00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第一巻 00000030¥T寒川入道筆記 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L16慶長十八年著 00000070L17作者未詳 00000080L18大本一冊 00000090L19宮内庁書陵部蔵 00000100¥T1歌連歌同詩聯句之事 00000110¥N1¥J 00000120¥X 00000130M3一△三十一字の哥のはしめハ、さらに申もことふりにたれ 00000140M4とも、そさのをのみこと出雲国にいたりて、宮つくりした 00000150M5まふ時、やいろの雲のたちけるに、よみたまへる哥、 00000160M6△△八雲たつ出雲やへかきつまこめに 00000170M7△△△やへかきつくるそのやへかきを 00000180M8あまつかむのミむまこ、わたつミのひめに、すみかよひた 00000190M9まひけるを、うのはふきあへすのみことを、うミをきたて 00000200M10まつりて、わたつミの宮に(1オ)かへりたまひけるときに、 00000210M11よみたまへる御哥、 00000220M12△△おきつとりかもつくしまにわかいねし 00000230M13△△△いもハわすれしよのこと+に 00000240M14かくよみたまひけれハ、とよたまひめの御返事、 00000250M15△△あかたまのひかりハ有と人ハいへと 00000260M16△△△きミかよそひしたうとくありけり 00000270M17となむありける。これらハミな神代の事成へし。人のよと 00000280M18なりてハ、おほさゝきのみことゝ申けるみこにをハしまし 00000290M19けるとき、おなし御おとうと宇治わかこと申けると、位を 00000300¥P4 00000310L1たかひにゆつりた(1ウ)まふとて、なにはにおハしましけ 00000320L2るを、猶位につきたまふへきこと近くなりける時、王仁と 00000330L3いふ人、いふかりおもひてよみて奉りける哥、 00000340L4△△なには津にさくやこのはな冬こもり 00000350L5△△△いまハはるへとさくやこのはな 00000360L6このことハ、応神天皇と申は、人のよと成て、神武天皇よ 00000370L7り十六代にやおハしますらむ。この応神天皇と申は、宇佐 00000380L8ノ宮八幡大菩薩にをハします。其御皇子このかミをおほさ 00000390L9さきのみこと申。其御おとうとを宇治若子と申けり。(2オ) 00000400L10御門、宇治若子をやことに御あひしにをハしましけむ、東 00000410L11宮にたてたてまつらせたまひにけり。其後みかとかくれを 00000420L12ハしましにけれは、東宮くらゐにつきたまふへきを、いか 00000430L13てか、われ、このかミををきたてまつりてハ位につ/き(ヒ)かむ、 00000440L14おほさゝきのみこはやくらひにつきたまへと申たまひける 00000450L15を、又われハこのかミなりとも、宇治若子を先くらひにと 00000460L16おほしけれはこそ、太子にハたてたてまつらせたまひけめ、 00000470L17いかてか父の御心さしを、たかへたてまつらん、宇治若子 00000480L18はやく位(2ウ)につきたまへとて、われハなにはにをハし 00000490L19ましにけり。又宇治わかこも宇治にこもりたまひけり。其 00000500M1ほとに国+のあまともゝ御調物を持て宇治にもてまいれ 00000510M2ハ、われハ天皇にあらす、難波へもてまいれと仰られけれ 00000520M3ハ、難波にもてまいれハ、又宇治へもてまいれと仰られけ 00000530M4れハ、こちかちもてまいる程に、なにもくちそんしけれハ、 00000540M5あまともゝ、おのか物から袖をなむぬらしけるといふこと 00000550M6も此御をりの事なり。かくて三とせをへけるほとに、宇治 00000560M7の若子のたまハく、われこのかミの(3オ)王の心さしをむ 00000570M8ハふへからす、ひさしくいきて天下をわつらハさむやとて、 00000580M9わさとなるやうにて、かくれたまひにけれハ、おほささき 00000590M10のみこ聞たまいて、難波より急おハしまして、いかてわれ 00000600M11をすてゝ、さきにハたちたまふへきそ、いそきいきかへり 00000610M12たまへと、棺にむかひてかなしミたまひけれハ、宇治若子 00000620M13いきかへりたまひて、おきゐたまひて申たまハく、是ハ天 00000630M14命なり、かきり有事也、いかてかとゝまらむと申たまひて、 00000640M15又棺にふしてうせたまひにけれハ、おほ/さき((ママ))のみこ、不斜 00000650M16かなしみたまひて、(3ウ)宇治やまの上に、みささきなと 00000660M17したまひてけり。さて其後に大ささきのみこと、終に位に 00000670M18つきたまひにける。是を仁徳天皇と申也。其後たかとのに 00000680M19のほりて、民の家家を御らんしつかはすに、/((脱文))かゝり、まし 00000690¥P5 00000700L1て遠つ国国いかならん、いま三年ハ国国のみつき物、なた 00000710L2てまつりそ、御膳御服御殿の事、たたかくてありなむと。 00000720L3三年過て又、たかとのにのほりて御覧するに、民の家にミ 00000730L4な、けふりあつくたちけり。御らんして、民とめり、われ 00000740L5すてにとみぬと。きさきわらひて申たまハく、とめりとは 00000750L6のたまへと、御膳御(4オ)服御殿しか+あり、何事かと 00000760L7みたまへると。御門のたまハく、いまたきかす、民とんて 00000770L8君まつしといふ事をと。さてよミたまへる御製也。 00000780L9△△たかきやにのほりて見れハけふりたつ 00000790L10△△△民のかまとハにきハひにけり 00000800L11扨、民ともまいりて、今ハ三年すてに過にたり、みつき物 00000810L12そなへたてまつらむと。みかとおほせられていはく、猶い 00000820L13ま四年ハ、みつき物なたてまつりそ、七年をすくしてたて 00000830L14まつれと。七年過にけれは、国&の民、老たる若きをいは 00000840L15す、材木をかたに(4ウ)かけて、きほひまいりて、宮作ほ 00000850L16となくしけりとなむ。 00000860L17此御門はくらひにおハしますこと八十七年なり。すへて御 00000870L18年ハ百廿七年なむおハしましける。みかとの第一の御いの 00000880L19りハ、民のうれへとゝめ。/(させ)たまふへきとの御事のミなりと 00000890M1そ。 00000900¥N2¥J 00000910¥X 00000920M3一△連歌濫觴者、仁王十二代景行天皇御宇、/連(ヒ|ヒ)東夷蜂起し、 00000930M4辺境さハかしかりしに、退治のため、日本武尊発向ありし 00000940M5とき、 00000950M6△△にゐはり筑波をすきていく夜かねつる(5オ) 00000960M7と尊仰出されけれハ、火とほす翁、付て申さく、 00000970M8△△夜にハこゝの夜日にハとをかを 00000980M9と侍し也。其後、万葉第八、尼か句に、 00000990M10△△佐保川の水せき上て植し田を 00001000M11と侍るに、△△△△△△△△△△家△持 00001010M12△△かるはついなはひとりなるへし 00001020M13とすゑを続たまひしなり。上古にハ上の句をいひかけて下 00001030M14の句を継せ、下の句をいひ出して上の句を付させ侍し也。 00001040M15五十韻・百韻といふ事ハ梵燈庵主の比より出来也。(5ウ) 00001050M16漢の一句の尾の字を韻と云例して、和にもとまりの字を云 00001060M17也。百句を五十韻と云へきを、誤て百韻と云来ル也。 00001070M18後普光園、御名乗ハ良基。園トハ院の心ナリ。 00001080¥P6 00001090¥N3¥J 00001100¥X 00001110L1一△連哥新式追加并新式今案等 00001120L2先本式と云を、建治二暦於鎌倉藤谷、為相卿被編云云。同 00001130L3比又大納言為藤卿新式被編なり。対本式新の字ををかるゝ 00001140L4なり。本式の連哥いまに清水寺に残て有之。毎月十八日に 00001150L5法楽執行の由。代代宗匠一度有興行事也。宗祇も執行有。 00001160L6則発句、(6オ) 00001170L7△△△△何人△△△△△△△△△△△△宗△祇 00001180L8△△水かほり花いさきよき深山哉 00001190L9△△△竜もひとつにさくらさくかけ△△快△勝 00001200L10△△天津風雲におつれは長閑にて△△△兼△載 00001210L11と侍しなり。紹巴も永禄の比、於六波羅普門院、百韵成就 00001220L12畢。懐紙ハ面ニ十句、名残の裏ニ六句書之。面毎ニ花一宛 00001230L13八本也。初折之面ニ/各(名)所一句。賦物之事、百韻ニ取之、今 00001240L14ハ不然。応安五年新式、後普光園摂政殿御作也。追加并新 00001250L15式今案、享徳元年、後常恩寺関白殿御作也。一条禅閤と申 00001260L16せし也。文亀元辛酉年、彼是を一冊(6ウ)に編之事、肖柏 00001270L17の作なり。柏原院御宇、奉行ハ兼載也。肖柏、宗碩、三人 00001280L18の談合なれとも、肖柏発起の故に彼作と云也。奥書ニ、応 00001290L19安以来新式今案追加之条条并近代用捨之篇目等、彼是勤以 00001300M1為一冊云云。従建治二年応安五年迄九十七年也。/(応安)六ヨリ享 00001310M2徳元迄八十年也。享徳二ヨリ文亀元年迄四十九年。文亀二 00001320M3ヨリ慶長十八年迄百十二年也。い上従建治二年慶長十八年 00001330M4迄/(三)百/(三)十/二(八ヒ|△ヒ)年也。応安新式之事、後普光園摂政殿之時、一人 00001340M5の老翁来て、十七ケ条の双紙、号立水臥水を告しらしめた 00001350M6まふ。帰る(7オ)さをあやしめ、人を付見せたまへハ、北 00001360M7野宝殿ニ入たまふ也。依之天神御作と知たまふ也。新式ハ 00001370M8十七ケ条目の双紙なりとそ。則、摂政殿自筆にあそはし、 00001380M9北野宝殿にいまに有之ト云云。 00001390¥N4¥J 00001400¥X 00001410M11一△北野裏白の事。毎年正月三日に必執行之連歌也。此元 00001420M12来は執筆誤て、一の折の裏をかゝすして、二の面にうつり 00001430M13候。其誤をあらためす、余の折をも面計にかきて、い上八 00001440M14枚に書之也。是を裏白といふ。此外ニ説有といへとも略之。 00001450¥N5¥J 00001460¥X 00001470M16一△歌も連歌も勿論、かなつかひ、句ぎり、清濁にて、事 00001480M17の(7ウ)外にちがふ事シヤ。 00001490M18△△わすらるゝ身をハおもハすちかひてし 00001500M19△△△人の命の/を(△お|゛△)しくもあるかな 00001510¥P7 00001520L1此哥のよミやうを、両人してあらそふた。其故ハ、このち 00001530L2かひてしを、一人ハちがひてしとよむ。又一人ハ、ぢがひ 00001540L3てしとよむ。此せんさく終不果。爰に歌道究タルト云人ア 00001550L4リ。両人同道して、其人のモトへゆきて、しか+と問。 00001560L5答テ曰ク、是ハ是、ぢがひトよみたるがよく候、其ゆへハ、 00001570L6この哥の下ノ句ニ、人の命のをしくも有かなと候、是にて 00001580L7分別候へと、何時も哥道不審ノ事候は、尋ニ(8オ)きたら 00001590L8れ候へと利口をいふて、両人なからをカヘサレタ。 00001600¥N6¥J 00001610¥X 00001620L10一△俊成卿九十一にて、はてさせられたと、八十一の歳の 00001630L11暮に此哥よませられたと、有人かたられし程に書付申候。 00001640L12其分か、猶可尋。 00001650L13△△いに/(シ)への鶴のはやしのけふりにも 00001660L14△△△たちをくれぬる身こそつらけれ 00001670¥N7¥J 00001680¥X 00001690L16一△仁治二辛丑年八月廿日、八十一にて定家之卿卒。 00001700L17仁治二ヨリ慶長十八年ニ至て三百七十三年歟。 00001710L18哥道執心の人ハ、右ノ忌日ニハ花香ヲ摘焼し、仏前ヲ拝シ、 00001720L19一首一句ヲモ手向クヘキ事也。(8ウ) 00001730¥N8¥J 00001740¥X 00001750M2一△嘉禎元年乙未卯月九日家隆卿卒。 00001760M3嘉禎元ヨリ慶長拾八年に至て三百七十九年也。 00001770M4此忌日ニモ精進潔斎シテ、跡をしたひ可申事也。 00001780¥N9¥J 00001790¥X 00001800M6一△紹巴常に申されしハ、哥にハ定家、連歌にハ宗祇、御 00001810M7心を添られし物にハ別而心をとめ、拝見再吟専用と申サレ 00001820M8タ。 00001830¥N10¥J 00001840¥X 00001850M10一△宗祇辞世、 00001860M11△△うつしをくもわかかけなから世のうさを 00001870M12△△△しらぬ翁そうらやまれぬる 00001880M13同発句、 00001890M14△△世にふるハさらに時雨のやとりかな(9オ) 00001900¥N11¥J 00001910¥X 00001920M16一△昌休辞世、 00001930M17△△かゝらんと思ひし物の身のきえハ 00001940M18△△△夕のかねに哀もそそふ 00001950M19同発句、 00001960¥P8 00001970L1△△月のミと苔地こととふ霜夜かな 00001980¥N12¥J 00001990¥X 00002000L3一△/(法眼)紹巴ハ、辞世ノ哥モ発句もなるまひ事シヤト、常&物 00002010L4かたり候つる。其通りシヤ。 00002020¥N13¥J 00002030¥X 00002040L6一△昌叱法橋辞世 00002050L7△△誰も唯世ハうきものとしりなから 00002060L8△△△かきりあるにや任せ来ぬらし(9ウ) 00002070L9同発句、 00002080L10△△朝かほハうき世の外のさかりかな 00002090¥N14¥J 00002100¥X 00002110L12一△心前辞世、 00002120L13△△数ふれハあまたの人にをくれこし 00002130L14△△△わか身の消をなにをもハまし 00002140L15紹巴右之哥をひらき、落涙中+無正躰て、 00002150L16△△なき跡に数へられんとおもふ身を 00002160L17△△△世に残しつゝ消ぬるかうき△△紹△巴 00002170L18同発句、 00002180L19△△うきハ人さかさまにゆく年もなし 00002190¥N15¥J 00002200¥X 00002210M1一△詩之始者毛詩也。論語云、子曰詩三百一言以蔽 00002220M2之思(10オ)無/邪(|云へり)。 00002230M3詩云、緡蛮黄鳥止于丘隅、子曰於止知其所止、可以人 00002240M4而不如鳥乎。私云、詩者所志云出ノコトバ也。天竺ニハ 00002250M5伽陀ト云、震旦ニハ翻訳シテ偈ト云。又頌ト云、又詩ト云。 00002260M6日本ニテハ歌ト云。去程ニ源氏ヲコマウドノ相人、相シ奉 00002270M7ル時ニ作リケル詩ヲモ、モロコシノ歌トカケリ。 00002280M8△△△△恋詩△△△△△△△△△葉苔磯 00002290M9△△長安遊子誤帰期△懶織回文錦字詩 00002300M10△△約臂黄金寛△一寸△逢人猶道不相思(10ウ) 00002310M11△△△△又△△△△△△△△△△劉媛 00002320M12△△雨滴梧桐秋夜長△愁心和雨到昭陽 00002330M13△△涙痕不学君恩断△拭却千行更万行 00002340M14△△△△又 00002350M15△△工夫若有思君意△成仏須先老釈迦 00002360M16△△△△恋詩 00002370M17△△若向天涯吐胸霧△三千日月可無光 00002380M18△△△△又 00002390M19△△君看一夜游泥水△是不清波月亦沈 00002400¥P9 00002410¥N16¥J 00002420¥X 00002430L1一△聚楽関白殿御月次之聯句御興行初(11オ) 00002440L2△△詩客尋梅到△遺野賢似求△△■春和尚 00002450L3△△聖皇焚栢祝△宜越副齢仙△△有節和尚 00002460L4右御会文禄二癸巳年正月廿五日也 00002470¥N17¥J 00002480¥X 00002490L6一△如月小喝食之時悪狂@カシマシ|ケレハ△@、△△小喝口如鵙△△佳月 00002500L7△△△△△△△△△△△△△△△△老僧形似牛△△如月 00002510¥N18¥J 00002520¥X 00002530L9一△昔或人ノ句ニ、 00002540L10△△△水清清水水△△川白白川川 00002550L11△△又 00002560L12△△△八坂五重塔(11ウ)三条六角堂 00002570L13△△又 00002580L14△△△花東山地主△△梅北野天神 00002590L15右喝食達ノ句也。後ニ皆名匠ニナラレタソ。カヤウナル文 00002600L16字者ノアルニ是御覧候へ。 00002610L17△△△諸行無/上(常)△△是生滅法 00002620L18△△△生滅滅已△△寂滅為楽 00002630L19此四句の文ハ、誠ニ犬ウツワラハベモ、シル事ジヤゲナニ、 00002640M1扨+笑止ナ事ノ、殊大寺ニ、此傍ニなに/物(ヒ者)やらん、たん 00002650M2さく一まい(12オ)卒都波ニ押付ておゐたト、 00002660M3△△無。/上(常)とはたかかきなせる諸行そや 00002670M4△△△そとハはつかし内にたておけ 00002680¥N19¥J 00002690¥X 00002700M6一△女房なとにさへ文字広才の人のあるに、出家の身とな 00002710M7りて、無学にてハ曲有間敷事也。 00002720¥T1伊勢物語之事 00002730¥N1¥J 00002740¥X 00002750M10一△伊勢筆作とハ無紛事なから、家&の説説不同。しか 00002760M11ハあれとも、今師説に用ルハ、伊勢カ書ト云儀也。古キ説 00002770M12ニ、伊勢ノ二字に、おとこをんなと云字訓アリ。おとこを 00002780M13んなの物語なれハ、伊勢物語と号するといへり。(12ウ)不 00002790M14足信用。又此物かたりに十くわんの注有。又知顕集とて、 00002800M15経信卿の注ありといへとも、いつれも一として、まこと有 00002810M16事なし。此等の注をハ後成恩寺殿よく破しておきたまへり。 00002820¥N2¥J 00002830¥X 00002840M18一△昔おとこ、むかしとハ大古をも云、近古をもいへり。 00002850M19又今朝ハあすのむかしに成、昨日ハ今日の昔に成、今のこ 00002860¥P10 00002870L1とを昔とも書へき事也。源氏に、いつれの御時ニかとかく 00002880L2も、むかしとをかん為也。尚書に、古者伏犠氏之王天下也 00002890L3とかくも、古といふを上にかふふらしめてり。男とハ業平 00002900L4也。むかし男と、古注につゝけて、業(13オ)平をむかしお 00002910L5とこといふなといへる儀ハわろし。昔とよみきりて、おと 00002920L6ことよむへし。 00002930¥N3¥J 00002940¥X 00002950L8一△うゐかうふり、禅閤ハ、うゐかうふりハ叙爵の事とあ 00002960L9そはせり。しかれとも、師説にハたゝ元服の事とす。元服 00002970L10ハ人の出身の始也。俗躰の定る所也。元服初より終焉の夕 00002980L11まての事を、この物語にハかける也。 00002990¥N4¥J 00003000¥X 00003010L13一△奈良の京かすかのさとに、うゐかふふりハ初ノ事也。 00003020L14かりするハ其後、又いつ/□((にカ))ても有へし。奈良の京ハ平城天 00003030L15皇もおハせし也。業平ハ平城の御孫(13ウ)なり。しるよし 00003040L16してとハ、業平の知行ありし也。奈良の京ハはや、此京へ 00003050L17うつされて、旧都になれとも、いまた業平の旧宅もあり、 00003060L18領知もありし程に、ゆきてあそふなり。 00003070L19そのさとにいとなまめいたる、なまめくハ最媚とかけり。 00003080M1うつくしくゆうけんなる躰也。 00003090M2はらから、兄弟の事也。古注に、有常カ女兄弟あることを 00003100M3いふと也。不可用。 00003110M4此男かいま見てけり、かいまミハ源氏におほき詞なり。日 00003120M5本紀より出たり。かきのひまより、の(14オ)そき見る心也。 00003130M6是ハのそくとハ見るへからす。物こしなとに、ほのかに見 00003140M7る心成へし。 00003150M8△△ついにゆくミちとハかねてきゝなから 00003160M9△△△昨日けふとハおもハさりしを 00003170M10昨日まてハ、今日とハおもハさりしと云儀ハ、大にきたな 00003180M11し。たゝ、きのふ今日とハ、おもハさりしと見るへし。是 00003190M12則、一切衆生の辞世也。かくとハしれとも、其きハになら 00003200M13てハ、おとろかさるなり。太和物語にハ、中将此哥をよみ 00003210M14てなん、扨果にけるとかけり。此物語、業平の始終をあく 00003220M15るほとに、元服のはしめより獲(14ウ)麟の夕まてにして、 00003230M16書とゝめたり。京極黄門の、常に見習へきハ古今伊勢物語 00003240M17とかゝれたり。業平ハ元慶四年庚子五月廿八日、五拾六歳 00003250M18にして卒す。慶長十八年に至て七百卅四年也。朱雀院御在 00003260M19位の時也。 00003270¥P11 00003280¥N5¥J 00003290¥X 00003300L1一△源氏物語之事。紫式部筆作勿論之儀也。しかしなから、 00003310L2女房の胸中一分として書出せる物とハ見えすと、不審ある 00003320L3事、尤いつれの抄にも其端ヲかきけり。しかハあれ共、式 00003330L4部広才のうへ、紫日記にも、今朝ハ里に出て史記と云文よ 00003340L5むなとゝ載たれは、外(15オ)典の事ハ申におよはす、天台 00003350L6六十くわんをも伺ヒ、一心三観ノ妙理をさとりうる程の人 00003360L7なれハ、疑を残すへからさるなり。物語の時代ハ一条院の 00003370L8御宇也。御在位ハ廿五年。永延二、永祚元、正暦五、長徳 00003380L9四、寛弘八、此六ノ年号都合廿五年。物語作リ初ル比ハ、 00003390L10寛弘年中歟。康和の比より、天か下に流布歟。寛弘元ヨリ 00003400L11康和元年迄九十六年歟。寛弘元年より慶長十八年迄七百年 00003410L12也。准拠之時代、醍醐、朱雀、村上、三代ニ准スル也。醍 00003420L13醐の天皇ノ御即位ヨリ、村上ノ御即位迄五十年也。桐壷ハ 00003430L14延喜、/生((ママ))雀ハ天慶、冷泉院ハ天暦、光源(15ウ)氏ハ西宮左 00003440L15大臣、如此相当スル也。上東門院ハ一条院ノ后。一条院御 00003450L16即位ヨリ慶長十八年迄ハ六百廿七年歟。紫式部、此時代ノ 00003460L17人也。いつれノ御時にか、題号の事、説説多といへ共、只 00003470L18源氏の事をしるせると也。猶口伝にあり。古今の序に山シ 00003480L19タ水ノ終すといへるか如ク、水ノ源をいへる也。泯江濫觴 00003490M1入楚乃無底@山谷第四句|■敦文詩△@ト云ガ如シ。是ハ女ノハカナク書タル 00003500M2ヤウナレトモ、其心淺からす。発端ハ伊勢カ家集に、いつ 00003510M3れの御ときにか有けん、おほミやす所と聞えける御つほね 00003520M4にと、かけるにもとつけり。いつれの御ときとさす事ハ、 00003530M5簡要ハ醍醐ノ御ときをさしていふ也。(16オ)高明公左遷の 00003540M6事をもつて、須磨の事を書也。惣而此物語のならひ、人独 00003550M7の事をさしつめてかくとハなけれとも、皆古事来歴なきこ 00003560M8とをはかゝさる也。好色の人をいましめんかために、多ク 00003570M9淫乱ノ事ヲ載也。盛者必衰の理リ、則出離解脱の縁も此物 00003580M10語の外にハあるへからす。又夢のうきはしの事、たゝ夢の 00003590M11儀也。はしハ言葉のたすけ也。よろつの事をゆめとしらせ 00003600M12んとのためなり。惣而源氏のはしめをハる事ハ皆、夢とい 00003610M13ハむか為/也(ヒ)なるへし。紫式部ハ観/世(音ヒ|△ヒ)の化身にて、人に世の 00003620M14中の有さま、たゝかり(16ウ)そといひしらせむ夢の物語な 00003630M15るへし。(17オ) 00003640¥N6¥J 00003650¥X 00003660M17△△△△千句法度 00003670M18一△一句一直附雪月花 00003680M19一△出合遠近但声先次第 00003690¥P12 00003700L1一△諸礼停止 00003710L2一△右如件 00003720L3△△△年号 00003730L4△△△△月日 00003740L5是紹巴の伝也。必如此可書。真草行ハ筆者次第也。昌叱ハ 00003750L6右定所如件トかゝれたソ。 00003760L8一△発句賦物の取様、面の仕様、千句の時の口伝有。(17ウ) 00003770¥T1愚痴文盲者口状之事 00003780¥N1¥J 00003790¥X 00003800L11一△我等下人ニ天下無双ノウツケモノアリ。当年正月ノ事 00003810L12ナルニ、庭前掃除ス。彼者ひとりことに、連歌士や又数寄 00003820L13者ナトハ、此様なる雪ノ朝タヲ心カケ、数寄ヲモ出シ、発 00003830L14句ヲモ思案スルコソ本意ナラメ、扨&大寐哉ト云ヲ聞テ、 00003840L15枕を上ケ、雪ハいか程フリタルトとへハ、中+申されぬ 00003850L16ことじやといふ。洛中ニハ昔より、左様ニ大雪ハふらぬが、 00003860L17キトくナル事哉、先いかほとふりたるそといへは、彼うつ 00003870L18ケもの申やう、上へハ一寸にタルタラズ候が、横へハいか 00003880L19ホトとも、かきりが御座なひと申タ。(18オ) 00003890¥N2¥J 00003900¥X 00003910M1一△右ノウツケヲ風呂へつれて入、かゝせんト思ひ候へハ、 00003920M2たびをはきなから風呂へ入ル。又ウツケヲヒログヨトしか 00003930M3り候へハ、御めんなされ候へ、石風呂のかつてをつかまつ 00003940M4り、面目ウシナヒ申スト云タ事。 00003950¥N3¥J 00003960¥X 00003970M6一△又此うつけニ、はかまかたきぬをこしらへとらせんと 00003980M7おもひ、色ハ何いろかよきそ、このめと申候へハ、とかく 00003990M8老少不定ともにかちんかよひと申タ事。 00004000¥N4¥J 00004010¥X 00004020M10一△われら近所にはなし候て居申候内ニ、俄ニ雨降出候あ 00004030M11ひた、笠をとりにまいれと申付候。もはやとりてまいるへ 00004040M12きと、おもてへ出尋候へハ、いまた取にまいら(18ウ)ぬと 00004050M13申ス。なぜにと申せハ、あまりに大ふりにて候程に、やう 00004060M14でから取にまいらふと申シタ事。 00004070¥N5¥J 00004080¥X 00004090M16一△此ヤツメ、宿に居たひと申、いとまをこい候程に、小 00004100M17家をもとめとらせ、宿にしかと居申事に候折ふし。/(我等ノ。)隣より 00004110M18火出て候やけ上り申候処ニ、カノウツケ、宿近キゆへには 00004120M19やくかけつけ、精を入、水をかけて火をけし申事に候。扨 00004130¥P13 00004140L1やけ候ハぬ、目出度とて、かけつけ候ものともに酒をのま 00004150L2せ、今夜ハウツケなからわれにかかつタト申候へハ、カノ 00004160L3ウツケカツニ乗て申やう、今夜ハとなりの家なれハこそ、 00004170L4大かたに火をけし(19オ)たれ、今度是のがやけふときハ、 00004180L5このつれに精ヲだいてハをくまひと利口しタ。 00004190¥N6¥J 00004200¥X 00004210L7一△右のあはうにましたる程のウツケモノ近所にあり。を 00004220L8のれか家ノ井戸へ/入て(ヒヒ)おちた。皆&出合、さて+笑止と 00004230L9いふて、のほりはしを井戸へ入て、あかられ候へ+とい 00004240L10へは、かのうつけ申やう、皆&しハし御まち候へ、そのゆ 00004250L11へハ、無案内ナル所ニテなれハ不及是非候が、おや先祖の 00004260L12屋敷の井戸へ落て、もはや男ハならぬ、是からすぐに高野 00004270L13へはしる、さらは+といふた。 00004280¥N7¥J 00004290¥X 00004300L15一△高知行とる人の内ノ者に、一段と文盲ナル人あり。(19 00004310L16ウ)乍去無油断奉公人たるに依て、人か馳走する。然間よ 00004320L17き数寄しやの所に茶にようだ。会過て主のもとへゆく。則 00004330L18会席の躰を主のとハれたれハ、其に、わかう様や、かミ様 00004340L19の御座候程に、申スまひト斟酌せらる。くるしからぬ、は 00004350M1や+申され候へと、せつかれた。さらハ申さう、汁ハ一 00004360M2段と見事なるわらひと申さるゝ。さて其わらひか爰のさし 00004370M3合か。中+。なせにととハるれハ、先わらひのわハわか 00004380M4う様のわの字、らハとの様のらの字、びハかミさまのびの 00004390M5ぢシヤト。いらぬ事ニ気をつけたの。(20オ) 00004400¥N8¥J 00004410¥X 00004420M7一△さてあはうハつきぬ事ジヤ。有家ノ六尺ニ風呂ヲたけ 00004430M8といひ付たれハ、風呂/を(ヒ|ヒ)ハたかれぬと申。なせにと問へハ、 00004440M9それにかミさまの御座有程に、分ハ申スまひ。なせに、く 00004450M10るしからぬ、申せとせつかれたれハ、さらは申さう、かま 00004460M11かわれまらした。それかかミ様にかまふ歟。中+かまひ 00004470M12まらする。なせに。たつに五六寸程われまらしたといふ 00004480M13た。 00004490¥N9¥J 00004500¥X 00004510M15一△いかにも文盲なる人、人をたのミ、文をかゝせて江戸 00004520M16へやる。その文躰、 00004530M17△△びんきよろこひ一筆とりむかひまいらせ候。(20ウ)其 00004540M18△△方にハ何事なく候。此方にも何事なく候哉。何様一夕 00004550M19△△与風以参可申承候。 00004560¥P14 00004570L1判をもかなにかいてたまハれといふて、ねんを入た。都か 00004580L2ら与風一夕所にてハなひの。 00004590¥N10¥J 00004600¥X 00004610L4一△又右のやうなる人の所へ、余所から折紙が到来シタ。 00004620L5此折かミを見るかほにて、中通りノ折目をもかまひなくひ 00004630L6ろげて、是+御らん候へ、当世ハいろ+の事がはやる、 00004640L7ふミを跡つがふてかいた、めつらしき事の。 00004650¥N11¥J 00004660¥X 00004670L9一△都に又似たる人なき文盲者あり。されとも(21オ)はや 00004680L10一両年已前に身まかりて、名のミはかりのこつた。今いら 00004690L11れたらハよきなくさみにてあるへき物をと、皆+をしか 00004700L12る。此人、もんまうならハ文盲なるていにてよかるへきに、 00004710L13物毎にさし出たがる。有時せいくわん寺へまいり、六字の 00004720L14ミやうがうの額を見て、事の外ほむる。人是ををかしがる。 00004730L15此名号ハ一遍上人の御筆也、いつれも見事シヤ、其中にて 00004740L16も、そなたの目にハどれが見事ニ候ぞ。かの者申やう、一 00004750L17遍の御筆などにいたらぬわれらが、とかく可申にてハ候ハ 00004760L18ねとも、とりわき南無阿弥/陀((ママ))/仏の、つの字が見事シヤ(|▽とかくに人ハ名をのこす事ミやうがな事シヤ)。/唯(たゝし|但) 00004770L19/よき(|よき)(21ウ)事にてなくハいらさる事シヤ。 00004780¥N12¥J 00004790¥X 00004800M2一△光源院殿の御時、磯谷とて一段と文盲なる人あり。しか 00004810M3しなから才覚人にすくれ、武道によハからぬゆへに出頭せ 00004820M4られた。有時国大名へ御使ニ/に((ママ))まいられた。其御下知にも、 00004830M5委細使者口状ニ被仰含由也。大名ヨリ御奏者両人出合、こ 00004840M6なたへと賞ス。扨大守ヨリ御請をも可被申上候、先ツ御使 00004850M7者の御名字ハトとふ。磯谷と申候。磯ハいつれにて候ソ。 00004860M8はたと失念ト申された。もし水辺の磯にてハ候ハぬかト申 00004870M9され候へハ、それ+と申された。扨がひハト(22オ)尋ら 00004880M10れけれハ、是もはたと失念ト申サル。爰にテ両人の奏者の 00004890M11いハく、しりかひのがひにてハ御座なひかといへは、さふ 00004900M12らひ程のものを、しりかひハあまりにて候、せめてむなか 00004910M13ひにさせられ候へト申された。是程なる人なれとも、おと 00004920M14こ儀かよさに、人かませたゾ。しぜんのときも一方の陣頭 00004930M15をかためられたに、一度もふかくをかゝなむだソ。 00004940¥N13¥J 00004950¥X 00004960M17一△武家の内をまかなふものあり。一段ト文盲にて、十石、 00004970M18廿石、百石、千石、ト云所にて、竹にきさミをして物をす 00004980M19ます。此者のむすこ是を見て、おなし(22ウ)やうに竹にき 00004990¥P15 00005000L1さみをする。親是を見てしかる。手ならひして、てをきる 00005010L2な。 00005020¥N14¥J 00005030¥X 00005040L4一△有入道すかたハ人かましけれとも、かたことはかりを 00005050L5いふ人あり。しかしなから、身をハきれいにたしなむ。か 00005060L6ミもひけもうつくしくそりて、数寄やへ入ル。路地にて、 00005070L7うつくし/く(き)そりやうとて、あひ客の人ほむる。しかる返事 00005080L8に、是ハけさ六角堂の上人様の自そりにして被下たといふ 00005090L9た事。 00005100¥N15¥J 00005110¥X 00005120L11一△加茂の社人、近江守に受領した。同名、親類、知音衆 00005130L12目出度とて皆&あつまる。其後、江州御内に(23オ)御座候 00005140L13かと出入の人云。此江州ト云事をしらす。何事そと思ふて 00005150L14知音の人にとふ。此知音の人、ひようげた人にて、色+ 00005160L15の事をいゝきかされタ。先ツ六十余州の内にも大国を名に 00005170L16つく事ハ規模也、人による事也、しかるに、近江国ハ廿四 00005180L17郡大国の内也、貴所にハ似合ぬ名をつかれた、物しらぬ、 00005190L18只犬シヤトいふ事シヤ、江州トハ犬トいふから名シヤト、 00005200L19事こまかにまことのやうにかたられけれハ、近江守、実に 00005210M1もト思ひ、今度から江州トいふてきた者にハ、返事のしや 00005220M2うかあると、いひもあへす、江州ハ内にかといふてキタ。 00005230M3(23ウ)江州ハ門にくそをくらふてゐるト返事した。さて 00005240M4+あハれな事の。 00005250¥N16¥J 00005260¥X 00005270M6一△京の町に売家あり。門に札をたてゝおいた。此家うり 00005280M7家也、但たゝミやにうらふト書てあり。皆人是を見て不審 00005290M8する。家をうる程ならは、誰に成ともうれかし、たゝミや 00005300M9をこのむハ何事そトいふ人おほかりけり。さて此うりての 00005310M10心をとへは、たゝミやにうらうトハ、くづいてうらうと云 00005320M11事シヤ。 00005330¥N17¥J 00005340¥X 00005350M13一△俄ニ不弁して京をうせた人あり。家をも捨て、門戸を 00005360M14閉て、門柱にたんさく一まひはり付て置。(24オ)其書やう、 00005370M15△△皇△帝△臣△下△也 00005380M16是を公家、武家、寺院、庵/斬((ママ))、町衆に至まて、見る人毎に 00005390M17不審をたつる。大かた、かふきハはつれぬト聞えタ。 00005400M18△△くわてきトいふ事シヤ 00005410M19只人ハ其分&に家をも身をももちてこそあるへきに、おも 00005420¥P16 00005430L1ひの外に結構に家を/(を身ヲ)かさりたるゆへに。 00005440¥N18¥J 00005450¥X 00005460L3一△三方論儀を借りニやつたれハ、卒都婆小町を(24ウ)を 00005470L4こされた。さて+物をしらぬ人の。 00005480¥N19¥J 00005490¥X 00005500L6一△うつけたる人、わき指をうしろへ押まハしてをいて、 00005510L7爰かしこト尋ル。ソバナル人是を見て、ソナタノ腰ニアル 00005520L8ハト云へハ、てをまハして、いらふて見て、扨+けんに 00005530L9ようもない所にあつた事シヤト。 00005540¥N20¥J 00005550¥X 00005560L11一△むかしからあはうハつきぬ事シヤ。今程世上ニつぎ木 00005570L12かはやる、あれハ何トしたる事ゾ。/(ミレハ)大キナル木を切テ、ヤ 00005580L13ウジ程ナル木をつぐ。少も合点ゆかぬト云。是を人聞て、 00005590L14あれハしぶかきなとをきりてツゲバ、御所柿にもなる、又 00005600L15ハ木ザハシニモ成候ト云へは、扨(25オ)+ちやうほう成 00005610L16事かなとて、其侭ふたかい程ある柿をきりて、ついだ。人 00005620L17是を見て、いかなるほにて候ぞととへハ、あなたこなたと 00005630L18もらひにやるも、六ケ/敷(シ)さに、やかてあの木のほをついた 00005640L19トいふタ。さて+をしい事の。 00005650¥N21¥J 00005660¥X 00005670M2一△われら九州へ下りさまに、去人のもとへいとま請にゆ 00005680M3きて、しか+といふたれは、亭主出合て、扨+遠国殊 00005690M4海上御儀太シヤト云。自筆ニ御くたりかトとふ程に、心安 00005700M5思召候へ、迎舟が伏見まてまいつて候ト云へハ、扨ハ心安 00005710M6存候、惣別あの舟の車力が(25ウ)造作な物シヤニ、よき御 00005720M7事や。 00005730¥N22¥J 00005740¥X 00005750M9一△右同前ノ様成人の方へ、築紫へ下りかけにいとまこひ 00005760M10にゆきたれば、文盲者出合て、いつ比迄の御逗留そトとふ 00005770M11程に、一両月の間と申候へハ、随分いそき御帰朝候へと申 00005780M12された。をかしさハかきりなし。 00005790¥N23¥J 00005800¥X 00005810M14一△九州に御座候大名衆に逢て、文盲なる者の申やう、東 00005820M15のはてに御座候ゆへに、存知なから御見廻も申あけぬトい 00005830M16ふタ。遠キ所ハあつまと心得タ。さて+せうしの。(26オ) 00005840¥N24¥J 00005850¥X 00005860M18一△九州衆ハ一段ト心かふかひ。そのゆへハ、いつかたへ 00005870M19御座候そト問へトモ、小風呂の口へは入さまにも、ちと 00005880¥P17 00005890L1よそへトいふ。さて+気のどくの。 00005900¥N25¥J 00005910¥X 00005920L3一△桜の木の間にもる月の、雪のふる夜嵐を、桜のこの馬 00005930L4にのる月のトうたふかよひト、両人色&にあらそふ。とか 00005940L5く爰にて問答して埓ハあくまいほとに、都へ上りて実否を 00005950L6決セントテ、両人同道にてのほる。有人にゆき逢て、此う 00005960L7たひ/を(ハ|ヒ)いかにと尋候へハ、答へテ曰ク、昔も今も桜の木の 00005970L8間にもるトうたひ候ハ、皆文盲なる者ノ事、只桜の(26ウ) 00005980L9この馬にのる月のトうたひ候かよく候、そのゆへハ、おも 00005990L10しろのはるひや+と、うたひ候程にト。京にもゐ中あり 00006000L11とハ此やうなる事か。 00006010¥N26¥J 00006020¥X 00006030L13一△中にもつらゆきハ、御しよところをうけたまハりて、 00006040L14いにしへ今迄を、御酒所をトうたふたかよひといふ。此問 00006050L15答落着せぬ。さらハ物しりのかたへとひにゆけとて、ふた 00006060L16り打つれて学文者の室ニ入て、しか+ととふ。此/者(もの)しり、 00006070L17だうけたる人にて、是ハこれ御酒所かよく候。其故ハ、中 00006080L18にもト/盃(盃)の事をいひ出し、御酒所をうけたまハり/て(と)いふて、 00006090L19はてによろ(27オ)こひをのミし君か代ト、皆酒ノ事シヤ程 00006100M1に、御酒所がよひト打つけた。さて+なにともいハゝい 00006110M2ハるゝものゝ。 00006120¥N27¥J 00006130¥X 00006140M4一△人にすくれてたのしき人あり。しかしなから、又人に 00006150M5すくれてしハひ人シヤ。此人将騏をすいてさす。大かたま 00006160M6けト見ゆる。しかれとも金をあひにすれはかゝゆる。しか 00006170M7も金の二まひまてもつ。金ヲせねハなに馬にてもかゝへぬ。 00006180M8さる程に金をあひにはるかト見れハ歩兵をはる。わきから 00006190M9皆&云やうハ、金を御はり候へ、さなけれハなにもあひ馬 00006200M10ハきかぬト(27ウ)いへは、かのしハ者申やう、たとひ王ハ 00006210M11つまろふトまゝ、当座先ツ物のいらぬがよひト云タ。 00006220¥N28¥J 00006230¥X 00006240M13一△右のやつめ散&にわつらい、今をかきりト見ゆる。し 00006250M14かれとも、薬代をいやかりて、かつてもつて薬をのまぬ。 00006260M15女房子共親類共あつまりて、是を笑止かる。とかく道山を 00006270M16申請、脉をハ一入御薬をも申請ル。/一口ものまぬ。(急とせんじて病者にあたゆる。)/爰にて= 00006280M17親類共分別して(口=をふさぎて)、此御薬ハ道山のおもたせシヤ、まいれト 00006290M18云たれハ、大口をあきてのうだ。さて+しハひやつの。 00006300¥P18 00006310¥N29¥J 00006320¥X 00006330L1一△右のやつめにましたる程のしハひ者あり。され共(28 00006340L2オ)道具ひやうしき、屏風、しやうじ、太鞁、鼓残る所なく 00006350L3こしらへてハおけとも、取出してつかふ事か嫌ひシヤ。用 00006360L4の時ハ必知音の方へかりにやる。是を皆人聞伝、にくひ事 00006370L5とて物をかさぬ。又有方へかりにやりたれハ、是もこなた 00006380L6に入候とてかさざりけれハ、さて+人ちくしやうなやつ 00006390L7どもかな、さらハこれのを取出シテつかへト云タ。 00006400¥N30¥J 00006410¥X 00006420L9一△西浄石の見事成を見て、さて+、くくんでもつやう 00006430L10なトいふてほめタ。物をほむるも事ニより、所によりての 00006440L11事成へし。せいじやうの石を見て、く(28ウ)くんでもつハ 00006450L12不似合。 00006460¥N31¥J 00006470¥X 00006480L14一△西浄をかう屋トいふ事に二説あり。一にハかミををろ 00006490L15すト云事シヤ。又一ニハにほふトいふ事シヤ。 00006500¥N32¥J 00006510¥X 00006520L17△△△△△△△△△△△△西浄 00006530L18一△閑所有様△△△南△△△△△北△雪隠 00006540L19△△△△△△△△△△△△東司 00006550M1家ハ南むきノ物シヤ。しかる間、南ハ風面なれハ/(後架ナシ。)。後(29オ) 00006560M2架トいふも北ニある閑所ノ名也。 00006570¥N33¥J 00006580¥X 00006590M4一△京の六尺共、二八月ノ出かハりに、よりあひて、此さ 00006600M5きの季に、そちハ何方にゐたそト問フ。をれハ二条のをな 00006610M6ら屋にゐたトいふ。さて+くさひ事を云、ならやならは 00006620M7ならやとハいハひで、おならやのおノ字ハ何事そトいへハ、 00006630M8おの字をつけたがそれほとはらがたつならハ、をれがゐ所 00006640M9をとうてようハトいふた。さて+よくをりやうたる対の。 00006650¥N34¥J 00006660¥X 00006670M11一△沈香めすまひかトいふて、あき人ありく。いづくの者 00006680M12そトとハすれハ、さかいの者ト答フ。さかひハト(29ウ)と 00006690M13へハ、くそのしやうしのきハ、へのまちのばばやの隣にて、 00006700M14はこやの分左衛門と申者にて御座候、御用のときハ道ふん 00006710M15所まて仰られ候へと申タ。扨+是もよくつゞいた事の。 00006720¥N35¥J 00006730¥X 00006740M17一△/夜(や)中にありくとて、なにやらんふんだ。あらむさや、 00006750M18ちやくトちやうちんもつて来れ、いや、ちやうちんにをよ 00006760M19はぬ、ねふつて見たれハ、あかつちジヤトいふ。むさいね 00006770¥P19 00006780L1ぶり事の。 00006790¥N36¥J 00006800¥X 00006810L3一△塩断の菜ニハ、梅干ガ何ヨリヨヒモノシヤ。あはうを 00006820L4いふものハせう事かない。(30オ) 00006830¥N37¥J 00006840¥X 00006850L6一△涼敷道ならハ唯心の浄土なるへしといふ程に、極楽ハ 00006860L7夏しらぬ所にてこそあるらめ。されとも足ハいかうひゆる 00006870L8と聞えタ。なせに。死ぬるほとの者が、跡とふらひてたひ 00006880L9給へト、いかなものも、たひをほしがる。 00006890¥N38¥J 00006900¥X 00006910L11一△昔から死にぞんハなひ事シヤ。なせに。若キ人しぬれ 00006920L12はをしひと云、年寄死ぬれは目出度事シヤトいふ。にくひ 00006930L13ものかしぬれハうれしきといふ。とかくわるいふ事ハなひ 00006940L14事シヤ。されともしんてハいらぬ事ジヤ。 00006950¥N39¥J 00006960¥X 00006970L16一△此五六日以前に、かぶきの大将が死ニまらした。何と 00006980L17(30ウ)してはてタソ。此春から夏秋かけて散&に煩候て、 00006990L18五六日さきにとん死シタ。 00007000¥N40¥J 00007010¥X 00007020M1一△何角といふて死ぬるハ必定シヤ。堺の八万貫屋身まか 00007030M2りて、あたし野へおくる。遺言ニ、われを野へ送るときに、 00007040M3乗物より両のてを出してをけ、其ゆへハ、さすかにさかひ 00007050M4南北にてかくれなかりし八万貫屋も、死ぬれハてをうちふ 00007060M5つて、いなるゝよと、諸人に見せた事、大導師なりとかん 00007070M6せぬ人はなかりけり。上代にも末代にもあるまひ禅法シヤ。 00007080¥N41¥J 00007090¥X 00007100M8一△老少不定とハ経にも説をきたまへとも、大略ハ(31オ) 00007110M9老がちしや程に皆&御用心。 00007120¥N42¥J 00007130¥X 00007140M11一△古句古哥 00007150M12△△△生死去来△棚頭傀儡△一線断時△落落磊磊 00007160M13△△いつの日のいつまて爰にてくるばう 00007170M14△△△まハし+てはてハかつたり 00007180¥N43¥J 00007190¥X 00007200M16一△色色に利口ハいへとも、死ぬるハすかぬ事シヤ。 00007210M17△△しにたきといふハ浮世のすてこと葉 00007220M18△△△まことの時はねかハさりけり 00007230M19△△世の中にひとりとゝまる者あらハ 00007240¥P20 00007250L1△△△若我かハと頼ミもやせん(31ウ) 00007260¥N44¥J 00007270¥X 00007280L3一△とにかくに右のやうなる事共をきけハ、気ノ毒じや。 00007290L4きかぬかよひ。かやうに治リタル御代にハ、太刀をハ鞘に 00007300L5納め、弓をは袋に入ておいて、其身+の数寄+にした 00007310L6かひ、日を暮し、よをあかしなくさむへき事シヤ。千も万 00007320L7も不入、当時無敵ハ若衆様ト腎をはたらかし討死せう事シ 00007330L8ヤ。不然ハ若衆様ノ御袋様ト。 00007340¥N45¥J 00007350¥X 00007360L10一△不文字なる人、医者振リヲシテ、病者ノ脉ヲトリテ、 00007370L11次ノ間へ立て、我等ノ手柄にてハ成申間敷候、いちだんと 00007380L12悪キ脉出申候、殊足ノ裏迄上気シタト(32オ)云タ事。 00007390¥N46¥J 00007400¥X 00007410L14一△聚楽にて、武家ノ右筆ノ入道、掛硯をもたせて登城す 00007420L15るを見て、ある若党たちより、卒爾なから、それさまハ歌 00007430L16道者にてハ御座なひか。なせにトいへは、歌道者ならハ、 00007440L17虫薬を申うけたい、散+にはらかこ/ま(わヒ)りまらする。 00007450¥N47¥J 00007460¥X 00007470L19一△武家ヨリ、やりノ鞘を百本程、あるぬし屋へあつらへ 00007480M1られた。さい+せつきにゆく。ぬし屋の亭主、御使者に 00007490M2逢て、随分いそき進上申さう、牛馬の家/を(ヒ|ヒ)にハ、何時しら 00007500M3ずに、かやうの御道具ハ入物シヤ程ニ、(32ウ)御急御尤じ 00007510M4やト云タ。 00007520¥N48¥J 00007530¥X 00007540M6一△ある大名の前にて、座頭、平家をかたる。くまかへか 00007550M7いち二ノかけシヤ。くまかへ平山かれ是五/崎((ママ))にてひかへた 00007560M8りとかたれは、右ノ大名文盲にて、いかに座頭、平家ハ歴 00007570M9+の前にて語物じやに、五/崎((ママ))にてひかへたるハ、いかう 00007580M10むさひ程に、せめてわんにてひかゆるやうにかたれト申さ 00007590M11れたれハ、尤ト申タ。さて+ききてとかたりてト似合た 00007600M12る事ノ。 00007610¥N49¥J 00007620¥X 00007630M14一△鵺に、南殿の大床に伺公スト云事を、しとをストかた 00007640M15るかよひと、両人僉議ス。右ノ大名是を聞て、(33オ)批判 00007650M16せられた。此平家ノ末ニ、頼政矢を二つたはさミける事ハ、 00007660M17源中納言雅頼卿其時ハいまた左少弁トかたる程に、せうベ 00007670M18んならハ、しとがよからふト申された。文盲にてハあれ共 00007680M19よひ作ノ。 00007690¥P21 00007700¥N50¥J 00007710¥X 00007720L2一△又ある座頭、助音して平家をかたる。一門ノ都落ト所 00007730L3望シヤ。あるひハとをきをわけ、さかしきをし/し((ママ))のき、駒 00007740L4に鞭うつ人も有、舟にさほさすものもあり、思ひ+心心 00007750L5に落そゆくといふを、大名ノ御前たるに依て、はひもうし 00007760L6て、駒にさほさし、舟に鞭うつトかたつたれハ、是も平家 00007770L7ノ、あハてさは(33ウ)ひたるゆへ成ト付タ。きとくしやト 00007780L8皆ほめた。座頭ハミな利根な物シヤ。 00007790¥N51¥J 00007800¥X 00007810L10一△大坂太閤様、薬院所ニ御座ノ時、杉原連一検校御礼ニ 00007820L11罷出、かへるさに御縁にて箒ニけつま/(づ)ひてころんだ。大閤 00007830L12様御同朋衆御しかりなされた。よくてを引て帰さてと御意 00007840L13シヤ。連一是をうけたまハり、御同朋衆疎略にても御座な 00007850L14い、罷立時ハ必これがてちだう物に候、いなばはうきト申 00007860L15ト申あけたれハ、大閤御笑被成、きどくを申たるとて、御 00007870L16小袖を被下タ。(34オ) 00007880¥T1落書附誹諧之事 00007890¥N1¥J 00007900¥X 00007910L19一△昔さかひに柳屋とて身をもちたる人あり。一段トれん 00007920M1哥執心のあまりに、宗祇老をまねきよせ、柳屋父子三吟を 00007930M2とのそむ。則祇公同心にて、はやはしまる。いまた賦とい 00007940M3ふ字もかゝさるに、柳屋門前にかくはかり、 00007950M4△△三吟によひ茶一斤ましりけり 00007960M5△△△のこる二斤ハくらハれもせす 00007970M6まことに身をもちたるといふとも、にげなき事をハせまひ 00007980M7事ジヤ。 00007990¥N2¥J 00008000¥X 00008010M9一△天下にかくれなき初花の茶入、立売大文字(34ウ)屋栄 00008020M10甫所持。是を三好方にて出頭の松山殿へ申て、権柄にて、 00008030M11さかひ衆拝見する時に、其路地口に、 00008040M12△△物しらぬ人のしわさよはつ花に 00008050M13△△△まつ山風をふかせ来ぬるハ 00008060¥N3¥J 00008070¥X 00008080M15一△をそ桜の茶入ハ、立売篠屋字久所持。をそ桜と名付る 00008090M16事ハ、 00008100M17△△夏山の青葉のましりのをそ桜 00008110M18△△△はつ花よりもめつらしきかな 00008120¥P22 00008130¥N4¥J 00008140¥X 00008150L1一△昔いかにもちいさき茄子の茶入もつ人アリ。(35オ)人 00008160L2ハさ程におもハねとも、主ハ天下一と思ひて、さひ+に 00008170L3数寄をせらるゝ時に、 00008180L4△△二ふくさへいらぬ茶入のなまなすひ 00008190L5△△△あへて其身のかほよごしかな 00008200¥N5¥J 00008210¥X 00008220L7一△中むかしの事かとよ、都に公事聞の奉行あり。一段ト 00008230L8正路に批判せられタト。しかしなから、女中方より耳へ入 00008240L9ル事ハ、皆理になるときに、 00008250L10△△かミさまの御前て公事かすむならハ 00008260L11△△△まらのやうなる批判なるへし 00008270L12とかく女房にハ、たかきもいやしきも、心かとらるゝト。 00008280L13(35ウ) 00008290¥N6¥J 00008300¥X 00008310L15一△多賀豊後ニ所司代被仰付候時ニ、女シヤモノニ談合仕 00008320L16リ御返事申上ウト云タ。尤シヤ。此女シヤモノニ談合申ス 00008330L17ト云ニ、説説多シト云ヘトモ、只女公事取次ナト究メテト 00008340L18思ヒ、右ノ如ク申上タ事シヤ。此人上代ニモ末代ニモ有間 00008350L19敷公事ノ批判、中+其数を不知。豊後記トテ名誉ノ批判 00008360M1せられた事をしるし置たる書物、法花経程ナル巻物五くわ 00008370M2ん、多賀ノ家に伝リ有之由及承候。拝見申度願ひ迄也。抑 00008380M3此人ハ後花園御治世ノ末、寛正年中ノ人也。将軍ハ慈照院 00008390M4殿ノ御代の所司代也。慈照院殿ハ普広院殿ノ御子也。准(36 00008400M5オ)三后贈大相国一品喜山大禅定門、御名乗ハ義政、文明五 00008410M6年正月七日御歳五十六ニテ御他界、天下の御主タル事卅一 00008420M7年也。此間ニ色色様様の御遊興、筆ニハ誰かつくし侍らん。 00008430M8数/哥(寄)ナトモ此時分ヨリ別而盛ナル由ニ候。武道にも又哥道 00008440M9にもすくれたまふ御所とそ。あるとき八幡より千句の御発 00008450M10句申上ル。則、△△△△△△△△義△政 00008460M11△△千世かけてさけや鳥居の花かつら 00008470M12又、大原野花見御成御発句、三月六日、 00008480M13△△遠く来て見るかひありや花盛(36ウ) 00008490M14則、御会御人数、 00008500M15公方様△△△△△一条大閤様△△△△△二条関白様 00008510M16△三条権輔殿△△△日野殿△△△△△△飛鳥井殿 00008520M17△細川右京大夫殿△山名殿△△△△△△一色殿 00008530M18△京極殿△△△△△小笠原美濃入道殿△杉原伊賀守殿 00008540M19△蜷川周防守殿△△能阿△行助△専順 00008550¥P23 00008560L1御連衆十六人、上古ニハ如此多人数ニ而、御座の由候。此 00008570L2時分ハ万事ニ名匠出現シヤソ。@寛正元年ヨリ慶長十八|年ニ至て百五十四年か@ 00008580¥N7¥J 00008590¥X 00008600L4一△同正月十五壬子、細雨、今出川殿御判始、御弓始、御 00008610L5馬乗始、此両条御師範小笠原備前守長光、御剣(37オ)拝領、 00008620L6此段蜷川新右衛門親慶日日記ニアリ。則自筆也。右新右衛 00008630L7門ハ、広沢ノ歌、又尺迦モ達磨ノ哥詠人の子か孫か、可尋。 00008640L8是程ニ哥道を我かまゝにシタル程ノ作者ナレトモ、集ニハ 00008650L9只一首入タルソ。抑新続古今集ハ後花園院ノ御宇、永享十 00008660L10年撰之。巻頭、 00008670L11△△△△△△△△△△△権中納言雅縁 00008680L12△△春来ぬといふより雪のふるとしを 00008690L13△△△四方にへた/((て脱カ))ゝたつ霞かな 00008700L14此集えらハれ/ゝ(シ|ヒ)時、此人ハ一休和尚ニモ逢フタルソ。蜷川 00008710L15新右衛門親当、哥道にやさ男なれハ、撰集ニ御(37ウ)免可 00008720L16被成トノ事ニテ侍リシカハ、主一代に一二万首モ詠てコソ 00008730L17侍るらめ。其内にさつつへき哥をぬき、三百首上ケ奉ル。 00008740L18其内に一首もなし。扨&と、又一日ニ百首詠候て又上奉ル。 00008750L19其裹ミ紙にもかく計、 00008760M1△△書すつる藻くつなりとも此たひハ 00008770M2△△△かへらでとまれ和哥の浦浪 00008780M3さて此百首の中に、 00008790M4△△遠からぬもとのさとりのミやことり 00008800M5△△△こととふ人のなきそかなしき(38オ) 00008810M6此哥一首入られけり。哥道の冥加、誠不至して高位にま 00008820M7しハるとハ、げに尤ト京わらんへ申伝ヘタソ。@新続古今集被撰|永享十年ヨリ慶@ 00008830M8@長十八年ニ至テ|百七十六年か△@ 00008840¥N8¥J 00008850¥X 00008860M10一△江州佐佐木四郎殿、入道させられて紹鼎ト号ス。都の 00008870M11主にと寄+望ミを御かけ被成候へ共、終に御てにいらさ 00008880M12る時に、 00008890M13△△都をは四郎+とのそめとも 00008900M14△△△しらかわまてもせうていハなし 00008910¥N9¥J 00008920¥X 00008930M16一△田舎にて、都のことくにとて精を入、饅頭を菓子ニ出 00008940M17されけれ共、風味もすかたもよくあらさり(38ウ)けれハ、 00008950M18取あへす、△△△△△△△△△△宗△祇 00008960M19△△まつくろでしかもかたふて人くハぬ 00008970¥P24 00008980L1△△△此まんちうを馬になさひで 00008990¥N10¥J 00009000¥X 00009010L3一△山門東坂本ニ答養とて連歌士あり。一段トロがこハか 00009020L4つタト。又いにしへ、おとこの時、てををい、足をちとひ 00009030L5かれた。あるとき御前ノ御会にめし出された。右如申句毎 00009040L6にこハロなれハ、△△△△△△△△△△△近衛太閤 00009050L7△△馬ならハのられん物かとう養が 00009060L8△△△口のこわさよすそのわるさよ 00009070¥N11¥J 00009080¥X 00009090L10一△妙心寺に金蔵主とて、一段トとひやうなる坊主(39オ) 00009100L11のありけるか、五月の節句ニ賀茂へけいば見物にゆき、か 00009110L12へるさにもどり橋にて印地を見る。我がゐる方まけになる 00009120L13と見て、衣の下より一尺八寸ノいか物作の大脇指をぬいて、 00009130L14きつてかゝる。むかふより、やかてやりにてつきころす。 00009140L15時に落書、 00009150L16△△五月五日競馬かへりの金蔵主 00009160L17△△△やりにつかれてひしやトコソナレ 00009170¥N12¥J 00009180¥X 00009190L19一△一とせ信濃国善光寺如来御在京とて御のほりのとき、 00009200M1則、本田善光御供也。是を粟田口にて雄長老御見物なされ、 00009210M2とりあへす、(39ウ) 00009220M3△△つミをきる弥陀のつるきや是ならん 00009230M4△△△粟田口より出るよしミつ 00009240¥N13¥J 00009250¥X 00009260M6一△かくれなき藤戸石を、上京細川殿御屋敷より室町畠山 00009270M7様御屋敷へ、信長公御引なさるゝ。数日御手間入けれハ、 00009280M8いたつらもの、 00009290M9△△花よりも団子の京トなりにけり 00009300M10△△△けふもいし+あすもいし+ 00009310M11此年の御普請にハ、江州衆別而精を入られけれハ、又いた 00009320M12つらもの、 00009330M13△△なまなりのすしとそ見ゆるあふミ衆(40オ) 00009340M14△△△おもせの石をもたぬ日ハなし 00009350¥N14¥J 00009360¥X 00009370M16一△丹後国主一色殿、実相院殿ニ知音なされ、夜も日もあ 00009380M17けぬ程の御事也。あまりに御心よき児たるにより、落した 00009390M18てまつりて、わかむこにと思ひかけられ候へ共、御同心な 00009400M19けれハ、なに者のしわざやらん、 00009410¥P25 00009420L1△△円頓者実相院をおとしかね 00009430L2△△△一色一香面目もなし 00009440¥N15¥J 00009450¥X 00009460L4一△下京に文台屋の清介といふものあり。文台(40ウ)の箱 00009470L5をは精ニ入すして、狂言をすく。方&あそひありき、人に 00009480L6すくれて不弁なれは、 00009490L7△△文台屋いらぬ狂言せうよりも 00009500L8△△△うちのくつろくはこをせいすけ 00009510¥N16¥J 00009520¥X 00009530L10一△京のぬしや、堺へ下り、さつまやにて数寄道具いろ 00009540L11+品品ぬり候へ共、てまちんをそく出けれハ、たんさく 00009550L12一まひ細工所にをきて、京へのほる。 00009560L13△△薩摩屋ハ薩摩のかミかおほつかな 00009570L14△△△それハたゝのりこれハたゝぬり 00009580¥N17¥J 00009590¥X 00009600L16一△そのかミ、八すミとて無官の侍あり。しかしなから 00009610L17(41オ)万事才覚ゆへに、都の奉行をせらる。堂上下御馳走 00009620L18不斜。そのゆへに身の程をもかへり見す、子共をあつめ、 00009630L19禁庭にて御能仕られタ。時に、 00009640M1△△八角めハ将騏の馬にこそ似たれ 00009650M2△△△くらひもなふて王に近つく 00009660M3此返哥に八角方より、 00009670M4△△くらひなくて王に近付ためしにハ 00009680M5△△△歩兵もなれハ金トこそいへ 00009690¥N18¥J 00009700¥X 00009710M7一△此六七十年以前の事なるに、元理とて誹諧の上手あり 00009720M8と聞えタ。三好修理大夫殿にて御会(41ウ)の過に、誹諧の 00009730M9発句御所望、折節御前ニ有合候人&ハ皆&入道なり。御俗 00009740M10躰ハ大夫殿計。比は十月なれは、そのまゝ、 00009750M11△△お座敷を見れは大略神無月△△△△△元△理 00009760M12△△△ひとりしくれのふるゑほしきて△△大夫殿長慶朝臣 00009770M13此百韻、誹諧の手本ト沙汰あるソ。則此内に、 00009780M14△△△なにト見れともさきの近さよ 00009790M15△△日をえらふ暦ハしハす廿日比△△△元△理 00009800¥N19¥J 00009810¥X 00009820M17一△ある女房、賀茂川の辺にてすそをからけて物をあらふ。 00009830M18その足もとに、ちいさき子よれまとハれて、(42オ)またく 00009840M19らよりかほの見えけれハ、有人、 00009850¥P26 00009860L1△△くろきかほしろきもゝより如トでて 00009870L2△△△お児を肩にのする弁慶△△△元△理 00009880L3さて+頓作なる事かな。あまりにくきほとのはや口なる 00009890L4にとて、又、 00009900L5△△しろきかほくろきもゝより如トでゝ 00009910L6△△△お児の肩にのれる弁慶△△△元△理 00009920L7右ノ前句両句なから、大夫殿のかけさせられたト、老人の 00009930L8かたられ候を、則如此書付候也。 00009940¥N20¥J 00009950¥X 00009960L10一△細川の幽斎、ある時紹巴所へ御尋ある。折/角(節ヒ|△ヒ)、(42ウ) 00009970L11紹巴ちんすひにて無正躰平臥也。幽斎是を見たまひて、い 00009980L12かに紹巴、いかにと二三度四五度おこしたまへとも、枕を 00009990L13あけてハ又寐、まくらを上てハ、たそ+と候へ共、目も 00010000L14覚す、むく+としてゐられたれは、 00010010L15△△△むくり+とあたまもたくる△△△△△幽斎 00010020L16△△うころもちありともしらす野へにねテ△△紹△巴 00010030L17かくいひ+おきられけり。 00010040¥N21¥J 00010050¥X 00010060L19一△又玄旨紹巴同道にて、鞍馬寺へ花見ニ御出ノ時ニ、岸 00010070M1より下へとひおりんとせられけれ共、老足心(43オ)のまゝ 00010080M2にならぬ。見たまひて、 00010090M3△△△とばう+とするそあぶなき△△△玄△旨 00010100M4△△人玉ハやまふの床の休らひに△△△△紹△巴 00010110¥N22¥J 00010120¥X 00010130M7一△江州山さき源太左御家中ノ人、俄かこひ座敷にて一折 00010140M8興行。連哥半ニ、かりニしつらひ候天井落けれは、いつれ 00010150M9もあたまをうたれぬ。中にも昌叱にあらけなくあたりけれ 00010160M10ハ、取あへす、 00010170M11△△おもひきやかりてん井のをちかかり 00010180M12△△△あたま板手をかふむらんとハ△△△昌△叱 00010190¥N23¥J 00010200¥X 00010210M14一△上古より世間にかくれなき、みのの国落書、(43ウ) 00010220M15△△ときはれとのりたてもせ/す(ぬ)よのはかま 00010230M16△△△みのハやふれて人のにそなる 00010240M17右の返哥、 00010250M18△△ときはれはのりたてそするよのはかま 00010260M19△△△みのハやぶれてひとのをそしく 00010270¥P27 00010280¥N24¥J 00010290¥X 00010300L2一△昔山門と三井寺と不和の儀ありて、三井寺へ山門より 00010310L3乱入して、三井/寺(ヒ|ヒ)鐘を山へ乱妨之時、 00010320L4△△三井寺の児ハ歯白になりにけり 00010330L5△△△つくへき鐘を山へとられて 00010340¥N25¥J 00010350¥X 00010360L7一△山城之国山崎宗鑑、一段ト不弁にて、正月用意も(44 00010370L8オ)無之歳暮に、 00010380L9△△としくれて人ものくれぬこよひかな△△△宗△鑑 00010390L10此発句をあハれかりて、正月の用意、方&から数+もち 00010400L11つとふタト。 00010410¥N26¥J 00010420¥X 00010430L13一△甲斐国武田信虎の御女を、菊亭殿へ御祝言の御約束あ 00010440L14り。いまた往来もこれなき以前に、先ツ聟殿見にとて案内 00010450L15なしに、菊亭殿へ、信虎御出の沙汰ありけれは、一首かく 00010460L16はかり、 00010470L17△△婿入もまたせぬさきの舅入 00010480L18△△△きくていよりもたけたふるまひ(44ウ) 00010490¥N27¥J 00010500¥X 00010510M1一△悪逆せられたる明知日向守、めしつかハれけるやりか 00010520M2たけの中間あり。六尺ゆたかなるおとこなり。あまりに大 00010530M3キなれハとて、人皆おふほとけと名を付た。此者日向殿へ 00010540M4何やらん不足をいふて、あたまをそりてひつこむ。向州是 00010550M5を聞たまひて、ひさしきものとて、不足をかなへて、よひ 00010560M6かへされた。又やりをかたげ供する。人是を見て、一首つ 00010570M7らねた。 00010580M8△△おふほとけあたまをそれは又仏 00010590M9△△△これそ二仏の中間といふ(45オ) 00010600¥T1謎詰之事 00010610¥N1¥J 00010620¥X 00010630M12一△春夏秋冬ヲ昆布ニ裹ダ△何ゾ△△△小式部 00010640¥N2¥J 00010650¥X 00010660M13一△ふすへぬかわ衣打きせた△何ゾ△△△北白川 00010670¥N3¥J 00010680¥X 00010690M14一△焼亡打けした△何ゾ△△△人丸 00010700¥N4¥J 00010710¥X 00010720M15一△股蔵のたぬき△何ゾ△△△枕 00010730¥N5¥J 00010740¥X 00010750M16一△むらさきの袈裟すミ染の袈裟△何ソ△△△ささ 00010760¥N6¥J 00010770¥X 00010780M17一△山からか山にはなれて去年ことし△何ゾ△△△唐錦 00010790¥N7¥J 00010800¥X 00010810M18一△山山ニ風ガ入タ△何ソ△△△嵐山 00010820¥N8¥J 00010830¥X 00010840M19一△わたましのあした△何ソ△△△すミ染の袈裟(45ウ) 00010850¥P28 00010860¥N9¥J 00010870¥X 00010880L1一△くささにさつた△何ソ△△△かいでの木 00010890¥N10¥J 00010900¥X 00010910L2一△ほの+とあかしのうらの朝きりに 00010920L3△△△しまかくれゆく舟をしそ思ふ 00010930L4△△此哥ハ字あまりにて候△何ソ△△△筆 00010940¥N11¥J 00010950¥X 00010960L5一△古今の序やふれて哥人の中終る△何ソ△△△きんかん 00010970¥N12¥J 00010980¥X 00010990L6一△酒の入物十△何△△△すゝむし 00011000¥N13¥J 00011010¥X 00011020L7一△あかぬわかれ△何△△△はなれうし 00011030¥N14¥J 00011040¥X 00011050L8一△田△何そ△△△もミち 00011060¥N15¥J 00011070¥X 00011080L9一△花△何そ△△△なるミ崎 00011090¥N16¥J 00011100¥X 00011110L10一△はらから△何△△△鏡台(46オ) 00011120¥N17¥J 00011130¥X 00011140L11一△太山路や深山かくれの薄もミち 00011150L12△△△もミちハ散て跡形もなし△何△△△茶磨 00011160¥N18¥J 00011170¥X 00011180L13一△驕過タ△何△△△花瓶 00011190¥N19¥J 00011200¥X 00011210L14一△ぼつ△何△△△酒壷 00011220¥N20¥J 00011230¥X 00011240L15一△紙帳のおなら△何ソ△△△かみくさ 00011250¥N21¥J 00011260¥X 00011270L16一△蚊帳のやふれ△何ソ△△△かいる 00011280¥N22¥J 00011290¥X 00011300L17一△天狗の土蔵△何ソ△△△まくら 00011310¥N23¥J 00011320¥X 00011330L18一△とりの中へくゝたちが入タ△何△△隣 00011340¥N24¥J 00011350¥X 00011360L19一△太刀刀皆失て果ニなたを包タ△何△△△花立 00011370¥N25¥J 00011380¥X 00011390M1一△法事の中ニりんがなつた△何△△△法輪寺(46ウ) 00011400¥N26¥J 00011410¥X 00011420M2一△宇治橋ノ半はついた△何△△△うし 00011430¥N27¥J 00011440¥X 00011450M3一△風呂の中に床ガある△何△△△懐 00011460¥N28¥J 00011470¥X 00011480M4一△無理に所望△何△△△をし鳥 00011490¥N29¥J 00011500¥X 00011510M5一△五輪のばけ物△何△△△袴 00011520¥N30¥J 00011530¥X 00011540M6一△からすのかしら白成タ△何△△△尾羽黒 00011550¥N31¥J 00011560¥X 00011570M7一△かけごの中ノ毛抜△何△△△篭 00011580¥N32¥J 00011590¥X 00011600M8一△寒ル嚢△なんそ△△△看経 00011610¥N33¥J 00011620¥X 00011630M9一△二つ△なんそ△△△四半 00011640¥N34¥J 00011650¥X 00011660M10一△まん丸△何△△△すミとり 00011670¥N35¥J 00011680¥X 00011690M11一△海のむかひ△何△△△鳥居(47オ) 00011700¥N36¥J 00011710¥X 00011720M12一△桜ノ明神△なんそ△△△涕巾 00011730¥N37¥J 00011740¥X 00011750M13一△廿一△何△△△八くし 00011760¥N38¥J 00011770¥X 00011780M14一△露△何△△△かさくるま 00011790¥N39¥J 00011800¥X 00011810M15一△たつ△何△△△うつぎ 00011820¥N40¥J 00011830¥X 00011840M16一△女△何△△△こふくろ 00011850¥N41¥J 00011860¥X 00011870M17一△もろこしのはてハあらしと立帰る△何△△△衣 00011880¥N42¥J 00011890¥X 00011900M18一△禅ノつとめはしむる僧ハ十六△何△△△ゐのしゝ 00011910¥N43¥J 00011920¥X 00011930M19一△ひやうごのつきしま△何△△△うミ梅 00011940¥P29 00011950¥N44¥J 00011960¥X 00011970L1一△にし△なに△△△ひと丸 00011980¥N45¥J 00011990¥X 00012000L2一△近江△なに△△△かなあふミ(47ウ) 00012010¥N46¥J 00012020¥X 00012030L3一△ひつじ△なに△△△馬の尾 00012040¥N47¥J 00012050¥X 00012060L4一△二ケ国の宿△なに△△△かゝミの家 00012070¥N48¥J 00012080¥X 00012090L5一△いろは四くたり△なに△△△くまて 00012100¥N49¥J 00012110¥X 00012120L6一△ようがいめせ△なに△△△白瓜 00012130¥N50¥J 00012140¥X 00012150L7一△東にハ風もなし△なに△△△うなぎ 00012160¥N51¥J 00012170¥X 00012180L8一△千手/勧((ママ))音△ナニ△△△ておほい 00012190¥N52¥J 00012200¥X 00012210L9一△坊主とわれ△ナニ△△△しとミ 00012220¥N53¥J 00012230¥X 00012240L10一△堂のすミ△ナニ△△△塔 00012250¥N54¥J 00012260¥X 00012270L11一△けふハ子△ナニ△△△いさり火 00012280¥N55¥J 00012290¥X 00012300L12一△三とせ一とせ△何そ△△△色紙(48オ) 00012310¥N56¥J 00012320¥X 00012330L13一△宮つかひかひこそなけれ身を捨て 00012340L14△△△しはさかさまにひくよしもかな△何△△△八はし 00012350¥N57¥J 00012360¥X 00012370L15一△産ダ馬ニ血ガ付タ△何△△△小町 00012380¥N58¥J 00012390¥X 00012400L16一△香炉ころんダ△何△△△独寐 00012410¥N59¥J 00012420¥X 00012430L17一△練に松を包タ△何△△△ねまつり 00012440¥N60¥J 00012450¥X 00012460L18一△くわの木まくら△何△△△まら 00012470¥N61¥J 00012480¥X 00012490L19一△なにもかもいらぬなりけりわかつまハ 00012500M1△△△此はるはかりそハんとおもへハ△何ソ△△△なつめ 00012510M2△△の木 00012520¥N62¥J 00012530¥X 00012540M3一△ききやうかるかやをミなへし△何△△△みくさ 00012550¥N63¥J 00012560¥X 00012570M4一△しゝとらののどをきつてかんやうの用にたゝす△何ソ 00012580M5△△十六らかん(48ウ) 00012590¥N64¥J 00012600¥X 00012610M6一△水にかきませタ△△△三ケ月 00012620¥N65¥J 00012630¥X 00012640M7一△きつねなかてかへる△△△月 00012650¥N66¥J 00012660¥X 00012670M8一△連哥ハはしまつタへたの下ノ句水辺よし△何ソ 00012680M9△△ふすべかわ 00012690¥N67¥J 00012700¥X 00012710M10一△四つ五つ時ハ武士のき物△何△△△馬よろひ 00012720¥N68¥J 00012730¥X 00012740M11一△しゐしは皆きつてさかさまにたつる△何ゾ△△△いし 00012750M12△△はし 00012760¥N69¥J 00012770¥X 00012780M13一△きりかさねたるなますなまとり△△△きり+す 00012790¥N70¥J 00012800¥X 00012810M14一△いくかへり/□((茶))磨ニ入て茶をひく△何ソ△△△うくひす 00012820¥N71¥J 00012830¥X 00012840M15一△まさかりのくわいにん△ナンソ△小野小町(49オ) 00012850¥N72¥J 00012860¥X 00012870M16一△にしの海あさし△ナンソ△△△鳥ひしほ 00012880¥N73¥J 00012890¥X 00012900M17一△うしろに/□((あ))かもなし△△△せきれひ 00012910¥N74¥J 00012920¥X 00012930M18一△ミやこハいつもしめりこそすれ△何ソ△△△ゑひもせ 00012940M19△△す京 00012950¥P30 00012960¥N75¥J 00012970¥X 00012980L1一△くわんとうの藤内がすゞを一つおとひタ△何ソ 00012990L2△△くわんす 00013000¥N76¥J 00013010¥X 00013020L3一△恋の本望きもすます△△△あふぎ 00013030¥N77¥J 00013040¥X 00013050L4一△つはき葉をちてつゆとなる△△△ゆき 00013060¥N78¥J 00013070¥X 00013080L5一△あの花ハなにはなそ△△△すいせんくわ 00013090¥N79¥J 00013100¥X 00013110L6一△くわんせか世をすてゝあすかミをそる△何ソ△△△く 00013120L7△△わんす(49ウ) 00013130¥N80¥J 00013140¥X 00013150L8一△つゆしもをけハはきの葉もなし△何ソ△△△月 00013160¥N81¥J 00013170¥X 00013180L9一△宿/を(トヒ|△ヒ)ヒだに枕たにもならへぬに 00013190L10△△△なにとなミたのさきにたつらん△何ソ△△ねづなき 00013200¥N82¥J 00013210¥X 00013220L11一△あをがひのくらをけかけハ尾をとれハはぬる△何ソ 00013230L12△△らかん 00013240¥N83¥J 00013250¥X 00013260L13一△四つ+の時日ハ入にけり△△△三井寺 00013270¥N84¥J 00013280¥X 00013290L14一△ちりハなし△△△はいたか 00013300¥N85¥J 00013310¥X 00013320L15一△てんくのらくるい△△△まめしる 00013330¥N86¥J 00013340¥X 00013350L16一△やすき事/囗((わ))すれた△なにそ△△△あんどん 00013360¥N87¥J 00013370¥X 00013380L17一△おやのけうくんかなハす△なにそ△こもちいぬ(50オ) 00013390¥N88¥J 00013400¥X 00013410L18一△むようのへたて△△△よしかき 00013420¥N89¥J 00013430¥X 00013440L19一△ひつじ△△△むまの尾 00013450¥N90¥J 00013460¥X 00013470M1一△よりまさハいねともうゐかふりをぬいてぬへのかしら 00013480M2△△をつく△何ソ△△△いりこ 00013490¥N91¥J 00013500¥X 00013510M3一△うをのめいわく△何ソ△△△水引 00013520¥N92¥J 00013530¥X 00013540M4一△坊主がいせよ△何ソ△△△しされ 00013550¥N93¥J 00013560¥X 00013570M5一△木を/□((き))り竹をきりて入よ△△△木つゝ木 00013580¥N94¥J 00013590¥X 00013600M6一△とり居の中のからくさ△△△いぬたて 00013610¥N95¥J 00013620¥X 00013630M7一△さくらのあを葉△△△花かたみ 00013640¥N96¥J 00013650¥X 00013660M8一△いのちハふえのあひた△△△ねこ(50ウ) 00013670¥N97¥J 00013680¥X 00013690M9一△ひがしの女房ハさる△△△梅の木 00013700¥N98¥J 00013710¥X 00013720M10一△うらのとまや△△△あまがいる 00013730¥N99¥J 00013740¥X 00013750M11一△左のあふミ右にして左ハなし△△△あふき 00013760¥N100¥J 00013770¥X 00013780M12一△五月五日つきの間なし△△△丹後つむき 00013790¥N101¥J 00013800¥X 00013810M13一△みがきじゆす△△△しゆす 00013820¥N102¥J 00013830¥X 00013840M14一△滝ノ響ニ夢ヲ驚ス△△△アイサメ 00013850¥N103¥J 00013860¥X 00013870M15一△ゆあかりのやうしやういきかたし△△△ききやう 00013880¥N104¥J 00013890¥X 00013900M16一△のほりくたりのてひやうし△△△さかはやし 00013910¥N105¥J 00013920¥X 00013930M17一△なすのよ一△△△せんすい 00013940¥N106¥J 00013950¥X 00013960M18一△無始無終ノ仏ケ塵ニ交ル△何ソ△△△千鳥(51オ) 00013970¥N107¥J 00013980¥X 00013990M19一△/黒白(クロシロ)ニシクハナシ△△△ナラフロ 00014000¥P31 00014010¥N108¥J 00014020¥X 00014030L1一△かへしてくやしもゝの木のしゆす△何ソ△△△尺八 00014040¥N109¥J 00014050¥X 00014060L2一△夏冬のうへのきぬかへさははりをそへてかへせ△何ソ 00014070L3△△ゆつりは(51ウ) 00014080¥P33 00014090¥U噺本大系△第一巻 00014100¥T戯言養気集 00014110¥G 00014120¥Y 00014130L15古活字本 00014140L16作者未詳 00014150L17横本△二巻二冊 00014160L18未刊随筆百種本(上巻) 00014170L19天理図書館蔵(下巻) 00014180¥T1戯言養気集△上 00014190¥N1¥J 00014200¥X○しんほちいの故事 00014210M5ある人、正月七日の事なるに、すきやにかまをしかけ、り 00014220M6ん+とたぎるを聞て、福田助十郎と云人のかたへ、一ふ 00014230M7く申さうと、文をやりければ、助十かみをそりて参らでは 00014240M8とて、たれかれをよべども、今日は遊び日にて有とて、皆 00014250M9+出て候と言ひしかば、いかゞせんと思ひいたる所へ、 00014260M10だんな坊主、年玉なんどさゝげまいられければ、福田悦て、 00014270M11さてもよき所へ御出有物かな、即頼申とて、かみをあらひ、 00014280M12一しきこねてかゝる。此僧、坊主あたま計そりつけたるゆ 00014290M13へにや有けん、かたこびんよりめき+とそりおとしけれ 00014300M14ば、これは+と、きもをつぶし、以外腹を立、是非もな 00014310M15き御さいばんにて侍ると、のゝしりしかば、いな事を承る、 00014320M16何とも御このみもおはさぬ間、とんせいなされ候かと存、 00014330M17仕て候とて、腹を立、そりさしていなんと云しを引とめ、 00014340M18此上はそり度やうに御そり候へと申しければ、則新しほつ 00014350M19けになしけり。正月なるにより是を新発意のはじめとす。 00014360¥P34 00014370L1評して云、人をふかう思ひ入し事有時は、たれもかくあら 00014380L2んとおもひ、くはしく云ことはらで、度々あやまちに至る 00014390L3事有。此助十郎も、いそぎかみをそり、はんなりとすきに 00014400L4あはん事をのみ思ひ、さかやきをとこのまざりしゆへ、存 00014410L5じもよらぬとんせい者になりにけり。 00014420¥N2¥J 00014430¥X○柳はみどりの故事 00014440L8ある人、いと柳をひさうして、うへをきしを、あんないな 00014450L9しにおり取。ていしゆ出て、とがめければ、柳はみどりじ 00014460L10やといふ。一句につまつて、むねんに思ひ、はなばしらを、 00014470L11ひしときせたれば、ちがたりしを、これ何事ぞと云時、な 00014480L12んぢ知らずや、はなはくれなひよ。やがて以てまいつた 00014490L13+。 00014500¥N3¥J 00014510¥X○善悪出入のいさかひ 00014520L16かうじうりが、きんかくじのたつちうをうりまはり、もん 00014530L17ぐはいへ出る所を、門番の坊主が引とめて、かうじもんを 00014540L18出ずといへば、答て云、僧はたゝく月下の門とて、ほうと 00014550L19きせた。 00014560¥N4¥J 00014570¥X○ちごの事 00014580M3ある人、お児さまは、むまれつひた大上ごぢやと申たれば、 00014590M4いやそれほどにもおりなひ、但しちぶさにも、さけをぬら 00014600M5ねば、のみかねたるなど、ちいが申た。 00014610¥N5¥J 00014620¥X○もちよく身をせむる事 00014630M8大ちごさま、三位殿にのたまひける。今日は一だんなるき 00014640M9日にて有やうなるが、さもあらぬやと、つきなくおほせけ 00014650M10れば、心へたる人にて、もちたんととりよせ、ひそかに物 00014660M11しければ、あまりふためいて、物かずをめされけるほどに、 00014670M12のどにつまり、きち+とめされけり。一山のしゆう見ま 00014680M13ひ、せうしがりて、日本一のまじなひてをやとひ、此よし 00014690M14かくと申せば、即まじなふに、りうごのごとくになりしも 00014700M15ち、二けん計さきへとんで出しかば、皆+めでたひ事ぢ 00014710M16や、さりとては、じやうす程有と、かんじけるに、大児、 00014720M17心もいまだつくや、つかざるほどなりしに、おなじくは内 00014730M18へまじなひ入たらば、日本をおきぬ、三国一であらふとお 00014740M19ほせられた。 00014750¥P35 00014760¥N6¥J 00014770¥X○大小のちご利どんの事 00014780L3天正八年の春、貞安、あづち山へ出仕申されしかば、信長 00014790L4公おねんごろ有て後、御ふしんなされけるは、世間おほく 00014800L5小児をば、りこんに、大ちごはおろかに云ならはし候、大 00014810L6ちごも小児の成上りなり、ちいさき時さへ、りこんならば、 00014820L7大になる程、猶+りはつにこそなるべけれ、いな事ぢや 00014830L8とのおほせなり。貞安、御尤の御ふしんにて候、大ちごは 00014840L9ぬるし、やうたうにちかうなるゆへにやとの返答なり。又 00014850L10嵯峨の策彦和尚へ御ふしんなされしかば、愚僧も、さやう 00014860L11に存候、大かたすいりやう申候に、小ちごの間は、いまだ 00014870L12里心御座候故、武家のりはつ、さいかく、身にも心にもつ 00014880L13きそふて、おはしまし候ゆへならんか、ひたもの寺じみて 00014890L14のちには、長袖のぬるきたちふるまひを、みなれ聞なれ、 00014900L15をのづから心おとりし侍るかとこたへ申されければ、事外 00014910L16御ゑつきにて、一段尤の返答ぢや、出家にも、それ+の 00014920L17たちが有とて評して、おほせけるは、 00014930L18一、佐久間が家来の者は、大りやく、しとやかに分別も有 00014940L19△そう也。 00014950M1一、滝川家来の者は、士風きらよく、丈夫にあるべきやう 00014960M2△也。 00014970M3一、柴田家来のものは、どこかも、むたいにおし破りさう 00014980M4△なり。 00014990M5とかく人は、かしこきになれずば、中々よきしなは出まじ 00015000M6き物なり、又其国の風あり、その時の風ありとのたまひし。 00015010¥N7¥J 00015020¥X○うたの事 00015030M9ある山寺の児たちにあはんとて、武士衆登山有けるに、二 00015040M10たび物おもふといふだいにて歌あり。 00015050M11△△春は花秋はもみぢを散さじと 00015060M12△△△としに二たび物思ふなり△△△△大ちご 00015070M13△△朝めしと又夕食にはづれじと 00015080M14△△△日々に二たび物をこそおもへ△△小ちご 00015090M15かくて武士衆へも所望ありければ、取あへず、 00015100M16△△国を望み国を取ては乱さじと 00015110M17△△△さらに二たび物おもふかな 00015120M18評して云、かなしひかな、二たび物を思はざりしゆへに、 00015130M19うき事をのみ万人につたふ。 00015140¥P36 00015150¥N8¥J 00015160¥X 00015170L1○ちご法師よりあひ、寒夜をなぐさまんとにや、てんがく 00015180L2をさんせうからにして、あぶりけるが、いさ、みつはねた 00015190L3る事を云くはんとて、うんりんゐんの、こんけんたんの、 00015200L4なんはんしんの、せんさんひんのとて、めき+としやう 00015210L5くはんすれど、小児計一も得いはず。やう+のこりすく 00015220L6なになれば、思ひ出したる事有とて、きほひかゝりつゝ、 00015230L7てんかんくんと云もあへず、五くし六くし引たくり、くは 00015240L8れたれば、横川の中将殿けうさめがほに成て、一段たつし 00015250L9やに御座あるといはれた。 00015260¥N9¥J 00015270¥X 00015280L11○又ある時でんがくあり。今度はしゆうくにて、物せんと 00015290L12て、 00015300L13△△清盛むさうの長刀△△△△△△△△△△△△△大ちご 00015310L14△△△なぞ+△△いつくしまでたまはつた 00015320L15△△仏のあたま△△△△△△△△△△△△△△△△侍△従 00015330L16△△△何ぞ+△△みくし 00015340L17△△いしやの本尊△△△△△△△△△△△△△△△小△児 00015350L18△△△なぞ+△△八くし 00015360L19侍従殿少腹立して、とかく小ちごさまは物かずをすかせら 00015370M1るゝと申された。 00015380¥N10¥J 00015390¥X 00015400M3○山寺の下ほうし、お児さまへおそれながら御無心申たき 00015410M4事御入候よし云しかば、情をかけよとの事なるべしと、お 00015420M5ぼしめし、さても+やさしき事を申物かな、何時なりと 00015430M6も、やすき程のことなりと仰ければ、かたじけなく存候と 00015440M7て、ほゝゑみけり。有とき院主、里坊へ御下候へば、かの 00015450M8者ぢうばこを持てしかゝり、御やくそくにまかせ申上候、 00015460M9めんざうにあるみそを、これに一ぱいをしつけて御ぬすみ 00015470M10候てくだされ候/へ申((ママ))た。 00015480¥N11¥J 00015490¥X 00015500M12○おちごさま、山上一のとある/二((ママ))和尚とね給ひて、大いき 00015510M13をつゝけさまに十計つき、いや+と仰けるを、なふ+ 00015520M14何事ぞ+と、ほうゐん申され候へば、はもじなる夢をみ 00015530M15てと計ありしを、先御かたり候へかしと仰せければ、小袖 00015540M16を二つ三つ御きせ候て、その後もちを事外しゐさせられ候 00015550M17つるを、つよくしんしやく申たるやうに覚えて、ゆめさめ 00015560M18たると、のたまひけるを、そふじて春のゆめは、あひかぬ 00015570M19る物じや、御心やすかれと申された。 00015580¥P37 00015590¥N12¥J 00015600¥X 00015610L1○山寺にての事なるに、宰相殿、お児さま、法師はるすに 00015620L2て御座候やと、とはれしかば、いや持仏堂にかきしておは 00015630L3しまし候と答へられた。かきとは何事にておはしますぞと 00015640L4宰相殿申ければ、とにもかくにも、はらぢからがなふて、 00015650L5あゝ、かんともきんとも、はねられぬと申された。 00015660¥N13¥J 00015670¥X 00015680L7○不動院のお児、存の外もちを過され、夜半のころはんね 00015690L8つして、なんぎなされけり。折ふし里よりめのと上り合せ 00015700L9いたるが、おき出て、何と御いり候ととひ申せば、しか 00015710L10※の事有てと仰候間、さらば少消食丸を御まいりあれか 00015720L11しとて、ゆを持て参りければ、そなたともおほえぬ人ぢや、 00015730L12ゆや薬が、のどへ入ほどならば、いま一つ二つももちをこ 00015740L13そ、くはうにといはれた。 00015750¥N14¥J 00015760¥X 00015770L15○ある時、ひえの山の小ぼうし、たきぎをこりに参るとて、 00015780L16お児さまの昼のおこゞは、ぜんだなにをきけるが、其下に 00015790L17我中食をもをひて出たり。つねよりはたきゞをしたゝかに 00015800L18持て見えしが、門の内へ入とひとしく、先ぜんだなへ来て、 00015810L19めしをたづね見れ共、なければ、いな事ぢやと思ひ、お児 00015820M1さま+、わたくしのひるめしは御存なきかと申せば、う 00015830M2ゝ、おこゞのそばに有たが、そちがめしか、しるかとおも 00015840M3ふて、あこが食に打かけて物したると仰せられければ、中 00015850M4+あきれもせぬ事ぢや、いやはや+といひて立のひた。 00015860¥N15¥J 00015870¥X 00015880M6○人によりことばなんどをば、よく聞しれども、理にはう 00015890M7とき人あり。此人云やうは、べんけいは、はうぐはん殿の 00015900M8わかしうであつたげな、なぜなれば、はうぐはん、むさし 00015910M9をめされてと、まひにある程に。 00015920¥N16¥J 00015930¥X 00015940M11○下京辺にお宮と云わかしうあり。みめかたち、たちふる 00015950M12まひに至るまで、一きはすぐれてよく侍れ共、てんねん町 00015960M13じみて、人のひめをく道具などを見ては、ねをつけて、こ 00015970M14にくきやうすなれば、時々御情にあづかる坊主、いさめけ 00015980M15るは、何事につけても、つき※しく御座有が、少いやな 00015990M16事がある、是を御なをし候つる程ならば、たまりはいたす 00016000M17まひと申ければ、それこそ承度事なれと、仰られ候しかば、 00016010M18別の事でもおりなひ、あまり御心さとく御目もきゝ候ゆへ 00016020M19やらん、人の刀わきざし、すきだうぐによらず御らん候ご 00016030¥P38 00016040L1とに、取まはしひねりまはし、ねさしをめさるゝが、きず 00016050L2て御座あるといさめければ、扨+過分な御いけんかな、 00016060L3以来心得候べし、まことにかやうなるいけんは、百くはん 00016070L4にもかはれまひ事ぢやと、はやくはせた。 00016080L5評して云、諌をいなみ、うけざるはまれなり。尤なるいけ 00016090L6んぢやとて納得して、聊かも跡のつかざるは、お宮のみか。 00016100L7あゝ世以此類ひおほかりき。たれもかれも人の上をば、そ 00016110L8しれども、我身の上をば、なをしへぬも、あるひは仏にな 00016120L9るやうをば、とき侍りしかども、いすよりおりたまへば、 00016130L10凡人の情にとしきも、みやづかふ人のたいぐはんなんどあ 00016140L11づかりつゝ、うしろぐらき事をしし、害にあひぬるを見も 00016150L12し、きゝもし侍りつゝ、をのが心をおさめみぬも皆+お 00016160L13宮なり。たゞひさうな子をば、おさなき時より、よき人に 00016170L14つけそへをきたき物なり。花中の鴬舌、花ならずして、か 00016180L15うばしき事あり。是はかのわかしゆうのしみこうだるやま 00016190L16ひを、ふかくなげきおもふ故、くどき事たんと申。御免 00016200L17+。 00016210¥N17¥J 00016220¥X 00016230L19○又さるわかしう、ねんじやとねて、ふびやうを取はづひ 00016240M1て出され、何とぞして此にほひを出さんとや思はれけん、 00016250M2翁殿は三わまつり御見物あつたかと申されければ、いやま 00016260M3だと答へけり。さらば、まねをして聞せ申さうほどに、か 00016270M4やうにはやされよとて、三わまつり、さはらばひやせ+、 00016280M5てんつく+と、いねながら、あしびやうしふんで、をし 00016290M6へられければ、中々おもしろさ、たまりはいたさぬとかん 00016300M7じけり。わかしゆう、まぎらかしすまひたと思ひ、弁殿、 00016310M8何と+と云れけるを、さとも+おもしろき事で御座あ 00016320M9る、承及たるよりよきひやうしにて候、さりながらまねさ 00016330M10へ、これ程くさひ事ぢやほどに、ほんのは中々あたりへも 00016340M11よられまひと云た。 00016350¥N18¥J 00016360¥X 00016370M13○かうやひじり、さるわかしうにほれて、色+くどけど 00016380M14も、つれなふて返事もなければ、さらばまい年二きごとに、 00016390M15これ+心づけをいたさうが、それでもいやかと、ぢきそ 00016400M16したれば、かならずやとて同心した。 00016410M17評して云、さひたりや、とらのふたりや、十郎ぢや、世く 00016420M18だり国風、いとにごれるからに、此両人が血脉、多くさか 00016430M19へ候て、何共かとも。 00016440¥P39 00016450¥N19¥J 00016460¥X 00016470L1○上京の翁やの何とやらん云人、十一二なる子をひさうし 00016480L2て、朝夕うたひををしへけるが、やがて十月に、寺の百は 00016490L3たご、くひにつれてゆかふぞ、よく覚えて、うたへよ+ 00016500L4と云ふくめけり。かくて十月にもなりしかば、寺より十三 00016510L5日には御ちがひなく、いづれも+のこらず御参候へとの 00016520L6御ゑいかうのふれ有ければ、お福をよびつけ、明日は寺へ 00016530L7つれて参り候はん、うたひをよく覚えたるか、かまひてよ 00016540L8き時分ににらまふ程に、其時ちやくとうたひ出せと、くれ 00016550L9※云ふくめけり。さて十三日に皆+つれだち参ければ、 00016560L10方々のつきあひにて、次第をゝつてなをり候に、先おさな 00016570L11き衆へぜんをすゆれば、かのお福、につことわらふて、な 00016580L12ふとゝ、百はたごとは此事かと申けり。おや、なんぎして、 00016590L13きつとにらみ候へば、扇をつ取かしこまつて、いはうなり、 00016600L14心ぞしるき、くもりなきと、うたひ出た。 00016610¥N20¥J 00016620¥X 00016630L16○お長と云わかしうに、金銀をたんともちたる人、ちゐん 00016640L17して、のきざまに、わきざしをこしらへ出さんとおもふ。 00016650L18同しくはお長に、このませて、あつらへんとて、清助に持 00016660L19せ、そなたのすきに、御このみ候へと申ければ、意得候と 00016670M1て、その一つ書、 00016680M2△△一はゞきはゐんすにて、むくに、きつさき三寸下まで 00016690M3△△一せつぱ、金しとゝめ同 00016700M4△△一めぬきは乗がほりたるを 00016710M5△△△△以△上 00016720¥N21¥J 00016730¥X 00016740M7○ある人、よきわかしうを見て、扨も+有事ぢや、むか 00016750M8し信忠公の御小しやうに佐治新太と申者があつたが、其人 00016760M9によくにた事ぢやと云しを、かたへに侍る坊主たち聞て、 00016770M10仰のごとく、みめかたちは天下一、おいどはしゆご/入((ママ))にて 00016780M11御入候と云ければ、しんぽちい申やうは、一かうに、又し 00016790M12ゆご不入でもおりなひ、時+ふびやうが出るほどに。 00016800¥N22¥J 00016810¥X 00016820M14○小児さま、里に久くとうりう有しかば、法印よりむかひ 00016830M15ながらに、三位をくだし、いんしんなど物し、文こま※ 00016840M16とゝのへつかはれしが、児、此文を見、きげんあしくなり、 00016850M17つくゑの上にをきしを、母上、ふしんにおもひ見給ふに、 00016860M18そもじ久々御とうりうなされ候ゆへ、さびしく侍りぬ、又 00016870M19にやけにも事をかき申候まゝ、いそぎ御登山あれかしとか 00016880¥P40 00016890L1ゝれたり。母上、児に云るゝやうは、にやけは、何とやう 00016900L2な物ぞ、調参せよかし、これは何にてあるとゝひつめられ 00016910L3て、寺がたにては、時+酒をさやうにも申候とこたへ給 00016920L4ひしかば、それこそいと安き事なれとて、もろはくの大樽 00016930L5を三取よせ、即三位殿にも、よきにやもじを申さんとて、 00016940L6よろしきさかなを取かへ引かへすゝめけれ共、一ゑんのげ 00016950L7こにて、ならざれば、いしゐにやけのみもがな、まいらせ 00016960L8たひといはれた。 00016970¥N23¥J 00016980¥X 00016990L10○世中おもてうらなる事有。ざとうの坊の心よきと、大ち 00017000L11ごの利はつなるがある。ひゑの山にての事なるに、小児を 00017010L12りんばうへ、しやうだいし、もちを出し候へば、事外物か 00017020L13ずを遊ばし、かへり給ふて、なんぎなされ候声、いとおび 00017030L14たゝし。則大児参られ、なふ+何と御座有と申されけれ 00017040L15ば、無理な事にあひ、もちを過し、胸がやくるやうに御座 00017050L16あると仰候へば、あこも参、類火にあひなん物をと、くや 00017060L17まれ、かまひて+消食丸など、きこしめし給ふな、頓て 00017070L18けんに御つきあらんほどに。 00017080¥N24¥J 00017090¥X○知てしらずがほする分 00017100M3小児、中将殿に麦の青やかなるを見給ふて、あれはなんと 00017110M4云草やらんと、おほせければ、ちやせんのほと申て、何の 00017120M5やくにも立ぬものにて御座あると返答申たれば、さてはあ 00017130M6をざしによからふ、おかさに五つ六つ物したひ事ぢやと仰 00017140M7られた。 00017150¥N25¥J 00017160¥X 00017170M9○一条辺に、よきわか衆有。百万べんの僧、久&ちいんし 00017180M10て、佐理行成の手本なんど参せけれども、いや+とのみ 00017190M11なけ、其のち一休の桑の机のうつしを調参らせ候へば、見 00017200M12事には有ども、少むづかし気なる道具ぢやとて、御かへし 00017210M13候なり。いやはやたまらぬ物ぢやと、ほむる事おびたゞし。 00017220M14さうはあの人に好せて参せみんとおもふなりとて、あひ口 00017230M15なる人を以、東山殿千鳥のすゞりをかり出し、是を写しし 00017240M16んじ度存候、御このみも候はば承たきよし申ければ、いや 00017250M17それは、はもじな事であると仰られし時、かやうなるもの 00017260M18は、聊くるしうもない事ぢやと申たれば、そなたに任せ申 00017270M19とて、 00017280¥P41 00017290L1△△一、硯ばこを少大に、千鳥をばゐんすにて、是も大に 00017300L2△△一、水入は銀にてうさぎを 00017310L3△△△但此好、むづかしく侍りなば、むくに 00017320L4はじめのしんしやくとは、事外かはつて、お僧も胸がたゞ 00017330L5めひたげな。 00017340¥N26¥J 00017350¥X 00017360L7○小児、ねんじやの弁殿へ、さすがを頼あつらへ申されけ 00017370L8る。其一書、 00017380L9△△一、小刀△△△△△△△△△△大小 00017390L10△△一、かうばし△△△△△△△△九寸五分 00017400L11右よきやうに物したまへとなり。べん殿も、かうばしの長 00017410L12過たる、きつくわいに存、いま少みじかくあそばしよく候 00017420L13はんと、いけんし給ひ候へば、君子はうつはものならずと 00017430L14て、物はかたひが悪さうな、中+はしなどゝ存ずる、つ 00017440L15れては御座あるまひと仰られた。 00017450L16△評して云、つねにともしきより此事出来るか。士の風、 00017460L17清からざるも、りやうすべき地の半をげんじ、礼法なきよ 00017470L18りか。 00017480¥N27¥J 00017490¥X○物いまひの部 00017500M3ある人、下人をめしよせ、明日は元日にて有ぞ、わか水を 00017510M4むかへよ、式は御いはひのおかゞみふくためよなんど云物 00017520M5ぢやぞ、かまひて+ぬかるな+とをしへけり。扨朝と 00017530M6くおきて、かの事申、だんな殿のきげんよくせんと思ひ候 00017540M7へ共、打忘て、坊さま+もちたさしませ、やき申さうと 00017550M8云たれば、以外腹立して、まくらを取てなげつけ、いきま 00017560M9きて、みえしに、あまつさへ、こゝなお坊主のなげきはや 00017570M10いといふた。 00017580¥N28¥J 00017590¥X 00017600M12○清水寺に住老僧、下小ぼうしに、あすは元日に有ほどに、 00017610M13茶は大ぶくもちのにたるをばかんといへ、かまひて万意得 00017620M14申候へとをしへければ、畏て物ある、御心安かれと申せし 00017630M15時、さてもわどのは物によく心得たるものぢや、あづきも 00017640M16ちをたべよと有ければ、十計にやいた。かくて夜も明けれ 00017650M17ば、ちやのゆ所に、わか水しかけ、りん+とたぎれば、 00017660M18法印さま+、おちやたうもよく御座ある、いそぎおひる 00017670M19なれ、申+、またお枕は上らぬかと云てをこひた。 00017680¥P42 00017690L1評して云、しゐて福をもとむる者は、色こそかわれ、此な 00017700L2げきにあひぬる事あり。あゝ天理に合する福有ものを。 00017710¥N29¥J 00017720¥X 00017730L4○大かたならず子をおもふ人ありけるが、西のおかに子ど 00017740L5もおほく持て、めでたきはゞあり。いざこれをよび、我こ 00017750L6をしゆくせんとて、こと※しきざうさなど物し、むかひ 00017760L7をやり、今こゝへと申来れば、悦あへり。かくて老母こし 00017770L8をかゞめ、打しはぶきつゝ見へければ、あるじ、よろこん 00017780L9で、よくおちやつた、これ+へとしやうじければ、こな 00017790L10たには、ごゑんがなふて上りにくひといふ。やう+にし 00017800L11て上りぬ。かくてふるまひなど物し、あま酒を出したれば、 00017810L12しるわんでつゞけざまに、三ばいにやひて、あゝこあまふ 00017820L13て何ともならぬと申た。 00017830¥N30¥J 00017840¥X○にくていなる部 00017850L17石田治部少輔三成の所へ、わかき衆のかたより文づかひあ 00017860L18りしが、もの申を高声に云たれば、つかひの耳本へより、 00017870L19これからと、さゝやかせ、則つくばはせた。 00017880¥N31¥J 00017890¥X 00017900M1○いなかの連歌しより、せうは法橋へてんとりのれんが来 00017910M2たりし中に、 00017920M3△△遠山の松の下なるかき蕨 00017930M4と云句あり。其ほうへんの事、書に眼力きどくに候、愚老 00017940M5なんどの及ばぬ事なりと。 00017950¥N32¥J 00017960¥X 00017970M8○古道三一渓、いしよかうしやく、聴聞の人、毎朝百人計 00017980M9有。其中にとしごろ十五六七八なる人おほかりしを、せう 00017990M10は法橋見給ひて、涙ぐませ給ふ事しばしありてやみぬ。そ 00018000M11の後道三にあひ給ふて、扨+そなたの門弟しうの内、二 00018010M12十にもたらざるしう多く、ふんかうをひつさけ+出入し 00018020M13侍るを見れば、なみだ計ぢやと申され候へば、さればその 00018030M14事にて物ある、今のわかき衆は、りこんさいかくに御座あ 00018040M15ると答へられし時、いやさうではなく候、あのおさなきも 00018050M16のどもが、いくらの人をくすしころさうと痛入啼るゝと也。 00018060M17翠竹院けうをさまひて、其方の芸をうら山しく存ずる、な 00018070M18ぜなれば、そもじ程のれんがにてさへ、人をしころひたと 00018080M19云さたはないほどに。 00018090¥P43 00018100¥N33¥J 00018110¥X○つよく古風になつんて恥を取部 00018120L3東美濃大井の住人天道左衛門が父、身まかりて、三十三年 00018130L4にあたりけるが、紹光寺にをひて、心ざしをせんとて一門 00018140L5めしつれ参けり。かたのごとくの仏事なるにより、三つて 00018150L6んじん出しかば、かの一類、何とかして、くひてんとおも 00018160L7ふ気色あらは也。相伴人のおどけものはしを取て、まんし 00018170L8くすんで、大にわを三つまはし、右のひざの上にをきて、 00018180L9左手にてまんぢうをとり、膝の上、一しやく計さゝげたれ 00018190L10ば、満座みなかくのごとし。中々くすんだるかほさがまで、 00018200L11にせたる体、いやはや、せもはらもきるゝほどなり。処に 00018210L12まんじうを、ひよいと上しかば、皆+玉をつくがごとく 00018220L13に上たり。 00018230¥N34¥J 00018240¥X 00018250L15○信濃国ふかしと云所にての事なるに、参宮たんがうあり。 00018260L16たれにても物のくひやう、立ふるまひなんどよく心へたる 00018270L17せんだつを同道せんとなり。是によつて才興坊を頼申たり。 00018280L18かくて山田へ事故なふつきしかば、御師の御ふるまひ、ま 00018290L19ことにおびたゞしき事なり。ざしきなかばの事なるに、せ 00018300M1んだつ、さんせうにむせて、えも心へられぬかほつきをせ 00018310M2しかば、をしなべて其やうにまねぬるを、かの坊主、手を 00018320M3ふれば、同じやうにふりぬ。たまりもやらで、たちつゝ、 00018330M4てうづ水をのみければ、満座又のみにけり。 00018340¥N35¥J 00018350¥X 00018360M6○丹波の奥ごほりより嵯峨の柴山所へ、むこ入ありけるが、 00018370M7色+さま※のもてなしなり。茶くはしに、きんとん出 00018380M8たれば、したゝかににやひて、そばなる人に、なを何と申 00018390M9ぞとさゝやいたれば、福田助十郎とこたへたり。かくてか 00018400M10へり申、やがて礼文を調ぬるが、きんとんのあぢを忘すし 00018410M11て、 00018420M12△△一書申上候。今度者はじめて参申候に、種々御ちさう 00018430M13△△の段忝存奉り候。次に尤御無心なる申事に候へども、 00018440M14△△福田助十郎を少下されたく候。御同心にをひては、な 00018450M15△△まにて此者に御渡し頼入存候。 00018460M16とくはせた。 00018470¥N36¥J 00018480¥X 00018490M17○昨日日吉が能に、すみだ川をしたりければ、しばいの心 00018500M18ありし人おほく鳴たるか、取分こしかたなど思ひ出てよと 00018510M19みえ侍りつるも有しとなり。かたへの人聴て、我も今日は 00018520¥P44 00018530L1見物し、なかんとていそぎ参りけるに、をきなせんざいふ 00018540L2過て、さんばさ出たれば、さめ+と啼出た。あたりの人 00018550L3の何事にやなき給ふぞと云たれば、あのすみたがほを見て、 00018560L4たれがなかぬものが、おちやらふかとて、しく+と又鳴 00018570L5た。 00018580¥N37¥J 00018590¥X○知ざるをとはずして、めんぼくをうしなふ事 00018600L8寺りやうたんと有びくに寺にて、春半の事なるに、百しや 00018610L9うどもに、ふろをたひて入参らせよと仰せられしかば、地 00018620L10下中のわかき者ども寄つどひ、右ふろをたき入申。老人の 00018630L11おぼほさまよろこび出て、てうづのこをお三方にすへて参 00018640L12らせよとおほせしかば、善門、かしこまつて御座ある、や 00018650L13がて調申候はんと云て、まかりたち、其事知さうなる人を 00018660L14集め、とひ候へども、覚へ忘れたるなんど云。はかのゆか 00018670L15ぬを、こざかしきものさし出、とかうせば御上りなされ候 00018680L16べしと腹立して、そふじやを以、先に仰出され候物どもは、 00018690L17三好家の乱に取れ候てより終にもとめ申候はぬと云しかば、 00018700L18あゝきやうこつや、こもじの事にて侍る物をとて引こみ給 00018710L19ひき。 00018720M1評して云、義をおもふ人と利のみ思ひぬる人のきやうがい 00018730M2と、右のおほゝさま、百しやうとのあいさつと、少似た気 00018740M3味がある。なぜになれば、そりが合ぬ所有をみるにつけて 00018750M4も。 00018760¥N38¥J 00018770¥X○悪をなせば自然にあらはるゝ部 00018780M7ある人、五月のころ、寺へ参候て、長老さまはとゝへば、 00018790M8嵯峨辺へとまぎらかしつゝ、まづおちやをまいつて御かへ 00018800M9りあれと、新発意つねよりは事かはりして茶を立申ける間、 00018810M10二三ふく物し、さぞ竹の子はへ申つらうとて、やぶをさし 00018820M11て行を、なふ+これめづらしく侍る、物申さうとよび帰 00018830M12せ共、少しも聞入ずして、猶のぞきまはりければ、薮の中に 00018840M13長老さま、雁のけをむしつて御座有、此人見ぬふりをして、 00018850M14御見まひ申候といへば、長老きもをつぶし、さても+や 00018860M15ぶの中まで、きとくなる御尋ね、さらば+やとおほせら 00018870M16れ、よそ目して御座ある。たんな殿も、よきころのくせも 00018880M17のにて、何事をあそばし候と申せば、此鳥のけを枕の中へ 00018890M18/入し((ママ))候へば頭痛の薬ぢやとて、たのもしきかたより給はり 00018900M19候間、かくのごとくいたせども、終にしつけぬ事にて、何 00018910¥P45 00018920L1共手間が入申と仰せければ、其は安き程の事にて候、こな 00018930L2たへ下され候へと申に任せ、即よきやうにしたゝめられ給 00018940L3ひ候へとて、御渡しあれば、ちやく+とひんむしり、け 00018950L4をば和尚さまへしんじ候て、けのあとは定て御用にも有ま 00018960L5じく候あひた、はいりやう申候、又頓て参らんとて帰ける。 00018970L6よびもどし、なふ其鳥のなをば何と云ぞと仰ければ、羽あ 00018980L7る時は雁、かくむしられてはをしどり、さらば+とてか 00018990L8へりけり。これらほど気の薬な、うまひ事はおりなひ。 00019000¥N39¥J 00019010¥X 00019020L10○福人のだんな寺へ参、かね打ならし、ざしきになほり、 00019030L11たれもをりなひか+と、高声に申しかば、長老さま、い 00019040L12そぎ御出あるとて、ころもすそにはやしたるからさけが付 00019050L13た。み給ふて、ちんぜらるゝやうは、我々が用ゐ申と、お 00019060L14ぼしめし候はん事、返々も口おしう存ずる、仏祖も御せう 00019070L15らんあれ、これは女どもが薬つかひにと、云もはてず、か 00019080L16ほをあかうしてうろたへられた。 00019090L17評して云、何事もありのまゝにあらまほし、ことをたくみ 00019100L18にかざるときは、何様きすが出来候て、そしりともなり、 00019110L19又心の中にて、いやしまるゝ事ともなるほどに。 00019120¥N40¥J 00019130¥X 00019140M2○こゝにしゆせう第一なる上人とさたありし出家有。光源 00019150M3院殿、御意に入参らせ、つね+御ときに参けるが、朝夕 00019160M4の御相伴もむづかしくおぼしめし、らくた申されよかしと、 00019170M5上野中務大輔義信をもつて仰られし時、御諚尤忝事に御座 00019180M6候といへども、八つ九つのころより、出家のすがたに身を 00019190M7やつし、なんぎやうくぎやういたし、いま六十にあまり、 00019200M8上人がうまで思ひのまゝにたつし、今さら何のゐんぐはに 00019210M9落候はんや、けんよも御座なひ、返+御めんなされ候や 00019220M10うに御とりなし頼申との事なれば、上下をしなべて、かん 00019230M11じ給ひけり。将軍かさねてねかはくは、くるしうもなひ事 00019240M12ぢや程に、分別あれかしと、被仰しかば、とかく立仏を居 00019250M13ぼとけにも、だんなはからいと、むかしよりのことはさに 00019260M14も申伝へ候へば、力及ばざる義也とて、ちやくとおちられ 00019270M15けり。折ふし七月の事なりけるに、大なるさばをすへけれ 00019280M16ば、上人かんじつゝ、扨+これは遠来の名物、忝とのじ 00019290M17ぎなり。智者は我道ならぬ事をも知とは云ども、あまりこ 00019300M18うしや過たる事ぢやとて、目引はな引笑ひ申処に、剰とて 00019310M19もの御ねんごろに、愚僧が子にてあるものをもめし出され 00019320¥P46 00019330L1候やうにたのみ奉り存ずると申さるゝによつて、御礼を請 00019340L2させられ候へば、四十に近きひげ男なり。将軍さまも又御 00019350L3前の人+もけうさめがわに成て、いやはや+とて大わ 00019360L4らひになつた。 00019370L5評して云、かなしひかな、人を知事の不明なる事、な/か(ママ)な 00019380L6ひかな、実をてらふ事。 00019390¥N41¥J 00019400¥X○耳にかへてうどんくふたる事 00019410L9こゝにそこつなる出家あり。心すなほにして、むよくなる 00019420L10人なりければ、何事も人のゆるしおもふ人也。かみをそる 00019430L11こと上手にて事外自慢し、一期の内に終にきつたる事なき 00019440L12なんど云まはりけるを、弥介といふ物ずきなる者あつて、 00019450L13何と上手なり共、我かみをそりたらば、きらせう物をと申 00019460L14けり。かの坊主これを聞、ふるまひがけになりとも、そら 00019470L15ん物をと云。と/しつ(ママ)くわかきあふれものども、此ことつの 00019480L16とや思ひけん、かけに極るやうにぞとりもちける。両方云 00019490L17つのり来て、うどんかけに極て、もしきりたらば、僧より 00019500L18其まかなひのさたをせられ候へ、又きられたらば弥介より 00019510L19のふるまひたるべしとの極にぞなりにける。さてかみをあ 00019520M1らひ、さしかゝる処に、兼舟のかみそりをちやん+と手 00019530M2合して、そるを見れば、自慢せしも、げにことはりと覚え 00019540M3て、気の薬ぢや、あたまをひよつと上れば、ちやつと引な 00019550M4んどする事、あまたたびなり。中+きるべうもみえざれ 00019560M5ば、此うどんは一定弥助がふるまひにならんと、声々なり 00019570M6し時、ねぶるふりして、あたまをふいと上たれば、左のみ 00019580M7ゝを半分過そりおとしたり。さてこそ耳をかゝへて、うと 00019590M8んくふた+と云て、のちはあいたや+と、わるびれた 00019600M9る声になりければ、皆+せもはらもきるゝ計に笑ひふし 00019610M10まろんだ。 00019620M11評して云、他人の善をいみねたんで、人にいやしまれ、或 00019630M12は耳を痛しむる者は、噫弥介のみか。 00019640¥N42¥J 00019650¥X○まつだけ年をへて松になる故事 00019660M15よく物に心得たる人云やうは、竹のこなど、むざとくはう 00019670M16事では御座なひ、なぜになれば二とせの内には用木になり 00019680M17候程にと云たれば、かたへの人聞て、尤なる被仰やうぢ 00019690M18や、あの松だけをも、いたづらにたべんもおしき事にてあ 00019700M19る、十五六年もしたらば大木にならんほどにと云た。 00019710¥P47 00019720¥N43¥J 00019730¥X○りんきの部 00019740L3ある人、上るりをすきて朝夕かたり候は、花のやうなる御 00019750L4すがた、はだゑは雪のごとくなると、さま※のよき事ぞ 00019760L5ろへをのみかたり侍るを、女房つね※ねたましくおもひ 00019770L6居たりし処に、夫此かたびら少みしかくたち候てくれよか 00019780L7しと云しかば、なふそなたのつね※ほめ給ふ、上るりめ 00019790L8にたゝせよく候はんとて、少しも取合されば、夫も腹あし 00019800L9き人なれば、いやはやぜひもなき事ぢやとて、いさかふ処 00019810L10に、となりの人せうしがり候て、上るりのことは四五年も 00019820L11過たる事なるを、おかたの云やうが、少わるひといけんし 00019830L12たれば、千年過てあらふとも、云べい事をば、いふたがよ 00019840L13く御ぢやると云た。 00019850¥N44¥J 00019860¥X 00019870L15○五六万石ほどだいくはんせし人ありけるが、在々を見ま 00019880L16ひに出らるゝに、おかみさまの御ゆるしがなければならず。 00019890L17ある時、在々へ参らでは、かなはぬ事あつて、いとまの事 00019900L18仰入られしかば、こんどは、きしやうも御無用にて侍る、 00019910L19みづからがこのみおはしまし候、ぢきにだんがうあらん程 00019920M1に、おくへ御座有となり。此人何事にてかおはさん、但引 00019930M2ちがへ、すらりとしたる事にてもや侍らんと、思ひ+御 00019940M3出有ければ、別の事でもおりなひ、そもじのものにふうを 00019950M4つけてやり申さうとあれば、それはがてんの行ぬことを承 00019960M5とて、そら腹をたちける処に、其御がてんの参らぬか、こ 00019970M6なたのてうほうぢやとて、これへ御座あれとしきりにの給 00019980M7ひしを、何やらん用をかまへ給ふふりをして立、ゑんりよ 00019990M8ぶかう物になれたるらうたうに、かゝる事の侍る、いかゞ 00020000M9してよろしからふぞと、だんがうありし時、おかみさまに 00020010M10必御さたなされまひならば、お伝いたし候べしと答へし時、 00020020M11かねをちやん+と打て、中+云まひほどに心安くおも 00020030M12へとなり。さらはをしへ申候、殿さまのくたんの物を、ち 00020040M13やんとでかさせられ候て、ふうを御つげられ候へ、其に付 00020050M14御分別ある事にて侍りと申ければ、もはやすゑをば、かく 00020060M15せ+と被仰、小袖一かさね給て、一段ほうびし給ひけ 00020070M16り。かくて在々にて百五六十日が間、はんなりとしたる/た((ママ)) 00020080M17めづらしき事どもにあふて帰給ふに、少奥へ御入候へとて、 00020090M18即ふうをみんとありしかば、ちやくとふうをはめて、りん 00020100M19となし見せけるに、聊たかふ事なければ、かみさま三度お 00020110¥P48 00020120L1かみ給ふて、さて+仏のやうなるそもじを、うたがひ候 00020130L2つる事のくやしさよとて、いよ+御中よく御子たちあま 00020140L3た出来さかへたまひけり。 00020150¥T1戯言養気集△下 00020160¥N1¥J 00020170¥X○大かたかへてよからん物 00020180M5殿さまのおくひやうに、かミさまの武へん、わかうさまの 00020190M6おうへすきに、おひめさまのおもてすき、闇の夜に月の夜、 00020200M7まとのあたり躬手に小口にてのあた矢、くらき宰相に知の 00020210M8明なるわかこう者。 00020220M9評して云、かへたき物ハあゝ是のミか。(一オ) 00020230¥N2¥J 00020240¥X 00020250M11○世をわたるかんようハ真偽の間のもちゐ其所を得に有 00020260M12松の木に烏、いかにも新しき肉をくハへいたる折ふし、其 00020270M13下に狐居合せて、扨も少、相伴申度事かなと思ひしか共、 00020280M14きやうかいはるかに、ちかうたる事なれハ、了簡の及へき 00020290M15なしとていたり。やゝ有て、工夫をめくらしいふやうハ、 00020300M16さてもうつくしき色かな、あのやうに思ひきつてくろきい 00020310M17ろ(一ウ)ハ、うるしも物かハちや、鳴給ふ声も諸鳥にかは 00020320M18つて、さひたり、啼て聞せられ候へかしと云。かもし聞て、 00020330M19きもしの云所まきれもなき事也、さらハきかせんとて一声 00020340¥P49 00020350L1物したれハ、肉ハ地へ落たりしを、狐引くハへていにたる。 00020360L2いやはや烏あきれたるてい、中&けうさめてそ見えにける。 00020370L3評して云、世にはかしてあり、はかされて有。大かた人の 00020380L4ことは(二ウ)に付て、其心ねあらん事をよく+知てあら 00020390L5まほし。しかハあれと、其察を過せハ、正に帰せさる事有。 00020400L6はかの行ぬ事あり。そこ+にしてをけハ烏に同し。此鳥 00020410L7も大かたりこんにハありといへとも、いまたはかされぬち 00020420L8ゑかなけれハこそ、木の下にはかしての狐はあつたれ。さ 00020430L9れハはかさるましきとするハ、其ねぬけす。たゝ我知をつ 00020440L10くすに有。(二ウ) 00020450¥N3¥J 00020460¥X○其物に付てその心あらされハ似たる事を聞たかう事 00020470L13天正のすゑの事なるに、関白秀次公の家臣の人&、新らし 00020480L14き諸大夫になりし時、其わかたうとも、しゆらくの番所の 00020490L15わきにつとひ居て、かたるやうハ、我主殿ハ今度かミにな 00020500L16られたるか、社参の衆も、めてたふ御座あるとて、樽酒を 00020510L17ハ持て参れとも、いまたさんせんなとはみえ(三オ)侍らぬ 00020520L18といへハ、何の神にか御なり候そと問に、さゝへあハひの 00020530L19かみになられたと答たり。それは少なまくさひかミちや。 00020540M1さりなから是ハ御意ならんほとに了簡もなし。うちのしう 00020550M2殿ハ昔からなまこの寿千寺と云来たりしなりと云た。 00020560M3評して云、万民をうれうる心ハよはく、利をおもふ心つよ 00020570M4き人を宰相の職に挙用ゐたら(三ウ)は、雀部淡路守をあハ 00020580M5ひのかみ、尼子寿千寺をなまこと聴違る害あらん。善悪相 00020590M6胎之因、智之明にあらすんハ噫。 00020600¥N4¥J 00020610¥X 00020620M8○ぬし屋の盛阿弥所へ、駒井中務少輔、吉田益庵なんとふ 00020630M9るまひに参られし処に、昼のころ、自ちうはこを持出、夜 00020640M10食を一つ申さうとて、ひらひたを見れハもちなり。 00020650M11又ある時、関白秀次公尾張の国(四オ)はいりやうなされ、 00020660M12清須城におハしまし候を、京よりをの+見まひ申、一礼 00020670M13事おはつて、ミな物かけに引へたり。やゝ有て、たれかれ 00020680M14とめし出され、あとに盛阿弥計のこりしを、それなるハた 00020690M15れそと仰られしかは、貴老て御座有とて出た。中&大笑に 00020700M16なり、かへつてしほらしう物あつた。 00020710M17或日、此ぬし屋ハ秀吉将軍御(四ウ)なんきの御ちんを度& 00020720M18みまひ申たりし時、天下大平に治めなハ、なんちに京中の 00020730M19ぬしのとうりやうをおほせ付られ候はんとの、御やくそく 00020740¥P50 00020750L1により、事外とミさかへしかハ、貴老次第御茶申さうと文 00020760L2にありしを、盛阿弥のから名とおもひ侍りしなり。 00020770¥N5¥J 00020780¥X 00020790L4○秀次公の御父武蔵守殿、ひけに一段自慢ありけるを、十 00020800L5人(五オ)計見まひ候て、さても+見事なおひけちや、日 00020810L6本にてハ終に見申さぬ、たゝ唐物て御座らふと申けれハ、 00020820L7事外なる御悦喜也。かくて皆+帰ける。其内つね+参 00020830L8てはなし候つる、あひ口の者をよひもとし、こゝへより候 00020840L9へ、此ひけ、真実ハ日本物て有そ、但、人にさたするな、 00020850L10われ計に聞するそとの、御ねんころなり。(五ウ) 00020860¥N6¥J 00020870¥X○みしかき部 00020880L13有人わきさしをかうて、知音のものにいふやうハ、これ 00020890L14+のほりたしをして物ある、中&うちのまねハ、おなり 00020900L15やるまひと云時、ねすんハ何程の物ちやと問しかハ、三百 00020910L16八寸て侍ると答へた。 00020920L17摂津有岡の城をとりまきし在番衆のかたより、国本への文 00020930L18に、(六オ)態一筆火之用心、お松やさすな、馬こやせ、か 00020940L19しく。 00020950¥N7¥J 00020960¥X○平宗盛の卿ハ、いつハり人にてあつた故事 00020970M3抑、これハたいらの宗盛也と、自慢申され候へとも、ゆや 00020980M4ハ、それはこしゝ、我ハ又あつまへとて、かへりつるを以 00020990M5て見れは。 00021000¥N8¥J 00021010¥X○久蔵主か故事 00021020M8加賀国伝灯寺の門前にして、いとあきらかなる月の夜に、 00021030M9あミ(六ウ)かさをきて、とちやうをふむ有。其所の奉行め 00021040M10ひたる人見付つゝ、此せつしやうきんたんの所にをひて、 00021050M11月夜にとちやうをふむそととかむれハ、正真の俗人て御座 00021060M12有、少も御かまひなされそとて、かひうつふひて物しける 00021070M13間、名をなのれ、もしなのらすんは、一矢もつてまひらふ 00021080M14といひて、つるをとをしたれは、是におとろき、俗人の名、 00021090M15久蔵主と(七オ)こたへた。 00021100¥N9¥J 00021110¥X○あふむかへしのすねこと 00021120M18ある人、茶うすをかりにつかハしけれハ、安き御用にて物 00021130M19ある、こなたへ御こし候て、ひかれ候へとの事により、参 00021140¥P51 00021150L1てひきたり。頓て又うすぬしのかたより、のほりはしをか 00021160L2りに来たりし時、安き程の御事に候、此方へ御出候て、い 00021170L3かほとも上りたひやうに御上り候へとなり。(七ウ) 00021180L4評して云、世人いらひとうあつて、ゆうのなき人ハ大かた 00021190L5此一味なり。いかさま国守にならん人の度量ハ、なミをは 00021200L6なれて大やうな所かある。 00021210¥N10¥J 00021220¥X○分別たてをして、かへつて愚なる事 00021230L9有人、来十六日御めし申候ハんよし、文参しかは、おやに 00021240L10て候人に、たんかう申、御返事いたし候はんとなり。(八オ) 00021250L11評して云、かやうにこしらへ、名人かほする人あり。これ 00021260L12ハしあんあるものてはなひとしるへし。内かともしけれは、 00021270L13人に物をかる事あり。 00021280¥N11¥J 00021290¥X○めつ/らき((ママ))所望 00021300L16いし道三一渓へ、かん色をとろへたる人来て、御無心の事 00021310L17に候へとも、きこんのおつる薬をたんと下され候やうにと 00021320L18申ける時、道三聞給ふて、これハさて(八ウ)めつらしき所 00021330L19望ておりやる、見かけとハはらりとちかふた義を承と、仰 00021340M1られしかは、いや我等の用にてハ御座なひ、女ともにたへ 00021350M2させたく存候と申たれは、何方もさやうにあるやとて、大 00021360M3わらひになつた。 00021370¥N12¥J 00021380¥X○しゐて自慢をすれは、はなをはしかるゝ事 00021390M6昔たれやらん、 00021400M7△△うき草に火をいけ水の螢かな(九オ) 00021410M8と侍りて、大かた出来たと、又してハ思ひ+居たり。秋 00021420M9の半、月清らかに風光もいとしつかなれハ、庭のやり水な 00021430M10んと手すさみ、たねんもなふ慰しころ、十二三ほとにみえ 00021440M11しおさなき人、こつせんとして出て云やうハ、発句を一つ 00021450M12つゝけて見たか、よくもおりなひ程に、御なほしなされた 00021460M13まハり候へと、侍りつゝ(九ウ) 00021470M14△△池水に波のうつひハ螢かな 00021480M15と云おハつて、ものいはんとすれハ、あとかたなし。 00021490¥N13¥J 00021500¥X 00021510M17○西国よりひんほつに上りぬる僧、心のまゝに万相調、下 00021520M18り用意せし処に、関東の僧問、筑前筑後あつてちく中なき 00021530M19ハ、いな事ちやと、ほんしやりととひ侍る時、されは候、 00021540¥P52 00021550L1上野下野のことし、昔日本三十三ケ国なりしを、六十六に 00021560L2わりなほ(十オ)しぬる時、其国長く候へハ、中の字をくハ 00021570L3へたる事ありとみえたり、備中越中のことしと答へた。 00021580L4評して曰、これハかくもん上をハはなれ、そさうなる事を 00021590L5以て、つまんて見たか。 00021600¥N14¥J 00021610¥X○おろかなる人の自慢ハ少しもゆるされもあるかの事 00021620L8ある人発句を一二して、人おほき所にてかたり出し、少ま 00021630L9ん(十ウ)し心のつのりぬる処に、さやうなる事をは、しせ 00021640L10んにをしこみたかる人聞て、事外にほめなしつゝ、いやは 00021650L11やお天神ちやとて、うしろをほと+と打たれハ、八幡な 00021660L12しそ、しやたんか破るゝと云た。 00021670L13或云、此発句に自慢せし人、のち一段富盛へけり。又のせ 00021680L14て笑ふたる者ハ、火をふかふちからもなふなつたと云しを、 00021690L15かたへの人(十一オ)聞て、それこそ道理なれ。天道ハすく 00021700L16なる心を守り給ふ程に、左もあらひてハと云て、かふりを 00021710L17ふつた。 00021720¥N15¥J 00021730¥X○門出をいはうの部 00021740M1ある人、明日ハ公事に出んそ、かちこめをめしのちやのこ 00021750M2にいたし候へと、よひよりいひてをひたれは、八才のむす 00021760M3め、くろ米を持て参たり。母事外しかつてにらみぬる時、 00021770M4これはかたう(十一ウ)米ちや物をといふた。 00021780¥N16¥J 00021790¥X○武田信玄、伊豆国はつかうのきたふ連歌の発句 00021800M7△△△△△△△△△△△△△△岡田堅桃 00021810M8△△おらてミん手にもたまらぬ萩か露 00021820M9と侍りけり。かくて出張し給ひし処に、彼国手にもためす、 00021830M10打随へ給へり。是により、けんたうへ鳥目千くハんつまれ 00021840M11けり。 00021850¥N17¥J 00021860¥X○翠竹院道三、福の神ひんほうのかミの十子、ならひに、まこ彦等に付給ふ名(十二オ) 00021870M15△△しハ大郎△△△△△△△為△持 00021880M16△△内ね二郎△△△△△△△中△吉 00021890M17△△斟酌三郎△△△△△△△吉△次 00021900M18△△内居四郎△△△△△△△家△持 00021910M19△△朝起五郎△△△△△△△舎△清 00021920¥P53 00021930L1△△有合六郎△△△△△△△宗△清 00021940L2△△倹約七郎△△△△△△△徳△満 00021950L3△△律義八郎△△△△△△△友△好 00021960L4△△少食九郎△△△△△△△宗△安 00021970L5△△積善十郎△△△△△△△秀△盛 00021980L6△△無由断孫右衛門尉△△△末△長(十二ウ) 00021990L7△△橘慈悲宮内卿△△△△△久△盛 00022000L8評して云、万つ善事をのミ心のそこから好被成つる事、つ 00022010L9もり+来て、今こゝに至て、慈悲の田地にこそ至りけれ。 00022020L10たれか知ん、此目出事を。 00022030¥N18¥J 00022040¥X○ひんほうの神 00022050L13△△花△大△郎△△△△△△家△広 00022060L14△△ぬめり二郎△△△△△△浮△世 00022070L15△△無精三郎△△△△△△△根なし 00022080L16△△盗四郎△△△△△△△△偽(十三オ) 00022090L17△△朝ね五郎△△△△△△△得△少 00022100L18△△勝負ノ才六△△△△△△友△連 00022110L19△△味口七郎△△△△△△△沖△則 00022120M1△△うそ八郎△△△△△△△ぬらり 00022130M2△△大飯九郎△△△△△△△勝△江 00022140M3△△積悪十郎△△△△△△△/亡(ほろふ) 00022150M4△△邪欲孫左衛門尉△△△△国△闇 00022160M5△△遊山すきノ安芸守△△△秋△慰 00022170M6其ころハ、たれもかれも、これを、扇たたふかミなんとに 00022180M7書しるし、もてあそひき。(十三ウ) 00022190¥N19¥J 00022200¥X○信長公武家の福神 00022210M10△△知人大郎△△△△△△△国△清 00022220M11△△才二郎△△△△△△△△久△盛 00022230M12△△剛三郎△△△△△△△△勝△光 00022240M13△△きこん与四郎△△△△△十△成 00022250M14△△忠五郎△△△△△△△△守△国 00022260M15△△正直六郎△△△△△△△宗△清 00022270M16△△義理七郎△△△△△△△道△明 00022280M17△△はかやり八郎△△△△△数△成 00022290M18△△知機九郎△△△△△△△宗△広 00022300M19△△無私十郎△△△△△△△正△道(十四オ) 00022310¥P54 00022320L1評して云、万民をしほりて取て、金銀を求る事なかれ。此 00022330L2十人を用るときんハ、七珍万宝まねかさるに至るそ。又時 00022340L3世により、此十子きらハれものになる事もあらん。 00022350¥N20¥J 00022360¥X○同武家貧ほうのかみ 00022370L6△△しハ太郎△△△△△△△為△持 00022380L7△△苛政二郎△△△△△△△秋△国 00022390L8△△不忠三郎△△△△△△△弥△也 00022400L9△△喧嘩四郎△△△△△△△角△立(十四ウ) 00022410L10△△貪欲五郎△△△△△△△/汚(けかる) 00022420L11△△結党六郎△△△△△△△猶△弥 00022430L12△△謬七郎△△△△△△△△唯△悪 00022440L13△△失職八郎△△△△△△△秋△風 00022450L14△△衒恩九郎△△△△△△△満△世 00022460L15△△由断十郎△△△△△△△/煽(ル) 00022470L16評して云、真の損益をかんかへぬからに、此十人をも用ゐ 00022480L17る人あり。これ毒虫を養ふなり。 00022490¥N21¥J 00022500¥X 00022510L19○はち屋出羽守と云し人ハ、信長公、秀吉将軍につかへて 00022520M1(十五オ)ときめきし人なりしか、此五去七恐之図を作して、 00022530M2座右にはりつけ見侍りしなり。 00022540¥N22¥J 00022550¥X○五去 00022560M4△△私△心 00022570M5△△闇△君 00022580M6△△邪△欲△△△を去レ 00022590M7△△弐△妻 00022600M8△△雑△学 00022610M9評して曰、此五去ハ身を守るの要にして、算功其中にあり。 00022620M10(十五ウ) 00022630¥N23¥J 00022640¥X○七△恐 00022650M12△△主△君 00022660M13△△聖△理 00022670M14△△鬼△神 00022680M15△△位△職△△△に恐よ 00022690M16△△闇△夜 00022700M17△△水△火 00022710M18△△悪△人 00022720M19右の外、若き人の智恵もたくましく、度量ひろく、勇猛有 00022730¥P55 00022740L1て、其気温恭に、理学文学も(十六オ)をのつから暁く、と 00022750L2こやらんと、めはすもあふつあはす、しかハあれと害にも 00022760L3おちいらす、さすか又権柄をもうしなハす、なさけらしき 00022770L4人をハおそれよ。 00022780¥N24¥J 00022790¥X 00022800L6○ある人、長尾兼信へ寿命の薬方を参らせけるを見れは、 00022810L7累世精神円 00022820L8不撓者△△△△△△△益△友 00022830L9知麒麟児△△△△△△養△気 00022840L10至誠△△△△△△△憐民沢(十六ウ) 00022850L11天地量△△△△△△△尽△孝 00022860L12自然用△△△△△△△開心盲 00022870L13右以聡明刀細刻、入智恵真水、用文武火煎之無時不眠焉。 00022880¥N25¥J 00022890¥X○狂△歌 00022900L16前大閤秀吉公に宮つかへしちやのゆ坊主、いと茶ハんとて 00022910L17御ひさうなされけるを、取はつし落してわりけり。是によ 00022920L18つて事外御きけんあしく、かのものあやうくみえし処に、 00022930L19長(十七オ)岡玄旨取あへす、 00022940M1△△つゝ井筒いつゝにわりしいとちやはん 00022950M2△△△罪をハ我かをひにけらしな 00022960M3となん侍り給へは、御気色もなをり、即彼坊主もめしいた 00022970M4されけり。 00022980M5正月吉書に、△△△△△△一休和尚 00022990M6△△おもくともかたに遊ハひ福の神 00023000M7△△△かろくといやよひんほうのかミ 00023010M8信長公より三条称名院殿へ、石(十七ウ)花、つめたかい、 00023020M9このわたををくられ給ひし時、 00023030M10△△かきくれてふる白雪のつめたさよ 00023040M11△△△このわたなくハいかにとかせん 00023050M12三好修理大夫殿に玄理と云者有しか、さる事ありて、春の 00023060M13比、かんきをかうふり、年のくれまてゆるされもなくて居 00023070M14たりし時、 00023080M15△△参へき御礼なれ共ことしより(十八オ) 00023090M16△△△かほのしハすをのへてまひらん 00023100M17と侍りて、御前の人+につたへけれハ、則めしかへされ、 00023110M18御ねんころありけり。 00023120M19かた目ある僧二人とをるを、有人見て、 00023130¥P56 00023140L1△△二人してひとりのまなこもちけるハ 00023150L2△△△とれかお僧かとれかさとうか 00023160L3と侍れは、返し(十八ウ)、 00023170L4△△本よりも一面目のそうなれは 00023180L5△△△覚るまなこそ一つなりける 00023190¥N26¥J 00023200¥X○あハれなる事 00023210L8徹書記左遷の旅にして、七月十三日に、 00023220L9△△中+になき玉ならハ古里に 00023230L10△△△かへらん物をけふの夕暮 00023240L11と侍りけり。此哥により、めしかへされけるとなり。 00023250¥N27¥J 00023260¥X○辞△世 00023270L14△△△△△△△△△△△人△丸(十九オ) 00023280L15△△石見かた高津の松のこのまより 00023290L16△△△浮世の月を見はてぬるかな 00023300L17△△△△△△△△△△△なり平 00023310L18△△終に行道とは兼てきゝしかと 00023320L19△△△昨日けふとハ思ハさりけり 00023330M1△△△△△△△△△△△△△△宗△祇 00023340M2△△世にふるもさらに時雨のやとりかな 00023350M3△△△△△△△△△△△△△△△△同 00023360M4△△うつしをく我かけなからよのうさも 00023370M5△△△知ぬおきなそうらやまれぬる(十九ウ) 00023380¥N28¥J 00023390¥X○耳をとらへて、はなをかむ類 00023400M8有くすし、察病指南をかうしやくあり。これを隙なしの奉 00023410M9公人承、さても+よきかうしやくちや、度&作病をいた 00023420M10し候へ共、少うたかハるゝ事ありき。是ハさくひやうのし 00023430M11なんを聞ぬからてあらふほとに、明日からハ聞申さうと云 00023440M12た。 00023450¥N29¥J 00023460¥X 00023470M14○よき比のうつけおもふやうハ、今世上につき木といひて 00023480M15はや(二十オ)り申を見れハ、大木をきつて、やうしよりほそ 00023490M16き木をつくなり、少もかてん参ぬ事かなと存、人にとへハ、 00023500M17しふかきをきつてハ、御所柿をつき、こさハしをつき候へ 00023510M18ハ、味いミしく成侍る。即つき木の柿を申とて出したれハ、 00023520M19五六物し、扨も+よき事をおそく承候とて、もとり+ 00023530¥P57 00023540L1五六石も年&なりけるしふかきを打きり、つきた(二十ウ) 00023550L2り。十日計過て、をしへたる人にあふて、一礼侍りやうハ、 00023560L3先日は忝つき木の御相伝、忘れかたう存するとそ申ける。 00023570L4其時、何柿のほをおつき候と問たれは、あなたこなたと求 00023580L5るも、むつかしさに、則其木のほをつき申たるとなり。 00023590¥N30¥J 00023600¥X 00023610L7○なりふりにも似すして、こひたかるものあり。れき+ 00023620L8夜はなしのさしきにて、夜半の(二十一オ)かねを聞て、い 00023630L9さ+皆+御かへりあれ、はや遠寺の晩鐘かなると云た。 00023640L10右の人の方へ、薩摩へ下る人いとまこひに参りたれハ、さ 00023650L11て+遠国へ御大義にて物ある、自筆に御下か、又あなた 00023660L12よりのまかなひかと被申候間、御心安かれ、むかひ舟か、 00023670L13ふしみまて上りゐたると申時、車力と云、かた+の御仕 00023680L14合ちや、頓て帰朝あれと也。(二十一ウ) 00023690L15評して云、よき人をハ小人いやかり讒しけるを、君主用ゐ 00023700L16て打きり、其職を小人に云つけられ、大なる損をなされ候 00023710L17ハ、五六石もなりししふ柿をきつて、即その木のほをつき 00023720L18たるにおなし。噫、こひたかる者は、内に智恵ともしきに 00023730L19よるか。 00023740¥N31¥J 00023750¥X○検地わひことの事 00023760M3有夜秀吉公御前にして、御とき衆へ、そはかきのれうりを、 00023770M4おほ(二十二オ)せつけられしかハ、△△△長岡玄旨 00023780M5△△うすゝみにつくれるまゆのそはかほを 00023790M6△△△よく+見れハミかとなりけり 00023800M7と侍られけれハ、事の外御きけんよろしくなりぬ。蜂屋出 00023810M8羽守、よきしほあひと思ひ、けんち御ゆるし候やうにとの 00023820M9事を一つ書にして、 00023830M10一、今度御検地、上下共に痛申事大かたならす候。万のい 00023840M11たミ(二十二ウ)連&に積りもて行、発してハ本へ帰るやう 00023850M12に覚へ申候事。 00023860M13一、士民にかきらす、はいとくの地をかゝへ持候へハ、老 00023870M14後のたのしみ其中に有て、人心清らかに、へつらふ心もう 00023880M15すくあるへき事候。御ゆるしなく候はゝ、人の気味年&に 00023890M16いやしくなり、至誠の者御座有ましき事。 00023900M17一、是非ともにけんちなされ候(二十三オ)ハんならハ、せ 00023910M18めてやしき分をハ御ゆるし候て、よろしく御座候ハん事。 00023920M19右の一書を以て諌申けれハ、△△△秀吉公 00023930¥P58 00023940L1△△蜂屋出羽検地ゆるせとさしていへと 00023950L2△△△そらうそふひて聞ぬ関白 00023960L3との給ひて、いかゝあらんとの御たんかうありしか、終に 00023970L4ハ好方のつよきにひかれてやます。(二十三ウ) 00023980¥N32¥J 00023990¥X前関白秀吉公御検地帳 00024000L7○五畿内 00024010L8二十二万五千三百石△△△△△△山△城 00024020L9四十四万九千石△△△△△△△△太△和 00024030L10二十四万二千百石△△△△△△△河△内 00024040L11十四万千五百十石△△△△△△△和△泉 00024050L12三十五万六千百石△△△△△△△摂△津 00024060L13○東海道十五ケ国 00024070L14十万石△△△△△△△△△△△△伊△賀 00024080L15五十六万七千百石△△△△△△△伊△勢(二十四オ) 00024090L16一万七千九百石△△△△△△△△志△摩 00024100L17五十七万千八百石△△△△△△△尾△張 00024110L18二十九万八百石△△△△△△△△三△河 00024120L19二十五万五千二百石△△△△△△遠△江 00024130M1十五万石△△△△△△△△△△△駿△河 00024140M2六万九千八百石△△△△△△△△伊△豆 00024150M3二十二万七千六百石△△△△△△甲△斐 00024160M4十九万四千二百石△△△△△△△相△模 00024170M5六十六万七千百石△△△△△△△武△蔵 00024180M6四万五千五十石△△△△△△△△安△房(二十四ウ) 00024190M7三十七万八千九百石△△△△△△上△総 00024200M8三十九万三千三百石△△△△△△下△総 00024210M9五十三万石△△△△△△△△△△常△陸 00024220M10○東山道八ケ国 00024230M11七十七万五千四百石△△△△△△近△江 00024240M12五十四万石△△△△△△△△△△美△濃 00024250M13三万八千石△△△△△△△△△△飛△騨 00024260M14四十万八千四百石△△△△△△△信△濃 00024270M15四十九万六千四百石△△△△△△上△野 00024280M16三十七万四千百石△△△△△△△下△野(二十五オ) 00024290M17百六十七万二千五百石△△△△△陸△奥 00024300M18三十一万八千百石△△△△△△△出△羽 00024310M19○北陸道七ケ国 00024320¥P59 00024330L1八万五千石△△△△△△△△△若△狭 00024340L2四十九万千四百石△△△△△△越△前 00024350L3三十五万五千六百石△△△△△加△賀 00024360L4二十一万石△△△△△△△△△能△登 00024370L5三十八万三百石△△△△△△△越△中 00024380L6三十九万八百石△△△△△△△越△後 00024390L7一万七千三十石△△△△△△△佐△渡(二十五ウ) 00024400L8○山陰道八箇国 00024410L9二十六万三千九百石△△△△△丹△波 00024420L10十二万三千石△△△△△△△△丹△後 00024430L11十一万四千三百石△△△△△△但△馬 00024440L12八万八千五百石△△△△△△△因△幡 00024450L13十万九千五十石△△△△△△△伯△耆 00024460L14十八万六千七百石△△△△△△出△雲 00024470L15十一万千八百石△△△△△△△石△見 00024480L16五千石△△△△△△△△△△隠△岐 00024490L17○山陽道八ケ国(二十六オ) 00024500L18三十五万八千六百石△△△△△播△磨 00024510L19十八万六千十七石△△△△△△美△作 00024520M1二十二万千八百石△△△△△△備△前 00024530M2十七万七千石△△△△△△△△備△中 00024540M3十八万六千二百石△△△△△△備△後 00024550M4十九万四千二百石△△△△△△安△芸 00024560M5十六万七千八百石△△△△△△周△防 00024570M6十三万七百石△△△△△△△△長△門 00024580M7○南海道六ケ国 00024590M8十四万三千六百石△△△△△△紀△伊(二十六ウ) 00024600M9六万二千四百五十石△△△△△淡△路 00024610M10十八万三千五百石△△△△△△阿△波 00024620M11十二万六千二百石△△△△△△讃△岐 00024630M12三十三万六千二百石△△△△△伊△予 00024640M13九万八千二十石△△△△△△△土△佐 00024650M14○西海道十一ケ国 00024660M15三十三万五千七百石△△△△△筑△前 00024670M16二十六万六千石△△△△△△△筑△後 00024680M17三十一万石△△△△△△△△△肥△前 00024690M18三十四万千三百石△△△△△△肥△後(二十七オ) 00024700M19十四万石△△△△△△△△△△豊△前 00024710¥P60 00024720L1四十一万八千三百石△△△△△豊△後 00024730L2十二万百九十石△△△△△△△日△向 00024740L3十七万五千百石△△△△△△△大△隅 00024750L4二十八万三千五百石△△△△△薩△摩 00024760L5△△△△△△△△△△△△△△壱△岐 00024770L6△△△△△△△△△△△△△△対△馬 00024780L7右の検地帳こと+く極りしかハ、やめ給ふ事もなりかた 00024790L8くおほしめし、即蜂屋に見せさ(二十七ウ)せられし時、行 00024800L9末よろしかるましきとハおもへとも、かさねて諌申に及さ 00024810L10りき。此検地、末代にして国病となるへき事を、蜂屋かね 00024820L11て鑑ミ知れる事あきらけし。 00024830¥N33¥J 00024840¥X 00024850L13○朝鮮国御進発之人数帳 00024860L14△肥前国名護屋在陣衆 00024870L15一万五千人△△△△△武蔵大納言殿 00024880L16一万人△△△△△△△太和中納言殿(二十八オ) 00024890L17八千人△△△△△△△加賀宰相殿 00024900L18三千人△△△△△△△穴津中将殿 00024910L19千五百人△△△△△△結城少将殿 00024920M1千五百人△△△△△△前尾張守殿常真 00024930M2五千人△△△△△△△越後宰相 00024940M3千人△△△△△△△△会津少将 00024950M4三千人△△△△△△△常陸侍従 00024960M5五百人△△△△△△△伊達侍従 00024970M6三百人△△△△△△△出羽侍従 00024980M7二千人△△△△△△△金山侍従(二十八ウ) 00024990M8八百人△△△△△△△松任侍従 00025000M9八百人△△△△△△△八幡山京極侍従 00025010M10百五十人△△△△△△安房侍従 00025020M11千人△△△△△△△△羽柴河内侍従 00025030M12千五百人△△△△△△龍野侍従 00025040M13五千人△△△△△△△北庄侍従 00025050M14千人△△△△△△△△堀美作守 00025060M15二千人△△△△△△△村上周防守 00025070M16千三百人△△△△△△溝口伯耆守 00025080M17五百人△△△△△△△木下宮内少輔(二十九オ) 00025090M18千人△△△△△△△△水野下野守 00025100M19千人△△△△△△△△青木紀伊守 00025110¥P61 00025120L1三百人△△△△△△△宇都宮弥三郎 00025130L2百二十人△△△△△△秋田大郎 00025140L3五十人△△△△△△△津軽右京助 00025150L4百人△△△△△△△△南部大膳大夫 00025160L5五十人△△△△△△△本多伊勢守 00025170L6百五十人△△△△△△那須大郎 00025180L7五百人△△△△△△△真田源五父子 00025190L8三百人△△△△△△△石川玄蕃允(二十九ウ) 00025200L9五百人△△△△△△△朽木河内守 00025210L10三百人△△△△△△△日禰野織部正 00025220L11二百人△△△△△△△北条美濃守 00025230L12千人△△△△△△△△千石越前守 00025240L13三百人△△△△△△△木下右衛門督 00025250L14千人△△△△△△△△伊藤長門守 00025260L15△△合七万千七百二十人 00025270L16○御前備 00025280L17七百人△△△△△△△富田左近将監 00025290L18八百人△△△△△△△金森飛騨守(三十オ) 00025300L19二百人△△△△△△△蜂屋大膳大夫 00025310M1五百人△△△△△△△戸田武蔵守 00025320M2五百人△△△△△△△奥山佐渡守 00025330M3四百人△△△△△△△池田備中守 00025340M4四百人△△△△△△△小出信濃守 00025350M5五百人△△△△△△△津田長門守 00025360M6三百人△△△△△△△上田左太郎 00025370M7八百人△△△△△△△山崎左馬允 00025380M8五百人△△△△△△△稲葉兵庫頭 00025390M9三百人△△△△△△△赤松上総介(三十ウ) 00025400M10五百人△△△△△△△市橋下総守 00025410M11千人△△△△△△△△羽柴下総守 00025420M12△△合七千五人 00025430M13○御弓鉄炮衆 00025440M14二百人△△△△△△△大嶋雲八 00025450M15三百人△△△△△△△野村肥後守 00025460M16三百人△△△△△△△木下与右衛門尉 00025470M17三百人△△△△△△△舟越五郎右衛門 00025480M18三百人△△△△△△△伊藤弥吉 00025490M19二百人△△△△△△△宮木藤左衛門尉(三十一オ) 00025500¥P62 00025510L1三百人△△△△△△△橋本伊賀守 00025520L2二百人△△△△△△△鈴木孫三郎 00025530L3三百人△△△△△△△生熊源助 00025540L4△△合二千二百人 00025550L5○御馬廻衆 00025560L6六千人△△△△△△△御傍衆△△六与 00025570L7六千人△△△△△△△小姓衆△△六与 00025580L8千人△△△△△△△△室町殿 00025590L9八百人△△△△△△△御伽衆 00025600L10千五百人△△△△△△木下半介与(三十一ウ) 00025610L11八百人△△△△△△△御使番衆 00025620L12二千人△△△△△△△御詰衆 00025630L13九百人△△△△△△△鷹師衆 00025640L14二千人△△△△△△△中間以下 00025650L15△△合二万千人 00025660L16○御後備衆 00025670L17五百人△△△△△△△羽柴三吉侍従 00025680L18五百人△△△△△△△長束大蔵太輔 00025690L19二百人△△△△△△△古田織部正 00025700M1三百人△△△△△△△山崎右京進(三十二オ) 00025710M2二百人△△△△△△△蒔田権佐 00025720M3二百人△△△△△△△中江式部大輔 00025730M4二百人△△△△△△△生駒修理亮 00025740M5百人△△△△△△△△同主殿頭 00025750M6百人△△△△△△△△溝江大炊助 00025760M7二百人△△△△△△△河尻肥前守 00025770M8五十人△△△△△△△池田弥右衛門尉 00025780M9二百人△△△△△△△寺沢志摩守 00025790M10百廿人△△△△△△△大塩与一郎 00025800M11二百人△△△△△△△木下左京大夫(三十二ウ) 00025810M12百人△△△△△△△△矢部豊後守 00025820M13二百人△△△△△△△有馬万介 00025830M14四百人△△△△△△△寺西筑後守 00025840M15五百人△△△△△△△福原右馬助 00025850M16二百人△△△△△△△竹中丹後守 00025860M17三百人△△△△△△△長谷川右兵衛尉 00025870M18百人△△△△△△△△松岡右京進 00025880M19百人△△△△△△△△河勝左兵衛尉 00025890¥P63 00025900L1三百人△△△△△△△氏家志摩守 00025910L2二百人△△△△△△△同内膳正(三十三オ) 00025920L3二百人△△△△△△△寺西勝兵衛尉 00025930L4百人△△△△△△△△服部土佐守 00025940L5二百人△△△△△△△間嶋彦太郎 00025950L6△△合五千九百七十人 00025960L7○朝鮮国先懸御勢 00025970L8七千人△△△△△△△小西摂津守 00025980L9五千人△△△△△△△対馬侍従 00025990L10三千人△△△△△△△松浦刑部卿法印 00026000L11二千人△△△△△△△有馬修理大夫 00026010L12千人△△△△△△△△大村新八郎(三十三ウ) 00026020L13千人△△△△△△△△五嶋若狭守 00026030L14△△合一万九千人 00026040L15一万千人△△△△△△加藤主計頭 00026050L16一万二千△△△△△△鍋嶋加賀守 00026060L17八百人△△△△△△△相良宮内少輔 00026070L18△△合二万三千八百人 00026080L19六千人△△△△△△△黒田甲斐守 00026090M1六千人△△△△△△△羽柴豊後侍従 00026100M2△△合一万二千人 00026110M3一万人△△△△△△△羽柴薩摩侍従(三十四オ) 00026120M4二千人△△△△△△△毛利壱岐守 00026130M5千人△△△△△△△△高橋九郎 00026140M6八百人△△△△△△△秋月三郎 00026150M7千人△△△△△△△△伊藤民部大輔 00026160M8八百人△△△△△△△嶋津又七郎 00026170M9△△合一万五千六百人 00026180M10五千人△△△△△△△福嶋左衛門大夫 00026190M11四千人△△△△△△△戸田民部少輔 00026200M12七千人△△△△△△△蜂須賀阿波守 00026210M13六千人△△△△△△△生駒雅楽頭(三十四ウ) 00026220M14三千人△△△△△△△羽柴土佐侍従 00026230M15△△合二万五千人 00026240M16三万人△△△△△△△羽柴安芸宰相 00026250M17一万人△△△△△△△小早川侍従 00026260M18二千人△△△△△△△久留米侍従 00026270M19三千人△△△△△△△柳河侍従 00026280¥P64 00026290L1千人△△△△△△△△高橋主膳正 00026300L2千人△△△△△△△△筑紫上野介 00026310L3△△合四万七千人 00026320L4○朝鮮国都表出勢之衆(三十五オ) 00026330L5一万人△△△△△△△備前宰相 00026340L6千人△△△△△△△△増田右衛門尉 00026350L7二千人△△△△△△△石田治部少輔 00026360L8千二百人△△△△△△大谷刑部少輔 00026370L9二千人△△△△△△△前野但馬守 00026380L10千人△△△△△△△△加藤遠江守 00026390L11△△合一万七千二百人 00026400L12三千人△△△△△△△浅野左京大夫 00026410L13千人△△△△△△△△木下備中守 00026420L14千五百人△△△△△△南条左衛門督(三十五ウ) 00026430L15千人△△△△△△△△宮部兵部少輔 00026440L16五百人△△△△△△△垣屋新五郎 00026450L17千人△△△△△△△△斎村左兵衛督 00026460L18千人△△△△△△△△明石左近 00026470L19五百人△△△△△△△別所豊後守 00026480M1三千人△△△△△△△中川右衛門大夫 00026490M2千五百人△△△△△△郡上侍従 00026500M3千人△△△△△△△△服部采女正 00026510M4五百人△△△△△△△一柳右近将監 00026520M5三百人△△△△△△△竹中源介(三十六オ) 00026530M6五百人△△△△△△△谷出羽守 00026540M7四百人△△△△△△△石川備後守 00026550M8△△合一万六千七百人 00026560M9八千人△△△△△△△岐阜少将 00026570M10四千人△△△△△△△羽柴丹後少将 00026580M11五千人△△△△△△△同東郷侍従 00026590M12三百人△△△△△△△早河主馬正 00026600M13千人△△△△△△△△小野木縫殿頭 00026610M14千人△△△△△△△△亀井武蔵守 00026620M15五百人△△△△△△△岡本下野守(三十六ウ) 00026630M16四千人△△△△△△△木村常陸介 00026640M17二百人△△△△△△△賀須屋内膳正 00026650M18七百人△△△△△△△牧村兵部太輔 00026660M19二百人△△△△△△△片桐東市正 00026670¥P65 00026680L1二百人△△△△△△△同主膳正 00026690L2三百人△△△△△△△高田豊後守 00026700L3二百人△△△△△△△藤懸三河守 00026710L4二百人△△△△△△△大田小源五 00026720L5二百人△△△△△△△古田兵部少輔 00026730L6三百人△△△△△△△新庄新三郎(三十七オ) 00026740L7三百人△△△△△△△毛利兵橘 00026750L8△△合二万六千六百人 00026760L9○朝鮮国舟手之勢 00026770L10千五百人△△△△△△九鬼大隅守 00026780L11二千人△△△△△△△藤堂佐渡守 00026790L12千五百人△△△△△△脇坂中務少輔 00026800L13八百人△△△△△△△賀藤左馬助 00026810L14七百人△△△△△△△来嶋兄弟 00026820L15三百人△△△△△△△菅平右衛門尉 00026830L16九百人△△△△△△△堀内安房守(三十七ウ) 00026840L17千人△△△△△△△△桑山小藤太 00026850L18三百人△△△△△△△同小伝次 00026860L19七百人△△△△△△△杉若伝三郎 00026870M1△△合九千七百人 00026880M2@名護屋|在陳勢@合十万八千五百人 00026890M3@朝鮮国|渡海勢@合廿一万二千六百人 00026900M4△△都合三十二万千人 00026910M5△自陸奥外浜、至肥前国名護屋、行程六千里也。故に国の 00026920M6△(三十八オ)遠近に随て、人数の多少有。必此目録を以て 00026930M7△其身の分限を云事なかれ。 00026940M8△本朝人王五十代、 00026950M9神功皇后御宇六十年庚辰、三韓を征し給ひてより爾降、百 00026960M10△有八代、 00026970M11今上皇帝文禄元年壬辰、 00026980M12△前摂政関白秀吉公、勢を朝鮮国に至て遣ハれける。其間 00026990M13△凡一千三百三十年か。(三十八ウ) 00027000¥N34¥J 00027010¥X 00027020M15○人心之論 00027030M16天正の初つかた、糸屋の宗印と云し人、白糸の色+にな 00027040M17りぬる事を、つく+と工夫しておもふに、昔もろこしに 00027050M18糸をかなしミ、岐に啼きし人の故ある事を聞て、けに左も 00027060M19有ぬへし、誠に人の心ハ、唯白糸のやうなる物にてありけ 00027070¥P66 00027080L1り、染なすやうにそ染りける、あしき事にハそまり安し 00027090L2て、色もか(三十九オ)ハりかたし、よき事にハそまりかたう 00027100L3して、色も又かはりやすし、此病根あらん事をなけきつゝ、 00027110L4退ておもふに、心を養ふ事、少欲よりよきハなかるへし、 00027120L5心の善にとゝまりかたく、悪にうつりやすきも、利欲これ 00027130L6をさそふか、糸を染ることもミな我よりす。(三十九ウ) 00027140L7宗印にしたしき人、此事を聞ていさめ云やうハ、糸をかな 00027150¥G 00027160L8しミ給ふとかや、打つ 00027170L9ゝき、かやうに糸のた 00027180L10かき時ハ、やかて又や 00027190L11すくなるに、何を御う 00027200L12れへたまうそや、あら 00027210L13せうしや/や((ママ))と云た。 00027220L14評して云、義をおもふ 00027230L15人と利をのミおもふ人 00027240L16のきやうかいの違たる 00027250L17事、これにても知ぬへ 00027260L18し。(四十オ)(四十ウ挿画) 00027270¥P67 00027280¥U噺本大系△第一巻 00027290¥Tきのふはけふの物語 00027300¥G 00027310¥Y 00027320L16古活字十行本 00027330L17編者未詳 00027340L18半紙本二巻二冊 00027350L19天理図書館蔵 00027360¥T1きのふハけふの物語△上 00027370¥N1¥J 00027380¥X 00027390M3△むかし天下をおさめたまふ人の御うちに、はうちやく 00027400M4なるものともあつて、禁中へ参り、ちんにとらふといひて、 00027410M5やりの石つきをもつて御もんをたゝく。御つほねたち、出 00027420M6あひたまひて、是ハこれたいりさまとて、下&のたやすく 00027430M7参る所てはないそ、いそき何かたへもまいれとおほせけれ 00027440M8は、此家をちんにとらせぬといふりくつのあらは、ていし 00027450M9ゆまかり出て、きつとことはりを申せといふた。(1オ) 00027460¥N2¥J 00027470¥X 00027480M11△おたの信長公、とき+けうにたんこをきこしめす。 00027490M12よくまいるとて、京わらんへ共、上様たんこと申。これを 00027500M13一段とそこつなる御こしやう、御まへちかきところにて、 00027510M14しか+申。是をきゝ給ひて御ふくりう、すてに御かんき 00027520M15をかうふらんとせしを、一けい道三御とうしやうあり。御 00027530M16尤の儀にてハ候へ共、世上にさやうに申こと、かゑつて御 00027540M17ほまれにて御座候、其ゆへハむかし天子ちまきを御らんし 00027550M18て、一たんおもしろきよし、ちよくしやうあれは、それよ 00027560M19りして京わらんへとも、たいりちまきと(1ウ)申ならハし 00027570¥P68 00027580L1候と、申あけられ候へは、のふなかこう御きけんなおり、 00027590L2右の御こしやう御しやめんなさるゝ。そうしてうへ+の 00027600L3御そはにこれある人は、万事きつかひいたさうことちや。 00027610¥N3¥J 00027620¥X 00027630L5△ある人ひようたんからこまのいてたるゑを見て、これ 00027640L6は何としたるいはれそと人にとふ。それさへ御そんしなき 00027650L7か、そふしてまき駒と申ハ、山にさんせうをまいてむまに 00027660L8なし申といふ。それ程ちようほうなる事をなにとてこゝも 00027670L9とにはつくらぬそといふ。こゝもとては人かぬすみ候とて、 00027680L10(2オ)むかしよりつくられぬとのへた。おろかなる事かな、 00027690L11よきむま一疋にても大ふんのかねをとらうに、はんをつけ 00027700L12てもくるしうないことちや、せんあくこのはるつくらうと 00027710L13て、さんせうを十石はかりかひとり、山をほらせ、こと 00027720L14+くまきて、やう+はよう事ちやか、おそひそと、く 00027730L15たんの人にとふ。それはいつころ御まき候。先月の二日に 00027740L16まいたといふ。はへぬこそたうりなれ、天火地火に物たね 00027750L17をまいては、はへぬかふしきてもおりないと、いふた。け 00027760L18に+その様なるしさいかあらふとそんし、(2ウ)こよミ 00027770L19なとをうたかはふことてはないと申されし。 00027780¥N4¥J 00027790¥X 00027800M2△ふしきなることかある。何ことそ。いや御公家衆ハ、 00027810M3よう草木のなをつかせらるゝ事ちや、先すゝき殿、松の木 00027820M4殿、竹の内との、やふ殿、はむろとの、やなきハらとの、 00027830M5きくていとの、たけや殿、此ふんちや。いやまたある。た 00027840M6れそ。とうさんせう殿。これハとうさいしやうをさんせう 00027850M7とおほえられて。 00027860¥N5¥J 00027870¥X 00027880M9△又有もの&申。御くけしゆうハ、ようとりけたものの 00027890M10名をつかせらるゝ事ちや。なせに。まつからす(3オ)まる 00027900M11との、わしのを殿、たかつかさとの、いのくまとの、この 00027910M12ふんちや。いやまたある。たれそ。まてのこうしとの。是 00027920M13も小路をこうしと思ふて。京にもゐ中とはこれらをさして 00027930M14か。 00027940¥N6¥J 00027950¥X 00027960M16△さかの大かくしとのへ、をんこくのしゆんれい参り、 00027970M17なにと申所そとてとふ。御もんせきとこたふ。三文にまけ 00027980M18てけんふつさせてたまハれといふ。五文のせきとおもふた 00027990M19事、口をしき次第なり。 00028000¥P69 00028010¥N7¥J 00028020¥X 00028030L2△ある人石山寺へさんけいして、ゑんきちやうもんす。 00028040L3其もんこんにいはく、そも+此いし山てら(3ウ)と申は、 00028050L4まへにこすいあり、うしろに山あり、みねにたうあり、た 00028060L5に&たうあり、二わう門あり。これをきゝ、是ハあすかい 00028070L6との御寺かといふ。なせにといへは、何にもかにもあり 00028080L7+とあるほとに、さうかとをもふた。 00028090¥N8¥J 00028100¥X 00028110L9△有人こものをおかふとて、六かくたうへ行、たつぬる。 00028120L10我らほうこういたさうといふ。いままてとこにいたそとと 00028130L11へは、おならやにいましたといふ。おならやとわ、人をな 00028140L12ふるか。居ところを御たつね候程に申事ちや。(4オ) 00028150¥N9¥J 00028160¥X 00028170L14△ある人寺へまいる。長老さま出相たまひて、きとくの 00028180L15御まいり、まつ+御ちやまいらせよ、もみちにたてゝま 00028190L16いらせよとおほせらるゝ。きやくきいてふしんす。もみち 00028200L17にとハなにことにて御座候と申。こうようと申心にてとこ 00028210L18たへらるゝ。尤とてかんして、此人きやくをえたらは、是 00028220L19をいふて一つこはさうとおもひて、たくむおりふし、さる 00028230M1人たつねらるゝ。御尋かたしけなく候、まつ御ちやまいら 00028240M2せよ、もミちにといひつくる。あんのことくふしんしてと 00028250M3ふ。こくよくと申きりちやといハれた。(4ウ) 00028260¥N10¥J 00028270¥X 00028280M5△ふろやにかう+ふろといふかある。これハいかなる 00028290M6いわれそとふしんすれは、さる人のいはく、是はふかふに 00028300M7およはぬといふきりちや。尤をもしろきとて、よそにて、 00028310M8ふくにもおよはぬとかたられた。ちつともおもしろけさら 00028320M9に+。 00028330¥N11¥J 00028340¥X 00028350M11△此ほと上京に、俄にふけんになりたるものあり。今や 00028360M12きのつほをみせへ出す。あるすきしや、かうしのうちをの 00028370M13そき、このつほをみて、扨+いふう物かな、口かひろい 00028380M14か、たひつほによからふといふて、手を入て見る。は入て 00028390M15から此てかぬけす。めいわく(5オ)して、まつ代をとふ。 00028400M16うちよりこのてもとを見て、千貫ならハうらふといふ。こ 00028410M17れを聞てきもをけし、さて+さやうにする物てはないそ、 00028420M18百くハんにとねきる。中&さやうにハならぬといふ。二百 00028430M19貫三百くハんまてねきる。いやこなたへとて引。次第には 00028440¥P70 00028450L1れてぬけす。さらは五百くわんにかわふといふ。もしぬけ 00028460L2ぬさきにとて、まけてかねうけとる。さてかへりてぬかふ 00028470L3と思へは、又かうしにせかれて出す。ついてにかうしをも 00028480L4かわふとて、また百貫そへ、六百くはんとり、いまちやう 00028490L5しやと申なり。(5ウ) 00028500¥N12¥J 00028510¥X 00028520L7△ある坊主御ちこさまにほれ、いろ+くとき、有夜申 00028530L8入た。さりなから何もまいらせうものかない。何かなとお 00028540L9もへ共かなハす。おりふし、たいたうこめすこしある。是 00028550L10をなりともこしらへてあけ申さうとて、ふへんなる御ふる 00028560L11まいをしていたす。御ち子様御らんして、これハめつらし 00028570L12きよしおほせらるゝ。三位うけたまはり、たまの御出にな 00028580L13にかなとそんし候へ共、我らか事にて候へは、心はかりに 00028590L14て御座候、せめて御ちそふのために、わさとそめさせたる 00028600L15よし申せハ、まことさうかして、たい(6オ)たうめしのや 00028610L16うなとおほせられた。 00028620¥N13¥J 00028630¥X 00028640L18△さる人の申されけるハ、竹の子なと、むさとたへうこ 00028650L19とて御座ない、二三ねんの内には、見事のたけになるにと 00028660M1いへは、これハもつともちや、あの松たけなとも、むさと 00028670M2くうは、をしひ事ちや、二三十年したらは、大木にならう 00028680M3にといハれた。 00028690¥N14¥J 00028700¥X 00028710M5△ゐなかより、はしめて上洛の人、三条あたりに宿をと 00028720M6り、方&けんふつにいつるとて、下人をよひ、京は家つく 00028730M7りおなしやうにて見まかひ候、何にても目しるしをして、 00028740M8よくおほえよといひつくる。(6ウ)心得申たるとうけ相、 00028750M9扨はう+けんふつしてかへるさに、あんのことくわすれ 00028760M10て尋る。しるしハととへは、いな事ちやみえぬといふ。な 00028770M11にしるしそとかさねてとふ。いやたしかに門ハしらに、つ 00028780M12はきにてかきつけをしてをいたか、みえぬといふ。言語道 00028790M13断、それか今まてあらふかとてしかる。いやまたしるしこ 00028800M14そあれ。何そ。やねにとひのとまりたるか、そちやといふ 00028810M15た。 00028820¥N15¥J 00028830¥X 00028840M17△ふたんくわうゐんとて、近衛たひかう御ねんころの長 00028850M18老あり。そうしてちやうらうふんはあし(7オ)うちにてま 00028860M19いりけれとも、右のちやうらう、れんかすきにて、せつ 00028870¥P71 00028880L1+御くハいにまかりいてらるゝゆへ、御くハいの日はか 00028890L2り、くきやう御めんとおほせいたさる&。長らう御ことは 00028900L3にあまへ、しやうちう下され候やうにと御のそミありけれ 00028910L4は、たいかう御わらひありて、とりあへす、 00028920L5△△くきやうをはとき+なりとすハれかし 00028930L6△△△ふたんくはふハいはれさりけり 00028940¥N16¥J 00028950¥X 00028960L8△このゑ殿を何のしさいやらん、ひてよしこうより、さ 00028970L9つまの房の津へ御なかしなされける。はいしよ(7ウ)ハ、 00028980L10かこしまへうつらせたまふ。このとき、 00028990L11△△大臣のくるまにわあらてあわれにも 00029000L12△△△のするかこしまになふはうのつ 00029010¥N17¥J 00029020¥X 00029030L14△ある人れんかをこゝろかけ、せうはへれいをいひ、月 00029040L15次のくわいに出て、 00029050L16△△さやけきは有明かたの月ならし 00029060L17△△といふ句に 00029070L18△△△山ほとときすさそひかほなる 00029080L19とつけた。せうは聞て、一段おもしろひ事ちや、めいよこ 00029090M1つゝミに手をうつ所ちやとほめられける。 00029100¥N18¥J 00029110¥X 00029120M3△又ある人秋のまへ句に、(8オ) 00029130M4△△のゝミやの森のこからし秋ふけぬ 00029140M5とつけた。ぬとまりかならぬといふ。さらは、ふけてとな 00029150M6をす。そうしやうきゝ、とてもの事に、しやうをさいてを 00029160M7かせられいと申された。 00029170¥N19¥J 00029180¥X 00029190M9△わたましれんかに、 00029200M10△△春の日やのきはにつきてめくるらん 00029210M11とした。そうしやうめいわくして、しゆひつ何となをるま 00029220M12いかといへハ、はやまつくろにすみになりたるといふ。た 00029230M13ひしか、またわきにつけうまてよといはれた。(8ウ) 00029240¥N20¥J 00029250¥X 00029260M15△れん哥しのあたりに、夜る少へんしけれは、内より、 00029270M16やふんに居所へきたつて、すいへんをはなつものは、しん 00029280M17りんか生類かと、とかめた。 00029290¥N21¥J 00029300¥X 00029310M19△定家の御弟けうくはつ坊、ことのほかふへんにて、年 00029320¥P72 00029330L1のくれに、ていかのきやうへ、 00029340L2△△けうくはつかしハすのハてのそらいんし 00029350L3△△△としうちこさん石ひとつたへ 00029360L4△△△△△返し 00029370L5△△さたいゑかちからのほとを見せんとて 00029380L6△△△いしをふたつにわりてこそやれ(9オ) 00029390L7此返哥にこめ五とうそへてをくられけるとなり。 00029400¥N22¥J 00029410¥X 00029420L9△しゆうくをすきたる人、何そおもしろきしゆうくをお 00029430L10もひ出せは、いろ+珍物をとゝのへふるまふ。あるとき、 00029440L11ひやくしゆつほりにやりて、其うちに人をよひあつめて、 00029450L12さま+ふるまひをこしらへ、此ものかへりたらハ座しき 00029460L13へまかり出、たか+と白朮ほりてまいりたると申せと、 00029470L14いひつくる。心得申たるとて、時分をはからひ、まかり出、 00029480L15おけらほつて参りたといへは、そちにひやくしゆつといふ 00029490L16て、口をかゝへた。そちにおけらといはふと(9ウ)たくミ 00029500L17けるに、思ひのほか、てはつちかいけれは、此下人後には、 00029510L18ふちをはなされし。 00029520¥N23¥J 00029530¥X 00029540M1△法花しゆうの、いつちとしようれつと、ほうもんをし 00029550M2て、かちまけハしらす、さん+つかミ相、へのこをしめ 00029560M3られてなんきする。やかて門に、 00029570M4△△ほけきやうのそのしようれつはしらねとも 00029580M5△△△きんをしむるはいつちめいわく 00029590¥N24¥J 00029600¥X 00029610M7△うつけたるもの&より相、そなたのやねには、ほしさ 00029620M8へたくさんあるか、我らかうへには、ほしもないといふ。 00029630M9何ほとあつても、みなぬかほして、や(10オ)くにたゝぬと 00029640M10いふた。 00029650¥N25¥J 00029660¥X 00029670M12△きのみしかきものゝよりあひて、このわきさしうらふ 00029680M13といふ。ねすんハととふ。三百八すむちやとこたへた。 00029690¥N26¥J 00029700¥X 00029710M15△ある人すきに行か、俄にひたいすりたきか、たれかか 00029720M16れかとひしめくおりふし、たんなはうす来る。よき所へ御 00029730M17出にて候、おほそれ入たる申事にて候へ共、中そり頼申と 00029740M18て、かミをあらふてかゝる。此僧坊主あたまはかりそりな 00029750M19らい、つねのことくにおもひ、かたこひんから、すら+ 00029760¥P73 00029770L1とそりおとす。(10ウ)此人きもをつふし、これハ何事そと 00029780L2いふて腹をたつる。御もうき尤にて候、さりなから、けか 00029790L3にて候、御めんなされ候へ、そふしてわれらせかれより、 00029800L4山寺にすみなれ、いつものことく、もくよくするとはかり 00029810L5そんしてといふ。それはいよ+てうふくなさるゝかとて 00029820L6ハらをたつる。さらはこのうへハ、せう事もおりない、われ 00029830L7らかかミをみななりとも御そりあれとて、あたまをさしつ 00029840L8くる。言語道断、是程おかしう、せうしなる事はあるまい。 00029850¥N27¥J 00029860¥X 00029870L10△世にあふないことかおほい。なにそ。(11オ)先、 00029880L11△△かつけやミの、ほうろくあきない 00029890L12△△たかにつけたる馬の、きしのほそみちつたう 00029900L13△△目くらのくたりさか 00029910L14△△わかきしゆうとめと、むこと中よき 00029920L15△△やもめ男のよめと中のよきも、 00029930L16△△若後家のしけき寺参り 00029940L17このふんちやとかたる。その座しきに出家のゐられたるか、 00029950L18けにも、これはいつれもあふなきものちや、われらのてら 00029960L19へも、わかき後家の朝夕参るかといふて、あつとおもひ、 00029970M1あふなふも御座ないといはれた。(11ウ) 00029980¥N28¥J 00029990¥X 00030000M3△ある人寺へ参り、長老様はととふ。御ようか有とて下 00030010M4京へ御こしなされ候、まつおちやまいりて御かへり候へと 00030020M5申。おりふし竹子の時分なり。さためて、やふにたけの子 00030030M6はへ申さうとてのそく。しんほちまかりいて、こなたへ御 00030040M7のき候へ、ちやうらうのわれらをしからせらるゝとて、し 00030050M8きりにめいわくかる。われらハふたんまいる、くるしうも 00030060M9御さらぬといふてのそきけれは、ちやうらうさま、やふの 00030070M10中に御座ある。いつものことく、ほくせきなとを御目にか 00030080M11くるかとおほしめし、留守御つかひなさるゝ(12オ)と心得 00030090M12て、うしろからそつとより見けれは、ミ事なるかんをむし 00030100M13らせらるゝ。此人ミぬかほにて、御見まひ申候といへは、 00030110M14ちやうらうきもをつふし、扨&きとくの御出、まつこなた 00030120M15へとおほせらるゝ。さてこれハ何をなされ候そと申せは、 00030130M16其ことにて候、此けをまくらにいれ候へは、つふうのくす 00030140M17りにて候程に、もとめて候へ共、しつけぬ事にて、何とも 00030150M18てまか入申とのへられた。たんな聞て、それはやすき事に 00030160M19て御座候、こなたへ下されよといふよりはやく、くる+ 00030170¥P74 00030180L1とむしり、おしやうのまへへ(12ウ)をしよせ、さためて此 00030190L2あとハ御ようにも御座あるまいとて、ふくろへおしいれけ 00030200L3れは、ちやうらうさらぬかほにて、これは何とりそとおほ 00030210L4せらるゝ。是はかんにて候、たゝしかやうにしてから、を 00030220L5しとりとも申とて、やかてとつてかへりけり。これらほと、 00030230L6きのくすりなることはなひことちや。 00030240¥N29¥J 00030250¥X 00030260L8△ある人、寺へ参りけれは、ちやうらうふためき御出な 00030270L9さるゝとて、ころものすそにからさけかとりついていつる。 00030280L10たんなの見るをめいわくして、これをわれらかたふるかと 00030290L11おほしめさん事、かへす(13オ)+口をしく候、是ハ女共 00030300L12かくすりくひにいたすとて、もとめたるといハれた。 00030310¥N30¥J 00030320¥X 00030330L14△あるひくにふろたけとおほせらるゝ。百しやう共あつ 00030340L15まつて、たきいれ申。しんさうすおほせられ候は、ちと、 00030350L16てうすのこをまいらせよとおほせられた。やまかのものに 00030360L17て、てうすのこといふ物をしらす。俄によりあひをして、 00030370L18此よしかくとひやうはんして、たれ+もしらぬといふ。 00030380L19とかくおそなわりては大事にて候と申。中にもとしよりた 00030390M1るものゝ申やうハ、きつとおもひいたしたる事(13ウ)の候 00030400M2とてまかり出、てうすのこハ先年の一らんにみな、たいて 00030410M3ん仕たると申。しんさうすきこしめし、さて+うつゝな 00030420M4きことやとおほせけれは、そのうつ&ないも一度にうせた 00030430M5と申あけた。 00030440¥N31¥J 00030450¥X 00030460M7△くわうけんゐん殿、あるしやう人一たんと御意に入た 00030470M8まひ、まいにち御ときにしゆつしなさるゝ。御ねんころの 00030480M9あまりに、らくたとおほせ出さるゝ。上人きゝ給て、御ち 00030490M10やうはかたしけなく候へとも、五つや三つのとしよりしゆ 00030500M11つけのすかたに身をなし、きやうたらにをならひ、五十に 00030510M12あまりて(14オ)上人かうまてさつかり、いまさら何事にら 00030520M13くたつかまつり候へきと、かへす+しんしやくあれは、 00030530M14みな是ハもつともとかんする。しやうくん是をきこしめし、 00030540M15尤の儀にて候へとも、心やすく申うけたまはるへきにて候 00030550M16と、さいさん御意あれは、このうへハちからおよハすとて、 00030560M17御らくたしたまふ。とかく、たちほとけをいほとけにも、 00030570M18たんなはからひとて、くわいふんをもかへりみす、扨+ 00030580M19御はつかしう候、さりなから、これ程なる御ねんころの御 00030590¥P75 00030600L1ついてに、御のそミのあるよし申さるゝ。なに事(14ウ)に 00030610L2ても、此うへハ申あけられよとおほせらるゝ。其きにて御 00030620L3座あらは、子にて候ものおも御目みえをさせたきとて、三 00030630L4十はかりなる男を出さるゝ。是ハ、くそうか十六けさかけ 00030640L5のとし、まふけたる子にて候と、申あけられけれは、上さ 00030650L6まをハしめ御まへの人&、ミすきちやうもさゝめき、大わ 00030660L7らひあつて、あきれたまふとそ。 00030670¥N32¥J 00030680¥X 00030690L9△あるいしやのところへ、おちの人、子をつれてゆき、 00030700L10きのふの御くすりにて、一たんとおなかこゝろもよく候、 00030710L11その御かけんになされ下され候へといふ。(15オ)くすし聞 00030720L12て、それはめてたい事ちや、さらは又あハせてまいらせう 00030730L13とて、くすりはこをとりいたす。何としてか、おちの人、 00030740L14まへをいたされた。このくすしこれに見とれて、もちたる 00030750L15さしをとりをとし、ひたものたつぬる。なにを御尋候そと 00030760L16とへは、今まてあつたおちの人のものかみえぬか、たれも 00030770L17しらぬかといハれた。 00030780¥N33¥J 00030790¥X 00030800L19△ひかし山なんせん寺にふつしあり。いつくともしらぬ 00030810M1はいそう、せん僧のころもをかりきして、五山衆にうちま 00030820M2しりていつる。いつれもてら+(15ウ)のしゆう、座はい 00030830M3ありて、それ+になをりたまふ。是をはしらて、かのは 00030840M4うすうろたへ、かなたこなたとやすらふ。座しきふきやう、 00030850M5これをみて、そなたの名ハなにと申そととへハ、坊主はひ 00030860M6まうして、是は大とく寺の治部きやうとこたへた。扨&せ 00030870M7んそうにはめつらしきなちやとて、やかて引たてた。 00030880¥N34¥J 00030890¥X 00030900M9△しやうとしゆうのたんきに、一けんそとは、やうり三 00030910M10悪道、かきやうさうりうしや、ひつしやうあんらくこく、 00030920M11此もんをくりかへし+ときたまふ。此もんの心ハ、一度 00030930M12そとはを見るものは、なかくさん(16オ)あくたうをはなる 00030940M13ゝととかれたり。ある人これをちやうもんして、ふしんす 00030950M14る。いかに上人きこしめせ、われらハねんふつ申さすとも、 00030960M15ほとけにならふとそんし候、そのゆへは、一度そとハをミ 00030970M16るものは、なかくさんあくたうをはなれ、いはんやさうり 00030980M17うする人は、あんらくこくに生るゝと候、さるほとに、此 00030990M18年まてそとはのかすをミたる事、あけてかそふへからす、 00031000M19今のあひたにも、当寺はかところへ参り候へは、千万もみ 00031010¥P76 00031020L1え候へしといふ。上人こたへていはく、いや+其儀にあ 00031030L2らす、はゝ一けん(16ウ)のそとはのことにて候、なかさハ 00031040L3それにおうしたるそとはなり、それほとなるを見給て候か 00031050L4ととはれけれは、いや、はゝ一間のはいまた見す候と申。 00031060L5上人のいはく、それを見つくるまてハ、ねんふつを申させ 00031070L6たまへとおほせられけれは、かしこまって候とてかへりけ 00031080L7る。此人の心こそまことのほとけにて候へ、上人らいした 00031090L8まふとそ。 00031100¥N35¥J 00031110¥X 00031120L10△ある人、子をてらへあけ、きやうをよめ、かくもんに 00031130L11せいをいれよと、きようくんすれとも、一ゑんせうゐんせ 00031140L12ぬ。くせ事とてしかれは、上人きこしめし、(17オ)きやう 00031150L13をよまぬは大事てもない、よきほつけ衆の下地ちや、あと 00031160L14をゆつらふ、ちやうかこはふて、きのくすりちやと、おほ 00031170L15せられた。 00031180¥N36¥J 00031190¥X 00031200L17△ひんほつに西国の僧、東国僧にとふ、かふつけ下野あ 00031210L18つて中つけなきはいかに。ちくせんちくこあつて、ちく中 00031220L19なきかことし。 00031230¥N37¥J 00031240¥X 00031250M2△ある人もつてのほかわつらひ、そんめい不定とミゆる。 00031260M3女房たちよりて、いままてハさりともとこそ思ひつるに、 00031270M4さはかりよはりたまふそや、おなしみちにともおもひ候へ 00031280M5共、あとをとひとふらふ人(17ウ)もなく候へは、心にまか 00031290M6せす、何事もおほしめしをかるゝことあらは、いひたまへ 00031300M7と、なく+申けれは、ひやうにん聞て、思ひのこす事も 00031310M8なく候、さりなから又いかなるひとにもそひたまハすハ、 00031320M9さいほうみなまいらせ候へし、さあらはいまたいきのかよ 00031330M10ふうちに、そもしのはなをそいて見せたまへといふ。それ 00031340M11こそやすき事よとて、われとはなをかいてみせけれは、い 00031350M12まハ心にかゝる事なしとて、しぬるをまちけるか、何とし 00031360M13てかしにそむし、やかてほんふくして、かのはなをおし 00031370M14(18オ)めともかなハす。とかくそひはてん事もむやくなる 00031380M15とて、あるときしきりにおい出す。女房聞て、是はおもひ 00031390M16もよらぬこと、われらこそ生つかぬかたわになりて、ハら 00031400M17のたつに、さほとミくるしくハ、そなた出たまへと、せん 00031410M18きまち+して、つゐに公儀へ出、たん+申あくる。扨 00031420M19男もまかり出て、あのをんなの申あけたることくにて御座 00031430¥P77 00031440L1候、さ/る((ママ))なから、御覧し候ことく、あのやうなるすさまし 00031450L2きものを、あけくれミ候はんも、めいわくに御座候、まか 00031460L3り出候やうに、おほせつけられくたされ(18ウ)候へと申。 00031470L4御奉行きゝたまひて、わかとのハらをめし、それ+あの 00031480L5おとこかはなをそけとおほせつけ、そのはな、あの女にと 00031490L6らするそ、此うへハ、うらミもあるまし、まかり出よとの 00031500L7たまふ。さう方、せひにおよハす、御まへをまかりたつ。 00031510L8おとこ、こゝろに思ふやう、せんなき事をしたるものかな、 00031520L9この男ふりにて、よき女をまうくる事ハなりかたし、たゝ 00031530L10もとのめに、なかふとなしとて、はなかけとも、ふたり手 00031540L11を引相かへり、ふた度ちきりける。 00031550¥N38¥J 00031560¥X 00031570L13△ししゆうの僧、せん僧にあふて、申さる&、せんしゆ 00031580L14(19オ)は、ようきんの字を、つかはるゝ事ちや。なせに。 00031590L15まつ、たいたうにて、両きんさん寺、さて、きむさうすの、 00031600L16ちやきん、ふいきん、しゆきんの、つきむのと、いろ+、 00031610L17いひたつる。せんそうのいわく、みなハ、ようつの字を、 00031620L18つかハせらるゝ、先、な無あミたふつ、おとつつハねつ、 00031630L19かねをたゝいつ、何やらしつ。 00031640¥N39¥J 00031650¥X 00031660M1△上京小川に、いからしとて、日れんしゆうの、しんし 00031670M2やあり。此人は、大とく寺さんけんゐんの、国師のおしな 00031680M3りしか、つね+、こくしへ、きようくん申されけるハ、 00031690M4せひとも法花衆に、御なり候て、きやう(19ウ)をいたゝか 00031700M5せられ候はゝ、我らにおいて、へつして、まんそく仕り候 00031710M6へしと、申された。 00031720¥N40¥J 00031730¥X 00031740M8△物かくには、くのきりやうか、かんようにてある。下 00031750M9京に、目いしやあり。のれんのかきつけに、 00031760M10△△かねこめくすりや 00031770M11とあり。三いろまて、うり物あるとて、人&、かひにゆく。 00031780M12此うち、一いろもなし。めいわくして、のち、 00031790M13△△かねこ△△めくすりや 00031800M14此ことくに、なをしける。 00031810¥N41¥J 00031820¥X 00031830M16△二度もの思、といふたいにて、(20オ) 00031840M17△△大ちこ△春ハ花秋はもみちをちらさしと 00031850M18△△△△△△△としにふたたひものおもふなり 00031860M19△△小ちこ△朝めしと又夕めしにはつれしと 00031870¥P78 00031880L1△△△△△△△日に二たひはものをこそおもへ 00031890¥N42¥J 00031900¥X 00031910L3△ちこほうし、より相、寒夜に、てんかくをして、三つ 00031920L4ハねたる事をいふて、しやうくハんせうとて、先、うんり 00031930L5んゐんの、こんけんたんの、なんはんしんの、せんさんひ 00031940L6んの、とて、みなしやうくハんす。小ちこ、一つも得いは 00031950L7す、はや、のこりすくなふなる。おもひいたしたるとて、 00031960L8きおいかゝりて、ちやうんすん(20ウ)と、いひさまに、五 00031970L9つ六つ、ひつたくり、やかて、しやうくわんせられた。 00031980¥N43¥J 00031990¥X 00032000L11△またある夜、しゆうくにて、しやうくはんするとて、 00032010L12△△大ちこ△△きよもりの長刀△△いつくしま 00032020L13△△しんほち△仏のつふり△△△△ミくし 00032030L14△△小ちこ△△いしやのほんそん△八くし 00032040¥N44¥J 00032050¥X 00032060L16△たいらの大しやう入道殿、ふくハらの別京にゐたまふ 00032070L17とき、御馬の尾に、ねすみか、すをして、子をうみけると、 00032080L18平家物語にみえたり。むかしハ、かゝるふしきなる事か、 00032090L19おほかつたか、いまはなしといふ。有(21オ)人聞て、これ 00032100M1は、さのミふしきてもあるまい。なせに。われらか子のか 00032110M2ミには、あさ、しやうやくしても、やかて、はんには、む 00032120M3しか子をうむ、といハれた。 00032130¥N45¥J 00032140¥X 00032150M5△ものいまいする人、下人をよひ、あすハ、元日にて有 00032160M6そ、なんち若水をむかへよとて、いろ+、しゆもん、を 00032170M7しへける。さて、さうてうにをきて、かのとなへことをわ 00032180M8すれて、あんし居けるをみて、しハらくかんにんしけるか、 00032190M9こらへかねて、まくらをうちつくる。此わつは、腹をたて 00032200M10ゝ、人の物思ふ所へ、なけきをなさるゝ、といふた。(21ウ) 00032210¥N46¥J 00032220¥X 00032230M12△又ある人、下人をよひ、右のことく、次第をいひをし 00032240M13へ、かまいて、ちやをたてたなとといふな、おふふく御い 00032250M14はひ候へ、と申せと、ねんころにいひつくる。此大ふくを 00032260M15わすれて、おちやたうか、はきましたか、おまくらハあか 00032270M16らぬか、といふた。 00032280¥N47¥J 00032290¥X 00032300M18△ある人、御ちこさまは、大上こちやと申。いや、それ 00032310M19ほとにもないか、ちふさにも、さけをぬらねは、ちにも、 00032320¥P79 00032330L1のみつかなんたと、ちいかいふた。 00032340¥N48¥J 00032350¥X 00032360L3△さるちしきの御内に、ひさしきしやミあり。あるとき、 00032370L4長老の御まへへ、まかり出、ひさ+、めしつか(22オ)は 00032380L5れ候へ共、つゐに御しめしをもうけす、あまりにあさまし 00032390L6く候、おほそれなから、と申あくる。ちやうらう、きこし 00032400L7めし、きとくなる心さし、ようこそ申てあれ、こなたへま 00032410L8いれとて、しやうし一大事のはを、さつけたまふ。しはら 00032420L9くあつて、まかり出、さんし申て候、しやうし一大事ハ、 00032430L10みそて御座候、と申あけた。是程おもしろきあたりは、た 00032440L11るまもいかゝ。 00032450¥N49¥J 00032460¥X 00032470L13△今日ハ、ひかんの中日ちや、しひ心さしこそせす共、 00032480L14せめて、寺参りなりともせうとて、参る。おりふし、御坊 00032490L15は、見事なるこいを、はうちやうして御座ある。(22ウ)た 00032500L16んな、くりへはいりけれは、はうす、きもをつふし、うろた 00032510L17へて、此こいは、なんといふうをて御さある、といハれた。 00032520¥N50¥J 00032530¥X 00032540L19△有人、寺へ参りけるに、長らう、見事なるあわひを、 00032550M1れうりなさるゝか、たんなに、是をみつけられ、かくさう 00032560M2やうハなし。まへにきつと、をしなをし、扨&、きとくに 00032570M3おまいりなされて候、ない+、けふハ、御しんふさまの、 00032580M4めい日にて候ほとに、さためて、御参りなされうとそんし、 00032590M5さけは、ようい仕候へ共、しやうしんの口にはのまれぬと、 00032600M6つね+おほせ(23オ)候程に、おためはかりに、これをと 00032610M7ゝのへたるよし、申さるゝ。たんな聞て、それハ、御心つ 00032620M8けは、まんそくにて候へとも、おほせられ候ことく、けふ 00032630M9ハおやの日にて、下されぬといへは、又うろたへ、まこと 00032640M10に、しつねんいたしたるよ、さて+、女とものにけんに 00032650M11つき、一つもよき事かない、と申された。 00032660¥N51¥J 00032670¥X 00032680M13△有人、信濃の国そのはら山にて、ふしきなることを、 00032690M14ミたといふ。たひ人、わらんすをふミきり、とくさを、わ 00032700M15らんすにつくり、はきけれは、ひたもの、あしかすれて、 00032710M16あしくひはかりになりたをみて来る、と(23ウ)いふ。尤さ 00032720M17うあらふ、これに、けんさんの、てんもくかあるを、夜こ 00032730M18とに、ねすみかきしる、/大((ママ))目ハかたし、ねすみのはかちひ 00032740M19て、此ほとは、尾はかりになりたるといふ。よきへんたう 00032750¥P80 00032760L1ちや。 00032770¥N52¥J 00032780¥X 00032790L3△あるものゝ、むこ入するとて、所の年よりたる人に、 00032800L4しき次第をならふ。其方しゆうとの所ハ、山家にて候程に、 00032810L5ふるまいに、かにをいたさう、かまいて、ふんとしをはつ 00032820L6いて、まいれといふ、いさい心得申と、うけあふ。あんの 00032830L7ことく、かにを出す。此むこ、ハしをからりとすてゝ、し 00032840L8たおひをはつして、引むす(24オ)ひ、せんのわきにをきけ 00032850L9れは、此さほうてこそあるらうとて、みな+座中、ミく 00032860L10るしきふんとしを、はつしける。 00032870¥N53¥J 00032880¥X 00032890L12△ゐ中より、はしめて上洛して、先せいくわん寺へ参り、 00032900L13御まへなるかくをみて、さてもミ事な、しゆせきかな、か 00032910L14ひたりや、せいの字、くハんの字の、ひつせいは、たふん、 00032920L15すかうか石すりてあらふ、といふた。 00032930¥N54¥J 00032940¥X 00032950L17△きのふ、日よしかのふに、すミた川をして、しはい中 00032960L18を、なかせたるといふ。有人、これをきゝ、明日早&、見 00032970L19物にゆく。まつ、をきな、せんさいふすき、さんはさう 00032980M1(24ウ)を見て、この人、さめ+となく。あたりから、是 00032990M2ハ何事そといへは、あのすミたかほか、あはれにて、物も 00033000M3いはれぬ、といふた。 00033010¥N55¥J 00033020¥X 00033030M5△御ちこさま、おさとか御ふへんさに、ハれかましきと 00033040M6きは、なにもかも、かりものちや、からせられる物は、し 00033050M7ちはかりちや、あらせうしやと、三位か申せハ、ちこのお 00033060M8ほせけるハ、しちもおれかてはないけな。なせに。見るも 00033070M9のことに、馬のものちやといふて、手をうつほとに。 00033080¥N56¥J 00033090¥X 00033100M11△天りう寺のさくけん和尚へ、信長公、御ふしんの(25オ) 00033110M12なさるゝ。何とて世間に、小ちこをは、りこんにし、大ち 00033120M13こハ、おろかにいひならハし候そ、大ちことハ、小ちこの 00033130M14なりあかりにてはないか、ちいさきときさへ、りこんなら 00033140M15は、大ちこにてはなを+りこんになるへきか、いかゝ、 00033150M16ふしんと、おほせらるゝ。そのとき、さくけん、御尤の御 00033160M17意にて候、われらもさやうに、そんし候、しかしなから、 00033170M18こちこのあひたは、いまた、さと心御座候ゆへ、ふけのり 00033180M19はつ、さいかく、身につきそふて、御座候か、てらしミて 00033190¥P81 00033200L1のちには、なか袖の、ぬるきたちふるまひを、見なれて、 00033210L2をのつから、(25ウ)心かおとり申かと、おほせけれは、の 00033220L3ふなか、事のほか、御ゑつきにて、一段もつともの御へん 00033230L4たうやと、かんしたまひける。 00033240¥N57¥J 00033250¥X 00033260L6△ともはやしとハ、ふし儀ちや、ともハきこえたか、は 00033270L7やしか、いなものちや、といふて、ふしんするものあり。 00033280L8それこそ、きこゑたれ、しゆうの御ようをきくとて、や、 00033290L9あ、といふて、はやすほとに。 00033300¥N58¥J 00033310¥X 00033320L11△ひさしきつれ相に、はなれて、しうたんする所へ、有 00033330L12ちしきの、御こしあつて、御なけきは、さる事にて候へと 00033340L13も、相ハ別の、もとゐにて候、思ひきり給て、(26オ)あと 00033350L14+を、よくとふらひたまへと、きようくんを、なされけ 00033360L15れは、御意のことくわれらもそんし候へ共、あのむすめ共 00033370L16か、はたちにもたらいて、あの相なるかほを見候へハ、ほ 00033380L17んなふか、おこりまらする、といハれた。 00033390¥N59¥J 00033400¥X 00033410L19△あるひやう人、いしやにあひ、ミやくをとらるゝ。是 00033420M1は大事の、おわつらいにて候、一儀を御つゝしミなくは、 00033430M2御くすりしんする事なるまい、と申されけれは、そのたん、 00033440M3御こゝろやすくおほしめせ、はや二三年も、そのかたはお 00033450M4りないといふて、御つい(26ウ)てに、女とものミやくをも、 00033460M5おそれ申たいとて、みすれは、ふしきや、これハ、くわい 00033470M6にんの御ミやくのやうな、と申されけれは、さやうに御さ 00033480M7らう、また此月かけて、四月ちやと申さるゝ。されはこそ、 00033490M8さうあらふとそんし、こなたの御くすり、しんしやく申候、 00033500M9其ことく、ふやうしやうにてハ、大事て御座候、と申され 00033510M10けれは、ていしゆ、めいわくして、さためてそれは、我ら 00033520M11子にては御座有まい、といわれた。 00033530¥N60¥J 00033540¥X 00033550M13△ふへんなるものゝ、よきむすめをもちけるを、よき所 00033560M14へ、きもいらうといへは、いかほとのしんしやう(27オ)そ、 00033570M15ととふ。ぬしはいま、らうにんちやか、やかて、ちきやう 00033580M16も出といふ。おちこは、四国の主ちや、といふ。扨&、き 00033590M17やうこつや、身にあてゝの十石とりにさへ、やらぬにとて、 00033600M18中+きゝもいれす、はらをたて、かへりける。 00033610¥P82 00033620¥N61¥J 00033630¥X 00033640L1△あるもの、むこ入せうとて、まつ女房をさきへやり、 00033650L2あすハかならす、いかふ、といふ。親の所にて、此よしか 00033660L3たる。さらは、よういせうとて、いろ+こしらへ、さて 00033670L4むすめをちかつけ、うちのは何そ、けいかあるか、といゑ 00033680L5ハ、大こか上手ちやとて、みなかねをもつ(27ウ)てきて、 00033690L6ならうといふ。さらはとて、やくしやをよひあつむる。ふ 00033700L7るまひすきてから、むこ殿の大こ、きゝおよひて候、何そ 00033710L8一はんあそハせとて、大こいたす。たへゑひて候へ共、御 00033720L9所望をつかまつらねは、りよくハいにて候ほとに、そとい 00033730L10たさうとて、大はたぬき、かたハちおとつて、な無あミた 00033740L11+と、六さい念仏を申けれハ、座中、けうをさましける。 00033750¥N62¥J 00033760¥X 00033770L14△ある人、若衆の御たつねを得て、是はゆめかうつ&か、 00033780L15かたしけない事やとて、いろ+御ちそふ申。御さかなも 00033790L16これなけれとも、せめて御酒なりとも、(28オ)まいらせた 00033800L17きとて、さま+すゝめ申せは、御さうりとりの三八か、 00033810L18まかり出、さやうに、さけな御しいなされそ、おさとて、け 00033820L19さも、さけのミをまいりて、今におかほかあかひ、と申た。 00033830¥N63¥J 00033840¥X 00033850M1△有わかしゆに、ひん僧かうちこうた。其内に又、大名 00033860M2かほれられた。やかて、ていかのきやうのしきしを、御手 00033870M3ほんにとて、しんせらるゝ。はうす是を聞て、まけしとお 00033880M4もひ、こうほう大師のしんきやうのきれを、三くたりはか 00033890M5り、もとめ出して、をくられた。また、たいミやうの方か 00033900M6ら、刀わきさし、かねたく(28ウ)さんにつけ、いかにもけ 00033910M7つこうなる、こしらへにて、しんせらるゝ。これを聞、あ 00033920M8きれて此返当には、かミそりなとにて、すむへからすとて、 00033930M9やかて思ひきり、 00033940M10△△何事も人にまけしとおもへとも 00033950M11△△△こかねかたなて手をそつきぬる 00033960¥N64¥J 00033970¥X 00033980M14△千松を、てらへのほせけれは、きよかきをして、見す 00033990M15る。親共是をみて、よきてにならふとて、よろこひける。 00034000M16母おやの申さるゝハ、てはかりてもない、おとな心も、あ 00034010M17るとみえた。なせに。きよかきのをくに、あなかしくと、 00034020M18あるほとに。(29オ) 00034030¥P83 00034040¥N65¥J 00034050¥X 00034060L1△山寺のしやミか、御ちこさまへ、おそれなから、御無 00034070L2心申度といふ。ちこきこしめし、扨&やさしき事、われら 00034080L3に、なさけをかけよとの望、とおほしめし、やすきこと、 00034090L4そちしたい、いまなり共、とおほせられた。しやみうけた 00034100L5まはり、さて+、かたしけなき事、いつにても、法印さ 00034110L6ま御留守にとて、あるとき、ほうゐん下山の時分、大なる 00034120L7ちうはこを、もつてかゝり、御やくそくのことく、これに 00034130L8めんさうなる、みそを一はい、御ぬすみ候て、くたされよ 00034140L9と申た。 00034150¥N66¥J 00034160¥X 00034170L11△小ちこ、のそミに、もちにさねある物なら、よからう 00034180L12(29ウ)と、申されけれは、大ちこのいはく、もち、まんち 00034190L13うハ、さねのなきゆへにこそ、ほんそうすれ、さねか、な 00034200L14にのように、たち候はんや。小ちこのいわく、それハ、た 00034210L15りう、さねかあらは、うへならへて、花みしてあそひたい、 00034220L16といハれた。 00034230¥N67¥J 00034240¥X 00034250L18△一段とそこつなるわかしゆ、もちを参るとて、ふため 00034260L19いて、のとにつまる。人&せうしかり、天下一ましないて 00034270M1をよひ、此よし、かくといふ。やかてましなふ。其まゝり 00034280M2うこのことくになり、二けんほとさきへ、とんて出る。み 00034290M3な+、めてたひことちや、さりとて(30オ)は、天下一程 00034300M4あるといふ。若衆聞て、さのミめいしんてはない。なせに。 00034310M5あつたらうまい物を、内へいるやうにしてこそ、天下二て 00034320M6もない、といハれた。 00034330¥N68¥J 00034340¥X 00034350M8△あるわかしゆ、ねんしやとねて、あかつきかたに、身 00034360M9をつはきにてぬらし、さて+ゆめを見て、あせをかいた、 00034370M10といはれた。何ゆめそ、ととへは、われらに、そなたから、 00034380M11大なるのしつけをこしらへ、これをさせ、とおほせらるゝ、 00034390M12いやといふてかへせハ、むりにとらへて、おひにさゝせら 00034400M13るゝ、なにとそして、是をかへしたき、と思ふて、くたひ 00034410M14れた、といふ。ねん(30ウ)しや是をきゝ、そうして、春の 00034420M15ゆめは、あはぬものちや、おこゝろやすう、おほしめせ、 00034430M16といふた。 00034440¥N69¥J 00034450¥X 00034460M18△ある人、子を寺へあけ、ひさしくあはぬとて、むかひ 00034470M19行、つれてかへる。寺内にて、ゆき相程の人、すハり、さ 00034480¥P84 00034490L1とへか、さらは+といふ。おや、これを聞て、すはりと 00034500L2ハ、名をかへたるかと、ふしんする。寺のならひにて、下 00034510L3戸を、すはりと申すとのへた。扨、五三日すきて、又とう 00034520L4たうしてまいる。法印、出相給て、松千代ははやう、兵衛 00034530L5殿きとくにとて、御酒をしいさせらるゝ。一ゑんにわれら 00034540L6も、せかれとおなし事にて、(31オ)すハりて、くたされぬ、 00034550L7といへは、され事はかりいハすと、一つまいれ、みなの一 00034560L8もんハ、ちとなるかとおもふか、たゝし、おもひわすれて 00034570L9候か、せひ一つ、とおほせけれは、ほうゐん様の御おほえ 00034580L10も、わるう御座らぬ、まつちよと、わたくしこそ、すはり 00034590L11て御さ候へ、あれか、あね母ハ、すはりて御座なひ、と申 00034600L12た。 00034610¥N70¥J 00034620¥X 00034630L14△ある人、竹田ほうけんへ/め((ママ))き、ちときこんのおつる御 00034640L15くすりを、申うけたいといふ。ほうけん、これをきゝ、御 00034650L16ミかけにちかふたるのそミ、ふしきなる、とおほせけれは、 00034660L17いや、われらかようては御さらぬ、女(31ウ)ともにあたへ 00034670L18候、と申せは、いつくもさやうなるかとて、わらひたまふ。 00034680¥N71¥J 00034690¥X 00034700M1△ある人の御内き、大事に御わつらひにて、いれうさま 00034710M2+なり。とかく御きねんしかるへきとて、山門の法印へ、 00034720M3御むかひ馬をのほせらるゝ。やかてほうゐん、むまにめし 00034730M4けるか、あまり此馬はやうて、中+のられぬ、とおほせ 00034740M5けれは、とねりか申やう、たつなをしめて、めさせられよ 00034750M6と申。心得たるとて、ひたもの、したおひをしめたまひて、 00034760M7これほとに、いきのはつむ程しめても、はやうて、やくに 00034770M8たゝ(32オ)ぬ、とかくおりて、あようたかましちや、とお 00034780M9ほせられた。 00034790¥N72¥J 00034800¥X 00034810M11△しうのこうしつへ、御見まいに参り、さて+、殿の 00034820M12御さらねハ、御やかたあれて、ところ+、しゆりにむか 00034830M13ふて候、御しようしや、と申せは、その事よ、これのか、 00034840M14むさとしひろけてをかれて、いま俄に、すへうとしても、 00034850M15すへられぬ、と申された。 00034860¥N73¥J 00034870¥X 00034880M17△れんかすきたるいしやの所へ、くすりとりにゆく。お 00034890M18りふし、一しゆんをみてゐられたか、心へたとて、くすり 00034900M19をあハせ、めいをかくとて、(32ウ) 00034910¥P85 00034920L1△△一つゝミに、水てんもくに、一はいなから入、しやう 00034930L2△△か三へきに、かへるかりかね。 00034940L3とかゝれた 00034950¥N74¥J 00034960¥X 00034970L5△上京のまくらやの、何とやらんいふ人、十二三なる子 00034980L6を、ひさうし、朝夕うたひを、をしへけるか、やかて十月 00034990L7に、百はたこくひに、つれてゆかふそ、ようおほゑて、其 00035000L8ときうたへよ、といふ。ほとなく、おめいかうちやとて、 00035010L9寺よりおあんないある。いつものことく、十三日には、か 00035020L10ならす御参り候へと、ふれらるゝ。扨つる千代をよひつけ、 00035030L11明日早&から、てらへつれてまいらふそ、うたひを、よく 00035040L12おほゑたるか、かまいて、(33オ)よき時分に、とゝか、にら 00035050L13まふそ、そのとき、ちやくと、うたへと、くれ+いひふ 00035060L14くめ、さて十三日に、おや子つれたち参る。方&のつきあ 00035070L15ひにて、次第+になをる。先おさなき衆へとて、せんを 00035080L16すゆれは、このむす子、につことわらふて、なふとゝ、百 00035090L17はたことは此事か、といふ。おや、めいわくして、きつと 00035100L18にらめは、よきしふんそとおもひ、あふきおつとり、かし 00035110L19こまつて、 00035120M1△△いわふなる、心そしるき、くもりなき 00035130M2を、たか+とうとふた。 00035140¥N75¥J 00035150¥X 00035160M4△ある人、せう巴所へ行、われらあまりに、無のふに 00035170M5(33ウ)候ほとに、なににても、心かけ申たきと、そんする、 00035180M6くすしか、れんかを、のそミにて候、御たんかう申、御意 00035190M7したいにいたさう、といふ。せうは、聞て、それは、よき 00035200M8こゝろかけにて候、ふたつのうちにてハ、れんかゝ、まし 00035210M9てあらふか、と申された。それより、れんかすきける。あ 00035220M10る人、せうは所へゆき、さて+、いハらやの無心は、貴 00035230M11老、御たんかうにて、れんか仕よし、申候か、何とおほし 00035240M12めして、御いけんなされ候そと、ふしんする。巴のいはく、 00035250M13其事にて候、あれほと、ふ作にて、くすしをいたされ候は 00035260M14ゝ、人たねかあるま(34オ)い、せめて連哥にては、人をこ 00035270M15ろすまいと、そんして、と申された。 00035280¥N76¥J 00035290¥X 00035300M17△あるもの、しやうるりをすきて、あけくれかたる。花 00035310M18のやうなる御すかたの、かれうひんかの御こえのと、さま 00035320M19+、けつこうにいふを、女房つね+、ねたましく思ふ。 00035330¥P86 00035340L1あるとき女房に、かたひらのふくろひをぬへと、いひつく 00035350L2れは、御身のいつもほむる、しやうるりめにぬハせよ、と 00035360L3いふ。となりのもの、申やう、それは五百年さきの事なる 00035370L4に、いらさるりんきちや、といへは、せんねんても、いふ 00035380L5すちなら(34ウ)いハてこらへまい。 00035390¥N77¥J 00035400¥X 00035410L7△有人、女はかりすき、一ゑんに若衆のかたをしらす。 00035420L8はうはいとも申やう、貴所ハ、てんふやしんちや、さため 00035430L9ていままて、わかしゆのおこないやうをも、しるまいとて、 00035440L10わらひけれは、その事ちや、つゐにしらぬ、さりなから、 00035450L11人のするを見てあるか、ふしきな事かある、何やら、ひた 00035460L12ものとつてくうたか、何ともかてんかすまぬ、といハれた。 00035470¥N78¥J 00035480¥X 00035490L14△ゐ中へ、ものゝほん、うりにくたりて、いろ+の物 00035500L15うりける。又ある人、まくらさうしをかうとて、(35オ)も 00035510L16し、文字のちかひたる事かあらは、かへさうそ、此ほとの、 00035520L17かうたうちにも、あしきことかある、と申されけれは、こ 00035530L18れは、ようほう寺の上人、せいわう坊の、けうかうなされ 00035540L19た程に、すこしもちかひハは、御座有まいと申た。(35ウ) 00035550¥T1きのふはけふの物語△下 00035560¥N1¥J 00035570¥X 00035580M3△ひてたゝ公より、禁中様御作事のとき、国&のにんふ 00035590M4とも、つゐちまハりの、うへ木のえたに、めんつを、ひし 00035600M5とかけてをいた。やなきはらとの、御覧して、 00035610M6△△見わたせハやなきさくらにこきかけて 00035620M7△△△ミやこははるのこしきなりけり 00035630¥N2¥J 00035640¥X 00035650M9△くハんとうの事なるに、いまゐとのといふ人の、むす 00035660M10めを、かすかとのへ、よめにとられしか、やかてあくる日、 00035670M11をくりかへされし。いかなる事にや、(1オ)おほつかなし。 00035680M12此とき、いちかわひせんのかミ、 00035690M13△△すゑとけてとてもいまゐのむすめこに 00035700M14△△△一夜のやともかすかとんなり 00035710¥N3¥J 00035720¥X 00035730M16△四条に、たまかつらか、のふをする。いさけんふつに 00035740M17と、さそふ。それハミたい事ちやか、中+ならぬといふ。 00035750M18せひともとて、さそひけれは、いや、おとこのなら、いか 00035760M19うか、をんなのは、見ることかならぬ。なせに。これの山 00035770¥P87 00035780L1のかミか、あれてからたまらぬ、といふ。それはかくさう 00035790L2まてよ、せひといへは、いや、よこめかあつて、貴所たち 00035800L3にも、心ハゆるされぬ、といふた。(1ウ) 00035810¥N4¥J 00035820¥X 00035830L5△をたの信長殿、ことのほか、たいりさまをたいせつに、 00035840L6おほしめし、むら井しゆんちやうを、奉行につけられて、 00035850L7きんちうことことく、みしゆりをな/き((ママ))るゝ。これを、うつ 00035860L8けたるものゝ申やうハ、たいり様の御ねんしやハ、むらい 00035870L9殿ちや。なせに。けふも、たいりのミしりをしに、いかせ 00035880L10らるゝとて、日に+御出あるほとに、そうかと思ふた。 00035890¥N5¥J 00035900¥X 00035910L12△今程、手かゝミはやる。いろ+さま+の、こひつ 00035920L13をあつめて、ほんそうする中にも、杉近衛殿の、御しゆせ 00035930L14きほとなるは、あるまいと、さたする。又、もん(2オ)ま 00035940L15うなるもの、申やう、それほとなるよき御てを、何とて、 00035950L16ちよくひつとハ申さぬそと、ふしんした。 00035960¥N6¥J 00035970¥X 00035980L18△あるしゆつけ、五六さいのすて子をひろうて、やしな 00035990L19ひそたて、七つ八つより法花きやう、そのほかのよミもの 00036000M1共、せいをいれ、をしへられ候へ共、一ゑんおほえす。あ 00036010M2まつさへ、ししやうの申さる&事を、せうゐんせす。言語 00036020M3道断、にくい事や、をのれめは、五つや六つのときよりひ 00036030M4ろい、やういくして、やう+人になし、きやうたらにを、 00036040M5をしへけれ共、あともなふわすれて、悪きやうはかりに、 00036050M6身を(2ウ)なして、われらにすねまはる事、いハれなし、 00036060M7やう+、つゑはしらにもなる時分に、さやうにふるまひ 00036070M8候、さたのかきり、く僧か、いまにてもし&たらハ、あと 00036080M9しきを、たれか望ものもある/か((ママ))れとて、思ふまゝにしから 00036090M10れた。其とき、かのわやくもの申ハ、御はうのおほせられ 00036100M11ふん、一として、われら心中に、かなハす、其つれの無り 00036110M12はかり、おほせ候共、少も御意にしたかふまい、此申ふん、 00036120M13御きにあたり候は、所の御代くハんへなり共、御あけ候へ、 00036130M14りひは、きゝしる人か御座らうとて、いよ+すねける。 00036140M15はうす、(3オ)ハらをすへかねて、ふきやう所にて、右の 00036150M16たん+、申さるれは、やかて、しんほちをめして、御坊 00036160M17のそんふん、ねんころに聞て有そ、そのはうかくこ、さた 00036170M18のかきりそ、いらいは、老僧次第にして、かう+かかん 00036180M19ようそ、とおほせわたされ候へは、しんほち申やう、御意 00036190¥P88 00036200L1のことく、われらにも申され、めいわく仕候、われら、一 00036210L2かう、尤と存する儀、是なく候、先やしなひそたて、人に 00036220L3なしたる、なととて、得こなる事を、申され候、それかし、 00036230L4馬の子か、うしの子ても候を、人になされ候は、をんとも 00036240L5そんすへけれ、そうへつ(3ウ)ハしめから、人の子にて候 00036250L6程に、おんともそんせぬ、其うへ、なられもせぬ、つえに 00036260L7せう、ハしらにせうと申され、何よりもつて、めいわくに 00036270L8候、又、きやうなとおしへたると、申され候へ共、一字も 00036280L9おほえ申ねは、みな返したるとうせん、これもつて、さの 00036290L10ミくわふんにもおりない、また、はうすしなれて後、我ら 00036300L11に寺をゆするとて、おんかましく申され候へとも、これも、 00036310L12世にあるうちに、ゆつられ候へは、すこしはまんそくにて 00036320L13候か、しなれてあとハ、われらよりほかに、てしとても御 00036330L14さらす、こ共はみな、しに(4オ)申なり、ことはりにおよ 00036340L15ハす、それかしかにて候、何かししやうの、たうりたるへ 00036350L16きや、御ふんへつなされ、きつと、おほせつけられくたさ 00036360L17れ候へ、と申あけけれは、ふきやうしゆうも、へんたうな 00036370L18く、あきれてゐられた。 00036380¥N7¥J 00036390¥X 00036400M1△ある寺に、名作の大こくのあるよし、聞およひて、た 00036410M2んな参りて、是を見たきとて所まうする。はうすきゝ、中 00036420M3+、われら大こくハ、もち候はぬ、といふ。たんな申や 00036430M4う、よくそんして候、われら儀ハ、よの人とは、かハり候、 00036440M5せひ共、といへは、言語道断の女房(4ウ)をよひ出す。た 00036450M6んな、きもをつふし、此事ては御座ない、ほんのを御みせ 00036460M7候へ、と申せハ、扨&、よく御そんし候、かまいて、さた 00036470M8のなきやうに頼入、内&ほうしやうさま、ほしきよし、い 00036480M9ろ+おほせ候ゆへ、ふかうかくし申せ共、貴所のお事ち 00036490M10やほとに、御目にかけうとて、又、ひしんをよひ出いた。 00036500M11ミやこの出家ハ、たふんかうはあるまい 00036510¥N8¥J 00036520¥X 00036530M13△有人、まいを一たんしまんして、月夜に一条のつちに 00036540M14てまふた。よきまいかとおもひ、たちよりてきゝけるか、 00036550M15一人つゝみなかへる。八九十なるうは一人(5オ)のこりて、 00036560M16さめ+となく。あたりなるもの申やう、あれほとへたの 00036570M17まいか、何ほとあハれにて、なくそとてわらひけれは、い 00036580M18や、あはれにはないか、われらかさうりをかりて、しりに 00036590M19しきけるか、はやうまいかハてたら、かへりたい、と申た。 00036600¥P89 00036610¥N9¥J 00036620¥X 00036630L1△さるてらへ参りけるに、うつくしきかふろのゐけるを 00036640L2見て、さて+うつくしき御若しゆかな、となたからとて、 00036650L3こそうにとふ。あれハ、大さからう人ちやといふ。さやう 00036660L4にみえた、よい子ちやか、とてもの事に、へゝをつけてほ 00036670L5しや、といへハ、此中、(5ウ)長老さまも、さやうにおほ 00036680L6せらるゝ、と申た 00036690¥N10¥J 00036700¥X 00036710L9△ちこ、さとにひさ+、御あそひなさるゝ。ほうゐん 00036720L10より、御見まいとして、御ふミと、さんミを、つかわさる 00036730L11ゝ。其御文のことは、いろ+さま+の、おもひふりの、 00036740L12ふんていの中に、 00036750L13△△そもし、なか+、さとに御とうりうにて、此ころは、 00036760L14△△おにやけにかつへ申 00036770L15と、くりかへし+、あそハしける。この文を、ちこの、 00036780L16わきあけの袖からおとすを、ちこのはゝ、これをひろうて 00036790L17みて、右のもんこんを、ふしんして、てゝおやにとへハ、 00036800L18是もしらす。ちこ(6オ)にとふて、何なりとももたせ、し 00036810L19んしやう申せよといふ。さて、ちこにとひけれは、ちこめ 00036820M1いわくして、其事にて候、山のならひにて、酒を、おにや 00036830M2けと申候と、のへられた。さらはすやきこと、さけをまい 00036840M3らせうとて、もろはくのたる十はかり、山へのほせらるゝ。 00036850M4さて三位、まかりかへるとて、いとまこひに出れは、やれ 00036860M5+御しんらうや、ちとおにやけをまいれとて、ひたもの、 00036870M6さけをしいらるゝ。少もたへぬ、一ゑんの下戸にて候、と 00036880M7いへは、それハのこりおほき事や、さらは、おにやけのミ 00036890M8をまいれ、と申た。(6ウ) 00036900¥N11¥J 00036910¥X 00036920M10△御わかしゆさま、御すかたと申、御こゝろつかひと申、 00036930M11まことに、のこるところも御座ない、され共、よそへ御出 00036940M12あつて、人の刀、わきさし、つゝミ、大こによらす、よう 00036950M13代さしをなさるゝ、是一つか、なによりきつちや、よく 00036960M14+きやうこうは、御たしなみ候へ、といふ。若衆きこし 00036970M15めし、扨&、くわふんな御いけんちや、すいふんたしなミ 00036980M16申さう、まことに+、このやうなる、かたしけない御い 00036990M17けんハ、百くハんても、かハれまひ、とはやくハせた。 00037000¥N12¥J 00037010¥X 00037020M19△やまてら僧、したしきたんなにあふて、申やう、(7オ) 00037030¥P90 00037040L1此ほとひさしく、わかしゆにかつへ、めいわくをいたす、 00037050L2とかたる。たんな聞て、尤おたうりや、何とそしあんして、 00037060L3おにやけのハりかたを仕、しんし申さう、といへは、はう 00037070L4す、まんそくして、それハ何よりの、御心さして御座らふ、 00037080L5せんあく、頼入候、たゝし、とてもの御事に、このミかあ 00037090L6る、と申さる&。いかやうの御このみそ、ととへは、あち 00037100L7をは、へゝのあちに、なされてくたされよ、といわれた。 00037110¥N13¥J 00037120¥X 00037130L9△ふたうなるもの、さるわかしゆを、無りにをしつけ、 00037140L10たしなませて、あとをゆひにて、ひたものくしる。(7ウ) 00037150L11これは何事そ、らうせきなるしかたちや、こんこたうたん 00037160L12の事とて、ハらをたてけれは、これほとあちのよいは、ふ 00037170L13しきちや、中に、けつひかあらふ、といふた。 00037180¥N14¥J 00037190¥X 00037200L15△かんまつ、ゆやをしそんしけれは、 00037210L16△△むねもりのさこそむねんにおほすらん 00037220L17△△△かんまつたゆふにゆやをしられて 00037230¥N15¥J 00037240¥X 00037250L19△しゆらくにて、こんかう太夫、くハんしんのふに、し 00037260M1はいせん三十文つゝ、とりけれは、 00037270M2△△こんかうハ、二そく三文するものを(8オ) 00037280M3△△△三十とるはせきたたゆふか 00037290¥N16¥J 00037300¥X 00037310M5△わかしゆの御すかたを見て、さて+、のこる所も御 00037320M6座なひとて、しミ+とほむれは、そはなるはうすたち、 00037330M7これを聞、おほせのことく、御かたちハ天下一、おにやけ 00037340M8ハ、しゆこふ入ちや、といはれけれは、又、そはなるしん 00037350M9ほちの申やうは、しゆこふにうても御さらぬ、といふ。な 00037360M10せに。さい+、ふひやうか出るほとに。 00037370¥N17¥J 00037380¥X 00037390M12△あるわかしゆ、ねんしやとねて、とりはついて、けか 00037400M13をして、さらぬていにて、さて+、なれなしみ(8ウ)の 00037410M14中ほとなる事は御さるまい、いまのやうなけかをいたして、 00037420M15はらをきりてもあかね共、なしミゆへに、何ともそんせ/ひ((ママ))、 00037430M16とおほせけれは、ねんしやうけ給はり、さて+かたしけ 00037440M17ない、左様におほしめし候へは、生&世&、わすれかたひ 00037450M18と、申もハてぬに、またせられた。ねんしや、はなをふさ 00037460M19き、かさね+くハふんな、と申た。 00037470¥P91 00037480¥N18¥J 00037490¥X 00037500L2△又さる若衆、ねんしやとねて、是もとりはつされた。 00037510L3何共此にほひを、さるへきやうなけれは、物かたりをしか 00037520L4けて、さんわうまつりを、御覧して候か。(9オ)いや、ま 00037530L5た見申さぬ、といふ。さらハ、ひやうしをふんて、きかせ 00037540L6申さうとて、 00037550L7△△大ミやのハしハ、のんのや+、さんわうまつり、す 00037560L8△△こすこ+や 00037570L9此ひやうして、くたんのいきを、ふるわれた。ねんしや聞 00037580L10て、さてもおもしろき事かな、うけたまハりおよひたるよ 00037590L11り、よきひやうしちや、さりなから、まねさへ、これほと 00037600L12くさいに、ほんのハ、あたりへよられまい、といハれた。 00037610¥N19¥J 00037620¥X 00037630L14△かうやひしり、わかしゆにほれて、いろ+、くとき 00037640L15けれ共、此わかしゆう、つれなふて、つゐにとうしん(9ウ) 00037650L16なけれは、ひしり、かさねて申さるゝは、まい年二きに、 00037660L17心つけをいたさうか、それてもいやか。 00037670¥N20¥J 00037680¥X 00037690L19△長老様へ、与六太夫殿おかた、御ミまひとして、させ 00037700M1んまめをもつて、御こしある。しんほち、御ちやうらうさ 00037710M2まへ申やう、与六たゆうとのゝお内儀の、是をもつて、御 00037720M3参り候、といふて、ゆひにて、かのものをつくり、御目に 00037730M4かくる。ちやうらう、御らんして、さて+にくひやつち 00037740M5や、人の見る所にて、さやうなる事をするものか、言語道 00037750M6断、くせ事ちや、きやうこうハ、弟子とも思ハねは、しし 00037760M7やうとも思ひそ、(10オ)はや+まかりたてよ、といふま 00037770M8ゝに、かうまの利けんをとつて、おひはしらかし給へハ、 00037780M9たんなしゆあつまりて、せうしなる事ちや、何事にて、御 00037790M10きにちかふたるそと、しんほちにとへは、いさゝか、おハ 00037800M11らのたつ程のことては、御座らぬ、これをしたとて、しか 00037810M12られ申とて、又、くたんの手もとをして、みする。たんな 00037820M13是をみて、それをしたらは、中+申共、きかせられまい 00037830M14とて、とんしやくせなんた。 00037840¥N21¥J 00037850¥X 00037860M16△ある人、たこくより女房をようて、ひさしくそひける 00037870M17か、心ならす、此女房ををくるとて、あきあかれ(10ウ)た 00037880M18るなかにても候ハねは、うらミもさらにあるましく候、さ 00037890M19りなから、ゑんつきす候はゝ、又こそ申いれ候へけれとて、 00037900¥P92 00037910L1家のたからものをとり出し、何にても、ほしき物をとりて、 00037920L2御かへり候へと、申されけれは、女房聞て、おほせのこと 00037930L3く、あかれて出候共、なにかうらミの候へし、ましてゆへ 00037940L4ある御事なれは、御ことハりにもおよハす候、また、この 00037950L5たからのうちに、ほしきものハなく候、われ+身にかへ 00037960L6ても、おしきものゝ候、といふ。此うへハ何なり共、御の 00037970L7そミ候へとて、せいもんをたてゝ、き(11オ)かせけれは、 00037980L8此うへはまんそくなり、われらのほしき物は、これよとて、 00037990L9五六すんなる物を、ひんにきり、とつてかへらふといふ、 00038000L10是ハといへと、きかす。理につめられて、せひにおよハす、 00038010L11それより、五百八十年のちきりける。女にも、かやうに、ち 00038020L12ゑのふかふて、やさしきものゝありとて、みなかんしける。 00038030¥N22¥J 00038040¥X 00038050L14△きくやのよ三郎か、おかたさまへ申やう、おそれなか 00038060L15ら、申たき事か御座ある、かなへさせられは申さう、とい 00038070L16ふ。きやうこつな事をいハしむ、人に聞えたらはよいもの 00038080L17かと、いはれけれは、よ三郎聞(11ウ)て、我らも申かけて 00038090L18から、御とうしんなくは、せひにおよハす候、かんにんま 00038100L19かりならぬといふ。おかた聞て、それほとにおもはゝ、い 00038110M1つなり共、と申されけれは、さらは、たゝいま申さうとい 00038120M2ふ。それはあまりきうな、といへは、いや、人のないとき 00038130M3申さうとて、み&にさゝやきて、朝夕のおめしか、くひた 00038140M4らぬ、ちとおしつけてくたされよ、と申た 00038150¥N23¥J 00038160¥X 00038170M6△おちこさまへ申、法印様ハ御留守か。いや、ちふつた 00038180M7うに、かきして御さる。かきとハ何事そ。ひたるさに、か 00038190M8んとも、きんとも、ハねられてこそ。(12オ) 00038200¥N24¥J 00038210¥X 00038220M10△あるちこ、そんのほかに、もちをきこしめし、にはか 00038230M11に、はんねつして、めいわくなさるゝ。ちと、うちのくつ 00038240M12ろくやうに、くすりをまいらせう、といひけれは、くすり 00038250M13やゆか、口へいるほとならは、また一つも、もちをこそ、 00038260M14くはふすれ。 00038270¥N25¥J 00038280¥X 00038290M16△ゑんりやくしの小ほうし、御ときすきて、やまへ木の 00038300M17はかきに行とて、御ちこさまの中ちきを、せんたなにあけ 00038310M18をき、その下に、小法師かひるめしもおひた。さて、山よ 00038320M19りかへりて見るに、御ちこ様の御せんもあかり、わかめし 00038330¥P93 00038340L1もなし。ふし儀なる事(12ウ)とおもひ、御ちこ様にとへは、 00038350L2まことに、おしるかと思ふて、あこかめしに、うちかけて 00038360L3くうたと、おほせられた。 00038370¥N26¥J 00038380¥X 00038390L5△ゑいさんのこほうしハら、山へ行さまに、御ちこさま、 00038400L6こゝにおひるか御さりまするか、九つをうつたらは、こし 00038410L7めせと、申をいて、やかて、やまよりかへりけるに、やう 00038420L8+四つ時分に、はや参りたるあとあり。いかにと尋申せ 00038430L9ハ、はや九つすきたると、おほせらるゝ。たゝいま四つを 00038440L10うちたるに、と申せは、されはこそ、けさいつゝと、今四 00038450L11つとハ、九つて(13オ)なひか、とおほせられた。さて+ 00038460L12よきさんようやとて、あきれもせなんた。 00038470¥N27¥J 00038480¥X 00038490L14△にしのとうゐん、/□((うカ))いらう所に、まりけるとて、何と 00038500L15かして、かゝりよりそとへついとこへ、大道へをつる。お 00038510L16りふし、おん国のさふらひ、人あまたつれて、とをられけ 00038520L17るか、これハ何ものそと、ひしめく所へ、ふらめいておつ 00038530L18る。心得たりと、いふまゝに、やりの石つきにて、つとん 00038540L19といハせた。しうかこれをみて、心かけハよけれとも、人 00038550M1のかひとりとみえて、とやまてしてあるに、ころすまいも 00038560M2のをと、いはれた。(13ウ) 00038570¥N28¥J 00038580¥X 00038590M4△あるわかしゆ、もつてのほか、御わつらひにて、いま 00038600M5をかきりとみゆる。ねんしや、なけきかなしむてい、まこ 00038610M6とに、よそのたもとも、ぬらしける。とかく此ふんならは、 00038620M7程もあるまいとて、さうれいのよういする。ねんしや申や 00038630M8う、らい世まて御とも申さうとて、くわんを大きにこしら 00038640M9へた、扨ほとなく、わかしゆ、ハてたまふ。ねんしやのし 00038650M10んるい共、いろ+いけんすれ共、中+、是程人もしら 00038660M11ぬさきこそ、いまさら、われらとりミたし候共、御しかり 00038670M12候てこそ、まんそくなれとて、聞もいれす。さて、われと 00038680M13かん(14オ)へいり、とりへ野えをくり、いんたうもすきて、 00038690M14火をかけけれは、くハんの中より、こうしやうに申やう、 00038700M15ふたをあけてたへ、申たき事かある、先火をけしてたまは 00038710M16れ、おもひきりたる事なれは、いのちは、つゆちり共思は 00038720M17ぬか、けふりくさい、まつ、せうへんしてから、心しつか 00038730M18にいひこんせうと、ぬかいた。 00038740¥P94 00038750¥N29¥J 00038760¥X 00038770L1△ひようたんやのゑもん三郎、ぬす人か、戸をあくるを、 00038780L2きゝつけ、手やりをもつてかまへ、なにさま、内へはいり 00038790L3たらハ、たゝ中を、くさりとつかふ、と思ふてまつ。しは 00038800L4らくあつてはいる。此おとこうろたへ、(14ウ)やりをは、 00038810L5其まゝしたにをいて、口にて、くつさりといふた。 00038820¥N30¥J 00038830¥X 00038840L7△しゆんれいと、ハちひらき、ね物かたりする。しゆん 00038850L8れい申やう、さて+、いかなるいんくハやらん、かやう 00038860L9にあさましき事や、せめててんかを、三日しりたい、さあ 00038870L10らは、国&のつちたうのいたし/て((ママ))を、たか+とつくらせ、 00038880L11ゑんのしたにて、其方たちとはなしたいと、いふ。ハちひ 00038890L12らきか聞て、さても貴所は、それほととんにて、しよこく 00038900L13をめくる事ちや、その身におうしたるねかひを、したかよ 00038910L14い、(15オ)われらハ京の国を、一日なり共しりたい。なせ 00038920L15に。まち中のいぬを、みなうちころさせて、ゆる+と、 00038930L16はちをひらきたひ。 00038940¥N31¥J 00038950¥X 00038960L18△あるものゝ申、へんけいハ、はうくハん殿の若衆ちや 00038970L19か、といふ、なせにといへは、はうくハんむさしをめされ 00038980M1と、まひにまふほとに。 00038990¥N32¥J 00039000¥X 00039010M3△さる上らう衆、長老様へ申さるゝハ、さいこうふかき 00039020M4身にて、後生一大事をもしらすして、月よ花よのあそひに 00039030M5て、くらし候、ちと御しめし候て、くたされ候へと、おほ 00039040M6せけれは、ちやうらう、きゝ給(15ウ)ひて、それはきとく 00039050M7の御望にて候、あら+申入候へし、そも+、女人しや 00039060M8うふつの法と申ハ、ミたのせいくハんに、しくはなし、何 00039070M9をもつて、かくいふなれは、第一をんなは、つひふかふし 00039080M10て、うかミかたきゆへに、ミたによらい、三十二のくわん 00039090M11にも、女人しやうふつを、たてたまふと、の給へは、こら 00039100M12へかね、くつ+と、わらひたまへハ、それハみなの、き 00039110M13のやりやうか、はやうわるいと、おほせられた。 00039120¥N33¥J 00039130¥X 00039140M15△むかし公方様、ち仏たうへ御参りなされけるに、おり 00039150M16ふし、あミたのミやうかうの、おちさせたまふ(16オ)を、 00039160M17しゆむあみといふ、とうほう、まかりたつて、かけ申せハ、 00039170M18やかて、又おつる。そのときの御ゑい、 00039180M19△△かちハらとしゆんあミたふか二度のかけ 00039190¥P95 00039200L1△△△それはかうミやうこれはミやうかう 00039210¥N34¥J 00039220¥X 00039230L3△御わかしゆさま、ゆミや八まん、いのちかつれなふて、 00039240L4かやうに、ものをおもひ候、つゆはかり/□((一字アキ))御なさけと、い 00039250L5ろ+くとき申せは、わかしゆきこしめし、われもいはき 00039260L6にあらねは、御心中すもし仕候へ共、とかく、ねんしやか 00039270L7きつうて、心にまかせす候、さほとにおほしめし候はゝ、 00039280L8なかきちきりとも、(16ウ)なり申へし、いさや、一所にみ 00039290L9をなけて、おなしハちすのゑんと、なるへきよし、おほせ 00039300L10けれは、さて+、かたしけなひ事かな、さらは、御とも 00039310L11申さうとて、川のほとりへ行ける。若衆の申さるゝハ、い 00039320L12さや、手にてを、とりくみて、してさんつをもゆかんと、 00039330L13おほせけれは、われらか事は、何とハて候ても、くるしか 00039340L14らす候、まつ+御いそき候へ、御なり候やうをも、見と 00039350L15ゝけまいらせ、やかて、おひつき申そうと、ふかくけいや 00039360L16く申す。其儀ならは、六道のつしにて、まち申さんとて、 00039370L17いたハしや、(17オ)いまた二八はかりとみえけるか、花の 00039380L18やうなる御すかたを、なミのもくつとなしたまふ。扨ねん 00039390L19しや、心しつかに十念して、一しゆかうこそ、つらねけれ。 00039400M1△△な無といふこゑのうちより身をなけて 00039410M2△△△あミたは水のそこにこそあれ 00039420M3とハよミたれ共、おもへはいらぬ事ちや、たゝいきのこり 00039430M4て、後世をとふらひ申てこそ、しんしつの御こゝろさしに 00039440M5て候へと、われと我かみに、いけんして、一もんしに、か 00039450M6けもとる。かのわかしゆも、やかて、すいりやうして、こ 00039460M7かけよりあかり給ひて、(17ウ)さきへまハりて、まちたま 00039470M8へは、ゆうれいかと思ひ、きもをつふし、おそろしさに、 00039480M9かミそりをぬいて、はつそうにかまへ、いかに、もうれい、 00039490M10たしかにきけ、あとをとふてとらせうと思ふそれかしに、 00039500M11うらミみをなさうと存して、ふかくすなと、いひすてゝ、 00039510M12あともみすに、にけた。 00039520¥N35¥J 00039530¥X 00039540M14△つの国中しまに、大百しやうのひくにあり。そうして 00039550M15まいねん、なかつ川のつゝミかきるゝゆへ、りんかうの百 00039560M16しやうより相、かのひくにか田の、まへをつく。しかるあ 00039570M17ひた、かれいとして、にんふ(18オ)ともの、中しきのしる 00039580M18をは、此あまか、とりおこなふ。あるとし、又いつものこ 00039590M19とく、ふしんするに、あま、何と思ふてやらん、しるをい 00039600¥P96 00039610L1たさぬ。せつ+、つかひたつれ共、とんちやくせぬ。く 00039620L2せ事とて、時のたいくハんへ、そせうすれハ、やかてめし 00039630L3いたし、まいねんの儀を、なにとてたうねん、おこたり申 00039640L4そと、おほせけれは、其御事にて候、いつもハ、わたくし 00039650L5かまへを、御つきなされ候ゆへ、しるを出し申候、当年は、 00039660L6われらてん地より、しもの方、きれ申候て、となりけのう 00039670L7へを、つかせらるゝに、何とて(18ウ)わきから、しるを出 00039680L8し候はんや、おほしめしわけられ候へ、と申けれは、上下 00039690L9大わらひにてハてた。 00039700¥N36¥J 00039710¥X 00039720L11△ある出家、おもひよらす、けいせいまちをとをれは、 00039730L12やかて、ころもの袖をひかれ、せひにおよハす、しうけん 00039740L13をつとめ、出さまに、ふせにとりたるものを、是しきなれ 00039750L14共、といへは、いや+けふハ、われら、おやの日にて候 00039760L15ほとに、それまても御さらぬ、と申けれハ、しゆつけ聞て、 00039770L16それは何よりの御けちゑん、ありかたう候、さらは、けさ 00039780L17をかけて、いたさうものを、さりなから、かいミやうは、 00039790L18なにと申そ。(19オ) 00039800¥N37¥J 00039810¥X 00039820M1△又ある坊主、これも、ひきいれられ、事すきて、れい 00039830M2もつをいたせは、今日ハ心さしの御座候、御わすれなくハ、 00039840M3まい月御こし候へ、といへは、それは一段と、しゆしよう 00039850M4に候、ねんころに、ゑかう申さう、またらい月からは、か 00039860M5ならす、おたいやからまいらふと、かたくやくそくせられ 00039870M6た。 00039880¥N38¥J 00039890¥X 00039900M8△六条のもんせきに、のふの有時、しはいへ、まんちう 00039910M9をまかるゝ。若さふらい、ちからにまかせてうつとて、つ 00039920M10いしをうちこえて、大道へおつる。山かより、はしめてい 00039930M11つるもの、これをひろうて、ふしきなる(19ウ)物かなとて、 00039940M12いろ+せんきする。中にも、としよりたるものゝ申やう、 00039950M13とかくこれハ、天人のたま子にてあらふ、といふ。尤ちや、 00039960M14たゝいまうまれたるとみえて、あたたかな、さらはあたゝ 00039970M15めて、かいをわらせよ、といふて、わたにつゝみ、ふとこ 00039980M16ろにてあたゝむる。次第に、あをくなり、けかはゆる。是 00039990M17ハ中+、てんにんの子てはないそ、むくりこくりか、た 00040000M18ま子てあらうそ、かいをわらぬさきに、ころせとて、大か 00040010M19りまたにて、すんといきつて、されはこそ、申さぬか、中 00040020¥P97 00040030L1に、くろちのかたまりかある、といふた。(20オ) 00040040¥N39¥J 00040050¥X 00040060L3△あるちやうらう、御わつらひもつてのほかにて、今を 00040070L4かきりとみゆる。てし、たんなあつまつて、さてもせうし 00040080L5なる御事や、此たんにて、何かくるしかるへきとて、さけ 00040090L6とさかつきを、まくらもとにをき、これ+、目をひらき 00040100L7て、御らん候へ、いつもの御/の((ママ))すき物にて候、といゑは、 00040110L8へゝか、と申された。 00040120¥N40¥J 00040130¥X 00040140L10△ある人、うつくしきかつしきにほれ、うたをようて、 00040150L11をくらるゝ、 00040160L12△△きミをのミこひこかれつる、手すさミに 00040170L13△△△かと田にいてゝねせりをそつむ(20ウ) 00040180L14此うたを得て、しれんくにて返しても、いかゝと、おほし 00040190L15めせとも、哥のみちハおほつかなしとて、さる人に、たん 00040200L16かうし給ひけれは、貴公は、しれん句なされ候ほとに、哥 00040210L17もなり申さう、作意ハ、れん句もうたも、おなし心にて御 00040220L18座候、と申さるゝ。さては別の事もなひと、おほしめして、 00040230L19へんか、 00040240M1△△われしらミふなあふりさきあしもちり 00040250M2△△△せとのはたけてこはうひきぬく 00040260M3きミをのみに、われしらミ、こいこかれつるに、ふなあふ 00040270M4りさき、此ことく、ついをなさるゝ事、(21オ)たんかう人 00040280M5のふ念とて、みなしかりた。 00040290¥N41¥J 00040300¥X 00040310M7△あふミのよこわたしにて、しよこくのもの、ふねにの 00040320M8り、いろ+、ものかたりする。中にも若きもの申やう、 00040330M9まことや、女房のまへのくさきもの、かうの物をつけたれ 00040340M10は、一ゑんくさうて、くハれぬといふは、まことにて御さ 00040350M11るかといふ。せんちうのものとも、われも+、せうここ 00040360M12そあれ、くさいかちやうちや、といふ。せんとう、これを 00040370M13聞て、ちとふねをもとしたい、といふ。こゝまてきて、何 00040380M14のようそとて、しかる。せひ共とて、をしもとして、わか 00040390M15いゑのうらへ(21ウ)つけ、女房をよはハり、けさのかうの 00040400M16物ハ、はやみなつけたるか、といへは、いままて何しにを 00040410M17かふそ、とくつけたるといふ。言語道断、ふり百すてた。 00040420¥N42¥J 00040430¥X 00040440M19△ハりまの国、あか/□□((松又カ))右衛門といふ人、ミのゝくに、 00040450¥P98 00040460L1はやしのかた、しゝのかは百まい、もとめてくたされよと 00040470L2て、文をやらるゝ、そのへんしに、 00040480L3△△御しやう、はいけんいたし候。次に、し&のかは御よ 00040490L4△△うのよし、おほせこされ候へ共、こゝもとにも、かり 00040500L5△△よりさきには、かは一ゑん御座なく候。さりなから、 00040510L6△△もとすをたつね、あとよりとゝのへ、しん(22オ)すへ 00040520L7△△く候。 00040530L8此へんしやうを見て、あかまつふけうのよし、きゝおよひ、 00040540L9いそき、はんしうへくたり、いひわけしてかへり、とかく、 00040550L10さふらひたるものゝ、もんまうなるは、口おしき事とて、 00040560L11六十三にて、寺入せられた。 00040570¥N43¥J 00040580¥X 00040590L13△ひせんの国、かん崎のこうりに、な無の二字を、かく 00040600L14にうちたる、ひく/□□((にてカ))らあり。すなハち、二字てらといふ。 00040610L15此あまとも、つねに、あさのいとを、よりてうる。又あた 00040620L16りに、とうミやうしといふ寺あり。この坊主とも、いとを 00040630L17かひに行ていにて、何とやらん、(22ウ)したとて、やかて、 00040640L18もんくハいに、 00040650L19△△二字寺もいまハ六字になりにけり 00040660M1△△△とうミやうしよりしちをいるれは 00040670¥N44¥J 00040680¥X 00040690M3△ある人、いとやなきをひさうして、うへをく。これを、 00040700M4あんないなしに、ほつて行。ていしゆとかめけれは、やな 00040710M5きハ、見とりちや、といふ。一句つまり、無ねんなる事と 00040720M6おもひ、はなハしらを、ひしとくハせて、ちかたる。これ 00040730M7ハ何事そ。はなハくれなゐよ、とて、やかて、もつてまい 00040740M8つた。 00040750¥N45¥J 00040760¥X 00040770M10△かうしうりか、きんかくしのたつちうを、うり(23オ) 00040780M11まはり、もんくわいへ出る所を、もんはんのはうすか、引 00040790M12とめて、かうし門を出す、といふ。そうはたゝく、けつか 00040800M13のもん、とて、ほうときせた。 00040810¥N46¥J 00040820¥X 00040830M15△ある人、子にけうくんするやうは、なんちを、はゝか 00040840M16うみおとしてより、このかた、あらきかせにも、あてしと 00040850M17し、ぬれたる所に、われはねて、かはきたるところに、わ 00040860M18とのをねさせて、つゝやはたちになし、たかき山、ふかき 00040870M19うみとも思ふに、おやのいふことを、せうゐんせす、その 00040880¥P99 00040890L1ことく、かいにまかせてふるまふ。くせ事とて、しかれは、 00040900L2むすこ聞て、おほせ候(23ウ)たん+、一つもそれかし、 00040910L3御尤と存せぬ、まつやういくなされ候とて、をんに御きせ 00040920L4候へ共、そうして、人のおやか、子をそたつる事、めつら 00040930L5しからす、我もやかて、子をもち候はゝ、人かたのます共、 00040940L6そたて申さう、これもつて、家なミにて候、其うへわれら 00040950L7か、せひとも出世のためにても候ハす、をの+さま、お 00040960L8もしろつくの、ついてをもつて、まかり出候間、是又、何 00040970L9の御おんにても、御座あるまい、さりなから、けに+さ 00040980L10やうにおほしめし候はゝ、もとの道から、まかりかへらう 00040990L11とて、母のうちまたへ+。(24オ) 00041000¥N47¥J 00041010¥X 00041020L13△あるにようはう、わかきおとこにはなれ、なけきのあ 00041030L14まりに、てらへ参り、さいこにおほせられしは、まこと、 00041040L15かう花もいらぬそ、わらわかまへをたむけよと、のたまひ 00041050L16しものをとて、まへをひらきて、なむいふれい、しゆつりし 00041060L17やうし、とんせうほたい、是+よく+、うけたまへと、 00041070L18ゑかうほつくハんの、かねうちならす。長老是を、物かけ 00041080L19より御覧して、ありかたき御心さしにて候、こなたへ御い 00041090M1り候へとて、めんさうへ、ひきいれたまふ。こハ何事そと 00041100M2いへは、仏の御あとハ、出家のくハいちう、せんさく(24ウ) 00041110M3なし、と申されけれは、せひにおよハす。しハらくして、 00041120M4いてさまに、長老の申さるゝは、御いひこんにまかせられ、 00041130M5まい月御さんけい候へ、と申されけれは、女房聞て、御と 00041140M6きひしハ、申におよハす、御ふせにも、いまのや。 00041150¥N48¥J 00041160¥X 00041170M8△御かつしき様へ、何かな、しんしやう申たいと、思へ 00041180M9共、刀わきさしは、いらさる御身なり、あふきなとは、い 00041190M10かめしからすとて、いろ+にあんしすまひて、とかく、 00041200M11正月のおなくさミ、たまふり+を、しろかねこかねの、 00041210M12まるうちにして、まいらする。これ(25オ)お、かつしき御 00041220M13らんして、一たんうつくしけれとも、おもうてふられはせ 00041230M14す、いらぬものちやとて、すてさせられた。それはおしや、 00041240M15とこへ。めんさうのまん中へ。 00041250¥N49¥J 00041260¥X 00041270M17△ていあんのたん儀に、今日ハひかんも、みて&候、此 00041280M18ほときとくに、上らうしゆうも、お参りなされた、しかれ 00041290M19は、ミたによらいの御せいくハんに、女人しやうふつのさ 00041300¥P100 00041310L1たを申さう、たゝし、ねんころに申せハ、たん儀かなかふ 00041320L2なる、又、あらまし申せは、ちとみ&とをき事なり、何と 00041330L3せうそ、かた+の、(25ウ)のそミ次第にいたさう、とお 00041340L4ほせけれとも、たんきの事なれは、へんしする人もなし。 00041350L5ていあんのいはく、上らう衆ハ、なかいかすきか、みしか 00041360L6ひかよいか、とおほせけれは、にようはう衆、一度にくつ 00041370L7+と、わらひたまへは、ちやうらう、きつとにらミ、そ 00041380L8れは、みなの、きのやりやうか、わるい、と申された。 00041390¥N50¥J 00041400¥X 00041410L10△にしのをかの、左近の太郎かむすこ、うしの何やらを 00041420L11したとて、所のもの共、よりあひ、かやうなるものを、その 00041430L12まゝをき候へは、七さとあるゝと申候、いそき此さいしよ 00041440L13を、おひ出すへきよしを、せんきする。(26オ)此よし聞て、 00041450L14おやまかり出て申やう、何共めいわく仕候、これは人の申 00041460L15なしにて候はん、中+、うしのハあつうて、せう+の 00041470L16ものゝ、なる事ては御座ない、といふ。さてハおやめも、 00041480L17したるそとて、親子なから、おひはらはれた。 00041490¥N51¥J 00041500¥X 00041510L19△おこうさま、おちの人をめして、なふ、うは、きかしめ、 00041520M1殿のしちのあとに、なにやらんあるか、あれハ何そ、とお 00041530M2ほせらるゝ。それは、をとものしゆうちや、といふ。おと 00041540M3もならは、ちとよひ入て、ふるまひたいと、おほせらるゝ。 00041550M4なにと御よひ候ても、うちへはまい(26ウ)らぬ、といへは、 00041560M5うは、うそをいはれたら、くれにをんて見しらせうそ、と 00041570M6いハれた。 00041580¥N52¥J 00041590¥X 00041600M8△ゐ中しゆう、ひさしくさいきやうし、国へ下とて、山 00041610M9崎のしゆくにとまり、扨&しうめいとて、此ほと京にとう 00041620M10りうの間に、めつらしき事もなくて、まかり下り候事、無 00041630M11念に存候、せめてこゝもとて、いさ一あそひせうと、いひ 00041640M12出す。尤よからうとて、やかて、ていしゆを頼。ていしゆ 00041650M13聞て、いまほと、はつとにて、さやうのものハなく候、さ 00041660M14りなから、ひとのよめ、むすめなとを、さいかくいたさう 00041670M15といふ。それ(27オ)こそ、一段のゝそミなれ、いそきたの 00041680M16ミ入。心得申とて、たつて、しハらくしてかへり、大かた 00041690M17けいやくいたし候か、一人たり申さぬ、さる人の後家、此 00041700M18ほと、あまに御なり候、これはいかゝ候はん、といふ。そ 00041710M19れこそ、につほん一なれ、といふ。左候はゝ、しのひやか 00041720¥P101 00041730L1に、火を御けし候て、くちとりになされ、一人つゝ御出候 00041740L2へ、めん+に、わたし申さうとて、くたんのやうすにて、 00041750L3みなうけとる。さて、あかつきかたにもとし、夜あけて、 00041760L4其宿を出てから、いつれも、ふきけんなるかほなり。中に 00041770L5も、こさかしきおとこ、(27ウ)いかさまふしんにおもひ、今 00041780L6夜のあまは、たれか御うけとり候そ、といふ、されは其事 00041790L7にて候、一はんにいたしたる、と申。さてハふたりちや、 00041800L8われらかもそちや、といふ。ひたものせんさくして見るに、 00041810L9ひとりも、かミのあるはなし。七八十なる、ふるひくにな 00041820L10り。しかもかたみにとて、思ふさま、しらミをゆつられた。 00041830¥N53¥J 00041840¥X 00041850L12△ある人、子をまうけて、さて+めてたい事ちや、こ 00041860L13とによい子や、かミかくろいの、いろかしろいのと、よろ 00041870L14こふ所へ、となりのめうさい、こしをかゝ(28オ)めてきて、 00041880L15やれ+めてたいとて、あからふとしても、ゑんかたかさ 00041890L16に、あかりかね、これのは、こゑんかなふて、あかられて 00041900L17こそ、いハれた。 00041910¥N54¥J 00041920¥X 00041930L19△あるちこ、花見に行とて、うつくしき、ハし一せん、 00041940M1こしにさいて、御出なさるゝ。後見の法印か、これをみて、 00041950M2言語道断やと、目にかとをたてゝ、にらむ。ちこのいはく、 00041960M3そなたの、なにと御にらミ候ても、あこかこゝろに、よし 00041970M4ミつのわきさしより、たのもしひ。 00041980¥N55¥J 00041990¥X 00042000M6△ある出家、けいせいまちをとをる。しやうらう、袖に 00042010M7とりつく。是ハ何事そ、く僧は是、五つや六つより、(28ウ) 00042020M8仏のたひに身をなして、女人の手から、物をもとりかはさ 00042030M9ぬに、はなしたまへと、あらけなけに、申されける。けい 00042040M10せひ聞て、御もつともにて候、さりなから、無理なる事ハ 00042050M11申まい、先御出家は、若衆をもちひ給ふよし、きゝおよひ 00042060M12て候、われらもおにやけを、御ようにたち申へし、といふ。 00042070M13はうす聞て、それハみ&よりに候、さておふせハ、いかほ 00042080M14とそ、ととへは、その事にて候、おもてむきハ、われ+ 00042090M15も、すきのみちにて候へハ、いかやうにも、御意次第にて 00042100M16候、からめては、むりにたしなミ申ゆへ、ちとかうしきに 00042110M17(29オ)御座候、といふ。坊主のいはく、御覧候ことく、ひ 00042120M18ん僧と申、老たいにて、からめてのなん所、ふあんないに 00042130M19ては、かなひ申まし、たゝ大てにて、一やりまいらうとて、 00042140¥P102 00042150L1やかてものせられた。 00042160¥N56¥J 00042170¥X 00042180L3△その方にようはうを、人かぬすむを、しらぬか、扨& 00042190L4うつけちや、よそへ行ていにて、かくれてミつけ、うちこ 00042200L5ろせの、たゝけのと、いろ+いひふくむる。心得たると 00042210L6て、にかいにかくれて、まつ所へ、あんのことく、まおと 00042220L7こきたり、さま+、ちけいのあまりに、をんな申やう、 00042230L8しんしつおもへは、まへをねふる(29ウ)ものちやか、そも 00042240L9しは、われ+を、さほとおほしめさぬ、といふ。おとこ 00042250L10のいはく、一めいをかけて、此ことく参るに、御うたかひ 00042260L11なされ候、いまなりとも、ねふらうとて、ひきむくるか、 00042270L12あまりくさゝに、はなにてなつる。女房、よくおほえて、 00042280L13いまのハ、はなちやといふ。いや、したちやといふ。せん 00042290L14きまち+する。かの男、ふしあなからのそき、よう見て、 00042300L15とちのひいきてもなひか、いまのは、はなちや+。 00042310¥N57¥J 00042320¥X 00042330L17△又あるもの、右のことく、まおとこきたり、さま+、 00042340L18ちはのあけくに、ねふらすハ、いやといふ。さらは(30オ) 00042350L19とて、ゆひにてくしり、其ゆひをのけ、別のを、ねふる。 00042360M1かのうつけもの、これをみて、女共ぬかるな、ての内に、 00042370M2ぬきかあるそ、といふた。 00042380¥N58¥J 00042390¥X 00042400M4△山かより、はしめて、むこの来るとて、いろ+様&、 00042410M5ふるまいをする。こたんに、うとんを出しけれは、山かに 00042420M6て、つゐに見たる事もなし。わかきものゝゐたるに、なは 00042430M7何と申そ、ととふ。此もの、ぬしか名の事とおもひ、与六 00042440M8と申候、御ようの事候はゝ、おほせつけられ候へ、といふ。 00042450M9さて、かへりて、後日のれいふミに、(30ウ) 00042460M10△△先度は、ハしめてまかりこし、さま+御ちそう、か 00042470M11△△たしけなく存候。ことにめつらしき、与六をくたされ、 00042480M12△△今に申出し候。近比、なれ+しき儀に候へとも、な 00042490M13△△まよろく、少申うけたく候。 00042500M14しうと、此返事を、あんしくらひた 00042510¥N59¥J 00042520¥X 00042530M16△うつけたるもの、よき女房をまうくる。ともたち共申 00042540M17やう、其/け((ママ))にようはうは、かたのことくよいか、ちと、は 00042550M18なのひくいか、なんちや、おれかもつたらは、よいはなを 00042560M19もとめて、つかう物を、といふ。おとこ聞て、それハつか 00042570¥P103 00042580L1るゝか、といふ。木竹さへつくに、まして(31オ)くすりを 00042590L2もつて、いかやうにもつく、ようならは、やらうといふ。 00042600L3さらはとて、くすりをもらい、あるとき、はなの見事なる 00042610L4女をとらへ、そいてかへり、わかにようはうをよひ、やか 00042620L5てそいて、くたんの大はなをつくる。あまり大きにてハ、 00042630L6口かあはぬとて、またもとのをつけた。つきことはついた 00042640L7か、うろたへて、さかさまにつけた。のち、あめふりには、 00042650L8ひたいに、つゝミをつかねは、口へ水かついて、なんきし 00042660L9た。 00042670¥N60¥J 00042680¥X 00042690L11△あるもの、ひることをくわたつるに、こさかしきむす 00042700L12こかゐたるを、むつかしかり、おひいたせ共、又(31ウ)き 00042710L13てのそく、さらはとて、めおとなから、おにのめんをかけ 00042720L14てする、かのわやくもの、はしり出、ともたち共をよふ。 00042730L15千松も、とら千代もみなおちや、物みせう、おれか所のな 00042740L16んとに、おにかほ&する、ミせう 00042750¥N61¥J 00042760¥X 00042770L18△あるもの、はくちにうちまけて、まるはきにあふて、 00042780L19内へかへらふやうハなし。さむさに、つしたうのゑんの下 00042790M1へはいる。おりふし、ゑのころか一疋いた。是ハ日ほん一 00042800M2の事とおもひ、やかていたき、これにて、ちとあたゝまる。 00042810M3又あとから一人はいる。たれそといへは、これもはかれて、 00042820M4ふるい+きて、この(32オ)ていならは、こゝへしぬるか、 00042830M5さて+めいわくや、うつまい物をとて、くやめ共かなハ 00042840M6す。扨それハ、何そととふ。その事、これにて、いのちを 00042850M7ついたるといふ。それハちようほうちや、ちとかりたい、 00042860M8といへとも、かさぬ。さらはさいかある、それかけに、一 00042870M9はんまいらう、といふた。 00042880¥N62¥J 00042890¥X 00042900M11△御ちこ様へ、ねんしや、なににても、しんしやう申た 00042910M12いとて、いろ+さま+のものを、御目にかくれ共、御 00042920M13意にいらす。あまりきよくも御座ない事ちや、せめて、た 00042930M14んしやく、すゝりをして、しんしやう(32ウ)申さう、水入 00042940M15ハちと、いろとり、かねにて、すゝめをつくらせ候へし、 00042950M16たゝし、ころは、いかほとに仕候はんや、御このミなされ 00042960M17候へ、と申せは、すゝめのころハ、ふくろほとかよからふ、 00042970M18とおほせられた。扨+、ハしめのしんしやくとハ、いか 00042980M19うちかふた。 00042990¥P104 00043000¥N63¥J 00043010¥X 00043020L1△せうは所へ、九州より、れんかしうしんの人、上洛す。 00043030L2ある時、せうはへ、申やう、国もとへの、くハいふんにて 00043040L3候程に、三条西殿へ、御れい申たいと、のそミけれは、や 00043050L4すき事とて、やかてとうたうある。巴の申さるゝ、御くけ 00043060L5しゆうは、一たん物ことに御念入、(33オ)ねとひをなさる 00043070L6ゝそ、貴所のやとは、三てうにて有ほとに、左様のきつか 00043080L7ひ、かんようと、申されけれは、まことに御心つけ、かた 00043090L8しけない、そのところハ、まかせをかれよと申。さて御た 00043100L9いめんにて、御さかつき下され、さま+御ねんころにて、 00043110L10きやうこうは、上国のみきり、さい+まちいる、なとゝ 00043120L11おほせられ、さて、あんないのことく、こゝもとにて、宿 00043130L12はと、御尋なさるゝ。かの人、何と心得てか、二てうの下 00043140L13と申。二てうのしもとハ、とおほせけれは、また、四てう 00043150L14のかミと申。四てうのかミとは、とおほせけれは、其(33ウ) 00043160L15とき、かの人うろたへて、三てうにしのつらの、きたなき 00043170L16いゑに、居まいらする、と申あけられた。かへるさに、せ 00043180L17う巴に、しかられて、いはれさる御心つけにてと、かへつ 00043190L18てうらミられた。 00043200¥N64¥J 00043210¥X 00043220M1△上京に、平林といふ人あり。此人のところへ、ゐ中よ 00043230M2り、ふミをことつかる。此もの、もんまうにて、名をわす 00043240M3れ、人をたのミ、よませてあれは、たいらりん、とよむ。 00043250M4そのやうなる名てはなひとて、又、よの人に見せけれは、 00043260M5是を得よまぬか、これは、ひらりんとのへ、とようた。こ 00043270M6れも、右に聞たるやうにない、ふし儀(34オ)なとて、又、 00043280M7さるものに見すれハ、一八十に木&、とよむ。此内ははつ 00043290M8れしとて、のちには、この文を、さゝのはにむすひつけて、 00043300M9かつこをもとめ、こしにつけて、たいらりんか、ひらりん 00043310M10か、一八十にほく+、とはやし事して、やかてたつねあ 00043320M11ふた。とかくよミかき程、ちようほうはあるまひ、わるう 00043330M12も、ようたるゆへにこそ、たつねあふたれ。(34ウ)。 00043340¥P105 00043350¥U噺本大系△第一巻 00043360¥Tきのふはけふの物語 00043370¥G 00043380¥Y 00043390L15古活字八行本 00043400L16編者未詳 00043410L17半紙本上巻下巻各一冊 00043420L18刈谷市立図書館蔵(上巻) 00043430L19天理図書館蔵(下巻) 00043440¥T1きのふはけふの物語△上 00043450¥N1¥J 00043460¥X 00043470M3△むかし、天下をおさめ給ふ人の御うちに、はうちやく 00043480M4なるものともあつて、禁中へまいり、陣にとらふといひて、 00043490M5やりの石つきをもつて、御門をたゝく。御つほねたち出あ 00043500M6い給ひて、これハ是たいりさまとて、下&のたやすく参所 00043510M7にてはないそ、はや+いつかたへもま(1オ)いれとおほ 00043520M8せけれは、此家をちんにとらせぬといふりくつのあらは、 00043530M9ていしゆまかりいて&、きつとことわりを申せといふた。 00043540¥N2¥J 00043550¥X 00043560M11△おたの信長公、時&けうにたんこをきこしめす。よく 00043570M12まいるとて京わらんへとも、上様たんこと申。是を一段と 00043580M13そこつ成こしやう、御前ちかき所にて、しか(1ウ)+と 00043590M14申。是お聞たまひて、御ふくりうなされ、すてに御かんき 00043600M15をかうふらんとせしを、一けい道三御登城あり、御尤の儀 00043610M16にてハ候へとも、世上にさやうに申事、かへつて御ほまれ 00043620M17にて御坐候、そのゆへハ、むかし、天子、ちまきを御らん 00043630M18して、一たんをもしろきよし、ちよく/ちし((ママ))やう有は、夫よ 00043640M19りして京わら(2オ)むへとも、たいりちまきと申ならはし 00043650¥P106 00043660L1候と申されけれは、のふ長御きけんなおり、右の御小性御 00043670L2しやめんなさる。そうして、うへ+の御そはにこれあら 00043680L3ん人ハ、万事きつかいいたさうことちや。 00043690¥N3¥J 00043700¥X 00043710L5△ある人、ひようたんからこまのいてたるゑをみて、是 00043720L6ハ何としたるいはれそ(2ウ)と人に問。それさへ御存なき 00043730L7か、そうして、まきこまと申ハ、山にさんせうをまいて、 00043740L8馬になし申といふ。それ程ちようほうなる物を、何とてこ 00043750L9&もとにはつくらぬそと云。こゝもとては人かぬすむ故に、 00043760L10むかしよりつくられぬといへハ、おろかな事ちや、よき馬 00043770L11一ひきにても大分のかね取ことちやに、い(3オ)か程番を 00043780L12つけてもくるしからぬ事ちや、善悪この春つくらうとて、 00043790L13上&のさんせう十石ほとかひとり、山をほらせ、こと+ 00043800L14くまいて、四五日して、やう+ハへ時分ちやか、をそひ 00043810L15とて、件の人にとへは、それハいつころ御まき候。此五日 00043820L16さきにまいたるといへハ、はゑぬか道理よ、天火地火に、 00043830L17ものたねを(3ウ)まいては、ハへぬかふしきてもないとい 00043840L18ふ。けにもそのやうなしさいかあらふと存た。さてハこよ 00043850L19みなとうたかふ事てハないといはれた。 00043860¥N4¥J 00043870¥X 00043880M1△ふしきな事かある。何事そ。いや、御公家ハよう、草 00043890M2木の名をつかせららる&事ちや、まつ、すゝき殿、松の木 00043900M3殿、竹の内殿、やふ殿、はむろ殿、柳原との、菊てゐ殿、 00043910M4竹(4オ)や殿、この分ちや。いやまたある。たれそ。とう 00043920M5さんせう殿。 00043930¥N5¥J 00043940¥X 00043950M7△あるもの、この衛殿へ、つ&しの花を持て参りけれは、 00043960M8さても見事なてきちよくやと、御ほめあれは、彼ものこれ 00043970M9を聞て、よひことを聞た、とこそていわうとおもふて、こ 00043980M10&かしこありく程に、南禅寺へゆきた。あんのことく、つ 00043990M11&しを(4ウ)なかめて、をしやうの御さる。てかいた所ち 00044000M12やとおもふて、さても見事な、てき+てこさる、かやう 00044010M13のてき+ハ、近年見申さぬとくわせた。 00044020¥N6¥J 00044030¥X 00044040M15△むらさき野のおしやうを夜はなしに申入、をまへて、 00044050M16てんかくをあふらんとて、はやく、てつきやうもてこひと 00044060M17いふた。わきより、不文字のさしてもの、(5オ)ひなんを 00044070M18くわせた。おしやうさまの御前ちやと思ふて、いらぬてゐ 00044080M19しゆのからこん、只火ふき竹ておきたいといふた。 00044090¥P107 00044100¥N7¥J 00044110¥X 00044120L2△さうりとりをおかふとて、六かくたうへ行、尋けれは、 00044130L3わかき男まかり出、ほうこういたさうといふ。今まてハい 00044140L4つかたにゐたるそととへは、下のをならや(5ウ)にゐたと 00044150L5いふ。おならやとは、人をうつけにするか、くさゐ事をい 00044160L6ふといへは、ゐ所を御たつね候程に、申事ちや。 00044170¥N8¥J 00044180¥X 00044190L8△有人寺へ参る。長老御らんして、さてさて、きとくの 00044200L9御さんけいとて、しやうし給ひて、先&御ちやしん上申せ、 00044210L10もみちにたて&参らせよと、仰せらるゝ。此人聞て、ふし 00044220L11んして、いろ+あんして(6オ)も、かてんゆかす。いや 00044230L12+、問ハ一とのはちと思ひ、長らう様にとひ申せは、こ 00044240L13うよふ立よと申て候と、仰/□((らカ))る。尤とかんして、帰るさ 00044250L14に、しる人の所へ立より、此事云へしにて、小性衆、御ち 00044260L15や一ふく給われ、もみちにたてゝ御意にかけられよと云。 00044270L16ていしゆも小しやうも、かてんゆかす、いかなるいはれそ 00044280L17と(6ウ)尋けれハ、こくよくといふ儀理ちやと、いはれた。 00044290L18聞えてこそ。 00044300¥N9¥J 00044310¥X 00044320M1△ふろ屋に、かう+ふろといふかある。これはいかな 00044330M2るいはれやらんといへは、ふかふにおよハぬといふ心かと 00044340M3いわれし。尤おもしろいとて、後によそにてかたり出しけ 00044350M4れハ、人&、いかなるいんゑんそと問けるに、ふくに(7オ) 00044360M5およはぬと、かたる程に、いささかおもしろけもあつてこ 00044370M6そ。 00044380¥N10¥J 00044390¥X 00044400M8△山寺法師、さる御ちこにほれて、色&ゑんをもつて申 00044410M9けれハ、さすか御かたちに似たる御心、やさしくまし+ 00044420M10て、有夜しのひにて御こし被成。これは在かたき事とて、 00044430M11ひしめけ共、ひんそうにて、何も御ふるまいせうやうもな 00044440M12い。(7ウ)せめて是なり共御なくさみにとて、た/((い脱カ))たうこめ 00044450M13のめしを出しけれは、御ちこ様御覧して、是ハうつくしき 00044460M14色やと仰せられた。そのとき三位まかりいて、申やうハ、 00044470M15たまさかの御こし、まことに身にあまり、かたしけなく存 00044480M16/□((候カ))、せめての御/((ち脱カ))そふにとて、そめさせ申たるといへハ、ち 00044490M17こきこしめされ、けにも、さ(8オ)う見えて、たいたうめ 00044500M18しのやうなと、おほせられた。 00044510¥P108 00044520¥N11¥J 00044530¥X 00044540L1△物ことに心をつくる人の申されしハ、当代御法度なき 00044550L2とて、竹の子をね引にして、たくさんにもてあつかふ事、 00044560L3おしき事ちや、三年めには、見事の竹になるにと、申され 00044570L4けれは、皆&聞て、是ハおほせのことく、おしき事ちやと 00044580L5(8ウ)いはれける。又そはなる人の云、そふしてまつたけ 00044590L6なとも、むさとたふるハいらさる事ちや、二三年おひたら 00044600L7ハ、大木にならふ物おと、申された。 00044610¥N12¥J 00044620¥X 00044630L9△ゐ中より初て京へ上りたる人、三条あたりに宿を取、 00044640L10東山へ見物に出るとて、下人をよひ、京ハ家つくり同様に 00044650L11て、見しりにくいそ、何にても心しる(9オ)しをして、能 00044660L12覚えよといひつくる。心得申たるとうけこうて、さて、方 00044670L13&見物して帰り、せんそくとれとて、先へつかひけれハ、 00044680L14あんのことく忘れて、こゝかしこを尋あるく。されはこそ 00044690L15と思ひ、しるしはと問へハ、いな事ちや、見えぬといふ。 00044700L16何しるしそと、重て問。たしかに門ハしらに、つはきにて 00044710L17書付をし(9ウ)てをきたるといふ。さたのかきり、それか 00044720L18やくにたつ物かとて、さん+にしかれは、またしるし 00044730L19ある。何そ。やねに、とひかとまりていたか、はや、是も 00044740M1をらぬよ。 00044750¥N13¥J 00044760¥X 00044770M3△ふたんくわう院とて、この衛のたいこう、御ねんころ 00044780M4の長らうあり。長らう分ハあしうちにて参りけれとも、こ 00044790M5の長(10オ)老、連歌すきにて、切&御会にまかり出らるゝ 00044800M6ゆへ、其日ハかり、くきやうを御免と仰せ出さる&。ちや 00044810M7うらう御こと葉にあまへ、常住下され候やうにと、御のそ 00044820M8み有けれは、たいかう御わらひなされ、とりあへす、 00044830M9△△くきやうをは時&成とすわれかし 00044840M10△△△ふたんくわうハいはれさりけり(10ウ) 00044850¥N14¥J 00044860¥X 00044870M12△ひてよし公の御時、何の子細やらん、この衛殿を、さ 00044880M13つまのはうの津へ、御なかし被成。はいしよハ、かこ島へ 00044890M14うつらせたまふ。そのとき、 00044900M15△△大臣の車にはあらてあはれにも 00044910M16△△△のするかこしまになふはうのつ 00044920¥N15¥J 00044930¥X 00044940M18△よろつのみちに心をかくる人は、いつれの事もすくれ 00044950M19すと見えたり。何に(11オ)も能さし出るもの、せうはのく 00044960¥P109 00044970L1わひにましハり、れんかするとて、 00044980L2△△さやけきハ有明かたの月ならし 00044990L3と云句に、 00045000L4△△△山郭公さそひかほなる 00045010L5とつけた。紹巴のいはく、一段おもしろひ、めいよこつゝ 00045020L6みに手を打所ちやと、ほめられた。 00045030¥N16¥J 00045040¥X 00045050L8△定家卿の弟きやうかくほう、ことの外(11ウ)ふへんに 00045060L9て、年のくれに定家卿へ、よみてつかはれける、 00045070L10△△きやう学かしハすのはての空いんし 00045080L11△△△年うちこさん石ひとつたへ 00045090L12△△△△△かへし 00045100L13△△さたいゑかちからの程を見せんとて 00045110L14△△△石をふたつにわりてこそやれ 00045120L15とて、此返哥に、こめ一たはらそへて、つ(12オ)かはされ 00045130L16ける。 00045140¥N17¥J 00045150¥X 00045160L18△しゆう句をすきたる人あり。めつら敷しうくをおもひ 00045170L19いたせは、色&珍物をとゝのへ、ふるまいをして、其さし 00045180M1きにいひ出し、うれしかる人あり。ある時、下人を、ひや 00045190M2くしゆつほりにやり、其内に人をよひあつめて、様&ふる 00045200M3まゐをこしらへて出し、此もの帰りた(12ウ)らは、さしき 00045210M4へまかり出て、いかにも高&と、白しゆつほりて参りたる 00045220M5よしを申せとて、ねん比にいひつけて、何様きたらハ、内 00045230M6にをけらといふへしと、心うれしく待所へ、あんのことく、 00045240M7時分をハかりて、まかりいて、をけらほりて参たといへハ、 00045250M8けてんして、そちにひやくしゆつといふた。(13オ) 00045260¥N18¥J 00045270¥X 00045280M10△法花宗の、いつちとせうれつと、/法門お((ママ))して、かちま 00045290M11けハしらす、さん+つかみあふて、へのこをしめられ、 00045300M12なんきせんハんするをみて、 00045310M13△△ほけ経のそのしやうれつはしらね共 00045320M14△△△きんをしめられいつちめいわく 00045330¥N19¥J 00045340¥X 00045350M16△有人にはかにすきに行とて、ひたいをそりたいか、た 00045360M17れかこれかと、ひしめ(13ウ)く所へ、たんなほうす来る。 00045370M18能所へ御こしにて候、はゝかり千万なる申事に候へとも、 00045380M19にはかに、すきにまいり候、中そりをたのミ申たいとて、 00045390¥P110 00045400L1かみをあらひ、そらする。此ほふす、つねに出家の髪をは 00045410L2かりそりならひ、いつものことく思ひ、かたこひんを、す 00045420L3ら+とそりおとす。此男きもをつふし、是ハ(14オ)+ 00045430L4といへとも、かなハす。さて+言語道断、めいわくちや 00045440L5とてはらをたつ。ほうす、せきめんして、けかと申なから、 00045450L6面目も御さない、御めんなされよ、惣して、せかれより山 00045460L7寺にすミ、つねにほうすのあたまをそりつけ、たま+男 00045470L8の髪なれは、もくよく仕とはかり存たるといへは、それハ 00045480L9いよ+てうふ(14ウ)くかとて、ハらをたつれとも、今更 00045490L10こひんもなをらはこそ。此分てはすむまい、ふしやうなか 00045500L11ら、ほつたい仕らうといへハ、はうす聞て、一段のを事、 00045510L12さらは、かいみやうをつけ申さうと、いはれた。 00045520¥N20¥J 00045530¥X 00045540L14△世にはあふない事かおほゐ。まつ、かつけすねのほう 00045550L15ろくうり、めくらの下りさか、若きしゆうとめとむこ(15オ) 00045560L16の中のよき、やもめ男のよめとむつましきも、若後家のし 00045570L17けき寺参り、此分ちやといへは、そこつなるはうすのきき 00045580L18て、まこと、是ハいつれもあふなゐ物ちや、我等の寺へも、 00045590L19つる屋の後家の、さい+参らるゝか、あつといふて、や 00045600M1かて口をかゝゑた。 00045610¥N21¥J 00045620¥X 00045630M3△有人、てらへまいり、長老様はと問へハ、(15ウ)留守 00045640M4ちや申。はる+まいりたるに、御残多事ちやとて、しは 00045650M5らくやすらいけるに、折ふし、竹の子の時分ちやとて、 00045660M6やふをのそきまはれハ、長らふさま、見事なるかんのけを 00045670M7むしりて御さある。この人、そろりとそハへより、御見ま 00045680M8ひにまいりたるよし申せは、長らう、けうてんして、さて 00045690M9+、此鳥のけを(16オ)枕に入候へは、つふうのくすりと 00045700M10申程に、かやうにいたすか、何としても、手なれぬ事はな 00045710M11らぬ物ちやと、仰らるゝ。たんな聞て、それハやすひ事て 00045720M12御さ候、是へ被下よとて、くる+とひきむしり、けをは 00045730M13をしよせて、此身ハこなたにいらさる物よとて、やかてと 00045740M14りて帰り、しやうくわんした。(16ウ) 00045750¥N22¥J 00045760¥X 00045770M16△又、さる寺へ参りけれハ、長老ふためいていつるとて、 00045780M17ころものすそに、からさけの大成をひつかけて出て、かく 00045790M18す事ハならす、はいまふして、さて+、是をく僧かたふ 00045800M19るかと思召ん事、返&無念に候、これハ女ともか、くすり 00045810¥P111 00045820L1つかゐにするといはれた。 00045830¥N23¥J 00045840¥X 00045850L3△有ひくに御所、御ちきやう所へ御遊(17オ)山に御こし 00045860L4なさるゝ。百性とも、御ちそうに石ふろをたき、入申。し 00045870L5んさうす御出なされ、ちと、てうすのこを参らせよと仰ら 00045880L6るゝ。山かの/((こ脱カ))とにて、てうすのこと云物をしらす。にはか 00045890L7によりあいおして、たれかれ/事((ママ))いへとも、しらぬといふ。 00045900L8とかく、をそなハりては大事といふ。中にも年寄たるもの 00045910L9の申様、(17ウ)きつと思ひ出したる事の候とて、まかり出、 00045920L10てうすのこは、先年の一らんに、皆たいてん仕たると申。 00045930L11しんさうす聞召、さてもうつゝない事やと仰せけれハ、其 00045940L12うつ&ないも、一度にうせたると、いふた。 00045950¥N24¥J 00045960¥X 00045970L14△くわうけん院殿の御時、ある上人、一段と御意に入た 00045980L15まひ、毎日御しゆつし(18オ)被成る&。御懇のあまりに、 00045990L16らくたとおほせらる&。上人聞給ひて、御ちやうかたしけ 00046000L17なふ候へ共、五つ六つより出家の姿に身をなし、今五十に 00046010L18あまりて上人かうまてさつかり、今更何事に、らくたつか 00046020L19まつるへきと、再三御しんしやくあれは、ミな+、尤と 00046030M1かんし給ふ。将くんこれを聞召、尤の事にて(18ウ)候へと 00046040M2も、心やすくはなし申たきとの事にて候と、重&御意あれ 00046050M3ハ、此上は、ちからなき次第なりとて、御らくたし給ふ。 00046060M4立ほとけをゐ仏にも、たんなハからいにして、外聞おもふ 00046070M5りすて、さて+御はつかしう候、さりなから、是程なる 00046080M6御ねん比のついてに、御のそみの有よし申されけれは、何 00046090M7事にて(19オ)も御かなへあらふすると、おほせらるゝ。其 00046100M8儀にて御さあらは、子にて候者をも御目見え申させたきと 00046110M9て、三十ハかりなる、ひけ男をつれ出て、是ハく僧か十六 00046120M10けさかけの年、まふけた子にてさうろうと申上られけれハ、 00046130M11上さまを初て御前の人&、ミす、きちやうもささめき、大 00046140M12わらひあつて、あきれ給ふ。(19ウ) 00046150¥N25¥J 00046160¥X 00046170M14△去くすしの所へ、おちの人、子をつれて行、昨日の御 00046180M15くすりにて一段とをなか心も能候、其御かけんに被成くた 00046190M16され候へといふ。くすし聞て、それハ目出たい事、さらは、 00046200M17又合て参らせうとて、くすりはこをとり出す。何としてか、 00046210M18おちの人、まへをいたされた。此いしや、是に見とれて、 00046220M19持たるさしをおき忘れ(20オ)て、ひたもの尋らるゝ。何を 00046230¥P112 00046240L1御たつねなさる&そといへハ、今まてあつたおちいの物か 00046250L2見えぬと、いはれた。 00046260¥N26¥J 00046270¥X 00046280L4△さる寺のはすゐけにて、あミかさふか+ときて、月 00046290L5夜にとちやうをふむ。あんたうのゑんさいこれをみて、な 00046300L6にものなれは、此せつしやうきんたんの所にて、らふせき 00046310L7をふるまふそとて、しら(20ウ)木の弓に矢をはけ、しきり 00046320L8にとかむる。此者きやうてんして、是ハ正しんのそくしん 00046330L9ちや、少も御かまいあるまいと云。能&ミれは、一らうの 00046340L10けんてゐちや。 00046350¥N27¥J 00046360¥X 00046370L12△関白ひてつくの御時、ぬし屋せいあみ所へ、御出頭衆 00046380L13二三人、すきに申入、ちや過て後、しよゑんにて、ゆる 00046390L14+と御あそひなさるゝ所に、ひる時分に、(21オ)清あミ、 00046400L15重はこをもつて、まかり出、おの+様、ゆるりとはなし、 00046410L16満足仕候、ちと、やしよくをりやうりいたし候、参らぬか 00046420L17といふて、ふたをあけたるをみれは、さたうもちちや。 00046430¥N28¥J 00046440¥X 00046450L19△有夜、ひてよし公、やしよくにそはかきを御このみな 00046460M1され、御しやうハんしゆうへも下されける。折ふし、長を 00046470M2かけ(21ウ)んし御登城なさるゝ。則そはかきをすハり、ふ 00046480M3たをあけて、とりあへす、 00046490M4△△うすすミに作りしまゆのそはかほを 00046500M5△△△よく+見れハみかとなりけり 00046510¥N29¥J 00046520¥X 00046530M7△ある長老のたん儀に、一けんそとは、やうり三あく道、 00046540M8かきやうさうりうしや、ひつしやうあんらくこく、此文を 00046550M9くり返し+説給ふ。この文の心ハ、一たひ(22オ)そとは 00046560M10をみるものハ、永く三悪道をのかるゝと、説れたり。ある 00046570M11人、是をふしんする。いかに上人聞召せ、我等ハ念仏を申 00046580M12さす共、ほとけにはならふと存る、其故ハ、一たひそとは 00046590M13をみる者ハ、永く三あく道をはなる&、いはんや、さうり 00046600M14うせは、あんらく国に生る&と候へは、此年まて、いか程 00046610M15のそとはをたてもし、(22ウ)見もしたる事、数しらす、今 00046620M16も千万もミて参りたるといへハ、上人聞給ひて、其儀にあ 00046630M17らす、はゝ一間のそとはの事にて候、それをみつくるまて 00046640M18ハ、念ふつをお申あれと、のへられた。 00046650¥P113 00046660¥N30¥J 00046670¥X 00046680L1△有人、子を寺へあけ、経をよめ、かくもんにせいを入 00046690L2よと、きようくんすれとも、一ゑんせうゐんせぬ。くせ事 00046700L3とて、しか(23オ)れハ、上人聞召て、経をよまぬハ、くる 00046710L4しうもないそ、よき法花宗のした地ちや、あとをゆつらふ 00046720L5そ、ちやうかこはうて、きのくすりちや。 00046730¥N31¥J 00046740¥X 00046750L7△ひんほつに、西国の僧、東国の僧にとうていはく、上 00046760L8野下野あつて、中野なきはいかん。ちくせんちくこあつて、 00046770L9ちく中なきかことし。(23ウ) 00046780¥N32¥J 00046790¥X 00046800L11△有人、もつての外にわつらひ、存命不定の時、女はう 00046810L12をちかつけて、此分ならは二三日中に身まかり候へし、あ 00046820L13ら御名残おしく候、いかなる人にか、そひたまはんとおも 00046830L14へハ、是のミ心にかゝると、いふ。女はう聞て、それハ心 00046840L15やすふ思召せ、しせんの事もあるならは、かみをそり、後 00046850L16生一へんにして、あとをとふらい(24オ)申へしといふ。男 00046860L17の云、それは満足にて候、さりなから、かみハそりてもは 00046870L18ゆる物なれハ、同しくハ、我いきのかよふうちに、そもし 00046880L19のはなをそいて見せられ候へ、さあらは、あとしき、家蔵、 00046890M1其外さいほう、一つものこさす参らすへしといふ。それハ 00046900M2やすき事とて、自はなをそいて見せける。此上ハ心にかゝ 00046910M3る事(24ウ)もなしとて、書おきなと、こま+として、女 00046920M4はうにわたし、しぬるをまつはかりなるか、此二三日、少 00046930M5しよくもすゝミ、心もかるひなといふ内に、やかて本服し 00046940M6て、さて+めてたい事とて、ひしめく所に、男つく+ 00046950M7おもへは、此はなそけを朝夕みる事、何としてもなるまい 00046960M8と思ひ、有時、女をちかつけ申(25オ)けるハ、近比面目な 00046970M9きことにて候へ共、御身のはなをみれは、いきのひてうら 00046980M10めしく候、とかく申かねて候へとも、そもしはいんきよし 00046990M11て給はれと云。女はう聞て、是ハ思ひもよらぬ事を仰候、 00047000M12生れつきたるはなそけ成とも、此年月のなさけハ有へし、 00047010M13まして、そなたのしわさなれハ、左程見くるしくおも(25ウ) 00047020M14わは、わとの出よとて、中+ふきやう千万也。男聞て、 00047030M15尤理非にまかう所ハなく候、只今まてのなさけに、せひと 00047040M16もいんきよといへハ、女、はらにすへかね、所のしゆこへ 00047050M17申上けれは、やかてめし出し、御尋被成る。その時、男ま 00047060M18かり出、申ける、さいせん女とも申上る所、一&いつハり 00047070M19是なく候、然とも、我等(26オ)若きものにて候へは、あの 00047080¥P114 00047090L1ことくなるものを、朝夕見候ハん事めいわくに存候、先、 00047100L2いんきよ仕やうにおほせ付られ下され候へと申せは、奉行 00047110L3衆聞たまひて、しはらく分別して、かのおとこのはなをそ 00047120L4けと、おほせつけらるゝ。此をとこ、けてんして、にけん 00047130L5とするを、とらへて、すんとそひて、彼女にとら(26ウ)せ 00047140L6て、此上ハ、たかひのうらミもあるましきそとて、をひ立 00047150L7られ、すこ+と帰りけるか、男、こゝろにおもふやう、 00047160L8いやゐや、此なりにてハ、よき女をまふくる事はなるまし 00047170L9きと思ひ、たゝ、もとのめになかふとなしとて、はなそけ 00047180L10二人、手を引て帰り、それより五百八十年まて。 00047190¥N33¥J 00047200¥X 00047210L12△書物をよむには、句のきりやうかせん(27オ)ちや。五 00047220L13条寺町に目くすし有。たれぬのに、かねこめくすりやとあ 00047230L14り。うり物三色あるとて、人&かひにくれとも、此内一い 00047240L15ろもなし。めゐわくして、 00047250L16△△かねこ 00047260L17△△△めくすり屋 00047270L18如此なおしける。 00047280¥N34¥J 00047290¥X 00047300M1△三井寺の法印、雨中の御つれ+にとて、二度物おも 00047310M2ふといふ題をいたし、(27ウ)是にて一首つ&よみ給へとて、 00047320M3二人のちこにおほせけれは、 00047330M4大児△△△春ハ花秋は紅葉をちらさしと 00047340M5△△△△△△としに二たひ物思ふなり 00047350M6小ちこ△△朝めしと又夕食にはつれしと 00047360M7△△△△△△日&に二たひ物をこそ思へ 00047370¥N35¥J 00047380¥X 00047390M9△ちこ法師よりあひ、てんかくをあふり、何にても三つ 00047400M10はねたる事をいふて、(28オ)しやうくわんせうと云て、う 00047410M11んりん院の、なんハんしんの、せんさんひんの、しんせん 00047420M12ゑんなといふて、ミな一くしつゝとられけるに、小ちこ、 00047430M13こんけんたんとて、二つ参る。是はといへハ、一つハこけ 00047440M14たるをしゆう句にてくふと仰せらるる。しんほちは、一つ 00047450M15もゑくはて、はや残すくなになる。思ひ出したるてゐにて、 00047460M16(28ウ)ちやうんすんといひさまに、十ハかりひつたくりて、 00047470M17やかてにやいた。 00047480¥N36¥J 00047490¥X 00047500M19△又、有夜、てんかくをして、しゆう句にて、しやうく 00047510¥P115 00047520L1はんするに、 00047530L2大ちこ△△きよもりの長たち△なんそ△△いつくしま 00047540L3しんほち△△仏のつふり△なそ+△△ミくし(29オ) 00047550L4小ちこ△△いしやの本尊△なそ+△△八くし 00047560¥N37¥J 00047570¥X 00047580L6△平家の大将清もりの御馬の尾に、一夜の間にねすミか 00047590L7すをかけ、子をうみたると、平家物語にあるか、昔ハかや 00047600L8うのふしきか様&あつたと聞に、今時ハさやうの事もない 00047610L9と云へは、有人聞て、是さのミふしきてもない。なせに。 00047620L10我等(29ウ)せかれのかみには、只今こと+くすきしやう 00047630L11やくしても、一時にむしかわくといふた。 00047640¥N38¥J 00047650¥X 00047660L13△さるちしきの御内に、久敷めしつかわれたる六十あま 00047670L14りのしやミ、有時、長老さまへ申上けるは、我らひさしく 00047680L15めしつかはれ、此年に成候へ共、つゐに御しめしおもうけ 00047690L16す、あまりにあさ(30オ)ましき御事にて候、おほそれなか 00047700L17ら、一そく御さつけ候へかしと申。長らふ聞召、それはや 00047710L18さしき事、こなたへと、めし上られて、生死一大事のわを 00047720L19さつけ給ふ。かたしけなきとて、まかり立けるか、しはら 00047730M1くしてまかり出、ハや+さんし申て候、しやうし一大事 00047740M2ハみそて御さ候、みそかわるけれ(30ウ)ハ、しやうしのし 00047750M3たてはならぬと申た。是程成あたりは、たるまもいか&。 00047760¥N39¥J 00047770¥X 00047780M5△けふは親の日ちやとて、寺へまいりけれハ、御房の御 00047790M6留守と見えて、けんくわんかあかぬとて、くりのくちから、 00047800M7めんさうへつ&と行。折ふし、ほうすハ、あわひのわたあ 00047810M,へのれうりをなさる&か、たんなに見られ、かくす間ハな 00047820M9し、(31オ)まへにきつとかまへ、さて+きとくの御さん 00047830M10けい、内&今日ハ御親父さまの/名((ママ))日にて候ほとに、定て御 00047840M11参りなされうと存、酒ハ用意仕候へとも、しやうしんにて、 00047850M12さけかのまれぬと、つね+仰せ候ほとに、ゑんとりおし 00047860M13て、これをとゝのへたると申されける。たんな聞て、それ 00047870M14は御心にかけられ、過分に(31ウ)はそんし候へとも、おほ 00047880M15せのことく、けふハ親の日にて候、御免なされよといへハ、 00047890M16其時うろたへ、まことに失念いたし候、さて+、ふちや 00047900M17うはうや、是とつて子もちにくわせよ、なまみたといふて、 00047910M18目をふさいていられた。 00047920¥P116 00047930¥N40¥J 00047940¥X 00047950L1△又、ある寺に、あわひれうりのさい中に、たんな、ふ 00047960L2つと来る。ほうす、きやうて(32オ)んして、このかひおめ 00047970L3のくすりちやと申か、まかしらにさし候か、ましりにさす 00047980L4かといふ。たんな聞て、にくき事と思ひ、それはめにより 00047990L5候、我らみてさいて進上とて、あをのきにねさせて、すに 00048000L6しほの入たるわたを、大はまくりほと入けれハ、まなこの 00048010L7玉かぬくるとて、五躰をなけておめきける。其間に、(32ウ) 00048020L8しやうくわんして、われらか眼には、口からさしたるか、 00048030L9ふさうたとて、みなしまふた。 00048040¥N41¥J 00048050¥X 00048060L11△又、ある房主の、すゝはちにて、ふななますをあゆる 00048070L12所へ、人のきたれハ、ふつと立て、かくさうとすれと、ま 00048080L13ちかくなれは、あたまにいたたき、まつ此なりに、すきん 00048090L14をするか、何と御さろふといふた。(33オ) 00048100¥N42¥J 00048110¥X 00048120L16△ゐ中より初て上りたる人、先せいくわん寺へ参り、御 00048130L17前なるかくを見て、さて+見事なしゆせきや、かひたり 00048140L18せいの字、願の字の筆せいは、たふん多分、すかうか石す 00048150L19りてあらふとほめた。 00048160¥N43¥J 00048170¥X 00048180M2△あつまの人の物語に、信濃国そのハら山にて、旅人わ 00048190M3らすをふミきり、とくさにてつくり、はきけれは、ひたも 00048200M4のに足(33ウ)くひハかりに成たるといふ。つくしの人、是 00048210M5を聞て、尤さうあろふ、九州にても、安らく寺のけんさむ 00048220M6の天目を、夜ことにねすミかきしりけるか、てんもくハか 00048230M7たし、ねすミのはか、ひたものちひて、此程は、おハかり 00048240M8になりたると、いふた。 00048250¥N44¥J 00048260¥X 00048270M10△昨日、日吉太夫、くはんしん能にすみ田川をして、し 00048280M11はい中をなかせた。さり(34オ)とては、めいしんちやとい 00048290M12ふ。有人是を聞、あくる日さう+見物にゆき、まつせん 00048300M13さいふ、おきなまいもすきて、さんはさうの中はに、此仁 00048310M14さめ+となく。あたりなるもの、これハ何事そといへは、 00048320M15あのすミたかほかあはれにて、物もいはれぬといふた。 00048330¥N45¥J 00048340¥X 00048350M17△御ちこさま、を里かふへんさに、はれか(34ウ)ましき 00048360M18時ハ、何もかもかりものちや、からせられぬものハしち 00048370M19はかりちや、あらせうしやと三位か申せは、ちこ聞召、ま 00048380¥P117 00048390L1ことに口をしや、しちもおれかてハないけなよ。なせに。 00048400L2ミな、みてハ、馬の物ちや+といふほとに。 00048410¥N46¥J 00048420¥X 00048430L4△よし野にての事なるに、有わかき者、山中にて山のい 00048440L5もをほりけるか、ふかくね(35オ)にいりけれハ、こしより 00048450L6かみハあなの中へ入てほる。折ふし、山ふしの通りけるか 00048460L7此もの&しりを見て、日本一の事と思ひ、無理にたしなま 00048470L8せてとをる。この男めいわくして、やう+あなよりおき 00048480L9あかる所へ、ともたちの来りけれハ、さてもふしきや、只 00048490L10今我しりから、あれなる山ふしか出て行か、(35ウ)何とし 00048500L11たる事そ、跡かそんしたるか、みてくれよといへは、とも 00048510L12たちさしうつふきて、しはらくミて、いや+、また小山 00048520L13伏の出ると見えて、おくに、ほらのかひのをとかするそ 00048530L14+。 00048540¥N47¥J 00048550¥X 00048560L16△天竜寺のさくけん和尚へ信長公御尋候、何とて世間に、 00048570L17大ちこをとんに、小児をはりこんにいひならハし候そ、こ 00048580L18(36オ)ちこの成あかりこそ大ちこなれ、ちいさき時さへり 00048590L19こんならハ、成人にしたかゐ、いよ+りこんになるへき 00048600M1か、いかゝふしんと仰せけれは、和尚聞給ひて、尤の御不 00048610M2審にて候、我等も左様に存候、しかしなから、こちこの間 00048620M3ハ、いまた里こゝろ御さ候ゆへ、武家のりはつ身につきそ 00048630M4ふて御さ候か、寺しみて後(36ウ)には、長袖のぬるきたち 00048640M5ふるまいを見なれて、をのつから心おとり申かと、おほせ 00048650M6けれハ、信長ことの外御ゑつきにて、一段尤の御へんたう 00048660M7やと、おほしめしけれハ、みな人かんせられける。 00048670¥N48¥J 00048680¥X 00048690M9△有人、久しきつれ相にはなれて、しうたんする所へ、 00048700M10知しき御こしなされ、御なけきハ道理なれとも、あふは別 00048710M11のもと(37オ)ゐにて候、思召きり給て、跡&をねん比に御 00048720M12とふらひ候へと、けうくんあれは、御意のことく、我らも 00048730M13そんし候へとも、あのむすめ共か、はたちにもたらすして、 00048740M14あのやうなる有さまをミれハ、ほんなふかおこりて、身の 00048750M15をき所か御さなゐと申された。 00048760¥N49¥J 00048770¥X 00048780M17△有人、さん+にわつらゐ、いしやを(37ウ)よひ、ミ 00048790M18やくを見すれは、是ハ大事の御わつらひにて候、一儀を御 00048800M19つ&しミなくは、御くすり進する事ハなるまいと、申され 00048810¥P118 00048820L1けれハ、其段御きつかひなされそ、はや二三年も、そのか 00048830L2たはおりないと云。さらは、まつ、くすりを少参らせう、 00048840L3此かけんをみて、重て仰せられ候へといふ。御ついてに、 00048850L4女とものみやく(38オ)をも、をそれ申せとて、よひ出す。 00048860L5くすし、此ミやくハ、くわいにんの心持御さある、是ハく 00048870L6るしうもおりないか、ていしゆの其きしよくにて、あのや 00048880L7うななれは、中&れうちかなるまいと申さるゝ。てゐし 00048890L8ゆ、めいわくして、それは我等の子てはあるまいと、いは 00048900L9れた。 00048910¥N50¥J 00048920¥X 00048930L11△むかし、下京に道無といふ者あり。よき(38ウ)むすめ 00048940L12をもつ。可然所へ、きもいらふといへは、いか程の身上そ 00048950L13と問。まへは四国の主てあつたか、今ほとハらうにんちや 00048960L14といふ。道無聞て、さて+きやうこつや、十石とる人に 00048970L15さへ、やらぬとて、中+聞も入なんた。 00048980¥N51¥J 00048990¥X 00049000L17△あるもの、むこいりするとて、まつ案内のために女房 00049010L18をやりける。しうと、まん(39オ)そくして、さらは用意せ 00049020L19よとて、さまさまこしらへける。さてむすめをちかつけ、 00049030M1そちのは何そけいかあるかといへは、太こか上手ちやとて、 00049040M2みな、かねをもつて、ならいにくるといふ。それハ心にく 00049050M3い事ちや、さらは、やくしやをあつめよとて、方&よりあ 00049060M4つまる。さて、むこ来り、こん+のしうけんすきて、 00049070M5(39ウ)しうとまかり出、むこ殿のたいこ聞及て候、何か一 00049080M6ハんあそはせとて、たひこを出す。たへゑいて候へ共、御 00049090M7所望を仕らぬハ、りよくわいにて候ほとに、そといたさう 00049100M8とて、大かたぬき、かたはちをつとつて、南無阿ミた+ 00049110M9と、六さひ念仏を高&と出しけれハ、諸人、けふおさまし 00049120M10ける。(40オ) 00049130¥N52¥J 00049140¥X 00049150M12△有人、若衆の御たつねを得て、是ハ夢かや、うつゝか 00049160M13かたしけない事やとて、色+の御ちそふ申。御さかなも 00049170M14御さなけれとも、せめて御酒なりとも参らせたいとて、さ 00049180M15ま+すゝめ申せは、さうりとりの三八か、まかりいて、 00049190M16左様にさけな御しゐなされそ、けさもけさとて、さけのミ 00049200M17をまいりて、いまに(40ウ)おかほかあかひと申た。 00049210¥N53¥J 00049220¥X 00049230M19△ある若衆に、ひん僧かうちこうて、文の通ひ、かすも 00049240¥P119 00049250L1しらす。又、其内に、さる大名ほれられた。やかて定家卿 00049260L2のしきしを御手本にとて、進せらるゝ。房主ハ是を聞て、 00049270L3まけしと思ひて、弘法大師のしん経のきれ、三くたりハか 00049280L4りもとめ出して、おくられけり。又、大名の方より、かた 00049290L5な(41オ)わきさしを、かねたくさんにつけて、いかにもけ 00049300L6つこうにこしらへ、進せらるる。ひん僧、これを聞て、あ 00049310L7きれ、此へんたうに、かみそりなとにても、すむへからす 00049320L8とて、やかておもひきり、 00049330L9△△何事も人にまけしとおもへとも 00049340L10△△△こかねかたなて手をそつきぬる 00049350L11此哥を読ておくり、やかて思ひきる。(41ウ) 00049360¥N54¥J 00049370¥X 00049380L13△次郎といふ子、寺より、きよ書をして帰、親ともに見 00049390L14すれハ、さて+うれしや、よい手にならふとて、よろこ 00049400L15ふ。母親の申けるは、手はかりてもない、をとな心もある 00049410L16と見えた。なせに。清書のおくに、あなかしくしらうと、 00049420L17ある程に。 00049430¥N55¥J 00049440¥X 00049450L19△小児のねかひ事に、もちやまんちうに、さねかあらは 00049460M1よからふと仰せけれハ、(42オ)大ちこのいはく、もち、ま 00049470M2んちうも、さねなきゆへにこそ、本そうすれ、さねか何の 00049480M3用にたち候はん。こちこの聞召、それもさうちやか、さね 00049490M4かあらは、うへならへて、花見してあそひたいと、おほせ 00049500M5られた。 00049510¥N56¥J 00049520¥X 00049530M7△そこつなる若衆、もちをまいるとて、物数を心かけ、 00049540M8あまりふためひて、のとに(42ウ)つまる。人&せうしかり、 00049550M9くすりを参すれ共、とをらす。何かといふうちに、天下一 00049560M10のましないてを、よひけれは、やかて、ましなふて、其ま 00049570M11ゝ、りうこのことくになりて、三間ハかり先へとんて出る。 00049580M12皆&めてたい事ちや、さりとてハ天下一ほと有といへは、 00049590M13若衆聞給ひて、めいしんてハない、あつたら物を内へ入 00049600M14(43オ)やうにしてこそ、天下二てもなゐと、いはれた。 00049610¥N57¥J 00049620¥X 00049630M16△あるわかしゆの、ねんしやとねて、あかつきかたに、 00049640M17身をつはきにてぬらし、さて+夢をみて、あせをかひた 00049650M18ると、いはれた。それハなに夢そといへは、我等に、そな 00049660M19たから、大なるのしつけをこしらへ、是をさせと仰せらる 00049670¥P120 00049680L1&、(43ウ)いやといふて、かへせハ、又、むりにとらえて、 00049690L2おひにさゝせらるゝ、なにとそして、これをかへしたひと 00049700L3思ふて、くたひれたるとかたられた。ねんしや聞て、そふ 00049710L4して春の夢はあハぬ物ちや、きつかいなされそといふ。 00049720¥N58¥J 00049730¥X 00049740L6△尾張のなこ屋へ、西国の大名しう御見まいの時、様& 00049750L7の御ちそふ、言語にのへ(44オ)かたし。下&をは町中より、 00049760L8したしに仕れとて、こんたてをいたさるゝ。 00049770L9△△一にんしんしる△△△なますふな 00049780L10△△△やきものさけ△△△さしミこひ 00049790L11△△△引てうつら 00049800L12なととて、さま+有。町人とも是をみて、いつれもやす 00049810L13きこしらへにて候へとも、二三百人の事に、にんしんをか 00049820L14ひあつめ候はゝ、十きん(44ウ)廿きんにてハたり申まし、 00049830L15此儀、御わひこと申上んとて、御奉行所へ参、そせう申け 00049840L16れは、奉行衆わらひ給ひて、尤そせう聞召わけられたり。 00049850L17大根しるにて御ゆるし有そと、おほせけれは、よくそや、 00049860L18そせう申てこそ候へ、惣して此殿さまほと、御しひふかき 00049870L19事は、天下にあるまいとて、よろこひける。(45オ) 00049880¥N59¥J 00049890¥X 00049900M2△かんしよくおとろへ、いかにもらう&としたる男、竹 00049910M3田法眼へまいり、少きこんのをつる御くすりを申うけたひ 00049920M4といふ。ほうけん是を聞、御見かけにちかうたる御のそみ、 00049930M5ふしきなるよし、おほせけれハ、いや+、われらの用て 00049940M6は御さらぬ、女ともにあたへ候と申た。(45ウ) 00049950¥P121 00049960¥T1きのふはけふの物語△下 00049970¥K△△△(初丁一丁欠落) 00049980¥N3¥J 00049990¥X 00050000L4△奉行につけられて、きん中ことことく、みしゆりをな 00050010L5さるゝ。/囗((是カ))を、うつけたるものの申やうハ、むら井殿、た 00050020L6いりさまの御ねんしやかといふ。なせにといへは、けふも 00050030L7内裏様の、みしりをしに、いかせらるゝとて、日に+御 00050040L8出あるほとに、さうかと思ふた。 00050050¥N4¥J 00050060¥X 00050070L10△いまほと、せけんに、手かゝみはやる。色&さま+ 00050080L11のこひつをあつめ、ほんそふする。(2オ)中にも、杉近衛 00050090L12殿の御しゆせきほとなるはあるまいと、さたする。又、も 00050100L13んまふなる人申やう、それほとなるよき御手を、なにとて 00050110L14ちよくひつとハ申さぬそと、いふた。 00050120¥N5¥J 00050130¥X 00050140L16△ある出家、五六さいなるすて子をひろうて、やしなひ 00050150L17そたて、七つ八つより、ほけきやうそのほかのよミもの共、 00050160L18せいをいれをしへられ候へとも、一ゑんおほえす。あまつ 00050170L19さへ、(2ウ)ししやうの申さるゝ事をせういんせす。こん 00050180M1こたうたん、にくい事や、をのれめハ五つ六つの時よりひ 00050190M2ろひ、やういくして、やう+人になし、きやうたらにを 00050200M3をしへけれ共、あとなふわすれて、/悪(あく)行はかりに身をなし 00050210M4て、われらにすねまはる事、いハれなし、やう+つえ 00050220M5はしらにもなる時分に、さやうにふるまふこと、さたのか 00050230M6(3オ)きりや、く僧かいまにても死たらハ、あとしきをも 00050240M7とらせうするにとて、おもふまゝにしかられけれハ、其と 00050250M8き、かのしんほち申ける。御坊のおほせられふん、一つも 00050260M9われら心中かなハす、其ことくなるむりはかり、おほせ候 00050270M10とも、すこしも御意にしたかふまい、此申分、御こゝろに 00050280M11あたり候ハゝ、所の代くハんへなりとも、御あけ候へ、 00050290M12りひハきゝ(3ウ)しる人か御座らうとて、いよ+すねけ 00050300M13る。坊主はらをすへかねて、ぶきやう所にて右の段&申さ 00050310M14るれは、やかてしんほちをめして、御ばうのそんふん、ね 00050320M15んころに聞てあり。其はうかくこ、さたのかきりそ、いま 00050330M16よりハ老僧したいにして、かう+かかんようそと、おほ 00050340M17せわたされけれハ、御意かしこまりて承候、われらにもさ 00050350M18やうに申され、めい/□□((わくカ))(4オ)仕候、それかし、一かう尤 00050360M19と存せす、い/□□((かにカ))と申に、先、やしないそたて、人になし 00050370¥P122 00050380L1たるなととて、むりなる事を申され候、それかし、馬の子 00050390L2うしの子ても候を、人になされ候へは、おんとも存候はん 00050400L3か、はしめから人の子にて候、又、きやうなとをしへたる 00050410L4とて、こと+しく申されても、一字もおほえ候ハねハ、 00050420L5みな返したる同前、又、しんたら(4ウ)あとをくるゝと申 00050430L6され候、これも、一日なり共世にあるうちに、寺をもわた 00050440L7され候へは、まんそくいたし候か、しなれてあとハ、我ら 00050450L8よりほかにとりてかなく候間、これもつておんにならす候、 00050460L9其上、木竹のきれのやうに、つえにならぬ、ハしらになら 00050470L10ぬと、あさゆふ申され、何より+めいわく仕候、さてハ、 00050480L11なにか一つ、師しやうのだうりたるへし、(5オ)よく+ 00050490L12きこしめしわけられ、まつすくにおほせつけられ候へと、 00050500L13申けれハ、奉行衆も、このあくたうものにいひふせられて、 00050510L14あきれてへんとうにもおよハれなんた。 00050520¥N6¥J 00050530¥X 00050540L16△ある寺に、めいさくの大こくのあるよしを聞およひ、 00050550L17さるだんな参り、一目おかミ申たいとて、しよまうする。 00050560L18はうす聞て、それハししやうの時こそ、いまはおりない、 00050570L19ひとか(5ウ)申とも、まことになされそと云。たんなきゝ、 00050580M1われらよくそんして候、よの人とはかハり、久しきたんな 00050590M2にて候、せひともといへハ、其儀ならハ御めにかけう、か 00050600M3まいて、人に御かたり候なとて、うつくしき女房をよひ出 00050610M4す。いや+、この事ては御座ない、ほんのお大こくをと 00050620M5いへハ、扨&よく御存ちや、かならすさたのなきやうに、 00050630M6たのミいり候、(6オ)内&ほうちやうさまほしきよし、い 00050640M7ろ+おほせらるゝゆへに、ふかくかくし申せ共、此うへ 00050650M8ちや程に、御めにかけうとて、又、てんにんのやうなるを 00050660M9出された。 00050670¥N7¥J 00050680¥X 00050690M11△有人、まいを一たんじまんして、月夜に一条の辻にて 00050700M12まふた。よきまいかとおもひ、たちよりてきゝけるか、一 00050710M13人つゝ、みなかへる。八九十なるうはか一人のこりて、さ 00050720M14め+と(6ウ)なく。あたりなるもの申やう、あれほとへ 00050730M15たのまひが、なにとあはれにてなくそとて、わらひけれは、 00050740M16いや、あはれにはないか、われらかさうりをかりて、しり 00050750M17にしかれたるか、ハやうとり返し、いにたいと、いふた。 00050760¥N8¥J 00050770¥X 00050780M19△さるてらへ参りけるに、うつくしきかふろのゐけるを 00050790¥P123 00050800L1ミて、さて+うつくしき御若しゆかな、となたから御こ 00050810L2しそととふ。あれ(7オ)ハ大坂らう人ちやといふ。さうみ 00050820L3えた、よい子ぢや、さりなから、とてものことに、へゝを 00050830L4つけてほしやといへハ、しんほち聞て、長老様もさやうに 00050840L5おほせらるゝと、いふた。 00050850¥N9¥J 00050860¥X 00050870L7△御ちこ、さとにひさ+御あそひなさるゝ。法印さま 00050880L8より御見まひとして、御文を三位につかハさるゝ。其文、 00050890L9いろ+さま+の御おもひふりのふんていの中に、(7ウ) 00050900L10そもし、なか+其地に御とうりうにて、此ころハおにや 00050910L11けにかつへ申と、くりかへし+あそハす。このふミを、 00050920L12わきあけの袖からおちたるを、ちこのはゝ、ひろうて見 00050930L13て、右のもんこんをふしんにおもひ、とゝにとへ共、しら 00050940L14すして、ちこにとひ、何/□((にカ))てももたせ、しんしやう申せと 00050950L15いふ。さらはとて、とひけれは、ちこせきめんして、その 00050960L16事(8オ)にて候、山のならひにて、さけをさやうに申なら 00050970L17ハし候と、のへられた。それこそやすき事よとて、たるを 00050980L18とりよせ、はゝの手にて、上おにやけ、おならと、かき付 00050990L19て、しんしやうする。扨、三位との、御しんらうや、ちと 00051000M1おにやけをまいれとて、ひたものにさけをしいらるゝ。す 00051010M2こしもたへぬ、一ゑんのけこぢやといへは、それハあまり 00051020M3のこりおほき事や、(8ウ)さらは、おにやけのみをなりと 00051030M4もまいれと、いはれた。 00051040¥N10¥J 00051050¥X 00051060M6△御わかしゆさま、御すかたと申、御こゝろつかひと申、 00051070M7まことに残るところも御座ない、され共、よそへ御出あつ 00051080M8て、人の刀、わきさし、つゝみ、たいこによらす、よくね 00051090M9さしをなさるゝ、是一つかたまにきつぢや、よく+きや 00051100M10うこうハ御たしなミ候へと、いふ。(9オ)若/衆(しゆ)きこしめし、 00051110M11さて+くハふんな御いけんちや、すいふんたしなミ申さ 00051120M12う、まことに+このやうなるかたしけない御いけんは、 00051130M13百くハんてもかハれまいと、はやくはせた。 00051140¥N11¥J 00051150¥X 00051160M15△やまてらのはうす、したしき人にあふて、此ほとひさ 00051170M16しく、わかしゆにかつへて、めいわくをいたすとかたる。 00051180M17此人きいて、尤(9オ)おたうりや、何とそしあんして、お 00051190M18にやけのハりかたを仕、しんし申さうといへハ、ばうすま 00051200M19んそくして、それは何よりの御心さして御座らふ、せんあ 00051210¥P124 00051220L1く頼入候、たゝし、とてもの事に、このミかあると、申さ 00051230L2るゝ。いか様の御このミそととへは、あちをは、へ&のあ 00051240L3ちになされてくたされよと、いハれた。 00051250¥N12¥J 00051260¥X 00051270L5△ぶたうなるもの、さるわかしゆをむりに(10オ)をしつ 00051280L6け、たしなませて、あとをゆひにて、ひたものくしる。是 00051290L7ハなに事そ、らうせきなるしかたちや、こんこだうだんの 00051300L8事とて、はらをたてけれハ、これほとあちのよいハふしき 00051310L9ちや、中にけつひかあらふと、いふた。 00051320¥N13¥J 00051330¥X 00051340L11△かんまつ、ゆやをしそんじけれは、 00051350L12△△むねもりのさこそむねんにおほすらん(10ウ) 00051360L13△△△かんまつたゆふにゆやをしられて 00051370¥N14¥J 00051380¥X 00051390L15△じゆらくにて、こんかうたゆふ、くハんしんのふに、 00051400L16しはいせん三十文つゝとりけれハ、 00051410L17△△こんかうハ二そく三文するものを 00051420L18△△△三十とるハせつた太ゆふか 00051430¥N15¥J 00051440¥X 00051450M1△わかしゆの御すかたをみて、さて+のこる所も御座 00051460M2ないとて、しミ+とほむれは、そはなるはうす立、これ 00051470M3を聞、おほせのこと(11オ)く、御かたちハ天下一、おにや 00051480M4けハしゆこふ入ちやと、いはれけれハ、また、そはなるし 00051490M5んほちの申やうハ、しゆごふにうても御さらぬと云。なせ 00051500M6に。さい+ふひやうか出るほとに。 00051510¥N16¥J 00051520¥X 00051530M8△長岡ゆうさい公、つるのはうちやうを、人に御おしへ 00051540M9候時、しらさきをいたにのせ、いたしけれは、当座に、 00051550M10(11ウ) 00051560M11△△しらさきか何そと人のとひし時 00051570M12△△△つるとこたへてくひなましものを 00051580¥N17¥J 00051590¥X 00051600M14△ならの伊勢やといふさかや、やすきさけにハ水を入て 00051610M15うりけれハ、ある人これをかひ、さん+あしきとて、き 00051620M16やうかをよミける。 00051630M17△△酒の名もところによりてかハりけり 00051640M18△△△いせやのさけはよそのとふろく 00051650M19伊勢屋返し、(12オ) 00051660¥P125 00051670L1△△よしあしといふハなにはの人やらん 00051680L2△△△おあしをそへてよきをめされよ 00051690¥N18¥J 00051700¥X 00051710L4△あるわか衆、ねんしやとねて、とりはつひてけかをし 00051720L5て、さらぬていにて、さて+、なれなしみの中ほとあり 00051730LLかたき事ハない、いまのやうなるけかをしてハ、はらをき 00051740L7りてもあかね共、なしみゆへに、なにともそんせぬと、お 00051750L8ほせけれハ、ねんしや、うけ給ハり、(12ウ)さて+かた 00051760L9しけない、さやうにおほしめし候へは、生&世&わすれか 00051770L10たひと、申もハてぬに、又、地ひゝきのする程なるをせら 00051780L11れた。ねんしや、はなをふたきて、かさね+くハふんに 00051790L12はあれ共、もはや御む用+。 00051800¥N19¥J 00051810¥X 00051820L14△さる若衆、これもとりはつして、すいとやり、何共此 00051830L15にほひをさるへきやうはなし。いろ+物かたりしかけて、 00051840L16扨、さんわうまつり(13オ)を御らんし候か。いや、また見 00051850L17申さぬといふ。さらハ、ひやうしをふんてきかせ申さうと 00051860L18て、大みやのハしとのハ、のんのや+、さんわうまつり、 00051870L19すこ++や。此ひやうしにて、くたんのいきをふるひ 00051880M1出す。ねんしや聞て、さてもおもしろき事かな、きゝおよ 00051890M2ひたるより、よきひやうしぢや、さりなから、まねさへこ 00051900M3れほとくさいに、しやう(13ウ)しんは、中+あたりへよ 00051910M4られまい。 00051920¥N20¥J 00051930¥X 00051940M6△かうやひしり、わかしゆにほれて、いろ+くとく。 00051950M7されとも、このわかしゆ、つれなふて、つゐにたうしんな 00051960M8けれは、ひしりかさねて申やう、まい年、二きに心つけい 00051970M9たさうか、それてもいやかと、いふた。 00051980¥N21¥J 00051990¥X 00052000M11△長老様へ、与六太夫殿おかた、御みまいに、ざせんま 00052010M12めをもつて御こしある。しんほち、(14オ)ちやうらうさま 00052020M13へ、与六太夫とのおかた様、御いんしんにこれをもつて御 00052030M14参り候とて、ゆひにてかのものをつくり、御目にかくる。 00052040M15ちやうらふこれをミて、事のほかはらをたて、時にこそよ 00052050M16れ、きやくのあるに、さやうなる事をするものか、さたの 00052060M17かきり、くせ事ちや、いまよりして弟子ともおもハぬ、し 00052070M18しやうとも思ふな、ハや+まかりたて(14ウ)よといふま 00052080M19ゝに、かふまの利けんをもつておひいたし給ふ。たんなし 00052090¥P126 00052100L1ゆこれを聞て、御わひこと申とて、まつしんほちにとへハ、 00052110L2いさゝかおハらのたつほとの事ては御さらぬ、これをした 00052120L3とて、こと+しうしからるゝとて、又くたんのてもとを 00052130L4してみせけれは、たんなしゆこれを見て、中+の事ちや、 00052140L5其儀ならは、いかほと申とも、御(15オ)同心あるまいとて、 00052150L6とんしやくせなんた。 00052160¥N22¥J 00052170¥X 00052180L8△ある人、たこくより女房をようて、久しくそひけるか、 00052190L9心ならすこの女ばうををくりけるとて、あきあかれたる中 00052200L10ても候はねハ、御うらみも有ましく候、ゑんつきす候ハゝ、 00052210L11又、むかひをまいらせうとて、家のたから物をとりいたし、 00052220L12何なりとも、をしくほしき物をとりてかへり給へと、さま 00052230L13+つミけれ(15ウ)ハ、女はう聞て、おほせのことく、あ 00052240L14かれて出候共、何かうらみの候へし、まして、ゆへある御 00052250L15事なれハ、御ことハりにもおよハす候、また、このたから 00052260L16のうちに、ほしきものハなく候、われ+身にかへても、 00052270L17をしきものゝ候といふ。このうへハ何なりとも御のそみ候 00052280L18へ、かなへ申さんとて、せいもんをたて、きかせけれハ、 00052290L19扨は、御いつハりてハな(16オ)い、さらハ御供申、をしき 00052300M1ものハ、御身よとて、馬にいたきのする。せいもんの上な 00052310M2れハ、理につめられ、せひにおよハす、それより五百八十 00052320M3ねんちきりける。おんなにも、かやうにちゑのふかふて、 00052330M4やさしきものゝありとて、人みなかんじける。 00052340¥N23¥J 00052350¥X 00052360M6△きく屋の与三郎、ていしゆの留守に、おそれなから、 00052370M7おかた様へ申度事か御座有、かな(16ウ)へさせられハ、申 00052380M8さうといふ。おかた、ハらをたて、うすしほや、其つれな 00052390M9事いふかとて、さん+にしかる。よ三郎聞て、われらも 00052400M10申かけて御同心なくハ、せひにおよハぬ、かんにんまかり 00052410M11ならぬと云。おかたこれをきゝ、おそろしさに、それ程に 00052420M12思はゝ、いつなり共と、いはれた。さらハ、たゝ今といふ。 00052430M13それはあまりきうなといへは、いや+、人のない(17オ) 00052440M14とき申さうとて、みゝにさゝやきて、朝夕のおめしがくひ 00052450M15たらぬ、ちとおしつけてくたされよと申た。 00052460¥N24¥J 00052470¥X 00052480M17△おちこさまへ申、法印さまハ御るすか。いや、ちぶつ 00052490M18たうに、かきして御さる。かきとハなに事そ。ひたるさに、 00052500M19かんともきんとも、ハねられはこそ。 00052510¥P127 00052520¥N25¥J 00052530¥X 00052540L2△あるちこ、そんのほかに、もちをきこしめし、(17ウ) 00052550L3にはかにハんねつして、めいわくなさる。ちと、うちのく 00052560L4つろくやうに、御くすりをまいらせうと、いひけれハ、く 00052570L5すりやゆか口へいるほとならは、また一つももちをこそく 00052580L6はふすれ。 00052590¥N26¥J 00052600¥X 00052610L8△ゑんりやくしの小ほうし、御ときすきて、やまへ木の 00052620L9葉かきに行とて、御ちこさまの中ちきを、せんたなにあけ 00052630L10をき、その下(18オ)に、小法師かひるめしもおひた。さて、 00052640L11山よりかへりて見るに、御ちご様の御せんもあかり、わか 00052650L12めしもなし。ふしきなる事とおもひ、御ちこ様にとへは、 00052660L13まことに、おしるかと思ふて、あこかめしにうちかけて、 00052670L14くふたと、おほせられた。 00052680¥N27¥J 00052690¥X 00052700L16△ゑいさんのこ法しハら、やまへ行さまに、御ちこさま、 00052710L17こゝに御ひるか御さりま(18ウ)するそ、九つをうつたらは、 00052720L18こしめせと、申おゐて出、やかてやまよりかへりけるに、 00052730L19やう+四つ時分に、はやまいりたるあとあり。いかにと 00052740M1たつね申せは、いや、九つすきたると、おほせらるゝ。た 00052750M2ゝいま四つをうちたるにと申せハ、されハこそ、けさ五つ 00052760M3と今四つとハ、九つてないかと、おほせられた。扨+、 00052770M4よきさん用やとて、あきれもせなんた。(19オ) 00052780¥N28¥J 00052790¥X 00052800M6△にしのとふゐんういらう所に、まりをけるとて、何と 00052810M7かして、かゝりよりそとへ、ついとこへ、大道へおつる。 00052820M8折ふし、をん国のさふらひ、人あまたつれてとをられける 00052830M9か、これハなにものそと、ひしめく所へ、ふらめいておつ 00052840M10る。心得たりといふまゝに、やりの石つきにて、つとんと 00052850M11いはせた。しうかこれをミて、心かけはよけれとも、人の 00052860M12かひとりとみえ(19ウ)て、とやまてしてあるに、ころすま 00052870M13いものをといハれた。 00052880¥N29¥J 00052890¥X 00052900M15△あるわかしゆ、もつてのほか御わつらひにて、いまを 00052910M16かきりとミゆる。ねんしや、なけきかなしむてい、まこと 00052920M17によそのたもともぬらしける。とかく此分ならハ、ほとも 00052930M18あるまひとて、さうれいのよういする。ねんしや申やう、 00052940M19らい世まて御とも申さうとて、(20オ)くハんを大きにこし 00052950¥P128 00052960L1らへた。扨、ほとなく、わかしゆハてたまふ。ねんしやの 00052970L2しんるい共、いろ+いけんすれとも、中+、是程人も 00052980L3しらぬさきにこそ、今さらわれら、とりみたし候とも、御 00052990L4しかり候てこそまんそくなれとて、聞も入す。さて、我と 00053000L5かんへ入、とりへ野へおくり、いんたうもすきて、火をか 00053010L6けけれハ、くハんの中よりかうしやうに申(20ウ)やう、ふ 00053020L7たをあけてたへ、申たき事かある、先火をけしてたまハれ、 00053030L8思ひきりたる事なれは、いのちハ露ちりともおもハぬか、 00053040L9けふりくさい、まつせうへんしてから、心しつかに、いひ 00053050L10こんせうと、ぬかいた。 00053060¥N30¥J 00053070¥X 00053080L12△ひ/□((よカ))うたん屋の四郎三郎、ぬすひとかとをあくるをき 00053090L13ゝつけて、手やりをもつて、まちかまへ、なにさま、たゝ 00053100L14なかをくさりとつく(21オ)へしと思ふ所へ、ぬつとはいり 00053110L15けれハ、かのやりをはとりなをしもせす、くちにて、くつ 00053120L16さりといふた。 00053130¥N31¥J 00053140¥X 00053150L18△さるてらにて、じゆんれいとはちひらきと、ね物かた 00053160L19りするをきゝけれハ、しゆんれい申やう、さて+、いか 00053170M1なるいんくハにて、われらハかやうにあさましき事や、せ 00053180M2めて天下を三日しりたい、さあらハ、国+の(21ウ)つち 00053190M3たうのいたしきを、高&とつくらせ、ゑんのしたにて、そ 00053200M4の方たちと、ゆる+とはなしたいといふ。ハちひらきか 00053210M5聞て、きしよハそれ程とんなゆへに、諸国をめくる事ぢや、 00053220M6その身にあふじたるねかひをしたがよい、たゝ、われらは 00053230M7京のくにを一日なりともしりたい。なせに。町中の犬とも 00053240M8を、みなうちころさせて、ゆる+とは(22オ)ちをひらき 00053250M9たいと、いふた。 00053260¥N32¥J 00053270¥X 00053280M11△ある人、へんけいハ判官殿の若衆ちやかと、いふ。な 00053290M12せにといへハ、判官むさしをめされと、まひにまふほとに、 00053300M13さうかとおもふた。 00053310¥N33¥J 00053320¥X 00053330M15△さる上らふ衆、長老様へ申さるゝハ、さいこうふかき 00053340M16身にて、後生一大事をもしらす、月よ花よのあそひにてく 00053350M17らし候事、あまりそらおそろしく候、ちと御しめし(22ウ) 00053360M18候てくたされ候へと申されけれハ、ちやうらうきゝ給て、 00053370M19それハきとくなる御のそみにて候、あら+申入候へし、 00053380¥P129 00053390L1そも+女人しやうぶつの法と申ハ、ミたの御せいくハん 00053400L2にしく事なし、何をもつてかくいふなれは、まつおんなは、 00053410L3つひふかくして、うかミかたしと、おほせけれは、こらへ 00053420L4かねて、くつ/■((ママ))とわらひたまへハ、長老ハらを(23オ)た 00053430L5て給て、くそうか、はのぬけて、せつないのあしきハ、と 00053440L6しよりのならひちやに、それはお上らうしゆの、きのやり 00053450L7やうかわるいと、おほせられた。 00053460¥N34¥J 00053470¥X 00053480L9△むかし、公/方((ママ))様、ちふつだうへ御参りなされけるに、 00053490L10おりふし、あミたのみやうかうおちさせたまふを、しゆん 00053500L11あみといふたうばう、まかりたつて、かけ奉れハ、又、や 00053510L12かて落給ふ。(23ウ)そのときの御ゑい、 00053520L13△△かち原としゆんあミたふか二度のかけ 00053530L14△△△それハかうミやうこれはミやうかう 00053540¥N35¥J 00053550¥X 00053560L16△御わかしゆさま、ゆミや八まん、命かつれなふて、か 00053570L17やうにものを思ひ候、つゆはかりの御なさけと、いろ+ 00053580L18にことはをつくし申けれは、わかしゆきこしめし、われも 00053590L19いは木ならねハ、御心中おもひやり候へとも、(24オ)とか 00053600M1く、ねんしやかきつうて、心にまかせす候、さほとにおほ 00053610M2しめし候ハゝ、なかきちきりとなり申へし、いさや、一所 00053620M3に身をなけて、おなしはちすのゑんとなるへきよし、おほ 00053630M4せけれハ、さて+かたしけない事かな、さらは、御とも 00053640M5申さうとて、河のほとりへゆきて、若/衆(しゆ)おほせけるは、い 00053650M6さ、手をとりくミて、してさんつをもこさんと、おほせけ 00053660M7れハ、(24ウ)われらか事ハ、なにとはて候ても、くるしか 00053670M8らす候、まつ+御いそき候へ、御なり候やうをも見とゝ 00053680M9けまいらせて、やかておひつき申へしと、ふかくけいやく 00053690M10申せハ、其儀ならハ、六道のつちにてまち申さんとて、い 00053700M11たハしや、いまた二八はかりとみえ給けるか、はなのやう 00053710M12なる御すかたを、なミのもくつとなし給ふ。扨、ねんしや 00053720M13心しづかに(25オ)十念して、一しゆ、かくつらねし、 00053730M14△△なむといふこゑのうちよりみをなけて 00053740M15△△△あみたハミつのそこにこそあれ 00053750M16とハよミたれ共、おもへはいらぬ事ちや、たゝいきのこり 00053760M17て、後世をとふらひ申てこそ、しんしつのこゝろさしにて 00053770M18あれとて、われと我身にいけんして、一もんしにかけもと 00053780M19る。かのわかしゆも、何とかして(25ウ)やかてあかり、さ 00053790¥P130 00053800L1きにて行あひ、ゆふれいかとおもひ、きもをけし、かミそ 00053810L2りをぬいて、はつさうにかまへ、いかにはうれいたしかに 00053820L3きけ、あとをとふらひてとらするそれかしを、うらみてふ 00053830L4かくするなと、いひすて、あともミすにけた。 00053840¥N36¥J 00053850¥X 00053860L6△つの国の中しまに、大百しやうのひくにあり。まいね 00053870L7ん、なかつ河のつゝみかきるゝ(26オ)ゆへに、りんかうの 00053880L8百しやう共よつて、かのひくにか田のまへをつく。しかれ 00053890L9は、かれいとして、にんそく共のちうしきのしるをは、此 00053900L10あまかとりおこなふ。あるとし、又いつものことく、ふし 00053910L11んするに、あま何と思ふてやらん、しるをいたさぬ。せつ 00053920L12+つかひをたつれとも、とんしやくせぬ。くせ事とて、 00053930L13其時のたいくハんへそせうすれハ、やかて(26ウ)めしいた 00053940L14し、まいねんの儀を、なにとてとう年おこたり申そと、お 00053950L15ほせけれハ、其事にて候、いつもハ、われ+かまへをつ 00053960L16かせらるゝゆへに、しるをいたし候、当年ハ我等てん地よ 00053970L17り、しものはうきれ申候て、となりのけのうへをつかせら 00053980L18るゝに、なにとて、わきからしるをいたし候ハんや、おほ 00053990L19しめしわけられ候へと申けれハ、上下大(27オ)わらひにな 00054000M1りて、ハてた。 00054010¥N37¥J 00054020¥X 00054030M3△ある出家、思ひよらす、けいせいまちをとをれは、や 00054040M4かてころもの袖をひかれ、せひにおよハす、しうけんをつ 00054050M5とめて、いてさまに、ふせにとりたるものを、これしきな 00054060M6れ共といへは、けいせい是を見て、ハや+、今日はわれ 00054070M7らおやの日にて候ほとに、それ/□((にカ))ても御さらぬとて、返し 00054080M8けれハ、出家聞て、(27ウ)それハなによりの御心さし、あ 00054090M9りがたふ候、さあらハ、けさをかけていたさうものをと、 00054100M10いハれた。 00054110¥N38¥J 00054120¥X 00054130M12△又、ある法師、是もひき入られて、事すきて、礼もつ 00054140M13をいたせハ、けふは心さし御座候、御わすれなくハ、まい 00054150M14月御こし候へといへハ、それこそ出家ののそみにて候へ、 00054160M15らい月はおたいやからまいらふと、いふた。(28オ) 00054170¥N39¥J 00054180¥X 00054190M17△六条のもんせきに、のふの有時、しはいへまんちうを 00054200M18まかるゝ。若さふらひ、ちからにまかせてうちけるほとに、 00054210M19ついじをうちこえて、大道へおつる。やまかよりはしめて 00054220¥P131 00054230L1来るもの、これをひろふて、扨もふしきなる物かなとて、 00054240L2いろ+せんきする。中にも老たるものゝ申やう、とかく 00054250L3これハ天人のたま子にてあるへしといへは、尤ぢや、たゝ 00054260L4(28ウ)いまむまれたると見えて、あたゝかなるそ、さらハ 00054270L5あたゝめて、かいをわらせよといふて、わたにつゝみ、ふ 00054280L6ところに入あたゝむる。次第にあをくなりて、毛かはゆる。 00054290L7是ハ中+天人の子てはないそ、むくりこくりかたま子に、 00054300L8うたかひもないそ、かいをわらせてはあしかりなん、たゝ 00054310L9いころせよとて、大かりまたにて、すんといきつて、され 00054320L10ハこそ(29オ)申さぬか、中にくろちのかたまりかあるはと、 00054330L11いふた。 00054340¥N40¥J 00054350¥X 00054360L13△ある長老、御わつらひもつてのほかにて、今をかきり 00054370L14とみゆる。てし、だんなあつまりて、さてもせうしなる御 00054380L15事や、此たんにて何とくたちもいらぬそとて、さけとさか 00054390L16つきまくらもとにをき、これ+、めをひらきて御らん候 00054400L17へ、いつもの御すきの物にて候と(29ウ)いへハ、へゝかと 00054410L18おもふたと、いはれた。 00054420¥N41¥J 00054430¥X 00054440M1△ある人、うつくしきかしきにほれ、哥をよミておくら 00054450M2るゝ、 00054460M3△△君をのミこひこかれつる手すさミに 00054470M4△△△かと田に出てねせりをそつむ 00054480M5出哥を得て、しれんくにて返してもいかゝとおほしめせと 00054490M6も、うたのみちハおほつかなしとて、さる人にたんかうし 00054500M7たまへハ、(30オ)御へんは、しれんくをなされ候ほとに、 00054510M8哥もなり申さう、さくいはおなし心にて御座候と申さるゝ。 00054520M9さてはへつの事もないと、おほしめして、へんか、 00054530M10△△われしらミふなあふりさきあしもちり 00054540M11△△△せとのはたけてごばうひきぬく 00054550M12きミをのミに、われしらミとつけられ、こひこかれつるに、 00054560M13ふなあふりさきと、(30ウ)此ことく、ついをなされし事、 00054570M14たんかう人のぶねんか。 00054580¥N42¥J 00054590¥X 00054600M16△あふミのよこわたしにて、/諸(しよ)国のもの共ふねにのり、 00054610M17いろ+物かたりする中に、若きものゝ申けるは、まこと 00054620M18や、女のまへのくさきものか、かうのものをつけたるは、 00054630M19くさうてくハれぬといふは、まことかといへハ、船中の者 00054640¥P132 00054650L1とも、われも+せうここそ(31オ)あれ、くさいかちやう 00054660L2ぢやと、めん+にい/□((へカ))は、せんとう、これを聞て、船を 00054670L3こきもとして、わかいゑのうらへつけ、女房をよひいたし、 00054680L4けさのふりをまつつけるなといへハ、はやつけたるといふ。 00054690L5せんとう、ろかいをすてゝ、なむさんほう、うり百すてた 00054700L6と云た。さこそくさかるらんと、みな+わらひき。 00054710¥N43¥J 00054720¥X 00054730L8△ひせんの国かんさきのこうに、なむの二字(31ウ)をか 00054740L9くにうちたるひくにてらあり。すなハち、二じてらといふ。 00054750L10此あま共、つねにあさのいとをよつてうる。又、あたりに、 00054760L11とうミやうしといふ寺あり。この坊主共、いとをかひにゆ 00054770L12くていにて、さい+ものとしたとて、やかて、もんに、 00054780L13△△二字寺もいまハ六しになりにけり 00054790L14△△△とうみやうしよりしゝをいるれは(32オ) 00054800¥N44¥J 00054810¥X 00054820L16△ある人、さけを人のかたへをくりけるとて、ゑんらい 00054830L17のよし、さま+いひて、すこしのたるをつかひけれは、 00054840L18ふミの返事に、 00054850L19△△あまの酒ふりさけみれはかすかある 00054860M1△△△ミかさものまハやかてつきなん 00054870¥N45¥J 00054880¥X 00054890M3△ある出家、師、弟子つれてときにゆき、かへるさに、 00054900M4けいせい町をとをるとて、しんほち申けるハ、よきつゐて 00054910M5にて御さある、ちと御(32ウ)より候へとすゝむれは、しし 00054920M6やう聞て、中+、さたにおよハぬ事、われらかやうなた 00054930M7つときちしきなとか、なにとて、/□((むカ))さとしたる所へよるも 00054940M8のそ、ことにけふハふせもとらぬにと申された。 00054950¥N46¥J 00054960¥X 00054970M10△ある人、いとやなきをひさうして、うへおく。これを 00054980M11あんないなしにほつて行。ていしゆとかめけれハ、やなき 00054990M12ハ見とりちやと(33オ)いふ。一句につまり、むねんなる事 00055000M13と思ひ、はなハしらをひしとくハせて、ちかたる。是は何 00055010M14事そ。はなハくれなゐにとて、やかてもつてまいつた。 00055020¥N47¥J 00055030¥X 00055040M16△ゑんふく寺の法師と、さる所にて、いろ+物かたり 00055050M17して、さて、ゑんふく寺のゑんハ何にて候そととひけれハ、 00055060M18すのこゑんにて候とこたふ。いや、何とかき申そといへは、 00055070M19(33ウ)わらひなはにてかき申たるといふ。いや、其事ては 00055080¥P133 00055090L1御座ない、字をたつね申といへは、地ハあかつちましりの、 00055100L2すな地ちやとこたへた。 00055110¥N48¥J 00055120¥X 00055130L4△かうじうり、きんかくじのたつちうをうりまハり、門 00055140L5外へ出るを、門はんの法師が引とゝめて、かうしもんを出 00055150L6すといへハ、僧ハたゝくけつかの門とて、はうときせた。 00055160L7(34オ) 00055170¥N49¥J 00055180¥X 00055190L9△ある人、子にけうくんするやうハ、/汝(なんぢ)を母かうミおと 00055200L10してより此かた、あらきかせにもあてしとして、ぬれたる 00055210L11所に我はねて、かはきたるうへにわとのをねさせて、つゝ 00055220L12やはたちになし、たかき山、ふかきうみ共思ふに、おやの 00055230L13いふことをせうゐんもせす、そのことく、かいにまかせて 00055240L14ふるまふ、くせ事ちやとて、しかりけれハ、むすこ聞て、 00055250L15おほせ(34ウ)候たん+、一つもそれかし御尤と存せぬ、 00055260L16まつやういくなされ候とて、おんに御きせ候へとも、そふ 00055270L17して人のおやの、/子(し)をそたつる事めつらしからす、われも 00055280L18やかて子をもち候ハゝ、人かたのますとも、そたて申さう、 00055290L19是もつて家なミにて候、其上われらをせひとも出世のため 00055300M1にても候ハす、をの+様おもしろつくのつゐてをもつて、 00055310M2まかり(35オ)出候あひた、是又何の御おんにても御さ有ま 00055320M3い、さりなから、けに+さやうにおほしめし候はゝ、も 00055330M4とのみちからまかりかへり候へしとて、はゝのうちまたへ 00055340M5かゝつた。 00055350¥N50¥J 00055360¥X 00055370M7△ある女房、わかきおとこにはなれ、なけきのあまりに 00055380M8てらへ参り、さいごにおほせられしハ、まことにこひしき 00055390M9時は、かう花もいらぬそ、わらハかまへをたむけよとの給 00055400M10ひ(35ウ)しものをとて、まへをひらきて、なむいふれい、 00055410M11しゆつりしやうし、とんせう/菩提(ぼだい)、これ+よく+うけ 00055420M12たまへと、ゑかふするを、長老物かけより御らんして、あ 00055430M13りかたき御心さしにて候、こなたへ御いり候へとて、めん 00055440M14さうへひきいれたまふ。こはなに事そといへは、仏の御あ 00055450M15とハ出家のくはいちう、せんさくなしと申されけれハ、せ 00055460M16ひ(36オ)におよハす、しハらくして、いてさまに長老の申 00055470M17さるゝハ、御いひこんにまかせられ、まい月御さんけい候 00055480M18へと申されけれは、女ばう聞て、御ときひしハ申におよハ 00055490M19す、御ふせにもいまのや。 00055500¥P134 00055510¥N51¥J 00055520¥X 00055530L2△御かつしき様へ、なにかなしんしやう申たいと思へと 00055540L3も、刀わきさしは、いらさる御身也、あふきなとは、いか 00055550L4めしからすとて、いろ(36ウ)+にあんしすまひて、とか 00055560L5く正月のおなくさめ、たまふり+を、しろかねこかねの 00055570L6まるうちにして、まいらする。これをかつしき御らんして、 00055580L7一たんうつくしけれとも、おもうてふられハせす、いらぬ 00055590L8物ぢやとて、すてさせられた。それはをしや、とこへ。め 00055600L9んさうのまん中へ。 00055610¥N52¥J 00055620¥X 00055630L11△ていあんのたんきに、今日はひかんもミて(37オ)て候、 00055640L12此ほときとくに、上らうしゆうもお参りなされた、しかれ 00055650L13は、ミたによらいの御せいくハんに、女人じやうぶつのさ 00055660L14たを申さう、たゝし、ねんころに申せハ、たん儀かなかふ 00055670L15なる、又、あらまし申せハ、ちとみゝとをき事なり、何と 00055680L16せうそ、かた+ののそミ次第にいたさうと、おほせけれ 00055690L17ハ、たんきの事なれハ、返事する人もなし。てい(37ウ)あ 00055700L18んのいはく、上らう衆ハなかひかすきか、みしかひかよい 00055710L19かといハれけれは、女はう衆一度にわらひ給へハ、ちやう 00055720M1らう、きつとにらみつけて、かた+のきのやりやうか、 00055730M2そてないと、申された。 00055740¥N53¥J 00055750¥X 00055760M4△にしのおかの左衛門次郎かむす子、うしのへゝをした 00055770M5とて、所のものともよりあひて、かやうなるものをそのま 00055780M6ゝをけハ、七さと(38オ)あるゝと申候、いそきこのさいし 00055790M7よををひ出すへきよし、せんきする。おや此よしを聞、ま 00055800M8かり出て申やう、なに共めいわく仕候、これハ人の申なし 00055810M9て候はん、中+うしのハあつうて、せらゝる事ては御座 00055820M10ないといふ。さては、おやめもしたるそとて、親子なから、 00055830M11おひはらハれた。 00055840¥N54¥J 00055850¥X 00055860M13△おこうさま、おちのひとをめして、なふ、うは、(38ウ) 00055870M14きかしめ、殿のしぢのあとに、何やらんふらめくか、あれ 00055880M15ハなにそと、いはるゝ。あれはおとものしゆちやといふ。 00055890M16おともならハ、ちとよひいれて、ふるまいたいと、おほせ 00055900M17られた。いや、御よひ候ても、内へはまいらぬといへハ、 00055910M18しかと其ふんか、うそをつき、そちへよふたら、かゝ様に 00055920M19云て、おんをひかへるそ。 00055930¥P135 00055940¥N55¥J 00055950¥X 00055960L2△ゐ中しゆ、久しくさいきやうして、国へ(39オ)下とて、 00055970L3山崎にとまり、扨&、此間ハしうめいとて、長+のざい 00055980L4きやうに、めつらしき事もなく、まかり下事、無ねんに存 00055990L5する、せめて爰もとてなり共、一あそひせうとて、ていし 00056000L6ゆを頼けれは、いま程、さやうのもの、はつとにて候へと 00056010L7も、すいふん、ひとのよめ、むすめなとをさいかくいたさ 00056020L8う、われらにまかせられよといふ。それこそ一段のそミ 00056030L9(39ウ)なれ、いそきたのミいる。心得申とて、たつてしは 00056040L10らくしてかへり、大かたけいやく仕候、一人たり申さぬか、 00056050L11さる人の後家、このほとあまに御なり候、これはいかゝ候 00056060L12ハん、といふ。それこそ日本一の事なれといふ。さ候ハゝ、 00056070L13しのひやかに火をけして、くちとりになされ、一人つゝ御 00056080L14出候へ、めん+に渡し申さうとて、夜ふけ、くたんのこ 00056090L15とくにわた(40オ)す。まつかミをさくりて、さてもむねん 00056100L16や、あまにとりあたりたるとおもへと、せひにおよハす、 00056110L17たまりける。扨三はん四/番(はん)めも、みな此ぶんにてねて、さ 00056120L18て、夜あけてハひとめもつゝましなといふて、こそ+み 00056130L19なかへる。ていしゆハかたりつけ、おもふさま、せにをと 00056140M1りける。よく+きけは、ふろ屋の火たきや、りんかうの 00056150M2こつしき共を、むき一せう(40ウ)つゝにてやとひて、かね 00056160M3まうけして、よろこひける。 00056170¥N56¥J 00056180¥X 00056190M5△有人、子をまふけて、さて+めてたい事ちや、こと 00056200M6によい子や、かミかくろひ、いろかしろひのと、よろこふ 00056210M7所へ、となりのおめうさい、こしをかゝめ、よろほひきて、 00056220M8やれ+めてたいとて、あからふとしても、ゑんかたかさ 00056230M9にあかりかねて、これのハ、こゑんか(41オ)ないほとに、 00056240M10あかられてこそと、いハれた。 00056250¥N57¥J 00056260¥X 00056270M12△あるちこ、はな見に行とて、しらはしを一せん、こし 00056280M13にさゝれた。うしろミの法師かこれを見て、さたのかきり 00056290M14やとて、めにかとをたてゝにらむ。ちこのいはく、そなた 00056300M15の何と御にらミ候ても、あこか心には、よしミつのわきさ 00056310M16しよりたのもしひ。 00056320¥N58¥J 00056330¥X 00056340M18△ある出家、けいせい町をとをる。しやうらう(41ウ)袖 00056350M19にとりつく。是は何事そ、此僧ハ五つや六つより仏のたい 00056360¥P136 00056370L1に身をなして、女人の手からものをもとりかはさぬに、は 00056380L2なしたまへと、あらけなけに申されける。けいせい聞て、 00056390L3御もつともにて候、さりなから、むりなる事ハ申まい、先 00056400L4御出家ハ若/衆(しゆ)をもちひ給ふよし、きゝおよひて候、われら 00056410L5もおにやけを御ようにたち申へしといふ。(42オ)ばうす聞 00056420L6て、それはみゝよりに候、さて、おふせハいかほとそと、 00056430L7とへは、その事にて候、おもてむきハ、われ+もすきの 00056440L8みちにて候へハ、いかやうにも御意次第にて候、からめてハ、 00056450L9むりにたしなミ申ゆへ、ちとかうしきに御座候と云。坊主 00056460L10のいはく、御覧候ことく、ひん僧と申、らうたいにて、から 00056470L11めてのなん所、ふあんないにてハ、かなひ申まし、(42ウ) 00056480L12たゝ大てにて一やりまいらふとて、やかてものせられた。 00056490¥N59¥J 00056500¥X 00056510L14△其方、にうはうをひとかぬすむをしらぬか、扨&うつ 00056520L15けぢや、よそへゆくていにて、かくれてみつけ、うちころ 00056530L16せの、たゝけのと、色&いひふくむる。心えたるとて、に 00056540L17かいにかくれてまつところへ、あんのことく、まおとこき 00056550L18たり、さま+ちけいのあまりに、をんな(43オ)申やう、 00056560L19しんしつおもへは、まへをねふる物ぢやか、そもしはわれ 00056570M1+をさほとおほしめさぬといふ。おとこのいはく、一め 00056580M2いをかけて、このことく参るに、御うたかひなされ候、い 00056590M3まなりともねふらうとて、ひきむくるか、あまりくさゝに、 00056600M4はなにてなつる。女房よくおほえて、いまのハはなちやと 00056610M5云。いや、したちやといふ。せんきまち+するを、此 00056620M6(43ウ)男、ふしあなからのそき、よくミて、とちのひいき 00056630M7てもないか、いまのハはなちや+/□((とカ))いふた。 00056640¥N60¥J 00056650¥X 00056660M9△又、あるもの、右のことく、まおとこ来り、様&ちけ 00056670M10いのあまりに、ねふらすハさせまいといふ。さらハとて、 00056680M11ゆひにてくしり、そのゆひをはのけて、別のをねふる。か 00056690M12のうつけもの、これをみて、おんなともぬかるな、ゆひに 00056700M13(44オ)ぬきかあるそと、云た。 00056710¥N61¥J 00056720¥X 00056730M15△山かよりはしめて、むこのきたるとて、いろ+さま 00056740M16+のふるまひをする。ごたんに、きりむきをいたしけれ 00056750M17は、山かにてつゐにみたる事もなし。一段とあぢのおもし 00056760M18ろきものそとおもひ、しやくをとるおんなに、何といふそ 00056770M19といへハ、我名の事とおもひ、こいとと申といへは、よく 00056780¥P137 00056790L1+おほえて、(44ウ)後日にれいふミをやりけるとて、 00056800L2△△先度は、ハしめて参り、いろ+の御もてなし、こと 00056810L3△△に夜もすから、こいと御ふるまひ、わすれかたきあち 00056820L4△△ハひにて候。とてもの御ことに、此ほうへちとたまハ 00056830L5△△り候ハゝ、いよ+まんそくたるへき。 00056840L6とかひてつかひけれハ、しゆうと、もつてのほかはらをた 00056850L7て、さたのかきりなる事ちや、かさねてよせるなと(45オ) 00056860L8て、やかて、むすめをとり返しける。 00056870¥N62¥J 00056880¥X 00056890L10△あるもの、よき女房をまふけて、しまんするを、さる 00056900L11いたつらものゝいはく、きてんのお内儀、かたのことくす 00056910L12くれたるか玉にきつぢや。なにそといへハ、まつおんなの 00056920L13めにはすゝをハれと、むかしからいひつたへたるに、めの 00056930L14ほそきかなんちや、あれをさて、当せいのなんはんれうち 00056940L15にて、なをしたらハ、(45ウ)天下にあるまいといへは、お 00056950L16とこ聞て、それハ扨、たれかしやうすそといふ。いや、ま 00056960L17しりをかミそりにてきりひろけて、われらかめいよのかう 00056970L18やくをつけてをけは、二三日のあいたに、すき+となを 00056980L19るといふ。さらハ、そのかうやくを申うけたいとて、いそ 00056990M1きかへり、女はうをとらへて、まふたをすかときり、かの 00057000M2かうやくを付て、二三日してみれ(46オ)ハ、ひたものたゝ 00057010M3れて、後、やかてあけくに目くらにないてはたいた。 00057020¥N63¥J 00057030¥X 00057040M5△ある人、ひることくハたつるに、七つはかりなるむす 00057050M6子、やゝもすれは、きてのそき+する。やかて、おにの 00057060M7めんをかけてする。かのあくたうものかきつと見て、やい 00057070M8+、みなこい+、うちのなんとに、おにかへゝするそ、 00057080M9ちやとこい+。(46ウ) 00057090¥N64¥J 00057100¥X 00057110M11△はくちにうちまけたるもの、かんのうちに丸はきにあ 00057120M12ふて、内へかへる事ハならす、辻だうのゑんの下にかゝみ 00057130M13ゐたるに、おりふし、ゑのころ一疋来るをとらへて、いた 00057140M14き、是にてちとハらをあたゝめてゐける所へ、又一人、あ 00057150M15かはたかにてきたり、それハなにそととふ。されは、これ 00057160M16にてちとはらをぬくめていきをつく、これにこりて、さい 00057170M17を手に(47オ)とりもせまいといふ。一人のもの、ちとかり 00057180M18たいといへ共、かさす。さらは、其いぬ、かけに一はんま 00057190M19いらふとて、かミのわけめから、さいをとり出、やかてう 00057200¥P138 00057210L1つて、ひつ/□((たカ))くつた。 00057220¥N65¥J 00057230¥X 00057240L3△御ちこさまへねんしやから、何にてもしんしやう申た 00057250L4いとて、いろ+さま+の物を御めにかくれ共、つゐに 00057260L5御意にいらす。あまりきよくも御座ない事ぢや、せめて 00057270L6(47ウ)たんしやくすゝりをこしらへ、しんしやう申さう、 00057280L7まきゑは、いからしかものすきにまかせをき、水入ハたん 00057290L8あミれうかに、しろかねとこかねにて、そきつきにすゝめ 00057300L9をつくらせけるか、とてものことに御めにかけて、ころを 00057310L10御このミ候やうにとて、御相くちをもつてうかゝひ申けれ 00057320L11ハ、すゝめのころ/□((ハカ))、ふくろう程なかよからふと、おほせ 00057330L12(48オ)られた。/□□□□((さて+カ))、まへかとのしんしやくとちかふ 00057340L13て、ねんしやも大あくびぢや。 00057350¥N66¥J 00057360¥X 00057370L15△せうは所へ、九州よりれんかしうしんの人、しやうら 00057380L16らくす。有時、せうはへ申やう、国もとへのくはいふんに 00057390L17て候程に、三条西殿へ御礼申度よしをいひけれハ、やすき 00057400L18事とて、やかて同道してゆかれけるか、みちにて、せうは 00057410L19申さるゝハ、御くけしゆハ、もの(48ウ)ことに御念入、ね 00057420M1とひをなさるゝそ、貴所のやとハ三条にて候ほとに、左様 00057430M2のきつかひかんようと申されけれは、まことに御心つけか 00057440M3たしけない、そのところハまかせをかれよと申。さて御た 00057450M4いめんにて、御さかつき下され、様&御/念(ねん)ころにて、きや 00057460M5うかふは、上国のみきり、さい+まちいるなとゝおほせ 00057470M6/□□□□□□□((られ、さてあカ))んないのことく、こゝもと(49オ)にて宿は 00057480M7と/□□□□□((御たつねカ))なさるゝ。かの人、なにと心得てか、二条 00057490M8の下と申。二てうの下ハとおほせけれは、また、四てう 00057500M9のかミと申。四てうのかミとはとおほせけれは、其時、か 00057510M10の人うろたへて、三てうにしのつらのきたなきいゑにゐま 00057520M11いらすると申あけられた。かへるさに、せうはにしかられ 00057530M12て、いはれさる御心つけにてと、かへつてうらみられた。 00057540M13(49ウ) 00057550¥N67¥J 00057560¥X 00057570M15△上京に平林といふ人あり。此ひとの所へ、ゐ中より文 00057580M16をことつかる。このもの、ひらはやしといふなをわすれて、 00057590M17人によませけれは、たいらりんとよむ。そのやうなる名て 00057600M18はないとて、又よの人に見せけれハ、是ハひらりん殿とよ 00057610M19ミける。これてもないとて、又、さるものに見すれハ、一 00057620¥P139 00057630L1八十ほく+とよむ。此/□□□□□((うちははつカ))れしとて、のちには此 00057640L2文を(50オ)さゝの/□□□□□((葉にむすひカ))つけて、かつこをこしにつけ 00057650L3て、たい/□□□((らりんカ))か、ひらりんか、一八十にほく+、ひや 00057660L4うりや+とハやし事をして、やかてたつねあふたと。 00057670L5(50ウ) 00057680¥P140 00057690¥U噺本大系△第一巻 00057700¥Tきのふはけふの物語 00057710¥G 00057720¥Y 00057730L16寛永十三年刊 00057740L17編者未詳 00057750L18半紙本二巻一冊 00057760L19都立中央図書館加賀文庫蔵 00057770¥T1きのふハけふの物語△上 00057780¥N1¥J 00057790¥X 00057800M3△むかし、天下をおさめ給ふ人の御内に、ばうじやくぶ 00057810M4しんなるものとも、あつまりて、/禁中(きんちう)へ参りて、ぢんを、 00057820M5とらふといひて、やりのいしづきをもつて、/御門(ごもん)をたゝく。 00057830M6御つぼね、ふた+と立出給ひて、申さるゝハ、これハ、 00057840M7だいりさまと申て、たやすく、けゞの参る所にてはないぞ、 00057850M8いそき、いづかたへも参れ、とおほせけれハ、此いゑを、 00057860M9ぢんにとらせぬといふりくつのあらバ、て(一オ)いしゆ出 00057870M10て、きつとことハりを申せ、といふた。 00057880¥N2¥J 00057890¥X 00057900M12△おたの/信長公(のふなかこう)、とき+、けうに、だんごきこしめす。 00057910M13よく参るとて、京わらんべ共、うへさまだんごと申。これ 00057920M14を、一だんと、そこつなる御/小性(こしやう)、御まへちかきところに 00057930M15て、このよしを、ざうたんしければ、これをきゝ給ひて、 00057940M16御ふくりうなされ、すでに御かんきを、かうふらんとせし 00057950M17を、一けい/道(たう)三、御とうじやうあり、御/尤(もつとも)の/儀(ぎ)にては候 00057960M18へとも、世上に、さやうに申事(一ウ)、かへつて、御ほま 00057970M19れにて御座候、其ゆへは、むかし、天し、ちまきを御らん 00057980¥P141 00057990L1じて、一/段(たん)おもしろきよし、ちよくぢやうあれハ、それよ 00058000L2りして、京わらんべとも、だいりちまきと、今に申ならハ 00058010L3し候と、申上られ候へば、のぶなが、御きけんなをり、右 00058020L4の御/小性(こしやう)、御しやめんなさるゝなり。/惣(そう)じて、うへ+の御 00058030L5そばに、これ有人ハ、ばんじに、きづかひを、いたさう事じや。 00058040¥N3¥J 00058050¥X 00058060L7△ある人、へうたんから、こまの出たるゑを見て、(二オ)、 00058070L8是は、なにとしたるいはれぞと、人にとふ。それさへ、御 00058080L9/存(そんち)なきか、/惣(そう)じて、まきのこまと申ハ、山に、さんせうを 00058090L10まきて、むまになし申と、いひけれハ、それほど、ちやう 00058100L11ほうなる物を、何とて、こゝもとにハ、つくらぬぞといふ。 00058110L12こゝもとにてハ、人かぬすむゆへに、むかしよりつくらぬ、 00058120L13といへハ、をろかな事じや、よき/馬(むま)一ひきにても、大ぶん 00058130L14のかねを、とる事じやに、いかほとばんをつけても、くる 00058140L15しからぬ事じや、ぜんあく此春は、つくらふとて、(二ウ) 00058150L16さんせうを、十石ほどかいとり、山をほらせ、こと+く 00058160L17まいて、四五日はかりして、やう+もはや、はへ/時分(じぶん)じ 00058170L18やか、をそいとて、かのをしへし人にとへば、それはいつ 00058180L19比、御まき候といへハ、此五日さきにまきたる、といへば、 00058190M1はへぬこそ、だうりよ、/天火地火(てんくわちくわ)に、物たねをまいてハ、 00058200M2はへぬが、ふしぎでもない、といふ。げに+、其やうな 00058210M3る、しさいの、あらふ/□((とカ))/存(そんち)た。さてハこよミなと、うたが 00058220M4ふことでハない、といはれた。 00058230¥N4¥J 00058240¥X 00058250M6△こゝに、ふしんのはれぬ事かある。なに事ぞ。(三オ) 00058260M7/公家(くけ)しうハ、よう/草木(くさき)の/名(な)を、つかせらるゝ事じや、まづ、 00058270M8すゝき殿、松の木との、たけの内殿、やぶ殿、はむろ殿、 00058280M9やなきはら殿、きくてい殿、たけや殿、此分じや。いやま 00058290M10だある。たれぞととふた。さんせうとの。 00058300¥N5¥J 00058310¥X 00058320M12△又あるもの申やう、/公家衆(くげしう)は、/鳥(とり)けだものゝ名を、つ 00058330M13かせらるゝといふ。なぜに。まづ、からす丸殿、わしのお 00058340M14殿、たかつさ殿、ゐのくま殿、此分しや。いや、まだある。 00058350M15たれぞ。までのこうぢ/□((とカ))のよ。(三ウ) 00058360¥N6¥J 00058370¥X 00058380M17△さがの大かく寺殿へ、をんごくの、じゆんれいが参り、 00058390M18これハ、なにと申所ぞ、といふ。これは、御もんぜき、と 00058400M19こたへけれハ、三文に、まけて、けんぶつハ、なるまいか 00058410¥P142 00058420L1とて、いろ+申た。五文のせきと、思ひし事、口おしき、 00058430L2/次第(したい)なり。 00058440¥N7¥J 00058450¥X 00058460L4△ある人、ざうりとりをおかんとて、六かくだうへゆき、 00058470L5たづねけれハ、わかきおとこ、まかり出て、ほうかういた 00058480L6さうといふ。今までは、いづかたにゐたるそと、とへハ、 00058490L7しものおならやに、ゐたるといふ。おな(四オ)らやとハ、 00058500L8人をうつけにするか、くさいことをいふ、といへハ、ゐど 00058510L9ころを、御たづね候ほとに、申事しや。 00058520¥N8¥J 00058530¥X 00058540L11△ある人、寺へ参る。/長老(ちやうらう)/御覧(こらん)じて、さて+、きどく 00058550L12の御参りとて、しやうし給ひて、先&御ちやしん上申せ、 00058560L13もみちにたてゝ、参らせよ、とおほせらるゝ。此人きゝて、 00058570L14ふしんして、/色&(いろ+)あんじても、がてんゆかず。いや+、 00058580L15とふハ一/度(と)のはぢ、とおもひ、長老さまに、とひ申せハ、こ 00058590L16うようたてよと、申事じや、とおほせける。尤/((と脱カ))(四ウ)がて 00058600L17んして、かへるに、/知(しる)人の所へ立より、此事いふべしにて、 00058610L18小/性衆(しやうしゆ)、御ちや一ふく給はれ、もミぢにたてゝ、御意にか 00058620L19けられよといふ。ていしゆも小性共も、がてんゆかす、い 00058630M1かなるいはれそと、たづねけれは、こくよくと、いふぎり 00058640M2じや、といハれた。 00058650¥N9¥J 00058660¥X 00058670M4△ふろやに、かう+ふろと、いふが有。これハ、いか 00058680M5なるいはれやらん、といへは、ふかふにおよばぬといふ心 00058690M6かといはれし。尤おもしろひとて、後に、よそにて、かた 00058700M7り出しけれは、人&、いかなるゐんえんぞ(五オ)と、とひ 00058710M8けるに、ふくにおよばぬ、とかたるほとに、いさゝか、お 00058720M9もしろげも、あってこそ。 00058730¥N10¥J 00058740¥X 00058750M11△山てらほうし、さる御ちごにほれて、色&ゑんをもつ 00058760M12て申けれは、さすが御かたちに/似(に)たる御心、やさしくまし 00058770M13+て、ある夜しのびて、御こしなさるゝ。これハ有かた 00058780M14き御事とて、ひしめきけれとも、ひん/僧(そう)にて、なにゝても、 00058790M15御ふるまひを、いたさうやうもない。せめてこれなり共、 00058800M16御なぐさミにとて、たいたう/米(こめ)のめしを、出し(五ウ)けれ 00058810M17は、御ちこ御らんじて、是ハうつくしき色やと、おほせら 00058820M18れた。其とき三/位(ミ)、まかり出申やうは、たまさかの御こし、 00058830M19まことに身にあまりて、忝く/存(そんち)て、せめての御ちそうにと 00058840¥P143 00058850L1て、米をそめさせ申たるといへば、御ちご、きこしめして、 00058860L2げにもさう見えて、たいたうめしのやうな、と仰られた。 00058870¥N11¥J 00058880¥X 00058890L4△物ことに心をつくる人の申されしは、/当代(たうたい)御はつとな 00058900L5きとて、/竹(たけ)のこをねびきにし(六オ)て、たくさんにもてあ 00058910L6つかふ事、おしき事じや、三年めにハ見事の竹になるに 00058920L7と、申されければ、ミな+聞て、これはおほせのことく、 00058930L8おしきことじや、といはれける。又、そばなる人の、申さ 00058940L9れしは、/惣(そう)じて、/松(まつ)だけなども、むさとたぶるハ、いらさ 00058950L10ることじや、二三十年おいたらハ、大木にならふものを、 00058960L11と申された。 00058970¥N12¥J 00058980¥X 00058990L13△ゐ中より、はしめて京へ上りたる人、三でうあたりに、 00059000L14/宿(やと)をとり、ひがし山へけんぶつに(六ウ)出るとて、/下(け)人を 00059010L15よびよせ、京は、/家(いゑ)つくりおなじやうにて、見しりにくひ 00059020L16そ、なにゝても、心しるしをして、よくおほえよと、いひ 00059030L17つくる。心え申たると、うけごうて、さて、/方&(はう+)けんぶつ 00059040L18して、かへり、せんそくとれとて、さきへつかひけれは、 00059050L19あんのことく、わすれて、こゝかしこを、たづねありく。 00059060M1さればこそとおもひ、しるしハととへは、いな事じや、見 00059070M2えぬといふ。なにをしるしにしたるぞ、ととふ。いやたし 00059080M3かに、かどば(七オ)しらに、つはきにて、かきつけをして 00059090M4をきたるといふ。さたのかぎり、それがやくに、たつ物か 00059100M5とて、さん+にしかれハ、またしるしかあると、いふほ 00059110M6とに、なにぞととへは、やねにとびかとまりてゐたか、こ 00059120M7れもをらぬよ。 00059130¥N13¥J 00059140¥X 00059150M9△ふだんくわうゐんとて、/近衛(このゑ)のたいかう、御ねんころ 00059160M10の/長老(ちやうらう)あり。/惣(そう)して、長老/分(ぶん)は、あしうちにて参りけれ共、 00059170M11此長老、れんがすきにて、/切&(せつ+)御くわ/□((いカ))にまかり出らるゝ 00059180M12ゆへ、其(七ウ)日ばかり、くぎやうを御めんと、おほせ出 00059190M13さるゝ。/長老(ちやうらう)、御ことばにあまへて、しやうじう、くださ 00059200M14るゝやうにと、御のぞミあれは、たいかう、御わらひなさ 00059210M15れ、とりあえす、 00059220M16△△くぎやうをば/時&(とき+)なりとすはれかし 00059230M17△△△ふだんくはうはいはれざりけり 00059240¥N14¥J 00059250¥X 00059260M19△むかし、/近衛(このゑ)殿を、なにのしさいやらん、ひでよし/公(かう) 00059270¥P144 00059280L1の御/時(とき)、さつまのぼうの津へ、御ながしなさるゝ。はいし 00059290L2よは、かごしまへ、うつされ給ふ。其とき、(八オ) 00059300L3△△/大臣(たいしん)のくるまにハあらてあはれにも、 00059310L4△△△のするかごしまになふぼうのつ 00059320¥N15¥J 00059330¥X 00059340L6△よろつの/道(ミち)に、心をかくる人は、いづれの事も、すぐ 00059350L7れずと見えたり。なにゝもよくさし出るもの、/紹巴(ぜうは)のくわ 00059360L8いにまじはり、れんがするとて、 00059370L9△△さやけきハ/有明(ありあけ)かたの月ならし 00059380L10と云句に、 00059390L11△△山ほとゝぎすさそひがほなる 00059400L12とつけた。ぜうのいはく、一/段(たん)お/□((もカ))しろひ。(八ウ)めい 00059410L13よこつゞミに、手をうつ所じや、とほめられた。 00059420¥N16¥J 00059430¥X 00059440L15△ていかの/卿(きやう)のおとうと、きやうかくばう、事のほかふ 00059450L16べんにて、/年(とし)のくれに、ていかの卿へ、よミてつかハされ 00059460L17ける。 00059470L18△△きやうかくかしはすのはてのくもゐんじ 00059480L19△△△としうちこさん/石(いし)ひとつたべ 00059490M1返し、 00059500M2△△さたいゑかちからのほとを見せんとて 00059510M3△△△石をふたつにわりてこそやれ(九オ) 00059520M4此/返哥(へんか)に、こめ一たハらそへて、つかハされけるとそ聞えし。 00059530¥N17¥J 00059540¥X 00059550M6△/秀句(しうく)をすきたる人あり。めづらしきしうくをおもひ出 00059560M7せば、/色&(いろ+)ちんふつをとゝのへ、ふるまひをして、其/座(さ)に 00059570M8ていひ出して、けふする人あり。有とき/下(け)人を、びやくじ 00059580M9ゆつほりにやり、そのうちに人をよびあつめて、さまさま 00059590M10ふるまひをこしらへて出し、此ものまかり/帰(かへ)りたらバ、ざ 00059600M11しきへまかり出て、いかにもた(九ウ)か+と、/白朮(ひやくしゆつ)ほり 00059610M12て参りたるよし申せと、くれ+いひつけて、なにさまき 00059620M13たらバ、そちにをけら、といふべしと、心うれしくまつ所 00059630M14へ、あんのごとく、/時分(しふん)をはかりて、まかり出、おけらほ 00059640M15りて、参りたる、といへば、そちに白朮、といふた。 00059650¥N18¥J 00059660¥X 00059670M17△ほつけしうのいつちと、しやうれつと、法もんをして、 00059680M18かちまけハしらず、さん+につかミあふて、へのこをし 00059690M19められて、なんぎせんばんするをミて、 00059700¥P145 00059710L1△△ほつけしうそのしやうれつハしらねとも(十オ) 00059720L2△△△きんをしむるはいつちめいわく 00059730¥N19¥J 00059740¥X 00059750L4△ある人、にはかに、すきにゆくとて、中ぞりをいたし 00059760L5たきが、たれか、かれかと、ひしめく所へ、だんなばうず 00059770L6きたる。よき所へ御こし候、はゞかりせんばんなる申事に 00059780L7て候へとも、にはかにすきに参候が、中ぞりをたのミ申た 00059790L8いとて、かミをあらひて、そらする。此ばうず、つねに/出= 00059800L9家(しゆ=つけ)のかミばかり、そりならひ、いつものごとくにおもひ、 00059810L10かたこびんを、ずら+と、そり(十ウ)おとす。此人、き 00059820L11もをつぶし、是ハ+といへとも、かなはず。さて+/言= 00059830L12語道断(こん=こたうだん)、めいわくじやとて、はらをたつる。/坊主(はうす)せきめん 00059840L13して、けかと申なから、めんぼくも御/座(さ)ない、御めんなさ 00059850L14れよ、/惣(そう)じて、せがれより山寺にすミ、つねに坊主のあた 00059860L15まをそりつけ、たま+、おとこのかミなれば、もくよく 00059870L16仕るとばかり、存たるといへハ、それはいよ+、てうふ 00059880L17くかとて、はらをたつれ共、かたこびんそられて、今さら 00059890L18なをらハ(十一オ)こそ。此ぶんにてはすむまい、ふしやう 00059900L19なから、ほつたい仕らふ、といへは、/坊主(はうす)聞て、一/段(たん)の御 00059910M1事、さらバ、かいミやうを、つけ申さう、といはれた。 00059920¥N20¥J 00059930¥X 00059940M3△世には、あぶない事がおほい。先、 00059950M4△△かつけずねの、ほうろくうり 00059960M5△△/高(たか)にをつけたる/馬(むま)の、きしのほそ道つたふ 00059970M6△△目くらの、くたり/坂(さか) 00059980M7△△わかきしうとめと、むこの中のよき 00059990M8△△やもめ男の、よめとむつましきも 00060000M9△△わか/後家(ごけ)の、しけき寺参り 00060010M10此分といへハ、そこつなる坊主の聞て、ま(十一ウ)こと是 00060020M11ハ、いづれもあぶないものじや、我らの寺へも、わかき/後= 00060030M12家(こ=け)の参らるゝが、あぶ、といふて、やかて口をかゝへた。 00060040¥N21¥J 00060050¥X 00060060M14△ある人、寺へ参りて、/長老(ちやうらう)さまといへは、るすじやと 00060070M15申。はる+参りたるに、御/残(のこり)おほい事とて、しばらくや 00060080M16すらひけるに、折ふし、たけの子の/時分(しふん)なれハ、やぶをの 00060090M17ぞきまハれハ、長/老(らう)さまハ、見事なるがんのけをむしりて 00060100M18御/座(さ)有。そろりとそばへより、御ミまひに参り(十二オ)た 00060110M19るよし申せは、長/老(らう)、きやうてんして、さて+、此/鳥(とり)の 00060120¥P146 00060130L1むくげを、まくらにいれ候へハ、づふうのくすりじやと申 00060140L2程に、か様にいたすが、なにとしても、手なれぬ事ハ、な 00060150L3らぬ物じや、と仰らるゝ。だんなきゝて、それハやすい事 00060160L4て御ざある、是へくたされよとて、くる+と、ひきむし 00060170L5り、けをハをしよせて、御まくらに御入候へとて、此/鳥(とり)の 00060180L6ミハ、こなたにいらざる物よとて、やがて取て帰り、しや 00060190L7うくわんす。(十二ウ) 00060200¥N22¥J 00060210¥X 00060220L9△あるびくに/御所(こしよ)、/知行所(ちきやうしよ)へ、御ゆさんに、御こしなさ 00060230L10るゝ。百しやう共、御ちそうに、/石(いし)ふろをたき、いれ申。 00060240L11しんざうす御出なされ、ちと、てうづのこを参らせよとお 00060250L12ほせらるゝ。山がのことにて、てうずのこといふ物をし 00060260L13らず。にはかに、よりあひをして、たれかれといへ共、し 00060270L14らぬといふ。とかくをそなはりてハ大/事(じ)といふ。中にも年 00060280L15よりたるものゝ申やう、きつと思ひ出したる事の候とて、 00060290L16まかり出て申やう(十三オ)、てうずのこは、先年の一らん 00060300L17に、ミなたいてん仕たると申。しんざうす/聞(きこ)しめし、さて 00060310L18も、うつゝない事やとおほせけれハ、其うつゝないも一/度(と) 00060320L19にうせたるといふた。 00060330¥N23¥J 00060340¥X 00060350M2△くわうげんゐん殿の御時、ある上人、一/段(たん)と御意に入 00060360M3給ひ、/毎(まい)日御しゆつしなさるゝ。御念ころのあまりに、ら 00060370M4くだと仰いたさるゝ。上人きゝ給ひて、御ちやうハ、かた 00060380M5しけなふ候へとも、五つ六つより/出家(しゆつけ)のすがたに身をな 00060390M6し、今(十三ウ)五十にあまりて、上人かうまてさづかり、 00060400M7今さらなに事に、らくだ仕候べきと、返す+御しんしや 00060410M8くあれハ、ミな+尤とかんじ給ふ。しやうぐん是をきこ 00060420M9しめし、尤の事にて候へ共、心やすく、はなし申/度(たき)との事 00060430M10にて候と、/再(さい)三御/意(い)あれハ、此上は/力(ちから)およはすとて、御ら 00060440M11くだし給ふ。とかく、たち/仏(ほとけ)をゐ仏にも、だんなはからひ 00060450M12にして、/外聞(くわいふん)をもふりすて、さて+、御はづかしう候、 00060460M13さりながら、是ほとなる、御念(十四オ)ころのついでに、 00060470M14のぞミの有よし、申上られけれは、なに事にても、御かな 00060480M15へあらふすると、おほせらるゝ。其/儀(き)にて御/座(さ)あらハ、子 00060490M16にて候ものをも、御めみえ申させ/度(たき)とて、三十バかりなる 00060500M17男をつれて出て、是ハ/愚僧(くそう)が、十六けさかけの時に、まう 00060510M18けた子にて候と、申あけられけれは、うへさまをはじめ、 00060520M19御前の人&、ミすもきちやうも、さゝめき、大わらひあつ 00060530¥P147 00060540L1て、あきれさせたまふ。(十四ウ) 00060550¥N24¥J 00060560¥X 00060570L3△あるちごくすしの所へ、おちの人、子をつれてゆき、 00060580L4きのふの御くすりにて、一/段(たん)とおなか心もよく候、けふの 00060590L5御くすり、其かげんに、なされくたされ候へといふ。くす 00060600L6し聞て、それはめでたい事、さらハ又、あはせて参らせう 00060610L7とて、くすりばこをとり出す。なにとかして、おちいのま 00060620L8へをいたされた。此くすし、是にミとれて、もちたるさぢ 00060630L9をおきわすれて、ひたもの、尋ねらるゝをみて、なにを御 00060640L10たづねなさるゝ、といへハ、(十五オ)今まてあつた、おち 00060650L11いの物か見えぬ、といハれた。 00060660¥N25¥J 00060670¥X 00060680L13△さる寺の、はすいけにて、あミがさ、ふか+ときて、 00060690L14月/夜(よ)にどぢやうをふむ。あんどうのえんさい、是をミつけ 00060700L15て、なにものなれば、此せつしやうきんだんの所にて、ら 00060710L16うせきをいたすそ、ゆミや八まん、やるまいとて、しらき 00060720L17のゆミに、やをはげ、しきりにとがむる。此もの、せきめ 00060730L18んして、これハしやうじんの、ぞくじんじや、すこしも、 00060740L19御かまひあるまいといふ。よく+見れは、ほうぢやうの 00060750M1(十五ウ)、とうさうすしや。 00060760¥N26¥J 00060770¥X 00060780M3△くわんばくひでつぐの御時、ぬしやのせいあミ所へ、 00060790M4御まへ衆二三人、すきに申入。ちやすぎて後、しよゑんに 00060800M5て、ゆる+と御あそひなさるゝに、日たけて、ひる/時分(しふん) 00060810M6に、せいあミ、ぢうばこをもちてまかり出、をの+さま、 00060820M7ゆる+と御はなし、/満足(まんそく)仕候、ちと、夜しよくを、りや 00060830M8うりいたし候、参らぬかとて、ふたをあけたるをミれハ、 00060840M9さたうもちじや。 00060850¥N27¥J 00060860¥X 00060870M11△ものごとに、こばしだてなる人、れき+、夜(十六オ) 00060880M12ばなしのざしきにて、夜なかのかねを聞て、ミな+御た 00060890M13ちなされよ、ゑんじのばんせうが、きこふるに、といふた。 00060900¥N28¥J 00060910¥X 00060920M15△ある人の所へ、さいこくへ下るとて、いとまごいに立 00060930M16よりけれは、さて+、御大/儀(き)や、さて、じぶんに御下り 00060940M17か、たゝし、あなたからのまかなひか、といふ。いや、ふ 00060950M18しミまて、むかひ舟か参りたる、といへは、それハ、しや 00060960M19りきと申、かた+よき御仕合じや、やかて、きちやうな 00060970¥P148 00060980L1されよ、さらば+。(十六ウ) 00060990¥N29¥J 00061000¥X 00061010L3△ある夜、ひでよし/公(こう)、夜しよくに、そばかきを御この 00061020L4ミなされ、御しやうばん/衆(しゆ)へも下されける。折ふし、/長(なか)を 00061030L5かげんし、御とうじやうなさるゝ。すなはち、そはがきを 00061040L6すはり、ふたをあけて、取あへず、 00061050L7△△うすゞミにつくりしまゆのそばかほを 00061060L8△△△よく+ミれハみかどなりけり 00061070¥N30¥J 00061080¥X 00061090L10△ある長/老(らう)のだんぎに、一けんそとは、ゑうり/□((三カ))あくだ 00061100L11う、かぎやうざうりうしや、ひつぢやうあんらくこく、此 00061110L12もんを、くり返し+とき給ふ。(十七オ)此もんの心は、一 00061120L13たび、そとはをミるものハ、ながく三あく/道(だう)をのがるゝと、 00061130L14ゝかれたり。ある人、是をちやうもんして、ふしんするハ、 00061140L15いかに上人、きこしめせ、我らハ、/念仏(ねんふつ)を申さず共、/仏(ほとけ)に 00061150L16ならふと/存(そんす)る、其ゆへハ、一たびそとはをミるものハ、な 00061160L17かく三あく道をはなるゝ、いはんや、ざうりうせば、あん 00061170L18らくこくにむまるゝ、と候へハ、此年まで、いかほとのそ 00061180L19とはを、たてもし、ミもしたる事、かずをしらす、今も千 00061190M1万も見て参りたる、といへば、上人、(十七ウ)きゝ給ひて、 00061200M2其/儀(き)にあらず、はゞ一けんの、そとハの事にて候、それを 00061210M3ミつくるまては、/念仏(ねんふつ)を申給へと、のべられた。 00061220¥N31¥J 00061230¥X 00061240M5△ある人、子を寺へあげ、きやうをよめ、がくもんにせ 00061250M6いを入よと、けうくんすれ共、一ゑん、せうゐんせぬ。く 00061260M7せ事とて、しかれは、上人きこしめして、経をよまぬハ、く 00061270M8るしうもないそ、よきほつけしうの、したぢしや、あとを 00061280M9ゆづらふぞ、ぢやうがこわうて、きのくすりじや。(十八オ) 00061290¥N32¥J 00061300¥X 00061310M11△ひんぼつに、/西国(さいこく)のそう、/東国(とうこく)のそうにとふていはく、 00061320M12/上野(かうつけ)、下つけあつて、中つけなきハ、いかに。ちくぜん、 00061330M13ちくごあつて、ちく中なきがことし。 00061340¥N33¥J 00061350¥X 00061360M15△有人、もつての外にわづらひ、ぞんめい/不定(ふぢやう)の時、/女= 00061370M16房(によう=ばう)をちかつけて、此/分(ふん)ならバ、二三日中に、しなんと思ふ 00061380M17なり、あら御なこりおしく候、又、いかなる人にか、そひ 00061390M18給はんとおもへハ、是のミ心にかゝるといふ。女/房(はう)聞て、 00061400M19それハ御心やすくおほしめせ、しぜんの事もあらハ、かミ 00061410¥P149 00061420L1をそり、/後生(こしやう)一へん(十八ウ)にして、御あとをとふらひ申 00061430L2候べしといふ。おとこ聞て、それハまんぞくにて候、さりな 00061440L3がら、かミはそりても、又はへるものなれハ、おなじくハ、 00061450L4我らかいきのかよふ内に、そもじのはなをそいでミせ給へ、 00061460L5さあらハ、あとしき、/家(いゑ)くら、其外ざいほう、一つものこ 00061470L6さず、参らすべしといふ。それハやすきこととて、みづか 00061480L7ら、はなをそいでミせける。此上ハ、心にかゝる事もなし 00061490L8とて、かきをきなどを、こまこまとして、女/房(はう)にわたし、 00061500L9しするをまつハかり(十九オ)なるか、此二三日、ちとしよ 00061510L10くがすゝむ、心もかるくなる、なとゝいふ内に、やがて本 00061520L11ぶくして、さて+めてたい事とて、ひしめく所に、おと 00061530L12こ、つく+とおもへは、此はなそげ/殿(との)を、あさゆふミる 00061540L13事ハ、なにとしても、なるましきとおもひ、ある時、女をち 00061550L14かづけて、申けるは、ちかごろ、めんぼくなき事にて候へ 00061560L15とも、そなたのはなをミれは、いのちいきのびて、うらめ 00061570L16しく候、とかく、申かねて候へとも、そもじは、ゐんきよし 00061580L17て、給ハれといふ。女/房(はう)聞て、(十九ウ)是はおもひもよらぬ 00061590L18事をおほせ候、むまれつきたるはななり共、此年月のなさ 00061600L19けハ有へし、ましてそなたのしわざなれハ、さほとミぐる 00061610M1しくおもはゝ、わ/殿(との)出よとて、ぶけう千万なり。おとこ聞 00061620M2て、/尤(もつとも)、りひにまがふ事ハなく候へとも、/只(たゝ)今までのなさ 00061630M3けに、ぜひ共、ゐん/し((ママ))よして給はれ、といへば、女、はら 00061640M4にすへかねて、所のしゆごへ申上けれハ、やがて、/両方(りやうほう)め 00061650M5し出し、御尋ねなさるゝ。其時おとこ、まかり出て申ける 00061660M6ハ、さいぜん、(二十オ)女ども申上候とをり、一&いつハ 00061670M7りこれなく候、しかれ共我ら、わかきものゝ事にて候へハ、 00061680M8あのごとくなるものを、朝ゆふ、ミ候はん事も、めいわく 00061690M9に存候、先ゐんきよ仕候やうにとの申分にて候間、おほせ 00061700M10付られて下され候へと申せハ、/奉行(ふきやう)きき給ひて、しはらく 00061710M11/分別(ふんへつ)して、かのおとこのはなをそげと、申付らるゝ。此男 00061720M12きもをつぶし、にげんとするを、とらへて、ずんとそいで、 00061730M13かの女にとらせて、此上ハ、たがひのうらミも、有まじき 00061740M14ぞ(二十ウ)とて、おつたてられ、すご+とかへりけるか、 00061750M15/男(おとこ)、心におもふやう、いや+此なりにては、よき女をま 00061760M16うくることは、成まじきとおもひ、たゞ、もとのめに、な 00061770M17かうどなしとて、はなそげ二人、手を引てかへり、それよ 00061780M18り、五百八十年まて。 00061790¥P150 00061800¥N34¥J 00061810¥X 00061820L1△物をかくには、くのきりやうが、せんじや。下京に、 00061830L2目くすし有。たれぬのに、かねこめくすりや、と有。三い 00061840L3ろまで、うり物の有とて、人&かいにくれ共、此内一色も 00061850L4なし。めいわくして、後(二十一オ)には、かねこ/目薬(めくすり)屋、 00061860L5とかくなり。 00061870¥N35¥J 00061880¥X 00061890L7△三井寺の/法印(ほうゐん)、/雨中(うちう)の御つれ+にとて、二/度(たひ)物おも 00061900L8ふと云/題(たい)を出し、是にて一/首(しゆ)づゝよミ給へとて、二人のち 00061910L9ごに仰けれは、 00061920L10△△大ちご△/春(はる)ハ/花秋(はなあき)はもミぢをちらさじと 00061930L11△△△△△△△△△△としに二たびものおもふなり 00061940L12△△小ちご△あさめしと又夕めしにはづれしと 00061950L13△△△△△△△△△△日&に二たひ物をこそおもへ 00061960¥N36¥J 00061970¥X 00061980L15△ちごと/法師(ほうし)よりあひ、でんがくをあぶり、△な(二十一ウ) 00061990L16にゝても、三つはねたる事をいひて、しやうくわんせんと 00062000L17いひて、うんりんゐんの、なんばんじんの、せんさんひんの、 00062010L18しんぜんゑんなどゝいひて、一くしづゝ、とられけるに、 00062020L19小ちこ、こんけんたんとて、二つ参る。是はといへハ、一 00062030M1つは、こげたをしうくにてくう、とおほせらるゝ。しんぼ 00062040M2ちハ、一つもえくハず。はや/残(のこ)りすくなになる。おもひ出 00062050M3したるていにて、ちやんうんすん、といひさまに、十はか 00062060M4り、ひつたくりて、やがて、しやうくわんいたす。(二十二オ) 00062070¥N37¥J 00062080¥X 00062090M6△又ある夜、でんがくをして、しうくにて、/賞翫(しやうくハん)するに、 00062100M7△△大ちご△△きよもりの/長刀(なきなた)△なんそ△いつくしま 00062110M8△△しんぼち△/仏(ほとけ)のつふり△なそ+△ミくし 00062120M9△△小ちご△△いしやのほんぞん△なそ+△やくし 00062130¥N38¥J 00062140¥X 00062150M11△たいらの大じやう/入道殿(にうたうとの)の御/馬(むま)の/尾(を)に、一夜の間に、 00062160M12ねずミかすをかけ、子をうミたると、/平家(へいけ)物かたりにある 00062170M13が、むかしハ、か様のふしぎか、さま+あつたと聞たる 00062180M14か、今時ハ、さやうの事ハなきといふ。有人聞て、是さの 00062190M15ミ、ふしぎ(二十二ウ)にてもない。なせに。我ら、せがれ 00062200M16の時のあたまのかミに、なにとしやうやくしても、何時に 00062210M17よらず、むしの子の五合や三合ハ、あつたほとに。 00062220¥N39¥J 00062230¥X 00062240M19△あるちしきの御内に、久しくめしつかはれし六十あま 00062250¥P151 00062260L1りのしやミ、有時、/長老(ちやうらう)さまへ、御そせう申けるは、我ら 00062270L2久しくめしつかはれ、此年に成候へとも、つゐに、御しめ 00062280L3しをもうけず、あまりにあさましき御事にて候、おそれな 00062290L4がら、一そく御さづけ候へかしと申。長/老(らう)きこしめして、 00062300L5(二十三オ)それはやさしき事、こなたへと、めしあけられて、 00062310L6しやうじ一大事のわをさづけ給ふ。かたじけなきとて、御 00062320L7/前(まへ)をまかり立けるか、しばらくして、まかり出、はや+ 00062330L8さんじ申て候、しやうじ一大事は、みそにて御座候、ミそ 00062340L9がわるけれハ、しやうじのしたてハ、くわれぬと申た。長 00062350L10/老(らう)、きこしめして、さて+、是ほどのあたりハ、だるま 00062360L11もなるまい。 00062370¥N40¥J 00062380¥X 00062390L13△けふは、おやの日じやとて、寺へ参けれは、御/坊(はう)の 00062400L14(二十三ウ)御/留主(るす)と見えて、げんくわんがあかぬとて、くり 00062410L15の口から、めんざうへ、つゝとゆく。折ふし/坊主(はうす)は、あは 00062420L16びのわたあへの、りやうりをなさるゝか、だんなに見付ら 00062430L17れ、かくすべきやうハなし、まへにきつとかまへて、さ 00062440L18て+、きとくの御参りにて候。内&けふは、御しんぶさ 00062450L19まのめい日にて候ほとに、さだめて、御参りなされうと/存(そんち) 00062460M1/酒(さけ)は/用意(ようい)仕候へとも、しやうじんのさかなにてハ、酒かのま 00062470M2れぬと、つね+御申候ほとに、えんとりをして、(二十四オ) 00062480M3是をとゝのへたると申さるゝ。だんな聞て、それハ御心に 00062490M4かけられ、/過分(くわふん)にハ候へとも、おほせらるゝごとく、けふ 00062500M5はおやの日にて候、御めんなされよといへは、其時うろた 00062510M6へて、まことに、しつねんいたし候、さて+ぶてうほう 00062520M7や、是をとつて、子もちにくはせよ、なまミだ、といはれ 00062530M8た。 00062540¥N41¥J 00062550¥X 00062560M10△ある寺に、あわびりやうりのさい中へ、だんな、ふと 00062570M11きたる。/坊主(はうす)、ぎやうてんして、此かいハ、目のくすりに 00062580M12て候と申か、まがしらにさし候か、又、ま(二十四ウ)じり 00062590M13にさし候か、といふ。だんな聞て、にくき事とおもひ、そ 00062600M14れは、めにより候、我ら見て、さして参らせんとて、あふ 00062610M15のけにねさせて、すに、しほの入たるわたを、あふはまぐ 00062620M16りに一はいほど、入けれハ、まなこの玉がぬくるとて、五 00062630M17たいをなげて、おめきける。其間に、しやうくわんして、 00062640M18我らがまなこには、口からさしたるが、ふさうたるとて、 00062650M19ミなしまふた。 00062660¥P152 00062670¥N42¥J 00062680¥X 00062690L1△又、ある/坊主(はうす)の、すゞのはちにて、なますをあゆ(二十五オ) 00062700L2る所へ、人の来れハ、ふと立て、かくさんとすれと、まぢ 00062710L3かくなれは、あたまにいたゞき、まづ此なりに、づきんを、 00062720L4女共にぬハするが、何と御座らふ、といはれた。 00062730¥N43¥J 00062740¥X 00062750L6△ゐ中より京へ、はじめてのほりたる人、まづ、せいぐ 00062760L7わん/寺(じ)へ参り、御まへなる、がくをみて、さて+見事な 00062770L8るしゆせきや、かいたり、せいの/字(じ)、くハんの/字(し)の/筆(ひつ)せい 00062780L9は、たぶん、すがうか/石(いし)ずりであらふ、とほめた。(二十五ウ) 00062790¥N44¥J 00062800¥X 00062810L11△あづまの人の物/語(かたり)に、しなのゝくに、そのはら山にて、 00062820L12たび人、わらんづをふミきり、とくさにてつくりて、はき 00062830L13ければ、ひた物に、あしのうらが、みがゝれて、やがて、 00062840L14あしくびばかりになりたるといふ。つくしの人、是を聞て、 00062850L15尤さこそあらふ、九/州(しう)にても、あんらく/寺(じ)のけんざんのて 00062860L16んもくを、夜ごとに、ねずミがきしりけるが、てんもくハ 00062870L17かたし、ねずミのはが、ひたものちびて、この程は、おば 00062880L18かりに成たる、といふた。(二十六オ) 00062890¥N45¥J 00062900¥X 00062910M1△きのふ、日よし大夫、くわんしんのふに、すミだ河を 00062920M2して、しばゐ中をなかせた。さりとてハ、めいじんじやと 00062930M3いふ。ある人、これを聞、あくる日さう+、けんぶつに、 00062940M4まづ、せんざいふ、おきなのまひもすぎて、さんばさうの 00062950M5なかばに、此人、さめ+となく。あたりなる人&、是は 00062960M6なにことぞといへば、あのすミた川かあはれにて、物もい 00062970M7ハれぬ。 00062980¥N46¥J 00062990¥X 00063000M9△おちごさま、おさとかふべんさに、はれかましき時は、 00063010M10なにもかも、かり物じや、からせられぬものハ、(二十六ウ) 00063020M11/じゞ((ママ))ばかりじや、あらしやうしやと、三/位(ミ)が、申せは、ち 00063030M12ごきこしめし、まことに口おしや、しゞも、おれがてハな 00063040M13いげなよ。それはなぜに。人かみてハ、むまの物じや+ 00063050M14とばかり、いふほとに。 00063060¥N47¥J 00063070¥X 00063080M16△よし/野(の)にての事なるに、あるわかきもの、山中にて、 00063090M17山のいもをほりけるが、ふかくねへいりけれは、うつふし 00063100M18になり、こしより上を、あなの中へ入、しりをもつたてゝ 00063110M19ほる。おりふし、山ぶしのとをりけるか、此ものゝしりを 00063120¥P153 00063130L1見て、日本一の(二十七オ)事とおもひ、むりにたしなませ 00063140L2てとをる。此をとこ、めいわくして、やう+あなよりお 00063150L3きあがる所へ、/友(とも)だちのきたりけれハ、さて+ふしぎや、 00063160L4たゝ今、我しりから、あれなる山ぶしが出て行が、なにと 00063170L5したる事ぞ、あとかそんじたるか、みてくれよといへば、 00063180L6友だち、さしうつふきて、しバらく見て、いや+又、/小(こ) 00063190L7山ぶしが出ると見えて、おくに、ほらの/□((かカ))いの、をとがす 00063200L8るぞ。 00063210¥N48¥J 00063220¥X 00063230L10△てんりう/寺(じ)の、さくげん/和尚(をしやう)へ、/信長公(のふなかこう)、御/尋(たつ)(二十七ウ) 00063240L11ね候ハ、なにとて、せけんに、大ちごを、どんに、小ちご 00063250L12をば、りこんに、いひならハし候、小ちごのなりあがりハ、 00063260L13大ちごよ、ちいさき時さへりこんならハ、せいじんにした 00063270L14がひ、いよ+りこんに成べきか、いかゞふしんじやと、 00063280L15おほせられけれハ、さくけん聞給ひて、尤の御ふしんにて 00063290L16候、我らもさやうに存候、しかしながら、小ちごの間ハ、 00063300L17いまださと心の御座候ゆへ、/武家(ふけ)のりはつ、身につきそふ 00063310L18て御座候が、寺じミてのちには、/長(なか)そで(二十八オ)の、な 00063320L19まぬるき立ふるまひをミなれて、をのづから、心をとり申 00063330M1かと存ると仰けれは、/信長(のふなか)、事のほか御きげんにて、一/段(たん)、 00063340M2尤の御へんたうやと、おぼしめしけれハ、ミな人&、かん 00063350M3ぜられける。 00063360¥N49¥J 00063370¥X 00063380M5△ともはやしとハ、ふしぎじや、/供(とも)ばかりにてよいに、 00063390M6はやしかいな物しや、といへは、ある人のざうり取が申け 00063400M7るハ、それこそ聞えて候へ、しうのめさるゝ時は、や、と 00063410M8いふて、はやすほどに。 00063420¥N50¥J 00063430¥X 00063440M10△ある人、久しきつれにはなれて、しうたんす(二十八ウ) 00063450M11る所へ、さるちしき御こしなされて、申されけるハ、御な 00063460M12げきは、尤なれとも、あふハわかれの、もとゐにて候、お 00063470M13ぼしめしきり給ひて、ふびんにおぼしめさば、御あとを、 00063480M14ねんごろに、御とふらひ候へと、けうくんあれハ、御/意(い)の 00063490M15ことく、わたくしも、さやうに存候へとも、あのむすめと 00063500M16もが、はたちにもたらずして、あのやうなる、ありさまを 00063510M17ミれは、ぼんのうがおこりて、身のをき所が御/座(さ)ないと、 00063520M18申された。 00063530¥P154 00063540¥N51¥J 00063550¥X 00063560L1△ある人、さん+にわづらひ、いしやをよひ、ミやく 00063570L2を(二十九オ)とらせけれハ。是は大/事(じ)の御わづらひにて候、 00063580L3一/義(き)を御ひかへなくハ、御くすりハ、しんする事成ましき 00063590L4と申されけれハ、其/段(たん)ハ御きづかいなされそ、はや二三年 00063600L5も、其かたは御/座(さ)ないと云。それハきどくの御事じや、さ 00063610L6らばまづ、くすりを参らせう、此かげんをみて、かさねて 00063620L7仰られ候へと云。御ついでに、女共のミやくをも、おそれ 00063630L8申せとて、よび出す。くすし、此ミやくハ、くわいにんの 00063640L9心もち御座ある。是はくるしうも(二十九ウ)おりないが、 00063650L10ていしゆの其きしよくにて、あのやうなれば、中&、りや 00063660L11うぢがなるまい、と申さるゝ。ていしゆ、めいわくして、 00063670L12それは、我らが子にては御/座(さ)あるまい、といはれた。 00063680¥N52¥J 00063690¥X 00063700L14△むかし、下京に、/道無(たうむ)といふ/者(もの)あり。よきむすめをも 00063710L15つて、よき所へ、きもをいらふといへば、いかほどの/身上(しんしやう) 00063720L16ぞと云。四/国(こく)のぬしにてあつたが、今程は、らう人じやと 00063730L17云。道無聞て、さて+きやうこつや、十/石(こく)とる人にさへ、 00063740L18やらぬものをとて、(三十オ)中&、きゝもいれなんだ。 00063750¥N53¥J 00063760¥X 00063770M1△あるもの、むこ入をするとて、/先&(まつ+)、あん内のために、 00063780M2女ばうをさきへやりける。しうと、まんぞくして、様&の 00063790M3よういをする。さて、むすめをちかづけて申けるは、そち 00063800M4のハ、なにゝてもげいが有か、といへは、むすめ聞て、た 00063810M5いこが/上手(しやうす)しやが、ミなかねをもちて、ならひにくるとい 00063820M6ふ。それハ心にくい事じや、さらバ、やくしやを、あつめ 00063830M7よとて、方&より、それ+の、けいしやをあつむる。さ 00063840M8て、むこ(三十ウ)殿御出にて、三&九/度(と)の、しうけん過て、 00063850M9しうと申されけるは、むこ殿のたいこ、うけたまはりをよ 00063860M10びて候、なにか一ばん、あそばせとて、たいこを出す。大 00063870M11/御酒(こしゆ)に、たべゑひて候へ共、御/所望(しよもう)を仕らねハ、/慮外(りよくわい)にて 00063880M12候ほどに、そといたさうとて、大かたぬぎ、かたばちおつ 00063890M13とつて、なむあミた+と、六さい/念仏(ねんふつ)を、たか+と出 00063900M14しけれハ、座中(さちう)の人&、けうをさましける。 00063910¥N54¥J 00063920¥X 00063930M16△ある人、わかしゆの御/尋(たつ)ねをえて、さてもかたし 00063940M17(三十一オ)けない事やとて、色&の御ちそうを申。なににて 00063950M18も、御さかなは、御/座(さ)なけれ共、/御酒(こしゆ)一つ申さんとて、さ 00063960M19ま+に、すゝめ申せハ、ざうり取の三八か、ふと罷出て 00063970¥P155 00063980L1申けるは、さやうに酒な御しゐなされそ、けさも、とつく 00063990L2りをふつてみて、酒かないとて、さゝのミを参りて、今に 00064000L3かほがあかい、と申た。 00064010¥N55¥J 00064020¥X 00064030L5△有ひんそうが、わかしゆに、くびだけうちこうて、ふ 00064040L6ミのかよひハ、かずしらず。又このわかしゆに大名のほれ 00064050L7られて、わかしゆのかたへの、ゐん(三十一ウ)しんに、てい 00064060L8かの卿のしきしを御手本にとて、をくり給ふ。かのひんそ 00064070L9う是をきゝ、われもまけじとおもひて、こうぼう大/師(し)のし 00064080L10んぎやうのきれを、三くだりばかりもとめ出して、をくら 00064090L11れた。又大名より、かたな、わきざしを、いかにもけつかう 00064100L12につくらせて、をくらるゝ。かの/坊主(はうす)是を聞て、あきれて 00064110L13ゐたりしか、おもひ出したる事有、かミそりを取出し、是 00064120L14をつくらせてやらんとて、折ふし、だんなの内に、しろかね 00064130L15さいくの人有けるを、よびに(三十二オ)つかハし、申されけ 00064140L16るハ、此かミそりを、さるかたへ、ゐんしんに参らせ候か、 00064150L17此まゝにてハ見ぐるしく候ほどに、はゞきなと御かけ、又、 00064160L18白さやぬりなとハ、其方御/存(そんち)のかたへ、あつらへて給はれ、 00064170L19又さくりやうの/義(き)ハ、だんな/衆(しゆ)の内に、わづらひ、/万事(ばんじ)か 00064180M1きりの人有、此人しなれたらバ、ふせなども、一かと御/座(さ) 00064190M2らふほとに、其時ミな+、すまし申さう程に、只へんし 00064200M3も、御いそき有て給はれ、といふ。しろかねやの太郎兵へ 00064210M4申けるハ、むかしより、かミそり(三十二ウ)に、さきなし 00064220M5とやらん、さやなしとやらん申、其上わたくし、さいくに 00064230M6は、中&仕りつけぬ物にて候ほどに、たゝおぼしめし御と 00064240M7まり候へ、と申せハ、ひんそう、ずんど思ひきりて、 00064250M8△△なに事も人にまけじとおもへとも 00064260M9△△△こがねがたなで手をぞつきける 00064270M10此哥をよミてをくり、やかて思ひきられた。 00064280¥N56¥J 00064290¥X 00064300M12△次郎といふ子、寺より、きよがきをしてかへり、おや 00064310M13共にミせければ、さて+うれしや、よき(三十三オ)手にな 00064320M14らふとて、よろこふ。/母(はゝ)おや申けるハ、手ばかりにてもな 00064330M15い、おとな心もあるとみえた。なぜに。/清書(きよかき)のおくに、あ 00064340M16なかしこ、じらふ、と有/程(ほと)に。 00064350¥N57¥J 00064360¥X 00064370M18△小ちごの御ねがひ事に、もちや、まんぢうに、さねが 00064380M19あらハよからふ、と申されけれハ、大ちごの申されしは、 00064390¥P156 00064400L1もちも、まんぢうも、さねのなきゆへに、ほんさうすれ、 00064410L2さねか、なにの/用(よう)にたち候ぞ。小ちご聞て、それハたりう 00064420L3じや、さねがあらバ、うへて、花見してあそび/度(たき)、と申さ 00064430L4れた。(三十三ウ) 00064440¥N58¥J 00064450¥X 00064460L6△そこつなるわかしゆ、もちを参るとて、物かずを心か 00064470L7け、あまりふためひて、のどにつまる。人&しやうしがり 00064480L8て、くすりを参らせても、此もちとをらす。なにかといふ 00064490L9内に、天下一のまじなひてを、よびけれハ、やがてまじな 00064500L10ふて、そのまゝ、ちりげもとを、一つたゝきけれは、りう 00064510L11ごのごとくなるもち、三けんあまりさきへ、とんて出る。 00064520L12ミな人&是をみて、さてもめでたい事じや、此まじない、 00064530L13ちとをそくは、あぶなかつたが、さりとては、天下一ほ 00064540L14(三十四オ)どある、といへば、わかしゆ聞給ひて、さのミ、 00064550L15めいじんにてはない、あつたら物を、内へ入やうにしてこ 00064560L16そ、天下一よ、二でもない、といはれた。 00064570¥N59¥J 00064580¥X 00064590L18△あるわかしゆ、ねんじやとねて、あかつきがたに、身 00064600L19をつばきにてぬらし、さて+/夢(ゆめ)を見て、あせをかいた、 00064610M1といはれた。ねんじや聞て、それハなに夢ぞといへば、わ 00064620M2れらかたへ、そなたから、大なるのしつけをこしらへ、是 00064630M3をさせと、おほせらるゝを、いやといふて、かへせば、又、 00064640M4むりにとらへて、おびにさ(三十四ウ)させらるゝ、なにとぞ 00064650M5して、是を返したいと思ふて、あなたへをし、こなたへを 00064660M6し、くたびれた、とかたられた。ねんじや聞て、/惣(そう)して、 00064670M7/春(はる)の/夢(ゆめ)は、あはぬ物じや、きづかひなされそ、といはれた。 00064680¥N60¥J 00064690¥X 00064700M9△おハりのなごやへ、/西国(さいこく)の大/名衆(ミやうしゆ)、御見まひの時、さ 00064710M10ま+の御ちそう有。下&のものをば、町中より、しいた 00064720M11しに仕れとて、こんたてをかきて、出さるゝ。 00064730M12△△にんじんじる△なますふな△やき物さけ△さしミこい 00064740M13△△ひきてうづら 00064750M14などとて、(三十五オ)さま+有。はうちやう人共、是を 00064760M15みて、いづれも、やすきこしらへにてハ、候へとも、二百 00064770M16人、三百人のしるに、にんじんをかいあつめ候ハゝ、十き 00064780M17ん、二十きんにてハ、中&たり申まじきが、此/義(き)、御わび 00064790M18ことあれかしと、申けれハ、御ぶぎやう衆へ、町中の年よ 00064800M19り共参り、そせう申けれハ、/奉行(ふきやう)衆わらひ給ひて、尤、そ 00064810¥P157 00064820L1せう聞わけた、大こんしるにてゆるす、とおほせられた。 00064830¥N61¥J 00064840¥X 00064850L3△いかにも、がんしよくおとろへ、らう+としたる 00064860L4(三十五ウ)人、たけだ/法(ほう)げんへ参り、ちと、きこんのおつる 00064870L5御くすりを、申うけたいといふ。法げん、これを聞給ひて、 00064880L6さて+、御ミかけとハ、ちかふたる、御のぞミかなと、 00064890L7ふしぎなるよし、仰られけれハ、此やせ/男(をとこ)、いや+、そ 00064900L8れがしか用にてハ、御/座(さ)ない。/女(をんな)共に、あたへ候と申た。 00064910¥N62¥J 00064920¥X 00064930L10△中むかしの事にや、しなのゝ国にて、ある人、/主人(しゆしん)を 00064940L11申入んとて、おハりのあつたへ、なまたいを、とゝのへに、 00064950L12つかハしけるが、此つかひのもの、たいといふ物(三十六オ) 00064960L13をしらず、やう+あつたにつきて、うをや町にゆき、い 00064970L14かにも、たか+と、たいかを+、とよはゝる。うをや 00064980L15是を聞て、これほどおほき、たいをかはずして、たいかを 00064990L16+といふハ、さだめて、/遠国(をんこく)のものよと心え、たいとな 00065000L17づけて、いかにも大きなる、にしをうる。此もの、いそぎ 00065010L18かへるほとに、/殿(との)の御出なさるゝあさ、参りつく。ていし 00065020L19ゆ、これを見て、是はたいにてハないぞ、まどひきといふ 00065030M1物じや、といふて、つかひの者を、さん+にしかる。 00065040M2(三十六ウ)はうちやう人是を見て、これは、たいにてもなし、 00065050M3又、まどひきにてもない、是は、おにのきこぶし、と云も 00065060M4のしや、といふ。又あるさふらひの、申さるゝは、さたの 00065070M5かぎり、ミな+ハ、是を御/存(そんち)なきか、これハ、へふぐり 00065080M6といふ物しや、と云。まどひきの、おにのきこぶしの、へ 00065090M7ふぐりなとゝいひて、色&せんぎ、まち+する所ヘ、/殿(との) 00065100M8の御出ある。ていしゆ、御むかひに罷出、今日の御こし、 00065110M9かたじけなきよし申上る。又御ちそうのために、おハりへ、 00065120M10さい(三十七オ)ぜんより、たいをとゝのへに、つかハして候 00065130M11か、たいにてハ御/座(さ)ないかと存る、色&の/名(な)をつけたるよ 00065140M12し、申上る。さらバそれを見う、とおほせられければ、や 00065150M13がて御目にかくる。/主人(しゆしん)御らんじて、ミな+は、/遠国(をんこく)に 00065160M14すミ候とて、是ほどのうをの名を、しらぬか、是ハ、まど 00065170M15ひきにてもなし、おにのきこぶしてもなし、又、へふぐり 00065180M16にてもない。これは、にかわときと、いふものじや、と申 00065190M17された。(三十七ウ) 00065200¥N63¥J 00065210¥X 00065220M19△ある人、にはかに、くすしを心がけ、いしよをあつめ、 00065230¥P158 00065240L1そろ+よみて、がてんのゆかぬ所に、つけかミを付る。 00065250L2女ばう、是をミて、そのかミは、なぜに、付させらるゝ、 00065260L3ととへば、おとこ聞て、是ハふしんかミとて、がてんのゆ 00065270L4かぬ所に付て、後にししやうにとふためにつける、それに 00065280L5よりて、ふしんかミと云。女ばう聞て、中&の事じや、おれ 00065290L6もふしんがあるとて、かミをすこしひきさきて、つはきを 00065300L7つけ、おとこのはなのさきに、ひたと(三十八オ)付る。是は 00065310L8なに事のふしんそ、我らがはなに、ふしんハあるまいと云。 00065320L9女ばう聞て、其事じや、世上に申ならハし候は、おとこの 00065330L10はなの、大きなるは、かならず、かの物か大きなるといふ 00065340L11が、そなたのはなハ大きなれとも、かのやつハちいさい、 00065350L12これかふしんじや。おとこ聞て、尤じや、又我らもふしん 00065360L13があるとて、女はうのほうさきに、かミをひたと付る。是 00065370L14ハ何のふしんぞと云。おとこ聞て、世にいひならハし候は、 00065380L15ほうさきのあか(三十八ウ)きものは、かならず、へゝかくさ 00065390L16いといふが、そなたのほうハしろけれど、へゝがくさいと 00065400L17いふた。 00065410¥N64¥J 00065420¥X 00065430L19△あるもの、/火事(くわし)にあひけるを、ミまひにゆきけれは、 00065440M1其女ばう申けるは、何にても、おしきものは御/座(さ)ないが、 00065450M2こきん、まんえう、いせ物かたり、是三いろをやきたるか 00065460M3何よりもおしきと、いふたるよしを、/友(とも)だちの所にて、か 00065470M4たり出/□((てカ))、さて+、やさしき事かな、さほどなる身上に 00065480M5てもなかつたが、さだめていにしへよき人のむ(三十九オ) 00065490M6すめか、又ハ名ある人のかくれた物共にてあらふと、此女 00065500M7ばうを事のほかにほめけれハ、此ともだちの女ばうつく 00065510M8+と聞て、我もいゑをやきてほめられんとて、あやまち 00065520M9のよしにて、其夜、/家(いゑ)に火をつけ、こと+くやく。さて、 00065530M10あくる日、しる人、しよしんるい、あつまりて、さて+ 00065540M11にが+しき事かなと、いひけれハ、この女ばう、いひけ 00065550M12るは、なにゝても/別(へち)におしきとおもふ物はないが、こぎね、 00065560M13まどこも、いせすりばち、是(三十九ウ)三色か、おしい事 00065570M14じやとて、ないた。 00065580¥N65¥J 00065590¥X 00065600M16△あるびくに、よりあひて、色&の物かたりをして、あ 00065610M17そばれたる所へ、わやくなるものゆきて、戸のふしあなよ 00065620M18り、わたくし物を、いかにもみことにしたてゝ、によつと 00065630M19出す。あるじのびくに是をミつけて、やれ+こゝへ、何 00065640¥P159 00065650L1やらしらぬむしめか出た、そこなかなひばしを、やいてお 00065660L2こさい、とりてすてふといふ。かなひばしのくるをとを聞 00065670L3て、かの物をひきければ、ひくに、うろたへて、今まてこ 00065680L4ゝ(四十オ)にあつた、まらがない、といはれた。 00065690¥N66¥J 00065700¥X 00065710L6△又あるびくに、三人づれて、とをりけるか、道ばたに、 00065720L7馬めが、かの物をおやして、をりけるを、びくに共、しり 00065730L8めにかけて、さらぬかほにてとをりけるが、さきなるびく 00065740L9に、こらへかね申けるハ、今の物ハ、さても見事や、いざ 00065750L10めん+に、名をつけうと申。あとなるふたりのびくに申 00065760L11けるハ、さてさて、よく御心がついた、先&さきより名を 00065770L12つけさせられよといふ。さらバ我ら、申出した事(四十ウ) 00065780L13じやほどに、つけ申さうが、よからうかしらぬとて、九ほ 00065790L14んと付られた。其いはれハととへは、さけは、ひるのミて 00065800L15も、よるのミても、のミさへすれば、心がいさミて、おも 00065810L16しろひ、其上さけハ、三&九どとて、こんかずハさだまり 00065820L17て、九たびかほんじや、それより上ハ、あなたの、きこん次 00065830L18第じや、これほとよいなハあるまいといふた。中なるびく 00065840L19に申けるは、むめぼうしと付る。其いはれハとゝへハ、見る 00065850M1たびことに、つがひかるゝといふ。あとなるひく(四十一オ) 00065860M2に、はなげぬきと付る。なぜにといへば、ぬくたびになミ 00065870M3だおつるといふた。 00065880¥N67¥J 00065890¥X 00065900M5△ある女ばう、/河(かは)へせんだくせんとて/行(ゆき)けるが、何とし 00065910M6てか、女のさねを大きなるかにがはさミて、なにとしても 00065920M7はなさず。女ばうめいわくして、先&いゑに帰り、物によ 00065930M8りかゝりて、色あをくなりてをりけるか、おとこよそより 00065940M9/帰(かへ)りて、是はあやまちをしたるか、又はくらんけかといへは、 00065950M10女ばう聞て、ありのまゝにいふ。それハいま(四十一ウ)だ 00065960M11はなさぬかとて、女はうのまへをひきあけて見れハ、した 00065970M12ゝかなるかに、こゝをせんとはさみてをりけるか、おとこ、 00065980M13色&さま+の、さいかくをすれ共、此かに、すこしも、 00065990M14くつろげず。あたりの人の申けるハ、あなをのぞミてつき 00066000M15たる、いきりやうにて候程に、きたうをさせて見よと、申 00066010M16けれハ、尤とて、あたりに山ぶしの有けるを、よびにつか 00066020M17ハして、女のまへをひろげて、いのる。此かに、しやくでう 00066030M18のをとにおとろきて、なを+しむる。(四十二オ)いかゞ 00066040M19せんと、せんぎまち+しけるか、山ふし申やう、わたく 00066050¥P160 00066060L1し是まて参り、むなしくかへり候まじ、しよせん此かにを 00066070L2かミわりて、すてんとて、大口あきて、またぐらへさし入、 00066080L3かミつかんとしけれは、かた+のはさミにて、山ぶしの 00066090L4ほうさきを、しかと、はさミける。色&、さいかくすれと 00066100L5も、両方ながらはなさす。女ばう思ひけるハ、かにのつら 00066110L6に、しゝをしかけてミんとて、したゝかにしけるか、山ぶ 00066120L7しのかほにかゝる事、ひとへに、たきにうたるゝ(四十二ウ) 00066130L8ごとくなり。おとこ是をみて、女どものさねの事ハ、はさ 00066140L9ミきり候共、いまたよけいか有ほとに、くるしうも御/座(さ)な 00066150L10いか、お山ぶしのかほに、ししのかゝりたるが、何よりめ 00066160L11いわくいたいたといへは、山ぶし聞て、しゝのかゝつたも、 00066170L12かにのはさミたるも、くるしうも御座ないか、御/内義(ないき)さま 00066180L13の、へゝのくさいで、はなが、もげていぬる、といふた。 00066190¥N68¥J 00066200¥X 00066210L15△ある人の女はう、はらをさい+いたかりけれは、つ 00066220L16ね+、はりたてをよひて、たてさせける。有(四十三オ) 00066230L17時、又はりをたてんとて、女ばうを、あふのけにねさせて、 00066240L18けふハどこらがいたう御/座(さ)ると、とひけれハ、おびしより 00066250L19下がいたいといふ。心え申/□((とカ))て、ほその下にたてんとて、 00066260M1そろ+さぐりける所へ、まだらねこ来りけるを、はりた 00066270M2て、是をみ/□((てカ))、さても+よいけや、これほどなけはある 00066280M3まいと、ねこをほめけれハ、そばにて、おとこ聞て、わが 00066290M4女ばうの、へゝのけの事とおもひて、はりたてをよせなん 00066300M5/□((だカ))(四十三ウ) 00066310¥N69¥J 00066320¥X 00066330M7△ぢしんゆり候あくる日、もんぜきさまへ御ミまひに、 00066340M8かたこといひ二人つれたちて、参りけるに、すなはち御目 00066350M9にかゝる時、両人の内一人申さるゝハ、さて+ゆふべハ、 00066360M10大づすんがゆりまして御/座(さ)る、といふ。今一人申やうハ、 00066370M11まことに大なゆがゆりまして、御きもがつぶれうと申。も 00066380M12んぜきお/□((かカ))しくおほしめし、御へんたうに、なゆやら、づ 00066390M13すんやら、世がねつするかと思ふた、と仰られた。 00066400¥N70¥J 00066410¥X 00066420M15△大ちご小ちご、ふじの山にゆきの有を御/覧(らん)し、(四十四オ) 00066430M16大ちごの申さるゝハ、いかに小ちご、これほとなるめしハ 00066440M17なるまいかと、申されけれハ、小ちご聞て、なにとあらふ 00066450M18ぞ、とろゝじるならバ、ねらふて/□((ミカ))う、と申された。 00066460¥P161 00066470¥P71¥J 00066480¥X 00066490L1△ある人申されけるハ、わらべを風の/子(こ)と申ハ、なにと 00066500L2したる事ぞ、とふしんしけれハ、こざかしきもの申やうは、 00066510L3ふうふのあひだの子なれは、風の子といふ、とこたへた。 00066520L4よきへんたうの。 00066530¥N72¥J 00066540¥X 00066550L6△むかし、さがのてんわうの時、/無悪(むあく)/善(せん)と、らく(四十四ウ) 00066560L7しよをたてた。御ふしんなされ、あるほどの物しりをよせ 00066570L8て、御よませ候へども、さらにこれをあかすものなし。こ 00066580L9ゝに、をのゝたかむらと申ものまかり出て、無悪善、と 00066590L10よミた。其時みかど、げきりんなさるゝハ、たかむらより 00066600L11はるかものしりさへ、えよまぬ物を、此もの、よミ申たる 00066610L12ハ、さだめて、其たかむらかたてつらんと、すでにるさい 00066620L13におよびける時、たかむら申けるハ、物をしり候へハ、け 00066630L14つく、ざいくわにおこなはるゝ事、めいわく(四十五オ)の 00066640L15よし、申上けれハ、物をしりたらバ、さらバなににても、 00066650L16むつかし/□((くカ))よまれぬことを、たくミて、よませ候へと、物 00066660L17しりどもに、仰つけられけれバ、子の/字(じ)を六つかきて、御 00066670L18よませ候へは、たかむら、なんなくよミけるほどに、さて 00066680L19は物しりと仰られて、るざいを御ゆるしなされた。 00066690M1△△/子(ね|し)△子(この|しの)△子(この|この)△子(こ|こ)△子(ね|し)△子(こ|し) 00066700¥N73¥J 00066710¥X 00066720M3△ある人、いかにもうつけたるわかたうを、よそへつか 00066730M4ひにやり、かへりて返事を申上た。/□((さカ))て、(四十五ウ)ふるま 00066740M5ひにあふたかと、とはれけれハ、/色&(いろ+)、けつかうのふるま 00066750M6ひに、あひたると申。さてこんだてをとはれけれハ、さい 00066760M7とも、ミな+かたる。しる/□((ハカ))と、たづね申されけれハ、 00066770M8かのうつけ物、いひかねて、かほあかめた。何とて申さぬ 00066780M9ぞととがめ申けれハ、はゞかりに御/座(さ)候ほどに、申されぬ 00066790M10といふ。しるに何のはゞかりのあるべき、いそぎ申せ、と 00066800M11有けれは、其時、ふるひ+、わらびのおしるにて、御/座(さ) 00066810M12候と申。/主人(しゆしん)きゝて、其しるに、なにの(四十六オ)はゞか 00066820M13りの有とて、わらはれけれハ、其時かのもの申やう、わハ 00066830M14わこさまのわ、らハとのさまのら、びハかミさまへさしあ 00066840M15ひ申、といふた。さてもこまかに/気(き)をつけたの。 00066850¥N74¥J 00066860¥X 00066870M17△くわんばくひでつぐ/公(こう)の御はなしの/衆(しゆ)に、そろりと申 00066880M18もの、あまりよくはなしを仕候ゆへ、ある時はなしにつま 00066890M19り候やうにと、おほしめして、あさのねおきに、いまだか 00066900¥P162 00066910L1ほをもあらはず、めをする+、とりミだしたるていにて 00066920L2ありけるに、何かはなし(四十六ウ)/□□((申せカ))と仰られけれは、 00066930L3にはかにつまりて、ゆめ物かたりをかたり出しけるは、さ 00066940L4てもこよひ、ゆめを見て御/座(さ)候か、ある所へゆき候へハ、 00066950L5道にこがねがおびたゝしくおちて御座候ほどに、さてもう 00066960L6れしき事かなと/存(そんし)、おもふぞんぶんにひろひ申、かへる所 00066970L7へ、おとしたるぬしきたりて、とりかへさんとおひかけ候 00066980L8ほどに、あせ水になりてにげ候へとも、すでに、おいつき 00066990L9さうに御座候とき、あまりめいわくいたし、はこをたれて、 00067000L10御座候(四十七オ)が、目さめて、かのかねをさぐりてミれ 00067010L11共、かねハあとかたちもなくて、はこはしたゝかたれてあ 00067020L12つた、と申あけた。 00067030¥N75¥J 00067040¥X 00067050L14△ある大ぶんげんしや、きたうのためにれんがをせんと 00067060L15て、れんがしをあつめ申された。又、そのむかひどなりに、 00067070L16いかにもすりきりたるれんかの上/手(ず)あり。それも、其日の 00067080L17れんじゆにくはゝりた。さて、そうしやう申されけるハ、 00067090L18御きたうのことに御ざ候程に、ていしゆより/発句(ほつく)御出し候 00067100L19へ(四十七ウ)と申されけれハ、其時、ていしゆ、 00067110M1△△あさぐもり又しこでろとて人だます 00067120M2と、/発句(ほつく)を出した。/座中(さちう)けうをさまして、あきれられた。 00067130M3その時、かのむかひのれんがし、せうしがりて、句をなを 00067140M4しければ、ていしゆ、はらをたて、わかくをなをそうより 00067150M5も、まつ、をのれが/家(いゑ)のやねをふけ、といはれた。いかい 00067160M6ふくりうの。 00067170¥N76¥J 00067180¥X 00067190M8△あるふうふのもの、一ぎをするたび+に、女バうにい 00067200M9ふやうハ、そちが物ハさがりて、下につきて(四十八オ)しに 00067210M10くい、といひけるを、となりのものたち/聞(きゝ)に、さい+き 00067220M11ゝた。ある時かのをとこ、よそへゆきてるすの時、かのと 00067230M12なりのたち聞したるおとこ、るすの女ばうの所へゆきて申 00067240M13けるハ、われわれハ、ちとよそへ参り候程に、あとをたの 00067250M14むと申ければ、なに事に、いつかたへゆき給ふそと、とひ 00067260M15けれハ、其事じや、よそに、うしのへゝかさかりたる程に、 00067270M16あげてくれよといふ程に、あげにゆくといふ。かのしたに 00067280M17つきたる女ばう、なの(四十八ウ)めによろこび、申やうハ、 00067290M18人のは、なをり申まいかといふ。うしさへなをし候ほとに、 00067300M19人のハ猶&やすく候、と申けれハ、はつかしき申事にて候 00067310¥P163 00067320L1へとも、われらか物かさがり候とて、これのか、つね+ 00067330L2きらはれ候ほとに、あげて給ハり候へと申けれハ、心え候 00067340L3とて、しりにこまくらをさせて、したゝかにくはせた。さ 00067350L4ても、かしこいやつの。 00067360¥N77¥J 00067370¥X 00067380L6△あるもの、ひる、一ぎをくわたてんとおもへとも、子ど 00067390L7も二人ありけれハ、ならず候程に、なにとかし(四十九オ)て、 00067400L8子どもをつかひにやり候ハんとふんべつして、申やうハ、 00067410L9此かなわを、おとゝいして、なかになふて、川へゆきてあ 00067420L10らへと申ければ、心え候とて、あらひにゆく。くはたてゝ、 00067430L11しミたるさいちうに、子とも、ふたりなからかへりた。お 00067440L12やともうろたへて申やう、何とて、かなわをハあらひ候ハ 00067450L13て、かへりたるぞと、しかりけれハ、あにむすこ申けるは、 00067460L14よそにも、ひるつびがはやるやら、川に、かなわあらひが 00067470L15つかへて、あらハれぬほとに、か(四十九ウ)へりたといふた。 00067480¥N78¥J 00067490¥X 00067500L17△ある女ばう、十ばかりなる子をだいてねた。さて、子 00067510L18がねいりたるかとおもふて、おとこの所へゆきた。おとこ 00067520L19いふやうハ、かめぢよがめがあかうか、なにとしてきた、 00067530M1といひければ、そつとぬけてきたといふ。さて一ぎをくは 00067540M2たてゝ、しミたるさいちうに、かめぢよ、そはへよりけれ 00067550M3ば、はゝおや申けるハ、われはなにとてきたといひければ、 00067560M4かめちよ申けるは、おれも、そつとぬけてき(五十オ)た、 00067570M5といふた。 00067580¥N79¥J 00067590¥X 00067600M7△あるぶげんしや、むすめを二人もちけるが、あねハ十 00067610M8八、いもとは十五になる。此/家(いへ)のきたう/坊主(はうす)、ひえの山の 00067620M9ざすにて、つね+きたうによひけるが、ある時、てゝお 00067630M10や申されけるは、我ハなにゝても思ふ事ハなきか、むすこ 00067640M11をもたぬが、何よりめいわくにて候が、もし/御坊(こはう)さまの御 00067650M12きたうのちからにて、あのむすめともを、をのこゞに御な 00067660M13し候事ハなるまいかと、申され(五十ウ)けれバ、ざす申さ 00067670M14れけるハ、それハ、やすき事にて候、御きやうにも、へんじ 00067680M15ようなんしのはうとて御/座(さ)候、御むすめご二人ながら、し 00067690M16ものばうまて給ハり候へ、いづれなりとも、きようのかた 00067700M17を、おとこになし申さんと、申されけれハ、ふうふなから、 00067710M18なのめならずよろこひ、むすめともを、つかハしける。さ 00067720M19て、ざす、きやうだいのむすめを、へち+にをき、おも 00067730¥P164 00067740L1ふほどたくりて、あき候時、なにといのり候ても、おとこ 00067750L2にハなり申さす候まゝ、その(五十一オ)方のゐんぐわとお 00067760L3ぼしめせとて、さとへかへされた。其ときおやども、むすめ 00067770L4にいふやうは、なにといのられたか、又、さもなかりける 00067780L5かと、申されければ、いもと申やうは、御はうさまも、いろ 00067790L6いろせいを出し、よるひる、しゞをうへ給へとも、はへつ 00067800L7かな/つ((ママ))た、といひけれハ、あねむすめ申やうは、はへつか 00067810L8ぬもたうりじや、さかさまにうへられたほとに、といふた。 00067820¥N80¥J 00067830¥X 00067840L10△よし/田(た)殿の山に、松だけはへ候へとも、松たけの 00067850L11(五十一オ)有よし、よそへ聞え候へは、あしきとて、おんミ 00067860L12つなさるゝ。さりながら、長をかゆうさいへは、すこしつ 00067870L13かハさるゝとて、これハわれらが山におえ候へとも、世上 00067880L14へハおんミついたし候へども、其/方(ほう)へハしんじ候、よそへ 00067890L15御かくし候へとて、つかハされけれハ、ゆうさい、きやう 00067900L16かをあそばされた。 00067910L17△△松だけのおゆるをかくすよしだ殿 00067920L18△△△わたくし物と人やいふらん 00067930¥N81¥J 00067940¥X 00067950M1△ある人わづらひ、さん+なりければ、くすしき 00067960M2(五十二終オ)たり。一ミやくとりて、くすりをあたへ、いろ 00067970M3+のどくだちをかきつけけるに、一ぎの事ハ、しんるい 00067980M4もミる事ありとて、かきつけざれば、くるしからずとてつ 00067990M5ゝしまざるゆへ、もつてのほかさいほつす。くすしきたり 00068000M6て、さたのかきりとしかりけれは、 00068010M7△△どくだちのうちならばこそあしからめ 00068020M8△△△そゝはなにかはくるしかるべき(五十二終オ) 00068030¥P165 00068040¥T1きのふはけふの物語△下 00068050¥N1¥J 00068060¥X 00068070L3△ひてたゞ/公(こう)より、/禁中(きんちう)様御さくじの時、/国&(くに+)のにんぶ 00068080L4共、つゐぢまハりのうへ木の/枝(えた)に、めんつをひしとかけて 00068090L5をきたるを、/柳(やなき)ハら殿御/覧(らん)じて、 00068100L6△△見わたせば柳さくらをごきかけて 00068110L7△△△ミやこハはるのこじきなりけり 00068120¥N2¥J 00068130¥X 00068140L9△くわんとうの事なるに、いま井殿と云人のむすめを、 00068150L10かすか殿へよめにとられしか、いかなる事かありけん、や 00068160L11がてあくる日おくり返されし(一オ)事、おほつかなし。此 00068170L12時、/市川(いちかハ)びぜんのかミ、 00068180L13△△すゑとけてとてもいまいのむすめ子に 00068190L14△△△一夜のやどもかすがどんなり 00068200¥N3¥J 00068210¥X 00068220L16△おたの/信長(のふなか)殿、だいりさまを、ことの外たいせつにお 00068230L17ほしめし、むら井しゆんちやうを/奉行(ぶきやう)に付られて、/禁中(きんちう)こ 00068240L18と+く、ミしゆりをなさるゝ。是を、うつけたる/者(もの)の申 00068250L19様ハ、だいりさまの御ねんじやハむらゐ殿じや。なぜに。 00068260M1けふも、だいりさまの、ミしりをしにゆかせらるゝとて、 00068270M2日に、(一ウ)/□((日カ))に、御出有ほとに、そうかとおもふた。 00068280¥N4¥J 00068290¥X 00068300M4△今ほと、せけんに、手かゞミがはやる。色&さま+ 00068310M5の/古筆(こひつ)をあつめて、ほんさうする。中にも、このゑ殿の御 00068320M6しゆせきほど見事なるハあるまいと、さたする。又、むひ 00068330M7つなるもの申やう、それほとなるよき御手を、なにとて、 00068340M8ちよくひつとは申さぬぞ、といふた。 00068350¥N5¥J 00068360¥X 00068370M10△ある/出家(しゆつけ)、五六さいなる、すて子をひろいて、やしな 00068380M11ひそだて、七つ八つより、ほつけきやう、其外(二オ)のよ 00068390M12ミ物共を、せいをいれ、をしへられ候へとも、一ゑんおぼ 00068400M13えす。あまつさへ、ししやうの申さるゝことを、せうゐん 00068410M14せず。ごんごだうだん、にくい事や、をのれめハ、五つ六 00068420M15つの時よりひろい、やういくして、今やう+人になし、 00068430M16きやうだらにを、ゝしへければ、あともなうわすれて、あ 00068440M17くぎやうばかりに身をやつして、我等にすねまはる事、い 00068450M18はれなし、やう+つえはしらにもなる/時分(じぶん)に、さやうに 00068460M19ふるまひ候、さたのかぎりなり、(二ウ)ぐそうかいまにて 00068470¥P166 00068480L1も、しゝたらバ、あとしきを、たれかのぞむものもあるか 00068490L2/れ((ママ))とて、おもふまゝに、しからるゝ。其とき、かのわやく 00068500L3もの申けるハ、/御坊(こはう)の仰られ/分(ふん)、一として、いはれなし、 00068510L4そのつれのむりばかり仰候とも、すこしも御/意(い)にしたかふ 00068520L5事あるまい、此申分御きにあたり候ハゝ、/所(ところ)の御/代官(たいくわん)へ成 00068530L6とも御あげ候へ、りひをきゝわくる人の御/座(さ)らふとて、い 00068540L7よ+すねまはる。/坊主(はうす)はらをすへかねて、/奉行所(ふきやうところ)にまか 00068550L8り出、/右(ミき)のだん+、(三オ)申さるれは、やがて、/彼(かの)わや 00068560L9くものをめし出し、御/坊(はう)の申/分(ふん)、ねんごろに聞てあり、其 00068570L10はうのかくごさたのかきりぞ、/以来(いらい)は/老僧(らうそう)しだいにして、 00068580L11かう+かんようぞと、おほせわたされ候へハ、しんぼち申 00068590L12やう、御/意(い)にてハ候へとも、われら、尤と/存(そん)ずる/義(き)これな 00068600L13く候、/先(まつ)やしなひそだて、人になしたるなととて、ゑこな 00068610L14る事を申され候、それがし、/馬(むま)の子か、うしの子にても候 00068620L15を、人にも御なし候はゝ、をんとも存ずべけれ共、そうべ 00068630L16つ、(三ウ)はじめから、人の子にて候ほどに、是もつてを 00068640L17んとも存ぜぬ、又、/木竹(きたけ)のたぐひにてもなきに、つえにせ 00068650L18う、はしらにせうと申され、何よりもつてめいわくに候、 00068660L19又は、きやうだらになど、をしへたると申され候へ共、一 00068670M1/字(じ)もおぼえ申さねば、ミな返したる/同前(どうぜん)、是もつて、さの 00068680M2ミをんにても御ざない、又/坊主(はうす)しなれて後、われらに寺を 00068690M3ゆつらふそとて、をんがましく申され候へとも、これも一 00068700M4日も世にゐられ候時に、ゆづられ候ハゝ、(四オ)すこしま 00068710M5んぞくにても御さらふか、しなれてあとハ、我らよりほか 00068720M6にでしもなし、子共ハミな、しに申なり、さたにおよばす、 00068730M7それがしがにて候、なにか、ししやうの/道理(たうり)が御/座(さ)あるか、 00068740M8御/分別(ふんへつ)なされてくたされよと申けれハ、ぶぎやうしゆも、 00068750M9あきれてへんたうなし。 00068760¥N6¥J 00068770¥X 00068780M11△ある寺に、めいさくの大こくの有よしを、きゝおよび 00068790M12たるだんな参りて、一目ミ申たいと/所望(しよもう)する。/坊主(はうす)聞て、 00068800M13中&我らは大こくハもち候(四ウ)はぬといふ。だんな申や 00068810M14う、よく存て候、我らの/義(き)ハ、よの人とハかはり候、ぜひ 00068820M15共といへハ、さてもよく御/存(そん)じや、まことに/数年(すねん)のだんな、 00068830M16くるしからぬ事とて、よび出すをミたれハ、としごろはた 00068840M17ちばかりなる、ごんごだうだんのよき女/房(はう)をよひ出す。だ 00068850M18んなきもをつぶし、此事でハ御ざない、正じんのお大こく 00068860M19を見申/度(たき)といへば、さて+よく御ぞし候、かまへて人に 00068870¥P167 00068880L1さたなきやうにたのミ入、内&ほうじやうさまより、ほし 00068890L2きよ(五オ)し色&おほせ候ゆへ、ふかうかくし申せ共、御 00068900L3存のうへじやほどに御目にかけうとて、これんなふ、ちと 00068910L4おでやとよび出すをミれは、としごろ十六か十七はかりの、 00068920L5いまだわきの下のふくろびたか、みめかたちハ、いはふ所 00068930L6もなき、ひじんなり。此様なるりやうげちがひハあるまひ。 00068940L7さりなから、ほうじやうさまの御ほしがりも尤じや。 00068950¥N7¥J 00068960¥X 00068970L9△ある人、まひを一/段(たん)とじまんして、月/夜(よ)に一/条(てう)のつち 00068980L10にてまふた。よきまひかとおもひ、立(五ウ)よりて、きゝ 00068990L11けるが、一人づゝミなかへる。八九十バかりなるうば一人 00069000L12/残(のこ)りて、さめ+となく。あたりなる/者(もの)申やう、あれほど 00069010L13へたのまひが、なにほどあはれにてなくぞとて、わらひけ 00069020L14れば、いや、あはれにてハなかぬ、我らがさうりをかせと 00069030L15申されたほとに、かしてあれハ、しりにしきけるが、此/舞(まひ) 00069040L16がはてたらバ、かへりたい、と申た。 00069050¥N8¥J 00069060¥X 00069070L18△さる寺へ参りけるに、ミめよきかぶろの有を見て、さ 00069080L19て+うつくしきわかしゆかな、どなた(六オ)からとて、 00069090M1こぞうにとへば、あれハ、大ざからう人の子じやといふ。 00069100M2さやうに見えた、よい子が、とてもの事に、へゝをつけて 00069110M3ほしや、といへハ、こぞう聞て、人のめは、はつかしい、 00069120M4此中、/長老(ちやうらう)さまも、その御のぞミばかりじや、といふた。 00069130¥N9¥J 00069140¥X 00069150M6△おちごさま、久&御さとに御あそびなさるゝ。ほうゐ 00069160M7んさまより御ミまひとして、三/位(み)に、御ふミもたせて、つ 00069170M8かハさるゝ。其御ふミのことハは、/色&(いろ+)さま+の、おも 00069180M9ひぶりの御ぶんしやう(六ウ)の内に、そもじさまハ、久& 00069190M10御さとに御とうりうにて、此ごろハ、おにやけにかつへ申 00069200M11とくり返し+、あそばしける。此ふミを、ちごのわきあ 00069210M12けの袖からおちけるを、ちごの/母(はゝ)是をひろふてミて、/右(ミき)の 00069220M13もんごんふしんして、てゝおやにとへば、是もしらず。ち 00069230M14ごにとふて、なにゝてももたせ、しん上申せと云。さて、 00069240M15ちごにとひけれハ、ちこ、めいわくして、其事にて候、山 00069250M16のならひにて、さけを、おにやけと申候といふ。(七オ)さ 00069260M17らはやすき事、さけを参らせうとて、もろはくのたる十ば 00069270M18かり、山へのぼせらるゝ。さて三/位(ミ)、まかりかへるとて、 00069280M19いとまこひに出れハ、やれ+、御しんらうや、ちと、お 00069290¥P168 00069300L1にやけをまいれとて、ひたもの、さけをしゐらるゝ。すこ 00069310L2しもたへぬ、一ゑんの、げこにて候、といへは、それハ残 00069320L3りおほき事や、さらバ、おにやけのミをまいれ、と申され 00069330L4た。 00069340¥N10¥J 00069350¥X 00069360L6△ある人、十二三なる子をてうあひして、つねにうたひ 00069370L7をゝしへけるが、せつかくならへ、やかて、十月(七ウ)十 00069380L8三日に成ぞ、百はたごくいにつれてゆかふぞ、よくおほえ 00069390L9て其時うたへと云。程なく、おめいこうじやとて、寺より 00069400L10あんないある。いつものごとく、かならずと、ふれらるゝ。 00069410L11さて、かの子をよび出し、明日は寺へつれて参るぞ、うた 00069420L12ひをわすれな、かまへて、よき/時分(しふん)に、とゝがにらまふぞ、 00069430L13其時かしこまり、あふぎをとりなをしうたへと、ねん比に 00069440L14いひふくむる。さて十三日に、おや子つれにて参り、方& 00069450L15のつきあひにて、しだい(八オ)しだいになをる。先おさあ 00069460L16ひ衆へとて、ぜんをすへけれは、むすこ、につことわらひ、 00069470L17なふとゝさま、百はたごとハ此事かと云。おや、めいわく 00069480L18して、きつとにらミけれハ、よき/時分(しふん)ぞとおもひ、かしこ 00069490L19まつて、まつかねのいはまをつたふこけむしろと、たか 00069500M1+とうたふた。 00069510¥N11¥J 00069520¥X 00069530M3△山寺のしやミが、おちごさまへ、おそれながら御/無心(むしん) 00069540M4が申たき、といふ。ちごきこしめし、/定(さた)めて、一/義(き)の/望(のそミ)に 00069550M5てあらふとおぼしめし、やすき事、(八ウ)今なり共お身し 00069560M6だいと、申されけれハ、しやみうけたまハりて、さて+ 00069570M7かたじけない事じや、いつにても、ほうゐんさまの御/留主(るす) 00069580M8に申さう、とていはず。有時、ほうゐん/下山(けさん)の/時分(じふん)、大き 00069590M9なるぢうばこをもつてかゝり、御やくそくのことく、めん 00069600M10ざうに有ミそを、是に一はい御ぬすミ候てくだされよと申 00069610M11た。 00069620¥N12¥J 00069630¥X 00069640M13△御わかしゆさま御すがたと申、御心ねと申、まこと 00069650M14に残るところも御/座(さ)ない、されとも、よそへ御(九オ)出な 00069660M15されてハ、人のかたな、わきざし、又は、つゞミ、たいこ、 00069670M16なにゝよらず、ねうちをよくなさるゝ、是一つのきずか、 00069680M17何よりのきずじや、今よりハ、ちと御たしなミ候へと云。 00069690M18わかしゆ、きこしめし、さて+/過分(くわふん)なる御いけんじや、 00069700M19ずいぶんたしなミ申さう、まことに、このやうなる、かた 00069710¥P169 00069720L1しけなき御いけんハ、百くわんにてもかはれまいと、はや、 00069730L2くハせた。 00069740¥N13¥J 00069750¥X 00069760L4△山寺のそう、したしきだんなにあふて申さるゝハ、此 00069770L5程は、久しくわかしゆにかつへ、めいわくいたす、(九ウ) 00069780L6とかたる。たんなきゝて、尤御/道理(たうり)や、なにとぞしあんし 00069790L7て、おにやけのはりかたを仕、しんじ申さう、といへは、 00069800L8/坊主(はうす)まんぞくして、それは何よりの御心さして御/座(さ)らふ、 00069810L9ぜひ共たのミ入候、たゞし、とてもの御事に、このミかあ 00069820L10る、と申さるゝ。いかやうの御このミぞ、と申せハ、あぢ 00069830L11をバ、へゝのあぢになされてくだされよ、といはれた。 00069840¥N14¥J 00069850¥X 00069860L13△ぶたうなる/坊主(はうす)、わかしゆを、むりにをしつけ、たし 00069870L14なませて、あとをゆびにて、ひたものくじる。(十オ)是は 00069880L15なに事ぞ、らうぜきなる事かなと、はらをたてけれハ、是 00069890L16程あぢのよきハふしぎじや、中につびがあらふ、といふた。 00069900¥N15¥J 00069910¥X 00069920L18△かんまつ大夫、ゆやをしそんじければ、 00069930L19△△むねもりのさこそむねんにおぼすらん 00069940M1△△△かんまつ大夫にゆやをしられて 00069950¥N16¥J 00069960¥X 00069970M3△じゆらくにて、こんごう大夫、くわんじんのふに、し 00069980M4ばいせん三十文づゝとりけれハ、 00069990M5△△こんごうは二そく三文する物を(十ウ) 00070000M6△△△三十とるはせきだ大夫か 00070010¥N17¥J 00070020¥X 00070030M8△わかしゆの御すがたを見て、さて+のこる所も御ざ 00070040M9ないとて、しミ+とほむれバ、そはなる/坊主(はうす)たち是をき 00070050M10ゝ、仰のごとく、御かたちは天下一、おにやけはしゆごふ 00070060M11入じや、といはれけれハ、又、そばなるしんぼちの申やう 00070070M12は、しゆごふにうでも御ざらぬといふ。なぜに。さい+ 00070080M13ぶひやうが出るほとに。 00070090¥N18¥J 00070100¥X 00070110M15△ながをかゆうさい、つるのはうちやうなされ、人に 00070120M16(十一オ)御をしへ候時、しらさぎ、/板(いた)にのせ出しけれハ、 00070130M17/当座(たうさ)に、 00070140M18△△しらさぎかなにぞと人のとひし時 00070150M19△△△つるとこたへてくいなまし物を 00070160¥P170 00070170¥N19¥J 00070180¥X 00070190L2△ならのいせやと云さかや、やすさけにハ、水を入てう 00070200L3りけれハ、ある人是をかい、伊せやのさけハ、さん+あ 00070210L4しきとて、きやうかをよミける。 00070220L5△△さけの名も所によりてかはりけり 00070230L6△△△いせやのさけはよそのとぶろく 00070240L7いせや、これをきゝ、かへし、(十一ウ) 00070250L8△△よしあしといふはなにはの人やらん 00070260L9△△△おあしをそへてよきをめされよ 00070270¥N20¥J 00070280¥X 00070290L11△あるわかしゆ、ねんじやとねて、取はづして、けがを 00070300L12して、さらぬていにて、さて+、なれなじミの中ほどな 00070310L13る事は、御ざるまい、今のやうなるけがをいたしてハ、は 00070320L14らをきりてもあかねとも、なじミゆへに、何ともぞんぜぬ 00070330L15と、おほせけれハ、ねんしや、うけたまハり、さて+、 00070340L16かたじけない、さやうに、おぼしめし候へハ、/生&(しやう+)/世&(せゝ)、 00070350L17わ(十二オ)すれがたいと、申もはてぬに、又せられた。ねん 00070360L18じやはなをふさぎて、かさね+/過(くわ)ぶんすぎた、といふた。 00070370¥N21¥J 00070380¥X 00070390M1△又、さるわかしゆねんじやとねて、是も取はづされた。 00070400M2なに共此にほひをさるべきやうなければ、物がたりに、さ 00070410M3んわうまつりを御らんじて候か。いやいまだミ申さぬ、と 00070420M4いふ。さらば、ひやうしをふミてきかせ申さうとて、 00070430M5△△大ミやのはやしハ、のんのや+、さんわうまつり、 00070440M6△△すこ(十二ウ)すこ+や 00070450M7此ひやうして、いきをミな+ふるハれた。さても、おも 00070460M8しろき事かな、うけたまはりをよびたるより、よきひやう 00070470M9しじや、さりながら、まねさへ是ほとくさいに、ほんのハ 00070480M10あたりへよられまい、といはれた。 00070490¥N22¥J 00070500¥X 00070510M12△かうやひじり、わかしゆにほれて、いろ+くどきけ 00070520M13れとも、此わかしゆ、つれなうて、ついに同心なければ、 00070530M14ひじり、かさねて申けるハ、まいねん二きに、心づけをい 00070540M15たさうが、それもいやか。(十三オ) 00070550¥N23¥J 00070560¥X 00070570M17△長/老(らう)さまへ、与六大夫殿のをかた、御ミまひに、ざせ 00070580M18んまめをもちて御こしある。しんぼち、長老さまへ申やう、 00070590M19与六大夫殿御/内義(ないき)の、これをもちて御参り候といふて、ゆ 00070600¥P171 00070610L1びにて、ものをつくり、御目にかくる。長老御らんじて、 00070620L2さて+にくいやつじや、人のミる所にて、さやうなるこ 00070630L3とをするものか、ごんごだうだん、くせ事じや、きやうこ 00070640L4うは、でしともおもはねハ、ししやうともなおもひそ、は 00070650L5や+まかりたてよと、いふまゝ(十三ウ)に、かうまのりけ 00070660L6んをとつて、おいはしらかし給へば、だんな/衆(しゆ)あつまりて、 00070670L7しやうしなる事じや、なに事にて御きにちがうたぞと、し 00070680L8んぼちにとへば、いさゝか、御はらのたつほどの事にてハ 00070690L9御座らぬ、是をしたとて、しかられたとて、又、かのても 00070700L10とをしてミする。だんな是をみて、それをしたらば、中 00070710L11+申とも、きかせられまいとて、とんじやくせなんだ。 00070720¥N24¥J 00070730¥X 00070740L13△ある人、たこくより、女ばうをよびて、久しくそ(十四オ) 00070750L14ひけるが、心ならず、此女ばうをおくるとて、あきあかれ 00070760L15たる中にてもなければ、うらミもさらに有まじく候、さり 00070770L16ながら、えんつきず候ハゝ、又こそ申入候べけれとて、/家(いゑ) 00070780L17のたからものを取出し、なにゝても、ほしきものを取てか 00070790L18へり候/□((へカ))と、申けれバ、女ばうきゝて、仰のごとく、あか 00070800L19れて出候とも、なにうらミの候べし、まして、ゆへある御 00070810M1事なれバ、御ことハりにも、をよばす候、又このたからの 00070820M2内にほしきものハなく候、われ+身(十四ウ)にかへても、 00070830M3おしき物の候といふ。此上ハなに成とも、御のぞミ候へと 00070840M4て、せいもんをたてゝ、きかせければ、女ばう聞て、是は 00070850M5まんぞくなり、われらのほしきものはこれよとて、おとこ 00070860M6の物をひんにぎり、ひたものひねりける。これハといへど 00070870M7きかず。へのこつめにつめられて、ぜひにをよばす、それ 00070880M8より五百八十年をちぎる。 00070890¥N25¥J 00070900¥X 00070910M10△きく屋の与三郎が、おかたさまへ申やう、おそれなか 00070920M11ら申たき事か御座ある、かなへてくたされ(十五オ)ば、申 00070930M12さうといふ。おかたきかれて、あらきやうこつな事をいハ 00070940M13しむ、人がきゝたらハ、よいものかと、いハれけれハ、与 00070950M14三郎きいて、我らも申かけて、御/同心(とうしん)なくハ、ぜひにをよ 00070960M15ばず候、かんにんハまかりならぬといふ。おかたきゝて、 00070970M16それほどにおもはゝ、いつなりともと申ければ、さらバ、 00070980M17たゞ今申さうといふ。それはあまりきうなといへば、いや 00070990M18人のないとき申さうとて、みゝもとへ口をよせ、さゝやき 00071000M19て、あさゆふのおめしがくいたらぬ、ちとをしつけてく 00071010¥P172 00071020L1(十五ウ)だされよ、と申た。 00071030¥N26¥J 00071040¥X 00071050L3△おちごさまへ申す、ほうゐんさまハ御るすか。いや、 00071060L4ぢぶつだうに、かきして御座る。かきとハなに事ぞ。ひだ 00071070L5るさに、かんともきんとも、はねられてこそ。 00071080¥N27¥J 00071090¥X 00071100L7△あるちこ、ぞんのほかに、もちをきこしめす。にはか 00071110L8に、はんねつして、めいわくなさるゝ。ちと、うちのくつ 00071120L9ろぐやうに、くすりを参らせうといひければ、くすりやゆ 00071130L10が口へ入ほどならバ、また一口も、もちをこそ、くハふず 00071140L11れ。(十六オ) 00071150¥N28¥J 00071160¥X 00071170L13△えんりやく寺の小ぼうし、御ときすぎて、山へ/木(こ)のは 00071180L14かきにゆくとて、御ちこさまのちうじきを、ぜんだなにあ 00071190L15げをき、そのしたに小ほうしがひるめしもをきて、さて山 00071200L16よりかへりて見るに、おちこさまの御ぜんもあがり、わが 00071210L17めしもなし。ふしぎなる事とおもひ、おちこさまにとへば、 00071220L18まことに、おしるかとおもふて、あこかめしに、うちかけ 00071230L19てくふた。 00071240¥N29¥J 00071250¥X 00071260M2△えいざんの小ほうしばら、山へゆきさまに、おち(十六ウ) 00071270M3こさま、こゝに御ひるが御座る、九つをうつたらバ、こし 00071280M4めせと申をきて、程なく山よりかへりけるに、やう+四 00071290M5つ/時分(しふん)に、はや参りたるあとあり。いかにとゝへハ、はや 00071300M6九つ打たるとおほせらるゝ。たゝ今、四つを打たるにと申 00071310M7せバ、されバこそ、けさ五つと今四つと、九つにてハなき 00071320M8かと申された。さて+よきさん用やとて、あきれもせな 00071330M9んだ。 00071340¥N30¥J 00071350¥X 00071360M11△にしのとうゐん、ういらう/所(ところ)に、まりをける。なにと 00071370M12かして、かゝりよりそとへ、ついとこえ、大道へお(十七オ) 00071380M13つる。折ふし、をんごくのさふらひ、人をあまたつれてと 00071390M14をられけるが、此人の/道(だう)ぐもちが、心えたると云まゝに、 00071400M15やりの/石(いし)づきにて、つとんといハせた。しうがこれを見て、 00071410M16心がけハよけれ共、人のかい鳥とみえて、とやまでしてあ 00071420M17るに、ころすまいものをといはれた。 00071430¥N31¥J 00071440¥X 00071450M19△あるわか/衆(しゆ)、もつてのほかに御わづらひにて、今をか 00071460¥P173 00071470L1ぎりとミゆる。ねんじや、なげきかなしむてい、まことに 00071480L2たとへんかたなし。とかく此分な(十七ウ)らは、程も有ま 00071490L3しきとて、さうれいの用意する。ねんじや申やう、/来(らい)世ま 00071500L4で御とも申さうとて、くわんを大きにこしらへた。さてほ 00071510L5どなく、わかしゆはて給ふ。ねんじやのしんるい共、いろ 00071520L6+いけんすれとも、中+是ほと人もしらぬさきこそ、 00071530L7今さら我らとりミだし候とも、御しかり候てこそまんぞく 00071540L8なれとて、きゝもいれず。さて我とくわんへ入、とりべ野 00071550L9へをくり、ゐんだうもすぎて、火をかけゝれハ、くわんの 00071560L10中より、かうしやうに(十八オ)申やう、まづふたをあけて 00071570L11たべ、申たき事かある、火もけして給ハれ、おもひきりた 00071580L12る事なれば、いのちは、つゆちりともおもはぬが、けふり 00071590L13くさい、まづせうべんしてから、心しづかに、ゆひごんせ 00071600L14う、といふた。 00071610¥N32¥J 00071620¥X 00071630L16△さるてらにて、じゆんれいとはちひらきと、ね物がた 00071640L17りするをきゝければ、じゆんれい申やう、さて+いかな 00071650L18るゐんぐわにて、我らハかやうにあさましき事や、せめて 00071660L19天下を、三日しり(十八ウ)たい、さあらバ、くに+のつ 00071670M1ぢだうのいたじきを、たか+とつくらせ、えんの下にて、 00071680M2其ハうたちと、ゆる+とはなしたいと云。はちひらきき 00071690M3ゝて、きしよは、それほどどんなゆへに、しよこくをめく 00071700M4ることじや、其身に、あふじたるねかひをしたるがよい、 00071710M5たゞ我らハ、京のくにを、一日なり共しりたい。なぜに。 00071720M6/町中(まちちう)のいぬどもを、ミなうちころさせて、ゆる+とはち 00071730M7をひらきたい、といふた。 00071740¥N33¥J 00071750¥X 00071760M9△さる上らう/衆(しゆ)、長/老(らう)さまへ申さるゝは、ざいごう(十九オ) 00071770M10ふかき身にて、ごしやう一大事をもしらず、月よ花よとあ 00071780M11そびくらし候事、あまりそらおそろしく候、ちと御しめし 00071790M12候てくだされ候へと申されければ、長/老(らう)きゝ給ひて、それ 00071800M13ハきどくなる御のぞミにて候、あら+申入候へし、そも 00071810M14+/女人(によにん)/成仏(しやうふつ)のほうと申は、ミだの御せいぐわんにしく事 00071820M15なし、なにをもつて、かくいふなれば、まづ女ハ、つびふ 00071830M16かくして、うかミかたしと、おほせければ、こらへかねて、 00071840M17くつ+とわらひ(十九ウ)給へば、長/老(らう)はらをたて給ひて、 00071850M18ぐそうが、はのぬけて、ぜつないのあしきハ、としよりの 00071860M19ならひじやに、それハ御上らう衆の、きのやりやうがわる 00071870¥P174 00071880L1い、と申された。 00071890¥N34¥J 00071900¥X 00071910L3△むかし、くばうさま、ぢぶつだうへ御参りなされける 00071920L4に、折ふし、あミだのミやうがうおちさせ給ふを、しゆん 00071930L5あミといふだうばう、まかり立て、かけたてまつれバ、ま 00071940L6たやがて、おちたまふ。其ときの御/詠哥(ゑいか)、(二十オ) 00071950L7△△かぢハらとしゆんあミだぶが二/度(と)のかけ 00071960L8△△△それハかうミやうこれハミやうがう 00071970¥N35¥J 00071980¥X 00071990L10△御わかしゆさま、ゆミや八まん、いのちがつれなふて、 00072000L11か様に物をおもひ候、つゆばかりの御なさけあれと、色& 00072010L12にことばをつくし申けれハ、わかしゆきこしめし、我もい 00072020L13はきならねば、御心中おもひやり候へども、とかく、ねん 00072030L14じやがきつうて、心にまかせす候、さほどにおぼしめし候 00072040L15ハゝ、ながきちぎりと成申べし、いざや、一(二十ウ)所に身 00072050L16をなげて、おなじはちすのえんとなるべきよし、仰ければ、 00072060L17さて+かたじけない事かな、さらバ御とも申さうとて、 00072070L18川のほとりへゆきて、わかしゆ仰けるハ、いざ手を取くミ 00072080L19て、しでさんづをこさんと仰けれは、我らか事ハ何とはて 00072090M1候てもくるしからす候、先&さきへ御いそぎ候へ、御なり 00072100M2候やうをも見とゞけ参らせて、おひつき申べしと、ふかく 00072110M3けいやく申せハ、其/義(き)ならバ、六/道(だう)のつぢにてまち申さん 00072120M4とて、いたハしや、(二十一オ)いまだ二八ハかりと見え給ひ 00072130M5けるが、花のやうなる御すがたを、川のもくづとなし給ふ。 00072140M6ねんじや、心しづかに十念して、一しゆつらねける。 00072150M7△△なむといふこゑのうちより身をなけて 00072160M8△△△あミだは水のそこにこそあれ 00072170M9とハよミたれ共、おもへばいらぬ事じや、いきのこりて/後(ご) 00072180M10世をとふらひ申てこそ、しんじつの心さしにてあれとて、 00072190M11我とわが身にいけんして、一もんじにかけもどる。かのわ 00072200M12かしゆ、(二十一ウ)すいれんの上ずにて、水のそこをくゞり、 00072210M13わきへあがり、さきにてゆきあふ。此おとこ、わかしゆの 00072220M14ゆうれいぞとおもひ、きもをつぶし、かミそりをぬいて、 00072230M15はつさうにかまへ、いかにばうれい、たしかにきけ、あと 00072240M16をとふらふてとらすべし、それがしをうらミてふかくすな、 00072250M17といひすてゝ、あともミすにけた。 00072260¥N36¥J 00072270¥X 00072280M19△津のくにの中じまに、大/百姓(しやう)のびくにあり。毎年、/中= 00072290¥P175 00072300L1津河(なか=つかハ)のつゝミがきるゝゆへに、りんがうの百姓ともよつて、 00072310L2かのびくにの田のまへをつ(二十二オ)く。かれいとして、人 00072320L3そく共のちうじきのしるをは、此あまがとりをこなふ。又 00072330L4ある年、つゝミのふしんをするに、あま、なにとおもふて 00072340L5やらん、しるを出さず。せつ+つかひをたつれ共、とん 00072350L6じやくせす。くせ事とて、其時のだいくわんへ申上ければ、 00072360L7やがてめし出し、/毎(まい)年のことを、なにとて、たうねんはを 00072370L8こたり申ぞと申。されバ、其御事にて候、いつもハ、われ 00072380L9+がまへをつかせらるゝゆへに、しるを出し候が、/当(たう)年 00072390L10は、我等かまへよりも、(二十二ウ)したのかた、きれ申候て、 00072400L11となりのけのうへをつかせらるゝに、なにとて、わきから、 00072410L12しるをいだし候はんや、おぼしめしわけられ候へと申けれ 00072420L13ハ、上下大わらひになつた。 00072430¥N37¥J 00072440¥X 00072450L15△ある/出家(しゆつけ)、おもひよらずけいせい町をとをれば、やが 00072460L16て、ころものそでをひかれ、ぜひにをよばす、しうげんを 00072470L17つとめて、出さまに、ふせにとりたるものを、これしきな 00072480L18れ共といへば、けいせい、これをミて、いや+けふハ我 00072490L19らのおやの日にて(二十三オ)候ほどに、それまでも御座る 00072500M1まいとて、返しければ、/出家(しゆつけ)きゝて、それはなによりの御 00072510M2心ざし、ありがたう候、さあらバ、けさをかけていたさう 00072520M3ものを、といはれた。 00072530¥N38¥J 00072540¥X 00072550M5△ある長/老(らう)、御わづらひもつての外にて、今をかぎりと 00072560M6ミゆる。でしもだんなもあつまりて、さてもせうしなる御 00072570M7事や、此だんにては、なにもどくだちもいらぬぞとて、さ 00072580M8けさかつきをまくらもとにをき、これ+めをひらきて御 00072590M9(二十三ウ)らんじ候へ、いつもの御すきの物といへば、めを 00072600M10あきみて、へゝかとおもふた、といはれた。 00072610¥N39¥J 00072620¥X 00072630M12△ある人、うつくしきかつしきにほれて、うたをよミて 00072640M13をくらるゝ 00072650M14△△きミをのミこひこがれつるなぐさみに 00072660M15△△△かと田に出てねぜりをそつむ 00072670M16此うたをえて、しれん/句(く)にて返してもいかゞとおぼしめせ 00072680M17ども、哥のミちはおぼつかなしとて、さる人にだんかうし 00072690M18給へば、御へんかハ、しれ(二十四オ)んぐをなされ候程に、 00072700M19うたもなり申さう、さくいは、おなじ心にて御座候と、申 00072710¥P176 00072720L1さるゝ。さてハ/別(へち)の事もないとおぼしめして御/返哥(へんか)に、 00072730L2△△われしらミふなあふりさぎあしもぢり 00072740L3△△△せどのはたけてごばうひきぬく 00072750L4きミをのミに、我しらミとつけられ、こひこがれつるに、 00072760L5ふなあふりさぎと、此ごとくつゐをなされしこと、だんか 00072770L6う人のぶねんか。 00072780¥N40¥J 00072790¥X 00072800L8△あふミの、よこわたしにて、しよこくのものども、 00072810L9(二十四ウ)船にのり、いろ+の物がたりをする中に、わか 00072820L10きものゝ申けるハ、まことや、女のまへのくさきものがか 00072830L11うの物をつけたるハ、かならずくさうてくハれぬといふは、 00072840L12まことかといへば、せんちうのもの共申けるハ、をんでも 00072850L13ないこと、せうここそあれ、くさいがぢやうじやと、めん 00072860L14+にいへば、せんどう是をきゝて、舟をこぎもどし、我 00072870L15いゑのうらへつけて、女ばうをよび出し、けさのうりを、 00072880L16まづつけな、といへば、ハやつけたるといふ。せんどう、 00072890L17ろ(二十五オ)かいをすてゝ、なむ三ぼう、うり百すてた、 00072900L18といふ。せんちうのものども、さこそくさかるらんと、わ 00072910L19らひき。 00072920¥N41¥J 00072930¥X 00072940M1△びぜんのくに、かんざきのこうに、なむの二じをがく 00072950M2に打たる、びくに寺あり。すなはち二/字寺(じてら)といふ。此あま 00072960M3共、つねに、あさのいとをよりてうるに、又あたりに、たう 00072970M4ミやうじといふ寺あり。此ばうずども、いとをかいにゆくて 00072980M5いにて、さい+ものとしたとて、やがてもんに、(二十五ウ) 00072990M6△△二/字(し)でらも今は六じになりにけり 00073000M7△△△だうミやうじよりしゞをいるれば 00073010¥N42¥J 00073020¥X 00073030M9△ある人、さけを、人のかたへをくるとて、ゑん/来(らい)のよ 00073040M10し、さま+いひて、すこしのたるをつかひけれは、ふミ 00073050M11の返じに 00073060M12△△あまのさけふりさけミればかすがある 00073070M13△△△みかさものまばやかてつきなん 00073080¥N43¥J 00073090¥X 00073100M15△ある/出家(しゆつけ)、/師(し)/弟子(てし)つれて、ときにゆく。かへるさに、 00073110M16けいせい町をとをるとて、しんぼちが申けるは、(二十六オ) 00073120M17よきついでにて御座有、ちと御より候へと、すゝむれば、し 00073130M18しやうきゝて、中+さたにをよばぬ事、我らがやうなる、 00073140M19たつときちしきなどが、なにとて、むさとしたる所へ、よ 00073150¥P177 00073160L1るものぞ、ことにけふハ、ふせもとらぬに、と申された。 00073170¥N44¥J 00073180¥X 00073190L3△ある人、いとやなぎをひさうして、うへをく。これを 00073200L4あんないなしにほりてゆく。ていしゆとがめけれは、やな 00073210L5ぎハミどりじやといふ。一/句(く)につまり、むねんなる事とお 00073220L6もひ、はなばしらをくハせ(二十六ウ)て、ちがたる、これは 00073230L7なに事ぞ。はなハくれなゐよとて、やがて、もつてまいつた。 00073240¥N45¥J 00073250¥X 00073260L9△かうじうり、きんかく/寺(じ)のたつちうをうりまはり、も 00073270L10んくわいへ出るを、もんばんのほうしが、ひきとゞめて、 00073280L11かうじもんを出ずといへば、そうハたゝくげつかのもん、 00073290L12とてほうどきせた。 00073300¥N46¥J 00073310¥X 00073320L14△ある人、子にけうくんするやうハ、なんぢ、/母(はゝ)がうミ 00073330L15をとしてより此かた、あらき風にもあてじとし、ぬれたる 00073340L16所に我はねて、かはきたる所(二十七オ)に、わとのをねさせ 00073350L17て、つゞやはたちになし、たかき山ふかき/海(うミ)ともおもふに、 00073360L18おやのいふことをせうゐんせず。其ことく、がいにまかせ 00073370L19てふるまふ。くせ事じやとてしかりければ、むすこきゝて、 00073380M1おほせ候/段&(たん+)、一つもそれがし、御もつともと存ぜぬ、ま 00073390M2づ、やういくなされ候とて、をんに御きせ候へとも、そう 00073400M3じて、人のおやの、子をそだつる事めつらしからず、我も 00073410M4やがて、子をもち候ハゝ、人がたのまずとも、そたて申さ 00073420M5う。是もつて、(二十七ウ)家なミにて候、其上我らを、ぜひ 00073430M6共、/出世(しゆつせ)のためにても候ハず、をの+さま、おもしろづ 00073440M7くのついでをもつて、まかり出候間、是又、何の御をんと 00073450M8も存ぜす、さりながら、げに+さやうに、おぼしめし候 00073460M9ハゝ、もとのミちへ、まかりかへり候べしとて、はゝのう 00073470M10ちまたへかゝつた。 00073480¥N47¥J 00073490¥X 00073500M12△ある女ばう、わかきおとこにはなれ、なげきのあまり 00073510M13に、てらへ参り、さいごに仰られしは、まことにこひしき 00073520M14時は、かう花もいらぬぞ、わらハが(二十八オ)まへをたむ 00073530M15けよと、の給ひしものをとて、まへをひらきて、なむゆう 00073540M16れい、しゆつりしやうじ、とんせうぼだい、これ+、よ 00073550M17く+うけ給へとゑかうするを、長/老(らう)物かげより御/覧(らん)じて、 00073560M18ありがたき御心ざしにて候、こなたへ御入候へとて、めん 00073570M19ざうへ引いれ給ふ。これハなに事をなさるゝといへは、ほ 00073580¥P178 00073590L1とけの御あとハ、/出家(しゆつけ)のくわいちう、せんさくなしと申さ 00073600L2れければ、ぜひにをよばす。しバらくして出さまに、長老 00073610L3の申さるゝは、御ゆひご(二十八ウ)んにまかせられ、/来(らい)月 00073620L4よりは、たい夜から御参りあれと、申されけれハ、御とき 00073630L5ひじは申にをよばず、御ふせにも今のじや。 00073640¥N48¥J 00073650¥X 00073660L7△御かつしきさまへ、なにがなしん上申たいと、おもへ 00073670L8とも、かたなわきざしは、いらざる御身なり。又、あふぎ 00073680L9などハいかめしからず。いろ+にあんじすまひて、とか 00073690L10く正月の御なぐさミに、たまぶり+を、しろかねのまる 00073700L11うちにして、参らする。是をかつしき御/覧(らん)じて、一/段(たん)うつ 00073710L12くしけ(二十九オ)れ共、をもうて、いらぬものじやとて、 00073720L13すてさせられた。それはおしや、とこへ、といへハ、めん 00073730L14ざうのまんなかへ。 00073740¥N49¥J 00073750¥X 00073760L16△ていあんのだんぎに、けふは、ひがんもはてゝ候、此 00073770L17ほときどくに、女らう衆も御参りなされた、然は、ミだに 00073780L18よらいの御せいくわんに、によにん/成仏(しやうふつ)のさたを申さう。 00073790L19たゞし、ねんごろに申せは、たんぎかながうなる、又、あら 00073800M1まし申せば、ちとみゝどをき事なり、なにとせう(三十九ウ) 00073810M2ぞ、かた+の、のぞミしだいにいたさう、と仰けれは、 00073820M3だんぎの事なれは、へんじする人もなし。ていあんのいは 00073830M4く、女らう衆は、ながいかすきか、ミじかいがよきかと、 00073840M5おほせければ、上らうしゆ一/度(と)にわらひ給ふ。長/老(らう)きつと 00073850M6にらミつけて、かた+の、きのやりやうが、そでないと、 00073860M7申された。 00073870¥N50¥J 00073880¥X 00073890M9△にしのをかの左衛門/次(じ)郎がむすこ、うしのへ/□((ゝカ))をした 00073900M10とて、所の者共よりあひて。かやうなるものを其まゝおけ 00073910M11ば、七さとかるゝと申候、い(三十オ)そぎ此ざいしよをお 00073920M12い出すべきよし、せんぎする。おや、此よしをきゝ、まか 00073930M13り出て申やう、なにともめいわく仕候、これは人の申なし 00073940M14で候はん、中+うしのハあつうて、しらるゝ事では御座 00073950M15ない、といふ。さてはおやめもしたるとて、子なからおひ 00073960M16はらふた。 00073970¥N51¥J 00073980¥X 00073990M18△おごうさま、おちの人をめして、なふうば、きかしめ、 00074000M19/殿(との)のしゞのあとに、なにやらんあるが、あれはなにぞと仰 00074010¥P179 00074020L1けれハ、あれは御ともの衆じや(三十ウ)と云。御ともなら 00074030L2バ、ちとよびいれてふるまいたいと、おほせけれは、いや 00074040L3御よび候ても、内へハ参らぬといへは、うそをいふ、内へ 00074050L4よふでふるまふたらは、かゝさまにいふて、をんをひかよ 00074060L5うぞといハれた。 00074070¥N52¥J 00074080¥X 00074090L7△ゐ中衆久しくざい京して、/本国(ほんこく)へくだるとて、山さき 00074100L8にやどをとり、さて+しうめいとて、此ほと京にとうり 00074110L9うの間に、めづらしき事もなく、まかりくだり候事、むねん 00074120L10に存候、せめてこゝもとにて、一あそびせうと、いひ出す。 00074130L11(三十一オ)尤よからふとて、やがて、ていしゆをたのめば、 00074140L12今ほとはつとにて、さやうのものハなく候、さりながら、 00074150L13人のよめ、むすめなとを、さいかくいたさうといふ。それ 00074160L14こそ、一/段(たん)ののぞミなれ、いそぎたのミ入。心え申とて、 00074170L15立て、しバらくしてかへり、さる人の/後家(こけ)、此ほどあまに 00074180L16成候、これはいかゞ候ハん/□((とカ))云。それこそ、日本一の事な 00074190L17れ、といふ。さ候ハゞ、しのびやかに火をけして、くじ取 00074200L18になされ、一人つゝ御出候へ、めん+に、わたし申さう 00074210L19と(三十一ウ)て、わたすに、まづ、かミをさぐりて見れハ、 00074220M1あまにて有。さては一ばんに出したるよと、おもひけれは、 00074230M2二ばんめのものも、まづかミをなでゝ、さてもむねんや、 00074240M3我とりあたりたと、おもひけるに、三ばんめ、四ばんめも、 00074250M4ミな其ぶんにて、夜のあけぬさきに、かへさねばならぬと 00074260M5て、さう+返し、あくる日、/過分(くわふん)の礼して、さてやどを 00074270M6いて、ミちにて、さんげするに、ミな、ふるひくにの、は 00074280M7のぬけたるばかりにて、大わらひして、はてた。(三十二オ) 00074290¥N53¥J 00074300¥X 00074310M9△ある人子をまうけて、さて+めでたい事じや、こと 00074320M10によい子や、かミがくろひ、色がしろひのとて、よろこぶ 00074330M11所へ、となりのめうさい、こしをかゞめてきて、やれ+ 00074340M12めでたい事やとて、あがらふとしても、えんかたかさにあ 00074350M13かりかね、是のハ、こえんがなうて、あがられてこそ、と 00074360M14いふた。 00074370¥N54¥J 00074380¥X 00074390M16△ある/出家(しゆつけ)けいせい町をとをる。長/老(らう)の/袖(そて)にとりつく。 00074400M17是ハなに事ぞ、ぐそうは是、五つや六つより、ほとけのた 00074410M18いに、身をなして、女人の手(三十二ウ)から、物をもとり 00074420M19かはさぬに、はなし給へと、あらけなく申されける。けい 00074430¥P180 00074440L1せいきゝて、御尤にて候、さりながら、むりなる事は申ま 00074450L2い、まづ御/出家(しゆつけ)は、わかしゆを、もちい給ふよし、きゝを 00074460L3よひて候、我らもおにやけを、御ようにたち申べしと云。 00074470L4ばうずきゝて、それはミゝよりに候、さて御ふせハ、いか 00074480L5ほとぞととへハ、其事にて候、おもてむきは、われ+も、 00074490L6すきのミちにて候へは、いかやうにも御/意(い)しだいにて候、 00074500L7からめ(三十三オ)でハ、むりにたしなミ申ゆへ、ちとかう 00074510L8ぢきに御座候といふ。ばうずのいはく、御らんじ候ことく、 00074520L9ひんそうと申、らうたいといひ、からめでのなんじよ、ぶ 00074530L10あんないにて、中+かない申まし、たゞ大手にて、一や 00074540L11り参らふとて、やかてものせられた。 00074550¥N55¥J 00074560¥X 00074570L13△其ほうの女ばうを、人かぬすむを、えしらぬか、さて 00074580L14+うつけじや、よそへゆくていにて、かくれてミつけ、 00074590L15うちころせと、いろ+いひふ(三十三ウ)くむる、心えた 00074600L16るとて、二かいにかくれて、まつ所へ、あんのことく、ま 00074610L17おとこきたり、さま+ちけいのあまりに、女申やう、し 00074620L18んじつおもへハ、ねぶるものじやが、そもじハ我&を、さ 00074630L19ほとおぼしめさぬ、といふ。おとこのいはく、一めいをか 00074640M1けて、此ことくまいるに、御うたかひなされ候、今なり共、 00074650M2ねぶらうとて、かほをさしよせけるが、あまりくさゝに、 00074660M3はなにてなづる。女ばう、よくおぼえて、いまのハ、はな 00074670M4ぢやといふ。いや、したじやといふ。せんぎまち(三十四オ) 00074680M5まちするを、二かいより、ふしあなからのぞき、よく+ 00074690M6見て、どちのひいきにてもないが、今のは、はなじや+、 00074700M7といふた。 00074710¥N56¥J 00074720¥X 00074730M9△あるもの、右のごとく、まおとこきたり、様+ちけ 00074740M10いのあまりに、ねぶらすハさせまいといふ。さらバとて、 00074750M11ゆびにてくじり、そのゆびをバのけて、/別(へち)のをねぶる。か 00074760M12のうつけもの、是をみて、をんなどもぬかるな、ゆびにぬ 00074770M13きかあるぞ、といふた。 00074780¥N57¥J 00074790¥X 00074800M15△山がより、はじめて、むこのきたるとて、色&(三十四ウ) 00074810M16さま+の、ふるまひをする。ごだんに、きりむぎを出し 00074820M17ければ、山がにて、つゐにミたる事もなし。一だんと、あ 00074830M18ぢのおもしろき物ぞとおもひ、しやくをとる女に、なにと 00074840M19云物そととへハ、われかなの事とおもひ、こいとゝ申とい 00074850¥P181 00074860L1へハ、よく+おほえて、/後(ご)日に、れいふミをやりけると 00074870L2て、/先度(せんと)ハ、はじめて参り、いろ+の御もてなし、こと 00074880L3に、こいとのあぢ、わすれがたく候、なれ+しき申事に 00074890L4て候へとも、此ほうへ、ちと給ハり候ハゝ、(三十五オ)いよ 00074900L5+まんぞくたるべく候と、かきてつかはしければ、しう 00074910L6とこれを見て、ごんごだうだん、我ひそうの物を、ぬすミ 00074920L7なから、うつけにするとて、やがてむすめを、とり返した。 00074930¥N58¥J 00074940¥X 00074950L9△あるおとこ、よき女ばうをまうけて、じまんするを、 00074960L10わやくなるものゝ、いひけるは、きしよの/内義(ないき)は、かたの 00074970L11ごとくすぐれたるが、/玉(たま)にきずじやといふ。おとこきゝて、 00074980L12はらをたて、なにがきづぞといへば、其事じや、をんなのめ 00074990L13には、(三十五ウ)すゞをはれと、むかしから、いひつたへた 00075000L14るに、其ほうの女ばうハ、めのほそきが一つのきづじや、我 00075010L15らか女ならバ、日本一のめもとになさうものを、といへは、 00075020L16それは何としてなるぞ、とゝへば、かのわやくものいふや 00075030L17うハ、まづまじりを、かミそりにて、きりひろげて、まぶ 00075040L18たをば、はさミきつてとり、なんばんかうやくをつくれは、 00075050L19二日三日のまに、すきとなをるといへは、さらバ其かうや 00075060M1くを、申うけうとて、やがてかへり、女ばうをとらへて、 00075070M2まぶた(三十六オ)をきり、かのかうやくを付て、二三日すぎ 00075080M3てミれは、ひたものにたゞれて、ほうさきまて、たゞれた。 00075090¥N59¥J 00075100¥X 00075110M5△ある人、ひるごとをくはたつるに、七つばかりなるむ 00075120M6すこ、やゝもすれバ、きてのぞきけるを、おや、むつかし 00075130M7くおもひて、おにのめんをかけてする。いつものあくたう 00075140M8もの、是をミて、かとへはしり出、ともだちをよびあつめ 00075150M9て、おにめがへゝするを、ミせうとて、みなつれてきた。 00075160M10(三十六ウ) 00075170¥N60¥J 00075180¥X 00075190M12△ぜうは所へ、きうしうより、れんがしうしんの人、上 00075200M13らくする。ある時ぜうはへ申やう、国もとへの、ぐわいぶ 00075210M14んにて候ほとに、三/条(てう)にし殿へ御礼申上たきよしを、いひ 00075220M15けれハ、やすき事とて、やかて同道してゆかれけるが、ミ 00075230M16ちにて、ぜうは申さるゝハ、御くげしうハ、ものことに御 00075240M17ねん入、ねどひをなさるゝぞ、きしよのやとハ、三でうに 00075250M18てある程に、さやうのきづかひ、かんようと、申されけれ 00075260M19ハ、まことに御心づけ、かたじけ(三十七オ)ない、その所 00075270¥P182 00075280L1は、まかせをかれよと申。さて、御たいめんにて、御さか 00075290L2づきくだされ、さま+御ねんごろにて、きやうかうは、 00075300L3上らくの折ふしは、さい+まち入なとゝ、仰られ、さて 00075310L4あんのごとく、ここもとにてハ、やどハと、御尋なさるゝ。 00075320L5かの人なにと心えてか、二/条(てう)のしもと申。二条の下ハと仰 00075330L6けれは、又、四でうのかミと申。四条のかミとハと仰けれ 00075340L7は、其時かの人、うろたへて、三でう西のつらのきたなき 00075350L8いゑに、ゐ参らすると申上(三十七ウ)られた。かへるさに、 00075360L9ぜうはにしかられて、いはれざる御心づけにて候と、かへ 00075370L10つてうらミた。 00075380¥N61¥J 00075390¥X 00075400L12△上京に、ひらはやしと云人あり。此人の所へ、ゐなか 00075410L13より、ふミをことづかりけるか、このもの、/平林(ひらはやし)といふな 00075420L14をわすれて、人によませけれハ、たいらりんとよむ。その 00075430L15やうなるなにてはないとて、又よの人にミせければ、是ハ、 00075440L16ひらりん殿と、よミける。是でもないとて、又、さる者に 00075450L17ミすれハ、一八十ぼく+とよむ。此うちハ、はづれしと 00075460L18て、のちにハ、(三十八オ)此ふミを、さゝのはにむすび付て、 00075470L19かつこをこしに付て、たいらりんか、ひらりんか、一八十 00075480M1にぼく+、ひようりや+と、はやし事をして、やがて 00075490M2尋ねあふた。 00075500¥N62¥J 00075510¥X 00075520M4△あるおとこ、あさおきて、おびをときながら、わたく 00075530M5し物を出して、火にあたる。五つバかりの子、そばへより 00075540M6ければ、かのわたくし物をかくす。子、是を、なにぞと思 00075550M7ひ、とゝの、なにやらん、かくいて、ミしやらぬ、ミたい 00075560M8+とて、しきりになく。おや(三十八ウ)きゝて、をのれ 00075570M9を、こね出した、こねばうよ、といへば、はゝきゝて、あ 00075580M10さなきすれば、一日なくに、一こね、こねて、ミせさしま 00075590M11せ、と云た。 00075600¥N63¥J 00075610¥X 00075620M13△ある人の所へ、はうばい一両人つれだちて、はなしに 00075630M14ゆく。ていしゆ出合て、はなしふるまひをして出/ず((ママ))。ぜん 00075640M15なかばに、きやく人申さるゝ、火のはたに何ぞくばりたる 00075650M16か、あしきかさかするといふ。ていしゆきゝて、人をよび、 00075660M17火のはたに、何ぞあるか見よ、何やら、わるいかゞするそ 00075670M18と、いひ付(三十九オ)ければ、此もの、ない/所(しよ)へゆきて、 00075680M19火のまハり、よく+ミれとも、さやうのものハなし。さ 00075690¥P183 00075700L1て、ざしきへまかり出て、三つゆびつきて、申けるハ、火 00075710L2のはたを、よくみて御ざれとも、なにも御ざらぬが、御か 00075720L3たさまの、火にあたりて御/座(ざ)る、と申た。 00075730¥N64¥J 00075740¥X 00075750L5△ある人、よそへ、ししやをつかハしけるか、この人ま 00075760L6かりかへり、ふうふ御座る所にて、御返事をこま+と申 00075770L7上る。/主人(しゆじん)の申さるゝは、さかづきハ出なんだか、ふるま 00075780L8ひハなかつたか、と申されけれハ、御ふる(三十九ウ)まひ 00075790L9こそ御/座(ざ)あつたといふ。こんだてハなにであつたといふ。 00075800L10御しるはうづで御座あつたと云。うづとハ何の事ぞといへ 00075810L11は、御うへさまの御まへてハ申にくいと云。くるしからぬ、 00075820L12申せといへば、らの御しるで御座あつたといふた。すぐに、 00075830L13うづらといひたきことじや。 00075840¥N65¥J 00075850¥X 00075860L15△あるさふらひ/馬(むま)にのりて、河をわたりけるか、/冬(ふゆ)の事 00075870L16にや有けん、さきにわたるわかたうか申けるは、さてもつ 00075880L17めたい事じや、へのこが、むめ(四十オ)ぼしになるぞとい 00075890L18ふ。しう是を聞て、やれ+、ないふそ、つがひかるゝと、 00075900L19いはれた。それより、かハらへあがりゆきければ、ぜにか 00075910M1一文おちて有けるを、馬よりとんでおりて、是をひろひ 00075920M2てミれは、かきのへたにて有。うちの者共にはづかしく思 00075930M3ひ、なんどきも、かやうの物をハ取てすてよ、馬がおどろ 00075940M4くにとて、すてられた。 00075950¥N66¥J 00075960¥X 00075970M6△ある長/老(らう)、町をとをられけるに、わやくなる女ばうは 00075980M7しり出、ころものすそに取つき、さ(四十ウ)め+となく。 00075990M8長/老(らう)御らんじて、これは何事そといふ。女ばう申やう、さ 00076000M9て+御なさけない事や、われ+、はんまいをも御あて 00076010M10がいなく、さもなくハ、ちりを成ともむすびて、御いとま 00076020M11とて給はらバ、かほにしるの有時に、にあひに、ありつき 00076030M12候ハんに、うちすてゝをかせらるゝ事、かず+うらミふ 00076040M13かく候と、まことしくいひてなく。長/老(らう)もとよりゆめにも 00076050M14しらぬ事なれハ、色&ちんじけれ共はなさず。けんぶつの 00076060M15ものとも申けるハ、是は長(四十一オ)/老(らう)さまのが、むりじ 00076070M16やといへハ、いよ+女かつにのり、はなさず。とかく爰 00076080M17にて水かけあひに申たり共、すむまいとて、長老をひつた 00076090M18てゝ所の/奉行(ふぎやう)へゆき、まづ女より申上て、さて長/老(らう)申さる 00076100M19ゝは、それがしは御らん候ことく、/出家(しゆつけ)の事、さやうの/義(き) 00076110¥P184 00076120L1ゆめ+御/座(さ)ない、其上わたくしハ、かつしきの時、らや 00076130L2くをわつらひ、ミな+おちて、やう+かぶが一すんほ 00076140L3ど御座る、と申さるゝ。女申けるハ、其一すんばかりのか 00076150L4ぶにてさせら(四十一ウ)るゝと、いひけれハ、/奉行(ふきやう)きゝ給ひ 00076160L5て、しよせん、御ばうの物をミンと有けれハ、はぢをかく 00076170L6せば、りが聞えぬとて、女もミよとて、出されしをミれは、 00076180L7八寸ばかりなるをミせられた。長/老(らう)のさいかくよかつた。 00076190¥N67¥J 00076200¥X 00076210L9△あるしほうり、寺のまへをうりけるに、すなはちよび 00076220L10入て、先しほをばかハずして、さて+そなたハ、しほな 00076230L11どをうりさうな人にてハない、ミどころかあるとほむれハ、 00076240L12しほうり申やう、さ(四十二オ)て+よいめや、そこなをし 00076250L13きを一まいくだされいとて、しほを三升/ば((ママ))かりてさし出す。 00076260L14是ハといへバ、けふハおぢのよりともの日じや、といふた。 00076270¥N68¥J 00076280¥X 00076290L16△あるわかしゆ、のしつけをほしゝとおもひ、ある夜ね 00076300L17んじやとねて、いふやうハ、そなたのはらのうへに、物を 00076310L18かかうが、よませられいやといひて、のしとかきければ、 00076320L19はやさとりて、あゝこそばい+とて、つけまでハ、ねん 00076330M1もなうかゝせなんた。 00076340¥N69¥J 00076350¥X 00076360M3△あるもの、久&そひたる女ばうを、にはかにいやか 00076370M4(四十二ウ)り、なにとそして、いさかひ出して、おひ出さん 00076380M5とたくミけれとも、此女ばう、おとこにすこしもたかふ事 00076390M6なし。ある時、おとこの申けるハ、ちかごろ申かね候へども、 00076400M7そなたを見ればむねかわるい、かてんづくにて、いんでた 00076410M8もれといふ。女ばうきゝて、せひにおよばぬ、さほとにお 00076420M9ぼしめさハ、かへらふとて、いにしへ、よめ入の時にき 00076430M10たる、いしやうをとりいたして、きるまゝに、かミにあぶ 00076440M11らをつけ、はをくろめ、出たちけれハ、おとこ、つく+ 00076450M12(四十三オ)と見て、もとのあらばちのすがた有。なにとぞして、 00076460M13いなせまいとおもへとも、一/度(ど)いひ出したる事なれば、と 00076470M14ゝむるにおよばす。折ふし、いぬるミちに、河の有けれは、 00076480M15此おとこ河のはたまてをくり、我舟にのせて、むかひのき 00076490M16しにつきけれは、女ばうふねよりあがりて、さらば+と 00076500M17いふていぬる。おとこ是をきゝて、ふなちんをいだせとい 00076510M18ふ。女ばう聞て、そなたとわれとかあひたにて、ふなちん 00076520M19にハ(四十三ウ)をよぶまいといへば、それハふうふのとき 00076530¥P185 00076540L1のこと、もはや、いとまをいだしてからハ、/他人(たにん)じやほと 00076550L2に、ふなちんがすまずハ、いなせまい、もどれとて、つれ 00076560L3てかへり、五百八十年そふた。 00076570¥N70¥J 00076580¥X 00076590L5△あるもの、せいじんの子を、三人もつ。あるとき、は 00076600L6ゝのうしろのこしに、やいとを、おとゝの二郎にすへさせ 00076610L7けるが、三郎、はゝのこしもとをほと+と、たゝきて、 00076620L8此あなたか、おゆかしいといふ。てゝおや聞て、三郎をに 00076630L9らミ、さん+にしかり(四十四オ)ければ、中むすこの次 00076640L10郎かいふやうハ、それはとゝのりんきじやといふ。あにの 00076650L11太郎、これをきゝて、それは次郎かいふかきこえぬぞ。な 00076660L12ぜに。とゝのためにハ、女ばうじやほとに。 00076670¥N71¥J 00076680¥X 00076690L14△八十ばかりなるばゝ、/市(いち)にたちけるが、又、あるよき 00076700L15わかしゆも、おなじく市にたつ。此わかしゆ、ばゝを、め 00076710L16もはなさず、あなたこなたへつきまハりて、よくミる。此 00076720L17はゝおもふやう、われにほれられたと見えた、一夜なびか 00076730L18ふと思ふ(四十四ウ)て、いかに、おわかしゆさま、我らに 00076740L19御用があら/□((ハカ))、仰られい、なに事成ともかなへ申さうとい 00076750M1ふ。此わかしゆ申さるゝハ、何も用はおりないが、我らハ 00076760M2かハらしのむすこじやが、其ほうのかほが、おにかハらの 00076770M3本によいと思ふて、見るといふ。ばゝきゝて、あのやくに 00076780M4たゝずめがといふた。 00076790¥N72¥J 00076800¥X 00076810M6△/御所方(こしよかた)の御ちの人、/町(まち)へうおかいに、/下女(げぢよ)をつれ御出 00076820M7なさるゝ。下女、うお取あげ、かいで、あらくさや(四十五 00076830M8終オ)、といふ。うおうりはらをたて、おのしがしうの、お 00076840M9ちの人の物がくさからふといふ。/下女(げぢよ)きいて、さてもりよ 00076850M10ぐわいをいふ物かな。しかとくさいといふか、さらばかゞ 00076860M11せうといふ時、おちの人、やれ下女にげい、ひくじじやと 00076870M12いはれた。 00076880¥Y 00076890M14此はなしのほんハ、せけんにおほく候へとも、事の外、 00076900M15あやまり御座候ゆへに、今又あらためて、令開板者也。 00076910¥Q寛永拾三年@丙|子@正月吉辰(四十五ウ) 00076920¥P186 00076930¥U噺本大系△第一巻 00076940¥T昨日は今日の物語 00076950¥G 00076960¥Y 00076970L16書写年不明 00076980L17編者未詳 00076990L18大本上巻一冊 00077000L19学習院大学蔵 00077010¥T1昨日ハ今日の物語△上 00077020¥N1¥J 00077030¥X 00077040M3△むかし天下をおさむる人、はうしやくなるふしにて、 00077050M4たいりをちんにとらふといひて、やりのいしつきをもつて、 00077060M5御もんをもつての外にたゝく。御つほねたち出合給ひて、 00077070M6これハこれたいりさまにて、下&のたやすくまいるところ 00077080M7にてハないそ、いそき+いつかたへなりともまいれとお 00077090M8ほせられた。其時かのはうしやくものゝ申やう、この家を 00077100M9ちんにとらせぬといふりくつのあらハ、ていしゆにいてゝ 00077110M10きつとことわりをい(1オ)へといふに、さて+こんごた 00077120M11うたんの事。 00077130¥N2¥J 00077140¥X 00077150M13△おたの信長公、時&けうにたんこをきこしめす。よく 00077160M14まいるとて京わらんへ、うへさまたんことなつけたり。是 00077170M15を一たんとそまつなる御こしやう、御せんちかき所にてし 00077180M16か+と申。これをきゝたまひて、ことのほか御ふくりう、 00077190M17すてに御かんきをかうふらんとせしところに、一けい道三 00077200M18御とうしやうあり。御ふくりう御尤にてハ候へとも、世上 00077210M19にさやうに申事ハかゑつて御ほまれにて御座候、其ゆへハ、 00077220¥P187 00077230L1むかし天子ちまきを御らん(1ウ)して、一たんとおもしろ 00077240L2きよしちよくちやうあれハ、それよりして、京わらんへ共、 00077250L3たいりちまきと申ならはし候と申あけられ候へハ、のふな 00077260L4かこう御きけん能なり、右の御小しやう御しやめんなさる 00077270L5ゝ。そうへつ、上+の御そはに是ある人は、万事にきつ 00077280L6かいかんようたるへき也。 00077290¥N3¥J 00077300¥X 00077310L8△ある人、下人にたいりちまきをかふてまいれといひつ 00077320L9けたれハ、心得申とてたいり様へ参り、御門はんの御まへ 00077330L10うちあけ、ちまきかハふといふ。はんしゆおかしくおもひ 00077340L11て、いか程にてかふそ(2オ)とゝへは、百文にてといふ。 00077350L12御はんの人&申さるるハ、これハたいりちまきとて、一貫 00077360L13文よりしたにてはうらぬそといへハ、けにも、此家つくり 00077370L14のていにてハ、さうあらふ事なりとて、やとへかへり、し 00077380L15か+といふた。物ことにふあんないにてハ、はちをかく 00077390L16へき事なり。 00077400¥N4¥J 00077410¥X 00077420L18△むかし天子御ふれゐの時、ある御いしや、さんたいあ 00077430L19る。くろとりハをんとくかとおほせられた。このいしや、 00077440M1くろとりといふ事そんせす候、うへ+の御ことは、下& 00077450M2うけたまハりしらす、何(2ウ)にて御座候そと、申上られ 00077460M3た。わらひの事おほせられた。 00077470¥N5¥J 00077480¥X 00077490M5△せうはところへ九州より、れんかしうしんの人在京す。 00077500M6ある時せうはへ申やう、国本へのくわひふんにて候間、三 00077510M7てう西殿へ御礼申上度とのそミけれは、もつともとて、や 00077520M8かてとうたうある。はの申さるゝハ、御くけしゆハ一たん 00077530M9と物ことに御ねんいり、ねとゐをさせらるゝそ、きしよの 00077540M10やとハ三てうにてあるほとに、さやうのきつかいせられよ 00077550M11と、かへす+いひふくめられた/□((れカ))(3オ)ハ、かの人申 00077560M12やう、かたしけなき御心つけにて候、其所ハまかせをかれ 00077570M13よと申された。さて御たいめんにて御さかつきくたされ、 00077580M14いろ+さまさま御ねんころにて、きやうこうハ、上国の 00077590M15ミきり、せつ+まち入なとゝおほせられた。さてあんな 00077600M16いのことく、こゝもとにての宿ハと御たつねなさるゝ。か 00077610M17の人、三てうとは申さすして、我らのやとは二てうの下と 00077620M18申。二てうの下とはと御尋あれハ、又、四てうのかミと申。 00077630M19四てうの上とハと御たつねあれハ、其ときかの人とうわく 00077640¥P188 00077650L1して(3ウ)、三てうにしのつらのきたなき家に居参らする 00077660L2と申あけられた。かへる道すから、せうはにいかうしから 00077670L3れた。 00077680¥N6¥J 00077690¥X 00077700L5△おなしく三てう殿へ、山さきのそうかんをとうたうに 00077710L6て、そうちやう御見まいにしこうある。かゝるところへ、 00077720L7ミかわのくにより、かきつはたのゆかりとて、いかにもか 00077730L8すかなるはな一もと、御文ハこにそふて、何方からやらん 00077740L9まいつた。すなわちこれを題にて御ほつく、 00077750L10△△あれをミよ花のすかたもかきつハた△△聴△雪(4オ) 00077760L11△△△のまんとすれハ夏のさわミつ△△△△宗△長 00077770L12△△くちなはにおハれていつち帰るらん△△宗△鑑 00077780L13これにて百ゐんあそはされた。是をはいかいの手ほんにす 00077790L14るそ。 00077800¥N7¥J 00077810¥X 00077820L16△あるものふしんする。御公家衆ハ、よう草木の名お御 00077830L17付なさるゝ事ちや。なせに。先すゝきとの、まつきとの、 00077840L18たけの内殿、やふとの、はむろとの、やなきはらとの、き 00077850L19くていとの、たけやとの、此ふんちや。いやまたある。た 00077860M1れそ。とうさんせうとの。これハ、とうさいしやうとのを 00077870M2もんまうにて(4ウ)申た事ちや。 00077880¥N8¥J 00077890¥X 00077900M4△又、もんまうなるものゝ申ハ、御くけしゆハ、ようと 00077910M5りけたものゝ名をつかせらるゝ事ちや。なせに。先からす 00077920M6まるとの、わしのをとの、たかつかさとの、いのくまとの、 00077930M7此ふんちや。いやまたある。たそ。まてのこうしとの。こ 00077940M8れも小路殿をこうしと思た。ミやこにも又いなか人とかく 00077950M9に、さしてたものかはるい、人かわらふ。 00077960¥N9¥J 00077970¥X 00077980M11△さかの大かく寺殿へ、おんこくのしゆん礼参りて、な 00077990M12にと申所そととふ。御もんせきとこたふ。三(5オ)文にて 00078000M13まけてけんふつはなるまいかと、わひことしたそ。御門せ 00078010M14きを五文のせきちやと心得た事、くちおしきしたい也。 00078020¥N10¥J 00078030¥X 00078040M16△むかし、三よしけより、御そくゐ御しゆきやうの御さ 00078050M17たありなから、とゝのいかねけれハ、なにものゝしわさや 00078060M18らん、一しゆ、 00078070M19△△やせ公家の/の((ママ))むきいひをたにもくひわひて 00078080¥P189 00078090L1△△△そくいたてこそむやくなりけれ 00078100L2この時に、たうしやうたうか、うちよらせ給ひて、さて+ 00078110L3にくいらくしゆの立やうかなとて、(5ウ)すなはち返し、 00078120L4△△たかいふそむきいひそくゐにならぬとハ 00078130L5△△△いのちをたにもつけはつかるゝ 00078140L6又、京わらんへ、 00078150L7△△事たらぬねやしもてこし御そくゐを 00078160L8△△△おしておこなふ君か代もかな 00078170L9其ちふんハ、らくしゆ、中&まひにちかそへられぬほと立 00078180L10けれハ、これをミよしけにも、むねんとやおもひけん、い 00078190L11そきとりおこなわれけれとも、やう+かたぎはかりにて 00078200L12ありけれハ、(6オ)又何ものやらん、 00078210L13△△いにしへのはゝ程もなきそくいかな 00078220¥N11¥J 00078230¥X 00078240L15△さもなき人、くわいふんに、御公家方へ御うたのくわ 00078250L16いにきのふ参たと、れき+のなかにてかたる。これを人 00078260L17&をかしかりて、其をもむきはととへハ、めつらしき題に 00078270L18て候、まつ一つハしののたふまくちや。是ハ子の日をいふ 00078280L19た。又一つハまつわかちや。是ハ杜若をいふた。是を座中 00078290M1のものおかしかり、たれ共なく一しゆ、 00078300M2△△しりてさへしらすかほする人もあるに(6ウ) 00078310M3△△△しらてしるふりゆくすへのはち 00078320¥N12¥J 00078330¥X 00078340M5△禁中にて月舟和尚、東坡御かうしやくあり。一たんと 00078350M6おもしろくおほしめすゆへに、なかさたちまちめいねうす。 00078360M7つね+下はらけにて、腹くせあしきゆへそ。しかる間た 00078370M8ゝミなから御しらすへ、かきいたす。あまりせうしさに、 00078380M9御前に三てうとのまし+けるか、はいかいのほつくをい 00078390M10たし給ふ。 00078400M11△△つきのふねへさきに出るうらみかな 00078410M12御せい、(7オ) 00078420M13△△一花薫九重△△△月舟の道具を一くわと申ゆへ 00078430M14この御りやうく、いなかの人、せうはへふしんす。月の御 00078440M15ほつく、はなの御わき、あふそれなから珍重、しかハあれ 00078450M16と、きかたかふた、御ほつくはあき、御わきハはるなり、 00078460M17これいかゝ候や。せうはこたへていわく、そうへつ御せい 00078470M18なとに、なにかと申事、そらおそろしき御事なり、しかし 00078480M19なから御ほつくと御わきと、きのたかふたことハ、あけて 00078490¥P190 00078500L1かそふへからす、その外きのない事も、ふてにハいかてつ 00078510L2くすへき、しやうこハ、先みミ(7ウ)ちかき事に申へし、 00078520L3へいけ物語に、源三位頼正ぬゑいし時、宇治の右大しん殿、 00078530L4△△ほとゝきす名をもくもゐに上るかな 00078540L5とあそはしけれハ、よりまさ承て、 00078550L6△△△ゆみはり月のいるにまかせて 00078560L7かくのことく、御ほつくハ夏、わきはあきそ。又とふ、き 00078570L8のないしやうこハいかゝ候。次のへいけに、おほいの御門 00078580L9きんよしこう、 00078590L10△△五月やミ名をあらわせる今夜かな 00078600L11よりまさうけたまわり、(8オ) 00078610L12△△△たそかれときもすきぬとおもふに 00078620L13これこそ、きのないためしよと申されたれは、いなかの人、 00078630L14さて+と、せうはをはいしけり。 00078640¥N13¥J 00078650¥X 00078660L16△むかし、松木殿と申御公家を、しやうくん、ことのほ 00078670L17か御てうあひのあまり/り((ママ))に、かうくわんにとおほしめしけ 00078680L18れとも、三大しんは、はやふさかりぬ。きたうにすゝめら 00078690L19るゝ時、 00078700M1△△けんもんにひきまハされてめてたやな 00078710M2△△△まつハちやうすのしんきたうとの 00078720M3これハ、たゝにはあらぬさくいとさたあり。御(8ウ)所ハ、 00078730M4はんせうゐんとのとかや。 00078740¥N14¥J 00078750¥X 00078760M6△ある人、いしやまへさんけいして、えんきちやうもん 00078770M7す。其もんこんにいはく、その+此いし山寺と申ハ、ま 00078780M8へにこすいあり、うしろに山あり、ミねにとうあり、たに 00078790M9ゝたうあり、二わう門あり。これを聞て、これハあすかい 00078800M10とのゝ御寺かととふ。なせにといへは、何にもかにもあり 00078810M11+とある程に、さうかとおもふた。 00078820¥N15¥J 00078830¥X 00078840M13△なんていの御とき、京かたにも天子御座あり、しやう 00078850M14くんあり、くわんれ(9オ)いあり。よし野にも天子御座あ 00078860M15り、しやうくんあり、くわんれいあり。このときのらくし 00078870M16ゆ、 00078880M17△△わうふたりくわんれいふたり御しよふたり 00078890M18△△△むたりとしたる京のありさま 00078900¥P191 00078910¥N16¥J 00078920¥X 00078930L1△ふたんくわうゐんとて、近衛たいかう御ねんころのち 00078940L2やうらうあり。そうへつ長老ふんハあしうちにてまひるに 00078950L3て候。しかれとも、右のちやうらう、れんかすきにて、せ 00078960L4つ+御くわいにまいりいてらるゝゆへ、御くわいの日は 00078970L5かり、くきやう御めんとおほせられけれハ、ちやうらう、 00078980L6御ことハ(9ウ)にあまへて、しやうちうくたされ候やうに 00078990L7と御望ありけれは、たいかう御わらひありて、とりあへす、 00079000L8△△くきやうをはとき+なりとすわれかし 00079010L9△△△ふたんくわうはいわれさりけり 00079020¥N17¥J 00079030¥X 00079040L11△杉近衛殿を、なにのしさいやらん、ひてよしこうより、 00079050L12さつまのはうのつへ御なかしなされけり。はいしよハ、か 00079060L13こしまとやらんに、うつりまします。このとき、 00079070L14△△大しんの車にハあらてあわれにも(10オ) 00079080L15△△△のするかこしまになふはうのつ 00079090¥N18¥J 00079100¥X 00079110L17△ある人、四方はいを見物に参り、 00079120L18△△うすゝミにかくまゆしろきそはかほを 00079130L19△△△よく+ミれハ御門なりけり 00079140¥N19¥J 00079150¥X 00079160M2△やうくわう院さま、御ふれいの時、つうせん、おんミ 00079170M3やく御とりちかへのおり、 00079180M4△△つうせんハしやうきもへたと見えにけり 00079190M5△△△わうのつまるをしらぬあわれさ 00079200¥N20¥J 00079210¥X 00079220M7△としなりきやうハ、九十一にてミまかり給ふ(10ウ)よ 00079230M8し承て候。八十一の時の御うたとて人のかたられ候は、 00079240M9△△いにしへのつるのはやしのけふりにも 00079250M10△△△立おくれぬるミこそつらけれ 00079260¥N21¥J 00079270¥Xあま入道はなしの事 00079280M13△ある若き人、れいならぬこゝちありて、ふりよに身ま 00079290M14かりぬ。悪事ハミにおり+、せん事ハ少もなさす。やれ 00079300M15+ちこくにおもむいて、かゝるく(11オ)るしミにあふと 00079310M16おもはゝ、後世ほたいもねかふへきものをと、こうくわい 00079320M17すれとも、さきにたたす。しかれとも、たのミ入たるしゆ 00079330M18つけあり。此人、きたれかしといふ声を聞て、ちこくのう 00079340M19ちより出家のこゑとして、さて+これへ御いてなり、我 00079350¥P192 00079360L1&このかまの中に候、これへ御いりあれ、すなはち、くそ 00079370L2うかあふきをふまへたまへ、はいりさまに、めをふミつふ 00079380L3いてたもるな。 00079390¥N22¥J 00079400¥X 00079410L5△さるしゆつけ、思はすけいせいまちをとをりあわする 00079420L6に、けいせいにそてをひかれ、むりに(11ウ)つほねへひき 00079430L7あけられ、せひに及ハすしうけんす。おりふし、ふせのあ 00079440L8りけるを礼にいたす。君かいわく、今日ハわらハかおやの 00079450L9日なれハ、それにをよハすといふ。しゆつけ聞て、かたし 00079460L10けなく候、さらハけさをかけて、いたさう物をといふた。 00079470¥N23¥J 00079480¥X 00079490L12△あるはうす、上らう町をとをる時、上らうそてをひく。 00079500L13はうすのいはく、われハこれ、五つや三つの年よりも、仏 00079510L14の躰に身をなして、ミなのやうなる人&には、手をもさゝ 00079520L15れぬものにて候。上らう聞て、御尤にて候へとも、女とこ 00079530L16そ生れて候へ共、(12オ)むさとしたる事をは申まい、うけ 00079540L17たまわり候へハ、御はう方ハ、わか衆をもちい給ふときゝ 00079550L18およひ候、われらも、おにやけをもちて候を、御ように立 00079560L19申へく候、又、前の方御所望に候ハゝ、さいハいわれ+ 00079570M1もすきのことにて候間、いとやすき御やうに候、しかしな 00079580M2から、こゝにことわりか御座候、そのしさいハ、おもてむ 00079590M3きハ、わかミすきよりの事にて候ゆへ、ねやすく候、から 00079600M4め手ハ、むりにたしなミ候により、ちとれいかたかく候、 00079610M5このうへハ、御はうさまの御すき次第にて候と、(12ウ)申 00079620M6た。はうす聞て、御らんし候ことく、せつしや一たんとひ 00079630M7ん僧の事にて候あひた、をもてむきの、やすいかたを仕り 00079640M8候といふて、はや、のりかかつた。 00079650¥N24¥J 00079660¥X 00079670M10△一たんと、しゆしやうなるしゆつけあり。これも、や 00079680M11なきまちをとをり合するおりふし、門たちしたるけいせい、 00079690M12御出家のころもをひきけれハ、ころものやふるゝ事をいた 00079700M13わりて、やかて内へはいり、これへ+とて、はや、まく 00079710M14らをならへた/ち((ママ))た。まんそくして、のきさまに、くわいち 00079720M15うし(13オ)たるふせを、たゝいまのれいとていたしけり。 00079730M16けいせいかいふやう、けふハおやの日、御やうに候ハゝ、 00079740M17御わすれなく、まひ月御いてあれといひけれハ、しゆつけ 00079750M18のいはく、さて+御けちえん一たんしゆしやうに候、ら 00079760M19い月からハ、かならす+おたいやから参らうするにて候 00079770¥P193 00079780L1と、かたくせいやくせられた。 00079790¥N25¥J 00079800¥X 00079810L3△さるかたに、ひくにふろ御たかせ候。御寺りやうの百 00079820L4しやうあつまり、これをたく。まつこゝろミにとて、しや 00079830L5うやの一はん子いりて倨るところへ、(13ウ)はうしやう様 00079840L6御いてと聞て、しかられてハ大事と心得て、かほをりやう 00079850L7の手にてかくしあかる。はうしやうさま御らんして、なふ 00079860L8おそろしや、あれハたれそ。かうざうす聞て、かほハかく 00079870L9して候ほとに、たれともしれ候はねとも、まらハ、もんせ 00079880L10んのまこ太郎かものちやとおほせられた。さて+能見し 00079890L11られた事ちや。 00079900¥N26¥J 00079910¥X 00079920L13△あるひくに、ふろたけとおほせられた。百しやうあつ 00079930L14まり、たきたていれ申候。しんさうすのおほせられ候ハ、 00079940L15ちと、てうつのこをまいらせよとお(14オ)ほせられた。や 00079950L16まかの事にてハあり、てうつのこといふ物をしらす。にわ 00079960L17かによりあひをして、此よしかくと尋ぬる。たれ+もし 00079970L18らす。とかく、おそなはり候てハ、しかられ候はんまゝ、 00079980L19むかしハ御座候つれとも、先年の一らんにうせ申たるよし 00079990M1御返し申上へきとて、しか+と申。しんさうすきこしめ 00080000M2して、さて+うつゝなき事を、みないハしむ事やとをほ 00080010M3せられたれハ、いや是うつゝないも、一度にうせたと申あ 00080020M4けた。 00080030¥N27¥J 00080040¥X 00080050M6△じしゆのはうす、ひくにと一ところにて、あめ(14ウ) 00080060M7の中さひしさに、一はんとおもひ、よる一人の小ものをは、 00080070M8さけをかいにやる。あとにて、やかてくわたつる。ひくの 00080080M9いわく、なふ、しぬる+と声をたてられたれハ、はうす 00080090M10も、そなたの御しにあれハ、おれもしぬるよなふと、ろん 00080100M11きにこゑをたつる。しかるところに、こものハさかやへハ 00080110M12ゆかすして、これをきゝいたり。さて、ことすきて後、さ 00080120M13けハととへハ、いまたかいに参らぬといふ。なせにといへ 00080130M14ハ、おひんさまも御はう様も、ふたりなから、しぬる+ 00080140M15とおほせられたほ(15オ)とに、しなせられたらは、さかて 00080150M16ハたかなし参らせうそとおもふて、参らぬといふた。 00080160¥N28¥J 00080170¥X 00080180M18△うつくしきはうす、いせ参りする。ミやかわにて、か 00080190M19ハわたしに手をひかれてわたる。かわわたし、一たんと、 00080200¥P194 00080210L1ふちやうなるものにて、これをひくにかとおもひ、かわな 00080220L2かにて、むすとてをやりてさくる。はうす、これハといわ 00080230L3れた。このときに、かハわたしうろたいて、いや、こゝな 00080240L4へゝは大にらちやといふた。たかいにわらふて、はたいた。 00080250¥N29¥J 00080260¥X 00080270L6△あるこひくに、ししやうの御つかいとて、里ハ(15ウ) 00080280L7なれた野をひとりゆくに、こゝをおりふしふちやうなるわ 00080290L8かものゝとをり合せて、ひくにゝことはをかくる。少御む 00080300L9しん申たい。あまのいはく、なにことそ、むしんといふ事 00080310L10ふあんない、さら+しらぬ。若もの聞て、おしりなくハ 00080320L11おしへ申さう。なふ、きやうこつやとてにくる。おとこを 00080330L12いつき、ひきころハかす。さて、はなかミをとりいたし、 00080340L13まくらにさせ、さて、ゆくをしたにしきたまへといへは、 00080350L14ひくにのいはく、なせに。つちにてしたかよこれうといへ 00080360L15ハ、いや、こゝろやすく(16オ)おほしめせ、しりハしたに 00080370L16おくまいといわれた。さて+一はんにふあんないなとい 00080380L17ふたに、いかうちかふた。 00080390¥N30¥J 00080400¥X 00080410L19△くわうけんゐんとのゝ御代に、あるしやう人、一たん 00080420M1と御いにいり、まい日おんときにしゆつしなさるゝ。御ね 00080430M2んころのあまりに、らくたとおほせいたされた。上人の年 00080440M3ハ、五十あまりとミゑた。上人おほせられ候ハ、御ちやう 00080450M4かたしけなく候へとも、いつゝや三つのとしよりも、しゆ 00080460M5つけのすかたとまかりなり、きやうたらにをなら(16ウ)い 00080470M6おほへ、上人かう迄さつかりて、いまさら、なに事にらく 00080480M7たつかまつるへきやと、かへす+しんしやくある。ミな 00080490M8人もつともとかんす。しやうくんきこしめし、これ、もつ 00080500M9ともの儀に候へとも、こゝろやすく申承るへきために候と、 00080510M10さいさん御意なさるゝ。この上ハちからをよハすとて、御 00080520M11らくたなり、とかくに立仏きよふつもたんなのはからひと 00080530M12て、くわいふんをもかへり見す、さて+御はつかしきと 00080540M13なりかほとなる。御ねんころの御ついてにて、子にて候も 00080550M14のをも御目見え(17オ)と望ミ申さるゝ。尤の御いくたる。 00080560M15しかるところへ、年三十あまりなるか、まかりいてられた。 00080570M16是はと御ふしんたつ。しやう人のいわく、これハく僧十六 00080580M17けさかけの年まうけたる子にて候と、申あけられたれハ、 00080590M18うへさまをはしめ御まへの人&、ミすきちやうもさゝめき、 00080600M19大わらひ、あきれはてゝ御さつた。 00080610¥P195 00080620¥N31¥J 00080630¥X 00080640L2△あるちやうらう、ひやうちうにめをふさき、すてには 00080650L3や、今をかきりと見ゆる。たんなのみな、よりあひて、あ 00080660L4らせうしや、今一度めをひらき、我(17ウ)おも御らんし候 00080670L5へかし。又、つねに御すきのものとて、さけと御さかつき 00080680L6をもちて、これ+御らん候へ、いつも御すきの物にて候 00080690L7と申せは、べゝかと仰られた。中+ふてをすてた事ちや。 00080700¥N32¥J 00080710¥X 00080720L9△さる人、ねんふつまうしは、いかうぬるいといわれた。 00080730L10くろたにゝくまかひかいらるゝ、それもぬるいか。 00080740¥N33¥J 00080750¥X 00080760L12△てんたいしうハぬるいといふ人あり。さいとうのかた 00080770L13はらに、むさしはうへんけいもいるけに(18オ)す。 00080780¥N34¥J 00080790¥X 00080800L15△しやうたうしうハ、ようあてじをあそはす。しやうた 00080810L16うも、しやうたうによらう、こうはう大師、あて字ハすこ 00080820L17しもないけにす。 00080830¥N35¥J 00080840¥X 00080850L19△ししゆ、せんしうにあふて申さるゝハ、ぜんしうにハ、 00080860M1能きんのしをつかせらるゝ事ちや。なせに。まつ、たうに 00080870M2てハきんさん寺、さて、きんさうすの、ちやきんの、ふい 00080880M3きんの、しゆきんの、つきんのと、かす+いひたてられ 00080890M4た。こゝにて、せんそうへんたうせられたやうは、時衆に 00080900M5は、やう、つ(18ウ)のしをつかるゝ事ちや。なせに。先な 00080910M6むあミた/た((ママ))ふつ、おとつつ、はねつ、かねをたゝいつ、ひ 00080920M7くにをもつつ。 00080930¥N36¥J 00080940¥X 00080950M9△むらさきのゝ大徳寺にて、大仏事あり。いつくともし 00080960M10らぬはいそう、せん僧のころもおかりきて、五山衆にうち 00080970M11ましりて、さしきへなをらんとす。いつれも+、てら+ 00080980M12のしゆ、座はいありて、それ+になおらるゝ。これをは 00080990M13しらて、このまひす、かなたこなたとうろたえやすらふ。 00081000M14さしき奉行是をミて、そなたのなはなにと申そとて(19オ) 00081010M15/へと((ママ))、かのはうす、はいまうして、わたくしハ、こうふく 00081020M16寺の治部卿といわれた。さて+五さんにハめつらしき名 00081030M17の。とかくにせ事ハ、ついにあらわるゝものちやほとに、 00081040M18たしなまう事ちや。 00081050¥P196 00081060¥N37¥J 00081070¥X 00081080L1△ひんほつに、西国の僧、東国のそうにとふ。かうつけ 00081090L2下野あつて、中つけのなきハいかん。とうこくのそう、こ 00081100L3たへていわく、ちくせんちくこあつて、ちくちうなきかこ 00081110L4とし。一たんとよいへんたうちやと、さたするそ。(19ウ) 00081120¥N38¥J 00081130¥X 00081140L6△あしかゝにて、しんほちしゆ、ほうもんす。一つから 00081150L7九つ迄、つの字ありて、十につのしのそはぬはいかん。こ 00081160L8たえていわく、もつともたうりかな、五つゝに、つのしを 00081170L9くわしやうした程にそ。これも一たんと、とんさくちやそ。 00081180L10これのちにかつかうになられたといふ。 00081190¥N39¥J 00081200¥X 00081210L12△しやうとしうたんきに、一けんそとは、えうり三悪道、 00081220L13かきやうさうりうしや、ひつしやうあんらくこく、このも 00081230L14んをくりかへし+とき給ふ。此もんのこゝろハ、一度そ 00081240L15とはをミるものハ、なか(20オ)くさんあくたうをはなるゝ 00081250L16よしなり。これをちやうもんして、ふしんするものあり。 00081260L17いかに上人きこしめせ、われらハこしやううけたまわり候 00081270L18ハすとも、くるしかるましく候、其ゆへは、一/□((たカ))ひそとは 00081280L19を見んものハ、なかくさんあくたうをはなれ、いはんや、 00081290M1さうりうせんものハあんらくこくに生るゝと候、さるほと 00081300M2に、此年まて、そとはの数見候事あけてかそふへからす、 00081310M3たゝいまのあひたにも、当寺のはかところへ参り候ハゝ、 00081320M4千万+見え候へし。上人こたへていわく、(20ウ)いやさ 00081330M5やうにてハ候ハす、はゝ一けむのそとはの事にて候、なか 00081340M6さはそれにあふしたるそとはの事なり、それおミ給ひて候 00081350M7やととはれけれハ、いや、いまたはゝ一間のハみ候ハすと 00081360M8こたへた。上人のいわく、それをミつくるまてハ、ねんふ 00081370M9つを申させたまへとおほせられけれハ、かしこまり候とて 00081380M10かへる。 00081390¥N40¥J 00081400¥X 00081410M12△あるしんほちに、おやの方より、能&ほけきやうをな 00081420M13らはしめよと、ゆたんなくきやうくんせられけれ共、すこ 00081430M14しもならはぬ。くせ事といへ(21オ)ともきかぬ。上人さま、 00081440M15おほせられけるは、きやうをよまぬハ大事もない、よいほ 00081450M16つけしうのしたちちや。なせに。ちやうかこわうて、きの 00081460M17くすりちや、あとをとらせうとおほせられた。 00081470¥N41¥J 00081480¥X 00081490M19△京の小かわに、いからしとて日れんしうのしんしんし 00081500¥P197 00081510L1やあり。この人ハ、大徳寺さんけんゐんの国師のおしなり 00081520L2しか、つね+こくしへきやうくん申されけるハ、せひ共 00081530L3+ほつけしうに御なり候て、きやうをいたゝかせられ候 00081540L4ハゝ、我らにおいて、へつしてかたしけなくそんすへく 00081550L5(21ウ)候と申された事。 00081560¥N42¥J 00081570¥X 00081580L7△悪とうなるしんほち、ししやうのきをとりうしなふと 00081590L8きに、くすしのところへ、きつけをとりにはしれといひ付 00081600L9られたは、みちにて、こをミていた。 00081610¥N43¥J 00081620¥X 00081630L11△物かくには、くのきりやうか大事ちや。京にひしやく 00081640L12さしの上手あり。くわんらいハ大つのものにてありけるか、 00081650L13ミやこに家をもち、すなはちおもてののれんに、天下一大 00081660L14つひしやくやとかきつくる。これを京わらんへ、大つひ、 00081670L15しやく(22オ)やとよふた。さて+、手からなへゝをもち 00081680L16たことちや。天下一の大つひか、しやくやしてゐる程に、 00081690L17いさ+けんふつにゆかんとて、かの家の門前に、きせん 00081700L18くんしゆをなす。 00081710L19もとハ△△天下一△△大つひしやくや 00081720M1いまは△△天下一△△大つのひしやくや 00081730M2かくのことく、のゝ字をいれてかく。尤ちや、はしめより、 00081740M3そのねんハありたい事ちやと人こと(22ウ)にいふ。 00081750¥N44¥J 00081760¥X 00081770M5△みやこ五てう寺町、ハしのほとりに目いしやあり。の 00081780M6れんのかきつけハ、かねこめくすりや。これを人&よミな 00081790M7しけるハ、かね、こめ、くすり屋とよふた。三いろまて、 00081800M8物ありとて、人&かいによる。このうち一いろもなし。な 00081810M9きこそたうりなれ、ミやうしハかねこ、めくすりやにてあ 00081820M10るあひた、これもかくのことくかけは、なんなきものを。 00081830M11(23オ)かねこ△△めくすりや。 00081840¥N45¥J 00081850¥X 00081860M13△二度もの思と云題にて、 00081870M14大△△はるハはな秋はもみちをちらさしと 00081880M15△△△△年に二たひ物おもふなり 00081890M16△ちこ 00081900M17△△△あさめしと又夕めしにはつれしと 00081910M18小△△△日にふたたひハものをこそおもへ 00081920¥P198 00081930¥N46¥J 00081940¥X 00081950L1△てんかくのしうく、大ちことしんほちと小ちこと、 00081960L2(23ウ) 00081970L3△△きよもりの長刀と参らふ△△五くしま 00081980L4△△しんほち、仏のつふりと参らふ△△三くし 00081990L5△△小ちこは、いしやの御ほそんと参らふ△△八くし 00082000L6とにかくに、小ちこハいかう、しやうくわんせられた。 00082010¥N47¥J 00082020¥X 00082030L8△大ちこ△△△△小茎△△こらへよし 00082040L9△△△△△△△世間ミな△△なれかしと思 00082050L10△△小ちこ△△△△大茎△△中こせすひほとに 00082060¥N48¥J 00082070¥X 00082080L12△△△△△△△わか手とゝかぬ山さくら△△大ちこ 00082090L13△△のほらはや△若むらさきのはらのうへ△△小ちこ(24オ) 00082100L14△△△△△△△△ふもとハかすむみねの月△△しんほち 00082110L15小ちこのさくふん出きた。 00082120¥N49¥J 00082130¥X 00082140L17△ある人、御ちこさまハ大上ごちやと申。そふてもない。 00082150L18ちふさにもさけをぬらねは、ちにものミつかなんたと、ち 00082160L19いかいふた。 00082170¥N50¥J 00082180¥X 00082190M2△大いひに、そのまゝしるをかけて、いくたひもまひる。 00082200M3後見かこれをミてにらむ。ちこおほせられ候やうハ、三位、 00082210M4おれをにらまうより、とろゝのをつけをにらまいよといひ 00082220M5なから、むす+と、いかほともまいつた。(24ウ) 00082230¥N51¥J 00082240¥X 00082250M7△よくりんきするねうはう、わかしゆのいたかるを、し 00082260M8やうしこしにミて、さて+あのよかるつらハ、なふ、に 00082270M9くやといふて腹をたてた。 00082280¥N52¥J 00082290¥X 00082300M11△御ちこさま、はしめて御とうさんに、じをさん+に 00082310M12御わつらひにて、しやうたいなき御すかたとて、はうゐん、 00082320M13さんミをめして、もつての外御せつかん。あのやうに、し 00082330M14やふるものか、さて+くせ事ちや。三位申やうは、日本 00082340M15こくの大小の神、へつしてハ山王大師も御せうらん候へ、 00082350M16しやふりハいたさぬ、ぬき様にやふれた。(25オ) 00082360¥N53¥J 00082370¥X 00082380M18△大ちこのしりけを、小ちこにぬかせらるゝところに、 00082390M19へをひられたれハ、小ちこの目へ、しゝをふきいれた。な 00082400¥P199 00082410L1ミたをなかさるゝを、はうゐん御らんして、小ちこの涙ハ 00082420L2なに事にてはんへるそ。小ちこしか+とつけられた。法 00082430L3印このよしきこしめして、大ちこも小ちこをもさん+に 00082440L4しかられた。おれか、けつひとたのしむものを、さしてた 00082450L5事をしてとおほせられた。 00082460¥N54¥J 00082470¥X 00082480L7△御ちこさま、御里御ふへんさに、はれかましき時ハ、 00082490L8なにもかもかり物ちや、からせられぬものハ(25ウ)やう 00082500L9+しぢはかりちや、あらせうしやと、三位か申せは、ち 00082510L10このおほせられ候やうハ、しちもおれかにてはないけな。 00082520L11なせに。ミる人ミな、馬の物ちやといふて手をうつほとに。 00082530¥N55¥J 00082540¥X 00082550L13△天りう寺のさくけん和尚へ、信長公御ふしんのことあ 00082560L14り。何とて世間に小ちこをはりこんにして、大ちこをはり 00082570L15こんにせぬぞ、大ちこといふハ、小ちこのなりあかりにて 00082580L16ハないか、小ちこにてさへりこんならは、大ちこにてハ、 00082590L17なを+りこんになるへきか、いかゝふしんと、おほせら 00082600L18(26オ)れたれハ、そのときさくけんの御返しに、御もつと 00082610L19もの御てうにて候、われらもさやうにそんち候、しかしな 00082620M1から、小ちこのあひたハ、いまた里こゝろ御座候て、ぶけ 00082630M2のりはつさいかくも身につきそふて御入候か、てらしミて 00082640M3のちハ、なかそてのぬるきたちひを見つけ申候へハ、おの 00082650M4つとたわけ申かとそんち候よし、おほせあけられけれハ、 00082660M5のふなかこう、ことのほか御ゑつきにて、一たん御もつと 00082670M6もの御へんたうやと、仰せられた。 00082680¥N56¥J 00082690¥X 00082700M8△あるちこ、はな見に参とて、うつくしきハし一(26ウ) 00082710M9せん、こしにさいて出給ふ。後見のはうし、これをミて、 00082720M10言語たうたんやと、目にかとをたてにらむ。ちこ、いかに 00082730M11そなたの御にらミあつても、よしミつのわきさしをさした 00082740M12るよりハ、あこかこころか、たのもしいといわれた。 00082750¥N57¥J 00082760¥X 00082770M14△わかしゆのさうりとりをたのミて、御さかつきくたさ 00082780M15れたいと、のかれかたくいふたれハ、心得んとて、その若 00082790M16衆を、やかてねんしやのところへとうたうしてゆく。ねん 00082800M17しや、かたしけなしとて、いろ+さま+の御さかなに 00082810M18て、九こんをす(27オ)すめけれハ、そこにて、かのこもの 00082820M19申やう、あまりになしいさせられそ、けささけのかすを参 00082830¥P200 00082840L1り候て、いまによふて、あのやうに、かほかあかいといふ 00082850L2た。いやしきものハ、あかりにつなかれぬ事ちや。 00082860¥N58¥J 00082870¥X 00082880L4△ある若しゆに、ひん僧のうちこまれた。其内に又、ち 00082890L5きやうとりの大ミやうほれられた。やかて、ていかのきや 00082900L6うのくわいしを、御手本にとてしんせられた。はうすこれ 00082910L7をきゝつけて、まけしとおもひ、こうはう大師のしんきや 00082920L8うのきれはし(27ウ)を三くたりほと、もとめいたして、お 00082930L9くられた。又そのゝち、大名より刀、わきさし、かねたく 00082940L10さんに付、けつかうなるこしらへにて、しんしやうす。は 00082950L11うす、これを聞て、あきれていられた。このへんたうに、 00082960L12かミそりなとにてハすむへからすとて、やかて思きつた。 00082970L13△△何事も人にまけしとおもへとも 00082980L14△△△こかねかたなに手をそつきぬる 00082990¥N59¥J 00083000¥X 00083010L16△次らうといふ子を三井寺へ、てならひにのほせた。や 00083020L17かて、きよかきをして里へミせられた。ふた(28オ)りのお 00083030L18や、これをミて、よいてになるへきとて、よろこひかきり 00083040L19なし。はゝのいわく、てまてこてなく、おとなこゝろもあ 00083050M1ると見えた。なせに。きよかきのおくに、あなかしく次ら 00083060M2う、といふことかあるといふた。 00083070¥N60¥J 00083080¥X 00083090M4△山門の小法師はら、御ちこ様へ御むしん申たいと申。 00083100M5ちこきこしめして、さて+やさしや、さためて、われら 00083110M6になさけをかけよとの望とおもひあわせ、やすきこと、そ 00083120M7ちしたい、すなはち、今なりともとおほせられた。小はう 00083130M8しとも承て、さて(28ウ)も+、かたしけなき御事ちや、 00083140M9たゝし、法印さま御留すのときに、むしんの事申あけ候は 00083150M10んといひもあへす、はうゐん御るすになる。しかるところ 00083160M11へ、右のはうし、ちうはこを手にもち、これにめんさうな 00083170M12るミそを一はい御ぬすミ候てくたされ候へと申。さても、 00083180M13かふきのちかふた事ちや。 00083190¥N61¥J 00083200¥X 00083210M15△悪とうなるちこの木へのほるをミて、 00083220M16△△さるちことミるよりはやく木へのほる 00083230M17ちこ、ことのほかはらをたてゝつけられた。(29オ) 00083240M18△△いぬのやうなるはうしきたれハ 00083250M19一たんよいさくふんちや。しかしなから、くつくりなをあ 00083260¥P201 00083270L1るへき事也。 00083280¥N62¥J 00083290¥X 00083300L3△しんほちかたへ、師しやうの御るすに去方より、もち 00083310L4たうらいしたそ。これをちこにかくすを見給ひて、 00083320L5△△望月の木かくれしたる今夜かな 00083330L6△△△△返し 00083340L7△△たゝみのへりを山のはにして 00083350¥N63¥J 00083360¥X 00083370L9△小ちこのいはく、もちにさねかあるものならは(29ウ) 00083380L10よからう。大ちこのいわく、もちもまんちうも、さねなき 00083390L11ゆへ、ミな人ほんさうす、なにをもつて、さねか、やうに 00083400L12立候はんや。小ちこのいわく、それハたりう、さねかある 00083410L13ならは、にはにうへならへて、はな見してあそひたや。 00083420¥N64¥J 00083430¥X 00083440L15△御かつしきさまへ、何をかな、しんしやう申たいとそ 00083450L16んすれとも、刀わきさしハいらぬ御身なり。おひやあふき 00083460L17やこそてのつれにてハ、いかめしからす。正月ハちかくな 00083470L18る。おもひいたしたることあり。たまふり+をしんしや 00083480L19うせんと思ひ、(30オ)たまをは、まりほとに二つ、しろか 00083490M1ねのなんりやうにて、これもまるうちにこしらへて、しん 00083500M2しやうする。かつしき御らんし、とりあけて、一ふりふつ 00083510M3て御らんして、一たんうつくしくハあれとも、いかにおま 00083520M4うて、うちにくい程に、入ぬものちやとて、御すてなされ 00083530M5た。さて+おしひ事の。されとも、すてさせられところ 00083540M6か、ハるうハない。めんさうのまん中へ。 00083550¥N65¥J 00083560¥X 00083570M8△あるはうす、かつしきにおもふ様ほれて、なにをかな、 00083580M9しんしやう申さうと、いろ+さま+(30ウ)とりかへひ 00083590M10きかへ、あひらしきものを御目にかけ申せとも、めをも御 00083600M11やりなされぬ。こゝによかわの御ふてさんていし、しよじ 00083610M12つかまつり候と、さうてんも御一ひつにて候、若御やうに 00083620M13は御座ないかと申。かつしききこしめして、それハなつか 00083630M14しい、ちと見たい事ちや。さら/ハと((ママ))に参り候はんと、生国 00083640M15いつものくにのものなり、いそきとりにくたる。そのあひ 00083650M16たに吉日れうしんあるによつて、かミをおろさせられた。 00083660M17そのゝち、せんしうよりかへりて、しんほちになら(31オ) 00083670M18せられたすかたをミたれハ、こひかさめた。さて、先度の 00083680M19三ていしはとおほせられたれハ、中&、とりてまいりてハ 00083690¥P202 00083700L1候へとも、かりほんにて候とまきらかいた。 00083710¥N66¥J 00083720¥X 00083730L3△御ちこさまねんしやより、なにそしんしやう仕たいと、 00083740L4しゆ+ゑんとりをして申せとも、少も御とうしんない。 00083750L5あまりにそれハきよくも御座ない、せめて、たんしやくす 00083760L6ゝりをして、しんしやう申さう、ミつ入ハ、ちといろとり、 00083770L7かねにて、すゝめをつくらせ候はんとそんすると申された 00083780L8れは、(31ウ)それハそなたしたいとおほせられた。しかし 00083790L9なから、ころハいかほとにと御このミなされ候へと申せは、 00083800L10すゝめころハふくろ程かよからふ、とおほせられた。さて 00083810L11+はしめのしんしやくとは、いかふちかふた。 00083820¥N67¥J 00083830¥X 00083840L13△一たんと、もちすきなるわかしゆあり。ふた+とま 00083850L14いるゆへ、のとにつまる。人&せうしにそんち、こゝかし 00083860L15ことかけまハり、天下一のましないてをよふてまいつた。 00083870L16はやましなふ。其まゝからしたまほとなもち、一けんほと 00083880L17さきへとん(32オ)ていてた。ミな人、めてたい事ちや、さ 00083890L18りとてハ天下一の上手ちやと、いひてよろこひのゝめく。 00083900L19しかるところに、若衆のそんふんは、一かうへちちや。こ 00083910M1れほと五ミのもちを、そとへハあつたら事ちや、うちへ入 00083920M2やうには、ましなはいて、天下二てもないと、おほせられ 00083930M3た。 00083940¥N68¥J 00083950¥X 00083960M5△あるわかしゆ、ねんしやとねて、あかつきかたにいわ 00083970M6く、しつ+とあせをかいたといふて、身につはきをぬつ 00083980M7て、ねんしやにいふやうハ、さて+いかふ、しんくにあ 00083990M8つた。ねんしや、なに事(32ウ)にととへは、はつかしけれ 00084000M9と申、おれに、そなたの大きな、のしつけをのいて、これ 00084010M10をさせとおほせられ候を、いやといふて、かへせは、又さ 00084020M11せといふて、むりにとらゑて、おひにさゝせてをかせらる 00084030M12ゝと、ゆめにミたれハ、かやうにあせをかひて、くたひれ 00084040M13たとおほせられたれハ、ねんしや、ことはもなふて、あき 00084050M14れていられた。 00084060¥N69¥J 00084070¥X 00084080M16△松千代といふわかしゆのおや、三井寺へむかひにゆき、 00084090M17とうたうして里へかへる。寺内にてあふほとの人、まつち 00084100M18よにいふやう、すはり、さとへか、(33オ)やかて+といふ。 00084110M19おや、これを聞て、すはりとはなに事そ。てらのならひに 00084120¥P203 00084130L1て、下戸をすはりと申すとのへておいた。さて又、きうそ 00084140L2くして、山のかたへとう+してまいる。はうゐん出合給 00084150L3ひて、まつちよ、はやういらいた、さかつき、それ+と 00084160L4て、松千代おやにしいさせらるゝ。一ゑん、わたくしも、 00084170L5この子もすはりにて候と申。法印おほせられ候ハ、されこ 00084180L6とおしやらすとも、先一つまいれ、ミなのしんるいしゆハ、 00084190L7一つつゝなるかとおほえた、たゝし、おもひわすれて候か、 00084200L8せひ(33ウ)一つとしゐさせらるれは、おや申やう、はうゐ 00084210L9んさまの御おほえも、ハるうハ御座ない、わたくしと松千 00084220L10代こそ、すはりにて御座候へ、あれかはゝとあねとは、ち 00084230L11とすはりにてハ御さない。 00084240¥N70¥J 00084250¥X 00084260L13△あるしゆきやうしやに、ろしにて、たかのゝ大ミやう、 00084270L14お僧いつくへと仰られた。くそうもそんせぬ。一たんすい 00084280L15たへんたうちや、ときを申さう。あのもりのうちにて、そ 00084290L16んちやうその家へ行ておまいれとの給ふた。くそうはかり 00084300L17参りてハ、いかか候はんと申されたれハ、うらさしをぬい 00084310L18て(34オ)しるしに御やり候。これをもちてゆき、おもひの 00084320L19まゝときをくうて、一しゆかきていてられた。 00084330M1△△こゝにきし 00084340M2△△かゝるおもひか 00084350M3△△たひの身に 00084360M4△△なさけある身を 00084370M5△△たのミてそゆく 00084380M6さて、とのやかたへ御かへりありて、やうす御たつねあれ 00084390M7ハ、このたんしやくを御目にかけ申た。能&しあんして御 00084400M8らんすれハ、小かたなたしか(34ウ)におくといふ、きりこ 00084410M9もれり。うたのしなに、くつかふりのふせいといふはこれ 00084420M10なるへし。(35オ) 00084430¥P204 00084440¥T1〔参考〕 00084450¥N1¥J 00084460¥X 00084470L3△わかき物共よりあひて、中にも年ころのおとこ申さる 00084480L4&ハ、此ころ一ゑんひまなきゆへ、かのあそひもならす、 00084490L5せんすりはかりにてくらすとかたるを、となりの太かミ是 00084500L6を聞、せんすりといふ事をしらす。ふしんしてよめにたう 00084510L7か、いや+心やすくむす子にとハんとて、とわれけれは、 00084520L8むす子へんとうに、それは人のふへんしたる事を左様に申 00084530L9といはれた。ある時きやくしんに、太かミ申さる&は、い 00084540L10にしゑはともこ(三オ)うもいたし候へとも、これのかすき 00084550L11られてのち、子共もわれらもせんすりはかりかき申候ゆへ、 00084560L12何の御そうも申さす、御はつかしいと申された。(山岸文庫 00084570L13本・上4) 00084580¥N2¥J 00084590¥X 00084600L15△さるわかきこけい、むすめにむこをとる。其後をやこ 00084610L16して此むこをろんしける。有時ふきやうゑあかる。をやの 00084620L17申さる&ハ、我身はかこけいなれは、入むこを取候へと、 00084630L18あたりのしうも申さるゝより、しんしやくにはそんし候へ 00084640L19共、みな様の御いけんにつき、つまをもうけて候へは、い 00084650M1たすらもののあ(三ウ)の女か、我かおとこにて候と申あく 00084660M2る事、何ともめゐわくにそんし候、きこしめしわけられく 00084670M3たされ候へと申あけれは、むすめはらをたて、をとなけな 00084680M4きおやをもち、御はもしに御座候へとも、このうへは、ま 00084690M5つすくに申へき、てゝをやゆいこんにて、あのゑもん太郎 00084700M6殿を、われ+とひとつになし候へと、かたくかゝ様に御 00084710M7申をき候ゆへ、一つになし候てからと申上る。ふきやうき 00084720M8こしめし、をや子せんきはむやく、むこをよひ出し、をや 00084730M9の方ゑか、むすめのかたゑかと(四オ)御たつねあれは、ゑ 00084740M10もん大郎申やう、其御事にて御座候、我らは、とち共なし 00084750M11にむこ入を仕たると申た。ふたまたかうやくとはこの事か。 00084760M12(山岸文庫本・上5) 00084770¥N3¥J 00084780¥X 00084790M14△ある人のいはく、ほうこうをするに、日夜に心のひま 00084800M15なき事、いつまてかくあるへしと思ひ、ある時、つくりや 00084810M16まいをして、かくれかにて、ミつからくひ物をとゝのへけ 00084820M17るに、立居すること七十度にあまれり。いままて人につか 00084830M18ハるゝとのみ思ひけれは、をのか身につかふるものをとふ 00084840M19んへつして、それより心をゆるさす、しうの御まへにつか 00084850¥P205 00084860L1ふまつりけれハ、ほとなくしゆつとうしやといはれ、七ち 00084870L2んまんほうみち+て、をのつから心やすき事もありとか 00084880L3たられし。たゝまよひのまなこに、地こくもかきもてきも 00084890L4(3ウ)みえ、さとれるまなこには、こくらくもしやつくわ 00084900L5うの顔も、かくみゆるとおもふへし。(多和文庫本・上4) 00084910¥N4¥J 00084920¥X 00084930L7△有人、大こくをつねにしんし、まもりほとけと頼ミ、 00084940L8よろつのものゝはつをゝさゝけたつとみける。しかれとも、 00084950L9ついにしんしやうおとろへて、すミ所をさり、あしにまか 00084960L10せてたとり行ほとに、一むらのさとのさし入に、たかふた 00084970L11あり。たちより(1ウ)みれは、きせんをゑらハす、のそミ 00084980L12成るものをむこにとるへしとあり。是日ほん一の事と思ひ、 00084990L13やかて此ふたをとり、宿所にたつねゆく。そうしやをもつ 00085000L14て、かのふたをさし出す。うちより心得てしやうしいれ、 00085010L15いつくしきむすめをいたし、さかつきとりかハす。やう 00085020L16+くれすきて、をくのまへ入、まくらをならへけるか、 00085030L17今まてよろつのはつをさ&け申にとて、かの大こくをきよ 00085040L18く門の口へさしよせけれハ、女房はたまくきかと思ひ、こ 00085050L19らへかねて、しきりにもちあけて、きよくもんのうちへい 00085060M1れ、これはもつたいなしとて、ちやくととつて、ミつしの 00085070M2たなにおさめ申、心しつかにかたらひ、ひよく/の((ママ))んりとち 00085080M3きりけれは、やう+あけすきて、てうすにむ(2オ)かひ、 00085090M4かの大こくをきよめ申さんとて、たつぬれともみえす。か 00085100M5ひそへ女にとへは、それハほそきくち/はな((ママ))のとりつきゐた 00085110M6るあひた、あれなる草の中へすてたるよし申。やかてたつ 00085120M7ねいたし見れは、まことにくちなハあり。此事ふしきにお 00085130M8もひ、あたりの人によそなからくわしくとひけれは、いま 00085140M9まてにむこをとる事七十人にあまりたり、しかれとも二日 00085150M10もゐすかへる、それをいかにといへは、此むすめかたちは 00085160M11ひ人なれ共、一夜そへはおそろしき事ありといひつたへて、 00085170M12むこにならんといふ人なしとかたる。扨ハ此女房は大こく 00085180M13のはうへんにて、われにあたへたまふそと思ひ、いよ+ 00085190M14たつとミけり。(2ウ)(多和文庫本・下4) 00085200¥N5¥J 00085210¥X 00085220M16△うとくなるもの、にはかにやまひつき、五六日すきて 00085230M17さん+よハり、めをまわす。しんるい共めいわくして、 00085240M18くすしをよひて、まつきつけをあたへけれは、ひやう人、 00085250M19くちに手をあて、のむましきていをいたしけれは、みな 00085260¥P206 00085270L1+、せうしや、なにのふそくかあつてまいらぬそ、もつ 00085280L2たひなやと、こかれけれは、女房つねの心をしつて、此く 00085290L3すりはミつからかおぢの御ふるまいにて候といへは、その 00085300L4とき口をひらきける。(多和文庫本・下24) 00085310¥N6¥J 00085320¥X 00085330L6△有人、ふへんして家をすて、らふにんするとて、かと 00085340L7はしらに、くわうていのしんかとかきつけてをく。見る人 00085350L8ふし(10オ)んしけれは、さる人これをみて、尤とかんしけ 00085360L9る。心ハいかにといへは、くハハその身のてきにあらすや、 00085370L10そふして人わそのほと+にかまへさらんハ、つゐにハた 00085380L11れもくわうていのしんかたるへしといわれし。(多和文庫本 00085390L12・下25) 00085400¥N7¥J 00085410¥X 00085420L14△ある人つゝミすき、こゝかしこに神事のふなとあれは、 00085430L15さし出て、日&にゆさんのミにてくらしけれは、程なく親 00085440L16の得させたるたから共をみなうしなひ、俄にきやうらんし 00085450L17て、人にけんくハをしかけて、さん+てをおひ、かのつ 00085460L18ゝみをうつ事もならす。をのつから内にのみいて、いとな 00085470L19ミをはけミけれは、ふ/たひ((ママ))とミさかへけり。たゝをよハさ 00085480M1る事に心をかくるハ、我身のてきをもとむ(10ウ)るににた 00085490M2り。(多和文庫本・下26) 00085500¥N8¥J 00085510¥X 00085520M4△ある人もんまふにて、くハふんのしよりやうをたいく 00085530M5わんするに、竹をきさミ十石をはたけの大にて、いかほと 00085540M6のさんようおもすましけれとも、少もちかふ事なし。その 00085550M7子、おやのまねをして、たけきれをあつめてきさみをすれ 00085560M8は、おやかこれを見て、千松よ、てならひするか、てをき 00085570M9るなといふた。(多和文庫本・下27) 00085580¥N9¥J 00085590¥X 00085600M11△ある人、れき+さんくわいの中へ、下人かしやうを 00085610M12もちてきたりけれは、さかさまにとつて、よミたるかほに 00085620M13て、くる+とまひて、此ほとすちけにて、ものかく事か 00085630M14ならぬとて、人をたのミ、かゝせ、もんこんをこのむ。い 00085640M15かにも、あけてあそハせとて、(11オ) 00085650M16△△先度之御ふミ御はいけん申され候、ちと+御ひまに 00085660M17△△御きやうまち入候、かしく、 00085670M18とかゝせて下人にわたし、さてもとの座になをり、又右の 00085680M19おりかミをさかさまにとりなをし、つく+とミて、たう 00085690¥P207 00085700L1せいは、ふみのくちにはんをする事かはやりものちやと、 00085710L2いわれた。(多和文庫本・下28) 00085720¥N10¥J 00085730¥X 00085740L4△ある人、きよらふして、さん+かんしよくおとろへ、 00085750L5いしやにあふ。やかてミやくをとりて、これハ大事の御わ 00085760L6つらひちや、一儀をあまり御すこし候ゆへとそんする、た 00085770L7ゝし、いまからもくすりを参りて、ちとよきとてゆたんな 00085780L8されな、とくたちかせんちやとて、ひたものくすりをあた 00085790L9へ、ちとミやくかなをりたるとて、いしやもまんそくして、 00085800L10いよ+せいをいたして、さい+見まひ申されけれは、 00085810L11あるとき、ひる事をしてゐられた。くすし是を見て、さた 00085820L12のかきりちや、これほとにしたてたるに、いらさるしんら 00085830L13うしたとて、もつてのほかはらをたつる。ひやうにん聞て、 00085840L14尤のおほせにて候へとも、(24ウ)あまり口かあしなさに。 00085850L15(多和文庫本・下59) 00085860¥N11¥J 00085870¥X 00085880L17△四十五になるむすめをはしめてよめ入さするとて、お 00085890L18やのけうくんに、かまいて、うちてのやうに大こゑにて物 00085900L19いふな、よめすみなとハ、いかにもしんしやうに、うくひ 00085910M1すのはつ(26ウ)ねのやうに、ほそ+としたるこえせよと 00085920M2て、くれ+いひふくむる。さてよめいりして、あけの日、 00085930M3よひにくふたるなつけのあちのかんみをハすれかねて、し 00085940M4うとのきくやうに、ひらくきくわふといふ。しうと聞て、 00085950M5さて+一けうものちやとおもふて、なか+としたるも 00085960M6のをすへけれは、又うくひすのとひなきに、き&き、きつ 00085970M7て+といふ。口もとしほらしき事、おもひやられた。 00085980M8(多和文庫本・下64) 00085990¥N12¥J 00086000¥X 00086010M10△くろたにから京へ、まい月ときに出る坊すあり。正月 00086020M11十日に、かなや長春所にて大酒をして、かへりに道にて田 00086030M12の中へころひ、けさ、ころも、小袖こと+く(27オ)よこ 00086040M13し、やう+下人のかたにかゝりてかへり、ゑひさめてか 00086050M14ら、扨+よしなきさけをしいられて、このことくそんを 00086060M15するとて、事のほかうらむる。扨ほとなく二月に又さけを 00086070M16しいらるゝ。その時、かのこものまかり出、先の月も御し 00086080M17ゆかすきて、道にてころハせられ、御いしやう共、みな御 00086090M18よこしなされて候、さのみ御無ようと申せは、其儀ならは 00086100M19申まひとて、おさめとる。さて、かへりさま、まへのとこ 00086110¥P208 00086120L1ろにてまたころひ、ともにひきおこされて、なんちよくき 00086130L2け、正月にはようてころふ、けふハよハねところふ、これ 00086140L3ミなせんせのさたまり事なり、きやうこうハ、そはから(27 00086150L4ウ)さけのしんしやくはむようと申された。(28オ)(多和文 00086160L5庫本・下65) 00086170¥N13¥J 00086180¥X 00086190L7△人のともとするに、あしきもの七つ有。一にハ高くや 00086200L8ん事なき人、二にはとしわかき人、三にハやまいなく身の 00086210L9つよき人、四にハ大酒をこのむ人、五にハ無理にいさめる 00086220L10つはもの、六にハきよこんする人、七にはよくふかきひと。 00086230L11(大英博物館本・上3) 00086240¥P209 00086250¥U噺本大系△第一巻 00086260¥Tわらいくさ 00086270¥G 00086280¥Y 00086290L16明暦二年刊 00086300L17編者△未詳 00086310L18中本△二冊 00086320L19天理図書館蔵 00086330¥T1わらいくさ△上 00086340¥N1¥J 00086350¥X 00086360M3△ある人、いかにもうつけたる、わかとうを、よそへつ 00086370M4かひにやり、かへりてへんじを申上た。さてふるまひにあ 00086380M5ふたかと、とハれけれハ、いろ+けつこうのふるまひに、 00086390M6あひ申たると申。さて、こんたてをとハれけれハ、さいと 00086400M7もミな+かたる。しるハとたつね申さるれは、かのうつ 00086410M8けものいひかねて、かほあかめた。何とて申さぬそとあれ 00086420M9ハ、はゞかりに御ざ候ほとに、申されぬといふ。しるに何 00086430M10のはバかりの有べきそ、いそき申せとありけれは、(一オ) 00086440M11そのとき、ふるひ+、わらびのおしるにて御ざ候と申。 00086450M12しゆじんきゝて、そのしるに何のはゞかりの有とて、わら 00086460M13ハれけれハ、その時かのもの申やう、わハわこさまのわ、 00086470M14らハとのさまのら、びハかミさまへさしあひ申と云た。さ 00086480M15てもこまかにきをつけたの。 00086490¥N2¥J 00086500¥X 00086510M17△あるにうばう、七つばかりの子をだいてねた。此こか 00086520M18ねいりたるとおもふて、おとこのところへいた。おとこい 00086530M19ふやうハ、とくまつかめかあこうか、なにとしてきたとい 00086540¥P210 00086550L1ひけれハ、そつとぬけてきたといふ。さて一きをくわたて 00086560L2ゝ、しみたるさいちうに、とくまつ(一ウ)そばへよりけれ 00086570L3ハ、はゝおや申けるハ、われハなにとてきたといひけれは、 00086580L4おれもそつとぬけてきたといふた。 00086590¥N3¥J 00086600¥X 00086610L6△有人にはかに、くすしを心かけ、いしよどもをあつめ、 00086620L7そろ+よミて、がてんのゆかぬ所にハ、つけかミを付る。 00086630L8女ばうこれをミて、其かミハなぜに付させらるゝといふ。 00086640L9おとこ聞て、これハふしんかみとて、かてんのゆかぬ所に 00086650L10付て、のちにししやうにとふために付る、それによりて、 00086660L11ふしんかミといふ。女ばう聞て、中+の事じや、おれも 00086670L12ふしんかあるとて、かミをすこし引さき、おとこのはなに、 00086680L13へたと(二オ)(二ウ三オ挿図)付る。これ何よふのふしんそ、 00086690L14われらかはなにふしんハ有まひといふ。女ばう聞て、その 00086700L15事じや、世上に申ならハし候ハ、おとこのはなの大きなる 00086710L16ハ、かならす、かのものか大きといふが、そなたのはなハ 00086720L17大きけれ共、かのものハちいさい、これかふしんじや。お 00086730L18とこ聞て、尤じや、又われらも、ふしんか有とて、女はう 00086740L19のほうさきに、かミをへたと付る。これハ何のふしんそと 00086750M1いふ。おとこきいて、よにいひならハし候ハ、ほうさきの 00086760M2あかき女ばうハかならす、ヘゝかくさいいふが、おのしの 00086770M3ハ、両なからほうさきハしろけれ共、へゝハくさい、これ 00086780M4ふしんしやといふた。(三ウ) 00086790¥N4¥J 00086800¥X 00086810M6△ぢしんゆりたるあくるひ、もんせきさまへ御みまひに、 00086820M7かたこといひ二人つれたちて、まいりけるに、すなハち御 00086830M8たいめん有。両人のうち/二人((ママ))申けるハ、さて+ゆふべハ、 00086840M9大づすんがゆりまして御ざると申。又一人か申やうハ、ま 00086850M10ことに大なゆがゆりまして、御きもつぶしなされうと申け 00086860M11る。もんせきおかしくおほしめされ、御へんたうに、なゆ 00086870M12やら、つすんやら、世かねつするかと、おもふたとおほせ 00086880M13られた。 00086890¥N5¥J 00086900¥X 00086910M15△むかし、さかの天わうのとき、無悪善とかいてたてた 00086920M16を、御ふしん有て、あるほとのものしりをよせて、ひよう 00086930M17ぢやう候へとも、さらに、(四オ)あかすものもなし。こゝ 00086940M18におのゝたかむらと申ひと、まかり出て、無悪善とよミ 00086950M19た。其時みかとげきりんなさるゝハ、たかむらより、はる 00086960¥P211 00086970¥G 00086980M1かものしりさへよまぬものを、此ものよみ申たるハ、さた 00086990M2めて、たかむらかたてつらんと、すてに、るざいにおよび 00087000M3けるとき、たかむら申けるハ、ものをしり候へハ、けつく 00087010M4ざいくわに、おこなわるゝ事、めいわくのよし申上けれハ、 00087020M5ものをしりたらハ、何にてもむつかしきよまれぬことを、 00087030M6たくミてよませ候へと、物しりどもにおほせつけられけれ 00087040M7ハ、/子(ね)の/字(し)を六つかきて、御よませ候へど、たかむらなん 00087050M8なく、よみけるほとに、さてハものしりと、おほせ(四ウ) 00087060M9つけられて、るざいを御ゆるしなされた。 00087070M10△△/子(ね|し)子(こノ|しノ)子(こノ|こノ)子(こ|こ)子(ね|し)子(こ|し) 00087080¥N6¥J 00087090¥X 00087100M12△さる大ちごと、小ちご、ふじのやまにゆき有を御らん 00087110M13じ、大ちご申さるゝハ、いかに小ちご、これ程なるめしハ、 00087120M14なるまいかと申さるれハ、小ちご聞て、なにとあらふぞ、 00087130M15とろゝじるかけてならば、ねらふてみうと申された。 00087140¥N7¥J 00087150¥X 00087160M17△有人のにうばう、はらをさい+、いたがりけれハ、 00087170M18つね+はりたてをよびて、たてさせける。有時はりをた 00087180M19てんとて、女ばうをねさせて、けふハ、どこらがいたう御 00087190¥P212 00087200L1さると、とひけれハ、おびしより(五オ)したか、いたひと 00087210L2いふ。心へ申とてほそのしたに、たてんとて、そろ+さ 00087220L3ぐりける所へ、まだらのねこきたる。はりたて此ねこをミ 00087230L4て、さても+よいけや、これほとなけハあるまひとて、 00087240L5ねこをほめけれハ、此にうバうのおとこきゝて、わか女ば 00087250L6うの、へゝのけのことゝおもひ、それよりも、はりたてを、 00087260L7よせなんた。 00087270¥N8¥J 00087280¥X 00087290L9△有人、こを寺へあけ、きやうをよめ、かくもんにせい 00087300L10を入よと、けうくんすれ共、一ゑんせうゐんせぬ。くせ事 00087310L11とて、しかれハ、上人きこしめして、きやうをよまぬハく 00087320L12るしうもないそ、よきほつけしうの、したちしや、ぢやう 00087330L13かこをふて、きのくすりじや。(五ウ) 00087340¥T1わらいくさ△下 00087350¥N1¥J 00087360¥X 00087370M3△有人の所へ、はうばい二三人つれたちて、はなしにゆ 00087380M4く。ていしゆ出合て、はなしふるまひをして出す。ぜんな 00087390M5かばに、きやく人申さるゝハ、火の中へ、何そくばりたる 00087400M6か、あしきかざかするといふ。ていしゆきゝて、人をよひ、 00087410M7火のはたに何ぞ有かみよ、なにやらわるいかゞするぞとい 00087420M8ひつくる。此ものない所へゆきて、火のまハりよく+ミ 00087430M9れとも、さやうのものハなし。さて、ざしきへまかり出て、 00087440M10ミつゆびつきて申けるハ、火のはたよくミて/□□□(きてもカ)、御ざ 00087450M11らぬか、御かた様の火にあたりて御ざる。(八オ) 00087460¥N2¥J 00087470¥X 00087480M13△あるしほうり、寺のまへをうりけるに、よひ入る。ま 00087490M14づしほをハ、かわずしてさて+そなたハ、しほなとをう 00087500M15りそうな人にてハない、ミ所か有とて、ほめけれハ、しほ 00087510M16うり申やう、さて+よいめきゝじや、そこなおしきを、 00087520M17一まひくたされとて、しほ三升はかりて、さしいだす。こ 00087530M18れハといへハ、けふは、われらかおぢの、よりともの日じ 00087540M19やといふた。 00087550¥P213 00087560¥N3¥J 00087570¥X 00087580L2△さる所のおちの人、さかなを町へ、かいに下女をつれ 00087590L3て出らるゝ。下女うをゝかいで、あらくさやと云。うをう 00087600L4りはらをたて、おのしか主のものか、くさからふといへハ、 00087610L5さてもりよぐわいを云、しかとくさいと云かよ、さらハ、 00087620L6(八ウ)(九オ挿図)かゞしようとて、いきれは、おちの人、や 00087630L7れきくよ、にけさい、これハひくじじやに。 00087640¥N4¥J 00087650¥X 00087660L9△有女、わかきおとこにはなれ、かなしミ、寺へ参。さ 00087670L10いこに仰られしハ、ま事こひしき時ハ、かう花もいらぬぞ、 00087680L11まへをたむけよとの給ひしものをとて、まへをひらいて、 00087690L12これ+よくうけ給へと有を、長老御らんじて、有かたき 00087700L13心さし、こなたへ御入候へとて、めんざう引入給に、こ 00087710L14れハ何事といへハ、しゆつけのくわいちうハ、仏のおあと、 00087720L15せんさくなしとて、しハらくして後に、長老のいハく、御 00087730L16ゆいこんにまかせられ、らい月よりハ、おたいやからや。 00087740L17ないき聞て、御ときひじおふせにも、いまのや。 00087750¥N5¥J 00087760¥X 00087770L19△有もの、ひさ+そいたる女ばう、にはかにいやがり、 00087780¥G 00087790M11(9ウ)何とぞして、いさかひいたし、おひいたさんと、た 00087800M12くミけれとも、此女ばう、おとこにすこしもさかふことな 00087810M13し。有とき、おとこの申けるハ、ちかころ申かね候へとも、 00087820M14そなたをミれはむねかわるひ、かてんづくにて、いんでた 00087830M15もれといふ。女ばう聞て、ぜひにおよバぬ、さほとにおほ 00087840M16しめさハかへらふとて、いにしへよめいりのときにきたる、 00087850M17いしやうを取いだしきるまゝに、かミにあぶらをつけ、は 00087860M18をくろめ、出たちけれハ、おとこつく+とみて、もとの 00087870M19あらばちのすかた有、何とぞして、いなせまいとおもへと 00087880¥P214 00087890L1も、一たひいいひだしたる事なれば、とゞむるにおよばす。 00087900L2をりふしいぬるミちに、川の(十オ)有けれハ、此おとこ、 00087910L3川のはたまておくり、わかふねにのせて、むかひのきしに 00087920L4つきけれハ、にうばう、ふねよりあかりて、さらば+と 00087930L5いふていぬる。おとこ是をきゝ、ふなちんをいだせといふ。 00087940L6にうばうきいて、そなたとわれとの間にて、ふなちんにハ 00087950L7およふまひといへば、それふうふのときの事、もはやいと 00087960L8まをいだしてからハ、たにんじやほとに、舟ちんかすまず 00087970L9ハ、いなせまい、もどれとて、つれてかへり、五百八十ね 00087980L10んそうた。 00087990¥N6¥J 00088000¥X 00088010L12△有ちしきの御内に、久しく召つかハれし、六十あまり 00088020L13のしミみ、有時長らうさまへ、申けるハ、われら久しく、 00088030L14めしつかハれ、此としに成候へとも、つゐに御しめしも 00088040L15(十ウ)うけず、あまりにあさましき御事にて候、おそれな 00088050L16がら、一そく御さつけ候へかしと申。長らうきこしめして、 00088060L17それハやさしき事、こなたへとめしあけられて、しやうじ 00088070L18一大じのわをさつけ給ふ。かたしけなきとて、御まへをま 00088080L19かりたちけるか、しばらくして、まかり出、はや+さん 00088090M1し申て候、しやうじ一大じハ、みそにて御さる、みそがわ 00088100M2るければ、しやうじのしたてハ、くわれぬと申た。長らう 00088110M3きこしめして、さて+これほとのあたりハ、たるまもな 00088120M4るまいとて、手をうたれた。 00088130¥N7¥J 00088140¥X 00088150M6△ものをかくにハ、くのきりやうかせんじや。下京に目 00088160M7くす/□(しカ)有。たれぬのに、かねこめくすりや(十一オ)と有けれ 00088170M8ハ、三いろまて、うり物の有とて、人+のかいにくれ共、 00088180M9此うち一いろもなし。めいわくして、のちにハ、かねこ目 00088190M10ぐすりやと、かくなり。 00088200¥N8¥J 00088210¥X 00088220M12△八十はかりなるばゝ、いちにたちけるか、又あるわか 00088230M13しゆも、おなしくいちにたつ。此わかしゆ、ばゝをめもは 00088240M14なさず、あなたこなたへつきまわりて、よくみる。此ばゝ 00088250M15おもふやうハ、われにほれられたとミへた、一や、なひこ 00088260M16ふとおもふて、いかにおわかしゆさま、われらに御ようか 00088270M17あらは、おゝせられい、何事なりともかなへ申さうといふ。 00088280M18此わか衆申さるゝハ、なにもようハをりないか、われらハ 00088290M19かハらやきのむすこじやか、其ほうのかほが、(十一ウ)おに 00088300¥P215 00088310L1かわらのほんによいとおもふて、みるといふた。はゝきい 00088320L2て、あのやくにたゝすめかといふた。 00088330¥N9¥J 00088340¥X 00088350L4△有人こを寺へあけ、きやうをよめ、がくもんにせいを 00088360L5入よと、けうくんすれ共、一ゑんせうゐんせぬ。くせ事と 00088370L6て、しかれハ、上人きこしめして、きやうをよまぬハ、く 00088380L7るしうもないそ、よきほつけしうの、したぢじや、ぢやう 00088390L8かこをふて、きのくすりじや。 00088400¥N10¥J 00088410¥X 00088420L10△有人のいはく、わらべを風の子と申ハ、何としたる事 00088430L11そと、ふしんしけれハ、こざかしきもの申ハ、ふうふの間 00088440L12の子なれハ、かせの子と云と、こたへた。能へんたうの。 00088450¥Q明暦二@丙|申@十一月吉日△△△△△九兵衛板(十二オ) 00088460¥P217 00088470¥U噺本大系△第一巻 00088480¥T百物語 00088490¥G 00088500¥Y 00088510L16万治二年刊 00088520L17編者未詳 00088530L18大本二巻二冊 00088540L19国会図書館蔵 00088550¥Y 00088560M1此/物語(ものかたり)を百物語と名づくる事ハ、/有夜(あるよ)の/徒然(つれ※)なるまゝに、 00088570M2こざかしき/童(わらハ)よりあつまりてあそびしに、一人申出せしハ、 00088580M3/草(くさ)も/木(き)もわが/大君(おほきミ)の国なれば、いづくか/鬼(をに)のすみかなるら 00088590M4んとはいへども、いにしへハ、あの山に/鬼(をに)あり、此/村(むら)にハ 00088600M5ばけ物出しなどゝ伝へし事おほし。此比の/御(ミ)代ハ、四/海(かゐ)な 00088610M6ミしつかにおさまり、風/枝(えだ)をならさぬ時なるにや、世中に 00088620M7ふしぎなし。まことなるや、いにしへ人の/語(かた)り/伝(つたへ)しハ、何 00088630M8にても百物語をすれば、かならずこハき物あら(一オ)ハれ 00088640M9出るとうけ給ハりし。/今宵(こよひ)ハ雨もそぼふり、物すごき/夜(よ)な 00088650M10れば、しめやかに百物語して、こハきもの出るか心みて、 00088660M11後の世のためしにせむといひければ、をの+然るへしと 00088670M12て、はや/物語(ものかたり)をはじめける。/先(まづ)/硯(すゞり)/料帋(れうし)を取出し、其中に一 00088680M13人筆とりにて書付けるに、かたハらいたき事共、我かと/語(かたり) 00088690M14しほどに、語すでに/百(もゝ)にミてんとする。今一つふたつにな 00088700M15りし時、すハやと子ども、さはぎあひて、/灯(ともしび)をふとくか 00088710M16ゝげて、すミ※を見まハし、に(一ウ)げ/尻(じり)になりてかた 00088720M17りしに、はや物語ハもゝにみちけれ共、さらにこハきもの 00088730M18も出ざりければ、/惣(そう)の子共口&にいひけるは、むかしの人 00088740M19は何事をかいひをきしとて、あざけりあへり。其中にこざ 00088750¥P218 00088760L1かしきわらは、/横手(よこで)をはつたと打て、こハき物こそ出ける 00088770L2と申けれバ、/童(わらは)共/肝(きも)をけし、いづ方へ、いかなる物出ける 00088780L3と、ふるひ+/問(とひ)けれバ、しづまり給へかた+、たゞ 00088790L4今/咄(はな)し給ひし其中に、こハきもの出たり、かのやつこがき 00088800L5たりし/衣裳(いしやう)の色+を見給は(二オ)ずや、/牛首布(うしくびぬの)のかたび 00088810L6ら、のりごハのしぶかたひら、みな+こハきものなり、 00088820L7おさまりし此/御代(ミよ)にハ、これらよりこハきものハ、百物語 00088830L8の事ハをきて、一/貫(くハん)物語にても出まじきぞと申けれバ、/皆= 00088840L9&(みな=+)/色(いろ)をなをして、げに是ハいはれしとて、大/笑(わらひ)して立さり 00088850L11ぬ。(二ウ) 00088860¥Y1百物語巻之上目録 00088870M3一△△/手習(てならひ)のしやうの事 00088880M4二△△/小僧(こそう)/問(もん)答の事 00088890M5三△△/麹売(こうじうり)の事 00088900M6四△△/観音(くハんをん)地蔵/鰌(どぢやう)ふむ事 00088910M7五△△/煮餠(にびやう)の事 00088920M8六△△/空気(うつけ)名を/改(あらたむる)事 00088930M9七△△/赤松(あかまつ)/問答(もんだう)の事 00088940M10八△△/白犬(しろいぬ)をつかむ事 00088950M11九△△/楽(らく)天が三/儀(ぎ)の事 00088960M12十△△/黄金(わうごん)一/枚(まい)取事 00088970M13十一△見ぬ京物語の事 00088980M14十二△/鄙(ひ)下の事 00088990M15十三△/李白(りはく)/酒(さけ)の/詩(し)の事 00089000M16十四△/宗閑(そうかん)が/額(がく)の事 00089010M17十五△/三/子(し)の三/望(はう)の事 00089020M18十六△/一休(いつきう)の/狂哥(きやうか)の事(三オ) 00089030M19十七△/尊氏(たかうぢ)/発句(ほつく)の事 00089040¥P219 00089050L1十八△/幽斎(ゆうさい)の付合の事 00089060L2十九△/一休(いつきう)/蛸(たこ)/食(くい)し事 00089070L3二十△/茶堂(さだう)/眠(ねふり)し事 00089080L4廿一△/語(かたる)ほど/読(よめ)る事 00089090L5廿二△/雪(ゆき)の/尺(しやく)さす事 00089100L6廿三△/時(とき)の/用(やう)に/鼻(はな)かく事 00089110L7廿四△/奴誹諧(やつこはいかい)の事 00089120L8廿五△/世(よ)を/恨(うらミ)し/詩(し)の事 00089130L9廿六△/恙(つゝが)の/故事(こじ) 00089140L10廿七△/火廻(ひまハし)の事 00089150L11廿八△/火本(ひもと)/問(とひ)に/走(はし)る事 00089160L12廿九△/諸宗(しよしう)/誹諧(はいかい)の事 00089170L13三十△/遊行(ゆぎやう)の/哥(うた)の事 00089180L14卅一△/入麺(にうめん)/振舞(ふるまひ)の事 00089190L15卅二△/念(ねん)を入過す事 00089200L16卅三△/達磨宗(だるましう)/道哥(だうか)の事 00089210L17卅四△人に/異名(いミやう)付る事(三ウ) 00089220L18卅五△/木(き)かと思ハする事 00089230L19卅六△/柿蔕(かきのへた)ひろふ事 00089240M1卅七△△/三个好(さんこよし)の事 00089250M2卅八△△/珍敷(めつらしき)よミある/詩(し)の事 00089260M3卅九△△/貧僧(ひんそう)三物の事 00089270M4四十△△/策彦(さくげん)/紹巴(ぜうは)付合の事 00089280M5四十一△/弘法(こうほう)/十/首(しゆ)の/哥(うた)の事 00089290M6四十二△/有無(うむ)の/哥(うた)の事 00089300M7四十三△/雉(きじ)に/道心(だうしん)/発(おこ)さする事 00089310M8四十四△/喧嘩売(けんくハうり)の事 00089320M9四十五△/文盲(もんもう)/字(じ)/参談(さんだん)の事 00089330M10四十六△/寺(てら)と/山(やま)と/狂句(きやうく)の事 00089340M11四十七△三/貝(ばい)/口説(くとき)の事 00089350M12四十八△はね/字(じ)の/典楽食(でんがくくい)の事 00089360M13四十九△/酒屋(さかや)/分字(わけじ)の/旗(はた)の事 00089370M14五十△△/徹書記(てつしよき)ハ/定家(ていか)の/再来(さいらい)の事(四オ) 00089380¥P220 00089390¥T1百物語巻之上 00089400¥N1¥J 00089410¥X 00089420L3一△人の語りけるハ、/東坡居士(とうばこじ)のいひをきしとかや、人の 00089430L4/手(て)ならひするに、/先(まづ)/真(しん)をならひ、次に/行(ぎやう)をならひ、次に/草(さう) 00089440L5を/習(ならふ)べし、/真(しん)ハ立がことく、/行(ぎやう)ハゆくがことく、/草(さう)ハわし 00089450L6るがごとし、それよくたつてゆかずハ、はしるものハあら 00089460L7じといへり。此事、/事文類集(じもんるいじゆ)に見えしと也。/誠(まこと)に/本(もと)/立(たつ)て/道(みち) 00089470L8なるといふことハりなるべし。此国にならへるハ、/東坡(とうば)の 00089480L9いへるとハかへさまなり。先/草(さう)を/習(ならひ)て/行(ぎやう)をならひ、/真(しん)をな 00089490L10らふと也。かくのことき人もまれなり。たゞ大かた/草(さう)バか 00089500L11り覚るゆへに、/文盲(もんもう)にして、/真(しん)に/書(かく)/字(じ)ハよくしりたる字に 00089510L12てもよミえざるなり。(五オ)いと口おし。心をつくして習 00089520L13なば、などかならひえざらん。哥に、 00089530L14△△/植(うへ)て見よ花のそたゝぬさともなし 00089540L15△△△こゝろからこそ身はいやしけれ 00089550L16といへり。又/兼好(けんこう)も、手のわろき人のはゝからずかきちら 00089560L17すハよし、見くるしとて人にかゝするハうるさし。 00089570¥N2¥J 00089580¥X 00089590L19二△/武田信玄(たけだしんげん)、/禅家(ぜんけ)の/小僧(こぞう)に行あひて、ぢごく/極楽(こくらく)はいつ 00089600M1くぞと/問(とい)給へば、くそくらへと申ける。/信玄(しんげん)色をちがへて、 00089610M2にくき/悪口(あつこう)のものかなといましめ給へバ、是ぢごくとこた 00089620M3ふ。/信玄(しんげん)をかしくおぼしめし、/縄(なわ)をゆるし給へバ、是/極楽(ごくらく) 00089630M4と申ける。/信玄(しんげん)又刀をぬき、/小僧(こぞう)にさしつけ、いけるもの 00089640M5か/死(し)せる物(五ウ)かと/問(とい)給へハ、/死(し)せるものと/答(こたふ)。ふりあ 00089650M6げてうたんとしたまへバ、にげさりていひけるは、めいわ 00089660M7づかの内にありといへる。 00089670¥N3¥J 00089680¥X 00089690M9三△/或寺(あるてら)に人なぶりの/浮蔵主(うきざうす)有けるが、門外をかうじ/売(うり)の 00089700M10/通(とをり)けるをよび入、様&のおどけを云てなぶられけるに、此 00089710M11/商人(あきひと)をどけものなりけれバ、口をたゝきて日を/暮(くら)しけるに、 00089720M12/御坊(ごばう)はやかへられよ、/門(もん)をさすぞと申されけれバ、彼もの 00089730M13申やうハ、かうじ門を出ずといふ。/御坊(ごばう)もよかりけり。/門= 00089740M14外(もん=ぐわい)へをし出して、/僧(そう)ハたゝく/月下(げつか)の/門(もん)とてたゝかれけれハ、 00089750M15/笑(わらひ)て帰ぬ。 00089760¥N4¥J 00089770¥X 00089780M17四△/長谷(はせ)の/観音(くハんをん)と/八田(やた)の/地蔵(ぢざう)と/鰌(どぢやう)ふミに行給ひしに、折 00089790M18ふし/旦那(だんな)に行あひ給へハ、河よりかけあがり、あはてふた 00089800M19め(六オ)きて、くハんをんハ/錫杖(しやくぢやう)と/数珠(じゆず)を持て/帰(かへ)らるれ 00089810¥P221 00089820L1ハ、/地蔵(ぢざう)ハ/蓮華(れんげ)をもちてかへり給ひしとなり。此比/開帳(かいちやう)に 00089830L2まいりし人のかたりし。/如何(いか)にも/観音(くハんをん)ハ/錫杖(しやくぢやう)じゆずを/持(もち) 00089840L3給ふ。又/地蔵(ぢざう)は/蓮花(れんげ)を持給へりと語り侍し。まことなると 00089850L4や。 00089860¥N5¥J 00089870¥X 00089880L6五△ある人物ごとにこびたる事をこのミけるが、/餅(もち)ハびや 00089890L7うのこゑなりと、/雑煮(ざうに)をにびやうとこバされけるが、ある 00089900L8時にびやうを/食(しよく)す所へ/客(きやく)の来りけれバ、さきのにびやうが 00089910L9あらバ出せよといはれければ、此人につかハるゝものなれ 00089920L10バ、/餅(もちゐ)をバびやうといふと心得、にびやうハはやなく候ま 00089930L11ゝ、やくびやうなり共出し申べきかといひけるぞをかしき。 00089940L12(六ウ) 00089950¥N6¥J 00089960¥X 00089970L14六△うつけなる子を一人/持(もち)けるが、/或(ある)時きやうくんして申 00089980L15けるは、人の子ハかしこくて、をのれが年よりわかき人に、 00089990L16ゑぼしぎのげんぶくのなどゝいひて、人ましハりをするに、 00090000L17其/年(とし)までおさな名をよバれて、うとつきまハりて、月日を 00090010L18くらし、身を/持(もつ)すべをしらず、あるひハ人に物をとらるゝ 00090020L19か、さなければ人にはらひ出してくばるか、少しやうねを 00090030M1取まハし申べきなり、けふは日なミよくて、/当町(たうちやう)の/子(こ)共/達(たち) 00090040M2ゑぼしぎをあそバすとかや、なんぢも/会所(くわいしよ)へ出、よき名を 00090050M3ついて来れよといひければ、/会所(くわいしよ)へ罷出名をかへて帰る。 00090060M4/親(をや)いかゝゑぼしきたるととへバ、弥六郎とかハり候と申。 00090070M5おやにが+敷(七オ)/腹(はら)をたてゝ申けるは、人の子ハかし 00090080M6こくて、藤六郎あるひハ彦九郎のとつき給に、何をもちて 00090090M7弥六郎とハつくぞとて、いかりけると也。 00090100¥N7¥J 00090110¥X 00090120M9七△/赤松(あかまつ)/円心(ゑんしん)い、/禅法(ぜんぼう)を聞えて、じまんせられしに、ある 00090130M10時/去(さる)/禅院(せんゐん)へ立より、/東堂(とうだう)の心を見んと/門外(もんぐハい)まて参りしに、 00090140M11十一二なる/喝食(かつしき)/土(つち)あそびして居(ゐ)られけれバ、/赤松(あかまつ)かつしき 00090150M12に/問(とい)けるハ、此/寺(てら)の/名(な)は/何(なに)と申ぞといへば、なんぢハなに 00090160M13といふ人ぞ。我ハ/赤松(あかまつ)/円心(えんしん)なりといへハ、此寺ハ/別法寺(べつほうじ)と 00090170M14申なりと/答(こたへ)ければ、円心思ふやうハ、/歳(とし)にもたらぬこび人 00090180M15かな、一/問(もん)をかばやと思ひて、/法(ほう)に/別法(べつほう)なし、いかなるか 00090190M16是(七ウ)/別法寺(べつほうじ)と/問(と)ハれぬるに、/喝食(かつしき)答ていはく、/松(まつ)に/古= 00090200M17今(こ=こん)の色なし、なんぢハ是/赤松(あかまつ)とこたへけれハ、/円心(えんしん)/舌(した)をふ 00090210M18るひ、/東堂(とうだう)にあふまでもなしとて、/門外(もんぐハい)より帰られしと也。 00090220¥P222 00090230¥N8¥J 00090240¥X 00090250L1八△よろづせちがしこき人ありて、月夜になれバ何にても 00090260L2ひろハんとて、用もなきにうか+とあるかれしに、少こ 00090270L3かげにきんちやくのごとき物をちてあり。いそぎひろハん 00090280L4と、あハてさハぎつかまれければ、/牛(うし)のくそなり。ひとり 00090290L5/腹(はら)をたてゝ行しに、又ある門のほとりに、何かハしらずわ 00090300L6たぼうしのやうにて、まつ/白(しろ)なる物見えけれバ、/跡(あと)より人 00090310L7来りてひらハんとす。此人心せきてはしりかゝりてつかミ 00090320L8つか(八オ)れしに、大きなる白いぬのふしたるなれバ、な 00090330L9にかハこらふべき、さん※にくらひかゝりけるとぞ。 00090340¥N9¥J 00090350¥X 00090360L11九△ある人/白楽天(はくらくてん)の三/儀(ぎ)とて/語(かた)りしハ 00090370L12△一日計在鷄鳴△△鷄鳴不起日課空 00090380L13△一月計在朔日△△朔日不立一月空 00090390L14△一年計在陽春△△陽春不耕秋実空 00090400L15といへる/語(ご)、まことにたゞ人ハ心に/油断(ゆだん)おこるにより、よ 00090410L16ろづにくゆることもわざハひもおこるとかや。古き哥に、 00090420L17△△こゝろこそこゝろまよハすこゝろなれ 00090430L18△△△心にこゝろこゝろゆるすな(八ウ) 00090440¥N10¥J 00090450¥X 00090460M1十△いにしへ/大名(だいミやう)/碁(ご)をすきてうち給ふに、出入の/者(もの)におど 00090470M2けたるものありしが。/常(つね)に来りて/碁(ご)のあひてになりけるが、 00090480M3打かゝると、やけるハ+とひやうしにかゝりていふ口く 00090490M4せありしに、/彼大名(かのだいミやう)も/気(き)にかゝりけれ共、うちしこりてハ 00090500M5ともにいハれけるが、ある時/彼(かの)をどけものに、今より/以後(いご) 00090510M6ハ何につけてもやけるハといふものにハ、/判金(はんきん)壱/枚(まい)の/過銭(くハせん) 00090520M7を出させ申べしときハめられける。是よりたがひにいひや 00090530M8ミしが、かのおどけ人ふと来て/咄(はな)しけるハ、都にハ/殊外(ことのほか)な 00090540M9るおごりを仕よし承候といふ。/大名(だいミやう)如何様の事かあると尋 00090550M10られしかば、/茶(ちや)の/湯(ゆ)を仕るが、/数奇屋(すきや)の/柱(はしら)ハみな/唐木(からき)を以 00090560M11仕、くはんす(九オ)などハきやらにて仕よしうけたまハり 00090570M12候といへば、それハやけてなるまひ事なりといはれけるに、 00090580M13扨こそとて/判金(はんきん)一/枚(まい)取けるとなり。 00090590¥N11¥J 00090600¥X 00090610M15十一△かた/田舎(いなか)のかたくな人共/寄合(よりあひ)て、物語せしこそおかし 00090620M16かりし。われ一と、りこんぶりて、しらざることもしりが 00090630M17ほにて一人申けるは、われら/幼少(ようせう)の/時分(しふん)都見物に上り候ひ 00090640M18しが、/嵯峨(さが)/法輪寺(ほうりんじ)ハさぞ/年(とし)よられつらんといひけれバ、一 00090650M19人申やう、我等近比上京仕候時承候ハ、/嵯峨(さが)/法輪寺(ほうりんじ)ハ相/果(はて) 00090660¥P223 00090670L1られたるさた申候といひけれバ、扨も+いとしき事かな、 00090680L2見事なる/大髭(おほひげ)にて候ひしが、おしき事やといひしと也。(九 00090690L3ウ) 00090700¥N12¥J 00090710¥X 00090720L5十二△物ごとにふかくひげする人有けるが、/客(きやく)来てはなし居 00090730L6に、客申けるハ、/御亭(ごてい)月ハ出て候かととへバ、すだれを/捲(まき) 00090740L7あげて、たゞ今月罷出られて候と申され候也。月にまでひ 00090750L8げさせられけると也。又ある時此人、さてもよき/星月夜(ほしつきよ)や 00090760L9と/空(そら)うちながめて/立(たゝ)れしに、となりより/垣(かき)ごしに申けるハ、 00090770L10貴様の屋の上には一しほ/星(ほし)がおほく候と申されけれは、尤 00090780L11おほくハ候へども、みなぬかぼしにて候とて、はや/星(ほし)にも 00090790L12/卑下(ひけ)をせられしと也。 00090800¥N13¥J 00090810¥X 00090820L14十三△ある人語しハ、/唐(たう)の/李太白(りたいはく)の/詩(し)に、月のもとに/独酌(ひとりくむ)と 00090830L15いへる/題(たい)にて、めいよの/句(く)あり。(十オ) 00090840L16△挙盃邀明月△△対影成三人 00090850L17此/句(く)の心は、ひとりくむ酒なれバ、/盃(さかつき)をさしあげて、/酒(さけ) 00090860L18に月をうつして、さてわが/影(かけ)をうつし&かば、三人酒をの 00090870L19む心ちありとたのしミけるとかや。めづらしき見たてなり。 00090880M1/李白(りはく)ハ/仙風(せんふう)をのづから有と伝へ侍る也。此句をもうけて、 00090890M2/大徳寺(たいとくじ)の/沢庵和尚(たくあんをしやう)の/哥(うた)とやらんに、 00090900M3△△ひとりすむ/庵(いほ)とハいはしよな+に 00090910M4△△△我かけそへて月を見るかな 00090920¥N14¥J 00090930¥X 00090940M6十四△ある人、山/崎(ざき)の/宗閑(そうかん)が/庵(いほり)を見物せしとてかたりけるハ、 00090950M7入口のがくにあげし/語(ご)、おどけたるかる口なりけれハ、/書(かき) 00090960M8とめ(十ウ)かへりしといふを見侍りしに、 00090970M9△一、△上の客人立かへり△一、△中の客人日かへり 00090980M10△一、△とまり/客人(きやくしん)下の下 00090990¥N15¥J 00091000¥X 00091010M12十五△/男子(なんし)を三人持たる人有けるか、/或(ある)時三人をよびあつめ 00091020M13語りけるハ、もろこしに/蘇(そ)/老泉(らうせん)といふ人あり、/軾(しよく)、/轍(てつ)とて二 00091030M14人の子をもてり、/幼少(ようせう)の時、彼二人か一/生(しやう)の間のことを文 00091040M15にかんがへをきしに、後其文に少もたがハずときけり、わ 00091050M16れも/老泉(らうせん)ほどハなく共、/汝等(なんぢら)が心を見おくべし、何にても 00091060M17のぞミある事を申べし、それにてはかりしるべしといひけ 00091070M18る。此三人ハ上二人はちと/次(つぎ)なるむまれつきなりし。/弟(をとゝ)ハ 00091080M19りはつものなりしが、(十一オ)まづ/兄(あに)より次第にいふてまハ 00091090¥P224 00091100L1せといへハ、/兄(あに)申やう、/富士(ふじ)の山がほしきといふ。なにゝ 00091110L2する。/枕(まくら)にせバやといへり。/親(おや)/喜(よろこん)で、扨も/総領(そうれう)の/望(のぞミ)ハ大 00091120L3きなるともてはやす。/次(つぎ)にとへハ、あふミのみづうミがほ 00091130L4しきといふ。是ハ何にかする。すゞり水にせんと云。是も 00091140L5大きなる/分別(ふんべつ)とて/喜(よろこん)で、一の/乙(をと)に/問(とひ)ければ、我ハ何もの 00091150L6ぞミハ候ハず、/牛(うし)のくそが三かたまりほしきといふ。/親子(おやこ) 00091160L7三人大きに/笑(わら)ひて、何にかするらんといへバ、/先(まづ)子供のた 00091170L8わけいふをよろこぶおやじに一かたまりくはせたし、/富士(ふじ) 00091180L9山のぞむ人にも一かたまりくハせたし、みづうミのぞむ人 00091190L10にもひとかたまりくハせたし、是よりほかに我等ハ(十一ウ) 00091200L11のぞミなしとにげさりける。 00091210¥N16¥J 00091220¥X 00091230L13十六△/一休(いつきう)和上さるかたへ、ときくひに御出あるつゐでに、 00091240L14/門前(もんぜん)の又六といふ/酒屋(さかや)へ立より、一つ二つ物語し給ふに、 00091250L15又六/馳走(ちそう)申、/彼奥殿(かのおくどの)の/諸白(もろはく)取出し、ひたじゐにしゐけれバ、 00091260L16/斎(とき)にゆく事もうちわすれ、とろり+とねふり給へば、又 00091270L17六思ひつけておこし申せども聞も入ず。ひとり目さむるま 00091280L18でねふりて、目さめけれバ、一/首(しゆ)、 00091290L19△△こくらくをいつくのほとゝおもひしに 00091300M1△△△/杉葉(すぎば)たてたる又六かかと 00091310¥N17¥J 00091320¥X 00091330M3十七△/神無月(かミなづき)の比、/尊氏将軍(たかうぢしやうぐん)/立花(りつくハ)をあそバしける処へ、(十二オ) 00091340M4/夢窓国師(むさうこくし)御出ありけるに、/尊氏(たかうち)不/斗(と)/発句(ほつく)をあそハしける。 00091350M5△△松をぬきもミちを立のにしきかな 00091360M6△△△秋雨洒如絲 00091370M7と/夢窓(むさう)わきをなされけるとなり。 00091380¥N18¥J 00091390¥X 00091400M9十八△/幽斎(ゆうさい)と/友長老(ゆうちやうらう)とのつけあひの/句(く)おもしろしとて、人の 00091410M10/語(かた)りしハ、かりそめに見るをうらやむ/草(くさ)の/庵(いほ)といふ/句(く)に、 00091420M11いつハりとなる人の/言(こと)の/葉(は)といひ給ふ/句(く)ハ、相逢尽道 00091430M12休官去、林下何曽見一人とつくりし/詩(し)の心にて、つ 00091440M13けられし/妙句(めうく)とかや。(十二ウ) 00091450¥N19¥J 00091460¥X 00091470M15十九△/一休(いつきう)/酒(さけ)に/酔(えい)給ひて、/返(へん)をなされしに、正しく/蛸(たこ)有ける 00091480M16を、人&是を見て、扨もなまぐさき/御坊(ごばう)かなと、口&にわ 00091490M17らひけれバ、我等はくハね共、口より出れバせんかたなし 00091500M18との給ひけれハ、皆人いよ+わらひて、くハざるもの/喉(のど) 00091510M19より出るものかといひければ、中+くハね共、のどより 00091520¥P225 00091530L1いづる/証拠(せうこ)あり、いざや/証拠(せうこ)を見せんとて、百/万遍(まんべん)へつれ 00091540L2ゆきて、/善導(ぜんたう)/法然(ほうねん)の/画像(ぐハぞう)を見せ、あれ見給へ人&、/善導(せんだう)の 00091550L3/阿弥陀(あミだ)くハれし事いづれの/書(しよ)にもなし、しかれ共/喉(のど)より/弥= 00091560L4陀(ミ=だ)出れば、善導もせんことなしとミゆと仰られけるぞ、有 00091570L5がたき/作分(さくぶん)かなとをの+/感(かん)じてかへりけり。(十三オ) 00091580¥N20¥J 00091590¥X 00091600L7二十△ある人の/茶堂坊主(さたうはうず)、あまりねふりてやうにたゝず。二 00091610L8時の/食事(しよくし)にバかり目さめ、其外ハ/昼夜(ちうや)ねふりけるが、名を 00091620L9やミの夜とつけられける。其いはれハ、くろふて/用(よう)にたゝ 00091630L10ぬと云心也。ある時さん※せつかん仕ける/夜(よ)、/主(しう)の前に 00091640L11かしこまる。ねふたきかととへハ、いやねふたくハなく候 00091650L12か、時&上まぶたがおとづれ候と申ける。 00091660¥N21¥J 00091670¥X 00091680L14廿一△さる百/姓(しやう)うけ取をとりてかへりしが、何と/書(かき)つけける 00091690L15ぞ聞たしと思ふ所へ、いかにもじんぶつよき/若侍(わかざふらひ)、あつ 00091700L16はれれき+といつつへき/躰(てい)なるに、/彼(かの)百/姓(しやう)袖をひかへ、を 00091710L17それながら此一筆御よミ給れと申かけられ、(十三ウ)さなか 00091720L18らしらぬともいはれざれは、をつとりよむ。此/侍(さふらひ)一/文(もん)不 00091730L19/通(つう)なる人なれバ、/恋(こい)し/床(ゆか)しとあるハといはれけれハ、百/姓(しやう) 00091740M1申やう、是ハうけ取にて候といへば、/實&(けに+)三/斗(ど)とあるハ。 00091750M2いや五/斗(と)にて候といふ。まことに二/斗(と)わきにぶらつきて有 00091760M3し故みえず、物/書(かく)ものハ/重宝(てうほう)にてなきかといげんを/云(いひ)、ひ 00091770M4たもの語れ、かたるほどよめるぞといひしと也。 00091780¥N22¥J 00091790¥X 00091800M6廿二△ある人のつかひし/者(もの)に、きやうがるうつけありけるが、 00091810M7大雪のふりける折ふし、/用所(やうしよ)ありてつかひにやるに、/彼(かの)も 00091820M8の申やう、雪ふかくてまいることならぬといふ。/主(しう)申ける 00091830M9は、/何尺(なんじやく)ふりたるととへば、あつさハ七八寸かとおほへ候 00091840M10が、はゞハし(十四オ)らず候と申ける。 00091850¥N23¥J 00091860¥X 00091870M12廿三△よろつそこつなる人、びしやもんをしんじ、/毎(まい)月/参詣(さんけい) 00091880M13申しに、ある時かも川の/飛越(とびこえ)みぞをこすとて、あいくちの 00091890M14さやはしりて/先(さき)へとびける。ゆめにもしらず行けるが、/足(あし) 00091900M15もとにぬきミになりて/落(をち)て有しを見つけて、是びしやもん 00091910M16の御りしやうと三/度(ど)礼し奉り、明日御礼に/参詣(さんけい)仕らんと、 00091920M17いそぎ我屋へ帰り、まづ/蔵(くら)におさめをき、さてふれ状まハ 00091930M18し、/知音(ちいん)の/者(もの)共に酒をふるまひ、かくと語りけれバ、是ハ 00091940M19目出度御ふくなりとて、一/度(ど)にどつとぞほめけるが、とても 00091950¥P226 00091960L1のことに其/脇指(わきざし)/拝見(はいけん)といひけれバ、尤とて、(十四ウ)/蔵(くら)にか 00091970L2け入、彼わきざしを取出し、/先(まづ)をの+いたゝきけるが、 00091980L3其中に一人これハ貴様のあひ口に似たりといふ。にが+ 00091990L4しく、/腹(はら)を/立(たて)、我等いかにそこつものなりとて、我/脇指(わきざし)を 00092000L5をとし、ひらふものやあるといひける。/座中(ざちう)此ことに気が 00092010L6つき、能&見れば/彼仁(かのじん)の/脇指(わきざし)にきハまりける。をの+申 00092020L7されけるは、とかく是ハ其方のあひ口なり、其方のあひ口 00092030L8御出しあれといへバ、いやこれに候とて/腰(こし)をさぐりて見れ 00092040L9バ、さやばかりぞ有ける。/座中(ざちう)一/度(ど)にどつとわらひ、扨も 00092050L10そこつの人かなと口&にわらひけれバ、あきれはてゝぞゐ 00092060L11たりけると也。(十五オ) 00092070¥N24¥J 00092080¥X 00092090L13廿四△/近比(ちかきころ)やつこはいかいとて人のしけるを聞しに、/冬(ふゆ)の事 00092100L14なりしに、 00092110L15△△/鬢水(びんミつ)にあたまがつはる氷かな 00092120L16といふ句に又付ける。 00092130L17△△しやつつらさむき雪のあけほの 00092140¥N25¥J 00092150¥X 00092160L19廿五△/或人(あるひと)世の中のうらめしき事共思ひつゝけて、つくりし 00092170M1/詩(し)ありと、語る人有けれバ、のぞミてかゝせけるが、いと 00092180M2あハれにて思ひふかし。 00092190M3△随世似有望△背俗如狂人 00092200M4△情哉憂浮世△何処寄此生(十五ウ) 00092210¥N26¥J 00092220¥X 00092230M6廿六△ある人の語りしハ、/恙(つゝが)なしといふこと、世人のつねに 00092240M7いへる/言葉(ことば)なるか、此ことば/史記(しき)にあらハれたるとや、む 00092250M8かしもろこしに、いまだ人の/家(いへ)なかりし時、/土穴(つちあな)をほりて、 00092260M9其中にて日月を送りけるに、/恙(つゝが)といへるむし出て人をさし 00092270M10ころしし事あり、此ゆへに人のそくさいなるかといハんこ 00092280M11とに、つゝがなきかといひつたへて、此国までいひならハ 00092290M12しけるなり。雪の後に梅を/問(とふ)といふ詩に、先問梅花無恙 00092300M13否と云ふ句もあり。 00092310¥N27¥J 00092320¥X 00092330M15廿七△/日待(ひまち)の夜、色&の/興(けう)ありてのち、火まハしを、はしめ 00092340M16て、ひの/字(じ)をかしらにつけて、ひたものいひまハしけるが、 00092350M17其/座(ざ)(十六オ)の中に、/成(なり)あがりたる/田夫(でんぷ)一人ありけるに、火 00092360M18まハしといふことしかとがてんせず。され共これほどの事 00092370M19しらぬかと人に思ハれむも口おしく、まじりゐ、たび& 00092380¥P227 00092390L1つまりけるが、ある人ひよどりといふ。次にひばりといふ。 00092400L2/彼(かの)人鳥の名と心得て、ふくろうといハれしに、/座中(ざちう)どつと 00092410L3わらひけれバ、まつくすミになりていふやうハ、をの+ 00092420L4はみな鳥の名を出して、われらたま+いひしを、かくわ 00092430L5らふよといひければ、なをおかしくて/笑(わら)ひあへり。 00092440¥N28¥J 00092450¥X 00092460L7廿八△とひやうなる/下部(しもべ)ありけるが、何方ともなくやれ/火事(くハじ) 00092470L8よといひ出しけるに、/主(しう)申けるは、何方なるぞ、見(十六ウ) 00092480L9聞て参れと申けれバ、かしこまりて候とて、あてどもなく 00092490L10/走(はしり)いづるが、米屋の/男(おとこ)/米(こめ)をせをひ/通(とをり)しに、彼もの/火(ひ)もとハ 00092500L11何ほどあるぞと、いきつぎかねて、問(とい)けれバ、此おとこ/火事(くハじ) 00092510L12とハしらず、一/斗(と)八/升(せう)五/合(がう)いたすハといへば、やれきいて 00092520L13あんどいたしたとてかへりけるとぞ。 00092530¥N29¥J 00092540¥X 00092550L15廿九△ある人の語りしハ、何たる人にても、我家の/風俗(ふうそく)なに 00092560L16につけてもいづるなり、たしなむべきことにやと云て、/諸= 00092570L17宗(しよ=しう)の/誹諧(はいかい)ありしを、/面(おもて)八/句(く)かきつけ侍る。 00092580L18/先(まづ)/真言宗(しんごんしう)の/発句(ほつく)に△△/金剛界(こんがうかい)/胎蔵界(たいざうかい)の/紅葉(もミぢ)かなと有けれハ、 00092590L19/曹洞宗(そうとうしう)/脇(わき)△△△△△△そもさんか是あきの夜の月(十七オ) 00092600M1/第(だい)三ハ/五山宗(こさんしう)いたしける△行つくす/江南(かうなん)すぢに/雁(かり)なきて 00092610M2四/句(く)めハ/浄土宗(じやうどしう)いたしぬ△△/西(にし)よりふくハこくらくのかせ 00092620M3五句めハ/日蓮宗(にちれんしう)なり△そこにこそくせもの仏やおハすらん 00092630M4六句めハ/一向宗(いつかうしう)なり△△人にかまハず御ふミよむなり 00092640M5七句めハ/儒者(じゆしや)△△△△物しりの/腹(はら)より出るじゆしやく/道(だう) 00092650M6八句めハ/医師(いしや)△△△△△/薬(くすり)のまずハしのゝたまはく 00092660¥N30¥J 00092670¥X 00092680M8三十△/遊行上人(ゆきやうしやうにん)にある人行あひて、ほとけの道を尋ねける時、 00092690M9哥よミて奉りければ、/返哥(へんか)し給ひて、ほとけの道をしめし 00092700M10たまふとなり。/問(とふ)ていはく、 00092710M11△△/絵(ゑ)にうつし木にきさめるもみだハ/弥陀(ミだ)(十七ウ) 00092720M12△△△かゝずきさまぬ/弥陀(ミた)ハいつくそ 00092730M13/返哥(へんか)、 00092740M14△△なむとたゝとなふる人のこゝろこそ 00092750M15△△△かゝすきさまぬそのまゝの/弥陀(ミだ) 00092760¥N31¥J 00092770¥X 00092780M17卅一△かたゐなかのことなるに、都の人行て住けるが、所の 00092790M18/里(さと)人をふるまひしに、/入麺(にうめん)をしんじたきとふれけれバ、い 00092800M19づれもかたじけなしとハ/返事(へんし)しけれ共、一人もにうめん/食(くう) 00092810¥P228 00092820L1やうしらず。かゝる事しらざるといはんも、/都(ミやこ)人にはづか 00092830L2しゝ、いかゞせむとひしめきて、をの+/会所(くわいしよ)へよりあひ 00092840L3/談合(だんかつう)をいたしゝに、其中にとし八しゆんにをよべる人、/食(くい) 00092850L4やうよくしり(十八オ)たりしが、とかくの/評議(ひやうぎ)もいらざり 00092860L5けり、たゞわれらがまねをしたまへと申けれバ、いづれも 00092870L6此儀然るべしとて、/日限(にちげん)来りけれバ、みな+/彼老人(かのらうじん)をさ 00092880L7きにたてゝぞ出られける。/亭主(ていしゆ)出合ひ、はやかつてよしと 00092890L8て出し&に、みな+/老人(らうじん)の手前をまもりゐけるに、此/老= 00092900L9人(らう=じん)なにとかしたりけん、/汁(しる)にこせうをはなすとて、はなへ 00092910L10入、くさめをひた物いたし、たえ入バかりなりけれバ、/座(ざ) 00092920L11にたまりえず、としよりの事なれバ/腰(こし)たゝずして、四つば 00092930L12いになり、/末座(ばつざ)へ出けれバ、をの+/入麺(にうめん)くふ/作法(さほう)これな 00092940L13りと、わざとくさめし、みなかほしかめ、四つはいになり 00092950L14てかへりけるとぞ。(十八ウ) 00092960¥N32¥J 00092970¥X 00092980L16卅二△むまれつきそこつなれバ、物ことにねんを入すごす物 00092990L17にや。ある人/供(とも)一人つれて、のりかけに打のり、大/坂(ざか)より 00093000L18上京しけるが、/淀(よど)の/橋(はし)にて馬をつぐ時、/供(とも)の/男(おとこ)をよびよせ、 00093010L19/荷物(にもつ)をつけさせていふやうハ、/先(まづ)つゞら二つつけけるか、 00093020M1次にあとつけのり敷つけゝるか、扨ハ何も取をとさゞる、 00093030M2まづ/羽(は)をり有り。/刀(かたな)/脇指(わきざし)あり、久三郎そこにおるか。まづ 00093040M3をれハこゝにゐる。よし+、馬やれといひしが、よこ/手(で) 00093050M4をはたと打て、さきの/茶(ちや)屋に忘れし物ありと、馬よりとび 00093060M5をり、十町バかりはしりかへりて/茶(ちや)屋へはいり、おかゝあ 00093070M6ミがさハこゝにないかといへば、かゝわらひて、あミがさ 00093080M7ハかぶりて/御座(おハしまし)候と申けれバ、あたまを(十九オ)さぐり見 00093090M8て、扨も+思ひがけもなき所にありしとて、はしられけ 00093100M9るとなり。 00093110¥N33¥J 00093120¥X 00093130M11卅三△/貧僧(ひんそう)のありけるが、北山のふもとに/柴(しば)の/庵(いほり)をむすびし 00093140M12に、/友(とも)の僧(そう)はじめて行てよめるとかや、 00093150M13△△なにをかなまいらせたくはおもへとも 00093160M14△△△/達摩宗(だるましう)にハ一/物(もつ)もなし 00093170M15とよミけれは、/返哥(へんか)に、 00093180M16△△一/物(もつ)もなきをたまハる心こそ 00093190M17△△△/本来(ほんらい)/空(くう)の一もつそかし 00093200¥N34¥J 00093210¥X 00093220M19卅四△わる口いひのおどけ人ありけるが、あたまのきんかん 00093230¥P229 00093240L1な(十九ウ)る人を見て、たるぼ+とのミよびて、名をい 00093250L2はざりければ、さる時此人、われらをたるぼとハなにとて 00093260L3いふぞとたづねしかば、かの人申けるは、先ほたるハしり 00093270L4がひかるものなり、其方ハあたまがひかれバ、ほたるをう 00093280L5ちかへして、たるほと申といひてわらひけるとなり。 00093290¥N35¥J 00093300¥X 00093310L7卅五△ある人むまれつきをろかにして、よろづかしこたての 00093320L8ミしけるが、夕涼のころみな人よりあひてはなしけるに、 00093330L9かのものハ一人とびのき、身うごきもせず/居(ゐ)たりけるに、 00093340L10皆人色&はなしをしかくれ共、をともせざりしが、やゝあ 00093350L11りて其/方達(はうたち)ハこれほどぶとおほきに、かしましくはなさる 00093360L12ゝよ、(二十オ)我らハしらぬかほして居て、木かとぶとめ 00093370L13に思ハせてすゞむぞ、物いふな+とぞ申けるとなり。 00093380¥N36¥J 00093390¥X 00093400L15卅六△さるうつけたる/牢人(らうにん)都にすミけれ共、/永&(なが+)の/牢(らう)人なれ 00093410L16ば、/手前(てまへ)つゞきがたきゆへ、/妻子(さいし)友だちにいとまごひして、 00093420L17/江戸(えど)へ/身躰(しんだい)からくりに下りしに、三/条(てう)の大/橋(はし)にて/銭(ぜに)一/文(もん)ひ 00093430L18ろひあげられしに、かきのへたにてぞ有ける。/牢人(らうにん)はらを 00093440L19たてゝ、/身躰(しんだい)かせぎに下る/門出(かどいて)に、さいさきあしゝとて引 00093450M1かへしかへりける。/友達(ともだち)此よし聞なぶりて云けるハ、/侍(さふらい)は 00093460M2/門出(かといて)か/大事(だいじ)なりと承る、((別話ヲ結合。ママ))其上みじかきがよしと申せば、/尤= 00093470M3&(もつとも=+)とほめければ、此人みじかきがよしと心得て、(二十ウ)/去= 00093480M4方(さる=かた)へ用の事ありて文をやるとて、一/書(しよ)かしくとのミかきて 00093490M5つかハしけると也。 00093500¥N37¥J 00093510¥X 00093520M7卅七△退一歩行安楽法、称三个好喜歓縁と云詩ハ 00093530M8/杜(と)/子美(しミ)が/句(く)なり。此/三个好(さんこよし)といへるハ、さる/賢人(けんじん)有けるが、 00093540M9/隣家(りんか)に子をほしく思ふとつねにかたられしに、ゆふべ子を 00093550M10もうけられしと女/房(ばう)かたりけれバ、扨それハよきことやと 00093560M11いふ。其後かの子/死(しに)ける。又女房いつぞやはなし申し/子(こ)/死(しに) 00093570M12候といへば、それもよしといふ。女ばうふしんにおもひて、 00093580M13子をもうけられしといへ共、又/死(し)せりといへ共よしといひ 00093590M14給ふハ、いかなることならんと/問(とい)けれは、それもよしと申 00093600M15(廿一オ)ける。是を三个よしといふ也。かくのことくよろづ 00093610M16あきらめし人ハあらじとて、もろこしにも/感(かん)じあへり。ま 00093620M17ことに此/詩(し)にいひしことく、よろこバしき心の中なるらん。 00093630¥N38¥J 00093640¥X 00093650M19卅八△ある人めつらしき/詩(し)をかたりしハ、/盛斎(やうさい)か/詩(し)に、 00093660¥P230 00093670L1△柳梢一殻茲緇滓△屋角双班谷古孤 00093680L2又此/句(く)よりつゝりしとなり。/詩学太成(しかくたいせい)にハ、 00093690L3△鴨入水中純△蝉於樹上緇 00093700L4といふ/句(く)あり。又/山谷(さんこく)が/句(く)にもめつらしき句あり。 00093710L5/猿(さるハ)/喚(よぶ)/山山(さん+と)。 00093720¥N39¥J 00093730¥X 00093740L7卅九△さる寺の/御坊(ごばう)、あまりに/貧僧(ひんそう)にて一年を送りかねける 00093750L8が、/漸(やうやく)/大晦日(おほつこもり)も/暮(くれ)けれバ、だうじゆく/小僧(こぞう)をあつめ(廿一 00093760L9ウ)て、いかになんぢら、此/春(はる)よりハいハひなをして、明 00093770L10日ハ/元三(ぐハんざん)なれば/発句(ほつく)をいたすべし、/脇(わき)/第(だい)三をいたし三つ物 00093780L11仕らんとて、/長老(ちやうらう)のいはく、 00093790L12△△/金持(かねもち)の/死(しゝ)たる今日の春日哉 00093800L13△△△/霞(かすミ)のうちに人玉ぞとぶ△△△△どうじゆく 00093810L14△△/門前(もんぜん)にきかんのはたを持つれて△/小僧(こぞう) 00093820L15と仕て、どつとわらひていはひけるといへり。 00093830¥N40¥J 00093840¥X 00093850L17四十△/策彦(さくげん)と/紹巴(ぜうは)との百/韻(いん)の/漢和(かんわ)を見侍りしに、おもしろき 00093860L18句どもおほき中に、 00093870L19△△難奈読残書 00093880M1といふ句に、(廿二オ) 00093890M2△△秋風に/飛行(とびゆく)/螢(ほたる)吹きえて 00093900M3と/脇(わき)し給ひける。 00093910M4又の/懐紙(くわいし)の中に/策彦(さくげん)、 00093920M5△△沙湿履無声 00093930M6といへる/句(く)に、 00093940M7△△しのふ夜の雨ハ中+たよりにて 00093950M8としられける。おもしろき/句(く)どもなりと聞し。 00093960¥N41¥J 00093970¥X 00093980M10四十一△/道心者(だうしんじや)の/庵(いほり)に、/弘法大師(こうぼうたいし)のよめる哥なりとて、/壁(かべ)に書 00093990M11つけしを、うつし来て見れハ、哥の/句頭(くかしら)に一二三より十ま 00094000M12でならへてよめる哥、 00094010M13△一ある心をしらてみな人の 00094020M14△△△しとろもとろに物をこそ思へ(廿二ウ) 00094030M15△二つともあらさるものをなとされは 00094040M16△△△みかきてもみよちゑのかゝみを 00094050M17△三/宝(ぼう)にいのらぬとてもみな人の 00094060M18△△△心のをにのつのををとせよ 00094070M19△四大とて地水火風をかりあつめ 00094080¥P231 00094090L1△△△かへさすとてもかへるおほそら 00094100L2△五躰とてかりに此世にあらハれて 00094110L3△△△出も入もたれかしるらむ 00094120L4△六/道(だう)とおもふこゝろハまよひなり 00094130L5△△△おもハぬもまたまよひなりけり(廿三オ) 00094140L6△七仏の世に出さりしそのさきは 00094150L7△△△たゝやミの夜に音も香もなし 00094160L8△八万の/諸経(しよきやう)をとくハなにならむ 00094170L9△△△たゝ一すちの道をしへなり 00094180L10△九ゆるとも今ハかなハしむまれきて 00094190L11△△△かならすしするならひある世を 00094200L12△十あくをのそくこゝろのなかりせは 00094210L13△△△一時の間もこくらくハなし 00094220¥N42¥J 00094230¥X 00094240L15四十二△むかし/伏見(ふしミ)に、/江湖(がうこ)とやらんいひて、/禅宗(ぜんしう)のあつまり 00094250L16て、/毎日(まいにち)/参禅参学(さんぜんさんがく)におこたることなし。一日/上堂(じやうだう)(廿四ウ)の 00094260L17ありしに、/趙州(せうしう)の/有無(うむ)とやらんいふこそくを、あけられし 00094270L18に、/上堂(じやうだう)過てかへる時、/員琢(いんたく)といふ僧、一/首(しゆ)の哥をよミて 00094280L19高らかに/吟(ぎん)ぜられし。 00094290M1△△/趙州(でうじう)の/有無(うむ)のふたつにほだされて 00094300M2△△△身ハ/淀(よど)川のからふねとなる 00094310M3と侍りければ、/東堂(とうだう)きゝ給ひて、/員琢(いんたく)+とよび給ひける 00094320M4に、やつと/答(こたへ)らるゝ。東堂のいはく、それがからふねかと 00094330M5仰られけるに、いんたく/答話(たうわ)をせられける。 00094340M6△寒松無声風来吟 00094350M7と有けれハ、又いはく、風たゆむ時ハと仰けれは、(廿四オ) 00094360M8△山虚有響 00094370¥N43¥J 00094380¥X 00094390M10四十三△さる山寺の御坊(ごばう)、/雉子(きじ)を一/羽(ハ)いけどりにしたまふが、 00094400M11/食(くい)たくハあれ共、/料理(りやうり)のやうすをしりたまハず。生ながら 00094410M12/毛(け)をひかれしか、/折節(おりふし)だんな来けれバ、/御坊(ごばう)あハてたまひ 00094420M13て、衣をかぶせめんぞうへをしこみ、さらぬていにて出ら 00094430M14れける。扨だんなと/四方(よも)山の物語しける所へ、かの/雉子(きじ)衣 00094440M15をかぶり、によき+とだんなの前へ出けれバ、/旦那(だんな)きも 00094450M16をつぶし、/御坊(ごばう)これハいかなることぞと手をうちわらひ/居(を) 00094460M17る。/御坊(ごばう)いかにもしづめ、さればめづらしきことにて候、此 00094470M18きじ/道心(だうしん)をおこし、いろ+とめ候へども、ふつと(廿四ウ) 00094480M19おもひきりしゆへ、ぜひなくきのふ/髪(かミ)をおろし、すなはち 00094490¥P232 00094500L1我等ふる衣をきせ候と申されけれハ、/旦那(だんな)をかくし思ひて、 00094510L2扨&しゆせうなる/法師(ほうし)ぶりにて候とて、/感(かん)じてかへりける 00094520L3と也。 00094530¥N44¥J 00094540¥X 00094550L5四十四△ある人/喧嘩売(けんくハうり)といひ立にして、/奉公(ほうこう)をかせぎけるに、 00094560L6おどけたる人ありてかゝへられしが、さる時/子息(しそく)/風呂(ふろ)へ入 00094570L7けれバ、せんとうの風呂にハ、かならず喧嘩出来るものな 00094580L8りとて、/彼(かの)者をそへてつかハしける。あんのごとく彼/若(わか)も 00094590L9の、かミあらひゆあぶるとて、とばしるちりてそバなる 00094600L10/侍(さふらひ)にかゝりけれバ、にくきりよぐわいものかなと、まな 00094610L11(廿五オ)こをいからしてひしめき、はやけんくわになりぬる 00094620L12時、彼/喧嘩売(けんくハうり)出むかひ、扨もそなたハよしなき/悪口(あつこう)をいは 00094630L13るゝや、をのれがやうなるばかハ、そこなやつがくそをを 00094640L14のれハくらへと、とがもなき/侍(さふらい)をさしていひけれバ、/何(なん) 00094650L15そや、そこなやつがくそをくふべきといふ。そこなやつと 00094660L16いはれし人すゝミ出て、とがもなき物をそこなやつとハ、 00094670L17しよ/侍(さふらい)にすいさんなりと、二つ三つ/云相(いひあふ)ひまに、さてこ 00094680L18そけんくわ売すましたりとて、/若衆(わかしう)の御とも仕、我屋にか 00094690L19へりしとなり。 00094700¥N45¥J 00094710¥X 00094720M1四十五△なりあがり人ハをかしき物なり。手前すこしよ(廿五ウ) 00094730M2けれハなき事のやうに思ひ、本より/文盲(もんまう)にてこびたがり、 00094740M3/公儀(こうぎ)だてをすることかたハらいたき者也ける。/或(ある)人二人共 00094750M4に文盲なるか、中よくしてさる方へふるまひに参られける 00094760M5が、こゝはれと公儀ぶりを出し、/書院(しよいん)へ/通(とを)られけるが、先 00094770M6とこを拝見仕らんとて、二人共に立よりミるに、/柳(やなぎ)といふ 00094780M7大/文字(もじ)一ふく/懸(かけ)けれバ、一人先、さても見事の、そも+ 00094790M8のひまんしたる/字(じ)なりと云。/亭主(ていしゆ)/腹(はら)にすへかね、すこしわ 00094800M9らひけれバ、今一人せうしがり、又こゝな人の/禅筆(せんひつ)くハさ 00094810M10るゝといひしも、禅筆ハ何とか心得けるやらむ。(廿六才) 00094820¥N46¥J 00094830¥X 00094840M12四十六△むかしひえい山と三井寺とハ、たがひ不和なりけるが、 00094850M13さる/法師(ほうし)三井寺をあざけりて、/狂句(きやうく)をして/遣(やり)ける。 00094860M14△寺見北兵左 00094870M15といひやりければ、 00094880M16△山誤東束来 00094890M17と/対(つい)せしとなり。此二/句(く)の心ふかし。/寺(てら)とバかりいへば三 00094900M18井寺也。/北兵左(ほくひやうさ)とハ/比丘尼(ひくに)といふ/字(じ)をあやまりしこと、も 00094910M19ろこしより/伝(つた)へし/故事(こじ)也。/下(した)心ハなまぐさき寺なり。女人 00094920¥P233 00094930L1きんぜいなるが、ひくにを寺にて見たりと云心なり。山と 00094940L2ハ/比叡山(ひえいさん)のことなり。/東束来(とうそくらい)是(廿六ウ)もよく/似(にた)る/字(じ)なれば、 00094950L3もろこしよりあやまりしと云伝し。/北兵左(ほくひやうざ)には三国一の/対= 00094960L4句(つい=く)なり。此対の下心ハ、/聖道家(しやうたうけ)のあやまりとて、むかしよ 00094970L5りいひをきしに、いよ+がまんへんしうにて、/武勇(ぶゆう)を第 00094980L6一とし、/文盲(もんまう)なりとそしりたり。 00094990¥N47¥J 00095000¥X 00095010L8四十七△世のうきめ見えぬ/海原(うなハら)に、/釣(つり)をたれて、しづかに/歳(とし)月 00095020L9を送る人のかたりしハ、ある時おきに舟をとめて、一/夜(や)をあ 00095030L10かしけるに、/海(うミ)のそこにしハかれたるこゑにて物語するを 00095040L11聞しに、にしとさゞいとなまこと三つあつまりて、にしさ 00095050L12ゞいにいふやうハ、そのほうハ門がまへよく、とひ(廿七オ) 00095060L13らつよくてうらやましゝ、大/波(なミ)大風にも何事に付ても御用 00095070L14心よしといふ。さゞい申やう、いやさもなし、波風の時/石(いし) 00095080L15/沙(すな)うち入候へば、せバくて身のふりまハしもならず、その 00095090L16ほうこそ/家居(いへゐ)つよく、内あかくけつかうなるゐなしにて、 00095100L17うらやまし&といふ。にし申やうハ、さ候へとも戸びらひ 00095110L18よはく、波風あらくてハ、いそぎハへ打よせられ、/船(ふね)の下 00095120L19などへしかれ候へバ、一/命(めい)はて候といひて、たがひにうら 00095130M1やミけれバ、なまこ申やうハ、それハ皆御両ていのおごり 00095140M2也、此なまこハあかはだかになりつゝ、波風のあらきにも 00095150M3よるべもしらず、ゆらめきまハりてくらし候、御両/躰(てい)返& 00095160M4もお(廿七ウ)ごりと申けるを聞て、其身にをよびかたきこと 00095170M5をうらやミもとむべからずと、/漁翁(きよおう)のかたりし。 00095180¥N48¥J 00095190¥X 00095200M7四十八△秋の夜の長きをくるしミ、人&よりあひでんがくをあ 00095210M8ぶりてなぐさミけるが、何にてもはね/字(じ)をつゞけて、いひ 00095220M9/次第(しだひ)にいくくしなり共/食(くふ)べしとさためしに、なんばんもん 00095230M10めんさんだんはんとて、七くし取人あり。又ある人、せん 00095240M11あんきんへんもんあんはんきんかんまんきんたんゐんしん 00095250M12といひつゝ、十四/串(くし)とりてくひけるに、はやのこりずくな 00095260M13になりけれハ、みな+口はうごめけ共、いひえざるとこ 00095270M14ろに、はんねんつんるんべんとて、五くしくハんとす。ミ 00095280M15な人大/笑(わらひ)(廿八オ)して申けるハ、なとそはねつるべなれ、/字(じ) 00095290M16ハ一字もはね字なしといひければ、又一人すゝミ出て、そ 00095300M17このき給へ、あんじ出したるとて、いふをきけば、ちやん 00095310M18うんすんとて三くし/食(くい)けるこそ、又なきをかしき事なれ。 00095320¥P234 00095330¥N49¥J 00095340¥X 00095350L1四十九△もろこしには、/風流(ふうりう)なる事あり。ある酒屋の門にくれな 00095360L2ゐの吹ぬきに、日本のなぞ+のやうなる事をかきつけて、 00095370L3人さとりてゆく時、/酒(さけ)をふるまふとなり。その/詩(し)にいはく、 00095380L4△時程来此有美酒 00095390L5といふ/句(く)を、一/字(じ)をわけて、/詩(し)の一句となして、/彼(かの)のぼり 00095400L6に(廿八ウ)/書(かき)つけて門に出してをくとなり。其詩にいはく、 00095410L7△日辺有寺△時の/字(じ)也△△千八口王△程の/字(し)也 00095420L8△両人上木△来の字也△△七山相双△此の字也 00095430L9△十月半斜△有の字也△△火焼羊瓦△美の字也 00095440L10△水辺有酉△酒の字也 00095450¥N50¥J 00095460¥X 00095470L12五十△/東福寺(とうふくじ)の/徹書記(てつしよき)ハ/定家(ていか)の/再来(さいらい)なりしとかや。其故を聞 00095480L13しに、/書記(しよき)京なる/哥友達(うたともだち)の方へ/斎(とき)に出られけるに、雪いと 00095490L14おもしろくふりければ、五/条(てう)のはしにやすらひ、四方山を 00095500L15なかめて一しゆよめり。 00095510L16△△とびきえて雲井はるかにゆくさぎの(廿九オ) 00095520L17△△△をのか羽こほすゆきのあけほの 00095530L18とよめりて、おもしろくおもひて、/料帋(れうし)を/借(かり)て書つけ、京 00095540L19へ出て見せバやと、道すがら吟行しけるに、京なる人明日 00095550M1は/書記(しよき)御出とて、少まどろむ処に、/夢(ゆめ)のうちに/定家(ていか)来て哥 00095560M2を給ハる。其哥/書記(しよき)のよめるうたなりしに、ていしゆ此む 00095570M3さうをよろこび、あくるをまちかねてかきつけ、/書記(しよき)をお 00095580M4そしとまつ。/書記(しよき)きたつて門に入とひとしく、むさうの物 00095590M5がたりをする。/書記(しよき)ふしぎにおもひて、かきつけたまひし 00095600M6哥をとりいだし、むさうの哥とくらべ見れば、てにはが 00095610M7(廿九ウ)ひとつちかハさりしこそふしぎなれ。ていしゆも/奇= 00095620M8異(き=い)のおもひをなしけるとなり。これより世&に/定家(ていか)の/再来(さいらい) 00095630M9ハ/書記(しよき)なりとつたへしなり。 00095640¥Y1百物語巻之上終(三十オ) 00095650¥P235 00095660¥Y1百物語巻之下目録 00095670L3一△△/返哥(へんか)/連句付(れんぐつけ)にする事 00095680L4二△△/春過(はるすぎて)の哥ほんあんの事 00095690L5三△△/薬鑵(やくハん)で/蛸(たこ)にる事 00095700L6四△△/山椒(さんせう)にむせる事 00095710L7五△△/箱根坂(はこねざか)/狂哥(きやうか)の事 00095720L8六△△/長刀指(なかがたなさし)になハるゝ事 00095730L9七△△/博奕(ばくち)うちの事 00095740L10八△△/児(ちご)/柚(ゆ)をもらふ事 00095750L11九△△/紹巴(ぜうは)/花林(くハりん)の事 00095760L12十△△/宗祇(そうぎ)/石山(いしやま)/発句(ほつく)の事 00095770L13十一△/横川(わうせん)/若王寺(にやくわうじ)/狂句(きやうく)の事 00095780L14十二△/盗(ぬす)人にお/湯(ゆ)の事 00095790L15十三△/掛(かけ)ねをいふ事 00095800L16十四△/銭(ぜに)の/異名(いミやう)の事 00095810L17十五△/喧嘩(けんくハ)うつる事 00095820L18十六△/徹書記(てつしよき)ながさるゝ事(一オ) 00095830L19十七△/春秋(はるあき)のあらそひの事 00095840M1十八△/王荊公(わうけいこう)/桜(さくら)の/詩(し)の事 00095850M2十九△/聾(つんぼ)/正直(しやうぢき)の事 00095860M3二十△時の用に/鼻(はな)さへかく事 00095870M4廿一△/風呂(ふろ)へ入かねし事 00095880M5廿二△/眠入(ねふりいり)/着物(きもの)/尋(たづぬ)る事 00095890M6廿三△/貞徳(ていとく)/粽(ちまき)/送(をくる)/哥(うた)の事 00095900M7廿四△/富士山(ふじさん)/詩哥(しいか)の事 00095910M8廿五△/夢窓(むさう)/嵐(あらし)山の哥の事 00095920M9廿六△/蛸食(たこくひ)の事 00095930M10廿七△りくつものゝ事 00095940M11廿八△はかなき物語の事 00095950M12廿九△たばこ十/首(しゆ)の哥の事 00095960M13三十△/同字(おなじし)五つ/重(かさね)し/狂句(きやうく)の事 00095970M14卅一△/広沢(ひろさハ)/月見(つきミ)の事 00095980M15卅二△まんぢうの名を/問(とふ)事 00095990M16卅三△/浮蔵主(うきざうす)の事 00096000M17卅四△/柄漏(ゑもり)の事(一ウ) 00096010M18卅五△/葉流詞(はやりことバ)の/誹諧(はいかい)の事 00096020M19卅六△/即心是仏(そくしんぜぶつ)の/分字(わけじ)の事 00096030¥P236 00096040L1卅七△△/離別(りべつ)の/詩哥(しいか)の事 00096050L2卅八△△/狐志(こしの)/侫(ねい)の事 00096060L3卅九△△/開元(かいげん)の/銭(ぜに)の事 00096070L4四十△△たうごせうの/秀句(しうく)の事 00096080L5四十一△/鴬宿梅(あうしゆくばい)の事 00096090L6四十二△/家隆(かりう)/定家(ていか)/掛哥(かけうた)の事 00096100L7四十三△/名誉(めいよ)の/狂句(きやうく)の事 00096110L8四十四△/塞翁(さいをう)が事 00096120L9四十五△八の/頭(かしら)はやうつ事 00096130L10四十六△/朝(てう)三/暮(ぼ)四の事 00096140L11四十七△/猿(さる)に/似(に)たる人の事 00096150L12四十八△/小判(こばん)ひろいし事 00096160L13四十九△/鼠(ねすミ)/蛙(かハづ)/同心(だうしん)の事 00096170L14五十△△しぶかたひらの事(二オ) 00096180¥P237 00096190¥T1百物語巻之下 00096200¥N1¥J 00096210¥X 00096220L3一△/五山(ごさん)の/喝食(かつしき)、/連句(れんぐ)に心を入て、/他事(たじ)なし。さる人いふ 00096230L4やうハ、ちごかつしきなどハ、又やハらかなる道をも、御 00096240L5がくもんありたるよし、ちと/哥学(かがく)をもなされよかしといさ 00096250L6めければ、われらが/家(いへ)の/詩連句(しれんぐ)からハ、哥ハならハずとて 00096260L7もよむべしといはれけるに、さるかたより哥を一/首(しゆ)/送(をくり)ける。 00096270L8△△君をのミ恋こかれたるたつさミに 00096280L9△△△かと田にいてゝねせりをそつむ 00096290L10/喝食(かつしき)/返哥(へんか)、 00096300L11△△われしらミふなあふりたるあしもつり(三オ) 00096310L12△△△せとのはたけてこほうひきぬく 00096320L13とせられけるこそおかしけれ。此返哥なにともがてんゆか 00096330L14ず。ミなれんぐのほうにて/返哥(へんか)しけれハ、心ハつうぜず、 00096340L15たゞ/字(じ)をのミつけたり。をかしかりし/言(こと)の/葉(は)なり。まこと 00096350L16に、いにしへ人のいひをきし、/詩作(しさく)の/連句(れんぐ)はのびすぎてど 00096360L17んなり、/連句(れんぐ)しの/詩(し)ハりこうすぎてどんなりといひしも、 00096370L18さもあらんかし。 00096380¥N2¥J 00096390¥X 00096400M1二△ある寺の/御坊(ごばう)へ、はるといふ女だんななりけるが、/親(をや) 00096410M2のぼだひとして、白かたびら一つ御/坊(ばう)へ遣しけるに、出入 00096420M3のものによくふかき女ありけるか、をのれが/小女(むすめ)をあま 00096430M4(三ウ)になしゝが、しろきかたびらなく候まゝ、申かね候 00096440M5へども、さきほどのかたびらつかハされよといひけれハ、 00096450M6御坊よめる。 00096460M7△△春くれてなつきよといふしろたえの 00096470M8△△△ころもほしがるあまのかゝさま 00096480¥N3¥J 00096490¥X 00096500M10三△/蛸薬師(たこやくし)のほとりに、ある寺に、やくハんにてたこをゆ 00096510M11でられしに、折ふしだんな参りて、/炉(ゆるり)のほとりに/火(ひ)せゝり 00096520M12して咄しゐけるに、やくハんにハかに/煮(にへ)あがりしを、/旦那(だんな) 00096530M13ふたをとりて見れば、たこありけり。/肝(きも)をけし、/御坊(ごばう)此や 00096540M14くハんにたこが御座候と申けれバ、扨&此間の/渇水(かつすい)に/当寺(たうじ) 00096550M15の水きれ、たこやくしの水をもら(四オ)いしが、さてハ 00096560M16/神躰(しんたい)があがらせたまふかと、おどろきたる/躰(てい)にて、あらも 00096570M17つたいなし、/此方(ごなた)へくだされよとて、めんぞうへおさめら 00096580M18れしぞ。よき/答話(たうわ)なりしと也。 00096590¥P238 00096600¥N4¥J 00096610¥X 00096620L1四△山もとのやつこ、/山椒(さんせう)を/買(かい)けるに、/商人(あきんど)色&取いだし 00096630L2見せけれ共、/何(いづ)れもからくハなしとてくひちらしけれバ、 00096640L3/売手(うりて)はらをたて、おミハ人をなぶるか、此/山椒(さんせう)からくなくハ、 00096650L4一/斤(きん)ふるまふといふ。やつこくふて見せんとて、ひた物く 00096660L5ひければ、なにかハたまるべき、むせいりけるが、ものもい 00096670L6ひえず、はしりてかへりしに、道にてふと思ひ出てけるハ、 00096680L7/山椒(さんせう)にむせてハあかゞねにかぶりつき(四ウ)てなをるとや、 00096690L8あかゞねがほしゝと思ふ所へ、あたまのきんかんなる人来 00096700L9りければ、やくハんうりと心得て、かのきんかんあたまへ 00096710L10ほかとくひつく。此人はらをたて、にくきやつとて、ひし 00096720L11とつかまへける。やつこ申けるハ、我ら/山椒(さんせう)にむせ、あか 00096730L12ゞねかと存、かくのしあわせ、御ゆるしあれといへども、 00096740L13きかず。一/腰(こし)に手をかけ、ちまなこになる。/町衆(ちやうしゆ)あつかひ 00096750L14けるハ、御かんにんあれ、にくき事ながら、ゑやうぐいに 00096760L15てもなし、くすりぐひにて候まゝ、御かんにん有るべしと、 00096770L16口&にいひけれバ、どつとわらひてさりぬ。 00096780¥N5¥J 00096790¥X 00096800L18五△ある人江戸へ/下向(けかう)するとて、はこねやまにてよめる。 00096810L19(五オ) 00096820M1△△はこねちのしり又しりをこえへつゝ 00096830M2△△△ひつたくたりにはてハむさし野 00096840M3又/幽斎(ゆうさい)のよめるは、 00096850M4△△しりのほりまたたに+をへめくりて 00096860M5△△△にり+くたるはこね山かな 00096870¥N6¥J 00096880¥X 00096890M7六△京わらはほどいたづらなるものハあらじ。ある時ゐな 00096900M8か山ぶし、あたご山へ/参詣(さんけい)のミちにて、六尺あまりの/太刀(たち) 00096910M9をほりだし、/祈祷刀(きたうがたな)にせんとよろこび、かの大刀をはきす 00096920M10まし、京/堀川(ほりかハ)を通りしに、さても+と見る人わらひける 00096930M11が、わかきもの共山ぶしのそばへつか+(五ウ)とはしり 00096940M12より、一人ハ/太刀(たち)のつかへかたを入、今一人ハこじりへか 00096950M13たを入て、かの山ぶしをになひすまして、ほり川へ/捨(すて)ける。 00096960M14山/臥(ぶし)あきれはてゝうご+と川よりはいあがり、扨も+、 00096970M15ミやこハ目はづかしといひしを、いまこそおもひしりぬと 00096980M16て、こしを引てかへりしと也。 00096990¥N7¥J 00097000¥X 00097010M18七△ばくちうち、打まけて、あかはだかになれるもの二人 00097020M19ありしが、/因幡堂(いなばだう)へまいりて、/薬師(やくし)へりうぐハんし申ける 00097030¥P239 00097040L1ハ、われら二人ばくちに打まけ、はだかにて候へバさむさ 00097050L2たへがたし、/衣(ころも)をあたへてたび給へといのりて/通夜(つや)をしけ 00097060L3るに、御/夢想(むさう)ありけるハ、なんぢ申所ふびんなれ共、(六オ) 00097070L4ころもをあたへがたし、先こよひハ此だうの下に、/犬(いぬ)の子 00097080L5四五ひき有べし、是を/腹(はら)にのせてさむさをたすかるべしと 00097090L6有けれハ、二人づれにてたづねしに、一人ハ三びきたづね 00097100L7出す。一人ハ二つたづね出し、御/夢想(むさう)の通に、はらの上に 00097110L8犬の子をのせ、夜さむをしのぎしが、一人いふやうハ、是 00097120L9にてもあとがさむし、いざ此方の二/疋(ひき)を其方へやるか、又 00097130L10其方のをこなたへとるか、一方へかたつけむといふ。一だ 00097140L11んとてはやさいを出しける。かゝるあさましき身となりは 00097150L12てゝも、/博奕(ばくち)のきざしやまざる事を、/薬師(やくし)しめし給ハんと 00097160L13て犬子をあたへしなれバ、両人さい取出(六ウ)しゝが。き 00097170L14つと思ひつゞけ、かくあさましき上にも、其方我等いまだ 00097180L15此こゝろざし出るよと、いひてやミしと也。 00097190¥N8¥J 00097200¥X 00097210L17八△山寺の/小児(こちご)ハ、いにしへよりさかしきものといひつた 00097220L18へし。ある時ちごひだるさにはかりけるハ、下腹いたむと 00097230L19てふせりしに、さる人申けるは、/柚(ゆう)をやきてまいれとて、 00097240M1/柚(ゆう)をあたへぬ。ちごおきかへり、扨も+よき/薬(くすり)かな、下 00097250M2腹の事はをきて上腹まてなをりしと申された。 00097260¥N9¥J 00097270¥X 00097280M4九△花見にまかれりけるに、かへるさを忘れしかバ、月/東= 00097290M5山(とう=ざん)にかゝやき、花にえいじて、一入ながめもまさりけるに、 00097300M6みな人此夕に一/首(しゆ)なくてハとて/案(あん)じけるに、一/句(く)も(七オ) 00097310M7出ず。其辺にやせほうし一人たゝずミありき、花をながめ 00097320M8しに、皆人おかしくおもひ、御/坊(ばう)一/句(く)なきかといひけるに、 00097330M9われらがやうなるものなにか申べし、をの+の御/句(く)聞申 00097340M10たしといふに、いざよびてなぶりものにせんと、これへ 00097350M11+と申ければ、/法師(ほうし)もむしろへよぢ上り、我等が/句(く)はづ 00097360M12かしながら申候ハんといふ。しかるべしとてすゞりをなら 00097370M13し書付るに、かの法師の句にいはく、/出見(しゆつけん)/花林(くハりん)/夜月(やげつ)と御/書(かき) 00097380M14下されよといへバ、みな人これを聞て、うたにあらず/詩(し)に 00097390M15もあらず、/句(く)にてもなしと口&につぶやき、ひやうまづき 00097400M16てほめそやし、/腹(はら)を(七ウ)かゝへてわらひけるに、此/法師(ほうし) 00097410M17申やう、まづさ様に御わらひあらずとも、御つけなされよ 00097420M18といふ。いかにしても此/句(く)ハなにやらんしれずといふ。よ 00097430M19ミに御よミあれといふによめりけれは、 00097440¥P240 00097450L1△△出て見よはなのはやしのよるの月 00097460L2と/吟(ぎん)じ出して、人みなよこ/手(で)をはたと打、さて御/名(な)はなに 00097470L3と仕らんといふに、名もなきものといはれけれともゆるさ 00097480L4ゞりしかバ、/紹(ぜう)とバかりあそバされよといふ。此下をぜひ 00097490L5といひけれバ、その義ならバ其/紹(ぜう)の/字(じ)の下に/巴(は)と書て/給(たべ)と 00097500L6いへバ、みな人/肝(きも)をつぶし、/虚空(こくう)ににげちらしけると也。 00097510L7(八オ) 00097520¥N10¥J 00097530¥X 00097540L9十△ある時/宗祇法眼(そうぎほうげん)石山寺にさんけいして、/湖水(こすい)をながめ 00097550L10給ひしに、折ふしほたるのとびきたりて、みぎはのうきく 00097560L11さにとまりしかは、一/句(く)、 00097570L12△△/萍(うきくさ)に/火(ひ)いけミづのほたるかな 00097580L13とありて、ことの外じまんせられければ、くハんをんハを 00097590L14かしくおほしけるにや、いづくともなく/童子(どうじ)一人来て、此 00097600L15句にてハほたるが/死(し)にぼたるなりとわらひて、 00097610L16△△/萍(うきくさ)に火をうつなミのほたるかな 00097620L17と/云(いひ)、かくこそハよけれ、右の哥にてハ/螢(ほたる)をいけ火にたと 00097630L18ふるハ、/螢(ほたる)めいわく也といひて、かきけすやうに/失(うせ)けると 00097640L19そ。(九ウ) 00097650¥N11¥J 00097660¥X 00097670M2十一△/相国寺(しやうこくじ)の/横川和尚(わうせんおしやう)ハめいよの/作者(さくしや)なりしと也。ある時 00097680M3/若王寺(にやくわうじ)へ花見にまかれりとて、あそバされしとかや。 00097690M4△若王花世界 00097700M5とあそバし、/外((ママ))のほか御じまんありければ、/鼻(はな)が一/尺(しやく)ほど 00097710M6高くなりたまふたと、人みな申ける処に、/虚空(こくう)に/声(こゑ)あつて、 00097720M7/対句(ついく)をいたしける。其/対句(ついく)に、 00097730M8△富士雪乾坤 00097740M9/名誉(めいよ)の/句(く)なり、天/狗(ぐ)やしつらんと、人みな/奇異(きい)の思ひをな 00097750M10しけるとそ。 00097760¥N12¥J 00097770¥X 00097780M12十二△さるぬす人、尾/尻(じり)をきりてしのびいり、すのこの下へ 00097790M13身をひそめてはいりゐける。夜もはやあけがたになれ共、 00097800M14/亭主(ていしゆ)いねざりけれバ、此ぬす人/持病(ぢびやう)に/疝気(せんき)をもちしが、 00097810M15(九オ)下びへにてやおこりけん、地もひゞくバかりにうめ 00097820M16き出す。/亭主(ていしゆ)きもをつぶし、たい松をともしミければ、ぬ 00097830M17す人なり。にくきやつかなと、うたんとすれば、ぬす人手 00097840M18をすり、ゆるし給へといふ。ていしゆ、じひ/心(しん)ふかき人な 00097850M19れば、先一/命(めい)をたすけけるに、ぬす人よしをかたりけれバ、 00097860¥P241 00097870L1みな人大わらひして/去(さる)に、ぬす人の云、/湯(ゆ)をひとつ給ハれ 00097880L2といふに、のませてかへしけるとかや。是よりして、ぬす 00097890L3人におゆとハ申つたへしと也。 00097900¥N13¥J 00097910¥X 00097920L5十三△ある人うつけたる子を一人持けるが、あきなひをさせ 00097930L6けるに、まづ/異見(いけん)をいたしける。何事もゆだんなく(九ウ) 00097940L7/精(せい)を出すべし、又をのれがやうなるうつけにハうそがおほ 00097950L8し、よろづいつハりなくたしなミ、月&に/算用(さんよう)を仕りきか 00097960L9せよといひ付けるに、彼うつけ/他事(たじ)なくあきなひをしける 00097970L10が、扨つこもりに/親(おや)さんやうをきくに、一/文(もん)も/利(り)なく又そ 00097980L11んもなし。これハなに事ぞととへバ、いつハりなくと仰ら 00097990L12れしにより、百/文(もん)に/買(かい)し物ハ百文になければうらずといひ 00098000L13けり。/親(おや)はらを立、扨もりちぎすぎたるうつけかなと様& 00098010L14/異見(いけん)し、商人ハそらねなくてハかなハじ、物ごとにそらね 00098020L15いひて、りとくを見べしと申けれハ、よくがつてん仕たり 00098030L16とて、みせたなへ出けるところへ、ひ(十オ)きやくと見え 00098040L17しものはしり来て、かのうつけを、人と思ひ、いかにや此 00098050L18町にミのやの彦右衛門といふ人やあるとたづねければ、此 00098060L19二町/下(しも)なりと申。ひきやく/過分(くハぶん)なりとてはしり行。彼もの 00098070M1大/声(こゑ)出してよびかへす時に、ひきやくはしりかへる。此下 00098080M2の町にて候と申。又はしりゆけバ又よびかへす。/飛脚(ひきやく)はら 00098090M3を立て、/其方(そなた)ハ我をなぶるかといへバ、やすけれ共まけて 00098100M4参らする、つまる所は此となりにて候と申けれバ、ひきや 00098110M5くはらを立けれバ、いや、おやじの仰らるゝ事ハ、あきな 00098120M6ひハ何にもそらねをいへとていからるゝゆへ、扨其方へも 00098130M7そらね申候といへハ、/飛脚(ひきやく)も/笑(わらひ)てさりぬ。(十ウ) 00098140¥N14¥J 00098150¥X 00098160M9十四△/五山(こさん)にはよろづの事きやしや/風流(ふうりう)をたしなむといへり。 00098170M10/銭(ぜに)を/何(なん)百文といふことを/異名(いミやう)をつけていふ也。 00098180M11△百△文△/一指(いつし)△一/指(し)ハ/天龍(てんりう)/一指禪(いつしぜん)といふより名付しと也 00098190M12△二百文△/黄■(くハうり)△/黄■(くハうり)ハ両个黄■啼翠柳と云より名付也 00098200M13△三百文△/木毬(もくきう)△@/木毬(もくきう)ハ/雪峯(せつほう)の木毬とて手まり也。参徒来れハ|木毬を三つなけ出すにてつけたりして也△△@ 00098210M15△五百文△/煙景(えんけい)△@煙景ハ五/湖(こ)といふよりつけしと也。五/湖(こ)/煙景(えんけい)|/有(あつて)/誰(たれ)/争(あらそふ)といふ句あり△△△△△△△△△△△ 00098220M15@ 00098230M17△壱/貫(くハん)文△/円相(えんそう)@円相是一円相也一貫也。/円(まる)きによりてかく付|たり△△△△△△△△△△△△△△△△@ 00098240M18かくのことき/異名(いミやう)をつけつゝいへり。/風流(ふうりう)なることゝさる 00098250M19人の/云(いひし)也。 00098260¥P242 00098270¥N15¥J 00098280¥X 00098290L2十五△ある人の川むかひに/喧嘩(けんくハ)の有りけるを見物する。其中 00098300L3におどけ人ありて、川むかひのけんくハはうつるものなり 00098310L4と(十一オ)いふ。又一人申か、尤ひぜんがさも出物なれハう 00098320L5つる、/喧嘩(けんくハ)も出物なればうつることも有べしと、二人ひた 00098330L6ものたはこといひけれバ、かたハらなる人きゝて、/喧嘩(けんくハ)が 00098340L7うつると云ことやある、たハけたことをいふものありとい 00098350L8へば、そこなやつハ人のたハふれにいふことをたハけとハ 00098360L9/何(なん)といふ、をのれかことでハなし、いらざる/悪口(あつこう)ぬかすと、 00098370L10はや色をかへていひけれバ、そばなる人、それ+はや/喧嘩(けんくハ) 00098380L11がうつりたといひけれハ、両方共にうちわらひてさりぬ。 00098390¥N16¥J 00098400¥X 00098410L13十六△/徹書記(てつしよき)の比ハことの外/乱世(らんせい)なりしに、/書記(しよき)たハふれに 00098420L14哥をよミ給ひしにより、さすらひ給ふと也。其哥に、(十一ウ) 00098430L15△△中+に見ぬもろこしの鳥は出し 00098440L16△△△桐の葉おとせあきの夜の月 00098450L17此うたの心は、いまの世のまつりことあしきにより、世が 00098460L18ミだれし、/禁裏(きんり)にうへ置/桐(きり)ハ/鳳凰(ほうわう)の/来儀(らいぎ)をまたんためなる 00098470L19に、此やうなるまつりことにてハ、ほうわうのくるねんハ 00098480M1なし、/桐(きり)の/葉(は)をうち/落(をとし)て、秋の月をさハりなくながめたる 00098490M2がよし、ミぬもろこしの鳥とハ/鳳凰(ほうわう)のことなり。此哥のそ 00098500M3こ心は、君をそしれる哥なるにより、さそらひしとなり。 00098510M4さるほどに/書記(しよき)の/謫処(たくしよ)へ哥友達共見まひけるに、七月十四 00098520M5日によミし哥とてかたり給ひし哥に、(十二オ) 00098530M6△△中+になき玉ならはふるさとに 00098540M7△△△かへらむものをけふの夕くれ 00098550M8此哥の心ハ、命あるがつれなし、/死(しゝ)たらバしやうりやうに 00098560M9なりて、此夕にはかへるべきものをと、ふる里を恋しく思 00098570M10ひつる心ざし、いとあはれふかし。扨此哥/禁裏(きんり)へきこえし 00098580M11かば、あハれにおぼしめして、めしかへされけるとなり。 00098590M12いとやさしき事共也。 00098600¥N17¥J 00098610¥X 00098620M14十七△ある人のかたりしハ、いにしへより春秋のあらそひお 00098630M15ほし、春がよし秋がよしといろ+にいひをきし中に、源 00098640M16氏物語の哥に、(十二ウ) 00098650M17△△春はたゝはなのひとへにさくはかり 00098660M18△△△ものゝあはれは秋そまされる 00098670M19又ある哥に、 00098680¥P243 00098690L1△△おほかたの秋にこゝろハよせぬれと 00098700L2△△△花見るときはいつれともなし 00098710L3かく思ひ+にいへる。つれ+にいひしことく、折にふ 00098720L4れは/興(けう)により、いつれの時をかすつべきや。又四/序(じよ)のなが 00098730L5め、いつれをか/捨(すつ)べきかたなしとてよめる哥、 00098740L6△△心うつるなさけいつれとわけかねつ 00098750L7△△△花ほとゝきす月雪のとき(十三オ) 00098760¥N18¥J 00098770¥X 00098780L9十八△ある人の語しハ、からには、日本のことくにさくらを 00098790L10/賞翫(しやうくハん)せざるやらん、おほき/詩文(しぶん)の中にも/桃桜(たうわう)などゝつゞ 00098800L11けてハあり、/桜(さくら)とバかりある/詩(し)ハ一/首(しゆ)もなきとなり。山桜 00098810L12といふ/題(だい)にて/王(わう)/荊公(けいこう)がつゝりしを、一/首(しゆ)いづかたにても/賞= 00098820L13翫(しやう=くハん)する也、これのミにて、さらに一首もなきと、/博学(はくかく)の人 00098830L14のかたりし。此山桜の詩か、日本の山桜の哥の心に/能(よく)/相応(さうおう) 00098840L15したると也、よくおぼえてをくべき/詩(し)也と、人の仰られし 00098850L16とかや。其/詩(し)は、 00098860L17△山桜抱石映松枝△△比並余花発最遅 00098870L18△頼有春風嫌寂寞△△吹香渡水報人知(十三ウ) 00098880¥N19¥J 00098890¥X 00098900M1十九△ある人語りしハ、人は正/直(ぢき)なるがよし、日月のあわれ 00098910M2ミをかうふるといひをきしもさる事也。天ぢくの事なると 00098920M3や、/商(あき)人に、/耳(ミゝ)つぶれたる人ありしが、ともの/商人(あきひと)の都よ 00098930M4り帰りけるに、今ほど都へハなにがむき候べし、をしへ給 00098940M5へと/問(とい)しに、何にてもびく次第なりといひて/耳(ミゝ)を/教(をしへ)けれバ、 00098950M6かたりしことハ聞えず、耳ををしへにより、みゝに/似(に)たる 00098960M7物をあきなひ物にせよと心得て、くさびらのたぐひをおほ 00098970M8くこしらへ、都へのぼりけれバ、折ふし大/王(わう)の/崩御(ほうぎよ)にて、 00098980M9一/国中(こくぢう)に/魚肉(ぎよにく)をたちけれバ、思ひのほか/利徳(りとく)をえたるとい 00098990M10へり。/誠(まこと)に人ハ正/直(ぢき)なるがよしとそ。(十四オ) 00099000¥N20¥J 00099010¥X 00099020M12二十△むかしある人、/家(いへ)/貧(ひん)にしてかなしミ/暮(くら)しけるが、びし 00099030M13やもん/天王(てんわう)ハ/福神(ふくじん)なるとて、七日/参篭(さんろう)申しに、ある/夜(よ)/夢(ゆめ)の 00099040M14中につゞミを一てう給るが、/夢(ゆめ)心に仰られしハ、此つゞミ 00099050M15一/方(はう)をうてバはな高くなる、一方をうてバもとのごとくに 00099060M16なる、名を/天狗(てんぐ)つゞミといふなり、なんぢにあたふるぞ、 00099070M17/才覚(さいかく)をまハしなば/福(ふく)をうべしとてゆめさめける。かの/者(もの)よ 00099080M18ろこび、さる大/名(ミやう)のとをりしを心あて、かのつゞミを打け 00099090M19れバ、大名の/鼻(はな)一/丈(ぢやう)バかりになりけれハ、是ハいかなる/奇= 00099100¥P244 00099110L1病(き=びやう)ぞやと、さま+/療治(れうぢ)するに/験(げん)なし。/彼者(かのもの)/立(たち)よりなをさ 00099120L2んといふ。よろこんで頼ミしに、(十四ウ)彼者いふやう、此 00099130L3/鼻(はな)/本復(ほんふく)し給ハゞ/黄金(わうごん)千/枚(まい)給るべしと/約束(やくそく)して、又天/狗(ぐ)つゞ 00099140L4ミをうちければ、もとのごとくになりぬ。其時黄金千枚う 00099150L5け取て、/栄花(えいぐハ)にほこりける。今ハつゞミもいらずとてなげ 00099160L6ゝれば、/鼻(はな)高くなる方に物あたりしかバ、/彼(かの)ものゝはな二 00099170L7/丈(ぢやう)バかりになり、むかふのはしらに、きり+とまきつき 00099180L8て、なに程ひけどもはなれず。/皷(つゞミ)をなげしばちなれば、彼 00099190L9一/方(はう)をうて共なをらず。しかる処にとなりより/火事(くハじ)おこり 00099200L10て、はや/我家(わがいへ)にゝつきける。せけ共はなハはしらにまきつ 00099210L11きはなれず。/是非(ぜひ)なくはなをひつかきてにげけると(十五オ) 00099220L12なり。これより時の用にハはなさへかくと申伝し。 00099230¥N21¥J 00099240¥X 00099250L14廿一△かたゐなかの人、都へ上り/風呂(ふろ)へいりけるが、入やう 00099260L15をしらず。人にとハんもはづかしゝ、いかゞせんと/小風呂(こふろ) 00099270L16のほとりをうとつきしが、よくたち候にはや入給へといひ 00099280L17しに、さくろぶろなれば、入てミれハむかひに/板(いた)あり。上 00099290L18の戸をあけんとすれバあかず、心得たりと戸のさんをふま 00099300L19へ、小風/呂(ろ)の上へ上りし時、/湯女(ゆな)ども大きにわらひて見け 00099310M1るところにすべり/落(をち)に、まあふのけにをちけるが、ぬから 00099320M2ぬかほにていひけるハ、かやうなる入にくき/風呂(ふろ)へ入らん 00099330M3より、ねたがましとておきもあからず。(十五ウ) 00099340¥N22¥J 00099350¥X 00099360M5廿二△ある人のくせとして、よくねをびれきるものたづねし 00099370M6を見れバ。半/斤(ぎん)入のさたうをけを上を下へともてかへして。 00099380M7いな事じや、此の/中(なか)にをきし物がなしとてひしめきける。 00099390M8なにか入をきしといひけれバ、よぎとふとんとを入をきし 00099400M9と申ける。これハさたうおけなるが、/気(き)もちがふたるかと 00099410M10いへば。さたうおけをもちながら、いびきをかきけると也 00099420¥N23¥J 00099430¥X 00099440M12廿三△/貞徳(ていとく)、/長嘯子(ちやうしやうし)の方へ/粽(ちまき)を五/把(ハ)をくるとて、よミてつ 00099450M13かハしける哥、 00099460M14△△/ち(゜)かきや/ま(゜)△/ま(゜)しかきすま/い(゜)△/き(゜)ゝなか/ら(゜) 00099470M15△△/こ(゜)ととひもせ/ず(゜)(十六オ)/は(゜)るハすきぬ/る(゜) 00099480M16此哥くつかふりに、ちまき/こ(゜)ハまいらするといふことをよ 00099490M17みいれたり。その/返哥(へんか)に/長嘯子(ちやうしやうし)、 00099500M18△△/ち(゜)よふと/も(゜)△/ま(゜)たなをあか/て(゜)/き(゜)ゝ度/ハ(゜) 00099510M19△△/こ(゜)れやはつね/や(゜)△/は(゜)つほとゝき/す(゜) 00099520¥P245 00099530L1此哥もくつかふりをよめば、ちまきごハもてはやすとなり。 00099540L2いとをかしと人のかたりし。 00099550¥N24¥J 00099560¥X 00099570L4廿四△/富士(ふじ)の山ハ三/国(ごく)になき/名山(めいざん)なれバ、/代&(よゝ)の人よミをき 00099580L5し哥、つくりをきし/詩(し)かぞふるにいとまあらず。其中に/定= 00099590L6家(てい=か)/家隆(かりう)のよミしとかやいひ伝し/哥(うた)、まづ/家隆卿(かりうのきやう)、(十六ウ) 00099600L7△△中+に雲よりうへはいさしらす 00099610L8△△△ミゆるハかりもたかきやまかな 00099620L9/定家(ていか)の哥ハ、 00099630L10△△/余(よ)の山の高ね+をめくりきて 00099640L11△△△/富士(ふじ)のすそのにかゝるしら雲 00099650L12とかや。/明(ミん)の/宋(そう)/京濂(けいれん)が/富士山(ふじさん)を聞をよびてつくれる/詩(し)ハ、 00099660L13/新選集(しんせんしう)に二/首(しゆ)あり。其/詩(し)にいはく、 00099670L14△絶入層霄富士厳△△蟠根直圧三州間 00099680L15△六月雪花翻素毳△△何処深林覓白■ 00099690L16△△△又(十七オ) 00099700L18△紅雲起処是蓬瀛△△十二楼台白玉京 00099710L19△不知秦世童男女△△還有児孫跨鶴行 00099720¥N25¥J 00099730¥X 00099740M1廿五△/夢窓国師(むさうこくし)嵐山に世をのかれておハせしが、庵よりけふ 00099750M2りのたちけるに、尊氏/将軍(しやうぐん)/狩(かり)に御出有しついてに、/夢窓(むさう)の 00099760M3/庵(いほり)へ立よりてよめり。 00099770M4△△露の身をあらしの山にをきなから 00099780M5△△△世にありかほのけふり立かな 00099790M6/夢窓国師(むさうこくし)の返哥、 00099800M7△△世にありとおもハねはこそ露の身を 00099810M8△△△あらしの山のけふりとそなす(十七ウ) 00099820M9かくあそバしければ、/尊氏(たかうち)おもしろくおぼしめし、折&庵 00099830M10へ来り給ひしに、ある時/夢窓(むさう)にごり酒をまいりければ、/尊= 00099840M11氏(たか=うぢ)一しゆ、 00099850M12△△/隠居(いんきよ)してこゝろをすますものならは 00099860M13△△△にごりさけをハいかにのむらむ 00099870M14/夢窓(むさう)御返哥、 00099880M15△△隠居してのむへきものはにこりさけ 00099890M16△△△とても此よにすむ身てハなし 00099900¥N26¥J 00099910¥X 00099920M18廿六△ある人のかたりけるハ、/西国(さいこく)のかたハらにたこおほき 00099930M19所あり。山よせのはか原までたこ来りて人をくらふと語り 00099940¥P246 00099950L1(十八オ)ければ、其座にめいよのたこくらひありしがいひけ 00099960L2る。いかなる人くひのたこなり共、/柚酸(ゆす)をかけてミたしと 00099970L3いひけれバ、なにほどすけりといふとも、かのたこハくは 00099980L4れまじといへハ、/食(くい)てミせんといふ。/論(ろん)じて、かけにぞし 00099990L5ける。扨彼国へ下り、/柚酸(ゆす)をこしにひつ付、かのはか原に 00100000L6しのびゐて、/蛸(たこ)の来るを待かけしに、折ふし死人ありける 00100010L7に、いんだうの/長老(ちやうらう)/紫衣(しゑ)を/来((ママ))りけれバ、彼もの人くらいの 00100020L8たこなり、すハやくいて見せんとて、はしりかゝりて、長 00100030L9老へ/柚酸(ゆす)うちかけてあたまへほかとくらいつく。なにもの 00100040L10なるとのたまへバ、是ハ都一/番(ばん)のたこくひのなにがし(十八 00100050L11ウ)なり、のがすまじとてかぶりつく。/堂宿(たうしゆく)旦那これをミ 00100060L12て、けうがるやつかなとて、さん+にちやうちやくす。 00100070L13彼者おどろき手をすりて申やう、是ハミやこ一/番(はん)のたこく 00100080L14ひにて候が、此所にたこおほしとうけたまハる、/紫衣(しゑ)の色 00100090L15を見そんじて、すハやこれぞとくひつき候、御免候へ、あ 00100100L16る詩にいはく、 00100110L17△咄个入道手転多△切懸柚酸見如何 00100120L18△作州一味天然別△他禁戒比老釈迦 00100130L19此/詩(し)ハ天下/老和尚(らうをしやう)一/休(きう)のほんさくなり、かほどの上人さへ 00100140M1たこにハみだるゝ心なれハ、ゆるし給へや人+よとて、 00100150M2にげ(十九オ)て上りけるとそ。 00100160¥N27¥J 00100170¥X 00100180M4廿七△りくつもの有けるが、かいだうをよりごほう+とう 00100190M5りけるを、いかさまかハりたるらん、よびてミんとてよび 00100200M6けるに、此/牛房(ごばう)ハいつくのこぼうそ。/商人(あきんど)申やう、やハた 00100210M7ごほうと云。いや/淀(よど)そうなといへバ、なにとていつハり申 00100220M8さんといふ。彼りくつもの、はやいつハりあり、やハたへ 00100230M9ハこゝもとより五里あり、其方ハよりごほうといはぬかと 00100240M10てかハざりける。 00100250¥N28¥J 00100260¥X 00100270M12廿八△おなじ心なる人、しめやかに物語りして、世の中のは 00100280M13かなきものおほき中に、/石火(せきくハ)のひかりいなづまのかけな 00100290M14(十九ウ)とは、かけろふ、夏のせミよりハはかなし、あさか 00100300M15ほの露の間、水にふる雪、いつれかあたならぬ、さだめな 00100310M16きうき世なりと、とり+にいひけるが、是らよりもはか 00100320M17なきものか一つありといふ人あり。なになるらんといふに、 00100330M18/菅原(すかはら)のきミの御哥に、 00100340M19△△あさかほハ名にこそたてれゆふつゆに 00100350¥P247 00100360L1△△△さきそふはなの色もみえけれ 00100370L2との給ひし、をの+我等よりはかなきものやあるといへ 00100380L3ば、みな人此哥を/吟(ぎん)じて、まことにはかなき身なりとなミ 00100390L4だくミて立かへりしと也。(二十オ) 00100400¥N29¥J 00100410¥X 00100420L6廿九△ある人たはこをすけり。此人のいはく、たばこにハ十 00100430L7/損(そん)ありとて、十/首(しゆ)の哥をよミながら、ひたのミにのまれけ 00100440L8る。其哥にいはく、 00100450L9△一まちに/火事(ひこと)のゆくもたはこゆへ 00100460L10△△△わか身のうへとをしはかるへし 00100470L11△二くしたゝたはこのむさのおちやの/湯(ゆ)ハ 00100480L12△△△火をとりけしてぬるくなりけり 00100490L13△三+にたはこのはいをふきちらし 00100500L14△△△やけねとたゝミむさくなりけり 00100510L15△四しやひきやくいそくつかひに日を/暮(くら)し(二十ウ) 00100520L16△△△たはこゆへにそはなはつきける 00100530L17△五はつとハ天下にかくれなきものを 00100540L18△△△それをやふりてのむハくせもの 00100550L19△六さいの市にてすこしかふたはこ 00100560M1△△△ちりかつもりてやまほとのそん 00100570M2△七八ををきてうき世にすむものが 00100580M3△△△さのミたはこをのむハ見くるし 00100590M4△八+ときさむたはこにこかたなや 00100600M5△△△まくらゆるりのふちハそこねて 00100610M6△九せとしてたはこにすける人ことに(廿一オ) 00100620M7△△△われハ持病のなをりたといふ 00100630M8△十そんのありとハしりてのむからは 00100640M9△△△たはこにまさるなくさミハなし 00100650¥N30¥J 00100660¥X 00100670M11三十△むかし五山の名ある/僧(そう)、しのびて月見にゆかんと二人 00100680M12たくミしに、一人ハまづさきへ出て、/風景(ふうけい)よきかたに立よ 00100690M13り待給ふ。今一人ハ/酒肴(しゆこう)せをひて跡より来りたまひて、た 00100700M14ハふれていひし/狂句(きやうく)、 00100710M15△/重&&&&(かさぬれハをもきをぢう+をもし)△△/対句(ついく)△/待&&&&(まてバをそきをまてと+おそし) 00100720M16/名誉(めいよ)の一/対(つい)なり。/重(ぢう)の/字(じ)、をもしとよむときハ/仄(そく)なり。ぢう 00100730M17とこゑによめば/平(ひやう)なり。/待(まつ)の字、をそしとよめバ(廿一ウ)/平(ひやう) 00100740M18なり。まつとよむ時ハ/仄(そく)なり。かくのごとくなる/妙句(めうく)/即時(そくじ) 00100750M19に出ること、たゞ人にハあらしと人の仰られし。 00100760¥P248 00100770¥N31¥J 00100780¥X 00100790L2卅一△/広沢(ひろさハ)の月見、今の世にももてあそひしといへども、い 00100800L3にしへハことに人おほくあつまりけるとなり。ある時/沢(さハ)に 00100810L4うきくさしげりて、月/影(かげ)水にうつらず、人みなむなしくか 00100820L5へりしに、/宗祇(そうぎ)も月見に出られけるが、水の上へ/杖(つえ)をなげ 00100830L6て、うきくさのばつとのきし時、月の水にうつりしを見て、 00100840L7△△うきくさをかきわけ見れは水に月 00100850L8△△△こゝにありとはたれもしらまし(廿二オ) 00100860L9とよめりて、ふかくまんじ給ひて、此の哥をへぎに書つけ、 00100870L10いけのほとりにたてゝ、又一/首(しゆ)の哥をそへ置ける。 00100880L11△△此うたのこゝろハしらしをそらくは 00100890L12△△△ていか/家隆(かりう)もしやかもたるまも 00100900L13とよミてをかれしかば、/宗祇(そうぎ)のまんしんを、おかしくおぼ 00100910L14しめしけるか、其ほとりに、/児(ちご)のミやとてほこらあり、此 00100920L15ほこらより/童子(どうじ)一人出て、われらも哥にそへうたよまんと 00100930L16てよミけるとなり。 00100940L17△しやかたるまていか/家隆(かりう)もしらずせは 00100950L18△△△哥にはあらてうしのくそかな(廿二ウ) 00100960¥N32¥J 00100970¥X 00100980M1卅二△むかし/田舎(いなか)人はじめて都へ上りしが、めなれぬ事ども 00100990M2おほかりけるとおもしろく思ひて、まづ清水に参りける。 00101000M3/坂(さか)にまんぢうをうりけるを見、まんぢうをしらず、なにな 00101010M4るやらんと、まづ一つかい取、人に名をとハんもゐ中らし 00101020M5ゝと/案(あん)じわづらひける。こやすの/塔(とう)のほとりにて、しかと 00101030M6も見せず、これをなにぞといふに、ミやこ人ハまんぢうの 00101040M7名をとふにハあらじときもつかず、それはこやすの/塔(とう)とい 00101050M8ひける。/中(なか)にあんのあるをミて又とふ。中にくろきものあ 00101060M9り、これハなにぞととふ。/中(なか)なるは/地蔵(ぢざう)なりと申けれバ、 00101070M10ゐ中もの、扨も/面白(おもしろき)(廿三オ)名のあるものかなとて、くら 00101080M11ひけるが、こやすのとうのむまさ、中なる/地蔵(ぢざう)ハなをむま 00101090M12しと申けると也。 00101100¥N33¥J 00101110¥X 00101120M14卅三△/浮蔵主(うきぞうす)なる/僧(そう)のありけるが、/盆(ぼん)になれバ十一日二日よ 00101130M15りおどりけるが、十四日のあさハ、/諸旦那(しよだんな)へまいり、つと 00101140M16めをするさほうなれば、此/浮蔵主(うきぞうす)おどりあかして、すぐさ 00101150M17まにつとめに出しが、去方にてつとめ、経をよミ+ねふ 00101160M18り入給ふ。/旦那(だんな)をかしく思ひ、いかに+とおこしけれバ、 00101170M19まかせてをけろ、おやどハでんちうじやといひて、ひやう 00101180¥P249 00101190L1しをうたれしと也。 00101200¥N34¥J 00101210¥X 00101220L3卅四△むまれつきそゝうなる人有けるが、去方へ行(廿三ウ) 00101230L4とて、/途中(とちう)にて夕立雨ふりしに、しる人のかたへ立より、 00101240L5からかさをかられけるに、からかさのほとりに/箒(はゝき)のありし 00101250L6を取ちがへ、からかさと思ひてさしてゆかれしに、おなじ 00101260L7くそゝこしき人ありしが、此人としる人なれバ、さても/能(よき) 00101270L8所にて御めにかゝりたり、われらも其/傘(かさ)の下へ入てたまハ 00101280L9れといふ。やすき事なりとて、二人つれにて、/彼箒(かのはゝき)をから 00101290L10かさと心得、二三町も行ける。見る人/狂人(きやうじん)なりとわらひけ 00101300L11るもしらざりしに、一人いひ出す事ハ、此やうなる夕立に 00101310L12は、かささしてもぬるゝ事ミやれといへば、いや此かさ先 00101320L13程よりえもりがいたすと申されて、(廿四オ)がつてんゆか 00101330L14ず。むかふよりしる人来て、さてもそゝうなる/仁(しん)かな、そ 00101340L15れハはゝきなるか、からかさと思ハるゝか、そさうなとい 00101350L16ひし時、きもをつぶし、一しほりになりて、/箒(はゝき)をすてゝ、 00101360L17二人共に立わかれしと也。 00101370¥N35¥J 00101380¥X 00101390L19卅五△世中の/時勢詞(はやりことバ)をはいかいにしたるとて、百/韻(いん)人の見せ 00101400M1ける。其中におかしき/句(く)ありとてかたるをきけバ、 00101410M2△△おしるにはよござんせうのからミにて 00101420M3△△△あへものによきあのさまのうど 00101430¥N36¥J 00101440¥X 00101450M5卅六△さる/禅僧(ぜんそう)のかたりしハ、/即心是仏(そくしんぜぶつ)といふ/語(ご)を、/頌(じゆ)につ 00101460M6くりしを見侍るに、一の/句(く)ハ/即(そく)の/字(し)を分、二の句ハ、心 00101470M7(廿四ウ)の/字(じ)、三の/句(く)ハ是の字を分、四の句ハ仏の字を分し 00101480M8/頌(じゆ)なり。其頌日本の作にてハなしと仰られし。 00101490M9△有節非于竹△三星繞月宮 00101500M10△一人居日下△弗与衆人同 00101510¥N37¥J 00101520¥X 00101530M12卅七△/李太白(りたいはく)が/詩(し)に、 00101540M13△呉州如看月△千里幸相思 00101550M14此/詩(し)ハ/朝翰(てうかん)といふものが、/他州(たしう)へ行し時の/送行(さうあん)なり。/呉州(こしう) 00101560M15へ御下ありても月を御覧あらば、千/里(り)をへだつるとも、月 00101570M16ハおなし月なれば、/此方(こなた)の事を思ひ出されよ、此方にも月 00101580M17をながめんとの心なるべし。/杜(と)/子美(しミ)の/詩(し)にも、(廿五オ) 00101590M18△今夜武州月△閨中唯独看 00101600M19此/詩(し)も武州に/妻(め)を置て、たゞひとり此方のことを思ひ出し 00101610¥P250 00101620L1て、月をミるらん、我も/他州(たしう)にて月を見れ共、おもひ出す 00101630L2ほとにと、なげきし/詩(し)也。又此国の/名哥(めいか)に、 00101640L3△△月見ハとちきりていてしふるさとの 00101650L4△△△人もやこよひ袖ぬらすらむ 00101660L5とよめる心は、人もや袖ぬらすらんといひしにて、我袖の 00101670L6ぬれしハいハずしてしれり。/李(り)/杜(と)の/詩(し)の心によく似たり。 00101680L7/名人(めいじん)の心はよく/通(つう)ずるものなり。/悪口(わるくち)なる人ハ此/詩(し)を見て、 00101690L8すぐによめりなどいハんはむげの事也。(廿五ウ)つらゆきが 00101700L9/古今(こきん)の/序(じよ)ハ/山谷(さんこく)の/序(じよ)より以前なり、古今の序を見て、/山谷(さんこく) 00101710L10の/序(じよ)をかくべきや、名人の心ざしかなふ故に、/古今(こきん)の序と 00101720L11山谷の序ハ、/筆法(ひつほう)すこしもかハらぬなりと人の語りし。 00101730¥N38¥J 00101740¥X 00101750L13卅八△山寺に/独法師(ひとりぼうし)有けり。ある時きつね来ていひけるは、 00101760L14我此山に/住(すめ)るきつねなるが、つねに/飢(うゆ)、/御坊(ごばう)ハ此山にすミ 00101770L15給へども/飢(うへ)たまハず、いかなる故ぞやとゝふ。/法師(ほうし)いひけ 00101780L16るは、我ら此衣一くハんにて、町へ出れば食物おほしとい 00101790L17へば、其衣をわれらに給ハれといふ。なんぢか人に見つけ 00101800L18られぬじゆつををしへバ、衣をあたへんとい(廿六オ)ひけれ 00101810L19ば、やすき事とて、かくれミのをまいらせんとて、古きみ 00101820M1のをあたへければ、/法師(ほうし)よろこびて、すなハち衣をあたへ 00101830M2ける。/老狐(らうこ)よろこび衣をきて町へ出ければ、人これを見て、 00101840M3きつねが衣きたるハと口&にわらひて、こゝかしこへをひ 00101850M4まハし、つゐにころされける。/法師(ほうし)も彼ミのを/着(ちやく)してさる 00101860M5くらへ行、たから物をとらんとするを、人見つけてころし 00101870M6ゝとなり。きつねハ/法師(ほうし)をばかし、法師ハきつねをばかし、 00101880M7/共(とも)にころされし事、両人/畜(ちく)の/悪心(あくしん)なれば、天これを/罰(ばつ)し給 00101890M8へり。/孤志(こし)の/佞(ねい)と云/故事(こじ)也。 00101900¥N39¥J 00101910¥X 00101920M10卅九△/或(ある)人の仰られしハ、/開元通宝(かいげんつうほう)の/銭(ぜに)ハ/唐(たう)の/太宗(たいそう)の(廿六ウ) 00101930M11時の/銭(せに)なり、/年号(ねんがう)にハあらざる也、/元(もと)を/開(ひらく)といふ心なりと 00101940M12也。/玄宗皇帝(げんそうくハうてい)の/開元(かいげん)ハ/年号(ねんがう)、かの/銭(ぜに)ハ/欧(あう)/陽恂(やうしゆん)といふものが 00101950M13こもんにかきて、うらに/楊貴妃(やうきひ)が/爪(つめ)のあとをいつくるぞ、 00101960M14今日本へわたりてある銭なり、心をつけてミるべし、銭の 00101970M15うらにやうきひの爪あと有也、めづらしき/故事(こじ)なりと人の 00101980M16語りし也。/玉海(きよくかい)といふ書にあり。 00101990¥N40¥J 00102000¥X 00102010M18四十△/朝鮮人(ちやうせんしん)此国へ来りし時、みな人立出て/見物(けんぶつ)しけるが、 00102020M19扨もめづらしきしやうぞくどもや、こせう衆の/衣裳(いしやう)ハ一/様(やう) 00102030¥P251 00102040L1にあかしと申けれバ、/去(さる)人のいひけるは、こせう衆のあか 00102050L2きハいまさらおどろくべからず、たうごせうハ(廿七オ)あ 00102060L3かきものなりといひし。をかしき/秀句(しうく)なり。 00102070¥N41¥J 00102080¥X 00102090L5四十一△/貫之(つらゆき)のむすめのすミけるそのゝうちに、あうしゆくば 00102100L6いとてかくれなき梅の木有けるに、/内裡(たいり)にきこしめしをよ 00102110L7ハれ、めし上られけるに、彼女房/読(よめ)る、 00102120L8△△ちよくなれはいともかしこしうくひすの 00102130L9△△△やとハとゝハゝいかゝこたへむ 00102140L10とよみけれハ、此哥を大きに御/感(かん)ありて、梅の木をかへし 00102150L11給ふと也。/名誉(めいよ)なる哥なりとそ。 00102160¥N42¥J 00102170¥X 00102180L13四十二△/家隆(かりう)、/定家(ていか)の方へよミてつかハし給ふ哥、 00102190L14△△とにかくにわかきハなをもたのミあり(廿七ウ) 00102200L15△△△定めなき世に老の身そうき 00102210L16とよミてをくり給へハ、定家の返哥、 00102220L17△△とにかくに老はあまたのとしもへつ 00102230L18△△△定めなき世に若き身そうき 00102240¥N43¥J 00102250¥X 00102260L19四十三△いにしへはいかひのれんぐはやりし時、名人の/句(く)とて 00102270M1人のかたりしは、 00102280M2△雲雁過雲雁△△鹿々鳴明鹿 00102290M3△水魚達水魚△△鶉々睡暮鶉 00102300M4△咄自口辺出△△油因油断断 00102310M5△睡令目下垂△△火以火吹吹(廿八オ) 00102320M6此句とも/名誉(めいよ)なる/句(く)なり、てほんともなるべきと人の語り 00102330M7給ひて、此/狂句(きやうく)のまねをせば、此狂句のごとく成べし、/狂= 00102340M8人(きやう=じん)はしれば不狂人もはしるといへば、かるき口をまなびバ、 00102350M9かるき口ともなるまじやと語り給ひし。 00102360¥N44¥J 00102370¥X 00102380M11四十四△むかしもろこしのかたハらに、/塞翁(さいおう)とて/賢人(けんじん)ありける 00102390M12が、/馬(むま)をうしなひし事あり。/知音(ちいん)きたりていひけるハ、扨 00102400M13も馬をうしなへりと/聞(きゝ)し、/笑止(せうし)やといひけれバ、思ひのほ 00102410M14かによろこびゐける。人ふしぎに思ひしに、其後一両日へ 00102420M15て/彼馬(かのむま)かへりしが、まきの島へ行て、よき馬を二三疋とも 00102430M16なひてかへりけれハ、又其辺の人、扨&馬のかへるのミな 00102440M17(廿八ウ)らす、よき馬おほくともなひ来りよき事やといへハ、 00102450M18/塞翁(さいおう)なげきかなしむ。人又ふしんをなしゝに、ある時塞翁 00102460M19かの馬にのりて去方へ行とて、此馬くるひけれバ、/落馬(らくは)い 00102470¥P252 00102480L1たし、/腰(こし)ぬけになりたり。又あたりのもの落馬をめされせ 00102490L2うしやといへば、大きによろこびゐける。人又/奇異(きい)の思ひ 00102500L3をなしゝに、折ふし都にいくさありとて、ざい※に/人夫(にんふ) 00102510L4をさしに来りて、みな人なげきかなしミけるに、/塞翁(さいおう)落馬 00102520L5にて、こしぬけゝれば、人夫にあたらざりけると也。しか 00102530L6る故に/悪(あしき)事あれハ、又よき事あり、是を人/間(げん)/万事(ばんし)/塞翁馬(さいおうがむま)と 00102540L7いへり。此心にて/五山(こさん)のたれ(廿九オ)とやらんがなされし/章= 00102550L8句(しやう=く)に/名誉(めいよ)の句あり。 00102560L9△任他紅葉落△△塞馬月林間 00102570L10此心ハ/紅葉(もミぢ)ハ見事なれども、ちりつくさハそれもよし、又 00102580L11/林(はやし)の/葉(は)とも/落(おち)たらバ。月のさハりなくて一/段(たん)ましといへり、 00102590¥N45¥J 00102600¥X 00102610L13四十五△ある人/座頭(ざとう)をすきて、/毎夜(まいや)五人十人よびよせ、/長(なが)あそ 00102620L14びをしけるに、/下部(しもへ)ともはらをたて、なにとぞ座頭共にあ 00102630L15たりて、こぬやうにとたくミて、門の口によこづちをつり 00102640L16て、あたまをうたするやうにからくミをきしに、あんのご 00102650L17とく/座頭(ざとう)来て、あたまをしたゝかにうつ。/名誉(めいよ)/意地(いぢ)あしき 00102660L18ものなれば、又あとにくる座頭にかく(廿九ウ)といはず、/座= 00102670L19頭(ざ=とう)八人来て八人ながらものいはず、みなかしらのわれるほ 00102680M1どうちける。をのれ一人うちてハ、/口惜(くちおしき)と思ひける心いづ 00102690M2れもあり。さるほどに、れゐのながあそびしてかへる時、 00102700M3/下部(しもべ)共いひけるハ、扨も夜ふけて候、/座頭(ざとう)の/坊(ばう)なん時ぞと 00102710M4いへば、われら来りし時、八つがしら打しまひたり、はや 00102720M5/明(あけ)候ハんといひける。すねもの也とぞ。 00102730¥N46¥J 00102740¥X 00102750M7四十六△もろこしに/狙公(そこう)といへる人、/猿(さる)をおほくかハれしに、 00102760M8色&/芸(げい)をしへけるに、其時とちをくハする也。一日に七 00102770M9づゝくハせけるが、/朝(あさ)四つくハせて色&のきよくをゝしへ 00102780M10けれハ、みなさる共よろこびてならふ。/暮(くれ)にハ又(三十オ) 00102790M11三つくハせける。又朝三つくハせけれバ、さる共いかりて/曲(きよく) 00102800M12をならハざると也。/朝暮(てうぼ)七つなれバおなじことなるに、を 00102810M13ろかなるものぞ。世の人の/愚痴(ぐち)なるにたとへて/荘子(さうじ)がいひ 00102820M14しとなり。/朝(てう)三/暮(ぼ)四といふ/故事(こじ)なり。かゝる事/猿(さる)のミにあら 00102830M15ず、人の上におほき事也、つゝしむべしと、ある人仰られし。 00102840¥N47¥J 00102850¥X 00102860M17四十七△むかしもろこしに/何(か)/尚之(しやうし)といふものと、/顔(がん)/延之(えんし)といふ 00102870M18ものと中よく語りしが、此二人ハせいひきくて、/猿(さる)に其ま 00102880M19ゝなり。彼もの二人よりあひてハ、何尚之ハ/顔(がん)/延之(えんし)を見て、 00102890¥P253 00102900L1扨も其方ハ猿によく/似(にた)りとてわらふ。顔延之(三十ウ)は/何(か) 00102910L2/尚之(しやうし)を見てハ、さても其方ハよく/猿(さる)に/似(に)たりと、たがひに 00102920L3いひあひけるが、或時道を行とて人のとをりしに、二人つ 00102930L4れにてとひけるは、此二人が中にどれがさるに/似(に)たるとと 00102940L5へば、/何(か)/尚之(しやうし)をさして此人よく/猿(さる)に/似(にた)りといひて、ことの 00102950L6外わらひけるに、/顔(かん)/延之(えんし)よろこび、それ見給へとて、とも 00102960L7にわらひけるに、何尚之のいはく、顔延之のわらわれける 00102970L8が、扨あの人ハ何に似たるととへハ、猿にハ少も似ず、其 00102980L9まゝ猿なりと、/道(みち)/行(ゆく)人申けれハ、二人共にわらひて帰りけ 00102990L10ると也。/蒙求(もヲぎう)といふ/書(しよ)にみえたり。/万事(ばんじ)是におなじ。人の 00103000L11事をわらひぬ(卅一オ)れば、人又われをわらふ。つゝしむ 00103010L12べしと也。 00103020¥N48¥J 00103030¥X 00103040L14四十八△人の語りしハ、身にもをよバぬ事をねがへバ、かなら 00103050L15ず天/道(たう)これを/罰(ばつ)し給ふといひて、かたりしハ、むかしある 00103060L16人きハめてまづしかりしに、あまりにかなしくおもひて、 00103070L17/観音(くハんをん)ハ/福寿界(ふくじゆかい)とたのもしくして/通夜(つや)をしけるに、あさとく 00103080L18おきてかへるさに、/小判(こばん)とおぼしき物/土(つち)にうづもれて有け 00103090L19れバ、これ御りしやうとよろこんで、はしりかへりて、/大= 00103100M1黒棚(だい=こくだな)へあげをきて、あたりの人ゝをよびあつめ、まづ/酒(さけ)を 00103110M2ぞふるまひける。さて福を見てあやからむといへば、たな 00103120M3よりをろしていたゞかせける(卅一ウ)に、よく+ミれハし 00103130M4んちうの/鬢水(ぴんミづ)入のそこなり。みな人/興(けう)をさまし、扨もそこ 00103140M5つの人なりと、どつとわらひてかへりしと也。いかで神仏 00103150M6もえがたきたからをあたへ給ハんやと、いとをかしかりけ 00103160M7る。まづしき身に/酒直(さかて)まで/出(いたし)し事あさまし。 00103170¥N49¥J 00103180¥X 00103190M9四十九△さる人の語しハ、/古鼠(ふるねずミ)/薮(やぶ)の中にかゞミゐてなげきける 00103200M10は、世の中に生をうくるものおほき中に、われらほどかな 00103210M11しきものハあらじ、まづねこの/食物(くいもの)にそなハり、又人に見 00103220M12つけられてハころされ、一/生(しやう)ごそめきにげまハりて、しづ 00103230M13かなるまもなし、あらものうやと(卅二オ)申ければ、/蛙(かへる)きゝ 00103240M14て、御なけきハもつともなるが、われらもかハらぬ身なり、 00103250M15此身ハへびのゑじきにそなハり、草ふかき所にすめば、人 00103260M16にふミころされ、草なき所に出れバ、水にかつへ、一/生(しやう)か 00103270M17なしゝとて二/疋(ひき)共になミだをながし、いざや此身の/前生(ぜんじやう)を 00103280M18聞て、/後世(ごせ)をいのらんといへハ、尤と/同(どう)じけるが、ねずミ 00103290M19語りけるは、さる寺にていんぐハ経を聞しが、/鼠(ねずミ)の前生ハ 00103300¥P254 00103310L1/猫(ねこ)なり、ねずミを取とのミ思ふゆへ、ねずミと生れてねこ 00103320L2にくハるゝと聞しほどに、其方も/前生(せんしやう)/蛇(へび)にて、かへるをの 00103330L3まん+との一念にて、今又/蛙(かへる)とむまれて、へびにのまれ 00103340L4けるとおぼし(卅三ウ)めせといへば、かへるはきこゆる哥よ 00103350L5ミなれハ、もつともさやうにいんぐわのまハりくる事有べ 00103360L6し、去なから、こゝにふしんなる哥あり、きゝて見給へとて、 00103370L7△△いにしへの/淵(ふち)か馬にやはまるらん 00103380L8△△△今また馬かふちにはまれり 00103390L9と侍し、哥の馬か/淵(ふち)にはまるハことハり也、淵か馬にはま 00103400L10るといへる事なにともがつてん参らずといふに、ねずミし 00103410L11バらく/吟(きん)じて見れども、/淵(ふち)が馬にはまるとハがつてんゆか 00103420L12す、かやうなる事ハ、世をのがれつゝしづかに/暮(くら)してあん 00103430L13じバ、かつてんまいるべし、いざやとかく(卅三オ)よをいと 00103440L14ひ申さんと、ねずミハ一けんまなかの/板屋(いたや)をたてゝ世をの 00103450L15がれしが、/悪念(あくねん)ふかきものなれば、一月こらへず/俗(ぞく)になり 00103460L16しゆへ、今に/廿日(はつか)ねずミとて人なをにくむ也、かへるハ/道= 00103470L17心(だう=しん)ふかく、/麦(むぎ)わらのしべにていゑをつくり、あまになりて、 00103480L18一/生(しやう)を/過(すこ)せしとなり、いまに子ともまでも、あまがへるど 00103490L19のハいつ/死(しに)給ひたなどいひて、とふらハれけると語りし。 00103500¥N50¥J 00103510¥X 00103520M2五十△或人の語りしハ、あつまのやつこを見侍しが、をとに 00103530M3聞しに十ばいせり、其たけ六尺あまりのおとこ、大ひげを 00103540M4ねぢあげ、まづはだにハ/牛首布(うしくびぬの)のかた(卅四ウ)びらき、上に 00103550M5ハふとぬのゝしぶぞめに、七八百がのりをかい、馬のかわ 00103560M6のふと/帯(をび)しつかとしめ、くまの/皮(かハ)の/長(なか)ばをり、まつすぐな 00103570M7る大小十もんじにさしこなしたるけしき、身の/毛(け)もよだつ 00103580M8バかりに候ひしが、/去(さる)人に/名(な)を/問(とい)けれバ、/鑓(やり)/龕兵衛(がんひやうゑ)と語り 00103590M9ける。さてもめつらしき/名(な)ミやうじと、其/由来(ゆらい)をきけば、 00103600M10ある時がん兵衛/大名(だいミやう)とけんくわをして、/敵(てき)の大ぜいなるを 00103610M11打やぶり、あまつさへ/敵(てき)の/鑓(やり)をうばひ取しにより、/鑓(やり)と/名= 00103620M12字(ミやう=じ)つきしとなり、又/龕(がん)兵衛といふ名は、かゝるたけきやつ 00103630M13こなれば、はや/死(し)して/龕(がん)に/乗(のり)たる心とて、/龕(がん)(卅四オ)兵衛 00103640M14と名づけけると語りける。 00103650¥Y1百物語巻之下終 00103660¥Q 00103670M17△△△△△△△此一部之書工武藤氏写之 00103680M18于時萬治弐暦初夏上旬 00103690M19△△△△△△△△△△△△松長伊右衛門開板(卅四ウ) 00103700¥P255 00103710¥U噺本大系△第一巻 00103720¥T私可多咄 00103730¥G 00103740L16寛文十一年刊 00103750L17中川喜雲編 00103760L18大本五巻五冊 00103770L19国会図書館蔵 00103780¥Y/私可多咄(しかたはなし)△序 00103790M3/哥袋(うたふくろ)の/口(くち)ハあくすべしらす、/舞扇(まひあふぎ)の/骨(ほね)ハもつ事ならず。も 00103800M4だして/酒(さけ)の/席(むしろ)に/謙(へりくだり)ぬるを、/衆人(しうじん)ミな/酔(えゝ)り、/我(われ)/独(ひとり)すましが 00103810M5ほといはれて、/乞(いで)やむかしかたりもそせんと、/詞(ことば)のたねを 00103820M6まくに、/根(ね)からミなるも有、/根(ね)なしかづらも有、あるひハ 00103830M7/都(ミやこ)人とかこち、あるひハ/鄙(ひな)人とつくる。よミする事ハ/稀(まれ)に、 00103840M8おとしむる事ハ/繁(しげ)く、/金(こがね)を/黄蘗(わうへき)といふがことし。/凡(すべ)て/無実(むしつ) 00103850M9に/似(に)侍れハ、/誰(たれ)すら/耳(みゝ)のさハる事あり共、/偏(ひとへ)に/罪(つミ)ゆる(一オ) 00103860M10してよ。/末広(すゑひろ)に/傘(からかさ)を出さずしてハ、/興(けう)すくなきか故也。 00103870M11/酌(くミ)かハすさゝのたハふれに/竹冠(たけかふり)をして、/予(よ)かひがめる/犬(いぬ)の 00103880M12/字(じ)をくハへ、/友(とも)にもてあそハしめんとす。あやまつ事ハ、 00103890M13もとほらぬ/舌(した)かなす所と、をしてはかりたうびよ。されハ 00103900M14わかちめあざやかならねハ、しかたはなしになんしけるを、 00103910M15人の/需(もとめ)に/応(おう)じ、万治二つの己亥年九月、/昔(むかし)にあつむるもの 00103920M16しかなり。 00103930M17△△△△△△△△△△△△△△△△中川喜雲(一ウ) 00103940¥P256 00103950¥T1/私可多咄(しかたはなし)△巻之一 00103960¥N1¥J 00103970¥X 00103980L3一△むかし+、天下/泰平(たいへい)におさまり、今此/御代(ミよ)のことく 00103990L4/国土(こくど)ゆたかなりしハ、/百済国(はくさいこく)より/王仁(わうにん)といふ/相人(さうにん)来り、な 00104000L5には津の/哥(うた)よめるゆへなりと、かたれハ、一人のいハく、 00104010L6その/王仁(わうにん)ハつのくにゝ/借屋(しやくや)してゐたと見えた、 00104020L7△△なにハつにしやく屋此花/冬(ふゆ)こもり 00104030L8△△△今を春へとしやく屋此花 00104040¥G 00104050M1とつらね侍る也。さて/家主(いへぬし)ハたれそ。/答(こたへ)ていふ、家主ハ百 00104060M2人一首の中の/作者(さくしや)さうな、/中納言(ちうなこん)/家持(いへもち)といふか有。又とふ、 00104070M3王仁ハ/異国人(いこくじん)なるによりて、家を日本てかハせさりしか。 00104080M4/答(こたへ)て云、中&の事、そのとをりと聞えた、/古(ふる)き/哥(うた)に、 00104090M5△△土も木もわか大君の国なれハ 00104100M6△△△いつくか王仁の/宿(やと)とさだめん 00104110¥N2¥J 00104120¥X 00104130M8二△むかし+、/遠国(をんこく)に/外科(げくハ)有。さる者、あざとる薬を給 00104140M9ハれと云。/外科(げくハ)、心えたとハいへ共、此薬をいかゝせんと 00104150M10あんしわつらひ、かるたの/札(ふた)のそうたとやらんいふものを、 00104160M11くろ(二オ)やきにして、天下一あさとる薬とじまんしてや 00104170M12つた。 00104180¥N3¥J 00104190¥X 00104200M14三△むかし、さる者、/鹿(しゝ)をくハふかと思ふといへり。/友(とも)だ 00104210M15ち聞て、鹿なとハあひ火もむさとくハぬもの也、何ゆへさ 00104220M16やうにいふそといへハ、くハぬ物といふ事をしらすして、 00104230M17ひよくといふた、それならハくふまい、別の事てもない、 00104240M18それかしハ物いひあしく、はなしににべかないと、されハ 00104250M19しゝのにへと云ほとに、しゝをくふたらハ、物語にもにへ 00104260¥P257 00104270L1かあらふかと思ふて、いふた。 00104280¥N4¥J 00104290¥X 00104300L3四△/昔(むかし)、さるかたに/祝言(しうげん)事有けれハ、/知行所(ちきやうしよ)の/百姓(ひやくしやう)来り、 00104310L4だい所のあたりちろめきぬるに、/代官(たいくハん)/する者、百姓にむか 00104320L5つて、めてたき折からなれハ、なんちらも悦ひませい、是 00104330L6にあるほかいのこハゐをくふか、又折のまんちうをたへる 00104340L7か、何なり共のそめといへハ、百姓の云、まんちうハいや 00104350L8でござる、ほうかいの/食(めし)下されといふた。 00104360¥N5¥J 00104370¥X 00104380L10五△昔、ぶせうものゝ/貧乏人(びんぼうにん)、くらまのびしやもんをいの 00104390L11れハ、/富貴(ふうき)になさるゝと聞て、/初寅(はつとら)に参り、色&びしやも 00104400L12んを/頼(たの)ミ、/下(げ)(二ウ)(三オ挿画)かふにかならす/小判(こはん)百両ひ 00104410L13らハせて給ハれといのり、道すから小判かおちて有かと思 00104420L14ひ、かなたこなた見まハせハ、一文の/悪銭(あくせん)もなし。やとへ 00104430L15かへりて、ひしやもんをのゝしりけるやうハ、ひしやもん 00104440L16してくらふほとのものか、それてハあつてこそ。 00104450¥N6¥J 00104460¥X 00104470L18六△昔、ゐなか人はしめて都にのほり、さるかたにて/哥書(かしよ) 00104480L19の上に/獅子(しゝ)の/文鎮(ぶんちん)有けるを、何といふ物そと思ひ、さなか 00104490¥G 00104500M12らとひもえせす、なかめゐけるに、あひきやく、さて+ 00104510M13しほらしきぶんちんかな、から物ハとこやら見事ちやなと 00104520M14ゝほめぬるを、ゐなか人きゝて、ぶんちんといふものこそ 00104530M15見覚えたれ、よき事ならひけると心のうちうれしく、とか 00104540M16くしゝのつくハひたるハ、ふんちんといふものと心得て、 00104550M17/翌日(よくじつ)ぎをんに参り、しやたんふしおかミ、こゝかしこ見ま 00104560M18ハし、きせんくんしゆの中にて、たか+と、さても+ 00104570M19是なるハしほらしきふんちんかな、から物ハとこやら見事 00104580¥P258 00104590L1ちやと、ほめぬるを見たれハ、御まへなるしゝこまいぬに 00104600L2てあつた。(三ウ)(四オ挿画) 00104610¥N7¥J 00104620¥X 00104630L4七△昔、へんどに外科有。くすりつゝミのかきつけハ、わ 00104640L5か女ハうにかゝせたり。ある時、かさの薬を人につかハす 00104650L6とて、子もちにうハかきをせよといふ。子もち、いかゝか 00104660L7くへきそといへハ、それハたうかさの薬なり、はしめての 00104670L8所なれハ、ちとこハせ、しよしんにかくな、たうと/唐(から)とハ 00104680L9おなじ事也、からかさの薬とかけと云。あて所ハ殿か様か 00104690L10ととふたれハ、それも殿やさまなとてハうれしうない、何 00104700L11左衛門/和尚(をしやう)とかけといふて、すミくろにかゝせてやつた。 00104710¥N8¥J 00104720¥X 00104730L13八△昔、かたおかてらのかねいのくハんしんとて、門に物 00104740L14こふもの有。あるし出て、/奉加帳(はうがちやう)かあるか、かたおか寺な 00104750L15らハ、かねいでハあるまい、かめ井てあらふ、はうくハん 00104760L16とのゝミうちに、かめ井かたおかと云程に、といへハ、こ 00104770L17たへて、もんたうハむやく、さらハ、はうぐハん帳に付せ 00104780L18られといふた。 00104790¥N9¥J 00104800¥X 00104810M1九△昔、すま寺の/青葉(あをば)の/笛(ふえ)を見て、此寺ハすま寺ハかたこ 00104820M2とであらふ、馬寺かよからふといふもの有。いかにととへ 00104830M3ハ、/白馬(あをば)の/節会(せちゑ)といふハ馬の事じやといふた。さて又、す 00104840M4ま寺のすまの/字(じ)をしり(四ウ)たるかといふ。あるものこた 00104850M5へて、いかゝしらぬといへハ、それをしらぬかよ、/丸(まる)の字 00104860M6をかく。いかにといへハ、/烏丸(からすま)のすまの字といふた。 00104870¥N10¥J 00104880¥X 00104890M8十△昔、かしこうもなきもの有。くハいにんの女、ふなを 00104900¥G 00104910¥P259 00104920L1くへハ子かおるゝといふ事を人にならひて、/東大寺(とうたいじ)の/良弁(りやうべん) 00104930L2いとけなき時、/桑(くハ)の木のもとにて、わしのつかミし折ふし、 00104940L3木のねもとをほりて、いくらの/鮒(ふな)をかうづミ、やかて子か 00104950L4おるゝてあらふといふた。 00104960¥N11¥J 00104970¥X 00104980L6十一△昔、ゐなかものゝ聞書に、かきのさねのくろやきハ、 00104990L7まめの薬と有を、かたハらの友たち見とりて、大事の/秘方(ひはう) 00105000L8こそ見とり覚えたれとて、かきの/実(さね)五石ハかりくろやきに 00105010L9して、まめ/畠(はたけ)へ入しと也。 00105020¥N12¥J 00105030¥X 00105040L11十二△昔、/聖人(せいじん)/過不及(くハふぎう)のたがひなくとの給ひし。まことによ 00105050L12ろつの事ハ、すくるもわろし、たらぬもあしゝ。/猿(さる)ハかし 00105060L13こきものなれ共、毛か三すちたらすして、人にえならぬと、 00105070L14わらハへ共のいふ、これこそたらすしてあしきせうこなれ 00105080L15とかたる。一人のいはく、いかにも其とをり也、すくるも 00105090L16あしゝ、其猿の三すちたらぬ毛か、我等かかた(六オ)にあ 00105100L17まりて有、是こそすくるハあしきせうこ也といふ。最前の 00105110L18者、その三すちすぎし毛ハととふ。されハ其事、たハけ、 00105120L19うつけ、はなけ、此三すちの毛かすきたといふた。 00105130¥N13¥J 00105140¥X 00105150M2十三△昔、/馬道具(ばだうく)に、しほでと云物ハなせに有そ、しほかで 00105160M3もせぬにといふ者有。答て云、/鞍(くら)に/海(うミ)かあるによりて、し 00105170M4ほてといふ。 00105180¥N14¥J 00105190¥X 00105200M6十四△昔、/具足(くそく)のさしものゝうけつゝさすものを、がつたり 00105210M7といふ。なせにかつたりとハいふそととふ者有。答て云、 00105220M8侍ハ知行をほしかつたり、手からをしたがつたり、いのち 00105230M9をおしかつたり。 00105240¥N15¥J 00105250¥X 00105260M11十五△むかし、人&手かゝみを見るに、こうほう大しのきれ 00105270M12出したる所をしハらくなかめゐて、扨も+見事な/弘法(こうほう)て 00105280M13ないかと、ほめけれハ、そハなる者、/真言宗(しんごんしう)のくハこ/帳(ちやう)ハ、 00105290M14いかい物しやといふた。 00105300¥N16¥J 00105310¥X 00105320M16十六△昔、おさなきもの井戸へおちけれハ、たハけたる男共 00105330M17あつまりて、いかりにてあけふとする。今一人かいひける 00105340M18ハ、いかりよりハ馬おひをやとふてきてあけさせふといふ。 00105350M19それハいか成事そといへハ、馬お(六ウ)(七オ挿画)ひハい 00105360¥P260 00105370¥G 00105380L12つもこあけにゆくといふほとに、子あくる事かじやうずて 00105390L13あらふといふた。 00105400¥N17¥J 00105410¥X 00105420L15十七△むかし、へんとにそこつなるいしや有。りんがうに、 00105430L16としはたちハかりのかねつけたる男わつらひ、はちまきし 00105440L17て打ふし、かのいしやにはしめてあひ、/脉(ミやく)をとらせけるに、 00105450L18いしやひぢをいかつにして、脉をうかゝひすミて、病人に 00105460L19いふやうハ、此ほと月のさハりハあるか、とゝこほるかと、 00105470M1とふ。病人これをきゝて、それかしハおとこなり、男に月 00105480M2のさハりハめつらしいといふ。いしやなむ三ほうと思ひ、 00105490M3其方ハおはくろつけてゐらるゝほとに、おなこかと思ふた、 00105500M4おとこならハ男と、はしめからなのりたいものてハないか 00105510M5といふて、いとまこひなしににけた。 00105520¥N18¥J 00105530¥X 00105540M7十八△昔、/鴻(こう)といふ鳥をくへハ、子のなき女はらむといふ事 00105550M8を聞はつりたるいしや有。友たちのやせ/薮(やぶ)をミて、竹のね 00105560M9へ鴻をうづめ、子かてきようと、/真実(しんじつ)からいふた。古より 00105570M10薮医者といふハ此事なるへし。(七ウ)(八オ挿画) 00105580¥N19¥J 00105590¥X 00105600M12十九△昔、遠国のもの二人都にのほり、かふりのゑいはかり 00105610M13有をミて、一人のいはく、是ハ天人の/羽衣(はころも)てあらふといふ。 00105620M14今一人の者、それハ天ぐのはねてあらふといふ。両人せん 00105630M15さくしなから、その事となく、たいり見にゆかんとて、つ 00105640M16いぢのくるりをとをりぬるに、/参内(さんだい)の/公家衆(くげしゆ)、こしよりお 00105650M17りさせらるゝを見て、かのせんさくのゑい、おなし事なれ 00105660M18ハ、せひをたゝさんと、ひそかに供のものにとふやうハ、 00105670M19今のこしより出させられたハ何といふそと、とふ。供の者、 00105680¥P261 00105690L1わしのおとのとこたへたれハ、かの二人いふやうハ、天ぐ 00105700L2のはねてもはころもてもなかつた、わしのおじやといふた。 00105710¥N20¥J 00105720¥X 00105730L4二十△昔、くげの御うちに、きりといふ下女有。をのかもち 00105740L5いんとて、いハしをやきけるに、/中居(なかゐ)の女これをミて、わ 00105750L6かためかと思ひ、そのむらさきをはやうといへは、きり、 00105760L7をのかくふへきためなれは、返事をもせさりけるに、中居 00105770L8のをんな、げんじの/題号(たいがう)をけがして、そこなきりつんぼと 00105780L9いひたりけれは、(八ウ)きりこれをきゝて、わがむらさき 00105790L10とこたへし。 00105800¥N21¥J 00105810¥X 00105820L12廿一△昔、/藤原(ふぢハら)の/実方(さねかた)といふ人ハ、/殿上(でんしやう)にて/行成(かうせい)のかんふり 00105830L13を打おとせしとかにより、さすらへのかなしさ、そのたま 00105840L14しゐすゝめとなりて、二たひ/台飯(だいはん)所のいひをねかハれしと 00105850L15いへは、一人のいはく、そのいひをねかハれしすゝめハ、 00105860L16ゑふなてハなかりけるか、ふくしまといふ所のゑふなすし 00105870L17ハ、はらかミないひじや。 00105880¥N22¥J 00105890¥X 00105900L19廿二△むかし、何ものゝ子ともやらん、たかうち板をミて、 00105910M1一人のいふハ、是ほとな小判かあらハよからふといへハ、 00105920M2今一人のいふハ、ほんのこばんてなく共、せめておこし米 00105930M3てかんにんせう。 00105940¥N23¥J 00105950¥X 00105960M5廿三△むかし、大/学(がく)の/序(しよ)をわらハへのふくするをきゝて、さ 00105970M6るもの、あのものゝ本ハ、すゝりのすミの事をかきたる物 00105980M7か。いかにといふに、人にをしゆるゆへんのはう也とある。 00105990¥G 00106000¥P262 00106010¥N24¥J 00106020¥X 00106030L1廿四△むかし、三/体詩(ていし)のぜつくハ、いぬの事をかきたるもの 00106040L2か、たうけんとよミ出すほとにといふた。(九オ) 00106050¥N25¥J 00106060¥X 00106070L4廿五△昔、ではの/湯殿(ゆどの)より出たる者と、あふミの/甲賀(かうか)の者と、 00106080L5かんさきの舟にのり合ける事有。せんとう、ふなちんをと 00106090L6らふといへは、ゆとのゝ者いふやうハ、それかしハゆとの 00106100L7より出たれハ、せつちんの事ハしらす、是なるかうかの人 00106110L8にせんちんの義ハとへといふ。せんとうきゝて、其方ハや 00106120L9さしや、/秀句(しうく)らしき事を云、ぜひに不及、せつちんかなく 00106130L10ハ丸にゆるしてやるそ。 00106140¥N26¥J 00106150¥X 00106160L12廿六△昔、たかさこのぜうとうばハ、あその宮のかんぬしを 00106170L13頼ミ、ほうこうをかせかれたか、さと人をあひまつ所に、 00106180L14らうにん夫婦きたれりとある。それまてうはハくげかたに 00106190L15ゐられたやらん、是なるうはこそたうしよの人なれと有と 00106200L16いふた。 00106210¥N27¥J 00106220¥X 00106230L18廿七△むかし、いかなるものゝふも、さいこにハなミたの雨 00106240L19かふると見えた。さしものきよつねさへ、さいこにハなミ 00106250M1たの雨かふりて、あまたうふくをきて死なれたか、いかに 00106260M2といふに、ふねよりかつはとおちしほのとあるといふた 00106270M3(九ウ)(十オ挿画) 00106280¥N28¥J 00106290¥X 00106300M5廿八△昔、げんひんそうづのなを、はしめハ三ゑもんといふ 00106310M6か。三/輪(わ)に、さんゑもんに入てをせ共出すとある。其後又 00106320M7名をかへ市右衛門といふか。御ころもをいちゑ給ハり候へ 00106330M8と有ほとに。 00106340¥N29¥J 00106350¥X 00106360M10廿九△昔、大もつのうらにて、よしつねよりしつかへ、へん 00106370M11けいに文をもたせてつかハされしと見えた。/弁慶(へんけい)かこう上 00106380M12にも、わか君の御ぢやうにハとある。扨其文ハ/尊円流(そんゑんりう)のし 00106390M13ゆせきか。しつかゝことはに、かくそんゑいのいつハりな 00106400M14くハといふほとに。 00106410¥N30¥J 00106420¥X 00106430M16三十△昔、なまくさき出家と、山ふしと、うらやさんと、し 00106440M17ゆんれいと、のりこみの舟に/遊女(ゆうちよ)をよひ、しゆえんして、 00106450M18いさ、ゝらハめん+の身の上の事を、一きよくつゝ、か 00106460M19なてゝあそハんとて、まつ遊女、うたへや+うたかたの、 00106470¥P263 00106480L1あハれむかしのこひしさを、今もゆふちよのふなあそひ、 00106490L2世をわたる一ふしを、うたひていさやあそハんと、江口を 00106500L3うたふたり。次に山ふし、うち見にハ+おそろしけなれ 00106510L4と、なれてつほいハ山ふしと、大江山をうたふ。次にうら 00106520L5やさん、あべ(十ウ)のやすなりうらなつて、かんじやうに 00106530L6申やうと、せつしやう石をうたふた。次にしゆんれい、こ 00106540L7と+くしゆんれいのしんろに、ぬさをさゝけつゝと、し 00106550L8ゆんくハんをうたひし。次になまくさしゆつけ、ひまなく 00106560L9うをゝくふ時ハ、つミもむくひも後の世も、わすれはてゝ 00106570L10おもしろやと、うかひをうたひけれハ、座中より、此うた 00106580L11ひのもんく出家ににあハす、今一ふしといへは、むつかし 00106590L12の僧のけうけや+と、そとは小町をうたふ。此せん中の 00106600L13あそひを、よそのふねよりきゝてうたひかける。ふねこそ 00106610L14りてせはく共、のせさせ給へわたしもり、さりとてハのせ 00106620L15てたひ給へと、すミた川をうたふたれは、せんとうこれを 00106630L16聞て、舟をハいかておしむへき、とく+召れ候へ+と、 00106640L17かねひらをうたへハ、今一人のせんとう、ふねもこかれて 00106650L18出らん、舟人もこかれいつらんと、三井寺をうたふ。其後 00106660L19をの+こゑをそろへ、同し舟になれ衣と、ちくふしまを 00106670M1うたふたるハ、まことに/興(けう)有し也。(十一オ) 00106680¥N31¥J 00106690¥X 00106700M3卅一△むかし、ぐそくひつのかき付に、/前(まへ)とかきたるをミて、 00106710M4これハおしきばこか、/前(ぜん)とかきつけかあると、いふた。 00106720¥N32¥J 00106730¥X 00106740M6卅二△むかし、なましゐにものしりかほして、ある/墓(はか)所の/碑(ひ) 00106750M7の/銘(めい)見るものあり。その文に/長谷河(はせかハ)/石見(いハミ)/忠堅(たゝかた)と云有けれハ、 00106760M8/長谷(なかたに)の/河石(かハいし)見れハたゝかたしとよミたり。 00106770¥N33¥J 00106780¥X 00106790M10卅三△昔、/宇治(うぢ)にて/茶(ちや)の手はしめの日をえらふ折ふし、さる 00106800M11もの、それハうしの日かよい、こよミにうしの日ハつめと 00106810M12るによしとある。 00106820¥N34¥J 00106830¥X 00106840M14卅四△昔、つの国つゝミか/滝(たき)ハ、大つゝミじやといふ者有。 00106850M15又小つゝミしやといふもの有。いかゝととへハ、小つゝミ 00106860M16といふものこたへて、たきの水も/肩(かた)へかゝるほとに、小つ 00106870M17ゝミ也と云。又、大つゝミといふもの、いや、ひざへかゝ 00106880M18るほとにと云。さるもの聞て、我らハたいこかと思ふ。な 00106890M19せに。どんなあらそひになるほとに。 00106900¥P264 00106910¥G 00106920¥N35¥J 00106930¥X 00106940L13卅五△昔、遠国より/法橋(ほつきやう)のそむいしや、都にのほり、したし 00106950L14き友たちを頼ミ、まつちしや刀をもとめたいといふ。友た 00106960L15ち(十一ウ)(十二オ挿画)聞て、其方ハ/医官(いくハん)をのそむほとのも 00106970L16のか、ちしや刀なとゝかたことをいふものかといへハ、い 00106980L17しやのいはく、我等のやう成物しりのさす刀なる程に、ち 00106990L18しや刀といひてもくるしかるまいと、重てつくした。 00107000¥N36¥J 00107010¥X 00107020M1卅六△昔、/先例(せんれい)の/口宣(くせん)/年号(ねんかう)月日ハいつなとゝいへるをきゝて、 00107030M2さるもの、くせんとハ何の事にてかあらんと人にもとハす、 00107040M3わが心にふしんして、いかさま月日のせんさくか有ほとに、 00107050M4こよミに有へしと思ひ、くりかへし+こよミをミて、あ 00107060M5けくのはてに、こよみにも八せんハあるか、くせんの事ハ 00107070M6ないといふた。 00107080¥N37¥J 00107090¥X 00107100M8卅七△昔、ゐなかにての事なりしか、やさしきもの有て、/綸= 00107110M9旨(りん=し)あそハす紙を/宿紙(しゆくし)といふげな、あハれ此しゆくしのしさ 00107120M10いをきかまほしけれ共、都へのつてもなく、とふへきたよ 00107130M11りあらさるゆへ、同し村にいしや有、これにとふへしとて、 00107140M12御所にあるしゆくしの事うけ給ハりたきと、かきてつかハ 00107150M13したれハ、その返事に、しゆくしとハ御所にかぎらす、し 00107160M14ふかき(十二ウ)にても、よくうミたるをしゆくしといふ也 00107170M15とをしへた。 00107180¥N38¥J 00107190¥X 00107200M17卅八△昔、かたゐなかに、上&のきゝてをあつめて、/自見(じけん)に 00107210M18つれ+草をかうしやくするもの有。/■康(けいかう)も/山沢(さんたく)にあそひ 00107220M19て、/魚鳥(ぎよてう)を見れハ心たのしむといふだんをよむに、魚鳥の 00107230¥P265 00107240L1二つをれうけんしていはく、けいかうほとの者か、むさと 00107250L2したるうをとりハたのしむまし、さためてとりハつるの事 00107260L3なるへし、うをハふくたうてあらふといふた。 00107270¥N39¥J 00107280¥X 00107290L5卅九△むかし、いもほりばうすのかたへ、さる所より文来れ 00107300L6り。うハ書をまづ人によミてもらふに、様とあるか殿とあ 00107310L7るかととふ。よむもの、いや、/老(らう)とあるといへハ、中+ 00107320L8にくい事しや、らうとハきこえぬ、せめてあかりや共なふ 00107330L9てとのゝしる。 00107340¥N40¥J 00107350¥X 00107360L11四十△昔、もちにあつき入てにたるを、せんざいもちといふ 00107370L12ハいかゝととふもの有。こたへていはく、じんざいもちと 00107380L13いふ事也、十月朔日にいづもの大やしろへ、かくのことき 00107390L14のもち(十三オ)をそなふるとなり、されハ/神在(じんざい)もちとかく 00107400L15と、/神職(しんしよく)たる人の子のいとけなきか物語を、きゝし也、た 00107410L16しかにハしらす。 00107420¥N41¥J 00107430¥X 00107440L18四一△昔、ねぢもちにあつきの付たるを、しんこといふハい 00107450L19かゝととふ者有。こたへていはく、しんかうといふ也、其 00107460M1心ハ夜のふくるをしんかうといふ、されハあつきをあかと 00107470M2いへハ、あかつきたるもちなれハ、しんかうといふなるへ 00107480M3し。 00107490¥N42¥J 00107500¥X 00107510M5四二△昔、十/種香(しゆかう)の座にましハりたる者有。札をとりて、そ 00107520M6はなる人にとふやうハ、是ハ一をつゝけてもくるしからぬ 00107530M7かといへハ、中+其方の心したい、三枚なからなり共つ 00107540M8ゝけられよといふ。心得たるとて其者上座をして、我手ま 00107550M9へゝ火もとより/香炉(かうろ)かくるとそのまゝ、人&のまん中へ一 00107560M10のふた三枚なからなけ出し、次の人に二こふたといふた。 00107570¥N43¥J 00107580¥X 00107590M12四三△むかし、かぶきの子共をあつめ、/源氏(げんじ)酒しけるに、名 00107600M13をなにとやらんいひしかふきの子、さかつきうけもちて、 00107610M14をとめに(十三ウ)さゝんといふ事を、/緒留(をどめ)にさしませうと 00107620M15いふた。 00107630¥N44¥J 00107640¥X 00107650M17四四△昔、のり物かくおとこを六尺といふハ、いかなるゆへ 00107660M18そととふ者あり。こたへていはく、のり物のばうハ一丈二 00107670M19尺の物也、それを二人してかたくるにより、二つにわれハ 00107680¥P266 00107690L1六尺也。 00107700¥N45¥J 00107710¥X 00107720L3四五△昔、かたゐなかに外科有。わが女ばうにれうち本をよ 00107730L4ませて、薬をでうがふせり。ある時、かうやくをねるへし 00107740L5とて、こもちをたのミ、書物をよミてもらふ。なに+/唐蝋(たうらう) 00107750L6壱斤とよむ。おつときゝて、たうらうとハかまきりの事也 00107760L7といひて、す万のかまきりをころして、かうやくにいれた。 00107770¥N46¥J 00107780¥X 00107790L9四六△昔、口のはた/黄(き)なる男、なましゐにひらいかくもんし 00107800L10て、人をせゝりたかる者有。いつれも外科といふものハ、 00107810L11れうぢハかりに/精(せい)を入、学文ハなきものかと思ひ、ちとな 00107820L12ふるへしにて、いにしへより其方のやうなる/瘡瘍科(さうようくハ)の上手 00107830L13ハたれそと、こハしてとひけるに、外科こたへて、/東垣(とうゑん)、 00107840L14/丹渓(たんけい)、/薜己(せつき)なといふ(十四オ)人、それかしかことく名人な 00107850L15りといふ。男聞て、たんけいといふハ仏師かと思ひ、さて 00107860L16+たんけいハ一色に上手なれハ、よろつに名人と見えた、 00107870L17それハ第一仏つくる事か上手てあつたといふ。外科かたは 00107880L18らをかゝへて、扨こそなふりかへさんと思ひ、その事+、 00107890L19仏つくる事や外科はかりてハなかつた、火とほすものめつ 00107900M1らしくしいたされたるにより、すなハち其/器(うつハもの)をたんけい 00107910M2といふといへは、おとこ、あんどんもたんけいのさくいか 00107920M3と、しんしつからとふた。まことに人をなふりたてするに 00107930M4よりて、かへりて我かつながるゝ。 00107940¥N47¥J 00107950¥X 00107960M6四七△昔、つるのはしやうの物かたけて、井のもと+とい 00107970M7ひありくもの有。わかきおのこ共聞てよひよせ、ちとなふ 00107980M8るへしと思ひ、井のもとほりをまねきいふやう、れうそく 00107990M9一銭かゐのもとをそこへあてがへといふ。井のもとほり心 00108000M10得たるとて、庭へくわをひとつうちたて、つちをはねおこ 00108010M11し、これか(十四ウ)一銭か井のもと也と、ねたれなからな 00108020M12ふりかへした。 00108030¥N48¥J 00108040¥X 00108050M14四八△昔、/先祖(せんそ)の/年忌(ねんき)に/僧俗(そうぞく)よひあつめ、/斎(とき)の/調菜(てうさい)に、しる 00108060M15にもふ、にものにもふ、さしミにもふ、さかなにもふを出 00108070M16したれハ、俗の中よりいふやうハ、僧衆の御経をとらや 00108080M17+とよませらるゝゆへ、ふかたくさんなといふ。僧のい 00108090M18はく、いや、さやうてハない、わうしやうもふのもの也と 00108100M19いはれし。 00108110¥P267 00108120¥N49¥J 00108130¥X 00108140L2四九△昔、さるかたへ、いつそやかしたる/碁盤(ごばん)をかへし給ハ 00108150L3れとかきてやりけれハ、さきのもの大きにはらをたて、こ 00108160L4れハ何たるむしつをいひかくるそ、さらにおほえなしとい 00108170L5ふ。そのふミをせんさくして見たれは、かなにてごばんと 00108180L6かきたるを/小判(こばん)かへせとよミたゆへなり。 00108190¥N50¥J 00108200¥X 00108210L8五十△昔、ゐなかもの都の町をとをりけるに、/藤(ふぢ)屋、花屋と 00108220L9のうれんにかきて、ならひたる家有。此二けんののうれん 00108230L10をつく+とミて、此家主ハしなのゝ国あそう殿の内衆か 00108240L11(十五オ)、とうろく、けろくとのうれんにかきておるといふ。 00108250L12つれたちける者、とうろく、けろくとハいかにととへハ、 00108260L13/藤(ふち)ハとうのこゑ、花ハげのこゑとこたふ。さて屋の字を六 00108270L14とハいかにとゝへハ、大/徳寺(とくし)の/春屋(しゆんろく)のろくの字とこたへた。 00108280¥N51¥J 00108290¥X 00108300L16五一△昔、いの字と八の字ハおなし事かととふもの有。さる 00108310L17ものこたへて、字ハおなし事なれ共、ひまなる時にかきた 00108320L18るハ八とよミ、いそかしき時にかきたるハいとよむとをし 00108330L19ゆ。 00108340¥N52¥J 00108350¥X 00108360M2五二△昔、いなかもの都にのほり、おさなきものに文をかき 00108370M3てもらふ。其もんこんに、先年といふ事このむ。せんねん 00108380M4といふもじ、いかゝかくそととへハ、いなかものいふやう 00108390M5ハ、其方ハ京にゐなから、三条にあるせんくハんしのせん 00108400M6の字と、四条の下にあるけんねんじのねんの字さへしらぬ 00108410M7か、ふたつとり合て、せんねんとかゝしませといふた。 00108420¥N53¥J 00108430¥X 00108440M9五三△昔、/渡唐(とたう)の天神のゑをミて、さるもの、あのこしにさ 00108450M10け(十五ウ)させられた、きんちやくのやうな物ハ何そととふ。 00108460M11答ていはく、あれハ/聖一国師(せういちこくし)のむさうに見えさせられ、/無= 00108470M12準(ぶ=しゆん)よりの/印可(ゐんか)をいれさせられたるゐんかふくろといふ物し 00108480M13やといへハ、いや+それてハあるまい、あの天神ハたび 00108490M14をあそハしたほとに、たひ人のもつでうづふくろてあらふ、 00108500M15いかにとなれハ、さいふの天神といふほとに。 00108510¥N54¥J 00108520¥X 00108530M17五四△昔、はしめて茶のゆに行もの有。友たち聞て、茶のゆ 00108540M18にハ色+むつかしき/時宜(じぎ)あり、けいはくなからもいはねハ 00108550M19ならす、とかく上座と下座ハむつかしきほとに、何とそし 00108560¥P268 00108570L1て人&のまん中にゐるやうにせよとをしへたれは、心得た 00108580L2るとてならひ覚え、すきやへはいりぬる比、四はうを見あ 00108590L3ハせ、いろりのそはのまん中になをりけるに、/意地(いぢ)のわろ 00108600L4きあひきやく共にて、何ともいはすだまりけれハ、/亭主(ていしゆ)出 00108610L5て、中の+のごばうたちハなせにせいかひくいそと云た。 00108620L6(十六オ) 00108630¥N55¥J 00108640¥X 00108650L8五五△昔、へんけいかゆのこくひたるといふ事、いにしへよ 00108660L9り世にいひふれたり。しかるにいつの比にや有けん、ゐな 00108670L10か人都にのほり、茶の湯の道具なと出したる町をとをり、 00108680L11是ハ+へんけいかゆのこすくひてあらふといふを、何そ 00108690L12と見たれハ、いろりのそことりにてあつた。 00108700¥N56¥J 00108710¥X 00108720L14五六△昔、ひよくの鳥の物かたりするもの有。此鳥ハ二羽つ 00108730L15はさをならへて、そらをかけると見えたなとゝいへハ、其 00108740L16座にうそつきゐあハせていひけるハ、われらハその鳥をい 00108750L17つそやら見たかわすれた、又それに似たうをゝのとの国の 00108760L18海にて見た、一疋のうをのあたまへ今一疋のかしらをさし 00108770L19こミて、二疋ならひてありく、すなハち七月にもちゆるさ 00108780M1しさはの事しや、海にてあのさしさはの、ひらり+とあ 00108790M2りくを、ミぬ衆に見せたい事じや。 00108800¥N57¥J 00108810¥X 00108820M4五七△昔、いたら/貝(かい)ハ、海にある時ハいかやうにしてとるそ 00108830M5と(十六ウ)といひけれハ、うそつきこたへていふ、あのかひ 00108840M6じやくしほと、海にて取やすき物ハない、竹の/柄(え)の所をと 00108850M7らゆるといふた。 00108860¥N58¥J 00108870¥X 00108880M9五八△昔、老たる侍のいふハ、刀の/小尻(こじり)と/偽(いつハり)とハおなし事 00108890M10也と。それハいかなる心そととへハ、あとからはくるとこ 00108900M11たへし。 00108910¥N59¥J 00108920¥X 00108930M13五九△昔、物なれたる侍のいふハ、たびをする時ハ/錐(きり)を持た 00108940M14るかよしと也。気つかひなるとまりにてハ、めしあハせの 00108950M15戸に内より錐をもミこミて、ねるようじんのためなり。又 00108960M16ふたんのねまきハうらおもてなしに、両めんよしと也。/俄(にハか) 00108970M17の事にをき出る時、たとひうらをきてもくるしからぬため 00108980M18也。 00108990¥P269 00109000¥N60¥J 00109010¥X 00109020L1六十△むかし、/白衣(ひやくゑ)といふ時宜のことはゝいかゝととふもの 00109030L2有。老僧のこたへていへるハ、是ハ仏者より出たることは 00109040L3なり、法師の/衣服(いふく)ハ白きをもちひ、そのうへにすミそめ 00109050L4の衣をきる、是礼なり、されハ/無礼(ふれい)の時ハ上の/黒衣(こくゑ)をぬき 00109060L5て白衣になるゆへ、無礼といはんためびやくゑといふ、 00109070L6(十七オ)それをあまねく俗躰にも用るといはれし也。 00109080¥N61¥J 00109090¥X 00109100L8六一△むかし、大坂一/戦(せん)のきさミ、おさなき者共あつまり、 00109110L9此城ハいかやうにしてとらせらるゝそといふ。こたへて云、 00109120L10/運(うん)に/乗(ぜう)して/軍法(ぐんほう)にてとらせらるゝ、それくんほうハ/海底(かいてい)の 00109130L11うをゝ、つりはりにてとるはかりことゝ同し事なりといへ 00109140L12は、此しろほとの物に何のくんほうもうんもいらふそ、手 00109150L13つかミにしたかよいといふ。それハきものふとい事をいふ 00109160L14といへハ、其方のいひふんハ大坂のしろの事なるへし、我 00109170L15等かいふハ、このしろと云うをの事しやと、いひてわらハ 00109180L16せた。 00109190¥Y1巻之一終(十七ウ) 00109200¥T1/私可多咄(しかたはなし)△巻之二 00109210¥N1¥J 00109220¥X 00109230M3一△むかし+、天神の御なのりハ世にしる人まれなり。 00109240M4さうてんある事とやらんなれハ、たしかなる事ハしらね共、 00109250M5そはつらきゝうけし御ゑいかに、 00109260M6△△心たにまことの道にかなひなハ 00109270M7△△△いのらすとても神や守らん 00109280M8との給ハせたれハ、/真道(まことのミち)この両字を御名のりによミやう 00109290M9あるかと、をしはかるといへハ、さるもの、いや、さやう 00109300M10てハあるまし、天神の御なのりハ御といふ也、むさうのれ 00109310M11ん哥の/懐帋(くハいし)に、いつれも/御(をほん)とあるといふた。 00109320¥N2¥J 00109330¥X 00109340M13二△むかし+、きやうげんの番くミに、いぐゐと有を見 00109350M14て、これハ/中将棋(ちうしやうぎ)の事をきやうけんにするかといふ。いか 00109360M15にといへハ、中しやうぎに/獅子(しゝ)のゐくひといふ。 00109370¥N3¥J 00109380¥X 00109390M17三△昔、/誹諧(はいかい)/未練(ミれん)のもの、/席(せき)にて人の句に、子をうミしは 00109400M18らという句有しを聞て、此句ハはらミ句といふ(一オ)もの 00109410M19か、但ぬけからといふ躰かととひけれハ、作者のいふ、是 00109420¥P270 00109430¥G 00109440L12ハぬけからにてハなし、人からといふもの也と、こたへし 00109450L13ハ/興(けう)なりしに、また/連座(れんざ)より、つゐてよく/古哥(こか)を思ひ出て、 00109460L14/源氏(げんじ)うつせミに、 00109470L15△△うつせミの身をかへてける木のもとに 00109480L16△△△猶人からのなつかしき哉 00109490¥N4¥J 00109500¥X 00109510L18四△昔、/俊寛僧都(しゆんくハんそうづ)、たんはの/少将(せうしやう)なりつね、/平(へい)はんくわ 00109520L19ん入道やすより、三人きかいかしまになかされし時、たん 00109530M1はの少将一人ねむしろをもち、のこる二人ハねむしろなか 00109540M2りつるにより、一まいのむしろをよこにしき、をの+ね 00109550M3たるゆへ、今もむしろをよこにしきていくたりもねるを、 00109560M4少将にしくといふハ、此少将なりつねよりこのかた、いひ 00109570M5きたれる事也。然ハいつの比そや、糺のもりにて、ゑむし 00109580M6ろをよこにしきて、人&ねころひゐけるを見、同し友の中 00109590M7より、少将のよるのむしろと、八/景(けい)をやつしてたハふれけ 00109600M8れハ、ねてゐたる友の中(一ウ)(二オ挿画)よりそのまゝ、/平= 00109610M9砂(へい=さ)のらくねといひしハ、いミじかりつる也。 00109620¥N5¥J 00109630¥X 00109640M11五△昔、まつしきはらから有。そうりやうの家のうちに、 00109650M12そしを宿かして、毎月/鳥目(てうもく)百文つゝの/地子(ぢし)を、そしのかた 00109660M13より/惣領(そうりやう)につかハす也。此そし百文の地子をなしかね、し 00109670M14ハらくをこたりけれハ、惣領いかりて、くせもの也、/地頭(ちとう) 00109680M15へうつたへんなといひて、せつかんする。時に/庶子(そし)のいは 00109690M16く、/如何(いかん)/是(これ)/庶子(そし)/成敗(せいばい)と/語(こ)をかけけれハ、惣領、/庭前(ていせんの)/百地子(ひやくぢし) 00109700M17とこたへし。 00109710¥N6¥J 00109720¥X 00109730M19六△昔、しめじ/茸(たけ)をくひけれハ、/腹(はら)いたむといふ事を聞て、 00109740¥P271 00109750L1△△たゝたのめしめじかはらのむし薬 00109760L2△△△いしや世の中にあらんかきりハ 00109770¥N7¥J 00109780¥X 00109790L4七△昔、/竜(たつ)といふ物をつゐに見たる事なし、いかやうなる 00109800L5物にか有といへハ、/紀(き)の国わかのうらにハ有と見えた、古 00109810L6哥に、 00109820L7△△わかの浦にしほみちくれハかたほ/波(なミ) 00109830L8△△△/芦(あし)へをさして/竜(たつ)/鳴(なき)わたる 00109840¥N8¥J 00109850¥X 00109860L10八△昔、/東坡(とうば)一文字を上下に、かくのことくつらねられし、 00109870L11△△一孤猿叫梢聞一 00109880L12△△一山里放言語一(二ウ) 00109890L13△△一貧家類人亦一 00109900L14△△一送数年輪廻一 00109910¥N9¥J 00109920¥X 00109930L16九△昔、/東福寺(とうふくじ)の/虎関(こくハん)、一文字をかくならへられし、 00109940L17△△月五中岩閑居一一 00109950L18△△露九幽台孤身一一 00109960L19△△一聞叫嶺猿梢亦一 00109970M1△△一送数年是輪廻一 00109980¥N10¥J 00109990¥X 00110000M3十△昔、卅六文字の哥、△△△△△△△二/条院(てうのゐん)/讃岐(さぬき) 00110010M4△△ありそうミのなミまかきわけてかつくあまの 00110020M5△△△いきもつきあへすものをこそおもへ 00110030M6五もしを二文字あまし、七文あるうた、 00110040M7△△さもあらハあれくれ行春もくものうへに 00110050M8△△△ちることしらぬはなしにほはゝ△△△△/経信(つねのふ) 00110060M9ことはのたくミめつらしき哥、六/帖(でう)に、 00110070M10△△君によりよゝ+よゝとよゝよこと 00110080M11△△△ねをのミそなくよゝ+よこと 00110090M12おなじもじなき哥、/古今(こきん)に、 00110100M13△△よのうきめ見えぬ山路へいらんにハ 00110110M14△△△思ふひとこそほたしなりけれ(三オ) 00110120M15くつかふりのおり句の哥、是ハ/仁和(にんわ)の御門のあはせたきも 00110130M16のをめさせ給ひけるに、人&御心得給ハさりしに、ひろは 00110140M17たの/御息所(ミやすところ)と申ける御かたより、たき物参らせられける也。 00110150M18△△/あ(゜)ふさか/も(゜)/は(゜)てハゆきゝ/の(゜)/せ(゜)きもゐ/す(゜) 00110160M19△△△/た(゜)つねてとひ/こ(゜)/き(゜)ミハかへさ/し(゜) 00110170¥P272 00110180L1小野ゝ小町、人のもとへ/琴(こと)かりにつかハす/折句(おりく)の哥、 00110190L2△△/こ(゜)との葉も/と(゜)きはなるをハ/た(゜)のまなん 00110200L3△△△/ま(゜)つハ見よかし/へ(゜)てハちるやと 00110210¥N11¥J 00110220¥X 00110230L5十一△昔、さる侍のかたより、やことなき御もとへ/鯉(こい)をたて 00110240L6まつるとて、/近習(きんじう)へよミてつかハしける。 00110250L7△△折よくハあけさせ給へ二つもし 00110260L8△△△うしのつのもし奉るなり 00110270L9やことなき御前に/披露(ひろう)し侍るに、御かへしの哥を下さるゝ。 00110280L10△△二つもし魚の名にてハあらね共 00110290L11△△△ひまの折ふし牛の/角(つの)もじ 00110300¥N12¥J 00110310¥X 00110320L13十二△昔、秋まつりを見侍るに、百しやうとも長刀さして、 00110330L14(三ウ)(四オ挿画)/武士(ぶし)のまねをしけるをミて、 00110340L15△△/附子(ぶし)ににたさといもの子やつくりもの 00110350L16△△人ハ武士はしらハ/桧(ひのき)魚ハ/鯛(たい) 00110360L17△△△きぬハこうはい花ハみよしの△△△△△読人不知 00110370¥N13¥J 00110380¥X 00110390L19十三△昔、何とやらんいひし/牢人(らうにん)、江戸に年をへて/本領(ほんりやう)にも 00110400¥G 00110410M12とつきかねし、しゆつくハい、 00110420M13△△日の/出(で)いしや四つさるがくにひる出家 00110430M14△△△八つ町人に夕くれの武士 00110440M15とつふやきけるに、ひとしき牢人有しか、むさしあふミか 00110450M16けて頼むへきかたもやなかりけん、くそくばをりハ十徳と 00110460M17なし、/鉄炮(てつはう)の/も((ママ))玉をハ薬ふくろに仕かへ侍るか、/晩学(ばんがく)の心 00110470M18にや、またしる人まれに、世上の/崇敬(そうきやう)うすかりけれハ、右 00110480M19の返哥に、 00110490¥P273 00110500L1△△夕くれの武士せし時もくらしかね 00110510L2△△△日の出医者ても夜ハあけぬ也 00110520¥N14¥J 00110530¥X 00110540L4十四△昔、/盲人(まうしん)哥よミて/霊山(りやうぜん)の/長嘯(ちやうしやう)へ見せ侍り、まことに 00110550L5目くらへひにおちすとハわか事なりなとゝ/謙退(けんたい)して、/添削(てんさく) 00110560L6たのミけるとき、/狂哥(きやうか)、(四ウ) 00110570L7△△ふミしらハめくらもへひにおちつへし 00110580L8△△△しらねハやすき和哥の道かな 00110590¥N15¥J 00110600¥X 00110610L10十五△昔、/貞徳翁(ていとくおう)に、/予(よ)が父、石のわたといふ句をしてミせ 00110620L11けれは、此石のわたの事出所せんさく有しに、貞徳朝座の 00110630L12狂哥に、 00110640L13△△はらわたを持といへるハ虎とミて 00110650L14△△△いる矢のたちし石にやあるらん 00110660¥N16¥J 00110670¥X 00110680L16十六△むかし、/上(かミ)の句にうをの名五つ、下/の((ママ))とりの名六つい 00110690L17れてよめる。ていとく、 00110700L18△△はなもはもさそふなあたらふくあらし 00110710L19△△△にほひはかりハおしからすかし 00110720¥N17¥J 00110730¥X 00110740M2十七△昔、/公方(くはう)のはなしのもゝの物語に、木にてしたる/釜(かま)に 00110750M3て/湯(ゆ)をわかせしといふ事、おかしくつくりなしてはなしけ 00110760M4るよし。又、さる者物語しけるに、予か父きゝてたハふれ 00110770M5に云やう、古へより木の釜あれハこそとて、古哥をつゞり 00110780M6あハせし。 00110790M7△△行やらて山路くらしつほとゝきす 00110800M8△△△今一こゑのき釜ほしさに 00110810¥N18¥J 00110820¥X 00110830M10十八△昔、伏見の奉行、茶の湯の名人なりしに、予か父、茶 00110840M11(五オ)入をミせけれハ、/飛鳥川(あすかかハ)と名つけしたぐひ也と、い 00110850M12へるによりて、しやうそくなとしてもてはやしけるか、わ 00110860M13びものゝくちおしさハ、ほとなく/質屋(しちや)といふ所につかハし、 00110870M14よそのもてあそひものになせる。其後ふし見の奉行、いつ 00110880M15そやの茶入ハとたつねられしに、/愚父(くふ)、 00110890M16△△きのふといひけふとくらしてあすか川 00110900M17△△△なかれてはやき/質(しち)に置けり 00110910M18奉行かへし、 00110920M19△△世中ハ何かつねなるあすか川 00110930¥P274 00110940L1△△△きのふのしちそけふハ銭に成 00110950¥N19¥J 00110960¥X 00110970L3十九△昔、/老僧(らうそう)の/小扈従(ここせう)二人あり。老僧一人のこせうをかし 00110980L4つきて、あつき比なりけるに、扇にてあふかれけれハ、今 00110990L5一人のないかしろにせらるゝこせう、老僧をうらミてつふ 00111000L6やきける。 00111010L7△△あたにたに思ふかたにそなひきける 00111020L8△△△扇の風も人の心も 00111030¥G 00111040M1老僧かへし、 00111050M2△△ひとりにハちりをもつけしひとりにハ 00111060M3△△△あらき風にもあてしとそ思ふ(五ウ)(六オ挿画) 00111070¥N20¥J 00111080¥X 00111090M5二十△昔、む月に人のきそハじめして、花のすかたさかりな 00111100M6るに、予か父、いにしへの人がましき時をこひて、つぎ小 00111110M7袖ぬきて見、きてミ見れと、昔ににるへくもあらす。うち 00111120M8わらひて、あばら成やねの下に、日のたくるまて身つくろ 00111130M9ひし、こしかた思ひ出て、 00111140M10△△つぎやあらぬ春や昔のやれ小袖 00111150M11△△△予か身ひとつハもとの身にして 00111160¥N21¥J 00111170¥X 00111180M13廿一△昔、予/弱冠(じやくくハん)のころ、/愚父(ぐふ)とさがにまかりし事有。い 00111190M14にしへハこゝの/嵐(あらし)山の城主ハ、わか先祖のものなりしか、 00111200M15今ハ/城郭(じやうくハく)さへあとなく、石すへ井戸のかたちハかりのこ 00111210M16れり。猶/末孫(ばつそん)のおとろへる事ハ、霜にいためる木の葉のこ 00111220M17としと、老父もわひて、あらし山にたゝすミ、 00111230M18△△さむうなるハむべ山風のこすゑかな 00111240M19筆のつゐてに、/亡父(ばうふ)か句また書つく。鳥羽をとをりしとき、 00111250¥P275 00111260L1ほとゝきすを聞て、 00111270L2△△とんでなけ鳥羽て猶なけほとゝきす(六ウ) 00111280L3此句/玉海綿(きよくかいしう)に愚父か/仮名(けミやう)/実名(じつミやう)かきいり侍れ共、又こゝに 00111290L4あらハす。これらの事見ん人ハ、はらをかゝへてわらひの 00111300L5とめ所有ましけれと、とてもあさけらるゝついでに、予か 00111310L6句をもかきこむる事、まことにはぢしらす也。いさゝか/自= 00111320L7讃(し=さん)にハあらす、すへて此こゝろさすハ、他の人をおかしか 00111330L8らしめんためなれは、わらハるゝこそほいなれ、それかし 00111340L9口といひ出し句とも、 00111350L10△△△/予(よか)/師(し)/徳昌庵(とくしやうあん)/法眼(ほうげん)/慶雲(けいうん)と/能(のう)見にまかりし時、/番組(ばんくミ)わ 00111360L11△△△き能しらひけにて有し。/式(しき)三番の/翁(おきな)かへりのおり、 00111370L12△△△/発句(ほつく)せよといへるに、はしかゝりの扇板より/幕(まく)きハ 00111380L13△△△へいたるまてに、 00111390L14△△/長閑(のとか)にもしらひげとなるおきなかな 00111400L15△△△/水無(ミな)月の事なりしに、四条の河中に/床(とこ)をうつし、友 00111410L16△△△どちすゝミ、いさや/柳色(やなきいろ)なる水に/曲水(きよくすい)のえんをもと 00111420L17△△△め、/興(けう)をもよほさんとて、四五たん川かミ(七オ)よ 00111430L18△△△りさかつきをなかし、/床(とこ)のもとに来るうちに発句せ 00111440L19△△△んと、人&いひあへるに心せけハ、石にさへられて 00111450M1△△△をそくもあれなと思ふに、よとまぬなかれにしたか 00111460M2△△△ひて、いとゝはやけれハ、やるせなく覚え侍りて、 00111470M3△△さかつきに/汗(あせ)をもなかす/川辺(かハへ)かな 00111480M4△△△今一たひとて、又四五たん/水上(ミなかミ)より/盃(さかつき)をくたしける 00111490M5△△△に、 00111500M6△△ゆふすゝみくむや/三水(さんずい)に/酉(とり)のとき 00111510M7△△△文月十六日をくり火見にまかりし比、ひかしの山の 00111520M8△△△かしらに月代あかり、はやつりばりのやうに見えし 00111530M9△△△折から、人&ほつくをいちはやくといひあへれハ、 00111540M10△△△月のみな山をはなれぬうちに、 00111550M11△△火を見るハ月のさハりやによいが/嶽(だけ) 00111560M12△△△雪の夜の事なりしに、やんことなきおほんまへに侍 00111570M13△△△りける時、/画工(ぐハこう)まかりてひとしく有。おもき仰に 00111580M14△△△(七ウ)絵ひとつとの給ひけれハ、かしこまり、はや 00111590M15△△△筆とりぬるに、又、予に此絵をかきをハらぬうち、 00111600M16△△△はやく/讃(さん)せよとのたまハせ給ふに、雪つミたる舟の 00111610M17△△△かたちあらはれぬれハ、いまた筆をなけうたぬに、 00111620M18△△雪のふねハげに/雪舟(せつしう)のなごりかな 00111630M19△△△春の日のくるゝをもしらす、花ミて東山に侍り、よ 00111640¥P276 00111650L1△△△その花見のかへさの袖におとろき、我かたも/木陰(こかけ)を 00111660L2△△△立さりけるに、また山にてハかハかりくらからんと 00111670L3△△△ハおほへさるも、坂をくたりつれハ道すち見えわか 00111680L4△△△す、あとのさゝいなるわらハ、てうちんもてさきた 00111690L5△△△てハ、友の中より前句して、つぎに花の句といひあ 00111700L6△△△へれハ、 00111710L7△△あとなるものそさきになりける 00111720L8△△よミかへすことはの花の/廻文哥(くハいぶんか) 00111730L9△△△又ある時、友と道ゆきの折から、まへ句出し(八オ) 00111740L10△△△て、つけ句はやうといへるに、 00111750L11△△うしろを見する人は身にしむ 00111760L12△△をはら木を月のくれまて/売(うり)ありき 00111770L13△△△さる人の/前句(まへく)、/言下(こんか)につけ侍る。 00111780L14△△かミハすれともにくからぬ中 00111790L15△△うらめしきいとまのふミの筆のさき 00111800¥N22¥J 00111810¥X 00111820L17廿二△昔、よしなき事を長物語する者有。/異名(いミやう)をみこの弓と 00111830L18いふ。口きくハかりて、いる事ハないといふ心也。 00111840¥N23¥J 00111850¥X 00111860M1廿三△昔、/金(きん)/源(げん)三かうたに、 00111870M2△△もろこしのからくれなゐに/咲(さき)にけり 00111880M3△△△わか日のもとの大和なてしこ 00111890M4是/秀哥(しうか)なれハとて、/定家卿(ていかきやう)/新勅撰(しんちよくせん)えらハれけるとき、/集(しう) 00111900M5にいれらるへしとあり。されとも、わか日のもとのことハ 00111910M6/作者(さくしや)の人からににあハす、此日のもとゝなをして入らるへ 00111920M7きよし、さた有けるに、金源三、此国に生れてハなへてわ 00111930M8が(八ウ)君といひ、わか日のもとゝいはんこと、其身によ 00111940M9るへからす、一字なをされても集に入しかひなきとて、い 00111950M10らさりしと也。 00111960¥N24¥J 00111970¥X 00111980M12廿四△昔、とつと遠国の者、哥に/病(やまひ)あるといふ事を聞て、病 00111990M13のあるならハ/脉(ミやく)のない事ハあるまい、哥の脉ハいかやうな 00112000M14物そととふ。答て云、和哥に病といふ事ハあれ共、脉とい 00112010M15ふ物ハなしといひぬれハ、今一人その座に居合せたる者聞 00112020M16て、哥に脉こそあれ、/伝教(てんけう)大師のよめるに、あのくたらさ 00112030M17ミやくとあり、又/万葉集(まんえうしう)に、手にとるからにゆらく玉の/緒(を) 00112040M18とつらねられしハ、ミやくの事なりといへハ、をんこく者 00112050M19聞て、そなたハ哥のくすしとのかといふた。 00112060¥P277 00112070¥N25¥J 00112080¥X 00112090L2廿五△昔、さる人のもとに/新参(しんさん)の/扈従(こせう)あり。主人のいへるハ、 00112100L3あそこの/日本紀(にほんぎ)をとりてこいといはるゝ。こせうまかり立 00112110L4て、わり木を二本もちて来り、二本木とりて参りたるとい 00112120L5ひけれハ、そのこり木の事てハない、/表紙(へうし)のある日本(九オ) 00112130L6/紀(き)といはれけれハ、/扈従(こせう)、それこそがてんなるかほして、 00112140L7又まかり立、たいこのばちを両手に持出、/拍子(へうし)のある二本 00112150L8木といふた。 00112160¥N26¥J 00112170¥X 00112180L10廿六△昔、さる所へ/史記(しき)をかし給へといひ付て、つかハしけ 00112190L11れハ、物の見事なる板を、大男あまたにもたせて来りける 00112200L12ほとに、是ハ何事そといへハ、しきと仰られたるほとに、 00112210L13しきハ板の事なれハ、是をかりて参りたといふた。 00112220¥N27¥J 00112230¥X 00112240L15廿七△昔、わらハへ三人つれにて、/下鴨(しもかも)へ参り、みたらしだ 00112250L16んごを題にて、それ+の/趣向(しゆかふ)こそおかしけれ。 00112260L17△△すいしやうのじゆずとみたらしだんごかな△小△僧 00112270L18△△てつはうの玉と見たらしたんこかな△△△△武△士 00112280L19△△そろばんのつぶと見たらしたんこかな△△△商△人 00112290¥N28¥J 00112300¥X 00112310M2廿八△昔、もろこしより、/七曲(なゝわた)にまがりたる玉の、中ハとを 00112320M3りて左右にあなあきたる、ちいさきを奉り、是に/綱(つな)をとを 00112330M4して給ハらんといふめるに、中将なりける人、/蟻(あり)をとらへ 00112340M5(九ウ)こしに糸をつけ、あなたなるあなに/蜜(ミつ)をぬり、あり 00112350M6を入給へるに、ミつの香をかきて、あり糸/よ((ママ))くはへ、あな 00112360M7たの口に出にけれハ、糸つらぬきたり。さてその糸つらぬ 00112370M8きたる玉を、もうこしへつかハされしかハ、日本の人のち 00112380M9ゑかしこく、はかりかたしと也。いつミの国/蟻通(ありとをし)明神ハ、 00112390M10すなハちかの中将也。 00112400¥N29¥J 00112410¥X 00112420M12廿九△昔、/孟子(まうじ)の母ハ子をよくそたてられし人なり。/孟母(まうほ)三 00112430M13/遷(せん)といひて、孟子のいとけなき時、三たひすミ所をうつし 00112440M14かへ、/儒者(しゆしや)のほとりにゐて、つゐに/学問者(かくもんしや)になせる也。さ 00112450M15れハいまめかしき事なから、いとけなき子をそたつるにハ、 00112460M16よき道を見ならハせ、きゝふれさすへき事也。かならす人 00112470M17ハつねに有くせ、よしあしにつきてそのふるまひあるもの 00112480M18也。いつの比なりけん、庄屋と/商人(あきんと)に/碁(ご)をうたせて、出家 00112490M19と武士と/医者(いしや)と見物しけるか、思ハすしらす面&の事を云 00112500¥P278 00112510L1出せり。庄屋/碁(こ)をうち入、覚えすなから、とかく地をとら 00112520L2ふ、とかく地(十オ)をひろけうといふに、あひての商人、 00112530L3あまり目をせるまいそ+といふ。見物の三人のうち武士 00112540L4のいひけるハ、かつてかふとの緒をしめよ、はた色かわる 00112550L5ふなつたなとゝいへハ、医者、もはやぎばか薬てもかなハ 00112560L6ぬなとゝいふ。出家、しぬるか+なむあミたふつ+と 00112570L7いふた。 00112580L8△△うへてみよ花のそたゝぬ里もなし 00112590L9△△△心からこそ身ハいやしけれ 00112600L10おなし人間と生れたるほとに、/人品(にんひん)を引くらへて、さうお 00112610L11うのうち、よきにこゝろさしたきもの也。 00112620¥N30¥J 00112630¥X 00112640L13三十△昔、さんごじゆのをしめをさけ、何とそして是を人に 00112650L14ひけらかしたいと思ひ、さるものにあひ、是ほとな、ほう 00112660L15つきハあるまいかといふて、をしめを見する。見たるもの 00112670L16ゝいはく、それほとなほうつきハいかほともあるか、その 00112680L17やうにきすのたくさんなハない、きずかなうてもくるしか 00112690L18らすハ参らせうといふたれハ、かの者かほをあかめた。 00112700L19(十ウ) 00112710M1△△ひろき世に我のミよしと思ふこそ 00112720M2△△△井の中に有かハつ成けり△△△△△△△読人不知 00112730M3△△しる人にひけらかしてもよき物ハ 00112740M4△△△/軍場(いくさば)てとる大将のくび 00112750¥N31¥J 00112760¥X 00112770M6卅一△昔、/安徳(あんとく)天/皇(わう)の御/辞世(じせい)に、 00112780M7△△今そしるみもすそ川のなかれにハ 00112790M8△△△波の/底(そこ)にも都有とハ 00112800M9とのたまハせ給ふ。海のそこに都のあるかまことかととふ 00112810M10者あり。さし出ものこたへていふ、いかにも都のあるかま 00112820M11ことさうな、此京のことくはんしやうして、町屋つくりも 00112830M12あると見えた、時&やねのふき板にこけのついたか、風に 00112840M13ふかれてあかる、それ此世かいてハかまほこといふ。 00112850¥N32¥J 00112860¥X 00112870M15卅二△昔、日てり年に、あるむらの/農民(のうミん)共あつまり、雨こひ 00112880M16のたんかふしけるに、こさかしきものゝいふハ、のふやお 00112890M17どりなとハたひ+の事なれハ、めつらしからす、やまと 00112900M18哥ハ力もいれすしてあめつちをうこかし、目に見えぬ/鬼神(おにかミ) 00112910M19をもあハれと思ハせけり、されハいにしへも/能(のう)(十一オ)/因法= 00112920¥P279 00112930L1師(いんほつ=し)にあまこひのうた頼ミけれハ、 00112940L2△△天の河なハしろ水にせきくたせ 00112950L3△△△あまくたります神ならハ神 00112960L4といふ哥をよめるに、雨たちまちくたり、五こくしやうし 00112970L5ゆせしときく、その/吉例(きちれい)にまかせ、此たひも哥人をやとひ、 00112980L6哥よませて水神/氏神(うぢかミ)なとをいさめんといふ。しかる所に一 00112990L7人まかり出ていふやうハ、一だんしかるへし、さりなから 00113000L8哥人を頼ミ、又/竜神(りうしん)にそせうするのハ、人つてにてまハり 00113010L9とを也、少やとひちんハたかく共、雨をちきに頼む事ハな 00113020L10るまいか、/定家卿(ていかきやう)も雨をやとハれしやらん、/時雨(しくれ)のちんか 00113030L11ある。 00113040¥N33¥J 00113050¥X 00113060L13卅三△昔、こしをれ哥といふハふしきな事也、哥も落馬なと 00113070L14する事ありて、こしかおるゝかととふ。答ていはく、中& 00113080L15の事、哥も馬からおつれハこそ、/僧正遍照(そうしやうへんぜう)、 00113090L16△△名にめてゝおれるハかりそ/女郎花(をミなへし) 00113100L17△△△われおちにきと人に語るな 00113110¥N34¥J 00113120¥X 00113130L19卅四△昔、くれかたにさる寺にあそひけるに、/鴟(とび)のやとり 00113140¥G 00113150M12(十一ウ)(十二オ挿画)もとめんとかけるをミて、あるしの僧、 00113160M13△△/鴟(とひハ)/宿(しゆくす)/寺中樹(じちうのき)と有しを、 00113170M14△△/僧(そうハ)/敲(たゝく)/月下鐘(けつかのかね)とこたへし。 00113180¥N35¥J 00113190¥X 00113200M16卅五△昔、さる寺の虫ほしに、竹の絵有けれハ、見るもの、 00113210M17此竹の絵はしめて一見いたした、/東坡(とうば)にてやあらんといへ 00113220M18ハ、つれのもの、いかにもとうばうたかひ有まし、経文の 00113230M19心も一/見(けん)/蘇東坡(そとうば)とあるほとにといふた。 00113240¥P280 00113250¥N36¥J 00113260¥X 00113270L1卅六△昔、ある寺のむしはらひに、/印陀羅(ゐんだら)の絵かゝりて有。 00113280L2此/表具(へうぐ)の中へり、古き/印金(ゐんきん)にて有し。見物の者絵をほめて、 00113290L3又さて+印金も見事とほむる折から、年四十ハかりにて 00113300L4遠国ものと見えし男、かほにつりひけうハひけたしかにも 00113310L5ち、なか刀さしこなし、はかまかたきぬためつけきて、絵 00113320L6をなかめ、人&の印金ほむるを聞て、印金といふ人ハ、/唐= 00113330L7僧(たう=そう)か日本僧かととふた。にか+しけれハ、返事するもの 00113340L8なかりし。(十二ウ) 00113350L9△△見にきても印金をたにえしらさる 00113360L10△△△人か/印陀羅(ゐんだら)あとてわらハふ 00113370¥N37¥J 00113380¥X 00113390L12卅七△昔、さる寺の/入院(しゆゐん)に、/法眼(ほうげん)なる人とつれたちまかりけ 00113400L13るに、法眼立花なかめゐらるゝ折ふし、あるしの僧たハふ 00113410L14れに、 00113420L15△△/法眼(ほうげん)の春の花と有しかハ、 00113430L16△△/入院(しゆゐん)の秋のもミちとこたへし。 00113440¥N38¥J 00113450¥X 00113460L18卅八△昔、/済家(さいか)の僧にあひ、名ハ何ととひけれハ、三/清(せい)とこ 00113470L19たへぬるに、一/派(は)の僧今一人ありあハせて、 00113480M1△△/自(おのつから)/是(これ)三/清(せい)/第(たい)一/(の)/名(な)とたハふれけるに、 00113490M2△△/済家(さいか)/僧裡(そうのうら)/独(ひとり)/分明(ふんミやう)とこたへし。 00113500¥N39¥J 00113510¥X 00113520M4卅九△昔、秋の夜ともなひかたらひゐけるに、/鴈(かり)のこゑかと 00113530M5おほしく、空に聞えけれハ、それかあらぬかといひあへる 00113540M6に、うたかふ事なく/白鴈(はくがん)なるへしとたハふれて、古き詩を 00113550M7取あハせし。 00113560M8△△/白眼(はくかんにして)/看(ミる)/他(たの)/世上人(せじやうのひと) 00113570¥N40¥J 00113580¥X 00113590M10四十△昔、/兼好法師(けんこうほうし)、小/鷹(たか)によき/犬(いぬ)ハ、大鷹につかひぬれハ 00113600M11小鷹にわろくなる、大につき小をすつることハり(十三オ)を 00113610M12ろかなる人といふとも、かしこき犬の心にをとらんやと、 00113620M13かけるたんこそおもしろけれ。さる所に、/矮狗(べいか)を/飼(かふ)て置、 00113630M14その名を/白妙(しろたへ)とつけたり。なつきにけらし白妙の哥の句に 00113640M15て、よく人になつきたるといふ心にてつけたりと見ゆ。べ 00113650M16いか、をのか名をよく覚えて、白妙とよへハいつくまても 00113660M17尾をふりて来るに、さる者此しさいよくきゝて、さて+ 00113670M18おもしろい事やとかんじ、其後矮狗をよふとて、しろたへ 00113680M19をわすれて、うろたへ+とよふ。へいかハよく聞しりて、 00113690¥P281 00113700L1わか事にあらされハ、少もかハるけしきなく、うこきもせ 00113710L2す、尾もふらされハ、かのうろたへとよふ人、へいかにむ 00113720L3かつて、あさましや、まことハいぬしや、うたのこゝろを 00113730L4はやわすれたかといふたハ、いぬよりはるかにをとれり。 00113740¥N41¥J 00113750¥X 00113760L6四一△昔、かたゐなかの出家、/海茸(うミたけ)くふを、たんな見付、そ 00113770L7れハ海茸にてハなきか、魚類にて、をの+なとのくひ物 00113780L8にて(十三ウ)ハあらすといへハ、出家あはてゝ、かぶらほ 00113790L9ねかと思ふた。 00113800¥N42¥J 00113810¥X 00113820L11四二△昔、ある所のくりに、たまごの有をたんなミつけ、/亭= 00113830L12坊(てい=ほう)に、あの玉子ハ御寺にハめつらしいといへハ、坊主聞て、 00113840L13あれハかうはこにせうと思ひ、もとめましたといふた。 00113850¥N43¥J 00113860¥X 00113870L15四三△昔、/泉涌寺(せんゆじ)へ行て、くるまをからふといふ者有。僧出 00113880L16て、当寺に車かすとハいかゝしたる事そといへハ、ない 00113890L17+泉涌寺にハ/舎利記(しやりき)かあると、うけ給ハるほとにといふ 00113900L18た。 00113910¥N44¥J 00113920¥X 00113930M1四四△昔、/業平(なりひら)ハ茶をよくのまれたるやらん、むかし男と云 00113940M2むかしハ茶の/銘(めい)なるへしといふ者有。ひとしき友たち聞て、 00113950M3其事、茶うけにハまめをくハれたるやらん、まめおとこ共 00113960M4いふ。 00113970¥N45¥J 00113980¥X 00113990M6四五△昔、かしこうもなきものゝいふハ、帯ハ国&によりて 00114000M7かハると見えた、まつ/公家衆(くげしゆ)ハ/石(いし)の帯あそハすやらん、石 00114010M8帯といふ、又もろこしにハ雲なとも帯にするやらん、/白楽= 00114020M9天(はくらく=てん)か/詩(し)に、/白雲(はくうん)帯ににて山のこしをめくると有、(十四オ) 00114030M10又かしまのあたりにハちや入を帯にするか、ひたちおひと 00114040M11いふ茶入有と云。答て云、まことに所により、かハると見 00114050M12えた、海のものハしほを帯にするか、おびしほと云/貝(かい)か有 00114060M13ほとに。 00114070¥N46¥J 00114080¥X 00114090M15四六△昔、/小野小町(をのゝこまち)ハ哥人にて、しやれかうへとなりてさへ、 00114100M16どくろにすゝきはえ出て、秋風のふくに付てもあなめ+ 00114110M17といふ哥よミしとかたれハ、さるものゝきて、名人ハ皆そ 00114120M18のとをりなり、/能筆(のうひつ)なとも死してのちもまた、ものかくと 00114130M19見えた、/道風(たうふう)しやれかうべの/手跡(しゆせき)といふかあるほとにとい 00114140¥P282 00114150L1ふた。まことに佐理行成ハいひまかふ人多し。 00114160¥N47¥J 00114170¥X 00114180L3四七△昔、/蝿(はい)と/蚊(か)とあつまりて/問答(もんだう)有。蚊かいはく、其方の 00114190L4名をなせにはいといふそ。蝿かいはく、貴人の御前をもは 00114200L5いまハるによりてはいといふ、扨其方の名ハなせに蚊とい 00114210L6ふそ。蚊のいはく、夏いつるによりて字のこゑをもちひて 00114220L7かといふ。はいの云、われらハはいかいの哥をもつ(十四ウ) 00114230L8らぬるゆへ、又そのよせいをもつてはいともいふ。蚊の 00114240L9云、われらハ哥道をすくゆへ、そのよせいをもちてかとも 00114250L10いふ。はいの云、われらハ牛蝿といひて、さしつくほとり 00114260L11こんなけんそくかある。かのいはく、我らハばうふりむし 00114270L12といひて、ばうつかひのめいじんを一るいにもつた。はい 00114280L13のいはく、神前にハはいてん有。かのいはく、かぐらだう 00114290L14あり。はいのいはく、われらハ古文の/僧蒼蝿(そうさうやう)の/賦(ふ)に/鴎陽公(をうやうごう) 00114300L15のかゝれた。蚊のいはく、われらも又無蚊虻之利觜とか 00114310L16ゝれた。蝿のいはく、われらハ/驥(き)といふ馬にのりて一日に 00114320L17千里行たる事か有。蚊の云、我等ハさい+血くさい事に 00114330L18/に((ママ))あふた。はいのいはく、むやくの論をするうちに、くも 00114340L19か出さうてきつかひな、いさうちへはいらふ。蚊のいはく、 00114350M1日本一のふんへつすミかにかへらふ。 00114360¥N48¥J 00114370¥X 00114380M3四八△昔、かたことをいふても、口のへらぬもの有。武者一 00114390M4騎と(十五オ)いふ事を一きんといふ。これを友たち聞て、 00114400M5きんとはねぬかよしとをしゆれハ、いやはねてもくるしか 00114410M6るまし、馬にのるものなれハ時&はねいでハ。 00114420¥N49¥J 00114430¥X 00114440M8四九△昔、一文字もえしらぬ男、ものしりかほしたかる者有。 00114450M9さる所に馬の/絵讃(ゑさん)のかけ物かけたるをミて、讃の所をつく 00114460M10+となかめ、かけ奉る御/宝前(ほうぜん)とよむ。そはなる者、それ 00114470M11より字数か多さうなといへハ、/諸願(しよくハん)/成就(しやうしゆ)/皆令(かいりやう)/満足(まんそく)とよ 00114480M12ふた。 00114490¥N50¥J 00114500¥X 00114510M14五十△昔、/在(ざい)/江戸(えと)し侍る比、さるおほんかたの/具足(ぐそく)のもちい 00114520M15ハゐにまかりけるに、なんぢかちゑをためしの具足也、はや 00114530M16く狂哥なくてハ/餅(もち)たうへる事かなハし、なとゝおとされて、 00114540M17△△君か代のひさしかるへきためしには 00114550M18△△△かねてそうれしおくそくの餅 00114560¥Y1巻之二終(十五ウ) 00114570¥P283 00114580¥T1/私可多咄(しかたはなし)△巻之三 00114590¥N1¥J 00114600¥X 00114610L3一△むかし+、ぶんざいに過てせんしやうもの有。/親類(しんるい) 00114620L4いさめて、せんせうをやめさせ、ぶんげんよりへりくたら 00114630L5しけれハ、せんせうもの、にハかにおごりをとめられ、気 00114640L6をわつらひ、/医者(いしや)をたのミ薬をのミぬるに、その薬のつゝ 00114650L7ミかみのかきつけを見て、さて+、此いしやハそれかし 00114660L8か病をよく見られた、千少つねのことくと有とよミて、又 00114670¥G 00114680M1せんしやうしたれば、一ふくてげんを見せた。 00114690¥N2¥J 00114700¥X 00114710M3二△むかし+、山てらの大ちごと小ちごとよりあひて、 00114720M4大ちこのいはく、/菜飯(さいはん)の/湯(ゆ)ほとうまい物ハないと、いはれ 00114730M5けれハ、小ちこきゝて、ゆよりハのこがうまいといはれた。 00114740¥N3¥J 00114750¥X 00114760M7三△昔、しちもつをとるもの有。ぬす人にせかねのうつハ 00114770M8ものをこしらへ、此/質屋(しちや)にゆき、多くの銭をかりてかへり 00114780M9けり。あとにて/器(うつハもの)をよく+ミれハにせかね也。かした 00114790M10る銭と十分(一オ)か一にも及ハす。いかゝせんとあんしけ 00114800M11るに、あるしたくミ出し、辻&に札を立たり。其札にいは 00114810M12く、きのふの夜わか家にがうだう入、方&よりあつかり置 00114820M13たる質物、のこらすとられたり、もし、そのぬし+いつ 00114830M14かたにてもめん+のしち物に見あたらるゝならハ、こな 00114840M15たへしらせ給ハれと、いつハりに札を立たり。しかる所に、 00114850M16かのにせかねの器しちにをきたる者、わか質物もがうだう 00114860M17にとられぬるものよとよろこひ、質物をうけんといひ、な 00114870M18を+銭をとらんと思ひ、そのまゝしち屋に行、此ころわ 00114880M19れらの質物に置し金のうつハものうけんと、元利の銭とゝ 00114890¥P284 00114900L1のへて、しち屋をねたらんとしたり。しちやのあるし、此 00114910L2はかりことにハかりに立たる札なれは、うれしく思ひ、や 00114920L3かてしち物に取たるにせかねのうつハものを取出してもと 00114930L4し、かしたる銭、元利ともに取かへしけると也。まことに 00114940L5よきはかりことなり。(一ウ)(二オ挿画) 00114950¥N4¥J 00114960¥X 00114970L7四△昔、老人のいへるハ、/化(ばけ)物といふハ人&の心より出て、 00114980L8心をばかさるゝもの也、たぬききつねなとのかたちをかゆ 00114990L9るハ、へんけの理そなハりたる物と思ひなハ、などやはか 00115000L10さるへき、をそれおのゝく心にはけ物有、四/季(き)に/草木(くさき)のそ 00115010L11め出すもおなし事也、さのミふしきと思ハねハ、草木には 00115020L12かさるゝものハなし、とかく目なれぬ事もあまりふしきに 00115030L13思ふへからす、其理こそあるらめと、水の/氷(こほり)になるたくひ 00115040L14なるへしと思ひさたむへし。いつの事にやらん有し、さる 00115050L15かたのひろまの天/井(じやう)の板に、人のさかさまに下からふミた 00115060L16る/足形(あしかた)のとろあまた所に有。あるし此あしかたをしかも元 00115070L17日に見付、何のふしきもなさす、天井かよこれたり、足代 00115080L18してぬくいつへしと、内の者にいひつけ、少もあしかたを 00115090L19あやしまれす有けるに、見るほとの人きくほとの人これを 00115100M1あやしミ、天井板に(二ウ)さかさまに足あとあるハふしき 00115110M2なる事也、うらかたなとゝいひのゝめきぬれ共、あるしハ 00115120M3少もさハかすして、よく/吟味(きんミ)あれハ、/旧冬(きうとう)のすゝはきに、 00115130M4たゝミをつミかさねて、其上にて/僕(ぼく)共の/杉立(すきだち)したる足のう 00115140M5ら、天しやうへとゝき、どろのつきたるにてありしなり。 00115150M6めつらしき事も、あまりに物をふしきに思ひ、気にかくる 00115160M7ハ損なり。 00115170¥N5¥J 00115180¥X 00115190M9五△昔、元日の/朝(あした)、さる所の庭かまとに、夜の間に/松茸(まつたけ)何 00115200M10本もはへたり。あるしこれをミて少も気にかけす、其上い 00115210M11ふやうハ、かまとに松たけのはゆるハめつらしからす、松 00115220M12たけにかまとかはへたらハふしきにも思ふへきかといひけ 00115230M13れハ、又二日の朝、松たけあまたはへたるうへに釜をミせ 00115240M14たり。あるしこれをミていふやう、はしめからかくのこと 00115250M15くならハ少ハふしきなるへし、人に気をつけられて/釜(かま)を見 00115260M16するハ別の事なしといひて、かつて気にかけ(三オ)されハ、 00115270M17何事もなくきえうせたり。 00115280¥N6¥J 00115290¥X 00115300M19六△昔、物を気にかくる者有。からすのこゑを聞、いまの 00115310¥P285 00115320L1なきやうハあしきといひて、心にかけわつらふ也。さるも 00115330L2のいさめていふハ、あれも口もちたれハなく也、/烏(からす)のなく 00115340L3に/吉凶(きつけう)有とハ、もしあたまのなきからすのなく時の事也、 00115350L4なとやくちはしの有からすのこゑを心にかけんやといへハ、 00115360L5かの気にかくる者、何とあたまのなき烏かあるかといふ。 00115370L6中&の事、からす/瓜(うり)といひてくちはしのなき物有、是かな 00115380L7くならハ、誰も気にかけてつゝしむかよいといへハ、扨ハ 00115390L8まことかと思ひ、からすのこゑを気にかくるほとのをろか 00115400¥G 00115410M1なるものなれハ、又からす瓜の事もいつハりと思はす。そ 00115420M2れよりやまひもよくなりたり。 00115430¥N7¥J 00115440¥X 00115450M4七△昔、かたゐなかの人、まりけるをミて、あのあり+ 00115460M5といふハ、いか成事そととふ。あれハ色をミて、わか方へ 00115470M6くる時(三ウ)(四オ挿画)に、人にばいそくせられましきため、 00115480M7はやくこゑかくる事也とこたへぬれハ、ゐなか人、けにも 00115490M8なる義とよくならひ、その後さる方にて、こいちやをふる 00115500M9まハれけるに、上座のもの、色もよきなとゝほめけれハ、 00115510M10ゐなかもの、まりの色の事おもひ出し、わか手前へくる時、 00115520M11色をミて、あり+といふ。そばの人聞て、その方ハまり 00115530M12のやうな事をいハるゝといへハ、ゐなかもの、わきからば 00115540M13いそくハなりますまいといふた。 00115550¥N8¥J 00115560¥X 00115570M15八△昔、ゑかきの/顔輝(がんひ)ハ、/猿(さる)をえものにてよくかきたり。 00115580M16しかれハある所に、かんひのさるの絵有しを人&見て、扨 00115590M17も+かいたり、見事なるかんひかなと、ほめぬるをきゝ 00115600M18てあるもの、かんひとハ/草花(さうくハ)の事かと思ふたれハ、さるを 00115610M19もかんひといふと心得、其後山王に参りける時、御前の猿 00115620¥P286 00115630L1の手そぼりするをミて、扨も+かいたり+、がんひよ 00115640L2+、かくいふを草花の事と思ふか、なんぢか事じや、し 00115650L3るまいなと(四ウ)いふ。むかしハまつかう猿かつらまつか 00115660L4いな。 00115670¥N9¥J 00115680¥X 00115690L6九△むかし、老たる侍のいへるハ、たれも/幕詞(まくことハ)しらすして 00115700L7ハかなハぬ事なれハ、おさなきものまてもよくしりて、そ 00115710L8のことはをつかふ、/味方(ミかた)のまくハうつ、/敵(てき)のまくハひく、 00115720L9船にハはしらかす、/座敷(ざしき)/桟敷(さんじき)にハかこふ、そうれいの/場(ば)に 00115730L10ははる、まくたゝむ事をしほるといふハ、そなハりたるこ 00115740L11と葉なれ共、/用捨(ようしや)の所ありて、まくあくるといひ、又ハお 00115750L12さむるといふ、あるひハ野山のあそひなとにも、まくうつ 00115760L13又ハかこふ、さてたゝむをも右の心もち有、又人の具足ほ 00115770L14むることはも、あるひハ花やかなるとほめ、あるひハすゝ 00115780L15ときとほむる、その/具足(ぐそく)のもやうによりて右の心もち有、 00115790L16具そくを見事とほむるハきらふことは也、せんぢやうにて 00115800L17/手負(ておひ)を見ことゝいふゆへ也、されハかふと一/刎(はね)とかく時も、 00115810L18刎の字/首(くび)をはぬるといふにかくゆへ、羽の字をかきかゆる 00115820L19事もあり、(五ウ)すへて人にましハるものハ、詞つかひを 00115830M1心にかけてたしなむへし、/蛇(じや)ハ一寸よりそのかたちをしり、 00115840M2人ハ一言にてその心さしはからるゝといへり、されハなを、 00115850M3連哥、はいかい、能なとやうの折ふしは、其所のさしあふ 00115860M4事をよくかんかふへし、あるひハ人の名、ミやうじ、/職(しよく)、 00115870M5いへの/紋(もん)なとまても心にもちて、すましきとにハあらす、 00115880M6あしきさまにすへからすといはれしハ、さも有ぬへき事と 00115890M7おほゆ。/余(よ)か/若年(じやくねん)の時、さるかたにて/発句(ほつく)つかうまつりけ 00115900M8るに、其家の/紋(もん)梅はちなれハ、もてる/調度(てうど)も絵あるものハ、 00115910M9これをかゝせ、きさむものハこれをきさませるゆへ、梅は 00115920M10ちをあいさつにし侍りぬ。其折からにハ今あしきと思ふほ 00115930M11とにハ思ハさりしか、のちにかんかへてうるさかりける句、 00115940M12△△梅はちや花をもよほす/羯皷打(かつこうち) 00115950M13ミつから/難(なん)にいふ、此句ハかつこ花をもよほすの/古事(こじ)にて 00115960M14(五ウ)仕立侍れハ、花はかりに思ひ入て、梅はちハよそに 00115970M15なり、かんじんの家の紋/面目(めんほく)すくなし。 00115980M16又、其年比の事なりしか、あるしかた出家にて、ともあま 00115990M17た/終日(ひねもす)あそひけるに、坊のうへをほとゝきす、こゑあさや 00116000M18かにをとつれ、空かけりゆけハ、あと+のねハしたいに 00116010M19かすかに聞ゆ。をちかたにうつりぬるを、今しハし此所に 00116020¥P287 00116030L1とゝまる事なきを、うらミかほにはぢしめて、ほつくせん 00116040L2とあんし、日半ほとたくミ、しかも禁句をはき出し、のち 00116050L3にくやしかりける句、 00116060L4△△をちかへりなくや/逃武者(にけむしや)ほとゝきす 00116070L5ミつから難にいふ、出家におつるといふことはいむなり。 00116080L6なを又/還俗(げんそく)の/還(けん)の字にかへるといふよミあれハ、をちかへ 00116090L7り大きにさしあひにて侍りしなり。 00116100¥N10¥J 00116110¥X 00116120L9十△むかし、くまのびくに絵をかけて、是ハ子をうまぬ人 00116130L10(六オ)死て後とうしミをもちて、竹のねをほる所なりとい 00116140L11ふをきく。おなこ共なミたをなかし、さてゑときすミて後、 00116150L12ひくにゝとふやうハ、子をうミてもそたゝぬものハ、うま 00116160L13すとおなし事かといへハ、/比丘尼(びくに)こたふるハ、それハうま 00116170L14すよりすこしつミあさし、されハとうしミハゆるして、た 00116180L15けのねをいがらにてほらするといふたハ、よいかけんな事 00116190L16なり。 00116200¥N11¥J 00116210¥X 00116220L18十一△昔、/法花宗(ほつけしう)あり。何ものによらす、じゆほうさせたく 00116230L19思ひ、ある時、わか/飼(かひ)をきたるねこもほつけしうにせんと、 00116240M1八巻をいたゝかすへきとて、ねこをとらへんとすれハ、は 00116250M2しりてえんの下へはいりけるを、つなとりて引ぬれハ、中 00116260M3&ねこつなになり、いろ+してミれともいてす。よへと 00116270M4も聞いれす有けれハ、今一人、おなし/宗旨(しうし)のほつけいふや 00116280M5うハ、其ねこハもはやすゝむるにおよハぬ、それほとじや 00116290M6うが(六ウ)こわくてハ、はやほつけてあらふといふた。 00116300¥N12¥J 00116310¥X 00116320M8十二△昔、ゐなかもの六条の/本願寺(ほんくハんじ)に参り、/堂(だう)をふしおかミ 00116330M9いふやうハ、しんらん様ずいぶんほとけになして給ハれ、 00116340M10けに+しんらん様のお力にも、仏になさるゝ事かなりか 00116350M11たくハ、きゝやう、をくるま、をミなへし、何そこれらの 00116360M12/草花(さうくハ)になして給ハれといふ。そのつれ聞て、それハ何事を 00116370M13いふそ、草花になりて何するそといへハ、その事、草花に 00116380M14なりたいとねかふハ/別(へち)の義てもない、七月七日にこゝのお 00116390M15花になりたさにいふ、あハれ七夕のお花になるならハ、少 00116400M16&まだるい仏よりハ、はるかましといふた。 00116410¥N13¥J 00116420¥X 00116430M18十三△昔、ぬからぬかほするゐなか者有。都の/風呂(ふろ)にはしめ 00116440M19て入、友たちに云やう、京のこぶろにハ火をともさぬ所て、 00116450¥P288 00116460L1いかうくらひ。 00116470¥N14¥J 00116480¥X 00116490L3十四△昔、十二月/先祖(せんぞ)の/年忌(ねんき)に、おなこ共あまたあつまり、 00116500L4みこをよひてくちをよせさせけれハ、みこ、たゝり月をい 00116510L5ふ(七オ)てきたうをし、又ふせとらんと思ひ、ことしハた 00116520L6ゝり月かおほい、をつつけきたうせすハあしからふといふ。 00116530L7きくおなこの中より一人いふやうハ、ことしたゝり月かあ 00116540L8るとハがてんかゆかぬ、今ハはやしハすなれハ、ことしハ 00116550L9此月はかり也といへハ、みこ、なむ三ほうと思ひ、にハか 00116560L10に大はたをぬき、そのふしんハもつとも也、しやばにてハ 00116570L11今かしハす也、こくらくにてハ今か六月じや、されハまだ 00116580L12たゝり月かおほい、こゝの六月ハとりわきあつうてならぬ 00116590L13といひて、口よせをハるまて大はたぬいてゐた。 00116600¥N15¥J 00116610¥X 00116620L15十五△昔、いづくにても/身上(しんしやう)おもハしからぬもの、都にのほ 00116630L16り、友たちとたんかうしけるハ、方&にてかせきぬれ共、 00116640L17いつこにもあしをとめかぬるといひけれハ、友たちきいて、 00116650L18とかく今一かせき、/伯耆(はうき)の国へ行て見られよと云。それハ 00116660L19是より道何ほとあるそととふ。こたへていはく、千(七ウ) 00116670M1里ある也、たミのありつきよき所と聞ゆ、詩経に/邦畿(はうき)千/里(り) 00116680M2/惟(これ)/民(たミの)/所止(ところとゝまる)とありといふた。 00116690¥N16¥J 00116700¥X 00116710M4十六△昔、年六十はかりの者、年中一日もしやうしんせぬも 00116720M5の有。友だちのいふハ、其方ハ二親もなく兄弟衆も相/果(はて)ら 00116730M6れたり、しかるに、一日も年中に/精進(しやうじん)日のなきハ何事そと、 00116740M7とへハ、答ていふ、われらの二親兄弟共ハ、ミな夜中に果 00116750M8られたる故、夜ねてから精進す。 00116760¥N17¥J 00116770¥X 00116780M10十七△昔、とつと遠国の/法花坊主(ほつけばうす)に、/他宗(たしう)のわかきもの共/参= 00116790M11会(さん=くハい)して、/是非(ぜひ)共/魚(うを)をくハれよといへハ、ほつけばうすのい 00116800M12はく、あまりつよくしんしやくいたしたらハ、また、しや 00116810M13うごハものと仰られて、そしらせられんほとに、人にそし 00116820M14られうよりハくハふと、いふた。 00116830¥N18¥J 00116840¥X 00116850M16十八△昔、おさなきもの茶をたてけるに、まだ/無功(ぶこう)なれハ、 00116860M17しまひの時、ふたにひつきりのつきたるをしらす、釜(八 00116870M18オ)の中へおとし、其まゝふたをしめけれハ、/客(きやく)のゐなか 00116880M19人これをミて、今の竹のわぎりハそのふんにてハにえまい、 00116890¥P289 00116900L1ぬかミそをいれさせられよと、いふた。 00116910¥N19¥J 00116920¥X 00116930L3十九△昔、大日とかきたるもじをミて、やまもりとよむもの 00116940L4有。いかにかくよむそととへハ、/大和(やまと)のやまの字と/晦日(つこもり)の 00116950L5もりの字じやほとに、山もりよといふた。 00116960¥N20¥J 00116970¥X 00116980L7二十△昔、しらすしてものしりかほする者あり。ともなひあ 00116990L8また、さる寺にあそひ、/鐘楼(しゆろう)のあたりをへめくりけるに、 00117000¥G 00117010M1いさや、此かねの/銘(めい)をよまんといひて、かねのもとに立よ 00117020M2り見けるに、所&しりたるもじあれと、よミつゝくる事な 00117030M3らさりけれハ、ともにめんほくなく、いふへきことハなく 00117040M4て、此かねのめいハ、/唐音(たうゐん)にかいた所てよめぬと、云た。 00117050¥N21¥J 00117060¥X 00117070M6廿一△昔、/烏丸(からすまる)のからの字ハ、/烏帽(ゑほうし)のゑほの字しやか、/室(むろ)町 00117080M7のもろの字ハ、何とよむかしらぬといへハ、おなしやう 00117090M8(八ウ)(九オ挿画)なる友、もろ町のもろハ/御室(おもろ)のろの字よと、 00117100M9いふた。 00117110¥N22¥J 00117120¥X 00117130M11廿二△昔、むこ入のはれに、小袖をそむる折ふし、めのとい 00117140M12ふやう、いかやうにそむへきそと、むこたる者にとひけれ 00117150M13ハ、地ハ山おろしにそめ、もん所にハゆづりはがたけをつ 00117160M14けよといふ。めのと、それハきやうこつな、何事にてまし 00117170M15ますそといへは、むこ山おろしゆつりはかたけと、いふほ 00117180M16とに、むこにハそれがよからふといふた。 00117190¥N23¥J 00117200¥X 00117210M18廿三△昔、かなたこなた人の置合になりて、身のほとよりく 00117220M19がいする者有。されハ、/器(うつハ)物にいたるまて、よきを見なら 00117230¥P290 00117240L1ひ侍る也。ある時、人のもてる道具共をミて、いつれも気 00117250L2にいらぬふせいにてほめす、いひこなしけれハ、道具ぬし 00117260L3いふやうハ、お手前ハちとかほかやせたらハよからふ、な 00117270L4せといへハ、目かこへて口のひろい事はかりいはるゝほと 00117280L5にと、いふた。 00117290¥N24¥J 00117300¥X 00117310L7廿四△昔、ゐなか人都にのほりけるに、あつき比にて有けれ 00117320L8(九ウ)ハ、あるしのいふやうハ、ひやりとすいせんをまい 00117330L9るかととひぬるに、此いなか人、すいせんといふものハ草 00117340L10花より外にしらす。さためて、都にハすいせんくハをもく 00117350L11ふ物なるへしと思ひ、いや、すいせんのすいくちよりハ、 00117360L12にんにくをたべたいといふた。 00117370¥N25¥J 00117380¥X 00117390L14廿五△昔、ゐなか人、/尺(しやく)八の中とをしをミて、是ハ何といふ 00117400L15ものそととひけれハ、それハ尺八の中とをしとこたへし。 00117410L16ゐなか人、さて+、都にハじゆずの/緒(を)まてめつらしいと 00117420L17いふほとに、いや、しゆすのをにてハない、尺八の中とを 00117430L18しとかさねていひけれハ、ゐなか人、されハこそ百八の中 00117440L19とをしと。 00117450¥N26¥J 00117460¥X 00117470M2廿六△昔、ゐなか人十二/律(りつ)を見て、是ハおくけさまたちの所 00117480M3の、竹がうしのきりはつしであらふといひし。 00117490¥N27¥J 00117500¥X 00117510M5廿七△昔、ゐなかにこさかしきもの有て思ふやうハ、いにし 00117520M6へよりの物語に、何事もよからぬ事ハみな、ゐなか者にか 00117530M7づくる、口をしき事也、/鈍智(どんち)ハ/都鄙(とひ)にかぎるまし、あはれ 00117540M8都(十オ)人にあひ、ちとたつねたき事有、ちゑのほとしら 00117550M9まほしきと思ふ折から、都よりかしこうもなきもの、かの 00117560M10ゐなかものゝ所へ行しに、さいハひと思ひ、都人にたつね 00117570M11ん、大和ことはとやらんに、都の手ふりといふハ何事そと 00117580M12とふ。都のもの、しらぬといへハはぢとこそ思ひつらめ、 00117590M13中&その事よくしりたり、都の手ふりとハ、のり物になふ 00117600M14六尺の事しやといふ。ゐなかのこさかしきもの、かたハら 00117610M15いたく、もはや別のせつハなきかととへハ、都人、まだあ 00117620M16る、をりとのやの糸くりをも都の手ふりといふと、こたへ 00117630M17し。まことにしらさるをしらすとせよ、是しれる也といふ 00117640M18事をしらぬハ、はぢしらす也と、ゐなか人にはちしめられ 00117650M19し也。 00117660¥P291 00117670¥N28¥J 00117680¥X 00117690L2廿八△昔、/琵琶(びは)と/琴(こと)とかざりたるをミて、是ハ何の木にてつ 00117700L3くるぞととふ者有。友、ことにゆびさして、是ハ/桐(きり)なり、 00117710L4又びはを是ハ/紫丹(したん)なりとをしへけれハ、とひしものよく 00117720L5(十ウ)(十一オ挿画)覚え、やとにかへりて友たちに、きのふ 00117730L6きりしたんを見たといふ。友人きゝて、かゝるめてたき御 00117740L7代なれハ、まことのきりしたんといふものハあるましと、 00117750L8せんさくして、よく聞たれハ、きりの琴したんのびはの事 00117760¥G 00117770M1にて有し。まことに/静謐(せいひつ)の此御代なとに、たとひ不吉の事 00117780M2をかたるもの有とも、ミなそらことのためしなり。 00117790¥N29¥J 00117800¥X 00117810M4廿九△昔、/種姓(すじやう)さもしきものゝ、かねもちになりて、人にま 00117820M5しハる者有。され共すりあげものなれハ、/田夫(でんぶ)第一のおと 00117830M6こ也。ある時、わが女バうに、きんらんにてたびをぬえと 00117840M7いふ。女はう聞て、きんらんのたひをはくものか日本にあ 00117850M8るか、いかに銭かねにとほしからぬといふても、たひにき 00117860M9んらんハせぬものしやといふ。かの男聞て、いや、べちの 00117870M10事てハない、友たち衆か、我らを足もとのわるい者しやと 00117880M11仰られて、/入魂(しゆこん)なきほとに、金らんのたびをはかふと、い 00117890M12ふた。(十一ウ) 00117900¥N30¥J 00117910¥X 00117920M14三十△昔、さる寺へわかき侍共まかりてあそひ、/亭坊(ていばう)に云や 00117930M15う、御ばうもいにしへハ何かしのはてにて、あつはれ侍た 00117940M16るへきに、何とてかやうに出家とハなられしといふ。亭坊 00117950M17こたへて、われらハ侍にてハなしと云。わかき者共聞て、 00117960M18それハいつハり也、/先祖(せんそ)をもあらまし承りたり、其上さふ 00117970M19らひは、にんべんに寺といふ字をかけハ、いよ+さふら 00117980¥P292 00117990L1ひにうたかひハなし、こしかたかたり給へといふ。亭坊答 00118000L2て、仰のとをり、侍といふ字ハにんへんに寺なれ共、われ 00118010L3らさふらひにてなきせうこハ、堂のやねを見給へといふ。 00118020L4わかき者共やねをミて、あれハくさりたる物也、せうこに 00118030L5ハいかゝ見んといへハ、坊主、されハその事、侍とこかね 00118040L6ハくちてくちせぬといふ、われら侍にてなきゆへ、やねま 00118050L7てあのことくくちたりとこたへけれハ、人&しゆせうかり 00118060L8て、/再興(さいこう)有けると也。まことに出家のおくふかく、した心 00118070L9よきへんたう也。(十二オ) 00118080¥N31¥J 00118090¥X 00118100L11卅一△昔、大名のはいぜんするこせう、かんなへの口よりさ 00118110L12けをこほしけるに、大名御きしよくあしく見えけれハ、そ 00118120L13のまゝ/咄(はなし)の者/狂哥(きやうか)よミて、大名のかんはせよろこハしむる。 00118130L14△△/酌人(しやくにん)のめもとに/塩(しほ)かこほるれハ 00118140L15△△△手もとの酒ハしつくなりけり 00118150¥N32¥J 00118160¥X 00118170L17卅二△昔、大名のミうちに国の/仕置(しをき)をする者有。/老衰(らうすい)日にま 00118180L18しぬれハ、をのかつとめを人にゆつり、身しりそかんと、 00118190L19うつたへぬれと、大名ゆるし給ハされハ、たひ+此事い 00118200M1ひやます。/死期(しご)ちかきなとゝかこちけるに、 00118210M2△△年をへて国の/鏡(かゝミ)となるものハ 00118220M3△△△死にかゝるをやくもるといふらん 00118230M4かくつふやくもの有けれハ、大名ゆるし給ひて、/老後(らうご)の身 00118240M5をやすくをきて、たのしミけるとなり。 00118250¥N33¥J 00118260¥X 00118270M7卅三△昔、大名のもとに召つかハるゝ小坊主に、/与斎(よさい)といふ 00118280M8者有。ある時/夜詰(よつめ)にねふりけれハ、大名/伺公(しこう)の者共に、与 00118290¥G 00118300¥P293 00118310L1斎かねふるつらを見よと、はけしく見えけれハ、咄のもの 00118320L2ゝ中より、(二十ウ) 00118330L3△△もろこしの/宰予(さいよ)ハ/昼(ひる)もねふりけり 00118340L4△△△せめて与斎ハゆるし給ハれ 00118350L5とよみけれハ、大名も座中も/興(けう)に入、与斎もつゝかなしと 00118360L6そ。 00118370¥N34¥J 00118380¥X 00118390L8卅四△昔、へんどに子をうミて、是ハ/鬼(おに)子なり、ころさんと 00118400L9いひあへるを、そのかたハらに老人ありて、此さたをきゝ、 00118410L10鬼子とハいかやうなるものそととへハ、/歯(は)のはへて生れ出 00118420L11るものをいふとこたへたり。老人のいふ、はしめよりはの 00118430L12有ものを鬼子といはゝ、かミをゆふくしも鬼子か、それ人 00118440L13の/歯(は)ハ/腎(じん)の/有余(ゆうよ)にて、/腎勢(じんせい)つよく生れつくものハ/胎内(たいない)より 00118450L14はをもちて出る也、又女子に生れ出るもの/陰穴(いんけつ)なきものあ 00118460L15り、おとろく事なく、いしやにたんかふすへし、れうぢに 00118470L16て陰穴てくる也、又男子女子にかきらす、七ケ月にて生る 00118480L17ゝ子もそたつ也、又十五ケ月にて生るゝ子も母共に/堅固(けんご)也、 00118490L18いつれもある事なれハ、心うく思ふましと、色&めつらしき 00118500L19事共いひて、かの鬼子といふをそたてさせけれは、(十三オ) 00118510M1親に/孝行(かう+)其身無病、人にすくれ、あまつさへ富貴にして、 00118520M2百/余才(よさい)にて命おハりしとなり。 00118530¥N35¥J 00118540¥X 00118550M4卅五△昔、かしこうもなき事をあんしたるもの有。あめとい 00118560M5ふものハ天にも人か有て、水こしにてとをすか、またハ、 00118570M6いかいひしやくをもちて水をうつか、なとゝいふて人にと 00118580M7ふたり。答て、其方のすいりやうのことく、雨ハ水こしか 00118590M8らとをす時も有、又ハ大なしやくにてうつ事もあるといへ 00118600M9ハ、又とふ、そのこさいか聞たい。こたへて、水こしから 00118610M10とをすゆへにとをり天といふ、大きなしやくにてうつによ 00118620M11りて、上に大しやく天か有といふた。 00118630¥N36¥J 00118640¥X 00118650M13卅六△昔、ひとりたひ人よぶかに出ぬれハ、道にてたうぞく 00118660M14あまたかこみ、金銀をとらんとす。其比奉行所よりはしり 00118670M15ものゝとが人をたつねらるゝに、そくたくかゝりたり。然 00118680M16る処にかのたひ人、われハ一人たうそくハ大せいなれハ、 00118690M17すへ(十三ウ)(十四オ挿画)きやうなく、いつハりていふハ、 00118700M18われハ金銀もちたる者にてハなし、此比奉行所よりたつね 00118710M19らるゝもの也、それゆへ夜をこめて爰をたちのく也、命を 00118720¥P294 00118730L1ゆるせといへハ、たうそくこれハ思ひもよらさるものかな 00118740L2とよろこひ、此ものを召つれ奉行所にゆき、そくたくとる 00118750L3へしと思ひ、いさミよろこひて、奉行所へかのたひ人をつ 00118760L4れ行、此ころ御たつね候/科人(とかにん)召つれたりとうつたへけれハ、 00118770L5奉行此者をミてふしきに思へるうちに、たひ人のいはく、 00118780L6われら科人にあらね共、夜ふかに出てあのたうそく共にあ 00118790L7ひ、せつなさのまゝ、いつハりたり、いそきたうそく共を 00118800L8からめらるへしといへハ、そこにてたうそく、扨ハたはか 00118810L9られたるよと思ひ、せひなくからめられたり。まことによ 00118820L10きちりやくにて有し也。 00118830¥N37¥J 00118840¥X 00118850L12卅七△昔、何事によらすしまんしていけんいふものあり。あ 00118860L13る時、貴人の御前へ出けるに、其方か国にハ海山なと(十四ウ) 00118870L14かあるか、/猟(れう)をしてあそふかなとゝ、たつねられしに、か 00118880L15のいげんいふ者、わたくしの在所ハ/余国(よこく)とかハり、山なと 00118890L16も中&たかく、海もことの外ふかし、さるにより、ざいも 00118900L17くぎよるいたくさんにて、よき在所といふ。貴人聞給ひて、 00118910L18いかにも其方かざいしよハさうであらふ、かしハざきのう 00118920L19たひに、在所の山たかく/笑止(せうし)の海ふかしと仰られし。 00118930¥N38¥J 00118940¥X 00118950M2卅八△昔、/法頂(ほつてう)のかつく/燕尾(えんび)といふ物をミて、あれハゑほし 00118960M3といふかととふ者有。今一人ハもうすといふものかと、二 00118970M4人とひけるに、物なれたるものゝこたへやうこそおかしけ 00118980M5れ。両人のいひふんをいつれもそたてたり。此ころまひを 00118990M6聞しとて、かゝるむつかしきゑほしをせきやにあつけ/帽子(もうす) 00119000M7といひてとある、まひの文句にあハせ、両人に/対(たい)し、をの 00119010M8+のことく、いにしへの人も、ゑほしとまうすの/差別(しやべつ)ハ、 00119020M9むつかしき事と見えしといひし。(十五オ) 00119030¥N39¥J 00119040¥X 00119050M11卅九△昔、雪のうちの/芭蕉(ばせを)を見たといふもの有。友たちきゝ 00119060M12て、雪のうちのはせをハなき物也、それハ絵にかきたるを 00119070M13見たるかといへハ、いやまことの雪のうちのばせう也、袖 00119080M14にふりかゝる雪を打はらひ+して、馬にのり行人を見た 00119090M15り、馬にのりたるものハ、/馬上(ばしやう)といハぬかといひし。 00119100M16△△/駒(こま)とめて袖うちはらふかけもなし 00119110M17△△△さのゝわたりの雪の夕くれ 00119120¥N40¥J 00119130¥X 00119140M19四十△昔、/気血(きけつ)共におとろへたるもの有。こさかしき友のい 00119150¥P295 00119160L1ふハ、此やうなるしやうにハ、十/全大補湯(せんたいふたう)かよいとをしへ 00119170L2けれハ、病人つふさにならひて、さるいしやの所へたつね 00119180L3行、れうそく十文持参して、大ふたうかいませうといふ。 00119190L4いしやきゝて、是ハめつらしき人かな、ことにせにハ何事 00119200L5そなとゝいへハ、十せん大ふたうと承るほとに、せに十文 00119210L6もちて参りた、是にて大補湯給ハれといへハ、いしやこた 00119220L7へて、たゝ今十全大補湯ハない、其方の病をそのまゝなを 00119230L8す千/金内(きんない)(十五ウ)/托散(たくさん)かある、それか用ならハうらふとい 00119240L9ふ。病人聞て、たとひ死ぬるとても、千金かならふかと云 00119250L10て、いんだ。 00119260¥N41¥J 00119270¥X 00119280L12四一△昔、しゆえんの座にて、あるしかたのむすこ/角弥(かくや)と云 00119290L13もの、うたひまひかなてけれハ、/風流(ふうりう)の老人有て、かほあ 00119300L14からむハかりにゑひ、/座興(ざけう)のとんさくをまひける。/列座(れつざ)の 00119310L15若き人&もあれハ、其あいさつの文句に、老人ハあかくな 00119320L16り、わかきハいつもゑひもせす、/富貴(ふつき)の家となるとかや、 00119330L17/長生殿(ちやうせいでん)のうちにハ/春秋(しゆんしう)をとむなるも、/角弥(かくや)と思ひしられ 00119340L18たりと、やさしくもおもしろくも文句をあハせまひけるに、 00119350L19物なれぬ若き男其座に有て、聞とかめたるこそさもしけれ。 00119360M1其まひハ、老人ハわかく成、若きハいつもおひもせすにて 00119370M2まします也、たゝ今仰られたハみなかたことなりといひし 00119380M3ハ、あさましきおとこふりにそ見えしなり。 00119390¥Y1巻之三終(十六オ) 00119400¥P296 00119410¥T1/私可多咄(しかたはなし)△巻之四 00119420¥N1¥J 00119430¥X 00119440L3一△むかし+、大/福長者(ふくちやうじや)の一ばん子にかしこからぬも 00119450L4の有。世の中のめうもくにふしぎかある。いかにといふに、 00119460L5われらのやうなるかねもちのひざをゆるがすをも、なぜび 00119470L6んぼうゆるきとハいふそ、是かねてもさめてもかてんかゆ 00119480L7かぬといへハ、そはにまつしきものゐあハせてこたへける。 00119490L8されハ此はうにもふしきかある、我らのやうなる銭のなき 00119500L9ひんほう人も、時&銭もちくびになるとハ、なせいふそと 00119510L10こたへた。 00119520¥N2¥J 00119530¥X 00119540L12二△むかし+、/名月(めいけつ)の夜のくまなきに、かしこうもなき 00119550L13者二人月見して、一人のいふハ、月ハうこくもの也、何と 00119560L14そとりはつしたらハおちさうな、あハれおちたらハひらハ 00119570L15んといふ。いま一人のもの、もろこしへハおちたと見えた、 00119580L16/月落鳥啼(つきおちとりないて)と云詩かある、日本へハゑんぎのみかとの比ハお 00119590L17ちなんたと見えた、せミ丸のうたひに、世ハまつせにおよ 00119600L18ふとても、日月ハ(一オ)地におちぬとある、され共今ハも 00119610L19しおつる事もあらふ、おつるならハかさてうけたかよい、 00119620¥G 00119630M12ふじたいこに、月おちかゝるやましろも、はやちかつけハ 00119640M13かさをぬきとあるほとに、うつかりと見るな、かさをもて 00119650M14とて、二人なからあくる日の辰のときまてかさをかまへた。 00119660¥N3¥J 00119670¥X 00119680M16三△昔、/烏賊(いか)と/蛸(たこ)とはまはたに出て、ゐせいあらそひ有。 00119690M17いかのいはく、われらハ哥につらねらるゝ、侍従哥に、い 00119700M18かにせん都の春もおしけれとと有。たこのいはく、われら 00119710M19も哥によまるゝ、/山辺赤人(やまのべのあかひと)、/蛸(たこ)のうらにうち出て見れハ白 00119720¥P297 00119730¥G 00119740L12たへのと有。いかのいはく、大/成論(せいろん)にもいかしやりうとあ 00119750L13る。たこのいはく、/諸経(しよきやう)にも/那由蛸(なゆたこ)とある。いかのいはく、 00119760L14時+われらハかミなりにもなつてあそふゆへ、いかつち 00119770L15といふ。たこのいはく、われらハ折&仏になりてあそふゆ 00119780L16へ、たこやくしといふ。いかのいはく、われらハ馬によく 00119790L17のるゆへ、あをりい(一ウ)(二オ挿画)か共いふ。たこのいは 00119800L18く、われらハ物をよくかき、筆をはなすまのなきゆへ、ゆ 00119810L19びにたこかてきたといふ。いかのいはく、其方ハ万事がて 00119820M1んのいたものにて、あたまをまろめなから何とてひつはり 00119830M2たこにハなるそ。たこのいはく、其方ハあつはれかうの者 00119840M3と見えたか、なにとてするめになり、なわにてくゝらるゝ 00119850M4そ。いかのいはく、われらハ/仙術(せんじゆつ)をえて空にのほるゆへ、 00119860M5わらハへのもてあそひものにもいかのほりといふ。たこの 00119870M6いはく、それハ此方の事にてたこのほりといふ。いやいか 00119880M7のほりとたかひにろんしあひ、ともに八手をくたきむすと 00119890M8くむ所を、両方なから、やかて、れうしの手にとらハれも 00119900M9のとなつた。 00119910¥N4¥J 00119920¥X 00119930M11四△昔、よそしらぬもの、大名のもとへ来る事有。家老に 00119940M12仰ありて此ものに/呉服(ごふく)を給ハる。/家老(からう)ひろふたにて呉服を 00119950M13つかハしけれハ、さて+有かたし、ことにけつ(二ウ)(三 00119960M14オ挿画)こうなるまきゑの/台(だい)まて下さるゝ、かたしけなしと 00119970M15て、ひろふたをも呉服と共に取てかへらんとする時、さす 00119980M16か家老たるものゝあいさつこそおもしろけれ。かの者には 00119990M17ぢをあたへましきと思ひ、家老のいふやうハ、その台をこ 00120000M18のはうへかるへし、今又別の人に呉服をのせてつかハすま 00120010M19きゑの台、手もとにきれ侍るほとに、かるへきといひて、 00120020¥P298 00120030L1ひろふたをとめをきたり。その首尾、侍共見きゝて、 00120040L2△△よむ哥のだいにもなれるひろふたを 00120050L3△△△家老の/作意(さくい)ほめぬ者なし 00120060¥N5¥J 00120070¥X 00120080L5五△昔、/清少納言(せいせうなこん)/枕草子(まくらざうし)に、うくひすハだいりのうちに 00120090L6すまぬそいとわろき、十年はかりさふらひて聞しかと、さ 00120100L7らに音もせさりきと、いふ事をきゝて、さるものゝいふハ、 00120110L8それハけにもらしき事也、さすかうくひすなれハこそ心あ 00120120L9りておほゆれ、てうるいの身としてたやすく/大内(おほうち)にまいる 00120130L10ハ、そらおそろしき事也と、/老(おひ)たる/谷(たに)のうくひすか、(三ウ) 00120140L11わか鳥共にいけんするゆへ、参らぬものてあらふ、清少納 00120150L12言もよく心をつけてかゝれたといふ。友たちきゝて、谷の 00120160L13うくひすのいけんするといふ事ハ、なんそかき物にあるか 00120170L14といへハ、公任のらうゑいしうに、鴬未出遺賢在谷とあ 00120180L15るほとにといふた。 00120190¥N6¥J 00120200¥X 00120210L17六△昔、さるものゝむこに弓をけいこするもの有。あハれ 00120220L18弓いるといふ事を、しうとにしられたきと思ひ、ある時し 00120230L19うとの方へ見まひ、何とそしてよき折からに、わか弓いる 00120240M1ことをひけらかしたし、かたり出さんと手ぐすねひきてま 00120250M2て共、弓のつゐてもなかりけれハ、かのむこ殿しうとにむ 00120260M3かつて、まづよのはなしハやめられよ、こなたハ/異国(いこく)の/養= 00120270M4由(やう=ゆう)、/吾朝(わかてう)の/為朝(ためとも)をしらせられたかといふ。しうと、中+聞 00120280M5およひたり、是ハ弓の名人とやらんきゝつたへし、さて此 00120290M6うハさをいひ出さるゝハ、其方にも弓をいらるゝかと(四 00120300M7オ)いへハ、むこ聞て、いや+養由ためともなとほとに 00120310M8ハねんもない事といふた。 00120320¥N7¥J 00120330¥X 00120340M10七△昔、/玄肪僧正(げんばうそうしやう)といふ人、/入唐(につたう)して/■州(ししう)の/知周(ちしう)大師にあ 00120350M11ひ、/法相宗(ほつさうしう)をならひ給ひしか、/唐人(たうじん)げんばうといふおなし 00120360M12こゑの字に/還亡(かへりほろふ)といふ/訓(くん)有と/難(なん)したりしか、/帰朝(きてう)の後つく 00120370M13し観世音寺をくやうの時、空よりいかつちなりくたりて、 00120380M14/玄肪(けんばう)をひつさけ雲中に入、くひを/興福寺(こうふくじ)の/唐院(たうゐん)におとしけ 00120390M15りとなん。/太宰少弐(ださいのせうに)/藤原(ふちハら)/広継(ひろつぐ)/所為(しハざ)也といふ。されハ人の 00120400M16名にも/吉凶(きつけう)ある事也。 00120410¥N8¥J 00120420¥X 00120430M18八△昔、うつけもの有。わか女房の名をかへて/楊貴妃(やうきひ)とつ 00120440M19くる。友たち聞て、是ハ何事そ、やうきひといふハ/玄宗皇= 00120450¥P299 00120460L1帝(けんそうくわう=てい)のきさきにて、しかも三千人のうち第一の美人也、はく 00120470L2らく天か/長恨哥(ちやうごんか)にも、回頭一笑百媚生、六宮粉 00120480L3黛無顔色あれハ、うるハしきかたちをしはからるゝ、 00120490L4(四ウ)其方の内方いかに/美女(ひちよ)なれハとて、やうきひとよふ 00120500L5事、その身もはつかしかるへし、よそのきこへなをうるさ 00120510L6しといへハ、くたんのうつけもの聞て、されハそのやうき 00120520L7ひハ/楊家(やうか)のむすめときく、われらの女共も八日に生れたと 00120530L8いふほとに、やうかのむすめといふ心に、やうきひとつけ 00120540L9たと云て、友たちのいけんをもきかすじまんした。 00120550¥N9¥J 00120560¥X 00120570L11九△昔、六/祖(そ)のからうすふめる/図(づ)のかけ物を見て、さるも 00120580L12の、是ハおもしろきやうすなり、われも一ふくほしゝと思 00120590L13ひ、あるしに此/祖師(そし)の事よくたつね、やとにかへり、ちい 00120600L14んのゑかきに頼むに、六/祖(そ)といふ事を打わすれ、からうす 00120610L15ふミの六蔵をかきて給ハれといふた。 00120620¥N10¥J 00120630¥X 00120640L17十△昔、筆もつ事もしらぬ侍有。年ハ五十におよへり。あ 00120650L18る時はうはい、卅六人の/哥仙(かせん)をくりかへし見侍る所へ、か 00120660L19の侍ゆきかゝり、その物の本ハ何そととふ。是ハ卅六人の 00120670M1かせん(五オ)とこたふ。侍聞て、それハいくたひミてもあ 00120680M2かぬものじや、その/楠(くすのき)か/合戦(かせん)の所をよミてきかせられよと、 00120690M3いふた。 00120700¥N11¥J 00120710¥X 00120720M5十一△昔、はり立のこうしや有。さるものとふていはく、こ 00120730M6の比/鍼灸(しんきう)/聚英(しゆえい)/正伝(しやうてん)の/或問(わくもん)なと見侍りしか、針ハ有瀉無 00120740M7補とあり、され共世上の針立補有といふ、いかゝ祖有やい 00120750M8なや。針立こたへていはく、我&をはしめ世間のはり立、 00120760M9何れも口にてハ補も有/益(ゑき)も有といへと、手にてたつる針に 00120770M10補のなき事うたかひ有へからす、是まことの一大事をさん 00120780M11け物語なり、世の中の人&針に補ありとおもふハ、大きな 00120790M12るあやまり也、ほのあるはりハ別の事を云、人にたつる針 00120800M13の事にハあらす、/唐船(たうせん)をのる時、ふねに針をたてねハのら 00120810M14れす、これに/帆(ほ)かあるゆへとりちかへて云/い((ママ))ふ事也と、か 00120820M15たられしハ、さすか名人のことはほと有て、おかしくも、 00120830M16しゆせうにもおほゆる。(五ウ) 00120840¥N12¥J 00120850¥X 00120860M18十二△昔、ある夜のつれ+に友たちあつまり、/座頭(ざとう)に平家 00120870M19一句所望せしに、いまた功なき/盲人(まうじん)にて、しかもこゑよか 00120880¥P300 00120890L1らぬに、なか+しき/妓王(ぎわう)をうなり出しけれハ、おもしろ 00120900L2けハさてをき、うるさくなれ共、なかはにやめよ共いはれ 00120910L3す。きく人+かたハしよりねいりけれハ、へいけハいつ 00120920L4かたりすミたるもしらす。夜/金((ママ))の折から、/扈従(こせう)のおこしけ 00120930L5るに、目をさまし、あまりの事にさるものかくそ、 00120940L6△△平家にハ妓王をかたり出す程に 00120950L7△△△きかてねたまそ仏也ける 00120960¥N13¥J 00120970¥X 00120980L9十三△昔、ちこのもつさうくハるゝ時、くひたらさりけれハ、 00120990L10はんたいにならへたるこせうか食をも、とりてくハれける。 00121000L11こせう、はんたいにかゝりて見れハ、めしなきゆへ、ちこ 00121010L12に、何とてわれらのもつそうを参りたるそといへハ、ちこ 00121020L13のいはく、そのはうのもつさうとハしらす、をれかもつさ 00121030L14うのさばのめしがこけてあるかと思ふてくふた。(六オ) 00121040¥N14¥J 00121050¥X 00121060L16十四△昔、/御幸(ごかう)のおりから、その里かねてよりきよめけるに、 00121070L17奉行から百姓共にまんちうくハられけれハ、よろこひ給ハ 00121080L18りて、/土民(とミん)の中にかくつらね侍りし也。 00121090L19△△御幸よりさきに給ハるまんちうの 00121100M1△△△中のさたうハ是そあま物 00121110¥N15¥J 00121120¥X 00121130M3十五△昔、かくをわつらふ者有。友たち見まひにきたりける 00121140M4時、いしやハなにといはるゝそととひけれハ、/膈(かく)といふ事 00121150M5をわすれて、/飛車(ひしや)といふ/煩(わつらひ)じやと、いはれた。 00121160¥N16¥J 00121170¥X 00121180M7十六△昔、かふきの子共をあつめ、/将棋(しやうぎ)さし侍る者あり。何 00121190M8とやらん名をいひしかふき子、そはに見物してゐけるに、 00121200M9まだ手あきの人&おほけれハ、かつ手より今一めん/盤(ばん)を持 00121210M10て出ぬるに、かの見物のかふき子、心のうちに食をまちか 00121220M11ねけると見えし色、外にあらハれたり。持出るしやうぎの 00121230M12ばんをしりめにかけ、/膳(ぜん)か出ると思ひ、人のさしてゐるし 00121240M13やうぎをそはからくつし、膳かでた、(六ウ)まづしやうき 00121250M14をくつしたかよいといふて、上座になをりけるに、そハへ 00121260M15持来るを見れハ、しやうきの盤にてそ有し。是ほとそつし 00121270M16のいたり、せうしなる事てあつた、 00121280¥N17¥J 00121290¥X 00121300M18十七△昔、/田舎(ゐなか)もの/禁中(きんちう)の/節会(せちゑ)のにハに参り、あの/公家(くげ)さま 00121310M19のもたせられたる物ハ何そととふ。つれたちたる都の者、 00121320¥P301 00121330L1あれハ/笏(しやく)といふもの也とこたふ。ゐなかものゝいふ、さて 00121340L2+、しやくといふものハいなものや、うらゝかざいしよ 00121350L3の庄屋もしやくもちにて、むねにつかへかあると、つね 00121360L4+いはるゝか、あのくげ様もむねにしやくかつかへて、 00121370L5のひつかゞんつあそハす、しやくのむしといふものハ、其 00121380L6まゝはごいたのやうなものじやといふた。 00121390¥N18¥J 00121400¥X 00121410L8十八△昔、/辺土(へんど)にかなかきをもよミわくる三/白(はく)といふもの有。 00121420L9さるものとつきあひて、何事も五/音(いん)さうつうなれハ、くる 00121430L10しからぬほとに、薬をかすりとなり共、きす(七オ)りとい 00121440L11ふてもくるしかるまい、かきくけこつうするほとにと、い 00121450L12かにもりはつかほにいひけれハ、こさかしきわらハ聞て、 00121460L13それハ物によるへし、其方の名を三白といふ、さしすせそ 00121470L14/通(つう)するとて、/寸白(すんはく)と云てハいかゝと、一口にこめられた。 00121480¥N19¥J 00121490¥X 00121500L16十九△昔、/凸(なかたか)といふ字をミて、おしろいとよミたるもの有。 00121510L17まことにおしろい屋のかたハ、比字のかたちによく似た。 00121520¥N20¥J 00121530¥X 00121540L19二十△昔、からのゑかきに/戴嵩(たいすう)といふ有。牛をえものにてか 00121550¥G 00121560M12く事上手なり。ある時、角をふり尾をたてゝ、牛共のたゝ 00121570M13かふをかく。一しほうるハしくいてきたりと思ひて、人& 00121580M14に見せあへり。其後牛つかふわつはの、野かひにいてたる 00121590M15に此絵を見せ、なんぢかあさゆふつかふうしによくにたる 00121600M16かといひてとひし時、うしかふわつはこれをミてわらふ。 00121610M17いかにとなれハ、牛のたゝかふときハ尾をたてすしてはら 00121620M18に尾をつくるもの也、此絵ハ尾をたてたれハあやまり也と 00121630M19(七ウ)(八オ挿画)いひし。たいすうおとろき、げにもとかん 00121640¥P302 00121650L1じ其絵をやふりたり。まことに名人ハ何事によらすたいす 00121660L2うのことく有たきもの也。たいすうほとの牛かきなれ共、 00121670L3まことに牛に手なれぬ事なれハ、あやまりもやあるらんと、 00121680L4あさゆふなるゝうしかひのわつはに見せたるは、名人のた 00121690L5いすうなれハこそ。 00121700¥N21¥J 00121710¥X 00121720L7廿一△昔、女のかミのゆひやうハ、ミな/名所(めいしよ)の/名(な)におふとい 00121730L8ふ。まつ/兵庫(ひやうご)又ハ/島田(しまた)なと、いつれも所の名しやといふ。 00121740L9さる者聞て、まだ有、/吹上(ふきあけ)といふハ/紀伊(きい)の国の名所といふ。 00121750L10されハ一座/興(けう)に入けるに、そはよりをろかなる男すゝミ出 00121760L11て、まだある、かうがいわけといふ。右の人&それハいつ 00121770L12くの名所そととへハ、われもしらぬといふて興をさました。 00121780¥N22¥J 00121790¥X 00121800L14廿二△昔、かしこからぬ者有。友たちにいふハ、けささるか 00121810L15たより文かきたか、あすの朝/斎(とき)をふるまハるゝ、是にふし 00121820L16(八ウ)(九オ挿画)きかある、/鴈(がん)をれうりせらるゝさうな、と 00121830L17きに鴈ハいな事しやといふ。友きゝて、それハ文のかきあ 00121840L18やまりかよみそこなひにてあらんといへハ、中&よミそこ 00121850L19なひにてハなし、二人まてに其文をよミてもらふた、いつ 00121860M1れもおなし事によまれた、其文に/猶(なを)/明朝(ミやうてう)/貴顔之(きがんの)時申上へ 00121870M2く候とある、されハきがんとハ春の/鴈(かん)の事てハないかとい 00121880M3ふた。 00121890¥N23¥J 00121900¥X 00121910M5廿三△昔、たんはのてゝうちくりといふハいかゝととふ者有。 00121920M6答ていふ、此事よろしからぬ/説(せつ)あれ共、まことハいにしへ 00121930M7たんはの百姓なるものゝ子にさかしきもの有、いとけなき 00121940M8ときその親秋山よりのかへるさにくりをひらい、すミかに 00121950¥G 00121960¥P303 00121970L1いりてわか子をあいするに、あまたのくりの中ちいさきく 00121980L2りをわか子に見すれハ、いとけなきもの、ちいさきハいや 00121990L3といふ心にやあたまをふりて、かふり+といふ事をする。 00122000L4又大きなるくりを見すれハ、うれしけなるかほはせして、 00122010L5(九ウ)おやへのついせうの心にやあらん、両の手をたゝき、 00122020L6てうち+といふ事をする。されハそれよりこのかた、手 00122030L7手をうつといふ心に、大なるくりを手&打くりといふなり。 00122040¥N24¥J 00122050¥X 00122060L9廿四△昔、ほめられてつきあかりする者有。手跡を人にミせ 00122070L10ける時、をの+、扨も+見事な事かな、其まゝ/弘法(こうほう)を 00122080L11ミるやうに思ふ、大師のさいたんてハないかとほめそやし 00122090L12けれハ、かの筆者ひとりことにいふやうハ、/入定(にうぢやう)ほときう 00122100L13くつなものハないといふた。 00122110¥N25¥J 00122120¥X 00122130L15廿五△昔、かしこうなきものよき子を持たり。しる人こと皆、 00122140L16/鴟(とび)かたかをうミたるといふ。親これをきゝて、中+うれ 00122150L17しがり、いよ+子をたかといハせ、われハとびといはれ 00122160L18たきと思ひ、さるかたへ親子めしよせられし時、/雉(きじ)をやき 00122170L19て出しけれハ、親のいふ、我らのせかれほと此雉をすく者 00122180M1ハ有まし、/鷹(たか)の生れかハりかしらぬ、我らハ又雉よりハ/鼠(ねすミ) 00122190M2かくひたいといふた。(十オ) 00122200¥N26¥J 00122210¥X 00122220M4廿六△むかし、大ちこのいへるハ、/下帯(したおひ)ほとついえないらぬ 00122230M5ものハない、かく事もむつかしい、され共/風呂(ふろ)へいる時ハ 00122240M6下帯かゝねハならぬ、とかくふろをはつとにしたいと、い 00122250M7はるゝ。小ちこ聞て、ふろへハめん+の心次第にて、い 00122260M8らふといるまいもまゝ也、下帯のためならハ、ふろよりハ 00122270M9夏を/法度(はつと)にしたかよいと。 00122280¥N27¥J 00122290¥X 00122300M11廿七△むかし、江戸あたりをありくかまはらひといふもの有。 00122310M12うたうたひ、かまとのまへにてまふ也。ある時、/神田(かんだ)のな 00122320M13へ町にゆき、家のうちへはいる所を、しもへ是ハ何ものそ 00122330M14といひしとき、いつもまいるかまはらひといふなり。しも 00122340M15べ、こゝハなへ町なれハ、かまはらひいらぬといへハ、か 00122350M16まはらひきゝて、こゝハかんだといへと、そのはうの目ハ 00122360M17両方なからよささうなほとに、なへ町へもかまはらひかく 00122370M18せ事てハあるまひといふた。 00122380¥Y1巻之四終(十ウ) 00122390¥P304 00122400¥T1/私可多咄(しかたはなし)△巻之五 00122410¥N1¥J 00122420¥X 00122430L3一△むかし+、なりひら、かすがのさとにてかいま見け 00122440L4るハ、/鰆(さハら)といふ魚にてハなかりつるかといふもの有。いか 00122450L5ゝといへハ、/伊勢物語(いせものかたり)にいとなまめいたる女、/腹(はら)からすミ 00122460L6と有程に。 00122470¥N2¥J 00122480¥X 00122490L8二△むかし+、はるか/遠国(をんこく)に/出家(しゆつけ)あり。/弟子(でし)にきうじを 00122500L9させて食くひける時、さん+でしをしかりぬるハ、何と 00122510L10ていつもゑびすおしきにハすゆるそといふ。でし聞て、さ 00122520L11れハその事、お大こくとならばせられて御ざる程に、ゑひ 00122530L12すおしきにすゆるといふた。 00122540¥N3¥J 00122550¥X 00122560L14三△昔、とつとかたゐなかに若き僧有。/善光寺(せんくハうじ)へまいる 00122570L15といふて、/同学(とうかく)のもの共にいとまこひして寺をいて、/妾(おもひもの) 00122580L16の所へまかりて日をゝくり、やう+/下向(けかう)の比になると、 00122590L17善光寺よりかへりたるふせいにて寺へもとりけれハ、寺中 00122600L18の僧共あつまり、さて+よき心さしかな、うらや(一オ) 00122610L19ましきなとゝいひ、さて善光寺のによらいハ、うすの上に 00122620M1ましますと承るか、さやうかととひけれハ、中&の事、う 00122630M2すの上におハします、しゆせうなるによらいなり、しかし 00122640M3なから如来にうすかにあハぬ、うすにハ大黒かよき物也、 00122650M4とてもの事ならハ、あの/如来(によらい)を此寺の大こくにしたい。 00122660¥N4¥J 00122670¥X 00122680M6四△昔、/色(いろ)このミの男有。/妻(つま)のもとをしのひ、さるかたに 00122690M7一夜とまり、後のあしたくら+にをきわかれ、ねまきに 00122700M8したるへにかのこの小袖をかさね、覚えす下にきて、わか 00122710¥G 00122720¥P305 00122730L1きる物を上にきて/宿(やと)へかへりたり。山の神これを見付、そ 00122740L2のべにかのこのきる物ハ、いつくのめらうめがわんぼそと 00122750L3せめとかめけれハ、男、へにかのこの小そてミておとろき、 00122760L4さて+そつじなる事と思ひ、何共いふへきやうもなく、 00122770L5あづきめしがくひたい、われハきつねしや、こん+くわ 00122780L6い+といふて、やふの中へかくれた。(一ウ)(二オ挿画) 00122790¥N5¥J 00122800¥X 00122810L8五△昔江戸にて、さるもの/禰宜(ねぎ)町へまかり、かふきの芝居 00122820L9にいたす花を見て、 00122830L10△△禰宜町のしはゐの花や神の/幣(ぬさ) 00122840L11其後又ゆき侍るとき、句一つと人のすゝめけれハ、 00122850L12△△ねき町ハ/湯立(ゆたて)か袖のあせしづく 00122860L13猶ゆき+て、/美(び)少年なとしたしミふかくなれハ、やミか 00122870L14たく/家職(かしよく)をもわすれぬれハ、 00122880L15△△ねき町の身にしミつくや/貧乏神(ひんほうかミ) 00122890L16市何とやらんいひしものに花とらせて、 00122900L17△△ねき町の市とのにやるや神楽銭 00122910¥N6¥J 00122920¥X 00122930L19六△昔、江戸のうかれめの有所ハ、/葭原(よしハら)とかやにすむ也。 00122940¥G 00122950M12此所へハよる行事ならねハ、さるものゝいふ、こゝのやし 00122960M13きわりの時、日なミの/吉凶(きつけう)によりて、夜ゆく事かならぬか、 00122970M14いかにといへハ、こよミによるゆかすといふ日かある、此 00122980M15ところの(二ウ)遊君ハ、雨ふる時あるひハ道あしきにハ、 00122990M16ろくろなはなと帯にしたる/奴(やつこ)の/背(せなか)にをハれて、行かふ有様 00123000M17いと興あれハ見んとせしまに、はや宿の門に入ぬれハ、た 00123010M18れかよミける、 00123020M19△△つゝゐつゝ井筒にかけしろくろ/縄(なハ) 00123030¥P306 00123040L1△△△/負(おひ)にけらしな身も見さるまに 00123050L2あとよりかふろハ肩/くま((ママ))にてきたるに、/全盛(せんせい)ちかく見ゆる 00123060L3子なれハ、これかれにもとつきて遊女かへし、 00123070L4△△くらへこしふり分かミの/肩(かた)くるま 00123080L5△△△君ならすして/誰(たれ)かあくへき 00123090L6となんよミしとなり。 00123100¥N7¥J 00123110¥X 00123120L8七△昔、かぶき子よひし者有。夜に入て其者きやらを取出 00123130L9し、たき侍るに、めつらしき/名香(めいかう)あるを折よく見付ぬれハ、 00123140L10是を少年にゆつらんと思ひ、色&取ませ、きぬにつゝミを 00123150L11きしをひろけ、わか心さすハ此名かう也、其外いつれにて 00123160L12もをくらんと、つゝミなから取さハき、したしきふせいに 00123170L13てひそかに見せ侍りしに、此名香とひとつきぬに、一/歩(ふ)の 00123180L14かた(三オ)ちしたる/万金丹(まんきんたん)有けれハ、少年是を夜目の事な 00123190L15れハ一歩かと思ひ、此比物をかい、ちと入事の有ほとに、 00123200L16是をもらハんといひて、万金丹を取たり。手に取てミて、 00123210L17あんの外なれハ手もちわろく、是か此中いかふほしく有け 00123220L18るか、大事の物ならハかへさう、此方にハいらぬといふた。 00123230L19扨&是ほとにか+しく、めいわくなる事ハなかつたと。 00123240¥N8¥J 00123250¥X 00123260M2八△むかし、/高野(かうや)に、とし六十になりてまへかミゆひたる 00123270M3者あり。/老僧(らうそう)と/風呂(ふろ)へいりけるに、六十になる若衆、わか 00123280M4身にしハのよりたるをミて、老僧にいふやうハ、いな事て 00123290M5皮かたるむといふ。老僧きゝて、今からちりめんの小袖を 00123300M6きるな、ちりめんをきるゆへ其様になるかといはれしハし 00123310M7ゆせう也。 00123320¥N9¥J 00123330¥X 00123340M9九△昔、九十六になるうは有。さるもの来りて、そなたを 00123350M10よき所へきもいらふ、ちらとミせてくれよといはるゝと云。 00123360M11うは聞て、よめいりの事と思ひいふやうハ、もはやいらさ 00123370M12る事か(三ウ)(四オ挿画)と思へ共、さりなから心ハはたちハ 00123380M13かりのいにしへにもかハらぬほとに、ともかくもたんかう 00123390M14せう、見たくハ見られう、さきハいつくそ、まゝ子ハない 00123400M15かととふ。答ていふ、さきハ面打也、そのはうをすこしの 00123410M16間やとふて、小町の面のかたにいたしたいといはるゝとい 00123420M17ふたれハ、うは、あんの外なる事なれハ、さん+ぶけう 00123430M18にて、九十六になる者か、小町の面のかたによくハ、百の 00123440M19銭をせよといふた。 00123450¥P307 00123460¥N10¥J 00123470¥X 00123480L2十△昔、/仏師(ふつし)のつまに/嫉妬(しつと)のふかき女房あり。もくさうつ 00123490L3くるにも/女躰(によたい)をつくれハねたむなり。ある時おつとのるす 00123500L4に、/弁才(べんざい)天をあつらへたきといふ者有。女はう出ていふや 00123510L5うハ、弁才天の事心得たり、しかしなからうしろつきハ弁 00123520L6才天にして、かほハ二/王(わう)にならハ作らせてやらふといふた。 00123530¥N11¥J 00123540¥X 00123550L8十一△昔、さるもの年たけたる子をもちぬれ共、思ハしき事 00123560L9なく、さハる事ありなとして、よめをもむかへさるに、 00123570L10(四ウ)ある時むすこ、こよミの/下段(げだん)を所&すミにてけした 00123580L11り。親ミつけて是ハ何事そといへハ、むすこいふやう、こ 00123590L12れのこよミにハ、よめとりによしといふ所かいらぬものし 00123600L13やと思ふて、そのふんをみなけしたといふた。 00123610¥N12¥J 00123620¥X 00123630L15十二△昔、一在所の/婦人(ふじん)とも、りんきかうをむすひし中に、 00123640L16ひとりおつとにわかれたるもの有。もはや今日よりりんき 00123650L17すへきおつともなし、かけせんとりかへさんと云。あまた 00123660L18の女の中に取わきりんきふかきものゝいはく、其方の/夫(おつと)し 00123670L19なれたれハとて、りんきか此世ハかりか、あの世へ女も死 00123680M1てゆけハ、たとひ仏になられても、ゆたんハせぬかよいと 00123690M2いふた。 00123700¥N13¥J 00123710¥X 00123720M4十三△昔、をいてきたる男有。親とつれたちてしうとのかた 00123730M5へはしめて行ける時、親のをしへけるハ、むこといふ者ハ 00123740M6はしめての時ハ、ミな人の見たかるものしや、さかつきの 00123750M7しだい万事に気をつけよといふ。むすこ、いかにも心得 00123760M8(五オ)たるとてしうとのかたへ行、さかつきの折ふし、/印= 00123770¥G 00123780¥P308 00123790L1篭(ゐん=ろう)よりそかうゑんを取いたし、さかつきににしり付たり。 00123800L2親これをミてひそかに、何事をするそといへハ、むすこ、 00123810L3此薬ハめいよの気付しや、/盃(さかつき)のしたい万事に気を付よと 00123820L4いはるゝほとに、気付薬を用るといふた。 00123830¥N14¥J 00123840¥X 00123850L6十四△昔、/棠陰比事(たういんひじ)にいはく、夫のるすに女のくひをきりて、 00123860L7むくろハかりふすまの下に有。夫かへりておとろき、女の 00123870L8一るいにしか+のやうたいなとミせ、我ハ夢にもしらす、 00123880L9るすのうちの事なりといふに、女のしんるい聞いれすして、 00123890L10をつとかわさならんと、奉行所へうつたへけるに、夫のい 00123900L11ふやうハ、いさゝかしらすと、有のまゝにいひけるを、奉 00123910L12行つく+ふんへつ有て、夫のいふ事すこしもいつハり有 00123920L13まし、是ハ/密通(ミつつう)のおとこ、かの女をつれてはしりたる物な 00123930L14るへし、あとにのこしをきたる(五ウ)(六オ挿画)むくろハ、 00123940L15/余(よ)の女のむくろハかりを/置(をき)たるものなるへし、さらハ/乞食(こつしき) 00123950L16共の中をせんさくして見んとてたつねられけるに、女のこ 00123960L17つしきのくひハかりすてたるあり。されハこそと、かのむ 00123970L18くろに引あハせ見られけれハ、そのくひなり。それより、 00123980L19まおとことはしりたる女もせんさく有ぬれハ、両人共にた 00123990M1つね出され、本夫ハなきとかをおハぬのミならす、/二(ふた)心の 00124000M2女、めかたき共に本望とけたり。 00124010¥N15¥J 00124020¥X 00124030M4十五△同/棠陰比事(たういんひじ)にいはく、/張挙(ちやうきよ)ハ/呉国(ごこく)の人なりけるか、/句= 00124040M5章(く=しやう)といふ所に夫をころし家に火をかけ、いつハりてわか夫 00124050M6やけ死たりといふ。此事夫の親類うけつけす、うつたへけ 00124060M7るに、/張挙(ちやうきよ)/双方(さうはう)をきゝて、ぶたを二疋取よせ、一疋ハころ 00124070M8し、一疋ハ生なから、たきゝをつミてやきて見られけれハ、 00124080M9はしめよりころしてやきたるふたハ、口の中に/灰(はい)すこしも 00124090M10なし、生なからやかれたるハ口中灰にてう(六ウ)つミたり。 00124100M11これによりてかの夫の口の中を見られたれハ、はいすこし 00124110M12もなし。夫をころしてのちに、家に火をかけやきたる物な 00124120M13りと、ぶたのせうこを見せられたり。其時女あらそハす、 00124130M14つミにおちけりとなり。 00124140¥N16¥J 00124150¥X 00124160M16十六△昔、うつくしき少年有。しかも/心底(しんてい)けなけにて、した 00124170M17しき/念人(ねんにん)をもてるに、さるおとこ、又此少年におもひをか 00124180M18けぬれハ、少年のいふやう、もとよりしたしむかたあれハ、 00124190M19わか心にまかせかたし、ゆるしたへよとことハるに、かの 00124200¥P309 00124210¥G 00124220L12おとこ、さあらハとてもいきて有へきにもあらす、さしち 00124230L13かへんといふ。少年きゝてすこしもおとろくふりもなく、 00124240L14われゆへかゝる事、此身のおもひて、なきあとのめんほく 00124250L15なり、ともにしでの山をたとらんといふ。男も、このむ所也、 00124260L16三づの川を手に手をくミてわたらんといふ。少年いよ+ 00124270L17かハるけしきなく、はや、刀のつかに手(七オ)(七ウ挿画)を 00124280L18かけけれハ、男此やうすをミて、少年のかたなのつかをお 00124290L19さへ、まてしハし、けふハ血いミしやといふてにけた。 00124300¥N17¥J 00124310¥X 00124320M2/十六((ママ))△昔、そつしなる/下部(しもべ)有。/八瀬(やせ)の木うる男のうしろすか 00124330M3たをミて、かミのゆひやう女とひとしけれハ、さらに男と 00124340M4ハ思ひもよらす、つか+とはしりより、うしろより袖を 00124350M5引たり。木うりの男ねちむきけれハ、つらハくまのかハの 00124360M6やうなるひけ男なれハ、しもへあきれはて、かの引たるそ 00124370M7てをもちて、此そてハたもとのやうなといふてのいた。 00124380¥N18¥J 00124390¥X 00124400M9/十七((ママ))△昔&、おさななしミより、ともしらがの/祖父(おほぢ)と/祖母(うば)有。 00124410M10/子孫(しそん)のさかえならふかたもなし。/財宝(ざいほう)まとしからす、/寿命(しゆミやう) 00124420M11と云/分限(ふんげん)といひ、めてたき事たくひまれなる/老翁老女(らうおうらうによ)有。 00124430M12されハ、此命なかく/堅固(けんご)なるをあやからせんとて、/源氏(げんじ)の 00124440M13なかれ何かしの子、/嫡男(ちやくなん)と二/番(ばん)めのむすめと二人か名付親 00124450M14に頼む。/翁(おきな)心得たりとて、まつ/惣領(そうりやう)を/楊名介(やうめいのすけ)と付たり。本 00124460M15親きゝ(八オ)て、/楊名介(やうめいのすけ)とハ/源氏物語(げんじものかたり)の三ケの大事の一つ 00124470M16と聞、又めてたき心こそ侍らんととふ。/翁(おきな)/答(こたへ)て、されハ 00124480M17其方ハ/源氏(けんじ)なれは、源氏にひさうするといふ心につけたと 00124490M18いふ。又二番めのむすめハ/老女(らうによ)を名付親に頼ミけるに、/小= 00124500M19枕(こ=まくら)とつくる。本親聞て、是もめつらしき名也、こまくらと 00124510¥P310 00124520L1ハ女のかミに用るうつハものならすや、むすめの名につけ 00124530L2らるゝハ、めてたき心有やととふ。/老女(らうによ)こたへて、小まく 00124540L3らいれてゆふかミハ、ぐなつかぬなり、されはかミかかた 00124550L4くなるといふ心につけたるとなり。まことにいわゐ事ハ、 00124560L5くちからにて、それよりたかひにいのち五百八十年+。 00124570¥Q 00124580L7△寛文十一年 00124590L8△△△△△△△△△△△△大伝馬三丁目 00124600L9△△△△辛亥孟春吉旦△△うろこかたや板(八ウ)