00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第五巻 00000030¥T宇喜蔵主古今咄揃 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L14延宝六年刊 00000070L15作者不詳 00000080L16中本五巻 00000090L17早大図書館蔵(巻一〜三) 00000100L18天理図書館蔵(巻四) 00000110L19京大文学部図書室蔵(鹿の咄蔵) 00000120¥Y宇喜蔵主古今噺揃序 00000130M3/何(いつ)れのときにかありけん、/瓢箪寺(へうたんじ)の/住侶(ちうりよ)/宇喜(うき)/蔵主(そうす)と申せし 00000140M4ハ、/一生(いつしやう)/浮世(うきよ)は/飛鳥川(あすかかハ)、きのふの/分別(ふんへつ)もけふハ人のあたと 00000150M5なり、/夢幻泡影(むけんはうやう)の/世(よ)の/中(なか)に、/何(なに)もかもない/本来(ほんらい)の/麺類(めんるい)ハ、 00000160M6/唯(たゝ)/喰(くふ)なりと思ひ取、/性空(しやうぐう)上人の/味噌豆(ミそまめ)も、/法然(ほうねん)の/釈(しやく)にて是 00000170M7をもり、/富士(ふじ)の人/穴(あな)の/勧進(くハんじん)に日を/暮(くら)し、あることないこと 00000180M8/狂言(きやうげん)/綺語(きぎよ)の/道(みち)すがら、/三仏乗(さんぶつぜう)のゑんざ/柿(かき)、/下手(へた)(一オ)の/噺(はなし) 00000190M9も/時(とき)いたれバ、/円月(ゑんけつ)の/窓(まと)の/内(うち)に/腹(はら)をかゝへ、/観念(くハんねん)の/床(ゆか)に手 00000200M10をたゝき、たそあるかいやい/太郎冠者(たらうくハじや)、ねんのふはやしみ 00000210M11じか/夜(よ)も、ねむりをさます/郭公(ほとゝきす)、/声立花(こゑたちはな)の/香(か)をかげバ、む 00000220M12かしハまつこふあつたとの、はなしに/骨(ほね)を/折句(おりく)さへ、/業平= 00000230M13餅(なりひら=もち)の/数(かす)をわすれ、/男(おとこ)なりけりやすら/殿(どの)、/首(かしら)をみずしてちゝ 00000240M14くハいと、/尾(お)もない事を/次第(おち)+に、/書集(かきあつめ)たる/笑草(わらひくさ)、/古今= 00000250M15噺揃(ここん=はなしそろへ)といふものならし。(一ウ) 00000260¥P4 00000270¥Y1宇喜蔵主古今噺揃第一目録 00000280L3一△/茶(ちや)の/湯者(ゆしや)の/利口(りこう)いふ事 00000290L4二△/元三(ぐハんざん)に/金銀(きんぎんゑ)え/方参(はうまい)りの事 00000300L5三△/誹諧師(はいかいし)/柳上(りうしやう)/公事(くじ)の事 00000310L6四△/田舎者(いなかもの)/伏見(ふしミ)下リ/船(ふね)の事 00000320L7五△せりやきの事 00000330L8六△/高野(かうや)/坊主(ぼうず)/指物屋(さしものや)/喧嘩(けんくハ)の事 00000340L9七△/狼(おほかミ)/松尾(まつのお)え/社参(しやさん)の事(一オ) 00000350L10八△/因幡(いなば)/薬師(やくし)/諸病(しよひやう)/威徳(いとく)の事 00000360L11九△/堺(さかい)/指物屋(さしものや)/又五郎(またごらう)事 00000370L12十△/田舎者(いなかもの)/京(きやう)/内参(うちまい)りの事(一ウ) 00000380¥T1 00000390¥N1¥J 00000400¥X一△茶の湯者利口いふ事 00000410M3/去人(さるひと)、/初(はつ)の/茶(ちや)の/湯(ゆ)を出され、/炉路(ろじ)、/囲(かこみ)、/手水鉢(てうずばち)まて、/清&(せい+)と 00000420M4水を入、きよらをつくし、/客(きやく)をもふけたまふ。其後、客も 00000430M5御出有。/数寄屋(すきや)に入給ひ、/掛物(かけもの)其外/気(き)を付、所&ほめなし、 00000440M6扨会/席(せき)/過(すぎ)けれハ、亭主、/炉(ろ)のもとになおり、客衆に一礼し、 00000450M7扨茶入の/蓋(ふた)をとると其まゝ、/天井(てんじやう)を/鼠(ねずミ)のあれけれハ、亭主 00000460M8こゝろへ、其まゝ茶入にふた(一オ)をする。一/座(ざ)の客、是 00000470M9を見て、扨も気の付たる/御作意(おんさくい)。すこしのほこりをいとふ 00000480¥G 00000490¥P5 00000500L1心ばせ、中+/今日(こんにち)の茶の湯なとゝほめけれハ、亭主/自慢(じまん) 00000510L2しぢうめんをつくり、しばしありてたてらるゝ。其後茶を 00000520L3茶/碗(わん)へいるゝと、又天井を鼠のあれけれハ、亭主あはて/赤= 00000530L4面(せき=めん)し、/何(なに)とすべきたよりもなく、茶/杓(しやく)を/脇(わき)へ/打(うち)すて、/鼻(はな)を 00000540L5つまんで、にやんといふた。(一ウ)(二オ挿絵) 00000550¥N2¥J 00000560¥X二△元三に金銀え方参りの事 00000570L8元三に、/丁銀(てうぎん)と/壱歩(いちぶ)とこま/銀(がね)と三人つれたち、/え方(ゑほう)参りを 00000580L9した。丁銀かいふやうハ、/互(たがい)に/旧冬(きうとう)はひまもなく、/商売(しやうばい)に 00000590¥G 00000600M1つかはれける。一/夜(や)あくれば、かやうに/長閑(のどか)になり、/民(たミ)の 00000610M2/竈(かまど)ハにぎはひ、/君(きミ)/万歳(ばんぜい)の/御代(ミよ)なれば、/我(われ)+もゆたかに/諸= 00000620M3国(しよ=こく)をめぐり、/諸人(しよにん)の/宝(たから)となり、かく/安楽(あんらく)にくらす事、/目出= 00000630M4度(めて=たき)事なとかたりける。壱歩(二ウ)が/聞(きゝ)て、もつとも/其方(そのほう)の 00000640M5/仰(おほせ)らるゝとをり、我+/程(ほと)/世(よ)に/重宝(ちやうほう)せらるゝ/物(もの)ハ、又ある 00000650M6まひ。/去(さり)ながら、/面(めん)&の/身(ミ)の/上(うへ)には、ふしやうといふ物が 00000660M7有が、丁銀殿ばかり、身にふしやうハ有まい。あまり/小家(こいゑ) 00000670M8へも/行(ゆき)たまハず、/誰(たれ)の/封(ふう)かれの/包(つゝミ)とて、さのミ人にもあは 00000680M9ず、のつしりと/暮(くら)さるゝ。/果報(くわはう)の人じやといふた。丁銀、 00000690M10是を聞て、もつとも其方ののたまふことく、あまり/貧(ひん)なる 00000700M11/者(もの)の(三オ)手へは/渡(わた)らす、こまばたらきはせねども、/爰(こゝ)に 00000710M12ひとつのふしやうがある。/先(まつ)/世間(せけん)に/大分(たいぶん)の/銀持(かねもち)がおほきに 00000720M13よつて、/某(それがし)を/松板(まついた)の/箱(はこ)に/入(いれ)、/土蔵(どぞう)に/積重(つミかさね)て/置(おく)ときハ、/息(いき)も 00000730M14/自由(じゆふ)にならぬ。これほど/迷惑(めいわく)な事ハないといふた。壱歩か 00000740M15聞て、いかにも、/左様(さやう)のふしやうハあるものじや。某も世 00000750M16間にてハ、あるひハ/遊山(ゆさん)/遊興(ゆうきやう)にハ/花(はな)の/露(つゆ)のといふて、/前巾= 00000760M17着(まへきん=ちやく)/紫(むらさき)ふくさより出て、(三ウ)かどや+といふて/重宝(ちやうほう)ハ 00000770M18せらるれ共、/世間(せけん)に/目(め)の/利(きゝ)たるものハすくなく、多/分(ぶん)が目 00000780M19のきかぬものゝ手にわたれは、よひかわるひかと、たび 00000790¥P6 00000800L1+/歯(は)にあてゝみる時に、何が/口中(こうちう)のくさい/歯(は)にあつるに 00000810L2よつて、其まゝ/色(いろ)がかはつて、じゆつなさ何にたとへられ 00000820L3ぬ。/兎(と)に/角(かく)に、こま/銀殿(かねどの)がましじやといふた。まめ/板(いた)聞て、 00000830L4されば某ハ、/節季(せつき)物ぎはには、/貴賎(きせん)上下のわかち(四オ)も 00000840L5なく、心やすく人&の手に/渡(わた)り、/賞翫(しやうくハん)ハしらるれども、又 00000850L6/気(き)のどくな事が有。あるひハ/寺方(てらかた)、/医師(くすし)、/物(もの)の/師匠(ししやう)へ/包(つゝ)ま 00000860L7れて/行(ゆく)ときハ、おほひかすくなひかと、/度(たび)&手にてひねら 00000870L8るゝに/迷惑(めいわく)するといふた。(四ウ)(五オ挿絵) 00000880¥N3¥J 00000890¥X三△誹諧師柳上公事の事 00000900L11/去国(さるくに)に、/誹諧師(はいかいし)/柳上(りうしやう)といふ/者(もの)あり。すこしの/庵(いほり)をむすび、 00000910L12誹諧の/善悪(せんあく)をものし/居(ゐ)られたり。/去上方衆(さるかミがたしゆ)、柳上に申さる 00000920L13ゝハ、かゝる/鄙(ひな)にすまんより上方に/登(のほ)り、/興行(こうぎやう)をしたまは 00000930L14ゞ、/身(ミ)の/幸(さいはい)となるべきと、/千度(ちたび)/百度(もゝたひ)いさめけれハ、柳上、 00000940L15ほとんど心/打(うち)とけ、かの人と上方へのぼり、誹諧をいたさ 00000950L16れしに、/彼(かの)人、/初(はしめ)の/契約(けいやく)と/相違(さうい)し、柳上(五ウ)身の上ハす 00000960L17こしもかまはす、あまつさへ、/後(のち)+はうとくなりけれハ、 00000970L18柳上、中+/腹立(ふくりう)し、/身上(しんしやう)のたよりとも成へきと申つゝ、 00000980L19かく/是(これ)までつれ/来(きた)り、かやうにるらうをさする事、/死(しゝ)ても 00000990¥G 00001000M11わすれぬうらみなりとおもひ、いか/様(さま)にも、/国(くに)の/守(かミ)にうつ 00001010M12たへ、身の/理非(りひ)をわかたんとおもひ、/所(ところ)のつかさへ、しか 00001020M13+のよし申上、すこしの/賄(まひない)もとりたきよし申ける。国の 00001030M14守きこしめしあげさせられ、/若(もし)其(六オ)/証拠(しやうこ)ばし有かと御 00001040M15/尋(たつね)有けれハ、柳上、いかにも証拠御座候とて、/古(ふる)き/懐紙(くハいし)の 00001050M16ミつ物を/取(とり)出し、/是(これ)/御覧(こらん)あそばされ候へとて、/指上(さしあく)る。 00001060M17△△△△/発句(ほつく) 00001070M18△△/此池(このいけ)の/柳上(りうしやう)はなをしげりかな 00001080M19△△△うしろだてには山ほとゝぎす△柳上 00001090¥P7 00001100L1△△一寸も/跡(あと)へハさらぬ月さして 00001110L2是ほとなる/証拠(しやうこ)ハ/御座(ござ)なきとて、/皃(かほ)をあかめ(六ウ)て申上 00001120L3る。国の守/聞召(きこしめし)、/一入(ひとしほ)おかしくおほしめし、さあらハ、四 00001130L4/句(く)めを/某(それかし)つけん。是にて/堪忍(かんにん)いたせとて、やがて御付なさ 00001140L5れける。 00001150L6△△△むしやうなものゝあつまりの秋 00001160L7とあそばしけれハ、/御近習衆(ごきんしゆしゆ)、五句目を御付なされける。 00001170L8△△/葛袴(くすはかま)/露(つゆ)うちはらひたちませい 00001180L9柳上、なにとも/言葉(ことば)なく、すこ+と/帰(かへ)りき。(七オ)(七ウ 00001190L10挿絵) 00001200¥N4¥J 00001210¥X四△田舎者伏見下リ船の事 00001220L13/去遠国(さるおんごく)の/者(もの)、/親子(おやこ)つれだち/伏見(ふしミ)の/船(ふね)にのり、大/坂(さか)さして下 00001230L14りける。/淀(よと)の/御城(おんしろ)をみて/息子(むすこ)かいふやうハ、いかに/親仁(おやぢ)。 00001240L15此御城をたつるに、五百匁ほども/銀(ぎん)か入事かといふた。/親= 00001250L16仁(おや=ぢ)聞て、/扨(さて)も+、/汝(なんじ)はおろかな事をいふものかな。此御 00001260L17/城(しろ)をたつるに、拾/貫(くハん)目のかねが/残(のこ)るものかといふた。 00001270L18△△△親仁の/異見(いけん)/聞事(きゝごと)なり。(八オ) 00001280¥N5¥J 00001290¥X五△芹焼の事 00001300M3/去(さる)人、/芹(せり)やきを/喰(くふ)て、何と、此せりやきハ、/火(ひ)にあぶるも 00001310M4のにてハなきに、/芹煮(せりに)とか/煮芹(にせり)とかいふべきものなるに、 00001320M5/芹(せり)やきといふ事ハ、不/思儀(しぎ)なることじやといふた。かたゑ 00001330M6なる人のいふやうハ、まだ芹ハ、/鍋(なべ)にて/煮物(にるもの)じやさかいに、 00001340M7やくといふ/縁(ゑん)も有が、まつさら/火(ひ)のけもないに、/月代(さかやき)とい 00001350M8ふ事さへ有といふた。(八ウ) 00001360¥G 00001370¥P8 00001380¥N6¥J 00001390¥X六△高野坊主と指物屋喧嘩の事 00001400L3/高野(かうや)/坊主(ぼうす)といふて、/都方(ミやこがた)の/門+(かど+)に、/札(ふだ)を出す/出家(しゆつけ)有。/去= 00001410L4町(さる=てう)の/指物屋(さしものや)にゆき、/例(れい)の札を出しけれハ、/亭主(ていしゆ)、/是(これ)を見て、 00001420L5/中(なか)+/札(ふた)をうつ事/無用(むよう)。/某(それがし)ハ/代&(だい+)/日連宗(にちれんしう)なれハ、/他宗(たしう)のち 00001430L6からハたのまぬと、おこがましくぞ申ける。/坊主(ほうず)聞て、扨 00001440L7もけんどん/愚痴(ぐち)なる人と、/悪口(あつこう)しけれハ、/亭主(ていしゆ)/腹(はら)をたて、 00001450L8そこな/糞虫(くそむし)、/何(なに)といふぞ申ける。坊主聞て、中+(九 00001460L9オ)の事。/三衣(さんゑ)を/着(ちやく)す/沙門(しやもん)をハ、/糞虫(くそむし)といふ事、もつての 00001470L10外の/雑言(ぞうごん)也。此/糞虫(くそむし)のいはれをきかんとぞ申ける。亭主聞 00001480L11て、何と、/糞虫(くそむし)といふか/腹(はら)が/立(たつ)か。/其方(そのはう)は高野より/出(いづ)ると 00001490L12いはぬか。それなれハ/糞虫(くそむし)よと申ける。坊主/閉口(へいこう)し、とか 00001500L13ふの/返答(へんとう)に及ばず。それなれハ、/己(をのれ)ハ/糞喰(くそくらひ)よと申ける。/亭= 00001510L14主(てい=しゆ)聞て、/暦&(れき+)の/指物屋(さしものや)を、/糞喰(くそくらい)と申ハ、いかなることぞ。 00001520L15此いはれをきかんとぞ申ける。/坊主(ぼうず)聞て、/己(おのれ)ハ指物屋なれ 00001530L16ハ、/箱(はこ)してくらハぬか。それなれハ/糞喰(くそくらい)といふた。(九ウ) 00001540L17(十オ挿絵) 00001550¥N7¥J 00001560¥X七△狼松尾へ社参の事 00001570M1/洛外(らくぐハい)に/狼(おほかミ)の/出(いで)、/田地(でんち)をあらし、人を/取(とり)けれハ、/里(さと)人/難義(なんぎ) 00001580M2におもひ、/松尾(まつのお)の/明神(ミやうじん)へ/湯(ゆ)を参らせ、/狼(おほかミ)の人をとらぬやう 00001590M3にと/願(ぐハん)をかけけり。明神の/詫宣(たくせん)に、/此後(こののち)ハ何事も有まじき 00001600M4と、/狼(おほかミ)を/制(せい)しさせ給ひける。時に狼共、松尾へ参り、なげ 00001610M5き申/様(やう)、/只今(たゞいま)/野山(のやま)に、/我&(われ+)の/食物(しよくもつ)御座なきゆへに、/里(さと)に出 00001620M6て人を取申に、かやうに明神のとがめゆへ、人を/取(とる)事も 00001630M7(十ウ)ならず、何とも/食物(しよくもつ)に/迷惑(めいわく)つかまつり候と申上る。 00001640M8/明神(ミやうじん)/聞召(きこしめし)、/汝等(なんぢら)も/不便(ふびん)の事也。其/儀(ぎ)ならハ/出家(しゆつけ)をとりて 00001650¥G 00001660¥P9 00001670L1ぶくせよ、出家ハ/第(だい)一/慈悲(じひ)の/者(もの)なれハ、うへたる/虎(とら)に/身(ミ)を 00001680L2あたへ、/鳩(はと)のかはりに/身(ミ)をすつる。其ながれをくむものな 00001690L3れハ、出家をとれとぞ/仰(おほせ)ける。/狼(おほかミ)ども/承(うけたまハ)り、こはかたし 00001700L4けなしとて、/御前(ごせん)をたち、/扨(さて)/里(さと)に/出(いて)、/出家(しゆつけ)をとらんと/待(まち)に 00001710L5けり。/折節(おりふし)、/盆前(ぼんまへ)の事なるに、/法界(ほうかい)の/施餓鬼(せがき)を申/坊主(ぼうず)、/里(さと) 00001720L6(十一オ)+を/通(とを)りける。狼、是をミて/願(ねが)ふところの/幸(さいはい)と、 00001730L7やがて/坊主(ほうず)に/喰付(くいつき)けり。坊主きもをつぶし、/鐃鉢(にようはち)をなげか 00001740L8くる。狼、/煎餅(せんべい)かとおもひ、/頓而(やがて)/喰付(くいつき)けるが、かねのせん 00001750L9べいはくはれぬとて、又坊主にとんでかゝる。坊主せんか 00001760L10たなさに、/懐(ふところ)より阿/弥陀経(ミだきやう)をとり出し、/狼(おほかミ)になげかくる。 00001770L11狼、是を見て、/奉加帳(ほうがちやう)かとおもひ、こそ+とにげた。 00001780L12(十一ウ)(十二オ挿絵) 00001790¥N8¥J 00001800¥X八△因幡薬師諸病威徳の事 00001810L15/因幡薬師(いなばやくし)と申/霊験(れいけん)あらたなる/薬師(やくし)おはします。/堂(だう)のまへに 00001820L16/為池(ためいけ)の/有(あり)けれハ、/町中(てうぢう)/談合(だんこう)して/住寺(じうじ)に申けるハ、かやうに 00001830L17町の内に/為池(ためいけ)/御(ご)座候て、/往来(わうらい)の/妨(さまたげ)になり申候間、此/堀(ほり)を/埋(うづ) 00001840L18み、/町家(まちや)を/立(たて)たきよし申ける。/往寺(ぢうじ)/聞召(きこしめし)、もつとも、町家 00001850L19をたてたらハ、/町内(てうない)も/賑(にぎは)ひ申べけれども、よく合/点(てん)をした 00001860¥G 00001870M11まへ。/薬師如来(やくしによらい)ハ、/諸(しよ)(十二ウ)/病(びやう)に/薬(くすり)をあたへなされ、/人間(にんげん) 00001880M12/身(ミ)の/上(うへ)の/病(やまひ)をあはれミまします/仏(ほとけ)なるに、/薬師(やくし)の/面(おもて)に/疔(てう)が 00001890M13/出来(でき)たらは、何とならふぞとおほせける。/町人(てうにん)聞て、それ 00001900M14ならハ、/町(てう)といたして、いゑじ/ゝ((くカ))をあげませふといふた。 00001910M15(十三オ)(十三ウ挿絵) 00001920¥N9¥J 00001930¥X九△堺指物屋又五郎事 00001940M18/堺北(さかいきた)の/庄(しやう)に、/指物屋(さしものや)又五郎といふ者あり。一/生(しやう)/文盲(もんもう)なる 00001950M19/者(もの)なるが、/女房(にようばう)をむかへけるに、此女房、/上方(かミがた)のものにて、 00001960¥P10 00001970L1ものごと/尋常(じんじやう)に、/姿(すがた)かたちもあてやかに、/和歌(わか)の/道(みち)もたし 00001980L2なミ、/勧学院(くハんがくゐん)の/雀(すゞめ)とやらんにて、/習(なら)はぬ/文字(もじ)も覚え、何に 00001990L3ても/文字(もじ)にて/返答(へんどう)したりける。/住吉(すミよし)の/御秡(おはらひ)に、又五郎一/門(もん) 00002000L4のよびけるが、折ふし/肴(さかな)の一/種(しゆ)(十四オ)もあらざれハ、女房 00002010L5に申けるハ、其方ハいそぎ/浜(はま)にゆき、/客(きやく)の/馳走(ちそう)に/肴(さかな)をもと 00002020L6めよと申ける。女房其まゝ、/文字(もじ)にて/返答(へんとう)したりけり。/海= 00002030L7上(かい=しやう)/波(なミ)あらくして、/魚網(ぎよもう)に/便(たより)なしとぞ申ける。又五郎聞て 00002040L8/腹(はら)をたて、あの女房ハ、何をいふても/唐人(とうじん)の/言葉(ことば)のやうに 00002050L9て、かいしき/物(もの)のやくにたゝぬ。/今日(けふ)よりしてハいづくへ 00002060L10も/出(いで)てゆけ。/夫婦(ふうふ)の/縁(ゑん)も/是(これ)までなりと、其まゝさりにけり。 00002070L11女房、何と(十四ウ)すべきよすがもなく、/涙(なミだ)とともになく 00002080L12+/別(わか)れけり。/其後(そののち)、/年(とし)をへて、又五郎/京(きやう)へのぼり、三/条(でう) 00002090L13の/大橋(おほばし)にて、/彼(かの)女房に/行合(ゆきあひ)にけり。又五郎もひさしきなじ 00002100L14みなれば、其まゝたちより、/扨(さて)も+/久(ひさ)しうあはなんだ。 00002110L15して+、今ハ/所帯(しよたい)をもするか。又ハみやづかへにてもす 00002120L16るか。なつかしいなど申。扨たゞ今ハ、いづくへゆくとた 00002130L17づねける。女房、又/文字(もじ)にて/返答(へんとう)をしたりけり。/旦那(たんな)の/使= 00002140L18者(し=しや)に、/東(ひがし)(十五オ)/山(やま)/清水寺(せいすいじ)/辺(へん)へ/云&(うん+)といふた。又五郎聞て、 00002150L19そのこゝろゆへにぞ、かやうに/夫婦(ふうふ)もわかるれ。/扨(さて)もじや 00002160¥G 00002170M11うのこわき/女(おんな)かなと、/扇(あふぎ)をあげてたゝきける。女房、また 00002180M12文字にて返答をした。/離別(りへつ)の/後(のち)の/打擲(ちやうちやく)、/頗(すこぶる)/本意(ほんい)にあらず 00002190M13といふた。(十五ウ)(十六オ挿絵) 00002200¥N10¥J 00002210¥X十△田舎者親子つれ京内参りの事 00002220M16/去田舎者(さるいなかもの)/親子(おやこ)つれ立、/京内参(きやううちまい)りをした。何が/余国(よこく)にちがひ、 00002230M17京都のにぎはひ、/商人(あきんど)の/売買(ばい※)、/町小路迄(まちこうじまで)/繁昌(はんじやう)なれハ、かの 00002240M18/息子(むすこ)がいふやうハ、いかに/親仁(おやぢ)。/我(われ)/方&(ほう+)をミれども、かほ 00002250M19ど/大(おほ)きなる/所(ところ)はなし。/日本国(にほんこく)といふハ/爰(こゝ)の事かととふた。 00002260¥P11 00002270L1/親仁(おやぢ)聞て、扨も+、わけもなひ事をいふ/者(もの)かな。/汝(なんぢ)がや 00002280L2うなる子をもてハ、/親(おや)の/名(な)までくだす。/日本国(にほんごく)といふハ、 00002290L3是三つ/合(あハ)した/程(ほど)有といふた。(十六ウ) 00002300¥Y1宇喜蔵主古今噺揃第二目録 00002310M3一△/謡(うたひ)/勘太(かんた)に/弟子(てし)手をとらす事 00002320M4二△/陽気者(やうきもの)/稲荷(いなり)まいりの事 00002330M5三△/練物(ねりもの)屋/親子(おやこ)の事 00002340M6四△下しやく/腹(ばら)/親父(おやぢ)の事 00002350M7五△/東(ひかし)山/雷(かミなり)/評判(ひやうばん)の事 00002360M8六△/俄(にはか)/分限者(ぶけんしや)の事 00002370M9七△/太皷持(たいこもち)/帳(ちやう)の/上書(うハかき)の事(一オ) 00002380M10八△/有徳人(うとくじん)/世(よ)に/落(おち)ぶれし事 00002390M11九△/薮医師(やぶぐすし)/道庵(どうあん)の事 00002400M12十△/吉弥(きちや)かうやくの事(一ウ) 00002410¥P12 00002420¥TI 00002430¥N1¥J 00002440¥X一△謡勘太に弟子手をとらす事 00002450L3/謡(うたひ)の/師(し)をする/者(もの)に/勘太(かんた)といふ人有。/生(うま)れつきのしわきもの 00002460L4にて、/朝夕(てうせき)もかつ※にくらしける。されども/弟子(でし)どもあ 00002470L5また有。/毎夜(まいや)/稽古(けいこ)をいたしけり。/夜(よる)の/稽古(けいこ)に/火(ひ)をともすと 00002480L6いふ事もなく、/弟子(でし)壱人/来(きた)れハわづかに/灯心(とうしん)をかゝげ、/火= 00002490L7打箱(ひ=うちばこ)をそバにおき、/稽古(けいこ)をさせけり。弟子うたひけるに、 00002500L8さつ+の/声(こゑ)ぞたのしむと、きり(一オ)をうたひしまふと、 00002510L9そのまゝ/火(ひ)をふきけし、よふ御/座(さつ)たとて/帰(かへ)しける。/又(また)/余(よ)の 00002520L10/弟子(でし)/来(きた)ると、そのまゝ火をうち、/灯心(とうしん)のたてうたわせける。 00002530L11/木陰(こかけ)を/旅(たひ)のやどゝせバ、花こそあるじなりけれと、うたひ 00002540L12しまふと、又先のことく、よふ御ざつたといふて/火(ひ)をけし 00002550L13にけり。その中にこざかしき/弟子(でし)有。/勘太(かんた)がやうすをみて、 00002560L14/少(すこし)の/油(あぶら)をいとひ、うたひしもふとかへす事、あまりしわき 00002570L15ことゝ/腹立(ふくりう)し、どこぞに(一ウ)(二オ挿絵)て/恥(はぢ)をあたゑん 00002580L16とおもひ、/去夜(さるよ)/稽古(けいこ)にゆきにけり。又/勘太(かんた)、とうしんの/立(たて) 00002590L17うたわせけり。やがてなおり、うたひけるに、しまふとそ 00002600L18のまゝ火をけしにけり。/弟子(でし)/庭(には)へをり、/石踏(せきだ)がみえませぬ。 00002610L19火をしろくして/下(くだ)されと申ける。勘太申/様(やう)、はき/物(もの)を/左様(さやう) 00002620¥G 00002630M11ニ/麁相(そそう)にせぬもの也。/不調法(ぶてうはう)などゝしかりける。されども 00002640M12弟子、かねてたくみし事なれバ、心におかしくおもひ、い 00002650M13かにしてもみえませぬほど(二ウ)に、火をともしてくださ 00002660M14れと申ける。/勘太(かんた)、せんかたなさに/火打(ひうち)を/持(もち)出て、/庭(にハ)にて、 00002670M15それかこれかと火をうちて、/火燧(ひうち)のひかりにておしへける。 00002680¥N2¥J 00002690¥X二△陽気者稲荷参りの事 00002700M18/去陽気(さるやうき)なる/者(もの)、/初午(はつむま)に/稲荷(いなり)えまいりける。/所(ところ)せきまて/幕(まく)を 00002710M19打、/七日(なぬか)ひさらぬ/滝(たき)のひゞきに、/声(こゑ)をよそへうたひ、/酒(さけ)た 00002720¥P13 00002730L1ふべあそびける。つれの人申/様(やう)、是から/西北(せいほく)にあたつて/嶋= 00002740L2原(しま=ばら)がみゆると(三オ)(三ウ挿絵)いふた。かのやうきもの、 00002750L3どれ+、どこからみゆるぞ。此/森(もり)の/通(とをり)にあるといふた。 00002760L4時にもはや此/陽気者(やうきもの)、心うかれ/扇(あふぎ)を/鼻(はな)にあて、さても/命(いのち)は 00002770L5有ものかとうたふた。 00002780L6△△△/千貫目(せんぐハんめ)あるともたまるまひ心ざし。 00002790¥N3¥J 00002800¥X三△練物屋親子の事 00002810L9/昔(むかし)/練物屋(ねりものや)に/生得(しやうとく)/親子(おやこ)共に/麁相(そさう)なる/者(もの)あり。/近所(きんじよ)に手あや 00002820¥G 00002830M1まちの有けれは、/先(まつ)/親父(おやぢ)かおきて、あ(四オ)はてふためき、 00002840M2/下帯(したおひ)をとりちがへ、一/疋(ひき)/有(ある)ねり/絹(きぬ)のはしをとり、下帯かと 00002850M3おもひ、やかてしられつゝ、子共、/御内(ミうち)の/者(もの)をおこしけり。 00002860M4むす子も/親父(おやぢ)の/声(こゑ)におどろき、やがておきあがり、是も下 00002870M5帯をとりちがへ、親父のしられたる絹のはしを、またかき 00002880M6にけり。/何(なに)が壱/疋(ひき)の/絹(きぬ)を/親子(おやこ)して、/庭(にハ)を/引(ひき)ずりけるほどに、 00002890M7絹の/中(なか)に火ばしのかゝり、ちん+となりけれは、むす子 00002900M8かいふやうハ、おやぢ、しづかにあゆましやれ。あと(四 00002910M9ウ)(五オ挿絵)から/雑色衆(さうしきしゆ)が御ざるやら、かな/棒(ほう)がなるとい 00002920¥G 00002930¥P14 00002940L1ふた。 00002950¥N4¥J 00002960¥X四△下しやく腹親父か事 00002970L4さる/太皷持(たいこもち)、/有徳人(うとくしん)につれだち/祇園(きおん)参りをした。/何(なに)か/結講(けつこう) 00002980L5なる/躰(てい)をして、/太皷(たいこ)を/持(もち)ありきけるが、/道(みち)にて/親(おや)にあひに 00002990L6けり。/本(もと)よりまづしきおやなれハ、/肩(かた)をむすんてすそにさ 00003000L7げ、/古糟買(ふるかすかい)をしたりけるが、/祇園(きおん)の/石壇(いしだん)にてむす子にはた 00003010L8とあひにけり。/親(おや)、是をみてむす子にいふやうハ、/今日(けふ)(五 00003020L9ウ)はいつくへ/行(ゆく)とたづねける。むす子、/赤面(せきめん)していたりし 00003030L10が、さすか親の事なれハ、/今日(けふ)ハたれさまの/振舞(ふるまひ)に/円山(まるやま)へ 00003040L11/行(ゆく)とこたへた。親父聞て、一/段(たん)+、/早速(さつそく)かへれと申つゝ、 00003050L12/互(たがひ)にわかれけり。/有徳人(うとくじん)是をミて、/只今(たゝいま)の/古糟買(ふるかすかひ)ハ、/其方(そのほう) 00003060L13ためにハ何ものぞ。ことの/外(ほか)にいんぎんなるあいさつとた 00003070L14づねられけれハ、かの/太皷持(たいこもち)、せんかたなさに、あれこそ 00003080L15/私(わたくし)がげしやくばらの親父じやといふた。(六オ) 00003090¥N5¥J 00003100¥X五△東山雷評判の事 00003110L18/下京(しもきやう)の/者(もの)、/町振舞(てうふるまひ)に/東山(ひかしやま)へ/行(ゆき)けるが、/俄(にハか)に/白雨(ゆふだち)ふり/神鳴(かミなり)し 00003120L19きりになりにけれハ、あそこ/爰(こゝ)にかゞまり/居(ゐ)たりけり。/折(おり) 00003130¥G 00003140M11ふしやねのもりけれハ、/亭坊(ていぼう)、もりをとめんとおもひ、/天= 00003150M12井(てん=じやう)の/上(うへ)へ/丸(まる)はだかにて、たらいを/持(もち)て/上(あげ)られけるが、何と 00003160M13してか/亭坊(ていぼう)ふミはずし、/天井(てんじやう)より/落(おち)られけり。人&おもひ 00003170M14よらざれハ、一/座(ざ)のもの/興(けう)をさまし、それこそか(六ウ)み 00003180M15なりとさわぎ、/仏前(ふつせん)、/納戸(なんど)、かこゐの/内(うち)、それ※へかゞみ 00003190M16ける。/亭坊(ていぼう)ハあはて、たらいを/前(まへ)にかゝへ、めんぞうさし 00003200M17てにげ入給ふ。やう+/雨(あめ)もしづまりけれハ、一/座(ざ)の/者(もの)ど 00003210M18も申やう、扨も+すさまじき/神鳴(かミなり)の/落(おち)やうかな。何と、 00003220M19/神鳴(かミなり)ハ何じやとおぼしめす。一人かいふやうハ、何じやハ 00003230¥P15 00003240L1しらす、/酒桶(さかおけ)をおとすやうなものじやといふ。壱人かいふ 00003250L2やうハ、/中(なか)+、/地蔵(ぢぞう)のやうなものしや共いひ、/口(くち)※に 00003260L3(七オ)(七ウ挿絵)申けり。/其時(そのとき)/町(てう)の/年寄(としより)申さるゝハ、いづ 00003270L4れものせんぎハ、ミなちがひました。只今の神鳴ハ/某(それがし)のよ 00003280L5くみたが、/絵(ゑ)にかいたとはちがふて、/先(まつ)神鳴の/生躰(しやうたい)は/坊主(ぼうず) 00003290L6じや。/太皷(たいこ)も/沢山(たくさん)にはなひ。たゞひとつしや。其ひとつの 00003300L7たいこをまへにかゝへられたが、そのしたに、ばちが一/本(ほん) 00003310L8あつたといはれた。 00003320¥N6¥J 00003330¥X六△俄分限者の事 00003340L11下京に/俄(にハか)/分限(ぶげん)なる人有。/物(もの)ごと/文盲(もんもう)にてくらさ(八オ)れけ 00003350L12る。されども手前/有徳(うとく)にありけれハ、/暦&(れき+)の/娘(むすめ)を/領惣嫁(そうりやうよめ)に 00003360L13とられけり。/婚姻(こんいん)めでたくおさまれハ、しうとの方に/膝直(ひさなを) 00003370L14しを/催(もよを)しける。何か/初而(はしめて)の/客(きやく)なれハ、/書院(しよゑん)/広庭(ひろにハ)、/炉路(ろぢ)/飛石(とびいし)、 00003380L15かゞみのごとくみがきたて、からの/大和(やまと)の/宝物(たからもの)/其外(そのほか)の/調度(てうど) 00003390L16まて、/爰(こゝ)をはれとかざりける。その日/限(げん)になりぬれは、/惣= 00003400L17領(そう=りやう)をめしつれて、しうとの/方(かた)へ/行(ゆき)にけり。/本(もと)より/炉路入(ろぢいり)の 00003410L18わけもなく、/上座(しやうさ)にこそハなをられ(八ウ)けれ。されども、 00003420L19/違棚(ちがひたな)、/書院(しよゑん)のかざり/道具(どうぐ)にいたるまで、かた/言(こと)まじりにほ 00003430M1めなしける。/亭主方(ていしゆかた)にハ/爰(こゝ)をはれとおもひ、/床(とこ)に/牧渓(もつけい)の/猿= 00003440M2猴(ゑん=こう)の/絵(ゑ)をかけにけり。其時かの/文盲(もんもう)/第(だい)一の/男(おとこ)、/床(とこ)わきにお 00003450M3しなおり、先/懸物(かけもの)をほめけるが、/猿猴(ゑんこう)の/絵(ゑ)をみしらず。/亭= 00003460M4主(てい=しゆ)にむかつていふやうハ、扨も+/見(ミ)事なる/掛物(かけもの)かな。こ 00003470M5れハどこの/和尚様(おしやうさま)じやといふた。/亭主(ていしゆ)あきれてゐたりける 00003480M6が、あまり/笑止(しやうし)さに、是ハ/牧渓(もつけい)/和(お)(九オ)(九ウ挿絵)/尚(しやう)の/筆(ふで) 00003490M7にて、/絵(ゑ)は/猿猴(ゑんこう)でござるといふた。其時、扨ハ/吉田(よしだ)のゑん 00003500M8こうで/御座(こざ)るか。ながい/手(て)で、つれ+をよふかゝれまし 00003510M9たといふた。 00003520¥G 00003530¥P16 00003540¥N7¥J 00003550¥X七△太皷持帳の上書の事 00003560L3/去太皷持(さるたいこもち)、/有徳人(うとくしん)とつれだち/嶋原(しまばら)がよひをしたりける。/折= 00003570L4節(おり=ふし)/盆(ぼん)の事なれハ、おもひ+に/宿(やど)+にて、おどりをはじ 00003580L5め、たはむれける。かの/太皷持(たいこもち)、/本(もと)よりこのむわざなれハ、 00003590L6/爰(こゝ)をせん/と((ママ))ぞくるひける。何とかした(十オ)りけん、/懐(ふところ)よ 00003600L7りもひさうの/帳(ちやう)をおとしける。/座中(ざちう)の/者(もの)是をみて、/商人(あきんど)な 00003610L8らハふところに/帳(ちやう)も有べきが、ふしぎなりとて、とりあけ 00003620L9てみれハ、/方(ほう)+の/客衆(きやくしゆ)よりのもらひものを付にけり。た 00003630L10れさまより/金子(きんす)壱/両(りやう)、どなたさまより/羽織(はおり)壱つなどかいて 00003640L11あり。/扨(さて)/上書(うはがき)をみれハ、/万忝帳(よろづかたじけなきちやう)とあつた。 00003650¥N8¥J 00003660¥X八△有徳人世に落ふれし事 00003670L14/去人(さるひと)、其いにしへハ/琴(きん)/碁(ぎ)/書画(しよぐハ)をたしなミ、物(十ウ)ごと/花= 00003680L15車(きや=しや)にくらされけるが、いつしか/手前(てまへ)おちぶれて、たつ木も 00003690L16しらぬ/世中(よのなか)におぼつかなくも/居(ゐ)られける。/其比(そのころ)/河原(かはら)/普請(ふしん)に 00003700L17/銭持(ぜにもち)の/有(あり)けれハ、是なりともつとめ、身のうきをはらさん 00003710L18とおもひ、ならわぬ/所作(しよさ)をしられたり。/扨(さて)/銭持(せにもち)に/番所(ばんどころ)をか 00003720L19まへ、ひとり+の/名(な)をかきつけにけり。扨かの人も/名(な)を 00003730¥G 00003740M11つけんとおもひ、/普請(ふしん)の/役人(やくにん)いふやうハ、/其方(そのほう)が/名(な)は/何(なに)と 00003750M12いふぞとたづねける。かの人、/名(な)を(十一オ)(十一ウ挿絵)おし 00003760M13み、それがしは/持(もち)人しらずと/付(つけ)て下されといふた。其時/役= 00003770M14人(やく=にん)聞て、それならハ/新乞食集(しんこじきしう)の/中(うち)へいれておけといふた。 00003780M15△△△/互(たがひ)にきやしやなる心なりけり。 00003790¥N9¥J 00003800¥X九△薮医/師(し)/道庵(とうあん)か事 00003810M18/薮(やぶ)ぐすしに/道庵(どうあん)といふ人有。/何病(なにやまひ)をみても/痰(たん)の/療治(れうぢ)/斗(はかり)しら 00003820M19れたり。/去(さる)こさかしき人、/道庵(どうあん)にいふやう、何と、/其方(そのほう)の 00003830¥P17 00003840L1れうじには/痰(たん)の/療治(りやうぢ)(十二オ)/斗(バかり)なさるゝが、/痰(たん)より/死(し)する 00003850L2ものかととふた。/道庵(どうあん)聞て、/中(なか)+の事。/何病(なにやまひ)にても/人間(にんげん) 00003860L3の一/命(めい)ハ、/痰(たん)にてめつすると申さるゝ。こさかしき人聞て、 00003870L4/尤(もつとも)、/病(やまひ)にて/死(し)する/者(もの)ハ/痰(たん)にても有べきが、何にても一/命(めい)ハ 00003880L5/痰(たん)にて/死(し)するとは/心得(こゝろへ)がたしと申ける。/道庵(どうあん)、かさねて申 00003890L6さるゝ。/人間(にんげん)の/命(いのち)に、/痰(たん)にて/死(し)せぬ/者(もの)一人もなし。/其時(そのとき)か 00003900L7のものいふやうハ、それならハ/酔狂(すいきやう)にて、ものごとあやま 00003910L8り/死(し)するも/痰(たん)か。いかにもたんじや。(十二ウ)へやうたん 00003920L9といふたん也。それならハ、あるひハ/喧嘩(けんくハ)/口論(こうろん)にて、あた 00003930¥G 00003940M1まをわられて/死(し)するもたんか。/道庵(どうあん)聞て、そりや、めうた 00003950M2んといふたんじや。あるひハ人の/宝(たから)をぬすみ、/公儀(こうぎ)のおき 00003960M3てに/死(し)するもたんか。それこそ/殊(こと)にいましむる、だいたん 00003970M4といふたんじや。それならハ、/自身(じしん)しやしんのして/死(し)する 00003980M5もたんか。それは、たんきといふたん也。しからハ、おさ 00003990M6なひの/川(かハ)がりに、/水(ミづ)におぼれて/死(し)するもたんか。そりや、 00004000M7じやうだん(十三オ)(十三ウ挿絵)といふたんじや。何とも 00004010M8/口(くち)かしこくのたまふが、/爰(こゝ)にひとつのふしん有。あるひハ 00004020M9/夜道(よみち)/山道(やまみち)に、/辻(つじ)ぎり、おいはぎにおふて/死(し)するもたんか。 00004030M10いかにも、それハ人ごとによくつゝしむべき、/油断(ゆだん)といふ 00004040M11たんじやといふた。 00004050¥N10¥J 00004060¥X十△吉弥かうやくの事 00004070M14/四条通(しでうとをり)に/楊枝(やうじ)屋あり。/歌舞妓子(かぶきこ)の/紋(もん)を/楊枝(やうじ)に/付(つけ)/商(あきなひ)けり。 00004080M15/方(はう)+の/田舎人(いなかうど)たちより、/吉弥(きちや)やうじ(十四終オ)こそめづら 00004090M16しなんどゝいふて/買(かひ)にけり。そのとなりにかうやくや有け 00004100M17るが、/楊枝(やうじ)屋のあきなひをミて、/扨(さて)も+ものにはふしぎ 00004110M18有。/吉弥(きちや)が/紋(もん)を/付(つけ)て/売(うる)により、/殊(こと)の/外(ほか)はやる。/某(それがし)もかうや 00004120M19くに/名(な)もつけてうらんとおもひ、かんばんのこしらへ、/吉= 00004130¥P18 00004140L1弥(きち=や)あかがりかうやくといふたもおかし。(十四終ウ) 00004150¥Y1宇喜蔵主古今噺揃第三目録 00004160M3一△/庄屋(しやうや)の二/番子(ばんご)/京(きやう)上りの事 00004170M4二△山/鳥売(とりうり)か事 00004180M5三△/文盲(もんもう)なる人/誹諧(はいかい)/稽古(けいこ)の事 00004190M6四△/雪村(せつそん)つかひの事 00004200M7五△/日用(ひよう)/了見(りやうけん)の事 00004210M8六△/駕篭(かこ)かき/年頭(ねんとう)礼の事 00004220M9七△/雀(すゞめ)とりやうの事(一オ) 00004230M10八△/坊主(ほうず)/遊女狂(ゆうしよくる)ひ/当話(とうわ)の事 00004240M11九△/田舎者(いなかもの)/将棊(しやうき)の/駒(こま)/買(かふ)事 00004250M12十△/後生(ごしやう)ねがひ/巾着切(きんちやくきり)/喧嘩(けんくハ)の事(一ウ) 00004260¥P19 00004270¥T1 00004280¥N1¥J 00004290¥X一△庄屋の二番子京上りの事 00004300L3/去遠国(さるおんごく)の/庄屋(しやうや)の二/番(ばん)子に/喜作(きさく)と申て有けるが、/親(おや)は/大百性(おふひやくしよう) 00004310L4にて/手前(てまへ)/有徳(うとく)に有けれハ、/喜作(きさく)に申/様(やう)、/汝(なんぢ)ハ/京都(きやうと)え上り 00004320L5/洛陽(らくやう)をも/見物(けんぶつ)し、我人の/付合(つきあひ)をもみならひ、/賢(かしこき)よりかしこ 00004330L6きになれなじみ、/都(ミやこ)の/風(ふう)をよくおぼへよ。/惣(そう)じて/京都(きやうと)にハ 00004340L7人のこゝろこさかしきにより、/田舎者(いなかもの)とみれハ物ごとなぶ 00004350L8るほどに、ずいぶん手をとらぬやうに、(一オ)/身持(ミもち)も/利口(りこう)に 00004360L9なれと、よくおしへてのぼしける。/喜作(きさく)聞て、いかにもお 00004370L10やぢの仰有とをり、/京(きやう)へ上り申候ハヾ、/万事(ばんじ)に/気(き)を付申べ 00004380L11きとて上りける。三/条(でう)/辺(へん)に/宿(やど)をとりにけり。/本(もと)より/喜作(きさく)、 00004390L12一/文(もん)/不通(ふつう)の男なりけれバ、/物(もの)ごと/文盲(もんもう)にみえにけり。宿の 00004400L13/亭主(ていしゆ)申けるハ、いかに/喜作殿(きさくとの)。今日ハ/祇園(きおん)/清水(きよミつ)へ御参りあ 00004410L14れ。さりながら/方&(はう+)/見物(けんふつ)したまハヾ、/定而(さためて)/昼食(ちうじき)まいりたく 00004420L15有べし。其時ハ四条川原にけんどんや(一ウ)が有ほどに、 00004430L16其/看盤(かんばん)をみて、すぐにうらへとをり、/昼食(ちうじき)をまいれとおし 00004440L17へける。/如何(いか)にも心得申候とて、やがて出にけり。扨方 00004450L18+を見物し、やう+/昼食(ちうしき)/時分(じぶん)になりけれバ、したゝめ 00004460L19をせんとおもひ、方+たづぬれ共、本より/文盲(もんもう)なれバか 00004470M1んばんハみしらず。あなたこなたを/尋(たづね)けるが、四/条(でう)の/御旅(おたび) 00004480M2の/町(てう)に/鳥(とり)やの有けれバ、是なんけんどんやとおもひ、やが 00004490M3て立より、少/御免(ごめん)あれとてとをりける。/亭主(ていしゆ)きつとみて、 00004500M4何の(二オ)(二ウ挿絵)/御用(こよう)とたづねける。喜作聞て、/旅篭(はたこ)を 00004510M5たべんと申ける。/亭主(ていしゆ)から+と打わらひ、/爰(こゝ)ハはたごや 00004520M6でハ御ざらぬ。けんどんやハ是よりひがしに有と申ける。 00004530M7喜作聞て/腹(はら)をたて、其方ハ/田舎者(いなかもの)じやとおもふてなぶるか。 00004540M8是ほどかんばん/出(だ)して/置(おき)て、はたごをせぬとは如何に+ 00004550M9と申ける。亭主、/猶(なを)もおかしがり、是は/鳥屋(とりや)にて、はたご 00004560¥G 00004570¥P20 00004580L1のかんばんハないと申ける。喜作聞て、/猶&(なを+)/腹(はら)をたて、其 00004590L2方ハいよ+/某(それがし)をなぶる。/先(まづ)/店(たな)(三オ)に/篭(かご)に/鳥(とり)ハないか。 00004600L3/亭主(ていしゆ)聞て、いかにも/篭(かこ)に鳥が有。それなれバ/旅篭(はたご)やよ。/都(ミやこ) 00004610L4にすんで/古歌(こか)の心をしらぬか。/亭主(ていしゆ)聞て、して+、/古歌(こか) 00004620L5の心ハいかにと申ける。/喜作(きさく)申/様(やう)は、/篭(かこ)の/鳥(とり)かやうらめし 00004630L6やとうたわぬか。それなれバ、はたごやにうたがいないと 00004640L7いふた。 00004650¥N2¥J 00004660¥X二△山鳥売か事 00004670L10/去(さる)山どり/売(うり)、/京(きやう)の/町(まち)を、/山鳥(やまどり)+と/売(うり)にけり。され共か 00004680L11わんといふものあらざれバ、/扨(さて)ハ/町(まち)をあ(三ウ)りくぶん 00004690L12にハ、山鳥を/買(かふ)人なし。/御所(ごしよ)の/内(うち)をうらんとおもひ、/大内(おほうち) 00004700L13さして/売(うり)にけり。山鳥うりおもふ/様(やう)ハ、町家にて/売(うる)とハち 00004710L14がふた/所(ところ)なり。/物(もの)ごときやしやに、/枕言葉(まくらことば)をつけてうらん 00004720L15とおもひ、/足引(あしひき)の山鳥は+/ハ((ママ))と売にけり。その/跡(あと)より/生= 00004730L16薑売(しやう=がうり)が是を聞、あの山鳥/売(うり)ハ/御所方(こしよかた)じやとおもひ、/枕言葉(まくらことば) 00004740L17を付てうる。/某(それかし)もしやうがにまくら/言葉(ことば)をつけんとおもひ、 00004750L18あらかねの/土生薑(つちしやうが)とぞ/売(うり)にけり。/然(しか)る/所(ところ)に、/去御所(さるごしよ)(四オ) 00004760L19(四ウ挿絵)よりやんごとなき/中間(ちうげん)壱人、/白張(しらはり)を/着(ちやく)し立出て、 00004770¥G 00004780M11二人の/商人(あきんど)をよびにけり。山鳥うり、そのまゝ/立寄(たちより)、あし 00004790M12びきの山どり、めすかと申ける。中間聞て、いや+、さに 00004800M13てハなしとて、今壱人をたづねける。そのとき/生薑売(しやうがうり)/罷= 00004810M14出(まかり=いて)、あらかねの土しやうが、御用かとぞ申ける。いや+、 00004820M15それにてもなし。ちはやふるかミくず買かとおもふたとい 00004830M16ふた。 00004840¥N3¥J 00004850¥X三△文盲なる者誹諧稽古の事(五オ) 00004860M19/去(さる)もんもうなる/者(もの)、人ごとに/誹諧(はいかい)するを聞て、まことに誹 00004870¥P21 00004880L1諧といふものハ、/月雪花(つきゆきはな)に心を付、しらぬ/名所(めいしよ)の/古事(こじ)をし 00004890L2り、あるひハ狂句をいたしてハ/貴(き)人/高(かう)人にも腹をかゝゑさ 00004900L3せ、/如何(いか)なる/学窓(かくそう)の/智者(ちしや)にも手をうたせ、是ほどなる/慰(なくさミ) 00004910L4はなし。人間の/嗜(たしなむ)べき道なりとおもひ、/去点者(さるてんじや)をしたい来 00004920L5り、/某(それがし)ハ/一生(いつしやう)/文盲(もんもう)にて/誹諧(はいかい)といふ事をしらず。/向後(きやうこう)ハ/貴= 00004930L6方(き=はう)の/門弟(もんてい)になり/度(たき)(五ウ)よしを申ける。/点者(てんじや)/聞(きゝ)たまひ、如 00004940L7何にも/指南(しなん)いたすべしと申さるゝ。其時かの/者(もの)申様、先/誹= 00004950L8諧(はい=かい)の/言葉(ことば)に、/人倫(しんりん)の、あるひハ/居所(きよしよ)/水辺(すいへん)などいふ事ハ如何 00004960L9なる事ぞと/尋(たづね)ける。/点者(てんしや)聞たまひ、先/人倫(しんりん)とは人の事。/居= 00004970L10所(きよ=しよ)とハ/家居(いゑい)、/万事(ばんじ)/屋敷(やしき)に/付(つく)ものをいふ。/水辺(すいへん)とは水のなが 00004980L11れをいふと/仰(おほせ)ける。/彼(かの)人聞て、/扨(さて)ハ/誹諧(はいかい)は心やすき物なり。 00004990L12このかくにていたすべきとて帰りける。/折節(おりふし)/彼(かの)人の屋敷の 00005000L13/前(まへ)にて/小用(しやうよう)す(六オ)る/者(もの)有。/彼(かの)人是をみて、そこな/人倫(しんりん)ハ、 00005010L14/某(それかし)の/居所(きよしよ)の/前(まへ)にて/水辺(すいへん)をながすかといふた。 00005020¥N4¥J 00005030¥X四△雪村遺ひの事 00005040L17/茶(ちや)の/湯者(ゆしや)のものごと/公儀(こうき)なれたる人と、/俄(にはか)/分限(ぶげん)の/文盲(もんもう)なる 00005050L18人とつれ/立(だち)、/去方(さるかた)へ/振舞(ふるまひ)に/行(ゆき)にけり。/亭主方(ていしゆがた)にハ/品&(しな+)の/道= 00005060L19具(とう=ぐ)をかざり、/床(とこ)に/雪村(せつそん)の/筆(ふで)に/猿(さる)の/絵(ゑ)をかけられけり。/茶(ちや)の 00005070M1/湯者(ゆしや)、/床(とこ)にむかひ、扨も/見事(ミごと)なる御/掛物(かけもの)。/雪村(せつそん)の/内(うち)にてハ 00005080M2是ほどなる/出来(でき)(六ウ)ものハ有まい。しほらしきかけ/絵(ゑ)な 00005090M3どゝほめにけり。彼もんもう人、是を聞て、扨ハ/猿(さる)の/異名(いミやう) 00005100M4を/雪村(せつそん)といふとこゝろへ、おなじごとく/床(とこ)にむかひ、いか 00005110M5にも/其方(そのはう)の/仰(おほせ)らるゝ/通(とをり)、さながら/絵(ゑ)とハおもはれぬ。いき 00005120M6てはたらくやうな/雪村(せつそん)じや。あの/町(まち)をありく/雪村(せつそん)つかひハ、 00005130M7おほへひな/物(もの)で御ざる。/米(こめ)を/盆(ぼん)に入てやらねバとらぬとい 00005140M8ふた。 00005150¥G 00005160¥P22 00005170¥N5¥J 00005180¥X五△日用了見の事(七オ)(七ウ挿絵) 00005190L3/江戸(ゑど)/日本橋(につほんばし)に/日用(ひよう)二人/居(ゐ)たりけり。かゝる/所(ところ)に、五十/万石(まんこく) 00005200L4/斗(ばかり)の/大名(たいミやう)、/供廻(ともまわり)きらをみがき大/勢(せい)/召(めし)つれ、/登城(とうじやう)なされける。 00005210L5壱人の/日用(ひよう)申/様(やう)、/我&(われ+)の/口(くち)にて申すハおろかなれども、扨 00005220L6+きれいなる御/大名様(たいミやうさま)かな。まことに人ハ/武士(ぶし)とハよく 00005230L7いふたり。あれハたれ様じやととふた。壱人かいふやうハ、 00005240L8あれこそ/其国(そのくに)の/城主(じやうしゆ)たれ様と申て、五拾万石の大名じやと 00005250L9いふた。いかにも+左様であらふず。/見事(ミごと)な/家中衆(かちうしゆ)な 00005260L10(八オ)とほめにけり。其/次(つき)に五万石/斗(はかり)の大名、/登城(とうしやう)なされ 00005270L11ける。又壱人かいふやうハ、是もきれいなる供まはり。こ 00005280L12れハどなたとたづねける。又壱人かいふは、是ハそんじや 00005290L13う其国の/守護(しゆご)たれさまと申大名にて、五万石の/分限(ふんけん)しやと 00005300L14申ける。其時かの壱人、/横手(よこで)をちやうどうつて、/扨(さて)も+ 00005310L15世ハさだめなひものじや。先の大名ハ五拾万石、今の大名 00005320L16ハ五万石。しかれハ先の大名と今の大名とハ、四十五万石 00005330L17のちがひなれ共、/別(へつ)に/供(とも)まはり、/乗馬(のりむま)/諸道具(しよどうぐ)(八ウ)にあま 00005340L18りちがひハないに、今の大名と我+とハ、わづか五万石 00005350L19のちがひなれども、此なりを見よといふた。 00005360M1△△△/日用(ひよう)の/了見(れうけん)/尤(もつとも)なり。 00005370¥N6¥J 00005380¥X六△駕篭かき年頭礼の事 00005390M4/去分限者(さるぶげんしや)へ/不断(ふだん)/出入(でいり)をする/駕篭(かこ)かき有。/毎日(まいにち)+かの人を 00005400M5のせ、身のいとなミをつとめけり。/新玉(あらたま)の/春(はる)になりければ、 00005410M6かの/有徳人(うとくじん)、かごかきをよびよせ、/今日(けふ)は/方&(はう+)を/礼(れい)にあり 00005420M7く間、其方もいそぎ/用意(ようい)を(九オ)(九ウ挿絵)せよとぞ仰け 00005430M8る。/承(うけたまはり)候とて、やがてこしらへ、かごをまはしけるが、 00005440M9/懐(ふところ)より/熨斗(のし)壱/筋(すし)/取(とり)出し、/棒(ほう)の下にそ/敷(しき)にける。かの人、 00005450¥G 00005460¥P23 00005470L1是を見て、けふのこしらへは、つねとハあらたまり、のし 00005480L2を/棒(ぼう)にしく事ハ/如何成(いかなる)事ぞと/尋(たづね)ける。かごかき聞て、され 00005490L3は/今日(けふ)の/駕篭(かご)は、わたくしが/年玉(ねんぎよく)にて、たゞまはしますと 00005500L4いふた。 00005510L5△△△さてもによふた/年玉(としたま)也。(十オ) 00005520¥N7¥J 00005530¥X七△雀とりやうの事 00005540L8去人、/雀(すゝめ)をハとりやうにて如何ほともとれるといふた。し 00005550L9て+、それはいかやうにてとれるといふた。先/柿(かき)の/葉(は)に 00005560L10/酒(さけ)の/糟(かす)をぬつて、やねの上にならべ/置(おき)、/風(かせ)にちらぬやうに 00005570L11/小石(こいし)をひとつづゝおもせに置。其時すゞめども、屋の上に 00005580L12来り、酒のかすをひたものくふ。後にハかすにえふて、 00005590L13/小石(こいし)を/枕(まくら)にして皆&ねる。/何(なに)か/炎天(ゑんてん)にほすにより、/柿(かき)の/皮(かわ) 00005600L14(十ウ)が/雀(すゝめ)にくる+とまきつく。其時/鍬(くわ)/箒(はうき)をもちて、く 00005610L15わら+はきおとすといふた。 00005620L16△△△/癆■(らうさい)やミの/思案(しあん)なるへし。 00005630¥N8¥J 00005640¥X八△坊主の遊女狂ひ当話の事 00005650L19去/謡(うたひ)うたひと、ぬめり/坊主(ぼうず)とつれ立、/嶋原(しまばら)へかよひける。 00005660M1思ひ+の出たちに、/当世(とうせい)やうのかます/袖(そで)、/伽羅(きやら)しめやか 00005670M2に/匂(にほは)せ、人め忍ふの/編笠(あミかさ)に、/揚屋(あけや)をさしてゐて行けり。/宿(やど) 00005680M3屋になれバ人をはゞかる(十一オ)けしきもなく、/重箱(ちうはこ)/肴(さかな)引 00005690M4ちらし、たそ有かいやいそれ+と、/知音(ちゐん)のおてき取よせ 00005700M5けり。本より/螢(ほたる)あつむる色このミにて、あてなる/女郎(しよらう)/来(きた)り 00005710M6けり。心+のたはむれに、さいつさゝれつ、のふずうと 00005720M7ふつらくあそび。やう+/夜半(よは)になりぬれば、かぶろはこ 00005730M8ゝろへ/床(とこ)をとり、御しづまりと申ける。もはや心うきたつ 00005740M9て、おもひ+に床に入、/小夜(さよ)の/枕(まくら)をかはしまの、/千夜(ちよ)を 00005750M10/一夜(いちや)とあかしける。然る所に、/謡(うたひ)(十一ウ)うたひになれたる 00005760M11遊女、何としてかは取はづし、すいとはづして/赤面(せきめん)する。 00005770M12かの人こゝろへ/笑止(しやうし)かり、すいちやうこうけいにと、うた 00005780M13ひにてまぎらしける。かたゑの/遊女(ゆうじよ)是を聞、いかに/御坊様(ごぼうさま)。 00005790M14となりの/殿子(とのこ)を御らんあれ。/只今(たゝいま)女郎の取はづして、すい 00005800M15とやられたを、其まゝ/謡(うたひ)にて、すいちやうこうけいとまぎ 00005810M16らせたまふ。かやうのとんさくハ御/坊様(ほうさま)はなるまい。さて 00005820M17も+たのもしき/御方(おんかた)と、ひたすらにほめにけり。/坊(ほう)(十二 00005830M18オ)(十二ウ挿絵)/主(す)聞て、あれほどの事、たがいはぬ者あらし。 00005840M19/若(もし)も御身の上にそこつの事あらハ、我にまかせたまへ。/少(すこし) 00005850¥P24 00005860L1もちじよくは有まいなど申ける。/遊女(ゆうしよ)聞て、中+あのや 00005870L2うなる事ハなるまいなと、せんぎするうちに、かの遊女も 00005880L3とりはづし、ぶんとやりにけり。其時坊主、こゝろへたり 00005890L4といふよりはやく、なまいたんぶといふた。 00005900¥N9¥J 00005910¥X九△田舎者将棊駒買事(十三オ) 00005920L7/去田舎者(さるいなかもの)、寺町/通(とおり)へ/立越(たちこし)、/将棊(しやうき)の/駒(こま)を/買(かい)にけり。四十枚の 00005930L8/駒(こま)を、/大(おほき)なばかりより取にしたりけり。/亭主(ていしゆ)是をみて、/惣(そう) 00005940L9じて此/将棊(しやうぎ)の/駒(こま)ハ四十枚にて大小の有物なり。其方ハ大き 00005950L10なばかりより取になさるゝハ、いかな事ぞ。それにては、 00005960L11/跡(あと)も/先(さき)もやくにたゝぬと申ける。彼もの聞て、同じ/直段(ねだん)な 00005970L12らは、大きなはかりこそよけれ。ちいさきはいらぬと申け 00005980L13る。/亭主(ていしゆ)かさねて、さればとよ。大小の有(十三ウ)により/駒(こま) 00005990L14の/品(しな)かそれ+かはるほどに、まぜて御取候へと申ける。 00006000L15其ときかのもの、扨ハ/将棊(しやうぎ)の/駒(こま)を/買(かふ)は、よみあげかといふ 00006010L16た。 00006020¥N10¥J 00006030¥X十△後生ねかひ巾着切と喧嘩の事 00006040L19/去後生(さるごしやう)ねがひの/親父(おやぢ)、四条川原へ/操(あやつり)を/見物(けんぶつ)に出られけり。 00006050¥G 00006060M11何とかしたりけん、人ごみの中にて/巾着(きんちやく)をきられけり。さ 00006070M12れどもかのものを/見(ミ)つけ、のがさじと申ける。/巾着切(きんちやくきり)、/為= 00006080M13方(せん=かた)なさに/脇指(わきざし)を/抜(ぬき)(十四オ)/切(きつ)てかゝる。かのおやぢも、巾着 00006090M14きられながら、にくい/男(おとこ)といふよりはやく/脇指(わきざし)をぬき、/互(たがひ) 00006100M15に切むすびける。何とかしたりけん、/双方(さうはう)共に/片腕(かたうで)づゝお 00006110M16とされけり。巾着切、もはやかなはじとおもひ、/行方(ゆきかた)しら 00006120M17すににげ/行(ゆき)けり。其後かの人、すべきやうもなく、/片腕(かたうて)ハ 00006130M18おとされ/涙(なミだ)ぐミていられける。あたりより人&/立寄(たちより)、扨も 00006140M19/笑止(しやうし)の事や。/盗(ぬす)人においとやらんにて、かやうに手までお 00006150¥P25 00006160L1わせ給ふ。いたはしなと申ける。/其中(そのなか)(十四ウ)に/外科(けくハ)壱人/居(ゐ) 00006170L2られけるか、かやうの事ハ/苦(くる)しからす。/先(まつ)/血(ち)の落ぬ先に/腕(うて) 00006180L3をつがんとて、そこらをたづねまはり、手を/継(つぎ)にけり。やう 00006190L4+/宿(やど)に/帰(かへ)り、/名医(めいい)/外科(げくわ)をよびよせ、さま+/療治(れうぢ)しられ 00006200L5ければ、其まゝ/本(もと)のごとく手ハなをりけり。されども、/最= 00006210L6前(さい=ぜん)あはてゝ手をつぎけるか、/盗(ぬす)人の手と取ちがへてつぎけ 00006220L7るにより、何か/悪性(あくしやう)な手をつぎけるゆへに、/数珠(しゆず)なともて 00006230L8ハ脇へほゝり、ひたもの/巾着(きんちやく)を見れハ、手がぬんぬと/腰(こし)の 00006240L9まはりへいた。(十五終オ) 00006250¥Y1宇喜蔵主古今噺揃第四目録 00006260M3一△しやうのこわきものかミゆひひやうはんの事 00006270M4二△生れつきハなをらぬ事 00006280M5三△堂のほうちやくの事 00006290M6四△はしごそといゑの事 00006300M7五△ミつかんかんなべの事 00006310M8六△ひらのたけてんぐたいじの事 00006320M9七△うでかうの事 00006330M10八△だいハぬりだいの事 00006340M11九△はいかいうらおもての事 00006350M12十△ならの大ぶつ京上りの事(一オ) 00006360¥P26 00006370¥T1 00006380¥N1¥J 00006390¥X一△じやうのこわきものかミゆひひやうはん 00006400L3さるじやうのこわきもの二人より合、よも山のはなしをし 00006410L4てゐたりけり。しかるところにかミゆひきたり、両人かか 00006420L5ミをそろへける。其のち一人がいふやうハ、たゝいまのか 00006430L6ミゆひほど下手なものハないといふた。一人がこれをきゝ、 00006440L7おてまへハわけもない事をいふ人じや。あれほど上手ハ又 00006450L8とあるまひといふた。さいぜんのもの、かさねていふやう 00006460L9ハ、そのはう、いかほどひいきをしても、あれほどなる下 00006470L10手ハないぞ。其しやうこにハさかやきをするたびことに、 00006480L11(二オ)すこしにてもきずをつけんといふ事がない。又一人 00006490L12がいふやうハ、いさゝかさやうであるまひ。それがしのい 00006500L13くたびそらせても、すこしもけがハない。其はうのわる口 00006510L14とぞ申ける。何がじやうのこわきものどもなれバ、たがひ 00006520L15にせんぎになりにけり。其ときさいぜんのもの申けるハ、 00006530L16なにのせんぎもいらぬ。たゝいまよびにつかハし、さかや 00006540L17きをそらしやうほどに、すこしにてもかミそりできりたら 00006550L18バ、其はううどんを五おけかへ。またすこしもきらずんバ、 00006560L19われうどんを五おけかふべし。/□□□((いかに))+(二ウ)(三オ挿絵) 00006570¥G 00006580M12と申ける。一人かこれをきゝ、こハめつらしきかけ六じや。 00006590M13いかにもそのはうのぞミに、すこしもきらずんば我かはん。 00006600M14はや+よべとぞ申けり。いかにもこゝろへたりとて、や 00006610M15かてかのかミゆひをよびよせ、さかやきをそらせける。も 00006620M16とよりかミゆひ、さかやきハめいじんなり。すこしもあや 00006630M17まりなかりけり。其時かのものせきめんし、すいふんきら 00006640M18するやうに、かしらをふりけれども、すこしもけがハあら 00006650M19ずして、さかやきをそりしまひける。いよ+かのもの気 00006660¥P27 00006670L1をせき、ひげをはやくそれとぞ申ける。うけたまハり候と 00006680L2て、かミゆひ(三ウ)かミそりをさか手にもち、はなのした 00006690L3をぞそりにけり。其時かのもの、じぶんハよきとおもひ、 00006700L4うつぶきにけり。なにがかミそりをさかてにもちてゐける 00006710L5に、にわかにうつふきけれバ、やがてはなをそりおとしけ 00006720L6る。其とき、はなをそがれたるもの、これみよ。きずをつ 00006730L7けたぞ。うどんをかへと、はなこゑになりていふた。 00006740L8△△△ひやうばん△はんとくがぐちよりうはまへをとられふ。 00006750¥N2¥J 00006760¥X二△生れつきハなをらぬ事 00006770L11さるさふらひのこしやうずきをなされ、あまたのびせうね 00006780L12んをかゝへさせ給ひ、ひたすら、てう(四オ)あひなされけ 00006790L13る。去町人の子に、みめかたちたをやかに、なさけあるわ 00006800L14かしゆにて、しんがい/□((そ))うず、ゑいざんのけいかいりつし 00006810L15も、あしをみだすほとにありけれバ、方&より、ちごわか 00006820L16しゆにのぞミけれども、おやゆるさずして、しんそうのう 00006830L17ちにてそたてけり。かのせうにんを御侍の御らんありて、 00006840L18ひたすら御のそミ有けれバ、やがてほうかうにいでにけり。 00006850L19なにがとのの御意にいり、しゆつとう申はかり/なか((ママ))りけり。 00006860M1ほうばいしゆハこれをそねミ、町人の子を御取たてなさる 00006870M2ゝが、なにのやくにたとふぞなど、ひやうばん(四ウ)した 00006880M3りけり。主人此事を聞召、かのこしやうをよひよせ、なん 00006890M4じハ町人の子にて、ふげいをすこしもれんませず、はうば 00006900M5いともがあなどるときいた。けふよりしてハぶげいをたし 00006910M6なめ。さふらひのげいハむまにのるを大事とする間、その 00006920M7はうも馬にのれ。さりなから、はうばいのミぬところにて、 00006930M8ずいぶんのりならへ。人にはぢしめらるなとおほせける。 00006940M9こしやう、うけたまハりて、かたしけなき上意とて、やか 00006950M10て人まぜもせず、中げん一人よび出し、馬にのらんと申け 00006960M11る。かしこまつて引出す。その(五オ)とき、かのこしやう、 00006970M12たちん馬にのるごとく、むながいをふまへてのりにけり。 00006980M13其ときむま取がいふやうハ、かやうな上馬にめすハ、あぶ 00006990M14ミよりのるものにて御座候とておしへける。そのとき小性 00007000M15聞て、いかにも+さたなしなど申ておはりける。そのゝ 00007010M16ちかの馬とり、はうばいにかたりけるハ、そんじやうそれ 00007020M17さまの馬のけいこに、むながいより御のりあつたとわらい 00007030M18けれバ、それより家中一ばいにきこえ、めひきはなひきわ 00007040M19らいける。そののち殿、此よしをきこしめし、こしやうを 00007050¥P28 00007060L1よびよせ、さてもそのはうハぶてうほうなるもの(五ウ)か 00007070L2な。馬にのるとて、むながいをふまへてのりたるな。いら 00007080L3いをたしなめ。かちうのわらひぐさになるとおほせける。 00007090L4ときにかのこしやう、わたくしの馬に乗たるを、かちうに 00007100L5一人もみたるものハ御さなきが、さためてそのときの馬子 00007110L6めが申た物であらふといふた。 00007120L7△△△馬とりを馬子とハ、くせハうせぬものか。 00007130¥N3¥J 00007140¥X三△堂のほうちやくひやうばんの事 00007150L10さるてらのとうの四すミに有ほうちやくを見て、さるもの 00007160L11二人より合、一人かいふやうハ、さても見事なたらりふら 00007170L12りのと申ける。一人かいふ(六オ)(六ウ挿絵)やうハ、こゝ 00007180L13な人ハ、かたことをいふ人じや。あれハむかしより、ふら 00007190L14りたらりといふものじや。さいぜんのもの、いや+その 00007200L15はうのがあやまりじや。こらいより、だらりぶらりといふ 00007210L16がほんじやとて、たがひにもんどうしたりけり。一人がい 00007220L17ふやう、とかくかやうな事ハ、そのもちぬしにとはねバす 00007230L18まぬ。ぢうじにたつねんと申ける。いかにもしかるべし。 00007240L19いざまいらんとて二人つれたち、方ぢやうさしてゆきにけ 00007250¥G 00007260M12り。ぢうじたちいで/□((て))たいめんなされ、なにの御用とぞお 00007270M13ほせけ/□((る))。ときに一人がいふやう、されバこれなる人と/□((少)) 00007280M14(七オ)のろんをいたしました。寺内に御座候堂の/□((四))すミの 00007290M15かねを、これなる人ハだらりふらりといふと申、わたくし 00007300M16ハふらりだらりといふと/□((申))が、まことのなじやと申まする。 00007310M17いつれがまことにて御さ候と申ける。ぢうじ、から+と 00007320M18うちわらひ、さてもおもしろきせんぎかな。さりながら両 00007330M19はうに、りが御座る。あのかねを、むかしハたらりぶらり 00007340¥P29 00007350L1と申、中むかしハふらりだらりと申、たゞいまハちんふら 00007360L2りといふとのたまふ。 00007370L3△△△ちうじのとんさく、もんしゆもなるまひ。(七ウ) 00007380¥N4¥J 00007390¥X四△梯子外家の事 00007400L6さる人しんたくをつくり、いゑゐつき+しくこしらへ、 00007410L7かつての井をぼりかへける。しかるところに、ものごとし 00007420L8わき人、ふしんのみまひにきたりけるが、井のもとほりか 00007430L9ゆるをミて、さて+ぞうさな事。井をほりかゆるもおし 00007440L10い事かなと申ける。ていしゆ聞て、もつともなれとも、わ 00007450L11れらのやしきにかつてあしく御さ候間、さてほりかゆると 00007460L12申ける。そのときかの人、それならバ、此ふる井をわたく 00007470L13しにくだされと申ける。ていしゆ聞て、あまりおかしくお 00007480L14もひながら、此古(八オ)井をなにゝなさるゝと申ける時に、 00007490L15かの人、はしごのそといゑにするといふた。 00007500¥N5¥J 00007510¥X五△みかん間鍋の事 00007520L18さるおさなひ四五人より合、ミつかんをさけとなづけ、お 00007530L19さななくさみに、さいつさゝれつ、たハむれけるが、やう 00007540¥G 00007550M12+ミかんをしまいけれバ、その中にこざかしきおさない、 00007560M13ミかんのかわともにくいけれバ、一人のおさない、あの人 00007570M14ハかんなべ共にくやるといふた。(八ウ)(九オ挿絵) 00007580¥N6¥J 00007590¥X六△比良嶽天狗たいじの事 00007600M17さるもの、此中ハそれがしハ身にあまるてがらをしたとい 00007610M18ふ。して+それハいかやうなるてからじやといふた。さ 00007620M19れバ其事。此中ひらのがだけにてんぐのあるゝといふこと 00007630¥P30 00007640¥G 00007650L12を申間、先それがしのひらのがたけへゆき、大をんじやう 00007660L13をあけて、此山にハ大てんぐ小てんぐのこもりゐて、ばん 00007670L14ミんのなやますときいた。なにものなりとも出て、それが 00007680L15しとしやうふをせよと申ける。そのとき山上おひたゝしく 00007690L16大かせふき、すぎの木の間より、たけ二十ぢやうばかり(九 00007700L17ウ)なる山ぶしのいて、それがしにむかひ申やうハ、この 00007710L18山ハじんりんまれなるに、やさしくもなんじ一人きたりて、 00007720L19われ+とせうぶをせんと申か。いでひとつかミにせん 00007730M1と、とんでかゝる。時にそれかしの申やうハ、これハてん 00007740M2くともおほへぬいでたちなり。それかしもにんげんなれバ、 00007750M3そのほうもにんげんのすがたになれ。さやうにすさまじき 00007760M4ていハ、ひけてミゆるといふた。ときにてんぐ、いかにも 00007770M5なんじがいふとをりじや。あまりおとなげない事じやほと 00007780M6に、すがたをかへんといふより(十オ)はやく、すぎむらへ 00007790M7ゆくかとおもへば、そのまゝすミまへがミのおとこになつ 00007800M8てきた。いざせうぶをせんとて、くんずころふづくミあひ 00007810M9けり。ときにそれかしのいふやうハ、かやうにくミあいて 00007820M10ハ、たがひのちからづくにて、せうふかしれぬ。いざやすむ 00007830M11まいかといふた。てんぐも、いかにもやすまふとて、たか 00007840M12ひにのきにけり。ときに、それかしのちりやくをもつてた 00007850M13いらげんとおもひ、いかにてんく。そのほうハおもふたよ 00007860M14りちからかつよひ。さためてそのほうにとらるるてあらふ 00007870M15が、こんじやうのおもひてに、その(十ウ)ほうハつうりき 00007880M16じざいのものなれバ、ばけてミせよといふた。ときにてん 00007890M17ぐ、たゞとつたやうにおもひ、いかにもなんじかいふこと 00007900M18く、たつたいまそのほうをとるぞ。あまりふひんな事じや 00007910M19ほとに、さいこのおもひてに、なになりとものぞめ。ばけ 00007920¥P31 00007930L1てミせんと申ける時に、それかしの、さらバあまり大きな 00007940L2る事はすさましきに、かき山ぶしとて、そのほうハかきが 00007950L3すきじやときいた。かきになれと申ける。てんぐ聞て、い 00007960L4かにも心やすき事とて、またすぎむらに入かとおもへバ、 00007970L5御所柿となつて(十一オ)(十一ウ挿絵)そろりとこけてきた。 00007980L6時にそれかしの、時/□((分))ハよきとおもひ、そろ+たちより、 00007990L7かのかきを手にのせ、たゞ一口にたいらげたといふた。 00008000¥N7¥J 00008010¥X七△腕香の事 00008020L10うでかうをたくぎやうにん有。町&をすく/□((ひ))とをりけり。 00008030L11折ふし、むかふよりわかき馬おひ、馬にのりきたりけるが、 00008040L12かの行人にむかひ、/□((し))はしとゞまり、ふところよりはなが 00008050L13ミふくろなどとり出しける。行人きつとみて、さだめてぜ 00008060L14になどくるゝものとおもひ、それ、ご/□((せ))の道ハじひをもつ 00008070L15て第一とし、そうゑを/□((く))(十二オ)やうするを道とす、こん 00008080L16じやうわづかかりのや/□((ど))なと、こゑだかにすゝめける。そ 00008090L17のとき馬おひ、ぜになどハおもひもよらず、はながミふく 00008100L18ろよりきせるを一本とり出し、うでがうの香炉にて、たば 00008110L19こをのんでとをりける。行人のけうさましたるもおかし。 00008120¥N8¥J 00008130¥X八△台ハぬりたいの事 00008140M3さるうとく人、ゆさんにゆきけるに、たいこ持あまたいざ 00008150M4ないあそひける。本より物このミのことなれバ、さけさか 00008160M5なとりちらし、こうたさミせんひきならし、のふずうたふ 00008170M6つ、た(十二ウ)わむれける。その中にことさら物ほしそふな 00008180M7たいこもち有けれハ、うとく人これをミて、そのほうにさ 00008190M8かなをとらせんに、さけをひとつのめと申ける。かのたい 00008200M9こもち、しやうとくハげこなれども、つゆをとらんとおも 00008210M10ひ、いかにもくだされんとて大さかつきをいたゝき、たぶ 00008220M11+とうけ持けり。時にうとく人、まへきんちやくより壱 00008230M12歩と四分はかりあるこまかねをとりいたしける。たいこも 00008240M13ちこれをミて、さだめて壱ぶをくるゝ事とおもひ、きげん 00008250M14よろしくのミにけり。そのときかのうとく人、(十三オ)一ぶ 00008260M15の上にこまかねをのせさしいだす/□□□((破レ不明))ハたいこもち、こ 00008270M16ハかたしけなしとて/□□((手をカ))さしいだしける。ときにうとく人、 00008280M17だい/□((はカ))ぬりだいじやとて、こまかねはかりをとら/□((せカ))、一ぶ 00008290M18ハきんちやくへおさめたるもおかし。 00008300¥P32 00008310¥N9¥J 00008320¥X九△はいかいうらおもての事 00008330L3さる人、はいかいをしならひ、あとさきつゝかぬほつくし 00008340L4られけるが、さるそうしやうに見せられける。本よりもん 00008350L5もうなる句なれとも、そうしやうハこざかしく、その道に 00008360L6いれんとおほしめし、おもしろきほつく、ことにあたらし 00008370L7(十三ウ)き句さくなとほめられける。かの人、一だんとよろ 00008380L8こひかへりける。そのゝちにまたほつくをつらね、そうし 00008390L9やうにうかゝひける。そうしやう御らんして、さても+ 00008400L10めつらしきしゆこう、たけたかきほつくなり。先日のほつ 00008410L11くとハかくべつのちがひなどゝほめられける。ときにかの 00008420L12人申やう、さやうに此句よく御座候ハヽ、せんどの/□((ほカ))つく 00008430L13をうらにして、此句をおもてになされてくだされといふた。 00008440¥N10¥J 00008450¥X十△南都大仏京上りの事 00008460L16ならの大ぶつ、きやうとけんぶつに上京なされ(十四オ)ける 00008470L17が、京の大仏と久しきちゐんなれバ、た/□((ちカ))よらせ給ひける。 00008480L18京の大ぶつも立出、いろ+御ちそうなされける。ならの 00008490L19大ぶつおほせ/□□((けるカ))ハ、こなたハくわほうなほとけじや、か 00008500¥G 00008510M12やうに/□□((けつカ))かうにふしんをなされ、なにゝふそくも御/□((ざカ))ら 00008520M13ぬ。わたくしハやしきハひろく持たれとも、つゆしもをふ 00008530M14せぐよすかもなし。ちかごろこなたにむしんなれども、な 00008540M15らをいつるとき、ろせんをすこしもちたるが、おもひのほ 00008550M16かかごちんたかく御さ候て、ろせんミなになした。すこし 00008560M17御かしあれとおほせける。京の大ぶつきこしめし、(十四ウ) 00008570M18(十五オ挿絵)わたくしもはるのぢぶんハ、はう※のさ/□□((いふカ)) 00008580M19にこぜにも御さるが、たゝいまハすこしも/□□((なしカ))とおほせけ 00008590¥P33 00008600L1る。なら大ぶつきこしめし、も/□((つカ))ともなれとも、こなたハ 00008610L2大ぶげんしやなるほ/□((とカ))に、すこしのぜにのないといふ事ハ 00008620L3あるまい。ひらに御かしあれとおほせける。京大ぶつ、て 00008630L4まへにハごさらぬが、さらバ、はながミふくろを見申さん 00008640L5とて、はなかミふくろのそこを御ふるひ有けれハ、ぐわら 00008650L6+と八百貫いでたるもおかし。(十五ウ) 00008660¥Y1鹿の咄蔵△△目録 00008670M3一△道心者女ばうくるひの事 00008680M4二△かぢや女はうそうれいの事 00008690M5三△かうろをほむる事 00008700M6四△らうそくたてのつるの事 00008710M7五△与三郎後生ねがひの事 00008720M8六△やくしやだねの事 00008730M9七△しんやくしやいりの事 00008740M10八△はいかいしりうほあづま下りの事 00008750M11九△はいかいし同意病の事 00008760M12十△きやうかよミ賀のうたの事(一オ) 00008770¥P34 00008780¥T1 00008790¥N1¥J 00008800¥X一△だうしんじや女はうくるひの事 00008810L3去いたづら道心者ありけり。さるてらへ四十八夜のべつじ 00008820L4にやとハれ、念仏をつとめけるが、かの道心しやの女はう 00008830L5身もちになり、うミつきになりけれバ、心もとなくおもひ、 00008840L6たび+いほりへミまひける。はうばいのぼうずともおも 00008850L7ひけるハ、なにとしてかハ、あのほうすハさい+いほり 00008860L8へかへるなど、ふしんしたりけり。され共かのほうず、い 00008870L9よ+心もとなくおもひ、ぢうやにかきらす、ひまさへあ 00008880L10れハいほりへかよひける。時に、はうはいのぼうずいひあ 00008890L11わせ、長/□((老))(二オ)へ申ける。そんじやうそのだうしんじや 00008900L12ハ、なに/□((の))用御座候やら、せつ+やどへ帰り給ひ、べつ 00008910L13じねんぶつのつとめも、けだいになり申あいた、けふより 00008920L14してハ、いほりへかへり申さぬやうに御申あれとそ申ける。 00008930L15長老きこしめし、まことにさやうにやとへかへりてハ、ね 00008940L16んぶつのつとめハなるまい。いかにもけふより庵へかへら 00008950L17ぬやうに申へしとて、かの道心じやをよひよせ、そのはう 00008960L18ハなにの用ありて、たひ+庵へかへり給ふそ。さやうに 00008970L19てハねんぶつもけだいになる。たゝいまよりしてハ、かま 00008980¥G 00008990M12いて門(二ウ)ぜんまでもいでたまふなと、かたくせいし給 00009000M13ひける。時に道心じや、めいわくながら御うけを申。いか 00009010M14にもかへり申まじとて、念ぶつをつとめける。そのうちに 00009020M15も、たゞ女はうの事をおもひ、なにとしてかハくらすやら 00009030M16ん。へいさんハしたるかと、あんじくらしていたりけり。庵 00009040M17にありける女はうハ、心やすく子をうミけるか、此間ハお 00009050M18つとのぼうずハみえぬ。ふしきなる事かなとおもひ、かの 00009060M19うミたるむすめをいたき、てらをさしてぞゆきにける。あ 00009070¥P35 00009080L1んのごとく、ほうずハねんぶつ申てゐたりけり。とかふい 00009090L2はんと思へ共、(三オ)(三ウ挿絵)人めをはゞかり、しバしひ 00009100L3かへてゐたりけるが、女ばう心におもふやう、せめて子を 00009110L4うミし事をしらせんとおもひ、ねんぶつにまぜて、なまい 00009120L5た、うんだ+と申ける。ときにかのほうず、うしろをミ 00009130L6れバわかつまなり。こハうれしや。子をバやすくうミたそ 00009140L7ふなが、おとこの子かむすめの子かと、心もとなくおもひ、 00009150L8これもねんぶつにてたつねける。なまいだ、なんだ+と 00009160L9とひにけり。ときに女はう、またねんぶつにてこたへけり。 00009170L10あまだ+といふたるもおかし。 00009180¥N2¥J 00009190¥X二△鍛冶屋女房葬礼の事(四オ) 00009200L13去町にもんもうなる年寄あり。その町のかぢやの女ばうは 00009210L14てけれバ、よう人をよひ、かぢやのないぎのほうぎよじや 00009220L15ほとに、町中をふれよ。そうれいハくれがたじやといひつ 00009230L16けけり。本より用人ももんもうなれバ、かしこまつて候と 00009240L17て、町中を、かぢやのないぎさま、ほうきよで御ざります 00009250L18る。そうれいハくれがたとふれにけり。町内に物ごと心へ 00009260L19たるしちやのありけるか、右のとをりふれにけり。しちや 00009270M1のていしゆ聞て、このふれハたれがいひつけぞ。用人聞て、 00009280M2御年寄のおほせにて御さ候と申ける。しちや聞て、さ(四ウ) 00009290M3(五オ挿絵)ても+もんもうなる事をいふものかな。そう 00009300M4じてほうぎよといふ事ハ、下+のこと葉にてハないぞ。 00009310M5かぢやのないぎのほうぎよといふ事かあるものか。もつた 00009320M6いない事をいはずとも、かぢやのないぎのしきよとふれよ 00009330M7とさん+しかりけり。用人うけたまハりて、さてとしよ 00009340M8りへゆき申様、かちやの内儀さまほうきよとふれ申候へバ、 00009350¥G 00009360¥P36 00009370L1しちやのたんなとの、さてももんもうなふれやうじや。そ 00009380L2れハたがいひつけぞとて、ことのほか御しかりあつたと申 00009390L3ける。としより聞て、さてもひちやのていしゆハ、つねハ 00009400L4それほどもんもうな人じやとハ(五ウ)しらなんだ。わけも 00009410L5ない事をいはれたな。なんじもしるごとく、あのかぢやハ 00009420L6きよねん三月にいゑをかふたでハないか。用人聞て、いか 00009430L7にも、御かいなされました。それなれバ、いゑもちの女は 00009440L8うのしゝたをほうぎよといふか、かた事かといふた。 00009450¥N3¥J 00009460¥X三△かうろをほむる事 00009470L11さる町へれき+のちやのゆしや、下やしきをもとめ、町 00009480L12しゆに御ちやをしんずへしとて、くわいぶんをまハしける。 00009490L13としより、町しゆをよひよせ、たれどのより御ちやを下さ 00009500L14るべきとてくわ/□((い))ぶんがまハつた。つゐにこいちやをのふ 00009510L15だ事/□((が))(六オ)ない。そのうへ、しよ道ぐもかざらるものじ 00009520L16やあらふが、なにとほめたものであらふなど申され/□((け))れバ、 00009530L17町衆聞て、いかにもそのはうのごとく、いづれも町に、ち 00009540L18やをのんだものがない。さりながら、ふるまいにまいらん 00009550L19もおくれた事しやなど申ける。その中にこさかしきもの有。 00009560M1いかにもさやうでごさる。さりながら、ちやといふものハ 00009570M2べつにしさいもない事じや。すてにせいじんのこと葉にも、 00009580M3しるをしるとせよ、しらさるをしらぬとせよと有けれバ、 00009590M4へつにはぢにハならぬ。されども、ていしゆがたにハひそ 00009600M5うのかうろが(六ウ)有ときいた。先御としよりのさきへな 00009610M6をり給ひ、とこのかうろをほめ給へ。そうして道ぐをたし 00009620M7なむ人ハ、かざり道ぐさへほむれバよろこふなど申ける。 00009630M8年寄聞て、これハ心やすき事じや。其かうろハいかさまに 00009640M9もほめ申へしとて、町衆ないだんして、さてふるまひに行 00009650M10にけり。ていしゆがたには、あんのごとく、きやくをたい 00009660M11せつにおもひ、ひそうのせいじのかうろをかざり、きやく 00009670M12まうけしたまひける。時に町衆、いつれものこらすしゆつ 00009680M13ざ有。その/□((時))としより、まつとこわきになをり、ていしゆ 00009690M14/□((に))(七オ)じぎもせず、かうろのふたをとり、さて/□((も))見事な 00009700M15るかうろかな。いつれも町衆、しやう/□□((かう))なされといふた 00009710M16るもおかし。 00009720¥N4¥J 00009730¥X四△らうそく立のつるの事 00009740M19さるもの二人、六条のぶつぐ屋町をとをりける。折ふし家 00009750¥P37 00009760L1+にふつぐをきれいにかざりける。一人がいふやうハ、 00009770L2さても+きれいな鶴かめのもやうかな。いきたつるにす 00009780L3こしもちがハぬなどほめにけり。そのとき一人がいふやう 00009790L4ハ、何と、いきた鶴ハたくさんにハないものじやときいた。 00009800L5その方ハどこてミられたぞ。それがし(七ウ)(八オ挿絵)ハ、 00009810L6/□□□□((さるとしゑどへ))くたりしとき、方&のやし/□((き))にて、いきたつるを 00009820L7はなちてあるをみた/□((と))いふ。一人かいふやうハ、それハま 00009830L8ことのつるでハあるまひ。さやうにたくさんにある物でハ 00009840¥G 00009850M1ない。それハかうつるといふものであらふといふた。いか 00009860M2にもそのほうのいはるゝとをりじや。それがしのミた鶴ハ、 00009870M3らうそく立をくはへてゐなんだほとにといふた。 00009880¥N5¥J 00009890¥X五△与三郎後生ねかひの事 00009900M6去町に与三郎といふて、てまへまづしきものあり。されと 00009910M7も後世を大事とおもひ、ゑぞう(八ウ)のあミだをぶつせん 00009920M8にかけ置、ふだんかうはなをさゝけ、二六時中にねんぶつ 00009930M9を申、あけくれにねんじける。そのいとくにか、てまへそ 00009940M10ろ+ふうきになり、大分の身だいになりけれバ、ぶつだ 00009950M11んのゑぞうをとりかへ、九ぢうざのもくぶつをけつかうに 00009960M12こしらへ、はじめのゑぞうハかたすミにおしこめて、もく 00009970M13ぶつのによらいに、しきミ、あかの水をさゝげ、ねかひけ 00009980M14る。ある時与三郎むなしくなり、めいどのたびにおもむき 00009990M15けるが、六道のつじにまよひ、いつちへゆくべきと、ぼ/□((う)) 00010000M16ぜんとあきれいたりける。かゝる所に、かのゑぞう(九オ) 00010010M17(九ウ挿絵)のあミだによらい、こんごんなりのかごにめし、 00010020M18ごくらくへゆかせ給ふ。そのとき与三郎、御かごにとりつ 00010030M19き、いづくの御そうさまぞ。とれへ御まいり候ぞ。もしご 00010040¥P38 00010050¥G 00010060L12くらくへ御まいり候ハヾ、それがしもめしつれたび給へと、 00010070L13なミだをながし申ける。ときにによらい御らんじて、その 00010080L14はうハ与三郎にてハなきかとおほせける。いかにも与三郎 00010090L15にて御さりまする。かくおほせあるハとなたでごさります 00010100L16る。によらいきこしめし、それがしハゑぞうのあミだじや。 00010110L17たゝいまごくらくへゆくとおほせける。与三郎聞/□((て))、(十オ) 00010120L18さてハさやうで御ざりまするか。それならバひごろの御な 00010130L19じミに、わたくしもこくらくへめしつれ下されと申ける。 00010140M1によらいきこしめし、その方こくらくへ行たくハ、九ぢう 00010150M2ざのあミだをたのめとのたまひける。 00010160¥N6¥J 00010170¥X六△役者種の事 00010180M5さるいなかもの、京都へ上り、四でうかハらを見物しける。 00010190M6いとなまめけるやらうども、いろ+のいしやうをちやく 00010200M7し、きやらしめやかにかをらせ、むらさきぼうし花やかに、 00010210M8ゑもんけたかくかざりけれは、しづ山かつにいたるまて、 00010220M9すこしハ(十ウ)なずミ申べし。かのいなかうども、一めミ 00010230M10しよりおもひそめ、あからめもせずながめゐて、あまりた 00010240M11えかね、水ちや屋にたちより、はづかしながらもの申さん。 00010250M12たゝいましバゐより御かへりあるわかしゆ、きりやうこつ 00010260M13から世にすぐれ、たぐいなき少人なるが、いかやうなる人 00010270M14の御子ぞ。おぼつかなき事など申ける。ちや屋のていしゆ 00010280M15聞て、されハあのわかしゆたちハミな、はう+のいなか 00010290M16よりおさないときにかゝへ置、せいしんのゝちハ、かやう 00010300M17にしよげいをおしへ、身をかさるゆへ/□((に))より、いつくしく 00010310M18なり給ふと申ける。いなか人聞(十一オ)て、さてハさやう 00010320M19で御さるか。わたくしハいかさまれき+のしそくたちじ 00010330¥P39 00010340L1やとおもふたに、我/□((等))ごときのいなかものの子がかやうに 00010350L2なり申候ハヽ、われらくにへくたり、おさない子共をつれ 00010360L3上り、わかしゆにいたすへしとて、やかてくにゝかへり、そ 00010370L4のゝちざいしよの子ともあまたつれのほり、四条かハらに 00010380L5参り、たれをたのまんたよりもなけれバ、かの子共の手を 00010390L6引、やくしやたね+と、四でうあたりをふれたるもおかし。 00010400¥N7¥J 00010410¥X七△新役者入の事 00010420L9さるひようきんなるわかきもの有。明くれ(十一ウ)ゆうら 00010430L10くにくらし、あきなひのうりかいハしらず、しよくハ手に 00010440L11つかず、せんかたなさにかぶきのやくしやになり、しよげ 00010450L12いすこしつゝならひ、かほミせに出けるが、みなやくしや 00010460L13にハちゐんちかづきあまた有。かほミせにハたるさかなを 00010470L14しうぎにくださるゝ。それがしハしんやくしやの事なれハ、 00010480L15ちかつきハなし。せめてなしミの町しゆになりとも、すこ 00010490L16しのたるさかなをもらハんとおもひ、かミふだすこしよう 00010500L17いして、もとすミける町へぞゆきにける。さて年寄そのほ 00010510L18か、ともたちにあひ、ちかころはづか(十二オ)しく御座候 00010520L19へ共、わたくしハやくしやになりました。かほミせよりぶ 00010530M1たいへ出まする。日比の御なじミにハけんぶつに御出あれ 00010540M2とて、札なとさし出しける。町衆聞て、さてもそのはうハ 00010550M3きような人じや。そうじてやくしやといふものハ、しよげ 00010560M4いなけれバならぬときいたに、そのまゝやくしやになり給 00010570M5ふ事ハ、さても+きどくな事じや。そのほうかほミせを、 00010580M6いづれもけんぶつにまいるべし。さてそのほうハ、いかや 00010590M7うなるきやうげんに、なにやくしやをし給ふぞとたつねけ 00010600M8る。そのときかのもの申やう、(十二ウ)されバ、わたくし 00010610M9ハきりきやうげんのやくをいたしまする。町衆聞て、さて 00010620M10ハいかさまにも、そのほうのげいハよいとみえた。しんや 00010630M11くしやにて、それほと大きなるげいをめさるほとに、さた 00010640M12めて上手であらふ。さりなから、きりきやうげんのうちで 00010650M13ハ、なにやくぞとたづねけるときに、かのもの申やう、さ 00010660M14れハ、きやうげんの内に、さふらひの馬にのる事がごさり 00010670M15まする。時に町衆、さてハそのほうハ、そのさふらひにな 00010680M16り給ふか。れき+のたちやくであらふなどゝ申ける。と 00010690M17きにかのもの、いや、そのさふらひでハ(十三オ)御さらぬ。 00010700M18馬になるといふた。 00010710¥P40 00010720¥N8¥J 00010730¥X八△はいかい師立甫東下りの事 00010740L3のゝ口立甫、はじめてあつまへ御下りなされし時、さる御 00010750L4かたに、りうほをめされ、其方ハミやこにてかくれなきは 00010760L5いかいのめいじんじやときいた程に、ほつくをのぞむべし。 00010770L6さりなから、月雪花の句ハめつらしからず。なになり共、 00010780L7めいよなほつくをせよと有けれハ、立甫かしこまつて、ご 00010790L8んかに、 00010800L9△△△△△発△句 00010810L10△△此とのゝのきのこのミやものこのミ 00010820L11△△△十七文/字(じ)の内、のゝ字八つ有もめいよ。(十三ウ) 00010830¥N9¥J 00010840¥X九△はいかい師同意病の事 00010850L14さるはいかいし、天神奉納に千句万句をこうぎやうしられ 00010860L15ける。かのそうしやう、なにとかこゝろへ給ひけん、二く 00010870L16わい共に、梅をほつくにしられたり。はう+の衆、これ 00010880L17を聞、千句梅ならバ、万句にハ松か桜かなと有へきものを、 00010890L18同ししゆこうにて、同意病なと申ける。さる口のわるき人、 00010900L19さあらハこれに三つ物をせんとて、つけられけり。 00010910M1△△△神風や千句万句の梅の花 00010920M2△△△△また此わきも/注連(しめ)を/春(はる)の日(十四オ) 00010930M3△△△あさかすミれいしやハ同じしゆこうにて 00010940¥N10¥J 00010950¥X十△狂哥読賀のうたの事 00010960M6さるあきんどたくへ、きやうかこゝろへたる人、年とうの 00010970M7れいにいてられける。ていしゆ見て、さて+御いでかた 00010980M8しけなきよし申、さけなどいたして、わたくしハだい+ 00010990¥G 00011000¥P41 00011010L1あきんどにて、ものいわゐ仕候間、なにゝても御さくいに 00011020L2て賀のうたなされて下され。すゑ+ハいよ+はんしや 00011030L3ういたすべしなと申ける。かの人聞召、もつともそのほう 00011040L4のおほせあるとをり、かやうに豊なる御代なれバ、上+ 00011050L5かたハ申も(十四ウ)(十五終オ挿絵)おろか、たミ百しやうあ 00011060L6きんどまで、あんらくにくらす事じや。さあらバ、一首よ 00011070L7まんとて、かくはかり、 00011080L8△△めでたいにさけくむ人のにこ+と 00011090L9△△△わらふ家にハ利をゑびすだな(十五終ウ) 00011100¥P42 00011110¥U噺本大系△第五巻 00011120¥T当世軽口咄揃 00011130¥G 00011140¥Y 00011150L16延宝七年刊 00011160L17作者不詳 00011170L18半紙本五巻 00011180L19天理図書館蔵 00011190¥Y 00011200M1/山田歌(やまだうた)にもあらず。また/臼引歌(うすひきうた)/耳茂悲(にもあらす(ママ))。/近曽(さいつころ)よりか、/世= 00011210M2中(よの=なか)に有事なひ事の口をたゝくを聞は、雪こむの/童(わらんべ)より、し 00011220M3よくりしよのおやちまて、/頭(かしら)をかゝへて/笑(わらふ)。いかなるか是、 00011230M4/抹(まつ)(序オ)/香(かう)くさき/祖師(そし)、/初来(せいらい)のくる+とのも、これを聞 00011240M5てすこしはゑミをふくミ給ハむ。/故耳(かるかゆへに)、にかわらひといふ 00011250M6物ならし。(序ウ) 00011260¥P43 00011270¥Y1/当世(たうせい)/軽口(かるくち)/咄揃(はなしそろへ)巻第一目録 00011280L3一△/大(おほ)きなる江戸ばなしの事 00011290L4二△しハき/者(もの)/鉄槌(かなづち)/借(か)る事 00011300L5三△/乞食(こつじき)わづらふ事 00011310L6四△/役者(やくしや)/前髪(まへがミ)/法度(はつと)の事 00011320L7五△/田螺(たにし)と/蚯蚓(みゝず)と/物語(ものがたり)の事 00011330L8六△/麁相(そさう)な/医者(いしや)十一に/灸(きう)をおろす事 00011340L9七△/死人(しにん)/覚帳(おぼえちやう)の事(目録オ) 00011350L10八△はいでの/男(おのこ)/惣(そう)右衛門をしらぬ事 00011360L11九△/亭主(ていしゆ)と/乞食(こつじき)と/乱酒(らんしゆ)の事 00011370L12十△/駕篭(かご)かきはまる事 00011380L13十一△/樽(たる)に/錐(きり)もみの事 00011390L14十二△/塩売(しほうり)/利口(りこう)いふ事 00011400L15十三△/帽子(まうす)を/冠(かふり)といふ事(目録ウ) 00011410¥T1/当世(たうせい)/咄揃(はなしぞろへ)巻第一 00011420¥N1¥J 00011430¥X一△大きなる江戸ばなしの事 00011440M5物ごと/専少(せんしやう)ゆいたがる江戸/商人(あきんど)、京へのほり、/両替(りやうがへ)屋にて 00011450M6/金(きん)と/銀(ぎん)とを両替する。つりかゆる間に、門を/魚(うを)うりとをる。 00011460M7/彼(かの)専少者、なにと/亭主(ていしゆ)。こゝもとにてハ、/鯛(たい)はいかほどな 00011470M8るを、大きなかしらじやととふ。亭主いひけるは、大きな 00011480¥G 00011490¥P44 00011500L1ると申すハ、壱(一オ)(一ウ挿絵)尺七八寸、/乃至(ないし)三尺より大 00011510L2きなるは御座ないといふ。かのせんしやう者、京はよろづ 00011520L3ものごとちいさいことじや。/汝(なんぢ)は江戸を見たかといふ。/亭= 00011530L4主(てい=しゆ)、いまだ見申さぬとこたふ。さらば江戸の事をすこしか 00011540L5たりてきかせう。大きな/鯛(たい)といふは壱丈四五尺、ちいさい 00011550L6といふても六七尺。いまもちてとをりし二尺はかりの鯛は 00011560L7/雑喉(ざこ)の中にあるといふ。(二オ)/亭主(ていしゆ)はらをかゝへ、さても 00011570L8大きな事かな。一度は見申たきよしいひければ、/専少者(せんしやうもの) 00011580L9いよ+つのり、/天秤(てんびん)の上なる弐百目/分銅(ふんどう)をとりて、これ 00011590L10ハ爰元にてハ、いかほとにつかふそといふ。ていしゆ、弐 00011600L11百匁分銅とかたる。せんしやうもの手をうつて、八まん、 00011610L12江戸にての弐/分(ふん)分銅じやといふた。 00011620¥N2¥J 00011630¥X二△しハき/者(もの)/金槌(かなづち)/借(か)る事(二ウ) 00011640L15さるしハき禅門、/柱(はしら)に/釘(くき)打とき、内の久三郎をよひて、む 00011650L16かひの又左衛門殿へ行、すこしの間/鉄槌(かなつち)かりてこいといふ。 00011660L17久三郎かりにゆく。又左衛門、もとより鉄槌ハありけれ共、 00011670L18/禅門(ぜんもん)かね※しハきものなれは、ないといふて/借(か)さず。久 00011680L19三郎/帰(かへ)りて、/鉄槌(かなづち)はないとて御かしなされませぬといふ。 00011690M1禅門きゝて、さて+しハいことや。鉄槌の(三オ)あるは、 00011700M2たしかにしつてゐるに、少つかふたればとて何ほどへるも 00011710M3のぞ。よい+。すこしそこねふとまゝよ。こちの鉄槌を 00011720M4とり出せといふた。 00011730¥N3¥J 00011740¥X三△/乞食(こつじき)/煩(わづら)ふ事 00011750M7下京大仏あたりにて、乞食両方より来、なにと久しや。さ 00011760M8て、其方は/顔(かほ)色がわるいが、わづらハるゝかといひければ、 00011770¥G 00011780¥P45 00011790L1その事。(三ウ)(四オ挿絵)/持病(ぢひやう)さしおこり、/迷惑(めいわく)するといふ。 00011800L2しからば/口(くち)にあふやうに、なぜ/室町(むろまち)がたをあるかぬぞとい 00011810L3へば、されはその事じや。/医者(いしや)のまだ/生(なま)物ハあたるといは 00011820L4るゝゆへに、こゝらにてかるい物をもらふてくふといふた。 00011830¥N4¥J 00011840¥X四△/役者(やくしや)/前髪(まへがミ)/法度(はつと)の事 00011850L7/少年(せうねん)の/前髪(まへがミ)なきゆへに/野郎(やらう)とはいふとかや。まへ/髪(かミ)をつけ 00011860L8て/芝居(しばゐ)へも/出(いづ)る/由(よし)。御公儀様(四ウ)より聞しめし、/急(きつ)度法 00011870L9度に致さずハ/曲事(くせこと)なるべしと、/芝居(しばゐ)の者どもよび付、一& 00011880L10に仰付らるゝ。/役者(やくしや)もめいわくし、色&となげきつゝ、切 00011890L11&/訴訟(そせう)に出ければ、/奉行(ふきやう)あぐませ給ひつゝ、/前髪(まへかミ)の事は、 00011900L12とても叶ハぬことなれば、おもひきれ。その代には、/上髭(うハひげ) 00011910L13をゆるさふと仰せられた。 00011920¥N5¥J 00011930¥X五△/田螺(たにし)と/蚯蚓(みゝず)と物語の事(五オ) 00011940L16/蚯蚓(ミヽず)と/田螺(たにし)とよりあひて、/互(たがひ)に/身(ミ)のうへの事をはなしける 00011950L17が、蚯蚓のいはく、そも+我身ほど/術(じゆつ)なき/苦労(くらう)をするも 00011960L18のは、またと有まい。/蛙(かへる)におそるゝのみならず、まづハ/裸(はだか) 00011970L19のことなれば、/炎天(ゑんてん)にはほしつけられ、そのほかくるしき 00011980¥G 00011990M12事ばかりじやが、其方ハ/家(いゑ)を/持(もち)てゐらるゝゆへ、はげしき 00012000M13時には身をちゞめ、さぞ/安楽(あんらく)に(五ウ)おハすらめといひけ 00012010M14れば、田にし、こたへて云やう、かまひて+うらやむな。 00012020M15身をちゞめても/詮(せん)がなひぞ。家ぐちかいてゆくとこたへた。 00012030¥N6¥J 00012040¥X六△/麁相(そさう)な/医者(いしや)十一に/灸(きう)をおろす事 00012050M18/道徳(たうとく)といふそさうな医者に、さる/病人(びやうにん)、十一に/灸(きう)をおろし 00012060M19てもらふ。医者、十二におろす。さて、すえてのち友達に、 00012070¥P46 00012080L1此程十一に灸を(六オ)(六ウ挿絵)すえたとて見せる。友達、 00012090L2これハ十一てハない。十二じやといふ。/病人(ひやうにん)、/医者(いしや)の所へ 00012100L3行、先日たのミ申す十一の/灸(きう)は、十二ととりちがへなされ 00012110L4たと、はらをたつる。医者きゝて、それはたしか十一であ 00012120L5つた。今一度見せ給へとて、よく見れど十二なれば、ぬか 00012130L6らぬかほにて、十一でも十二でも、きくハおなじことじや。 00012140L7上の町のやけるのに、下の町の/道具(だうぐ)のけぬ事ハ(七オ)ない 00012150L8といふた。 00012160¥N7¥J 00012170¥X七△/死人(しにん)覚帳の事 00012180L11さるおんぼ、/御旅(おたひ)町の帳屋に立より、この帳いくらととひ 00012190L12ければ、五匁とこたふ。おんぼ、四匁にまけ給へといふ。 00012200L13いやなりませぬといへば、そんならば四匁四分に/買(かい)ませう。 00012210L14ちと心入ある事なりといへば、やすけれどまけませう。さ 00012220L15らば/表書(うハがき)ハ何と/致(いた)さうぞといへ(七ウ)ば、/死人(しにん)覚帳と/書(かい)て 00012230L16下されよ。こゝろえたりとて/表書(うハがき)をしたり。時に見物の者、 00012240L17さて+見事なる手かな。/生(いき)てはたらくごとくじやといふ。 00012250L18おんぼ、ことの/外(ほか)/気(き)にかけ、もはや+此帳は/買(かい)ますまい 00012260L19といふ。/帳屋(ちやうや)のいハく、うハ書までさせて、それハだうし 00012270M1た事ぞ。/是非(ぜひ)+買たまへといかりければ、いまハかねが 00012280M2ない。かねをもつて晩のじあいに(八オ)とりにこふといふ 00012290M3た。 00012300¥N8¥J 00012310¥X八△はいでの/男(おとこ)/惣(そう)右衛門をしらぬ事 00012320M6さる者、下男にしなのゝ国のはいでをつかふ。ある時、下 00012330M7の町にきられてゐる者があるとて、あたりの者見にゆくを、 00012340M8/亭主(ていしゆ)聞て、やれ、ぬす人か、何者じや。仁介、見てこいと 00012350M9いふ。仁介、かしこまつたとて、みてかへり、三つ/指(ゆび)つい 00012360M10て申けるは、/誰(たれ)も惣右衛門と(八ウ)申ものじやと申さふら 00012370M11へども、/我等(われら)か目にハ/女子(をなご)てござりますといふた。 00012380¥N9¥J 00012390¥X九△/亭主(ていしゆ)と/乞食(こつじき)と/乱酒(らんしゆ)の事 00012400M14/乞食(こつじき)あまた/門口(かとぐち)にたち、/御町(おてう)にてハ/名代(なだい)の御/家(ゑ)様。ことに 00012410M15/若殿(わかとの)様の/御祝言(こしうげん)。われらごときもかやうなる時、おもひ/出(で) 00012420M16いたしたうござるなどゝのゝしりければ、/親仁(おやじ)、それ+、 00012430M17/飯(めし)をとらせてやれといハるゝをきゝ、いや(九オ)+、/食(めし) 00012440M18はめづらしうもござりませぬ。/誠(まこと)にはや/目出度(めでたき)おりからで 00012450M19ござれば、/酒(さけ)を一/盃(はい)づゝくたされよといひけれは、ていし 00012460¥P47 00012470L1ゆもおどけ人、/殊(こと)に/酒(さけ)ずきなれば、やさしや。めしをとら 00012480L2いで、/酒(さけ)をこふこそしほらしや。さらバさけをくれよと有 00012490L3ければ、/大(おほ)かん/鍋(なべ)に/酒(さけ)をいれ/持(もち)て/出(いて)ければ、/乞食(こつじき)、大きに 00012500L4よろこび、大きなるめんつにて、さいつさゝれつのふ(九 00012510L5ウ)たりけり。/興(けう)に/乗(せう)して/亭主(ていしゆ)、あいをせんとて出られた 00012520L6り。/乞食(こつじき)、これは+かたじけなき御事かな、さらばとて 00012530L7めんつをさす。ていしゆ、ひとつ/呑(のふ)で/乞食(こつじき)にさす。時に乞 00012540L8食、おさへませうとて、さかなをはさむ。亭主、いや+ 00012550¥G 00012560M1そのやうにはならぬといふ。いや、どうでもおさへませう。 00012570M2亭主、/辞義(じぎ)をしかね、そんならば、めんつはいたゞく。/御= 00012580M3酒(ご=しゆ)はゆるせといはれた。(十オ)(十ウ挿絵) 00012590¥N10¥J 00012600¥X十△/駕篭(かご)かきはまる事 00012610M6さる/遠国(をんごく)の四拾八貫目ある/肥(こえ)たる男、京うちまいりをした。 00012620M7大仏の御まへより/祇園(きおん)まで駕篭をかる。壱匁とやくそくし 00012630M8てかいて行。五でう/辺(へん)までかいて来りしが、四拾八貫目あ 00012640M9るおとこなれば、おもひのほか/肩(かた)も/背(せなか)ももげて行やうなれ 00012650M10ば、かごかき、/相手(あいて)にいひけるは、此やうな/重(おも)い人は、の 00012660M11せ/初(はじ)めじや。(十一オ)/兎角(とかく)明日か大/事(じ)じや。かご/銭(せん)を/損(そん)に 00012670M12して、/爰(こゝ)にてうちあけて帰るまいかといふ。相手、いかに 00012680M13もそのとをりじや。明日/役(やく)にたゝぬとて、駕篭/銭(せん)を/損(そん)にし 00012690M14て、うちあけて帰る。折ふし/友達(ともだち)のかごかき、此有様を見 00012700M15て、/重(おも)たいめをしたまふのミならず、駕篭銭さへとりたま 00012710M16ハず。さて+/笑止(せうし)や。又あのやうな大きな者を、ふたり 00012720M17してやるものか。不心得な事(十一ウ)じやといふ。/駕篭(かご) 00012730M18かき、しほ+と/涙(なミた)をながしていひけるは、されば、大仏 00012740M19の/御釈迦(おしやか)を見た目でのせたによつて、ちいさいとおもふて、 00012750¥P48 00012760L1いかい/損(そん)をしたといふた。 00012770¥N11¥J 00012780¥X十一△/樽(たる)に/錐(きり)もみの事 00012790L4少ぬけたるおとこ、樽をあけるとてのミ口の出かねければ、 00012800L5/傍(かたハら)に有ける人、さて+/愚(おろか)なる人かな。/風(かさ)穴がない故じ 00012810L6や。樽の上に錐て穴(十二オ)を開られよと気をつけられ、 00012820L7/穴(あな)をあけたれば、/案(あん)のごとくどぶ+と出たり。かの男、 00012830L8樽にいだき付、にハかにはら+となミたをながす。人&、 00012840L9いかに+とおどろきければ、かの男涙をおさへ、くやし 00012850L10きことをきゝてたべ。/去(きよ)年/親仁(おやじ)が小/便(へん)の/通(つう)せすして死なれ 00012860L11たり。かゝる/療治(りやうし)をしるならは、親仁かあたまに、きりも 00012870L12みをせうものをとて、又さめ+(十二ウ)とないた。 00012880¥N12¥J 00012890¥X十二△/塩売(しほうり)/利口(りこう)いふ事 00012900L15さる塩売、四/条河原(でうがハら)/橋(はし)の上にて、あやまつて/塩俵(しほだハら)を河へを 00012910L16とす。なにが塩の事なれは、皆水になる。かのしほうり、 00012920L17かなしさのあまりに、/声(こへ)をあげてなく。/往来(ゆきゝ)の人、大男の 00012930L18なくを見て、さて+、しほの五/俵(ひやう)や十俵の事にてなくも 00012940L19のか。/未練(ミれん)なと笑ふ。その時しほ(十三オ)うり、はづかし 00012950M1がり、ぬからぬふりにて、塩の五俵や十俵ながしたが、さ 00012960M2のミかなしうハなひが、大/勢(せい)の魚が/喉(のと)の/渇(かわこ)ふとおもふてか 00012970M3なしいといふた。 00012980¥N13¥J 00012990¥X十三△/帽子(まうす)を/冠(かふり)といふ事 00013000M6さる口がしこきもの、二人づれにて正月廿五日に/智恩院(ちをんゐん)/法= 00013010M7然(ほう=ねん)の/御忌(きよき)参りをして、長/老達(らうたち)のあまた帽子を/着(き)て出給ふを 00013020M8見て、一人が(十三ウ)(十四オ挿絵)いひけるは、さてもいかい 00013030¥G 00013040¥P49 00013050L1事、/冠(かふり)を/着(き)て出たまふといふ。つれ聞て、あれは冠でハな 00013060L2ひ。/帽子(まうす)といふものじや。/冠(かふり)などゝいふものハ、御/公家(くげ)様 00013070L3よりほかハ、/着(き)る事ハならぬといふ。口がしこき者いふや 00013080L4う、たしか冠じやと云/証拠(せうこ)があるに、/初心(しよしん)な事はとりてお 00013090L5きやといふ。つれ/腹(はら)をたて、あれを冠といふ/証拠(せうこ)があらば 00013100L6出せといふ。いかにも証拠がある。/杜若(かきつばた)(十四ウ)のうたひに、 00013110L7うゐかふりとハまうすとかやとうたハぬかといふた。 00013120¥Y1当世咄揃巻第一終(十五オ) 00013130¥Y1/当世(たうせい)/軽口(かるくち)/咄揃(はなしそろへ)巻第二目録 00013140M3一△/大仏(だいぶつ)の/御釈迦(おしやか)に/戸帳(とちやう)の事 00013150M4二△/湿(しつ)にあてられたる/病人(びやうにん)の事 00013160M5三△/東河原(ひがしがハら)/大水(おほミづ)の事 00013170M6四△/北野(きたの)七/本松(ほんまつ)/能(のふ)/見物(けんぶつ)の事 00013180M7五△/鑓持(やりもちの)/雪隠(せつちん)の事 00013190M8六△/精進(しやうじん)の/栄螺(さゞい)の事 00013200M9七△/乞食(こつじき)/福(ふく)を/祷(いの)る事(目録オ) 00013210M10八△/力持(ちからもち)の事 00013220M11九△/茶(ちや)屋のしやうぎの事 00013230M12十△へこりの事 00013240M13十一△/夜番(やばん)/返答(へんとう)の事 00013250M14十二△/鈍根草(どごんさう)の事 00013260M15十三△しハき/医者(いしや)の事(目録ウ) 00013270¥P50 00013280¥T1/当世(たうせい)/咄揃(はなしぞろへ)巻第二 00013290¥N1¥J 00013300¥X一△/大仏(だいぶつ)の/御釈迦(おしやか)に/戸帳(とちやう)の事 00013310L5さる/者(もの)、大仏の御釈迦へ/参(まい)りちかひけるは、/只今(たゞいま)/心中(しんぢう)に申 00013320L6上たるとをり、御かなへくだされさふらハヾ、御/姿(すがた)のかく 00013330L7るゝやうに、戸帳をかけて/参(まいら)すべきと/願(ぐハん)をかくる。なにが 00013340L8御釈迦の/通力(つうりき)なれば、ほどなく/心中(しんぢう)の/祈誓(きせい)のとをりにかな 00013350¥G 00013360M1ふ。かの/者(もの)よろこび、やがて戸帳を(一オ)(一ウ挿絵)かけ 00013370M2んともくろみしが、大仏の事なれば、/存(ぞんじ)のほか五十/端(たん)や百 00013380M3端が/絹(きぬ)にてはたらず。大/分(ぶん)いれば、おもひながらうちすぐ 00013390M4る。御釈迦はらをたて給ひ、戸帳をかけるうれしさのま 00013400M5ゝにこそ、/其方(そのはう)の/望(のぞ)ミをかなへたり。はやくかけよと/二王(にわう) 00013410M6をもつて/使(つか)ひたつ。かの者、二王とうちつれ御釈迦のまへ 00013420M7にいで/佗言(わびこと)しけるは、/御意(ぎよい)のとをり、戸帳をかけ申さんと 00013430M8(二オ)いひしこと、/紛(まぎ)れ/御(ご)ざなく/候(さふら)へども、おもひのほか 00013440M9絹が入申すゆへ、戸帳は御ゆるしくださるべし。その/代(かハり)に 00013450M10ハ/寄特頭巾(きどくづきん)をして/着(き)せませうといふた。 00013460¥N2¥J 00013470¥X二△/湿(しつ)にあてられたる/病人(びやうにん)の事 00013480M13ある/貧(ひん)なるものゝ/女房(にようばう)、ぶら+とわづらひしが、とかく 00013490M14すれ共/愈(いえ)す。ある/医者(いしや)をよびて見するに、これは/湿(しつ)にあて 00013500M15られたる(二ウ)わづらひじやといふ。/男(おとこ)きゝて、いやそれ 00013510M16は見たてがちがひました。/左様(さやう)でハござるまひ。つねに/増= 00013520M17水(ぞう=すい)をたぶるゆへに、いつからか/櫃(ひつ)は/棚(たな)へあげて、さハりも 00013530M18/致(いた)さぬ。なんのひつにあたろふにやといふた。 00013540¥P51 00013550¥N3¥J 00013560¥X三△/東河原(ひがしがハら)/大水(おほミづ)の事 00013570L3此まへ大水のゝち、三条の/橋(はし)の/下(した)にて/乞食(こつじき)二人よりあひ、 00013580L4一人のいふやう、さても+(三オ)おもひもよらぬ大水に 00013590L5て、/着類(きるい)こと※くながして/迷惑(めいわく)するといひければ、一人 00013600L6のいふやう、されば+、をれもそのとをりじや。/別(べち)に/外(ほか) 00013610L7の物はおしからぬか、/晴着(はれぎ)にのけてをいた、えり/垢(あか)もつか 00013620L8ぬ/薦(こも)をながした。いつち、これがおしいといふた。 00013630¥G 00013640¥N4¥J 00013650¥X四△/北野(きたの)七/本松(ほんまつ)/能(のふ)/見物(けんぶつ)の事 00013660M3/北野(きたの)七本松にて/勧進能(くハんじんのふ)あり。見物の中に、(三ウ)そのさま 00013670M4あしからぬ/禅門(せんもん)、かたハらなる人に/向(むか)ふて、何とおぼしめ 00013680M5す。/聞(きゝ)をよびたるよりは/麁相(そさう)な/能(のふ)じやと/存(ぞん)ずるといふ。さ 00013690M6れば/舞台(ふたい)、はしかゝりハ申すにをよばず、/衣裳(いしやう)などの見ぐ 00013700M7るしさ、/言葉(ことば)にハのべられぬといへば、かの禅門、いや先、 00013710M8/舞台(ぶたい)/衣装(いしやう)はともあれ、あの/笛吹(ふえふき)を/御覧(ごらん)なされ。/腰懸(こしかけ)さへ/持(もち) 00013720M9て出ぬといふ事かあるものか。/且(かつう)は見物をあなづる(四オ) 00013730M10(四ウ挿絵)と見えたといふた。 00013740¥N5¥J 00013750¥X五△/鑓持(やりもち)/雪隠(せつちん)の事 00013760M13とつと/遠国(をんごく)の/者(もの)、四五人づれにて花の/都(ミやこ)へのぼり、京/内(うち)参 00013770M14りをする。/北野(きたの)をこゝろざして/千本通(せんぼんどを)りを/上(のぼ)りしが、/焼亡(ぜうまう) 00013780M15の時に/鐘(かね)つく所を見て、あれは何を/商買(しやうばい)にする人の/家(いゑ)ぞ。 00013790M16さて+ながい/家(いゑ)じやと、いろ+/評判(ひやうばん)すれど、/埓(らち)あかず。 00013800M17/同行(どうぎやう)のうちにかしこだてする/者(もの)いひ(五オ)けるは、あさま 00013810M18しや。ミなハ/初心者(しよしんもの)じや。あれをしらぬか。あれは/鑓持(やりもち)の 00013820M19/雪隠(せつちん)じやといふた。 00013830¥P52 00013840¥N6¥J 00013850¥X六△/精進(しやうじん)の/栄螺(さゞい)の事 00013860L3ある壱文/銭(ぜに)も百にわるほどなるしハきもの、/客(きやく)を四人ふる 00013870L4まふとて/焼(やき)物に/栄螺(さゞい)をする。やがて/魚屋(うをや)をちかづけ、客四 00013880L5人と/亭主(ていしゆ)と五人の/算用(さんよう)にて、/栄螺(さゞい)五つかふ。魚屋のいふや 00013890L6う、やすき物じや。/十(とを)/買(かい)給へといへときかず。さて/膳(ぜん)を出 00013900L7(五ウ)すまへかた、/与風(ふと)/客(きやく)一人きたる。亭主、御/帰(かへり)なされよ 00013910L8とハいはれず、よきおりからの御出。/誰(たれ)様もござる。御と 00013920L9をりあれといへば、/心得(こゝろえ)たとて/座敷(ざしき)へとをる。亭主、/勝手(かつて) 00013930L10へ/入(いり)、/焼(やき)物の栄螺か壱つたるまいほどに、/裏(うら)にあるさゞい 00013940L11のからに、/大根(だいこん)や/牛蒡(ごばう)をきりまぜ、/内証(ないせう)の事は/大事(だいじ)ない。 00013950L12かならずこれををれにひけといひつけしが、いそかしきま 00013960L13ぎれにとりちがへ(六オ)て、亭主によき栄螺をすへた。亭 00013970L14主、/蓋(ふた)を/取(とり)てみて/肝(きも)をつぶし、そこもとへ、もし/精進(しやうじん)の栄 00013980L15螺はまぎれてハまいらぬかといふた。 00013990¥N7¥J 00014000¥X七△/乞食(こつじき)/福(ふく)をいのる事 00014010L18ひがし/河原(がハら)に乞食あつまり/僉議(せんぎ)しけるは、まことに/貧(ひん)ほど 00014020L19つらき物は又とあるまひ。いざ、/湯(ゆ)の花をまいらせ/福(ふく)を/祈(いの) 00014030M1らんと、/太鞁(たいこ)にはめんつのうらをたゝき、/皿(さら)のわれを/調拍(とびやう) 00014040M2(六ウ)/子(し)とし、/女(をんな)乞食(こつじき)の/年(とし)わかきを/神子(みこ)とし、しらゆふ花 00014050M3をさゝげけるに、/神(かミ)も/納受(なうじゆ)し給ひけん、やがて/御託宣(ごたくせん)あり。 00014060M4みな+かうべをたれて/聞(きく)。かしこうも/丸(まろ)をこゝに/勧請(くハんじやう)し、 00014070M5/湯(ゆ)の花をくれける心ざし、/一入(ひとしほ)うれしうおぼしめす。今よ 00014080M6り/随分(ずいぶん)まもらふとハおもへども、あたら/湯(ゆ)に、ゆの/子(こ)のな 00014090M7いがはらがたつと、/御託宣(ごたくせん)があつた。 00014100¥N8¥J 00014110¥X八△/力持(ちからもち)の事(七オ) 00014120M10あるかた/田舎(ゐなか)にて、わかき男ども、ちからもちをしたりけ 00014130M11る中に、/米(こめ)/弐俵(にひやう)をゆひ/合(あハ)せてかろ※と/持者(もつもの)あり。さて 00014140M12+つよい/事(こと)やとて/感(かん)ずる中に、/一人(ひとり)/二人(ふたり)ほめぬ者有しが、 00014150M13京の者どもがちからをきゝてからハ、/一切(いつさい)ほめられぬ。/疲(やせ) 00014160M14かれたるちいさき/男(おのこ)にても、五十貫目持た、六十貫目持た 00014170M15といふ者をいくたりも見たといふ。/傍(かたハら)の/者(もの)きゝて、まこと 00014180M16にその事(七ウ)(八オ挿絵)じや。/去年(こぞ)/若(わか)き/者(もの)か/室町通(むろまちどをり)にて、 00014190M17五/間口(けんぐち)の/家(いゑ)を/棒(ぼう)にふつたといふものがあつた。なんと京に 00014200M18ハちからづよが/多(おゝ)いでないかといふた。 00014210¥P53 00014220¥G 00014230¥N9¥J 00014240¥X九△/茶(ちや)屋のしやうぎの事 00014250L14正月のはじめつかた、/旅(たび)人、/道中(だうちう)の茶屋のしやうぎに、/注= 00014260L15連(し=め)かざりをして/置(をき)けるをみて、つれの人にいひけるは、あ 00014270L16れハ/尤(もつとも)じや。/聞(きこ)えた。/往来(わうらい)の人、これにこしをかくるゆへ 00014280L17に銭をまふくる。かうなふてハ(八ウ)かなハぬといふて/感(かん) 00014290L18ずる。つれの人きゝて、いや、まだあれより/聞(きこ)えたことが 00014300L19ある。こちの/隣(となり)の/飛脚(ひきやく)ハ、/足(あし)のうらに/鏡(かゞミ)をすえるといふた。 00014310¥N10¥J 00014320¥X十△へこりの事 00014330M3さるわかき者、心やすからぬつきあひにて、/取(とり)はづしてへ 00014340M4をこかれしが、まぎらかさんとおもひ、/畳(たゝミ)をとん+ばた 00014350M5+たゝく。/満座(まんざ)の/者(もの)ども見て、いまのハまざ+、へで 00014360M6あつたとお(九オ)もひながら打すぐる。その中に物をこら 00014370M7えぬ/若(わか)き者有しが、畳をたゝくを見て、これ+、たゝく 00014380M8まい+。そのやうにたゝけば、へこりがたつと、もつて 00014390M9まいつた。 00014400¥N11¥J 00014410¥X十一△/夜番(やばん)/返答(へんとう)の事 00014420M12さる/町(てう)の/手(て)まへ/者(しや)、われらがやうな/福人(ふくじん)ハ、/万事(ばんじ)/身持(ミもち)がむ 00014430M13つかしい。その/上(うへ)、/盗人(ぬすびと)などか/窺(うかゞ)ふ物じやとて、用人にめ 00014440M14をかけらる。ある/夜(よ)、/夜(や)(九ウ)(十オ挿絵)/食(しよく)をふるまハんと 00014450M15て、/番床(ばんどこ)へ/呼(よび)にやられければ、/用人(ようにん)申けるは、/今晩(こんばん)ハ/腹(はら)が 00014460M16しげり申す。もはや参るまじきといふ。/手(て)まへ/者(しや)、/返事(へんじ)を 00014470M17きゝて、それならば、こいせんじ/茶(ちや)がある。/来(き)てのめとい 00014480M18ハれければ、用人、さい+御/使(つかひ)かたじけなくさふらへ共、 00014490M19こい茶をくだされさふらへバ、/夜(よ)がねられませぬ/程(ほど)にのむ 00014500¥P54 00014510¥G 00014520L12まひと返事した。 00014530¥N12¥J 00014540¥X十二△/鈍根草(どごんさう)の事(十ウ) 00014550L15さる/親仁(おやじ)、ぬけた/息男(むすこ)をつれて/饗膳(ふるまひ)に/行(ゆく)。/亭主(ていしゆ)、いろ+ 00014560L16/馳走(ちさう)の上にて、さかなに/茗荷(ミやうが)を/持(もつ)て出、どごんさうを参れ 00014570L17といふて/一&(いち+)にひく。客のいひけるは、/鈍根草(どごんさう)といへど、 00014580L18この/風味(ふうミ)にてハ/食(くハ)でハならぬといひて、/何(いづ)れもうくる。か 00014590L19のぬけたむすこにも/引(ひか)んとするを、親ミて、これ+、せ 00014600¥G 00014610M12がれにハ/御無用(ごむよう)といふ。亭主きゝて、いや、どごんさうと 00014620M13ハいへど、なる程風味のよき(十一オ)ものじやとて無理に引。 00014630M14親仁/辞義(じぎ)をしかね、いや、たゞ/時宜(じぎ)でハごさらぬが、/世悴(せがれ) 00014640M15ハ/下地(したぢ)がござりますといふた。 00014650¥N13¥J 00014660¥X十三△しハき/医者(いしや)の事 00014670M18さるしハき/薮医者(やぶいしや)、/年頭(ねんとう)の/礼(れい)に/旦那(だんな)がたをあるくに、/年玉(としだま) 00014680M19をくバらねばならず、/薬種(やくしゆ)ハたかし、/煉薬(ねりやく)ハ物がいる。何 00014690¥P55 00014700L1がなものゝいらぬくすりをこしらへ、年玉にいたし度とお 00014710L2もハれしが、/急(きつ)(十一ウ)(十二終オ挿絵)/度(と)おもひ/出(だ)し、/藁萼(わらしへ)を 00014720L3壱寸ほとづゝに/切(きり)て/帋(かミ)につゝミ、/旦那(だんな)がたを持てくバる。 00014730L4/医者(いしや)/帰(かへ)られて/後(のち)、ある/旦那(だんな)、これハ/紙(かミ)ばかりさうな。いこ 00014740L5うかるひといふてあけて見るに、/薬(くすり)ハなくて、わらしべの 00014750L6壱寸ばかりなるがある。これはどうしたことじやとて、か 00014760L7きつけをミれば、/藁萼(わらしべ)のわきに、しびりの御薬、つけやう、 00014770L8つハきにて、とかきてあつた。 00014780¥Y1当世咄揃巻第二終(十二終ウ) 00014790¥Y1/当世(たうせい)/軽口(かるくち)/咄揃(はなしそろへ)巻第三目録 00014800M3一△ぶたごなる/下男(しもおとこ)の事 00014810M4二△/鞁(つゞミ)屋こゑ/買(かい)/喧嘩(けんくハ)の事 00014820M5三△/助言(じよごん)いひたがる人の事 00014830M6四△/鰈(かれ)を四/枚(まい)/送(をく)る事 00014840M7五△二くつしの事 00014850M8六△/大坂(おほざか)/雪隠(せつちん)/薦垂(こもだれ)の事 00014860M9七△ぬけた/息男(むすこ)/酒(さけ)/売(う)る事(目録オ) 00014870M10八△/追出(をひだ)しぐすりの事 00014880M11九△/犬(いぬ)も/商(あきな)ひする事 00014890M12十△/山帰来(さんきらい)の/煎(せん)じ/糟(かす)の事 00014900M13十一△/惣(さう)右衛門をよび/生(いけ)る事 00014910M14十二△/侍(さふらひ)の/御二(おに)あしの事 00014920M15十三△/孫(まご)八うたひの事(目録ウ) 00014930¥P56 00014940¥T1/当世(たうせい)/咄揃(はなしぞろへ)巻第三 00014950¥N1¥J 00014960¥X一△ぶたごなる/下男(しもおとこ)の事 00014970L5ある/身持(ミもち)ぶたごなる久七といふ下男、/雪隠(せつちん)へゆく。雪隠よ 00014980L6り久七が/声(こゑ)にて、うちのたけをよぶ。たけ、何事ぞとてゆ 00014990L7く。いや、/別(べち)のことでハなひが、/紙(かミ)をたもといふ。/下女(げぢよ)き 00015000L8ゝて、きやうがることや。紙をももたずして/厠(かハや)へゆくもの 00015010L9かといひければ、いや+、もはや(一オ)/紙(かミ)もいらぬぞ。 00015020L10今に/水風呂(すいふろ)へ/入(いる)ほどにといふた。 00015030¥N2¥J 00015040¥X二△/鞁屋(つゞミや)とこゑかいと/喧嘩(けんくハ)の事 00015050L13/西(にし)の/郤(おか)のこゑ/買(かい)、京へ出て、こゑかハふ+といふてある 00015060L14きけるが、ある/鞁(つゞミ)屋より、こゑ/売(うろ)とよぶ。こゑ買たちより、 00015070L15さらば/買(かい)ませうといへば、/亭主(ていしゆ)いてゝ、いや+/売(うる)まひ。 00015080L16こゑハないといふ。こゑ買、大きに/腹(はら)を立、/田舎者(ゐなかもの)じ(一 00015090L17ウ)やとおもふてなぶるさうな。ねんもないこと。きくこ 00015100L18とでハないといかる。/亭主(ていしゆ)すこしもさハがず。いや、さや 00015110L19うに/腹立(はらたて)らるゝな。むかしよりの/世話(せわ)にさへ、こゑなふて 00015120¥G 00015130M12人をよぶといふ事がある程にといふ。こゑとり、なにとか 00015140M13おもひけん、うちうなづきてかへりけるが、しばらくあり 00015150M14て、こゑを/壱荷(いつか)になふてきたり、/件(くだん)の/鞁(つゞミ)屋の/門(かど)にをろし、 00015160M15こゑびしやく(二オ)にてこゑをすくひ、みせに有けるつゞミ 00015170M16や/太鞁(たいこ)にかけたり。亭主大きに/興(けう)をさまし、さて+にく 00015180M17きしわざ。壱寸もやるまひと、にが+しくもいかりける。 00015190M18こゑかい、さあらぬていにて、さきほどその/方(はう)ハ、こゑな 00015200M19ふて人をよぶといふて/詰(つめ)たでハないか。/鞁(つゞミ)にも/太鞁(たいこ)にも、 00015210¥P57 00015220L1かけごゑといふ事があるからハ、こゑをかけてもすこしも 00015230L2/大事(だいじ)ないといふて、また(二ウ)(三オ挿絵)つめた。 00015240¥N3¥J 00015250¥X三△/助言(ぢよごん)ゆいたがる人の事 00015260L5ある所にて人&よりあひ、/棊(ご)をはじめけるが、其内にきハ 00015270L6めて/助言(ぢよごん)ゆいたがる者あり。人のうつ/棊(ご)をわきより、きれ 00015280L7の、をさへのといふ。ひらさらたのむ。助言ゆいたまふな 00015290L8といへど、すこしもたゞ口なく、いひやまず。/棊(ご)うち共い 00015300L9ふやう、そのやうに何ほどいひ給ふなといへどいひ(三ウ) 00015310L10給ふは、/兎角(とかく)目にて見給ふゆへじや。帰り給へといふ。か 00015320L11の者きゝて、をれもさうおもふ。とかく見るが/毒(どく)じやとい 00015330L12ふて、/半町(はんまち)ばかり/帰(かへ)られしに、/折節(おりふし)むかふより/棊(ご)/友達(ともだち)/来(く)る。 00015340L13助言いひたがる者、これはどこへ行たまふといへば、/相手(あいて) 00015350L14きゝて、/上(かミ)の町の/碁(ご)/見物(けんぶつ)にゆくといふ。かの助言ゆひ、を 00015360L15れもいまゝで見てゐたが、あまりまだるうてかへる。御む 00015370L16つかしながら、ゆかせたま(四オ)ハヾ、それまだ/白(しろ)のかた 00015380L17から、/角(すみ)にきつてとる手があるが、いまに/機(き)にかゝる。か 00015390L18ならずわすれなと、御申たのむといふて、みちにて/言伝(ことつて)し 00015400L19た。 00015410¥N4¥J 00015420¥X四△/鰈(かれ)四/枚(まい)をくる事 00015430M3物いはひする所へ/出入(でいり)の者がたより、/歳暮(せいぼ)の御/祝義(しうぎ)とて/鰈(かれ) 00015440M4をつかハす。/数(かず)をみれば四枚あり。/亭主(ていしゆ)/機(き)にかけ、大きに 00015450M5/腹(はら)を立、かの出入の者に(四ウ)/来(きた)れとてよびよせ、其方ハ 00015460M6/鰈(かれ)をくれたるこゝろざしハ/過分(くハぶん)なるが、五枚か三枚は聞え 00015470M7たが、四枚は/合点(がてん)がゆかぬ。さて+物しらずじやとい 00015480M8ふて、さん※のゝしる。出入の者すこしもさハがず、わ 00015490M9たくしハ、御しまひのよかれかしといはふてしんぜました 00015500M10といひければ、亭主ことのほか/機嫌(きげん)なをりて、そのやうな 00015510M11/心入(こゝろいれ)じやとハしらず。をれハまた、其方をしかれと(五オ) 00015520M12いふ事じやとおもふてしかつたといふた。 00015530¥N5¥J 00015540¥X五△二くつしの事 00015550M15/随分(ずいぶん)/悪性(あくしやう)にて、しかも/博奕(ばくち)をわざとする者あり。親、いろ 00015560M16+/異見(いけん)すれど/可(きか)ず。此うへは打きつてすてんとて、きら 00015570M17るゝにぞきハまりける。きらるゝこと/内通(ないつう)する者あつて、 00015580M18むす/子(こ)に/告(つげ)たりければ、/息子(むすこ)めいわくし、/清水(きよミづ)の/観世音(くハんぜをん)に 00015590M19参り、此/難(なん)をすくひ給へと(五ウ)(六オ挿絵)/肝胆(かんたん)くだきいの 00015600¥P58 00015610¥G 00015620L12りける。さて/御鬮(ミくじ)をおしいたゞき、/我命(わがいのち)/恙(つゝか)なくハ一の/鬮(くじ) 00015630L13をりさせたまへと、ふりいだしみれば二の鬮なり。又ふり 00015640L14なをしてみれど二の鬮をり給ふ。いや+、/三度目(さんどめ)が/本(ほん)じ 00015650L15やと、/一心(いつしん)にかけてふり出す。又おなじ二の/鬮(くじ)なり。さて 00015660L16ハ/我(われ)/存命(ぞんめい)する事かたし。/是非(ぜひ)もなき/次第(しだい)かなと、しほ+ 00015670L17と下向しけるが、/道(みち)にて/博奕(ばくち)の/友達(ともだち)に行あひ、(六ウ)おや 00015680L18の打きらんといふ事、/御鬮(ミくじ)の/様子(やうす)ありのまゝにかたりける。 00015690L19友達きゝて、それは目出度御鬮じや。なに事もあるまひ。 00015700M1すこしも/機遣(きづかい)するな。そのゆへは、まつ/父(おや)が/打切(うちきらふ)といふ 00015710M2ではない/が((ママ))。/如何(いか)にもおやが打切ふといふ。/御鬮(ミくじ)に二が三 00015720M3/度(ど)おなじやうに出たてないか。中+。それなれば、何ほ 00015730M4と/親(おや)が打きりたくと二くつしにするほとに、うちきる事ハ 00015740M5ならぬそと(七オ)いふた。 00015750¥N6¥J 00015760¥X六△/大坂(おほざか)/雪隠(せつちん)/薦(こも)だれの事 00015770M8大坂/町&(てう+)の雪隠に、/薦莚(こもむしろ)をかけ雪隠とかきつけてあり。/冬(ふゆ) 00015780M9の/寒(かん)ずる比、ある/乞食(こつじき)、寒さのあまり、かの雪隠のこもを 00015790M10はづして身にまとひ、うづくまりつくぼうてゐる。かゝる 00015800M11所へ、なるほど/麁相(そさう)なる/若(わか)き者、何が雪隠とハ/書(かき)てあるな 00015810M12り。うしろよりまくり、はいらんとす(七ウ)るに、こつじ 00015820M13きの/尻(しり)見えければ、さてハはや/先約(せんやく)があるとて、わきの雪 00015830M14隠をたづねた。まだ/乞食(こつじき)じやといふ/合点(がてん)がゆかなんだ。 00015840¥N7¥J 00015850¥X七△ぬけた/息男(むすこ)/酒(さけ)/沽(うる)事 00015860M17ある/酒屋(さかや)の/親仁(おやぢ)、ぬけたむすこをちかづけ、さけをうりに 00015870M18つかハすとて/教訓(けうくん)しけるハ、かへ+とばかりいふても、 00015880M19酒はうれぬ物じやほどに、すこしきかしてうれと申つくる。 00015890¥P59 00015900L1ぬくなむす子、(八オ)/委細(いさい)/合点(がてん)でござるとて、一/荷(か)になふ 00015910L2て出けるが、しばらくありてもどる。/親仁(おやぢ)、して+うつ 00015920L3たか+。いくらほどになつた。どれ/銭(ぜに)はといへば、ぬく 00015930L4なむすこいふやう、まだ/聞酒(きゝざけ)がたらいで、とりに/来(き)たとい 00015940L5ふた。 00015950¥N8¥J 00015960¥X八△/追出(をひだ)し/薬(ぐすり)の事 00015970L8ある/文盲(もんもう)/正直(しやうちき)なる者、ことの外風を引、/散(さん)※/迷惑(めいわく)いたし 00015980¥G 00015990M1けるを、ある人見て、さて+/笑(せう)(八ウ)/止(し)や。風を/引(ひい)たハ 00016000M2/術(じゆつ)ないものじや。それにハおひ/出(だ)しがようきく。/一日(いちにち)/二日(ふつか) 00016010M3/清(せい)出してのまれよ。それならばすつきりとなをるといふ。 00016020M4かの者、/合点(がてん)したる/皃(かほ)つきしていひけるハ、さて+、物 00016030M5もいらぬよい/薬(くすり)を、/今(いま)までしらなんだ。/早&(さう+)/給(たべ)申さんとて、 00016040M6やがてそのあかつき、/本国寺(ほんこくじ)の/鐘楼堂(しゆろうだう)の/下(した)へゆき、/明(あけ)六つ 00016050M7の/追出(おひだ)しをつくたびごとに、/鯉(こい)が水を/呑(のむ)やうにしられた。 00016060M8(九オ)(九ウ挿絵) 00016070¥N9¥J 00016080¥X九△/犬(いぬ)も/商(あきな)ひする事 00016090M11/友達(ともだち)どちよりあひ、/四方(よも)のはなしをしけるが、いま/時(どき)も/万(よろづ) 00016100M12かしこふなつて、それ+にたゞゐる者ハなひ。/人&(にん+)に/精(せい) 00016110M13を出すと、いろ+/噂(うハさ)をする。その中に/子細者(しさいもの)のいふやう、 00016120M14いかにもそのとをりじや。/犬(いぬ)さへ/商(あきな)ひをするといふ。それ 00016130M15ハあたらしき事じや。なにのあきなひをするぞといふ。さ 00016140M16ればその事。あいつに/棒(ぼう)をくるれば、ちや(十オ)わん+ 00016150M17とぬかすといふた。 00016160¥P60 00016170¥N10¥J 00016180¥X十△/山帰来(さんきらい)の/煎(せん)じ/糟(かす)の事 00016190L3ある/若(わか)き者よりあひ、へをこきあひしが、いざくすりの/名(な) 00016200L4をこかんとて、ひとりが/陳皮(ちんひ)とこく。又一人が/茯苓(ぶくりやう)とこく。 00016210L5今一人が、いかにいきづめども出ず。あまりいきづミ/過(すぎ)て、 00016220L6/鰹(かつほ)ぶしのやうな、みをこき出す。/友達(ともだち)/肝(きも)をつぶし、これは 00016230L7何事じやといへば、さても/初心者(しよしんもの)じや。それをしらぬか。 00016240L8(十ウ)これこそ/山帰来(さんきらい)の/煎(せん)じ/糟(かす)じやといふてにげた。 00016250¥N11¥J 00016260¥X十一△/惣(さう)右衛門をよびいける事 00016270L11さる人、/初夜(しよや)/時分(じぶん)にある町をとをられしが、/何者(なにもの)とはしら 00016280L12ず、/気(き)をとりうしなふてゐる。かの人これを見て、ふ/便(びん)や。 00016290L13何者じや。/盗人(ぬすびと)かと、たちよりてよく+みれば、/顔(かほ)は/白= 00016300L14壁(しら=かべ)のやうな/女子(をなご)なり。まさしくこれは惣右衛門さうな。と 00016310L15かくよび/生(いけ)んとて、/名(な)ハしらず。/耳(ミヽ)もとへ(十一オ)/口(くち)をよせ、 00016320L16そうよもん+とよび/生(いく)る。このよび/生(いく)る/声(こゑ)をきゝて、/辻= 00016330L17小路(つじ=こうぢ)の/出見(でミ)せの惣右衛門、やれ、惣右衛門/買(かい)の大/臣(じん)がある 00016340L18ハといふて、おい+に四十八人よつた。 00016350¥G 00016360¥N12¥J 00016370¥X十二△/侍(さふらひ)の御二あしの事 00016380M14六条あたりに人くらひ犬、さる/侍(さふらい)の/足(あし)へくらひ/付(つき)、あしよ 00016390M15りくれなゐをながさしける。/侍(さふらひ)大きに/腹立(はらたて)、かやうなる 00016400M16くせものを町にやしなふ(十一ウ)(十二オ挿絵)こそやすからね。 00016410M17/宿老(しゆくらう)は何くそ。八まん、きかぬといひていかる。宿老ふ 00016420M18るひ+/罷出(まかりいで)、/畜生(ちくしやう)のことなれば、まつひら御ゆるし下さ 00016430M19るべしと、いろ+ことハりいへど/聞(きゝ)いれず。町中も/難義(なんぎ) 00016440¥P61 00016450L1いたし、とかく/何度(いくたび)も/侘言(わびこと)にしかじとて、手をとつてわび 00016460L2る。その時/侍(さふらひ)いふやう、それ程にわびるからはかんにん 00016470L3いたすべし。/向後(きやうかう)/狼藉(らうぜき)/致(いた)さずまじといふ/手形(てがた)をかけ。ゆる 00016480L4すべし(十二ウ)といふ。町中よろこび、やがて物かきとつて 00016490L5/書(かく)。一△/侍(さふらひ)の御ミあしを犬くらひと/書(かき)、かやうなる/文章(ぶんしやう) 00016500L6にて候ハんやと/宿老(しゆくらう)に見せる。宿老、/本(もと)より/文盲(もんまう)/第(だい)一の人 00016510L7なれば、此書やうをみて大きに/恐顛(ぎやうてん)し、かやうにかきてハ 00016520L8いよ+/御堪忍(ごかんにん)あるまじ。まづ御ミあしとかきてハ/片輪(かたわ)に 00016530L9なる。/惣(さう)じて/足(あし)は三つハない物じや。その/上(うへ)、/犬(いぬ)くらひと 00016540L10ハあまりそさうな。/侍(さふらひ)の(十三オ)/御二(おに)あしを犬/賞翫(しやうぐハん)仕と、 00016550L11さきをあがまへてかゝずハ、御かんにん有まひといふた。 00016560¥N13¥J 00016570¥X十三△孫八うたひの事 00016580L14孫八といふ/諸芸(しよげい)/不器用(ぶきよう)なる者、/男(おのこ)ハ何なり共一/芸(げい)あるがよ 00016590L15いとて、/鞁(つゞミ)を打ならひ、/笛(ふえ)を/吹(ふき)、/太鞁(たいこ)に/替(か)へ、いろ+な 00016600L16らひけれ共、もとよりぶ/器用(きよう)なれば、ひとつも/埓(らち)あかず。 00016610L17いや+/諷(うたひ)がよいものじやとて、また諷にかへれども、 00016620L18(十三ウ)(十四終オ挿絵)人の十日にあぐるうたひハ、百日ほど 00016630L19かゝる。その内そろ+/身躰(しんたい)もかんがたちしゆへ、あがり 00016640¥G 00016650M12/鯰(なまづ)にならる。さる/諷(うたひ)/友達(ともだち)とち/出合(いであひ)、何と、孫八殿ハ諷にこ 00016660M13との外/精(せい)が出たが、/知行(ちぎやう)になつたかといふ。友達きゝて、 00016670M14その事。いこう/上(あが)つて/米(こめ)になつたといふ。/扨&(さて+)よいことや。 00016680M15なにほどとらるゝといへば、やう+/手(て)の/内(うち)の米になつた 00016690M16といふた。 00016700¥Y1当世咄揃巻三終(十四終ウ) 00016710¥P62 00016720¥Y1/当世(たうせい)/軽口(かるくち)/咄揃(はなしそろへ)巻第四目録 00016730L3一△/二(に)の/膳(せん)の/饗膳(ふるまひ)の事 00016740L4二△/実盛(さねもり)といふ/皐月(さつき)/買(か)ふ事 00016750L5三△/焼亡(ぜうまう)/消(けし)やうの事 00016760L6四△/乞食(こつじき)/棊(ご)を打事 00016770L7五△/土足(どそく)の事 00016780L8六△しハき者/小指(こゆび)ひろふ事 00016790L9七△ものよしと/牛房売(ごばううり)と/問答(もんだう)の事(目録オ) 00016800L10八△/藤顔(とうがん)の/絵(ゑ)に/即之(そくし)の/賛(さん)ある事 00016810L11九△田村のうたひ/不審(ふしん)の事 00016820L12十△/外方(あはう)/正直(しやうぢき)なるものゝ事 00016830L13十一△/文盲(もんまう)なる/女房(にようばう)/文章(ぶんしやう)をこのむ事 00016840L14十二△/盗(ぬす)人/礼(れい)をいふ事 00016850L15十三△/蚤(のミ)が月見花見の事 00016860L16十四△/夜番(やばん)/寒声(かんごゑ)をつかふ事 00016870L17十五△うたひ/人雇(ひとやとひ)の事 00016880L18十六△久七/飯蛸(いひだこ)あらふ事(目録ウ) 00016890¥T1当世咄揃巻第四 00016900¥N1¥J 00016910¥X一△二の/膳(ぜん)の/饗膳(ふるまひ)の事 00016920M5ある/侍(さふらひ)、/夷中(ゐなか)に屋/敷(しき)をもとめ/造作(ざうさく)ことすぎ、/先(まづ)/町中(てうぢう)をふる 00016930M6まハれけるに、/年寄(としより)をはじめ/脇宿老(わきじゆくらう)そのほか、/若(わか)き/衆(しゆ)まて 00016940M7/座(ざ)に/付(つく)と、一しほ/膳(ぜん)を/持(もつ)ていづる。さて、その次に二の膳 00016950M8を持て出、すえんとするを、/年寄(としより)見て、/最早(もはや)、/□□((これカ))に/御覧(ごらん)な 00016960¥G 00016970¥P63 00016980L1さるゝとをり、ひかへてまかりある/□□((ほどカ))に、(一オ)/下座(しもざ)の 00016990L2/行(ゆき)たらぬところへ御すえなさ/□□((れよカ))といふて、二の膳に手を 00017000L3かけ、/下(した)にをかせ/□□((けるカ))。/脇宿老(わきしゆくらう)、これを見て、/額(ひたい)に/汗(あせ)をな 00017010L4がしけるが、/余(あま)り見かねて/笑止(せうし)がり、かやうの/叮嚀(ていねい)なる御 00017020L5ふるまひにハ、本膳二の膳と申て、壱人に二/膳(ぜん)すハる物じ 00017030L6や。先御すハりなされよといふ。年寄しばしありて、すこ 00017040L7しうちうなづき、/今(いま)/合点(がてん)いたした。さだめてこれが、/侍= 00017050L8衆(さふらい=しゆ)のとらせらるゝ(一ウ)(二オ挿絵)/二人(ふたり)/扶持(ぶち)といふのであら 00017060L9ふといふた。 00017070¥N2¥J 00017080¥X二△/実盛(さねもり)といふ/皐月(さつき)/買(か)ふ事 00017090L12さる口がしこき者、しろきさつきの花のさかりなるを/墨(すミ)に 00017100L13て/黒(くろ)くぬり、ちいさき木札に、さねもりと/書(かき)て/店(ミせ)に出して 00017110L14をく。ある花/数寄(ずき)する手まへ/者(しや)これを見て、さてもめづら 00017120L15しき花や。/終(つゐ)にくろき花はいまが見/初(はじ)めじや。これハいく 00017130L16らでもかハでハならぬ(二ウ)といふて、/直段(ねだん)いくらと/問(とふ)。 00017140L17/亭主(ていしゆ)きゝて、金子弐十両といふ。手まへ者きゝて、いかに 00017150L18/世(よ)に/稀(まれ)なる花じやといふても、あまり/高直(かうぢき)なることやと拾 00017160L19両につける。亭主、もとより/墨(すミ)にてぬりたる花のことなれ 00017170M1ば、まけませうとてまける。手まへ者、/金子(きんす)わたして、さて 00017180M2此花は、名はなにといふぞと/問(と)ふ。亭主きゝて、/実盛(さねもり)と申 00017190M3す花じやといふ。手まへ者悦(三オ)びとりて帰り、水をか 00017200M4けなどして/重宝(ちやうほう)せられけるが、なにが/墨(すミ)にてそめたる花の 00017210M5事なれば、水をかくるとそろ+しろくなる。てまへ者は 00017220M6らを立、にくきことかな。なにとがなして此代をとり返し 00017230M7たきとおもひ、/出入(でいり)の者にかる口なる者をちかづけ、そち 00017240M8ハそんじやうそこの/植木(うへき)屋へ行、しろき花を黒く/塗(ぬり)て、/今= 00017250M9朝(け=さ)人をだましたる/様子(やうす)を(三ウ)いひて、壱両なりとも、と 00017260M10り/返(かへ)して来れといふ。こゝろえ申すとて、そのまゝ/植木(うへき)屋 00017270M11へ行、さて+其方ハきこえぬ。しろき花をくろくぬりて 00017280M12/置(をき)、人をだました。せめて拾両の/金子(きんす)を五両ハもどせとい 00017290M13ふ。植木屋きゝて、/別(べち)にだましハいたさぬ。それゆへ名を 00017300M14さねもりと申た。さねもりの/諷(うたひ)に、/鬢髭(びんひげ)を/墨(すミ)にそめとうた 00017310M15ひ申さぬか。をれもうそハつかぬからハ、壱(四オ)両にて 00017320M16ももどすことハならぬといふ。かる口/云(いふ)ものきゝて、それ 00017330M17なれば、いよ+半分/戻(もど)せ。実盛のうたひに、/近年(きんねん)ごりや 00017340M18うに付られてとうたふからハ、五両もどせとて、りくつ/詰(づめ) 00017350M19にして五両とりかへした。 00017360¥P64 00017370¥N3¥J 00017380¥X三△/焼亡(ぜうまう)/消様(けしやう)の事 00017390L3焼亡のゆく時、さる町の/愚(をろか)なる/番太郎(ばんたらう)、/三間(さんげん)ばかりある/柄(ゑ) 00017400L4の/箒木(はゝき)を持て出、けさうとは(四ウ)せずして/火(ひ)にさしつけ、 00017410L5/燃(もえ)つかしてハ/踏(ふミ)けし、又/燃(もえ)つかしてハ/踏(ふミ)けしするを、/宿老(しゆくらう) 00017420L6見て、やれそこな/戯気者(たハけもの)。なぐさみも時による。すこしな 00017430L7り共けさうとハしをらずして、/箒(はゝき)につけてハふミけし+ 00017440L8しをるやうな/大戯気(おほだハけ)じや。そのやうな事をしをらずとも、 00017450¥G 00017460M1水なり共はやくはこべといふ。その時番太いふやう、宿老 00017470M2ハ/持(も)たしやるれ共、火事のやう(五オ)(五ウ挿絵)すハ/不合点(ふがてん) 00017480M3さうな。此やうなる大きなる火ハ、とりへいでけさねばけ 00017490M4されぬといふた。 00017500¥N4¥J 00017510¥X四△/乞食(こつじき)/碁(ご)/打(うつ)事 00017520M7/東河原(ひがしがハら)にて乞食共よりあひ/碁(ご)を打けるに、/棊盤(ごばん)にハ/折敷(をしき)の 00017530M8うらに/帋(かミ)をはり、/白石(しろいし)にハ/赤貝(あかゞい)のわれ、/黒石(くろいし)にハけし/炭(ずミ)な 00017540M9どをあつめうちけるが、中比/碁(ご)の手につき/思案(しあん)しけるに、 00017550M10こゝが大事の所とて、あたまを/掻(かき)ければ、(六オ)/虱(しらミ)ひとつ、 00017560M11/爪(つめ)にかゝりて来る。やがて碁盤の上にをき、爪にてころす。 00017570M12/友(とも)乞食のいふやう、いかに乞食なればとて、/棊(ご)といふ物ハ 00017580M13上つかたのなさるゝ事じや。/盤(ばん)の上にてころす事、/尾篭(びろう)な 00017590M14ることゝいふ。かの乞食ぬからぬ/皃(かほ)にて、されば/碁(ご)なれば 00017600M15こそころせ、/象戯(しようぎ)なれば口へつむといふた。 00017610¥N5¥J 00017620¥X五△/土足(どそく)の事(六ウ) 00017630M18さる人、/雨中(うちう)に/文盲(もんまう)なる/友達(ともだち)の/家(いへ)に/立寄(たちより)、このほどハ久し 00017640M19くをとづれもいたさぬが、何事もこざらぬかなどゝいふ。 00017650¥P65 00017660L1/亭主(ていしゆ)たち出、ようこそ御出なされたれ。先/上(うへ)へあがらせら 00017670L2れよとあひしらふ。立よりたる人、いや/今(こん)日ハ/土足(どそく)にて候 00017680L3ほどに、又其内ゆる+と参るべきとてまかり帰る。亭主、 00017690L4土足といふ事をしらで、ことの外に/腹立(ふくりう)する。むす子、 00017700L5(七オ)/親仁(おやじ)か腹立をきゝて、土足といはれたハ/土(つち)のあしと 00017710L6いふことでこざる。雨ふりに/裸足(はだし)にてよられたれば、土足 00017720L7もきこえたといふ。親仁、そこにて/合点(がてん)せられ、さてハ/足(あし) 00017730L8に土さへつけば土足といふとこゝろえて、よき事をも覚え 00017740L9たる物かなとおもひ、土足を/言(いハ)ふばかりに、裸足になりて、 00017750L10/知音(ちゐん)の/医師(くすし)のもとへゆく。医師出あひ、さらば上へ御あが 00017760L11り候へといハるれ(七ウ)ば、かの/文盲(もんまう)なる人、土足にて候 00017770L12といふ。/医師(くすし)、さやうならば、先うらの/竹椽(ちくゑん)へ御とをりあ 00017780L13れといハるゝ。かの文盲なる人、竹椽とハ人の/名(な)とこゝろ 00017790L14え、もはやけふはまかり帰りまする。其/中(うち)に参りませう。 00017800L15うらの竹ゑん様へも、よからふやうに御心得くだされませ 00017810L16といふた。 00017820¥N6¥J 00017830¥X六△しハき者/小指(こゆび)ひらふ事 00017840L19さるひすらこくしハき人、何にてもひらい/度(たく)(八オ)おもひ、 00017850M1/用所(ようじよ)もなきに町/小路(こうぢ)をうそ+あるきけるに、何の/子細(しさい)は 00017860M2しらねども、/喧嘩(けんくハ)にて/截(きり)むすぶ所へ行かゝる。やれ、此ど 00017870M3やくやのまぎれに、何なり共ひらハんと、/蚤(のミ)とり/眼(まなこ)にて見 00017880M4てゐる。何が火花をちらして切あへば、/片相手(かたあいて)の/小指(こゆび)をき 00017890M5りをとす。かのひすき者、やがてひろふてもどる。さて喧 00017900M6嘩は町の/扱(あつかひ)にて/双方(さうはう)/相(あひ)すミて、かのきられし小指を尋れど 00017910M7もなし。/去(さる)人(八ウ)(九オ挿絵)、/小指(こゆび)をひらいし人の所をか 00017920M8たる。きられたる人、そのひろいたる人の家に行、小指御 00017930¥G 00017940¥P66 00017950L1ひろいなされたるげな。此方へ御/返(かへ)しくだされよといへば、 00017960L2しハき者のいふやう、わたくしも入用に候ゆへひろいまし 00017970L3た。/返(かへ)し申す事ハならぬといふ。きられし人、それハ/何(なに)の 00017980L4/御用(ごよう)に入申すぞといへば、さればその事じや。/酒(さけ)のかんを 00017990L5する時に入るといふた。(九ウ) 00018000¥N7¥J 00018010¥X七△ものよしと/牛蒡売(ごばううり)と/問答(もんたう)の事 00018020L8年の/暮(くれ)に、ものよし/路次(ろし)に出て、さま※/商人(あきん)の/売(うり)物をい 00018030L9はふ。さるとひやうなる/牛蒡売(ごほううり)、物よしに行あふ。ものよ 00018040L10し、牛蒡をいハ、ふといふ。/牛蒡売(ごばううり)めいわくし、/最早(もはや)さき 00018050L11ほどにいハふたといふ。さやうならバ、/手判(てはん)の/札(ふだ)があるべ 00018060L12きほどに札を見せよといふ。まことに其/札(ふだ)をとりたれ共、 00018070L13/道(ミち)にてをとしたると、いろ+/問(もん)(十オ)/答(とう)すれ共、壱/把(わ)と 00018080L14らねはきかぬといふ時に、物よし共の内に年よりたるがい 00018090L15ひけるは、あれほどにことハりを申さるゝからハ、さだめ 00018100L16て/偽(いつハ)りハあるまひかとおもふ。さりながら、さき程/祝(いわ)ふた 00018110L17といふ/誓文(せいもん)を立給へといふ。牛房うりきゝて、いかにも/誓(せい) 00018120L18文を立申さふ。さきに/祝(いわ)ふたといふがうそならバ、誓文ミ 00018130L19しやれかつたいとたつる。ものよしきゝて、やれ+、あ 00018140M1いつは(十ウ)をれらが名をは/誓文(せいもん)に立るといふて、いよ 00018150M2+きかなんだ。 00018160¥N8¥J 00018170¥X八△/藤顔(とうがん)の/絵(ゑ)に/即之(そくし)の/讃(さん)ある事 00018180M5さる/文盲(もんまう)第一なる人、/布袋(ほてい)に/讃(さん)ある/絵(ゑ)を/求(もとめ)て/目利(めきゝ)に見ても 00018190M6らふ。/目利者(めきゝしや)、これはまがひもなく/藤顔(とうがん)の絵に/即之(そくし)の/讃(さん)じ 00018200M7やと/誉(ほむ)る。文盲なる人よろこび、さらば人&にひけらかさ 00018210M8ふとおもひ、こゝやかしこの友達共をよびて、此(十一オ) 00018220M9ほと/類(るい)もなきよき/絵(ゑ)をもとめたるとて見する。友達見て、 00018230M10さて+見事なる事かな。此やうなる絵ハ又とあるまひ。 00018240M11/筆者(ひつしや)は/誰(たれ)人にて候そと/問(とふ)。文盲なる亭主、これは、ふうが 00018250M12んの絵にそこひの/賛(さん)にて候とこたふ。友達きゝて/腹(はら)をかゝ 00018260M13へ、はあ、さてハ目/医者達(いしやたち)のよりあひじやとほめた。 00018270¥N9¥J 00018280¥X九△/田村(たむら)の/諷(うたひ)/不審(ふしん)の事(十一ウ) 00018290M16ある人の/親仁(おやじ)、田村をうたふをきゝて、千の/御(ミ)手ごとに大 00018300M17/悲(ひ)の弓には/智恵(ちゑ)の矢をはめて、/一度(ひとたび)はなせば千の矢さきと 00018310M18うたふは、/興(けう)がるあやまりじや。なぜにといふに、弓ゐる 00018320M19にハおしてかつて有て、両の手にてハ矢さきひとつならで 00018330¥P67 00018340L1ハなし。千の御手にハ五百の矢さきとうたふてこそ、まこ 00018350L2となれ。大きなるあやまりでハないかといふ。/隣(となり)にゐる/禅= 00018360L3門(ぜん=もん)、これをきゝ(十二オ)て、其方の/不審(ふしん)もつともなれ共、 00018370L4きくところをえきかれぬ。それでこそハ、あれを見よ、ふ 00018380L5しぎやなとうたハぬかといふた。 00018390¥N10¥J 00018400¥X十△/外方(あはう)/正直(しやうぢき)なる者の事 00018410L8さる所に、をろかにして正/直(ちき)なる人あり。友達のいふやう、 00018420L9そなたのやうに/寝(ね)てばかりゐて、/商買(しやうはい)とても/家職(かしよく)とてもせ 00018430L10ずして、ゐぐひにめさるゝ。それにてハゆくさきは、さだ 00018440L11めて/渇(かつ)え(十二ウ)て/死(し)ぬるより/外(ほか)は有まひ。さて+/笑止(せうし) 00018450L12の事や。/似合(にあひ)の/商(あきなひ)にても/職(しよく)にてもめされよといへば、かの/愚(をろか) 00018460L13に正/直(ちき)なる人、いや+、むかしよりの/世話(せわ)にも、/果報(くハほう)ハ 00018470L14/寝(ね)てまて、/天道(てんたう)ハ人をころさずといふ事があるからハとて、 00018480L15すこしも/聞(きゝ)いれず、あけくれ/居喰(いぐひ)にする。それ故/諸道具(しよだうぐ)も 00018490L16/売(うり)つくし、/五日(ごにち)も/三(さん)日も物をくハざるゆへに、/目(め)まひおち 00018500L17入ばかりなる時、/俄(にハか)にをどろき/声(こゑ)をあげ(十三オ)て、やれ、 00018510L18天/道(とう)が人をころす。やあい、天道が人をころすハとよばゝ 00018520L19つた。 00018530¥N11¥J 00018540¥X十一△/文盲(もんもう)なる/女房(にようはう)/文章(ぶんしやう)を/好(この)む事 00018550M3さる一文字もえひかぬ女房、江戸に男を持てゐけるが、よ 00018560M4ひのぼせて手に※かせぎ、たよりにせんと、/切(せつ)&よひに 00018570M5人を下せ共、男、/追付(をつつけ)上るべきと返事して、/兎角(とかく)に上らず。 00018580M6女房はらを立、人を/雇(やとい)、御むつかしながら、江戸の男が所 00018590M7(十三ウ)(十四オ挿絵)へやる文をかきてくだされませといふ。 00018600M8やすきこと。何と/書(かき)ませうぞといへば、まづ、わざと一/筆(ふで) 00018610¥G 00018620¥P68 00018630L1申上候。にくい人じや。のぼろ+といふてばかりゐて、 00018640L2どりやどこにのぼつたとかいてくだされよとこのふだ。此 00018650L3やうな文/章(しやう)ハ有まい。 00018660¥N12¥J 00018670¥X十二△/盗(ぬす)人/礼(れい)をいふ事 00018680L6/小夜(さよ)/更(ふけ)がたの時分、さる家の門口を盗人ほりあけ、すでに 00018690L7はいらんとするを、/亭主(ていしゆ)きゝつけ、(十四ウ)そろりと/立(たち)より、 00018700L8ぬす人の/手(て)をしかととらまへ、くゝらふとハせずして、/銭(ぜに) 00018710L9を三百文/握(にぎ)らせ、さて+其方ハ/若(わか)き者の、あしきしよざ 00018720L10いをすることかな。おもふ/子細(しさい)あれば、此銭をとらするぞ。 00018730L11/早(さう)&/帰(かへ)り、かならず/盗(ぬす)人をおもひとまれといひければ、そ 00018740L12の時ぬす人、大きによろこび、/返答(へんたう)こそハおかしけれ。命 00018750L13をたすけ給ふのミならず、銭までくださるゝ(十五オ)御事、 00018760L14いたみいりたる/御心底(ごしんてい)。かやうになさるれば、いまから参 00018770L15りにくいといふた。 00018780¥N13¥J 00018790¥X十三△/蚤(のミ)か月見花見の事 00018800L18さる/友達(ともだち)どちよりあひ、/四方(よも)の/咄(はなし)のみぎり、一人のいひけ 00018810L19るは、さて+、/祇園(ぎをん)/清水(きよミづ)の/桜(さくら)は、いまが/最中(さいちう)じや。それ 00018820M1ゆへ/見物(けんぶつ)の/貴賎(きせん)ハ/糠(ぬか)をまいたごとくじや。それに付、/当世(たうせい) 00018830M2は/鳥類(てうるい)まで花見をするさうな。いま/程(ほと)東山は、/殊(こと)に(十五ウ) 00018840M3いづかたよりも/鳥類(てうるい)がおほいといふを、あるとひやうなる 00018850M4者がきゝて、鳥などの花見するといふは、もはや/い((ママ))そじや。 00018860M5ふるい+。むかしハ/蚤(のミ)さへ月見花見をしたといふを、友 00018870M6達きゝて、大きなるうそをいハるゝ人じや。それはいつの 00018880M7/時(じ)代に、/蚤(のミ)が月見花見をしたぞといふ。とひやうなる者い 00018890M8ひけるは、吉田の/兼好(けんかう)の時代にてあつた。つれ※草に、 00018900M9花は(十六オ)さかりに、月はくまなきをのミ見る物かハと 00018910M10かいて有。/兼好(けんかう)ほどなる人が、うそハかいてをかれまひと 00018920M11いふた。 00018930¥N14¥J 00018940¥X十四△/夜番(やばん)/寒声(かんごゑ)をつかふ事 00018950M14上京の番太に、ことのほか/声(こゑ)つきあしき者あり。町中によ 00018960M15りあひのつゐで、/誰(たれ)いふともなく、此町の夜番ハ/数ケ年(すかねん)の 00018970M16者なれ共、いかにしても、/焼亡(ぜうまう)がゆきまするといふこゑを 00018980M17き(十六ウ)けば、いとゝ身の/毛(け)がよだつ。あのやうなるこ 00018990M18ゑつきのわろき者には、ひまを出し給へと口&にいふ。/宿= 00019000M19老(しゆく=らう)きゝて、いかにも不/便(びん)ながらも、皆&のおほせらるゝと 00019010¥P69 00019020L1をりじや。さりながら/今(こ)年は/余日(よじつ)もないことじや。/年(とし)も/明(あけ) 00019030L2たらバ早&ひまを出すへきと、/隙(ひま)の出るにぞきハまりける。 00019040L3番太、年があくるとひまの出る事をきゝて、大きに/迷惑(めいわく)に 00019050L4おもひ、をりふし(十七オ)/師走(しハす)の事にてハあり、/夜(よ)中の/過(すぎ) 00019060L5時分に、/焼亡(ぜうまう)が行まする+とよばゝる。町中これをきゝ 00019070L6て、やれ、/火事(くハじ)がゆくげなハ。どこらがやけるぞとて、あ 00019080L7ハてさハぎて出て見れ共、何事もなし。これハ+、/焼亡(ぜうまう) 00019090L8もゆかぬに、人に/肝(きも)をつぶさしをる。いよ+にくきやつ 00019100L9じやといふ。その時/番太(ばんた)いふやう、此ほど、焼亡ごゑがわ 00019110L10ろきゆへ御ひまをくだ(十七ウ)さるゝとあるゆへ、あまり 00019120L11かなしさのまゝ、焼亡の/寒(かん)声をつかいますといふた。 00019130¥N15¥J 00019140¥X十五△/諷(うたひ)人/雇(やとひ)の事 00019150L14ある万事文/盲(まう)なる/親仁(おやじ)、むす子にうたひを/稽古(けいこ)させけるが、 00019160L15ある時、諷/講(かう)の当/番(ばん)にあたる。親仁に諷講の事をいひけれ 00019170L16ば、親仁きゝて、いかにもやすい事じや。/夜食(やしよく)は何をする 00019180L17ぞととふ。夜食にハ/赤豆粥(あづきがゆ)をこしらへ、諷六番(十八オ)は 00019190L18つるとそのまゝ御出し給ハれといふ。さて/日(ひ)もやう+く 00019200L19るゝと、/今(いま)一しほ諷の/衆中(しゆぢう)来り、まづ/高砂(たかさご)より/次第(しだい)+に 00019210M1諷ける。/中入(なかいり)すぎて/待(まち)諷をうたハんとする時、しばしづゝ 00019220M2やすミけるほどに、親仁、一番のうたひを二番づゝにかぞ 00019230M3へければ、三番目はつるとそのまゝ/息子(むすこ)をよびて、かゆを 00019240M4いだせ。加/減(げん)かよいといふ。むすこきゝて、/興(けう)がることや。 00019250M5まだやう+三(十八ウ)番こそすぎたれ。いま三番うたハ 00019260M6ねば/粥(かゆ)は出されぬ。それではかゆがのびて、かけんがそこ 00019270M7ねふず。何としてのかとしてのとて、/腹(はら)をたてゝわめく。 00019280M8/親仁(おやじ)もあきれたるていにてゐたりしがいふやう、それがい 00019290M9ま三番うたふまて、かゆがのびてまちてゐらるゝものか。 00019300M10いま五六人もうたひうたひをやとふて、はやくうたひしま 00019310M11へといふた。(十九オ)(十九ウ挿絵) 00019320¥N16¥J 00019330¥X十六△久七/飯蛸(いひたこ)あらふ事 00019340M14さる手まへ者、/饗膳(ふるまひ)をせられけるが、ふるまひなかばに/扈= 00019350M15従(こ=せう)をよびて、久七に、/今朝(けさ)/魚(うを)屋がをいてゐた飯鮹を、はや 00019360M16くあらふてさかなに出せといひつけらる。久七、かしこま 00019370M17つたとて、はしりにかゝりてあらひけるが、/飯(いひ)ぶくろをき 00019380M18りやぶりて、飯をのこらずあらひすて、さハ+と/煮(に)て扈 00019390M19従にわたす。こせう見て、/興(けう)(二十終オ)がることや。此や 00019400¥P70 00019410¥G 00019420L12うな飯のない鮹はいたされまい。てきと御しかりあらふと 00019430L13いふ。久七、興をさましけるが、いや+、先御いたしあ 00019440L14りて給ハれ。/是非(ぜひ)御しかりあらば、そなたの飯なしをたの 00019450L15むと、/秀句(しうく)にいふた。 00019460¥Y1当世咄揃巻第四(二十終ウ) 00019470¥Y1/当世(たうせい)/軽口(かるくち)/咄揃(はなしそろへ)巻第五目録 00019480M3一△山/雀(がら)をだます事 00019490M4二△きせるの/吸口(すいくち)/買(か)ふ事 00019500M5三△とひやうなる/医者(いしや)の事 00019510M6四△物いハひする/者(もの)の事 00019520M7五△しんしの/御慶(ぎよけい)の事 00019530M8六△/文盲(もんまう)なる大/上戸(じやうご)の事 00019540M9七△/樒(しきミ)を/買(か)ふ事(目録オ) 00019550M10八△/香炉(かうろ)の/伽羅(きやら)をなむる事 00019560M11九△/茶碗(ちやわん)のかる口いふ事 00019570M12十△/博奕打(ばくちうち)/手(て)みその事 00019580M13十一△/駕篭(かご)かきぶりの事 00019590M14十二△/道寸(だうすん)/療治(りやうぢ)の事(目録ウ) 00019600¥P71 00019610¥T1当世咄揃巻第五 00019620¥N1¥J 00019630¥X一△/山雀(やまがら)をだます事 00019640L5さる所にて/友達(ともだち)四五人よりあひ、/椽(ゑん)さきにて/四方山(よもやま)の物が 00019650L6たりをする折ふし、むかひの/前栽(せんざい)にやまがら来り、/小枝(こえだ)に 00019660L7/飛(とび)めぐる。さても/利口(りこう)なる山/雀(がら)かな。たれ+もとられさ 00019670L8へしようならばほしい。やれ、とりもちよ/網(あミ)よとひしめく。 00019680¥G 00019690M1その中にすこしぬけたる若き者ありしが、(一オ)みなだま 00019700M2れ+。とりもちもあミもいらぬぞ。をれがだましてとるや 00019710M3うがあるぞといふて、/鼻(はな)をつまみ、あをぬいて/鼻(はな)のあなを 00019720M4山がらに見せる。友達いふやう、それは何をする。/山雀(やまがら)は 00019730M5もはやとんでいんだといふ。そのときいふやう、さて+ 00019740M6のこりおほいことじや。やまがらが/鼻(はな)の/穴(あな)を見をらなんだ 00019750M7さうな。をれハあいつに/胡桃(くるミ)じやとおもハせて、くひにく 00019760M8る所を(一ウ)(二オ挿絵)だましてとらやうとおもふたといふ 00019770M9た。 00019780¥N2¥J 00019790¥X二△きせるの/吸口(すいくち)/買(か)ふ事 00019800M12/去(さん)ぬる/飢饉年(ききんどし)に、ある人、きせる屋へきせるを買にゆかれ 00019810M13しが、こゝろに入たるを、これはいか程ぞととハれければ、 00019820M14壱匁といふ。/買手(かいて)きゝて、それハちとたかさうな。しかし 00019830M15ながら/鴈首(がんくび)ハ内にあるほどに、この/吸(すい)くちばかりかハふ。 00019840M16何ほどするぞととふ。ていしゆ、九分とこたふ。/買(かい)ぬし 00019850M17(二ウ)きもをつぶし、それは、とそんどなるいひぶんや。 00019860M18壱匁の/半分(はんぶん)なれば五分とこそハ/尤(もつとも)なれ。とかくうらぬ/分別(ふんべつ) 00019870M19かといふ。きせる屋きゝて、さればその事。ことし口へは 00019880¥P72 00019890L1いるほどの物に、やすい物はこざらぬといふた。 00019900¥N3¥J 00019910¥X三△とひやうなる/医者(いしや)の事 00019920L4さる/亭主(ていしゆ)、/雨(あめ)のふる/時分(じぶん)、やねへもりをとめにあがられし 00019930L5が、あやまつてやねよりす(三オ)べりをち、/目(め)をまハし/死= 00019940L6入(しに=いる)。/女房(にようぼう)むすこ、そのほかあたりの者まできもをつぶし、 00019950L7やれきつけよ、/人参(にんじん)よとひしめく。いや、/先(まづ)/上(かミ)の町の/医者(いしや) 00019960L8/元徳(げんとく)をよべとてよびに行。元徳、/使(つかい)をつれて/来(きた)り、まづ/脉(ミやく) 00019970L9を見て、これは/医者(いしや)のよびやうがをそいといふ。むす子の 00019980L10いふやう、たつたいまをちられさふらふゆへ、そのまゝ/貴= 00019990L11方(き=はう)様をよびにつかハしました。べちにすこし(三ウ)もぬか 00020000L12りハいたさぬといふ。元徳きゝて、いや+、その方たち 00020010L13の/学問(がくもん)もせいで、おしりやることでハない。これはかりそ 00020020L14めなから、四五日以前よりもよほして/落(おち)た物じやといハれ 00020030L15た。 00020040¥N4¥J 00020050¥X四△物いハひする/者(もの)の事 00020060L18万事気にかけ、物いはひする人あり。大/晦日(ミそか)に/女房(によぱう)にいひ 00020070L19けるは、そちがしるごとく、/今年(ことし)までハいかふ仕合がわる 00020080¥G 00020090M12い。/来春(らいしゆん)からべつして(四オ)/仕合(しあハせ)をいわひなをさふほどに、 00020100M13/明日(あす)の元/日(じつ)/早朝(さうてう)に、をれハ/戸棚(とたな)の上にのぼり、/米(こめ)の/粉(こ)をく 00020110M14ハふほどに、もはやそなたハ/今朝(けさ)より/国王(こくおう)の/位(くらい)にならしや 00020120M15つたといはへ。かならずくふことをわすれなといふ。女房 00020130M16きゝて、いかにも物は万事いハひからじや。こゝろえまし 00020140M17たといふ。さてあら玉のとしたち帰る早朝に、男、戸棚の 00020150M18上にひざつき、ひた物粉をくふ。女房見(四ウ)(五オ挿絵)て、 00020160M19/国王(こくわう)のくらゐじやといふ事を、はたとわすれ、いろ+お 00020170¥P73 00020180L1もひいださうとすれど出ず。男はらを立、/時分(じぶん)がよきがい 00020190L2はゝぬかといハれて、なにやらくふことであつたと、/急度(きつと) 00020200L3おもひいだし、もはやこなたハ、/今朝(けさ)よりこじきのくらゐ 00020210L4じやといはふた。 00020220¥N5¥J 00020230¥X五△しんしの御/慶(けい)の事 00020240L7ある友達二三人よりあひ、いろ+/世間(せけん)の義(五ウ)理をつ 00020250L8けあひしが、ひとりの者いひけるハ、十二月をしハすとい 00020260L9ふはきこえたが、年のはじめの状に、/新春(しんしゆん)の/御慶(ぎよけい)とかくハ 00020270L10いかいあやまりじや。しんしの御慶とかくか本じや。その 00020280L11故ハ、/夏(なつ)もたけ秋も/過(すき)て、そのとしも/暮(くれ)なんとする時、我 00020290L12人うけはらひに/辛労(しんらう)して、もまれたる/絹(きぬ)のごとく、/顔(かほ)に/皺(しハ) 00020300L13のよるをもつて十二月をしハすといふ。又年/明(あけ)て、いづか 00020310L14たも/豊(ゆたか)(六オ)なれば、/顔(かほ)の皺もこゝろとつれてのび+と 00020320L15なりたるは、かの絹をしんしで/張(はつ)たるにたとへたれば、し 00020330L16んしの御慶が本じやといふた。 00020340¥N6¥J 00020350¥X六△/文盲(もんまう)なる大/上戸(じやうご)の事 00020360L19さるやさしき心いれなる人、世におちふれ引こもりゐたる 00020370M1所へ、友達、さくらの花のさかりなるを一/枝(えだ)もちて/来(く)る。 00020380M2亭主よろこび、心ざしのほと、下にハをかれまひとて、と 00020390M3くりに水(六ウ)をいれいけられける。さても見事じや。/世(よ) 00020400M4にある人は、としてかくしてなどゝ/詠(なが)めいたりしか、これ 00020410M5でハ/一盃(いつはい)のまひでハかなふまひとて、/巾着(きんちやく)をさがして見ら 00020420M6れたれば、やう+二十/銭(せん)ばかりとりいだしぬ。これにて 00020430M7/酒(さけ)かふたらぱ、/二人(ふたり)のむほどはとぼしかるまじとて、/手(て)づ 00020440M8からちろりを持て酒をもとめたり。すでにかんする所へ、 00020450¥G 00020460¥P74 00020470L1大/上戸(じやうご)のなにがし、此ほどハ御/目(め)にかゝら(七オ)ぬとて/来(く) 00020480L2る。さてもきのどくや。はやくのミたけれども、こゝで出 00020490L3せば酒がたらぬ。いついなふもしれずと、あんじわづらひ 00020500L4しが、やゝあつて/亭主(ていしゆ)、はじめの/客(きやく)にむかふていひけるハ、 00020510L5/水辺(ミづへん)の/酉(とり)は何といたさふぞといふ。はじめの/客(きやく)きゝて、そ 00020520L6れは山に山をかさねずハなるまいといふ。/文盲(もんまう)なる大上戸 00020530L7これをきゝて、あゝかなしや。又/連歌(れんが)をするげなとて、に 00020540L8げていんだ。(七ウ)(八オ挿絵) 00020550¥N7¥J 00020560¥X七△/樒(しきミ)を/買(か)ふ事 00020570L11ある七十ばかりなる/姥(うば)、花屋にて/樒(しきミ)の花を買ふとて、よい 00020580L12しんがあるかといふ。花/売(うり)きゝて、此うちをゑつて御とり 00020590L13あれといふて、五十本ばかりとり出す。此/姥(うば)、/上(うへ)を/下(した)へと 00020600L14返してえらミけるが、なにとしてか、/涙(なミだ)はら+とこぼ 00020610L15す。花売見て、さて+いとをしや。それほどなけかるゝ 00020620L16は、ちかきうちに御子/達(たち)にはなれさせられたか(八ウ)とい 00020630L17ふ。うばきゝて、あゝいま+しや。しんハなきよりとい 00020640L18ふ事をしらぬかといふた。 00020650¥N8¥J 00020660¥X八△/香炉(かうろ)の/伽羅(きやら)をなむる事 00020670M3ある人、/伽羅(きやら)をきゝゐたる所へ/客来(きやくらい)あり。さて+、よき 00020680M4おりからの御出じや。此木を/求(もと)めんと存ずるが、あさミか 00020690M5あり。又こちらの木は、からすぎて気にいらず。しかしな 00020700M6から、いづれにいたさうぞ。御きゝくだされといふ。客き 00020710M7ゝて、いかにもやすい(九オ)事。きゝてしんぜうといへど、 00020720M8つゐに香をきくことはなし。/最前(さいぜん)亭主、/香炉(かうろ)を/鼻(はな)のしたへ 00020730M9さしよせ、手をおほひ、あさきのからきのといふたハ、い 00020740M10かさまなめて見るとこゝろえ、まつ/香炉(かうろ)をとりて口のはた 00020750M11へさしつけ、/舌(した)を入てねぶりけるが、舌さき/炭団(たどん)にあたつ 00020760M12て、もつての外にあつかりければ、香炉をなぐる共なく、 00020770M13すつるともなく、あハたゝしく下にをきて口をかゝへ(九 00020780M14ウ)ゐたり。/亭主(ていしゆ)見て、はらをかゝへ、何と御きゝなされ 00020790M15たかといひければ、かの人/顔(かほ)をふつて、是ほどあつい木は 00020800M16/終(つい)にきかぬ。ひらさらおもとめなさるゝ事は御無用じやと 00020810M17いふた。 00020820¥N9¥J 00020830¥X九△/茶碗(ちやわん)のかる口いふ事 00020840¥P75 00020850L1ある年よりたる者よりあひ、茶のミ物語のありしが、ひと 00020860L2りのいハく、いづくて/煎(せん)じ/茶(ちや)をたべても、茶碗のふかさハ 00020870L3壱寸づゝあるかと存ずると(十オ)いふ。/禅門(せんもん)きゝて、それ 00020880L4は/合点(がてん)ゆかぬ事じや。いせ/天目(てんもく)のふかきもあり、/音羽(をとわ)/茶碗(ぢやわん) 00020890L5のあさきもあるものを、すべて壱寸づゝあるとハ、その方 00020900L6のちがひじやといふ。かの人きゝて、さうでない。何やき 00020910L7の茶碗にもせよ、五ぶ+とのめば、みなになるほどにと 00020920L8いふた。 00020930¥N10¥J 00020940¥X十△/博奕打(ばくちうち)/手(て)みその事 00020950L11ある者よりあひ博奕をうちけるが、その中に(十ウ)(十一オ挿絵) 00020960L12きハめてひとり手むさき/禅門(ぜんもん)あり。/指(ゆび)の/股(また)にこまがねをお 00020970L13ほくはさみて、をいちやうか、かうかなれば、ひとつに/押= 00020980L14込(をし=こミ)/算用(さんよう)してとる。/筒(どう)とりも、手みそをつけらるゝを見てゐ 00020990L15たれども、/禅門(ぜんもん)のことなれば、見ぬかほにて算用してやる。 00021000L16さりながら、あまりににくきことじや。なにとがなしてや 00021010L17めさせたきとおもひしが、我かるたをひねりて見るに、つ 00021020L18けめをしたり。さて、かの手むさき(十一ウ)禅門のかるた 00021030L19をあけてみれば、かうじや。禅門よろこび、やがて手のう 00021040¥G 00021050M12ちにあるほどなる壱/歩(ぶ)をおしこみ、そらさぬ/皃(かほ)にてゐたり 00021060M13しを、おや、やがていふやう、この方ハつけめじやとて、 00021070M14のこらずなでどりにする。かの禅門、にハかに/肝(きも)をつぶし、 00021080M15やい、手みそまでとつてゆくかといふた。 00021090¥N11¥J 00021100¥X十一△/駕篭(かご)かきぶりの事 00021110M18さる/遠国(をんごく)の者、/編笠(あミかさ)ふか※とかぶりて、京より(十二オ) 00021120M19/伏見(ふしミ)へ/下(くだ)る。三条/寺町(てらまち)の/辻(つじ)にて、伏見へかごをからふ。何 00021130¥P76 00021140L1ほどとるといふ。/駕篭(かご)かききいて、伏見の京/橋(はし)まて、ぶり 00021150L2にてやりませうといふ。この人、ぶりとハ弐匁のことをし 00021160L3らざりしが、すい成ふりにて、それはたかい。さハらでや 00021170L4れといふ。かごかき、をかしがり、いや、なりませぬとい 00021180L5へば、かの人いふやう、ひらさら、さハらでやれ。五条の 00021190L6橋までゆけば、ごまめでもやりたがるといふた。(十二ウ) 00021200¥N12¥J 00021210¥X十二△/道寸(だうすん)/療治(れうぢ)の事 00021220L9/道寸(だうすん)とて、いろはより外ハしらぬ禅門あり。あるとき禅門 00021230L10の/女房(にようばう)、もつてのほかにわづらふゆへ、/隣(となり)の人見まひにゆ 00021240L11かれければ、折ふし十/歳(さい)ばかりの/子(こ)、/病人(びやうにん)の/頭(かしら)へ、ひたと 00021250L12かぶりつく。道寸ハあしをすき/間(ま)もなくねづる。となりの 00021260L13人、これを見ていふやう、たゞいま/御子息(ごしそく)、病人のかしら 00021270L14へひたとかミつき、その方にハあし(十三オ)(十三ウ挿絵)を 00021280L15ねぢ給ふは、様子/合点(かてん)ゆかぬといふ。禅門きゝて、されば 00021290L16御/不審(ふしん)ハことハりなり。女どもがわづらひに付、/養性(やうじやう)のた 00021300L17めじやといふ。/隣(となり)の人きゝて、これはかハりたる/療治(りやうぢ)じや。 00021310L18すこしならひたきよしいひければ、やすきこと。おしへ申 00021320L19べし。さる/上手(じやうず)の/医者(いしや)の持てゐられたる療治本の中に、つ 00021330¥G 00021340M12かむそくねつとあつた。それで、かしらをせがれにかませ、 00021350M13あしを身(十四終オ)どもがねぢるといふた。 00021360M14△△△/頭寒足熱(づかむそくねつ)を見そこなふた。 00021370¥Y1当世咄揃第五(十四終ウ) 00021380¥P77 00021390¥Q 00021400L3延△宝△七△@己△|△未@△稔 00021410L4△△卯△月△下△旬 00021420L5△△△△△△△△△△△△堀川通西吉水町 00021430L6△△△△△△△△△△△△△△銭屋△儀△兵△衛 00021440L7△△△△△△△△△△△△△△鎰屋△吉△兵△衛 00021450L8△△△△△△△△△△△△△△金屋△四郎兵衛 00021460¥P78 00021470¥U噺本大系△第五巻 00021480¥T軽口大わらひ 00021490¥G 00021500¥Y 00021510L14延宝八年刊 00021520L15山雲子序 00021530L16半紙本五巻 00021540L17京大文学部図書室蔵(巻一・二・四) 00021550L18国会図書館蔵(軽口曲手鞠巻三) 00021560L19大阪府立図書館蔵(巻五) 00021570¥Y/軽(かる)口大わらひ/序(じよ) 00021580M3/品者(しなもの)ハ/都(ミやこ)に、/木男(きおとこ)のつめひらきハ/御(お)江戸にのミ有ものかは。 00021590M4花にハ/熊谷(くまがへ)を/出(いだ)し、月にむかふて/伊勢嶋(いせじま)ぶしをかたる事ハ、 00021600M5/二千里(じせんり)の/外(ほか)もそのとをり/者(もの)なればなり。よしや/瓢箪(へうたん)のうき 00021610M6に/浮世(うきよ)と/観(くハん)ずべしと、/鉢(はち)たゝきすら/云&(うん+)むべもきこえたり 00021620M7と、打(一オ)よりてあそぶ、こちの町の/会所(くハいしよ)のはなしを/書集(かきあつむ) 00021630M8れば、見るも聞も、よひさかなじやと、ひつかけたる/武蔵= 00021640M9野(むさし=の)のはらをかゝへぬ、人しなければ、軽口大わらひと/名= 00021650M10付(な=づけ)/侍(はんべる)ならし。 00021660M12△△△△延宝八年新春之御慶申納而 00021670M13△△△△△△△△何の何氏 00021680M14△△△△△△△△△△山△雲△子△記△(一ウ) 00021690¥P79 00021700¥Y1かる口大笑第一目録 00021710L3一△松はやし/謡(うたひ)の事 00021720L4二△/播磨(はりま)の/者(もの)うつけの事 00021730L5三△/御公家侍(おくげさぶらひ)/文盲(もんもう)の事 00021740L6四△/物毎(ものごと)に/気(き)を/付(つけ)過る事 00021750L7五△/口真女(くちまめ)なる/者(もの)の事 00021760L8六△/即時(そくじ)の/占(うらなひ)の事 00021770L9七△/文盲者(もんもうもの)うへつかたへ/出入(いでいる)事 00021780L10八△/本願寺(ほんぐハんじ)え/日参(につさん)する事(二オ) 00021790L11九△/麁相者(そさうもの)/媒(なかだち)の事 00021800L12十△/浮蔵主(うきぞうす)/談義(だんぎ)の事 00021810L13十一△/山水(さんすい)なる/町年寄(まちとしより)事(二ウ) 00021820¥T1かる口大笑第一 00021830¥N1¥J 00021840¥X一△松はやし/謡(うたひ)の事 00021850M5/或(ある)所に松はやしの謡を/興行(こうぎやう)せんとて、/友達(ともだち)/中間(なかま)をもよほし 00021860M6けり。其中にかつて謡をしらぬ/者(もの)ありて、/我等(われら)ハ謡をしら 00021870M7ぬ/程(ほど)にゆくまひといへば、何なりとも/小(こ)謡の口をさへうた 00021880M8へば、わきから/付(つけ)るほどに、やすき事ををしへんとて、/長= 00021890¥G 00021900¥P80 00021910L1生(ちやう=せい)の家にこそおひせぬ/門(かど)ハ有なるにといふ事を、/毎夜(まいよ)をし 00021920L2へけれ共、おひせぬ/門(かど)といふ事をひしと/忘(ハす)れければ、おひ 00021930L3せぬとハ、とし(三オ)よらぬといふ事じや程に、そちのお 00021940L4ばゞを思ひ/出(だ)してうたへといひければ、それよりよく/合点(がてん) 00021950L5して謡けり。さて其日/我(わが)謡になりて、はたと忘れしが、お 00021960L6ばゝを思ひ/出(だ)して、長/生(せい)の家にこそおばゞ+といへば、 00021970L7/座中(ざちう)もそれにうつりて、かあやせ+とつけられた。 00021980¥N2¥J 00021990¥X二△/播磨(はりま)の/者(もの)うつけの事 00022000L10/播磨(はりま)に/福留(ふくどまり)といふ所あり。そこの/者(もの)、/年(とし)参に/讃岐(さぬき)の/金毘羅(こんひら) 00022010L11へ参けるが、/行(ゆき)くれてある/家(いへ)(三ウ)(四オ挿絵)の/戸(と)をたゝ 00022020L12き、/宿(やど)からんといふ。うちに、こよひハ/節分(せつぶん)なれば、かす 00022030L13まひのかさうのといひけるが、中にも、どこ/衆(しゆ)ぞといふ。 00022040L14いや/金毘羅(こんひら)参でござる。播磨の/福留(ふくどまり)の/者(もの)じやといへば、其 00022050L15まゝ戸をあけて、いかにもやすき事。かしませうとてうち 00022060L16へいれ、やれ/洗足(せんそく)させませい。/先(まづ)/得方(えほう)えなをしませい。福 00022070L17どまりでめでたいぞと、よろこびもてなす事かぎりなし。 00022080L18其後/茶(ちや)などのミてはなしになりけり。/亭主(ていしゆ)いふやう、/爰許(こゝもと) 00022090L19ハ/近年(きんねん)世中あしう(四ウ)ござるが、こなたの/在所(ざいしよ)ハ、なさ 00022100M1へ福どまりじやほどに、さぞ/福貴(ふつき)にござらう。/何(なん)ぞめでた 00022110M2い事をかたらしやれといへば、/彼者(かのもの)、いかな+、こちの 00022120M3/方(かた)も近年ハわるうござる。福どまりハむかしの事。今ハび 00022130M4んぼうどまりでござるといへば、やれ、うたてのびんぼ 00022140M5うどまりや。かた/時(とき)もをかぬぞと、てん/手(で)にたゝき/出(だ)し 00022150M6た。 00022160¥N3¥J 00022170¥X三△/御公家侍(おくげさふらひ)/文盲(もんもう)の事 00022180M9/或(ある)/御/公家(くげ)の/元関(げんくハん)に、/御供(おとも)の侍よりゐて/咄(はなし)し(五オ)けるが、 00022190M10一人いふやう、/御手前(おてまへ)の/旦那(だんな)殿の/当官(とうぐハん)は何ぞと申ければ、 00022200M11/左小弁(させうべん)でござるといふ。わきで/文盲(もんもう)なる侍/聞(きゝ)て、/小声(こごゑ)にい 00022210M12ふやう、其/官(くハん)ハ/御厠(おかハ)の/御奉行(おぶぎやう)でござるかといふ。ミなあき 00022220M13れて、なぜに/左様(さやう)にハの給ふぞといへば、でも、させうべ 00022230M14んじやと仰らるゝ程にといへば、まへの侍/赤面(せきめん)して、そん 00022240M15なら、おぬしの/旦那(だんな)ハ/雪隠奉行(せつちんぶぎやう)じやといふ。是ハめづらし 00022250M16や。何のせうこが有ぞといへば、しれた事よ。/右大便(うだいべん)でハ 00022260M17ないかといふた。(五ウ) 00022270¥N4¥J 00022280¥X四△物/毎(ごと)に/気(き)を/付(つけ)過る事 00022290¥P81 00022300L1物に気を付過る/親仁(おやぢ)あり。/或者(あるもの)、をれが/娘(むすめ)を下の丁の/経= 00022310L2師(きやう=じ)やよりほしがる程に、やらうとおもひまする。/聟(むこ)にして 00022320L3もくるしかるまいかといへば、/彼(かの)親仁いふやう、あれハぎ 00022330L4やうさんに/病気者(びやうきもの)で、かんばんにさへ/持病(ぢびやう)を/書(かい)てをいたほ 00022340L5どに、むやうにめされといふ。それハ何とやうにござると 00022350L6いへば、色+たんしやくありとかいてをきましたといは 00022360L7れた。(六オ) 00022370¥N5¥J 00022380¥X五△口まめなる/者(もの)の事 00022390L10/嗜(たしなミ)いふまじきハ人のさたにこそ。/或(ある)所に/二(ふたり)人よりて人事を 00022400L11いひける所え、とつと口まめなる/者(もの)/来(きた)る。おてまへハ見き 00022410L12く事をつゝまぬ人なり。此事をかならず/他言(たごん)してたもるな 00022420L13とて、/銭(ぜに)を百やりければ、何がさていひませうとて、かの 00022430L14銭をふところに入て帰けり。/夜中(よなか)/時分(じぶん)に/門(かど)をたゝく。たそ 00022440L15といへば、/彼者(かのもの)、をれでござるといふ。何とていまきたら 00022450L16れたといへば、いや、ひる(六ウ)(七オ挿絵)くだされた銭 00022460L17をかへしませう。どうしあんしても、きひた事ハいひたう 00022470L18てならぬといふた。 00022480¥G 00022490¥N6¥J 00022500¥X六△/即時(そくじ)の/占(うらなひ)の事 00022510M14/或(ある)大/名(めう)、/狐狩(きつねがり)に出られ、/岩(いハ)をおこし山をくづして/狩(かり)まハり、 00022520M15あなをふすべられけり。とある所に、/大(おほ)きなる/穴(あな)有。やれ、 00022530M16ふすべよとてひしめけば、/夫婦(ふうふ)の/狐(きつね)とび出たるを、やす 00022540M17+と/生捕(いけどり)にしたり。もはや此穴にハおるまひ。わきをか 00022550M18らんといへば、/或侍(あるさふらひ)すゝミ出、此穴にハたしかに/子狐(こぎつね)四/疋(ひき) 00022560M19有程に(七ウ)ふすべよと/下知(げぢ)をして、つよくふすべければ、 00022570¥P82 00022580L1/案(あん)のごとく子狐四疋出たるを、やす+ととらへければ、 00022590L2/殿(との)の/機嫌(きげん)あさからず。/彼侍(かのさふらひ)をよび、其/方(ほう)ハ何として穴の内 00022600L3の事を/知(しり)たるぞととハれければ、/即時(そくじ)の/占(うらなひ)を/持(もち)て/知(しり)ました 00022610L4と申上る。それハいかやうの事とあれば、むかいの/堤(つゝミ)を見 00022620L5ましたれば、ちんばがとをりましたによりて、ちんばこし 00022630L6ひきありと/占(うらなひ)ましたといへば、/猶&(なを+)/悦喜(ゑつき)かぎりなく、ほう 00022640L7びをもらひたり。それよりおく山へ/狩(かり)いられけるに又穴あ 00022650L8り。/或麁(あるそ)(八オ)/相者(さうもの)、をれも/占(うらなひ)をしてほめられんと思ひ、 00022660L8此穴にハたしか/鴟(とび)がすをしておらう程にふすべんといへば、 00022670L10ミな+あきれて、おてまへも占をめさるゝか。/鴟(とび)ハ木に 00022680L11こそ/巣(す)をくへ、穴にはおらぬといへば、いやおると/口論(こうろん)す 00022690L12るを、/殿(との)きかれて、其方も占をしつらん。何とてさやうに 00022700L13ハ申ぞととハれければ、/先(さき)程むかふの山で、あひたみたさ 00022710L14ハとうたひましたゆへに、とびたつばかりとうらなひまし 00022720L15た。なんでもゐませうといふた。 00022730¥N7¥J 00022740¥X七△/文盲者(もんもうもの)/上(うへ)つ方え出入事(八ウ) 00022750L18/或(ある)やんごとなき御方へ/伺公(しこう)するゐしや、/新宅(しんたく)をたてけるが、 00022760L19/御前(ごぜん)え出ければ、其方ハ新宅をたてたげな。/家(いへ)見にゆかふ 00022770M1と仰ければ、ありがたき仰にてござりますると申せば、な 00022780M2んでも/行(ゆき)て/大義(たいき)をさせんと/左礼(ざれ)給へば、其時/麁相者(そさうもの)罷出、 00022790M3しハい/者(もの)でござりますれば、/馳走(ちそう)申をめいわくいたしまし 00022800M4て、ござりませいとハ申ませぬ。こざりませうば、あれが 00022810M5物のいらぬやうに、/木(き)ちんでござりませいといふた。あな 00022820M6たにハ何やら御存なかつた。(九オ) 00022830¥N8¥J 00022840¥X八△本願寺へ/日参(につさん)する事 00022850M9/或者(あるもの)、本願寺へ/日参(につさん)しけり。又/同(おな)じやうなる/親仁(おやじ)、彼者に 00022860M10あひて、こなたハ/毎日(まいにち)ようまいらしやる。我等ハ此世の/業(ごう) 00022870M11がはていで、え参ませぬ。うら山しや。/定(さだめ)て御所様をさい 00022880M12+おがましやらうといへば、中+おがみまする。あ 00022890M13なたハ/生如来(いきによらい)様の事なれば、ふしぎな事がござる。お/小便(せうべん) 00022900M14を被成る所え/行(ゆき)かゝりましたによりて、わきにひれふして 00022910M15お小便のおとを聞まするに、ぎりのつまつたおとがしまし 00022920M16たといふ。さぞさうござらう。(九ウ)(十オ挿絵)何とやう 00022930M17にちやうもん被成たといへ/□□□((ば、ミ))なつかさくらゐの事でご 00022940M18ざつた。/先(まづ)/初(はじめ)ハだいぶ+となされ、中ほどで/中将(ちうぜう)/少将(せうしやう) 00022950M19+と被成て、しだいにはやうなりて、せう++と被 00022960¥P83 00022970¥G 00022980L12成たが、じゞうととまりましたといふた。 00022990¥N9¥J 00023000¥X九△/麁相者(そさうもの)/媒(なかだち)の事 00023010L15/或者(あるもの)、人の/嫁(よめ)をきもいりけるが、両方の/親(おや)共も/合点(がてん)したり。 00023020L16/彼(かの)むすこ、媒をひそかによびきけば、われらが/女房(にようばう)の事を 00023030L17/御肝煎(おきもいり)じやげな。忝ござる。し(十ウ)て、其/娘(むすめ)のうまれつ 00023040L18きハようござるかといへば、/彼媒(かのなかだち)、ずいぶんよういハんと 00023050L19思ひ、あのやうなよいのハごさらぬ。/縫(ぬい)はりようて、/読書(よみかき) 00023060M1ばんじ/理発(りハつ)で、/姿(すがた)やうすハ/柳(やなぎ)などのたよ+するやうにご 00023070M2ざる。/口(くち)もとのしほらしさ、目もとなどハほそ※として 00023080M3/薄(すゝき)のやうにござるといふ。彼むすこ、わきハようござるが、 00023090M4/女(をんな)の目にハすゞをはれといふに、ほそ過ていやじやといふ。 00023100M5彼者、はつと思ひ、いや+、ほそいハかた+の目の事。 00023110M6/一方(いつほう)ハ大きにござるといふた。(十一オ) 00023120¥N10J 00023130¥X十△/浮蔵主(うきぞうす)/談義(たんぎ)の事 00023140M9/或寺(あるてら)の/住持(じうぢ)、ぎやうにひやうきんにて有しが、/去(きよ)年/十夜(じうや)の 00023150M10談義に、/弥陀(ミだ)御/本願(ほんぐハん)のおもハくハしよわけの立た事。/神(しん)ぞ 00023160M11/余経(よきやう)にかやうの事ハみえぬといはれければ、談義はてゝ/或= 00023170M12旦那(ある=だんな)いふやう、/御(お)まへの談義にハ、/当世詞(たうせいことば)が/出(で)て人がわら 00023180M13ひますると/異見(いけん)しければ、心えましたといはれ、/明(あく)る/夜(よ)の 00023190M14談義にいひわけせんとおもハれ、/昨夜(さくや)の談義に当世詞を申 00023200M15たとておわらひ被成たと承ました。/小僧(こぞう)共(十一ウ)が申を 00023210M16/折檻(せつかん)いたしたを、覚ず申ました。/平世(へいせい)我等が/身持(ミもち)も/詞(ことば)のご 00023220M17とく、/俗衆(ぞくしゆ)にもまじハるかとおほしめさうがめいわくにご 00023230M18ざる。/愚僧(ぐそう)において/不儀(ふぎ)な事共ハ、此寺へすハりてから、 00023240M19みぢんけがごあんせぬといはれた。 00023250¥P84 00023260¥N11¥J 00023270¥X十一△/山水(さんすい)なる/町年寄(まちとしより)の事 00023280L3/或町(あるちやう)に/借(しやく)屋しける/者(もの)に、何共しよざいのしれぬ者有しが、 00023290L4あたりより/不審(ふしん)をなしければ、としより五人/組(ぐミ)より/彼者(かのもの)方 00023300L5へ/使(つかい)をたてよび/寄(よせ)(十二オ)て、/御手前(おてまへ)のしよざいがしれぬゆ 00023310L6へに、/不審(ふしん)に思ひたづねるといへば、彼者、いかにもしよ 00023320L7ざいハござれ共、お/恥(はづ)かしうござるといふ。いかやうにし 00023330L8ても/身(ミ)を過るが/手柄(てがら)なり。何にてもいふてきかしやれとい 00023340L9へば、近年ハ/本手(もとで)をしうしなひ、何とぞつらをさらさぬ事 00023350L10をと存て、/師子(しし)まひをいたしまするといふ。これハ思ひの 00023360L11/外(ほか)なしよざいでござる。/装束(しやうぞく)ハどこでめさるゝといへば、 00023370L12/因幡堂(ゐなばだう)のうしろを/楽(がく)やにして/出(で)まする。それにまがひハご 00023380L13ざりませぬとて、彼/道具(だうぐ)を/持(もち)て(十二ウ)(十三オ挿絵)きたれ 00023390L14ば、此上ハうたがひなしとて、彼者のしよざいハしれた。 00023400L15或者すゝみ出、よき/次手(ついで)でござる程に尋ませう。/御年寄(おとしより)様 00023410L16のしよざいもしれませぬといへば、ミな+、是ハよう/気(き) 00023420L17が/付(つき)ました。/聞(きゝ)ませうといへば、年寄殿、以の外にめいわ 00023430L18くして、申も/恥(はづ)かしうござるといふ。/是非(ぜひ)うけたまハらん 00023440L19といへば、せんか/か((か衍))たなくて、われらハ/時(とき)+の物をしま 00023450¥G 00023460M11するといふ。時&とハ/合点(がてん)がまいらぬ。何事でござるとい 00023470M12へば、/我等(われら)もつらをさらすがはづかしうて、春ハ/大黒(だいこく)の/面(めん) 00023480M13をかぶり(十三ウ)て/一二((ママ))たハらをいひ、冬ハかほをつゝみ 00023490M14て/節季候(せきぞろ)をして、其間にハめんをきて風の神ををくります 00023500M15るといはれた。 00023510¥Y1軽口大わらひ第一終(十四オ) 00023520¥P85 00023530¥Y1軽口大わらひ第二目録 00023540L3一△/文盲(もんもう)なる/者(もの)の事 00023550L4二△三条/縄手(なハて)けんくハの事 00023560L5三△おろしなますをしらぬ事 00023570L6四△/連歌(れんが)をしらぬ事 00023580L7五△/手水(てうず)のこをしらぬ事 00023590L8六△/畳(たゝミ)さし/哥読(うたよむ)事 00023600L9七△/麁相者(そさうもの)/小便(せうべん)の事 00023610L10八△花見の/供(とも)久八が事(一オ) 00023620L11九△山/家(が)の/者(もの)/鯛(たい)かふ事 00023630L12十△/乞食(こじき)はなしの事 00023640L13十一△/辻雪隠(つぢせつちん)の事 00023650L14十二△正月物いはゐする/者(もの)の事 00023660L15十三△/小者(こもの)を/置(をく)事(一ウ) 00023670¥T1かる口大笑第二 00023680¥N1¥J 00023690¥X一△/文盲(もんもう)なる/者(もの)の事 00023700M6/五木湯(ごもくゆ)といふハ、/五色(いついろ)の/木薬(きぐすり)を/加(くハへ)いれて/入湯(いりゆ)ニすれば、/気= 00023710M7血(き=けつ)めぐるとかや。/或(ある)人、五木湯をしているがよい/気味(きミ)じや 00023720M8といへば、わきにて/聞(きゝ)たる/者(もの)、其やうによき物ならば/我等(われら) 00023730M9もして入ませうといふ。いかにもよからう。被成よといへ 00023740M10ば、其/晩(ばん)に/彼者(かのもの)かたより/使(つかひ)にて、こなたの五木湯がうらや 00023750M11ましくて此方にもいたしました。所がかハれば/面(おも)(二オ)し 00023760M12ろうござる。/来(き)てお入被成とよびにおこしければ、其まゝ 00023770M13/行(ゆき)て、我等の五木湯にハ/手間(てま)が入ました。こなたハさいか 00023780M14くな人で、はやう被成たといへば、/女房(にようばう)出て、これのハ/湯= 00023790M15殿(ゆ=どの)にいられまするといふ。湯殿へ/行(ゆけ)ば、湯の中より、はや 00023800M16うござれ共、/先(まづ)かげんをみましたといはるゝ。ゆる+お 00023810M17入被成よとて中をミれば、どろのやうなる湯に、ざうりせ 00023820M18きだのやぶれを取いれて、其中へはいりて、ゑい/気味(きミ)でご 00023830M19ざると、あをつ(二ウ)(三オ挿絵)ていられた。/同理(どうり)こそ。せ 00023840¥P86 00023850¥G 00023860L12どのはきだめをいれた五木湯であつた。 00023870¥N2¥J 00023880¥X二△三条なハて/喧嘩(けんくハ)の事 00023890L15/或時(あるとき)、三条/縄手(なハて)にてけんくハ/出来(いでき)けり。町の/者(もの)出合て、さ 00023900L16ま※あつかひけれ共、/更(さら)にきゝいれず。とやせんかくや 00023910L17といふ/所(ところ)へ、/麁相(そさう)なる/坊主(ばうず)/来(きた)り、あの人だちハ何事でござ 00023920L18るといふ。あれハ/道(ミち)とをりが/喧嘩(けんくハ)をして、両方がこバりき 00023930L19つてゐる/最中(さいちう)じや。何とぞやハら(三ウ)ぎをいれて/■(あつかい)たい 00023940M1といふ事じやといへば、/彼坊主(かのばうず)、それこそをれがしやうが 00023950M2ござるぞとて、/血脉袋(けちミやくぶくろ)より何やら取/出(だ)して、是を喧嘩す 00023960M3る男のあたまへふりかきやれといふ。/皆(ミな)+あきれて、是 00023970M4ハ何事ぞといへば、いや、かくれもない/高野山(こうやさん)の/土砂(どしや)でご 00023980M5ざる。是をふりかければ、其まゝやハらぎが/出来(でき)ますとい 00023990M6ふた。 00024000¥N3¥J 00024010¥X三△おろしなますをしらぬ事 00024020M9/或辺土(あるへんど)の者四五人づれにて、/愛宕(あたご)参をして(四オ)/坊(ばう)につき 00024030M10ければ、/料理(りやうり)におろしなますをして/出(だ)された。/振舞(ふるまひ)うちく 00024040M11ふて帰けり。/追付(おつつけ)/在所(さいしよ)へ代官殿きたられければ、/庄(しやう)や、/小= 00024050M12百性(こ=びやくしやう)をよび、/御(お)代官へ何がなめづらしい料理をしんぜう。 00024060M13/愛宕(あたご)でくふたなますの/大根(だいこ)ハいかふうまかつたが、何とや 00024070M14うにして、あのやうにきざみた物ぞと、とり※に/評判(へうばん)し 00024080M15けるが、/刻(きざミ)たのでハなかつた。かみくだいた物じやといふ。 00024090M16誠にさうじや。いざせうとて、大根を/手毎(てごと)にわたし、いへ 00024100M17(四ウ)内があつまりて、口より/雫(しづく)をたらし、かみくだいて 00024110M18なますにした。 00024120¥P87 00024130¥N4¥J 00024140¥X四△/連哥(れんが)をしらぬ事 00024150L3或山/里(ざと)へ/代官(だいくハん)御出の/折(おり)から、/逗留(とうりう)のうち、とぜんなりとて 00024160L4/庄(しやう)やをよびて、何と、此あたりに/連哥師(れんがし)ハなきかととハれ 00024170L5ければ、いや、さやうの物ハ、つゐにミた事もござりませ 00024180L6ぬ。/爰許(こゝもと)の山に/赤樫(あかかし)、しらかしの/外(ほか)、/連樫(れんがし)ハござりませぬ 00024190L7といふた。(五オ) 00024200¥N5¥J 00024210¥X五△/手水(てうつ)の/粉(こ)をしらぬ事 00024220L10/代官(だいくハん)/在郷(ざいごう)まハりの時、/御小姓(おこしやう)、百/性(しやう)をよびて、/殿(との)の/御湯殿(おゆどの) 00024230L11に入ほどに、/御手水(おてうず)の/粉(こ)を/持(も)てこいといひ付ければ、い 00024240L12そぎ/庄(しやう)屋の方へ/行(ゆき)て、かくといひければ、何の事でか有ぞ 00024250L13と、/地下中(ぢげぢう)をよびて/談合(だんこう)すれども、しりたる/者(もの)なし。/時刻(じこく) 00024260L14うつりければ、/早(はや)くもてこいと、/度(たび)※/使(つかい)/来(きた)れば、何とぞ 00024270L15よきやうに取つくろいて/御返事(おへんじ)を申あげうとて、庄や、/袴(はかま) 00024280L16をかた/尻(しり)ニ(五ウ)(六オ挿絵)かけ/台所(だいところ)へ参り、/御手水(おてうず)のこの 00024290L17事、仰付られました。/随分(ずいぶん)せんぎいたしまするに、大坂の 00024300L18/一乱(いちらん)にミなちり※になりましてござるといふた。 00024310¥G 00024320¥N6¥J 00024330¥X六△/畳(たゝミ)さし/哥読(うたよむ)事 00024340M14/笹岡(さゝをか)/新(しん)五右衛門といふ/者(もの)、/和哥(わか)に心をそめ、おりふしにつ 00024350M15けて/哥(うた)を/読(よミ)けり。/友(とも)なひあつまりて、哥の/会(くハい)をしけり。折 00024360M16ふし/畳(たゝミ)屋をよびてさゝせけるが、/彼(かの)畳や、/次(つぎ)の/間(ま)へ来りて 00024370M17/始終(しじう)/読(よミ)出す哥をかんじゐたるを、人&しほらしき(六ウ)者 00024380M18かなと思ひよびよせて、其方ハ何のわけも/聞知(きゝしる)まいと思ふ 00024390M19に、やさしくも哥を聞ゐたる事かな。何なりとも/読(よん)でみよ 00024400¥P88 00024410L1といへば、/更(さら)におくするけしきなく/読(よミ)いだす/哥(うた)、 00024420L2△△/笹岡(さゝをか)新五右衛門様にて/畳(たゝミ)をさせば 00024430L3△△△おもひもよらぬうづらの/汁(しる)をすふ事かな 00024440L4といひければ、/笑者(わらふもの)もあり。其中に新五右衛門、是程にも 00024450L5心をのべし事ハ、さすが/和哥(わか)の/奇特(きどく)じや。是ハ/字余(じあまり)じや程 00024460L6に、/三十一文字(ミそじひともじ)につゞめて(七オ)よみなをせといへば、 00024470L7△△/笹岡(さゝをか)新様とこでたゝさせば 00024480L8△△△おもひよらぬらの/汁(しる)すふ哉 00024490¥N7¥J 00024500¥X七△/麁相者(そさうもの)/小便(せうべん)の事 00024510L11ぎやうさん/麁相(そさう)者有て、/雨夜(あまよ)にえんへ出けるが、/夜明(よあけ)がた 00024520L12まで、ね所へいらざれば、/女房(にようばう)ふしぎに思ひ、出でみれば、 00024530L13えんさきにまへうちからげて/立(たち)たり。/宵(よひ)から何をしてござ 00024540L14るといへば、小便をするが、いかふ/出(で)るぞといふ。女房よ 00024550L15りて(七ウ)ミれば、/飛樋(とひ)から雨の/落(おち)るを、/小便(□うべん)じやとおも 00024560L16ふていられた。 00024570¥N8¥J 00024580¥X八△花見の/供(とも)久八が事 00024590L19/或所(あるところ)に花見してゐたりしが、打よつて/弁当(べんとう)をひらきけり。 00024600M1久八、心に思ふやう、さても/旦那(だんな)たちハおもしろさうに弁 00024610M2当をくハるゝが、我/等(ら)にハいつ、くへといハるゝぞと/詠(ながめ)ゐ 00024620M3たり。かゝる処に/巾着(きんちやく)きり、/彼(かの)つれの巾着をきりてにげた。 00024630M4やれのがさじと、/残(のこら)ず/追(おい)かけたり。(八オ)彼久八、もとよ 00024640M5り弁当に心いりたれば、やれ/弁当残(べんとうのこり)、のがしハせぬぞとて、 00024650M6かたはしからしてやつた。 00024660¥N9¥J 00024670¥X九△/山家(やまが)の/者(もの)/鯛(たい)をかふ事 00024680M9山家の者、/市(いち)へ出て鯛をかひて/在所(さいしよ)へかへり、鯛といふう 00024690M10をゝミやれとふれければ、在所中よりあひて、さてもめづ 00024700M11らしい物じやとて、とり※/批判(ひはん)しけり。とかく/庄(しやう)や殿へ 00024710M12ミせませうとて/持行(もちゆけ)ば、庄や、つく※とみて、そち/衆(しゆ)ハ 00024720M13(八ウ)(九オ挿絵)何もしらぬ。是ハ何が鯛であらふ。是ハゑ 00024730M14びす殿のわきざしじやが、いかふくさいといふ。中に/利口(りこう) 00024740M15成者すゝみ出て、いかにも其通。くさいハ/古身(ふるミ)じやぞ。ひ 00024750M16そうしやれといふた。 00024760¥N10¥J 00024770¥X十△/乞食(こじき)はなしの事 00024780M19三条のはしを通りけるに、/石垣(いしかき)の下に/乞食(こじき)共咄してゐたり。 00024790¥P89 00024800¥G 00024810L12何とおもハるゝぞ。都のうちになを/得(ゑ)たる/金持(かねもち)あまた有が、 00024820L13さぞ心にまかせ、おもしろからう。何ほどばかり/持(もち)てゐる 00024830L14(九ウ)事ぞといへば、かたはらより、いや、人のいふほど 00024840L15ハえ/持(もつ)まひ。何事もわきからいふとハちがふ物じや。こち 00024850L16らが/身(ミ)の/上(うへ)にもある事じやといへば、それハどうした事ぞ 00024860L17ととへば、いや、をれらが/身(ミ)の/虱(しらミ)も、京での/評判(へうばん)にハ壱斗 00024870L18もあらうやうにいへども、いかひ事あつて、たつた壱合よ 00024880L19りおおふハあるまひといふた。 00024890¥N11¥J 00024900¥X十一△/辻雪隠(つじせつちん)の事 00024910M3/或者(あるもの)、/辻(つじ)に/雪隠(せつちん)をたてたが、こやしがたまり(十オ)て、ぎ 00024920M4やうさん/銭(せに)をもうけると/語(かたり)ければ、とつとしハき男聞て、 00024930M5是ハあれにせんをこされたと思ひ、其となりに又/雪隠(せつちん)を/建(たて) 00024940M6けり。/彼者(かのもの)おもふやう、けふよりハわが雪隠へばかり入の 00024950M7あるやうにせんとて、人だちさへあれば、人の雪隠へはい 00024960M8りゐて、人来ればせきばらいをして、/隣(となり)へござれといへば、 00024970M9ひた物わがのへ/行(ゆき)けり。/是手(このて)を/隣(となり)の/者(もの)しりて、さてもむさ 00024980M10き心かなと/腹立(ふくりう)して、夜の/間(ま)に/行(ゆき)て、わが雪隠の/板(いた)をふめ 00024990M11ば(十ウ)おちるやうにしてをきたり。これをばしらず彼男、 00025000M12又/明(あく)る日雪隠へはいりければ、とんとはまりて、くそまぶ 00025010M13れになりてはいあがり、はう+やどへかへりければ、/女= 00025020M14房(によう=ばう)みて、さて+見ぐるしきありさまかな。是といふも心 00025030M15からぞと、はぢしめければ、ぬからぬかをにて、両の/袂(たもと)よ 00025040M16りくそをとりいだし、けがをしてもたゞハもどらぬ。是を 00025050M17みよ。/洗沢(せんたく)ちんほどハしてきたぞといふた。(十一オ) 00025060¥P90 00025070¥N12¥J 00025080¥X十二△正月物いはゐする者の事 00025090L3とつとゐんぎやうなる/仁(じん)、/小者(こもの)を/呼(よび)て、あすハ元日じやほ 00025100L4どに、/麁相(そさう)をいふなといはれければ、かしこまりました((と脱カ))/い 00025110L5ふところへ、/伴(ばんの)寿庵(じゆあん)といふ人、/歳暮(せいぼ)の/御礼(おれい)申といはれけれ 00025120L6ば、小者、/口上(こうじやう)をうけとりた。/旦那(たんな)、今のハたそととハれ 00025130L7たれば、麁相者、いや/別(べち)の事でもござりませぬ。ばんのじ 00025140L8あひじやといはれまするといへば、ぎやうさん/気(き)にかけら 00025150¥G 00025160M1れた。(十一ウ)(十二オ挿絵) 00025170¥N13¥J 00025180¥X十三△/小者(こもの)を/置(をく)事 00025190M4/或仁(あるじん)、小者を/置(をき)けるが、此者、今までハ/黄檗山(わうばくさん)にゐたとい 00025200M5へば、其方ハ/隠元(ゐんげん)の/御書(おかき)被成た物ハもたぬかととひければ、 00025210M6いかにも持ましたといふ。是ハよき事を聞たり。してやら 00025220M7うとおもひ、/明日(あす)/座敷(ざしき)のとこへかけてをけよ。みうほどに 00025230M8といはれければ、かしこまりましたといひけり。/明日(あす)おき 00025240M9て/床(とこ)をミれば、ぎやうさんふるき/下帯(したおび)をかけ(十二ウ)てを 00025250M10いた。/大(おほ)きにけでんして、/彼(かの)小者をよびて、是ハ何ぞとと 00025260M11ハれければ、いや、是が隠元様のおかき被成たふんどしで 00025270M12ござるといふた。 00025280¥Y1軽口大笑第二終(十三終オ) 00025290¥P91 00025300¥Y1かる口曲てまり三目録 00025310L3一△/嫁(よめ)/産(さん)をするに/姑女(しうとめ)/臨終(りんじう)の事 00025320L4二△/文盲(もんもう)/坊主(ぼうず)/改名(かいめう)付る事 00025330L5三△/辺土(へんど)の/者(もの)京/打廻(うちまハり)の事 00025340L6四△/田舎者(ゐなかもの)宇治見物事 00025350L7五△/寒国(かんこく)の大咄の事 00025360L8六△天人をつかふ事 00025370L9七△物いまひする/者(もの)の事 00025380L10八△やかましき念仏申の事(一オ) 00025390L11九△すりきりたる/者(もの)/振舞(ふるまひ)に行事 00025400L12十△/在郷(ざいごう)にて/吉利支丹(きりしたん)/改(あらため)の事 00025410L13十一△/弁慶(べんけい)が/沙汰(さた)する事(一ウ) 00025420¥T1かる口曲手鞠三 00025430¥N1¥J 00025440¥X一△/嫁(よめ)/産(さん)をするに/姑女(しうとめ)/臨終(りんじう)の事 00025450M5ある所に、ういに子をうむ/者(もの)有けるが、/母親(はゝおや)/来(きたり)て、女のし 00025460M6んぼうハ今の事じやぞ。心をはつきとしてよろこびやれ。 00025470M7せいをだしてうん+といやれといへば、わきからも、う 00025480M8ん+といふてせいを付けり。其ころ/姑女(しうとめ)わづらひて、今 00025490M9がりんじうにきハまれば、/旦那寺(だんなでら)の/長老(ちやうらう)/枕(まくら)もとにきたられ、 00025500M10ばゝさま。今が/如来(によらい)のおむかへじやぞ。お/念仏(ねぶつ)、/南無阿弥(なむあミ) 00025510M11+といふてすゝ(二オ)められしが、わきにハ、うんとい 00025520M12や+といひければ、長老それにうつりて、念仏を取ちが 00025530M13へて、うんといや+といはれければ、いとしやおばゝ、 00025540M14うん+といふて、おちいられた。 00025550¥N2¥J 00025560¥X二△/文盲(もんもう)/坊主(ぼうず)/改名(かいめう)付る事 00025570M17とつともんもうなる坊主ありけるが、いかなるえんにや、 00025580M18ある/在所(ざいしよ)の/寺(てら)にすえんといふ。坊主いふやう、/秤目(はかりめ)の外ハ 00025590M19いろはもとくとハしらねば、改名をゑつけまいといふ。/肝= 00025600¥P92 00025610¥G 00025620L12煎(きも=いり)の/者(もの)、改名ハらくに付られ(二ウ)(三オ挿絵)まする。男 00025630L13にハ/道(たう)の/字(じ)を/付(つけ)、女にハ/妙(めう)を/付(つ)きやれといへば、心ゑまし 00025640L14たとて、/彼寺(かのてら)の/住持(しうぢ)になりけり。/或旦那(あるだんな)/斎(とき)によびて、/夫婦= 00025650L15子共(ふうふ=こども)、お/血脉(けちミやく)を請ませうといへば、心えましたとて、何や 00025660L16ら/書封(かきふう)じてわたされた。ミな+いたゞきて、/改名(かいめう)ハ何と 00025670L17付て被下ましたといへば、/親仁(おやじ)を道一、むすこを道/分(ふん)、/女= 00025680L18房(によう=ばう)を妙五、/娘(むすめ)を妙/厘(りん)と付られた。/肝煎(きもいり)たる/者(もの)伝(つたへ)きゝて、さ 00025690L19て+、よく改名を付させられた。秤目の外ハしらぬと仰 00025700M1られたが、さうでもない。/物知(ものしり)じやと(三ウ)いへば、い 00025710M2や+、秤目でつけました。屋うちの/衆(しゆ)を、しめて壱分五 00025720M3リンで付ましたといふた。 00025730¥N3¥J 00025740¥X三△/辺土(へんど)の/者(もの)京打/廻(まハり)の事 00025750M6辺土の者京へ上り、見物しありきしが、寺町通に出、めな 00025760M7れぬうり物を、是ハ何ぞ、あれハいかにと/評判(へうばん)して/通(とを)りし 00025770M8が、/将棊(しやうぎ)の/駒(こま)をみて、ねぢひねれ共さらに/知者(しるもの)なし。一人、 00025780M9しばしあんじたりしが、是ハたしか/小人嶋(こびとじま)のそとばであら 00025790M10ふといふた。(四オ) 00025800¥N4¥J 00025810¥X四△/田舎者(ゐなかもの)宇治見物の事 00025820M13京打/廻(まハ)りする田舎者、宇治へ/行(ゆき)、あなたこなたとありきし 00025830M14が、こざかしき/親仁(おやじ)/来(きたり)、おの+ハ此所見物の/衆(しゆ)とミまし 00025840M15た。/名所旧跡(めいしよきうせき)あない仕らうといへば、是こそ/幸(さいハゐ)と/悦(よろこ)び打つ 00025850M16れだち、/先(まづ)/平等院(べうとうゐん)にいたり、是こそ扇の/芝(しば)。うもれ木の花 00025860M17さくこともと/読(よミ)て、/頼政(よりまさ)のはらをきられたハこゝの事でご 00025870M18ざるといへば、田舎者、/謡(うたひ)を/知(しり)ておるゆへに、わりふがあ 00025880M19ふておもしろいといへば、それならば/謡(うたひ)でお(四ウ)しへま 00025890¥P93 00025900L1せう。是なる/嶋(しま)が/名(な)に立花のこじまがさき。むかひにみえ 00025910L2たる寺が、ゑしんの/僧都(そうづ)のミのりを/説(とき)し寺。月こそ出れと 00025920L3いふた/朝日(あさひ)山ハむかふの/岑(ミね)。山/吹(ぶき)のせにかげみえてといふ 00025930L4ハ、此川なかのせの事でござるといへば、ゐ中者、さても 00025940L5+よいおぼえじや。まんざら謡を聞やうな。/其次(そのつぎ)にうた 00025950L6ふ山も川もハしれたが、おぼろ+ハどれでござるといふ。 00025960L7/彼親仁(かのおやじ)ひしとつまり、其おぼろ+ハ/爰(こゝ)もとにもおしがり 00025970L8まする。先年の大水にながれました(五オ)といへば、ゐ中 00025980¥G 00025990M1者、是ハさて、おしゐ事のといふた。 00026000¥N5¥J 00026010¥X五△/寒国(かんこく)の大咄の事 00026020M4/師走(しハす)に二三人よりてゐたりしが、当年ハいかふ/寒(かん)じまする 00026030M5といふ。一人、いや、是が寒ずるでハござらぬ。/加賀(かゞ)のあ 00026040M6たりハぎやうさんにかんじまする。酒なとハはかりて/売(うる)事 00026050M7ハならいで、あんでうるといふ。是ハつゐにきかぬ事でご 00026060M8ざる。いかやうにいたすといへば、/先(まづ)酒をつぎて/板(いた)の上を 00026070M9ながせば、それが氷まするを、かたはしからおこして、あ 00026080M10んだ物でござ(五ウ)(六オ挿絵)る。又/小便(せうべん)なども、たゞす 00026090M11る事ハならいで、すりぎほどな木をもちて打おりてせねば、 00026100M12小便がさほになるといふ。又一人、それハさほどな事でも 00026110M13ござらぬ。/越後(ゑちご)のかたハぎやうな事。あるとき/侍(さふらひ)が両方よ 00026120M14り馬に/乗(のり)て/行(ゆき)あひ、しばし咄をしてゐましたが、二/疋(ひき)の馬 00026130M15が一どに小便をしましたれば、其小便が氷て、馬がりんと 00026140M16いてつきたを、/手桙(てこ)でおこしましたといふた。 00026150¥N6¥J 00026160¥X六△天人をつかふ事(六ウ) 00026170M19又/或(ある)所によりあひてゐたりしが、何と、うつくしき物ハ天 00026180¥P94 00026190L1人のやうがうといふが、さぞうつくしからふといふ。一人 00026200L2それハかくべつな事。/上界(じやうかひ)の/者(もの)じやによつて、人の心をよ 00026210L3く/知(しり)てさいかくな物じやといへば、して其方ハ見やつたか 00026220L4といふ。みたかとハおろか、/半季(はんき)つかいましたといふ。そ 00026230L5れハたが/肝(きも)いりでおきやつたといへば、/或時(あるとき)/手水(てうづ)つかひに 00026240L6でたれば、井のもとのきハにすご+と立てゐたを、とや 00026250L7かくとしてつかふたが、/儀理(ぎり)のかたい物じや。(七オ)三月 00026260L8三日の/暮(くれ)方まではたらひて、今までハ/御念比(ごねんごろ)になされて忝 00026270L9うござりますると、しミ※と礼をいふて、かきけすやう 00026280L10にうせたといへば、/皆(ミな)/興(けう)をさまし、それハ/幽霊(ゆうれい)であらうぞ 00026290L11といへば、/彼(かの)男ぬからぬかほにて、さればさうもあらうか。 00026300L12/時(とき)※はまつかうくさかつたといふた。 00026310¥N7¥J 00026320¥X七△物いまひする/者(もの)の事 00026330L15ぎやうにごまのごうなる者有しが、/大晦日(おほつごもり)のよ、久八をよ 00026340L16びて、あすハ元日じやほどに、屋内の/諸(しよ)(七ウ)/道具(たうぐ)にも、 00026350L17だんなさまのといふ事を付ていへといへば、かしこまりま 00026360L18したとて、元日にとくおき、/茶(ちや)をたてゝ、だんな様の大ぶ 00026370L19くといへば、/旦那(だんな)よろこぶ事かぎりなし。又旦那様の/御(お)ざ 00026380M1うに、旦那様のおせちと、いち+にいひけり。其後/鰯(いハし)を 00026390M2やきけるが、やけいハしをはさみおとして、はあ、旦那様 00026400M3のくびがおちたといふた。 00026410¥N8¥J 00026420¥X八△やかましき/念仏(ねぶつ)申の事 00026430M6/或老女(あるらうによ)、男にをくれ、かなしミのあまり/昼夜(ちうや)念(八オ)仏を 00026440M7申、/鐘(かね)をたゝきけり。其/隣(となり)の者やかましく思へども、せん 00026450M8かたなくて有けり。其所へ或者来て、さても隣のばゞハぎ 00026460M9やうさん鐘をたゝく事かなといへば、やくハん屋もにげる 00026470M10ほどたゝきまする。何とぞやめさせたうござるといふ。彼 00026480M11者、よき/思案(しあん)があり。やめさせてやらうとて、それよりば 00026490M12ゞが所へ/行(ゆき)、/四方(よも)のはなしして、をれハ此中/白(しら)山/立(たて)山参り 00026500M13しまして、地ごく/極楽(ごくらく)をみてきました。/皆(ミな)/知(しる)人にあふたと 00026510M14いふ。こちの/親仁(おやじ)にもあハ(八ウ)(九オ挿絵)しやりたかと 00026520M15いふ。いかにもあふたが、みちがへるほどわかやいでいら 00026530M16るゝといへば、さて+ようあふてござつた。くハしう咄 00026540M17てきかさせられとて、/悦(よろこ)ぶ事かぎりなし。定てこちの事を 00026550M18とやりませうといへば、いや/問(とひ)もめされなんだといへば、 00026560M19是ハさてにくい事かな。どうぞ/様子(やうす)があらふといへば、其 00026570¥P95 00026580L1事でござる。三/途(づ)川のおばゞが/近(ちか)い/比(ころ)/後家(ごけ)になられたが、 00026590L2これの親仁と/夫婦(ふうふ)になられて、/死人(しにん)の/衣装(ゐしやう)ハとりやる。ぎ 00026600L3やうさん手まへがようて、すくやか(九ウ)な男に/乗(のり)物をか 00026610L4ゝせて、三づ川原の/小勝(こかつ)や千之/丞(ぜう)や/宮内(くない)喜大夫が/芝居(しばゐ)には 00026620L5いりこふでいらるゝゆへに、こちの事共ハけもない事。思 00026630L6ひだしやらぬといへば、ばゞ、身をもだへ、さて+にく 00026640L7や+。こちでハせいだいてお念仏を申て、今一どめぐり 00026650L8あハせて被下ませいと/如来(によらい)様をたのむに、もはやお念仏申 00026660¥G 00026670M1て何にせう。みるもはらたちやとて、親仁がいはゐをひき 00026680M2やぶりて、かみくずかごへいれた。(十オ) 00026690¥N9¥J 00026700¥X九△すりきりたる/者(もの)/振舞(ふるまひ)に/行(ゆく)事 00026710M5とつと/摺切(すりきり)たる者、/或(ある)方へ振舞のあいさつによばれ、ゆか 00026720M6ねばならす、/着物(きもの)ハなし。/羽織(はをり)壱つ/借(かり)出し、それ壱つをき 00026730M7て/袴(はかま)をきて/行(ゆき)たり。/亭主(ていしゆ)出て、/御客(おきやく)袴を御取候へといへば、 00026740M8/本客(ほんきやく)袴をぬぎたり。彼者にもぬがれよといへば、此まゝが 00026750M9ようござるといふ。いや、こなたハあいさつを/頼(たのめ)ば、猶心 00026760M10やすくぬいでくだされといへば、ぜひぬげと/覚(おぼ)しめさば、 00026770M11いんで参ませうとて、ついとゐんだが、何ほど(十ウ)よひ 00026780M12にやりてもこなんだ。 00026790¥N10¥J 00026800¥X十△/在郷(ざいごう)にて/吉利支丹(きりしたん)/改(あらため)の事 00026810M15/或(ある)在郷に、だいうす改ありて、/不思儀(ふしぎ)におもハるる物あら 00026820M16ばからめとれと、ふれ有しかば、/庄(しやう)屋せんぎしたりしが、 00026830M17ほどなく、からめとり参ましたと/注進(ちうしん)する。/代官殿(たいくハん)、さあ 00026840M18らば/白砂(しらす)へひき出せ。ごうもんせんと有しかば、かしこま 00026850M19りたりと、くつきやうの男二三人してになひこふだり。み 00026860¥P96 00026870¥G 00026880L12れば、大きなるつきうすをからめ(十一オ)て/白砂(しらす)にすへ、 00026890L13何とせんぎいたしましても、是より/大(だい)うすハござりませぬ 00026900L14といふた。 00026910¥N11¥J 00026920¥X十一△/弁慶(へんけい)が/沙汰(さた)する事 00026930L17/或(ある)所に/四方(よも)のはなししけるが、むかしより名をえし/侍(さふらひ)に神 00026940L18仏にならぬハなし。権五郎かげまさハ/御霊(ごれう)の/宮(ミや)といハゝれ、 00026950L19/政門(まさかど)ハかん/田(だ)の/明神(めうじん)とあがめらるゝといへば、一人すゝみ 00026960M1出、弁慶程な/兵(つハもの)が、めうな物になつたのといへば、何にな 00026970M2つたぞととふ。石になつたといふ。是ハしやうこが有かと 00026980M3(十一ウ)(十二終オ挿絵)いふ。はてさてしれた事。三条通に弁慶 00026990M4石の/町(てう)が有といふ。又かたハらより、/判官(はうぐハん)殿ハ仏になられ 00027000M5たが、くハんじんをして、人に物をださする事をしたがり 00027010M6やつて、ひよんな仏じやといふ。これもめづらしい事じや。 00027020M7いハれがあるかといへば、これもしれた事じや。寺+よ 00027030M8りすゝめやる/帳(ちやう)をば、はうぐハん帳とハいはぬかといふた。 00027040¥Y1軽口曲てまり三(十二終ウ) 00027050¥P97 00027060¥Y1かる口大笑第四目録 00027070L3一△うつけ/坊主(ばうず)の事 00027080L4二△/道温(だううん)/療治(りやうじ)の事 00027090L5三△/文盲者(もんもうもの)人まねの事 00027100L6四△/在郷(ざいごう)にて/平家(へいけ)/語(かたる)事 00027110L7五△しハき者に/上下(かミしも)かる事 00027120L8六△/忠度(たゞのり)の/旧跡(きうせき)見物の事 00027130L9七△文盲者/秀句(しうく)の事 00027140L10八△/祇園会(ぎおんゑ)見物の事(一オ) 00027150L11九△文盲なる女の事 00027160L12十△/奈良(なら)にて/狂哥(きやうか)の事 00027170L13十一△石山/参詣(さんけい)の事(一ウ) 00027180¥T1かる口大笑第四 00027190¥N1¥J 00027200¥X一△うつけ/坊主(ばうず)の事 00027210M5時と所をはかりて物をばいふべき事にこそ。/或者(あるもの)、屋敷を 00027220M6もとめ/新宅(しんたく)をたて、わたましをしける/祝(いハひ)の中へ、/旦那(だんな)坊主、 00027230M7ねよこ+ときたり、さても見事にたてさせられました。 00027240M8/施主(せしゆ)もなふてハきどくでござる。きれいな/荘厳(しやうごん)かなといふ。 00027250¥G 00027260¥P98 00027270L1/亭主(ていしゆ)、以の外きにかけ、/施主(せしゆ)の、やれしやうごんのなどい 00027280L2ふハ、/寺(てら)にこそ有事なれ。/御(ご)ばうハ人(二オ)をのろやるさ 00027290L3うな。じたい、此やうな/祝(いハひ)の所へハ、/出家(しゆつけ)ハこぬ物でおじ 00027300L4やるといへば、御尤でござる。けふはいよせに/参(まいり)、あぶら 00027310L5あげをたべて、くちがすべりました。なんでもこなたで/酒(さけ) 00027320L6をのまふと思ふてきたに。/先(まづ)ミな様、それでよふいハヽし 00027330L7やりませ。晩の/時合(じあひ)にきて、酒をのミませうとていんだ。 00027340¥N2¥J 00027350¥X二△/道温(だううん)りやうぢの事 00027360L10下京に、さうであらうの道うんといふゐしや有。(二ウ)(三 00027370L11オ挿絵)かく/異名(ゐめう)を付ける事ハ、/病人(びやうにん)にあひてハ、まづ/面想(めつさう) 00027380L12に此/脉(ミやく)でハ/頭痛(づつう)ハせぬかといふ。いかにもいたすといへば、 00027390L13さうであらうといひ、又いやといへば、さうであらうとい 00027400L14はれけり。/或(ある)うつけ、此道うんを、ぎばへんぢやくと/貴(たつとび)け 00027410L15り。或時いふやう、道うん様ハ/御(お)りやうぢがはやりませう 00027420L16といへば、うちうなづき、/世上(せじやう)のゐしやの手のつきたハ、 00027430L17ミなをれがなをしてやりまする。此中もめづらしいやまひ 00027440L18がござつた。さる/女房(にようばう)のあたまが、夜のうちに(三ウ)ひや 00027450L19うたんのやうにはげましたといふ。是ハ何といふわづらひ 00027460M1でござりまするといへば、はちたゝきといふ/病(やまひ)じや。きい 00027470M2ておきやれ。是にハ/茶筅(ちやせん)をせんじてのふだがよひ。さやう 00027480M3にをしへてきたれバ、/彼(かの)おかたがそさうもので、いりがう 00027490M4らをせんじてのまれたによつて、いとしや、かみのはへる 00027500M5けがないといはれた。 00027510¥N3¥J 00027520¥X三△/文盲者(もんもうもの)人まねの事 00027530M8ある所へ三人づれにて咄しに行けり。二月のす(四オ)ゑつ 00027540M9かたなりしに/雑贄(ざうに(ママ))をして出しければ、/亭主(ていしゆ)、/珍(めづら)しからねど 00027550M10正月の物でござるといふ。一人の/客(きやく)、をれが所のハミなにな 00027560M11りたに、こなたのハ/積善(しやくぜん)のよけいでござるといふ。今一人 00027570M12も、誠にさうじやとて、ひたものくひけり。残る一人の者 00027580M13おもふやう、さてハ/菜(な)をうハをきにしたる/餅(もち)ハ、積善のよ 00027590M14けいといふなりと心ゑたり。其者の所へ客有ければ、ひそ 00027600M15かに内の者にいひ付けるハ、しやくぜんのよけいをして/出(だ) 00027610M16せといはゞ、餅をにて、なを(四ウ)上にをき、かやう+ 00027620M17にして/出(だ)せよといひふくめ、ざしきへ出、/四方(よも)の咄して人 00027630M18をよびて、やい、めづらしからねど、しやくぜんのよけいを 00027640M19してだせといひ付たり。客聞て、さてもこびた/料理(りやうり)さうな 00027650¥P99 00027660L1と思ひをる処へ、ぜんをすへたのをみれば、ざうにをして 00027670L2出したり。亭主、ふたをとりてみわたせば、/皆(ミな)なを下にを 00027680L3きて餅が上にあり。あハたゝしく内の者をよび付、あなた 00027690L4方ハ心やすきお客じやが、しやくぜんのよけいをふるまハ 00027700L5んと申(五オ)たに、是をみをれ。もちが上になつて/菜(な)が下 00027710L6へなつたで、これハよけいのしやくぜんになつた。そさう 00027720L7なやつめかなと、ぎやうさんにしかつた。 00027730¥G 00027740¥N4¥J 00027750¥X四△/在郷(ざいごう)にて/平家(へいけ)/語(かたる)事 00027760M3とつと山/家(が)へ、いづくともなく/座頭(さとう)、びハをおひてきたり。 00027770M4/彼在所(かのさいしよ)にとうりういたされよとてとゞめをき、在所/中(ぢう)より 00027780M5あひて、なんぞうたふてきかしやれといふ。平家をかたり 00027790M6てきかせませうとて、/琵琶(びハ)をしらべ、よもすがら/語(かたり)しが、 00027800M7一人すゝ(五ウ)(六オ挿絵)ミ出、/座頭(さとう)が袖をひきて、とても 00027810M8の事に、そなたさまハうしろでうならずにゐて、まへの/木= 00027820M9平家(き=べいけ)ばかりならしてきかしやれといふた。 00027830¥N5¥J 00027840¥X五△しはき者に/上下(かミしも)かる事 00027850M12ある所に、ぎやうさんしハき者ありしが、其となりの者、 00027860M13/下(しも)の丁の/葬(さう)に行たく思へども、上下をもたねば/是非(ぜひ)なく、 00027870M14となりのしはき者が所へ/借(かり)てミふとて、かりにやりければ、 00027880M15かさいでハならず、いやにハあり。/返事(へんじ)にこまり、やすい 00027890M16事でござるが、こ(六ウ)ちのさうにまだきませぬほどに、 00027900M17来月ハかならずかしませうといふた。 00027910¥P100 00027920¥N6¥J 00027930¥X六△/忠度(たゞのり)の/旧跡(きうせき)見物の事 00027940L3さつまの/守(かミ)たゞのりのはかハ、あかしの人丸の宮のふもと、 00027950L4/人家(じんか)の中に有。/或(ある)人、見物しける折ふし、忠度ハ/文武(ぶんふ)にな 00027960L5をえし御人なり。あのすまの/内裏(だいり)よりおち給ふ折から、此 00027970L6辺にて、をかべの六弥太にあひ給ふらん。いたハしや、あ 00027980L7つはれ/諸(しよ)げいに達し、ことに/哥(うた)にほまれ有御かたなりとか 00027990L8(七オ)んじければ、/親仁(おやじ)打きゝて、さうじや+。/哥読(うたよミ)で 00028000L9あつた。/茶(ちや)のゆまでせられて、/利休(りきう)の/弟子(でし)であつたといは 00028010L10れければ、人&/興(けう)をさまし、それハ/時代(じだい)がちがひましたと 00028020L11いへば、をれがいふ事ハたゞかる※しう思ふが、物をひ 00028030L12かぬ事ハいはぬぞ。たゞのりのうたひに、せいなんのりき 00028040L13うにおもむきとハうたハぬか。しかも/俊成(としなり)の所へゆかぬさ 00028050L14きに、茶をのミにゆかれたそふなといハれた。 00028060¥N7¥J 00028070¥X七△/文盲(もんもう)者/秀句(しうく)の事(七ウ) 00028080L17江戸の/住人(じうにん)、しろ犬をかひけるが、/名(な)を二十四と付てよび 00028090L18けり。ある人来りて咄する折から、/彼(かの)犬みえければ、/亭主(ていしゆ)、 00028100L19二十四こひ+とよびければ、其まゝ来りけり。/客(きやく)いふや 00028110M1う、さてもよく/仕入(しいれ)させられた。何とて二十四とハ付給ふ 00028120M2といへば、/白(しろ)くござるゆへに二十四と付申たといへば、お 00028130M3もしろき/御作意(ごさくい)かなとほめけり。それをとつとぬけたる京 00028140M4の男聞て、をれも白犬をたんぞくして、二十四と付て人に 00028150M5ほめられん(八オ)と思ひ、京へ帰、あなたこなたとして白 00028160M6犬をもとめ、二十四+とよびけり。聞人ふしぎして、な 00028170M7ぜに二十四といやるといふ。彼男、をれがさくゐで付まし 00028180M8た。あの犬、しろうござるによつて二十四と付たといへど 00028190M9も、一えんほめなんだ。/道(だう)りこそ。江戸者ハしろくといへ 00028200M10ば二十四がきこえたが、京の/詞(ことば)で、しろうといふたので、 00028210M11らちかあかなんだ。 00028220¥N8¥J 00028230¥X八△/祇園会(ぎおんゑ)見物の事(八ウ)(九オ挿絵) 00028240M14ある/田舎者(ゐなかもの)、ぎをんゑ見物せんとて寺町通四条の/辻(つじ)え行た 00028250M15りしが、/群集(くんじゆ)の中をあなたこなたとすれども、/寸地(すんち)もあき 00028260M16/所(しよ)なければ、うろ+とたゞよひしが、にハかに/雪隠(せつちん)が恋 00028270M17しくなりたり。かたハらをみれば、色のあほき男が/門柱(もんばしら)に 00028280M18たちそひて、/平蜘(ひらぐも)のやうになりてゐたり。是に/近(ちか)づき、こ 00028290M19なた様ハこゝもとのあんなひ/知(しつ)てござらうが、こゝらに/雪= 00028300¥P101 00028310¥G 00028320L12隠(せつ=ちん)ハごさらぬかといふ。/彼(かの)者いきをつぎかねて、其事+。 00028330L13こな(九ウ)たハ其やうにありきてとひもなさるゝが、此て 00028340L14いをみてくだされ。/私(わたくし)ハもはやいごく事もならぬといふた。 00028350¥N9¥J 00028360¥X九△/文盲(もんもう)なる女の事 00028370L17ある所に/火事(くハじ)いできけるが、/方&(ほう※)よりみまひおゝかりけり。 00028380L18ある者いふやう、さて+/不慮(ふりよ)なる火事でござりました。 00028390L19おゝくの/道(だう)具共をやかせられうといへば、/女房(にようばう)、仰のごと 00028400M1く、だうぐおゝくやきましたが、中にもおしき物ハ、われ 00028410M2らが(十オ)持ました/古今(こきん)、/万葉(まんやう)、いせ物がたりがおしき物 00028420M3でござるといはれければ、/聞(きく)人、やさしき心かなとかんじ 00028430M4けり。それを/隣(となり)の男/聞(きゝ)ゐたりしが、かへりて/女房(にようばう)にいふや 00028440M5う、さて+となりのおかたハ心にくき人じや。おゝくの 00028450M6道具をやきしよりも、古今、万葉、いせ物語がおしきとい 00028460M7ハれて、みな人かんじられたとかたりければ、彼女房、つ 00028470M8く+と聞ゐたりしが、其所へもみまひ/人(ど)ありて、大事の 00028480M9道くにはなれさせられて、御ふじ(十ウ)ゆうにござらうと 00028490M10いへば、女房すゝミ出、外の物の事ハ露ほども思ひませぬ 00028500M11が、わらハがやきたる物に、みにかへてもと思ふ物がござ 00028510M12んすといふ。何でかござるととへば、/五間(ごけん)まなかのいせご 00028520M13よみでござんすといはれた。 00028530¥N10¥J 00028540¥X十△ならにて/狂哥(きやうか)の事 00028550M16名にしおふ/春日(かすが)の/山林(さんりん)ハ、きりとる事/停止(てうじ)の所なれば、/神= 00028560M17木(しん=ぼく)えだしげり、いふはかりなき/深山(しんざん)なり。もし/風(かぜ)をれなと 00028570M18あれば、/神(かミ)の御(十一オ)/る((ママ))しとて、禰/宜(ぎ)たちのきまゝにとら 00028580M19るゝ事なり。そのゆへに風はげしき夜ハ、われおとらじと 00028590¥P102 00028600¥G 00028610L12/木(こ)のもとへこぞりて、をれ/木(き)をとるとかや。ある夜、/戌(いぬ)の 00028620L13こくばかりに風ふきいだしけるに、われも+と人にかく 00028630L14れ、おれ木ありやとみに行をみて、狂哥、 00028640L15△△風ふけばおきつころびつねぎたちの 00028650L16△△△よはにや木見にひとりゆくらん(十一ウ)(十二オ挿絵) 00028660¥N11¥J 00028670¥X十一△石山/参詣(さんけい)の事 00028680L19ある/者(もの)石山参しけるが、もろこ/河(がハ)をうちわたり、/粟津(あハづ)の松 00028690M1/原(ばら)にさしかゝる。つれのいふやう、あのふけの中に/柿(かき)の木 00028700M2のうへたるが/木曽(きそ)殿のつか。是なる田の中/石(せき)たうハ/兼平(かねひら) 00028710M3かはかなりとをしへければ、一人、さても其むかし、木そ 00028720M4殿是へおち給ふ/比(ころ)ハ、む月のすゑにひえの山風の/寒(さむ)き折ふ 00028730M5し、手もこゞへ/手綱(たづな)もひかれなんだとみえて、あのふけの 00028740M6中へ馬をのりこ(十二ウ)まれたを、石田のはんぐハんがゐ 00028750M7ておとしたるとかや。平家に有といへば、一人すゝミ出、 00028760M8仰のごとくに、其比ハ木曽殿もかねひらもあハてゝやら、 00028770M9たびもはかひでさむかつたそふなといふ。/皆(ミな)おかしがりて、 00028780M10それハ何としてしりやつたといへば、はて兼平のうたひに、 00028790M11所ハこゝぞわれよりも、/主君(しゆくん)の御/跡(あと)を/先(まづ)とぶらひて、たび 00028800M12給へといへば、ぎやうにつめたかつたそうなといふた。 00028810¥Y1軽口大わらひ第四終(十三オ) 00028820¥P103 00028830¥Y1/遠慮(ゑんりよ) 00028840L3/這巻(このまき)を/遠慮(ゑんりよ)と申事ハ、さしあひの事を/集(あつめ)候へば、見給 00028850L4ふかたの御心得のため/名(な)付候なり。さす所にて御よみ 00028860L5候事ハならぬぞや。(一オ) 00028870¥Y1かる口大笑遠慮第/□((五脱カ))目録 00028880M3一△嶋原/薄雲(うすぐも)がりはつの事 00028890M4二△嶋原にて/酔狂(すいきやう)の事 00028900M5三△/同(おなじく)/傾城(けいせい)ちじよくの事 00028910M6四△同/雲(くも)井文の事 00028920M7五△/挙(あげ)屋にてはなしの事 00028930M8六△けいせいに/吹上(ふきあげ)/乞食(こじき)の事 00028940M9七△嶋原にて/道温(だううん)療治(りやうぢ)の事 00028950M10八△おしをつかふ事(一ウ) 00028960M11九△/初夢(はつゆめ)に/■(へのこ)をみて/判(はん)じさする事 00028970M12十△/薬(くすり)をつけて/一義(いちぎ)の事 00028980M13十一△すかさぬ/男女(おとこをんな)の事 00028990M14十二△よめいり/道(だう)具する事 00029000M15十三△上村吉弥に/恋暮(れんぼ(ママ))の事 00029010M16十四△中川/染(そめ)之助に恋暮の事 00029020M17十五△すりきりたる/僧(そう)/野臈(やらう)にふらるゝ事 00029030M18十六△/野(や)らうとてき/州(しう)と/口説(くぜつ)の事 00029040M19十七△/小僧(こぞう)/若衆(わかしゆ)に恋暮の事(二オ) 00029050¥P104 00029060L1十八△/御局(おつほね)/双紙(さうし)を/読(よミ)給ふ事 00029070L2十九△ひやうきんなる/針立(はりたて)の事 00029080L3廿△/麁相(そさう)なる久三郎が事 00029090L4廿一△/井守(ゐもり)の/黒焼(くろやき)/恋薬(こひぐすり)の事(二ウ) 00029100¥T1かる口大笑遠慮第五 00029110¥N1¥J 00029120¥X一△嶋原うすぐもがりはつの事 00029130M5嶋原に松山とて、何ともならぬ/我曼(がまん)なる上らうありて、わ 00029140M6るじやれにしやれこびて、世のにくまれ/者(もの)有けり。ある時、 00029150M7/揚(あげ)屋の二/階(かい)にて月見しけるに、松山と/中(なか)よからぬ薄雲とい 00029160M8ふ上らうも、わきの/座敷(ざしき)にいられしに、折ふし、月の雲ま 00029170¥G 00029180¥P105 00029190L1に入けるに、松山いふやう、薄雲ハよからぬやつじや。月 00029200L2の/前(まへ)をもはゞからぬといへば、薄雲こらへぬ上らうにて、 00029210L3/名(な)に(三オ)たてる薄雲ハしばしのさハりじやが、むかふの 00029220L4松山ハつれなひ物じや。あれさへなくハ、月の/行(ゆく)ゑハかく 00029230L5さじ物をといはれければ、松山、二の/句(く)がでなんだ。 00029240¥N2¥J 00029250¥X二△嶋原にてすいきやうの事 00029260L8嶋原にてとんてきのよりあひに、思ひさしの/乱酒(らんしゆ)になりし 00029270L9かば、色+の事をつくしたるあまりに、ならぬ事をたく 00029280L10みしが、/或者(あるもの)、からき物ハおゝくくハれぬ物じや。此/大= 00029290L11盃(おほ=さかづき)に一はい、/小桝(こせう)をくふ者が有かといへば、/血気(けつき)なる男、 00029300L12君のお盃でならば、どふも(三ウ)(四オ挿絵)いへまひ。く 00029310L13をふといふ。さあらばとて取よせければ、つけざしをおし 00029320L14いたゞき、ずつとやり、其後/小桝(こせう)を盃にはかりて、口一は 00029330L15いほうばりしが、とんとむせかへりて目をしろくろしたり。 00029340L16/座中(ざちう)、どうてんして、かほに水をかけ口をわり、何か薬と 00029350L17せんぎしけり。ゐしやはしり来り、小桝にむせたにハ、く 00029360L18そをくハねばなをらぬといへば、/是非(ぜひ)なひ事。くそなりと 00029370L19くハせうて、せんぎ/極(きハま)りければ、/彼者(かのもの)、しろくろすりかた 00029380M1てに、しかたをしけれ共、がてんゆかねば、/書(かい)て(四ウ)ミ 00029390M2せよとて/硯(すゞり)をやれば、何やらかいたり。みれば、どうでも 00029400M3くそをくハするならば、/薫(かほる)さまのくそがのぞみじやとかい 00029410M4た。 00029420¥N3¥J 00029430¥X三△嶋原にてけいせい/恥辱(ちじよく)の事 00029440M7うたひをすきて/立(たち)ゐにうたハるゝ/老人(らうじん)有しが、物やゆかし 00029450M8かりけん、くるわを一はいにして出入せられけるが、/或(ある)時、 00029460M9/揚(あげ)屋まちへはいらるゝに、大坂屋の/格子(かうし)の内より、たれと 00029470M10ハしらず、水に/近(ちか)きがとをるよといひければ、さすが彼人 00029480M11取あへず、まづ(五オ)つびをうるなりといはれたれば、ど 00029490M12うもへんじかなかつた。 00029500¥N4¥J 00029510¥X四△/雲(くも)井文の事 00029520M15今ハむかし、さき/小藤(こふぢ)、かほる/先生(せんせい)よりあひ給ふおりから、 00029530M16/雲(くも)井といふ/格子(かうし)の上らうをよびての給ふハ、のふ雲井。あ 00029540M17がミハもんもうな文の/書(かき)やうをしやる。ひとひ/挙(あげ)屋町に次 00029550M18郎さまと/一(ひと)所にいたとき、次郎さまへ文をおこしやつたを 00029560M19みれば、ひとひハ久かたにて御げんにいりと/書(かい)てあつた。 00029570¥P106 00029580L1久かたとハ(五ウ)久しく/堅(かた)きと/書(かき)て、天の事を哥にも/読(よミ)、 00029590L2/哥書(かしよ)などにかく時の/枕詞(まくらことば)でこそあれ。久かたのひかりのど 00029600L3けき共、又ハ久かたの/天(あま)つそらなどゝも/読(よん)だぞやいの。/但(たゞし)二 00029610L4郎さまと天へあがりやつたかとしかり給へば、/薫(かほる)/聞(きこ)しめし、 00029620L5さういハんすハ、/小藤(せうとう)さまのがとをりませぬ。あの人ハ/名(な) 00029630L6にしおふ雲井じやによつて、そらへもあがりやりませいで 00029640L7ハとの給へば、笑になりてはてけり。それをはしの/小夜(さよ)風 00029650L8といひて、/蓼(たで)ずでもいかぬわらうが聞はさまれ、さる方へ 00029660L9文をやら(六オ)るゝのをみれば、ひとひハ久あしでごげん 00029670L10にいりとかゝれたによりて、さても/珍(めづら)しきぶんしやうかな 00029680L11といへば、さよ風いはるゝハ、せけんの人の久かたとかゝ 00029690L12るるハあやまりでござんす。久かたとハそらの事でござん 00029700L13す。人のかたハそらに有物じや。かたにのつてあハれハす 00029710L14まひし、/下(した)であふ物じやによつて、久あしと/書(かく)物でござん 00029720L15す。/少(ちと)/哥学(かがく)をさしやんせといハれた。 00029730¥N5¥J 00029740¥X五△/挙(あげ)屋にてはなしの事 00029750L18或大/臣(じん)、/大皷(たいこ)あまた引つれて、嶋原にて/遊興(ゆうけう)のあ(六ウ)ま 00029760L19りに、/万(よろづ)のはなしがあつた。大臣のいハく、われ人、口で 00029770¥G 00029780M12ハいへども、大臣といふ事にしさいがあらうが、しらぬと 00029790M13いへば、大鞁共、是ハよい所におきがつきましたといふ。 00029800M14中にも/道哲(だうてつ)とてしさいらしき/末社(まつしや)すゝみ出、其/子細(しさい)我等で 00029810M15なくハらちかあくまひ。大臣とハ/能(のふ)からいひはじめた事じ 00029820M16や。大夫ハまへども大臣ハ/座(ざ)について、大夫をまハすると 00029830M17いふ心で、よきおてきを大臣と申也といへば、又其おてき 00029840M18といふ事が、らちかあかぬといへば、其時/初音(はつね)のたまハく、 00029850M19それを(七オ)まだしらんせぬか。上/臈(らう)とふたりの中をば、 00029860¥P107 00029870L1はじめハやりがあちこちとあしらいて、後にハ二人がくミ 00029880L2/合(あひ)てたゝかふによつて、どちからもてきじやといふ事也と 00029890L3の給へば、/貞安(ていあん)のお/談義(だんぎ)もはだしでござると、ミな+三 00029900L4尺ほどなよだれをたらしてかんじた。又壱人すゝみ出、つゐ 00029910L5でに大夫さまに尋ませう。/伏見(ふしミ)の上らう町を、しもく丁と 00029920L6いふ事ハいかにといへば、あれハミな人、かねをたゝきあ 00029930L7げるによつてしもく丁と申す。そんならどろ町ハといへば、 00029940L8くる人けん(七ウ)(八オ挿絵)ぼうぞめのやうにしミこむゆ 00029950L9へにとの給へば、又大つのしばや町ハ。あれハ人をようや 00029960L10く所じやとの給へば、あつとかんじて、二/階(かい)もおつるばか 00029970L11り也。それを或者聞て、是ハおもしろき事を聞たりと思ひ 00029980L12しが、其後ある方へ行て、さあくるわの事につゐて、ふし 00029990L13んな事あらば、ゐんえんをいふてきかせうといへば、是ハ 00030000L14めづらしいことをしりやつた。先さしあたりにとハふ。嶋 00030010L15原とハなぜに/付(つけ)たぞといへば、彼者ひしとつまりて、あれ 00030020L16ハじたい/女(によ)ごの嶋じや。嶋がばら+としてゐたに(八ウ) 00030030L17よりて、しまばらじやといふた。 00030040¥N6¥J 00030050¥X六△けいせいに/吹上(ふきあげ)/乞食(こじき)の事 00030060M1/或(ある)ぜんせいしけるかひて、二せとかねし事ハさてをき、い 00030070M2つのまにかほつきあげ、もとより/親類(しんるい)のかんだうをえて、 00030080M3川原おもてにさまよひしが、むかしめしつかひし/者(もの)に、は 00030090M4たと行あひたり。さすが/主従(しうじう)のちなミとて、じぎをしたれ 00030100M5ば、彼乞食さも/大(おほ)やうに、なんと/ゝ((と衍))といへば、さてもいと 00030110M6をしきおなりにならせられました。きのふけふまでハ、た 00030120M7まの/御(お)出にも(九オ)三まいがたにあたりをはらひ、大臣様 00030130M8よとはいかゞミましたに、今ハ大臣様のけもござりませぬ 00030140M9といへば、ぬからぬかほにて、さうもなひ。此なりになり 00030150M10たれども、ミな大臣といふ。今ハ川原にをるゆへに、川原 00030160M11の/左(さ)大臣とハわが事也。一もんくだされといふた。 00030170¥N7¥J 00030180¥X七△嶋原にて/道温(だううん)/療治(りやうぢ)の事 00030190M14/挙(あげ)屋のたれやらがむすめ、/難産(なんざん)をしけり。赤子、手ばかり 00030200M15だして/更(さら)に/生(うま)れず。いかゞハせんともだへ、方&よりゐし 00030210M16やをよびあつめたれ共、何ともて(九ウ)だてなしといふ。 00030220M17其時、道うんもいられしが、すゝみ出、おの+/御評義(ごへうぎ)の 00030230M18うへなれは、私が/作(さく)意のりやうぢをいたしてみませうかと 00030240M19いふ。何なりとも思ひよりを仰られよといへば、/別(べち)の事で 00030250¥P108 00030260L1もござらぬ。/赤子(あかこ)がてを/出(だ)したに/付(つい)て、思ひよりました。 00030270L2あの手のうちへ壱/歩(ぶ)をひとつ/入(いれ)たらば、うまるゝはづじや 00030280L3といふ。/皆(ミな)けうをさまして、是ハ/珍(めづら)しや。何とてさやうに 00030290L4仰らるゝといへは、いや、/挙(あげ)屋のうちにうまるゝ程な子な 00030300L5れば、/腹(はら)のうちから/気(き)がとをりていまするによつ(十オ)て、 00030310L6手のうちへ露をうちたらば、/礼(れい)をしに、でいでハかなハぬ 00030320L7といはれた。 00030330¥N8¥J 00030340¥X八△おしをつかう事 00030350L10/或(ある)りかんなる/親仁(おやじ)、年の比十はかりなるおしを/仕(つかひ)けるが、 00030360L11おしのくせとしてみゝも聞えねば、しかたをして/仕(つかひ)けり。親 00030370L12仁、つねにあかがひをすかれけるを、/娘(むすめ)さいかくにて、/彼(かの) 00030380L13をしを/納戸(なんど)へつれ行て、をしへてかひにやりけり。母思ふ 00030390L14やう、さても娘が/赤(あか)がひをバ、何として/合点(がてん)さするぞとふ 00030400L15しぎして、そとか(十ウ)(十一オ挿絵)たかげよりみれば、/娘(むすめ)、 00030410L16まへをひきあけて、あかゞひをおしへけり。/母(はゝ)みて、是ハ 00030420L17りはつなをしへやうかなと思ひけり。/或時(あるとき)親仁、/赤(あか)がひく 00030430L18ハんといはれければ、おかた、/彼(かの)をしを/納戸(なんど)へつれ行て、 00030440L19まへをひきひろげてミせ、さかな/篭(かこ)と/銭(ぜに)とをわたしければ、 00030450¥G 00030460M14打うなづきて出たりしが、日の/暮(くれ)までかへらねば、いかゞ 00030470M13したりけんとあんじゐたるに、やう+/初夜(しよや)/時分(じぶん)に帰、か 00030480M14の/篭(かご)をさし出す。おかた、ふたをあけてみられたれば、/紫(むらさき) 00030490M15うらのついた毛/巾着(きんちやく)をかふてきた。(十一ウ) 00030500¥N9¥J 00030510¥X九△/初夢(はつゆめ)に/■(へのこ)をみてはんじさする事 00030520M18/或者(あるもの)、/年始(ねんし)の夢に、したゝかなる/■(へのこ)を見たりしが、さめて 00030530M19のち/女房(にようばう)に、めいよな夢でハなひかと/語(かたり)ければ、さて+ 00030540¥P109 00030550L1/珍(めづら)しい夢かな。/聞(きく)もこゝちようござる。/上(かミ)の/丁(てう)のうらなひ 00030560L2しに、はんじてもらハしやれといへば、さらば/判(はん)じてみう 00030570L3とて/彼(かの)所へ行て、かやう+とかたれば、さて+よき御 00030580L4夢かな。/当年(たうねん)より/仕合(しあハせ)なをるべし。是よりひた物おくへあ 00030590L5きなひに行給ハヾ、かねをもうけ給ふべしといへば、彼者 00030600L6/悦喜(ゑつき)して(十二オ)/帰(かへり)、有し/次第(しだい)をかたれば、/女房(にようばう)/諸(もろ)ともに 00030610L7/悦(よろこ)ぶ事かぎりなく、それよりさしづにまかせて、おく/丹波(たんば) 00030620L8へあきなひに行ければ、/思(おも)ハぬ仕合して程なく/分限(ぶげん)成けり。 00030630L9其/隣(となり)に、思ふ事はかどらぬ/者(もの)有しが、女房いふやう、隣に 00030640L10ハよい物を夢にみて分限になられた。そなたも/■(へのこ)の事をお 00030650L11もやらば、どこぞでハ夢にミやらうといふ。彼男、是ハよ 00030660L12うきがつゐたとて、■の事を思ひゐたりしが、思ふ事ハね 00030670L13ごとにもいふとかや。ほどなくきんを夢にミたり。其まゝ 00030680L14女房をおこし、よき(十二ウ)夢を見たりと語ければ、女房、 00030690L15扨&うれしい事や。きんハ/金(こがね)の事じやによりて、隣の夢に 00030700L16ひとくらゐましじや。いそぎはんじてもらやれといへば、 00030710L17/早天(さうてん)に/占(うらなひ)しのもとへ行て、/初(はじめ)をハりを/語(かたり)、/判(はん)じて被下とい 00030720L18へハ、/笑止(せうし)な事。さん+の夢じや。夢ちがへの/祈祷(きたう)をめ 00030730L19されといふ。彼者あきれて、隣のハ■をみて/分限(ぶげん)にならる 00030740M1ゝに、我等ハきんをみたれば猶よからうと思ふに、あしか 00030750M2らうとハ/合点(かてん)参らぬ。/子細(しさい)をきかんといふ。子細をきかん 00030760M3より祈祷をめされといへば、と(十三オ)かくきかでハならぬ 00030770M4と/赤面(せきめん)しければ、それほどきゝたくハ申べし。/先(まづ)隣殿の夢 00030780M5ハ■じやによつて、おくへゆかれたがよからうといひたれ 00030790M6ば、おく丹波へ行てようなられた。■といふ物ハ、ひた物 00030800M7おくへ行ほどよい物じや。又こなたの夢のきんといふ物ハ、 00030810M8おくによき事が有てひちめけ共、口にぶら+としてゐる 00030820¥G 00030830¥P110 00030840L1ものじや。おくにハよき事が有に、とぐちにぶら+とし 00030850L2ておる物ハ、/乞食(こじき)より外になければ、たぶん乞食をしやら 00030860L3ふといふた。(十三ウ)(十四オ挿絵) 00030870¥N10¥J 00030880¥X十△/薬(くすり)をつけて/一義(いちぎ)の事 00030890L6/或者(あるもの)、女のうれしがる薬をもらひ、なんでもひとなぐさミ 00030900L7せんとて嶋原に行、日/比(ごろ)はなす何やらといふ女をよびてあ 00030910L8ひけり。彼薬をそと入てしたりければ、女、おとこをはね 00030920L9のけ、是ハまへがうづくハのふ+と、かゝへてもだへけ 00030930L10れば、男あきれて、とやせんかくやといふをとに、/揚(あげ)やの 00030940L11かゝ、やりてさハぎて、是ハなに事をさんした。こなさま 00030950L12のなんぞつけさんしよといへば、何をかくさふぞ。よき薬 00030960L13じやとて人にもらひ、(十四ウ)是を付たと、ゐんろうを出し 00030970L14みれば、どうりこそ、たき物と取ちがへたり。是ハ+と 00030980L15さハぎ、とかくいたミやまねば、ゐしや殿にミせんとて人 00030990L16をはしらせけれバ、ゐしやきたり、やうすを聞て、たき物 00031000L17にハしほがいるによつて、しむはづじや。何とりやうぢを 00031010L18せんとあんじたりしが、大きなる/鉢(はち)に、すと酒とをよきあ 00031020L19んばいにしてもてこひといふ。心えたりと/亭主(ていしゆ)/持(もち)て出たり。 00031030M1さあ、此はちの上へまたがり、前へくミかけてあらハねば 00031040M2なをらぬといふ。亭主、さてもこびたるお(十五オ)りやう 00031050M3ぢかな。ゐ/書(しよ)に有事かといふ。彼ゐしや、是が/作意(さくい)のりや 00031060M4うぢである。女のまへをば/上(じやう)かひ/下(げ)かひとて、かひにたと 00031070M5へた物じや。さるによつて、かひに/塩(しほ)がすぎたによつて、 00031080M6すと酒とでおびしほの/料理(りやうり)にせねば、あぢがなをらぬとい 00031090M7はれた。 00031100¥N11¥J 00031110¥X十一△すかさぬおとこ女の事 00031120M10或者の/友(とも)に七右衛門といふ者、今しにたるといふ所へはし 00031130M11り/行(ゆき)、扨&おどろき入たる事かなといへば、/女房(にようばう)なく+ 00031140M12いふやう、/御(ご)ぞんじのごとく、ふたりの/中(なか)(十五ウ)もよくく 00031150M13らしましたれば、わらハが今の心のうちをバすいりやうし 00031160M14てくだされませい。あすよりハたれをたよりにしませうと 00031170M15/泣涕(りうてい)こがれければ、彼男そばにより、七とハわけて/語(かたり)まし 00031180M16たに、我等もちからおとしました。こなたにハ/日比(ひごろ)おもハ 00031190M17くであつたれども、さすが色にもだしませなんだ。けふよ 00031200M18りをれを七じやとおもハしやれ。ふうふになりませうと、 00031210M19じつとしめければ、/女房(にようばう)、なミだかたてに、につとわらひ、 00031220¥P111 00031230L1あゝゑずや。お心いれハうれしうござんすが、わづ(十六オ) 00031240L2らひのうちから/先約(せんやく)がござんすといふた。ゆだんかならぬ 00031250L3の。 00031260¥N12¥J 00031270¥X十二△よめいり/道具(だうぐ)する事 00031280L6/或(ある)まきゑや、よめいり道具を請取/出来(しゆつらい)しけれバ、むすこに、 00031290L7状をそへてやれといふ。むすこ状をかきて、/親仁(おやじ)に/読(よん)できか 00031300L8せければ、此状ハさん※わるい/書(かき)やうじや。御道具の/模= 00031310L9様(も=やう)まくらをわり、しあん仕とハなぜかいたといふ。むすこ 00031320L10いふやう、手をつくいて/念(ねん)を入たといふ事でござるといふ。 00031330L11親仁、/枕(まくら)をわりとかゝ(十六ウ)(十七オ挿絵)いでかなハずハ、 00031340L12枕をひしやぎとかきをれ。いかいうつけじやとしかりけれ 00031350L13ば、むすこ/腹(はら)をたてゝ、どちやら/行(ゆき)たり。女房いふやう、 00031360L14さて+わけもない事をいふてしからしやる。あれが/書(かい)た 00031370L15/文章(ぶんしやう)がようござるにといへば、なをはらたて、おぬしもお 00031380L16なじ物しらずじや。よめいりに、わるといふ事ハさしあひ 00031390L17でハないかといふた。 00031400¥N13¥J 00031410¥X十三△上村吉弥に/恋暮(れんぼ(ママ))の事 00031420M1都に其名かくれなく、人の心に/恋草(こひぐさ)を上村吉弥といふハ、 00031430M2男かと思へば女なりけり。なりふりハ、/五月雨(さミだれ)(十七ウ)のそ 00031440M3ら井のもとほり、井/出(で)のかハずもはだしでにげるほどなる 00031450M4ぬれ者なれば、いまだ/嫁(か)せざる/娘(むすめ)、ミやづかへの女ハいふ 00031460M5におよばず、長松やかめがかゝまで心をそらになし、彼/芝(しば) 00031470M6ゐにハ、男よりハ女の/見物(けんぶつ)なんおほかりけり。或/若(わか)男、彼 00031480M7芝居に/行(ゆき)けるに、其まへに年の/比(ころ)/二十(はたち)ばかりの/品者(しなもの)、いふ 00031490M8はかりなくらうたげなるがゐられけり。吉弥が/狂言(きやうげん)に、あ 00031500¥G 00031510¥P112 00031520L1まの/焼(たき)さしといふて/若衆(わかしゆ)と娘と/忍(しの)びあひ、ぎやうさんうま 00031530L2き所をしたり。彼/品者(しなもの)、かづきはれやかに(十八オ)かきあげ、 00031540L3めかれせず、よねんなきありさまなれば、男、かづきの/下(した) 00031550L4より、そと手をいれたれども、うつゝ心なければ、さらに 00031560L5しられず。男ハ心そらになりて、まんぢうのごとくなる所、 00031570L6/猟虎(らつこ)のかはにさハるかとおぼえしが、何とハしらず、手の 00031580L7うちへぬら+としめりたり。そとひきてみれば、えもい 00031590L8はれぬ物が手のうちにあり。おぼえずしらず、うしろのか 00031600L9たへほうどなげたれば、七十ばかりの/禅門(ぜんもん)の目はなの間に、 00031610L10ひつちやりとかゝりけれバ、禅門、しづ+とをし(十八ウ) 00031620L11/拭(のご)ひ、彼男の/袖(そで)をひき、こごゑになりて、をれにかゝつた 00031630L12ハ大事ござらぬが、わかひ人の手ばなハ、ひきやうでござ 00031640L13るといはれた。 00031650¥N14¥J 00031660¥X十四△中川/染(そめ)之助に/恋暮(れんぼ)の事 00031670L16染之助ハ/双(さう)なき/若衆(わかしゆ)がたなりと世の取さた也。いづくのか 00031680L17たすみまでも/恋(こひ)ハ有物なり。たゞ/夫婦(ふうふ)/渡世(とせい)する/者(もの)有しが、 00031690L18彼/女房(にようばう)、いつしか此若衆におもひ染之介、/世帯(せたい)ハ何に四 00031700L19条/河(がハ)、そこのミくずともならばなれと、彼/芝(しば)ゐにのミ行け 00031710M1れば、男もうき事に(十九オ)思ひけり。ある時、めしをたき 00031720M2+、となりのおかたと彼若衆の事をはなしけり。男はら 00031730M3を立て、ひきかつぎてねたり。やゝありて、のふ/食(めし)をくや 00031740M4れとおこしければ、ほしもない。われが男の染之介めにく 00031750M5らハせいといふ。そんなら染さまにたむけうとて/棚(たな)へあげ 00031760M6た。おとこ、/昼(ひる)過までねてをれ共、食をくへともいはず。 00031770M7しだいにすいてきたれば、むく+とおきて、やいそこな 00031780M8やつ。ひだるうてめがまふハ。染之助めがわけなりとくふ 00031790M9てやらうといふた。(十九ウ) 00031800¥N15¥J 00031810¥X十五△すりきりたる/僧(そう)/野(や)らうにふらるゝ事 00031820M12或/禅僧(ぜんそう)、心ハたけく思へども、すりきりたるがありけり。 00031830M13何の/一角(いつかく)とかいふ/野臈(やらう)をかハれけるに、ひいき/僧(そう)の事なれ 00031840M14ば、/金剛(こんがう)も/野(や)らうも更にまハらず。ある/時(とき)/床(とこ)入の折から、 00031850M15/少(すこし)の事に一角、彼/御坊(ごバう)を/振(ふつ)てふりつけゝり。以の外に/腹立(ふくりう) 00031860M16し、其方ハ/大俗(だいぞく)のみとして、わけもたてずに/僧(そう)をまく事ハ、 00031870M17/非修(ひしゆ)ひ/学(がく)のいたり也。是といふも、われすりきりたるゆへ 00031880M18なり。さらば/一句(いつく)もつてまいらうとて、/如何(いかなるか)/是(これ)/一角(いつかく)ハ/将(しやう) 00031890M19(二十オ)/棊(ぎ)の馬、/金銀(きんぎん)なくとも又させよ。一ばんいかに+ 00031900¥P113 00031910L1といハれければ、何をいはんすといへば、ミたかさあ、/法= 00031920L2問(ほう=もん)にハかつたぞとて、/肴(さかな)にあつた/蛸(たこ)をくハれた。 00031930¥N16¥J 00031940¥X十六△やらうとてきしうと/口説(くぜつ)の事 00031950L5/或(ある)やらう、/敵州(てきしう)と/口説(くせつ)をして、又もとのごとく中をなをり 00031960L6けるが、/野州(やしう)、おてきの/友達(ともだち)に/近付(ちかづき)、なかなをりのしるし 00031970L7に何ぞやらうと思ひまする。此/香炉(かうろ)ハひさうなれ共、あの 00031980L8人様の/日比(ひごろ)/望(のぞミ)そうなほどに是をしんぜうといへば、彼男、 00031990L9是をやりやるハ/義縁(ぎゑん)か(二十ウ)わるい。/無用(むやう)じやといふ。な 00032000L10ぜに/左様(さやう)にいはんすといへば、/昨日(きのふ)のほど、けんくハこう 00032010L11ろをして、こうろハでけぬやり物じやといふた。 00032020¥N17¥J 00032030¥X十七△/小僧(こぞう)若衆に/恋暮(れんぼ)の事 00032040L14ある寺の/住持(じうぢ)、ひそうせらるゝ/少年(せうねん)有しが、小僧くびだけ 00032050L15思へ共、長/老(らう)のそばをはなれねば、思ひにふししづむ折か 00032060L16ら、長老よそへゆかるゝをよろこび、彼若衆のへやに/行(ゆき)、 00032070L17ひごろのおもハくをあとやさきといひければ、わたくしき 00032080L18を、さやうに思ふて被下るハかた(二十一オ)じけなふござる。 00032090L19何にても仰にハそむかじといへば、あまりのうれしさにむ 00032100M1ねせき上てゐたりしが、ふるい+、此/帯(おび)ハ何でござると 00032110M2いふ。/繻子(しゆす)でござるといへば、繻子とハきよくもないとい 00032120M3ひさま、くちをすふた。 00032130¥N18¥J 00032140¥X十八△/御局(おつぼね)さうしを読給ふ事 00032150M6やんごとなき/方(かた)を出入する/侍従(じじう)といふ/女房(にようはう)ありけり。或御 00032160M7局へ参ていふやう、きのふひがしの/御殿(ごてん)へ参ましたれば、 00032170M8御局さま、さうしを御らん被成るかたてに、/麦(むぎ)のこをあが 00032180M9りましたが、さうしをくりかへし(二十一ウ)なさるゝとて、 00032190M10おくちに物がござりましたにより、おゆびのさきをぬらさ 00032200M11しやりまするとて、おぬしの/前(まへ)へゆびを入て、其しめりで 00032210M12くりかへして/御読(およミ)被成ました。りはつな事でハござりませ 00032220M13ぬかといへば、さきの/上臈(じやうらう)/聞召(きこしめし)、わがみハまだそれをし 00032230M14りやらぬか。こちの/御殿(ごてん)でもミなそのやうになさるゝ。そ 00032240M15れでさうしを、くさざうしといふぞやいのと仰られた。 00032250¥N19¥J 00032260¥X十九△ひやうきん成/針立(はりたて)の事(二十二オ) 00032270M18ひやうきんなる/針立(はりたて)有けるが、さる方へ/行(ゆか)れければ、十七 00032280M19八なるぼつとり/者(もの)、針をとたのミければ、/彼御坊(かのごばう)なにが 00032290¥P114 00032300¥G 00032310L12雪をあざむくはだへをみて、心そらになり、何とぞして/恋(こひ) 00032320L13の/会(かい)所をさぐりたく思へども、/親兄弟(おやきやうだい)そばにあれば、何の 00032330L14手くだもなりがたく、いかゞせんと/案(あん)じ出し、/持(もち)たる針を 00032340L15はらのうへえ、ころりととりおとし、かなたこなたを尋るふ 00032350L16りしてさぐられけれども、/彼(かの)ぼつとりハ(二十二ウ)(二十三オ 00032360L17挿絵)さすがとをりものなれば、しらぬふりしていられた。 00032370L18そばより是を見て、それハなにをなさるゝといへば、はつ 00032380L19とおどろき、針の事をうち/忘(わす)れて、今まで/持(もち)てゐました/開(ぼゝ) 00032390M1がみえませぬといはれた。 00032400¥N20¥J 00032410¥X二十△/麁相(そさう)なる久三郎が事 00032420M4/或(ある)人久三郎をよびて、山の/芋(いも)をかふてこいといへば、かし 00032430M5こまりましたとて/八百(やほ)屋へゆきしが、折ふし山のいもハき 00032440M6れたといへば、むなしく/帰(かへり)(二十三ウ)しが、/中(ちう)にて/思案(しあん)して 00032450M7/牛房(ごぼう)をかふてきた。それは牛房でハないか。それをかふて 00032460M8こひとハ、/誰(た)がいふたぞとしかられければ、山のいもハご 00032470M9ざりませぬゆへに、これをかふて参ました。牛房も山の芋 00032480M10も、おなじつよさでござりますといふた。 00032490¥N21¥J 00032500¥X二十一△/井守(ゐもり)の/黒焼(くろやき)/恋薬(こひぐすり)の事 00032510M13/守宮(ゐもり)のつるみたるを/黒焼(くろやき)にして、思ふかたにふりかければ、 00032520M14さつそく/恋路(こひぢ)の/使(つかい)をいたして、あ(二十四オ)なたからほれて 00032530M15かゝりまする。かるがゆへに、/業平(なりひら)/袖(そで)の/下(した)/恋使散(れんしさん)とハ/是(これ)で 00032540M16ござりまする。めしてござれとうりければ、/或若男(あるわかおとこ)是をか 00032550M17ひけり。あくれば/友(とも)と打つれ、四条川原へ/行(ゆき)た。むかふよ 00032560M18り/来(きた)るをミれば、どうもいへぬぬけしう、つゞら/笠(がさ)にかゝ 00032570M19え/帯(おび)、/供人(ともびと)までもよしなが/染(そめ)、しばしとゞまり/詠(ながめ)ゐたりし 00032580¥P115 00032590L1が、/彼(かの)男、/夕部(ゆふべ)の/薬(くすり)を思ひ出し、つれをしばしと/引(ひき)とゞめ、 00032600L2/懐(ふところ)より取出し、そとかたかげより/彼(かの)つゞら/笠(がさ)(二十四ウ)にふ 00032610L3りかけたれば、折ふし/河風(かハかぜ)/吹来(ふききた)り、川原にねてゐたる/乞食(こじき) 00032620L4ばゞにかゝりた。なにが/名誉(めいよ)の/薬(くすり)なれば、そのまゝ/験(げん)がみ 00032630L5えて、ばゞが心、うちやうてんになり、彼男の袖にすがり、 00032640L6のふ/殿(との)。/恋路(こひぢ)にへだてハなき物を、これハどふでござんす 00032650L7とぬれかけたれば、彼男あきれはて、/跡(あと)をも見ずしてにげ 00032660L8ていんだ。 00032670¥Y1軽口大笑第/□((五脱カ))終(二十五終オ) 00032680¥Q 00032690L14延宝八@庚△|△申@年青陽吉日開板 00032700L15△△△△△書林△△小林久左衛門 00032710L16△△△△△△△△△△大角八郎兵衛 00032720L17△△△△△△△△△△△△△△(二十五終ウ) 00032730¥P116 00032740¥U噺本大系△第五巻 00032750¥T当世手打笑 00032760¥G 00032770¥Y 00032780L16延宝九年刊 00032790L17作者不詳 00032800L18半紙本五巻 00032810L19都立中央図書館加賀文庫蔵 00032820¥Y序 00032830M3なげぶしの/唱哥(しやうが)つけるすべしらず、/諸(しよ)わけのざしきにのぞ 00032840M4く事もなくて、/竈土(かまど)/関白(くハんぱく)にてうちくらすならひならば、い 00032850M5つの世にかは大臣とは/仰(あふ)がれん。いでや、おのことうまれ 00032860M6ては/騒(ぞめく)こそ/為以(おもハく)なれと、/土(つち)の/車(くるま)の我等しき(一ウ)迄、ゆる 00032870M7くハんとしてくらす。忝さを/観(くハん)じゐたる/折(をり)から、はしたな 00032880M8き/槙(まき)の板どを/音(をと)づれて来る。みればあたりのとをり/者等(ものら)が 00032890M9いざのめよと/夕部(ゆふべ)の月、花にむかひてうち/寄(より)、かたり/遊(あそ)び 00032900M10し/軽口(かるくち)を/書集(かきあつめ)て、五巻となしてミする。もとより/僕(やつがれ)も/好士(すきもの) 00032910M11にて、さらばとてこれをひらけば、(二オ)どうもいへぬお 00032920M12かしさにて、こらへ/袋(ぶくろ)のをのづから、座敷もどよみて大わ 00032930M13らひになりぬ。さて此書に/初冠(うゐかふり)させて、当世手/打笑(うちわらひ)といふ 00032940M14事しかなり。(二ウ) 00032950¥P117 00032960¥Y1当世手打笑第一 00032970L3△△△△目△△録 00032980L4一△/祇園町(ぎをんまち)にて/羽織(はをり)をひろふ事 00032990L5二△/与作(よさく)といふ/者(もの)を/使(つかひ)にやる事 00033000L6三△/田舎者(ゐなかもの)/巾着(きんちやく)きらるゝ事 00033010L7四△/在郷(ざいごう)に/入聟(いりむこ)を取たる事 00033020L8五△/無筆(むひつ)成/者(もの)/銀(かね)請取に/行(ゆく)事 00033030L9六△うつけ/者(もの)/賀茂(かも)の/競馬(けいば)に/餅(もち)をうる事(三オ) 00033040L10七△/紺(こう)屋え/使(つかひ)に/行(ゆく)事 00033050L11八△/秀句(しうく)のまねをする事 00033060L12九△/誓願寺(せひぐハんじ)の/図子(づし)にて/手(て)の/筋(すぢ)見る事 00033070L13十△べらばうをしらぬ事 00033080L14十一△めつたとこばす/者(もの)の事 00033090L15十二△/脚半(きやはん)をかたしはく事 00033100L16十三△人の/男(むすこ)を/女(おなご)じやとあらそふ事(三ウ) 00033110¥T1当世手打笑第一 00033120¥N1¥J 00033130¥X一△/祇園町(ぎをんまち)にてはをりをひろふ事 00033140M5/或者(あるもの)、/夕(ゆふ)べ花見のかへりがおとしたるちりめんの/黒羽織(くろばをり)を、 00033150M6/祇園(ぎをん)町にてひろいたるとて/悦(よろこび)けり。とつとぬけ男/二人(ふたり)、/是(これ) 00033160M7を/聞(きゝ)て、いざ、おれらもひろいにゆかふとて/行(ゆき)けり。あな 00033170M8たこなたみまハしけるが、/独(ひとり)の/者(もの)、/落(おち)て有ぞとて、づか 00033180¥G 00033190¥P118 00033200L1+と立より、とらんとしたれば、/真黒(まつくろ)なる(四オ)/犬(いぬ)が、 00033210L2わんといふてとびかゝりければ、にげてかへりた。つれの 00033220L3男、ひろやつたかといへば、ぬからぬかほにて、/羽織(はをり)ハお 00033230L4ちてあれど、/犬(いぬ)めがせんをこしたといへば、さてハあひつ 00033240L5もひろいにでたよの。 00033250¥N2¥J 00033260¥X二△/与作(よさく)といふ/者(もの)を/使(つかひ)にやる事 00033270L8/或侍(あるさふらひ)、/与作(よさく)とてたゞ/一人(ひとり)の/若党(わかたう)を/使(つかひ)けり。けふハはれの 00033280L9所へ/使(つかひ)にやる程に、/口上(こうじやう)つめ(四ウ)(五オ挿絵)ひらき、よ 00033290L10くたしなミて、をれが/外分(ぐハいぶん)をつくろへよ。/御使(おつかひ)の/御名(おな)ハと 00033300L11とハヾ、/与作(よさく)/丹波(たんば)のといふ/小哥(こうた)を思ひだして、たんば/与作(よさく) 00033310L12とこたへよといへば、かしこまりましたとて/使者(ししや)に/行(ゆき)けり。 00033320L13あんのごとく、/御使者(おししや)の/御名(おな)ハと/尋(たづね)ければ、丹波をば取ち 00033330L14がへて、しやんとさせ与作といふた。 00033340¥N3¥J 00033350¥X三△/田舎者(いなかもの)/巾着(きんちやく)きらるゝ事(五ウ) 00033360L17/田舎者(いなかもの)、三条の辻にてきんちやくをきられ、/大(おほ)きにおどろ 00033370L18き、めつたとおつかけて/行(ゆき)たり。/或摺箔(あるすりはく)屋へかけこみ、な 00033380L19んでもきんちやくきりハ、こゝへにげたであらうと、わめ 00033390M1きければ、町中も出あひたり。これの/亭主(ていしゆ)ハすりの/大将(たいしやう)さ 00033400M2うなといふ。これハさて/勿躰(もつたい)なや。/何(なに)のしやうこが有ぞと 00033410M3いへば、あれほどのうれんに、すりはぐ屋と/書(かい)て(六オ)ハ 00033420M4ないかといふた。 00033430¥N4¥J 00033440¥X四△/在郷(ざいごう)に/入聟(いりむこ)を取たる事 00033450M7/或在郷(あるざいごう)に入むこを取けるが、ぎやうにぬけたる男なり。し 00033460M8うといふやう、/地下(ぢげ)をありくとも、人にじぎをせよ。/仕事(しごと) 00033470¥G 00033480¥P119 00033490L1などしてをる人にハあいさつをいへといひければ、心ゑま 00033500L2したといふ。/彼聟(かのむこ)、/野(の)へ出しが、むかふの/岸(きし)に/大木(たいぼく)に/上(のぼ)り 00033510L3て/枝(えだ)をきる/者(もの)あり。(六ウ)(七オ挿絵)是を見/付(つけ)て、これ+ 00033520L4と/手(て)まねきしければ、いそぎふためきておりて/来(きた)り、何事 00033530L5ぞ。心もとなしといへば、/別(べち)の事でもござらぬ。/御太儀(ごたいぎ)で 00033540L6ござるといふた。 00033550¥N5¥J 00033560¥X五△/無筆成者(むひつなるもの)/銀(かね)/請取(うけとり)に/行(ゆく)事 00033570L9/無筆(むひつ)なる男、銀子を請取に行たり。/先(さき)より、請取をなされ 00033580L10よと/硯(すゞり)/紙(かミ)を出しければ、はゞかりながら、こなた被成てく 00033590L11だ(七ウ)されよといふ。/先(さき)の人もきやうをさまし、/手形(てがた)の 00033600L12事なれば、そちの/手(て)でかゝねば/埓(らち)があかぬといへば、/悪筆(あくひつ) 00033610L13でござるといふ。あしきハくるしからぬといへば、ひしと 00033620L14つまりて、いや、じたいかゝぬ/筆(ひつ)でござるといふた。 00033630¥N6¥J 00033640¥X六△うつけ/者(もの)/賀茂(かも)の/競馬(けいば)に/餅(もち)を/売(うる)事 00033650L17うつけたる男、かもの/競馬(けいば)に/餅(もち)をうりに/行(ゆき)たり。/或(ある)者いふ 00033660L18やう、此やうな人ごミ(八オ)でハ、すりがあつて/売(うり)物をぬ 00033670L19すミ、又/当世(たうせい)の/六法(ろつはう)ハ、物をくふても/銭(ぜに)をださずににげて 00033680¥G 00033690M12行程に、やうじんをしやれといへば、心ゑたりとて、にを 00033700M13おろし/餅(もち)をならべてゐたり。かゝる/所(ところ)へ、/馬(むま)きれてさはぎ 00033710M14ければ、/彼(かの)男、/大(おほ)はだぬぎて、ぬかる事でハないぞ。人に 00033720M15くらハれんより、をれがしてやるとて、かたはしからくふ 00033730M16た。(八ウ)(九オ挿絵) 00033740¥N7¥J 00033750¥X七△こう屋へ/使(つかい)に/行(ゆく)事 00033760M19ぎやうさんぬけたる男を/紺(こう)やへ/使(つかい)にやるとて、/色(いろ)ハ花色に 00033770¥P120 00033780L1して、あられごもんをつけたといへ。あられをわすれたら 00033790L2ば、二月十五日にいりてくふたあられを思ひだせといへば、 00033800L3心得ましたとて行たりしが、/紺(こう)屋にて、あられをはたとわ 00033810L4すれて、/色(いろ)ハ花色にして、しやかのはなくそを(九ウ)つけ 00033820L5てたもれといふた。 00033830¥N8¥J 00033840¥X八△/秀句(しうく)のまねをする事 00033850L8或所に四五人/咄(はな)してゐたり。壱人、/菓子(くハし)に有し/粭(あめ)をとると 00033860L9て、しやう+のよる/飴(あめ)をくハふといひければ、又ひとり、 00033870L10をれハ/平沙(へいさ)のらくがんをしてやらうといふ。これハよき/秀= 00033880L11句(しう=く)なりとほめけり。それをきゝたる/麁相者(そさうもの)、をれもどこぞ 00033890L12で此しう(十オ)くをいハうと思ひたりしが、/或(ある)とき/東福寺(とうふくじ) 00033900L13の/前(まへ)を/通(とを)るとて、/彼秀句(かのしうく)をおもひだし、つれの人に、いざ、 00033910L14しやう+のよるの/地黄煎(ぢわうせん)をかハうといふた。 00033920¥N9¥J 00033930¥X九△/誓願寺(せいぐハんじ)の/図子(づし)にて/手(て)の/筋(すぢ)ミる事 00033940L17誓願寺のづしに手のすぢをミるもの有。やせの男、見てた 00033950L18もれとて、手をさし出しければ、/筋(すぢ)をミる/者(もの)、/麁相者(そさうもの)(十 00033960L19ウ)(十一オ挿絵)にて、/八瀬(やせ)の男、かみをつのぐりたるを/女(おんな)じ 00033970¥G 00033980M12やと心得、こなたハ/子(こ)をうむたびに/平産(へいさん)であらうといふ。 00033990M13/八瀬(やせ)の/者(もの)、/大(おほ)きにおどろきて、をれは男でおじやるといへ 00034000M14ば、ぬからぬ/顔(かほ)にて、なんぼう男でも、手は/女(おなご)じやといふ 00034010M15た。 00034020¥N10¥J 00034030¥X十△べらばうをしらぬ事 00034040M18とつとぬけたる男いふやう、むかひの/道(たう)(十一ウ)/場(ぢやう)の/御坊(ごばう)ハ、 00034050M19/名(な)をかハられたをしりやつたかといふ。いやしらぬといへ 00034060¥P121 00034070¥G 00034080L12ば、/御坊(ごばう)の、けさとをられたれば、/次郎(じろ)や/三郎(さぶ)がいハるゝ 00034090L13にハ、あれ、べらぼうがとをるといはれたできいたといふ。 00034100L14それハかハりた/名(な)でハない。あほうじやといふ事よといへ 00034110L15ば、/彼(かの)男、さてハをれをもあの/衆(しう)が、せんミつ+といふ 00034120L16も、よい事でハあるまひの。(十二オ) 00034130¥N11¥J 00034140¥X十一△めつたとこばす/者(もの)の事 00034150L19めつたとこばす/者(もの)有。/或(ある)人、こなたの/親仁(おやじ)様にあひました 00034160M1が、お/たし((ママ))やでめでたうござるといひければ、/彼(かの)男、こな 00034170M2た様の御/親仁(おやじ)様こそ/御太平(ごたいへい)にござれ。私の/処(ところ)のハもはやた 00034180M3いはに/及(および)まして、はなどもこと※く/破損(はそん)しましたといふ 00034190M4た。 00034200¥N12¥J 00034210¥X十二△/脚半(きやはん)をかたしはく事(十二ウ)(十三オ挿絵) 00034220M7そさう成/侍(さふらひ)有。/鷹(たか)のゝ/供(とも)にでるとてきやはんをかたし 00034230M8はきて出たり。/傍輩(はうばい)ども、どつとわらひければ、いそぎ/宿(やど) 00034240M9へかた+をとりにやりた。/小者(こもの)とりてきたり。わきより、 00034250M10どこにあつたぞととへば、ゑん/柱(ばしら)にはかせてござりました 00034260M11といふ。/彼(かの)侍さハがぬ/顔(かほ)にて、それほどどうけねば、おも 00034270M12しろふないといはれた。(十三ウ) 00034280¥N13¥J 00034290¥X十三△人のむすこを/女(おなご)じやとあらそふ事 00034300M15或者、うゐに/男子(なんし)をまうけて、てうやはなとそだてしが、 00034310M16ぬけたる男、/久(ひさ)しぶりできたり、これにハ子をまふけられ 00034320M17たげなといふ。/夫婦(ふうふ)の/者(もの)、/玉(たま)のやうなむすこを/持(もち)ました。 00034330M18つれてこいといへば、/下女(げす)がだいてきた。彼者見て、よい 00034340M19こかな。男じやといやれども、をれがやうに、男の子ハゑ 00034350¥P122 00034360L1もちやるまひと(十四終オ)いふ。/夫婦(ふうふ)あきれて、此子ハ男じ 00034370L2やが、何をいやるぞといへば、まだいやるか。あれほど/女(おなご) 00034380L3のしやうこにハ、ひたいにべにで、犬といふ/名(な)が/書(かい)てある 00034390L4ハといふた。 00034400¥Y1当世手打笑第一終(十四終ウ) 00034410¥Y1当世手打笑第二目録 00034420M3一△/田舎者(いなかもの)/曼頭(まんぢう)をかう事 00034430M4二△山/家(が)の/者(もの)/蚊(か)屋をしらぬ事 00034440M5三△うつけたる男かひ物する事 00034450M6四△しハき/者(もの)の事 00034460M7五△/魚(うほ)くひ/坊主(ばうず)の事 00034470M8六△/麁相者(そさうもの)/公家衆(くげしゆ)へ参る事 00034480M9七△山家の者/曼頭(まんぢう)をひろう事 00034490M10八△或人/小者(こもの)に/弁当(べんとう)もたする事(一オ) 00034500M11九△ぬけたるむすこの事 00034510M12十△/田舎者(いなかもの)京のぼりの事 00034520M13十一△/在郷(ざいこう)での男ををく事 00034530M14十二△/関東者(くハんとうもの)あたご参の事 00034540M15十三△/祝(いわい)の/座敷(ざしき)へ/麁相者(そさうもの)来る事 00034550M16十四△かけすゞりをぬすまるゝ事 00034560M17十五△小者に使をしゆる事 00034570M18十六△/下部(しもべ)どもが/願(ねがひ)の事 00034580M19十七△物しり/顔(がほ)の事 00034590¥P123 00034600L1十八△/巾着切(きんちやくきりの)/女(をんな)/産(さん)をする事(一ウ) 00034610¥T1当世手打笑第二 00034620¥N1¥J 00034630¥X一△/田舎者(いなかもの)/曼頭(まんぢう)をかう事 00034640M5/田舎者(いなかもの)三条のつゝみにて、まんぢう/買(かハふ)といふ。壱分づゝで 00034650M6ござるといへば、田舎者じやと思ひ、ぎやうなそらねをい 00034660M7やる。壱もんに/十(とを)うりやれといふ。/亭主(ていしゆ)あきれて、いやは 00034670M8や、きやうがさめるといへば、はて、三/貫(ぐハん)あめさへ壱文に 00034680¥G 00034690¥P124 00034700L1うるハといふた。(二オ) 00034710¥N2¥J 00034720¥X二△山/家(が)の/者(もの)/蚊(か)屋をしらぬ事 00034730L4とつとおく山の/者(もの)、/市(いち)へ出ければ、やどの/亭主(ていしゆ)、こゝもと 00034740L5ハ蚊がたくさんにいまする。かやへ/入(いつ)てやすましやれとい 00034750L6へば、かやをミて/大(おほ□)にぎやうてんして、/是(これ)をミやれ。此ふ 00034760L7くろの中へ/入(いれ)といふハ、ねいりたら、しめころさうとのたく 00034770L8ミであらう。うつかりとハねまいぞといふた。(二ウ)(三オ 00034780L9挿絵) 00034790¥N3¥J 00034800¥X三△うつけたる男かい物する事 00034810L12ぎやうさんうつけをつかふ人あり。かひ物をさするとて、 00034820L13むさとかハずとも、百の物を壱/文(もん)に/付(つけ)るもならひじや。/方= 00034830L14&(はう=※)であたつて見てかへよといひけり。/或見世(あるミせ)にて、こたつ 00034840L15をねぎり、まけませうといふ。それならば/火(ひ)をたもれとい 00034850L16へば、たばこを/出(いだ)す。/火(ひ)入をやぐらの中へいれ、/羽織(はをり)を打 00034860L17かけて、百の物を壱文(三ウ)に付るもならひ、/先(まづ)あたつて 00034870L18みてかハうといふた。 00034880¥N4¥J 00034890¥X四△しハき/者(もの)の事 00034900M3しハき者有しが、/他国(たこく)より/客(きやく)有。こゝもとはさかなの/大切(たいせつ) 00034910M4な/所(ところ)で、/御(ご)ちそうもゑ/致(いた)さぬといふ/処(ところ)へ、/鯛(たい)や+と/売(うり)け 00034920M5れば、むすこ、とゝ様。さかなをうるぞといへば、をのれ 00034930M6が何を/知(しつ)て。あれハあたりのわかい/衆(しゆ)が、/魚売(うほうり)のけいこを 00034940M7しやるといふた。(四オ) 00034950¥N5¥J 00034960¥X五△/魚(うほ)くひ/坊主(ぼうず)の事 00034970M10/坊主(ぼうず)、/鮒(ふな)なますを/大(おほ)きなる/鉢(はち)にてあへてゐる/最中(さいちう)に、/旦那(だんな) 00034980M11/来(きた)る。かくすべきやうなければ、/彼鉢(かのはち)にむかひて、たから 00034990M12かに/陀羅尼(だらに)をとなへたり。/是(これ)ハ何事ぞといへば、/旦那衆(だんなしう)/振= 00035000M13舞(ふる=まひ)をしらるゝが、/俄(にハか)に/献立(こんだて)がかはりてたのまるゝ/程(ほど)に、/今(いま) 00035010M14の/間(ま)に、かまぼこに/祈(いのり)かへるいはれた。(四ウ) 00035020¥N6¥J 00035030¥X六△/麁相者(そさうもの)/公家衆(くげしゆ)へ参る事 00035040M17/麁相者(そさうもの)、/御公家(おくげ)の/短冊(たんざく)を/書(かき)てよませらるるを/聞(きゝ)て、/御名乗(おなのり) 00035050M18がいやしうござりまする。おかえなされませいといふ。何 00035060M19とてさうハいふぞと仰けれバ、/金茂(きんもち)とハくひ物のやうで、 00035070¥P125 00035080¥G 00035090L12げびて/聞(きこ)えまするといふ。又おなじやう成男、さういやる 00035100L13な。/昔(むかし)も/中院(なかのゐん)や/食(しよく)といふがあつた。(五オ)(五ウ挿絵) 00035110¥N7¥J 00035120¥X七△山/家(が)の/者(もの)/曼頭(まんぢう)をひろう事 00035130L16山/家(が)の/者(もの)、/市(いち)に/出(いで)て/曼頭(まんぢう)をひろい、ねぢひねりてみれども 00035140L17しらず。とかく/庄(しやう)屋/殿(どの)にミせませうとて見せければ、なん 00035150L18ぞの/玉子(たまご)であらう。あたゝめてみよといひければ、わたに 00035160L19つゝミてあたゝめ、二三日してみれば、/毛(け)がはへたり。/庄(しやう) 00035170M1や/大(おほき)におどろき、/玉子(たまご)から/毛(け)がはへた/程(ほど)に、/鬼(おに)の玉子で 00035180M2(六オ)あらうといふた。 00035190¥N8¥J 00035200¥X八△/或(ある)人/小者(こもの)に/弁当(べんたう)もたする事 00035210M5/或(ある)人、/賀茂(かも)の/芝原(しばわら)にてあそびゐたり。/弁当(べんたう)をひらき/色(いろ)&の 00035220M6さかなとりいだし、あれよこれよといふ/折(おり)から、/赤犬(あかいぬ)/来(きたり)て、 00035230M7壱つくハへてにげた。/旦那(だんな)、久三郎よ。あの犬めをすかし 00035240M8よせてくハせいといひすてて、/宮(ミや)へ参りた。かへりて/酒(さけ)を 00035250M9のミ、さかなを(六ウ)だせといへば、久三郎、/先(さき)に、くハ 00035260M10せよと仰られましたにより、犬にくハせましたといふた。 00035270¥N9¥J 00035280¥X九△ぬけたるむすこの事 00035290M13/或者(あるもの)/腫物(しゆもつ)をわづらひしが、よそから/見廻(ミまい)の/状(ぢやう)をおこした。 00035300M14御はれ/物(もの)/平愈(へいゆう)なされ候哉。せつかく/快気(くハいき)をえらるべく候と 00035310M15/書(かき)たり。むすこ、此状をみて、/平愈(へいゆう)とハ(七オ)何の事でご 00035320M16ざるといへば、/親仁(おやじ)、なをるといふ事じやとをしへたり。 00035330M17/打(うち)うなづきてゐたりしが、/友立(ともだち)の/口説(くぜつ)して、わぼくしたる 00035340M18所へ状をやるとて、/両方(りやうほう)/中(なか)を/平愈(へいゆう)なされ目出度候。せつか 00035350M19く/快気(くハいき)をえらるべく候とかいてやつた。 00035360¥P126 00035370¥G 00035380¥N10¥J 00035390¥X十△/田舎者(いなかもの)京のぼりの事 00035400L14/或(ある)所に、よろづうつし物といふかんばん有。(七ウ)(八オ挿絵) 00035410L15/田舎(いな□)者、かんばんをミてきました。何でもうつしてくださ 00035420L16るゝかといふ。いかにも。おこのミしだいに、/本(ほん)をみて/書(かき) 00035430L17うつしまするといへば、てう※の事。本ハこれでござる 00035440L18とて、/真黒(まつくろ)なるはだをぬぎてうしろむひた。是ハどうぞと 00035450L19いへば、此せなかのたむしを、/榎(ゑのき)にうつしてくだされとい 00035460M1ふた。(八ウ) 00035470¥N11¥J 00035480¥X十一△/在郷(ざいごう)での男を/置(をく)事 00035490M4/或者(あるもの)、ざいごう/出(で)の男を/置(をき)けるが、/火(ひ)のもとを大事にせよ。 00035500M5/火事(くハじ)あるときハ、京にははやがねがなるほどに、きゝつけ 00035510M6たらば、やうちをおこし、あたりにもしらずばおこせよと 00035520M7いひければ、心ゑましたとて、その日もくれたり。/下隣(しもどなり)にじ 00035530M8んじやうを申おやぢ有しが、れいの(九オ)せめかけて、か 00035540M9ねをたゝきければ、/彼(かの)男きゝつけ、やれ、はやがねをなら 00035550M10すハと、やうちをおこし、/其侭(そのまゝ)かどへはしり出て、/火事(くハじ)よ 00035560M11+とわめきければ、/町中(てうじう)そうどうする事おびたゝし。さ 00035570M12らに/火本(ひもと)しれねば、/彼(かの)男をしからぬ/者(もの)ハなし。かさねてか 00035580M13らハ、となりあたりのなりをとを、とくときゝさだめ(九ウ) 00035590M14(十オ挿絵)て人をおこせよといひつけゝり。そのゝち、う 00035600M15らの町より火いでゝやけたり。/亭主(ていしゆ)おどろき、久三郎めは、 00035610M16/誠(まこと)のときにハどこにおるぞとたづねければ、/見世(ミせ)にみゝを 00035620M17あてゝ、ひらぐものやうになりて居たり。何をするぞ。/火事(くハじ) 00035630M18のゆくをばしらぬかといへば、をししづまりたるこゑにて、 00035640M19はじめからきいていれど、まづとなり(十ウ)あたりのなり 00035650¥P127 00035660¥G 00035670L12おとを、とくときゝまするといふた。 00035680¥N12¥J 00035690¥X十二△/関東者(くハんとうもの)/愛宕(あたご)参の事 00035700L15関東の者、あたごへ/参詣(さんけい)しけるが、ひろ/沢(さハ)の/辺(ほとり)にて/或茶(あるちや)屋 00035710L16へはいりて、ちやをのまふといへば、/折(をり)しもばゞがありて 00035720L17茶をたてけり。関東者、なまりたるこゑにて、/在名(ざいめう)ハ何と 00035730L18いふぞといへば、(十一オ)ばゞが/耳(ミゝ)にハ、/改名(かいめう)ハ何といふぞ 00035740L19と聞て、めうせひといひまするといふ。その事でハなひ。 00035750M1/所(ところ)のなハ何といふぞといへば、所ハ/近江(あふミ)の/者(もの)でござるとい 00035760M2ふ。いや、それでもなひ。こゝの/小名(こな)の事じやといへば、 00035770M3これハさて、こなが事をしつてござるか。こなハこの中、 00035780M4京へ/行(ゆき)ましたといふ。/彼男(かのおとこ)はらをたてゝ、それはきよくる 00035790M5かといへば、さ(十一ウ)れば、けふくるやらあすくるやら、 00035800M6しれませぬといふた。 00035810¥N13¥J 00035820¥X十三△/祝(いハひ)の座敷へ/麁相者(そさうもの)来る事 00035830M9或人、/法躰(ほつたい)をして/振舞(ふるまひ)などする所へ、/麁相者(そさうもの)来りて、/御法= 00035840M10躰(ごほつ=たい)めでたうござる。お/名(な)は何と申まするぞととへば、/道夢(どうむ) 00035850M11とかへましたといふ。麁相もの/聞(きゝ)て、さても、うれいな名 00035860M12をつかせられたといふ。/彼仁(かのじん)はら(十二オ)をたて、それハ 00035870M13何事をいやるぞといへば、はて、其せうこにハ、ゆやのう 00035880M14たひに、/泪(なミだ)ながらにかきと/道夢(どうむ)とうたハぬかといふた。 00035890¥N14¥J 00035900¥X十四△かけすゞりをぬすまるゝ事 00035910M17ぬけたる男、かけすゞりをぬすまれたり。人&聞て、/笑止(せうし) 00035920M18やといへば、此おとこ、少もおどろかずして、ようござる。 00035930M19やがてもてきてかへしませふといふ。それは(十二ウ)何事 00035940¥P128 00035950L1ぞ。まじなひにてもめされたかといへば、いや、さうでも 00035960L2ござらぬが、/鎰(かぎ)がこちにあるほどに、あける事がなるまい 00035970L3といふた。 00035980¥N15¥J 00035990¥X十五△/小者(こもの)に/使(つかひ)をしゆる事 00036000L6或人、/田舎出(いなかで)の男ををきて、/使(つかひ)にやるとて、先物もふとい 00036010L7ふて、さきの人こたへてから、/口上(こうじやう)をいひわたせよとをし 00036020L8へてや(十三オ)りたり。/彼(かの)さきの/仁(じん)に、/町中(まちなか)にてはたと行 00036030L9あひたれば、づか+とまへゝ行て、大/道(どう)の/真中(まんなか)にて、物 00036040L10もふといふた。 00036050¥N16¥J 00036060¥X十六△/下部(しもべ)共が/願(ねがひ)の事 00036070L13/下部(しもべ)どもよりあひて、めん+のねがひをいふ。壱人のい 00036080L14ハく、をれハつね※ひだるいとねぶたいとが、やまひじ 00036090L15やほどに、/身体(しんたい)がよくなりたらば、/食(めし)をくふてハね、(十三 00036100L16ウ)くふてハねふといふ。かたハらよりきゝて、はてさて、 00036110L17しんだいさへよくなれば、うまい物が色&有さかひに、く 00036120L18ふてハくひ、くふてハくひ、くふにかゝつていよふほどに、 00036130L19ねる/間(ま)が何があらうにといふた。 00036140¥N17¥J 00036150¥X十七△物/智(しり)がほの事 00036160M3物しりがほする男、人にかたりけるハ、/諸人(しよにん)のたつとぶ/孔= 00036170M4子(かう=し)といひし人ハ、(十四オ)いかひかたわであつたといふ。/聞(きく) 00036180M5人おどろきて、それハつゐにきかぬめづらしきはなしなり。 00036190M6して、いかやうのかたわぞととへば、されば、二十八九ま 00036200M7でハゐざりにてあつた。そのしやうこにハ、/論語(ろんご)に、/三十= 00036210M8而立(さんしう=にしてたつ)とあるほどにといふた。 00036220¥N18¥J 00036230¥X十八△/巾着切(きんちやくきり)の女さんをする事 00036240M11巾着切の/女(をんな)が/産(さん)をするをきゝたると(十四ウ)て、かたる人あ 00036250M12り。此女、/難産(なんざん)にて子がてをさきへ出してうまれず。ばゞ、 00036260M13いろ+とさいかくすれど、手をうちへいれず。いかゞせ 00036270M14んといふ処へ、或人来りて、しやうことあれとて、/産所(さんじよ)の 00036280M15まへに石うすをすへて、/金火(かなひ)ばしをちりゝんとひきずりけ 00036290M16れば、さすがおやのこほどありて、/金棒(かなぼう)かと思ひて手をう 00036300M17ちへひきたり。(十五終オ)さらばうませんとて、たからかな 00036310M18る/声(こゑ)にて、/篭者(□うしや)/御赦免(ごしやめん)じや。/出(で)ませいといふたれば、ぬつ 00036320M19とうまれた。 00036330¥P129 00036340¥Y1当世手打笑第二終(十五終ウ) 00036350¥Y1当世手打笑第三目録 00036360M3一△/麁相(そさう)なる/坊主(ばうす)の事 00036370M4二△ぬけたる男すきに行事 00036380M5三△/小者(こもの)/旦那(だんな)にしからるゝ事 00036390M6四△下京/道伯(どうはく)の事 00036400M7五△/麁相(そさう)者/使(つかい)をうけ取事 00036410M8六△さかひの/者(もの)/御節会(おせちゑ)おがみに参る事 00036420M9七△/大仏(だいぶつ)にて/太箸(ふとばし)をひろふ事 00036430M10八△/御局(おつぼね)をしらぬ事 00036440M11九△もんもう成者/法躰(ほつたい)する事(一オ) 00036450M12十△さふらひそさうの事 00036460M13十一△万日ゑかうにあきなひする事 00036470M14十二△物いまひするばうずの事 00036480M15十三△むすこそつじの事 00036490M16十四△よくふかき/若衆(わかしゆ)の事 00036500M17十五△一/義(ぎ)のときなく女の事 00036510M18十六△/道頓堀(どうとんぼり)より火事を見る事 00036520M19十七△丸山にて大酒の事 00036530¥P130 00036540L1十八△大/上戸(じやうご)の事 00036550L2十九△/片言(かたこと)いふ事 00036560L3二十△/唐様(からやう)をかく事(一ウ) 00036570¥T1当世手打笑第三 00036580¥N1¥J 00036590¥X一△/麁相(そさう)なる/坊主(はうず)の事 00036600M5/或者(あるもの)、だんな/坊(ばう)とつれだちてありく所へ、み事な/鯉(こい)を/持(もち)て 00036610M6とをりけり。さても見事/((な脱カ))鯉(こい)かな。あれをさしみにしてやり 00036620M7たいといひければ、/坊主(ばうず)、さしみが/一(いち)の/料理(りやうり)でござるとい 00036630M8ハるゝ。/旦那(たんな)あきれて、何とてさしミをばしらせられたぞ 00036640¥G 00036650¥P131 00036660L1といへば、ぬか(二オ)らぬ/顔(かほ)にて、いや、をれが/過去生(くハこしやう)で、 00036670L2ぎやうなすきでござつたといはれた。 00036680¥N2¥J 00036690¥X二△ぬけたる/男(おとこ)/数寄(すき)に/行(ゆく)事 00036700L5/或者(あるもの)、/数寄(すき)によばれて、かこひへわきざしをさして/入(いり)けれ 00036710L6ば、わきよりせうしに思ひ、こごゑにて、ぬいてござれと 00036720L7いへば、かの者もさゝやきて、うちでぬいてきましたれば、 00036730L8へさへでぬといふた。(二ウ)(三オ挿絵) 00036740¥N3¥J 00036750¥X三△うつけ/者(もの)/旦那(だんな)にしからるゝ事 00036760L11うつけ者、/旦那(だんな)にしかられたるをきゝて、おなじやうなる 00036770L12者いふやう、そちが旦那ハいかふしかるのといふ。しから 00036780L13れたる男、ようはを/抜(ぬく)やつじやといふ。して/前(まへ)から、はを 00036790L14ぬくかといへば、/昔(むかし)からじやといふ。/近(ちか)い/比(ころ)からであらう。 00036800L15/目利(めきゝ)がある。あたまがしほう/髪(がミ)でないハといふた。 00036810¥N4¥J 00036820¥X四△/下(しも)京/道伯(だうはく)の事(三ウ) 00036830L18或/方(かた)のお/小性衆(こしやうしう)、もつての外にはらをいたミ給ひしが、/道= 00036840L19伯(だう=はく)とて、とつと/麁相成(そさうなる)ゐしやきたり、/食(しよく)にハ何をまいりた 00036850M1ぞととふ。/夕部(ゆふべ)/鯉(こい)をまいりましたといへば、手をちやうど 00036860M2うちて、これハさて、/敵薬(てきやく)かなといふ。それハどうした事 00036870M3ぞといへば、はてさて、/鯉(こい)にこ/性衆(しやうしう)ハ/禁物(きんもつ)じやといはれた。 00036880¥N5¥J 00036890¥X五△/麁相者(そさうもの)/使(つかい)を請取事(四オ) 00036900M6/端(はし)/玄清(げんせい)といふゐしや、或はいかいしの所へみまハれた。/草= 00036910M7履取(ざう=りとり)はしりきて、/端(はし)/玄清(げんせい)お/見廻(ミまひ)申といへば、/麁相者(そさうもの)、/使(つかい)を 00036920M8うけ取、/主(しう)のまへにて、はしげいせい/御見舞(おミまひ)といふ。こゝ 00036930¥G 00036940¥P132 00036950L1へはし/傾城(けいせい)のくるはつハない。ふしぎな事やといふ処へ、 00036960L2彼ゐしやきたられた。/帰(かへり)て/後(のち)、彼麁相者をさん※にしか 00036970L3れば、おやぢいはるゝハ、しかるな+。あいつも/宗因流(そうゐんりう) 00036980L4のはいかいをするそうな。/扨(さて)(四ウ)(五オ挿絵)もようとり 00036990L5なしたといはれた。 00037000¥N6¥J 00037010¥X六△/境(さかい)の/者(もの)/御節会(おせちゑ)/拝(おがミ)に参る事 00037020L8/堺(さかい)の者、正月京にのぼりければ、よき折からなり、/大内(だいり)の 00037030L9/御節会(おせちゑ)/拝(おが)まうとて/大内(だいり)に/行(ゆき)けり。いまだはじまらざりけれ 00037040L10ば、/御白砂(おしらす)を/見物(けんぶつ)しけり。それを京の者がみて、こよひハ 00037050L11/田舎(いなか)者がきたそうな。/絵(ゑ)にかいた/公家(くげ)をば見うが、/生公家(いきくげ) 00037060L12ハこよひが/見初(ミはじめ)であらうと(五ウ)いふ。さかいの者はらを 00037070L13/立(たて)て、京のやつハ/生(うま)れてから、しんだ/鯛(たい)ばかり見て/生鯛(いきだい)ハ 00037080L14え見をらぬ。をれらハ/生公家(いきくげ)より/生鯛(いきだい)を見たがよいとて、 00037090L15つゐといんだ。 00037100¥N7¥J 00037110¥X七△大/仏(ぶつ)にて/太箸(ふとばし)をひろふ事 00037120L18/或者(あるもの)、年のはじめに大/仏(ぶつ)へ/参詣(さんけい)しけるが、/拝(おがミ)て/立(たち)さまに/前(まへ) 00037130L19をみれば、ふと/箸(ばし)が一/膳(ぜん)有。是ハめでたき物。/如来(によらい)の/御福(ごふく) 00037140¥G 00037150M12なりと、をし(六オ)いたゞき、/帰(かへり)てよろこぶ事かぎりなし。 00037160M13かゝる所へそさう/者(もの)/来(きたり)て、あまりよろこびやるな。大仏の 00037170M14まへでハ、せう+/大(おほ)きな物もちいさうミゆる。ふとばし 00037180M15じやとおもやらば、/大鞁(たいこ)のばちであらふ。をれが/冬年(ふゆとし)、大 00037190M16仏の/堂(だう)で/手拭(てのごい)をひろうて、内へとてきてみたれば、/古脚布(ふるぎやふ) 00037200M17であつたほどに。 00037210¥N8¥J 00037220¥X八△/御局(おつぼね)をしらぬ事(六ウ)(七オ挿絵) 00037230¥P133 00037240L1或者、/御公家方(おくげかた)へ/行(ゆき)たが、あなた方にハ、はし/傾城(げいせい)をつか 00037250L2ひ物になさるゝかして、おつぼね+といはるゝ。ふしぎ 00037260L3な事じやといふ。わきより、こゝな人ハそれをしりやらぬ 00037270L4か。お/局(つぼね)とハ/年(とし)のよつた/女房衆(にようばうしゆ)の事じやといへば、/尤(もつとも)じや 00037280L5といひしが、或所にて、こなたのおか様ハいかうわかそう 00037290L6なといひければ、/彼(かの)男、いや、わかうもござらぬ。おつぼ 00037300L7ねでござると/云(いふ)た。(七ウ) 00037310¥N9¥J 00037320¥X九△/文盲(もんもう)なる/者(もの)/法躰(ほつたい)する事 00037330L10或者、/法躰(ほつたい)しけるが、/名(な)ハ何と申ぞととふ人有。ほうゑつ 00037340L11と申といへば、ほうハのりでござるか。ゑつハよろこぶと 00037350L12いふじてあらうといへば、彼男、こばさんと思ひて、ほう 00037360L13ハのりでハござらぬ。そくゐでござるといひたり。/先(さき)の人 00037370L14も、よいかげんにあしらいてをかれた。そこを/帰(かへる)とて、つ 00037380L15れのいふやう、そなたハもんもうな事(八オ)をいやる。ほ 00037390L16うハそくゐといふ事が有物かといへば、をれも/本字(ほんじ)ハ/知(しり)て 00037400L17いれども、わざといハなんだといふ。それならば、/本字(ほんじ)ハ 00037410L18なにでおじやるといへば、ほうハつらでござるといふた。 00037420¥N10¥J 00037430¥X十△さふらひ/麁相(そさう)の事 00037440M3/或大名(あるだいめう)、/小性(こしやう)をてうあいし給ひしが、其小性をめしつれて 00037450M4/鷹野(たかの)に/御(お)出有しに、いづくともなく/蜂(はち)とびきたりて、/其小= 00037460M5性(そのこ=しやう)(八ウ)をしたゝかさしけり。みるうちに/腫(はれ)あがりたり。 00037470M6/殿(との)をはじめ、何が/薬(くすり)ぞとせんぎある処へ、/麁相(そさう)もの罷出、 00037480M7よいくすりがござりまする。あの/御子(おこ)のはくそをつけてハ 00037490M8そのまゝ/直(なを)るといふた。/小性衆(こしやうしう)のはくそ、いとめづらし。 00037500¥N11¥J 00037510¥X十一△/大仏(たいぶつ)の/者(もの)万日/廻向(ゑかう)に/商(あきなひ)する事 00037520M11大仏のほとりに、なやにんじんをうる/者(もの)有。(九オ)(九ウ挿 00037530M12絵)五条の万日廻向に、何がなあきなひをせんと思へども、 00037540M13もとでなければ、ぜひなしとなげきけり。目をかける人、 00037550M14銭を五百/文(もん)かして、子どものすく物をうれよといへば、か 00037560M15しこまりましたとて/帰(かへ)る。さて万日廻向も十日おはりけれ 00037570M16ば、銭をかしたる人、あきないがあつたかといへば、壱文 00037580M17もゑうりませぬ。子共のすく物をうれよと仰られたにより、 00037590M18(十オ)/土人形(つちにんぎやう)や/飴(あめ)をうりました。ふしぎな事や。何とやう 00037600M19にうりたぞといへば、うれぬこそは/同理(どうり)なれ。彼男、/例(れい)の 00037610¥P134 00037620¥G 00037630L12なやにんじんをうるごとくに、あめぞい、しやうの/笛(ふえ)、き 00037640L13んひらぞいとうりた。 00037650¥N12¥J 00037660¥X十二△物いまひする/坊主(ばうず)の事 00037670L16/或寺(あるてら)の/住持(じうぢ)に、とつと物いまひする有けり。/大晦日(おほつごもり)に/小僧(こぞう) 00037680L17をよびて、あすハ何事も(十ウ)/麁相(そさう)をいふなといひ付られ 00037690L18た。さて/元日(くハんにち)の/朝(あさ)、/小僧(こぞう)、いろりの/火(ひ)を/吹(ふく)とて/灰(はい)をふきた 00037700L19て、/御坊(ごばう)のあたまくだしに/灰(はい)がかゝりければ、もつての外 00037710M1に気にかけられ、めでたく取なをさでハあしかるべしと思 00037720M2ひ、やい小僧、/一句(いつく)した程にめでたういハへとて、 00037730M3△△小僧こそ/福(ふく)ふき/懸(かけ)るけふの春 00037740M4なんでもめでたいぞとてよろこばれけ(十一オ)れば、小僧、 00037750M5/私(わたくし)つけませうとて、 00037760M6△△お/住持(しうぢ)様のはいにならしやる 00037770M7と付ければ、ぎやうさん気に懸られた。 00037780¥N13¥J 00037790¥X十三△むすこ/率爾(そつじ)の事 00037800M10或所に、むすこ/灸(きう)をするとて、ゐしやにてんを/頼(たのミ)、はだぬ 00037810M11ぎてうつむきゐたりしが、/母親(はゝおや)、うつむきたる/鼻(はな)さきを、 00037820M12何やら/尋(たづね)るとてありきければ、彼むすこ、のけさま(十一ウ) 00037830M13にそりかへりければ、ゐしや殿、/墨(すミ)をせなかうちへにじり 00037840M14/付(つけ)、是ハ何事ぞといへば、それでも、/母者(はゝじや)人のすそのあを 00037850M15ち風で、/鼻(はな)がそげるやうにござつたといへば、ゐしや、/口(くち) 00037860M16のうちにて、さてハくさつじやよといはれた。 00037870¥N14¥J 00037880¥X十四△よく/深(ふか)き若衆の事 00037890M19とつとよくふかき若衆有しが、/床(とこ)入にさへなれば物をもら 00037900¥P135 00037910L1ひけり。其あと/口(くち)には、か/様(やう)(十二オ)の事を申も、その/方(ハう) 00037920L2様と/打(うち)とけたるゆへでござる。たにんむきでハかやうの事 00037930L3ハ申されまひといひければ、/兄分(あにぶん)、/大(おほ)あくびをして、い 00037940L4や+そうでハない。とこ入のときハ、なるほど/他人(たにん)むき 00037950L5にしてたもれといふた。 00037960¥N15¥J 00037970¥X十五△/一儀(いちぎ)のとき/啼(なく)女の事 00037980L8一/儀(ぎ)の/時(とき)なく/女房(にようばう)あり。わきにねたる/娘(むすめ)、ね/耳(ミゝ)に/母(はゝ)のなく 00037990L9こゑを聞て、あハたゝし(十二ウ)く来、かゝ様ハなぜになか 00038000L10しやるぞといへば、おどろきながらおししづまりて、とゝ 00038010L11様とあハれな咄をして、こらへられいでないた。あす/咄(はなし)て 00038020L12きかせうほどに/行(ゆき)てねよといへば、/娘(むすめ)かへりてねたり。や 00038030L13ゝありて又なきだした。/今度(こんど)ハ娘、ぬき/足(あし)にてそろ+と 00038040L14来り、あとの/方(かた)よりはいよりたり。又おどろきて、なぜき 00038050L15たぞといへば、をれもこらへ(十三オ)られませぬといふた。 00038060¥N16¥J 00038070¥X十六△/道頓堀(どうとんぼり)より火事をみる事 00038080L18/或時(あるとき)、大坂に火事いできけるに、道頓堀の/芝居(しばゐ)には/木戸番(きどばん) 00038090L19らがやぐらにあがりて、さハぐ事おびたゝし。した成者、 00038100M1どこじやぞ+といひければ、/上(うへ)なる木戸番、こゑをはか 00038110M2りに、いつものくせが出て、かハつた+とわめく。した 00038120M3より(十三ウ)おかしがりて、それハ何事をわめくぞといひ 00038130M4ければ、ぬからぬ/顔(かほ)にて、なを大/声(ごへ)上て、かハつた+。 00038140M5風がかハつたぞやうといふた。 00038150¥N17¥J 00038160¥X十七△/丸(まる)山にて大酒の事 00038170M8/或者(あるもの)、/友(とも)だちあまたにて丸山えあそびに行けり。殊の外の 00038180M9/乱酒(らんしゆ)になりて、ざしきのすミ※にいねてゐるもの/多(おほ)し。 00038190M10其(十四オ)中にゐきり/者(もの)有て、酒などにゑひてねるといふ 00038200M11事ハ、ひけた事じや。われらハのめば/呑程(のむほど)気がはつきとする 00038210M12といひて、かちにてぶらつきて帰ければ、わらハぬ者ハな 00038220M13し。/初夜(しよや)/時分(じぶん)の事なるに、/祇園(ぎをん)の松原さがる所に、八/文字(もんじ) 00038230M14屋のかゝが火をともし、/茶(ちや)をうりてゐたり。/彼酔(かのゑひ)たる男、 00038240M15此かゝを見て、/謹而(つゝしんで)じぎをして/通(とをり)(十四ウ)ければ、つれ、 00038250M16をかしがりて、あれハたれじやとおもやるぞといへば、ぬ 00038260M17からぬふりにて、こゝな/衆(しゆ)ハ、男ハじぎにあまれといふ事 00038270M18を知ぬかといふ。又/祇園(ぎをん)町にいざりの/乞食(こつじき)がゐたれば、づ 00038280M19か+とよりて、はて、御ゐんぎんな御人や。お手あげら 00038290¥P136 00038300L1れませひと/云(いふ)た。 00038310¥N18¥J 00038320¥X十八△大/上戸(じやうご)の事 00038330L4大上戸/有(あり)。/度&(たび+)/酔狂(すいきやう)するゆへに、/親類(しんるい)より(十五オ)あひ色 00038340L5&ゐけんすれど/聞(きゝ)入ず。/或時(あるとき)おびたたしく/酔(ゑひ)て、ときやく 00038350L6をしたり。或者、ひそかに鳥のきもをひろひきて、ふきた 00038360L7る物の中へ入をき、さめて後これを見せて、人にハふくち 00038370L8うに五/蔵(ざう(ママ))がありてこそ/命(いのち)も有に、そなたハ/臓(ざう)を壱つはき出 00038380L9したり。やがて/死(し)するであらふ。ひらに酒をとまれといふ。 00038390L10/彼者(かのもの)、いや+くるしからず。もろこしに二/臓(ざう)たらぬ(十五ウ) 00038400L11三臓/法師(ほつし)さへ有し。をれはまだ四臓あるほどに、くるしか 00038410L12らぬといふた。 00038420¥N19¥J 00038430¥X十九△/片言(かたこと)いふ事 00038440L15或者/客(きやく)をよびけるが、あひさつにこばさんとや思ひけん、 00038450L16何のふぜいもござりませぬ、せめて/庭前(ていぜん)のさうぢをいたし 00038460L17たれども、/跡(あと)から/諸鳥(しよてう)が/馬糞(ばふん)を致して、むさうなりまする 00038470L18といひければ、わきから、くつ+と笑ければ、(十六オ) 00038480L19/彼仁(かのじん)/赤面(せきめん)して、をれがいふ事ハ人が/笑(わら)ふハ。何と、/梵字(ぼんじ)に 00038490M1あたらぬかしらぬ。いつぞ/字者衆(じしやしゆ)にとハふずよといふた。 00038500¥N20¥J 00038510¥X二十△/唐様(からやう)をかく事 00038520M4からやうの手本をならふ人、さるかたへ/状(でう)をやりたり。/例(れい) 00038530M5の/書散(かきち)らしたるにて一/字(じ)もよめず。二三日過て、先の人状 00038540M6を/持参(じさん)して、此間被下たる状ハ一字もよめませなんだ。 00038550M7(十六ウ)¥K以下落丁(解説ページ参照) 00038560¥P137 00038570¥Y1当世手打笑第四目録 00038580L3一△/或者(あるもの)/湯(ゆ)やえ行事 00038590L4二△正月いねのほにてかざりをする事 00038600L5三△/公家衆(くげしゆ)の/長(なが)やにて咄の事 00038610L6四△/小子(ちいさきこ)/井(い)のもとへおつる事 00038620L7五△かたいぢなるおやじの事 00038630L8六△/山水(さんすい)なる者せんたくする事 00038640L9七△/友達(ともだち)とけんくハする事 00038650L10八△/或親仁(あるおやじ)人に状をたのむ事 00038660L11九△北野ゝ木やざいごうへ行事 00038670L12十△とひやう成人の事 00038680L13十一△/佗(わび)人/狂哥(きやうか)の事 00038690L14十二△/落首(らくしゆ)の事 00038700L15十三△/旦那坊主(だんなばうず)そさうの事 00038710L16十四△/立本寺(りうほんじ)の坊主若衆もたるゝ事 00038720L17十五△むさき若衆の事 00038730L18十六△こしもとをてうあひする事 00038740L19十七△/金剛(こんがう)ゐんらくばの事 00038750M1十八△/自堕落(じだらく)/坊主(ばうず)の事 00038760M2十九△/替(かハり)たる事をこのむ事 00038770M3二十△ぬけたるむすこの事 00038780M4二十一△/行水(きやうずい)して/蛇(くちなハ)にくハるゝ事(一ウ) 00038790¥P138 00038800¥T1当世手打笑第四 00038810¥N1¥J 00038820¥X一△/或者(あるもの)/湯(ゆ)屋え/行(ゆく)事 00038830L5/或(ある)人、お/公家衆(くげしう)の/仙洞(せんとう)様えござるのをば、/仙(せん)とうへゐんざ 00038840L6んすると仰らるゝといへば、/麁相者(そさうもの)聞て、/湯(ゆ)屋を/銭湯(せんとう)とい 00038850L7ふ、その事じやと心得、それを今までしりませなんだ。し 00038860L8て/女房(にようばう)をば何と仰らるゝぞといへば、/御局衆(おつぼねしう)と申といひけ 00038870L9り。あくる日、/彼(かの)(二オ)/麁相者(そさうもの)/湯(ゆ)屋へ行たり。女房ども出 00038880L10て、此中ハみえませなんだといへば、/爰(こゝ)で/少(ちと)こばさんと思 00038890L11ひ、此中ハ隙入があつて、ゐんざんもしませなんだ。/御局= 00038900L12衆(おつぼね=しう)ハかハつた/諸分(しよわけ)もないかといふた。 00038910¥N2¥J 00038920¥X二△正月/稲(いね)のほにてかざりする事 00038930L15/或在郷(あるざいごう)の/者(もの)、/来年(らいねん)ハいはゐて正月にかハつたかざりをせん 00038940L16とて、まへの/年(とし)より(二ウ)(三オ挿絵)ほ/長(なが)き/稲(いね)をあつめ、、 00038950L17それをかざりにして、/孫(まご)も/子共(こども)も打よせて、あら/目出(めで)たや。 00038960L18ほにほがさいたといはゝせて、よろこぶ事/限(かぎり)なし。かゝる所 00038970L19へ/麁相者(そさうもの)、ひよか+と/来(きた)り、此かざりを見て、/是(これ)ハさて、 00038980¥G 00038990M12めづらしきかざりやといふ。ミやれ。ほにほがさいて、め 00039000M13でたいのといひければ、いかにも+、/今年(ことし)からほだれが 00039010M14さがるといふた。(三ウ) 00039020¥N3¥J 00039030¥X三△/御公家衆(おくげしう)の/長(なが)屋にて咄の事 00039040M17或御公家の長屋に、とひやう者があつまりて/万(よろづ)の咄をして 00039050M18ゐたり。壱人いふやう、こちらハ/御(お)公家様につかハるゝさ 00039060M19かいで、うろたへた。やぶの中の/荒神(くハうじん)よりハましじや。/旦= 00039070¥P139 00039080L1那殿(だん=などの)ハ/神仏(かミほとけ)はんぶんの人じやといふ。それハどうしたしさ 00039090L2いぞといへば、/先(まづ)神のしやうこにハ/野ゝ宮(のゝミや)様、/仏(ほとけ)の/証拠(しやうこ)に 00039100L3ハせいがんじ様じやといふ。又/壱(ひとり)(四オ)人、それハそうじ 00039110L4やが、/篭(かご)かきの/御公家(おくげ)もあるといふ。こゝな者ハ、とひや 00039120L5うな事をいふ。どの公家様ぞといへば、はて、/手(て)ぶり三条 00039130L6殿じやといふた。 00039140¥N4¥J 00039150¥X四△/小子(ちいさきこ)井の/本(もと)へ/落(おつ)る事 00039160L9或所に、何とかしたり、/子(こ)が井どへ/落(おち)たり。やう+/引上(ひきあげ) 00039170L10て久三郎に、ゐしや殿をよんでこいといへば、はしり出し 00039180L11が、ゐしやハよんでこいで、ばゞをつれてきた。是ハどう 00039190L12ぞといへば、久/三(ざ)(四ウ)(五オ挿絵)いふやう、此おばゝ、 00039200L13おちやないかといふて、ありかれました/程(ほど)ニ、おちが有と 00039210L14いふたれば、見て/談合(だんかう)せうといはれた/程(ほど)に、つれてきまし 00039220L15た。 00039230¥N5¥J 00039240¥X五△かたいぢ成/親仁(おやじ)の事 00039250L18或者、/振舞(ふるまひ)によばんといひければ、/客(きやく)になる人、何も/馳走(ちそう) 00039260L19ハ被成な。/一汁(いちじう)/一(いつ)さいに被成よといひければ、わきより/親= 00039270M1仁(おや=じ)すゝみ出て、/一汁(いちじう)も/無用(むやう)でござる。/一(いつ)さいにしておかし 00039280M2やれと(五ウ)いふ。むすこいふ/様(やう)、あの人ハくるしうもな 00039290M3いが、其様な/文盲(もんもう)な事ハいはぬ物でござる。/一汁(いちじう)とハ/汁(しる)の 00039300M4事でござる。/汁(しる)を被成なといふ事が有物かといへば、/親仁(おやじ) 00039310M5ぬからぬ/顔(かほ)にて、/其(その)汁の/汁(じう)ハ/知(しつ)ておバるよ。をれがいふのハ、 00039320M6/豆腐(たうふ)のじうの事でおじやる。/豆腐(たうふ)をにてハ、/重箱(じうばこ)へ/入(いれ)ぬか 00039330M7といはれた。 00039340¥G 00039350¥P140 00039360¥N6¥J 00039370¥X六△/山水(さんすい)成/者(もの)/洗沢(せんたく)する事 00039380L3さんすい成者有しが、/洗沢(せんたく)をしたく思へど(六オ)きがへな 00039390L4し。いかゞせんと/案(あん)じたりしが、女房/云様(いふやう)、そなたをおふ 00039400L5て、をれがき物を/二人(ふたり)してきて/洗(あらを)ふといふ。是がよからう 00039410L6とて、女房におはれたり。かゝる処へ或者、ちよか+と 00039420L7来りければ、/彼(かの)男、びろうながら、たかうござるといふ 00039430L8た。 00039440¥G 00039450¥N7¥J 00039460¥X七△或者/友達(ともだちと)/喧嘩(けんくハ)する事 00039470M3ぬけたる者、/友達(ともだち)と/喧嘩(けんくハ)をして、思ふさま(六ウ)(七オ挿絵) 00039480M4なる目にあひて、/家(いへ)にもどりて思ふやう、あねやつに手/返(がへ) 00039490M5しハならず、何と/哉(がな)せんと/案(あん)したりしが、/杓子(しやくし)を/持(もち)て/行(ゆき)、 00039500M6/彼(かの)あいてのかど口にて、ひた物まねきゐたり。/皆(ミな)人おかし 00039510M7がりて、何をしやるぞといへば、あいつめが、三年の内に 00039520M8ハしぬるはづじやといふた。 00039530¥N8¥J 00039540¥X八△/或親仁(あるおやぢ)人に/状(ぢやう)を/頼(たの)む事 00039550M11或/文盲(もんもう)なるおやぢ、/他国(たこく)にむすこをもたるゝ(七ウ)が、/嫁(よめ) 00039560M12がしにたると/聞(きゝ)て、むすこの所へ状をやらるゝ。/其執筆(そのしゆひつ)に 00039570M13/頼(たのま)れた/者(もの)が、めいわくをいたされた。わざと一筆申とこの 00039580M14まれて、/跡(あと)がらちがあかねば、/依(よつて)と/書(かき)ませうかといへば、 00039590M15/親仁(おやじ)、いや、どこへもよりハいたさせぬ。すぐにやります 00039600M16る。をれがこのミませう。お/夏(なつ)がしんだとの/手(て)をうつた事 00039610M17なり。ちつともなげくな。又いかやうの/者(もの)もよんだがよい。 00039620M18心をはつきと(八オ)して、/鬼(おに)になりて/茶(ちや)をのめべく候とこ 00039630M19のまれた。 00039640¥P141 00039650¥N9¥J 00039660¥X九△/北野(きたの)の木や/在郷(ざいごう)へ/行(ゆく)事 00039670L3北野に/文盲(もんもう)なる/植木(うへき)や有。おく山へ/植木(うへき)をかひに/行(ゆき)て、/色(いろ) 00039680L4&/身(ミ)の上のよせい咄しけるが、をれハ/上&(うへ+)様/方(がた)へ植木を/指= 00039690L5上(さし=あげ)て、/直(ぢき)にお/詞(ことば)にかゝるといへば、さても/冥加(めうが)な事でござ 00039700L6るとかんしければ、/其時(そのとき)じまんらしく、/御所(ごシよ)がた様、こと 00039710L7の外/御念比(ごねんごろ)でござる。此中も参りた(八ウ)れば、はて/扨(さて)よ 00039720L8うきたとて、みすのうちへよバせられ、きさき、こいやい 00039730¥G 00039740M1と仰られたれば、/天人(てんにん)のごとく成が、うんかのごとく御出 00039750M2被成た。やい+、あの木やに、きのふかんばくからきた 00039760M3るくしがきを、/三(ミ)くしとらせいて仰られた。 00039770¥N10¥J 00039780¥X十△とひやう成人の事 00039790M6或/侍(さぶらひ)、/初対面(しよたいめん)の侍にあふて咄するとて、侍ハわたりもの 00039800M7でござるといひければ、/親仁(おやじ)/進(すゝミ)(九オ)出て、さても、せが 00039810M8れが/麁相(そさう)を申ました。お/気(き)にかけさせるゝな。やい、そ 00039820M9こな麁相者。侍ハわたり物とハどふした事ぞ。あのお人(ひと)が 00039830M10とがをなされたとて、わたり者に成ものか。じんじやうに 00039840M11/切腹(せつふく)を被成るハといはれた。 00039850¥N11¥J 00039860¥X十一△/侘人(わびびと)/狂哥(きやうか)の事 00039870M14とつと/軽口(かるくち)成わび人有しが、秋も/更行(ふけゆく)くまゝに、/障子(しやうじ)のや 00039880M15ぶれよりもりくる風も(九ウ)(十オ挿絵)はだ/寒(さむ)けれど、是 00039890M16をはるべき/紙(かミ)なければ、一/首(しゆ)の/狂哥(きやうか)を/読(よミ)て、或人の方へ/紙(かミ) 00039900M17をもらいにやられた。 00039910M18△△かミなくて/障子(しやうじ)ハやぶれ秋さむや 00039920M19△△△/仏(ほとけ)の/説(とき)しのりハあれども 00039930¥P142 00039940¥N12¥J 00039950¥X十二△/落首(らくしゆ)の事 00039960L3或所に、/恩地(おんぢ)五郎兵衛といふ侍あり。/殿(との)の/御(お)とりたての者 00039970L4にて、うへミぬわしとくらし(十ウ)けり。/殿(との)/御死去(ごしきよ)の/折(おり)ハ、 00039980L5/追腹(をいばら)をきらいで、ハかなハぬ処を、をしだまりて有ければ、 00039990L6わらハぬ/者(もの)ハなし。何者かしかりけん、彼五郎兵衛が/門(かど)に 00040000L7一首の/落首(らくしゆ)を立たり。 00040010L8△△おん五郎ひやうしんだり/全(まつたう)/義理(ぎり)しらず 00040020L9△△△/若殿(わかとの)の世にあぶなうんけん 00040030¥N13¥J 00040040¥X十三△/旦那坊主(たんなばうず)/麁相(そさう)の事 00040050L12旦那坊をよびて、なたう/汁(じる)をふるまハんとて、(十一オ)つと 00040060L13ぐち取出し、是ハ女房ともが、さいくにねさせました。/精= 00040070L14進(しやう=じん)物ハお/寺(てら)様の/料理(りやうり)がよいはづじや。こなた、被成ませい 00040080L15といへば、/御坊(ごばう)、心ゑましたとて、/彼納豆(かのなとう)をヒ/引(ひき)よせ、つと 00040090L16の口をあけ、かいでみて、さても、よいまめのねれやうや。 00040100L17思ひやられた。おかさまのがといひて、ちやつと口をふさ 00040110L18がれた。 00040120¥N14¥J 00040130¥X十四△/立本寺(りうほんじの)/坊主(ばうず)/若衆(わかしう)もたるゝ事(十一ウ) 00040140M3立本寺の坊主、若衆を/持(もち)けり。したゝかなる物にて、ひき 00040150M4ふせてやられければ、彼若衆せつなさに、びろうなしやう 00040160M5かな。若衆などゝいふ物ハ、よこからやハらかにこそする 00040170M6物なれ。どうよくなしやうじやといひければ、/其時(そのとき)/坊(はう)主の 00040180M7/返答(へんたう)がひそうじや。おぬしハまだしらぬか。をれがふじゆ 00040190M8ふせでもあらば、よこからもせうが、立本寺ハじふせじや 00040200M9によつて、大こくをするやう(十二オ)に、/地(ぢ)にふせてする 00040210M10さほうじやといはれた。 00040220¥N15¥J 00040230¥X十五△むさき若衆の事 00040240M13或者、若衆とねて、さま※/物語(ものがたり)しけるが、若衆いふやう、 00040250M14をれが/知積院(ちしやくゐん)にゐたとき/程(ほど)、くハつけいをした事ハなかつ 00040260M15たといふ。何と/様(やう)な事ぞといへば、若衆いふやう、此やう 00040270M16にねてゐても、/枕本(まくらもと)に/菓子(くハし)ををきて、くひ/次第(しだい)であつたと 00040280M17いふ。/念者(ねんじや)もきやうをさまし、さて、/菓子(くハし)は(十二ウ)何が 00040290M18すきぞといへば、菓子の/内(うち)でハ/焼(やき)もちがやうござるといふ 00040300M19た。 00040310¥P143 00040320¥N16¥J 00040330¥X十六△或人/腰本(こしもと)をちやうあひせらるゝ事 00040340L3或所に、なにがしのはてといひながら/町(まち)屋ずまゐをする人 00040350L4有。はし/近(ちか)き所へこしもとをつれよせて、/昼(ひる)おこなふてい 00040360L5らるゝ所へ、/或麁相者(あるそさうもの)、ぐハさ+と/戸(と)をあけて、御みま 00040370L6ひ申まするといひければ、/彼(かの)人おどろきながら、さはが 00040380L7(十三オ)ぬ/顔(かほ)にて、是をみよ。/世(よ)におちぶれては、/自身(じしん)へ 00040390L8きをする事よといはれければ、/彼麁相者(かのそさうもの)、これへくださり 00040400L9ませ。いたしてあげませうといふた。 00040410¥N17¥J 00040420¥X十七△/金剛院(こんがういん)/落馬(らくば)の事 00040430L12金剛院といふ人、馬にのりて、どうかしつらう、さかさま 00040440L13におちられけり。つれの人ひきをこして、けがハなひかと 00040450L14(十三ウ)とへば、いや、けがハせず。をれが/金剛院(こんかういん)なれば 00040460L15こそ、けがもせなんだれ。しぜん/土器院(かハらけイん)ならば、/粉(こ)に成で 00040470L16あらうにといハれた。 00040480¥N18¥J 00040490¥X十八△/自堕落(じだらく)/坊主(ばうず)の事 00040500L19むかし/或寺(あるてら)のなにがしハ、いかなますがすきじやといふ事、 00040510M1/洛中(らくちう)にかくれなし。ある/旦那(だんな)、/彼寺(かのてら)へ参だれば、折ふし御 00040520M2坊ハ/留守(るす)にて/小僧(こぞう)二人出あひたり。此旦那、お(十四オ)か 00040530M3しき男にて、ちいさき小僧にさゝやきて、先度御坊様え/鮒(ふな) 00040540M4ずしを/進上(しんじやう)したが、まいりたかととへば、小僧、ふしぎ成 00040550M5/顔(かほ)にて、それハしりませぬ。こちの御坊様ハ、いかなます 00040560M6こそすきなれといふ。又一人のが/聞(きゝ)て、おふを、こちやつ 00040570M7げふよといふた。 00040580¥N19¥J 00040590¥X十九△/替(かハり)たる事を/好(このむ)事 00040600M10かハりたる事をこのむ人、下男を/呼(よび)(十四ウ)て、よそへ/音= 00040610M11信(いん=しん)をしたきが、何にてもむかしから人のつゐにつかハぬ、 00040620M12めづらしき見事なる物がやりたいといへば、下男きゝて、 00040630M13思ひつけました。かうて参ませふとてはしり出て、しばら 00040640M14く有てかへりて、かわつたものをかふて参ましたといふ。 00040650M15/主人(しゆじん)よろこびて、何ぞといへば、でかしたるにてハござり 00040660M16ませぬかといふ、とりだし(十五オ)たをミれば、大なる 00040670M17ゐはいにてあつた。 00040680¥P144 00040690¥N20¥J 00040700¥X二十△ぬけたるむすこの事 00040710L3十六七なるざうり取ども、へやのかたすミに、れきをおや 00040720L4して、あほのけにねながらながめゐたるところへ、/十(とを)斗な 00040730L5るとなりのむすこ、のぞきにきたを、やがてよびよせて、 00040740L6これをなぶりてくれよといへば、いやといふを色&たのミ 00040750L7て、/銭(ぜに)三もんやるやく(十五ウ)そくにて、なぶらせけり。 00040760L8ひたとなぶるほどに、うつむきたるむすこがはうさきくだ 00040770L9り、水/鉄炮(でつはう)ほどはせかけたり。むすこ/腹(はら)をたて、うんだら 00040780L10うんだといひハせいで、是なら四もんでもいやじやといふ 00040790L11た。 00040800¥N21¥J 00040810¥X二十一△/行水(ぎやうずい)して/蛇(くちなハ)にくハるゝ事 00040820L14或者、夏のくれかた、せどにて行水してゐたる処へ、くさ 00040830L15の中より/蛇(へび)/一筋(ひとすぢ)(十六終オ)出て、たちすましたるれきの/真(まん) 00040840L16中を、しかとくひつきたり。あハてさハぎて、をとゝをよ 00040850L17びたり。/弟(をとゝ)、心得たりとて、ながたなおつとり/切(きり)にかゝる。 00040860L18/兄(あに)がいふやう、あハてゝそつじをするな。よく目をミてき 00040870L19れ。目のなきハ、をれが物じやぞといふた。 00040880¥Y1当世手打笑第四終(十六終ウ) 00040890¥P145 00040900¥Y1当世手打笑第五目録 00040910L3一△/大(おほ)き/成(なる)/虚言(きよごん)の事 00040920L4二△/吉岑(よしミね)え目/薬(ぐすり)取に行事 00040930L5三△/火事(くハじ)見舞の事 00040940L6四△/堀(ほり)川にて/鍔(つば)をかふ事 00040950L7五△/数寄者(すきしや)かこひを/建(たて)る事 00040960L8六△/湯治(とうぢ)して/髪(かミ)/剃(そる)事 00040970L9七△/年始(ねんし)に/耳(ミヽ)の/聞(きこ)えぬ事(一オ) 00040980L10八△/黒谷(くろだに)/門前(もんぜん)のうつけの事 00040990L11九△むすこ夜ありきする事 00041000L12十△/墨跡(ぼくせき)のはなしの事 00041010L13十一△/間男(まおとこ)といはるゝ事 00041020L14十二△/座頭(ざとう)をとまらする事 00041030L15十三△/麁相(そさう)なる/下女(げじよ)が事(一ウ) 00041040¥T1当世手打笑第五 00041050¥N1¥J 00041060¥X一△/大(おほ)きなる/虚言(きよごん)の事 00041070M5ぎやうなる/空言(そらごと)をいふ者有しが、或者、/当世(たうせい)ハにハか/盲目(もうもく) 00041080M6がおゝいといふ。/彼(かの)者、あのもうもくのはやるハ、をれが 00041090M7/親仁(おやじ)がはじめられた事じやといふ。それハどうした事ぞと 00041100M8いへば、をれが親仁、/清水(きよミづ)の/舞台(ぶたい)にて/桃(もゝ)をくふてゐられた 00041110M9が、どうかしつらん(二オ)/桃(もゝ)を取おとし、何がしハきおや 00041120M10ぢなれば、/南無(なむ)さんぼうといひてとびをりられしが、とん 00041130M11とおちつくはづミに目の/玉(たま)がぬけました。/桃(もゝ)をくふてつぶ 00041140M12れたによつて、ひよ+とつぶれる目をば、/俄(にハか)もゝくとい 00041150M13ひまする。 00041160¥N2¥J 00041170¥X二△/吉峯(よしミね)え目/薬(くすり)取に行事 00041180M16或者、めをわづらひしが、/吉岑(よしミね)へ目薬を取(二ウ)(三オ挿絵) 00041190M17にやりてさしたれば、すきとなをりたといふ。とつとぬけ 00041200M18たる男/聞(きゝ)て、目薬が/吉岑(よしミね)に/沢山(たくさん)にござるかといふ。/一山(いつさん)の 00041210M19/内(うち)にハどこにもござるといふ。をれもとりに/行(ゆき)ませうとい 00041220¥P146 00041230¥G 00041240L12ひしが、あくる/晩(ばん)にきたりて、けふよしミねへ/行(ゆき)て尋たが、 00041250L13目薬らしい物ハなかつたといふ。どうしやつたといへば、 00041260L14木のねにあらうと思ひ、ほりかへしてミましたといふた。 00041270L15(三ウ) 00041280¥N3¥J 00041290¥X三△/火事(くハじ)/見廻(ミまひ)の事 00041300L18或所に/火事(くハじ)いできけるが、/隣(となり)え/大勢(おほぜい)見/舞(まひ)て、もみけしたり。 00041310L19/亭主(ていしゆ)/云様(いふやう)、/隣迄(となりまで)やけましたにのがるゝ事ハ/皆(ミな)様の/御影(おかげ)でご 00041320M1ざる。/酒(さけ)をまいりませいとて出しけり。やかましき/上(うへ)に/御(ご) 00041330M2ざうさでござるといへば、亭主、是ハ扨、何事もいたしま 00041340M3せぬにお/礼(れい)でござるといへば、ぬけたるむすこ(四オ)すゝ 00041350M4み出て、その/代(だい)に、そちのやけるときに、こちから参ませ 00041360M5うといふた。 00041370¥N4¥J 00041380¥X四△/堀(ほり)川にて/鍔(つば)をかふ事 00041390M8或者、堀川にてよき/比(ころ)なる/鍔(つば)をねぎりしが、折ふし、/代物(だいもつ) 00041400M9なくて、/後(のち)に取におこさうとて/宿(やど)にかへり、/小者(こもの)をよびて、 00041410M10此/銀(かね)をもちて、いまの/鍔(つば)をとてこひといへば、かしこまり 00041420M11ましたとて出たりしが、/日暮(ひくれ)になれども(四ウ)(五オ挿絵) 00041430M12かへらず。何としたるぞとせんぎする所へ、によこ+と 00041440M13/帰(かへり)た。/鍔(つば)をとてきたかといへば、何程尋ましても、今の見 00041450M14/世(せ)ハござりませなんだ。けつく、よい鍔かふて参ましたと 00041460M15て、とりいだしたをみれば、くハんすのふたであつた。 00041470¥N5¥J 00041480¥X五△/数寄者(すきしや)かこひをたてる事 00041490M18/数寄(すき)者、かこひを/建(たて)られしに、むすこ、其咄をする処へ、/町(ちやう) 00041500M19の/年寄(としより)、とつと/文盲(もんもう)なるが(五ウ)来りて、其かこひの/名(な)ハ 00041510¥P147 00041520¥G 00041530L12何と申といふ。彼むすこハ/額(がく)の事をとふかと思ひて、/松月(しやうげつ) 00041540L13と申まするといへば、彼年寄殿、其晩に町の/会所(くハいしよ)え五人/組(ぐミ) 00041550L14をよびあつめて、そんじやうそれハ、是程/御法度(ごはつと)の/遊女(ゆうじよ)を 00041560L15かゝえて/傾城(けいせい)屋をしやるが、/各(おの+)ハ/御(ご)存か。/急度(きつと)せんぎをし 00041570L16ませうといふ。ミな、きもをつぶして、是ハふしきな事で 00041580L17ござりまする。こなた(六オ)様ハどこで/御聞(おきゝ)被成たといへ 00041590L18ば、/慥(たしか)な事。しかもむすこが/語(かた)られました。/傾城(けいせい)ハかこひ 00041600L19でござる。/名(な)も聞ました。/松月(しやうげつ)といひまする。とかく/油断(ゆだん) 00041610M1ハならぬといはれた。 00041620¥N6¥J 00041630¥X六△/湯治(とうぢ)して/髪(かミ)を/剃(そる)事 00041640M4/或侍(あるさふらひ)、/病気(びやうき)に/付(つき)/湯治(とうぢ)仕度候と/殿(との)へ申上ければ、/如何(いか)にも 00041650M5ひまをとらする程に、なに事も心まかせに/緩&(ゆる+)と仕れとあ 00041660M6れば、(六ウ)(七オ挿絵)/御意(ぎよい)忝と/悦(よろこび)て/有間(ありま)に/湯治(とうぢ)しけり。心 00041670M7/持(もち)ハよけれ共、ぬれたる/髪(かミ)の/雫(しづく)身にかゝりてきのどくじや 00041680M8といへば、つれいふやう、何事も心まかせにせよとの/御意(ぎよい) 00041690M9有/上(うへ)ハ、それ程/苦(く)にならば、又はゆる物じや程にすられよ 00041700M10といへば、/尤(もつとも)也とて其/侭(まゝ)/坊主(ばうず)になり、是で一/段(だん)心もかろ 00041710M11しと/悦(よろこび)けり。やう+/日数(ひかず)かさなれば/国(くに)え/帰(かへ)る。/親類(しんるい)一 00041720M12/門(もん)これを見て、こ(七ウ)ハ/如何(いか)成事ぞといへば、有し/次第(しだい) 00041730M13をかたる。いかに/殿(との)の心まかせと/御意(ぎよい)有とても、是ハかく 00041740M14/別(べつ)成事じや。とかく申/上(あげ)いてハかなふましきとて申上たれ 00041750M15ば、手を打てぎやうてん被成た。/扨(さて)、/御前(ごぜん)えふるひ+出 00041760M16たり。其/方(はう)ハ/坊主(ばうず)に成て、/俗名(ぞくめう)でハすまぬ物じやとて、/御(お) 00041770M17咄の者を/召(めし)て、あれに名を付てとらせよと仰ければ、その 00041780M18まゝ/安(やす)わんとつけたり。/殿(との)/聞召(きこしめし)て、是ハ/珍(めつ)(八オ)らしき名 00041790M19じや。何たるしさいぞと仰ければ、さうじてねだん/安(やす)きご 00041800¥P148 00041810¥G 00041820L12きハ、/湯(ゆ)に入ますれば其/侭(まゝ)そりまする。此男も/湯(ゆ)ニ入ると 00041830L13そりましたゆへに、/安椀(やすわん)でござりまするといふた。 00041840¥N7¥J 00041850¥X七△年始に/耳(ミヽ)の聞えぬ事 00041860L16或者、年の/始(はじめ)にいふやう、私ハよひのとしから、みゝが聞 00041870L17えいで、つんぼうに成ましたといひければ、/理発(りはつ)なる人、 00041880L18それをきにかきやるな。ことし(八ウ)から仕合がよからう。 00041890L19/福(ふく)つんでめでたいぞといへば、/悦(よろこ)ぶ事かぎりなし。それを 00041900M1ぬけたる者聞て、よきとうわ也。どこぞていはんと思ひ、 00041910M2それよりひた物ありけども、/耳(ミヽ)の/聞(きこ)えぬといふ者もなし。 00041920M3かゝる処へ、ふくといふ/下女(げじよ)がきたりければ、やれ、われ 00041930M4ハつんでハなひかといふ。あちにハ、かるたの事と思ひて、 00041940M5いや、此春はほうびきをしまするといふた。(九オ) 00041950¥N8¥J 00041960¥X八△/黒谷(くろだに)/門前(もんぜん)のうつけの事 00041970M8黒谷門前に/道心(だうしん)の/庵(あん)有。よな+/戸(と)をたゝきて、たそとい 00041980M9へば、にげて/行者(ゆくもの)有。こよひもきたらばとらへんとて、/道= 00041990M10心者(だう=しんじや)十人斗/待(まち)かけしが、/夜半(やはん)の/比(ころ)に/例(れい)のごとく、こと+ 00042000M11とたゝく。すハやきたぞとて、手/毎(ごと)にひをともし、/棒(ぼう)を/持(もち) 00042010M12出てとらへたり。何者ぞといへば、/盗人(ぬすびと)でもござらぬ。/毎= 00042020M13夜(まい=や)/戸(と)をたゝくも、/皆(ミな)是/後生(ごしやう)のためで(九ウ)ござるといふ。 00042030M14こハ何事ぞといへば、はてさて、道心に/似合(にあハ)ぬ事を仰らる 00042040M15ゝ。/貞安(ていあん)の/御談義(おたんぎ)に、とかく此/夜(よ)ハかりの/夜(よ)ぞ。道心おこ 00042050M16せとのおすゝめなれば、/毎(まい)よおこしまするといふた。 00042060¥N9¥J 00042070¥X九△むすこ夜ありきする事 00042080M19ひやうきん成むすこ有。親仁、よありきを/折檻(せつかん)すれども、 00042090¥P149 00042100L1/更(さら)にもちゐず。/殊(こと)に/盆(ぼん)にハ/猶(なを)出けるが、或/時(とき)、/女出立(をんなでたち)をし 00042110L2て夜あくる/迄(まで)おどり、く(十オ)たびれて/部(へ)やに入、/彼出立(かのでたち) 00042120L3のまゝにて打ころぎてねたり。/昼(ひる)になれどおきざれば、親 00042130L4仁ふしぎして/部(へ)やへ行てみれば、ミなれぬ女、ぜんごもし 00042140L5らずねてゐたり。是ハ何者ぞ。むすこハどこへ行たぞと、 00042150L6せんさくするこゑにめをさまし、大き成こゑにて、松/坂(ざか)こ 00042160L7えてやつさといひさま、せどへにげた。 00042170¥G 00042180¥N10¥J 00042190¥X十△/墨跡(ぼくせき)のはなしの事(十ウ)(十一オ挿絵) 00042200M3/或貴人(あるきにん)の御まへにて、酒の上に、かけ物/墨跡(ぼくせき)のはなしがあ 00042210M4つた。壱人、かたハらの/麁相(そさう)者にむかひ、/昔(むかし)よりすたらぬ 00042220M5物ハ手でござるといふ。麁相者、いかにもさやうでござる 00042230M6といふ。/貴人(きにん)/聞召(きこしめし)、其/方(はう)も、/て((ママ))/数寄(ずき)かと仰ければ、すきで 00042240M7ござりまするといふ。をれもすきで/集(あつめ)てをいた程に、取よ 00042250M8せうとて、/小性(こしやう)よび給ふに、おそく成ければ、彼麁相者、 00042260M9/私(わたくし)申/付(つけ)ませうとて、かつてへ(十一ウ)立たり。しばらくし 00042270M10て/大(おほき)な/鉢(はち)をかゝへてきたり、/御前(おまへ)様の/御(ご)すきほどござりま 00042280M11して、よいのがござりましたとて、/下(した)にをいたをみれば、 00042290M12たこの手てあつた。 00042300¥N11¥J 00042310¥X十一△人に/間男(まおとこ)といハるゝ事 00042320M15或女房/懐妊(くハいにん)しけるが、うゐの事なれば/恥(はづ)かしく思ひてゐ 00042330M16たり。或/時(とき)はらをいたミけれ共、男ハ/留守(るす)也。いかゞせん 00042340M17と思ふ所へ、ゐしやみま(十二オ)ハれた。此由をみて、薬を 00042350M18あたへられしが、まだなをらぬといふ。さあらば/腹(はら)をミま 00042360M19せうとて/腹(はら)をみて、是ハ/懐妊(くハいにん)じや。是をとうからいひもせ 00042370¥P150 00042380L1いで、しやうが有物をといふ処へ、男かへりた。その/侭(まゝ)ゐし 00042390L2やをとらへて、/間男(まおとこ)じや。にがしハせぬぞといふ。ゐしや、 00042400L3ぎやうてんして、何を/証拠(しやうこ)にさやうにいはるゝぞといへば、 00042410L4/懐妊(くハいにん)をとうからいハひで、しやうが有にと、たつた/今(いま)いやら 00042420L5ぬ(十二ウ)か。したゝかしたそうなといふ。ゐしや、はじ 00042430L6めおハりをいひければ、男いふやう、なんのせんさくもい 00042440L7らぬ。そなたの物をだしやれ。/目利(めきゝ)が有といふ。ゐしや聞 00042450L8て、是ハ/迷惑(めいわく)なれども、くもりなき/上(うへ)からじや程に、だし 00042460L9ませうとて、れきを、によつと/出(だ)された。男、ふつとかい 00042470L10でミて、是でこそ/間(ま)男でない。しやうこハしれたれといふ 00042480L11た。さてハくさいに/極(きハまり)た。(十三オ) 00042490¥N12¥J 00042500¥X十二△/座頭(ざとう)をとまらする事 00042510L14/座頭(ざとう)を/二人(ふたり)、/二階(にかい)にとまらせて、/下(した)にてきびしく/取(とり)ければ、 00042520L15/二人(ふたり)の/座頭(ざとう)/聞付(きゝつけ)て、/扨(さて)も/心(こゝ)ちよい事/哉(かな)。いざおりてきくま 00042530L16ひかといふて、/下(した)にひのともして有をもしらず、まつはだ 00042540L17かにてはしごをおるゝを、/亭主(ていしゆ)見付て、/座頭(ざとう)ハどこへゆき 00042550L18やるといへば、せんかたなさに、おやしたるれきをにぎり 00042560L19て、是程な/鰹(かつほ)ぶしハ(十三ウ)爰元で何程し/□((まカ))せうといふ。/跡(あと) 00042570M1の座頭が、おきづかひ被成まするな。/聞(きゝ)ハいたさぬといふ 00042580M2た。 00042590¥N13¥J 00042600¥X十三△/麁相(そさう)なる/下女(げす)が事 00042610M5或所に、/亭主(ていしゆ)おかたとしぐみて、やう+/矢(や)かずも/通(とを)り、 00042620M6/最早(もはや)天下をとるをりから、おかた、しにまする+といは 00042630M7れた。/次(つぎ)のまにねてゐたる/下女(げす)、是を聞て、そと/障子(しやうじ)をあ 00042640M8けて、申し+といへば、/二人(ふたり)ながらおどろきて、何事ぞ 00042650M9(十四終オ)といへば、いや、おか/つ((ママ))様の/生(いき)てござりまする内 00042660M10に、/給(きう)の/残(のこり)をくだされませいといふた。 00042670¥Y1当世手打笑第五終 00042680¥Q 00042690M14△△延宝九年正月吉日 00042700M15△△△△△△△△△△△△△敦賀屋△弥兵衛(十四終ウ) 00042710¥P151 00042720¥U噺本大系△第五巻 00042730¥T当世口まね笑 00042740¥G 00042750¥Y 00042760L15延宝九年三月序 00042770L16一笑軒序 00042780L17半紙本五巻 00042790L18天理図書館蔵(巻一〜四) 00042800京大文学部図書室蔵(軽口売正月巻五) 00042810¥Y 00042820M1/江潭(かうたん)の/漁父(ぎよふ)は/船(ふな)ばたをたゝき、/経蔵(きやうぞう)を見れはふけんじふた 00042830M2いじハ手を打、/頭巾(づきん)きせたるみゝつくをミて、/小鳥(ことり)どもた 00042840M3かつてかしましく、/猿(さる)のしりにひつつく/猿(さる)、これらハミな、 00042850M4/他(ひと)をそしるのわらひなり。/延喜(ゑんぎ)の/聖帝(せいてい)ハ/慈悲(じひ)/忍辱(にんにく)の御/眼(まなこ)よ 00042860M5り、つねにゑみ給ふ。又/迦葉拈花(かしやうねんけ)して/微笑(ミせう)せられしハかた 00042870M6いさた。春山如笑と/古詩(こし)に見えた。是ハ(一オ)/景気(けいき)のさ 00042880M7たであらふ。今此一/冊(さつ)をひろげてミれば、かのゑひす三郎 00042890M8殿ハ、/西(にし)の/海(う□)にて大鯛を/釣(つり)て笑ひ、/盧山(ろさん)の/恵遠(ゑをん)ハ/虎渓(こけい)の/橋(はし) 00042900M9をこえて、/腹(はら)すぢの/皮(かハ)をよられたたぐひ。此さうしをとも 00042910M10とするに、もらひわらひするゆへに、口まねわらひといふ 00042920M11も又おかし。 00042930M13△延宝九年△辛酉△三月上旬△△△△△△一笑軒叙(一ウ) 00042940¥P152 00042950¥Y1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第一/目録(もくろく) 00042960L3一△あはうなる/男(おとこ)/風呂(ふろ)へ/入(いる)事 00042970L4二△/御門跡(ごもんぜき)の/松拍子(まつはやし)に/不審(ふしん)の事 00042980L5三△わさ/米売(ごめうり)/火事場(くハじば)を/通(とを)る事 00042990L6四△/博奕打(ばくちうち)と/行人(ぎやうにん)と/身上(しんしやう)/物語(ものがたり)の事 00043000L7五△/年玉(としだま)の/扇(あふぎ)を/買(かふ)事 00043010L8六△/新敷事(あたらしきこと)を/云(いひ)たがる/者(もの)の事 00043020L9七△/玉子(たまご)の/料理(れうり)/好(このむ)事(二オ) 00043030L10八△/口(くち)がしこい/奉公人(ほうこうにん)の事 00043040L11九△/花車(きやしや)な/碓踏(からうすふミ)の事 00043050L12十△/手代(てだい)を/借銭(しやくせん)こひに/遣(つかハす)事 00043060L13十一△/牢人(らうにん)まじなひの事 00043070L14十二△/忝(かたじけなき)と/云(いふ)を/頂妙寺(てうめうじ)と/書(かく)事 00043080L15十三△とへう/者(もの)正月の/礼(れい)に/行(ゆく)事 00043090L16十四△/麁相者(そさうもの)/薬(くすり)/煎(せん)ずる事 00043100L17十五△/麁相者(そさうもの)/酒(さけ)に/酔(ゑひ)/誹諧(はいかい)する事 00043110L18十六△/鷺(さぎ)の/絵(ゑ)をかく事(二ウ) 00043120¥T1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第一 00043130¥N1¥J 00043140¥X一△あはうなる/男(をとこ)/風呂(ふろ)へ入事 00043150M5/去所(さるところ)に/成程(なるほと)あはう/成(なる)おとこ、/旦那(だんな)の/振舞(ふるまひ)にゆかれたる/供(とも)を 00043160M6して/帰(かへ)り、/内(うち)にてはうばい共に/云(いふ)やう、/扨&(さて+)/腹(はら)の/立(たつ)事じや。 00043170M7けふハ振舞の/後(のち)、日くれに/風呂(ふろ)かあつたが、おれにも入れ 00043180M8と云たによつて入たが、/殊外(ことのほか)あなづりをつて、おれが入て 00043190¥G 00043200¥P153 00043210L1から、/内(うち)ハくらやミじやに、/火(ひ)さへとぼさなんだと(三オ) 00043220L2いへは、はうばいどもおかしがり、扨/風呂(ふろ)へ入て、いかや 00043230L3うにあつたぞととへば、されば、くらがりにて内ハ見えぬ 00043240L4が、風呂の/内(うち)ハ/殊外(ことのほか)ひろ/た((ママ))事さうなり。またいろ+の事 00043250L5が有さうな。まづ/大木(たいぼく)を引やらして、ゑだがさハりまする 00043260L6といふ。/夜(よ)うりが有やら、/蛸(たこ)+といふ。/伊勢(いせ)の/道者(たうしや)も有 00043270L7やら、さつとおはらひ+と云、それニ/茶(ちや)屋も有と見えて、 00043280L8しやうぎへとをれと云。(三ウ)(四オ挿絵)其外/振舞(ふるまひ)やら何や 00043290L9らして、是ハけつかうなおいきを下されますると云。其内 00043300L10に/病人(ひやうにん)も有やら、ひえものでござるといふたといへハ、は 00043310L11うばいとも殊外おかしがり、もはやそれバかりかといへは、 00043320L12いや、まだいつち、うらやましひ事かあつたハ。/奥(おく)で酒も 00043330L13りをしをつて、おあひはこざらぬか+といふた。 00043340¥N2¥J 00043350¥X二△/御門跡(ごもんぜき)の/松拍子(まつはやし)に/不審(ふしん)の事(四ウ) 00043360L16さるものいふやうハ、御門跡の松はやしにハ、/坊主衆(ばうずしゆ)か/能(のう) 00043370L17をするときいたが、それに付不審かあるといふ。されば、 00043380L18坊主衆ハゑぼうしがきられまひとおもふことじや。/俗人(ぞくじん)ハ 00043390L19かミにかけるが、ばうず衆のハ/合点(がつてん)がゆかぬといふ。/中(なか)に 00043400M1も口がしごき者有ていふやう、いかにも是ハ尤なるふしん 00043410M2じや。坊主衆もようぬかろハひの。まへかどから、あたま 00043420M3に/折針(をりくぎ)をうつておかるゝといふた。(五オ) 00043430¥N3¥J 00043440¥X/二((ママ))△/早米売(わさごめうり)/火事場(くハじば)を/通(とを)る事 00043450M6七月にわさ米うり、/手桶(ておけ)に入て/町(まち)を/売(うつ)て/通(とを)りしか、其/町(てう)/不= 00043460M7慮(ふ=りよ)に手あやまちをしけれハ、/近所(きんしよ)の/者(もの)ふためいて、やい、 00043470M8そこな手桶さげたおとこ、水をかけよ+といへハ、い 00043480¥G 00043490¥P154 00043500L1や、おれハわさ米を売て通るものじやといふ。/彼者(かのもの)聞て、 00043510L2わさ米うりならハ、/法界(ほうかい)のために火もとへ水をむけていね 00043520L3とわめきた。(五ウ)(六オ挿絵) 00043530¥N4¥J 00043540¥X四△/博奕打(ばくちうち)と/行人(きやうにん)/身上(しんしやう)/物語(ものかたり)の事 00043550L6行人と博奕打と/咄(はな)しけるが、行人か/語(かたり)しハ、我等が/身上(しんしやう)程 00043560L7うき事ハあらし。/足(あし)にもあハぬ/高木履(たかぼくり)をはき、ひよりハよ 00043570L8うても/常住(じやうぢう)しる道をつたふやうて、はかもゆかす。もらひ 00043580L9のない時は、/弥(いよ+)あたまから/丸(まる)はだかの行人じやといふを、 00043590L10ばくちうちが聞て、我等もおなし事じや。かるたにあびら 00043600L11うんけんや三まいぼうろんが入たてば、(六ウ)程なうはだ 00043610L12かにかいなりまする。是を思ふに、すまふとりかよい物じ 00043620L13やハ。まけても/勝(かち)ても、両方かはだか/勝負(せうふ)といふた。 00043630¥N5¥J 00043640¥X五△/年玉(としたま)の/扇(あふき)を/買(かふ)事 00043650L16/雑式(さうしき)の/下代(したたい)、/年頭(ねんとう)に/町(まち)を/行(ゆき)けるか、扇うりにゆきあひ、扇 00043660L17買ふと云。/売手(うりて)、/箱(はこ)よりあふぎを出しミせけるが、やすあ 00043670L18ふぎのくせとして、ひろぐるとひとしく、かなめぬけたり 00043680L19しを、/下代(しただい)、やにハに(七オ)/箱(はこ)に打入、取て行を、扇うり、 00043690¥G 00043700M12きもをけし、是はいかにといへハ、はしりものハめしあげ 00043710M13になる/法(ほう)じや。是もかなめのはしりものじやといふ。あふ 00043720M14ぎうり、こまりて、しからバ箱ハ下されといへば、下代/重= 00043730M15而(かさね=て)いふ、/家(いへ)ともにあがり物じや。こごといふてやまされな 00043740M16といふた。 00043750¥N6¥J 00043760¥X六△/新敷(あたらしき)事をいひたがる/者(もの)の事 00043770M19何にてもあたらしい事をいひたがる者、あたま(七ウ)のは 00043780¥P155 00043790L1げた人にいふやうハ、其方のさかやきハ、よい/小判(こばん)の/小判= 00043800L2の((ママ))やうなといへハ、此人聞て、おさないのさかやきこそ小 00043810L3判のなりとこそいへ、おれがごとくはげあたまハやくハん 00043820L4とこそいへと申せハ、さればこそ、はげたによつて小判と 00043830L5ハいふ。それハいかにととへハ、きんかとミゆるといふ事 00043840L6じや。やくハんハいかふふるいといふた。 00043850¥N7¥J 00043860¥X七△たまごの/料理(れうり)/好(このむ)事(八オ) 00043870L9/寒夜(さむきよ)二三子打より、たまごをまさな事してあそびけるが、 00043880L10ひとり/愚痴(ぐち)なるおとこのいふは、たまごのふハ+ハ、さ 00043890L11い+でめづらしくもないが、/少(ちと)こんにやくがくふてミた 00043900L12いといふ。/友達(ともたち)おかしく/思(おも)ひて、こんにやくのハ/終(つゐ)に/承(うけたまハ) 00043910L13らぬといへハ、かのおろかもの、いかにも、こんにやくで 00043920L14も/致(いた)す。其せうこにハ/門(かど)を、こんにやくふハ+とうるハ 00043930L15さてといふた。 00043940¥N8¥J 00043950¥X八△口がしこい/奉公人(ほうこうにん)の事(八ウ)(九オ挿絵) 00043960L18さる人、一/門(もん)より頼まれたるとて、/出替(でかハり)はるか過て奉公人 00043970L19をおき、/給分(きうぶん)/如何程(いかほど)とねぎりて云事ハ、今/季中(きなか)の事じやに、 00043980M1ひらにそれほどで行てくれよ。一/門(もん)の中のしや程にといへ 00043990M2は、此/奉公人(ほうこうにん)、口のよいやつにて、されば一もんの中なれ 00044000M3バ、きなかでも給分をまけましてハ先参るまひといふた。 00044010¥N9¥J 00044020¥X九△/花車(きやしや)な/碓踏(からうすふミ)の事 00044030M6さる/米(こめ)ふミのとゝ、しまふて/食(めし)を/喰(くらふ)を、/亭主(ていしゆ)つく(九ウ) 00044040M7+と見ていはるゝ事ハ、其方ハ食も/大分(たいぶん)ハならず、いか 00044050M8うきやしやなと申さるれハ、からうすふミよろこびて、い 00044060M9かにもわたくしハ、よのつねの米ふミとハちがひましたと 00044070M10いふ。それハ何とちかふたぞとあれハ、されば、よのつね 00044080M11のハからうすをふミ、わたくしハきやらうすふミで/御座(ござ)る 00044090M12といふた。 00044100¥N10¥J 00044110¥X十△/手代(てだい)を/借銭(しやくせん)こひにつかハす事 00044120M15/或人(あるひと)、/金銀(きん※)をおゝせ、手代をこひにやれども、一(十オ)分 00044130M16もおこさねハ、/主人(しゆじん)、手代をよびつけ、なにといふぞと尋 00044140M17らるゝ。手代申やう、何ともならぬもがりでこざりまする。 00044150M18すこしかたがつきさうでハ、あちらこちらとへらをつかひ 00044160M19まして、もんのないやつで御座ると申。/旦那(たんな)聞て、其こと 00044170¥P156 00044180L1く、もがりでへらをつかひかたもつかず、もんもなくハ、 00044190L2/定而(さだめて)/紺(こん)屋のならず者のはてゝあらふと云た。 00044200¥N11¥J 00044210¥X十一△/牢(らう)人まじなひの事(十ウ) 00044220L5あるさふらひ、/茶釜(ちやがま)をあつらへしに、かなけの出ぬやうに 00044230L6と、かたからやくそくしけるに、いかにしてもかなけ出け 00044240L7れハ、/鍋(なべ)屋へ行、さん+にねだりける/処(ところ)へ、/日比(ひころ)/念比(ねんころ)す 00044250L8るずんどすりきりたる/牢人(らうにん)/来(きた)りて、此やうすを聞て、かな 00044260¥G 00044270M1けの出ぬやうにましなふてやらうといふ。/鍋(なべ)屋よろこび/頼(たの) 00044280M2ミけれバ、/腰(こし)よりふるき/巾着(きんちやく)を取出し、/茶釜(ちやかま)の中へ入て 00044290M3(十一オ)まハしけれハ、なべ屋ミて、どうした事ぞととふ。 00044300M4されば此巾着にハ廿ケ年このかた、かなけといふものかい 00044310M5らぬゆへ、これにあやかるやうにといふた。 00044320¥N12¥J 00044330¥X十二△/忝(かたしけなし)と云を/頂妙寺(てうめうじ)と/書(かく)事 00044340M8さる所へさかなを/送(をく)りけるに、其/返事(へんじ)に、御/肴(さかな)をくり下さ 00044350M9れ、頂妙寺に奉存候と書をこした。/亭主(ていしゆ)見て、此頂妙寺が 00044360M10/合点(がつてん)ゆか(十一ウ)(十二オ挿絵)ぬ。さだめてひけてミゆると 00044370M11いふ事で有らうと、かのものゝところへゆき、さん+に 00044380M12はらたてける。/彼者(かのもの)聞て、頂妙寺といふ事をしられぬか。 00044390M13/忝(かたしけなき)といふ事じやといふ。それハどうした事ぞととふ。 00044400M14されば、頂妙寺にハ/片(かた)一/方(ほう)/寺家(じけ)がなけハ、かたじけない 00044410M15といふ事じやと云た。 00044420¥N13¥J 00044430¥X十三△とへうもの正月の/礼(れい)に行事 00044440M18/或(ある)とへうもの、正月に/知音(ちいん)の/門礼(かどれい)にありきし(十二ウ)か、 00044450M19さる所にて、物もうといふべきをとりちがへて、どれ+ 00044460¥P157 00044470L1といくこゑもいへども、内よりこたへねば、そこで/気(き)かつ 00044480L2いて、又物もうといひなをせハ、うちより、どれとこたふ。 00044490L3名をいふ事を又取ちかへて、お/出(いで)のよしもうといふて/帰(かへ)ら 00044500L4れた。 00044510¥N14¥J 00044520¥X十四△/麁相者(そさうもの)/薬(くすり)/煎(せん)ずる事 00044530L7あるかたにめしつかハるゝ/麁相(そさう)者、くすしのかたへくすり 00044540L8を取にやりけれバ、/医者(いしや)/薬(くすり)を(十三オ)わたす時、しやうが 00044550L9一分いれよと申さるゝ。かしこまりたりとて取てかへり、 00044560L10せんずる時、しやうがなけれハ/唐(たう)がらしを一分入てせんず 00044570L11る。時に/旦那(だんな)、つゝミかミを見て、やい+、しやうが壱 00044580L12分いれたかといふ。麁相者いふやう、しやうがハ御座りま 00044590L13せぬゆへに、からミに/唐(たう)がらしを入ましたといふた。 00044600¥N15¥J 00044610¥X十五△そさうもの/酒(さけ)に/酔(ゑひ)/誹諧(はいかい)する事(十三ウ) 00044620L16さる/誹諧師(はいかいし)、/町(てう)の/会所(くハいしよ)をかりてゐられしか、/麁相(そさう)なるはい 00044630L17かいし、/霊山(りやうぜん)へゆき酒に/酔(ゑひ)てかへりしか、/彼誹諧師(かのはいかいし)のもと 00044640L18へゆきて見れハ、/大勢(おほぜい)よりあつまりて/居(ゐ)る。かのもの、/町(てう) 00044650L19の/寄合(よりあひ)といふ事をしらず、/会(くハい)日じやと思ひ、内へはいりけ 00044660M1るに、/宿老(しゆくらう)/博奕(ばくゑき)/遊女(ゆふぢよ)の事といハれければ、かのそさうもの、 00044670M2△△秋のかせ/軒(のき)をならべてふれながし 00044680M3と付た。(十四オ)/宿老(しゆくらう)聞て、どなたじや。きがちがひハしま 00044690M4せぬかといはれけれハ、/利根(りこん)さうに、/気(き)がちがひましたら、 00044700M5はるかぜになりとも/到(いた)しませうと云た。 00044710¥N16¥J 00044720¥X十六△/鷺(さぎ)の/絵(ゑ)をかく事 00044730M8/或(ある)御/大名(たいミやう)へ/御出入(おいていり)するもの、/絵(ゑ)をすこしかきければ、/殿(との)こ 00044740M9れをきこしめされて、御/普請(ふしん)の/後(のち)、/座敷(ざしき)に一/間(ま)、/彼者(かのもの)に/鷺(さぎ) 00044750M10のゑをかゝせ給ひしが、ことのほかぶてうほう(十四ウ)な 00044760M11りしかハ、/殿(との)のおほせらるゝは、やれ、此/鷺(さぎ)はどんな/鷺(さぎ)だ。 00044770M12あひるのやうなと仰らるゝを、/絵書(ゑかき)いろ+申わけしてゐ 00044780M13るをりふし、御/庭(には)の/泉水(せんすい)へいきたるさぎ、おりしかハ、や 00044790M14れ、あれを見よ。あのごとくにかけよと仰らるゝとき、/絵(ゑ) 00044800M15かき申やう、いや、あのさぎは/公界(くがい)をミぬで御座りまする。 00044810M16わたくしのたゞいまかきまするハ、公界を見たので、あ 00044820M17(十五オ)ひるに/似(に)る/筈(はづ)で御座りますると云た。 00044830¥Y1当世口まね笑第一終(十五ウ) 00044840¥P158 00044850¥Y1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第二/目録(もくろく) 00044860L3一△/文盲(もんもう)なる/医師(いし)の事 00044870L4二△/乞食(こつじき)/誓文(せいもん)/立(たつ)る事 00044880L5三△あぶり/餅(もち)の/子(こ)をうむ事 00044890L6四△わきざしの/身(ミ)をとらるゝ事 00044900L7五△/牢人(らうにん)/蚊屋(かや)を/質(しち)に/置(おく)事 00044910L8六△/文盲成者(もんまうなるもの)/茶碗(ちやわん)の/義理(ぎりを)/問(とふ)事 00044920L9七△/物毎(ものごと)/千少(せんせう)を/云者(いふもの)の事 00044930L10八△/親仁(おやじ)/子共(こどもの)/在付(ありつき)を/咄(はな)す事(二オ) 00044940L11九△あはうりちぎなる/男(おとこ)の事 00044950L12十△/田夫者(でんぶもの)/茶湯(ちやのゆ)に/行(ゆく)事 00044960L13十一△/文盲者(もんまうもの)/振舞(ふるまひ)にゆきし事 00044970L14十二△/利口(りこう)なる/当話(たうわ)をいふ事 00044980L15十三△/文盲成者(もんまうなるもの)/馬道具(ばだうぐ)に/不審(ふしん)の事 00044990L16十四△/杜若(かきつばた)の/謡(うたひ)に/不審(ふしん)/打(うつ)事 00045000L17十五△/西国(さいこく)下りする/者(もの)の事 00045010L18十六△/女郎花(をミなへし)に/義(ぎ)を云事 00045020L19十七△/愚(ぐ)なる/親仁(おやじ)が事 00045030M1十八△/大人(おとな)の/病(やまひ)を/疳(かん)と/云(いふ)事(二ウ) 00045040¥P159 00045050¥T1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第二 00045060¥N1¥J 00045070¥X一△/文盲(もんまう)なる/医師(いし)の事 00045080L5/去(さる)わかき/者(もの)、三/重韻(ぢういん)の/字(じ)をひたとくりならひけるが、三重 00045090L6韻の/奥(おく)に、/入声字(につしやうじ)の所にふつくちきに/平字(へうじ)なしといふ事 00045100L7を、いかほどおもひ出せどもおぼえ得ず。其となりにくす 00045110L8し一人有けり。もとより/文盲(もんまう)/第(だい)一の人なれとも、時の/仕合(しあわせ) 00045120¥G 00045130M1にやありけん、世にもちひられ、/乗物(のりもの)など(三オ)をつらせ、 00045140M2なか+/大才(たいさい)なるかほつきなり。此/若者(わかきもの)、さいはひの事か 00045150M3な。此/薬師(くすし)殿にとハんと思ひ、/彼宿(かのやど)へ行けり。しかるに此 00045160M4若き者も、ふつくちきといふことをおほえはつりていふや 00045170M5う、此三重韻のおくに、くつちかきに平字なしとハ、いかや 00045180M6うに厶り候ぞととひけれハ、かの文盲のくすし、三重韻と 00045190M7いふ事をしらず。しかれども、しらぬとハいはれず。さて 00045200M8+其/方(はう)ハいまだわかい人じやが、な(三ウ)(四オ挿絵)まこ 00045210M9びにこびた。三重韻おぼえて、よいくすりがなあはせうと 00045220M10おもふてかといはれた。 00045230¥N2¥J 00045240¥X二△/乞食(こつじき)/誓文(せいもん)立る事 00045250M13乞食どもたかり、/銭勝負(せにせうぶ)しけるが、ひとり/手目(てめ)をつかふて、 00045260M14せにとりたるのとらぬのとせんさくせしが、此乞食がいふ 00045270M15ハ、扨&わつかなる/有(う)せんがけの事に、手目をする/物(もの)か。 00045280M16/若(もし)手目をしたらハ、われぬ/五器(ごき)をもたす、ふたゝびこもを 00045290M17きぬほうも(四ウ)あれ、手目ハせなんだ。おれを其やうな 00045300M18げひた者じやと思ふかとぬかした。 00045310¥P160 00045320¥N3¥J 00045330¥X三△あぶり/餅(もち)の子をうむ事 00045340L3/喰物(くらひもの)にいやしいばゝあり。人の/餅(もち)をやくそばにゐたりし 00045350L4が、やうやく/餅(もち)のあふれてふつとふくれけれハ、/内(うち)のおか 00045360L5さまのミられて、やい+、あもがやゝうむハといはれけ 00045370L6る時、かのいやしつらのばゝが、おつと、おれかとりあけ 00045380L7ばゝせうとて、(五オ)口へとりあげてのけた。 00045390¥N4¥J 00045400¥X四△/脇指(わきざし)の身をとらるゝ事 00045410L10ぬけさくのおとこ、二/尺(しやく)あまりのだらをさし、よそへ行け 00045420L11るが、いづくにてかとられけん、わきざしの身をぬいてと 00045430L12られ、さやばかりさして内へ帰りしを、/皆(ミな)人見て、身ハ何 00045440L13としたととへば、そこで/気(き)がついて、さやをひた物たゝい 00045450L14てミるを、/誰(たれ)もおかしがりて、/鍔(つば)の/有物(あるもの)が、其さやの中(五 00045460L15ウ)へ入物かといへば、ぬけさくいふやう、いや+、七 00045470L16/度(ど)たづねて人をうたがへじやと、ひた物たゝいてミた。 00045480¥N5¥J 00045490¥X五△/牢人(らうにん)/蚊(か)屋を/質(しち)に/置(おく)事 00045500L19/或(ある)すりきりの/牢(らう)人あり。日比/謡(うたひ)をすきこのミけるが、其/友= 00045510¥G 00045520M12達(とも=たち)、ある/夜咄(よはな)しに行けれバ、/彼(かの)牢人、なんぞ/馳走(ちそう)をいたし 00045530M13たくおもひけれ共、すきと/銭(せに)はなし。とやせんかくやとお 00045540M14もひ、扨かやを/質(しち)におき、/当分(たうぶん)のまをあはせけるが、ミな 00045550M15+(六オ)(六ウ挿画)さけにえひ、/東北(とうぼく)をうたひしが、/香(か)や 00045560M16ハかくるゝの所で、彼牢人/内証(ないせう)へはいり、でつちにいふや 00045570M17う、扨も+口おしき/次第(しだい)じや。/蚊(か)屋を/質(しち)に/置(おき)たるを/見付(ミつけ) 00045580M18おつたさうな。/東北(とうほく)を/謡(うた)ひて、はちをかゝせおると、さん 00045590M19+に/腹立(ふくりう)しけるが、たゝし、かやを質に置た事か色に出 00045600¥P161 00045610L1た物であらふといふ。でつち聞て、いや、いろにてませね 00045620L2バこそ、いろこそ見えねかやハかくるゝと(七オ)/と((と衍))うたひ 00045630L3ましたといふた。 00045640¥N6¥J 00045650¥X六△/文盲(もんまう)なる/者(もの)/茶碗(ちやわん)の/義理(きり)/問(とふ)事 00045660L6/去者(さるもの)二人よりあひ/茶(ちや)をのむとて、てんもくをひねくりまハ 00045670L7し、なにと、是を/天目(てんもく)とハいかなる事でなづけたるぞとふ 00045680L8しんしけれバ、かの一人の/者(もの)/云(いふ)やう、それをしらぬか。も 00045690L9んまうなる事じや。それハてんがもくつくによつて、てん 00045700L10もくといふといへば、かのふしんしたるもの、大にがてん 00045710L11(七ウ)し、うちうなづき、それは/茶(ちや)わんの/義理(きり)/迄(まで)すんだと 00045720L12いふた。 00045730¥N7¥J 00045740¥X七△/物事(ものごと)/千少(せんせう)をいふものゝ事 00045750L15千少ものが、いふ事にことをかいて/友達(ともだち)に/咄(はな)す事ハ、おれ 00045760L16ハ此程あまりにあぶらあげがくふてミたかつたゆへ、/伽羅(きやら) 00045770L17のあぶらで/鶴(つる)をあげさせてくふたが、なふ、大事ない物じ 00045780L18やと云を、/友達(ともたち)、あまり聞かねて、いかにも、それハをろ 00045790L19(八オ)らもくふたが大事ない物じや。/殊(こと)にじやかうやぢん 00045800M1かうをふつてくふたが、なをよい物じやにと、きよくりた。 00045810¥N8¥J 00045820¥X八△/親仁(おやじ)子共の/在付(ありつき)を/咄(はな)す事 00045830M4こどしよりたる/者(もの)二三人うちより、めん+子共の/芸能(げいのう)に 00045840M5てありつきしものがたりする時、ひとりの/親仁(おやじ)が/咄(はな)しに、 00045850M6わたくしも子を一人もちて、やう+と此中/太皷打(たいこうち)のやく 00045860M7(八ウ)(九オ挿絵)にありつけたといふ。二人のもの聞て、/何= 00045870M8方(いづ=かた)へ/在付(ありつけ)られしといへハ、いや、さのミよい所でもないが、 00045880¥G 00045890¥P162 00045900L1しやぐり/大原殿(おほばらどの)へ出して、かごをになふ太皷打に出したと 00045910L2いはれた。 00045920¥N9¥J 00045930¥X九△あはうりちぎなるおとこの事 00045940L5すりきりのくすし、あるとき/客人(きやくじん)を得られしが、おとこを 00045950L6よび、/餅(もち)三十買ふてこひといはれけれハ、心得ましたとて 00045960L7/銭(ぜに)を見るに、十五文た(九ウ)らず。かのいしやに、ぜにが 00045970L8たりませぬといふ。いしや、きのどくにおもひ、其/方(はう)が/銭(ぜに) 00045980L9なりともたしてゆけといふ。其まゝ/我銭(わがぜに)を十五文そへて、 00045990L10/餅(もち)を三十かふて/来(きた)る。/客(きやく)のまへにていふやう、/旦那(だんな)の/銭(ぜに)十 00046000L11五文、わたくしのぜに十五文、/合(あハせて)三十文がもちで御座る。 00046010L12よふまいりませとしひけり。/医者(いしや)/内証(ないせう)へはいり、さて+ 00046020L13にくいやつじや。/人中(ひとなか)ではぢをかゝせをると、さん+に 00046030L14しかり(十オ)ければ、かのおとこ、されバ、十五文のぜに 00046040L15さへ覚て御座りますればようござりまする。もし御/客(きやく)に/取(とり) 00046050L16まぎれてわすれなされませうかとぞんじまして、ねんのた 00046060L17め申ましたと云た。 00046070¥N10¥J 00046080¥X十△/田夫者(でんぶもの)/茶湯(ちやのゆ)に/行(ゆく)事 00046090M1/去田夫者(さるでんぶもの)、/茶湯(ちやのゆ)に行て、すき屋へ大/脇差(わきざし)をさしてはいりた 00046100M2り。そばなる/相客(あひきやく)せうしかりて、ひそかにいふやうハ、な 00046110M3がいものを(十ウ)ぬかせられよとさゝやきければ、心得ま 00046120M4したといふて、ゆびのさきにて、はなげをひたものぬいた。 00046130¥N11¥J 00046140¥X十一△/文盲者(もんまうもの)/振舞(ふるまひ)にゆきし事 00046150M7さる文盲者、/成程(なるほと)よい衆の所へ振舞に行しか、/書院(しよゑん)、/違棚(ちがひだな)、 00046160M8/床(とこ)、/茶所(ちやじよ)に、きらをミがき立たる/唐(から)の/大和(やまと)の/道具(だうぐ)、かずを 00046170M9つくしてかざられしを、もんまう者見てあいさつに、さて 00046180M10+、色&の御/馳走(ちそう)、かたじけなく存まするハ、か様に(十 00046190M11一オ)さま+のむしぼしを見まする。/殊(こと)に/床(とこ)に七/夕(ばた)の花ま 00046200M12でなされまして、一しほかたじけなふ御座るとのべられた。 00046210¥N12¥J 00046220¥X十二△/利口(りこう)なる/当話(たうわ)を云事 00046230M15/華光寺(けくハうじ)といふに/毎月(まいげつ)/立花(りつくハ)の/会(くハい)有けるが、/会中(くハいちう)にひとり当/話(わ) 00046240M16のよきおとこ、是も/花(はな)一/瓶(へい)さしけるに、さししまひ水など 00046250M17して/跡(あと)に、其花のむかふを、ほうしのとをりしを、(十一ウ) 00046260M18/彼当話者(かのたうわしや)がいふは、あれ+、ばけものよといふ。人&、 00046270M19それハ何といふ事ぞといへバ、されば、花のむかふを/通(とを)る 00046280¥P163 00046290L1ハ見こし/入道(にうだう)よと申されし。 00046300¥N13¥J 00046310¥X十三△/文盲(もんまう)なるもの/馬道具(ばだうく)に/不審(ふしん)の事 00046320L4かしこからぬものどもあつまりゐて、/馬道具(ばたうく)にしほてとい 00046330L5ふ物、なぜに有ぞ。/塩(しほ)かいでもせぬにといふ。こたへて、 00046340L6/鞍(くら)に/海(うミ)が有によりて、しほてといふ。まだふしんがある。 00046350L7/具足(ぐそく)の/指物(さしもの)の(十二オ)うけづゝさす物、何とて、がつたりと 00046360L8ハいふぞととふ。/答(こたへ)て、さふらひは/知行(ちぎやう)をほしがつたり、 00046370L9手がらをしたがつたり、いのちをおしがつたりといふ。 00046380¥N14¥J 00046390¥X十四△/杜若(かきつばた)の/謡(うたひ)に/不審(ふしん)/打(うつ)事 00046400L12あるもの、ともだちどもにいふやうハ、むかしの人は、い 00046410L13かふしハかつたさうな。たび一そくの事をいふて、/後世(ごせ)ま 00046420L14ではぢかきやるといふ。(十二ウ)みな+/不審(ふしん)におもひ、な 00046430L15ぜにといへバ、されば、かきつばたのうたひに、はる※ 00046440L16きぬるたびおしぞ思ふとうたはぬかといふ。其中に、口の 00046450L17きいたものありて、おれハまだふしんがあるといふ。ミな 00046460L18+何事ぞととひければ、たびをはくといふに、はる+ 00046470L19きぬるとうたふが/不審(ふしん)じやといふた。 00046480¥N15¥J 00046490¥X十五△/西国(さいこく)下りする/者(もの)の事(十三オ) 00046500M3西国くだりするもの、/播磨灘(はりまなだ)をのりて/船頭(せんどう)に、此かぜは何 00046510M4風ぞととふ。/船頭(せんどう)がいふ。是は/穴師(あなじ)とて、此/灘(なだ)にめでたき 00046520M5風じやといふ。/乗合(のりあい)の/中(なか)に、壱人のぬく太郎が云事は、あ 00046530M6なじより、ふねにハはしり/痔(じ)の風がよかろとつくした。 00046540¥N16¥J 00046550¥X十六△/女郎花(をミなへし)に/義(ぎ)をいふ事 00046560M9あるものがいふにハ、/小野(をのゝ)/頼風(よりかせ)がおもひものは、(十三ウ)め 00046570M10したきの女てあつたさうな。はなの名も、をんなめしとい 00046580M11ふ。しかのミならず、むせる/粟(あわ)のことしと、花の色にあら 00046590M12はるゝからハ、/有無(うむ)にばいたの女さうなといへるを、さる 00046600M13人聞て、そのやうな事はつゐに承らぬ。何と、うたなどに 00046610M14はない事かとあれば、かのものがいふ事は、いかにも哥に、 00046620M15△△秋の野にたまめきたてるをんなへし 00046630M16とよふで有(十四オ)と申されし。 00046640¥N17¥J 00046650¥X十七△/愚(ぐ)なる/親仁(おやじ)が事 00046660M19/分限者(ぶげんしや)でから/文盲(もんまう)な/親仁(おやじ)、むすこにうたひをならはせ、そ 00046670¥P164 00046680L1の/師匠(ししやう)、ある夜なら/茶(ぢや)くらゐで/呼(よび)て、おやじ/師匠(ししやう)にうたひ 00046690L2を/所望(しよもう)せし時に、/弟子(でし)どもがいふ事ハ、何をかあそばされ 00046700L3う。/定家(ていか)か/桧垣(ひがき)かなどいへハ、/文盲(もんまう)なる/親仁(おやじ)か聞て、いや 00046710L4(十四ウ)+、/定家(ていか)の/家隆(かりう)のは、こゝもとでたび+うけた 00046720L5まハる間、/羅生門(らしやうもん)のシテか/所望(しよまう)申たいとやられた。 00046730¥N18¥J 00046740¥X十八△/大人(おとな)の/病(やまひ)を/疳(かん)と云事 00046750L8/或者(あるもの)、一/方(はう)のかいなをいたミしが、とへうものか/見舞(ミまひ)に/来(きたり) 00046760L9ていふ事は、そなたのわづらひは五/疳(かん)であらふほどに、あ 00046770L10か/蛙(かゑる)か/常山(くさぎ)のむしかを/喰(く)へといふを、/病人(ひやうにん)聞て、/小児(せうに)(十 00046780L11五オ)にこそ五かんといふ/病(やまひ)はあれといへば、五かんかたか 00046790L12いなの病じや程に/赤蛙(あかかゑる)をくやれといふた。 00046800¥Y1当世口まね笑第二終(十五ウ) 00046810¥Y1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第三/目録(もくろく) 00046820M3一△/出雲(いづも)の/大社(おほやしろ)にて/神(かミ)/改(あらため)の事 00046830M4二△/麁相者(そさうもの)/煩人(わつらひにん)を/見舞(ミまひ)に/行(ゆく)事 00046840M5三△/小倉(こくら)三/官(ぐハん)/飴売(あめうり)の事 00046850M6四△/文盲成者(もんまうなるもの)/禁裏(きんり)/咄(ばな)しの事 00046860M7五△/長老(ちやうらう)/談義(だんぎ)に/率爾(そつじ)いふ事 00046870M8六△そこつなる/医者(いしや)の事 00046880M9七△/留主事(るすごと)にとうわくせし事(二オ) 00046890M10八△でつち/餅(もち)の/異名(いミやう)/云(いふ)事 00046900M11九△しはきもの/茶磨(ちやうす)をかさぬ事 00046910M12十△銀袋(かねぶくろ)をひろふてろじあひの事 00046920M13十一△/棚経(たなぎやう)にゆきし/出家(しゆつけ)の事 00046930M14十二△るざらししらぬ/者(もの)の事 00046940M15十三△/遠行(ゑんぎやう)と云事をしらぬ事 00046950M16十四△/小童(こわらハ)に/病人(ひやうにん)/見舞(ミまひ)にやりし事 00046960M17十五△はだか百/貫(くハん)の事 00046970M18十六△/腹筋(はらすぢ)な/儒者(じゆしや)の事(二ウ) 00046980¥P165 00046990¥T1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第三 00047000¥N1¥J 00047010¥X一△/出雲(いつも)の/大社(おほやしろ)にて/神(かミ)/改(あらため)の事 00047020L5十月にハ日本国の神&、/出雲(いづも)の大やしろにてよりあひをな 00047030L6さるゝとかや。/去年(きよねん)の十月に神&よりあつまり給ひ、いろ 00047040L7+/評定(へうぢやう)なさるゝに、此比は/諸国(しよこく)にゑこぜぬ神が有。なに 00047050L8と/吉田殿(よしだとの)、くハんじやうめさるゝかと/仰(おほせ)られしかハ、/祇園= 00047060¥G 00047070M1殿(ぎをん=どの)、いかにもさ(三オ)やうに/承(うけたまハ)つた。ちとあらためたら 00047080M2ハよう御座らふとて、神+をせんさくしてミられけれは、 00047090M3ばち+といふ神あり。祇園殿是を見て、そなたはいづか 00047100M4たにこざる神ぞととハれければ、されバ京/松原(まつはら)/辺(へん)にて御座 00047110M5るといふ。まつハらへんは/玉津島殿(たまつしまとの)あたりで御座るかとい 00047120M6はれけれハ、いかにも其/近辺(きんへん)にてこざりまする。わたくし 00047130M7所ハかくれ(三ウ)(四オ挿絵)もこざりませぬ。すなはち、/額(がく) 00047140M8に新左衛門とかきて御座りますといふ。祇園とのあきれて、 00047150M9新左衛門といふ/額(がく)は、今か聞はしめじや。扨/神躰(しんたい)は何ぞと 00047160M10とひけれは、/渋紙(しぶかミ)で御座りまするといふた。 00047170¥N2¥J 00047180¥X二△/麁相者(そさうもの)/煩人(わつらひにん)を/見舞(ミまひ)に/行(ゆく)事 00047190M13さる人のむすこ、/散&(さん+)わづらひけるか、/麁相者(そさうもの)、わつらひ 00047200M14のよしを聞て、そのまゝ(四ウ)はしりゆき、むすこ殿、御 00047210M15わづらひのよし、承りました。いかい御ちからおとし、申 00047220M16ませうやうも御座らぬといふ。/病人(びやうにん)のおや、なか+はら 00047230M17をたて、また/死(しに)もせぬところへ来りて、とふらひは何事ぞ 00047240M18と、さん+にしかりけれバ、/彼(かの)そさうもの、ぬからぬか 00047250M19ほで、どうて一/度(ど)は御ちからおとしでござるといふていん 00047260¥P166 00047270L1だ。(五オ) 00047280¥N3¥J 00047290¥X三△/小倉(こくら)三/官(ぐハん)/飴売(あめうり)の事 00047300L4はう※の/市(いち)に出て/飴売者(あめうるもの)の/棚(たな)のまへに、/飴(あめ)/買(かハ)ふと立より 00047310L5見て、是はむさうはないか。どうやらむささうなといへ 00047320L6ハ、あめうりがいふ事は、是がむさからふ事ハ、なるほど 00047330L7きれいに御座るといひさまに、手ばなをつんとかふでか 00047340L8ら、おのれが手にとりてくふて見せて、是がむさいかとい 00047350¥G 00047360M1ふた。(五ウ) 00047370¥N4¥J 00047380¥X四△/文盲成者(もんまうなるもの)/禁裏(きんり)/咄(はな)しの事 00047390M4あるものがいふ事は、/何事(なにごと)でもあれ、/異国(いこく)よりも/我朝(わかてう)は、 00047400M5物がやさしう/利根(りこん)にミへ聞ゆる。/内裏(だいり)さまの名まで/各別(かくべつ)じ 00047410M6やといふ。/或(ある)人聞て、なにと/各別(かくへつ)ぞといへば、されば、/異= 00047420M7国(い=こく)の/内裏(だいり)にハあはうでんと云が有。/日本(につほん)の内裏さまにハお 00047430M8かしどころといふが有。/是程(これほど)ちがひか有ハさてといふた。 00047440M9(六オ) 00047450¥N5¥J 00047460¥X五△/長老(ちやうらう)/談義(だんぎ)に/率爾(そつじ)云事 00047470M12/髪(かミ)のあぶらうつりがふかき/出家(しゆつけ)、されども口よくして/談義(だんぎ) 00047480M13せらるゝと、/貴賎(きせん)の/男女(なんによ)そでをつらね、くびすをついでま 00047490M14いる。/或時(あるとき)/聴衆(てうじゆ)の中に、おさなひ、なき出してさまたげと 00047500M15なりしを、/彼僧(かのそう)、/気(き)のどくがりて、/高座(かうざ)より、なふ、そこ 00047510M16な子のうば。其子を/眠蔵(めんざう)へつれて行て、/愚僧(ぐそう)か子共(六ウ) 00047520M17(七オ挿絵)と、のゝさま事なりとさせてすかしやれと、/((い脱カ))か 00047530M18いそつじをいはれた。 00047540¥P167 00047550¥N6¥J 00047560¥X六△そこつなる/医者(いしや)の事 00047570L3/去(さる)そこつなるいしやあり。十八九ばかりのひなおとこわづ 00047580L4らひ、はちまきしてをりふし、かの/医者(いしや)にはじめてあひ、 00047590L5/脉(ミやく)をとらせけるに、医者、ミやくをうかゞひ、扨/病人(ひやうにん)にい 00047600L6ふやうハ、此程、月のさハりは有か、とゞこほる(七ウ)か 00047610L7ととふ。/病人(ひやうにん)聞、それがしはおとこなり。/男(おとこ)に月のさハり 00047620L8はめづらしいと云。/医者(いしや)、南/無(む)三/宝(ぼう)とおもひ、ぬからぬか 00047630L9ほで、おとこならば、はしめから、おとことなのりたいも 00047640L10のでハないかといふた。 00047650¥N7¥J 00047660¥X七△/留主(るす)事にとうわくせし事 00047670L13/主人(しゆしん)のるす事に、下&のもの、まるた一二/疋(ひき)よび、小うた 00047680L14/謡(うた)はせ/酒(さけ)のミてゐたりしが、(八オ)おもてに人を/置(おき)、/旦那(たんな) 00047690L15/帰(かへ)られうば/雪駄(せつた)の/音(おと)がせうほどに、こちへいへといひ置し 00047700L16ところへ、/旦那(たんな)、/草履(ざうり)で帰ると、みな+あはてゝ云事は、 00047710L17さて+、雪駄でも御座りませひで、はやう御帰りなされ 00047720L18たといふ時、旦那にがい/皃(かほ)で、あのびくにハ、なにしに/奥(おく) 00047730L19へよび入/置(おき)たるぞといへハ、あれハ/御前(おまへ)様の/雪駄(せつた)に、/小哥(こうた) 00047740M1きかせませうとおもふて(八ウ)入置たると云た。 00047750¥N8¥J 00047760¥X八△でつち/餅(もち)の/異名(いミやう)云事 00047770M4/物毎(ものごと)気にかくる/者(もの)有しが、/元日(ぐハんにち)に/礼者(れいしや)きたりけるに、/亭主(ていしゆ)、 00047780M5てつちをよびて、べうを出せといひければ、てつち、へう 00047790M6といふ事をしらす、何の事で御座りまするととふ。/亭(てい)主聞 00047800M7て、もちの事しやといふ。でつち合/点(てん)して、其べうハ、に 00047810M8へうにして出しま(九オ)せうか、やくべうにして出しませ 00047820M9うかといふ。/亭主(ていしゆ)いよ+気にかけて、おのれはさいぜん 00047830M10からいま+しい事バかりぬかす。やくべうとハどうした 00047840M11ことじや。おれが物毎に気にかけぬものなれハこそ大事も 00047850M12なけれ。にべうになりとも、さんべうになりともして、は 00047860M13やく出しをれといひしかりけれハ、でつち、ぬからぬかほ 00047870M14で、やくべうハきらハせ(九ウ)(十オ挿絵)らるゝが、さんび 00047880M15やうはすきさうなといふた。 00047890¥N9¥J 00047900¥X九△しハきもの/茶磨(ちやうす)をかさぬ事 00047910M18/去者(さるもの)、/茶(ちや)をひくとて、ちやうすをかりにやりければ、さき 00047920M19より返事に、ちやうすをよそへかせバ、くせがついてわる 00047930¥P168 00047940L1ふござる。此方へきてひかしませと返事しけり。/彼者(かのもの)大き 00047950L2にはらをたて、何がな此/返答(へんたう)をとおもふをりから、かの茶 00047960L3磨の/主(ぬし)より、はしごをかし(十ウ)給へといひをこせり。す 00047970L4なはち其返事に、はしごを/余所(よそ)へかせばくるひまする。あが 00047980L5るところがあらハ、此方へきてあがらしませと、くらハせた。 00047990¥N10¥J 00048000¥X十△/銀袋(かねぶくろ)をひろふてろじあひの事 00048010L8すんと/麁相者(そさうもの)二人つれて、ある/町(まち)を/通(とを)りしに、壱人の/者(もの)/皮= 00048020¥G 00048030M1袋(かハ=ふくろ)をひろふ。なんでも/銀袋(かねぶくろ)さうなといふ。かのつれ、それ 00048040M2ハおれかはやう見(十一オ)つけたほとに、をこせといふ。 00048050M3やるまひといふ。この/僉義(せんぎ)はてず。後にハたゝきあひける 00048060M4が、町の/者(もの)/出合(いであひ)、とかく町からあつかひませう。町のいふ 00048070M5やうにめさるゝかといへば、両人共に、御町次第に仕らふ 00048080M6といふ。町の者聞、それならハ、此ふくろ、壱/貫目(くハんめ)あらふ 00048090M7と二貫目有ふと、両人してわけてとりやつてよかろといふ。 00048100M8両人の者、いかにも/御意(ぎよい)次第に(十一ウ)致しませうといふ 00048110M9て、彼袋をひらいて見れは、中ハ/三具足(ミつぐそく)/直(なを)しの/道具(たうぐ)てあつ 00048120M10た。 00048130¥N11¥J 00048140¥X十一△/棚経(たなぎやう)に/行(ゆき)し/出家(しゆつけ)の事 00048150M13/或出家(あるしゆつけ)、/米(こめ)屋の/旦那(だんな)へ/盆(ぼん)の/棚経(たなぎやう)にゆかれしが、いつも/新発= 00048160M14意(しんぼ=ち)をつれらるれとも、さハる事有て此時ハひとり行しか、 00048170M15御/経(きやう)/過(すぎ)て、おふせの/銭(せに)のひとりまへ出しを、いな事じや。 00048180M16/弟おも方((不明))へことつてられさう(十二オ)な事じやとおもふて、 00048190M17かしこをミれハ、見せ米のつゝミたるありしを、やがて取 00048200M18ていハるるハ、是はしんぼちがかたへで御座らふ。かたし 00048210M19けないといはれた。 00048220¥P169 00048230¥N12¥J 00048240¥X十二△るざらししらぬ/者(もの)の事 00048250L3四五人うちより、物がたりしてゐけるか、ひとりの/者(もの)がい 00048260L4ふは、あのるざらしといふは、いかやうな物ぞといひ出す 00048270L5を、其内何(十二ウ)もしらぬわろが、しつたがほで、るざら 00048280L6しはこゝのはつこに其まゝな/布(ぬの)じやといふを、又ひとり/能(よく) 00048290L7しりたる/者(もの)がいふ事ハ、扨&むさとしたる事をいふ。るざ 00048300L8らしとハ、にがいくすりの木じやといへば、しつたがほせ 00048310L9しもの、/手持(てもち)あしくて、それハさらさぬゆへ木じや。おれ 00048320L10がいふは、さらしたのじやといふた。(十三オ) 00048330¥N13¥J 00048340¥X十三△/遠行(ゑんきやう)といふ事をしらぬ事 00048350L13/或文盲者(あるもんまうもの)の/祖父(おほぢ)/果(はて)られしに、其後いんぎんなるあいさつの 00048360L14人、/途中(とちう)にて行あひ、扨&ひさしく御目にかゝらなんだ。 00048370L15先以/祖父(おやぢ)様の/御遠行(ごゑんぎやう)で、いかい御ちからおとしよといへは、 00048380L16/文盲(もんまう)もの、遠行を/病(やまひ)の名じやと思ふていふ事ハ、あながち 00048390L17わづらひハ遠行共見えませなんだが、/有無(うむ)に/老躰(らうたい)のとし 00048400L18(十三ウ)よりて、じねんじやうにしなれましたといふた。 00048410¥N14¥J 00048420¥X十四△/小童(こわらハ)に/病人(ひやうにん)/見舞(ミまひ)にやりし事 00048430M3/去(さる)うたひの/師(し)をする者/病(やまひ)しけるが、其/伯母(おは)の方より、こわ 00048440M4らべを見舞にやりける。をりふし/弟子(でし)ども/大勢(おほぜい)うちよりて、 00048450M5手に+/珠数(じゆず)を/持(もち)て/能(のう)のいのりのまねしてゐたを、此小わ 00048460M6らべ見てはしりかへり、御/気相(きあい)がいかうわるいやらして、 00048470M7大勢して御/祈祷(きたう)(十四オ)なされまするが、御いそかしさうに 00048480M8御座るゆへ、御つかひのことつてハ申ませなんだといふた。 00048490¥N15¥J 00048500¥X十五△/裸(はたか)百/貫(くハん)の事 00048510M11いや+の者でも、おとこははだか百/貫(くハん)と云が、物にくら 00048520M12べて見れバ、ねうちが/高(たか)いと云。/或(ある)人聞て、何にくらべて 00048530M13/高(たか)いぞといへば、/公(く)家百/官(くハん)を引合て見れハ、ねうちに大分 00048540M14の/高下(かうげ)かあるハさてといふた。(十四ウ) 00048550¥N16¥J 00048560¥X十六△/腹筋(はらすぢ)な/儒者(じゆしや)の事 00048570M17ミヽかきに/半分(はんふん)も/知恵(ちゑ)のない/儒者(じゆしや)が、/大儒(たいじゆ)/発明(はつめい)の人も/何(なに)な 00048580M18らずとおもふ。/少(ちと)/腹立(ふくりう)させうと、/世上(せじやう)/名高(なたか)き儒者をほめけ 00048590M19れハ、かの/無学儒(むがくじゆ)がいふ事は、いや+、/今時(い□どき)/何程(なにほど)の儒者 00048600¥P170 00048610L1でも、もとの/孔子(こうし)/老子(らうし)なとに合てミれば、いかうあをい事 00048620L2じや。おれさへ/孔子(こうし)/老子(らうし)程にハないものと、あふきをきり 00048630L3(十五オ)+まはしていふた。 00048640¥Y1当世口まね笑第三終(十五ウ) 00048650¥Y1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第四/目録(もくろく) 00048660M3一△/琴(こと)屋と/張物(はりもの)屋/口論(こうろん)の事 00048670M4二△ふんやの/康秀(やすひて)と/云(いふ)/商人(あきんど)の事 00048680M5三△ちんばの/供(とも)に/徳蔵(とくさう)が参る事 00048690M6四△なまぐさ/坊主(ばうず)が事 00048700M7五△しハきものゝ事 00048710M8六△/麁相者(そさうもの)おり/湯(ゆ)に/入(いる)事 00048720M9七△/上京(かミぎやう)の/者(もの)の/子(こ)/奉公(ほうこう)に/出(いだ)す事 00048730M10八△ふつゝかもの/能見物(のうけんぶつ)に/行(ゆき)し事(二オ) 00048740M11九△/茶(ちや)の/給仕人(きうじにん)/軽口(かるくち)の事 00048750M12十△/医者(いしや)/病人(びやうにん)に/当話(たうわ)を云事 00048760M13十一△なぞ+をとく事 00048770M14十二△かたき/法華宗(ほつけしう)の事 00048780M15十三△/濃茶(こいちや)に/口(くち)をやきし事 00048790M16十四△/諷(うたひ)の/師(し)/知行(ちぎやう)の事 00048800M17十五△/文盲者(もんまうもの)/吊(とふらひ)にゆく事 00048810M18十六△/瘡(かさ)かく/狂言師(きやうげんし)が事 00048820M19十七△/四方髪(しはうがミ)の/異名(いミやう)の事(二ウ) 00048830¥P171 00048840¥T1/当世(たうせい)/口(くち)まね/笑(わらひ)第四 00048850¥N1¥J 00048860¥X一△/琴(こと)屋と/張物(はりもの)屋/口論(こうろん)の事 00048870L5/琴(こと)屋、/女房(にようばう)にいふやうハ、/明日(ミやうにち)は/元日(くハんにち)じやほどに、ことし 00048880L6我らハ/仕合(しあハせ)がなをらふといハへといひければ、女房、こゝ 00048890L7ろへましたとて、元日/早朝(さうてう)におきていはひけれバ、/亭主(ていしゆ)よ 00048900L8ろこび事かぎりなし。しかるところへ/張物(はりもの)屋、/礼(れい)にきたり、 00048910¥G 00048920M1/四方(よも)山の/咄(はな)しをしけるが、(三オ)とかく町にハ事なかれで 00048930M2御座るといふ。/琴(こと)屋聞て、さん+にはらをたて、琴屋を 00048940M3そばに/置(おき)なから、町に事なかれとハどうした事ぞ。其/方(はう)の 00048950M4あきなひがよいとおもふて、さういやるかといへハ、/張物(はりもの) 00048960M5屋より琴屋がわるひといふではないが、してそなたは、張 00048970M6物屋がわるい/商(あきなひ)じやとおもやるか。とかくせけんは、張物 00048980M7やてなけれはわたられぬといふていんだ。(三ウ) 00048990¥N2¥J 00049000¥X二△ふん屋の/康秀(やすひで)といふ/商人(あきひと)の事 00049010M10京三/条(てう)/辺(へん)に、こゑの/中買(なかかい)をする者、中+/銀持(かねもち)にてぶけん 00049020M11なれども、あたりよりはさげしめてつきあひなし。此/中買= 00049030M12殿(なかかい=どの)、いなかへゆかれたるに、/田舎(いなか)にてハ其やうなる事はし 00049040M13らず。さま+/馳走(ちそう)し、なれなじみて/語(かたり)あひけり。扨/上(のぼ)り 00049050M14まへにおよびしかバ、/在所中(さいしよぢう)をよび、/振舞(ふるまひ)御いとまごひを 00049060M15しけるに、/在所(さいしよ)の(四オ)/者(もの)のいはく、かやうにたがひに/念= 00049070M16比(ねん=ごろ)に/致(いた)すからハ、京へもし/罷上(まかりのぼ)りたらバ、かならず御/尋(たつね)を 00049080M17申ませう。所はいづかたにて御座るといへハ、其/時(とき)/中買(なかかい)、 00049090M18ほうど返事つまり、さながらこゑの/中買(なかがい)とハいはれず。わ 00049100M19たくし/宿(やと)もとハ、三条の/右大臣(うたいじん)のあたりにて、ふん屋のや 00049110¥P172 00049120L1すひでと尋ねさしやれといふた。 00049130¥N3¥J 00049140¥X三△ちんば/供(とも)に徳蔵(とくざう)か/参(まい)る事(四ウ)(五オ挿絵) 00049150L4或ちんばの/内(うち)に、/徳蔵(とくざう)といふ/口(くち)のきいたおとこをつかひけ 00049160L5るが、/彼徳蔵(かのとくざう)を/供(とも)につれ/清水(きよミづ)へ参られしに、/八坂(やさか)にてまね 00049170L6きけれハ、/徳蔵(とくざう)見て、申、/御前(おまへ)をまねきまするといふ。/主(しゆ) 00049180L7聞て、おれであるまひ。此あたりに/近付(ちかつき)がないほどにとい 00049190L8はれけれバ、/徳蔵(とくざう)ぬからぬかほで、おまへさまかおちんじ 00049200L9やによつて、こち+とまねきましたと云た。(五ウ) 00049210¥N4¥J 00049220¥X四△なまぐさ/坊主(ばうす)が事 00049230L12なまぐさ坊主あり。/或時(あるとき)/焼鮎(やきあゆ)に/蓼酢(たでず)かけてやる所へ、/旦那(たんな) 00049240L13/来(きた)りしかば、かくすべきところなく、/懐(ふところ)の/中(なか)へ/皿(さら)ともにお 00049250L14し/込(こミ)しが、身いごきする/拍手(ひやうし)に、/蓼酢(たでず)がふところよりなが 00049260L15れ出るを、/旦那(たんな)ミられて、なふ/坊主(ばうず)。それ、ふところから 00049270L16何やら/汁(しる)かたるといへは、坊主あハてゝ、されバ此/程(ほと)(六 00049280L17オ)はらに/焼鮎(やきあゆ)が/出来(でき)まして、其/口(くち)か/明(あき)ましたが、やゝも 00049290L18すれば此ことく、うミのやうな/蓼酢(たです)が出てまするといふた。 00049300¥N5¥J 00049310¥Xしはきものゝ事 00049320M3しハきもの、/葬礼(さうれい)にゆくごとのかへりに、/町衆(てうしゆ)のすてし/草= 00049330M4履(ざう=り)を、/小者(こもの)にいひ付ひろひに出しけるを、町にたちなれし 00049340M5/乞食(こつしき)、それをよくしりて、とられぬまにと(六ウ)ミな+ 00049350M6ひろひしを、小者つく※と見て、/旦那(たんな)殿に申せバ、出し 00049360M7ぬかれたとおもひ、/腹(はら)立がほでいふ事は、扨も+こゝろ 00049370M8ねのきたない/乞食(こつじき)めじやなあ。それ程にしてひらふたとて、 00049380M9なんまいが事があらふぞといはれた。 00049390¥N6¥J 00049400¥X六△/麁相者(そさうもの)おり/湯(ゆ)に入事 00049410M12/或(ある)そめもの屋の/亭主(ていしゆ)と/念比(ねんころ)なるそ(七オ)さうもの、/冬(ふゆ)の/夜(よ)、 00049420M13/水風呂(すいふろ)へ入にわせた。/湯(ゆ)があいたといふより其まゝ、/丸裸(まるはたか) 00049430M14になり、/庭(にハ)につけてある/桃皮(もゝかハ)の/桶(おけ)へつか+とはいり、あ 00049440M15ゝ/極楽(こくらく)や、なふたうとやのといハるゝと、内の/下女(げぢよ)見て、 00049450M16申、それハもゝがハのおけで御座るにといへば、まへのこ 00049460M17とばを取もなをさず、あゝ地こくや、なふつめたや、あゝ 00049470M18かなしやといはれた。(七ウ) 00049480¥P173 00049490¥N7¥J 00049500¥X七△/上京(かミきやう)の/者(もの)の/子(こ)/奉公(ほうこう)に出す事 00049510L3京中のかねもちのかたへ、上京の者の子をハ、人/頼(たのミ)して奉 00049520L4公に出す/時(とき)、/主人(しゆじん)ミられて/仰(おほせ)らるゝハ、此者ハ/殊(ことの)外かじけ 00049530L5たなりじやが、上京のところハいづくぞと/尋(たつね)らるゝ。いひ 00049540L6つぎの者申ハ、いかにもすこしかじけまするも、/道理(だうり)で御 00049550L7座りまするは、上京でハ/姥(うば)がふところにそだちまして、/火= 00049560L8桶(ひ=おけ)(八オ)/程(ほど)な/家持(いゑもち)の/子(こ)で御座るといふた。 00049570¥N8¥J 00049580¥X八△ふつゝか/者(もの)/能(のう)を/見物(けんぶつ)に/行(ゆき)し事 00049590L11ふつゝかもの、能を見物にゆきしが、/作物(つくりもの)の/舟(ふね)さへ出る能 00049600L12は/兼(かね)平とこゝろへ、其日/唐船(たうせん)の/能(のう)をミて帰り、人に/咄(はな)す事 00049610L13は、今日/兼平(かねひら)の能をミたが、殊外/出来(でき)たといふ。さるもの 00049620L14聞て、けふのハ唐船にて有し。兼平にてハなし。兼平にあ 00049630L15のことく子(八ウ)どもが出る物かといひけれハ、ふつゝか 00049640L16/者(もの)がいふ事は、あの子共はミな、兼平が/本腹(ほんばら)と/下(げ)しやくば 00049650L17らの子じやといふた。 00049660¥N9¥J 00049670¥X九△/茶(ちや)の/給仕(きうし)人/軽(かる)口の事 00049680M1/客(きやく)/来(きたり)て/茶(ちや)をこふとき、/小者(こもの)茶を/立(たて)て出す。/亭主(ていしゆ)のんで見て、 00049690M2此茶/風味(ふうミ)よろしからず。物のうつり/香(が)にや、水のうつりが 00049700M3にやと、小者をしかりけれバ、小者、口のきいたやつ(九 00049710M4オ)にて、/定(さだめ)て風を引た物で御座りませうといふ。/主人(しゆじん)聞 00049720M5て、/何(なに)として風を引たるぞといへバ、されば風引たればこ 00049730M6そ、つぼかはなごゑにさふらふと申す。主人おかしく思ハ 00049740M7れて、いかにもさうあらふ。おれが/茶壷(ちやつほ)は、じたいかたぬ 00049750M8ぎじやとて、/笑(わらひ)になつた。 00049760¥G 00049770¥P174 00049780¥N10¥J 00049790¥X十△/医者(いしや)/病(ひやう)人に/当話(たうわ)を云事 00049800L3/或人(あるひと)/腹中(ふくちう)けになりて、くすしを/呼(よび)よせ(九ウ)(十オ挿絵)見せ 00049810L4けるが、/医者(いしや)の申さるゝは、して+、/何(なに)をかまいりたる 00049820L5ととハれしに、/病人(ひやうにん)が云、きのふもづくと/海月(くらげ)とあいりや 00049830L6うりにしてたべたといふ。/医(い)者のいハるゝハ、それで腹中 00049840L7がさえぬ事よ。くらげは/海(うミの)月、もづくハ/海雲(うミのくも)。とかく月に 00049850L8雲をよせ合せたるゆへに、腹中がさえぬ事よといはれた。 00049860L9(十ウ) 00049870¥N11¥J 00049880¥X十一△なぞ+をとく事 00049890L12/或人(あるひと)のなぞ+に、/月影(つきかけ)をいたゝきにけりなミかしら、と 00049900L13/発句(ほつく)にしてかけられしを、/利発者(りはつもの)さしいで、ゆりわととく。 00049910L14人&、是は/尤(もつとも)といひけれバ、/文盲者(もんまうもの)そこに/居合(ゐあはせ)ていふ事ハ、 00049920L15ゆりわとハよう出た。おれも/先程(さきほと)から、くゞつとまでハ/思= 00049930L16出(おもひ=いだ)したといふた。 00049940¥N12¥J 00049950¥X十二△かたい/法華宗(ほつけしう)の事(十一オ) 00049960L19けんごなる/法華宗(ほつけしう)あり。/客(きやく)/来(きたつ)て/仏法(ぶつほう)/咄(はな)して、/漸(やう+)/帰(かへ)らんを 00049970M1りから、むらさめのしける程に、めしつかふものをよびよ 00049980M2せ、あミだがさといふべきを、うたてくおもひて、それ、 00049990M3おしやか/笠(がさ)をかしまいらせよといふ。/下人(けにん)申様、されば、 00050000M4其/釈迦笠(しやかかさ)は、此程たほうへかし参せて、御座ないといふた。 00050010¥N13¥J 00050020¥X十三△/濃茶(こいちや)に/口(くち)をやきし事(十一ウ) 00050030M7/濃茶(こいちや)をのミたる事もない/和子(わこ)か/茶(ちや)の/湯(ゆ)によはれ、あつき茶 00050040M8をかぶ+とのんで、したゝか/口(くち)をやいていはるゝ事は、 00050050M9申+、/茶堂(さたう)御/法躰(ほつたい)やくに、其/水指(ミつさし)に水あかゞこさらバ、 00050060M10ちとくだされよといふ。さだう、何になさるぞととへバ、 00050070M11只今あつき茶にて口をやけどしました。そこにつけたいと 00050080M12いふ。 00050090¥N14¥J 00050100¥X十四△/謡(うたひ)の/師(し)/知行(ちぎやう)の事(十二オ) 00050110M15ある/謡(うたひ)の/師(し)をするもの、いづかたへかちくてんしけるが、 00050120M16ある/者(もの)、此ころ/去所(さるところ)であふたといふ。/師(し)のでしども聞て、 00050130M17何としられたぞととふ。されば仕合がようなられた。うそ 00050140M18らしうおもやらふが、/大名(だいミやう)になつて/五畿内(ごきない)をもらハれたと 00050150M19いふ。/弟子(でし)共よろこび、それは/定(さため)て/公方(くばう)様からの/御朱印(こしゆゐん)が 00050160¥P175 00050170L1そふてあらふといふ。御朱印ハそハなんだ。其/代(だい)に、はし 00050180L2(十二ウ)一ぜんそへてくだされたといふた。 00050190¥N15¥J 00050200¥X十五△/文盲者(もんまうもの)/吊(とふらひ)にゆく事 00050210L5/去在所(さるさいしよ)に/文盲(もんまう)第一の/親仁(おやじ)有けるか、其/隣家(りんか)の/牛(うし)はしりけれ 00050220L6バ、/彼親仁(かのおやじ)其まゝはしり行、承れハ牛か/死(しに)ましたげな。い 00050230L7かい御ちからおとして御座るといふ。/亭主(ていしゆ)聞て、扨&/文盲(もんまう) 00050240L8な人かな。牛の/死(しぬる)を、はしつたとこそいへ、またいかい/御= 00050250L9損(ご=そん)をなされたと(十三オ)こそいふものなれ。どこの/国(くに)にか、 00050260L10御ちからおとしといふ事が有ものか。そんな/文盲(もんまう)な事をい 00050270L11ふて、よそではぢをかきやんなとしかりけれハ、/彼親仁(かのおやじ)、 00050280L12とくとがてんしてかへりしが、其/後(のち)/庄(しやう)屋のおばゝ/死(し)なれ 00050290L13ければ、/早(さう)&に庄屋殿へ行、聞ますれば、ばゝさまのはし 00050300L14らしやりましたげな。/大御損(いかいごそん)をなされましたと云た。 00050310¥N16¥J 00050320¥X十六△/瘡(かさ)かく/狂言師(きやうげんし)が事(十三ウ) 00050330L17/或狂言(あるきやうげん)をせし/若(わか)きおとこ、/八坂(やさか)、/北野(きたの)の/茶(ちや)屋へといきに出 00050340L18けり。/程(ほど)なく/瘡(かさ)をうつりてかきしが、/傍輩(はうばい)ども/打(うち)より、/狂= 00050350L19言(きやう=げん)のけいこをする時、此瘡かき、きハめておかしきおとこ 00050360M1にて、/末広(すゑひろ)の/狂言(きやうげん)すとて、かさをかくやらかゝがやまひ、 00050370M2人がゝさをかくならハ我もかさをかこふよと云たれば、残 00050380M3りの/者(もの)/同音(どうおん)に、げにもさありや、よがりも惣右衛門+と 00050390M4はやした。(十四オ) 00050400¥N17¥J 00050410¥X十七△/四方髪(しはうがミ)の/異名(いミやう)の事 00050420M7四方髪のむさきおとこあり。異名を/古行燈(ふるあんどう)といふ。こゝろ 00050430M8は、四方髪にあふらじむほど、むさうなるゆへといへハ、 00050440M9/皆(ミな)人、/尤(もつとも)と/同心(どうしん)する。/中(なか)にひとりそさうもの、なんでもど 00050450M10こぞてやろとたくミしところへ、ある四方髪の/儒者(しゆしや)きたり 00050460M11しを、やれ、ふるとうだい、ひさしいのといふ。儒者聞て、 00050470M12/古(ふる)とうだいとハいかにと(十四ウ)とへハ、/麁相者(そさうもの)がいふや 00050480M13うハ、其方のあたまのさらハ、あふらつぎにも/似(に)やう/程(ほど)に、 00050490M14ふるとうだいといふた。 00050500¥Y1当世口まね笑第四終(十五オ) 00050510¥P176 00050520¥T1第五 00050530¥N1¥J 00050540¥X一△/質(しち)屋に/歳暮(せいぼ)を/祝(いはひ)し事 00050550L5/或富貴(あるふうき)なる質屋、歳暮のいはひをミれハ、/先(まづ)/床(とこ)に/注連餝(しめかざり)を 00050560L6引、/遊行(ゆぎやう)上人の/像(ざう)とつなぎぶねとを二/幅(ふく)/対(つい)にして懸らる 00050570L7ゝ。ある人、其心をとふ。/亭主(ていしゆ)申さるゝは、遊行は/札(ふた)のひ 00050580L8ろまるやうにとの/為(ため)、つなぎぶねハ/質物(しちもつ)のなかれぬやうの 00050590L9いはひと(三オ)申さるゝを、ひとりのどうけもの聞て、し 00050600L10からハ/順礼(じゆんれい)の/像(さう)と、又上&吉のらうそくのかたをかけても、 00050610L11おなじ/道理(だうり)しやといふた。 00050620¥N2¥J 00050630¥X二△はいての三八/水風呂(すいふろ)へ入事 00050640L14さるところへ、いなかよりはいでのわろが上りて、はしめ 00050650L15て水風呂へ入けるが、いるとひとしく、ひよこ+ときも 00050660L16つぶれさうにたちあがり+するを、はうばいともが見て、 00050670L17(三ウ)(四オ挿絵)なにとてさやうにするぞといへバ、三八が 00050680L18云事は、されバ、此かねのこしかけがあつうて、ひさしう 00050690L19はこしかけてゐられませぬといふた。 00050700¥G 00050710¥N3¥J 00050720¥X三△/新宅(しんたく)にてさしあひを云事 00050730M14或人、新宅びろめとて、/町衆(てうしゆ)残らす申いれられしが、町人 00050740M15の中にひとり、なにともならぬぬかりのすけありて、/普請(ふしん) 00050750M16のていを(四ウ)見まハして云事ハ、いかに/御亭(ごてい)様。あのゑ 00050760M17んのひさしを見れは、/竹(たけ)だるきにあそバしたさうなが、あ 00050770M18れはいらざる事をなされた。身どもがとくぞんじたらハと 00050780M19めませう物をといふ。御亭聞れて、それハいかやうな事で 00050790¥P177 00050800L1御座るぞといへば、ぬかりのすけが、あの竹だるきほど、 00050810L2/火事(くハじ)のときになりて、かしましい物はない。てつきりと火 00050820L3(五オ)事の時にならふほどに、おれがいふにちかふか、ミ 00050830L4やといふた。 00050840¥N4¥J 00050850¥X四△/大年(おほとし)/掃除(さうぢ)に付/狂哥(きやうか)の事 00050860L7/或家(あるいゑ)の/御亭(ごてい)、大つもごりの/夜(よ)のいとくらきも、やうやくし 00050870L8らミぬべきをりから、久三郎をめして、おもてを/掃除(さうぢ)せよ 00050880L9と仰らるゝ。久三、かしこまりて、/手桶(ておけ)に水をくミ、さゝ 00050890L10らをもつて、かどのいしを(五ウ)あらふほどこそあれ、/大= 00050900L11方(おほ=かた)夜もあけぬめり。かくして/御亭(ごてい)、/内(うち)にゐられしが、掃除 00050910L12するおとをきゝて、一/首(しゆ)ハかくと聞えし、 00050920L13△△/門朝(かとあさ)にさゝらのおとの聞えしハ 00050930L14△△△こちの久三がとりおひかあらぬか 00050940¥N5¥J 00050950¥X五△/軽口成人(かるくちなるひと)/狂哥(きやうか)の事 00050960L17/或御大名(あるおたいミやう)、御/気(き)に入/老俗(らうぞく)あり。/異名(いミやう)(六オ)をやせ山と付ら 00050970L18れ、おそばさらず参りたりしが、此/御前(ごぜん)にて/将棊(しやうぎ)をさしけ 00050980L19れば、おなじく御そばちかきかる口なる人、/狂哥(きやうか)に、 00050990M1△△やせ山がかしらハ/雪(ゆき)にうづもれて 00051000M2△△△/将棊(しやうぎ)の手までつめたさう也 00051010¥N6¥J 00051020¥X六△/木遣云者(きやりいふもの)/発句(ほつく)せし事 00051030M5/諸方(しよほう)の/普請(ふしん)に/木遣(きやり)してありく(六ウ)もの、/誹諧(はいかい)の/発句(ほつく)して 00051040M6日よう/大将(たいしやう)のかたへ/遣(つかハ)しける。其句に、 00051050M7△△/軒(のき)のよだちうけ/樋(どい)かけ/樋(どい)つようかけよ 00051060M8としてやりけれバ、日よう/大将(たいしやう)、/長点(ながてん)して/褒美(ほうび)に、さあゝ 00051070M9さつさと、ふるていをミるやうに/侍(はべ)ると書付てやりた。 00051080¥N7¥J 00051090¥X七△/即興(そくけう)に/発句(ほつく)せし事 00051100M12/誹諧(はいかい)のすきものふたり、/雪(ゆき)の日うち(七オ)よりて、いざ/即= 00051110M13興(そく=けう)に/発句(ほつく)ひとつづゝせうといひて、其まゝ、 00051120M14△△雪にとぶからすハやミの/螢火(けいくわ)哉 00051130M15とやつたれば、今ひとりの/者(もの)か/頓而(やかて)又、 00051140M16△△ゆきに/鷺(さき)は/牛(うし)におゝせた/黒木(くろぎ)哉 00051150M17/当世(たうせい)/誹諧(はいかい)するわろが/耳(ミヽ)にハ、/親仁(おやじ)が/異見(いけん)を聞やうに思ふで 00051160M18あらふ。 00051170¥P178 00051180¥N8¥J 00051190¥X八△/弥蔵(やざう)/誹諧(はいかい)する事(七ウ) 00051200L3/去所(さるところ)に誹諧ありけり。百/韵(いん)を/興行(こうぎやう)しけるに、/座中(さちう)まハリ付 00051210L4にしけり。其中に誹諧かつて/初心(しよしん)なる/弥蔵(やざう)といふものあり 00051220L5けるが、人なミに其/座敷(ざしき)につらなりけるに、/扨(さて)/発句(ほつく)より次 00051230L6第+にまハりきて、 00051240L7△△/朝(あさ)はらの/草(くさ)にこそ/入(いれ)月/影(かげ)は 00051250L8といふ/前句(まへく)、/彼初心者(かのしよしんもの)の/手前(てまへ)にまハりたり。(八オ)彼初心 00051260L9者色&と/思案(しあん)すれども出ず。ひまハとれる。ぜひなくて、 00051270L10△△/弥蔵(やざう)がもちをかふてくふなり 00051280L11と付ければ、/座中(ざちう)ともに、是は/殊外(ことのほか)/違(ちかひ)てつかぬなり。よ 00051290L12く付なをし給へといへば、其時彼初心者、されば、そのつ 00051300L13かぬによつて/餅(もち)をかふてたべまする。つけバかふてはくハ 00051310L14ぬ。是/程(ほど)な付句は有まひといふた。(八ウ) 00051320¥N9¥J 00051330¥X九△/古筆(こひつ)と/後室(こうしつ)と/取違(とりちかゆ)る事 00051340L17/若(わか)き/後家(ごけ)のかたより、/去方(さるかた)へ/古筆(こひつ)を/持(もた)せて、/小女(こをんな)をつかひ 00051350L18にやりしが、/先(さき)の/旦那(たんな)、小女にとふやうは、此古筆に/札(ふだ)は 00051360L19つかぬか。又/状(ぜう)でもつかぬか。そちハしらぬかとあれば、 00051370M1小女、/古筆(こひつ)を/後室(こうしつ)と心得、あゝ後室さまへ、ふだは/質(しち)屋か 00051380M2らをり+つきまする。又/状(ぜう)はあたりのうこ+したるわ 00051390M3かい(九オ)/殿(との)たちから、いくつも付まするが、返事に/隙(ひま)が 00051400M4ないとおしやりまするといふた。 00051410¥N10¥J 00051420¥X十△/下女(げぢよ)がもとへしのぶ事 00051430M7/去(さる)むすこ、内の下女か/方(かた)へしのびしが、/丸(まる)はだかになり、 00051440M8こしに/銭(ぜに)を付てしのぶ。此こしに/付(つけ)し/銭(ぜに)は、/彼(かの)女をたらす 00051450M9にてなんありける。ある夜/母親(はゝおや)、ごとめくを聞付、しそく 00051460M10ともしてさしよせ、是をミれバ、(九ウ)むすこ、/丸(まる)はだか 00051470M11の/躰(てい)なり。こハ/何(なに)のまねぞや。きやうこつやといはれけれ 00051480M12バ、むすこ、とうわくして、/岩(いわ)屋へ/代(だい)参り。お/岩(いは)が方へは 00051490M13だかぬけ参りとて、こしの/銭(ぜに)をがら+ならして、/母(はゝ)じや 00051500M14人にミせた。 00051510¥N11¥J 00051520¥X十一△/人形(にんぎやう)を見て/落涙(らくるい)する事 00051530M17/誓願寺(せいくハんじ)の/内(うち)に、むなしくなりしおさないのもちあそび物を 00051540M18/納(おさむ)る。其/前(まへ)に、(十オ)としごろなる女、なミだにふししづミ 00051550M19ゐけるが、其をりふしに、又やしなひ君におもひある/乳母(おち)、 00051560¥P179 00051570L1そこを/通(とを)りあハせとふらふやうハ、そなたには、見申せバ 00051580L2さきほどより、なミだに/袖(そで)ひちておハします。さだめて 00051590L3/養君(やしなひきミ)にをくれ給ふにてありなん。わらハもさやうのうき 00051600L4おもひにあひ参らせ候へバ、思ひやりていとをしく候と、 00051610L5しミ+と申せバ、/彼(かの)女が云やう、(十ウ)(十一オ挿絵)いや、 00051620L6わたくしは其思ひにてハ御座らぬ。/古(いにし)へそひましたおとこ 00051630L7に、あのやりもちの/人形(にんぎやう)がよく/似(に)ましたれば、思ひ出され 00051640L8てかなしうてなりませぬといふた。 00051650¥G 00051660¥N12¥J 00051670¥X十二△へうきんなる/和子(わこ)の事 00051680M3あるへうきんなるもの、日/暮(くれ)になると/門立(かどたち)して、/往来(ゆきゝ)の/女= 00051690M4房(によう=ばう)にわるくちをいひ、ぞめきける。有時、此/者(もの)かおふくろ、 00051700M5/綿(わた)(十一ウ)/帽子(ぼうし)して/余所(よそ)より帰るを、よその女かとおもひ、 00051710M6/鼠鳴(ねずミなき)しければ、/友達(ともたち)ども、せうしかりて、あれハお/手前(てまへ)の 00051720M7御ふくろじやハといへバ、ぬからぬかほで、おれもかてん 00051730M8じやが、何をかくさうぞ、/母舎人(はゝじやひと)をよばひぼしかとおもふ 00051740M9た。 00051750¥Q 00051760M10△△△△△△△△△△京寺町松原上ル町 00051770M11△△△△△△△△△△△△△△△菱屋治兵衛板(十二オ) 00051780¥P180 00051790¥U噺本大系△第五巻 00051800¥T鹿野;武左衛門口伝はなし 00051810¥G 00051820¥Y 00051830L16天和三年刊 00051840L17鹿野武左衛門作・紅葉子跋 00051850L18大本三巻(中巻ヲ欠ク) 00051860L19広島市中央図書館浅野文庫蔵 00051870¥Y鹿武左衛門口伝はなし 00051880M3/爰(こゝ)に志賀武左衛門とて、はなしにすける者ありて、この比 00051890M4大かた世にもてはやるゆへ、こゝかしこと/御伽(おとぎ)に召るゝ。 00051900M5あるは見し事聞し事、/或(ある)ハ/露(つゆ)/跡形(あとかた)もなき事をも、/笑舗仕(おかしくし)か 00051910M6たしてはなし出る事、/危(あやしく)たゝなり。しかあれと、もとよ/季(り) 00051920M7むまれは津の国の/難波(なには)のよしあしもしらす、/片言(かたこと)ましりな 00051930M8るを、筆にまかせてかいやり、雨/夜(よ)の/伽席(かせき)にもならんかし 00051940M9と、さうしにつゝるのミ。(一オ)(一ウ・二オ挿絵) 00051950¥P181 00051960¥G 00051970¥Y1 00051980M1初△とり次のそさう 00051990M2二△いたりあきんど 00052000M3三△かこかきのさいたん 00052010M4四△しだいふどう 00052020M5五△ひ人のきやう哥 00052030M6六△かぐやのばけもの 00052040M7七△くだりなそ 00052050M8八△なんぎの/店(たな)がり 00052060M9九△こつ/食(じき)/乞食(こじき)のわけやう 00052070M10十△ゆやのふしぎ 00052080M11十一△よねのわけやう 00052090M12十二△川ながれ/死人(しに□) 00052100M13十三△むさうのあなほり 00052110M14十四△ゆめあわせ(二ウ) 00052120¥P182 00052130¥T1 00052140¥N1¥J 00052150¥X一△とりつぎのそさう 00052160L3一△/点者(てんしや)の/高井(たかゐ)/立志(りうし)の/子息(しそく)、/軒号(けんがう)を/松葉軒(しやうようけん)、名ハ/立詠(りうゑい)とい 00052170L4ふ。文月中/旬(じゆん)に、人形町に/誹諧(はいかい)の/門弟(もんてい)に/菱川氏(ひしかハうぢ)といふ/画工(ぐわこう) 00052180L5のかたへ、夕つかた見まハれけるに、/玄関(げんくわ)にて案内を云入 00052190L6られければ、とりつぎの小者、そさうものにて、菱川の前 00052200L7にまいり、しやうれうけんゆふれいさまの御見廻なされま 00052210L8したといふ。菱川聞て、さて+、おりから/盆(ぼん)の事なるに、 00052220L9しやうれうけんゆふれいといふハ、こゝろもとなき名かな。 00052230L10いか様なるものぞととハれけれハ、かのそさうもの、やせ 00052240L11たる/小坊主(こほうず)の/白装束(しろしやうそく)にて、つえをつき御出候と申。とか 00052250L12くふしぎにおもひ、ものかげより見れバ、立詠にておハし 00052260L13き。どつとわらひて、ざしきにいたり、右のあらましかた 00052270L14りけれは、立詠もうちわらひて、てい主、わらひ草のたね 00052280L15とて哥よミける。(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00052290L16△△なにといふれいのそさうのまた出て 00052300L17△△△しやうれうけんもなきうつけもの 00052310¥N2¥J 00052320¥X二△いたりあきんど 00052330¥G 00052340¥P183 00052350L1一△ある心いれいたりたるもの、いにしへはよろしくくら 00052360L2せしが、身まどしうなりて、あきないに出しに、さるやし 00052370L3きへあきないに行けるに、そのやしきのてい、ことのほか 00052380L4やさしく、いたりかましう見えけれは、すこしいたりをい 00052390L5はんとおもひて、大き成こゑにて、あし引の山のいもはめ 00052400L6しませぬかとあきなふ。かたハらなるながやのこうしより、 00052410L7十七八バかりのやんことなき女、かほさし出し、これ+ 00052420L8あきんど、あらかねのつちしやうがハないかといわれた。 00052430L9それをかミくずかいが聞て、さて+きやしやな事じやと 00052440L10思ひて、ちはやふるかミくづかをふとよハりければ、又せ 00052450L11きだなをしが通りて、よにあふ坂のせきだなをしとよハ、 00052460L12りた。(四ウ) 00052470¥N3¥J 00052480¥X三△かごかきのさいたん 00052490L15一△さるまずしきかごかき、正月の二日に、はしつめのと 00052500L16こに居るかミゆいの所へ行、一つさかやきそりてくだされ 00052510L17いといふ。/髪結(かミゆい)、こゝろへたると申て、かミそりをあわす 00052520L18れハ、かこかき申けるハ、去年あまりしまひかね候につい 00052530L19て、うとく成人のなさるゝさいたんのほつくをしました。 00052540M1かミゆい聞て、さて+世間にはにた事がおゝい。我等も 00052550M2ゑい衆のまねをして、さいたんとやらをしました。まづ其 00052560M3方のを聞て、おれかのもいわふといへは、かごかき、さら 00052570M4ははづかしけれと、いふて見ませう。我等が/家職(かしよく)によそへ 00052580M5て、かうしました。 00052590M6△△かきそめやまづいちもんしにかごのほう 00052600M7かミゆい、つく+聞て、さてもおもしろさうな。さて、 00052610M8そなたのハどふじやといへば、はづかしなから申さうとて、 00052620¥G 00052630¥P184 00052640L1かミゆい、 00052650L2△△あふぶくやたてかけていはふちやせんかミ(五オ)(五ウ 00052660L3△△挿絵) 00052670L4としました。そなたもおれも、たがひにしよくによそへて 00052680L5しましたほとに、今年からしあわせかよかろうとて、どつ 00052690L6と/笑(わら)ふ所へ、いつくともしらす、こもかふり一人きたりて 00052700L7立聞しいふやうハ、さても+、めん+のさいたんうけ 00052710L8たまハり事てござる。なにもそんじませねとも、りよぐわ 00052720L9いながら、わたくしもいたしましてござる。申て見ませう 00052730L10か。二人きもをつぶし、さても、いきものには油断がなら 00052740L11ぬとハ我等が事じや。して、そちもさいたんといふものを 00052750L12したかといふ。こもかぶり聞て、まつとりあへす聞て下さ 00052760L13れとて、 00052770L14△△門松はみぎやひだりのおちやうじやさま 00052780L15といたしました。さて+、こつぢきのさいたんにハ似合 00052790L16たるとて、みな+笑ふてかへりける。 00052800¥N4¥J 00052810¥X四△しだいふとうの火事ばなしの事 00052820L19去ル町人とも、七八人より合、せけんはなしをとり+に 00052830M1し(六オ)てあそびける中に、なにと、去年の火事ハ大きな 00052840M2る火事でハなかつたか。それについてふしぎがある。いか 00052850M3やうな事ぞととう。されはその事じや。廿八日バかり火事 00052860M4が出た。なせにといふに、霜月廿八日には、あか坂迄やけ 00052870M5ぬけた。また/師走(しわす)の廿八日には、あまつさへ駒込の寺よ 00052880M6りやけ出て江戸中をなでた。廿八日バかりたび+やけた 00052890M7ハふしぎでハないかといふ。中にもよき口なるものいふや 00052900M8うハ、それをふしぎじやといふか。それハきハまつた事じ 00052910M9や。毎月廿八日ハふどうのゑん日じやによつてやけたとい 00052920M10ふ。ふだうのゑん日にハ火事かゆくはづかといふ。されば 00052930M11その事。ふだうハせなかに、ふだん火ゑんをおふていらる 00052940M12ゝほどに、やけるはづじやとおもへ。尤きこへたが、それ 00052950M13にもよらぬ事がある。十三日に火事のてた事もあり、十五 00052960M14日に火事のでた事もあり、又ハ十七日にやけた事もある。 00052970M15それもちがふたといへば、よき口なるもの申やう、さて 00052980M16+そなたハぐちなるものかな。そこ(六ウ)をもつて、次 00052990M17第ふどうといふ事があると申た。さて+よきへんとうか 00053000M18な。 00053010¥P185 00053020¥N5¥J 00053030¥X五△つき地非人狂哥のよミ合 00053040L3一△さるもの、二三年以前の大風にて、米高直なる時分に、 00053050L4弐人つれにてつき地のはしをとをりけるに、なるほとやせ 00053060L5おとろへたる/非(ひ)人、/寒天(かんてん)にこも壱枚かぶり、はしのうへに 00053070L6はだをつけてふしているを見て、是をみよ。せけんのうり 00053080L7かいたかきゆへ、このやうなあハれなるものをミる。是を 00053090L8見て/唯(たゝ)ハとをらりよまひ。いさ、なにぞかる口を一つつゝ 00053100L9いふてとをろといふ。尤とて壱人がいふやうハ、此非人も 00053110L10はやいのちハつき地といふ。今一人がいへるは、つき地の 00053120L11はしにて、いのちハつき地じやとハ出来た。かうもあろう 00053130L12か。なにと。だうしても/死(し)のう、はしのうへにいるほとに 00053140L13と申た。その時かの非人、むつくとおきあかり、さて+ 00053150L14両人のかる口、近比うけたまハり事てござりまする。我も、 00053160L15はらのうちからの非人てハこさりませぬ。(七オ)もはや今 00053170L16明日中に相はてますれは、せめてこんじやうこしやうのい 00053180L17とまこひに狂哥を一首よミませうほとに、お聞なされて下 00053190L18されませいとて、百人一首のうち天智天皇の哥をかすりて 00053200L19よミけるを聞は、 00053210M1△△あきの田のかるまてまたぬ我いのち 00053220M2△△△しつかからたは雨にぬれつゝ 00053230M3二人のもの、きもをつふし、非人に哥をかけられ返哥をせ 00053240M4ずハかなハじとて、一人の返哥に、山辺のあか人の哥かす 00053250M5りてよめる、 00053260M6△△田子のそこうちのそきみれはしろづきの 00053270M7△△△米のたかねにがこそおれける 00053280M8とよミけれハ、今一人の返哥に、いせものかたりの哥をか 00053290M9すりて、 00053300M10△△おきもせずねゝせてはしにあかしては 00053310M11△△△こもかぶりとてなかめくらしつ 00053320M12とよミてとをりける。(七ウ) 00053330¥N6¥J 00053340¥X六△和泉太夫楽屋のばけ物附奇妙のはり札 00053350M15一△旧冬廿八日の大火事に、いつミ太夫芝居のきんひら人 00053360M16きやうの入たる長持壱さほやけ、それゆへいつミ太夫ちか 00053370M17らをおとし、やう+しばいをたて、四月廿日比より人ぎ 00053380M18やうをこしらへ、五月せつくよりしはゐはしむるとて、み 00053390M19な+よろこひ候節、がくやによな+ふしきなる事出来 00053400¥P186 00053410¥G 00053420M1たり。大のおとこ、鉄炮をもち、がくやに出て、かなたこ 00053430M2なたをたゝき廻し、大きなるこゑをあげ、いつミ太夫+と 00053440M3/呼(よバ)ハる声、中+天地もひゞきておびたゝし。世間のとり 00053450M4さたには、いつミ太夫しばいへは、ばけもの出てわざわひ 00053460M5をなし、それゆへしばゐがならぬとひやうばんす。さてき 00053470M6んひらのばうこん出て、いづミ太夫にあひ、さて+其方 00053480M7ハ我をないがしろにして、あまつさへ八右衛門にはひまを 00053490M8出し、明ても暮てもながもちのすミにねさしておきたる故 00053500M9に、やきこみにあふた。とくにも出て、おのれめがくび、 00053510M10ねぢきら(八オ)(八ウ・九オ挿絵)むと思ふ所に、たけつなしき 00053520M11つてかんげんせしゆへ、今まて手のびにしておいた。もは 00053530M12やたけつなかかんけんも/用(もち)ひぬぞ。とかく五月五日にハ木 00053540M13戸に仁王だちして出、かなぼうにて見物のやつをたゝきた 00053550M14をし、/死(し)人の山をつかふとて、大きにわめきさけぶこゑ、 00053560M15中+すさまじき事たとへかたし。時にいつミ太夫、上下 00053570M16を着し、わび事いたし候へとも聞いれす。かくてハ大せい 00053580M17かつゑにおよふ事じやほどに、いざきたうせんとて、/芝(しば)/神= 00053590M18明(しん=めい)まへに/住(すま)居なさるゝ/玄識(げんしき)/法印(ほうゐん)をたのミ、かやう+で御 00053600M19座る。きたうをなされ下されと申せハ、これハきたうにて 00053610¥P187 00053620L1ハかなひかたし。あらたなる御ふだをはりませうとて、な 00053630L2にやら四方にふうじこめたる御ふだをはられた。そのばん 00053640L3より、ごとりともせす。三日たて共何事もなし。さて+ 00053650L4あらたな事かなとてよろこび、さて、ふだをはがしよりて 00053660L5見れハ、此ふだに、みなもとのよりよし公あびらうんけん 00053670L6としられた。なにがよりよしのきてんかな。(九ウ) 00053680¥N7¥J 00053690¥X七△くたりなぞのそさうもの 00053700L9一△さる町人の方へ、ともどち四五人よりあひ、よも山の 00053710L10はなしをする。てい衆申けるハ、そのはうハいかふなぞず 00053720L11きじやときいた。この比かミかたより上手なるなそときか 00053730L12くだりたほどに、かけて見よ。といてミやるまいかと申け 00053740L13る。されバなぞハ気のつまるものにて、いやな所があると 00053750L14おもひすてたが、去なから、くだりなそならめつらしくと 00053760L15いてみよ。かけ給へといふに、南無阿弥陀仏。何、なむあ 00053770L16みだぶつ。さて+これハめつらしや。とけそふなほどに、 00053780L17あんじてみよとて、しハらくめをふさぎあんじつゝ、さて 00053790L18とけたといふ。なにとゝとへハ、むぢなとといた。六字の 00053800L19名号じやほどに、むじなとハよふとけたとて、座中みな 00053810M1+ほめける所に、その中にとひやうものありて、さても 00053820M2+其方ハしあんのあつき名人かな。/南無阿弥陀仏(なむあミだぶつ)とかけ 00053830M3るなぞをむじなとハ、よく(十オ)といたり+。わたくし 00053840M4も/狸(たぬき)まてハ気がついたといはれた。 00053850¥N8¥J 00053860¥X八△なんきのたなかり 00053870M7一△去もの、六七間口の家をもち、町役むつかしきとて/家= 00053880M8守(や=もり)をつけてうらやへ引こミ、らくをしておくらんとて、た 00053890M9のしミすますといふ心にて、入道して名を/楽斎(らくさい)とつき、心 00053900M10やすくくらしける。そのたなのうちに、とひやうなるもの 00053910M11有て、/俄(にわか)にあたまをそり、楽斎とついていたりけるを、大 00053920M12屋のらくさいきかれて、さて+にくいやつかな。いそき 00053930M13人をつかハしよびよせける。さて+、おんミハおれが名 00053940M14をついて、此たなにハいるそ。名をかへでハない。おれが 00053950M15たなにゐるうちハつかせぬ。よそへこしてハかまひない。 00053960M16このうへハかた時もおれがたなにかなふまし。今日の内に 00053970M17たてとて、大きにりつふくいたしけれハ、たなのらくさい 00053980M18申やう、わたくしも、おまへの名にあやかりまして、たの 00053990M19しミすましたふ御座りますほどに、つかせて下されませい 00054000¥P188 00054010¥G 00054020L12と申ける。(十ウ)(十一オ挿絵)大屋の楽斎、いよ+はらをた 00054030L13て、おのれハ人をうつけにするやつじや。たなのらくさい、 00054040L14大屋のらくさいとて、/楽斎(らくさい)まきれがするによつて、いよ 00054050L15+ならぬ。一時もおかぬほとに、けふのうちにたなをた 00054060L16て。さなくハ/仕(し)やうがあると云て、いよ+はらたてられ 00054070L17ける。たなのらくさい申けるハ、さりとてハおろかな事を 00054080L18おしやりまする。楽斎がまぎれるはづハ御座りませぬ。わ 00054090L19たくしハたなのらくさいなれハ、にせてごさりまする。お 00054100M1まへハ大屋さまてござれは、まらくさいで御座りますると 00054110M2いふた。 00054120¥N9¥J 00054130¥X九△こつじきこじきのわけやう 00054140M5一△もの事ねん入きく人あり。ともたちにあふてといける 00054150M6ハ、そうじて、家+の/門(かど)にたち、ものをもらいてくろう 00054160M7やつをこつじきといひ、又こじきともいふが、二色にいは 00054170M8ふよりも一色にいふたがよからう。こつしきがほんか、こ 00054180M9しきがほんかと(十一ウ)とふた。とんさくのよきもの申やう、 00054190M10それ、こつじきといふハ、魚鳥のふるまひありても、身ハ 00054200M11我+たへて、ほねならでハとらせぬ。ほねをくらふてい 00054210M12るほとに、こつじきといふてよし。又こじきハ人にものを 00054220M13もらふてくふほどの事じやによつて、はらにたるほどハ人 00054230M14がとらせぬ。たんとくふを大じきといへとも、かやうのも 00054240M15のハ少づゝもらふてくゑハ、ふだんこじきじやといふた。 00054250M16よきとんさくなり。 00054260¥N10¥J 00054270¥X十△湯屋の家名に矢の形出す因縁 00054280M19一△さるもの、湯屋のかんばんを見ていふやうハ、ゆやに 00054290¥P189 00054300L1矢を出しておきたるハ、いかさまやうすがあらふ。そのほ 00054310L2か、かミや、ふでやなどのやにも矢があらふ事しやが、ゆ 00054320L3やにハかり矢のかたを出したは、いかさまふしぎじやとい 00054330L4ふ。とんさくおとこ申けるハ、もつともよきふしぎじや。 00054340L5さりながら、ゆやに矢を出したハ、よき利くつじやといふ。 00054350L6なぜにといへば、あれへ(十二オ)いるほとのものが、ゆが 00054360L7身にかゝるゆへに、かゝらバ矢ぼりあるまいといふたハ、 00054370L8まづ、いるといふこゝろか。さりとハよきとんさく。 00054380¥N11¥J 00054390¥X十一△女をよねと云にわけある事 00054400L11一△女はうを見てみな人が、よねしうといふハ、いかなる 00054410L12事に申ととふ。とんさくもの、さらハよねしうといふゐん 00054420L13ゑんを、わけて聞かしませう。いろはのよたれのくだりに 00054430L14ていふたことば也。いかにといふに、よたれそつね、かミ 00054440L15のよの/字(じ)と、しものねのじとのあひに、ぢが四つあり。し 00054450L16ゞをはさむによつて、そうじての女をよねといふ也といは 00054460L17れた。 00054470¥N12¥J 00054480¥X十二△川ながれの/死人(しひと)見わけ三段の事 00054490M1一△去もの、ふたりつれにて正月二日三日ころに、あさく 00054500M2さの川ばたをとをりけるに、やけ/死(し)人でハないが、さきへ 00054510M3壱人ながるゝ。死人ハうつむけになりてながるゝハ、おと 00054520M4こか女かといふ。壱人申やう、うつむけバおとこじやとい 00054530M5ふ。されば、むかしよりいふ事(十二ウ)(十三オ挿絵)じやが、ま 00054540M6ことか。見よといふて引あをのけてみたれば、おとこなり。 00054550M7さてもふしきなことじやといふ所へ、あをのけなりてな 00054560M8がれくる死人あり。是ハあをのいたる。女か。みよといふ 00054570¥G 00054580¥P190 00054590L1て見れば、うたがいもなき女也。ふたりなから手をうちて、 00054600L2さて+これにつけても、ふるきものゝいふ事をけしたが 00054610L3わるひ。我+せがれのじぶんより上方にても人がいふた 00054620L4が、見たるハこれがはつじやとて、いまたふしぎのはれざ 00054630L5るうちに、よこしまになりてなかれきたる死人あり。是ハ 00054640L6ととへハ、これはまた/野郎(やらう)の/死(し)にたるのしやといふた。 00054650¥N13¥J 00054660¥X十三△第六天詠哥のあなほりの事 00054670L9一△正月十五日に、浅草第六天にて、湯の花をあげゝれバ、 00054680L10まだやけふと御たくせんあり。そのうへ第六天の御詠哥あ 00054690L11り。そのうたに、正月十五日ハむまの日にてあつた。 00054700L12△△むまは火ではつるものとハしりなから 00054710L13△△△あなをほらぬハゆたんなり(十三ウ)(十四翁オ挿絵)けり 00054720L14と、御たくせんに御詠哥あれハ、あさくさのものとも、あ 00054730L15なをほれといふてほりけれとも、地ハかたし、らちあかで 00054740L16なんぎする所へ、くわをかたけたるおとこ二三人、あなほ 00054750L17ろ+と申来る。幸とおもひ、たのミほらせければ、いく 00054760L18つほれとも、みな丸くほりける。ふしぎにおもひたつねけ 00054770L19れば、かのもの申やう、われ+ハみな寺方から、ちんで 00054780¥G 00054790M12ほりでるといふた。 00054800¥N14¥J 00054810¥X十四△山ふし八卦にてむかてかわかぶりのさたの事 00054820M15一△あるはたちハかりなるむすめ、ぎよくもんへたけ六寸 00054830M16バかりなるむかで、はいりたるとゆめに見て、山ふしのと 00054840M17ころへきたり、はんじて下されいといふ。こゝろへたると 00054850M18てはんじける。追付ゑんづきをいふて/か((ママ))ふほどに、かまハ 00054860M19ずゑんにつけ。しかれば此ゆめハあふたといふて、むすめ 00054870¥P191 00054880L1やどへ帰るといなや、ゑんづきをいふてきたるを、よきさ 00054890L2いわひと(十四ウ)(十五オ挿絵)そのまゝゑんについた。おとこ 00054900L3気に入、五日めにおやのもとへかへり、まづ山ぶしの所へ礼 00054910L4に行しが、山ぶし、なにと、そなたのおとこハ、ひさうの 00054920L5ものがかわかぶりにてあらうといふ。むすめ聞て、きもを 00054930L6つぶし、さて+はづかしや。そのやうな事も/八卦(はつけ)のおも 00054940L7てにて見ゑまするかととへハ、されハその事。むかでのは 00054950L8いるものハ、かわかぶりよりほかハないといふた。 00054960¥G 00054970¥Y1上巻終(十五ウ) 00054980¥P192 00054990¥Y1鹿武左衛門口伝はなし△下 00055000L3初△なんぎのかつほ 00055010L4二△がてんちがい 00055020L5三△やつこのけんくわ 00055030L6四△ふしよくのごふう 00055040L7五△かり人のどうよく 00055050L8六△あま 00055060L9七△袖乞のきつきやう 00055070L10八△ぜつのあやまり 00055080L11九△やきばのよく心 00055090L12十△三人かる口 00055100L13十一△福ゑひす 00055110L14十二△乞食のまき/舌(した) 00055120L15十三△あひるのくやミ 00055130L16十四△酒論のきやう哥 00055140L17十五△三番つゞき切きやうげん 00055150L18十六△じしんのゆいそこない(三十オ)(三十ウ・卅一オ挿絵) 00055160¥T1 00055170¥N1¥J 00055180¥X一△なんぎのかつほ 00055190M3一△乗物町に、おやを仁助、子を六助といふ人ありける。 00055200M4頃日の事なるに、けふハ月見也。心いわひに/鰹(かつほ)をもとめ、 00055210M5りやうりせんといふ所へ、大こゑあげて、かつほ+とう 00055220M6りきたるを、直段きわめ取しに、大小あれハいかゝせん。 00055230M7大きなるハ少しさがり、ちいさきハあたらしきなり。大は 00055240M8小をかなゆるたとへありとて、大き成をとり、りやうりし、 00055250M9したゝかに/喰(くひ)けるに、あんのごとく、さん※にわつらひ、 00055260M10あたまをからげ三日ふしけり。やう+まくらはなれてい 00055270M11ふやうハ、さて+よくゆへに、せつなきおもひをしたる 00055280M12事かなといふ。六助、つね+古哥なとをすきてよミける 00055290M13が、此かつほにつけて一首よミませうといへハ、親の仁助 00055300M14聞て、きやう哥よからふ。よめとあれハ、六助哥に、 00055310M15△△よくゆへにたべしりやうりやあきがつほ(卅一ウ) 00055320M16△△△さけにはよハてうをによひけり 00055330M17とよミけれバ、めしつかひのてつちがまかり出て、わたく 00055340M18しも一首つらねませうとて、とりあへず、 00055350M19△△もろともにあわれとおもへあきかつほ 00055360¥P193 00055370¥G 00055380M1△△△おれよりほかによふ人もなし 00055390M2とよミけれバ、親の仁助、さて+おもしろし。それかし 00055400M3もよまでハかなハじとて、一首つらねける。 00055410M4△△けふの日も八つさがりしあきかつほ 00055420M5△△△七つなんぎにあふ仁助かな 00055430¥N2¥J 00055440¥X二△がてんちがひ 00055450M8一△さる町人のめしつかひの小者、主人の/留守(るす)をしていた 00055460M9る所へ、したしきともたち来りて、これのていしゆハとこ 00055470M10へ行れたるととひけれハ、こものまかり出て、/天和(てんわ)へまい 00055480M11られたると申。/彼(かの)人ふしぎにおもひ、/翌(よく)日またまいりて、 00055490M12(卅二オ)/亭主(ていしゆ)にあふて、きのふはそなたハ/何方(いつかた)へ行たるとと 00055500M13へハ、/芝筋(しばすじ)へまいりたるといふ。なにと、/芝(しば)すじに天和と 00055510M14いふ所やあるかととふ。さて+つがもない事をきく人か 00055520M15な。それハ今時の年/号(がう)じやといふ。されハこそと思ひ、小 00055530M16者をよび出し、くたんのやうすを主人とへハ、小者申やう、 00055540M17されば、だんなさまはつね+、ほと/遠(とを)きところを、ゑん 00055550M18はうへ行と御意なされますにより、只今はゑんはうのねん 00055560M19がうかわりましたにより、天和とハ申ましたといひけれハ、 00055570¥P194 00055580L1主人あきれた。 00055590¥N3¥J 00055600¥X三△やつこのけんくわ 00055610L4一△さる町やつこに、ふぐのわたとく助と申おのこありけ 00055620L5る。さかい町へ見物にきたるとて、おやぢはしを八もんじ 00055630L6にふミちらし、四方をねめまハしてとをる。又むかふより、 00055640L7なるほとちいさきおとこ、是もきかぬふうにて、大わきさ 00055650L8しよこ(卅二ウ)(卅三オ挿絵)たへ、はなうたにてきたりける。 00055660¥G 00055670M1はしのまん中にて行あたり、/双方(そうはう)わきさしに手をかけ、す 00055680M2でにけんくわと見えしとき、とくすけ、大きなるおとこな 00055690M3れは、かさにかゝり、こをのこ、まなこあけといふ。ちい 00055700M4さきおとこ、きかぬものにて、うぬがまなこあけといふ。 00055710M5たかひにこと葉あらくなり、大わきさしに手をかけんとし 00055720M6たる時、小男申けるハ、やい、おとこがちいさいとてのま 00055730M7るゝものでハない。さんせうハこつぶてもからいといふ事 00055740M8をバ云ハんとして、大きやつこに気をのまれ、こつふをわ 00055750M9すれ、おとこちいさいとてのまるゝものでハない。さんせ 00055760M10うハからいさといふた。きん所にばん太郎居て、さんしよ 00055770M11ハからいといふは、こつぶがおちたとおもひ、こつぶがお 00055780M12ちた+といへば、両方けひたるやつこにて、ま事のこつ 00055790M13ぶがおちたかとおもひ、したハかりながめて双方にがわら 00055800M14ひになりてわかれ、終にけんくわになりませなんだ。(卅三ウ) 00055810¥N4¥J 00055820¥X四△ふしよくの御ふう 00055830M17一△ある人、なつ中ことのほかふ食し、いろ+れうじい 00055840M18たされけれ共、さらにげんなし。出入の牢人ありしが、め 00055850M19いよの御ふうをもちたか、いつかたにても、ふしよくの人 00055860¥P195 00055870¥G 00055880M1ハたちまちくわいきいたすとて、御ふう二ふくつかハしけ 00055890M2り。しやうじんなどして水をあらため用ければ、そのまゝ 00055900M3ふくちうすきて、ものくい心いできて、あまりはうしよく 00055910M4なるまゝ、人+ふしぎにおもひて、その御ふうにいかや 00055920M5うなる神+のくハんじやうがあるとて、ひそかにひらき 00055930M6てみれは、そのもんにいわく、 00055940M7/牛馬(ぎうば)/六畜(ろくちく)/野郎(やらう)そわか 00055950¥N5¥J 00055960¥X五△かりうどのとんよく 00055970M10一△さるかり/人(うど)の山へ行、しゝをねらふ。そのあとにつき 00055980M11まハり/鹿(しゝ)を/買(か)ふものあり。山にてころしたる時、そのまゝ 00055990M12かへは/直(ね)段やすきゆへなり。むかふの山の根にて鹿一疋を 00056000M13見付、(卅四オ)(卅四ウ・卅五オ挿絵)てつほうをはなすといなや、 00056010M14この鹿たをれける。このてつほう、あたりハせいで、しゝ 00056020M15の下はらをする。このしゝ、おくびやうものにて、てつほ 00056030M16うあたりたると思ひてせつじをしけり。はやく出、直段を 00056040M17いたされよと申せば、あき人、やすくかハんとおもひ、は 00056050M18なに手をあて、あくさ+と云。かりうどあきれはて、た 00056060M19ゞ今うちたる鹿を、あらくさとハいふぞ。かうもの申ける 00056070¥P196 00056080L1は、是ハ山にて四五日もいぜんに、鹿としともぐいして/死(し) 00056090L2にたるのじや。いかふふるいといふ。かりうど気をせき、 00056100L3これがふるいかとて、/鉄炮(てつほう)にていじりまハせハ、もとより 00056110L4しなぬしゝなれバ、むつくとおきて山へかけのぼる。あれ 00056120L5がふるいか+とて高声になりていへは、あき人、ぬから 00056130L6ぬかほにていふやうハ、いかにもあしのぶんハあたらしし。 00056140L7とうぼねハくさうて、はながむけられぬといふた。 00056150¥N6¥J 00056160¥X六△あま(卅五ウ) 00056170L10なにと、あまといふうたひは/灸(きう)から出たるうたひそうな。 00056180L11きうの事バかりあるといふ。なぜにといふに、じつ月さん 00056190L12のふきみかう+たらばといふほどに、ミなきうの事じや 00056200L13といふ。そばにとひやうなるものありあわせ、いかにもよ 00056210L14ふ気がつきました。なぜにといふに、いよ+きうにきわ 00056220L15まりました。そのしやうこにハ、此筆の跡を御らんぜよと 00056230L16うたふたほとに、きうにきハまつたといふた。 00056240¥N7¥J 00056250¥X七△袖乞のきつきやう 00056260L19一△ある牢人、ことのほかおはをからし、とせいをおくる 00056270¥G 00056280M12べきちからなけれハ、ちからおよばす、此うへハ袖ごひを 00056290M13して門+をめぐり、一/銭(せん)の/助力(じよりき)をかうていとなミをせん。 00056300M14さりなから、いかにこつじきに出るとても吉日を見ていづ 00056310M15べしとて、こよミをとり出し見るに、中だんにとるといふ 00056320M16事あり。是ハしかるべし。まづとるといふがめてたしと申 00056330M17されければ、一ぼく罷出申やう、御尤ニ存候へとも、また 00056340M18御りつ(卅六オ)(卅六ウ挿絵)しんのときこそ、知行とるなどゝ 00056350M19て吉日にて御座候へとも、こつしきの御/身(ミ)にならせ給ひて 00056360¥P197 00056370L1ハ、日しよくか十方ぐれか、しかるべしと申ける。 00056380¥N8¥J 00056390¥X八△ぜつのあやまり 00056400L4一△されバものにはいゝやう、いひじなにて、いかふきも 00056410L5をつぶすといふについて、さるもの、八さくの節句に去方 00056420L6へ礼に行しが、赤坂松平安芸守様のこやがけをしまひくづ 00056430L7しに行、そのものもいざりしに、となりの家へはいり、こ 00056440L8の/あちら((ママ))に新助と申人がいられませうが、どこへ行れまし 00056450L9たとといけれは、ていしゆ申けるハ、されは、その新助ハ 00056460L10あと月、ぢがいをしられましたといふ。礼しや、きもをつ 00056470L11ぶし、是はいかな事。いかなるしさいにて、ぢがいハしら 00056480L12れましたととふ。ていしゆ申やう、されハ様子ハ不存候へ 00056490L13共、今ほとはあさ草辺ニいらるゝよし、うけたまハりまし 00056500L14て御座るといふ。礼者ふしきにおもひ、なにと、ぢ(卅七オ) 00056510L15かいしたるものが浅草辺にいるとハいかに。てい主申やう、 00056520L16余りきもつぶし給ふな。地をかへてゆかれましたといふた。 00056530¥N9¥J 00056540¥X九△やきばのよく心 00056550L19一△やけ死人をやきばへもち行、たのむ間、はいにしてた 00056560M1もれといふ。おんぼうのいふやうハ、やけたるしにんハ、 00056570M2やきちんかたかふ御座るといふ。それハかくべつの事かな。 00056580M3半分すぎも手前にてやいてきたほとに、たき木か入まいと 00056590M4おもふに、たかきとハふしぎしや。いや、その死人にハあ 00056600M5ぶらけないほとに、五百文ならばやかふ。それよりやすく 00056610M6てはそんがゆくといふ。そんがゆくならハ四百文出そう。 00056620M7はつじやほどに、もつて御座れ。やいてしんじやう。かさ 00056630M8ねてハこれてはなりませぬ。やとへ御かへりあらバ、あら 00056640M9めはしや天神の衆へ、さたなしにして下されといふた。 00056650¥N10¥J 00056660¥X十△三人かる口 00056670M12一△上野のちや屋に、女ちやを立て居る所へ、/高野(かうや)の坊主 00056680M13と座(卅七ウ)頭とこんやと立より、ちやをのミ居て、かうや 00056690M14のぼうず申けるハ、/上野(うへの)ののゝ/字(じ)ハ、かうやのやのじと申 00056700M15ける。こんや聞て、いや+かたかなののゝ字じやと申け 00056710M16る。ざとう聞て、いや+つへつきののゝ字しやといふ。 00056720M17ちやをたてし女申けるハ、いや+上野ののゝ字ハ、たす 00056730M18きかけののゝ字て御ざりますといふた。 00056740¥P198 00056750¥G 00056760¥N11¥J 00056770¥X十一△福ゑびす 00056780M3一△さるもの、ゆで/野老(ところ)にてゑびす大こくをつくり、ぼん 00056790M4にのせておいた所へ、となりにものいわひするもの、あそ 00056800M5びにきて、このゑびすをおれに下されいといふ。やすき事 00056810M6とてやる。さてもつて帰り、かまのほとりにすゑおきて、 00056820M7よろこぶ事かぎりなし。二三日すぎてみれバ、かのゑびす 00056830M8のかほ、目はたかり、口ゆがミ、なきつらなり。これハか 00056840M9まのほとりに置たるゆへ、しなびてしかミづらになりたり。 00056850M10山ぶしをよび、かやう+と見せけれハ、山ぶし、しなび 00056860M11たると見うけ、ひたと(卅八オ)(卅八ウ・卅九オ挿絵)水をかけ 00056870M12ゝれば、もとのごとくに/に((ふカ))つこりとなる。それよりして、 00056880M13その家日&にふつきになり、いのり事もかなひ、なか+ 00056890M14はんじやうすると也。まことにせわにも、ところはんじや 00056900M15うとハ申ならハしける。 00056910¥N12¥J 00056920¥X十二△/乞食(こじき)のまき/舌(じた) 00056930M18一△三吉と申こつ食、通町にてかしらぶんのこつじきにあ 00056940M19ひて、此中ハ久しく御意をゑませぬ。御きげんにござりま 00056950¥P199 00056960L1するかとといければ、/汝(なんぢ)が申ごとく久しくあわぬ。この比 00056970L2はふくちうけゆへ/町(まち)へも出ず。けふはじめてそろ+あゆ 00056980L3むといへバ、三吉申けるハ、さやうに御ふくちうあしきに、 00056990L4するが町、ほん町は御むやうで御座りまする。めつた町の 00057000L5新道へ御出なされ、ざうすいをもらいてあがりませと申せ 00057010L6ハ、その時かしら申けるは、女房どもにはあわなんだかと 00057020L7とへバ、おまへのおくさまハ、本町に、おゆのこをあがり 00057030L8てござりましたといふた。(卅九ウ) 00057040¥N13¥J 00057050¥X十三△あひるのくやミ 00057060L11一△さる御大名衆、うら町を御通給ひしに、さきばらひの 00057070L12かち衆、かい鳥のあひるをふミころしたり。大名、是を御 00057080L13らんじて、そのあひるにぬしハなきかとて、中小性に仰付 00057090L14られ、まいりて可申ハ、家来そこつの段、かんにんつかま 00057100L15つり候やうにと、ゐんぎんに口上を申おハりけれハ、てい 00057110L16主申けるハ、御/悔(くやミ)の御/使者(ししや)にて御座候ほどに、御返事申あ 00057120L17ぐるハりよぐわいて御座りまするあひだ、わさと御返事申 00057130L18あげぬと申た。 00057140¥N14¥J 00057150¥X十四△酒論の狂哥 00057160M3一△/上戸(じやうこ)成ともたち三人よりあひ、いさ+、けふはさけ 00057170M4のミてなぐさまんとて、よきさかなをとゝのへ、たかひに 00057180M5さしつさゝれつ酒のミけり。その中にも壱人が申けるハ、 00057190M6いつまてのミても/勝負(せうふ)がしれず。いざや哥をよミて、かつ 00057200M7たるものハ大きなるさかつきにてのむべし、まけたらハち 00057210M8いさきものにて(四十オ)のまんとて、三人のともだち、お 00057220M9もひ+哥よミけり。 00057230M10△△年こへてまたのむべきとおもひきや 00057240M11△△△いのち成けりさよの中わん 00057250M12△△陸奥のしづはた山のわすれくさ 00057260M13△△△人のこゝろをくミてしるわん 00057270M14△△としのうちに春はきにけり一とせを 00057280M15△△△こぞとやいはむことしとや/飯(いひ)わん 00057290M16三人一首つゝ哥よミて、さけのミける。しやくに立しおの 00057300M17こ、わたくしもなぞをかけてのまんとて、/立春(りつしゆん)としました。 00057310M18とハ何ととくぞと聞ければ、かんだけのまふとて、ミな呑 00057320M19けり。 00057330¥P200 00057340¥N15¥J 00057350¥X十五△三ばんつゞき切きやうげん 00057360L3一△七月すゑつかた、さるうへつかたの上郎衆、やぶ入と 00057370L4て宿をりして、竹之丞芝居を見物に行給ふか、きりきやう 00057380L5けん三番つゞきとよばハるをよろこび、さじきへあがり見 00057390L6物するに、(四十ウ)三番つゞき一番過し時、はかま/着(ちやく)したる 00057400L7おのこ、ぶたいへ出てかしこまり申やう、三番つゞきにつ 00057410L8かまつるはづにてござりますれとも、太夫しくたびれます 00057420L9る。そのうへ日もくれまするほどに、中を一ばんぬいて仕 00057430L10りまするほどに、さやうお心得なされませいと申けれハ、 00057440L11さん敷にありし上郎衆の中より所望しけるハ、ない+、 00057450L12三ばんつゞきにいたすよし聞つたへ、けふハ見物にきたる 00057460L13所に、中を一はんぬいていたす事、さりとてハ聞えず。日 00057470L14くれてもくるしからさる間、ぬかずに三ばんしてくれいと 00057480L15所望せられた。 00057490¥N16¥J 00057500¥X十六△じしんのゆいそこない 00057510L18一△ぢしゆんと申いしやの名をゆいそこない、こゝへじし 00057520L19ん様ハ見ゑませなんだかととふ。ちしゆんとハ聞たれとも、 00057530M1おどけものにて、いや、このほとハじしんハさたがない。 00057540M2どのじしんの事そととへハ、かのせいの高き大じしん様の 00057550M3事てござりまする。てい主、よい口なものにて、それハが 00057560M4てんじや。その大じしん様ハ、此ほどおくへいかれた程に、 00057570M5おくへ尋てゆけと申された。(四十一オ) 00057580¥Y奥山住紅葉子跋 00057590M11しか氏はなしは、むさしのゝ千種のかす+おほく侍れと、 00057600M12事しけきゆへ、爰にハ大かいをしるしぬ。又跡より、/蜂(はち)の 00057610M13さしあひ、かすり/咄(はな)し、狂哥、早哥のかる口はなしを板行 00057620M14せしめ出すものならなきにハしかし。 00057630¥Q 00057640M16△△△△△△△△△△△△△板本 00057650M17△△天和三亥九月中旬△△△△柏屋与市(四十一ウ) 00057660¥P201 00057670¥U噺本大系△第五巻 00057680¥T鹿の巻筆 00057690¥G 00057700¥Y 00057710L16貞享三年刊 00057720L17鹿野武左衛門作・古山太郎兵衛画 00057730L18半紙本五巻 00057740L19東大図書館霞亭文庫蔵 00057750¥Y鹿の巻筆△序 00057760M3それ、やまと大わらひのはじめは、むかし+あつたとこ 00057770M4ろに、そろりといひけるおどけものゝ、御きげんなをしに、 00057780M5おたるもつてまいつたといひしより、はじめてよろづのこ 00057790M6とばに、はなをさくいのかる口は、あまねくよにひろまり、 00057800M7月まち日まちのねふりをさます、おとぎほうずのひざをい 00057810M8ため、うゑ(一オ)つかたの御まへにては、下がゝりのさし 00057820M9あひおほくかたりのゝしるも、きやうげんきぎよの道すく 00057830M10に、三仏生のゑんはいなもの、我がいほはミやこのたわこ 00057840M11といひ、鹿がすむとなりにて、よをうぢ大和絵師古山師重、 00057850M12ふうりうのゑそらごとゝは、たがゆひそめた、しかのまき 00057860M13/筆(ふで)きは御免。(一ウ) 00057870¥P202 00057880¥G 00057890¥Y鹿のまき筆惣目録 00057900¥Y1第一目録 00057910M4初△ばんどうや才介 00057920M5/一((ママ))△三人ろんぎ 00057930M6三△せりふのけいこ 00057940M7四△いなかものどうわすれ 00057950¥Y1第二目録 00057960M9一△筆屋のじゆりやう 00057970M10二△にせやしま 00057980M11三△同二ばん目 00057990M12四△夢中のろうにん(二オ) 00058000M13五△火の見やぐらの見たて 00058010M14六△松本尾上狂哥 00058020M15七△いミやうなりひら 00058030¥Y1第三目録 00058040M17一△たいこやぐらのらくがき 00058050M18二△浅草観音梅の狂哥 00058060M19三△さかい町馬のかほミせ 00058070¥P203 00058080L1四△二くづし 00058090L2五△正月ハ物いまひ 00058100L3六△無筆のげんくわ帳 00058110L4七△むそうのよみそこなひ(二ウ) 00058120L5八△やぼのかげま持 00058130L6九△吉原ひなあそび 00058140L7十△仏事のいんしん 00058150L8十一△よしハら酒の行末 00058160L9十二△きよつねのうたひ聞なし 00058170¥Y1第四目録 00058180L11一△くどくの念仏 00058190L12二△きかぬやつこのしゆどう 00058200L13三△くるま善七が火事 00058210L14四△代官のかる口 00058220L15五△ひやうくやのかけ物(三オ) 00058230L16六△初心大こくまい 00058240L17七△かんばんのよみちがい 00058250¥Y1第五目録 00058260L19一△ぬれのはじまり 00058270M1二△ゆ屋のあま 00058280M2三△くだりなぞはなし 00058290M3四△ばゝが寺請状 00058300M4五△作蔵がかた事 00058310M5六△躰の屋道具 00058320M6七△あにさまのりやうけん 00058330M7八△しばい大夫本の日待 00058340M8九△心ばかりハ我物(三ウ) 00058350¥P204 00058360¥T1 00058370¥N1¥J 00058380¥Xばんとうや才介 00058390L3浅草新寺町に、すご六のばん、さいとどうなどつくる事め 00058400L4いじんの/細工(さいく)人あり。江戸中よりあまねくあつらゆるもの 00058410L5もおほかりける。さるによつて、弟子なとも四五人ありて、 00058420L6ふつきにくらし、名をばんどうや才介とつきけり。さてう 00058430L7らにやぶのありしに、此竹をきりて、どうにつくるほどに、 00058440L8竹の子なとのじぶんハ、ずいぶんたいせつにしたり。され 00058450L9ば、もしや人の竹の子をぬすミてきりもやせんとおもひて、 00058460L10かぞひしるしなどをつけておきしに、いつのまにか竹の子 00058470L11十四五本もぬすミとりたり。才介、もつての外に/立腹(りつふく)して、 00058480L12弟子とも(四オ)(四ウ・五オ挿絵)よひて、とかく外からぬす 00058490L13むへきにあらすと、こと+くせんぎするに、きけハすき 00058500L14とすごろくの事にて申あいけり。やい、そこなでつちめハ 00058510L15しらぬか。てつちきいて、わたくしが/重(じう)二や三にて、そも 00058520L16やそも此竹の子をとりませうか。一六におといなされいと 00058530L17申。一六をよびてせんさくすれハ、うらに母いんきよして 00058540L18いらるゝに、いんきよのしゆ三さまにおきゝなされいと云。 00058550L19さらばとて、さい介いんきよへゆきて、しゆ三坊。こなた 00058560M1ハ竹の子ハきりたまわずやといふに、ゐんきよ、さて+ 00058570M2おてまへのたいせつにしらるゝものを、おれがきるものか。 00058580M3そなたのふせうからおこつた。じやう六ばかりかいていて 00058590M4うか+としたるゆへ(五ウ)でく介や三四郎をよびてきき 00058600M5やれ。あいつらが一二をあらそふて四かねるやつでないと 00058610M6いわれて、又両人をよびてとふに、我+四六年もほうこ 00058620M7うつかまつります。すいぶんふぎはつかまつらぬ物を。六 00058630M8地に御意なされい。われらがばんハしませず。たとひどう 00058640M9ぎりになりまするとても、そんじませぬといふ。さい介き 00058650M10いて、おのれらがあくじハさい+の事じや。一をうつて 00058660M11ばんをしる。おれがおふめにミていれば、目のないものじ 00058670M12やとおもふか。たま+ものをいひつけても、ぐし+ば 00058680M13かりぬかして、しろきをくろとあらそひてもあらそわせぬ 00058690M14ぞ。ぐつともぬかすときるぞ。手ハみせぬと(六オ)いふ。 00058700M15その時三四郎、いかにでく介。もはやばんじきわまつた。 00058710M16此うへハどうもならぬ。だんなむし+いわしやればぜひ 00058720M17なし。おミとをれとさしちかひ、四の二さと、いろをちが 00058730M18へていへば、四の二といわれてさい介も、のぼりつめてを 00058740M19りはがなかつた。 00058750¥P205 00058760¥G 00058770¥N2¥J 00058780¥X三人ろんぎ 00058790M3浅草/俵(たわら)町松崎源内と申者あり。むかしハ何様よしあるろう 00058800M4にんなりしが、いまはひきかへ、少しやうばいなどしられ 00058810M5けり。ふかくつねにはなしあふ人ふたりありしに、一人ハ 00058820M6平川与市左衛門とてろう人なり。いま壱人は三河屋三郎兵 00058830M7衛と申けるが、是ら三人朝夕ともにわけて(六ウ)したしく 00058840M8せられけり。此与市左ハことの外なるごしやうねがいにて、 00058850M9ついにじゆずをはなす事なし。たゝ西方をのミいのられけ 00058860M10り。源内はあけくれしやうぎをすきて、あいてのあらんか 00058870M11ぎりハよるひるともにさゝれける。又三郎兵衛ハかるたを 00058880M12すきて、よミの、あわせの、かうなどゝいふ事のミふかく 00058890M13のそミけり。あるとき源内方にて三人ともに出あい、夜す 00058900M14がらよも山のはなししけるに、与市左いひ出されけるハ、 00058910M15さて+両人へいけん申たき事ありといふ。何事ぞ。され 00058920M16ば、にんげんわづかのゆめの世にむまれ、ながきらいせの 00058930M17ことわりをしりたまわぬこそくちをしけれ。あわれ、ごし 00058940M18やうにもとつき給ひ(七オ)(七ウ・八九オ挿絵)かしといふ。て 00058950M19いしゆきいて、まこと仰のことくなり。しかし、われハ少 00058960¥P206 00058970L1もとつく心にや、ごしやうぎと申か、しやうぎまてハすき 00058980L2候。さりとてハ三郎兵、御じぶんにハにあわずかるたわざ、 00058990L3ふつ+とやめ給へ。かるたハばくちのだい一なり。人の 00059000L4おもふ所もあり。なくさミとはよもいわじ。さりとてハや 00059010L5めさせ給へ、与市とのと云。三郎兵衛きいて、かるたもご 00059020L6しやうになるまじや。それかるたハ人間のせいすいのもと。 00059030L7されば仏法にいわんにハ、まづ四十八枚ハミだの四十八く 00059040L8わんなり。一より九まで四とをりにて四九三十六、地の三 00059050L9十六ゐんをひやうし、/十(じう)、四枚ハしやか、ミだ、やくし、 00059060L10ミろく仏。/馬(むま)四枚ハもんしゆ、ふげん、くわんをん、(八 00059070L11九ウ)せいし。きり四枚ハじこく、びしやもん、こうもく、 00059080L12そうてう。さてまた、いす、こつふ、はう、おうる/四(よ)しな 00059090L13にさためしハ、しゆミ四しうをかたとりたり。一ハはんも 00059100L14つのはしめなれは、あざを天下にたつるなり。一よりきり 00059110L15までの十二とさだめしかずハ、十二月をひやうしたり。さ 00059120L16れば、きりといひてハ何にてもすきをいだす。いきものゝ 00059130L17十二枚ハ十二ゐんゑんなり。やくしの十二神をもひやうし、 00059140L18心は人のなくさみにして、よろづのやまいをわすれ、気を 00059150L19ほうずるゆへなり。よみのかるたハ壱枚のこり、あがられ 00059160M1ぬ事八つのぜんありなから、壱つのあくにひかさるゝ心な 00059170M2り。九枚もつハ九ほんの(十オ)じやうど、ごしやうに入ね 00059180M3なり。さるによつてかるたとなづく。米ハ是人をたすくる。 00059190M4そのいねのあとをかるたといふ。あわせにては人のぜんあ 00059200M5くをしり、かうニては人のうんふをしる。三枚まくハ三く 00059210M6じの心なり。是もかやうにこゝろへば、いかてごしやうに 00059220M7ならずやといわれたり。その時源内申されけるハ、さやう 00059230M8にいわんにハ、しやうぎはなをまさりたる事あれば、是に 00059240M9もとづき給へかし。それ、しやうぎハかうう、かうそなり。 00059250M10さて仏法にては、両王ハしやか、みた。王のわき八枚ハほ 00059260M11けきやう八くわん。歩九枚ハ九ほんのしやうど。飛車、角 00059270M12行ハもんじゆ、ふげん、くわんをん、(十ウ)せいし。されば、 00059280M13なるときハしゝ、ぞうのいかりあり。ばんのおもてに八十 00059290M14一の目ハ、天の三十三天、地の三十六ゐん、十二ゐんゑん、 00059300M15是八十一なり。四つのほし四天王、つむところハ人間のち 00059310M16ゑにより、しやうぎの学によるへし。つめあひハほうもん 00059320M17におなじ。一手のあくじにて一ばんのまけあり。しりよあ 00059330M18るべし。てき三つめに入て金になるハ、是かうミやうの人、 00059340M19又ハすゝめの/師(し)。くわんゐの心、てきよりとりたる駒をは 00059350¥P207 00059360¥G 00059370M1る事、是いけどりの人をつかふこゝろ。但シさきの学を我 00059380M2がものにしたるにひとし。金ハ左大臣。あとのすミへかゞ 00059390M3む事なし。銀ハ目付なれば、すミ+よくきく。桂馬ハ馬に 00059400M4てはしるやく(十一十二オ)(十一十二ウ・十三十四オ挿絵)なれば、人 00059410M5のうへをものりこゑて、高名をきわむ。香車ハ/軍使(ぐんし)なれば、 00059420M6てきぢんまですぐにかける。歩はあしがる。さればさきに 00059430M7そなゑをたつる。かうミやうきわめ、てきぢんまで入時、金 00059440M8になりてハ左大臣にもおなし。飛車は一方の大将なれハ後 00059450M9に龍王となる。角ハきりんのいかりあれハ龍馬となる。ひ 00059460M10とつとして仏法、仁義の両道にはずるゝ事なし。しやうぎ 00059470M11経とてきやうもあり。とかく是にもとつき給ひかしといわ 00059480M12れけるに、与市左是をきいて、げに+源州の仰もつとも 00059490M13なり。せめてハ是にし給へかし。まづ、かるたつくりいだ 00059500M14す、いゑなさへわるきぞや。かるたをすくと(十三十四ウ) 00059510M15いふ事の、ほかへもしもきこへなハ、てじやうをおろされ、 00059520M16かぎやをとりあけられてせんかたなし。たゞ笹やきてきく 00059530M17もいや。人のなんまでかぶとやの、もはやおもひとゞまり 00059540M18たまへとて、かるたのなんを、一からきりまでたんかにい 00059550M19われた。 00059560¥P208 00059570L1一二わるきハ△三郎兵衛△四まいつかへて△五めいわく 00059580L2六しんけんぞく△うとミはて△七にすつきと△おきあげて 00059590L3八をひらくハ△いまのまぞ△九にのしをきハ△きゝいれす 00059600L4十+そちの△あやまりて△馬じやといへど△かいあらじ 00059610L5是よりきりを△あげたまへ△せめてしやうぎハ△げいのうち 00059620L6たゞ王+に△しくハなし△金銀さらに△ついやさず(十五オ) 00059630L7ミたる桂馬も△あしからで△ざしきの香車を△もよをして 00059640L8歩しのつきあい△おほくあり△人の角行△よくなりて 00059650L9どうりも飛車も△しるゝなりけり 00059660L10△△何事も人間ばんじさいをふか 00059670L11△△△馬とたとへし事もこそあれ 00059680L12さてこそ三郎兵衛、かるたをとゞめられしとなり。 00059690¥N3¥J 00059700¥Xせりふのけいこ 00059710L15過にし霜月より、竹之丞しばい、はじめてかほみせに出る。 00059720L16出来嶋吉之丞、まへ+かげまのときより、殊の外はやる 00059730L17子なり。しばいへ出るにより、いよ+夜るひるともに、 00059740L18つかのまもひまなし。されともかたきうちの(十五ウ)きやう 00059750L19げんせりふをいふやくなれハ、こゝろのうちにふくしける 00059760M1に、夜ふけてきやく少ねいりける。よき/隙(ひま)ぞと心へて、き 00059770M2やくの大小をさし、身ふりをしてみんとやおもひけん、か 00059780M3のきやくのまくらもとにたちて、ようせうよりねろふとい 00059790M4へとも、をりのなけれハ、ほんいをとけず。ひころこゝろ 00059800M5をつくせしに、今夜にいんくわやさたまりけん、しかしね 00059810M6入たるをきらんは、しにんをきるにことならずと、あゆミ 00059820M7の板をふミならし、三千ねんに一度はなさきミのなるせい 00059830M8おふぼがそのゝもゝ、とうくわのせちゑ、うどんけのおや 00059840M9のかたきにあふはまれなりといへとも、おもへばや(十六 00059850M10オ)(十六ウ・十七オ挿絵)すかりけるぞやと云て、たちをさや 00059860M11ともにふりあげけれハ、きやくをどろき、はだかにて、だ 00059870M12い所をさしてにげゆく。是ハいかに。おやかたをさきとし 00059880M13てさわききけバ、さりとてはおぼへなし。人たがいにてあ 00059890M14ろふと云。いや、きやうげんのせりふなるが、あすのか 00059900M15ほミせに出るにより、ふくしてみましたといわれて、やう 00059910M16+あんどした。 00059920¥N4¥J 00059930¥X/田舎者(いなかもの)のどうわすれ 00059940M19とをり町三丁目えとしころなる男きたりて、わかきものに 00059950¥P209 00059960¥G 00059970M1むかひ、ちとものたつねましたいといふ。なに事ぞととへ 00059980M2ハ、こゝらにたつねたき人ありと云。(十七ウ)名はなにとと 00059990M3へハ、わすれましたといふ。いゑ名ハととへは、是もわす 00060000M4れました。さてとほうもない事をいふ人しや。それではし 00060010M5れぬといへハ、わたくしは、はる+とをき/水戸(ミと)からまい 00060020M6つたものでござる。をしゑてくだされねは、二日ぢのみち 00060030M7をかへります。さりとハといふ。此をとこもきのどくにお 00060040M8もひて、せめてかたしろてもおぼへたまわぬかととへば、 00060050M9名も家名も、みなさすやうなと云。しばらくかんがへて、 00060060M10さてはむかいの上下やどに、まつば屋有介が事であろふ。 00060070M11まつばもありも、さす物じやほとにといふ。いや、それて 00060080M12はござらぬ。さてハかゝミや(十八終オ)はりまのかミかと 00060090M13とふに、それでもござらぬ。まつときつくさすものじやと 00060100M14いふ。いまおもひつけた。/伊賀(いが)屋の八兵衛かといへば、そ 00060110M15れ+といふてたづね/逢(あふ)た。(十八終ウ) 00060120¥P210 00060130¥T1鹿の巻筆第二 00060140¥N1¥J 00060150¥X筆屋のしゆりやう 00060160L5とをり町にしゆりやうしたる筆やあり。なをのとの守とい 00060170L6へり。十四五なるわつはしをつかひけるに、をのれ、のと 00060180L7のかミの内に長吉はにあわぬ。きくわうとつけうといふ。 00060190L8長吉きいて、まことに、ちやうきちとは、いな物でござる。 00060200L9きくわうとつけて下されませい。わつはへもつうじまする 00060210L10と申ける。こゝにまた、のとの守のいゑぬしに八兵衛と申 00060220L11おとこありしが、のちにひまをとりて、のとのかミの弟子 00060230L12になりけり。わつはのいひけるは、(一オ)(一ウ・二オ挿絵)の 00060240L13との守のみうちに八兵衛とはいわれまい。なをかゑてよか 00060250L14るへし。をれも長吉とはにあわぬとて、たんなのきくわう 00060260L15とつけられた。そなたのなは、つぎのぶとつけふとて、い 00060270L16ゑぬしよりきたる八兵衛を次信とそ付にける。さてわつは、 00060280L17八兵衛をつきのぶとつけましたといへハ、のとのかミきい 00060290L18て、さて+にくひやつかな。つきのぶはおれかためにか 00060300L19たきなるに、なせつぎのぶとはつけたとて、さん+にし 00060310¥G 00060320¥P211 00060330L1かる。きくわうきいて、さて+たんなはをろかな事をお 00060340L2しやる。おまへの大屋にいられましたさかいに、つきのぶ 00060350L3と付ましたと申た。(二ウ) 00060360¥N2¥J 00060370¥Xにせ屋しま 00060380L6去ル戌のとし極月廿八日、火事のじぶん、しにたるせうじ 00060390L7屋が子、さとううり三郎兵衛がゆらいを、くわしくたつぬ 00060400L8るに、五十四間のせうじやにかくれなき人なり。としより 00060410L9けれハみな、せうじ殿とてきんじよの人ももちひける。三 00060420L10年さきに病死せられけるに、兄弟の子あり。兄に三郎衛兵、 00060430L11弟に四郎兵衛、弟子新五郎、三にんいつれもきりやうのも 00060440L12のなれハ、おやのあとをとりみださす、大かたにとせいを 00060450L13おくりけり。しかるに三郎兵衛弟に申けるは、かゝるおり 00060460L14からに、三人もろともにおなじわざばかりもせんなし。な 00060470L15んぢ弟子新五郎と(三オ)すいぶんかせぐべし。我ハあきな 00060480L16ひをせんといふ。いか成事をやととへハ、さとうをうりて 00060490L17見んといふ。四郎兵衛申けるハ、せうじやが子さとううり、 00060500L18いかにももつてにあわしき。ひとかせぎかせきて見給へと、 00060510L19それよりしたくをして、ある時ばん町、うしごみ、かうし 00060520M1町、よつや、赤坂、あをやま、しば、こびき町、つきぢ、て 00060530M2つほうづをかぎりに、うりてかへる時もあり。又ある時ハ、 00060540M3とをり町、ゑどはし、こあミ町、はこ崎町、れいかん嶋、 00060550M4大わたしをこゑて、ふか川、てら町、ほんじやう、両国橋 00060560M5を渡り、あさくさ、したや、かんだへんをうりありくほと 00060570M6に、まいにち五百三百ハもふけずといふ事なし。しかるに 00060580M7(三ウ)極月廿八日にハ、もはや正月もちかしとて、いつ 00060590M8+よりもみめいに出て、ほんじやう、かめいどのへんま 00060600M9て行。四つ時分より大風ふきて、つちほこりをひたゝし。 00060610M10これハとおもふに、あわや火事といふて、天にくろくもま 00060620M11つくろにおゝふ。是はとおもひ、かのさとうハしる人のあ 00060630M12りしに、しか+といふてあつけをき、一もんじにかけき 00060640M13たる。もはや両国橋のあたりハ一めんにまつくろにして、 00060650M14わけてそれとも見へかたし。されともふてきのものなれハ、 00060660M15やう+にしろかね町まてかけきたるに、かゝミやのとの 00060670M16かミがへいのやけおちたるうへをこゑてゆかんとすれハ、 00060680M17しのびかへして、つちふまずのまつたゝなかに、のぶかに 00060690M18こそ(四オ)(四ウ・五オ挿絵)ふミたてたり。心ハこうなれと 00060700M19も、いたでなれハ、なにかわもつてたまるべき。どてきわ 00060710¥P212 00060720¥G 00060730M1にひしとたをれ、ばんしのゆかにふしにけり。是ハさてを 00060740M2き、四郎兵衛ハ新五郎もろともに、はるかににげのびたり 00060750M3しか、かゝるおりから、我+がさいくもたくさんにある 00060760M4べきなれは、いざやまづやけハらへゆかんとて、我いどこ 00060770M5ろにかへり、そう+やけはいとりのけて、新五郎両人に 00060780M6て、その夜にこやをぞとりたてたり。されとも兄の三郎兵 00060790M7衛ハミへず。さて+ふしぎのしたいかな。兄三郎兵衛は 00060800M8我+とはちがい、ひときりやうある人なるに、今まてを 00060810M9/((そ脱カ))きはふしんなり。何様我+をたづねんため、(五ウ)火事 00060820M10のところにふか入して、けふりにむせてしにたまふか。さ 00060830M11なくハ、けがばしし給ふか。うちすてゝハをかれまいとて、 00060840M12大屋へゆきて此よしをかたる。おりふし名主殿もいであい 00060850M13て、やうすをきこしめし、まことに三郎兵衛事なれハ、う 00060860M14ちすてゝおかれじと、大屋、あいたなもろともにたつねて 00060870M15こそは出られたり。たつねしところハどこ+ぞ。くらの 00060880M16うちにぞこめかしや、ひよりハしれぬてりふり町、やけし 00060890M17ハげにもこあミ町、こゝにてあわハよし町や、げにやうき 00060900M18よのさかい町、おほくの人ものり物町、とがもなけれどざ 00060910M19いもく町、にもつをふかくほりとめや、をとハなけれとて 00060920¥P213 00060930L1つはう町、兄かゆくゑ(六オ)のなにとてか、しろかね町ま 00060940L2てたつぬれと、廿八日の事なれハ、くらさハくらし、てを 00060950L3いしにんのおほけれハ、さらにそれともミへわかず。たま 00060960L4+ことふものとてハ、やけハらの火のまわり、どてのう 00060970L5への松風ばかりなり。四郎兵衛申けるは、かくたつねてハ 00060980L6しれかたし。とかく名をよひてこそとおもひ、爰元にさと 00060990L7ううりせうじ屋が子、兄の三郎兵衛ハおわせぬかと、ひそ 00061000L8かによふでぞとをりけり。かゝりけるところに、四郎兵衛 00061010L9がこゑときゝて、どての松風もろともに、たそとこそハと 00061020L10われける。四郎兵衛、兄のこゑときくよりも、心もそらに 00061030L11うれしくて、やけしひとをのりこゑて、いかに、けがばし 00061040L12し給ふか。(六ウ)是ハ+と申ける。三郎兵衛申けるハ、 00061050L13わが身の事ハいわすして、名主殿ハそくさいか。大屋殿ハ 00061060L14まめなるか。わとのハけがばしせぬかといふ。あいたな、 00061070L15大屋もろともに、是ハといひて、きんじよのやけこやより、 00061080L16やり戸一枚とりもちて、三郎兵衛をかきのせて、さきは四 00061090L17郎兵衛かき、あとは弟子新五郎、さてあいたな、大屋殿、 00061100L18いつれもさきにたちそいて、やけこやさしていそきけり。 00061110¥N3¥J 00061120¥X二番目 00061130M3さるほとに、やけこやになりしかハ、名主殿にかくといふ。 00061140M4名主よしをきゝて、是ハいかに三郎兵衛。心ハなにとある 00061150M5やらん。けがハどこぞととわれける。されともところの 00061160M6(七オ)わるけれハ、たゝうなつきたるばかりにて、ものを 00061170M7もさらにいわさりけり。そのときをとゝ四郎兵衛、兄に心 00061180M8をつけんとやおもひけむ、是ハたとへでなけれとも、かま 00061190M9くらかしの五郎助は、とりこゑばしの弥三郎に、ゆんでの 00061200M10かたをたゝかれて、三日つけてねらい、ついにたゝきかへ 00061210M11すときく。わづかのほそくぎ壱本にて、やミ+とし給ふ 00061220M12ものかな。まくらもとハ名主さま。わきにおハすハ大屋殿。 00061230M13その次ハあいたなしゆ。こう申ハ弟の四郎兵衛と申ける。 00061240M14その時に三郎兵衛、をもき枕を少あげ、さもくるしげなる 00061250M15いきをつき、この三郎兵衛が、かまくらかしの五郎介に、を 00061260M16とるべきにハあらねども、のとのかミがしのび(七ウ)かへ 00061270M17しハ、かミがたまてもかくれなし。かほとの名たかき大く 00061280M18ぎに、まつたゝなかをとをされて、三郎兵衛にあれハこそ、 00061290M19かくいつれものそのなかにて、ものハ少もいふぞかし。い 00061300¥P214 00061310L1かに名主様、大屋様。四郎兵衛ハわかけれは、ばんじハた 00061320L2のミたてまつる。かたミのものをおくるべし。きり、かな 00061330L3つち、のミ、のこきりハ新五郎にゑさするなり。此はをり 00061340L4ハけきれしたれと、四郎兵衛とりてきて、われにそふとおも 00061350L5ふべし。是をさいごのことばにて、三十一をいちごとして、 00061360L6ついにむなしくなりにけり。人&是ハとの給へど、とても 00061370L7かなわぬしでのみち、あさくささいふくじにて、とむらい 00061380L8をぞ(八オ)(八ウ・九十オ挿絵)したりける。しかるに大屋殿、 00061390L9くろいぬ一ひきいだききて、此いぬ、われがひさうなり。 00061400L10名をハこぐろとなつけたり。ねこ、いたちにかけあわせて、 00061410L11そのはやき事いちもつなり。ぬす人などにほゑる事、よの 00061420L12いぬにハ十ばいせり。三郎兵衛つねにのぞむ。されども、 00061430L13あいたなにものぞむ人おほけれハ、ついにとらせず。いま 00061440L14のべのおくりさせんと、しろぬの一たんとり出し、かのこ 00061450L15ぐろにまきつけて、寺へ一所にをくりける。あらふしぎや、 00061460L16さいふくじにてやきけるに、火そうのをりから、かのいぬ、 00061470L17われととひいでゝ、かの火の中へとんで入ル。いにしへの 00061480L18ぎけいハ、つきのふがさいごに、大夫くろをひかれける。 00061490L19(九十ウ)いまの大屋ハこぐろのいぬをおくられしに、火の 00061500M1中にいりし事、めいどまてともしたり。あふしうにかくれな 00061510M2きつきのふがさいごにをなじけれハ、にせ屋しまと申なり。 00061520¥N4¥J 00061530¥X夢中の浪人 00061540M5爰に大和田源太左衛門と云ろう人あり。永+のろう人に 00061550M6て、をはをうちからし、むもれ木のはなさくべくも見へず。 00061560M7身のなりはてのあわれらしきありさまなれとも、心はいま 00061570M8ださらにをとろへず、あなたこなたとつとめけるに、ある時 00061580M9いつもめをかけさせらるゝ御屋敷へまいりけるに、御きや 00061590M10くの方様へ、かの源太左衛門を(十一十二オ)御しる人にな 00061600M11されけれは、なか+ねんころに仰られ、にあわしきところ 00061610M12もあらんにはきもを入べし。身がかたへも、ちとまいられよ。 00061620M13さりなから、方+へつとむるゆへひまなし。来ル十一日 00061630M14には宿にをるなれば、ひまにおゐてはお出をまつと仰けれ 00061640M15ハ、あまりにうれしくて、すミよしのまへに二葉をすゑそ 00061650M16へて千年まつ心にて、十一日をおそしとまちけり。その日け 00061660M17んになれは、あかたれたるくろはぶたひのうへに、時ならぬ 00061670M18もじのかたきぬなと、ゑもんけたかくひきつくろひ、まいり 00061680M19けるに、そうしやであいて、なひ+御じぶんの事、だん 00061690¥P215 00061700¥G 00061710M1な申付をかれましたとて、(十一十二ウ)さしきにせうじけり。 00061720M2しばらくあつて口上仰いだされけるは、よふお出なされた。 00061730M3おまちとをにごさろふが、さかやきにそりかゝりました。 00061740M4しばらくまたせ給へとありて、ちや、たばこぼん出し、又 00061750M5ひくわしをたくさんにつミもちいでゝ、ろう人のまへにを 00061760M6く。もとよりまつくすみになりていけるに、家中の子なり 00061770M7けるが、六つ七つばかりの子、かミをうちちらかいたるが、 00061780M8せうじをそろりとあけて、ろう人のかほを見なから、かのく 00061790M9わしをぬすミて、せうじのかげにゆきてくらふ。またきては 00061800M10とりてゆきける。ろう人心に思ふやう、さて+きのどく 00061810M11な事じや。ろう人がひだるさに(十三オ)(十三ウ・十四オ挿絵) 00061820M12くわしをあらしたとおもわれなん事、よに口をしや。おど 00061830M13してミんとおもひて、またきけるほとに、めとはなに手を 00061840M14あてゝ、めくちをひろげて、もゝんぐわあと云。かの子お 00061850M15どろきてにげ、又きたればをとし、二三度しけるが、また 00061860M16せうじをあけてくる。かの子どもと思ひ、めくちひろげて、 00061870M17もゝんぐわあといへば、殿なり。そのまゝ御かへりあつて、 00061880M18さて+あのろう人はそうきそふな。いそいでかへせと仰 00061890M19ける。そうしやきたつて、たんな、やうの儀あつてまかり 00061900¥P216 00061910¥G 00061920M1出られまする。まづおかへりなされませい。かさねて此ほ 00061930M2うからよびにしんすへきむね申さるゝといわるゝ。ろう人、 00061940M3さてはいまの(十四ウ)もゝんぐわあゆへとおもひながら、 00061950M4せひなくさしきをたちけり。げんくわ口へ出けれは、又か 00061960M5のいたづらがき、げんくわのわきにいけり。さてもこの子 00061970M6めゆへ、しんだいとりそこなふたとおもひ、にくさもにく 00061980M7し、またもゝんぐわあと、めくちをひろげてをどしければ、 00061990M8見る人、いよ+そうきにきわまつたといわれた。 00062000¥N5¥J 00062010¥X火の見やぐらみたて 00062020M11いなかもの三人つれて、江戸けんぶつのためにきたりしに、 00062030M12まづ屋敷+を見ありきけるが、ひのミやぐらをみつけて、 00062040M13ひとりのいゝけるやうハ、くにもとにてきゝおよびし、く 00062050M14ものうへ人さまといふは、是にてあらふと(十五オ)いふ。 00062060M15一人が申けるハ、みれハさむらいそふなほとに、てんちく 00062070M16ろう人といふものでござろふ。中にもことしのよりたるも 00062080M17の申けるは、屋敷に、なにろう人があらふ。うへに/大皷(たいこ)が 00062090M18あるほとに、かミなりの下屋敷さといふた。 00062100¥P217 00062110¥N6¥J 00062120¥X松本尾上狂哥 00062130L3をのへ、もとはかけろふにてをわしける。過にし霜月朔日 00062140L4より、かん三郎しばいへ出けり。まへ+よりしたしくい 00062150L5きけるきやくのともとち、きたりて申けるハ、今日はおの 00062160L6へかたへ御こしあるましきかといへハ、いやはや、むかし 00062170L7のやうにはまいられぬ。くらいあがり給へハ、花代もあか 00062180L8るらめ。しかし、是をおやかたの方へおくりてたべとて、 00062190L9(十五ウ)狂哥をかきてつかわしけり。 00062200L10△△花代も高砂ならはこちハいや 00062210L11△△△おのへのかねをもたぬ身なれは 00062220L12おやかた、返哥をかきてをくりけり。 00062230L13△△まづかひやまへがミかつらなかき夜に 00062240L14△△△あかつきまてはかけてやろふそ 00062250¥N7¥J 00062260¥Xいミやうなりひら 00062270L17江戸さかい町のほとりに、なりひら勘右衛門といふものあ 00062280L18り。わかきものともよりあひ、ひやうばんしけるやうハ、 00062290L19勘右はなるほと、ぶをとこなるに、なりひらとハ、いかな 00062300M1れはいふやらんといへは、その中にひとりの申けるは、(十 00062310M2六終オ)よくはたらく男なれハ、まめおとこといふぎりで、 00062320M3なりひらであろふといふ。又ひとりのいゝけるは、いや、 00062330M4わかき時おとこだてありつらめ。むかし男と云ぎりかとい 00062340M5へハ、はるか下座にありし人、われ、よくいわれをしりた 00062350M6り。勘右はいにしへ、とつとふべんな人でこさつたか、お 00062360M7やだい+よりしつけたるしよくにて、ものういかむりや 00062370M8をして、ならの京、かすかな里にいた人しやさかいて、な 00062380M9りひらといふといわれた。(十六終ウ) 00062390¥P218 00062400¥T1鹿の巻筆第三 00062410¥N1¥J 00062420¥X太皷やぐららくかき 00062430L5過にし春の比、中村善五郎新芝居とりたて、なにかなかわ 00062440L6りたる事をせんとおもひ、たいこやぐらのまくを、かきに 00062450L7そめてはりけれハ、いかなるものかしたりけん、 00062460L8△△新しばいをもてにかきのまくをはり 00062470L9△△△さそやうちにハへたのあるらん 00062480L10かくぞはりかミしければ、善五郎きのどくに思ひて、そめ 00062490L11なをし、こんのまくをはりけれハ、またかくなん、 00062500L12△△うちまわすたいこやくらのまくのいろ 00062510L13△△△そめかへしても見てはこんこぬ(一オ)(一ウ・二オ挿絵) 00062520L14ついには、しばいつふれしとなり。 00062530¥N2¥J 00062540¥X浅草観音梅の狂哥 00062550L17四方のけしきものとかなれは、したしきともとちふたり三 00062560L18たり、春をゑかほにともなひて、つミもむくひもあさくさ 00062570L19のくわんぜをんにもふでけるに、めての寺に梅花のさかり 00062580¥G 00062590¥P219 00062600L1なれは、けんぶつのきせん、袖をつらねていろめきける。 00062610L2むめのはなたが袖ふれしにほひやらん、春やむかしをおも 00062620L3ひでにたちよりて見れば、なかふよこさまにつくりなした 00062630L4り。まことにくぜいのふねなりとも/いつ((ママ))つべし、のりの人 00062640L5をやまつこゝろか。されとも、したかきをゆいまわしけり。 00062650L6(二ウ)是は花をおしミてこそと、石川氏の何かし、狂哥し 00062660L7侍る。寺の名をきけば、ちかうゐんと申。 00062670L8△△二世かけてかわらしとはなにちかういん 00062680L9△△△まかきは人にちきらせしとや 00062690¥N3¥J 00062700¥X堺町馬のかほみせ 00062710L12市村しばいへ、去ル霜月より出る斎藤甚五兵衛と云役者、 00062720L13まへかたハ米かしにて、きざミたはこうりなり。とつとか 00062730L14るくち、きりやうもよきをとこなれば、とかく役者よかる 00062740L15べしと、人もいふ、われもおもふなれば、竹之丞大夫もと 00062750L16へ、つてをたのミ出けり。明日よりかほミせに出るといふ 00062760L17て、米かしのわかきものともたのミ申けるハ、はしめて 00062770L18(三オ)なるに、なにとぞ花を出してくだされかしとたのミ 00062780L19ける。めをかけし人&二三十人いひあわせて、せいろう四 00062790¥G 00062800¥P220 00062810L1十、また壱間のたいにとうからしをつミて、うへに三尺ほ 00062820L2となるつくりものゝたこのせ、甚五兵衛とのへと、はりかみ 00062830L3して、しばいのまへにつミけるぞ、おひたゝし。甚五兵衛 00062840L4大きによろこび、さて+おそらくは伊藤庄大夫とわたく 00062850L5し、花が一番なり。とてもの事に、けんふつに御出と申け 00062860L6れハ、大せいけんぶつにまいりける。されとも、はしめて 00062870L7のやくしやなれハ、人らしきげいはならす、きりきやうげ 00062880L8んの馬になりて、それもかしらハはたらくなれハ、しりの 00062890L9ほうになり。かの馬出るより、此馬が甚五兵衛といふ(三 00062900L10ウ)ほとに、しばい一とうに、いよ馬様+と、しばらく 00062910L11なりもしづまらず、ほめけり。甚五兵衛、すこ+ともな 00062920L12らじ/((と脱カ))おもひ、いゝん+と云なから、ぶたいうちをはねま 00062930L13わつた。 00062940¥N4¥J 00062950¥X二くづし 00062960L16遠州はままつ袋やの治兵衛といふもの、子次郎介を江戸へ 00062970L17あきなひにくだし、おわり町に/店(たな)を出し、たび屋をいたす。 00062980L18わかきものゆへ、御/法度(はつと)きひしき中に、ちとしやうぶわざ 00062990L19をすき、あきなひも身にそまず、あしきともをのミまねき 00063000M1て、うつら+くらすほどに、ざいしよよりぢさんのかね 00063010M2もみなうちこミ、けつく/借(しやく)金おほく、あきなひもなりかた 00063020M3きゆへ、しよたいをしまい、(四五オ)(四五ウ・六オ挿絵)こと 00063030M4うぐをのりかけにゝこしらへ、ざいしよへのぼらんと、とり 00063040M5つくろふおりから、ざいしよおやのかたよりひきやくきた 00063050M6る。次郎介、何事やらんと文をひらき見るに、何+その 00063060M7ほう儀、もとでをうしなひ、大分かねなどかりたときいた。 00063070M8ぢう+のふとゞき、此ほうへのぼりしだいにうちきりす 00063080M9てべきなどゝ、さん+にいひおこしければ、次郎介おも 00063090M10ふやう、ざいしよにかへりてもいかゝ、あしからんと、こ 00063100M11しらへたる二もつをくずしける。友たち見まいきて、その 00063110M12ほうハのほるよしきいたに、なせに、にをくづすといへば、 00063120M13おやがうちきろふと云により、二くづしたといわれた。 00063130M14(六ウ) 00063140¥N5¥J 00063150¥X正月は物いまい 00063160M17田所町に、かうしう屋の甚右衛門とて、代&/法花宗(ほつけしう)ニ而、 00063170M18ものいまひをせらるゝ。きうとう廿八日まてしやうばいい 00063180M19そかわし、御かざりのどうぐもこしらへさるゆへ、作介を 00063190¥P221 00063200L1よびて、かざりなわをなゑといふに、作介手をついて、ぶ 00063210L2ちやうほうなるわたくし、かざりをいたさば、ろくでハ御 00063220L3座るまいといふ。ていしゆ気にかけて、ばかめがといふて、 00063230L4そばなるまきをなけつける。作介、是だんな。またなげき 00063240L5をなさると云。甚右、さて+ぜひもないたわけじや。左 00063250L6様の事ハぬかさぬものじや。あすハ大つごもりじやに、か 00063260L7ならすそさうをいふな。ことに元旦にハ(七八オ)諸事とり 00063270L8をとし、物をうちわりなとしても、目出たくなりたとばか 00063280L9りいへといひつけけるに、たなよりものゝおちかゝりけれ 00063290L10は、作介ちうにてとり、我があらんかぎりは、めつたに目 00063300L11出度ハせまいといふた。 00063310¥N6¥J 00063320¥X/無筆(むひつ)のげんくわ帳 00063330L14/五十嵐(いからし)/勘解由(かげゆ)とて、てまへよきろう人あり。されともいか 00063340L15なる事にか、むひつにてをわしけり。正月の礼しやきたる 00063350L16に、作内といふ男、げんくわ帳をつくるに、だんなも無筆、 00063360L17我もむひつなれば、ゑにかきてをきけり。かげゆ、帳をと 00063370L18りて見るに、文とさくらをかきてをきけり。花の丞がきた 00063380L19かといふに、けさまいられたと云。(七八ウ)また上に松の 00063390M1枝と下にじやうきをひきわる所をかきてあり。まつかへさ 00063400M2くわんのわせたかと云。御座りました。男ほねたくましき 00063410M3が、けんをもちて、つゝたちあがりているところをかきた 00063420M4り。作内よ。是はよめぬがととへば、りきのけんもつさま 00063430M5といふ。だんな、是はあてじでおじやろふ。ふどうゐんに 00063440M6まがふといわれた。 00063450¥N7¥J 00063460¥Xむそうのよミそこなひ 00063470M9神田大工町に、大黒や長兵衛とてしまい物やあり。過し正 00063480M10月朔日の夜、むそうを見けり。ことなふ長兵ものいまいす 00063490M11る人なれば、気にかけ、をきもあがらず、二日のひる時分 00063500M12までふしけれハ、さい女まくらもとに(九オ)(九ウ・十オ挿絵) 00063510M13よりて、いかゝ御心ばしあしう御入候や。しよくじをもま 00063520M14いらず、かやうにうちふし給ふ事、いかなれば御心におほ 00063530M15しめす事もやおハしますか。わらハとは二世とかねたる中 00063540M16に、御つゝしミはいかゝとかきくどく所へ、同店にいらる 00063550M17ゝ和泉屋の与三といふて、ちと哥学なとすかるゝ人、見ま 00063560M18われけるに、内室、右のよしをつぶさにかたる。与三ふし 00063570M19んにおもひ、長兵衛に聞。ていしゆ枕をやう+あげて、 00063580¥222 00063590L1その方、つね哥道をもすかるゝ人なればはなすなり。夕部 00063600L2ゆめの内に、三度までをしかへして、 00063610L3△△▽おくよりわつとないて出ける 00063620L4と云下の句を見たり。としの初め、かやうのふきつ(十ウ) 00063630L5なる事、心にかゝるゆへ、つや+をきもあからすといへ 00063640L6は、与三よこ手を打て、是ハ目出度ゆめ。ひらにおきてよ 00063650L7ろこび給へといわれ、をきあがり、ことぶきさま+とり 00063660L8つくろい、扨目出度いわれはいかにととへば、与三、さい 00063670L9ぜんの下の句に、上の句をつけて目出度とていだされた。 00063680L10△△大こくにびんぼうかミがたゝかれて 00063690L11△△△をくよりわつとないて出ける 00063700L12とかゝれたれは、長兵衛大きによろこひ、殊の外にいわゝ 00063710L13れけれハ、まことにそのとしよりしあわせつゝき、さかへ 00063720L14られけり。そのとなりに、松田助之進とて(十一オ)小知を 00063730L15ものぞむろうにん有。此春、 00063740L16△△△まつたぐひなきあしたかな 00063750L17といふと云むそうを見る。こぞ、長兵が事など思ひあわす 00063760L18るに、あしきいわゐはよくさかゆる。まして目出度ゆめと、 00063770L19たんさくにかきて、みきなどすへて、さま+いわいなか 00063780M1ばのところへ、近所に居けるそゝうものきたりて、しか 00063790M2+ときゝて、扨+目出度事かなとて、たんさくをとり、 00063800M3つく+うちながめて、まゆをひそめけれは、ていしゆ、 00063810M4いかにといへば、かのそゝうもの、此ゆめ目出たからず。 00063820M5よく+よまれよ。ふきつなりといふ。松田、さにはあら 00063830M6じと、いろをちがへて(十一ウ)いへば、そゝうもの、是ミ 00063840M7やれ。まつだくびなきあしたかなと云ゆめが、何か目出た 00063850M8かろふといふた。 00063860¥N8¥J 00063870¥Xやぼのかげまもち 00063880M11さるろうにん、さかい町へんにすミけれハ、かげまをかゝ 00063890M12へけるに、かん三郎しばいへ、過にし霜月より出しけり。 00063900M13まへ+のきやく、それ+に花など出しける。されども、 00063910M14ぶたいなれざる子なれは、やう+三番三のせんさいにい 00063920M15たしける。きやくとも、ひる時分よりいつもくるに、あさ 00063930M16とくにしまふやくなれハ、ついにきやくの見る事なし。お 00063940M17やかたゆきてミて、きのどくにおもひて、大夫もとへまい 00063950M18りて、おやかたそせう(十二オ)申けるハ、そめのぜうがいた 00063960M19すところ、朝にてきやくしうもみやらいで、なにともきの 00063970¥P223 00063980¥G 00063990M1どくに存まする。あわれねがわくハ、さんばそうを、きり 00064000M2きやうげんになされてくだされませいといわれた。 00064010¥N9¥J 00064020¥X吉原ひなあそび 00064030M5吉原の上ろふ、おもひ+におやかたのむすめの節句なり 00064040M6とて、ひなををくられけるに、その内につとめしけ+に 00064050M7て、二日の日まて、いまたせつくをおくらぬ上郎ありて、 00064060M8ぎうをよびて申されけるは、たいぎなから、にんきやう町 00064070M9へ行、何にてもしほらしき人形をとゝのへ、うちのむすめ 00064080M10子へおくりてたべと云て、金子壱分(十二ウ)なげいだす。 00064090M11まへかたよりちかづきか、にんぎやう町のねずミ屋豊前か 00064100M12たへ行て、かの金子なげ出して、何ニても此金に見合て人 00064110M13形を下されといふ。壱歩ならハ是よとてさし出す。いそか 00064120M14わしさに、そう+もちてかけはしりける。浅草すわ町ま 00064130M15てゆきて、ぎう心におもふやう、なかをあけてもみなんだ 00064140M16が、よきにんぎやうかとおもひてミれば、小坊主からくり 00064150M17にて、ちやひく所なり。是はなるまじとてもちてかへり、 00064160M18ちやひく事ハ、おらが町のきらひものなるに、よのを下さ 00064170M19れといへは、誠におもひつけなんだ。茶ひくハさしあひじ 00064180¥P224 00064190¥G 00064200M1や。是をとて、太皷をもちている人形をつかわしける。ぎ 00064210M2う見て(十三オ)(十三ウ・十四オ挿絵)とてもの事に、たいこ 00064220M3もちよりきやく人形がほしいといふた。 00064230¥N10¥J 00064240¥X仏事のゐんしん 00064250M6しばひゞや三丁目に、大和屋善左と申て、すこびたる人あ 00064260M7り。浄土真宗にてをわしけるに、殊の外ごしやうねがひに 00064270M8て、過し秋こゝろさし有、せう+仏事をいたされける。 00064280M9さかい町に住せらるゝ和泉氏の何かし、ふかくねんころな 00064290M10りしが、仏事のおりから、人をおくり給ひしに、かやば町 00064300M11に、じやうにがまんぢうとて名物なりしを、まきゑの重箱 00064310M12につめて、上にたんさくをかゝれたり。(十四ウ) 00064320M13△△あちハひはじやうにかわれと源元は 00064330M14△△△をなしなかれのたゝのまんちう 00064340M15又酒一とくり、是もたんさくあり。 00064350M16△△じやうと酒やとくりと是をまいれかし 00064360M17△△△へつに新酒をそへてしんらん 00064370M18文もなく、たゝかくばかりいひおこしけり。大和屋がをい 00064380M19に、石川氏の何かしをよびて、此返哥をかきてをくれとい 00064390¥P225 00064400L1へば、二首の哥を一首にて返哥しけり。 00064410L2△△西方をじやうにたのまんちうのうち 00064420L3△△△ミきのらいかうぜんちしきかな 00064430¥N11¥J 00064440¥X吉原酒の行末(十五オ) 00064450L6本町に源といふものあり。とつとしわきものなり。されと 00064460L7も、よし原はすきにて、ひたとゆきかよふ。ある時さんち 00064470L8やにて、大せい一座してさかもりしけるに、のちはらん酒 00064480L9に成て、ひたとさけをこぼす事おひたゝし。なひ+しわ 00064490L10きものなれハ、をしき事におもひて、ぎうをよび出し、さ 00064500L11かつきさして、さて、此さかつきのだいやぜんなとに、お 00064510L12びたゝしくさけのしたミがあるは、みなすたる事かととへ 00064520L13ハ、なに、むさとすてませう。すきと、ひとつにして/樽(たる)に 00064530L14つめておきまする。それがなにゝなるととふに、是をうる 00064540L15酒やがござります。それよりかいにまいります。うそをつ 00064550L16くものじやと(十五ウ)いへは、さて+おかへりに御らん 00064560L17なされませい。せん七か屋敷に、酒やが二間までごさりま 00064570L18す。かんはんに、上々したミもろはく。 00064580¥N12¥J 00064590¥Xきよつねうたひのきゝなし 00064600M3さるもんもうなるもの申けるは、さても平家の一門おほき 00064610M4中に、清つねハそさうな人さうな。なせにととへハ、あめ 00064620M5のふるにうろたひ、しなれたけなといふ。さて+うたひ 00064630M6をきゝたまわずや。おもひさだめて身をなげられたにとい 00064640M7ふに、いや+、うたひニも、かつはとおちしほのといふ 00064650M8なれハ、あめにうろたひられたそふなといふ。ひとりのい 00064660M9ひけるは、をれハ(十六オ)うらにいるとてしなれたとおも 00064670M10ふ。是ハきやうかつたことじやといふに、それでも、こし 00064680M11よりよふせうぬき出しと、うたふほとにといふた。(十六ウ) 00064690¥P226 00064700¥T1鹿の巻筆第四 00064710¥N1¥J 00064720¥Xくどくの念仏 00064730L5あるもの、ひたとねんぶつを申てハかますに入、又申てハ 00064740L6かますに入、ひたもの申てかますにつめるほとに、三かま 00064750L7すつゝつめて、三だんふりしけるほどに、九かますぞ申た 00064760L8めける。もはやめいどへゆかんにも、ミやげこゝろやすし 00064770L9とて、そのゝちさのミねんぶつも申さすいけるに、六十八 00064780L10九にて、ついにおうじやうしけり。されとも申をきたるね 00064790L11んぶつを、にゝつくり、馬につけてゆくほとに、こむろふ 00064800L12しにてゆきけり。六道のつじへゆけハ、おに七八人出て、 00064810L13ざい人をとかめる。されとも此(一オ)(一ウ・二オ挿絵)をと 00064820L14こはミやげ大ぶんもちたれば、おにの中をもかまわず、の 00064830L15りなからゆかんとする。鬼とがめけるに、いや、とかめるま 00064840L16てもなし。此ミやけをミよ。ミなねんぶつなりといふ。中 00064850L17にもしやうじきなる鬼、さりとてはけつこうなる御事なり。 00064860L18とをり給へといふに、又しさいらしきおにひとりきて、い 00064870L19や+、まへかたもあつた事じや。にもつをあらためてと 00064880¥G 00064890¥P227 00064900L1をそふ。此まへもあらためずして、ゑんまより戸を三日つ 00064910L2ゝしめられた事あり。ぜひ見んといへば、いかつかましく、 00064920L3にを取出しミせるに、みなめうもんねんぶつにて、三駄な 00064930L4からしいななり。鬼大きにをとろき、かのものをとつて、 00064940L5八まん(二ウ)ぢごくへをとす。そのつぎに、しやばにてゑ 00064950L6さしなりしが、ながきはをりをきて、しほ+としてとを 00064960L7るに鬼ミて、是はあく人そうな。ミやげはなきかととへは、 00064970L8いや、ござらぬといふ。すこしなりともあらば見せよとい 00064980L9われて、まへきんちやくより、さて+十へんまで御座ら 00064990L10ぬとて、八へんねんぶつをいだすに、いつれもくわうミや 00065000L11うかくやくたり。おにともひれふして、をがミらいはいし、 00065010L12まことに十ねん一ねんなりとて、ごくらくへとをされた。 00065020¥N2¥J 00065030¥Xきかぬやつこのしゆどう 00065040L15山の手筋に、さる屋しきへ出入するもとゆいうりの(三オ) 00065050L16わかしゆあり。又その屋し/((き脱カ))に、すわともいはゞ、かんなめ 00065060L17たがるやつこあり。なにとそ此わかしゆをとねらひとも、 00065070L18をりがなけれハちからなし。あるとき、かのわかしゆきた 00065080L19りけれハ、いろ+にちそうして、けふハあめもふりさう 00065090¥G 00065100¥P228 00065110L1なほとに、あきなひもなるまじ。われらへやへきたり給へ 00065120L2とうちつれて、やがてにわへをしふせてやりけれハ、わか 00065130L3しゆ、此道がきらいなれハ、きやつに一本させんとて、す 00065140L4またをとらせけり。やつこ、けつきにまかせてやるとて、 00065150L5すなのなかへ三寸ほと作蔵をつきこミけれハ、すなまらに 00065160L6なる。やつこ、わかしゆにむかひ、さて+、そのほうハ 00065170L7ずい(三ウ)ふんたしなミがわるい。かならす+いまより 00065180L8して、こんにやくをくすりくいにしやれといふた。 00065190¥N3¥J 00065200¥X車善七が火事 00065210L11過にしころ、善七がところに火事のいできけるに、おびた 00065220L12ゝしく見ゆる。米かしのわかきものとも、おほく出てミけ 00065230L13るに、此火事ハまさしく吉原にきわまつたといふ。その中 00065240L14に、上ろうにふかくあいけるもの申けるハ、さあらば、か 00065250L15けつけて、せめてくし箱の壱つものけてやらんとて、ひと 00065260L16ついきに成て、ともとふたりつれにてかけつけたり。あさ 00065270L17くさこまかたにて、ことの外いきのきれけれハ、ひとりの 00065280L18云(四オ)(四ウ・五オ挿絵)けるハ、しばらくまち給へ。水な 00065290L19りとものミてかけんといふ。いや、もはやいかずとよしと 00065300M1いふ。是まてきたりてなせにととへハ、まさしく是は善七 00065310M2であらふといふ。こゝにてなにがしれんといへは、いや+、 00065320M3ぜん七にきわまつた。よしハらならハ、きやらくさかろふ 00065330M4が、かんこくさいほとに、ちり/紙(かミ)に火がついつらといふ。 00065340M5あんのことく善七であつた。はなのきいたやつの。 00065350¥N4¥J 00065360¥X代官のかる口 00065370M8とつとうわきなるもの、吉原へゆくとて、道にて馬かたに 00065380M9ゆきあたる。ことの外にはらをたちて、さん+しかりけ 00065390M10るに、まごもりくつもの、さま+に云あひ、いよ+に 00065400M11いかり(五ウ)て、わきさしにそりをうつて、をのれ、たゝ 00065410M12一うちにせんといふ。まこもこらゑぬやつにて、をれかく 00065420M13ひもかねじやほとに、むさとハきられじといへは、かねな 00065430M14りともきらんとてぬきけれは、もとの口にハにず、いつく 00065440M15共なくにけゝれハ、ぬきたるわきさしをすこ+とさゝん 00065450M16やうもなければ、をのれてもきらんとて、馬のほそくびを 00065460M17きりをとしけり。町のもの出合、らうせき/者(もの)とてとらへて、 00065470M18ところの代官へつれゆきけるに、代官ふたりにてしはしい 00065480M19給ふところなれば、両人出あひてくじをきゝ給ひ、さりと 00065490¥P229 00065500¥G 00065510M1てハ、物もいわぬちくしやうをきる事、人をきりたるより 00065520M2(六七オ)なをとがゝふかし。いつくのものなるそ。ありの 00065530M3まゝに申せと仰けれハ、とをり町何丁目、大屋ハ杢左衛門、 00065540M4/親(おや)は八兵衛、わたくしは九十郎と申といふ。一人の代官、 00065550M5とかくふかきとが人なれハ、つめろふへやれと仰けるに、 00065560M6又一人の代官仰けるは、八兵衛子九十郎、馬きつたほとに、 00065570M7あかり屋へやれと仰られた。 00065580¥N5¥J 00065590¥X表具屋のかけ物 00065600M10さる表具屋のミせに、二三人よりあひてあそびけるに、ひ 00065610M11やうぐにきたるかけ物を見れは、大もんしに、吉弓と二字 00065620M12かきてあり。是ハかわりたるものなり。いかさま(六七ウ) 00065630M13はんし物なるへしといふに、一座の人申されけるは、いざ 00065640M14や、なくさミにわれ+かしよさい+にてはんじてミん 00065650M15といふ。壱人ハさむらい、壱人ハいしや、壱人ハ百姓なり。 00065660M16ていしゆはひやうぐはりつけやのしやうばい。三人いゝけ 00065670M17るハ、まづていしゆにはいかゝおぼしめさるゝととへハ、 00065680M18わたくしハ、はつさいくに是をうけとりまして、心にはん 00065690M19じてよろこひます。よきゆミとかいてござりますにより、 00065700¥P230 00065710L1よきゆミならハ、てまいよかるへしとはんじましたと云。 00065720L2一座の人&、もつともと申されける。さりなから四人のし 00065730L3よざい+とお申なさるゝからハ、しよざいてはんじませ 00065740L4う。まつわた(八九オ)(八九ウ・十十一オ挿絵)くしハはりつけ 00065750L5しやうばいなれハ、よきゆミならば/張(はり)によかろふとおもひ 00065760L6ますと云。いしやきいて、おれハ/吉弓(きつきう)とかいて御座るハ、 00065770L7十一ハくちのきうによいといふ事でござろふ。口中の病ハ 00065780L8十一のきうにて、かならすよくなる物じやといわれた。百 00065790L9姓申けるは、わたくしハ春のはじめに此かけものをミてよ 00065800L10ろこびます。ことしハ何かもよくあたろふとおもひます。 00065810L11よきゆミならば、あたるはずじやほとにといふ。さむらい 00065820L12きいて、さりとては、しよざい+よくはんじられた。わ 00065830L13がしよざいハかたなわきさしなれハ、大小とはんじたとい 00065840L14われた。大小ハもつともじやが、(十十一ウ)心ハいかにと 00065850L15とへは、大の字は先よこに一もんじを引、小の字ハ先たて 00065860L16にほうをひくなれば、よこのほうハミな大、たてハミな小、 00065870L17十二月の大小なるべし。ことしハ/閏(うるふ)かあるさかいに、くわ 00065880L18くが十三あるといわれたほとに、こよみをひきあわせて見 00065890L19れハ、大小少もかわらず、 00065900¥G 00065910M6よく+見れは、貞享三年の大小のかけ物なり。人&こと 00065920M7しの中のてうほうにしられた。(十二オ) 00065930¥N6¥J 00065940¥X初心大こくまい 00065950M10さかい町のほとりに、うとくなるものゝ子ありしが、その 00065960M11身どうらくものにて、おやかんどうしたりければ、とせい 00065970M12のおくりやうあらずして、あなたこなたとうろたいける。 00065980M13ころしも極月のすゑになりしかハ、もはや身のおきところ 00065990M14なくして、たゝぼうせんとしていたりける。かゝりける所 00066000M15へ、つね+ねんころしたるともだちきたりていふやうハ、 00066010M16さてハわが身のきやうがいは、なにとしておくるべきや。 00066020M17もとてがなければ、いまさらあきなひもなるまじ。又ほう 00066030M18かうに出る事も、身のかわかなけれ(十二ウ)ば、これもな 00066040M19らず。われらとつくとしあんした。春ハ大こくまいがはや 00066050¥P231 00066060¥G 00066070M1るほとに、出たらばよかろふといひければ、かのものいふ 00066080M2やう、いかにもよきふんへつしてたまわつた。さあらば、 00066090M3そのやういをせんとて、にわかにあさくさへゆきて、紙に 00066100M4てつくりしめんを壱つ十二文にてかい、きれたりしきる物 00066110M5のゑもんひきつくろひ、春のくるを、いまやをそしとまち 00066120M6いたり。ほとなく正月朔日になりしかば、けふはとしの 00066130M7はしめ月のはしめ日のはしめなれは、門出めてたしと、酒 00066140M8四五はいひつかけて、まづ町+を、ござつた+といひ 00066150M9て(十三オ)(十三ウ・十四オ挿絵)あるきけり。しかるに、あさ 00066160M10くさしんふくしといゝしゑけてらのありしか、かの所へゆ 00066170M11きて、さんもんより、こざつた+とばかりいひて、なに 00066180M12かまた、ござつたといふ事をわすれていたりければ、内よ 00066190M13りこぞう出て申けるハ、是ハたぶん、にせ大こくまいと見 00066200M14へて、なにがまたをわすれたそふなとおもひ、ミな+あ 00066210M15きれはて、どつといゝてわらひける。もとよりこぞう、く 00066220M16ちあひのよきものなれば、なにがまたござつたと、高声に 00066230M17いゝければ、大こくまい、又あとをわすれて、いふ事のな 00066240M18くて、そこにゆるりとござれといひて、はづ(十四ウ)かし 00066250M19まいをして、にけてかへつた。 00066260¥P232 00066270¥N7¥J 00066280¥Xかんばんのよミちがい 00066290L3弥左衛門町に、明石屋又介とて、そゝうなるものあり。御 00066300L4出入の御屋しきへゆくとて、道にてかんばんをミてはなし 00066310L5申けるハ、さて+此ころ、かわりたるつばの出申候が、 00066320L6殿様にはつばずきなされまするに、いまた御らんなされま 00066330L7せぬかと云。此ころはやるしやうあミでの事かと仰けれは、 00066340L8いや、とうゆがつばと申て、もつはらはやります。ほう 00066350L9※にかんばんいでましたといふ。是ハめづらしき物じや 00066360L10とて、御用人をよびつけ、又介/同道(どう+)して、つはをミてまい 00066370L11れと(十五オ)仰付らるゝ。かしこまり候と、うちつれてゆ 00066380L12きて見れば、とうゆかつはのかんばんなり。用人もあきれ 00066390L13てかへられた。(十五ウ) 00066400¥T1鹿の巻筆第五 00066410¥N1¥J 00066420¥Xぬれのはしまり 00066430M5それ天は、やうにしてすミやかなり。地ハゐんにしてどう 00066440M6せず。月日のめくるも、ゐんやうわがふの車のわやくなる 00066450M7はなしのついでに、ミな人のぬれ+といひて、れんぼの 00066460M8やミをてらさせ給ふ日の本の、そのかミさまとごてさまと、 00066470M9あまのうきはしのうへにして、せきれいのをのひこ+す 00066480M10るを見給ひ、みとのまくばいありしより、我朝ひらけはじ 00066490M11まりて、あまのさかほこ、づんとさしこミ、から+から 00066500M12とさがし給ふ、そのさきより出るしづくがくにとなる。(一 00066510M13オ)(一ウ・二オ挿絵)されハしつくよりおこるあきつしま、ゐ 00066520M14んとやうとの二つの間にやわらきあひ、わがふの儀は、ま 00066530M15た地水火風空の五つにかたまり、目もあり口もあり、ある 00066540M16ひは女男となると、大さつしよにかきけるは、おれハしら 00066550M17ぬが、ぬれといふを是からかんがへて見るに、うきはしの 00066560M18もとにて、さかほこのしづくよりおこりて、なん女のかた 00066570M19らひあり。まして思ひのふちにしつミ、なミたのあめにそ 00066580¥P233 00066590¥G 00066600M1でをしぼる。君にあふせのなミまくらなんといへは、ぬれ 00066610M2といふであらふといわれたれば、そばなる男、いや、そう 00066620M3てない。はじめての事には、つはきでぬらすに(二ウ)よつ 00066630M4て、ぬれといふといわれた。 00066640¥N2¥J 00066650¥Xゆ屋のあま 00066660M7所はしらに申されぬ、手前うとくなる人なれば、ミな大臣 00066670M8と申ける。いわれをくわしくたつぬるに、此人とつといろ 00066680M9このミ、どうもいわれぬやさ男、あけくれたゝおふなのお 00066690M10もひつくわけのミをすかれけるに、つねにりんのたまをも 00066700M11てあそぶに、さのミにおもふほとならず。さるによつて、 00066710M12あわれ、からこくのたまはすくれてよきときくに、何とそ 00066720M13もとめゑたきとおもふおりふし、過にし八月廿一日に、て 00066730M14うせんじん来る。さりとてハ此大せいのうちに、かの玉を 00066740M15もたぬ(三オ)事ハあらじとおもひ、ほんせいしにゆきて、 00066750M16さま+心つくし、代壱両弐分にてもとめ出して、身をは 00066760M17なさずてうほうせられけるに、友たちの人きたりて、貴様、 00066770M18たいせつの玉をもちたるよし。ぜひにかしたまへと、ふか 00066780M19くしよもふせらるゝまゝ、ぜひにおよばずかしけるに、此 00066790¥P234 00066800L1人もひたとやうにたつなれば身もはなさず、せんとうへゆ 00066810L2かれけるに、かの玉たもとにあれハ、ぬきすておくきる物に 00066820L3入ておかん事もおぼつかなし。此玉ハまさしく、いこくの 00066830L4てうほうなるに、もし人にぬすまれてハせんなしとて、手 00066840L5ぬくひにつゝミゆつぼに入に、まろきものなれハ、(三ウ)い 00066850L6かゝしてかとりおとしけむ、みへす。されとも、われゆつ 00066860L7ぼにりんの玉おとしたりともいわれず。もし又人の手にわ 00066870L8たりたる事もはかりかたし。さればとてせんぎならぬ物の 00066880L9事なり。ぜひなくかへりて、かのよしかたられければ、此 00066890L10大臣ふかくなげき、さりとてハとおもひて、そのゆやにゆ 00066900L11きかよひて、うちにかいそだての十四五なるおんなのわら 00066910L12ハありしに、いまだ名もつけず、あま+とのミよびしに、 00066920L13是をふかくたのミ、此ゆつほの中へ、めんようふしぎの玉 00066930L14をおとしたり。あわれとりゑたらば、なんぢ、われがふさ 00066940L15いにせんといゝければ、やすきほとの事なり。しかしよる 00066950L16は(四オ)(四ウ・五オ挿絵)ミへかたし。また、ひる女の身に 00066960L17て大せいの男入こミのうちへ入たらば、よもそのまゝハか 00066970L18へすまじ。いかゝとおもひわづらへハ、此人申やう、さらば、 00066980L19なんぢはだかにて、ゆぐに此なわゆいつけよ。おつと、そ 00066990M1とにひかへたりとおもひなば、さのミ人のよもせましと、 00067000M2かたくけいやくさだめつゝ、もし、かのたまをとりゑたら 00067010M3ハ、此なわをうごかせ。我爰元にてひかんとて、あがりば 00067020M4にひかへいる。その時かのあま、やくそくし、ひとつのて 00067030M5ぬくひさげもつて、ゆつぼの中へとび入ば、人&おどろき、 00067040M6わきへよる。そのひまに、かの玉をたつねとつて出んとすれ 00067050M7ば、四五人とりつく。かねてたくミし、事なれハ、(五ウ)われ 00067060M8はかさかき、玉をばおしこミ、たゝかたわきへそ、ふした 00067070M9りけり。ゆやのならいにかさかきいめば、あたりにちかつ 00067080M10くぬれてもなし。そのひまにやくそくのなわをうこかせば、 00067090M11その人よろこひ、ひきだしたり。されとも、つよくひきた 00067100M12るゆへに、あがりばにて、むねをやうつて、ごたいもすく 00067110M13ミうちふしぬ。かの人、なげきのたまふやう、玉もいたつ 00067120M14らになり、ぬしもむなしくなりたりと、ともにうちふし給 00067130M15ふとき、かのあま、いきのしたにて申やう、わがへそのあ 00067140M16たりをみたまへといふ。げにも、へそのしたにあなあり。 00067150M17かのあなより、かうミやうかくやくたる玉をとりいだして、 00067160M18かのあまも(六オ)やう+かいしやくし、ついに身うけし 00067170M19て女房にせられた。金持いろにめづるを大臣と申なり。 00067180¥P235 00067190¥G 00067200¥N3¥J 00067210¥Xくだりなぞ 00067220M3此ころ上方より、なそを二つくだした。ミじかまら、なが 00067230M4まら。ながまらは、つきよからすととかれた。ミじかまら 00067240M5は、あさつきととく。さりとてはよくとかれたといふはな 00067250M6しあるに、とひやうなるもの、このなそをきいて、つきよ 00067260M7からすよりも、あさつきができた。くさいものじやさかい 00067270M8といひしが、かのもの、さるかたへゆきて、此なぞをはな 00067280M9しけるに、なかまらのはなししければ、さりとてハよきと 00067290M10きやうとて、(六ウ)一座の人+ほめわらひけるに、又ミ 00067300M11じかまらといふなそござりますと云。此ときやうハときけ 00067310M12ば、かりぎといふ。かりぎといひてハつまらぬといへば、 00067320M13さて+、みなさまは、かミがたからくたりたなぞをとく 00067330M14ほどのものが、つまらぬやうにハときませぬ。かりきハま 00067340M15づくさきものなり。またかりがあるさかいて、かりぎとと 00067350M16いつらといふた。 00067360¥N4¥J 00067370¥Xばゝが寺請状 00067380M19町+はずれ+まで、しうしの御ぎんミつよけれハ、お 00067390¥P236 00067400L1んなおとこ、ともにミな寺請状を大屋取おくほどに、さる 00067410L2所にかわりたるばゝあり。むすめをふたり(七オ)(七ウ・八 00067420L3オ挿絵)もちしに、此ころふたりながらろう人して宿にいる。 00067430L4されば大屋から、寺請状取てをこせといわれた。けふあた 00067440L5ゝかなるとて、ふたりのむすめともなひて御寺へゆきしが、 00067450L6此ばゝ、おかしきくせにて、いつもあとにいふ事をさきに 00067460L7いふ。お寺さまのじうじに御めにかゝり申出しけるハ、今 00067470L8日ハ日よりもよくのどかなるまゝに、むすめともふたりな 00067480L9からつれてまいりました。御たいきなから、してくだされ 00067490L10ませい。わたくしのも、ついでにしてくだされませい。と 00067500L11しよりましたさかいに、またまいりますもたいぎじやほど 00067510L12に、たのミます、寺請をといへば、(八ウ)お寺、さて+ 00067520L13おかしき物のいひやうじや。あとにいふ事をさきにいふさ 00067530L14かいで、よのだんなに、かべこしなどできかせられぬいひ 00067540L15ぶんじやとおもひながら、もつとも、むすめたちハしてや 00067550L16らふが、おのしも一度になるまい。おれもたつたいま、ち 00067560L17やの間で二本かいてくたびれた。そとはをといわれた。 00067570¥N5¥J 00067580¥X作蔵がかた事 00067590M1南こん屋町二丁目に、さるろうにん、いなかものをつかい 00067600M2けるに、なにやらのかきにかゝりたるやうに、なまながき 00067610M3男なれば、名を作蔵とつけけり。つねにかた事をいへば、 00067620M4さらにわけきこへかたき(九オ)ほとなりしに、あるとき夜 00067630M5に入て火事の出来けるに、かの作蔵に、ミよといへば、や 00067640M6ねに上りミれハ、火のてまちかくみゆる。だんな、とこじ 00067650M7やととへば、さて+くさかつたがどうりじや。へがちか 00067660M8いといふ。だんな、またかた事ぬかすといふに、わきのや 00067670M9ねに上りたるもの、さて+火のこもおびたゝし。わたく 00067680M10らのほうにミゆるといふをきゝ、やねよりかけおりて、お 00067690M11かミさま、御やうじんなされませい。火事ハまたくらじや 00067700M12と申ますが、へのこがふらり+とまいりますとくらわせ 00067710M13た。(九ウ) 00067720¥N6¥J 00067730¥X躰の屋とう具 00067740M16さる人申けるは、世中の諸道具、家居門戸、いつれも人の 00067750M17躰をひやうす。人のたいにミなありと申けるを、いかにと 00067760M18とへば、人のたいに、まづ、むないたとて板あり。ほうけ 00067770M19た、しりけたとてけたも二所にあり。よつはりとてはりあ 00067780¥P237 00067790L1り。両手はうてきなり。ほうかまちとてかまちあり。はな 00067800L2はしらとてはしら有。ひたいとて井もあり。かやうの道具、 00067810L3ミな城の用にもちゆるといへば、その城ハととへば、うし 00067820L4ろとてしろあり。中にめいもんといふ門もあり。その門に 00067830L5出入あるかととへば、出入のために口あり。よきもとをる、 00067840L6あしきも(十オ)とをる所なれは、大事のせき所なり。さる 00067850L7によつて、口には物をならべたり。やりをとがいとてやり 00067860L8あり。さきはいきとまりかととへば、うら門ありといふ。 00067870L9おもての口にハはものやりあるに、かんじんのぬけ/道(ミち)に、 00067880L10やうじんの道具ハなきかといへば、をろかなり。まづ、や 00067890L11うじんのために、よりぼうあるが、がつてんかといへハ、 00067900L12まことに、よりぼうありと云。されども、ぼうばかりにて 00067910L13心もとなくハ、まつとやうじん道具をミせうかといへば、 00067920L14いかにととふ。両方のあしをなげいだしてハ、さすまた、 00067930L15ひざをおりてハ、つくほう。(十ウ) 00067940¥N7¥J 00067950¥Xあに様のりやうけん 00067960L18爰に花屋の茂兵衛といふて、五十ばかりになりしが、子ふ 00067970L19たりあり。兄ハ廿一二、弟ハ十二三に成ける。南かぜはけ 00067980M1しくふきて、ミせへごミおびたゝしくふきあげけるほとに、 00067990M2兄の太郎介をよひて、おもてへ水をうたせけるに、弟の次 00068000M3郎ハ、おもてのゑんにこしかけていける。おりふし、母お 00068010M4や近所へ礼にゆきけるが、としはへハよそぢにあまれとも、 00068020M5心は春めきてわか+としたる人なれば、だてそめのきる 00068030M6物に、しゆすのはゞひろおびして、とりなりひきつくろひ 00068040M7てかへられし。次郎見て、いよ、しなものめ、ぼつとりも 00068050M8の(十一オ)(十一ウ・十二オ挿絵)といふて、母のしりをたゝく。 00068060M9おやぢ見て、大たわけめ。それ、あたまをはりやれ。母に 00068070M10そのやうな事するものかといへば、母おや、さて+ばか 00068080M11めといふに、おやぢ、そのやうな事をさせつけれハくせに 00068090M12なるとて、せなかをおもふさまにたゝく。次郎おびたゝし 00068100M13くなけば、あに、かけきたつて、なにものがたゝいたぞ。 00068110M14たれにたゝかれ/((た脱カ))とて、いかつかましくいへば、おやぢ、お 00068120M15れがたゝいたがなんとしたといふ。いかにおやちじやとて、 00068130M16正月しまにたゝかしやるは、いかやうなるとがしましたと 00068140M17いへハ、おやぢ、さて+、おやが子をたゝくがなにしや。 00068150M18いゝわけをせまいとおもへとも、あまりおのれ、いかつか 00068160M19ましけれは(十二ウ)いふ。母おやのしりをたゝくさかいに、 00068170¥P238 00068180¥G 00068190M1おれがうつたが、なんとしたといわれて、太郎、それハお 00068200M2やぢのどうりじや。をのれハなぜ、おとこのあるものゝし 00068210M3りをたゝくそといふた。 00068220¥N8¥J 00068230¥Xしばい大夫もとの日まち 00068240M6木挽町大夫もとにて日待ありしに、あまり夜長なるに、す 00068250M7こしなぐさまんとてうちよりて、かうをしけるに、ひとり 00068260M8がとうをとらんといふて、とうを取に、さる名あるやくし 00068270M9やなりしが、ひたまけにまけるほとに、のちはそこらあた 00068280M10りのかねをかりて、ミなまけた。きのとくにおもひ、此う 00068290M11へハせひなし。これを(十三オ)はろふといふ。わががゝへ 00068300M12の野郎をよび出してはる。しかも名あるものなり。さきの 00068310M13もの、是ハめいわくでござります。あまりひきもござらぬ 00068320M14にといへば、是ハすてゝも三十両がものハあるが、おのし 00068330M15ハうきやらぬかといへば、さやうなる大ばくちハいやでご 00068340M16ざるといふ。さて+おのしハよひからいくらとられたと 00068350M17おもやる。是がしまいじやとて、ほんにはる。そばなる人 00068360M18のいひけるハ、それハさりとてハ、ふかくで御座る。二つ 00068370M19にわつてはらしやれ。よひからミるに、おやも入目はござ 00068380M1らぬ。貴さまのほんかちてまけさしつた。二つにわれば、 00068390M2たとへ、おやのめがよふてかしらをとられて(十三ウ)も、 00068400M3しりハのこります。しりさへあれハ、いつてもきやくはな 00068410M4るといふた。 00068420¥N9¥J 00068430¥X心ばかりは我物 00068440M7さる人、吉原へけんぶつにまいられけるに、さもじんじや 00068450M8うに出たつたるわかきおとこ来る。あけ屋町の木戸きわに 00068460M9てミれば、お出なされましたといふ。さりとてハ、かつて 00068470M10んゆかず。となたにて御座るといへば、おまへたなにおり 00068480M11まする、さしものや半兵衛がでしでござりますといふ。さ 00068490M12て+六蔵か。これハ+、けさもあふたに見わすれた。 00068500M13おのしハさりとては、いしやうもちかな。此けとろめんの 00068510M14はをりは、いつこしらへたぞととへば、かりものでござり 00068520M15(十四オ)ます。此つむぎのしろこそでハ。是もかり物。この 00068530M16とうきんのきる物は。かり物。此さんとめのはかまハ。か 00068540M17りもの。さて+けつこうなるわきさしかな。是もかり物 00068550M18か。なか+と申。此いんろう、きんちやくハ。なをかり 00068560M19物なり。したのおび、はおりハおのしのか。いや、だんな 00068570¥P240 00068580L1のをかりました。かの人あきれはて、さてもかりたり+。 00068590L2へのこばかりしやかといへば、是もかり物なりといふ。是 00068600L3はどうしてかりものしやととへば、ミな人が、馬のものじ 00068610L4やと申さかいて、これもわたくしのとハいわ/((れ脱カ))まい。(十四ウ 00068620¥Y秡 00068630M3あらしにちれる木の葉も陽気をゑて、またほのとめだち、 00068640M4秋はもとのことくに、もミぢの色かわりたるうき世の中、 00068650M5よむともつきぬはなしのほんに、ふるめかしきも座のきや 00068660M6うによりてあらたまること、ひじりのことばに、古きをた 00068670M7つねてあたらしくはなす。これさいかくたるべし。されば、 00068680M8あとかたもなきそらことを、ミてきたやうにいひつゞくる 00068690M9も、むらさきなる女が源氏六十でうにゆるしをとりあつめ 00068700M10たること草は、林にしげきおちばなとにひとしけれとも、 00068710M11鹿氏が心にかなへて、道のたくミ(十五終オ)なるはまれな 00068720M12り。さるによつて、此あとよりハ、はなしといやと名付、 00068730M13一冊にせんじ出すもの也。御望のかた※は、坂本まで御 00068740M14書付御越あるへく候。鹿氏ぎんみをとげ、かき入者也。 00068750¥Y1鹿野巻筆巻五終 00068760¥Q 00068770M17△△△△△△△△△△△作者△鹿野武左衛門 00068780M18△△貞享三年@丙△|△寅@△△絵師△古山太郎兵衛 00068790M19△△△△二月吉日△△@江戸道油町|南青物町@△開△板(十五終ウ) 00068800¥P241 00068810¥U噺本大系△第五巻 00068820¥T正直咄大鑑 00068830¥G 00068840¥Y 00068850L16貞享四年刊 00068860L17石川流舟作・菱川師宣画 00068870L18半紙本五巻 00068880L19天理図書館蔵 00068890¥Yしやうぢき咄序 00068900M1あけらほんと、/相思草(たばこ)のけふりに口びるをふすぼらかして、 00068910M2/行返(ゆきかへ)る/昔(むかし)いまの/噺(はなし)の/品(しな)を、つく+と思ふに、/寔(まこと)すくなきい 00068920M3つハりがちなり。されバとて/万(よろづ)にいミしくとも、/咄(はなし)/好(この)まざ 00068930M4らんおのこハ、たまの/御客(をきやく)にあいさつなき/心地(こゝち)ぞすべきと、 00068940M5せんしやうものゝふるき/言葉(ことは)をとりてハ、/予(よ)、/正直(しやうじき)/咄(はなし)/大(をゝ) 00068950M6(一オ)/鑑(かゞミ)となづけて、/正敷(まきしく)/見聞(ミきゝ)たる所の/噂(うわさ)をつゝるに、/四= 00068960M7巻(よまき=の)/半(なかば)あまりて、見るにをかしさして、かたへの人にほのめ 00068970M8かすれバ、手をひろげ口をゑこ+として、しばしものを 00068980M9もいわず。なふ是ハと、そこらうちをつゝけばこそばし。 00068990M10/腹筋(はらすじ)の/替(かわる)/色香(いろか)もよしや/吉野(よしの)の/山桜(やまさくら)に、花のお江戸の/笑草(わらひぐさ)、 00069000M11いざとゆふべの/物語(ものがたり)、/其五品(そのいつしな)をかきわけて、/題号(だいごう)にあらハ 00069010M12すものならし。(一ウ) 00069020¥P242 00069030¥Y1/勝詞記咄(しやうぢ△き△はなし△|すぐるゝことバをしるす)大鏡目録△青 00069040L3一△はなしの咄△△△@なむあミだ六字に△|△△かなふ人こゝろ@ 00069050L4二△だいじやうご△△@すゞしさやこゝろの|△△そこの柳樽△△@ 00069060L5三△お寺のいぬ△△△@ふかくとりてあさき△|△△川瀬の二度びくり@ 00069070L6四△/嘩車(きやしや)/商人(あきんど)△△△△@ミてもやさし人の△|△△言葉の花ざかり@ 00069080L7五△ふしぎの/神詑(しんたく)△△@しん※ハ万病に△△△|△△きくふじの丸(二オ)@ 00069090L8六△/塵(ちり)のゐんねん△△@むねをはろふ理ハ△△△|△△さま+に鳥ばゝき@ 00069100L9七△/谷中(やなか)のりせふ△△@一すじにたのむ仏や|△△かんのふじ△△@ 00069110L10八△/雲井(くもい)のうそつき△@田舎人の口に/狂(きやう)あり|△△をどけ事△△△@ 00069120L11九△/侘宣(しんたく(ママ))のよみかへ△@あくといふも善に△△|△△もとずく神のじひ@ 00069130L12十△すゝむる/功徳(くどく)△△@いのるしるしはやく△△△|△△ひらくる妙法花(二ウ)@ 00069140¥T1 00069150¥N1¥J 00069160¥X第一△はなしのはなし 00069170M3/堺町(さかいてう)/辺(へん)にて、さる人きたりて/咄(はなし)けるハ、さて+とんだは 00069180M4なしがござるといふ。いかにととへバ、/信濃(しなの)の/善光寺(ぜんくわうじ)にい 00069190M5らるゝ/坊(ぼう)様の、江戸/見物にわせられた。/芝筋(しハすじ)を見せんと思 00069200M6ひて、つれだちてゆきまするに、/新橋(しんはし)の方より、ざるをに 00069210M7なひて、なまあミしや+といふてかけきたる。/彼坊(かのほう)ミて、 00069220M8じゆづをとりいだして、かのあミうりをおがミながら、ど 00069230M9この人じやととふ。/三田(ミた)の/者(もの)で御座るといへハ、/何方(いづく)のかた 00069240M10じやとまたとふに、あとの/方(ほう)をゆびざしして、かけとをり 00069250M11けるを、かんたんくだきておがみ給ふ。なぜおがみ給ふと 00069260M12とへば、さて+お江戸(三オ)にハほとけがござる。おも 00069270M13き/荷(に)をもちながらも/名号(めうがう)ハわすれず、南無阿弥陀+とと 00069280M14なゆる。どこの人じやととへば、ミたのものとこたへ、ほ 00069290M15うがくをとへは、/西(にし)の/方(かた)へゆびさす。あまりに/有難(ありがた)しとて 00069300M16おがまれた。/田舎(いなか)/坊主(ぼうず)ほどおかしき事ハなしとかたる。て 00069310M17いしゆ、/評(ひやう)して/曰(いわく)、それハおかしき事になし。/目出度(めでたき)/坊(ほう)様 00069320M18かな。それ人のこゝろに、物のおともおふづるものなり。 00069330M19たとへバきぬたをうつに、子共、かゝさま+といふとき 00069340¥P243 00069350¥G 00069360M1ハ、ひゞき是におなじ。なまいた+と/云時(いふとき)は、またひゞ 00069370M2き是におふづるがごとし。そのひと/名号(めいこう)心にたへぬへに、 00069380M3/生海■(なまあミ)を南無阿弥ときゝ給ふ事、此人仏なり。むかし(三 00069390M4ウ)/栂尾(とがのを)の上人、道をすぎ給ひけるに、川にて馬あらふお 00069400M5のこ、/足(あし)+といひけれバ、上人立とまりて、あなとふと 00069410M6や、/宿執(しゆくしう)/開発(かいほつ)の人かな。/阿字(あし)+ととなふうるぞや。いか 00069420M7なる人の御馬ぞと、あまりにたふとく覚ゆるハと/尋(たづね)給ひけ 00069430M8れバ、/府生殿(ふせうどの)の御馬にて候とこたへけり。こハめてたき事 00069440M9かな。/阿字本不生(あしほんふせう)にこそあい侍る。うれしき/結縁(けつゑん)をもしつ 00069450M10るものかなとて、/感涙(かんるい)をぬぐハれけるとそ。ありがたきこ 00069460M11ゝろゆへ、/兼好(かねよし)もつれ+草にかゝれたも、是におなじと 00069470M12いわれた。 00069480¥N2¥J 00069490¥X第二△/大上戸(だいぜうご) 00069500M15爰に大酒をこのむ男あり。春ハとそ酒に/命(いのち)(四オ)(四ウ・五 00069510M16オ挿絵)をのべ、/桃(もゝ)の酒に心をうつし、/夏(なつ)ハ/柳樽(りうそん)のもとにす 00069520M17ゝみ居てハ、ひやさけをたのしミ、秋ハさか月のかげにま 00069530M18くらをかたむけ、/隣家(りんか)にさけをあたゝめて/紅葉(かうやう)をたき、心 00069540M19のすまぬ/折節(をりふし)はにごりさけをたのしミ、冬のさみしき/時雨(しぐれ) 00069550¥P244 00069560L1の夜すがハあられ酒をともとす。されバ/夕部(ゆふへ)に/大酒(たいしゆ)してあ 00069570L2したにしすとも、かんなべをのミはなさじとす。時にした 00069580L3しくかたる/友達(ともたち)、此人はつゐにハないそんの/生成(しやうなり)とて、さ 00069590L4ま+といさめけれども、酒こそいのちなりとて、すこし 00069600L5ももちゐず。有時、大酒してさん+にはきたる中に、友 00069610L6達、鳥のきもをいれて、つね+云たるにさけをとめ給わ 00069620L7ぬこそぜひなけれ。(五ウ)/今(いま)/貴殿(きでん)のはきたまふを見たまへ。 00069630L8人に五ぞう有。そのうちの一ぞうを、これはき給ふぞ。五 00069640L9ぞうが一ぞうかけたれば、あとハ四ぞうにきわまつたとい 00069650L10へば、かのものきひて、いやくるしからず。天/竺(ぢく)にも三/蔵= 00069660L11法師(そう=ほうし)あり。我か町にも、下の町にかぢやの二蔵も、いまだ 00069670L12そくさいじやといふた。いかいすきの。 00069680¥N3¥J 00069690¥X第三△お/寺(てら)のいぬ 00069700L15/去御寺(さるおてら)のおしやう、犬を/秘蔵(ひさう)せられけるに、名をさげをと 00069710L16つけられたり。あるとき、心/易(やすき)き/旦那衆(だんなしう)四五人きたりて、 00069720L17ひめもす遊ばれけるに、ひとりの/云出(いひいた)されけるは、/犬(いぬ)の/名(な) 00069730L18もおほき中に、さげをとつけさしつたハ、さりとてハかわ 00069740L19つた名じやといへば、(六オ)かたハらより、いや此御寺様 00069750M1ハさぶらひ/筋(すじ)のお人じやさかひ、/武士道(ぶしだう)でつけさしつつら。 00069760M2まづいぬハ/用心(ようしん)のためじやによつて、あのいぬが内にあれ 00069770M3ば、わきざしにそふといふこゝろで、さげをであらふとい 00069780M4ふ。/独(ひとり)の/云(いひ)けるハ、たゞし/下緒(さげを)とハ、げじよとかくなり。 00069790M5見れバ、めいぬそふなさかひに、しもの女といふこゝろで、 00069800M6さげをかといふ。またひとりの/云(いひ)けるハ、となたもりくつ 00069810M7ハあれども、それでハ/下女(げぢよ)のしよの/字(じ)があてじしや。さり 00069820M8ながら、/脇指(わきざし)の下緒に相きハまつた。あのいぬ、いつも/庫= 00069830M9裡(く=り)のかたにバかり居るさかひに、くりかたにつくといふこ 00069840M10ゝろかといふ。とかく/御寺様(おてらさま)のつけさしやつた名じや/程(ほど)に、 00069850M11(六ウ)/成程(なるほど)ふかいりくつであらふとて、/和尚(おせう)の/前(まへ)へいてゝ 00069860M12とへば、おもひの外にちがふた。あのいぬ、/門(かど)へさへてる 00069870M13と、となりのいぬにかまれ+して、それにをそれて、お 00069880M14ゝさけてありくさかいに、/下尾(さげを)とつけたといわれた。 00069890¥N4¥J 00069900¥X第四△/嘩車(きやしや)のあきびと 00069910M17/南鍋町(ミなミなべてう)、八/官(くわん)町といふところを、/商人(あきひと)/四角成(しかくなる)かわごを、お 00069920M18ふこにかけてかつがせ、きびら、ならざらし、しまたかミ 00069930M19やといふてとをりしに、/間口(まぐち)十四五間に、/美(ひ)+しく立な 00069940¥P245 00069950¥G 00069960M1らべたるやかたのかうしのうちより、ほそやかにけたかき 00069970M2御/声(こゑ)にて、なつ/衣(ころも)と仰けるに、/商人(あきうと)、/我(われ)をひとへによび給 00069980M3ふ(七オ)やといふて/立寄(たちより)けれバ、うば、/台所口(だいところくち)のかたゑま 00069990M4ハりて、お/姫(ひめ)様の/帷子(かたびら)ごらんなされたきと仰じやに、きた 00070000M5まへとて内へいれける。御/年(とし)の程ハ三五/夜中真月(やちうしんげつ)の色めく 00070010M6御かほばせ、ゑもいわれぬむすめ出で、帷子を取いださせ、 00070020M7/古(いにしへ)のならのミやこの/八重(やゑ)ざらし侍るやと仰ければ、/京= 00070030M8九重(きやう=こゝのへ)にをりいたしますといふて、さらしをいだしける。ほの 00070040M9+と/明石(あかし)ちゞみ/ミ((ミ衍))ハおわすかとあれバ、/嶋(しま)かくれぬるも 00070050M10よふよしがごさりますといふてミする。/扨(さて)/色&(いろ+)のそめかた 00070060M11びらもとりいだしけるとき、/娘(むすめ)、はないろのもよふをミて、 00070070M12/此色(このいろ)ハなにとやらん、いやしきやう/成(なる)がとて、/又(また)(七ウ)/難= 00070080M13波津(なに=ハづ)にさくや此はないろも、人のかふかとおほせけれバ、 00070090M14いまをさかりにうるやはないろと申ける。うばきゝゐて、 00070100M15/売(うり)かふものもおほき中に、お/姫様(ひめさま)のといやう、あきびとの 00070110M16こたへやう、おもしろくの給ふ。どこ/言葉(ことバ)でござりますと 00070120M17いふ。そばにありし上/郎(らう)、あれハ哥のかみにてとい給ふゆ 00070130M18へに、哥の下にてこたへ給ふといわれて、いまゑとくした 00070140M19りとて、うば、/与作(よさく)/丹波(たんば)の/馬織(むまをり)ハござらぬかととへば、あ 00070150¥P246 00070160L1きびと、いまハお江戸のかたなさしがきますといふた。 00070170¥N5¥J 00070180¥X第五△ふしぎの/神託(しんたく) 00070190L4/過(すぎ)しころ/湯嶋(ゆしま)の天/神(じん)/類火(るいくわ)のとき、門/前(ぜん)(八オ)の人こそつて 00070200L5なげきけるハ、じせつきたれば、御神ものがれさせ給ハぬ 00070210L6御事ながら、御/氏(うち)子の中にも、わけて御/手子(てこ)なれバ、かゝ 00070220L7るくわなんにあふ事をつげさせ給ハぬこそほいなけれ。神 00070230L8ハ人のうやまふによつていをまし、人ハ神のとくによつて 00070240L9うんをそふとかや。なと、はんじやうの上にもはんぜうを 00070250L10ねがひ奉るところの/氏子(うぢこ)、ことに此御神ハ、れいげんあら 00070260L11たにをわします事、むかしより/諸神(しよじん)にすぐれさせ給ふに、 00070270L12いかなる御事ぞ。神ハてんしやうなさせ給ふか。とかく/湯= 00070280L13花(ゆ=ばな)をあけて御/託宣(たくせん)をきかんと、かぐらをそうし、御湯花を 00070290L14さゝげ奉る。/有難(ありがた)くも神ハのりうつらせ(八ウ)たまひて、 00070300L15ところの/氏子(うぢこ)なげく事、ことハりなれども、つげハまへか 00070310L16たよりありけれども、ぼんぶさとりなし。たかむろほつき 00070320L17やうけんりんにゆいつけて、あまねく江戸中へふれさせた 00070330L18り。天神/前(まへ)/膏薬(こをやく)+といわせしをしらねばぜひなしと、神 00070340L19ハあがらせ給ひけるとかや。 00070350¥N6¥J 00070360¥X第六△/塵(ちり)のゐんねん 00070370M3/去(さる)人、/珍客(ちんきやく)のきたるよしにて、/座敷(ざしき)を/掃除(そうじ)しけるをりふし、 00070380M4いつも出入しけるすかんひんの/牢(らう)人来りけるに、ていしゆ 00070390M5出/合(あい)、/明日(ミやうにち)すこしきやくをゑまするゆへ、取込てござるが、 00070400M6おはなしなどゝもてなし、さて此ごミといふ物ハ、さりと 00070410M7ハつき(九オ)ぬものでござるといへば、/牢(らう)人、その/誇(ほこり)を、 00070420M8ごみとおほせハひが事じや。それハごみとハ申さぬ。/塵(ちり)と 00070430M9申といはれた。さてハごみといふ物ハちがひましたかとと 00070440M10へバ、なか+、塵とハ千/里(り)とかひた/字(じ)しや。いづくより 00070450M11くるとハしらねども、ほこりハなにほどたてこめたる/宮殿(くうでん) 00070460M12/楼閣(らうかく)ゑもいるものなれバ、千/里(り)ひとはねといふぎりで、/塵(ちり) 00070470M13と申とかや。また/塵(ちり)にましハるものに、/五微(ごミ)/六塵(ろくぢん)とてあり。 00070480M14さればごみのミの/字(じ)、六ぢんのぢんの/字(じ)をあわせて、めに 00070490M15も見へぬところのほこりを/微塵(ミぢん)といへり。/所謂(いわゆる)/色(いろ)、/声(こゑ)、/香(にをい)、 00070500M16/味(あぢわい)、/触(ふるゝ)、/法(のり)、/是六塵(これろくぢん)なり。五/微(み)と/云(いふ)も、(九ウ)世中のつい 00070510M17ゑにして、人うるさくいやがる物五つあり。/蚤(のミ)、/蜆(しらミ)、/鼠(ねづミ)、 00070520M18/盗(ぬすミ)、/暗闇(くらやミ)、これが/五微(ごミ)じやといはれた。 00070530¥P247 00070540¥N7¥J 00070550¥X第七△/谷中(やなか)のりせう 00070560L3谷中/感擁寺(かんのうじ)の/高祖(かうそ)は、いかなる/願望(くわんもう)にてもかなハずといふ 00070570L4事なしとて、江戸中の/諸(しよ)人、さま+の/立願(りうぐわん)のかけるとい 00070580L5ふをきゝいて、さる人/痔(じ)をわづらゐて、くるしミのあまり 00070590L6に、/浄土宗(ぜうどしう)にて有しが/彼(かの)寺にまいり、/平愈(へいゆふ)の願の立、百日 00070600L7法花に成こもりける。七日にまんずる夜、/夢中(むちう)に有/難(がたく)も、 00070610L8/日連大聖(にちれんだいせう)人あらハれさせ給ひて、/弓(ゆん)手にハ/唐芥(とうがら)子をもち、 00070620L9めてに御経を持せられて、(十十三オ)(十十三ウ・十四オ挿絵)けた 00070630L10かき/御声(ミこゑ)にて、これを/朝夕(てうせき)三年喰すべし。すなハち妙薬な 00070640L11り。かくのごとくの物ハ、ミな/薬(くすり)のためにこれをあらしむ。 00070650L12/令百由旬内無諸衰患(りやうひやくゆしゆんないむしよすいげん)とのたまふとおもへは、ゆめさめぬ。あ 00070660L13りがたしと、らいはいしてかへり、/終(つい)にくわいきをゑた 00070670L14りと、/去法花宗(さるほつけしう)にかたりければ、此僧たとへに/曰(いわく)、さる事 00070680L15あるべし。一/切(さい)のくすりも、ほとけのおしゑにもれたる事 00070690L16なし。たとへば/唐(もろこし)に/計伊(けい)といふものあり。/和国(わこく)におほき 00070700L17/瘡毒(そうどく)をわづらひけり。いまのかさ、これなり。なか+む 00070710L18さきやまいなれば、/■岸山(こうがんさん)といふやまにすてたり。/計伊(けい)ふ 00070720L19かくなげき、天にきせいし(十四ウ)けるとき、壱人の/童子(だうじ)あ 00070730M1らハれ、其山に有し/荊棘(いばら)をおしへたまひて、/是好良薬今留= 00070740M2在此汝可取服勿憂不差(ぜかうらうやくこんる=ざいしによかしゆぶくもつうふさい)、此もんをかくおほせられて、われ 00070750M3ハ/文珠師利菩薩(もんじゆしりぼさつ)と、/雲井(くもい)にひかりをはなつてうせたまふ。 00070760M4これ法花経のもんなり。このよきらうやくをいまとゝめて、 00070770M5こゝにをく。なんじら、とつてぶくすべし。いへすとうり 00070780M6やうる事なかれとのこゝろなり。/計伊(けい)、かんるいきもにめ 00070790M7いじ、/彼(かの)ねをとりてぶくす。病いゑて/日数(ひかす)百/余(よ)日すぎ/古里(ふるさと) 00070800M8にかへりたり。ミるにわかやぎ、いろつやゝかなり。/所人(しよじん)、 00070810M9ふしぎのおもひをなし、/尋(たづ)ねとへば、/右之次第(ミぎのしだい)(十五オ)をか 00070820M10たる。/末世(まつせ)の/宝薬(ほうやく)とて、名付て/山帰来(さんきらい)といへり。やまより 00070830M11かへりきたるとかけり。いままた、/日連(にちれん)のさづけ給ふも法 00070840M12花経のようもん、/令百由旬内無諸衰患(りやうひやくじゆんないむしよすいげん)とかきて、ひやくゆ 00070850M13じゆんのうちに、もろ+のすいげんな/が((ママ))らしめんとのこ 00070860M14ゝろなり。されバ法花経ハよきやうにすぐれて、くどくふ 00070870M15かしとて、すゝめて/法花宗(ほつけしう)になした。 00070880¥N8¥J 00070890¥X第八△/雲井(くもゐ)のうそつき 00070900M18/有所(あるところ)に大ぜい/寄合(よりあい)はなしける/折節(をりふし)、/何事(なにこと)をといかけてもつ 00070910M19まらず、それ+にはなす者ありけれバ、ひとりの申いだ 00070920¥P248 00070930L1しけるハ、/公家衆(くげしう)などの御/名(な)ハ、/成程(なるほど)けたかき/名(な)ばかりあ 00070940L2りそふな(十五ウ)ものじやに、きくに、/鳥(とり)の名がおほい。ま 00070950L3づ/鷲(わし)の/尾(を)どの、/烏丸殿(からすまるどの)、/鷹司殿(たかつかさどの)などハ、ミな鳥の名でござ 00070960L4るハ、がてんがいかぬととふ。それハとりの名がことハり、 00070970L5/鳳凰(ほうわう)様へつかへさしやる/公家衆(くけしう)じや。鳥ハそらをとぶもの 00070980L6なれバ、そのやうな名をつかしやる方を、天上人といふと 00070990L7いへば、それならバ、下のなハつかしやらぬはずじやに、 00071000L8土よりしたにゐる海にすむ、かいるいのたぐひを名につか 00071010L9しつたがござる。/馬刀(まて)の/小路(かうじ)、/辛螺(にし)きの/小路(こうじ)どのなとハ、 00071020L10/貝(かい)の名でござる。そのはず。/錦小路(にしきのかうぢ)、/万里小路殿(まてのこうじどの)は、 00071030L11/土御門(つちミかど)へ/伺公(しかう)の方がたじやといふ。さてまた、ちくしやう 00071040L12の名(十六オ)をつかしつたがござる。/佐目牛殿(さめうしとの)、/猪熊殿(いのくまどの)。 00071050L13是ハとうしたものてごさる。このかた※ハ御/節会(せつゑ)などの 00071060L14おりから、/出御(しゆつきよ)のとき、/獅子(しし)いでんへつめさしやる/衆者(しうじや)さ 00071070L15かい、けだ物の名でござると/云(いふ)た。 00071080¥N9¥J 00071090¥X第九△/侘宣(たくせん)のよミかへ 00071100L18/浅草(あさくさ)のかたハらに、/不動院(ふたうゐん)といふたつとき/山伏(やまぶし)おハしける。 00071110L19だんほうより日/待(まち)をたのまれ給ひて、小/座敷(さしき)/床(とこ)に三/社(しや)の/侘= 00071120M1宣(たく=せん)のかけ、まへにくもつをそなへ、よもすからいらるゝをり 00071130M2ふし、/盗人(ぬすひと)/宵(よい)よりしのびいりて、つま/戸(ど)のわきにたゞすミ、 00071140M3内のしづまるてい待居たり。/夜(よる)ハしんかうにおよへとも、 00071150M4内のあかりハしめらず。/何様(なにさま)/有明(ありあけ)をとぼしをくなるべし。 00071160M5(十六ウ)/宝(たから)の内にいりながら、手おむなしく夜をあかさんも 00071170M6/口惜(くちをしき)き事におもひて、ゑんがわにあがり/障子(せうじ)のすきミれば、 00071180M7床のまへに坊主ひとり、いねぶりいたり。/障子(せうじ)そろ+と 00071190M8ひきあけ内にいりて、/屏風(びやうぶ)のうしろにまハり、かけてあり 00071200M9しけさころも、きるものなどとりてひくとき、/不動院(ふとうゐん)ミつ 00071210M10けて、屏風をひきあけて見れハ、おとこひとりうつぶしに 00071220M11なりてゐる。何者ぞととへばこたへず。其時、さてハおの 00071230M12れハどろほうそうなが、/扨(さて)&ふびんな事かな。いかにして 00071240M13左様なるわさをする事ぞ。あの三/社(じや)のたくせんを見よ。雖 00071250M14為計謀眼前利潤必當神明罰(十七オ)といふ事ハ 00071260M15しらぬか。/我(われ)/坊主(ぼうず)の身ならずハ、すべきやうあれどもゆるす。 00071270M16かならずとゞめよといわれけれバ、其時あたまをもちあげ 00071280M17て、さりながらごらんなされませい。雖非正直一旦 00071290M18依怙終蒙日月之憐とかいてござります。それでぬすむ 00071300M19とゑかふをいたしますといふ。/坊主(ほうず)から+とわらひて、 00071310¥P249 00071320L1/正直(せうしき)なれバ/一旦(いつたん)の/依怙(ゑこ)にあらずといへどもとこそよめとお 00071330L2ほせければ、それならバおむつかしながら、かへりてんを 00071340L3つけておかしやりませいといふた。さてハよミそこないゆ 00071350L4へのぬす人ならバ、かさねてハとゞめよ、うゑにかつへて、 00071360L5てつぐわんハしよくすとも、ぬすミハ(十七ウ)するなとて、 00071370L6お/初尾(はつを)の銭を弐百文とらせ給ひける。ぬす人、おかしやり 00071380L7ませいてといふて、いたゞきながら、じひのしつにハおも 00071390L8むくべしとかけいでた。 00071400¥N10¥J 00071410¥X第十△すゝむるくどく 00071420L11/江戸通町(ゑどとをりてう)のかたハらに、/店借(たながり)にて、ぢゝとばゝをわしけ 00071430L12るに、もとよりまどしきむまれつき、/舟(ふね)と/橋(はし)とハおほきな 00071440L13がら、渡りかねたる世のいとなミに心をくだき、/仏(ぶつ)/共(とも)/法(ほう)と 00071450L14もしらず。/近所(きんしよ)に/法花宗(ほつけしう)にて、ことのほかなる/後世(ごせ)ねがひ 00071460L15の人ありけり。もとよりすこびたる人、/彼者(かのもの)をふびんに思 00071470L16ひて、/常(つね)にきたりてすゝめ申されけるハ、此世ハわずかの 00071480L17/借(か)りの/宿(やど)、ながき/後(のち)の(十八オ)/世(よ)の/成仏(じやうぶつ)をねがい給へかしと、 00071490L18ひたすらにいわれて、おやぢいひけるハ、/仏(ほとけ)になりたり/共(とも) 00071500L19ゑきなし。さりながら、をらが大/屋殿(やとの)の/様(やう)に、だいぶんの 00071510M1たなをもち、あきないしやうとも思わで、/屋賃(やちん)をとりてら 00071520M2く+とくらす事あらバ、ねがいませうといふ。それこそ 00071530M3やすき事なり。われ/法花経(ほけきやう)をさづくへし。されどもならひ 00071540M4覚へん事かたければ、そのだいがう/妙法連花経(めうほうれんげきやう)をとなへた 00071550M5まへ。これすなハち一/大事(だいじ)なり。すこしもうたがふ事なか 00071560M6れ。/経(きやう)に/曰(いわく)、/無量珍宝不求自得(むりやうちんほうふぐじとく)ともとかれたり。またいわ 00071570M7く、/当智如是人自在所(とうちによぜにんじざいしよ)(十八ウ)/欲生(よくせう)。このこゝろハ、まさに 00071580M8しるべし、かくのごとく人ハ、わかまゝなるところにむ 00071590M9まれ、ほつするといふこゝろなりとて、法花経をさづけら 00071600M10れ、それより/後生(ごせう)にもとづき、りんじうの/夕部(ゆふべ)までだいも 00071610M11くおこたらず、つゐに/大往生(だいわうじやう)をとげたり。百ケ日にあたる 00071620M12よ、/彼経(かのきやう)をさづけし人、/不思義(ふしぎ)のゆめをミたり。うばが方 00071630M13へきたりてかたられけるハ、おやぢの/成仏(ぜうぶつ)うたがひなく、 00071640M14ねがひのまゝなり。われにゆめのつげありしが、ゑんのふ 00071650M15の/門前(もんぜん)に/家屋敷(いゑやしき)をもらゐて大/屋(や)となり、/屋賃(やちん)が壱両三/歩(ぶ)八 00071660M16百文づゝあがりますといわれしほどに、/夢(ゆめ)のうちに/我(われ)とい 00071670M17けるは、(十九終オ)八百のはしたハなにゆへととへば、いま 00071680M18ぢごくのぜにのそふば、壱歩に壱貫弐百します。/法花経(ほけきやう)/壱= 00071690M19部(いち=ふ)/八巻(はちくわん)をさづけ給ふゆへに、やちん壱歩八貫づゝあがりま 00071700¥P250 00071710L1すといわれたとはなされければ、ばゝ、とてもの事に、大 00071720L2/般若(はんにや)をさづけ給ハヾ、おんてもなふ六百貫ハあがろふもの 00071730L3をといふた。(十九終ウ) 00071740¥Y1/笑事記咄(しやうじ△き△はなし△△|わらふことをしるすはなし)大鑑目録△黄 00071750M3一△おどけ/法問(ほうもん)△△△△@とふて智恵をミたる|△△こゝろや一旦那@ 00071760M4二△/非人(ひにん)じせい/狂哥(きやうか)△△@土中にもくちぬこがねの|△△くちずさミ△△△△@ 00071770M5三△/文盲(もんもう)のおやぢ△△△@しらざるハしらさるぞ|△△よき老のさた△△@ 00071780M6四△/商人(あきんど)のよびくせ△△@もんだうハたがひに△|△△とがをにないぼう@ 00071790M7五△/時(とき)のかねの云なし△@是かあれかおのか△△△△|△△心のうけこたへ(一オ)@ 00071800M8六△/猫(ねこ)のぢほう△△△△@成仏ハたゞいちもつの|△△どうりかな△△△@ 00071810M9七△/商(あきない)のけいこ△△△@だんこうのあるにも|△△あらぬたとい事@ 00071820M10八△/天道(てんとう)のめぐミ△△△@からかさのさすかに|△△是もりくつもの@ 00071830M11九△/三味線(さミせん)の物ずき△△@かたりじやうすその△|△△しな※や一二三@ 00071840M12十△/赤銅(しやくだう)のめきゝ△△△@さいわいにあるも△△△|△△むかでのあしきゑん@ 00071850M13十一△ひよくの/魚(うを)△△△△@ことハりハつきぬ△△△△△|△△ちぎりのふかき海(一ウ)@ 00071860¥P251 00071870¥T1 00071880¥N1¥J 00071890¥X第一△おとけ法問 00071900L1/去禅寺(さるせんてら)の/頭堂(とうだう)となかよしにて、つねにきたりあそぶだんな 00071910L2あり。/今宵(こよひ)もきたりければ、/頭堂(とうたう)ハるすなり。きやくでん 00071920L3ゑ月のさしけるに、十二三成小僧をあいてにして/遊居(あそびゐ)ける 00071930L4が、だんなもすこびたるものなれば、/小僧(こぞう)をなぶりてあそ 00071940L5ハんとおもひよびて、お小僧ハ名をなにといふぞととへば、 00071950L6/弘雄(かうを)と申といふ。/源五平(けんこへい)とも/与作(よさく)ともつかいて、こうをと 00071960L7ハむつかしい名しやといへば、/小僧(こぞう)、/旦那(だんな)にとびかゝりて 00071970L8/手足(てあし)をつめる。何事をするといへば、/弘雄(かうを)つミまする。こ 00071980L9うをつミてこそ/頭堂(とうたう)にはなれ。たとへにも、しやミから/長= 00071990L10老(ちやう=らう)になられぬと(二オ)いゝます。それでもつむでハない。 00072000L11つねるハといへば、/哥(うた)に、 00072010L12△△身をつミて人のいたさぞしられけり 00072020L13とよミました。/又(また)/旦那(だんな)、/弘雄(こうを)ハ/肴(さかな)がすきかと云。こなたハ 00072030L14おすきか。なるほどおれハすきじやといゑば、/小僧(こそう)、/庫裡(くり) 00072040L15へかけゆきて、にないぼうを/持来(もちき)てさん※にたゝく。是 00072050L16ハまたどうした事じやといへば、こうをとよひかけて、さ 00072060L17かながすきじやとおしやるハ、こうをのさか/名(な)ハをうこで 00072070¥G 00072080¥P252 00072090L1/御座(こさ)るほとに、したゝかにふるまいました。だんな、にな 00072100L2いぼうをおうことハ。/小僧(こぞう)、/哥(うた)に、 00072110L3△△/陸奥(ミちのく)のぢびきの/石(いわ)と/我恋(わがこい)は、 00072120L4△△△になわばおふこなかやたへなん 00072130L5と申ハ、しらしやらぬか。/旦那(だんな)もあきれて、なにがな(二ウ) 00072140L6むりな事いひかけんと思ひて、/弘雄(かうを)、あの/鎮守(ちんしゆ)は/何(なに)の/宮(ミや)じ 00072150L7やととふ。あれは/稲荷(いなり)のミやでござる。/神(かミ)は内にか、/留主(るす) 00072160L8かととふ。いなりといふからは、るすでハござらぬといへ 00072170L9ば、こちらハなにのミやじや。あれハ/不動(ふとう)でござる。/不同(ふとう) 00072180L10ならバ、うちにいられぬ事もおほからふ。ミてきやれとい 00072190L11ふ。小僧、心ゑましたとかけゆきて、戸びらをばた※と 00072200L12たゝひてもどる。るすかといへば、あれをしらしやらぬか。 00072210L13戸をたゝひたれば、/板(いた)をとのしましたわといふ。また/旦那(だんな)、 00072220L14なにをかいわんと思ひて、/弘雄(こうを)、あれほど月ハさへてござ 00072230L15るに、雲がかゝりてきのどくじや。たゝきやれといへば、 00072240L16また小/僧(そう)、(三オ)つきやまへかけのぼりてかへる。/旦那(たんな)、 00072250L17たゝいたかととへば、おもふさまたゝかれて、そらぢうか 00072260L18はれたといふた。 00072270¥N2¥J 00072280¥X第二△/非人(ひにん)しせいの/狂哥(きやうか) 00072290M3/本庄業平塚(ほんぜうなりひらつか)のわきに、とし/久敷(ひさしく)/住(すミ)けるひにんあり。なにさ 00072300M4ま、よしあるものゝはてか、いとやさしきゆへに、所の人 00072310M5のたすけにて、/露命(つゆのいのち)をつなぎけるが、すきにし/霜(しも)月のすへ 00072320M6より、おもき/病(やまい)にくるしミける。ちかきほとりの非人共き 00072330M7たりて、よきにいたわりしが、/次第(しだい)にまさるさむさに、よ 00072340M8るのむしろもうすけば、めんつふの/食(しよく)もたへだへになり、 00072350M9/極月(ごくけつ)廿二日にハしきりに/取(とり)つめたり。(三ウ)したしみける 00072360M10/乞食(こつじき)のなかに、わけてふかくねんごろしける/非人(ひにん)ふたりあ 00072370M11りけるが、/枕本(まくらもと)によりて、まことに御身、いまをかぎりに 00072380M12見ゆる事こそかなしけれ。世におハします/旦那衆(だんなしう)ハ、けふ 00072390M13ハとしこしなりとて、それ+にことぶきのよそほいある 00072400M14に、せめてさばかりの事こそなくとも、こよいばかりハ/待= 00072410M15給(まち=たま)へと、なミだながらにいへば、/彼非人(かのひにん)、おもきまくらを 00072420M16うごかして、さもくるしげなるいきをつき、/最早(もはや)/此世(このよ)のゑ 00072430M17んたへて、われめいどにおもむくなり。人ならぬ身なれバ 00072440M18とて、さすがに/和哥(わか)の御/神(がミ)、そのなもこゝに/在原(ありハら)の、/昔(むかし)男 00072450M19の御びやうしよに、ひさしく/年(とし)をふるつかの、(四オ)(四ウ 00072460¥P253 00072470L1・五オ挿絵)ほとりにすめる/甲斐(かひ)もなく、しなん事も/口惜(くちをし)し。 00072480L2たとひうたにハあらずとも、ゆひてこそミんとて、じせい 00072490L3に/狂哥(きやうか)しける。 00072500L4△△いにしへハ世に/在原(ありハら)の身なれども 00072510L5△△△いまこつじきとなりひらのつか 00072520L6/独(ひとりの)/非人(ひにん)、やさしくも、の給ふものかな。此/塚(つか)にて/最後(さいご)を 00072530L7きわめ給ふは、なりひらのしゆじやうさいどのミせしめに、 00072540L8かりにあらハれ給ふよふに思ふとて、是もついぜんの心に 00072550L9て、/笑哥(しやうか)をしける。 00072560L10△△ところしも爰にしかわる/業平(なりひら)ハ 00072570L11△△△これぞまことの/在五中将(さいごちうぜう) 00072580L12またひとりのひにん、さりながら、日こそ/多(おほき)に、(五ウ)/今宵(こよい) 00072590L13しも、せつぶんのよに、りんじうし給ふは、じやうぶつう 00072600L14たがひなし。 00072610L15△△なりひらぎさすがこよひのまめ/男(おとこ) 00072620L16△△△/鬼(おに)ハきらゐておくるごくらく 00072630¥N3¥J 00072640¥X第三△/文盲(もんもう)のおやぢが事 00072650L19/去人(さるひと)、/年(とし)のよわひもこよミの/一廻(ひとめぐり)をこゆる程なれば、入道 00072660M1してゐんきよじよをしつらひ、/子息(しそく)によをゆづりけるに、 00072670M2/近所(きんしよ)の人きたりて申けるハ、ごじふんさまハ/御子息様(こしそくさま)へか 00072680M3とく御ゆづり、おらく人にならせられ、まづもつて御/目出(めで) 00072690M4たし。さだめて名もかへさせられつらん。/法名(ほうめう)ハなにと申 00072700M5ますととへバ、おやぢ、/宗円(そうゑん)と申といわれけるに、そうは 00072710M6(六オ)さためて/宗(むね)でござらふ。ゑんハ/円(まろき)でござるかととへ 00072720M7ば、いや+ゑんハ/板(いた)でござるといふ。きやくもあきれて、 00072730M8あいさつなしにかへつた。あとにてむす子しかりけるハ、 00072740M9おやぢのしらずハしらぬふりがよいに、ゑんハまるいとい 00072750M10ふ/字(じ)かととふに、あふといわれゐで、ゑんはいたしやとハ 00072760M11なにごとじや。あせが/出(で)たといへば、そこなたわけもの。 00072770M12おれもゐんきよじよハ竹ゑんじやさかい、まろきハかてん 00072780M13なれども、ぐわいぶんを思ふて/板(いた)じやといふた。 00072790¥N4¥J 00072800¥X第四△/商人(あきんと)のよびくせ 00072810M16さるわたり/歩行(かち)のもの、/町宿(まちやと)へきたりて/遊(あそ)びゐけるに、/何= 00072820M17共(なに=とも)ならぬこしやくものにて、よろづに(六ウ)/言葉(ことは)とがめし 00072830M18ける。あるとき/西瓜(すいくわ)をかうとて、おてまへハなにとして、 00072840M19すいくわを、すいくわん+とうるぞ。どれをきゐても、さ 00072850¥P254 00072860L1りとハかた事じやといへバ、このあきうど、おとがめハ御 00072870L2もつともなれとも、/商人(あきうと)のよびくせにて候。あやまりなり 00072880L3とも、てうしののぼるやうに申ます。たとへば、いろりを 00072890L4ゆるりといひきたれば、あやまりなれども申とおなし。す 00072900L5いとつめて、またくわとつまつた/字(じ)でござるゆへに、くわ 00072910L6をはねました。つれ+などにも、おゝかめれを、よみく 00072920L7せに、かんめれと、はねじを/付(つけ)る事も、/言葉(ことば)/優美(ゆふび)にきこへ 00072930L8て心ふくめるがごとし。そふべつ/芋(いも)なども/声高(こゑたか)くよバんと 00072940L9(七オ)おもへば、いもう+と申ます。二/字(じ)につまりたる 00072950L10ハよびにくさに、わざと/入言葉(いれことハ)をいたすといふ。/彼歩行者(かのかちのもの)、 00072960L11/二字(にじ)につめてよびにくきハ、此中おてまへが/大根(だいこん)/牛房(ごぼう)をう 00072970L12るに、だいこ+とつめてよばれたハ、がてんがいかぬと 00072980L13とふ。それも御もつともなれども、あとの/牛房(ごぼう)をうるとき、 00072990L14てうしをのぼせんために、だいことつめて、/其(その)はねしを、 00073000L15ごんぼんと申で、よひくせがよふござる。/牛房(ごぼう)をはねるた 00073010L16めに、/大根(だいこん)をつめました。人/丸(まる)のうたに、なが+し夜を 00073020L17といわんために、やまとりの/尾(を)のといひ、山/鳥(どり)をいわんた 00073030L18めに、/足曳(あしびき)のといふ/枕言葉(まくらことバ)とおなじこゝろなり。(七ウ)ま 00073040L19へをひかへ、まへをのばしまする事も、あきんどのよびく 00073050M1せとて/大事(だいじ)て/御座(ござ)る。すこしの言葉くせをもつて、ことば 00073060M2にゆふあり。おまへなどの/殿様(とのさま)のおともにおあるきなさる 00073070M3にも、馬とり、はさみ/箱(ばこ)もちなどハ、はい+といふを、 00073080M4おまゑなどは、はあい+とおつしやるで、言葉けたかく、 00073090M5しさいらしくきこへます。是もあのじが/一(ち)/字(じ)おほい。/土倚(は△い△|つちより) 00073100M6がほんてござるといわれて、かのおさぶ、ものをいわなん 00073110M7た。 00073120¥N5¥J 00073130¥X第五△ときのかねのいひなし 00073140M10/去者(さるもの)/振舞(ふるまい)にゆきて、いとふ/夜更迄(よふくるまで)/遊(あそ)びて、さけによい、ふ 00073150M11ら+とかへるに、/浅草(あさくさ)/新寺町(しんてらまち)を(八オ)とをりけり。もん 00073160M12ぜきまへの/番太郎(ばんたらう)に、もはやいくつじやととへば、六十二 00073170M13になりますといふ。さていかひたわけの。かねの事じやと 00073180M14いへば、かねをもちますれば、/番太郎(ばんたらう)ハいたしませぬとい 00073190M15ふ。/彼者(かのもの)あきれはて、いや、その事ではない。ときハとと 00073200M16へば、ときハ/明日(めうにち)、おてらでござりますといふた。 00073210¥N6¥J 00073220¥X第六△ねこのぢほう 00073230M19/芝牛町(しバうしまち)に、とつとかたき/法花宗(ほつけしう)のおハしける。きんじよよ 00073240¥P255 00073250¥G 00073260M1り/猫(ねこ)をもらひもとめけるに、さき様/浄土宗(じやうどしう)にておわしけれ 00073270M2ば、此猫もぜうと成べし、とかく/我所(わがところ)におくからハ、ぢほ 00073280M3うさせんとて、つなぎをきける/猫(ねこ)をとらへていひふ(八ウ) 00073290M4くめけるハ、一さいの/経(きやう)+のなかに、わがほうの/妙法花= 00073300M5経(めうほけ=きやう)ハ、/余経(よきやう)にすぐれてくどくふかし。されば/釈迦如来(しやかによらい)も、 00073310M6四十/余年(よねん)未/顕(けん)/真実(しんじつ)とときたまふ。/諸教(しよきやう)/十王(じうわう)/最第(さいだい)一、いかな 00073320M7るちやうるいちくるいも、このきやうにじやうぶつうたが 00073330M8ひなし。/経(きやう)に/曰(いわく)、/若有聞法者無一不成仏(にやくうもんほうしやむいちふじやうぶつ)とときたまふ。こ 00073340M9のほうをきくものあらば、ひとつとして/成仏(じやうぶつ)せざるといふ 00073350M10事なしとのこゝろなり。/龍女(りうによ)じやうぶつのゑんにまかせて、 00073360M11此/法花(ほけ)経の五の巻をいたゞかせんとて、こんじんよりぶつ 00073370M12しんにいたるまで、/此経(このきやう)をよくたもつと云ながら、きやう 00073380M13をもちていたゞかせんとするとき、ねこ、おど(九オ)ろき 00073390M14てゑんのしたにかけこみたり。ていしゆ、それひきいだせ 00073400M15と三助にいひつけゝれば、ひたもの、くびずなをひけども 00073410M16いでず。やれひけ+といへば、なにほどひきましても、 00073420M17なか+いでませぬと云。ていしゆ、でぬか。でませぬ。 00073430M18それならをけ。それほとじやうがこわくハ、/法花(ほつけ)にきハま 00073440M19つたといわれた。 00073450¥P256 00073460¥N7¥J 00073470¥X第七△あきなひのけいこ 00073480L3/世(よ)のいとなミもまどしからずくらされける人の、/二十斗(はたちばかり)な 00073490L4るせいじんの子を持たり。/有時(あるとき)、/近所(きんじよ)のねんごろなる人四 00073500L5五人きたりて、はなしける折ふし、ていしゆ申されけるハ、 00073510L6をれが/太郎(たらう)めにも(九ウ)すゑ+のためなれハ、いかよふ 00073520L7なるしよくなり共、あきないにてもしならわせたきが、い 00073530L8づれもいかやうなる事がやうござろふと/談合(だんかう)しかけけれバ、 00073540L9/独(ひとり)のいひけるは、/御子息様(ごしそくさま)あきなひのたなをださしやらふ 00073550L10ならバ、とかく/鑷子(けぬき)、はさみ、/剃刀(かミそり)などか、よふござらふ 00073560L11といふ。それがあきなひのしならいによきやととへば、か 00073570L12んばんをみしやしやれ。どれも/小刀(こがたな)とかいてござるといふ。 00073580L13またひとりが申けるハ、いや+/夏(なつ)むきならば/木綿(もめん)/足袋(たび)、 00073590L14ふゆハ/革(かハ)/靺(たび)などかよふござらふといふ。ていしゆ、利のか 00073600L15ゝるものかととへバ、まづかわゆひ子にハたびをさせよと 00073610L16いひまするといふに、/頓瓢者(とひやうもの)/出(いで)て云けるハ、(十一ノ二オ)(十一 00073620L17ノ二ウ・十三オ挿絵)それよりもずんどよひものか御座ります。 00073630L18とがにんのくびにかけまする/錠(じやう)がござる。是をこしらへな 00073640L19らハしやれと云。それハだうした事にととへば、/昔(むかし)よりた 00073650M1とへにも、子ハ三/界(がい)のくびかせと申ますといふた。 00073660¥N8¥J 00073670¥X第八△天/道(とう)のめぐミ 00073680M4五六人/寄合(よりあい)はなしけるをりから、/独(ひとり)の申けるハ、世中に天 00073690M5たうのめぐミほどありがたき事なし。まづよる/昼(ひる)といふ事 00073700M6あらずハ、人こんきうすべきに、夜といふ事ありて、/上(かミ)ハ 00073710M7/高家(かうけ)、下ハ/賎(いやし)きわれ+、ひとり下人もやすむまあり。こ 00073720M8れ天のめぐミ。また/雨(あめ)といふ事なくは、(十三ウ)かうさくハ 00073730M9申におよバず、/草木(そうもく)いかにしてあるべし。しからバ、/人間(にんけん) 00073740M10のしよくなし。風といふ事あらずは、ふねの/渡海(とかい)もかなハ 00073750M11ず、また/草木(くさき)五こくのミもいらず。ミな/天道(てんたう)のめぐミにて、 00073760M12それ+にある事ありがたきといへば、/末座(ばつざ)にありし/頓飄= 00073770M13者(とひやう=もの)すゝみ出て、まだそれよりも天道のめぐミにありがたき 00073780M14事ありといふ。それはととへば、雨とゆふものが、うへか 00073790M15らふるほと/有難(ありがたき)事なし。もししたからふらバ、からかさが 00073800M16さゝれまひといふた。 00073810¥N9¥J 00073820¥X第九△/三味線(さミせん)のものずき 00073830M19/有人(あるひと)、/万(よろづ)人にかハりたる事のミこのミ、/諸道具(しよだうぐ)に(十四オ)物ず 00073840¥P257 00073850L1きをせられけるに、/三味線(さミせん)をあつらゆるとて、さいく人を 00073860L2よびていわれけるハ、さをハしたんにして、どうハ大方く 00073870L3わりん、たかやさんなどをすれども、手おもく思わるゝあ 00073880L4ゐた、/桐(きり)にしたきといわれける。さいく人申けるハ、おも 00073890L5のずきハよふござりますが、それハ/御法度(ごはつと)でなか+仕ま 00073900L6す事が成ませぬといふ。これハかわりたる事をいわるゝ。 00073910L7いかにして御はつとじや。どうをきり、さをゝしたんなれ 00073920L8ば、きりしたんでござりますにより、なりませぬ。あまつ 00073930L9さへ、そのねいろまで御法度でござると云。それハまた、 00073940L10どうした事じや。/桑(くハ)やくわりん、たかやさんハかたき木で 00073950L11ござり(十四ウ)ますにより、ねいろもよふ御ざりますが、/桐(きり) 00073960L12はひゞきがわるふて、ばてれん+となりますと/云(いふ)た。 00073970¥N10¥J 00073980¥X第十△/赤銅(しやくどう)のめきき 00073990L15/去人(さるひと)、/四方(よも)山のはなしのつゐでにいひけるハ、物ハなんぞ 00074000L16とりゑがなふてハかなハぬものじや。たとへバ、こはくハち 00074010L17りをすふものなり。さんごじゆハどくをしる。/家(いゑ)の/内(うち)にど 00074020L18く入ときハ、おじめなどにつけてゐるに、たちまちにわる 00074030L19ゝ。/去程(さるほど)に玉のうちのたからなり。またしやくどうを身に 00074040M1つけると、むかでがそばへもよらぬものじやといへば、て 00074050M2いしゆ云けるハ、/赤銅(しやくどう)にハ/百足(むかで)がおじますか。それハ+ 00074060M3/百足(むかで)のきわへ赤銅をよすると、たちまち(十五オ)しぬといふ。 00074070M4わたくしも、さるかたより/赤銅(しやくとう)の小づかをもらいましたが、 00074080M5ミせませうとて、とりいだひて見する。/彼者(かのもの)見て、いや+、 00074090M6是ハにせ/赤銅(しやくだう)しや。なにのやくにもたゝぬといふ。ていし 00074100M7ゆ、おほきにはらをたてゝ、是ハにせでハござらぬ。さき 00074110M8の人が、なるほどたいせつがりてくれました。こなたハ赤 00074120M9銅見しり給ハぬそうなといふ。/折節(をりふし)かやゝなれバ、二寸ばか 00074130M10りの/百足(むかて)がおちたり。/幸(さいわい)じやとて、彼百足のありくさきへ 00074140M11おけば、そのうへにのほりてゆく。彼者、あれをミやれ。 00074150M12これはにくるミといふものじや。にせにきわまつたといへ 00074160M13ば、ていしゆいよ+せいて、/出所(でどころ)がよいさかい(十五ウ)で、 00074170M14この/赤銅(しやくとう)ハにせでハござらぬ。大かた、この百足がにせで 00074180M15ござろふといふた。 00074190¥N11¥J 00074200¥X第十一△ひよくの/魚(うを) 00074210M18/有人(あるひと)申けるハ、天にあらばひよくの鳥、地にあらバ/連理枝(れんりのゑた) 00074220M19といふて、/恋路(こいぢ)の道ハいづくもおなじ事のやうにいふが、 00074230¥P258 00074240L1/此界(このかい)の下の/龍宮(りうぐう)にも、恋といふ事ハある事やととふ。おろ 00074250L2かの事。そうべつ、たいの有ものに、ひとつとして/和合(わがう)か 00074260L3くる事なし。ことに/龍宮(りうくう)にも壱つの/浄土(じやうと)なれば、いかでそ 00074270L4の事なかるべし。されバこそむかし/浦嶋(うらしま)太郎も、りうぐう 00074280L5のおとの姫とちきりをこめて、玉手箱をもちてかへりした 00074290L6めしあり。それのミにかぎら(十六終オ)ず、ひよくの魚とい 00074300L7ふて、ひとつにしめあわせて/居(い)るうをハ、見たまハずやと 00074310L8いへば、なにしに/左様成(さやうなる)ものを見ませふ。はなしにきくさ 00074320L9へこれがはじめなりといふ。/扨&(さて+)おくミ、な人かな。七/月(くわつ) 00074330L10たくさんくるものなり。ぞくなハさしさばといふものじや 00074340L11といふた。(十六終ウ) 00074350¥Y1/正志記咄(しやうじ△き△はなし△△△△|まさしきこゝろをしるすはなし)大鑑目録△赤 00074360M3一△かた事のうハぬり△@そのしなもしらで△|△△詞のこばしだて@ 00074370M4二△/無筆(むひつ)の/字(じ)せんぎ△△@それぞともいふに△△|△△いはれぬ物をしへ@ 00074380M5三△あまりの/卑下(ひげ)△△△@ですぎじと思ふ斗の|△△身だしなミ△△@ 00074390M6四△/買(かふ)て/小弁(せうべん)△△△△@よしあしにいふせわごとや|△△江戸ならひ△△△△△@ 00074400M7五△/万病(まんびやう)/錦袋円(きんたいゑん)△△△@といかけてつまるその△△|△△身ののちぐすり(一オ)@ 00074410M8六△/盗人(ぬすびと)のりやうけん△@つミなくてひいき+ハ|△△ときのとり△△△△@ 00074420M9七△御/家(いゑ)の八/蔵(ざう)△△△△@ゐんねんのきいて△△|△△ゑとくを下をとこ@ 00074430M10八△/角内(かくない)が物をじ△△@をくびやうハ心の/鬼(をに)の|△△身をせめて△△△@ 00074440M11九△利くつの/金公事(かねくじ)△@かるくちやさすが△△△|△△こなたもとをりもの@ 00074450M12十△/扶持人(ふちにん)のざとう△@さみせんの引手も△△△△△|△△おほき名つけおや(一ウ)@ 00074460¥P259 00074470¥T1 00074480¥N1¥J 00074490¥X第一△かた事のうハぬり 00074500L3/無筆成者(むひつなるもの)、ある人にたづねとひけるやうハ、此中かわつた 00074510L4言葉をきゝました。/牢人衆(らうにんしう)でござるが、/去方(さるかた)で/出合(であい)ました。 00074520L5そのところのていしゆ、いかゞして御/暮(くら)しなさるゝときけ 00074530L6ば、/手習(てならひ)の/師(し)をしますといわれたるに、/亭主(ていしゆ)、さやうでござ 00074540L7らふ。まことに、貴様ハ手をよくあそバさるゝほどにとい 00074550L8へば、いやはや、かたゐなかにをりますれば、しやうじん 00074560L9のむちやうとうの、へんふくでござりますといはれました 00074570L10が、がてんがいきませぬといへば、/無鳥嶋(むちやうとう)の/蝙蝠(へんふく)とハ、と 00074580L11りなきしまのかうもりといふ事じやとおしへられ、/能事(よきこと) 00074590L12(二オ)をおぼへたり。ゐんぎんなる/座敷(ざしき)にて、なんでもい 00074600L13わんと思ふをりふし、/去御屋舗(さるおんやしき)へゆきて、さま※のはな 00074610L14しのつゐでに、おてまへハいかなる事をして、つねにくら 00074620L15すぞととハれて、爰こそと思ひ、すこしぼうを覚へをりま 00074630L16するゆへに、近所なるわかき/衆(しう)にたのまれ、しなんをいた 00074640L17しますると/言(いふ)。/御自分(ごじぶん)ハぼうをつかハるゝよし、きゝおよ 00074650L18んだといわれて、むちうとうのりつふくでござりますとい 00074660L19ふ。さき様ハかた事とハしらず、しばしかんがへて、/夢中= 00074670M1等(むちう=とう)の/立腹(りつふく)とハ、ゆめのうちのともがらのはらたつやうなと 00074680M2のこゝろかといへば、いや+/左様(さやう)なあさまな事でハござ 00074690M3りませぬ。(二ウ)とりなきしまのかうもりと申事じやとい 00074700M4ふた。 00074710¥N2¥J 00074720¥X第二△/無筆(むひつ)の/字(じ)せんぎ 00074730M7/屋敷(やしき)へ万ふしんがたの御用をきく町人なれば、/清帳(せいてう)をかき 00074740M8けるに、/竹垣(たけゑん)といふ字をわすれて、しばしあんじゐるに、 00074750M9近所の人きたり。何を物あんじがほにおハすととへば、/亭= 00074760M10主(てい=しゆ)、いや竹ゑんをわすれましたといふ。扨&竹ゑんハ、か 00074770M11ら竹よりも女竹がよふござるといふ。いやさ、/書様(かきやう)の事で 00074780M12ござるといへば、わらびなわで、ひきしめ+かいたがよ 00074790M13いといふ。それでハござらぬ。/字(じ)の事でござるといへば、 00074800M14/地(じ)ハ/赤土(あかつち)がよふござるといふた。 00074810¥N3¥J 00074820¥X第三△あまりの/卑下(ひげ)(三オ) 00074830M17/浅草(あさくさ)に/安楽寺(あんらくし)といふ/禅寺(せんでら)あり。あるとき、らうにんしう二 00074840M18三人ふるまひによバれける。いづれも/近付(ちかづき)ならねば/住寺(ぢうじ)引 00074850M19合て、御/牢(らう)人たがいのことなれば、ひとつハ御ちかづきに 00074860¥P260 00074870¥G 00074880M1いたさんために、/各&(をの+)申いれましたなどゝいひて、たがひ 00074890M2のしきだいおハり、/四方山(よもやま)のはなしになりて、扨ひとりハ 00074900M3/当地(たうち)のらうにん、独ハすぎしころまで/奥州(をうしう)/仙台(せんたい)/城下(しやうか)にいた 00074910M4るよし、かたりける。ぢうじ、まことに/陸奥(むつのく)ハ大国五拾四 00074920M5郡なれバ、さぞ/名所(めいしよ)もおほからふなどいはれけるに、なか 00074930M6+とてあらましかたる。又/当地(とうち)の/牢人(らうにん)、いまひとりのら 00074940M7うにんに、/御自分(ごじふん)(三ウ)さまの/御住国(ごぢうこく)ハととへば、/此牢人(このらうにん)、 00074950M8ことのほかなる/卑下(ひげ)するやつにて、あなたのおくにのあと 00074960M9でハ申されぬといふ。それハいかにしてとといつめられ、 00074970M10いや/駿河(するが)でござりますが、五十四くんのあとて、七郡ばか 00074980M11りの小国ハ申いだされぬといふ。さて+あまりの/御(こ)ひげ 00074990M12/い((ママ))じや。/小(せう)こくなれども/駿州(すんしう)ハよこくにこへて/名所(めいしよ)おほく、 00075000M13/宇都山(うつのやま)、/木枯森(こがらしのもり)、/清見潟(きよミがた)、/三保浦(みほのうら)、/奥津里(をきつのさと)、/田子浦(たごのうら)、/浮嶋(うきしま) 00075010M14が/原(はら)など、ミなめいしよのよし、いにしへの/哥人(かじん)もこゝろ 00075020M15をつくし、ことに/天竺(てんぢく)、/漢土(かんど)、/日本(につほん)/三国(さんごく)/無双(ぶさう)/名山(めいさん)/富士(ふじ)を/朝= 00075030M16暮(てう=ぼ)にごらんなさりやうの、御うらやまし。せめて(四ノ五オ) 00075040M17(四ノ五ウ・六オ挿絵)一たびのぼりまして見ましたいといへ 00075050M18ば、/彼牢人(かのらうにん)、おのれが/手作(てさく)の山のやうに、/田舎(いなか)山でござれ 00075060M19ば、なか+御/目(め)にかけるほどの山でハごさらぬといふた。 00075070¥P261 00075080¥N4¥J 00075090¥X第四△かふてしやうべん 00075100L3/商人(あきびと)の/売物(かいもの)にねをつけてまけたるとき、かわぬを江戸こと 00075110L4ばに、しやうべんのするといふ。/由来(ゆらい)を/委(くハしく)たづぬるに、と 00075120L5つとむかし/公家衆(くげしう)、御/当地(とうち)へおんくだりありしに、なにの 00075130L6/左小弁(させうべん)/道明卿(ミちあきらけう)の御/家(か)人、日本橋あまが崎のたなへきたりて、 00075140L7ものをととのへけるに、いろ+ねぎりてまけたれば、高 00075150L8きほどにかわじといふ。/商人(あきひと)、/大(おほ)キにはらをたて、たかきや 00075160L9すきハ/右(ミぎ)にすこしハわきまへの(六ウ)ありそふな事なりと 00075170L10さん※にあつかうすれば、/右小弁(うせうべん)のけらいならは、ミぎ 00075180L11にすこしも/弁(わきま□)があらふけれとも、/左小弁(さしやうべん)のものじやさかい 00075190L12に、ひだりにすこしわきまへたゆへに、あとで/高(たか)いとおも 00075200L13へつけたに、ゆるしやれといふて、わらひにしてかへつた。 00075210L14さすが/公家(かうけ)につかへるほど有て、とうハかよきとさたして、 00075220L15それより/今(いま)の/世迄(よまて)、すこしわきまへよといふこゝろで、/小弁(せうべん) 00075230L16といふとかや。又四ケ市/広小路(ひろこうじ)にて/脇指(わきざし)の道具をうる/店(たな)へ、 00075240L17やつこきたりて、/古鞘(ふるさや)をことのほかにねぎりたり。商人ま 00075250L18けたれば、爰があしき、これが/気(き)にいらずといふ。あきうと、 00075260L19しやうべんするかといへバ、(七オ)やつこ/腹(はら)を/立(たて)て、おれ 00075270M1をなぶる。すいさんなりといさかふところへ、つれのやつ 00075280M2こきたりて、いか/成(なる)事ぞととふ。/商人(あきひと)、/是(これ)をねをさしつて、 00075290M3/小弁(せうべん)さつしやるさかい、小弁かといへば、はらをたてしや 00075300M4ると云。つれのやつこ、いかにもそなたのことハりじや。 00075310M5此男ハさるの/年(とし)じやさかい、だらいふんしがわるいほどに、 00075320M6かんにんさしやれとて、やつこをつれていつた。 00075330¥N5¥J 00075340¥X第五△/万病(まんびやう)/錦袋円(きんたいゑん) 00075350M9/下谷(したや)/池(いけ)のはたに、くわんがくや大助といふて、あまねく江 00075360M10戸中にかくれなき/薬店有(くすりだなあり)。おもてに/金銀(きん※)のちりばめ、/瑠璃(るり) 00075370M11のつぼ、/珊瑚(さんご)のゑた、/琥珀(こはく)のだい、めなふのいし、すいし 00075380M12やうのかゞみ、かざりたて(七ウ)たる純子のしとねのう 00075390M13へにハ、かうらいなんきんのつぼをならべ、にしき、金ら 00075400M14んをもつてくちを/包(つゝミ)、壱/間(けん)のきんかんばんに、/万病(まんびやう)/錦袋円(きんたいゑん) 00075410M15とかき付て、諸人是をもとめてくわいちうするほどに、う 00075420M16りかふにいとまなし。折節、しさいらしきろう人きたりて、 00075430M17かんばんにふしんしけるハ、それやまひハ四百四病あるに、 00075440M18/此錦袋円(このきんたいゑん)、いかにしてか/万病(まんひやう)によしとハいひたまふぞ。こ 00075450M19ざかしきわかいもの出て、四百四病と御さだめハさる事な 00075460¥P262 00075470¥G 00075480M1れども、/千万億(せんまんをく)のやまひあれバこそ。にん+にもつやま 00075490M2ひに、まづせんきといふわづらひあり。/物毎(ものごと)にこうまんの 00075500M3こゝろあれバ、かならずまんきといふ(八オ)わづらひいづ 00075510M4る。/貴様方(きさまがた)のようなる御/牢人(らうにん)様も、ひよつと/臆病(をくひやう)と申やま 00075520M5いいでたがるものじや。されば、千万/億(をく)のやまひなしとハ 00075530M6いわれますまいといふた。扨もりかふなものゝ。 00075540¥N6¥J 00075550¥X第六△ぬす人のりやうけん 00075560M9/去人(さるひと)の女房、ふかく猫をあいす事、じゆりやうじんが/鹿(しゝ)をな 00075570M10で、/林(りん)/和清(なせい)が鶴をこのむより尚まされり。あるとき、てい 00075580M11しゆ/遠国(をんこく)より九寸あまりの/生鮎(なまあゆ)をもらゐて、/珍物(ちんふつ)とよろこ 00075590M12び、是を/馳走(ちそう)にきやくをよび、人数にあわせてやき物にな 00075600M13したるに、てがいの猫もそばにありけるが、ひとつたちま 00075610M14ちみえず。ていしゆおほきに(八ウ)いかつて、さん※に 00075620M15猫をちやうちやくする。女房はらをたて、ぬす人ハねこに 00075630M16もきわまらず、しやうこもないにむたいなりとて、ふうふ 00075640M17いさかいをし出したり。一/座(ざ)の人、やう+にとりさばき 00075650M18をきけるに、/翌日(よくじつ)女房の云けるハ、さりとてハ/夕部(ゆふべ)ハこな 00075660M19たのがむりじや。ねこもむしつをいひかけられ、くちをし 00075670¥P263 00075680L1がりて、ぬす人せんさくしだしましたといふ。それハどうし 00075690L2てしれたととへば、/夜中(よぢう)ゆめもむすはず、ない+ないか 00075700L3となきあるきてせんさくしましたに、あらふ事の、八つじ 00075710L4ぶん/庭鳥(にハとり)が、とつてかうと/云(いゝ)ましたほどに、ぬす人ハ庭鳥 00075720L5にきハまつたといはれた(九ノ十オ)(九ノ十ウ・十一ノ十二オ挿絵) 00075730¥N7¥J 00075740¥X第七△御/家(いへ)の八蔵 00075750L8/伏見屋(ふしミや)のなにがしどのゝうちに八/蔵(ざう)といふて、としごろ四 00075760L9十四五なるおとこあり。あるときねんごろなる人、伏見屋 00075770L10の所にきたりてあそびける。はなしのつゐでに申されける 00075780L11ハ、是の男ハよほどのとしごろなものを、八/蔵(ざう)とハにあい 00075790L12ませぬ。八兵衛とも八右衛門ともつけさしやらひてといは 00075800L13れけれバ、/亭主(ていしゆ)、御ふしんハ御もつともなれとも、あれに 00075810L14八蔵といふゐんねんがござるといわるゝ。それならバ御こ 00075820L15とハり、/扨(さて)/様子(やうす)をうけ給ハりたいととへば、人にしん、か 00075830L16ん、じん、はい、ひとて、五つのざうハきハまつてあるも 00075840L17のじや。あれハ外にぞうが三つごさると(十一ノ十二ウ)いふ。 00075850L18まづ/立居(たちゐ)よろづにぶしやうさ、ものいゝつけてもいらいな 00075860L19し。さながら/木蔵(もくぞう)なり。何にてもいくらもとりこむ、くら 00075870M1ひこむハ是がどぞう。またつらつきまかりくねりて、あほ 00075880M2うらしきほらぞうにまがいなし。是で八蔵じやといはれた。 00075890¥N8¥J 00075900¥X第八△/角内(かくない)がものをぢ 00075910M5/此角内(このかくない)ハいなかものなれどもたくましき男なれば、江戸な 00075920M6か/間者(まもの)の内にいつてわたり/奉公(ほうこう)をしけるに、このごろらう 00075930M7にんにて、ほうばうほうこうのくち+にかせぐをりふし、 00075940M8/浅草観音(あさくさくわんをん)の/広小路(ひろこうじ)/菓子屋(くわしや)のとなりに、/嵐(あらし)/自俊(じしゆん)といふ/医者(いしや)の 00075950M9内へほうこうにいづる/約束(やくそく)にて、/ミめ((ママ))へほうこうし(十三オ) 00075960M10けるに、ばんかたかへりて/宿(やど)の/亭主(ていしゆ)にかたりけるハ、なか 00075970M11+/奉公(ほうこう)ハなりますまいといふ。なぜにととへハ、人のき 00075980M12ろふものゝあつまりてござる。人ごとに/風(かぜ)、/地震(ししん)、/火事(くわじ)、 00075990M13/雷公(いかづち)、この四いろ、たれもいやがるに、まづいかづちハ/観= 00076000M14音(くわん=をん)のかみなりもんのまへでこざる。それのミならず、/旦那(たんな) 00076010M15とつとはげしきよし、ミやうじをといましたれは、/嵐(あらし)と申 00076020M16ます。あらしがはげしくてどうなりませふ。あまつさへ名 00076030M17ハじしんと申ます。是がわるい/寄合(よりあい)てこざらぬかといふ。 00076040M18ていしゆもおかしくおもひて、ミるときくハちがふものな 00076050M19れバくるしからずといへば、ことにとなりがとつとわるき 00076060¥P264 00076070L1といふ。それハ(十三ウ)いかにととへば、/角内(かくない)こ/声(ごへ)になりて、 00076080L2けさかんばんをよみてミましたが、日本第一/万(よろす)おんくわじ 00076090L3どころとかいてござるといふた。 00076100¥N9¥J 00076110¥X第九△りくつのかね/公事(くじ) 00076120L6爰にはなしの武左衛門といふて、ふるなのべんぜつをもつ 00076130L7てハ、はなしに/目連(もくれん)のしゆずをえたり。一/休(きう)の/軽口(かるくち)をまな 00076140L8び、竹斎がをどけはなし、そろりがとんさくの言葉にまさ 00076150L9りたりとて、世の人もてはやしけるほどに、はなしの名、 00076160L10世上にひろし。さてしも/氷口(ひのくち)のなにがしてとて、でげんなる 00076170L11町人、べつしてめをかけ給ふに、かの武左、とかくして金 00076180L12子五拾三両ときがりにゆひかけ(十四オ)たり。/当座(とうさ)のような 00076190L13らバやすき事なりとてかし給ふに、三ケ月五ケ月をすぎ、 00076200L14其年をこへてもかへさず。たび+こわれて金子三両つか 00076210L15ハし、是にて/相済(あいすミ)申間、手/形(がた)をかへしくだされといふ。/氷= 00076220L16口(ひの=くち)、おほきにおどろき、武左大屋、五人組、なぬしまてと 00076230L17ゞけたり。名ぬし、この事をきゝて、とかく是にハしさい 00076240L18あるべし。/借(か)し/金公事(かねくじ)ハ御法度なれはとて、両方のなぬし 00076250L19たちあいて、やうすをとふ。武左衛門申けるハ、もつとも 00076260M1金子五十三両かり申たるところハ/実正(じつせう)なれども、手/形(がた)にも、 00076270M2はなし武左衛門とかきました。/上(うわ)はをなしますからハしさ 00076280M3いあらじと/存(ぞんじ)(十四ウ)まして、金子三両つかハしました。も 00076290M4とより、ひのくちどの御存のはなしのそれがしなりといふ。 00076300M5武左方の名ぬしきゝて、是も一利/有(あり)といへば、/氷口方(ひのくちかた)のな 00076310M6ぬし、しばらくかんがへて、はなしと手形にかきたるや。 00076320M7なか+と申。手形にあるからハもつともじや。それなら 00076330M8ハ三両のうわはハよしにして、はなしに五拾両をすましや 00076340M9れといふた。 00076350¥N10¥J 00076360¥X第十△ふち人のざとう 00076370M12/去御方(さるおんかた)にめしつかハれる小/座頭(ざとう)、いまだ名もつけたまハで 00076380M13おわしけるに、あるとき、だんな/近所(きんしよ)の衆におほせられけ 00076390M14るハ、是か名を何とそ(十五終オ)/座頭(さとう)によそへてつけたきと 00076400M15仰ければ、口+に申けるハ、かれが名ハ一代/牢人(らうにん)とつけ 00076410M16なされませい。こゝろハとあれば、一生目ミへかないと申。 00076420M17また申けるハ、いや、ごふちくださるゝからハ、牢人とハ 00076430M18いはれまい。ふる/茶(ちや)うすとおつけなされませい。こゝろは、 00076440M19人にハよくまハれども/目(め)かないと申ける。ざとう、とかく 00076450¥P265 00076460L1私が名ハあつもりとおつけなされてくだされませといふ。 00076470L2こゝろハ、いまだむくわんじやと申た。(十五終ウ) 00076480¥Y1/性次記咄(しやうじ△き△はなし△△|むまれつきをしるすはなし)大鑑目録△白 00076490M3一△吉原上郎のミ立△△@つめあいのことばハ|△△どうも先手後手@ 00076500M4二△/田舎者(いなかもの)の/口上(かうぜう)△△△@ぎせちなくつくらふ|△△花のお江戸さあ@ 00076510M5三△/浦川(うらかハ)の/舟賃(せんちん)△△△△@口ろんぎうつも△△△△|△△はやすもしもかゝり@ 00076520M6四△/官女(くわんぢよ)のうハさ△△△@くものうへありし△△|△△むかしの物かたり@ 00076530M7五△/上方(かミがた)の/頓飄者(とひやうもの)△△△@まかり出てそこつ△△△△|△△ながらもやさ男(一オ)@ 00076540M8六△/大職官(たいしよくわんの)/浄瑠璃(ぜうるり)△△@人こゝろさとる△△△△|△△むすめのあなかしこ@ 00076550M9七△/勘判(かんばん)の/読(よミ)そこない△△@かくべつやあきれはて|△△たるものわらひ△@ 00076560M10八△とぶらひの/難儀(なんぎ)△△@をもひよらぬさても△△△|△△もふじやのかわりごと@ 00076570M11九△もつとものあつかい△@なにとなくいろに△△△|△△こゝろをよせいもの@ 00076580M12十△はなしの/仕様(しやう)△△△@かミなりやをちつゐて|△△いへときのきやふ@ 00076590M13十一△/異名(いめう)の/蝿(はい)△△△△△@のぼるべきはらの△△△△△△|△△かわつたうへのさた(一ウ)@ 00076600¥P266 00076610¥T1 00076620¥N1¥J 00076630¥X第一△/吉原(よしハら)/女郎(ちようらう)のミたて 00076640¥X/駿河町(するかてう)の四郎、/材木(ざいもく)町の六、/伊勢(いせ)町の/清(きよ)、この三人ハこれ 00076650L4ならびなきかいて、よしハらにて月日をおくりける。され 00076660L5ども/太夫(たゆふ)/格子(かうし)などにあふ事ハなく、あけくれ/山茶(さんちや)をのミか 00076670L6ぞへける。有時、四つ目屋にて一座したり。なさけらしき 00076680L7手くだ、わけらしきほだし、口+のたハ事いひやミて四 00076690L8郎云出しけるハ、扨われらハ何を/商売(しやうばい)にしそうなものじや。 00076700L9/君達(きミたち)のミたてをきかんといへバ、四郎にあふ上郎、かたさ 00076710L10まハ/碁打(ごうち)でござらふ。こゝろハととへば、/御見(ごげん)にいるとい 00076720L11としらしき仰に、ずんど(二オ)しにまする。/殊(こと)に/初会(しよくわい)のば 00076730L12んから、もはやよい手が見えたハ、碁打じやといふ。六か女 00076740L13郎に、をれハなにとミたてじやときけバ、そさまハ/将碁(しやうぎ)さ 00076750L14しでござらふ。心ハととへバ、まづさしあいハよし。やう 00076760L15の事などいひやれバ、/逢(あふ)て+と/返事(へんじ)して、おいでのとき 00076770L16ハりくつづめにつめさしやる。また/花(はな)などをくださるに、 00076780L17いつとても壱分じや。つゐに弐/歩(ぶ)がござらぬといふ。また 00076790L18/清(きよ)か女郎にミたてをとへバ、/貴様(きさま)ハおふたりとハちがふて、 00076800L19男のしわざてござらぬ。双六打じや。こゝろハととへバ、 00076810¥G 00076820¥P267 00076830L1まづ御出のときハそのまゝだきついて、ずんどどふを(二 00076840L2ウ)はなさしやらぬ。それさへあるに、いつもむしにさつ 00076850L3しやるからハ、/雙(すご)六打にきわまつたといふた。 00076860¥N2¥J 00076870¥X第二△/田舎者(いなかものゝ)の/口上(かうぜう) 00076880L6/去牢人衆(さるらうにんしう)、いなかものをつかハれけるに、/年初(ねんし)のれいにい 00076890L7づるとて/供(とも)につれたり。さてかのものにむかひへゆきて/源= 00076900L8五左(けん=ござ)に、みども、れいにまへつたといへといひ付ける。その 00076910L9まゝむかいゑゆきて、ものもふといふ。どれいとていづれ 00076920L10バ、/源五左(げんござ)にをらがだんな様、おれいと申といふ。さきの 00076930L11もの、あきれて/居(い)る。/旦那(だんな)もきもをつぶして、/田舎(いな)かもの 00076940L12じやさかいでふちやうほう。よきやうにたのむとてたちさ 00076950L13り、/扨&(さて+)をのれハたわけめかな。(三オ)さきさまを成程い 00076960L14んきんにゆふて、をれをげさげにこそいふものなれ。/此江= 00076970L15右方(このごう=へかた)へゆけといわれけれバ、/彼田舎者(かのいなかもの)、かしこそふにかけ 00076980L16ゆきて、たのみませうといふ。どれからといへは、江右衛 00076990L17門様ゑといひながら、だんなのかたへゆびをさして、こい 00077000L18つがおれい申ますといふた。 00077010¥N3¥J 00077020¥X第三△/浦川(うらかわ)の/舟賃(ふなちん) 00077030M3/安房国(あわのくに)の/府中(ふちう)/平郡(へくり)といふところへとをるミちに、うらかわ 00077040M4といふところに/舟渡(ふなわたし)シあり。かのわたしふねに、/近江国(あふミのみに)/甲= 00077050M5賀(かう=か)のものと、/出羽国(でわのくに)/湯殿(ゆどの)のもの、のりあわせたり。/向(むかい)のき 00077060M6しにふねをつけて、せんとう、/舟賃(せんちん)を(三ウ)よこせといへ 00077070M7ば、おれハ/湯殿(ゆどの)のものなれば、せんちんハしらぬ。/甲賀(かうか)の 00077080M8ものからとれと/云(いふ)。/甲賀(かうか)のものに、せんちんといへバ、/平= 00077090M9郡(へ=くり)へとをる/者(もの)が/浦川(うらかわ)のわたしで、/甲賀(かうか)のものゝ/舟賃(せんちん)ハとら 00077100M10れまい。そちもこちも、ミなおなしたぐひじやといわれて、 00077110M11せんどう、/扨&(さて+)これ/程(ほど)の/大川(おほかハ)をわたして、まるにそんハな 00077120M12るまひといふた。 00077130¥N4¥J 00077140¥X第四△/官女(くわんじよ)のうわさ 00077150M15さるうかれもの、/京見物(きやうけんぶつ)にのぼりたるよしにて、/名所(めいしよ)/物語(ものかたり) 00077160M16などしけるほどに、/定(さだめ)て/内裏様(だいりさま)、/公家衆(くけしう)なともミたまふか。 00077170M17さて+けつかうな事しやあろふといへば、なか+(四ノ五 00077180M18オ)(四ノ五ウ・六オ挿絵)たとへていはふやうもなし。一/条(てう)より 00077190M19九/条(てう)まで/南北(なんぼく)三十八町、/西朱雀(にししゆしやく)よりひがし/朱雀(しゆしやか)まで/東西(とうざい)十 00077200¥P268 00077210¥G 00077220M1八町、/公家天(くけてん)上人御やしき、ひゞしくいらかをならへ、/禁= 00077230M2中(きん=ちう)ハ十二の御門、/紫宸殿(ししんてん)、/清涼殿(せいりやうでん)そのほか/禁闕宮中(きんけつきうちう)の間、な 00077240M3か+ことばにおよハれすといふ。さてまたきさきの/上郎(ぢようらう) 00077250M4なともミへさせ給ふかととへば、/大裡(たいり)上郎もはじめて見ま 00077260M5したが、それハ+うつくしさ、思ふたよりハ、がをおり 00077270M6ました。よく+てこざる。しやうへんのなさるにも、/公= 00077280M7家衆(く=げしう)の名をよばしやるといふ。それハいかやうな事じやと 00077290M8(六ウ)とへば、きよらなる御/肌(はたへ)をいたして、たかいゑんか 00077300M9らしやうやうをなさるに、まづ、しやう/少将(せうしやう)となされて、 00077310M10なかごろに/中将(ちうしやう)となさるに、おさめのときハくらゐがあが 00077320M11ります。/侍従(しいしう)ととまりましたといふた。 00077330¥N5¥J 00077340¥X第五△/上方(かミかた)の/頓飄者(とひやうもの) 00077350M14/京(きやう)/三条通(さんてうとを)りにすミけるもの、/俳諧(はいかい)にのミ身をやつし、きも 00077360M15うか+となりて、/身上(しんせう)の取つぶし、おもハずのあづまく 00077370M16だりして、江戸白銀町に宿をたのミ、手代奉公をのそミ居 00077380M17ける。され共むかしハわすられず、からはらにもうたをぎ 00077390M18んし、ねざめにも/発句(ほつく)をいふ。近所の人(七オ)おかしきも 00077400M19のなりとて、ひたものかなたこなたゑよびて、/哥仙(かせん)五十/韻(ゐん) 00077410¥P269 00077420L1なとして遊ひけるほどに、/近付(ちかつき)ひろくなりたり。あるとき 00077430L2近所の人、はかまきていそかハしそふにかへるを、彼者ミ 00077440L3て、いつくへの御出ととふ。/名主殿(なぬしとの)へ一日せんき有て、い 00077450L4ま迄いましたといへは、心に誹諧の事のミ思へハ、一日千 00077460L5句ありときひて、わたくしもまいらふに、そのはかまをか 00077470L6し給へといへば、何心なくぬぎてかしたり。扨名主へゆき 00077480L7てミるに、人二三十人なミゐたり。いつはしゐわんと思ふ 00077490L8きなれば、おほくの中をのりこへ、まちかく/寄(より)てきけば、 00077500L9/名主(なぬし)/御法度(こはつと)の/御(ご)(七ウ)/定目(ちやうもく)をたからかによみたり。一△ば 00077510L10くち諸勝負人宿の事といひもきらぬに、/彼者(かのもの)いでゝ、こふ 00077520L11もござりませうかとて、 00077530L12△△/春風(はるかぜ)は/其浦&(そのうら+)をふれなかし 00077540L13といふ。/名主(なぬし)、こいつハ/気(き)ハちがいハせぬかといへば、/季(き) 00077550L14がちがいましたらバ、/秋(あき)風とおなをしなされてくだされま 00077560L15せいと/云(いふ)た。 00077570¥N6¥J 00077580¥X第六△/大職官(たいしよくわん)の/浄瑠璃(しやうるり) 00077590L18/牛込八幡(うしこミはちまん)の庭にて、つねに/浄瑠璃(しやうるり)をかたりてゐるものあり。 00077600L19おほくの人たちより、なミゐてきくに、/四十(よそし)/余(あま)りの女、十 00077610M1六七なる/娘(むすめ)をつれて、/神前(しんせん)にまいり、かへるさに、これも 00077620M2よりて/聞(きけ)ハ、たいしよくわんの/浄瑠璃(しやうるり)、/海士(あま)/龍宮(りうぐう)にゆきて、 00077630M3(八オ)めんかうふはいの玉をぬすミにぐるに、しゆごのあ 00077640M4くりう、おつかけきたる。ちの下をかききり、たまをおし 00077650M5こみたりといふに、/彼母(かのはゝ)をや、なミたをなかす。むすめ、 00077660M6かゝさまハあまりあわれなところてもないに、なぜなかし 00077670M7やるととへは、/扨&(さて+)/左程(さほど)/名高(なたか)きあまでも、/智恵(ちゑ)がなふてし 00077680M8なしつたかいとしさに、なミたかでるといふ。/娘(むすめ)、それハ 00077690M9なぜにととへは、ちの/下(した)をかききらずとも、そればかりの 00077700M10たまハおしこみどころかあらふにといへば、むすめ、海士 00077710M11もさすがな人じやさかい、それほどな/分(ふん)べつのない事ハご 00077720M12さるまい。されども、それ(八ウ)でハめんやうくさいの玉 00077730M13になりませうといふた。 00077740¥N7¥J 00077750¥X第七△かんばんのよミそこなひ 00077760M16/田舎者(いなかもの)、/横山町(よこやまてう)の新道をとをりけるに、一流/無増(ぶさう)/月水(つきミつ)なが 00077770M17しといふ事を、おほきなるくろぬりのかんはんのうへに、 00077780M18/白(しろ)くかなにてあり+とかきてあり。/彼田舎者(かのいなかもの)これを見つ 00077790M19け、内にいり申けるハ、かんばんにつゐて、すこしたのミ 00077800¥P270 00077810L1ましたい事かごさりますといふ。/医者(いしや)/出(いで)て、いかやうな事 00077820L2そといへは、こなたハつき水をながさしやりますか。なか 00077830L3+とこたへける。/代物(たいもつ)ハいかほとてござりますといふ。 00077840L4金子壱歩/宛(つゝ)でござるが、月ハよほとかさ(九オ)なりました 00077850L5かととへバ、いかにも、よほどに成まする。その人をつれ 00077860L6てこざらふか。またハくすりをしんじやうかときけバ、す 00077870L7ぐに/私(わたくし)で御座ります。/医者(いしや)おかしく思ひて、男がつかも 00077880L8ないといふに、おなごがよくは女房なりともつれて参らふ 00077890L9といへば、いしや、さりとハがてんのいかぬごあいさつし 00077900L10や。どう/+((ママ))したわけしや。様子をかたらしやれといわれ 00077910L11て、/去年(きよねん)八月から/私(わたくし)が/田(た)へ水かつきましたが、壱歩ばか 00077920L12りでならふ事ならは、/西(にし)の/方(かた)の/谷(たに)へなかしましたいといふ 00077930L13た。 00077940¥N8¥J 00077950¥X第八△とふらひの/難義(なんぎ)(九ウ) 00077960L16/木挽町(こびきてう)の/方辺(かたはら)、まどしきものゝところに、でいしゆにてゐ 00077970L17ける/作平(さくへい)といふもの、過し夏、/永&(なが+)のわつらひにて死にけ 00077980L18る。宿の/亭主(ていしゆ)ハいなかへゆきて留主なり。/念仏講(ねんぶつかう)なかまゑ、 00077990L19女房かけまハつてたのミけれバ、こうじう拾七八人/寄合(よりあい)け 00078000M1る。/寺(てら)ハ/深川(ふかかわ)/法善寺(ほうせんじ)の寺中のよしなれハ、/桶(をけ)などとゝのへ 00078010M2てつれゆきける。もとより身にもかゝらぬ事なり。せしゆ 00078020M3ハなし、道すからをとりくどきにていそぎける。れいがん 00078030M4じま/大渡(おほわたし)にてふねにのせ、/舟中(せんちう)にてもさハぎけるほどに、 00078040M5/彼(かの)桶をとりおとしたり。人&おとろきて、やう+にとり 00078050M6あけ(十ノ一オ)たれども、桶のそこぬけて、死人ハなし。 00078060M7ぜひなくむかいへあがり、桶ばかりかつき行に、/玄信寺(けんしんじ)と 00078070M8いふ/法花寺(ほつけてら)のまへに、四十はかりのこつじき、さかやきほ 00078080M9う+としたるがねてゐたり。これこそくつきやうの事と、 00078090M10/彼非人(かのひにん)にいひけるハ、なんじ/死(し)人になりて此をけのうちに 00078100M11いりゆくべし。とぶらひすぎて、やきバへつれゆくとき、 00078110M12道にてもどすべしと、三百文にてやといたり。/乞食(こつしき)思わず 00078120M13のよろこびとて、をけにいりぬ。さて寺になれバ、もくよ 00078130M14くなどさせ、いよ+しにたるふりよと/約束(やくそく)して、お寺の 00078140M15おこそりをあてられけるに、百日(十ノ一ウ)あまりすらぬ 00078150M16さかやきを、なまもみにてするほとに、いたさたまられず、 00078160M17されともしばしこらへけるに、また/同宿(どうしゆく)/立(たち)かわりて、死人 00078170M18のあたまをそるごとくに、ゑしやくもなくかミそりをたて 00078180M19れハ、かのしにんをとりあがつて、三百が五百ても、これ 00078190¥P271 00078200L1ハこらへられぬとてかけいでた。 00078210¥N9¥J 00078220¥X第九△もつとものあつかい 00078230L4/爰(こゝ)に/三嶋屋(ミしまや)の/何某(なにかし)といふ/大尽(たいじん)/有(あり)。/春(はるの)の/初(はしめ)のなぐさみにハ、 00078240L5/栄方(ゑほう)にむかつて/野郎(やらう)を祝、秋の/半(なかハ)の/楽(たのしミ)にハ、あけやにき 00078250L6たつて女郎をあいし、/極遊(ごくゆう)の人なりけれバ、/出(いて)入のう(十二 00078260L7オ)(十二ウ・十三オ挿絵)かれもの/太皷(たいこ)のうちつけより、かしら 00078270L8かゝむしんをいひかけ、/三味線(さミせん)の引手にハ壱弐参/両(りよう)の金を 00078280L9かり、/大政殿(だいせうとの)とうやまいたり。あるひやうきんもの、ときが 00078290L10りにとて金子五両かりて、ほとすぐれとかへさず。大臣腹 00078300L11をたてゝ、ない+の金子、いかにしてよこしたまハぬと 00078310L12いへバ、それハおまへの/暦(こよミ)をミてござるときかりましたに、 00078320L13何返しませふと云。これはだうした事ととへば、そのこよ 00078330L14ミを持てござれとて、こよみを見せて、これごらんなされ 00078340L15いと、/五墓日(こむにち)がかなでかいてあつたれハ、こむにちとかい 00078350L16てござるさかい、五両(十三ウ)こミましたといふ。/大政(たいせう)、そ 00078360L17れならバ、なをよこしやれ。中段にとるとあるほとに、と 00078370L18あらそひけるとき、そば成もの、これハ両方ながらことハ 00078380L19りしや。お/言葉(ことは)の中段なれども、わが/間日(まび)を申さふ。そな 00078390M1たハ口をとづ/((る脱カ))かよい。ひらくとわるい。よこしかねやうと 00078400M2あやぶてハないが、ふくちなればのそく事もなるまい。お 00078410M3れがたいらにおさむそ。たがいにおしやつたハ水になされ 00078420M4て、是でさたむ。/下段(げたん)にさけよしとあるほどに、さけ一/樽(たる) 00078430M5でわひことと、さけになりすまいたれば、あまつさへ、か 00078440M6ん日してくろふひといふた。 00078450¥N10¥J 00078460¥X第十△はなしの/仕様(しやう)(十四オ) 00078470M9それはなしハ、壱かおち、弐か/弁説(べんせつ)、三かしかた。ことに 00078480M10/当世(たうせい)ハ、いにしへのそろりなどの/噺(はなし)の/風俗(ふうそく)とハかわりて、 00078490M11かる口におかしくしとけなく、利をつめ、げびたよふでき 00078500M12やしやなり。まづおちかわるふてハつまらぬ。さりなから、 00078510M13ひとつハあどしだいしやといふに、/去口合(さるくちあい)のよきもの云け 00078520M14るハ、さて+かわつたはなしがあると/云(いふ)。それはいかや 00078530M15うな事じやととへは、/夕部(ゆふへ)/中橋(なかばし)の三/文字屋(もんしや)といふしちやへ、 00078540M16いなびかりおびたゝしくなりて、かみなりどの、太皷をし 00078550M17ちにをきにごさつたといふといへば、うそをいふ人がある 00078560M18ものしや。/稲光(いなひかり)ハ(十四ウ)したが、ならぬものをといへば、 00078570M19ならねばこそ質をおきにござつたといふ。是ハきこへたが、 00078580¥P272 00078590L1/此咄(このはなし)ハかさねてハ御/無用(ふよう)じや。あとかよさに利がきこへた。 00078600L2ならぬかといわずハおちぬといへば、はなしのうちで、か 00078610L3みなり斗ハ、なるほとおちぬがよいといふた。 00078620¥N11¥J 00078630¥X第十一△/異名(いめう)の/蠅(はい) 00078640L6/朋達知(ともとち)五六人あつまり、/四方山(よもやま)のものかたりしける中に、 00078650L7/蠅(はい)の左吉といふものあり。ひとりのいひ出しけるハ、人の 00078660L8異名もおほき中に、はいといふ/異名(いミやう)ほどかわつたハあるま 00078670L9い。また左吉といふも、よほと/耳(ミゝ)にたつ名じや。されども、 00078680L10さけづきなれば/左吉(ひだりよし)といふこゝろでも(十五オ)あらふ。はい 00078690L11ハがてんがいかぬといふ。左吉、御ふしん御もつともじや。 00078700L12心ある異名じやほどに、なぐさミにはんじて見さしやれと 00078710L13いふ。独のいひけるハ、此男どふもならぬ人たらし、いつ 00078720L14ももみ手して空おがミなれば、手をするといふ心で蠅であ 00078730L15らふといふ。ひとりハ、左吉じたいすりきりなれば、ふけ 00078740L16ばとぶといふ/心(こゝろ)で、はいであらふといふ。またひとりハ、此 00078750L17男、あなたのおつしやるとをり、くちあいがよさに、いかな 00078760L18るものにも、やきてをくわせる。さればうづめばつち、/焼(やけ)ば 00078770L19/灰(はい)といふこゝろであらふといふ。左吉、とれ+もちがい 00078780M1ました。まづ/蠅(はい)と(十五ウ)いふ虫、もとよりこゝろなきもの 00078790M2なれば、むさく、けか/わら((ママ))しき身いて、いかなる/天子(てんし)/高位(かうい) 00078800M3もわきまへず、うへにのぼる。われまた、いやしき身とし 00078810M4てよき女さへミると、いかなる女郎お姫様もミわけず、/腹(はら) 00078820M5の上へのぼりたがるとて/蠅(はい)じやといふた。(十六オ) 00078830¥P273 00078840¥Y1/盛紫記咄(しやうじ△き△はなし|さかりのいろをしるす)大鑑目録△黒 00078850L3一△後家の事ハり△△@おもしろくこゝろを|△△つけしるのわん@ 00078860L4二△/番太郎(はんたらう)が/出来口(できくち)△@いやしくもなさけ△△|△△こゝろやおなし道@ 00078870L5三△/和気(わけ)のたゞ/中(なか)△△@石よりもかたき△△△△|△△しなしもなさけなり@ 00078880L6四△同二番目/猫(ねこ)の/中媒(なかうど)△@あいミての△△△△△△|△△後のこゝろや/恋(こい)の/種(たね)@ 00078890L7五△やぼの小/僧(ぞう)△△△@是ハさてのふおそろしき|△△はつしぐれ(一オ)@ 00078900L8六△/大津(おふつ)の/高札(たかふだ)△△△@つけすぎしくきりの|△△程のこれハさて@ 00078910L9七△/夢想(むさう)の/馬薬(めうやく)△△△@もつともやおかたの△|△△わけハそれほどに@ 00078920L10八△いらぬいひわけ△@らちもないふすまの△△|△△かげにむく++@ 00078930L11九△/庭前(ていぜん)の/桃(もゝ)△△△△@/春雨(はるさめ)のぬれにいろづく|△△花のゑだ△△△△@ 00078940L12十△/恋(こい)の/空事(そらごと)△△△△@天も地も一心にある|△△はなし口(一ウ)@ 00078950¥T1 00078960¥N1¥J 00078970¥X第一△後家のことハり 00078980M3/津(つ)の/国(くに)中川と云所に、/長(なが)十五丁が間、/堤(つゝミ)のふしん有けるに、 00078990M4そのつゝみをつく所+の村やくにあてゝ、あるひハ/食(めし)や 00079000M5さいを出しけるに、下村の名主はごけにて、三才ニなる子 00079010M6をやういくしたり。されば諸事を後家とりをこなひけるに、 00079020M7/今日(けふ)のひるめし、此ごけのやくにあたりたれバ、にしめな 00079030M8どとゝのへて、ひるめし出しければ、奉行、ごけにむかへ 00079040M9て申けるは、是ほどのひるめしに、そなたはなぜに汁ハい 00079050M10だしたまハぬといへば、/後家(こけ)、わたくしがまへをつひてく 00079060M11だされたらば、なるほど汁をだしませふが、いまだ上の村 00079070M12に御座るさかひ、しるハだしませぬといふ。奉行、それハ 00079080M13もつともなれども、此方のおゑ(二オ)しだひにかゝろふハ 00079090M14といわれた。 00079100¥N2¥J 00079110¥X第二△/番太郎(ばんたろう)が/出来口(できくち) 00079120M17/番(ばん)町に、助兵衛といふばん太郎すみけるが、殊外なるすき 00079130M18にて、夜ごとに女房を三つつゝはかゝさず。かゝもあまり 00079140M19にくたびれて、さりとてハこなたのやうなすきハあるまひ。 00079150¥P274 00079160L1とき+ハまびかしやれ。命がつゞきませぬといふ。助兵 00079170L2衛、されどもかんにんなりがたしといふて、ひたものにか 00079180L3ゝりければ、さてハぜひなし。びくになりともかわしやれ 00079190L4といわれて、むかしよりいひつたへたる/辻君(つじぎミ)と云者、番町 00079200L5/筋(すし)ハおほくありくに、よる斗とるゆへに、是をなづけて江 00079210L6戸言葉に夜たかと云。/彼夜鷹(かのよたか)をよびて、ひたもの物しける 00079220L7まゝ、なじミふかく成て、/夜喰(やしよく)(二ウ)などこしらへてくわ 00079230L8せけるほどに、女房あまりにみかね、助兵衛をしかりける 00079240L9やうハ、さりとてハ人めもいかゞじや。/鷹(たか)をのミかわゆき 00079250L10ものにして、食迄くわせる事やある。のちハどのやうな事 00079260L11であろふといわれ、扨&われのけて、何しにかわゆかろふ。 00079270L12にくいによつて、食をくわせるといふ。それハだうした事 00079280L13じやととへば、古しへよりのたとへにも、にくい/鷹(たか)にハゑ 00079290L14をかへといふ事ハしらぬかといふた。 00079300¥N3¥J 00079310¥X第三△/和気(わけ)のたゞなか 00079320L17爰に/武篭(たけこ)長兵衛といふ人あり。/商人(ばいにん)なれども、その身うと 00079330L18くに/富(とミ)/栄(さか)へ、よろづの/世話(せわ)をしもふたやにて、只一心に/名号(めうがう) 00079340L19をねんじ、/末法(まつほう)万年/余経(よけう)ひつ(三オ)めつ弥陀一きやうりも 00079350M1つへんぞうの/道理(たうり)にかなへ、つみもむくひも浅草のかたほ 00079360M2とりにすまれけるに、十八才になり給ふむすめ、ひとりお 00079370M3わしける。心ざまよにこへて、万の事にさかしく、御きり 00079380M4やうハ申もくだ糸しどけなき御よそほひ、ミる人こゝろを 00079390M5うつしゑの、まなバぬ/女子(によし)ハなかりけり。されどもいまだ 00079400M6/妻(つま)/定(さだめ)もおわしまさず、花のさかりをはる※と、父もろと 00079410M7もに淨土文にいりて、/後生(こせう)の一大事をのミねがい、/則念(そくねん)仏 00079420M8者/芬陀莉花(ふんたりけ)、あるひハ/弥陀(ミた)三十五のぐわんに、/転女成男(てんによせうなん)と 00079430M9たて給ふを、ありがたき事にいのられける。しさいをくわ 00079440M10しくたづぬるに、此君いまだ三五のころ、ゑんへんのむす 00079450M11バれしに、いかなる/無縁(むゑん)のしゆくがふ(三ウ)にや、それとば 00079460M12かりの便して、/今朝(けさ)吹風ともろ共に、/夕部(ゆふへ)のつゆときへら 00079470M13れぬ。されば世ハあぢきなきものにおもひ、かミをもきり、 00079480M14とんせいびくともならんとおもわれしを、/只(たゞ)/独子(ひとりこ)なればや 00079490M15う+になぐさめおきぬ。しかれども世の人/彼(かの)君を/恋忍(こいしの)ひ、 00079500M16ふミ玉づさのかよふ事、二六時中にはかりなし。ふたりの 00079510M17おやハ、/哀(あわれ)此子がきもをれて、いかなる人にも思ひつけか 00079520M18しと、神仏をもいのる心なれば、めしつかひの下女にも、 00079530M19あへて此事ハしめさず、たゝれんほあいじやくの物語のミ 00079540¥P275 00079550L1をはなせと、いひをしへられけれども、むすめハきゝもい 00079560L2れず、つゐに文をさへとりあげたる事もなし。いよ+/往= 00079570L3生(わう=せう)/極楽(こくらく)をのミ(四オ)(四ウ・五オ挿絵)ねがハれける。むすめの 00079580L4名はおいわといへり。いかなるものかしたりけん、/武篭(たけこ)長 00079590L5兵衛のかとにらくがきをしたり。/父(ちゝ)のミやうじ娘の名をか 00079600L6き付たり。 00079610L7△長兵殿裏春秋留△武篭門前日月遅 00079620L8△△きみが名はちよに八千代にさゞれいしの 00079630L9△△△いわほをとふせこれのむすめ子 00079640¥N4¥J 00079650¥X第四△/猫(ねこ)の/中媒(なかふど) 00079660L12/武篭氏(たけこうぢ)のむすめお岩のきみ、いかなる事にか、ねこをふか 00079670L13くあいし、へんしもはなし給わす。されハ世の人、女三の 00079680L14君とそ申ける。さてしも/隣家(りんか)に/牢人衆(らうにんしう)のこにて、/幸(かう)之助と 00079690L15いふ/今年(こんねん)十七才になれる/若(わか)しうあり。しなかたちいとやさ 00079700L16しく、いにしへの(五ウ)/源氏業平(けんしなりひら)などハ、名のミきゝしば 00079710L17かり、いまこのせうじんにくらへんに、まばゆきほとにこ 00079720L18そとおもわるれ、たがゐにしたしくて、つねに来りあそび 00079730L19ける。石よりかたきお/岩(いわ)のきみも、この人にハこゝろをよ 00079740M1せて、むかしもかゝる人ありて恋といふ事もこそと、いど 00079750M2ゞいとしさます鏡、くもらでいつもあれかしと、ふかきお 00079760M3もひのいろ出て、なさけまじりのさゝめ事、さすか心も/幸= 00079770M4之助(かう=のすけ)、いかて/恋路(こひぢ)ハしらまゆミ、/引手(ひくて)/な((ママ))なびくあをやぎの、 00079780M5いとたよ+としたふにぞ、たかひに花のかほばせの、身 00079790M6になりてこそしられそめ、人にハいわて岩つゝじ、したに 00079800M7こがるゝこひ(又ノ五オ)ごろも、またきて見ればいやまさ 00079810M8り、あわれ人めのせきもなく、こゝろのそこのうちとけ 00079820M9て、むすぶゑにしを/待侘(まちわひ)しに、/仏(ほとけ)をいのるしるしにや、/菩= 00079830M10提(ほ=たい)もいまはぼんのふの、たすけの道のあらわれて、たのミ 00079840M11たる/旦那寺(だんなてら)に、ぶつしとてふたおやながら、よふくるまで 00079850M12帰らず。いつものごとく/幸之助(かうのすけ)/来(きた)りけるに、よき/留主(るす)とお 00079860M13もひ、さま+とくどきよる。もとより思ひはふかけれと 00079870M14も、さすかこゝろのはづかしく、/色&(いろ+)といひのべぬ。幸 00079880M15之助いろをかへ、なさけまじりのいつわりを、/誠(まこと)と思ふく 00079890M16やしさよと、かへらんとしたるとき、おいわ、たもとを 00079900M17ひかへ、(又ノ五ウ)いやとよ是もきみがため、すゑもとをら 00079910M18ぬものゆへに、そめてくやしきむらさきの、/後(のち)のこゝろを 00079920M19おもふなりといわれければ、幸之助、すへとをらじとハ何 00079930¥P276 00079940¥G 00079950M1事ぞ。お岩かたさまハ、おんとしわれにひとへおとらせ給 00079960M2ふゆへに、たとひつれそい申ても、にあわじとのこゝろな 00079970M3り。さてにやわじとの御心は、はじめよりしれすして、い 00079980M4まおもひつけ給ふや。とかくかなわぬうき世/成(なり)と、なミ 00079990M5だぐミて居けるとき、お岩こゝろもくるしくて、手がひの 00080000M6/猫(ねこ)をひさにあげて、我ハいかゞおもふといふ。ねこ、にや 00080010M7わふとなくとき、もし、ねこが/似合(にやわふ)といゝますほどに、そ 00080020M8さま(六オ)しだいといだきつけば、幸之助いろを/直(なを)し、ま 00080030M9たもやぎよいのかわらんと、たゞそのまゝにかたかけにひ 00080040M10きいれて、おもふさまにものしたり。こぐらきところに、 00080050M11ものかけのけわしくうごくを、ねこみつけて、すこしあと 00080060M12へしさりながら、ふうふつとおどしたり。おいわ是をミて、 00080070M13もはやをれを女房にさしやらずハなるまい。猫かみつけて、 00080080M14ふうふ+といひますといわれた。 00080090¥N5¥J 00080100¥X第五△やぼの小/僧(ぞう) 00080110M17/芝(しバ)/土器町(かわらけまち)/常笑寺(じやうせうし)に、/寒龍(かんりう)といふて十四五になる小僧あり。 00080120M18心ざましどけなく、とりなりたよ+と、ものうちいひた 00080130M19る/言葉(ことば)つよからぬ(六ウ)ありさま、/陽柳(やうりう)のくわんをんとも 00080140¥P277 00080150L1いひつへし。ある時ねんごろなるたんな、/夜(よ)ふくるまであ 00080160L2そび留りたれば、とぎにとて、かの小僧をそばにねせたり。 00080170L3だんな思ひけるハ、まことや、こぞうハかつけのくすりと 00080180L4きく。ひとつハくすりぐいのためなり。又お寺にすむから 00080190L5ハきりやうハよし。きハとをりて社あらめとおもひ、ふと 00080200L6ころの内にいりても、なるほどしづかなり。まことに、/不= 00080210L7思義(ふ=しき)の御ゑんにてなどいひながら、そろ+ものしける。 00080220L8しづか成こそことわりかな、なるほとよくねいりたるが、 00080230L9いまわのとき、めをさまし、そのまゝはねをきて、ことの 00080240L10外はらをたち、そこなきやく(七オ)じんづらめ。おらがお 00080250L11てらのをれをあなゝしじやとおしやつたに、よくあけをつ 00080260L12たと、とつ+ゑんがわにかけいで、ちやうずばちの水を、 00080270L13ひさくに一はいもちきて、どく+とのミ、是がもつたら 00080280L14きかぬほどにといふた。 00080290¥N6¥J 00080300¥X第六△大津の/高札(かうさつ) 00080310L17ひたちのくにみとのもの、かみがた/見物(けんぶつ)に同行五人にての 00080320L18ぼりける。道すがら、/名所(めいしよ)/旧跡(きうせき)うちながめ、/大津(おほつ)の/宿(しゆく)をこ 00080330L19へて、ひのくちといふざいしよをとをりけるに、むぎはた 00080340M1けに/高札(たかふだ)あり。大つ△ひのくち△むぎばたけ△むさと人に 00080350M2/草(くさ)からせ申/間敷(ましく)候とあり。かのものども、/此辺(このへん)にすこし 00080360M3(七ウ)やすミ、ふだをミつけ、是はいかさま、しさいあり 00080370M4げなり。たれよめかれといへども、ミなむひつなり。され 00080380M5ども/同行(だうげう)のうちに/坊主(ぼうず)のありしが、あとにさがりたるをま 00080390M6ねきて、これハいかなるふだぞといへば、ものしりがほに 00080400M7/立寄(たちより)て、たからかによむ。大つびの△くち△むきはだけ 00080410M8むさと人にくさがらせ申/間敷(まじく)候とよめば、/同行(だうぎやう)のもの共、 00080420M9これはもつともなおきてじやといふた。 00080430¥N7¥J 00080440¥X第七△/夢想(むさう)の馬ぐすり 00080450M12/岩井(いわゐ)町といふ所にすミけるもの、/浅草(あさくさ)の/観音(くわんをん)のふかくしん 00080460M13※せしに、あるときふしぎのれいむをかふむりたり。馬に 00080470M14なりたり、人になる(八オ)じゆふのくすりのほうをゑたり。 00080480M15まことにきたいのミやうやく、さかい町へいでゝかねまふ 00080490M16けせんとよろこび、さてかのやくミ/調合(ちやうがう)して、にかいにあ 00080500M17がり、はたかになりてそろ+ぬりて見れバ、かほむまに 00080510M18なり、また/手足(てあし)むまになりたり。/女房(にようぼう)/来(きた)りて是をミつけ、 00080520M19さて+いかなる御事に、いきながらちくしやうにハなり 00080530¥P278 00080540L1給ふとて、とりつきてなげく。/彼馬(かのむま)/云(いひ)けるは、すこしもく 00080550L2るしからず。人になる事またじゆふなりとて、わが/で((ママ))にく 00080560L3すりをぬりて、くびも手ももとのごとく人になりたり。/女= 00080570L4房(によう=ぼう)、/扨(さて)もきたいなる事かな。/最早(もハや)くすりをぬらずとおかし 00080580L5やれ。こし(八ウ)よりしたは、むまがよいぞといふた。 00080590¥N8¥J 00080600¥X第八△いらぬいひわけ 00080610L8/去人(さるひと)、/近(ちか)きころ/女房(にようぼう)をもちければ、なかも/吉野(よしの)の花めづら 00080620L9しく、たゞこれとのミ心をうつし、ひるハひめもす、ちわ 00080630L10事をいひ、よるハおなじよぎのうちに、ひとつこゝろハふ 00080640L11たりねの、枕ならべていだきあい、しめつゆるめつ、よね 00080650L12んなきありさま。なつといひし/下女(げぢよ)も、こゝろのミだれが 00080660L13み、いゝよる人もがなと、うら山しく思ふおりふし、女房 00080670L14/里(さと)へとまりがけに行たり。/留主(るす)/物(もの)さびしとて、/友達(ともたち)二三人 00080680L15よびてはなしけるが、夜にいりて皆かへるに、/御内室(ごないしつ)の御 00080690L16るす、/今宵(こよひ)ハひとりねの(九オ)(九ウ・十オ挿絵)さびしさ、 00080700L17おしはかるなどいひける。ていしゆ、さればされば/是非(ぜひ)に 00080710L18かなわぬ。こんやハなつがふところへでもはいりてねませ 00080720L19うと云て、/打笑(うちわら)ふてかへり、さてしも/座敷(ざしき)にいりて、てい 00080730M1しゆハねたり。/下女(げぢよ)のなつ、心におもひけるは、かみさま 00080740M2のおるすもしあわせじや。/旦那(だんな)のおれがふところへきてね 00080750M3よふとおしやつたほどにと、ひとりつぶやき、おさなきと 00080760M4き正月のきたるこゝちして、ねいりもせず、いまか+と 00080770M5まてどもこず。扨ハ/旦那(だんな)ねいりてわすれ給ふやら、こなた 00080780M6よりゆきておこそふとおもひ、/座敷(ざしき)のふすましやうじをそ 00080790M7ろりとあける。だんな、たれじやといふ。下女、いやなつ 00080800M8でこざりますと(十ウ)いへば、おのれはなにしにうせたと 00080810M9いわれて、あんにそふいしたりとおもひ、さきほどわたく 00080820M10しがところへきて、ねやうとおしやりましたさかい、いや 00080830M11とゆひに/参(まい)りましたといふた。 00080840¥N9¥J 00080850¥X第九△/庭前(ていぜん)の/桃(もゝ) 00080860M14/比(ころ)しも/文月(ふミづき)すゑつかた、おひめさま/庭前(ていぜん)におんいでありて、 00080870M15/四方(よも)をながめさせ給ふに、おほきなる/桃(もゝ)のいとうつくしう 00080880M16あかるミて、ゑだもたゆむ斗になりさがりたるを/御覧有(ごらんあり)て、 00080890M17このもゝの名をよろいどおしとは、いかにしていふぞとた 00080900M18づねさせ給ふに、/姥(うば)、/大(おほ)きさ九寸五/分(ふ)まハりござりますさ 00080910M19かい、よろいどうしと申ますと云。こゝちよき(十一ノ五オ) 00080920¥P279 00080930¥G 00080940M1/桃(もゝ)なれば、とりてまいれと仰けれど、/木末(こずへ)たかければ、お 00080950M2ふなのわざにハかなハず。おだいどころの/作蔵(さくぞう)をよびて、 00080960M3桃の木にのぼせけるに、/作蔵(さくぞう)、かたびらを七チのづまでは 00080970M4さみあげて、/上(うへ)よりとつておとすとき、お/姫様(ひめさま)も/木(き)のもと 00080980M5に御出あり、あれ是とおほせけるが、作蔵がしりにぶら 00080990M6+とするものを見つけさせ給ひて、うば、あれはなんじ 00081000M7やととわせられければ、/姥(うば)のぞきミれバ、しわのよりたる 00081010M8/丸(まる)き/物(もの)二つさがりたるをミて、/生梅干(いきむめほうし)と申ますもので御座 00081020M9ると云。お/姫様(ひめさま)、どうりでおれがまゑが、つをひくといわ 00081030M10しつた。 00081040¥N10¥J 00081050¥X第十△/恋(こい)のそらごと(十一ノ五ウ) 00081060M13/去人(さるひと)、/恋(こい)といふ事ハどつからはじまりたととひければ、恋 00081070M14は天よりはじまりたり。されば、いざなぎいさなミも、天 00081080M15のかミにておハします。これ/恋(こい)の/根元(こんげん)なりとかたりけるに、 00081090M16いまも天にこひといふ事あるやととへは、なか+の事、 00081100M17/先(まづ)/げ((ママ))んきうしよくじよの/星(ほし)、これもめをのふたほしにて、 00081110M18年に一/夜(よ)のちぎりあり。ミやうしやうほしも、よいあかつ 00081120M19きとて/夫婦(ふうふ)おわします。ミなそれ+にむすび給ふ中にも、 00081130¥P280 00081140L1やもめの/星(ほし)もあるやらして、よばひするといふもあり。ま 00081150L2たしゆだうとゆふ事も有。すバりほしといふもありとかた 00081160L3る。さてまた(十六オ)あのかみなりといふは、天にこさり 00081170L4てもすさましいお人じやといへば、いや+ずんとそふで 00081180L5ない。つきそうてミて、なるほとよいお人じや。ことにあ 00081190L6たりもかゝやくような/御内儀(おないぎ)を/持(もつ)ていらるゝ。それはだう 00081200L7してしらしつたととへば、さて、しらしやらぬか。/稲妻(いなつま)と 00081210L8ゆふて御座る。それハ+きのかるい、すんと/座持(さもち)じや。 00081220L9それでなつむきなどハ、/羽衣(はころも)壱つで、たいこもつてかけま 00081230L10ハらしやるといふた。(十六ウ) 00081240¥Y秡 00081250M3/勝詞記(しやうじき)/咄(はなし)ハ、一たんゑこ+と笑らふにハあらねども、つ 00081260M4ゐにしつきのあわれ、/面白(をもしろい)おかしい、かうした/和気(わけ)ある物 00081270M5かたりのいろ+を、取あつめ/書集(かきあつめ)て、/三嶋暦(ミしまこよミ)のふるめか 00081280M6しき去年のうわさも、今度御あらための/新暦(しんれき)+衆のとり 00081290M7さたよりして、/下(しも)ハミんかん/賎(しづ)のしわざ、/田打男(たうちをとこ)のとりな 00081300M8りハ/勿論(もちろん)、品あるはなしとなる/雷公(いかづち)のひつかり(十七オ)ころ 00081310M9+と/夕立(ゆふたち)に、竹の子のそだてられて、色をふくめる/女郎= 00081320M10花(じよらう=くわ)、くねるとかきし水ぐきハ、男山のむかし語となり、ひ 00081330M11さごをかしかましとてすてしといふとり/沙汰(さた)も、あつた事 00081340M12なればこそ、あづさにもちりばめたれ。/言葉(ことば)の花/盛(ざかり)、/筆(ふて)の 00081350M13/林(はやし)に/音(をと)/凄(すさまじ)く、口もさがなき/世風俗(よのならわし)、ミるにつけきくによそ 00081360M14へて、なミだ川/恋(こい)の/淵瀬(ふちせ)にしつむも/有(あり)、(十七ウ)ふかきな 00081370M15さけも有明の月すミわたる、/聖賢(せいけん)の/教(をしへ)に/事(わざ)をいひなせば、 00081380M16一座二座三座のたくせんかけて、/日待(ひまち)の/御伽(をとぎ)ぼうこうにこ 00081390M17とふり/似(に)たれども、ふるきをたつねて/新敷(あたらしき)をしる、また/是(これ) 00081400M18一/座(さ)のきやうげんきぎよの三仏しやうのゑんをもとめて、 00081410M19つゝりあつめしうそのかわつた/本(ほん)の/寔(まこと)の/盛紫記(しやうじき)はなしと、 00081420¥P281 00081430L1紙ハそのまゝあきまなくなりました。(十八オ) 00081440¥Q 00081450L4△△△△△△△△△△△△作△者 00081460L5△△△△△△△△△△△△△△石△川△流△舟 00081470L6△△△△△△△△△△△△日本絵師 00081480L7△△△△△△△△△△△△△△菱△川△師△宣 00081490L8維時貞享四歳次丁卯皐月吉辰 00081500L10△△△△△△△△△江戸日本橋青物町 00081510L11△△△△△△△△△△△△△藤本兵左衛門@板|行@(十八ウ) 00081520¥P282 00081530¥U噺本大系△第五巻 00081540¥T当世はなしの本 00081550¥G 00081560¥Y 00081570L16貞享頃刊 00081580L17作者不詳 00081590L18中本一冊 00081600L19天理図書館蔵 00081610¥T1/当世(とうせい)はなしの/本(ほん) 00081620¥N1¥J 00081630¥X一△中間(ちうけん)人に/打(ちやう)ちやくせらるゝ事 00081640M5/石塚(いしつか)/備中(びつちう)といふ人の/中間(ちうげん)、あるやしきへ/日(ひ)くれがたにつか 00081650M6ひにゆきけるに、もんのうちより、なにものなれば、/日暮(ひくれ) 00081660M7てかどにたゝずむハ、ぬす人にてあるらんと、さん+に 00081670M8うちけれバ、物をゑいはずにげかへり、/右(ミぎ)のだん+いひ 00081680M9ければ、なにとてをのれハ、/備中(ひつちう)の/守(かミ)ものじやといはなん 00081690M10だと、しかられけれバ、されバ、びといへばたゝき、/備(びつ)と 00081700M11いへバたゝきて、つゐに/中(ちう)のねをあげさせなんだといふた。 00081710¥N2¥J 00081720¥X二△ねり物や/親子(おやこ)そさうの事 00081730M14むかしねり物やに、しやうとく、おやこ共にそさうなるも 00081740M15の(二オ)あり。きんじよに/手(て)あやまちのありければ、まづ 00081750M16をやぢがおきてあはてふためき、したおびをとりちがへ、 00081760M17一/疋(ひき)あるねりぎぬのはしをとり、/下(した)おびかと/思(おも)ひ、やがて 00081770M18しられつゝ、子ども、うちのものをおこしけり。むすこも 00081780M19おやぢのこゑにおどろき、やがてをきあがり、是も/下(した)をび 00081790¥P28 00081800¥G 00081810L12を取ちがへ、おやぢのしられたるきぬのはしを、またかき 00081820L13にけり。/何(なに)が壱/疋(ひき)のきぬを、おやこして/庭(にハ)をひきずりける 00081830L14/程(ほと)に、/絹(きぬ)の/中(なか)にひばしのかゝり、ちん+となりけれは、 00081840L15むす/□□□((子がいカ))ふやうハ、おやぢ、しづかにあゆましやれ。あ 00081850L16とからざうしきしゆがござるやら、かなぼうがなるといふ 00081860L17たもおかし。 00081870¥N3¥J 00081880¥X三△/長珠数(ながじゆず)といふ/異名(いめう)の事 00081890M1ある人、よそへゆきてハ、むさと/長居(ながゐ)をしけれバ、みなあ 00081900M2き(二ウ)(三オ挿絵)はてけり。ある人いけんしけるハ、そ 00081910M3なたハよそへゆきてハながゐをめさるゝゆへ、せけんで長 00081920M4じゆすと、いめうをつけたほどに、どこへはなしにいきや 00081930M5ろとまゝよ、心えてはやくかへられよといひければ、かの 00081940M6ものいふやう、をれに/長珠数(ながじゆず)とつけたに、いはれがあらう 00081950M7といへば、されば、くるにあひたといふ事じやとてわらひ 00081960M8ければ、いや+其心でハなし。此/名(な)ハおれがためにハよ 00081970M9き事じや。長じゆずじやによつて、くるまをまちかねると 00081980M10いふ事じやとて、猶さい+わせた。 00081990¥N4¥J 00082000¥X四△/片言(かたこと)いひの事 00082010M13ある人、ほつたいせられけれバ、かた事いひまかり/出(いで)、御 00082020M14ほうたい、めでたき事でござる。わたしらもいつかさて、 00082030M15せがれに/世(よ)をわたして、せどの小やへ、らく+とじんき 00082040M16よがい(三ウ)たしたうござるといはれたもおかし。 00082050¥N5¥J 00082060¥X五△ある/女(をんな)/談義(だんぎ)の/座(ざ)にて/取(とり)はづしをしたる事 00082070M19/浄土寺(じやうどでら)にだんぎ/有(あり)けるとき、かたすミに、とし四十ばかり 00082080¥P284 00082090¥G 00082100L12の女ありたるが、とりはづしをこきて、そばに有ける/若男(わかをとこ) 00082110L13にむかい、さて+こなたハわかきなりして、/今(いま)のやうな 00082120L14る事がある物かといへば、おとこきゝて、こなたハとしと 00082130L15いひ女の/身(ミ)として、さやうの事をしながら、人におほせて、 00082140L16むしつをいはるゝといかりけれバ、/座中(ざちう)けうさめてさわぎ 00082150L17けり。長らう/高座(かうざ)より、そこもと、さき/程(ほど)からよからぬせ 00082160L18んさく也。さりながら、こゝにはなしがござる。/仏在世(ぶつざいせ)に 00082170L19も、/仏(ほとけ)のせつほうのとき、ときいたらぬ/御経(おきやう)にて、ちやう 00082180M1じゆねふりける。/其(その)うちのらかん、ただ今のごとくとりは 00082190M2づし給へバ、ちやうじゆどつとわらひ、め(四オ)をさまし、 00082200M3かの/経(きやう)をきゝいれ、さとりをえ給ふ。たゞ今の/□((もカ))/其通(そのとをり)なれ 00082210M4ば、/是(これ)こそ/善(せん)ちしきなれ。/御名(おな)をの給へ。くわこ帳につけ、 00082220M5ゑかうせんと申されけれバ、かの女、さてハうれしき事か 00082230M6なと思ひ、人の/中(なか)をわけて/高座(かうさ)ちかくより、たゞ/今(いま)のハわ 00082240M7れらにて候。くわこ帳につけ給ハれといふ。長らうおかし 00082250M8くて、たゞ今ハだんぎば也。まづうちへゆき、はこ帳につ 00082260M9き給へとおほせられた。 00082270¥N6¥J 00082280¥X六△/坊主(ぼうず)の/遊女狂(ゆうぢよぐる)ひ/当話(とうわ)の事 00082290M12さる/謡(うたい)うたひと、ぬめりぼうずとつれ/立(たち)、しまばらへかよひ 00082300M13ける。/思(おも)ひ+のいでたちにて、とうせいやうのかますそ 00082310M14で、きやらしめやかににほはせ、人めしのぶのあミがさに、 00082320M15あげやをさしゐて行けり。やど屋になれバ、人をはゝか 00082330M16る(四ウ)(五オ挿絵)けしきもなく、ぢうばこさかなひきち 00082340M17らし、たそあるかいやい、それ+と、ちゐんのおてきと 00082350M18りよせけり。もとよりほたるあつむるいろこのミにて、あ 00082360M19てなるじよらうきたりけり。心+のたはふれに、さいつ 00082370¥P285 00082380L1さゝれつ、のふずうとふつ、らくあそび。やう+/夜半(よは)にな 00082390L2りぬれば、かぶろハこゝろへ、とこをとり、御しづまりと申 00082400L3ける。もはやうきたつておもひ+にとこに入、さよのま 00082410L4くらをかはしまの、ちよを一やとあかしける。しかる所に 00082420L5/謡(うたい)うたひになれたるゆう/女(じよ)、/何(なに)としてかはとりはづし、す 00082430L6いとはづしてせきめんする。かの人こゝろへしやうしがり、 00082440L7すいちやうこうけいにと、うたひにてまぎらしける。かた 00082450L8ゑのゆふじよ/是(これ)をきゝ、いかに御ぼう様。となりのとのご 00082460L9をごらんあれ。たゞ/今(いま)/女郎(じよらう)の(五ウ)とりはづして、すいと 00082470L10やられたを、其まゝうたひにて、すいちやうこうけいとま 00082480L11ぎらせ給ふ。かやうのとんさくハ/御坊様(こほうさま)ハなるまひ。さて 00082490L12も+たのもしき御かたと、ひたすらにほめにけり。ぼう 00082500L13ずきいて、あれほとの事、たがいはぬものあらじ。もしも 00082510L14御/身(ミ)のうへにそこつの事あらハ、われにまかせ給へ。すこ 00082520L15しもちじよくハ有まいなど申ける。ゆうじよきいて、なか 00082530L16+あのやうなる事ハなるまいとせんぎするうちに、かの 00082540L17ゆうじよもとりはづし、ぶんとやりにけり。/其時(そのとき)/坊主(ほうず)、/心(こゝろ) 00082550L18へたりと/云(いふ)よりはやく、なまいだんぶといふた。 00082560¥N7¥J 00082570¥X七△/後生(こしやう)ねがひと/巾着切(きんちやくきり)とけんくわの事 00082580M3さるごしやうねがひのおやぢ、四/条川原(でうかハら)へあやつりをけん 00082590M4ぶつに/出(いで)られけり。/何(なに)とかしたりけん、人ごミの/中(なか)にて、 00082600M5/□((きカ))(六オ)んちやくをきられけり。されどもかのものを見つ 00082610M6け、のがさじと申ける。きんちやくきり、せんかたなさに、 00082620M7わきざしをぬき、きつてかゝる。かのをやぢも、きんちや 00082630M8くきられながら、にくいをとこといふよりはやく、わきざ 00082640M9しをぬき、たがひにきりむすびける。/何(なに)とかしたりけん、 00082650M10さうはう共に、かたうでつゝをとされけり。きんちやくき 00082660M11り、もはやかなわじと思ひ、ゆきがたしらずににげゆきけ 00082670M12り。其のちかの人、すべきやうもなく、かたうでハをとさ 00082680M13れ、なミだぐミていられける。あたりより人&たちより、 00082690M14さてもしやうしや。ぬす人においとやらんにて、かやうに 00082700M15てまでおわせ給ふ。いたわしなと申ける。/其中(そのなか)に、げくわ 00082710M16壱人ゐられけるか、かやうの事ハくるしからず。まづ/血(ち)の 00082720M17おちぬさきに、うでをつ(六ウ)(七オ挿絵)がんとて、そこ 00082730M18らをたづねまはり、/手(て)をつぎ、やう+/宿(やど)にかへり、/名医(めいい) 00082740M19げくわをよびよせ、さま+れうぢしられければ、其まゝ 00082750¥P286 00082760¥G 00082770L12もとのごとく/手(て)ハなをりけり。されども、さい/前(ぜん)あはてゝ 00082780L13/手(て)をつぎけるか、ぬす人の/手(て)と/取(とり)ちがへてつぎけるにより、 00082790L14なにがあくしやうな/手(て)をつぎけるゆへに、じゆずなどもて 00082800L15バわきへほゝり、ひたもの/花(はな)がミぶくろ、きんちやくを見 00082810L16れバ、/手(て)がぬんぬと、こしのまはりへいたといふた。 00082820¥N8¥J 00082830¥X八△やつこじうめんつくる事 00082840L19ある/侍(さふらい)、四/条(でう)わたりをとをられけるに、むかふより二/尺(しやく)に 00082850M1あまる大わきざしを、かの/侍(さふらい)にあて/立(たち)かへる。じうめんき 00082860M2しよくしけれハ、かのさふらひ、きやつめハあぶれもの也 00082870M3と/思(おも)ひながら、/其(その)ほう、われにゆきあたるのミならず、じ 00082880M4うめんにてにらむ(七ウ)事ハすいさん也といへバ、されば 00082890M5こそ、おさふらひ御めんといはゞ、御ふそくであんべいと 00082900M6思ひ、じうめん申たといふた。 00082910¥N9¥J 00082920¥X九△ちやがまの/中(なか)にばけ物の事 00082930M9ある/寺(てら)の長らう、/夜(よ)に入てちやをのむべしといはれければ、 00082940M10小ぞうねふり+ちやをいれ、ひをたきけるが、せんごも 00082950M11しらずねふりけれバ、長らう/火(ひ)をたきて、/茶(ちや)がまのふたを 00082960M12とられければ、/中(なか)よりなにとハしらず、あしをいだしけり。 00082970M13やれ、くわんすがばけたハとさわがれけれバ、/寺中(ぢちう)おとろ 00082980M14き/来(きた)りてみれバ、うたがひもなくあしひとつ/出(いで)けれバ、い 00082990M15かゞハせんといふ中に、らうそうのいふ、しよせん、此く 00083000M16わんすをうちこかしたらバ、ばけ物いづべし。/出(いづ)る/所(ところ)をお 00083010M17さへんといふ。もつ共しかるべしと、くわんすをうちこか 00083020M18し、かのあしをおさへたり(八オ)といへば、てんでにひを 00083030M19ともして/是(これ)をみれバ、長らうのたびに、ちやをいれてせん 00083040¥P287 00083050L1じたのぢやあつたとの。 00083060¥N10¥J 00083070¥X十△じやうのこわき/者(もの)かミゆひ/評判之事(ひやうはんのこと) 00083080L4さる所に、じやうのこわきもの二人よりあひ、よも山のは 00083090L5なしをしてゐたりけり。しかる/所(ところ)にかミゆひきたり、両人 00083100L6かかミをそろへける。そのゝち一人がいふやうハ、たゞい 00083110L7まのかミゆひほど、へたなものハないといふた。一人が/是(これ) 00083120L8をきゝ、おてまへハわけもない事をいふ人じや。あれほど 00083130L9じやうずハ又とあるまいといふた。さいぜんのもの、かさ 00083140L10ねていふやうハ、/其方(そのほう)ハいかほどひいきしても、あれほど 00083150L11なるへたハないぞ。其しやうこにハ、さかやきをするたび 00083160L12ごとに、すこしにても、きずをつけんといふ事がない。又 00083170L13一人がいふやうハ、いさゝかさやうである(八ウ)(九オ挿絵) 00083180L14まい。それがしのいくたびそらせても、すこしもけがハな 00083190L15い。其ほうのわるくちとぞ申ける。なにがじやうのこわき 00083200L16ものどもなれハ、たがひにせんぎになりにけり。/其時(そのとき)さい 00083210L17ぜんのもの申けるハ、なにのせんぎもいらぬ。たゞいまよ 00083220L18びにつかハし、さかやきをそらしやうほどに、すこしにて 00083230L19もかミそりできりたらば、そのほううどん五/桶(おけ)/買(かへ)。又ちつ 00083240M1共きらずんバ、われうどんを五おけかふべし。いかに+ 00083250M2といひける。壱人が是をきゝ、こハめづらしきかけ六じや。 00083260M3いかにも其ほうのぞミに、すこしもきらずんハわれかはん。 00083270M4はや+よべとぞ申ける。いかにもこゝろへたりとて、や 00083280M5がてかのかミゆひをよびよせ、さかやきをそらせける。も 00083290M6とよりかミゆひ、さかやきハめいじん也。すこしもあやま 00083300M7りなかりけり。其(九ウ)ときかのものせきめんし、ずいぶ 00083310M8んきらするやうに、かしらをふりけれども、すこしもけが 00083320M9ハあらずして、さかやきをそりしまひける。いよ+かの 00083330M10ものきをせき、ひげをはやくそれとそ申ける。うけ給ハり 00083340M11候とて、かミゆひ、かミそりをさかてにもち、はなの/下(した)を 00083350M12そりにけり。其ときかの/者(もの)、じぶんハよきと思ひ、うつふ 00083360M13きにけり。なにがかミそりをさかてにもちてゐけるに、に 00083370M14ハかにうつふきけれハ、やがてはなをそりをとしける。其 00083380M15ときはなをそがれたる/者(もの)、/是(これ)みよ。きずをつけたぞ。うど 00083390M16んをかへと、/鼻声(はなこゑ)に/成(なり)ていふた。 00083400¥N11¥J 00083410¥X十一△またき人とぬす人との事 00083420M19さる所に、なるほどまたき人ありけるに、一としきゝん/年(とし) 00083430¥P288 00083440¥G 00083450L12の事なるが、よるの四つしふんに、なにものやらん、/□□= 00083460L13□((見せ=こカ))(十ノ十二オ)じけれバ、かのまとうど、なにものぢや。か 00083470L14どぐち/□□□□((せゝるはカ))といゝけれバ、かのものきゝ、いや、くる 00083480L15しからぬものぢや。ぬす人ぢやといふ。なにと、ぬす人ど 00083490L16のか。まだねませぬ/程(ほど)に、まづいきまわつてごされといふ。 00083500L17ぬす人きゝ、これハいかな事。まだねやしやれぬか。はや 00083510L18うしもふてねやつしやれ。/上(かミ)の町の/孫(まこ)左衛門殿までいてき 00083520L19ませうといふていんた。 00083530¥N12¥J 00083540¥X十二△/田舎者(いなかもの)味噌やかんばんよむ事 00083550M3ゐなかもの、京うちまいりをしけるに、みそやのかんばん 00083560M4をミて/手(て)をうつてかへり、ていしゆにいふやう、ミやこの 00083570M5めいしよ、のこりなくおがミめぐりたり。みやことて、もつ 00083580M6共らしき事をかきおきたりといふ。ていしゆ、それハいか 00083590M7やうの事といふ。されバふや町とやらんに、うへ+みそ 00083600M8と、/書(かき)付て(十ノ十二ウ)(十三オ挿絵)あり。さても+りくつ 00083610M9をかきたりとかんじければ、ていしゆおかしく/思(おも)ひて、そ 00083620M10れハめづらしき事かな。いかやうのしさいにてござるとい 00083630M11へば、さて+ていしゆハ/京(きやう)にいても、是をしらぬか。う 00083640M12へ+みそといふ事ハ、上をミればかぎりがないぞ、たゞ 00083650M13下をみよといふ事にて、/庭訓(ていきん)にも有事じやといはれた。 00083660¥N13¥J 00083670¥X十三△/法花寺(ほつけてら)/浄土寺(じやうどでら)と/犬(いぬ)をかふて/口論(こうろん)する事 00083680M16ある/所(ところ)に、ほつけ寺とじやうとでらとならびてありけるか、 00083690M17ほつけでらにかいをきたるいぬを、ほうねんとなをつけて 00083700M18よびければ、となりの/浄土寺(じやうどでら)の/僧(そう)たち、さて+にくき事か 00083710M19な。大じのそしを、いぬにする事こそいこん也とて、/浄土寺(しやうとてら) 00083720¥P289 00083730L1にもいぬをかいて、にちれんとなをつけ、/物(もの)もくはせずや 00083740L2せおきて、あたりの/子(こ)どもをまねきよせて、となりの/法(ほう)ね 00083750L3ん(十三ウ)とこちの/日(にち)れんとかミあハせてくれとたのミけ 00083760L4れバ、こどもむらがりよりて、にちれんこい、ほうねんこ 00083770L5いとよびて、かミあハせけれバ、なにがにちれんハやせい 00083780L6ぬの事なれば、ほうねんにかミふせられけれバ、にちれん 00083790L7がまけて、ほうねんがかちたりとはやしけれバ、ほつけ 00083800L8/寺(じ)/に((ママ))これをりつふくして、やがて/法然(ほうねん)をおひいだされた。 00083810¥G 00083820¥N14¥J 00083830¥X十四△ばくち/打(うち)/長老(ちやうらう)に/成(なる)事 00083840M3さるもの、ばくちにうちほうけて、をやのかんだうをえて、 00083850M4いなかへゆきけるが、ある/浄土(しやうど)でらに、ぜんしうとほうも 00083860M5んしてまけ、てらをひらきけるを、かのばくちうち、よき 00083870M6さいはいとおもひ、かミをそりおとし其てらへすハりける 00083880M7が、かのぜんしうへ、こちらよりほうもんしかけゝるハ、 00083890M8仏大のかしやのけひハいかにといふ。さしもさとりのぜん 00083900M9しうなれども、此一くにがて(十四オ)んゆかす、つゐにてら 00083910M10をひらかれけれバ、しすましたりとよろこび、ていきんし 00083920M11きもくのやうなるものにて、よきくちにまかせてだんぎと 00083930M12きけれバ、/所(ところ)のものども、よき長らう様とてまいりけり。 00083940M13ある/時(とき)いにしへのばくちともだち、あきないにありき、を 00083950M14りふし其ざいしよにとまり、よきたんぎときいてまいりミ 00083960M15れバ、いにしへ、ぜに三百文かしたるともだちなり。よき 00083970M16所にて見つけたりとをもひ、くわこにてこれハいかにと、 00083980M17ゆびをミつさしあげければ、長らうがてんして、是にてハ 00083990M18いかにと、ゆびを二つさし出し、二百文にねぎられた。 00084000M19(十四ウ)