00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第六巻 00000030¥T枝珊瑚珠 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L16元禄三年刊 00000070L17鹿野武左衛門等作・石川流宣画 00000080L18半紙本五巻 00000090L19国会図書館蔵 00000100¥Y 00000110M1/珊瑚珠(さんごしゆ)は/毒(どく)を知らせ、/咄(はな)しは/気(き)をおきなふ。しかし、ねり 00000120M2さんこしゆの/益(ゑき)なき/古文(こふん)くさき/物語(ものかたり)ハ、なを/虚労(きよろう)の/病(やまい)にも 00000130M3とつくならん。たゝしゐんにやか、/琥珀(こはく)の/塵(ちり)を/吸(すふ)よりもは 00000140M4やき/玉(たま)の/盃(さかつき)のそこつもの、/腹(はら)のかわのう(一オ)つゝなき/口= 00000150M5拍子(くち=ひやうし)にまかせ、/田舎(いなか)/鴬(うくいす)の/里(さと)なれぬ/囀(さへつり)もまたおかしくて、 00000160M6/春風(はるかせ)の/上気(うわき)にそゝりかきつゞくる。ありそふてなきハ/葉(は)な 00000170M7しなれは、/枝(ゑた)さんこしゆか。(一ウ) 00000180¥P4 00000190¥Y1/朶珊瑚珠(ゑたさんごしゆ)△△△目録 00000200L3第一△/野父(やぶ)にも/剛者(かうのもの) 00000210L4第二△しつたふり 00000220L5第三△浅草/並木(なミき)の火事 00000230L6第四△同やつこのせき筆 00000240L7第五△同/神鳴(かミなり)の/狂哥(きやうか)(二オ) 00000250L8第六△/時(とき)のはやり事 00000260L9第七△/駒掛(こまかた)の/猿屋(さるや) 00000270L10第八△つけるくすり 00000280L11第九△はなしの/本(ほん) 00000290L12第十△/縁喜(ゑんき)のふんしや 00000300L13第十一△たびの/雪隠(せつちん)(二ウ) 00000310¥T1 00000320¥N1¥J 00000330¥X一△野父に剛の者△△△△△△△△△△¥A宣 00000340M3/譬(たとへ)は/葛西(かさい)村に孫左衛門と云百性のもとひ、よしありて/禅(せん)僧 00000350M4の来たりけるに、/近所(きんしよ)の人あつまりて、/法(のり)のしめしを/請(うけ)た 00000360M5まわりたきなとゝ、こそつて申けるに、あら+経論のさ 00000370M6たし給ひ、たゝ念仏のほかに、よのぎなし。/我(わ)か/宗(しう)ていハ 00000380M7顕正/悟道(ごとう)をもとゝするなれと、さとる事ハならすと仰けれ 00000390M8ば、はるか/末座(ばつざ)にいねむり/居(ゐ)たる久八と云/頓瓢(とひやう)者すゝミ/出(い) 00000400M9て、ひとおゝけれと、わたくしはさとりましたと云。一/座(さ) 00000410M10の人/興(きやう)をさまし、何事をいわるゝといへは、長/老(らう)きこし 00000420M11(三オ)めして、いやとよ。さにはあらす。野父に/剛(かうの)者、むか 00000430M12しもその/例(れい)おゝし。六/祖(そ)ハ/米(こめ)ふミなれと/悟(ご)道し、/守省禅師(しゆせいぜんじ) 00000440M13ハ七歳にて/頓悟(とんこ)し、/倶胝(くてい)/童(とう)子は十二才にて/省悟(せいこ)し、法/達禅= 00000450M14師(たつせん=し)ハ八十一歳にて大/悟(こ)し給ふ。/碧岩集(へきかんしう)ニ/曰(いわく)、仏の/性義(しやうき)をし 00000460M15らんと/欲(ほつ)せは、/当(まさに)しせつ/因縁(ゐんゑん)を/観(くハん)す。仏法において/遥(ハるかに)に 00000470M16/遠(とをし)と思ひをなすへからす。その心さしをつけざれは、/未来= 00000480M17永劫(ミらい=やうこう)をへるとも、/自心是仏(じしんせふつ)すること、しる事あるへからす。 00000490M18その心さしにつき、ざぜんするときんば、一分において大 00000500M19/悟(こ)たちまちに是ある(三ウ)(四オ挿絵)へきなりとて、久八 00000510¥P5 00000520¥G 00000530L11にむかへてらいし、さとり給ふ心はいかにといわれ、久八 00000540L12ひざ立なをし、此/重箱(ぢうはこ)の中ハ/熬(いり)豆て御座らふと/悟(さと)りました 00000550L13といふた。 00000560¥N2¥J 00000570¥X二△しつたふり△△△△△△△△△¥A女心 00000580L16/作内(さくない)と云者、/鄙(ひな)人なれと、よろつまめやかに、しらぬ事も 00000590L17しりたるやうに/間(ま)を合るものあり。有るとき、/近(きん)所の人/振= 00000600L18舞(ふる=まへ)に/同道(どう+)したり。/彼(かの)作内しさいらしく、家つくり庭のあり 00000610L19さまなとほめ、そのゝち龍と/虎(とら)を/墨絵(すミゑ)にかきたるついたて 00000620M1あり。にじりよりて、是ハなにさま、たゝ人のゑにてハなし。 00000630M2さりとハ(四ウ)見事なりと云。ていしゆ、こなたはめきゝ 00000640M3もなるそふな。/狩野隼人(かのゝはやと)かかきたりといへは、また作内、 00000650M4此ゑはなんて御座ルと云。おとけた人かな。/龍虎(りやうこ)て御座る 00000660M5ハといわれて、上か龍、下か/虎(こ)か。さて+御しんぶのか 00000670M6ほには/似(に)ぬ/子(こ)て御座ルといふた。 00000680¥N3¥J 00000690¥X三△浅草並木の火事△△△△△△△△△¥A鹿 00000700M9ころは/陬(む)月廿四日、午の/刻(こく)ばかりに、北風はけしく、あさ 00000710M10くさ/観(くわん)世音の/寺内(じない)より火事いてき、ひろこうしに火の子を 00000720M11とばす。所の/者(もの)、/神鳴(かミなり)門に来リなげきけるは、只今/並(なミ)木の 00000730M12家ハ一/有(う)ものこさす(五オ)やけおち候へし。あわれ風の三 00000740M13郎殿。かぜかわらせてたまわれかしといへは、/風(ふう)天、もつ 00000750M14ともの事なれと、にし南は当/社(しや)あやうし、また/東風(こち)になを 00000760M15したらは、御/城府(じやうふ)えおそれあり。とかく時のうんめいと 00000770M16仰けれハ、そのきならは、神/鳴(なり)の御ちかいに雨をふらせ給 00000780M17ひかしといのる。かミなり、あららかに目を見ひらき、ぼ 00000790M18んぶにならハすとも/雨(あめ)ハふらせたけれと、/今日(けふ)ハ御成日な 00000800M19れハ鳴事かなわす、ならねは雨はふらせられすとて、風天 00000810¥P6 00000820¥G 00000830L11と打つれ、火よけの/畠(はたけ)へひつこまれた。(五ウ)(六オ挿絵) 00000840¥N4¥J 00000850¥X四△同僮僕のせき筆△△△△△△△△¥A口前 00000860L14何の/某(それがし)と云/武士(ふし)、/観音(くわん)へもふてられけるに、かゝるおりか 00000870L15ら火事を見とゝけてこそと、馬にむち打て四方をのりめく 00000880L16り、やけたるあらましかきつけんといわれけれと、おりふ 00000890L17しなれは筆/硯(すゝり)もなし。口取の関介、やうしハ御座りまする 00000900L18かととふ。ありといわれけれは、たびのかたのやうに、/墨(すミ) 00000910L19ニて作りたるほうひけをなてゝ、/硯(すゝり)ハ/爰(こゝ)に御座りますとゆ 00000920M1ふた。 00000930¥N5¥J 00000940¥X五△同神鳴の狂哥△△△△△△△△△¥A宣 00000950M4浅草観世音の火よけの/畠(ハたけ)へ、/風(ふう)天神/鳴(なり)二/躰(たい)(六ウ)ともにね 00000960M5せおきたり。若キ者あさけり申けるハ、風の三郎とのハ扨 00000970M6置、まつかミなり門と云からハ、火事ニおふこそしせつな 00000980M7れ。せめてつけハありそふな物しやと、狂哥に、 00000990M8△△神鳴の火事に太皷ハうたすして 00001000M9△△△畠の中へよこにねられた 00001010M10かミなり、むく+とおきかへりて、 00001020M11△△人並木火事をくゆるの浅草よ 00001030M12△△△神鳴とても風はさむらふ 00001040¥N6¥J 00001050¥X六△/時(とき)のはやり事△△△△△△△△△△△¥A宣(七オ) 00001060M15/神(かん)田めつた町に、/徳斎(とくさい)とてぬけたるかうやく/売(うり)り、いつも 00001070M16ひんにて、やう+ふうふのとせいをおくりけり。有ル時 00001080M17女方ゐけんしけるは、そなたのやうに、気のはたらきなき 00001090M18人ハ、一生かあいた、とほしくくらすものなり。世間の人は 00001100M19りはつにて、おなしかうやくをうれとも、喜三郎かかうや 00001110¥P7 00001120L1く、すべ+となをるなと、かわりたる事云てはやらかす。 00001130L2そふへつ、何ニてもはやり事をしたせは、もふける物なり。 00001140L3おり物にさへ、いちのやおり、さんやれおり、そめ物にも 00001150L4延宝年中にそめいたしたりとて、ゑんほうそめあり。きん 00001160L5ねん好色とゆふ(七ウ)事かはやれは、好色ならちや、かう 00001170L6しよくたはこなとゝ云。ちとはやりことを云て、かふやく 00001180L7もうりやれといへは、徳斎しごくして、その/翌日(よくしつ)より/箱(はこ)を 00001190L8かたけて、万/応(のふ)/膏薬(かうやく)と/云(ゆふ)まいものても御座らぬ。しかし、 00001200L9ゐんにやかと云て売ありくほとに、人ミな、きちかいそふ 00001210¥G 00001220M1なと云た。 00001230¥N7¥J 00001240¥X七△駒掛のさる屋△△△△△△△△¥A流尚 00001250M4浅草/駒(こま)かたに、/猿(さる)やと云/饅頭(まんちう)屋あり。お出入の御/屋鋪(やしき)に御 00001260M5/祝言(しうげん)有りて、こなたの御/姫様(ひめさま)、どなたへおこしかいると日 00001270M6/間(けん)さたまり、諸/事(じ)御やうをとゝのへけるに、御用人、とり 00001280M7+さたし申されけるハ、此/度(たひ)の(八オ)御/菓(くわ)子ハ、かれか 00001290M8所にてとゝのゆる事、御祝言に、さるや/不吉(ふきち)なり。せひう 00001300M9りたくは/家(いひ)名をかへよと仰ければ、かしこまり候とてかへ 00001310M10り、/猿(さる)に/扇(あふき)をもたせたり。御/屋鋪衆(やしきしう)来らせ給ひて、いへな 00001320M11を/替(かへ)ますると云たか、もとのさるしやと仰ければ、ていし 00001330M12ゆ、なるほとかへました。さるかあふきをもちましたれは、 00001340M13/猿舞(さるまい)屋で御座りますとゆふた。 00001350¥N8¥J 00001360¥X八△付ルくすり△△△△△△△△△△△¥A宣 00001370M16/赤坂(あかさか)伝馬町に、/豊(とん)田やと云ふげんの者あり。子二人もちた 00001380M17り。/嫡子(ちやくし)を/案(あん)太郎、/二男(しなん)を/案(あん)二郎(八ウ)(九オ挿絵)といへ 00001390M18り。案太郎ハむまれつきたるうつけ者なれは、そうりやう 00001400M19つきかたしとて、/隣(りん)町田町に店/持(もた)せ、/案(あん)次郎につとめさせ 00001410¥P8 00001420L1ける。ある時すこしの出入ありて、名主より/豊(とん)田やか戸を 00001430L2しめられたり。/近所(きんしよ)の人、案太郎か宅へ見まいて、御/親祖(おやぢ) 00001440L3さまふりよの事御座ルよし、申ても御一/所(しよ)の事なれは、と 00001450L4かくおこしなされて、よきやうに御たんかうあれかし/とよ((ママ))、 00001460L5おやご斗の/苦労(くらふ)にはなるましといゝけれハ、もつともにお 00001470L6もひけるか、行て親祖に向へ、こなたひとりの苦労にもな 00001480L7るまい。見せをあけて/商(あきな)ひをなされ。(九ウ)かへりまして 00001490L8おれか所の戸をしめておきませふと云。おやぢあきれはて 00001500L9ゝ、そこなうつけもの。そのやうなじゆふかなるものか。 00001510L10/馬鹿(ばか)にはつける薬かないといへは、案太郎、ぬからぬ/皃(かほ)て、 00001520L11あつたら/売(うれ)ませふといふた。 00001530¥N9¥J 00001540¥X九△はなしのほん△△△△△△△△△¥A流下 00001550L14与九郎と云/在郷(さいこ)ものをおきたり。雨中のつれ+に、/咄(はな)シ 00001560L15の/本(ほん)をもとめてこいといゝつけて、/鳥目(てうもく)三百文わたしけれ 00001570L16は、かしこまり候とかけいたして、/翌(あくる)日かへりけり。いか 00001580L17にしておそかつたとて、さん+しかりけれは、ほんにな 00001590L18さるとおしやるさかい、ずいふん(十オ)きんミいたしまし 00001600L19た。壱ツあるか二ツあるか、はなしはまれな物て御座ル。 00001610M1やう+もとめましたとて、八十はかりなばゝをつれて/来(キ) 00001620M2た。 00001630¥N10¥J 00001640¥X十△縁喜の文者△△△△△△△△△△△¥A宣 00001650M5/長崎(なかさき)町の/辺(ほとり)に、/休徳(きうとく)と云者あり。たのしき物にて金をかし 00001660M6て世をたのしむ。されとも/無筆(むひつ)/不知恵(ふちゑ)なる事あさまし。さ 00001670M7る方の/内儀(ないき)より、きうとく女方のかたへ、はつ春のしうぎ 00001680M8に文おこしたり。休徳、よミてきかせよといへは、女方、 00001690M9なに+とよミて、目出たくかしくと御座ルといへは、て 00001700¥G 00001710¥P9 00001720L1い(十ウ)(十一オ挿絵)しゆ/腹(ハら)をたてゝ、ものをかきてもぶん 00001730L2をしらぬ。目出度/借(か)し/苦(く)とはなに事しや。かして苦をして 00001740L3よいものか。返事には、目出たくかさぬ/徳(とく)とかいてやれと 00001750L4いふた。 00001760¥N11¥J 00001770¥X十一△旅の雪隠△△△△△△△△△△¥A口青 00001780L7江戸しな川町の者、/京都(きやうと)へ用の事ありて上り、かへりにぬ 00001790L8まづの/宿(しゆく)にてひるやす/((み脱カ))して、/雪隠(せつちん)に行は、また江戸より上 00001800L9リの者二人つれにて来り、/独(ひとり)を門にたゝせて、となりのせ 00001810L10んちにいりたり。/壁(かべ)のくすれよりミれは、わが同し町の 00001820L11(十一ウ)ものなり。弥介とのかととへは、たゝいま御かへ 00001830L12りなされますか。御宿にても何事も御座りませぬ。よいと 00001840L13ころて御めにかゝりましたと云。かとのはつれしうか。つ 00001850L14れで御座ります。それなら、ちとよせませふものおといわ 00001860L15れた。(十二終オ) 00001870¥Y1枝さんこ珠△二△△目録 00001880M3第一△/田舎(ゐなか)の/飛脚(ひきやく) 00001890M4第二△/万(まん)日のかんはん 00001900M5第三△/新橋(しんはし)のかミ/結(ゆい) 00001910M6第四△五尺てぬくい 00001920M7第五△さいだいゑん(一オ) 00001930M8第六△/火(ひ)の/見(ミ)やくら 00001940M9第七△しまつの/縄(なわ) 00001950M10第八△さかやの八/蔵(ぞう) 00001960M11第九△かさき/誹諧(はいかい) 00001970M12第十△/稲荷(ゐなり)の/笠着(かさき)(一ウ) 00001980¥P10 00001990¥T1 00002000¥N1¥J 00002010¥X一△田舎の飛脚△△△△△△△△△△¥A宣 00002020L3かた/夷(ゐ)中より用事ありて、/京都(きやうと)/高家(かうけ)方へ/飛脚(ひきやく)をつかわしけ 00002030L4るに、/公家(くげ)の御/名(な)はおほへかたしとて、ひきことにておし 00002040L5ゑける。成ほと心へ候とゆふて、東の洞院をのほりに、新 00002050L6/在家(さいけ)下の町通り/小(お)川坊/城(じやう)とのゝ門に行て、くげしうの御屋 00002060L7敷ハこれで御座るかと/問(と)ふ。番の衆、ゑせたるといやうと 00002070L8おもひなから、さきはどなたときく。/空(そら)をとぶよふな/名(な)て 00002080L9御座ると云。さてハ鳥のたくひなるへし。/飛鳥(あすか)井とのかと 00002090¥G 00002100M1いへは、そのやうな名ては御座らぬ。いたづらなとりて御 00002110M2座ると云。(二オ)さては/烏(からす)丸とのかといへは、またいたつ 00002120M3らじやと云。/鷹司(たかつかさ)とのかといへは、またいたづらな鳥で御 00002130M4座ると云。/鷲尾(わしのを)大/納(な)言とのかととへは、そのわしとのとて、 00002140M5かけたへた。 00002150¥N2¥J 00002160¥X二△万日のかんはん△△△△△△△△△¥A宣 00002170M8元禄三年三月十一日より廿日まて、浅草清水寺に万日のゑ 00002180M9かうあり。江戸中の/貴賎(きせん)くんしゆをなす。ある人ゆいける 00002190M10は、御当地の万日、きんねん回向おゝし。されとも、この 00002200M11たびのゑかうの/師(し)晃岳法印ハ/名僧(めいそう)におわします。二王門の 00002210M12前なる(二ウ)(三オ挿絵)三十三/間堂(けんどう)の/面(おもて)に、きたひのかん 00002220M13はん出たり。さためてりうとうのたくいなるべし。/万(まん)日/光= 00002230M14物(ひかり=もの)色々/有(あり)リと、くろぬりの勘判にかきつけいたしおかれた 00002240M15りとかたりけれは、人+ふしきのおもひをなし、ゆきて 00002250M16見るに、さのことし。しさいをたつねけれは、よろつ日光 00002260M17物いろ+ありとゆふかんばんしやといふた。 00002270¥N3¥J 00002280¥X三△新はしのかみゆい△△△△△△¥A不笑 00002290¥P11 00002300L1新橋のはしつめに、弥太郎と云/床髪(とこかミ)結あり。このころ八/王= 00002310L2子(わう=じ)の者を/弟子(てし)にとりて/置(おき)ける。おりふし(三ウ)山の手の角 00002320L3内、あたごまへりのかへるさにたちより、さかやきをすら 00002330L4せける。彼しんべい、あたまよりそりおろして、まつくろ 00002340L5につくりたてたるほうひけ、かた+ずらりとすりおとす。 00002350L6角内おとろきて、/庭(にわ)中におとりくるい、孫六か打たる二尺 00002360L7三寸ひきくつろけ、我十三年此方、此/鬢(ひけ)のちからをもつて、 00002370L8七両弐分にきずをつけず。ひけなくてハ壱両の金もとりか 00002380L9たしと、とび色のこわねをいたして、はしくづれよとひし 00002390¥G 00002400M1めきたり。弥太郎/蝶鳥(てうとり)のことくかけ来り、御もつとも/((に脱カ))御座 00002410M2る。とかく山たしの田舎者、御ゆるし(四オ)こそと、金子 00002420M3三/両(りやう)いたしてあつかい、やう+に/返(かへ)しける。しかるに/肥(ひ) 00002430M4前の国より江戸見/物(ふつ)のためにくたりける/沙(しや)門、おわり町の 00002440M5ほとりに、よしありて下けるか、江戸入なれは、/彼(かの)者にかミ 00002450M6をすらせける。三百/里(り)の永/旅(たひ)に、ひけさかやきのわけも見 00002460M7へわかぬほとはへければ、/心(こゝろ)のまゝにすりけるほとに、ミ 00002470M8ぎの角内よりなをいさぎよきやつこにそすりなしたり。彼 00002480M9坊/主(す)きもをけし、是ハゑせたるしわさかな。此ありさまの 00002490M10入道なれと、方十町の/景台(けいたい)、八/間(けん)四/面(めん)の本/堂(どう)、三十二間の 00002500M11/廻廊(くわいらう)あり、百三十石(四ウ)(五オ挿絵)の寺領を持て、ゐに 00002510M12ふせらるゝ身なれとも、江府の錦城おかまんため、忍ひて 00002520M13くたる老僧を、なぶると云は江戸ならいかと、はつたとに 00002530M14ら見ていかりける。かのしんべい、ぬからぬ皃て、またす 00002540M15らせて金をとらふと云事か。もはやくわぬといふた。 00002550¥N4¥J 00002560¥X四△五尺てぬくい△△△△△△△△△△¥A宣 00002570M18越後の旅人はいせ町に宿をとり、佐渡のたひうとハ小ふな 00002580M19町に居たり。ゑちごのたひ人、こめかしのはしにて、なか 00002590¥P12 00002600L1き三尺てぬくいをとし(五ウ)けるを、佐渡のたひ人ひろ 00002610L2いける。此方の/の((ママ))三尺てぬくいなりと云。是ハ三尺てぬく 00002620L3いにてハなしとあらそいけるほとに、橋のうへにてしはし 00002630L4はりおふ。両町より立合、ひきわけけれとも、いまたせん 00002640L5ぎひす。とかく名主殿に申てこそと、両方の名主立あいて、 00002650L6やうすをとわれけれハ、越後の者、わたくしが三尺手ぬく 00002660L7いに、まきれ御座らぬと云。佐渡の者は、是ハ五尺てぬく 00002670L8いなりと云。なかそめたるか、しやうこなりとてかへさせ、 00002680L9いせ町の名主いわれけるは、さとのたひ人も此ゑちこ(六 00002690L10オ)のたひ人とは、筋向に宿とりなから、あらそわるゝわ 00002700L11けもあらし。小ふないよこのやどがわるいにきわまつた。 00002710L12宿かよけれは名もたゝぬといわれた。 00002720¥N5¥J 00002730¥X五△さいたいゑん△△△△△△△△¥A流下 00002740L15/牛込(うしこミ)の/辺(ほとり)に、/日下見現(くさかミけん)とてかひたる/牢人(らうにん)あり。斉大円と云 00002750L16めいほうをおほへて、常に売り薬して、とせいをおくる。 00002760L17/日蓮宗(にちれんしう)ニて/殊外(ことのほか)なるしんじやなり。/諸法(しよほう)にすくれたるくす 00002770L18りなれは、是ひとへに法華経にひとしきとて/諸教(しよきやう)十/王最(わうさい) 00002780L19/第一(たいいち)四十/余歳(よねん)/未顕真実(ミけんしんしつ)と(六ウ)(七オ挿絵)ゆふもんの心を、 00002790¥G 00002800M11くすりうり言葉にませて、しよびやう十方さいたいゑん、 00002810M12四十四色見現か解毒、ほんもんしゆりやうの南無めう/鳳髄= 00002820M13丹(ほうすい=たん)と云て売りありく。/法花宗(ほつけしう)ハかれかくすりをのむこそほ 00002830M14う※なしとて、ことのほかにうれたり。となりに弥五介 00002840M15とてほていふり、つねに/芝肴(しはさかな)うりて世をわたる。かれハ/浄= 00002850M16土宗門(しやう=としうもん)にて、見現とつねにしうろんやむ事なし。彼ミけん 00002860M17か法の力にて、くすりのうれる事をそねみて、わが売るさ 00002870M18かなにもよびくせをつけたり。鰺十疋三文つゝ、■いつさ 00002880M19い(七ウ)味噌こくせう、八文しよしやうくわん、かいせ 00002890¥P13 00002900L1あミしやこハと云てうるほとに、日蓮宗ハいやらしとて、 00002910L2もとめす。念仏しうはもつたいなしとて、かわす。ふつと 00002920L3売なんたと。 00002930¥N6¥J 00002940¥X六△火の見やくら△△△△△△△△¥A梅女 00002950L6中小性らしき侍、本町を通りけるに、町のなかはにてせき 00002960L7たのはなをふミきり、おりふし、かひ草履ももたせざれは、 00002970L8僕におゝせて、此あたりにそうりあきなふところやあると 00002980L9云つけける。作介かけまわりて見れは、時しも春の風(八 00002990L10オ)しつかに、火の見やくらの太皷もおとなくて、番の者 00003000L11そうりをつくりてつるしおきたり。作助下より、その草履 00003010L12かわんとゆふ。十二文なりとこたゑけれは、銭をつゝミて 00003020L13なけ上ケけるに、つるし置たる鉦に、したゝかに打つけた 00003030L14り。町人肝をけして、いつくに火事やあると、あしを空さ 00003040L15まになしてさわく。番の者気のとくにおもひて、いや、つ 00003050L16ゝみてなけましたと云。さてハつけ火なりとて、いよ+ 00003060L17さわいた。 00003070¥N7¥J 00003080¥X七△しまつの/縄(なわ)△△△△△△△△△¥A長子(八ウ) 00003090M1大坂町の/裏店(うらたな)に、/佐五(さこ)左衛門とて、かくれなきしわ者あり。 00003100M2なわを見ると、たとへはきためにありても、/不動(ふとう)のさすけ 00003110M3なりとていたゝき/来(きた)リ、よりわけて、やねにひしとほしお 00003120M4くこと/小山(こやま)のことし。ある人来りて、この/縄(なわ)のあたらしき 00003130M5はことハりなれと、ふるきは何のやうに/立(たつ)ととへは、古き 00003140M6をつきてあたらしくしますと云。此くさりたるはと問は、 00003150M7くさりなわにもとりへとて、すたにきりますると云。しか 00003160M8しひろい給ふハよからす、人のとりさたあしと、いけんし 00003170M9けれは、御ゐけんハかたし(九オ)けなけれと、人ハ一代縄 00003180M10末代と申からハ、そまつにはならぬといふた。 00003190¥N8¥J 00003200¥X八△酒屋の八蔵△△△△△△△△△¥A流尚 00003210M13かうじ町六丁目伊丹やか内え、/越谷(こしかい)と云/在郷(さいこう)より、十八九 00003220M14なるてつちをおきたり。まめやかにはたらきけれは、目を 00003230M15かけてつかいける。有時酒樽ののミくちをあけさせ、酒を 00003240M16たせと云つけけれは、口はあけましたれと、酒ハひとしつ 00003250M17くもてませぬと云。ことハりなり。あたまにきりもみをせ 00003260M18よといわれて、上に錐もミをするよりはやく(九ウ)(十オ挿 00003270M19絵)、ミなきりおつる滝のことし。八蔵よりほうほとなるな 00003280¥P14 00003290¥G 00003300L11ミたをなかして、しはしはおきもあからす。ていしゆおと 00003310L12ろきて、いかなるゆへなれはと、しさいをとへは、酒につ 00003320L13けておやかなつかしう御座りますと云。わか/親祖(おやち)ハ/上戸(しやうこ)て 00003330L14あつたかといへは、いや、わたくしかおやハ、しやうべん 00003340L15かつかいてしにましたか、おやさへいきておれは、江戸ま 00003350L16て/奉公(ほうこう)にはまいりませぬ。物をしりませいてのこりおゝい。 00003360L17あたまにきりもミをしたらば、しぬまいものをといふた。 00003370¥N9¥J 00003380¥X九△笠着誹諧△△△△△△△△△△△△¥A宣(十ウ) 00003390M1/亀井戸(かめいと)の/天神(てんしん)に、毎月廿五日に俳諧あり。かさきとて、た 00003400M2れと見わかぬやうに、あミかさふか+ときて、数百の人、 00003410M3口をそろへて云ほとに、そのこゑおびたゝし。/宗匠(そうしやう)執筆(しゆひつ)是 00003420M4をあらため、あしきハ返、/句(く)よきをかきうつす。/懐帋(くわいし)なか 00003430M5はへて、 00003440M6△△/水(ミつ)にしん苔や/空(そら)の/月影(つきかけ) 00003450M7と云/前句(まへく)に、/郭公(ほとゝきす)と/五文字(いつもし)を云。しゆひつ、/季(き)かちかへ候 00003460M8といへとも、また/時鳥(ほとゝきす)と云。そうしやう、まへ句月の句に 00003470M9て/秋(あき)なり。/蜀魄(ほとゝきす)ハ/夏(なつ)なりといへと、やます、/杜鵑(ほとゝきす)と云。 00003480M10しゆひつ/請(うけ)て、 00003490M11△△/子規(ほとゝきす)/鳴(なく)ころ/植(うへ)し/田(た)を/刈(かり)て(十一終オ) 00003500¥N10¥J 00003510¥X十△稲荷の笠着△△△△△△△△△△△¥A宣 00003520M14しんざいもく町/稲荷(いなり)の/神前(しんせん)にて、かさきはいかい/有(あり)しとき、 00003530M15前句、 00003540M16△△/胡蝶(こてふ)のひけもいひはいわるゝ 00003550M17と云句に、おふせいの中より、/秋(あき)の/鹿(しか)といへり。さきのこ 00003560M18とく、季ちかひなりといへど、くりかへして云。うけて、 00003570M19△△/秋(あき)の/鹿(しか)/春(はる)にもちゆる江戸かのこ 00003580¥P15 00003590L1△△△右の二句は珍句なれは、かきしるせり。△(十一終ウ) 00003600¥Y1ゑだ珊瑚珠△三△目録 00003610M3第一△/理朽(りくつ)の/思案(じあん) 00003620M4第二△はんじ/物(もの) 00003630M5第三△/観世音(くわんせおん)の/利生(りしやう) 00003640M6第四△/吉原(よしハら)ほめ/言葉(ことは) 00003650M7第五△/同(おなしく)さんちや(一オ) 00003660M8第六△同△つほね 00003670M9第七△同△なミ/女郎(しよらう) 00003680M10第八△/火(ひ)の/見番(ミはん) 00003690M11第九△/扇子(あふき)の/発句(ほつく) 00003700M12第十△与九郎か/意(こゝろはせ)(一ウ) 00003710¥P16 00003720¥T1 00003730¥N1¥J 00003740¥X一△理朽の思案△△△△△△△△△△△¥A宣 00003750L3ある人/麦飯(ばくハん)の一/汁(ぢう)一/菜(さい)の/約束(やくそく)にて、/近所(きんしよ)の人を/振舞(ふるまい)ける。 00003760L4ほとなく/領理(りやうり)出たり。ときしも/五月(さつき)なかば、/笋羮(しゆんかん)にとろゝ 00003770L5汁なり。/二十(ハたち)はかりの男、しるの/蓋(ふた)をとり、また/菜(さい)のふた 00003780L6をとりて、いつれももとのことくふたして、/食(めし)はかり/喰(くふ)人 00003790L7あり。ていしゆ、是はいか成事なりととへは、此とろゝは 00003800L8山の/芋(いも)て御座らふと云。なか+といへは、此しゆんかん 00003810L9にも山の芋か入ましつらと云。さてはやまのいも、おきら 00003820¥G 00003830M1いかと(二オ)問ふ。/私(わたくし)は丑の年て、山のいもはたへませぬ。 00003840M2うしにやまの/芋(いも)ハさし合かといわれて、さては御存しない 00003850M3そふな。/丑寅(うしとら)の/歳(とし)ハ/虚空蔵(こくうそう)のけたいなり。山の芋ハ/泥鯏(うなき)に 00003860M4成と云さかい、たべぬと云た。 00003870¥N2¥J 00003880¥X二△はんじ物△△△△△△△△△△△△¥A鹿 00003890M7中/橋(はし)の南かわに、三尺斗の/黒(くろ)キ/勘判(かんはん)に、/白(しろ)クあり+と、 00003900M8上&二/挺立(ちやうたち)とかきたり。ふしきなる事におもひて立より 00003910M9見けるに、/浅草苔(あさくさのり)なり。気の通りたるかんばんとおもひ行 00003920M10に、あさくさに/壱間(いつけん)のミすすたれに、/無類(むるい)/蔭馬(かけま)ありとしる 00003930M11せり。(二ウ)(三オ挿絵)すたれの内なれは、是ハいかなるも 00003940M12のやらん、しれかたし。いかさま、さききやうなるはんし 00003950M13物にこそとおもへて、すこしもとめたきといへは、/葛西海= 00003960M14苔(かさいの=り)をいだして見せたり。 00003970¥N3¥J 00003980¥X三△浅草観音の利生△△△△△△△¥A流尚 00003990M17/本庄(ほんしやう)二ツ目に/安楽(あんらく)と云町人あり。うき世の/世話(せは)をしもふた 00004000M18や/隠居(ゐんきよ)してすめり。我か此世のおもいてに、/稲荷(ゐなり)の/宮(ミや)のこ 00004010M19んりうをねかひけれと、六十に/余(あま)りて明日の命も知れかた 00004020¥P17 00004030L1し。また命の内にしやうしゆせされは、/後生(こしやう)の(三ウ)さま 00004040L2たけなり。とかく浅草の/観世音(くわんせおん)は、らいけんあらたにまし 00004050L3ませは、/建立(こんりう)の内/寿命(しゆミやう)をのべたまへといのりけるに、七日 00004060L4にまんする/朝(あし)た、/鳥目(ちやうもく)百銭ひろいたり。安楽よろこひてか 00004070L5へり、女方/孫子(まここ)/若(わか)ひ者あつめて、われ、しゆめうをいのり 00004080L6けるに、はしたにもあれかし、百まてとひろいたるこそう 00004090L7れしけれ。むかしもしゆんじやうほう、/諸国(しよこく)をくわんじん 00004100L8して/大仏(たいふつ)/と((ママ))こんりうし、大/伽藍(がらん)のくよふせしに、六十にあ 00004110L9まりけれは、/命(いのち)あやうしと/清水(きよミつ)にいのりける。/莚(むしろ)をひ(四 00004120L10オ)ろいて二十をのぶるとの御ちかいとよろこびて、ねか 00004130L11いじやうしゆせしためしあり。有がたき御つけと上下ざゝ 00004140L12めきわたる中に、/普代(ふたい)の久蔵壱人/涙(なミた)をなかす。人+たち 00004150L13よりて、かほと目出たきおりふしに、いかなる事なりとと 00004160L14へハ、久蔵申けるは、莚をひろい二十を/延(のふる)とはんし給ふハ 00004170L15事ハりなり。百を百まてとははんじるてハ御座らぬ。大か 00004180L16た、ころりとしなしやらふと云事て御座らふと云た。 00004190¥N4¥J 00004200¥X四△吉原ほめ言葉 00004210L19山の手のよし様と云御方、いつもおくつに参り(四ウ)(五オ 00004220M1挿絵)ける。下/谷(や)/池(いけ)のはたに/住(す)ム/唐(から)物やのすけ、/一谷(いちかい)の大= 00004230M2楽院山(たい=らくゐんやま)/常陸(ひたち)より行/通(かよ)ふ百/性(しやう)に、/兵次(ひやうぢ)かれこれをめして、今 00004240M3日ハ/麗(れい)天にして/蒼穹(そうきう)の/雲(くも)しづかなれは、いさや/色里(いろさと)に/足(あし)を 00004250M4とはせ、/栄(ゑい)花のはな/見(ミ)をせんと、浅草/舟(ふね)に/艫(ろ)をはやめ、/真= 00004260M5土(ま=つち)山の月をかこち、/今戸川(いまとかわ)のふち/瀬(せ)にせまり、おせさゝさ 00004270M6つと/船宿(ふなやと)につけは、戸/手(て)の/上風(うわかせ)うわきにまかせ、ゑもん/坂(さか) 00004280M7をひきつくろいて、/君(きミ)かやきてに大/門(もん)口、江戸丁二丁目さ 00004290M8かい町、/角(すミ)町しん丁京町の、これそまつたゝなかの丁、(五ウ) 00004300M9六道のちまたに/待合(まちあい)の辻、上屋町の/角(かと)に門たちして、/言葉(ことは) 00004310¥G 00004320¥P18 00004330L1の/和気(わけ)の花いかた、なかれの君の御すかた、ちつとこなた 00004340L2てほめもうそふと、 00004350L3△△△△よし様△太夫格子ほめ言葉 00004360L5/青陽(せいよう)の/朝(あした)より、/高尾(たかを)のもミちはいろをあやし、やなきのゑ 00004370L6たのミたれかミ、/照(て)るまゆすミや/四(し)方/拝(はい)、かすミまはゆき 00004380L7/薄雲(うすくも)に、たなひくまつやあいおいの、くらいあらそふたゆ 00004390L8ふさま、けんごに+御おつねん、きゑつほとんとあさか 00004400L9らす、そのおもかけのかわらぬは、けにとこなつのかきつ 00004410L10はた、/小紫(こむらさき)のいろまさり、ほとゝきすの(六オ)/初音(はつね)より、 00004420L11なをちんちやうな/西尾(にしを)の君、これそ和国のまれ/物(もの)と、/唐国(もろこし) 00004430L12まてもゆふ/志賀野(しかの)、ミよしのゝ山戸とは、ちきりてそしる 00004440L13/花崎(はなさき)の、花をふんてハおなしくおしむ/柏崎(かしわさき)、ともしひをか 00004450L14ゝけては、よせいしらるゝ千年の君、/和哥山(わかやま)のミちひろく、 00004460L15ときしりかほの/朝霧(あさきり)ハ、このはいろつく丹/州(しう)と、いわでも 00004470L16さとるつまへにゝ、すこふるきミは/小若佐(こわかさ)の、月のひかり 00004480L17や/小更級(こさらしな)、こいにそひらく/白菊(きく)は、ふゆも/常磐(ときわ)の/和哥松(わかまつ)と、 00004490L18ゆきのうちよりはなふくむ、/梅(むめ)か/枝(ゑ)にかほるかせ、四/季(き)の 00004500L19はなさくあけや町、おゑとの花/里(さと)とは、ゆふまい物てハ、 00004510¥G 00004520M11はつあ、御座らぬ。(六ウ)(七オ挿絵) 00004530¥N5¥J 00004540¥X町人△局ほめ言葉 00004550M14江戸町のきやく立さらてのミ、/角(すミ)町のしやミたゆることな 00004560M15し。けにや、女郎の手くたには、/局(つほね)こそなをおもしろけれ。 00004570M16たつとからす、いやしからす、けふのよるへハきぬ※に、 00004580M17かわれはかわるかねことも、ちくさにかこつ/思草(おもひくさ)、その女 00004590M18郎/花(くわ)のいきはり/合(あい)、そなたこなたの/仇(あた)くらべ、かことはか 00004600M19りの/偽(いつわり)も、いわでの山のいわつゝし、それとそいねのゆめ 00004610¥P19 00004620L1たにも、うつゝとはせぬさよ/衣(ころも)、つまともおもふ身ならね 00004630L2は、うらミあらしすかたのはな、ぼんのふ+さめかたき、 00004640L3ほたいのための/金仙花(きんせんくわ)、やれはたのしむ/商(あき)人の、正月(七 00004650L4ウ)やうにかと+を、のそくはかりのれいてんく、かけ 00004660L5てもとらん/三重(ミゑ)の/帯(おひ)、とけてハとつと/情(なさけ)あり。つくままつ 00004670L6りのなべならて、手/鍋(なべ)さけてとゆふしての、神の/名(な)にたつ 00004680L7ちきりたに、かわれはかわる君こゝろ、きのふと/今日(けふ)と/飛= 00004690L8鳥(あす=か)川、てくたはくわぬ/通(とを)り/者(もの)、しよじせはなりと夕/霞(かすミ)、お 00004700L9もひは/今宵(こよひ)一夜妻(よつま)、そうば+にねをたてゝ、わすか五匁 00004710L10三匁、いつときのゑいくわにわ、/千年(ちとせ)の君になすむこんだ。 00004720¥N6¥J 00004730¥X山伏△山茶ほめ言葉 00004740L13/陰陽(ゐんよう)の/昔日(そのかミ)は、/空(くう)+として/寂(じやく)+たり。(八オ)ほこのし 00004750L14たゞりこりかたまる、そのミなもとはふたはしら、いま/我= 00004760L15朝(わか=ちやう)にはひこつて、人/間(けん)のゑいくわとす。ことにおさまる/御= 00004770L16代(ミ=よ)の春、はなのお江戸の/和気(わけ)の/里(さと)、そのいろ+のしなさ 00004780L17ため、上には太夫/格子(こうし)の君、下に/局(つほね)やなミつほね、くわん 00004790L18じやうおろし奉る。なかにもたつとき御女郎、/山茶(さんちや)の君と 00004800L19あらハれて、まつしん町に三/浦(うら)屋の、名にきゝふれしこし 00004810M1きふ様、すミ町の女郎には、まんじやのふしなミ様、くし 00004820M2やくやのわかな様、めうかやにはつせ様、ふちやの内にふ 00004830M3しの様、つたやにきゝし大くら様、ひしやの君ハなか嶋様、 00004840M4まん(八ウ)じやのむらさめ様、かゝやに見たる/花月(くわけつ)様、山 00004850M5やの内のこさわ様、うつらやのゆきへ様、/名(な)にこそたてれ 00004860M6江戸町の、二丁目出たきひたりかわ、たわらやのこきん様、 00004870M7きりやの内にミゆき様、いせやにきてはミはな様、花やの 00004880M8名あるはなよ様、四つめやにきんだ様、ひらのやにゆきへ 00004890M9様、ひしやのうちにいつミ様、ゑいらくやにてはつね様、 00004900M10つのくにやに小太夫様、まつやの君ハたかまつ様、またミ 00004910M11きかわに名をゑたる、あつまやのかつま様、まんしやのよ 00004920M12しの様、山田やの小太夫様、あふきやのゆきへ様、中むら 00004930M13やにいちはし様、むかてやのあかし様、すゞきやのきんだ 00004940M14様、かりかねやのとやま様、さとやに名(九オ)あるミよし 00004950M15様、ひやうこやのたまかつら、かきやにふるき/瀬(せ)川様、い 00004960M16せやにきゝしさかた様、ともへやのミゆき様、まつや内に 00004970M17よし松様、そうじてさんちや三十七/間(けん)、そのしんそうの君 00004980M18/達(たち)まて、七なんのやほをさつて、七/福(ふく)の大臣を、けないに 00004990M19しつかとおさめ、女郎はんしやうの御きねんと。 00005000¥P20 00005010¥N7¥J 00005020¥X百性△ほめ言葉△なミつほね 00005030L2/銭(せに)とそ/契(ちき)る御/契銭(けいせん)、百生の身にしあれハ、たよふかうしの 00005040L3つめひらき、それとはかりもきせちなし。まつた/讃茶(さんちや)のや 00005050L4かばねの、てかばちない二/階(かい)にて、ちやうしゑんをくやら 00005060L5かし、わんぼうに/香(か)をとめて、いしくもあらぬいき(九ウ) 00005070L6(十オ挿絵)はり/合(あい)、/局(つほね)の君かおとほねの、ゑこせぬくせりも 00005080L7かしかまし。/壱畳(いちせう)半のおへやすミ、あしをはかりに一里/塚(つか)、 00005090L8つかのま君と/伏(ふし)見町、かしのいよこの女郎たち、きせるく 00005100¥G 00005110M1わへてつぼつこい、まなこのしほのしほらしや、ゆへはい 00005120M2わるゝ江戸かのこ、こくもうすくも/紫(むらさき)の、色をそたのむひ 00005130M3とへおひ、五尺てぬくいなかそめて、そめも/染(そめ)たよ/京(きやう)町の、 00005140M4三浦まかきのすしむかい、いなりやしきてうつほれた、お 00005150M5もいはこれもおれかつれ、ことつてもてこいかきのれん、 00005160M6色をも香をもしる人よ、たゝしゐんにやかそれとても、せ 00005170M7ずやうがないやほすけの、めつたやたらの大/鼓(こ)もち、うつ 00005180M8ほとのひるそは切か、けんどんの君にほたされて、さいこ 00005190M9く(十ウ)/西国(さいこく)さいこくしゆんれ、むねにきふたのたゆるま 00005200M10もさんやれ。 00005210¥N8¥J 00005220¥X八△火の見番△△△△△△△△△△¥A流下 00005230M13/岩(いわ)井町のひの見やくらの下より、過しころすこしけむりも 00005240M14へ出たり。されともはやく見つけてけしたり。町人むれあ 00005250M15つまりて、火の見のはんのものは、いかにして/鉦(とら)ハうたぬ 00005260M16といへは、もつともて御座ります。つね+/名主(なぬし)様のおゝ 00005270M17せつけに、/遠(とをく)ハしつかに三つ打へし。十五六町/近辺(きんへん)ならは、 00005280M18しつかにひさしくうて。もし/隣(りん)町ならは、なるほときひし 00005290M19く打。(十一オ)それ+におゝしてとあれば、下よりやけ 00005300¥P21 00005310L1出るには打へきやうなし。鉦を下へなけましたと云た。 00005320¥N9¥J 00005330¥X九△扇子の発句 00005340L4/弥生(やよい)の/半(なかは)、ちり残たる/桜(さくら)も、/朧(おほろ)月のおもしらふ/冴(さへ)たる/宵(よい)に、 00005350L5友たちかたらいて、世中のうわさはなしして遊ひおるうち 00005360L6に、ほと奈/良茶(らちや)やうのものいたして、下/戸(こ)ならぬこそ/咄(はなし)に 00005370L7はよけれと、/盃(さかつき)のかすかさなれは、ことのほかあつしと、 00005380L8ひさまくり、はたぬきなとしける。ていしゆ、いつもたは 00005390L9この火もうるさくなりて、/扇(あふき)にこゝろうつりかわるとき、 00005400L10うらさる御/屋鋪(やしき)へ/団扇(たんせん)のたくい、つかいものにするとて、 00005410L11(十一ウ)ひとへよりおらせておきたり。今宵のあつさに何も 00005420L12ひまいらせん。扇の/発(ほつ)句と望ミけれは、 00005430L13△△△/神(かミ)風や二/見(ミ)か浦の金/扇(あふき)△△△△△△△△△¥A雪子 00005440L14△△△/破(やふれ)ても/扇(あふ)子は/腰(こし)の/力(ちから)かな△△△△△△△△¥A清 00005450L15△△△/冷(すゝ)しさは気にさからハぬ扇哉△△△△△△¥A宣 00005460¥N10¥J 00005470¥X十与九郎か意△△△△△△△△△¥A短才 00005480L18ある人、水風/呂(ろ)をたきて、/近所(きんしよ)におわしける/出家衆(しゆつけしう)をよび 00005490L19湯に入たり。与九郎と云下男、ひたもの火をたきけるほと 00005500M1に、あつさかきりなし。僧、いかなれは、かやう(十二終オ) 00005510M2にたくそ。いましふんの/湯(ゆ)ハぬるいかよし。しよたいもし 00005520M3らぬものかな。たんなのためは思わぬかといわれ、与九郎、 00005530M4御/前(まへ)の入しやましたさかい、たきまする。今日ハわたくし 00005540M5か心さしの日て御座りますとゆふた。(十二終ウ) 00005550¥P22 00005560¥Y1朶さんこしゆ△四△目録 00005570L3第一△/文盲(もんもう)の/状(ぢやう) 00005580L4第二△たかいの/麁相者(そさうもの) 00005590L5第三△/浅草(あさくさ)むしそは/切(きり) 00005600L6第四△/無筆(むひつ)の/医者(いしや) 00005610L7第五△/僮僕(やつこ)のかこかき(一オ) 00005620L8第六△/勘判(かんはん)の/見損(ミそこない) 00005630L9第七△八/内(ない)か/出来(でかし)たて 00005640L10第八△/不審(ふしん)の/行燈(あんとう) 00005650L11第九△/迹目(あとめ)/公事(くじ) 00005660L12第十△/天狗(てんぐ)の/寄瑞(きすい) 00005670L13第十一△/蜆(しらミ)のせつかん(一ウ) 00005680¥T1 00005690¥N1¥J 00005700¥X一△文盲の状△△△△△△△△△△¥A口青 00005710M3/青山宿(あをやましゆく)/久保町(くほまち)と云所に、/彦(ひこ)左衛門と云者あり。八丁六/段(たん)の 00005720M4/田地(てんぢ)をもとめける。下町銀座町によしのものありて、金を 00005730M5/借(かり)につかわしける。むひつなれは、/近所(きんしよ)の人をたのミてふ 00005740M6ミかゝせける。いよ+御/堅固(けんご)に御座候哉とかけば、此/田= 00005750M7地(てん=ぢ)ハ/下田(げてん)にて、ねたんやすき所なり。ごけんごとかきてハ 00005760M8かてんせまい。せめて十/間小(けんご)とかいてくたされと云。いや 00005770M9/是(これ)は/利足(りそく)のことではなし。御そく才かと云事しやと云て、 00005780¥G 00005790¥P23 00005800L1かれこれかきしまいて、とめに、/貴面(きめん)のときをごし候とよ 00005810L2めは、金を(二オ)かりなから/木面(きめん)ところてはない。/金(かね)面と 00005820L3かいてくたされといふた。 00005830¥N2¥J 00005840¥X二△/逓(たがい)のそそう△△△△△△△△△△△¥A宣 00005850L6浅草/並(なミ)木の火事/本庄(ほんしやう)へとひて、日くるゝまてやけたり。/隣= 00005860L7町(りん=ちやう)の/番(ばん)太郎、おきかきを/持(もち)来りて、あまりさむし。火をひ 00005870L8とじうのふたもれとて、とらんとせしとき、くらのわきニ 00005880L9/居(ゐ)たる弥五介かけ出て、さん+にしかる。ばん太郎、/腹(はら) 00005890L10をたてゝ、しわいやつかあるものじや。これほとたいぶん 00005900L11の火を、/何(なに)にしやうとてくれぬそ。おのれ見をれ。こんと 00005910L12おらかほうの火事に、(二ウ)(三オ挿絵)火をやるかといわれ 00005920L13て、弥五助、これも浅草からもろふた火しやとゆふた。 00005930¥N3¥J 00005940¥X三△浅草むし蕎麦切△△△△△△△¥A流尚 00005950L16浅草/駒掛(こまかた)のけんとんむしそばきりを、やつこ内に入ておも 00005960L17ふさまにくらい、あたへなけれは、とかくにちてこそとお 00005970L18もひ、/時(とき)からなれは/蝿(はい)二三/疋(ひき)とり、かの茶わんに入、てい 00005980L19しゆをよひて、大の/眼(まなこ)に/角(かと)をたてゝ、たいじの銭をいたし 00005990M1くふ物に、此ことく、はいをいれ/毒(どく)をかふ事やある。我そ 00006000M2んじやうそれか/家来(けらい)なり。/屋鋪(やしき)へきたるべし。わけをたゝ 00006010M3さんとゆふ。ていしゆ(三ウ)さわかす。御もつともなれと、 00006020M4そのためにかんはんにも、むしそは切と御座ると云。扨ハ 00006030M5むしとありて虫を入は、そは切ならば、すこしそはを切ん 00006040M6と、/脇指(わきさし)ぬきてひらめかす。/近所(きんしよ)の者二三人かけよりて、 00006050M7したゝかに打ける。やつこいよ+はらをたてゝ、むしそ 00006060M8は切に虫あればそは切をするに、此たゝきたるりくつあり 00006070M9やと、あらゝかにいへは、さやうにむたいなる人はゆるさ 00006080¥G 00006090¥P24 00006100L1す、手ぎつけれは、けんとんと申とゆふた。 00006110¥N4¥J 00006120¥X四△無筆の医者△△△△△△△△△¥A似鹿 00006130L4/下谷(したや)に/案伯(あんはく)と云いしやあり。一/字(じ)をひく事も(四オ)ならね 00006140L5と、いしやのむひつはあしきとて、物かきのやうにもてな 00006150L6しける。菊月の/節句(せつく)まへ、さる人/余所(よそ)ゑつかへをつかわし 00006160L7けるついてに、案伯へよりて薬をとりて来れと/云付(ゆいつけ)ける。 00006170L8/使(つかい)の/者(もの)/雉子(きし)つかへ、かこに入てさけなから、/手紙(てかミ)をあんは 00006180L9くへ/渡(わた)ス。ひらきて二三/度(ど)うなつき、つかへの者にむかつ 00006190L10て、きじつかいやり申と/文(ふミ)にありと云。いや、これハよそ 00006200L11ゑまいりますといわれて、またてかミをひろけて、ことわ 00006210L12りじや。なを+かきに、やらぬとあるといふた。 00006220¥N5¥J 00006230¥X五△やつこのかこかき△△△△¥A鹿(四ウ)(五オ挿絵) 00006240L15三月五日のでかわりに出たる/作介角内(さくすけかくない)、云あわせけるは、 00006250L16ことしはおもひのほか/思(おも)ふやうなる/口(くち)もなし。/当分(とうふん)のかせ 00006260L17きに/品川(しなかわ)口にてかこなりとかきてこそと、/篭(かこ)一/挺(ちやう)もとめて 00006270L18/往来(おふらい)の人/待居(まちゐ)たり。/廿余(はたちあま)りの/男(おとこ)とをりがけに、かこは/日本(にほん) 00006280L19ばしまていくらととへは、三百と云。廿四文てやらぬかと 00006290M1云すてゝ/通(とを)りける。/二(ふたり)人かゆいけるは、/今日(けふ)はじめて出た 00006300M2るに、はつかごかりをかさぬはぎゑんわるし。のせてこそ 00006310M3とよひもとしたり。のりて、半町ほと/行(ゆき)すこし、かこまて 00006320M4と/飛出(とひいて)、おれが/親祖(おやち)か、やすきもの(五ウ)はよせといわれ 00006330M5たり。/日本橋(にほんはし)まてハ二百てなけれはのせぬところを、廿四 00006340M6文てハくちすきもないはすしや。かこかきかぬすミものに 00006350M7きわまつたといわれた。 00006360¥N6¥J 00006370¥X六△勘判の見そこない△△△△△△△¥A笑口 00006380M10/田舎(ゐなか)もの、/亀井町(かめゐちやう)によしありて一夜をあかしける。/旅(たひ)のく 00006390M11たひれやすめなから、/湯(ゆ)にいりたまひと云。いつくにある 00006400M12やらところしれすといへは、江戸ハなににてもおもてにか 00006410M13んばん御座ると云。さてはやすしとて/外(そと)へ/出(いて)、三四間行 00006420M14て(六オ)かつぱやの見せに、きる物ぬき、はたかになりて、 00006430M15ないしやうへはいる。ていしゆおとろき、/何(なに)事なりと云。 00006440M16たひうと、さわかぬけしきにて、つねの湯はめづらしから 00006450M17ず。とうゆにいらふとゆふた。 00006460¥N7¥J 00006470¥X七△八内か出来立△△△△△△△△¥A口計 00006480¥P25 00006490L1有ル人、すきやをたてたり。/萩垣(はきかき)なと物すきにして、/■地(らいち) 00006500L2に二三/間(けん)根笹をうへける。廿日ほとへて、すきとかれたり。 00006510L3気の毒におもひて、なんそくすりもありそふな物しやとい 00006520L4われけれは、僕の八内、きんしよの/宮内(くない)との、よひて来り 00006530L5ける。ていしゆ、よく御出なされ(六ウ)(七オ挿絵)ました 00006540L6といへは、/只今(たゝいま)ハ御/使(つかい)。いかやうの御/用(やう)かと問ふ。わたく 00006550L7しハ申つけませぬかと、八内をよひてとへは、/笹(さゝ)かかれま 00006560L8したに、薬かほしいとおつしやつたさかひ、宮内様ハ/薮医= 00006570L9者(やふい=しや)と申まする。御薬をすこしくたされませいと云た。 00006580¥G 00006590¥N8¥J 00006600¥X八△/不審(ふしん)の/行燈(あんとん)△△△△△△△△△△¥A似鹿 00006610M3/木挽(こひき)町つきしに、/常(つね)にしたしくつき合/牢人衆(らうにんしう)、以上六人を 00006620M4あんとくミと云。ある人ふしんしけるは、いつれも様を、 00006630M5いかなれば/行燈(あんと)組と申ととへは、かれこれミな/惣髪(そうかミ)なり。 00006640M6/四方紙(しほうかミ)とゆふきりしやと云。五人はそふかミなれはきこへ 00006650M7ましたか、/独(ひとり)の/坊(ほう)様か、かてん(七ウ)ゆかぬといへは、あ 00006660M8れは聖あんとんて御座ると云た。 00006670¥N9¥J 00006680¥X九△蹤目公事△△△△△△△△△△△¥A似鹿 00006690M11/南伝馬町(ミなミてんまちやう)に何かしと云て、七八百両のぶけんなり。死病の 00006700M12かれかたく、過しころ/相果(あいはて)たり。しかれとも十八九斗なる 00006710M13やうしの子壱人あり。/後家(こけ)ハとかく/嫁(よめ)もとりて、あとをく 00006720M14ずさぬやうにといへは、子は/蹤(あと)くすそふと云。さま+き 00006730M15やうくんしけれと、きかす。おやと子と公事になりて、/名= 00006740M16主(な=ぬし)へ此事をきかせけれは、/親子(おやこ)共よひて、/母(はゝ)おやのあとを 00006750M17たてんと云に、いかにして、やうしの身にて、子はくすさ 00006760M18んとゆふそと(八オ)、さん+しかりければ、子の申ける 00006770M19は、/仰(おゝせ)ハさる事なれと、わたくしか所には、馬か三/疋(ひき)御座 00006780¥P26 00006790L1りますと云。それいかなれはととへは、/親祖(おやち)、つね+か 00006800L2るた打なからも、/馬(むま)か三ひきあらは、かならすくすせとい 00006810L3われましたとゆふた。 00006820¥N10¥J 00006830¥X十△天狗の寄瑞△△△△△△△△△¥A口青 00006840L6/四(よ)つ谷に/孫作(まこさく)と云者、ぐわんらい/生(むま)れ/付(つき)たるおくひやうに 00006850L7て、/四十(よそち)にあまれと、物おじをしけり。さるほとに、杉の 00006860L8木には/天狗(てんく)のすむときゝて、杉さへ見れは礼をなしてとを 00006870L9りける。あるとき(八ウ)(九オ挿絵)/高井戸(たかゐと)村まてやうあり 00006880L10て、黄昏時に原中をかへりける。/杉(すぎ)のなミ木にありけれは、 00006890L11しはらくこしをそらさす、/上(うへ)よりしわかれこゑにていゝけ 00006900L12るは、ほんふの身にて、おれか/居(ゐ)る事をしりたるこそやす 00006910L13からね。ことに/礼(れい)をなす/心(こゝろ)さしのやさしけれと、すかたを 00006920L14あらハせ給ひ、/不老丸(ふらうくわん)と云くすりなりとて、三粒くたされ 00006930L15ける。そも+此くすりは/若(わか)き者にもちゆへからす。壱/粒(つふ) 00006940L16のめは十二年つゝわかくなる、そくさいゑんめいの/薬(くすり)と仰 00006950L17ける。ありかたしといたゝきて、一粒はのミたり。/女方(にうほう)、 00006960L18/男(おとこ)のかへりたるを見れは、四十にあまりけるか、三十より 00006970L19内(九ウ)のおとこにそなりたり。女方きもをけして、しさ 00006980¥G 00006990M11いをとへは、あらましかたりて、此くすり一粒のめは、ひ 00007000M12とまわりつゝわかくなる。せかれ、わすか十なれは、のむ 00007010M13となくなるそ。わ/ぐ((ごカ))れもいまたわかけれは、見もすること 00007020M14なかれとて、かけ硯に入おき、錠をおろしおきたり。女方、 00007030M15ていしゆの留主に、いかなれ、さやうのことはあらじとお 00007040M16もひて、一りうのめは、そのあぢかんろのことし。のこり 00007050M17一粒もくいけるほとに、廿七の女方か三つになりて、いろ 00007060M18りはたに茶を立居たるこそ、男かへりてきもをけしたると 00007070M19なり。 00007080¥P27 00007090¥N11¥J 00007100¥X十一△蜆の折檻△△△△△△△△△△¥A流下(十オ) 00007110L3去年の冬、十二三になる田舎出のてつちをおきたり。春に 00007120L4なりて親来りけれは、旦那申されけるは、そなたの子なか 00007130L5らも、さりとてハあの竹蔵めは、ふせうなやつしや。毎日 00007140L6湯せんそくもさすれと、蜆かたいふんたかるとはなされけ 00007150L7れは、扨+にくいやつて御座りますと、さん+にちや 00007160L8うちやくする。下人共ひきはなして、せつかんのところへ 00007170L9わゆかぬ。いけんをしたかよいといわれて、まことに花の 00007180L10お江戸へまいりて、湯水風呂に入なから、何としてしらミ 00007190L11かたかるそ。おれはなん年(十ウ)にも湯をあひたることな 00007200L12けれとゝいひなから、ゑりをひろけてみせけれは、蜆あり。 00007210L13とふりて御座ります。あれもわたくしも/白山権現(しらやまごんけん)のうぢ子 00007220L14て御座りますといふた。(十一終オ) 00007230¥Y1枝さんこしゆ△△目録 00007240M4第一△/寄代(きたい)の/身(ミ)なけ 00007250M5第二△しんべとの 00007260M6第三△九+の/神鳴(かミなり) 00007270M7第四△/和気(わけ)の/小衣(さころも) 00007280M8第五△/人(ひと)のなさけ(一オ) 00007290M9第六△/楽斎(らくさい)か/目薬(めくすり) 00007300M10第七△/筆屋(ふてや)のかんはん 00007310M11第八△お/寺(てら)の/礼(れい) 00007320M12第九△かき/暖簾(のれん)の/狂哥(きやうか) 00007330M13第十△/態(のふ(ママ))の/番付(ばんつけ)(一ウ) 00007340¥P28 00007350¥T1 00007360¥N1¥J 00007370¥X一△寄代の身なけ△△△△△△△△¥A流向 00007380L3/三十(ミそし)にたらぬ/男(おとこ)、/両国橋(りやうこくはし)に身をなげたり。/所(ところ)のものひきあ 00007390L4けて見けるに、/右(ミき)の/手(て)にとうからし、/左(ひたり)に/竹(たけ)をもち、/赤(あか)キ 00007400L5/足袋(たひ)をはきて、/下帯(したおひ)もせであり。人+、いかなるしよぞ 00007410L6んありてかくは/出(いて)たちたらんと、とり+のさたする中に、 00007420L7わたくしかんかへ見るに、/唐芥子(とうがらし)はともし/火(ひ)、あかきたび 00007430L8は/愚人(ぐにん)、なつのむしとんと/火(ひ)に入/心(こゝろ)なるへしといへは、/通(とを) 00007440L9りかゝりたる/牢(らう)人、それにてはいゝたらす、とうからしハ 00007450L10からき物、竹ハ/世中(よのなか)、下おひハまわし、たびハ(二オ)あし 00007460L11もとなり。からき世中にまわしハならす、あしもとのあか 00007470L12いうちにとゆふこゝろしやと云た。 00007480¥N2¥J 00007490¥X二△しんべとの△△△△△△△△△△¥A宣 00007500L15下町に/住(すミ)ける/新兵衛(しんひやうへ)と/云(ゆふ)もの、吉原に/行(ゆき)てかゑりに、/道(ミち) 00007510L16すから、もひとつしてこい、しんへとの+と、ひたもの 00007520L17云。しんべい、きのとくにおもひて、とかく、はやりこと 00007530L18江戸中のしよにん云はやらかす事なれは、とめん事、大水 00007540L19をてにてふせぐなるへし。/仏神(ふつじん)をいのりてこそと、浅草と 00007550¥G 00007560M11うこうゐんのやくし/如来(によらい)ハ、むかし/伝馬(てんま)町にまし+、げ 00007570M12んぶしやなりときくとて、/御仏(ミほとけ)に(二ウ)(三オ挿絵)まへりて、 00007580M13此ころのはやりうたに、 00007590M14△△見れはたらふくつるてん+ 00007600M15△△△たらふく+たんたらふく 00007610M16△△なぜにこじよろはでゝあわぬ、しんべとの 00007620M17と申て、わかミのうへのやうにて、めいわくに御座ります。 00007630M18ねがわくハ此/哥(うた)やめさせてたまわれかしと、その/夜(よ)ハつや 00007640M19しける。うしミつはかりに、/御格子(ミかうし)のうちより、ひかりさし 00007650¥P29 00007660L1てあららかに、人の云事ハぜひなし、/我仏(わがほとけ)なれと、/野郎(やらう)ハ 00007670L2/薬師(やくし)のきらい物といへは、此ころ/陰郎(かけらう)/退転(たいてん)したるもわれゆ 00007680L3へかと、うらミらるゝこそいとかなしと/仰(おゝせ)けれは、さてハ 00007690L4ほとけハしひふかし。/神(かミ)にいのらはやと、/長田(なかた)ばゝにまい 00007700L5りて、/山王権現(さんわうこんけん)のいのり/奉(たてまつ)る。/是(これ)もミとしろの(三ウ)内よ 00007710L6り/声(こゑ)あつて、山王のさくらのきに/猿(さる)が三/万(まん)三/千(せん)三百三十さ 00007720L7かつたと、われはかりならす、つかわしめまできやりにゆ 00007730L8へと、いかにせんとあれは、とかく/神(かミ)のつかさなる/太神宮(たいしんくう) 00007740L9をいのらはやと、/芝(しは)の/神明(しんめい)ゑりうぐわんせしかは、ありか 00007750L10たくも/童子(とうし)壱人あらわれさせ給ひて、人の口には/戸(と)もさゝ 00007760L11れす、/我(われ)さへゆるさて/酒(さけ)のミたる者を見ては、/天照太神(てんしやうだいしん) 00007770L12かあかつたと云。九月のまつりもしんめいまつりとはいわ 00007780L13て、/目(め)くされまつりと云。/伊勢(いせ)はしんめいの/惣名(そうめう)なり。此 00007790L14ほとまたふるきうたをおもひ出して、/伊勢(いせ)のおたま(四オ) 00007800L15はあぶミか、ちよいとくらかとうたふ、/凡夫(ほんぶ)さかんに神た 00007810L16ゝりなしと/仰(おゝせ)られた。 00007820¥N3¥J 00007830¥X三△九+の神鳴△△△△△△△△¥A口前 00007840L19かミなりにおそるゝものあり。やミの夜のよはいほしにも 00007850M1きもをけし、秋の/稲妻(いなつま)に気をうしなふ。ましてどろ+と 00007860M2なるおとは、たましい身にそわす。有ル人ゐけんしけるは、 00007870M3/雷(いかつち)のなるたびにおつる物にはなし。それ、かミなりは/山(やま) 00007880M4+に六十四あり。言はをかけてもおつる事なし。/五六(ころ) 00007890M5+/云(いふ)ハ三十の/鳴(なる)おとなり。/八八(ばち+)と云ときはかり、六十四 00007900M6のかミなり、ミな(四ウ)(五オ挿絵)出たるとおもひたまへ 00007910M7といへは、さては、けんいちはおほゑずとよいといふた。 00007920¥N4¥J 00007930¥X四△和気の小衣△△△△△△△△△△△¥A宣 00007940M10/新吉原(しんよしハら)二丁目/松屋(まつや)の/皐衣(さころも)とゆふ/遊君(ゆふくん)あり。/蜷川氏清(になかわうちきよ)様と云 00007950M11人にふかく/三歳世(ミとせ)のなしミ、すへの松山と/真土山(まつちやま)にちかい 00007960M12て、/角田川(すミたかわ)のふかき/底意(そこゐ)を/都鳥(ミやことり)にことよせ、まつ/宵(よい)の月ハ 00007970M13おのつからくもり、きぬ+のわかれは、/鐘(かね)つく人をきつ 00007980M14ねはめなでとかこち、おふさきるさのさゝめ/言(こと)ハ、/秋(あき)の/夜(よ) 00007990M15もミちかく、おもふ人のきませじと、/思(おも)わぬ人にそいねの 00008000M16/時(とき)(五ウ)は、/夏(なつ)の/夜(よ)もあけかぬるとそくるしミける。此ほ 00008010M17とハいたわりの事ありてほどへ、/佐野(さの)のふなはしわたりな 00008020M18けれは、たよりいかにと/松浦(まつら)かたにあくかれ、/袂(たもと)は/海士(あま)の 00008030M19/袖(そて)かとうたかふ。されはとてつとめの身なれは、/今日(けふ)のち 00008040¥P30 00008050¥G 00008060L11きりにたわむれ、その事となくおりし/時(とき)から、しよやの/鐘(かね) 00008070L12のいまたミヽふれぬに、/籬(まかき)におとづれありて、/清(きよ)様ときけは、 00008080L13たち/居(ゐ)てかなわねばこそうき/世(よ)なれ。/今宵(こよひ)はさわりありま 00008090L14す。またの/夜(よ)にこそ/待(まち)ますると、/相思草(たはこ)すいつけて、/見物(けんふつ) 00008100L15もめつらしからぬに、此きせるもたせられて、かへらせ給 00008110L16へとさし(六オ)いたす。/蜷川(になかわ)/氏清(うちきよ)とりあへず、 00008120L17△△/逢(あふ)まてをまつや/思(おも)ひの/煙草(けむりくさ) 00008130L18△△△/今日(けふ)の/情(なさけ)にきせるさころも 00008140L19まつやの/皐衣(さころも)返哥、 00008150M1△△/蜷川(になかわ)の/清(きよ)きにあらふやぶれきぬ 00008160M2△△△なかれの/末(すへ)やむすぶ皐衣 00008170¥N5¥J 00008180¥X五△人の情△△△△△△△△△△△△△¥A鹿 00008190M5有ル人/座敷(ざしき)を/立(たて)なおし、/近所(きんしよ)の人を/新宅(しんたく)へ申入てふるまい 00008200M6ける。/酒(さけ)なかはに/内方(ないほう)出て、なにも(六ウ)(七オ挿絵)御座 00008210M7りませぬか、しんたくを御/馳走(ちそう)に、さゝひとつまいりませ 00008220M8といわれけれは、一/座(さ)、さりとてはお/物(もの)入で御座らふか、 00008230M9けつこうな御ふしんて御座ると云。/内方(ないほう)、うちのちからは 00008240M10かりでハ御ざらぬ。ミな/近所(きんしよ)のしうの/御(を)かけじやと云。与 00008250M11/茂作(もさく)かへりてはなしけるは、それとのゝ/内儀(ないき)ハ、さりとは、 00008260M12くわをいわぬりはつな人じや。あのしんだいで、たれにこ 00008270M13うりよくもゑらりやうそ。これ+いわれたりとほめける。 00008280M14/女方(にやうほう)、それほとのことか、いわれぬものかといゝけるか、 00008290M15十四五日へて、よろこびをしたり。七/夜(や)のいわひとて/近(きん) 00008300M16(七ウ)/所(しよ)の/衆(しう)をよひたり。/今日(けふ)ハ/目出(めて)たし。御/内儀(ないき)様もよ 00008310M17ろこひて御座らふ。やす+と御/平産(へいさん)、ことにおのこゞて 00008320M18御座るなとゝいゝけれは、女方まかり出て、ていしゆはか 00008330M19りのちからて/出来(てき)たでは御座らぬ。ミなきんじよのわかい 00008340¥P31 00008350L1しゆのおかけしやと云た。 00008360¥N6¥J 00008370¥X六△楽斎か目薬△△△△△△△△△¥A似鹿 00008380L4/同朋町(どうほうまち)に/楽斎(らくさい)と云者、めいほうをおほへて/目薬(めくすり)を/合(あわ)せける。 00008390L5いかなる目にもよしとて、らくさいめくすりとさたし、江 00008400L6戸中のひやうばん、/売(うれ)る事かきりなし。となりへまた、め 00008410L7いしやこして、/楽斎(らくさい)と(八オ)かんはんをいたしたり。とり 00008420L8ちかひて是もうれたり。らくさい/腹(ハら)をたて、/似(に)せことをい 00008430L9たすよし、/大屋名主(おふやなぬし)へ事ハりけれは、両方をよひてせんぎ 00008440¥G 00008450M1せらるゝ。いまの楽斎申けるは、わたくしハにせらくさい、 00008460M2あの者はまらくさいて御座るといふた。 00008470¥N7¥J 00008480¥X七△筆屋の勘判△△△△△△△△△¥A流下 00008490M5/麁相者(そそうもの)かたりけるは、/昨日(きのふ)しろかね町を/通(とを)りけるに、あた 00008500M6らしきかんはんを見たり。此ころにゐかふとおもふか、そ 00008510M7なたもいきやるまいかと云。いかなることそととへは、吉原 00008520M8よりましな事か御座るは。(八ウ)(九オ挿絵)/京(きやう)から女か三 00008530M9人くたりたそふな。江戸の/名(な)とはいかふかわつた。ひとり 00008540M10ハたきも、ひとりハとよう、/独(ひとり)はひつしんと云。ねたんか 00008550M11やすい。ひとつつび壱匁つゝとかいてあると云。是はよき 00008560M12なくさミなりと、つれたちて/行(ゆ)きて見れは、京くたり/瀧本(たきもと) 00008570M13やう/筆人(ひつじん)、一/対(つひ)壱匁つゝと、かなにてかきたり。 00008580¥N8¥J 00008590¥X八△お寺の礼△△△△△△△△△△¥A笑口 00008600M16有ル人申けるは、世中のつとめほと、きのとくな物ハない。 00008610M17ぎりしゆんきにこまりたり。中にも寺まいりかきのとくじ 00008620M18やと云。それはどふした(九ウ)ことにととへは、五十ハす 00008630M19くなし二百ハすきる。/銭(ぜに)の/持(もつ)ていきやうかないと云。それ 00008640¥P32 00008650L1なら百/文(もん)でよふ御座るといへは、百を/紙(かミ)につゝんだところ 00008660L2は、どふやらまらのやうて、おてら様へはたしにくひと云 00008670L3た。 00008680¥N9¥J 00008690¥X九△柿暖簾の狂哥△△△△△△△△△△¥A宣 00008700L6六十あまりの/牢人(らうにん)、せんたい/紙子(かミこ)のいろつきたるに、とき 00008710L7ならぬ一/重(ゑ)はをり、きさミさや/朱(しゆ)ぬりのなへづるのごとく 00008720L8そりたる/刀(かたな)、やくわんのふたのやうなるつはをうつて、あ 00008730L9いくちのわきさし、/扇(あふき)を/弓手(ゆんて)にぶらつかせ、西うしのなミ 00008740¥G 00008750M1つぼねこま(十オ)やかにのそく。かきのれんのなかほとに 00008760M2て、ふとりたる女らう、/身(ミ)せばのつまのつましなくて、か 00008770M3いつくもふてゐたりけるに、いかにしてか、かのところす 00008780M4こし見へたり。牢人しはしこゝちまどひ、くめの/仙人(せんにん)かむ 00008790M5かし/語(かた)りおきく、しはらくなかめおりしほとに、女郎、こ 00008800M6ゝろつきてゐなをりける。牢人たちさりなから、 00008810M7△△百なりと/名(な)にこそたてれ/柿(かき)のれん 00008820M8△△△さねをいたすはへたな/見(ミ)せかけ 00008830M9女郎おいかけて、 00008840M10△△牢人のつらこそしぶきかきのれん(十ウ) 00008850M11△△△さねまてむけともたぬこしせに 00008860¥N10¥J 00008870¥X十△/態((ママ))の番付△△△△△△△△△△¥流下 00008880M14過しころ浅草に/態(のふ)ありしとき、同所中町に/抹香(まつかう)うりて世の 00008890M15いとなミとする。むすめひとりもちたり。さる/屋鋪(やしき)へ/奉公(ほうこう)に 00008900M16いたし/置(おく)。二三日のひまにて/来(きた)りける。おりからの/見物(けんふつ)と 00008910M17て/態(のふ)をミせに/遣(つかハす)ス。ひろこうしにて/重箱(ちうはこ)もちたる男、かの 00008920M18娘にちか+よりて、どこへ御座ルと云。のふ見物にとい 00008930M19へは、わたしか入てしんじやうと、ものかたりなとしてつ 00008940¥P33 00008950L1れたちゆく。(十一オ)そのちうはこはなにて御座るととへは、 00008960L2/餅屋(もちや)へとりにまいりました。かゝミて御座るなと云うちに、 00008970L3/観音堂(くわんおんとう)のうしろへつれ/行(ゆき)、/芝原(しはハら)にておもふさまのめに/合(あわせ) 00008980L4たり。/坊主(ほうす)ひとりふら+と来て、/是(これ)ハたいしの御山にて 00008990L5かゝるらうぜきと、あららかしかられ、女をすてゝにけ行。 00009000L6/房主(ほうす)もさすか/岩(いわ)木ならねは、おしふせて物しけり。ひけそ 00009010L7らさまにはへたるやつこ、ミやめくりに見つけて、/にあま((ママ)) 00009020L8ぬ/坊(ほう)のしわさと、弐尺壱寸ひきくつろけてさん+におと 00009030L9す。坊主たまりかねてかけ出す。やつこ、いまは心やすし。 00009040L10いぎにおよハヽ/命(いのち)をとらんと、二時はかりハねせ/置(おき)(十一ウ) 00009050L11たり。/娘(むすめ)、やう+おこされてかへりける。おやぢ、うれ 00009060L12しけにたち/出(いて)、おもふたよりはやかつた。なんばんほとし 00009070L13たるととふ。娘、いかい事しまして、かすハおほへませぬ 00009080L14と云。さりなから御/屋敷(やしき)へかへりて、はなしのために/番付(はんつけ) 00009090L15をかいてやろふ。まず/初手(しよて)にしたはなんじや。かゝミをも 00009100L16つてしました。それならば/竹生嶋(ちくふしま)。さてそのつきは。/坊主(ほうす) 00009110L17で御/座(さ)る。これハほうか/僧(そう)。そのつきは。こわいかほて御 00009120L18/座(さつ)たほとに、おんりやうて御座らふ。それハあふひのうへ 00009130L19であらふ。/何(なに)かしりませぬ。ひげかはへて、おたちをさし 00009140M1ました。それならは、おんりやうではない。/鍾馗(しやうき)(十二オ)じ 00009150M2やといへは、/娘(むすめ)、とかくおんりやうにきわまつた。これか 00009160M3すると、こしのぬけたか一/度(ど)しやといふた。 00009170¥P34 00009180¥Y秡 00009190L4/春雨(はるさめ)のつれ+/袷恰(かれこれ)/集(あつま)りてはなしける 00009200L5を、予おかしくて筆をならす。ある人/諸事(しよじ) 00009210L6/世話(せわ)らうしけれと、世の/気(き)はらしに/桜(さくら)に 00009220L7ちりはめて見せまぼしと、ひた(十二ウ)す 00009230L8らに云もすてかたくて、そのひと+の 00009240L9名をあらわしてかけり。しかし/当時(そのかミ)の咄 00009250L10しは/独(ひとり)の心なり。/言草(ことくさ)のしなかわりたる 00009260L11こそ、なを/興(きやう)あり。/言葉(ことは)の玉のミかき/合(あわす) 00009270L12ルはなしなれは、めつらしとても/朶(ゑた)さん 00009280L13ごしゆか 00009290G1△はなし 00009300G2紅葉軒 00009310G3△△△鹿 00009320G4△△△似鹿 00009330G5△△△口青 00009340G6△△△如心 00009350G7△△△笑口 00009360G8△△△宗計 00009370G9△△△口前 00009380G10△△(十二ウ) 00009390G11△△△短才 00009400G12△△△不笑 00009410G13△△△口計 00009420G14△△△梅女 00009430G15△△△長子 00009440G16△△△流下 00009450G17△板本 00009460G18△△△流尚 00009470G19画誂軒 00009480G20△△△宣 00009490¥Q 00009500L16△△△△△△△△絵師△△石川流宣 00009510L17元禄三@庚午@初夏日 00009520L18△△△△△△△△板本△△相摸屋太兵衛(十三終オ) 00009530¥P35 00009540¥U噺本大系△第六巻 00009550¥T軽口露がはなし 00009560¥G 00009570¥Y 00009580L16元禄四年刊 00009590L17露の五郎兵衛作 00009600L18半紙本五巻 00009610L19国会図書館蔵 00009620¥Y1かる口露がはなし巻之一目録 00009630M3第一△/文盲(もんもう)なる人物の/書付(かきつけ)をひはんする事 00009640M4二△京の何がし/丹波(たんは)へむこ入する事 00009650M5三△筆まめなる書付の事 00009660M6四△本国寺/大門(たいもん)うへ/松(まつ)の事 00009670M7五△/茶(ちや)といふことを/利口(りこう)に取なをす事 00009680M8六△/重言(じうごん)くるしからずといふ事 00009690M9七△大じんと大このいはれの事 00009700M10八△/目(め)ハ/欲(よく)のもとでといふ事 00009710M11九△/涙(なミだ)ハ人の/尋(たつぬ)るたね(一オ) 00009720M12十△六はらの/勧進(くハんじん)咄 00009730M13十一△/老(をひ)てもわかきにまけぬ咄 00009740M14十二△/推量(すいりやう)と/違(ちがふ)たはなし 00009750M15十三△人をけしてはまりのはやき咄 00009760M16十四△人はそだちといふ事 00009770M17十五△/恥(はぢ)をいわゐなをす咄 00009780M18十六△小僧が利口ハ/却而(かへつて)めいわく 00009790M19十七△/悪性(あくせう)の名付親 00009800¥P36 00009810L1十八△/羨敷(うらやましき)ハ/食物(しよくもつ)の火事 00009820L2十九△/親父(をやぢ)がはたらき三国一 00009830L3廿△/苦身(くるしミ)も/品(しな)による(一ウ) 00009840¥T1軽口露がはなし卷之一 00009850¥N1¥J 00009860¥X第一△/文盲(もんもう)なる人物の/書付(かきつけ)をひはんする事 00009870M5一△ずんど/文盲(もんもう)成/田舎侍(いなかさふらい)、/供(とも)人/少(せう)&めしつれ、京むろ町を 00009880M6とをり給ひ、/家(いへ)&ののうれんの書付を見て行けるに、よめ 00009890M7たる/字(じ)一/軒(けん)もなし。/或所(あるところ)に/戸(と)をさし、/借家(かしいへ)かし/蔵(くら)と書付し 00009900M8を、しばらく/立止(たちとゞま)り、ひそかに下人を/呼(よび)、あれハ何といふ 00009910¥G 00009920¥P37 00009930L1/字(じ)じやととはれけるに、かし家かし蔵ありと申す。/主(しう)人う 00009940L2ちうなづき、/尤(もつとも)/手(て)ハよろしからねど、いかにとしても/文= 00009950L3章(ぶん=しやう)がよひといはれた。(二オ) 00009960¥N2¥J 00009970¥X第二△京の何がし/丹波(たんば)へむこ入する事 00009980L6一△京の何かし、/丹波(たんば)のおく山より/縁(えん)をむすび、/程(ほど)へて/聟(むこ) 00009990L7入するに、/土産(ミやげ)物には大きなる/生鯛(なまだい)一/枚(まい)、/小者(こもの)にもたせけ 00010000L8る。七条大/宮(ミや)にて/道中(だうちう)の/用意(ようい)にとて、ふのやきを/買(かい)、/道(ミち)す 00010010L9がらくふて行けり。/扨(さて)/舅(しうと)の/家(いへ)に/着(つき)ければ、/馳走(ちさう)に/水風呂(すいふろ)を 00010020L10たき入けり。小者も水風呂へ入とて、/懐中(くわいちう)よりふのやき一 00010030L11まき/落(をとし)ける。山/家(が)の者共これを見て、扨も/合点(がてん)のいかぬ物 00010040L12じやと、いろ+/評判(ひやうばん)すれども、つゐに見しりたる者もな 00010050L13し。さらバ/堂(どう)の/坊主(ばうず)と庄や殿をよひて(二ウ)これを見せ 00010060L14るに、坊主のいふハ、/爰(こゝ)らの衆のしらぬが道/理(り)なり。/是(これ)は 00010070L15/天狗(てんぐ)殿のやいとのふたじやといふ。又庄や殿に、此/魚(うを)は何 00010080L16と申物ぞととへば、庄やの申さるゝハ、是ハ京/祇園(ぎをん)の/小宮(こミや) 00010090L17にも有ゑびす殿の/腰(こし)にさしてゐらるゝ/太刀(たち)じやといふた。 00010100¥N3¥J 00010110¥X第三△/筆(ふで)まめ成/書(かき)付の事 00010120M1一△ある人のかたへ、/夏(なつ)の/比(ころ)客きたりて、/素麺(そうめん)をふるまひ 00010130M2けり。からしの/粉(こ)をたづねるに、/紙袋(かミふくろ)に書付なくて、/気(き)の 00010140M3せくまゝにあれこれとさがし、/漸&(やう+)取出し/振舞(ふるまい)過けり。日 00010150M4/暮(ぐれ)にをよび、むすこ(三オ)/外(そと)よりかへりき。/親父(おやぢ)いふやう 00010160M5ハ、あのかみぶくろニは、それ+の入たる物を書付せよ。 00010170M6/惣(さう)じてかきつけのない物は、いそぐ時のやくに/立(たゝ)ぬぞと云。 00010180M7いかにも心へましたとて、/頓而(やがて)親父ねられける時、/紙張(してふ)に 00010190M8大筆にて、此内におやぢ有と書付た。 00010200¥G 00010210¥P38 00010220¥N4¥J 00010230¥X第四△本国寺/大門(たいもん)にうへ/松(まつ)の事 00010240L3一△本国寺大門の/南(ミなみ)ハ、十年ばかり以前迄/民家(ミんけ)なりしを、 00010250L4/近年(きんねん)ハ小松/植(うは)りけり。此松に付うへ木やを/呼(よび)、あの大門よ 00010260L5り/北(きた)にハむかしより大/木(ぼく)の松八本あり。あれは/法花(ほつけ)八/軸(ぢく)を 00010270L6かた取八本也。然るに(三ウ)(四オ挿絵)此たび南のあき地 00010280L7にハ、法華二十八/品(ほん)をかた取廿八本うへべし。/直段(ねだん)如何程 00010290L8といへば、木屋申ハ、とかく法花経の/義理(ぎり)ハそむかれます 00010300L9まひ。/直段(ねだん)/壱歩(いちぶ)八/貫文(くハんもん)に御/買(かい)下されよと云。寺にも/指当(さしあたり)、 00010310L10/高直(かうじき)とてねぎるべきやうもなし。其中に/小(こ)ざかしき男罷出、 00010320L11木屋の/宗旨(しうし)をとへば、浄土といふ。然らバ其方の宗旨にて 00010330L12/金子(きんす)/三歩(さんぶ)/経(きやう)にまけよといふた。 00010340¥N5¥J 00010350¥X第五△/茶(ちや)といふ/言(こと)を/利口(りこう)に取なをす事 00010360L15一△利口成者の咄しに、/茶道坊主(ちやだうばうず)といふ/言葉(ことば)を(四ウ)そば 00010370L16にゐける人/聞(きゝ)ていふ/様(やう)ハ、尤ちやを/立(たつ)るなれ共、あれはさ 00010380L17だうといふ物じや。/惣(そう)じて/茶(ちや)には、さといふこと葉を/用(もちいる)と 00010390L18をしえければ、/彼(かの)者が云、それは其方の申されやう無/理(り)也。 00010400L19さとちやと同じことならバ、/笹(さゝ)屋の三郎兵衛を、茶+屋 00010410M1の茶郎兵衛といふても大事ないかと云た。 00010420¥N6¥J 00010430¥X第六△/重言(じうごん)くるしからずといふ事 00010440M4一△/重言(じうごん)をいひ付たるくせにて、夜るの夜中にてもあらバ 00010450M5こそ、/昼(ひる)の日中に、/山中(さんちう)の山なかにて、/馬(むま)からをちて/落馬(らくば) 00010460M6して、うでのかいな(五オ)を打おりて、/医者(いしや)のくすしに/懸(かゝ□) 00010470M7て、/養生(やうじやう)してりやうじしたれば、やう+なをりへいゆふ 00010480M8したといふを、/友立(ともだち)/聞(きゝ)て、扨もそちが言葉ハミな重言也。 00010490M9よそにて左様の/言(こと)をかならず申されなとかたく/異見(いけん)すれば、 00010500M10/彼(かの)者へらぬ口にて/返答(へんたう)せしは、其方ハ/文盲(もんもう)な人じや。/聖人(せいじん) 00010510M11/賢人(けんじん)の/語(ご)に多く重言有といふ。それは何の書物に有といへ 00010520M12ば、/諷(うたひ)の本に有。/高砂(たかさご)の/浦(うら)に/着(つき)にけり+と有。それは目 00010530M13出たひ事故くるしからず。然らバ、/跡(あと)とふらひてたび給へ 00010540M14+といふ/謡(うたひ)も有ぞや。(五ウ) 00010550¥N7¥J 00010560¥X第七△大/尽(じん)と大/皷(こ)の/謂(いは)れの事 00010570M17一△今時のわけしりハ、世間せんしやうのために、壱町あ 00010580M18ゆミ行にも、大/皷(こ)といふしやれものをめしつれありくなり。 00010590M19それに付、あの大こといふ/義理(ぎり)ハ、何といふ事ぞといへば、 00010600¥P39 00010610L1さかしきおとこが/頓作(とんさく)をいふハ、/惣(そう)じて大じんも大こも、 00010620L2ミな+六/斎(さい)念仏の/宗旨(しうし)であろふ。其いはれハ、大じんハ 00010630L3かねもち也。大こといふ者ハ、からり+の/身躰(しんだい)なれば、 00010640L4かねもちニ付て/歩(あゆ)まねバならぬといふた。 00010650¥N8¥J 00010660¥X第八△目ハ/欲(よく)のもとでといふ事(六オ) 00010670L7一△/田舎(いなか)人はじめて京へ上り、方&見物せり。大仏の/釈迦(しやか) 00010680L8を見てにはかに/欲心(よくしん)/発(をこ)り、つれの/友(とも)ニいふやうハ、目は欲 00010690L9の/許手(□とで)じやといふ。あの仏の御手程おれが手も大きならバ、 00010700L10京一/番(ばん)の/両替(りやうがへ)屋の/門(かと)に立、手に一はい小判をつかミ取たい 00010710L11といふた。 00010720¥N9¥J 00010730¥X第九△/涙(なミた)は人も/尋(たつね)るたね 00010740L14一△うつくしき女中ひとり、/途中(とちう)にやすらひて、物あハれ 00010750L15さうになき/居(い)たり。行あふたる人、何事のかなしミありて、 00010760L16さやうに/涙(なミた)にむせび給ふと(六ウ)とひければ、女聞て、さ 00010770L17れバこそ、あれ+あそこへ衣を/着(き)てあミ/笠(かさ)めしたる人は、 00010780L18/都(ミやこ)にかくれなき/哥(うた)念仏/説教(せつけう)ときの/林清(りんせい)といふ人なり。あの 00010790L19人のむねの内に、いか程あハれしゆせう成事の侍らんやと 00010800M1おもひやられて、/袂(たもと)をしぼるといふた。但ぬれかけのある女か 00010810M2しらぬ。 00010820¥N10¥J 00010830¥X第十△/六波羅(ろくはら)の/勧進(くハんじん)といふ事 00010840M5一△/無意気(むいき)成にはか/道心(たうしん)、六はらの勧進といふて、/門(かど)+ 00010850M6をありく也。人&/不審(ふしん)に思ひ、/何(なに)と、六はらの/堂(だう)が/立(たて)なを 00010860M7るか。/慥(たしか)きのふも/東(ひかし)山へ/行(ゆく)とて(七オ)通りたるに、/作事(さくじ)の 00010870M8/躰(てい)ハ見へず。いかさま、この坊主ハ/似(に)せ/勧進(くハんしん)にてあるべし。 00010880M9いざ+よびてたづね申さんと、二三人立よりて、此坊主 00010890M10に/謂(いはれ)を/聞(きゝ)けるに、御/不審(ふしん)尤なり。/愚僧(ぐそう)が/庵室(あんじつ)は六はらの/片= 00010900M11原(かた=はら)町に罷有。/庵(あん)に斗居たるは片はらよと、そのまゝむねを 00010910M12ひろげ/腹(はら)をたゝきてをしえ、/勧進(くハんじん)と申ハ此ろく/腹(はら)へといふ 00010920M13た。 00010930¥N11¥J 00010940¥X十一△/老(をひ)てもわかきにまけぬ事 00010950M16一△或/在郷(ざいがう)に七十ちかき/姥(うば)あり。にあひたる者の方へよめ 00010960M17入をするに、/牛(うし)にのり、/二十(はたち)斗の/孫(まこ)に(七ウ)牛の口を引せ 00010970M18行なり。道にてさハる/荷物(にもつ)の有をミて、孫、牛に/声(こへ)をかけ、 00010980M19のいてとをれと云。/姥(うば)、これを/聞(きゝ)、そふて通れといはんこ 00010990¥P40 00011000L1そ本意成に、のいてといふ/言葉(ことば)ハ/気(き)にかゝり不吉也。いや 00011010L2+けふは行まひと、よめ入をやめけるも/興(けう)あり。 00011020¥N12¥J 00011030¥X十二△/推量(すいりやう)と/違(ちがふ)た事 00011040L5一△ある所に久七といふ下人有けり。かたのごとくよくは 00011050L6たらき、主人の気に入奉公せしが、或時主人/他(た)行の折ふし、 00011060L7お内義へ、/近比(ちかころ)はづかしながら、、/私(わたくし)が/心底(しんてい)をつゝまずはな 00011070L8し申度と(八オ)いふ。内義ハ/面(かを)をあかめて、あらけうこつ 00011080L9なる人や。何をいふ事の有べしと申されける。久七、かや 00011090L10うに申うへに御/聞(きゝ)なきにおゐてハ、/覚悟(かくご)いたしたといふ。 00011100L11内義申ハ、それほどに思ひ侍らバ、/重而(かさねて)折も有べしと申さ 00011110L12れけり。さいわひたゞ今ハ人もなく、よきしゆびにて候ま 00011120L13ゝ、ぜひ今申さんと、つか+と/耳(ミヽ)のはたへより、/小声(こごへ)に 00011130L14さゝやく様ハ、あすより/飯(めし)のしやくしを、おしつけて下さ 00011140L15れよといふた。 00011150¥N13¥J 00011160¥X十三△人をけしてはまりのはやき事(八ウ)(九オ挿絵) 00011170L18一△ある人、京にめづらしき/軽(かる)口咄しハなひかととハれけ 00011180L19るに、さして思ひ付たるはなしも御座らぬ。此ほど京中の 00011190M1とをり/道(ミち)をよくいたし、/門(かど)の/真(まん)中をたかくかまぼこなりに 00011200M2いたすといひもはてぬに、そのはなしハふるひぞ+とけ 00011210M3されければ、さればこそ、其ふるひによつてかまぼこにい 00011220M4たしたといふ。此人ハ肴やでハないか。 00011230¥N14¥J 00011240¥X十四△人はそだちの事 00011250M7一△ふり/暮(くら)したるつれ+の/折節(をりふし)、二三人/呼(よび)あつめ、とろ 00011260M8ゝ/汁(しる)を/振舞(ふるまひ)ける。其中にこびたる人の申(九ウ)さるゝハ、 00011270M9色+の御馳走、ことにけふのことづて汁ハ、いつにまさ 00011280M10りて一入出来たるとほめ給ふ。そばに/相伴(せうばん)したる人、これ 00011290M11はめづらしき御言葉やと思ひ、其しさいをとふに、されば、 00011300M12此汁にてハいか程も/飯(めし)がすゝむゆえ、よくいひやるとのえ 00011310M13んにより、ことづて汁といふならん。聞えたる/作意(さくい)やと/感(かん) 00011320M14じ、/宿(やと)にかへりて、やがてくだんの汁にて/客(きやく)をよぶに、こ 00011330M15とづてをとはれて、めしのまゝをやるとぞ申ける。 00011340¥N15¥J 00011350¥X十五△/恥(はぢ)をいはひなをす事 00011360M18一△或町に/寄会(よりあひ)有けり。/二階(にかい)座敷にてつとめける。(十オ) 00011370M19事過てかへるさに、長/座(ざ)にくたびれ、そさう成者、はしご 00011380¥P41 00011390L1のもとにて大あくびするとて、/尻(しり)の/辺(へん)より、ほんと/音(をと)のせ 00011400L2しを、そば成人、とんさくを申された。扨も天下大へいで 00011410L3御座るといへば、/彼(かの)者も、されバこくとあんどいたしたと 00011420L4いふて/笑(わら)ふた。 00011430¥N16¥J 00011440¥X十六△小僧が利口で/却而(かへつて)めいわくといふ事 00011450L7一△去寺に、うつくしきお/児(ちご)有けり。/旦那(たんな)参られて、小僧 00011460L8をちかくよびて、あの児ハどなたの/子(こ)なれバ、あのやうに 00011470L9うつくしひぞといふ。小僧、あれハ屋敷方のお子なり。/爰(こゝ) 00011480L10の/弟子(でし)に成に御出有といふ。(十ウ)旦那きゝて、おれが思 00011490L11ふやうならバ、あの児を女子にしてほしひと申せば、小僧 00011500L12がいふやう、いづれ人の目は九分十分じや。さたハないこ 00011510L13と。長老様も左様ニ御申あるといふた。 00011520¥N17¥J 00011530¥X十七△/悪性(あくせう)の名付親 00011540L16一△去所に二十斗の悪性成むすこあり。/夜(よ)る+外へ/遊(あそ)び 00011550L17に出けり。おや大きに/腹立(ふくりう)して、念/比(ごろ)なる人を両人かたら 00011560L18ひ、御太儀ながら、今ばんむすこめが/居(を)る所へ同道たのむ 00011570L19よし申て、扨/親父(おやぢ)は、八まきよりぼうなどもちて、/常(つね)に/子(こ) 00011580M1が/行(ゆく)所を(十一オ)見とゞけ、あはたゞ/敷(しく)/表(をもて)の戸をたゝき、/爰(こゝ) 00011590M2にこちのむす子ハゐぬかと、/急(きう)にたづねければ、子ハ/親父(おやぢ) 00011600M3が/声(こへ)ときゝ、やがて二かいへはしりあがり、かくれ所のな 00011610M4きまゝに天/井(ぜう)へとび上りければ、/腰(こし)より/上(かミ)ハ天井にてかく 00011620M5れたり。親父友三人ながら、にかひへ行見れば、何かハし 00011630M6らず、こしより/下(しも)斗の物有けり。子も/絶躰絶命(ぜつたいぜつめい)、爰なりと/息(いき) 00011640M7づむひやうしに、大き成へを一つ、ほんとこきたり。扨一 00011650M8人が云様ハ、是ハ/定而(さだめて)ろくろ/首(くび)といふ物じや。又壱人がい 00011660¥G 00011670¥P42 00011680L1ふハ、いや/首(くび)ハ見へぬほどに、ろくろ/尻(じり)にてあろふといふ。 00011690L2親父も/興(けう)を(十一ウ)(十二オ挿絵)さまし、いや+、いづれも 00011700L3の/量見(りやうけん)とハちがふた。ろくろくびでもろくろじりでもない。 00011710L4/先(さき)のなり/音(をと)を聞からハ、六郎兵衛にてあらふといふた。 00011720¥N18¥J 00011730¥X十八△/羨敷(うら山しき)ハ/食物(しよくもつ)の火事 00011740L7一△四条/河原(かハら)にうつくしき野郎あり。/古郷(こきやう)/親里(をやさと)ハ京の西じ 00011750L8ゆらくの者也。五月十五日ハ今宮の神事にて親里へまつり 00011760L9に行けり。/常(つね)ハつとめの身なれば/隙(ひま)なく、/往来(ゆきゝ)する事/更(さら)に 00011770L10なし。さるにより、おやも一しほ/珍敷(めつらしく)/不便(ふびん)に思ひ、何哉/馳= 00011780L11走(ち=さう)せんとて/餅(もち)をつきくハせけり。野郎も/逢(あふ)た時かさ(十二ウ) 00011790L12をぬげとかや、人目もはぢもかまハず、したゝかにくいけ 00011800L13り。されども/夕陽(せきやう)にしに入あひのなるころ、/我(わか)すむおやか 00011810L14たの内へ/帰(かへ)り、ねてもをきても、くるしさうに見へけるを、 00011820L15ほうばいの野郎見かねて、そなたの/煩(わつらい)は、こゝちいかゝ有 00011830L16ととひけれは、/唯(たゞ)けふのもてなしの/餅(もち)をくいすごして、む 00011840L17ねのやけるがくるしいといひければ、おれもちと、その/類= 00011850L18火(るい=くわ)にあふて見たひよ。 00011860¥N19¥J 00011870¥X十九△親父がはたらき三国一 00011880M3一△夫婦をどけ者にて、/嫁(よめ)も/娘(むすめ)もあつまりて、/冬(ふゆ)の(十三オ) 00011890M4/夜寒(よさむ)の折ふし、たうふを弐三丁もとめ/田楽(でんがく)にする。親父い 00011900M5ひ出すは、をの+/秀句(しうく)をいふてくふべしと。/嫁(よめ)やがて、 00011910M6われハ仏のつぶりと申て三くし取てのく也。むすめハ、い 00011920M7なば/堂(だう)とてやくし取たり。母ハ/屏風(びやうぶ)のかげより出るをミれ 00011930M8ば、/髪(かミ)をばつとミだしたすきをかけ、左右の手にて目口を 00011940M9ひろげ、われは/鬼(をに)なり。ミなくハふとて、有たけ取たれば、 00011950M10せんかたなさに親父ハ、ふるき手ぬぐひをあたまにかぶり、 00011960M11手をさし出し、/乞食(こじき)に参りた。一つづゝとらして下されと 00011970M12いふ。(十三ウ) 00011980¥N20¥J 00011990¥X二十△/苦身(くるしミ)も/品(しな)によるといふ事 00012000M15一△上/戸(ご)なる親あり。町内に伊勢参宮の/坂迎(さかむかい)とて出けり。 00012010M16暮にをよび内にかへり、むねをなで/額(ひたひ)をとらへ、あらくる 00012020M17し+と、時すぐるまでかなしがるを、利口なるむすこ有。 00012030M18とゝはそれ程くるしひ/酒(さけ)を、よひころにのミもせでと申せ 00012040M19バ、親ハ目を見出し、おのれハこざかしく、何をしりがほ 00012050¥P43 00012060L1にぬかすぞ。此/酔(えひ)のさめるがくるしやといふてあそぶに。 00012070¥Y1軽口露がはなし巻一終(十四オ) 00012080¥Y1かる口露がはなし巻の二目録 00012090M3第一△/伊勢講(いせかう)の/当番(たうばん) 00012100M4二△/蚤(のミ)の/式(しき)三ばん 00012110M5三△/藤(ふぢ)の/丸(まる)がかうやく 00012120M6四△はなし/鳥(とり)のさた 00012130M7五△/蛸(たこ)やくしの/日参(にちさん) 00012140M8六△おやも/閉口(へいこう) 00012150M9七△/仏前(ふつぜん)の/三(ミつ)ぐそく 00012160M10八△一/家(け)の内の物語 00012170M11九△/疱瘡(はうさう)の/養性(やうじやう)(一オ) 00012180M12十△/道外者(だうけもの)のあひさつ 00012190M13十一△/文盲(もんもう)の/風呂入(ふろいり) 00012200M14十二△/欲(よく)ふかき/姥(うば) 00012210M15十三△/借銀(しやくぎん)の/談合(だんかう) 00012220M16十四△人の生れハ言葉でしれる 00012230M17十五△/舞(まひ)まひと百/性(しやう)と/口論(こうろん) 00012240M18十六△/坊主魚(ばうずうを)のねがひ 00012250M19十七△きれひずき 00012260¥P44 00012270L1十八△ひけう者の/喧嘩(けんくわ)(一ウ) 00012280¥T1露がはなし卷の二 00012290¥N1¥J 00012300¥X第一△/伊勢講(いせかう)の/当番(たうはん) 00012310M5一△去医/者(しや)、いせ講の有し所へ/風与(ふと)立より、これはいかう 00012320M6にぎやかなる/躰(てい)じやと申さるれば、/亭主(ていしゆ)申ハ、伊勢講にて 00012330M7御座候。それは御太義といふに、されば貴様のお薬と同事 00012340M8にて、よくまハり候といへば、ことの外/医者(いしや)よろこびかへ 00012350M9りけるに、又存知たる所へ/寄(より)ける。/爰(こゝ)もどたくたといそが 00012360M10しく/料理(りやうり)しけり。亭主申ハ、今ばんはいせかうつとめ申也。 00012370M11さいはひの所へ御出なされた。/勝手(かつて)にて/酒(さけ)(二オ)ひとつま 00012380M12いれといふ。これは御太儀ながらも目出たひ事と申すれば、 00012390M13亭主、されば貴公の薬と同し事にて、さい+あたります 00012400M14といふた。 00012410¥N2¥J 00012420¥X二△/蚤(のミ)の/式(しき)三ばん 00012430M17一ある人、/蚤(のミ)を壱/疋(ひき)とらまへ、式三番をまハせける。む 00012440M18かひの親父これを見て、扨もおもしろき事かな。/吾(われ)ものミ 00012450M19一つほしやと思ひ、/着類(きるい)を見れ共、かねて女房きれいずき 00012460¥P45 00012470L1せしゆへ壱疋もなし。/是非(ぜひ)なく四五日も程過、ある夕ぐれ 00012480L2時分、何かハしらず壱疋とらまへ、うれしゆ思ひ、三番さ 00012490L3うを/始(はじめ)メ(二ウ)、/自(ミづか)ら口/笛(ぶへ)を/吹(ふき)、ゆびにて/畳(たゝミ)をたゝき、/片= 00012500L4手(かた=て)ニ/扇子(あふぎ)をもち、きげんよくまハせける所へ、/成人(せいじん)の/子(こ)/外(そと) 00012510L5より/帰(かへ)り、/親父(をやぢ)、これは何をなさるゝと云。のミに/三番(さんば)さ 00012520L6うをふまするぞ。おれは目がかすんで太夫殿の/舞(まひ)ぶりが見 00012530L7へぬに、/火燭(ひそく)を/灯(とぼ)して、ちやと見よといへば、むすこ、こ 00012540L8ゝろへたとて火そく/持(もち)きたりミるに、何とよくまやるかと 00012550¥G 00012560M1とふ。いや親父、まひはせぬぞ。まハぬも/道理(だうり)て御/座(ざ)る。 00012570M2/役者(やくしや)がかはりて/白身(しらミ)太夫じやといふ。 00012580¥N3¥J 00012590¥X三△藤の丸がかうやく(三オ) 00012600M5一ある所に/藤(ふち)の丸のつきたるのうれんかけたる/家(いへ)にて、 00012610M6/番(ばん)をつとめけるに、折ふし/田舎人(いなかひと)/通(とをり)りあハせ、そのまゝ立 00012620M7より、かうやくを/買(かふ)てミやげにせんと/所望(しよもう)する。番の者、 00012630M8こゝにハなしといふ。して/是(これ)ハ何ぞととふ。いや、かうや 00012640M9くにてはなし。是は町/役(やく)也と/返答(へんたう)した。いと/興(けう)有/答(こたへ)にや。 00012650¥N4¥J 00012660¥X四△はなし/鳥(とり)のさた 00012670M12一△じやうのこハき者二人/寄(より)あつまりゐける所へ、/門(かど)を、 00012680M13はなし鳥+と/売(うり)ありく也。一人が云やう、あのつばくら 00012690M14といふ/鳥(とり)ハとび/魚(うを)に/成(なる)といふ。(三ウ)(四オ挿絵)又一人、い 00012700M15やそれハ大きにうそなりといふて、両人/赤面(せきめん)してせりあひ 00012710M16ける所へ、わるじやれなるおとこ壱人来り、此せんさくを 00012720M17/聞(きゝ)、むかしよりも山のいものうなぎになる/抔(など)といひならハ 00012730M18しけれども、つゐに見たる事もなし。然れともさも有べし。 00012740M19おれも此廿五日に/北野(きたの)ゝ/天神(てんじん)へまいるとて、はちくのかは 00012750¥P46 00012760L1ざうり壱/足(そく)十九文にて/買(かひ)はひたるに、/宿(やど)へ/戻(もど)りミれば、/長= 00012770L2刀(なき=なた)になつたといふた。 00012780¥N5¥J 00012790¥X五△/蛸(たこ)やくしへの/日参(にちさん)(四ウ) 00012800L5一△三/条(ぜう)/辺(へん)に、うハき/成男(なるおとこ)あり。いつの比より/蛸薬師(たこやくし)/日参(にちさん) 00012810L6いたし、其身一代の内/蛸(たこ)をくハぬとて、人にも/披露(ひろう)せしが、 00012820L7/祇園(ぎをん)の/涼(すゞ)ミの/折(をり)ふし、四条/河原(かハら)の/床(ゆか)のうへにて、/友(とも)/立酒(たちさけ)の 00012830L8ミ/居(い)けるに、/茶(ちや)屋の/肴(さかな)とて、もミ/塩(じほ)の大蛸を物の見事に/切(きり) 00012840L9はやし出ける。/彼(かの)おとこ、やがて此たこをしたゝかにくい 00012850L10けり。つれの友、それはたこなるに、何とて其身ハくい給 00012860L11ふぞやといへば、此おとこ、さればきのふ十二日に、ふや 00012870L12町のほてい薬師へ/願(ぐハん)をかけかへ、/向後(けふかふ)われ一代の間ハ/布袋(ほてい) 00012880L13をくハぬといふて、/蛸(たこ)のさいしんを/乞(こう)たり。(五オ) 00012890¥N6¥J 00012900¥X六△/親(をや)も/閉口(へいこう) 00012910L16一△十二三成むすこに親/異見(いけん)するハ、おのれに何をいひ付 00012920L17ても返事せず、打うなづひて斗/ゐ(い)るていたらく、/近比(ちかころ)見ぐ 00012930L18るし。をし五郎にてハあるまひ。人の物いふにハ、いやを 00012940L19の/返答(へんたう)申せよ。/但(たゞ)しうなづく斗にて物事/済(すま)ば、しぜんおれ 00012950M1が目が見へずバ、その/風俗(ふうぞく)ハ見へまひし、/然(しか)らバ一代/埒(らち)の 00012960M2あく事ハ有まひなどゝ、さん※にらミ付しかりける。子 00012970M3がいふやうハ、返事を/高声(かうせう)にしたればとて、もし親父つん 00012980M4ぼの時ハといふた。(五ウ) 00012990¥N7¥J 00013000¥X七△/仏前(ふつせん)/三具足(ミつくそく) 00013010M7一△去/田舎(いなか)に、一/村(むら)ミな一/向宗(かうしう)にて、/道場(だうでう)へまいりて御/讃= 00013020M8嘆(さん=たん)を/聴聞(ちやうもん)いたし、事をはりて/講衆(こうしゆ)申さるゝハ、仏前のミつ 00013030M9ぐそくの内、らうそく立を/仕(し)なをし申さずばなるまひ。あ 00013040M10の鳥を/何(な)んぞ、よの鳥に/好(この)ミ申/度(たい)が、/何(なに)とおもハるゝやと 00013050M11いへば、いづれも此義に同じ。されば/烏(からす)やには鳥もいかゞ 00013060M12也。何がよかろやとせんぎしけり。其中に小ざかしき男の 00013070M13いふハ、とかく/白(しら)さぎにめされかしといふ。/座中(ざちう)、此/義(ぎ)/然(しか) 00013080M14るべしと/談合(だんかう)きハめけるに、/坊主(ばうず)/罷(まかり)出て(六オ)申さるゝハ、 00013090M15いや+、さぎハむやうになされ。其しさいハ、どぜう 00013100M16/坊主(ばうず)にさし/合(あい)じや。 00013110¥N8¥J 00013120¥X八△一/家(け)の内の物語 00013130M19一△ある所に一/家(け)まじハり、色+の物がたりをする/次(つゐで)に、 00013140¥P47 00013150L1/中(なか)ゐの女房がいふにハ、あの正月ある事は五月かならず有 00013160L2となれば、/万事(ばんじ)いはひもつゝしミもいたしたがよひと申せ 00013170L3バ、十四五成こしもと女が/是(これ)を/聞(きゝ)、さてハさやうにあるこ 00013180L4とか。おれハ/左右(さう)も/思(をも)ハぬ也。正月ハかちんをさい+見 00013190L5もし、くいもしたが、五月のけふハ廿八日になれど、/餅(もち)と 00013200L6て壱つもミぬ程に。(六ウ) 00013210¥N9¥J 00013220¥X九△/疱瘡(はうさう)の/養性(やうじやう) 00013230L9一△/上(かミ)京/新在家(しんざいけ)あたりを、三十斗の男とをりけるに、にし 00013240L10の方よりとしころ成/女房(にうばう)、下女壱人めしつれ/来(きた)るとて、此 00013250L11男をミてほや+と/笑(わらひ)より、/楚忽(そこつ)ながら、其方さまを/私(わたくし)所 00013260L12へ御/供(とも)申たきと/語(かた)る。此おとこ、/常(つね)に/色(いろ)このまぬにもあら 00013270L13ねば、/早速(さつそく)に/同道(だう+)して、かの女の所へ/行(ゆき)見れば、れき+ 00013280L14の/家(いへ)ゐなり。やがてろじの/戸(と)をあけ、/屏風(びやうぶ)引ちらしたる/座= 00013290L15敷(さ=しき)へよび入、/種&(しゆ+)/料理(りやうり)をくハせ、さて/最前(さいぜん)の女房いふ様ハ、 00013300L16ちかごろ申かねたる義に(七オ)おハしまし候へども、わた 00013310L17くしハこれの/養君(やしなひきミ)に/乳(ち)をまいらせしうばにて御/座(ざ)候。/今= 00013320L18年(こ=とし)十六になり給ひて、あちこちより/縁付(えんつき)の事のミ申参しが、 00013330L19そもし様に一めあはせまいらせたく存、さてかく申入たる 00013340M1事に候まゝ、/是非(ぜひ)御あひ下されよと、手をとり、おくの/一= 00013350M2間(ひと=ま)へつれ行けり。男/夢(ゆめ)かうつゝかなどゝ思ひながら、ふる 00013360M3ひ+/屏風(びやうぶ)のそばまて行けり。かのうば、むすめの/枕(まくら)もと 00013370M4へ/寄(より)ていふ様ハ、もうし、おまへ様にかゝせられますなと 00013380M5申/証拠(せうこ)ハ、此人を/御覧(ごらん)じませ。おかきなさるゝとひとしく、 00013390M6あの人(七ウ)の/顔(かを)のやうに、ミつちやが/出来(でき)ますといふた。 00013400¥N10¥J 00013410¥X十△/道外者(だうけもの)があひさつ 00013420M9一△/文盲(もんもう)にして、しかもだうけ者あり。其となりによしあ 00013430M10る人/住(すミ)けり。/或時(あるとき)夫婦いさかひはじまりて、たかひに/声(こへ)た 00013440M11かくなりけるに、かのだうけ者/行(ゆき)、けんくハ/最中(さいちう)にあひさ 00013450M12つするこそ、おまへ様がおまへ様なれば、こな様がこな様 00013460M13なり。事のたとへにも、大坂に/介六(すけろく)といふ/大工(だいく)さへ御/座(ざ)る 00013470M14に、かんにんさしやんせといへば、此つかぬ/言葉(ことば)がをかし 00013480M15ゆなりて、/夫婦(ふうふ)ともに、にが+/笑(わらふ)て中をなをりた。(八オ) 00013490¥N11¥J 00013500¥X十一△風呂入 00013510M18一△ちと御めんなれ。/草臥(くたびれ)ものでひえ者で、どうもならぬ 00013520M19が、あき/所(しよ)ハいかゞ。御とをりなされ。おくハむさし/野(の)に 00013530¥P48 00013540L1て侍る。/近比(ちかころ)かたじけなし/抔(など)といふて、/小(こ)風呂の内へ入け 00013550L2るに、/去(さる)人、山たかきがゆへにたつとからずと口ずさみに 00013560L3申を、なま物じり成ものが是を聞、/庭訓(ていきん)のたゞ中をいはる 00013570L4ゝといふに、おかしく思ひ、又一人がいふ。その方ハ物し 00013580L5りがをな事を云。あれは/庭訓(ていきん)にてハない。/節用集(せつようしう)といふ/謡(うたひ) 00013590L6の本に有事じやと。(八ウ)(九オ挿絵) 00013600¥N12¥J 00013610¥X十二△/欲(よく)ふかき/姥(うは) 00013620L9一△ある山/家(が)に/欲(よく)ふかきうばあり。人の物と見ては、/木(こ)の 00013630L10/葉(は)ひとつわら一すじ成共、くれい+と、たくしもらふ也。 00013640L11ある時、大き成/鼠(ねずミ)をとらまへそこなふて、/尾(を)斗引ちぎれ/捨(すて) 00013650L12けるを、それをくれよといふに、人、これはねずミの/尾(を)な 00013660L13り。そなたにやりても、やくにたゝぬ物よといへば、かの 00013670L14/姥(うば)、成程やくにたつと云。何にするやととへば、その尾を 00013680L15/干(ほし)てをき、/姥(うば)が/家(いへ)に代&/伝(つたハ)りたるきりのさやにするといふ 00013690L16た。 00013700¥N13¥J 00013710¥X十三△/借銀(しやくぎん)の/談合(だんかう)(九ウ) 00013720L19一△わかき者共あつまり、一人がいふやうハ、今時は何の 00013730M1/商売(しやうばい)も/売(うり)くずして、中+すぎわひにたらぬ。どこぞに 00013740M2大/分(ぶん)あそんで有かねがあらふに、さてくるり+とまハす 00013750M3べきに、口/惜(をしい)事じやといふ。今一人がいふ様は、よそに大 00013760M4きなかねがあれど、其方の/器量(きりやう)にてハまハす事が成まひと 00013770M5いへば、それは/耳寄(ミヽより)な事を/聞(きい)た。其かねはどなたのかねじ 00013780M6や。利さへやすければ、なる程まハして程なく/富貴(ふつき)に成也。 00013790M7其かねの有所をしらせ給へといへば、いとやすき事なり。 00013800M8(十オ)をしへ候ハんまゝ、ずいぶん/力(ちから)一はいまハし給へ。 00013810¥G 00013820¥P49 00013830L1/則(すなハち)、所ハかくれもない、三十三/間(げん)と大仏のあひに、大き成 00013840L2かねにて/常住(じやうじゆ)あそんで有と云た。 00013850¥N14¥J 00013860¥X十四△人の生れハ言葉でしれる 00013870L5△ある寺に年ふりたる松木一本あり。/老僧(らうそう)は/少人(せうじん)にたハ 00013880L6ぶれ、あの松ハ/男(を)松であらふか/女(め)松であるべきかといハれ 00013890L7たり。/哥(うた)よみの子が申さるゝハ、女松にておハすらん。月 00013900L8のさハりになるほどに。/土民(どみん)の子がいふにハ、おとこ/松(まつ)じ 00013910L9やと云。あれほど松ふぐりの有物を。(十ウ) 00013920¥N15¥J 00013930¥X十五△舞まひと百性と/口論(こうろん) 00013940L12一△それ+に/忌(いミ)こと/葉(ば)のあるぞかし。/茄子(なすひ)にハまふとい 00013950L13ふことばを百性も/忌(いミ)る也。/都(ミやこ)七条/朱雀(しゆしやか)にて、なすびをうへ 00013960L14る百性あり。又その/節(せつ)ハ/吉祥院開帳(きちじやうゐんかいてふ)の折から、/参詣(さんけい)の人に 00013970L15/勧進(くハんじん)をせし舞をまふ男あり。或時とをりあハせ見れバ、 00013980L16大きなる/土工李(とくり)に/盃(さかつき)をそへて有。ちと是をなん/望(のそミ)にや思ひ 00013990L17けん、/畠(はたけ)へ立より、さらバ一ふしまハんと云ふ。百性聞て、 00014000L18あらもつたいなや、/門(かと)出あしゝと大に/腹立(ふくりう)しけれと、/かく((と脱カ)) 00014010L19いひより/酒(さけ)をのミのま(十一オ)せけるが、立て/行(ゆき)さまに、さ 00014020¥G 00014030M12きほどの/腹立(ふくりう)は、たがひに、ねもはもをりない事よと/上(うハ)ぬ 00014040M13りを申た。 00014050¥N16¥J 00014060¥X十六△/坊主魚(ばうずうを)の/願(ねがひ) 00014070M16一△ある所の/地頭(ちとう)と中のよき出家あり。/振舞(ふるまひ)によバれて/色= 00014080M17&(いろ=+)/食物(しよくもつ)の咄し有しに、/海月(くらけ)と云物ハ/精進(しやうじん)めきたる物也。出 00014090M18家にもまいらせたや。殿に云て是をゆるしにせんなどゝ/語(かた) 00014100M19る。年たけたる/弟子(でし)聞て、殿へ仰上るゝつゐでに、/鯉鮒(こいふね)の 00014110¥P50 00014120L1事をも/頼(たのミ)入。又/私(わたくし)が/名(な)を/替(かへ)ます。/宗加(そうか)と申がすきで御座 00014130L2ると。(十一ウ)(十二オ挿絵) 00014140¥N17¥J 00014150¥X十七△きれいずき 00014160L5一△きれいずき成もの有。けぬきを/持(もち)て口のはたのひげを 00014170L6ぬきゐたり。そば成るもの、少それをわれにかし給へとい 00014180L7ふ。かし候はん間、むさい所をぬき給ふなとてわたしける。 00014190L8扨もよくくふけぬきじや。なんでもたしなミ人かな/抔(など)とほ 00014200L9めちらし、大かたしまひ、のどの/下(した)をぬきければ、かの者 00014210L10いふやうハ、それむさい所よとゆびざししければ、のどの 00014220L11/下(した)にむさき所が有やととがめければ、成ほど+むさひ。 00014230L12御身の/下帯(したをび)をはさむ所じやといふ。(十二ウ) 00014240¥N18¥J 00014250¥X十八△ひけう/者(もの)の/喧嘩(けんくわ) 00014260L15一△夜ふけて三条大ばしを/通(とを)る者あり。むかふより来る人 00014270L16に/橋(はし)の中ほどにて行あたり、それをとがめ、たがひに/口論(こうろん) 00014280L17になし、一人ハ大男、一方ハ小男、/双方(そうハう)につかみ合、大男 00014290L18ハ/苦(く)もなく小男をくミふせ、/馬(むま)のりにしてゐたり。小男、 00014300L19今ハはやこれ/迄(まて)と思ひ/定(さだ)め、九寸斗のさすがをぬき、つか 00014310M1んとせしを、/上成(うへなる)大男、これをミて、/高声(かうせう)に、やれ人ごろ 00014320M2しよ。出合+といふたハ、/組(くミ)ふせて/居(い)ながら/排興者(ひけうもの)ぞと。 00014330¥Y1露がはなし巻二終(十三オ) 00014340¥P51 00014350¥Y1かる口露がはなし巻の三目録 00014360L3第一△/御霊(ごれう)大明神へ/福(ふく)を/祈(いの)る事 00014370L4二△/塩打豆(しほうちまめ)のはなし 00014380L5三△目くらの/頓作(とんさく) 00014390L6四△/賀茂(かも)川の大水 00014400L7五△をどけ/言(こと)も/斎(とき)による 00014410L8六△人より/鳥(とり)がこハひ 00014420L9七△百まんべん万日参り 00014430L10八△しハき/坊主(ばうず)の/若衆(わかしゆ)ぐるひ 00014440L11九△わたまし/祝義(しうき)の/使者(ししや)(一オ) 00014450L12十△とがのなひ/盗人(ぬすひと) 00014460L13十一△/魚類(ぎよるい)がしやミせん引事 00014470L14十二△せいじんのむすめに/異見(いけん) 00014480L15十三△/東(とう)じの/塔(たう)にてばくちうち 00014490L16十四△/浄土法花(じやうとほつけ)の相ずまひ 00014500L17十五△/児(ちご)のつまミぐひ 00014510L18十六△/両外(りやうげ)ちがひ(一ウ) 00014520¥T1露がはなし巻の三 00014530¥N1¥J 00014540¥X第一△/御霊(ごれう)大明神へ/福(ふく)を/祈(いの)る事 00014550M5一△上京にひとりの/職(しよく)人あり。/朝夕(あさゆふ)を/送(をく)りかねゐけるが、 00014560M6とかくは/氏神(うじがミ)へ/祈(いの)りをかけ、/急(きう)に/富貴(ふうき)に成べしと思ひ、御 00014570M7霊明神へ七日/詣(まふ)でいたし、/私(わたくし)に銀子壱貫目/得(え)さしてたび給 00014580M8へと、かんたんくだき/祈(いの)りける。/満(まん)ずる七日の夜あらたに 00014590M9御/告(つげ)あり。/汝(なんぢ)うらむる事なかれ。よく/分別(ふんべつ)して神をもいの 00014600M10れ。/分在(ぶんざい)に過たる/願(ねがひ)ハ得さしがたし。われ/多(をふ)くの/氏子(うじこ)を/持(もち) 00014610M11たるといへども、/上(かミ)で/御霊(ごれう)/下(しも)で御霊とて、二所(二オ)ぜよた 00014620M12ひにて十両なり。/汝(なんぢ)壱貫目の/望(のそミ)なれば、今小/判(ばん)にて十六七 00014630M13両に/及(をよ)べり。何として成べし。さりながら氏子の事なれば 00014640M14/不便(ふびん)に思ふ。いそぎ是より/真如堂(しんによだう)の/稲荷(いなり)へ参り、/福(ふく)を/祈(いの)れ 00014650M15と/御(ご)れい/夢(む)有。此おとこ目をさまし、すこしりくつをこね 00014660M16たり。/稲荷(いなり)とハいねをになふと/読(よむ)なれば、百/性(しやう)の/望(のそミ)こそか 00014670M17なふべし。/我等(われら)ハしよく人の事なれば、百性の手ハざはな 00014680M18らぬ也。とてもならぬ事ならバ、七日迄つらずとも、とく 00014690M19にしらせ給ハひでと大きに/腹立(ふくりう)し、/社壇(しやだん)をにらミ、扨もに 00014700¥P52 00014710¥G 00014720L12くひ/四一(よいち)両めがといふた。(二ウ) 00014730¥N2¥J 00014740¥X第二△/塩打豆(しほうちまめ) 00014750L15一△ある/儒者(じゆしや)の所へ町人見まひければ、/茶(ちや)をのませ、其う 00014760L16へにて小者に、其/塩打豆(えんてふず)すこし/持参(じさん)せよといふ。やがてち 00014770L17いさきへぎ/台(だひ)に、しほうちまめを少入、/座敷(さしき)へ出す。町人 00014780L18是をミて、此まめの名ハ何と申と/問(とへ)ば、/塩打豆(ゑんてふず)とい也。 00014790L19其心ハいかにといへば、/塩(えん)ハしほ、/打(てふ)ハうち、/豆(ず)ハまめと 00014800M1/講尺(こうしやく)せられ、今すこしたべ候へといへば、小者が申ハ、も 00014810M2はやなしといふ。主人、ふぎうりき也といふを、町人又、 00014820M3其御/言葉(ことば)ハいかに。/不及力(ちからをよハず)といふ事じや。扨ハこびたる口 00014830M4上を/覚(おほ)へ(三オ)たると悦びかへり、内の/女房(によばう)にいひふくめ、 00014840M5/件(くだん)の/豆(まめ)をこしらへ、/誰(たれ)がな此言葉を云て/振廻(ふるまひ)たやと/待(まち)し所 00014850M6へ、/舅(しうと)の/親父(をやぢ)来れり。/亭主(ていしゆ)、その/塩打豆(ゑんてうずを)持参せよといへば、 00014860M7女房、あゝと云ふて少し出しけり。親父、何心もなくひた 00014870M8物くひけり。亭主よろこび、今少出せといふ。女房/打(うち)わす 00014880M9れ、あゝといふてすでに出さんとせしが、/急度(きつと)思ひ出し、 00014890M10いや、もはやなしといふ。亭主、何、ゑんてふずハもはや 00014900M11ないとや。/不及力(ふぎうりき)を/忘(わす)れて、あのふぐりなしめがと女房を 00014910M12しかりければ、女房、それは/言葉違(ことバちがひ)で御ざろふ。女に何の 00014920M13ふくりがあろふといふた。(三ウ)(四オ挿絵) 00014930¥N3¥J 00014940¥X第三△目くらの/頓作(とんさく) 00014950M16一△/針立(はりたて)の目くら/坊主(ばうず)、/旦那(だんな)がたへ/療治(りやうぢ)に行、よも山の物 00014960M17語にとりまぎれ、しバらく/隙(ひま)を入ける所へ、/客(きやく)/来(きたり)、はじめ 00014970M18て/知(しる)人に成、/客(きやく)より申ハ、何と/座頭(ざとう)どのハどなたの御/弟子(でし) 00014980M19にて候や。いち/方(かた)か、ぜう方か。/定(さだめ)て/琴(こと)/三味線(さミせん)も、/平家(へいけ)小 00014990¥P53 00015000L1うたも上/手(ず)にておハし候ハん。/以後(いご)ハ/拙者(せつしや)所へも申入、一 00015010L2/曲(きよく)承り候ハんなどゝ、念比に申されければ、此目くらも、 00015020L3あまりゐんぎん成あひさつにいたミ入、たうわくせしめ、 00015030L4いや、私ハいちかたにてもぜうがたにても御座なく、はり 00015040L5かたニてと申た。(四ウ) 00015050¥N4¥J 00015060¥X第四△/賀茂(かも)川の大水 00015070L8一△きのふけふの大雨にて、/都(ミやこ)の/賀(か)も川一はいに大水出た 00015080¥G 00015090M1り。四条三条の/辺(へん)にて/諸人(しよにん)見物する中に、ひとりがいふや 00015100M2うハ、さのミ大水といふ程にもなひ。夕部と見合に、水の 00015110M3/高(たか)さ五寸にハまされずといふ。ありあふ人の申ハ、それは 00015120M4目ちがひにてあるべし。夕部とハ一尺や二尺のましと云事 00015130M5ハないにといへば、かの者じやうこハく、はてさて、へた 00015140M6なことをいはるゝ。今二寸たかければ、/爰(こゝ)のほんと町ハ/一(ひと) 00015150M7なでじや。(五オ) 00015160¥N5¥J 00015170¥X第五△をどけ事もときによる 00015180M10一△おどけたる者、或時/長老(ちやうらう)を申うけ/斎(とき)を/進(しん)じけるに、/老= 00015190M11僧(らう=そう)、だんなにむかつて、/今朝(けさ)の/追善(ついぜん)は六/親(しん)の内たれ人の/年= 00015200M12忌(ねん=き)、どなたのためにて候と申さるれば、亭主ゐんぎんにか 00015210M13しこまり、手をつき、まき/舌(じた)の口上にて/高(たか)+と申けるハ、 00015220M14御/尋(たつね)にて御座候/条(ぜう)、つまびらかに申上べき。今日ハ/拙者(せつしや)が 00015230M15/兄嫁(あによめ)や/妹(いもと)むこのしうとの日て御ざると申た。こびたる口上うる 00015240M16さし。只親の日といはひで。 00015250¥N6¥J 00015260¥X第六△人より鳥がこハひ(五ウ) 00015270M19一△ひがし山/黒谷(くろたに)の/辺(へん)に/畠(はたけ)をうつに、となりの百性通りあ 00015280¥P54 00015290L1はせ、是ハ何をまくぞといふに、/彼(かの)はたうち、/小手(こで)まねき 00015300L2して、あ+/声(こへ)がたかひぞ。ひきう+といふ。扨ハ/世(よ)に 00015310L3まれなる/唐物(からもの)の/種(たね)をうゆるにやと思ひ、心得たりとさし/足(あし) 00015320L4してちかく/寄(より)たれば、いかにもおのれが/声(こへ)のてうしをひき 00015330L5くいふにハ、/大豆(まめ)をまく。/烏(からす)や/鳩(はと)がきく/程(ほど)に。 00015340¥N7¥J 00015350¥X第七△百/万辺(まんべん)の万日参り 00015360L8一△ある人夫婦づれにて、百/万辺(まんべん)の万日ゑかうに参るとて、 00015370L9今出川のひがし/野(の)中にて/知(しる)人に/行(ゆき)(六オ)あふたり。扨も/御= 00015380L10亭(ご=てい)ハといへば、女房、そのまゝ/返答(へんたう)におよハず、はしりよ 00015390L11り、そゝと物をいふて給ハれといふ。扨ハ/誰(たれ)ぞにかくるゝ 00015400L12かや。いや、かくれます人も/御座(ござ)らぬが、内にあまをねさ 00015410L13せてきたが、もし/声(こへ)のたかきに目がさめればめいわくとい 00015420L14ふた。 00015430¥N8¥J 00015440¥X第八△しハき/坊主(ばうず)の/若衆(わかしゆ)ぐるひ 00015450L17一△しハき坊主が/去(さる)わかしゆを恋わびて、かず+文をか 00015460L18よハしくどきければ、/若衆(わかしゆ)とをり者にて、一夜坊主の方へ 00015470L19とまりに行ける。/暁(あかつき)雨のふるをとを坊主きゝつけ、南無 00015480¥G 00015490M12/三宝(さんぽう)、とめてくやしや。/朝飯(あさめし)(六ウ)をふるまハずば成まひ。 00015500M13そらね入して、/起(をき)てかへるをしらぬふりにせんこそよから 00015510M14めと/思案(しあん)しけれバ、若衆、そと/起(をき)て行ける。もはや/門(もん)のそ 00015520M15とへも出ぬと思ひ、心もとなさにおきて見ければ、いまだ 00015530M16門の内にやすらへるを見付、/仰天(ぎやうてん)し、立てゐながら目をふ 00015540M17さぎ、/高(たか)いびきをかき事よ。 00015550¥N9¥J 00015560¥X第九△わたまし/祝儀(しうぎ)の/使者(ししや) 00015570¥P55 00015580L1一△あたらしく/普請(ふしん)/出来(でき)たる所へ、/知音(ちいん)の方より祝義をも 00015590L2たせ/使(つかい)をやるに、かまへて/常(つね)の所へ使に行とハ/違(ちがふ)そ。一/言(こん) 00015600L3にても/卒怱(そこつ)なる/言葉(ことは)を申なと。(七オ)/畏(かしこまり)て候とて行ける。 00015610L4さきの亭主悦ひ、/献&(こん+)をくみ/馳走(ちさう)いたす。されどもつゐに 00015620L5/唖(をし)のごとくなれバ、亭主すまぬ事に思ひ、貴所はいかな/子= 00015630L6細(し=さい)により無/言(ごん)の仕合ぞや。わめきさめくこそ目出たけれと 00015640L7いふ時、されば、さき程から物がいひたふて、/胸(むね)がやける 00015650L8程にあつたれど。 00015660¥N10¥J 00015670¥X第十△とがのなひ/盗人(ぬすひと) 00015680L11一△おれが/秘蔵(ひさう)せしわきざしがミへぬ。そちがぬすミたる 00015690L12といふ。いやとらぬ。さりとてハ/証拠(せうこ)人有とつよくいふ時、 00015700L13取ハせぬ。人の見ぬまにもらふた。(七ウ)(八オ挿絵) 00015710¥N11¥J 00015720¥X十一△/魚(うを)がしやミせん引事 00015730L16一△月花の/遊興(ゆうけう)に、/琴(こと)/三味線(さミせん)を/引(ひき)もよほすハ/人間(にんげん)のならゐ 00015740L17也。さる程ニ此度われら/西国(さいこく)より/上(のほ)り、/海上(かいしやう)/永&(なが+)かゝり、 00015750L18めづらしき事を見侍るといへバ、/座(さ)中、何事なるぞ。おも 00015760L19し/き((ママ))事ならはなし給へといふ。されば、しやミせんハ人間 00015770M1斗のなぐさみニてなひ。/海底(かいてい)の/魚(うを)も引ならふといふ。それ 00015780M2ハ/近比(ちかころ)/聞(きゝ)をよバぬめづらしき咄しなり。/但(たゝし)貴所も久&西国 00015790M3の/住(すま)ゐにて口かしこく、御江戸にはやるけいあんことバを 00015800M4申されけるといへば、いや、しかも小うたに(八ウ)のせて、 00015810M5/鱈(たら)とふぐと/毎(まひ)日引あそぶ也。其小うたハ。たんたらふくつ 00015820M6るてん、たらふくつるてんと引。 00015830¥N12¥J 00015840¥X十二△せいじんの/娘(むすめ)に/異見(いげん)する事 00015850M9一△さる人、むすめ二人持けり。あねハ年十八、/妹(いもと)ハ十六、 00015860M10ふたり共にえん付せり。さきにてあねハにくまれさられ、 00015870M11/妹(いもと)ハよつばりたれるとてさられける。おや、さん+/腹立(ふくりう) 00015880M12しけれ共、/是非(ぜひ)なくてしか+/異見(いけん)申より外ハなし。かゝ 00015890M13る所へ/頓作(とんさく)のよき人来り、此よしを聞、親にいふやうハ、 00015900M14さのミ御異見無用になさるべし。/今年(ことし)ハ/道理(だうり)也。/来(らい)年から 00015910M15ハ両人の/子達(こたち)(九オ)よくなをり申べしといへば、おや、こ 00015920M16としハあしゝ、来年ハよしとはいかゝ。心へがたしといふ。 00015930M17/彼(かの)もの申やうハ、あねハにくまるゝはづじや。二九の十八。 00015940M18/妹(いもと)のよつばりハしゝの十六なり。とかくことしハ其はつじ 00015950M19や。 00015960¥P56 00015970¥N13¥J 00015980¥X十三△/東寺(とうじ)の/塔(だう)にてばくち打 00015990L3一△さる/博奕打(ばくちうち)、とうじの/塔(たう)へしのび入、三国一よき所と 00016000L4て、大/声(ごへ)あげてうち/居(い)たり。所の/衆僧(しゆそう)より申ハ、此/塔(たう)へ出 00016010L5入する事かたくきんぜい。/殊(こと)に見れバ博奕也。其儀ハ日本 00016020L6国の/御法度(ごはつたう)也。いそぎ立さり申べしと申さるゝ。/博奕(はくち)打共 00016030L7口をそろへて申やうハ、御法度(九ウ)なればこそ/爰(こゝ)で打ま 00016040L8すといふ。それいかにと申に、/塔(たう)の下にて、ことに大/勝負(せうぶ) 00016050L9にて/更(さら)になし。/銭(せに)にてハ八文にたらず、/高(たかハ)九りんの/勝負(せうぶ)也 00016060L10といふた。 00016070¥N14¥J 00016080¥X十四△浄土宗と/法華宗(ほつけしう)と/相住居(あいすまひ)の事 00016090L13一△さる町人にじやうのこはき法花宗と浄土宗と、壱/軒(けん)の 00016100L14家に/壁(かべ)をへだて/住(すまひ)ゐける。或時念仏/講(こう)にて大/鐘(かね)を/打(うち)ならし、 00016110L15/夜半(やはん)の/比(ころ)迄念仏申て、扨/夜食(やしよく)になら/茶(ちや)をせしが、/件(くだん)の法花 00016120L16のかたへ、/今(こん)ばんハおやかましゆ候ハん。あまり/夜寒(よさむ)に候 00016130L17まゝおくり候よし申て、かのなら茶をやりける。忝とて 00016140L18此(十オ)/食(しよく)をしたゝかたべけり。くふとひとしく/腹中(ふくちう)いた 00016150L19ミ、/夜中(よぢう)に廿五たびくだりける。かた法花の事なれば口す 00016160M1さまじくそしるこそ、いやの南無阿弥陀仏を/数(かず)&/聞(きゝ)たる故、 00016170M2/法然(ほうねん)が日と同じやうに/雪陰(せつゐん)へ行も廿五/度(ど)と、さん+につ 00016180M3ぶやきけり。/翼日(よくじつ(ママ))はらもなをりければ、女房いふハ、/今朝(けさ) 00016190M4のくだりハ何と有ぞ。されば南無あミた迄ハやミたり。さ 00016200M5りながらまだ残りたるやら、ぶつ+といふ。 00016210¥N15¥J 00016220¥X十五△/児(ちご)のつまミぐい 00016230M8一△さる所に/茗荷(めうが)のさしミありけるを、お/児(ちご)、/是(これ)を(十ウ) 00016240M9(十一オ挿絵)つまミくいけるを、そば成人申やうハ、これを 00016250M10バむかしより今にいたり、物よミ覚ん事をたしなむ人ハ、 00016260M11ミなどんごん/草(さう)と名付、物わすれするとて、かたくくハぬ 00016270M12物じやといひをしへければ、/児(ちこ)聞て、それならバおれハ/猶(なを) 00016280M13くふべしといふ。ひだるさをくふてわすれうといふた。 00016290¥N16¥J 00016300¥X十六△/両外(りやうげ)ちがひ 00016310M16一△ある人/番(ばん)にあたり、上下を/着(ちやく)してつとめけるに、ひが 00016320M17しのかたよりあじろの/駕(のりもの)に、びろうどのたて/笠(がさ)、はさみ/箱(ほこ)、 00016330M18/供(とも)人あまたつれて通られける。番の(十一ウ)者ども、いかさ 00016340M19ま、よしある御かたなり。/座上慮外(さしやうりよぐわい)のいたり成べしと思 00016350¥P57 00016360L1ひ、/土(つち)べにをりてひざまづき、つゝしんで待うけたり。の 00016370L2り物なるハ浄土宗の長老なり。此よしを見られて、/時宜(じぎ)す 00016380L3るとハ思ひもよらず。十念の望なるべしと心得、やがての 00016390L4り物の戸をひらき、/合掌(がつしやう)して、南無あミ+といはれけれ 00016400L5ば、番の人&/興(けう)をさまし、はかまの土をふるひけるとぞ。 00016410¥Y1露がはなし巻三終(十二オ) 00016420¥Y1かる口露がはなし巻の四目録 00016430M3第一△/始(はじめ)てよバれし/祇園会(きをんゑ)の/客(きやく) 00016440M4二△/野郎(やらう)の/金剛(こんがう)念仏講 00016450M5三△人のうハさ 00016460M6四△たき物の取ちがひ 00016470M7五△うそ講の/参会(さんくハひ) 00016480M8六△物のあハれは人の行末 00016490M9七△/印判(ゐんばん)屋のむすこ 00016500M10八△/船(ふね)のしかた 00016510M11九△/文盲(もんもう)成者の/子細(しさい)を/習(なら)ふ(一オ) 00016520M12十△/灸(きう)をろしのさた 00016530M13十一△/新仏(しんふつ)一/躰(たい)の/望(のそミ) 00016540M14十二△同ふしん 00016550M15十三△花見の/張賃(てふちん) 00016560M16十四△りんきはなし 00016570M17十五△同講のくはだて 00016580M18十六△/辻談義(つじだんぎ) 00016590M19十七△/順礼捨子(しゆんれいすてご)のはなし 00016600¥P58 00016610L1十八△/水瓜(すいくハ)のせんさく(一ウ) 00016620¥T1露がはなし巻之四 00016630¥N1¥J 00016640¥X第一△/始(はしめ)てよバれし/祇園会(ぎをんゑ)の/客(きやく) 00016650M5一△京に/富貴(ふつき)なる人あり。生国ハ/田舎(いなか)人にて、十才より京 00016660M6へ上り、物事しはくして/銀(かね)をのバしける。/寒(さむ)き時ハ/灯明(とうミやう)の 00016670M7火にてせなかをあたゝめ、/暑(あつき)折にハ/越中(ゑつちう)ふんどし一/筋(すじ)にて 00016680M8かせぎ、こまかうして銀高八千貫目持、/毎(まい)年/諸方(しよハう)へかしけ 00016690M9り。其銀の/廻(まハ)る事、/淀(よど)の/水車(ミつくるま)ハいそなり。/幼少(ようせう)より京への 00016700M10ぼり、かほどの/身躰(しんだい)に成といへ共、つゐに/古郷(ふるさと)の/親類(しんるい)ひと 00016710M11り/呼(よび)たる事もなし。/或年(あるとし)六月ぎをん/会(ゑ)ニ(二オ)はじめて/呼(よび) 00016720M12ければ、何が/田舎(いなか)ものゝ事なれば、いとこはつこに/至(いたる)迄、 00016730M12/宵(よい)の日よりとまりがけに上りける。神事の/膳分(ぜんぶ)ハ、つまミ 00016740M14大こんの/汁(しる)、/黒米飯(くろごめめし)、/瓜(ふり)なます、あま/酒(さけ)一はいより/外(ほか)に/香(かう) 00016750M15の物もくはせず。中にも/亭主(ていしゆ)にちかき人いふやうハ、はじ 00016760M16めてよバれ候神事にハ、/料理(りやうり)そさう成といふ。されば/今年(ことし) 00016770M17程/無(ぶ)仕合なる事ハなし。さるによつて、そちたちをまんな 00016780M18をしに/呼(よび)たるぞ。来年ハ仕合して/結講(けつかう)申べしといへば、そ 00016790M19れは心もとなし。いか成事やととふ。其やうすは見せ申べ 00016800¥P59 00016810L1しとて、ミな+引つれ(二ウ)五/間(けん)/四方(よハう)の/蔵(くら)の/戸(と)あけて見 00016820L2せたり。十/貫(くハん)目入の/箱(はこ)入を物の見事につミかさね、あれ 00016830L3見給へ。いつもハ壱はこもなきに、ことしハかし所がなふ 00016840L4て、かね殿が/昼(ひる)ねをしてゐらるゝといふた。 00016850¥N2¥J 00016860¥X第二△/野郎(やらう)の/金剛(こんがう)念仏講 00016870L7一△野郎の/草履取(ざうりとり)を、/異名(いミやう)に/金剛(こんがう)といふとかや。あるとき 00016880L8/途中(とちう)にて念仏講の同行に/逢(あふ)たり。そちハ此/季(き)より/自前(じまへ)に宿 00016890¥G 00016900M1を持たるよし。それに付、此月の講ハ其方があたり番成が、 00016910M2いかゞつとめ申さるべきやといふ。いかにも明/晩(ばん)つとめ候 00016920M3ハん。同行(三オ)衆へも其よし申給ハれといふて、/互(たがひ)にわ 00016930M4かれける。扨宿にかへり、女房にかくといへば、女房あき 00016940M5れていふやうハ、こちハいまだ此ごろの宿ばいりにて、仏 00016950M6もなく、いかゞすべきといへば、男聞て、/気遣(きつかい)するな。其 00016960M7/才覚(さいかく)ハふんべつしたぞ。さいわひ夜るの事なれば、人の見 00016970M8/知(し)り有まじと思ひ、/立像(りうざう)の仏一/躰(たい)かりとゝのへ、/箱持仏堂(はこぢぶつだう) 00016980M9へ/押(をし)入つとめけり。何れもわれいちとしこりかゝつて、せ 00016990M10め念仏を申。すでに/廻向(ゑかう)とおぼしき時、かの仏の御/面(かを)、く 00017000M11るりとめくれ、/鬼(おに)の/顔(かを)に成けり。何れも念仏を申やめ、お 00017010M12そろし(三ウ)(四オ挿絵)く、これハ+と斗申けり。亭主 00017020M13是をミて、其はづじや。くるしゆなひぞ。/糸(いと)がきれたとい 00017030M14ふ。せんさくすれば、/芝居(しばい)より/借用(しやくよう)したからくりのはりぬ 00017040M15きじや。 00017050¥N3¥J 00017060¥X第三△人のうわさ 00017070M18一△二三人よりあひて物のよしあし/評判(ひやうばん)せしが、そんぜう 00017080M19そいつハ/賢(かしこい)やつじや。水の中をもぬれずにくゝるやうなや 00017090¥P60 00017100L1つよといへば、一人かいふ様ハ、それハ其方のあまり/誉(ほめう)ど 00017110L2ての/言葉(ことば)よ。今でもよびよせ、水に入れたらバぬれべし。 00017120L3/殊(こと)に/紙子(かミこ)を/着(き)せたらバ/猶(なを)ぬれべしとせり合ける。してもか 00017130L4しこひ(四ウ)者じやといひけり。それは御身の申されやう 00017140L5あしゝ。/了簡(りやうけん)の/不(ふ)了簡といふ物也。人の目にミづにいる時 00017150L6ハ、ぬれずにくゞる事ハ扨をき、ねてゐても、いかなこと 00017160L7ぬれまひといふた。 00017170¥N4¥J 00017180¥X第四△たき物の取ちがひ 00017190L10一△よしある人の方へ/振舞(ふるまひ)に行ければ、/飯後(はんご)の/湯(ゆ)出たるに、 00017200L11/風味(ふうミ)ことにかうバしく、大きによしとほめけるを、内義/聞(きゝ) 00017210L12つけ、うれしげにのうれんのひまより/顔(かを)さし出し、お/湯(ゆ)の 00017220L13かうばしきもことハりや。/薫物(たきもの)をくべた程にと申されけれ 00017230L14ば、/座敷(さしき)に(五オ)ゐたる人&も、/耳(ミヽ)にしミてぞかんじける。 00017240L15中に壱人うらやミ、/宿(やと)にかへり、女房にかたれば、それ程 00017250L16の事ハ/誰(たれ)もいふべき物をとあざわらひ、/知音(ちいん)をよびならべ、 00017260L17/飯(めし)の/湯(ゆ)を以前のやうにとゝのえ出し、人&、かうばしやと 00017270L18ほむる時、女房はゞからず、おゆハかうばしからふ。/柴(しば)を 00017280L19三/束(ぞく)たらずくべた程に。 00017290¥N5¥J 00017300¥X第五△/嘘講(うそかう)の参会 00017310M3一△/常(つね)に中よき/友立(ともたち)、十人斗/講(かう)をむすびて、さい+/参= 00017320M4会(さん=くハひ)せし。/名(な)をうそ/講(かうと)付たり。此いはれハ/色里(いろざと)へ/往来(わうらい)せんた 00017330M5めの手くだの/沙汰(さた)なり。/或(ある)時/友(とも)ニ(五ウ)/途中(とちう)にて行あふて、 00017340M6/晩(ばん)にハ内&の講をつとめ候間、御出候へと、かたくけいや 00017350M7くして、/暮(くれ)におよびて行ければ、/昼(ひる)過より/他行(たぎやう)いたし、宿 00017360M8にハゐぬといふ。講中、せんかたなくかへりける。あけの 00017370M9日、/彼(かの)友がいふやうハ、夕部ミな+われ所へ参られたる 00017380M10を聞てゐたれ共、わざと留主をつかふたといふ。それはち 00017390M11かごろ/届(とゞ)かぬしかたじやとせんぎすれば、彼ものいふハ、 00017400M12/元来(くハんらい)此衆中にてハ/筈(はづ)の/違(ちが)ふ事ハくるしからず。/寄(よる)程の者 00017410M13ハミなうそつき講じや物を。 00017420¥N6¥J 00017430¥X第六△物のあハれは人の行末(六オ) 00017440M16一△むかしハ大/金(かね)持の大じんなれど、世の/盛衰(せいすい)とて/近(きん)年を 00017450M17ちびれ、/雑式(ざうしき)の/金(かな)ぼうよりいたきびんぼうにたゝかれ、あ 00017460M18しこしもなやミはて、せんかたもなく/乞食(こつじき)になり、或時ハ 00017470M19/清水寺(きよミつてら)又ハ/北野(きたの)七本松の/辺(へん)にて、/往来(わうらい)の人に/袖乞(そでこひ)してげり。 00017480¥P61 00017490L1然るところへ/当流(たうりう)の大じんと見へて、友たち多くつれだち、 00017500L2大こ/交(まじ)りにて/弁当(べんたう)したゝかにもたせ、上下さゞめきありく 00017510L3所へ、かの/乞人(こつじん)、やぶれあミ/笠(かさ)かぶり物を乞。折ふしおと 00017520L4に聞えし大こ、にへたとあふむ也。はづかしく思ひ、ちや 00017530L5くと見ぬ/顔(かを)せしが、何が/当世(たうせい)(六ウ)のとをり/者(もの)の大こなれ 00017540L6ば、むかし/恩(をん)を見たるよしミあり。/彼袖(かのそで)/乞(こふ)人にことばをか 00017550L7け、少し/小腰(こごし)をかゞめいふやうハ、もうし、おまへハそん 00017560L8ぜうどなた様にては/御座(こざ)らぬか。扨もひさしや。して/是(これ)ハ 00017570¥G 00017580M1いかなる事にて、かやうの御すがたにならせ給ふぞと、い 00017590M2としミ+とたづねければ、むかしせんしやういふたるく 00017600M3せにて、あゝ/音(をと)たかし+。必さたハなひ事。わざと此身 00017610M4に成て親のかたきをねらふといふた。 00017620¥N7¥J 00017630¥X第七△/印判屋(ゐんばんや)のむすこ 00017640M7一△ある所に/印判(ゐんばん)屋ハとし/比(ころ)の/親父(をやぢ)にて、/常(つね)にめ/金(がね)(七オ) 00017650M8をあてゝ/細工(さいく)せられける。去人、ゐんばん壱つ/誂(あつら)へ、さき 00017660M9銀をわたし、いつ+の日ハ出来申すけいやくして、扨其 00017670M10日印ばんを取に行ければ、折ふし/親父(をやぢ)/他行(たぎやう)いたし、百の銭 00017680M11十一二文ぬけたる/廿斗(はたち)のむすこがいふやう、其方様ハ見/知(し) 00017690M12りませぬといふ。先日あつらへ申時、そちハ/爰(こゝ)に/居(い)てよく 00017700M13存たるはづじやに、何とてさやうにハ申ぞ。今日/夜舟(よふね)にの 00017710M14り大坂へ/下(くだ)る也。/是非(ぜひ)ゐんばん/請(うけ)取べしといふ。/件(くだん)のむす 00017720M15こ、今しバらく御まちなされといふよりはやく、親父の目 00017730M16がねを取出し、わが目にあてゝ此(七ウ)(八オ挿絵)人を見て、 00017740M17/私(わたくし)ハ見/知(し)らねども、をやぢの目金で見れば、/先日(せんじつ)御出なさ 00017750M18れた人じやといふて、印判を/渡(わたし)た。 00017760¥P62 00017770¥N8¥J 00017780¥X第八△/船(ふね)のしかた 00017790L3一△町人四五人/寄(より)て/酒(さけ)を/呑(のミ)けり。其中に/始而(はしめて)の/衆(しゆ)両人あり。 00017800L4たがひに/盃(さかづき)をいたゞきけるに、/肴(さかな)をはさミぬる/躰(てい)をミて、 00017810L5われにくれると/覚(おぼへ)て、/盃(さかつき)を/下(した)に/置(をき)、手をさし出せば、その 00017820L6人にハやらで、おのれが/侭(まゝ)にはさみくふ也。かの手をさし 00017830L7出た人、はづかしく、てにはあしくて、もうし、何れも様、 00017840L8/沙汰(さた)ハなひ事。此/私(わたくし)が手ハ/舟(ふね)によく/似(に)ませぬかといふて 00017850L9引たり。(八ウ) 00017860¥N9¥J 00017870¥X第九△/文盲(もんもう)なる/者(もの)の/子細(しさい)を/習(なら)ふ 00017880L12一△さい+/医者(いしや)衆へ出入いたしたる人有。/医師(いし)/病(びやう)人にむ 00017890L13かひて、/瀉(しや)するか/結(けつ)するかととハるゝを聞て、ある時其子 00017900L14細をとふに、瀉するとはくだる事也。/結(けつ)するとハくだらぬ 00017910L15事也。是ハこびたる/言葉(ことは)やと思ふ折ふし、/親類中(しんるいなか)の/商人(あきんど)来 00017920L16りて、明日/長崎(ながさき)へ罷下が、なにも御用の事ハ候ハぬやとい 00017930L17ふ時に、何と、長さきへ/瀉(しや)するとや。やがて無事にて/結(けつ)せ 00017940L18よといふた。 00017950¥N10¥J 00017960¥X第十△/灸(きう)をろしのさた(九オ) 00017970M3一△あけくれぶら+/煩(わづらふ)ものあり。/医者(いしや)の/許(もと)へ行て/脉(ミやく)を 00017980M4見せければ、薬ばかりにてハ中+/治(ぢ)しがたきせう也。こ 00017990M5れハふじ三里に、をもさま/灸(きう)をすへられよといふに、/病(びやう)人、 00018000M6かさねて/談合(たんかう)申べしと、いそぎ/宿(やど)にかへり、扨&うつけた 00018010M7るくすしの申されやうや。/富士(ふじ)ハきゝおよびたる大山也。 00018020M8其ふじ三里が間に/灸(きう)をせよとハ、いかに/病(やまい)がなをるとて、 00018030M9そもやそも、もぐさがつゞく物かと。 00018040¥N11¥J 00018050¥X十一△/新仏(しんぶつ)一/躰(たい)の/望(のそミ) 00018060M12一△にはか/道心(だうしん)をこし、/新(しん)仏一/躰(たい)のぞミて仏/師(し)所(九ウ)へ 00018070M13行、/大座後光(たいざごくハう)のせんさく申折ふし、それに付、京の/因幡堂(いなばだう) 00018080M14の/本尊薬師(ほんそんやくし)如来ハ/碁(ご)ばんに/乗(の)らせ給ふが、あれハめづらし 00018090M15き大座にて侍る。何と/謂(いは)れの有事かといへば、成程いはれ 00018100M16もあり、尤成事なりといふ。其/子細(しさい)ハ。あのいなば堂ハ四 00018110M17/町(てう)にかゝつたといふ。 00018120¥N12¥J 00018130¥X十二△同/不審(ふしん) 00018140¥P63 00018150L1一△又/信州(しんしう)/善光寺(せんくハうじ)の如来ハ、/臼(うす)に/乗(の)らせ給ふと聞及たり。 00018160L2成程尤さうなり。ゑんぶだんごなれば、うすへ入ましたも 00018170L3ことハり也。して、/立像(りうざう)か座(十オ)像かと/問(とい)ければ、/杵蔵(きねざう) 00018180L4にて有べし。 00018190¥N13¥J 00018200¥X十三△花見の/張賃(ちやうちん) 00018210L7一△われ人ともに一日の/遊興(ゆうけふ)、/千年(ちとせ)を/延(のぶ)る心地ぞせり。/爰(こゝ) 00018220L8に/西陣(にしぢん)の内さる一町中のこらず、東山/双林寺(さうりんじ)へ花見に行け 00018230¥G 00018240M1り。/春青(しゆんせう)一/刻(こく)あたへ千金の/永(えい)日も、/夕陽(せきやう)にしに入あひのな 00018250M2るころ、/番(ばん)やの又助、/家(いへ)&をふれけるハ、/迎(むかひ)に人を御やり 00018260M3なされよといふ。何れも/絹(きぬ)やの事なれば、女/弟子(でし)斗にて、 00018270M4男ぎれハ/鼠(ねすミ)もなし。とかく町中の/迎(むかい)なれば、惣ようの名代 00018280M5に、又すけ、何とぞ/了簡(りやうけん)せよと/宿老(しゆくらう)の内義が申された。又助 00018290M6(十ウ)(十一オ挿絵)やがて/会所(くハひしよ)の家より/張賃(ちやうちん)を取出し、東山さ 00018300M7して行ける。又すけお/迎(むかい)に参たるといへば、いづれも座敷 00018310M8を立けるに、/道(ミち)/闇(くらく)なれば、又助、ちやうちんをとぼしける。 00018320M9/常(つね)の張賃にてもあらバこそ、町中のかたミうらみもいかゞ 00018330M10とて、町のたて張賃を長きさほ竹にをし立、はりひぢ/肩(かた)ま 00018340M11くりして持たるをミれば、/西陣(にしちん)何/組(くミ)何の町と大筆にて書付 00018350M12の有なれば、花見/戻(もとり)の/群集(くんじゆ)きもをつぶし、火の手も見へず、 00018360M13はやかねの/音(をと)もせぬにふしぎや。/如何(いか)さま気遣なりと、諸 00018370M14人、此ちやうちんをミて、どこじや+と云た。(十一ウ) 00018380¥N14¥J 00018390¥X十四△りんきはなし 00018400M17一△りんきふかき女房あり。其となりに夜半のころいさか 00018410M18ふ/声(こへ)しけり。何事にやと夫婦/起(をき)て聞ゐたれバ、男の/悪性(あくしやう)い 00018420M19たづら成によりをこりたるりんきいさかひの/修羅(しゆら)なり。此 00018430¥P64 00018440L1女房も、となりの事を身にさしあて、もらひ/腹(ばら)を立、何の 00018450L2/理(り)も/非(ひ)もなく、/我男(わかおとこ)のあたまをつゞけばりにはりけり。男、 00018460L3これハ何とする事ぞ。/気(き)が/違(ちがふ)たかといへば、いや、少しも 00018470L4気ハちがハぬ。そなたも/向後(けふこう)たしなみ給へ。此/後(のち)も、あの 00018480L5となりのいたづら男のやうに身をもつなと(十二オ)いふ事よ。 00018490¥N15¥J 00018500¥X十五△同/講(かう)のくはだて 00018510L8一△わかき/嫁(よめ)の方より/陰居(ゐんきよ)のかミ様方ヘ、こしもとを使に 00018520L9やりければ、何事の使に来ぞと仰あれば、いや、おくさま 00018530L10の仰られにハ、少物の講を御むすびなされますにより、御 00018540L11ゐんきよのかミ様も、人数に御入なされぬかとの使に参り 00018550L12たると申。あらけふこつや。是ほどいそがハしくてならぬ 00018560L13に、それは何の講じやととハれけれバ、/別(べち)の/子細(しさい)にあらす。 00018570L14/悋気講(りんきこう)ををく様の/大将(たいしやう)にて、/誰&(たれ+)も御入むすび有と申せバ、 00018580L15(十二ウ)りんき講ならバおれもふたりまへまじらふぞと云 00018590L16てくれい。成程つね※おれがこのむ所よ。 00018600¥N16¥J 00018610¥X十六△/辻談義(つじだんぎ) 00018620L19一△去人、/辻(つじ)だんぎを/説(とく)坊主に/逢(あふ)て不/審(しん)するハ、あの/鷄(にハとり)、 00018630M1きじ/抔(など)といふ鳥をミるに、男鳥の/毛色(けいろ)ハ/殊(こと)に見事に侍る也。 00018640M2あれは/先生(ぜんじやう)ハ何ものが/生(うま)るゝと/問(とひ)けるに、とんさくのよき 00018650M3坊主にて、あれハ大/方(かた)、/役者(やくしや)の/若(わか)女方、/若衆(わかしゆ)方の生れ/替(がハ)り 00018660M4そふな。其/子細(しさい)ハうつくしく/衣(い)しやうがよひといふた。然 00018670M5らバ女鳥ハ/毛(け)色あしきが何ものぞ。あれはびんぼうなくハ 00018680M6しや/方(がた)(十三オ)の生れたると、/因果経(ゐんくわきやう)にあるといふた。 00018690¥N17¥J 00018700¥X十七△/順礼(じゆんれい)/捨子(すてご)の咄し 00018710M9一△/関東(くハんとう)の/言葉(ことば)になまりの多き/順礼(じゆんれい)二人つれだち、はじめ 00018720M10て京へのぼり、五条の/橋(はし)を/通(とを)りけるに、/折(をり)ふし/捨子(すてご)あり。 00018730M11かの順礼、此/子(こ)を見て、/先(さき)へゆく同行にいふハ、/爰(こゝ)に/子(こ)め 00018740M12がすてゝ有といへば、つれ聞て、/米(こめ)ならバひらつてこひと 00018750M13いふ。しかも/赤子(あかご)めだと云に、それはたいたう/米(こめ)であるべ 00018760M14ひ。よしさ。くるしゆなひこんだに、はやくひらつてこよ 00018770M15さといふた。いかひ両げちがひじや。 00018780¥N18¥J 00018790¥X十八△/文盲成(もんもうなる)人/水瓜(すいくハ)のせんさく(十三ウ) 00018800M18一△/祝言(しうげん)/振舞(ふるまひ)のうへにて、/亭主(ていしゆ)/水瓜(すいくハ)を出しければ、其座に 00018810M19/文盲(もんもう)なる人のいふハ、此すいくハと云物は、くはぬ物じや。 00018820¥P65 00018830L1これをくえバ/神鳴(かミなり)につかミころさると、/片(かた)じやうしきにい 00018840L2ふ。座中/興(けう)をさまし、其方ハちかごろそさう成事をいはる 00018850L3ゝ。さやうの/言(こと)いはぬ物じやと/笑止(せうし)がりける。扨ハいづれ 00018860L4もハ物のわけを御存/知(ぢ)なひとミへた。神なりハ/水瓜(すいくハ)のたゝ 00018870L5りといふに。 00018880¥Y1露がはなし巻の四終(十四オ) 00018890¥Y1かる口露がはなし巻の五目録 00018900M3第一△/嘘(うそ)にもせよきびのよひ事 00018910M4二△/葬礼(そうれい)の七五三 00018920M5三△/小法眼(こほうげん)の二/幅(ふく)一/対(つい) 00018930M6四△/道頓堀(たうとんほり)にてきんちやく切の事 00018940M7五△/性(しやう)わる+の/坊主(ばうず) 00018950M8六△此/碁(ご)ハ/手(て)ミせ/禁(きん) 00018960M9七△/伊勢(いせ)ぬけ/参(まいり) 00018970M10八△/九品(くほん)の/浄土(じやうと)九&の/算用(さんよう) 00018980M11九△/常題目(じやうだいもく)の/地形(ぢぎやう)(一オ) 00018990M12十△ゑびす講の書状 00019000M13十一△/弁説(べんぜつ)の過たる/乞食(こじき) 00019010M14十二△/入院(にうゐん)ぶるまひ 00019020M15十三△しらねバ是非もなし江戸の/嶋原(しまバら)京の嶋原 00019030M16十四△/欲(よく)のふかき長老 00019040M17十五△/後家(ごけ)の/役義(やくき) 00019050M18十六△/小間物売(こまものうり)が/覚帳(おぼへちやう) 00019060M19十七△十/夜(や)の長だんぎ 00019070¥P66 00019080L1十八△/江州(がうしう)つち山のばくらう 00019090L3△△△△△△△以△上△(一ウ) 00019100¥T1露がはなし巻の五 00019110¥N1¥J 00019120¥X第一△/嘘(うそ)にもせよきびのよひ事 00019130M5一△思ひもよらぬもうけをしたといふ/次(つゐ)でに、おれも/咄(はな)そ 00019140M6ふ。きのふ/河原(かハら)の村山が/芝(しば)ゐへ/見物(けんぶつ)に行ければ、/狂言(きやうげん)/最中(さいちう) 00019150M7に/行(ゆき)かゝり、せんかたなく/桟敷(さんじき)の下にて立ながらミてゐた 00019160M8に、何かハしらず、/真中(まんなか)程をちらと見たれば、年/廿斗(はたち)の女 00019170M9房、やんごとなき御/姿(すがた)にて、下女壱人つれて見物せられけ 00019180M10るを、見ると其まゝ/恋(こい)風ぞうと/吹(ふき)、心もうか+と成、/舞= 00019190M11台(ぶ=たひ)の方へは目もやらず、いかさまくどいてミ(二オ)たひ物 00019200M12じやと思ふ折ふし、かの女房、下女をつれてかへりける。 00019210M13おれも/跡(あと)に付出ける。扨それより、/祗園(ぎをん)、/清水(きよミつ)、/大谷(おふたに)、大 00019220M14仏、方+を行けるに、さのミ/礼拝(らいはい)の/躰(てい)もなく、いか様、 00019230M15此女ハわれをみて/当(たう)世のしかけ女じやと思ひ、いやこれは 00019240M16/是非(せひ)共/宿(やと)を見/届(とゝけ)、重而くどく/種(たね)にも成べしと思ひ/定(さだ)め、そ 00019250M17ろり+つき/廻(まハ)りけるに、もはや日/暮(くれ)に/及(をよひ)、かの女せいぐ 00019260M18ハんじ/墓(はか)のをくへぞ行ける。/幸(さいわひ)よき所よ、宿迄行にをよハ 00019270M19す、/爰(こゝ)にてくどき、/是非(ぜひ)念をはらさんと思ひ、われも/墓(はか)の 00019280¥P67 00019290L1そばへ行ければ、/却而(かへつて)女の方より(二ウ)われに言葉をかけ、 00019300L2おまへ様ハけふ一日わらハに付そひ、これ迄/御神妙(こしんミやう)御出忝。 00019310L3とくにも言葉をかけまいらせたく候へども、さすがに人め 00019320L4/遠慮(ゑんりよ)いたしたり。おまへ様の物が此中におハしまし候ハヽ 00019330L5御取なされよと、はな/紙袋(かミふくろ)きんちやく、又ハ金銀の入たる 00019340L6/打替(うちがへ)、かず+の物を/懐中(くハひちう)よりなげ出した。おれも/案(あん)に/相= 00019350L7違(さう=い)したと/仰天(ぎやうてん)して、是ハミな/私(わたくし)が物で御座るといふて、有 00019360L8たけ取て/戻(もど)りたと、大きにはなしける。是ハミな/夢(ゆめ)のはな 00019370¥G 00019380M1しじやといふた。 00019390¥N2¥J 00019400¥X二△/葬礼(そうれい)の七五三(三オ) 00019410M4一△ある人、あほう成者にいふやうハ、あすハ上の町より 00019420M5けつこう成/葬(そう)が有と咄す。けつこうといへば/振舞(ふるまひ)の事じや 00019430M6とこゝろえて、/押(をし)かけたくさんにくハふと思ひ、一めもし 00019440M7らぬ人の/葬礼(そうれい)に行、大勢の人は/皆(ミな)かへりけるに、此ものハ 00019450M8しりはてにかへり、すぐにきのふ咄したる人の所へ行て、 00019460M9そちハ大き成うそをつき、おれをはまらしたとうらみける。 00019470M10それハ何事なればといふに、尤けふの/葬(そう)ハ七五三程けつこ 00019480M11うにあれ共、/膳(ぜん)ハ出なんだ。あまりな事じやと思て、もり 00019490M12物に手をかけたれバ、をんぼうめが、たゝきころそといふ 00019500M13た。(三ウ) 00019510¥N3¥J 00019520¥X三△小/法眼(ほうげん)の/二幅(にふく)一/対(つい) 00019530M16一△明後十一日/霊山宿阿弥(れうぜんしゆくあミ)におゐて/御酒(こしゆ)/進(しん)上申/度(たく)候。御出 00019540M17可忝候。以上。おの+同道していそぎける。亭主、本/走(さう)の 00019550M18/小法眼(こほうげん)が/書(かき)し/龍虎(りやうかう)の二/幅(ふく)壱/対(つい)をかけられけるを、ミな+ 00019560M19立より/詠(なが)め居て、ひとりの/文盲(もんもう)成おとこ、つく+/虎(とら)を見 00019570¥P68 00019580L1て、扨も此/猫(ねこ)ハ上/手(ず)のかいた物かな。此やうないちもつを 00019590L2一/疋(ひき)持ならバ、夜の目のあハぬ事ハあるまひといへば、又 00019600L3ひとりがいふやう、ねずミ取やうな目で、何やらにらんで 00019610L4ゐるといふ時、/宿老(しゆくらう)、龍の/絵(え)にゆびざし(四オ)して、/実(げに) 00019620L5+そのはづで御座る。/爰(こゝ)なからざけをねらふてゐまする。 00019630¥N4¥J 00019640¥X四△/道頓堀(だうとんぼり)にてきんちやく切とらへし事 00019650L8一△去る町人、大坂/道頓堀(たうとんほり)にて/巾着切(きんちやくきり)をとらえて、/先(さき)のき 00019660L9んちやくを/返(かへ)せとて、せごしけれ共、此/盗(ぬす)人、いろ+ち 00019670L10んじけるが、/次第(しだいニ)人多くかさなりて、それふめ、たゝけな 00019680L11どゝこへ※にいふ。かの者が申やうハ、貴様の/巾着(きんちやく)ハ取 00019690L12とひとしく/同類(とうるい)に/渡(わたし)、こゝにハなし。明日/返進(へんしん)申べしとい 00019700L13ふ。それハいよ+/肝(きも)のふときいひ分かな。とかくてうち 00019710L14やくせんと申時、かのぬす人(四ウ)(五オ挿絵)/独言(ひとりこと)を/聞(きく)に、 00019720L15じたひおれがのが/分別(ふんべつ)ちがひじや。やつはり大ちやくな分 00019730L16なれば、よきにいわれぬきんちやくに成たるゆへよと。 00019740¥N5¥J 00019750¥X五△/性(しやう)わる+の/坊主(ばうす) 00019760L19一△さる町/庵(あん)に坊主あり。/妹(いもと)といふて女を/置(をき)、/甥(おひ)といふて 00019770¥G 00019780M12/子(こ)を持けり。され共念仏の/音声(をんじやう)よく、/鐘(かね)をよく/打(うつ)により、 00019790M13/俗衆(ぞくしゆ)の念仏講へやとひける。いやなくせにて/博奕(はくち)をすいて、 00019800M14人にかくれて折&其/場(ば)へ行けり。或時念仏講同行衆とて、 00019810M15/庵(あん)へさそひ/寄(より)ければ、/他行(たぎやう)のよし。/今晩(こんばん)ハ講に(五ウ)て/爰(こゝ) 00019820M16の/御坊(ごぼう)をつれねば、講中にかね/打(うつ)人なし。何方へ参られた 00019830M17ると、留主/居(い)の女にしきりに/問(とひ)ければ、是非なく、そこと 00019840M18おしへける。/先(さき)へ行ミれバ、/最中(さいちう)さかりと/勝負(せうぶ)有けり。扨 00019850M19+人にハ人くずとて、御身あたまを丸め、なまどし/寄(より)て、 00019860¥P69 00019870L1かやうの/掛勝負(かけせうぶ)をめさるゝ事、/所存(しよぞん)のあしき事なり。よし 00019880L2あし人にうたハれぬ/先(さき)に、/少(ちと)たしなまんせ。内に女房子も 00019890L3なひ物かなんぞの/様(やう)に、/性(しやう)わる+と、/散(さん)+にしかりけ 00019900L4れば、坊主がいふやうハ、其やうに御しかり無用なり。/掛= 00019910L5勝負(かけ=せうぶ)にてハ/更&(さら+)なし。/座中(ざちう)共に(六オ)ミな/限金(げんきん)/勝負(せうぶ)なり。 00019920L6念仏講のかねハミな/来世(らいせ)がねじや。まづ+今ばんハ御ゆ 00019930L7るしあれといふた。 00019940¥N6¥J 00019950¥X六△此/碁(ご)は手ミせ/禁(きん) 00019960L10一△/有徳(うとく)成町人、せいじんの子共に/世(よ)を/譲(ゆづ)り、その身は/禅= 00019970L11門(せん=もん)になり/裏(うら)座敷に/隠居(ゐんきよ)せり。同町に又さのごとくなる人有 00019980L12けり。あけ/暮(くれ)/碁(ご)を打てたのしミ、相手もかハらず、此両人 00019990L13より外に/碁(こ)の/友(とも)とする人もなし。或日、一方の人つゞけて 00020000L14二/番(はん)まけられ、/赤面(せきめん)して打程に、又三番めの碁もまけにミ 00020010L15へける。/大石(たいせき)しにたる所を、一/手(て)ミせよといへば、中+ 00020020L16(六ウ)見せるけしきハなし。是非共これは見よ。ミせまひ 00020030L17と、たがひに/盤(ばん)の上にて手をねぢあひ、あげくの事に/黒白(くろしろ) 00020040L18の/石(いし)をつきくずし、たがひに/腹立(ふくりう)して、おのれしのれとい 00020050L19ひ/合(あひ)、/向後(けうかう)一生、そちと/碁(ご)ハうたぬぞ。いかにも/参会(さんくハひ)/止(やめ)に 00020060M1いたすと、/堪当言葉(かんだうことば)にて/罷(まかり)かへりける。扨其日も西にかた 00020070M2ぶき、/外(ほか)の/友(とも)とてもなく、/枕(まくら)/引寄(ひきよせ)、つく※とけふの/口論(こうろん) 00020080M3を思ひ出し、とかくむかしより/短気(たんき)ハ/損気(そんき)といふハ/爰(こゝ)ぞか 00020090M4し。/先程(さきほと)の/碁(ご)一/番(ばん)まけて打ならバ、今/時分(じぶん)までハしこりか 00020100M5ゝり打てなぐさまん物をと、両方ともに(七オ)こうくハひ 00020110M6しける。同町の事なれば、/明(あく)れバ早天よりかの相手の/門(かと)を 00020120M7/通(とをる)とて、たがひに/尻目(しりめ)にてにらみあひ、一方よりいふハ、 00020130M8なま年よつて、/朝腹(あさはら)から/碁(ご)のうちたそうなつらなといへば、 00020140M9/門(かと)を/行(ゆき)過たるが立/止(とゝま)り、/打(うち)たひがおのれにかまふかと、目 00020150M10に/角(かど)入てとがめける。打たくバ/爰(こゝ)へうせをれ。/慈悲(じひ)にう 00020160M11つてこませふぞといふ。/慈悲(じひ)にもせよあたにもせよ、さあ 00020170M12+打て見くされと、/誰(たれ)あひさつなしに中をなをりた。 00020180¥N7¥J 00020190¥X七△伊勢ぬけ参(七ウ) 00020200M15一△/江州(ごうしう)/矢(や)ばせの/船(ふね)にて、/九州(きうしう)/肥後(ひこ)の者なるとて、年十一 00020210M16二才なる子共、伊勢へぬけ参とて、両人船に/乗(のり)ける。此も 00020220M17の、/路銭(ろせん)すくなく持けるにや、たゞし/腹中(ふくちう)ひもしさの折か 00020230M18らにや、一人がいふやうハ、あの/三上(ミかミ)山が/飯(めし)ならバ、/唯(たゞ)一 00020240M19口にせしめん物をといへば、又壱人/端的(たんてき)の/返事(へんじ)に、此/水海(ミつうミ) 00020250¥P70 00020260L1がとろゝ/汁(じる)ならば、をんでもなふくいかねハせまひといふ 00020270L2た。/乗合(のりあい)の中に心ある人や、此言葉を/不便(ふびん)にや思ひけん、 00020280L3/船中(せんちう)にて/勧進(くハんじん)をあつめ、/銭(ぜに)壱/貫文(くハんもん)くゝり、此両人の者に 00020290L4つかひける。/誠(まこと)に/神徳(しんとく)/有難(ありかた)し+。(八オ) 00020300¥N8¥J 00020310¥X八△九/品(ほん)の浄土九&の/算用(さんよう) 00020320L7一△さる法花の坊主と浄土の/俗(ぞく)と/道(ミち)づれに成、行/途中(とちう)にて 00020330L8坊主いふハ、其方ハ何宗ぞと/問(とふ)。俗聞て、忝も/極楽(こくらく)浄土と 00020340L9いふに、坊主、何の忝事が有べしとあざけるを、/俗(ぞく)、念仏の 00020350L10ありがたき事ハ、仏ほさつ/祖師達(そしたち)、九品九&の浄土と申也。 00020360L11しらずばいふを聞給へ。/先(まづ)二四八、三四十二日ハ/薬師(やくし)、三 00020370L12五の十五日あミた、三六ノ十八/観音(くハんをん)、三七廿一日/弘法(くハうほう)、三 00020380L13八廿四/地蔵(ちざう)、五&廿五日/元祖法然(くハんそほうねん)、四七廿八日/親鸞(しんらん)。かく 00020390L14のごとく念仏の宗門、ミな九&に/合(あふ)なりといへば、坊主聞 00020400L15て、(八ウ)(九オ挿絵)いかにもさこそ有べし。又此方の/日(にち)れん 00020410L16上人の日も左のごとしといふ。何と、十三日が九&に/合(あふ)か 00020420L17といへば、九&も/算用(さんよう)も入らバこそ。十三日ハ世/界(かい)の衆生 00020430L18を二まひのあたりなれば、一つにかきなでゝすくひとると 00020440L19いわれた。 00020450¥N9¥J 00020460¥X九△/常題目(じやうだいもく)の地形 00020470M3一△/北野(きたの)に/常題目(じやうだいもく)といふ所あり。去法花の/俗人(ぞくじん)聞及て、は 00020480M4じめて参られけるに、寺内事の外ひろしといへども、/地形(ぢぎやう) 00020490M5たかひく有て見くるしゝ。/迚(とても)の事に地をろくにならしたき 00020500M6物かなと/噂(うハさ)する(九ウ)を、/亭坊(ていはう)申さるゝハ、此高ひくあり 00020510M7てこそ/題目(だいもく)も/相続(さうぞく)すれ。ろくじハ此方にさし合じやといふ。 00020520¥N10¥J 00020530¥X十△ゑびす講の書状 00020540M10一△十月廿日ゑびす講の/振舞(ふるまひ)するに、/嘉例(かれい)の/客(きやく)、もんもう 00020550M11成人の方へふミをもたせ/呼(よび)にやりけり。今日ハゑびす講に 00020560M12て御座候。早&御出/仰(あをぐ)所ニ候。以上。/誰殿(たれとの)参ると、/書(かき)した 00020570M13ゝめ、もたせやりけるに、此文をミて事の外に/腹立(ふくりう)してい 00020580M14ふやうハ、此やうな、へたらしき文のかきやうがある物か。 00020590M15此さむそらにおよひて、御出あをぐ所とハ何事じや。御出 00020600M16なされ候ハヽこたつ(十オ)こたつと/書(かき)たい物じや。 00020610¥N11¥J 00020620¥X十一△/弁説(べんぜつ)の過たる/乞食(こしき) 00020630M19一△/乞食(こじき)ハ/座(ざ)入してより/袋(ふくろ)を/首(くび)にかけてありくとや。ある 00020640¥P71 00020650L1所にて/弁説(べんぜつ)にまかせ口をすごしける乞食を、さん+たゝ 00020660L2きければ、此こじき、したゝかたゝかれて/後(のち)いふやうハ、 00020670L3おれも/神主(かんぬし)のながれ也。/汝(なんぢ)にかならずばちかあたるべしと、 00020680L4大きにのゝしりけり。それいかなれバさはいふぞととふに、 00020690L5此袋ハ忝も/社(やしろ)也。それをいかにあれバ。/紙(かミ)のやどり給ふな 00020700L6り。/社(しや)だんじやといふてりくつにつめ、なぜに/打(てう)ちやくし 00020710L7けるぞ。弓(十ウ)/矢(や)八まん、/堪忍(かんにん)ならぬと、大きにねだれ 00020720L8ければ、/打(てう)ちやくもたゝきもせぬ也。おのれ/乞食(こしき)にて、く 00020730L9れよといふにより、/慈悲(じひ)におもさま、くはしてとらしたと 00020740L10いふ。 00020750¥N12¥J 00020760¥X十二△/入院(じゆえん)ふるまひ 00020770L13一△/真言寺(しんごんてら)へ/村中(むらぢう)のこらず入院/振舞(ふるまひ)によばれ、/住持(ぢうじ)弟子に 00020780L14申付、寺の/住物(ぢうもつ)こと※くとり出し、それ+の道具の/名(な) 00020790L15をいふて見せられたり。何れも見物いたし、其中に/輪(わ)によ 00020800L16くにたる物ハ何と申ぞととふ。是ハりんぼうと申物じやと 00020810L17いふに、もんもう(十一オ)成百性、さて+むかしよりつ 00020820L18ゐに見た事がない。/耳(ミヽ)にきくさへいやじやに、まして/目(め)に 00020830L19見る事うるさし。はやく/捨(すて)給へ、其びんぼうをと。 00020840¥N13¥J 00020850¥X十三△/知(し)らねハ是非もなし江戸の嶋原京の嶋原 00020860M3一江戸の/芝(しはい)ゐをしまバらと云、京のけいせい町を嶋原と 00020870M4いふ。江戸より去人はじめて京へのぼり、/上(かミ)京に何共なら 00020880M5ぬこくめん成人の/方(かた)に/宿(やと)取ゐけり。/或時(あるとき)四条かハらの/芝(しば)ゐ 00020890M6を見物してかへりけるに、/亭主(ていしゆ)、今日ハどこを見物なされ 00020900M7たるととふ。/客(きやく)ハ何心もなく、今日ハ嶋原へまいりたるが、 00020910M8扨&おもしろい(十一ウ)事かな。/酒(さけ)をのむ所もぬれかけた 00020920M9る所もあり。/近(きん)年のなぐさミ、又/明日(あす)も参るべしといふ。 00020930M10亭主/色(いろ)をうしなひ、扨も+/悪性(あくしやう)人かな。きのふけふのぼ 00020940M11りて程もなきに、はやけいせいくるひをめさるかと、大に 00020950M12/異見(いけん)した。 00020960¥N14¥J 00020970¥X十四△/欲(よく)のふかき長老 00020980M15一△/欲(よく)ふかき長老、同宿をつれて/羅斎(ろさい)に出し。/斎料(ときれう)に/布施(ふせ) 00020990M16をつゝミ、/童子(わらんへ)にもたせ長老の前にをき、是ハ百文とミへ 00021000M17たり。/後(のち)に亭主廿疋つゝミけるをもちて出、同宿が前に/置(をく)。 00021010M18長老、あら/不審(ふしん)(十二オ)や。/前後(せんこ)/失念(しつねん)にてこそあらめと、 00021020M19寺へかへりて同宿にむかひ、さいぜんの/布施(ふせ)ハ/施主(せしゆ)取ちが 00021030¥P72 00021040L1へたると覚たり。おれがのをそちへやり、其方がのをこち 00021050L2へとらんといふ。同宿、めいわくなるふりをするに、いよ 00021060L3+ほしく思ひ、我分をなげ出し、かの二百文つゝミを取 00021070L4あげて見たれば、/蝋燭(らうそく)二丁有けり。 00021080¥N15¥J 00021090¥X十五△/後家(ごけ)の町/役(やく) 00021100L7一△或町に番の事あり。/家役(いへやく)なれば/名(めう)代立べきやうもなし。 00021110L8其町にひとりの後家あり。此人ニも番させんといふに、め 00021120¥G 00021130M1いわくに思ひ、色+わびこと(十二ウ)(十三オ挿絵)を申 00021140M2けるハ、もつとも町義の仰をそむきて、番せまひにてハ御 00021150M3ざらぬ。はかまを/着(き)てハ小べんが成ますまひと思ひ、これ 00021160M4一つ気のどくてあんすといふ。 00021170¥N16¥J 00021180¥X十六△/小間物(こまもの)屋が/覚帳(をほへてう) 00021190M7一△一/生(しやう)よみかきしらぬ/文盲(もんもう)成小間物や/商人(あきんと)ありけり。ひ 00021200M8かへ帳あきなひ有ごとに、人にハたのまれず、/自(ミづか)らさいか 00021210M9くして、/小刀(こかたな)をもつて三尺斗の木にきざを付、/我(わか)覚へとし 00021220M10て/埒(大ち)をあけけり。ある日/暮(くれ)のくらまぎれに小間物を/売(うり)たる 00021230M11を、又かの木にきざを付るを、むすこながめゐて、とゝ、 00021240M12くらがりで物(十三ウ)をかひて、手をきりやるなといふた。 00021250¥N17¥J 00021260¥X十七△十/夜(や)の/長談義(ながだんぎ) 00021270M15一△/関東(くハんとう)よりのぼりたる長老、寺へすハりて、/始(はしめ)て十/夜(や)の 00021280M16/談義(だんぎ)をとかれける。/洛中(らくちう)の/男女(なんによ)/参詣(さんけい)くんじうせり。長老、 00021290M17/高座(かうざ)にて申さるハ、/昨晩(さくばん)/談(だん)じたる/次(つぎ)を今ばんも/講尺(かうしやく)いたす 00021300M18事也。それに付、うけ給ハれば、/愚僧(ぐそう)がだんぎハ長がくて 00021310M19たいくつなと、女中方の申さるゝと/評判(ひやうばん)あり。/理句義(りくぎ)のよ 00021320¥P73 00021330L1くつまるやうにと存て申也。さりながら、/今晩(こんばん)のも/何(いづ)れも 00021340L2/次第(しだい)にいたそふが、(十四オ)女中たち、何と思しめすぞ。 00021350L3みぢかひがよいか、/長(ながひ)がよいかと、くりかへしとハれける。 00021360L4/参(さん)けいの/男女(なんによ)返事なく、くつ+とわらひけるを、長老/腹= 00021370L5立(ふく=りう)せられ、/高声(かうせう)に、それはかた+の/気(き)のやりやうがわる 00021380L6ひといふた。 00021390¥N18¥J 00021400¥X十八△/江州(がうしう)/土(つち)山のはくらう 00021410L9一△/江州土(がうしうつち)山の者、ばくらうのもとにて/馬(むま)壱疋/買(かひ)けるに、 00021420L10/眼(まなこ)、/爪(つめ)、かみ、くら/下(した)、其外そろひたるとほむる時、何と 00021430L11川わたりハよきかととふに、中+の事。川ハ/鵜(う)じやとい 00021440L12ふ。めでたし+とて(十四ウ)よろこびもどりけり。四五 00021450L13日過て/雨(あめ)ふり、/田村(たむら)川の水まさりける時、かの馬/荷(に)を付、 00021460L14川をわたるに、中程にてどうど/臥(ふし)たり。/買(かい)ぬし/気(き)のどくニ 00021470L15思ひ、やがてばくらうが所へ行き、/存分(ぞんぶん)をいひけるに、さ 00021480L16ればこそ川ハ/鵜(う)じやと申たハ。/鵜(う)といふ鳥の水を見ていら 00021490L17ぬやあらんといふた。 00021500¥Q 00021510M1△△元禄四年 00021520M2△△△△未七月吉日△△△△△△△書林開板 00021530¥Y1かる口露がはなし巻五終△(十五オ) 00021540¥P74 00021550¥U噺本大系△第六巻 00021560¥T遊小僧 00021570¥G 00021580¥Y 00021590L16元禄七年刊 00021600L17作者不詳 00021610L18半紙本五巻 00021620L19天理図書館蔵 00021630¥Y1/遊小僧(うかれこぞう)/序(ちよ)△第一 00021640M3/行(ゆく)川のながれは/絶(たえ)ずしてしかももとの/水(ミつ)にあらず。その賀 00021650M4/茂(も)川のながれ/清(きよ)く、/末(すへ)ハ白/河(かハ)/夜(よ)舟の/友(とも)、/一夜(ひとよ)ふしミのくだ 00021660M5り舟、/東国(とうこく)西/国(こく)/北南(きたミなミ)、/老若男女(らうにやくなんによ)こぞり/合(あひ)、/着替枕(きがへまくら)のねざ 00021670M6めにハ、/思(おも)ひ+のなぐさミ、/声(こゑ)おかしくうひやうしとり、 00021680M7うたふ/謡(うたひ)もまだるしと、/頓作(とんさく)の/誹諧(はいかい)にハ/舟(ふな)ばたをたゝいて 00021690M8/笑(わら)ひ、/我(われ)ひとりすめりとて、/儒道神(じゆだうしん)道/和(わ)哥の(一オ)/道(ミち)、/都鳥(ミやことり) 00021700M9のこととへハ、/觜(はし)と/足(あし)との/赤(あか)いのハ、/伊勢海老(いせゑび)のはらから 00021710M10と/軽口(かるくち)に/目(め)を/覚(さま)し、/桃花源(とうくわけん)の/夢(ゆめ)見たと、みぬ/唐土(もろこし)のはなし 00021720M11には、/布袋(ほてい)の/腹(はら)をかゝへられ、/取(とり)あげ/祖母(はゞ)の/仮粧皃(けしやうがほ)、/鬼(おに)に 00021730M12/瘤(こぶ)をとられしと、/深(ミ)山がくれの/紅葉狩(もミちかり)、/猿(さる)が/尻(しり)は/真赤(まつかい)に、 00021740M13/朝三暮四(ちやうさんほし)の/酒(さけ)の/数(かず)、/大黒舞(だいこくまひ)にはやされて、こゝろ/言葉(ことば)もひ 00021750M14やうきんの、うかれ/小僧(こぞう)といふものならし。(一ウ) 00021760¥P75 00021770¥Y1 00021780L1一△神はきねがならハしの事 00021790L2二△/金銀(ぎん+)は/代(よ)の/宝(たから)なる事 00021800L3三△/昆布(こぶ)は/油(あふら)あげの事 00021810L4四△/玉子売(たまごうり)と/鳥屋(とりや)/喧嘩(けんくわ)の事 00021820L5五△/鳶(とび)が/鷹(たか)うむといふ事 00021830L6六△/野郎(やらう)は/親仁(おやじ)なる事 00021840L7七△/茗荷(ミやうが)は/鈍根草(どんこんさう)といふ事 00021850L8八△/法界(ほうかい)/吝気(りんき)の事(二オ) 00021860L9九△/水(ミつ)に/住(すむ)/蛙(かハつ)/都(ミやこ)は/髪結(かミゆひ)/迄(まて)の事 00021870L10十△/誹諧(はいかい)/打(うち)こしの事(二ウ) 00021880¥T1 00021890¥N1¥J 00021900¥X神はきねがならハしの事 00021910M3/神(かミ)は人のうやまふによつて/威(ゐ)をます。/去小社(さるこやしろ)を/守(まも)る/神主(かんぬし)、 00021920M4/我(わか)か/家(いゑ)の/神道(しんたう)は/露(つゆ)もしらす、神の/威光(ゐくハう)によつて/安楽(あんらく)に/渡世(とせい) 00021930M5いたしける。こざかしき/町人(まちにん)つく+と思ふやう、それ/和= 00021940M6朝(わ=てう)は/神国(しんこく)なり。人間に/生(うま)れて/神道(しんたう)すこししらでは、/身(ミ)のた 00021950M7のしミもなき事と思ひ、かの神主にちかづき、(三オ)/神道(しんたう) 00021960M8の/奥儀(をふぎ)はおもひもよらず、せめて神にさいはいのわけなり 00021970¥G 00021980¥P76 00021990L1ともうけたまハり/度(たく)候。/先(まつ)神道に/八百(やお)万の八人の/八乙女(やおとめ)、 00022000L2すでに/神代(かミよ)の御/哥(うた)に、/出雲八重垣(いづもやへがき)のと申八文/字(じ)を/秘決(ひけつ)にい 00022010L3たし申よし、/是(これ)ハ/如何(いか)なる御事と/尋(たつね)けれバ、/神主(かんぬし)/聞(きい)て、其 00022020L4/方(ほう)ハ若キ人のよき心がけなり。此国は神の/作(つく)りはじめ/給(たま)へ 00022030L5ハ、/神(かミ)をうやまふにしくハなし。(三ウ)さりながら八文/字(じ) 00022040L6の事は/何(なに)の事もなひ。あれハ/仏者(ぶつしや)のいひし事じや。/八万諸= 00022050L7聖教八功徳池(はちまんしよ=しやうげうはつくどくち)のといふ。/神道(しんたう)に露(つゆ)もなひ事。それゆへ/道= 00022060L8心者(たう=しんじや)の米(こめ)もらふにも/八&(はち+)と/云(いふ)といふた。 00022070¥N2¥J 00022080¥X/金銀(きんぎん)は/代(よ)の/宝(たから)なる事 00022090L11/兎角(とかく)/浮(うき)世はみちのく山、/金(かね)をもたねば/住(すむ)かひなしと、/明暮(あけくれ) 00022100L12かせぎ大/分(ぶん)の/身躰(しんだい)になりける人、子を三人/持(もち)けるが、すで 00022110L13に神にハ(四オ)きんじやうといひ、/仏(ほとけ)はわうごんのはだへ 00022120L14といふ、かねにすぎたる事なしと、先/惣領娘(そうりやうむすめ)をおかねと 00022130L15つけ、二ばんめを/金(きん)十郎といひ、三番めハ/盲目(もうもく)なれば/四(し)ぶ 00022140L16/一(いち)と/付(つけ)た。 00022150¥N3¥J 00022160¥X/昆布(こぶ)は/油(あふら)あげの事 00022170L19/小夜(さよ)のねざめに/枕(まくら)さためず/色町(いろまち)の夜おき、/禿(かぶろ)引舟ひきおこ 00022180M1し、此あけがたの月たゞハみられず、/戸棚(とたな)さがして酒のか 00022190M2んをせよと、(四ウ)/太鞁持(たいこもち)/心得(こゝろえ)て、/是(これ)によき/物(もの)ありと/玉子(たまご) 00022200M3七つ/鮹(たこ)一はい、それりやうりといへば、引舟まなばしとれ 00022210M4ども、/常(つね)に/手(て)なれぬ/不調法(ぶてうほう)さ。もどかしや。そなた/衆(しう)は/旅= 00022220M5篭屋(はた=ごや)の/女房(にようばう)にならふもしらぬと、いひがいとらせ/釜(かま)の/下(した)を 00022230M6たくも/有(あり)。/禿(かぶろ)は/棚(たな)より/昆布(こんぶ)をとりいたす。これくつきやう 00022240M7の/物(もの)。すましにせよ。/心得(こゝろえ)ましたと、あらいにかゝり、/井(ゐ) 00022250M8のもとへ/取(とり)おとしける。あはてふた(五ノ九オ)めき、くま 00022260M9でよいかりよとさはぎけれバ、/下男(しもおとこ)ぬからぬ/皃(かほ)して、/目(め)を 00022270M10する+、/昆布(こぶ)ならば油であげませうといふた。 00022280¥N4¥J 00022290¥X四△/玉子売(たまごうり)と/鳥(とり)やと/喧嘩(けんくハ)の事 00022300M13よぶこ/鳥(どり)は/春(はる)の/物(もの)じやといふ。/雪(ゆき)のあした、/上京(かミぎやう)の/富家(ふうか)の 00022310M14/方(かた)へ、/玉子(たまご)/売(うり)ます、/玉子(たまご)めせと申ける。/折(おり)ふし/出入(いていり)の/鳥(とり)や 00022320M15/居(ゐ)あハせ、これ+/此御家(このおいゑ)は/我等(われら)の/出入(いていり)申/所(ところ)。/玉子(たまご)ハうら 00022330M16せぬと(五ノ九ウ)いふ。/玉子(たまご)うり/聞(きい)て、おかしい事をいふ 00022340M17人じや。そなたハ/鳥(とり)やならバ、とりをうりやれ。せきせば 00022350M18ひ事。玉子をうらふといふ。鳥や/腹(はら)をたて、そこな/男(おとこ)は、 00022360M19りくつをいふものじや。/鳥(とり)もたま子もおなし事。とかく玉 00022370¥P77 00022380L1子はうらせぬといふ。たま子うりきいて、そんならバ/材木(ざいもく) 00022390L2やハ/松茸(まつたけ)うらせまいかといふた。(十オ)(十ウ・十一オ挿絵) 00022400¥N5¥J 00022410¥X五△/鳶(とび)か/鷹(たか)うむといふ事 00022420L5/山(やま)のいものうなぎになり、とび/魚(うを)の/雀(すゝめ)になるといふはまこ 00022430L6とか。/去人(さるひと)、/器用(きよう)なる/子(こ)を/持(もち)ければ、あふ人ごとに、/扨(さて)も 00022440L7/其方(そのはう)の/子息(しそく)は/何(なに)かにきようのよし、おてまへとハ/各別(かくべつ)/生(むま)れ 00022450L8まさりし人。まことにとびがたかうんだといふものじやと 00022460¥G 00022470M1ほめけれバ、/親仁(おやじ)/聞(きい)て、さればいづれもさやうにおつしや 00022480M2るで、気がつきました。(十一ウ)/此中(このぢう)も、ひたと/雉子(きじ)をく 00022490M3ひたがるでこまりはてましたといふた。 00022500¥N6¥J 00022510¥X六△/野郎(やらう)は/親仁(おやじ)なる事 00022520M6/桐(きり)の/葉(ハ)おつる/初秋(はつあき)に、なき/玉(たま)まつる/折(おり)から、/槙(まき)の/葉(ハ)かざし 00022530M7人&の/聖霊(しやうりやう)をむかふとて/六道(ろくだう)に/参詣(さんけい)す。/夜(よ)の/内(うち)よりのむ 00022540M8かひ/鐘(がね)、/我(われ)おとらじとせはしくつき、/口&(くち+)に/戒名(かいミやう)+とよ 00022550¥G 00022560¥P78 00022570L1ばゝりける。/爰(こゝ)に/山家(やまが)の/男立(おとこたち)より、(十二オ)/戒名(かいミやう)かいてと 00022580L2いひければ、/坊主(ばうず)/筆(ふで)をとり、/何(なに)とかきませうといふ。かの 00022590L3/男(おとこ)、/戒名(かいミやう)をおぼえねば、/親仁(おやじ)とかいてくだされよといふ。 00022600L4/坊主(ばうず)/聞(きい)て、/仏(ほとけ)の/名(な)に/親仁(おやじ)とハかゝれまいといふ。となりの 00022610L5/坊主(ばうず)/聞(きい)て、はて/親仁(おやじ)といふ/戒名(かいミやう)ならば、/野郎(やらう)/妄者(もうしや)の/内(うち)へ/入(いれ) 00022620L6てをけといふた。 00022630¥N7¥J 00022640¥X七△/茗荷(ミやうが)は/鈍根草(どんこんさう)といふ事 00022650L9/神農(しんのう)は/百草(ひやくさう)をなめて/能毒(のふどく)をしり、/本草(ほんざう)(十二ウ)には/諸色(しよしき)を 00022660L10しる。/去歴(さるれき)&の/御方(おかた)、/不断(ふたん)ミやうがをすきてまいりける。 00022670L11/折(おり)ふし/家中(かちう)のこらす/御礼(おんれい)にあがりし/時(とき)、御はなしの/次而(ついで)に、 00022680L12何と、ミやうがハどんごん/草(さう)とて、さい+くへばあほう 00022690L13になるといふ。/某(それかし)は/此中(このぢう)/毎日(まいにち)/食(しよく)すれ共、その/覚(おぼ)えもないと 00022700L14のたまへバ、/下座(げざ)より/茶道(さだう)まかり/出(いで)、さやうに/御意(ぎよい)なされ 00022710L15まするが、よほどきゝましたそふにござりまするといふた。 00022720L16(十三オ)(十三ウ・十四オ挿絵) 00022730¥N8¥J 00022740¥X八△/法界(ほうかい)/吝気(りんき)の事 00022750L19おもしろの/春辺(はるべ)やな。/去太夫(さるたゆふ)、/一代能(いちだいのふ)をいたされけるが、 00022760M1/名人(めいじん)のきこえ/有(あり)ければ、/京中(きやうぢう)ハ申にをよばず、/田舎遠境(でんじやゑんきやう)より 00022770M2/我(われ)おとらじと/登(のぼ)り、/見物(けんぶつ)/日&(にち+)にみちにけり。かのりんきふ 00022780M3かき/男(おとこ)、/能(のふ)といふ事はしらねども、人にさそはれ/見物(けんぶつ)に/行(ゆき) 00022790M4しが、能の/中半(なかば)に/用事(ようじ)ありて/芝居(しはゐ)より/外(そと)へ/出(いて)ける。/然(しか)る/所(ところ) 00022800M5へ/近付(ちかつき)の人/来(きた)り、(十四ウ)/見物(けんふつ)にまいられたかととふ。い 00022810M6かにもきました。/何番目(なんはんめ)と/尋(たつね)ける。たゞ/今(いま)四/番(はん)めじや。/能(のふ) 00022820M7は/何(なに)じやととふた。されば/何(なに)とも/謡(うたひ)ハしらぬが、/坊主(はうず)一人 00022830M8/出(いで)て、いまだ/日(ひ)は/高(たか)く候へども、あまりの/大雪(おほゆき)にて候/程(ほと)に、 00022840¥G 00022850¥P79 00022860L1/宿(や□)をからふといふ。かゝる/所(ところ)へ/女(おんな)一人/出(いで)て、やすき事にて 00022870L2候へとも、あるじの/御留主(おるす)にて候ほどに、/御宿(おやど)ハかない候 00022880L3ましといふ。/其時(そのとき)/坊主(はうず)、/一夜(いちや)の事ハくるし(十五オ)かるま 00022890L4し。/是非(ぜひ)におかしあれといふてゐるか、/男(おとこ)のるすにかしお 00022900L5らねばよひがといふた。 00022910¥N9¥J 00022920¥X九△/水(ミつ)に/住(すむ)/蛙(かハつ)/都(ミや□)の/髪結(かミゆひ)/迄(まて)の事 00022930L8/実(げに)/長閑(のどか)なる/東山(ひかしやま)、/花(はな)の/盛(さかり)ハ/弥生山(やよひやま)、/御室(おむろ)の/桜(さくら)/名木(めいぼく)と、/田舎(ゐなか) 00022940L9より/花見(はなミ)にのぼる/人(ひと)、/方&(はう+)/一見(いつけん)し、/一条(いちでう)もどり/橋(はし)に/立(たち)より、 00022950L10/折節(おりふし)/床髪結(とこがミゆひ)に、/此川(このかハ)は/何(なに)といふと/尋(たづね)ければ、/待賢(たいけん)門/院(ゐん)の/堀= 00022960L11川(ほり=かハ)と/子細(しさい)らしくこたへける。/田舎人(ゐなかひと)/聞(きい)て、/扨(さて)も(十五ウ)な 00022970L12かゝらぬ/名誉(めいよ)なくろかミゆひ/殿(どの)じやといふ。されば、みだ 00022980L13れて/今朝(けさ)は/物思(ものおも)ひますといふた。 00022990¥N10¥J 00023000¥X十△/誹諧(はいかい)/打(うち)こしの事 00023010L16おさまる/御代(ミよ)のしるしとて、/京(きやう)/田舎(ゐなか)はいかいの/前句付(まへくづけ)はや 00023020L17り、きのふけふ/迄(まて)/切字(きれじ)さへしらぬ人も、はや/新点者(しんてんじや)になり 00023030L18/墨(すミ)を/引(ひく)/其浮雲(そのあぶな)さ。/前句(まへく)にうつらぬ/句(く)も、しさいらしき/句(く)/作(つく) 00023040L19リには/若(もし)は/古事(こじ)かと思ひ、しらぬ事も/聞(きい)た/皃(かほ)して(十六オ) 00023050M1/長点(なかでん)/朱点(しゆでん)をかけ、/初心(しよしん)をまよハす/月次(つきなミ)の/会(くわい)をはしめられけ 00023060M2る/折(おり)から、/去人(さるひと)の/付句(つけく)に、 00023070M3△△/鼻筋(はなすぢ)を見てみめのよしあし 00023080M4といふ句を/付(つけ)ければ、/宗匠(そうしやう)じまん/皃(かほ)して、さし/合(あひ)ますると 00023090M5いふ。/作者(さくしや)、/何(なに)がさしまするととふた。/打(うち)こしの/天狗(てんぐ)にさ 00023100M6すといふた。 00023110¥Y1うかれ小僧一之終△△(十六ウ) 00023120¥P80 00023130¥Y1/宇賀礼小僧(うかれこそう)△第二 00023140L3一△/果報(くハほう)は/才智(さいち)によらぬ事 00023150L4二△/一心(いつしん)むけやうの事 00023160L5三△/一(いち)を/以(もつ)て/万(ばん)をしる事 00023170L6四△/十千貫目(とせんぐわんめ)も/夢(ゆめ)なる事 00023180L7五△/誹諧(はいかい)/前句付(まへくつけ)の事 00023190L8六△しらぬは/身(ミ)の/科(とが)ならぬ事 00023200L9七△/家業(かげう)に/心懸(こゝろが)ケよきハ/他(た)をしらぬ事(一オ) 00023210L10八△/了簡(りやうけん)/違(ちが)ひの事 00023220L11九△/何年(なんねん)しても/愚痂(ぐち)ハなをらぬ事 00023230L12十△/詞(ことバ)一/言(ごん)にて/賢愚(けんぐ)知る事(一ウ) 00023240¥T1 00023250¥N1¥J 00023260¥X一△/果報(くハほう)は才智によらぬ事 00023270M3/金(こかね)は/北斗(ほくと)をさそふとも一/樽(そん)の/酒(さけ)にはしかしと、/古人(こじん)のいひ 00023280M4しもことはりや。/文盲(もんもう)不/通(つう)の/人有(ひとあり)。されども/前世(ぜんぜ)の/果報(くわほう)に 00023290M5や、/金銀(きん+)を/沢山(たくさん)に/持(もち)にけり。/惣領(そうりやう)に/嫁(よめ)をむかへしに、/富貴(ふうき) 00023300M6ゆへ/歴(れき)&の/息女(そくちよ)をよびにける。/舅(しうと)の/方(かた)に/聟(むこ)をふるまふに、 00023310M7/親仁(おやじ)も/御出(おいで)と/物(もの)こときよらをつくし、/書院(しよゐん)の/床(とこ)に(二オ)/定= 00023320M8家卿(てい=かきやう)の/三首(さんしゆ)の/懐紙(くハいし)かけ、/青貝(あをがい)の/卓(しよく)に/時代(じたい)まきゑの/篭(かご)、/香炉(かうろ) 00023330M9/羽箒(はばゝき)かろ+/取合(とりあハ)してかざり、/違棚(ちがひたな)にハ/為家(ためいゑ)の/古今集(こきんしう)/其外(そのほか) 00023340M10/唐(から)の/大和(やまと)の/名物(めいぶつ)、/数(かず)をつくしてかざり/置(をき)、/是(これ)をはれとぞい 00023350M11たしける。もんもうなる/親仁(おやじ)、/惣領(そうりやう)/其外(そのほか)/相伴人(しやうばんにん)つれだち、 00023360M12しうとの/方(かた)に/行(ゆき)、/炉路(ろぢ)より/書院(しよゐん)へとをりける。/亭主(ていしゆ)/立出(たちいで)、 00023370M13/今日(こんにち)の/御出(おいで)/忝(かたじけな)しと(二ウ)あいさついたしける。/相伴人(しやうばんにん)に 00023380M14こびたる人ありて、/親仁(おやじ)/床(とこ)のあたりへ/気(き)をつくるかと、し 00023390M15ばしひかへてみれども、何ともあいさつなし。/相伴人(しやうばんにん)/床(とこ)に 00023400M16むかひ、/扨(さて)&けつかうなる/御掛物(おかけもの)、かざり/道具(だうぐ)/御取合(おとりあハせ)、お 00023410M17/物(もの)ずきのおもしろさなどゝほめにけり。/時(とき)に/親仁(おやじ)、/亭主(ていしゆ)に、 00023420M18けつかうなる/道具(たうぐ)を/御(お)かざりなされた。あのれんだいの/松= 00023430M19虫(まつ=むし)(三オ)/籠(かご)ハ/何(なに)のためぞと/尋(たづね)ける。/亭主(ていしゆ)、きやうをさまし、 00023440¥P81 00023450¥G 00023460L12せきめんしてぞ/居(ゐ)たりける。あいさつ人、きかぬ/皃(かほ)にて、 00023470L13/三首(さんしゆ)の/御哥(おうた)にとりわき/松虫(まつむし)の/御歌(おうた)ハおもしろきやうに申ま 00023480L14するといふ。/親仁(おやじ)そらさぬかほして、わたくしはれんとび 00023490L15があのやうなちいさい/篭(かご)もぬけまするかと/思(おも)ふといふた。 00023500¥N2¥J 00023510¥X二△/一心(いつしん)むけやうの事(三ウ) 00023520L18あだし/野(の)の/露(つゆ)きえやすく、/萩(はぎ)の/下葉(したバ)も/色(いろ)づきて、/松(まつ)の/嵐(あらし)も 00023530L19なる/滝(たき)に、/道心者(たうしんじや)の/庵(いほり)あまた/有(あり)。/朝(あした)には/京(きやう)へ/出(いで)て/鉢(はち)をひら 00023540M1き、/夕(ゆふ)べにはつま木をこりて/茶(ちや)をわかし、/一生(いつしやう)ををくりけ 00023550M2る。/老(おい)たる/道心者(だうしんじや)に/道念(だうねん)といふもの有。/病(やまひ)にせまり/命終(ミやうじう)にち 00023560M3かづけは、あたりの/道心者(たうしんじや)とも/立(たち)より、/色&(いろ+)かんびやうし、 00023570M4/意念(いねん)/往生(わうじやう)とハ申せ/共(とも)、(四オ)/口(くち)に/名号(ミやうがう)をわすれずハ/往生(わうしやう)う 00023580M5たがひなしと/耳(ミヽ)のそばに/立寄(たちより)、/日比(ひころ)の/称名(せうミやう)をわするゝなと 00023590M6いふ。/其時(そのとき)/道念(たうねん)、はつちとこたふ。/道心者(たうしんしや)どもきもつぶし、 00023600M7/扨&(さて+)わけもなき事をいふ事と、また/立(たち)より、かならず/念仏(ねんぶつ) 00023610M8をわするゝなとすゝめければ、またはつちといふ。/是(これ)にて 00023620M9ハさだめて/六道(ろくだう)にまよはん。ふびんの事なりと、あたりの 00023630M10/長老(ちやうらう)を/請(しやう)じ、(四ウ)/右(ミぎ)の/段&(たん+)申上ケ、/終焉(しうゑん)の御すゝめ、た 00023640M11のミますると申ける。/和尚(おしやう)/来(きた)り給ひ、いかに/道念(たうねん)、/常(つね)&の 00023650M12/来迎(らいかう)をわするゝなとすゝめたまへバ、またはつちといふ。 00023660M13/其時(そのとき)/和尚(おしやう)、/入(いれ)ませうとのたまへバ、/南無(なむ)あミだ/仏(ぶつ)とうなづ 00023670M14きて、/往生(わうじやう)のそくわいをとげにけり。 00023680¥N3¥J 00023690¥X/一(いち)を/以(もつ)て/万(ばん)をしる事 00023700M17/長安(ちやうあん)の/都(ミやこ)は/近(ちか)/いやら(△(うカ))/天(てん)の/道(ミち)ハ/遠(とを)いやら。(五ノ九オ)/何(なに)のわき 00023710M18まへもなき人の/子(こ)に、/物(もの)こと/器用(きよう)なる/男子(なんし)有。人&/世(よ)にあ 00023720M19やかり/物(もの)ともてはやしける。/或時(あるとき)/去人(さるひと)のいふやうハ、/其方(そのはう) 00023730¥P82 00023740L1の/御子息(こしそく)ハ/万事(ばんじ)にきようのよし、うけたまはる。/碁(ご)ハ何ほ 00023750L2どの碁でござる。/親仁(おやじ)/聞(きい)て、/宗匠(そうせう)に二つでござる。/扨(さて)/将棊(しやうぎ) 00023760L3ハ何ほどぞ。/是(これ)も/片香車(かたきやうしや)。さても+/器用(きよう)なる事。/鞁(つゝミ)はな 00023770L4りますか。いかにも/打(うち)まする。どれほどの/鞁(つゝミ)で(五ノ九ウ) 00023780L5御/座(ざ)る。/上手(じやうづ)の/役者(やくしや)に/片皮(かたかハ)の/皷(つゝミ)じやと/云(いふ)た。 00023790¥N4¥J 00023800¥X/十千貫目(とせんぐわんめ)も/夢(ゆめ)なる事 00023810L8/春(はる)/田(た)がやせば/秋(あき)/実(ミ)のり、/東方朔(とうばうさく)か/桃(もゝ)の/木(き)も/熟(じゆく)するまではま 00023820¥G 00023830M1だるし。/陽気(ようき)さかんなる/若男(わかおとこ)、/人(ひと)のいさめをもちいず。/悪= 00023840M2所(あく=しよ)の/山入(やまいり)に五人の/太皷(たいこ)をつれ、/有(ある)ほどの/名取(なとり)の/遊女(ゆうぢよ)をつか 00023850M3み、/揚屋入(あけやいり)の/酒(さか)もりに、つねのおさへハ/興(けう)なしと、/金子(きんす)一 00023860M4/両(りやう)のミをはじめ、(十オ)(十ウ・又十オ挿絵)/末社(まつしや)ぞろへのらく 00023870M5あそび、/下戸(げこ)ならぬこそおのこはよけれと、/五盃(ごはい)のふでハ 00023880M6/五両(ごりやう)もらひ、/金銀(きん+)ハ/空(そら)よりやふりけん/地(ぢ)よりやわきけん、 00023890M7/親(おや)のゆづりの/銀箱(かねばこ)は/碓(からうす)のふミだんになり、十/軒口(けんぐち)を/棒(ぼう)に 00023900M8ふり、/浅(あさ)ましき/姿(すかた)になりても、かねのなる木がほしいとい 00023910M9ふ。わきなる人、/其方(そのはう)ハ/金(かね)のなる/木(き)かあらば、/青(あを)いうちか 00023920M10らむしらふ/物(もの)といふた。(又十ウ) 00023930¥N5¥J 00023940¥X/誹諧(はいかい)/前句付(まへくつけ)の事 00023950M13/月(つき)は/山(やま)/風(かせ)ぞ/時雨(しぐれ)ににほの/海(うミ)、/近江(おふミ)の/国(くに)に/殊(こと)に/前句付(まへくつけ)はやり 00023960M14ける。/去百姓(さるひやくしやう)/其(それがし)がせがれが、/此中(このぢう)/誹諧(はいかい)をすきていたしま 00023970M15すが、/始(はじめ)ハ/独吟(どくぎん)の/両吟(りやうぎん)のといふてしましたが、/此比(このころ)ハ/銭(ぜに)を 00023980M16やつて/当銀(とうぎん)にしますといふた。 00023990¥N6¥J 00024000¥Xしらぬは/身(ミ)の/科(とが)ならぬ事(十一オ) 00024010M19/井(ゐ)の内の/蛙(かハづ)ハ/大海(たいかい)をしらず。人ハ/氏(うぢ)よりそだち。/去下男(さるしもおとこ)、 00024020¥P83 00024030L1/上京(かミきやう)/辺(へん)の/茶人(ちやしん)に/半季奉公(はんきはうこう)をつとめける。されば、/一季居(ひときゐ)の 00024040L2ならひに、/前(まへ)の/主(しう)を大/方(かた)そしる/物(もの)なるが、/或時(あるとき)/友達(ともたち)の男に 00024050L3/途中(とちう)にて/行逢(ゆきあひ)けれバ、/其方(そのはう)、/只今(たゝいま)ハいづ/方(かた)に/奉公(はうこう)すると/尋(たつね) 00024060L4ける。/上(かミ)京にゐるといふ。何と/今度(こんど)の/主(しう)もしハい/者(もの)かとと 00024070L5ふ。/此(この)四五日/奉公(はうこう)をするが、いかさま/前(まへ)の/主(しう)と(十一ウ)ちが 00024080L6はぬ。しハひ/者(もの)と見えて、/此中(このぢう)も/客(きやく)五人あるに、/茶(ちや)を一ふ 00024090L7くたてたといふた。 00024100¥G 00024110¥N7¥J 00024120¥X/家業(かげう)ニ/心懸(こゝろが)ケよきハ/他(た)をしらぬ事 00024130M3/夕(ゆふ)へ/涼(すゞ)しき/椽(ゑん)ばなにすだれまきあげ、おもふ/友(とも)どち、よね 00024140M4んなく/碁(ご)を/打(うち)にけり。/田舎(ゐなか)の/出家(しゆつけ)/見物(けんぶつ)して/居(ゐ)たまふ。ある 00024150M5いは/四丁(しちやう)におふの、/切(きり)ませうかの、あるいはかうを/打(うち)かけ 00024160M6うかのと、ひた/物(もの)いひけれハ、/彼出家(かのしゆつけ)、(十二オ)/終(つい)に/碁(ご)とい 00024170M7ふ物ハしらず、何ぞあいさつをいひたくおもひ、とかく/碁(ご) 00024180M8ハあらい/言葉(ことハ)さへいへばよき事ぞと/心得(こゝろえ)ゐる/内(うち)に、また/爰(こゝ) 00024190M9をとんと/切(きり)ませうといふ。/其時(そのとき)/出家(しゆつけ)、/先(まつ)またしやれ。きら 00024200M10ふよりは其/石(いし)をふミたおさつしやれといふた。 00024210¥N8¥J 00024220¥X/了簡(りやうけん)/違(ちが)ひの事 00024230M13/青&(せい+)/一寸(いつすん)の/松中(まつなか)に/棟梁(とうりやう)の/姿(すかた)有。せんだんハ(十二ウ)/二葉(ふたば)より 00024240M14かうばし。去/貴人(きにん)の/子(こ)に、二つ三つの/比(ころ)より、/子(こ)どものま 00024250M15さる事をしのこすことなく、いたいけにいたしける。/麁相(そさう) 00024260M16なる/者(もの)/来(きた)りて、かのおさな/子(ご)にむかひ、てうち+あはゝ、 00024270M17いろ+の事させけるに、のこる/所(ところ)もなくあいらしくいた 00024280M18しけれハ、かの/男(おとこ)/扇(あふぎ)をたゝき、/扨(さて)も+いたいけなおさな 00024290M19いじや。/人間(にんけん)、/物(もの)をしらぬ也とほめた。(十三オ)(十三ウ・十 00024300¥P84 00024310L1四オ挿絵) 00024320¥N9¥J 00024330¥X/何年(なんねん)しても/愚痴(ぐち)ハなをらぬ事 00024340L4/禍(わさハい)は/下(しも)から。/町人(まちにん)のたしなミは/少(すこし)も/御法(ごほう)をそむかぬやう 00024350L5に/心(こゝろ)かけ、/朋友(ほうゆふ)のまじハりにもおろそかならぬをよしとす。 00024360L6/下京(しもぎやう)に/一町(いつちやう)に/等雲(とううん)・/了慶(りやうけい)とて、/両人(りやうにん)の/年寄(としより)有。二人共に/文= 00024370L7盲(もん=もう)なれ共、/家(いゑ)/久敷者(ひさし□もの)なれば/宿老(しゆくらう)をもたせける。/或時(あるとき)の/書上(かきあげ) 00024380L8に/両人(りやうにん)の/名(な)をかきける。/筆(ふで)とりの申/様(やう)、(十四ウ)/等雲(とううん)の等ハ、 00024390L9/何(なに)と/書(かき)ますると/尋(たつね)ける。/町人(まちにん)の/内(うち)より、等ハ/竹(たけ)かふりに/寺(てら) 00024400L10といふ/字(じ)、/雲(うん)ハ/雲(くも)といふ/字(じ)とこたへける。/筆取(ふてとり)かさねて、 00024410L11/了慶(りやうけい)の了の/字(じ)は何と/書(かき)まする。/又(また)/先(さき)の人、了慶の了はみゝ 00024420L12りやうとこたふ。/其時(そのとき)/了慶(りやうけい)/腹(はら)を/立(たて)、そこな/若(わか)キ/人(ひと)ハ/麁相(そさう)を 00024430L13いふ人じや。/某(それかし)がいかに/身躰(しんだい)がならぬとて、人/中(なか)でおれを 00024440L14みゝりやうといふ事か/有物(あるもの)か。/以来(いらい)をたしなミ/給(たま)へと(十五 00024450L15オ)申ける。かの/者(もの)/赤面(せきめん)し、いかにも+あやまりました。 00024460L16/良(やゝ)りやうをかけといふ。/其時(そのとき)また/腹(はら)を/立(たて)、/其方(そのはう)ハ/人(ひと)をうつ 00024470L17けにするか。八十にあまる者を、やゝりやうといふ事があ 00024480L18る/物(もの)か。/等雲(とううん)に/位(くらゐ)も/官(くわん)もまくる事でない。とううむが/竹(たけ)か 00024490L19ふりならば、をれハ/木(き)かふりにかけといふた。 00024500¥N10¥J 00024510¥X/言葉(ことバ)/一言(いちごん)にて/賢愚(けんぐ)/知(し)る事 00024520M3/法(のり)のをしへの/道(ミち)ひろく、/槃特(はんどく)も/仏果(ぶつくわ)を/得(え)た(十五ウ)まふ。/去= 00024530M4人(さる=ひと)、/親(おや)の/年忌(ねんき)に/長老(ちやうらう)を/請(しやう)じ、/町中(ちやうぢう)に/斎(とき)をいたしける。/折(おり)ふ 00024540M5し/長老(ちやうらう)の/隙入(ひまいり)あり、/小僧(こそう)ばかり/参(まい)りける。/年寄(としより)/町中(ちやうぢう)のこら 00024550M6ず/斎(とき)にまいる。/年寄(としより)、/出家(しゆつけ)さへみれバ、/老若(らうにやく)にかぎらす/老= 00024560M7僧(らう=そう)といふと/心得(こゝろえ)、/斎(とき)を/喰(くひ)+、/今朝(けさ)の/調菜(てうさ□)いかふ/出来(でき)まし 00024570M8た。/老僧様(らうそうさま)、よふまいりませい。/殊(こと)に/老僧様(らうそうさま)はお/若(わか)いほど 00024580¥G 00024590¥P85 00024600L1に、とりわき、まいりませいといふた。 00024610¥Y1うかれ小僧二之終(十六オ) 00024620¥Y1/夘伽礼小僧(うかれこそう)△第三 00024630M3一△/草人木(さうにんぼく)をしらぬ事 00024640M4二△/人(ひと)の/心(こゝろ)はしられぬ事 00024650M5三△/精進肴(しやうじんざかな)の事 00024660M6四△/蕎麦切(そばきり)はや/打(うち)の事 00024670M7五△/難波(なにハ)の/舟遊(ふなあそ)び/余念(よねん)/夏川(なつかハ)の事 00024680M8六△/駕籠掻(かごかき)も/名乗(なのり)を/呼(よぶ)事 00024690M9七△/四方髪(しはうかミ)は/昼行燈(ひるあんどう)といふ事(一オ) 00024700M10八△/欲(よく)には目の見えぬ事 00024710M11九△/万僧(まんぞう)/供養(くよう)の事 00024720M12十△/始末(しまつ)も/事(こと)による事(一ウ) 00024730¥P86 00024740¥T1 00024750¥N1¥J 00024760¥X一△/草人木(さうにんぼく)をしらぬ事 00024770L3/初(はつ)むかしの/味(あちハ)ひは/五味(ごミ)をうるほし、/酒(さけ)のゑひさまし、まこ 00024780L4とに/茶(ちや)の/湯(ゆ)ハ/仏法(ふつほう)より/出(いて)て/貴人(きにん)のもてあそび。/中京(なかきやう)にかく 00024790L5れなき/茶人(ちやじん)/有(あり)。/家居(いゑゐ)きよらに、わざとならぬ/庭木(にハき)に/炉路(ろぢ)の 00024800L6/取(とり)やう、/物(もの)すきにかこふ/茶(ちや)の/間(ま)のあかりよく、/毎日(まいにち)/客(きやく)を/請(しやう) 00024810L7じける。/或時(あるとき)/田舎侍(ゐなかさふらい)を/招請(しやうたい)せられける。この/侍(さふらい)、(二オ) 00024820L8/終(つゐ)に/茶(ちや)の/湯(ゆ)といふ事をしらす。/長刀(なかかたな)をさしながら、かこゐ 00024830¥G 00024840M1の/内(うち)に/入(いり)にけり。/詰(つめ)に/行(ゆく)たる人/笑止(しやうし)におもへ共、さすが/武= 00024850M2士(ぶ=し)の事なれは、/刀(かたな)をぬかしやれともいはれず。物によそへ 00024860M3て、とかくかこゐの/内(うち)にてハ/長(なが)い/物(もの)をバぬきましたがよふ 00024870M4ござるといふ。/其時(そのとき)かの/侍(さふらい)、そらさぬ/皃(かほ)して、ふところよ 00024880M5りけぬきを/取出(とりいた)し、/鼻毛(はなげ)をぬかれたるもおかし。(二ウ) 00024890¥N2¥J 00024900¥X二△人の心はしられぬ事 00024910M8よしや/弥生(やよい)の/花盛(はなさかり)、/京中(きやうぢう)の人&、/思(おも)ひ+の花見/幕(まく)、/祇園(ぎおん)、 00024920M9/清水(きよミつ)、/鳥部(とりべ)山、/袖(そて)をつらねて見物する。/西陣(にしぢん)にまづしき/糀= 00024930M10屋(かうじ=や)有。十二になるむすめを/持(もつ)。人の/花見(はなミ)をうらやミ、/父親(てゝおや) 00024940M11に/是非(ぜひ)に花見につれたまへとせがみける。さすがおんあい 00024950M12のかなしさ、ふびんにおもひ、さあらば花見いたさんと、 00024960M13/弁当(へんたう)もなけれバ、/椀(わん)/折敷(おしき)を(三オ)つゞらに入、/背中(せなか)におひ、 00024970M14むすめの手を/引(ひき)、/舟岡(ふなおか)山にのぼりける。あたりを見まハし、 00024980M15人のなき/所(ところ)に/葛篭(つゝら)をおろし/置(をく)。/折節(おりふし)、山まハり/見付(ミつけ)、/是(これ) 00024990M16+、/此(この)山にてきやうげんはさせぬといふ。/親仁(おやじ)/腹(はら)を/立(たて)、 00025000M17あまりせきて物もいはず、/弁当(べんたう)の/椀(わん)を/取出(とりだ)し見せければ、 00025010M18山まハり/是(これ)を見て、しな/玉(だま)は/猶(なを)ならぬといふた。 00025020¥P87 00025030¥N3¥J 00025040¥X三△/精進肴(しやうしんさかな)の事(三ウ) 00025050L3一日に/千里(せんり)も/行車(ゆくくるま)もがな、/洛外(らくぐわい)の/花見(はなミ)をせん。/円(まる)山、/霊山(れうぜん)、 00025060L4/双林寺(さうりんじ)の/遊山所(ゆさんところ)ハ、卅日も/前(さき)よりからねばならぬと、/円山(まるやま) 00025070L5の花見/振舞(ふるまひ)。/洛中(らくちう)のすい/男(おとこ)、/当世(とうせい)の/時花歌(はやりうた)、/酒(さけ)のゑひざめ、 00025080L6あぶないがてんといふて/酌(くむ)/数(かす)に、/是非(せひ)に/今宵(こよひ)はのミじらけ、 00025090L7うたふつまふつする所へ、/若(わか)き/男(おとこ)の/来(きた)りける。/亭主(ていしゆ)よろこ 00025100L8び、/能折(よきおり)からの御出。さあ+/座敷(さしき)へとよびにけり。/其時(そのとき) 00025110L9/客(きやく)の/方(かた)(四ノ八オ)より、ひらに御出とすゝめければ、いや 00025120L10/私(わたくし)ハ/酒(さけ)は一/滴(てき)もたべ申さず。其上今日ハ/精進(しやうじ)じや。ゆる 00025130L11したまへと申ける。/亭主(ていしゆ)/手(て)をとり、/酒(さけ)ハならずと、/是程(これほと)し 00025140L12ミたる酒もりに、/肴(さかな)なり共したまへと申ける。それならは 00025150L13肴をせん。さりながら/私(わたくし)ハしやうじ肴じやといふ。/客(きやく)ど 00025160L14も/口(くち)+に、よからふといふ。其まゝ大/肌(はだ)をぬぎ、なまい 00025170L15だと/念仏(ねんふつ)を申た。(四ノ八ウ) 00025180¥N4¥J 00025190¥X四△/蕎麦切(そばきり)はや/打(うち)の事 00025200L18/大(おほ)江の/岸(きし)の/浪枕(なミまくら)、/夜昼(よるひる)のわかちなく、入/舟(ふね)出/船(ふね)/数千艘(すせんぞう)、ま 00025210L19ことに/繁昌(はんじやう)の/地(ち)と見えて、物こと大やうに、/道頓堀(たうとんほり)のそば 00025220M1/切(きり)や、大/座敷(さしき)をかまへ、/庭(にハ)には/筑(つき)山、/蘇鉄(そてつ)の/数を(かす)/植(うへ)ならべ、 00025230M2/客(きやく)一人にも五人三人のかよひを/付(つけ)てもてなしける。芝居の 00025240M3はてに/奥方(おくがた)の/順礼(しゆんれい)/数(す)百人、いざそば切くはんといふ。つれ 00025250M4の内に、/此(この)大/勢(せい)に、何とて(九オ)(九ウ・十オ挿絵)そば切が 00025260M5なる物ぞ。/宿(やど)へかへらふといふ。又一人のいふやうハ、蘇 00025270M6/鉄(てつ)に/指(ゆび)をさし、あれほど大きなるわさびの/有(ある)からハ、百人 00025280M7や二百人のそば/切(きり)はならふといふた。 00025290¥G 00025300¥P88 00025310¥N5¥J 00025320¥X五△/難波(なにハ)の/舟(ふな)あそひ/余念(よねん)/夏川(なつかハ)の事 00025330L3/福嶋(ふくしま)川の/夕(ゆふ)げしき、入/江(え)+の/舟遊(ふなあそ)び、/岸(きし)の木/陰(かけ)に/茶店(ちやたな)を 00025340L4かまへ、/雀鮓(すゝめすし)を/売(うり)にけり。/肴(さかな)に雀ずしをかおふといふ。壱 00025350L5人の(十ウ)いふやうは、/当年(とうねん)ハ/雀(すゝめ)ずしがいかふあたります 00025360L6るほどに/無用(むよう)でござる。それはなぜに。はなし鳥がおほふ 00025370L7て雀が/高(たか)きによつて、/大方(おゝかた)つばくらをするといふた。 00025380¥G 00025390¥N6¥J 00025400¥X六△/駕篭掻(かごかき)も/名乗(なのり)をよぶ事 00025410M3/舟(ふね)に/馬(むま)は二/句(く)ざりと、/子(こ)共つぶてもうちこしをきらひ、三 00025420M4/句(く)にわたるながれ川はかごかきのきらひ/物(もの)と、/馬(むま)おひ/舟人(ふなひと) 00025430M5迄/誹諧(はいかい)をし、(十一オ)/仁蔵(にざう)三/蔵(ざう)といふ/名(な)をよばす、/或(あるい)ハ/暁弾(きやうたん) 00025440M6の/柳陰(りうゐん)のと/名乗(なのり)を/付(つ)ク。/去(さる)人、/関(せき)の/地蔵(ぢざう)よりかごをかりけ 00025450M7るに、一人に/直段(ねだん)をきはめけれバ、つれの駕かきに、さあ 00025460M8ゆかふといふ。/直(ね)はいくらぞ。/其時(そのとき)/発句(ほつく)をしかけける。 00025470¥G 00025480¥P89 00025490L1△△/駕銭(かごせん)やつなぎながらの太郎月 00025500L2/心得(こゝろへ)たといふて/駕(かご)に/取(とり)つき、/脇付(わきつけ)ませう。 00025510L3△△手をそへてかくしまな/蓬莱(ほうらい) 00025520L4といふた。(十一ウ) 00025530¥N7¥J 00025540¥X七△四/方髪(ほうかミ)は/昼行燈(ひるあんどう)といふ事 00025550L7七/徳(とく)の/舞(まひ)を二つわすれしハ心/有(あり)ての事。何事もしらずして 00025560L8しつた/皃(かほ)する者有。/物(もの)は/類(るい)をもつてあつまるならひ。おな 00025570L9し/友達(ともたち)に、/子細(しさい)らしく/学文(がくもん)だてする/者(もの)あり。/或(ある)時/節用集(せつようしう)を 00025580L10/取出(とりいた)し、/文字(もじ)のせんさくする所へ、かの物しりだてする/男(おとこ) 00025590L11/来(きた)り、何を/勤学(きんがく)なさるゝぞ。いかふ/精(せい)が/出(で)るといふ。され 00025600L12ば、あまり(十二オ)さびしさに、/聖賢(せいけん)の/道(ミち)をとくとわきまよ 00025610L13ふとおもふて、/節用集(せつようしう)を見るといふ。かの/男(おとこ)/聞(きい)て、/扨(さて)&き 00025620L14どくなる事かな。/某(それかし)も/此中(このぢう)は/打絶(うちたへ)て/学文(かくもん)もせぬ。/久(ひさ)しう/節= 00025630L15用集(せつ=ようしう)をきかぬ/程(ほと)に、二三/枚(まい)よふできかしやれといふた。 00025640¥N8¥J 00025650¥X八△/欲(よく)には/目(め)の見えぬ事 00025660L18/五日(いつか)の/風(かせ)/十日(とをか)の/雨(あめ)、/五穀(ごこく)のためによき/物(もの)そ。まことなる天 00025670L19/道(たう)を、さかしまにおもふは何事ぞ。(十二ウ)/当年(とうねん)/打(うち)つゞき日 00025680M1でりなれば、/此(この)てりにては二百十日に/風(かせ)ふかふと、/米(こめ)の/買= 00025690M2置(かい=をき)する人あり。され共/五穀成就(ごこくちやうじゆ)の/世(よ)の/中(なか)にて、なる/程(ほど)日 00025700M3よりよく/風(かぜ)もふかず。かの/米持(こめもち)、/今日(けふ)はふかずとも、さだ 00025710M4めて/放生会(はうじやうゑ)にハかならずふくべしと、/正直(しやうぢき)の/神(かミ)をよこしま 00025720M5におもひける。其日も/天気(てんき)ことによろしく、/米(こめ)の/相場(さうば)、日 00025730M6&にさがりければ、かの/米(こめ)や、/大分(だいぶん)(十三オ)(十三ウ・十四オ 00025740M7挿絵)のそんの/上(うへ)に風がやまひになり、/万事(ばんじ)の/床(ゆか)にふしにけ 00025750M8り。/一門(いちもん)よりあひ/医者(いしや)を/請(しやう)じける。/脉(ミやく)をとりて見て、/扨(さて)も 00025760M9/是(これ)ハ/大風(おほかせ)を/引給(ひきたま)ふ。/発散(はつさん)せんといふ。其時/病人(びやうにん)おきあがり、 00025770M10/扨(さて)&いかい下/手(た)ないしやかな。風なれば/此病(このやまひ)おこる事でな 00025780M11い。是ハ日でりゆへ、ねつびやうじやといふた。 00025790¥N9¥J 00025800¥X九△/万僧(まんそう)/供養(くやう)事(十四ウ) 00025810M14もろこしの/安禄山(あんろくさん)ハ/鹿(しか)を/馬(むま)といひ、/武蔵坊弁慶(むさしばうべんけい)は/往来(わうらい)の/巻= 00025820M15物(まき=もの)を/勧進帳(くわんじんちやう)によむ。こゝに/唐陽(たうやう)とて/手前(てまへ)まづしくして、 00025830M16せんしやう/斗(バかり)いふ/者(もの)有。/友達(ともたち)の/来(きた)り、/其方(そのはう)ハ/色(いろ)も/青(あを)し、/月= 00025840M17代(さか=やき)もそらず/長髪(ちやうはつ)の/躰(てい)は、もし/煩(わづらひ)かととふ。いや/左様(さやう)でもな 00025850M18し。此中/昼夜(ちうや)/学文(がくもん)に/精(せい)をつくし、ひるハ/終日(ひねもす)/読書(とくしよ)し、夜ハ 00025860M19/鈍帳(とんちやう)の/中(うち)で/勤学(きんがく)するといふ。かの人/聞(きゝ)て、/扨(さて)も(十五オ)/其方(そのはう) 00025870¥P90 00025880L1ハきどくな事じや。其/上(うへ)/身躰(しんだい)もよくなられたと見えた。/鈍= 00025890L2帳(どん=ちやう)などゝいふ物ハ、/大躰(たいてい)の/町人(まちにん)の/釣(つる)ことでなし。うらやま 00025900L3しやといふてわかれける。かの/者(もの)/思(おも)ふやう、/扨(さて)も+せん 00025910L4しやうをいふやつかな。どんちやうの事ハおゐて、/蚊帳(かちやう)も 00025920L5ろくなハ/釣(つる)まいとおもひ、其/翌朝(よくてう)/早天(さうてん)に/唐陽(たうやう)方へ/行(ゆき)、/内(うち)に 00025930L6かととふ。/折節(おりふし)/女房(にようバう)出て、まだ/唐陽(とうやう)はねてゐらるゝと(十五 00025940L7ウ)いふ。それこそくつきやうの事と、ねまへ/行(ゆき)て見れば、 00025950L8やぶれたる/紙帳(しちやう)によねんなくいねて/居(ゐ)る。されバこそとお 00025960L9もひ、/唐陽(とうやう)+とおこす。きもをつぶし、/目(め)をする+は 00025970L10ひ/出(いて)、/何事(なにこと)そと/尋(たつね)ける。されバきのふ、/其方(そのはう)は/鈍帳(どんちやう)の/中(うち)に 00025980L11ねるといふたが、/是(これ)がどんちやうかととふ。/唐陽(たうやう)せかぬ/皃(かほ) 00025990L12して、いかにも、いつもどんちやうをつれ共、夕部すこし 00026000L13(十六オ)/物(もの)ずきに/是(これ)をつつたといふ。して、/是(これ)ハ何といふ物 00026010L14じや。是ハ/親仁(おやし)の/代(だい)にこしらへられた/重箱(ぢうばこ)の/覆(をほひ)じやといふ。 00026020L15/扨&(さて+)いかひせんしやうをいふ/者(もの)じや。とても/是程(これほど)大きなる 00026030L16/重箱(ぢうばこ)がある物か。その重箱みせいといふ。されバ/此中(このぢう)、/奈= 00026040L17良(な=ら)の/万僧(まんぞう)/供養(くよう)にかしたといふた。 00026050¥N10¥J 00026060¥X十△/始末(しまつ)も事による事 00026070M3/■居士(ほうこじ)の/金(こかね)を/淵(ふち)に/捨(すて)しハ、あまりいたり(十六ウ)/過(すき)たる事と、 00026080M4物こと/始末(しまつ)して/金銀(きんきん)を/大分(たいふん)に/持(もち)人、あまり/親(おや)のしはきは其 00026090M5子かならず/金(かね)をつかふ物なり。/勿躰(もつたい)なくも/親(おや)の/仕(し)やうは、 00026100M6むさきの、/義理(ぎり)をしらぬのと、ひた物まだるくおもひ、/死(しに)一 00026110M7/倍(ばい)のかねをかる。/皆(ミな)/世間(せけん)の/習(なら)ひ也。/去銀持(さるかねもち)の子に/二十斗(はたちハかり)な 00026120M8る者、きりやう人にすくれたるが、親の/目(め)をしのび、/嶋原(しまバら) 00026130M9がよひに日をくらす。さだめなき/世(よ)のならひとて、/親仁(おやじ) 00026140M10(十七オ)むなしくなりければ、もはや/今(いま)は/我物(わかもの)とよろこび、 00026150M11/吊(とふら)ひくる人、/御力(おちから)おとしといへば、いやちからおとしてハ 00026160M12なりませぬ。/輿(こし)の/跡(あと)をかきまするといひ、/一門(いちもん)のあつまれ 00026170M13バ、/是程(これほど)の大よせに/小盃(こさかつき)はまだるひ。むさしのでのめと 00026180M14いひ、/葬礼(そうれい)ハ/朝込(あさごミ)にしやうといふ。/一門(いちもん)の/者(もの)/聞(きい)て、いや 00026190M15+/暮方(くれかた)といへば、それならハ/門(もん)さゝぬ内に三/枚(まい)で出そふ 00026200M16といふた。 00026210¥Y1宇かれ小僧三之終(十七ウ) 00026220¥P91 00026230¥Y1/憂香連小僧(うかれこそう)△△第四 00026240L3一△/雨乞(あまこひ)/入札(いれふだ)の事 00026250L4二△/色(いろ)はまよひの/始(はじめ)の事 00026260L5三△/女筆(によひつ)/絵馬(ゑむま)の事 00026270L6四△/旅行(りよかう)は/物毎(ものごと)/気(き)を/付(つく)る事 00026280L7五△かけろく/謎(なぞ)の事 00026290L8六△人の/事(こと)はいひよき/物(もの)の事 00026300L9七△/古(ふる)きハ/世(よ)の/宝(たから)なる事(一オ) 00026310L10八△/愚癡(ぐち)も/頓作(とんさく)の事 00026320L11九△/謡(うたひ)に/利屈(りくつ)をいふ事 00026330L12十△/合薬売(あハせくすりうり)の事(一ウ) 00026340¥T1 00026350¥N1¥J 00026360¥X/雨乞(あまこひ)/入札(いれふた)の事 00026370M3ことハりや日の/本(もと)なればてりもしつさりとてはまたあめが 00026380M4/下(した)とハ。/歌人(かじん)の/口(くち)すさひ今おもひ出す。打つゝき日てりに 00026390M5/耕作(こうさく)に/力(ちから)なく、/村(むら)&/里(さと)&に/雨乞(あまこひ)をいたしける。/御湯(ミゆ)まいら 00026400M6する/詫宣(たくせん)に、/四条河原(しでうかハら)の/歌舞妓(かぶき)を見せたらハ/雨(あめ)をふらせん 00026410M7とのたまふ。/有(あり)かたや、/是(これ)こそこゝろやすき事なりと、/庄= 00026420M8屋(しやう=や)/年寄(としより)/相談(さうたん)し、/四軒(しけん)の(二オ)/芝居(しバゐ)に/入札(いれふだ)をさせにけり。/或(あるい) 00026430¥G 00026440¥P92 00026450L1ハ七日の/内(うち)、/百両(ひやくりやう)五十/両(りやう)三十両と、思ひ+に入にけり。 00026460L2/去者(さるもの)、/銭(せに)二/貫文(くはんもん)と札を/入(いる)る。/是(これ)/落札(おちふだ)と申ける。/日限(にちげん)をさだ 00026470L3め/村中(むらぢう)かの/社(やしろ)にあつまり、/哥舞妓(かふき)は/村山(むらやま)がくるか/万太夫(まんたゆふ)が 00026480L4/来(く)るかと/口(くち)+にいふ/所(ところ)へ、かの/札主(ふだぬし)ヽれんじやくを/肩(かた)に 00026490L5かけすご+と/来(きた)り、かの/社(やしろ)をおひにけり。人&きもをつ 00026500L6ぶし、是はいかなる事ぞ。かのおとこ、されば/今日(こんにち)ハ/神(かミ)の 00026510L7/御機嫌(ごきげん)よふござるにより、/河原(かハら)へ(二ウ)つれましてかぶき 00026520L8を見せますといふた。 00026530¥N2¥J 00026540¥X/色(いろ)はまよひの/初(はしめ)の事 00026550L11/袖(そで)のかほりもにほひ/来(く)る/色町(いろまち)の/夕凉(ゆふすゝ)ミ、/螢(ほたる)なけこむあだ人 00026560L12にさそハれ、/貧(まづ)しき/男(おとこ)/嶋原(しまバら)に/行(ゆき)、/御影(おかげ)にてかこゐに/枕(まくら)をな 00026570L13らべ、/一代一世(いちたいいつせ)のたのしミと/宿(やど)にかへり、/友達(ともだち)にかたりけ 00026580L14るは、きのふ/上郎(じやうらう)をかふたるが、あのやうなうつくしきも 00026590L15のも、うき/世(よ)にあるものか。/清紫(せいし)の二/女(ぢよ)は見(三オ)ねハし 00026600L16らず、/今(いま)/日本(にほん)には有まじき物と、ひたすらにほめにけり。 00026610L17/友達(ともたち)/聞(きい)て、それハ何といふ/女郎(ちよらう)ぞ。されば/夕部(ゆふべ)までハ/名(な)を 00026620L18よふおぼえたが今わすれた。たしかおれが/祖母(ばゞ)の名とおな 00026630L19し事じやといふ。/扨(さて)も+おかしい事。/女郎(ちよらう)の/名(な)に、ばゝ 00026640M1のやうなるは有まいといふ。なるほどおほえた。/妙貞(めうてい)とい 00026650M2ふ。/友達(ともだち)/腹(ハら)をかゝへ、女郎の名に/妙貞(めうてい)といふ事が有物かと 00026660M3わらひけれバ、いかにも+今おほえ(三ウ)た。/花月(くハげつ)とい 00026670M4ふといふた。 00026680¥N3¥J 00026690¥X/女筆(によひつ)/絵馬(ゑうま)の事 00026700M7/神(かミ)のめぐミのふかき/世(よ)に、/神前(しんぜん)に/女筆(によひつ)の/絵馬(ゑむま)をかくる事は 00026710M8やり、まだいはけなき/女子(によし)のいろ+/詩文(しぶん)までもかきにけ 00026720M9り。/去人(さるひと)の/息女(そくぢよ)、ことにうるハしく/詩歌(しいか)をかき、/物(もの)よミも 00026730M10のこる/所(ところ)なし。/皆(ミな)人うらやミ、/扨(さて)&その/方(はう)のむすめハおと 00026740M11こにまさり/智恵(ちゑ)有て、/物(もの)よミまでいたさるゝよし、/世(よ)に 00026750M12(四オ)せいじんしやといふ。/親仁(おやじ)/聞(きい)て、されば此中も/曽而(かつて) 00026760M13/夢(ゆめ)を見ぬと申まするといふた。 00026770¥N4¥J 00026780¥X/旅行(りよかう)は/物毎(ものこと)を/付(つく)る事 00026790M16くる+三べん/跡(あと)みよそはか。/旅(たび)ハ/吉日(きちにち)をえらひ/首途(かどで)をす 00026800M17る/物(もの)也。/去田舎武士(さるゐなかぶし)、/始(はじめ)て/東国(とうごく)へ/下(くだ)リけり。/物(もの)こと/念(ねん)の/入(いり) 00026810M18たる人にて、/道(ミち)&の/景気(けいき)をながめ、/下(しだ)&/迄(まて)心やすく/旅(たび)いた 00026820M19しける。おなし/旅人(たひひと)、/銭(せに)一/貫文(くわんもん)/肩(かた)にかたけて/先(さき)へ/行(ゆく)。かの 00026830¥P93 00026840L1/侍(さふらひ)、/下人(げにん)(四ウ)よびよせ、/先(さき)へかたげて/行銭(ゆくぜに)は、/此方(このはう)の 00026850L2もたせた/銭(せに)にてハなひかととふ。/下人(けにん)/聞(きい)て、いや+/左様(さやう) 00026860L3にてハござりませぬ。あの/者(もの)の/銭(せに)にてござりまする。/扨(さて)も 00026870L4おれが/銭(せに)によふ/似(に)たといふた。 00026880¥N5¥J 00026890¥Xかけろくなぞの事 00026900L7/智恵(ちゑ)/秀(ひいで)てハいつはりおほし。/大欲(たいよく)ハ/無欲(むよく)に/似(に)たり。/田舎(ゐなか)よ 00026910L8り/富貴(ふうき)なる人、/京遊山(きやうゆさん)せんとて/都(ミやこ)にのぼり、/洛中洛外(らくちうらくぐわい)/色町(いろまち) 00026920L9/迄(まて)/尋(たつね)ぬくまも(五ノ九オ)(五ノ九ウ・十オ挿絵)なし。/名取(なとり)の/太= 00026930L10皷持(たい=こもち)、/田舎大尽(ゐなかだいじん)ともてはやし、ついしやうけいはく/隙(ひま)もな 00026940L11し。されバ此人、/一分(いつふん)も/金銀(きん※)をやるすべもしらず。/太皷持(たいこもち) 00026950L12/共(とも)あきれはて、いかほどしハき者も、/折(おり)&ハ/一歩(いちぶ)の一つも 00026960L13くるゝが、其わけもなし。にくひやつかな。どふぞして一 00026970L14/歩(ぶ)なりとももらハんと、/或時(あるとき)かの人にむかひ、おもしろき 00026980L15かけなぞがこざりまする。一/歩(ぶ)を一つづゝかけて、何にて 00026990L16もなぞをとき申者(十ウ)/一歩(いちぶ)とるはづといふ。/其時(そのとき)/大(だい)じん、 00027000L17/先(まづ)そんならば/座興(ざけう)にしやう。いかにもと/請合(うけあひ)、/一歩(いちぶ)一つづ 00027010L18ゝ/出(だ)し/合(あハせ)、さらばなぞをかけませう。/長(なか)さ五/尺(しやく)/斗(ハかり)、/背(せ)の 00027020L19/高(たか)さ四尺ばかり、四つ/足(あし)有(あり)。ひたいにまがりたる/角(つの)二つ。 00027030M1/是(これ)/何(なに)といふ。その/時(とき)かの/者(もの)、ほんにしやうといふ。いか 00027040M2にもといた。/何(なに)と。/是(これ)は/牛(うし)じや。いかにも/牛(うし)でござります 00027050M3る。さらば一/歩(ぶ)をしんじませう。はひとつ、なぞをかけ 00027060M4ませう。よからふ。/今度(こんど)ハ/(又十オ)二/歩(ぶ)がけにいたしませ 00027070M5う。なるほど。さらばかけませう。ながれたる/川(かハ)ぎしに/蛇= 00027080M6籠(じや=かご)/有(あり)。その下より三寸まハりほどにて、三尺四五寸の/物(もの)ぬ 00027090M7ら+、なにと。かの/者(もの)、といた。何と。うなぎじや。い 00027100M8や、くちなハでござりまするといふて、二/歩(ぶ)のかねをとつ 00027110¥G 00027120¥P94 00027130L1た。 00027140¥N6¥J 00027150¥X人の/事(こと)ハいひよき物の事 00027160L4/相国寺(しやうこくじ)の横川に、/木篇(きへん)に/目(もく)といふ/字(ぢ)をとへば、(又十ウ)し 00027170L5らぬとのたまふ。/去(さる)人、/孝行(かう+)なる人を/持(もち)、/我(わか)/一跡(いつせき)をゆづり、 00027180L6もはやうき/世(よ)は/楽坊主(らくはうず)にならんとて、/親子(おやこ)つれ/立(たち)、/菩提寺(ぼだいじ) 00027190L7に/行(ゆく)。/髪(かミ)をそり、/十徳(じつとく)の/広袖(ひろそて)こゝろにかゝる事もなく/帰(かへ)り 00027200L8ける。/途中(とちう)にて/近付(ちかつき)にあふ。かの人此さま見て、/扨(さて)&/果報(くわほう) 00027210L9の御人や。もはや/法躰(ほつたい)なされ、めてたき事や。して+御 00027220L10/名(な)ハ何と申ぞ。/時(とき)にかの/親仁(おやじ)、/我名(わかな)を/覚(おほ)へず。されバおほ 00027230L11へませぬ。/息子(むすこ)にむかひ、其方ハしら(十一オ)ぬか。/先程(さきほと)ま 00027240L12でおぼへましたが、わすれました。かの人/聞(きい)て/尤(もつとも)の事。 00027250L13/当座(たうざ)にハおぼへぬものでござるとてわかれけり。/宿(やど)へかへ 00027260L14り/女房(にようバう)にむかひて、/扨(さて)も/途中(とちう)にていかひ/恥(はぢ)をかいた。おれ 00027270L15が/名(な)をとハれたに、/忰(せがれ)か/親(おや)の/名(な)をさへしらいで、そばて/汗(あせ) 00027280L16をかいたといふた。 00027290¥N7¥J 00027300¥X/古(ふる)きハ/世(よ)の/宝(たから)なる事 00027310L19/俊成(しゆんぜい)の/桐火桶(きりびおけ)、/頓阿(とんあ)の/螺鈿(らてん)の/軸(ぢく)も、/青貝(あおがい)の(十一ウ)/落(おち)たるを 00027320M1よしとす。/去能太夫(さるのふたゆふ)、/勧進能(くわんしんのふ)を/始(はしめ)けるに、/都(ミやこ)は/目(め)はづかし 00027330M2と/上絹(うハきぬ)/大口(おほくち)/其外(そのほか)の/装束(しやうそく)、/奇麗(きれい)をつくしける。京中の/貴賤(きせん) 00027340M3/此度(このたひ)の/装束(しやうそく)の/結構(けつこう)、/古今(ここん)/有(ある)まじきやうに申ける。/去人(さるひと)/是(これ)を 00027350M4見て、/扨(さて)も+けつかうなるしやうぞくの/新敷(あたらしき)事かな。今 00027360M5すこしの事でわるひ。/是程(これほど)の/能(のふ)に、/面(めん)がふるいといふた。 00027370M6(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵) 00027380¥N8¥J 00027390¥X八△/愚痴(ぐち)も/頓作(とんさく)の事 00027400M9/生死事大無常迅速(しやうじじだいむぢやうじんそく)とすゝむる/出家(しゆつけ)あり。/殊勝千万(しゆしやうせんばん)の/御= 00027410M10僧(お=そう)、/物(もの)しりの/談儀者(だんぎしや)ともてはやしける。/去文盲(さるもんまう)なる/禅門(せんもん)/参(まい) 00027420M11り、/和尚(おしやう)にむかひ/尋(たつね)けるハ、/一見卒都婆永離三悪道(いつけんそとはえうりさんあくだう)と/承(うけたまハ) 00027430M12リ候。/一間(いつけん)の/卒都婆(そとは)の事ハおゐて、/寺(てら)+にて二/間(けん)も三/間(けん) 00027440M13もあるそとはを見まする。一間の/卒都婆(そとハ)を見てさへ/三悪道(さんあくだう) 00027450M14ハのかるゝと申(十三ウ)ますれば、/三間(さんけん)の/卒都婆(そとハ)を見ますれ 00027460M15ハ/十悪(ぢうあく)はのかれますかととふた。/和尚(おしやう)こたへて、/一見卒都(いつけんそと) 00027470M16婆といふハ、はゞ一間の事じやとのたまへば、それらは見 00027480M17ませぬといふた。 00027490¥N9¥J 00027500¥X九△/謡(うたひ)に/利屈(りくつ)をいふ事 00027510¥P95 00027520L1/四海浪(しかいなミ)しづかにと一ふしうたふ/音曲(をんぎよく)に、/諷(うたひ)ほどよろしき/物(もの) 00027530L2なしと、ひたすら/稽古(けいこ)する人あり。/友達(ともたち)にいふやうハ、/此中(このぢう) 00027540L3/田村(たむら)のうたひを(十四オ)けいこするが、いかひあやまりが/有(ある)。 00027550L4/大悲(だいひ)の/弓(ゆミ)には/智恵(ちゑ)の/矢(や)をはめて、ひとたびはなせば/千(せん)の/矢(や) 00027560L5さきとある。いかに/千手(せんじゆ)くわんおんにても、/片手(かたて)で/弓(ゆみ)ハゐ 00027570L6られまいほどに、/一度(ひとたひ)はなせば五百の/矢(や)さきとうたひたい 00027580L7物じやといふ。/友(とも)の人、されハこそそれにて、あれを見よ、 00027590L8ふしきやなとうたふといふた。 00027600¥G 00027610¥N10¥J 00027620¥X十△/合薬売(あハせくすりうり)之事(十四ウ) 00027630M3/風(かぜ)は/百病(ひやくびやう)の/長(ちやう)たり。/食後(しよくご)の/一睡(いつすい)、/万病円(まんひやうゑん)と、/北野(きたの)の/縁日(えんにち)に 00027640M4ねり/薬(やく)を/売者(うるもの)/有(あり)。となりの/方(かた)に、さたう/生姜(しやうが)をうるもの有。 00027650M5/皆(ミな)/口(くち)+にのふどくをいふ。しやうが/売(うり)はしやうがをはさ 00027660M6ミ、/先(まつ)しやうがは/口中(こうちう)をうるほし、たんを/切(きり)、その/味(あぢ)かん 00027670M7ろのことくと人&にくばりける。/諸人(しよにん)、これをあちハひ、 00027680M8まことに/風味(ふうミ)よろしゝと/我(われ)も+と/買(かい)にけり。ねり/薬売(やくうり)、 00027690¥G 00027700¥P96 00027710L1いろ+(十五オ)/口上(こうじやう)を申せ共、一人もよる人なし。/兎角(とかく)、 00027720L2/喰(くひ)にハ人の/付事(つくこと)と思ひ、此ねり/薬(やく)に/五味(ごミ)あぢハひあり。す 00027730L3こし/舌(した)さまにをけば、うつきをはれ、たちまちきりよくを 00027740L4ます/妙薬(めうやく)と、人&の/手(て)に/付(つけ)にけり。され共なめて見る人な 00027750L5し。ひらさらこゝろみになめて見たまへといひければ、/去= 00027760L6人(さる=ひと)いふは、/薬(くすり)の心をしらぬによつて、そつじになめられぬ 00027770L7といふ。/其時(そのとき)くすりうり、(十五ウ)もどかしの人や。/毒(どく)に 00027780L8もくすりにもならぬ。なめて見やといふた。 00027790¥Y1宇加連小僧四之終(十六オ) 00027800¥Y1/曇佳連小僧(うかれこそう)△△第五 00027810M3一△/仕形(しかた)ばなしの事 00027820M4二△/色(いろ)には/外(ほか)を/忘(わす)るゝ事 00027830M5三△/文盲(もんもう)ハ/宛字(あてじ)を/知(しる)事 00027840M6四△/同(おな)じ/目(め)も/事(こと)に/依(より)/違(ちが)ふ事 00027850M7五△/頓作(とんさく)ハ/智恵(ちゑ)によらぬ事 00027860M8六△/秋(あき)の/山(やま)ハ/桜(さくら)に/増(まさ)る事 00027870M9七△/自剃(じぞり)ハ人の/為(ため)ならぬ事(一オ) 00027880M10八△/水(ミつ)ハ/方円(はうゑん)の/器(うつハ)による事 00027890M11九△/詞(ことハ)/多(おほ)きハ/品(しな)すくなき事 00027900M12十△/繁昌(はんしやう)の/地(ち)は/物毎(ものこと)/治(おさま)る事(一ウ) 00027910¥P97 00027920¥T1 00027930¥N1¥J 00027940¥X一△/仕形(しかた)はなしの事 00027950L3/鳩(はと)の/杖(つえ)は/老(おい)たる人のたすけ、/目(め)のよきハその/身(ミ)の/徳(とく)と、八 00027960L4十ばかりの/老人(らうしん)、/東山(ひかしやま)に/開帳(かいちやう)ありと、人をもつれす/参詣(さんけい)す。 00027970L5/生(うま)れ/付(つき)てはなしずきの人なり。/道(ミち)&つれがなほしやと、あ 00027980L6とさきを見ハしける。/折節(おりふし)六十/斗(ハかり)の/男(おとこ)、/是(これ)も一人まいり 00027990L7ける。かの/老人(らうしん)よき/友(とも)と思ひ、そなにハ/東山(ひかしやま)へさんけいか 00028000L8ととふ。いかにも。それならハ/同道(とうたう)いたし(二オ)ませう。 00028010¥G 00028020M1/何(なに)と、/先年(せんねん)/石山(いしやま)の/開帳(かいちやう)ほどにまいりはござらぬの。いかに 00028030M2もさやうでござる。/石山(いしやま)にてすまふを見たまふたか。いか 00028040M3にも見ました。/其時(そのとき)/若(わか)之/助(すけ)が/関(せき)じやが、/左(ひたり)の/手(て)をかふあげ 00028050M4てといふより/咄(はなし)がうつりて、のふ、すまふ/取(とり)はすしをよふ 00028060M5くふ物でござる。/兎角(とかく)すしは/近江鮒(あふミぶな)かよふござる。したか、 00028070M6あふミの/者(もの)はつかひにくふござる。/朝(あさ)おき+からこハ/高(たか) 00028080M7に/物(もの)いひまする。/惣(そう)して/舟人(ふなひと)ハわるひ/者(もの)(二ウ)でござる。 00028090M8あがり/場(バ)でハ/駕(かご)をかる共、わらぢをはいたがよふごさる。 00028100M9わらぢを/仁王(にわう)にしんずるハ/何(なに)とした事じや。されバ/盗人(ねすひと)は 00028110M10/目(め)をぬくといひまする。目をしやうくわんならば/鍋焼(なべやき)がよ 00028120M11ふござらふ。ねぶかをくふてからは/神(かミ)まいりせぬ物じやと 00028130M12いひまする。まことに/法花宗(ほつけしう)は/義理(きり)がかたふごさる。/松(まつ)が 00028140M13/崎(さき)のをどりは/皆(ミな)/花笠(はながさ)をきまする。/田(た)うへに/笠(かさ)きたるはしほ 00028150M14らしい/物(もの)じや。/住吉(すミよし)の/田植(たうへ)ハ五月廿八日(三オ)じやといひ 00028160M15まする。/堺(さかひ)のうらに/生(いき)た/蛸(たこ)がござる。それに/付(つい)て、さいぜ 00028170M16んのすまふの/手(て)ハどふでござる。いかにも、さまたにあげ 00028180M17ておとしたといふた。 00028190¥P98 00028200¥N2¥J 00028210¥X二△/色(いろ)には/外(ほか)を/忘(わす)るゝ事 00028220L3/色(いろ)の/道(ミち)には、たけき/武士(ものゝふ)もいづれあやめといひ、/志賀寺(しかてら)の 00028230L4/老僧(らうそう)も/足(あし)をみだす。/寺町(てらまち)に/親子(おやこ)共に/好色(こうしよく)なる/帷子屋(かたひらや)有。/朝(あさ) 00028240L5まだきより/店(ミせ)に出、ゆきゝの女の/品(しな)をさだめける。/或時(あるとき)廿 00028250L6四五なる女一人、/当世(たうせい)/仕出(しだ)し(三ウ)/黄八丈(きはちぢやう)に/浅黄(あさぎ)うら、/紋= 00028260L7繻子(もん=しゆす)のはゞひろ/帯(おひ)、ぬり/笠(かさ)の/目通(めとをり)、/腰(こし)すへての/中(ちう)あし、/容= 00028270L8顔(よう=がん)ことにうる/しく(は脱力)、しやらり+ととをりける。/親子(おやこ)とも 00028280L9に/是(これ)を見て、いづくへあゆむ人なりと、目がれもせず/居(ゐ)る 00028290L10/所(ところ)へ、かの/女(おんな)/店(ミせ)による。/親子(おやこ)共に/仰天(きやうてん)して、つく+とな 00028300L11かめける。かの女、かづきを/買(かほ)ふといふ。むすこあはてゝ、 00028310L12かづきハござるか、/女方(おんなむき)てござるか、男むきでござるかと 00028320L13いふ。/親仁(おやじ)/聞(きい)て、そこなうつ(四オ)け。かづきに/男(おとこ)むきと 00028330L14いふが/有物(あるもの)か。/袴(はかま)にこそ/男(おとこ)むきも/女(おんな)むきもあれといふた。 00028340¥N3¥J 00028350¥X三△/文盲(もんもう)ハ/宛字(あてじ)を/知(しる)事 00028360L17/塞翁(さいおう)に/物(もの)をとへは、それもよしといふ、/頓作(とんさく)は/当座(とうざ)の/恥辱(ちちよく) 00028370L18をすゝぐ。/去(さる)人、/婚礼(こんれい)の/祝儀(しうぎ)に/肴(さかな)を/贈(をくる)るとて、/祐筆(ゆふひつ)に/状(ぢやう)を 00028380L19かゝせらる。/折節(おりふし)/右筆(ゆふひつ)、/肴(さかな)といふ/文字(もじ)をわすれ、かんなに 00028390¥G 00028400M12て/書(かき)にけり。/主人(しゆしん)/是(これ)を見て、/扨(さて)&/麁相(そさう)な事。肴といふ/字(じ)を 00028410M13しらぬ(四ウ)かと/大(おほ)きにとがめられければ、/祐筆(ゆふひつ)/頓作(とんさく)に、 00028420M14されば/常(つね)の/御状(こぢやう)には/肴(さかな)といふ/字(じ)、/真名(まな)に/書(かき)まするが、/祝言(しうげん) 00028430M15は/一代(いちだい)に/一度(いちと)の/物(もの)でござりまする。/肴(さかな)といふ字ハ又あると 00028440M16/書(かき)まするさかいに、/仮名(かな)で/書(かき)ましたといふた。 00028450¥N4¥J 00028460¥X四△/同(おな)し/目(め)も/事(こと)に/依(より)/違(ちが)ふ事 00028470M19五百/羅漢(らかん)を見れはどれぞハ/我(わか)/皃(かほ)に/似(に)るといふ。/去作(さるつく)の/髭(ひげ)の 00028480¥P99 00028490L1/道具持(だうぐもち)、/風呂屋(ふろや)へ/行(ゆき)ふろにいらんと、/亭主(ていしゆ)に/刀脇差(かたなわきさし)をあづ 00028500L2け、入にけり。やがて/風呂(ふろ)(五ノ九オ)(五ノ九ウ・十オ挿絵)より 00028510L3あがり/亭主(ていしゆ)に、/先程(さきほど)の/大小(たいしやう)をたまハれといふ。/亭主(ていしゆ)、/皃(かほ)を 00028520L4見て、/其方(そのはう)よりハ/何(なに)にてもあづからぬといふ。たしかにあ 00028530L5づけた。おこせいといふ。/亭主(ていしゆ)/腹(はら)を/立(たて)、/中(なか)+の事。/其方(そのはう) 00028540L6よりハ/塵(ちり)ほどの/物(もの)もあづからぬと、こハ/高(たか)に申ければ、/道= 00028550L7具持(たう=ぐもち)、いかにも/合点(がてん)したとて/勝手(かつて)にゆき、/鍋(なへ)すミにて/鬚(ひげ)を 00028560L8つくりて/出(いて)にけり。そのとき/亭主(ていしゆ)/是(これ)を/見(ミ)て、いかにも見し 00028570¥G 00028580M1つた/皃(かほ)じやとて、(十ウ)/互(たかい)に/大笑(おほわら)ひをして大小をわたしけ 00028590M2る。 00028600¥N5¥J 00028610¥X五△/頓作(とんさく)は/智恵(ちゑ)によらぬ事 00028620M5/達磨(たるま)の/九年面壁(くねんめんへき)、/卞和(へんくわ)が/玉(たま)も/年経(としへ)て/知(しる)人有。/誹諧(はいかい)の/句作(くさく)も 00028630M6/思案(しあん)すれば/珍句(ちんく)ありと、/殊(こと)に/功者(こうしや)ハなき/所(ところ)を/案(あん)じ/出(いた)す。/去= 00028640M7席(さる=せき)に/連中(れんぢう)/寄合(よりあひ)、/互(たかひ)に/新敷(あたらしき)/句作(くさく)せんと、/頭(かしら)をかたぶけ、/秋(あき)の 00028650M8/夜(よ)/長(なか)けれ共/深更(しんかう)にをよびける。/供(とも)の/者(もの)共、あまり/主(しう)の/長居(なかゐ) 00028660M9を/迷惑(めいわく)かり、/扨(さて)も+/長座(ちやうさ)(十一オ)かな。何をしてゐらるゝ 00028670M10事ぞ。そとのぞきて見んといふ。一人の/者(もの)、かまいてのぞ 00028680M11くなよ。なぜに。のそけばかならず、/茶(ちや)くれいといふぞ。 00028690¥N6¥J 00028700¥X六△/秋(あき)の/山(やま)は/桜(さくら)に/増(まさ)る事 00028710M14/草木(さうもく)は/雨露(うろ)のめぐミ、日うらの/木(き)の/子(こ)ハ/山賎(やまがつ)のたすけとな 00028720M15る。/世間(せけん)をしらぬ/男(おとこ)、八月/中半(なかば)に/客(きやく)を/請(しやう)しける。/何(なに)かなめ 00028730M16つらしき/吸物(すひもの)をせんと/八百屋(やおや)に申/付(つく)る。かしこまり候とて、 00028740M17(十一ウ)/方(はう)&かけまハり、しめちをとゝのへ、すひ/物(もの)にいた 00028750M18しける。/其後(そののち)/青物(あほもの)の/注文(ちうもん)に、十弐匁すひ/物(もの)しめぢの/代(たい)と有。 00028760M19/亭主(ていしゆ)/大(おほ)きにきもをつぶし、/先日(せんじつ)のすひ/物(もの)か十二匁か。いか 00028770¥P100 00028780L1にも。さても+あのけつねのからかさがやといふた。 00028790¥N7¥J 00028800¥X七△/自剃(じぞり)は/人(ひと)の/為(ため)ならぬ事 00028810L4/仏(ほとけ)も十九/歳(さい)よりしやミをなされ、/菜(な)つミ/水(ミつ)くミ/米(こめ)をふミ、 00028820L5なんぎやうは/出家(しゆつけ)の/役(やく)と、/去道心者(さるたうしんじや)、(十二オ)あたまもミづ 00028830L6からそりにけり。/俄(にハか)/道心者(たうしんしや)/来(きた)り、うらやましや。/其方(そのはう)ハ/自= 00028840L7剃(じ=ぞり)をなさるゝ。/某(それかし)ハ一/円(えん)する事ならぬ。ついでに/我等(われら)もそ 00028850L8りてたまハれと申ける。かの/者(もの)/聞(きい)て、それがしは/自剃(しそり)ハい 00028860L9たすれとも、/終(つゐ)に人のをそつてやりたる事なし。ならぬと 00028870L10いふ。/是(せ)非にそつてといふ。それならハうしろへまハりや。 00028880L11うしろさまにそらふといふた。 00028890¥N8¥J 00028900¥X八△/水(ミづ)は/方円(はうゑん)の/器(うつハ)による事(十二ウ) 00028910L14/湯盤銘(たうのはんのめいニ)、まことに/日&(ひゞ)にあらたなり。/茶(ちや)の/湯(ゆ)ハかりそめ 00028920L15にも/手水(てうづ)をつかひ、/身(ミ)をきよめ、物こときれいなるをすき 00028930L16といふ。/去所(さるところ)にて/夜会(やぐわい)に/亭主(ていしゆ)、しぶ/茶(ちや)をしんじませうとい 00028940L17ふ。いづれも/忝(かたしけなし)と申す。/上座(しやうざ)にゐる人、/何(なに)のあいさつも 00028950L18なし。わきより/笑止(しやうし)かり、/御手水(おてうづ)に御立なされませいとい 00028960L19ふ。かの人、さいぜんから、まだ/雪隠(せつゐん)へも/行(ゆき)ませぬ。茶を 00028970M1のふてから/手水(てうづ)にたちませうといふた。(十三オ)(十三ウ・十 00028980M2四オ挿絵) 00028990¥N9¥J 00029000¥X九△/詞(ことハ)/多(おほき)は/品(しな)すくなき事 00029010M5/平上去入(ひやうじやうきよにう)は/文字(もんじ)の/声(こえ)。/儒者(じゆしや)と/出家(しゆつけ)とかハり有。/去医者(さるいしや)の 00029020M6/方(かた)に/這出(はひで)の/男(おとこ)をつかハれける。/本(もと)より/田舎(ゐなか)ものなれば、/物(もの) 00029030M7ことふつゝかに、かたこと/斗(バかり)いひける。/去方(さるかた)より/薬代(やくだい)を/持(もち) 00029040M8て/来(きた)りける。かの男/請取(うけとり)、たれさまより、かねがまいりま 00029050M9したといひける。/御礼(おれい)を申せとて/使(つかひ)をかへし、/跡(あと)にてかの 00029060M10/男(おとこ)をよひよせ、そこなもの。薬代などをハ/銀子(ぎんす)と(十四ウ) 00029070M11こそいふべきに、かねがまいりましたといふ事が有ものか。 00029080M12/以来(いらい)をたしなめと申さるゝ。/下男(げなん)、かしこまりました。/其= 00029090M13後(その=ゝち)かの/医者(いしや)、/去方(さるかた)へ/夜(よ)ばなしの/約束(やくそく)せられけるが、おそな 00029100M14ハりけれバ、下男に/今宵(こよひ)は/何時(なんとき)じやととハれける。其時か 00029110M15の/男(おとこ)、たゝ今/初夜(しよや)の/銀子(きんす)がなりましたといふた。 00029120¥N10¥J 00029130¥X十△/繁昌(はんしやう)の/地(ち)ハ/物毎(ものこと)/治(おさま)る事 00029140M18/富(とミ)は/屋(おく)をうるほし、/出家(しゆつけ)ハ/無欲(むよく)をよしとす。(十五オ)/去繁昌(さるはんしやう) 00029150M19の/寺(てら)に/弟子(でし)もあまたあり。/和尚(おしやう)こゝろよく、/毎日(まいにち)/客(きやく)をまふ 00029160¥P101 00029170¥G 00029180L12け、/連句(れんぐ)の/会(くわい)、/連歌(れんが)/誹諧(はいかい)/歌(うた)の会、/袖(そで)をつらねてまいりける。 00029190L13こざかしき/小僧(こぞう)有。/茶(ちや)をはこびけるを、/上座(しやうざ)の客一人/斗(バかり)に、 00029200L14ひたとまいらせける。和尚御らんして、どなたへも茶をし 00029210L15んじませいと/仰(おほせ)ける時に、小僧、お/一人(ひとり)つゝにあかせまし 00029220L16たが、よふこざりますといふた。 00029230¥Y1うかれ小僧五之終△△(十五ウ) 00029240¥Q 00029250M2元禄七年戌正月吉日 00029260M4△△△△△△△△京押小路 00029270M5△△△△△△△△△△△吉田三郎兵衛 00029280M6△△△△△△△△同 00029290M7△△△△△△△△△△△上野屋市郎兵衛 00029300M8△△△△△△△△大坂高麗橋一丁目 00029310M9△△△△△△△△△△△吉野屋五兵衛 00029320M10△△△△△△△△江戸長谷川町 00029330M11△△△△△△△△△△△松会三四郎 00029340¥P102 00029350¥U噺本大系△第六巻 00029360¥T初音草噺大鑑 00029370¥G 00029380¥Y 00029390L15元禄十一年刊 00029400L16寓言子序 00029410L17大本七巻 00029420L18国会図書館蔵(巻一) 00029430L19都立中央図書館加賀文庫蔵(巻二〜七) 00029440¥Y初音草噺大鑑序 00029450M3/一休(いつきう)の/瓢金(ひやうきん)も、/抹香(まつかう)くさひとて/童子(どうじ)ハ/鼻(はな)をおほひ、/曽呂利(そろり) 00029460M4が/弁説(べんせつ)も、/理窟(りくつ)らしきとて/田夫(てんぶ)ハ/顔(かほ)をしかめし。/中比(なかごろ)/策伝(さくでん) 00029470M5が/頓作(とんさく)も、/時代蒔絵(じだいまきゑ)のやうに/古風(こふう)なりかし。/当世(とうせい)/鹿(しか)が/軽口(かるくち) 00029480M6も、その/巻筆(まきふで)のいひふるしてめづらしからず。それより/今(いま) 00029490M7の人の/機(き)に/応(おう)じたる/咄(はなし)の/種(たね)ハ、/正木(まさき)のかづらたえずして、 00029500M8/鳥(とり)のあとハ/書林(ふミのはやし)にしげし。/仰(そも+)/是(これ)ハ、わけて/流布(はやる)をあつめ 00029510M9て、/新(あたら)しき/年(とし)の/初笑(はつわら)ひ、大/黒殿(こくどの)の/咄袋(はなしぶくろ)。(序オ)いつゝいつ 00029520M10までも/世(よ)に/伝(つたハ)れとて、/上中下(かミなかしも)に/通(とを)リ/町(てう)、/国(くに)+/里(さと)※の/馬= 00029530M11次(むま=つぎ)、京より江戸に/喩(さと)しやすきを/七(なゝ)つ何もかも/巻(まき)+にしる 00029540M12す。かの/隆弁僧正(りうべんそうじやう)の/歌(うた)に、 00029550M13△△/聞(きく)たびにめづらしけれバ/郭公(ほとゝぎす) 00029560M14△△△いつもはつねの/心地(こゝち)こそすれ 00029570M15とよめる/心(こゝろ)ばへをとりて、/初音草(はつねぐさ)/咄(はなし)/大鑑(おほかゞミ)と/題(だい)するになん。 00029580M17△△△△△△△△△△△△△△△洛下△寓言子(序ウ) 00029590¥P103 00029600¥Y1初音草咄大鑑巻第一 00029610L3△△○目△録 00029620L4一△/初茶湯(はつちやのゆ)の/風流(ふうりう) 00029630L5二△にくからぬ/花(はな)ハ/実盛(さねもり) 00029640L6三△/名(な)たかき/吉野(よしの)の/花(はな) 00029650L7四△/臍(ほそ)にかへてつかむ/白銀(しろかね) 00029660L8五△/梅法師(むめぼうし)ハ/昔(むかし)の/皺(しハ) 00029670L9六△/火桶(ひおけ)のうハなり/打(うち) 00029680L10七△/身(ミ)のほどのくやミ 00029690L11八△九/分(ぶん)十/分(ふん)/目(め)の/欲(よく) 00029700L12九△/馬(むま)の/鼻毛貫(はなげぬき) 00029710L13十△水ではつるハ水 00029720L14十一△/八百万(やをよろづ)の/神(かミ)ぜんさく 00029730L15十二△/家業(かぎやう)による/了簡(りやうけん) 00029740L16十三△/詞(ことバ)おほきハ/徳(とく)すくなし 00029750L17十四△三つ/物(もの)の/点取(てんとり) 00029760L18十五△ミぬ/大内(おほうち)の/余情(よせい) 00029770L19十六△/形(かたち)より/先(まづ)/産(うむ)/心(こゝろ) 00029780M4十七△/極楽(ごくらく)の/豊年(ほうねん) 00029790M5十八△/落(おち)めをミるが/男(おとこ)(三オ) 00029800M6十九△/一時(いつとき)の/栄花(ゑいぐわ) 00029810M7二十△/天竺浪人(てんぢくらうにん)の/宿(やど) 00029820M8廿一△/後家(ごけ)ハ/小町(こまち)が/俤(おもかげ) 00029830M9廿二△/足(あし)壱/本(ほん)ハもらい/物(もの) 00029840M10廿三△/節用集(せつようしう)の/謡(うたひ) 00029850M11廿四△/亀(かめ)ハ/命(いのち)の/宝(たから) 00029860M12廿五△/天神(てんじん)の/財府(さいふ) 00029870M13廿六△/比翼(ひよく)のさし/鯖(さバ) 00029880M14廿七△どもりの/音曲(おんぎよく) 00029890M15廿八△/恋(こひ)の/重荷(おもに)にあまる/智恵(ちゑ) 00029900M16廿九△/野郎(やらう)の/実種(ミうへ) 00029910M17三十△/甜(なめ)てミる/空焼(そらだき)の/香(か)(三ウ) 00029920¥P104 00029930¥T1初音草大鑑巻第一 00029940¥N1¥J 00029950¥X一△/初茶湯(はつちやのゆ)の/風流(ふうりう) 00029960L5/時津風(ときつかせ)/枝(えだ)をならさぬ/門(かど)の/松(まつ)、たちかへる/春(はる)の/初空(はつぞら)、ミとり 00029970L6の竹のひとふしを/常盤(ときハ)の/友(とも)と/愛(あひ)し、/玉川(ぎよくせん)の/風流(ふうりう)をたのしふ 00029980L7人ありけり。/初茶(はつちや)の/湯(ゆ)をもよほし、/炉路(ろじ)の/飛石(とびいし)みぎりをは 00029990L8らひ、/手水鉢(てうづばち)の/若水(わかミづ)きよらかにして/同志(どうし)をまねきしに、を 00030000L9の+/待合(まちあひ)、にしりあがりより/数寄屋(すきや)に/入(いり)、/先(まづ)/水仙(すいせん)のなび 00030010L10きより、/掛物(かけもの)其ほか/飾(かざり)のしほらしきに気をつけ、あらたま 00030020L11のことぶき/会席(くわいせき)も/過(すぎ)けれバ、/亭主(ていしゆ)、やがて/炉(ろ)のもとにより、 00030030L12/客(きやく)にあいさつして、さて/茶入(ちやいれ)の/蓋(ふた)をとる。折ふし/天井(てんぜう)にて 00030040L13/鼠(ねづミ)あれければ、/亭主(ていしゆ)心得、/其(その)まゝ茶入の/蓋(ふた)をする。/客衆(きやくしゆ)、 00030050L14これハお/気(き)のつきたる/儀(ぎ)。すこしの(四オ)ほこりをもいと 00030060L15ハせらるゝ御心ばせ。/中(なか)+/今日(こんにち)の/茶(ちや)の/湯(ゆ)ハなどゝほめけ 00030070L16れば、/亭主(ていしゆ)、いやはやといふて/自慢(じまん)くさく/十面(ぢうめん)し、しバし 00030080L17ありてたつる。さて/茶碗(ちやわん)へ/茶(ちや)をいるゝとき、又/天井(てんぜう)にてね 00030090L18づミあれけれバ、/亭主(ていしゆ)あハてゝすべきやうなく、/其(その)まゝ/茶= 00030100L19杓(ちや=しやく)をすて/鼻(はな)をつまんで、にやんといふた。 00030110¥N2¥J 00030120¥X二△にくからぬ花ハ/実盛(さねもり) 00030130M3八まん大/名(ミやう)。/花(はな)ずきをなされけるが、/路次(ろし)にて/手塚(てづか)太郎介 00030140M4といふ/侍(さふらひ)を御/駕(かご)ちかく/召(めさ)れ、あのミせ/店(だな)のせき/台(だい)なるハさ 00030150M5つきさうなが、/黒(くろ)い/花(はな)ハいまが見/初(ハじ)めじや。あたいいかほ 00030160M6どにてもとらせ、/買(かう)て/来(きた)れと/仰付(おほせつけ)らる。かの/侍(さふらひ)、やがては 00030170M7しりゆき、此花ハ/直段(ねだん)いかほどゝとふ。/亭主(ていしゆ)、金子弐拾両 00030180M8に/差上(さしあげ)ませうといふ。/侍(さふらひ)きいて、(四ウ)いかに/世(よ)に/稀(まれ)な花 00030190M9じやといふてもあまり/高直(かうぢき)なり。拾両に/仕(つかまつ)れといふ。/亭主(ていしゆ)、 00030200M10いかにも/御意(ぎよい)の/上(うへ)ハまけて/上(あげ)ませうといふ。/侍(さふらい)、やがて金 00030210M11子をわたし、此花の/名(な)ハ/何(なん)といふぞ。/亭主(ていしゆ)、/其札(そのふだ)を/御覧(ごらん)じ 00030220M12ませ。/実盛(さねもり)と申ますといふ。さて花をもたせ/帰(かへ)り、御/庭前(ていせん) 00030230M13の目がれぬ/詠(なか)めとなり、/朝夕(あさゆふ)水などをそゝがせ/愛(あひ)せられし 00030240M14が、そろ+と花の色しろくなる。これハ不/審(しん)なる事かな 00030250M15とおぼしめし、/花檀奉行(くわだんぶぎやう)の/樋口(ひぐち)二郎八といふ/者(もの)をめされ、 00030260M16/様子(やうす)を御たづね有けれバ、/樋口(ひぐち)たゝ/一目(ひとめ)見て、/言語道断(ごんごだうだん)、に 00030270M17くき/儀(ぎ)を仕ました。/元来(くハんらい)これハ/墨(すミ)て/染(そめ)ました/物(もの)でごさりま 00030280M18すと申す。太郎介、/近比(ちかごろ)/不念(ぶねん)なり。さう+あたいを/取帰(とりかへ) 00030290M19し/来(きた)れとある。太郎介、其まゝ/植木(うへき)屋へゆき、やいそこな 00030300¥P105 00030310¥G 00030320M1/大(おほ)がたりめ。/白(しろ)い花を/墨(すミ)に(五オ)て/染(そめ)ていつハる/段(だん)、/不届(ふとゞき) 00030330M2/千万(せんばん)なり。/急度(きつと)金子拾両もどせといふ。/亭主(ていしゆ)きいて、され 00030340M3ばその/墨(すミ)で/染(そめ)ましたゆへ、花の/名(な)をさねもりとハ申まする。 00030350M4/実盛(さねもり)の/謡(うたひ)に、/鬢髭(びんひげ)を/墨(すミ)に/染(そめ)とござる/儀(ぎ)ハ、御/存(ぞんじ)でござらふ。 00030360M5/私(わたくし)、/無下(むげ)にかたりハ/仕(つかまつ)らぬといへバ、太郎介うちうなづ 00030370M6き、しからバぜひもなし。さりなから/実盛(さねもり)のうたひに、/近= 00030380M7年(きん=ねん)ごりやうに/付(つけ)られてとあるからハ五両もどせと、りくつ 00030390M8/詰(づめ)にして五両/取(とり)かへした。 00030400¥N3¥J 00030410¥X三△/名(な)たかき/恋(こひ)ハ/吉野(よしの)の花 00030420M11京の/嶋原(しまバら)に、/吉野(よしの)と申て/花(はな)にもまさりて/色香(いろか)ふかき/女(ぢよ)らう 00030430M12あり。心ざまもあてやかにしてよしあり。にくからぬもの 00030440M13なれば、かはゆがりてふかくあふ大/臣(じん)、いつそにかゝつて 00030450M14うけ/出(だ)す(五ウ)/談合(だんかう)をきくより、女らう、このしゆびをい 00030460M15のり、/神(かミ)+へきせいをかけ、ことによしのゝお山へハか 00030470M16ぶろを/代参(だいまい)りさせ、さくらを/千本(ちもと)うへて、すゑハれんりと 00030480M17/立願(りうくハん)/程(ほど)なくかないて、その身つゐにまゝになれば、いづれ 00030490M18もあやかりものといふ。/中(なか)に/小蝶(こてう)と/云(いふ)女郎、わがミもさる 00030500M19/方(かた)様うけださうといはんすが、どの/神(かミ)さまへ/願(ぐハん)をかけまし 00030510¥P106 00030520L1よと、/知音(ちゐん)の/男(おとこ)にかたれば、此男、すれ/者(もの)にて、おかしが 00030530L2りていふやう、/幸(さいはい)のことがある。/吉野(よしの)もわが/名(な)によせて、 00030540L3さくらをちもとうへさせけれバ、/胡蝶(こてう)といふ名に/合(あハ)せ、そ 00030550L4ちの/在所(ざいしよ)の/産神(うぶすな)様へ、/菜種(なたね)の花を/千本(せんほん)うへてミやれといふ 00030560L5た。 00030570¥N4¥J 00030580¥X四△/臍(ほそ)にかへてつかむ/白銀(しろかね) 00030590L8とつとむかし、/女■氏(ちよくわし)といふ人、天のそこねたるを/補(おぎなハ)れし 00030600L9といひ(六オ)(六ウ・七オ挿絵)/伝(つた)へたり。その/比(ころ)/雲(くも)がふるうな 00030610L10つて、所+のやふれより/神鳴(かミなり)おつる/事(こと)たび+なり。さ 00030620L11る/両替(りやうがへ)屋におちて、/亭主(ていしゆ)のがさぬとおさへければ、あるじ、 00030630L12なふかなしやとこゑをあげ、/年(とし)よりますれバ、へそがひつ 00030640L13/ご((ママ))んでござらぬ。/是(これ)でかんにんなされて/下(くだ)されと五百/匁包(めづゝミ) 00030650L14を/出(いだ)せバ、/欲(よく)のふかき/雷公(かミなり)にて/取(とり)てかへり、天上にて/太鞁(たいこ) 00030660L15の/張賃(はりちん)にやれば、/何(なに)が/道(ミち)すがら火に/焼(やけ)しゆへ、やけ/銀(がね)ハと 00030670L16らぬといへバ、壱匁もつかハれなんだ。 00030680¥N5¥J 00030690¥X五△/梅法師(むめぼうし)ハ/昔(むかし)の/皺(しは) 00030700L19/正直(しやうぢき)ハ一/旦(たん)の/依估(ゑこ)にあらずとかや。ずんと/孝行(かう+)にてなミだ 00030710M1もろき人、さる方へふるまひにゆかれけるとき、/平皿(ひらざら)なる 00030720M2/筍羮(しゆんかん)をみて、/箸(はし)をからりとすて、なミだをはら+とこぼ 00030730M3され(七ウ)けれバ、/亭主(ていしゆ)、きもをつぶして、これハ/何(なん)とな 00030740M4されたといへば、あの/梅(むめ)ぼしを見ましたれば、/死(し)なれた/母(はゝ) 00030750M5じや人のことがおもひだされてなげきまするといふた。 00030760¥N6¥J 00030770¥X六△/火桶(ひおけ)のうハなり 00030780M8女の/性(しやう)ハひがミてつねに/嫉妬(しつと)ふかきゆへ、/仏(ほとけ)も/五(いつゝ)の/障(さハり)あり 00030790M9と/説(とき)たまふもことハりなるかな。/下(しも)京/辺(へん)に、/玉椿(たまつばき)の/八千世(やちよ) 00030800M10とかハらぬちきりをかハしてすむ/祖父(ぢい)と/祖母(うバ)有しが、/祖父(ぢい) 00030810M11七十にあまりて/寒気(かんき)に/堪(たえ)がたけれバ、/土火桶(つちひおけ)をもとめ、ひ 00030820M12るハひざをはなさす、夜ハ/夜床(よどこ)に/入(いれ)て、/年(とし)よりたる/身(ミ)ハ/思(おも) 00030830M13ふことも心にかなはねハ、そなたを/抱(だい)て身のしハをあた 00030840M14ゝむれバ、/祖母(うバ)にハまさりていとおしのつまやとて、/火桶(ひおけ) 00030850M15をなでさすりて/調法(てうほふ)しけるを、うバ/聞(きい)てはらをたて、にく 00030860M16(八オ)き/祖父(ぢい)がことばや。/惣(そう)じてあの/火桶(ひおけ)がうせおつてか 00030870M17ら、/祖父(ちい)がおれにかほつきをわるうしをる。あら/腹(ハら)たちや 00030880M18と思ひ、/祖父(ぢい)が/隣(となり)へゆきたるるすに/火桶(ひおけ)を/引出(ひきいだ)し、をのれ 00030890M19めハようも+おれが/祖父(ぢい)をねとらうとしおる。此うバが 00030900¥P107 00030910L1/目(め)の/黒(くろ)いうちハ/思(おも)ひもよらぬこと。はやう/出(で)てゆけと、/火= 00030920L2桶(ひ=おけ)を/取(とつ)て/溝(ミぞ)の/中(なか)へなげしに、火桶の火に/水(ミづ)/入(いり)しかバ、ぢい 00030930L3+と/鳴(なり)しを、/祖母(うバ)/聞(きい)て、あら/腹(ハら)たちや。まだおのれハじ 00030940L4いとぬかすかとて、うちくだひてすてた。 00030950¥N7¥J 00030960¥X七△身のほどのくやミ 00030970L7/井(ゐ)の/内(うち)の/蛙(かハづ)ハ大/海(かい)をしらず。人ハ/氏(うぢ)よりそだち。さる/下男(しもおとこ)、 00030980L8/上(かミ)京/辺(へん)の/数寄者(すきしや)のもとに/一季(ひとき)/奉公(ほうこう)をつとめける。されば/下= 00030990L9&(した=+)の/者(もの)のならひに、/前(まへ)の/主人(しゆじん)を大かたそしる物なるが、あ 00031000L10るとき/友(とも)だち(八ウ)の/男(おとこ)に/途中(とちう)にて/行(ゆき)あひけれバ、/其方(そのほう)、 00031010L11ことしハいづ/方(かた)に/奉公(ほうこう)をすると/尋(たづ)ねける。/上(かミ)京/室町(むろまち)にゐる 00031020L12といふ。/何(なん)と、/今度(こんど)の/主人(しゆじん)もしハひやつかととふ。されば 00031030L13此四五日/奉公(ほうこう)をするが、いかさま/前(まへ)の/主(しう)とちがハぬしハひ 00031040L14/者(もの)と/見(み)えて、此/中(ぢう)も/客(きやく)五人あるに、/茶(ちや)を一ふくたてたとい 00031050L15ふた。 00031060¥N8¥J 00031070¥X八△九/分(ぶん)十/分(ぶん)/目(め)の/欲(よく) 00031080L18さはるに/煩悩(ぼんのう)/目(め)の/欲(よく)。たうとひ/寺(てら)ハ/門(もん)に/馬立(むまたて)、/玄関(げんくわ)に/使者(ししや) 00031090L19/男(おとこ)たえぬ。さる/寺(てら)がたに/美目(ミめ)よき/小姓(こせう)有けり。心やすき/旦= 00031100¥G 00031110M12那(だん=な)/参(まい)られて/小僧(こぞう)をよびて、あの/小姓(こせう)ハ、いづ/方(かた)よりかゝへ 00031120M13させられた。/名(な)ハ/何(なん)といふぞととふ。小僧、あれハ/去浪人= 00031130M14衆(さるらうにん=しゆ)の/子(こ)でござる。/名(な)ハ/花崎(はなざき)/作弥殿(さくやどの)といひまするといふ。/旦= 00031140M15那(だん=な)きいて、さても+ちよつとあるまい/器(き)(九オ)/量(りやう)じや。 00031150M16おれが/思(おも)ふやうならバ、あの/子(こ)を/女子(おなご)にしてほしいといへ 00031160M17バ、/小僧(こぞう)がいふやう、いづれ人の/目(め)ハ九/分(ぶん)十/分(ぶん)でござる。 00031170M18さたハないこと。/長老様(ちやうらうさま)もさやうにおしやりまするといふ 00031180M19た。 00031190¥P108 00031200¥N9¥J 00031210¥X九△馬のはなげぬき 00031220L3/山家(やまが)/辺(へん)の/者(もの)、江戸/見物(けんぶつ)に/来(き)て、/日本橋(にほんばし)をうちわたり、あま 00031230L4/店(だな)の/辺(へん)にて一ばん/燭台(しよくだい)のしんきりをひろい、/宿(やど)へかへり、 00031240L5これハ/何(なん)でござりまうすととふ。/亭主(ていしゆ)おどけ/者(もの)にて、それ 00031250L6ハ/鬼(おに)のけぬきじやといふ。/何(なん)でもめつらしい/物(もの)でござる。 00031260L7/国(くに)へかへりてお/寺(てら)へミせまうそうと、やがて/国(くに)へ/下(くだ)りて/先(まづ) 00031270L8人&にミすれば、いかにもそうで/有(ある)べい。/家(いゑ)のたからにし 00031280L9めされといふ。/名主(なぬし)きいて、/何(なん)ぼう/重宝(ぢうほう)でも/用(よう)にたゝねバ 00031290L10あんにすべい。/何(なん)と、これハ/村中(むらぢう)の/馬(むま)のはなげぬきにした 00031300L11がよかんべい(九ウ)(十オ挿絵)といふた。 00031310¥N10¥J 00031320¥X十△水ではつるハ水 00031330L14/世間(せけん)のなげきもかまハず、むごい心から金銀大/分(ぶん)ためてひ 00031340L15とりくらす者あり。ある/夕暮(ゆふくれ)に、/耳(ミヽ)より/人魂(ひとだま)とびゆくをミ 00031350L16て、したがへのつまをむすべバ/帰(かへ)るといふが、とやせんか 00031360L17くやとする/間(ま)に、はや/行衛(ゆくゑ)もなし。よこ手をうつて、三/年(ねん) 00031370L18ハいきぬといひつたへた。まことに/夢(ゆめ)うつゝのかりの/宿(やど)、 00031380L19もはや/何(なに)もいらぬ物と思ひ、たくはへし金銀を三とせの/内(うち) 00031390M1につかひすてけり。そのゝち/人魂(ひとだま)かへりて/夢心(ゆめごゝろ)に申ハ、ひ 00031400M2よつと/出(で)まして/方(ハう)※まハりましたれとも、かハつたこと 00031410M3もござらぬ。なじミてござれバもどりました。/今(いま)までのや 00031420M4うにおいて/下(くだ)されといふ。いや、此方へハ/帰(かへ)らぬ/筈(はづ)に/分別(ふんべつ) 00031430M5をきハめたといへ共、ぜひなくしなれぬいのち(十ウ)なれ 00031440M6ば袖ごひになつて、/人魂(ひとたま)で大/分(ぶん)そんをいたしましたもので 00031450M7ござる。しなれハしませずといふて、/門(かど)+をまハつた。 00031460¥N11¥J 00031470¥X十一△/八百万(やをよろづ)の/神(かミ)ぜんさく 00031480M10ふりミふらずミ/定(さだ)めなき、/空(そら)ハ/時雨(しくれに)にならの/葉(は)の、/神無月(かミなづき) 00031490M11にハ日本の/諸神(しよじん)、/出雲(いづも)の大やしろにてよりあひをなさるゝ 00031500M12とかや。其ころ/八百万(やをよろづ)の神たち/評定(ひやうぢやう)とり※なる/中(なか)に、此 00031510M13/比(ごろ)ハ/諸国(しよこく)に、ゑしれぬ/神(かミ)が有ときこゆ。なにと/吉田殿(よしだとの)、不 00031520M14/吟味(ぎんミ)さうにござると、/日吉(ひよし)の大/行事(ぎやうじ)の/神(かミ)/仰(おほせ)られしかバ、/祇= 00031530M15園殿(ぎ=おんどの)、いかにもさやうに/承(うけたまハ)つた。ちとあらためたらバよう 00031540M16/御座(こざ)らうとて、/神(かミ)※をせんさく有しに、ごそ+といふ 00031550M17/神(かミ)有。ぎおんどの/是(これ)をみて、そなたハいづ/方(かた)にゐらるゝ神 00031560M18ぞととひ給へバ、京/松原通(まつハらとを)りに(十一オ)ゐまするといふ。さ 00031570M19てハ/玉津嶋殿(たまつしまどの)のあたりかとあれば、いかにもその/東(ひかし)で、わ 00031580¥P109 00031590L1たくし/所(ところ)ハかくれもござりませぬ。すなハち/額(がく)に/新(しん)左衛門 00031600L2とかきて/御(ご)ざりますといふ。きおんどの、してそれハ、/神= 00031610L3躰(しん=たい)ハ/何(なん)じやとのたまへば、はづかしながら、/渋紙(しぶかミ)でござり 00031620L4ますといふた。 00031630¥N12¥J 00031640¥X十二△/家業(かぎやう)による/了簡(れうけん) 00031650L7/釈迦(しやか)と/鵞尾(しやが)とハ/同(おな)じひゞきで大きなちがひじや。こゝに/屋= 00031660L8須元清(や=すげんせい)といふ/医者(いしや)、さる/誹諧師(はいかいし)の/所(ところ)へ見まハれた。/草履取(ぞうりとり) 00031670L9はしりゆき、/物(もの)まう。/屋須元清(やすげんせい)お見まひ申と、あハたゞし 00031680L10くいへバ、/麁相者(そさうもの)、/使(つかひ)を/請取(うけとり)、/主人(しゆじん)へ、やすげいせい/様(さま)お 00031690L11見まひといふ。こゝへやす/傾城(げいせい)のくるはづハない。がてん 00031700L12がゆかぬといふ/処(ところ)へ、かのゐしや/来(きた)られた。さて/客(きやく)/帰(かへ)りて、 00031710L13かの/小者(こもの)をさん※にしかれバ、亭主のおやち(十一ウ)い 00031720L14ふやう、しかるな+。あいつも/宗因風(そういんふう)のはいかいをする 00031730L15そうな。さてもようとりなしたといふた。 00031740¥N13¥J 00031750¥X十三△/詞(ことバ)おほきハ/徳(とく)すくなし 00031760L18/言葉(ことば)おほきハ/品(しな)すくなし、/過(すぎ)たるハおよバざるがごとし。 00031770L19/向(むか)ふ/疵(きず)したゝかな/覚(おぼえ)の/有(あり)さうな/田舎侍(いなかさふらひ)、三/条(でう)の/宿屋(やどや)より/嵯= 00031780M1峨(さ=が)あたごをかけて、/駕篭(かご)を四匁八分にてかりてのる。/道(ミち)す 00031790M2がらかごかきいふやう、/同(おな)じ人と/生(むま)れましても、かやうな 00031800M3/山坂(やまさか)をのせまして/汗水(あせミづ)をながしまするに、お/前様(まへさま)がたハお 00031810M4かね/次第(しだい)でかごに/召(めし)まして、御さんけいなされますると申 00031820M5ハ、/過去(くわこ)の御/善根(ぜんごん)といひ、此/世(よ)から/黄金(わうごん)の/肌(はだへ)と申ませうか。 00031830M6さながらたゝ/今(いま)の/新小判(しんこばん)と申ハ、/外(ほか)にハござりませぬ。お 00031840M7/前様(まへさま)のやうな/大臣様(だいじんさま)の/儀(ぎ)でござると、あたづいせうを八百 00031850M8も/云(いふ)て、/其日(そのひ)も/暮(くれ)におよ(十二オ)び、/宿屋(やどや)へもどる。さて 00031860M9/駕賃(かごちん)を四匁わたしけれバ、かごかきいふやうハ、かごちん 00031870M10ハ四匁八/分(ふん)でござりまする。八分たりませぬと。/侍(さふらひ)きいて、 00031880M11いかにも、/銀目(かねめ)ハ四匁八分の/定(さだ)めじやが、/其方(そのはう)ども/道(ミち)すが 00031890M12ら、おれを/小判様(こばんさま)といふた。/小判(こはん)にするからハ、おれが/額(ひたい) 00031900M13の/切(きれ)でハ八分ひかねバならぬといふた。 00031910¥N14¥J 00031920¥X十四△/三物(ミつもの)の/点取(てんとり) 00031930M16/友(とも)ハ/類(るい)を/以(もつ)てあつまるならひ。/文盲(もんもう)なる/者(もの)二三人より/合(あひ)け 00031940M17るが、きのふハミちの/途中(とちう)なかであふたが、どこへゆかれ 00031950M18たといふ。されば/芝(しば)の/増上寺(ぞうじやうじ)/前(まへ)へつとめたといへバ、/壱人(ひとり) 00031960M19が云ハ、今のハ大きなかたことじや。/上増寺(じやうぞうじ)とこそいへと 00031970¥P110 00031980L1いふ。壱人がいふハ、それハミなかたことじや。あれハ/増= 00031990L2&寺(ぞう=そうじ)といふが/本(ほん)じやとて、三人ながら/情(じやう)こハくあらがふて、 00032000L3/埒(らち)(十二ウ)あかず。/時(とき)に/一人(ひとり)がいふ。/惣(そう)じて此やうなことハ 00032010L4/誹諧師(はいかいし)が/知(しつ)てゐるものじやほどに、/三色(ミいろ)ながら/書付(かきつけ)てやれ 00032020L5とて、/隣町(りんてう)の/点者(てんじや)/某(なにがし)のもとへやりけれバ、さすがの/点者(てんじや) 00032030L6にて、 00032040L7△先/増上寺(ぞうしやうし)に△@めづらしからず|ふるし△△△△@△■上/増(ぞう)寺/@等類(とうるい)|おほし@△△朱■/増&寺(ぞう+じ) 00032050L8@ちか比あたらしく候|珍重△△△△△△△@ 00032060L9そのまゝ/添削(てんさく)しければ、/手柄(てがら)をしたといふて/巻(まき)をとつた。 00032070¥N15¥J 00032080¥X十五△見ぬ/大内(おほうち)のよせい 00032090L12思ふことかなハぬ/浮世(うきよ)をさん※にしちらし、京に/住(すミ)うか 00032100L13れ、あづまのかたにしるべ有て/下(くだ)りしが、/宿(やど)の/女房(にうぼう)いふや 00032110L14う、さても+京の/衆(しゆ)ハものごとやさかたな。さすが/内裏(たいり) 00032120L15様のお/国(くに)ほどござる。さぞいきた/公家衆(くけしゆ)や/内裏(たいり)上らうをた 00032130L16くさんに/御覧(ごろ)じやらうといへバ、京の/者(もの)/文盲(もんもう)なりしが、/色(いろ) 00032140L17+/身(ミ)の/上(うへ)のよせい/咄(ばな)しをするやう、おれハ京でハ/禁中様(きんちうさま) 00032150L18の(十三オ)御/用(やう)をつとめました。/其時分(そのじぶん)ハ/御所様(ごしよさま)がたへ/参(まい)れ 00032160L19バ、/直(ぢき)におことばにあづかりて、はて/扨(さて)ようきたと、みす 00032170M1のうちへよバせられ、きさき、こいやいと/仰(おほせ)られたれば、 00032180M2/何(なに)が天人のやうなが、うんかほどおいでなされて、なんで 00032190M3ごさんすとおつしやれたれバ、あの/烏帽子屋(ゑほしや)に、きのふか 00032200M4んばくからくれたくし/柿(がき)を、ミくしとらせいと、おほせら 00032210M5れたと。 00032220¥N16¥J 00032230¥X十六△/形(かたち)より/先(まづ)/産(うむ)心 00032240M8/色里(いろざと)に/身(ミ)をたつる/太鞁(たいこ)の/女房(にようバう)、うミ月になれば、なじミの 00032250¥G 00032260¥P111 00032270L1とりあげばゞ/来(きた)りて、さあしきりがついたとて、いきます 00032280L2れば、/逆子(さかご)に/成(なつ)て手ばかりかたて/出(いだ)し、なやましけれバ、 00032290L3おとこをはじめ一もん、これハとさハき、/婦人医者(ふじんいしや)を/頼(たの)ミ、 00032300L4/色(いろ)+としてミれども、手ばかり出して/生(むま)れず。かの/医者(いしや) 00032310L5/病功(びやうこう)/有(あり)けれバ、ミな+さハぎやるな。がてんしたと(十三 00032320L6ウ)やがて/巾着(きんちやく)から/壱歩(いちぶ)を/取出(とりだ)してにきらせければ、その 00032330L7まゝむまれて、おぎや+と、うれしさうなはつこゑをあ 00032340L8げた。 00032350¥N17¥J 00032360¥X十七△/極楽(ごくらく)の/豊年(ほうねん) 00032370L11/元禄(げんろく)/酉戌(とりいぬ)の/比(ころ)、江戸京大坂におゐて/善光寺(ぜんくハうじ)の/如来(によらい)を/開帳(かいてう)有 00032380L12しに、/何(なに)が三/国(ごく)/伝来(でんらい)の/御本尊(こほぞん)にてましませバ、/都鄙(とひ)/遠境(ゑんきやう)の 00032390L13/僧俗(そうぞく)/男女(なんによ)おがミ/奉(たてまつ)らぬものハなし。ことに/極楽往生(ごくらくわうぜう)の/御印= 00032400L14文(ごいん=もん)をおされしかバ、われも+と/額(ひたい)をさし/出(だ)して/頂載(てうだい(ママ))し、 00032410L15/決定往生(けつぢやうわうぜう)をよろこぶことかぎりなし。それより/地獄(ぢごく)へおも 00032420L16むく/罪人(ざいにん)、ことの/外(ほか)/減(げん)じけるほどに、/鬼(おに)の/在所(ざいしよ)/迷惑(めいわく)におよ 00032430L17びけれバ、/焔魔王(ゑんまわう)これを/不便(ふびん)におぼしめし、/如来(によらい)へ御/訴訟(そせう) 00032440L18なされ、/御印文(ごいんもん)を御とめ/下(くだ)され候やうにと申/上(あげ)らる。如来 00032450L19の/仰(おほせ)にハ、/尤(もつとも)なれ/共(ども)、おれも一/切(さい)/衆生(しゆぜう)を/仏(ほとけ)になさず(十四オ) 00032460M1ハ/正覚(しやうがく)を/取(とる)まひと/口(くち)/広(ひろ)ういふてをいたれバ、/中(なか)+/印文(いんもん)を 00032470M2やめることハならぬ。さるが/中(なか)に、おれを/頼(たの)まぬ/日蓮宗(にちれんしう)が 00032480M3大/分(ぶん)あるほどに、それを/食物(しよくもつ)に/仕(つかまつ)れと有ければ、/焔王(ゑんわう)か 00032490M4さねて、/若(わか)い/鬼(おに)どもハその/通(とを)りでござりまするが、/中(なか)でも 00032500M5/不受不施(ふじゆふせ)ハとりわき/情(じやう)がこハふござりますれば、/年寄(としより)/鬼(おに)ど 00032510M6もが/歯(は)にあひますまいといはれし。 00032520¥N18¥J 00032530¥X十八△/落(おち)めをミるが男 00032540M9/其比(そのころ)御/印文(いんもん)をいたゝきたる/者(もの)、/世(よ)をさり/西方(さいほう)十/万億(まんおく)をさし 00032550M10ておもむく。六/道(だう)の/辻(つぢ)の/方(かた)から、これ申+とよぶをミれ 00032560M11ば、そのかミ/長崎(ながさき)にて/咄(はなし)たる/友達(ともたち)也。かの/者(もの)、/我等(われら)ハしや 00032570M12ばにて/後世(ごせ)もねがハず、ことに/遠国(おんごく)なれバ御/印文(いんもん)をもうけ 00032580M13ず、/極楽(ごくらく)へまいらふあてがごさらぬ。ミますれバ、こなた 00032590M14の/額(ひたい)にあり+とござるハ御印文さうな。うらやましき/義(ぎ) 00032600M15て御(十四ウ)(十五オ挿絵)ざる。どうぞお/供(とも)にハなるまいかと 00032610M16いふ。いやそれハならぬといひしが、/人(ひと)ハおちめをミるが 00032620M17/男(おとこ)じやと/思(おも)ひ、やがて/額(ひたい)とひたいをあハせ、御/印文(いんもん)をうつ 00032630M18してつれたちしが、/極楽(こくらく)の/東門(とうもん)にて、/仁王殿(にわうどの)/出(いで)られて/吟味(ぎんミ) 00032640M19せらる。いや、あれハわたくしがつれてござりますといへ 00032650¥P112 00032660L1バ、其方ハ/正真(しやうじん)にまぎれがないほどに、つつと/通(とを)れ。/跡(あと)の 00032670L2/者(もの)ハ/似(に)せにきハまつた。/証拠(しやうこ)にハ、御/印文(いんもん)の/字(じ)がうらにな 00032680L3つたとて、おひかへされた。 00032690¥N19¥J 00032700¥X十九△一/時(とき)の/栄花(ゑいくわ) 00032710L6/一時(いつとき)の/栄花(ゑいぐわ)にちとせをのぶると。/主人(しゆじん)のるすに/家来(けらい)ども/集(あつま) 00032720L7り/茶(ちや)をせんじのミしが、すね/平(へい)といふ/男(おとこ)、つねに/旦那(だんな)のめ 00032730L8さるゝ/茶碗(ちやわん)を/取出(とりいだ)しのミけるを、/旁輩(はうばい)が見て、やれ、こゝ 00032740L9なすね/平(へい)ハわけのない/者(もの)じや。それハ/旦那(たんな)の/茶(ちや)わんでハな 00032750L10いかといへば、すね平がす(十五ウ)ねがほして、/何(なに)をぎよう 00032760L11さんにいやるぞ。/旦那(たんな)じやとて、べちに/穢多(ゑつた)でハあるまひ 00032770L12し、/瘡(かさ)かきでハ/有(ある)まひし、おれが此/茶(ちや)わんでのんだらなん 00032780L13じやとぬかした。 00032790¥N20¥J 00032800¥X二十△/天竺浪人(てんぢくらうにん)の/宿(やど) 00032810L16/玉渕(ぎよくゑん)をうかゞハざる/者(もの)ハ/龍(りやう)をしらずとかや。ずんど/遠国(おんごく)の 00032820L17者、四五人づれにて京へ/初(はじめ)て/上(のぼ)り、/内裏様(たいりさま)を/拝(おが)ミ/奉(たてまつ)らんと、 00032830L18/寺町(てらまち)を/上(かミ)へ/椹木町(さハらぎてう)を/通(とを)りしが、/火(ひ)の見やぐらを見つけて、 00032840L19あれハ/何(なに)をうり/買(かう)所じや。さて+/長(なが)い/家(いゑ)かなといふ。つ 00032850M1れの内にかしこだてなるおとこが、扨も/都(ミやこ)ハ/自由(じゆう)なことじ 00032860M2や。あれハやり/持(もち)の/雪隠(せつちん)じやといふ。一人がいふハ、あれ 00032870M3をミや。/太鞁(たいこ)があるからハ/神鳴殿(かミなりどの)の/下屋鋪(しもやしき)てあらふといふ。 00032880M4一人がいふハ、さうでハ有まい。人か二三人ミへるほどに、 00032890M5あれハ(十六オ)/天竺浪人(てんぢくらうにん)の/宿(やど)であらふといふた。 00032900¥N21¥J 00032910¥X廿一△/後家(ごけ)ハ/小町(こまち)が/俤(おもかげ) 00032920M8/丙午(ひのへむま)の女ハ/夫(おつと)を/喰(くら)ふと/昔(むかし)から/云伝(いひつた)ふ。こゝに/夫(おとこ)を四十九人 00032930M9まで見はて、それより/後家(ごけ)を/立(たて)て九十六になるおばゞ有し 00032940M10が、さるひと、そもじをよき所へきもいらふほどに、ちら 00032950M11とミせてくれいといはるゝといふ。おばゝ/聞(きい)て、もはや/後= 00032960M12家(ご=け)でくらさうと思へども、心ハはたちの/時(とき)も今もかハるこ 00032970M13とハないほどに、だんかう/次第(しだい)にしませうが、さきハどの 00032980M14やうな所でござる。/継子(まゝこ)ハござらぬかといふ。きもいり、 00032990M15/向(さき)ハ/面打(めんうち)じやが、そもじをすこしの/間(ま)やとふて、/小町(こまち)の/面(めん) 00033000M16の/本(ほん)にしたいといはるゝといへバ、おばゞあきれて/腹(ハら)をた 00033010M17て、九十六になる/者(もの)が/小町(こまち)の/面(めん)の/本(ほん)によくバ、/百銭(ひやくぜに)をめさ 00033020M18れいといふた。(十六ウ) 00033030¥P113 00033040¥N22¥J 00033050¥X廿二△/足(あし)壱本ハもらい物 00033060L3/万(よろづ)の/事(こと)/古実(こしつ)しつたがほする/者(もの)有しか、/咄(はなし)のつゐでに、/神代(かミよ) 00033070L4にハ/犬(いぬ)の/足(あし)三本あり。いかにしても/不自由(ふじゆう)なることをめい 00033080L5わくにおもひ、/諏訪(すハ)の/明神(ミやうじん)へ/訴訟(そせう)申ければ、ふびんとおほ 00033090L6しめされ、いろ+御しあんなされ、せんぎして見/給(たま)へど 00033100L7も、/世間(せけん)にいらぬ足が一本もなし。しかしながら、ごとく 00033110L8や/鍋(なべ)のしりにハ三本にても/立(たつ)べしとて、壱本下されければ、 00033120L9それより犬の足四本づゝに/生(むまる)るといへバ、一/座(ざ)の人、それ 00033130L10ハつゐに/承(うけたまハ)らぬ。/何(なん)の/書(しよ)に見へました。/証拠(しようこ)があるかと 00033140L11いふ。中+、その証拠にハ明神から下されし足なれバ、 00033150L12/大事(だいじ)がつて、/犬(いぬ)の/小便(しやうべん)するときハ/片(かた)足あげてゐるといふた。 00033160L13(十七オ) 00033170¥N23¥J 00033180¥X廿三△/節用集(せつようしう)の/謡(うたひ) 00033190L16京へのほる/者(もの)二三人つれたちしが、/水口(ミなくち)を/過(すぎ)て/石部(いしべ)山を見 00033200L17かけ、一人が、あの山ハなぜに/木(き)が一本もはへぬといへバ、 00033210L18その/筈(はづ)じや。おどり/哥(うた)に、/石部山(いしべやま)によく/似(に)た、あたまがは 00033220L19げてやつさと/有(ある)といふ。そのさきへゆく小/僧(ぞう)が、/山(やま)/高(たか)きが 00033230M1ゆへにたつとからずと、/吟(ぎん)じけるを、一人が/聞(きい)て、あの/小= 00033240M2僧(こ=ぞう)ハ/年(とし)もゆかぬが、/器用(きやう)そうな。/庭訓(ていきん)のたゞ/中(なか)をやらるゝ 00033250M3といへバ、つれの/者(もの)、その/方(ハう)ハわけもないことをいふ。あ 00033260M4れハ庭訓でハない。/節用集(せつようしう)といふうたひの/文句(もんく)じやといふ 00033270M5た。 00033280¥N24¥J 00033290¥X廿四△/亀(かめ)ハ/命(いのち)の/宝(たから) 00033300M8/忍(しの)はずが/池(いけ)の/辺(へん)にて、/児(こ)どもむらがりて/亀(かめ)をとらへ、さい 00033310M9なむところへ、さる人/行(ゆき)かゝり、これを見て/銭(ぜに)をとらせ、 00033320M10こひとりて/僕(ぼく)にもたせて(十七ウ)かへり、やかてちいさき/泉= 00033330M11水(せん=すい)にはなし入、あけくれながめおりけるが、あるとき、/友(とも) 00033340M12だちの人きたりて、此間ハ/何(なに)としてミかぎりたまふぞ。/誰(たそ) 00033350M13/中言(なかごと)にても申たるかといへバ、いや、おもしろい物が/有(あつ)て、 00033360M14それで/何方(いづかた)へも/出(で)ぬといふ。それハどうした物じや。あの 00033370M15/泉水(せんすい)の/亀(かめ)についてのことじやと。あれについて、/何(なん)ぞかハ 00033380M16つたことが有かといへバ、されば/其(その)ことじや。むかしから 00033390M17/鶴(つる)ハ千/年(ねん)/亀(かめ)ハ/万年(まんねん)といふほどに、あの/亀(かめ)も/万年(まんねん)いきるかと 00033400M18思ふて、/此中(このぢう)からためしてゐるといふた。 00033410¥P114 00033420¥N25¥J 00033430¥X廿五△天神の/財府(さいふ) 00033440L3ある所にて、/床(とこ)に/渡唐(とたう)の天/神(じん)の/像(ざう)をかけをきたるをみて、 00033450L4/猿智恵(さるちゑ)なる/者(もの)、あの/腰(こし)にさげさせられたるきんちやくのや 00033460L5うな/物(もの)ハ何でござろうといへば、かたへの人、あれハ/聖一= 00033470L6国師(しやういち=こくし)の/夢想(むさう)に見へさせられし(十八オ)ときの/御影(ミゑい)、もろこし 00033480L7/無準禅師(ぶしゆんせんじ)よりの/印可(いんか)を入させられたる/印可袋(いんかぶくろ)といふものじ 00033490L8やといへバ、かの/者(もの)、いや+それでハあるまい。あの天 00033500L9神ハつくしへ/旅(たび)をあそバしたほどに、/道中(だうちう)で/何(なに)やかや入さ 00033510L10せられた袋であらふ。其しやうこにハ、/今(いま)の/世(よ)まで、さい 00033520L11ふの天神といふほどに。 00033530¥N26¥J 00033540¥X廿六△ひよくのさし/鯖(さば) 00033550L14/謡(うたひ)の/稽古(けいこ)する人、/参会(さんくハい)して/咄(はな)すつゐでに、/楊貴妃(やうきひ)の/曲舞(くせまひ)に、 00033560L15天にあらバねがハくハ/比翼(ひよく)の/鳥(とり)とならんとあるが、いかや 00033570L16うな鳥じやといへバ、かたへの人、つゐに見たことハない 00033580L17が、あの/鳥(とり)ハ/雌雄(めおと)つねにはなれず、二/羽(は)つばさをならべて 00033590L18/空(そら)をかけるものさうななどゝいへバ、その/座(ざ)に/出(で)ほうだ 00033600L19い/鑓右衛門(やりへもん)といふ/男(おとこ)ゐあハせて、われら、その/鳥(とり)をバいつ 00033610M1(十八ウ)(十九オ挿絵)やらミたやうなが。それ+、/鳥(とり)でハな 00033620M2かつた。/魚(うを)じや。此/以前(いぜん)/能登(のと)の/国(くに)の/海(うミ)てミた。一/疋(ひき)の/魚(うを)の 00033630M3あたまへ、/今(ま)一疋のあたまをさしこんで、二疋ならんであ 00033640M4るいたといへバ、わきから、それハ七月の/指鯖(さしさバ)のことじや。 00033650M5とほうもないと/笑(わらひ)ければ、いや、あのさし/鯖(さバ)がうミの中で 00033660M6ひら+とありくを、見ぬ/衆(しゆ)にミせたいといふた。 00033670¥N27¥J 00033680¥X廿七△どもりの/音曲(おんぎよく) 00033690M9/鸚鵡(あふむ)よく/物(もの)をいふ人の/口(くち)をうつすゆへなり。/謡(うたひ)の/師(し)をす 00033700M10る人、三平といふ下人をつかひしが、/大(おほ)きなるどもりなり。 00033710M11されども/謡(うたひ)を/聞(きゝ)とりてうたふに、/少(すこし)もどもることなし。あ 00033720M12るとき、さるかたへつくゑを/一(いつ)きやくかりにつかハしける 00033730M13に、/門口(かどぐち)から、つ、つ、つとばかりいふて/出(で)かねけれバ、 00033740M14いよ+せきて、ゑ、ゑ、+をと、もがきてわけしれず。 00033750M15/亭主(ていしゆ)、かしこき(十九ウ)人なればやがて/心得(こゝろへ)、S/是(これ)なる三/平(へい) 00033760M16ハ/何事(なにごと)にてわたり候ぞといひかけけれは、三平さん候。/机(つくゑ) 00033770M17を/一脚(いつきやく)御かし候へと、らちがあいた。 00033780¥N28¥J 00033790¥X廿八△/恋(こひ)の/重荷(おもに)にあまる/智恵(ちゑ) 00033800¥P115 00033810L1/末摘花(すゑつむはな)といふすがれたる/大夫(たゆふ)にあふ/者(もの)、/久米(くめ)の/岩橋中(いははしなか)たゝ 00033820L2んとおもふ/折(をり)ふし、/金子(きんす)拾/両(りやう)の/無心(むしん)いはれて、かなしなが 00033830L3ら/心得(こゝろへ)たといふてかへり、/太鞁持(たいこもち)のうんとくをよんで、/何(なに) 00033840L4とぞやらぬ/分別(ふんべつ)ハないかといふ。つかハされねバひけると 00033850L5いふ。やれハ/談合(だんかう)ハいらぬ。それならバ/明日(あす)ゆきてたちさ 00033860L6まに、/約束(やくそく)の/物(もの)をこゝにおくと/床(とこ)におゐてたとう。さすが 00033870L7大夫じやほどに/手(て)にハ/取(とる)まい。/送(おくつ)て/出(で)たまに、そち、/取(とつ)て 00033880L8こいとしめし/合(あハ)せ、/扨(さて)その日/件(くだん)のしゆびにして、此/中(ぢう)の御 00033890¥G 00033900M1申こし、こゝにをくといへバ、大夫はづかしながら御/無心(むしん) 00033910M2をといふ。男かさねてもお心をかれずなど、さらバ+と 00033920M3(二十オ)いふてわかれ、/道(ミち)にて、どれ、うんとく。/今(いま)の/小判(こばん) 00033930M4ハとあれバ、てんと/失念(しつねん)しました。八まん。/大夫(たいふ)が見/付(つけ)た 00033940M5らバ/男(おとこ)がすたる。/似小判(にせこばん)じやといふ。うんとく/似(に)せ/小判(こバん)な 00033950M6らバ/取(とつ)て/参(まい)つたとてわたしければ、男/忝(かたしけ)ない。/生(いき)がね拾両、 00033960M7にせといはずハ/出(だ)しやるまい。/神(しん)ぞ/正真(しやうじん)+といへば、う 00033970M8んとく/正真(しやうじん)なら、まだ三両/残(のこ)した。ぬかりハしませぬ。 00033980¥N29¥J 00033990¥X廿九△/野郎(やらう)の/実種(ミうへ) 00034000M11/奥田舎(おくいなか)の/者(もの)/初(ハじめ)て江戸へ/上(のぼ)り、/堺(さかい)町/哥舞妓芝居(かぶきしバゐ)を/見物(けんぶつ)しける 00034010M12に、/野郎(やらう)ども、だて/染(ぞめ)の/上下(かミしも)、/金銀(きん※)/作(づく)りのやうな大小、/衣= 00034020M13紋(ゑ=もん)けたかくひきつくろひて/草履取(そうりとり)にふらせ、/橋(はし)がゝりへ/出(いで) 00034030M14ければ、いよ/右近様(うこんさま)、かほる/様(さま)、/式部(しきぶ)様などほむるを、/田= 00034040M15舎者(い=なかもの)/聞(きい)て、そばなる人にいふやう、/只今(たゞいま)御出なされたる/小= 00034050M16性衆(こ=せうしゆ)ハ、けつこうなお/若衆様(わかしゆさま)でござるが、あれ(二十ウ)ハど 00034060M17なた/方(がた)のお/子(こ)たちでこざるととふ。そばなる人、あれハ/方(はう) 00034070M18※の/田舎(いなか)から、ちいさき/子(こ)どもを/年(ねん)を/切(きり)てかゝへをき/諸= 00034080M19芸(しよ=げい)をおしへ、/成人(せいじん)して/身(ミ)をかさり、/舞台(ふたい)へ/出(だ)すゆへ、うつ 00034090¥P116 00034100L1くしくなるといふ。/田舎者(いなかもの)、さてハさうか。/身(ミ)どもハいか 00034110L2/様(さま)、れき+の/子共衆(こどもしゆ)じやと思ふたといふて、/見物(けんぶつ)をして 00034120L3/国(くに)もとに/帰(かへ)り、/其(その)のち/在所(ざいしよ)の/子(こ)どもをあまたつれて江戸に 00034130L4/来(きた)りけれど、/堺町(さかいてう)にたのむべきたよりなければ、/子(こ)どもを 00034140L5さきに/立(たて)てあとから、/野郎種(やらうだね)ハい+とぞよバりける。 00034150¥N30¥J 00034160¥X三十△/甜(なめ)てミる/空焼(そらだき)の香 00034170L8/匂(にほ)ひなどハかりの/物(もの)なれど、/空焼(そらだき)のしめやかなる/雨中(うちう)ハひ 00034180L9としほと、/伽羅(きやら)をきゝゐたる所へ、ある人/入来(しゆらい)しければ、 00034190L10さて+よきおりからの御出じや。此/木(き)をもとめんと/存(ぞん)ず 00034200L11るがあさミがござる。又こち(廿一終オ)らの木ハからすぎて 00034210L12/気(き)にいらず。さりながらいづれにいたさうぞ。御きゝくた 00034220L13されといふ。/客(きやく)、いかにもきゝてしんぜうといへど、つゐ 00034230L14に/香(かう)をきゝたることハなし。/最前(さいぜん)/亭主(ていしゆ)/香炉(かうろ)を/鼻(はな)の下へよせ、 00034240L15手をおほひ、あさきのからきのといふたハ、いかさまなめ 00034250L16て見ると/心得(こゝろへ)、/香炉(かうろ)を/口(くち)のはたへさしつけてねぶりけるが、 00034260L17/舌(した)さき/炭団(たどん)にあたりてあつかりければ、あハたゝしく/香炉(かうろ) 00034270L18をさしをき、/口(くち)をかゝへゐたり。/亭主(ていしゆ)おかしがりて、/何(なん)と 00034280L19御きゝなされたといへば、かの人/顔(かほ)をふつて、/何(なん)ぼの木も 00034290M1/聞(きゝ)ましたが、これほどあつい木ハ/終(つゐ)に/聞(きゝ)ませぬ。 00034300¥Y1初音草大鑑巻第一(廿一終ウ) 00034310¥P117 00034320¥Y1初音草咄大鑑巻第二 00034330L3△△目録 00034340L4一△いはぬハいふに/増(まさ)る 00034350L5二△百/味(ミ)の/夜食(やしよく)/浄土双六(じやうどすごろく) 00034360L6三△/人篇(にんべん)に/寺(てら)ハ/侍(さふらひ)の/素氏(すじ) 00034370L7四△おれが口からハいはれぬ 00034380L8五△/薄衣(うすころも)の/螢(ほたる) 00034390L9六△/唐(から)やうの/巾着(きんちやく) 00034400L10七△/世(よ)にあやかり/物(もの) 00034410L11八△いきうつしの思ひ 00034420L12九△大/名(ミやう)ハくらべもの 00034430L13十△/神代(かミよ)の/頭巾(づきん) 00034440L14十一△/編笠(あミがさ)そんはく 00034450L15十二△まな/板(いた)の/簡略(かんりやく) 00034460L16十三△/泪(なミだ)にぬるむ/酒(さけ)の/間(かん) 00034470L17十四△ちはやふるかミの/油(あぶら) 00034480L18十五△/首(かしら)かくして/尾(を)の出る/世話(せわ) 00034490L19十六△/古来(こらい)/稀(まれ)なる/隠居(ゐんきよ) 00034500M1十七△/竃神(かまがミ)ハよい口の女 00034510M2十八△/唐音(たういん)の/鐘(かね)の/銘(めい)(一オ) 00034520M3十九△/地獄極楽(ぢごくごくらく)の/吝気(りんき) 00034530M4二十△/口(くち)の/広(ひろ)き/秀句詰(しうくづめ) 00034540M5廿一△/書(かい)てもよめぬわが/文(ふミ) 00034550M6廿二△/残(のこ)りおほい/妻(つま)の/別(わかれ) 00034560M7廿三△/眼鏡(めがね)でためす/盃(さかづき) 00034570M8廿四△/辛鮭(からざけ)の/丸薬(ぐハんやく) 00034580M9廿五△/蚤(のミ)の/三番叟(さんばさう) 00034590M10廿六△/興(けう)がる/法師(ほうし) 00034600M11廿七△/薬(くすり)にもきくからミ 00034610M12廿八△つかぬ/誹諧(はいかい) 00034620M13廿九△/喧嘩(けんくわ)の/当話(とうわ) 00034630M14三十△/首(くび)のない/化物(ばけもの)(一ウ) 00034640¥P118 00034650¥T1初音草大鑑巻第二 00034660¥N1¥J 00034670¥X一△いはぬハいふに/増(まさ)る 00034680L5/弓(ゆミ)ハふくろに入、/釼(つるぎ)ハはこにおさまる/御世(ミよ)のたのしミ。/千= 00034690L6世(ち=よ)をかさねて/万代(ばんだい)の、/亀井戸(かめゐど)のほとりにて/勧進能(くハんじんのう)ありしに、 00034700L7/見物(けんぶつ)の中にそのさまあしからぬ/褝門(ぜんもん)、かたハらなる人にむ 00034710L8かふて、なにとおぼしめす。/聞(きゝ)をよびましたより/麁相(そさう)な/能(のう) 00034720L9じやと/存(ぞん)ずるといふ。されば/橋(はし)がゝりもみじかく、/衣裳(いしよう)な 00034730L10どのミくるしさ。/仰(おほせ)のとをりで/御座(ござ)るといへば、かの/褝門(せんもん)、 00034740L11いや、/先(まづ)/舞台衣裳(ぶたいいしやう)ハかんにんごろで御座るが、あの/笛吹(ふゑふき)を 00034750L12/御覧(ごらん)なされ。/腰懸(こしかけ)さへ/持(もつ)て/出(で)ぬといふことがあるものか。 00034760L13かつうハ江戸のかたわきじやによつて、/見物(けんぶつ)をあなづると 00034770L14見えたといふた。(二オ) 00034780¥N2¥J 00034790¥X二△百/味(ミ)の/夜食(やしよく)/浄土双六(じやうどすころく) 00034800L17/天(あま)の/岩戸(いハと)のそのかミ、/神(かミ)すゞしめの/風俗(ならハし)とて、/九月(ながづき)の/比(ころ)/日= 00034810L18待(ひ=まち)をせしに、/明(あけ)がたき/夜(よ)のなぐさミとて、/小哥(こうた)、上るり、 00034820L19/物(もの)まねなど、さま+なる/中(なか)に、人の心の/善悪(ぜんあく)ハこれでミ 00034830M1ゆる/物(もの)じやと、浄土双六をうちけるに、やうちんへおつる 00034840M2も有、がきだうへゆくも有。/一人(ひとり)ハ/仏(ぶつ)になりたるとてよろ 00034850M3こぶ/所(ところ)へ、/御膳(おぜん)を/出(だ)しますといへば、をの+/座敷(ざしき)をつく 00034860M4る。/仏(ぶつ)をうちたる/者(もの)、おれハほとけの/居所(ゐどころ)へなをるとて/上= 00034870M5座(しやう=ざ)をしめければ、/口(くち)がしこき/者(もの)のいふやう、それならバ、 00034880M6まづ/喰(くひ)ものハ/餓鬼道(がきたう)でしまひますると申て、ほとけにハな 00034890M7にもくハせぬ。 00034900¥N3¥J 00034910¥X三△/人篇(にんべん)に/寺(てら)ハ/侍(さふらひ)の/素氏(すじ)(二ウ) 00034920M10さる/城下(じやうか)のほとりに、/寺庵(じあん)をむすびて年久しく/住(すむ)/僧(そう)有しに、 00034930M11/柴(しは)のあミ/戸(ど)の/明(あけ)くれ、わかき/侍(さふらひ)どもより/合(あひ)あそびしが、あ 00034940M12るとき、/御坊(ごぼう)もむかしハあつはれの侍らしくミゆるが、な 00034950M13にとて/出家(しゆつけ)にはなられしといふ。/僧(そう)こたへて、われらハ侍 00034960M14でハ/御座(ござ)らぬ。をの+のお/目(め)がちかふたといふ。いや、 00034970M15/何(なに)ほどかくされても/承(うけたまハつ)た/事(こと)がある。/其(その)上/侍(さふらひ)ハ/人篇(にんべん)に 00034980M16/寺(てら)といふ/字(じ)をかけバ、いよ+/侍(さふらひ)にまぎれハ/御座(こざ)らぬ。い 00034990M17にしへが/承(うけたまハり)たいといへば、かの/僧(そう)、/仰(おほせ)のとをり侍といふ 00035000M18/字(じ)ハ人篇に/寺(てら)なれども、われら/侍(さふらひ)にてなき/証拠(しやうこ)ハ、やねの 00035010M19くさりたるを/御覧(ごらん)なされい。むかしから、侍とこがねハく 00035020¥P119 00035030¥G 00035040M1ちてくちぬと申が、/拙僧(せつそう)ハ侍でなきゆへ、やねまであのご 00035050M2とくくちましたといふて、やがて/奉加帳(ほうがちやう)をもつてしかけた。 00035060M3(三オ) 00035070¥N4¥J 00035080¥X四△おれが口からハいはれぬ 00035090M6大坂/本町筋(ほんまちすぢ)に/佐々木(さゝき)/無手(むて)右衛門とて、/手習子(てならひこ)を/取(とり)て世をわ 00035100M7たる/浪人(らうにん)有しが、/手跡(しゆせき)をことのほか/自讃(じさん)しけるが、あると 00035110M8き人/来(きた)りて/咄(はなし)のつゐでに、むかしハ/弘法(こうぼう)・/道風(とうふう)・/尊円(そんゑん)、/近= 00035120M9来(きん=らい)ハ/光悦(くハうゑつ)・/瀧(たき)本/坊(ぼう)などゝ申/能書(のうじよ)あまた有が、/当世(とうせい)江戸京大 00035130M10坂にてハたれ+、能書の/沙汰(さた)いたすといへば、かの/浪人(らうにん)、 00035140M11/例自慢(れいのじまん)くさきかほにていふやう、/当世(とうせい)/能書(のうじよ)と申ハ、/先(まづ)江戸 00035150M12にてハ/佐(さ)々木/玄龍(げんりやう)、さて京にてハ佐&木/志次磨(しづま)、大坂てハ 00035160M13おれが口からハいはれぬといふた。 00035170¥N5¥J 00035180¥X五△/薄衣(うすごろも)の/螢(ほたる) 00035190M16ある/談林(だんりん)の/諸化(しよけ)、/解間(げあひ)に心やすき/旦那(だんな)の/所(ところ)へきたりて一/宿(しゆく) 00035200M17(三ウ)せしに、/近所(きんじよ)の/者(もの)ども/夜咄(よハなし)のつゐでに、/何(なに)と/思(おほし)めす。 00035210M18/浄土宗(しやうとしう)の/長老(ちやうらう)の/袈裟(けさ)衣ハ、/褝宗(ぜんしう)の/威儀(ゐぎ)に/似(に)た物じやといへ 00035220M19ば、かたへの人、されバ/世間(せけん)にハいづれ/似(に)た物がおほい。 00035230¥P120 00035240L1/神主(かんぬし)ハ/公家(くげ)に/似(に)たといふ。又わきから、/草(くさ)木にさへ/茶山花(さざんくわ) 00035250L2ハ/椿(つはき)に/似(に)、/牡丹(ぼたん)に/芍薬(しやくやく)、かきつばたにあやめハよう似たな 00035260L3どゝいふに、かの/諸化(しよけ)いはるゝハ、さてもかつをぶしに/似(に) 00035270L4た/物(もの)ハ/牛(うし)の/角(つの)でハ御座らぬかと。/亭(てい)主/聞(きい)て、牛の角がどこ 00035280L5に似たと/難(なん)じければ、いや、こちの/中間(なかま)でハよう/似(に)たとて 00035290L6/牛(うし)の角と付ました。/亭主(ていしゆ)、/何(なに)と、こなたも/其中間(そのなかま)かといへ 00035300L7ば、かの/所化(しよけ)うろたへて、いや身共などハ/鰹節(かつをぶし)ハつかへど、 00035310L8/牛(うし)の/角(つの)ハつかハぬといはれた。 00035320¥N6¥J 00035330¥X六△/唐(から)やうの/巾着(きんちやく) 00035340L11何もしらぬ/文盲(もんもう)なる人、ある人のさげたる/巾着(きんちやく)を見て、こ 00035350L12(四オ)(四ウ・五オ挿絵)れハ何と申す/皮(かハ)で/御座(ござ)ると/尋(たづね)しに、/唐(から) 00035360L13のゐんでんといふ。/其後(そののち)かの/文盲(もんもう)人、さる所のふるまひの 00035370L14/座敷(ざしき)にて、道具/墨跡(ぼくせき)などの/咄(はなし)になりて、/客(きやく)のいふやう、 00035380L15/私(わたくし)ハ/頃日(このごろ)/唐(から)の/隠元(ゐんげん)を一/枚(まい)もとめましたといふを、かの/文= 00035390L16盲(もん=もう)人、すハ/巾着(きんちやく)の/革(かハ)よと思ひ、それハ/重宝(ちやうほう)なる/物(もの)をおもと 00035400L17めなされた。何と、それを/巾着(きんちやく)一つぶん、しよもうハなり 00035410L18ますまひかと。 00035420¥N7¥J 00035430¥X七△世にあやかり物 00035440M3なま/物(もの)じり川へはまると。/鵜(う)の/足(あし)ハ/黒(くろ)いやら/烏(からす)の目ハ白い 00035450M4やら、何のわきまへもなき人の子に、よろづに/器用(きよう)なる/男= 00035460M5子(なん=し)あり。人&/世(よ)にあやかり物ともてはやしけるが、ある時 00035470M6さる人のいふやう、/其方(そち)の/御子息(こしそく)ハ/諸事(しよじ)に/器用人(きようじん)のよし。 00035480M7さぞ御満(五ウ)/足(ぞく)であらふ。さて/碁(ご)ハ何ほどの/碁(ご)でござる。 00035490M8/親仁(おやぢ)きいて、/本因坊(ほんゐんぼう)に二つでござる。して/将棊(しやうぎ)ハ何ほどそ。 00035500M9これも/宗桂(そうけい)に/片香車(かたきやうしや)。さて+/器用(きよう)なる/事(こと)かな。/鞁(つゞミ)もなり 00035510M10ませう。いかにもうちまする。どれほどのつゞミでござる。 00035520M11これも新九郎に/片皮(かたかハ)の/鞁(つゞミ)で御座るといふた。 00035530¥N8¥J 00035540¥X八△いきうつしの思ひ 00035550M14/古墳(こふん)/多(おほくハ)/少年人(せうねんのひと)といへるも、/定(さだ)めなき/世(よ)の/口(くち)ずさミなり。 00035560M15ミやこ/誓願寺(せいぐハんじ)の/内(うち)に、/世(よ)をさりたるおさないのもちあそび 00035570M16物を/納(おさむ)る/地蔵堂(ぢぞうだう)/有(あり)。其/前(まへ)にとしごろなる女、なミだにふし 00035580M17しづミゐけるが、/折(をり)ふし又やしなひ/君(ぎミ)におもひある/乳母(うば)と 00035590M18をりあハせて、見ますれば、そなたにハさきほどからなミ 00035600M19だに/袖(そで)をぬらして/御(ご)(六オ)ざるが、さだめて/養(やしな)ひ/君(ぎミ)にをく 00035610¥P121 00035620L1れ給ふにてあらん。わらハもちかきころ、さやうのうき思 00035630L2ひにあひ/参(まい)らせ候へば、思ひやりていとをしく候と、しミ 00035640L3※ととふらひしに、かの女いふやう、いや、わたくしハ 00035650L4其思ひでハ御座らぬ。/古(いにし)へそひましたおとこに、あのやり 00035660L5もちの/人形(にんぎやう)がそのまゝいきうつしで御座れば、思ひだされ 00035670L6てかなしうてなりませぬといふた。 00035680¥N9¥J 00035690¥X九△大名ハくらべ物 00035700L9/肩(かた)をうち/踵(くびす)をつぐとハまことに/富饒繁花(ふにようはんくわ)のちまた。江戸/日= 00035710L10本橋(に=ほんばし)に/日用(ひよう)二人/居(ゐ)たりし。かゝる所に/供(とも)まハりきらをミが 00035720L11き、大/勢(ぜひ)/召(めし)つれられたる大/名(ミやう)/登城(とうじやう)なされけるを、/一人(ひとり)の/日= 00035730L12用(ひ=よう)申やう、さて+きれいなる御/供廻(ともまハ)りかな。あれハ/何様(なにさま) 00035740L13といふ/御大名(おだいミやう)じやといふ。(六ウ)一人かいふやう、あれハ 00035750L14其/国(くに)の御/主(ぬし)たれ/様(さま)といふて、五拾万石のお大名じやと。其 00035760L15/次(つぎ)に又/乗物(のりもの)をはやめて、はい+/馬(むま)かたつけと、/先供(さきども)こゑ 00035770L16をかけて大名/登城(とうぜう)なさる。又/一人(ひとり)いふハ、これもきれいな 00035780L17る/供(とも)まハり。どなたじやといふに、これは/何(なに)といふ/所(ところ)の/御= 00035790L18城主(ご=じやうしゆ)、壱万石のお大名じやといふ。/其(その)とき/壱人(ひとり)の/日用(ひよう)、/横= 00035800L19手(よこ=で)をうつて、/何事(なにごと)も/過去(くわこ)よりの/定(さだま)りといへど、/先(さき)のお大名 00035810M1ハ五拾万石、いまの大名ハ壱万石。/先(さき)のと/今(いま)のとハ四拾九 00035820M2万石のちがひじやが、/供(とも)まハり/馬乗物(むまのりもの)/諸道具(しよだうぐ)、あまりちが 00035830M3いハないに、/後(のち)の大名と/我(われ)+ハ、わづか壱万石のちがひ 00035840M4なれども、此なりを見よといふてあきれた。 00035850¥N10¥J 00035860¥X十△/神代(かミよ)の/頭巾(づきん) 00035870M7三/千世界(せんせかい)の/真中(まんなか)、/其国(そのくに)のミやこに/生(せう)をうくるハ、三/楽(らく)の/外(ほか) 00035880M8のた(七オ)のしミと思ふべし。/片山家(かたやまが)の/者(もの)ども、かないろ 00035890M9といふ/器物(うつハもの)を見て、これハなにゝなる物じやといふ。これ 00035900M10は/神世(かミよ)のとき/火(ひ)の/雨(あめ)が/降(ふ)つた。そのをりかづいたづきんじ 00035910M11やといふ。/一人(ひとり)の/者(もの)つるをとらへて、これハ/何(なん)の/為(ため)じやと 00035920M12いふ。それハぬけぬやうに/緒(を)をつけたといふ。/口(くち)をとらへ 00035930M13て、これはととへバ、/耳(ミヽ)のきこゆる/為(ため)じやといふ。それな 00035940M14らバ/両方(りやうハう)に/有(ある)はづじやがといふ。わるひがつてんじや。ね 00035950M15るときの/為(ため)に、かたつらにしておいた。 00035960¥N11¥J 00035970¥X十一△編笠そんはく 00035980M18/編笠(あミがさ)そんはくといふ/医者(いしや)のもとへ、ねん/比(ごろ)なる/友(とも)/来(きた)りて、 00035990M19/頃日(このごろ)ハ/寒気(かんき)も/甚(ハなハだ)に/御座(こざ)るが、/毎日(まいにち)おつとめやら/御出合(おであい)申さ 00036000¥P122 00036010L1ぬといへば、いや/此間(このあいだ)ハ/草履取(ざうりとり)めがわづらひまする。/小者(こもの) 00036020L2めハとび/越(こへ)にまたげ(七ウ)かぬる/程(ほど)なあか/切(ぎれ)がいたむと申 00036030L3て、/供(とも)にもつれられませぬゆへ、いづ/方(かた)へも/出(で)ませぬとい 00036040L4ふ。/小者(こもの)つく※と/聞(きい)て、なミだをはら+とながし、/申(まうし) 00036050L5/旦那様(だんなさま)。さりとてハどうよくな/義(ぎ)でござりますといふ。そ 00036060L6んはく、けうをさまし、そちハ/何(なに)をいふぞといへば、たゝ 00036070L7今のおはなしでしれました。/夕部(ゆうべ)/私(わたくし)があが/切(ぎれ)をとびこさし 00036080L8やれましたにまぎれがない。いかにまたがれぬといふても、 00036090L9/杖(つえ)をなかへつきこませられましたやら、けさまで/血(ち)が大/分(ぶん) 00036100L10/出(で)ました。ぜひとびこさいでなりませずハ、/今度(こんど)から/杖(つえ)を 00036110L11バゆるして/下(くだ)されませいといふた。 00036120¥N12¥J 00036130¥X十二△まな/板(いた)の/簡略(かんりやく) 00036140L14百/姓(せう)二三人、/地頭方(ぢとうがた)へ御/用(よう)にてまいりけるが、/折(をり)ふしふる 00036150L15(八オ)まひの/節(せつ)にて/台所(だいどこ)にかまぼこ有しを、ひとりの百/姓(せう) 00036160L16いふやう、さてもお/地頭様(ぢとうさま)にも/諸事(しよじ)御/簡略(かんりやく)なさるゝハ。あ 00036170L17の/魚(うを)をミやれ。/板(いた)にとりつけてあるが、/定(さだ)めて/切(きる)ときにま 00036180L18な/板(いた)のいらぬやうにしたものさうなと。/庄屋(しやうや)きいて、さて 00036190L19+とほうもないこといふて、お/侍衆(さふらいしゆ)にわらハるゝな。あ 00036200¥G 00036210M11れハ/今日(こんにち)のおれうりになさるゝ/杉焼(すぎやき)といふもので、/杉(すぎ)の/板(いた) 00036220M12につけて/焼(やい)たものじや。そのやうなことをいへば、しつた 00036230M13おらゝまでが、ぐわいぶんがわるいといふた。 00036240¥N13¥J 00036250¥X十三△/泪(なミだ)にぬるむ/酒(さけ)の/間(かん) 00036260M16もろこしの/劉伯倫(りうはくりん)ハ/酒功賛(しゆこうさん)を/作(つく)り、/白楽天(はくらくてん)ハ/酒徳頌(しゆとくのせう)をあら 00036270M17ハしてこれを/愛(あい)し/友(とも)とせし。/実(まこと)に、一/舛(せう)ハ/夢(ゆめ)のごとし、五 00036280M18/合(がう)ハまぼろしのごとしとハ、上/戸(ご)のはかなく/醒(さむ)ることを/嘆(なげき) 00036290M19たる/言葉(ことば)なる(八ウ)(九オ挿絵)べし。こゝに/可(べ〈)右衛門といふ 00036300¥P123 00036310L1人、うき世を酒にくらして/楽(たの)しミしが、つゐに/内損(ないそん)たのミ 00036320L2すくなき/末期(まつご)にのぞミ、/惣領(そうれう)に/遺言(ゆいこん)するやう、/我(われ)此/病(やまひ)にて 00036330L3/死(し)なんこと一/生(せう)の/本望(ほんもう)也。しかれば/酒桶(さかおけ)を/棺(くハん)にし、/酒(さけ)の/粕(かす) 00036340L4にてよく+つめ、/花(はな)水にハ/酒(さけ)を/手向(たむけ)てくれよ。/魂(たましゐ)ハ酒を 00036350L5はなるゝことなし。/汝(なんぢ)、酒をのむときハわれに/逢(あふ)とおもへ。 00036360L6又かねてよみをく/辞世(じせい)あり。そのごとく/葬(はうふり)てくれよとて、 00036370L7かくなん。 00036380L8△△われ/死(しな)バ酒屋の/蔵(くら)の/桶(おけ)の/下(した) 00036390L9△△△/破(われ)てしづくのもりやせんもし 00036400L10これを/最期(さいご)の/詞(ことば)にて/空樽(あきだる)とぞなりける。/程(ほど)なく七&日の/追= 00036410L11善(つい=ぜん)をいとなミ、人+を/呼(よび)あつめ、/亡者(もうじや)の/好(すき)なりとて、/酒(さけ) 00036420L12をしゐ/飲(のミ)けるが、/俄(にハか)になミたぐミしかバ、人&ミて、/愁歎(しうたん) 00036430L13ハ/御尤(ごもつとも)なれども、/親仁(おやぢ)もお年のうへじやなどゝ/云(いひ)いさめけ 00036440L14れば、/亭主(ていしゆ)、いや/別(べち)のことでハなげき(九ウ)ませぬ。/親仁(おやぢ) 00036450L15/末期(まつご)の/遺言(ゆいごん)に、そちが酒をのむときハ/我(われ)に/逢(あふ)と思(おも)へ。おれ 00036460L16が/魂(たましゐ)ハ/酒(さけ)じやといはれたが、御/存(そんじ)のとをり/親父(おやぢ)ハはつきり 00036470L17とした人で/御座(ござつ)たが、/何(なん)といたしたか、/只今(たゝいま)たべた/親仁(おやぢ)の 00036480L18かんが、どんになられたとおもへば、あの/世(よ)のことが思ひ 00036490L19やられてかなしう御座るとすゝりあげた。 00036500¥N14¥J 00036510¥X十四△ちはやふるかミの/油(あぶら) 00036520M3/貧(ひん)のぬすミに/恋(こひ)の/哥(うた)とかや。/其躰(そのてい)いやしからぬ/浪人(らうにん)、/四方= 00036530M4髪(しハう=がミ)なるが/紙子(かミこ)に/朱(しゆ)ざやの大小をさし、/北野(きたの)の天神の/内陣(ないぢん)に 00036540M5て、むたいに/散銭(さんせん)を/取(とつ)てふところへ入る。/社僧(しやそう)ども、これ 00036550M6はらうぜきなりとてとらへければ、いや+さはぎたまふ 00036560M7な。/自分(じぶん)ハしらしぼり/伽羅(きやら)の/進(しん)と/云者(いふもの)なりと、なを+ね 00036570M8ぢこめバ、/何(なに)にもせよ、らうせき/者(もの)なりと(十オ)ひしとと 00036580M9らへ、/別当(べつとう)へつれゆき、かやう+といふ。/別当(へつとう)/聞(きい)て、/其= 00036590¥G 00036600¥P124 00036610L1方(その=ハう)/名(な)ハ/何(なん)と/云(いふ)。/宿(やど)もとハいづくとせんぎしければ、/拙子儀(せつすぎ) 00036620L2ハ/油(あぶら)の/小路辺(こうじへん)に/罷(まかり)ある/白(しら)しぼり/伽羅之進(きやらのしん)と申/者(もの)なりといふ。 00036630L3其/儀(き)ならバくるしうない。ゆるしてやれといはる。/社僧(しやそう)ど 00036640L4も/聞(きゝ)て、これはがてんまいらぬ御/下知(けぢ)なり。/白絞(しらしぼり)/伽羅之進(きやらのしん) 00036650L5なれば、ぬすミをしてもゆるし申へきやといへバ、/別当(べつたう)、 00036660L6いや+これはどふても、かミのあぶらじやといはれた。 00036670¥N15¥J 00036680¥X十五△/首(かしら)かくして/尾(を)のミゆる/世話(せわ) 00036690L9あこぎか/浦(うら)に/引(ひ)くあミだ/庵(あん)といふ/寺僧(じそう)。/夜(よる)+しのび+ 00036700L10に/買(かい)にやるでつち、十日あまり/風(かぜ)をわつらふてふせりけれ 00036710L11ば、せんかたなく/自身(じしん)ほうかふりして、/粋(すい)の/魚屋(うをや)にゆき、 00036720L12/夜更(よふけ)人しづまりてのち、/戸(と)をごと+とたゝきければ、/亭= 00036730L13主(てい=しゆ)/内(うち)から、/急(きう)に/誰(たれ)じや+と、(十ウ)/高(たか)らかにとがめけれ 00036740L14ば、/在家(ざいけ)からきたが、/生(なま)だこハあるかといふた。 00036750¥N16¥J 00036760¥X十六△/古来(こらい)まれなる/隠居(ゐんきよ) 00036770L17/人間(にんげん)七十/古来(こらい)/稀(まれ)なる/文盲人(もんもうじん)。/子(こ)に/世(よ)をわたし、/後生(ごしやう)一へん 00036780L18にならんと思ひ、/隠居所(ゐんきじよ)の/普請(ふしん)をくハだて、/大工(だいく)に/差図(さしづ)な 00036790L19どをさせけるに、/息子(むすこ)を/呼(よび)、/材木(ざいもく)の/注文(ちうもん)をかゝするとて、 00036800M1/先(まづ)/口(くち)に/材木(ざいもく)の/事(こと)とかけと/好(この)めバ、むす/子(こ)も/親(おや)に/似(に)るならひ 00036810M2にて、/材(ざい)の/字(じ)ハ/何(なん)とかきまするととへば、大かたしれたこ 00036820M3と。/先木(まづき)へんにかけといふ。さて、つくりハどうで/御座(ござ)る 00036830M4といへば、つくりハとふにをよバぬこと。かなでかきをれ。 00036840M5それほどどんでハ心もとない。まだ/隠居(ゐんきよ)ハなるまいといふ 00036850M6た。 00036860¥N17¥J 00036870¥X十七△/竃神(かまがミ)ハよい口の女 00036880M9/白(しろ)きちはやを/着(き)、/鈴(すゞ)うちふりて、あらおもしろの/竃神(かまがミ)やと、 00036890M10(十一オ)あづま/哥(うた)をうたひまふ女ミこを、いち子ともかまバ 00036900M11らひともいへり。/屋鋪方(やしきがた)/町屋(まちや)/門(かど)+をありきしが、江戸か 00036910M12んだの/鍋町(なべてう)のある/家(いゑ)へはいる。/下部(しもべ)の/男(おとこ)、これハ/何者(なにもの)ぞ。 00036920M13とをれといへば、いつもまいるかまバらひてござる。いは 00036930M14ひましよといふ。/男(おとこ)、いやこゝをしらぬか。/鍋町(なべてう)なれバか 00036940M15まバらひハいらぬといふ。それならバ、こゝハかんだとい 00036950M16へど、こなたの/目(め)ハ両方ながらよさそうなほどに、なべ町 00036960M17じやとてもかまバらひがこぬはづてハ有まいと、/千世(ちよ)の/御= 00036970M18神楽(ミ=かぐら)とまひおさめた。 00036980¥P125 00036990¥N18¥J 00037000¥X十八△/唐音(たうゐん)の/鐘(かね)の/銘(めい) 00037010L3/四書(ししよ)の/素読(そよミ)などしたそうな/若侍(わかさふらひ)二三人、/角田川(すミだがハ)/木母寺(もくぼじ)へ 00037020L4さんけいし、/名(な)にしあふ/古哥(こか)などを/吟(ぎん)じ、しさいらしく物 00037030L5しつたがほして、/貴賎(きせん)の/中(なか)をあそびありきしが、/鐘楼(しゆろう)のあ 00037040L6たりを(十一ウ)へめぐりて、いざ此/鐘(かね)の/銘(めい)をよまんといひて、 00037050L7/鐘(かね)のもとにたちより見けるに、/所(ところ)+しりたる/文字(もじ)あれど、 00037060L8よミつゞくることならず。うなるばかりで/埓(らち)があかねば、 00037070L9/人中(ひとなか)のめんぼくいふべきことバなくて、/此鐘銘(このかねのめい)ハ/唐音(たういん)でか 00037080L10きおつたゆへよめぬといふた。 00037090¥N19¥J 00037100¥X十九△ぢごく/極楽(ごくらく)のりんき 00037110L13/嫉妬(しつと)ふかき女の/胸(むね)と上/戸(ご)の/額(ひたい)ハ、いつもあつきといふ心に 00037120L14て、/盆(ぼん)の/前(まへ)にもたとへしぞかし。さる所に、りんきふかき 00037130L15/女房(にようぼう)ありて、せけんもはゞからず、よるひる/夫(おとこ)をせがむほ 00037140L16どに、/次第(しだい)にやせおとろへ、これを/気病(きやミ)してついに/死(し)にけ 00037150L17り。/近所(きんじよ)よりとふらひにゆけども、人の/内義(ないぎ)たちの/悔(くやミ)づか 00037160L18ひにハ/返事(へんじ)もせず、一/門(もん)どもあまり見ぐるしがり、もはや 00037170L19/此世(このよ)にいられぬ人のことじや。ふつつりと/思(おも)ひきりやれと 00037180M1(十二オ)いへば、それハどうよくなことをおしやる。ぢこく 00037190M2ごくらくへも、いたづらな女の/死(しん)でゆくまひものでもない。 00037200M3さいの/河原(かハら)のおんばハ、/年(とし)ごろハいくつばかりで御座るぞ。 00037210M4もし/後家(ごけ)でハなひかといふた。 00037220¥N20¥J 00037230¥X二十△口の/広(ひろ)き/秀句詰(しうくづめ) 00037240M7江戸/下谷辺(したやへん)に、/筍斎(じゆんさい)といふ/医者(いしや)有しが、/薬(くすり)の/飲手(のミて)ハなし。 00037250M8/誹諧(はいかい)などをし/秀句軽口(しうくかるくち)のはなしの/伽(とぎ)になり、大名/衆(しう)をつと 00037260M9めありきしが、あるとき/何者(なにもの)のわざにや、/筍斎(じゆんさい)が/門(かど)に/狂哥(きやうか) 00037270M10してはりける。 00037280M11△△なり下るはてハ/茄子(なすび)の/尻(しり)しきよ 00037290M12△△△/茶入(ちやいれ)のうハぎ身のせばきより 00037300M13/筍斎(じゆんさい)ミて、/薬代(やくだい)くれぬのミならず、にくき/者(もの)のしハざかな 00037310M14と/推量(すいりやう)するに、へたの/皮薬(かハくすり)がまハらぬといふ心なるべし。 00037320M15いで/返哥(へんか)せんと、 00037330M16△△/病人(びやうにん)を/無事(ぶじ)になすびのかうのもの 00037340M17△△△ぬか口いふぞへたのかわなる(十二ウ)(十三オ挿絵) 00037350M18又あるとき、/筍斎(じゆんさい)を/当惑(とうわく)させんと、おどけ者/作病(さくびやう)をこしら 00037360M19へ、/万秀句(よろづしうく)にして/先(まづ)物まうといひ、/私(わたくし)ハうんすん町から参 00037370¥P126 00037380L1たといはせもはてず、/筍斎、さてハ目ひとつかんだの人か 00037390L2といふ。お/薬(くすり)を申/請(うけ)たい。/私(わたくし)/持病(ぢびやう)にむかしの/掟(おきて)が御ざる。 00037400L3筍斎せんきが有じや迄。男ふとん/枕(まくら)を/煩(わつら)ひまする。斎よこ 00037410L4ねが出たか。男/筏(いかだ)をよほどのミました。斎いや/下(くだ)しバかりで 00037420L5ハなをるまい。男いや/秋(あき)風でござる。斎ふき出る物じや。 00037430L6男此/比(ごろ)ハ四十八/枚(まい)がはなれ身ふしがなやミます。斎かさけ 00037440L7のしそんじたハ/骨(ほね)うづきになりよい。男ぬまづと/吉原(よしハら)の/間(あい) 00037450L8が、ぶ/用心(ようじん)で御ざる。斎はら心がわるいの。男やゝもすれ 00037460L9ば/猿(さる)にこのミをミせたやうにござる。斎いかにも/時(とき)+気 00037470L10あがりがする物じや。男此間ハ/系図(けいづ)をかんがへまする。斎 00037480L11/何筋(なにすぢ)が/引(ひき)つるか。男/渕(ふち)の/底(そこ)かこハ物でこさる。斎いかにも、 00037490L12たまりにならずハよからふと、一&/当話(とうわ)しければ、さて 00037500L13+こなたハへたの/皮(かハ)の/名人(めいじん)かな。/私(わたくし)ハ(十三ウ)ミなうそ 00037510L14の/皮(かハ)で御座るとてにげた。 00037520¥N21¥J 00037530¥X廿一△/書(かい)てもよめぬわが/文(ふミ) 00037540L17ある所に、すんぱんといふ/文盲(もんもう)なる/医者(いしや)有しが、ことの/外(ほか) 00037550L18/手跡(しゆせき)も/粗筆(そひつ)なれバ、/書(かき)まぎらかさんと思ひ、/唐(から)やうの/手本(てほん) 00037560L19をならひけるが、心やすき人のかたへ/状(じやう)をやりけり。/例(れい)の 00037570M1/麁筆(そひつ)にてかきちらしたれば一/字(じ)もよめず。/埓(らち)あかねバ、二 00037580M2三日/過(すぎ)て/友(とも)だち/状(じやう)を/持参(ぢさん)して、此/間(あいだ)つかハされたる/状(じやう)ハ一 00037590M3/字(じ)もよめませなんだ。これハ/何(なん)といふことで御座るととひ 00037600M4けれバ、かのすんぱんも、よみてミれどもよめず。大きに 00037610M5とうわくして、とひにくるならバ、こちにわすれぬさきに 00037620M6そのまゝ/来(き)もせいでといふた。 00037630¥N22¥J 00037640¥X廿二△/残(のこ)りおほい/妻(つま)の/別(わかれ) 00037650M9ある/者(もの)/妻(つま)にはなれて/物(もの)さびしく/暮(くら)しける折ふし、/友(とも)だちの 00037660M10/方(かた)(十四オ)より、/愁(うれい)をはらふ/箒(はうき)とかや申候へば、これにて/少(すこ) 00037670M11し/朦気(もうき)をはらし/給(たま)へと/酒(さけ)をおくりける。/幸(さいはい)心やすき人/居合(ゐあハ) 00037680M12せけれバ、いざ一つといひて/樽(たる)をあけしに、のミ/口(ぐち)/出(で)かね 00037690M13ければ、/居合(ゐあハせ)たる人ミて、/風穴(かざあな)がないゆへじや。/樽(たる)の/上(かミ)に 00037700M14/錐穴(きりあな)をあけられよと/気(き)を/付(つけ)られ、/穴(あな)をあけたれば、/案(あん)のご 00037710M15とくどぶ+と出たり。/時(とき)に/亭主(ていしゆ)、/樽(たる)にいだき/付(つき)なミだを 00037720M16ほろ+とながす。かの人、/何(なん)としたる/事(こと)とおどろきけれ 00037730M17ば、/亭主(ていしゆ)/泪(なミだ)をおさへ、さても+/残多(のこりおほふ)ござる。/御存(ごぞんじ)のとを 00037740M18り/女房義(にようぼうぎ)ハ、/産後(さんご)に/小便(せうべん)が/通(つう)せずして/死(しに)ました。かゝる/療= 00037750M19治(りやう=ぢ)がござる物を、とういふて/下(くだ)されいで。/女房(にうぼう)どもがあた 00037760¥P127 00037770L1まに/錐(きり)もミをいたしたらば、/小便(せうべん)が/通(つう)じませうにとて、又 00037780L2さめ+とないた。 00037790¥N23¥J 00037800¥X廿三△/眼鏡(めがね)てためす/盃(さかづき)のつきめ(十四ウ) 00037810L5わるじやれなる大/臣(じん)、はじめてゆきたる/揚屋(あげや)にて、/亭主(ていしゆ)を 00037820L6よび出し/盃(さかづき)をさし、/銚子(てうし)のつぎめじや。今ひとつといへば、 00037830L7はや三/盃(ばい)めハどうもさやうにハといふ。ぜひのめと、きん 00037840L8ちやくをあくれば、さてハした物じやと、一はいてうどう 00037850L9けるを、やかて目がねを取出して見きハめ、此ころ目をわ 00037860L10づらふたれば、かすんでたゞハミへぬ。いかにも一はいて 00037870L11うどあるよといふてはづした。 00037880¥N24¥J 00037890¥X廿四△/辛鮭(からざけ)の/丸薬(くハんやく) 00037900L14/古人(こじん)もいはれし。/汝(なんぢ)/元来(ぐハんらい)/枯木(かれき)のごとしとかや。/落葉(おちば)が/霜(しも)の 00037910L15/夜(よ)ざむなる/比(ころ)、/薬(くすり)ぐひにせんと、さる所の/庵主(あんじゆ)、からざけ 00037920L16を/料理(れうり)して/居(ゐ)る所へ、ふとだんなまいり見/付(つけ)たれば、/坊主(ほうず) 00037930L17あハてゝ、そばにある/衣(ころも)を、ちやつと/引(ひき)かぶせてかくせし 00037940L18を、だんなおどけものにて、/亭坊様(ていぼうさま)。その(十五オ)/衣(ころも)のした 00037950L19なる物ハなんでござるととひければ、/坊主(ほうす)、なむ三ぼう、 00037960M1あらはれたるとぜひなく、これはからざけでござるが、/粉(こ) 00037970M2にして/丸薬(ぐハんやく)にいたすゆへ、まづころもをきせてミますると 00037980M3いふた。 00037990¥N25¥J 00038000¥X廿五△/蚤(のミ)の/三番三(さんばさう) 00038010M6/上(かミ)をまなぶ/下(しも)とかや。さる/屋鋪(やしき)の/中間部屋(ちうげんへや)にて、/草履取(ぞうりとり)の 00038020M7ちよこ/内(ない)、/扇(あふぎ)にて/拍子(ひやうし)をうつて、いやあハ+といふを、 00038030M8/門番(もんばん)のづく/平(へい)といふおやぢ、/何(なに)やら/面白(おもしろ)さうな/事(こと)をするな 00038040M9といへば、ちよこ/内(ない)、/上(うへ)がたにハ/能(のう)をなされてなぐさまし 00038050M10やるが、こちとハ/蚤(のミ)をとらまへて/三番三(さんばさう)をふませてミると 00038060M11いふ。/門番(もんばん)つく+ミて、さても/面白(おもしろ)いことかなと思ひ、 00038070M12/部屋(へや)へかへり、/何(なに)かハしらず壱/疋(ひき)とらまへ、/口笛(くちぶゑ)をふき/扇= 00038080M13拍子(あふぎ=びやうし)にてたゝミをたゝきまハせけるとき、/傍輩(ほうばい)の/中間(ちうげん)/来(きた)り、 00038090M14おやぢ、/何(なん)のまねをするといへば、いや、/蚤(のミ)に(十五ウ)三番 00038100M15三をふまするが、とぶやらはねるやら、/目(め)がかすんで/大夫= 00038110M16殿(たゆふ=との)の/舞(まひ)ぶりが見へかぬる。よい/目(め)でミやれ。よくまやるか 00038120M17といふ。いやおやぢ、まひハせぬぞ。これハ/役者(やくしや)がかハつ 00038130M18て、しらミ/大夫(だゆふ)じや。 00038140¥P128 00038150¥N26¥J 00038160¥X廿六△/興(けう)がる/法師(ほうし) 00038170L3/夕部(ゆふへ)すゞしき/椽(ゑん)ばなにすだれまきあげ、思ふ/友(とも)とち/余念(よねん)な 00038180L4く/碁(ご)をうちしに、/田舎(いなか)の/出家(しゆつけ)/見物(けんぶつ)せられしが、あるいハ/目(め) 00038190L5をつぶさうの/打(うつ)てとらうかの、/又(また)ハはねかけうの、ころさ 00038200L6うのといひければ、かの/出家(しゆつけ)、/終(つゐ)に/碁(ご)といふ/物(もの)ハしらず。 00038210L7何ぞあいさつをいひたく思ひ、とかく/碁(ご)ハあらひことばさ 00038220L8へいへばよいぞと/心得(こゝろへ)ゐる/内(うち)に、又こゝを/切(きり)ませうといふ。 00038230L9/時(とき)にかの/出家(しゆつけ)、/先(まづ)またしやれ。きらふよりハ/其石(そのいし)めをふミ 00038240¥G 00038250M1たをさつしやれといふた。(十六オ) 00038260¥N27¥J 00038270¥X廿七△/薬(くすり)にもきくからミ 00038280M4ある人、/麁相(そさう)なる/小者(こもの)をつかひしが、/医者(いしや)の/所(ところ)へ/風(かぜ)の/薬(くすり)を 00038290M5とりにやりければ、/医者(いしや)、くすりをわたすとき、しやうが 00038300M6一/分(ふん)いれよといはる。かしこまりましたとて/取(とり)てかへり、 00038310M7せんずる/時(とき)、しやうがをうちわすれて、/何(なに)やらからひ物じ 00038320M8やがと、やがて/思(おも)ひ/出(だ)したるかほにて、/唐(とう)がらしを壱分入 00038330M9てせんずる。/時(とき)に/主人(しゆじん)、つゝミ/紙(がミ)を見て、やい+、しや 00038340M10うが壱分入たかといふ。/麁相者(そさうもの)いふやう、しやうがハ/御座(こざ) 00038350M11りませぬゆへ、からミに/唐(とう)からしを入ました。 00038360¥N28¥J 00038370¥X廿八△つかぬはいかい 00038380M14京も/田舎(ゐなか)も/誹諧(はいかい)のひるとはやるに、さる人百/韵(いん)を/興行(こうぎやう)して 00038390M15より/合(あひ)しに、/其中(そのなか)に此ごろ/誹諧(はいかい)をしならふ、ずんど/初心(しよしん)な 00038400M16る(十六ウ)(十七オ挿絵)/弥蔵(やざう)といふ/者(もの)、人なミに/座鋪(ざしき)につらな 00038410M17りけるに、/発句(ほつく)より/段(だん)+とまハりきて、 00038420M18△△/朝(あさ)ハらの/草(くさ)にこそいれ/月影(つきかげ)は 00038430M19といふ/前句(まへく)、/弥蔵(やざう)が手まへにまハりたり。/色(いろ)+と/案(あん)ずれ 00038440¥P129 00038450L1ども出ず。ひまハとる。やう+に、 00038460L2△△弥蔵がもちをかふてくふなり 00038470L3と付ければ、一/座(ざ)の人&、これは/殊外(ことのほか)/違(ちがふ)てつかぬほどに、 00038480L4よく/付(つけ)なをし/給(たま)へといふ。/其時(そのとき)弥蔵、されバそのつかぬに 00038490L5よつて、/餅(もち)をかふてたべまするといふ心じや。つけバかふ 00038500L6てハくはぬ。をの+の/聞(きゝ)やうがわるいといふた。 00038510¥N29¥J 00038520¥X廿九△/喧嘩(けんくわ)の/当話(とうわ) 00038530L9これは/高野山(かうやさん)/奥(おく)の/院(いん)より/出(いで)たるといふて、/町(まち)+/門(かど)+に 00038540L10/札(ふだ)をおすぐハんにん/坊主(ほうず)、さる/町(てう)の/指物(さしもの)屋の/門(かど)に、/札(ふだ)をお 00038550L11しければ、/亭主(ていしゆ)ミて、(十七ウ)札をはる/事(こと)ハ/無用(むよう)じや。/日蓮= 00038560L12宗(にちれん=しう)なれば/他宗(たしう)ハたのまぬとあらゝかにいへバ、さても/愚痴(ぐち) 00038570L13けんどんな人かなと/悪口(あつこう)す。/亭主(ていしゆ)/腹(ハら)をたて、そこな/糞虫(くそむし)ハ 00038580L14/何(なに)といふぞといふ。/坊主(ぼうず)聞(きい)て、何(なに)と、三/衣(ゑ)をきる/沙門(しやもん)を、く 00038590L15そ/虫(むし)といふことがあるか。そのいはれをきかんといふ。/亭= 00038600L16主(てい=しゆ)/聞(きい)て、/何(なに)と、くそ虫といふが/腹(はら)が/立(たつ)か。/其方(そち)ハ/高野(かうや)より 00038610L17/出(いづ)るといへバ/糞虫(くそむし)よといふ。/坊主(ぼうず)いよ+せきて、それな 00038620L18らバ/己(をのれ)ハ/糞喰(くそくらひ)じやと。/亭主(ていしゆ)聞て、/歴(れき)+の/男(おとこ)をくそくらひ 00038630L19とハ、八まん、きかぬといふ。/坊主(ほうず)聞て、をのれハ/指物屋(さしものや) 00038640M1なれば、/箱(はこ)をして/喰(くら)ハぬか。それなれバ/糞喰(くそくらい)といふた。 00038650¥N30¥J 00038660¥X三十△/首(くび)のない/化物(ばけもの) 00038670M4よろづのことに/間似合(まにあひ)をいふ/者(もの)、/四方(よも)山のはなしのついで 00038680M5に、此ころ/西(にし)のくぼのへんを/夜中(やちう)に/通(とをり)しが、さても+お 00038690M6そろしいばけ物(十八オ)にあふたといふ。それハどのやう 00038700M7なばけ物ぞととひければ、/何(なに)かハしらず、大なる/入道(にうどう)なる 00038710M8が、/目(め)ハ/皿(さら)ほど有て、/髪(かミ)を/四方(しハう)へさばきて、/首(くび)ばかりとび 00038720M9まハつたが、/中(なか)+すさまじかつたといふ。きく人、/何(なん)と、 00038730M10大/入道(にうだう)の/首(くび)に/髪(かミ)があるものかといひければ、いや、あたま 00038740M11ハろくにミなんだといふた。 00038750¥Y1初音草大鑑巻第二(十八ウ) 00038760¥P130 00038770¥Y1初音草咄大鑑巻第三 00038780L3△△目録 00038790L4一△/初春(はつはる)の/福徳(ふくとく) 00038800L5二△/恥(はぢ)をあらはす/古脚布(ふるぎやふ) 00038810L6三△/日本国(にほんごく)を/一目(ひとめ) 00038820L7四△/喰(くふ)てしる/壱文慢頭(いちもんまんぢう) 00038830L8五△/重(おも)い物ゐんすの/鏡(かゞミ) 00038840L9六△/茶臼(ちやうす)にあふむがへし 00038850L10七△有がたや/鉦(かね)の/緒(を) 00038860L11八△/紙帳(しちやう)もそれ+の/入物(いれもの) 00038870L12九△/牡丹(ぼたん)ハ/子細(しさい)の/種(たね) 00038880L13十△/貴(たうと)や/夢(ゆめ)の/観音(くハんおん) 00038890L14十一△あやしき物/竹光(たけミつ) 00038900L15十二△/吸筒(すいづゝ)の/煎薬(せんやく) 00038910L16十三△/木乃伊(ミいら)の/定紋(ぢやうもん) 00038920L17十四△/瓢(ふくべ)に入し/年(とし)ぜんさく 00038930L18十五△/法師(ほうし)/古井戸(ふるゐど)の/恋(こひ) 00038940L19十六△/病論(びやうろん)ハいひがち 00038950M1十七△/粋(すい)もはまる/桐(きり)の/箱(はこ) 00038960M2十八△三百文ハ/定(さだまつ)た/果報(くわほう)(一オ) 00038970M3十九△/子細(しさい)を/云(いひ)たがつたり 00038980M4二十△/名乗(なのら)ねと/今(いま)の/実盛(さねもり) 00038990M5廿一△手をとる/業平(なりひら)の/俤(おもかげ) 00039000M6廿二△いへばいハるゝ/枕(まくら)ことば 00039010M7廿三△/玉鉾(たまほこ)も今の/菜刀(ながたな) 00039020M8廿四△/神鳴(かミなり)の/落穴(おとしあな) 00039030M9廿五△/能(のう)ハうその/種(たね) 00039040M10廿六△うてハひゞく/太鞁持(たいこもち) 00039050M11廿七△/物(もの)の/名(な)もかハる/細首(ほそくび) 00039060M12廿八△さいの/河原(かハら)の/印地(いんぢ) 00039070M13廿九△見た/事(こと)もない/嘘(うそ)の/皮(かハ) 00039080M14三十△大/臣(じん)やつし/病(やまひ) 00039090M15卅一△山/鳩(ばと)に/耳(ミヽ)あり 00039100M16卅二△ね覚のちろり(一ウ) 00039110¥P131 00039120¥T1初音草大鑑巻第三 00039130¥N1¥J 00039140¥X一△/初春(はつはる)の/福徳(ふくとく) 00039150L5さる大/名(ミやう)がたに/御嘉例(ごかれい)とて、正月七日の/夜(よる)、大/書院(じよゐん)にて御 00039160L6/家(いゑ)久しき/者(もの)ばかり/召(めし)出され、/宝引(ほうびき)のあそひ有しに、ふすま 00039170L7/障子(しやうじ)の/内(うち)より五/色(しき)の/長緒(ながを)を/数(す)百/筋(すぢ)/出(だ)して、一/筋(すぢ)つゝ/引(ひき)て、 00039180L8/其緒(そのを)に/付(つけ)おかれし/物(もの)を/仕合次第(しあハせしだい)に/下(くだ)されける。/小性衆(こしやうしゆ)/桑(くわ)の 00039190L9/木(き)の/鐘木杖(しゆもくづえ)。/家老職(からうしよく)の/人(ひと)/銀銭(ぎんせん)壱/貫文(くわんもん)。あるひハ/絹巻物(きぬまきもの)、又 00039200L10ハ/伽羅(きやら)、/扇子箱(あふぎばこ)、/馬(むま)の/沓(くつ)、/摺小木(すりこぎ)などに/取(とり)あたるも/有(あり)。/茶= 00039210L11道坊主(さ=だうぼうず)からざけ。/横目役(よこめやく)の/人(ひと)、/眼鏡(めかね)に/取(とり)あたるも/自然(じねん)とお 00039220L12かし。/爰(こゝ)に/御家(おいゑ)の/年男(としおとこ)とて八十六/歳(さい)になる人、手をひかれ 00039230L13て/御嘉例(ごかれい)を/勤(つとめ)けるが、人まかせに取てくれたる/縄(なハ)を/引(ひき)出し 00039240L14けるに、お/腰(こし)もとの/梅(むめ)がえとて十五六の大ふり/袖(そで)を/下(くだ)され、 00039250L15これハ+と/興(けう)(二オ)をさましける。又/男(おとこ)ざかりの/出頭人(しゆつとうにん)、 00039260L16しかも/色(いろ)ずきなるが、/縄(なハ)をより/取(どり)にして、よき/物(もの)をと/観念(くハんねん) 00039270L17して引たぐりければ、大/殿(との)の/時(とき)さへ/古狸(ふるたぬき)とよばれし百/三(ミつ)に 00039280L18なるお/祖母(ばゞ)を引出せば、一/度(と)に/春(はる)のはじめの大わらひ。と 00039290L19かく/福徳(ふくとく)ハ/天道次第(てんたうしだい)、/殿様(とのさま)の御/機嫌(きげん)/万歳楽(まんざいらく)。 00039300¥N2¥J 00039310¥X二△/恥(はぢ)をあらハす/古脚布(ふるぎやふ) 00039320M3/京(ミやこ)の/春(はる)の/初空(はつぞら)、まづ/長閑(のどか)なる東山。ある人/大仏(だいぶつ)へ/参詣(さんけい)しけ 00039330M4るが、/拝(おが)ミて/立(たち)さまに/前(まへ)をミれば/太箸(ふとばし)一ぜん有。これハめ 00039340M5でたき/物(もの)。/如来(によらい)の/御福(ごふく)なりとおしいたゞき、/帰(かへ)りてよろこ 00039350M6ぶ事かぎりなし。かゝるところへそさう/者(もの)/来(きたり)て、あまりよ 00039360M7ろこびやるな。大仏の/前(まへ)でハせう+/大(おほ)きなものもちいさ 00039370M8うミゆる。ふと/箸(ばし)じやとおもやらバ/太鞁(たいこ)のばちであらふ。 00039380M9をれも/冬年(ふゆとし)大仏の/堂(どう)で/手拭(てぬぐひ)をひろうて、/内(うち)へきてミ(二ウ) 00039390M10たれば、/古脚布(ふるぎやふ)てあつたほどに。 00039400¥N3¥J 00039410¥X三△日本国を/一目(ひとめ) 00039420M13まだふミも見ぬ/天(あま)の/橋立(はしだて)、/生野(いくの)を/越(こえ)て/丹波(たんば)のおくより/親子(おやこ) 00039430M14づれ/京内(きやううち)まいりをせしに、まことに/京(ミやこ)のにぎハひ、/商人(あきんど)の 00039440M15/売買(ばい※)、/小路(こうぢ)+の/繁昌(はんじよう)、/目(め)をおどろかして、かの/息子(むすこ)がい 00039450M16ふやう、/親(おや)じや/人(ひと)。おらゝも方+をミれども、これほど 00039460M17/大(おほ)きな/所(ところ)ハ/御(ご)ざらぬ。/日本国(につほんごく)といふハこゝの事かととふ。 00039470M18/親仁(おやぢ)/聞(きい)て、さても+わけもなひこといふて人にわらハる 00039480M19な。/親(おや)はぢじや。日本国といふハこれ三つあハせたほど 00039490¥P132 00039500¥G 00039510M1あるといふた。 00039520¥N4¥J 00039530¥X四△/喰(くふ)てしる壱/文慢頭(もんまんぢう) 00039540M4/鳥(とり)に/鳳凰(ほうわう)有、からす有。/草(くさ)に/利根草(りこんさう)あり、/鈍根草(とんこんさう)有。ある 00039550M5(三オ)(三ウ・四オ挿絵)所に/異名(ゐミやう)を壱文まんぢうといふて、 00039560M6とつと/案(あん)のない/歴&(れき+)の御/方(かた)、/夜(よ)ばなしの/次而(ついで)に、/何(なに)と、/蓼= 00039570M7草(た=で)を/好(すい)て/喰(くへ)ば/利根(りこん)になると/古(いにしへ)よりいふが、十日/余(あま)りくふて 00039580M8ミたれども、かハつた/分別(ふんべつ)も/出(で)ず。又/茗荷(ミやうが)は/鈍根草(どんこんさう)とて、 00039590M9さい+くへばあほうになると/云(いひ)つたふ/程(ほど)に、これも/此中(このぢう) 00039600M10/毎日(まいにち)/食(しよく)すれども、/其(その)おぼえもない。これにハ/世間(せけん)の人がむ 00039610M11かしからはまつてゐる。/家中(かちう)の/者(もの)どもにぬかるなとのたま 00039620M12へば、/御意(ぎよい)に/入(いり)の/竹庵(ちくあん)が申けるハ、/蓼草(たで)ハきゝませぬさう 00039630M13なが、さやうに/御意(ぎよい)なされますれば、ミやうがハよほどき 00039640M14ゝましたそふにごさりまする。 00039650¥N5¥J 00039660¥X五△/重(おも)いものゐんすの/鏡(かゞミ) 00039670M17/仏(ほとけ)ハ/黄金(わうごん)の/肌(はだへ)といへどミたものもない/世界(せかい)。/潜上(せんしやう)ハ/出次第(でしだい) 00039680M18といひつのる。/曽我(そが)右衛門といふ/者(もの)、/友(とも)二三人にて/色里(いろざと)へ 00039690M19かよひ(四ウ)けるに、/初会(しよくわい)の/女郎(ぢよらう)の/酒(さけ)なかばに、れいのせ 00039700¥P133 00039710L1んしやう/云(いふ)やう、きのふ、さる所へ/茶(ちや)の/湯(ゆ)にゆきて、いか 00039720L2ふ/気(き)がつまつた。ことににじりあがりの/出入(でいり)になんぎした 00039730L3といふ。女郎きいて、それハ何とあそバしてといへば、か 00039740L4の/者(もの)、/別(べつ)のことでハないが、ふところに入た/鏡(かゞミ)がおもくて、 00039750L5さて+めいわくいたしたといふ。女郎又、びんかゞミを 00039760L6入さんしたとて、さほどおもふハ/御(ご)あんすまいといへバ、 00039770L7かの者、さればつねの鏡なればおもふもないが、さるお大 00039780L8/名(ミやう)から/拝領(はいりやう)したゐんすの/鏡(かゞミ)であつた。 00039790¥N6¥J 00039800¥X六△/茶臼(ちやうす)にあふむがへし 00039810L11/物(もの)ミなかぎり有。かぎりなきうき世の/楽(たの)しひと、/玉川(ぎよくせん)のな 00039820L12がれをくめど、とつと/吝人(しはいひと)有しが、さる者、/茶臼(ちやうす)をかりに 00039830L13やりけれバ、その/返事(へんじ)に、茶うすをよそへかせばくせがつ 00039840L14いてわるふごさる。(五オ)/此方(こち)へきてひかしやれと/返事(へんじ)す。 00039850L15さきの/人腹(ひとハら)をたてゝ、さて+しハいやつかな。何がな此 00039860L16/返答(へんとう)をとおもふ/折(おり)ふし、かの茶臼の/主(ぬし)より、/梯子(はしご)をかし/給(たま) 00039870L17へと/云(いひ)やりけれバ、さいわいかなと其返事に、はしごをよ 00039880L18そへかせバくるひまするほどに、あがる所があらバ、この 00039890L19方へきてあからしやれとくハせた。 00039900¥N7¥J 00039910¥X七△有がたやかねの/緒(を) 00039920M3/黒加賀(くろかが)の/長羽織(ながばをり)ぱつパの大小、京ざんとめの/袴足(はかまあし)いそがし 00039930M4さうに、さふらひ二三人、/浅草観音(あさくさのくハんおん)へ/参詣(さんけい)しけるが、きせ 00039940M5ん/群聚(くんじゆ)の/中(なか)を、はい+といかつにおしわけ+、/散銭箱(さんせんばこ) 00039950M6のちかくへよりしが、/田舎(いなか)らしき/男(おとこ)、/犢鼻褌(ふんどし)のさがりがは 00039960M7つれてひきずりけるを、かの/侍(さふらい)の中に/粗相者(そさうもの)ありて、/手拭(てぬぐい) 00039970M8が/落(おち)たると思ひ、つか+と(五ウ)よりて/取(とり)あぐると、/田= 00039980M9舎者(い=なかもの)/気(き)がついて、ふところより引あげゝれば、つれの/侍(さふらひ) 00039990M10/笑止(せうし)さうに、あたまをかきけるに、/粗相者(そさうもの)手をうつて、あ 00040000M11たご/白癩(びやくらい)、かねの/緒(を)かと思ふて取ついた。しんぞ口おしい 00040010M12と云し。 00040020¥N8¥J 00040030¥X八△/紙帳(してう)もそれ+の/入物(いれもの) 00040040M15/心(こゝろ)にかゝる山のはもなき/武蔵野(むさしの)といへど、月にうき/雲(くも)すこ 00040050M16しさハりある/浪人(らうにん)、とふ人あれバわぶとこたへて、/年久(としひさ)し 00040060M17く/芝浦(しはうら)のほとりにさすらひしに、/夏(なつ)の/比(ころ)/珍客(ちんきやく)ありて、/素麺(そうめん) 00040070M18を/調(てう)してふるまふとて、からしのこを/尋(たつね)けるに、/紙袋(かミぶくろ)に/書= 00040080M19付(かき=つけ)なく、あれこれとさがしやう+/取出(とりいだ)し、もてなして/帰(かへ) 00040090¥P134 00040100L1しぬ。/暮方(くれかた)にをよび、かしこからぬむす子、よそよりかへ 00040110L2りき。/親仁(おやぢ)いふやうハ、あの紙ぶくろにハそれ+の入た 00040120L3る物を書付しておけ。いそぐ/時(とき)の/用(よう)にあハぬといへバ、/心= 00040130L4得(こゝろ=へ)ま(六オ)したとて、やがて/親仁(おやぢ)ねられけるとき、/紙帳(しちよう)に 00040140L5大/筆(ふで)にて、/此内(このうち)におやぢ有と/書(かき)つけた。 00040150¥N9¥J 00040160¥X九△/牡丹(ぼたん)ハ/子細(しさい)の/種(たね) 00040170L8さる所に、一もんふ/通(つう)にして/牛(うし)の/角文字(つのもじ)もしらぬ人有。よ 00040180L9ろづのことに/子細(しさい)らしくこばしたかる/僻(くせ)あり。/春(はる)の/比(ころ)、/客(きやく) 00040190L10/入来(いりきた)りて、/庭(にハ)の/木立(こだち)、/石(いし)のあしらひに/気(き)をつけ、/花檀(くわだん)の色 00040200L11+/牡丹(ぼたん)の手入、めづらしき花、さて+きれいなる/掃除(さうぢ)、 00040210L12うら山しき御なくさミかなとほめけるに、かの人、あまり 00040220L13うら山しく思召な。/花前(くわせん)へ/小鳥(しやうてう)どもがくんじゆいたして、 00040230L14/馬(ば)ふんをつかまつるに/困窮(こんきう)しますといふた。 00040240¥N10¥J 00040250¥X十△/貴(たうと)や/夢(ゆめ)の/観音(くハんおん) 00040260L17/信濃国(しなのゝくに)/草(くさ)津の/湯(ゆ)の山にて/其(その)ほとりの人ども、ある/夜(よ)の/夢(ゆめ)に 00040270L18(六ウ)(七オ挿絵)つげていはく、あすの/午(むま)の/刻(こく)に卅ばかりの 00040280L19/髭男(ひげおとこ)、かげなる馬にのり/湯(ゆ)に/入来(いりきた)るべし。すなはち/観音(くハんおん)ぼ 00040290¥G 00040300M11さつ也。なんぢら、ねんごろにおがむべしとて/夢(ゆめ)さめぬ。 00040310M12/村中(むらぢう)の/者(もの)どもおどろき、/夜(よ)あけてたがひにつげゝれバ、ミ 00040320M13な人つゆもたかはず。ふしぎの/事(こと)なりとて/湯(ゆ)のほとりを/清(きよ) 00040330M14め/注連(しめ)を/引(ひき)/香花(かうけ)をそなふ。/国中(こくちう)に/聞(きゝ)つたへ、おびたゝしく 00040340M15あつまりて、今や+と/待(まち)けるに、/午(むま)の/刻(こく)過る/比(ころ)、/夢(ゆめ)の/告(つげ) 00040350M16に/露(つゆ)たがハぬひげ男、/弓(ゆミ)をかたげ、かげなる/馬(むま)にのりてき 00040360M17たる。やれ/観音(くハんおん)さまよと、おほくの人/立(たち)さはぎておがミ奉 00040370M18る。此/男(おとこ)、大におどろき、心得ぬ事かなと人&にやうすを 00040380M19とへども、たゞおかミに/拝(おが)むバかり也。ふしぎいよ+は 00040390¥P135 00040400L1れず。ある/僧(そう)の手をひたひにあてゝおがミ入たるがもとに 00040410L2よりて、ひらさら、いかなる事にやととふ。此/僧(そう)、/夢(ゆめ)の/告(つげ) 00040420L3を有のまゝにかたり、いひも(七ウ)はてず、なむ/観世音(くハんせおん)と 00040430L4おがむ。此/男(おとこ)、人+にむかつてすはく、われは/甲州(かうしう)がた 00040440L5の/侍(さふらひ)なるが、ふと/狩(かり)に出て/狼(おほかミ)に/臀(しり)をかまれ、/疵(きす)やうじやう 00040450L6のため/湯治(とうぢ)にきたり。観音とハ/勿躰(もつたい)なしとて、あなたこな 00040460L7たへにげまどへバ、人+これをきゝて、されバこそ/臀(しり)く 00040470L8らい観音とむかしから申せバ、いよ+/観音様(くハんおんさま)にうたがひ 00040480L9なしとて、此/男(おとこ)のしりにつきておがミあるひた。 00040490¥N11¥J 00040500¥X十一△あやしき物/竹光(たけミつ) 00040510L12御/公儀(こうぎ)より/浪人(らうにん)の御たつね有し/比(ころ)、さる町の/借屋(しやくや)に、/紙子(かミこ) 00040520L13しぶゑもんといふ浪人有。/家主(いへぬし)よりよびにつかハしければ、 00040530L14只今ハわきざしののりをぬぐふて/居(ゐ)まするほどに、おしつ 00040540L15けまいらふといふ。さてこそ大/事(じ)が/出来(でき)た。人をころした 00040550L16物であらふと、家主、五/人(にん)ぐミ、(八オ)あをくなりて浪人 00040560L17の所へゆき、やうすを/尋(たつね)ければ、いや御/気遺(きづかい)なさるゝな。 00040570L18/自分(じぶん)/脇差(わきさし)ハはづかしながら/箆(へら)てござるが、/先(さき)ほどから/紙子(かミこ) 00040580L19のつゞくりをいたしたれば、その/糊(のり)をこそげてまいらふと 00040590M1存じた。 00040600¥N12¥J 00040610¥X十二△/吸筒(すいづゝ)の/煎薬(せんやく) 00040620M4遥見人家花則入とかや。/去年(こぞ)の/枝折(しをり)の/道(ミち)かへて、東 00040630M5山の/梢(こずへ)を/雲(くも)にミなし、/友(とも)二三人、さハげあだ/夢(ゆめ)、しバしう 00040640M6き世のさがの/辺(ほとり)、花見ありきしに、/不許葷酒(ふきよぐんしゆ)の/石(いし)を/立(たて)たる 00040650M7/門(もん)の/内(うち)に、/名(な)ある/桜(さくら)の/色(いろ)をあらそひて/咲(さき)ミだれたるに、い 00040660M8ざとて/立入(たちいり)たれば、門を/守(まも)る/者(もの)/立出(たちいで)、そのすい/筒(づゝ)ハ/酒(さけ)そう 00040670M9な。此/禅林(ぜんりん)の内へハ入ぬといふ。/供(とも)の者、これハ酒でハ/御(ご) 00040680M10ざらぬ。だんな/病者(びやうじや)ゆへ、さき※迄/薬(くすり)をせんじてもちあ 00040690M11りくといふ。しか(八ウ)らばのミてミんといふ。やがて大 00040700M12/茶碗(ちやわん)にたぶ+とあたへけれバ、此/薬(くすり)には大/分(ぶん)ぢわうが/入(いつ) 00040710M13たさうな。ようきゝましようといふて/通(とを)しぬ。さあ+し 00040720M14すました。/久(きう)七でかしたといふまゝ、花のもとにてかたふ 00040730M15けて、おさへたかまふたなどゝ云所へ、/番(ばん)の/者(もの)来りて、も 00040740M16し/供(とも)の/衆(しゆ)。さきほどの/薬(くすり)の二ばんハまたあがりませぬかと 00040750M17いふた。 00040760¥P136 00040770¥N13¥J 00040780¥X十三△/木乃伊(ミいら)の/定紋(ぢやうもん) 00040790L3/似薬種(にせやくしゆ)/売買(うりかい)/御停止(ごてうじ)の/札(ふた)有ながら、きんねん/木乃伊(ミいら)たくさん 00040800L4になることハ、/世間(せけん)に/似(に)せがおほし。ねんをいれてうりや 00040810L5れといへば、/薬種(きぐすり)やふくりうして、/正身(しやうじん)のたしかなる/証拠(しやうこ) 00040820L6にハ、/人(ひと)がたちそのまゝミせて/売(うり)まするといふ。ミれば/肌(はだ) 00040830L7につきたるかたびらに、かくのうちに/小(こ)の/字(じ)の/紋所(もんどころ)あり。 00040840L8人+手をうつて、さても(九オ)+/唐(から)にも/嵐(あらし)三右衛門と 00040850L9いふものがあるか。大かたににせを/売(うり)おれといふた。 00040860¥N14¥J 00040870¥X十四△/瓢(ふくべ)に/入(いれ)し/歳(とし)ぜんさく 00040880L12人の/親(おや)ごゝろハ/闇(やミ)にハあらねど、/子(こ)を思ふことハ/霜夜(しもよ)の/鶴(つる) 00040890L13よりもふかし。/世(よ)のおぼえゆたかならん/聟(むこ)もがなと、/明(あけ)く 00040900L14れ/物(もの)ねがふ/母(はゝ)の/親(おや)。むすめにむかひ、そちハはや、/年(とし)つゞ 00040910L15やはたちになる/迄(まで)、むすぶの/神(かミ)の/御気(おき)かつかぬやら、/似合(にあハ)し 00040920L16きこともなく、ことハりや/苧(を)をうむすべさへしらいでとし 00040930L17かるを、/隣(となり)の人の/内儀(ないぎ)/居(ゐ)あハせて、/女(おな)の/子(こ)ハ/其(その)やうにあひ 00040940L18たてなくしからしやらぬものじや。これのお/松(まつ)どのハこと 00040950L19し/二十(にじう)にこそならるれ。/知恵(ちゑ)もつく/時(とき)があるにと/云(いひ)なだめ 00040960¥G 00040970M11けれバ、こなたよりうミの/母(はゝ)が/知(しつ)てゐまする。あれハはた 00040980M12ちにこそなりますれといふ。(九ウ)(十オ挿絵)いや/二十(にしう)でこ 00040990M13そあれと、同じことをあらがふ所へ、/娘(むすめ)の/祖母(はゝ)きたりて、 00041000M14/孫(まご)がとしハおれがよい/証拠(しやうこ)を/持(もつ)た。/何(なん)のまきれもないこと 00041010M15ゝ、やがて/隠居屋(ゐんきよや)より/大(おほき)なるふくべを/取(とり)よせて、ミな+、 00041020M16これですんだといふ。これで/何(なに)がしれまするといへバ、あ 00041030M17のお/松(まつ)がむまれどしに此ふくべがなつて/有(あつ)た。もし/年(とし)ぜん 00041040M18さくの/時(とき)、/証拠(しようこ)にと思ふて/取(とつ)ておいたと。 00041050¥P137 00041060¥N15¥J 00041070¥X十五△/法師(ほうし)/古井戸(ふるゐど)の/恋(こひ) 00041080L3/法師(ほうし)ばかりうらやましからぬ/物(もの)ハなし。/人(ひと)にハ/木(き)のはしの 00041090L4やうに思ハるゝと、/学文(がくもん)も/物(もの)うくなり、/菩提心(ぼだいしん)も/似(に)せむら 00041100L5さきのもとの/浮世(うきよ)にかへり、/再男軒(さいなんけん)と/号(かう)して、/針立(はりたて)やら/誹= 00041110L6諧師(はい=かいし)やら何やらしれぬ/世(よ)わたりして/居(ゐ)たりしに、/古(いにしへ)の/学友(がくゆう)、 00041120L7よしミを/思(おも)ふてたつねより、こしかたの/物語(ものがたり)せしに、/出(で)び 00041130L8たいに/頬(ほう)ハまんぢうのやうにふくれ(十ウ)やり、おとがひ 00041140L9/鳩(はと)むね、いづれ/七道具(なゝつだうぐ)そろふたる女、/勝手(かつて)にミへしを、/定(さため) 00041150L10て/下女(げぢよ)なるべしと思ひ、くハしく/問(とひ)ければ、あれが/本妻(ほんさい)じ 00041160L11やといふ。/友(とも)だちおとろき、/扨(さて)+/何(なん)の/因果(ゐんくわ)にて、あれて 00041170L12いにハそふことじやと/笑(わら)ひければ、さたハないこと。おち 00041180L13くちにハ目が見えなんだ。 00041190¥N16¥J 00041200¥X十六△/病論(びやうろん)ハ/云(いひ)がち 00041210L16さる所に、やハら/出来庵(できあん)とて/文盲(もんもう)/大才(たいさい)なる/医師(いし)有。かハり 00041220L17たる/名字(ミやうじ)かなと/尋(たつね)けれバ、/近所(きんじよ)の/者(もの)の/異名(いミやう)にて、かゝると 00041230L18なげるといふこゝろじやといふ。此/医師(いし)、/何病(なにやまひ)を見ても/痰(たん) 00041240L19の/療治(りやうぢ)ばかりしられたるに、こざかしき人/尋(たつね)けるハ、こな 00041250M1たの/療治(りやうぢ)にハいつも/痰(たん)の/薬(くすり)ばかりもらせらるゝが、それに 00041260M2てすむことかといへバ、/出来庵(できあん)いハく、中+、なに/煩(わづら)ひ 00041270M3にても/人間(にんげん)ハ/痰(たん)にて/死(し)する/物(もの)じやといふ。かの人、/痰(たん)にて 00041280M4バかり(十一オ)/死(し)するとハ/心得(こゝろへ)がたし。しからバ/浮気者(うハきもの) 00041290M5/酔狂(すいきやう)して、/物(もの)ごとあやまり/死(し)するも/痰(たん)か。いかにも、へう 00041300M6たんといふたん也。あるひハ/喧嘩口論(けんくわこうろん)にてあたまをわられ 00041310M7て/死(し)するも/痰(たん)か。それハミやうたんといふたん也。又ハ/盗(ぬす) 00041320M8人などの/掟(おきて)にあふて/死(し)するも/痰(たん)か。されば、だいたんと申 00041330M9たん也。しからバ/川(かハ)へ/身(ミ)をなげ/首(くび)くゝりて/死(し)するも/痰(たん)か。 00041340M10いかにも、たん気といふたん也。さて又、おさなひ/子(こ)の川 00041350M11/狩(がり)などに/水(ミづ)におぼれて死するも/痰(たん)か。それこそ、じやうだ 00041360M12んといふたんじや。/左様(さやう)に/口(くち)がしこくのたまふが、しから 00041370M13バ、/夜道(やミち)/山道(やまミち)、/辻切(つぢぎり)/追(おひ)はぎにあふて/死(し)するも/痰(たん)か。いかに 00041380M14も、/人(ひと)ごとによくつゝしむべき/油断(ゆたん)といふたんじやと、よ 00041390M15い/口(くち)の/出来庵(できあん)がこたへた。 00041400¥N17¥J 00041410¥X十七△/粋(すい)もはまる/桐(きり)の/箱(はこ) 00041420M18/妻(つま)といふものを/持(もち)ながら、/勤(つとめ)の/身(ミ)とて/一(ひと)とせを江戸/詰(づめ)にく 00041430M19ら(十一ウ)すこそ、こよなう/千年(ちとせ)の心ちこそすれと、/非番(ひばん)を 00041440¥P138 00041450¥G 00041460L11やりくり/横目(よこめ)をしのび、/番頭(ばんがしら)の思ハくを/忘(わす)れて/色里(いろざと)にかよ 00041470L12ひ、/時(とき)めく/上郎(じようらう)にふかくあひしに、ある時/大夫(たゆふ)心やすくう 00041480L13ちとけて、かた様の/御国(おくに)もとハ/雪国(ゆきくに)なれバ、つめたひ/御(お)心 00041490L14におつもりもいかゞなれど、御/無心(むしん)ながら/珍(めづらし)い/加賀(かゞ)ぶしを 00041500L15/沢山(たくさん)にかいて下されませいと云けれバ、何よりやすひこと。 00041510L16/仰(おほせ)までもなし。かさねて/持参(ぢさん)いたさんと/屋鋪(やしき)へかへり、さ 00041520L17ハぎ/中間(なかま)をよびあつめ、かハつた/大夫(たゆふ)が/無心(むしん)が有とて四五 00041530L18人してかきあつめ、/桐(きり)の/箱(はこ)にしたゝめ、/約束(やくそく)の日/揚屋(あげや)へも 00041540L19たせていき、不手ぎハなれども御/望(のそミ)にまかせてと/座鋪(ざしき)に/荷(にな) 00041550M1ハせければ、女郎ふしぎに思ひ、/蓋(ふた)をとらせてミければ、 00041560M2/花鰹(はながつほ)をおびたゝしくかいて入たり。/大夫(たゆふ)ミて、/私(わたくし)がたまのミ 00041570M3ましたかゝぶしとハちがひましたといへバ、/扨(さて)(十二オ)さ 00041580M4て、大夫ハいかひ/粋(すい)かな。此ころ/加賀(かゞ)ぶしをきらして、/土= 00041590M5佐(と=さ)ぶしの/正身(しやうじん)じやと。 00041600¥N18¥J 00041610¥X十八△三百文ハ/定(さたまつ)た/果報(くわほう) 00041620M8/家(いゑ)に/鼠(ねずミ)あり/国(くに)にぬす人有とハ/古人(こじん)の/格言(かくげん)。とかく/油断(ゆだん)のな 00041630M9らぬうき世なり。雨風はげしき/小夜更(さよふけ)がたに、さる家の/門= 00041640M10口(かと=ぐち)を/切(きり)ぬく/音(をと)、ふとねミヽに聞つけ、/亭主(ていしゆ)そろりと/立(たち)より、 00041650M11/盗人(ぬすびと)の手を/内(うち)よりしかととらまへ、/女房(にようバう)をよびおこし、/銭(せに) 00041660M12三百文/取(とり)いださせ、ぬす人に/握(にぎ)らせ、さて+天/命(めい)しらず 00041670M13め。此/腕(うで)を引ぬくハやすけれど、おれも/聞付(きゝつけ)て/仕合(しあハせ)、おの 00041680M14れも此/分(ぶん)にてハ/不仕合(ふしあハせ)なるべし。/去(さり)ながら思ふ/子細(しさい)あれば、 00041690M15此/銭(ぜに)をとらする。これにこりて/盗人(ぬすびと)を思ひとゞまれと云け 00041700M16れば、/盗(ぬす)人大きによろこび、かやうに/命(いのち)をたすけ(十二ウ) 00041710M17(十三オ挿絵)下さるゝさへで/御(ご)ざるに、銭までハあまりいた 00041720M18ミいりまする御なさけ。かやうになされますれば、いまか 00041730M19ら/切(さい)+/参(まい)りにくひと申た。 00041740¥P139 00041750¥N19¥J 00041760¥X十九△/子細(しさい)を/云(いひ)たがつたり 00041770L3/何(なに)ごとも/古実有儀(こしつあるぎ)ハ、/其道(そのミち)+の人に/尋(たつね)たるがよし。口か 00041780L4しこき/伯楽(はくらく)に、/或(ある)人/問(とひ)けるやうハ、/馬道具(ばだうぐ)に、しほでとい 00041790L5ふ物有。/塩(しほ)も/出(で)もせぬに、なぜにかくハ申ぞと云ければ、 00041800L6/伯楽(はくらく)こたへて、/鞍(くら)に/海(うミ)が御座るにより/塩(しほ)でとハ申と云。/或(ある) 00041810L7人又とふハ、それにつき/具足(ぐそく)のさし/物(もの)のうけ/筒(づゝ)をさす物を、 00041820L8がつたりとハなぜに申ぞといへバ、されバこそ大事のこと 00041830L9を/御尋(おたつね)なさるゝ。それ/侍(さふらひ)ハ/先(まづ)/知行(ちぎやう)をほしがつたり、又手が 00041840L10らをしたがつたり、/其上(そのうへ)/命(いのち)をおしがつたり、とかく、がつ 00041850L11たりがなふてかなはぬ物じやといふた。(十三ウ) 00041860¥N20¥J 00041870¥X二十△/名(な)のらねど/今(いま)の/実盛(さねもり) 00041880L14/物(もの)にハ目じるしがなうてかなはぬ。/墨髭(すミひげ)ずんど兵衛と云/鑓= 00041890L15持(やり=もち)、/風(ふ)呂屋へゆき/亭主(ていしゆ)に大小をあづけ入にけり。やうやく 00041900L16/風呂(ふろ)よりあがり、/先程(さきほど)の大小を/給(たまハ)れといふ。/亭主(ていしゆ)かほをミ 00041910L17て、/其方(そなた)よりなににても/預(あづか)りハせぬといふ。いやたしかに 00041920L18/二腰(ふたこし)を/預(あづ)けた。わたせといへど、亭主、/存(ぞんじ)もよらぬこと。 00041930L19/塵(ちり)ほどの物もあづからぬ/((と脱力))いひければ、ずんと兵衛、いかに 00041940M1も/合点(がてん)したとて/勝手(かつて)にゆき、/鍋炭(なへずミ)にて/髭(ひげ)をつくりて出けれ 00041950M2ば、/亭主(ていしゆ)これを見て、いかにも見知たかほじやとて、大小 00041960M3をわたした。 00041970¥N21¥J 00041980¥X廿一△手をとる/業平(なりひら)の/俤(おもかげ) 00041990M6さる/卒忽(そこつ)なる/医者(いしや)、さかい/町(てう)の/花車(くわしや)がたをする/役者(やくしや)/煩(わづら)ひ、 00042000M7(十三又オ)はち/巻(まき)してねてゐたるに、かの/医者(いしや)、/初(ハじ)めてた 00042010M8のまれ/脉(ミやく)をうかゞひ、さて、こなたハ月のさハりあるか。 00042020M9又ハとゞこほり有かととふ。/病人(びやうにん)/聞(きい)て、いや、わたくしハ 00042030M10おとこで/御座(こざ)る。/男(おとこ)に月のさハりハめづらしいおたつねと 00042040M11いへバ、/医者(いしや)、なむ三/宝(ぼう)とおもひ、ぬからぬかほにて、おと 00042050M12こならバはじめから男で御ざるといひたいものではないか。 00042060¥N22¥J 00042070¥X廿二△いへばいはるゝ/枕詞(まくらことバ) 00042080M15/勧学院(くハんがくゐん)の/雀(すゞめ)ハ/蒙求(もうきう)をさへづるといふハ/古(ふる)き/世話(わせ)なり。さす 00042090M16が/九重(こゝのへ)の/内(うち)ハ/雲井(くもゐ)ちかきゆへにや。末(すゑ)※のいやしき/物(もの)/売= 00042100M17者(うる=もの)まて、/風月(ふげつ)の/情(なさけ)/有(ある)ことぞかし。/鳥(とり)をあきなふ/者(もの)、/御所方(こしよがた) 00042110M18を/売(うり)まハりしが、/町(まちや)家にて/売(うる)とハちがふて、きやしやに/枕= 00042120M19言葉(まくら=ことば)(十三又ウ)をつけてうらんと思ひ、/霜枯(しもがれ)の/芦鴨(あしがも)ハ、/足引(あしびき) 00042130¥P140 00042140L1の/山鳥(やまどり)ハ+/ハ(ハ衍)とうりけり。その/跡(あと)から/青物売(あをものうり)がこれを/聞(きい) 00042150L2て、それがしもまくることでハない。/枕言葉(まくらことバ)で/売(うり)ましよと 00042160L3おもひ、/沢辺(さハべ)の/根芹(ねぜり)ハ、あらかねの/土生姜(つちしやうが)ハとよバる。し 00042170L4かる/所(ところ)にさる/御所方(ごしよがた)より/中間(ちうげん)壱人、/白張(はくてう)/着(き)て/出(いで)けるが、は 00042180L5るかに/二人(ふたり)の/商(あきんど)人をよびけれバ、/先(まづ)/鳥売(とりうり)/立(たち)かへりて、あし 00042190L6引の山鳥が入まするかといふ。/中間(ちうげん)、いやそれでハないと 00042200L7いふ/所(ところ)へ、/青物売(あをものうり)/来(きた)りて、あらかねの/土生姜(つちしやうが)が御用かとい 00042210L8ふ。いや+それでもない。おれハ、ちはやふるかミくづ 00042220L9/買(かい)かとおもふて/呼(よん)だ。 00042230¥N23¥J 00042240¥X廿三△/玉鉾(たまほこ)も/今(いま)の/菜刀(ながたな) 00042250L12正月十七日、/大内(おほうち)にて/令人(れいじん)の/舞楽(ぶがく)を/御覧(ごらん)の御/儀式(ぎしき)あり。/民(たミ) 00042260L13の/楽(たの)しむところをたのしミましますおほゝんめぐミありて、 00042270L14(十四オ)/都鄙(とひ)の/僧俗男女(そうぞくなんによ)/拝(おが)ミ/奉(たてまつ)るも、いとたうとき日の/御門(こもん) 00042280L15の/帰(かへ)さに、京わらべ四五人、うちつれてゆく/中(なか)にいふやう、 00042290L16/楽(がく)をしらぬものハ、見ても/聞(きい)てもおもしろからぬものじや。 00042300L17/舞(まふ)てばかりゐて、あれハなぜ物をいはぬといへば、あれハ 00042310L18たがひに中がわるひゆへなり。それハなぜにといふ。むか 00042320L19しつるぎの/舞(まひ)のとき、こじりとがめをしおつたげな。 00042330¥G 00042340¥N24¥J 00042350¥X廿四△/雷(かミなり)の/落穴(おとしあな) 00042360M13/物(もの)ごと/序(つゐで)なきことハつきなしといへり。此/次而(ついで)に、さる/俳= 00042370M14諧師(はい=かいし)に人の/問(とひ)けるハ、/仮令(たとへ)バ/家居(いゑゐ)に/居間広間(ゐまひろま)などいふハ、 00042380M15さしあたりて聞えたが、/台(だい)所とハ何として/名付(なづけ)候や。/宗匠(そうせう) 00042390M16いはく、されば/高(たかき)もいやしきも、/夫(おつと)ハ/外(そと)をつとめ、女ハ/内(うち) 00042400M17を/治(おさむ)る/世(よ)の/式(しき)なれば、/御台(ミたい)所と云心にや。しからバ又家ご 00042410M18とに/大和窓(やまとまど)といふ有。是も/伊豫簾(いよすだれ)、/譛岐円座(さぬきゑんざ)なとハ、其 00042420M19(十四ウ)/国(くに)より出る/名物(めいぶつ)なるゆへ其名をいふ。/大和窓(やまとまど)といふ 00042430¥P141 00042440L1も其国より/仕(し)出したる/故(ゆへ)に候や。左にハあらず。やまとを 00042450L2/国(くに)の/名(な)に御心得候ゆへ、/義理(きり)すまず。此/窓(まど)ハ/家内(かない)に/明(あか)りを 00042460L3とらん/為(ため)、又ハ/寵(かまど)の/煙(けふり)を/出(いだ)す/道(ミち)なれバ、/日本窓(やまとまと)と/書侍(かきはんべ)り。 00042470L4ひのもとゝ/唱(となふ)れば/煙(けふり)の/縁語(えんご)もこもると/利口(りこう)にこたへたれバ、 00042480L5/軽口(かるくち)なる/者(もの)いふやう、/宗匠(そうせう)の/答(こたへ)ハ/長(なが)+しくてまハり/遠(とを)ひ。 00042490L6あれハ/雷(かミなり)の/落(おと)し/穴(あな)といふとこたへた。 00042500¥N25¥J 00042510¥X廿五△/能(のう)ハ/嘘(うそ)の/種(たね) 00042520L9/神(かミ)ハ人の/敬(うやま)ふによつて/威(ゐ)をますとかや。/千早振(ちハやふる)/上加茂(かミかも)の/神= 00042530L10事能(じん=じのう)を/毎年(まいねん)/六月(ミなづき)/勤(つとめ)けるに、/近郷(きんがう)の百/姓(しやう)、はじめて/見物(けんぶつ)しけ 00042540L11るが、つれの者にいふやうハ、さて+/能(のう)といふものハ、 00042550L12/大(おほ)きなうそをいふことじや。あの男ハ此/村(むら)の庄屋のむすこ 00042560L13五郎作と(十五オ)いふやつじやが、/是(これ)ハ/平(たいら)の/宗盛(むねもり)なりとぬ 00042570L14かしをつた。 00042580¥N26¥J 00042590¥X廿六△うてハひゞく/太鞁持(たいこもち) 00042600L17さる/古工面(こくめん)なる人、あげやといふことハどうして/名(な)付たる 00042610L18そととへバ、太/鞁(こ)の太郎/斎(さい)といふ/者(もの)きいて、/惣(そう)じて/傾城(けいせい)ハ 00042620L19うかれめといふて、むかしハ/室(むろ)・/薄多(はかた)・江口・/神崎(かんざき)などの 00042630M1/舟(ふね)の/泊(とま)りに有けるなり。其/女郎(ぢよらう)を/買(かふ)/旅人(たびにん)を舟よりあげる宿 00042640M2屋なるゆへに、/揚(あけ)屋といひしより/初(はじま)りたる事なりといへバ、 00042650M3それがしハわるう/合点(がてん)した。/傾城買(けいせいかい)どもが大酒をのんでハ 00042660M4/返吐(へど)をつくゆへに、あげやといふかとおもふた。 00042670¥N27¥J 00042680¥X廿七△物の名もかハるほそ/首(くび) 00042690M7/物(もの)の/名(な)も/所(ところ)によりてかハりめ有にや。とつと/奥国(おくぐに)の/侍(さふらひ)、江 00042700M8戸(十五ウ)(十六オ挿絵)/詰(つめ)のうち、/身(ミ)うちに所+/腫物(しゆもつ)いでき 00042710M9ければ、/町(まち)より、そんはくといふ/外科(けくわ)をよびてミする。/外= 00042720M10科(け=くわ)、いかにもむつかしい/症(しやう)で御/座(ざ)る。のち/程(ほど)/付薬(つけくすり)/取(とり)に/下(くだ)さ 00042730M11れいといふて/帰(かへ)る。やがて/薬(くすり)を/取(とり)よせミれバ、つゝミ/紙(かミ)に、 00042740M12ほそへ御/付(つけ)なさるへく候と有。これハどこらへつけべいと 00042750M13いへば、/隣部屋(となりべや)の源内左衛門/居合(ゐあハせ)、どれ+あんちうこと 00042760M14だ。げに/土佐大(とさだ)夫が上るり/本(ぼん)に、ほそ/首(くび)ちうにぶちをとす 00042770M15とあるほどに、くびのまハりへひつつけめされいと申され 00042780M16た。 00042790¥N28¥J 00042800¥X廿八△さいの/河原(かハら)の/印地(ゐんぢ) 00042810M19ある/僧(そう)/西国行脚(さいこくあんぎや)と心ざし、/暮(くれ)におよび/関所(せきしよ)も/越(こへ)がたければ、 00042820¥P142 00042830L1/本箱根(もとはこね)といふ/所(ところ)にとまりしに、/比(ころ)ハ五月五日の/暁(あかつき)がた、/物= 00042840L2音(もの=を□)さハがしく聞えければ、あやしく思ひ/壁(かべ)の/透間(すきま)よりうか 00042850L3ゞひミけ(十六ウ)れば、此世をさりたる子共、あハれや/娑婆(しやば) 00042860L4の/節句(せつく)を/思(おも)ひ/出(いた)し、さいの/河原(かハら)にてゐんぢうをはじめて、 00042870L5/塔(とう)にくミあけたる/小石(こいし)をくづし、うつゝのごとくうちける 00042880L6が、/中(なか)に五つばかりになる/子(こ)のあたまを/打(うち)わりけれバ、/地= 00042890L7蔵菩薩(ぢ=ぞうほさつ)大きにさはぎたまひ、/先(まづ)/閻魔(えんま)の/疵帳(きずちやう)につかれしに、 00042900L8/娑婆(しやば)の/例(れい)にまかせて、/十(とを)よりうちの子どもの/公事(くじ)はきかぬ。 00042910L9其うへこゝハ/無始(むかし)よりこのかた、/死(しに)ぞんの/所(ところ)にきハまつて 00042920L10あるといはれた。 00042930¥N29¥J 00042940¥X廿九△見た事もない/嘘(うそ)の/皮(かハ) 00042950L13/神鳴(かミなり)の/太鞁(たいこ)ハ一つが十/間程(けんほど)づゝあるといふ。さてそれをは 00042960L14る/皮(かハ)が有かといへバ、なる/程(ほど)うその/皮(かハ)といふ/皮(かハ)じやと/咄(はな)す 00042970L15/中(なか)に、につこともせずに/居(ゐ)て/嘘(うそ)いふ/男(おとこ)有しが、さても/紀(き)の 00042980L16/国(くに)ハ/名物(めいぶつ)ほど(十七オ)あつて、大きな/蜜柑(ミかん)のある所じや。 00042990L17てんと八/幡(まん)、かハを/鞠(まり)にけるほどのが有といへば、/座中(ざちう)け 00043000L18うをさまし、うそもよいかげんに/云(いふ)たがよい。ミかんの/皮(かハ) 00043010L19で鞠がけらるゝものかといへバ、なるほと、/鞠(まり)にけるのが 00043020M1おりやる。/惣(そう)じてミなが/文盲(もんもう)じや。/犬(いぬ)の/皮(かハ)でした/鞠(まり)を/犬皮(けんひ) 00043030M2といひ、ミかんの/皮(かハ)でしたを/陳皮(ちんひ)といふものじや。 00043040¥N30¥J 00043050¥X三十△大/臣(じん)やつし/病(やまひ) 00043060M5/海士(あま)のかる/藻(も)の/我(われ)からと/恋路(こひぢ)にしづミ、/音(ね)にこそたてね、 00043070M6/世(よ)をうか+と/煩(わづら)ふもの有しに、/友(とも)だち見まひに/来(きた)り、/病= 00043080M7人(ひやう=にん)の/親仁(おやぢ)にあふて/云(いふ)やうハ、/御子息(ごしそく)の/病気(びやうき)、/何(なに)とも/心得(こゝろへ)ま 00043090M8せぬ。/拙者(せつしや)の/存(ぞん)ずるハ、心におもふことある/躰(てい)と見えます 00043100M9るといへば、おやぢ、いかにも/我等(われら)もさやうに存ずる。/当= 00043110M10世(とう=せい)のわかい/衆(しゆ)のはやりことバ(十七ウ)の大じんといふ/病(やまひ)で 00043120M11/御(こ)座らふといふを、友だちきいて、さてハおやぢめも大/臣(じん) 00043130M12といふことを/知(しつ)たそうな。/長(なが)びかうといふことであらふと 00043140M13思ひ、大臣わづらひとハいかやうなことで御座ると、しら 00043150M14ぬかほにて/問(とい)ければ、いや大/臣(じん)わづらいと申ハ、/御典薬衆(ごてんやくしゆ) 00043160M15にかけずハなをるまひといふことじや。/今時(いまとき)のわかひ人に 00043170M16ハ/似(に)あハぬ。御/存(ぞんじ)ないかといふた。 00043180¥N31¥J 00043190¥X卅一△山/鳩(ばと)に/耳(ミヽ)あり 00043200M19/貞享歴(でうきやうれき)に、たねまきによし一/粒万倍日(りうまんはいにち)と有を見すまして、 00043210¥P143 00043220L1/畠(はた)をうち/種(たね)をまきけるに、/隣(となり)の/百姓(ひやくしやう)/野(の)に出けるが、やい 00043230L2+、けふハ/何(なに)をまくぞとよびかけゝれば、/先(さき)の百/姓(しやう)、/小= 00043240L3手(こ=で)まねきして、あゝ+/声(こゑ)が/高(たか)ひぞ。ひきう+といふ。 00043250L4/扨(さて)ハ/世(よ)にまれなる/唐物(からもの)(十八オ)/種(だね)うゆるにやと思ひ、さし 00043260L5/足(あし)してちかく/寄(より)たれば、かの百/姓(せう)さゝやきていふやうハ、 00043270L6/別(べち)の/物(もの)でハない。けふハ/大豆(まめ)をまくが、/鳩(はと)どもか/聞(きゝ)つけお 00043280L7ろうと/思(おも)ふて。 00043290¥N32¥J 00043300¥X卅二△/祢覚(ねざめ)のちろり 00043310L10/藻塩(もしほ)たれつゝわぶとハなけれど、/少(すこ)しゆへある/津(つ)の/国(くに)/浪人(らうにん) 00043320L11に、その/名(な)、/須磨氏関弥(すまうぢせきや)と/云(いふ)人有。/酒好(□けすき)なりしが、ある/夜(よ) 00043330L12/無(む)二に/咄(はな)す/友(とも)/来(きた)りしに、れいのねざけとて、ちろりといふ 00043340L13/物(もの)にてたび+/酒(さけ)をあたゝめて/出(いづ)るに、此/友(とも)かる口なる人 00043350L14にて、/亭主(ていしゆ)のおさかなにとて、とりあへず、 00043360L15△△あハたゞしかよふちろりのなり/音(をと)に 00043370L16△△△いくよねざけをすまの関弥の 00043380¥Y1初音草大鑑巻第三終△(十八ウ) 00043390¥Y1初音草咄大鑑巻第四 00043400M3○目△録 00043410M4一△/言葉(ことば)に/咲(さく)/金(こがね)の/花(はな) 00043420M5二△/夜学(やがく)の/鈍帳(どんちやう) 00043430M6三△/風待(かぜまつ)かほり/鼻(はな)のきく/蚤(のミ) 00043440M7四△/苦(く)ハ/色(いろ)かハる/宝(たから)の山 00043450M8五△/娑婆(しやば)の/師走(しハす) 00043460M9六△/恩(おん)を/仇(あた)で/報(ほう)ずる 00043470M10七△/吝気構(りんきかう)の/勤(すゝめ) 00043480M11八△/天人(てんにん)の/目病(めやミ) 00043490M12九△/迷途(めいど)のうハさ 00043500M13十△三/度(ど)の/鬮(くじ)も/祝(いはひ)から 00043510M14十一△一/情(じやう)のこハき/猫(ねこ)づな 00043520M15十二△/挨拶(あいさつ)ハ/新(あたらし)い/魚(うを) 00043530M16十三△/女夫喧(めをといさかひ)も/果(はて)ハ/笑(わらひ) 00043540M17十四△かなハぬうき世 00043550M18十五△/調宝(てうほう)なる/女房(にうぼう) 00043560M19十六△江戸の/阿蘭陀(おらんだ) 00043570¥P144 00043580L1十七△/住持(ぢうぢ)のかる/口(くち) 00043590L2十八△/心中(しんぢう)のらうそく(一オ) 00043600L3十九△/天狗羽衣(てんぐはごろも) 00043610L4二十△/婆(ばゞ)が/耳(ミヽ)ハ/広沢(ひろさハ)の/池(いけ) 00043620L5廿一△/乞食(こじき)も三日/明智(あけち)が/末(すへ) 00043630L6廿二△/旅(たび)ハ/情(なさけ)/仏(ほとけ)の/道(ミち) 00043640L7廿三△よしあしハ/伊勢講(いせかう) 00043650L8廿四△/長(なが)いハ/恐(おそれ)あり 00043660L9廿五△/分別(ふんべつ)の/仕置(しおき) 00043670L10廿六△/茶釜(ちやがま)の/化物(ばけもの) 00043680L11廿七△/名(な)ハ/色(いろ)による/野郎餅(やらうもち)(一ウ) 00043690¥T1初音草大鑑巻第四 00043700¥N1¥J 00043710¥X一△/言葉(ことば)に/咲(さく)/金(こがね)の/花(はな) 00043720M5/鵬(ほう)といふ/鳥(とりは)、/搏(うち)て/天(そら)をかけるときハその/翅(つばさ)九万/里(り)ありとか 00043730M6や、/荘子(そうじ)が/筆(ふで)さきにしるしたれど、むかしからミたといふ 00043740M7/者(もの)なければ、/云勝(いひがち)になりぬ。/初(はじ)めて江戸より/上(のぼ)りたる/墨髭(すミひげ) 00043750M8のやつこ、御/城内(じやうない)より/出(いで)て/両替屋(りやうがへや)にゆき/銭(せに)を/買(かい)けるが、/折(おり) 00043760M9ふし/門(かど)を、/鯛(たい)、こち、/鱧(はも)などゝよびて/魚売(うをうり)てとをりけれバ、 00043770M10/何(なん)と/亭主(ていしゆ)、こゝもとにてハ、いかほどなるを大きな/鯛(たい)とハ 00043780M11いふぞととふ。されバ大きい/鯛(たい)と申ハ、壱/尺(しやく)七八寸/乃至(ないし)三 00043790M12尺より大きなるハござりませぬといふ。やつこ/聞(きい)て、さて 00043800M13も京ハよろづものごとちいさい所じや。おてまへハ江戸を 00043810M14ミやつたか。いやまだミませぬ。それなら江戸のはなし 00043820M15(二オ)をしてきかせべい。大きな/鯛(たい)といふハ壱/丈(ぢやう)四五尺、 00043830M16ちいさいと/云(いつ)ても六七尺、いま/売(うつ)て/通(とを)つたやうな二尺ばか 00043840M17りのハ、/雑喉(ざこ)の中にあるといふ。/亭主(ていしゆ)はらをかゝへ、さて 00043850M18も/珍(めづら)しい/鯛(たい)かな。お江戸ハ/万事(ばんじ)大きなと申が、一/度(ど)ハ/下(くだ)り 00043860M19ましたいといへば、やつこいよ+つのりて、天/秤(びん)の/上(うへ)な 00043870¥P145 00043880L1る/分銅(ふんどう)を/取(とつ)て、これはこゝもとでいかほとにつかふぞとと 00043890L2ふ。それハ弐百/匁分銅(めふんどう)でござる。やつこ/手(て)をうつて、てん 00043900L3とびやくらい、江戸の弐/分分銅(ふんふんどう)じやといふた。 00043910¥N2¥J 00043920¥X二△/夜学(やがく)の/鈍帳(どんてう) 00043930L6今どき世にはやる、せんしやうつねのごとしと。名をしら 00043940L7れたるやぶ/医(い)に、けいあんとて/手前(てまへ)まづしく、/隙(ひま)にまかせ 00043950L8て/嘘(うそ)をつくものありしが、/友達(ともだち)/来(きた)りて、/其方(そのほう)ハ此ごろハ久 00043960L9しく見えぬが、/色(いろ)もわるく(二ウ)/長髪(ちやうはつ)の/躰(てい)にてゐらるゝハ、 00043970L10もし/病気(びやうき)かととふ。いやさやうでハない。此中/昼夜(ちうや)/学文(がくもん)を 00043980L11はげんで、/終日(ひねもす)/読書(とくしよ)をいたし、/夜(よ)すがらハ/鈍帳(どんてう)の/中(うち)で/勤学(きんかく) 00043990L12をするといふ。さてハさやうか。きどくな心がけになられ 00044000L13た。其うへ/身躰(しんだい)もよくなつたと見えて、/鈍帳(どんてう)を/釣(つら)るゝとあ 00044010L14るハ、大/躰(てい)の/者(もの)のならぬことじや。うら山しやといふて/帰(かへり) 00044020L15しが、かの/友(とも)思ふやう、/扨(さて)も+せんしやうをいふやつか 00044030L16な。/鈍帳(どんてう)の事ハおゐて、/蚊帳(かてう)もろくなハ/釣(つる)まいとおもひ、 00044040L17/其翌朝(そのよくてう)/早天(さうてん)に/慶安(けいあん)かたへ/行(ゆき)、/内(うち)にかととふ。/折(をり)ふし/小者(こもの)/出(いで) 00044050L18て、/旦那(たんな)ハまだねてゐられますといふ。かの/友(とも)、/幸(さいはい)かなと、 00044060L19ね/間(ま)へ行てミれバ、やぶれたる/紙帳(してう)にふしておる。されバ 00044070M1こそと思ひ、しきりに、/慶安(けいあん)+とおこせバ、目をすり 00044080M2+はひ出て/肝(きも)をつぶしたる/躰(てい)なり。されば、きのふ/鈍帳(とうてう) 00044090M3を/釣(つる)(三オ)といはれしが、これが/鈍帳(とんてう)かととふ。/慶安(けいあん)せか 00044100M4ぬかほにて、いつもどんてうをつれども、/夜前(やぜん)ハすこし/物(もの) 00044110M5ずきにこれを/釣(つつ)たといふ。してこれハ/何(なん)といふ物じや。こ 00044120M6れは/親仁(おやじ)が/代(だい)にこしらへた/重箱(ぢうばこ)のおほひじやといふ。さて 00044130M7+いかひせんしやうをいふ/者(もの)じや。とてもこれほど大な 00044140M8る/重箱(ちうばこ)があるものか。その/重箱(ちうばこ)が有か。ミせいといふ。さ 00044150M9れば此中、/奈良(なら)の大/仏(ぶつ)の/万僧供養(まんぞくやう)にかしてやつたとはづし 00044160M10た。 00044170¥N3¥J 00044180¥X三△/風待(かぜまつ)かほり/鼻(はな)のきく/蚤(のミ) 00044190M13/庭(にハ)のとこ/夏(なつ)もしほるゝばかり。あつき/日影(ひかげ)にある/山茶(さんちや)の/女= 00044200M14郎(ぢよ=らう)、しどけなきすがたにて、/涼(すゞ)しき/風(かせ)まちがほにて/端居(はしる)し 00044210M15たるに、ひざの/上(うへ)へ/蚤(のミ)のとまりしを、やさしきゆびにてお 00044220M16さへんとするに、おさへぬさきに、/蚤(のミ)ころりとこけおちけ 00044230M17れバ、いのちもろきこ(三ウ)とかなと、ふかくかなしミけ 00044240M18るに、/買手(かいて)のおとこ、はながミ/袋(ふくろ)より/虫(むし)目がねを/取(とり)いだし 00044250M19てミるに、かの/蚤(のミ)、/手(て)をかざし、はなをふさぎ、身をちゞ 00044260¥P146 00044270¥G 00044280M1めゐたりしが、しバしありていづくへかとびける。これを 00044290M2ふしぎにおもひ、人にたづねけれバ、この/女郎(ぢよらう)/口中(こうちう)わるく 00044300M3さし。それをゆびにつけられけるを、/蚤(のミ)めいわくしてあり 00044310M4けるにや。 00044320¥N4¥J 00044330¥X四△/苦(く)ハ/色(いろ)かはる/宝(たから)の山 00044340M7/国富(くにとミ)/民豊(たミゆたか)にして、/宝(たから)ハ世&にミちのく山、/金花(こがねはな)さく/春(はる)のは 00044350M8じめ、/丁銀(てうぎん)、/壱歩(いちぶ)、/大豆板(まめいた)の/精(せい)、三人つれだち七/福神(ふくじん)へ/礼(れい) 00044360M9にゆきけるが、/道(ミち)すがら/丁銀(てうぎん)がいふやう、/互(たがひ)に/旧冬(きうとう)はひま 00044370M10なく/商売(しやうばい)につかハれしが、/一夜(いちや)/明(あく)れバ心も/長閑(のどか)になり、/道(ミち) 00044380M11せバからぬ/御世(ミよ)なれバ、/我(われ)+も/思(おも)ふまゝに、/諸国(しよこく)をぐる 00044390M12+とめぐり、/諸人(しよにん)の/重(ちやう)(四オ)(四ウ・五オ挿絵)/宝(ほう)となり、 00044400M13人にうやまハるゝこと/誰(たれ)か/肩(かた)をならべんといへハ、/壱歩(いちぶ)が 00044410M14いふ。いかにも/其(その)とをり。我+ほど/世(よ)に/用(もちひ)らるゝものハ 00044420M15/又(また)とあるまひ。/去(さり)ながら/面(めん)+の/身(ミ)の/上(うへ)にハ、ふしやうと 00044430M16いふ/物(もの)か/有(ある)が、/丁銀殿(てうぎんどの)ばかり/大(おほ)やうにして、あまり/小家(こいゑ)へ 00044440M17も/行(ゆき)たまハず。/誰(たれ)が/包(つゝミ)かれが/封(ふう)とて、さのミ人にもあハず、 00044450M18のつしりと/暮(くら)さるゝ/果報人(くわほうじん)じやといふ。/丁銀(てうぎん)/聞(きい)て、其方の 00044460M19たまふごとく、あまり/貧者(ひんじや)の手へハわたらず。こまばたら 00044470¥P147 00044480L1きハせねども、こゝにひとつのふしやうがある。/先(まづ)/世間(せけん)に 00044490L2大/分(ぶん)の/銀持(かねもち)おほきによつて、/某(それがし)を/松板(まついた)の/箱(はこ)に/入(いれ)、/土蔵(どざう)に/積(つミ) 00044500L3かさねてをくときハ、/息(いき)もならずめいわくいたすといふ。 00044510L4/壱歩(いちぶ)が/聞(きい)て、いかにもさやうであらふ。/某(それがし)も/世間(せけん)にてハ/遊= 00044520L5山遊興(ゆ=さんゆうけう)の/所(ところ)にて、/花(はな)の/露(つゆ)のといふて、/巾着(きんちやく)や/紫(むらさき)ぶくさより 00044530L6出て、かどやの一かくのといはれてい(五ウ)たゞかれうや 00044540L7まハるれども、世上に/目(め)のきゝたる/者(もの)すくなけれバ、よい 00044550L8かわるいかと、たび+/歯(は)にあてゝミらるゝとき、なにが 00044560L9/口中(こうちう)のくさい/歯(は)にあてらるれば、其まゝ/色(いろ)がかはつて、じ 00044570L10ゆつなさ/何(なに)にたとへられぬ。とかく、こま/銀殿(がねどの)じやといふ。 00044580L11こま/銀(がね)がいふやう、されバ、/某(それがし)は/節季(せつき)/物(もの)ぎハにハ、/貴賎(きせん)の 00044590L12わかちもなく人&の手にわたり/賞翫(しやうくハん)せらるれども、きのと 00044600L13くなことハ、あるひハ/寺方(てらがた)、/医者(いしや)、/物(もの)の/師匠(ししやう)へ/包(つゝ)まれてゆ 00044610L14くときハ、おほいかすくないかと、たび+手にてひねら 00044620L15るゝに、ずんどめいわくするといふた。 00044630¥N5¥J 00044640¥X五△/娑婆(しやば)の/十二月(しハす) 00044650L18女ごゝろのはかなく、/夫(おとこ)にをくれてほどなきころ、/梓神子(あづさミこ) 00044660L19をよびて口をよせさせければ、/神子(ミこ)たゝり月をいふて/祈祷(きたう) 00044670M1をし、(六オ)ものをとらんとおもひ、ことしハたゝり月が 00044680M2おほい。/祈祷(きたう)をせずハあしからふといふ。そばにゐたるこ 00044690M3ざかしき女、ことしたゝり月がお/お((お衍))ほいとハ/合点(がてん)ゆかぬと 00044700M4おもひ、/今(いま)ハ/十二月(しハす)なれバ、もはやことしといふても此月 00044710M5ばかりなるがといへば、/神子(ミこ)ぬからぬかほにて、にハかに 00044720M6大はだぬぎ、/其不審(そのふしん)ハもつともじや。しやばにてハ今がし 00044730M7ハすなれど、/極楽(ごくらく)でハ/今(いま)が六月じや。あつうてならぬとい 00044740M8ふて、口よせおハるまで、大はたぬいでゐた。 00044750¥N6¥J 00044760¥X/五((ママ))△/恩(おん)を/仇(あた)で/報(ほう)ずる 00044770M11ある所に/火事(くハじ)いできたるに、/隣(となり)へ大ぜい見まひてもミけし 00044780M12たれバ、/亭主(ていしゆ)、まづめでたふござる。/隣(となり)までやけましたに、 00044790M13あやういところをのがれますといふも、いつれものおはた 00044800M14らきゆへでご(六ウ)ざる。とりあへずいわゐにとて、/酒(さけ)な 00044810M15どを/出(いた)しければ、これハやかましきうへに御ざうさでござ 00044820M16るといへば、/亭主(ていしゆ)、これハさて/此中(このなか)でござるゆへ、さかな 00044830M17もござらぬ。/骨(ほね)をり/分(ぶん)に一つおすぐしなされいなどゝ一/礼(れい) 00044840M18いひければ、ぬけたるむすこまかり出て、/其代(そのだい)に、/其方(そち)の 00044850M19やけまするときハ、/何時(なんどき)でも/参(まい)りませうといふた。 00044860¥P148 00044870¥N7¥J 00044880¥X六△/吝気講(りんきかう)の/勧(すゝめ) 00044890L3/広(ひろ)ひミやこの/内(うち)とて、ある/町(てう)のほとりにて女房どもあつま 00044900L4り、/吝気講(りんきかう)をむすびて/悪性(あくせう)なる/夫(おとこ)をせこめける/中(なか)に、ひと 00044910L5り/夫(おつと)にをくれたるもの/有(あり)て、もはやわれらハ/今日(けふ)からりん 00044920L6きをせう/者(もの)もなし。/講(かう)をバはづして/下(くだ)されといへバ、あま 00044930L7たの女のなかに、おばゞすゝミ出でいふハ、そもじのつれ 00044940L8あひ/死(し)なれたれば(七オ)とて、りんきが/此世(このよ)ばかりですむ 00044950L9ものか。あのよへわかき女ハいふにおよバす、/遊女(ゆうぢよ)、/手(て)か 00044960¥G 00044970M1け/者(もの)も/死(しん)でゆけバ、たとひほとけになられてもゆだんハな 00044980M2らぬといふた。 00044990¥N8¥J 00045000¥X七△/天人(てんにん)の/目病(めやミ) 00045010M5/湯殿山(ゆとのさん)一/世(せ)の/行人(ぎやうにん)とかんばんを/出(いだ)して、うき/世(よ)をわたる/両= 00045020M6国橋(りやう=ごくばし)のミぎハにて、百日さんげ+の/垢離(こり)をかき、かの/行= 00045030M7人(ぎやう=にん)/富士(ふじ)せんじやうをしけるに、山ハ/雲霧(くもきり)をわけのぼりて、 00045040M8/八葉(はちよう)の/絶頂(ぜつちやう)にいたり、しバらく/息(いき)をつきける。/空(そら)より/聞(きゝ)な 00045050M9れぬこゑにて、これ+江戸の/本庄(ほんじやう)の/行人(ぎやうにん)。おれハてん上 00045060M10にすまゐするものしやが、ちかごろむつかしからふが、/本= 00045070M11町(ほん=てう)の五/霊香(れいかう)めぐすりを一/貝(かい)/買(かう)て、かさねてのぜんじやうに、 00045080M12わすれずもてきてたもれ。これ、/銭(ぜに)をこと(七ウ)(八オ挿絵) 00045090M13づてませうといふ。いかにもやすいことでござる。して、 00045100M14こなたハ/何(なん)としてお/目(め)がわるひぞととへバ、それハ申さぬ 00045110M15とても御すいりやうなされ。日本一の/烟出(けふりだ)しの/上(うへ)にゐます 00045120M16るもの、たまるものでござるかといふた。 00045130¥N9¥J 00045140¥X八△/迷途(めいど)の/噂(うハさ) 00045150M19/地獄極楽(ぢごくごくらく)の/便宜(びんぎ)ハ、/日蔵上人(にちざうしやうにん)、/仁田(にたんの)四郎このかた、ひさ 00045160¥P149 00045170L1※/打絶(うちたへ)てきかざりしが、此ごろさる人/頓死(とんし)せられしに、 00045180L2とかく廿四/時(とき)ハ/定(さだま)りのごとくにとて、/見合(ミあハせ)けるうちに/蘇生(よミがへり) 00045190L3けれバ、/妻子(さいし)一/門(もん)よろこぶことかきりなし。さて/何(なん)と、し 00045200L4バらく/死(しん)でゐられしうちにハ、さだめてあの/世(よ)へゆかれつ 00045210L5らうが、どのやうなことぞと/尋(たつね)ければ、されバ+心ぼそ 00045220L6い/所(ところ)へゆきましたが、/仕合(しあハせ)と/死(し)(八ウ)/手(で)の山ハもどり/篭(かご)に 00045230L7/乗(のつ)てこえ、/三途河(さうづが)のうばがもちをたべて、それからまん 00045240L8+とした/海(うミ)を/舟(ふね)に/乗(のつ)たが、その海にハうをハ一/疋(ひき)もなく 00045250L9て、/油(あぶら)あげの/昆布(こぶ)やかんてん、きくらげ、麩やこんにやく 00045260L10のやうな/物(もの)が、大/分(ぶん)およぎあるいたを、ふしぎにおもひ、 00045270L11せんどうに/尋(たつね)たれば、これハ/娑婆(しやば)でうたひにうたハるゝ、 00045280L12しやうじの/海(うミ)といふ/所(ところ)じやと申た。 00045290¥N10¥J 00045300¥X九△三/度(ど)の/鬮(くじ)も/祝(いは)ひから 00045310L15ある/時(とき)ハ/色里(いろざと)うき/世(よ)町にかよひ/酒婬(しゆゐん)をたのしミ、ことに/博= 00045320L16奕(ばく=ち)をこのミて、/昼夜(ちうや)をしらぬ/者(もの)あり。/親(おや)、いろ+/異見(いけん)を 00045330L17すれど/用(もち)ひねバ、/親(おや)ぜひなく、此うへハ/手(て)にかけてうちき 00045340L18らんと/思(おも)ひさだめしを、一九郎といふ/友(とも)だち、しきりに/内= 00045350L19証(ない=しやう)をとをしけれバ、(九オ)/息子(むすこ)/動転(どうてん)して、せつなき/時(とき)の/神(かミ) 00045360M1だのミと清/水(ミつ)に参り/観音(くハんをん)にいのり、此たびの/命(いのち)をすくひた 00045370M2び/給(たま)へ。/親(おや)の/心(こゝろ)やハらぎますやうに、一のミくじを/下(くだ)され 00045380M3ませひとふり/出(だ)しければ、二の/鬮(くじ)也。又ふりなをしけれバ 00045390M4二のくじ也。とかく三/度(ど)めが/本(ほん)じやと、一/心(しん)にきせいして 00045400M5ふり/出(だ)しけるに、もとの二の/鬮(くじ)なり。さてハ/我命(わがいのち)たすかり 00045410M6がたし。なむ三/宝(ぼう)しなしたりと、しほ+となり/下向(げかう)しけ 00045420M7る/道(ミち)にて、かの/友(とも)だちにゆきあひ、/御鬮(ミくじ)の/次第(しだい)をかたりけ 00045430M8れバ、友/達(だち)、それハ/観音(くハんをん)の/御利生(ごりしやう)じや。なにことも/有(ある)まひ。 00045440M9きづかひするな。そのわけハ、/鬮(くじ)に二が三/度(ど)/出(で)たなれば、 00045450M10/何(なに)ほど/親(おや)がうちきりたく/思(おも)ふても、二くづしにするほどに 00045460M11うちきることハならぬぞといふた。(九ウ) 00045470¥N11¥J 00045480¥X十△/情(じやう)のこハき/猫(ねこ)づな 00045490M14さる所に/不受不施(ふじゆふせ)の/法花(ほつけ)ありしが、なにものによらず/受法(じゆほう) 00045500M15させたくおもひ、あるとき、わが/飼(かい)をきたる/猫(ねこ)もじゆずを 00045510M16きらせ/法花宗(ほつけしう)にせんと、八/巻(くハん)をいたゞかすべきとて、ねこ 00045520M17をとらへんとすれバ、ねこおどろきて、えんの/下(した)へはいり 00045530M18けるを、つなをとりて/引(ひき)けるに、/中(なか)+ねこづなになり、 00045540M19/色(いろ)+としても/出(いで)ず。よべども/聞(きゝ)いれずして/有(あり)ければ、き 00045550¥P150 00045560L1のどくがりて、かつをぶしなどをミする/所(ところ)へ、だんな/坊(ぼう)き 00045570L2たりしに、しか+のことをかたりけれバ、/坊主(ぼうず)いハるる 00045580L3ハ、そのねこハもはやすゝむるにおよバぬ。それほど/情(じやう)が 00045590L4こハくてハ、こちの/宗旨(しうし)にきハまつたといふた。 00045600¥N12¥J 00045610¥X十一△/挨拶(あいさつ)ハ/新(あたらし)い/魚(うを)(十オ) 00045620L7とつと/遠国(をんごく)の/法花坊主(ほつけぼうず)に、/他宗(たしう)のわかきものども/参会(さんくハひ)して、 00045630L8/是非(ぜひ)とも/魚(うを)をくハれよといへば、かの/坊主(ほうず)いふやう、これ 00045640L9ハめいわくな/儀(ぎ)でござる。さりながら、あまりつよくしん 00045650L10しやくいたしたらバ、またじやうがこわいとて、そしらる 00045660L11ゝであらふほどに、人にそしられうよりハ、いつそのこと 00045670L12くハふといふた。 00045680¥N13¥J 00045690¥X十二△/女夫喧(めをといさかひ)も/果(はて)ハ/笑(わらひ) 00045700L15/文盲(もんもう)にして、しかもどうけ/者(もの)あり。そのとなりになにがし 00045710L16とて、/由(よし)ある人ありけるが、/有(ある)とき/内義(ないぎ)、りんきをいひつ 00045720L17のりて、/女夫(めをと)いさかひになり、こゑたかくなりけるに、か 00045730L18のだうけ/者(もの)ゆきてあつかひけるやうハ、/先(まづ)おまへ/様(さま)がお/前(まへ) 00045740L19様なれバ、こな様がこな様でごさる。ことのたとへにも、 00045750¥G 00045760M11大/坂(さか)に/介作(すけさく)といふやくハんや(十ウ)(十一オ挿絵)さへござる 00045770M12に、御かんにんなされませいといふ。此つかぬことはがお 00045780M13かしうなりて、/夫婦(ふうふ)ともに/笑(わら)ひになつてすんだ。 00045790¥N14¥J 00045800¥X十三△かなハぬハうき世 00045810M16へだてぬ/中(なか)の/友(とも)だち、四五人より/合(あい)/物(もの)がたりするに、ひと 00045820M17りがいふやう、まゝならぬハうき/世(よ)じや。/桜(さくら)ハ/色(いろ)ことなれ 00045830M18ども/匂(にほ)ひうすし。/梅(むめ)が/香(か)ハふかけれども/枝(えだ)こハ※し。/柳(やなぎ) 00045840M19ハたをやかなれども/花(はな)さかずといへバ、ひとりがいふ。そ 00045850¥P151 00045860L1れにつき、かミなりの/鳴(なる)ときひかるいなづまを、/地(ぢ)しんの 00045870L2さきへつけたい。/地(ぢ)しんのゆるときハ、さきへしらせがな 00045880L3いによつて、人ミなさハぎ、/棚(たな)から/物(もの)もおちてそんずる。 00045890L4又かミなりのさきへいなびかりがすれバ、まづきもをつぶ 00045900L5す/所(ところ)へおびたゝしく/鳴(なる)ゆへ、いよ+きもをつぶす。これ 00045910L6ハあちらこちらへした(十一ウ)きものなりといへば、そば 00045920L7なるものがいふやう、それほど/思(おも)ふやうにしたくハ、/地(ぢ)し 00045930L8んを/空(そら)でゆらして、/神(かミ)なりを/地(ぢ)の/下(した)でならせたいものじや。 00045940¥N15¥J 00045950¥X十四△/調法(てうほう)なる/女房(にうぼう) 00045960L11ある人、あハうなるむす子をもちしが、/嫁(よめ)をとりむかへし 00045970L12に、/聟(むこ)いりのとき、かの/甚(じん)六しうとにいふやう、おつかひ 00045980L13がたもおほくこざるに、/何(なに)よりてうほうなる/女房(にようバう)を下され、 00045990L14かたじけなふござりまするといふ。おやぢあせをかき、め 00046000L15いわくしけれども、せんかたなく/祝儀(しうぎ)をすまして/帰(かへり)しが、 00046010L16其後しうと、かのあハうをきのどくがり、りふじんにむす 00046020L17めを/取(とり)かへさんとす。あハうのおやぢ、/仲人(なかうど)をよびよせい 00046030L18ふやう、わらでたバねても/此方(このほう)ハおとこのこと(十二オ)な 00046040L19るに、たゞいまのわけハあまりにふミつけにしたことじや 00046050M1といへバ、あハうの/甚六(じんろく)、此よしをきゝ、こなたからして、 00046060M2をれをわらでたばねたの、ふミつけたのと三もん/草履(ざうり)のや 00046070M3うにおしやるによつて、だいじのおかさまを/取(とり)かへさうと 00046080M4いひまする。をれがしあんにハ、とかくさうれいのときの 00046090M5やうに、一/門(もん)しゆにはかまをきせ、わびことをして、/今(いま)一 00046100M6/度(ど)よびいけるやうにしたひといふた。 00046110¥N16¥J 00046120¥X十五△江戸のおらんだ 00046130M9/長崎下(ながさきくだ)りする/貨物取(くわもつとり)とうちつれ、/日本橋(にほんばし)を/北(きた)へゆきしに、 00046140M10ながさき/咄(はなし)をよせいらしく、/口(くち)にまかせて咄てゆくをりふ 00046150M11し、人のむら/立(だつ)を/何(なに)ぞととへバ、御/城(しろ)へおらんだ御/礼(れい)にあ 00046160M12がるといふ。此つれの/男(おとこ)、あれ、/咄(はなし)の/唐人(たうじん)がくるハといへバ、 00046170M13かの/貨物(くわもつ)とり、(十二ウ)ろくにミやりもせずいふやう、いやは 00046180M14や、長崎のおらんだを見つけた/目(め)でハ、江戸のおらんだなど 00046190M15ハ、中+しよしんで見らるゝものでハごあらぬといふた。 00046200¥N17¥J 00046210¥X十六△/住持(ぢうぢ)のかる/口(くち) 00046220M18いつのころにや、大/地(ぢ)しんゆりて、あふミの/国(くに)くつきむら 00046230M19といふ/山家(やまが)を、おもハずも/一谷(ひとたに)をうづミけれバ、/数千(すせん)人む 00046240¥P152 00046250L1なしくなる。そのゆうれいども/毎夜(まいよ)いでゝ、なくこゑ/物(もの)が 00046260L2なしく、山もくづるゝばかりなれば、/親類(しんるい)のさと※より、 00046270L3いろ+と/仏事(ぶつじ)/作善(さぜん)をしてあとをとふらひけれども、なか 00046280L4+やむことなし。その/寺(てら)の/住持(ぢうぢ)、京の人にて/頓作(とんさく)のかる 00046290L5/口(くち)なりしが、/急度(きつと)しあんして、/其夜(そのよ)らんとうへゆかれしに、 00046300L6かのゆうれいども、すそやた(十三十四オ)もとにすがり、 00046310L7なきさハぎけれバ、/住持(ぢうぢ)、/世(よ)なをし+といはれけれバ、 00046320L8ゆうれいども、なふかなしやといひもあへず、たちまちき 00046330L9へてうせにけり。 00046340¥N18¥J 00046350¥X十七△/心中(しんぢう)の/蝋燭(らうそく) 00046360L12/美少年(びしやうねん)の月のすがたを/愛(あひ)し、/秋(あき)の/夜(よ)のしめやかなる。すき 00046370L13/人(ひと)あつまりて/長(なが)ものがたりに、/更(ふけ)ゆくかねのこゑ、/鳥(とり)のね 00046380L14をかこち、ともし/火(び)かすかになりしを、わかしゆ、かゝげ 00046390L15るとてけされけれバ、/座中(ざちう)大わらひせしを、/念者(ねんじや)、かハら 00046400L16け/取(とつ)てあぶらをのめバ、そのゝち火をともすとて、/扨(さて)ハ/油(あぶら) 00046410L17がなふてきへけると、めんほくをすゝぐ。此こゝろをわか 00046420L18しゆかんじて、なを/念比(ねんごろ)ふかくなりぬ。又ひとりのわかし 00046430L19ゆ、此ことをうらやミ、わが/念者(ねんじや)に/咄(はなし)、(十三十四ウ)(十五オ挿 00046440¥G 00046450M11絵)ある/夜(よ)/友(とも)だち/会合(くハいがう)しけるとき、らうそくのしんをきりて、 00046460M12わざときやしけれバ、/念者(ねんじや)/心(こゝろ)えて、くらがりまぎれにかぶ 00046470M13りしが、かゑ/手燭(でしよく)をもちて/出(いで)ければ、/念者(ねんじや)、らうそくを/半= 00046480M14分(はん=ぶん)ほどかぶりさし、/随分(ずいぶん)と/存(ぞん)ずれど、これほど/残(のこつ)た/心中(しんぢう)も 00046490M15これまでじやといふた。 00046500¥N19¥J 00046510¥X十八△/天狗(てんぐ)の/羽衣(はごろも) 00046520M18/遠国(をんごく)の/者(もの)ミやこにのぼり、/堀川(ほりかハ)の/古道具店(ふるだうくだな)に、/冠(かふり)のうしろ 00046530M19にひらりとしたる/嬰(ゑい)といふ/物(もの)ばかりあるをミて、ひとりが 00046540¥P153 00046550L1いふ。/扨(さて)もミやこほどある。これをミや。/天人(てんにん)の/羽衣(はごろも)のき 00046560L2れさうなといふ。つれのおとこ、いや+これハ/天狗(てんぐ)のは 00046570L3ねであらふといふ。/両人(りやうにん)せんさくしながら、/内裏様(だいりさま)をおが 00046580L4まんと、/筑地(つゐぢ)をくる+とゆき(十五ウ)しに、/参内(さんだい)の/公家= 00046590L5衆(くげ=しゆ)、こしよりおりらるゝをミて、かのせんさくする/嬰(ゑい)おな 00046600L6じことなれバ、ひそかに/供(とも)のものにとふやうハ、いまあの 00046610L7こしのうちから/出(で)させられたハ、なにと申ぞととひけるに、 00046620L8/供(とも)の/者(もの)、わしのを/殿(どの)とこたへたれば、かの/遠国者(おんごくもの)ども/手(て)を 00046630L9うつていふやう、とかくしらぬことハとふたがよい。/天狗(てんぐ) 00046640L10のはねでも/羽衣(はごろも)てもなかつた。わしのをといふものであつ 00046650L11たといへば、又ひとりのつれがいふ。おらゝも、とびのを 00046660L12までハ/気(き)がついた。 00046670¥N20¥J 00046680¥X十九△/婆(ばゞ)が/耳(ミヽ)ハ/広沢(ひろさハ)の/池(いけ) 00046690L15/関東(くハんとう)の/者(もの)あたごへ/参詣(さんけい)しけるが、/広沢(ひろさハ)の/池(いけ)のほとりにて/茶= 00046700L16屋(ちや=や)へより/茶(ちや)をのミしに、茶屋のばゞ、/此(この)やうな/景(けい)のよい/池(いけ) 00046710L17ハ、いなかにハござるまいといへバ、/関東者(くハんとうもの)、されバ+。 00046720L18して(十六オ)/在名(ざいミやう)ハ/何(なん)といふぞといへば、ばゞ、/改名(かいミやう)ハ/何(なん) 00046730L19といふぞととふかと/思(おも)ひ、ミやうせいといひまするといふ。 00046740M1そのことでハない。/所(ところ)の/名(な)ハ/何(なん)といふぞといへば、/所(ところ)ハあ 00046750M2ふミのむまれでござるといふ。いやさ、それでもない。こ 00046760M3ゝの/小名(こな)のことじやといへば、これハさて、こながことを 00046770M4しつてござる/が((ママ))。こなハ/此中(このぢう)/京(きやう)へゆきましたといふ。/関東= 00046780M5者(くハんとう=もの)はらをたてゝ、それハきよくるかといへば、されバ、け 00046790M6ふくるやらあすくるやら、しりませぬといふた。 00046800¥N21¥J 00046810¥X二十△/乞食(こじき)ハ三/日(か)/明智(あけち)が/末(すゑ) 00046820M9/世(よ)の/飢饉(ききん)につき、/慈悲(ぢひ)ふかき人、三/条(でう)の/橋(はし)の/下(もと)にて/毎日(まいにち)せ 00046830M10ぎやうに/粥(かゆ)をひきけるに、あまたの/非人(ひにん)あつまりける。そ 00046840M11の/中(なか)に、むまれつきたくましき/者(もの)、三人/同(おな)じ/枕(まくら)をならべ、 00046850M12/夜(よ)の(十六ウ)あくるをまちしに、/折(をり)ふし雨ふりてゆきゝの 00046860M13人、げたふミならしてとをりけれバ、さても+口おしき 00046870M14ことかな。むかしハかけ/鞍(ぐら)にこしをもかけしに、あたまを 00046880M15ふまるゝどうぜんじやといふ。いかにも/身(ミ)どもがおやも、 00046890M16/七(なゝ)つ/道具(だうぐ)もたせて、かりそめにもありきしに、/何(なん)の/因果(ゐんぐわ)に 00046900M17か、このさまになつたといふ。一人ハよくねてゐたるが、 00046910M18/夢(ゆめ)をミたといふておきた。二人の/非人(ひにん)が、/何(なに)をミたぞとい 00046920M19へバ、されバこほうばいとて/明智日向守(あけちひうがのかミ)をミたが、そのな 00046930¥P154 00046940L1りハどうしたことじやとたつねられしほどに、こじきも三 00046950L2/日(か)すればわすれぬといふた。 00046960¥N22¥J 00046970¥X二十一△/旅(たび)ハ/情(なさけ)/仏(ほとけ)の/道(ミち) 00046980L5ある/寺(てら)の/住持(ぢうぢ)、しなのゝ国/善光寺(ぜんくハうじ)へさんけいせんとて、や 00046990L6(十七オ)さしき/小性(こしやう)を一人つれられしが、なにが/北国(ほつこく)の/道(ミち) 00047000L7なれバ、/山(やま)+/谷(たに)+/難所(なんじよ)にて、ことに/馬(むま)とても、かこと 00047010L8てもなければ、かの/小性(こしやう)、ありきかぬるをあハれミ、ひる 00047020L9のうちハ/住持(ぢうぢ)、/小性(こしやう)をせなかにおふて/山(やま)をこせバ、/夜(よる)ハま 00047030L10た/住持(ぢうぢ)を/小性(こしやう)がおひけるとなり。 00047040¥N23¥J 00047050¥X廿二△よしあしハ/伊勢(いせ)の/浜荻(はまおぎ) 00047060L13さる/町医者(まちいしや)、/心(こゝろ)やすき/町人(ちやうにん)の/所(ところ)へふと/立(たち)よりけるに、/料理(りやうり) 00047070L14する/躰(てい)なれバ、いかうにきやかなことじや。/客来(きやくらい)にやとい 00047080L15へバ、/亭主(ていしゆ)、/今日(けふ)ハ/伊勢講(いせかう)にて御/座(ざ)候/((と脱))いふ。それハ/御太儀(ごたいぎ) 00047090L16といふに、されバ/貴様(きさま)のお/薬(くすり)と同じことにて、さい+よ 00047100L17くまハりまするといへば、かの/医者(いしや)、ことのほかよろこび 00047110L18たる/躰(てい)にて(十七ウ)(十八オ挿絵)かへりけるに、またしりた 00047120L19る所へよりけれバ、こゝもどさくさといそがハしく/料理(りやうり)し 00047130¥G 00047140M11けり。/亭主(ていしゆ)いふやう、けふハ/伊勢講(いせかう)の/当番(とうばん)でござる。さい 00047150M12はいの/儀(ぎ)、/勝手(かつて)にて/料理(りやうり)をまいりませいといふ。これハ御 00047160M13/太儀(たいぎ)ながら、めでたひことゝいへバ、/亭主(ていしゆ)、されバ/貴公(きこう)の 00047170M14お/薬(くすり)と同じことにて、さい+あたりますといふた。 00047180¥N24¥J 00047190¥X廿三△/長(なが)いハ/恐(おそれ)あり 00047200M17さる/田夫者(てんぶもの)、/茶(ちや)の/湯(ゆ)にゆきて、すき屋へ大わきざしをさし 00047210M18てはいりたり。そばなる/相客(あいきやく)せうしがりて、ひそかにいふ 00047220M19やうハ、ながいものをぬかせられよとさゝやきけれバ、こ 00047230¥P155 00047240L1ゝろへましたといふて、ゆびのさきにて、はなげをひたも 00047250L2のぬきける。(十八ウ) 00047260¥N25¥J 00047270¥X廿四△/分別(ふんベつ)の/仕置(しおき) 00047280L5さし物屋の太郎次郎右衛門とて、/諸事(しよじ)にもつてまハりたる 00047290L6/分別(ふんベつ)するもの有。あるとき大風ふきけれバ、やい+/女房(にようぼ) 00047300L7ども。大風がふくほどに、/細工(さいく)がはやりてかねをもうくる 00047310L8であらふとよろこぶ。女房きいて、/大工(だいく)、やねふきでハな 00047320L9し。さいくのはやるとハがてんゆかぬといへバ、おとこき 00047330L10いて、さてもたはけたやつかな。風がふくによつて、ほこ 00047340L11りが人の目へ/入(いる)。ところで目がわるうなる。そこで/座頭(ざとう)に 00047350L12なり三/味線(ミせん)をならふにより、/猫(ねこ)の/皮(かハ)を大分はぐゆへ、/鼠(ねづミ)が 00047360L13あれて/戸棚(とたな)をかぶるによつて、/戸(と)だなのあつらへがあるわ 00047370L14いやいと、れいの/分別(ふんベつ)を/出(だ)した。(十九オ) 00047380¥N26¥J 00047390¥X廿五△/茶(ちや)がまのばけもの 00047400L17ある/寺(てら)の長/老(らう)、つれ+なる/夜(よ)、/茶(ちや)をせんじさせられしに、 00047410L18/小僧(こぞう)ねふり+、/茶袋(ちやふくろ)をうちこミせんじけるが、ぜんごも 00047420L19しらずねいりければ、長老火をたきながら、かまのふたを 00047430M1とられしに、/中(なか)よりなにとハしらず、/足(あし)をによつといだし 00047440M2けり。やれ、くわんすがばけたハとさハがれければ、/弟子(でし) 00047450M3どもおどろき/来(きた)りてミるに、うたがひもなき/足(あし)なり。いか 00047460M4ゞハせんとさハぐ。/中(なか)に/老僧(らうさう)のいふ。しよせん、くわんす 00047470M5をうちこかしたらバ、ばけものいでんところを、とつてお 00047480M6さへん。これもつともと、やがてくハんすをうちこかし、 00047490M7かの/足(あし)をおさへたといへば、てんでに/火(ひ)をともしよくミる 00047500M8に、長/老(らう)のふるたびに/茶(ちや)を/入(いれ)てせんじたのぢや。(十九ウ) 00047510¥N27¥J 00047520¥X廿六△/名(な)ハ/色(いろ)による/野郎餅(やらうもち) 00047530M11さる所のもちや、/野郎餅(やらうもち)といふあんもちを/仕出(しだ)しけれバ、 00047540M12めづらしき/名(な)ともてはやし、大/分(ぶん)うれける。あるひハ/荻野= 00047550M13沢之丞(をぎの=さハのぜう)がすき/油(あぶら)、/水木辰之介(ミづきたつのすけ)が/紋(もん)たばこなどゝて、ことの 00047560M14ほかはやりけれバ、ある/膏薬屋(かうやくや)つく※とおもふやう、こ 00047570M15のしな※ハつねの/物(もの)なれども、/野郎(やらう)の/名(な)をかたどるゆへ 00047580M16にはやるハ、すこしの/品(しな)のつけやうなり。/此(この)ほうのかうや 00047590M17くにも/名(な)のつけやうあるとて、/谷嶋主水(たにしまもんど)あかゞりのかうや 00047600M18くと、かんはんを大/筆(ふで)にミしらせた。 00047610¥Y1初音草大鑑巻四(二十終オ) 00047620¥P156 00047630¥Y1初音草咄大鑑巻第五 00047640L3△○目録 00047650L4一△つれ+/草(ぐさ)ハ/恥(はぢ)の/種(たね) 00047660L5二△/松(まつ)ハすねたる/秀都(ひでいち) 00047670L6三△/男(おとこ)の/姿(すがた)女の/魂(たましゐ) 00047680L7四△/分別(ふんベつ)ハあまりてたらず 00047690L8五△/輪廻(りんゑ)の一/番太鞁(ばんだいこ) 00047700L9六△/約束(やくそく)かたきむかふ/歯(ば) 00047710L10七△/天狗(てんぐ)の/鼻(はな) 00047720L11八△世上ハ/心安椀(こゝろやすわん) 00047730L12九△ぬけ口のよい/釜(かま)の/底(そこ) 00047740L13十△/烏帽子(ゑぼし)きて/似(に)せ/男(おとこ) 00047750L14十一△/口拍子(くちびやうし)よき/売薬(うりくすり) 00047760L15十二△/物忘(ものわす)れせぬ/過去咄(くわこはなし) 00047770L16十三△/初春(はつはる)ハ/世(よ)のさま 00047780L17十四△/万病(まんびやう)三/重韵(ぢういん) 00047790L18十五△/弥陀(ミだ)の/御手跡(ごしゆせき) 00047800L19十六△あふなや/地獄(ぢごく)の/釜(かま) 00047810M1十七△/恋(こひ)にはまる/堀(ほり)川 00047820M2十八△/悟(さとり)てしる/達磨(だるま)の/絵(ゑ)(一オ) 00047830M3十九△/無筆(むひつ)の/手形(てがた) 00047840M4二十△二/階(かい)の下ハ/泥(どろ)の/海(うミ) 00047850M5廿一△/鯲(どぢやう)の/命(いのち) 00047860M6廿二△/極楽(ごくらく)の/客人(きやくじん) 00047870M7廿三△/知(しつ)たがほにいゐ/蛸(だこ) 00047880M8廿四△/歳旦(さいたん)のなげぶし 00047890M9廿五△/声(こゑ)にひゞく/初夜(しよや)の/鐘(かね) 00047900M10廿六△/水辺(ミづへん)の/酉(とり) 00047910M11廿七△/潜上(せんしやう)ハ/身(ミ)の/世話(せわ) 00047920M12廿八△/三筋(ミすち)たらぬ/猿(さる)の/毛(け)(一ウ) 00047930¥P157 00047940¥T1初音草咄大鑑巻第五 00047950¥N1¥J 00047960¥X一△つれ+/草(ぐさ)ハ/恥(はぢ)の/根(ね) 00047970L5/八重(やゑ)/一重(ひとゑ)/花(はな)のミやこの/上中(かミなか)、/下立売(しもたちうり)のほとりに、にハか/分= 00047980L6限(ぶ=げん)に/名(な)をしられ、/物(もの)ごと/文盲(もんもう)なれども、/歴(れき)+/人(じん)のむすめ 00047990L7を/惣領(そうれう)/嫁(よめ)にとりて/婚礼(こんれい)あひすミ、しうとのかたに/膝(ひざ)なをし 00048000L8をもよほしける。なにが/初(ハじめ)てのことなれバ、/書院(しよゐん)、/庭前(にハまへ)、 00048010L9/路次(ろじ)、/飛石(とびいし)、かゞミのごとくミがきたて、からのやまとの 00048020L10/調度(てうと)、こゝを/晴(はれ)とかざりける。/親仁(おやぢ)/惣領(そうれう)もろともに、しう 00048030L11とのかたへゆきけり。もとより/上座(しやうざ)にうちなをり、/書院(しよいん)/違= 00048040L12棚(ちがひ=だな)の/道具(たうぐ)のかざりに/気(き)をつけ、かたことまじりにほめちら 00048050L13す。/床(とこ)にハ/牧渓(もつけい)の/猿猴(えんこう)の/絵(ゑ)をかけしに、かの文盲なる/親仁(おやち)、 00048060L14この/掛(かけ)ものを見てほめけるが、(二オ)/猿猴(えんこう)をさへミしらず。 00048070L15しうとにいふやうハ、さて+見ごとなる/表具(ひやうぐ)かな。これ 00048080L16ハ/何(なん)と申す/和尚様(おしやうさま)でござるととふ。しうとあきれながら、 00048090L17これハ/牧渓和尚(もつけいおしやう)の/筆(ふで)にて、/絵(ゑ)はえんこうでごさるといふ。 00048100L18さてハかの/吉田(よしだ)のえんこうでござるか。あれほど/手(て)が/長(なが)う 00048110L19なふてハ、つれ※ハかゝれますまいといふた。 00048120¥N2¥J 00048130¥X二△/松(まつ)ハすねたる/秀都(ひていち) 00048140M3ある所に/秀(ひで)いちといふ/座頭(ざとう)、/日待(ひまち)のとぎにゆきけるが、と 00048150M4つとかる/口(くち)ばなしにくたびれ、ちとねむたいといひければ、 00048160M5そばにおなごともゐて、そなたハつねに/目(め)をふさぎてゐた 00048170M6まへバねむたいことハあるまいがといひけれバ、/座頭(ざとう)(二 00048180M7ウ)きゝて、/女衆(おなごしう)の/身(ミ)ごもりて/腹(ハら)の大きなときハ、/食(しよく)のく 00048190M8いたいことハあるまいがといひし。また/此秀(このひで)いち、あるか 00048200M9たへゆきはなしけるが、もはや/日(ひ)もくれ/道(ミち)もとをし。おい 00048210M10とま申ますといへバ、ていしゆきいて、/目(め)の見えぬ/身(ミ)が/日(ひ) 00048220M11くれをいそぐハいかゞといへば、/秀(ひで)いち、いや/日(ひ)がくれま 00048230M12すれバ、/目明(めあき)がゆきあたりますといふた。 00048240¥N3¥J 00048250¥X三△/男(おとこ)の/容(すがた)/女(おんな)の/魂(たましゐ) 00048260M15おもしろの春のけしき、/東(ひがし)山の/辺(へん)にて/勧進能(くハんじんのう)ありしに、/見= 00048270M16物(けん=ぶつ)ことのほかおほかりける/中(なか)に、ものごと/法界(ほうかい)りんきする 00048280M17/男(おとこ)、/能(のう)ハしらねども/友(とも)にさそハれてゆきしが、/能(のう)のなかば 00048290M18に/用(よう)ありて、しばゐの/外(そと)へ/出(いで)ける/所(ところ)へ、しる人きたり、(三オ) 00048300M19/見物(けんぶつ)にかととふ。いかにもきました。/何番(なんばん)めとたつねけれ 00048310¥P158 00048320¥G 00048330M1ば、たゝいまが四/番(ばん)めじや。/能(のう)ハなんじや。されば/謡(うたひ)ハし 00048340M2らぬが、/坊主(ばうす)が/一人(ひとり)いでゝ、/日(ひ)ハ/高(たか)いが大/雪(ゆき)じやほどにや 00048350M3どをからふといふ。女がひとりゐて、やすいことなれども、 00048360M4あるしがるすじやによつて、おやどハかなはぬといふ。/坊= 00048370M5主(ほう=ず)ハ、/一夜(いちや)ハくるしかるまい。ぜひにおかしやれといふて 00048380M6ゐるが、/身(ミ)どもが/出(で)たあとハしらぬ。/男(おとこ)のるすにかしおら 00048390M7ねバよいがといひし。 00048400¥N4¥J 00048410¥X四△/分別(ふんべつ)ハあまりてたらず 00048420M10/物(もの)ごと分別らしき/男(おとこ)、/田村(たむら)をうたふをきゝて、/千(せん)の/御手(ミて)ご 00048430M11とに大/悲(ひ)の/弓(ゆミ)にハ/智恵(ちゑ)の/矢(や)をはめて、/一(ひと)たびはなせバ/千(せん)の 00048440M12/矢(や)さきとうたふハ、いかいあやまりじや。なぜに(三ウ)と 00048450M13いふに、/弓(ゆミ)をいるにハおしてかつて有て、/両(りやう)の/手(て)にてハ/矢(や) 00048460M14さきひとつなり。/千(せん)の/御手(ミて)にハ五百の/矢(や)さきとうたふてこ 00048470M15そはづがあへ、大きなるあやまりでハないかと、/分別(ふんべつ)らし 00048480M16くはなす。/傍(そば)にゐたる/禅門(せんもん)きゝて、そちのふしん、もつと 00048490M17もなれども、きゝところをえきかれぬ。それでこそハ/前(まへ)か 00048500M18たに、あれを見よ、ふしぎやなとうたハぬかといふた。 00048510¥P159 00048520¥N5¥J 00048530¥X五△/輪廻(りんゑ)の一/番太鞁(ばんだいこ) 00048540L3/春(はる)の/花(はな)の/色(いろ)にうかれ、/秋(あき)の/露(つゆ)のぬれになづミて、/夕霧(ゆふきり)とい 00048550L4ふ大夫に/年月(としつき)ふかくあふおとこありける。さる中に世のう 00048560L5きハのかれぬならひにて、/夕(ゆふ)ぎり、/風(かぜ)のこゝちといひしが、 00048570L6つゐにむなしくきえけり。おとこ/血(ち)のなミだながら、/恋(こひ)に 00048580L7(四オ)(四ウ・五オ挿絵)/死(し)なれぬうき/身(ミ)をうらみくらしけるが、 00048590L8ある/夕(ゆふ)くれ、あめ/一(ひと)とをりしたる/跡(あと)より月いでゝ、けしき 00048600L9/物(もの)あハれなるに、かのおとこ、すこしまどろミける/夢(ゆめ)に、 00048610L10すぎし/夕霧(ゆふぎり)、きやらのかほりしめやかに、けたかきさまに 00048620L11て/枕(まくら)もとにたちより、さてしもあかぬちきりとて、御なげ 00048630L12きのほどいとおしく、わか/身(ミ)とても御/事(こと)のミにおもひこが 00048640L13れはて候へバ、/邪婬(じやいん)の/悪鬼(あつき)にせめられて、なま/爪(づめ)をぬかれ 00048650L14/髪(かミ)をきられ、やきじるし、ある/時(とき)ハゆびきり/入(いれ)ぼくろ、か 00048660L15ゝるくるしミのうちにも、申かハせし御ことわするゝひま 00048670L16もなけれバ、ゑん/王(わう)にいとまをうけ、これまでまいりたる 00048680L17なりと、なミたなからにくときけれバ、おとこもゆめのう 00048690L18ちに、さま※かなしミなげきける。かゝる所につらや、 00048700L19(五ウ)/罪障(ざいしやう)の/雲(くも)たなびき、/庭(にハ)の/筑山(つきやま)/震動(しんどう)し、/赤(あか)まへだれし 00048710M1たる/鬼(おに)きたりて/鉄棒(てつぼう)をつきならし、あらゝかなるこゑにて、 00048720M2なふ/大夫(たゆふ)さま、たゝさんせやといふかと/思(おも)へバ、そ/ゝ((のカ))まゝ 00048730M3/夢(ゆめ)。 00048740¥N6¥J 00048750¥X六△/約束(やくそく)かたきむかふ/歯(ば) 00048760M6/金銀(きん※)/蔵(くら)にミち、よろづことかゝぬ人あり。一/芸(げい)ある/者(もの)ハな 00048770M7にゝよらずめしかゝへしに、なるほどたくましき/男(おとこ)きたり 00048780M8て、わたくしハ/歯(は)をくひしめてからハ、たとへバ/鬼(おに)がきて 00048790M9もあきませぬといふ。それも一/芸(げい)じやとてかゝへしが、/此(この) 00048800M10うへハ、ミどもが申つくることハ、なにゝても/異儀(ゐぎ)ハある 00048810M11まいといふ。/何(なに)がさて、いのちにてもおやくに/立(たち)ましよ。 00048820M12それハたのもしきことなりとよろこび、月日をおくるに、 00048830M13/彼主人(かのしゆじん)、たのミすくなきわづらひにて、/今(いま)(六オ)をかきり 00048840M14と思ふとき、/件(くだん)の/男(おとこ)をちかふよび、/日(ひ)ごろのやくそくハこ 00048850M15ゝじや。おれハ/命(いのち)がおしいほどに、/其方(そち)/死(しん)でくれいといふ。 00048860M16かしこまりました。/身(ミ)がハりに/立(たち)ませうといふ。つね+ 00048870M17おれハ/大(おほ)きにうそをついたほどに、おれかかハりじやとい 00048880M18はゞ、さだめて/鬼(おに)どもが/舌(した)をぬくであろ。/其(その)とき、たしな 00048890M19ミの/歯(は)をくいしめてあくなといふ。これも/口(くち)すぎでござる。 00048900¥P160 00048910L1こゝろえましたといふた。 00048920¥N7¥J 00048930¥X七△/地蔵(ぢぞう)に/頭(あたま)/天狗(てんぐ)の/鼻(はな) 00048940L4おさまる/御世(ミよ)のゆたかなるこゑ/都鄙(とひ)の/老若(らうにやく)、はいかいの/前= 00048950L5句付(まへ=くづけ)はやり、きのふけふ/迄(まで)/切字(きれじ)もしらぬ人、はや/点者(てんじや)/何軒(なにけん) 00048960L6などゝ/名乗(なのり)て/墨(すミ)をひく、/月次(つきなミ)の/会(くハひ)をはじめけるおりから、 00048970L7さるものゝ/付句(つけく)に、(六ウ) 00048980L8△△/鼻筋(はなすぢ)をみて/美目(ミめ)のよしあし 00048990L9という/句(く)をしけれバ、/宗匠(そうしやう)じまんがほして、此/句(く)ハさし/合(あひ) 00049000L10ますといふ。/作者(さくしや)、なにがさしまするととへば、いや、/打= 00049010L11越(うち=こし)の/天狗(てんぐ)にさすといふた。 00049020¥N8¥J 00049030¥X八△/世上(せじやう)ハ/心安椀(こゝろやすわん) 00049040L14/去方(さるかた)に/召(めし)つかハるゝ/侍(さふらひ)、/病気(びやうき)につき/湯治(とうぢ)のねがひを/殿(との)へ申 00049050L15/上(あげ)ければ、いかにも、いとまをとらする/程(ほど)に、なに/事(ごと)も/心(こゝろ) 00049060L16まかせにゆる+と/仕(つかまつ)れとあれば、/有(あり)がたしとよろこび、 00049070L17/有馬(ありま)にて/湯治(とうぢ)しけり。こゝろもちハよけれども、ぬれ/髪(がミ)の 00049080L18/雫(しづく)/身(ミ)にかゝりてきのどくじやといへバ、つれのいふやう、 00049090L19/何事(なにこと)も心まかせにいたせとの/御意(ぎよゐ)なれバ、それ/程(ほど)/苦(く)になら 00049100¥G 00049110M11バ、又はゆる/物(もの)じやほどにすられよ。いかにもとて/其(その)まゝ 00049120M12/剃(そり)て、これで一/段(だん)/気(き)もかろしと/悦(よろこび)けり。(七オ)やう+/日= 00049130M13数(ひ=ず)かさなり/国(くに)へかへりけれバ、/親類(しんるい)ども、これを見て/肝(きも)を 00049140M14つぶす。/有(あり)しむねをかたる。いかに心まかせと/御意(ぎよい)有とて 00049150M15も、これハ/各別(かくべつ)なることゝて申上ければ、/手(て)をうつてぎや 00049160M16うてんなされ、/御前(こぜん)へめされけれバ、ふるひ+/出(いで)けり。 00049170M17其方ハ/坊主(ばうず)になりて/俗名(ぞくミやう)でハすまぬ物じやとて、御/咄(はなし)の/者(もの) 00049180M18を/召(めさ)れ、あれに/名(な)をつけてとらせよとの/給(たま)へバ、そのまゝ 00049190M19/安(やす)わんとぞつけゝる。/殿(との)/聞(きゝ)たまひ、これハめづらしき/名(な)じ 00049200¥P161 00049210L1や。/何(なに)たるしさいぞと有けれバ、/惣(そう)じてねだんやすき/椀(わん)ハ、 00049220L2/湯(ゆ)に/入(いれ)ますれば其まゝそりまする。/此男(このおとこ)も/湯(ゆ)にいりてそり 00049230L3ましたゆへ、/安椀(やすわん)でこざりますと申た。(七ウ)(八オ挿絵) 00049240¥N9¥J 00049250¥X九△ぬけ/口(くち)のよい/釜(かま)の/底(そこ) 00049260L6/玉(たま)まつるころ、さる/者(もの)、/盆礼(ぼんれい)に/寺(てら)へまいり/住持(ぢうじ)にいふやう、 00049270L7いつぞつゐでにお/尋(たつね)申ませうとそんじた。此うら/盆(ぼん)にハ/先= 00049280L8祖(せん=ぞ)の/聖霊(しやうりやう)たち、/娑婆(じやば)へかへらるゝとむかしから/云(いひ)つたへ 00049290L9まして、十二三日/比(ごろ)よりたなをかざり、それ+にまつり 00049300L10をいたし、ことにお/寺(てら)がたにてハ、七月はじめより/施餓鬼(せがき) 00049310L11をなされ、三/界万霊(がいばんれい)の/廻向(ゑかう)をあそバさるゝが、/惣(そう)じて/地獄(ぢごく) 00049320L12の/釜(かま)のふたハ十六日にならでハあかぬよし、うけたまハり 00049330L13およびましたに、/亡者(もうじや)たちハどこからわせまするやら、こ 00049340L14れのミふしんにござるとたづねけれは、/住持(ぢうし)つまらぬかほ 00049350L15にて、いかにもよき/御(ご)ふしんじや。さりながら、/釜(かま)の/底(そこ)か 00049360L16らぬけて(八ウ)/来(く)るよし、/経文(きやうもん)に見えたといはれた。 00049370¥N10¥J 00049380¥X十△/烏帽子(ゑぼし)/着(き)て/似(に)せ/男(おとこ) 00049390L19京の/者(もの)/田舎(いなか)へくたりて、さま※めづらしき/咄(はなし)をしけるに 00049400M1つけて、いなか者いふやう、/本願寺(ほんぐハんじ)/御門跡(ごもんせき)の/松(まつ)はやしにハ、 00049410M2/坊主(ぼうず)たちが/能(のう)をめさるゝげな。それについてふしんがある。 00049420M3坊主/衆(しう)ハゑぼしがきられまいとおもふことじや。/俗人(ぞくじん)ハ/髪(かミ) 00049430M4にかけるが、/坊主(ぼうず)あたまハ/合点(がてん)かゆかぬといふ。京のもの、 00049440M5/口(くち)がしこくこたへて、いかにもこれハ/尤(もつとも)なるふしんじや。 00049450M6/坊主衆(ぼうすしゆ)もそれハぬかりハせぬ。まへかどから、あたまに/折= 00049460M7釘(おり=くぎ)をうつておかるゝといふた。 00049470¥N11¥J 00049480¥X十一△/口拍子(くちびやうし)よき/売薬(うりくすり)(九オ) 00049490M10京と江戸ゆきゝすぐなる/通町(とをりてう)の/辻(つぢ)+をミれば、あるいハ 00049500M11/歯(は)ぬき、/耳(ミヽ)の/療治(りやうぢ)、又ハあかゞりのかうやく、/座頭(ざとう)のめぐ 00049510M12すりなど。こゝに/万病(まんびやう)によきとて、ねりやくを/売(うる)者あり。 00049520M13となりのかたに、/砂糖生姜(さとうしやうが)をうる者あり。ミなくち※に 00049530M14のうどくをいふ。しやうが/売(うり)ハ/生姜(しやうが)をはさミ、/先(まづ)しやうが 00049540M15ハ/口中(こうちう)をうるほし、たんを/切(きり)、そのあぢハひ、かんろのごと 00049550M16くと、人&にくバりければ、/諸人(しよにん)これをあぢハひ、まこと 00049560M17に/風味(ふうミ)よしと、とり※に/買(かい)けり。ねり/薬売(やくうり)いろ+/口上(こうじやう) 00049570M18を申せども、一人もよらず。とかく/生姜売(しやうがうり)のやうにせんと 00049580M19/思(おも)ひ、此ねり/薬(やく)にハ/五味(ごミ)のあぢハひあり。すこし/舌(した)さきに 00049590¥P162 00049600¥G 00049610L11をけバ、うつきをハらし、たちまち/気力(きりよく)をます/妙薬(めうやく)と、/人= 00049620L12&(ひと=※)の/手(て)に/付(つけ)けり。され(九ウ)どもなめてミる人なし。お/立(たち) 00049630L13よりのかた※、ひらさら、こゝろミになめて見たまへと 00049640L14いひけれバ、/去人(さるひと)いふハ、/薬(くすり)のやうすをしらいでハ、/卒尓(そつじ) 00049650L15にハなめられぬといふ。/其(その)ときくすり/売(うり)、もどかしの人た 00049660L16ちじや。/毒(どく)にも/薬(くすり)にもならぬ。なめてミやれといふた。 00049670¥N12¥J 00049680¥X十二△/物忘(ものわす)れせぬ/過去(くわこ)の/咄(はなし) 00049690L19ある/者(もの)、/旦那坊(だんなほう)とつれだちゆきける/路次(ろし)にて、見ごとなる 00049700M1/鯉(こい)をもちてとをりけれバ、さても見ごとなる/鯉(こい)かな。あれ 00049710M2を/吸(すい)ものにしたらバよからふといひしに、/坊主(ぼうず)、いや+ 00049720M3/鯉(こい)ハさしミが/一(いち)の/料理(りやうり)でござるといはるゝ。だんなあきれ 00049730M4て、なにとて、さしミをしらせられたぞといへば、(十オ) 00049740M5ぬからぬかほにて、いや、をれが/過去生(くわこしやう)で、ぎやうなすき 00049750M6で/有(あつ)たといハれた。 00049760¥N13¥J 00049770¥X十三△/初春(はつはる)ハ/世(よ)のさま 00049780M9/年(とし)の/初(はじめ)とて正月をことぶきいはひ、/万(よろづ)によき/得方(えほう)にむかひ、 00049790M10/鏡餅(かゞミもち)に/老(おひ)をうつし、/海老(ゑび)の/腰(こし)のかゞむ/迄(まで)/子孫(しそん)を/愛(あひ)して、/代= 00049800M11&(だい=+)/世(よ)をゆづり/葉(は)と、めでよろこぶこそ/世(よ)のさまなれ。こゝに 00049810M12ある/寺(てら)の/長老(ちやうらう)、とつと/物(もの)いまひせしが、/大晦日(おほつごもり)の/夜(よる)、/小僧(こぞう) 00049820M13をよびて、あすハ/何(なに)ごとも/麁相(そさう)をいふなといひつくる。さ 00049830M14て/元日(ぐハんじつ)の/朝(あさ)、/小僧(こぞう)、いろりの/火(ひ)をふくとて/灰(はい)をふきたて、 00049840M15/御坊(ごぼう)のあたまくだしかゝりければ、もつての/外(ほか)に/気(き)にかけ 00049850M16しが、めでたく/取(とり)なをしていわゝんとおもひ、やい/小僧(こぞう)、 00049860M17/一句(いつく)したほどにめでた(十ウ)(十一オ挿絵)いやうにいへとて、 00049870M18△△/小僧(こぞう)こそ/福(ふく)ふき/懸(かく)れけさの/春(はる) 00049880M19なんでもめて/((た脱カ))いぞとてよろこバれけれは、小僧/脇(わき)をつくる、 00049890¥P163 00049900L1△△/長老様(ちやうらうさま)の/灰(はい)にならしやる 00049910L2としけれバ、いよ+/気(き)にかけられた。 00049920¥N14¥J 00049930¥X十四△/万病(まんびやう)/三重韵(さんぢういん) 00049940L5/素読(そよミ)を/習(なら)ふわかき/者(もの)、詩を/学(まなバ)んとおもひ三/重韵(ぢういん)をくりなら 00049950L6ひけるが、/入声(につしやう)の/所(ところ)に、ふつくつきに/平字(ひやうじ)なしといふこと 00049960L7を/忘(わす)れ、いかほど/思(おも)ひ/出(だ)せどもおほえず。/其(その)となりに/医者(いしや) 00049970L8あり。もとより/文盲(もんもう)/第(だい)一なれども、/時(とき)の/仕合(しあハせ)にや、ことの 00049980L9ほかはやりて/乗物(のりもの)にのり、/大才(たいさい)なるかほつきなり。わかき 00049990L10/者(もの)、さい(十一ウ)はひのことかな。此/医者(いしや)へとハんとおも 00050000L11ひ、かの/宅(たく)へゆきけり。しかるに/此者(このもの)も、ふつくつきとい 00050010L12ふことをおほえはつりていふやう、/此三重韵(このさんぢういん)のおくに、く 00050020L13つちかきに/平字(ひやうじ)なしとやら申ことハ、いかやうにくり候ぞ 00050030L14ととひければ、かの/文盲(もんもう)なる/医者(いしや)、三重韵をしらずとハい 00050040L15はれず。さて+こなたハいまたわかき人じやが、なまこ 00050050L16びにこびたことをいはるゝ。/三重韻(さんぢういん)をおほえて、/癲癇(てんかん)の/薬(くすり) 00050060L17をあハせうとおもふてかといはれた。 00050070¥N15¥J 00050080¥X十五△/弥陀(ミだ)の/御手跡(ごしゆせき) 00050090M1/機(き)によつて/法(ほう)を/説(とく)とかや。/今時(いまどき)の/人(ひと)、/名聞後生(めうもんごしやう)の/世中(よのなか)。/偽(うそ) 00050100M2と/思(おも)ひなからも、かハつたことをよろこぶことぞかし。さ 00050110M3れバ/寺(てら)+の/開帳(かいちやう)にも、ふるい/仏(ほとけ)や/経(きやう)のといふものハ、さ 00050120M4(十二オ)のミ/人(ひと)/信(しん)ぜねハ/取出(とりいだ)さずして、/是(これ)ハ/中将姫(ちうじやうひめ)の/針箱(はりばこ)、 00050130M5/元三大師(ぐハんざんだいし)の/匂袋(にほひぶくろ)、/役(ゑん)の/行者(ぎやうじや)の/尺八(しやくはち)などゝておかまする 00050140M6/事(こと)なり。さる/寺(てら)の/開帳(かいちやう)に、めづらしや、/善光寺(ぜんくハうじ)の/如来(によらい)さま 00050150M7のお/手(て)をおかミましたといふ人/有(あり)けるを、そばなる人/聞(きい)て、 00050160M8それハどのやうなお/手(て)の/風(ふう)にて、/何(なん)といふことをあそバし 00050170M9たるぞととへバ、お/手(て)ハ/近衛様(このゑやう)にて、こゝにあハれをとゞ 00050180M10めしハ、/秀利(ひでとし)ふうふの/人&(ひと+)なりと、/善光寺(ぜんくハうじ)の/道行(ミちゆき)をあそバ 00050190M11したるのじやといふた。 00050200¥N16¥J 00050210¥X十六△あぶなや/地獄(ぢごく)の/釜(かま) 00050220M14うき/世(よ)を五百八十/年(ねん)とおもひて、/後世(ごせ)ねがふことのきらひ 00050230M15なる/親仁(おやぢ)ありしに、そのむすこハわかいなりして/信心(しんじん)ふか 00050240M16き(十二ウ)/者(もの)なり。つねにおやぢの/仏(ほとけ)ぎらひをきのどくが 00050250M17りけるか、/盆(ぼん)の十六日の/朝(あさ)いふやうハ、なふおやぢさま。 00050260M18つねにハ/後生(ごしやう)ねがはずとも、けふハぢごくの/釜(かま)のふたさへ 00050270M19あく日じや/((と脱カ))申ほどに、ちと/寺(てら)へおまいりなされいといへバ、 00050280¥P164 00050290L1さて+おのれハおやに不/孝(かう)なやつかな。ちごくのかまの 00050300L2ふたのあく/時(とき)、/寺(てら)へまいらせて、/釜(かま)の/中(なか)へふミかぶらせう 00050310L3といふことかといふて/腹(ハら)をたてた。 00050320¥N17¥J 00050330¥X十七△/恋(こひ)にはまる/堀川(ほりかハ) 00050340L6/中立売(なかたちうり)/堀川(ほりかハ)のほとりにて三十ばかりの/男(おとこ)とをりけるが、/西(にし) 00050350L7のかたより、としごろなる/女房(にうバう)、/下女(けぢよ)をめしつれとをりあ 00050360L8ひ、此おとこをミて、ほや+と/笑(わら)ひより、/楚忽(そこつ)なること 00050370L9(十三オ)ながら、そもじ様をさるかたへお/供(とも)申たきと、な 00050380L10れ+しくいひけれバ、此おとこ、つねに/色(いろ)このまぬにも 00050390L11あらねバ、さすが/岩木(いわき)ならず、かの女のあとにたちてゆき 00050400L12しに、れき+の/家(いえ)ゐなり。やがて/路次(ろじ)の/戸(と)を/引(ひき)あけ、/屏= 00050410L13風(びやう=ふ)/引(ひき)ちらしたる/座敷(ざしき)へよひ/入(いれ)、/色(いろ)+/馳走(ちそう)し、さてかの女 00050420L14房いふやうハ、ちかごろ申かねましたが、わたくしハ此/家(いゑ) 00050430L15のむすめ子に/乳(ち)をまいらせしうばにてござりまするが、こ 00050440L16とし十五になりたまふが、/方(ハう)※から/縁組(ゑんぐミ)を申まいります 00050450L17る。そもじ/様(さま)にひとめあはせまいらせたく/存(そんじ)まして、これ 00050460L18までおともいたしましたと、/手(て)をとり、おくの/一間(ひとま)へつれ 00050470L19ゆく。/男(おとこ)、/夢(ゆめ)かうつゝかと/思(おも)ひながら、ふるひ+/屏風(ひやうぶ)の 00050480¥G 00050490M11そはまでゆきけり。うば、むすめのま(十三ウ)(十四五オ挿絵) 00050500M12くらもとへよりていふやうハ、もうし、おまへ様にかゝせ 00050510M13られますなと申/証拠(しやうこ)ハ、/此人(このひと)を/御覧(こらう)じませ。おかきなさる 00050520M14ゝとそのまゝ、あの人のかほのやうに、ミつちやになりま 00050530M15するといふた。 00050540¥N18¥J 00050550¥X十八△/悟(さとり)てしる/達磨(だるま)の/絵(ゑ) 00050560M18ある/者(もの)、/客(きやく)を四五人まねきてはなしけるが、/床(とこ)に/達磨(だるま)の/絵(ゑ) 00050570M19をかけ、/花(はな)などいけおきしに、/客(きやく)いふやう、/此絵(このゑ)ハ/御所持(ごしよぢ) 00050580¥P165 00050590L1でござるか、つゐにミませぬ。して、たれでござるととひ 00050600L2ければ、いかにも、/此(この)ごろさる/方(かた)からもとめました。/探幽(たんゆう) 00050610L3でござるといふ。そばに/文盲(もんもう)なる人/有(あり)けるがいふやう、は 00050620L4てさて、/探幽(たんゆう)と申ことハぞんぜなんだ。われらハ/達磨(だるま)じや 00050630L5とばかりぞんじまし(十四五ウ)たといふた。 00050640¥N19¥J 00050650¥X十九△/無筆(むひつ)の/手形(てがた) 00050660L8/無筆(むひつ)なる/者(もの)、/銀子(ぎんす)を/請(うけ)とりにゆきしに、さきより/請取(うけとり)の/手= 00050670L9形(て=がた)をなされよと/硯帋(すゝりかミ)を/出(だ)しければ、はゞかりながら、こな 00050680L10た、なされてくだされよといふ。/先(さき)の人もきやうをさまし、 00050690L11/手形(てがた)のことなれバ、そちの手でかゝねバ/埒(らち)があかぬといへ 00050700L12ば、いや/悪筆(あくひつ)でござるといふ。あしきハくるしからぬとい 00050710L13へば、ひしとつまりて、いや、じたいかゝぬ/筆(ひつ)でござると 00050720L14いふた。 00050730¥N20¥J 00050740¥X二十△/二階(にかい)の/下(した)ハ/泥(どろ)の/海(うミ) 00050750L17/南(ミなミ)の/風(かせ)かほるすゞしきミな月のくれがた、/二階座敷(にかいざしき)にて四 00050760L18五人はなしゐけるに、ぢしんしきりにゆりけれバ、(十六オ) 00050770L19/二階(にかい)ハあやうし。ミな+/下(した)へおり申さんといふ。/中(なか)にそ 00050780M1さうなる人、さきへとびおりしが、いかゞしたりけん、は 00050790M2しごの/下(した)に/糠(ぬか)ミその/桶(おけ)/有(あり)けるに、/足(あし)をふミこミ、やれ+ 00050800M3/二階(にかい)の人&、下へおりさせらるな。もはや/下(した)ハ/泥(どろ)の/海(うミ)にな 00050810M4りましたといふた。 00050820¥N21¥J 00050830¥X廿一△/鯲(どぢやう)の/命(いのち) 00050840M7/寺町(てらまち)のさる/住持(ぢうぢ)、しのび+/魚鳥(ぎよてう)をものせられしが、ある 00050850M8とき/小僧(こぞう)にいひつけて、とくりをもたせ/酒(さけ)をとりにやるて 00050860M9いにて、どぢやうを/買(かい)にやりしが、/小僧(こぞう)、かへるさに/門前(もんぜん) 00050870M10に/子(こ)どもあまたたかりて、あないちしてゐたるを、/小僧(こぞう)/立(たち) 00050880M11よりてミけれバ、子どもいふやう、/小僧(こぞう)。そのとくりのハ 00050890M12なんじやぞといへバ、/小僧(こぞう)、さあ、此なかに/有(ある)ものをなん 00050900M13じや、ちやつといへ。いひ(十六ウ)あてたらハ一/疋(ひき)やらう 00050910M14といふた。 00050920¥N22¥J 00050930¥X廿二△/極楽(ごくらく)の/客人(きやくじん) 00050940M17/一村雨(ひとむらさめ)の/空(そら)の月。きよろ+としたるかほにて/間似合(まにあひ)をい 00050950M18ふ人、/路次(ろし)にてしる人にゆきあひ、さて+此ごろハ御ぶ 00050960M19さた申ました。/手前(てまへ)も/昼夜(ちうや)/客人(きやくじん)がござつて、いそかハしさ 00050970¥P166 00050980L1に御見まひも申ませぬといへバ、それハ/何(なん)として、/毎日(まいにち)の 00050990L2お/客(きやく)でござると/問(とい)けれバ、されバ/庭前(ていぜん)の/泉水(せんすい)に、/当年(とうねん)ハ/蓮(はす) 00051000L3の/花(はな)が大/分(ふん)さいたゆへ、/昼(ひる)ハ/方(はう)※から/見物(けんぶつ)にわせまする 00051010L4といふ。それハ/御尤(ごもつとも)でござるが、しからバちと、/夕(ゆふ)がたハ 00051020L5お/出(いて)なされさうなことゝいへバ、されバ/夜(よ)さりハ、/極楽(ごくらく)か 00051030L6ら/仏(ほとけ)さまたちがあそびにござるゆへ、/夜(よ)のめもねませぬと 00051040L7いふた。(十七オ) 00051050¥N23¥J 00051060¥X廿三△/知(しつ)たがほにいゐ/蛸(だこ) 00051070L10/田舎者(いなかもの)、しる人ありて京へ上りけるが、/比(ころ)ハやよひのハじ 00051080L11め、/四方(よも)のこずゑも/咲初(さきそむ)るけしき、/東(ひがし)山の花ミにともなひ 00051090L12ゆきける。かくて/幕(まく)うちまハし、/弁当(べんとう)など/取(とり)ちらし、うた 00051100L13ひさゞめきけるが、さかなにいゐだこをひきしを、/田舎者(いなかもの)、 00051110L14つく※ミて、そばなる人に、/是(これ)ハ/何(なん)でござるぞととふ。 00051120L15それハたこでござるといふ。して、此めしのある/丸(まる)ひ/物(もの)ハ 00051130L16/何(なん)といふものぞといふ。ていしゆおかしながら、それハど 00051140L17うびんといふ物でござるといへバ、めしさへ/中(なか)にあれバ、 00051150L18どうびんといふと/心得(こゝろへ)て、めしつぎをこひけるとて、ちと 00051160L19そこもとから、どうびんをまハさしやりませといふた。 00051170¥G 00051180M11(十七ウ)(十八オ挿絵) 00051190¥N24¥J 00051200¥X廿四△/歳旦(さいたん)のなげぶし 00051210M14/月花(つきはな)も/目(め)でミたバかり。さる/文盲(もんもう)なる人あり。/其子(そのこ)ハ/親(おや)に 00051220M15似ずやさしく、/俳諧(はいかい)を/好(すき)てしけるが、あらたまの/春(はる)をこと 00051230M16ぶきて、/歳旦(さいたん)の三つ/物(もの)をしけるを、ある人見ておやぢにむ 00051240M17かひ、さて+御/子息(しそく)の/歳旦(さいたん)ハ、うけたまハりごと、/耳(ミヽ)を 00051250M18おどろかしましたといへバ、/親仁(おやぢ)/聞(きい)て、/私(わたくし)にハつねにかく 00051260M19しまするが、あれが/歳旦(さいたん)ハいかふよいと、人&ほめられま 00051270¥P167 00051280L1する。いつぞお/出(いで)なされい。しつほりと/三味線(さミせん)できかせま 00051290L2せうといふた。 00051300¥N25¥J 00051310¥X廿五△/声(こゑ)にひゞく/初夜(しよや)の/鐘(かね) 00051320L5/出家(しゆけ)ハ/仏(ほとけ)くさく/儒者(じゆしや)ハ/孔子(こうし)くさし。/去医者(さるいしや)のかたに、ぶ/調= 00051330L6方(ちやう=ハう)なる/小者(こもの)をつかハれける。/本(もと)より/田舎者(いなかもの)にて/物(もの)ごとかた 00051340L7こと(十八ウ)ばかりいひける。/去方(さるかた)より/薬代(やくだい)を/持(もち)て/来(きた)りける 00051350L8を、かのおとこ/請取(うけとり)、たれさまからかねがまいりましたと 00051360L9いふ。/礼(れい)の/口上(こうじやう)をいひつけ/使(つかひ)をかへし、/跡(あと)にて/小者(こもの)をよび、 00051370L10そこなもの。/医者(いしや)の/内(うち)におるからハ/薬代(やくだい)とか/銀子(ぎんす)とかいふ 00051380L11ものじや。かねがまいりましたといふことが有ものか。/己= 00051390L12来(い=らい)ハたしなめといハるゝ。/小者(こもの)、かしこまりました。/其後(そのゝち)、 00051400L13/夜(よ)ばなしの/客(きやく)ありけるが、もはやこよひハ/何時(なんどき)じやととハ 00051410L14れければ、かのおとこ、たゝ/今(いま)/初夜(しよや)の/銀子(ぎんす)がなりましたと 00051420L15いふた。 00051430¥N26¥J 00051440¥X廿六△/水辺(ミづへん)の/酉(とり) 00051450L18/風月(ふげつ)を/友(とも)として、つれ+とこもりゐたる/隠者(ゐんじや)をとふらふ 00051460L19人、/比(ころ)しもさくらのさかりなる一/枝(えだ)をもちてきたる。/亭主(ていしゆ) 00051470M1(十九オ)よろこび、心ざしのほど、ミすぐしがたしと/花(はな)がめ 00051480M2にいけて、/扨(さて)も見ごとや。/春(はる)のゆくゑしらぬ/身(ミ)になどゝ/詠(なが) 00051490M3めゐたりしが、これでハ一/盃(はい)のまひでハかなふまひとて、 00051500M4とくりをさがしてミけれバ、やう+/二人(ふたり)のむべきほどな 00051510M5り。これにてことたりぬと、すでにかんをする/所(ところ)へ、大/上= 00051520M6戸(じやう=ご)の/友(とも)、/此(この)ほどハおめにかゝらぬとて/来(く)る。さてもきのど 00051530M7くや。はやくのミたけれど、こゝで/出(だ)せバ/酒(さけ)たらず。いつ 00051540M8/立(たゝ)んもしれずと、あんじわづらひけるが、/亭主(ていしゆ)、/初(ハじめ)よりの 00051550M9/客(きやく)にいふやう、/水辺(ミつへん)の/酉(とり)ハ/何(なん)といたさうぞといへバ、/初(ハじめ)の 00051560M10/客(きやく)きゝて、されバ、/山(やま)に/山(やま)をかさねずハなるまいといふ。 00051570M11/文盲(もんもう)なる大/上戸(じやうこ)これをきゝて、さても/気(き)のつまる。又/連歌(れんが) 00051580M12をするげなとて、にげていんだ。(十九ウ) 00051590¥N27¥J 00051600¥X廿七△/潜上(せんしやう)ハ/世(よ)の/勢話(せわ) 00051610M15/物(もの)ごと/子細(しさい)をいふて/潜上(せんしやう)なる人あり。/有(ある)ときはじめての/客(きやく) 00051620M16ありけるに、/座敷(ざしき)から/手(て)をたゝかれけれバ、あいといふて 00051630M17/小坊主(こはうず)/出(いで)けれバ、おのれより、まちつと大きなものにこい 00051640M18といふ。十七八なる/小性(こせう)出けるに、おのれもなるまい。た 00051650M19れぞ、しかとしたるものに/出(で)いといへば、廿五六なる/侍(さふらひ)い 00051660¥P168 00051670L1でける。そちもらちがあくまい。よの/者(もの)にこいといふ。卅 00051680L2四五なる/侍(さふらひ)/出(で)けれバ、たそ、おとなしき/者(もの)に/出(で)よといふ。 00051690L3/今度(こんど)ハ/家(いゑ)の/執権(しつけん)とミへて六十ばかりの/白髪(しらが)おやぢ出ければ、 00051700L4たばこの火を入てこいといはれた。 00051710¥N28¥J 00051720¥X廿八△/三筋(ミすぢ)たらぬ/猿(さる)の/毛(け)(二十終オ) 00051730L7さる所の/咄(はなし)のつゐでに、/風呂屋(ふろや)の女を/猿(さる)+といふハがて 00051740L8んがゆかぬといへバ、あれハ/垢(あか)をようかくといふことさう 00051750L9なといふ。そばなる人、いや+あれにこそ、ふかいいハ 00051760L10れのあることじや。そのわけハといへば、/猿(さる)と/名(な)づくるこ 00051770L11とハ、けいせいに/毛(け)か/三筋(ミすぢ)たらぬといふことじや。 00051780¥Y1初音草咄大鏡巻之五(二十終ウ) 00051790¥Y1初音草咄大鑑巻六 00051800M3△○目録 00051810M4一△/位(くらい)ハ/推(おす)におされぬ 00051820M5二△/武士(ぶし)ハ/祝(いは)ふ/首途(かどで) 00051830M6三△/一挺鞁(いつてうつゞミ)/恥(はぢ)の/皮(かハ) 00051840M7四△/見物(けんぶつ)/文盲(もんもう)な/耳(ミヽ) 00051850M8五△/木(もく)あミが/御製(ぎよせい) 00051860M9六△/妄者(もうじや)の/水練(すいれん) 00051870M10七△/高野(かうや)/那智(なち)ハ/恋(こひ)の山 00051880M11八△/姿(すがた)ハ女/名(な)ハ/男(おとこ) 00051890M12九△心にうつる/咄口(はなしぐち) 00051900M13十△/頭(あたま)ハ見えぬ大/名(ミやう) 00051910M14十一△/年(とし)の/初夢(はつゆめ) 00051920M15十二△/竹(たけ)と/木(き)と/位争(くらいあらそひ) 00051930M16十三△/貧(ひん)すれば/鈍(どん)する 00051940M17十四△/舟哥(ふなうた)できく/名香(めいかう) 00051950M18十五△/謡(うたひ)ハ/名所鑑(めいしよかゞミ) 00051960M19十六△/新(あたら)しき/古筆(こひつ) 00051970¥P169 00051980L1十七△/梯子(はしご)の/外家(そといゑ) 00051990L2十八△めでたしと/納(おさ)め/盃(さかづき)(一オ) 00052000L3十九△/下(くだ)りかねたる/夜舟(よぶね) 00052010L4二十△/下手(へた)の/談儀(だんぎ) 00052020L5廿一△/鋸屑(おがくず)も/云(いへ)バ/云(いハ)るゝ 00052030L6廿二△/貴(たつ)とからずして/哥(うた)の/交(まじハり) 00052040L7廿三△/古米(ひね)の/念仏(ねんぶつ) 00052050L8廿四△/楠(くすのき)/討死(うちじに)の哥/仙(せん) 00052060L9廿五△/鰹山伏(かつほやまぶし) 00052070L10廿六△/飛脚(ひきやく)の/鏡餅(かゞミもち) 00052080L11廿七△/世(よ)ハ/逆(さかさま)にミる/暦(こよミ) 00052090L12廿八△ごめんハ不/足(そく) 00052100L13廿九△/言伝(ことつて)にする/隅(すミ)の手 00052110L14三十△/玄関(げんぐわ)よりにじり上り 00052120L15卅一△/内証(ないしやう)ハお/局(つぼね)(一ウ) 00052130¥T1初音草咄大鑑巻之六 00052140¥N1¥J 00052150¥X一△/位(くらい)ハ/推(おす)におされぬ 00052160M5ちはやふる/神無月(かミなづき)にハ、/日本(につほん)の/諸神(しよじん)たち、/出雲(いつも)の大/社(やしろ)へ/我(われ) 00052170M6も+とあつまりたまふ。こゝに/福(ふく)の/神(かミ)と/貧乏神(びんぼうがミ)と/道(ミち)にて 00052180M7/出合(であひ)しが、/福(ふく)の/神(かミ)いはるゝハ、其方ハ/貧(ひん)なる/者(もの)の/家(いゑ)をすミ 00052190M8かとして、まづしきめバかりミるであらふ。/身(ミ)どもハ/富貴(ふうき) 00052200M9なる/者(もの)の/蔵(くら)の/内(うち)をすミかとすれバ、/火事(くわじ)の/気(き)づかひなく、 00052210M10ことに/過(すぎ)しゑびす/講(かう)にハ、おびたゝしく/馳走(ちそう)せらるゝこと 00052220M11じやとのゝしりければ、/貧乏神(びんほうかミ)いふやう、なんぼう大きな 00052230M12かほつきせられても、其方ハ/町人(てうにん)どもとばかりつきあふて、 00052240M13/秤(はかり)めばかりせゝるであらふ。/身(ミ)どもじやとて、さのミあな 00052250M14どりたまふ(二オ)な。/近年(きんねん)ハ/公家衆(くげしゆ)とひざぐミではなす 00052260M15といふた。 00052270¥N2¥J 00052280¥X二△/武士(ぶし)ハ/祝(いは)ふ/首途(かどで) 00052290M18/昔(むかし)/去(さる)大/名(ミやう)、/西国(さいこく)かたへ/城(しろ)/請取(うけとり)に/下(くだ)り/給(たま)ふとて、大坂に/着(つき)た 00052300M19まひ/休息(きうそく)のうち、/若党(わかとう)四五人うちよりていふやう、/惣(そう)じて 00052310¥P170 00052320¥G 00052330M1/武士(ぶし)ハはかない物じや。/首尾(しゆび)よく/請取(うけとる)までハ/生(いき)て/帰(かへ)らんと 00052340M2ハ思ハれず。いざ/旅(たひ)の/気(き)ばらしに、/道頓堀(とうとんぼり)とやらを/見物(けんぶつ)せ 00052350M3んとて/行(ゆき)けるに、/芝居(しばゐ)はてけれバむなしくかへるもほゐな 00052360M4し。見せ/物(もの)でもミんと/小(こ)芝居へ/立(たち)よりしに、/今度(こんど)/御評判(ごひやうバん)の 00052370M5/鬼(おに)の/塩漬(しほつけ)ハこゝじや。/代(だい)ハ三文でミせまするとよバヽる。 00052380M6かの/者(もの)ども、三文ハ/高(たか)い。/一銭(いつせん)でミせいといふ。ようござ 00052390M7る。/仕廻(しまい)じやほどにまけませうといへバ、はいりけるが、 00052400M8一人ハはいらずしてそとにのこりける(二ウ)を、つれども、 00052410M9なぜに/其方(そち)ハはいらぬぞといへバ、いや+/大事(だいじ)の/首出(かといで)に 00052420M10/一(いつ)せんでまける/芝居(しはい)ハふ/吉(きつ)じやといふて、はいらなんだ。 00052430¥N3¥J 00052440¥X三△一/挺鞁(てうつゞミ)/恥(はぢ)の/皮(かわ) 00052450M13/鞁(つゞミ)をすきてうつ/者(もの)よりあふて、/幸派(かうハ)の/壱挺(いつてう)がのぞミなれど 00052460M14も、ゆるしを/取(とり)に江戸へ/下(くだ)るが/太儀(たいぎ)じやなどゝはなすとこ 00052470M15ろへ、/麁相(そさう)なるものひよこ+と/来(き)て、いづれもハなんの 00052480M16/御談合(ごだんかう)なさるゝととへば、/壱挺(いつてう)がのぞミじやと申ことでご 00052490M17ざるといふ。おの+ハわかいなりして/下卑(けび)たことを/仰(おほせ)ら 00052500M18るゝ。/豆腐(とうふ)がそれほどむまいものでもないにといふた。 00052510¥P171 00052520¥N4¥J 00052530¥X四△/見物(けんふつ)/文盲(もんもう)な/耳(ミヽ)(三オ) 00052540L3/勧進能(くハんじんのう)を見物(けんぶつ)してかへりける。つれの/中(なか)に、/能功者(のうこうしや)なる人 00052550L4いふやう、/今日(けふ)の/見物(けんふつ)に/能(のう)を/知(しつ)た/者(もの)ハなさそうな。ほむべ 00052560L5き/所(ところ)ハほめず。さうもない/所(ところ)でハ、やんや+と/口(くち)+に 00052570L6いふて、見ど/((こ脱カ))ろをかつてしらぬといへバ、さやうでござら 00052580L7ふことハ、大夫も、/見物(けんぶつ)の/者(もの)どもを/何(なに)もしらぬ/者(もの)どもじや 00052590L8と思ふたやら、きついことをいひました。三/番目(ばんめ)の/東北(とうほく)の 00052600L9/能(のう)に、/見物(けんぶつ)/文盲(もんもう)の/数(かず)+とうたひおつたといふた。 00052610¥N5¥J 00052620¥X五△/木阿弥(もくあミ)が/御製(ぎよせい) 00052630L12さる大/名(ミやう)の/御前(おまへ)にて、/哥(うた)ばなしのつゐでに、のゝ/字(じ)を/十入(とをいれ) 00052640L13て/哥(うた)よめとありければ、/茶道(さだう)の/木阿弥(もくあミ)/取(とり)あへず、 00052650L14△△むさしのゝ/笹(さゝ)のおさゝの/露(つゆ)の/上(うへ)の 00052660L15△△△/夕(ゆふべ)の月の/秋(あき)のものうさ(三ウ) 00052670L16とつかまつりければ、/殊外(ことのほか)に/感(かん)じたまひけり。/折(おり)ふし、御 00052680L17前に/文盲(もんもう)にてこびたがる/侍(さふらひ)つめたりしが、此/哥(うた)を/聞(きい)て、さ 00052690L18てもたけ/高(たか)く、おもしろくあたらしき/古哥(こか)かな。/達者(たつしや)につ 00052700L19かまつりましたと申けるを、そばより、古哥でハない。そ 00052710M1さうなことゝいへバ、かの/男(おとこ)めいわくがりて、/惣(そう)じてわた 00052720M2くしハ/文盲(もんもう)にござるさかいで、かやうな/御製(ぎよせい)にそさう申ま 00052730M3したと、いよ+あハうをつくした。 00052740¥N6¥J 00052750¥X六△/妄者(もうじや)も/水練(すいれん) 00052760M6/難産(なんざん)にて/女房(にうぼう)をうしなひたる/者(もの)、/追善(ついぜん)に/水施餓鬼(ミづせがき)をとりを 00052770M7こなひける。/布施物(ふせもつ)を/持(もつ)て/寺(てら)へまいり、/住持(ぢうじ)に/段(だん)+/礼(れい)を 00052780M8のべていふやう、さて+/甚深(じんじん)なる/御廻向(ごゑかう)の/功(く)(四オ)(四ウ 00052790M9・五オ挿絵)/徳(とく)によつて、/妄者(もうじや)も/仏果(ふつくわ)を/得(え)まするでござりま 00052800M10せうなどゝいひければ、/住持(ぢうぢ)、あまり/卑下(ひげ)するとて、これ 00052810M11ハ/御(ご)ゐんきんな/御礼(おれい)で、ちかごろいたミ/入(いつ)た。/惣(そう)じて/水(ミづ)せ 00052820M12がきなどゝいふものハ、/水(ミづ)の/上(うへ)の/所作(しよさ)なれバ、つねに/水(ミづ)ご 00052830M13ゝろのない/妄者(もうじや)ハこゝろもとないといはれた。 00052840¥N7¥J 00052850¥X七△/高野(かうや)/那智(なち)も/恋(こひ)の山 00052860M16六十あまりなる/者(もの)、/高野(かうや)山にはじめてまいり、それより/那= 00052870M17智(な=ち)に/参詣(さんけい)せしに、/院(ゐん)+/谷(たに)※の/坊主(ばうず)、このおもかげをミ 00052880M18るより、わかしゆさま+と、こゑ※にいろめきて/袖(そで)を 00052890M19ひき、/露(つゆ)のおなさけとくときけれバ、このおやぢめいわく 00052900¥P172 00052910L1して、あるさと人の/家(いゑ)へにげこミ、まつひらたのミまする 00052920L2と、かげ(五ウ)をかくせしに、かのほうずとも、あとより 00052930L3つけこミ、いまのわかしゆをいだせ+といふ。あるじ、 00052940L4これへハわかしゆハ見えませぬといへバ、ていしゆ、それ 00052950L5ハちかごろ手がわるい。このうちへはいりたるたしかなせ 00052960L6うこにハ、かどにしもく/杖(つえ)があるハさてといふた。 00052970¥N8¥J 00052980¥X八△/姿(すがた)ハ女/名(な)ハ/男(おとこ) 00052990L9さる所に、しなのゝ国よりはいでの者をめしつかひけるが、 00053000L10あるとき/下(しも)の/町(てう)にきられてゐる者ありとて、あたりの者見 00053010L11にゆくを、ていしゆ/聞(きい)て、やれ、ぬす人が/何者(なにもの)じや。八介。 00053020L12ちやと見てこいといふ。八介、やがてみてかへり、三ツ/指(ゆび) 00053030L13ついて/云(いふ)やう、/誰(たれ)もミな/惣(そう)右衛門がきられておると申ます 00053040L14れども、わたくしが/目(め)にハ、女子とほか見えませぬといふ 00053050L15た。(六オ) 00053060¥N9¥J 00053070¥X九△心にうつる/咄口(はなしくち) 00053080L18/山階(やましな)に万日/回向(ゑかう)有しに、さる/老人(らうじん)ひとりまいりけるが、し 00053090L19たいはなしずきにて、よき/道(ミち)づれがなほしやと、あとさき 00053100M1をミまハしけるに、さいわい六十ばかりの/男(おとこ)、これも一人 00053110M2と見えけれバ、かの/老人(らうじん)、よきつれと思ひ、こなたハ万日 00053120M3へさんけいかととふ。いかにも。それならバ/同道(どうだう)いたしま 00053130M4せう。なんと、/去年(きよねん)の/伏見(ふしミ)の万日ほどに、まいりハござら 00053140M5ぬの。いかにもさやうでござつた。なんと、/藤(ふぢ)の/森(もり)の/相撲(すまふ) 00053150M6ハいかい/見物(けんぶつ)て/有(あつ)たの。されバ+。/其関(そのせき)ハ/大山(おほやま)といふて 00053160M7よい/男(おとこ)じやが、/左(ひたり)の/手(て)をかうあけてと、しかたばなしにう 00053170M8つりて、のふ、すまふ/取(とり)ハ/鮨(すし)をよふくふ/者(もの)でござる。とか 00053180M9く/鮨(すし)ハ/近江鮒(あふミふな)がよい。したが、あふミ/者(もの)ハ/朝(あさ)おき+(六ウ) 00053190M10から、こハ/高(たか)に/物(もの)いひます。/惣(そ□)じて馬かたハわるひ/者(もの)でご 00053200M11ざる。/駕(かご)にのるにハ、わらぢをぬいたがよふござる。わら 00053210M12ぢを/仁王(にわう)にしんずるハ、いハれがあらふ。こんな所でハ/盗= 00053220M13人(ぬす=びと)が/目(め)をぬきまする。目を/賞翫(しやうくハん)ならバ/鍋焼(なべやき)がようござら 00053230M14ふ。ねぶかをくふてからハ、/神(かミ)まいりせぬものしやと云ま 00053240M15する。まことに/法花宗(ほつけしう)ハ/義理(ぎり)がかたふござる。松が/崎(さき)のを 00053250M16どりハ/花笠(はながさ)をミなきまする。/田植(たうへ)に/笠(かさ)きたハしほらしい/物(もの) 00053260M17じや。/住吉(すミよし)の/御田(おんだ)ハ五月廿八日でござるの。/堺(さかい)うらの/蛸(たこ)ハ 00053270M18手が/長(なが)いといひまするの。それに/付(つけ)て、さいぜんのすまふ 00053280M19の/手(て)ハどふでござつた。いかにも、とんとあげておとした 00053290¥P173 00053300L1といふた。 00053310¥N10¥J 00053320¥X十△/頭(あたま)ハ見えぬ大名(七オ) 00053330L4さる大名がたへ/出入(いていり)する/町人(まちにん)二人よりあひ、ゐせいくらべ 00053340L5をしける。一人ハとし久しくお出入して、たび+/殿(との)へお 00053350L6/目見(めミへ)申/上(あげ)たる/者(もの)なり。一人ハあらたにお出入しけれバ、お 00053360L7目見もせざりけるが、たがひにいひつのりて、一人の者が 00053370L8いふやう、其方、/何(なん)といふてもまだお目見さへせぬといへ 00053380L9バ、ひとりの/男(おとこ)せいて、いかにもお目見したといふ。それ 00053390L10ならバ、/殿様(とのさま)ハ/前髪(まへがミ)があるかないかととひけれバ、/殿様(とのさま)を 00053400L11見たことなければ、ひしとつまりて、どうじややら、あた 00053410L12まハおほえぬが、/足(あし)にハたしか/袴(はかま)をきてござつたといふた。 00053420¥N11¥J 00053430¥X十一△/年(とし)の/初夢(はつゆめ) 00053440L15/夢(ゆめ)ハ/判(はん)じからと、むかしからいひ/伝(つたへ)た。さる/家中(かちう)に、/立(りつ) 00053450L16(七ウ)(八オ挿絵)/身前(しんまへ)なる/侍(さふらひ)、ことしハ/知行(ちぎやう)/拝領(はいれう)やせん。 00053460L17/吉凶(きつけう)をこころミんと、/元三(ぐハんざん)の/夜(よ)、/宝舟(たからぶね)をしき、ねしけるに、 00053470L18/糞(くそ)を/首(あたま)にぬられたると/夢(ゆめ)に見ければ、/朝閨(あさねや)より出て、こと 00053480L19のほか/気(き)にかゝる/躰(てい)なれバ、/女房(にうぼう)/様子(やうす)をたづねしに、/亭主(ていしゆ)、 00053490M1/侍(さふらひ)の一分たゝぬ/夢(ゆめ)をミた。/弓矢(ゆミや)八まん、口おしいと/夢(ゆめ)のや 00053500M2うをかたりけれハ、/女房(にうハう)、/学問(がくもん)などしてやさかたなる/生立(そたち) 00053510M3なりけれバ、いや+これハよき/夢(ゆめ)でござる。わがミ判じ 00053520M4ましたといふて、/糞(くそ)といふ/字(じ)を/取(とり)なして、やがてつらねけ 00053530M5る。 00053540M6△△ことしより/知行(ちぎやう)とならん/初夢(はつゆめ)に 00053550M7△△△/米(こめ)と/田(た)/共(とも)にいたゝきぞする 00053560M8と/祝(いは)ひければ、その秋高/禄(ろく)を/拝領(はいれう)じけるとなん。/米田共(こめたとも)ハ、 00053570M9/糞(くそ)と/云(いふ)/字(じ)を/取(とり)なしてよミたるなり。(八ウ) 00053580¥G 00053590¥P174 00053600¥N12¥J 00053610¥X十二△/竹(たけ)と/木(き)と/位(くらい)あらそひ 00053620L3下京に一/町(ちやう)に、/等順(とうじゆん)、/了宅(りやうたく)とて/年寄(としより)あり。両人ともに/文盲(もんもう) 00053630L4なれども、/所久(ところひさ)しき/者(もの)なれば/宿老(しゆくらう)をもたせける。あるとき 00053640L5/公儀(こうぎ)の/書上(かきあげ)に、両人の名をかきける。/筆者(ひつしや)、等順の/等(とう)ハ/何(なん) 00053650L6と/書(かき)まするととふ。/寄合(よりあい)たる町の/者(もの)、/等(とう)ハ竹かふりに/寺(てら)と 00053660L7いふ/字(じ)とこたへける。/筆取(ふでとり)かさねて、了宅の/了(りやう)の/字(じ)ハ/何(なん)と 00053670L8書まするととふ。/又(また)/先(さき)の/者(もの)、了ハミヽりやうとこたふ。そ 00053680L9のとき了宅ハらを/立(たて)、お/手前(てまへ)ハ、身どもが/身躰(しんだい)がならぬと 00053690L10て、人中で、おれをバミヽりやうといふことが有ものかと 00053700L11いひければ、かの者、いかにも+あやまりました。それ 00053710L12なら/良(やゝ)りやうをかけといふ。そのとき又ハらをたてゝ、其 00053720L13方ハいよ+うつけにするか。七十にあまるものを、(九オ) 00053730L14やゝりやうといふ事が有ものか。/等順(とうじゆん)に位も/官(くハん)もまけるこ 00053740L15とでハない。等順が/竹冠(たけかふり)ならバ、おれがハ木冠にかけとい 00053750L16ふた。 00053760¥N13¥J 00053770¥X十三△/貧(ひん)すれバ/鈍(どん)する 00053780L19貧すれハ鈍すると。さる/能(のう)大夫の何かし、さん※おちぶ 00053790M1れて、/朝夕(あさゆふ)をおくりかねけるを、/目(め)をかくる人&見かねて、 00053800M2どこぞ寺をかりて/合力能(かうりよくのふ)を一日めされとて、/高砂(たかさご)・/忠度(たゝのり)・ 00053810M3松風などゝ、あらまし/番組(ばんぐミ)をしたりけれども、/衣装(いしやう)一つも 00053820M4なければ、これも/埒(らち)あかぬとき、能大夫、しあんしていふ 00053830M5やう、高砂も松風もとりをいて、/紙子(かミこ)/着(き)て/鉢木(はちのき)と、はだか 00053840M6にて/海人(あま)をつかまつらふといふた。 00053850¥N14¥J 00053860¥X十四△/舟哥(ふなうた)できく/名香(めいかう)(九ウ) 00053870M9さる所にて、/雨夜(あまよ)のつれ※に/香(かう)をきゝけるに、あるひハ 00053880M10/夜(よる)の/梅(むめ)、さころも、あるひハ/柴舟(しはぶね)、うつせミなとゝ、思ひ 00053890M11+きゝかハしけるに、/若松(わかまつ)といふ/名香(めいかう)をきゝしる人なか 00053900M12りけるを、さる人、これハたしか、若松ときゝましたとい 00053910M13ひけれバ、/亭主(ていしゆ)、さりとハようきかせられたるといひけれ 00053920M14バ、そばにとつとぬけたる/男(おとこ)ゐたりけるが、/香炉(かうろ)を/取(とつ)てし 00053930M15バしきいていふやう、さて+/口(くち)おしいことでごさる。/身(ミ) 00053940M16どもゝうれしめでたとまてハ/気(き)がつきましたが、若松さま 00053950M17とハ、えきゝませなんだといふた。 00053960¥N15¥J 00053970¥X十五△/謡(うたひ)ハ/名所鑑(めいしよかゞみ) 00053980¥P175 00053990L1/遠国(おんこく)の/者(もの)はじめて京へのぼり、まづ/名(な)にしあふ/清水(きよミづ)の/観(くわん) 00054000L2(十オ)/音(おん)へ/参詣(さんけい)せんと/案内(あんない)をたのミ/出(いで)けるに、/案内者(あんないしや)、か 00054010L3しこハ/御影堂(ミゑいどう)でござる。これハ/五条(ごでう)の/橋(はし)でござるとおしへ 00054020L4けれバ、/田舎(いなか)人、さてハこれが、ゆやにうたひまする四条 00054030L5の五条の橋の/上(うへ)といふ所か。おひたゝしい橋でござる。し 00054040L6て又、/其次(そのつぎ)の/老若男女(らうにやくなんによ)きせんとひなどゝいふハ、どこらで 00054050L7ござるととひけれバ、案内者/吹出(ふきだ)すほどおかしかりけれど、 00054060L8さすが京の/者(もの)にて、さらぬかほにていふやう、されバ其老 00054070L9若男女と申ハ此川下でござつたが、/去年(きよねん)の大/水(ミづ)でミな/流(なが)れ 00054080¥G 00054090M1てござらぬといふた。 00054100¥N16¥J 00054110¥X十六△/新(あたら)しい/古筆(こひつ) 00054120M4よろずおのれがおろかなるをかへりミずして、/出次第(でしだい)をい 00054130M5ふ/者(もの)、さる所にて/古筆咄(こひつはなし)のつゐでに、此ごろ/元三大師(ぐハんざんだいし)の/手= 00054140M6跡(しゆ=せき)(十ウ)(十一オ挿絵)をミたといふ。それハ哥か、経の切か 00054150M7ととひけれバ、いや二条の/関白殿(くハんはくどの)へつかハされし文で/有(あつ)た 00054160M8が、関白様まいる/元三大師判(ぐハんざんだいしはん)とありしといふ。人&きいて、 00054170M9元三大師ハ/慈恵僧正(ぢゑそうじやう)とこそいひたれ。大師ハ/死(し)なしやれて 00054180M10後のおくり名なりといへバ、かの人、いやとよ。/死(し)なしや 00054190M11れてのゝちにやられた文じやといふた。 00054200¥N17¥J 00054210¥X十七△/梯子(はしご)の/外家(そといゑ) 00054220M14さる人、/新宅(しんたく)をつくり/住居(すまゐ)つき※しく、/勝手(かつて)の井のもと 00054230M15をほりかへける。しかる所に、ものごとしハき者、/普請(ふしん)の 00054240M16見まひに来りけるが、これを見て、さて+/造作(そうさ)なこと。 00054250M17/井土(ゐど)/と((をカ))ほりかゆるもおしいことかなといへバ、/亭主(ていしゆ)、さり 00054260M18ながら我等の屋/敷(しき)に/勝手(かつて)あしきゆへ、ほりかへまするとい 00054270M19ふ。其ときしハき(十一ウ)者、それならバ此/古井(ふるゐ)をわたくし 00054280¥P176 00054290L1に下されといふ。/亭主(ていしゆ)/聞(きゝ)て、あまりおかしくおもひながら、 00054300L2それハ/何(なん)になさるゝといへバ、かの/者(もの)、/梯子(はしご)の/外家(そといゑ)にいた 00054310L3さうといふた。 00054320¥N18¥J 00054330¥X十八△めでたしとおさめ/盃(さかづき) 00054340L6よろづ/無芸(むげい)なる者、/祝言(しうげん)ふるまひにゆきしが、/酒宴(しゆゑん)のさい 00054350L7ちうになりて、何ぞおさかなをとのぞまれ、しさいらしく 00054360L8こハづくろいして、あらいたハしや人+ハと、/説経(せつきやう)をか 00054370L9たり/出(だ)す。ともだち/咲止(せうし)がりて、よし+といひて/袖(そで)をひ 00054380L10きければ、そこにてはつとおもひ、此人&の心のうち、め 00054390L11でたしとも/中(なか)+申はかりハなかりけりと、やう+おさ 00054400L12めた。 00054410¥N19¥J 00054420¥X十九△/下(くだ)りかねたる/夜舟(よぶね)(十二オ) 00054430L15ある/文盲(もんもう)なる人、/食傷気(しよくしやうけ)にて/医者(いしや)をよび、/療治(れうぢ)をたのミ/脉(ミやく) 00054440L16をミせけるに、医者、/瀉(しや)しまするか/結(けつ)しまするかととひし 00054450L17に、/病人(びやうにん)、これをしらず、/子細(しさい)を/聞(きゝ)ければ、/瀉(しや)するとハ下 00054460L18ること、結するとハくだらぬことなりと医者のいふを、/小= 00054470L19者(こ=もの)、これハこびたことを聞たると/思(おも)ひ、其後かの/主人(しゆじん)、大 00054480M1坂へゆくとて/伏見(ふしミ)へ下りしが、大風にて舟出ねハ/舟(ふな)/待(まち)しけ 00054490M2り。さてかの小者をよびて、/今夜(こんや)/舟(ふね)が/出(で)さうなか、聞てこ 00054500M3いとて、/浜(はま)へつかはしけるに、やがてたちかへりていふや 00054510M4う、/船頭(せんどう)にうけたまハりましたが、此風でハ中+舟ハ/瀉(しや) 00054520M5しませぬと申まするほどに、今夜ハとかく、こゝに結しさ 00054530M6つしやりませいといふた。 00054540¥N20¥J 00054550¥X二十△/下手(へた)の/談儀(だんぎ)(十二ウ) 00054560M9ある/寺(てら)にて、/談儀(だんぎ)すぎても/座(ざ)をたゝぬばゞあり。かほをミ 00054570M10れバ、まゆをしハめて、しうたんらしきていなり。/住持(ぢうぢ)、 00054580M11/内所(ないしよ)よりこれを見て、あながちにかんじ、さて+、/信心(しんじん) 00054590M12ふかきおばゞかな。一/句(く)の/聴聞(てうもん)をさへのぞむ人まれなるに、 00054600M13/談義(だんぎ)のこりおほきていとミへたり。しゆしやうなる心ざし 00054610M14かな。よび入て/茶(ちや)をまいらせよと、/同宿(どうじゆく)にいひつけらる。 00054620M15/同宿(どうじゆく)、こなたへ御入候て/茶(ちや)をまいらぬかととひけれバ、か 00054630M16のおばゞ、かたじけなふハござれども、あまり/長(なが)いお/談義(たんぎ) 00054640M17にて、しびりがきれてたゝれませぬといふた。 00054650¥N21¥J 00054660¥X廿一△/鋸屑(おがくず)も/云(いへ)バ/云(いハる)る 00054670¥P177 00054680L1/鋸屑(おかくす)もいへバいハるゝと。さる大/名(ミやう)の/御前(ごぜん)の/食(めし)わろく/出来(でき) 00054690L2(十三オ)ければ、/殿(との)、中+/御(ご)きげんそこねけるを、御そば 00054700L3/衆(しう)、きのとくに思ひ、/手(て)に/足(あし)をにぎりけり。しかるを御/相= 00054710L4伴坊主(しやう=バんほうず)、やがてとりなしを申けるハ、此御/食(めし)ハ/米(こめ)と/水(ミづ)とば 00054720L5かり入てたきましたるゆへ、あしく候にやと申けれバ、/殿(との)、 00054730L6いよ+御きげんをそこねて、食をたくに/米(こめ)と水のほかに、 00054740L7なにを入てたくものぞ。うつけをいふやつかなと、御しか 00054750L8り有けれバ、かの/坊主(ばうす)、いや米と水のほかに、/今(いま)一いろ/念(ねん) 00054760L9を/入(いれ)てたきますれバ、お/食(めし)がよく/出来(でき)まするといひけれバ、 00054770¥G 00054780M1/当座(とうざ)の/興(けう)になりて、御きげんかなをつた。 00054790¥N22¥J 00054800¥X廿二△/貴(たつと)とからずして/哥(うた)の/交(まじハり) 00054810M4心やすき/客(きやく)二三人うちよりて、/何(なに)やかや/世間(せけん)のうハさにつ 00054820M5けて、/何(なん)と/思(おも)ハしやる。/哥(うた)ほどけつかうなものハない。た 00054830M6つとか(十三ウ)(十四ノ五オ挿絵)らずして/高位(かうゐ)にまじハるとあ 00054840M7れバ、なんぼういやしうても、/公家衆(くげしゆ)かたのおそばへまい 00054850M8るハ/哥(うた)の/徳(とく)じや/((と脱カ))はなしけれバ、あほう/律義(りちぎ)なる/小者(こもの)、つく 00054860M9※と/聞(きい)てゐたるが/罷出(まかりいで)て、わたくしにハお/暇(いとま)を/下(くだ)されま 00054870M10せいといふ。それハにハかにがてんがゆかぬ。/様子(ようす)をいへ。 00054880M11/品(しな)によりいとまをとらせんといへバ、されバのことでござ 00054890M12ります。/旦那様(だんなさま)のおはなしがまことならバ、わたくしも/田= 00054900M13舎者(いな=かもの)でこそござりますれ。こむろぶしの一ふしもやります 00054910M14るによつて、/町(まち)の/奉公(ほうこう)いたしませうよりハ、/内裏様(だいりさま)へ/参(まい)つ 00054920M15て/奉公(ほうこう)をいたしませうといふた。 00054930¥N23¥J 00054940¥X廿三△/古米(ひね)の/念仏(ねんぶつ) 00054950M18さる/後生(こせう)ねがひの/親仁(おやぢ)、/此世(このよ)の/縁(えん)つきてめいどへおもむき 00054960M19し(十四ノ五ウ)が、四五十年がうち申おきたる念仏を/俵(たハら)にし 00054970¥P178 00054980L1て、/白瓜(しろふり)の/馬(むま)一/万駄(まんだ)ほどにつけ、ゑんまの/前(まへ)にゆきければ、 00054990L2おにども出て、/米(こめ)ざしにて/一&(いち+)さして見て、まへ+の申 00055000L3をきの念仏そうな。/虫(むし)がさして/一(ひと)つもうけとるべき/念仏(ねんぶつ)な 00055010L4し。いハれぬ申おきじや。これでハ/極楽(ごくらく)へハやられぬ。/新= 00055020L5米(しん=まい)の/念仏(ねんぶつ)ハすこしでもないかといひければ、/親仁(おやぢ)、/身内(ミうち)を 00055030L6さがしてミて、もうし、りんじうに申ました念仏が四五へ 00055040L7んほど、/此頭陀袋(このづだぶくろ)にござりまするが、これでハなりますま 00055050L8いかととひけれバ、ゑんま/王(わう)きゝたまひて、それでハ不/足(そく) 00055060L9なれども、/有合(ありあひ)なれバぜひもなしとて/極楽(こくらく)へとをされた。 00055070¥N24¥J 00055080¥X廿四△/楠(くすのき)/討死(うちじに)の/哥仙(かせん)(十六オ) 00055090L12/何(なに)ごともしらずして/知(しつ)たがほする/者(もの)あり。/物(もの)ハ/類(るい)をもつて 00055100L13あつまるとかや。おなじ/友(とも)だちに、/子細(しさい)らしく/書物(しよもつ)すきを 00055110L14する者ありしが、あるつれ※の日、/哥書(かしよ)を/取出(とりだ)し見てゐ 00055120L15たる所へ、かの/知(しつ)たがほするおとこきたり、/何(なに)を/勤学(きんがく)なさ 00055130L16るゝぞ。いかふ/精(せい)が/出(で)るのといふ。されバあまりさひしさ 00055140L17に、三十六人の/哥仙(かせん)をミるといふ。かの/男(おとこ)きいて、さて 00055150L18+それハおもしろからふ。われらもうちたえて、/久(ひさ)しう 00055160L19かせんのことをきかぬほどに、/楠(くすのき)がうち/死(じに)の/所(ところ)を二三/枚(まい)よ 00055170M1んできかしやれといふた。 00055180¥N25¥J 00055190¥X廿五△/鰹(かつほ)山ぶし 00055200M4ふしハ+/鰹(かつほ)ぶしハとよびて/売(うり)ありくに、むかふよりかけ 00055210M5/出(いで)の山ぶし二人とをりちがひ、此あきんどに/行(ゆき)あたる。 00055220M6/鰹(かつほ)ぶし/売(うり)、/腹(ハら)(十六ウ)をたてゝ、やいそこな山ぶし。まな 00055230M7こが見えぬ/が((ママ))。八まん、きくことでハないと、/売物(うりもの)をすて 00055240M8ゝとんでかゝる。山ぶしも、おのれこそ/行(ゆき)あたりをつたり。 00055250M9にくい/悪言(あくごん)と、/合力(がうりき)ともにとんでかゝるを、あたりの/者(もの) 00055260¥G 00055270¥P179 00055280L1とりさへ、/両方(りやうハう)へ/引(ひき)わくる。あきんど、ぜひなく/売(うり)ものを 00055290L2ひつかづきゆきしが、けんくわが/性(しやう)になつて、/鰹(かつを)ぶしとい 00055300L3ふことを、はたとわすれて、ふし+は山ぶしハとよん 00055310L4だ。 00055320¥N26¥J 00055330¥X廿六△/飛脚(ひきやく)の/鏡餅(かゞミもち) 00055340L7五十三/次(つぎ)なミ木の/松(まつ)かざりをわけて、江戸へくたる/道(ミち)すが 00055350L8ら、/茶(ちや)屋の/床机(しやうぎ)に/注連(しめ)かさりをしておきけるを見て、つれ 00055360L9の人にいひけるハ、あれをミやれ。尤(もつとも)なことじや。/往来(わうらい)の 00055370L10人、たちよりてこしをかくるゆへ/銭(ぜに)をまうくる。かうなふ 00055380L11てハかなハぬ(十七オ)といふてかんじけれバ、つれの人、 00055390L12あまりいはんとて、いやまだあれより/尤(もつとも)なことがある。こ 00055400L13ちの/隣(となり)の/飛脚(ひきやく)屋ハ、三/ケ日(がにち)のあいだハ、/足(あし)のうらに/鏡(かゝミ)をす 00055410L14ゆるといふた。 00055420¥N27¥J 00055430¥X廿七△/世(よ)ハ/逆(さかさま)にミる/暦(こよミ) 00055440L17一/文字(もんじ)もひかぬおやぢ、/灸(きう)をすゆるに日をミんとて、こよ 00055450L18ミをたづねければ、となりへかしましたといふ。やがてと 00055460L19りかへしにやりて、かのおやぢ、こよみをさかさまにして 00055470M1ミてゐければ、むすこ、それハさかさまでござるといふ。 00055480M2おやぢ、さん※/腹(ハら)をたてゝ、どこのせかいに、こよみを 00055490M3さかさまにしてかへすことがあるものじや。かさねて/隣(となり)か 00055500M4ら、/雨(あめ)がふつてから/笠(かさ)をかりにきたともかすな。かしたら 00055510M5バさしてありきおるであろといふた。(十七ウ)(十八オ挿絵) 00055520¥N28¥J 00055530¥X廿八△/御免(ごめん)ハ不/足(そく) 00055540M8/遠国(をんごく)より江戸づめの/侍(さふらひ)、さかい/町(てう)を/見物(けんぶつ)せんと、しあん/橋(ばし) 00055550M9をわたりしに、むかふより二/尺(しやく)あまりの長わきざしをよこ 00055560M10たへたる/男(おとこ)、かの/侍(さふらひ)にあてゝたちかへり、じうめんをつく 00055570M11り、/気(き)しよくしけれバ、/侍(さふらひ)、きやつめハあふれ/者(もの)よとおも 00055580M12ひながら、/其方(そのほう)、われにゆきあたるのミにあらず、じうめ 00055590M13んにてにらむこと、すいさんしごくと/刀(かたな)のそりをかへしけ 00055600M14れバ、されバこそお/侍(さふらひ)。ごめんといハヾ御ふそくてあんべ 00055610M15いとそんじ、十めんをつくり申たといふた。 00055620¥N29¥J 00055630¥X廿九△/言伝(ごんつて)にする/隅(すミ)の/手(て) 00055640M18ある所にて、人&よりあひ碁をうちしに、其中にきハめ 00055650M19(十八ウ)て/助言(じよごん)したがる者ありて、わきより、きれの、おさ 00055660¥P180 00055670L1へのといふ。ひらさらたのむ、/助言(じよごん)しらるゝなといへどや 00055680L2まねバ、/碁(ご)うちどもいふやう、なにほどいひたまふなとい 00055690L3ふてもやめられぬからハ、/見物(けんぶつ)せずにかへられよといへバ、 00055700L4おれもさうおもふとてかへりしに、むかふより/友(とも)だちきた 00055710L5る。かの/者(もの)、どこへゆかるゝといへバ、/友達(ともだち)、/寸宅(すんたく)かたへ 00055720L6/碁会(ごくハひ)にゆくといふ。かの/者(もの)、おれもいまゝで見てゐたが、 00055730L7あまりまだるさにかへる。おむつかしながら、ゆかせられ 00055740L8たらバ、それまだ/白(しろ)のかたから/角(すミ)に/切(きつ)てとる/手(て)があるが、 00055750L9いまに/機(き)にかゝるほどに、かならずわすれるなといふてた 00055760L10もれ。たのむと、/道(ミち)からことつてした。 00055770¥N30¥J 00055780¥X三十△/玄関(けんくわ)よりにじりあがり(十九オ) 00055790L13さる/有徳(うとく)なる/町人(ちやうにん)、ずんとぬけたるむすこをもちしが、く 00055800L14がいをミせたらハかしこくやならんと/思(おも)ひ、人づきあひを 00055810L15させけり。/其中(そのなか)に/世斎(よさい)といふ人、あたりの人&を/振廻(ふるまひ)ける 00055820L16に、此ぬけたる/甚(ぢん)六をもよびけるが、甚六/手代(てだい)いふやう、 00055830L17/世斎様(よさいさま)ハかくれなき/数寄者(すきしや)なれバ、さだめて/茶湯(ちやのゆ)をなされ 00055840L18ませう。/惣(そう)じて/数寄屋(すきや)にハ、にじりあがり、/露地入(ろぢいり)などゝ 00055850L19てむつかしき/作法(さほう)がござりますげな。よく/心得(こゝろへ)て御出なさ 00055860M1れませといへバ、/気(き)づかひするな。/恥(はぢ)ハかゝぬぞとて、ゆ 00055870M2くやいなや、/世斎(よさい)の/門(かど)口より、/足(あし)もとをめつたにふミにじ 00055880M3り、/玄関(げんくハん)よりひざにてにじり、/座敷(ざしき)へとをるを、/世斎(よさい)おか 00055890M4しく思ひ、ちとなぶらんと、さて+甚六/殿(どの)にハばんじお 00055900M5/気(き)がつきまする。/中(なか)+そのやうにハにじられぬもので 00055910M6(十九ウ)ござるといへば、甚六/聞(きい)て、御ゐんきんな御あいさ 00055920M7つ。さりながら、かさねてからハ/心(こゝろ)やすうして、/茶湯(ちやのゆ)なし 00055930M8におよびなされい。このにじりあがりハ/衣裳(いしやう)の/毒(どく)でござる 00055940M9といふた。 00055950¥N31¥J 00055960¥X卅一△/内証(ないしやう)ハお/局(つぼね) 00055970M12ある/文盲(もんもう)なる/職人(しよくにん)のかたへ/友(とも)だちきたりて、此ごろハ/久(ひさ)し 00055980M13うあハぬが、なんといそがハしいかといへば、されバ、此 00055990M14あいだハさる/公家衆(くけしゆ)へ御/用(よう)でゆくが、それについて、あな 00056000M15たがたにハはしげいせいをつかひものになさるゝかして、 00056010M16つぼね+といはるゝ。ふしぎなことしやといへば、/友(とも)だ 00056020M17ち、こゝな人ハそれをしらりやらぬか。おつぼねとハ/年(とし)の 00056030M18よつた/女房(にうぼう)のことじやといへバ、はてさて、それハしらな 00056040M19んだといふ。そのゝちある/所(ところ)にて、こなたの(廿終オ)/女房= 00056050¥P181 00056060L1衆(にうぼう=しゆ)ハいかうわかさうなが、/気(き)のついた人じやといひければ、 00056070L2かのおとこ、いや+さやうにわかうもござらぬ。ミかけ 00056080L3とちがひまして、/内証(ないしやう)ハおつぼねてござるといふた。 00056090¥Y1初音草咄大全巻六(廿終ウ) 00056100¥Y1初音草咄大鑑巻七 00056110M3△○目録 00056120M4一△/男(おとこ)ハ/武士(ぶし)女ハ/京(きやう) 00056130M5二△/昼寐(ひるね)の/丸鏡(まるかゞミ) 00056140M6三△/世(よ)ハ/金(かね)が/利発(りはつ) 00056150M7四△/胎内(たいない)ハ/十月(とつき)の/定(さだめ) 00056160M8五△/似(に)た/物(もの)ハ/親(おや)と/子(こ) 00056170M9六△/挨拶(あいさつ)ハすまた/拍子(びやうし) 00056180M10七△/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00056190M11八△/囃(はなし)ハ/智恵(ちゑ)の/花(はな) 00056200M12九△/好色(かうしよく)おやま/餅(もち) 00056210M13十△/田舎(いなか)ハ/口恥(くちはづかし) 00056220M14十一△/無常(むじやう)ハ/碁(ご)の/生死(いきしに) 00056230M15十二△/問(とハ)ぬハ/末代(まつだい)の/辱(はぢ) 00056240M16十三△/請(うけ)てながす/軽口(かるくち) 00056250M17十四△/劔(つるぎ)の/舞(まひ)ハ/何代(いつのよ) 00056260M18十五△/分(わけ)のない/哥囃(うたはなし) 00056270M19十六△/妙薬(めうやく)に/奇特(きどく) 00056280¥P182 00056290L1十七△/時宜(じぎ)の/云置(いひおき) 00056300L2十八△/恥(はつかし)や/行燈(あんどん)の/影(かげ)(一オ) 00056310L3十九△あけて/悔(くや)しき/挾箱(はさミばこ) 00056320L4二十△/貧乏神(びんぼうがミ)の/遷宮(せんぐう) 00056330L5廿一△/与作(よさく)と/同国(どうこく) 00056340L6廿二△上/戸(ご)の/下界(げかい) 00056350L7廿三△/月夜(つきよ)の/金鍔(きんつば) 00056360L8廿四△/命(いのち)の/釣緒(つりを)/三味線(さミせん)の/糸(いと) 00056370L9廿五△/神(かミ)ハ/髭(ひげ)を/受給(うけたま)はず 00056380L10廿六△/恋路(こひぢ)の/雷(かミなり) 00056390L11廿七△/祈(いのれ)ばかなふ/仁王門(にわうもん)(一ウ) 00056400¥T1初音草咄大鑑巻七 00056410¥N1¥J 00056420¥X一△/男(おとこ)ハ/武士(ぶし)女ハ京 00056430M5人ハ/武士(ぶし)。/女(おんな)ハ/京(きやう)の/水(ミづ)ぎハたちて、江戸むらさき/紅梅(かうばい)のか 00056440M6いどりすがた、/物(もの)いひたるけはひ、いとこよなし。ある/公= 00056450M7家衆(く=げしう)のむすめを/吾妻(あづま)のおくへ/縁組(ゑんぐミ)の/事(こと)あり。/所(ところ)から/山中(さんちう)に 00056460M8てひなびたれとも、/聟君(むこきミ)の/姓系図(うぢけいづ)、いかにしても/歴(れき)+な 00056470M9りとて/婚礼(こんれい)きハまり、おつぼね、/腰(こし)もと、/中居(なかゐ)、おはした 00056480M10など、つき※に/供(とも)して、しうげんあひすミけり。/朝夕(あさゆふ)に 00056490M11いひつかふことばも、やまと/詞(ことバ)のから/名(な)をよひければ、/奥= 00056500M12方(おく=がた)づきの/侍(さふらひ)、/下部(しもべ)、きよろ+とするばかりなり。あると 00056510M13き/奥方(おくがた)の/部屋(へや)より、おしろものをつかハされいといひけれ 00056520M14ば、/侍(さふらひ)どもがてんゆかず、/奥老(おくおとな)に申きかせけ(二オ)れバ、 00056530M15おとなもしらず。/年寄中(としよりぢう)をよびあつめていふやう、べつの 00056540M16/事(こと)でハござらぬ。/奥方(おくがた)よりおしろものをいだせとなり。い 00056550M17づれも御ぞんじか、いかゞせんとだんかうす。ミな+か 00056560M18うべをかたふけ、さま※しあんすれども、らちあかず。 00056570M19/とき((ママ))/一家老(いちからう)申さるゝハ、一/乱(らん)にうせたと申されよ。/此儀(このぎ)天 00056580¥P183 00056590¥G 00056600M1下一のへんじとて、おつぼねをよび/出(いだ)し、おしろものを/出(いだ) 00056610M2せとおしやれども、一/乱(らん)にうせてござらぬといふ。つぼね 00056620M3きゝもあへず、あゝけうこつやといハれければ、いやその 00056630M4けうこつも、おしろものと一/度(ど)にうせてござらぬといふた。 00056640¥N2¥J 00056650¥X二△/昼(ひる)ねの/丸鏡(まるかゞミ) 00056660M7まだ/初秋(はつあき)の/霧(きり)をはらひ、/朝供(あさども)をつとめてかへり、六/尺(しやく)ども、 00056670M8部(二ウ)屋に/昼(ひる)ねしてゐたりけるが、かほを/蝿(はい)がせゝりけ 00056680M9れば、むく+とおきあがり、そばに有ける/丸(まる)かゞミをと 00056690M10り、うらの/方(ほう)をミて、これハいかなこと。おれがかほに天 00056700M11下一をかきおつた。/誰(た)がしおつたと、/腹(ハら)をたちけれバ、は 00056710M12うばいがミて、おてまへがかほにそんなことハない。いな 00056720M13ことをいふて/腹立(ふくりう)するといふ。それなら此かゞミを見よと 00056730M14てさし/出(だ)しければ、これもそさう/者(もの)にて、又/取(とり)ちがへ、う 00056740M15らの/方(ハう)をミて、いや+天下一ばかりでハない。なんてん 00056750M16の/木(き)まてが/書(かい)てあるほどに、かんにんハなるまいといふた。 00056760¥N3¥J 00056770¥X三△/世(よ)ハ/金(かね)が/利発(りはつ) 00056780M19とかくうき世ハあほうでも/金(かね)がりはつにするならひ。さる 00056790¥P184 00056800L1/所(ところ)に、ぬけ/作(さく)にて/有徳(うとく)なる/者(もの)あり。/座敷(ざしき)をたてゝ/後(のち)/天井(てんじやう)を 00056810L2見(三オ)れバ、しかもまん/中(なか)にふしあなあり。きのどくな 00056820L3ことかなとあんしけるおりふし、/才覚(さいかく)なる/友(とも)だち、見まひ 00056830L4にきたる。ぬけ/作(さく)、天井のことをかたる。/友(とも)だち、あそこ 00056840L5へハ火よけの/札(ふだ)をはりたまへ。わざとさへはる/所(ところ)じやとを 00056850L6しへけれバ、ぬけ/作(さく)よろこび、いそぎ/祈祷所(きたうじよ)へ申つかハし、 00056860L7ふし/穴(あな)の/上(うへ)へ/札(ふだ)をはりけり。あるとき、ぬけ/作(さく)心やすき/所(ところ) 00056870L8へゆきしに、/亭主(ていしゆ)いふやう、むすめおまん、しうげんまへ 00056880L9でいそがハしうござる。したが、むすめがゆびにうをの目 00056890L10がてきましたが、うをのめハぬけましたが、あとのあなが 00056900L11ミぐるしきとて、きのどくかります。よきくすりなどハご 00056910L12ざらぬかといひければ、ときにぬけさく、ふしあなのこと 00056920L13をおもひ/出(だ)し、それにハさいわいのことがござる。火よけ 00056930L14の/札(ふだ)をはつたがよいといふた。(三ウ) 00056940¥N4¥J 00056950¥X四△/胎内(たいない)ハ十月の/定(さため) 00056960L17/胎(ハら)の/内(うち)に/十月(とつき)までハよふゐたと、/世間(せけん)からふしんをたつる、 00056970L18ものごとにせハしき人あり。ある/夜(よ)きやくをうけて、をの 00056980L19+ざしきにとをり、/別(べつ)して/今晩(こんばん)ハおぼしめしより、かた 00056990M1じけなふぞんずると、まだろくになをりもせぬに、さあ、 00057000M2やしよくか、たばこか、お/茶(ちや)もてこいといふ。/客人(きやくじん)、まづ 00057010M3御ぜんハおそからぬといへバ、それならバともかくも、や 00057020M4い、おさかづきをもつてきて、らうそくのしんをきれとい 00057030M5ふた。 00057040¥N5¥J 00057050¥X五△/似(に)た/物(もの)ハ/親(おや)と/子(こ) 00057060M8/色(いろ)の/道(ミち)にハ/武(たけ)きものゝふハさらなり、/世智(せち)なるあき人もそ 00057070M9ろばんの/露(つゆ)、をき/所(ところ)をわするゝと。/烏丸(からすま)どをりに/親子共(おやことも) 00057080M10(四オ)(四ウ・五オ挿絵)に/好色(かうしよく)なるかたびらやあり。明ぼ 00057090M11のよりミせに出て、ゆきゝの女に/目(め)をよろこバせける。あ 00057100M12るとき廿二三なる女、/当世(とうせい)/仕出(しだ)し/黄(き)八/丈(ちやう)にあさぎうら、/紋= 00057110M13繻子(もん=じゆす)のはゞびろおび、ぬりがさの目どをり、/腰(こし)すへて、し 00057120M14やらり+とミへきたる。/容顔(ようがん)ことにうるハしかりければ、 00057130M15/親仁(おやぢ)むすこともにこれをミて、いづくへあゆむ人ならんと 00057140M16おもひ、まじろきもせずゐる/所(ところ)へ、かの女ミせへよる。/親= 00057150M17子(おや=こ)ともに/仰顛(ぎやうてん)して、つく+とながめけるに、かの女、か 00057160M18づきを/買(かい)ませうといふ。むすこ、うつかりとなり、かづき 00057170M19は色+ござるが、女むきでござるか、/男(おとこ)むきでござるか 00057180¥P185 00057190L1ととふ。/親仁(おやぢ)も/有頂天(うてうてん)になり、やい、そこなうつけ。かづ 00057200L2きに/男(おとこ)むきといふが/有物(あるもの)か。/袴(はかま)にこそ/男(おとこ)むきも女むきもあ 00057210L3れといふた。(五ウ) 00057220¥N6¥J 00057230¥X六△/挨拶(あいさつ)ハすまた/拍子(ひやうし) 00057240L6/水道(すいとう)の/水(ミづ)の/味(あぢ)、人のこゝろを/汲(くミ)しりて、江戸/小判(こバん)のつかミ 00057250L7/取(どり)、とし※/富(とミ)をかさねけれバ、/錦(にしき)を/着(き)て/古郷(こきやう)へのぼりけ 00057260L8るに、ふるき/友(とも)だち見まひに/来(きた)り、/久(ひさ)しうて御めにかゝつ 00057270L9た。江戸にて/仕合(しあハせ)よく、大/分(ぶん)の御しんだいとうけたまハつ 00057280L10た。さだめて/子(こ)ども/衆(しう)も大/勢(ぜ)いござらうととひけれバ、い 00057290L11や子どもハ三人ござるといへバ、さぞそうりやう/殿(どの)ハ/男子(なんし) 00057300L12であらふ。いや/女子(おなご)なりといふ。それならバつぎハおとこ 00057310L13でござらふ。いや女なりといふ。しからバ三ばんめハさし 00057320L14づめの/男(おとこ)ならんといへバ、ちかごろめんぼくなけれど、ミ 00057330L15な/女子(おなご)じやといふ。/友(とも)だち、/手(て)もちなくとうわくながら、 00057340L16されどもこなたが/男(おとこ)で/仕合(しあハせ)じやといふた。(六ノ七オ) 00057350¥N7¥J 00057360¥X七△/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00057370L19/世中(よのなか)の人のこゝろのあだ/花(ばな)。/色(いろ)にうつりやすき/男(おとこ)あり。子 00057380M1のある/間(なか)といへど、/女房(にうぼう)ハことに/嫉妬(しつと)ふかく、これを/気(き)に 00057390M2して/労咳(らうがい)となり、ついに/世(よ)をさりければ、/閨(ねや)の/内(うち)ものさひ 00057400M3しく、/子共(こども)の/行(ゆく)すゑも/不便(ふびん)なりと/後妻(ごさい)をよひ入しに、ふる 00057410M4き/妻(つま)とかハりて、/夫(おとこ)の/目(め)をかくる/下女(げぢよ)こしもとにハ、こと 00057420M5にむつましくなさけをくハへ、まゝ/子(こ)といへど/身(ミ)をわけた 00057430M6ることくにいとをしミふかく、よろづ/気(き)をつけて/素生(そだて)けれ 00057440M7バ、/世間(せけん)からも、/牛(うし)に/馬(むま)をのりかへたなどゝほめけり。あ 00057450M8るとき心やすき/友(とも)、かの/夫(おとこ)にいふやう、/貴様(きさま)ハ/仕合(しあハせ)じや。 00057460M9/今度(こんど)の/内方(ないほう)ハ/賢女(けんぢよ)の/沙汰(さた)がある。/唐(から)ハしらぬこと。日本に 00057470¥G 00057480¥P186 00057490L1ハない/聖人(せいじん)といふものじやと、ついしやう(六ノ七ウ)をい 00057500L2ひければ、/夫(おとこ)きいて、されバ/身(ミ)ともゝさう/思(おも)ひまして、/此= 00057510L3中(この=ぢう)もうけたまハれバ、ちいさい/時(とき)から、/曽而(かつて)/夢(ゆめ)をミぬとい 00057520L4ひまするといふた。 00057530¥N8¥J 00057540¥X八△/咄(はなし)ハ/智恵(ちゑ)の/花(はな) 00057550L7/咄(はなし)のつゞきも/縁(ゑん)によると。/友(とも)だち五六人よりて、/物(もの)の/初(はじま)り 00057560L8を/唐(から)のやまとのためしをひきて、かたりけるなかに、/此碁(このご) 00057570L9といふ/物(もの)ハ、もろこしの/尭(ぎやう)といふみかど、つくりはじめた 00057580L10まひて、/王子(わうじ)たちの/智恵(ちゑ)つけにおしへたまひしとかや。さ 00057590L11るほどに、/盤(ばん)の/面(おもて)をバ/天地(てんち)/四方(しハう)にかたどり、/聖目(ひじりめ)ハ/四季(しき)/土= 00057600L12用(ど=よう)を/表(ひやう)し、/石(いし)の/白(しろ)い/黒(くろ)いハ/夜(よる)と/昼(ひる)をわけ、/其数(そのかず)三百六十/目(もく) 00057610L13ハ一/年(ねん)の/日数(ひかず)にさだめられた/物(もの)じやといひけれバ、かたハ 00057620L14らから、あの/将戯(せうぎ)といふ(八オ)/いふ((いふ衍))/物(もの)ハ、/漢(かん)のミかどつく 00057630L15り/初(ハじ)めたまひて、/軍(いくさ)たちに/表(ひやう)したものじやといふそばに、 00057640L16/文盲(もんもう)にて/知(しつ)たがほする/者(もの)いふやう、いや+、/将戯(せうぎ)の/駒(こま)の 00057650L17/初(はじ)まりハさうでハなさそうな。あれハ/小人嶋(こひとじま)のそとバを/表(ひやう) 00057660L18して、/根元(こんげん)が/仏法(ぶつほう)から/出(で)たものじや。/卒都婆(そとハ)の/証拠(しやうこ)にハ、 00057670L19すんばくで/死(しん)だ/者(もの)にハ/金(きん)とあり、/馬(むま)にふミころされたるも 00057680M1のにハけいば、/車(くるま)におしころされたるハ/飛車(ひしや)、かくのやま 00057690M2ひで/死(しん)だるハ/角行(かくぎやう)と/書(かい)てあるをミやれといふた。 00057700¥N9¥J 00057710¥X九△/好色(かうしよく)おやま/餅(もち) 00057720M5江戸/博労町(ばくろうてう)のかたハらに、さる/浪人(らうにん)、/古道具(ふるどうぐ)ミせを/出(だ)して 00057730M6/渡世(とせい)のたすけとしけるに、/類(るい)おほくなりて、はかのゆくこ 00057740M7ともなけれバ、/片(かた)ミせにて/女房(にうぼう)の/手(て)わざに/餅屋(もちや)をせんとて、 00057750M8/好色(かうしよく)おやま(八ウ)(九オ挿絵)/餅(もち)とかんばんをかけ、/餅(もち)を/出(だ) 00057760M9しおきけるに、あるとき、/古道(ふるどうく)くを見てあるく/者(もの)、此/餅(もち)ハ 00057770M10いかほどゝとふ。/亭主(ていしゆ)、それハしれたものでござる。/取(とり)が 00057780M11へでござるといふ。/買手(かいて)、それハ/高(たか)い。壱/銭(せん)に五つづゝま 00057790M12けやれといふ。/亭主(ていしゆ)/腹(ハら)をたて、お/手(て)まへハつゐに/餅(もち)/買(かふ)たこ 00057800M13とハなさそうな。/壱銭(いつせん)に五つ/売(うる)もちが江戸/中(ぢう)に/有(ある)ものかと 00057810M14いひけれバ、/買手(かいて)、こゝな/男(おとこ)ハ、どんなことをいふ。/取替(とりがへ) 00057820M15で/買(かへ)バ、/本(ほん)の/餅屋(もちや)で/買(かう)ハやい。/古道具店(ふるどうくだな)に/出(た)して/有(ある)からハ、 00057830M16/安(やす)からふとおもふて/買(かハ)んといふことじや。 00057840¥N10¥J 00057850¥X十△/田舎(いなか)ハ/口(くち)はづかし 00057860M19いなかよりはじめて/京見物(きやうけんぶつ)にのぼりたる/者(もの)、上&みそと/書(かい) 00057870¥P187 00057880L1てあるかんばんをミて、うなづきてかへり、/宿(やど)屋にいふや 00057890L2う、ミやこ(九ウ)の/町(まち)+ほど/有(あつ)て、めづらしいことがお 00057900L3ほい。なかに、もつともなことをかいてござるといふ。て 00057910L4いしゆ、それハ/何(なん)といたしたことゝとへバ、されは/河原町(かハらまち) 00057920L5とやらんに、うへ+みそと/書(かき)つけてあり。さても+り 00057930L6くつなことゝかんじければ、ていしゆおかしがりて、それ 00057940L7ハめづらしいことじや。いかやうのしさいでござるといへ 00057950L8バ、さて+、/御(こ)ていしゆハ京にすミながらおろかな。う 00057960L9へ+みそといふことハ、/上(うへ)をミれバかぎりかないほどに 00057970L10みそ。たゞ/下(しも)を見よといふことなり。しかも/庭訓(ていきん)の/式目(しきもく)に 00057980L11ものつたことじやといふた。 00057990¥N11¥J 00058000¥X十一△/無常(むじやう)ハ/碁(ご)の/生死(いきしに) 00058010L14さる/所(ところ)に/碁(ご)ずきなる/友(とも)二人、/夜(よる)ひるをわかずうちけるほど 00058020L15に、/精(せい)やつきたりけん、二人ともにたえいりて、つゐに/生= 00058030L16石(いき=いし)なく(十オ)めいどにおもむく。ゑんま/王(わう)御らんじ、おの 00058040L17れらハしやばにて/後世(こせ)のいとなミもせず、/朝暮(あけくれ)/碁(ご)をすきけ 00058050L18る/罪(つミ)、五/逆(きやく)にもまさりたれバ、/地獄(ちごく)へおとすべしとあれバ、 00058060L19一人が申やう、わたくしハ/碁(ご)にて/生死(いきしに)の/無常(むじやう)を/観(くハん)じました 00058070M1といふ。それハなんと/観(くハん)じたとあれバ、/電光朝露石(でんくハうてうろいし)の/火(ひ)と 00058080M2/観(くわん)じましたといふ。さてひとりハいかにとあれバ、わたく 00058090M3しハ世の中を/手(て)ミせきんと/観(くハん)じましたと申せバ、ゑん/王(わう)、 00058100M4これ/罪(さい)人に/至極(しごく)せり。しやばの/業(こう)にまかせて、八大ぢごく 00058110M5の/石(いし)こづめにせよとおほせられ、/扨(さて)ひとりのものをめし出 00058120M6し、/汝(なんぢ)ハかりにも/無常(むじやう)を/観(くハん)じたれバ/極楽(ごくらく)へつかハすとあれ 00058130M7バ、かの/者(もの)、ねがハくハひとつぢごくへまいりたいといふ。 00058140M8それハどうしたことぞとあれバ、しやバから/勝負(しやうぶ)がつきま 00058150M9せぬほどに、(十ウ)ま一ばんうちましたいと申上た。 00058160¥N12¥J 00058170¥X十二△/問(とハ)ぬハ/末代(まつだい)の/恥(はぢ) 00058180M12/問(とふ)ハ一/旦(たん)の/恥(はぢ)とハぬハ/末代(まつだい)の/恥(はち)とかや。/田舎(いなか)より京へはじ 00058190M13めてのぼりたる/者(もの)、さる/方(かた)にて、/書物(しよもつ)の/上(うへ)に/獅&(しゝ)の/文鎮(ぶんちん)有 00058200M14けるを、あれハなんといふじやとおもひながら、さすがと 00058210M15ハれもせぬ/首尾(しゆび)にてながめゐけるに、/相客(あいきやく)、さて+しほ 00058220M16らしきぶんちんかな。/唐物(からもの)ハどこやら見ごとてござるとほ 00058230M17めけるを、/田舎者(いなかもの)、よきこと/聞(きゝ)たると/心(こゝろ)のうちにうれしく 00058240M18おもひ、とかく/獅々(しゝ)のつくばふたる/たる((たる衍))ハ、ぶんちんとい 00058250M19ふとこゝろへ、そのゝち/大仏(だいぶつ)へまいりしが、/下向(げかう)に三門の 00058260¥P188 00058270L1/内(うち)を見て、京のつれにいふやう、さて+これハ大きなぶ 00058280L2んちんでごさる。からものハどこやらが見ごとじやといふ 00058290L3た。(十一オ) 00058300¥N13¥J 00058310¥X十三△/請(うけ)てながす/軽口(かるくち) 00058320L6/万事(はんじ)/才覚(さいかく)なるなかに、/料理(りやうり)なと/功者(こうしや)にて、/酒(さけ)ハもとより/咄(はなし) 00058330L7の/伽(とぎ)になりて、/弁口(べんこう)なる/浪人(らうにん)、/出入(いでいり)の/殿方(とのがた)へゆきけれバ、 00058340L8なんと、此ごろハ/久(ひさ)しく見まひにあづからなんだ。して、 00058350L9/町方(まちがた)のあたらしい/軽口(かるくち)ばなしハないかととハれければ、ち 00058360L10かごろよいのが/出(で)ました。こんど江戸/中(ぢう)の/道(ミち)をつくります 00058370L11に、/真中(まんなか)をむつくりとかまぼこ/形(なり)に仕り、といひもはてぬ 00058380L12に、/殿(との)、そのはなしハふるひ+とけされけれバ、されバ 00058390L13こそ、ふるひによつて、かまぼこにいたしましたといふた。 00058400¥N14¥J 00058410¥X十四△/劔(つるぎ)の/舞(まひ)ハ/何代(いつのよ) 00058420L16はじめて天/王寺(わうじ)の/聖霊会(しやうれうゑ)にまいりたる/者(もの)、さて+/有(あり)がた 00058430L17いことどもじやが、あの/冷人(れいじん(ママ))のまひといふハ、われらごと 00058440L18きの/楽(がく)を(十一ウ)(十二オ挿絵)しらぬ目でハ、見てもきい 00058450L19ても一/向(かう)おもしろふないものじや。あれハなぜにものをい 00058460¥G 00058470M11ひませぬと、そばなる人にとへバ、/口(くち)がしこきおとこ、あ 00058480M12れハたがひに/中(なか)がわるひゆへじやといふ。それハなぜにと 00058490M13いへバ、むかし/劔(つるぎ)の/舞(まひ)の/有(あつ)たとき、こじりとがめをしまし 00058500M14たげな。 00058510¥N15¥J 00058520¥X十五△/分(わけ)のない/哥咄(うたばなし) 00058530M17/五月(さつき)のミじか/夜(よ)、/日待(ひまち)をせしに、/夏(なつ)の/夜(よ)ハねぬに/目(め)さます 00058540M18ほとゝぎすとかや。/哥(うた)ばなしになりて、さる人いふやう、 00058550M19/人丸(ひとまる)/赤人(あかひと)ハどちらにもおとりまさりがないと、/古今(こきん)の/序(じよ)に 00058560¥P189 00058570L1かゝれたが、/末代(まつだい)にも/定家(ていか)/家隆(かりう)/西行(さいぎやう)などゝいふ/名人(めいじん)あまた 00058580L2有が、とれが上/手(ず)てあらんなどゝいへば、かたハらに/出次= 00058590L3第(でし=たい)に/口(くち)をたゝく/文盲者(もんもうもの)/有(あり)しが、すゝミ出ていふやう、人丸、 00058600L4あか人を/哥(うた)よミじやといへど、せんに/立(たつ)た(十二ウ)/哥(うた)がひと 00058610L5つもないといふ。そばなる人、どの/哥人(かじん)のよまれたがせん 00058620L6に立といへば、かの/者(もの)、すでに/今井(いまゐ)の四郎のりきよハ、/小= 00058630L7町(こ=まち)に九十九/夜(よ)かよハれたが、その/時(とき)のうたに、おきつしら 00058640L8なミあすが川とよまれた。それを/弘法大師(こうぼうたいし)のきかしやれて 00058650L9あハれにおぼしめし、ゆるくともよもやぬけじのから/衣(ころも)と 00058660L10あそバした。そこでいづミしきぶのつかゞ、二つにさつと 00058670L11われましたといふ。してどうしたぞといへば、こゝが/名哥(めいか) 00058680L12のきどくじや。/梅若丸(むめわかまる)がよミがへられたといふた。 00058690¥N16¥J 00058700¥X十六△/妙薬(めうやく)に/奇特(きどく) 00058710L15さるわかき/男(おとこ)、ふと目をまハしけるに、あたりの/者(もの)ともは 00058720L16せあつまりて、いろ+とりやうぢしてもがきける。/其中(そのなか) 00058730L17にそさう/者(もの)、/気(き)つけと/声(こえ)のくすりととりちがへて、/声(こゑ)の/薬(くすり) 00058740L18をのませける。(十三オ)まことに/薬(くすり)のきどくにや、かの/男(おとこ)、 00058750L19/口(くち)をうご+とするほどに、そりやこそよミがへるハとて、 00058760M1人+まもりゐたりければ、しばらくありて、/死(しな)ざやむま 00058770M2ひといふなげふしをはりあげてうたひ、つゐにむなしくな 00058780M3りし。 00058790¥N17¥J 00058800¥X十七△/時宜(じぎ)のいひ/置(おき) 00058810M6/形(かたち)ハ/産(むめ)どこゝろハ/産(むま)ぬならひ。さる/有徳(うとく)なる/者(もの)の/惣領(そうりやう)、は 00058820M7たちばかりなれど、ぬく太郎の/名(な)を取しが、かしこき/手代(てだい) 00058830M8をつけ、/世間(せけん)をつとめさせしに、/方(ハう)※ふるまひにゆき、 00058840M9/馳走(ちさう)の/料理(りやうり)を/喰(くへ)ども、/時宜(しぎ)も/挨拶(あいさつ)もいハねば、/亭主(ていしゆ)、/手(て)も 00058850M10ちなき/風情(ふぜい)たび+なり。/手代(てだい)/気(き)のどくにおもひ、つね 00058860M11+いひおしへけり。あるとき/晴(はれ)なる所へ、/手代(てだい)も/召(めし)つれ 00058870M12ふるまひにゆき、ぬく太郎、/上客(しやうきやく)なれば(十三ウ)/床(とこ)わきにな 00058880M13をる。さて/勝手(かつて)より/膳(ぜん)を/出(いだ)すを見かけて、/御亭主様(こていしゆさま)+と 00058890M14よんで、これハいかひ御/馳走(ちさう)。お/料理(りやうり)といひ、あんばいも 00058900M15/出来(てき)ましたといふ。ときに手代、/汗(あせ)をにぎりにらミければ、 00058910M16ぬく太郎うなづきて、わすれぬさきにといふた。 00058920¥N18¥J 00058930¥X十八△/恥(はつかし)や/行燈(あんどう)の/影(かけ) 00058940M19さる所へ/夜盗(よとう)の入て、/金銀(きん※)をぬすミいづる。/亭主(ていしゆ)、目をさ 00058950¥P190 00058960¥G 00058970L11まし、のがすまじとて/追(おつ)かけ、うしろさまにむずとくミ、 00058980L12/上(うへ)を/下(した)へとかへしける。/亭主(ていしゆ)こゑをあげ、ぬす人をとらへ 00058990L13たぞ。出あへ+とよバヽりけれバ、/番太(ばんた)の久三はしりよ 00059000L14り、あんどうかげによくミれバ、/二人(ふたり)ながら/町衆(ちやうしゆ)なれバ、 00059010L15/番太(ばんた)とうわくして、上がぬす人さまか、/下(した)がぬす人さまか 00059020L16といふた。(十四オ) 00059030¥N19¥J 00059040¥X十九△あけて/悔(くや)しき/挾箱(はさミばこ) 00059050L19もろこしの/白楽天(はくらくてん)ハ/子(こ)をさきだてゝ、/枕(まくら)にのこる/薬(くすり)をうら 00059060M1ミしといふも、ことハりかな。/世間(せけん)に/疱瘡(ほうそう)はやる/時分(じぶん)、さ 00059070M2る/者(もの)のいとけなき/子(こ)、/兄弟(きやうだい)一/時(どき)にほうそうす。/兄(あに)ハ三つに 00059080M3なるが、ほうさうあしくて/死(し)にけるに、又つぎの/当歳子(とうざいこ)も、 00059090M4をくれて/死(し)す。/外聞(ぐわいふん)もあしければ、ひそかに/寺(てら)へおくらん 00059100M5とて、はさミ/箱(はこ)に入てやりけり。/下部(しもべ)、/寺(てら)の/門外(もんぐわい)に/置(をき)て、 00059110M6しか+といふうちに、ぬす人はさミ/箱(ばこ)を/取(とつ)てにげる。/下= 00059120M7部(しも=べ)これをミつけ、あとより/追(おつ)かけ、やれ、どろぼうよ+ 00059130M8とこゑをたつる。/門前(もんぜん)の/者(もの)とも/出合(であハせ)、なにを/取(とつ)た+とい 00059140M9へば、/下部(しもべ)うろたへて、ほうそうを取た+といふて/追(おつ)か 00059150M10けた。(十四ウ)(十五オ挿絵) 00059160¥N20¥J 00059170¥X二十△/貧乏神(びんぼうかミ)の/遷宮(せんぐう) 00059180M13不/定(ぢやう)なることハ/大(おほ)やうたかはずとハ世のつねなり。さる/浪= 00059190M14人(らう=にん)、/方(ハう)※とかせきて、大方すミよれバはづれ、あるひハ 00059200M15さハりありて有つかず。とかくおれにハ/貧乏神(びんぼうがミ)、八十/末社(まつしや) 00059210M16まで取つきたるにやと/述懐(しゆつくわい)し、うか+と/年月(としつき)をおくり、 00059220M17さん+おはうちかれ、/火(ひ)ふく/力(ちから)もなきやうになりければ、 00059230M18/貧乏神(びんぼうかミ)/出現(しゆつげん)していふやう、今までバ/随分(ずいぶん)/影身(かげミ)にそひてゐた 00059240M19れども、もハやたゝずミもならねバ、/他所(たしよ)へ/社(やしろ)をかゆるぞ 00059250¥P191 00059260L1とて/門口(かとぐち)へ/出(で)てゆく。/浪人(らうにん)、有かたしとよろこび、/女房(にうほう)を 00059270L2よび、もはや/仕合(しあハせ)がなをつ/((た脱カ))ぞ。此/紙(かミ)子/羽織(はおり)を/質(しち)に/置(おい)て、/酒(さけ) 00059280L3を/買(かふ)てこい。/祝(いは)ひにのまんといひつくるとき、/貧乏神(ひんぼうがミ)たち 00059290L4かへり、いや+それをミては、(十五ウ)けふハまだいな 00059300L5れぬといふた。のふかなしや。 00059310¥N21¥J 00059320¥X廿一△/与作(よさく)と/同国(どうこく) 00059330L8/奥丹波(おくたんば)さる/村(むら)の百/姓(せう)に与次兵衛といふ/者(もの)有しが、大/分(ふん)の/未= 00059340L9進(ミ=しん)つもり、其うへ/借銀(しやくぎん)おびたゝしくかさなりければ、せん 00059350L10かたなく、所を夜ぬけして立のきけり。/代官(だいくわん)、/地下人(ぢげにん)、こ 00059360L11とのほかにくミ、見つけ/次第(しだい)/急度(きつと)とらへんと、より+た 00059370L12つねける。おりふししたしき/友(とも)だち、/用(よう)のことにて京へ出 00059380L13けるが、三/条通(でうとをり)にて、はたとあひて、なんと与次兵衛。そ 00059390L14ちハふかくな/者(もの)じや。大/分(ぶん)人に/損(そん)をかけ、かやうに京/辺(へん)に 00059400L15おるものか。/代官(だいくハん)よりたづねらるゝ。そう+わきへたち 00059410L16のきやれといふ。いかにも、おれも江戸へ/下(くた)つてかせがう 00059420L17とぞんずる。して、いまハ/名(な)もかへたであらふととへバ、 00059430L18いまハ次兵衛とかへたと(十六オ)いふ。/友(とも)だち、/扨(さて)ももつ 00059440L19ともな/名(な)をかへたと、ことのほかかんじけるに、次兵衛き 00059450M1いて、おれハさしてもつともにもおもハぬが、なんとして、 00059460M2そのやうにかんずるといへば、友だち、いや、きつうでき 00059470M3た名じや。じたい、与次兵衛がよぬけをしたによつて次兵 00059480M4衛とハ、さりとハできたといふてかんじた。 00059490¥N22¥J 00059500¥X廿二△/上戸(じやうご)の/下界(げかい) 00059510M7三/国(ごく)一じやむこにとりすまひたと、大がハらけたびかさな 00059520M8りけれバ、/壱人(ひとり)の/上戸(じやうこ)、正/躰(たい)なく/酔(えひ)つぶれ、/座(ざ)にたまらず、 00059530M9そろりとぬけてつぼの内へ出けるが、/足(あし)たゝざれハそのま 00059540M10ゝ/縁(えん)の/下(した)にかくれふす。/亭主(ていしゆ)も/相客(あひきやく)も、かの人を/尋(たづ)ぬれど 00059550M11も見えず。ふしぎやと/勝(かつ)手をせんぎすれども、かへりたま 00059560M12ハぬといふ。さればこそ、つ(十六ウ)ぼの/縁(えん)の/下(した)にさうな。 00059570M13それ、さほか/熊手(くまで)にてさがし/出(た)せ。もはや/酒(さけ)も/取(とり)ぎハなれ 00059580M14ば、ぜひまひとつと、/口(くち)+にいふ。/中(なか)に/下戸(けこ)なる/者(もの)、こ 00059590M15とのほか/大酒(たいしゆ)にて、おいたミと見えましたほどに、其/分(ぶん)に 00059600M16て/盃(さかづき)をおつもりと/立(たつ)てとめけれバ、しからバとて/千秋楽(せんしうらく)を 00059610M17うたひ、/盃(さかづき)をおさむるとき、かの人、ちとさめぎハになり、 00059620M18のこりおほく思ひ、/縁(ゑん)の/下(した)よりはい/出(で)ていふ、しバらく/下= 00059630M19界(げ=かい)へあま/下(くた)り、/人(ひと)の心をためしてミるに、/酔(ゑひ)くたびれてか 00059640¥P192 00059650¥G 00059660L11くれたる/者(もの)を、さほか/熊手(くまで)でさがし/出(だ)し、ま一つのませた 00059670L12いとおしやるお/方(かた)様もあるに、もはやいたミそうな、ひら 00059680L13に/盃(さかづき)をおさめいとぬかすやつもあると、うらめしさうにい 00059690L14ふた。 00059700¥N23¥J 00059710¥X廿三△/月夜(つきよ)の/金鍔(きんつば)(十七オ) 00059720L17/僣上(せんしやう)したがるおとこ、七/度(と)やきの金/鍔(つば)をさし、/正身(しやうじん)とおも 00059730L18ハせんと、/名月(めいげつ)のあそひに/友(とも)だちのかたへゆき、さて+ 00059740L19こよひの月のひかりハ、わけてようさえた。おの+なん 00059750M1と、あの月と此つはと、大きさハとちらでござらふと、わ 00059760M2きざしをぬき/出(だ)してミせければ、人+、れいのせんしや 00059770M3うをするに、ちとあてばやとおもひ、されバ、その金つば 00059780M4によう/似(に)た月でござる。したが、あのやうにひかる月/夜(よ)を 00059790M5バ、にたりいふ/物(もの)じやげなといひけれバ、かの/者(もの)せいて、 00059800M6それハなぜに。いや/古今集(こきんしう)のうたに、 00059810M7△△/月夜(つきよ)よし/夜(よ)よしと人につげやらバこてふに/似(に)たり 00059820M8といふ/哥(うた)がござると、てきめんにあてた。 00059830¥N24¥J 00059840¥X廿四△/命(いのち)のつり/緒(を)三/味線(ミせん)の/糸(いと)(十七ウ)(十八オ挿絵) 00059850M11/源氏物語(けんじものがたり)に、/常陸(ひたち)の/宮(ミや)ハ/目盲(めしい)たまひて、/琵琶(ひは)/琴(こと)にこゝろを 00059860M12なくさませられしとかや。さる/町(てう)に、ごぜひとりずミして 00059870M13ゐたりしが、ろくろ/首(くび)なるよし/風聞(ふうぶん)しければ、わかき/男(おとこ)ど 00059880M14も、ろくろ/首(くひ)の/咄(はなし)を/聞(きい)て、つゐにミたることなし。いざや、 00059890M15やうすをうかゞひミんとて、さミせんを/習(なら)ふにことよせて、 00059900M16かのごぜがところへよる+かよひ、ある/夜(よ)二三人、けい 00059910M17こしてかへるていにもてなして、/窓(まど)のひまよりのぞきゐけ 00059920M18れば、あんのごとくろくろ/首(くび)、むかふへぬつとぬけ/出(で)ける 00059930M19が、ごぜのことなれば、/前(まへ)なる/行燈(あんどん)にゆきあたり、ぐど 00059940¥P193 00059950L1+しけるを、のぞきゐたる/者(もの)ども、見かねておもはずし 00059960L2らず、まちつとひだりへといふた。 00059970¥N25¥J 00059980¥X廿五△/神(かミ)ハ/髭(ひげ)を/受給(うけたま)ハず(十八ウ) 00059990L5そのかミ/坊主(ほうす)百兵衛といふやくしや、京のしばゐへのぼる 00060000L6つゐでに、/伊勢(いせ)へまいりけるを、/社人(しやにん)、これをとがめて、 00060010L7やれ、こゝのおきてをしらぬか。御/神前(しんせん)へぼうずハかたく 00060020L8おきらいなれバならぬといふ。こゝろへましたとて、かた 00060030L9をぬぎて、ぼんのくぼにすこしある/髪(かミ)をミせけれバ、/社人(しやにん) 00060040L10よこ/手(で)をうつて、あきれかへり、それならバまがはぬやう 00060050L11に、ひげてもなぜおかぬといへバ、さればでこざります。 00060060L12/神(かミ)ハひげをうけ/給(たま)はずとハ申ませぬか。 00060070¥N26¥J 00060080¥X廿六△/恋路(こひぢ)の/雷(かミなり) 00060090L15/物(もの)ごとにしさいを/云(いひ)たがる/者(もの)あり。あるとき、またおなじ 00060100L16やうなしさい/者(もの)きたり。世上のはなしおハりて、ひとりが 00060110L17いふやうハ、なんと、/恋(こい)といふことハ/神代(かミよ)よりはじまり、 00060120L18いま/人間(にんげん)なをはな(十九オ)ハだし。/扨(さて)天にも/恋(こひ)といふこと 00060130L19があるにやといふ。しさい/者(もの)/聞(きい)て、されハ天にひよくの/鳥(とり)、 00060140M1よバひ/星(ほし)あれバ、子もち/星(ぼし)あり。/若衆(わかしゆ)ぐるひもはやればこ 00060150M2そ、すバり/星(ぼし)の/名(な)あり。めたなバた、おたなバたハ、とし 00060160M3に一/夜(よ)のちぎりをかこち、まつ夜の/床(とこ)の/塵(ちり)をはらへバ、は 00060170M4ゝき/星(ぼし)など、さま※しさいをいへば、ひとりのしさい/者(もの) 00060180M5がいふやう、さてあのかミなりといふものハ、/恋(こい)をしりた 00060190M6ればこそ/哥(うた)に、 00060200M7△△/天(あま)のハらふミとゞろかしなる/神(かミ)も 00060210M8△△△/思(おも)ふ/中(なか)をバさくるものかハ 00060220M9とよまれたといふ。それハふるひ。あれほどのわけしりが 00060230M10あらうか。/天(てん)上をバ/太鞁(たいこ)をもつてありかるゝといふた。 00060240¥N27¥J 00060250¥X廿七△/祈(いのれ)バかなふ/仁王門(にわうもん) 00060260M13おろかなる人のならハしと、/恋(こひ)ハむすぶの/神(かミ)にいのり、ち 00060270M14からハ(十九ウ)/仁王(にわう)にやつかいをかけてねがふ。/上野(うへの)の仁 00060280M15王門に人あつまりて、/力紙(ちからかミ)をあてるとて、/或(あるひ)ハ/眼力(かんりき)をねが 00060290M16ひ/腕(うで)の/力(ちから)をねがひ、思ふ/所(ところ)を/目(め)あてにして/紙(かミ)をふきけるを、 00060300M17/夫婦(ふうふ)づれにて見てゐる人、われらも一つふきあてんと、/仁= 00060310M18王(に=わう)のへそをとめあてゝ、ふかんとしたるとき、/内方(ないハう)、/夫(おつと)の 00060320M19/手(て)をとらへて、さて+やくにたゝぬ所をねかはずとも、 00060330¥P194 00060340L1ずつとしたの/方(かた)へあてさしやんせといはれた。 00060350¥Q 00060360L4△元禄十一戊寅元宵良辰 00060370L5△△△△△△△△△五条橋通萬壽寺町外屋 00060380L6△△△△△△△△△△△書肆△川勝五郎右衛門 00060390¥Y1初音草咄大鑑巻七(二十オ) 00060400¥P195 00060410¥U噺本大系△第六巻 00060420¥T露新軽口はなし 00060430¥G 00060440¥Y 00060450L16元禄十一年刊 00060460L17露五郎兵衛作 00060470L18五巻 00060480L19国会図書館蔵(写本) 00060490¥Y1露新軽口はなし巻一目録 00060500M3第一△ねがハぬ事 00060510M4二△/八百(ヤヲ)屋ぐハんだて 00060520M5三△よき事をしらぬもの 00060530M6四△いたるあきんど 00060540M7五△あてずいな/人(ヒト) 00060550M8六△にごり字をしらぬもの 00060560M9七△灸おろしのいしや 00060570M10八△はやわざの事 00060580M11九△山ぶしがあらハれた 00060590M12十△すきなれハぜひもなし 00060600M13十一△やぶいしやのくすり(1オ) 00060610M14十二△ほめぬがまし 00060620M15十三△もとをわすれた 00060630M16十四△川ながれ 00060640M17十五△河ながれハひらいがち 00060650M18十六△そさうな/小者(コモノ) 00060660M19十七△かみなりのばくち 00060670¥P196 00060680L1十八△かいミやうの事 00060690L2十九△らう人帰参の事(1ウ) 00060700¥T1露新軽口はなし巻一 00060710¥N1¥J 00060720¥X第一△ねがハぬ事 00060730M5去大名の若殿、御国/初知(シヨチ)入御目出たひとて、百性/売(バイ)人御む 00060740M6かひに出けり。御供の侍衆、大儀+。扨爰元ハこちらが 00060750M7西にあたるかと御尋有。百性衆御願申、大殿様の御代にハ 00060760M8こちらが東、こちらが西にて、/此方(コナタ)が南、こなたが北にて 00060770M9御座候。御じひに、/先殿(セントノ)様の通、こちらを南に被成被下候 00060780M10ハヽ難有奉存候と申た。 00060790¥N2¥J 00060800¥X二△/八百(ヤヲ)屋のぐハんだて 00060810M13去八百屋、観音へ願かけ、私久+あきなひいたし候へ共、 00060820M14不仕合にて何共迷惑仕候。殊に観音様ハ慈悲第一の仏にて 00060830M15御座候に、何とぞ仕合致候様ニ守らせ給へと、(2オ)一七 00060840M16日こもりけるが、あるよのつげに、いかに汝、慥にきけ。 00060850M17一切衆生/我(ワレ)を念ずるものに福徳あたふるといへ共、汝斗ハ 00060860M18わが力にハをよバぬ。何方の仏神也共たのめ。まづ此観音 00060870M19の音の字を見よ。/真(シン)にてかけバ/音(ロツヒヤク)なり。さうにてかけバ 00060880¥P197 00060890L1/音(シチヒヤク)也。此/音(シチヒヤク)の観音が、何とて八百屋が守られうぞとお 00060900L2ほせられた。 00060910¥N3¥J 00060920¥X三△よい事をしらぬもの 00060930L5田舎者、京の室町を通りし/時(トキ)、去所にて京の町人衆、おも 00060940L6て座敷ニ而酒もりをしていられしが、さかなにやきはまぐ 00060950L7り也。めなれぬ事なれバ、いなか人、あれ弥太兵衛、見や。 00060960L8都ハいたる、伽羅の油を肴にして酒をのむと云。伽羅の油 00060970L9をしつたハよいが、いつも/小(コ)がいか。(2ウ) 00060980¥N4¥J 00060990¥X四△いたるあきんど 00061000L12きらずうりが、おかべのからもふるし。たうふのかすも猶 00061010L13いやなり。のつしりとちらしだうふといふたもおかしや。 00061020L14たゞしおぼろ豆腐のやつしか。 00061030¥N5¥J 00061040¥X五△あてずいの事 00061050L17かたことながら物たづぬる。あのしやうぎハ、ぎけいきじ 00061060L18や。それハいかに。たゞのぶが、よかハのかくはんをころ 00061070L19すと云。たゞのぶかかくはんにかつこと、一ゑんがてんゆ 00061080M1かぬといひけれバ、されバその事。たゞのぶがかくはんに 00061090M2かつことならず、はうぐわん殿にたゞのぶがなりかハりて、 00061100M3金になつたによつて、たゞのぶもかくはんをころすと云も 00061110M4はなし。 00061120¥N6¥J 00061130¥X六△にごり字しらぬもの(3オ) 00061140M7とらやの商売人の家名に、とらやと書て、則其家に、こん 00061150M8ののふれんにとらをそめ、かなに、どらやとかいたのふれ 00061160M9ん也。さるもの通り見て、こゝの虎ハ、からかハにきハま 00061170M10つた。あのとらがのうれんにあるといふた。しらぬハおか 00061180M11し。 00061190¥N7¥J 00061200¥X七△灸おろしのいしや 00061210M14去者、口合のよいいしや殿に、七のづにきうおろして被下 00061220M15候へと申けれバ、もとより下手な人にて灸所しらず。八の 00061230M16づにおろされた。病人、ところがちがふたと云。いやくる 00061240M17しからず。上の町がやけれバ下の町もさハぐにより、くる 00061250M18しからぬと云も、よいかげんないひぶんなり。 00061260¥P198 00061270¥N8¥J 00061280¥X八△はやわざの事 00061290L3此比都へ大坂より舟のぼり申、取分西風にて、をいよく順 00061300L4風(3ウ)にほをあげのほり申に、山崎おもてより風かハり 00061310L5て、俄に舟又くだる。船頭、中+気の毒におもいて、何 00061320L6とやらん云所へ、とんさくなる人、/懐(フトコロ)より紙袋をいだし、 00061330L7是をほばしらへゆひ付たまへと申す。船中の人&、何成ぞ 00061340L8と尋けれバ、此内に和中散有。くだりをとむるといふ。 00061350¥N9¥J 00061360¥X九△山伏があらハれた 00061370L11とくほういんとて、かど+はらいに行かげにて、はじめ 00061380L12て大峯へ入て、にハかに鼻が天ぐ殿にあやかり、おごりい 00061390L13で、嶋原の北むきに五分ばかり取、見よしと申女と少なじ 00061400L14ミしに、去時見よし申ハ、そ様とわれら事、二世もとなじ 00061410L15ミ候へ共、つとめまうし、殊に曲輪ずまひの事にて候へバ、 00061420L16御いたくとてもしらず。其上に其方様のあたま、合点ゆか 00061430L17ぬと申けれバ、とくほういん色(4オ)をつけ、われハかね 00061440L18持の子ニ而、おやのかげにて京中に千軒の家たて、/楽人(ラクジン)と 00061450L19申。見よし、心の内によろこばしくおもひゐ/い((い衍カ))たりしに、 00061460M1去人参り申やう、扨+爰へくる大じんハ山ぶしにて、こ 00061470M2ちへおいせんどのにきたといふ。見よしも是にさたをかぎ 00061480M3り、かさねて来りし時、其方様ハ山伏じやといふ。とくほ 00061490M4ういんこたへて、其事ハ何ものがいふたぞ。いのりころさ 00061500M5んといふた。 00061510¥N10¥J 00061520¥X十△すきなれバぜひもなし 00061530M8去大名ひげずき也。かく内と申つり/髭(ヒゲ)の男、鑓持に有。参 00061540M9勤の時分道中にて、六条の本願寺道ニ而鑓持の髭を御らん 00061550M10じて、扨も見事の髭やとてよび給ひ、御手にて髭御なで被 00061560M11成、金子三歩御門跡様より被下候。おがミに出し百性ばゞ、 00061570M12としより衆、扨も+有がたき御手のかゝるあのやつこの 00061580M13髭、あや(4ウ)かりものとて、かの髭を一筋もらへバ、わ 00061590M14れも+/((と脱カ))さしいだし、御門徒衆大勢たかりかゝりてぬくほ 00061600M15どに、/奴(ヤツコ)の髭、御手のかゝるかた一方こと※くぬきけれ 00061610M16ハ、やつこハ迷惑ながら主人へ帰り、右のだん+申上、 00061620M17髭かくの仕合にぬかれ候まゝ、残り申かたひげ、すり可申 00061630M18と申上ければ、髭ずき成との、いや、かたはら町のはれに 00061640M19せんとおほせられた。 00061650¥P199 00061660¥N11¥J 00061670¥X十一△やぶいしやの薬 00061680L3去薮医者、町通りけるに、しち屋のかんはんを見て、薬ニ 00061690L4なるはちのすじやとおもいて、此はちのすハいかほどいた 00061700L5すと申。若イ者、それハしちのす也といふ。いしや殿、扨 00061710L6&おしいことかな。今一のすたらぬ故、薬にならぬほどに、 00061720L7やはり/今(イマ)一年さらしてをかれいといふ。(5オ) 00061730¥N12¥J 00061740¥X十二△ほめぬがまし 00061750L10去所に新宅を立て、人&家見に行けり。其内に一人、そさ 00061760L11うもの申ハ、扨もきれいな柱かな。皆こと+くひの木の 00061770L12ふしなしかといふ。てい衆ハ、ざい木にハ念入申候と云。 00061780L13かのそさう者申ハ、此やうな木に火がついてからきへぬも 00061790L14のといへハ、亭主、大きに腹を立、はじめていたすふしん 00061800L15に、それハ余り成いひぶんと、散+に腹立けれバ、かの 00061810L16もの、てをあハせて、御ゆるし候へ。われらハかやう成事 00061820L17申ものにてハなく候に、ひよつと申た。どうしてもけちじ 00061830L18やと申す。 00061840¥N13¥J 00061850¥X十三△/本(モト)をわすれた 00061860M3去をんごくのもの、京へ奉公に参り、諸事よきうつくしき 00061870M4事きゝならいて、雪隠へ行をかうやへ行とハ、かうやへ行 00061880M5(5ウ)てかミおとすといふ事をきゝて、やぶいりに在所へ 00061890M6ゆきて、しさいらしく、人&きゝ候へ。あのせつゐんへゆ 00061900M7くのを、かうやへゆくといふことハ、かうやにてわらをお 00061910M8とすゆへにといふた。 00061920¥N14¥J 00061930¥X十四△川ながれ 00061940M11かつら川に川ながれあり。在所衆やがて引あげ、其はうハ 00061950M12いづくのさい所ぞ。名ハなにといふと、さま+とへど、 00061960M13へんじもせず。是ハきがつかぬ。きつけに水のませいと申 00061970M14けれバ、やがておきあがり、水ハ下ぢが有と、おきていに 00061980M15けり。 00061990¥N15¥J 00062000¥X十五△川ながれハひらいがち 00062010M18有時おほかミなり、大水川に大分出けり。かゝるところに、 00062020M19くるま長持壱つながれきたる。さるものひろい宿へもち帰 00062030¥P200 00062040L1り、あらうれしや、仕合なをりたぞ。よぎふとんハ申にお 00062050L2よ(6オ)ばず、かねが大分有べしと大きに悦、やがてぢや 00062060L3うまへあけ見てあれハ、八十ばかりのおやぢ、かみなりが 00062070L4なりやんだかとて出にけり。 00062080¥N16¥J 00062090¥X十六△そさうな小者 00062100L7さるもの、御さうれいを寺町へおがミに出たり。あまりお 00062110L8そくたいくついたし、小者に、いづくまで御出そと申候へ 00062120L9バ、小者おもてに出て、かみを見て申やう、上ノ町まで御 00062130L10越候が、しよもうが御座候やら、おそく御座候と申た。 00062140¥N17¥J 00062150¥X十七△かミなりのばくち 00062160L13さる寺の庭に大きなるいちやうの木有。その上へかミなり 00062170L14おち、いちやうミぢんになり、ね迄掘をこしたるやうにな 00062180L15くなりけり。長老どうじゆく二人つれ出て見、扨+大き 00062190L16(6ウ)成かみなりかな。是ハかミなりにてハあらず。かく 00062200L17のごとくいちやうの根から取ハ、さだめてすりにてあらん 00062210L18といふ。神なり、上よりきいて、いや、すりにてハあらず。 00062220L19成程かミなり也。坊主三人出たやらんと云。長老、すいさ 00062230M1んといふ。かミなり、大きないちやうハおひちやうなり。 00062240M2ねからとるハ三人の坊主ハさんまい坊主よ。是ぶた也とい 00062250M3ふ。長老、そちハなにかミなりぞ。はち+のあいの三と 00062260M4/云云((ママ))。 00062270¥N18¥J 00062280¥X十八△戒名の事 00062290M7さる寺へ死人つれ行、うづめかへる時、かい名を長老、書 00062300M8をかれたれバ、どう宿衆取ちがへ、八百屋の書出シ三分五 00062310M9りんと有しをやる。せしゆ、三分五リンと云かいミやうハ 00062320M10ないはづ也とて、さかさまにはりてをく。参る程の人&、 00062330M11(7オ)厘五分三と/回(エ)向いたした。 00062340¥N19¥J 00062350¥X十九△浪人帰参の事 00062360M14都東山のほとりに、柴の庵を引むすび、とこに達磨の賭物 00062370M15をかけていられける所へ、おはを打からしたる浪人ゆきて、 00062380M16さて+きれいにちんまりと、味なすまいかな。して、御 00062390M17坊様ハそうどう宗にてやましますととハれけれバ、いや、 00062400M18私ハいしやにて御座候といハれた。浪人、扨ハおいしやに 00062410M19て御ざりますか。私ハ永+の浪人ものにて御ざりますが、 00062420¥P201 00062430L1何とぞ本国へもどり候やうになる薬ハ御座りますまいかと 00062440L2いはれけれバ、それこそなりさうなものとて、一服調合し 00062450L3てやられける。かたしけなしとて帰り、かしらせんじして 00062460L4のミけれバ、こしうより、帰参と申来る。二ばんせんじの 00062470L5ミけれバ、二(7ウ)百石のかぞうと申来る。扨帰参してよ 00062480L6り、ふしぎ成いしやとて、右のとをりを殿様へ申上られけ 00062490L7れば、其薬、いかやう成儀ぞ。はいさいの程、秘蜜の御ざ 00062500L8つらう。きゝてまいれとて使立けれバ、医者、さのミとん 00062510L9だるくすりにてもなく候。附子にきこくをくハへたといハ 00062520L10れた。(8オ) 00062530¥Y1露新軽口はなし巻二目録 00062540M3第一△入ぼくろの事 00062550M4二△すまふ取の無筆 00062560M5三△遠慮せいでも大事ない事 00062570M6四△上戸のこたつ 00062580M7五△棚つる宿がへ 00062590M8六△/謎(ナゾ)に心とられしむすこ 00062600M9七△無筆成おやぢ 00062610M10八△柱をとるこゝろ 00062620M11九△/一息(ヒトイキ)に備前へついた 00062630M12十△りやうげちかいの事 00062640M13十一△網うちのはなし(1オ) 00062650M14十二△なつな五郎八 00062660M15十三△はつむまの事 00062670M16十四△楊貴妃があらハれた 00062680M17十五△金を食にする出家(1ウ) 00062690¥P202 00062700¥T1露新軽口はなし巻二 00062710¥N1¥J 00062720¥X第一△入ぼくろの事 00062730L5四条川原に水木辰之助とて、いやはやそれハどうもいへぬ 00062740L6今/業(ナリ)平とも云べき若女方有。衆道柄をにぎる/若衆(ワカイ)、かの辰 00062750L7之助と一座して、をさへたかゝへつの上にて、おさかなに 00062760L8いれぼくろとて、うでハふるし、ひたいに、水木辰の助と 00062770L9いれられた。酒のゑひさめて、これハ何共屋敷へハかへら 00062780L10れぬ。何とかせんとあんじわつらひてゐける時、一人のつ 00062790L11れ、いや+、やけどしたとて帰りてハいへとて、小刀や 00062800L12きて、かの入ぼくろの上へをしあてた。水木辰之助ハきえ 00062810L13/え((え衍))、丹波守とあり+と残る。 00062820¥N2¥J 00062830¥X二△すまふ取の無筆(2オ) 00062840L16さる所に大ぜいよりあひ、相撲とりけるに、二三人づれの 00062850L17一人まけて、一人のつれに、かち/相撲(スマウ)一ばんとれといはれ 00062860L18ければ、いや、わたくしハむ筆といふ。すまふに無筆がい 00062870L19るかと申けれバ、あてからぬといふた。 00062880¥N3¥J 00062890¥X三△遠慮せいでも大事ない事 00062900M3さる所にあたらしく蔵をうち、成程手をこめてふしんして、 00062910M4出来てから皆人来り、けん物して、さて+ていねいな蔵 00062920M5かな。よく出来たりとほめけれバ、亭主申さるゝハ、いや、 00062930M6蔵も火にあハねバしれませぬといハれた。 00062940¥N4¥J 00062950¥X四△上戸のこたつ 00062960M9あるじやうこども四五人寄合て、今宵は夜さむなに、こた 00062970M10つに火を入られよといふ。てい主、まだこたつをきら(2 00062980M11ウ)ぬといふ。一人が申けるハ、こたつより酒一升御かい 00062990M12あれ。打よりたべ、われらがふところへ、あし御さしあれ 00063000M13と申。此儀よからうとて酒とりよせ、何れものミて、かの 00063010M14人のふところへあしふミ入、そろ+ねられた。ひといき 00063020M15ねて目をさまし、何れも申けるハ、さても是ハひへごたつ 00063030M16しやといへバ、一人の申ハ、今五合かきさがいたらよから 00063040M17うといふた。 00063050¥N5¥J 00063060¥X五△たなつるやどかへ 00063070¥P203 00063080L1さる人やどがへして、ある人にたのミ、棚つりてもらハれ 00063090L2けり。心得たりとて、さもてばしかくつりて帰り申されし。 00063100L3うれしや、かたづけんとて、たなへそれ+にあげられけ 00063110L4れば、棚ども残らず皆おちたり。あくる日(3オ)くだんの 00063120L5棚つりたる人わせたり。亭主被申けるハ、きのふハたなを、 00063130L6何とつりてたもつたやら、皆おちたといはれけれバ、それ 00063140L7ハ何ぞあげやつたものであらうといふた。 00063150¥N6¥J 00063160¥X六△なぞに心とられしむすこ 00063170L10さる所に十二三に成むすこ有。なぞはやりける比、朝夕な 00063180L11ぞに身をやつしてゐける程に、おやぢしかりて申けるハ、 00063190L12いきばるめがとしかりければ、むす子申けるハ、おやぢ、 00063200L13それといた。きやくしゆのせきたふかと申す。母おやの申 00063210L14さるゝハ、おやぢのしかりやるにも、なぞにしをる。ごく 00063220L15つぶしめといはれければ、おつと、そくいべらといふた。 00063230¥N7¥J 00063240¥X七△無筆なるおやぢ 00063250L18さる/無筆(ムヒツ)成おやぢ有。よそからふミが来りても、(3ウ)子 00063260L19の留守にハ返事ならず。気のどくにおもひ、子かへりけれ 00063270M1バしかりて、今からよそへ行ならバ、返事二ツも三ツも書 00063280M2て置てからゆけといはれけれバ、子申けるハ、何事か申来 00063290M3べきに、返事の書置がなるものかと申けれバ、さもあるべ 00063300M4しとて、それよりふだん庭へかべ土をこねをきて、よそよ 00063310M5り/文(フミ)がくると、くだんのかべ土へ両手をつきこミ、使の人 00063320M6に見せて、かくの通り故、御返事申さず候。是より申さう 00063330M7といはれた。 00063340¥N8¥J 00063350¥X八△はしらをとる心 00063360M10あるつゞくり普請する所へ、さる人来り物語して、あのは 00063370M11しらハうつとしいに、御とりあらぬかといハれけれバ、て 00063380M12いしゆ、私もさやうにそんじ候とて、大工をよびよせ、と 00063390M13(4オ)らせられける。その次の柱も、そのあちらのはしら 00063400M14も、こゝの角のはしらも、此はしらも御とりあれといはれ 00063410M15けれバ、大工、それでハやねがおちまするがと申しけれバ、 00063420M16大工迄のしあんハせなんだといハれた。 00063430¥N9¥J 00063440¥X九△一息に備前へついた 00063450M19当六月暑気の比、大坂川口にてさる人、酒におびたゝしく 00063460¥P204 00063470L1ゑひて、あつさの侭ニ川口へ出られたれバ、折ふしびぜん 00063480L2船にわたしのかけて有を見て、乗てすゞまんとおもひゆか 00063490L3れけるが、ねぶけつき、こけるやいなや高いびきをやらる。 00063500L4船頭、是船をだすが、こなたハびぜんへかととひければ、 00063510L5をうといひける間、船を出して、追風にまかせ、びぜんへ 00063520L6つき、かの人を(4ウ)おこして、あがり給へといひけれバ、 00063530L7是ハどこじや。びぜんじやといふ。何とて是へハつれてき 00063540L8たぞといふ。船頭、舟いだす時、をうとお申しやるによつ 00063550L9てのせてきたといふ。扨大坂へ便有に、此人ふミをやられ 00063560L10けるハ、其元の我等が、われらにて御座候哉。こゝもとの 00063570L11われらが我等にて御座候哉。一円がつてんまいらず候と書 00063580L12てやられた。 00063590¥N10¥J 00063600¥X十△りやうげちがいの事 00063610L15さる所に、しやうわるの男有けるが、ばくちにうちまけ、 00063620L16あまつさへはてにハさん※気色あしく成て、/煩(ワヅラヒ)ゐけるに、 00063630L17ある人来り申けるハ、上の町の玄徳様ハおかうしやなおい 00063640L18しや様じやほどに、ちと見てもらへと申けれバ、(5オ)さ 00063650L19あらバ行てたのミませうとて、行てミやくを見てもらひけ 00063660M1る。玄徳様おほせらるゝハ、さてもとりあげたしやうかな 00063670M2と御申あれば、八幡、まつたくとりあげませぬと申す。し 00063680M3からバせんきかと御申あれバ、いや、またする気にて御座 00063690M4ると申した。 00063700¥N11¥J 00063710¥X十一△あみうちのはなし 00063720M7さる人、友達に/咄(ハナ)されけるハ、扨+われらが近所に、と 00063730M8うあミの名人が御座る。いかやうにもこのミ次第に、あミ 00063740M9をひろげ申候。或ハ桜の花のごとく成共、桔梗に成とも、 00063750M10わちがへに成共、尤四角にも、菊の花に成とも、このミ次 00063760M11第に打申候と咄す。其後右の人&、桂へ川がりに行時、か 00063770M12の咄しのあミうちたのまんとて、右の人(5ウ)の所へさそ 00063780M13ひがてら行、いつぞや咄しのあミうち、やとふて給ハれと 00063790M14申されけれバ、さて+やすい事じやが、残おほい事ハ、 00063800M15/今朝(ケサ)葵の紋をうつてとらへられたといふた。 00063810¥N12¥J 00063820¥X十二△なづな五郎八 00063830M18あらたまる年のはじめ、太郎も二郎もほう引などしてあそ 00063840M19びしに、さる所に五郎八と申十四五の子有。夜もすがら、 00063850¥P205 00063860L1かるたさばくりして、夜あけ七日の朝かへり、いねぶりゐ 00063870L2けるに、母おやの申けるハ、五郎八、是五郎八とおしけれ 00063880L3バ、おつと、おしてうけましやうといふて、ぜんを引よせ 00063890L4ける。いや是、みそじやといひけれバ、てミそ共にうけた 00063900L5といふた。(6オ) 00063910¥N13¥J 00063920¥X十三△初むまの事 00063930L8稲荷の社人、御そせう申上られけるハ、正月晦日、二月朔 00063940L9日、ミむまと、/去年(コゾ)も/今年(コトシ)もつゞき、何とも気のどく成事 00063950L10にて御座候。中の馬を初むまにあそばされ下され候へとね 00063960L11がひ申さるれバ、朔日の馬にも参らせて、初馬を三度せう 00063970L12といふ事かと仰らるれバ、いや、さやうにてハ御座なく候。 00063980L13はじめのむまハすて候て、中のむまをと申上れバ、いや 00063990L14+、すてむまハ御法度でならぬと仰られた。 00064000¥N14¥J 00064010¥X十四△楊貴妃があらハれた 00064020L17さる所の中ゐの女、美人ハ柚の香ひがするときゝはつり、 00064030L18二六時中たもとにゆをたやさずいれて持(6ウ)いたり。み 00064040L19せの若イ衆いづれも、おなつ。わがミハいつもゆのにほい 00064050M1がする。いかさま美人さうなといハれけれバ、しや、何い 00064060M2ハんすとて袖をふる拍子に、くだんのゆ、ころりとおちけ 00064070M3れバ、扨もかなしや。やうきひがあらハれたといふた。 00064080¥N15¥J 00064090¥X十五△金を食にする出家 00064100M6しゆしようがほにて/欲(ヨク)ふかき長老有。常※病者気にて、 00064110M7/熱(ネツ)おきつしていられけるに、有時、心易キ旦那参り、内証 00064120M8へはいり、長老様の御目にかゝる。御そばに、方&よりの 00064130M9志、ふせ共あまた有けれバ、だんな申けるハ、どうしても長 00064140M10老様じや。われらハ年中身をくだいてあがけ共、かけに斗 00064150M11成てすたるが、和尚様ハねて御座つてもようとれますると 00064160M12いハれ/((けれ脱カ))ば、長老の仰に、どうしても(7オ)善光寺の尺迦の 00064170M13まねハならぬ。ねていても思ふやうにとれぬ。/剰(アマツサへ)くハね 00064180M14バよけれどといはれた。(7ウ) 00064190¥P206 00064200¥Y1露新軽口はなし巻三目録 00064210L3第一△修行者とんさく 00064220L4二△八百屋嶋原がよひ 00064230L5三△気まハすもの 00064240L6四△親仁のとんさく 00064250L7五△田舎人色里へ行 00064260L8六△あさねの事 00064270L9七△親仁命こひ 00064280L10八△絵心有人/批難(ヒナン)いふ 00064290L11九△久三郎馬追けんくハ 00064300L12十△雪隠をおがむ人 00064310L13十一△いなかもの手の筋を見る事(1オ) 00064320L14十二△かハつた買物 00064330L15十三△当流のうたひ 00064340L16十四△鳴物法度 00064350L17十五△わらぢせんたしなむ(1ウ) 00064360¥T1露新軽口はなし巻三 00064370¥N1¥J 00064380¥X第一△修行者とんさく 00064390M5さる修行者、米屋へ修行に行けり。米やの女房、とをらし 00064400M6やれ+と、けんどんに申ける。亭主きゝ、やい+、其 00064410M7やうにけんどんにいふものか。あさハ弘法大しのござると 00064420M8申すに、そのやうにけんどんにいはぬものじやと、さん 00064430M9※にしかりけり。女房、まことにとおもひ、米びつへか 00064440M10ゝり、ひとにぎりつかミ、是いれましやう+と、あとよ 00064450M11りをつかけければ、かの修行者、あたまにてもはらるゝか 00064460M12とおそれにげけり。猶しきりに、をつかけけれバ、修行者、 00064470M13辻雪隠へ逃入リける。かの女房戸口に立、入レましやう+ 00064480M14といひけれバ、内よりかの僧、弘法大師高野山へ入給ふ。 00064490M15女人(2オ)けつかいの所なるぞ。そこ立のけ+といハれ 00064500M16た。 00064510¥N2¥J 00064520¥X二△八百屋嶋原がよひ 00064530M19さる八百屋、嶋原へさい+かよひける。女郎申すハ、あ 00064540¥P207 00064550L1の人ハ八百屋じやが、此所へさい+ミへるが、さらバな 00064560L2ぶつて見んとて、もうし、おまへ様ハ町ハ/何(イヅ)かたにて候ぞ。 00064570L3われらハ二条室町辺にて御座る。御商買ハなにやにて御ざ 00064580L4んす。われらハ木薬屋で御ざる。さいハいでこざんす。大 00064590L5人参ハいかほと仕るぞ。されバ、おほ人参ハたばによると 00064600L6いはれた。 00064610¥N3¥J 00064620¥X三△気まハすもの 00064630L9さる若ヒ衆寄合て、其内より一人申けるハ、あのもうせん 00064640L10ハ何にてそむるぞといひけれバ、其中に一人(2ウ)申ける 00064650L11ハ、せう+に酒をのませて血をとり、そむると申ける。 00064660L12扨ハさやうに候かといひける所へ、小もの、茶を持ていで 00064670L13けり。かの人、さても+お手前ハりこんな人かな。われ 00064680L14らに茶をのませて、せうべんをとらふと云事か。それハな 00064690L15るまい+といふた。 00064700¥N4¥J 00064710¥X四△親仁のとんさく 00064720L18さる町内に、東山へゆさんに行れた。其内におやこづれに 00064730L19てかへり、かのおやぢ酒にえひ、小哥ぶしにてかへりける 00064740M1が、我町内になり、/主((わカ))が家も行過けり。むすこ、これ+、 00064750M2こちのいゑハこゝなるにといひけれバ、おやぢ、さらぬて 00064760M3いに行、今はいれば、小哥があまるといはれた。 00064770¥N5¥J 00064780¥X五△田舎人色里へ行(3オ) 00064790M6さるいなかもの、四五人づれにて嶋原へ見物に行けり。又 00064800M7京衆ゆきて、女郎の名をいひ、井筒様の、夕がほさま、玉 00064810M8の井さまのと色+ほめける。かのいなかもの、扨ハうた 00064820M9ひの名にてほむると心得、さらバうらゝもほめんと思ひ、 00064830M10よう+、橋弁慶様とほめければ、やりて、こゝな人ハ。 00064840M11大夫様をはし/ごへん((ママ))様とハと、さん※にしかりけるを、 00064850M12よう、山うばさまといふた。 00064860¥N6¥J 00064870¥X六△あさねの事 00064880M15さる一向宗、毎日朝事にまいられける。あるときねすごし、 00064890M16肩衣をとりちがへ、女房衆のまへだれを引かけ参られけれ 00064900M17バ、道にて同行衆に行あひ、こゝなハ、いかうあかう御座 00064910M18るといひけれバ、されハ(3ウ)其事。いそぎまするといハ 00064920M19れた。 00064930¥P208 00064940¥N7¥J 00064950¥X七△親仁命こひ 00064960L3さるおやぢ、寿命をねがひ、清水にまふで、われ百迄のじ 00064970L4ゆミやうをあたへさせたびたまへとて、七日まふでけるに、 00064980L5あたる七日めに、三年坂にて、白紙に百といふじの書たる 00064990L6をひらハれ、是こそ観音の御利生と悦び、宿に帰り、兄む 00065000L7すこに見せ、かくのごとくとかたられけれバ、兄つく※ 00065010L8と見て云やう、是ハ命こひかなひたるにてハなし。文字を 00065020L9よみくだせバ、一日ぐらしといふことにて候といひけれバ、 00065030L10又弟いふやう、いや左様ニ而ハあるまい。それハころりゆ 00065040L11けといふ事にて候といふた。(4オ) 00065050¥N8¥J 00065060¥X八△絵心有人批難いふ 00065070L14さる人、何を見ても只ひなんバかりいふ人有。たとへバ狩 00065080L15野の筆にても、さんをいれけるが、ある時友だち二三人つ 00065090L16れだち、さが辺へまいられけるが、折節白鷺二三羽、田の 00065100L17あぜにおりけれバ、つれの人いふやう、¥K(コノ間文字アルハズ) 00065110L18かのひなんいふ人申やう、いや+、鷺のひつせいハあの 00065120L19やう成物にてハないといふ。とやかくいふ内に鷺飛/去(サル)。又 00065130M1つれ申やう、何と、あのとびさる所ハ見事でハないかとい 00065140M2ふ。又ひなんいふ人、いや+、とぶひつせいハ、あれが 00065150M3何として、あのやう成物でハないといはれた。 00065160¥N9¥J 00065170¥X九△久三郎馬をひ喧嘩(4ウ) 00065180M6さる久三郎、弁当をもちかへりければ、むかふより馬をひ、 00065190M7馬を引来りけるか、かの弁当に行当り、ちうばこふミわり 00065200M8けれバ、久三郎大きに腹を立、脇指をぬき、かの馬を切け 00065210M9れバ、馬をひはらを立、聞まいといさかひけれバ、あたり 00065220M10のもの共出合、此やうにぢうをいたしけれバ、馬もはねゝ 00065230M11ばならぬ。又馬子もかんにんせよ。きりときつたれバ、つ 00065240M12んとあがられぬといふた。 00065250¥N10¥J 00065260¥X十△雪隠をおがむ人 00065270M15さる人、せつちんへ行てハあとをおがミけれバ、むす子い 00065280M16ふやう、何と、こなたハせつちんへ行、跡をおがましやる 00065290M17が、何とした事ぞとたづねけれバ、おやぢいふやう、己ハ 00065300M18ものをしらぬやつじや。あれハ大事のぼさつのはか所じや 00065310M19といハれた。(5オ) 00065320¥P209 00065330¥N11¥J 00065340¥X十一△いなかもの手の筋をミる事 00065350L3さる田舎者京へのぼり、手の筋のかんばんに、手のかた有 00065360L4けれバ、いなかもの見て、此内に手をうるさうなとたづね 00065370L5ければ、内より出、いや+、是ハ手の筋を見て、一代の 00065380L6善悪をいひまする。所望ならバ代物十弐文にて見てしんぜ 00065390L7うといひけれバ、しからバ見て下されといひて見てもらひ、 00065400L8代物はらひ、扨下の町に足袋のかんばん有をみて、是ハあ 00065410L9しの筋を見る所さうな。手の筋をミて足の筋を見ぬもいか 00065420L10ゞとおもひ、かの足袋屋へはいつて、此足見て被下と、あ 00065430L11しを出しけれバ、たび屋ハ足袋をあつらゆるかとおもい、 00065440L12ほんを取て、是ハ拾一文じやといひければ、かのいなかも 00065450L13の、手の筋ハ拾二文じやが、(5ウ)足の筋ハ壱もんやすい 00065460L14とて銭をつかれた。 00065470¥N12¥J 00065480¥X十二△かハつたかいもの 00065490L17さる方に、いろはかなくそもじをしり、きゝてぼうもんに 00065500L18こびたがる人あり。むのじハはね文字のんの字と同じこと 00065510L19じやときゝはつり、先月八日因幡薬師ゑ参り、本見せを見 00065520M1まハり、うたひのほんが有かといハれけれバ、何がいりま 00065530M2するといへバ、たんらがあるかといはる。本や、いやそれ 00065540M3ハ御座りませぬといふて、十ばんバかり取出し、これらハ 00065550M4いりませぬかといへバ、十さつばかりの上に、かんたん見 00065560M5へけるを、かの人、是ハかむたむじやといふて下を見られ 00065570M6たれば、たむらの本も有けり。是ほど、たんらも有に、な 00065580M7いといやる。二はんさうなといはれた。(6オ) 00065590¥N13¥J 00065600¥X十三△当流のうたひ 00065610M10何がしとのとて、/専(モツハラ)当流のうたひをじまんせらるゝ人有。 00065620M11そこへさる人あそびに参られたるが、例の当流うたひのじ 00065630M12まんいハるゝをきゝて、此仁いふやうハ、貴様、当流をじ 00065640M13まんなさるれ共、われらほどハなるまいといふ。てい主き 00065650M14ゝて、/其方(ソナタ)ハつゐにはれな場へも双林寺へも出られた事を 00065660M15きかぬ。我等ハ竹村甚左衛門/弟子(デシ)にて、かくれおしやらぬ。 00065670M16しからバうたふてきかさつしやれといふ。何がし殿、ゐな 00065680M17/((を脱カ))りてうたハるゝ。 00065690M18右のかひなをうちおとせハ左の御手にて六弥太をとつて 00065700M19なけのけ今ハかなはしとおほしめしてヤヲハ 00065710¥P210 00065720L1とうたハるゝ時、此人、いや+それハ当流(6ウ)じやな 00065730L2い。ちがふたといふ。何がしどの、はらを立、何のちがふ 00065740L3た事があらふ。しからバお手まへのをきかふと申さるゝ。 00065750L4その時此人うたハるゝ。 00065760L5右のかひなをうちおとせバ左の御手にて六弥太をとつて 00065770L6なけのけ今ハいしやぼんとおほしめしてヤヲハ 00065780L7とやられた。 00065790¥N14¥J 00065800¥X十四△鳴物法度 00065810L10さる御大名、御他界にて、御国中なり物法度のふれ有。御 00065820L11城中にても、町+に番をいたし候時分、につけ馬とをり 00065830L12けれバ、はら+とおり立て、馬子をとらへ、是程なり物 00065840L13御法度のきびしい御ふれの有に、そむくハ大ちやくものじ 00065850L14やとて、さん※にちやうちやくする。ま(7オ)ご、めい 00065860L15わくにおもい、まつひら御めん被成候へ。御ふれ御座候故 00065870L16鈴をもはづし、神妙に追まするといへ共承引せす。しばれ 00065880L17くゝれといからるゝゆへ、馬子、扨何たるとがにて左様に 00065890L18御腹立なされ候やといへば、番の衆、まだ如在な事をいふ 00065900L19やつじや。あれ程子共か、たいこうて、まめくハせう/+(タイコウテ) 00065910M1といふを、あらがひをるといはれた。 00065920¥N15¥J 00065930¥X十五△わらぢせんたしなむ 00065940M4さるこあげ、酒のミにて、ならぬ中から毎日酒かふてのミ 00065950M5けるが、殊更此比ハ酒のねだんもあかり、こあげもすくな 00065960M6けれバ、女房うとましくおもひ、しかりけれ共きかずして、 00065970M7ひたすら酒手をつかひけるゆへ、あるとき女房、てつきり 00065980M8こよひハさむき程に、又酒であらふと(7ウ)思ひ、銭のあ 00065990M9り所をかくして置ければ、こあげどの、内儀のねいる時分 00066000M10にそろ+おきて、銭をさがしいだし、こしにつけ、かい 00066010M11にゆかんとして、とくりをさがしけるおとにて女房おどろ 00066020M12き、火をともして見れば、亭主うろ+と物をさがす。女 00066030M13房、それハ何をさしやるといへば、いや、物がないと云。 00066040M14ものとハまたとくりかな、たづねさしやるかといへば、い 00066050M15や、それでハないといふ。まづ、そのこしな銭ハ何事ぞと 00066060M16いへバ、されバ、/ど((とカ))にまよふたさかいで、どこへゆかふや 00066070M17らしらぬによつて、まづ銭をこしに付たといはれた。(8オ) 00066080¥P211 00066090¥Y1露新軽口はなし巻四目録 00066100L3第一△無筆成人無筆の所へ手紙の事 00066110L4二△かんばんのよミやう 00066120L5三△/主(シユウ)にかゝりの事 00066130L6四△田舎衆三条やど屋の事 00066140L7五△夜食のめしばち 00066150L8六△字の書やうの事 00066160L9七△利口すきた小僧 00066170L10八△わるずいなかんだ 00066180L11九△茶入の/蓋師(フタシ) 00066190L12十△はや口にてゑとき 00066200L13十一△持仏に鬼の事(1オ) 00066210L14十二△利根なき人物かす事 00066220L15十三△ころも屋の事 00066230L16十四△城請取の事 00066240L17十五△有馬の火事の事 00066250L18十六△はり/札(フダ)の事 00066260L19十七△利根成豆腐うり 00066270M1十八△はじめとハちがふた 00066280M2十九△夜番御用心の事(1ウ) 00066290¥P212 00066300¥T1露新軽口はなし巻四 00066310¥N1¥J 00066320¥X第一△む筆成人無筆の所へ手紙の事 00066330L5さる無筆成人、金ざしと、かせと書て手かミをつかハされ 00066340L6た。先様是を見て、これハ金をかせといふ事也。さらバ返 00066350L7事をせんとて、食つぶと、なの葉と書てやられた。さて、 00066360L8かの無筆の人これを見て、さん※にはらをたて、女房に 00066370L9いふやう、扨も+上の町の孫左衛門ハきこへぬ人じや。 00066380L10かねをかりにやりたれバ、なの葉とめしつぶとかいてくさ 00066390L11れた。めしハはんのこゑ有によつて、なはんをせいといふ 00066400L12事じや。扨も+きこへぬ事をいふとはらをたてれば、女 00066410L13ばう、いや+それハなはんでハあるまい。めしハいひの 00066420L14こゑ有。ないといふ事で御座らうといへば、てい(2オ)主 00066430L15きゝて、まことにさやうの事もあらう。ないならハかなで 00066440L16書ておこさいて、おゝきなあてじをかいた。 00066450¥N2¥J 00066460¥X二△かんばんのよミやう 00066470L19田舎人京へのぼり、さる所に、あきた新わらびと有かんば 00066480M1んをミて、是ハめつらしきことや。いかやうなわらひぞ。 00066490M2きかんとて、かと口にしばし立ていられしを、内より、何 00066500M3の御やうぞと申。いや、あき田新わらひかきゝたいといハ 00066510M4れた。内のものども、くつ+とわらいければ、かのいな 00066520M5か人申さるゝハ、さてもおかしもないわらいに、かんばん 00066530M6をたされた。 00066540¥N3¥J 00066550¥X三△主にかゝりの事 00066560M9ある所の手代あたごへまいるに、みちすがら、うたいをう 00066570M10(2ウ)たハれた。やう+二三ばんおほへられたれども、 00066580M11大音声こゑがよかつた。去人きゝて、さてもよきうたいか 00066590M12な。さらバとハんとて、申、只今のうたい、上がゝりにて 00066600M13御座る/が((かカ))下がゝりにて御座るかととハれた。いや、上がゝ 00066610M14りにても下がゝりにても御座らぬ。主にかゝりにてござる 00066620M15といふた。 00066630¥N4¥J 00066640¥X四△田舎衆三条やど屋の事 00066650M18いなかしゆ十人ばかり三条のやど屋にとまりけり。二かい 00066660M19座敷へあげけれバ、目なれぬ所ゆへ、さて+、天へちか 00066670¥P213 00066680L1い所にをくと申けれバ、京ハいしの上のすまいといふハわ 00066690L2る口、大かたやねの上のすまいと、かしこらしき人いはれ 00066700L3ける中に、水風呂にいれとて、/下(シタ)からよび候へバ、あがる 00066710L4ハあがり(3オ)けれ共、おりやういかゞと、ひしめくうち 00066720L5に、壱人、これ+、われにつきておりよとて、はしごを 00066730L6さかさまにくだる。下にいける人&わらいけれバ、いやと 00066740L7よ、さきにねこがかやうにしておりた。なわらいそといふ 00066750L8た。 00066760¥N5¥J 00066770¥X五△夜食のめしばち 00066780L11当年の寒気けしからぬゆへ、おやぢこたつをはなれず。夜 00066790L12食のおはちと共にあたりていらるゝ所へ、十二三に成むす 00066800L13こ、とば+来て、こたつへ足をふんごミ、おやぢの足を 00066810L14じかとふむ。おやぢはら立て、あのばちあたりめが。おや 00066820L15の足をふむものかとしからるれバ、かのむすこいふやう、 00066830L16何しにばちがあたらふ。食ばちをバふミハせぬにといふた。 00066840¥N6¥J 00066850¥X六△字の書やう(3ウ) 00066860L19さる人、くわんおんのをんの字ハ、どうやらかくといひけ 00066870M1れバ、ある人、されバ、しんにかけバ六百と書、さうにか 00066880M2けバ七百と申されし。音音 00066890¥N7¥J 00066900¥X七△利口すぎた小僧 00066910M5さる寺にうつくしさ、それハことばにものべがたき二八ば 00066920M6かりの小性有。だんな衆まいられ、さて+うつくしき生 00066930M7れつきかな。さりとハ此市三郎ハ、女にしてほしいことじ 00066940M8やといはれけれバ、小僧申けるハ、和尚様にも左様のおの 00066950M9ぞミにて御座りますといふた。 00066960¥N8¥J 00066970¥X八△わるずいなかんだ 00066980M12あるひだりかんだの人と四五人うちより、酒のミてあそび 00066990M13ける。左の手にて、かの左のかんだをかくし、立居共(4オ) 00067000M14にせしに、有壱人、ひだりのはうから、是さしますといふ 00067010M15て、さかづきさしければ、けハしさにひだりの手にてうけ 00067020M16とり、いつもかくす目なれば、うけさまに右の手にて右の 00067030M17目をふさかれたれば、火のあかりが見へぬを、はてわるじ 00067040M18やれな。たがけしたといはれた。 00067050¥P214 00067060¥N9¥J 00067070¥X九△茶入のふたし 00067080L3さるいなかのちやのゆじや、ひさうのちや入のふたわれて 00067090L4なかりけり。京へのぼりたるこそさいハひとおもひて、ふ 00067100L5たしの所へ行、色+と吟味の上にてあつらへられけれバ、 00067110L6ふたや、てうじやうへやのぼりけん、あハぬさいくなれど 00067120L7も、かさねてのさいくのためにて御座りまする程に、して 00067130L8見ませふと申けれバ、そちの手ならひにあハぬふたハ、 00067140L9(4ウ)いらぬといふてかへられた。 00067150¥N10¥J 00067160¥X十△はや口にてゑとき 00067170L12さるところに開帳有。いろ+の宝物どもゑときの坊主、 00067180L13のべられけるハ、是ハ弘法大師の作の観音。あれなるハ伝 00067190L14教大師の御作の大黒。其つぎ成が同作の十一面くわんおん、 00067200L15こなたのミだが太子の作。是が法然の二くずしの舎利。御 00067210L16おがミあれと、/息(イキ)をもつかずに申されけれバ、皆人&、に 00067220L17くずしならバ、此開帳巻直セといふた。 00067230¥N11¥J 00067240¥X十一△持仏に鬼の事 00067250M1さる人、持仏のまん中に見事に鬼をつくらせて、本尊にた 00067260M2て置、朝夕、未来ハ申にをよばす、現在共にたのミたてま 00067270M3つり候と、ふかくおこたりなくいのり被申候。有(5オ)人 00067280M4見て、扨+其方ハおかしき事をいたしをき、何とて鬼を 00067290M5たのミ申され候と申候へバ、いやとよ、仏菩薩弥陀如来ハ 00067300M6こちがたじやといはれた。 00067310¥N12¥J 00067320¥X十二△利根なき人物かす事 00067330M9さるしわき人、又しわき人の処えはしごかりにつかハし候 00067340M10へば、安き事にて候へども、其方へハならぬ。此はうへき 00067350M11てのぼりたまへと返事しければ、扨もにくいへんじかな。 00067360M12何そあいつがかりによこさぬ事ハあるまいと云所へ、水風 00067370M13呂桶御借候へと申こし候へバ、さてこそとおもひ、安き事。 00067380M14此方へ御出、いり候へといふた。 00067390¥N13¥J 00067400¥X十三△ころも屋の事 00067410M17田舎衆、三条通りを四五人づれにてとをりさまに、見せに 00067420M18(5ウ)おや子二人いられけるに、四五人の衆、いなかごゑ 00067430M19にてたか+と、しまばらへハどちらへまいる。をしへて 00067440¥P215 00067450L1くだされよといハれたれバ、是を西へとをしへた。かたじ 00067460L2けないとて西へ行、しまバらにハのうれんなが+とかけ 00067470L3て、色よき女ばうのいるときゝ及び、見んとおもひていそ 00067480L4かれけれバ、衣の店へ行、さてこそながのうれん有。さら 00067490L5バ、おもひのまゝに見物せんとおもひ、のうれんをしあげ 00067500L6+見られけれバ、女とも大勢、ころもぬふてゐけるを見 00067510L7て、扨こそとおもひて、ようぬけまするといはれた。 00067520¥N14¥J 00067530¥X十四△城請取の事 00067540L10さる大名、西国辺へ城請取に御くだりのをりふし、わかき 00067550L11さぶらひしゆ、大坂どうとん堀にて三つ足の(6オ)子を見 00067560L12せものにいたししを、立とまり見候ハんやと有ければ、き 00067570L13どのもの申候ハ、きのふ迄ハ三文宛で見せ申候へども、今 00067580L14日ハまけて一文づゝと申候へバ、さふらひ衆、大事の門出 00067590L15に、いつせんにまけてハならぬとて、見ずにかへられた。 00067600¥N15¥J 00067610¥X十五△有まの火事 00067620L18湯本の薬師如来ハ行基の御作、めいやくし也。しかるにお 00067630L19ゝき成火事にて、薬師如来やけたまふとも申す、のけたと 00067640M1も申す。いかゞととハれけれバ、ある人申けるハ、いつく 00067650M2しハやけたまへ共、/三(ミ)くしハのけたといふた。 00067660¥N16¥J 00067670¥X十六△はりふだの事 00067680M5あるいしや、宿ふだに、/生田上成(いくたじやうせい)とかきてをきし。さる 00067690M6(6ウ)もの見て内へはいり、扨+めづらしき御事や。私、 00067700M7つゐに見申たる事なく候侭、ひとめ御見せ被下いと申。内 00067710M8より、それはなにの事ぞといへバ、おもてに、いきたかミ 00067720M9なりとかきて候と申。いや+、いきたハさてをき、しん 00067730M10だかミなりもないとわらいし。 00067740¥N17¥J 00067750¥X十七△利根成豆腐うり 00067760M13さるところに庚申の夜、とうふうりしをよべ+どきかす 00067770M14行しを、人をいだしてよびかへし、そこなとうふや。耳ハ 00067780M15ないかといへバ、やう+一ツござりますと、耳豆腐をい 00067790M16つてうをいて行しと。 00067800¥N18¥J 00067810¥X十八△はじめとハちがふた 00067820M19芝居へ見物に行しに、あるもの、あミかさきて、さきにけ 00067830¥P216 00067840L1ん物していければ、あとの人、あミかさとられよとて、さ 00067850L2い+(7オ)申せどもぬかず。いかいじやまの人かな。口 00067860L3でいふ時にとらいで、引ばかなといふてもとらぬ。男だて 00067870L4かとおもひて、こらえかね、あミがさを引たくれバ、にが 00067880L5+しきかさかき也。引たくりし人も笑止におもひて、や 00067890L6はりきて御座れとて、又きせた。 00067900¥N19¥J 00067910¥X十九△夜番御用/番((ママ))の事 00067920L9夜番ども寄合いふやう、何と、上の町の又兵衛が御ようじ 00067930L10程、大をんでよい声ハないといふ。其内にしさいなものい 00067940L11ふやう、いや+、又兵衛がこゑハよいけれど、ぶひやう 00067950L12で、もちつとぼうにのらぬ。(7ウ) 00067960¥Y1露新軽口はなし巻五目録 00067970M3第一△薬ぐひの事 00067980M4二△絵心なき者 00067990M5三△よいかけんな事 00068000M6四△七条のやきちん 00068010M7五△男きんぜいの所 00068020M8六△目出たい世中 00068030M9七△かしこうない人 00068040M10八△よきさうれい見ぬもの 00068050M11九△あてのつちがはづれた 00068060M12十△いひさうな事 00068070M13十一△又いひさうなもの(1オ) 00068080M14十二△むこんの事 00068090M15十三△かたき打の仕出し 00068100M16十四△にハか道心 00068110M17十五△所ちがひの事 00068120M18十六△むすこがじまんばなし 00068130M19十七△いぬのまじない 00068140¥P217 00068150L1十八△大仏の尺迦へ願立 00068160L2十九△男じまん(1ウ) 00068170¥T1露新軽口はなし巻五 00068180¥N1¥J 00068190¥X第一△くすりぐひの事 00068200M5さる寺に坊主四五人あつまりて、薬ぐひにどぢやうをかい 00068210M6に、とくりもたせて小僧をつかハしけり。道にて、小僧、 00068220M7何をかいにいかれた。小僧申ハ、この徳利ハすか、醤油か。 00068230M8さしたらバ一引やらうといふた。 00068240¥N2¥J 00068250¥X二△絵心なきもの 00068260M11絵心のなきものにて、てうちん屋のかんばんかきて下され 00068270M12候へと申。ゑかゝねど$△かくのごとくかきてやる。去 00068280M13もの申ハ、是ハあんどんのかんばんじやといふ。かきたる 00068290M14人、さてハあてじかといふた。 00068300¥N3¥J 00068310¥X三△よいかけんな事(2オ) 00068320M17去在所のもの参宮いたし候に、大夫とのにて風呂に入、草 00068330M18臥た、たまハりた、おはらい+といふ。一人のもの申ハ、 00068340M19おはらいハまづ、風呂をあがつてからの事といふた。 00068350¥P218 00068360¥N4¥J 00068370¥X四△七条のやきちん 00068380L3さる有徳成人相はて、七条にて火葬にいたし候時、をんぼ 00068390L4う、やがてかたびらをはぎて火さうにいたし申候。はいよ 00068400L5せの時分、やきちんとて銭六文やりければ、をん坊、是ハ 00068410L6やきちんにハすくなしといふ。いやそれにてよし。その方 00068420L7がかたびらをはぎたるにより、今ハはぎやきハ五文六文じ 00068430L8やといふた。 00068440¥N5¥J 00068450¥X五△男禁制の所 00068460L11御葬礼のあと泉涌寺にておがミ申時、おとこハならず(2ウ) 00068470L12女ばかりおがミ申。在所よりぢゞばゞ参られたり。男ハな 00068480L13らぬといふ。ぢゞはらをたて、ゑこひいきあらバかへらん 00068490L14といふ。ばゝ一人おがミに行。ぢゝ腹をたて、ばゝ、その 00068500L15方斗一人おがミて仏にならバなれ、/高屋(カウヤ)でおもひしらせん 00068510L16といふた。 00068520¥N6¥J 00068530¥X六△目出たいよの中 00068540L19百性、やねふきなをす。内の三蔵、やねよりおちけれバ、 00068550M1人&きもをつぶし、めがまひたるか、こしがぬけたるか、 00068560M2たゞしハしにハせぬかとあハてふためく。旦那きゝ、いや 00068570M3+、此やうなよの中のよい時ハ、下へこぼれたものに、 00068580M4わるいものハないものじや+。 00068590¥N7¥J 00068600¥X七△かしこうない人 00068610M7さるしまつなもの、銭百文ひろひたるが、此銭にか(3オ) 00068620M8ミに書付のふだ有。壱匁八分と書付有。今ハ銭百文が壱匁 00068630M9四分五リン成に、壱匁八分にてひろひ候へバ、三分五リン 00068640M10のそん也とて、ひろハれなんだ。 00068650¥N8¥J 00068660¥X八△よきさうれい見ぬもの 00068670M13田舎者四五人京へのぼり、三条通を行、然る所へよい衆相 00068680M14はてられて、けつこう成さうれいきたる。つゐに目なれぬ 00068690M15事なれバ、あれハ何成ぞ。上人様が、しろいのりものに、 00068700M16はくつきたふろしきをしき、大勢人が上下にて来る。何な 00068710M17るらんと申候へバ、しさいらしく申人有て、あれハ諸国の 00068720M18大名衆より、御所がたへ御音信ものがゆくといふた。大事 00068730M19のものかといへバ、いやこわめしといふ。つれども、それ 00068740¥P219 00068750L1ハ中にも見ぬにといへハ、こわめしのし(3ウ)やうこに、 00068760L2ミなひたいに、ごま塩をあてゝゐるといふ。 00068770¥N9¥J 00068780¥X九△あてのつちがはづれた 00068790L5花山に万日のゑかうの時、大分に雨ふり、茶や、あき人、 00068800L6やくしや、其外のものまで相応に損をせり。十念おろした 00068810L7まふ御長老衆、いつもハなむあミたぶとさつけられしなれ 00068820L8とも、かれども雨ふりて、きのどくにおぼしめし、十念を、 00068830L9あうまい+とさづけたまふ。花山とハはなの山とかくじ 00068840L10なれども、くわさんとかなにてかく時ハ、くハさんがしや 00068850L11う也。@但シハ男共がいふ|た事か。△△△△@ 00068860¥N10¥J 00068870¥X十△いひさうな事 00068880L14さる所に、/御前(ゴゼ)にろくろ首有とわかき衆申せば、見にゆか 00068890L15んといふ。壱人申ハ、よいとて/とて((ママ))、さる時に五三人(4オ) 00068900L16夜に入て行、さま※あそびいたりけり。かへらねバねぬ 00068910L17ほどにとて、かへるていにておもてをあけ、皆+/椽(エン)の下 00068920L18より、かのごせ、ねいり候を見ていたりけり。あんのごと 00068930L19く、きやく衆かへるとおもひ、ねやに入けり。くだんのろ 00068940M1くろくび、そろ+ぬけ、かの見へぬろくろ首にて、むか 00068950M2ひになにがあるもしらずぬけけるが、あんどにゆきあたる 00068960M3を見て、こらへかね、かのゑんの下より、右へ+といふ 00068970M4た。 00068980¥N11¥J 00068990¥X十一△又いひさうなもの 00069000M7さる所に、をしのこじき、かど+をごきたゝきありきし 00069010M8に、さる人、あれハにせなるといふ。だんなきゝて、其や 00069020M9うにいひまするな。ふびんなる事かな。その方ハふびんや。 00069030M10そちハしやうじんのをしじやといはれければ、かのをし、 00069040M11(4ウ)うれしくおもひ、あゝといふたもおかし。 00069050¥N12¥J 00069060¥X十二△むごんの事 00069070M14さるもの三人寄合、廿三夜まちをいたし、夜なか迄の事な 00069080M15るに、よなかまでむごんして月をおがまんとて、むごんと 00069090M16さだむ。一人あくびをして、ものいはずにハいられんもの 00069100M17じやといふた。二人めの人、むごんにものいふかといふて、 00069110M18二人やぶる。今一人のひといふやう、まだいはぬものハお 00069120M19ればかりといふた。いひハする。 00069130¥P220 00069140¥N13¥J 00069150¥X十三△かたき打の仕出し 00069160L3こじきにハ種なし。さるもの、非人になりて有しを、いに 00069170L4しへのちかづきあふて、そのはうハなにとてかやうに、ひ 00069180L5にんになりたるとといければ、いや、われらハおやぢをも 00069190L6ちし。(5オ)たれぞころしたらバとそんじ、かたき打にい 00069200L7でたといふた。 00069210¥N14¥J 00069220¥X十四△にハか道心 00069230L10にハか道心有。しやくじやうふりて修行に行けり。さる人 00069240L11申けるやうハ、世間の修行人ハ、念仏かはつちにいてたま 00069250L12ふに、いつも其方ハしやくじやう、いかに。されバ其事。 00069260L13わたくしハぞくの時、大分にしやくせんをいたし、さき様 00069270L14へしやくでう手がたいたしつかハし申候。その埒、今にあ 00069280L15けさる内に、坊主になり申候ゆへ、そのほどこしにもなり 00069290L16候ハんとぞんじ、ふり申候。又ものいハざるハいかにとい 00069300L17ふ。借状手形の奥書にも、一言申ましきとかきて候。 00069310¥N15¥J 00069320¥X十五△所ちがひの事(5ウ) 00069330M1さる者絹三尺もとめ、はだの帯にいたし、絹の下の帯をよ 00069340M2ろこびありく。さる人とハれけるハ、かゞかとといければ、 00069350M3いや、ゑつ中といふた。 00069360¥N16¥J 00069370¥X十六△むすこがじまんばなし 00069380M6さる人四五人よつてはなししていられけるが、はなしのう 00069390M7へにて壱人いはれけるハ、わたくしがおやぢハ、まい日て 00069400M8らまいりばかりしてい申され候といはれければ、皆人、さ 00069410M9て+、それハきどく成事でござると、色+ほめければ、 00069420M10/其(ソノ)中に、むふんべつ成人有。われも人にほめられんとおも 00069430M11ひ、私がおやぢハ、むまれてより此かた、女のはだをふれ 00069440M12られませぬといへバ、皆人いふやう、こなたハ養子か実子 00069450M13かととふた。成ほど私ハ実子でござるといふ。しかればこ 00069460M14(6オ)なたハどこからむまれたといふ。その処へ、きがつ 00069470M15きませなんだといふた。 00069480¥N17¥J 00069490¥X十七△いぬのまじなひ 00069500M18さる人云事ハ、いぬのおどするにハ、小ゆびに/虎(とら)といふも 00069510M19じをかけバをどさぬといへば、又人、それでも、いつぞや 00069520¥P221 00069530L1かきてとをりけれども、上の町のいぬが大ぶんおどしたと 00069540L2いへば、いや+、それハいちがひにハいはれぬ。無筆な 00069550L3いぬなれバ、しやう事もないといはれた。 00069560¥N18¥J 00069570¥X十八△大仏の尺迦へ願立の事 00069580L6さる人、一子をわづらハせ、大仏のしやかへ願をかけ、此 00069590L7世忰ほんぶくいたし候ハヽ、おまへにとちやうをかけてし 00069600L8んぜませうと申せバ、さつそく平愈いたし(6ウ)ました。 00069610L9夫婦よろこび礼まいりいたし、扨とちやうのもくろミいた 00069620L10し候へバ、さても+大分いり申ゆへ、是ハいかにしても 00069630L11なり申さず候ゆへ、せめてきどくづきんにてこらへて/下(クダ)さ 00069640L12んせと申された。 00069650¥N19¥J 00069660¥X十九△おとこじまん 00069670L15ある裏長屋おほき所にて、一人の女ばうの申けるハ、さて 00069680L16さてこちのおやぢハ、ミな+のきかしやるやうに、いつ 00069690L17はいすきると酒がさけのむことじややら。いやが上に、の 00069700L18もう+といふて、ちとをそいと、たゝくやらわめくやら、 00069710L19きのどくな事てござるといへば、皆+、おなごハひとつ 00069720M1じや。かさねて、つえとりばへをするならバ、皆よつてた 00069730M2ゝきかへさん。おしらしやれと申ければ、たのミまする 00069740M3(7オ)とて約束してをく。あんのごとく又よい機嫌になり 00069750M4てもどり、酒のもう+とあたけ、女ばうをたゝく時、女 00069760M5バう約束のごとく、ほうはいへ申ければ、廿人斗のあひ借 00069770M6屋のかゝや後家たち、手&に火吹竹、すりこぎなどもちよ 00069780M7つて、おやぢやらぬ、こごといふかとて、ぶつてかゝれば、 00069790M8女なれ共多せいかなハず。隣へにげこミて屏風のかげにか 00069800M9ゞみゐる。隣のてい主是を見て、あさましや。女にたゝか 00069810M10れ、せうし+。此男ハ、うちのやつと十五年そへども、 00069820M11つゐにこぶしひとつもあてられぬといふた。 00069830¥Q元禄十一△子歳正月吉日△△△△藤兵衛板行;(7ウ) 00069840¥P222 00069850¥U噺本大系△第六巻 00069860¥T露五郎兵衛新はなし 00069870¥G 00069880¥Y 00069890L16元禄十四年刊 00069900L17露五郎兵衛作 00069910L18半紙本一冊 00069920L19国会図書館蔵 00069930¥Y都露新咄目録 00069940M3大洪水神なりはなし 00069950M4かみなり落し所& 00069960M5せんふく寺の神鳴はなし 00069970M6うハき成神なりはなし 00069980M7女のかみなりはなし 00069990M8かみなりのこまはなし 00070000M9中嶋両替やの神なり 00070010M10六角表具やの神なり 00070020M11川なかれひらふてなんき 00070030M12川なかれ玉まつりはなし 00070040M13うつどんのすまふとり 00070050M14そさうなるおしゆくらう 00070060M15老人の女郎かい 00070070M16あはびとさゞいのはなし 00070080M17まじないのふだのはなし 00070090¥P223 00070100¥Y 00070110L1俗△名△△△露五郎兵衛 00070120L2/戒(かい)△名△△△/露休(ろき□) 00070130L3△△△△△△△△生年五十九才 00070140L4やしなふて 00070150L5△△くれぬ人こそ 00070160¥G 00070170L13△△△△かたからめ 00070180L14一もん銭を 00070190L15△△おしむ君かな(ウ) 00070200¥T1露五郎兵衛新はなし 00070210¥N1¥J 00070220¥X百日の日てりより一時の洪水 00070230M5比ハ元禄十四辛巳六月十九日、また/更(ふけ)やらぬ/宵(よい)のまの、風 00070240M6すさまじく/雲(くも)おこり、雨おり+打しきり、物すさまじく 00070250M7ねもやらぬ、夜あけのかねつく+と、ながめあかせし廿 00070260M8日の朝、六ツのひゞきともろともに、なるいかづち北にお 00070270M9こり、/車軸(しやちく)の雨ミなみにハしり、いなづまハくわゑんをあ 00070280M10ざむき、くらさハ/一天(いつてん)に/漆(うるし)をさす。心をくれたる人ハ/蚊帳(かや) 00070290M11にひれふし、うんらいくうせいでんの口もともわなゝき、 00070300M12あるいハつかへ/血(ち)のみちをなやミ、たけき人ハ/戸棚(とたな)/半櫃(はんひつ)の 00070310M13そばにあぐらかきて、きせる持ながら人のこハがるをあざ 00070320M14わらいて、しばらくハつよみを見せたれど、みせあけよハ 00070330M15えいはす。/香(かう)/□□□((もれとカ))(一オ)せがむもかたはらいたし。/尤(もつとも)な 00070340M16る哉、/洛中(らくちう)/上中(かミなか)京/数(す)百/ケ所(かしよ)に/雷(らい)おちて、人をそこない家を 00070350M17さく事、壱丁に二ケ所ハおつれと、一ケ所もおちざる所ハ 00070360M18なしとぞ。此雨に/洪水(こうずい)して、/堀川(ほりかハ)一/条(てう)の/橋(はし)より/初(ハじめ)、/大炊殿(おほいどの) 00070370M19ばし、三条四条、其間の/坊門(ばうもん)の/橋共(はしとも)ハいふに/不及(およはず)、/堀川西= 00070380¥P224 00070390¥G 00070400M1東(ほりかハにし=ひかし)の/家(いゑ)に水をはせこみ、/家財雑具(かざいざうぐ)をたゞよハせ、/朝(あした)より/暮(くれ) 00070410M2までハ/人民(にんミん)を二/階(かい)に/住(すま)せたれば、子を/落(をと)して見ながらに/殺(ころ) 00070420M3し、/妻(つま)を/沈(しづ)めて/臍(ほそ)をかむ。中にも四条川原にて/溺死(おほれしゝ)たる人、 00070430M4数しらず。/其故(そのゆへ)ハ/例年(れいねん)六月七日より同十八日の夜迄、/祇園= 00070440M5会(きおん=ゑ)の間、/川床(かハとこ)に/洛中(らくちう)の人を/留(とゞ)め、/酒色(しゆしよく)の/便(たより)に小屋を打なら 00070450M6へて、/極(きハ)しらぬ/町作(まちつく)り/幾千軒(いくせんけん)といふ/限(かきり)なきを、十九日の朝 00070460M7ハ/加茂川(かもかハ)や/糺(たゝす)の/森(もり)の水無月/祓(はらい)かけて、/晦日(つこもり)迄の/群集(くんじゆ)を心か 00070470M8け、手つがいよく、小屋をたゝ(一ウ)すぐに/糺(たゝす)の/森(もり)へはこ 00070480M9び、/形(かたち)ばかりに立たるもあり。いまだ四条に/諸道具(しよだうく)をかた 00070490M10づけ、/菰(こも)ばりをめくりかけ、石くどに/茶(ちや)がますへて、小む 00070500M11すめが/化粧(けはい)のゆなど/涌(わか)すなるも/多(おほ)し。又ハ/稲荷(いなり)、/北野(きたの)、/真= 00070510M12如堂(しん=によとう)、/黒谷(くろたに)の/辺(へん)より出たる茶やハ、/尋常(よのつね)の/宿替(やとがへ)と/違(ちか)はす、 00070520M13あらましの物ハ/半櫃(はんひつ)に/仕込(しこミ)、明日ハふき/板(いた)、/竹(たけ)たるき、/葭= 00070530M14簾(よし=すたれ)、/傘(かさ)/木履(ほくり)/迄(まて)、心を/配(くはり)て/持(もち)ありくハ、/皆(ミな)/客(きやく)への/働(はたらき)にて、/往= 00070540M15来(ゆき=ゝ)を/車(くるま)に/積(つミ)わたして、/糺(たゝす)へと心さし、其夜ハいつもの小宿 00070550M16に臥けるが、明六つの/空(そら)けしからぬ、/雨(あめ)といひ/神鳴(かミなり)といひ、 00070560M17日やといの/娘(むすめ)か/泣出(なきた)して、かゝ様に/逢(あい)たいとさけふ中に、 00070570M18ひし+となる/雷(いかつち)に目を見つめ、/薬(くすり)よ水よとあハてさハく 00070580M19内、やれ川水こそましたれと、/縄手(なハて)、/石垣(いしかけ)、/宮川(ミやかハ)町、とり 00070590¥P225 00070600L1+にわめき出す。/南無(なむ)三/宝(はう)(二オ)とかけ出す人/音(をと)、かみ 00070610L2なりハぐわら+、川水ハどう+、/門(かと)の/戸(と)ハぐわたひし、 00070620L3なくやらさけぶやら、おきつまろひつかけつけたれ共、/次= 00070630L4第(し=たい)に水ハかさまさる。せんかたなさに小屋に取つき、/諸道= 00070640L5具(しよたう=く)/借床(かしとこ)に、二三人四五人つゝ/乗(のり)かゝり、しはしハ水をふせ 00070650L6きしかとも、いしやほん、きんちやく/神(かミ)なり殿、いかなる 00070660L7水をか/落(おと)されけん、せんくりにおしなかされ、思ひもよら 00070670L8ぬ川なかれ、/死骸(しがい)を/残(のこ)せし人/数(かす)、合百三拾七人なりとかや。 00070680L9/前代未聞(せんたいミもん)の事とも也。 00070690¥N2¥J 00070700¥X/洛中(らくちう)に/神(かミ)なり/落(おち)し所& 00070710L12六/角堂(かくたう)の内三所、同/門前(もんぜん)の/表具屋(へうくや)、同通/烏丸(からすまる)にしへ入町、 00070720L13/室町(むろまち)通六/角(かく)上ル大もんしや、同町つほや、/釜座(かまのさ)竹や町下ル 00070730L14/釜(かま)や、/御幸(こかう)町竹や町下ル(二ウ)あふミ屋・@高くらおし|かうしノ角@古かね 00070740L15屋・@同えひす|川下ル丁@/染物(そめもの)屋・@からす丸|二条下ル@/越後(えちご)や・@高くらおしこう|ちひかしへ入丁@丸屋・@ふや|町三@ 00070750L16@条下|ル△@/桑名(くハな)や・@おしかうちさ|かい町のかと@/国分(こくふん)や・@同にし|へ入町@茶わん屋・@同さかい町|東へ入町△@酒 00070760L17屋・@しん町にし|き下ル町△@へにや・@同所|会所@・@同|町@/厨子(づし)・@にしきの□□|しん町西へ入@/亀薬師(かめのやくし) 00070770L18四所・二条角くら・同所二所・@上長|者町@/桔梗(きゝやう)や甚三、@さハら木町|小川西へ入@神さ 00070780L19きや・@衣たな丸太|町下ル丁△@てうや・@新町竹や|町上ル△@/鞍(くら)や・/水薬師(ミつやくし)・@にしのとうゐん|下立うり下ル△@ 00070790M1大もんしや・@かまの座下立|うり下ル角△@つたや・@小川通|竹や町@/作庵(さくあん)・@からす丸|下長者町@ゐつ 00070800M2ゝ屋四郎衛門・/聚落(しゆらく)@三井浄貞|下やしき@・@東とうゐん|丸太町下ル@らうそくや・@仏光寺大|宮西へ入@ 00070810M3寺之内・/祇園執行(きおんのしゆきやう)・@よした|さい所@/雷火(らいくわ)有・@相国寺|つきぬけ@用人の所・@今出|川室@ 00070820M4@町西|へ入@両かへ屋・@むろ町|かしら丁@ろくろ/縄(なハ)や・@からす丸たこ|やくし下ル丁@二所・@小川一|条上△@ 00070830M5太刀屋・@ちおんゐん|町ミよし丁@/宿(やと)かりの所@下女一|人死ス@・@寺町二|条上ル@要法寺・/菅太神(かんたいしん)・ 00070840M6@小川えひ|す川上ル@七条/札(ふた)の/辻(つし)@らい火にて|二けん焼△@(三オ)(三ウ・四オ挿絵)@人二人|死す△@・@同|し@ 00070850M7@ゆし|やか@・@かまの座|中長者町@・@寺町真如|堂前ノ町@・@百まんへ|んやしき@・@にし六|条寺内@三所・@ほり川二条|石はし上ル@・@ひかし|の洞院@ 00070860M8@たこや|くし△@・@しやうと寺|むら一軒@/雷(らい)火・@しも立うりほ|り川東へ入△@・@ゐのくま|御池下ル@大もんしや・@しやう|こゐん@ 00070870M9@ノ|森@雷火・@さかい町おし|こうち下ル△@かうりん・@しん町さハ|ら木町下ル@へにや・@しんせん|ゑん町△@・せ 00070880M10いくわんし・/西陳(にしちん)・@五|条@本/覚(かく)寺・@せん|本町@/瑞雲院(すいうんゐん)・@やな|き町@米屋・@大せん|ほん丁@ 00070890M11かうや・@本せいくわんし|あふらのかうち@板/坂((垣カ))屋・@ほり川仏|光寺下ル@川の中・/壬生(ミふ)・@さかい|町おし@ 00070900M12@かうし|上ル△@いたみや・@出水通西△|とうゐん下@/寺(てら)・@ほり川上△|長者町上ル@/材木(さいもく)や・上かも@らい|くわ@ 00070910M13@にて家三け|んやくる△@・@きた|の△@/専徳寺(せんとくし)、/猶(なを)此外にありといへと、所たしかな 00070920M14らず。又ハふかくつゝしみて申さぬも有と也。 00070930¥X3¥J 00070940¥X/専福寺(せんふくし)神なりはなし 00070950M17上京のせんふくしといふ寺へ神なり/落(おち)て、/仏前(ふつせん)の/天蓋(てんかい)、/唐(とう) 00070960M18はた、/来迎柱(らいかうはしら)なと/微塵(ミちん)に打くたき、/堂(だう)も/門(もん)も一時のけふり 00070970M19となさんと、あれわ(四ウ)たるほとに、/和尚(おしやう)おとろき、/本= 00070980¥P226 00070990L1堂(ほん=たう)へはしり出、にくき神なりめじや。是ハ/堂(だう)をつぶすかと 00071000L2いかられければ、いかにもつぶさうもしれず。八&のかみ 00071010L3なり、ガウじやといふ。/長老(ちやうらう)、われハ/出家(しゆつけ)じやによつて、 00071020L4さやうの事しらず。とても人力にハ/及(およ)ぶまし。/仏力(ぶつりき)を以 00071030L5て、つんとあがらせぬといへば、いや+、あがらせまい 00071040L6といはるゝとも、こちハ/太皷(たいこ)の二であがつて見せうといふ 00071050L7た。 00071060¥N4¥J 00071070¥Xうはきなる神なり 00071080L10同じ比、うハき神なり、ひし+となるほどに、/嶋(しま)ばらへ 00071090L11とんとおち、ある/揚(あけ)屋の/座敷(さしき)に入て、/屏風(へうふ)せうじをさしの 00071100L12ぞき、なげふしなどうたいてかけまはるほどに、/気象(きじやう)なる 00071110L13男、つか+とよりて、神鳴めを/取(とつ)てふせ、おのれハ/性(しやう)の 00071120L14わるひやつじや。此やうなる/色里(いろざと)(五オ)へ/落(おち)て、上郎様を 00071130L15おびやかすといふ事が有物かと、さん+しかりけれは、 00071140L16神なりいふ様、我ハ/内気(うちき)なる神なりにて、かやうの所へく 00071150L17るも/恥(はつ)かしうてならぬを、是、此うしろな/大(たい)こめがつれて 00071160L18来たというた。 00071170¥N5¥J 00071180¥X女かみなりのはなし 00071190M3おなし比、おし/小路(こうち)/古道具(ふるたうく)やのていしゆ、/思案(しあん)して、とか 00071200M4くほらのかいハ、諸事の物がおそるゝによりて、/吹(ふき)たつれ 00071210M5ハきたうになるけな。/急(いそい)てふけとて、家+申合せ、ぶう 00071220M6+とふきたつるに、ふしきや、其家+へハ/落(おち)ず。其あ 00071230M7たりの木ぐすり屋に/法螺(ほら)の/貝(かい)ハなし、/竹(たけ)の/筒(つゝ)を吹けるに、 00071240M8神なり/落(おち)けれは、/亭主(ていしゆ)きもをつぶして、やれ神なりめ。か 00071250M9いをふくに、なぜおちたととがめければ、神なりきいて、 00071260M10/貝(かい)ならばおち(五ウ)(六オ挿絵)ねど、是ハ竹のつゝなれば、 00071270M11扨ハ下かいのしまい風呂かと思ふておちたといふた。 00071280¥N6¥J 00071290¥Xかみなりのへそとるはなし 00071300M14神なり中間にも/惣(そう)大将ありて、下+の神なりどもめしよ 00071310M15せ、此たびハ大ぶん下かいへおちたれば、定てへそ共、大 00071320M16ぶんに有べし。急ぎ出して見せよとありければ、下かみな 00071330M17りども口をそろへ、御もつともで御ざります。さりながら、 00071340M18今ほど下かいにハ、まひごまがはやりますゆへ、ミな+ 00071350M19/桑(くハ)の木でこしらへて、手に+持ていまするゆへ、ふとこ 00071360¥P227 00071370L1ろへいかな事、手もさへらるゝ事て御ざらぬといふた。 00071380¥N7¥J 00071390¥X四条中嶋の神なり(六ウ) 00071400L4中嶋の両がえやへ、ひし+とおつる。ていしゆ/肝(きも)をつぶ 00071410L5し、やれ、おのれハ何ものじや。おれハ神なりじやといへ 00071420L6ば、/亭主(ていしゆ)聞て、/爰(こゝ)ハ所もわるし。/断(ことハり)なしに二階へ/落(おつ)るとい 00071430L7ふ事か有物かとしかりければ、やけでかまはぬといふた。 00071440¥N8¥J 00071450¥X六/角前(かくまへ)/表具(へうく)やの神なり 00071460L10六/角前(かくまへ)の/表具(へうく)屋へ/落(おち)て、さん+にあばれ、/雲(くも)ゐをさして 00071470L11あがりける。/跡(あと)にて/内外(うちと)のもの/共(とも)、やう+/気(き)を取なをし、 00071480L12さてもきびしき事や。/世(よ)も/滅(めつ)するかと思ふたとて、/門(かと)の/廻(まハ) 00071490L13りを見ありきけるに、/太皷(たいこ)一つ/落(おち)てあり。/扨(さて)も+、/神(かミ)な 00071500L14りがたいこをわすれていにおつたハとて、/近所(きんしよ)の人にも見 00071510L15せて、/守(まも)りにもなるべしと/悦(よろこ)ぶ所へ、/風(かせ)の/神(かミ)をくる(七オ) 00071520L16/乞食(こつしき)、うろ+と/尋(たつね)きたり、此ていを見て、申+、それ 00071530L17ハ/私(わたくし)が/大(たい)こで御ざる。/先程(さきほど)のきびしさに、取おとしてにげ 00071540L18ましたといふた。 00071550¥N9¥J 00071560¥X川ながれのはなし 00071570M3川ながれハひろいが/ぢ((ママ))じやと、/欲(よく)ふかき/者(もの)ども、神なりハ 00071580M4おそろしながら、手に+くまで引さげ見れば、水ハはや 00071590M5/逆(さか)おとし、/茶(ちや)屋の/椀箱(わんはこ)、よしすだれ、/川床(かハとこ)、さんをみだし 00071600M6て/流(なか)るゝ中に、/長持(なかもち)ひとつながれ/来(く)るを、天のあたへと/悦(よろこ) 00071610M7び、/熊手(くまて)に引かけ、やう+に/取上(とりあ)ケ、/女房(にようはう)にみせ、是 00071620M8+、なんでも/衣類(いるい)や/銀(かね)ハ、してやつた物じや。そちにも 00071630M9きせるぞ。/悦(よろこ)べと、ふたの/錠(ちやう)まへを取て引あけければ、内 00071640M10より八十ばかり成おばゞ、もはや神なりハやんだかとて、 00071650M11そろ+と出られた。(七ウ)(八オ挿絵) 00071660¥N10¥J 00071670¥X川ながれ玉まつり 00071680M14其年の盆にハ、川ながれせし人の親兄弟、なげきの内の玉 00071690M15まつりなれば、取わき恋しき人にあふ心ちして、水むけに 00071700M16萩の露を手向けるに、/聖霊(しやうりやう)、大きに腹をたて、外の/客衆(きやくしゆ) 00071710M17ハともかくも、我+ハ水にあきはてたれば、水ハきくも 00071720M18いやじや。たはこの火たもといふた。 00071730¥P228 00071740¥N11¥J 00071750¥Xすまひ取のはなし 00071760L3此ころ何方にもすまひ有て、/遠国(ゑんこく)/近国(きんこく)のすまひ取、われも 00071770L4+と/登(のぼ)ル折ふし、六波羅の芝居にて、/相引(あいひき)が病気なるを 00071780L5大山が二番勝て、うれしがるやらほめるやら、其比の是沙 00071790L6汰也。/彼(かの)中間に、田舎の相撲取の少たらぬ人、相引を見て 00071800L7いふ様、あの人ハ手まへしやときいたとい(八ウ)へば、外 00071810L8のすまひ取、いかにも相引ハ拾貫匁や廿貫匁のまハしハ/仕(し) 00071820¥G 00071830M1やるといへば、是ハさて、/我(おれ)ハ此中、壱両壱/歩(ふ)のまハしを 00071840M2/買(かふ)てさへけつかうに思ふに、拾貫匁のまハしハさそ/結構(けつこう)に 00071850M3有ふといへは、いや、さうてハない。/銀(かね)のまハしの事とい 00071860M4へば、それハ何として、/重(おも)うてなりますまいといふた。 00071870¥N12¥J 00071880¥Xそさう成ル/年寄(としより)とのゝはなし 00071890M7下京ノ町の/宿老(しゆくらう)との、むかふよりわせるを、/同町(おなしてう)の/米(こめ)屋の 00071900M8/若(わかい)もの、雨ふりなれば、/笠(かさ)ぼくりをはき、米たハらせおい 00071910M9て来りしが、おとしよりへもくれいし、たかふ御ざります 00071920M10といひければ、おとしよりきかれて、やあ、またあがつた 00071930M11かといわれた。 00071940¥N13¥J 00071950¥X老人の/女(ちよ)郎ぐるひ(九オ) 00071960M14さる人、年よれどもむかしわすれず、/東寺(とうじ)まいりのつゐて、 00071970M15/嶋原(しまはら)へ行て、つぼね+をながめしに、/女郎(ちよらう)ハ見たし目ハ 00071980M16うとし。くわい中より目がねをいだし見られければ、女ら 00071990M17うはらをたて、/爰(ここ)なおやぢ様ハ、わるがねをミるやうにさ 00072000M18んすといへば、いや、わるうハないが、是もよほどすれた 00072010M19物じやといはれた。 00072020¥P229 00072030¥G 00072040¥N14¥J 00072050¥Xあわびとさゞいのはなし 00072060L14あわびとさゞいとのいふ事をきけば、さゞい申やうハ、さ 00072070L15て+、こなた様のやしきハ/間口(まくち)もひろし、口&もおほく、 00072080L16/殊(こと)に/奇麗(きれい)なるすまゐ、御うらやましやといへば、/蚫(あわび)きゝて、 00072090L17いや+、/我等(われら)/手前(てまへ)ハ/間口(まくち)斗で、うらゆきもなし。貴様ハ 00072100L18うら行も有。/殊(こと)に/表(おもて)に/戸(と)たて具(九ウ)まで御ざつて、御う 00072110L19らやましやといへば、さゞい/聞(きい)て、もつとも、戸たて/具(ぐ)も 00072120M1御ざつて/用心(ようしん)よく御されども、内せつちんてなんき/致(いた)すと 00072130M2いふた。 00072140¥N15¥J 00072150¥Xまじなひの/札(ふだ) 00072160M5丘闕闕闕闕。このような/咒(ましない)の札、/家&(いへ+)にあるを見て、そさ 00072170M6うなる人、/札(ふた)ハほしけれども/銭(せに)出す事ハいやなり。/宵闇(よいやミ)の 00072180M7比、人の家にはりたるを/盗(ぬすミ)て/張(はり)て置たり。夜あけて、あた 00072190M8りの人に見せければ、是ハ/借屋札(かしやふた)じやがといひければ、か 00072200M9の人へらぬ口にて、それも大事ない。/悪(わる)い/病(やまひ)も、あき屋か 00072210M10と思ふてはいるまいといふた。 00072220¥Q 00072230M13△△△△△△△△△△寺町通松原上ル町 00072240M14△元禄十四辛巳八月吉日△△菱屋治兵衛板(十オ) 00072250¥P230 00072260¥U噺本大系△第六巻 00072270¥T軽口御前男 00072280¥G 00072290¥Y 00072300L16元禄十六年刊 00072310L17米沢彦八作 00072320L18半紙本五巻 00072330L19東大国語研究室蔵 00072340¥Y序 00072350M3此/比(ころ)/京都(きやうと)へ上りけるに、みやこの/若(わか)き/衆(しゆ)、何と彦八、/難波(なにハ) 00072360M4にあたらしい事ハないか。うけたまハらん。されは、夕部 00072370M5/淀(よど)川にて水が/物(もの)申ました。何と+といへば、わかきしゆ 00072380M6/聞(きゝ)たまひ、水が物いふ、ふしぎにあらず。こちの/宮古(ミやこ)には、 00072390M7/露(つゆ)がはなしをするとおほせらるゝ。その/言葉(ことのは)をたねとして、 00072400M8さらば一はなし仕りませふ。とうざい+。(一オ)(一ウ挿絵) 00072410¥G 00072420¥P231 00072430¥Y1/軽口御前男(かるくちごぜんおとこ)巻之一目録 00072440L3一△/御進物(ごしんもつ)の大/根(こん) 00072450L4二△れうげちがひ 00072460L5三△北/野(の)ゝ/能(のう) 00072470L6四△にうり屋のかんばん 00072480L7五△/食(しよく)もげいの内 00072490L8六△すへふろの/難儀(なんぎ) 00072500L9七△すまふの/名乗(なのり) 00072510L10八△千日/寺(でら)の/新地(しんち) 00072520L11九△そろばんの松はやし(二オ) 00072530L12十△/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00072540L13十一△見/立(たて)の/文字(もじ) 00072550L14十二△くめの/仙(せん) 00072560L15十三△できあひぐら 00072570L16十四△/鼻(はな)じまん 00072580L17十五△かほの/摸様(もやう) 00072590L18十六△恋の/出来蔵(できざう) 00072600L19十七△けがのとん/作(さく)(二ウ) 00072610¥T1 00072620¥N1¥J 00072630¥X/御進物(ごしんもつ)の/大根(だいこん) 00072640M3/尾張(おハり)の/国(くに)ミあしげといふ所ハ、大こんの/名所(めいしよ)なるが、ふと 00072650M4さ七/尺(しやく)まハり、/長(なが)さ弐/間半(けんはん)の/大根(だいこん)はへたり。/是(これ)ハめづらし 00072660M5き物とて、やがて/禁中(きんちう)様へさし/上(あげ)ける。此大こん、しゝん 00072670M6でんのきだはし、あがらず。/公家衆(くげしゆ)、ふしぎをなしけるに、 00072680M7かの大こん、おくびやうものにて、しゝんでんのきだはし 00072690M8を大/根(こん)おろしかと思ふて、あがらなんだ。大/根一(こんいち)のおくび 00072700¥G 00072710¥P232 00072720L1やうものとわらハれた。 00072730¥N2¥J 00072740¥Xれうげちがひ(三オ) 00072750L4/伏見(ふしミ)の/乗合(のりあひ)にて、くわんとうの/長老(ちやうらう)とかミがたへんの長老 00072760L5とはなしけるに、/上方(かミがた)の/僧(そう)、しばゐばなしをしたし、あや 00072770L6めハいづかたでミても/上(じやう)ものといひければ、くわんとうの 00072780L7長/老(らう)、それはかミがた/衆(しゆ)にハ/似(に)あひ申さぬ。あやめよりハ 00072790L8かきつばたが上物といハるゝ。又かミがたの長老、おんな 00072800L9がたハあつまがよきといへば、くわんとうの長老いハるゝ 00072810L10ハ、それもちがふた。女ハ/都(ミやこ)がよし。あづまハでんぶなり 00072820L11とこたへければ、かミ/方(がた)の長老、一つも/咄(はなし)あハず。しから 00072830L12ば/宇源次(うげんじ)などハ御ぞんじ(三ウ)なきかといへば、くわんと 00072840L13うの長老ぬからぬふりで、/宇源(うげん)じと申御寺、いづかたに候 00072850L14や。此ほど/京都(きやうと)に廿日/斗(はかり)とうりう仕候へ共、いまだ参らぬ 00072860L15と/云(いハ)れた。 00072870¥N3¥J 00072880¥X北/野(の)ゝ/能(のう) 00072890L18北/野(の)天神の前に/観世織部(くわんぜおりべ)太夫、一/世(せ)一/代(だい)の/勧進能(くわんじんのう)せられけ 00072900L19るに、天神まくらがミにたち給ひ、此たひおもひまうけて、 00072910M1太夫/気(き)をはり給ふ。しかし天神の前に、かこいをおびたゝ 00072920M2しくはり、/揚詰(あげづめ)のやうに見ゆれど、太夫の/評判(ひやうばん)なき事ハ、 00072930M3一世一代のけちで有まいかと仰られた。(四オ) 00072940¥N4¥J 00072950¥X/煮売屋(にうりや)のかんばん 00072960M6ゐなか/衆(しゆ)弐三人づれにて/堀江(ほりゑ)を/通(とを)りけるに、/煮(に)うり見/世(せ)に 00072970M7あるあんどんの/書付(かきつけ)を見ていはるゝハ、さけさかなあり。 00072980M8又一/方(はう)にハ/酒(さけ)/肴(さかな)とかいてあるを、酒/又(また)/有(あり)とよまれて、/出来(でき) 00072990M9た。おやまありとはかゝれぬにより、酒/又(また)/有(あり)とハ/尤(もつとも)じや。 00073000¥N5¥J 00073010¥X/食(しよく)もげいの内 00073020M12さる/殿様(とのさま)へらう/人(にん)をめし出され、/武芸(ぶげい)の/様子(やうす)おたづねなさ 00073030M13る。/兵法(へいほう)ハ/何(なに)りうぞとたづね給へば、かのらう/人(にん)、其/儀(ぎ)ハ 00073040M14かつて成ませぬといふ。(四ウ)(五ノ七オ挿絵)/馬上(ばしやう)を/聞(きゝ)たまへ 00073050M15ば、それも/得乗(えのり)ませぬといふ。殿さまあきれたまひ、/食(しよく)ハ 00073060M16よくなるかとたづねたまへば、らうにんぬからぬ/皃(かほ)で、そ 00073070M17れハずいぶんたべますといふ。/御(お)そば衆、いや+しよく 00073080M18さへなれば、/少&(せう+)のげいハ、おしてこなす物で御ざります 00073090M19と、お取なし申された。 00073100¥P233 00073110¥N6¥J 00073120¥X/居風呂(すへふろ)の/難儀(なんぎ) 00073130L3ある/麁相(そさう)なる人、すゑふろを取ちがへ、井戸へはまりける 00073140L4が、やう+とあがり、すました/皃(かほ)で、/足下(あしもと)に井戸がある 00073150L5ゆへに/取違(とりちがへ)るといハるゝ。/隣(となり)から/来(き)て、け(五ノ七ウ)かハ 00073160L6なきかといへば、けがハせぬが水をのんだといふ。/隣(となり)の人 00073170L7もそさうにて、何ほどのまれたといへば、ていしゆぬから 00073180L8ぬ/皃(かほ)で、/升(ます)をもつてゆかぬにより、/程(ほど)がしれませぬといハ 00073190L9れた。 00073200¥N7¥J 00073210¥Xすまふの/名乗(なのり) 00073220L12/堀江(ほりえ)に/勧進(くわんじん)ずまふはしまる。ある日/見物(けんぶつ)の中に、とし/比(ごろ)三 00073230L13十/歳(さい)ばかりなる/男(おとこ)出て取けるが、ときの/仕合(しあわせ)にや、/大兵(たいひやう)を 00073240L14壱ばんなげたり。見物あたまをたゝいてどよミけり。/行司(ぎやうじ) 00073250L15出て、/名乗(なのり)ハ何と申ぞととひければ、彦兵衛と申といふ。 00073260L16いや其名にて(八オ)ハあらず。外に名ハなきかといふ。/世= 00073270L17忰(せ=がれ)のじぶん、次郎吉と申たといふ。/行司(ぎやうじ)あきれ、/家名(いゑな)ハな 00073280L18いか。/家名(いゑな)こそあれ。こんにやく屋と申。ぎやうじ/団(うちわ)をあ 00073290L19げ、/難波(なにハ)におゐてこんにやく屋と/名乗(なのり)ければ、見物一どう 00073300M1に、ふあ引とわらひける。 00073310¥N8¥J 00073320¥X千日/寺(でら)の/新地(しんち) 00073330M4/今度(こんど)/道頓堀(とうとんほり)千日のはかの/前(まへ)に、新地おほせ/付(つけ)らるゝに、わ 00073340M5かき/者(もの)より合て、こゝハ何町にならふぞといひければ、長 00073350M6町うらなれば、宿やまちにならんといふ。いや色まちにな 00073360M7らんとせりあひける。/色里(いろざと)になる(八ウ)いハれハといへば、 00073370M8されば、/西(にし)ハ千日/寺(でら)、みなミハ/墓(はか)、ぼんのうそくぼだいで、 00073380M9/離(はな)れたものでハないハさて。 00073390¥N9¥J 00073400¥X/十露盤(そろばん)の松はやし 00073410M12/堂嶋(だうじま)のかたハらに、/間口(まぐち)弐/間(けん)ばかりなる/所(ところ)にわかき衆あつ 00073420M13まり、そろばん四五丁ならべ/算用致(さんよういた)されける。弐匁五分、 00073430M14百卅六匁、又ハ壱万四千貫目、あるひハ拾壱万七千石弐斗 00073440M15三升八夕などいふを、/田舎(ゐなか)もの/聞(きゝ)て、となりにて/尋(たつね)ければ、 00073450M16あれハ/揃盤(そろばん)の/師匠(ししやう)なるが、けふハそろばんの松はやし、/唯= 00073460M17今(たゝ=いま)大ミだれ大/勘定(かんぢやう)といハれた。(九ノ十一オ) 00073470¥P234 00073480¥N10¥J 00073490¥X/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00073500L3/去(さる)人、むすこ/一人(ひとり)/持(もち)けるに、ゐなかより/客(きやく)ありしに、/亭主(ていしゆ) 00073510L4むすこをふいちやうせらるゝハ、/私(わたくし)の/世忰(せがれ)なから、きよう 00073520L5ものにて、/諸芸(しよげい)ハ申におよばす、何事にてもしのこす事な 00073530L6しとかたりければ、/客(きやく)ほめらるゝハ、今の/世(よ)の/聖人(せいじん)と申ハ 00073540L7こなたの御/子息(しそく)で御座るといへば、ていしゆ、ふわと/乗(のり)て、 00073550L8/聖人(せいじん)と仰らるゝで/気(き)が/付(つき)ました。むまれて此かた、/夢(ゆめ)を見 00073560L9ぬやつで御座りますといはれた。 00073570¥N11¥J 00073580¥X/見立(ミたて)の/文字(もじ)(九ノ十一ウ) 00073590L12よそにせむしなる人、/煙草(たばこ)すいつけるを見て、/友(とも)たちのい 00073600L13ふやう、/其方(そのはう)のたばこ/呑(のま)るゝハ、そのまゝつえつきの乃の 00073610L14/字(じ)じやと見たてけれバ、せむしはらをたて、きせる小わき 00073620L15にかいこミ、なぶるかと/儀勢(ぎせい)しければ、さうしやれバ、/悉= 00073630L16皆(しつ=かい)、/及(およふ)といふ字じやとわらハれた。 00073640¥N12¥J 00073650¥X/久米(くめ)の/仙(せん) 00073660L19/色(いろ)めきたるおんな、/賀茂河(かもかわ)へゆきてせんだくしける折ふし、 00073670¥G 00073680M12風はげしく/裾(すそ)ひるがへり、はぎのしろきをわれと見て、か 00073690M13の女房心におもふやう、むかし久米の(十二オ)せんにん、 00073700M14此やうなはぎを見て、つうをうしなひ、/下界(げかい)へくだりたま 00073710M15ふときく。今の世にも/仙人(せんにん)ありて/落(おち)給ふまい物でないと思 00073720M16ふ一/念(ねん)、天につうじけん、くも/間(ま)にせんにん、ま見へ給ふ 00073730M17が、まぢかくさがると思へバ、はぎにたをされた。べかか 00073740M18うと/云(いひ)て上りける。 00073750¥P235 00073760¥N13¥J 00073770¥X/出来合蔵(できあひぐら) 00073780L3京丸太町/堀河辺(ほりかわへん)にとんさく/成(なる)人あり。/近所(きんじよ)に/火事(くわじ)ゆきける 00073790L4に、けわしき中にて女/房(ばう)を/近(ちか)づけ、だい所にしちやうをつ 00073800L5らせける。女房見て、これハ扨、気がちがふたか。何事ぞ 00073810L6といふ。/亭主(ていしゆ)せかぬふりで、(十二ウ)(十三オ挿絵)/道具(だうぐ)ミな 00073820L7+入よといふ。見/舞(まひ)にくる人、是ハなにぞといへば、何 00073830L8と、よきとんさくにてハないか。わきから見たらバ/内蔵(うちぐら)じ 00073840L9やとおもふであらふと/云(いハ)れた。 00073850¥N14¥J 00073860¥X/鼻自慢(はなじまん) 00073870L12さる/仁(じん)、/世界(せかい)にあるほどのかざをかぎ/覚(おぼへ)たれど、/未(いまだ)四天王 00073880L13寺の/塔(たう)の九りんのかざをしらぬとて、かぎに/行(ゆき)けれど、は 00073890L14るか成そらにて/鼻(はな)ハとゞかず。ちゑを/出(だ)して/石(いし)ひらひなげ 00073900L15ければ、九りんにあたりおちけるを、そのまゝかぎて、さ 00073910L16して/替(かわり)たるかざにあらすといふ。つれの人、いかやうの/匂(にほ) 00073920L17ひするといへバ、三/具足(ぐそく)の(十三ウ)かざとおなじ事じやと 00073930L18いはれた。 00073940¥N15¥J 00073950¥X/顔(かほ)の/摸様(もやう) 00073960M3/麁相(そさう)なる/御侍(おさふらひ)、きよ/水辺(ミつへん)にてしる人に/逢(あひ)、何と/作左(さくざ)、ひさ 00073970M4しやとあれバ、/彼(かの)おとこ/胆(きも)つぶし、いや、わたくし作左衛 00073980M5門にハあらずといふ。御侍、よく+のぞき、/是(これ)ハ/卒尓(そつじ)。 00073990M6御/免(めん)あれとわかれけるに、また四五町すぎて、みぎの/男(おとこ)に 00074000M7/行(ゆき)あひ、/扨&(さて+)、/其方(そのはう)によく/似(に)たる/者(もの)有て、たゞいまめんぼ 00074010M8くうしなふたとかたる。彼おとこ聞て、是ハ/扨(さて)、やはりみ 00074020M9ぎのものにて候といふ。/御(お)侍へらぬ口で、かさね+のぶ 00074030M10/調法(てうほう)申ました。(十四オ)今/程(ほど)ハ京/都(と)に、/貴様(きさま)のやうな/顔(かほ)の 00074040M11/摸様(もやう)がはやるそふなといハれた。 00074050¥N16¥J 00074060¥Xこひの/出来蔵(できざう) 00074070M14/或(ある)わか/衆(しゆ)に、出来蔵と云/奴(やつこ)、心をかけ、/千束(ちつか)の/文(ふミ)をつかは 00074080M15すといへ共、一/通(つう)の返事もなし。ある夕/暮(くれ)に/生玉(いくたま)の/馬場先(ばゝさき) 00074090M16にて出あひ、若衆を取ておさへ、日/比(ごろ)心をつくせどもかひ 00074100M17なし。さあ、いなせの返事ハいかにと、/脇指(わきざし)くつろげきめ 00074110M18ければ、かのわかしゆ、今ハかなハじと、わきざしをぬき 00074120M19けれバ、うへなる/出来蔵(できざう)きもを/消(け)し、やれ人/殺(ころし)、であへ 00074130¥P236 00074140L1+とわめき(十四ウ)けるハ、さても大きなるれやうげ/違(ちが) 00074150L2ひじや。 00074160¥N17¥J 00074170¥Xけがの/頓作(とんさく) 00074180L5町+に/殿様(とのさま)御とをりとて、/置土(おきつち)をしけるに、さる/親仁(おやじ)け 00074190L6つまづき、/彼(かの)おき土の上へよこたをしにこけられ、さても 00074200L7/熱(あつ)やといはるゝ。町衆/立(たち)よりおこして、其/方(はう)、あつやとい 00074210L8はるゝハいかにぞといふ。おやじ、/口(くち)がしこいわらうにて、 00074220L9はて、/置土(おきつち)じやによりてあついといハれました。 00074230¥Y1御前男一之終(十五オ) 00074240¥Y1軽口御前男巻之二目録 00074250M3一△まがひ/道(ミち) 00074260M4二△/宿老(しゆくらう)のとり/違(ちが)へ 00074270M5三△どぢやう/汁(じる)の/呪(まじない) 00074280M6四△/川越(かわごし)のとんさく 00074290M7五△/富士(ふじ)見/西行(さいぎやう) 00074300M8六△/仁義(じんぎ)の屋/尻切(じりきり) 00074310M9七△てゝなし子 00074320M10八△子が/才覚(さいかく) 00074330M11九△よくから/沈(しづ)む/淵(ふち)(一オ) 00074340M12十△たが見ても/幽霊(ゆうれい) 00074350M13十一△人まねの/碁(ご)の/助言(じよごん) 00074360M14十二△/山水(さんすい)のかけもの 00074370M15十三△/思案(しあん)する/程(ほど)そさう 00074380M16十四△ばくち/宿(やど)の/吟味(ぎんミ) 00074390M17十五△/火燵(こたつ)の/過怠(くわたい) 00074400M18十六△ふんべつの/料理(れうり) 00074410M19十七△ゆでばす 00074420¥P237 00074430L1十八△/帆(ほ)かけ/馬(むま) 00074440L2十九△/腎虚(じんきよ)の/白鼠(しろねずミ)(一ウ) 00074450¥T1 00074460¥N1¥J 00074470¥Xまがひ/道(ミち) 00074480M3ある/占(うら)やさん、/道(ミち)にふミまよひ、三つ/辻(つじ)にたち、しあんし 00074490M4て/居(ゐ)る所へ、/牛(うし)つかひ/来(きた)る。/彼(かの)山ぶし立より、むかふのざ 00074500M5いしよへハ、とのミちから/参(まい)るぞ。おしゑてといへば、う 00074510M6しかひもすね/者(もの)にて、そなたハ人の身のうへさへ八/卦(け)にお 00074520M7き/出(だ)すほどに、/我身(わかミ)のうへの事ハ手の物と、八/卦(け)にとハれ 00074530M8よといふ。山ぶし/聞(きい)て、されば八/卦(け)で見たれば、その/方(はう)に 00074540M9とふてゆけとあるほどに、それでとひますとぬけられた。 00074550¥N2¥J 00074560¥X/宿老(しゆくらう)の取ちがへ(二オ) 00074570M12ある/文盲(もんまう)なるわらう、/友(とも)だちにいふやう、そちの/町(ちやう)のしく 00074580M13らう/殿(どの)ハ、しくらうでない。こちの三九郎よりおとつたれ 00074590M14ば、二九郎であらふといへば、/友(とも)たち/聞(きい)て、それハいかい 00074600M15/違(ちが)ひじや。この/中(ちう)もより/合(あひ)に町衆のあいさつに、/御(ご)くらう 00074610M16じやといはれた。 00074620¥N3¥J 00074630¥X/鯲汁(どぢやうじる)のまじない 00074640M19/去寺(さるてら)の/仰(おほせ)らるゝハ、此/程(ほど)ハ何としたやら、せいが/落(おち)て、/寺役(じやく) 00074650¥P238 00074660L1もつとめにくしとあれば、わるじやれなだんな衆、それに 00074670L2ハどぢやう/汁(じる)がよいとすゝめ、/頓而(やがて)(二ウ)/寺(てら)にてのりやう 00074680L3り、/汁(しる)をもる/最中(さいちう)、ずんどかたい/旦那(だんな)さんけいにて、/長老(ちやうらう) 00074690L4めいわくなていを見て、かのわるじやれ、/気(き)づかひしたま 00074700L5ふな。/我等(われら)、いなするまじない覚たりと、/彼(かの)だんなの/耳(ミヽ)の 00074710L6はたへよるかと見えしが、うなづきて帰られけり。長/老(らう)、 00074720L7さてもふ/思儀(しぎ)なる/呪(まじない)。われにもおしへたまへとあれハ、何 00074730L8のひしよもなし。長老とふたり/鯲汁(どちやうしる)をくふ。こなたがゐ 00074740L9ればいやがりやる/程(ほど)に、いなしやれといふた。 00074750¥N4¥J 00074760¥X川ごしのとんさく 00074770L12ある/比丘尼(びくに)、/賀茂(かも)川にゆきかゝり、水たかけれバ(三オ)/川= 00074780L13越(かわ=こし)をやとひ、/鳥目(てうもく)五/銭(せん)のやくそくにてこしけるが、まんな 00074790L14かのふかミにて、さらバおりたまへといふ。びくに、なせ 00074800L15にといへば、先こゝ/迄(まで)が五文。むかひまてハ拾文。あとへ 00074810L16もどりますれバ弐拾文といふ。びくに聞て、しつかいそれ 00074820L17ハ、川/中(なか)であまはぐやうな事じやといはれた。 00074830¥N5¥J 00074840¥Xふじ見/西行(さいぎやう) 00074850¥G 00074860M12さる人、/薬瓢(ゐんろう)きんちやくをさげけるに、/友達(ともだち)いふやう、/印= 00074870M13篭(ゐん=ろう)のひぼ長く、/無用心(ぶようじん)なり。どこぞでハきられうといへば、 00074880M14/彼(かの)人聞て、いや+、/切(きつ)ても/切(きれ)ぬ(三ウ)(四オ挿絵)といふ。 00074890M15なぜに。/御覧(ごらん)候へ。/蒔絵(まきゑ)がふじミ/西行(さいぎやう)じや。 00074900¥N6¥J 00074910¥X/仁義(じんぎ)の屋/尻切(じりきり) 00074920M18/雨風(あめかぜ)の/夜(よ)、こそ+と/見世(ミせ)のしたを/切(きり)けるに、/亭主(ていしゆ)、じひ 00074930M19/第(だい)一のゆうなる人、/鼻息(はないき)もせず/忍(しのび)出、ぬす人の/手(て)をしかと 00074940¥P239 00074950L1とらへ、/銭(ぜに)弐百文にぎらせ、さきほどより御/太儀(たいぎ)や。ほね 00074960L2おりや。ちか/比(ごろ)すこしながらと、とらせければ、/偸人(ぬすびと)きも 00074970L3を/潰(つぶ)し、/是(これ)ハめいわく。此やうに御いんぎんに被成ますれ 00074980L4ば、かさねて参りにくいと/時宜(じぎ)をしければ、ていしゆ、さ 00074990L5ても其方ハ/盗人(ぬすひと)の/中(うち)でも、りちぎ/者(しや)じや。(四ウ) 00075000¥N7¥J 00075010¥X/父(てゝ)なし/子(ご) 00075020L8/下女(げじよ)なれどかたち人なミに、/折(おり)+御/客(きやく)もあれバしやくに 00075030L9/出(で)て、おもひ入たる人の/付(つけ)ざしをのみけるに、ほどなく/懐= 00075040L10胎(くわい=たい)し、きのどくながら月をかさね、/今朝(けさ)やす+と/産(うミ)おと 00075050L11し、見ればあたまなく、手ばかりの子なり。人※ふしぎ 00075060L12に思ひ、かの/下女(げじよ)にたづねければ、/別(べつ)におぼへもなし。/彼(かの) 00075070L13付さしのとき、/肴(さかな)に/蛸(たこ)をたべましたといへば、そばなる人 00075080L14申されしハ、さやうの事も有べし。/上(かミ)ノ町の又兵衛の/内義(ないぎ) 00075090L15ハ大/酒呑(さけのミ)じやが、さかづきなしに/引(ひつ)かたふけ(五オ)/呑(のま)れた 00075100L16れば、/徳利子(とつくりご)を/生(うま)れたといハれた。 00075110¥N8¥J 00075120¥X/子(こ)が/才覚(さいかく) 00075130L19ある人、五つばかりに見ゆる子に/銭(ぜに)壱文/渡(わた)し、/酢(す)/買(かふ)てこい 00075140M1といふ。むすこ、がてんして/行(ゆき)けるが、/酢(す)はかハずして、 00075150M2/餬(のり)を/買(かふ)て帰りける。/母(はゝ)おや見て、/是(これ)ハ/醋(す)でハない。しやう 00075160M3ねなしめとしかりけれハ、/子息(むすこ)せかぬ/皃(かほ)で、のりハこぼれ 00075170M4いでよいさかいで、/買(かふ)て/来(き)ましたといふた。 00075180¥N9¥J 00075190¥X/欲(よく)からしづむ/淵(ふち) 00075200M7さる所に、子弐人もちたる有けり。/壱人(ひとり)ハまゝ子/成(なり)(五ウ) 00075210M8ければ、にくさの/余(あま)り、/寺(てら)へ/行(ゆき)て長/老様(らうさま)を/頼(たの)ミ、子/共(ども)の/名(な) 00075220M9を/付(つけ)かへてもらふ。/兄(あに)ハずいぶんミじかき/名(な)、/弟(おとゝ)ハひさう 00075230M10/子(ご)で御座ります。成ほど/長(なが)き名をと、このミければ、長/老= 00075240M11様(らう=さま)、がてんじやとて、/兄(あに)をによぜがも、/弟(おとゝ)をバあのくたら 00075250M12/三(さん)びやく/三(さん)ぼだいと付給ふ。ある/時(とき)によぜがも、川へ行て 00075260M13ながれければ、/近所(きんじよ)の/者出(ものいで)て、やれ、によぜがながるゝハ 00075270M14と、やがて引あげ、あやうき/命(いのち)たすかりける。/其後(そのゝち)又、/弟(おとゝ) 00075280M15水/遊(あそび)してながれければ、/母(はゝ)おや、かなしや。あたりに人ハ 00075290M16(六ノ九オ)ないか。あのくたら三びやく三ぼだいが/流(なが)れま 00075300M17すといふ/間(ま)に、/行衛(ゆくゑ)なかりける。母おや、ぬからぬかほで、 00075310M18三百をすてたら、たすかろ物をとなかれた。 00075320¥P240 00075330¥N10¥J 00075340¥X/誰(た)が/見(ミ)ても/幽霊(ゆうれい) 00075350L3/元禄(けんろく)十五年/極(ごく)月/中旬(ちうじゆん)に、ある人より/合(あひ)、/扨(さて)も二/条堀河(でうほりかわ)にゆ 00075360L4うれい/出(いで)て、人のかよひなしといふ。/一拳(ひとこぶし)あるわかひ/者(もの)、 00075370L5かしこへ行けるに、あんにたがハず、/夜半(やはん)ばかりゆうれい 00075380L6川ばたに見えければ、すかさずぬき/打(うち)に/切(きつ)てかゝる。わつ 00075390L7となき/出(だ)し、/消(きへ)ぬがふしきと/立(たち)より見れバ、/廿(はたち)あまりの 00075400L8(六ノ九ウ)/男(おとこ)なり。なんぢ何/者(もの)なれば、/毎夜(まいや)此所へ出るぞ 00075410L9ととがめければ、わたくしハ/寒足(かんあし)つかひに/出(で)まするといふ。 00075420L10それハ何ゆへぞ。/身共(ミども)ハ/麩(ふ)屋の/男(おとこ)なれば、あしをかためね 00075430L11ば成ませぬといふた。 00075440¥N11¥J 00075450¥X人まねの/碁(ご)の/助言(じよごん) 00075460L14/近所(きんじよ)に/碁会(ごくわい)あり。/見物(けんふつ)の人、/切(きつ)てとれ+と/云(いふ)を、もんも 00075470L15うなるわらう、/助言(しよごん)のすべハしらず、きれ+といふを聞 00075480L16て、/扨(さて)ハきつくいふが/碁(ご)の/言葉(ことば)じやと思ひ、/切(き)る事いらぬ 00075490L17物じやといふ。/碁(ご)うつ人/聞(きい)て、きらずによき手もや候とい 00075500L18はれけれバ、はて、/切(きら)ずに(十オ)ふミつぶしたがよからふ。 00075510¥N12¥J 00075520¥X/山水(さんすい)の/掛物(かけもの) 00075530M3よそに/振舞(ふるまひ)有て、こしもとの/須磨(すま)きうじしけるが、/床(とこ)にか 00075540M4ゝりし/雪舟(せつしう)の/山水(さんすい)の/掛(かけ)物を見て、なミだをはら+とこぼ 00075550M5す。/客(きやく)しゆ見て、何とて/歎(なげ)くぞととへバ、わしがおやじも 00075560M6かゝれましたが、山ミちをかくとて/死(しな)れましたといふ。そ 00075570M7なたが/親(おや)ハ/絵書(ゑかき)かといへば、いや、/駕篭(かご)かきで御座りまし 00075580M8た。 00075590¥G 00075600¥P241 00075610¥N13¥J 00075620¥X/思案(しあん)する/程(ほと)/麁相(そさう)(十ウ)(十一オ挿絵) 00075630L3/或(ある)そさうもの、/瀬戸物(せともの)屋へ水つぼ/買(かい)にゆき、ミな+うつ 00075640L4ふけて/有(ある)を見て、此つぼにハ口がないとひつくり/返(かへ)し見て、 00075650L5/南無三宝(なむさんぼう)、/底(そこ)がぬけたといへば、/亭主(ていしゆ)もそさうもの、しば 00075660L6らくあんじて、/名誉(めいよ)な事じや。どふ/思(し)案しても、くちが/下(した) 00075670L7とほかおもハれぬといふた。 00075680¥N14¥J 00075690¥X/博痴宿(はくちやど)の/吟味(ぎんミ) 00075700L10生玉の/水茶(ミづちや)屋の/女子共(おなごども)ハ、/博痴(ばくち)やどするさうな。せんさく 00075710L11したらよからふ。/是(これ)ハあたらしい。/訴人(そにん)でもあるかといへ 00075720L12ば、いや、此/中(ぢう)天王/寺(じ)/参(まいり)に、こしかけ(十一ウ)たばこをの 00075730L13ミ、/茶(ちや)を/呑(のミ)てたちさまに、それ、茶の/銭(ぜに)となげいだせバ、 00075740L14/茶(ちや)の銭ハ/請(うけ)取ました。ついでに/火(ひ)の銭くだされと/云(いふ)からハ、 00075750L15ばくち/宿(やど)に/極(きわま)つた。 00075760¥N15¥J 00075770¥X/火燵(こたつ)の/過怠(くわたい) 00075780L18/去年(こぞ)の/冬(ふゆ)、ちとぬけたる人の所へ、/隣(となり)のむすこあそびに/来(きた) 00075790L19り、よめ、/姑(しうとめ)と三人づめのこたつ/度(たび)かさなりて、/密夫(まおとこ)のし 00075800M1かけ見/付(つけ)いだし、/頓而(やがて)御/奉行所(ぶぎやうしよ)へ申/上(あげ)ければ、/慥(たしか)成しやう 00075810M2こがあるか。/成(なる)ほど、/年(とし)よりたる/母(はゝ)がしやうこで御座りま 00075820M3す。/宿(やど)ハ/則(すなハち)、こたつめで御座りますといふ。(十二オ)御/奉= 00075830M4行(ぶ=ぎやう)様おかしく/思召(おほしめし)、しからば/先(まづ)、宿を/閉門(へいもん)させいと、/今年(ことし) 00075840M5の三月に、こたつへいもんと仰付られ、ばた+とふさぎ 00075850M6ました。 00075860¥N16¥J 00075870¥X/分別(ふんべつ)の/料理(れうり) 00075880M9/紀州(きしう)/十津(とつ)川の/温泉(ゆ)ハ其しるしありとて、ある人/湯治(たうち)せられ 00075890M10しに、一まハりにて/足(あし)がひきよいぞと、そろ+/湯元(ゆもと)の/様= 00075900M11子(やう=す)、あたりの/景気(けいき)ながめありきしに、とある山/際(ぎわ)、/熱(にへ)かへ 00075910M12る/湯(ゆ)の/中(なか)に、見事なる/鯉(こい)ふなたくさんなり。/山中(さんちう)の事にて 00075920M13/肴(さかな)にはかつへたり。/幸(さいわい)と取て帰り、/醤油(しやうゆ)(十二ウ)のあんば 00075930M14いして/熱立(にえたつ)ところへ、/彼魚(かのうを)を/入(いれ)けれバ、いままでよハりし 00075940M15/鯉鮒(こいふな)、ひち+とはね/出(いで)、たけは/焼(たく)ほど/鍋(なへ)のうちをちらり 00075950M16+とあそぶ/体(てい)。/是(これ)ハふしぎ。/喰(くハ)れハせまいと、しばし/思= 00075960M17案(し=あん)し、/汲立(くミたて)の/井戸水(ゐどミづ)に、なまじやうゆかげんしかけ、/彼魚(かのうを) 00075970M18を入ければ、たハ++とにえて、/其味(そのあぢ)どふもいへぬげ 00075980M19な。 00075990¥P242 00076000¥N17¥J 00076010¥X/茹蓮(ゆでばす) 00076020L3/田舎衆(ゐなかしゆ)、弐三人づれにての天王寺まいり。ゆで/藕(ばす)うるを見 00076030L4て、ふしぎさうに/立(たち)とまり、/扨(さて)も/手篭(てごもつ)た/細工(さいく)じや。あの/穴(あな) 00076040L5ハ何としてあけた物(十三オ)ぞといへば、又ひとりがいふ 00076050L6やう、是ほどのさいくに/蜘(くも)の/巣(す)があるといふて/買(かわ)なんだ。 00076060¥N18¥J 00076070¥X/帆(ほ)かけ/馬(むま) 00076080L9ある人、/馬(むま)かたにむかひ、此馬ハいづくへ/行(ゆく)ぞととへば、 00076090L10風にまかせてゆきますといふ。/扨(さて)もあたらしい。/舟(ふね)こそ風 00076100L11にまかすれといへば、馬かた聞て、いやはやもんもうな。 00076110L12/馬(むま)の/耳(ミヽ)に風とは申さぬか。やれ+、ほてつはらがくねる 00076120L13ハとかけさせける。 00076130¥N19¥J 00076140¥Xぢんきよの/白鼠(しろねずミ)(十三ウ) 00076150L16京二/条通(でうとをり)の/生薬(きぐすり)屋にしろねずミありて、ていしゆ、/福(ふく)なり 00076160L17とよろこびけるに、/身体(しんだい)しだい+におちぶれければ、/内= 00076170L18儀(ない=ぎ)いはるゝハ、とかくあの白/鼠(ねすミ)が/来(き)てから此かた、ろくな 00076180L19事が御座らぬ。ていしゆ、/実(げに)もとおもひ、/舛(ます)おとしにて、 00076190M1くだんのねずミを/取(とり)、せんさくしければ、わたくし、/真(まこと)の 00076200M2白鼠にあらず。/黒(くろ)鼠也。ふとぢんきよを/煩(わづらい)だし、御みせの 00076210M3/地黄丸(ぢわうくわん)をぬすミたべまして、此やうにしろふ成ましたとい 00076220M4ふた。 00076230¥Y1御前男二之終(十四オ) 00076240¥P243 00076250¥Y1軽口御前男巻之三目録 00076260L3一△わらんべのちゑ/比(くらべ) 00076270L4二△/故事付(こじづけ)の/名(な) 00076280L5三△/下(げ)人のかる/口(くち) 00076290L6四△/即座(そくざ)の/能(のう) 00076300L7五△うたひのさし/出口(でぐち) 00076310L8六△/子数(こかず)のはきちがへ 00076320L9七△かハつた/吸物(すいもの) 00076330L10八△大/銀(かね)もちのしやくせん 00076340L11九△朔日ハつごもりの/翌日(あくるひ)(一オ) 00076350L12十△花のぬけがら 00076360L13十一△いかものぐひ 00076370L14十二△/鷹野(たかの)の/空鉄砲(そらてつほう) 00076380L15十三△夕めしの/喰(くひ)ちがへ 00076390L16十四△/訴状(そじやう)の書ぞこなひ 00076400L17十五△うち/首(くび)の/不問(とハず)がたり 00076410L18十六△せつなき時の神/頼(だの)ミ 00076420L19十七△/貧報(びんぼう)神の身もち/揚(あげ) 00076430M1十八△らうにんの/吉左右(きつさう) 00076440M2十九△/殺生(せつしやう)きんだんの/札(ふだ)(一ウ) 00076450¥P244 00076460¥T1 00076470¥N1¥J 00076480¥Xわらんへの/智恵比(ちゑくらべ) 00076490L3/涼(すゞ)しき夕ぐれ、ほたる取に出し/子共(こども)、かたハらによりて、 00076500L4なんと、/灯心(とうしん)といふ物ハどこから/出(で)るぞ。あれハたゝミか 00076510L5ら出るさうな。いや+、あミがさからでると、せりあひ 00076520L6けるに、六つばかり成子がいふやう、たゝミからでもあミ 00076530L7/笠(がさ)からでも有まい。おれハあんどの/引出(ひきだ)しからでるとほか 00076540L8思ハぬと/云(いふ)た。 00076550¥N2¥J 00076560¥X/故事付(こじづけ)の/名(な) 00076570L11/大和国(やまとのくに)よしのあたりに、むすめ弐人/持(もち)ける人、てうあひの 00076580L12あまり、/姉(あね)の/名(な)をしきぶと/付(つけ)、/妹(いもふと)を(二オ)とちぎりとよび 00076590L13ける。ある人のいハく、こなたの/姉娘(あねむすめ)しきぶハきこへまし 00076600L14たが、いもふとをとちぎりとハいかゞとたづねければ、を 00076610L15の+ハ/謡(うたい)、御ぞんじないと見へました。それハもんもう 00076620L16也。/井筒(ゐづゝ)のうたひに、あり+としるしおかれた。/紀(き)のあ 00076630L17りつねの/娘(むすめ)ハ、ならびなきびじんゆへ、なり平、心をつく 00076640L18されしよし。/我等(われら)がむすめも、あつはれおとるまじきぞん 00076650L19じよりにて、とちぎりと付申候といふ。して、其井づゝの 00076660M1うたひハととへば、しさいらしく、その比ハ/紀(き)のあり/常(つね)の 00076670M2娘とちぎりと、うたひ(二ウ)ますといはれた。 00076680¥N3¥J 00076690¥X/下(げ)人のかる/口(くち) 00076700M5さるよそに一/僕(ぼく)つかふ/牢人(らうにん)衆あり。/下人(げにん)、となりへ/酒(さけ)かい 00076710M6にゆきしに、何と/角内(かくない)、そちの/旦那(だんな)ハかねがありさうな。 00076720M7いつ見ても/内(うち)があたゝかさふなといハるれば、下人いふや 00076730M8う、成ほどあたゝかいといふ。/銀(かね)があるかといへば、/銀(かね)ハ 00076740M9ないが、ひざのさらから/火(ひ)がでるさかいであたゝかいとい 00076750M10ふた。 00076760¥N4¥J 00076770¥X/即座(そくざ)の/能(のう) 00076780M13けふハ/祖母(ばゞ)の/命日(めいにち)と、夕めし/過(すぎ)てはか参りせしに、(三オ) 00076790M14/寺(てら)ハいつよりさびしく、/徒然(つれ+)なるまゝ、とつておきを/呼(よび)だ 00076800M15し、/酒(さか)もりのさいちうなれバ、ぢうじうろたへ、女に大 00076810M16がまかづけ、かくしけるを、/旦那(だんな)、何あそばしますといへ 00076820M17ば、/余(あまり)さびしさに/道成寺(どうじやうじ)をいたす。こりやよからふと、 00076830M18一はい引かけ、大じやの/出(で)るまに大こく/舞(まひ)と、はやされ 00076840M19た。 00076850¥P245 00076860¥G 00076870¥N5¥J 00076880¥Xうたひのさし/出口(でぐち) 00076890L14/勧進能(くわんじんのう)けんぶつの/中(なか)に、ある人のいはるゝは、/地(ぢ)うたひ 00076900L15ハどこできいてもならが/上手(じやうず)じやといへば、もんもう成/人(ひと) 00076910L16さし/出(で)て、それハさし/合(あひ)じや。(三ウ)(四ノ六オ挿絵)なぜに。 00076920L17はて、/奈良(なら)ハ/下(しも)がゝりでハ御座らぬか。 00076930¥N5¥J 00076940¥X/子数(こかず)のはきちがへ 00076950M1天満の/夏祭(なつまつり)、/通(とを)り/筋(すぢ)ハよひよりやらいゆふて、/家(いゑ)+のき 00076960M2やくおびたゝし。ある所へよき/仁躰(じんたい)にて、むすこ弐人つれ、 00076970M3/桟敷(さじき)へあがられければ、/相客(あひきやく)ちかづきに成て、さて+よ 00076980M4い御/器量(きりやう)な/子達(こたち)じや。ミな+其方様の御しそくかといへ 00076990M5ば、はて扨よく御ぞんじで御座る。/是(これ)ハわたくしが二そく 00077000M6で御座ります。まあ二そくハ/宿(やど)におりますが、/古(ふる)ざうりと 00077010M7同し事で、めろ共なれバ、でんだうへハつれませぬと(四 00077020M8ノ六ウ)つくされた。 00077030¥N7¥J 00077040¥Xかハつた/吸物(すいもの) 00077050M11/或(ある)人いはるゝハ、此中さるかたで、めぐすり/貝(がい)のすいもの 00077060M12が/出(で)たといふ。/扨(さて)ももんもうな。それハ/蛤(はまぐり)の/吸(すい)物であらふ 00077070M13がといへば、されば、/相客(あひきやく)の方へハ/身(ミ)をいれたかしらぬが、 00077080M14われらかたへハ、からばかりもりてすへました。何と、こ 00077090M15れが目薬/貝(がい)のすい物でないか。 00077100¥N8¥J 00077110¥X/大銀(おほかね)もちの/借銭(しやくせん) 00077120M18/朝夕(てうせき)も思ふまゝに/喰(くハ)ず、/夏(なつ)さいミ/冬(ふゆ)かミこ、(七オ)/只(たゞ)しわ 00077130M19くしてかねをのばす人あり。/近所(きんじよ)の人いふハ、/其方(そのはう)ハくハ 00077140¥P246 00077150L1ず/着(き)ずしてかねをのばし、何せらるゝといへば、されば、 00077160L2人めにハ千/貫(ぐわん)目もあるやうに見ゆれど、/大分(だいぶん)の/借銀(しやくぎん)じや。 00077170L3いま、あり銀が八百貫目ござつて、まだ弐百貫目たりませ 00077180L4ぬ。どうぞしまつして千貫めにせんとおもへと、まあ弐百 00077190L5貫めがいへませぬといハれた。 00077200¥N9¥J 00077210¥X朔日ハつごもりの/翌(あくる)日 00077220L8ある所に子どもよりあひて、/兄(あに)がいふハ、なにと、/晦日(つごもり)が 00077230L9さきか、/朔日(ついたち)がさきかといへば、/弟(おとゝ)、おれハちいさい(七 00077240L10ウ)さかいでしらぬといふ。/親仁(おやじ)しさいらしく、それハ月 00077250L11+の大小でちがふ物じやと。 00077260¥N10¥J 00077270¥X花のぬけがら 00077280L14さるぶげんしやの/惣領殿(そうりやうとの)、六月/中比(なかごろ)、花見がてら/吉野(よしの)参 00077290L15りとさハぐ。ともだちの伝九郎/来(き)あはせ、今じぶんの/花(はな)見、 00077300L16のミこまぬといへば、おやぢ/笑止(せうし)がりて、/吉田(よしだ)の/兼好(けんこう)が、 00077310L17花ハさかりに月ハくまなきをのミ見る物かハといひし事も 00077320L18あれば、/世悴(せがれ)も花のちりたるあとを見て、おもひやらんと 00077330L19の心入とミへましたといはれけれバ、む(八ノ十オ)すこぬ 00077340M1からぬ/皃(かほ)で、おやじどの、何をしりもせいで。よしのハひ 00077350M2ゆる所で、六月にも/谷(たに)※のさくらが/咲(さく)まい物でないと、 00077360M3うハぬりをしられた。 00077370¥N11¥J 00077380¥Xいかもの/食(ぐい) 00077390M6/過(くわ)をいへばいふ事と、おれハ/世界(せかい)にくひ/残(のこ)したものがない 00077400M7といへば、また壱人、おれもその/通(とを)り。して、/珍(めづ)らしい物 00077410M8ハ何をくやつたといへば、/蛇(じや)のすしをたべた。其方ハ何を 00077420M9くふたぞ。おれハかミなりのすしをくふたといふ。そばか 00077430M10らおかしがりて、なんと、蛇のすしの/味(あぢ)ハどのやうなもの 00077440M11(八ノ十ウ)ぞ。/風味(ふうミ)どうもいへぬよい物じやが、すこしき 00077450M12のどくハ水くさいといふ。又かミなりのすしハととへば、 00077460M13そのうまさ、世にあるものでハなけれど、是も少/雲(くも)くさい 00077470M14のでこまつたといハれた。 00077480¥N12¥J 00077490¥X/鷹野(たかの)の/空鉄砲(そらでつはう) 00077500M17/或殿様(あるとのさま)、たか野に出たまひける。/池(いけ)のミぎハに/雁(がん)百/羽(は)ほど 00077510M18見えけるを、/殿(との)御らんじ、/鉄砲(てつはう)取よせ、ねらひすましてう 00077520M19ち給へば、一/羽(は)ものこらすたち/去(さり)ける。折ふし/茶道(さだう)ちんさ 00077530¥P247 00077540L1い目をまハし、やう+人ごゝちつきける時、/殿様(とのさま)御きげ 00077550L2んあしく、身が/手(て)(十一オ)まハりにおるやつが、/鉄砲(てつはう)のお 00077560L3とに/目(め)をまハしける。/腰(こし)ぬけめとしかり給へハ、/珍斎(ちんさい)、い 00077570L4きのしたより、まつたく/鉄砲(てつはう)にてハ御座なく候。あれほど 00077580L5たくさん/成(なる)/鳥(とり)にあたらぬからハ、まさかの/時(とき)、何にかあた 00077590L6りませふとぞんじまして、おせうしさに目がまひましたと 00077600L7申あげた。 00077610¥N13¥J 00077620¥X夕めしの/喰(くひ)ちがへ 00077630L10/五ケ(ごか)の/津(つ)といへど、江戸のげん/銀(ぎん)かけねなし、/三井(ミつゐ)のたな 00077640L11に何でもないものハないといふ。/友(とも)だち聞て、いや+、 00077650L12三井が/棚(たな)にもない物があると、せり(十一ウ)(十二オ挿絵)あ 00077660L13へば、となりのおやじ/聞(きい)て、いらざるせりあひじや。こゝ 00077670L14にゐて江戸の事がしれる物か。きのふもこちのでつちが、 00077680L15/旦那(だんな)様、おめしが/出来(でき)ました。お/帰(かへ)りといふ。帰りて見れ 00077690L16ば、めしにあらず、ざうすいなり。となりでさへ是ほどの 00077700L17ちがひがあるといはれた。 00077710¥N14¥J 00077720¥X/訴状(そじやう)の/書(かき)ぞこなひ 00077730¥G 00077740M12/万年(まんねん)/亀(かめ)太郎様と申/御代官(ごだいくわん)あり。お/下(した)の百/姓(しやう)、山くじを取む 00077750M13すび/訴(そ)状さしあぐるとて、万/年(ねん)を/書(かき)ぞこなひ、一年亀太郎 00077760M14様と(十二ウ)書ける。御取/次衆(つぎしゆ)見たまひ、/名字(ミやうじ)がちがふた。 00077770M15/是(これ)ハ一年じやとしかられ、庄屋せかぬふりで、/力(ちから)おとしま 00077780M16したと申た。 00077790¥N15¥J 00077800¥Xうち/首(くび)のとハず/語(かたり) 00077810M19ある人のいハるゝハ、打くびにあふ時、きられるハおぼえ 00077820¥P248 00077830L1ぬが、その前かた、/首(くひ)すぢなであげるが/気味(きミ)がわるい。た 00077840L2とへていハヾ、きうをすゆる時に、やいとばしのさハるや 00077850L3うな物じやとかたれバ、それハきられた/者(もの)がいふたかとい 00077860L4へば、されば、さう有さうなものじやにより、きらるゝも 00077870L5のに/問(とひ)たい(十三オ)けれど、かたびんぎでしれませぬとい 00077880L6ふた。 00077890¥N16¥J 00077900¥Xせつなき/時(とき)の/神頼(かミたのミ) 00077910L9/久三(きうざ)夜あそびに/出(で)て、ふけて/帰(かへ)り/戸(と)をたゝけど、/玉(たま)もうば 00077920L10も目があかず。/旦那(だんな)、よい/夢(ゆめ)を見さいておきられ、/戸(と)をあ 00077930L11けて、久三か。/夜歩(よあるき)、がてんがゆかぬと、しかり+おく 00077940L12へゆかれしか、しばらくして又/出(で)て見れば、久三、たつた 00077950L13り/居(ゐ)たり、/方&(はう※)をおがむ。久三、ねハせいで何をするとい 00077960L14ハるれバ、されハ、わたくしも御/奉公(ほうこう)せいにいれ、ずいぶ 00077970L15んとぞんじても、どうやらぶほうこうの(十三ウ)やうに御 00077980L16座候ゆへ、/神仏(かミほとけ)をたのミますれど、/御利生(ごりしやう)なしといふ。/旦= 00077990L17那(だん=な)きかれて、やいあほう。/昼(ひる)おがめ。今ハかミ/仏(ほとけ)もねいり 00078000L18ばなじや。 00078010¥N17¥J 00078020¥X/貧報神(びんぼうがミ)の/身(ミ)もち/揚(あけ) 00078030M3/才覚(さいかく)なびんぼう神、/花麗(くわれい)なるすがたにて三/条(でう)のはしをわた 00078040M4る。又むかふより、す/紙子(かミこ)一くわんのわらうわせて、やあ、 00078050M5そなたハわれらが/中間(なかま)の/法(はう)をわすれ、/其黒羽(そのくろは)に/金(きん)ごしらへ 00078060M6のわきざし。此/方(はう)ハならぬ+。さて、いつの/間(ま)にふくの 00078070M7/神(かミ)になられたといへば、よそでいやるな。おれも今ハ 00078080M8(十四オ)/廓(くるわ)をおもにするゆへ、かうしたしかけでなければ、 00078090M9大じんが見たをされぬ。 00078100¥N18¥J 00078110¥X/浪人(らうにん)の/吉左右(きつさう) 00078120M12さるらうにんの/内儀(ないぎ)、ちかづきの/方(かた)へゆかれけれバ、てい 00078130M13しゆいはるゝハ、こなた様ハ、やがて世にいでたまハん。 00078140M14/吉左右(きつさう)があしもとてしれました。内儀よろこび、なにと見 00078150M15えますといへば、こなたのざうりが/長刀(なぎなた)に成ました。 00078160¥N19¥J 00078170¥X/殺生(せつしやう)きんだんの/札(ふた) 00078180M18ある/池(いけ)に、/殺生禁断(せつしやうきんたん)と、あたらしきふだ(十四ウ)有しを、 00078190M19もんもうなる人/立(たち)より、どこのしばゐの/札(ふだ)じやと見ていら 00078200¥P249 00078210L1るゝを、ある/僧(そう)おかしく、それハ、せつしやうきんだんの 00078220L2札で御座るといハるれは、なをかてんゆかず。ぬからぬ/皃(かほ) 00078230L3で、はあゝ、さてもしたり。きれいな事かなといふてのか 00078240L4れた。 00078250¥Y1御前男三之終(十五オ) 00078260¥Y1軽口御前男巻之四目録 00078270M3一△ぬす人に/鑰(かぎ) 00078280M4二△いひがゝりの/法問(ほうもん) 00078290M5三△/幸(さいわい)のはや/桶(おけ) 00078300M6四△/巳(ミ)のとしの/古手形(ふるてがた) 00078310M7五△/犬(いぬ)の/聞(きゝ)ぞこなひ 00078320M8六△/寺(てら)の/紅梅(かうばい) 00078330M9七△ふんべつの/有(あり)所 00078340M10八△かミそり/当(あつ)る/丁子頭(てうじがしら) 00078350M11九△/蚊(か)屋のかり/違(ちか)ひ(一オ) 00078360M12十△/木(き)ぐすりやの/発明(はつめい) 00078370M13十一△かハきの/病(やまひ) 00078380M14十二△/石(いし)よりかたい/門徒宗(もんとしう) 00078390M15十三△ありまの身すぎ 00078400M16十四△/茶(ちや)の/湯(ゆ)たゞ/度(のり) 00078410M17十五△七ふしぎ 00078420M18十六△/名(な)には/妙薬(めうやく)がある 00078430M19十七△いひぬけの/虎落(もがり)(一ウ) 00078440¥P250 00078450¥T1 00078460¥N1¥J 00078470¥Xぬす人に/鑰(かぎ) 00078480L3去人、ぬす人にあふたとかたる。友だち聞て、/何(なに)をとられ 00078490L4たといへば、/銭箱(せにばこ)をぬすまれた。/中(なか)に何もなかつた/が((ママ))とい 00078500L5へば、銀五百目あつた。/去(さり)ながら/錠(じやう)をおろしておいたによ 00078510L6つて、/気遣(きづかい)はない。それが何のやくにたつぞといへバ、い 00078520L7や+、かぎハこちにあるほどに、あける事がなるまい。 00078530¥N2¥J 00078540¥X/云(いひ)がゝりの/法問(ほうもん) 00078550L10ある寺に/小僧(こぞう)四五人よりあひ、何とかた+。いづれの/法(ほう) 00078560L11がかたじけないぞと/云(いふ)。/天台(てんだい)の小/僧(ぞう)、こちハ/実(じつ)(二オ)/相大= 00078570L12乗(さうだい=じやう)のみのりで/諸宗(しよしう)のもとじやといふ。/浄土宗(じやうとしゆう)の小/僧(ぞう)ハ、た 00078580L13ゞ/経(きやう)も/論釈(ろんしやく)もすて、十ねんぐそくの南無阿弥陀仏に/究(きハま)つて 00078590L14/往生(わうじやう)するといふ。/法花(ほつけ)の小/僧(ぞう)出て、こちハ一/切(さい)の/経王(きやうわう)で、 00078600L15五/字(じ)のだいもくにつゞまり、/法花経(ほけきやう)より/外(ほか)にたつとむ事ハ 00078610L16なしといふ。その/中(なか)に、/門徒(もんと)の小/僧(ぞう)をミな+あなどりて、 00078620L17門/徒(と)ハなにのらちもない/宗(しう)じや。女ぼうをもち、うを/鳥(とり)な 00078630L18どくふて、けさ/衣(ころも)をちやくする事のミこまずといへば、な 00078640L19にほどをの+が/呑(のミ)こまいでも、われらが(二ウ)/法(ほう)がかた 00078650M1じけなければこそ、こちのまねをする/衆(しう)がおほいといふた。 00078660¥N3¥J 00078670¥X/幸(さいわい)のはや/桶(おけ) 00078680M4ある人すへふろに入しに、何とかしたりけん、目をまハし、 00078690M5やれ+とさハぎしに、/近所(きんじよ)の/下手斎(へたさい)かけつけ、すへ/風呂(ふろ) 00078700M6におきながらミやくを取、せかぬかほで、さあ/呑口(のミくち)ぬいて、 00078710M7ゆをすてよといふ。かしこまつて、のミくちぬきました。 00078720M8/下手斎(へたさい)きいて、これでよい。ふたをして、すぐにはかへや 00078730M9れといハれた。(三オ) 00078740¥N4¥J 00078750¥X/巳(ミ)のとしの/古手形(ふるてがた) 00078760M12さる人、/道(ミち)なかにて/友(とも)だちに/行(ゆき)あひ、なんとひさしや。い 00078770M13つ見てもそちハ/若(わか)いが、としハといへは、三十五になる。 00078780M14/扨(さて)もわかいぞ。お/内儀(ないぎ)ハいくつじや。五十八。是ハ大きな 00078790M15としまじやとわらへば、彼おとこいふやう、それで巳の年 00078800M16の/古(ふる)てがたじやといふ。心ハといへば、見るたびごとに、 00078810M17しかへたふてならぬ。 00078820¥N5¥J 00078830¥X/犬(いぬ)のきゝぞこなひ 00078840¥P251 00078850L1京/室町通(もろまちとをり)を、ある/侍衆(さふらひしゆ)とをられけるに、いぬ、しきりに/吠(ほえ) 00078860L2かゝる。侍、/刀(かたな)にそり/打(うつ)てしかられ(三ウ)けるを、町の/年= 00078870L3寄(とし=より)見付て、只今ハ犬の御せいたうつよし。かたなのそりう 00078880L4ち給ふ事、/近比(ちかごろ)そつじ也といふ。侍、/道理(だうり)につめられ、犬 00078890L5にむかつて、私、さふらひにあらず/町人(まちにん)なり。御めん+ 00078900L6とわびたまへば、犬もそのまゝにげうせける。/町衆(てうしゆ)より/合(あふ) 00078910L7てひやうばんに、侍より町人が/位(くらゐ)が/高(たか)さうな。今の/侍(さふらひ)、/町(まち) 00078920L8人じやといふたれば、犬がにげましたといへば、/年寄(としより)、い 00078930L9や、あれハ犬が/聞(きゝ)そこなふたのじや。/子細(しさい)ハ、まちにんと 00078940L10いふを、まちんと/聞(きい)て/逃(にけ)おつた。 00078950¥N6¥J 00078960¥X/寺(てら)の/紅梅(かうばい)(四ノ六オ) 00078970L13或寺の/紅梅(かうばい)、いまをさかりと/咲(さき)ければ、げに天神のめで給 00078980L14ひしもことハりにおぼゆ。/旦那(だんな)しゆ弐三人参られ、/木下陰(このしたかげ) 00078990L15に/床(とこ)すへさせ、ぢうじまじりに酒ごとして、/旦那(だんな)/発句(ほつく)して 00079000L16たんざく付らる。此比はやりしたゞ/信(のぶ)のさいもんにて、 00079010L17△△紅/梅(ばい)ハまづハ天しよくすがた哉 00079020L18とせられけれは、おどけたるぢうじにて、さつても/出来(でき)た 00079030L19り。いひんひ+と、/三味(さミ)の/相(あひ)の手で/笑(わらハ)れた。 00079040¥G 00079050¥N7¥J 00079060¥X/分別(ふんべつ)のあり/所(どころ) 00079070M14/若(わか)い者どもよりあひ、なんと、/分別(ふんべつ)といふものは(四ノ六ウ) 00079080M15(七オ挿絵)へそのしたから/出(で)る物かといへば、いや+、 00079090M16むねから出るといふ。いや、あたまからさうなと、さん 00079100M17※に/論(ろん)じけるを、さるおやぢ聞て、ミなのじぶんでハま 00079110M18だ得しらしやれぬはづじや。/分別(ふんへつ)といふ物ハ、じたいむさ 00079120M19い所から/出(で)ます。それゆへ、ふんへつといふ。又/誹諧(はいかい)のつ 00079130¥P252 00079140L1けあひにも、分別といふに/長雪隠(なかぜつゐん)がのせてあるといはれた。 00079150¥N8¥J 00079160¥X/剃刀(かミそり)あつる/丁子(てうじ)がしら 00079170L4此ほどハ/葬礼(さうれい)がなふて小/銭(ぜに)に事かくと、/門番(もんばん)の九助つぶや 00079180L5く。長/老(らう)きゝ給ひ、/葬(さう)礼のないハ/旦方(だんはう)(七ウ)のはんじやう 00079190L6じや。九介/聞(きい)て、さうれいが参ればお/寺(てら)のにぎハひじやと 00079200L7いふ。折ふし/門(もん)をしきりにたゝく。九介出て、たれじや。 00079210L8/死人(しにん)を送りますといふ。九助よろこびさハぎければ、ぢう 00079220L9じ大やうに、やかまし+。おのれがいはねど、/葬(さう)礼のあ 00079230L10るハよいからがてんじや。さてハさきへ申て参りましたか。 00079240L11いや、いふてハ/来(こ)ぬが、よいに大きな/丁子(てうじ)がしらが/立(たつ)た。 00079250¥N9¥J 00079260¥X/蚊屋(かや)のかり/違(ちが)ひ 00079270L14ゆふべ、/胴(どう)がくさつてありたけとられ、帰りて女/房(ばう)をだま 00079280L15し、/銀才覚(かねさいかく)に出しければ、千日寺にてかや(八オ)/三(ミ)はり/借(か) 00079290L16つてしちに入、銀六拾目こしらへてわたせば、おとこよろ 00079300L17こび、すぐにばくちの/宿(やと)へゆき、六拾目をほんにはり、一 00079310L18/番(ばん)にとられ、はふ+帰れば、女ぼうはらをたて、かなし 00079320L19や。千日でかつたかやが、一/時(とき)にほろびたといはれた。 00079330¥N10¥J 00079340¥X/木(き)ぐすりやの/発明(はつめい) 00079350M3さる御/侍(さふらひ)、木ぐすりやへ/来(き)て、/人参(にんじん)もとめ帰り給ふ。あ 00079360M4とへとなりのおやじわせて、たゞ今ハよいあきなひし給ふ。 00079370M5さだめて利もあるべしといへは、/亭主(ていしゆ)聞て、利ハミへまし 00079380M6(八ウ)たが、/病人(びやうにん)のきしよくハよふ御座るまい。おやじき 00079390M7いて、/病(びやう)人を御ぞんじもなふて、よふ有まいとハ心得がた 00079400M8しといへば、さればこそ、ぶしがにんじんを取にきたから 00079410M9ハ、さてハじんふたう、かなハぬとぞんするといハれた。 00079420¥N11¥J 00079430¥Xかハきのやまひ 00079440M12すくやかな男、にハかにかハきのやまひとりつき、くへと 00079450M13も+あきたらず。きたう/願(ぐわん)だて、いしやもんぢやく、の 00079460M14こる/方(かた)なくしけれども、/露(つゆ)ほどもげんきなく、今をかぎり 00079470M15のとき、(九ノ十一オ)みな+あたりへよひよせ、われらが 00079480M16/病(やまひ)、今思ひいだしたり。相かまへて、かた※/孫子(まごこ)の/末(すゑ)ま 00079490M17で、/仁王(にわう)の/口(くち)へ/紙(かミ)うちこむなといひ/置(おい)てしなれた。 00079500¥N12¥J 00079510¥X/石(いし)よりかたい/門徒宗(もんとしう) 00079520¥P253 00079530L1ひがし本ぐわんじの/門跡様(もんせきさま)へ、おかミそりいたゝくとて、 00079540L2さるざいしよのおばゞ、しまつでし/立(たて)たつぎ※の/布子(ぬのこ)き 00079550L3て、御たいめんじよへあがれば、/門跡(もんぜき)さまも御出あり。つ 00079560L4ぎ※にむつとなされ、これきせよとて、おめしのお/白(しろ)小 00079570L5そできかへさせ、おかミそりあてたまふ。ばゞ(九ノ十一ウ) 00079580L6(十二オ挿絵)帰りて此よしをいひければ、/地下(ぢげ)中よりあひ、 00079590L7ばゞにミあかしやりて、かの小そでをほどき、少つゝもら 00079600L8ひ、あやからんといふ。/隣(となり)ざいしよのもの/望(のぞ)む。何にめさ 00079610L9る。おじゆずぶくろのお/表(おもて)にいたしますといへば、ばゞは 00079620L10らをたて、そなたハおじゆず/袋(ふくろ)のお表にするといはるゝハ、 00079630L11/帰参(きさん)じやさかいで、いよ+ならぬといふた。 00079640¥N13¥J 00079650¥X/有馬(ありま)の身すぎ 00079660L14/何(なに)をしてもはだかで/居(ゐ)てくふほとの身すぎや(十二ウ)ある。 00079670L15何がなあたらしい事/仕出(しだ)してすぎハひにせんと、/竹(たけ)どいに 00079680L16/気(き)を付て、/竿竹(さほだけ)のふしをぬき、/有馬(ありま)へゆきて大ごゑあげ、 00079690L17二/階(かい)から/小便(せうべん)させふといひあるけば、/湯入(ゆいり)衆きゝて、是ハ 00079700L18あたらしいとよびけるに、くだんの竹をそとから二かいへ 00079710L19さし/出(だ)す。/是(これ)ハ竹がほそいといへは、がてんで御座ると、 00079720¥G 00079730M12ふところなるじやうごをはめてさし出したり。 00079740¥N14¥J 00079750¥X/茶湯(ちやのゆ)たゞのり 00079760M15/西国(さいこく)へおもむきしに、あかしがたにて/船頭(せんどう)申ハ、(十三オ) 00079770M16あれに見えましたが人丸、そのこなたに御座るがたゞのり 00079780M17のかいな/塚(づか)とかたれば、ある人、/其(その)さつまの/守(かミ)/忠度(たゞのり)ハ、か 00079790M18くれもない/和哥(わか)の/達者(たつしや)、/茶(ちや)の/湯(ゆ)の/上手(じやうず)といへば、/乗(のり)あひし 00079800M19ゆ、ちやのゆいたされし事めづらしい。なにゝ見えました 00079810¥P254 00079820L1といへば、うたひに、/城南(せいなん)りきうかたへおもむき候とあれ 00079830L2は、いくたより/前(まへ)に、りきうの所へいとまごひにゆかれた 00079840L3そふな。 00079850¥N15¥J 00079860¥X七ふしぎ 00079870L6/摂州(せつしう)天王寺の人、ゐなかへ/見物(けんふつ)にくだりしに、(十三ウ)/宿(やど) 00079880L7の/亭主(ていしゆ)、何と、/天王寺(てんわうじ)の七ふしぎ、まことにて候や。成ほ 00079890L8ど/我等(われら)、あさ夕よく/存知(ぞんぢ)て/居(ゐ)ます事じや。七つハ何+で 00079900L9御座る。/先(まづ)かめ井の水。かれこれと六つまでハいふて、七 00079910L10つめをわすれて出なんだ。何と+としきりにとハれ、め 00079920L11いわくして、わすれさうもない事をわすれたがふしぎじや。 00079930¥N16¥J 00079940¥X/名(な)にハ/妙薬(めうやく)がある 00079950L14物もう。どれ。せきたんと申もの、御みまい申す。なんじ 00079960L15や。/留守(るす)か。御/帰(かへり)あらハ、たづねましたと(十四オ)いふて 00079970L16たもと/云置(いひおい)ていなれた所へ、/亭主(ていしゆ)弐三人づれで帰られけれ 00079980L17ば、/右(ミぎ)の/口上(こうじやう)いふを、つれのそさう成人きかれて、そのせ 00079990L18きたんハ、おれがよふ覚てゐるといハるゝ。ていしゆ聞て、 00080000L19御ぞんじハあるまいが。いや+、我等よくしつた事じや。 00080010M1人にいハしやるな。そのせきたんには、ちんひと/黒(くろ)まめせ 00080020M2んじて/呑(のめ)ば、たちまちよいといハれた。 00080030¥N17¥J 00080040¥Xいひぬけの/虎落(もがり) 00080050M5/気(き)がさで/過(すき)る/牢(らう)人、此比はりをたて/習(なら)ひ、(十四ウ)事がな 00080060M6とおもふ所へ、/近所(きんじよ)より/病(ひやう)人ありて/頼(たのミ)けれバ、何心なく/針(はり) 00080070M7たてしが、此はりぬけず。とやかくと/力(ちから)を出し引ければ、 00080080M8針ハおれて/腹(はら)へ入る。びやう人/気(き)を取うしなひ、きつけ何 00080090M9かといふ内に、身もひへ/息(いき)もたへければ、/針(はり)たて、こゝハ 00080100M10大事とおもひ、いづれももはやあきらめ給へ。/私(わたくし)はりハ/天= 00080110M11国(あま=くに)が/作(さく)にて千両ともかへねども、おれこミたれは取返しも 00080120M12ならぬ。/時節到来(じせつたうらい)、ぜひもないといふて/逃(にげ)られた。 00080130¥Y1御前男四之終(十五オ) 00080140¥P255 00080150¥Y1軽口御前男巻之五目録 00080160L3一△たから寺/開帳(かいちやう) 00080170L4二△/貧報神(びんほうがミ)かいちやう 00080180L5三△から/風呂(ふろ) 00080190L6四△/昔(むかし)を今によミがるた 00080200L7五△でかハりの/虎(とら) 00080210L8六△/長(なが)そろばん 00080220L9七△ぬかぬに物がある 00080230L10八△/我(わが)身の/料簡(りやうけん)(一オ) 00080240L11九△かけねなし 00080250L12十△まよひ/駕篭(かこ) 00080260L13十一△すまふの/評判(ひやうばん) 00080270L14十二△見まひ/人(じん) 00080280L15十三△/邪婬(じやいん)の/訴人(そにん) 00080290L16十四△かゝり/子(ご) 00080300L17十五△かハりあふぎ 00080310L18十六△げぢ※ 00080320L19十七△ものハあてにならぬ 00080330M1十八△気のつくほどそんがある(一ウ) 00080340¥P256 00080350¥T1 00080360¥N1¥J 00080370¥Xたから寺/開帳(かいちやう) 00080380L3/欲(よく)にハきりがない。さるおやじ、山/崎(さき)の/開帳(かいちやう)に、うち/出(で)の 00080390L4小づち一はいのおもひ/入(いれ)で/参詣(さんけい)し、小つちおかミ/度(たき)よしい 00080400L5へば、小/僧(ぞう)立より、/槌(つち)をおがませ、たからさづくるが、/銀(ぎん) 00080410L6十匁で御座る。/是(これ)ハさて、/持(もち)あハせが御座りませぬ。六匁 00080420L7五分でまけて/((と脱カ))いへば、しからば、さたなしにまけてやりま 00080430L8すと手をひらかせ、/何(なに)やら手の内に/置(おい)て、其/上(うへ)をつちにて 00080440L9うち、さあにぎつて、/宿(やど)へ帰るまであけさしやるなとおし 00080450L10へて帰しけり。おやじ(二オ)よろこび、/枚方(ひらかた)まで/来(きた)りしが、 00080460L11どうやらこゝろもとなく、手をあけて見れば、/残而(のこつて)三匁五 00080470L12分かし、といふ書付であつた。 00080480¥N2¥J 00080490¥X/貧報神(びんぼうかミ)かいちやう 00080500L15あるざいがうのやせ/寺(てら)に、山ざきのかい/帳(ちやう)うら山しく思ハ 00080510L16れけれど、れいほうなければすべきやうなく、/智恵(ちゑ)を/出(だ)し 00080520L17て/開(かい)帳の/札(ふた)ニ/云(いわく)、 00080530L18△一△/当寺(たうじ)/代&(だい+)相つたハる/貧報(びんほう)神、御むさうによつて、来 00080540L19△△△ル七月十四日より開帳せしむるもの也。もしさんけ 00080550¥G 00080560M12△△△いなき/方(かた)へハ、(二ウ)(三オ挿絵)/貧報神(ひんほうかミ)御入有へきと 00080570M13△△△の御/詫宣(たくせん)なり。さう+さんけい有べく候△以上 00080580M14△△△△△未五月四日 00080590M15と書て、さあつかミどりじやと、/地下中(ぢげぢう)うちよりにぎハふ 00080600M16ところに、ふしぎや、かの神あらハれたまひ、さやうにわ 00080610M17れを人めにさらし、銭かね取こミはんじやうせバ、此/寺(てら)に 00080620M18は/住(すミ)がたし。なごりおしやと、夕ぐれにかきけすごとくう 00080630M19せ給ふ。さても/智恵(ちゑ)かな+。 00080640¥P257 00080650¥N3¥J 00080660¥Xから/風呂(ふろ) 00080670L3嶋原のあげや/誰(たれ)やらが/座(ざ)しきにて、大(三ウ)じんの前で、 00080680L4かぶろ、ひよつととりはづしければ、/女郎(ぢよらう)きゝ、さてもぶ 00080690L5しつけな。そこたちおれといへど、かぶろ、うじ+とし 00080700L6ければ、女郎はらたて、さあたゝぬかといひさまに、女郎 00080710L7又取はづし、ぬからぬかほで、まづ、おれから/立(たち)ませうと 00080720L8いハれた。 00080730¥N4¥J 00080740¥Xむかしを今によみがるた 00080750L11今といふいま、あかはだかにうちなされ、/袖(そで)ごひのかしま 00080760L12だち。ある/門口(かどぐち)にたち/寄(より)、かるたの二を弐まいならべてい 00080770L13たりければ、/旦那(だんな)(四ノ六オ)見て、久三、あのひにんハ何 00080780L14をするぞ。あれハたすけてくれいと申事で御座ります。し 00080790L15からバなんでもとらせい。久三、やがてむし一まいに銭壱 00080800L16文そへて、ひにんにやれば、ひにん、弐を壱まい、にわへ 00080810L17すてゝ、/是(これ)でうかミました。 00080820¥N5¥J 00080830¥X/出(で)かハりの/虎(とら) 00080840M1お/内義(ないき)さま、おやくそくの人をつれて/参(まい)りましたと、/針(はり)か 00080850M2ゝが/門(かど)口から。やかましい人がきたと御内義、ほうこう/人(にん) 00080860M3を見られて、成ほどおきましよ。そなたハきりやうもよい 00080870M4が、(四ノ六ウ)そのつめハいつとりやつたまゝぞ。くい物 00080880M5する身にハむさい事じや。今までハどこにほうこうしやつ 00080890M6たぞ。あい、これハそのはづて御座ります。あとの/季(き)まで、 00080900M7ふろやにおりましたといふた。 00080910¥N6¥J 00080920¥X/長(なが)そろばん 00080930M10ばゞそだちに十四五まで。是ハあまりな事じや。てら入に 00080940M11はおそしと、夕かたよりあたりへ/算用(さんよう)ならひにやりける。 00080950M12ししやう、四五へんもおしへて、いんでからもゆだんなく、 00080960M13(七オ)内でけいこしたがよい。かしこまつたといへど、/来(く) 00080970M14る日も+らちあかず。/師匠(ししやう)ほつとして、そなたハ内でけ 00080980M15いこせられぬと見えた。ぬく太郎/聞(きゝ)、/成(なる)ほどいたしますれ 00080990M16ども、/長(なが)そろばんでおぼへられませぬ。それハどうしたも 00081000M17のぞ。いや、おやぢ百まんべんをよまるゝそろばんで御座 00081010M18ります。 00081020¥P258 00081030¥N7¥J 00081040¥Xぬかぬに物がある 00081050L3ある/侍(さふらい)、町人といひぶんして、中+ことばあらくなり、 00081060L4ぬけ、/相手(あいて)になる。さふらひなら(七ウ)ばぬけとあつこう 00081070L5すれど、その/座(さ)をひけてにげゆきしに、其後かのさふらひ 00081080L6とねん比なるもの、/其(その)はう様ハ、いつそやかやう+の義 00081090L7にて、さしづめになりけれと、大小ともにやくに御たてな 00081100L8きよし。それハいつぬかふとおほしめすといへば、これハ 00081110L9せつしやが/食(めし)をくふときにぬきますといはれた。 00081120¥N8¥J 00081130¥Xわが身のりやうけん 00081140L12かんだなるかぢやありしが、あまりよるひるやかましさに、 00081150L13となりのおやじゆきて、(八オ)さてもこなたハ/上(じやう)こんな事 00081160L14じや。/夜(よ)なか八つになつても、しごとのおとのせぬ事がな 00081170L15い。いかにかねののびるがおもしろいとて、ちと夜もねて、 00081180L16身のつゞくやうにさしやれといへは、ちか比御いけん、か 00081190L17たじけない。さりなから、わたくしハいつも、かたつらの 00081200L18めがねていますゆへ、これでいれあひますといふた。 00081210¥N9¥J 00081220¥Xかけねなし 00081230M3かたびらハふゆ、かハしやれ。/夏(なつ)がいハたかふ御座る。 00081240M4(八ウ)いや+、さうもいハしやるな。ひるらうそくをか 00081250M5ふたけれど、やすふなかつた。 00081260¥N10¥J 00081270¥Xまよひ/駕篭(かこ) 00081280M8やりましよ+。かごやりませふ。かごかろふ。なんぼう 00081290M9じや。三匁五分。それハたかい。壱匁弐分。いや+と、 00081300M10壱匁六分迄にねなした。よふ御座る。やりましよといふて 00081310M11のせてゆく。いやだんな。どこまでで御座るといへば、ほ 00081320M12んになふ、おれもしらぬといふた。 00081330¥N11¥J 00081340¥Xすまふの/評判(ひやうばん)(九オ) 00081350M15/今度(こんど)大坂/ぼ((ママ))り江にすまふ有しに、ついにミた事もないいな 00081360M16かしゆ、見物してくにへ帰りければ、ともだちしゆ、なん 00081370M17と、大坂のすまふハととへば、成ほど見ました。さすが大 00081380M18坂ほどある。ミな+めいじんじやといふ。そのうちの人 00081390M19いはれしハ、何をいハるゝやら。おれハばん付を見たが、 00081400¥P259 00081410L1ろくなすまふハ一人もないが。いや+、それでもどれが 00081420L2/出(で)ても、ぎやうじが、よい+といひました。 00081430¥N12¥J 00081440¥X見まひ/人(じん)(九ウ)(十ノ十二オ挿絵) 00081450L5やれ、/火事(くわじ)がいく。どこじや+。とこじやしれぬ。そん 00081460L6なら、みまひにいかざなるまいといふた。 00081470¥N13¥J 00081480¥X/邪婬(じやいん)のそにん 00081490¥G 00081500M1さる所のむすこ、久しぶりにてくるわへゆきしに、女らう 00081510M2いふハ、何とて久しう見へませなんだ。さればさん※の 00081520M3事。もはや/其方(そなた)にもあハれぬやうになつた。それハ何とし 00081530M4て、そのやうなしゆびに成ました。いや+、しゆびのわ 00081540M5るい事ハない。そんならどうで御ざんす。されば、そちに 00081550M6おやじがあひたがるといふた。(十ノ十二ウ) 00081560¥N14¥J 00081570¥Xかゝり/子(ご) 00081580M9六拾ばかりのおやじ、さるかたへゆきてはなされしに、あ 00081590M10る人のいふハ、おやじさまも、お子たちが御座りますか。 00081600M11成ほど、一人もちましたが、いかいせわで御座るが、もは 00081610M12やかゝりませふとぞんじ、よろこひますといふ。さぞさう 00081620M13御座りましよ。もはやおいくつで御座る。さだめて、さい 00081630M14も御座りませふといへば、ことしでふたつになりますとい 00081640M15ハれた。(十三オ) 00081650¥N15¥J 00081660¥Xかハりあふぎ 00081670M18五兵衛どの。そのあふぎ、ミせさしやれ。はて是ハよいあ 00081680M19ふぎの。なん/本(ぼん)のあふぎで御座る。それハ壱本で御座る。 00081690¥P260 00081700L1何をいハるゝやら。/貴様(きさま)がいつ壱本のあふぎ、もたれた事 00081710L2があるぞ。それでも三年になるが、それよりほか御座らぬ 00081720L3といふた。 00081730¥N16¥J 00081740¥Xげぢ※ 00081750L6こなたハいかふあたまがはげました。まだそのじぶんでハ 00081760L7あるまいが。いや+、もはやこの(十三ウ)はづで御座る。 00081770L8三十八になるおやじをもつていますといはれた。 00081780¥N17¥J 00081790¥X物ハあてにならぬ 00081800L11ある人、久三つれて/買(かい)物に出られ、さる見せにて/買(かい)物とゝ 00081810L12のへゐらるゝを、見せさきにひにんども、ながめおるほど 00081820L13に、こりや久三。おれハうらへいく。見せさきに人がある。 00081830L14さいふに気をつけ、ばんをせよ。あいといふて、/旦那(だんな)ゆか 00081840L15れしあとにて、かの久三、さいふかたげてはしりければ、 00081850L16おもてのひにん、あれ+といふた。(十四オ) 00081860¥N18¥J 00081870¥X/気(き)のつくほどそんが有 00081880L19大/坂(さか)より/和泉(いつミ)へゆく人、さかいにて/友達(ともだち)にあひ、どこへ。 00081890M1ゑびす/嶋(じま)から今いぬる。そちハどこへ。おれハいづミへゆ 00081900M2くが、つれがあらバ三/里(り)まハれじや。つれのあるおり、い 00081910M3んでおかふと、さかいからつれだつてもどられた。 00081920¥Q 00081930M6元禄十六壬未年六月上旬 00081940M7△△△△△△△△△△△△敦賀屋 00081950M8△大坂順慶町心斎橋筋書林△△△九兵衛 00081960M9△△△△△△△△△△△△柏原屋 00081970M10△△△△△△△△△△△△△△△清右衛門(十四ウ) 00081980¥P261 00081990¥U噺本大系△第六巻 00082000¥T軽口ひやう金房 00082010¥G 00082020¥Y 00082030L16元禄頃刊 00082040L17作者不詳 00082050L18半紙本五巻五冊 00082060L19京大文学部図書室蔵 00082070¥Y/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)序 00082080M3/波風(なミかせ)しつかに/納(おさま)り、はつ/曙(あけほの)の/若(わか)ゑひす、ものもふどれい、 00082090M4/新春(しんしゆん)の御/吉慶(きつけい)、/何方(いつかた)も/御同然(ことうせん)の/中(なか)、/八十(やそし)の/親父(おやぢ)も、/若(わかう)ふ 00082100M5ならしやりましたの/祝言葉(いわゐことハ)、/福(ふく)の/神(かミ)や/御万歳(こまんさい)、/大黒舞(たいこくまい)の 00082110M6/打出(うちて)の/小(こ)つち、かたげたき/智恵袋(ちゑふくろ)よりハ、/何(なに)なりともこ 00082120M7のむ/物(もの)も/取出(とりいた)し、あたふべきと有しかハ、/予(よ)も、よきもの 00082130M8にあたらんとおもひ、/取出(とりいた)せハ、/一(ひとつ)の/書(しよ)を/得(う)る。ひらきて 00082140M9/見(ミ)れハ、/当世(とうせい)の/軽口(かるくち)はなしを/書(かき)あつめたり。/予(よ)、/是(これ)なん/初= 00082150M10福(はつ=ふく)を/得(ゑ)たりと、(一オ)/其侭(そのまゝ)/置事(をくこと)を/不得(ゑす)して、これにもとづ 00082160M11き、/部(ふ)せん/事(こと)をと、/世間(せけん)の/海(うミ)/広(ひろ)く、/筆(ふて)の/林(はやし)、/世(よ)にしげき/噂(うハさ) 00082170M12をあつめ、/下官(やつかれ)がすけるにまかせて、/梓(あつさ)にちりばめ五/巻(くわん) 00082180M13にして、/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)と/名付者(なつけるもの)か。(一ウ) 00082190¥P262 00082200¥Y1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)/巻(まき)一 00082210L3△△△/目録(もくろく) 00082220L4一△/小堀遠州(こほりゑんしう)の/懸物(かけもの)の事 00082230L5二△/水風呂(すいふろ)へ/香物(かうのもの)/入(いる)る事 00082240L6三△しわき/者(もの)/目(め)を/張(は)る事 00082250L7四△かづき/買(かい)に/行(ゆき)し事 00082260L8五△/甥(おい)を/見違(ミちがへ)し事 00082270L9六△/編笠(あミがさ)を/着(き)て/物(もの)いはれぬ事 00082280L10七△/親子(おやこ)/酒(さけ)にゑひたる事 00082290L11八△/輪袈裟(わげさ)の事(目録オ) 00082300L12九△手くせの/悪敷者(あしきもの)/茶(ちや)屋へ/行(ゆく)事 00082310L13十△弐分五厘と云/異名(いミやう)の事 00082320L14十一△/親父(おやぢ)/唐人(たうじん)となられし事 00082330L15十二△ちやうちんに/女郎(ちよらう)/書(かき)し/絵(ゑ)の事 00082340L16十三△/家&(いへ+)で/思案(しあん)する事 00082350L17十四△/井戸(ゐと)がへの事 00082360L18十五△/神鳴(かミなり)/江戸(ゑど)のよし/原(ハら)へ/落(おつ)る事 00082370L19十六△ねり/供養(くやう)の事(目録ウ) 00082380¥T1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)巻一 00082390¥N1¥J 00082400¥X一△/小堀遠州(こほりゑんしう)の/懸物(かけもの)の事 00082410M5あるもんもう成/人(ひと)、/茶湯(ちやのゆ)ぶるまいにいかれしに、かけ物に 00082420M6/小堀遠州(こぼりゑんしう)の/詩哥(しいか)をかけられしを、/相客(あいきやく)見て、/扨(さて)+/見事= 00082430M7成(ミこと=なる)とほめられしを、/彼(かの)もんもう人も/見(ミ)て、あれはたれが/筆(ふて) 00082440M8てござるぞとたづねられしに、あいきやく、あれハ/遠州(ゑんしう)の 00082450M9筆でござると云。/彼(かの)人がてんせず。その遠州とハ/何人(なにひと)でご 00082460M10ざるといはるゝにより、相客、きのとくがりて、はて、小 00082470M11堀/遠江(とを+ミ)殿の事でござるといへバ、ぬからぬ(一オ)皃て、 00082480M12それハ成程しりましたが、いつ坊主になりやりましたとい 00082490M13はれた。 00082500M14△/評(ひやう)に/日(いはく)、遠州と云を/坊主名(ほうすな)と覚られたと見へた。 00082510¥N2¥J 00082520¥X二△/水風呂(すいふろ)へ/香物(かうのもの)入る事@古キを以て新く|する△△△△△@ 00082530M17/若(わか)き/衆(しゆ)/寄合(よりあい)、何かはなしをしける時、ひとりの人云けるハ、 00082540M18/世(よ)にハいろ+の事あり。/隣(となりの)/祖母(ばゝ)ハ/麁相(そさう)な人かな。/食(めし)の 00082550M19/湯(ゆ)のあついに、かうの物を入れバさめる事をしつて、水風 00082560¥P263 00082570L1呂のあついに、かう物もてこいといはれたと、しまん/皃(かほ)に 00082580L2はなせ共、人&云けるハ、それハふるいはなしじやといふ 00082590L3て(一ウ)/笑(わら)はす、/不首尾(ふしゆび)成しに、其一座に/田舎者(いなかもの)/居(ゐ)けるが、 00082600L4此はなしを/聞(きゝ)て、ふしぎなる/皃(かほ)をして云やう、いまのはな 00082610L5しを承り候へハ、水風呂のあついに、かうの物を入てさま 00082620L6するとの事にて候なと云により、いかにも+と云けれバ、 00082630L7此人云やう、私の存まするハ、水風呂のあついにハ、かう 00082640L8の物より、水を入たらバよかろといはれた。 00082650¥N3¥J 00082660¥X三△しわき/者(もの)/目(め)を/張(は)る事 00082670L11今の世ハ/物(もの)ごとに、しまつせねバならんよじやとて、去し 00082680L12わい/親父(おやち)、まづ/目(め)と云/物(もの)、/人毎(ひとこと)に二つ有リ。(二オ)壱つでも 00082690L13くるしからぬ事。二つハつゐへじや。もし目を/煩(わづら)ふか、又 00082700L14ハ物に/中(あたり)つぶれる事も有ものなれバ、其時のためにとて、 00082710L15目をかた+紙にてはり、/常(つね)にひとつにて、卅年ばかりく 00082720L16らされしに、あんのごとく、/五月(さつき)/暗(やミ)のくらきに/行中(ゆきあたり)、目 00082730L17つぶれけれバ、此/時(とき)の/為(ため)とて、くだんのはりをきたる/紙(かミ)を 00082740L18とり、/役(やく)に立られけり。然ども、此目、卅年斗/張(はり)たる事な 00082750L19れバ、/近年(きんねん)の人を見しらず。むす子の云やう、おやぢ+ 00082760M1といへば、おやぢ云やう、/声(こゑ)ハ聞しれども、/御皃(おかほ)を見知り 00082770M2ませぬと(二ウ)いはれた。 00082780M3評に曰、@卅年はかり目をはりをくゆへ、卅年いせんの|皃を見しりて、今の事をしらぬもおかし。△@ 00082790¥N4¥J 00082800¥X四△かつきかいに行し事 00082810M6/都(ミやこ)五条通りハふるぎや/町(ちやう)にて、いろ+のふるぎをあき 00082820M7ないける。/夕暮(ゆふくれ)に、二八斗の、さもうつくしきをんな、ふ 00082830M8るてやの内へ、つつとはいりけれハ、ていしゆ見て、あま 00082840¥G 00082850¥P264 00082860L1りうつくしきに気をとられ、/十方(とはう)なき所に、女云けるハ、 00082870L2かづき/買(かい)ませうといへば、ていしゆあはて、かづきハ/女(おなご)が 00082880L3たか、男がたかといふたれば、/彼(かの)女おかしがり、そさうな 00082890L4る人かな。かづき(三オ)に男がた、をんながたと云て有も 00082900L5のか。はかまなんぞのやうにといふた。 00082910¥N5¥J 00082920¥X五△/甥(をい)を/見違(ミちかへ)し事 00082930L8そさうなるおやぢ、/寺(てら)へ参るとて、/通(とをり)リ町を/通(とを)られしに、 00082940L9むかいより卅斗なる人来りしが、世にハ/似(に)た者あり。/彼(かの)を 00082950L10やぢの/甥(をい)とこゝろへ、近クよりて、すでに/甥(をい)よと/言葉(ことば)をか 00082960L11けんとするに、/能(よく)&ミれば、/甥(おい)にてハなし。/手持(てもち)/悪敷(あしく)/行= 00082970L12過(ゆき=すき)ぬ。おやぢうしろむき、/小者(こもの)に云やう、はて、あれほど 00082980L13/甥(おい)によくにたはあるまひなといへバ、/小者(こもの)/云(いふ)やう、さても 00082990L14(三ウ)(四オ挿絵)/能(よく)にましてござります。あれハまつ、た 00083000L15れが甥じやといふた。 00083010M16△評に曰、@めつさうに卅斗なる者を|皆おいと云ハおかし。△@ 00083020¥N6¥J 00083030¥X六△/編笠(あミかさ)を/着(き)て/物(もの)いはれぬ事 00083040L19/是(これ)もそさうなるおやぢ、ぼんまへにあミ笠を着て、かけこ 00083050M1いにいかれしに、道にてしる人に/逢(あい)けれ共、あミ/笠(かさ)のひぼ、 00083060M2つよくしめられしゆへに、くちあからず、其内にとをりぬ。 00083070M3おやぢ、こゝろにおもふやう、物いはふとして物いはれざ 00083080M4るハ、/扨(さて)ハ/中風気(ちうふけ)とおもハれ、やがてに内へ帰り、/硯(すゝり)をと 00083090M5り、かみにかゝれる事(四ウ)こそおかしけれ。われらハ/俄(にハか) 00083100M6に、/中風気(ちうふけ)やら、ものいわれんと/書(かい)て、むすこに見せけれ 00083110M7バ、むすこ/驚(おどろき)、まづおやぢ、あミ笠をぬがしやれといへば、 00083120M8おやぢ/編笠(あミかさ)をぬぎ、物いへば、なるほど+常のごとし。 00083130M9おやちぬからぬ/皃(かほ)で、扨ハあミ笠ハ、/中風(ちうふ)に大きんもつじ 00083140M10やといはれた。 00083150¥N7¥J 00083160¥X七△/親子(おやこ)/酒(さけ)にゑひたる事 00083170M13/去所(さるところ)に、酒ずきなる者親子有けり。有時むすこ、酒にゑ 00083180M14ひて、内へ帰りければ、おやちも酒によひて帰り、むすこ 00083190M15をとらへて、おやぢのしかる事こそおかし(五ノ十オ)けれ。 00083200M16やれ、おどれハめつたに/酒(さけ)をくらふてよひをる。あのどん 00083210M17なつらハいの。おのれが/面(つら)ハ、ちやうど八ツあるハ。をの 00083220M18れに此跡ハやられぬ。/役(やく)に立ぬやつじや。いづくへなり共 00083230M19うせをれと云てしかりけれバ、むす子きいて、おれがかほ 00083240¥P265 00083250L1が八ツに見へるとハ、そなたが酒によふてみへるハ。何じ 00083260L2や。おれにハ此跡ハやらんといやるか。これ、此やうなく 00083270L3る+とまハる家ハいらぬと云た。 00083280L4△評に曰、@親父酒よふて皃か八にみゆるもおかし。|むすこ酒によふて家かまハるもおかし。@ 00083290¥N8¥J 00083300¥X八△/輪袈裟(わげさ)の事(五ノ十ウ) 00083310L7/真言宗(しんこんしう)と見へて、/輪(わ)けさをかけて、さもしゆしやうらしく 00083320L8/通(とを)られけるを、/田舎者(いなかもの)/見(ミ)て云やう、あの/輪袈裟(わげさ)ハ何として 00083330L9かけたるものぞ。/下(した)からはいらしたる物か、又上からはい 00083340L10らしたる物かと、あんし/煩(わづら)い、/兎角(とかく)あのぼんの内までいて 00083350L11見んと、/跡(あと)よりいきけるに、彼ぼん、/近付(ちかづき)にあい、お久し 00083360L12やと/笠(かさ)をぬぎけれハ、/彼(かの)田舎者見ていふやう、できた。あ 00083370L13たまからはいらしたものじやと云た。 00083380L14△評に曰、此坊主かさをきて居たるゆへにや。(十一オ) 00083390¥N9¥J 00083400¥X九△手くせの/悪敷者(あしきもの)/茶(ちや)屋へ/行(ゆく)事 00083410L17さる/手(て)くせのあしき/者(もの)、/茶(ちや)屋へあそびにゆきけるが、/座敷(ざしき) 00083420L18のゑんに、/金(かな)だらいありけるを見て、よき物とおもひ、/帰(かへ) 00083430L19りしなに/取(とり)、ふところへ入れども、大きくて見へけれバ、 00083440M1しあんをめぐらし、折ふし/羽織(はをり)きていれば、せなかへまハ 00083450M2し/入(いれ)てけり。さて帰る/時(とき)、をんないふやう、こよひハなに 00083460M3の/御馳走(こちそう)も申ませなんだ。又いつござんすといふて、せな 00083470M4かをたゝきけれバ、/彼(かの)金だらい、くわんとなりけれバ、ぬ 00083480M5からぬ/皃(かほ)で、かうしんの/晩(はん)にこふといふた。(十一ウ) 00083490¥N10¥J 00083500¥X十△弐分五厘と云/異名(いミやう)の事 00083510M8/京都(きやうと)/松原(まつハら)あたりの/者(もの)/成(なる)か、いミやう、弐分五リンといふ 00083520M9ものあり。/本名(ほんミやう)をいはずして、人&、弐分五厘とばかり云 00083530M10けり。ある/時(とき)、/御目付衆(おめつけしゆ)御/聞(きゝ)なされ、かはつた/異名(いミやう)なり。 00083540M11/此者(このもの)つれきたれ。/様子(やうす)御/尋(たつね)あるべしと、おほせられしか 00083550M12ば、/年寄(としより)、/五人組(こにんくミ)、/彼(かの)弐分五リンヲつれ/参(まいり)けり。/何(なに)とて/此= 00083560M13者(この=もの)を弐分五厘といふとあれば、/年寄(としより)申やう、/其儀(そのき)でござり 00083570M14ます。べつにあしき人にてもござりませぬが、/此人(このひと)の/親(おや)ハ、 00083580M15しやうばいがごふん屋でござりまする。/其子(そのこ)でござります 00083590M16るによつて(十二オ)弐分五リンと申ますと云た。 00083600¥N11¥J 00083610¥X十一△/親父(おやち)/唐人(たうじん)となられし事 00083620M19さるれき+の人なるが、六十に/余(あまつ)て、/今(いま)を/限(かぎ)りにわづら 00083630¥P266 00083640L1いける。いろ+/典薬衆(てんやくしゆ)を頼ミ、/療治(りやうぢ)しけれども、/大病(たいひやう) 00083650L2ゆへか、/次第(したい)におもくなりけり。此おやぢ、なミだをなが 00083660L3し、/大(おほ)きになかれしかバ、あまたの/一家(いつけ)やむすこ/立(たち)、/側(そハ)よ 00083670L4り、/何(なに)とてさやうに御なげき候ぞ。/生死(しやうじ)のならひハ、/誰(たれ)と 00083680L5てものがれぬことを、さもしき御こゝろ入としかりけれバ、 00083690L6おやぢ云やう、さら+/命(いのち)がおしくて、なくにあらず。を 00083700L7れハ/追付(をつつけ)/唐人(たうじん)に(十二ウ)(十三オ挿絵)なるがかなしいによつ 00083710L8て、なくといはれしかハ、/子共衆(こともしゆ)や/一門衆(いちもんしゆ)/聞(きゝ)て、これハ/合= 00083720L9点(が=てん)のいかぬ/事(こと)かな。それハまた、なにといたした事ゆへ、 00083730L10さやうに/被仰(おほせられ)候ぞと申されけれバ、おやぢきいて、され 00083740L11バ、さいぜんのおいしやどのゝおほせられつる/事(こと)を/聞(きい)たか。 00083750L12おれが/脉(ミやく)をミてから、もはや、あつちものじやといはれた 00083760L13といふてなきけり。 00083770L14△/評(ひやう)に/曰(いはく)、@あつちものじやによつて/唐人(たうしん)と|なると/覚(おほ)えられけるにや。△△@ 00083780¥N12¥J 00083790¥X十二△ちやうちんに/女郎(ちよらう)/書(かき)し/絵(ゑ)の事 00083800L17いづくも/盆(ほん)にハ/手向(たむけ)とて、きりこあんど、ちやうちん(十 00083810L18三ウ)など、おもひ+に、もんを/付(つけ)て/出(いた)しけり。/遊女町(ゆふちよまち) 00083820L19のちやうちんの/紋(もん)にしるしとて、十七八/斗(はかり)なる/振袖(ふりそて)の/見事(ミこと) 00083830¥G 00083840M12なる/女(をんな)を/書(かい)て出しけり。何とかしつらん、そのちやうちん 00083850M13の/火(ひ)より、/火事(くわじ)/出来(しゆらい)して、そうだうす。/所(ところ)の/奉行(ふきやう)/聞(きゝ)給ひ、 00083860M14さて+にくいやつかな。ちやうちんに/女郎(ちよらう)をかく/事(こと)、/火(ひ) 00083870M15にたゝるずいさうなり。それをいかにと/云(いふ)に、/女郎(ちよらう)ハやく 00083880M16/物(もの)じや。かさねてハ/幽霊(ゆうれい)をかけとおほせられた。なぜにな 00083890M17れバ、きゆる物じやといふ。 00083900¥N13¥J 00083910¥X十三△/家&(いへ+)て/思案(しあん)する事(十四オ) 00083920¥267 00083930L1/此中(このちう)、/家&(いへ+)の/内(うち)ヘはいりて、ほうづえをつゐて、しバらく 00083940L2/目(め)をふさぎて、いぬる/者(もの)あり。ふしんにおもひ、やうすを 00083950L3ミれバ、/隣(となり)へもむかいへもいきて、みぎのとをりなり。/何(なに) 00083960L4とも/合点(かてん)いかず。さてハ/気(き)ちがひとばかりおもひけるに、 00083970L5しバらくありて、/彼者(かのもの)、/又(また)きたりて/云(いふ)事を/聞(きけ)バ、/最前(さいぜん)ハ/不= 00083980L6調法(ぶ=てうほう)なり。はいかい/師(し)のまねを/仕(つかまつ)りました/者(もの)でござりま 00083990L7す。一/銭(せん)下されいと/云(いふ)た。 00084000¥N14¥J 00084010¥X十四△/井戸(ゐと)かへの事 00084020L10/井戸(ゐど)つぶれてせんかたなけれバ、/井戸(ゐと)ほりをよびにやり、 00084030L11/新(あたらし)く/井戸(ゐと)をほりて/直段(ねたん)ハいくらそ。此/井戸(ゐと)をさらへ(十 00084040L12四ウ)てハいくらといはれけれバ、/新(あたらし)く/掘申(ほりもうし)候へバ、壱 00084050L13/貫(くわん)よりまけハござらぬといふを、あるじ云やう、それハ 00084060L14きつうたかい。三/百(びやく)でまけてたもといふ。いや、なりま 00084070L15せぬといひけれバ、そんなら、/古井戸(ふるゐど)を/下(した)をいにやろとい 00084080L16はれた。 00084090¥N15¥J 00084100¥X十五△かミなりよし/原(ハら)へ/落(おつ)る事 00084110L19/夕立(ゆふたち)しきりにふりきて、/神鳴(かミなり)きびしくなりて、/所(ところ)こそ/有(ある)へ 00084120M1けれ、よし/原(ハら)の/揚(あけ)やの/座敷(さしき)に、あまた/女郎(ちよらう)どもや/客(きやく)の/有中(あるなか) 00084130M2へ/落(おち)けれバ、/揚(あけ)屋の/男(おとこ)、やがてかミなりをとらへて、をの 00084140M3れハ/性(せう)のわるいかミなりかな。/所(ところ)こそあれ、/揚(あけ)屋へ/落(おつ)る/事(こと) 00084150M4があるものかとて、/殊外(ことのほか)しかりけれハ、/神(かミ)(十五オ)なり云 00084160M5やう、さりとてハ、いづれもへ/面目(めんほく)ないハ。このやうな/所(ところ) 00084170M6へ、をれハ/落(おち)る/気(き)でハ、せいもんないか、こりや、うしろ 00084180M7な/大皷(たいこ)にそゝなハかされて/落(おち)た/程(ほと)に、ゆるせといふた。 00084190¥N16¥J 00084200¥X十六△ねり/供養(くやう)と云事 00084210M10/去人(さるひと)のいはれしハ、ねりくやうを/喰(くふ)たとばかりいはれける 00084220M11により、いかやう/成(なり)と/尋(たつね)けれバ、/雑水(さうすい)の/事(こと)を、ねりくやう 00084230M12じやといはるゝ。めつた/成事(なることを)/云人(いふひと)じやといへは、ざうす 00084240M13いたく/時(とき)、/釜(かま)のふたあけてミや。/菩薩(ほさつ)かおとらしやるとい 00084250M14はれた。(十五ウ) 00084260¥P268 00084270¥Y1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんはう)/巻(まき)二 00084280L3△△△/目録(もくろく) 00084290L4一△/長老(ちやうらう)/阿弥陀(あミだ)をわすれし事 00084300L5二△/三尊(さんそん)の/體(たい)の事 00084310L6三△/御法度(こはつと)のたねか/嶋(しま)の事 00084320L7四△/火(ひ)の/用心(ようじん)ふれる事 00084330L8五△/宗旨改(しうしあらため)の事 00084340L9六△/葬礼(そうれい)を/奉行(ふぎやう)に/見(ミ)る事 00084350L10七△/骨仏(こつほとけ)/取違(とりちかへ)し事 00084360L11八△そうれいとりちがへし事(目録オ) 00084370L12九△/心中(しんぢう)したる事 00084380L13十△/橋(はし)の/上(うへ)より/雪踏(せつた)/落(おとし)したる事 00084390L14十一△/井戸(ゐと)へ/親父(おやぢ)はまる事 00084400L15十二△/田舎者(いなかもの)さゞい/喰(くハ)せし事 00084410L16十三△/茶釜(ちやがま)のはけ/物(もの)の事 00084420L17十四△/泉水(せんすい)へ/亀(かめ)をはなしたる事 00084430L18十五△ざうすいを/振舞(ふるまい)し事 00084440L19十六△/碁盤(ごばん)かりにつかハす事 00084450M1十七△二人/共(とも)にしわき/者(もの)の事(目録ウ) 00084460¥P269 00084470¥T1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)巻二 00084480¥N1¥J 00084490¥X一△/長老(ちやうらう)あミたをわすれし事 00084500L5いかに/物覚(ものおほへ)がないとて、/長老(ちやうらう)のあミだ/如来(によらい)をわするゝと 00084510L6いふ/事(こと)があるものか。/高座(かうざ)に/上(あか)りて、あミた/如来(によらい)をわすれ 00084520L7て、ぎち+しられける。/何(なに)とかしてうしろむきて、あミ 00084530L8た/如来(によらい)の/皃(かほ)をゆひざしていはれけるハ、あれ、あのわろの 00084540L9いはるゝ事といわれた。 00084550¥N2¥J 00084560¥X二△/三尊躰(さんそんたい)の事 00084570L12ある人、/三尊(さんそん)をおがミ、あの/三尊(さんそん)ハどうした事で、あのや 00084580L13うにしてこさると/尋(たつね)けれハ、/物(もの)にかしこぶるもの(一オ)云 00084590L14やう、あれハをんじゆ/戒(かい)の/所(ところ)てごさる。まつくわんをんの 00084600L15もつてこざるハ、れんけ/盃(さかつき)とて、極楽のさかつきでござ 00084610L16るが、せいし/様(さま)へさそといふて、こしをかゞめてゞこざる 00084620L17が、せいし/様(さま)ハもはやなりませぬ、ゆるしてくだされとい 00084630L18ふて、/手(て)をあわせておがましやる/所(ところ)てござる。/又(また)/中(なか)のあミ 00084640L19だのゆびをまろめてこざるハ、そのやうに/酒(さけ)をのんで/酒(さか)屋 00084650M1へはらふ、これがあるかと云ことじやといはれた。 00084660M2△評に曰、ゆひを/丸(まろ)めてこれとハ/銭(せに)の/事(こと)か。おかし。 00084670¥N3¥J 00084680¥X三△/御法度(こはつと)のたねか/嶋(しま)の事(一ウ) 00084690M5/城(しろ)の/角櫓(すミやくら)のあたりに/何者(なにもの)やら/立(たち)て、弐尺はかりの/物(もの)を/持(もつ) 00084700M6て/居(ゐ)けるか、/番(はん)の/者(もの)/見付(ミつけ)て、これハ/御法度(こはつと)のたねかしまと 00084710M7いふ/鉄炮(てつほう)なり。やがてくゝりて/殿(との)へつれ/行(ゆ)き、/右之様子(ミきのやうす)申 00084720M8/上(あけ)けれハ、にくいやつかな。そのまづ、たねがしまハいづ 00084730M9くに有ととへバ、ふところにござりますと云。いそひでい 00084740M10だせとて、とりいだせは、そのやうな/物(もの)でハなふて、いで 00084750M11はすなり。 00084760M12△評に曰、@いてはすをきらすに、さかてにもちて/喰(くふ)により|わきよりたねがしまの見たて、おかし。△△△@ 00084770¥N4¥J 00084780¥X四△/火(ひ)の/用心(ようしん)ふれる事 00084790M15/京(きやう)の町ハ、/夜(よ)る+/火(ひ)のようじんとてふれあるき(二オ) 00084800M16けれハ、はいでのでつち、これを/聞(きゝ)て、あれハなにうりで 00084810M17ござりますと、内へとひけれは、ていしゆおかしがり、あ 00084820M18れハ/火(ひ)よじとて、むまきものなり。もどりによんてかへと 00084830M19いはれけれバ、うれしがり、/表(おもて)へ/出(で)てから/内(うち)へはいり/云(いふ)や 00084840¥P270 00084850L1う、いかさまはやるものやらして、もはやぼうばかりにな 00084860L2りましたと云た。 00084870¥N5¥J 00084880¥X五△/宗旨改(しうしあらため)の事 00084890L5/毎年(まいねん)しうし/御(おん)あらため/被遊(あそハされ)候ゆへ、/奉公人(ほうこうにん)も/請状(うけじやう)よりさ 00084900L6きへ、/宗旨請(しうしうけ)を/取事(とること)なり。ぎをんあたりの/茶(ちや)屋に、女をあ 00084910L7またかゝへけるに、/宗旨帳(しうしちやう)に/何宗共(なにしうとも)(二ウ)(三オ挿絵)かゝ 00084920L8ねバ、/御公儀様(ごこうぎさま)より御とがめなされ、/何宗(なにしう)ぞ、/急度(きつと)申/参(まい)り 00084930L9候やうにとありけれバ、ていしゆ申けるハ、をんなどもの 00084940L10/宗旨(しうし)ハ/御無用(こむよう)になされくたされませい。いかにしても申/上(あけ) 00084950L11にくうごさりますといふ。/是非(ぜひ)に申上いとおほせられけれ 00084960L12バ、その/儀(き)ならバ申ませう。/法花(ほつけ)ても/浄土(じやうと)でも/禅宗(せんしう)でもご 00084970L13ざりませぬ。やましうでごさりますと云た。 00084980¥N6¥J 00084990¥X六△そうれいを/奉行(ぶきやう)に/見(ミ)る事 00085000L16そふれいのくるを見て、/番(はん)の/者(もの)ども、/夜(よ)まハりの/奉行衆(ふきやうしゆ) 00085010L17とおもひ、/下(した)に/居(ゐ)て、ぢきしけれハ、かへつて(三ウ)そう 00085020L18れいの/供(とも)、さてもそさうな/者(もの)かなとてわらひけれバ、/彼番(かのはん) 00085030L19の/者(もの)/腹(はら)を/立(たて)いふやうハ、やい、そこなそふれい。とこへも 00085040¥G 00085050M12つてゆくととがめけれバ、これハ火やへ/焼(やき)に/行(ゆく)とこたへけ 00085060M13り。/重(かさね)て/番(はん)のもの云けるハ、/火(くわ)そうならバ、/火(ひ)のようじん 00085070M14をよくせいと云た。 00085080¥N7¥J 00085090¥X七△こつほとけ/取違(とりちかへ)し事 00085100M17/大坂道頓堀(おほさかとうとんほり)の/火(ひ)屋は、/大坂中(おほさかちう)の/三昧(さんまい)にて/一夜(いちや)に/□((人カ))をやく/事(こと)、 00085110M18/時(とき)により廿人/斗(はかり)もありけり。/有時(あるとき)/入(いり)ごミの/事(こと)なれば、こ 00085120M19つ/仏(ほとけ)(四オ)まぎれ、あれか/是(これ)かと/尋(たつね)けり。おんぼ、これを 00085130¥P271 00085140L1見て、こなたハとこのそうれいてござるといふ。これハ/小(を) 00085150L2はまの/米中衆(こめなかしゆ)のでござるといふ。/中衆(なかしゆ)のこつ/仏(ほとけ)ハこれで 00085160L3ござると云て/渡(わた)しけり。/人&(ひと+)あきれ、扨+いかにしやう 00085170L4ばいなればとて、やいたる/物(もの)をこれ/程(ほと)に/見(ミ)しる/事(こと)、ふしき 00085180L5じやといへは、おんぼ云やう、かくれがござらぬ。こめ/中= 00085190L6衆(なか=しゆ)のこつ/仏(ほとけ)ハ、/此(この)さむいのに、じばんひとつきていやりま 00085200L7すといふた。 00085210¥N8¥J 00085220¥X八△そうれい/取違(とりちかへ)し事(四ウ) 00085230L10/有所(あるところ)にそうれい出しか、いなかよりのぼりたる/内(うち)のでつ 00085240L11ちが/親(をや)をたのミ、天がいをもたせけれバ、/折(をり)ふしわきより 00085250L12もそうれいあまたありしが、此でつちかおやぢ、うか+ 00085260L13とする内にそうれいを取ちがへ、/余所(よそ)のそうれいに、/天(てん)が 00085270L14いをさしかけける。/皆人(ミなひと)おかしがり云やう、其/方(ほう)ハ、此そ 00085280L15うれいの/役人(やくにん)でハないが、なぜにのかぬとしかりけれバ、 00085290L16/此者(このもの)いよ+とうわくして、天がいを/持(もち)ながら、/辻(つじ)へ/出(いて)て 00085300L17/云(いふ)やう、その/方(ほう)へそうれいのはぐれたハいきませぬかとと 00085310L18いける。(五ノ十オ) 00085320¥N9¥J 00085330¥X九△/心中(しんちう)したる事 00085340M3/去侍(さるさふらい)の/子息(しそく)、/親(をや)の/勘当(かんたう)かふむりて、/京(きやう)にいられしが、/嶋= 00085350M4原(しま=バら)のしら/菊(きく)と/云(いふ)/女郎(ちよらう)になづミ、二世も/三世(さんせ)もと/云(いゝ)かはしけ 00085360M5り。ある/時(とき)/女郎(ちよらう)の云けるハ、たがいにかやうになるうへハ、 00085370M6なに/成(なり)とも心中をせんと/云(いゝ)けり。/世(よ)の/中(なか)のしんぢうを見る 00085380M7に、あるいハさしちがへ、又ハくゝり/合(あわせ)て/身(ミ)をなげなとす 00085390M8る事、いかい/無分別(むふんへつ)なり。とかく/心中(しんちう)するも/命(いのち)あつての事。 00085400M9/何(なに)とぞ/命(いのち)をすてすに、よい/仕(し)やうがあらふと/云(いゝ)けれハ、お 00085410M10もい/出(いた)したる事(五ノ十ウ)こそあれ。まづこなさまのひた 00085420M11いに、わたくしが/名(な)を、やきじるしにしてあてさしやんせ。 00085430M12またわたくしがひたいにハ、こなさまの/御名(おな)を、やきしる 00085440M13しにいたしま/せん((ママ))と/云(いふ)。/男(おとこ)めいわくなれども、もはや/云(いゝ)か 00085450M14ゝつた事なれバ、ひかれもせす。/火(ひ)ばしをやきて、ひたい 00085460M15に、しら/菊(きく)とやき付けけり。/然(しか)る所に、/其夜半斗(そのやはんハかり)に、/俄(にわか) 00085470M16に/男(おとこ)の/親(をや)の/方(がた)より、/勘当(かんたう)ゆるす/程(ほと)に/早&(さう+)/下(くた)り候べしと/飛= 00085480M17脚(ひ=きやく)くれハ、うれしや、さてこそ/世(よ)に/出(いて)たれと/云(いゝ)て、よろ 00085490M18こふ/事(こと)かきりなし。/然(しか)れとも、ひたいにしら/菊(きく)と/入(いれ)ぼくろ 00085500M19あれバ、これでハ/親(おや)の(十一オ)/前(まへ)へハいかれまひ。/何(なに)とぞ 00085510¥P272 00085520L1はがすやうと、しあんしけ/れ((るカ))か、おもい出し、/脇差(わきさし)の/中(なか)ご 00085530L2をぬき、/火(ひ)にてやきあつべし。それでハ/此文字(このもし)きへて、/焼(やけ) 00085540L3どのぶんに/致(いた)し/下(くた)るへしと/思案(しあん)/仕出(しいた)し、やがてなかごをや 00085550L4きあてけれバ、はじめのしら/菊(きく)ハきへて、/跡(あと)に/備前長船(びぜんをさふね)と 00085560L5/銘(めい)か/切(きれ)たり。 00085570¥N10¥J 00085580¥X十△/橋(はし)の/上(うへ)より/雪踏(せつた)/落(おと)したる事 00085590L8/物(もの)にりこうぶる/男(おとこ)、/日本橋(にほんはし)の/上(うへ)より/何(なに)とかしたりけん、せ 00085600L9つたをかたし、/橋(はし)の/下(した)へ/落(おと)しけり。をりふし/乞食(こつしき)/下(した)に/居(ゐ)け 00085610L10れハ、/其雪踏(そのせつた)とつてくれ。(十一ウ)(十二オ挿絵)/銭壱文(せにいちもん)やろ 00085620L11と云けり。/弐(に)文ならバとつてしんじませう。壱文でハいや 00085630L12と云けり。/彼男(かのおとこ)、まてと云て、/今(いま)かたしのせつたをわざ 00085640L13と/落(おと)し、弐つで/三(さん)もんやろといはれた。 00085650¥N11¥J 00085660¥X十一△/井戸(いと)へおやちはまる事 00085670L16そさうなる/親父(おやち)、/夜(よる)うらへ/行(ゆく)とて/井戸(ゐと)へはまりしかば、一 00085680L17/家(け)/驚(おとろ)き、やがて/井戸(ゐと)ほりをよびにやり、此おやぢをいく 00085690L18らであぎやるといへハ、三/百(ひやく)てあげませふと云。それハ 00085700L19あまりたかい/程(ほと)に、百であげやと云。いや、なりませぬと 00085710¥G 00085720M12云こゑを、此おやぢ、/井戸(ゐと)の(十二ウ)/内(うち)にて/聞(きゝ)いて云やう 00085730M13ハ、こりや、みなの/者(もの)ども。百より壱もん/高(たか)くてもあがら 00085740M14ぬぞといはれた。 00085750¥N12¥J 00085760¥X十二△/田舎者(いなかもの)さゞいくわせし事 00085770M17/田舎者(いなかもの)をふるまいによびける時、さゝいのにかやきを、/向(むか) 00085780M18ひに/出(いた)しけれハ、/田舎(いなか)者/此(これ)をミて、やがてさゞいのふたを 00085790M19とつてかミけれバ、ていしゆしやうしがり、それハふたて 00085800¥P273 00085810L1ごさりまする/程(ほと)に、/中(なか)の/躬(ミ)をまいれと云けれハ、/田舎者(いなかもの)、 00085820L2/手(て)をつゐて/云(いふ)やう、ぶちやうほうな。/御道具(おたうく)に/疵(きす)を/付(つけ)まし 00085830L3たと云た。(十三オ) 00085840¥N13¥J 00085850¥X十三△/茶釜(ちやかま)のはけ/物(もの)の事 00085860L6/茶(ちや)がまよりはけ/物(もの)が出るとさたしけり。/何(なに)が出るとおもへ 00085870L7バ、/茶(ちや)がまの/中(なか)より、/大(おゝ)きなる/足(あし)か出ると云。ミなふしん 00085880L8がり見けれハ、なる/程(ほと)あしが/出(いて)てハはいり、はいりてハ/出(て) 00085890L9るにまがひなし。ていしゆ、あまりに/不思儀(ふしき)におもひ、や 00085900L10がてとらへて/見(ミ)れは、/扨(さて)もそさうなる/内儀(ないき)かな、/茶袋(ちやふくろ)か 00085910L11とおもふて、もめんたびの/中(なか)へ/茶(ちや)を/入(いれ)て、/釜(かま)てにられた。 00085920¥N14¥J 00085930¥X十四△/泉水(せんすい)へ/亀(かめ)をはなしたる事 00085940L14/物毎(ものこと)にねん/入(いる)る/人(ひと)ありしが、せんすいへ/大(おゝ)き/成(なる)/亀(かめ)を入ら 00085950L15(十三ウ)れけり。あたりの/人&(ひと+)、これハふしぎなる/物数奇(ものずき) 00085960L16かな。なにとおもふて、/亀(かめ)ハ/泉水(せんすい)へ/入(いれ)さつしやつたと/問(とひ)け 00085970L17れハ、あるし、されバてござる。/亀(かめ)は/万年(まんねん)のよハひをへる 00085980L18といひまするハうそか、ぢやうか。あのはてを/見(ミ)よとおも 00085990L19ふて/入(いれ)ましたと云た。 00086000¥N15¥J 00086010¥X十五△ざうすいを/振舞(ふるまい)し事 00086020M3/物(もの)にしまつが/第(たい)一じやと云いて、/夕食(ゆふめし)ハ/極(きハ)めてざうすいを 00086030M4/喰(くい)けり。そのさいちうに、/近付(ちかつき)の/浪人(らうにん)/来(きた)りしかバ、心やす 00086040M5き/人(ひと)なり。ふるまハんとて、/頓而(やかて)/膳(ぜん)を/出(いた)しけり。/浪人(らうにん)ふた 00086050M6をとりてみれは、ざう(十四オ)すいなり。/浪人(らうにん)/大(おゝ)きに/腹(はら)を 00086060M7立、/目(め)にかどをいれて/云(いふ)やう、やい、ざうすいめ。/内斗(うちはかり) 00086070M8か、をのれハさき※まて、つゐてあるきをるといはれ 00086080M9た。 00086090¥N16¥J 00086100¥X十六△/碁盤(ごはん)かりに/遣(つかハ)す事 00086110M12/夜長(よなか)の/時分(ぢふん)に、/友達(ともたち)/寄合(よりあい)、いざ/碁(ご)をうつべし。/隣(となり)へ/行(ゆき)て/碁= 00086120M13盤(ご=ばん)をかりてこいと、/下人(けにん)に/云付(いゝつけ)、かりにつかハしけり。/下= 00086130M14部(しも=べ)、となりへ/行(ゆき)て/云(いふ)やうハ、/大事(たいし)の/物(もの)てこさりまするが、 00086140M15こばんをかして/下(くた)さりませいと云へハ、ていしゆ/聞(きゝ)て、/不= 00086150M16思儀(ふ=しき)なる/皃付(かほつき)にて、/夜(よる)ごばんをかりに/来事(くること)、/合点(がてん)いかずと、 00086160M17しばらくしあん(十四ウ)して、/合点(かてん)+とうなつき、さた 00086170M18めて/碁(ご)を/打(うた)ふといふ/事(こと)じやあろといふた。 00086180¥P274 00086190¥N17¥J 00086200¥X十七△二人/共(とも)にしわき/者(もの)の事 00086210L3/隣(となり)づからに、しわき/者(もの)ありけり。/内(うち)のほうきハつかハずし 00086220L4て、となりへほうき、かりにやりけり。/隣(となり)のあるしおもふ 00086230L5やうハ、/扨(さて)むさきやつかなとおもひ/云(いふ)やうは、ほうき 00086240L6ハごさるけれども、かす/事(こと)ハなりませぬ。はく/所(ところ)があらバ、 00086250L7こちへもつてきて、はかしやれと/云(いゝ)てやりけり。/其後(そのゝち)はし 00086260L8ごをかりにやりけれバ、また/隣(となり)の/亭主(ていしゆ)、此さきのほうきの 00086270L9/事(こと)をおもひ/出(いた)し、(十五オ)云やうハ、はしごハごさるけれ 00086280L10ども、かすことハ/成(なり)ませぬ。あがる/所(ところ)があらハ、こちへき 00086290L11て/上(あか)らしやれといふた。(十五ウ) 00086300¥Y1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)巻三 00086310M3△△△目録 00086320M4一△/雪(ゆき)にのゝ/字(じ)/書(かく)事 00086330M5二△/銭(せに)百文ひろひし事 00086340M6三△/国(くに)の/守(かミ)の/火葬(くわさう)の事 00086350M7四△/火(ひ)の/見(ミ)/矢倉(やくら)の事 00086360M8五△/同(おなしく)/直(なを)し 00086370M9六△/碁好(ごず)きなる/者(もの)の事 00086380M10七△こじきせいとうの事 00086390M11八△/美人(ひしん)の事(目録オ) 00086400M12九△/鞁(つゝミ)屋の事 00086410M13十△/寒声(かんこへ)の事 00086420M14十一△/五条(こてう)の/橋(はし)にてたはこのむ事 00086430M15十二△/火(ひ)あふりを見に/行(ゆく)事 00086440M16十三△/浪人(らうにん)/碁(ご)にせく事 00086450M17十四△/夜食(やしよく)の事 00086460M18十五△/見(ミ)たれがミといふ事 00086470M19十六△/馬(むま)じまんの/医(い)しやの事 00086480¥P275 00086490L1十七△どもの事 00086500L2十八△/新宅見舞(しんたくミまい)の事(目録ウ) 00086510¥T1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)巻三 00086520¥N1¥J 00086530¥X一△/雪(ゆき)にのゝ/字(じ)を/書(かく)事 00086540M5/雪(ゆき)のふりける/朝(あさ)、/門(かと)へ/出(いて)てミれバ、しやうべんにて/大(おゝ)きく、 00086550M6のゝ/字(じ)を/書(かき)たり。これハ/誰(たれ)がしたといひけれは、むかひの 00086560M7でつちが、しやうべんで/書(かい)たといふ。さてもあいつハよい 00086570M8/手(て)じやといはれた。 00086580¥N2¥J 00086590¥X二△/銭(せに)百文ひろひし事 00086600M11/去親(さるをや)にかう+なる/人(ひと)、/親(おや)の/病気(ひやうき)なれは、/本腹(ほんふく)のためと 00086610M12て、/多賀(たが)の/社(やしろ)へもふでける/時(とき)、鳥ゐのあたりにて、/銭(せに)百/文(もん) 00086620M13ひろひ、/忝(かたしけなし)と(一オ)云ひて/帰(かへ)り、あたりの/人(ひと)に見せけれ 00086630M14ハ、そさう成/人(ひと)/見(ミ)て/云(いふ)やうハ、これハあしき/事(こと)じや。まつ/銭(せに) 00086640M15百ハころりと/云(いふ)によつて、やがておやぢの/死(し)にやろと云た。 00086650¥N3¥J 00086660¥X三△/国(くに)の/守(かミ)の/火葬(くわさう)の事 00086670M18/国(くに)の/守(かミ)/御死去(ごしきよ)なされ、その御しがいを/火(くわ)さうにする時、/何= 00086680M19者共(なに=ものとも)しれず、/壱人(いちにん)きたつて、ためつすかめつしてのぞきけ 00086690¥P276 00086700L1り。/侍衆(さふらいしゆ)これをミ/付(つけ)て、さだめしぬす/人(ひと)さうなと、やが 00086710L2てとらへてけれハ、/彼(かの)ものいふやう、まつたくさやうの/者(もの) 00086720L3でハござらぬ。/私(わたくし)ハつゐに、/大名(たいミやう)の/火(ひ)に(一ウ)くばつた 00086730L4を見ませぬによりて、のぞきましたと云た。 00086740¥N4¥J 00086750¥X四△/火(ひ)の/見(ミ)/矢蔵(やくら)の事 00086760L7/長崎(なかさき)より上りたる/外科(けくわ)の/大上手(たいしやうず)ありけるが、/又(また)/此比(このころ)、/道(ミち)に 00086770L8てけんくわして、/大(おゝ)げさにきられしかば、やがて/右(ミき)の/外科(けくわ) 00086780L9をよびにやり、かうやくを付られしが、/胴(だう)より/上(うへ)ハ/上(うへ)、/下(した) 00086790L10ハ/下(した)となをり、/常(つね)の/人(ひと)のごとし。/然共(しかれとも)、/下(した)ハ/足(あし)ばかりにて 00086800L11/皃(かほ)なし。/上(うへ)ハ/皃(かほ)あれ共あしなし。/何共仕様(なにともしやう)なけれバ、しあ 00086810L12んをめぐらし、まづ、こしより/下(した)ハ、ふやへ/奉公(ほうこう)にやれ。 00086820L13またこしより/上(うへ)ハ、/江戸(ゑと)へ/下(くた)して、/火(ひ)の/見(ミ)/矢倉(やくら)へ/上(あけ)イトこ 00086830L14ゝろ(二オ)/付(つき)、/此比下(このころくた)りしとかや。 00086840¥N5¥J 00086850¥X五△/同(おなしく)/直(なを)し 00086860L17右の/腰(こし)より/上(うへ)ハ、/江戸(ゑと)の/火(ひ)の/見(ミ)/矢倉(やくら)に/居(ゐ)る。/腰(こし)より/下(した)ハ、 00086870L18/京(きやう)のふやに/居(ゐ)けり。/有時(あるとき)、/近所(きんじよ)の/衆(しゆ)、/江戸(ゑと)へ/下(くたる)る/用有(ようあり)けれ 00086880L19バ、ふやにいき云やう、用事に/付(つき)、/江戸(ゑと)へいくが、/其方(そのほう)の 00086890M1/腰(こし)より/上(うへ)へ、/言伝(ことつて)でもしられんかと/尋(たつね)けれハ、ふやの/腰(こし)よ 00086900M2り/下(した)のもの云やう、/成程(なるほと)/頼(たのミ)ミましたい/事(こと)がござりまする。 00086910M3わたくしが/上(うへ)の/身(ミ)にあハしやつたらバ、あまり/其許(そこもと)で/湯水(ゆミつ) 00086920M4をのむな。/爰元(こゝもと)でしやう(二ウ)べんにかゝつて/居(ゐ)ると云て 00086930M5くれと云た。 00086940¥N6¥J 00086950¥X六△/碁好(こず)きなる/者(もの)の事 00086960M8/有人(あるひと)、あまり/碁(ご)にすき、/昼夜(ちうや)/打(うた)れけり。/内(うち)より、/夕(ゆふ)めしま 00086970M9いれと/度&(たひ+)人くれども、うか+として聞いれず、いぬる 00086980M10/気色(けしき)なかりけれバ、/又(また)でつちがきて、/申(もうし)+といへバ、な 00086990M11んじやと云。おめしがひへまする/程(ほと)にあがりませいといへ 00087000M12バ、おやぢ、なんじや。めしくへといふか。あい。めしじ 00087010M13やあるまいがな。いや、めしでござります。いや、めしじやあ 00087020M14るまいがな。あい、さうすいてこさりますと云た。 00087030¥N7¥J 00087040¥X七△こじきせいとうの事(三オ) 00087050M17/京(きやう)にて、/乞食(こつじき)のせいとうする/大将(たいしやう)を、/与次郎(よぢらう)と云とかや。 00087060M18ある/時(とき)/与次郎(よちらう)、/夜(よる)+/町中(まちちう)をめぐりけるに、/大勢(おゝせい)こじきふ 00087070M19せりけれバ、/与次郎(よちらう)いふやう、こりや、こじき/共(とも)。/聞(きけ)バ/此= 00087080¥P277 00087090L1中(この=ちう)、ぬすミをすると/云(いゝ)てとりさたあり。もしさやうの/事(こと)が 00087100L2あれハ、/京(きやう)をはらふて、/壱人(いちにん)もおかぬぞと、さもぎやう 00087110L3+しく/云(いゝ)けれバ、/中(なか)にもふるきこじき、/心得(こゝろへ)ましてござ 00087120L4ります。/新(しん)こじき/共(とも)に/急度(きつと)申/付(つけ)ませうと/云(いふ)。さて/新(しん)こじ 00087130L5き、ふるこじきに/問(とい)けるは、いまのハどなたでござります 00087140L6ととへバ、いまのハおかしらの与次郎さまじやと(三ウ) 00087150L7(四オ挿絵)いへば、/新(しん)こじき/聞(きい)て、はて、けつこうなげずぢ 00087160L8かい/御人(おひと)じやと云た。 00087170¥G 00087180¥N8¥J 00087190¥X八△/美人(ひしん)の事 00087200M3もろこしの/楊貴妃(やうきひ)と云/美人(ひしん)ハ、/柚(ゆふ)の/香(にほ)ひすると云/事(こと)をきい 00087210M4て、/去(さる)いけずのむすめ、/常(つね)にふところに/柚(ゆ)を/入(いれ)けり。ある 00087220M5/時(とき)うつむくとて、ゆふがふところよりころりと/落(おち)けれバ、 00087230M6ぬからぬ/皃(かほ)で、はあゝ、ふところから/楊貴妃(やうきひ)があらハれた 00087240M7と云た。 00087250¥N9¥J 00087260¥X九△/鞁(つゝミ)やの事 00087270M10つゞミやのミせさきに、こゑたごをならべ/置(おき)けれバ、(四ウ) 00087280M11おやぢ/大(おゝ)きに/腹(はら)を/立(たて)、なぜにとらぬとて、さん※にしか 00087290M12りけれバ、こゑかいも/腹(はら)を/立(たて)、/何(なに)とがなとおもひしが、や 00087300M13がてこゑを/一(ひと)しやく、つゞミやの/見(ミ)せに、さらりとかけに 00087310M14けり。ていしゆいよ+/腹(はら)を/立(たて)、ぶて+、たゝけといふ 00087320M15/時(とき)、こゑかい/云(いひ)けるハ、あまりそのやうにハの給ふな。つ 00087330M16ゞミにかけごへと/云(いゝ)て/有(ある)じやといふた。 00087340¥N10¥J 00087350¥X十△かんごゑの事 00087360M19あかつき/方(かた)の事成しに、/町(ちやう)の/用人(ようにん)ぼうをつき、/火事(くわし)よ+ 00087370¥P278 00087380L1といひまハりけり。/町(ちやう)の/物(もの)とも/聞付(きゝつけ)て、/火本(ひもと)ハどこじや。 00087390L2かしこじやとはいもんしけれども、さらに(五ノ十オ)しれ 00087400L3ざれバ、/用人(ようにん)をよひ、どこがやけると/問(とい)けれハ、どこもや 00087410L4けハ/致(いたし)ませぬと云。そんならハ、なぜに/火事(くわし)+と/云(いふ)たと 00087420L5いへバ、/私(わたくし)ハ/火事(くわじ)+の/寒声(かんこへ)をつかいましたと云た。 00087430¥N11¥J 00087440¥X十一△/五条(こてう)の/橋(はし)にてたはこのむ事 00087450L8/京(きやう)の/五条(こてう)の/橋(はし)ハ、/西詰(にしつめ)、/東詰(ひかしつめ)、/両町(りやうてう)へいひ付られ、きびし 00087460L9くとがめて、たばこなと、はしの/上(うへ)にてのむ/事(こと)ならぬに、 00087470L10/年比(としころ)なる/人(ひと)、/橋(はし)の/上(うへ)にてたばこのミ/行(ゆき)けり。/両町(りやうちやう)の/者(もの)/立= 00087480L11寄(たち=より)とがめけれバ、くるしからずといふにより、/爰(こゝ)ハ/法度(はつと)に 00087490L12てならぬと、/重而(かさねて)いひけれ/共(とも)、/聞(きゝ)いれすしていふやう、 00087500L13まづ、ゆやのうたひをみよ。/四条五条(してうごてう)(五ノ十ウ)の橋の/上(うへ)、 00087510L14/老若男女(らうにやくなんによ)、きせると/火(ひ)とありと云た。 00087520¥N12¥J 00087530¥X十二△/火(ひ)あぶりを/見(ミ)に/行(ゆく)事 00087540L17もんもう/成人(なるひと)、/火(ひ)やぶりを見にゆきて/帰(かへ)り、はなさるゝを 00087550L18/聞(きけ)バ、けふのやつハ、さてもつよいやつじや。/首(くひ)の/座(ざ)へな 00087560L19をつてから、いごきもせず、くわつしよくしてしんだとい 00087570M1はれたれハ、/聞人(きくひと)の/云事(いふこと)ハ、あのやうなきつい/目(め)にあふな 00087580M2ら/火(ひ)を/付(つけ)まい/物(もの)と、いまはこんくわいにあろといはれた。 00087590¥N13¥J 00087600¥X十三△/浪人(らうにん)/碁(ご)にせく事 00087610M5ある人、/常(つね)に/碁(ご)をすき/打(うち)けるが、/相手(あいて)ハ/年比(としころ)(十一オ)なる 00087620M6/浪人(らうにん)なりしが、二人ともにこのミ、/極(きハめ)めて一日つゝ/打(うた)れけ 00087630M7り。ある/時(とき)、/浪人(らうにん)、してうを打出してにげらるゝを、おさ 00087640M8へ+て、/大方(おゝかた)/向(むかふ)まて/行(ゆき)さうに見へけれハ、浪人、大きに 00087650¥G 00087660¥P279 00087670L1せきて、/脇指(わきさし)などひねくりまハして云けるは、かやうにあ 00087680L2たまをおさへ+られてハ、/一分(いちふん)たゝぬによつて、こんど 00087690L3おさへると、もはやかんにんハならぬとつふやき、/彼(かの)して 00087700L4うを出られけれバ、/相手(あいて)の/男(おとこ)おもふやう、してうにおひだ 00087710L5したる/石(いし)なれハ、をれかかつにハ/極(きハま)りたれど、又おさへた 00087720L6ら、/浪人(らうにん)か/殊外(ことのほか)せいた/程(ほと)に、もしもの/事(こと)もと(十一ウ)(十 00087730L7二オ挿絵)/思案(しあん)して、わさとわきをして、/□((ゑカ))いてがミへまし 00087740L8たといはれた。 00087750¥N14¥J 00087760¥X十四△/夜食(やしよく)の事 00087770L11やしよくに、てんかくをして/田舎者(いなかもの)にふるまひけれハ、/田= 00087780L12舎者(い=なかもの)おもふやう、/扨(さて)ハとうふをくしにさしたハ/矢(や)、/食(めし)ハし 00087790L13よくじやによつて、/矢食(やしよく)とこゝろへ、/其後(そのゝち)あるし、まちつ 00087800L14とまいりませといへは、いなかもの、さて+、/殊外(ことのほか)に/矢(や) 00087810L15もしよくもたへましたといふた。 00087820¥N15¥J 00087830¥X十五△/見(ミ)たれかミといふ事 00087840L18みやこハ/物毎(ものこと)にきやしやなり。でんがくを、みだれ(十二ウ) 00087850L19がミといふとかや。くしにかゝると/云(いふ)ぎりとかや。/田舎者(いなかもの) 00087860M1これをきゝてわすれ、くいにかゝるとおぼへて、/川(かハ)ながれ 00087870M2をまいりませと云た。 00087880¥N16¥J 00087890¥X十六△/馬(むま)じまんの/医(い)しやの事 00087900M5/去御屋敷(さるおやしき)へ/出入(いていり)の/物(もの)しりがほするいしやに、/円伯(えんはく)とてあり 00087910M6けるか、/馬(むま)に/乗(のり)じまんするゆへ、/侍衆(さふらいしゆ)おかしがり、/口(くち)の 00087920M7こハき/馬(むま)を出し、/乗(の)りて見られよと/有(あり)しかバ、/円伯(ゑんはく)こゝろ 00087930M8へたりと/打乗(うちのり)けるを、/侍衆(さふらいしゆ)、わざと/馬(むま)のしりを、/大竹(おゝたけ)に 00087940M9てたゝけバ、/此(これ)にきもをつぶし、/大津(おゝつ)へ/向(むけ)てかけ/行(ゆき)けり。 00087950M10/道(ミち)にて/此円伯(このゑんはく)のとなりの/人(ひと)見付て、(十三オ)こりや/円伯殿(ゑんはくとの)。 00087960M11/馬上(はしやう)にてどこへござるといへは、/馬(むま)の/上(うへ)から大あせをなが 00087970M12し、ど/ご((ママ))へまいらふやら、しれませぬといはれた。 00087980¥N17¥J 00087990¥X十七△どもの事 00088000M15いかにしてもりちぎかとりへじやといふて、どもをうちに 00088010M16おかれしが、/此(この)ども、うたひが/上手(しやうす)にてありけれバ、しよ 00088020M17じ/云付(いゝつく)る/事(こと)、うたひでやりけり。ある/時(とき)、おもてを、しや 00088030M18うべんもらいませうといへば、あるじきいて、やい、ども 00088040M19よ。しやうべんやれといはるれは、やがておもてへはしり 00088050¥P280 00088060L1/出(いて)云やう、いかに申候。しやうべんをかよふするにて候と 00088070L2云た。(十三ウ) 00088080¥N18¥J 00088090¥X十八△/新宅見舞(しんたくミまい)の事 00088100L5そさう/成人(なるひと)、/新宅(しんたく)を/見(ミ)まひに/行(ゆき)て云やう、さて+けつこ 00088110L6うなるふしんかな。/皆(ミな)ひの/木(き)でござる程に、よふもへませ 00088120L7ふといふ。そバに/居(ゐ)る/衆(しゆ)きのとくがり、さて+、/其方(そのほう)ハ 00088130L8そさうな人かな。そのやうなさしあひがある/物(もの)かといへば、 00088140L9りかうさうに、ほんに、ひよんな事を申ました。こりや、 00088150L10けちでござると云た。(十四オ) 00088160¥Y1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)巻四 00088170M3△△△目録 00088180M4一△/飛脚(ひきやく)/駕篭(かご)かりし事 00088190M5二△/足袋屋(たひや)/餅屋(もちや)の事 00088200M6三△びんぼう/神(かミ)の事 00088210M7四△/八幡参(やはたまい)りの事 00088220M8五△のこぎりと/云(いふ)事 00088230M9六△/密柑(ミつかん)の事 00088240M10七△/三間(さんけん)はりの事 00088250M11八△/座当(ざとう)/門跡様(もんせきさま)へ/参(まい)る事(目録オ) 00088260M12九△/口(くち)りこうなる/医者(いしや)の事 00088270M13十△ほうしやに/駕篭(かこ)にのせし事 00088280M14十一△/死人吊(しにんとふら)ひニ/行(ゆく)事 00088290M15十二△ちわうせんやの/公事(くじ)の事 00088300M16十三△/今(いま)なりひらの事 00088310M17十四△ゆかたもやうの事 00088320M18十五△/性(せう)のわるき/子(こ)の事(目録ウ) 00088330¥P281 00088340¥T1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)/巻(まき)四 00088350¥N1¥J 00088360¥X一△/飛脚(ひきやく)/駕篭(かこ)かりし事 00088370L5/飛脚(ひきやく)、大津にて/京(きやう)までかごかりけり。すいぶん+いそ 00088380L6ひで弐百/文(もん)にねをして、いきなしにくるはづなれども、さ 00088390L7すがかこかいて、そのやうにもならす。やう+やつと/茶(ちや) 00088400L8屋までゆきけり。/飛脚(ひきやく)/云(いふ)やう、をれハ/急(いそ)くによつて、弐 00088410L9百/文(もん)出して、かつて/来(き)たが、かやうにおそくてハならんと 00088420L10/云(いひ)、しかりけれバ、かごかきのいふやうハ、ずいぶんハ/急(いそ) 00088430L11きますれども、こなたがおもいによつてと/云(いふ)。そんなら、 00088440L12からかごなら、はしるか。(一オ)なか+。はしりましや 00088450L13うと/云(いふ)。そんならおりよと/云(いゝ)て、われも一/所(しよ)にはしりける 00088460L14とかや。 00088470L15△評に曰、@いそぎにこゝろとられ、われがかごに|のること、わすれけるもおかし。△△@ 00088480¥N2¥J 00088490¥X二△/足袋(たひ)屋/餅(もち)やの事 00088500L18/物毎(ものこと)やすけれバ、はやるぞかし。/京寺町(きやうてらまち)のもちやハ、二文 00088510L19もちを壱文づゝに/売(うり)たれバ、あそこなハいかい/餅(もち)じやとて、 00088520M1/大(たい)ぶんはやりけり。そのとなりに/足袋(たひ)やありけり。/此(この)おや 00088530M2ぢ、つく※おもふやうハ、となりのもちは、いかいと/云(いゝ) 00088540M3てはやる/程(ほと)にとおもひ/付(つけ)、それよりたひあつらへにくる/人(ひと)、 00088550M4/十(と)もんといへば/十一(しういち)もんにしてやり、(一ウ)七もんといへ 00088560M5バ八もんにしてやられバ、かさねてあつらへる人もな 00088570M6かりし。 00088580¥N3¥J 00088590¥X三△びんぼう/神(かミ)の事 00088600M9いちのわろき/者(もの)、二人/有(あり)けり。正月の/事(こと)なりしに、なにが 00088610M10な/気(き)にかけ/た((ママ))さしとおもふ所へ、/彼(かの)ものにあひけれバ、/云(いひ) 00088620M11やうハ、これびんぼかミ。どこへいきやるといへば、こい 00088630M12つもいぢわるにて、そなたの/所(ところ)へいくといふた。 00088640¥N4¥J 00088650¥X四△/八幡参(やはたまい)りの事 00088660M15正月にハ/極(きハま)りて/京(きやう)の/者(もの)、/八幡(やはた)へ/参(まい)る事なり。五/条(てう)の(二オ) 00088670M16橋にて、かごをかるに、まづやわたへハ道いかほどあると 00088680M17いへば、かごかきが/云(いふ)やうハ、五里ござりますと云けれバ、 00088690M18/此者(このもの)いふやうハ、それハいかいうそじや。やハたへハ四里 00088700M19有。けさもこちの/門(かと)を、やわたごほう、よりごほうと云か 00088710¥P282 00088720¥G 00088730L12らハ、四/里(り)あるといへは、かごかき/重(かさね)て云けるは、されハ 00088740L13/其(その)四里ごぼうを、たゝきこほうにしてくへバ、五/里(り)+申 00088750L14ますといふた。 00088760¥N5¥J 00088770¥X五△のこぎりと云事 00088780L17かごかき/中真(なかま)の/言葉(ことは)ハ、/何分(なんふん)の/何匁(なんもんめ)のに、いろ+のか 00088790L18へ/言(こと)はを/付(つけ)けり。有人、/大津(おゝつ)へかごをかりけるに、(二ウ) 00088800L19(三オ挿絵)いくらでやると云けれは、/駕篭(かこ)かき、ころりで 00088810M1やりましやうといふ。/此男(このおとこ)、ころりといふ事をしらされ 00088820M2とも、どうも/口(くち)をししと、のこぎりでやれと云ければ、か 00088830M3ごかき、/是(これ)ハわれら/ひ((ママ))/中間(なかま)にて/聞(きゝ)なれぬ/事(こと)とおもひ、こし 00088840M4をかゞめていふやう、のこぎりとハいくらの事でござりま 00088850M5すととふ時、又われが云ころりとハ、なんぼの事じやとい 00088860M6へば、ころりとハ百文の事でこざりますと云たれバ、のこ 00088870M7ぎりと云ハ、そのころりをまん/中(なか)から二つに/引(ひき)わるによつ 00088880M8て、五十と云た。(三ウ) 00088890¥N6¥J 00088900¥X六△みつかんの事 00088910M11有やしきに、みごとにみつかんできてあれハ、ある人これ 00088920M12を云やう、これハまづ/花(はな)か、ミか。なんであらふ。扨+、 00088930M13みごとなるものかなとほめけれハ、あるじ聞て、さてハし 00088940M14らぬ/者(もの)ぞと、やかて/立出(たちいて)云やう、/是(これ)ハミつかんと/云物(いふもの)にて、 00088950M15くふ/物(もの)なり。一つふるまハんとて、とつてくわせけり。か 00088960M16のもの、/扨(さて)+めつらしきものくたされ、かたじけなきと 00088970M17て、いにしなに、かわをふところへ入ていきけれハ、ある 00088980M18じ云やう、そのかわゝ/何(なに)になるといへバ、これハとつてか 00088990M19へりまして、(四オ)ちんぴにいたしますと云た。 00089000¥P283 00089010¥N7¥J 00089020¥X七△/三間(さんけん)はりの事 00089030L3ある/者(もの)、二かいのむしこより、しやうべんをせしに、/此下(このした) 00089040L4を/侍(さふらい)とをりけれバ、かの/侍(さふらい)のあたまの/上(うへ)へ、しやうべ 00089050L5んかゝりけれハ、八まんきかぬとて、/刀(かたな)をひねくりまハし 00089060L6けり。/尤(もつとも)とて、あたりの/人&(ひと+)/立出(たちいて)、/詫言(わひこと)すれども/聞(きゝ)いれ 00089070L7ざる/時(とき)に、/男(おとこ)壱人/来(きた)り、/間尺(けんしやく)を/取(とり)云やう、/御公儀(ここうき)の/大方(たいほう) 00089080L8じや/程(ほと)に、云ぶん有まひ云。/彼侍(かのさふらい)、それハどうした/事(こと) 00089090L9じやといへハ、/三間(さんけん)ばりまでハ御ゆるしじや。これハまだ、 00089100L10二/間半(けんはん)ほかないといふた。(四ウ) 00089110¥N8¥J 00089120¥X八△/座当(さたう)/門跡様(もんせきさま)へ/参(まい)る事 00089130L13/東国(たうこく)のはてより/座当(さたう)壱人/上(のほ)り、六/条様(てうさま)へ/行(ゆき)てあんないこひ、 00089140L14ぜひに/御門跡様(こもんせきさま)に/御目(おんめ)にかゝり、/御手(おて)をにぎり度よし申/上(あけ) 00089150L15ける。/玄関(けんくわん)の/侍(さふらい)、とうハくしけれ共、/本(もと)より/慈悲(じひ)の/事(こと)な 00089160L16れバ、くるしかるまじとて、/此(この)よし申あげけり。はる※ 00089170L17/来(きた)れるこゝろざしをかんし給い、/奥(をく)へめし、さてひだりの 00089180L18/御手(おて)をいたし、にぎれとありしかば、/座当(さたう)、ありがたく/存(そんし)、 00089190L19/御手(おて)をしつかとにぎりて、ふところより、/小判(こはん)百/両(りやう)/包(つゝミ)て 00089200M1御/手(て)の/中(なか)へ/入(いれ)けれバ、もんぜき様もかさね(五ノ十オ)てお 00089210M2ほせられけるは、/右(ミき)の/手(て)ハにぎりやらぬかとおほせられた。 00089220¥N9¥J 00089230¥X九△/口(くち)りこう/成(なる)いしやの事 00089240M5ある/人(ひと)、/大病(たいひやう)をやミけるに、/近所(きんじよ)に、/口(くち)りかうなるいしや 00089250M6ありけり。/此病(このやまい)をうけとり、/本腹(ほんふく)さすべきよし、/請合(うけあい)ける 00089260M7が、/大病(たいひやう)ゆへにや、/終(つゐ)にへいゆふなく、しにければ、/其= 00089270M8夜(その=よ)すぐに、/野辺(のべ)にをくりける。/其後(そのゝち)/彼(かの)いしや、見まハれて 00089280M9いはれけるハ、/扨(さて)+のこりおゝき/事(こと)かな。して、/土(ど)そう 00089290M10になされたか、/火(くわ)そうになされたかと/尋(たつね)られけれバ、/火(くわ)そ 00089300M11うにしたるよし云けれハ、(五ノ十ウ)ぬからぬ/皃(かほ)で、いし 00089310M12やの/云(いゝ)けるハ、/土(と)そふならば、/今(いま)一ふくかつて/見(ミ)たいとい 00089320M13はれた。 00089330¥N10¥J 00089340¥X十△ほうしやに/駕篭(かご)にのせし事 00089350M16/世(よ)の/中(なか)の/一(ひと)たびハさかへ、/一(ひと)たひハおとろふる/世(よ)の/習(なら)ひ、 00089360M17いにしへハよし/有人(あるひと)なれとも、/今(いま)ハおとろへて、やう+ 00089370M18/兄弟(けうたい)二人かごをかき、/渡世(とせい)をくらしけり。ある/時(とき)/兄(あに)の/云(いふ)や 00089380M19うハ、けふハひがんの/中日(ちうにち)也。/何(なに)とぞすこしにても、ほう 00089390¥P284 00089400L1しやとる事もならねバ、三/条(てう)の/橋(はし)へ出て、/銭(せに)とらずに/出家(しゆつけ) 00089410L2をかごにのせて、これをほうしやにすへしと云けれハ、/弟(おとゝ)、 00089420L3/尤(もつとも)とおもひ、二人つれにて三/条(てう)の(十一オ)/橋(はし)の/上(うへ)へ出け 00089430L4れバ、さいわひ、三十斗の/僧(そう)壱人/来(きた)られしを、やがてかご 00089440L5にのせけり。/此僧(このそう)、おもひがけなけれバ、/銭(せに)の/用意(ようい)もせず、 00089450L6のらんといへども、ぜひにと云てのせけり。かごかき/云(いふ) 00089460L7やうハ、/寺町通(てらまちとをり)へまいらふか、/三条通(さんてうとをり)へまいらふかといへ 00089470L8ば、/僧(そう)、いつくへなりとも、/其方(そのほう)のかつてにいかれよと云 00089480L9けれバ、こゝろへたりとて、/寺町(てらまち)を三/条(てう)よりさがりけり。 00089490L10/町(まち)の/中程(なかほと)とおぼしき/所(ところ)にて、/彼僧(かのそう)、/大(おゝ)き成こゑをいだし、 00089500L11/永観堂(ようくわんだう)、しよけはつちと、ふれられけり。(十一ウ)(十二オ 00089510L12挿絵) 00089520¥N11¥J 00089530¥X十一△/死人吊(しにんとふら)いに/行(ゆく)事 00089540L15ある所のおやぢ、はやり/病(やまい)にて/死(し)なれければ、あたりの/人= 00089550L16&(ひと=+)、とむらいに/来(きた)りけり。/中(なか)にも/常(つね)にねんごろ成/人(ひと)/有(あり)しが、 00089560L17もはや/今生(こんしやう)の/名残(なこり)なり。/今一度(いまいちと)/皃(かほ)を見たきよし云けれハ、 00089570L18いかにもとて、/衣(きるもの)をとり、/皃(かほ)を見せけり。/彼人(かのひと)云やうハ、 00089580L19/扨(さて)もいとしや。/日比(ひころ)ハかるたがすきじやあつたが、ちやう 00089590M1ど、ほとけ/皃(がほ)が、あざをにぎつたやうなといはれた。 00089600¥N12¥J 00089610¥X十二△ぢわうせん屋の/公事(くし)の事 00089620M4さる所に、ぢわうせん屋が有しが、此ぢわうせんは、さる 00089630M5(十二ウ)まつぢわうせんとて、/名(な)をとつたるちわうせんに 00089640M6て、/殊外(ことのほか)うれけり。/此事(このこと)かくれなけれハ、となりのもの、 00089650M7これをにせて、さる/松(まつ)ぢわうせんとてうりけり。本のぢわ 00089660M8うせんや、はらを/立(たて)、/御公儀(ごこうき)へ/御(おん)そしやう申上、/両人共(りやうにんとも)に 00089670¥G 00089680¥P285 00089690L1めしいだされ、きやふこふ、さる/松(まつ)のにせ、/売事(うること)なるまじ 00089700L2きよし、きつとおほせ/付(つけ)らるれハ、かのもの申やう、それ 00089710L3ハあまりあまい/事(こと)でこざりますと云けれハ、/重(かさ)ねて、/急度(きつと) 00089720L4しやうばいを、けふよりしては、かへませふや++と 00089730L5おほせられた。 00089740¥N13¥J 00089750¥X十三△/今(いま)なりひらの事(十三オ) 00089760L8/■(たて)も/事(こと)によりけり。/此比(このころ)の/若(わか)い/衆(しゆ)をミるに、まゆ/毛(け)を/弐(ふた)す 00089770L9し/程(ほと)つゝおひて、のこりハミな+ぬきけ/り((るカ))を、ある人ミ 00089780L10て/云(いひ)けるハ、こなたのまゆハ、/今(いま)はやるさうなが、しつか 00089790L11い、とを/目(め)から/見(ミ)てハなりじやまでといひけれバ、/此者(このもの)、 00089800L12/手(て)を/打(うつ)て云やう、/其方(そのほう)ハさりとハすいかな。/成程(なるほと)、/今(いま)はや 00089810L13る此まゆを、なり/平(ひら)まゆと/云(いふ)ものじやといはれた。 00089820¥N14¥J 00089830¥X十四△ゆかたのもやうの事 00089840L16/盆(ほん)にハおどるといふて、ひんなるもとみたるも、おもひ 00089850L17+にゆかたをこしらへけり。かごかきの子も、(十三ウ) 00089860L18ゆかたほしいとせがめハ、せんかたなく、もめんをかいけ 00089870L19れとも、/染(そめ)ちんいかにしてもなりがたけれバ、となりの/絵(ゑ) 00089880M1かきをたのミ、/何(なに)なりとも/書(かい)てくたされと/頼(たの)ミければ、/山(やま) 00089890M2みちをかいてやろと云けれバ、かごかきの/子(こ)云やうハ、そ 00089900M3れハいやでござります。おやぢのつね+いはれしハ、/山(やま) 00089910M4みちハことのほか、しんらうなと申されました/程(ほと)に、いや 00089920M5と云た。 00089930¥N15¥J 00089940¥X十五△/性(せう)のわるき/子(こ)の事 00089950M8/性(せう)のわるきむす/子(こ)、つねにしまハらへいきけり。おやぢの 00089960M9おもハれける。とかくをれもしまばらへ/行(ゆき)、(十四オ)あい 00089970M10つにはぢをあたへたらバやむへしとおもひ、/有(ある)日、/嶋原(しまハら)に 00089980M11てむすこにあいけれバ、をのれ+といふて、はぢをかゝ 00089990M12しけれバ、/女郎(ちよらう)ともいひけるハ、あれハたれでござんすと 00090000M13いへば、むすこ、ぬからぬ/皃(かほ)で、あれハおれがげしやくば 00090010M14らのおやぢじやといふた。(十四ウ) 00090020¥P286 00090030¥Y1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんぼう)/巻(まき)五 00090040L3△△△目録 00090050L4一△/古道具(ふるたうく)屋と/餅屋(もちや)の事 00090060L5二△たらいに/乗(のつ)たる事 00090070L6三△あたこ/殿(との)/江戸(ゑと)へくたりの事 00090080L7四△/真如堂(しんによたう)の/如来様(によらいさま)の事 00090090L8五△/出入(いていり)の/油屋(あふら)か事 00090100L9六△ねぢ/上戸(じやうご)の事 00090110L10七△/大仏(たいふつ)の/耳掻(ミゝかき)の事 00090120L11八△しかたたんきの事(目録オ) 00090130L12九△たなの/落(おつ)る事 00090140L13十△くわんじんすまふの事 00090150L14十一△ざうすい/喰(くい)たる事 00090160L15十二△/東本願寺(ひかしほんくわんし)/御(ご)さうれいの事 00090170L16十三△やつこひげそりし事 00090180L17十四△/帳(ちやう)をひろいし事(目録ウ) 00090190¥T1/軽口(かるくち)ひやう/金房(きんほう)/巻(まき)五 00090200¥N1¥J 00090210¥X一△/古道具(ふるとうく)屋と/餅屋(もちや)の事 00090220M5かた見世にハ/焼(やき)もちやと、かた/見世(ミせ)にハ/古道具(ふるとうく)やと、かけ 00090230M6あいにしてしやうはいしけるか、/田舎者(いなかもの)/門(かと)を/通(とを)りて、此や 00090240M7きもちかを。/十(とを)をに/付(つき)いくらといひけれハ、/是(これ)ハ壱文ツゝ 00090250M8にきハまりてあると云。/田舎者(いなかもの)いふやうハ、それハあたら 00090260M9しきやきもちか、壱文ツゝしや。これは/古道具(ふるとうく)になつたほ 00090270M10とに、/十(と)を五/文(もん)にうれといふた。 00090280¥N2¥J 00090290¥X二△たらいにのつたる事 00090300M13大坂/小(を)はまの/川(かハ)に、/女(をんな)せんたくして/居(ゐ)けれハ、/道通(ミちとを)る 00090310M14(一オ)人/折(をり)ふし、のんとやかわきけん、/川(かハ)へをり、その女 00090320M15にひしやくをかりて/水(ミつ)をのミけり。かへらんとしけるに、 00090330M16/彼(かの)ひしやく、そてにかゝり/川(かハ)へ/落(おち)、なかれけれは、かのを 00090340M17んな、あのしやく、とりてかへせと/云(いゝ)けれハ、/此男(このおとこ)、そこ 00090350M18なるたらいを/舟(ふね)にしてのりて、しやくをとらんとしけれと 00090360M19も、したいに/流(なか)れる/事(こと)なれハ、ゑとらすして、/川口(かハくち)の/番所(はんしよ) 00090370¥P287 00090380L1のきハまてなかれけり。はん/衆(しゆ)、これをミて云やうハ、/川(かハ) 00090390L2なかれか、たすけんとおもひ、こゑをかけけれは、/此男(このおとこ)、 00090400L3とかめるとおもひけん、/大(おゝ)きなる/声(こゑ)して、/只今(たゝいま)あまか/崎(さき)へ、 00090410L4けんとんの/舟(ふね)だして(一ウ)まいりますと云た。 00090420¥N3¥J 00090430¥X三△あたことの/江戸(ゑと)くたりの事 00090440L7/去年(さんぬるとし)、さかのおしやかさまの/江戸(ゑと)へ/奉加(ほうか)に御/参被成(まいりなされ)、/大(だい) 00090450L8ふんかねもうけなされけり。/其(その)よし、あたことの/御聞(おんきゝ)なさ 00090460¥G 00090470M1れ、めてたしとて/見(ミ)まハれけれハ、しやかによらいのおほ 00090480M2せられけるハ、/江戸(ゑと)ハことに火事しけい/所(ところ)なれハ、こなた 00090490M3ハぜひに/御下(おくた)りなされ。はやるへしとのたまへハ、あたこ 00090500M4との、おほせらるゝハ、いかにも、われらもさやうにおも 00090510M5へ候へ共、きのとくかこさるハ、/江戸(ゑと)にハ/川村(かハむら)すいけんと 00090520M6云/者(もの)かいまするニよつて、われらか(二オ)くたりたらハ、 00090530M7此はなの/長(なかい)いの/((を脱カ))ミて、新/田(てん)にせふといはふかとおもふて、 00090540M8ゑくたりませぬと仰られた。 00090550¥N4¥J 00090560¥X四△しんによたうの/如来様(によらいさま)の事 00090570M11さかのしやかによらい、/大(たい)ふんかねもうけなされ候ゆへ、 00090580M12/真如堂(しんによたう)も/御下(おんくた)りの/事(こと)/極(きハま)りけれは、/有夜(あるよ)、/住持(ぢうし)の/枕(まくら)に、によ 00090590M13らい/御夢想(ごむさう)ありけるハ、われ、此たひ/江戸(ゑと)へ/下(くた)るゆへ、/霊= 00090600M14宝霊仏等(れい=ほうれいふつとう)の/荷物(にもつ)に、/荷(に)しるしをかくへし。/則(すなハち)、/此字(このじ)をかけ 00090610M15とて、/夢(ゆめ)さめぬ。ミれハ/鈴(すゝ)の/字(じ)なり。ありかたしと、/則(すなハち)、 00090620M16/荷(に)しるしにしけり。これも/大(たい)ふんにかねもうけなされ、/京(きやう) 00090630M17へ/御(おん)かへり(二ウ)なれハ、/住持(ちうし)よろこひかきりなし。今お 00090640M18もひ合すれハ、鈴の/字(じ)ハ/金(かね)をせしめると/書(かい)た/字(じ)によつてと 00090650M19云た。 00090660¥P288 00090670¥N5¥J 00090680¥X五△/出入(いていり)の/油屋(あふらや)か事 00090690L3/京室町(きやうむろまぢ)に何かしとて、/大(おゝ)きなる/銀持(かねもち)/有(あり)けり。其/内(うち)へ/出入(いていり) 00090700L4する/油(あふら)やありしか、/此油(このあふら)や、目ハかんたにて、/皃(かほ)ハミつ 00090710L5ちやとこそいへ、はなもかほにあき所なけれハ、ミな/人(ひと)、 00090720L6/異名(いミやう)を/付(つけ)て、/惣(そう)かのこ+と云ける。/有時(あるとき)、/出入(いていり)する何 00090730L7かしのをく様、/油(あふら)やにむかひての給ふは、その/方(ほう)に、なに 00090740L8共+いひかねて/居(ゐ)れとも、あまり/人(ひと)しれずおもふもつら 00090750L9い/程(ほと)に、おれかおもひをはら(三オ)させてくれと、おふせ 00090760L10られけれハ、/油(あふら)や、きもをつふし、/天(てん)へあかるこゝちしけ 00090770L11り。ぜひにとて、/油(あふら)や/□((のカ))/手(て)をとり、/奥(をく)へつれゆきて、/爰(こゝ) 00090780L12にまつへしとありしかハ、けつこうなるふとんの/上(うへ)にのり、 00090790L13何事かなと/侍居(まちゐる)所へ、/奥様(をくさま)ハ三つはかりの/子(こ)をいたき、出 00090800L14給ふをミれハ、ほうそふの/山(やま)あけかたに見えけり。/其時(そのとき)/奥= 00090810L15様(をく=さま)、/子(こ)にむかつての給ふハ、/此中(このちう)、かきやんな+といへ 00090820L16とも、かゆいとてかきやる。そのやうにかきやると、あれ 00090830L17ミや、/皃(かほ)かあの/油(あふら)やの/■(かほ)のやうになるといはれた。(三ウ) 00090840L18(四オ挿絵) 00090850¥N6¥J 00090860¥X六△ねち/上戸(じやうこ)の事 00090870M3/祇園八坂(きをんやさか)の/茶(ちや)や/方(かた)に、/酒(さけ)のしたミとて、/毎日(まいにち)/大方(おゝかた)一/間(けん)に一 00090880M4/升程(しやうほと)つゝ/有(あり)けり。/是(これ)をもらふこしき有けるか、いつもし 00090890M5たミの/酒(さけ)を、めんつに一はい/入(いれ)のミけれとも、/此(この)こしき、 00090900M6/極(きハ)めてねち/上戸(しやうこ)にて、ねぢねハゑのます。あるあさの事な 00090910M7るに、/友(とも)のこしき壱人もなく、ねちてのむへき/友(とも)もなく、 00090920M8/気(き)の/毒(とく)におもふ所へ、さつまやつこ壱人/来(きた)たりけれハ、/嬉(うれ)し 00090930M9やとおもひ、やつこかそはに/立(たち)より/云(いふ)やうハ、ちかころ御 00090940M10むしんなる/事(こと)てこさりますれとも、/是(これ)ハ/酒(さけ)てこさりまする 00090950M11か、/私(わたくし)はねち/上戸(じやうこ)てこさりまする。ねぢねハ、(四ウ)ゑ 00090960M12/下(くた)さりませぬ/程(ほと)に、のめとおふせられて/下(くた)さりませいと云 00090970M13けれハ、やつこ/腹(はら)を/立(たて)、むさいなりをしをつて、にくいや 00090980M14つの。しらんといひけれハ、こじき云やう、それハ/御仁躰(こしんたい) 00090990M15に/似合(にやい)ませぬ。見かけて申上まするにとて、はなさす。/是= 00091000M16非(ぜ=ひ)におよハすして、やつこ、さあ、そんならくらいおれと 00091010M17いへは、いや、/是(これ)ハ/大(たい)さんでござりまするゆへ、なりませ 00091020M18ぬと云。はて、たわけめ。はやくくらへといへは、いや、 00091030M19成ませぬと/云(いひ)てねぢけれハ、やつこ、ならねバよいと云て、 00091040¥P289 00091050L1やかてめんつをかゝへて、のんていにけり。 00091060¥N7¥J 00091070¥X七△/大仏(たいふつ)の/耳(ミゝ)かきの事(五ノ十オ) 00091080L4あるひと云けるハ、/大仏(たいふつ)にて/耳(ミゝ)かきをひろふたといへは、 00091090L5/見(ミ)ゝかきしやあるまい。しやくししやあろといへは、かの 00091100L6もの、さきへいはれたとおもひ、いや、/本(ほん)のミゝかきしや 00091110L7といふた。 00091120¥N8¥J 00091130¥X八△しかただんきの事 00091140L10ある/寺(てら)の/長老様(ちやうらうさま)ハ、しかたたんきしやと云ふらしけれハ、 00091150L11しかたをミてハ、/皆人(ミなひと)おかしかりき。ある/時(とき)、せつしやう 00091160L12かいのたんき/成(なり)しに、まつ、あの/鳥(とり)さしを見さつしやれ。 00091170L13/人間(にんけん)の/皃(かほ)てハごさらぬ+。うろ+として、しかも/鳥(とり)を 00091180L14さす/時(とき)の/皃(かほ)を/見(ミ)さつしやれと云て、(五ノ十ウ)あふきをも 00091190L15つて/高座(かうざ)の上にて/立(たち)て、これもんにかまへて+とのたま 00091200L16へは、/折(おり)ふし、かねたゝきの/坊主(ほうす)、ねふりて/居(ゐ)しが、ふと 00091210L17めをさまし、きもをつふし、やかてかねをたゝきて、/大(たい)を 00091220L18んあけて、/鳥(とり)をさいた、ミさいな+と云た。 00091230¥N9¥J 00091240¥X九△たなの/落(おつ)る事 00091250M3ある人、/宿(やと)かへしけるに、/友達(ともたち)にたのまれて、/棚(たな)を/釣(つり)てやり 00091260M4けれハ、/何(なに)とかしたりけん、/上(うへ)へ/物(もの)をあげたれハ、/此棚(このたな)つ 00091270M5ゐ/落(おち)けり。/其後(そのゝち)/棚(たな)つりたるものにあい、その/方(ほう)ハまづそさ 00091280M6うな。あのやうな/棚(たな)のつりやう(十一オ)かある/物(もの)か。つゐ 00091290M7おちたといへは、/彼(かの)ものいふやう、をれかつつた/棚(たな)が/落(おつ)る 00091300M8はづじやないが、いな事しやとて、しあんして/云(いふ)やうハ、 00091310¥G 00091320¥P290 00091330L1/棚(たな)の/上(うへ)へなんぞ、あきやつたものしやあろといふた。 00091340¥N10¥J 00091350¥X十△くわんしんすまふの事 00091360L4/京(きやう)にハくわんしんすまふはやるとて、/国&(くに+)よりいろ+ 00091370L5の/者(もの)とものほり、/相引(あいひき)の/大山(おゝやま)の/御用木(こようほく)の/両国(りやうこく)のとて、つ 00091380L6よき/者(もの)ありけるか、/又(また)/此中(このちう)、/江戸(ゑと)より/上(のほ)りたるとて/出(て)てと 00091390L7りける/者(もの)、/壱番(いちはん)にてもまける/事(こと)なし。あまりつよけれハ、 00091400L8/御名乗(おんなのり)ハ/何(なに)といふと(十一ウ)といけれとも、なのらざりけ 00091410L9れハ、/見物座中(けんふつさちう)のこらす、/名(な)のり+と/尋(たつね)けれハ、まけぬ 00091420L10こそ/道理(たうり)なれ、江戸/本町(ほんちやう)において、/現金(けんきん)かけねなししやと 00091430L11名のつた。 00091440¥N11¥J 00091450¥X十一△ざうすいくいたる事 00091460L14ひんほうなる/者(もの)/有(あり)けり。/朝夕(あさゆふ)さうすいはかりくいけれハ、 00091470L15むすこか/云(いゝ)けるハ、これ、とゝ。此やうなしるひ/物(もの)ハ、い 00091480L16やしやといひけれハ、それほとしるくハ、あしたはいてく 00091490L17へといふた。 00091500¥N12¥J 00091510¥X十二△/東本願寺(ひかしほんくわんし)の御さうれいの事(十二オ) 00091520M1去ル年、東もんせき様の/御死去(こしきよ)にて、もんとしゆ、/国&(くに+)よ 00091530M2り上りけるか、御そふれいの/時(とき)に、六十はかりのばゝ、御 00091540M3こしをみて、/我(わか)むすめに/云事(いふこと)をきけハ、あなたかたハ/仏(ほとけ)さ 00091550M4まじやによつて、いきるのしぬるのといふ/事(こと)ハなけれとも、 00091560M5此やうになさるゝ/事(こと)ハ、此ほんぶのミせしめのために、わ 00091570M6ざとしなしやつたと/云(いふ)た。 00091580¥N13¥J 00091590¥X十三△やつこひけそりし事 00091600M9/江戸(ゑと)の/日本橋(にほんはし)のきハに、かミゆいのとこありけれハ、すさ 00091610M10ましきやつこ壱人/来(きた)り、さかやきそりてくれべいと(十二ウ) 00091620M11(十三オ挿絵)いひけれハ、こゝろへたりとて、そりてやり 00091630M12けり。やつこ云やうハ、さかやきハそりたか、/皃(かほ)のひけハ 00091640M13のこすはつしやに、なせにそつたとて、ねたりけり。われ 00091650M14ハ/此鬚(このひけ)ゆへに、さる/御大名様(おたいミやうさま)へ/道具持(たうくもち)にいくはつしやに、 00091660M15ひけかなけれはゆかれんとて、ねたりけれハ、せんかたな 00091670M16く、/鳥目(てうもく)壱/貫(くわん)/出(いた)し、あつかいていなしけり。/其後(そのゝち)、せい 00091680M17のたかい/坊主(ほうす)、/病(やミ)あかりとミへて/来(きた)り、かみゆひ/殿(との)。あた 00091690M18まそつてくたされいと云けり。こゝろへたりとて、そりに 00091700M19けり。さいぜんのやつこにこりはて、こんとハ此/坊主(ほうす)のあ 00091710¥P291 00091720L1たまはかりそりて、ひけをのこしけれハ、(十三ウ)/坊主(ほうす)、 00091730L2/大(おゝ)きに/腹(はら)を/立(たて)、/坊主(ほうす)にひけ/作(つく)りてよい物かと、わめきけれ 00091740L3ハ、かミゆひ云やう、さいせん、ひけをすりて/銭(ぜに)壱/貫(くわん)と 00091750L4られてむねんなるに、またおのれめ、をれにひげをそらせ 00091760L5て/銭(せに)をとるべきたくミしやといふて、さん+に/此坊主(このほうす)を 00091770L6ちやうちやくしけれハ、/行(ゆき)とをりの/人&(ひと+)、すはや、けんく 00091780L7わと/立(たち)よりけり。かミゆいの/女房(にうハう)きもをつふし、ミれハ大 00091790L8きなる/坊主(ほうす)に、ひけすさましく/作(つく)りたり。なにかさいせん 00091800L9のにこりはて、/物(もの)もいわす、これハ+と/斗(はかり)云けり。おや 00091810L10ち、これを/聞(きゝ)て、/女房(にうハう)にやうすを/尋(たつね)ハ、(十四オ)にうはう、 00091820L11せいて/云(いふ)やう、さいせんのやつこかひけをそつてさへ、/銭(せに) 00091830L12壱/貫(くわん)てやう+かんにんしましたに、いまハまた、それ 00091840L13よりハまたすさましきやつこを、ほうすにしました/程(ほと)に、 00091850L14五/貫(くわん)ても/聞(きゝ)ますまひと云た。 00091860¥N14¥J 00091870¥X十四△/帳(ちやう)をひろいし事 00091880L17ある/人(ひと)、ちいさき/帳(ちやう)壱つひろいしを、あけて見れハ、/室町(むろまち) 00091890L18の太郎兵衛様より/金子(きんす)壱/角(かく)、/新在家(しんさいけ)の/六(ろく)さまより/羽織(はをり)壱つ、 00091900L19/江戸(ゑと)の/大臣様(たいしんさま)よりぐん/内(ない)しまのきる物に、もゝひきのふる 00091910M1いの壱つとありけれハ、かてんゆかす。(十四ウ)まつ/上書(うハかき) 00091920M2をみよといへは、/大皷持(たいこもち)の/八助(はちすけ)として、おもてに、万あり 00091930M3かたき/帳(ちやう)とありけり。 00091940¥Q 00091950M6△△△目出度祝月日 00091960M7△△△△△△△△△△△京寺町通松原上ル町 00091970M8△△△△△△△△△△△△△△△△△△菱屋治兵衛板 00091980¥Y/軽(かる)口ひやう/金房(きんぼう)終(十五オ)