00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第七巻 00000030¥T軽口あられ酒 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L16宝永二年刊 00000070L17作者未詳 00000080L18半紙本五巻 00000090L19国会図書館蔵 00000100¥Y1軽口あられ酒巻一△目録 00000110M3第一△/嫁取(よめとる)だんこ 00000120M4二△さか/釈加(しやか)/江戸(ゑど)にて/開帳(かいちやう) 00000130M5三△江戸にて御身ぬぐい 00000140M6四△釈伽如来をだわらにての事 00000150M7五△/如来(によらい)御身ぬぐゐ 00000160M8六△小/僧(ぞう)りこん 00000170M9七△小/哥(うた)ずきな人 00000180M10八△/宗論(しうろん) 00000190M11九△/鳥(とり)さし小ぞう(一オ) 00000200M12十△/今(いま)なり/平(ひら)の/事(こと) 00000210M13十一△すまうのなのり 00000220M14十二△一はいきげんて/遣(つかふ)/旦那(だんな) 00000230M15十三△よわきものけんくわ 00000240M16十四△しわきおやぢ 00000250M17十五△四/条(でう)/石(いし)かけ町大文字屋の事 00000260M18十六△かけ物あらそふ事 00000270M19十七△おやこともにたらぬ 00000280¥P4 00000290L1十八△すいせんをしらぬ人(一ウ) 00000300¥T1ばなし巻一 00000310¥N1¥J 00000320¥X第一△/嫁取(よめとる)だんこ 00000330M5さる人、よめよびたくおもへど、/有(ある)ハいやなり、おもふハ 00000340M6ならず。おはりの一もんより、むすめをくれんといへ共/何(なに) 00000350M7とせん。又さる人申ハ、大/名(めう)もとりが/有(ある)。これをきもいら 00000360M8んとゆう。/如何(いかゞ)せんと/有(ある)ば、さるそそうな人、かきもの見 00000370M9てしんぜうとて、こよミとり/出(いだ)し、大めうからハいらぬ/物(もの)、 00000380M10おハりのになされ。大/名(めう)五む日、八せんおハり、よめどり 00000390M11に/に((に衍))よしと有/程(ほど)に。(二オ) 00000400¥N2¥J 00000410¥X二△/嵯峨(さか)のしやか/江戸(ゑと)にて/開帳(かいてう) 00000420M14/釈伽如来(しやかによらい)/開帳(かいてう)、十月にハさかいへ御のぼりなされる。また 00000430M15おがミ申/事(こと)もまれ也。けちゑんのために、/春(はる)まで/御(ご)かいち 00000440M16やう御のべ下され候へと、江戸/中(ぢう)ねがわれければ、つき※ 00000450M17の/出家衆(しゆつけしゆ)申され候ハ、のばす事ハかなハぬと/有(ある)。いや+、 00000460M18まへ+もかいちやうのびたる事御さ候とゆう。いや、釈 00000470M19伽のかいちやうハちゞめハすると、のばす事ハならぬ。そ 00000480¥P5 00000490L1れをいかにとゆうに、しやかがしらじやとゆふ。 00000500¥N3¥J 00000510¥X三△江戸にて御身ぬぐい(二ウ) 00000520L4釈伽如来御身ぬぐい、/絹(きぬ)さらしのきれ持/参(さん)いたし、御身ぬ 00000530L5ぐうが/銭(せに)百文/宛(づゝ)に/定(さた)め、さるもの、ぬのぎれ壱/尺(しやく)に銭五十 00000540L6文そへ、御身ぬぐい/頼(たのむ)とゆう。いや、御身ぬぐいハ/定(さだ)めが 00000550L7銭百文とゆう。五尺三尺有きれも百文、これ一尺にたりま 00000560L8せん。五十でまけて下され候へとゆう。しやかきこしめし、 00000570¥G 00000580M1にくゐ申/分(ぶん)/哉(かな)。しやかのさほうやぶる。しやかハきわめが 00000590M2百文なり。あわせも百にたつ。なんぢ五十にねきる/事(こと)、三 00000600M3/国(ごく)一の此/釈(しや)伽を、あをにゝするかといわれたり。(三オ) 00000610¥N4¥J 00000620¥X四△/釈伽(しやか)如来おだわらにての事 00000630M6さが/如来(によらい)、/小田原(おたハら)にて、もはや日本の/地(ち)をはなれたかと/有(ある)。 00000640M7いや、こゝハ日本小田原と申す、ういろうの/名所(めいしよ)と申す。 00000650M8しやかによらい、うゐろうやのかんばんに、とうちんこと 00000660M9してあるほどに、からかとおもふた。 00000670¥N5¥J 00000680¥X五△如来御身ぬぐい 00000690M12しやかの御身ぬぐいとて、さらしのきれ二寸/程(ほと)に/切(きり)、/鳥目(てうもく) 00000700M13百文づゝにていたゞかす。いづれも申うけられ候/衆(しう)申さ 00000710M14れ候ハ、これハ/如来(によらい)の御身に(三ウ)(四オ挿絵)あたりたる 00000720M15のにて/御座(ごさ)候かと/申(もう)す。/成程(なるほと)せいもん、御身ぬぐいたるさ 00000730M16らしのきれ也と/申(もう)す。人&よろこび、いたゞき/帰(かへ)る/人(にん)じゆ 00000740M17をしらず。さて/如来(によらい)、さがへ御/登(のぼ)りハ十月/廿日(はつか)/昼(ひる)の四つ也。 00000750M18しやか、/大津(おほつ)にて/被仰(おほせられ)候ハ、三/条(でう)より四条からかへるべし。 00000760M19ぎおんのおたびへより、せいもんのみやへまいらふといわ 00000770¥P6 00000780L1れた。 00000790¥N6¥J 00000800¥X六△/小僧(こそう)りこん 00000810L4/寺(てら)のちやうろう、こ/僧(ぞう)つれ、ときにゆかれ、ふせに/銭(せに)弐百 00000820L5文つゝむ。こぞう/受取(うけとり)、/頃日(このごろ)ハ小/遣(づかひ)もなし。(四ウ)百ハわ 00000830L6たくしにせんとおもひ、百文かくし、/残(のこり)百文かミにつゝみ 00000840L7/置(おく)。ちやうろう、こぞうに、さきのふせハと申さる。小ぞ 00000850L8う百文/出(いた)す。ちやう/老(ろう)、ふせハ弐百文と申さる。こ/僧(そう)、い 00000860L9や百文にて御/座(さ)候とゆう。これ、うハづゝミのかミに、ふ 00000870L10せ弐百文として/有(あり)。/小(こ)ぞう、いや、ふせに百文と申た。ふ 00000880L11せニ百文か。 00000890¥N7¥J 00000900¥X七△/小哥(こうた)ずきな人 00000910L14さるていしゆ、なげぶしがすきにて、よるよそへゆくと、 00000920L15かどをうたふてありく。あるとき夜る/男(おとこ)、/留主(るす)なりけるに、 00000930L16おもてをなげぶしうたふてありく。(五オ)/内儀(ないき)、こちの人 00000940L17じやとおもひ、おもてのとをあけてまちいられた。かどを 00000950L18うたひて下の町へゆく。ようにたこへとて、又/内(うち)ニ/入(いる)とこ 00000960L19ろへ、おとこ/帰(かへ)りけり。/女房(にようぼう)申ハ、/扨(さて)もよくにたこへ有。 00000970M1/今(いま)おもてをうたふて/通(とを)つた人、こなたかとおもひ、むかひ 00000980M2に/出(いて)候が、下の町へゆかれたといふ。いや、おれであつた 00000990M3が、うたがあまりたにより、下の町までゆき、うたいしま 00001000M4ふたとゆわれた。 00001010¥N8¥J 00001020¥X八△/宗論(しうろん) 00001030M7さる/法花宗(ほつけしう)申ハ、いかに/浄土(せうと)。その/方(ほう)ハ/何(なに)をたの(五ウ)ミ、 00001040M8/仏(ほとけ)になるぞ。こちハあみだ/如来(によらい)を/頼(たの)むと/云(いう)。/法花(ほつけ)宗申ハ、 00001050M9それハひだるいものを/頼(たの)む。如来ハおんなきたるとかく。 00001060M10/女(によ)らいが/何(なに)がかたじけないと/云(いう)。/妙法(めうほう)の妙ハ、おんなへん 00001070M11に/少(すこし)ほうれんげきやう、同じ事とゆふ。 00001080¥N9¥J 00001090¥X九△/鳥指小僧(とりさしこぞう) 00001100M14ちんさいと申す小ぼうず、ぶてうはう/成(なる)小まい、まいもう 00001110M15し候。御ちそうにまハしもうさんずるあいだ、おんゆるし 00001120M16/下(くだ)され候へと申す。/何(いづ)れも御きやく/方(がた)、これ一だんと、し 00001130M17よもう/有(ある)。と(六オ)の、ちんさいを/召(めし)なされ、/何(いづ)れも/様(さま)へ 00001140M18御ちそうにおさかなと/仰(おほ)せ/付(つけ)られ、ちんさい、かしこまり、 00001150M19さいた+、見さいな。/鳥(とり)をさいた、見さいな。ひとへの 00001160¥P7 00001170L1/日(ひ)ハ/又(また)、/壱(ひと)つひよ/鳥(どり)、/日(ひ)よりよかれとさいづるところを、 00001180L2ちうでさいておつとつた。/二日(ふつか)の日ハまた+、二日の日 00001190L3ハまた++とばかりにて、さすものわすれ、とのさま 00001200L4のちりめんのはおりがざしきにあつた。やがてはおりをさ 00001210L5された。御きやくをはじめ、ちんさい、よきものさいた。 00001220L6ためになりそうなもので御ざるとて、/何(いづ)れ(六ウ)(七オ挿絵) 00001230L7もおほめ/有(あり)。とのもおかしく思召、すくにわれにとらすと 00001240L8て、/羽(は)おりをちんさいに/下(くだ)された。はおりにちんさい、あ 00001250¥G 00001260M1ぢを/得(ゑ)て、三日ハまた+、とのさまのさしがへの/金作(きんづく)り 00001270M2のかたながあつた。/此(この)かたなをさそうとした。とのさま御 00001280M3らんじて、それハおれがさすのじやといわれた。 00001290¥N10¥J 00001300¥X十△/今(いま)なり/平(ひら)の事 00001310M6/町方(まちがた)に、わかいしゆ弐三人つれにて、まちをとをりけり。 00001320M7むかうより廿三四斗なるわかいしゆ、(七ウ)びんあつく、 00001330M8まゆほそ/ぐ((ママ))、きりやうよき/仁(じん)、まいり候/処(ところ)に、二三人の/内(うち) 00001340M9より一人ほめけるハ、/扨(さて)&よききりやうかな。しやうじん 00001350M10の/今(いま)なり/平(ひら)と申けり。中に一人、こゝろにおもひけるハ、 00001360M11あのようなるハなりひらと申す。/我等(われら)もなり平とほめら 00001370M12れんと、やどに/帰(かへ)り、かみゆひをよびにやり、さかやきを 00001380M13このミ、びんあつく、まゆほそくとこのミけり。かミゆい、 00001390M14/仰(おほせ)のとをりすりけり。かの人よろこび、/町方(まちがた)をとをりけり。 00001400M15久しき人にあひ、さて+久しうあい不申(八オ)候と一/礼(れい) 00001410M16ありて、さて/貴(き)さまハいつのまに、なりになりやつたぞ。 00001420M17かの人、さて貴様ハ/平(ひら)をのけて、なりとハしやれた申/分(ぶん)ゆ 00001430M18はれたと/悦(よろこふ)。まゆほそきゆへか。 00001440¥P8 00001450¥N11¥J 00001460¥X十一△すまうのなのり 00001470L3さるすもうずきなる人、しゆしやかのくハんじんずもうへ 00001480L4参られ候。かの人、小むすびより/段(だん)&せきわき/迄(まで)とりほし 00001490L5けり。/大関(おほぜき)くま右/衛門(ゑもん)をのぞまれけるに、/行事(きやうじ)あつかひ申 00001500L6され候へ/共(ども)/聞(きゝ)不入、ぜひ※大ぜきにのぞまれけるに、ぎ 00001510L7やうじ申すハ、左/様(よう)ニ御ざ候ハヽ、今かの三ばん(八ウ)な 00001520L8のり候へ/共(ども)、六ばんのなのりに/仕(つかまつり)候と申しければ、かの 00001530L9人/合点(がつてん)して、ぎやうじ、なのらハ/何(なに)と申候ぞと/聞(きゝ)ければ、 00001540L10かの人、/名乗(なのり)ハ御ざなきと申ける。しからば/何(なに)やにて候と 00001550L11申す。こんにやく屋と申す。/行事(きやうじ)/心得(こゝろへ)、/今(こん)日のすもう、/東(ひかし) 00001560L12の/方(かた)において、ろくばんかち、こんにやく屋となのりける。 00001570L13けんぶつより、ふわあとわらハれた。 00001580¥N12¥J 00001590¥X十二△一はいきげんで/遣(つかふ)だんな 00001600L16さる/旦那(たんな)、下人よび/寄(よせ)、こと/外(ほか)さむく候へば、な(九オ)ん 00001610L17じ、さけを一つのミて、ふし見へつかひにまいれ。やれ、 00001620L18たけ。あつくかんをいたし、/八蔵(はちぞう)にのませと有。下/女(ぢよ)、か 00001630L19んよく候と申す。だんな、こゝへ/持(もち)て/参(まい)れ。われ、かんを 00001640M1みんとて、ちやわんにつゞけさまふたつのミ、さてよきか 00001650M2んなり。よいきびかな。このいきおいに、ゐてこいといわ 00001660M3れた。 00001670¥N13¥J 00001680¥X十三△よわき/者(もの)けんくわ 00001690M6さる町にけんくわあり。さん※にふみあいければ、あた 00001700M7りの人、ひらに+かんにんあ(九ウ)(十オ挿絵)れ。こな 00001710M8たのあひてハにげたとゆう。むねんや。せんをこされた。 00001720M9おれがにぎやうとおもふたに。 00001730¥N14¥J 00001740¥X十四△しわきおやじ 00001750M12さる/所(ところ)に、七つ八つ/斗(ばかり)のまごあいはて、はゝおや、おば一 00001760M13もんなげく。しはき/親(おや)、もつともかなしきハことわり也。 00001770M14しかしおれもかなしけれ。こゑをあげてなれば、あたりへ 00001780M15きこゑ、とむらいに人くれば、めい日にちやもたてねばな 00001790M16らぬ。そのやうな事でハ、せたいならぬ。やい三ぞう。こ 00001800M17の子がしんだが、そうをいたす事、人にしらす(十ウ)な。 00001810M18/野(の)だちがあれば、/立酒(たちさけ)の壱つももらねばならぬほどに、人 00001820M19のしらぬやうに、ふごに入れ、さんまいゑその/方(ほう)一人かた 00001830¥P9 00001840L1げてゆき、うずめて/帰(かへ)れ。これをうづめたら、さだめて/土(つち) 00001850L2があまろ/は((ほカ))どに、もどりに、ふごにつちを入てもどれ。へ 00001860L3つついのうハぬりにせうといわれた。 00001870¥N15¥J 00001880¥X十五△/四条(しぢやう)/石(いし)かけ/町(まち)大文/字(じ)やの事 00001890L6たつの四月なが/雨(あめ)にて、かも/川(がわ)の/水(ミづ)/大分(たいぶん)に/出(いで)けり。/石(いし)かけ 00001900L7/町(まち)大もんじやのやましう小ゆきとて、廿二三なる/女(おんな)、/水(ミづ)け 00001910L8んぶつニ/川(かわ)ばたへ(十一オ)/出(いで)ければ、川の/石(いし)かけくゑて、川 00001920¥G 00001930M1ゑ/流(なが)れけり。人&あわてゝ/引(ひき)上ゲたれども、ふかき大川ゑ 00001940M2はまりければ、まづきつけに水のまさんにもしたぢ/有(あり)。さ 00001950M3ま※かいびやうしけれども、ついにしゝたり。町中より 00001960M4/合(あひ)、/扨(さて)もふびんの/次第(しだい)かな。心だてもしおらしきものなる 00001970M5に、ふびんなる/事(こと)なり。まことに、/人間(にんけん)ハひほうのしにハ 00001980M6いたさぬと申せども、しやうじんのこれハひほうなりとゆ 00001990M7う。町の/年寄(としより)申され候ハ、いや、これハじやうがうなりと 00002000M8ゆふ。/又(また)ミな申され候ハ、/年(とし)より候てが(十一ウ)/長(てう)びやうに 00002010M9て、これがじやうがう。/此(この)わかきもののしにたるハひほう 00002020M10とゆう。しゆくろう、また申され候ハ、たゞのもの、かわ 00002030M11へはまりてしなば、ひほうなり。これハ大もんじやとゆう 00002040M12/茶(ちや)屋のおやまなり。ゆう/女(ぢよ)がながれの/身(ミ)でしぬるハ、ぜう 00002050M13がうなりといわれた。 00002060¥N16¥J 00002070¥X十六△/掛物(かけもの)あらそふ/事(こと) 00002080M16さる所にふるまい有。いづれもざしきに/居(い)ながれ、/何(いづ)れも 00002090M17とこにかゝりしつるのゑハ、ちよくわんの/筆(ふで)なりとて、て 00002100M18いしゆ、てうはういたしお(十二オ)かれましたが、/今(こん)日ミな 00002110M19さまへ御ちそうにかけられましたそうなと申されたれば、 00002120¥P10 00002130L1でんぶな人すゝみ/出(いで)、いや、あれハつるにてあらず。がん 00002140L2じやと申ける。いや、つるじやとゆう。いや、がんにきわ 00002150L3まつた。つるならば、ろうそくをくわへているはづじやと 00002160L4ゆう。 00002170¥N17¥J 00002180¥X十七△おやこともにたらぬ 00002190L7さるむすこ、月夜に/長(なが)ざをもつて、そらをかつ。/親仁(おやじ)見て、 00002200L8/何(なに)をする。むす子きゝ、ほしをかつとゆう。/親(おや)ぬからぬか 00002210L9をにて、/下(した)からハとゞくま(十二ウ)い。屋ねへあがれとゆ 00002220L10うた。 00002230¥N18¥J 00002240¥X十八△すいせんをしらぬ人 00002250L13/極(ごく)月のころ、さるざしきのとこに、すいせん/一本(ひともと)いけてあ 00002260L14り。さる人見て、さてめづらしいとふしんがる。ていしゆ 00002270L15見て、その/方(ほう)様にも、/花(はな)にこゝろがありそうなとゆう。い 00002280L16や、心ハなく候へども、かんのうちに、にんにくに/花(はな)のさ 00002290L17いたハ見はじめとゆうた。(十三オ) 00002300¥Y1軽口あられ酒巻二△目録 00002310M3第一△たんき成/牢(ろう)人 00002320M4二△/米屋(こめや)の/男(おとこ)そそう 00002330M5三△/雨乞(あまごひ)の/願(ぐハん)ほどき 00002340M6四△そそうな/医者(いしや) 00002350M7五△はりつけにいけん 00002360M8六△/下(くだ)る舟にゑん/慮(りよ) 00002370M9七△きまゝなおやぢ 00002380M10八△/寒(かん)の/内(うち)にあせかく 00002390M11九△/碁(ご)にあぶながる(一オ) 00002400M12十△/碁(ご)に/助言(じよごん)ゆふ 00002410M13十一△おやじとんさく 00002420M14十二△/進物(しんもつ)によミ/様(よう)の事 00002430M15十三△しあんする人 00002440M16十四△たらぬ人 00002450M17十五△/紺屋(こうや)へ/男(おとこ)を/使(つかひ)にやる 00002460M18十六△/間(まに)にあひな/宿老(しゆくろう) 00002470M19十七△そそうなたばこのミ 00002480¥P11 00002490L1十八△正月うたひそめ(一ウ) 00002500¥T1はなし巻二 00002510¥N1¥J 00002520¥X第一△たんきな/牢(ろう)人 00002530M5さる/牢(ろう)人、ほうろくづきんにかミばおり、なべのつるのや 00002540M6うなかたなをさし、さむけれどあふぎ遣ひ、山寺などうた 00002550M7ひて、さる町人衆の所へ行、/色&(いろ+)のせんせうばなし、/長(なが) 00002560M8+といたされた。/夕喰(ゆうはん)/時分(じふん)に/成(なり)ければ、お/内儀(ないぎ)、あなず 00002570M9りがましく候へとも、/今晩(こんばん)ハおミいをたきましたとて/膳(ぜん)す 00002580M10へければ、ろうにん、ふたをあけ見て、さん※にはらを 00002590M11たて、やがて(二オ)かたなにそりをうつ。ていしゆ、御も 00002600M12つとも。あやまりましたと申。牢人、いや+、ていしゆ 00002610M13/内儀(ないぎ)え申/分(ぶん)、/少(すこし)もない。/云(いひ)ぶんハ此ぞうすいに有。やいぞ 00002620M14うすい。おのれハなにのいしゆにて、おれがゆくさき※ 00002630M15へついてまハるといふた。 00002640¥N2¥J 00002650¥X二△/米屋(こめや)/男(おとこ)そさう 00002660M18/高直(かうじき)な米/次第(したい)にさがり、/皆(ミな)&よろこぶ/折節(おりふし)、/雨(あめ)ふり/道(ミち)しる 00002670M19し。こめやの男げたをはき、四/斗俵(とうびやう)かたげ、とくいゑゆく。 00002680¥P12 00002690L1町の/宿老(しゆくろう)見て、米をもつてゆくかと/云(いふ)。米屋の男も宿(二 00002700L2ウ)/老(ろう)にあひ、ぼくりはくハりよぐハいと思ひ、たかうご 00002710L3ざりますとゆう。しゆくろ、きもつぶし、又あがつたかと 00002720L4いふた。 00002730¥N3¥J 00002740¥X三△あま/乞(ごひ)の/願(ぐハん)ほどき 00002750L7元禄十三年/夏(なつ)の/比(ころ)、/丹波(たんば)の/山家(やまが)に、いへ廿/斗(ばかり)の/在所(ざいしよ)に、/高(たか) 00002760L8十五/石(こく)の/所(ところ)有。/庄(しやう)屋あまりに雨ふらず、其在所のうぶすな 00002770L9に壱尺斗の/宮(みや)あり。/庄(しやう)屋/願(ぐハん)かけ/被申(もうされ)候ハ、雨を給ハヾ、此 00002780L10うぶすな様へやくしや五六十人/程(ほど)に、三番つゞきの大/狂言(きやうけん)、 00002790L11水がらくりをいたし、いさめ可申候と/願(ぐハん)かけゝれば、(三オ) 00002800L12其夜雨/降(ふり)、世の中よし。/扨(さて)雨/乞(ごひ)のぐハんほどき/致(いた)し可申候と 00002810L13て、京へ/役者(やくしや)やとひに/登(のぼ)す。役者五六十人参候へば、/雑兵(そうひやう) 00002820L14百人の上参り候。銀子壱貫五百目取/行(ゆかん)と/云(いう)。さん用いたす 00002830L15に/高(たか)十五/石(こく)の所、五拾匁米ニして、廿年が間一/粒(りう)も/不残(のこらず)、 00002840L16雨/乞(ごひ)の願ほどきニ入/事(こと)なればかなハぬといふ。/去者(さるもの)、/是(これ)ハ 00002850L17/壱((もカ))つとも/成(なり)。しかし/神(かミ)の事、そまつにハ/成(なり)申まし。/私(わたくし)/銭(ぜに) 00002860L18壱貫にて五六十人/程(ほど)よせ、水がらくりいたし、うふすな様 00002870L19へいさめ可申と申ければ、/余(あまり)りやすし。/手形(てがた)/被致(いたされ)よとて、 00002880¥G 00002890M12やがて壱(三ウ)(四オ挿絵)/貫(くハん)わたす。うけ取、九百文もう 00002900M13けた。しあんかくべつ、かのうぶすなの御こしになわをつ 00002910M14け、せなかにひつかけ京へ/登(のぼり)り、/都(ミやこ)万太夫が/芝居(しばい)の内へ入、 00002920M15かのおミこしをまへにかゝへ、/今度(このたび)の/雨乞(あまごひ)のぐハんほどき 00002930M16也。/能(よく)御らん候へとてミせた。 00002940¥N4¥J 00002950¥X四△そさうないしや 00002960M19さる/医者(いしや)、かぜを引いられたるに、又/病人(びやうにん)有、よびに参る。 00002970¥P13 00002980L1いしや参られて、わたくしも/風引(かぜひき)/居(い)申候。/定(さだめ)て/貴(き)様のも、 00002990L2がいきならん(四ウ)と、/脉(ミやく)をとり、われらのも/其(その)方様のも、 00003000L3同しやまひ也。/薬(くすり)/調合(てうがう)いたし/置(おき)申べく候まゝ、取に御/越(こし)な 00003010L4され。かハる事あらば申こしませうといわれた。 00003020¥N5¥J 00003030¥X五△はりつけにいけん 00003040L7/粟(あわ)田口に、にせ/金(がね)いたしたもの、はりつけにかゝり、木の 00003050L8/空(そら)より、/皆(ミな)様。/一連(いちれん)たくせうのお/念仏(ねんぶつ)/頼(たのミ)まするとゆう。や 00003060L9つこにらみ、今ハ念仏申也。/重而(かさねて)おたしなミやとゆふた。 00003070¥N6¥J 00003080¥X六△/下(くだ)り/船(ぶね)にゑんりよ(五オ) 00003090L12ゑんりよせいでもだいじない事、ゑんりよする人申され候 00003100L13ハ、おれハ大坂へ下るのに、夜ふねで下りたいが、/親(おや)子/兄= 00003110L14弟(きやう=だい)ふねにのるに、/伏(ふし)見でごぼううるので、何ともめいわく 00003120L15じや。 00003130¥N7¥J 00003140¥X七△きまゝな/親仁(おやし) 00003150L18さるきまゝな親仁、一もん子共よび/寄(よせ)、/我等(われら)そくさいの内、 00003160L19その方共にゆひ/置(おき)いたし/置(おく)なり。/今度(こんど)の/門跡(もんぜき)さまの御そう 00003170M1れいおがミたか、かね大/分(ぶん)に入ても、/極楽(ごくらく)より/便(たより)もなし。 00003180M2おれがしにたりと、物の入ぬやうに、そうをい(五ウ)たせ。 00003190M3子共、その方様ゆい/言(こん)の/通(とおり)りにいたしませう。こしでやり 00003200M4ませうか。いや、それでハ物かゐる。のりものでか。それ 00003210M5でもかねがいる。ぶりにないしてやりませうか。それでも 00003220M6/日用(ひよう)二人やとハねばならぬほどに、たゞかねの入らぬやう 00003230M7に、おれがしんだら、かちでゆかうといわれた。 00003240¥N8¥J 00003250¥X八△かんの内にあせかく 00003260M10さる/若(わかい)衆よりて申ハ、扨+さむし。もはやことし、あせ 00003270M11かくことハあるまいとゆう。/亭衆(ていしゆ)、(六オ)もしあせかくこ 00003280M12とこそあれ。/去(さる)かたへまいらぬといふ。四五町ほどゆき、 00003290M13酒屋のおもてをたゝく。何ものぞとゆう。見れば酒めしむ 00003300M14すそうなに、一はいだせとゆふ。/酒(さか)屋の男、あばれもの、 00003310M15たゝけとて、ぼうちぎりきにておつかける。そりやにげよ 00003320M16とてにげにけり。さかやの/男共(おとこども)、何のこともない、あばれ 00003330M17ものじやにかゑれとて、みな+もどる。にげたるもの共、 00003340M18ほう+一所によりて、さて+いわれぬ事申、にげさせ 00003350M19た。あせかいたとゆう。ていしゆ、その方/立(たち)、あせがかき 00003360¥P14 00003370¥G 00003380L12たいと(六ウ)(七オ挿絵)/被申(もうさるゝ)るゝによつてといふた。 00003390¥N9¥J 00003400¥X九△/碁(ご)にあぶながる人 00003410L15さる人、ごうつを見てゐられたり。たゞ物、あぶない+ 00003420L16と申された。うつものきゝ、なにがあぶないぞ。おさへた 00003430L17らぬくや、しきらばわたらふ。みないしハつゞくが、何が 00003440L18あぶないぞ。いや、はなゝ/石(いし)がおてうかと思ふて、あぶな 00003450L19いといふた。 00003460¥N10¥J 00003470¥X十△/同(おなし)しく/助言(じよごん)ゆふ人 00003480M3さる人、碁にくせとして助言/云(ゆひ)ずきな人(七ウ)有。うち/手(て) 00003490M4衆いやがり、今から/助言(じよこん)ゆやるならば、くハたいに/銭(ぜに)百文 00003500M5/宛(づゝ)/取(とる)ほどに、かまゑてゆやるなと申せば、かの人、/助言(しよごん)/云(ゆひ) 00003510M6をこらへかね、五十文でまけてたも。そこな/黒石(くろいし)/渡(わた)れと云 00003520M7すてゝゐんだ。 00003530¥N11¥J 00003540¥X十一△おやぢ/當作(とんさく(ママ)) 00003550M10/去所(さるところ)の/親仁(おやじ)、/目鏡(めがね)をあてゝ物の本見ていられたが、とろ 00003560M11+ねいり、/後(のち)にハゐびきをかゝれた。/内儀(ないぎ)見て、ねらる 00003570M12ゝならば、めがねもはずして、ろくに/休(やすミや)たらよかろうと、 00003580M13お(八オ)こせば、おやじ、ぬからぬかほして、ゆめを見る 00003590M14とゆハれた。 00003600¥N12¥J 00003610¥X十二△/進上(しんじやう)物/書付(かきつけ)よみやうの事 00003620M17/或御所(あるごしよ)がたへ、/去(さる)ところよりしん上に、/杉(すぎ)のはこ壱つ上ル。 00003630M18つけがミあり。かなにて、なにハとかきてつけてあり。し 00003640M19しや/役(やく)人/請取(うけとり)、ひろまにて申ハ、さて+ふしぎや。これ 00003650¥P15 00003660¥G 00003670L12+、なにわと申事かきてあり。これハ/中(なかハ)なにやらんとあ 00003680L13んじいしが、人&より、一こじこじたことかな。なにわの 00003690L14/梅(むめ)のなにしおゝにてもなし。なにハつにさくやこの(八ウ) 00003700L15花ともいわれず。なにわのあし、なにハの入江にてもある 00003710L16まいと、さま+あんじた。あけ見たれハ、なが弐わあつ 00003720L17た。な弐わ。 00003730¥N13¥J 00003740¥X十三△あんじん事 00003750M1さるもの、ひたいに/手(て)をゝきて、さて+わすれた。そば 00003760M2なるもの、/何(なに)ぞといふ。いや、/去年(きよねん)の八月十五日ハ月か、 00003770M3やミか、わすれた。そばなる人もたらぬ人にて、こよミを 00003780M4ミやといふた。 00003790¥N14¥J 00003800¥X十四△たらぬ人 00003810M7さるしゆつけ、くびにじゆずをかけ、あしろ/笠(がさ)(九オ)きて 00003820M8/通(とを)る。たらぬ人見て、ふしぎや。あのじゆずハかさよりち 00003830M9いさし。/何(なに)としてくびへハはいりたぞ。たゞし、くびとも 00003840M10にじゆずやへあつらへたかとふしんがりて、あとよりゆき 00003850M11見れば、このしゆつけ、/近付(ちかづき)にあひ、/扨(さて)/久(ひさ)しう御ざると、/笠(かさ) 00003860M12をぬぐ。かのたらぬ人見て、さてハかさをきぬさきに、じ 00003870M13ゆずハかけたものじや。あんどした。 00003880¥N15¥J 00003890¥X十五△こう屋へ/男(おとこ)を/使(つかひ)にやる 00003900M16ぎやうさんぬけたる/男(おとこ)を、/紺(こう)やへ/使(つかひ)にやるとて、/色(いろ)ハ/花(はな)色 00003910M17にして、あられご/紋(もん)をつけてといへ。あられ(九ウ)(十オ挿 00003920M18絵)をわすれたらば、二月十五日にいりてくふたあられを 00003930M19/思(おも)ひだせといへば、/心得(こゝろへ)ましたと/行(ゆき)けり。/紺(こう)屋にてあられ 00003940¥P16 00003950L1をわすれて、/色(いろ)ハ花色にして、しやかのはなくそをつ/気(け)て 00003960L2たもれといふた。 00003970¥N16¥J 00003980¥X十六△間にあひな宿老 00003990L5さる/町(ちやう)に、/月(つき)なミのより/合(あひ)/有(あり)。くわい/所(しよ)にて、いつもの/法= 00004000L6度書(はつ=とがき)よまれたり。町/内(ない)/遊女(ゆうによ)/野郎(やらう)かたくきんぜいとゆうこと、 00004010L7すぐに、のらかたくきんぜいとよむ。壱人のひと被申候ハ、 00004020L8それハのらにてハない。やろうじやとゆう。/宿老(しゆくろう)申され候 00004030L9ハ、やはりのらと(十ウ)よまれよ。とても/此町(このちやう)に、やろう 00004040L10かゝゆるものなし。わかきもの共がのら+するほどに、 00004050L11やはり、のらきんぜいとよめとゆふた。 00004060¥N17¥J 00004070¥X十七△そそうなたばこのミ 00004080L14ある人、よるの/夜中(やな)/時分(しぶん)にめをさまし、たばこのまんとて 00004090L15/台所(たいところ)にゆき、/下女(けじよ)のまくらもとに/火打箱(ひうちばこ)/有(ある)を、/火(ひ)打といし 00004100L16を/持(もち)、下女のきわずミに火をうちかけたれば、めの/玉(たま)へい 00004110L17しあたりたり。下女きもつぶし、/目(め)より火が/出(で)たとゆう。 00004120L18かの/男(おとこ)ぬからぬかほにて、その火て/一(いつ)ふくせうと(十一オ) 00004130L19ゆうた。 00004140¥N18¥J 00004150¥X十八△正月うたひそめの事 00004160M3さるものより/合(あい)、/今夕(こんや)ハうたひぞめなり。ばんうたひこそ 00004170M4しらず/共(とも)、小うたひ/成共(なりとも)/一切(ひときり)づゝ也うたわんとゆう。/一人(いちにん) 00004180M5のもの申ハ、おれハ、たかさごやこのうら/舟(ぶね)にほをあげと 00004190M6/斗(ばかり)おぼへたとゆう。ともだちおかしくおもひ、しからば、 00004200M7それほどなりともうたひ/出(いだ)されたら、すへハみなつけんと 00004210M8ゆう。しからばぐわいぶん也。たのむとて、人なみにざし 00004220M9きにつらなり、おもひけるハ、かずなきうたひ(十一ウ)な 00004230M10れば、人のうたハぬさきにとおもひつき、ともなしに、/高= 00004240M11砂(たか=さご)や/此浦舟(このうらふね)にほをあげてとうたへども、いづれもあきれて 00004250M12つけず。うろたへ、みぢかきかとおもひて、たかさごやこ 00004260M13のうら/舟(ふね)にほをあげてゑと、/引(ひけ)どもつけず。なをうろたへ 00004270M14て、たすけ/舟(ぶね)とゆふた。(十二オ) 00004280¥P17 00004290¥Y1軽口あられ酒巻三△目録 00004300L3第一△/下馬札(けばふだ)を見た事 00004310L4二△はやらぬ/談義(だんぎ) 00004320L5三△すもうのせき/金(かな)いかり 00004330L6四△/鳥(とり)のまねの/嫁(よめ)入 00004340L7五△ひろくものしらぬ人 00004350L8六△あほうなでつち 00004360L9七△けつミやくのにせ 00004370L10八△馬のとむらい 00004380L11九△塩うりがなみだ(一オ) 00004390L12十△ながだんぎ 00004400L13十一△あらたな/石仏(いしぼとけ) 00004410L14十二△/浪花(なには)/善光寺(ぜんかうじ) 00004420L15十三△むすめにゐけん 00004430L16十四△ねむたいうへのねむたさ(一ウ) 00004440¥T1はなし巻三 00004450¥N1¥J 00004460¥X第一△/下馬札(げばふだ)を見た事 00004470M5むらさきのゝ/大徳寺(だいとくじ)の/門(もん)に、/下馬(げば)としてあつた。そゝうな 00004480M6もの見て、やすいことじや。/一分(いつふん)の/馬(むま)があるとゆうた。 00004490¥N2¥J 00004500¥X二△はやらぬだんぎ 00004510M9/天(てん)ぢくのさる所ニ/寺(てら)/有(あり)。くれ/合(あひ)より/談義(だんぎ)いたされ候へども、 00004520M10/参(まいり)り衆四五人ばかり也。/寺(てら)おとこきのどくにおもひ、あづ 00004530M11きがひをたきて、だん義まいりにふるまいければ、したい 00004540M12に(二オ)まいりかさなり、十人が五十人、五十にんが百人 00004550M13になりけり。/長老(ちやうろう)/大(おゝ)きによろこび、/今(いま)はわれがたんぎきゝ 00004560M14/入(いり)、/大分(だいぶん)のまいり/有(ある)とてよろこびたまふ。/男(おとこ)、いや、さやう 00004570M15にてもなし。/勿論(もちろん)こなたの/御(ご)そんにてハ候へ/共(ども)、あまりし 00004580M16やうしにぞんじ、/小豆(あづき)がいをたき、/夜喰(やしよく)にまいり/衆(しう)にふる 00004590M17まい申候/故(ゆへ)、まいりもおゝくなり候と申。ちやう/老(ろう)、もつ 00004600M18ともさもあらん。ずいぶん/馳走(ちそう)いたし、まいりのあるやう 00004610M19にたのむと有。しかし/頃日(このごろ)ハあづきがいたきけれども、/次= 00004620¥P18 00004630L1第(し=たい)(二ウ)に/参(まい)りもなく、/寺(てら)のおとこせき、/談義(たんぎ)はてじぶん 00004640L2に/門(もん)に/出(いで)、/明(ミやう)日よりだん義かわり、なめしにでんがくじや 00004650L3+。 00004660¥N3¥J 00004670¥X三△/相撲(すまふ)の/関(せき)/金(かな)いかり 00004680L6さるもの申ハ、さて+、ほしな寺のすまふハ、/男(おとこ)よりば 00004690L7ゞが/大(だい)分/見物(けんぶつ)にゆくといふ。すまふハ男のものなり。ばゞ 00004700L8のゆく事、がてんゆかぬ。いや、わきの/勧進相撲(くハんじんずまふ)ハみなミ 00004710¥G 00004720M1やがた、あそこハ/寺(てら)がたで、ばゞがいたと/云(いう)。あれハなに 00004730M2とてほしな/寺(でら)とゆう。むかした(三オ)ゐかうさまの、あの 00004740M3寺におこしをかけられたとき、ぢうぢ御/目(め)見えのため、ほ 00004750M4しな二れん上ケられた。それが/寺(てら)の/とく((不詳))/根(こん)になりて、ほし 00004760M5な/寺(でら)と申。/寺号(じがう)ハかうぶくじとゆふ。しかればなにとて、 00004770M6くハんじんずまふねがひた。あの寺もしんだいならず、/如= 00004780M7来(によ=らい)様をしちに/入(いれ)、ことしながれそうなによつて、かないか 00004790M8りでとめた。(三ウ)(四オ挿絵) 00004800¥N4¥J 00004810¥X四△/鳥(とり)のまねの/嫁取(よめどり) 00004820M11さるむすめ/嫁入(よめいり)する。はゝ/親(おや)/被申(もうされ)候ハ、たにん/中(なか)ハはづか 00004830M12しく、さきへゆかれ候とも、ものごとをしおらしく、うぐ 00004840M13いすごへに被申とあれば、むすめ、こゝろゑたりとて/吉(きち)日 00004850M14きわまり、よめ/入(いり)よ、まづしうぎにぞうに/出(いで)けり。さいに 00004860M15くきのありけるを、よめにハひかず。/嫁(よめ)/大分(だいぶん)に/餅(もち)をたべら 00004870M16れ、むねやけければ、やがてうぐゐすごゑにて、くきくお 00004880M17うとゆう。むこもしうげんに、/鳥(とり)のまね(四ウ)をするとこ 00004890M18ゝろゑ、うづらのまねにて、たこくをといわれた。なかう 00004900M19ど/人(にん)の/女房(にやうぼう)、しやうしにおもひ、かミさま、よめごさまも 00004910¥P19 00004920L1おわかく、/今(いま)よりおせわで/御(ご)ざりませうとゆう。しうとめ 00004930L2もりちぎにて、しうげんにハ/鳥(とり)のまねをするとおもひ、か 00004940L3らすにて、あゝ+といわれた。/下女(けじよ)たけ、きもつぶし、 00004950L4さてハよめいりのときハとりのまねをするとこゝろゑ、や、 00004960L5/八蔵(はちぞう)。かまのしたを、くハつ+とたきやといふ。八蔵も、 00004970L6しばをとつてかうとゆう。(五オ) 00004980¥N5¥J 00004990¥X五△/厚(ひろ)く物しらぬ人 00005000L9さる者、十月十六日に/東福寺(とうふくじ)のかいさんきまいり、/目出(めで)た 00005010L10い此がらん、しやう一/国師(こくし)より、ついにゑんしやうのない 00005020L11/寺(てら)ぢや。つうてんの/紅葉(もミぢ)、こゝもとのめいぼくなり。まこ 00005030L12とに/諸木(しよほく)おゝき/中(なか)に、もミぢのかうやういたしたるハ見事 00005040L13なものじやといゑば、/何(なに)もしらぬ事。さて+/大(おほ)きなもみ 00005050L14ぢの/木(き)/哉(かな)。あつたら、もみぢのはが、みなあかうかれたと 00005060L15いふた。(五ウ) 00005070¥N6¥J 00005080¥X六△あほうなでつちそそう 00005090L18さるだんな、でつち壱人つれ、はなしにゆき、でつちに申 00005100L19され候ハ、だんかうもある。/定(さだめ)てひま入申べくまゝ、その 00005110M1ほうハてうちん火をけし、こしかけて/休居(やすミい)よと申さるゝ。 00005120M2/出市(でつち)、火がきへぬと申。だんな、やい、たてゝおいてハき 00005130M3ゑぬぞ。てうちんも/下(した)におけと申さるゝ。出市、したにお 00005140M4けば、しハがよりまするというた。 00005150¥N7¥J 00005160¥X七△けちミやくのにせ(六オ) 00005170M7さるとが人、かのにせがねいたしたもの、しざいにおこな 00005180M8ハれ、めいどへゆく。/六道(ろくだう)の/辻(つぢ)にて、おに、むかひにゐて、 00005190¥G 00005200¥P20 00005210L1/地(ぢ)ごくへおとさんといふ。にせがねいたしたもの、さりと 00005220L2てハ/鬼(おに)の/目(め)にもなミだ也。/何(なに)と、ごくらくへまいる事があ 00005230L3らば、おしへて給ハれといふ。おにきいて、けちミやくハ 00005240L4ないかと/有(あり)ければ、まんれいさまのけちミやく/成(なり)とて、/酒(さか) 00005250L5屋のかよひ/出(いだ)す。おに見て、これハにせなり。しやうじん 00005260L6いだせと申。しやうじんにもにせにも、これ/斗(ばかり)也。しから 00005270L7ば/歩(ぶ)をひいて/下(くだ)(六ウ)(七オ挿絵)されと申た。 00005280¥N8¥J 00005290¥X八△むまのとむらい 00005300L10さるばゝの/馬(むま)のつなぎしを見て、なみだを/流(なが)された。さて 00005310L11+あはれや。あの馬が/死(しん)で、かわをはがれて、そのかわ 00005320L12をたいこにはられて、そのまたたいこ、もししばいのやぐ 00005330L13らだいこになつて、どん※とたゝかれ、その下でふだを 00005340L14かひ、かく太夫があやつりに、とよかつをしたをおもへは、 00005350L15なみだがこぼるゝ。 00005360¥N9¥J 00005370¥X九△/塩(しほ)うりがなみだ(七ウ) 00005380L18さるしほうりのおやぢ、/塩(しほ)になひ、ほそきはしをわたる。 00005390L19けつまづき、なミだをながす。さる人見て、さて+ほそ 00005400M1もとでにて、しほをこぼし、なげかれ候事、もつとも也。 00005410M2しほうり、いや、二/斗(しやう(ママ))ばかりの事/こと((こと衍))なるが、かハいや、 00005420M3/川(かわ)の/魚共(いをども)がのどがかわかんとぞんじ、それがかハゆうござ 00005430M4ると申た。 00005440¥N10¥J 00005450¥X十△ながだんぎ 00005460M7去/寺(てら)にだん/義(ぎ)あり。/折(おり)しも/此談義(このだんぎ)/永(なが)く、いづれもたいくつ 00005470M8せられた。/漸(やう)&だん/義(ぎ)は(八オ)てゝ、さるばゝ壱人/残(のこ)り、 00005480M9せきだたづねいられた。/寺男(てらおとこ)ゆうハ、いぬがくわへ、だい 00005490M10/所(どころ)へまいりたか、おしい事じや。せきだはなおゝ、/犬(いぬ)がく 00005500M11いきりをつたとゆう。ばゝ/大(おほ)きにはらをたて、/此(この)はなをく 00005510M12ろうたと、なにのはらのたりにならふ。それほどくいたく 00005520M13ハ、あの長/老(ろう)の/永(なが)だんぎのさき、くいきらいでとゆふた。 00005530¥N11¥J 00005540¥X十一△あらたな/石仏(いしぼとけ) 00005550M16さる所に御たけ弐尺ばかりの、あらたなる石仏のぢぞうあ 00005560M17り。さる人、此/地蔵(ぢぞう)にむかひ、まこ(八ウ)とに/此(この)ぢざうさ 00005570M18ま、げんぶくしやにて、むしくいばなど御なをし/被成(なされ)候。 00005580M19わたくしも/何(なに)ぞしんだいのやくにおん/立(たち)/下(くだ)されと申。ある 00005590¥P21 00005600L1/夜(よ)、ぢぞうぼさつ、/枕(まくら)もとに/来(きた)り給ひ、なるほどやくにた 00005610L2つべし。/当年(たうねん)ハな/大(たい)こんやすし。/何時(なにどき)/成共(なりとも)くきをいたし候 00005620L3ハヽ、おもしになるべきとの御事なり。 00005630¥N12¥J 00005640¥X十二△/浪花(なにハ)/善(ぜん)くハうじ 00005650L6大坂ほりゑ阿/弥陀池(ミだいけ)へ、せんくハうじによらい/壱躰(いつたい)、元禄 00005660L7十二年ニすハり/御座(まし+)て、五十日/が((ママ))い長(九オ)/有(あり)。人&/参詣(さんけい) 00005670L8す。/正直成(しやうしきなる)おやぢ、ふしぎや此みだ/如来(によらい)、三国/伝来(でんらい)のミだ 00005680¥G 00005690M1によらいにて、いきによらいと/承(うけたまハ)る。いごきもゆがミも 00005700M2なされぬとゆう。そば/成(なる)/道心(たうしん)じやもうされしハ、なるほど、 00005710M3/生(いき)/如(によ)来様なれども、/今(いま)ハ/生物(いきもの)見せ申/事(こと)/御法度(ごはつと)ゆへ、ひらか 00005720M4たにて、しめてまいつたと/申(まうし)された。(九ウ)(十オ挿絵) 00005730¥N13¥J 00005740¥X十三△むすめにいけん 00005750M7十四五なるむすめ、正月のあそびにはねつきゐたり。わか 00005760M8い衆見て、そのはごいたをかしやとて、むりにとり、ちか 00005770M9らまかせにつけば、はね、やねへあがる。とりもせで、か 00005780M10のわかい/衆(しう)ハにげてゆく。さすが女の子なれば、あれ、見 00005790M11さしやんせ、かゝさま。はねをわかい衆がやねへあげさし 00005800M12やつた。はゝおやきゝ、それ、いわん事かの。つねに/若(わかい)し 00005810M13うにつかしやんなとゆうに、つかしてとまつた。となりの 00005820M14ばさまに、おろしてもらや。(十ウ) 00005830¥N14¥J 00005840¥X十四△ねむたいうへのねむたさ 00005850M17さるでつち、だんなの/夜(よ)ばなしの/伴(とも)にゆき、こしかけにて 00005860M18いねむりいたり。/何(なに)のやうもなゐに、はやくたちたまわい 00005870M19でとねむる。/宿(やど)の/下女(けじよ)も、しまいたい、ねむいとおもひ、 00005880¥P22 00005890L1でつちに申すハ、/長(なが)ばなしするものハ、せきだのうらにや 00005900L2いとすへれば、はやうたつものじやほどに、もぐさやろう 00005910L3といふ。/出市(でつち)よろこび、/大(おほ)きうしてすゑけり。/旦那(だんな)申ハ、 00005920L4よひやら、きうのにほひするとて、なをはなされた。(十一 00005930L5オ) 00005940¥Y1軽口あられ酒巻四△目録 00005950M3第一△/商(しやう)ばいがあらわれた 00005960M4二△/有馬(ありま)のゆななげく 00005970M5三△まハしにふた/色(いろ) 00005980M6四△/万(まん)日にかいミやう 00005990M7五△子どもかる口 00006000M8六△大こく/舞(まい)も見/立(たて) 00006010M9七△こしやくな/子共(ことも) 00006020M10八△たんきな/長(ちやう)ろう 00006030M11九△あたらしき/事(こと)たくむ(一オ) 00006040M12十△/何(なに)を見てもふるゐと/云(いう) 00006050M13十一△かごかきのとむらい 00006060M14十二△大こくまいもゆだんせん 00006070M15十三△ふ/生(せう)な/下(げ)人 00006080M16十四△/馬(むま)にのりつけぬいしや 00006090M17十五△あちらこちら 00006100M18十六△ふく/参(まいり)り 00006110M19十七△二人そそう 00006120¥P23 00006130L1十八△おやににぬ子ハおに/子(ご)とゆう(一ウ) 00006140¥T1はなし巻四 00006150¥N1¥J 00006160¥X第一△/商売(しやうばい)があらわれた 00006170M5さるかミ/結(ゆい)のわかい/衆(しう)、けいせい/町(まち)へ((のカ))あげ屋ゑゆき、/上郎(ぢやうろう) 00006180M6よびにつかハした。/遊女(ゆうしよ)したくの/内(うち)、かミゆひのわかひ衆、 00006190M7上/郎(ろう)をまちかね、いねむりいられた。しかる所へ上郎きた。 00006200M8こゝハはしぢか也。とこへ御こし候へとゆう。かミゆいの 00006210M9わかい衆、いや、/今日(こんにち)ハとこへハゆかぬ。/日手間(ひでま)をやとう 00006220M10たとゆふた。 00006230¥N2¥J 00006240¥X二△/有馬(ありま)のゆななげく(二オ) 00006250M13国&の/人(ひと)&、/養性(ようじやう)のために、ありまへ/湯入(とうじ)いたされけり。 00006260M14ゆよりあがりてハ、/宿(やど)にて/酒(さけ)もりいたしあそび、こうた上 00006270M15/瑠理(るり)などかたり、さかもり/有(あり)。さる人、/肴(さかな)につなの小うた 00006280M16ひをうたひ、つわものゝまじハり、たのミ/有(ある)/中(なか)のしゆゑん 00006290M17かな((と脱カ))うたひければ、ゆな/涙(なミだ)を/流(ながし)し、もはや/有馬(ありま)もめつほう 00006300M18也。そのやうにみな、つハものになりてハ、ありまへまい 00006310M19るしうバござるまいとて、なげかれた。(二ウ) 00006320¥P24 00006330¥N3¥J 00006340¥X三△まハしに二色 00006350L3さる人/云(いう)ハ、/人(ひと)ハしれぬものじや。いせや/又(また)兵衛ハしんだ 00006360L4いがならなんだ。いまハかねが/出(て)来たやら、/十貫目(ぢつくハんめ)のまは 00006370L5しをしやる。さるすまう/取(とり)きゝて、/扨(さて)&おれが一両三/分(ぶ)で 00006380L6かうたまハしもよいが、十貫匁とゆうハいかようなまハし 00006390L7で御ざるとゆう。それはなにのまはしぞ。はだ/帯(おび)ではない 00006400L8かといふ。こちのゆうハ、かねのまハしの事。十貫/目(め)のま 00006410L9はしハ、おもとうてなるまいとゆうた。(三オ) 00006420¥N4¥J 00006430¥X四△万日にかいミやう 00006440L12/万(まん)日の/廻向場(ゑかうば)へ、としのころ廿二三なさむらいゆき、/改名(かいめう) 00006450L13たのもとゆう。/坊主衆(ぼうすしう)、/何(なに)とゝゆう。しくんやうさんと/申(もうす)。 00006460L14しに/師匠(ししやう)の/師(し)をかく。さむらい、/字(じ)がちがひたと申す。/又(また) 00006470L15ようさんにも山と書。是も字がちがひました。いろ+と 00006480L16かきかへ候へ/共(ども)、/気(き)ニいらず。しかるを七十/斗(はかり)/成(なる)/道心者(だうしんじや)か 00006490L17ゝれければ、よろこびかへられ候。ふしぎや、/此方(このはう)/色(いろ)/&(+)と 00006500L18かき候て/気(き)ニ/不入(いらず)。/其方(そのほう)様、/御書(おんかき)候へば/合点(がつてん)めされ候。/何(なに) 00006510L19と申たる/事(こと)やらんといへば、され(三ウ)(四オ挿絵)ば人に 00006520¥G 00006530M12/仍而(よつて)/法(ほう)をとく。あのわかいさむらいの、むじやうのために 00006540M13もあらず、こいよりをこるとおもひ、/ケ様(かよう)にかいて/思君様= 00006550M14参(しくんよう=さん)とやつた。 00006560¥N5¥J 00006570¥X五△子どもかる口 00006580M17/或(ある)とき、四つ五つ/斗(はかり)の/子共(こども)、まゝこといたしあそび、/蜜(ミ)か 00006590M18んのかわをさかづきにして/実(ミ)をしぼり、/酒(さか)もりいたしあそ 00006600M19ぶ。/中(なか)にもいやしき子/壱人(いちにん)、しぼりたる/実(ミ)をくう。ともだ 00006610¥P25 00006620L1ち、そちハしうにせんとゆふ。なぜにといへば、かんなべ 00006630L2をくやつたとゆうた。(四ウ) 00006640¥N6¥J 00006650¥X六△大こく/舞(まい)も見/立(たて) 00006660L5大こくまいきて、/町(まち)をありく/時(とき)、大こくどの御さつた。一 00006670L6にたわらふまへて、大こくどの御さつたとゆう。さむらい 00006680L7ハ大こくハあまりしんしまいとおもふて、ぶし/方(がた)でハ御ざ 00006690L8つた+、ゆみやかミさき/立(たて)て、お八まんの/御(ご)ざつたとゆ 00006700L9ふ。/寺(てら)がたでハ大こくまいハ/如何(いかゞ)おもひて、/寺(てら)のにぎあい 00006710L10をおもひて、ござつた+、/念仏(ねんふつ)を/前(さき)に/立(たて)、/性生(おうじやう)にんが/御(ご) 00006720L11さつたとゆうた。 00006730¥N7¥J 00006740¥X七△こしやくな/子共(ことも)(五オ) 00006750L14さる人、/十(とう)/斗(ばかり)な子と七つ斗な子とをもつ。さるとき、はゝ 00006760L15/物(もの)まいりいたすとて、かミなどゆい、きる物/着(き)かへ出られ 00006770L16ば、あにむす子/見(ミ)て、かゝさまも/内(うち)でハやうないが、出た 00006780L17ちやればすてられぬとゆふ。てゝおや/聞(きゝ)て、/口(くち)のすぎたが 00006790L18きとてにらむ。/弟(おとゝ)きゝ、そりやぬしの/有(あり)ものに、うか+ 00006800L19して、よいつらしやとゆう。 00006810¥N8¥J 00006820¥X八△たんきな/長(ちやう)ろう 00006830M3さるよそのてらにだんぎ/有(あり)とて、何れも大勢いまいられ、 00006840M4たんきはじまらざるうち、/口(くち)(五ウ)とに、いろ+のはな 00006850M5しいたしいられたり。しばしいたし、はんしやうもなり、 00006860M6/長(ちやう)ろうさまも御出あれば、まんざしつまり、はなしもやみ 00006870M7けり。長ろうもいろあをくして/申(もう)され候ハ、ふとわたくし 00006880M8出まして、いづれもしづまりました。はなしのじやまにな 00006890M9りませう。まづわたくしハ/台所(だいところ)へまいろう。それにてゆる 00006900M10りと御はなしなされませいとて、だんぎハなかつた。 00006910¥N9¥J 00006920¥X九△あたらしき事たくむ 00006930M13さる人、あたらしき/人(ひと)のせぬ事いたすれば、(六オ)/大分(たいふん)か 00006940M14ねもうけるほとに、/何(なに)なりとも/人(ひと)のおもひつかぬ/事(こと)を/仕(し)い 00006950M15だし、/大分(たいふん)にこしらへ/置(おき)、/一度(いちと)ニ/出(いだ)し、るいのなきうちに 00006960M16/大分(だいふん)にかねをもうけんとおもひ、/六(ろく)条/敷(じき)ほどのところに/取(とり) 00006970M17こもり、/壱人(いちにん)も/人(ひと)/入(いれ)ず、/半年(はんねん)/程(ほと)かゝり、/六条敷(ろくでうじき)にいつはい 00006980M18/出(て)かし、うりにだされたが、/壱文(いちもん)にもならなんだ。ひなの 00006990M19そうれいの/道具(たうぐ)をこしらへた。 00007000¥P26 00007010¥N10¥J 00007020¥X十△/何(なに)を見てもふるいと/云(いう)人 00007030L3さる/時(とき)、/五条(こてう)ばしを/夜中(よなか)/時分(じぶん)に/渡(わた)る。はし(六ウ)のまん中 00007040L4に/小坊主(こほうす)一人いる。やれ、われハばけものか。/小僧(こぞう)にばけ 00007050L5るハふるいとゆう。/此(この)ばけ/物(もの)、かぶろにばけた。いや、か 00007060L6ぶろもふるいとゆう。/化(ばけ)ものも/是非(ぜひ)なく、小ばんにばけて 00007070L7あし/元(もと)にいる。こばんと/見(ミ)てよくができ、ばけものの事わ 00007080L8すれけん、/天道(てんたう)のあてがい/有(あり)、かたじけなしと、いただき 00007090L9けれは、小ばん、ひたいよりはなれず。きもをつふし、こ 00007100L10はんにはけたハふるゐといへば、/化(ばけ)もの、/今吹(いまふき)もふるいか 00007110L11とゆうた。 00007120¥N11¥J 00007130¥X十一△かごかきのとむらい(七オ) 00007140L14/去所(さるとこ)に親子あひがたにて、かごかきとせいをゝくるものあ 00007150L15り。/有時(あるとき)/親仁(おやじ)申されしハ、もはやはゝの/七年(しちねん)也。/世(よ)に/有人(あるひと) 00007160L16ハとんしやせがきもいたすれど、/金銀(きん※)いだす事ならず。て 00007170L17らへときまへ上ル事もならぬ/仕合(しあハせ)也。/何(なに)とかせんと有けれ 00007180L18ば、むすこ申ハ、左様におもハれ候ハヽ、めい/日(にち)に、こな 00007190L19たとわれら/辻(つぢ)に出、あしのよハき人を/法界(ほうかい)にかごにのせ、 00007200¥G 00007210M12とむらハんと申す。/親仁(おやじ)もつともとて、その日/親子(おやこ)/辻(つぢ)に/出(いて)、 00007220M13かごやろうと申せとも、のらんと云人もなし。しかる/所(ところ)え 00007230M14/坊主(ぼうず)一人/来(きた)りたり。/駕篭(かご)(七ウ)(八オ挿絵)やろうとゆう。 00007240M15/坊主(ぼうず)/申(もう)され候ハ、/銭(ぜに)がないとゆう。いや、/此駕篭(このかご)ハほうか 00007250M16いにて/銭(ぜに)ハとり/申(もう)さんとゆう。/坊主(ぼうず)、たゞならばのらんと 00007260M17ゆうて、かごにのり、これハ/何(なに)とて、たゞかごにのせ候と 00007270M18/申(もうし)。かごかきゆうハ、おやの/七年(しちねん)に/相(あい)あたり申候/間(あいだ)、さて 00007280M19こそほうかいにのせ申候と申す。しからばゑかういたさん 00007290¥P27 00007300L1とて、かごのなかにて、ゑかういたされた。さていづくゑ 00007310L2やらんと/申(もう)す。/坊主(ぼうず)、いづかたへなりとも、いへのおゝき 00007320L3のき/下(じた)へと/申(もう)す。こゝろへたりとて、のき/下(じた)をとをる。/町(まち) 00007330L4のまん/中(なか)に(八ウ)て、かごの/内(うち)より/坊主(ぼうず)大おんにて、よう 00007340L5くハん/堂常(だうじやう)/念仏(ねんふつ)はつちといわれた。 00007350¥N12¥J 00007360¥X十二△大こくまいにゆだんせん 00007370L8さるしんだいのよきにわへ大こく/舞(まい)きたり、/庭(にハ)にて、/御(ご)ざ 00007380L9つた※。ふくの/神(かミ)のござつた。/大(だい)こくの/御(ご)ざつた。大こ 00007390L10くの/能(のう)にハ、一にたわらふまへて、二ににつこりわろうて 00007400L11と、ゆうておどる。だんな見て、けらいをよび、やい/三蔵(さんぞう)、 00007410L12大こくさまの/御(ご)ざつた。せきだかくせといわれた。 00007420¥N13¥J 00007430¥X十三△ぶ/生(せう)な/下人(げにん)(九オ) 00007440L15さる/旦那(だんな)、/下人(げにん)をよび、なんぢハさかいへ/遣(つかひ)に/参(まい)れ。/下人(げにん) 00007450L16申ハ、/夕部(ゆうべ)/大分(だいぶん)に/雪(ゆき)ふり申候と申す。だんなきひて、ゆか 00007460L17れぬほどにはあるまいと/申(もう)さるゝ。いや、あつさは/五分斗(ごぶばかり) 00007470L18つもり候へ/共(ども)、はゞがしれませぬと申た。 00007480¥N14¥J 00007490¥X十四△/馬(むま)にのりつけぬ/医者(いしや) 00007500M3/江戸(ゑど)にてハ、さむらい/衆(しゆ)より、いしやをよび/寄(よせ)候むかひに 00007510M4/馬(むま)をやる。さるいしや、むまハふ/得手(ゑて)なれども、馬にのり、 00007520M5くらにかぶりつきていられ、きう/病(びやう)人なれば、むまはやく 00007530M6ゆく。/道(ミち)にてちかづき/申(もう)(九ウ)されけるハ、/道才(だうさい)様、いづ 00007540M7れへと申す。此くらいならば、どこへ/参(まい)らふやらしれぬと 00007550M8/申(もう)された。 00007560¥N15¥J 00007570¥X十五△あちらこちら 00007580M11すこ六と申さとう、よる、てうちんをとぼし、もてあるく。 00007590M12さる人、そのほうハ目も見へぬに、てうちんハなにのため 00007600M13ぞと申す。ざとうきいて、いや、むかうより/来(く)るものが、 00007610M14もしゆきあたろうとぞんじての事と申た。 00007620¥N16¥J 00007630¥X十六△ふく参り 00007640M17正月朔日に、/俗仁(ぞくじん)と/山(やま)ぶし道づれにて、ぎおん(十オ)との 00007650M18まいりに、たかせの川に、かうりはりつめたり。/俗仁(そくじん)申ハ、 00007660M19/先(まづ)ことしのきつけう、めてたし。わたくしハさミせん屋に 00007670¥P28 00007680L1/一年中(いちねんぢう)かわをはり申候ハ、/早(はや)+かように、かわのかうり 00007690L2はりたるを/見(ミ)るとしハ、/仕合(しあわせ)よく候ハんとてよろこぶ。又 00007700L3山ぶし、なみだながす。/何(なに)とてな/が((ママ))れ候ぞ。われ山ぶしな 00007710L4り。/水(ミづ)がなうてほへると/申(もう)す。 00007720¥N17¥J 00007730¥X十七△二人そそう 00007740L7さるおもてに、ぞうりわらんず大分つり置あきうとあり。 00007750L8そそうな人、ふし見ハかうゆ(十ウ)くかとといければ、 00007760L9/内(うち)より、むかうハ四/文(もん)、まへは六文と申す。とうた人も、 00007770L10かたじけないとて、ゆかれけり。 00007780¥N18¥J 00007790¥X十八△/親(おや)ににぬ子ハおに子じやとゆう 00007800L13さるものふた/子(ご)うむ。/男(おとこ)よほどたらぬ/人(ひと)にて、うむやうす 00007810L14をよく見、とりあげばゝのゑなつくまでをよく見とゞけ、 00007820L15おやににぬ子ハをにかとゆうが、おれににたやら、ほう/引(びき) 00007830L16がすきかして、ゑなをふたりしてひつはりたとゆうてよろ 00007840L17こぶ。(十一オ) 00007850¥Y1軽口あられ酒巻五△/目録(もくろく) 00007860M3第一△しばうりゆいわけ 00007870M4二△/子(こ)に/自曼(じまん)すぎた 00007880M5三△わるじやれな/茶(ちや)屋ぐるい 00007890M6四△おとなげないおや 00007900M7五△/化(ばけ)ものにうハまへ/取(とる) 00007910M8六△けんくわどう/切(ぎり) 00007920M9七△/白人(しろと)ば/口(くち) 00007930M10八△/喜蔵(きぞう)うをあらふ 00007940M11九△/善光寺(ぜんかうじ)/如来(によらい)さた(一オ) 00007950M12十△正月/朔日(ついたち)そそう 00007960M13十一△そそうなきうおろし 00007970M14十二△/河内(かハち)/平野(ひらの)はなし 00007980M15十三△/花見(はなミ)/弁当(へんたう)のばん 00007990M16十四△うつけもの/駕茂(かも)の/競馬(けいば)に/餅(もち)うる(一ウ) 00008000¥P29 00008010¥T1はなし巻五 00008020¥N1¥J 00008030¥X第一△/柴売(しばうり)ゆひわけ 00008040L5さる山/家(が)より馬に/柴(しば)をつけ、京/七条(しちゞやう)口まで/来(く)る。さいはい 00008050L6その日、わたり物有とてにぎわひけり。しばうりのおやぢ、 00008060L7/陽気(ようき)ものにて、/柴(しば)やすくうりて、わたりものを見んとて、 00008070L8かちハおそきとて、やがて馬にのり、むろ町上へあがる。 00008080L9/辻(つぢ)※に/立(たつ)けんぶつ、/渡(わた)りものがかミからばかりとおもへ 00008090L10ば、/下(しも)からもわたり物が/来(く)るとゆう。おやぢもう(二オ)ろ 00008100L11たへ、/是(これ)ハたんばのしばうりで御ざるといふた。 00008110¥N2¥J 00008120¥X二△子に/自曼(しまん)すきた 00008130L14去人申され候ハ、世/間(けん)に子ハ/多(おほ)く/持(もつ)べきが、おれか子/程(ほど)き 00008140L15ようなものハあるまいといふ。また去ひといふハ、御/子息(しそく) 00008150L16御きように御座候よし/承(うけたまハ)り候が、/碁(ご)ハたれ/位(ぐらい)に御うち候ぞ。 00008160L17/本因坊(ほんいんぼう)ニ/先(せん)手と/云(いふ)。/将棊(しやうぎ)ハ/何(なに)と。そうけいに/片香車(かたきやうしや)はづし 00008170L18候とゆう。/小鼓(こつゞミ)ハなにとゝいへば、かうの清五郎に/片皮(かたかハ)は 00008180L19づしますとゆふた。(二ウ) 00008190¥N3¥J 00008200¥X三△わるじやれな/茶(ちや)やぐるい 00008210M3さるちや屋にきやくあり。また/外(ほか)の衆二三人ゆかれ、六/畳= 00008220M4敷(ぢやう=しき)の/下座敷(したざしき)に/入(いり)、手をたゝく。/茶(ちや)屋のおやま共、/返(へん)事ハす 00008230M5れど、おくのきやく斗あいしらい/出(いで)ず。/客(きやく)はらたて、此方 00008240M6見たておつた、外の茶やへゆかんとて/何(いづ)れもたつ。さりと 00008250M7てハにくい事じや。/出(で)をらんくわたいに、何ぞぬすまんと 00008260M8て、かねのたばこぼんを/取(とり)たれど、/持(もち)て/出(いで)むやうなし。や 00008270¥G 00008280¥P30 00008290L1がてせなかに入て持て帰らんとす。おやま、/今(こん)日ハ/大寄(おほよせ) 00008300L2(三オ)ぶあしらい也。/近(ちか)い内にあんせとて、せ/中(なか)をたゝく。 00008310L3かのかねのたばこぼん、ぐハんとなる。/若衆(わかいしう)もぬからぬ/顔(かほ) 00008320L4にて、かうしんのばんにこんといふ。 00008330¥N4¥J 00008340¥X四△おとなげないおや 00008350L7さる/所(ところ)に、廿四五になるむすこ有。/未(いまだ)/女房(にやうぼう)も&たず。へや 00008360L8ずまゐに、/去(さる)夜/女(をんな)一人、さるかたよりよび、へやに/置(おき)、/夜= 00008370L9半斗(や=はんばかり)にはゝご、へやにゆき、ふしぎや、ない事、へ屋に人の 00008380L10おとする。きぶんにてもあしく候や。こゝろもとなきと申 00008390L11さ(三ウ)れければ、むす子きもつぶし、いや、きぶんも/能(よく) 00008400L12候が、/今夜(こよひ)/何(なに)といたしたやら、のミがせゝり候と申。しか 00008410L13らば/気遣(きづか)ひもなし。にくいのミかなとて、はゝ/子(ご)もおもや 00008420L14へかへられた。かの/女(おんな)、/夜(よ)あけぬさきにいなしけり。夜あ 00008430L15けて、てゝおやおゝせられ候ハ、いかにあに。かわいそう 00008440L16に、/夕部(ゆうべ)ののミにも、あさめしをくわせとゆはれた。(四オ) 00008450L17(四ウ挿絵) 00008460¥N5¥J 00008470¥X五△/化(ばけ)ものにうハまへ取 00008480M1去/大工(だいく)、/篇笠(あミがさ)を/着(き)、/間(けん)ざほをもち、/在所(ざいしよ)へ/普請(ふしん)/請取(うけとり)に、/野= 00008490M2中(の=なか)に見こし/入道(にうだう)、うしろよりのぞく。大工、/爰(こゝ)にない+ 00008500M3ばけもの有ときゝて有。心得たりとて、けんざほに篇笠き 00008510M4せ、見こし入道より壱尺ほどのばす。入道まけじと、また 00008520M5壱尺ほどのばす。大工又のばす。見こし入/道(だう)/猶(なを)のばす。だ 00008530M6ゐく、まけじと、けんざほのはしをもち、かいな一はいに 00008540M7のばしけり。見こし入道もせんかたなく、まへゝまハり、 00008550M8さてた(五オ)かうのび候。今日よりミこし入道のうハまへ、 00008560M9しんぜましやうと申た。 00008570¥N6¥J 00008580¥X六△けんくわどう/切(きり) 00008590M12/大坂(おほざか)かうらい/橋(ばし)にけんくわありて、とう/切(ぎり)して/本人(ほんにん)にげた 00008600M13り。あたりの人きもつぶし、まづいしやをよぶ。/外科(げくわ)/道災(だうさい) 00008610M14さう+/来(きたり)、/扨(さて)も/大分(だいぶん)の手おいかな。まづかうやくをつけ 00008620M15られた。さつそくなをりたり。しかし、きりこ口/壱所(ひとゝころ)へよ 00008630M16せて、かうやくつけたらよからふに、きれはなれ/成(なり)につけ 00008640M17ければ、/弐(ふた)つに(五ウ)/に((に衍))/成(なり)てそく才に/成(なり)たり。こしからう 00008650M18へハ/手(て)にてほう、/腰(こし)から/下(しも)ハ/足(あし)にてありく。/先(まづ)こしより/上(うへ) 00008660M19ハ/江(ゑ)戸へ/奉公(ほうこう)に/下(くだ)ス。江戸にて/火(ひ)の見やぐらの/遠目(とをめ)に/有付(ありつき)、 00008670¥P31 00008680L1こしから/下(しも)は/十年切(ぢうねんぎり)にふやへ/奉公(ほうこう)にやりて、/今(いま)にふんでい 00008690L2らるゝ。(六オ) 00008700¥N7¥J 00008710¥X七△/白人(しろと)ばくち 00008720L5さる物、おれはよミはしつたが、かうをしらぬ。/何(なに)と+ 00008730L6がかうぞ。さる人ゆうは、七と二とがかう、三と六とぼう 00008740L7ずとかう、九/壱枚(いちまい)にぼうず二まいもかう、四と五とぼふず 00008750L8もかうじや。それをすれば、かわをみなとり候とゆふ。/然(しから)ハ 00008760¥G 00008770M1われ、とうどり/可申(もうすべき)か、/皆(ミな)はり候かとゆう。皆&、白人じ 00008780M2やほどにはれといふ。やがてまきつけ、おやぶたあけた。 00008790M3四と五とぼうずしや。とろかといふ。やれとれとて、はた 00008800M4ハみなとりた。白(六ウ)(七オ挿絵)人ハとうどりハいらぬ 00008810M5もの。四と五とぼうずハぼうずじや。十てもむまでもきり 00008820M6でもなかつた。/赤(あか)二の上に、ほていがあるのじや。 00008830¥N8¥J 00008840¥X八△/喜蔵(きぞう)うをあらふ 00008850M9さるだんな、下人よび、いけぶねの中ニて大きなる/鯉(こい)一ほ 00008860M10ん、川にてあらふてこいとゆふ。かしこまり、やがて川へ 00008870M11ゆき水につけければ、こいの一はねにてにげにける。しつ 00008880M12+ゆへどもかなハず。やがてかへり、かやう+と申。 00008890M13だんな/大(おほ)きにはらをたて、ごんご、にくきやつ(七ウ)かな。 00008900M14しかしたわけをつかふゆへ也。/今(いま)ハゆるす。/重而(かさねて)さやうの 00008910M15ものあらいおらば、ゑらへなハをつけ、/川(かハ)のくいへ/成(なり)とも、 00008920M16また/石(いし)へなりともくゝりあらい候へば、たとへ/手(て)はなれて 00008930M17もにげぬと/云(いう)。/喜蔵(きぞう)こゝろへ、/又(また)重而さけをすゝあらへと 00008940M18/有(あり)ければ、やがてかわへ/行(ゆき)、からざけのゑらになわをつけ、 00008950M19/川(かハ)ばたなる/石(いし)にくゝり、からざけをかわに/入(いれ)、あしにてふ 00008960¥P32 00008970L1ミつけ、さあにげて見よ/を((とカ))いふた。 00008980¥N9¥J 00008990¥X九△/善光寺(ぜんくハうじ)/如来(によらい)のさた(八オ) 00009000L4さるもの申ハ、善光寺のによらいハ、/座(ざ)ぞうか、りうぞう 00009010L5かとゆふ。さる又ひと/申(もう)され候ハ、いや、きねぞうであろ 00009020L6う。いかにとゆうに、此/程(ほど)もどうしんじやが、ぜんかうじ 00009030L7へつきに/い((けカ))りとゆふた。 00009040¥N10¥J 00009050¥X十△正月/朔日(ついたち)そそう 00009060L10さる人、せつきのしまいさん※にて、/大晦日(おほつもごり)のよるの八 00009070L11つ/時分(じふん)、/漸&(よう+)しやくせんこいも、わび事のたら※にかへ 00009080L12し、その身もさん※くたびれ、/丸(まる)ねにいたし、ね/入(い)られ 00009090L13たり。/夜(よ)も(八ウ)ほどなく/明(あけ)ければ、正月一日なりとて、 00009100L14おもてをたゝき、ものもと/云(いう)。かのもの、ふと/目(め)さまして、 00009110L15/又(また)しやくせんこひかとおもひ、ゐきまハりて/御座(ござ)れといわ 00009120L16れた。 00009130¥N11¥J 00009140¥X十一△そそうなきうおろし 00009150L19さるきうおろしをたのミて、きやうくハんにきうをおろし 00009160M1て/下(くだ)されとゆう。こゝろへたりとて、やがてほうげたへ、 00009170M2もぐさ/大(おほ)きくいたしすゑたり。すへられし/人(ひと)、ほうげたを 00009180M3いがめて、/扨(さて)もあつい/事(こと)かな。これがきやうくハんかとゆ 00009190M4う。き(九オ)うおろしきゐて、おれハ/□((けカ))うくハんかとお 00009200M5もふたによつて、ほうげたにすへたら、見かへり/仏(ほとけ)にせう 00009210M6とおもふたといわれた。 00009220¥N12¥J 00009230¥X十二△/河内(かわち)/平野(ひらの)のはなし 00009240M9かわち平野/大念仏(だいねんぶつ)ゆづうの/本地(ほんぢ)、/大通上人(だいつうせうにん)の/後従(こぢう)りやうぜ 00009250M10ん/上人(せうにん)ハ、ぢゑいまでににんぜられ、ねりくよふまでなさ 00009260M11れ候へ/共(ども)、きうせんのしゆくゑんに、/大(だい)つう上人へむりの 00009270M12ふそくをゝく、/其外(そのほか)、しゆつけあく/事(じ)/廿(にじつ)ケよ/有之(これあり)。/元禄(げんろく)十 00009280M13二年五月廿五日に、大坂/南口(みなミぐち)にて、といた(九ウ)と/申(もう)すと 00009290M14ころにて、はりつけにかゝられたり。きせん、これを/見物(けんぶつ) 00009300M15する。/其中(そのなか)に/七十(しちぢう)斗のむば、さめ※となきけり。人&見 00009310M16て、かよう/成(なる)しやうわる/坊主(ほうず)のはり/付(つけ)にかゝる/事(こと)、なにが 00009320M17かなしくてなかれ候とゆう。ばゝ/申(もう)され候ハ、いや、あの 00009330M18/人(ひと)がはりつけにかゝり候ゆへ、それがかなしくてハなかず。 00009340M19あのやうな/悪人(あくにん)としらずして、ねりくよふのとき、おぢう 00009350¥P33 00009360L1ねんをうけて、それが/口(くち)をしいとてなかれたり。(十オ) 00009370¥N13¥J 00009380¥X十三△はな見/弁当(べんとう)のばん 00009390L4/或(ある)人、加/茂濃(もの)/芝原(しバハら)にてあそびゐたり。/弁当(べんとう)をひらき、/色(いろ)& 00009400L5のさかなとりいだし、あれよこれよといふ/折(おり)から、/赤犬(あかいぬ)/来(き) 00009410L6て、/壱(ひと)つくハへてにげた。/旦那(だんな)、久三郎よ。あの/犬(いぬ)/免(め)をす 00009420L7かしよせてくハせいといひすてて、/宮(ミや)へ/参(まい)られた。かへり 00009430L8て/酒(さけ)をのミ、さかなをだせといへば、久三郎、/先(さき)に、くハ 00009440L9せよと/仰(おほせ)られましたにより、/犬(いぬ)にくハせましたとゆうた。 00009450¥N14¥J 00009460¥X十四△うつけ/物(もの)加/茂(も)の/競馬(けいば)に餅うる事(十ウ) 00009470L12うつけたる/男(おとこ)、かものけいはに/餅(もち)を/売(うり)に/行(ゆき)たり。/或(ある)もの/云(いう) 00009480L13やう、/此(この)やうな人ごミにハすりが/有(あり)て、/売物(うりもの)をぬすミ、/又(また) 00009490L14/当世(とうせい)の/六方(ろつほう)ハ、/物(もの)をくふても/銭(ぜに)をださずににげてゆく/程(ほど)に 00009500L15/用心(ようじん)をしやれといへば、/心(こゝろ)ゑたりとて/荷(に)をおろし、/餅(もち)をな 00009510L16らべてゐたり。かゝる/所(ところ)え、/馬(むま)きれてさわぎけり。かの/男(おとこ) 00009520L17/大(おほ)はだぬぎて、ぬかる/事(こと)でない。/人(ひと)にくら/□((ハカ))れんより、を 00009530L18れがしてやるとて、かたはしからくふた。 00009540¥Q 00009550M1△△△△△△△△寺町通仏光寺下ル町 00009560M2△△△△△△△△△△谷村多兵衛 00009570M3宝永二年正月吉日△△△△△△△△板行 00009580M4△△△△△△△△△△神原理兵衛 00009590M5△△△△△△△△△△△△△△△(十一オ) 00009600¥P34 00009610¥U噺本大系△第七巻 00009620¥T露休置土産 00009630¥G 00009640¥Y 00009650L16宝永四年刊 00009660L17露五郎兵衛遺作 00009670L18半紙本五巻 00009680L19東大国語研究室蔵 00009690¥Y置土産△序 00009700M3/虚言(うそ)と/軽口(かるくち)とを一/荷(か)にして、四/条河原(でうがハら)の夕すゞミ、又ハ万 00009710M4日の/回向(ゑかう)、こゝかしこの/開帳所(かいちやうどころ)に/場(ば)どりし、/数万(すまん)の/聴衆(ちやうじゆ) 00009720M5に/腹筋(はらすじ)をよらす/都(ミやこ)の/名物(めいぶつ)入道/露休(ろきう)、過にし元禄ひつじの/秋(あき)、 00009730M6/閻浮(えんぶ)をさりし/追善(ついぜん)に、露休が一/生(しやう)、はなしのひかへ帳をく 00009740M7りひろげ、いまだ/世間(よのなか)の人にわらハせぬ/噺(はなし)を取あつめ、/旧(ふる) 00009750M8きハえりすて、あたらしきをひろひ/寄(よせ)て、/露休(ろきう)/置土産(をきミやげ)と/名= 00009760M9付(な=づけ)、/全部(ぜんぶ)/五巻(いつまき)とし(一オ)/長旅(ながたび)の/船路(ふなぢ)、あるひは/雨夜(あまよ)のなぐ 00009770M10さみにも/貴(たふと)からずして、/高位(かうゐ)の/御意(ぎよゐ)に入、/月待(つきまち)/日待(ひまち)の/席(せき)に 00009780M11ハ、かるふてなら/茶(ちや)ぐらゐになすハ、ひとへに/咄(はなし)の/徳(とく)と思 00009790M12ふ/故(ゆへ)に一/首(しゆ)。 00009800M13△△/露(つゆ)とのミ/消(きへ)し/法師(ほうし)がことの/葉(は)は 00009810M14△△△人の/耳(ミヽ)にもをきミやげかな(一ウ) 00009820¥P35 00009830¥Y1置土産巻一 00009840L3一△/文盲人(もんもうじん)/年号(ねんがう)にて/挨拶(あいさつ) 00009850L4二△/居風呂桶(すへふろおけ)の取ちがへ 00009860L5三△/狸(たぬき)と/狐(きつね)との/出合(であひ) 00009870L6四△/真如堂(しんによだう)の/来迎(らいかう) 00009880L7五△/自慢(じまん)の/謡(うたひ) 00009890L8六△/日待(ひまち)に/謎(なぞ)の事 00009900L9七△/謡(うたひ)しらずに/知皃(しりがほ) 00009910L10八△/物(もの)の/誉(ほめ)ぞこなひ 00009920L11九△/乞食(こつじき)の/鳴物(なりもの)/法度(はつと)(二オ) 00009930L12十△下人/口上(こうじやう)の/稽古(けいこ) 00009940L13十一△/寝言(ねごと)も時による 00009950L14十二△/目鏡(めがね)にはまる一/盃(はい) 00009960L15十三△/物知皃(ものしりがほ)の大/恥(はぢ) 00009970L16十四△/仏(ほとけ)も/札(ふた)づかひ(二ウ) 00009980¥T1置土産巻一 00009990¥N1¥J 00010000¥X一△文/盲(もふ)なる人年/号(がう)にて/挨拶(あいさつ)/云(いふ)事 00010010M5/或(ある)人、/途(と)中にて文/盲(もふ)/成(なる)人に行合しに、はて/扨(さて)、/久(ひさ)しうお目 00010020M6にかゝりませぬ。いよ+御無事、一だんに存る。/私(わたくし)も遠 00010030M7/方(ほう)へ/参(まい)りて、/漸(やう+)此中/上(じやう)京いたしましたといへば、文/盲(もふ)なる 00010040M8人/聞(きゝ)、/扨(さて)もとんさく/成(なる)人かな。年/号(がう)であいさつをやらるゝ。 00010050M9我等も誰ぞに/逢(あふ)たらハ、此ことくに申さんと思ひ、一二町 00010060M10も/行(ゆき)けれバ、むかふより/知(しる)人/来(きた)る。さらばあいさつをやら 00010070M11んと(四オ)思ひ、是+、久しうお目にかゝらぬ。いよ 00010080M12+御無事、一段に存る。私事も此中/延宝(えんほう)へ参り、やう 00010090M13+/元禄(げんろく)いたしたといへハ、彼人/聞(きゝ)、/扨(さて)ハ年/号(がう)でやらるゝ 00010100M14と思ひ、ほうゑい事と、へんとうせられた。 00010110¥N2¥J 00010120¥X二△/居風呂桶(すへふろおけ)の取/違(ちがへ) 00010130M17/或麁相(あるそさう)なる人、内の男をよび、やい与七。云/付(つけ)たすいふろ 00010140M18ハよいか。与七こたへて、/成程(なるほど)よふござります。彼そさう 00010150M19人、さらハ入ませふとて、やがて/裸(はたか)になり、そばなるあく 00010160¥P36 00010170L1/桶(おけ)へはいり、/皃(かほ)(四ウ)をなでゝ、はあ/極楽(こくらく)+といへハ、 00010180L2与七見て、是ハあく/桶(おけ)でござります。/旦那(だんな)聞て、南無三/宝(ほう)、 00010190L3それなら是ハ地ごくじや。 00010200¥N3¥J 00010210¥X三△/狸(たぬき)と/狐(きつね)との/出合(であひ) 00010220L6/或山里(あるやまざと)に、みやまとく介といふ/古狸(ふるたぬき)有ける。都にかくれなき 00010230L7/稲荷(いなり)山の長助と云きつね行あひ、扨&久しう打たへ、お目 00010240L8にかゝらぬ。いかにも其通。さだめて/芸(げい)があがつたであら 00010250L9ふ。何と/狸(たぬき)、/少(ちと)ばけて見しやれ。とく介聞、いや+、そ 00010260L10なたの若衆にばけるが、中+見事じや(五オ)げな。/先(まつ)お 00010270L11手ぎわを見ませふ。さあ所望+といふやいな、上&の若 00010280L12衆になる。たぬきミて、よこ手を打、扨/化(ばけ)たり+といふ 00010290L13かと思へば、狸ハ見えず。是とく介+といふて、うしろ 00010300L14を見れば、/小豆飯(あづきめし)有。狐きつと見て、狸めが、おれが手な 00010310L15ミにおそれて、大事の/飯米(はんまい)をバ/忘(わす)れてにげたと見へた。日 00010320L16比の/好物(かうぶつ)、てう※の事と思ひ、/喰(くひ)かゝらんとすれハ、あ 00010330L17づきめし、むく+として、わるじやれするな。おれじや 00010340L18といふを見たれハ、狸じやあつたとの。(五ウ) 00010350¥N4¥J 00010360¥X四△/真如堂(しんによたう)の/如来(によらい)/来迎(らいかう)の事 00010370M3ある/年(とし)の十/夜(や)に、人&/通夜(つや)をして、/精(せい)を出して念仏申ける。 00010380M4中にも/信心(しん※)なる/老婆(ばゞ)たち、扨&有がたや。こよひ/我等(われら)が/往= 00010390M5生(わう=じやう)のしるしをしめし給へと、/内陣(ないじん)を立さらず、/夜(よも)すがら念 00010400M6仏しける所に、有がたや如来、/夜半(やはん)過に/仏殿(ぶつでん)よりをりさせ 00010410M7給ふ。ばゞたち有かたく思ひ、まさしく/御来迎(ごらいかう)まします。 00010420M8/先(まづ)/我等(われら)をすくひ給へ。いや、/私(わたくし)を/先(まづ)たすけ給へと、口※ 00010430M9に申せは、如来/微妙(ミめう)の/御声(みこゑ)を出し、/汝等(なんぢら)、まんがち(六七オ) 00010440M10にせりあふな。我ハ/宵(よひ)よりお/茶湯(ちやとう)がすぎて/小便(せうべん)にゆくとて、 00010450M11/堂(だう)のうしろへ出給ふ。 00010460¥N5¥J 00010470¥X五△/自慢(じまん)の/謡(うたひ) 00010480M14ある人/風呂(ふろ)に入て、/謡(うたひ)の名人ハたれ+、/観世流(くわんぜりう)にハ江戸 00010490M15のたれ、京にハ何といふ人、大坂/堺(さかひ)でハ其人、それ+と 00010500M16/評判(ひようばん)するを、かしこからぬ人聞て、さらば/少(ちと)/謡(うたひ)を/唄(うた)ひませ 00010510M17うと思ひ、/声(こゑ)はりあげて、おかしくうたひけれハ、彼人聞 00010520M18て、扨&こなた様にハうたひがおすきそふにござる。去な 00010530M19がら、ふしが聞/馴(なれ)ぬふし(六七ウ)(八オ挿絵)でござる。上が 00010540¥P37 00010550¥G 00010560L13ゝりか下/懸(がゝり)かといへば、いや+、私は/親(おや)にかゝりでござ 00010570L14るとこたへた。 00010580¥N6¥J 00010590¥X六△日待に/謎(なぞ)の事 00010600L17/去(さる)方の日/待(まち)に人+/寄合(よりあひ)、なぞをかけける。/或(ある)人、南無あ 00010610L18ミだ仏といふなぞをかけけれども、一/座(ざ)にとく人なけれハ、 00010620L19此/謎(なぞ)ハあげませうといふ。さらば、とひて/聞(きけ)ませう。むじ 00010630M1なととき申といへハ、人&聞かね、心ハいかにと/尋(たづぬ)れハ、 00010640M2むじなとハ/獣(けだもの)の/名(な)、/六(む)字の名といふ事じやといへハ、はあ 00010650M3是ハとけぬがことハり。むつかしいなぞじや(八ウ)といへ 00010660M4ば、ぬけたる男いふやう、はて扨わたくしも、おほかめと 00010670M5/迄(まで)ハ/気(き)を付ましたがといハれた。 00010680¥N7¥J 00010690¥X七△/謡(うたひ)しらずに知りたる/皃(かほ) 00010700M8/或親仁(あるおやじ)、/一人息子(ひとりむすこ)にうたひをおしへけるに、/外様(とざま)へ出たら 00010710M9ハ、人の謡を聞、しらぬ/皃(かほ)してゐれハわるい程に、/少(ちと)/稽古(けいこ) 00010720M10せよといひけれハ、ゆや、/田村(たむら)、/東北(とうぼく)、かれこれ十/番(ばん)/斗(ばかり)、 00010730M11/曲舞(くせまい)の所を/覚(おぼ)えける。ある時/振舞(ふるまひ)に/行(ゆき)ける。いづれも/碁(ご)な 00010740M12どうちて、/盤(ばん)の/端(はた)をならして、/野ゝ宮(のゝミや)の/曲舞(くせまひ)うたへハ、/彼= 00010750M13息子(かの=むすこ)、其まゝつける。田村を(九オ)うたへハ田村を付るに 00010760M14よつて、おかしく思ひ、ちとはやき謡をうたハんと思ひて、 00010770M15山/姥(うば)の/切(きり)をうたひ、今まて爰に有よと見へしか、山また山 00010780M16に山めくりと、せハしくうたひけれハ、彼息子、はたとこ 00010790M17まりて、こりや又、せきぞろ+と付られた。 00010800¥P38 00010810¥N8¥J 00010820¥X八△物を/誉(ほめ)てほめぞこなひ 00010830L3或人、我子にをしへけるハ、/余所(よそ)へ行てハ何をふるまハふ 00010840L4と/随分(ずいぶん)ほめて/喰(くへ)。うか+とくふな。息子聞、いかにも心 00010850L5得ましたといふ。あるとき/振廻(ふるまひ)に行ける/時(とき)、/膳(ぜん)を出しけれ 00010860L6ハ、はて扨、是ハ(九ウ)けつかうな/膳(ぜん)でござります。/定而(さためて) 00010870L7/根来(ねごろ)でござらふ。/先(まづ)/食(めし)ハ/肥後米(ひごまい)か/讃岐(さぬき)米か。/味曽(ミそ)ハ四/条烏= 00010880L8丸(でうからす=ま)かと、それ+に/名物(めいぶつ)をいひたてほめけれハ、/亭主(ていしゆ)おか 00010890L9しく思ひ、こなた様ハこまかにお/気(き)を付られまするといへ 00010900L10ハ、/彼者(かのもの)、/自慢(じまん)らしき/皃(かほ)をして、/食(めし)の/湯(ゆ)を一口/呑(のミ)て、はあ、 00010910L11是ハこのあたりの/湯(ゆ)でハござるまい。さだめて/有馬(ありま)の/湯(ゆ)と 00010920L12/覚(おぼ)えまする。 00010930¥N9¥J 00010940¥X九△乞食も鳴物の法度 00010950L15/伏見(ふしミ)の/乞食(こつじき)、京四条/川原(かハら)を/通(とを)りけるとき、京(十オ)の乞食 00010960L16に/行(ゆき)あひ、何と、久しうあハぬ。京都にかハる事ハないか。 00010970L17されバ此廿六日の/晩(ばん)に、/悲田寺(ひでんじ)の茂作様のおはて被成たと 00010980L18いへハ、是ハ+おく様のいかいお/力(ちから)をとし。/其事(そのこと)ゆめ 00010990L19+存ぜぬ。して、なり物は/御法度(ごはつと)かといへハ、されバ 00011000M1+、それゆへ風の神が三日とまる、せきぞろハ七日とま 00011010M2つた。 00011020¥N10¥J 00011030¥X十△下人口上の/稽古(けいこ) 00011040M5ある/呉服(ごふく)屋に下人をかゝへける。/主人(しゆじん)/云様(いふやう)ハ、何方より/客= 00011050M6衆(きやく=しゆ)があらふとも、それ+にあいさつ(十ウ)をせよと/常&(つね+) 00011060M7申ける。心得ましたといふ。ある/時(とき)/越前(ゑちぜん)より/客(きやく)上りけれハ、 00011070¥G 00011080¥P39 00011090L1彼下人出て、是ハよふお上り被成ました。/寒気(かんき)の時/分(ぶん)、御 00011100L2/苦労(くらう)でごさりまする。/当年(たうねん)ハ京都も大/雪(ゆき)でござりまする。さ 00011110L3ぞお/国元(くにもと)も大/雪(ゆき)であらふと存まする。主人聞、さて+よ 00011120L4いあいさつ、出来(でき)た+。此後も/其格(そのかく)にあいしらへよと/誉(ほめ) 00011130L5けれハ、下人悦ひ、/合点(がつてん)でござりまする。又あくるとし六 00011140L6月の末、又/越前(えちぜん)の客上りけれハ、是ハ+あつい時分によ 00011150L7ふお上りなされました。当年ハ/爰元(こゝもと)も/殊外(ことのほか)(十一オ)あつさ 00011160L8てござります。さぞお国ハ大/火事(くわじ)でかな、ごさりませう。 00011170L9めいわくなあいさつの。 00011180¥N11¥J 00011190¥X十一△ねごとも時による 00011200L12/或所(あるところ)へぬす人四五人、屋/尻(じり)を/切(きり)て入けるとき、/亭主(ていしゆ)、ぶて 00011210L13+といふ。/盗(ぬす)人どもしづまり、さて+きミのわるい事 00011220L14をいふとて、/耳(みゝ)をそばめて聞ば、又/亭主(ていしゆ)いびきをかく。さ 00011230L15てハねごとそうなとて、/手拭(てぬぐひ)を口へねちこミてをけハ、ね 00011240L16/言(ごと)ハやミぬ。盗人ども悦ひ、/道具(だうぐ)どもぬすみとり、/帰(かへ)らん 00011250L17とせしとき、(十一ウ)(十二オ挿絵)あつたら/手拭(てぬぐひ)をいて帰る 00011260L18ハおしい事じやとて、口にこミし手ぬぐいをとれハ、なに 00011270L19が口の中にたまりたる/寝言(ねごと)一/度(ど)に出る/程(ほど)にせハしく、ぶて 00011280M1++++。 00011290¥N12¥J 00011300¥X十二△目がねにはまる一/盃(はい) 00011310M4或大じん/茶(ちや)屋へ行、酒事してあそびけるが、内の/料(りやう)理する 00011320M5男/罷出(まかりいで)、お/肴(さかな)なくともおなじみだけに、御酒しつはりとゝ 00011330M6いへハ、大じん、おもしろい。こりや男、さいたとて大な 00011340M7る/盃(さかづき)さしけれハ、此男、/私(わたくし)ハ/得(え)下されませぬ。いや+ 00011350M8(十二ウ)ならぬとハいハせぬ。そこらハ一/盃(はい)うけよといへハ、 00011360M9ぜひなく/引(ひき)うけける。大じん、きんちやくをひねくれハ、 00011370M10男、さてこそ/露(つゆ)うたるゝよと、/盃(さかづき)を/下(した)にをく。大じん見て、 00011380M11何と、ちやうどうけたか。おれハ目がわるうてきのどくじ 00011390M12やとて、目がねを出し、さかづきを見られた。 00011400¥N13¥J 00011410¥X十三△物しりがほに大/恥(はぢ) 00011420M15さるせんせうもの、物しりがほにいひけるを、人&おかし 00011430M16く思ひ、何と、こなたハ/諸事(しよじ)に心得てござるが、/定(さだめ)て/稽能(げいのう) 00011440M17は申におよばぬで御(十三オ)/座(ざ)らふ。いやはや、それ/程(ほと)す 00011450M18ぐれハいたさぬ。/去(さり)ながら、/将棊(しやうぎ)ハ/宗桂(そうけい)に/片馬(かたむま)おろします 00011460M19る。/碁(ご)ハ/本因坊(ほんゐんほう)に二つをかせまする。/謡(うたひ)なども/前(まへ)/観世(くわんぜ)太夫 00011470¥P40 00011480L1にをしへました。はて/扨(さて)お/上手(じやうず)/哉(かな)。して/鞁(つゞみ)ハといへハ、/今(いま) 00011490L2でも/幸(かうの)清五郎に、かた/皮(かハ)はづしてうつといハれた。 00011500¥N14¥J 00011510¥X十四△仏も札つかひ 00011520L5/当時(いまどき)は/観音(くわんおん)の御/利生(りしやう)あらたなりとて、/諸国(しよこく)より/順礼(じゆんれい)あまた 00011530L6出る。ある順礼道行四五人、/紀州(きしう)くま/野(の)をおがミ、きミゐ 00011540L7でらへ参りけれハ、/漸(やう+)(十三ウ)/日暮(ひくれ)けれハ、/本堂(ほんたう)に/通夜(つや)を 00011550L8し、/夜明(よあけ)なハ/札(ふだ)を打、/下向(げかう)せんといひてやすミける。其夜 00011560L9くわんをんの御こゑあらたにのたまく、やいなんぢら、ま 00011570L10ことたすかりたくハ、木札をうたずとも銀札をくれよと、 00011580L11あらたに御/霊夢(れいむ)をかうふり、道行目をさまし、まことに/当= 00011590L12国(たう=ごく)も札づかひなれハ御尤といへハ、壱人かいわく、つね 00011600L13+あほうをハ/紀三井寺(きミゐでら)しや、二番じやといへとも、銀札 00011610L14をほしいとハ、さりとハくわんおんハおかしこい+。 00011620¥Y1一之巻終(十四オ) 00011630¥Y1置宮笥巻二 00011640M3一△/小便(せうべん)の/了簡違(りやうけんちがひ) 00011650M4二△/女房(にようぼう)に/利屈(りくつ) 00011660M5三△用心ぶかい百姓 00011670M6四△/牡丹好(ぼたんずき)のせんしやう 00011680M7五△/貴賎(きせん)上下ほしいハ/金(かね) 00011690M8六△/慶安(けいあん)の/講尺(こうしやく) 00011700M9七△貴様といふ事/不案内(ぶあんない) 00011710M10八△思ひもよらぬ/泣様(なきやう) 00011720M11九△/鶴(つる)と/鷺(さぎ)との/評論(ひやうろん)(一オ) 00011730M12十△手の/筋(すじ)の/看板(かんばん) 00011740M13十一△とかく/博奕(ばくち)が/好物(かうふつ) 00011750M14十二△てんかんの/誹諧(はいかい) 00011760M15十三△入物にハ/恥(はぢ)かき/道具(だうぐ) 00011770M16十四△/貧僧(ひんそう)のからかさ 00011780M17十五△/豆腐売(とうふうり)の聞ちがへ 00011790M18十六△/席駄(せきだ)の/反橋(そりはし) 00011800M19十七△親子ともに大/上戸(じやうご)(一ウ) 00011810¥P41 00011820¥T1 00011830¥N1¥J 00011840¥X一△/小便(せうべん)の/了簡(りやうけん)ちがひ 00011850L3ある人/頭巾(づきん)を/買(かひ)にゆき、此づきん/何程(なにほと)と/云(いふ)。ていしゆ聞、 00011860L4六匁五分でござる。それハ/高(たか)い。五匁ニかハふ。それなら 00011870L5まけてしんぜう。/彼(かの)かい手、づきんをとりて、いや、是ハ 00011880L6付ぞこないじや。まづをきませふ。ていしゆ、はらをたて、 00011890L7こゝな人ハ、あきなひ見せで/小便(せうべん)しやるか。ぜひ共うらね 00011900¥G 00011910M1ハをかぬ。/買手(かいて)めいわくして、しからハ、づきんハをいて、 00011920M2此もゝ引をかいませふ。/是(これ)/何程(なにほど)。此もゝ引ハ六百でござる。 00011930M3えい+、三百にまけさしやれ。ていしゆ、はじめにこり 00011940M4て、いかにも(二オ)まけてやりませふが、又小べんする事 00011950M5ハならぬぞ。/買手(かいて)きゝ、いや+、小べんのしられぬもゝ 00011960M6引ならハ、かふ事ハならぬ+。 00011970¥N2¥J 00011980¥X二△女/房(ほう)に/利屈(りくつ) 00011990M9ある人、めをといさかひせしに、おつとハあそびずき、女 00012000M10ぼうハ/諸事(しよじ)つまやかにはたらくものなれは、是、いかにお 00012010M11とこじやといふても、其やうにあそびあるいて、何もかも 00012020M12おれひとりにさせてよいか。/朝(あさ)から/晩(ばん)まで、男のする事ま 00012030M13でさせて、といふてはらを立れハ、おつと聞て、やい、そ 00012040M14げめ。おのれハ男(二ウ)のする事を見事するか。をんでも 00012050M15ない事。あゝ、りよぐわいながら、/何(なん)なりと/仰付(おほせつけ)られ。は 00012060M16て扨、にくいをとがいじや。それならハ、はかまをきて小 00012070M17/便(べん)して見せい。是ばかりハ成ますまい。 00012080¥P42 00012090¥N3¥J 00012100¥X三△用心ぶかい百姓 00012110L3ある/百姓(ひやくしやう)、はたけに物だねをまきゐたりける。となり/畑(はた)の 00012120L4与太郎見て、なんと次郎作。けつかうな日よりじや。何を 00012130L5まきやるぞ。次郎作、/返事(へんじ)すれども聞えず。与太郎ミて、 00012140L6/何(なん)といふぞ。すきときこへぬといへば、そばへより、/耳(ミヽ)の 00012150L7はたへさゝ(三オ)やきて、/大豆(まめ)をまくといふ。はて扨、さ 00012160L8ゝやかいでも大事ない事をといへバ、高ふいへハ/鳩(はと)がきく。 00012170¥N4¥J 00012180¥X四△/牡丹(ぼたん)ずきのせんしやう 00012190L11ある人よりあひ、牡丹のはなしして、方&にぼたんあれ共、 00012200L12貴様の/程(ほと)いろ+のかぶ/持(もち)たる人ハなしといへハ、せんし 00012210L13やうもの/自慢(じまん)して、いやはや、せけんにハ/菊(きく)をすいてうへ 00012220L14たり、/芍薬(しやくやく)をすく人も有。わたくしハぼたんをすきてうへ 00012230L15まする。さりながら方&より、おれき+様の見物にお出、 00012240L16きやくもてあつかひに/隙(ひま)のない事。(三ウ)(四オ挿絵)人&聞、 00012250L17それならハお/公家様(くげさま)がた、お/大名(たいミやう)がたもお出なされ、さぞ 00012260L18御あひさつがむつかしうござりませう。いや+、其やう 00012270L19な/衆(しゆ)ハ心やすいによつて、何とも存ぜぬが、きのどくハ、 00012280M1折+/唐獅子(からしゝ)がまいるに、こまりはてた。 00012290¥N5¥J 00012300¥X五△/貴賎(きせん)上下ほしいハ/金(かね) 00012310M4/去御方(さるおんかた)、山ぶきのさかりに、/庭前(ていぜん)にたゝずみて花にながめ 00012320M5入ておハしましけり。おそばちかき女中、是ハさだめて、 00012330M6お哥でもあそばしつらん。いかゞと申けれハ、いや+、 00012340M7哥などハ思ひもよら(四ウ)ぬ事。あの山ぶき/色(いろ)な/新小判(しんこばん)が、 00012350M8弐三千両もほしい事じや。 00012360¥N6¥J 00012370¥X六△/慶安(けいあん)の/講尺(かうしやく) 00012380M11さる/御大名(おだいミやう)、/家中(かちう)のれき+/御前(ごぜん)へあいつめゐたりけれハ、 00012390M12/殿様(とのさま)おほせ出さるゝハ、/聞(きけ)バ此比、けいあんといふ事がは 00012400M13やる。あれハどふした/詞(ことば)ぞと仰ける。折ふし御/近習(きんじう)の人 00012410M14+、ゑんりよいたし、か様の事ハ/御家老(ごからう)ならでハ存じま 00012420M15すまいと申せハ、/急(いそ)ぎ家老/石部金(いしべきん)吉を召出さる。金吉承り、 00012430M16さればでござります。是ハ(五六オ)おめでたい/詞(ことば)でござ 00012440M17ります。慶安とハ、よろこびやすしと書ましたれハ、/民(たミ)/百= 00012450M18姓(ひやく=しやう)迄もうるほひ、ひとへに/殿様(とのさま)御長久をことぶき、おめで 00012460M19たい詞でござります。殿きこしめし、金吉がまた、けいあ 00012470¥P43 00012480L1んをいふよ。殿様ハきつい御すい。 00012490¥N7¥J 00012500¥X七△貴様といふ事/不案内(ふあんない) 00012510L4ある人、あの/貴様(きさま)といふハ何とした事ぞといひけれハ、か 00012520L5しこきもの、あれハミつちやの有を貴様といふといへハ、 00012530L6是ハおもしろい。聞へましたといふ。/或時(あるとき)ちかづき、/道(ミち)に 00012540L7て行あひ、久しうおめに(五六ウ)かゝらぬ。して、貴様ハ 00012550L8いづくへ御出といへハ、かのもの聞て大きにわらひ、おれ 00012560L9よりそなたハ大/貴(き)様て、/我等(われら)を貴様とハはらがいたい。 00012570¥N8¥J 00012580¥X八△思ひもよらぬ/泣(なき)やう 00012590L12ある所に、/母親(はゝおや)にはなれ、二七日の間、物もくハずなげく。 00012600L13となりの/内儀(ないぎ)見て、おやごにはなれてかなしひハ/道理(だうり)なれ 00012610L14ども、もはやかなハぬ事じやほどに、物をくふて内へかへ 00012620L15り、しうとめごをかゝ様と思ひ、かう+にしたがよいと 00012630L16いへハ、かのむすめ、いや+、おもひきられぬ事がござ 00012640L17ります。きいて下されと云。(七オ)となりの内儀ハ、いや 00012650L18+、其やうになげゝハ、かゝ様のめいどのまよひじや。 00012660L19もはやなげき給ふなといへば、いや、わたくしが/母(はゝ)のいき 00012670M1てゐられまする時から、あのむらさきのきる物と嶋じゆす 00012680M2のおびとをもらひたふ思ひましたに、あね様のとつていな 00012690M3れました。わしにハかたミじやといふて、じゆずぶくろ壱 00012700M4つ。是がどふして思ひきられませふ。 00012710¥N9¥J 00012720¥X九△/鶴(つる)と/鷺(さぎ)との/評論(ひやうろん) 00012730M7ある人、鶴の/絵(ゑ)の/屏風(びやうぶ)を見て、扨も/書(かい)たり。/鴻(かう)にハちと/足(あし) 00012740¥G 00012750¥P44 00012760L1がながいといへハ、壱人の見たてにハ、(七ウ)(八オ挿絵)は 00012770L2て、わけもない。あれハさぎでこそあれといへは、/亭主(ていしゆ)聞 00012780L3かね、此/絵(ゑ)ハ/鶴(つる)でござるといふ。此もの聞て、人をあほう 00012790L4にした事いハしやんな。つるならば、らうそくたてをくハ 00012800L5へてゐるはづじや。 00012810¥N10¥J 00012820¥X十△手の/筋(すし)の/看板(かんばん) 00012830L8ある所に、御手のすじといふかんばんに、手のかたをかき 00012840L9て出しをく。/田舎(いなか)もの見て、是は何程で見るととへハ、十 00012850L10二文づゝで見まする。さらば見てたべといふ時、八/卦(け)のお 00012860L11もてにて、むかしより有たる事、/残(のこ)らずいひけれハ、扨& 00012870L12(八ウ)ふしぎな事かなと悦ひて帰りけるが、又下の町へ行 00012880L13けれハ、/足袋(たび)のかんばん有。さても+/都(ミやこ)ハ物ごとじゆう 00012890L14な。あしのうらなひもあると見えた。是ハどふでござると 00012900L15/尋(たつね)けれハ、たひ屋、あしをミて、十一文でござるといへハ、 00012910L16さてハ足ハ一文やすいとミへた。 00012920¥N11¥J 00012930¥X十一△とかく/博奕(ばくち)が/好物(かうぶつ) 00012940L19ある下人、/主(しゆ)人の目をしのび、/毎夜(まいよ)ばくちうちに行けるゆ 00012950M1へ、/銭(ぜに)の有切打まけて、はをり/着物(きるもの)まで打こミけるを、主 00012960M2人いろ+せつかんすれ共(九オ)こらへられず。又ある夜、 00012970M3壱つあるふとんをもち出けるを、主人見付、いづかたへ行 00012980M4ぞといへば、下人めいわくして、いへ。せつちんへ参りま 00012990M5す。はて扨、さい+せつちんへ行。してまた、其ふとん 00013000M6ハ何になるぞ。さい+参るも/太義(たいき)に存まして、こんどは 00013010M7とまりがけに参りまする。 00013020¥N12¥J 00013030¥X十二△/顛癇(てんかん)の/誹諧(はいかい) 00013040M10/鎌倉(かまくら)/江(ゑ)の/嶋(しま)にちかき里に、手まへともかふもする人あり。 00013050M11しかれども、/持病(ぢびやう)にてんかんといふ/病(やまひ)、時+おこりけれ 00013060M12ハ、江の嶋のべんざい天(九ウ)へぐわんをかけ、御ゑん日 00013070M13にハおこたらず、さんけいいたしける。道にてかごをかり 00013080M14てのりければ、又れいのやまひおこりて、しばしあわをふ 00013090M15きけるが、/弁(べん)天の御りしやうにや、さつそくさめにけり。 00013100M16かごかき申ハ、是/旦那(だんな)、/発句(ほつく)いたしました。 00013110M17△△今日ハ道にてあハをふくの神 00013120M18といへハ、あとかたのもの付ました。 00013130M19△△是ぞまことのべざいてんかん 00013140¥P45 00013150L1かごかきにハきどく千万。 00013160¥N13¥J 00013170¥X十三△入物にハ/恥(はち)かき/道具(だうぐ)(十オ) 00013180L4春の比いづかたも、にあひ+にべんたうをこしらへ花見 00013190L5にゆく。/去(さる)ひんなるもの、子共をつれ、けふハ花見にゆか 00013200L6んと、/食(めし)よにしめよかうの物よと、ぶんざいさうおふのこ 00013210L7しらへ、/椀(わん)も/重箱(じうばこ)も、そといへなけれハ、ふるきつゞらに 00013220L8入て/自身(じしん)せおひて、人をめもせず、/祇園林(ぎをんばやし)に行ておろし、 00013230L9まくなけれバ、ふろしきをはりゐる所へ、所のもの来り、 00013240L10是+、/辻(つじ)しはゐはならぬ。外へゆきやといへハ、此男む 00013250L11つとして、是、此通じやと、わん、重箱など出し見せけれ 00013260L12ども、(十ウ)いや+、しな玉とりてもならぬ。さてもめいわ 00013270L13くの。 00013280¥N14¥J 00013290¥X十四△/貧僧(ひんそう)のからかさ 00013300L16/或所(あるところ)の/草庵(さうあん)に/貧僧(ひんそう)あり。/非時(ひじ)にゆかんと思ふ折ふし、雨ふ 00013310L17りけれハ、しばらくはれまを待ける所へ、ちか付一人来り、 00013320L18からかさ一本御かしといへば、かさハ壱本、我身も非時に 00013330L19ゆけハ、かす事ハならず。かさぬもきのどく。ちやくとよ 00013340M1こになり、ひるねしたるかほしてゐる。此ちか付、是+ 00013350M2とおこしけれ共、ねいりたるふりしてかまハねば、ぜひな 00013360M3く帰り、となりの門に雨やどりしてゐる。(十一オ)/彼僧(かのそう)、 00013370M4むく+とをき、非時をそくならんと思ひ、かさをさして 00013380M5出けれハ、となりに雨やどりしてゐたるおとこ、是御/坊(ぼう)、 00013390M6手がわるいといへば、せんかたなくて、からかさをさして 00013400M7大いびきをかいた。 00013410¥N15¥J 00013420¥X十五△/豆腐(とうふ)うりの聞ちがひ 00013430M10都の町を、とうふ+とうりあるく。ある家より下女、と 00013440M11うふかハふとよべとも、ゑきかず、行すぎける。下女おも 00013450M12てにはしり出、こゝなとうふ屋ハ、/耳(ミヽ)ハないか。是程よぶ 00013460M13に、どんな人じやといへハ、とうふ屋、せかぬかほして、 00013470M14みゝハ下の町で/売(うつ)(十一ウ)(十二オ挿絵)てしまひました。 00013480¥N16¥J 00013490¥X十六△/席駄(せきだ)の/反橋(そりはし) 00013500M17或しまつなる人、下人にいひ付けるハ、此中はいたせきだ 00013510M18をほしてをけといへハ、心得ましたとて、やがて/炎天(ゑんてん)にほ 00013520M19してをく。主人見て、是ハ+ぶてうほうな。此やうに日 00013530¥P46 00013540¥G 00013550L13あたりにほしてをく物か。せきだがそり/橋(はし)になつたとしか 00013560L14りけれハ、下人さハがぬふりにて、そのはづでござります。 00013570L15下にかハがござる程に、そりはしに成ませう。(十二ウ) 00013580¥N17¥J 00013590¥X十七△/親子(おやこ)ともに大/上(じやう)戸 00013600L18さるおやじ、/酒(さけ)にえふて/帰(かへ)り、むすこをよびけれ共、内に 00013610L19いす。はて扨、であるきをつて、にくいやつめといふ所へ、 00013620M1むす子も/殊外(ことのほか)/酔(ゑふ)て帰る。おやじ見て、やい、たわけもの。 00013630M2どこで其やうに大酒をくらふた。おのれがやうなものに、 00013640M3此家ハやられぬ。むすこ聞、是おやじ。やかましうおつし 00013650M4やんな。此やうにくる+とまハる家ハ、もらハひでも大 00013660M5事ない。おやじも/舌(した)をもつらかして、あのうんつくめ。お 00013670M6のれがつらハ、二つにミゆるハ。ぞんの外なのミやう。 00013680¥Y1二之巻終(十三オ) 00013690¥P47 00013700¥Y1遠喜宮笥巻三 00013710L3一△/未開紅(ミかいこう)の/短尺(たんじやく) 00013720L4二△/狐(きつね)も/化(ばか)さるゝ/世界(せかい) 00013730L5三△下人の/博奕好(ばくちずき) 00013740L6四△/辻番(つじはん)の/答話(とうわ) 00013750L7五△/文字(もじ)二つ何事にも遣ふ 00013760L8六△/清水(きよミづ)の/御利生(ごりしやう) 00013770L9七△/似(にせ)と/正真(しやうじん)とハ/各別(かくべつ) 00013780L10八△/雷(かミなり)の/落(おち)ぞこなひ 00013790L11九△/女夫(めをと)いさかひのあつかひ(一オ) 00013800L12十△/雲(くも)の物いふ世の中 00013810L13十一△/貧乏(びんぼう)ハ/過去(くわこ)の/約束(やくそく) 00013820L14十二△/挨拶(あひさつ)も人による 00013830L15十三△とふらひの口上 00013840L16十四△/夜半(やはん)に/犬(いぬ)の一/声(こゑ) 00013850L17十五△/貧家(ひんか)の/朝夕(てうせき) 00013860L18十六△/文字(もんじ)も/色&(いろ+)の/読様(よミやう)(一ウ) 00013870¥T1 00013880¥N1¥J 00013890¥X/未開紅(ミかいかう)の/短尺(たんしやく) 00013900M3/都(ミやこ)/誓願寺(せいぐわんじ)の/紅梅(かうばい)ハ、/名(な)にをふ/未開紅(ミかいこう)と云/名木(めいほく)なり。花ざ 00013910M4かりにハ/諸人(しよにん)、/詩哥(しか)を/短尺(たんじやく)に/書(かき)て付る。ある/夕暮(ゆふぐれ)に、/西雲(さいうん) 00013920M5といふ/道心者(だうしんじや)、花をながめて/居(ゐ)る所へ、/町(まち)の/夜番(やばん)/来(きた)りて、 00013930M6さて+/大分(だいぶん)のたんじやくかな。さらバ/拙者(せつしや)も一/句(く)仕らん 00013940M7とて、 00013950M8△△/紅梅(かうはい)の/枝(えだ)にとび火や御/用心(ようじん) 00013960M9西雲、是を聞て、/我等(われら)も一句やつてくれうと、 00013970M10△△紅梅のえだをしもくにずわいだぶつ(二オ) 00013980¥N2¥J 00013990¥X二△/狐(きつね)も/化(ばか)さるゝ世の中 00014000M13/去(さる)所に狐とも四五/疋(ひき)ゐける所を、/才覚(さいかく)なる/侍(さふらひ)/通(とを)り/合(あハせ)、是 00014010M14ハ/狐共(きつねども)の/寄会(よりあひ)、ばける/談合(だんかう)かなする物であらふ。さらバな 00014020M15ぶつて見んとて、やいそこな狐ども。われらハ/随分(ずいぶん)ばける 00014030M16と思ふそふなが、いかふ/初心(しよしん)な事じや。何と、身共がばけ 00014040M17たを見てをけ。そのまゝ/武士(ぶし)と見ようが。狐とも聞、/成程(なるほど) 00014050M18+。あつはれお侍と見えるが、して貴様ハいなり様の/御= 00014060M19近習(ご=きんじう)か。いや+、身ハ/摂州(せつしう)/信田(しのだ)の/森助(もりすけ)七代の/子孫(しそん)也。/猶(なを) 00014070¥P48 00014080¥G 00014090L13も/不審(ふしん)に思ハば(二ウ)/我供(わがとも)をして見よといへハ、狐共たば 00014100L14かられ、やがてともをして/行(ゆく)。/向(むか)ふの/方(ほう)に大なる/犬(いぬ)有。/供(とも) 00014110L15の/狐(きつね)にいふハ、あのむかふの門にゐるハ、そちが目にハ犬 00014120L16と見ゆるか。あれハ犬でござるとておそれけれハ、あれも 00014130L17身共が友だちじや。なんと、犬にはける事ハ成まいな。狐、 00014140L18けうをさまし、是ハがてんがゆかぬとにげて帰り、狐/中間(なかま)へ 00014150L19/触(ふれ)をまハし、/向後(きやうこう)/子(こ)狐共を/日暮(ひのくれ)に/出(だ)すな。いかふばかす人 00014160M1が有ぞと/用心(ようじん)する。又ある時、/彼侍(かのさふらひ)が通りけれハ、あれ 00014170M2こそせんどの/侍(さふらひ)じや。子ぎつね共、(三オ)/皆(ミな)ばかされぬや 00014180M3うに、まつげをぬらせ+。是ハあちらこちらな事の。 00014190¥N3¥J 00014200¥X三△下人の/博奕(ばくち)ずき 00014210M6/或(ある)人の下男、/毎夜(まいよ)ばくち/打(うち)に出る。/内儀(ないぎ)つねに/異見(ゐけん)すれ共 00014220M7/聞(きゝ)入ず。/亭主(ていしゆ)はらを立、夜る+/門(かど)口に/錠(ぢやう)をおろし、出ぬ 00014230M8やうにせしに、ある時かの男、すこし/有銭(あるぜに)をうづかし、何 00014240M9とぞ/旦那(たんな)がね入たらバ出べしと思へども、門口に/錠(ぢやう)をろし 00014250M10たれハ、せんかたなく、やねをこへて/隣(となり)へ出んと思ひ、や 00014260M11ねへあがりける。/旦那(だんな)聞付て、や(三ウ)(四オ挿絵)ねがめ 00014270M12り+いふハがてんのゆかぬ事じやといへハ、/内儀(ないぎ)すいり 00014280M13やうして、いや、あれハ/猫(ねこ)そうにござるといへハ、ふゝ、 00014290M14扨ハねこめがといへハ、男うれしく思ひ、あひと/返事(へんじ)した。 00014300¥N4¥J 00014310¥X四△/辻番(つぢばん)の/答話(とうわ) 00014320M17ある町の辻番、うつら+ねふりゐたりし所に、わかき/衆(しゆ) 00014330M18/声(こゑ)はりあげて、是ハ/播州(ばんしう)と/謡(うたひ)けれバ、ねミヽにふつと入る 00014340M19やいなや、とんでいで、何の用でござるといふ。わかき衆 00014350¥P49 00014360L1おかしく思ひ、いや、こちハ/高砂(たかさご)をうたふといへハ、辻番 00014370L2聞て、(四ウ)又よきついでなれば、/小便(せうべん)いたさふと存候。 00014380¥N5¥J 00014390¥X五△/文字(もじ)二つを何事にもつかふ 00014400L5/或文盲(あるもんもう)なる親仁、子共てらより帰りける時、手本をミて、 00014410L6さあ此手本よめといへハ、其子口より/読(よミ)おハり、/何月(なんぐわつ)いく 00014420L7かとよミけれハ、おやじ聞、先度ハ此字を/月(つき)とよミ、又け 00014430L8ふハぐわちとよむハどふした事じや。子共、いかにも此字 00014440L9をハ、つきともぐわち共よミまする。こゑとよみも同じ事 00014450L10でござる。又此/机(つくゑ)も、つくゑとも、しよくともいひまする。 00014460L11親仁聞、扨も+しらなんだ。大ぶんの(五オ)学文をした 00014470L12と悦ひけり。折ふし/近所(きんじよ)に病人あり。/十死一生(じつしいつしやう)のよしを聞、 00014480L13見/舞(まひ)けれハ、/病家(びやうか)にハ/歴&(れき+)/親類(しんるい)あつまりゐけれハ、爰ハち 00014490L14と子細らしくやらんと思ひ、承れハお/医者(いしや)がかハりました 00014500L15げな。何と、つくゑハ成まするかと尋ければ、人&/気(き)にか 00014510L16け、こゝな人ハ、何をわけもない事をいハるゝと、つきた 00014520L17ふしけれハ、むく+とをきて、はて扨、お手まへたちハ、 00014530L18ちか/比(ごろ)/文盲(もんもう)な衆でおじやる。つくゑといふハ、しよくの事 00014540L19じや。わけもしらいで、めつたに人をぐわちたをすか。 00014550M1(五ウ) 00014560¥N6¥J 00014570¥X六△/清水(きよミづ)の/御利生(ごりしやう) 00014580M4/或所(あるところ)に、ばくちずきなる/息子(むすこ)あり。たび+ゐけんすれ共 00014590M5聞ず。/毎夜(まいよ)かるた/打(うち)に行けるを、/親人(おやじ)見付、やがてわきさ 00014600M6しをひねくり、をのれを打きらんといふを、ほう+にげ、 00014610M7せんかたなくて/清水(きよミづ)の/観音(くわんおん)へ/参(まいり)、一心にきせいし、扨みく 00014620M8じをとりて、親人まことに/打切(うちきり)給ふならハ、二をたべ。も 00014630M9し又おどしのためならハ、三を下されよと/信心(しん※)をこらし、 00014640M10みくじをふれハ、三度ながら二が出ける。是ハぜひなき事 00014650M11かなと、/涙(なミだ)ながらに/下向(げかう)せんとせし(六オ)所に、有がたや 00014660M12/観世音(くわんぜおん)、/八旬(はつしゆん)あまりのかく/人(じん)と/現(けん)じ、/告(つげ)てのたまハく、な 00014670M13んぢ、なげく事なかれ。二が三度迄出れハ二くずしなれハ、 00014680M14親の打切ハかなハぬぞ。よろこべ+。 00014690¥N7¥J 00014700¥X七△/似(にせ)と/正真(しやうじん)とハ/各別(かくべつ) 00014710M17或人四五人/打寄(うちより)、/座敷(ざしき)に/涼(すゞ)ミてゐたりしか、はて扨、/正真(しやうじん) 00014720M18のしやくどうハ、きミやうな物じや。/蜈蚣(むかで)がをそるゝとい 00014730M19へハ、中にもせんしやうな男、/小刀(こかたな)をそろりとぬき、はづ 00014740¥P50 00014750¥G 00014760L13かしながら此/小柄(こづか)、しやくどうと申ハおろか、/残(のこり)おほい事 00014770L14ハ、/昔(いにし)へ(六ウ)(七八オ挿絵)/田原藤(たハらとう)太がもたれたらハ、/弓矢(ゆミや) 00014780L15いらずに手がらせられう物をと、じまんたら※の所へ、 00014790L16/天井(てんじやう)より長ミ五六寸のむかで、はたと/落(をち)けれハ、人+は 00014800L17つとおどろく。中にもはたらいたる男、いや、さハぐまい。 00014810L18さいぜんの/小柄(こづか)でたいらげてやりませうといへハ、心得た 00014820L19りと小刀をぬいて、/百足(むかで)の/胴中(どうなか)しかとおさへけれハ、百足 00014830M1ふり返り、やがて小柄をしつかとかミけれハ、ぜひなくか 00014840M2な火ばしにてはさみて/捨(すて)けり。是ハ+、/正真(しやうじん)の/赤銅(しやくどう)と承 00014850M3つたが、どうした事じやのといへハ、いや+、(七八ウ) 00014860M4しやくどうハ正しんじやが、今のハむかでが、にせてあら 00014870M5ふ。/吟味(ぎんミ)してみや。 00014880¥N8¥J 00014890¥X八△/雷(かミなり)も/落(をち)ぞこなひ 00014900M8/近年(きんねん)かミなりたび+/落(おち)て、いづかたもめいわく。かミな 00014910M9り殿もしやれて、何なりともしてやらねハあハぬと見えた。 00014920M10おちる所でハへそをとつていかるゝ。中にもぶてうほう成 00014930M11かミなり、ふけ田の中へおちけるが、やう+としてあが 00014940M12りけれハ、かミなり共よりあひ、扨も+/何(なん)の/徳(とく)もない所 00014950M13へ落て、せうし千万。此方共ハあそここゝで(九オ)/臍(へそ)をよ 00014960M14ほどしてやつたといへハ、されハ+、おち所ハわるかつ 00014970M15たけれ共、まけハいたさぬと、ふところより田にしを取出 00014980M16し、/天(あま)の川にてあらひ、是でへそもどきを仕らふ。 00014990¥N9¥J 00015000¥X九△/女夫(めをと)いさかひのあつかひ 00015010M19去人、/毎日(まいにち)めをといさかひをしけり。となりのおやじ、せ 00015020¥P51 00015030L1うしに思ひ、是+そなた衆。其やうにいさかひをするも 00015040L2のか。ちとたしなましやれ。大坂にハやくわんやの介六と 00015050L3いふものさへあるに、少&の事ハかんにんしやといへハ、 00015060L4ていしゆ聞、尤でござり(九ウ)ます。かんにんせまいと存 00015070L5ますれ共、おやじ様のぬけめのない御ゐけんで、どふも申 00015080L6やうがない。 00015090¥N10¥J 00015100¥X十△雲の物いふ世の中 00015110L9此/秋(あき)/程(ほど)/天気(てんき)のよい事ハ、此二三十年にもおぼへぬと百しや 00015120L10うのよろこび、野へ出て田かりほす。となり田の五郎作、 00015130L11なんと、打つゞいてけつかうな/日和(ひより)でないか。おてんとう 00015140L12様も/気(き)がとをつて、こちとをふびんにおぼしめすさふなと 00015150L13いへば、せい+たるあお/雲(ぐも)の/中(うち)より、ゑへん+と/声(こゑ)が 00015160L14した。(十オ) 00015170¥N11¥J 00015180¥X十一△/貧乏(びんぼう)は/過去(くわこ)の/約束(やくそく) 00015190L17去びんぼう人、さきの/生(しやう)の/約(やく)そくとハいへ共、是ほどつら 00015200L18い事ハないと、/山崎(やまざき)/銭原(せんげん)/宝寺(たからてら)へまいり、くわんおん様へ 00015210L19ぐわんをかけけれハ、有かたや、御むさうにうちでの小づ 00015220M1ちをさづけ給ひ、何にてものぞミの物を三/度(ど)までハ打だす 00015230M2ぞ。三/度(ど)/打(うつ)たらハ、あとハこちハしらぬとの御れいむ。あ 00015240M3んのごとく、うちでの小づちをさずかり、さう+げかう 00015250M4せしが、/比(ころ)ハ/極月(ごくげつ)/末(すへ)つかた、あまりさむさに大/地(ぢ)をうち、 00015260M5もろはく一升と、ひうを一/枚(まい)と(十ウ)うてバ、あんのごと 00015270M6く出たり。有がたく思ひ内へかへり、/先(まづ)さむさをしのがん 00015280M7と、かミこ壱つとうてハ、其まゝ/紙子(かミこ)出にける。女ほう是 00015290M8を見て、さて+、きのかなハぬ人かな。とてもの事に、 00015300M9きぬのものを打だす事ハならぬかとしかりけれハ、此おと 00015310M10こ、はらをたて、何の大事か、へちまのかハといへバ、そ 00015320M11のまゝへちまのかハを打出した。 00015330¥N12¥J 00015340¥X十二△あひさつも人による 00015350M14ある所に、/大方(おほかた)/快安(くわいあん)とて/上手(じやうず)の/医師(くすし)あり。/用事(ようじ)有て町の/夜= 00015360M15番(や=ばん)が所へゆき、内にゐるかと(十一オ)いへハ、女ぼうかし 00015370M16こきものにて、これのおやじがやくも、おまへ様のお/薬(くすり)と 00015380M17/同(おな)じ事といふ。其心ハ。はて、よふまわりまするといへハ、 00015390M18/医師(くすし)よろこび、/近所(きんじよ)の/内義(ないぎ)に其はなしせられける。あると 00015400M19き自/身番(しんばん)有て、彼所へ番がまわりけれハ、/快安(くわいあん)見まひ、け 00015410¥P52 00015420¥G 00015430L13ふハ御/太義(たいぎ)と云。かの/内義(ないぎ)、/例(れい)のはなし思ひ出し、こちの 00015440L14/番(ばん)も、おまへのお薬同し事といふ。心ハといへハ、よふあ 00015450L15たります。医師めいわく。 00015460¥N13¥J 00015470¥X十三△とふらひの口上 00015480L18ある人、ちか付のむす子/頓死(とんし)しけり。せうしに(十一ウ)(十 00015490L19二オ挿絵)思ひ、下人をよび口上をいひ付、とかく此世ハ無 00015500M1/死(し)/無常(むじやう)のせかひ、おあきらめ被成よと申せ。かしこまりま 00015510M2したといひて、/行道(ゆくミち)にて大かぐらを見、おもしろさに、で 00015520M3んづく※と、太このひやうしにのりて彼所へ行。口上を 00015530M4はたとわすれ、でんづくのせかひ、おちからをとしといふ 00015540M5て、口上出す。かゝる所へ、又/外(ほか)よりとふらひに来り、さ 00015550M6て+無常のせかひ、申さふやうもないといへハ、かの/使(つかひ) 00015560M7の下人、/私(わたくし)もあのひやうしに/頼(たのミ)まするといふた。 00015570¥N14¥J 00015580¥X十四△/夜半(やはん)に/犬(いぬ)の一/声(こゑ)(十二ウ) 00015590M10物ごと用心する折ふし、夜半にすさまじく/犬(いぬ)ほへけれハ、 00015600M11聞人おどろき/出合(いであひ)、ぬす人などの来るにやと夜番にとへハ、 00015610M12犬、何のことなくねてゐる。中にもふんべつらしきおやぢ、 00015620M13是+きづかいな事ハない。犬が/夢(ゆめ)に、せきだなをしかな 00015630M14見た物であらふ。 00015640¥N15¥J 00015650¥X十五△/貧家(ひんか)の/朝夕(てうせき) 00015660M17あるひんなる人、子共ハ大ぜい、うりかいハ高し。とかく 00015670M18しまつせねバならぬ。かゝ、とかくざうすいをせよといふ。 00015680M19女房もしまつものにて、米すこし(十三オ)入てこしらへけ 00015690¥P53 00015700L1れハ、あね娘いふやう、此/雑吸(さうすい)ハしるうてくハれぬといへ 00015710L2ハ、母親はらを立、しるくハぼくりはけとしかりける。/末= 00015720L3子(ばつ=し)のぼうずもめいわくながらくひ、なふかゝ様。此ごきの 00015730L4なかのぼうずハ、くふてもだんないか。水かゝみよりましなざ 00015740L5うすい。 00015750¥N16¥J 00015760¥X十六△文字も色&の/読様(よミやう) 00015770L8さるもの四五人おもてにはなしゐる所へ、女来り、二郎三 00015780L9郎様と書たる文を出し、此お名ハ何とかいてこざりますと 00015790L10とひけれハ、壱人見て、何共かつてんかゆかぬ。たしかに 00015800L11状と見ゆるが、二らさらとかい(十三ウ)たハふしぎじやと 00015810L12いへハ、又壱人見て、是ハこらさらとよむ。又壱人見て、 00015820L13じらみらとよめハ、中にもふんべつらしき男、いづれもハ 00015830L14もんもうな。たしなミやれ。是ハ二らう三らう様といふ事。 00015840L15さためておしよけかたへゆく文であらふ。これからまつす 00015850L16くに行て、/増上寺(さうじやうじ)といふてたづねてござれ。 00015860¥Y1三之巻終(十四オ) 00015870¥Y1越幾美矢気巻四 00015880M3一△/麁相(そさう)な/医師(ゐしや)殿 00015890M4二△/髪結(かミゆい)の/了簡(りやうけん)ちがひ 00015900M5三△/乞食(こつじき)の/婚礼(こんれい) 00015910M6四△/虚言(うそ)はつきがち 00015920M7五△/菩薩(ぼさつ)の/大慈悲(だいじひ) 00015930M8六△かくれもないしわん坊 00015940M9七△京にはやる/祭文(さいもん) 00015950M10八△けしからぬ/肥満(ひまん) 00015960M11九△/猪(ゐ)のしゝの/蘇生(よミがへり)(一オ) 00015970M12十△/薬師(やくし)の/願(ぐわん)立 00015980M13十一△一文/不通(ふつう)の/坊主(ぼうず) 00015990M14十二△あほうでも/誹諧好(はいかいずき) 00016000M15十三△/茶(ちや)の/湯(ゆ)ぶるまひ 00016010M16十四△/文盲(もんもふ)なる/誉(ほめ)物(一ウ) 00016020¥P54 00016030¥T1 00016040¥N1¥J 00016050¥X一△/麁相(そさう)な/医師(ゐしや)殿 00016060L3ある人風を引けれハ、薬をのミ/養性(やうじやう)せんと思ひ、よこ町の 00016070L4/道(だう)三殿をよふでこいと、下人にいひ付る。下人いそぎ行て、 00016080L5御/苦労(くらう)ながら御出といへハ、はて扨、身共も風を引まして、 00016090L6さきから薬をたべる。去ながら、/外(ほか)からとハちがふた。お 00016100L7つ付参らふとて、たゞ今お人でござつた。されハ私も風を 00016110L8引ました/程(ほど)に、ミやくを/御覧(ごらん)なされ、お薬を下されませい。 00016120L9心へました。身共も風を引ましたが、こなたハ/頭痛(づつう)ハせぬ 00016130L10か。いたしまする。/食(しよく)があぢ(二オ)ないであらふ。さやう 00016140L11でござる。ねつもすこしあらふ。いかにも。せきもでるか。 00016150L12出まする。のどもかハくか。すこしかハきまする。しれた 00016160L13+。おれが風と同し風じや。/脉(ミやく)にハおよばぬ。此くすり 00016170L14をのましやれ。かわつた事があらハ、こちからいふてこそ 00016180L15う。是ハあちらこちら。病人めいわくの。 00016190¥N2¥J 00016200¥X二△/髪結(かミゆひ)の/了簡(りやうけん)ちがひ 00016210L18或かミゆい、/酒(さけ)にえひてとろ+ねふりゐる所へ、ひげや 00016220L19つこ壱人来り、さかやきそりてくれよと頼ける。心得まし 00016230¥G 00016240M13たとて、そる程に+大/事(じ)(二ウ)の/髭(ひげ)をそりをとしけれハ、 00016250M14やつこはらをたて、やいうろたへ物。身がとうハ此ひげゆ 00016260M15へに、大分のきりまいをとる。此ひげをそりをとすからハ、 00016270M16おのれ、身がしんしやうの/敵(かたき)だ。のがさぬと、さん※に 00016280M17はらをたて、もとのやうにしてかへせと、きしよくをかへ 00016290M18ていかりける。やれけんくわよと人&出合、まつひら御か 00016300M19んにんとあつかへ共、やつこ/聞(きゝ)入ぬゆへ、町の/宿老(しゆくらう)殿のり 00016310¥P55 00016320L1やうけんにて、/鳥目(てうもく)壱貫文にて、やう+あつかい/埓(らち)/明(あけ)け 00016330L2る。其後又四五日/過(すぎ)て、/病後(びやうご)と見へて、ひげかミ長き/坊主(ぼうず) 00016340L3来り、あたまをそらせけれハ、(三四オ)あたま/斗(ばかり)そりて、 00016350L4ひげを残しをく。坊主はらをたて、人をなぶるか。此ひげ 00016360L5をそらねハきかぬといへば、かミゆい聞、又ひげをそらし 00016370L6て壱貫してやらふと事か。ならぬ+と云。坊主いよ+ 00016380L7/腹(はら)を立、つかミあへハ、又けんくわよと、人&さハぎける。 00016390L8/折(おり)ふしお/宿老(しくらう)殿、人のうしろより見てにげられける。町の 00016400L9/衆(しゆ)申さるゝハ、なにとぞおあつかいなされぬかと申せば、 00016410L10されハ私もあつかひたふ思へ共、中+先度のかくにハ成 00016420L11ませぬ。此たびハ、やつこを坊主ニしたと見へました。(三 00016430L12四ウ)(五オ挿絵) 00016440¥N3¥J 00016450¥X三△/乞食(こつじき)の/婚礼(こんれい) 00016460L15/或(ある)こつじき、女ぼうをよびむかへ、/幾(いく)/久(ひさ)しくといハひける。 00016470L16しうとの乞食、/聟(むこ)殿のひざなをし仕度候間、明/晩(ばん)御出とて、 00016480L17一門の人&車座にゐて、だん+のちそう。すでに酒もり 00016490L18はじまり、いざむこ殿。何にてもさかな一つうたひたまへ 00016500L19としよもうすれハ、ひざたてなをし、あふぎをつとり、や 00016510M1らめでたや。こなたの御じゆミやうを申さハ/鶴(つる)ハ千年と、 00016520M2やくはらひをやられた。 00016530¥N4¥J 00016540¥X四△/虚言(うそ)ハつきがち(五ウ) 00016550M5去人、けふハめづらしい所へ参つて、けつこうな道具とも 00016560M6を見物いたした。こなたハひるねしてゐたげなが、いつの 00016570M7まに出さしやつた。けさあさのまに、さる寺へれいほうを 00016580M8おがミに行ましたれハ、壱尺八寸の大わきざしを見まし 00016590M9た。何と、一尺八寸といふハ、こなたしうハ見まいの。そ 00016600M10れが何とめづらしい事か。是、身どもがさいたも一尺八寸 00016610M11あるといへハ、いや+おれが見たハ、/横(よこ)はゞ一尺八寸で 00016620M12あつた。 00016630¥N5¥J 00016640¥X五△/菩薩(ぼさつ)の大/慈悲(じひ)(六オ) 00016650M15ある所に八十あまりのおやじ、つく※と思ひけるハ、今 00016660M16ほど/観音(くわんおん)へ/願(ぐわん)をかけて、かなハしやる時ハ有まい。何とぞ 00016670M17今一たび、わかやぐやうにして下されよと、清水へ一七日 00016680M18こもりける。ありがたや七日まんずる夜、御れいむありて、 00016690M19なんぢ此/丸薬(ぐわんやく)をあたふる。是を一りうのめハ十年づゝわか 00016700¥P56 00016710L1やぐと、あらたなる御つげ。目さめてミれハ、まくらもと 00016720L2に一つゝミの御薬。やがて一りうのミて水かゞみをミれハ、 00016730L3七十ばかりになる。ふしぎに思ひ、又二りうのめハ、六十 00016740L4より五十に、だん+(六ウ)わかやぐ。こハ有がたしと/宿(やど) 00016750L5へかへりけれハ、/妻子(さいし)おどろき、何としてわかやぎ給ふと 00016760L6いへハ、されば/念彼観音(ねびくわんおん)の御ちから、かやう+のしだい 00016770L7とかたる。中にも/惣領(そうりやう)のむすこ、/当年(たうねん)五十三、我等に一り 00016780L8うたべといへば、おやぢがつてんせず、薬をおしミけるゆ 00016790L9へ、ぜひなく所の/代官殿(だいくわんどの)へ御そせう申せハ、さつそくおや 00016800L10じ/召(めし)出され、子共へ一りうづゝゆづりあたへよとの仰付。 00016810L11しわきおやじ、がつてんせねハ、代官にくしと思召、それ 00016820L12+、おさへてとれとある。二三人取かゝりけれハ、/親人(おやじ) 00016830L13かなハじと(七オ)思ひ、彼くすりを一口にほうばりけれハ、 00016840L14たちまちあか子となり、おぎや+となき、五十三のそう 00016850L15りやう殿にいだかれて帰ける。 00016860¥N6¥J 00016870¥X六△かくれもないしわん坊 00016880L18世間にかくれないしわきおとこ、ある所よりふるまひのく 00016890L19わいぶんを/持来(もちきた)る。かのつかひのものをよび、/明日(あす)のふる 00016900M1まひハゑり/袖(そで)だちか本立かととふ。/使(つかひ)聞、本立でござりま 00016910M2する。しからハ参りませうと、てんをかけけり。折ふし/友(とも)だ 00016920M3ちゐ合、それハがてんがゆかぬととへハ、ゑり袖なれハ身 00016930M4(七ウ)から物が出る。本立なれハ身からものハ出ぬといへ 00016940M5ハ、友だち聞て、扨も貴様ハ/土(つち)の/西行(さいぎやう)じやといへハ、其心 00016950M6ハ。はて、土の西行ハくびハをちてもふろしきははなさぬ。 00016960¥N7¥J 00016970¥X七△京にはやる/祭文(さいもん) 00016980M9はやり物とて、京中に/八百(やほ)屋お七といふさいもん、/老(おひ)たる 00016990M10もわかきも、是をうたハねハならぬと見えて、ある/馬(むま)かた、 00017000M11/馬(むま)を引て、お七なく+よほんほほふといへハ、あとより 00017010M12馬が、いひんひひいと付た。(八オ) 00017020¥N8¥J 00017030¥X八△けしからぬ/肥満(ひまん) 00017040M15ある/小間物(こまもの)うり二人、とくゐのかたにてゆきあひ、何と、 00017050M16けしからぬあつさでないかといふ所へ、おくよりお/乳(ち)の人 00017060M17出、こなた衆もあついかといへハ、壱人見て、おちいさま、 00017070M18此/夏(なつ)ハけしからぬ/肥満(ひまん)なされましたといへハ、一人のもの 00017080M19けうをさまし、何と、肥満とハ/何(なん)の事じや。肥満とハしゝ 00017090¥P57 00017100L1がついた事じや。はて扨しらなんだと、おちの人にむかひ、 00017110L2おまへにハしゝがつきましたを存ませなんだ。さりながら、 00017120L3きつねのついたやうにハござりますまい。(八ウ)よふ御や 00017130L4うしやうなされませい。めいわくの。 00017140¥N9¥J 00017150¥X九△/猪(ゐ)のしゝの/蘇生(よミがへり) 00017160L7ある/狩人(かりうど)、ゐのしゝを見付、打とらんと思ひ、あわてゝ玉 00017170¥G 00017180M1をわすれ、から/鉄炮(てつほう)をはなしける。うろたへたるしゝにて、 00017190M2おどろきて/死(しゝ)けり。かゝる所へしゝ/買(かい)来りけれハ、さいわ 00017200M3いとおもひうりけるが、/買手(かいて)、何と此しゝにハてつほうの 00017210M4あともなし。いつ/死(しん)だもしれぬ。ふるうハないかといへは、 00017220M5かりうど、たつた今打ました。いや/古(ふる)そうなとて、引かへ 00017230M6し見れハ、彼しゝ、むく+とをきあがり、(九オ)山をさ 00017240M7してにげける。/狩人(かりうど)ゆびざしして、あのあたらしさを/御覧(こらん)ぜ。 00017250¥N10¥J 00017260¥X十△/薬師(やくし)の/願(くわん)だて 00017270M10/或人(あるひと)、/蛸(たこ)薬師へ参り、京にかくれなき/霊仏(れいぶつ)。此/願(ぐわん)御かなへ 00017280M11下されなハ、一/生(しやう)たこをたべまいといふぐわんをかけける。 00017290M12ある時ふるまひに行、たこをくひける。/友(とも)だち見て、彼願 00017300M13だてハといへば、此もの聞、されハ霊仏ハいづくも同し事 00017310M14とおもひ、ふや町の/布袋薬師(ほていやくし)へ願をかけなをし、一生ほて 00017320M15いをたべますまいと申た。(九ウ)(十オ挿絵) 00017330¥N11¥J 00017340¥X十一△一/文(もん)/不通(ふつう)の/坊主(ほうず) 00017350M18さる/田舎(いなか)の/坊(ぼん)さま、京へ上りて下人をかゝへ、/国(くに)もとへ帰 00017360M19られける。下人にいろ+国もとのせんしやうをいハれけ 00017370¥P58 00017380L1れ共、/元来(ぐわんらい)/無筆(むひつ)なれ共、物しりがほにて、やい、あの/家(いへ)に 00017390L2ある札ハよめたか。あれハかしや/札(ふだ)でござりまする。よい 00017400L3手でござります。いや+、手よりも/文(ぶん)がよい。 00017410¥N12¥J 00017420¥X十二△あほうでも/誹諧好(はいかいずき) 00017430L6/去(さる)かしこうない人、誹諧をすきけれハ、/都(ミやこ)へ/上(のぼり)、/点者(てんじや)の/会(くわい) 00017440L7をも聞申さんと、はる※田舎より(十ウ)上りける。道に 00017450L8てある/代官所(たいくわんしよ)の/屋敷(やしき)に、人おほくあつまりゐるを、もし 00017460L9是ハ/誹諧(はいかい)の/会(くわい)でハござらぬかと/尋(たづね)けれハ、百/姓(しやう)聞、さだめ 00017470L10て/灰(はい)のせんぎも出ませふといへハ、扨ハ一/句(く)/成(なり)共と思ひ、 00017480L11内へ入。/役人(やくにん)、/訴状(そじやう)を取上、/何村(なにむら)の/誰(たれ)が下人/欠落(かけおち)の事とよ 00017490L12ミ上れハ、かのうんつく、 00017500L13△△△/請人(うけにん)こゝに/有明(ありあけ)の月 00017510L14と付る。代官見給ひ、おのれハ/気(き)がちかふたか。いへ、/季(き) 00017520L15ハ月にもたせました。 00017530¥N13¥J 00017540¥X十三△茶の湯ぶるまひ(十一オ) 00017550L18あるりくつもの、/茶(ちや)をふるまハんと思ひ、ばん程御出。人 00017560L19のひかぬ茶を/進(しん)じ申さんといひやりけれハ、かしこまり候 00017570M1とて来り、扨、人のひかぬお茶とハめづらしうござる。ど 00017580M2ふした事やらんと/尋(たづね)けれハ、されバ風がひきましたと申け 00017590M3る。さらバ此へんほういたさぬと、先日ハ忝い。然ば今/晩(ばん)、 00017600M4人も風もひかぬお茶しんしたいといひやりける。/客人(きやくじん)来り 00017610M5て、人も風もひかぬお茶とハ、いかやうの茶かととひけれ 00017620M6ハ、されハ、茶のひいたをしんじませふと申事といハれた。 00017630¥N14¥J 00017640¥X十四△/文盲(もんもふ)なる/誉様(ほめやう)(十一ウ) 00017650M9さる人、/庭(にハ)のかゝりをほめけるとて、さて+、けつこう 00017660M10なにハてござります。あれにミへまする松の木ハ、じねん 00017670M11せきと見ましたといへハ、そばにゐたる人、是を聞、はて 00017680M12/扨(さて)もんもうな事をいふ人じや。松の木に/自然石(じねんせき)といふ事が 00017690M13ある物か。じねんせきといふハ、山のいもの事でこそあれ 00017700M14といハれた。 00017710M15△△じねんじやうのはきちがへ、是もおかしし。 00017720¥Y1四之巻終(十二オ) 00017730¥P59 00017740¥Y1遠気見屋計巻五 00017750L3一△/心中(しんじう)の/大筈者(おほはづもの) 00017760L4二△/大(いぬ)も見立る/人相(にんさう) 00017770L5三△/相手(あひて)ほしがる/酒好(さけずき) 00017780L6四△/盗(ぬす)人の/用心時(ようじんとき) 00017790L7五△はやるものには/寺号(じがう)/山号(さんがう) 00017800L8六△/蛸(たこ)をとるにも/才覚(さいかく) 00017810L9七△/鈍(どん)な/者(もの)の才覚だて 00017820L10八△/雪降(ゆきふり)のらくがき 00017830L11九△/碁打(ごうち)の/助言(じよごん)(一オ) 00017840L12十△/芝居(しばゐ)/咄(はなし)ところまたら 00017850L13十一△/曲者(くせもの)のよりあひ 00017860L14十二△/若(わか)いものゝ/痔疾(じやミ) 00017870L15十三△/法躰(ほつたい)ハ/木綿(もめん)一/反(たん) 00017880L16十四△/栄螺(さゞい)のつぼやき 00017890L17十五△/駄賃馬(だちんむま)の一さん 00017900L18十六△/相互(あひたがひ)に/麁相者(そさうもの)(一ウ) 00017910¥T1 00017920¥N1¥J 00017930¥X一△心中の大/筈者(はづもの) 00017940M3/何国(いづく)にもめつたに心中はやる。大坂のかたわきに、ある女、 00017950M4さる男をかたらひ、とかく心中して/死(しな)んといふ。男めいわ 00017960M5くながら、ぜひなくて/梅田(むめだ)の/橋(はし)へいそぎける。男いふやう、 00017970M6内のしゆびあしくて、わきざしをさいてこなんだ。何と、 00017980M7そなたハかミそりでももつてきたかといへハ、女、いや 00017990M8+其気ハつきませなんだ。しからハ何とぞしてかミそり 00018000M9をとつておじや。心得ましたと、はしりて帰る。男しあん 00018010M10して、いらぬものじやとおもひて、(二オ)にげて帰る。女 00018020M11かミそりを/持行(もちゆき)、男をたづぬれ共見えず。扨ハはずした物 00018030M12であらふ。あのやうなぶしん中ものと/死(し)んでゑきなしと思 00018040M13ひ、帰りける。其/後(のち)/日本橋(につほんばし)にて、はたと/行(ゆき)あひしかハ、お 00018050M14とこ、にげんやうなくて、はながミを折、ひたいにあて、 00018060M15しやばいらい、お目にかゝらぬといふた。 00018070¥N2¥J 00018080¥X二△/犬(いぬ)も見立る/人相(にんさう) 00018090M18/或侍(あるさふらひ)に犬ほえかゝる。をくびやうものにて、/刀(かたな)のそりを 00018100M19うつてとびしさり、引ぬいてうたんとす。犬しきりにをど 00018110¥P60 00018120L1す。町の/年寄(としより)出合、これほど(二ウ)/御法度(ごはつと)きびしいに、し 00018130L2かもお侍の、どふした事でござるといへハ、/侍(さふらい)とふわくし 00018140L3て、/町人(まちにん)じやとこたへけれハ、犬ハ其まゝにげてゆく。町 00018150L4の人&、ふしぎなりといへハ、/年寄(としより)りやうけんにハ、犬、 00018160L5/人相(にんさう)を見たて、おどしけるが、町人といふ事を、まちんと 00018170L6聞て、にげた物であらふ。 00018180¥N3¥J 00018190¥X三△相手ほしがる/酒好(さけずき) 00018200L9酒ずきなる人、とかく相手をほしがりけれとも、折ふし所 00018210L10の神事にて、/近所(きんじよ)の人ハ/来(こ)ず。手前に/客(きやく)もなし。いかゞし 00018220L11て/友(とも)ほしやと思ふ所へ(三四オ)/乞食(こつじき)来り、御/祭(まつり)めでたうい 00018230L12わゐませうといへハ、ていしゆ聞、やい/非人(ひにん)。そちハ酒ハ 00018240L13のまぬか。それハかたじけないといへハ、やがて/自身(じしん)かん 00018250L14なべもち出、さあ一つのめ。こつじき、めんつをうけけれ 00018260L15ハ、ちやうと引かけ、ずつとほしけれハ、おれいたゞこ。 00018270L16それハりよぐわいといへハ、ていしゆ引うけ、ずつとほし、 00018280L17扨もよいきミ。此/盃(さかづき)一つあつらへてもらハふ。 00018290¥N4¥J 00018300¥X四△/盗(ぬす)人の/用心時(ようじんどき) 00018310¥G 00018320M13さる所のよそに、/日暮(ひくれ)其まゝ町の木戸をしめけれハ、/往来(わうらい) 00018330M14の人、門をたゝき、道とをりの(三四ウ)(五オ挿絵)ものじや。 00018340M15あけて通してたも。/辻番(つじばん)きゝ、いや+、ぬす人の用心する 00018350M16によつて、お/宿老(しくらう)様からのいひ付であける事ハならぬ。よ 00018360M17こ町へまわつてござれ。通りのもの聞、いやはやおかしい。 00018370M18此やうな/貧乏(びんぼう)町へ、/何(なに)しにぬす人がはいらふといへハ、辻 00018380M19番聞、ぬす人がはいるといふ事でハない。町の衆がぬす人 00018390¥P61 00018400L1にいかれうかといふ用心じや。 00018410¥N5¥J 00018420¥X五△はやるものにハ/寺号(じがう)/山号(さんがう) 00018430L4江戸大坂京三ケ所のもの、/矢橋(やばせ)の/船(ふね)に/乗(のり)、/面&(めん+)の/在所(ざいしよ)のせ 00018440L5んしやう/咄(ばなし)。江戸の人いひけるハ、(五ウ)江戸のかたにハ、 00018450L6何にてもはやる人にハ/山号(さんがう)/寺号(じがう)を付まする。江戸中の/名医(めいゐ) 00018460L7/福安(ふくあん)殿と申がござる。此人を/医王山(ゐわうざん)/薬師寺(やくしじ)と申て、ことの 00018470L8外はやりまするといへハ、大坂の人聞、成程いづかたもお 00018480L9なじ事。大坂の/芝居(しばゐ)に、四十三宇平次といふ/役者(やくしや)がござる。 00018490L10京の人聞、いやはや、めづらしからぬ事。京の/嶋原(しまばら)にハ、 00018500L11みなさんごぞんじと申太夫がござる。 00018510¥N6¥J 00018520¥X六△/蛸(たこ)を取にも才覚 00018530L14さる人、蛸(たこ)をとるハつぼにてとるといへば、(六オ)さらバ 00018540L15/我等(われら)もとらんとて、せつちんのつぼを/掘(ほり)おこし、よくあら 00018550L16ひ、/海(うミ)ばたにすへ、中へこぬかを入てをきけれハ、/海中(かいちう)一 00018560L17ばんの大だこ中へはいり、まじ+としてゐたり。さてこ 00018570L18そ大だこをしてやつたと、取にゆきけれハ、此蛸、/雪隠(せつちん)か 00018580L19とおもふて、人をとをきくと其まゝせきばらひして、ゑ 00018590M1へん+。 00018600¥N7¥J 00018610¥X七△/鈍(どん)なものの才覚だて 00018620M4ある人、下人にいひ付けるハ、/客衆(きやくしゆ)もお帰りなされた/程(ほど)に、 00018630M5/座敷(ざしき)のはんどうな/火(ひ)を/消(け)せ。(六ウ)かしこまりましたと、 00018640M6はんどうをもち出、やがて水をかけんとす。主人見て、や 00018650M7い久三。それハぶてうほうな。此大/分(ぶん)の/火(ひ)を、はんどうへ 00018660M8水をかけるものか。火かきへとりわけてけせ。一/度(ど)にけせ 00018670M9バはいがたつと、しかりけれハ、かしこうない久三、ぶつ 00018680M10+といふてけす。ある時、むかふの/家(いへ)より/火事(くわじ)出けれハ、 00018690M11/近所(きんじよ)出合、やれ/焼亡(ぜうもう)よ。水を出せとよばハりけれハ、かの 00018700M12久三、わらを一わもち出、さハぐまい+。此やうな大き 00018710M13な火ハ、とりわけてけさねハはいがたつとて、わらに火を 00018720M14付、(七オ)ちく+とりわけて消した。 00018730¥N8¥J 00018740¥X八△雪ふりのらく書 00018750M17/雪(ゆき)のふりつもりたる/朝(あさ)、にハのけしきを見れハ、いろはを 00018760M18雪にかきたり。下人をよび、にくいやつの。此やうなてん 00018770M19ごうをかこふより、そうじなり共せず、さむい時分にさう 00018780¥P62 00018790L1+から、らく/書(がき)しをるとしかりけれハ、下人聞、わたく 00018800L2しでハござりませぬ。けさ、太郎様のせうべんでかゝしや/((り脱カ)) 00018810L3ました。主人聞、ふゝ扨ハ太郎がかいたか。せうべんで此 00018820L4くらゐにやつ(七ウ)たらハ、こんどハ/能筆(のふひつ)にならふ。きつ 00018830L5い了簡の。 00018840¥N9¥J 00018850¥X九△/碁打(ごうち)の/助言(じよごん) 00018860¥G 00018870M1さる人/碁(ご)を見物して、ひたと/助言(じよごん)いふにより、打手きのど 00018880M2くに思ひ、さりとハいふてたもるな。お手まへのゐられて 00018890M3ハ/碁(ご)がうたれぬ。此碁ハ大事のかけじや程に、助言いふて 00018900M4たもるな。/其代(そのかハり)にハ内&のぞミの/鍔(つば)をやるとて、つば一枚 00018910M5わたしけれハ、かのものがてんして、だまつて見物しけり。 00018920M6碁なかばに、口をむじ+していひたけれ共、つばもらひ 00018930M7(八オ)たるゆへ、ちやくとつばを口へあてゝだまりけるが、 00018940M8あまりこらへかねて、是+、もはやつばハかへすぞ。其 00018950M9一もく打てとれ。 00018960¥N10¥J 00018970¥X十△/芝居(しばゐ)の/咄(はなし)所まだら 00018980M12さるそさう物、四条川原の芝居見物したりとて、ところま 00018990M13だらにはなす。一つもあハぬ事をいふ。そばなるおとこ聞、 00019000M14なんと、女がたの/上手(じやうず)ハたれじやといへば、/片岡(かたおか)仁左衛門 00019010M15といふ。それハかたき/役(やく)じや。まことにわすれた。女がた 00019020M16の太夫は、小かん太郎次。それもちがふた。(八ウ)それハ 00019030M17くわしやがたじや。ふゝまことに、おれが見たハ/人形芝居(にんぎやうしばゐ) 00019040M18であつた。 00019050¥P63 00019060¥N11¥J 00019070¥X十一△/曲者(くせもの)のよりあひ 00019080L3有所のよそに、くせのあるもの三人。壱人ハはなしする時、 00019090L4せなかをかく。又壱人ハ手にてはなをなでる。又壱人は目 00019100L5をなでるくせ有。たがひにいひ合、かさねてからハたがひ 00019110L6にたしなミ、くせをなをさんとかたくいひ合ける。ある時、 00019120L7はれがましきふるまひの/座(ざ)にて、れいのくせ出けれハ、た 00019130L8がひにきつと見合(九オ)けるゆへ、せんかたなく壱人のく 00019140L9せもの、けさわたくしのうらへ/雉子(きじ)が参つたによつて、て 00019150L10つほうでうたんといたしたれハ、ばた+とたつてにげた 00019160L11りと、ばたつくまねしてせなかをかく。一人のくせもの、さ 00019170L12れば身共が所のせどへも、うさぎがまいつたによつて、/弓(ゆミ) 00019180L13をつとつて此ごとくにゐましたと、弓ゐるまねして、はなを 00019190L14なでけれは、又壱人のくせもの、あんまりむごい/咄(はなし)で、な 00019200L15ミだがこぼるゝとて、目をなでた。 00019210¥N12¥J 00019220¥X十二△若いものゝ/痔疾(じやミ)(九ウ)(十オ挿絵) 00019230L18比しも方&の花ざかり。ミな人うハ気に成折ふし、さるわ 00019240L19かいもの、友だちさそひに、さあ+けふハ/祇園(ぎをん)へ花見に 00019250M1と/誘(さそ)ひけり。ちか比うら山しけれ共、痔がおこりて行事ハ 00019260M2ならぬといへハ、友たち聞、それハきのどく。/痔(じ)にハよい 00019270M3/灸(きう)有。いぼぢか、はしり/痔(じ)かといへハ、いや、さやうでハ 00019280M4ない。しからハあなぢか。/穴痔(あなじ)なれハ、さつそくなをる灸 00019290M5じや。いや、薬でも灸でもなをらぬ。親じじや。 00019300¥N13¥J 00019310¥X十三△/法躰(ほつたい)ハ/木綿(もめん)一/反(たん) 00019320M8さる/愚痴(ぐち)なる人、ほつたいして寺へまいる。道(十ウ)にて、 00019330M9/古(こ)ほうばいにあひけれハ、扨&いつほつたいなされた。先 00019340M10めでたうござるといへハ、此人、ほつたいといふ事をしら 00019350M11ず。わかきものにとへば、かのぜんもんをなぶりて、ほつ 00019360M12たいと申ハぬすミした事じやといひけれハ、はて扨しらぬ 00019370M13ゆへに、人になぶらるゝ事じやといふ折ふし、又ちか付に 00019380M14あいけれハ、是ハ+御ほつたいかといへハ、貴様ハきよ 00019390M15くもないと、はらをたて、身共わかい時分から、人のもの 00019400M16ハ一せんでもほつたいした事ハおりない。/親人(おやじ)の/木綿(もめん)一/反(たん) 00019410M17ばかりじや。 00019420¥P64 00019430¥N14¥J 00019440¥X十四△/栄螺(さゞい)の/壷焼(つぼやき)(十一オ) 00019450L3さる所のいなか衆、一村いひ合て、さんぐうをいたしける。 00019460L4太夫どの、いろ+の御/馳走(ちそう)いたされけるが、さゞいをつ 00019470L5ぼやきにして出けるを、/庄屋殿(しやうやどの)、さゞいふたを、けり+ 00019480L6とかぶり給へハ、/皆(ミな)一/度(ど)に、けり+かぶる。ていしゆ見 00019490L7て、申+、それハさゞいのふたでござります。/中(なか)に/身(ミ)が 00019500L8ござるといへハ、いづれもはつと思ひ、大/事(じ)のお/道具(だうぐ)に、 00019510L9きずを付ました。 00019520¥N15¥J 00019530¥X十五△/駄賃馬(だちんむま)の一さん 00019540L12道中にて馬にのりながら、たばこ一匁かハんとて、(十一ウ) 00019550L13ぜにを見せへなげけれハ、馬ハぜにのをとに/驚(おどろ)き、一さん 00019560L14にかけ出す。たばこや/追懸(おつかけ)、是/旦那(だんな)殿。どこ迄ござるとい 00019570L15へハ、此きほひでハ、どこへゆかふもしれぬ。 00019580¥N16¥J 00019590¥X十六△/相互(あひたがひ)に/麁相(そさう)もの 00019600L18さるもの、四条川原を通りしが、しる人に、はたと行あひ、 00019610L19何としばゐハ、まふはじまらぬかといへハ、いや、まだは 00019620M1じまつたといへハ、そんな事ハ、ゑゝきゝわけた。 00019630¥Q宝永四@丁△|△亥@正月吉日△△△△田井利兵衛開版;(十二オ) 00019640¥P65 00019650¥U噺本大系△第七巻 00019660¥T軽口星鉄炮 00019670¥G 00019680¥Y 00019690L15正徳四年刊 00019700L16作者不詳 00019710L17半紙本五巻 00019720L18天理図書館蔵 00019730L19翻刻掲載番号△第九二号 00019740¥Y1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)/巻(まき)之一△/目録(もくろく) 00019750M3一△山/伏(ふし)もんだうの事 00019760M4二△ゑんまもんだう事 00019770M5三△一/休(きう)はなし 00019780M6四△のり合はなし 00019790M7五△ひにん/寄合(よりあい)はなし 00019800M8六△たばこの/煙(けふり)の事 00019810M9七△からしゝのはなし 00019820M10八△大/仏(ぶつ)のはなし(一オ) 00019830M11九△しぎのかんきん事 00019840M12十△こよみ/買(かい)の事 00019850M13十一△/魚(うお)屋のほとけの事 00019860M14十二△たゝき与次郎/色(いろ)ぢや屋/咄(はなし) 00019870M15十三△こゝろちがいの事 00019880M16十四△りくつはなし 00019890M17十五△ひにん酒もり 00019900M18十六△けつばんの事 00019910M19十七△万日ゑこうの事 00019920¥P66 00019930L1△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△一之目録終(一ウ) 00019940¥T1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻一 00019950¥N1¥J 00019960¥X一△山伏もんだうの事 00019970M5ある在家へ山ぶしきたり、かけ出の山ぶし、ときりやうを 00019980M6こひ、ほらのかいをおびたゝしくふき、唯今のかいは、家 00019990M7内/福貴(ふつき)/長久(てうきう)のかいなりといふ。/亭(てい)主聞て、何のまいすらし 00020000M8いことをいやるといゝければ、山伏はらをたてゝ、それな 00020010M9らば/調(てう)伏のかいをふくぞといゝけれは、ていしゆ、内に/割(わり) 00020020M10木をわりていられしか、大キにはらをたて、もちたるなた 00020030M11ひつさげ、(二オ)山伏にむかいければ、山ぶし、こんかう 00020040M12づゑをおつとりのべ、すでにミけんをうたんとしければ、 00020050M13ていしゆ、此ていにおどろき、いやもし、ときりやうに、 00020060M14此なたをしんぜませうといへば、これにても、ときりやう 00020070M15にとるとて、ひつこくりて、にけていんだ。 00020080¥N2¥J 00020090¥X二△ゑんまもんだう 00020100M18此ころある人、はやり/病(やまい)にてあいはてられた。ぢごくのあ 00020110M19るじゑんま大王へまいりいゝけるハ、私ハしやばにて、あ 00020120¥P67 00020130¥G 00020140M1くをつくつた事もござりませぬ(二ウ)ほどに、/極楽(こくらく)へやつ 00020150M2て下されませといふ。ゑんまきゝたまい、もつともあくハ 00020160M3つくらねとも、/後世(ごせ)をねがふたことがないによつて、ごく 00020170M4らくへハならぬ。/今(いま)/一度(いちと)しやばへかへり、ごしやうをねが 00020180M5ふてこいといわれければ、いや、わたくしハしやばにてハ 00020190M6大びんぼうなものでごさります。まへの所ハいやでこざり 00020200M7ますといふ。ゑんまきこしめして、そんならバどこへゆき 00020210M8たいととわれければ、四/条(でう)通に、かねもちのうつくしい/後= 00020220M9家(ご=け)がごさりまする。これへやりてくたさりませといゝけれ 00020230M10ハ、ゑんま(三オ)(三ウ・四オ挿絵)きゝたまへ、そこへハお 00020240M11れもゆきたいといはれた。 00020250¥N3¥J 00020260¥X三△一休はなし 00020270M14ある人、/一休和尚(いつきうおしやう)をときによびけるに、/床(とこ)のかけものに、 00020280M15/若(わか)キ女をはだかにして/絵(ゑ)がきおきけり。一休御らんして、 00020290M16さて+、めつらしいかけものじや。これにさんをしてや 00020300M17らふとて、/諸仏(しよぶつ)/出世(しゆつせ)の/門(もん)、/諸人(しよにん)めいわくの/門(かど)と、あそバし 00020310M18た。 00020320¥P68 00020330¥N4¥J 00020340¥X四△のり合はなし 00020350L3大坂へののり合にて人&寄合、こなたハ/何国(いづく)の人そととふ。 00020360L4わたくしハ丹州てこさるといふ。(四ウ)また、こなたハと 00020370L5とふ。わたくしハ/和州(わしう)じやなどゝ、いつれも州といふ事を 00020380L6いふ。その中にもんもうなる人ありて、わたくしハ天/州(しう)て 00020390L7ごさるといふ。聞人、さて+、きゝなれぬ国てござると 00020400L8いゝて、とわれけれは、かの人いわるゝハ、大坂の天満で 00020410L9ごさるといわれた。 00020420¥N5¥J 00020430¥X五△ひにんはなし 00020440L12ある人、夜に入りて四条かわらをとほられけれハ、ひにん 00020450L13ども、ねはらばいてはなしするをきけば、一人いふやうハ、 00020460L14今ハ米油(五オ)大ぶんたかく、町人しゆ、いかふづゝなが 00020470L15るけなといふ。なるほど、めいわくいたすさうなといへば、 00020480L16かのものいふやう、こちらハ米をかほふとも、あふらをか 00020490L17ほふとも、家ちんを出さうともおもハす、らくなことでハ 00020500L18ないかといへハ、いかにもそうじやが、あまりたかふいふ 00020510L19な。人がなりたがるといふた。 00020520¥N6¥J 00020530¥X六△たばこの/煙(けふり) 00020540M3ある人たばこをのミ、/鼻(はな)よりけふりを出されけれハ、見る 00020550M4人、さてもじゆふなことじや。こなた(五ウ)のかほが、た 00020560M5れにやらにたといふ。今一度出して見せたまへといへば、 00020570M6又一ふくのミて/鼻(はな)よりいたしけれバ、いま思ひ出した。し 00020580M7ゝのかうろににたといふた。 00020590¥N7¥J 00020600¥X七△からしゝのはなし 00020610M10/朝鮮(てうせん)人の上りに、本国寺まへにて下男二人、用事あつて寺 00020620M11へはいる。/一人(ひとり)のものいふやう、そなたハからしゝをミや 00020630M12つたかといへは、いや、ついに見ぬといふ。此内に有。見 00020640M13たくばミせうとて、つれたちゆきけれハ、はやう(六オ)見 00020650M14せてたもといふ。さらば、これミやれとて、下唐人のより 00020660M15合ている小べんたごをバミせて、その中ハミな、からしゝ 00020670M16じやといふた。 00020680¥N8¥J 00020690¥X八△大仏のはなし 00020700M19さる人のいへるハ、大ぶつまへにてみゝかきをひろい、う 00020710¥P69 00020720L1ちへ帰つて見れば、さいしんじやくししやといわれたげな。 00020730L2此ごろ又ある人、大/仏(ぶつ)まへにてみゝかきをひろい、内へ帰 00020740L3りて見られければ、やはりつねのみゝかきであつたといふ 00020750L4た。(六ウ) 00020760¥N9¥J 00020770¥X九△しぎのかんきん 00020780L7ある若キ男二人つれにて、はなしをするをきけば、一人ノ 00020790L8ものいふやうハ、なにと、そなたハ/昆布(こぶ)を取をミやつたか 00020800L9といふ。いや、ついにミぬといふ。昆布をとるのハ、うミ 00020810L10の中へさんせうを壱斗ほどなげると、こぶがくる+とま 00020820L11く。それを切て取といへば、それハこゝろやすいことじや。 00020830L12またそなたハ、しぎを取を見やつたか。いや、ついにミぬ 00020840L13といふ。しぎを取のハ、山中へ/持仏堂(ちぶつだう)をすへておけば、山 00020850L14のしぎども、その内へはいり、(七オ)かんきんをする。そ 00020860L15れを其まゝとるといふた。 00020870¥N10¥J 00020880¥X十△こよミかい 00020890L18ある人、こよミをかほふとて、かど売のをよび、としとく 00020900L19ハ何の方そとといけれハ、亥子の間てこざる。また八せん 00020910M1ハいつからぞ。二月五日といふ。またすもふハいつからぞ 00020920M2といへハ、こよミ売おかしくおもひ、此内をやう御らんな 00020930M3されませといふた。 00020940¥N11¥J 00020950¥X十一△/魚(うお)屋のほとけ 00020960M6あるうおや、阿弥陀如来を一たいもとめて、(七ウ)さき 00020970M7+にてはなしけれハ、かいてのたんなたち、御たけハ何 00020980M8ほとあるそととわれけれハ、うおや、うちかきを取出して、 00020990M9/尾(を)かしらかけて、これほとござりまするとて、一尺二三寸 00021000M10しかたにて見せた。 00021010¥N12¥J 00021020¥X十二△たゝき与次郎色ちや屋咄 00021030M13正月すへつかたに、若き与次郎二人つれにて、かうたい/寺(じ) 00021040M14のあたり、色ちや屋へゆき、二人ながらさしきにいれとも、 00021050M15やましう出ス。あまりおそさに、つねのくせなれハ手を 00021060M16(八オ)たゝんたんとうちけれハ、山しういてゝ、さて+ 00021070M17せわしない手の打やう。たゝきかねをうつやうなといゝけ 00021080M18れハ、かの若いもの共きゝ、我等ふたんまいらぬとて、お 00021090M19あなつりなされるのといふた。 00021100¥P70 00021110¥N13¥J 00021120¥X十三△こゝろちかい 00021130L3おく山家のもの、京のうおのたなをとおり、大キなる/伊勢(いせ) 00021140L4ゑびをミて、ひたものなぶりけれハ、内よりていしゆいて 00021150L5ゝ、さやうにおなふりなされてハ、/手数(てかす)がいりてわろくな 00021160L6り(八ウ)まするといゝけれハ、かの/田舎(いなか)ものいふやう、是 00021170L7ハ見事にぬりたものしやによつて、ぬりやうを見ますると 00021180L8いふた。 00021190¥N14¥J 00021200¥X十四△りくつはなし 00021210L11むろ町通のごふくやに、徳右衛門とて少だうけたりくつな 00021220L12る人あり。ミせにたはこをのミいられける所へ、こゑかい 00021230L13とおりあわせてハ、こなたにこゑハこさりませぬかといへ 00021240L14は、徳右衛門、あるハといわるゝ。こゑかい、見ませうか 00021250L15といふ。なるほとミやれといわるゝ。こゑかい(九ノ十二オ) 00021260L16ミて、あれは何ほとにしてくたされまするとといけれハ、 00021270L17いや、うるのてハないといわるゝ。そんならは、なせに見 00021280L18せさしやつたといへは、はて、見たいとゆやるによつてミ 00021290L19せたといわれた。 00021300¥N15¥J 00021310¥X十五△ひにん/酒(さか)もり 00021320M3ある人、いなりの神事ニ夜に入てかへられける。町の門の 00021330M4すミにて、ひにんともより合て、さかもりをするをミれハ、 00021340M5一人いふやうハ、六助。そなたにさけをふるまおふ。六助 00021350M6聞、(九ノ十二ウ)それハくわぶんとて、かけたる/汁(しる)わんをさ 00021360M7しいたし、半ふんすきうけてのミけるとき、/肴(さかな)をいたしま 00021370M8せうとて/小鯛(こたい)のかしら、かれのほね、いろ+もらいあつ 00021380M9めたるくひさし共を、めんつよりはさみ、六助どの、はし 00021390M10かへましたといふた。 00021400¥N16¥J 00021410¥X十六△けつばん 00021420M13/江州(こうしう)/小谷(こたに)といふ所に、江戸はたもと/衆(しう)のちきやう所あり。 00021430M14ねんぐをかねにて/納(おさ□)候が、年のくれに/在所中(さいしよちう)より合、ねん 00021440M15くの(十三オ)/銀(かね)を/庄屋(しやうや)殿にてあつめ、/地頭(ちとう)殿へいたし候せ 00021450M16つ、五百/包(つゝミ)壱つふんじついたしけれハ、より合のしゆ、い 00021460M17ろをちかへてせんさくしけれ共見へす。此上ハめん+か 00021470M18きものして、けつはんをおしていたされよと申付らるゝ時、 00021480M19此内に、六十/斗(はかり)なる/無筆(むひつ)なる男一人出て、わたくしハもの 00021490¥P71 00021500L1をかく事なりませぬといわれけれハ、庄屋殿申さるゝハ、 00021510L2此方よりかいてやろう程に、そちが/名書(なかき)の上に、けつはん 00021520L3をおして出せと申されけれバ、心得ましたとて、かのきし 00021530L4やう(十三ウ)(十四オ挿絵)もんを、うらのゑんにひろげ、我 00021540L5しりにすミをつけ、/名書(なかき)のうへに、べつたりとこしをかけ 00021550L6られければ、/菊(きく)のやうなはんがついた。 00021560¥N17¥J 00021570¥X十七△万日ゑこう 00021580¥G 00021590M1万日ゑこうへ、六十あまりなる老人三人づれにて、めん 00021600M2+たんほに酒を六七合ほどづゝ/入(い)るを、/皆(ミな)&/懐中(くわいち□)して/念= 00021610M3仏(ねん=ふつ)を一せめ申て、三人ながらちや屋にいり、たうふをかい 00021620M4て大ぶん酒をのまれけるが、もはやいざ、下かうをいたさ 00021630M5うとて、三人ながらせめ念仏をまうし(十四ウ)+、下か 00021640M6ういたされるとき、そのうちに/一人(ひとり)つゑをついて、かねの 00021650M7ひやうしにあわせ、つゑつき+あるかれけるが、さけに 00021660M8ゑい、しやうたいをわすれて、もちたるつゑにて/先(さき)へゆく 00021670M9ぜんもんのあたまを二つ三つたゝかれければ、さき成ぜん 00021680M10もん、これハ何のいしゆがござつてたゝかしやるとて、さ 00021690M11ん+はらをたてらるゝ。その時たゝきたる人、それにて 00021700M12はつときかつきて、/扨(さて)+そさうなることをいたしました。 00021710M13/私(わたくし)ハさけにゑいて、せめ/念仏(ねんぶつ)のひやうしにかゝ(十五オ)つ 00021720M14て、御つむりをたゝきました。まつたくいしゆにてハこざ 00021730M15りませぬ。御ゆるし下されませといふ。せんもん/聞(きゝ)、いし 00021740M16ゆがなけれと、さけにゑいてならバこらへませうとて、先 00021750M17へゆかれけれバ、ぢきをするとて、けがに又一つあてられ 00021760M18た。 00021770¥P72 00021780¥Y1一之巻終(十五ウ) 00021790¥Y1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻二△目録 00021800M3一△/伏見(ふしミ)のとみの事 00021810M4二△とろゝ/汁(じる)の事 00021820M5三△たびのそうの事 00021830M6四△人だまの出し事 00021840M7五△人/喰馬(くいむま)もあいくち 00021850M8六△そさうな人の事 00021860M9七△井のもとの札の事 00021870M10八△かぜの/神(かミ)の事(一オ) 00021880M11九△ふるはかまの事 00021890M12十△はとのかいといふ/占(うらない)の事 00021900M13十一△三輪のうたひ事 00021910M14十二△それもよし 00021920M15十三△/雨(あめ)ふりひにんはなし 00021930M16十四△/豆(まめ)まくはなし 00021940M18△△△△△△△△△△△△△△△二之巻目録終(一ウ) 00021950¥P73 00021960¥T1かる/口(くち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻之二 00021970¥N1¥J 00021980¥X一△/伏見(ふしミ)のとみ 00021990L5あるひんなる人、/小商(こあきない)にてもくらしかね、何ぞ一もうけし 00022000L6て/仕合(しあわせ)したしと思ひ、ふしミのとミにさい+/銭(ぜに)かねを出 00022010L7しけれ共、ついにあたらず。ほそもとで、みなに成る。もは 00022020L8やあきないもならず、うつかりとなりけるとき、しあんを 00022030¥G 00022040M1いだし、今/一度(いちと)/稲荷(いなり)つかのミくじを取て、此ミくししだい 00022050M2にいたさうとて、山/科(しな)のいなりづかにゆき、弐百匁(二オ) 00022060M3のかちにあたり候ハヽ一をくだされとて、ミくじをおしい 00022070M4たゞきふりければ、一がいでけり。またふりければ一かい 00022080M5で、三/度(ど)まて一か出ければ、さて+うたがひもなき御つ 00022090M6げとおもひ、金二朱こしらへ、とミに入レければ、またあ 00022100M7たらず。さて+口おしやとて、はらを立、帰りさまにい 00022110M8なりづかにゆき、ミくじのつゝを打くだきければ、つゝの 00022120M9なかより一が三本いでた。あわぬこそたうりなれ。 00022130¥N2¥J 00022140¥X二△とろゝ/汁(しる)(二ウ) 00022150M12ある人、とろゝ/汁(じる)をして二三人ふるまハれけるが、そのう 00022160M13ちに心ある人、/扨(さて)+けふのことつて/汁(じる)は、ようてけまし 00022170M14たといふ。人&、これハめづらしき御/言葉(ことは)やとたつねけれ 00022180M15ハ、/食(めし)がすゝむゆへに、よく/飯(いゝ)やるといふこゝろじやとい 00022190M16われけれバ、/座中(さちう)、尤とてほめけれハ、其内に一人もんも 00022200M17うなる人、帰りしなにちかづきの所へよりて、けふハさる 00022210M18所で、ことつて汁にてふるまハれたといふ。先の人、それ 00022220M19ハとうした/汁(しる)ぞととハれければ、とろゝじるのことしや 00022230¥P74 00022240L1(三オ)(三ウ・四オ挿絵)といふ。さきの人、なぜにそうハい 00022250L2ふぞととハれければ、よくおだいやるといふ心じやといゝ 00022260L3けれバ、これハたうりがきこへぬとてわらふた。 00022270¥N3¥J 00022280¥X三△たびのそう 00022290L6あるかた/田舎(いなか)に、百性おやの命日に、我かどをおりふし、 00022300L7たびのそう一人とほられけれハ、まうし/御坊(ごぼう)さま。今日ハ 00022310¥G 00022320M1おやの命日にてござります。ときをしんぜませうといゝけ 00022330M2れハ、かの/坊主(ぼうず)、かたじけのふござりますとて、内に入け 00022340M3れば、ていしゆ、七つ斗なる子どもに膳をすへ(四ウ)させ 00022350M4た。ものしらぬ/出家(しゆつけ)にて、/仏前(ぶつせん)にむかい、何にても/経(きやう)をよ 00022360M5まずバなるまいと思ひ、/妙法蓮華経(ミやうほうれんげきやう)/普門品(ふもんほん)第(だい)二十五とよミ 00022370M6て、あとをわすれ、思ひ出せ共出ズ。その間にまぎらす何 00022380M7がなと思ひ、あたりを見れば、ほし/菜(な)五れんつりてあり。 00022390M8これを見て経ごゑを/出(だ)し、一れん二れん三れん四れん五れ 00022400M9んと、はや/口(くち)によミても、いまだおもひ出さず。少まの有 00022410M10けれハ、そばなる七つ/斗(ばかり)なる子、/干菜(ほしな)をよむと思ひ、うら 00022420M11にもまだつりてあるといふた。(五オ) 00022430¥N4¥J 00022440¥X四△人たまの事 00022450M14ある/一人(ひとり)ずミの男、ふら+とわつらいけるが、ともだち 00022460M15見舞、何と気食ハよいかととへハ、いや、かわる事もない 00022470M16が、此中ふしぎなことがある。われらが内より/小(ちいさ)きひかり 00022480M17ものが出たといふ。友だちいふやう、それハ人だまてあら 00022490M18ふ。そなたもかくごしやれ。おつつけしぬるであらふとい 00022500M19へば、/た((さカ))て+せひもない事しや。さりながら、しよくが 00022510¥P75 00022520L1ちく+/喰(くへ)るといふ。それならば、とてもしぬるからハ、 00022530L2くいたいものをは(五ウ)くやれといふ。そんならはとて、 00022540L3少のきるい道具もうり、くいけれと、かわる事なし。そろ 00022550L4+たつしやに成てくいものなけれは、ぜひなくこつじき 00022560L5に出、かど+を、人たまにだまされたものてごさる。た 00022570L6すけてくたされといふた。 00022580¥N5¥J 00022590¥X五△人くい馬もあいくち 00022600L9ざいご馬を十四五なる小/馬子(まこ)におわせ、/道中(たうちう)をとほりける 00022610L10が、かの馬、まごをあなとり、ミちをゆかされは、まご、 00022620L11ぎごわに引けれハ、馬はらをたて、まごをくわんと、はを 00022630L12むいてかゝる。折ふし(六オ)/医者(いしや)ぼんとほり合、あい口を 00022640L13ぬき、馬のつらへさしつけけれハ、これにおそれてくハな 00022650L14んた。それより、人くい馬もあいくちといふ。 00022660¥N6¥J 00022670¥X六△そさうな人 00022680L17ある人、とちうにてちかつきにあい、さて+久しうござ 00022690L18るといふ。さきの人、まことに久しうごさるといふて、こ 00022700L19なたハどなたてこさりまするといゝけれハ、はしめの人、 00022710M1こなたハ見しりませぬといへば、わたくしも見しりませぬ 00022720M2といふた。 00022730¥N7¥J 00022740¥X七△井のもとのふだ(六ウ) 00022750M5大坂の家&にハ井のもとなし。又ほりぬきの井ととて、一 00022760M6町に六七けんほとづゝあり。大かた川水をかふてつかふ。 00022770M7あるとき町のより合に宿老申さるゝハ、此町にハ井のもと 00022780M8のある/印(しるし)なし。ことに火事ばやきしふんなれば、井のもと 00022790M9ある家に井の字をかきて、かど+にはれと申されて、井 00022800M10の字を七まいかきて、町の用人にわたされければ、よく日 00022810M11札を六まいわたし、壱/枚(まい)取てかへり、/宿老(しゆくろう)にわたしけれハ、 00022820M12何とて壱枚あましたととハれ(七オ)けれハ、用人申やう、 00022830M13/医者(いしや)/元立(けんりう)様ハ/門(もん)つくりてござります。/門(かと)かまへに/井(い)の字ハ、 00022840M14見ぐるしうござりまするといふた。 00022850¥N8¥J 00022860¥X八△かせの神 00022870M17大坂にしやうかんはやり、壱町に二人三人わつらいけれハ、 00022880M18町の年寄衆より合、此中町々に風の神をおくるほどに、此 00022890M19町にもおくりやれと申されければ、若キしゆのいわるゝハ、 00022900¥P76 00022910L1たれにても人をかせの神にしたて、これを川へはめてかへ 00022920L2れば、すきといぬる(七ウ)といふ。/年寄(としより)申さるゝハ、たれ 00022930L3にても三百か五百文て、やとわるゝものハあるまいかとい 00022940L4われければ、町の用人出て、五百文くたされまするならバ、 00022950L5わたくしまいりませうと申。それならハとて、かぜの神の 00022960L6しやうそくきせ、あとより町中、太皷かねにておくり、川 00022970L7へはめて、みな+/帰(かへ)りければ、用人、わきミちよりはや 00022980L8くかへり、年寄へすくにゆき、かせの神がもどりましたと 00022990L9いふて、五百文くたされませといふた。 00023000¥N9¥J 00023010¥X九△ふるはかま(八オ) 00023020L12あるしまつなる人、ふるきはかまをかふて内へかへられた 00023030L13れば、そのまゝさうれいをふれてきた。さつそく出られけ 00023040L14れは、また/次(つぎ)の日さうれいにいで、十日ばかりのうちに、 00023050L15五/度(たび)まて出られけれハ、内儀いわるゝハ、さて+けたい 00023060L16わるいはかまじや。内のさうれいにハ一度もつかわぬに、 00023070L17五たひまて出たといふた。 00023080¥N10¥J 00023090¥X十△はとのかいといふうらない 00023100¥G 00023110M12あるうらないさん、町々を、うらないさん+といふてと 00023120M13ほりけれハ、若いしゆ四五人より合(八ウ)(九ノ十二オ挿絵) 00023130M14ている所をとほりあわせける。五人のしゆ、あのうらなひ 00023140M15をよびてなぶるまいかとてよび入、うらなひたのミませう。 00023150M16まづ此五人の内、此家のていしゆをうらないたまへ。あい 00023160M17ましたらバ十二銭やりませうといふとき、なるほど、うら 00023170M18ないました。ていしゆのつふりから、いげがたつといゝけ 00023180M19れば、四人のしゆ、/亭主(ていしゆ)の方を見る。其まゝしれた。よき 00023190¥P77 00023200L1はたらきじや。 00023210¥N11¥J 00023220¥X十一△三/輪(ハ)のうたひ 00023230L4ある人、三輪をうたひければ、ともだち、そば(九ノ十二ウ) 00023240L5に/居(い)てきゝけり。ある夜のむつことに、御/身(ミ)いかなるゆへ 00023250L6により、かく年月をおくるとうたひけれハ、友だちいふや 00023260L7う、これハうたひのぶんがわるい。御身いかなる上にのり 00023270L8と、なをしたらハよかろふといふた。 00023280¥N12¥J 00023290¥X十二△それもよし 00023300L11あるせんもん、/気(き)のけつかうなる人にて、なにきいても、 00023310L12それもよし+といわるゝ。ある人きて、こなたハけつか 00023320L13うなる人と申といへは、それもよしといわるゝ。かの人、 00023330L14ねハあほう(十三オ)しやと申。それもよしといわるゝ。こ 00023340L15なたをたゝかふといふ人があるといふ。それもよしといわ 00023350L16れた。 00023360¥N13¥J 00023370¥X十三△ひにんはなし 00023380L19さミたれのころ、/雨(あめ)ふりつゝき、四五日ほとハそとへ出ら 00023390M1れす。あるひにんふたり、のきの下にすくみいて一人いふ 00023400M2やうハ、何と、けふのはらハ何とあるといゝけれハ、はら 00023410M3ハ/太皷(たいこ)じやといふ。さてもよきもらいかあつたかといゝけ 00023420M4れハ、いや、どうがかわについたといふた。(十三ウ) 00023430¥N14¥J 00023440¥X十/五((ママ))△豆まくはなし 00023450M7ある在所に、はたけにまめをまきけるが、そのあたりの/女(め) 00023460M8ろう、/畠(はたけ)のあぜにしやうべんをしければ、はたけぬし見つ 00023470M9け、さん※にしかりければ、かのおなごいふやう、なぜ 00023480M10にそれほとにしからしやるぞといゝければ、そちがまめを 00023490M11/鳩(はと)が見ると、/豆(まめ)たねをミな、はとがとるといふた。 00023500¥Y1二之巻終(十四オ) 00023510¥P78 00023520¥Y1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻三△目録 00023530L3一△米のはなし 00023540L4二△大坂のり合はなし 00023550L5三△すまふはなし 00023560L6四△久しうあわぬ人 00023570L7五△びんぼう神 00023580L8六△ひん僧のちりやく 00023590L9七△天道人をころさず 00023600L10八△心得ちがいの事(一オ) 00023610L11九△りんきはなし 00023620L12十△月見のはなし 00023630L13十一△/坊主(ほうづ)おちの事 00023640L14十二△/長楽寺(てうらくじ)かい帳 00023650L15十三△碁うちの事 00023660L16十四△将棊さしの咄 00023670L18△△△△△△△△△△△△△△△三之巻目録終(一ウ) 00023680¥T1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻之三 00023690¥N1¥J 00023700¥X一△/米(こめ)のはなし 00023710M5あるひんなる人、二三人より合はなしけるハ、/一人(ひとり)のもの 00023720M6いふやう、此あきハ/殊外(ことのほか)まんさくにて世の中じやに、米の 00023730M7さがらぬハとうしたことぞといゝけれハ、一人のものいふ 00023740M8やう、これハかねもちの米屋めが、大ふんかいおきして、 00023750M9うらぬゆへにさからぬといふ。そばなる人、われらハふう 00023760M10ふに子とも三人あり。なんほほどかせぎても、壱升代ハも 00023770M11うけ出さぬ。三人の子ともにひだるい目をさする。とかく 00023780M12にくい(二オ)ハこめやじやといふ。そはなる人申さるゝハ、 00023790M13こなたのふくりうハひととほりきこゑたか、見れはふうふ 00023800M14ながら若い。またくい口のおほくなろもしれぬ。てまへの 00023810M15千本づきをやめられよといふた。 00023820¥N2¥J 00023830¥X二△大坂のり合はなし 00023840M18此ころ、ある人大坂へ下られける。ふしミよりのり合舟に 00023850M19のられ、なかにて人&にとわれけるハ、こなたの御国ハい 00023860¥P79 00023870L1づくてこさるととわれけれハ、あるひハ近江のものといふ 00023880L2者もあり、又/若狭(わかさ)のものといふものもあり。又こなたハい 00023890L3づくぞと(二ウ)とへば、わたくしハ大坂のものでごさると 00023900L4いふ。大坂ハ米ハ何程いたしまするぞととふ。此人、米の 00023910L5/石買(こくかい)をしらぬ人にて、三/合(がう)が廿四文いたしまするといわれ 00023920L6た。 00023930¥N3¥J 00023940¥X三△すまふはなし 00023950¥G 00023960M1大坂にて、くわんじんすまふあり。/大関(おゝせき)ハ/金錠(かないかり)仁太夫なり。 00023970M2すまふ中入すぎて、大関金錠をのぞミけれハ、金いかり出 00023980M3けり。相手にたれか出て、/行司(ぎやうじ)合せける。しばらくねぢ合 00023990M4けるが、金錠まけたり。そのとき/座中(ざちう)一どに、どつとわら 00024000M5ふ(三オ)(三ウ・四オ挿絵)とき、あるさじきより、/金錠(かないかり)仁太 00024010M6夫との参るといふ花を出しける。かないかりこれを見て、 00024020M7おれハまけたに、名ちがひにてあるべしとよくミれば、ち 00024030M8がいなく我名なり。をしいたゞき、がくやへゆき、/中(なか)をミ 00024040¥G 00024050¥P80 00024060L1れば、/正気散(しやうきさん)一ふくあり。ふしんにおもひ、かきつけをミ 00024070L2れば、これをのミ、/関(せき)をやめられよとかいた。 00024080¥N4¥J 00024090¥X四△久しうあわぬ人 00024100L5ある人、とちうにてちかづきにあい、さて+久しうあわ 00024110L6なんたか、たつしやなかといゝけれハ、なるほど(四ウ)た 00024120L7つしやなが、こなたハきつういろかあをいか、なにとなさ 00024130L8れたといゝけれハ、されバ、へちにおほへハないか、さり 00024140L9なから、そんな事もあろふ。此中ハ/八木(はちほく)か/高(かう)じきになつて、 00024150L10六せうの米をくふほどに、さうもあらふといふた。 00024160¥N5¥J 00024170¥X五△ひんぼう/神(かミ) 00024180L13都西ぢんのあたりに/小商(こあきない)するものあり。かたのわるきゆへ 00024190L14か、とし+きわのしまいあしくて、何事もおもふやうに 00024200L15ならす。ひだりすまふとるやうなこととて、あんしいる所 00024210L16へ、かたのうへより、(五オ)何やらまへにおちけるを見れ 00024220L17ば、五つばかりなる小ほうずなり。おのれハ何ものじやと 00024230L18といけれハ、日ころこなたについているびんぼう神しやと 00024240L19いふ。さて+うれしやとて、女ぼう子どもをよひ、これ 00024250M1を見よ。日ころ我らについているびんぼう神じや。打ころ 00024260M2そうと思へとも、いぬるからハたすけていなそうといへバ、 00024270M3びんぼう神わらいていふやう、あまたのひんぼう神か、そ 00024280M4なたに付ている。此ころ又しらぬびんぼう神がきたによつ 00024290M5て、いところかなさに、けがにおちたといふた。(五ウ) 00024300¥N6¥J 00024310¥X六△ひん僧のちりやく 00024320M8ある/田舎(いなか)の田のあぜを/道心者(だうしんじや)とほりける。ころハ五月田う 00024330M9へのぢふんに、ゆかおけといふわけものに、ひるめしを入、 00024340M10大きなるごきに五はい入りてあるを、かのひん僧ミて、さ 00024350M11て+百性しゆハぢきがほそい。我らならバ、一人して五 00024360M12はいくおうとゆふてとほりけれハ、五人のうち若き百性出、 00024370M13さて+大しよくなぼうずかな。いさ、くわしてミやう。 00024380M14ゑくわずハ、だうをうたせて、うちころそうといゝあわせ、 00024390M15よびかへし、御ぼう。五はい(六オ)くやるならハくわせう。 00024400M16ゑくわずは、たうをうたす/が((ママ))といゝけれハ、なるほとくい 00024410M17ませうとて、まつ一はいくいて、もはやくわれぬといふ。 00024420M18五人のものとも、はらをたて、ぼうずの手あしを取て、こ 00024430M19ろすはづになりけるとき、五人内としよりたるものいふや 00024440¥P81 00024450L1うハ、何とて一はいのめしに、/命(いのち)をとらるゝぞとといけれ 00024460L2ば、今のひだるさてハ、五はいくおうとおもひましたか、 00024470L3ぜひにおよびませぬとゆいけれハ、かのとしよりいふやう、 00024480L4/今日(きやう)ハ我らかおやのめい日じや。たすけ(六ウ)てやれとい 00024490L5ふた。 00024500¥N7¥J 00024510¥X七△天道人をころさず 00024520L8ひんなる/一人(ひとり)すみの/男(おとこ)、ふら+とわつらい、身すきもせ 00024530L9ず、うか+とねてはかりいけるが、二三日が/間(あいだ)くいもの 00024540L10くハす、あまりひだるくなりて、/目(め)まひごゝろになりけれ 00024550L11ハ、大きなるこゑを出して、であへ+。人ころしよ+ 00024560L12とよハわりけれバ、あい/借屋(じやくや)のしゆ出合て、なにとしやつ 00024570L13たといゝけれバ、/天道(てんだう)人をころさすといふに、/今日(けふ)まで三 00024580L14日くハぬに、もう/目(め)かまふて(七オ)しぬるゆへ、天道人を 00024590L15ころすといふものじや。それゆへにこゑをたて、よびまし 00024600L16たといふ。ミな+大わらいして、まづめし一はいづゝ五 00024610L17六はいよりければ、それでたすかつた。 00024620¥N8¥J 00024630¥X八△心得ちかい 00024640M1あるやぶ/医者(いしや)の所へ、権右衛門といふ人、状をやらける。 00024650M2/文(ぶん)ていに、此中ハ/久敷(ひさしく)御出も御座なく候。/随而(したがつて)我等むすめ 00024660M3りん、此中ふら+わつらい申候。御出被成候而、御りや 00024670M4うじ頼上申候と、かいてやられければ、いしやの内儀、状 00024680M5よまるゝ(七ウ)を/聞(きゝ)て、見まハしやる事ハ/無用(むよう)といわるゝ。 00024690M6なぜにさういふぞととわれけれハ、したがつてわつらふむ 00024700M7すめに、とう、くすりがまハるものぞといふた。 00024710¥N9¥J 00024720¥X九△りんきはなし 00024730M10/川原(かわら)町新からす丸に五郎兵へといふ/大工(だいく)あり。此男しやう 00024740M11わるにて、女ぼうもちながら、ほかにほうこう人をてかけ 00024750M12にして、さい+出あひけるを、女ぼうしつて、やゝもす 00024760M13れハめうといさかいして、こゑ/高(たか)くゆいやひけるとき、あ 00024770M14いしやく屋に弥兵へとて、さかなうり有。いさかいの有 00024780M15(八ノ十一オ)ときハ、弥兵へゆきて、中なをりさしてすま 00024790M16しける。又あるときいさかひけれハ、弥兵へか女ほう、わ 00024800M17かおとこのあたまを二つ三つたゝく。弥兵へ、これハどう 00024810M18したことそ。気がちがふたかといゝけれハ、あの五郎兵へ 00024820M19のやうに、/性(しやう)のわるいことしやるなといふことじやといふ 00024830¥P82 00024840L1た。 00024850¥N10¥J 00024860¥X十△月見のはなし 00024870L4うとくなる人、ざしきにて女ほう子どもなどうちまじり、 00024880L5月をミてあそハれけるが、ざしきの/前(まへ)に松一本あり。月す 00024890L6こしミへず。(八ノ十一ウ)/亭主(ていしゆ)いわるゝハ、あの松ハ/女松(めまつ)か 00024900L7おまつかととハれければ、/内儀(ないき)、めまつでござらふ。月の 00024910L8さわりしやほどにといわるゝ。十ヲ/斗(ばかり)なる/男(をとこ)の/子(こ)いふやう、 00024920L9あれハ/男松(おまつ)てござるといふ。なぜにととへば、/松(まつ)ふぐりが 00024930L10両方に二つあるほどにといふた。 00024940¥N11¥J 00024950¥X十一△/坊主(ぼうづ)おちの事 00024960L13ある/坊主(ほうづ)、身もちらんぎやうにて、ついに/俗(そく)になりて、ほ 00024970L14そ※あきないしてくらしけるが、ねんごろにするともだ 00024980L15ちあり。ぞくになられて、まだあわず。ふとたづねよりて、 00024990L16(十二オ)たがいに/咄(はなし)けるが、見ればでびたいに/鼻(はな)ひしげ、 00025000L17ほうさきとがりける/下女(げじよ)あり。あれは下/主(す)にてあるかと、 00025010L18小ごゑにてといければ、いや、我らが/女房(によぼう)じやといふ。/聞(きく) 00025020L19人おどろき、こハ/何(なに)のいんぐわに、あれていのものにそわ 00025030M1るゝぞとわらひけれバ、何事をいわるゝぞ。/落口(おちくち)にハ/目(め)が 00025040M2見へなんだといわれた。 00025050¥N12¥J 00025060¥X/十三((ママ))△/長楽寺(てうらくじ)かい帳 00025070M5ひがし山長楽寺に、二月より五月まで、一もり/長者(てうじや)の/大黒= 00025080M6天(だいこく=でん)かい帳に、見せものいろ+あり。(十二ウ)その/中(なか)に若 00025090M7キ女に、人めんさうといふやまひ有とて、はらに人のかほ 00025100M8をかきて、やまひしやといゝ見せければ、ミる人、これハ 00025110M9人のはらに絵をかいたものとおもひながら、さてもめづら 00025120M10しいものしや。此おなごの帯のしたが見たいといわれた。 00025130¥N13¥J 00025140¥X十四△/碁(ご)うち 00025150M13ある人/碁(ご)をすきて、ともだちしゆへさい+ゆかれけるか、 00025160M14夜食に/赤(あか)がいのねりミそを一しゆにて、めしくい+、碁 00025170M15をうたれけるか、(十三オ)/先(さき)の人も、石を一つうつてハめ 00025180M16しをくわるゝ。/白石(しろいし)のかた一もくうてバ黒も/打(うち)、いま一も 00025190M17くにて大ふんのそん有るゆへに、白石壱つ/打込(うちこミ)ければ、/黒(くろ) 00025200M18の/方(かた)、そうハさせぬとて、ごげを取ちがへ、つぼ/皿(さら)のあか 00025210M19がいを一つつまミ、碁/盤(ばん)の上へうちければ、/盤中(ばうぢう(ママ))がねりミ 00025220¥P83 00025230L1そになつた。 00025240¥N14¥J 00025250¥X十五△/将棊(しやうぎ)さしの咄 00025260L4ある人将棊をさし/習(なら)い、さい+町内へゆかれける。ある 00025270L5夜/急用(きうよう)あつて、内のもの(十三ウ)をよびにやりければ、今 00025280L6すこしまて。この将棊をしまいしだい帰らふといわるれば、 00025290L7つかひのもの、いや、/唯今(たゞいま)御/目(め)にかゝりたいとおほせられ 00025300L8まするほどに、まづ御かへりなされませといへば、そんな 00025310L9らバさしさいて帰るとて、さう+かへられけるが、我所 00025320L10のくゞりをあけて内へもいらず、たちていらるゝ。/供(とも)/の((の衍))の 00025330L11ものいふやう、なぜにおはいりなされませぬといゝければ、 00025340L12こうゆけバ/角(かく)がいるといわるゝ。こちらをおとほりなされ 00025350L13ませといへば、(十四オ)/桂馬(けいま)がいるといわるゝ。うちのも 00025360L14の、いやこれは/将棊(しやうぎ)でハござりませぬといへば、まことに 00025370L15そうじやとて、気がついた。 00025380¥Y1三之巻終(十四ウ) 00025390¥Y1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻四△目録 00025400M3一△いろだんぎ 00025410M4二△あちらこちら 00025420M5三△ぜんご/相違(さうい)の事 00025430M6四△かたいぢな人の事 00025440M7五△ひわだやはなし 00025450M8六△しうくの事 00025460M9七△ときぼんのはなし 00025470M10八△八けいのかへし(一オ) 00025480M11九△/下帯(したおび)のいわれの事 00025490M12十△人/相(さう)見たての事 00025500M13十一△大きなちがい 00025510M14十二△そさうなだんな 00025520M15十三△/紅(へに)しぼりの/下帯(したおひ) 00025530M16十四△老女のよめいり 00025540M17十五△ひにんあいさつ 00025550M18△△△△△△△△△△△△△△△四之巻目録(一ウ) 00025560¥P84 00025570¥T1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻之四 00025580¥N1¥J 00025590¥X一△いろだんぎ 00025600L5あるてらのじうぢ、ふぎやうぎにて、/色(いろ)ぢや屋のことばを 00025610L6いだし、だんぎとかるゝ。十夜ねんぶつハあミだ/如来(によらい)御ほ 00025620L7うしやなり。しかるに、ミだの御本ぐわんのおもハくハ、 00025630L8しよわけのたつた事。/神(しん)ぞ、/余経(よきやう)にかやうのありがたきこ 00025640L9とハ見へぬといわれけれハ、まいりしゆ、くつ+とわら 00025650L10いける。/和尚(おしやう)きこしめし、いつれものきのやりやうがわる 00025660L11いといわれたが、またわらふた。(二オ) 00025670¥N2¥J 00025680¥X二△あちらこちら 00025690L14/都(ミやこ)かわら町に好色なるおやぢあり。となりの徳兵への女ほ 00025700L15うを見て、時&ざれことをいゝけれハ、此やうすを徳兵へ 00025710L16見て、町の/宿老(しゆくろう)殿へゆき、事のついてにいわるゝハ、わた 00025720L17くしの女ともをば、となりの人いろ+とくどかれますが、 00025730L18かりそめながら、かうじてハはり付たう※てこさる程に、 00025740L19御いけんをたのミまするといゝけれハ、/宿老(しゆくろう)/聞(きゝ)、なるほど 00025750M1いけんをしませうとて、喜右衛門が/子(こ)喜兵へをよひ付、こ 00025760M2なたハ若げにて、となり(二ウ)の徳兵へ殿の内儀に、ざれ 00025770M3ことをいわるゝけな。今よりすつきりとやめさしやれ。二 00025780M4人共に/首(くび)のだうぐしやと申されけれハ、喜兵へ聞、それハ 00025790M5わたくしてハござりませぬ。/親父(おやぢ)てござります。しやうの 00025800M6わるいおやぢをもちますれハ、夜がねられませぬといふた。 00025810¥N3¥J 00025820¥X三△ぜんご/相違(さうい) 00025830M9ある町に、じしんばんにあたりたる人、/夜番(やはん)をやとひ、そ 00025840M10の方ハよくばんをいたすげな。/今夜(こんや)ハ此方へたのむ。ずい 00025850M11ぶんせい出して(三オ)たも。めしもさけものミやれと申さ 00025860M12れければ、/夜(や)ばんいふやう、さけハいらぬものてござりま 00025870M13するといふ。なぜにととわれけれハ、ねふりがまいります 00025880M14るといふ。ていしゆきゝ、さて+きのついた人じや。さ 00025890M15りながら、すこしのミやれとて、ちやわんに一つのまされ 00025900M16ける。しはらくあつて、ちやものんでゆけといわるれハ、 00025910M17さいせんのことばをわすれ、ちやハいらぬものでござりま 00025920M18すといふ。なせにととへば、/夜(よ)がねられませぬといゝけれ 00025930M19ハ、大キにしかられた。(三ウ) 00025940¥P85 00025950¥N4¥J 00025960¥X四△かたいぢ 00025970L3ある人/二人(ふたり)つれにて、ちか田舎へ下られけるが、/道(ミち)のかた 00025980L4ハらに大きなるゑの木あり。一人いふやう、さても大きな 00025990L5るゑの木じやといへハ、/又(また)一人のいふハ、これハむくの木 00026000L6じやといふ。かの人いわるゝハ、あれほと、ゑのミがなつ 00026010L7てあるにといわれけれハ、なんぼゑのミがなつても、木は 00026020¥G 00026030M1むくの木じやといふた。 00026040¥N5¥J 00026050¥X五△ひわだやはなし 00026060M4あるひわだや二三人、やねをふきけるが、/下(した)へ(四オ)しや 00026070M5うべんしにおりけれハ、そのミぞのはたに、せきたなをし、 00026080M6しごとをしいけるが、やねやにむかいいふやう、こなたと 00026090M7わたくしとハいかゐちがいじや。こなたハ人のあたまのう 00026100M8へにてしごとをなされるが、我らハ人のあしにはくせきだ 00026110M9を/土(つち)のうへにていたす。大きなるちがいじやといゝければ、 00026120M10ひわだやいふやうは、そなたのしごとハ中しやといふ。こ 00026130M11れよりしたがごさるかといゝけれハ、井のもとほりをミや。 00026140M12/地(ぢ)より下にてするハといふた。(四ウ) 00026150¥N6¥J 00026160¥X六△しうく 00026170M15あるきたう寺へ、だんなしゆまいられ、/不動(ふだう)のまへに/供物(くもつ) 00026180M16にもち三つあり。あのもちを、こんがらとやいてくいたい 00026190M17といわれけれは、ほうゐんいでゝ、くひたくばくハしやれ。 00026200M18たれぞせいたかといふた。 00026210¥P86 00026220¥N7¥J 00026230¥X七△ときぼんのはなし 00026240L3ある人、こゝろやすき/僧(そう)にあい、/明日(ミやうにち)ハわれらこゝろざし 00026250L4の日にてござる。ときに御出被成といゝ、/菜(さい)ハわらびてこ 00026260L5さるといへは、わらびハむやうになされ。口がやけませう 00026270L6と、かる口を(五オ)いわるれば、いや、くるしうござらぬ。 00026280L7けしあへにいたすといわれた。 00026290¥N8¥J 00026300¥X八△八けいのかへし 00026310L10あるらく人、もんぜきまいりして、ミちにてしる人になり、 00026320L11下かうにつれたち、そろ+はなし+いわるゝハ、貴様 00026330L12ハ源氏のばんしやうハミさしやつたかといわるれば、さて 00026340L13ハ、われを八けいもしらぬもんもうなるものとおもひ、な 00026350L14ふるとこゝろへ、ついに見ませぬが、またこなたハ平家の 00026360L15らくかんハミられたかといふた。(五ウ)(六オ挿絵) 00026370¥N9¥J 00026380¥X/十((ママ))△した/帯(おび)のいわれ 00026390L18若キもの二人より合、ひとりがいふやう、下帯ヲまわしと 00026400L19いふハ、とふしたことぞとといければ、それハこしをまわ 00026410M1すゆへじやといふ。又ふんどしハたふしたことぞといゝけ 00026420M2れは、それハふんおとしといふことじやといゝければ、/誠(まこと) 00026430M3をきいてから、むさうなつたといふた。 00026440¥N10¥J 00026450¥X十一△人/相(さう)見たて 00026460M6あるざい所へ、がうまわりに大官しゆ参れけるが、百性し 00026470M7ゆよりちさういたし、御まへつい(六ウ)しやうを申なかに、 00026480M8/人相(にんさう)を見て/寿命(じゆミやう)をかんかへるといふものあり。/大官(だいくわん)殿の御 00026490M9まへにいでける。/大官(たいくわん)、じゆミやうをといたまへは、御/寿= 00026500M10命(しゆ=ミやう)ハ/九十歳(くじうさい)といふ。又御/家老(からう)殿ハ七十五といへバ、まづよ 00026510M11き見たてじやと御/機嫌(きけん)よく御立なされた。あとにて、其方 00026520M12人相のうらなひハ、とふしたことにて左様にいふぞととい 00026530M13ければ、/殿(との)の/鼻(はな)の下が/九分(くぶ)ある。家老ハ七ぶ半ある。その 00026540M14長さにてうらなふたといふ。そのとき/聞人(きくひと)おかしくおもひ、 00026550M15/東方(とうぼう)/朔(さく)ハ/九千歳(くせんざい)といふが、(七オ)/鼻(はな)の下が九尺あるかとて、 00026560M16大わらひになつた。 00026570¥N11¥J 00026580¥X十二△大きなちがい 00026590M19京三条の大はしを、若キもの二人つれにて東へゆきければ、 00026600¥P87 00026610L1むかふよりちや屋女一人、きれいに出たち西へくる。ひと 00026620L2りの若いものいふやうハ、あれハ/八坂(やさか)のものじやといふ。 00026630L3また一人ハ、/稲荷(いなり)あたりのものじや。すこしげびたといふ。 00026640L4いや、八坂ものじやとあらそひゆく。東から六十/斗(ばかり)のおや 00026650L5ち、これハ/何(なん)のせんさくでごさるとといければ、一人の 00026660L6(七ウ)ものいふやう、女の/方(ほう)をゆびをさし、あれは八坂の 00026670L7ものといゝけれハ、一人、いや、いなりじやと申ことじや 00026680L8といふ。かのおやぢ、女のことハきかず、/二人(ふたり)ともにちか 00026690L9いました。あれハ大仏の瓦やきのけふりてござるといふた。 00026700¥N12¥J 00026710¥X十三△そさうなだんな 00026720L12ある人、おやふたり女ぼう子とも、ぬしともにならび/居(い)て 00026730L13/朝(あさ)めしをくていらるゝところへ、/一門(いちもん)/中(なか)より、/歳暮(せいほ)のいわ 00026740L14ひをもつて十四五なるてつちきて、/口上(こうしやう)をゆひけれハ、/下= 00026750L15女(け=じよ)うけ(八ノ十三オ)とりて、さて+/遠(とほ)い/所(ところ)をはやうござ 00026760L16つた。あさめしをくふていきやれといゝければ、でつち、 00026770L17いや、下されますまいとしんしやくいたしけれハ、かのだ 00026780L18んなきかれて、われかいわれぬつびじんしやくをせずと、 00026790L19くいおれといわれた。おやのまへでハ、ちとさし合じや。 00026800¥N13¥J 00026810¥X十四△べにしぼりの下帯 00026820M3ある町のかミゆいのむすこ、やすミの日をかんがへて、あ 00026830M4たごへまいらんと思ひたち、べにしぼりの下帯をこしらへ、 00026840M5あさくらき/内(うち)(八ノ十三ウ)(十四オ挿絵)にしだくして出ける 00026850M6が、三条通をにしへゆき、町はつれより、しりを/七(しち)のづま 00026860M7でからげて八もんじにあるきければ、むかふよりざいごも 00026870M8の、大ぜいつれにて東へきたりけるが、まへを見て、ミな 00026880M9+わらひけれバ、かのかミゆいおもふやう、さてハべに 00026890M10しぼりの下帯をミて、おかしくおもふさうなと思ひ、ふと 00026900M11まへを見れば、まわしをかゝずにいる。これハとておもひ 00026910M12出せハ、/下帯(したおび)ハ枕もとにたゝんでおいた。 00026920¥N14¥J 00026930¥X十五△老女のよめ入(十四ウ) 00026940M15京かわら町に五十ばかりなる/後家(ごけ)あり。大津ににあいのや 00026950M16もめありけれバ、それへよめ入をしられけるか、ふるきつ 00026960M17ゞら、はさみ/箱(はこ)、よぎなどをバむまにつけ、中のりして下 00026970M18られける。ミちばたにさわる/荷物(にもつ)あれば、まご、あとより、 00026980M19のいてと/馬(むま)にゆいけれは、此女ぼうきにかけ、まご、此馬 00026990¥P88 00027000¥G 00027010L12をあとへもとしてたも。おれハ此としでもよめ入をする。 00027020L13のいてとゆやるがきにかゝるといへば、まごきいて、尤て 00027030L14ごさる。けれとも、こちらへよれば、さきのむまとそうて 00027040L15/行(ゆき)まする。(十五オ)よつてむまがあふといふものでござる 00027050L16といゝければ、それならばゆかふといわれた。 00027060¥N15¥J 00027070¥X十六△ひにんあいさつ 00027080L19こつじきもそれ+にかしらあり。三条/大橋(おゝはし)にて、西の方 00027090M1より若キ女のこつしき、/東(ひがし)へ/行(ゆく)。東の方よりも五十あまり 00027100M2なる女のこじき、/西(にし)の方へきたる。若キこつじきにいふや 00027110M3う、やれなべよ。おれがむすめのよしハ見なんだかといふ。 00027120M4なべいふやう、なぜにとわせられまするといふ。/夕部(ゆふべ)かす 00027130M5のあらいさけがあたつたといふたが(十五ウ)といゝければ、 00027140M6御きづかいなされまするな。たゝ/今(いま)三条むたうの町に、/軒(のき) 00027150M7の/下(した)に/湯(ゆ)のこをばあがつてござりましたといふた。 00027160¥Y1四之巻終(十六オ) 00027170¥P89 00027180¥Y1/軽口(かるくち)星鉄炮巻五△目録 00027190L3一△見どうしのうらなひ 00027200L4二△/侍(さむらい)/船頭(せんどう)もんだう 00027210L5三△もんもうなあいさつ 00027220L6四△/雨夜(あまよ)のしやうべん 00027230L7五△雪のほつくの事 00027240L8六△うたひこうの事 00027250L9七△あつめ/舞(まい)の事 00027260L10八△/雨(あま)こひの/能(のふ)の事(一オ) 00027270L11九△/誓願寺(せいがんじ)/人穴(ひとあな)のくわんじん 00027280L12十△とちうのあいさつ 00027290L13十一△こもぞうの事 00027300L14十二△竹田がはなし 00027310L15十三△うそをそだてる事 00027320L16十四△ふるながもち 00027330L17十五△むくりこくり 00027340L18△△△△△△△△△△△△△△△五之巻目録終(一ウ) 00027350¥T1/軽口(かるくち)/星鉄炮(ほしてつほう)巻之五 00027360¥N1¥J 00027370¥X一△見どうしうらなひ 00027380M5若キ男商売もせず、ぬらりすぎに/浮世(うきよ)をわたりけるが、見 00027390M6どうしのうらなひといゝて、かた/田舎(いなか)をあるきければ、あ 00027400M7るざいしよのおやぢよびて、今日此家にうせたるものがご 00027410M8ざる。こなたハミどうしのうらなひをなさるゝならば、う 00027420M9らなふて下されといへば、かの男、なるほどしれましたと 00027430M10て、家の内をみまハせは、/牛(うし)べやにうしが見へず。さてハ 00027440M11うしがはなれたとおもひ、うせものハ(二オ)黒きものじや 00027450M12といふ。おやぢ、なるほど、黒きものでごさるといふ。/耳(ミヽ) 00027460M13があらふが。なるほと、ミヽがこざるといふ。かの男、さ 00027470M14てハうしに極たと思ひ、うせものハむかいの山のあなたに 00027480M15草をくふているといへバ、おやぢいふやう、うせものハな 00027490M16べてござるが、なべも草をくいまするかといふた。 00027500¥N2¥J 00027510¥X二△/侍(さふらい)/船頭(せんとう)もんだ/い((ママ)) 00027520M19ある侍、/播(はり)磨へ下るとて、大坂にて舟まちをバしけるが、 00027530¥P90 00027540¥G 00027550L13/舟頭(せんとう)、ふねが出まするとて、のりてしゆを宿+へよびに 00027560L14行けるが、侍二人、下人一人つれ(二ウ)てふなばたへきて、 00027570L15舟にのらふといゝければ、せんどういふやう、御まへ様ハ 00027580L16どこのおきやくでごさるといゝければ、侍きいて、今ばし 00027590L17の/木綿(もめん)屋の客といゝけれバ、御名はなにと申まするととい 00027600L18けれバ、身ともハ/荒波(あらなミ)龍右衛門と申。そのつぎにごさるハ。 00027610L19大西福右衛門と申。御供の人ハ何と申といゝければ、らい 00027620M1でんの新蔵と申といふ。船頭きいて、此三人の衆ハ、ふね 00027630M2にのせますることハなりませぬといふ。侍はらをたて、た 00027640M3うしたことでのせぬ(三オ)ぞといゝければ、いや、きつけ 00027650M4うがわるい。大西が吹て、あらなミがたつて、しんだうら 00027660M5いでんしたらば、船ハたまるものでハござらぬといふた。 00027670¥N3¥J 00027680¥X三△もんもうなあいさつ 00027690M8さる人、とちうにてちかづきにあい、此中は久しうあいま 00027700M9せぬ。さて、こなたも御ちかづきの徳兵へ殿、此中しなれ 00027710M10ましたといゝければ、先の人いわるゝハ、けつかうな御人 00027720M11て有たに、しやうしな事のといわれければ、かの人聞て、 00027730M12ろうしやうふじやうといふことをいゝちがへ、(三オ)四オ 00027740M13挿絵)ちやうりやうふりやうでごさるといわるれハ、さき 00027750M14の人、まことに、ひうやらひやうりでござるといふた。 00027760¥N4¥J 00027770¥X四△/雨夜(あまよ)のしやうべん 00027780M17かた/田舎(いなか)にそさうなる人あり。すこし雨ふりければ、夜中 00027790M18にねやのさきなる竹ゑんから、しやうべんいたされけるが、 00027800M19/初夜(しよや)の時分から九つしぶんまて、うちへいらず。女ぼうふ 00027810¥P91 00027820L1しきに思ひ出て見れば、立ていらるゝ。女ぼういふやう、 00027830L2何をしてごさるとといければ、いや、しやうべんをするが、 00027840L3今夜ハ大ぶん出るといわるゝ。女ぼういふやう、(四ウ)そ 00027850L4れハこなたのしやうべんでハござらぬ。とゆの雨おちのお 00027860L5とじやといゝけれハ、それで気がついて、身をなでゝミれ 00027870L6ば、つめたうなつた。 00027880¥N5¥J 00027890¥X五△雪のほつく 00027900L9/宗祇(そうぎ)法師、霜月の比、雪ふりに馬にのり、あづまへ下られ 00027910L10ける。/越(ゑち)川をとほられければ、/馬子(まご)いふやう、そうぎさま、 00027920L11此ゆきに一句いたしましたといふ。何としたぞととわれけ 00027930L12れば、雪ふれバかわらの石も/頭巾(づきん)きるといふ。宗祇、下の 00027940L13句を付やうとて、日がてりやぬぐといわれた。(五オ) 00027950¥N6¥J 00027960¥X六△うたひこう 00027970L16ある若いしゆより合、/謡講(うたいこう)をいたされけるが、かなわのう 00027980L17たひに、/御手蔵(ミてくら)に三十番神まし+てといふことをうたひ 00027990L18ぞこない、またぐらに三十番神まし+てとうたひければ、 00028000L19聞人、さてもめいわくな所へ三十番神をおきましたとわら 00028010M1いければ、そばなるおどけたる人いわるゝハ、りんきの/謡(うたひ) 00028020M2じやほどに、またぐらのばんをなさるゝ事もあらふといふ 00028030M3た。 00028040¥N7¥J 00028050¥X七△あつめ/舞(まい)(五ウ) 00028060M6ある若キ男、京よりごう州へあきないに下り、さる/在所(ざいしよ)に 00028070M7とまり、夜はなしのついでに、ミなのしゆ、/舞(まい)をまふて見 00028080M8せうかといゝければ、なるほど見ませうとて、より合見居 00028090M9けれバ、かの男おもふやう、/田舎(いなか)ハ何もしるまいと思ひ、 00028100M10まづ/能登(のと)殿ハ/次信(つぎのぶ)をいおとせば、かげ清ハミおのやをおつ 00028110M11かけた。かねひらハあわずが原のまくり切、馬にふまれた 00028120M12ものどもハ、あわれなりけることどもなりと、二三べん舞 00028130M13ければ、けんぶつのうち、ばゝ、なミだをこぼしけれバ、 00028140M14かの男、何とばゝ。あわれ(六オ)なかとといけれバ、いや、 00028150M15あわれにハないが、おれが/孫(まご)を京へのぼしたが、そなたの 00028160M16やうに、あほうをつくさうかとおもへバ、かなしひといふた。 00028170¥N8¥J 00028180¥X八△/雨(あま)ごひの/能(のふ) 00028190M19/江州(ごうしう)/小谷(こだに)といふざい所に、あまごひの御れいの能あり。ざ 00028200¥P92 00028210L1いしよのしゆ、ミな+けんぶつに出らるゝ。そのあたり 00028220L2に徳助といふ人有。ついにのふといふものを見たことなし。 00028230L3あたりの人、かの徳介をバさそひ、けんぶつに出ければ、 00028240L4/三番三(さんばんさう)すぎて、わきのふに高砂なり。今をはじめの/旅(たび)ごろ 00028250L5も、日も(六ウ)ゆくすへぞ久しき。/抑(そも+)是ハ九州ひごのく 00028260L6にあそのミやのかんぬし、ともなりとハ我ことなりとうた 00028270L7ひければ、徳助立てもどる。ミなの人いふやう、なぜに徳 00028280L8助どのハ御たちなされるぞといゝければ、徳介いふやう、 00028290L9此のふハ、人あほうにしたのふしや。あれがどこにあその 00028300L10宮のかんぬしじやぞ。あれハいつも京よりくる小間物屋の 00028310L11十兵へじやといふて、はらをたてた。 00028320¥N9¥J 00028330¥X九△/誓願寺(せいぐわんじ)人/穴(あな)のくわんじん 00028340L14あるさいかくな人、/奥国(おくくに)へ下り、/在&(ざい+)を誓願寺(七オ)人あ 00028350L15なのくわんじんといゝ、かど+をもらひとほられける。 00028360L16ざいしよのしゆ、ついにせいぐわんしの人あなといふこと 00028370L17きかぬか、まづそなたは何といふ人ぞとといけれバ、わた 00028380L18くしハ又吉と申、人/穴奉行(あなぶぎやう)てござるといゝけれバ、それな 00028390L19らバ、いつぞ京へ上りておたづね申さうとて、/米銭(こめぜに)かど 00028400M1+にて取帰りて、女ぼう子どもをやしないて、らく+ 00028410M2とくらしける。あるとき、かの/在所(さいしよ)の人京へのぼり、せい 00028420M3ぐわんじのあたりにて又吉をふと見合、扨+よい所で 00028430M4あいました。かの人(七ウ)(八ノ十二オ挿絵)/穴(あな)を見せて下さ 00028440M5れといゝければ、なるほど見せませうとて、/我宿(わがやど)へつれ/行(ゆき)、 00028450M6/二人(ふたり)の子ども/女房(にうほう)をミせ、あの三人の人穴をうめますると 00028460M7いふた。 00028470¥N10¥J 00028480¥X十△とちうのあいさつ 00028490M10ある人、大坂のちかづきに久しうであい、さて+久しう 00028500M11ごさる。今ほどハ大坂ハどこにごさるととひければ、御ぞ 00028510M12んじのとほり、もとハ今ばし/筋(すし)に、けつきのつよひぢぶん 00028520M13にハ、/緒(を)屋していましたが、只今ハさこ/場(ば)に/納(な)屋していま 00028530M14するといふた。きをつけると、さしあいじや。(八ノ十二ウ) 00028540¥N11¥J 00028550¥X十一△こもそう 00028560M17京ちかき/白川(しらかわ)といふざいしよのある家に、若い/者(もの)四五人 00028570M18あそびいる所へ、こも/僧(そう)尺八をふきて、かと口にきたりけ 00028580M19れば、内より、いかいへたじや。あれほどにハしりでもふ 00028590¥P93 00028600L1くといゝければ、かのこも僧はらを立て、しりで尺八がな 00028610L2るならバ、此尺八をたゝやらふといゝければ、いかにもし 00028620L3りでふかうといふ。こもそういふやう、ならずば何をくし 00028630L4やるといふ。ぜに壱貫文やらふといふ。さらばふきやれと 00028640L5て尺八をわたしけれバ、(十三オ)やかて尺八を請取、さか 00028650L6さまにしてしりからふきけれバ、よほどなつた。こもそう 00028660L7いふやう、そなたのしりでふきやれといゝけれハ、まこと 00028670¥G 00028680M1のしりてふいたるを、そなたの/口(くち)へ入レるかと、りくつを 00028690M2つめ、尺八をとつた。 00028700¥N12¥J 00028710¥X十二△竹田がはなし 00028720M5ある人大坂へ下り、からくり/芝居(しバい)の竹田/出雲(いづも)にあひ、いわ 00028730M6れけるハ、此/春(はる)も/長楽寺(てうらくじ)に/山崎(やまさき)/宝寺(たからてら)のかい帳あるが、め 00028740M7づらしきからくりをして、御上りなされぬかとといけれハ、 00028750M8我らもあたらしき(十三ウ)からくりハしかけましたが、京 00028760M9のしゆに上こすからくりハこざらぬといふ。なせにととひ 00028770M10ければ、今の/都(ミやこ)のしゆのからくりにはおよびませぬ。/去(さる)年 00028780M11の春ハ米八拾匁いたしました。/夏(なつ)のころより/次第(したい)あがりに 00028790M12今百六七十目いたしても、すこしもひけがミへぬ。ないし 00028800M13やうのからくりがしれぬによつて、竹田もはだしてござる 00028810M14といふた。 00028820¥N13¥J 00028830¥X十三△うそをそだてる事 00028840M17ある人より合はなされけるハ、此中我らハ/尾張(おハり)へ下りまし 00028850M18たか、大キな/大根(だいこん)を見たといふ。/聞(きく)人、(十四オ)何ほどあ 00028860M19るぞとといけれハ、切こぐちが五六尺あり。長サハ壱丈五 00028870¥P94 00028880L1尺ほどあつたといふ。扨もそれは大キな大こんじや。その 00028890L2たねをもらいたいことじやといふ。ほしくハもらふてやら 00028900L3ふが、それハどこへまきやるといゝければ、うらにまくが、 00028910L4大根ハのぞミになひが、あとがいるといふ。あとハなにに 00028920L5なるぞとといけれハ、大こんをぬいたあとをバ、井のもと 00028930L6にするといふた。 00028940¥N14¥J 00028950¥X十四△ふる/長(なが)もち 00028960L9ある人、/薮(やぶ)の/下通(したどふり)にて、ふるき長もちを/買(かい)て(十四ウ)内へ 00028970L10帰り、あけてミれば小/屏風(びやうぶ)があつた。扨&ほり出しをした 00028980L11といわれけれハ、あたりの人是をきゝ、それよりおれハま 00028990L12たほり出しをしたといふ。何をかふて、ほり出しをしやつ 00029000L13たととひけれバ、されば、きのふ八文で/大根(たいこん)をかふたが、 00029010L14中に/障子(しやうじ)があつたといふた。 00029020¥N15¥J 00029030¥X十五△むくりこくり 00029040L17ある下男、二人つれにてとほりけるが、一人のいふやう、 00029050L18/極月(しわす)にハむくりこくりがくるといふハ、まことかととへば、 00029060L19一人のいふやう、むくりこくり(十五オ)といふハ女のこと 00029070M1じやといふ。それハなぜに、おなごをバむくりこくりとい 00029080M2ふぞとといけれバ、まづむくつてとおぼやといふ。そのあ 00029090M3とはととへは、/((この間、文字脱カ))るといふはんじものじやといふた。 00029100¥Y1五ノ巻終 00029110¥Q 00029120M6△△△△△△△△正徳四年 00029130M7△△△△△△△△△△三月吉日 00029140M8△△△△△△△△△△△△△万屋庄兵衛(十五ウ) 00029150¥P95 00029160¥U噺本大系△第七巻 00029170¥T軽口福蔵主 00029180¥G 00029190¥Y 00029200L16正徳六年刊 00029210L17作者不詳 00029220L18半紙本五巻 00029230L19国会図書館蔵 00029240¥Y/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくそうす)△序 00029250M3まことに/日本(ひのもと)は、かしこくも/天照大神(あまてるおんかミ)、/代&(よゝ)のすべらぎ、 00029260M4ひさかたの/国(くに)のどやかにおさまりて、/民(たミ)も/千(ち)とせをいはふ 00029270M5なる。げにや/和国(わこく)の/風俗(ふうぞく)、人のこゝろ/柔和(にうわ)にして、/仁義(じんぎ)/礼= 00029280M6智(れい=ち)の/道(ミち)をたゞしふし、/朋友(はうゆう)のまじハりを/旨(むね)とす。/尚(なを)/礼(れい)の/用(よう) 00029290M7は、/和(くわ)を/尊(たつと)しとすとかや。爰に/優&(ゆう+)(一オ)ぶら+、うき 00029300M8にういたる/豊年(ほうねん)春、ふく/蔵主(そうす)と/名付(なづけ)、/当世(たうせい)/軽口(かるくち)ばなし五巻 00029310M9にあつめ、/老若(らうにやく)/男女(なんによ)/長夜(ちやうや)の/眠(ねふり)をさます物ならし。(一ウ) 00029320¥P96 00029330¥Y1/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくぞうす)/巻(くハんの)一△/目録(もくろく) 00029340L3一△/大黒(だいこく)の/御威勢(こいせい) 00029350L4二△/鉢(はち)の/木(き) 00029360L5三△/竹生嶋(ちくぶしま) 00029370L6四△/現銀(げんぎん)/懸直(かけね)なし 00029380L7五△/女武者(おんなむしや) 00029390L8六△/弥陀(ミだ)の/三尊(さんそん) 00029400L9七△/神代(かミよ)の/秤(はかり)の/家(いへ) 00029410L10八△/鬚貫(ひげぬき)(二オ) 00029420L11九△/銭(せに)のさかる/当話(とうわ) 00029430L12十△/碁盤屋(ごばんや)のかんばん 00029440L13十一△/大学(だいがく)の/大意(たいい) 00029450L14十二△やしま 00029460L15十三△らいくわう 00029470L16十四△/後生(ごしやう)が/大事(だいし) 00029480L17十五△/和薬(わやく) 00029490L18十六△/玄賓僧都(げんひんそうづ)/俗名(ぞくミやう) 00029500L19十七△/髪結(かミゆひ)/傾城(けいせい)/狂(くる)ひ 00029510M1十八△はめ/句(く)の/法談(ほふだん)(二ウ) 00029520¥P97 00029530¥G 00029540¥T1 00029550¥N1¥J 00029560¥X一△大黒の御威勢 00029570M3/去(さる)/歴&(れき+)の人、なにとかして近年不/勝手(かつて)になり、/色&(いろ+)/思案(しあん)し 00029580M4て、とかく物は/信心(しん+)からじやとて、あらたまのとしのはじ 00029590M5めに、/大黒殿(たいこくどの)を/蔵(くら)の/乾(いぬい)のすミに/祭(まつ)り、/富貴(ふうき)を/祈(いの)られた。そ 00029600M6の/夜(よ)/蔵(くら)の内にて、あはれさうに/泣声(なくこゑ)しけれハ、/亭主(ていしゆ)/婀娜(やさしき)人 00029610M7にて一首、 00029620M8△△びんぼ神大こく殿に追出され 00029630M9△△△今をかぎりとなきぞわかるゝ 00029640M10と口すさみ/祝(いは)ひたれハ、其年より大ぶん仕合よく、/富貴(ふうき)の 00029650M11/家(いへ)とさかへられた。(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00029660¥N2¥J 00029670¥X二△鉢の木 00029680M14/文盲(もんもう)なる/楽人(らくじん)/寄合(よりあい)、今は人が/利根(りこん)に成て、いかな/家(いへ)にも/行= 00029690M15燈(あん=ど)が三つ四つなひ家ハなひが、むかしはなかつたそうな。 00029700M16/適(たま+)あれバ大事にかけて、大名衆への御つかひ物になつた。 00029710M17むかしの事をきくに、あんどにとりそへたまわつて候と、 00029720M18/謡(うたひ)にもうたふといはれた。 00029730¥P98 00029740¥N3¥J 00029750¥X三△竹生嶋 00029760L3文盲なる老人よりあひ、/一人(ひとり)のいふやう、むかしハ/木(き)のま 00029770L4たから人が/生(むま)れたといふが、まことで(四ウ)あらふ。まづ 00029780L5/鴬(うくひす)ハミな竹から生れたといはるゝ。人+きゝて、それ 00029790L6はめづらしいはなしじや。いハれをかたり給へといへバ、 00029800L7されバ/延喜(ゑんぎ)の御代に、竹から/鴬(うくひす)が生れた/証拠(せうこ)がある。ち 00029810L8くぶしまの/謡(うたひ)にも、竹にうまるゝ/鴬(うくひす)のと、くりかへして 00029820L9うたふ程に、たしかなことじや。 00029830¥N4¥J 00029840¥X四△現銀掛直なし 00029850L12さる御大名、/相撲(すまふ)御すきなされ、方&より/名人(めいじん)のすまふと 00029860L13り、大分あつまり、御前にてとらせられた。/其中(そのなか)に、とし 00029870L14比四十/余(あま)りの/色(いろ)白き/弱(よハ)(五ノ十オ)さうな男/罷(まかり)出て、/歴&(れき+)の相 00029880L15撲とりをかたはしより、ひろいがちにして、手にたつもの 00029890L16なし。殿様も御/自慢(じまん)の御/手相撲(てすまふ)、/皆(ミな)まけけれハ、大きにせ 00029900L17かせ給ひ、大/関(せき)に、出てとれの御意。かしこまりましたと 00029910L18て出てとる。是も又何の手もなくこかしけり。行事、/名乗(なのり) 00029920L19をとへは、/現銀(げんぎん)かけねなし。まけぬこそ道理なれ。 00029930¥G 00029940¥N5¥J 00029950¥X五△女むしや 00029960M15さる人、むかしは/歴&(れき+)のつわ物に、女がたんとあつたそう 00029970M16なといふ。/友達(ともだち)/聞(きゝ)て、それハなぜにといへバじ五ノ十ウ)(十 00029980M17一オ挿絵)まづともへ、山ぶき、金/平(ひら)が母などゝて、つよき 00029990M18女/武者(むしや)があり。また/梶原(かぢハら)源太も/女(おんな)であつたといふ。友達聞 00030000M19て、それハ/合点(がつてん)のゆかぬことをいやる。梶原がおなごとは 00030010¥P99 00030020L1どふした事ぞといへバ、されバ、むかしより皆人ごとに、 00030030L2/伊藤(いとう)どの/土(と)井どのといがむすめかぢハら、といふほどに、 00030040L3おなごにまきれハなひといはれた。 00030050¥N6¥J 00030060¥X六△三尊 00030070L6/文盲(もんもう)なる/者(もの)二人づれにて寺へまいり、/弥陀(ミたの)三/尊(ぞん)をおがミて、 00030080L7一人のいふやう、あのわき/立(だち)に(十一ウ)/腰(こし)をかゞめて、な 00030090L8にやら/台(たい)のやうなものを持てござるは、なにぞといへハ、 00030100L9/今(いま)一人のいふやう、あれハあミだ様の御/茶(ちや)をまいります故、 00030110L10/茶(ちや)の/給仕(きうじ)なさるゝ/菩薩(ぼさつ)様じやといふた。 00030120¥N7¥J 00030130¥X七△/神代(かミよ)の/秤(はかり)の/家(いへ) 00030140L13/近年(きんねん)方&の/開帳(かいちやう)はやり、これは/弘法大師(こうぼふだいし)の尺八、いや/善導= 00030150L14大師(せんだう=たいし)の/杖(つえ)のといふて、いろ+の/霊宝(れいほう)おゝきうちに、/蝉丸(せミまる) 00030160L15の/琵琶(ひわ)とて見せけり。文盲なるもの二人つれにて、一人の 00030170L16いふやう、あれハ何やら/大事(だいじ)にかけてあると(十二オ)いへ 00030180L17バ、今一人のいふやう、あれをそなたはしらぬか。あれハ 00030190L18/神代(かミよ)のはかりの/家(いへ)じやといはれた。 00030200¥N8¥J 00030210¥X八△ひけぬき 00030220M3こざかしき人、/絵(ゑ)をこのミて、/細工絵(さいくゑ)に、/唐(たう)の/玄宗皇帝(げんそうくわうてい)の 00030230M4ぐし君と/楊貴妃(やうきひ)と/囲碁(いご)を/錚(あらそ)ひ給ふところをかき、/自慢(じまん)して 00030240M5人に見せけれバ、有人いふやう、/唐(とう)人の/絵(ゑ)にま/髯(ひげ)が有はづ 00030250M6じやが、これにはひげかなふて、/唐(とう)人にてハなひといへバ、 00030260M7尤じやといふて、そばに/毛貫(けぬき)をかきておかれた。さてもよ 00030270M8きとんさく。(十二ウ) 00030280¥N9¥J 00030290¥X九△銭のさがる/当話(とうわ) 00030300M11二人/寄合(よりあひ)、なにと、/頃日(このころ)ハ大分の/銭(ぜに)のさがりじやが、とふ 00030310M12した事じやまでといへは、今一人のいふやう、さがる/筈(はづ)じ 00030320M13や。小/哥(うた)に、/橋(はし)のらんかに/腰(こし)うちかけてと、うたふさかい 00030330M14で、おあしがさかるはづじやといへは、それならバ/小判(こばん)の 00030340M15さがるハ、またどふしたことぞといへハ、はて、きんもと 00030350M16もにさがる/道理(だうり)じやと、こたへられしもおかし。 00030360¥N10¥J 00030370¥X十△/碁盤(ごばん)屋のかんばん 00030380M19/関東(くハんとう)もの京へのほり、寺町/通(とをり)をとをり、ごはん(十三オ)ご 00030390¥P100 00030400L1いしやと、のうれんに/書(かき)てあるを見て、扨+、/何方(いつかた)にて 00030410L2も/金(かね)/程(ほと)人のほしがる/物(もの)ハなひ。このかきつけをミや。こば 00030420L3んこいしやと、のうれんにさへ/書付(かきつけ)てあるといふた。 00030430¥N11¥J 00030440¥X十一△/大学(だいがく)の/大意(たいい) 00030450L6/文盲(もんもう)なるもの、/隣(となり)にて大/学(がく)のそよみするをきゝ、/友達(ともだち)にい 00030460L7ふやう、大学ハ/何事(なにごと)をかいたものぞとおもひしが、/硯(すゞり)の/墨(すミ) 00030470L8の/拵様(こしらへやう)をしたものじやといへハ、友達きゝて、それハな 00030480L9ぜに。人のよむのをきけハ、人におしゆるゆゑんのほうな 00030490L10りとあると、(十三ウ)いはれたもおかし。 00030500¥N12¥J 00030510¥X十二△やしま 00030520L13ちしやハ+とて/売(うり)まハれど買手もなく、ちと/休(やす)まんとお 00030530L14もひ、橋のうへにおろして、しバらく休ミ居ける所へ、/麁= 00030540L15相者(そ=さうもの)ゆきあたりて、一/荷(か)のちさを川へこかしたり。ちそう 00030550L16り/腹(はら)を/立(たて)、/我(わ)が一せきのもとでを、かやうにながしたから 00030560L17ハ、まどはせねバきかぬとて、さん+つかミあふ。/彼(かの)そ 00030570L18さうもの、/是非共(ぜひとも)/堪忍(かんにん)めされよ。けがじやといへバ、ちし 00030580L19やうり、いよ+はらをたて、どふでも(十四オ)まどハせ 00030590M1ねばきかぬといふ。/其時(そのとき)/彼麁相(かのそさう)もの、/其方(そのはう)の/云(いひ)でん尤なれ 00030600M2ども、ちしやはまどハずと、/八嶋(やしま)のうたひにさへあるほと 00030610M3に、/堪忍(かんにん)しやといふていんだ。 00030620¥N13¥J 00030630¥X十三△らいくわう 00030640M6/文盲(もんもう)なるもの、/酒天童子(しゆてんどうじ)の/狂言(きやうげん)を見て、あの/源(ミなもと)の/頼光(らいくハう)ハ、 00030650M7あミだ/如来(によらい)の/家老(からう)であつたそうなといふ。つれきゝて、そ 00030660M8れハいなことじや。なぜにと/問(と)へハ、/彼文盲(かのもんもう)人、されハ御 00030670¥G 00030680¥P101 00030690L1/談義(だんぎ)にも、/偏(ひとへ)に/弥陀(ミだ)のらいかうをたのめと/仰(おゝせ)られたといふ 00030700L2た。(十四ウ)(十五オ挿絵) 00030710¥N14¥J 00030720¥X十四△後生が大事 00030730L5さる/歴&(れき+)の/奥(おく)様、/後生(ごしやう)ねがひにて/旦那寺(だんなでら)の/長老様(ちやうらうさま)に、いろ 00030740L6+/有難(ありがたき)事をきゝ、/余念(よねん)なき/折(おり)ふし、おならをぶうとやら 00030750L7れた。めんぼくなさに/畳(たゝミ)をならし、いろ+まぎらかさん 00030760L8とせられしとき、/長老(ちやうらう)のすゝめに、たとへ/此世(このよ)ハとりはづ 00030770L9すとも、ながきみらいをとりはづさぬやうにめされとおし 00030780L10やつた。 00030790¥N15¥J 00030800¥X十五△/和薬(わやく) 00030810L13/今時(いまとき)ハ/世(よ)がじやうびて、/太躰(たいてい)の/医者(いしや)の/薬(くすり)は(十五ウ)のミて 00030820L14もなし。/薮医者(やふいしや)の/寸鉄(すんてん((ママ))とて、とつと/文盲(もんもう)なるいしやあり。 00030830L15くすり/呑(のむ)ものなけれバ、とかく/身躰(しんだい)しまい、江戸へかせぎ 00030840L16にゆかんとおもひ、くすりのあまりを/売(うり)、/遣銭(つかひぜに)にせんとて、 00030850L17/薬(くすり)屋の手代をたのミ、いか程にかやるぞ。/直段(ねたん)よく買ふて 00030860L18たもといへハ、手代見て、/皆(ミな)わやくばかりで、銭めハなひ 00030870L19と/云(いひ)けれバ、/寸鉄(すんてつ)、まつくろに/腹(はら)をたて、かやうに/躰(てい)にな 00030880M1りても、/誓文(せいもん)、まつたく、わやくをいたす/心(こゝろ)ざしでハない 00030890M2といはれた。 00030900¥N16¥J 00030910¥X十六△/玄賓僧都(げんひんそうづ)/俗名(ぞくミやう)(十六オ) 00030920M5もんもうなる/親仁(おやじ)、/三輪(みわ)の/謡(うたひ)をきゝて、/玄賓僧都(げんひんそうづ)ハ/俗名(そくミやう)を 00030930M6市右衛門といふたが、とふした/事(こと)で/出家(しゆつけ)になられたしらん 00030940M7といふ。/友達(ともたち)の/親仁(おやじ)きゝて、それハめづらしい/事(こと)をきいた。 00030950M8どふしてしられたと/問(とへ)バ、されバうたひに、/御衣(おんころも)を/市右(いちえ)/給(たま) 00030960M9ハり候へと、うたふほどにとやられた。 00030970¥N17¥J 00030980¥X十七△/髪(かミ)ゆひ/傾城(けいせい)ぐるひ 00030990M12さる/髪結(かミゆひ)、/傾城(けいせい)を/買(かひ)にゆきて、なにのかのといふて/酔(えひ)まぎ 00031000M13れに、とろり+とねむりけり。/女郎(ぢよらう)見て、もし+とお 00031010M14こし、/床(とこ)へござん(十六ウ)せといへバ、かミゆひ/目(め)をすり 00031020M15+、いや、とこへは/手間取(てまとり)をやとふておきましたといふ 00031030M16た。 00031040¥N18¥J 00031050¥X十八△はめ/句(く) 00031060M19あたらしき/俳諧(はいかい)/笠付(かさつけ)の/題(だい)を出して/渡世(とせい)を/送(をく)る/点者(てんじや)、ふたり 00031070¥P102 00031080L1づれにて本国寺のいしつき/見物(けんぶつ)にゆき、一人のいふやう、 00031090L2なにと、その/方(はう)や/我等(われら)、いろ+/思案(しあん)してあたらしき句を 00031100L3出し、/精(せい)をだせども、/漸(やう)+ふたりか三人の/口(くち)さへくひか 00031110L4ね、/宿賃(やとちん)さへはらひかねるに、この御上人様は、/高祖(かうそ)様の 00031120L5/南無妙法蓮花経(なむミやうほふれんげきやう)の、(十七オ)ふるきはめ/句(く)を/仰(おゝせ)られてさへ、 00031130L6かやうにだいぶんの/御普請(ごふしん)が/出来(でき)るといはれた。(十七ウ) 00031140¥Y1/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくそうす)/巻之(くハんの)二△/目録(もくろく) 00031150M3一△/刀(かたな)のそらざや 00031160M4二△やりばなし 00031170M5三△/万歳楽(まんさいらく)/当話(たうわ) 00031180M6四△/御寺(おてら)の大/黒舞(こくまひ) 00031190M7五△/肥満男(ひまんおとこ) 00031200M8六△/少気者(せうきもの)/普請(ふしん) 00031210M9七△/無筆(むひつ)の/口上(こうじやう) 00031220M10八△/僣上(せんしやう)の/葬礼(そうれい)(一オ) 00031230M11九△むくろ/腹(はら)立人 00031240M12十△くせハなをらぬ 00031250M13十一△かんばんに/偽(いつハり)なし 00031260M14十二△とし/子(ご)に七人 00031270M15十三△/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00031280M16十四△/麁相(そさう)な/寄合(よりあい) 00031290M17十五△火の見/矢蔵(やぐら) 00031300M18十六△/火事場(くわじば)のすゞり(一ウ) 00031310¥P103 00031320¥T1 00031330¥N1¥J 00031340¥X一△/刀(かたな)の/空鞘(そらさや) 00031350L3さる/浪人(らうにん)、/勧進能(くハんじんのう)見物にゆかれ、/先(まつ)かたなをぬきて/下(した)に/置(おき)ゐ 00031360L4られけるが、人おほくおしあひ、/能(のう)の/最中(さいちう)に、ごめん+ 00031370L5とて/彼浪人(かのらうにん)の/側(そば)を通り、もし/其(その)御かたなを御のけ下されま 00031380L6せと申せば、/彼(かの)浪人のいはく、その/刀(かたな)のこじりの/方(はう)を御と 00031390L7をりあれ。そこハそらざやじやといはれた。 00031400¥N2¥J 00031410¥X二△やりはなし 00031420L10/奥州(おうしう)のもの、/長崎(ながさき)へゆくとて、みちのほども(二オ)しらす。 00031430L11/先(まづ)/都(ミやこ)をさしてのぼり三条の/橋(はし)にて、/長崎(ながさき)へハどちへまかる 00031440L12と/問(と)へは、これもてんほものにて、おかしくおもひ、いま 00031450L13二三/町(ちやう)/西(にし)へ/行(ゆき)、/尋(たづ)ねめされとおしへた。 00031460¥N3¥J 00031470¥X三△/侍(さふらひ)を/蹴(け)る/万歳楽(まんさいらく) 00031480L16正月/中比(なかころ)、/御所(ごしよ)のうちを/歴&(れき+)の/侍(さふらひ)とをられけるが、むかふ 00031490L17より/万歳楽(まんさいらく)きたり、/彼侍(かのさふらひ)を/足(あし)にてしたゝか/蹴(け)る。さふら 00031500L18ひ大きに/腹(はら)を立、やがて万歳がむなくらをとり、にくき/奴(やつ) 00031510L19とて、さん※にしかられた。/万歳(まんさい)いふやう、/御侍(おさふらひ)と見か 00031520¥G 00031530M12け、いわゐ(二ウ)ましてといふ。さふらひ、いよ+/腹(はら)を 00031540M13立、ぶつてたゝいてといへハ、/万歳(まんざい)いふやう、いはれを申 00031550M14ませふ。万歳の/大事(だいじ)の/言葉(ことば)に、みとのさかへまします、ま 00031560M15ことにめでたふ/侍(さふら)ひけると申ますといへバ、侍も/返答(へんとう)なく、 00031570M16/堪忍(かんにん)せられた。 00031580¥N4¥J 00031590¥X四△/御寺(おてら)の/大黒舞(だいこくまい) 00031600M19正月そう+に、おふくの/面(めん)を/着(き)て、かど+を/女(をんな)の/装束(しやうぞく) 00031610¥P104 00031620L1して、ござつた+、大こくとのがござつたといふてまハ 00031630L2る。/爰(こゝ)にものごとに/念(ねん)を/入(いれ)て/尋(たづ)ぬる人あり。/彼(かの)大こく/舞(まい)を 00031640L3とらへて、大/黒天神(こくてんじん)ハ(三オ)/男神(をかミ)にて/福(ふく)の/神(かミ)しやに、なぜ 00031650L4/其(その)ほうハおんなのすがたにてありくぞと/問(と)ハれけれバ、さ 00031660L5れバ、/私(わたくし)ハ/御寺(おてら)がたの大こく/舞(まい)でこざるといふたもおかし。 00031670¥N5¥J 00031680¥X五△/肥満男(ひまんおとこ) 00031690L8/肥満(ひまん)したる/男(おとこ)、/御出入(おでいり)申/御屋鋪(おやしき)へまいり、/殿様(とのさま)の御/機嫌(きげん)う 00031700L9かゝひまするなとゝ申、御きげんの/折(おり)ふし、/御前(ごぜん)へ出た。 00031710L10/殿様(とのさま)御/覧(らん)なされ、/其方(そのほう)ハ以前(いぜん)より、ことのほか/肥満(ひまん)したと 00031720L11仰られけれバ、ひげする事とて/手(て)をつゐて、/私(わたくし)の/肥(こへ)は半分 00031730L12ハ/垢(あか)でござりますといふた。(三ウ)(四ノ九オ挿絵) 00031740¥N6¥J 00031750¥X六△/少気者(せうきもの)/普請(ふしん) 00031760L15さる人、/町(ちやう)の/角屋鋪(かどやしき)を/買(かい)、/普請(ふしん)しけるか、大かた/出来(でき)て、 00031770L16/念比(ねんごろ)の人一両人よび、ふしんの/様子(やうす)を見てたもといへバ、 00031780L17/友達(ともたち)のいふやう、/扨(さて)+、そなたハいかいふしんべたじや。 00031790L18/角(かど)屋のおもひ出に、なぜに/両口(りやうくち)にせられぬぞといへバ、/彼= 00031800L19律義者(かの=りちぎもの)、/我等(われら)もさやうに/存(ぞん)じましたけれど、/口(くち)壱つさへ/遠= 00031810M1慮(ゑん=りよ)にぞんしましてといはれた。 00031820¥N7¥J 00031830¥X七△/無筆(むひつ)の/口上(こうしやう) 00031840M4さる/御公家様方(おくげさまかた)へ、/遠国(をんごく)の/武家(ぶけ)がたより/使者(ししや)をつかハされ 00031850M5た。/彼使者(かのししや)、/先(さき)様へまいり、/安案(あんない)してげん(四ノ九ウ)くハ 00031860M6んへ/通(とを)られけれバ、/外様(とざま)の/侍(さふらひ)衆出て、/時宜(じぎ)をのべ、/扨(さて)御 00031870M7/口上(こうじやう)を/承(うけたまハ)るに、ことのほかながき口上にて/覚(おぼ)へにくけれ 00031880M8バ、かの侍ひ、/帳(ちやう)を持(もち)て/出(いで)、大事の御口上にてござります 00031890M9ほどに、/此帳(このちやう)に御/書(かき)/下(くた)されませい。/旦那(だんな)かへり候ハヽ、御 00031900M10使者のよし申ませふといへバ、/彼使者(かのししや)、きのどくにおもひ、 00031910M11/私(わたくし)ハ/無調法(ぶてうほう)にござりますほどに、それにて御かき下されま 00031920M12せといへバ、かの/侍(さふらひ)、わたくしも御同前に/無調法(ぶてうほう)にござる 00031930M13とて、たがひにきのどくがる/時(とき)に、/使者(ししや)のいふやう、/合点(がつてん) 00031940M14致しましたとて、ふところより/印判(ゐんばん)をとり(十オ)出し、そ 00031950M15の/帳(ちやう)におして、御/帰(かへり)なされ候ハヾ、よろしく/仰(おゝせ)上られ/下(くだ)さ 00031960M16れませといはれた。 00031970¥N8¥J 00031980¥X八△/葬礼(そうれい)の/僭上(せんしやう) 00031990M19/僭上者(せんしやうもの)、/親(おや)にはなれ、/葬礼(そうれい)のこしらへ有べき/道具(だうぐ)/調(とゝのへ)にや 00032000¥P105 00032010L1るとて、/世間躰(せけんてい)のそうれいにハ/天蓋(てんがい)壱つじや。あまりおも 00032020L2ハしからず。我等/親仁(おやじ)のそうれいには、てんがい二つもた 00032030L3せ△といふた。 00032040¥N9¥J 00032050¥X九△むくろばら/立(たつ)人 00032060L6さる人、友達にいふやう、/隣(となり)の又右衛門ハ、つね+もの 00032070L7にはらたてぬ人じやとおもふたが、さて※、むくろ(十 00032080L8ウ)(十一オ挿絵)ばら/立(たつ)る人じやといふ。/友達(ともたち)きゝて、はて 00032090L9あの又右衛門は、せう+の事に/腹立(はらたつ)る人でハないが、/何= 00032100L10事(なに=ごと)てか、はら/立(たて)られたといへバ、それバ、/昨日(きのふ)/昼寝(ひるね)して/居(ゐ) 00032110L11られたほどに、まめつぶほどの/火(ひ)を/耳(ミヽ)へいれたれバ、こと 00032120L12のほか、むくろばらを/立(たて)られた。おもふたとハちがふた人 00032130L13じやといはれたも、/余(あま)りな事。 00032140¥N10¥J 00032150¥X十△くせハなをらぬ 00032160L16ねんごろにはなす人、/二人(ふたり)/寄合(よりあい)、一人のいふやう、そなた 00032170L17ハつね+くせにて、/鼻(はな)を/横撫(よこなで)にするとて/世間(せけん)にて/笑(わ)らふ。 00032180L18又我等も/御存(ごそんじ)のとをり、あたま(十一ウ)をたゝくくせあり 00032190L19て人が/笑(わら)ふほどに、いざ、いまよりいひあはせ、/互(たがひ)にくせ 00032200M1をやめんといへバ、/彼鼻(かのはな)すゝる人、なるほどさやうでござ 00032210M2る。/今(いま)よりたがひに申あはせ/直(なを)そうとて、/扨(さて)/四方山(よまやま)の/咄(はなし)し 00032220M3て、なにと、/頃日(このごろ)の/矢数(やかず)をミやつたかといへバ、なるほど 00032230M4見たが、五人ばり/程(ほと)の/弓(ゆミ)にて、/心易(こゝろやす)そうにこうひいたとて、 00032240M5つゐ/鼻(はな)をなでられた。いま一人、これを見て、なに、その 00032250M6/矢(や)が通りたら、した+といはふがやといふて、また/天窓(あたま) 00032260M7をたゝかれた。(十二オ) 00032270¥N11¥J 00032280¥X十一△/看板(かんばん)に/偽(いつはり)なし 00032290M10さあ+/生(いき)た/虎(とら)じや。昨日/阿蘭陀(おらんだ)よりのぼりました。/偽(いつハり)な 00032300M11らバ/銭(せに)ハとらぬ。はやひが/賞翫(しやうくハん)、/銭(ぜに)ハもどりじや。ゑいと 00032310M12う+といふてわめく。こざかしきもの、/木戸(きど)にて、なに 00032320M13と、/此(この)かんばんの/通(とをり)にちがひはないかといへバ、なるほど、 00032330M14かんばんにすこしもちがひハござらぬ。はいりて、とくと 00032340M15見給へといふ。此かんばんのとをりに/偽(いつハ)りなくハ、見るに 00032350M16及ばぬといふていんだ。 00032360¥N12¥J 00032370¥X十二△とし/子(ご)に七人(十二ウ) 00032380M19さる人/田舎(ゐなか)よりのぼり、/久(ひさ)しくあはぬ人の/方(かた)へ/行(ゆき)、/先(まづ)/何事(なにごと) 00032390¥P106 00032400¥G 00032410L12もなくて/目出度(めでたい)と、なにやかや/咄(はなし)のところへ、七つばかり 00032420L13の/子(こ)出けり。/客(きやく)、此/子(こ)を見て、/是(これ)ハ/貴様(きさま)の御/子息(しそく)か。さて 00032430L14+よき/器量(きりやう)やといへは、いや、/娘(むすめ)でござるといふ。又六 00032440L15つ/斗(はかり)の/子(こ)出たり。/客(きやく)見て、/是(これ)ハ男子か。はて、よひ/子持(こもち)じ 00032450L16やといへバ、/是(これ)もめらうで/御座(ござ)るといふ。/客(きやく)も/手持(てもち)あしき 00032460L17所へ、四つばかりや三つばかりや、又うばにだかれた/子(こ)や、 00032470L18七つをかしらに七人まで、/男(おとこ)の/子(こ)かと/挨拶(あいさつ)すれバ、ミな/女(おんな) 00032480L19の子にて、/客(きやく)も/当惑(とうわく)して、はて、そなたさへ(十三オ)(十三 00032490M1ウ挿絵)おとこなれハよふござるといはれた。 00032500¥N13¥J 00032510¥X十三△/聖人(せいじん)に/夢(ゆめ)なし 00032520M4さる人、七つはかりになる男子をもたれけるか、/器用者(きようもの)に 00032530M5て、/四書五経(ししよごきやう)までよみおぼへ、/親(おや)も/悦(よろこ)び、/近所(きんじよ)の人も、さ 00032540M6て+おとなまさりや。わづか七つや八つにて/此子(このこ)のやう 00032550M7な人はあるまい。/誠(まこと)に/聖人(せいじん)といふハ此子の/事(こと)でござると/誉(ほめ) 00032560M8けれバ、/彼親(かのおや)よろこび、/皆(ミな)人ごとに/左様(さやう)にほめさしやるさ 00032570M9かひで、此中も/夢(ゆめ)を見るかと/尋(たづ)ねけれども、夢ハ見ぬと申 00032580M10ますとつくされた。(十四オ) 00032590¥N14¥J 00032600¥X十四△そさうな/寄合(よりあひ) 00032610M13さる人、/下人(げにん)八/助(すけ)をよび、やい、われハ/明日(あす)/江戸(ゑど)の/店(たな)へや 00032620M14るぞ。ゐてこひといはれた。かしこまりましたとて、なに 00032630M15の事もきかず。/朝(あさ)七つにおきて江戸へくだり、/店頭(たなかしら)に逢ふ 00032640M16た。たなかしらいふやうハ、八助ハ/何(なに)の/用(よう)でくたりやつた。 00032650M17京にハ何事もないかと/問(と)へバ、八助、はつと/気(き)がつき、さ 00032660M18れバ/我等(われら)京をたつまへの/晩(ばん)に、旦那の、/明日(あす)江戸のたなへ 00032670M19ゐてこひと申されましたゆへ、なにの/用(よう)の/事(こと)もきかず、つ 00032680¥P107 00032690L1いくだりました。ほんに、用事をきゝて(十四ウ)/来(く)るはづ 00032700L2でござつたものを。 00032710¥N15¥J 00032720¥X十五△/火(ひ)の/見(ミ)/矢蔵(やぐら) 00032730L5/田舎者(いなかもの)二人づれにて京へのぼり、/北野(きたの)の/天神(てんじん)へまいるとて、 00032740L6/千本(せんぼん)通をあかり、ひの見やぐらを見て、あれハ/何(なに)のための 00032750L7/番所(ばんどころ)ぞといへバ、一人のいふやう、あれハ/近国(きんごく)に/火事(くわじ)のゆ 00032760L8くとき、あれより見て/鐘(かね)をつけバ、/火(ひ)けしの衆御/出(いで)なされ 00032770¥G 00032780M1てけさせらるゝためじやといふ。それハきこへたが、また 00032790M2/下(した)の/方(ほう)に/窓(まど)があるハ、なにのためぞといへバ、あれもちか 00032800M3くの火事を見るためじやとおしへた。(十五オ) 00032810¥N16¥J 00032820¥X十六△/火事場(くわじば)のすゞり 00032830M6/此已前(このいぜん)江戸大火事のとき、/火(ひ)けし/役(やく)の御/奉行(ぶぎやう)御出なされ、 00032840M7やがて/消(け)させられた。さて/祐筆(ゆうひつ)をめし、/様子(やうす)/書付(かきつけ)よと仰ら 00032850M8れた。祐筆、/硯(すゞり)をわすれ/迷惑(めいわく)するを、/気(き)のきいた/鑓持(やりもち)見て、 00032860M9もし、当分の御こゝろ/覚(おぼ)へのためばかりならハ、わたくし 00032870M10のすミひげを御つかひなされませといふ。祐筆/悦(よろこ)び、/楊枝(やうじ) 00032880M11のさきをかミ、/墨髭(すミひげ)にてかきつけ帰り、扨/殿様(とのさま)御/機嫌(きげん)の/折(おり) 00032890M12ふし、わが/無調法(ぶてうほう)、鑓持がさつそくを申/上(あぐ)る。殿様、こと 00032900M13のほか御きげんにて、大/分(ぶん)(十五ウ)/褒美(ほうび)をくだされた。/傍= 00032910M14輩(ほう=ばい)のつりひん、/浦山敷(うらやましく)おもひ、われも/何日(いつ)ぞ/才覚(さいかく)をせんとお 00032920M15もひ、/其後(そのゝち)又火事のとき、大分にすミをつけ、/方&(ほう+)かけま 00032930M16はれども、見てもなけれバ、/彼(かの)やつこ、火事/場(ば)へ/首(くび)さしの 00032940M17べて、もし、/火事場(くわじば)のすゞりハ、御用にござりませぬかと 00032950M18いふた。(十六オ) 00032960¥P108 00032970¥Y1/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくそうす)/巻之三(くわんのさん)△/目録(もくろく) 00032980L3一△/弓(ゆミ)の/稽古(けいこ) 00032990L4二△/番太郎(ばんたらう) 00033000L5三△/鯉(こい)のかんばん 00033010L6四△/追剥(おいはぎ)にうわまい 00033020L7五△/小判(こばん)のしかけ 00033030L8六△/親(おや)がゝり 00033040L9七△/石(いし)の/上(うへ)の/住居(すまひ) 00033050L10八△/奉加帳(ほうがちやう)(一オ) 00033060L11九△/摂待(せつたい) 00033070L12十△/三国(さんごく)/伝来(でんらい) 00033080L13十一△/八百屋(やをや)が/僣上(せんしやう) 00033090L14十二△しまつの/当話(とうわ) 00033100L15十三△/捨子(すてご) 00033110L16十四△/僣上(せんしやう)の/病(やまひ)/本腹(ほんぶく) 00033120L17十五△ばいそく 00033130L18十六△/座頭(ざとう)の/当話(とうわ) 00033140L19十七△げびた事(一ウ) 00033150¥T1 00033160¥N1¥J 00033170¥X一△弓のけいこ 00033180M3さるもの、弓を/稽古(けいこ)せんとおもひ、矢はぎの所へゆき、け 00033190M4いこ/矢(や)のずんどよきをかいませふ。/直段(ねだん)ハ/少(すこし)もねぎりハい 00033200M5たさぬほどに、よき/矢(や)を見せ給へといへバ、なる程、かし 00033210M6こまりましたとて見せた。やがてよき/矢(や)/五手(いつて)/取(とり)て、/銭(ぜに)卅文 00033220M7渡したり。/矢師(やし)のいふやう、これハどふでござりますとい 00033230M8へハ、十本の/代(だい)で御座るといふ。いや、/此矢(このや)は卅文や百文 00033240M9には/賣(うり)ませぬといへバ、はて、そなたハ/無理(むり)なことをいふ 00033250M10人じや。むかしより/鴈(がん)ハ八百、/矢(や)ハ三文(二オ)でハないか 00033260M11といわれた。 00033270¥N2¥J 00033280¥X二△/番(ばん)太郎 00033290M14/冬(ふゆ)の/夜(よ)かぜ/烈(はげ)しき/時分(じぶん)、町の番太郎、/家(いへ)+の/戸(と)をたゝき、 00033300M15/火(ひ)の/用心(ようじん)はよふこざりますかと、さい+まはれバ、なさ 00033310M16けある町人見て、さて+あの番太は/奇特(きどく)なやつじや。さ 00033320M17むからふに、/呼(よび)て/茶漬(ちやつけ)なりとも/喰(くハ)せて、/酒(さけ)をてんもくに/一= 00033330M18盃(いつ=はい)のませと、でつちにいひつけられた。かしこまりました 00033340M19とて、/彼(かの)番太をよひ、/茶漬(ちやづけ)や/酒(さけ)をのませて、何と、其方ハ 00033350¥P109 00033360L1きどくなものじや。/随分(ずいぶん)/大事(だいじ)にかけて、(二ウ)せつ+町 00033370L2中を/触(ふれ)よといはれけれバ、番太郎かしこまつて、/御意(ぎよい)のと 00033380L3をりでごさります。/火(ひ)ほとこわひものハござりませぬゆへ、 00033390L4御町中を一/軒(けん)+たゝきましてふれまする。ことに/今晩(こんばん)ハ 00033400L5いかふさむうござりまして、/難儀(なんぎ)つかまつりましたが、御 00033410L6/影(かげ)にてあたゝまりました。ありがたふござりますといふて、 00033420L7かへりしなに、もし、おまへさまの/火(ひ)の/用心(ようじん)はかまひませ 00033430L8ぬほどに、/御勝手(ごかつて)に/被成(なされ)ませといふてゆるしたもおかし。 00033440¥N3¥J 00033450¥X三△/鯉(こい)のかんばん(三オ) 00033460L11二人つれにて/黄檗(わうばく)へまいり、さて+きゝおよびしより/結= 00033470L12構(けつ=かう)なことかなとて、/方&(はう+)/見物(けんぶつ)して、/扨(さて)/食堂(じきだう)に、/木(き)でつくり 00033480L13たる/鯉(こい)のつりてあるを見て、一人のいふやう、/寺(てら)にハ/似合(にあわ) 00033490L14ぬものがあるといふ。今一人のいふやう、これハ/出家衆(しゆつけしゆ)の 00033500L15/斎(とき)くわしやるとき、こいといふて、これをたゝけバ、ミ 00033510L16な+あつまり給ふといへバ、いや+それでハあるまい。 00033520L17まへの/池(いけ)をミれハ、/鯉(こい)が大ぶんに有さかいで、さだめてそ 00033530L18のかんばんであらふといふた。 00033540¥N4¥J 00033550¥X四△おいはぎにうハまひ(三ウ)(四オ挿絵) 00033560M3さる/兵法(ひやうほふ)の/名人(めいじん)、すこし用事ありて、/夜半(やはん)/時分(じぶん)に、/狼谷(おゝかミだに)と 00033570M4をられた。/例(れい)の山だち五六人出て、/酒手(さかて)をわたせ。さなく 00033580M5ハのがさぬといふ。/彼兵法(かのひやうほふ)つかひきゝて、我等は酒手ハも 00033590M6たぬ程に、/堪忍(かんにん)してとをしやといへハ、さかてがなくハ、 00033600M7/其着物(そのきるもの)、/脇指(わきさし)、ふんどしまてはげとて、/脇指(わきさし)ぬきつれて、 00033610M8/切(きつ)てかゝる。/兵法(ひやうほふ)つかひ見て、さてハのがれぬ所とおもひ、 00033620¥G 00033630¥P110 00033640L1壱尺八寸するりとぬき、六人を/相手(あひて)にして、はや二三人に 00033650L2手を/負(おゝ)せたり。/追剥(おいはぎ)/肝(きも)をつぶし、いや+いのちこそ物だ 00033660L3ねとて、三人ハ/行方(ゆきがた)しらず(四ウ)/逃(にけ)たり。/彼兵法(かのひやうほふ)つかひ、 00033670L4/手負(ておひ)の/脇指(わきさし)、/羽織(はをり)をとりていんだ。あとにて、かのをひは 00033680L5ぎとも/寄合(よりあひ)、さて+、/今夜(こんや)ハ/仕合(しあハせ)がわるい。たま+と 00033690L6をれバ、あのやうなつよひやつにて、/大事(だいじ)のわれらがもと 00033700L7での、/脇指(わきさし)をとられたと/悔(くや)めバ、一人の/律義(りちぎ)な/追剥(をひはぎ)の云や 00033710L8う、/惣(そう)じて/其方達(そのはうたち)がわるひ。此/狼谷(おゝかミだに)ハ、/皆(ミな)人が/用心(ようじん)のわ 00033720L9るいといふところへきていやるか、ちがいじやといふた。 00033730¥N5¥J 00033740¥X五△小判のしかけ 00033750L12さる/律儀(りちぎ)なる/商人(あきひと)、/途中(とちう)にて/壱歩(いちふ)ひとつ(五ノ十オ)ひろひ、 00033760L13うれしくおもひ、あけて見れバ、金壱歩代十五匁と有を見 00033770L14て、/肝(きも)をつぶし、たゝいまハ金壱両がわづか四十九匁ほか 00033780L15せぬ/小判(こばん)を、六拾匁の/算用(さんよう)にしてハ、一/割(わり)八ぶ半のしかけ 00033790L16じや。/大分(だいぶん)の/損(そん)がゆくとて、又すてゝいんだ。 00033800¥N6¥J 00033810¥X六△/親(おや)がゝり 00033820L19さるれき+の/謡講(うたひかう)の/場(ば)へ、とひやうな、かしこうもない 00033830M1/者(もの)/来(きた)り、/私(わたくし)も一番うたハんとて、/猩&(せう※)を/上(かミ)がゝりやら/下(しも)が 00033840M2ゝりやらしれぬ、/四座(よざ)のぬけぶしをうたへバ、/座中(ざちう)はらを 00033850M3かゝへ、なにと、(五ノ十ウ)そなたのうたひは、上がゝり 00033860M4か下がゝりかといへハ、いや、わたくしの/謡(うたひ)は、親がゝり 00033870M5でこざるといふた。 00033880¥N7¥J 00033890¥X七△/石(いし)のうへのすまひ 00033900M8/田舎(いなか)もの四五人つれにて京/見物(けんぶつ)にのぼり、まだ日もたかけ 00033910M9れバ、/御内裏(おだいり)様を見物せんとてゆきたるが、/折(おり)ふし御/公家= 00033920M10衆(くけ=しゆ)へれき+の/使者(ししや)有て、/供(とも)の/者(もの)ども、/門前(もんぜん)のきり/石(いし)にか 00033930M11しこまりて居るを、かの/田舎(いなか)もの見て、まことに/在所(ざいしよ)にて、 00033940M12京ハ石のうへのすまひじやといふが、まことじや。あれを 00033950M13ミや。/皆(ミな)石のうへのすまいじやといふた。(十一オ) 00033960¥N8¥J 00033970¥X八△/奉加帳(ほうがちやう) 00033980M16さる/在所(ざいしよ)に、ところの/惣堂(そうたう)/破損(はそん)におよび、/念仏(ねんぶつ)/講中(かうぢう)のとり 00033990M17もちにて、/奉加帳(ほうがちやう)をこしらへ、/講中(かうちう)すゝめにありきにける。 00034000M18なにが/百姓(ひやくじやう)の/事(こと)なれハ、/声高(こゑだか)に、そなたハ弐百文つき給 00034010M19へといふ。/亭主(ていしゆ)きゝて、御ぞんじのとをり、/百姓(ひやくしやう)の/事(こと)な 00034020¥P111 00034030L1れバといふを、/隣(となり)の/酒屋(さかや)へ/奉加(ほうが)にゆきし/者(もの)ども、これをき 00034040L2ゝ、あれきゝ給へ。となりにさへ/百(ひやく)しやうとおしやるに、 00034050L3こなたにハ五百なされませといふた。(十一ウ)(十二オ挿絵) 00034060¥N9¥J 00034070¥X九△/摂待(せつたい) 00034080L6/謡稽古(うたひけいこ)の/若(わか)ひ/衆(しゆ)寄合、いざ/此盆(このぼん)のうちにうたひ/講(かう)をはじ 00034090L7めんとて、/先(まづ)/番組(はんぐミ)をかきつけ、ゆやはたれ、/道成寺(だうじやうじ)ハたれ、 00034100L8いや/摂待(せつたい)の/卒都婆小町(そとはこまち)のといふを、うたひしらぬ/親父(おやぢ)きゝ、 00034110¥G 00034120M1扨+わかき/衆(しゆ)じやが、きどくな/供養(くやう)をめさるとかんじ、 00034130M2やがて/茶(ちや)/壱斤(いつきん)とわり木壱/束(そく)もたせて、わたくしのこゝろざ 00034140M3しでござりますほどに、/摂待(せつたい)のとき御つかひ下されませと 00034150M4いふてやられた。/殊勝(しゆしやう)なこゝろさし。(十二ウ) 00034160¥N10¥J 00034170¥X十△/座頭坊(ざとうのほう)/当話(とうわ) 00034180M7ある/座頭(ざとう)の/坊(ほう)、/夜咄(よはな)しに行、帰りに、/桃灯(てうちん)をかりませうと 00034190M8いふ。/亭主(ていしゆ)きゝて、そなたハてうちんハ入まいがといへハ、 00034200M9いや、わたくしハいりませぬけれど、目あきがゆきあたり 00034210M10ますると。 00034220¥N11¥J 00034230¥X十一△げびた事 00034240M13ずんどまずしき/者(もの)、/質種(しちたね)つきて、おかわを/質(しち)屋へ/持(もち)てゆき、 00034250M14是にてよき/程(ほと)/銭(ぜに)をかし給へといへば、/是(これ)にハ/四&(しゝ)の十六文 00034260M15かしませうといふ。それならば帰りて、ばゝに/問(とふ)てくそと 00034270M16いふた。(十三オ) 00034280¥N12¥J 00034290¥X十二△/三国(さんこく)/伝来(てんらい) 00034300M19さる/後生(ごしやう)ねかひの/楽人(らくじん)四五人/寄合(よりあひ)、なにと、/嵯峨(さが)の/釈迦如= 00034310¥P112 00034320L1来(しやかによ=らい)、このたび江戸へござつて大分/御繁昌(ごはんじやう)であつたといふ。 00034330L2又一人のいふやう、はてそのはづじや。/嵯峨(さが)の/尺迦如来(しやかによらい)ハ 00034340L3/三国(さんごく)/伝来(てんらい)の御/仏(ほとけ)にて、/何方(いつかた)でも御はんじやうなさるゝとい 00034350L4へバ、/軽口(かるくち)なるものきゝて、いや+、/三国(さんごく)/伝来(てんらい)とハ/善光= 00034360L5寺(ぜんくハう=じ)の/如来(によらい)様の事じやといふ。なぜにといへバ、はて、嵯峨 00034370L6の尺迦如来様は、/内裏様(だいりさま)へと江戸へばかりござつたゆへ、 00034380L7/嵯峨(さが)の御/釈迦(しやか)様ハ、二/国(こく)/伝来(でんらい)の/筈(はづ)(十三ウ)じやといはれ 00034390L8た。 00034400¥N13¥J 00034410¥X十三△/八百屋(やおや)が/僣上(せんしやう) 00034420L11/八百屋(やおや)のむす/子(こ)、大/坂(ざか)へくだるとて、/夜舟(よふね)にて/乗合衆(のりあひしゆ)とは 00034430L12なしに、/我(われ)ハ/呉服屋(ごふくや)の、いや/米(こめ)屋のと/名乗(なのり)あふて、さて/彼= 00034440L13八百屋殿(かの=やおやどの)に、御/自分(じぶん)は御/商売(しやうばい)は/何(なに)をなさるゝぞと/問(と)へは、 00034450L14此むす/子(こ)/僣上(せんしやう)ものにて、さながら八百屋とハゑいはす。/我(われ) 00034460L15ハ/薬種(やくしゆ)屋でござる。それゆへ大坂へ/買物(かいもの)にまかる。いつも 00034470L16/大分(だいぶん)に/買入(かいいれ)いたしますといふ。/乗合(のりあひ)の/衆(しゆ)きゝて、なにと、 00034480L17大/人参(にんじん)ハたゞいま、いか程(十四オ)いたしますと/問(と)へバ、 00034490L18大/人参(にんじん)もたばによりますといはれた。 00034500¥N14¥J 00034510¥X十四△しまつの/当話(たうわ) 00034520M3しわき/男(おとこ)、/友達(ともたち)にさそハれ/嶋原(しまバら)へゆき、つれのいふやう、 00034530M4其方ハかやうのわけハ/初(はじめ)てゞあらふほどに太夫とおもへど、 00034540M5太夫もあまりじや程に/天神(てんじん)にしやといへハ、/彼(かの)しハき/男(おとこ)、 00034550M6いや+、/我等(われら)は/鹿恋(かこい)にいたさうといふ。つれきゝて、い 00034560M7ますこしの事じやに、ひらに天神にしやれといへバ、いや 00034570M8+、かねはかまハぬけれど、天神ハならぬ。/在所(ざいしよ)のお 00034580M9ばが(十四ウ)(十五オ挿絵)しなれて、火がわるひと/へ((ママ))られた。 00034590¥N15¥J 00034600¥X十五△/捨子(すてご) 00034610M12さる寺の門のうちへ、二歳ばかりの子を/捨置(すておき)けり。/長老(ちやうらう) 00034620M13/寺中(じちう)の/衆(しゆ)をよび、いろ+/談合(だんかふ)して、とかく御/慈悲(じひ)の/世界(せかい) 00034630M14じやほどにすてゝもおかれまい。かねつけて、さとにやる 00034640M15談合きハめ、方&きけども、さとにやしなひてもなし。寺 00034650M16中/難義(なんぎ)におよび、御/代官所(だいくわんしよ)へまいり、いつかたへ成共、御 00034660M17/指図(さしづ)あそばされ候様にと御ねがひ申上る。御代官/聞召(きこしめし)、か 00034670M18ねさへつけたら、もらひてがあ(十五ウ)らふほどに、/金(かね)つ 00034680M19けてやれとの/御意(ぎよい)。その/時(とき)寺中、左様でござりますけれど 00034690¥P113 00034700L1も、/世話(せわ)にも、/寺(てら)からさとへと申て、とりてがござりませ 00034710L2ぬといハれた。 00034720¥N16¥J 00034730¥X十六△/僣上(せんしやう)/病(やまひ)/本腹(ほんふく) 00034740L5/分(ぶん)に過たる/僣上者(せんしやうもの)あり。/親父(おやぢ)/異見(いけん)して、/其方(そのはう)がやうに/分際(ぶんざい) 00034750L6に過たる僣上をいふものなし。/自今(じこん)/以後(いご)、僣上をやめ、も 00034760L7のごとうちばにせよとしかれバ、むす子/俄(にわか)に僣上をやめけ 00034770L8れバ、/万事(ばんじ)おもしろからず。うつら+と/煩(わつらひ)けり。/親父(おやぢ)こ 00034780¥G 00034790M1ゝろ(十六オ)もとなくおもひ、/医者(いしや)をたのミ/薬(くすり)をとりにや 00034800M2りけり。むす子、薬の書付をミれば、せんしやうつねのご 00034810M3とくとあり。むす子よろこび、さて+、此/医者殿(いしやどの)ハいか 00034820M4い/上手(じやうず)じや。見立がよひとて、またせんしやうしたれハ、 00034830M5一/貼(ふく)にて/験(げん)をミせた。 00034840¥N17¥J 00034850¥X十七△ばいそく 00034860M8/文盲(もんもう)なるもの、/上手(じやうず)の/鞠(まり)けるをミて、あのあり+といふ 00034870M9は、いかなる事ぞと/問(と)へバ、あれはいろを見て、/我(わ)がまへ 00034880M10ゝ/来(く)る/時(とき)、人にばいそくせられましきためじやといふ。/文= 00034890M11盲(もん=もう)人、尤とおもひ、(十六ウ)そのゝちさる/歴&(れき+)のかたにて、 00034900M12/濃茶(こいちや)をふるまハれ、上座の人、いろもよきなとゝほめけれ 00034910M13バ、/彼文盲人(かのもんもうびと)、/鞠(まり)のことをおもひ出し、あり+といふ。 00034920M14そばなる人、これをきゝ、その方ハ何ことをの給ふと/問(と)へは、 00034930M15/彼者(かのもの)わきから、ばいそくはなりますまひとつくされた。(十 00034940M16七オ) 00034950¥P114 00034960¥Y1/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくそうす)/巻之(くハんの)四△/目録(もくろく) 00034970L3一△/御秡(おはらい) 00034980L4二△/蒟蒻屋(こんにやくや) 00034990L5三△/顔輝(がんひ) 00035000L6四△/民(たミ)ハ/伯耆(はうき)の/国(くに) 00035010L7五△/精進(しやうじん)ハ/夜(よる) 00035020L8六△/釜(かま)はらひ 00035030L9七△/大仏師(だいぶつし) 00035040L10八△りくつ(一オ) 00035050L11九△/太補湯(たいふとう) 00035060L12十△/和哥浦(わかのうら) 00035070L13十一△/哥(うた)の/医者殿(いしやどの) 00035080L14十二△ゑひす/折敷(おしき) 00035090L15十三△/子(こ)あげ 00035100L16十四△/忌言葉(いミことば) 00035110L17十五△/古(ふる)ふんどし 00035120L18十六△/湯殿(ゆどの)の/山伏(やまぶし) 00035130L19十七△/鐘鋳(かねい)の/奉加(ほうが)(一ウ) 00035140¥T1 00035150¥N1¥J 00035160¥X一△御はらひ 00035170M3/治(おさ)まれる御/世(よ)のしるしとて、/国&(くに+)よりの/伊勢参宮(いせさんぐう)ひきも 00035180M4きらず。/同行(どうぎやう)十五人つれにて/先(まづ)/太夫(たゆふ)殿へ/着(つい)た。なにがいろ 00035190M5+の/馳走(ちそう)、まづ/風呂(ふろ)へ御いりとて、/上手(じやうず)のふきてを馳走 00035200M6にいたされ、其中に/風呂数寄(ふろずき)の/客人(きやうじん)、ゆる+とふかれ、 00035210M7さて+かたしけない。もはやおはらひ+といへバ、同 00035220M8行きゝて、あらもつたいなや。風呂のうちで、/御秡(おはらひ)をいた 00035230M9ゝくといふことが有物か。先あかりて、手水などつかひて 00035240M10からの/事(こと)にめされといはれた。(二オ) 00035250¥N2¥J 00035260¥X二△こんにやく屋 00035270M13去ル人、はいでのでつちに、/蒟蒻売(こんにやくうり)がきたらバよびてかへ 00035280M14といはれた。かしこまりましたとて/居(ゐ)るところへ、こんに 00035290M15やくや+と売けれバ、/旦那(だんな)/聞(きい)て、あれ、なぜにかはぬぞ。 00035300M16/呼(よび)てかへといはれし時、でつちがいふやう、いや+、あ 00035310M17いつがやうなおゝへいな/奴(やつ)がのハ、かいますまい。いつ/喰(く) 00035320M18をふと、こちのまゝじやに、こんやくや+と、おゝへい 00035330M19にぬかしますといふて、かわなんだ。 00035340¥P115 00035350¥N3¥J 00035360¥X三△がんひ(二ウ)(三オ挿絵) 00035370L3/絵師(ゑし)の/顔輝(がんひ)ハ/猿(さる)がゑものにて/能(よく)かゝれた。去所に、がんひ 00035380L4の猿じやとて/秘蔵(ひさう)して見せられけれハ、人+/見(ミ)て、さて 00035390L5も見事/出来物(できもの)かなとほむれバ、/其座(そのざ)に/文盲(もんもう)なる人ありて、 00035400L6/扨(さて)ハがんひとハ/草花(さうくわ)の事じやとおもひしが、猿をがんひと 00035410L7いふとこゝろへ、/其後(そのゝち)/友達(ともたち)とつれだちて/叡山(ゑいざん)へまいりしが、 00035420L8/彼山(かのやま)に猿が大分あり。友達にいふやう、あのがんひを見や。 00035430¥G 00035440M1さても大分のかんひかなといへバ、つれきゝて、/顔輝(がんひ)とハ 00035450M2何の事ぞといへバ、猿ををしへて、あれががんひでないか。 00035460M3其方ハ/文盲(もんもう)な人じやと(三ウ)いふた。 00035470¥N4¥J 00035480¥X四△/民(たミ)は/伯耆国(はうきのくに) 00035490M6なにをしても仕合の/悪敷(あしき)/男(おとこ)、友達に/談合(だんかふ)して、とかく/何(いづく)国 00035500M7へなりとも/他国(たこく)へかせぎにゆかふとおもふと/語(かた)れバ、こざ 00035510M8かしき男、其方ハ/伯耆(はうき)の国へ行たらよからふ。とかく/住(すミ)よ 00035520M9き国しやそうなといふ。/彼(かの)男/悦(よろこ)び、みちハいか程あると/問(と) 00035530M10へバ、/千里(せんり)あり。民のありつきよき国じやときいた。詩経 00035540M11に、/邦畿(ほうき)/千里(せんり)/惟(これ)/民(たミの)所止とあるといふておしへた。 00035550¥N5¥J 00035560¥X五△/精進(しやうじん)ハ/夜(よる)(四オ) 00035570M14/年比(としごろ)六十あまりの/男(おとこ)、/年中(ねんちう)に一日も/精進(しやうじん)せられたるを見た 00035580M15ものもなし。/或(ある)人の/云(いふ)やう、そなたハ/両親(ふたおや)/兄弟衆(きやうだいしゆ)ともに/相(あひ) 00035590M16/果(はて)られたに、そなたの/終(つゐ)に精進せられしを見た/事(こと)がないと 00035600M17いへバ、/彼精進(かのしやうじん)ぎらひの云やう、/其筈(そのはづ)でござる。/我等(われら)の親 00035610M18兄弟ともに、/夜(よ)に入てしなれましたゆへ、夜る/寝(ね)てから精 00035620M19進をいたすといはれた。 00035630¥P116 00035640¥N6¥J 00035650¥X六△かまはらひ 00035660L3/江戸(ゑと)/神田(かんだ)/鍋町(なべちやう)へ、/釜(かま)はらひませふとて、釜のまへにて/祭文(さいもん) 00035670L4をよみけれバ、八助見て、なにさ、(四ウ)てんごうせずとい 00035680L5ね。此町はなべ町にて、かまばらひハいらぬといへバ、/釜(かま) 00035690L6ばらひの/云(いふ)やう、そのやうにかきやぶりにはいはぬものじ 00035700L7や。此/所(ところ)をかんだといへど、/目(め)のよき/衆(しゆ)が有といふた。 00035710¥G 00035720¥N7¥J 00035730¥X七△/大仏師(だいぶつし) 00035740M3/遠国者(をんごくもの)二人づれにて、/初(はしめ)て京/見物(けんぶつ)にのぼり、寺町どをり/通(とを) 00035750M4り、/大仏師(だいぶつし)と、のうれんに/書付(かきつけ)有を見て、一人のいふやう、 00035760M5さて+、あの大仏を、いかなる/大工(たいく)が/建(たて)たるとおもひし 00035770M6が、此/家(いへ)の/亭主(ていしゆ)がたてたそうな。のうれんにかきつけが有 00035780M7からハ。(五ノ九オ) 00035790¥N8¥J 00035800¥X八△りくつ 00035810M10/近年(きんねん)どろ/坊(ぼう)とて、かたり/坊主(ほうず)/徘徊(はいくわい)して人をたぶらかしける 00035820M11ゆへ、/或(ある)人の申されしハ、/今時(いまどき)の坊主にハゆだんがならぬ 00035830M12といはれた。/其座(そのざ)に去ル/出家(しゆつけ)/居合(ゐあハせ)しが、/方&(はう※)にてさやうに 00035840M13申され、何共/迷惑(めいわく)にぞんじます。本より/坊主(ぼうず)ハ/盗(ぬすミ)ハせねど 00035850M14も、ぬす人めが、坊主になりますと/答(こたへ)られた。尤な/返答(へんたふ)。 00035860¥N9¥J 00035870¥X九△/太補湯(たいふたう) 00035880M17/文盲(もんもう)なる/親父(おやぢ)、うつら+/煩(わづら)ハれけり。/念比(ねんころ)な人これを見 00035890M18て、そなたの/病(やまい)にハ、/十全(じつせん)太補湯が(五ノ九ウ)(十オ挿絵)よ 00035900M19からふといへバ、/親父(おやぢ)よろこび、やがて/医者(いしや)殿へまいり、 00035910¥P117 00035920L1/太補湯(たいふたう)をくだされませとてもらひ、/銭(ぜに)十文/出(いだ)しけり。医者 00035930L2殿見て、これハどふでごさるといへバ、されバ、十銭/太補= 00035940L3湯(たいふ=たう)でハござらぬかといはれし。 00035950¥N10¥J 00035960¥X十△/和哥(わか)の/浦(うら) 00035970L6/文盲(もんもう)なものあつまり、なにと、/龍(たつ)と云物を/慥(たしか)に見たものな 00035980L7し。いかやうのものぞ。見たいといへは、/子細(しさい)らしき/者(もの)/云(いふ) 00035990L8やう、/紀伊国(きいのくに)/和哥(わか)の浦にハ、/龍(たつ)が/大分(だいぶん)にあるそうな。/哥(うた)に 00036000L9うそハないはつじや。さ(十ウ)れバ、 00036010L10△△和哥の浦にしほみち来れハかたを浪 00036020L11△△△あしべをさしてたつなきわたる 00036030¥N11¥J 00036040¥X十一△歌の/医者殿(いしやどの) 00036050L14/哥(うた)に/病(やま)ひあると/云(いふ)事を、/文盲(もんもう)な者きいて/不審(ふしん)におもひ、や 00036060L15まひがあらバ/脈(ミやく)のない事ハあるまひとおもひ、/哥(うた)の/脉(ミやく)はい 00036070L16かやうなものでござるといへバ、こざかしき人きゝて、お 00036080L17かしくおもひ、/成程(なるほど)、哥にミやくこそあれ。/伝教大師(でんげうだいし)の哥 00036090L18に、あのくたら三ミやくと有。/万葉集(まんようしふ)にも、手にとるから 00036100L19にゆらく玉の/緒(を)とあり。これ哥のミやくじや(十一オ)とい 00036110M1へバ、/文盲人(もんもうひと)きゝ、さて+そなたハ哥のいしやとのじや 00036120M2といふた。 00036130¥N12¥J 00036140¥X十二△ゑびす/折敷(をしき) 00036150M5さる/寺(てら)にて、/旦那(だんな)衆よりいれ仏事有けるが、/小僧(こそう)、/住持(ぢうぢ)の 00036160M6/膳(ぜん)をすへけれバ、住持、小僧をよびつけて、いつもいふ/事(こと) 00036170M7じやに、なぜにゑびす折敷にすゆるとて、さん+にしか 00036180M8られけれバ、小僧/云(いふ)やうは、/和尚(おしやう)様ハいつも大こく/殿(との)とな 00036190M9らんでこざるさかいで、それでゑひすおしきにすへました 00036200M10といふて、ちやつと/口(くち)をふさいでにげた。(十一ウ) 00036210¥N13¥J 00036220¥X十三△/子(こ)あげ 00036230M13/去所(さるところ)に、/三歳(ミつ)になる/子(こ)を/井戸(ゐど)へおとし、やれ/碇(いかり)よ、/熊手(くまで)ハ 00036240M14ないか。すいがうやくですいあげさせよと、ミな+うろ 00036250M15たへまはる所へ、/隣(となり)のぬけた/親父(おやぢ)/見舞(ミまひ)に来て、いつれも/気= 00036260M16遣(き=づかひ)めさるゝな。こちのとなりの/馬士(むまかた)よびにやりて、あげさ 00036270M17せふ。いつも子あげにゆくといふほどに、子をあげる事が 00036280M18/上手(じやうず)であらふといはれた。 00036290¥P118 00036300¥N14¥J 00036310¥X十四△/忌言葉(いミことバ) 00036320L3とつと物いわゐする/念者(ねんしや)、/娘(むすめ)を/去方(さるかた)へ/縁(えん)(十二ノ三オ)つき 00036330L4の/約束(やくそく)して、/先(まづ)/長持(なかもち)、/挾箱(はさミはこ)其外、/蒔絵(まきゑ)の/道具(だうぐ)ども、/前方(まへかた)よ 00036340L5りあつらえんとおもひ、/塗師(ぬし)屋をよひ、とかく直段ハた 00036350L6かくとも、/万事(ばんじ)/念(ねん)/と((をカ))入たのむといへハ、ぬしやきゝて、/少(すこし) 00036360L7も/御気遣(おきづかひ)/被成(なされ)まするな。出来合をめしましたぶんでハ、/終(つひ) 00036370L8/一度(いちど)ではげまする。わたくしが/致(いた)しましたハ、たとへ/五度(ごど) 00036380L9や三度よめ入なされても、はげぬやうに/堅地(かたぢ)にいたしませ 00036390L10ふと、うけあふたもおかし。 00036400¥N15¥J 00036410¥X十五△/古(ふる)ふんどし 00036420L13/鍛冶(かぢ)屋の/仁蔵(にざう)、/盆(ほん)正月のための小銭をあつめ、(十二ノ三ウ) 00036430L14(十四オ挿絵)/責(せめ)て一/度(ど)は/八坂(やさか)の/茶(ちや)屋へゆきたしとおもひ、や 00036440L15う+弐匁五分たまりけれバ、うれしくおもひ、/古(ふる)ふんど 00036450L16しにくゝり付、/節句(せつく)のごゑんをまちかね、八坂のあたり/何(なに) 00036460L17屋とかやへはいり、/盃(さかづき)のうちに、つく+おもへハ、わが 00036470L18ふんどしのあまりきたなき事を/恥(はづ)かしくおもひ、/金(かね)の事も 00036480L19うちわすれて、二/階(かい)からそつと/捨(す)てけり。折ふし、したに 00036490M1/下女(げぢよ)せんたくして/居(ゐ)けるが、これをミれハ/太閤(たいかう)様/時代(じたい)の/木= 00036500M2綿(も=めん)ふんどしなり。下女の云やう、もし、これハおきやく様 00036510M3のかといへバ、二蔵、いや+、それハおれ(十四ウ)/おれ((おれ衍)) 00036520M4がのてハない。そのくゝり付てある/金(かね)ばかりが、おれがの 00036530M5じやといふた。 00036540¥N16¥J 00036550¥X十六△/湯殿(ゆどの)/山伏(やまぶし) 00036560M8湯殿山の山ぶしと/江州(がうしう)/甲賀(かうか)の/者(もの)と、/矢橋(やばせ)の舟に/乗合(のりあひ)、物が 00036570¥G 00036580¥P119 00036590L1たりのうちに、舟も松本ちかくなりけれバ、船人もこびた 00036600L2/男(おとこ)にて、/舟賃(せんちん)おはらひなされといへバ、山ぶしきゝて、/我= 00036610L3等(われ=ら)はゆどのゝ者じや。せんちんならバ、甲賀の人にとれと 00036620L4いふ。船人きゝて、/扨(さて)は/秀句(しうく)でやらるゝ。それならバ/其方(そのはう) 00036630L5ハまるにゆるすといふた。(十五オ) 00036640¥N17¥J 00036650¥X十七△/鐘鋳(かねい)の/奉加(ほうか) 00036660L8むかし、/片岡寺(かたおかでら)のかねいの/勧進(くわんじん)とて、奉加帳を出しすゝめ 00036670L9けり。こざかしき人ありて、片岡でらならバ、かねいでハ 00036680L10あるまい。/亀井(かめゐ)であらふ。/判官殿(はうぐわんどの)の/御内(ミうち)に/亀井(かめい)、/片岡(かたおか)、/伊= 00036690L11勢(い=せ)、/駿河(するが)といふほどにといへバ、/勧進(くわんじん)する人のいふやう、 00036700L12とかく/問答(もんだう)ハいらぬ。ほうぐわん帳につき給へといふた。 00036710L13(十五ウ) 00036720¥Y1/軽口(かるくち)/福蔵主(ふくそうす)/巻之五(くわんのご)△/目録(もくろく) 00036730M3一△/白粉(おしろい)いろ+あり 00036740M4二△かわつた/油(あぶら)つき 00036750M5三△/四方髪(しはうがミ) 00036760M6四△/珊瑚樹(さんごじゆ) 00036770M7五△/囲碁(ゐご)の/大事(だいじ) 00036780M8六△/戻子(もじ)屋 00036790M9七△/豆腐(たうふ)のうば 00036800M10八△/老人(らうじん)の目/利(きゝ) 00036810M11九△三文が/井戸(ゐと)(一オ) 00036820M12十△/猫(ねこ)に/受法(じゆほふ) 00036830M13十一△わけどり 00036840M14十二△久三郎はまり 00036850M15十三△/状(じやう)の/留書(とめがき) 00036860M16十四△しわひ/男(おとこ) 00036870M17十五△/菓子売(くわしうり)にしる/火事(くわじ) 00036880M18十六△/井戸(ゐど)のとりちがへ 00036890M19十七△/孔雀太夫(くじやくだゆふ) 00036900¥P120 00036910L1十八△/蚊(か)は日本のたから 00036920L2十九△/丸裸(まるはたか)の御/公家様(くげさま)(一ウ) 00036930¥T1 00036940¥N1¥J 00036950¥X一△/白粉(おしろい)いろ+/有(あり) 00036960M3/遠国者(をんごくもの)おしろい屋へはいり、/注文(ちうもん)出して、まつしろき/白粉(おしろい) 00036970M4と、あかきおしろひと、/黒(くろ)きや/黄(き)いろや、/皆&(ミな+)そろへて/買(かい) 00036980M5ませふといふ。/白粉(おしろい)屋きいて、いや、おしろいに黒きやあ 00036990M6かきハござらぬ。/白(しろ)きばかりのものでこざるといへハ、/買= 00037000M7手(かい=て)きゝて、さてもさんすいな白粉屋といへバ、/亭主(ていしゆ)/腹(はら)を/立(たて)、 00037010M8どこの/国(くに)にか、黒きやあかき白粉が/有物(あるもの)かといへバ、/買手(かいて) 00037020M9の/云(いふ)やう、/此方(このはう)にもなき/事(こと)ハ申さぬ。/夫(それ)ならバなぜに/其方(そのはう) 00037030M10ハ、御/白粉(おしろい)いろ+有と/書(かい)て/置(おい)たと/詰(つめ)た。(二オ) 00037040¥N2¥J 00037050¥X二△かわつた油つき 00037060M13/去軽口(さるかるくち)なる人、/途中(とちう)にて/友達(ともだち)にあひ、なにと、/其方(そのはう)の/町(ちやう)の 00037070M14/宿老(しゆくらう)ハ、油つきになられたのといへバ、それハ/合点(がつてん)のいか 00037080M15ぬ事じや。人が油つきになるものかといへバ、/彼軽口男(かのかるくちおとこ)の 00037090M16いふやう、なるほど、あぶらつきになられた/証拠(しやうこ)ハ、/会所(くわいしよ) 00037100M17へはいられたといふた。 00037110¥N3¥J 00037120¥X三△/四方髪(しはうがミ) 00037130¥P121 00037140L1こざかしき人、/伊勢(いせ)の/太夫(たゆふ)殿に/逢(あふ)て、/何(なに)と、おなじ/神(かミ)様に 00037150L2も、/社僧(しやそう)とて、/出家(しゆつけ)の御もりがあるに、/御伊(おい)(二ウ)/勢(せ)/様(さま)ば 00037160L3かりハ/出家(しゆつけ)ハなふて、/四方髪(しはうかミ)の/祢宜衆(ねぎしゆ)ばかりじやが、とふ 00037170L4したいはれでござるといへバ、/御師(おし)のいはく、神は/正直(しやうぢき)の 00037180L5かうべにやどり給ふ/故(ゆへ)に、あたまを大事にかけるといはれ 00037190L6た。 00037200¥N4¥J 00037210¥X四△さんごじゆ 00037220L9/僣上者(せんしやうもの)、さんごじゆのおしめを/買(かい)、人にひけらかさんとお 00037230L10もへと、見てもなけれバ、/彼(かの)僣上もの大/勢(ぜい)の/中(なか)にて、なに 00037240L11と、これほどなほうづきハあるまひか。ほしいとて、おじ 00037250L12めを見せた。/傍(そば)なる人見て、それ程なほうづきハ、たくさ 00037260L13んにあれども、そのやうな/疵(きず)の(三オ)有のハない。/疵(きす)がな 00037270L14ふてもくるしからずハ、やらうといへバ、/顔(かほ)をあかめてい 00037280L15んだ。 00037290¥N5¥J 00037300¥X五△/囲碁(ゐご)の大事 00037310L18/碁数寄(ごずき)な/楽人(らくじん)/寄合(よりあひ)、毎日/碁(ご)をうたれしが、/或夜(あるよ)、大事の/手(て) 00037320L19をあんじいられし所へ、/勝手(かつて)より、/加減(かげん)がよふござります 00037330M1とて、/坪皿(つほざら)に/赤貝(あかがい)のねり/味噌(ミそ)を入、出しけり。/亭主(ていしゆ)/碁笥(ごげ)か 00037340M2とおもひ、つぼさらの/蓋(ふた)をとり、/赤貝(あかがい)をひときれとつて、 00037350M3/暫(しバらく)案してうたれた。/相手(あいて)の/禅門(ぜんもん)も/少時(しばし)あんじ、/大事(だいじ)の手 00037360M4が見へた。/赤貝(あかがい)の/手(て)にハこまつたといふ(三ウ)(四オ挿絵) 00037370M5て、まけられた。 00037380¥N6¥J 00037390¥X六△もじ屋 00037400M8とつと/山家(やまか)の/者(もの)寄合、一人の/云様(いふやう)、いまハ/世(よ)がおさまつて、 00037410¥G 00037420¥P122 00037430L1/仮初(かりそめ)にも/袴(はかま)を/着(き)るといへバ、/傍(そバ)な/老人(らうじん)きいて、人は/着(き)る/筈(はづ) 00037440L2じや。/鬼(おに)さへ/袴(はかま)をきるそうな。/三条(さんてう)通をミれバ、/鬼(おに)もじあ 00037450L3りと、/看板(かんばん)が有といふた。 00037460¥N7¥J 00037470¥X七△たうふのうば 00037480L6/若(わか)き/者(もの)、/念比(ねんごろ)な/女房(かゝ)をたのミ、そなたのむかいのたうふ屋 00037490L7のうばを、われに/肝煎(きもいり)てたも。/我等(われら)も(四ウ)三月にハ/隙(ひま)も 00037500L8らひ、/宿(やと)へはいりて小/商(あきなひ)/致(いた)すほどに/頼(たの)むといへバ、なる 00037510L9/程(ほと)/心得(こゝろへ)ました。あそこのうばハいかふよひとて、/方&(はう※)から 00037520L10いへど、/前方(まへかた)より/約束(やくそく)かあるとて、/脇(わき)へハやられぬけれど、 00037530L11/我等(われら)申たら、なるほどなりますといへバ、/彼人(かのひと)よろこび、 00037540L12とかくそなたをたのむといふ。/必(かならず)脇へ/約束(やくそく)のないうちに、 00037550L13はなしてたもといへバ、/心得(こゝろへ)ましたとて、たうふ屋へゆき、 00037560L14うばのこといへバ、そなたの事ならやすきことゝいふ。/其= 00037570L15後(その=ゝち)/彼男(かのおとこ)、/身躰(しんたい)/道具(だうぐ)こしらへ、とかく宿へはいりてからよべ 00037580L16バ/物(もの)がいるとて、/祝言(しうげん)と/宿(やと)(五ノ十オ)/振舞(ふるまひ)とひとつにせん 00037590L17とて、/彼念比(かのねんごろ)なかゝに、内&のうばを/晩(ばん)にたのむといへバ、 00037600L18心得ましたとて、/其晩(そのばん)/櫃(ひつ)/一荷(いつか)にいれ、これが五拾匁がうば 00037610L19でござる。/精(せい)/出(だ)して/売(うら)しやれといふていんだ。さても大き 00037620M1なはまり。 00037630¥N8¥J 00037640¥X八△/老人(らうじん)の/目利(めきゝ) 00037650M4とかく人は/習(ならお)ふより/馴(なれ)ひといふが/尤(もつとも)じや。/去所(さるところ)にて/日待(ひまち)の 00037660M5/座(ざ)に大/勢(ぜい)/寄合(よりあい)、/碁(ご)の双六の/将棊(しやうぎ)のといふて、/面&(めん+)の/数寄(すき) 00037670M6+なり。/物(もの)に/心得(こゝろへ)たる/老人(らうじん)あつて、あの/碁(ご)を打てゐる/衆(しゆ) 00037680M7の/家業(かげう)(五ノ十ウ)を、/我等(われら)いひあてんとて、あれハ/侍衆(さふらひしゆ)、 00037690M8これハ/出家衆(しゆつけしゆ)、又あの人は/医者(いしや)、/此人(このひと)は/商人(あきひと)と/一&(いち+)さゝれ 00037700M9しが、すこしもちがはず。いかにさやうに/知(し)り/給(たま)へるとい 00037710M10へバ、されバ/打(うつ)/言葉(ことば)に、 00037720M11△△/侍衆(さふらいしゆ)ハ、はたいろがわるひ。/勝(かつ)て/甲(かぶと)の/緒(を)をしめたがよ 00037730M12△△ひ。 00037740M13△△/出家衆(しゆつけしゆ)ハ、しぬる+、/南無阿弥陀仏(なむあミだぶつ)+。 00037750M14△△/医者(いしや)ハ、もはや/耆婆(ぎば)が/薬(くすり)でもない。/脉(ミやく)があがつた。 00037760M15△△/百姓(ひやくしやう)ハ、とかく/地(ぢ)を/多(おゝ)くとつたがよい。/地(ち)をひ(十 00037770M16△△一オ)ろげふ。 00037780M17△△/商人(あきひと)は、/細(こまか)に/目(め)をせつたがよい。とかく/損(そん)せぬ/様(やう)にし 00037790M18△△ませふ。 00037800M19といはれたでしるゝ。 00037810¥P123 00037820¥N9¥J 00037830¥X九△三文が/井戸(ゐど) 00037840L3京の/町(まち)を、いのもと+といふてありくを、/田舎者(いなかもの)きゝて 00037850L4/不審(ふしん)におもひ、これ+/買(かい)ませふとよびて、そこへ二三文 00037860L5がのあてがやといへバ、/心得(こゝろへ)ましたとて、/唐鍬(たうぐわ)にて/庭(にわ)を三 00037870L6/鍬(くわ)ほり、これハまけでごさるといふて、三文とりていんだ。 00037880¥N10¥J 00037890¥X十△ねこに/受法(じゆほふ)(十一ウ)(十二オ挿絵) 00037900L9/堅法華宗(かたほつけしう)、我が内にゐるほどのもの、ねずミまでに/受法(じゆほふ)さ 00037910L10せけり。ある時、/友達(ともだち)のかたより/猫(ねこ)の/子(こ)をもらひ、これも 00037920L11/受法(じゆほふ)させんとおもひ、やがて八の/巻(まき)を/持(もつ)てかゝれバ、/彼(かの)ね 00037930L12こ、たゝかるゝかとおもひ、/縁(えん)のしたへにげた。/綱(つな)をひき、 00037940L13よべどもひけ/共(ども)いでず。/側(そば)に/同行(どうぎやう)衆ゐられしが、もはや/猫(ねこ) 00037950L14は/法花宗(ほつけしう)になつたほどに、すゝむるにおよばぬ。これ程に 00037960L15じやうがこわふてハといはれた。 00037970¥N11¥J 00037980¥X十一△わけどり 00037990L18きんちやくきり五六人/寄合(よりあひ)、/方&(はう※)にて/取(とり)たる(十二ウ)/物(もの)ど 00038000L19も、わけてとらんとて、せんさくするうちに、/中(なか)でもずん 00038010¥G 00038020M12ど/重(おも)き/巾着(きんちやく)壱つ見えず。これハ/合点(がてん)のいかぬ事じや。此う 00038030M13ちに、/手(て)くせのわるいものはないがといふた。 00038040¥N12¥J 00038050¥X十二△久三郎はまり 00038060M16/去(さる)人、/家来(けらい)を/寒夜(かんや)に/使(つかひ)にやるとて、/今宵(こよひ)はいかふ/寒(さむ)ひ。か 00038070M17んさせて一/盃(はい)/呑(の)んでゆけとて、かんさせられた。もはやか 00038080M18んがよからふ。もてこいとてかん/切(ぎり)、旦那ばかり/呑(のミ)て、い 00038090M19かふ/能(よひ)/気味(きミ)じや。このきおひに、ちやつといてこひといは 00038100¥P124 00038110L1れた。(十三オ)久三郎いかいはまりの。 00038120¥N13¥J 00038130¥X十三△/状(じやう)の/留書(とめかき) 00038140L4/去(さる)人、/念比(ねんごろ)の/中(なか)に、大名の/祐筆(ゆうひつ)/戻(もどり)りありて、はなしにまい 00038150L5られけるとき、申されけるハ、/何(なに)と、/世間(せけん)の人/書状(しよじやう)のとめ 00038160L6に、$とかき、/$(のうへ)とかき、/$(はちふん)とかゝる。いつれ 00038170L7がよひかしらぬ事なれども、わたくしハ/$(はちふん)とかくがと 00038180L8いはれけれバ、/彼祐筆(かのゆふひつ)も/返答(へんとふ)なくてかへられた。 00038190¥N14¥J 00038200¥X十四△しわい/男(おとこ) 00038210L11さるしわい/男(おとこ)、/友達(ともだち)のかたへ状つかハすとて、きりの(十 00038220L12三ウ)/葉(は)に状をかきつかハしける。/彼男(かのおとこ)よみて、さて、/使(つかひ)を 00038230L13よび、さて+、そちの/壇那(だんな)ハ/世帯(せたい)しらずじや。/此葉(このは)ハ/焼(たき) 00038240L14つけになる。/肩(かた)をぬげとて、/使(つかひ)のでつちがせなかに/返事(へんじ)か 00038250L15き、とめに、御/覧(らん)ののち/火中(くわちう)+とかきてやつた。 00038260¥N15¥J 00038270¥X十五△/菓子売(くわしうり)にしる/火事(くわじ) 00038280L18/日(ひ)の/暮(くれ)あひに、/菓子(くわし)+と/売(うり)て/通(とを)るを、/役人(やくにん)きゝ、やれ、 00038290L19/火事(くわじ)よと/触(ふれ)ける。/折(おり)しも/横町(よこちやう)にあやまちしけるに/出相(いであひ)、/消(け) 00038300M1して/悦(よろこ)び、よくしらせたと/誉(ほめ)らるゝ。/明(あく)る/晩(ばん)に、又くわし 00038310M2や/通(とを)る。/心得(こゝろへ)た(十四オ)とて、/町中(ちやうぢう)をふれさわぎけれど、 00038320M3/何(なに)の/気(け)もなかつた。 00038330¥N16¥J 00038340¥X十六△井戸のとりちがへ 00038350M6/去友達(さるともだち)/寄合(よりあひ)、/三井(ミつい)といふ/名字(ミやうじ)ハいかなるいはれあるか。ど 00038360M7れも/金持(かねもち)じやといふ。又一人、/四井(よつい)といふも/金持(かねもち)じやとい 00038370M8ふ。ひとりの/者(もの)いふやう、あれは/井戸(ゐと)が三つ有、四つあり 00038380M9し/古家(ふるいへ)をかふてから、/分限(ぶげん)になりたるにより、/名字(ミやうじ)とした 00038390M10といふ。又一人、いや+さやうにの給ふな。人の/腰(こし)を四 00038400M11つゐといへど、おいどハ壱つじやといはれた。(十四ウ) 00038410¥N17¥J 00038420¥X十七△/孔雀(くじやく)太夫 00038430M15ちかき/比(ころ)くじやく太夫とて、/女(おんな)を/男(おとこ)と/偽(いつは)り、/御穿鑿(ごせんさく)ありて 00038440M16/篭(ろう)に/入(いる)。/去者(さるもの)申やう、ふびんのことかなといひけれバ、/友= 00038450M17達(とも=だち)に口がしこき/者(もの)ありて、あれハその/筈(はづ)じや。/男(おとこ)の女に/化(ばけ) 00038460M18るは/野郎(やらう)とておゆるしじや。/女(おんな)の/男(おとこ)にばけたるは、かなら 00038470M19ず/篭屋(ろうや)じやといはれた。 00038480¥P125 00038490¥N18¥J 00038500¥X十八△/蚊(か)は日/本(ほん)のたから 00038510L3人ごとに、/夏(なつ)ハよけれど、/蚊(か)ほどいやなものはないといふ。 00038520L4/去老人(さるらうじん)いふやう、さやうにの給ふ(十五オ)な。/蚊(か)といふも 00038530L5のは、人を/養(やしの)ふものじや。まづ/蚊帳屋(かちやうや)、/帋帳屋(しちやうや)、かやの/木(き) 00038540L6や/其外(そのほか)、人のためによきものじや。/其上(そのうへ)/日本(にほん)のたからじや。 00038550L7/証拠(しやうこ)には/海士(あま)の/謡(うたひ)に、/蚊(か)ほど/目出度(めでたき)たからを、なにとて/日= 00038560L8本(に=ほん)へは/送(おくり)り候ぞとある。 00038570¥N19¥J 00038580¥X十九△/丸裸(まるはだか)の御/公家様(くげさま) 00038590L11むかし/御公家様(おくげさま)の御/寄合(よりあひ)の/折(おり)ふし、/仰(おゝせ)出さるゝハ、/定家(ていか)の 00038600L12/謡(うたひ)に、/狩衣(かりきぬ)の/袖(そで)を/冠(かふり)のこぢにうちかけてとうたふ。かりき 00038610L13ぬのときハ、/烏帽子(ゑぼし)なり。大きなる/誤(あやま)りとあれバ、はるか 00038620L14/御次(おつぎ)に/御出入(おていり)の(十五ウ)/医者(いしや)ぼん/居(ゐ)られしが、/罷(まかり)出て申上 00038630L15るやうハ、それハ、さやうのこともあるまひ/事(こと)でハござり 00038640L16ませぬ。/去枕絵(さるまくらゑ)に、/御公家(おくげ)様の/丸裸(まるはだか)で/冠(かむり)めしてござるのが 00038650L17/慥(たしか)にあるとやら申ますると、いひすてゝにげたげな。 00038660¥Q 00038670M1△△正徳六年正月吉日 00038680M2△△△△△△△△△△△京寺町松原上ル町 00038690M3△△△△△△△△△△△△△△△菱屋治兵衛板行 00038700¥Y1軽口福蔵主巻之五終(十六オ) 00038710¥P126 00038720¥U噺本大系△第七巻 00038730¥T軽口出宝台 00038740¥G 00038750¥Y 00038760L16享保四年刊 00038770L17作者不詳 00038780L18半紙本五巻 00038790L19東大国語研究室蔵 00038800¥Y1軽口はなし△一之巻 00038810M3一△/福神(ふくじん)の/初寄合(はつよりあひ) 00038820M4二△/知(し)りがほお/庄(せう)や/殿(との) 00038830M5三△/上手(じやうず)つかふ/国(こく)せんや 00038840M6四△そば/切(きり)/生(むま)れ/兼(かね)る/門口(もんぐち) 00038850M7五△/腹(はら)のうちで/糊(のり)だち(一オ) 00038860M8六△/我名(わかな)をしらが/法躰(ほつたい) 00038870M9七△しんきならうそく 00038880M10八△/僣上(せんしやう)のへんねし 00038890M11九△/無筆(むひつ)の/書出(かきいだ)し 00038900M12十△/物(もの)しりのおやぢ(一ウ) 00038910¥T1 00038920¥P127 00038930¥N1¥J 00038940¥X/福神(ふくしん)の/初寄合(はつよりあい) 00038950L3/四海(しかい)/浪(なミ)しづかなる/御代(ミよ)の/春(はる)こそめてたけれ。/民(たミ)の/竈(かまと)もにぎ 00038960L4はひ、七/福神(ふくじん)の/初(はつ)よりあひ、/酒(しゆ)ゑん/長座(ちやうざ)の其うへハ、/祝儀(しうぎ) 00038970L5/嶋台尉(しまだいせう)と/姥(うば)、かしらの/雪(ゆき)もうちとけて、はや/若(わか)ゑびす大/黒(こく) 00038980L6ハ、/酒(さけ)にゑいてのくだぞかし。是ゑびす殿ハ/当年(たうねん)いづくの 00038990L7/何商売(なにしやうばい)をまもらせたまふと有けれバ、/我等(われら)ハいつものご 00039000L8とくうをやがよふござる。/肴(さかな)/沢山(たくさん)な/鯛(たい)もおほく有/家(いゑ)へ/行(ゆき)ま 00039010¥G 00039020M1する。扨大黒殿ハ/何(なに)やへおうつりなさるゝ。我等は/米(こめ)やへ 00039030M2行ますると有けれバ、げほう殿/罷出(まかりいで)、それハ(二オ)なり 00039040M3ませぬ。いまだ此/春(はる)ハ/寒(かん)じますゆへ、我等が/行(ゆか)ねば、あた 00039050M4まかひゑるにより、米屋へ行まするといはれけれバ、大黒 00039060M5殿ハ大きに/腹(はら)を/立(たて)、是げほう。其やうな/我(わが)まゝ、あたまか 00039070M6ちなる事ハいはせぬと、いろ+とせりあひ給ふ中へ、ゑ 00039080M7びす殿わつて入、是げほう殿。/貴(き)でんハなぜに米やへ行た 00039090M8がらせ給ふぞ。/道理(だうり)により、/拙者(せつしや)があいさつ仕らふと有け 00039100M9れバ、げほうも今ハせんかたなく、ありやう申そふ。/外(ほか)の 00039110M10/商売(しやうばい)へ行てハ、/我等(われら)があたまにあい申づきんがなし。米や 00039120M11にハ、あたまにあふ/米(こめ)ぶくろのづきんがあるといはれた。 00039130M12(二ウ) 00039140¥N2¥J 00039150¥X二△知りかほを/庄(せう)や殿 00039160M15/三味線(さミせん)といふ事を知らぬいなか衆、京へ上り、三条に/宿(やと)を 00039170M16/取(とり)、/皆&(ミな+)/座敷(ざしき)へなをり、あたりを見まわせば、/床(とこ)わきに/三= 00039180M17味線(しや=ミせん)壱/張(てう)かけて有を見て、扨あれハ/何(なん)であらふ。/替(かハ)つたる 00039190M18物かな。何といふ物か。大この/四角(しかく)成やうなものに木をつ 00039200M19きさし、いとをかけ、くいがさして有。何てあらふと/評判(ひやうばん) 00039210¥P128 00039220¥G 00039230L12すれ共、此事/知(し)りたる者、其中に壱人もなし。それより内 00039240L13の/亭主(ていしゆ)をよび、是ハ何で御ざるといへば、何心もなく、是 00039250L14ハどうハ/桐(きり)、さほハしたんで御ざりますといふ。それでも 00039260L15/皆(ミな)/合点(がてん)せず。中でも(三オ)(三ウ・四オ挿絵)/庄(せう)や殿罷出で、 00039270L16合点した。皆だまりやれ。是ハかのこちの/在所(ざいしよ)の入口に有 00039280L17/制札(せいさつ)に/書(かき)て有、きりしたんといふ者ハ此事しや。さきほど 00039290L18より是をいらへば、此いとが、ばてれん+となるといは 00039300L19れた。 00039310¥N3¥J 00039320¥X三△/上手(じやうず)をつかふ/国(こく)せんや 00039330M3京ほり川/辺(へん)の古/道具(だうぐ)やの見せに、/弁財(べんざい)天の/木像(もくぞう)を/売(うり)物に/出(いだ) 00039340M4し/置(をく)を、さる人見て通り、思ひ付たる事が有。今はやる国 00039350M5せんやにての/言葉(ことば)つかひで、なぶり/買(がい)仕らんと、是、/御亭= 00039360M6主(ごてい=しゆ)。此/錦祥女(きんしやう※)ハ/直段(ねたん)何程で御ざるととへば、/亭主(ていしゆ)もさすか 00039370M7の/商人(あきんど)/故(ゆへ)、はや/合点(かてん)(四ウ)して、扨は/拙者(せつしや)が国せんやを知 00039380M8るまひかと、なぶるそうな。此はうも国せんやにて/返答(へんたう)仕 00039390M9らふと、代ハ/和藤内(わとうない)で/御(こ)ざりますといへば、/彼者(かのもの)、きもを 00039400M10つぶし、それハ/高直(かうぢき)にござる。/老(らう)にしてくだされといへば、 00039410M11/亭主(ていしゆ)/聞(きゝ)、其やうな/李踏天(りたうてん)な事ハ申ませぬといふ。/買手(かいて)、も 00039420M12はや是ハ/及(およ)ばぬとかゑりけり。内より女ばう聞て、今のは 00039430M13何といふ事でござると、ふしぎうつ。亭主聞、/尤(もつとも)じや。わ 00039440M14つて申聞せふ。▽/錦祥女(きんしやうぢよ)ハ/弁才天(へんざいてん)の事。▽/和藤内(わたうない)ハ/三官(さんぐわん) 00039450M15といふ事。▽/老(らう)といふ事ハ/一官(いつくハん)にせよといふ。▽/李踏天(りたうてん)と 00039460M16いふ事ハ、目をぬくやうな事ハ申さぬといふ事じや。/女房(によばう) 00039470M17(五オ)聞、はて、/小(こ)むつかしひことをいはしやるといわれ 00039480M18た。 00039490¥P129 00039500¥N4¥J 00039510¥X四△そば切/生(むまれ)/兼(かね)る/門口(もんぐち) 00039520L3夜るハはなしもしゆミますと、/若(わか)い/衆(しゆ)二三人/寄(より)あひ、一ツ 00039530L4二ツといふ内に、夜もふけ/腹(はら)もひもじくなり、是はかんに 00039540L5ん成がたく、折ふし/食(めし)もあり/合(あひ)なく、いかゞつかまつらん 00039550L6といへば、壱人の者申やう、いつぞやより、そば切がのぞ 00039560L7ミ也。/亭主役(ていしゆやく)にそば切いふてやりやとあれば、/夜(よ)もふける、 00039570L8/門(もん)がしまるべし。此/相談(さうだん)ハやめさつしやれといふ。其中に 00039580L9/麁相者(そさうもの)の久七申やうハ、いや+門をしめてもくる/し((ママ))ない。 00039590L10我等がたばかりやうがござる。取あげ(五ウ)ばゞをよびに 00039600L11行といふて、ぜひに/門(もん)をあけさす。しからば、いてござれ。 00039610L12心へたりと、すぐにゆく。あんのことく門しめて有。大/急= 00039620L13用(きう=よう)じや。門をあけと、しきりにたゝく。/夜番(やばん)の者、内より 00039630L14申ハ、何ほど/急用(きうよう)にても、あける事ハなりませぬといふ。 00039640L15いや+、どふでもあけて下され。かなハざる急用じやと、 00039650L16/殊(こと)の/外(ほか)せわしくいふ。/夜番(やばん)又いふやうハ、/段&(だん+)のおことハ 00039660L17りじやが、/何用(なによう)でごさるととへば、いや、取あけばゞの所 00039670L18へ、そばきりをあつらゑにゆくといはれた。 00039680¥N5¥J 00039690¥X五△/腹(はら)のうちて/糊(のり)たち(六オ) 00039700M3さる人、/田舎(いなか)よりはい出の/小者(こもの)をおかれける。/名(な)は長吉と 00039710M4付られ、/有時(あるとき)、長吉。/糊(のり)を/買(かふ)てこいと申付る。/畏(かしこまり)候と丸 00039720M5ぼん/持(もつ)て出ける。どふやらこふやらのりをかふて、長吉、 00039730M6是を見てつく※おもふやうハ、京にてもちのりといふハ 00039740M7此事そふなと、/先(まづ)一ツ/喰(くふ)て見る。二ツくい三ツくい、廿文 00039750M8がのりを/半分(はんぶん)/喰(くふ)て、こわ+内へ/戻(もど)る。/旦那(たんな)まちかねて/居(いる) 00039760M9所なれば、/何(なに)していたる事ぞとしかれバ、はい出、りちぎ 00039770M10者なれバ、何をかくしませうぞ。此のりとやらを/喰(くい)まして 00039780M11ござるといふこゑの下より、かの長吉、はらにてのりたち 00039790M12がしたやら、しやちこばり、目を見つめ、(六ウ)(七オ挿絵) 00039800M13すでにあやうき所なり。/旦那(だんな)/気(き)もをつぶし、やれ/医者(いしや)よ、 00039810M14/針立(はりたて)とうろつく所へ、/医者(いしや)の/道斎(たうさい)見まハれ、是ハ何として 00039820M15かやうにハ成ましたと、やうす聞く。/旦那(たんな)、みぎの次第を 00039830M16のこらす申されければ、道斎うちうなづき、せくまい+。 00039840M17のりを/喰(くい)、しやちこばり候にハ、よこ/槌(つち)をせんじてのまし 00039850M18やつれといはれた。 00039860¥P130 00039870¥N6¥J 00039880¥X六△/我名(わかな)をしらが/法躰(ほつたい) 00039890L3/無筆(むひつ)のおやぢ、内ハむす子に/渡(わた)し、/世(よ)をらくにすむべしと 00039900L4/旦那寺(だんなでら)へ参り、/法躰(ほつたい)に成り、名ハ/法春(ほうしゆん)と付て、/和尚(をうしやう)様に申 00039910L5上るやうハ、わたくし、物わすれいたします。(七ウ)何とぞ 00039920L6名御かき下さるへしとかきてもらい、それよりもとり道に 00039930L7て近付に行あひ、是ハ太兵衛殿。おめてたい/法躰(ほつたい)、あやか 00039940L8り物と一礼して、扨御名ハ/何(なに)と申ますととへハ、/私(わたくし)/名(な)ハ是 00039950L9でこさると、かの書付を見せけれバ、よむ人/麁相者(そさうもの)にて、 00039960L10是は/法春(ほうはる)といふ/名(な)じやといへバ、いや+/寺(てら)の/坊(ほん)様の付て 00039970L11下された名ハ、そのやうな/名(な)てハない。よい名てあつたと 00039980L12いふてわかれ、それより内へ/戻(もと)り、むす子に見せけれバ、 00039990L13むす子ハ/猶(なを)もつてもんもう/者(もの)、此やうな/名(な)を付てもろふと 00040000L14いふ事があるものかとしかれバ、いや/坊(ほう)様のいはしやつた 00040010L15ハよい名じや。(八オ)むす子聞、はて是ハ、御/法(のり)ののりと 00040020L16いふ字と、/春日(かすが)のかすといふ字なり。それで/法春(のりかす)と/云(いふ)/字(な)し 00040030L17やといはれた。 00040040¥N7¥J 00040050¥X七△しんきならうそく 00040060¥G 00040070M12/奥山家(をくやまか)にらうそくをしらぬ/在所(ざいしよ)有。何とてか其/所(ところ)のはたけ 00040080M13/中(なか)に、らうそく壱てうおちて有けるが、所の者ひろいあげ 00040090M14て見て、是ハふしぎなる物があると/我屋(わがや)に/取帰(とりてかへ)り、あたり 00040100M15の/衆(しゆ)をよせてひやうばんすれ共、知り手なく、是ハたれを 00040110M16よべ、かれをよんでおじやといふ所へ、事しり弥ざ(八ウ) 00040120M17ゑもんとて、所にて口きゝかけ来り、是を見て大ぶんおど 00040130M18ろき、是を此やうにしておく物でなし。/桶(をけ)にもたごにも水 00040140M19くめといへば、よりてゐる/者(もの)、是ハ/先(まつ)/何(なん)でござりますとと 00040150¥P131 00040160L1へば、是ハおれが京へ上り候とき、京のせいぐわんじの万 00040170L2日ゑかうの/時(とき)見て/来(き)ました。此なかから火の/出(で)る物じやと 00040180L3いはれた。 00040190¥N8¥J 00040200¥X八△/僣上(せんしやう)のへんねし 00040210L6下京六/条(でう)/辺(へん)に、やう+十/石(こく)ほと/作(つく)る/酒(さか)屋のなに/某(がし)とて、 00040220L7せんしやう/成(な)る人あり。いつの/比(ころ)か、/地震(ぢしん)ゆり候/後(のち)の事な 00040230L8るが、そのとなりに、もちやの八兵衛と申(九オ)人あり。 00040240L9此八兵衛殿をよびて、扨/昨日(きのふ)の/地震(ちしん)ハよほどのゆりでござ 00040250L10つた。それにつき、此はうハ大ぶんのそんがこざる。聞て 00040260L11下され。弐千石ほとの/酒桶(さかをけ)がこけて、みなこほれましたと 00040270L12いへば、/餅(もち)屋の八兵衛聞て、さて+きつひうそ、せんし 00040280L13やういひをるとおもひ、それハわつかのそん。又此はうの 00040290L14ハ、/昨日(きのふ)いたしたしんこのねぢが/地震(ちしん)でみな、ねぢがもと 00040300L15つ((た脱カ))といはれた。 00040310¥N9¥J 00040320¥X九△/無筆(むひつ)の/書出(かきだ)し 00040330L18中京に大ぶんはやるたうふやあり。此/亭主(ていしゆ)無筆なる人にて 00040340L19一代売買帳なし。いつ/方(かた)にても(九ウ)(十オ挿絵)たうふと 00040350M1りにくると、/障子(しやうし)に、たうふつかハし候程のかずを、ぼう 00040360M2ひきてしるし/置(をく)。/或(ある)ひハたうふ壱てうなれバ一すじ、三て 00040370M3うなれば三すじ引。/節季(せつき)より/節季(せつき)/迄(まで)/皆(ミな)/是(これ)なり。/極月(こくけつ)/大晦日(おほつもごり) 00040380M4のばんに、/堺(さかい)やの太郎兵衛様ハ/爰(こゝ)でござりますかと、けわ 00040390M5しく/戸(と)をたゝく。内よりおどろき、たれて御ざるといへハ、 00040400M6/豆腐(たうふ)屋でござります。/書出(かきだ)しが参りました。/大戸(おほと)あけて下 00040410M7されませといふた。 00040420¥G 00040430¥P132 00040440¥N10¥J 00040450¥X十△物しりのおやぢ 00040460L3あら/玉(たま)の/年(とし)もわかやく/老(をい)の/身(ミ)も、子共あつめて(十ウ)遊ぶ 00040470L4春、玉うち、あないち、ほうびきや、はなしをしてあそぶ 00040480L5中にも、おろかしき子どもありて、みなの/衆(しゆ)、/聞(きか)つしやれ。 00040490L6とうしんといふ物ハどこから出る物ぞといへば、壱人の子、 00040500L7あれハあミ/笠(かさ)のうちから出るといふも有。又壱人ハ、たゝ 00040510L8ミのうちより出るといふも有。又壱人ハ、あミ笠からもた 00040520L9ゝミからも/出(で)ハせぬ。こちのあんとうの引出しから出ると 00040530L10いふた。(十一オ) 00040540¥Y1軽口はなし△二之巻 00040550M3一△はじめて京の/餅(もち)つき 00040560M4二△/身鯨(ミくじら)の/目利(めきゝ) 00040570M5三△/馬上(ばしやう)の/莨■盆(たばこぼん) 00040580M6四△から物の/道具(だうぐ) 00040590M7五△人によりて/精進日(しやうじんび)(一オ) 00040600M8六△/親(おや)より/大切(たいせつ)な/食櫃(めしびつ) 00040610M9七△/才学(さいかく)も/事(こと)による 00040620M10八△/辞義(じぎ)のとりちがへ 00040630M11九△/例年(れいねん)の/薬喰(くすりぐひ)(一ウ) 00040640¥T1 00040650¥N1¥J 00040660¥X一△はじめて京の餅つき 00040670L3/或人(あるひと)、/鄙(いなか)よりかしこらぬ/男(おとこ)をおかれしが、其/兄弟衆(きやうだいしう)の/所(ところ) 00040680L4に、/餅(もち)つきにて/彼(かの)男をやとハれけるが、日の/暮(くれ)がたにかへ 00040690L5りけり。/傍輩(ほうばい)ども/寄会(よりあひ)、なんと、其方ハぜんざい餅をたん 00040700L6と/喰(くふ)たであらふといへば、此男、いや+けもない事、た 00040710L7べぬといふ。しからば、/雑煮(ざうに)であつたかといへば、いや、 00040720L8それでもないといふ。それならば、何をくふたととひけれ 00040730L9ば、いや、あそこにはぜんざい/餅(もち)ハしらしやれぬ(二オ)と 00040740L10見へて、いとこ/煮(に)の/餅(もち)であつたといふた。 00040750¥N2¥J 00040760¥X二△身鯨の目利 00040770L13大坂に/熊野(くまの)や/頓(とん)兵衛といふ人あり。此仁、くま野ゝ人にて 00040780L14/鯨(くじら)を/目利(めきゝ)せらるゝ。其/友達(ともだち)に/朱(しゆ)兵衛といふ人あり。此人、 00040790L15/身鯨(ミくじら)が/好(すき)にて/喰(くハ)れけれ共、よきくじらに/買(かい)あたらず。それ 00040800L16ゆへ/頓(とん)兵衛を/頼(たの)ミ、いつにても貴様の/目利(めきゝ)にて、よき/身鯨(ミくじら) 00040810L17をかふて給ハれと/頼置(たのミをき)ければ、ある時よき鯨を(二ウ)見/合(あハせ)、 00040820L18/買(かい)ける。其内をわけて彼朱兵へ方へつかハさんと思ひ、/少(ちと) 00040830L19ぬけたる男にもたせ/遣(つかひ)、内&お/望(のぞ)ミゆへ買ました程に、/遣(つかハ) 00040840M1しますといふて持て参れ。扨代ハ六分でござりまするとい 00040850M2ふて、/銭(ぜに)をうけ取て帰れといひ付ければ、やがて朱兵衛所 00040860M3へ行て、内&のお/望(のぞミ)ゆへ/身鯨(みくじら)を進じますると/慇懃(ゐんぎん)に/口上(こうじやう)を 00040870M4/演(のべ)ければ、朱兵衛/夫婦(ふうふ)悦び、扨&お心に/懸(かけ)られまして/忝(かたじけない) 00040880M5とて一/礼(れい)をいひ、/肴篭(さかなかご)へ/紙(かミ)二枚入て、かの男に(三オ)渡し 00040890M6ければ、此男つく※と見て、/其段(そのだん)頓兵衛へ申きけませう。 00040900M7代物ハ六分でござりまするといふて帰つた。 00040910¥N3¥J 00040920¥X三△馬上のたばこぼん 00040930M10/片田舎(かたいなか)より京見物に上りし人有ける。三条の/辺(へん)にて、あし 00040940M11だの行人、/鉄(かね)のひとつあしの/高木履(たかぼくり)をはき/鐘(かね)打ならし、し 00040950M12ゆしやうげに/勧進(くわんじん)して通りけるに、大津に/通(かよ)ふ/駄賃馬(だちんむま)の/馬= 00040960M13子(ま=ご)、/荷物(にもつ)を/卸(おろし)、馬に打のりて行けるが、彼/勧進(くわんじん)/坊主(ぼうす)を(三 00040970M14ウ)(四オ挿絵)よびかけければ、銭をくれけると思ひ、/只今(たゞいま) 00040980M15/料足文(りやうそくもん)の心ざしととなへければ、いや+、かうろの火 00040990M16ですいつけるとて、たばこをすひて帰けるを、行人はらを 00041000M17たてけれども、/強勢(がうせい)なる/馬子(まご)なれば、ぜひに/及(およば)ず打過ける 00041010M18ぞ/本意(ほゐ)なけれ。 00041020M19△△此/田舎衆(いなかしう)の評にいハく、扨&/都(ミやこ)は/自由(じゆう)な事。/馬乗(むまのり)のた 00041030¥P134 00041040¥G 00041050L12△△ばこぼんハあたまにいたゝきてゐるとかんじた。 00041060¥N4¥J 00041070¥X四△/唐物(からもの)の/道具(だうく)(四ウ) 00041080L15下京/辺(へん)にて、こつちり/茶平(ちやへい)とて/有徳(うとく)の人あり。されども/文= 00041090L16盲(もん=もう)/第(だい)一の人にて有ければ、/近所(きんじよ)の人/笑止(せうし)がりて、/常&(つね※)/異見(ゐけん) 00041100L17しけるハ、こなたは/身躰(しんだい)ににあハぬ。どこへいても/料理(りやうり)で 00041110L18も/道具(だうぐ)でも、すきと/誉(ほめ)ぬ人じや。/亭主(ていしゆ)ハ/気(き)をはりてよき物 00041120L19を出すに、うつかりとしておゐやるハ、/中&(なか+)見にくい。/先(まづ) 00041130M1ハていしゆへの/無礼(ぶれい)なりといひ、かさねてはどこへ行ても、 00041140M2何かに気を付てあいさつめされよといひければ、心得(五 00041150M3オ)たりとて、/其後(そののち)ハどこへ行ても何もかにも/気(き)を/付(つけ)、じ 00041160M4まんになられた。/或時(あるとき)/雨中(うちう)の/淋(さび)しき/折(おり)、さる方へはなしに 00041170M5ゆかれけるに、/亭主(ていしゆ)/罷出(まかりいで)、よふこそ御出なされました。/我= 00041180M6等(われ=ら)も今日ハさびしう存ておりました。/幸(さいハひ)おすきの/茶(ちや)を入ま 00041190M7せう。先&是へおあがりなされませよとて、/莨■盆(たばこぼん)を出し 00041200M8ければ、/茶平(ちやへい)、やがてたばこぼんにしかゝり、是はおちや 00041210M9さへでござるに、おたばこ/迄(まで)忝ない。はて扨きれいなきせ 00041220M10る。/爰物(こゝもの)とハ見へませぬ(五ウ)といハれければ、/亭主(ていしゆ)もお 00041230M11かしくおもひながら、されバと/斗(ばかり)いひければ、茶平、ひた 00041240M12ものひねくりて見しに、すい/口(くち)に/水口(ミつくち)といふ/銘(めい)あり。それ 00041250M13をすひ口とよみ、はあ/唐(から)にまぎれない。/惣(そう)じて/唐(から)にハ/諸道= 00041260M14具(しよだう=ぐ)に/書付(かきつけ)/致(いた)すと申が、/爰物(こゝもの)でない/証拠(しやうこ)にハ、/水口(すいくち)と/書付(かきつけ)が 00041270M15ござるといひて、/雁首(がんくび)の/方(かた)をミれば、また/水口(ミなくち)と/銘(めい)あり。 00041280M16茶平、はつと思ひしが、せかぬかほで、いや是は、爰です 00041290M17ひくちをがんくびになをしたと見へた。今ハ/日本(にほん)(六オ)に 00041300M18もよい/細工(さいく)人が出来たと申された。 00041310¥P135 00041320¥N5¥J 00041330¥X五△人によりて精進日 00041340L3げにや/紅(くれな)ゐは/園生(そのを)にうへてもかくれなし。/茶平(ちやへい)/弟(おとゝ)に/杓(しやく)右衛 00041350L4門といふて、/近比(ちかごろ)/文盲(もんもう)なる人あり。/或時(あるとき)/近所(きんじよ)にて、/卵(たまご)のふ 00041360L5ハ+を/振廻(ふるまひ)ける。/亭主(ていしゆ)大ぶんに/拵(こしら)へければ、よほどあま 00041370L6りけるに、/明日(あす)/迄(まで)はおかれまいとて、/寸蔵(すんざう)といふ/下部(しもべ)をよ 00041380L7び、是/喰(くふ)てしまへといへば、此男、いや、わたくしハおゆる 00041390L8しなされませいといふ。それハなぜ(六ウ)にじや。くるし 00041400¥G 00041410M1からぬ。/喰(くへ)といへば、男めいわくがりて/辞退(じたい)するを、ぜひ 00041420M2くへといへば、/私(わたくし)ハ/今日(こんにち)ハ大/事(し)のしやうじん日でござりま 00041430M3す。それハ/何精進(なにしやうじん)なるぞととへば、けふは廿五日、/法然= 00041440M4様(ほうねん=さま)の御日でござるといふ。扨&そちハ/信心(しん※)ふかきものじや 00041450M5と、/旦那(だんな)も/少(すこ)し/恥入(はぢいり)けるに、/彼杓(かのしやく)右衛門申されけるハ、是 00041460M6+寸蔵。/仏(ほとけ)のしやうじんならば、おちてもくるしからぬ。 00041470M7/歴&(れき+)の/家持(いゑもち)さへおちるといハれしハ、どふしたがつてん。 00041480M8(七オ)(七ウ挿絵) 00041490¥N6¥J 00041500¥X六△親より大切な食櫃 00041510M11下/京辺(ぎやうへん)/比丘尼(びくに)の/図子(づし)とやらんいふ/所(ところ)あり。其町の/裏屋(うらや)に、 00041520M12ある/後家(ごけ)、/男(おとこ)の子ひとり/持(もち)て、人/仕事(しごと)して世をわたりゐる。 00041530M13/或日(あるひ)、事の外/寒(さむ)きとて/火燵(こたつ)にあたり、/親子(おやこ)ながらねころび 00041540M14ゐけるに、此子、ひたもの/母(はゝ)のあしを/踏(ふミ)ける。/折節(おりふし)/隣(となり)の人 00041550M15来りて、やれ/勿躰(もつたい)ない。それハ/母親(はゝおや)のあしをふむものかと 00041560M16いへば、此子がいふやうハ、なんと、かゝをふむだら大事 00041570M17か。(八オ)/食(めし)びつでハなしといふた。 00041580¥P136 00041590¥N7¥J 00041600¥X七△/才学(さいかく)も事による 00041610L3/天(あめ)の/宮(ミや)/長庵(ちやうあん)とかやいひし/医師(ゐしや)あり。/半季(はんき)十弐匁にて下男 00041620L4をおかれしが、/或時(あるとき)長/庵(あん)、風をひかれしかバ、/薬(くすり)一ふく手 00041630L5合にし、しやうが二へぎ入、つねのことくせんじ候へと、 00041640L6/彼男(かのおとこ)にいひ付られければ、/畏(かしこまり)候と/薬鍋(くすりなべ)とり出し、是を大 00041650L7事と/煎(せん)じ、扨一ばんせんじあがりませいと持来る。長/庵(あん)一 00041660L8口のまれければ、事の/外(ほか)に/塩(しほ)(八ウ)からければ、ふしぎに 00041670L9思ひ、彼男をよび付、是は何として、/塩(しほ)けが有ぞといへば、 00041680L10いや、お/気遣(きづかひ)なしにあがりませいといふ。それハなぜにと 00041690L11いへば、手まへにしやうががござりませぬゆへ、/香(かう)の物の 00041700L12しやうがを入ました。 00041710¥N8¥J 00041720¥X八△/辞義(じぎ)の取ちがへ 00041730L15/世(よ)に/愚鈍(ぐどん)なるものは/沢山(たくさん)なり。/或(ある)人/沢山(たくさん)なる男をおかれけ 00041740L16る。/友達(ともだち)の/方(かた)にうつくしき/猫(ねこ)を/飼(かハ)れける。其ねこを/一向(ひたすら)に 00041750L17/所望(しよもう)せられしにより、しからバいつ成共(九オ)とりに/御越(おんこし) 00041760L18と/約束(やくそく)しけるゆへ、彼男をもらいにやられけり。/先(さき)キ様に 00041770L19七つ/斗(はかり)なる/男子(おとこのこ)有しが、此子/聞(きい)て、/猫(ねこ)をやる事ハならぬと 00041780M1/泣(なき)ければ、/親(おや)せんかたなく、いろ+たらし、よ/所(そ)のおぢ 00041790M2さまにやくそくしたによつてやらねバならぬ。我にハ又よ 00041800M3い物をやる/程(ほど)に、此/猫(ねこ)ハあの人にわたせといへば、此子し 00041810M4く+なきて、ぜひにおよばぬかほしてゐれば、/彼男(かのおとこ)、/猫(ねこ) 00041820M5をもらひ、/左(ひだり)のわきに/抱(いだ)きて、帰りさまに(九ウ)/右(ミぎ)の/手(て)を 00041830M6つき、/先(まづ)かへりまする。はて扨わこさま。いかいおちから 00041840M7おとしでござりまするといふた。 00041850¥N9¥J 00041860¥X九△/例年(れいねん)の/薬喰(くすりぐひ) 00041870M10/去人(さるひと)/毎年(まいねん)/寒(かん)のうちハ/薬喰(くすりぐひ)とて、/鹿(ろく)をくハれけるゆへ、/鹿(ろく)/売= 00041880M11者(うる=もの)、/徳意(とくゐ)にして/例年(れいねん)来りけり。あるとし、また/寒前(かんまへ)に来り、 00041890M12いつも参るものでござりまする。お/見舞(ミまい)申まする。/当年(たうねん)も 00041900M13/鹿(ろく)を持て参りませう/程(ほど)に、相かハらず/召(めし)て(十オ)下されま 00041910M14せいとて、/密柑(ミかん)廿/斗(ばかり)/盆(ぼん)にのせて出しければ、はて扨よふこ 00041920M15そおじやつた。いかにも、ことしも/喰(くハ)ふ程に持ておじや。 00041930M16此/程(ほど)ハ/寒(かん)をまちかねて、此中ハぶたをくふが、扨&むまい 00041940M17事じやといハれければ、/鹿売(ろくうり)、かほをしかめ、はて、それ 00041950M18ハむさいものをあがりまするといふた。(十ウ) 00041960¥P137 00041970¥Y1軽口はなし△三之巻 00041980L3一△/貧乏神(びんぼうかミ)の/付刄(つけやきば) 00041990L4二△おらゝが/親(おや)もよし/有者(あるもの) 00042000L5三△/療治(れうぢ)は/天道(てんたう)/次第(しだい) 00042010L6四△/麁相者(そさうもの)ハ/恥(はぢ)の/看判(かんばん) 00042020L7五△/冬(ふゆ)も/汗(あせ)かく/給仕人(きうじにん) 00042030L8六△/気(き)をせかぬも/善悪(よしあし)(一オ) 00042040L9七△思ひの/外(ほか)の/酒(さけ)のかん 00042050L10八△/誹諧(はいかい)はどふした物か(一ウ) 00042060¥T1 00042070¥N1¥J 00042080¥X一△びんぼう神の付やきば 00042090M3/人者(ひとハ)一代のうちにうきしづミが七たびは有と、むかしより 00042100M4いふたれ共、しづミてからハうきがたい物。/上京(かミぎやう)/辺(へん)に/徳= 00042110M5嶋屋(とく=しまや)の/雲(うん)八といふ人、かたい/銀(かね)三百/貫目(くわんめ)、/親(おや)の/譲(ゆづり)に/請取(うけとつ)た 00042120M6ハ/町衆(ちやうしゆ)も御/存(そんじ)の事。/若(わかい)ハしどがない。何としてやら四五年 00042130M7の中つかひ/捨(すて)、今ハ/小遣銭(こづかひぜに)さへなき/仕合(しあハせ)、一/門中(もんぢう)より合、 00042140M8/是程(これほど)にすり/切(きる)といふ事が/有物(あるもの)かとて、さん※にしかる。 00042150M9/町衆(ちやうしゆ)もあきれはて、(二オ)是+/雲(うん)八/殿(との)。大ぶんの/銀(かね)みな 00042160M10になるまで、/何(なに)の/談合(だんかう)もなしにうか+とくらすと事が有 00042170M11物かといへば、それ程に/思召(おほしめ)さば、とうからいふてハ下さ 00042180M12れいでと、/却而(かへつて)/不興皃(ぶけうがほ)する。それハ/近比(ちかごろ)わるいがてん。ど 00042190M13ふぞ今からとても、何ぞ/似合敷(にあハしき)/商(あきなひ)でも/成(なる)まい物でないと 00042200M14いへども、何をせうにも/元手(もとで)一文なければ、どふぞ/当分(たうぶん)も 00042210M15とでのいらぬ事を/思案(しあん)して見給へ。何事もこなたの/為(ため)。身 00042220M16すぎにする事(二ウ)/恥(はぢ)にハならぬ。身を/捨(すて)てこそうかむ/瀬(せ) 00042230M17があると、しミ※と/異見(ゐけん)すれば、/雲(うん)八も/得心(とくしん)して、/近比(ちかごろ) 00042240M18/忝(かたじけな)い。/成程(なるほど)よき/分別(ふんべつ)仕ました。/明日(あす)から/精(せい)を出し、かせ 00042250M19ぎませうといひけるゆへ、何ぞ/商(あきなひ)の思ひ付が有かといへば、 00042260¥P138 00042270L1あぢな事を/巧(たくミ)ましたと、/錐(きり)を一本/腰(こし)にさし、あくる日/早&(さう+) 00042280L2より出るを、/懇(ねんごろ)なる/衆(しゆ)、あとより付て見れば、京中を、火 00042290L3ふき竹のあなあけうとて、あるかれた。(三オ) 00042300L4△△此/雲(うん)八のたわけ物、三百貫目といふ銀を何としたつかひ 00042310L5△△やうぞ。/嘸(さぞ)おかしからふ。火ふき竹の/穴(あな)、京中あるくと 00042320L6△△ても、/銭(せに)/出(だ)すものは有まいといへば、いや+、壱/軒(けん)/有= 00042330L7△△家(ある=いゑ)を、びんぼう神が/尻(しり)からふきたてるであらふといひし 00042340L8△△ハ、よい見たて。 00042350¥N2¥J 00042360¥X二△おらゝか親もよしある者 00042370L11/丹州(たんしう)の/何村(なにむら)とかやいひし所でハ、/名字(ミやうし)もある/百性(ひやくしやう)の子なれ 00042380L12ども、よほどたらぬ/男(おとこ)なれハ、/田畠(たはた)もミなにして、京にあ 00042390L13る(三ウ)(四オ挿絵)/伯母聟(おばむこ)を/頼(たの)ミて、ある所に/奉公(ほうこう)してゐ 00042400L14られけるが、/夕飯(ゆふはん)の/振舞(ふるまひ)ありて、/台所(だいどころ)いそがハしけれハ、 00042410L15/料理(りやうり)する/若(わか)いもの、それ太郎作。/汁(しる)がにへたか、見てたも 00042420L16といへば、/心得(こゝろへ)ましたとて、/旦那(だんな)の/椀(わん)にて/汁(しる)をすふ。/若(わか)い 00042430L17もの見付、是+太郎作。それハ/旦那様(だんなさま)の/椀(わん)じやがと、し 00042440L18かりければ、はて、/大事(たいじ)ござらぬ。/旦那殿(だんなとの)じやといふて、 00042450L19/穢多(ゑつた)しやうもじでハ有まいといふた。(四ウ) 00042460¥G 00042470¥N3¥J 00042480¥X三△/療治(りやうぢ)は/天道(てんたう)/次第(しだい) 00042490M14大坂の/天満(てんま)あたりに、/損伯(そんはく)とて大やぶの/医師(くすし)あり。/天神橋(てんじんばし) 00042500M15に/米(こめ)/問(どい)屋の何右衛門とかやいふ人/煩(わづらひ)けるが、/彼損伯(かのそんはく)をよ 00042510M16びて/薬(くすり)を/呑(のま)れけり。此くすし、/毎日(まいにち)/加減(かげん)をして/療治(りやうぢ)すれ共、 00042520M17/次第(しだい)に/病気(びやうき)おもくなれば、とかく/医者(ゐしや)をかへんとて/大医(たいゐ)を 00042530M18よび見せければ、是は何とも/合点(がてん)のまいらぬ/病症(びやうしやう)。今まで 00042540M19の/薬(くすり)ハと/尋(たづ)ねける。折ふし/損伯(そんはく)も/来合(きあハせ)けれハ、/幸(さいわひ)の(五オ) 00042550¥P139 00042560L1所へお出。/只今迄(たゞいままて)のお/療治(りやうぢ)ハ何とか。/医案(ゐあん)を承らんとあれ 00042570L2ば、/損伯(そんはく)/迷惑(めいわく)し、されハ、/私(わたくし)もむつかしい/病気(びやうき)と見ました 00042580L3ゆへに、/薬(くすり)を/何服(なんぷく)も/合(あハせ)、/天道(てんたう)/次第(しだい)と申て、なげまして/封(ふう)じ 00042590L4めの上へなつたを/用(もち)ひましたといハれた。 00042600¥N4¥J 00042610¥X四△/麁相者(そさうもの)ハ/恥(はぢ)の/看判(かんばん) 00042620L7大坂/新地(しんち)に/小児医師(せうにゐしや)/南哲(なんてつ)とかやいひし人有。作介といふ/麁= 00042630L8相者(そ=さうもの)をつかひけるが、/近所(きんじよ)に/石部屋(いしべや)の/金蔵(きんざう)といふ人(五ウ) 00042640L9の子わづらいければ、/南哲(なんてつ)をたのミて/療治(りやうぢ)せられけるが、 00042650L10此子、いかにしても/薬(くすり)うけつけず。/南哲(なんてつ)、また見まハれけ 00042660L11れば、/親達(おやたち)申さるゝハ、/昨日(きのふ)のお/薬(くすり)たべさせますれば、の 00042670L12ミこまずにはき出しまするといへハ、/南哲(なんてつ)、また/脉(ミやく)をうか 00042680L13ゞひ見られける所へ、作介申やう、申/旦那様(だんなさま)。此お/薬(くすり)ハ/天= 00042690L14満(てん=ま)の万右衛門殿の/死(しん)だ子の/薬(くすり)でハござりませぬかといへば、 00042700L15/南哲(なんてつ)、きのどくに思ひ、/聞(きか)ぬふりしてゐられけれ共、/後(うしろ)よ 00042710L16り/羽織(はをり)を/引(ひき)、(六オ)くりかへしいひければ、大だハけめが、 00042720L17何をぬかすとて、しかりける。作助申やう、こなたの其心 00042730L18入じやによつて、/猶(なを)/心許(こゝろもと)ないといふたハ/笑止千万(せうしせんばん)。 00042740¥N5¥J 00042750¥X五△/冬(ふゆ)も/汗(あせ)かく/給仕(きうじ)人 00042760M3中京に/万(よろづ)屋の/徳斎(とくさい)とてかくれなきしわさ、一文の/銭(せに)百にわ 00042770M4つてつかふやうな生れつき。され共手まへよろしく、町に 00042780M5も古き仁なれば、何事に付てものけて/置(をか)ぬ人なりしが、/内= 00042790M6義(ない=ぎ)申さるゝハ、こなたもどこへも(六ウ)かしこへも/振舞(ふるまひ)と 00042800M7あれハゆかしやる。/少(ちと)此/方(ほう)へも/夜(よ)さりもと/呼(よび)給へとあれハ、 00042810M8さらばあすの/晩(はん)、そば切にて/振舞(ふるまひ)いたさうとて、近所の衆 00042820M9へ/案内(あんない)いハれければ、/皆&(ミな+)/打寄(うちより)、あのしわい/徳斎(とくさい)がそば切 00042830M10/振舞(ふるまひ)ならハ、/定而(さためて)一/桶(をけ)か二おけ/迄(まで)ハ/買(かふ)まい/程(ほど)に、/随分(すいぶん)/喰(くハ)ん 00042840M11と/談合(だんかう)し、扨人&/打連立(うちつれだち)ていきけり。/案(あん)のごとく、六七人 00042850M12の/客(きやく)に/漸(やうやく)/蕎麦切(そばきり)二/桶(おけ)なり。され共/徳斎(とくさい)、せんしやうもの 00042860M13なれハ/座敷(ざしき)へ出、いづれも/適&(たま+)のお出なれ共、さしたる 00042870M14(七オ)御/馳走(ちそう)も申さぬ。/去(さり)ながら大/分(ぶん)/蕎麦(そば)の/用意(ようゐ)いたした。 00042880M15/随分(ずいぶん)まいつて被下よといへば、/勝手(かつて)ハみなになれ共ひた物 00042890M16/喰(くひ)けるゆへ、/給仕(きうじ)人の三吉めいわくしてゐれども、/客(きやく)ハか 00042900M17まハず、そばもつておじやといふ。/勝手(かつて)へゆけハ、もはや 00042910M18/聞(きか)ぬかほして、とるなとしかる。とかくはやう/酒(さけ)を出した 00042920M19らば、/蕎麦(そば)をくハれまいとて、三吉に/間鍋(かんなべ)もたせ出すれば、 00042930¥P140 00042940L1三吉が/皃(かほ)見ると、そば切+とせがむ。三吉、/勝手口(かつてぐち)にう 00042950L2ろ+してゐる所に、お/内義(ないぎ)ハ/肴鉢(さかなばち)を(七ウ)取くみ、是も 00042960L3つて出よといハれけれ共、三吉も/座敷(ざしき)へ出れば、そば切と 00042970L4せがむによつて、ぜひなく/肴鉢(さかなばち)をゑさし/箒(ばうき)にのせて、/勝手(かつて) 00042980L5/屏風(びやうぶ)のうしろからさし出した。 00042990¥N6¥J 00043000¥X六△気をせかぬもよしあし 00043010L8/西山(にしやま)の/辺(へん)に不/動院(どうゐん)といふ/寺(てら)あり。/或時(あるとき)、所の/歴&(れき+)/衆(しゆ)をふる 00043020¥G 00043030M1まハれければ、/亭坊(ていぼう)気をせく人にて、/夕飯(ゆふはん)の/振舞(ふるまひ)を/前日(まへび)の 00043040M2/晩(ばん)よりこしらへさせければ、/内(うち)の/者(もの)共、/夜(よ)をねぬゆへ/草臥(くたびれ) 00043050M3て、こしらへハ/出来(でき)る、(八オ)(八ウ挿絵)みなねふりゐたり 00043060M4しが、作介も/茶釜(ちやがま)の/下(した)をたき+、/前後(せんこ)もしらずね入けれ 00043070M5ば、もえくい、/柴(しば)の中へおちて火事となり、/台所中(だいどころぢう)/煙(けふり)と 00043080M6なれば、やれ水よ+とよばハる。/在所中(ざいしよぢう)/出合(であひ)、/漸(やう+)として 00043090M7/消(け)しにける。/門前(もんぜん)にさハかぬ/男(おとこ)/有(あり)けるが、けし/炭(すミ)にて/堂(だう)の 00043100M8はしらにかく/斗(はかり)。 00043110M9△△不/動院(どうゐん)くりから/火烟(くわえん)/出(いで)ければ 00043120M10△△△/客(きやく)ハこんがら/亭主(ていしゆ)せいたか(九オ) 00043130¥N7¥J 00043140¥X七△思ひの外な酒のかん 00043150M13大坂/何町(なにまち)とやいひし所に/町振舞(ちやうぶるまひ)あり。此お町中、いづれも 00043160M14そろふたる/飲手(のミて)なれハ、/亭主(ていしゆ)も一きわもるべしと、たくみゐ 00043170M15る。されども/遍(へん)/極(きハま)りたる/作法(さほう)ありて、/中酒(ちうしゆ)ともに五/遍(へん)に/定(さだまり) 00043180M16たれハ、/亭主(ていしゆ)/給仕(きうじ)人に申けるハ、/中酒(ちうしゆ)ハ/常(つね)の/盃(さかつき)、二へんめよ 00043190M17りハ/盞(さん)をかへ/中椀(なかわん)にてもり、四/遍(へん)まハらバ/汁椀(しるわん)につぎ給へ。 00043200M18五へんめハおさめなれハ、/花(はな)やかに/食椀(めしわん)にてもるべし。三 00043210M19べんまハらハ、/我等(われら)(九ウ)出て、/汁椀(しるわん)にてしゐる程に、其 00043220¥P141 00043230L1通心得よといへば、/給仕(きうじ)人、はや三べんまハりましたとい 00043240L2ふ時、/亭主(ていしゆ)ハ、身共出て、なんでも/汁椀(しるわん)に仕らふとて、/座= 00043250L3敷(ざ=しき)へ/出(いで)、見/渡(わた)しければ、はやいづれも/飯椀(めしわん)になん+とう 00043260L4けて、/御亭主(ごていしゆ)、/何(なんと)といへば、/亭主(ていしゆ)あきれて/詞(ことバ)なく、はあ、 00043270L5/迚(とても)ならば、/通(かよ)ひ/盆(ぼん)がようござらふといハれた。 00043280¥N8¥J 00043290¥X八△誹諧ハどふした物か 00043300L8下京の/片辺(かたほとり)に/福蔵(ふくざう)とて/文盲(もんもう)なるおとこ、(十オ)かたのごと 00043310L9くせんしやう/者(もの)にて、/仮初(かりそめ)にもうそをつく生れつき。/友達(ともだち) 00043320L10の/方(かた)へ/噺(はなし)にゆかれければ、/折節(おりふし)/近所(きんしよ)の/衆(しゆ)、/四方山(よもやま)のはなし 00043330L11有ける時、何と/福蔵殿(ふくざうどの)。此中は/何方(いつかた)へもお出ないかとあれ 00043340L12ば、されは、/昨日(きのふ)/妙円寺(ミやうえんじ)と申/寺(てら)へ、/誹諧(はいかい)の/会(くわい)に/参(まい)つたとい 00043350L13ふ。それハ/聞馴(きゝなれ)ぬ/寺(てら)なり。何と、妙は/妙法(ミやうほう)の妙てござらふ 00043360L14が、ゑんハどふでござるととへば、それハ/竹縁(たけゑん)てござる。 00043370L15いや、かきやうの事でござるといへば、わらび/縄(なハ)のまハし 00043380L16かきで(十ウ)ござるといへば、それでこなたの/誹諧(はいかい)ハ、何 00043390L17と心/許(もと)ないとわらひければ、いや、さのミ/心元(こゝろもと)ない事もご 00043400L18ざらぬは。/味曽汁(ミそしる)がうすうてよかつたといハれた。(十一オ) 00043410¥Y1軽口はなし△四之巻 00043420M3一△/様子(やうす)しらぬ/化物宿(ばけものやと) 00043430M4二△せんじやうつねのことく 00043440M5三△何をいふも/商口(あきなひくち) 00043450M6四△/馬(むま)をうらやむ/老僧(らうそう) 00043460M7五△一/町中(ちやうぢう)の/分別袋(ふんべつぶくろ)(一ウ) 00043470M8△△/自慢(じまん)の一/芸(げい) 00043480M9△△/博奕(ばくち)ハ一はい/機嫌(きげん) 00043490¥K〔註・目次の次に本文つづく〕 00043500¥P142 00043510¥T1 00043520¥N1¥J 00043530¥X一△様子をしらぬ化物宿 00043540L3下京五条あたりに、/手前(てまへ)/隙(ひま)にくらして、/後生(ごしやう)一へんに思ひ 00043550L4入たる人あり。/朝(あさ)/早&(さう+)より/起(おき)て見せに/出(いで)、たばこ/盆(ぼん)をとぎ 00043560L5にして、/数珠(すゞ)をつまぐりゐられける所へ、/廻国(くわいこく)の/修行者(しゆぎやうしや)来 00043570L6り、申/兼(かね)ましたが、おたばこ一ふく/所望(しよもう)(二オ)とあれハ、 00043580L7何は/扨(さて)/先(まづ)こしかけてゆるりと参れ。してこなたにハ/旅僧(たびそう)と 00043590L8見へましたが、/何国(いづく)へお通りといへは、/成程(なるほど)/愚僧(ぐそう)ハ/諸国(しよこく)/修= 00043600L9行(しゆ=ぎやう)の/者(もの)でござる。/亭主(ていしゆ)/殊勝(しゆせう)に思ひ、何と、国&を/廻(まハ)り給ハ 00043610L10ヽ、/嘸(さぞ)/色&(いろ+)の事がござらふといへハ、されハ/方&(ほう+)とあるき 00043620L11ますれ共、/別(べち)にかハつた事もござらぬ。/去(さり)ながら/行暮(ゆきくれ)てハ 00043630L12/野(の)に/臥(ふす)事もこざり、又/宿(やど)かりて/泊(とま)る事も/有(あり)といへば、何と 00043640L13おそろしい事/抔(など)ハござらぬかととふ。いや、それハ/夜道(よミち)を 00043650L14通れハ物すごひ事。時&ハ/幽霊(ゆうれい)(二ウ)(三オ挿絵)などにも 00043660L15あひますれば、/廻向(ゑかう)致して通りまするか、ふしぎなハ/夕部(ゆふべ)、 00043670L16/大仏(だいふつ)/辺(へん)に/宿(やど)をかりましたれハ、すさまじい事がござつた。 00043680L17夜もはや/明方(あけがた)に見れハ、/仁階(にかい)より/鬼(おに)のかたち、又ハ白きき 00043690L18る物を/着(き)たる/幽霊(ゆふれい)、其あとより/坊主(ぼうず)も出る。其すさまじさ。 00043700L19身共も/始(はじめ)ハ/念仏(ねんぶつ)申、ゑかうも致したれ共、あまりおそろし 00043710¥G 00043720M12さに/裏(うら)の/垣(かき)をやぶり、にげて参つた。あれハばけ物の/巣(す)で 00043730M13あらふと存るといハれた。 00043740M14△△此/旅僧(たびそう)しらねば/道理(だうり)。是ハ/願人坊主(くわんにんぼうず)、(三ウ)/行人(きやうにん)、風の 00043750M15△△神をくる者の/宿(やと)、朝こしらへて出る成べし。それにおそ 00043760M16△△るゝ御出家、思ひやられた。 00043770¥N2¥J 00043780¥X二△せんじやうつねのことく 00043790M19/摂州(せつしう)/何之郡(なにのこほり)とかやの/守護(しゆこ)、きびしき/殿(との)にて、/手下(てした)の百/性(しやう)、 00043800¥P143 00043810L1/町(ちやう)人共、/納米(なふまい)を不/足(そく)仕ハ、是/皆(ミな)おごりゆへなれハ、/平生(へいぜい)/食= 00043820L2事(しよく=じ)の/外(ほか)、/酒(さけ)/肴(さかな)などハ/堅(かた)く/停止(てうじ)との/制法(せいほう)也。所の/者共(ものとも)/打寄(うちより)、 00043830L3是はきびしき/仰付(おほせつけ)。さりながら/肴物(さかなもの)ハぜひないが、せめて 00043840L4酒ハ/隠(かく)して/少(すこし)づゝハといひける/折節(おりふし)、/近郷(きんかう)に火事有(四オ) 00043850L5ければ、是/又(また)不/届(とゞき)の事也とて、所&に/番(ばん)をさせられ、/守護(しゆこ) 00043860L6より/諸事(しよじ)/吟味(ぎんミ)の/奉行(ぶぎやう)まハられける。/折節(おりふし)/寒(さむ)き/比(ころ)なれば、/或= 00043870L7番(ある=ばん)所にて/火鉢(ひばち)に/鍋(なべ)をかけ、酒のかんしてゐる所へ、/奉行(ぶぎやう)/来= 00043880L8合(き=あハせ)ければ、かくすべき所なけれハ、せんかたなくゐる。/奉= 00043890L9行(ぶ=ぎやう)も酒のかんと見ければ、/番(ばん)の/者(もの)、是は何をにるぞ。必/酒(さけ) 00043900L10などハ/御法度(ごはつと)/成(なる)ぞとあれハ、されハ、/私共(わたくしども)風を引ましたれ 00043910L11ば、/薬(くすり)をせんじたべまするといへば、/奉行(ぶぎやう)聞て、身共も風 00043920L12引た/程(ほど)に、くすり(四ウ)ならばよからふと、/茶椀(ちやわん)に二三ば 00043930L13い引かけ、是ハよい/薬(くすり)じや。/後程(のちほど)又/廻(まハ)る程に、二ばんをせ 00043940L14んじてをけと申された。 00043950¥N3¥J 00043960¥X三△何をいふも商口 00043970L17/勧学院(くハんがくゐん)の/雀(すゞめ)ハ/蒙求(もうぎう)をさえつる。とかく/口(くち)のよい/商人(あきんと)ハ、/銀(かね) 00043980L18もふけしてとをる。/都(ミやこ)より/小万物(こまもの)をうりに/丹波(たんば)へ下る人あ 00043990L19り。おく/山家(やまが)の/村&(むら+)まてこまかにあるく。/或郷(あるごう)へ行て/商(あきなひ)を 00044000M1するに、/諸事(しよじ)物しりがほに口たゝけば、扨も/利口(りこう)な人かな。 00044010M2あの人のしられぬ事ハ有まい。/道場(たうじやう)(五オ)御/坊(ぼう)様よりハま 00044020M3しじやと、さま※の事ども/尋(たづね)ける。中にも/年比(としごろ)なおやぢ 00044030M4申さるゝハ、/暦(こよミ)といふものハふかい事をかいた物じやとミ 00044040M5へました。いろ+の事があれども、がてんがゆかぬ。/小= 00044050M6万物屋殿(こ=まものやどの)へ御存であらふといへば、此男も/文盲(もんもう)なれ共口が 00044060M7しこき男にて、/成程(なるほと)存たといへば、/暦(こよみ)の口に/年徳(としとく)あきの方 00044070M8とござるハ、何の事かといへハ、あれハ年徳といふて、/其= 00044080M9年(その=とし)の/徳(とく)な方でごさる。/百性方(ひやくしやうがた)にハ/秋入(あきいれ)を大事におもふゆへ、 00044090M10秋の方と書ました。はあ尤でござる。(五ウ)/大将軍(だいしやうぐん)とハど 00044100M11ふした事といへば、あれハ/地頭殿(ちとうとの)の/頭(かしら)ハ、正月のお/雑煮(ざうに)を 00044110M12くふ時、あの方を/向(むい)ていハひまする。/大将(たいしやう)ぐんといふ事、 00044120M13ひとつでもあだな事ハない。京の大/経師(きやうじ)からかいて出すに 00044130M14よつて、皆うそな事ハござらぬといへハ、一人がいふハ、 00044140M15いや+、大/経師(きやうじ)じやといふても、しられぬ事が有そうな。 00044150M16/毎年(まいねん)/暦(こよみ)をかへ共、/庚申(かうしん)といふ日がかいてないと申された。 00044160¥N4¥J 00044170¥X四△馬をうらやむ老僧 00044180M19京の/寺町通(てらまちとをり)を/上(かミ)より/若(わか)き/侍(さふらひ)、見事成(六ノ九オ)馬に/乗(のり)、/若= 00044190¥P144 00044200L1党(わか=とう)四五人/召連(めしつれ)たるが通りける。/下(しも)の/方(ほう)より/鉢坊主(はちぼうず)二三人づ 00044210L2れにて、/鉢(はち)を/乞(こひ)通りける中に、/年(とし)たけたる/道心(だうしん)立とまりて、 00044220L3/羨敷(うらやまし)さうに見けるゆへ、あとより/来(く)る/坊主(ぼうす)、こなたは何 00044230L4を見るぞといへば、身共ハもはや年よつたれは、/足(あし)がよわ 00044240L5つたによつて、あの/馬(むま)がけなりい。あのやうな馬をもつた 00044250L6ならば、しやんとのつて、京中を/鉢(はち)ひらきませうといハれ 00044260L7たハ、何としたがつてん。(六ノ九ウ)(十オ挿絵) 00044270¥N5¥J 00044280¥X五△一町中の分別袋 00044290L10/河原(かハら)の/辺(へん)、/片原町(かたハらまち)に、/亭主(ていしゆ)の/隙(ひま)なる/商屋(あきなひや)有けり。/近所(きんじよ)の/者(もの) 00044300L11/寄会(よりあひ)て/夜咄(よばなし)しけるに、一人が申やう、見れハむかふの川原 00044310L12にハ、/乞食(こつじき)共さむさうにしてゐるに、我&は此やうに/楽&(らく+) 00044320L13とくらす事よといへば、はてあれらハ/過去(くわこ)の/因果人(ゐんぐわにん)めらよ 00044330L14と、にくていにいひ、/酒(さけ)のかん、/吸物(すひもの)よ/肴(さかな)よとて、あくま 00044340L15て/飲(のミ)、/酔(ゑひ)まぎれに、何と、百/物語(ものがたり)すれば/化物(ばけもの)出るといふが、 00044350L16何とうそか/誠(まこと)か、いざこよひして(十ウ)見まいかといふ/程(ほと) 00044360L17こそあれ、うそ八百の/噺(はなし)ども八九十も/語(かた)る時、何かハしら 00044370L18ず、/表(おもて)の/隔子(かうし)の/物見(ものミ)より、/障子(しやうじ)を打やぶりて、どつさりと 00044380L19/落(おつ)る。やればけ物よと、ゑさし/箒(ばうき)、火ふきだけにて打ふせ、 00044390¥G 00044400M12扨火をとぼし、よく見れば、かしらハ/猿(さる)、/尾(お)ハ/泥(どろ)まぶれ、 00044410M13あし手ハとらのごとくなり。是こそむかしの/鵺(ぬえ)ならんとの 00044420M14ゝめけば、中にも/年比(としごろ)のよきおやぢ申さるゝハ、いや+ 00044430M15是ハ/狸(たぬき)のばけそこなひにてあらんと、かた/意地(ゐじ)に(十一オ) 00044440M16いひければ、さもあらんといふ所へ、其町のお/宿老殿(しゆくらうどの)、あ 00044450M17まりさハがしければと/気遣(きづかひ)して見まハれ、是ハ何事でござ 00044460M18ると/尋(たづ)ねられければ、か/様(やう)+のしだいとて、/最前(さいぜん)の/化物(ばけもの) 00044470M19を見せければ、お/宿老(しゆくらう)聞、いや+是ハ/狸(たぬき)でハないが、ふ 00044480¥P145 00044490L1しきな物じやといハれければ、/最前(さいぜん)のおやぢ聞、こなたハ 00044500L2何を/目利(めきゝ)して/狸(たぬき)でないとはおつしやるといへば、さればこ 00044510L3そ、たぬきならば/腹(はら)つゞみが有はづじやといハれた。いづ 00044520L4れも聞、/御尤(ごもつとも)な御/了簡(れうけん)で(十一ウ)ござりまする。とかく是 00044530L5は、/明日(あす)/御公儀様(ここうぎさま)へ/持参(じさん)仕らんと、其夜ハ/皆&(ミな+)/番(ばん)をして、 00044540L6夜のあくるを待たれける。扨も/分別者(ふんべつもの)の/寄会(よりあひ)、/頼(たの)もしきお 00044550L7町/衆(しゆ)。 00044560L8△△/後(のち)に/近所(きんじよ)の衆にきけば、/猫(ねこ)の/死(しん)だに/赤紙(あかがミ)のふくろを/頭(かしら)に 00044570L9△△きせたのじや。/川原(かハら)にゐたる/乞食共(こじきども)、/表(おもて)から打こふだげ 00044580L10△△な。 00044590¥N6¥J 00044600¥X六△/自慢(じまん)ながら私の/芸(けい) 00044610L13あほう/律義(りちき)なものは/気(き)の/薬(くすり)じや。京/室町(むろまち)あたりに、/銀(かね)がし 00044620L14してくらす人有。(十二オ)物ごと/随分(ずいぶん)こまか/成(なる)/仁(じん)なりしが、 00044630L15/同(おな)じ/身躰(しんだい)の/衆中(しゆぢう)/寄会(よりあひ)、とかく/利(り)がやすく共、/慥(たしか)な所へかし 00044640L16たがよい。/今時(いまどき)ハ/油断(ゆだん)のならぬ/世間(よのなか)じやといへば、一人が 00044650L17申さるゝハ、いや+/気遣(きづかい)をして/銀(かね)をかさうよりは、何な 00044660L18りとも見たてゝ/買(かふ)ておいたが/徳(とく)じやといへば、/亭主(ていしゆ)/聞(きゝ)、さ 00044670L19れば/徳(とく)のついでに、此/季(き)ゐる/男(おとこ)/程(ほど)とくなものはない。/給分(きうぶん) 00044680M1はやすうて/律義(りちぎ)にハあり。/米(こめ)もふむ、木もわる。其上おか 00044690M2しい事いふて、一日にハ二三/度(ど)わらハする。中&(十二ウ) 00044700M3よい/気(き)なものじやと語れば、久三郎/悦(よろこ)びて、/茶(ちや)をはこびけ 00044710M4る時、何やかや世上のうハさに付て、何と思ハしやる。/哥(うた)/程(ほど) 00044720M5けつこうな物はない。たつとからずして/高位(かうゐ)にましハると 00044730M6あれハ、なんぼういやしうても、/公家衆方(くげしゆがた)のおそばへ参る 00044740M7も/哥(うた)の/徳(とく)じやと/噺(はなし)ければ、久三郎/罷出(まかりいで)、私にハお/暇(いとま)を/被下(くだされ) 00044750M8ませいといふ。それハ/俄(にハか)にがてんがゆかぬ。/様子(やうす)をいへ。 00044760M9/品(しな)によつて/隙(ひま)をやらふといへば、此男いふハ、/旦那様(だんなさま)のお 00044770M10/咄(はな)しが/誠(まこと)なれば、/私(わたくし)も/田舎(いなか)ものでこそ(十三オ)ござります 00044780M11れ、こむろぶしの一ふしもやりまするによつて、/町(まち)の/奉公(ほうこう) 00044790M12いたしませうよりハ、/内裏様(だいりさま)へ参つて/奉公(ほうこう)をいたしませう 00044800M13/程(ほど)に、/明日(あす)からおひまを下されませいといふた。 00044810¥N7¥J 00044820¥X七△/博奕(ばくち)ハ一はい/機嫌(きげん) 00044830M16/気(き)の/打(うち)つかぬ/者(もの)は事の用にたゝぬ物。上京に/水嶋(みづしま)屋の/何(なに)右 00044840M17衛門とかやいふひと、風の/心地(こゝち)とて打ふしゐけるが、/終(つひ)に 00044850M18/相果(あひはて)けり。(十三ウ)此/家(いゑ)へ出入する介作といふ男、此よし 00044860M19を聞付来りける。扨&お/笑止(せうし)千万。何にても/似合敷(にあハしき)御用仰 00044870¥P146 00044880L1付られませいと申けれハ、/成程(なるほど)/頼(たのミ)たい。/太義(たいぎ)ながら/輿(こし)とて 00044890L2うちんを/買(かふ)てくれよと、/銭(ぜに)三/貫(ぐわん)文/渡(わた)しければ、心得ました 00044900L3と/請取(うけとり)出にける。/比(ころ)ハ正月のすゑ成しが、/宿(やど)へ帰るまでも 00044910L4なしと/友達(ともだち)の所へ/立寄(たちより)、かやう+のわけじや。/晩(ばん)までハ 00044920L5/宿(やど)へも帰るまい程に、内へ其通いふてやつてたもれとて、 00044930L6見れハ/酒(さけ)のかんなべあり。是(十四オ)はよい所。/誰(たれ)そ/客(きやく)が 00044940L7有かといへば、いや+客といふ程の事でハない。/誰&(たれ+)が 00044950L8/手慰(てなぐさミ)といへば、介作一はいきげんにて/仁階(にかい)へ上り見れば、 00044960L9かるたの/最中(さいちう)なれハ、やがてひざをしなをり、/彼銭(かのせに)を取出 00044970L10し、/我等(われら)どうをとるといふまゝに、/暮(くれ)がたまで打程に、三 00044980L11貫文をまけてやう+心つき、南無三ぼう、おれはかやう 00044990L12+のわけじやと/語(かた)れハ、ていしゆもあきれ、それならば 00045000L13身共が/銭(せに)をかさうといへば、悦ひ、ぜにをかりて打かたげ、 00045010L14やう+(十四ウ)/輿(こし)を/買(かい)来る。内にハ介作を待かね、もは 00045020L15や時取がちがふ/程(ほど)に/埓(らち)/明(あか)ぬとて、/万事(ばんじ)/調(とゝの)へてしまふ所へ、 00045030L16介作帰りければ、人&しかりて、もはや/輿(こし)ハいらぬといへ 00045040L17ば、介作めいわくに思ひ、それならばお/内義(ないぎ)さまをのせま 00045050L18して、お/供(とも)させませふといふた。(十五オ) 00045060¥Y1軽口はなし△五之巻 00045070M3一△/分限者(ふんげんしや)の/稽古(けいこ) 00045080M4二△かたいも/事(こと)による 00045090M5三△いやがうへの/文盲(もんもふ) 00045100M6四△あかゞりハ久三が/涙(なミた) 00045110M7五△/数寄屋(すきや)のにじりあがり(二オ) 00045120M8六△/故人(こじん)もうそつき 00045130M9七△/勝手(かつて)にあハぬ/神道(しんたう) 00045140M10八△/取(とり)ちがへたる/伊勢参(いせまいり)(二ウ) 00045150¥T1 00045160¥P147 00045170¥N1¥J 00045180¥X一△/分限者(ふんげんしや)の/稽古(けいこ) 00045190L3/智(ち)あるも/愚(おろか)なるも、/銀持(かねもち)に/成(なる)事をねがふハ/何国(いづく)もおなじ事。 00045200L4されば津の国に/鹿嶋(かじま)やの/何某(なにがし)といふ人、かね/沢山(たくさん)に持けり。 00045210L5/皆(ミな)/人(ひと)/寄会(よりあひ)、かじまやは/近(ちか)き/比(ころ)まで、ほそき事/燈明(とうミやう)の火で/尻(しり) 00045220L6あぶるやうな事じやに、今ハよい/仕合(しあハせ)。/天晴(あつはれ)かね持になら 00045230L7れましたと/咄(はな)しければ、六平次といふ/愚(おろか)なる/者(もの)是を聞、打 00045240L8うなづき居たりしが、我屋に帰り、/持仏堂(ぢふつだう)に火をともして、 00045250L9尻をもつたて居る事、/毎日(まいにち)/毎夜(まいや)の事なれば、女/房(ぼう)見て、な 00045260¥G 00045270M1ふ、こなたは(三オ)何をさつしやるといへは、扨&そちハ 00045280M2/愚鈍(ぐどん)なものじや。是は銀持になる下地をするに、じやまを 00045290M3いふ。もんもうな事をいハず共だまれといふて、/寒(さむ)き夜も 00045300M4いとハず、尻まくりて、/灯明(とうミやう)の火へさしつけられた。 00045310M5△△/判者(はんじや)のいハく、扨&此/仏(ほとけ)になる事、/近比(ちかころ)めいわくであら 00045320M6△△ふといへば、/去人(さるひと)/了簡(れうけん)に、いや+/行基(ぎやうぎ)の作ならはくる 00045330M7△△しかるまい。(三ウ)(四オ挿絵) 00045340¥N2¥J 00045350¥X二△かたいも事による 00045360M10生れつきのあほうハ/金銀(きん※)づくでもなをらぬ。/近江(あふミ)に京屋の 00045370M11太郎介といふて、手前うとくなる人あり。されどもおろか 00045380M12にかたくななる/者(もの)なりしが、有時/近所(きんじよ)の人&/寄合(よりあひ)/咄(はな)しける 00045390M13ハ、あのねじかねやの六兵衛ハいかい/銀持(かねもち)じや。されば/銀= 00045400M14持(かね=もち)/程(ほど)あつてかたい/男(おとこ)、あれハ/石(いし)の/吸物(すいもの)じやといふ。太郎介 00045410M15聞て、是はおもしろい。身共もちつと銀持ました。いつぞ 00045420M16何茂を申入ませうといへば、それハ忝じけない。いついく 00045430M17かにまいり(四ウ)ませうと、/日限(にちげん)を/定(さだ)め人&行ければ、太 00045440M18郎介、よくこそ御出と悦び、/吸(すい)物を出しけるが、皆&/椀(わん)の 00045450M19ふたをとりて見て、あきれゐければ、太郎介/罷出(まかりいで)、六兵衛 00045460¥P148 00045470L1殿は存ぜぬ事。此方にハ/随分(すいふん)/石(いし)を/吟味(ぎんみ)いたし、/青石(あをいし)/斗(ばかり)を仕 00045480L2ました。ちとおかへなされよといハれた。 00045490¥N3¥J 00045500¥X三△いやがうへの文盲 00045510L5ある老人、若き者の/集(あつま)り居る中にて、水ハ/方円(ほうえん)の/器(うつハもの)にし 00045520L6たがひ、人は/善悪(ぜんあく)の/友(とも)によるといへば、とかく物/毎(こと)/気(き)を付 00045530L7るがよいと(五オ)いハれけるを、佐次平といふ/文盲(もんもう)なる男、 00045540L8是を聞、何とも/合点(がつてん)ゆかず。/宿(やど)にかへり、同やう成友に/尋(たづね) 00045550L9けれ共、是も/同腹中(どうふくちう)なればしらず。され共口かしこき男に 00045560L10て、それハ其方の/聞(きゝ)ぞこないであらふ。/慥(たしか)に山/臥(ぶし)の大/楽院(らくゐん) 00045570L11の与介が事じや。/水(ミづ)ハ/法印(ほうゐん)の/内(うち)の者に/随(したが)ふ。人ハ善悪の/供(とも) 00045580L12によるといふハ与介にまぎれないといへば、佐次平打うな 00045590L13づき、それ+それでしれたと。又/或時(あるとき)、/彼(かの)老人に出合、 00045600L14こなたには物ごと、しさいらしうおつしやる。いつぞやも、 00045610L15あの(五ウ)/用水(ようすい)の事を承つた。何と、水が法印の内のもの 00045620L16にくまれるがふしぎか、人がともによるとおつしやれども、 00045630L17与介が/供(とも)のしやうも/珍(めづらし)らしうもないといハれたハ、/恥(はぢ)のう 00045640L18ハぬり。 00045650¥N4¥J 00045660¥X四△あかゞりハ久三が涙 00045670M3四五人よりあひ人の/評判(ひようばん)しけるに、下ル町の何屋の/娘(むすめ)ハ色 00045680M4が/黒(くろ)い。又/横(よこ)町の/手拭(てぬぐい)屋の/内義(ないぎ)程きめごまかな生れつきハ 00045690M5有まいと/咄(はな)す中に、一人がいふやうハ、それに付おれが所 00045700M6に此/季(き)ゐる男程、きめのあらいものはない。(六オ)とび/越(こへる) 00045710M7にまたげかねる程なあかぎれがあるとはなしければ、/亭主(ていしゆ) 00045720M8聞て、それはどこの男もおなじ事といふを、久三郎つく 00045730M9※聞て、涙をはら+とながし、申/旦那(だんな)様。さりとてハ 00045740M10どうよくなとなげく。亭主けうさめ、そちハ何をいふぞと 00045750M11あれば、はて、今のお/噺(はなし)でしれました。/夕部(ゆふべ)/私(わたくし)があかぎ 00045760M12れをハとびこさしやましたにまきれない。いかにまたげら 00045770M13れぬといふても、/杖(つえ)をなかへつきこませられたと見えて、 00045780M14けさまで/血(ちが)大ぶんに出ました。(六ウ)/是非(ぜひ)とびこさいでな 00045790M15らずハ、/今度(こんど)から杖ハゆるして下されませいといふて、さ 00045800M16め※とないた。 00045810M17△△判に、/近年(きんねん)/藤丸(ふぢのまる)のかうやくが大ぶんうれるといふハ聞へ 00045820M18△△ました。 00045830¥P149 00045840¥N5¥J 00045850¥X五△数寄屋のにじりあがり 00045860L3江戸の片/辺(ほとり)に/槌(つち)やの庄六とて有。近き比までハさもなき/身= 00045870L4躰(しん=だい)なれども、何としてやら/俄(にハか)/分限(ふんげん)に成けり。/誠(まこと)に/銀(かね)ハわき 00045880L5物と人/宇(う)らやミけり。/近所(きんじよ)に/治部斎(ぢぶさい)とて/有徳(うとく)の(七オ)(七ウ 00045890L6挿絵)ひとあり。/或時(あるとき)治部斎、近所の人&を/振廻(ふるまひ)ける。庄 00045900L7六も此/客(きやく)に行けるが、庄六/家来(けらい)いひけるハ、治部斎様ハか 00045910L8くれなき/数寄者(すきしや)なれば、/定(さだめ)て/茶湯(ちやのゆ)有べし。数寄屋にハにじ 00045920¥G 00045930M1りあがり、/露地(ろぢ)入、むつかしき事なる由。かまへてよく心 00045940M2得て御/越(こし)といへば、/気遣(きづかひ)をするな。/恥(はぢ)はかゝぬそとて出ゆ 00045950M3きけり。治部斎の/門(かど)口より、/足(あし)もとをめつたにふみにじり 00045960M4て、/玄関(げんくわん)よりひざにてにじり/座敷(さしき)へとをるを、/亭主(ていしゆ)おかし 00045970M5く思ひ、扨は此男にじりあかる(八オ)といふ事を聞はつつ 00045980M6たと見えた。さらバちとなぶらんとおもひ、扨&庄六殿に 00045990M7ハ/万事(ばんじ)にお/気(き)が付まする。中&きついにじりやうでござる 00046000M8といへば、庄六聞、/御慇懃(ごゐんぎん)の御あいさつ。さりながら/重而(かさねて) 00046010M9からハ心やすうしてお/呼(よび)なされい。にじりあがりハきる物 00046020M10のどくでござるといハれた。 00046030¥N6¥J 00046040¥X六△古人も/虚言(うそ)つき 00046050M13大坂/北浜(きたばま)にあほうりくつなるゑせ物あり。しかも/身躰(しんだい)よろ 00046060M14し。或時町中の/参会(さんくわい)(八ウ)に、/何事(なにこと)も/古来(こらい)より/定置(さだめを)かれた 00046070M15る事共に、あだな事はないといへば、/彼(かの)えせ者罷出て、そ 00046080M16れハ一/概(がい)にハ申されぬ。/古人(こじん)の/詞(ことば)にも/虚言(きよごん)がござる。/石(いし)の 00046090M17/上(うへ)にも三年/居(ゐ)れハあたたまるといへども、/我等(われら)がむかふに 00046100M18/居(ゐ)る/乞食(こじき)は、ことしで七/年(ねん)/石(いし)の上にねれども、此中もきつ 00046110M19う/寒(さむ)ひと申すれば、うそにハきハまつた。 00046120¥P150 00046130¥N7¥J 00046140¥X七△/勝手(かつて)にあハぬ/神道(しんたう) 00046150L3/或神職(あるしんしよく)の人申されしハ、/日本(につほん)は/忝(かたじけな)くも(九オ)/神国(しんこく)にて、/日= 00046160L4夜(にち=や)/朝暮(てうぼ)/神明(しんめい)の/御恵(おんめぐみ)ミにあづからずといふ事なし。/神道(しんたう)の/事(こと) 00046170L5をしらざるハ/無下(むげ)の/事(こと)なり。/何事(なにごと)も/是(これ)、心やすく世をわた 00046180L6るは/神(かミ)の/御恩(ごおん)なりと/語(かた)りしを、/欲(よく)ふかき/麁相者(そさうもの)/聞(きゝ)、/尤(もつとも)の/義(ぎ) 00046190L7/也(なり)。さらば/神道(しんたう)をならひ、心やすう世を/渡(わた)り申さんと/神道= 00046200L8者(しんたう=じや)の/許(もと)へ/行(ゆき)、神道を/伝授(てんじゆ)申たきよしいひければ、/近比(ちかごろ)/奇特(きどく) 00046210L9千万。/成程(なるほと)/伝授(でんじゆ)申べしと、/折本(おりほん)を取出し、此/通(とをり)/随分(すいぶん)/修行(しゆぎやう)し 00046220L10給へとある。是は何と申物で(九ウ)候ぞと/尋(たづね)ければ、是は 00046230L11/某(それがし)が/祓(はらひ)の本なり。先そなたの本/書立(かきたつ)るまでは、此本の通 00046240L12を/祓(はらひ)給へといふ。/麁相者(そさうもの)/承(うけたまハ)り、それハ/近比(ちかごろ)/迷惑(めいわく)に存ま 00046250L13するといへば、いや+それハ其方のわるいがてん。神道 00046260L14は/毎日(まいにち)/祓(はらひ)をせねハならぬと申さるれば、/礼義(れいぎ)もなくにげて 00046270L15帰り、あらうたての/伝授(てんじゆ)や。/何程(なにほと)/神道(しんたう)を/知度(しりたい)といふても、 00046280L16身共が/身躰(しんだい)で/毎日(まいにち)/払(はらい)はならぬ。/剰(あまつさへ)/手前(てまへ)の/折帳(おりちやう)まで取出し、 00046290L17先&是をはらへと申さるゝハ、/針(はり)を/蔵(くら)につんでも(十オ)た 00046300L18まらぬとつぶやきしは、扨も/笑止(せうし)。 00046310¥N8¥J 00046320¥X八△取ちがへたる/伊勢参(いせまいり) 00046330M3/愚(おろか)なると/正直(しやうじき)とは/各別(かくべつ)の/事(こと)なれ共、大かたハあやまりて/愚= 00046340M4痴(ぐ=ち)/成(なる)を正/直(じき)と思ふにや。/或(ある)人、二三人/連(づれ)にて/伊勢(いせ)参りをし 00046350M5にけり。其中に一人すぐれて/愚(おろか)なる男あり。是なんあほう 00046360M6りちぎといふ/成(なる)べし。道すがら申けるハ、扨もそなた程正 00046370M7直な人はないとそだてければ、/誠(まこと)と思ひ/悦(よろこ)びけるが、程な 00046380M8く/神前(しんぜん)になれば、/面&(めん+)に(十ウ)/心中(しんぢう)の/願望(ぐわんもう)を/祈(いのり)けり。/彼男(かのおとこ) 00046390M9/神前(しんせん)にたち、手をさかさまにして我ひたいを/拝(おが)む/躰(てい)也。人 00046400M10&見て、/其方(そのはう)は/何(なに)をし給ふといへバ、/何茂(いづれも)はむかふを/拝(おが)ミ 00046410M11給へ。/我等(われら)ハいづれもなミにはならぬといふ。/子細(しさい)をとへ 00046420M12ば、身共ハ正/直(じき)の/者(もの)なれば、/定(さだめ)て神のやどり給ハん。神は 00046430M13正直の/頭(かうべ)にやどるといふ/本文(ほんもん)をしられぬか。それハ/近比(ちかごろ)/文= 00046440M14盲(もん=もう)なり。たしなミ給へとて、さか/手(て)にして/頭(かしら)をおがむた。 00046450¥N9¥J 00046460¥X九△/肴(さかな)のから名(十一オ) 00046470M17上京に/糸屋(いとや)の/何某(なにかし)とて/有徳(うとく)の人有。/奥山家(おくやまが)より、はい出の 00046480M18/小者(こもの)をおきけり。ある/時(とき)/客人(きやくじん)来りければ、/彼者(かのもの)にいひ付、 00046490M19/魚屋(うをや)へ行て/鯉(こい)を/買(かい)来れといへば、/畏(かしこまり)候と/肴篭(さかなかご)を引さげ出 00046500¥P151 00046510L1けるが、/魚棚(うをのたな)に/行(ゆき)けれ共、/鯉(こい)といふ事を/忘(わす)れ、あられぬ事 00046520L2いふて/尋(たづね)ければ、うをや/合点(がてん)せず、/漸(やゝ)/有(あつ)て帰る。主人/待兼(まちかね) 00046530L3て、何と、かふて来たかといへば、/魚棚(うをのたな)中にないと申ました 00046540L4といふ。/主人(しゆじん)/腹(はら)をたて、/今時分(いまじふん)/肴屋(さかなや)に/鯉(こい)のないといふ事が 00046550L5有物かとしかりければ、はて扨(十一ウ)同じ事じやにふし 00046560L6ぎなといへば、主人聞て、おなじ事とはいかにと尋ければ、 00046570L7わたくしはおじやれと心得ました。こいとハあまりちがい 00046580L8はいたしませぬといふた。 00046590¥Q 00046600L10△△△享保四年 00046610L11△△△△△△@己△|△亥@正月吉日 00046620L12△△△△△△△△△△東寺町通松原上ル町 00046630L13△△△△△△△△△△△△△△△△菊屋 00046640L14△△△△△△△△△△△△△△△△△七良兵衛板 00046650¥Y1軽口はなし五之巻終(十二オ) 00046660¥P152 00046670¥U噺本大系△第七巻 00046680¥T軽口はなしとり 00046690¥G 00046700¥Y 00046710L16享保十二年刊 00046720L17作者不詳 00046730L18小本五巻 00046740L19蓬左文庫(尾崎久弥氏旧蔵)蔵 00046750¥Y序 00046760M3ふんべついろ+ありと、かんばんあり。かいにゆき、此 00046770M4ふミのかきつけ、京中をたづねてしれませぬ。たづねあた 00046780M5るふんべつ、いかほどぞと、文をミせける。 00046790M6△△△たはけや権右衛門様とあり。 00046800M7これハ人をあほうにしたふミなれハ、ふんべつもむつかし 00046810M8し。銀十匁にておしへ申べしといふ。たかいものなれど、 00046820M9(一オ)ためしにかハんとて、銀十匁わたしける。さてふん 00046830M10べつや申ハ、此ふミハはやがきにかきしゆへ、たはけやと 00046840M11よめる也。此たの/字(じ)ハ/左(ひだり)といふ字にて、ひだりばけや権右 00046850M12衛門とて、とミのこうぢ四条下ル町とおしへければ、たづ 00046860M13ねあたりけり。まことにふんべつ屋もあるへきことにおも 00046870M14ひ、ついでながら、いまはやるかるくちのはなしにも(一 00046880M15ウ)かきやにふんべつありバかいたいと申けれバ、なる 00046890M16ほど、はこいりのよきのありとて、いろ+ミせけるうち 00046900M17に、はんじものもありしゆへ、そのうちミじかいはなしに 00046910M18はんじ物をとりまぜかいけれバ、いづかたよりかいに御出 00046920M19なされしとたづねけるゆへ、いなかよりかいにまいりしと 00046930¥P153 00046940L1こたへけるに、ふんべつ屋とりあへず、(二オ) 00046950L2△△いなかなら京もろはくのかるくちを 00046960L3△△△よいかわるいかきいて見さしやれ 00046970L4△△△△△かへし 00046980L5△△さへづるハ京のすゞめのはなしとり 00046990L6△△△そのかりくちをこちハ/借(か)るくち 00047000L7といふてかへりけり。まことにふんべつもかハるゝものに 00047010L8こそ、今のミやこにうりかいのなきものハ、ぼたもちばか 00047020L9りそうな。じゆうなことの。(二ウ)(三オ挿絵) 00047030¥G 00047040¥Y1一之巻△もくろく 00047050M3はなし/鳥(どり)かい 00047060M4はをりやの内儀 00047070M5ひがんのくばり物 00047080M6ねこのけいろ 00047090M7やしろのかつほ/木(ぎ) 00047100M8みくじらうり 00047110M9新敷ふんどし 00047120M10たびのあつらへ 00047130M11きわのこばらい 00047140M12かぜのぎんミ 00047150M13ミヽのくわほう 00047160M14/四宝(よつほう)のうハさ(三ウ) 00047170¥P154 00047180¥T1かるくちはなしとり一 00047190¥N1¥J 00047200¥Xはなしどりかい 00047210L5はなしどりのすゞめ、なんばあるぞ。ミなかほ。三十はご 00047220L6ざる。いくらぞ。一わ十文ならしにしてしんぜましよ。五 00047230L7もんづゝにまけてたも。いやなりませぬとて、いにけり。 00047240L8一町ばかりゆきて、まけにもどりけれバ、いや、五もんに 00047250L9もたかいほどにかふまい。(四オ)こちのうらへも、いかい 00047260L10こと、すゝめがくる。とらまへてはなそ。 00047270¥N2¥J 00047280¥Xはをりやのないぎ 00047290L13三月のせつくの御ゑんに、はをりやのないぎ、あいじやく 00047300L14やへゆき、きのふのおれい申ます。はてようござんした。 00047310L15さて+うつくしうしたてたあはせをめしました。こなさ 00047320L16まの御ぬいなされましたか。なんとして(四ウ)わたくしが 00047330L17このやうにぬいましよ。これハけふ御ゑんにて、おやぢひ 00047340L18まゆへ、ぬふてくれられました。けなりや、こな様ハての 00047350L19きいたごていさまをもたしやつて、うつくしいあハせをめ 00047360M1します。わたくしハかたのわるい、てのきかぬおとこをも 00047370M2ちまして、このやうにときあけをきています。 00047380¥N3¥J 00047390¥Xひがんのくばりもの(五オ) 00047400M5あすハおやぢのひがんにあたられた。いまのこめのたかさ 00047410M6では、なんとしたるものであらふと、ないぎとだんこうあ 00047420M7りけれバ、かまのまへから十二三のでつち申やう、どこに 00047430M8もかんりやくして、くばりませぬ。くちいわゐばかりにな 00047440M9されませ。 00047450¥N4¥J 00047460¥Xねこのけいろごのミ 00047470M12ねこのこをやくそくして、うつくしき(五ウ)しろねこをや 00047480M13りけれハ、しろいものハよごれめがつく。いやとてかへし 00047490M14ける。それならバとて、くろねこをやりける。これハなを 00047500M15いや。くろいものハよわい。 00047510¥N5¥J 00047520¥Xやしろのかつほ/木(ぎ) 00047530M18やしろのやねにあるをかつほぎといふハ、こゝろのあるこ 00047540M19とか。あれハやねのだしにつかふによつて、かつほぎとい 00047550¥P155 00047560L1ひます。(六オ) 00047570¥N6¥J 00047580¥Xミくじらうり 00047590L4見くじらうりをよんで、さて+、いろのよいくしらじや。 00047600L5これハうしをくじらににせてうるのでハないか。わたくし 00047610L6も、うをやにてうけてうりますれハ、もとハぞんじませぬ。 00047620L7このかミの町でミせましたが、うしであろとハいわれなん 00047630L8だ。むまそうなと申された。(六ウ) 00047640¥G 00047650¥N7¥J 00047660¥Xあたらしきふんどし 00047670M3そなたハよきふんどしかいてゐるが、はぶたへか。いゝや。 00047680M4かゞか。いゝや。それにちかいものじや。それにちかいと 00047690M5ハなんぞ。はて、かゞにちかい、ゑつちうじや。 00047700¥N8¥J 00047710¥Xそのいちたびのあつらへ 00047720M8そのいちといふざとう、たびやへゆきて、あしのほんをと 00047730M9らせ、なるほど(七オ)上&のかわにて、たびをいたしたき 00047740M10よし申ゆへ、たびや申ハ、こびとかしやむのかわにてなさ 00047750M11れませいと申けれハ、そのいち申やう、こびとにてもしや 00047760M12むにてもくるしからず。やつぢのかわにてぬふてくだされ。 00047770¥N9¥J 00047780¥Xきわのこばらい 00047790M15大としのよ、大かどハのこして、こばらいばかりいたしけ 00047800M16るに、大かどのかけこい(七ウ)(八オ挿絵)きたりて、この 00047810M17ほうハはるまでまつことはなりませぬ。こばらひのうちへ 00047820M18いれて、すこしなりともかりたいといふ。ないぎ、さいか 00047830M19くな人にて、さらバ、こばらいにしましよとて、ことしう 00047840¥P156 00047850L1まれた/子(こ)をわたしけれバ、かけこいもきもつふしける。な 00047860L2いぎ申さるゝハ、たいせつな子をかねのかたにやりまする。 00047870L3申ぶんハござるまい。(八ウ)かけこいもつまりて、ふとこ 00047880L4ろへだきけれバ、そのまゝしやうべんをたれけるゆへ、い 00047890L5や、これハかへします。なんぼこばらいでも、このしかけ 00047900L6ではうけとられぬ。 00047910¥N10¥J 00047920¥Xかぜのぎんミ 00047930L9かんのうちに、さむいとてさしまわしてゐけれとも、かぜ 00047940L10かくるにより、このかぜハどこからいるぞ。うちのもの申 00047950L11やう、(九オ)これハにかいからまいります。それなら、か 00047960L12ぜのこぬやうに、はしごひいておけ。 00047970¥N11¥J 00047980¥Xミヽのくわほう 00047990L15むかしから、ミヽのいつかいものにハくわほうがあるとい 00048000L16へど、いまのぜには、ミヽかいかふちいさいけれど、そう 00048010L17ばもたかくなり、ミヽの大きなぜにと、かたをならべてあ 00048020L18るけバ、ミヽにはよらぬものそうな。いかにも、まちがた 00048030L19などにて、(九ウ)こづかいのときハ、をれなふてハといふ 00048040M1やうに、なうりやちしやうりにあふて、いつかいかほすれ 00048050M2ども、さああをざしに一くわんつなぐとき、しんせんハは 00048060M3せいたされて、たゝミのあわい、ゑんのしたへ、ころ+ 00048070M4こけおち、人がつれにゆかねハ、ゑあがらす。めんほくな 00048080M5いかほつきにてゐるに、ミヽの大きなぜにたちハ、たいに 00048090M6のりて、大やうなかほにて、うへつかたへ(十オ)あがる。 00048100M7これほとくわほうがちがふたハ。 00048110¥N12¥J 00048120¥X四つほうのうハさ 00048130M10四つほうも十ねんあまりつかわれて、ひなたもかまはずあ 00048140M11るくゆへに、いろもくろふなつた。そのうへ四わりましか 00048150M12ら、せけんへはづかしいやら、このぢうハあかいかほして 00048160M13あるく。 00048170¥Y1はなしとり一終(十ウ) 00048180¥P157 00048190¥T1かるくちはなしとり二 00048200¥N1¥J 00048210¥Xをはり大こん 00048220L5をハり大こんの二けんほどあるをもらいける。これハめづ 00048230L6らしき物とて、うぢがミぎをんさまへあげけるに、いしだ 00048240L7んのしたにて、にわかに大こんおもくなり、五人十人かゝ 00048250L8りてあぐれとあがらず。さてハ此大こんハ/火(ひ)のかまいある 00048260L9かとてやめける。そのよ、しやにんのまくらがミに、(一オ) 00048270L10ぎをんどの御たくせんに仰らるゝハ、けふ、うぢこよりめ 00048280L11づらしき大こんをあげしに、おもくなりてあからぬハ、/火(ひ) 00048290L12のかまいにてハなし。大こんがこゝろに、いしだんをわさ 00048300L13びおろしかとおもひ、こわがりてあがらなんだ。 00048310¥N2¥J 00048320¥Xあさくさのかたきうち 00048330L16あさくさのくわんおんの御ゑんにちに、おやのかたき、 00048340L17のがさぬとて、たがいに(一ウ)きりあい、なんなくかたき 00048350L18うちおゝせける。さんけいの人、くものこをちらすごとく 00048360L19ミなにげけるに、としのころハ四十あまりのさむらい一人、 00048370M1ミづちや屋にこしかけて、はじめをハりけんぶつせられけ 00048380M2る。かたきうちしさむらい申さるゝハ、こなたさまにハ御 00048390M3しんべうに御らんなされくだされ、わたくしのためにハか 00048400M4たじけなくそんじます。(二オ)御けミやうハなにと申御か 00048410M5たにてござりますとたづねけれバ、けんぶつのさむらい申 00048420M6さるゝハ、わたくし、見とゞけ申べきためにてハなく候。 00048430M7きもがつぶれまして、こしがぬけて、ゑたちませぬ。 00048440¥N3¥J 00048450¥Xぜんくわうしのによらい 00048460M10ぜんくわうしのほとけハ/座像(さぞう)じや、りうぞうじやとせりあ 00048470M11ふところへ、(二ウ)ともだちきたりて、なにのせんさくぞ。 00048480M12せんくわうじのほとけを、あのひとハりうぞうじやといわ 00048490M13るれど、ほんだよしミつがつれましてきたれども、おきど 00048500M14ころなさに、つきうすのうへにのせましておいたとあれバ、 00048510M15/座像(ざぞう)のはづてござる。いや+、ふたりながらわるいせん 00048520M16さくじや。りうざうでもざぞうてもあるまい。つきうすに 00048530M17(三オ)のせてあらバ、きねぞうてあろ。 00048540¥P158 00048550¥G 00048560¥N4¥J 00048570¥Xゆきのよのひのやうじん 00048580L14きやくをよびてもてなし、きやくもいなれて、だんな申さ 00048590L15るゝハ、ことのほかにさむいほどに、つぢのそへばん又す 00048600L16けをよんで、ならぢやもさけもふるまゑと申さるゝゆへ、 00048610L17又すけをよび、ならちやをくわせ、さけをのませけれバ、あ 00048620L18りがたきよし申ける。だんな申さるゝハ、こんやハ(三ウ) 00048630L19(四オ挿絵)ゆきふりて、ひのやうじんのきづかいもない。 00048640M1もはや又すけもねたがまし。さやうにもつかまつりましよ。 00048650M2さりながらこの/御酒(ごしゆ)のきほいに、お町様がたふれましてか 00048660M3ら、ふせりましよとてかへり、一けん+かどたゝき、ひ 00048670M4のようじんをようなされませとふれしまい、又いまのだん 00048680M5なのとをたゝく。たれじや。又すけでござります。なんの 00048690M6ようぞ。(四ウ)おかげてあたゝまりまして、お町様がたひ 00048700M7のやうじん、ふれました。おまへのぎハかくべつてござり 00048710M8ます。ひのやうじんハ/御勝手(ごかつて)になされませ。 00048720¥N5¥J 00048730¥Xたとへぞこない 00048740M11しんごんの/御坊(ごぼう)、しろこそでのうへに、わげさかけてたい 00048750M12めんせられけれバ、きやく申さるゝハ、おまへがたハ大か 00048760M13た、わげさばかりめします。しさいのある(五オ)ことでご 00048770M14ざりますか。いゝや、なにもしさいハござらぬ。ころもき 00048780M15て、わげさかけるはづなれと、心やすいきやくにハ、わげ 00048790M16さハかりかけます。りやくぎてござる。なるほど御もつと 00048800M17もにぞんじます。わたくしどものゑつちうふんどしのやう 00048810M18なものでこさります。 00048820¥P159 00048830¥N6¥J 00048840¥Xよそハゆらぬぢしん 00048850L3町のよりあいに一人申さるゝハ、なんと(五ウ)ゆふべのぢ 00048860L4しんハきついことの。町のしゆ申さるゝハ、ゆふべぢしん 00048870L5ハゆらなんだ。こなたのゆめでかなあろ。いや+、たし 00048880L6かおきてゐるうちであつた。しゆくらうどの、しさいなか 00048890L7ほして申さるゝハ、こなたにかぎりて、そさうなことをい 00048900L8ふ人でハない。それハさだめて、いませけんにはやる、ひ 00048910L9とりまへのけんどんのぢしんであろ。(六オ) 00048920¥N7¥J 00048930¥Xやミのよのひろいがね 00048940L12りちぎな人、よるあるき、かね三十匁ひろハれける。その 00048950L13ゝちよるあるくときハ、なにもおちてハないかと、きをつ 00048960L14けられけるに、又かねらしきものゝつゝミたるをひろい、 00048970L15つじのばんたがひかげにてあけてミれバ、きんす一ぶ、し 00048980L16ろかね三匁あり。これハかたじけないといたゞき、ふとこ 00048990L17ろへいれんと(六ウ)するとき、うしろから、たゞいまのか 00049000L18ねハ、わたくしおとし申候。きんす一ぶと、しろかね三匁 00049010L19あるへく候。かきつけあいましたらハ、御かへしくださり 00049020M1ませ。おやぢ、きもつぶして、ひろいものをやるはづハ 00049030M2なけれども、かきつけもあいまする。こなたに見つけられ 00049040M3たほどに、これハやります。せんどの三十匁ハ、かやすこ 00049050M4とハなりませぬ。(七オ) 00049060¥N8¥J 00049070¥Xさんりのやいと 00049080M7そさうないしやに、さんりのきうをおろしてもらいしに、 00049090M8かめのをにすミをつけらるゝゆへ、これハところがちがい 00049100M9ハいたしませぬか。なるほど、こゝでござる。しりより一 00049110M10りかミなれバ、三りじや。 00049120¥N9¥J 00049130¥X月のすんをとる 00049140M13めいげつに/小僧(こぞう)ゑんへ出、ものさしにて(七ウ)(八オ挿絵) 00049150M14月をさしてミる。ちやうらう出られ、/小僧(こぞう)、なにするぞ。 00049160M15お月様の大きさをさしてミまする。あほうめが。そこから 00049170M16さいてハしれまい。/堂(どう)のやねへあがりて、さしてみよ。 00049180¥N10¥J 00049190¥Xしわきうたいの/師(し) 00049200M19しわき/師匠(ししやう)あり。まいばん、でししゆのそろふまでくらが 00049210¥P160 00049220¥G 00049230L12りにゐて、もはやミなそろひましたといへば、/火(ひ)うち(八 00049240L13ウ)ともして、さあうたハしやれとて、まつかぜをうたい、 00049250L14一ばんすめハ/火(ひ)をふつとふきけし、くらがりにゐてはなし 00049260L15してかへり、かどへ出てひとりがいふやう、をれハこよひ、 00049270L16まいちどひをとほさしてみよとおもひて、せきだをはきか 00049280L17へてきた。いざ五人ながらもどろとてもどりて、せきだか 00049290L18かわりました。ひをともしてくださりませ。(九オ)はてさ 00049300L19て、めん+のあしにおぼゑがないかとて、ひうちばこと 00049310M1りいだされけれハ、さてこそ/火(ひ)をとぼさるゝよと、五人の 00049320M2こゝろのうちハおもしろかりしに、おもひのほかに火ハと 00049330M3もさず、/火(ひ)うちといしをにわへもつておりて、ひとつうつ 00049340M4てハ、そりやミへたか。又ひとつうつてハ、そりやミへた 00049350M5か。 00049360¥N11¥J 00049370¥Xはいでのおとこ(九ウ) 00049380M8まりのくつをあつらへおき、とりにやりけれハ、いまひぼ 00049390M9をつけまする。またしやれとて、つかいをまたせおき、ま 00049400M10りや、おとこにといけるハ、だんな殿。まいにちまりをあ 00049410M11そばすか。いかにも、まいにち、けられます。うつほハ 00049420M12いらぬか。されバぞんじまませぬ。それハいるともいらぬと 00049430M13も、申されませなんだ。うつぼがいると(十オ)申さるゝな 00049440M14ら、又とりにまいりましよ。まづ、くつばかりくださりま 00049450M15せ。 00049460¥N12¥J 00049470¥Xあちらこちら 00049480M18やれ長吉。それハだんなののまるゝちやわんでないか。い 00049490M19まからそのちやわんで、ちやをのむまいぞ。長吉きもつぶ 00049500¥P161 00049510L1し、こゝのだんなとのハ、すじかわるいか。 00049520¥Y1はなしとり二終(十ウ) 00049530¥T1かるくちはなしとり三 00049540¥N1¥J 00049550¥Xしんたくぶるまい 00049560M5かわにしにいゑをかい、きれいにふしんして、町をふるま 00049570M6いけるに、ぜんをいだすぢふんに、しゆくらうどの、せつ 00049580M7ちんへゆかれ、ひさしくなれどもいでられず。ふしぎにお 00049590M8もひ、町の五人ぐミのしゆ、せつちんのそばへゆき、そと 00049600M9から、/何(なに)となされたとといけれバ、しゆくらうどの(一オ) 00049610M10うちから申さるゝハ、せつちんの/戸(と)かあきませぬ。そとの 00049620M11かきがねがしめてござるか、見てくだされ。いや、かきが 00049630M12ねハあいてござるとて、そとから五人ぐミ、ちからいだし 00049640M13てあくれともあかぬ。これハきのどくといふ/所(ところ)へ、ていし 00049650M14ゆいでられ、いや、それでハあきますまい。わたくしあけ 00049660M15ましよ。このほうのせつちんハ、うちびらきでござります。 00049670M16一ウ) 00049680¥N2¥J 00049690¥Xさかづきのあいさつ 00049700M19さて、ふるまい/出(いで)てちうしゆもすミ、二こんめにていしゆ 00049710¥P162 00049720¥G 00049730L12申さるゝハ、/下座(しもざ)のおために、おしゆくらう様から、さん 00049740L13をかへておまわしくだされと申けれハ、こゝろへましたと 00049750L14て、/中(なか)わんとりあげ、いづれもしもざのわかいしゆ。これ 00049760L15からミせしめのために、さんをかへます。 00049770¥N3¥J 00049780¥Xりやうりのうハさ(二オ) 00049790L18そのあくる日しゆくらうどの、よそにてはなしに、きのふ 00049800L19けつかうなふるまいにまいつた。しやうゆふのねりミその 00049810M1りやうりありしよし申さるゝ。それハきゝなれぬめづらし 00049820M2きりやうり。いかやうのものぞとたづねけれバ、しやうゆ 00049830M3ふにくずをいれたハ、しやうゆふのねりミそでハないか。 00049840¥N4¥J 00049850¥Xふたいろのさかな(二ウ)(三オ挿絵) 00049860M6二日よりあいにさけを出して、ていしゆ、ミぎの/手(て)にたこ 00049870M7のはち、ひだりの/手(て)にひしこのはちをもちていで、こんば 00049880M8んハよりあいのことなれハ、なにもさかなハこしらへませ 00049890M9ぬ。此ふたいろばかりてござりますとて、ふたつのさかな 00049900M10を、しゆくらうのまへにおきけれバ、しゆくらうどの見ら 00049910M11れて、これハ見ごとなひしこでござると(三ウ)ほめらるゝ。 00049920M12ていしゆ申さるゝハ、これハあまがさきからもらいました。 00049930M13さやうでござろ。このやうなひしこハ京でハミませぬ。さ 00049940M14て+見ごとなひしこでござる。さらハたこをたんましよ。 00049950¥N5¥J 00049960¥Xとしよりのふくりう 00049970M17しゆくらうどの、あまりもんもうにて、ことにとしよりや 00049980M18くもひさしくもち申さるれバ、としよりやくを(四オ)あげ 00049990M19さすべしとて、町/中(ぢう)より、にちぎやうじの人をつかいにや 00050000¥P163 00050010L1りける。/口上(こうじやう)に、町中申まする。としよりやくひさしく御 00050020L2もちなされましたれバ、又ほかの人に御ゆづりなされ、と 00050030L3しよりやくをあげてくださるべきよし申けれバ、としより、 00050040L4ことのほかふくりうにて、なにのしおちもないに、町から 00050050L5やくをあげよとおほせらるゝぞ。(四ウ)あげたけれハ此ほ 00050060L6うからあげます。さやうのあたむねのわるいことハ、きく 00050070L7こともいやでござる。つかいの人申さるゝハ、さいわゐの 00050080L8ことでござります。おむねがわるくハ、あげて御らんなさ 00050090L9れませ。 00050100¥N6¥J 00050110¥Xおよひごしのぜん 00050120L12りちきな人、はれがましきふるまいにゆきける。きうじに 00050130L13ん、ぜんのすゑやう、とをくすゑける。いづれもぜんをま 00050140L14ゑに(五オ)ひきよせ、くわれけるに、りちきな人ハぜんを 00050150L15すゑたまゝにて、手をのばして、めしもしるもくゐけれハ、 00050160L16となりのあいきやく見かねて、ぜんをひきよせてまいれと 00050170L17申されけれバ、かしこまりましたとて、ぜんをひきよせ、 00050180L18ふたくち/三(ミ)くちくゐて、おしへた人のそでをひいて、おか 00050190L19げでたべようござります。 00050200¥N7¥J 00050210¥Xねんぶつかうのさそひ(五ウ) 00050220M3ねんぶつかうにさそひけれバ、たゞいま、ゆふろに入てゐ 00050230M4られます。それならバ、われらハさきへまいろ。まんにひ 00050240M5とつ、あがらしやつたら、あとからござれといふてくださ 00050250M6れ。 00050260¥N8¥J 00050270¥Xあかいはし 00050280M9あるもんとの/御坊(ごほう)、十月にかミ/京(きやう)へひじにゆかれける。か 00050290M10へりに、ほりかわの一でうに、かたミせハふるきすだれを 00050300M11(六オ)かけ、ふるい/手(て)のかけたぢぞう一たいつりさげ、ふ 00050310M12るとうぐすこしあり。かたミせハしほものやにて、見ごと 00050320M13なるあかいわし、たわらにいれ、ミせにいだしありける。 00050330M14よきいわしかな。しも京へハあのやうないわしハもてこね 00050340M15バ、こゝろにかいたいとおもへど、しろこそでにころもき 00050350M16て、いわしのねだんとハれもせず。まづふるだうくのかた 00050360M17のミせへより、(六ウ)すだれにかけてあるふるいぢぞうを 00050370M18ひねくりまわしミて、さて+、これハ見ことなぢぞうて 00050380M19ござる。このぢぞうハ、百入がいくらしまする。 00050390¥P164 00050400¥G 00050410¥N9¥J 00050420¥Xくらまのりしやう 00050430L14はつとらにくらまへまいりしに、いつくともなく、しらか 00050440L15ミ一まいあたまへおち、ふところへ入ける。これハかたじ 00050450L16けない。ふくのかミとて、かへりてともだちに(七オ)ひけ 00050460L17らかしける。わるくちいひのともだち申やう、それハいか 00050470L18やうにして、ふところへはいりしぞ。されバおがミてゐる 00050480L19うちに、このかミつむりへおちて、ミぎのびんのかたから、 00050490M1かほへすれ、ふところへはいつた。それハことのほかわる 00050500M2いはいりやうじや。なぜといふに、びんとほうとすれては 00050510M3いりしかミなれバ、びんぼうがミじや。(七ウ)(八オ挿絵) 00050520¥N10¥J 00050530¥Xおかわのしちもつ 00050540M6大としのばんに、あたらしきおかわをしちもつにして、ぜ 00050550M7にをかりたいといふ。/内義(ないぎ)見て、百文ハかしましよ。さり 00050560M8ながら、おやぢにミせましよとておくへもちゆき、此おか 00050570M9わに、せに百文かしまする。おやちミて、はてさて、わけ 00050580M10もない。まるにかふても大かた百ほとのものを。それにハ 00050590M11かすな。(八ウ)それでも百文かそと、やくそくしました。 00050600M12なんぼやくそくしたとも、しやうべんしてかへせ。 00050610¥N11¥J 00050620¥Xゆふふくなぬす人 00050630M15ぬす人はいりしをきゝつけ、ていしゆおきて、くらがりで 00050640M16くんづころんづもミあい、やう+ぬす人をおさへてゐら 00050650M17れける。ないぎ/火(ひ)をともし、おやぢ様。なんと、ちやをし 00050660M18んぜましよか。(九オ)ぬす人おさへられてゐて、お/内義(ないぎ)様。 00050670M19りよぐわいながら、わたくしにもちや一はい、くださりま 00050680¥P165 00050690L1せ。 00050700¥N12¥J 00050710¥Xこうたのきゝちかい 00050720L4おやぢ、ひかし山へふるまいにゆきてハ、いつもさけのき 00050730L5げんにて、こうたをうたふてかへらるゝ。けふのふるまい 00050740L6にも、さだめていつものぢふんに、こうたぶしにてかへら 00050750L7るべしと(九ウ)まちけるおりふしに、あんのごとく、こう 00050760L8たぶしにてかへらるゝ。くゞりをあけてまちけれども、よ 00050770L9その人にて、かミのほうへゆき、おやぢにてなし。さても 00050780L10ようにたこゑかなと、くゞりしめてうちへはいりしに、し 00050790L11ばしありて、こうたもうたハぬ人、かどをたゝく。たれじ 00050800L12や。おれじや。あけい。くゞりあくれハおやぢなり。(十オ) 00050810L13さて+いまがた、こなたにようにた小うたうたふて、か 00050820L14ミのほうへゆかれた。こなたかとおもひ、くゞりあけまし 00050830L15た。ようにた人もあるものじや。そのこうたうたふて、か 00050840L16ミへいたハおれじや。それならなぜに、はいらしやれなん 00050850L17だ。はいろとおもふたれども、こうたがあまつて、かミの 00050860L18町までいた。 00050870¥Y1はなしとり三終(十ウ) 00050880¥P166 00050890¥T1かるくちはなしとり四 00050900¥N1¥J 00050910¥Xやうしむすめ 00050920L5十になるむすめの/子(こ)に、金子弐百両つけてやうしにやりた 00050930L6いといふをきゝて、これハみゝよりな。さりながら大ぶん 00050940L7のかねがつくほどに、さだめてかたわにてあろといひけれ 00050950L8バ、きもいりの人申ハ、いや、かたわにてハござらぬ。ず 00050960L9いぶんうつくしき(一オ)こなれど、ひだりのかほにあかき 00050970L10あざありて、これがきずゆへに、かねもいかいことつきま 00050980L11す。そのぶんならバくるしからず。やしないましよ。ない 00050990L12ぎ申さるゝハ、なんぼかねがつけばとて、かたかほハうつ 00051000L13くしく、かたかほの見ぐるしき/子(こ)をそだてあげても、ゑん 00051010L14につけどころがあるまい。これハむやうになされと申され 00051020L15けれバ、(一ウ)おやぢふくりうして、あほうぬかすな。を 00051030L16れもそれ、ほんなことハふんべつしておいた。なんとなさ 00051040L17るゝ。かたはらまちへゑんにつけるハ。 00051050¥N2¥J 00051060¥Xからものやけんぶつ 00051070M1いなかのさむらいしゆ一人、からものやに見てゐらるゝう 00051080M2ちに、のりものいしや、ミまわれけるゆへ、ていしゆ、さ 00051090M3むらいに申ハ、いしやどのへあいさついたします。(二オ) 00051100M4すこし御まちくだされとてうちへはいり、あいさつして、 00051110M5いしやハくすりあはしていなれける。ていしゆ出て、いろ 00051120M6+のから物どもとりいだしてミせける。さて+きゝお 00051130M7よびしより、けつかうなものどもでござる。このうち、ふ 00051140M8だをつけたぶん、やしきへもたしてくだされ。おやぢどの 00051150M9を見ませいで、のこりおほひ。さてハおまへ様にハ(二ウ) 00051160M10おいしやごゝろがござりますか。いや、さやうのことハご 00051170M11ざらぬが、たゞいまのいしやどのゝいわるゝをきけバ、お 00051180M12やぢもあつちものじやと申されたゆへ、見たいといふこと 00051190M13でござる。 00051200¥N3¥J 00051210¥Xとうふのかよひ 00051220M16とうふをかふて、かよひをとうふのうへにのせてかへりけ 00051230M17る。とうふもかよひもおなじいろなれバ、とうふかとおも 00051240M18ひ、(三オ)とんび、かよひをかけてとびゆきける。つかいの 00051250M19ものかへりて、かよひをとんびにかけられましたと申けれ 00051260¥P167 00051270L1バ、だんな、ことのほか、きものつぶれたかほして、それ 00051280L2ハなんとしたものであろと、いろ+しあんして、いや 00051290L3+、はやうとうふやへいてこい。なんと申てまいりまし 00051300L4よ。しらぬとんびがかよひもつてきたと、とうふやつてた 00051310L5もんなといふてこい。(三ウ)(四オ挿絵) 00051320¥N4¥J 00051330¥Xゐんきよのからくり 00051340L8大ぶつへんに、ゐんきよの/長(ちやう)らうあり。きたる廿五にちに 00051350¥G 00051360M1ごくらくへまいるほどに、十八日より、べちじねんぶつを 00051370M2はじめますると、なじミのだんなへ申さるゝゆへ、これハ 00051380M3ありがたいことかなと、きゝづたへにミな+金銀あげて、 00051390M4おいとまごひの十ねんをうけ、廿四日までハきせんくんじ 00051400M5ゆする。廿五日にハ(四ウ)りんじうの日なれバ、人にたい 00051410M6めんなし。さて廿六日のあさそう+、なじミのだんなの 00051420M7うち、ことにねんごろの人、いかやうのりんじうにてあり 00051430M8しぞ。きゝにまいらんと、まつはら通をゆきけるに、むか 00051440M9ふから、たしか長らう様、しろこそでにころもきてきたら 00051450M10るゝ。ゆふれいか。こゝハろくどうのつぢなれバ、さてハ 00051460M11りんじうあしくて、まよふて(五オ)出らるゝかとおもへハ、 00051470M12ぞんぞとさむく、こわくなりける。ちかくになりけれバ、 00051480M13長らうのかたより、なんとゝ申されける。ふるい+、お 00051490M14まへハゆうれいでハござりませぬか。御ふしん、もつとも 00051500M15でござる。ゆうれいでハごさらぬ。きのふが七日めなれば、 00051510M16りんじうしてしまいますはづなれと、あまりのこりおほく、 00051520M17二日のもらいかござる。(五ウ) 00051530¥P168 00051540¥N5¥J 00051550¥Xじねんこしのうたい 00051560L3うたひをしらぬ人、/能(のう)をけんぶつしてかへりてはなしに、 00051570L4けふの/能(のう)に、じねんせきといふうたいがあつたといふ。す 00051580L5こしうたいしりたる人きゝて、それハじねんこじのことで 00051590L6あろ。こなたのいはるゝじねんせきハ、やまのいものこと 00051600L7でござる。 00051610¥N6¥J 00051620¥Xかたことぞろへ(六オ) 00051630L10まごすけか。ようござつた。はあ/和尚(をしやう)様。おやどにござり 00051640L11ます。これハわたくし、/手酒(てしゆ)のごぼうてござります。こん 00051650L12にちハ、わたくし、おやのゑんにちでござります。それゆ 00051660L13へ、しやさんいたしました。 00051670¥N7¥J 00051680¥Xほんぶくのうハさ 00051690L16そなたのとなりのおやぢ、わづらいハいよ+ようござる 00051700L17か。なるほど(六ウ)よさそうなが、又ほんぶくせらるゝこ 00051710L18とがあろ。あの人ハようなつてはほんぶくし、ようなつて 00051720L19ハほんぶくしられます。あのぶんなら、たんめいで、いの 00051730M1ちがながかろ。 00051740¥N8¥J 00051750¥Xせんとうのきゝちかい 00051760M4おやぢとの、うちにか。たゞいまでられました。どこへで 00051770M5ござる。せんとうのゆに、いりにいかれました。(七オ)さ 00051780M6て+、それハけつかうな。あやかりものでござる。せめ 00051790M7てわたくしハ、くげしゆのすいふろへなりと、いりにいき 00051800M8たい。 00051810¥N9¥J 00051820¥Xまつかぜのうたひ 00051830M11四五人よりあひ、まつかぜをうたひ、あはれにきえしうき 00051840M12ミなりと、うたふところへ、人きたれり。くせのところな 00051850M13れバ、こゑびくに、(七ウ)(八オ挿絵)あはれいにしへを、と 00051860M14うたいけれバ、御ゑんりよなしに、そのまゝうたわしやれ 00051870M15ませ。 00051880¥N10¥J 00051890¥Xとけつのかたこと 00051900M18いしやのところへきて、たゞいまおやぢ、とてついたされ 00051910M19ました。ちよつと御いでくださりませ。とてつとハなんの 00051920¥P169 00051930L1ことでごさるそ。くちから、ちをはかれました。はて、こ 00051940L2なたハ(八ウ)いかいかたこといはしやる。ちをはいたハ、 00051950L3とけつといひます。とてつといふハ、よいしゆのにわにあ 00051960L4るうへきのことでごさる。 00051970¥N11¥J 00051980¥Xちやわんのひゞき 00051990L7きやくありて、うちのものをよび、せんとのちやわんをお 00052000L8めにかけい。くわんにんの入ましたちやわんのことでござ 00052010¥G 00052020M1りますか。われハいかいかたことを(九オ)いふて、をれま 00052030M2でがもんもうそうにきこゆる。ちやわんのひゞきハ、くわ 00052040M3んにうといふ。おぼへておけ。われがいふくわんにんとハ、 00052050M4おなごのミもちなことじや。 00052060¥N12¥J 00052070¥Xうらぼんのぢしん 00052080M7きのふハいかいぢしんでござりました。なにごともござり 00052090M8ませぬか。されバ、よほどのちしんでおどろきまし(九ウ) 00052100M9たれども、このほうのためには、よきじしんでよろこびま 00052110M10す。それはなにことでござりますぞ。されば御ぞんじのと 00052120M11をり、このほうおやぢ、ちうぶにて、かほがゆがミました 00052130M12に、きのふのぢしんから、かほのゆがみがなをりました 00052140M13それハめでたいことかな。このほうにハいかいそんをいた 00052150M14しました。しやうりやうのたながくづれまして、(十オ)も 00052160M15り物もはぎのはなも、にわへおちましたゆへ、こしらへな 00052170M16をしました。それはおいそがしかろ。ぞんじましたら、た 00052180M17なのくづれるときにまいりて見ましよもの。なんの、ミる 00052190M18ことがござります。はて、むかしからいふ、ぼたもちのた 00052200M19なからおちるがミたいと申ことでござる。 00052210¥P170 00052220¥Y1はなしとり四終(十ウ) 00052230¥T1かるくちはなしとり五 00052240¥N1¥J 00052250¥X四てんわうのたとへ 00052260M5ミなもとのらいくわうハ、四てんわうのはたらきにて、い 00052270M6まのよまでに/名(な)をのこされた。なにのはたらきもなくて、 00052280M7四てんわうの/上(かミ)にたつがふしぎな。なんのふしぎなことが 00052290M8あるぞ。たとへてきかそ。人のかほにある、め・はな・く 00052300M9ち・ミヽ。これハ(一オ)四てんわうなり。めハミるやくあ 00052310M10り。はなハかぐやく。くちハ物いふやく。ミヽハきくやく。 00052320M11かやうにめん+はたらくやくハ、しれたことなり。まゆ 00052330M12といふものハ、なにのやくもなく、はたらくこともないに、 00052340M13め・はな・くち・ミヽのかミ/座(ざ)にゐる。これ、らいくわう 00052350M14でないか。きこへた。それならふしんがあるハ。なんぞ。 00052360M15むかしの(一ウ)四てんわうのほかに、ひとりむしやとて、 00052370M16はたらきし人があつたが、ひとのかほで、ひとりむしやハ 00052380M17どこぞ。おとがいじや。おとがいに、なにのやくがあるぞ。 00052390M18おなごの/苧(を)をうむとき、おとがいでおさへるやくがあるハ。 00052400M19いかにもきこへた。さりながら、おとこのおとがいに、な 00052410¥P171 00052420L1にのやくがあるぞ。ふんどしかくとき、おさへるハ。(二オ) 00052430¥N2¥J 00052440¥Xごのかちまけ 00052450L4きやくとていしゆと、ごをうちける。もくさんして、きや 00052460L5くハ五もくのかちといふ。ていしゆも五もくのかちといひ、 00052470L6ていしゆ申さるゝハ、はまにて十もくのかしがござる。そ 00052480L7のいしをこゝへいれますれバ、このほう、五もくのかちに 00052490L8てござらぬかと申けれバ、そのはまハ、あしたかへしまし 00052500¥G 00052510M1よ。(二ウ) 00052520¥N3¥J 00052530¥Xけいせいのゆふぐれ 00052540M4りちぎないなかしゆ、けいせいかいけるに、けいせいの申 00052550M5やう、くにもとへ御かへりなされましたらバ、ゆふぐれに 00052560M6ハおもひ/出(だ)してくだされと申ける。こゝろへましたとやく 00052570M7そくして、そのゝち、ほかのけいせいをかいけれバ、これ 00052580M8もまたおなじやうに、夕ぐれのものさびしきおりハ、おも 00052590M9ひだして(三オ)くだされといひければ、りちぎなおとこい 00052600M10ふやう、やすいことなれども、ゆふぐれハかなハぬ。せん 00052610M11やくいたした。あさめしすぎにおもひだしましよ。 00052620¥N4¥J 00052630¥Xてにはちがひ 00052640M14久七、やどばいりして、だんなへゆきけれバ、だんな申さ 00052650M15るゝハ、なんと久七。あきないでもするか。なるほど、よ 00052660M16きあきないにとりかゝりました。(三ウ)(四オ挿絵)なにをう 00052670M17るぞ。すりこばちをうりまする。それハよきものか。いか 00052680M18にも/利(り)のあるものてござります。せとものやにてきずもの 00052690M19をかいまして、あかつちにてつくろふてうります。一まい 00052700¥P172 00052710L1にて四五ふんづゝも/利(り)がござります。まいにち十/枚(まい)ほどう 00052720L2りますれバ、ふたりのくちすぎ、らくにござります。それ 00052730L3ハよき(四ウ)あきないにとりついた。よううれるか。され 00052740L4ばでござります。うれますれバようござりますれど、いか 00052750L5にしてもうれませぬ。 00052760¥N5¥J 00052770¥Xねとうじんうり 00052780L8ねとうじミをうりけるを、十もんにつけけれども、なりま 00052790L9せぬとていにけるが、まけにもどり、これハあまりやすく 00052800L10ねでござらぬけれど、(五オ)まけてしんぜましよ。いや、 00052810L11こちにハねとうじミなら、ほしいねでなくハいやぢや。さ 00052820L12てもそさうなことをいふて、うりそこなふた。こんどはあ 00052830L13ぢに物いはんとおもひうりける。又よそにても十文につけ 00052840L14けれバ、まけにもどり、これハよいねてござりますといひ 00052850L15けれハ、十文にハたかい、つけようとおもふに、そなたの 00052860L16かた(五ウ)から、よいねといはるゝ。いやじや。 00052870¥N6¥J 00052880¥Xにた人たがい 00052890L19しばいのたちやくしやに、あにを小平太、おとゝを弥平太 00052900M1とてあり。うりをふたつにわつたごとくによくにたきやう 00052910M2だいなり。あにの小平太にめをかけらるゝ大じん、しばい 00052920M3へゆくとて四条のはしをわたるに、むかいからおとゝの弥 00052930M4平太(六オ)くるを、あにの小平太とおもひ、なんと小平太、 00052940M5このぢうハあハぬといはれけれバ、わたくしハ小平太がお 00052950M6とゝ弥平太と申ものでござりまする。どなた様にもおミち 00052960M7がへなされますと申けれバ、さて+そさう申たとて、わ 00052970M8かれける。さてしばいすぎてかへりに、このたびハあにの 00052980M9小平太にあひて、けさほど、そなたの(六ウ)おとゝの弥平 00052990M10太を、そなたかとおもひ見ちがへて、こゝろやすいあいさ 00053000M11つをしたハと申されけれバ、わたくしもまだ、さいぜんの 00053010M12弥平太てござります。 00053020¥N7¥J 00053030¥Xつんぼのでんがく 00053040M15でんかくをさかづきにいれて、じゆつといふを、おもしろ 00053050M16がりて、さけのむ人あり。としよりてミヽとをくなり、じ 00053060M17ゆつといふがきこへねば、そばに(七オ)こしもとおきて、 00053070M18じゆつといふか、きいてくれよと申さるゝゆへ、じゆつと 00053080M19申ますといへば、おもしろいとてさけのまれける。こんや 00053090¥P173 00053100L1又でんかくをせよと申つけらるゝ。むつかしさに、夕めし 00053110L2のでんがくがござります。それハつめたいので、じゆつと 00053120L3ハいふまいもの。なるほど、じゆつと申ます。それならバ 00053130L4とて、さけのかんさせ、(七ウ)(八オ挿絵)つめたいでんがく 00053140L5にて、さあきけと申さるゝゆへ、ミヽのはたへよりて、大 00053150L6ごゑあげ、じゆつと申ました。これハいかなこと。つめた 00053160L7いでんがくも、じゆつといふか。むまいことじや。 00053170¥G 00053180¥N8¥J 00053190¥Xにかいのしやうべん 00053200M3三つばかりの子、おもてのにかいから、やねへしやうべん 00053210M4しける。とばしり、かいどうとをる人のあたまへかゝり 00053220M5(八ウ)けれバ、これハかんにんならぬとて、ねだりこみけ 00053230M6る。町しゆ、あつかい申けるハ、のきぐちからハ二けんま 00053240M7でないに、かんにんなされといひけれバ、いよ+はらを 00053250M8たて、これにすんしやくがいることか。いかにも、すんし 00053260M9やくかいります。三げんばりまでハおゆるしじや。 00053270¥N9¥J 00053280¥Xさるににたともだち 00053290M12/山(やま)すけ/谷(たに)すけとて、ふたりながら(九オ)さるのかほににた 00053300M13ともだちありて、たがいに、さるよ+といひける。ふた 00053310M14りづれにて、よそへゆくみちにて、またともだちにあひて、 00053320M15なんと、にたものがふたりづれであるくハ。ふたりのうち、 00053330M16どちらがさるに、ようにたぞ。/山(やま)すけがさるにようにたと 00053340M17いひけれバ、/谷(たに)すけ、大きにわらいける。又いふやう、た 00053350M18にすけのかほハ、にたとハいはれぬ。(九ウ)/生身(しやうじん)のさるじ 00053360M19やといひけれバ、はじめ山すけをわらいけるはづかしさに、 00053370¥P174 00053380L1たにすけがかほ、あかくなりける。それ+、かほがあか 00053390L2ふなつて、いよ+まことのさるじや。 00053400¥N10¥J 00053410¥Xにたるやつし/字(じ) 00053420L5おくすりたべますうちに、せんじちやをたべましてもくる 00053430L6しうござりませぬかと、いしやどのへたづね(十オ)けれバ、 00053440L7もんもうなこといはしやる。/茶(ちや)と/云(いふ)/字(じ)ハ、/薬(くすり)といふ/字(じ)てご 00053450L8ざる。 00053460¥Y1はなしとり五大尾 00053470¥Q 00053480L12△△△△△△△△△△未歳正月吉日 00053490L13△△△△△△△△△△△△△寺町通三条上ル丁 00053500L14△△△△△△△△△△△△△△△菱屋新兵衛板(十ウ) 00053510¥P175 00053520¥U噺本大系△第七巻 00053530¥T軽口機嫌嚢 00053540¥G 00053550¥Y 00053560L16享保十三年刊 00053570L17松泉編 00053580L18半紙本五巻 00053590L19国会図書館蔵 00053600¥Y軽口機嫌嚢 00053610M3むかし+、/祖父(ぢい)や/祖母(ばゝ)のはなしをわらひ/初(そめ)しハ、日本一 00053620M4の/秬(きび)だんご、/大豆(まめ)の/粉(こ)にぬり/坊主(ほうず)、坊主+小坊主と、一 00053630M5休和尚のおどけ給ふハ、/底(そこ)のしれぬ/知恵袋(ちゑふくろ)、/曽呂利(そろり)と(オ) 00053640M6/替(かは)り、/鹿(しか)とうつり、もみぢ/散(ちる)/盃(さかつき)のまへに、/何(なん)のわいた 00053650M7めなく、かきあつめし小僧が機嫌嚢、わらひものになる/序(しよ) 00053660M8也。 00053670M10△△享保十三 00053680M11△△△△△申ノとし△△△△△△△△△松△泉△編(ウ) 00053690¥P176 00053700¥T1軽口機嫌袋巻之一 00053710¥N1¥J 00053720¥Xあら玉の初礼 00053730L5春ハ/明(あけ)ほのゝ山しろく、ミね+もういかふりして、梅の 00053740L6はなにつこりと、/春風(しゆんふう)/春水(しゆんすい)、一/時(し)にきたる/年始(ねんし)の/礼者(れいしや)、 00053750L7しほたれたる上下も、/万歳(ばんぜい)をよばふ/御代(ミよ)のこゑ、ものもう。 00053760L8どれ。/何(なに)屋/誰(たれ)、お礼申ます。お/帳(てう)にとめて下さりませ。/玄= 00053770L9関(げん=くわ)にゐる人、/無筆(むひつ)て、わたくしハぶてうほうにござります。 00053780L10それへつけて、おかへりなされませ。はアわたくしもぶて 00053790L11う(一オ)ほうにござります。そんなら/判(はん)おして、かへらし 00053800L12やませ。 00053810¥N2¥J 00053820¥Xつくもかミ 00053830L15/何(なに)がしといふ/絵(ゑ)かき、さるおかたから、小町の/百(もゝ)とせの/像(さう) 00053840L16をかいておこせと、御ちうもんがきたが、つねの/老女(らうちよ)をか 00053850L17いてハすまぬ。どふぞ/百(ひやく)にちかきらうぢよがあらバ見たい。 00053860L18それこそ此町の/木工(もく)兵衛の/姥(ば)様、ことし九十六にならるゝ。 00053870L19いて見てござれと、あんないがあつて、見せねバならず。 00053880M1これ姥様。(一ウ)おツつけ、こなたを見にくる人があるほど 00053890M2に、/着(き)ものでもさつはりとしていやしやれ。やあ/何(なに)といや 00053900M3る。おれを見にくる人があるう。はて、あられもないだん 00053910M4かうめさる。かんまへて、まゝ/子(こ)のあるところへハ、いや 00053920M5じやぞや。 00053930¥N3¥J 00053940¥Xあてすいりやう 00053950M8こも/僧(そう)、/尺八(しやくはち)ふいてかど+をしゆぎやうしてきて、こゝ 00053960M9かして/下(くだ)されとやすんだれバ、ていしゆまかり/出(で)て、おま 00053970M10へハどれからおいでなされます。/大(たい)ぶつから/出(で)ます。まい 00053980M11(二オ)(二ウ・三オ挿絵)にちかようにおいでなさるゝも/御(ご)た 00053990M12いぎでござります。いや/此二三年(このにさんねん)/已前(いぜん)までハ、まひ日/出(て) 00054000M13ましたれど、いまハこゝろまかせのしゆぎやうです。むゝ 00054010M14すれバかたきハしれましたの。 00054020¥N4¥J 00054030¥Xかいるのぐわん/立(だて) 00054040M17てうほうの子がねつがあつて、うばややうちが、/手(て)にいれ 00054050M18てもむようにするを見て、でつちの三太うらやましがり、 00054060M19おれもあのようにしてもらふ/身(ミ)になりたいとつぶやくを、 00054070¥P177 00054080¥G 00054090M1おう(三ウ)ばどのがきかれて、あがミも気やいがわるいと、 00054100M2/此(この)いと様のように、やうちがかゝつて/大事(たいじ)にしてやる/事(こと)じ 00054110M3や。けなりか、わづらやといふたれバ、いつのまにやら、 00054120M4せどへでた。/何(なに)するぞと、しやうじのあいからのぞいてミ 00054130M5れバ、/霜(しも)月のさむそらにまるはだかになつて、かあぜひけ 00054140M6+。 00054150¥N5¥J 00054160¥X/一(いち)ごやまひ 00054170M9いぼでもほうくろでも、せんきでもすんばくでもあらバ、 00054180M10おんだしなされ。よつく(四オ)なおしてやるべいといふて 00054190M11ありくいしやあり。こちのとろ/松(まつ)めが/夜小便(よばり)がなおらバ、 00054200M12なをしてもらいたいと見せた。いしやどの、ようすをきゝ、 00054210M13この/子(こ)ハどこ/生(うま)れです。大ぶつのきせるやの/子(こ)でござる。 00054220M14そんならなおらぬ。大ぶつゑいたいばりじや。 00054230¥N6¥J 00054240¥Xながひものにハまかれ 00054250M17/世間(せけん)ながばおりがはやつて、こしらへごとハこしらへたれ 00054260M18ど、/古風(こふう)なおやじどのに見せられず。/留主(るす)を見あわせ、さ 00054270M19らバけふハいて/来(こ)ふと、き(四ウ)ものあらため、ながひは 00054280¥P178 00054290L1おり/着(き)て出よふとした/所(とこ)へ、ぬつとおやじがかへられ、な 00054300L2がひはおり、ぬがれもせず、うろ+としているを見て、 00054310L3こりやどこへゆく。おびしてゆけ。 00054320¥N7¥J 00054330¥Xわざわひハ下から 00054340L6/御(お)れき+のお/次(つき)の/間(ま)て、/茶道(さとう)ぼん、大あくびしけるを、 00054350L7/殿(との)さまのおミヽにいり、いまのハたれじやとおとがめあり 00054360L8しを、おそばしゆのとりなしでしれざりしが、/誰(たれ)いふとも 00054370L9なくあらハれて、不/礼(れい)ものなりとて、おひ(五ノ八オ)ま/下(くた) 00054380L10さるゝ/時(とき)、さどう、くちのうちにて、/好事(こうじ)/門(もん)をいでず、あ 00054390L11くび/千(せん)里をはしるじやの。 00054400¥N8¥J 00054410¥Xさいかくの花にかせ 00054420L14/何(なに)としてものとしてと、はなしのさい/中(ちう)、ふとくびすじを 00054430L15かいたれバ、つめのあいへしらミがはさまつた。/人中(ひとなか)でつ 00054440L16ぶされもせず、/此中(このちう)おれハしらミでしなだまをとるが、/何(なに) 00054450L17として見せうか。それハめづらしい。よかろ+。さらバ、 00054460L18あたまへもみこミ、たちまちこゝへぬ(五ノ八ウ)けたと、 00054470L19ゑりからだし、またこれをはなのさきへもみこミ、をつと 00054480M1こゝへぬけたと、そでぐちから。 00054490¥N9¥J 00054500¥X/陰陽師(おんようじ)/身(ミ)のうへ 00054510M4/参宮(さんくう)のやまぶしひとり、せきのしゆくまできて、いせミち 00054520M5/江戸(ゑど)ミちのわかれとて、とちらへいこぞとまよふてゐる所 00054530M6へ、/百姓(ひやくしやう)のきたをうれしく、こりや+/百(ひやく)しやうよ。いせミ 00054540M7ちハどちらじや。おしへてくれ。なにはい山ぶしめが、/横= 00054550M8平(わう=へい)にぬかすとはらたてゝ、そちハやまぶしじやないか。 00054560M9(九オ)われがしやうばいじや。/占(うらな)ふていけさ。むゝこれ 00054570M10ハもつともじやと、ふところから八/卦(け)とり/出(だ)し、さら+ 00054580M11とかんがへ、しれた+。どうじや。/百姓(ひやくしやう)にとふて/行(ゆけ)とあ 00054590M12る。 00054600¥N10¥J 00054610¥Xわるじやれ 00054620M15/張果郎(てうくわらう)が/絵(ゑ)を見て、/此仙人(このせんにん)ハくそのごくにもたゝぬ。ひよ 00054630M16うたんからこまをたされた。こちのかゝハ、ひようたんか 00054640M17ら/胡摩(ごま)をだして、あへものにつかふに。 00054650¥N11¥J 00054660¥Xわが身つめつて人の(九ウ) 00054670¥P179 00054680L1/大仏(だいぶつ)のはしらの/穴(あな)に、しゆんれいがつまつて、あとへもさ 00054690L2きへもゆかぬとたちさハぐ。見れバ/同行(どうきやう)十/人(にん)ばかり、/前(まへ)か 00054700L3らハ/手(て)を/引(ひき)、しりからハ/突(つく)。つまつたおとこハ、こしぼね 00054710L4がいたむといふて、ほへるやら/笑(わら)ふやら。けんぶつハゑい 00054720L5とう+とおしあふて、/何(なに)があさから/日(ひ)の/入(いり)かたまでもが 00054730L6くうち、ぐつすりとぬけて/出(で)て、ぬからぬかほで、これを 00054740L7おもへハ、/母(はゝ)じや/人(ひと)ハいかひくらうめされた。 00054750¥G 00054760¥N12¥J 00054770¥X/上(かミ)をまもる/下(しも)(十オ)(十ウ挿絵) 00054780M3/北条時政(ほうでうときまさ)ハおごりをしづめ、/家(いへ)のかんりやくを/第(たい)一となさ 00054790M4れたげな。あるとき、お/小性(こしやう)をめされ、そちがさげものゝ 00054800M5その/緒〆(おしめ)を見せよとある。/御覧(ごらん)にいれます/玉(たま)でハござりま 00054810M6せぬ。あふぎが/谷(やつ)の/小(こ)まものやで七分でもとめまして、に 00054820M7せたまてござります。なるほどそう見た。それハおごりじ 00054830M8や。身が/緒留(おとめ)を見よ。はあこれハ/木欒子(むくろじ)でハござりませ 00054840M9ぬか。いかにも+。そちがハ七分、身がハはねそゑて壱 00054850M10/文(もん)でかい申た。(十一オ) 00054860¥N13¥J 00054870¥X/出(で)るまかせ 00054880M13かりそめのことも、おめでたい+であへる/婚礼(こんれい)のさかづ 00054890M14きごと。三&九/度(ど)のこゝろもち、よめ/子(ご)のかはらけが/聟君(むこきミ) 00054900M15へおさまるとき、/仲人(なかふど)の/出来(でき)右衛門がさしづして、/れ((ママ))がい 00054910M16ながら、こゝハおひとつあがらねバ/気(き)にかゝるおさかづき 00054920M17といはれて、/聟(むこ)ハ/一滴(いつてき)もならぬ/下戸(げこ)なれど、たぶ+とう 00054930M18けられたれば、ほう見ごと+。/斯(かう)/往生(わうじやう)ずくめにしたも 00054940M19のじや。(十一ウ) 00054950¥P180 00054960¥N14¥J 00054970¥Xたのむ/木(こ)の/下(もと)に/雨(あめ) 00054980L3/赤貝(あかかい)、/蛤(はまぐり)、/辛螺(にし)、/栄螺(さゝい)うちより、何とおもやる。/尾鰭(おひれ)のあ 00054990L4るしゆハ/自由(じゆう)ハはたらけど、あミにかゝつて、ついこの/世(よ) 00055000L5のおいとまめ/た((さカ))る。こちらハ/家(いへ)もちて、/戸(と)をしめて/砂(すな)にま 00055010L6ぶれてさい/居(い)れハ、しやう+で人にとられることでない 00055020L7といふ/下(した)から、あかがひ、口をほつかりとあき、はあなん 00055030L8まミだぶつといふた。のこりの/貝(かい)ども口をそろへ、うつか 00055040L9りと口あひて、人にとらりやんなや。何いやる。いつのま 00055050L10にやら、/魚(うを)のたなへ/来(き)たに。 00055060¥Y1一之終(十二オ) 00055070¥T1軽口機嫌袋巻之二 00055080¥N1¥J 00055090¥Xなぞ+なあに 00055100M5あつらへておいた/火達(こたつ)のやぐらが/出来(でき)てきましたと/突出(つきだ)す。 00055110M6/親仁(おやぢ)どのが見られて、兄よ。これハ/三角(さんかく)じやが、なぜ/常(つね)の 00055120M7/四方(しほう)にあつらへなんだ。はて△ついゑなことハ/親仁(おやぢ)さまの 00055130M8おきらいじやによつて、 00055140M9△Gこゝハおやぢさま 00055150M10こゝハはゝじや人 00055160M11こゝハわたくし。 00055170M13是でよいハさて。/親仁(おやぢ)、そらうそふいて、かゝ、あぢなな 00055180M14ぞかけお(一オ)つた。/呼(よん)でやらざなろまい。 00055190¥N2¥J 00055200¥X/麁相(そさう)のまたそさう 00055210M17/頓察(どんさつ)といふいしやどの、/火吹竹(ひふきたけ)をわきざしにして/病家(ひようか)へ見 00055220M18まわれた。もし、おまへのおさしなされたものハ、なんぞ 00055230M19/御療治(こりやうぢ)にいりますか。見れバ/火吹竹(ひふきたけ)なり。/女(おんな)どもがと/云(いゝ)す 00055240¥P181 00055250L1てゝ、とつはかハもどつて、/我家(わかいへ)をとりちがゑ、となりの 00055260L2うちへずか+とはいり、こりや/女(おんな)ども。おのれゆへに、 00055270L3こんな/麁相(そさう)したとわめかるる。となりの/内義(ないぎ)おかしがり、 00055280L4/頓察(どんさつ)様。おまへ(一ウ)のところハとなりじやといはれて、 00055290L5ものもいはず/飛(とん)で/出(いで)、よう+/我(わか)うちへ/帰(かへ)り、そのまま/内= 00055300L6義(ない=ぎ)のそばにつくばふて、はんれやれ/只今(たゝいま)ハそさう申ました。 00055310¥N3¥J 00055320¥X/油断(ゆたん)/強敵(がうてき) 00055330L9/去者(さるもの)が、さるものゝ/妻(つま)に不/義(ぎ)して、ほんの/亭主(ていしゆ)に見つけら 00055340L10れ、いろ+とあいさつがいつて、とかく/命(いのち)さへたすけた 00055350L11まはゞ、/其外(そのほか)ハこゝろまかせにし/給(たま)へといふにぞ、やには 00055360L12に/剃刀(かミそり)ふりあげ、おの+の/御(ご)とりもちで、/鼻(はな)をそいでゆ 00055370L13る(二オ)すぞ。こゝろからとハいひながら、さぞ/口(くち)おしか 00055380L14ろ。いや△くちおしうハござらぬが、/鼻(はな)がおしうごある。 00055390¥N4¥J 00055400¥X/糸(いと)による/物(もの)なら 00055410L17/京(きやう)へあそびに/登(のぼ)ツた/大臣(だいじん)、/祇園町(きおんまち)の/色有(いろある)/茶(ちや)屋で、なる/市(いち)と 00055420L18いふ/三味(さミ)せんの/手(て)がらしをよび、/夜(よ)あけぢかくまでそゝり 00055430L19あげられ、たわひなき/最中(さいちう)、/中居(なかい)のすぎが/出(で)て、もふおや 00055440M1すミなされあせ。/又(また)なる/市(いち)様もおかへしなさりましたらよ 00055450M2かろといふと、(二ウ)(三オ挿絵)そのまゝつぎ/三味(さミ)せんをば 00055460M3ら+としまうて/箱(はこ)に/入(いれ)、/立(たつ)ていんだ。/大臣(だいじん)不/興(けう)なかほし 00055470M4て/中居(なかい)をよび、そちがいはれざる、いまの/座頭(ざとう)をいなした 00055480M5が、きつうはらが/立(たつ)たかして、/三味(さミ)せんをみぢんにした。 00055490¥N5¥J 00055500¥X/智恵(ちゑ)あれバほまれも 00055510M8/最明寺(さいミやうじ)どの、あるとしの/暮(くれ)、/御殿中(ごでんちう)のたゝミしきかへるを 00055520¥G 00055530¥P182 00055540L1/御覧(ごらん)じて、/母(はゝ)の/尼公(にこう)ハ、しやうじをさへつゞくり/給(たま)ふ。こ 00055550L2れハうらをかへさせて/敷(しけ)よと/仰(おほせ)らる。/青砥左衛門(あをとざゑもん)、かしこ 00055560L3まり、うら(三ウ)かへすことハ/武門(ぶもん)にきらい候なれバ、此 00055570L4まゝにさしおかるべきよし、申あげらる。それハ/青砥(あをと)が不 00055580L5/了簡(れうけん)なり。五百/畳(ぢやう)や六百/畳(ぢやう)のこと、/何(なに)かくるしかるべき。 00055590L6そちがきらふハ、/戦場(せんじやう)におよんでのことさ。 00055600¥N6¥J 00055610¥X/似(に)ぬ/子(こ)ハおに/子(ご) 00055620L9かくして/拵(こしらへ)たちりめんの/頭巾(づきん)を、/親仁(おやぢ)どのが見つけて、わ 00055630L10れハあぢやるなあ。ちりめんの/頭巾(づきん)といふものハ、/此方(こち)と 00055640L11づれのかぶるものでハない。/何方(どこ)て/買(かう)た。かへしてこいと、 00055650L12さん※に(四ノ七オ)しかられ、むすこもいひわけにとう 00055660L13わくして、いや△よんべひらふて/来(き)ました。やあ△ひらふた 00055670L14といふか。ふうん△おれがわかいときひらふたよりハ、/地(ぢ)が 00055680L15わるひ。 00055690¥N7¥J 00055700¥X/愚者(ぐしや)の/宗論(しうろん) 00055710L18なんぼいやつても、/人間(にんけん)のおさまるところハ、/仏道(ふつどう)にきわ 00055720L19まツた。すでに/寺(てら)うけ/状(じやう)がなけれバ、どこにもすむことが 00055730M1ならぬハさて。いや△こゝな人は、りくつでやりやるけれ 00055740M2ども、/此日本(このにほん)にうまれて、/神道(しんとう)ハけされぬ。/仏道(ぶつどう)のわるひ 00055750M3しやう(四ノ七ウ)こがある。なんぞ。/西方(さいほう)の/極楽浄土(こくらくしやうど)といふ 00055760M4て、みな/人(ひと)が/西(にし)へ+とこゝろをよせる。すれバわるひに 00055770M5きわまつた。それがなんぞ。はて/西(にし)の/心(こゝろ)とかいて/■(あく)とよ 00055780M6むハさて。 00055790¥N8¥J 00055800¥Xめかりせぬハ/人形(にんきやう)も 00055810M9あんじたよりおもひの/外(ほか)かるい/疱瘡(ほうそう)で、きげんハよひとい 00055820M10ゝながら、いつせきのひとり/子(ご)、ゆだんがならぬと、/家内(やうち) 00055830M11が/手(て)に/足(あし)にぎつて、ここを/大事(だいじ)と/夜(よ)とぎ日とぎうちかゝり、 00055840M12けふハ/山(やま)あげの/日(ひ)じやと、きん/所(しよ)のともだち/子共(こども)(八オ)十 00055850M13四五人、/大(だい)かぐらやらとんぼがへりやら、こゝろまかせに 00055860M14くるはして、にゑかへるところへ、となりのとろ兵衛どの 00055870M15がわせて、なんと△ぼんがきげんハどうでやす。ほゝう△よ 00055880M16つたハ+。しつかい、さいのかわらじや。 00055890¥N9¥J 00055900¥X/愚痴(ぐち)のわれら 00055910M19/今時(いまどき)おもてむきハ/御出家(ごしゆつけ)で、/内証(ないしやう)ハ/魚(ぎよ)ぼん、にくじきをこ 00055920¥P183 00055930L1のミ、/俗(そく)よりハおとつたがおゝひ。そうでやすとも。しゆ 00055940L2つけといふハすくない。/聞(きい)て/下(くだ)され。/此中(このちう)もおれがてらへ 00055950L3まいつた(八ウ)れハ、/和尚(おしやう)がはすのあへものを/喰(くう)ふていら 00055960L4れた。あんまりけうといことで、もう+しゆせうげがさ 00055970L5めました。それハ/別(べち)にかわつたことじやないが。あゝもつ 00055980L6たいない。しつかい、ほとけのねだをはづして/喰(くう)ようなも 00055990L7のじや。 00056000¥N10¥J 00056010¥Xつくろい物ハ/尻(しり)から 00056020L10はれがましきつきあいで、そのかへるさ、/玄関(げんくわ)からめん 00056030L11+の/供(とも)のものよぶに、/久七(きうしち)、/久助(きうすけ)、/関内(せきない)などとよぶ/中(なか)に、 00056040L12/二郎衛門(ぢろゑもん)+とよばれたハ、やとひざうりとりとしれて。 00056050L13(九オ) 00056060¥N11¥J 00056070¥X/哥人(かじん)ハ/居(い)ながら 00056080L16/御殿(ごてん)ぢかき町の/子共(こども)、/几巾(いか)をあげけるを、/御書院(おしよゐん)のさきか 00056090L17ら/御覧(こらん)じて、さてもようあがつた。あれハなにいかといふ 00056100L18ものぞ。おそばの/女中(ぢよちう)うけたまわり、かるた几巾と申でご 00056110L19ざりましよ。/中(なか)にかるたの/虫(むし)がゑ/書(かい)てござります。いかに 00056120M1もそうじやが、あがりにくいものが、ようあがつたなあ。 00056130¥N12¥J 00056140¥Xけいはく口にあまり 00056150M4/関平(せきへい)がけふ/結(いふ)たかみハ、どうやら/気(き)ミがわるひ(九ウ)(十 00056160M5オ挿絵)と、びんかゞミひねくり、なでなおしていらるゝと 00056170M6ころへ、はりたての/百舌斎(もすさい)どのがきて、だんな、なにあそ 00056180M7ばします。けふのかみハできぬようにおもふ。それで見て 00056190M8ゐる。いや+、しごくようおできなされた。おまへのお 00056200M9つむりに/何(なに)の/申(もうし)ぶんがあろにや。さあといふてから、よい 00056210M10あたまもないてバ。 00056220¥N13¥J 00056230¥X/療治(れうち)ハがくもんの/外(ほか) 00056240M13/伏見(ふしミ)から/便舟(ひんせん)して、十人ばかりののりあい。のぼりハいと 00056250M14ゞまだるく、あせミづたらして/引(ひい)て/来(く)るところに、/何(なに)とか 00056260M15しけん、此ふねがすハつて、おせどもひけ(十ウ)どもちつ 00056270M16ともうごかず。せん/頭(どう)もいかゞせんとあせるとき、のり/合(あい) 00056280M17にいしや/殿(との)かいられて、どれ+、此ふねを/我等(われら)がくすり 00056290M18で、じゆうにさしてやろと、しばしかんがへて/一貼(いつふく)/調合(てうかう)し、 00056300M19/急(きう)にふりだして、/川(かハ)かミへながして見や。こゝろへたりと 00056310¥P184 00056320¥G 00056330L12さしづのとおり、/川上(かハかミ)へざつとながしたれど、いかな+ 00056340L13ちつともうごかず。いしやどの、/手(て)もちあしく、/今(いま)の/一貼(いつふく) 00056350L14できくはづじやがと、/川上(かハかミ)を見わたし、ゑゝきこへた+。 00056360L15/水(ミづ)のへりと見たてて、/地黄(ぢわう)を/大分(たいぶん)くわへたが、/皆(ミな)のしゆ、 00056370L16見やツしやれ。/川上(かハかミ)に/大(だい)(十一終オ)こんあらふておるさか 00056380L17いで。 00056390¥N14¥J 00056400¥X水にうつる面影 00056410M1いやで+ならいでも、/流(ながれ)の身なれバぜひなく、/衣(ころも)/掛(かけ)る人 00056420M2に/身(ミ)を/売(う)ツても、/宵(よい)からつかへが/痛(いたミ)ますとうそ/云(いふ)て、たわ 00056430M3いなくね入ツたを、/客(きやく)のお/坊(ぼん)も/小面(こつら)にくふ、/色(いろ)&とおもふ 00056440M4/内(うち)、/夜(よ)がふけてハ/寺(てら)の/首尾(しゆび)がきのどくで、いなねバならず。 00056450M5そつと/床(とこ)を/抜(ぬけ)て/出て、/棚(たな)に/有(あつ)ツた/剃刀(かミそり)で、おやまの/髪(かミ)をこ 00056460M6そ+と/尼(あま)にしていんだ。/跡(あと)で/目(め)がさめて、はあうれしや、 00056470M7/夜(よ)が/明(あけ)た。/客(きやく)ハはや、いつのまにやらいなれたそうなと、 00056480M8そつと/起(おき)て、/手(て)/で((だカ))らいに/水(ミづ)を/入(いれ)、ずつと/顔(かほ)をだしたれバ、 00056490M9/移(うつる)る/影(かげ)ハ/坊主頭(ぼうすあたま)。ゑゝ△まだいなんせんか。(十一終ウ) 00056500¥P185 00056510¥T1軽口機嫌嚢巻之三 00056520¥N1¥J 00056530¥X親のこゝろ子しらす 00056540L5/兄子様(あにごさま)/御参宮(ごさんくう)あそバしたきよし、/番頭(はんとう)の/治部左(ぢぶざ)、おやぢさ 00056550L6まへのねがひ/が((かカ))ない、/成程(なるほど)まいらせふが、/銭(せに)のいることハ 00056560L7ならぬ。/道中(どうちう)も/身(ミ)がるに、/馬(むま)かごもとび/乗(のり)にして、わかい 00056570L8ものひとりと/針(はり)の/寿針(しゆしん)と久七一/人(にん)と、/已上(いぜう)四五人の/供(とも)でな 00056580L9どゝ/指図(さしづ)にて、さて/参宮(さんくう)/下向(げかう)せられた。あくる/日(ひ)、おやぢ 00056590L10さまいわるゝにハ、おもひの/外(ほか)、/下向(げかう)がはやかつた。/何(なに)と 00056600L11/旅(たび)ハういものか。/子(こ)されバ、むかしから申ことに、うそ 00056610L12ハござりませぬ。いとし子に(一オ)/旅(たび)させとハ。おやさ 00056620L13あ、おれもそうおもふてさ。むすこおもしろふござりまし 00056630L14た。 00056640¥N2¥J 00056650¥X/生(いき)によらい 00056660L17/嵯峨(さが)のおしやか/様(さま)ハ/赤栴檀(しやくせんだん)の/御(ミ)ほとけにて、くどふいふも 00056670L18ふるし。ちかいころ/京(きやう)でお/開帳(かいちやう)があつて、/道俗(どうそく)の/参詣(さんけい)ある 00056680L19/中(なか)に、/有徳人(うとくじん)と見へた/禅門(ぜんもん)、かゝるけつかうなほとけ様を、 00056690M1まぢかふおがミたてまつること、おれが/一代(いちだい)のうち、もう 00056700M2ならぬことゝ、ふところから/香合(かうはこ)とり/出し(て(ママ))、/是(これ)ハ/若年(じやくねん)のと 00056710M3き、/去(さる)やんごとなきおかた様でいたゝいた/東大寺(とうたいじ)といふ/名(めい) 00056720M4/伽羅(きやら)の/切(きれ)なれど、/今(いま)な(一ウ)んのおしかろにや。さらバ御 00056730M5ほとけに/奉(たてまつ)らんと、/香炉(かうろ)に/焙(つが)れしかバ、かほり/寺内(じない)にくん 00056740M6じ、さん/詣(けい)の/人(ひと)、/鼻(はな)をひこめかし、うれしがるとき、/釈尊(しやくそん) 00056750M7/御(ミ)こゑをあげられ、/小僧(こそう)よ+。きつうかんこくさい。お 00056760M8れが/衣(ころも)に/火(ひ)ハつかんか、見てくれ。 00056770¥G 00056780¥P186 00056790¥N3¥J 00056800¥X/道(ミち)によつてかしこし 00056810L3あの/海老(ゑび)をとるを見やつたか。いゝや。そのむぞうさなこと。 00056820L4ふねにのつて、じつと見てゐると、/浪(なミ)の/中(なか)にうざ+と/生(はへ) 00056830L5たようなものがある。それをけぬきで、くい+とぬくと、 00056840L6みな/海老(ゑび)じや。(二オ) 00056850¥N4¥J 00056860¥Xあなつりかつら 00056870L9/御国方(おくにかた)へ/御奉公(こほうこ)にやつたひとりむすめ、さん※わづらふ 00056880L10ておいとまくだされ、まづしい/親里(おやざと)へもどつてゐるを、れ 00056890L11き+のいしや/衆(しゆ)に見てもらふたれバ、/此病気(このひやうき)ハ/人参(にんじん)ずく 00056900L12めにせねバならぬ。それさへならバ/療治(れうじ)してやろといはる 00056910L13ゝ。それハどうなりとさいかくいたしませふといふを、/娘(むすめ) 00056920L14が/聞(きい)て、もしとゝ/様(さま)。お/国(くに)ていたゞきました/人参(にんしん)が、/手箱(てばこ) 00056930L15にござりませふ。あれで/大事(たいじ)あるまいか、おめにかけて/下(くだ) 00056940L16さりあせ。それこそさいわいと/手箱(てばこ)を(二ウ)(三オ挿絵)/出(た) 00056950L17し、あけて見たれバ、/大人参(たいにんしん)の見ごとなが/箱(はこ)一ツはいあり 00056960L18ける。いしやどの、きもつぶしうろたへて、/是(これ)ほど見ごと 00056970L19な/人参(にんしん)があるからハ、いれずと/大(たい)じごさるまい。 00056980¥N5¥J 00056990¥Xたゝねど/矢声(やこゑ) 00057000M3/盗人(ぬすひと)のこつちやう/石川氏(いしかハうぢ)、/下京(しもきやう)/辺(へん)を/夜(よ)ふけてぶら+と 00057010M4/俳廻(はいくわい)し、/大(おゝ)きな/家(いへ)のくゞりのほそめに/明(あき)たをさいわひに、 00057020M5ずつとはいつて、/窓(まど)もる/月(つき)にすかして見れバ、人ひとりも 00057030M6なし。/畳(たゝミ)しきならべたれバ、/明家(あきや)でもなし。/何(なに)をとるべき 00057040M7/手比(てごろ)の(三ウ)ものもなけれバ、/背戸(せど)ぐちまでいて、ずいふ 00057050M8ろ/桶(おけ)にかたびらがうちかけて/有(あり)けるを、これなつとしてや 00057060M9らんと、かのかたびらをまくつたれバ、/中(なか)から/大(おゝ)きなこゑ 00057070M10して、/誰(だれ)じや。/蚊(か)がはいる。わるじやれしてくれな。 00057080¥N6¥J 00057090¥X/麻(あさ)につるゝよもぎ 00057100M13/弥之介(やのすけ)といふ/手下(てした)の/盗人(ぬすびと)、よこ/町(ちやう)のちいさきいゑをこゝろ 00057110M14がけ、/戸(と)をこぢはなしはいつたれバ、ていしゆ/目(め)をさまし、 00057120M15どろぼうめ。のがさじと、むづとくミつく。/盗人(ぬすひと)もこゝを 00057130M16のがれんと、たがひにしばらくくミ(四オ)あふうち、/家(いゑ)の 00057140M17/女房(によぼう)/灯(ひ)をともし、おやぢどの。にがさしやんな。/茶(ちや)でもし 00057150M18んじよかといふたれバ、/盗人(ぬすひと)も、おかさま。りよぐわいな 00057160M19がら、ついでにおれも、ひとつくだされ。 00057170¥P187 00057180¥N7¥J 00057190¥X見ぬがこゝろにくし 00057200L3/江戸(ゑど)の/堀抜井戸(ほりぬきいど)といふハ、そのふかいこと、/手桶(ておけ)でもおと 00057210L4してとりたけれバ、たとへていふならバ、/朝(あさ)くらい/内(うち)には 00057220L5いつて、あくる/日(ひ)の/昼(ひる)/時分(じぶん)でなけれバ/出(て)られぬ。それハ/貴(き) 00057230L6様がしらぬものをはめるのじや。まだけふといは、ながひ 00057240L7/鑓(やり)を見た。/八間(はちけん)も/十間(じつけん)もあろかい。(四ウ)/鞘(さや)ハ/雲(くも)にかくれ 00057250L8て見へなんだ。/何(なに)をつくのじやしらぬ。それハうそつくの 00057260¥G 00057270M1じや。 00057280¥N8¥J 00057290¥Xこゝろこそ心 00057300M4/地獄(ぢごく)の/図(づ)のかけものかけ、/弁(べん)にまかせてしやべツているを、 00057310M5つりひげのやつこが/聞(きひ)て、/何(なに)さ、とろくさい。/御坊(おぼん)。/何(なに)と 00057320M6/唐人(とうじん)や/天竺(てんぢく)の人ハ、ぢごくへおち/申(もう)さぬか。それハどこで 00057330M7も/人(ひと)のこゝろのもちようしだいでござる。そんなら/此(この)やう 00057340M8なばかな/絵(ゑ)ハ、ぶちやぶつてしまいめされ。せめさせるや 00057350M9つらハ/唐人(からじん)で、せめられるものハ/日本人(にほんじん)ばかりか。(五ノ八 00057360M10オ) 00057370¥N9¥J 00057380¥Xさる/知恵(ちゑ) 00057390M13大きな/章魚(たこ)が/磯(いそ)にあがり、たわひもなふねていたを、さる 00057400M14が見つけて、やにはに/木(き)からする+とをり、/足(あし)/一本(いつほん)ふつ 00057410M15つりと/切(きり)、もとの/木末(こすへ)にあがりてくらいける。/章魚(たこ)/大(おゝ)きに 00057420M16はらを/立(たて)、おのれ、だまして/海(うミ)へつれてゆかんと、/気(き)げん 00057430M17よきていで、どうびんてうなづき、/手(て)をあげてまねいたれ 00057440M18バ、さる、かぶりふり、いや+、その/手(て)ハくはぬ。 00057450¥P188 00057460¥N10¥J 00057470¥X/武士(ものゝふ)のやばせ 00057480L3おさむらい/壱人(ひとり)のりかけて、/粟津(あハづ)の/松原(まつバら)をと(五ノ八ウ)(九 00057490L4オ挿絵)おり、まごよ。かねひらの/塚(つか)へつれていけ。/身(ミ)か/先= 00057500L5祖(せん=ぞ)じやによつて、/拝(はい)してゆかねバならぬと、/石塔(せきとう)へまいり、 00057510L6おしうつむきおがまる/所(ところ)に、どろ+としんどうがした。 00057520L7/何(なに)とまご。ふしぎじやないか。身が/信(しん)がとゞいて、/今(いま)のご 00057530L8とくにしんどうしたと、/自慢(じまん)たら※、/瀬田(せた)のもち屋まで 00057540L9きてやすまれける。もち屋の/小(こ)めろ、けふといかほして、 00057550L10もしおさむらい様。/今(いま)の/地震(ぢしん)に、どこでおあいなされまし 00057560L11た。 00057570¥N11¥J 00057580¥Xはづかしのもりて 00057590L14かせぎ/出(だ)して/家(いへ)をもとめ、/東山(ひかしやま)で/町(ちやう)ぶるまいし(九ウ)/し((し衍))て 00057600L15/其後(そののち)/魚屋(うをや)にかねわたすとき、/書(かき)つけを見て/大(おゝ)きにきもをつ 00057610L16ぶし、これうをや。/此(この)やきものゝ小/鯛(たい)十/枚(まい)で三十/匁(め)とハけ 00057620L17ふとい。/半分(はんぶん)ねにまけてもらわねバならぬことが/有(ある)。/何(なに) 00057630L18/仰(おゝせ)られます。/一夜塩(いちやじほ)の/揃(そろい)もの、三十/匁(め)でさへそんがまいり 00057640L19ます。いやこれ△なんぼそなたがじまんしやつても、/炙(やき)もの 00057650M1ゝわるかつたしやうこがある。ミな/片身(かたミ)づゝのこつたから 00057660M2ハ。 00057670¥N12¥J 00057680¥Xたちをあらハす 00057690M5あげ屋の/亭主(ていしゆ)、/旦那寺(たんなでら)のかいミやう/書(かき)に/頼(たの)まれ、/上下(かミしも)/着(き)て 00057700M6つくゑになおつてゐる/所(ところ)へ、かいミやう(十オ)たのミまし 00057710M7よ。/道寿(どうじゆ)と/書(か)いて/下(くだ)され。さて/妙三(めうさん)と/書(かい)て/下(くだ)され。まだた 00057720M8のまれたがあるが、あれハ/何(なに)とやらいふた。はあわすれた。 00057730M9そんならこちへまかせられ。これでよい。 00057740G 00057750¥N13¥J 00057760¥Xものゝ/名(な)も/所(ところ)によりて 00057770M12ぼたもちを/振舞(ふるまい)たれバ、/客人(きやくじん)、はしとりなおし/子細(しさい)らしく、 00057780M13/此(この)もちにハいろ+の名がある。/御(ご)ぞんじか。/春(はる)ハ/黄(き)なを 00057790M14バ/菜種(なたね)、/赤(あか)ひをつくし、/夏(なつ)ハぼたもち、/秋(あき)ハはぎのはな、 00057800M15/冬(ふゆ)ハ/雪(ゆき)つぶて、まろめるといふ/心(こゝろ)。その/外(ほか)、いもせの/中(なか)と 00057810M16ハ、となりしらずに(十ウ)ちぎる。/寺(てら)がたでハ/奉(ほう)加/帳(てう)。つ 00057820M17いた所もつかぬところもあるによつて。いつち/聞(きこ)へたのハ、 00057830M18/大坂(おゝさか)で夜ふねといふのじや。心ハの。はてとなりしらずに 00057840M19つくと。 00057850¥P189 00057860¥N14¥J 00057870¥Xぬかにうつ/鉄釘(かなくき) 00057880L3これ/兄(あに)。そなたのように、まりの/茶(ちや)の/湯(ゆ)の/十種(じじゆ)/香(かう)の/会(くわい)のと、 00057890L4/高上(かうじやう)なことに/日(ひ)をついやして、見る見まねに/家(や)うちがいた 00057900L5りすぎて、かんりやくのじせつ、/世間(せけん)ていがわるい。やめ 00057910L6にしやといはれたれバ、いやしきあまのたいなひにやどら 00057920L7せ給ふゆへと、謡を。(十一オ) 00057930¥N15¥J 00057940¥X/其末(そのすへ)の/案(あん)じおき 00057950L10あんまりねずミがあれて、/衣類(いるい)や/道具(とうぐ)をかぢる。ひとつハ 00057960L11しまつじやほどに、ねこ壱ひき、どこぞでもらふてこいと 00057970L12/家来(けらい)にいゝつけたれバ、まじりなしの/黒(くろ)ねこをつれて/来(き)た。 00057980L13/是(これ)ハむそうてわるい。かへしてこい。いやおまへが/日比(ひごろ)/御(ご) 00057990L14ていねひなによつて、くろいハよごれめが見ゑいでよかろ 00058000L15と/存(そんじ)まして、ずいふんよりどりにしてまいりました。なに 00058010L16ぬかす。くろいものハよわい。 00058020¥Y1三之終(十一ウ) 00058030¥T1軽口機嫌嚢巻之四 00058040¥N1¥J 00058050¥X/四季(しき)の/土用(どよう) 00058060M5けふハどようの/気(け)か、/頭痛(づつう)がしてどふもならぬ。ても、も 00058070M6んもうな/人(ひと)かな。/春(はる)/土用(とよう)があるものか。/六月(ろくくわつ)にこそあれ。 00058080M7むゝそなたハ/四季(しき)のどようをしらぬか。/春(はる)でもどようが 00058090M8ごさる。いや/六月(ろくぐわつ)の/外(ほか)ハないと、こハだかにせりあいけ 00058100M9るを/亭主(ていしゆ)きのどくにおもひ、あるかないかハこれでしれる 00058110M10と、こよみをつき/出(だ)した。かたいぢもの、こよみを見れバ 00058120M11/四季(しき)にある。ぬからぬかほで、はんれやれ。/何(なに)事もむかしじ 00058130M12やの。/是(これ)も/今(いま)の/地頭(ぢとう)どのゝ(一オ)さいくじやあろ。 00058140¥N2¥J 00058150¥Xいにしへの/八重桜(やゑさくら) 00058160M15/奈良(なら)から/京(きやう)へのぼつた/人(ひと)、/三条(さんてう)のはしづめに/宿(やど)をとりける。 00058170M16これいなかしゆ。すいふろがよい。いらしやれと、/内義(ないぎ) 00058180M17がいはれたれバ、ならの/人(ひと)、おれをいなかしゆにしたが、 00058190M18むねんなとやおもわれけん、すいふろのうちにて、/奈良(なら)の 00058200M19いなかを/立出(たちいで)てと、うたわれた。 00058210¥P190 00058220¥N3¥J 00058230¥X/栴檀(せんだん)ハ/二葉(ふたば)より 00058240L3やんごとなき/御方(おんかた)に/御普請(ごふしん)あり。あさ/御寐所(こしんしよ)を/出給(いでたま)ひて、 00058250L4/御(ご)ふしん/場(は)へおもしろそふに/土(つち)をはこぶを/御(ご)覧(一ウ)じて、 00058260L5/我(われ)もなぐさ/ミ((み衍))みに/土(つち)をはこびたいと/仰(あふせ)ある。/家老(からう)どのきか 00058270L6れて、/御養性(ごようじやう)のすじにもなるべきことゝて、おこゝろまか 00058280L7せになりて、ほうかぶり、いやしきすがたにかはりて、つ 00058290L8ちすこしばかりになひ、日ようと打まじり、むら+と/御= 00058300L9入(おん=いり)あるを、ふしん/奉行(ふきやう)、ひとり+/名(な)をとふて/帳(てう)にとめる。 00058310L10/此御方(このおんかた)の/番(ばん)になり、/名(な)ハ/何(なに)といふぞと/問(とハ)れて、とうわくな 00058320L11され、この/一荷(いつか)ハ/持人(もちびと)しらすと/書(かい)て/給(たま)はれ。 00058330¥N4¥J 00058340¥Xねこにからざけ 00058350L14ちいさいまくら/屏風(へうぶ)をはり、/近所(きんじよ)のゑかきの/所(ところ)へ(二オ)/持(もち) 00058360L15て/行(ゆき)、ちか/比(ころ)/御無心(ごむしん)ながら、/是(これ)に/鯨(くしら)をかいて/下(くだ)されといふ。 00058370L16此ちいさいべうぶに、くじらハできまい。/草花(くさはな)か/春(はる)の/野(の)か 00058380L17などのるいが、しほらしうてよかろ。いや+/鯨(くじら)をたの 00058390L18むにハ/存(そんじ)よりがござる。/大(おゝ)きうて/書(かき)にくゝバ、かい/二三分(にさんふん) 00058400L19がを/書(かい)てくだされ。 00058410¥G 00058420¥N5¥J 00058430¥X/女(おんな)さかしくて 00058440M14ぼんめがけふの/清書(きよがき)ハよう/出来(でき)た。さらバ見せて/来(こ)ふと、 00058450M15ねんごろあひへくわいちうしてもて/行(ゆき)、/久(ひさ)しうおめにかゝ 00058460M16りませぬ。どうでこうでのあいさつで、ふところへ/手(て)をい 00058470M17れたれバ、はしり/過(すぎ)たお/内義(ないぎ)(二ウ)(三オ挿絵)で、これハまあ 00058480M18+おいでなされますたび+おミやを。いやこちのぼん 00058490M19めが、けふの/清書(きよかき)です。見て/下(くだ)されとだしたれバ、/内義(ないぎ)も 00058500¥P191 00058510L1/手(て)もちあしくて/言葉(ことば)なく、はあゝ。 00058520¥N6¥J 00058530¥X人のことハ/目(め)に 00058540L4/途中(とちう)でさきへ/行人(ゆくひと)のわきざしの/反(そり)がかへつてあるを見つけ、 00058550L5しらずにいらるゝそふなと、そばへより、もし、おまへの 00058560L6わきざしのそりが/返(かへ)つてござる。なおさしやれといふたれ 00058570L7バ、礼をもいはず、へゑかぜで。 00058580¥N7¥J 00058590¥Xさもしの/人心(ひとこゝろ) 00058600L10/阿蘭陀(おらんた)人ハきぬの/切(き)れをこしにつけて、/鼻(はな)をかむ。いか 00058610L11(三ウ)さまよいしまつじやと、もめんの/切(き)れではなをかむ 00058620L12しハんぼどの。かゝ。/此中(このちう)ハいこふはながくさゝに/風気(かざけ)か 00058630L13と、いしや/衆(しゆ)に見てもらふたら、/何(な)ンでもないといわれた 00058640L14けれど、/気味(きミ)がわるい。お/内義(ないき)/聞(きか)れて、ゑゝそれハ/此中(このちう)、 00058650L15/鼻紙(はなかミ)せんだくせぬさかい。 00058660¥N8¥J 00058670¥Xゆめあわせ 00058680L18/貧(ひん)なたびやあり。/朝(あさ)とく/起(おき)て、さて+うれしや。けつか 00058690L19うな/夢(ゆめ)を見た。おつつけ、りつしんするであろと、にわか 00058700M1に/神(かミ)の/棚(たな)へとうミやうあげ、/神酒(ミき)をそなへておがまるゝ。 00058710M2/内義(ないぎ)ふしぎにおもひ、/何(なに)ごとで、そのようにお(四オ)がま 00058720M3しやる。人にいやんな。よんべ、あふミの/三上山(ミかミやま)を/夢(ゆめ)に見 00058730M4たによつて。それがなんでござる。はつてさて/三上山(ミかミやま)はみ 00058740M5な人が、むかで/山(やま)といふじやないか。むかでとハ/百足(ひやくあし)と/書(かく) 00058750M6によつて、あしがおゝふなれバ、こちのはんじやうじやハ 00058760M7さて。 00058770¥N9¥J 00058780¥X/芸(げい)あらそひ 00058790M10/貴様(きさま)が/兵法(へうほう)+とじまんめされても、これこの/相撲取(すまいとり)のうで 00058800M11ふしにハなるまい。いや+、すまいと/兵法(へいほう)と/一口(ひとくち)にはいは 00058810M12れぬ。それハ/勝負(しやうぶ)をしてみねバしれぬことじやと、いゝぶ 00058820M13んになり、すまひとりもいゝかゝつて、その/分(ぶん)にもすまず。 00058830M14いざといふやいなや、/兵法(へうほう)つかいを(四ウ)ひツとらへ、/目(め) 00058840M15より/高(たか)くさしあげ、さあ見へたか。いかな+/兵法(へうほう)ハこゝ 00058850M16じや。なげなりともどう/成共(なりとも)めされ。/手(て)のはなれるがあひ 00058860M17づで、ころりとやることじやといゝけれバ、なげられもお 00058870M18ろされもせず、とほうにくれ、やあい/出(で)あへ+。/人(ひと)ご 00058880M19ろし+。 00058890¥P192 00058900¥G 00058910¥N10¥J 00058920¥Xしらずハとへ 00058930L14うづらをこのむ/人(ひと)ありて、/三(さん)十/羽(は)あまりもかふて/棚(たな)になら 00058940L15べておかれたを、うづらのさへづり、ついに/聞(きい)たこともな 00058950L16き/人(ひと)が/来(き)られ、さて+/大(だい)ふんのうづらかな。どれにおろ 00058960L17かハなけれど、あの/三番(さんばん)め(五ノ八オ)のうづらがよい鳥じ 00058970L18やと、すいがましくやられた。これハ貴様もうづらの/目利(めきゝ) 00058980L19がなるそふなと、すきの友とて酒などもてなしている所へ、 00058990M1たなから/鶉(うつら)が、ちゝくわいとさへづゝたれバ、客人きもを 00059000M2つぶし、今のハなんです。 00059010¥N11¥J 00059020¥X/風流(ふうりう)の/料理(れうり)すき 00059030M5/極暑(こくしよ)のじぶん、ふるまいありて、いろ+のすいものが出 00059040M6たうへ、いかにもていねひな/吸物(すいもの)わんで、/亭主(ていしゆ)も酒もりい 00059050M7で、いざ、おすいなされませとふたをとつたれバ、/中(なか)にハ 00059060M8何もなくて、風がばつと/立(たつ)た/斗(はかり)なり。(五ノ八ウ)(九オ挿絵)/是(これ) 00059070M9ハめづらしい。/今日(こんにち)のしよきに/風(かぜ)のおすいものとハどうも 00059080M10/申(もう)されぬ。とてものことに、/此料理(このりようり)かたをおしへてたべと、 00059090M11よぎなくいはれて、ちか/比(ごろ)/大事(だいし)の/伝受(てんじゆ)にて候へどおしへ申 00059100M12べしと、しさいらしく、すいものやがて/出(だ)そふとおもふと 00059110M13き、わんのふた/少(すこし)あけかけ、/火吹竹(ひふきたけ)でおよそ/七吹(なゝふき)ほど/吹(ふき)こ 00059120M14む。/七(なゝ)ふき/半(はん)ハ/過(すぎ)るくらいでござる。/八吹(やふき)ともふけバ、ふ 00059130M15たがふわ++して、/風(かぜ)がミなこぼれます。 00059140¥N12¥J 00059150¥Xしりも/結(むす)ばぬ/糸(いと) 00059160M18/身(ミ)ハ/急(きう)な/飛脚(ひきやく)じやと、/十文(じうもん)もりかきこんで、あたへ(九ウ) 00059170M19をはらひ、かたなをわすれて、といと/出(で)てゆかれた。/往還(わうくわん) 00059180¥P193 00059190L1にすむ/茶(ちや)やのかゝ、にせざむらいと見てとつて、どうでと 00059200L2りにわせるであろ。なぶつてやりませふと、かくしておい 00059210L3た。しばらくしてまつくろになりたちかへり、/侍(さむらい)かたぎで 00059220L4/麁相(そさう)したともいはれず、/横平(わうへい)に、これ+おかた。/爰(こゝ)に/身(ミ)が 00059230L5かたなをおいたが。いやござらなんだ。はてこゝにおい 00059240L6たにちがひがない。でもなかつたもの。はつてさて此か 00059250L7ゝハ/性根(しやうね)のない、/大(たい)事のたましいを。 00059260¥N13¥J 00059270¥X/大(たい)ハ/小(せう)をかなへる 00059280L10/大仏(だいぶつ)のしやかによらい、さがのおしやか様へお/出(いで)あつて、 00059290L11(十オ)/此(この)たひの/開帳(かいちやう)ハおしあわせもよかつたと/承(うけたまハつ)た。/近= 00059300L12比(ちか=ごろ)/御(ご)無/心(しん)ながら、かして/下(くだ)されとありけれバ、/仏(ほとけ)ハあいた 00059310L13がいのことなれど、/過分(くわぶん)なことハなるまひ。/爰(こゝ)に/銭(ぜに)が五十 00059320L14/〆(くわん)有。これで/大事(たいじ)なくバと、わき/立(だち)のらかん/立(たち)に/仰(おゝせ)ありて、 00059330L15ゑいやつとはこびたまふを、/大(だい)ぶつのしやかによらい、こ 00059340L16れハかたじけないと、/前(まへ)ぎんちやくへ/入(い)れ、こしにつけて 00059350L17こそ+。 00059360¥N14¥J 00059370¥X/対(つい)あるもの 00059380M1/小僧(こぞう)よ。又これハゑびす/膳(ぜん)じや。なんぼいふても/性根(しやうね)のな 00059390M2い。こりやこふなをすものじやと、とりなをされた(十ウ) 00059400M3れバ、/和尚(おしやう)様。それハわしもしつておりますれど、/大(だい)こく 00059410M4/様(さま)とならんでごさるさかい。 00059420¥N15¥J 00059430¥Xやミハあやなし 00059440M7きかぬ/気(き)なおさむらい、ふろから/出(で)て、身があたまをふん 00059450M8だやつがある。/吟味(きんミ)せねバならぬとわめかるゝ。ゆやのて 00059460M9いしゆ、きのどくながら、みな/出(で)てくださりませと、ひと 00059470M10り+おさむらいにミせても、ふろのうちハくらがりなれ 00059480M11バ、どれがあしともしれず。あれでもない、これでもない 00059490M12といふうち、もうミなだしまして、ひとりもござりませぬ。 00059500M13しからバふろののミぐちぬいて、いかきをあてゝ見よ。(十 00059510M14一オ) 00059520¥N16¥J 00059530¥X/正直(しやうぢき)のかくれ/里(ざと) 00059540M17/朝夕(あさゆふ)/神棚(かミのたな)に/燈明(とうミやう)かゝげ、りよくをねがふ/親仁(おやぢ)どの、あると 00059550M18き/神(かミ)だなをそうぢするとて、/神(かミ)たなのかべにあなの/明(あき)たる 00059560M19を見つけ、/是(これ)ハ大こくどのゝかくれざとじやと、ずつと/穴(あな) 00059570¥P194 00059580L1へ/手(て)をやつたれバ、/何(なに)やらやハ+としたものあり。そつ 00059590L2と/引(ひき)だしたれハ、しゆすの/女(おんな)おひ。かゝ。おれが/正直(しやうしき)なに 00059600L3よつて、かくれ/里(ざと)からたまハつた。ありがたいことかなと 00059610L4/又(また)/手(て)をやつたれバ、/地紅(ぢべに)の/子共(ことも)のかたびら。/扨(さて)も/有(あり)がたい。 00059620L5あまめにきせて/嬉(うれ)しがらそと、/又(また)/手(て)をやつてさぐつて/居(い)る 00059630L6/所(ところ)へ、となりから/手代(てだい)が/来(き)て、これ+おやぢ/殿(との)。(十一ウ) 00059640L7見つけたぞ+。こちのいかうの/物(もの)を、なぜとりやる。 00059650¥N17¥J 00059660¥X/富貴(ふつき)の/花(はな)ざかり 00059670L10/店(たな)おろしもしゆびよく、/金銀銭(きんぎんぜに)をつミかさね、/一盃(いつはい)きげん 00059680L11にうつら+ねむるともなくきけバ、小判かいふにハ、/世(よ) 00059690L12に/重宝(ちやうほう)の/第一(たいいち)とよバれ、いやしきものゝ/手(て)にいらず。せが 00059700L13れの/壱歩(いちぶ)ハ/大臣(たいじん)のふところにいだかれたハよけれど、こり 00059710L14やはづむぞとなげらるゝときハ、いたかろふとおもふてき 00059720L15のどくな。それハこの/丁銀(ちやうぎん)めもおなじおもひがござる。子 00059730L16どもらが/布施(ふせ)につゝまれて、お/寺様(てらさま)にひねらるゝを見てハ、 00059740L17なミだ(十二オ)がこぼれて、かわゆふござる。/銭(せに)どのがい 00059750L18つち/気(き)さんじな。いやなふ、わしほどひまのないものハご 00059760L19ざらぬ。よるもひるも/喰(くい)くちがおゝふて、たゞ/居(い)をしませ 00059770M1ぬ。さりながら、うれしいことハ、ちかひころからつぶし 00059780M2どもがはね/出(た)されて、ちとかたらくになりましたと、/目出= 00059790M3度(めで=たき)ゆめハさめにけり。/千秋万歳楽(せんしうはんせいらく)。 00059800¥Q 00059810M6享保十三年申正月吉日 00059820M7△△△△△△△京衣棚御池下ル町 00059830M8△△△書△林△△△△万屋作右衛門板(十二ウ) 00059840¥P195 00059850¥G(一オ) 00059860¥G(一ウ) 00059870¥G(二オ) 00059880¥P196 00059890¥G(二ウ) 00059900¥G(三オ) 00059910¥G(三ウ) 00059920¥G(四オ) 00059930¥P197 00059940¥G(四ウ) 00059950¥G(五オ) 00059960¥G(五ウ) 00059970¥G(六ノ十オ) 00059980¥P198 00059990¥G(六ノ十ウ) 00060000¥G(十一オ) 00060010¥G(十一ウ) 00060020¥G(十二オ) 00060030¥P199 00060040¥G(十二ウ) 00060050¥Q 00060060¥P200 00060070¥U噺本大系△第七巻 00060080¥T座狂はなし 00060090¥G 00060100¥Y 00060110L15享保十五年刊 00060120L16環仲仙い三作 00060130L17半紙本三巻 00060140L18東大国語研究室蔵(上巻) 00060150L19都立中央図書館加賀文庫蔵(中・下巻) 00060160¥T1座狂はなし△上之巻 00060170¥N1¥J 00060180¥X/紅葉(もミぢ)がり 00060190M5/嶋原(しまバら)/住吉(すミよし)まつりに、紅葉がりをねり物にいたしけるが、あ 00060200M6る人申けるは、嶋原もこれよりハ/別(べつ)してにぎおふべしとい 00060210M7ふ。そばなる人、いかなれバ、さは申さるゝやと云ければ、 00060220M8はて、色のミなかミにて紅葉がりとハ、色をかる人/盛(さか)んな 00060230M9るべしといふ。そばなる人、いや、さにあらず。弥嶋原 00060240M10ふはんじやうのさうと思ハるゝ。なぜにの。はてさて、 00060250M11G是もち少もさハかん。(一オ) 00060260¥N2¥J 00060270¥X/全盛(せんせい)の太夫 00060280M14嶋原にて、名に/逢(あ)ふ此花とよバれし梅がえさまとて、とぶ 00060290M15鳥も/落(おつ)るばかり全盛の太夫有けるに、/古金(こきん)らんのたばこ入 00060300M16をこしらへけるに、ある/太皷(たいこ)是を見て、すてゝも廿両道具 00060310M17なれバもらひかけん。よも時めく太夫さまなれバ、をしく 00060320M18共いやとハいわれまいと思ひ、太夫さま、御たばこ入を下 00060330M19さりませと云ければ、太夫、何とか思ひけん、ちやつと、 00060340¥P201 00060350L1かほをふところへ入けり。太皷是を見て、太夫さま。そ 00060360L2れは(一ウ)手がわるいと、ゑりをとらへて引あけゝれハ、 00060370L3太夫、ふところの内にて、べかこして。 00060380¥N3¥J 00060390¥X右や左り 00060400L6去/田舎(いなか)の/歴(れき)&人、京にのほり、四条通りを東へ/向(むけ)、通られ 00060410L7けり。東よりめくらのこつぢき、右や左りのお長者さま、 00060420L8一銭とらして下さりませと来りしが、かの人、こしより銭 00060430L9一せん取出し、目くらの左りの方へ出しけり。目くら、有 00060440L10かたふござりますと、右の方へ手を出しけるが、かの人、 00060450L11おふやうな(二オ)るかほして、長者ハ左りにある。 00060460¥N4¥J 00060470¥Xかごかきの二/役(やく) 00060480L14/至極(しごく)こまかき/大臣(だいしん)、大津へ行、京へ帰るとて大津八町より 00060490L15かごに/乗(のり)り帰られしが、かごの内より咄しをしかけ、さて、 00060500L16きのふ乗りしかごかきハ、さて+よひかごかきにて、や 00060510L17つこ茶屋にてかごを立、酒を/調(とゝの)へ、おれにふるまい、手ま 00060520L18へものミ、其上かごもかへず、大津屋敷まで送り、百文に 00060530L19てかご代/極(きハ)めけるに、八拾文にまけますと、十六文ぬき返 00060540M1し帰りたりと、咄(二ウ)ければ、かごかきふたりながら、 00060550M2高いひきを、かフかフ。 00060560¥N5¥J 00060570¥X三国のミあひ 00060580M5江戸の者と大坂の者と京のものとよりあひしが、大坂のも 00060590M6のいわく、をそらくハ大坂ほどのミ手の有所はござるまい。 00060600M7さだめし聞及び給ハん、/浮無瀬(うかむせ)といふ七合五夕入る/盃(さかづき)で、 00060610M8十ぱいのんだ者はいくたりもあると云ければ、江戸のもの、 00060620M9こゝはまけまいと思ひ、お申しやるな。それハ呑といふも 00060630M10のでハおりない。江戸でハ/居風呂桶(すへふろおけ)で呑申(三オ)と云けれ 00060640M11ば、京の者いわく、それものむと云ものてハござらぬ。お 00060650M12れハきのふ/八幡(やハた)へまいりましたが、あの大きなふねでのん 00060660M13だ。 00060670¥N6¥J 00060680¥X/医者(いしや)の立ふるまひ 00060690M16有所に病人ありて、大医の/抜田(ぬきだ)/頓庵(どんあん)殿をよびけり。頓庵来 00060700M17られ、病人の床ちかく座し、先医者の立ふるまひ、何れと 00060710M18ても羽おりのすそを両手にてぴんと/後(うしろ)へはね、さて/脉(ミやく)をミ 00060720M19るまへの手つき/定(さたま)りたる事にて、もミ手をし(三ウ)て居ら 00060730¥P202 00060740L1れけるに、蝿一ひき来り、/膝(ひさ)のうゑにとまりけれハ、頓庵 00060750L2しばらく此蝿のしよさをミて、もつての外にきしよくし、 00060760L3Gあい口にそりを打て、うぬめ、すいさん。りよぐ 00060770L4ハい物めがと、蝿をにらまれけれバ、病人きもを 00060780L5つぶし、何ンでござりますと云ければ、此はいめが、 00060790L6ちいさいなりをして、わたくしがまねをしおります。蝿も 00060800L7はね、うしろへぴんとはねて、両手にてかほをなでゝ、手 00060810L8をもむゆへに。(四オ) 00060820¥N7¥J 00060830¥X/葬礼(そうれい)そこぬけ 00060840L11/貧(ひん)/成(なる)者の女房/死(しに)けれバ、/相借屋(あいじやくや)のとゝなどより/集(あつま)り、/用= 00060850L12布(よう=ぬの)を/経帷子(きやうかたびら)にして/着(き)せ、ひたいにごましほをくゝり付、は 00060860L13や/桶(おけ)の中へ入、相借屋のとゝ/二人(ふたり)して、其夜寺へかいて行 00060870L14しが、/麁相(そさう)なる/早桶(はやおけ)なれば、/底(そこ)がぬけて死人ハ下へをちけ 00060880L15るに、それをもしらで、二人ハから桶をかいて行けり。こ 00060890L16のをとし置たる町の/番太(ばんた)、/初夜(しよや)の/太皷(たいこ)を打て/廻(まハ)りしが、何 00060900L17やら白い物がつくバふているがと思ひ、(四ウ)そばへ行て 00060910L18/透(すかし)て見れバ、是ハがつてんのゆかぬものじやがと、太皷の 00060920L19ぶちていらふて見れバ、木のやうなれバ、扨もきつうひへ 00060930M1るそうな。ゆうれいがいてついた。 00060940¥N8¥J 00060950¥X/節用集(せつようしう)/講釈(こうしやく) 00060960M4都にて節用集と云物の本をかふてきたりしが、/調法(てうハう)成物と 00060970M5ハ聞たれども、一/字(じ)もよめざれバ、/惣堂(そうとう)の坊様へ持行、一 00060980M6&/問(とい)けるハ、此/橋(はし)の上から長い物を持て、二人して下をさ 00060990M7がしているハ何ぞととふ。坊様のいわ(五オ)く、是ハあま 00061000M8のうきはしより、青うなばらをさがしたまひし/天(あま)のしやち 00061010M9ほこといふ物じや。 00061020¥N9¥J 00061030¥X医者殿御礼 00061040M12物いわひする人の所へ、元日早&に/福森(ふくもり)/家入(かにう)といふいしや、 00061050M13礼にゆかれけるが、乗物先へ行、/若党(わかとう)/走(はし)り入、福森家入御 00061060M14礼申上ますると云入けれハ、/亭主(ていしゆ)、福森と聞より/飛(とん)で出テ、 00061070M15家入様ハと云けれハ、若党せいて、もふ旦那ハ、とを/過(すき)ゆ 00061080M16かれました。 00061090¥N10¥J 00061100¥X/大磯(おほいそ)のたびね(五ウ) 00061110M19旅人、道中の大磯にとまりけるに、いとおかしげなる女壱 00061120¥P203 00061130L1人、しやくに出けり。たび人たわむれて、名をといけれは、 00061140L2とらと申やんすと云。たび人聞て、大いそにとらとハおも 00061150L3しろし。むかしも此所に、とらといひし名とりがあつたと 00061160L4聞たがと云けれハ、此女云やう、いかさま、ふしぎな事て 00061170L5ござんす。此所にハむかしから、/美(び)人がひとりづゝハたゑ 00061180L6ませぬ。 00061190¥N11¥J 00061200¥X/味噌桶(ミそおけ)のまじなひ 00061210L9ミそ桶の古いを/買(かふ)てきて、せつちん/壷(つぼ)の替り(六オ)にしけ 00061220L10るが、何たる事にや、うらへいても+いられず、なんぎ 00061230L11していける所へ、山ぶし来りけれバ、よい所へござつた。 00061240L12此中せつちんを/建(たて)なをし、ミそ桶の古きをうめけるゆへか、 00061250L13すきといられず。是にハどうぞましないがござらぬか。山 00061260L14ぶし聞て、いかにも、まじないがござるとも。何の事ハな 00061270L15い。みそおけ+と三べんとなへさしやれ。ゆるりといら 00061280L16れませふ。それは心やすい事也とて、すぐに/雪隠(せついん)へはしり、 00061290L17ミそ桶+と三べんとなへけれバ、心よくいられけり。亭 00061300L18主(六ウ)せつちんより出、扨+まじなひといふものハ、 00061310L19あらそはれぬものでござる。とてもの事に、まじないの心 00061320M1がうけ給ハりたいと云けれバ、はて、何の事もない。ミそ 00061330M2桶を三へんとなへハ、三三の九そおけじや。まだはなしが出る。 00061340¥N12¥J 00061350¥X出るまゝ 00061360M5久九郎といふ男、五条のはしにて丹六に/逢(あい)、是は久しい。 00061370M6何と、こほり町の/豆(まめ)助ハまめなかの。丹六されバかわい事 00061380M7よ。つまこをのこして、夕部/死(しん)でのけた。久九郎、きもをつ 00061390M8ぶし、さて+、久しいなじミで有た(七オ)ものを。/泪(なミた)か 00061400M9ら※わかれけり。丹六は、死もせぬものを、つい死たと 00061410M10いふてのけて、ひよんな事をいふたと思ひ、すぐに豆介が 00061420M11所へ行、けふ五条のはしにて久九郎にあふたが、わがミの 00061430M12事をとうたによつて、ひよつと口がすべつて、わがミハ夕 00061440M13部死にやつたといふてのけた。てつきり爰へとむらいにか 00061450M14ふほどに、あやつたら、其口あハしてたも。 00061460¥N13¥J 00061470¥X大だこの/料理(りやうり) 00061480M17あごとゝのふる/網(あミ)ぶねの、ゑいや+と引あげゝれば、 00061490M18(七ウ)一間四方ほどある大/蛸(たこ)、あミの中につふりふり立い 00061500M19たり。是ハすざましいわと、やがてひきづり出し、/車(くるま)にの 00061510¥P204 00061520L1せ、引キ帰り、さてゆでるだんに成、/鍋(なへ)へも/釜(かま)へもはいら 00061530L2ず。壱人/智恵(ちゑ)のかわをむいて、すへふろ桶へ入てゆでよと 00061540L3いふ。是ハちへかな+とて、居風呂桶へ入て、日なかほ 00061550L4どゆでけるが、もはやゆだるじぶんぞと、ふたを取て見け 00061560L5れバ、たこ、つふりをずつと出し、ゆかた、もつてこい。 00061570¥Y1座狂咄上の終(八オ) 00061580¥T1座狂はなし△中之巻 00061590¥N1¥J 00061600¥X/蛇(へび)の/巣(す)ごもり 00061610M5ある人問けるハ、あの蛇ハ春ハ/穴(あな)を出て冬ハ穴の中に居る 00061620M6が、あれハ先長の冬中、何をくふて居る事ぞととふ。はな 00061630M7してきかせふけれども、そなたは根どいをしやるによつて、 00061640M8はなされぬ。根どいをしよまいほどに、はなしてたも。し 00061650M9からバ咄してきかしやう。冬の中ハ穴の中にまるう成てゐ 00061660M10て、ひだるう成と、をのれがからだをそろ+と、/尾(お)から 00061670M11くふ。だん+(一オ)とくふて、のちにハくび斗に成と、 00061680M12ひよいととびついてくふ。それハどふとびつくぞ。それ、 00061690M13その根どひじやによつて。 00061700¥N2¥J 00061710¥X/今羅生門(いまらしやうもん) 00061720M16/東寺(とうじ)の羅生門に、夜な+ばけ物が出る。見て来たと云。 00061730M17それハいか様なばけ物ぞとといけれバ、大入道がさばきか 00061740M18ミして出ると、ひよいとうそつきはなしけれバ、はて、わ 00061750M19けもない。坊主がどふさバきがミが成物じや。そのならぬ 00061760¥P205 00061770L1所をするが、ばけ物じや。(一ウ) 00061780¥N3¥J 00061790¥X三人の/僣上(せんしやう) 00061800L4僣上もの三人、東山へ行しが、夕/食(めし)の/膳(ぜん)あがると其/侭(まゝ)、を 00061810L5れハいなねバならぬといふ。なにゆへぞと云ければ、きの 00061820L6ふけふ、嶋原に太夫を五六人あげて置た。太皷どもをつれ 00061830L7ておさねバならぬ。壱人がいわく、ほんに、をれもいなね 00061840L8バならぬ。/祇園(きおん)町の/文字(もんじ)が所て、白人二三十人と子共十人 00061850L9ばかり、/昼夜(ちうや)をして置たといふ。今壱人、ほんにそれよ。 00061860L10おれも用が有といふて立けるが、壱人がいふやう、なんと、 00061870L11帰り道じやに、文(二オ)字が方へおじやらぬか。いや、明 00061880L12日ハ出入したものゝめい日じやによつて、今夜ハ本国寺の 00061890L13僧正をよんで、かんきんさする。 00061900¥N4¥J 00061910¥X/狐(きつね)の/子飼(こがい) 00061920L16子がいの狐がおどると聞たによつて見たさに来た。をどら 00061930L17して見せさしやれ。亭主聞て、あづき食を/焼(たい)てくわさねバ 00061940L18/踊(おど)らぬゆへ、大分/造作(ぞうさ)にござる。/客(きやく)聞て、はる+来まし 00061950L19たに、どふぞ踊らして見せて下され。亭主聞て、八介。太 00061960M1義ながら、あづきめしを(二ウ)焼きやらぬか。八介聞て、 00061970M2もうよしになされませ。いまから焼ましたら、よなかに成 00061980M3ましやう。もう今夜はよしになされませと云けれハ、狐、 00061990M4/障子(せうし)のあちらから、八介。ちやづけてかんにんしやう。 00062000¥N5¥J 00062010¥Xむすこの/紅(もミ)うら 00062020M7/参会(さんくハい)に/宿老(しゆくらう)申されけるハ、今のわかい衆ハ紅裏をつけるが、 00062030M8女のくさつたやうな事でござる。どこまてをごる事やらと 00062040M9いわれしが、其中ニあるむすこ、もミうらを/着(き)ていたりし 00062050M10か、/耳(ミヽ)こそばく罷出、私も着て(三オ)ゐまするが、是ハあ 00062060M11ながち、をごりでも/伊達(たて)にも着ませぬ。はだの薬でござり 00062070M12ます。宿老聞て、薬ならバなぜ又、はだに白いじばんを着 00062080M13ていさしやる。むすこがいわく、いゑ、此ぢばんハ紅の薬 00062090M14でござります。 00062100¥N6¥J 00062110¥X鬼の二人つれ 00062120M17丹波の大江山の/鬼(おに)、節分の夜、たつた/鰯(いはし)のあたま一つの事 00062130M18で、/柊(ひいらぎ)て目をついてのけて、手引に手を引れて、室町のお 00062140M19びやへ目薬/買(かい)に行かふと思ひ、山ごへに一条通りへ出、う 00062150¥P206 00062160L1か+と東へさいて行けるが、手を(三ウ)ひかれゐる鬼、 00062170L2手引の鬼に、こゝハどこ通りじや。一条通りでござる。目 00062180L3くら鬼、南無/三宝(さんほう)。こふハ行れぬ。なぜにでござる。はて、 00062190L4/戻(もと)り/橋(ばし)ハ不用心な。 00062200¥N7¥J 00062210¥X/曽(そ)ろり 00062220L7/太閤(たいかう)の御前に、そろりと申者出申候が、たゞよく人をのせ 00062230L8る事が上手にて候といふ。それよべとの御意にて、そろり、 00062240L9御前に畏る。太閤仰けるハ、よく人をのせるげなが、此太 00062250L10閤ものせるか。御/勿躰(もつたい)ない。将軍様がどふのせられまする 00062260L11物でござりまする。(四オ)太閤ハ、そふであらふさ。此太 00062270L12閤斗ハよふのせまいさ。そろりはや、ちつくりとおのりか 00062280L13ゝりなされた。 00062290¥N8¥J 00062300¥X/谷汲(たにくミ)かいちやう 00062310L16/美濃(ミの)のたにぐミ、八坂の/庚申堂(かうしんとう)にて/開帳(かいてう)有けるが、田舎衆、 00062320L17是へ参らんと、しるたにより八坂の/塔(とう)のまへゑ出、とうの 00062330L18まへにて、まんぢうを一つかいしが、名をしらざりけれハ、 00062340L19一口くふてから左の手に持、是ハ何でござるととふ。それ 00062350M1ハ八坂のとうてござる。此中なハ、何でござる。其中なハ、 00062360M2ミろくぼさつでござる。(四ウ)そとな八坂のとうより、中 00062370M3なミろくがうまい。 00062380¥N9¥J 00062390¥X/這出(はいで)の狐つき 00062400M6はいでのでつちに狐つき、いのりきとうにて、やう+お 00062410M7ちけるが、どうやらうつかりひよんとしければ、旦那はら 00062420M8を立、をのれハ狐がついてから、いかいあほうに成をつた。 00062430M9狐まどよりによつとくびを出し、ありや、もとからじや。 00062440¥N10¥J 00062450¥Xかち荷持 00062460M12かち荷もち、木屋より有所へ木を持て行ける(五オ)に、旦 00062470M13那出て、それ、目をまハさせて請取と云けれハ、木持、う 00062480M14んと云てふんぞりかへりけり。旦那きもをつぶし、それ水 00062490M15よ、きつけよとどしめき、とかくはやふかごにのせて木屋 00062500M16へをくれと、かごかきをやとひ来り、いくらでやるととひ 00062510M17けれバ、五百文でやりましよ。それハ高い。三百でやりや。 00062520M18木持、むく+とをきあがり、目ハとつくりと廻しました。 00062530M19請取しやれ。かごハもどりてござるほどに、おれが弐百で 00062540¥P207 00062550L1まいりましよ。(五ウ) 00062560¥N11¥J 00062570¥Xそば切の上手 00062580L4町の参会に、私がせがれハ/蕎麦(そハ)を打事が大めい人で、さあ 00062590L5打と申すれバ、方&から見物が有と云。それハいか様な事 00062600L6でござる。先/曲(きよく)打が品&ござる。/唐(もろこし)打、/大和(やまと)打、/白糸(しらいと)な 00062610L7がし、はなれうち、下すいかたのいたり打、/柳(やなぎ)の糸のミだ 00062620L8れ打、/晴嵐(せいらん)/金糸(きんし)いとすゝき、/磯(いそ)打波のまくり打なとゝ申を、 00062630L9ちと御目にかけたい。是ハたまりませぬ。いや明日、皆& 00062640L10参らふ。必御出と/約束(やくそく)し、あくる日、宿老初(六オ)め皆& 00062650L11来られけれハ、かのむすこ上下を/着(ちやく)し、十めんをつくり、 00062660L12めんほうをしやにかまへ、さて打かゝりしか、中+あか 00062670L13へたにて、こと※くぼうにとりつき、もちやらくちやら 00062680L14とらちあかず、どふやらかふやらしてはなし、又/粉(こ)を/蒔(まい)て 00062690L15/麺(めん)ぼうに/巻(まき)、一/押(おし)をして、はらりとのばしけるが、なさけ 00062700L16なや、ちぎれ+に成て、/盤(ばん)より外ゑとぶやら、ざしき内 00062710L17はそばだらけになれバ、おやぢせいて、是ハ日本の図打て 00062720L18ござります。む(六ウ)すこぬからぬかほて、あれへはなれ 00062730L19とんたが、壱/岐津嶋(きつしま)じや。 00062740¥N12¥J 00062750¥Xせかぬいろ 00062760M3嵐三右衛門がよいとて、/殊(こと)の外の大入リにて、/狂言(きやうげん)/最(さい)中に、 00062770M4事の外かんこくさいと云出し、しばらくして先キの人の紙 00062780M5子の/羽織(ハおり)、くすぼり出しけり。是ハと、もミけさんとしけ 00062790M6るを、もちつと待て下され。なぜにてござる。たばこ一ふ 00062800M7く、吸つけたい。 00062810¥N13¥J 00062820¥Xりちぎもの(七オ) 00062830M10四条寺町おたびの辻にて、田舎衆が、大津へハどつちへ行 00062840M11キまするととひけれバ、辻なるかごかき、此寺町通をまつ 00062850M12すくに上へ行当つて、右の方へ行かしやれとおしへけれハ、 00062860M13寺町を上へ向はしり、三条の北かわへ/行当(ゆきあた)りの家へはいり、 00062870M14/裏(うら)の/土蔵(とぞう)の間へはいらんとするを、やれぬす人よとさハき 00062880M15けれバ、いや、おれハ行当て、右の方から大津へ行もので 00062890M16ござる。 00062900¥Y1座狂咄中の終(七ウ) 00062910¥P208 00062920¥T1座狂はなし△下之巻 00062930¥N1¥J 00062940¥X/座頭(さとう)の七人づれ 00062950L5去所へ座頭七人来りしが、其家にわるじやれ成もの有て、 00062960L6門口によこづちをあたまのすれるほどに、能キかげんにつ 00062970L7り置しが、座頭帰るに、初め壱人より五人め迄、面&にう 00062980L8たざるかほして通りしが、六人めの座頭、こつつりと打、 00062990L9おしつけ七つであろうと云けれハ、七人めの座頭かしこく、 00063000L10七つのかしらハ、さつきになつた。(一オ) 00063010¥N2¥J 00063020¥X仏のふるまい 00063030L13五条/本覚寺(ほんがくじ)のうきあしの如来、大坂へ/開帳(かいちやう)に下られしが、 00063040L14其時分/都(ミやこ)の/名仏達(めいふつたち)より、色&の/餞別(はなむけ)/送(おく)られる。本覚寺の 00063050L15如来も、/首尾(しゆび)よく開帳も/仕舞(しまい)/登(のほ)られしかバ、はなむけの参 00063060L16りし仏達を/召寄(めしよせ)られ、御ふるまいなされける。仏たち御は 00063070L17なしの/最中(さいちう)に、/誓願寺(せいぐハんじ)の如来、是ハきつうなまぐさいとの 00063080L18たまふ。皆&、是ハいか様。仏たちの/寄合(よりあい)に、此やうにな 00063090L19まぐさいかざをさしやるハ、亭(一ウ)主の不念なりト云め 00063100M1ぐり、ミかへり本尊、のうれんをあげて、/勝手(かつて)の方をのぞ 00063110M2ひて見給へハ、/道理(どうり)こそ、/蛸薬師(たこやくし)がこたつにあたつてじや。 00063120¥N3¥J 00063130¥X/一家(いつけ)/振舞(ふるまい) 00063140M5/有徳人(うとくじん)、一家を振舞れけるに、/浄瑠璃(しやうるり)ハ国大夫、しやミせ 00063150M6んハとみ市なりしが、座敷も酒しゆミ、はや八こゑの鳥も 00063160M7つげ渡りしゆへ、客衆も立れければ、此とミ市も立けるに、 00063170M8わるじやれ成者、杖をかくし置けれバ、とミ市、置たる所 00063180M9を尋ね、(二オ)爰に置たるつゑがないとわめきけり。八介 00063190M10しやうしがり、出してやりぬ。とミ市うれしく、是ハ私が 00063200M11大事の御/所車(しよくるま)でござります。八介、心ハととひけれバ、は 00063210M12あて、うしなふてハ、いごかれませぬ。 00063220¥N4¥J 00063230¥Xつるべおろし 00063240M15三拾三間/堂(どう)につるべおろしが出るげなと。ある人、是をた 00063250M16いらげんと、五升/樽(たる)と五/盃(はい)入のさかづきとを持て行、二三 00063260M17盃ひつかけ、今や+と待いたり。あんのごとく夜半の比、 00063270M18/軒(のき)口より火の玉まい(二ウ)下かるをミれバ、つるべおろし 00063280M19也。かの人、都のばけ物に/似合(にあハ)ぬ/図(づ)がふるい。先さむいに、 00063290¥P209 00063300L1人にばけて一ぱいしやらぬかと云けれバ、ばけ物聞て、是 00063310L2ハよかろふと、たちまち軒とひとしき大入道にばけたり。 00063320L3是ハいよ+ふるし。ことに其やうな大坊主にハ、此樽に 00063330L4てハ酒がたらぬによつて、のます事ハならぬ。あやまりた 00063340L5りとて、女にばけたり。是もふるけれ共、色めいておもし 00063350L6ろいほどにとて、さかづきをさしつおさへつして、何と、 00063360L7ちいさきものに/化(ばけ)て見しや。心(三オ)得ましたと梅干にば 00063370L8けたり。此人、一口にたいらげんと思ひ、さてもやうにて 00063380L9是ハめづらしい。どれ、/迚(とてもの)の事に爰へ+と手を出しけれ 00063390L10バ、たちまち大きな目にばけて、べつとこしや。 00063400¥N5¥J 00063410¥X/遠(とを)目がね 00063420L13京の木屋町松原辺の裏座敷を、一日がりに/催(もよう)してかり遊 00063430L14びけるが、遠目鏡を持行、いなり山、/清水(きよミつ)、/霊山(りやうぜん)、丸山、 00063440L15段&見おろし、川むかいの座敷、宮川町の座敷を見けれは、 00063450L16白人と子共、客の(三ウ)ねてゐる目をしのび、ちわ最中に 00063460L17て、何やらん、むつまじくはなすていなりしが、あまり此 00063470L18人、聞たかつたやら、遠めがねへ/耳(ミヽ)をあてられた。 00063480¥N6¥J 00063490¥X/稲荷(いなり)参り 00063500M3ふしぎな事哉。極月廿日過の午の日の明六つ時分に、いな 00063510M4りさまへまいれバ、/奇妙(きめう)にいなりさまを/直(ちき)におがむ。おれ 00063520M5ハ去年迄に三度迄/拝(おか)んだといふ。はたなる人、それハ有が 00063530M6たい事じやと、はや極月にも成、しかも廿二日が午の日な 00063540M7れバとて、京を七つ立、(四オ)いなりへまいりける。/伏= 00063550M8見海道(ふし=ミかいとう)/鳥居(とりゐ)の近所にもなれバ、はや明六つにもなりぬ。そ 00063560M9こへ南の方より、いとしゆしやう成/老翁(らうわう)、いねを一/荷(か)にな 00063570M10い来りけれバ、これこそと/信心(しん※)/肝(きも)にめいじ/拝(はい)しけるか、や 00063580M11がてそバちかふ来り給ふと、ミヽのそバにて、かざりわら 00063590M12ハ+。 00063600¥N7¥J 00063610¥X七本松 00063620M15都寺町/錦(にしき)の天神、今を/盛(さかり)と御はんじやうにて、一両年の内 00063630M16には御宮居も御/建立(こんりう)と、/参詣(さんけい)の衆中も悦びけり。此/庭(にハ)に近 00063640M17き比、七本松を/植(うへ)ける。此松、(四ウ)もと/鳴瀧(なるたき)といふ所に 00063650M18ありけるが、/友達(ともたち)の松のくらいの太夫、此七本松さん、錦 00063660M19へ行かんして久しういなせの便りもなしと、錦へミまいに 00063670¥P210 00063680L1来りしかバ、七本松。よくぞや御出。たんとうれしうござ 00063690L2んす。しかし天神さんのおかげにて、うけ出されましたけ 00063700L3れども、見さんす通り、此せまい所にかこわれているのミ 00063710L4か、参りの人&が/兼(かね)てこゝへ来てかこわれて居るといふ事 00063720L5を知つて、来てミてハ、これが/惣嫁(そうか)といわしやんす。 00063730¥N8¥J 00063740¥Xそば切買(五オ) 00063750L8今石彦右衛門と云者、若党を/建仁寺(けんにんじ)町の丸屋といふけんど 00063760L9ん屋へはしらせ、只今そば切を拾匁が持て来るべしと云。 00063770L10御/所(ところ)ハどこてござります。/火消(ひけ□)屋敷の前の門づくりへ、今 00063780L11持てこいと云てかへりけり。まるやの亭主聞て、それハ/例(れい) 00063790L12のかたりの所なり。やらずバねちにかふほどに、五匁がを 00063800L13持て行て、今夜ハそバきれまして是ばかりじやといへと云 00063810L14付けれバ、かしこまりましたと、五匁がかの門作りへ持て 00063820L15行、/断(ことハ)り云けれバ、かの今石彦右衛門出、大のま(五ウ)な 00063830L16こをいからし、なんじや。そは切やにそバがきれたと云事 00063840L17があるものか。にくいやつの。ぜひきれてなくバ、今五匁 00063850L18ハ/銀(かね)て持てこい。 00063860¥N9¥J 00063870¥X大事の/代(しろ)物 00063880M3八月廿日は二百廿日に当り、大風おびたゝしく、/丑寅(うしとら)風に 00063890M4て大こう水出ける。是にてハ/堤(つゝミ)も/追付(おつつけ)切レて、此在所も/流(なが) 00063900M5れんと、我も人もてん手に大/切(せつ)成ものを、となり在所へ持 00063910M6はこびけるが、其中になでつけの/浪(らう)人/ども((ママ))ミへたる人、右 00063920M7の手を有たけのばし、/勢(せい)を(六オ)切てはしられけるを、あ 00063930M8る人問けるハ、あの手をかたげのかるハ、いかなる事にや 00063940M9と/尋(たづね)けるが、あれハあの人の大切の物でござる。なんでご 00063950M10さる。/手習(てならい)の御師/匠(せう)でござる。 00063960¥N10¥J 00063970¥Xぢがをこつた 00063980M13有むすこ、嶋原へほどふりて行しが、太夫、此中はいかな 00063990M14れバ御あゆませもなされなんだ。いこうあんじました。い 00064000M15や、此中は、ぢがをこつて、扨&もと/直(ね)にしかねた。それ 00064010M16ハ御なんぎなものでござる。なぜか(六ウ)ごにて成ともご 00064020M17ざんせなんだ。いや、おれがぢがおこると、あるかれても 00064030M18壱寸も出られぬ。それハいぼぢか、はしりぢか、あなぢで 00064040M19もござんすか。薬ハなぜあかりませぬ。いや、おれがぢハ 00064050¥P211 00064060L1薬でもかうやくても、のミもつけもなりませぬ。なぜにて 00064070L2ござんす。いや、おやぢがおこつた。 00064080¥N11¥J 00064090¥Xむまいもの 00064100L5/蛸(たこ)つく※思ひけるハ、人&うまさがたこじやと云て、た 00064110L6ゞおれらをとりたがる。/定(さため)しおれらもながいきはせまじ。 00064120L7一生の思ひ出に、どらほとうまいぞ、あし一本(七オ)/片輪(かたわ) 00064130L8にする斗じや。ちとくふて見んと、ほつ+足をくふて見 00064140L9るに、是ハたまらぬと、ついになんなく八本ながらくふて 00064150L10しまいたり。所へ、/友達(ともだち)の蛸来りてきもをつぶし、其我が 00064160L11なりハなんじや。見られたものでハないとわらいけるが、 00064170L12何をかくそふぞ。人&うまさがたこじやと云によつて、ほ 00064180L13つ+くふて見たれバ、たまられいて、一本+と思ひ、 00064190L14/皆(ミな)くふてのけた。此どうびんがどふもならぬ。我くふてく 00064200L15れ。 00064210¥Y1座狂咄下の終(七ウ) 00064220¥Q書林含霊軒蔵板目録〔一丁〕 00064230M3享保十五年△△△△△△△花洛△環仲仙△い三作 00064240M4△△戌正月吉日 00064250M6続一休はなし△全部三冊△△近日出来△@前編ニ残す所此度不|残板行す△△△△△@ 00064260M8古今難病方彙△横本全部一巻△同断 00064270M10/機(からくり)/訓蒙(きんもう)かゞ見/草(くさ)△三冊△△江△戸△小川彦九郎 00064280M11△△当正月£出し申候△△△△大△坂△瀬戸物屋伝兵衛 00064290M12△△△△△△△△△△△△△△△京△都△めと木屋伝兵衛 00064300¥P212 00064310¥U噺本大系△第七巻 00064320¥T咲顔福の門 00064330¥G 00064340¥Y 00064350L16享保十七年刊 00064360L17其磧作・序 00064370L18半紙本五巻 00064380L19東大国語研究室蔵等 00064390¥Y/咲顔(ハらひかほ)/福(ふく)の/門(かと)/序(しよ) 00064400M3/怖(おそろしき)顔も/銭(せに)にて/和(やハ)らげ、/鈍(にふ)き/口(くち)を/銭(せに)にて/笑(わら)ハせと、/銭(せに)の/徳(とく) 00064410M4をいひ/立(たて)られしか、/其銭(そのせに)に/増(まさ)りて、/頻皃(しかミかほ)を/芫爾(につこり)とさせ、/脂= 00064420M5茶面(やん=ちやづら)を/咲(ゑま)すは、/当世(たうせい)の/軽口咄(かるくちハなし)、/誠(まこと)に/欝気(うつき)をはらす/慰(なぐさ)ミの/種(たね) 00064430M6を/集(あつ)め、/自然(しせん)と(オ)/笑(わら)ふ/家(いへ)には、まねかぬに/来(きた)る/福(ふく)の門 00064440M7と/号(なづけ)て、/世(よ)の人の/笑(わら)ひを/催(もよふ)すものなり。ほんにア、/可笑(おかし)。 00064450M10△△△于時享保十七 00064460M11△△△△△△めでたい初春△△△△△作者其△磧△(ウ) 00064470¥P213 00064480¥Y1/咲顔(ゑがほ)/福(ふく)の/門(かど)第一 00064490L3目△△録 00064500L5○△/立身(りつしん)の利兵衛 00064510L6○△/立花(りつくわ)の/自慢(じまん) 00064520L7○△/医者(いしや)の/石持釣(ハぜつり) 00064530L8○△/娘(むすめ)が/為(ため)の/縮緬(ちりめん) 00064540L9○△わり事ざかり(一オ) 00064550L10○△おはまりの/餅搗(もちつき) 00064560L11○△/虫(むし)に/喩(たとへ)る/若衆(わかしう) 00064570L12○△はぬけの長太 00064580L13○△六十の/手(て)ならひ 00064590L14○△/角太夫節(かくだゆふぶし)の/名人(めいじん) 00064600L15○△/女房(にようぼう)の/狐(きつね)つき 00064610L16○△/付(つけ)てやる/嫁(よめ)入の/敷銀(しきがね) 00064620L17○△三人/見(ミ)の/名月(めいけつ)(一ウ) 00064630L18○△/請(うけ)て/寐(ね)るたのしミ 00064640L19○△お/婆(バ)ゞの/買(かい)くすり 00064650M1○△/碁会(こくハい)の/供(とも)の/述懐(しゆつくハい) 00064660M2○△八/間(けん)の/大蝦蟆(おゝかいる) 00064670M3○△/温石(おんじやく)の/御無心(ごむしん) 00064680M4○△/古井戸(ふるいど)の/掘替(ほりかへ) 00064690M5○△/薯蕷(やまのいも)が/蝦蟆(かいる)になる(二オ) 00064700¥P214 00064710¥T1/咲顔(ゑがほ)/福(ふく)の/門(かと)第一 00064720¥N1¥J 00064730¥X/立身(りつしん)の利兵衛 00064740L5人の/念力(ねんりき)といふものハ、きついものでござる。こなたも御 00064750L6/存知(そんぢ)の/飛上(とびあが)りの利兵衛が、じやに/成(なつ)て、/今朝(けさ)のぼられた。 00064760L7ヤアこりやけうとい。/雨(あめ)もふらなんだが、どこの/池(いけ)から/蛇(じや) 00064770L8になつてのぼられましたぞ。イヤ/念力(ねんりき)で/弄出(かせきだ)され、/長者(ちやうじや)に 00064780L9なつて、/今朝(けさ)江戸からのぼられた。(一オ) 00064790¥N2¥J 00064800¥X/立花(りつくわ)の/自慢(じまん) 00064810L12/道場(たうぢやう)の/坊(ぼん)さまが/仏前(ぶつぜん)の花をさしたとて、/自慢(じまん)で/鼻(はな)を/高(たか)ふせ 00064820L13られます。ヤア花が/高(たか)くバ/花瓶(くわひん)がこけませふが。それでひ 00064830L14かへをしておかれました。身もかふ申ハ、/前置(まへおき)でござる。 00064840¥N3¥J 00064850¥X/医者(ゐしや)の/石持釣(はぜつり) 00064860L17此中ハ/療治(りやうぢ)もひまでござるゆへ、なぐさミに/川口(かわぐち)へ/石持(はぜ)つ 00064870L18りに/参(まい)つたが、どふした/事(こと)やら、つん(一ウ)とかゝりませ 00064880L19ぬ。ヲ、かゝらぬはつでござる。なぜに。ハテこなたにかゝ 00064890M1りや、/薬代(やくだい)が/入(いる)によつてじや。 00064900¥N4¥J 00064910¥X/娘(むすめ)か/為(ため)の/縮緬(ちりめん) 00064920M4いかふちりめんがやすうござる。されバ/手前(てまへ)の/娘(むすめ)も、とか 00064930M5く、ちりめんを/好(□のミ)ますゆへに、思ひ/切(きつ)て一/升(せう)かいました。 00064940M6ヤア一/升(せう)とハ、なんの事でござる。ハテちりめんしやこサ。 00064950¥N5¥J 00064960¥Xわり/事(こと)/盛(さかり)(二オ)(二ウ・三オ挿絵) 00064970M9せがれめ。そのやうにわるさしおるなら、/薩摩(さつま)へやつての 00064980M10けるぞよ。とゝさま。/同(おな)じ/事(こと)なら/豊後(ぶんご)へやつてくだされ。 00064990M11/国太夫(くにたゆふ)がおもしろいげな。 00065000¥N6¥J 00065010¥Xおはまりの/餅搗(もちつき) 00065020M14これ+、こなたに無心かござる。たつた五六/升(せう)ついて下 00065030M15され。イヤ/当暮(たうくれ)ハ/身共(ミども)も/手前(てまへ)がいそがしさに、/一門(いちもん)どもの 00065040M16/方(かた)をたのんで、つい(三ウ)てもらひますれバ、外をおたの 00065050M17ミなされ。ソリヤこなたのいふハ正月の/餅(もち)の/事(こと)か。中+。 00065060M18イヤ身どもがついてもらひたいと申ハ、こちの/旦那寺(たんなでら)の/奉= 00065070M19加(ほう=が)に、/米(こめ)なら五六/升(せう)ついてもらひたいと申/事(こと)でござる。 00065080¥P215 00065090¥G 00065100¥N7¥J 00065110¥X/虫(むし)に/喩(たとへ)る/若衆(わかしゆ) 00065120M3/螢(ほたる)ハ/野郎(やらう)の/果(はて)かして、/尻(しり)の/光(ひか)りで人の/賞翫(しやうくわん)にあひますが、 00065130M4/同(おな)じ/虫(むし)でも、きり※す(四オ)ハ/念者(ねんじや)がないかして、/瓜(ふり)の 00065140M5/皮(かわ)/喰(くふ)ても、しかりてがごさらぬ。 00065150¥N8¥J 00065160¥Xはぬけの長太 00065170M8こちの長太が/歯(は)がぬけました。そんなら、入/歯(ば)さつしやれ。 00065180M9五条の/大円(だいゑん)が/名人(めいじん)じや。いてたのましやれ。イエ+/横町(よこまち) 00065190M10のあしだやへ/頼(たのミ)ます。こなたのいふハなんの/事(こと)ぞ。ハテ長 00065200M11太がぼくりのはがぬけました。 00065210¥N9¥J 00065220¥X六十の/手習(てならひ)(四ウ) 00065230M14あのとしまで物を/書(かき)ませぬによつて、此中/手習(てならひ)に/寺(てら)へやり 00065240M15ました。/清書(きよがき)を見せさしやれ。されバ/右(ミぎ)の/手(て)ハ/上(あが)りませぬ 00065250M16が、/左(ひだり)か/上(あが)つて、めつきりと/酒(さけ)かなり/出(で)ました。 00065260¥N10¥J 00065270¥X/角太夫節(かくだゆふぶし)の/名人(めいじん) 00065280M19/上(かミ)の町の与五右衛門ハかくし/芸(げい)かござる。/夕部(ゆふべ)/日待(ひまち)に/角太= 00065290¥P216 00065300L1夫(かくた=ゆふ)ぶしの/小袖売(こそでうり)をかたられましたが、おもしろい/事(こと)でござ 00065310L2つた。ハレヤレ同じ与五(五オ)右衛門といふ名でも、ちかひ 00065320L3がござる。こちの/横町(よこまち)の与五右衛門ハ/木綿売(もめんうり)をかたられて、 00065330L4/夕部(ゆふへ)町へつけとゝけがござつた。 00065340¥N11¥J 00065350¥X/女房(にようほう)の/狐(きつね)つき 00065360L7どれへござる。サレバけふハ/山伏(やまぶし)の/方(かた)へ/祈祷(きたう)を/頼(たのミ)にまいる。 00065370L8此間/手前(てまへ)の/女房(にやうほう)どもにハ、/狐(きつね)がつきました。ハテそれハぞ 00065380L9んぜなんだ。身どもが女房どもも、いつからやら、しゝが 00065390L10ついて、かごかきが/重(おも)いといふて(五ウ)いやがります。 00065400¥N12¥J 00065410¥X/付(つけ)てやる/嫁入(よめり)の/敷銀(しきかね) 00065420L13/御存知(こそんち)の/通(とを)り、こちの/娘(むすめ)ハきりやうがわるうござれど、も 00065430L14らいたいといふ人がござるゆへに/契約(けいやく)いたしたが、かねを 00065440L15つけてやらずバなるまいと存じて、つけてやります。それ 00065450L16ハめでたい。/今時(いまどき)ハきりやうより/銀(かね)でござる。/何(なに)ほどつけ 00065460L17られますぞ。サレバ七/軒(けん)からもらふて付させました。ヤアそ 00065470L18りや/何(なに)(六オ)を。ハテおはぐろのかねをつけさせました。 00065480¥N13¥J 00065490¥X三人/見(ミ)の/名月(めいげつ) 00065500M3/扨(さて)も/今夜(こんや)の月ハあきらかな事でこさる。/去年(こぞ)の八月の十五 00065510M4日の/夜(よ)も、此やうにまん/丸(まる)な/月(つき)が/出(で)さしやつたが、しつか 00065520M5りとおぼへぬが、とふでごさつたの。サレハ身ともハ/其時= 00065530M6分(そのじ=ふん)、大/坂(さか)におつたゆへぞんぜぬ。宇兵衛殿ハ/物覚(ものおほへ)のつよひ 00065540M7人じや。/去年(こぞ)の八月の十五日の夜も、月か/出(で)やしやつたか 00065550M8の。ソリヤ(六ウ)(七オ挿絵)人&にとハしやるまでもない/事(こと)。 00065560M9/暦(こよミ)見さしやりや、ついしれる事じやに。 00065570¥N14¥J 00065580¥X/請(うけ)て/寝(ね)る/楽(たの)しミ 00065590M12/栄耀(ゑよう)な事なれど、どふも/堪忍(かんにん)がならぬによつて、/銀(かね)/才覚(さいかく)し 00065600M13て、とんと/請(うけ)て、ゆふべたのしんでねました。ソリヤ/太夫(たゆふ) 00065610M14か/天神(てんじん)か。イヤ+。そんなら/茶(ちや)屋のおやまかな/請(うけ)て/来(き)て、 00065620M15たのしんでねやしやつたものであろの。ハレわけもない。 00065630M16/質(しち)やから/蚊(か)や(七ウ)/請(うけ)て/来(き)て、/蚊(か)にもせがまれず、ゆるり 00065640M17とふせつた。 00065650¥N15¥J 00065660¥Xお/婆&(ハ、)の/買薬(かひくすり) 00065670¥P217 00065680L1/看盤(かんばん)に/子(こ)のとまらぬ/薬(くすり)とあるが、とまらぬが/定(ぢやう)なら、一つ 00065690L2ゝミ/買(かふ)て、ついでに/爰(こゝ)でのんでいにましよ。ハテよいとし 00065700L3じやが、/婆(バ)さま、こなたも/子(こ)のとまるおぼへがござるか。 00065710L4いかにも+、/毎夜(まいよ)さ/子共(ことも)がとまりにまいる。此ごろハ/孫(まご) 00065720L5までがとまりにうせて、やかましうて成ませぬゆへ、/子(こ)の 00065730L6とまらぬ(八オ)/薬(くすり)なら、のまふと思ふて/買(かい)ますわいの。 00065740¥N16¥J 00065750¥X/碁会(ごくわい)の/供(とも)の/述懐(しゆつくハい) 00065760L9/今夜(こんや)ハ/旦那(だんな)の/碁会(ごくわい)の/供(とも)にゆきますが、/情(なさけ)ない事ハ/慥(たし)かに/今= 00065770¥G 00065780M1夜(こん=や)ハ/武蔵坊弁慶(むさしほうへんけい)じや。何べんけいとハな。ハテすてゝも/七(なゝ) 00065790M2ツ/道具(だうく)じや。 00065800¥N17¥J 00065810¥X八/間(けん)の/大蝦蟆(おふがいる) 00065820M5こちの/在所(さいしよ)には八間ある/蝦蟆(かいる)か/出(で)て、/池(いけ)の/魚(うお)をとりに/廻(まハ)り 00065830M6ます。/爰元(こゝもと)にそんな大きな/生物(いきもの)が(八ウ)ござるか。ア、八 00065840M7/間(けん)などあるを、大きな/生物(いきもの)とおぼしめすハ、さすが/田舎(いなか)の 00065850M8/目(め)せばさじや。/此方(こち)の町には十五/軒(けん)の/屋(や)もりがござるが、 00065860M9/毎月(まいつき)/家賃(やちん)を/取(とり)に/廻(まハ)ります。 00065870¥N18¥J 00065880¥X/温石(おんじやく)の/御無心(ごむしん) 00065890M12/御(こ)むしんながら、/温石(おんじやく)があらバかして下され。ア、やすい 00065900M13事でござる。/此方(このほう)の/温石(おんじやく)ハ/破(われ)てござるが、くるしうなくバ 00065910M14かしませふ。なんと/破(われ)たお(九オ)んじやくでも、/方角(ほうがく)がし 00065920M15れるものでこざるか。ハテつがもない。こなたのいふハ/磁= 00065930M16石(じ=しやく)の事でござろがの。 00065940¥N19¥J 00065950¥X/古井戸(ふるゐど)の/掘替(ほりかへ) 00065960M19こりや/井戸(ゐど)をほりかへさつしやるか、/今迄(いままで)の/古(ふる)い/井(ゐ)のもと 00065970¥P218 00065980L1ハ、あつたらものじや。つぶさずと、おれに下され。ム、 00065990L2/古井戸(ふるいど)をもらふて/何(なに)になさるゝ。ハテ/階子(はしこ)の/外家(そといゑ)に仕る。 00066000¥N20¥J 00066010¥X/薯蕷(やまのいも)が/蝦蟆(かいる)に/成(なる)(九ウ) 00066020L5/私(わたくし)が/在所(ざいしよ)の/榎(ゑ)の/木(き)の太郎/作(さく)が/裏(うら)に、山のいもが/蝦蟆(かいる)になつ 00066030L6て/半分(はんぶん)ハかいるで/這(はい)あるきました。コレハめつらしい。/薯= 00066040L7蕷(やまの=いも)の/鰻(うなぎ)になるといふ事ハ/聞及(きゝおよ)びましたが、扨もふしぎの。 00066050L8サレハそれゆへ京の見せ物しばゐのものが/聞(きゝ)つけ、はる 00066060L9+/参(まい)つて金五両から拾両まてにつけて、/大方(おゝかた)/埓(らち)の/明(あく)/所(ところ)へ、 00066070L10庄屋の次郎左衛門がきかれ、つぬに見ぬものじや。京へや 00066080L11らぬさきに見やうとて、とつかハと/走(ハし)つて/来(き)(十オ)て、つ 00066090L12い/踏(ふミ)ころしてのけられ、/怪我(けが)じや。/堪忍(かんにん)せいと/侘(わび)られても 00066100L13かんにんせいで、つゐに/御代官所(ごだいくハんしよ)へ/出(で)ましたれバ、/双方(さうはう) 00066110L14御/召出(めしだ)しなされ、さすが御代官/様(さま)ほどござる。わいらが/宗= 00066120L15旨(しう=し)ハ/何宗(なにしう)じやと御たづねなされたゆへ、/一在所(ひとさいしよ)ハ/皆(ミな)/一向宗(いつかうしう) 00066130L16じやと申たれバ、/門徒宗(もんとしう)ならかんにんせずバなるまい。/帰= 00066140L17命(き=ミやう)/無量(むりやう)次郎左衛門、かいるふんだら/大事(だいじ)かといふでハな 00066150L18いか、たて+。(十ウ) 00066160¥Y1/咲(ゑ)かほ/福(ふく)の/門(かと)第二 00066170M3△△目△△録 00066180M5○△/小女郎後家(こちよろごけ) 00066190M6○△/金銀(きん※)のつぶし/買(かい) 00066200M7○△候得ともの長左衛門 00066210M8○△/小野小町(おのゝこまち)/水辺(すいへん)の/哥(うた) 00066220M9○△/小者(こもの)が/在所(さいしよ)/目利(めきゝ) 00066230M10○△/石痲(せきりん)/本腹(ほんぷく)のいはひ(一オ) 00066240M11○△/鄙(ひな)のけ/((い脱力))せい/町(まち) 00066250M12○△/鴬(うくひす)の勘兵衛 00066260M13○△三人の/子(こ)の/親(おや)(一ウ) 00066270¥P219 00066280¥T1咲顔福の門二 00066290¥N1¥J 00066300¥X/小女郎後家(こちよらうごけ) 00066310L5となりの/裏座敷(うらざしき)かりてゐる/後家(ごけ)ハ、すらりとした大キな/女= 00066320L6房(によう=ぼう)じやに、/小女郎後家(こぢよらうごけ)と/沙汰(さた)いたすが、わけハ/御(ご)ぞんじな 00066330L7いか。ム、まだこなたハ、そのいわくしらずか。あの/後家(ごけ) 00066340L8ハ/上(かミ)の町の/玉(たま)屋新兵衛といふ/酒(さか)屋の/亭主(ていしゆ)が、ふせておいて 00066350¥G 00066360M1かよハるゝゆへに、玉屋新兵衛によせて、/小女(こぢよ)(一オ)郎/後= 00066370M2家(ご=け)といひますわいの。ム、上るりの玉屋新兵衛ハおけぶせ 00066380M3で/難義(なんぎ)いたすに、上の町の玉屋新兵衛ハ/後家(ごけ)ぶせてたのし 00066390M4まるゝな。されバ/酒(さか)屋でござるゆへに、ふたり/手(て)じやくの 00066400M5かんなべの/弦(つる)かけ/升(ます)で、あぢをやられます。 00066410¥N2¥J 00066420¥X/金銀(きん+)のつぶし/買(かい) 00066430M8/金銀(きんぎん)のつぶし、かいませふ+。これ+、/金(かね)のつぶし/売(うり) 00066440M9ませふ。これをかふて下され。こりや/身共(ミども)(一ウ)か/忰子(せがれ)て 00066450M10ござるか、/今(いま)までなにほとゝいふ金銀をつぶしたやらしれ 00066460M11ませぬ。是ほどな金銀のつぶしハござらぬ。かふて下され。 00066470M12イヤこりやこちハかハれませぬ。/紺屋(こうや)よんで/談合(たんかう)して、や 00066480M13きなをしてもらハしやれ。 00066490¥N3¥J 00066500¥X候得共の長左衛門 00066510M16あの人の/異名(いミやう)を、候得どもの長左衛門とハなぜいひますぞ。 00066520M17されバなにをやくそくしても、へんがへ(二オ)しらるゝに 00066530M18よつて、候へどもの長左衛門と申す。その心ハな。ハテ/御(ご) 00066540M19けいやく仕候へとも、/参(まい)りたく候へども、/安(やす)き/御用(ごよう)に候へ 00066550¥P220 00066560L1とも、/進上(しんじやう)申/度(たく)候得ども、此こゝろでござるわいの。 00066570¥N4¥J 00066580¥X/小野(おの)の/小町(こまち)/水辺(すいへん)の/哥(うた) 00066590L4/小野(おの)ゝ/小町(こまち)/水辺(すいへん)の草といふ/題(だい)て、/波(なミ)のうね+といふ/哥(うた)を 00066600L5よまれたハ、/関東(くわんとう)での/事(こと)でござろ。ハテ/内裏(だいり)でうたあハせ 00066610L6の/時(とき)よまれた/哥(うた)じや。イヤ+(二ウ)(三オ挿絵)/都(ミやこ)でよまれ 00066620L7たら、/波(なミ)のうね+はへしげるらんとよまれふに、うね 00066630L8+/生(おへ)しげるらんとハ、/関東(くハんとう)ことばじやハさて。 00066640¥N5¥J 00066650¥X/小者(こもの)が/在所(さいしよ)/目利(めきゝ) 00066660L11でつちがほしいとおつしやつたゆへ、/夜(よ)に入ましたれど、 00066670L12つれて/参(まい)りました。/御気(おき)に/入(いつ)たら、/今夜(こんや)からすぐにおつか 00066680L13ひなされませ。ム、よいころな/小者(こもの)じや。京ちかくと見た。 00066690L14おれがかふにらんでハ、一/町(ちやう)と/所(ところ)(三ウ)をさしちかへる/事(こと) 00066700L15でハない。そんならどこと/御(ご)らうじました。ム、/東福寺(とうふくじ)か、 00066710L16いなり/辺(へん)であらふがな。イエ+/伏見(ふしミ)でござります。ハア 00066720L17/夜(よる)じやによつて、思ひのほか、/所(ところ)をちかふ見たわいやい。 00066730¥N6¥J 00066740¥X/石淋(せきりん)/本腹(ほんぶく)のよろこび 00066750M1久しうお見まひ申さぬが、かはることハござらぬか。ヤア 00066760M2茂右衛門/殿(との)か。ようござつた。身どもハ/大病(たいひやう)をわつらひ、 00066770M3もうお/目(め)にかゝるまひとそんじたか、/徳(とく)(四オ)/安(あん)様のおか 00066780M4けで/本腹(ほんぶく)いたした。/日(ひ)ごろのりんびやうがこうじて、/石淋(せきりん) 00066790M5といふやまひになつて、コレ見さつしやれ。此やうな/砂(すな)が 00066800M6/出(で)ました。人の/五躰(こたい)から/砂(すな)が/出(で)ると申ハふしぎな事でハご 00066810M7ざらぬか。これを見ておかしやれ。ハレヤレさやうな事もぞ 00066820M8んぜいで/御(ご)ぶさた申た。さて/念比(ねんころ)にござれば、おためをぞ 00066830M9んじて申す。わたくしハ/苦(くる)しうないが、かならず外の人に 00066840M10は/病(やまひ)のはなしなされふ共(四ウ)此すなを/出(た)して見せらるゝ 00066850M11事ハ/御無用(ごむよう)になされ。/第(だい)一むさい。/出(で)どころかわるふござ 00066860M12る。ア、あやまりました。/尤(もつとも)+。しからバおいとま申す。 00066870M13/今(け)日ハしばゐの/札(ふだ)をもらひましたゆへ、せがれをつれて/見(けん) 00066880M14物にまいれバ、心がいそぎます。さらバ+。コレ+/茂右(もへ) 00066890M15との。/御子息(ごしそく)をつれてしばゐへこざるか。中+。ア、こ 00066900M16なたハ人の事もいふ人には/似合(にやハ)ぬ。/御子息(こしそく)をつれて、/万人(まんにん) 00066910M17も/見物(けんぶつ)のある/芝居(しバゐ)へござるハ、さた(五オ)のかぎりとぞん 00066920M18する。なぜに。ハテ/御子息(ごしそく)ハどこからうまれさつしやつた。 00066930M19第一むさい。/出(で)どころがわるうござる。 00066940¥P221 00066950¥N7¥J 00066960¥X/鄙(ひな)のけいせい/町(まち) 00066970L3さすが/田舎(いなか)のけいせい町ほどあつて、/器量(きりやう)から/衣装(いしやう)から、 00066980L4京の/色(いろ)ざととはちがふたもの。シテあの/銭(ぜに)て/爪(つめ)がへしして 00066990L5ゐる/女郎(ちよらう)ハ、なんぼほどするぞ。あなたの/花代(はなだい)は廿一匁で 00067000L6ござる。ム、(五ウ)(六オ挿絵)あたご山じやの。ハア/旦那(たんな)、 00067010L7のぼりつめてごさりますな。イヤ+/高(たか)きおやまハあたご 00067020L8山といふ心+。 00067030¥G 00067040¥N8¥J 00067050¥X/鴬(うくひす)の勘兵衛 00067060M3こなたの町の勘兵衛を/初音(はつね)の勘兵衛と申げなが、ちかいこ 00067070M4ろから/誹諧(はいかい)をせらるゝときけバ、さためてむかしの、 00067080M5△△きくたびにめつらしけれバ/時鳥(ほとゝきす) 00067090M6と、/秀哥(しうか)よまれたゆへに、/初(はつ)ねの/僧正(そうじやう)と申たくらいで、勘 00067100M7兵衛の/初音(はつね)も、/名句(めいく)かないたされて、/初音(はつね)の(六ウ)勘兵衛 00067110M8と申か、いかにしても/奥(おく)ゆかしうぞんずる。エ、勘兵衛が 00067120M9/芋(いも)の/煮(にへ)たもぞんぜぬざまで、此はるからはいかいするとい 00067130M10ふて/自慢(じまん)いたすが、ハらすぢな事でござる。此正月廿日に、 00067140M11うぐひすのはつねを/聞(きい)て/発句(ほつく)をいたし、大ぶん/自慢(じまん)して/点= 00067150M12者(てん=じや)かたへ/点(てん)とりにつかハしたれバ、さすが/点者(てんじや)ほどあつて、 00067160M13/点(てん)もかけずにワキをつけてこされた。勘兵衛が/発句(ほつく)に、(七オ) 00067170M14△△うれしやな/廿日(はつか)に/初音(はつね)きいたぞや 00067180M15△点者ワキいつの/廿日(はつか)に/何(なん)の/初音(はつね)を 00067190M16それから/初(はつ)ねの勘兵衛と申て、/笑(わらひ)ものにいたします。 00067200¥N9¥J 00067210¥X三人の子の/親(おや) 00067220M19扨ても/久(ひさ)しうあいませなんだ。/大方(おふかた)十四五年ぶりでござる。 00067230¥P222 00067240L1/仕合(しやハせ)がよひかして、つんととしがよりませぬ。されバわた 00067250L2くしも、/今(いま)ハ仕合をしなをしまして、/小家(しやうけ)なれど三/軒(げん)まで 00067260L3かいました。(七ウ)ハレめでたい。シテ御/内儀(ないき)さまがこざる 00067270L4か。ア、/子(こ)も三人までござろ。コレハ+、さふした/仕合(しやハせ)な 00067280L5ら/御(ご)そうれうハ/男(おとこ)でござる。イヤ△めろでござる。そんなら 00067290L6二/番(バん)めがむす/子(こ)どのでござろ。イヤ△めろでござる。ム、そん 00067300L7なら三/番(ばん)めハ/慥(たしか)に三/男(なん)の/三郎(さふろ)で、わやく太郎でござろ。イ 00067310L8ヤ△めろでござる。ヤア/皆(ミな)をなごでごさるか。中+。ム、 00067320L9まだしもこなたがおとこで、めでたふこざる。(八オ) 00067330¥Y1/咲顔(ゑかほ)ふくの/門(かど)第三 00067340M3△△目△△録 00067350M5○△/商人(あきうど)の/月代(さかやき) 00067360M6○△/宿老(しゆくらう)の/新(しん)ぎせる 00067370M7○△/庄屋(しやうや)/脇(わき)の三右衛門 00067380M8○△/唖(おし)の/乞食(こつじき) 00067390M9○△/家並(いへなミ)の/異名(いミやう)(一オ) 00067400M10○△/夢中(むちう)の/牛車(うしくるま) 00067410M11○△/替物(かへもの)ハ/朝夕(てうせき)の/菜(さい)(一ウ) 00067420¥P223 00067430¥T1咲顔福の門三 00067440¥N1¥J 00067450¥X/商人(あきうど)の/月代(さかやき) 00067460L5/髪結(かミゆい)の/権助(ごんすけ)ハまだ/来(こ)ぬか。八郎兵衛/殿(どの)と/今(いま)/茶(ちや)の/湯(ゆ)ふるまひ 00067470L6にゆくによつて、/月代(さかやき)そらねバならぬ。はやうよんでこい。 00067480L7イヤ/権助(こんすけ)は/疝気(せんき)がおこつてねております。ハテ/月代(さかやき)なら 00067490L8とをからいハしやれいで、身どもがすつてしんぜふ。/前方(まへかた) 00067500L9も/度(たび)+すつた。どれ、あたまもましや(一オ)れ。イヤ+ 00067510L10こなたにハ/掛商(かけあきな)ひする/商人(あきうと)が、/月代(さかやき)そらす物じやござらぬ。 00067520L11ヤアあきんどのあたまそらさぬとハなぜにな。ハテこなた 00067530L12にすつてもらや、きわ※のこるによつて、あたまであい 00067540L13ませぬわいの。 00067550¥N2¥J 00067560¥X/宿老(しゆくらう)の/新(しん)きせる 00067570L16コリヤ/久助(きうすけ)。わりや、/町(てう)の/用(よう)をきけバ、/町衆(てうしう)の/家(イへ)+へ/入(いり)こ 00067580L17むほどに、/身(ミ)が/異名(いミやう)をきいたであらふ。(一ウ)/町(てう)のたバね 00067590L18もする/身(ミ)どもを、あたらしきせると/異名(いミやう)をつけられたげな 00067600L19か、どふした/子細(しさい)で、あたらしきせるとハつけられた。/其(その) 00067610M1いわれはきかぬか。ハテそれハしれた事でござります。 00067620M2おまへの/耳(ミヽ)へハ/裏借屋(うらじやくや)の/隅(すミ)※まての/事(こと)が、よう/通(とを)ると 00067630M3いふ心で、あたらしきせると申でこざりませふ。ム、/聞(きこ)へ 00067640M4た+。さいハい五人/組(ぐミ)の/与三右(よそへ)が見へた。たづねて見や 00067650M5う。コレ与三/右(へ)どの。/身(ミ)(二オ)どもをあたらしきせると、 00067660M6/町衆(てうしゆう)が/異名(いミやう)をつけられたとあるが、/心(こゝろ)ハどふした/事(こと)てござ 00067670M7る。いかにも、そのわけを/此比(このごろ)/承(うけたまハ)つたが、/何(なに)をおつしや 00067680M8つても/新(あた□)しきせるで、つまらぬといふ/心(こゝろ)じやげな。 00067690¥N3¥J 00067700¥X/庄屋(しよや)/脇(わき)の三右衛門 00067710M11/此中(このぢう)ハきつう/嵐(あらし)が/当(あた)ります。そんなら/屋根(やね)をまくりませふ 00067720M12がな。ハレ△わけもない。/身(ミ)ども(二ウ)(三オ挿絵)か申す 00067730M13ハ、三右衛門が/狂言(きやうけん)の事でござる。ヤア△/庄屋(しよや)/脇(わき)の三右衛 00067740M14門ハ/狂言(きやうけん)めされますか。よい/事(こと)/承(うけたまハ)つた。/来年(らいねん)/此在所(このざいしよ)の/神= 00067750M15事能(じん=じのう)にハ/所望(しよもう)して/狂言(きやうげん)させませふ。ハテ△/拙者(せつしや)が申ハ、しば 00067760M16ゐの三右衛門/事(こと)でござる。ハレ△そさうな。/名字(ミやうじ)ハ/柴田(しばた)と 00067770M17申す。/芝居(しバゐ)とハ申さぬぞや。 00067780¥P224 00067790¥N4¥J 00067800¥X/唖(おし)の/乞食(こつじき)(三ウ) 00067810L3あの/唖(おし)ごろの/乞食(こじき)が、五/器(き)の/中(うち)からかるたの/素虫(すむし)を/出(だ)して 00067820L4見せるハ、どふした/心(こゝろ)じやな。ハテ△あれハつんともらひ 00067830L5がなふて、/虫(むし)がかぶるほどにくれよといふ事であろ。イヤ 00067840L6+きりのない/虫(むし)じやほどに、たすけてくれといふ事じや。 00067850¥N5¥J 00067860¥X/家並(いゑなミ)の/異名(いミやう) 00067870L9ヤア九郎兵衛殿。今よびにやる/所(ところ)じやに(四オ)ようござつ 00067880L10た。此たび/福田(ふくだ)屋の徳右衛門どの/家(いゑ)もとめられ、/明後日(めうごにち)/帳= 00067890L11切(ちやう=きり)をせふとあるによつて、/組中(くミぢう)をよせ/売券状(うりけんじやう)などの下/書(がき)を 00067900L12して/居(い)る。こなた/吹挙(すいきよ)の/事(こと)じや。町の/式法(しきほう)の通り、かなら 00067910L13ず/費(ついへ)なもの入を/堅(かた)ふさせられな。成ほど/其段(そのたん)/畏(かしこま)りました。 00067920L14扨たゞいま/参(まい)るハ/買主(かいぬし)徳右衛門、/御前(おまへ)へねがひがあつてた 00067930L15のまれてまいつた。/此町(このてう)にハ(四ウ)/以前(いせん)から/家持(いへもち)、/借屋(しやくや)に 00067940L16かぎらず、/異名(いミやう)のつかぬお人ハ一人もござらぬ。それを/聞(きゝ) 00067950L17およバれ、とふぞ/私(わたくし)ばかりハ/異名(いミやう)をおつけなされて下され 00067960L18ぬやうに、御ねがひ申てくれとのことでござる。ハテそれ 00067970L19ハ/気(き)の/毒(どく)なねがひでござる。/古来(こらい)より/此町(このてう)には/異名(いミやう)をつか 00067980¥G 00067990M12ぬわろハ/一人(ひとり)もないに、/徳(とく)右衛門とのハかりを/異名(いミやう)つけず 00068000M13にハおかれますまい。なんと、五人/組(ぐミ)の/焼(やき)(五オ)/味噌(ミそ)の太 00068010M14郎兵衛どの、/松原(まつハら)の喜兵衛どの、/千秋楽(せんしうらく)の五兵衛どの。こ 00068020M15りやかりそめなから/大事(たいじ)の事でござれバ、ねがはれても/異= 00068030M16名(い=ミやう)つけずにハおかれますまい。コレ九郎兵衛どの。/徳(とく)右衛 00068040M17門とのハ此/度(たび)/辰巳角(たつミかど)の/屋敷(やしき)をもとめられたほどに、/我庵(わかいほ)の 00068050M18徳右衛門とか、/宇治(うぢ)の/里(さと)の徳右衛門とかつけませふ。ミな 00068060M19どれ+も/一子細(ひとしさい)づゝあつてつける/異名(いミやう)でござる。此(五 00068070¥P225 00068080L1ウ)五人/組(くミ)の太郎兵衛を/焼味噌(やきミそ)とつけたハ、/白粥(しらかゆ)の太郎兵 00068090L2衛どの、むかひにゐさしやるゆへに、/焼味噌(やきミそ)の太郎兵衛と 00068100L3つけたもの。また/松原(まつハら)の喜兵衛どのハ、かふきいたがそう 00068110L4か、こんな/事(こと)じやげながさうかと、/物(もの)/一(ひと)ついふて/二(ふた)つめに、 00068120L5そうか+といはるゝによつて、/松原(まつハら)の喜兵衛/殿(どの)といひま 00068130L6す。此/千秋楽(せんしうらく)の五兵衛どのハ/斎非時(ときひじ)にいても/酒(さけ)さへとれゝ 00068140L7バ、/千秋楽(せんしうらく)をうたハるゝ(六オ)ゆへに、/異名(いミやう)に/仕(つかま)つた。ミ 00068150L8ぢんも/町(てう)にむりなことハ申さぬ。すでにこなたを/碁石(ごいし)の九 00068160L9郎兵衛といひますハ、/商売(しやうばい)が/白粉屋(おしろいや)じやによつて四郎兵衛 00068170L10/殿(との)と/名(な)をいひさふなものを、九郎兵衛と申ゆへに、/白(しろ)いと 00068180L11/黒(くろ)いと申/心(こゝろ)で/碁石(こいし)の九郎兵衛/殿(との)と申。/年(とし)よりがすぢのない 00068190L12/事(こと)ハ申さぬ。いづれもどふおぼしめす。ハテ△/異名(いミやう)をきら 00068200L13ハるゝなら、/町(てう)の/格式(かくしき)を/除(のぞ)いて、/今(いま)から(六ウ)/異名(いミやう)なしの 00068210L14/徳(とく)右衛門/殿(との)とおつしやれ。ハテ△それがすぐに/異名(いミやう)といふ 00068220L15ものでござれバ、/願(ねが)ひの/通(とを)り/異(い)名も/何(なに)もない、/素(す)徳右衛門 00068230L16と申さふ。 00068240¥N6¥J 00068250¥X/夢中(むちう)の/牛車(うしくるま) 00068260L19夕/部(べ)の/夢(ゆめ)に、/在所(さいしよ)の/婆(バ)さまの京へのぼられ、寺/参(まい)りすると 00068270M1て、/道(ミち)で車にしかれて/半死半生(はんしはんせう)の/躰(てい)で、かごにのつてもど 00068280M2られ、それ(七オ)からさん※わづらハしやると見て、か 00068290M3なしかつたによつて、/因果(いんぐわ)の車のわが/罪業(ざいごう)の/深(ふか)ひゆへてご 00068300M4ざらふ。/現在(げんざい)の/果(くわ)を見て/過去(くハこ)/未来(ミらい)をしると申せば、/未来(ミらい)の 00068310M5ほども/心(こゝろ)もとなふござるほどに、/精(せい)/出(だ)してお/念仏(ねんぶつ)を申さし 00068320M6やれとすゝめましたれバ、/婆(ハ)さまのいはしやる/事(こと)ハ、/仏(ほとけ)の 00068330M7おかげで車にしかれてよい/所(ところ)へ/参(まい)るほどに、きづかひすな 00068340M8といはしやる(七ウ)ゆへ、/車(くるま)にしかれてよい/所(ところ)へまいると 00068350M9ハと、とひましたれバ、ハテ△/牛(うし)にひかれて/善光寺(せんくハうじ)まいり 00068360M10するわいといはるゝとおもふたりや、/夢(ゆめ)がさめました。 00068370¥N7¥J 00068380¥X/替物(かへもの)ハ/朝夕(てうせき)の/菜(さい) 00068390M13/日比(ひころ)しわいに/似合(にやハ)ぬ。やすいものじやとて、たくさんに/茄= 00068400M14子(な=すび)/焼(たい)て/喰(くや)るの。イヤ△こりや/銭(ぜに)でかやせぬ。/小便(せうべん)にかへた 00068410M15によつて、それで/煮(に)て/喰(くふ)。ヱ、きたないわろじや。いかに 00068420M16/銭(せに)が/出(で)ぬとて、/小便(せうべん)に(八オ)/替(かへ)た/物(もの)を/喰(くふ)といふ/事(こと)があるも 00068430M17のか。ア、むさい人じや。ム、そんなら、そなたの/所(ところ)の/小便(せうべん) 00068440M18ハ、かへなしにたゞやりやるか。ハテなんの、たゞやるも 00068450M19のぞ。/毎朝(まいあさ)二/荷(か)の/小便(せうべん)を四文づゝに、ねをして/銭(せに)をとる。 00068460¥P226 00068470¥G 00068480L12ム、/其銭(そのぜに)ハ/何(なに)しやる。さだめて/菜大根(なだいこん)/買(かや)るであらふが、そ 00068490L13りや、かへものくやるも/同(おな)じ/事(こと)じや。イヤ+/喰(くい)ものはか 00068500L14わぬ。/毎日(まいにち)/溜(ため)ておいて、/小便(せうへん)の/銭(せに)じやによつて、/褌(ふんとし)を/買(かふ) 00068510L15わいの。(八ウ) 00068520¥K〔註・挿絵は巻四、三オの分〕 00068530¥Y1/咲(ゑ)がほ/福(ふく)の/門(かと)第四 00068540M3○△/新町(しんまち)の/紅葉狩(もミぢがり) 00068550M4○△/親父(おやぢ)の/早合点(ハやがつてん) 00068560M5○△/愛宕山(あたこさん)から/遠見(ゑんけん) 00068570M6○△/考(かんがへ)て/兼而(かねて)の/買置(かいおき) 00068580M7○△五/節句(せつく)の/売物(うりもの) 00068590M8○△/替(かへ)ものハ/朝夕(てうせき)の/菜(さい) 00068600M9○△/遠国(ゑんごく)の/虚説(きよせつ)(一オ) 00068610M10○△/年寄(としより)の/腫物(しゆもつ)ハ/町(てう)の/煩(わつら)ひ 00068620M11○△/寄合(よりあい)に/親父(おやぢ)の/噂(うハさ)(一ウ) 00068630¥P227 00068640¥T1咲顔福の門四 00068650¥N1¥J 00068660¥X/新町(しんまち)の/紅葉狩(もミぢがり) 00068670L5/難波(なにハ)で/花(はな)の/真町(しんまち)といハれ、/繁昌(はんじやう)な/色町(いろまち)てござるに、/近(きん)年ハ 00068680L6どふしてやら/客(きや□)がすくなふて、/色宿(いろやど)の/商売(しやうばい)もあハぬじやご 00068690L7ざらぬか。いかにも+。こなたもこちも/互(たがひ)に/客(きやく)屋でごさ 00068700L8れバ、かふ人だちがなふてハ、すへ※の事が/案(あん)じらるゝ 00068710L9によつて、/我等(われら)おもひつきには、/此廓(このくるわ)の内に(一オ)/龍田(たつた)や 00068720L10/高雄(たかを)から、もミぢを/数千本(すせんほん)とりよせ/植(うへ)たらバ、/秋(あき)/淋(さび)しい/時= 00068730L11分(じ=ぶん)に/紅葉(もミぢ)見がてら、めつきりと人が/来(き)て、にぎ+しうなら 00068740L12ふとぞんずるが、いづれもがたハどふおもハしやる。コリ 00068750L13ヤよいおもひつきじや。/紅葉(もミぢ)をとりよせて/家(いへ)+の/門口(かどぐち)に 00068760L14五/本(ほん)六/本(ほん)づゝ/植(うへ)たらバ、いよ+/色里(いろざと)に/色(いろ)がてりそひ、あ 00068770L15そバぬ/気(き)な人もさすが/岩木(いわき)にあらざれバ、心よハくも/色(いろ)に 00068780L16ひかれて(一ウ)/立(たち)より、/山路(やまち)の/菊(きく)の/酒(さけ)じやなどゝのミかけ 00068790L17らるゝであらふ。はやうもみぢをとりよせませふ。コレ+ 00068800L18ミなの/談合(だんかう)をさいぜんから/聞(きい)てゐますが、なんぼ/紅葉(もミぢ)を/植(うへ) 00068810L19られたと、かんじんの/$(これ)/持(もち)がないによつて、もみぢ 00068820M1がり+といろばかりかりてあそび、/正味(しやうミ)の/客(きやく)ハあるまい。 00068830M2/末社(まつしや)の/神(しん)バかりで、/無明(むミやう)の/酒代(さかだひ)さへとれまい+。 00068840¥N2¥J 00068850¥X/親父(おやぢ)の/早合点(はやがてん)(二オ) 00068860M5かゝさま。むかひの/姨(おバ)さまの/所(ところ)へ/今(いま)いたりや、おばさまと 00068870M6おぢさまとよつて、/夜(よる)する/事(こと)を/昼(ひる)してじやわい。ヤイあほ 00068880M7うめ。わけもない/事(こと)ぬかす。九郎兵衛どの、お/聞(きゝ)なされ。 00068890M8いかにとしが/参(まい)らぬとて、/成人(せいじん)の/兄(あに)も/居(お)る/所(ところ)で、イヤハヤ/汗(あせ) 00068900M9の/出(で)るやうな/事(こと)をぬかします。ハテ/何(なに)やら/色品(いろしな)もきかず 00068910M10に。コレ/長松(ちやうまつ)。むかひのおばの/所(ところ)には、/夜(よる)する/事(こと)を/昼(ひる)して 00068920M11か。アヽおばさまとおぢ/様(さま)(二ウ)(三オ挿絵)とが、ひと/所(ところ)へ 00068930M12よつて。コリヤまだあほうぬかすか。ハテわらべハぐわん 00068940M13ぜがない。しからずとそのまにいはさしやれ。シテ△おぢ 00068950M14とおばとが/夜(よる)する/事(こと)を/昼(ひる)してじやとハ、どんな/事(こと)していや 00068960M15る。アノナぬいたりさいたり/豆腐(とうふ)をして、/夜食(やしよく)にこそする 00068970M16ものじやに、ふたりよつて、でんがく/焼(やい)て/喰(くふ)てじやわいの。 00068980¥N3¥J 00068990¥X/愛宕山(あたごさん)から/遠見(ゑんけん)(三ウ) 00069000M19一/年(ねん)に二三度づゝまいれど、いつでも此あたこ/山(さん)ハ/太儀(たいぎ)な。 00069010¥P228 00069020L1こなたハ/達者(たつしや)な。くたびれハせずか。イヤハヤ△/高山(かうざん)ほどあ 00069030L2つて、コレ+/爰(こゝ)から/見(ミ)おろせハ京が/一目(ひとめ)に見ゆる。なんと 00069040L3よい/景(けい)じやないか。いかにも京中ハ一/面(めん)に見へますが、こ 00069050L4ちの/所(ところ)の二/階(かい)が見へさふなものじやが、見へませぬわいの。 00069060L5ハテわけもない。/遠目金(とをめがね)でも/家(いへ)+ハこまかには見へぬ 00069070L6はづじや。イヤ+すでにこちの二/階(かい)(四オ)からハあたご 00069080L7/山(やま)がよう見へるによつて、こゝからもこちの二かいが見へ 00069090L8るはづじや。 00069100¥N4¥J 00069110¥X/考(かんかへ)て/兼(かね)ての/買置(かいおき) 00069120L11/惣(そう)じて/物(もの)を/買(かハ)ふなら、その/時(とき)+に/至(いた)つては/高直(かうぢき)な物じや 00069130L12によつて、/焼炭(たきすミ)ハ/夏(なつ)/買(かへ)バやすし、/晒(さらし)などハ/冬(ふゆ)かへば/大(だい)ぶん 00069140L13/下直(けちき)な。/万事(バんじ)に/気(き)をつけて、/春(はる)/入(いる)ものハ/秋(あき)かへハやすし。 00069150L14/冬(ふゆ)いるものハ/夏(なつ)かへバ、/何(なに)によらずやすい。イヤ+さふ 00069160L15い(四ウ)やるな。/此中(このちう)/蝋燭(らうそく)を/昼(ひる)/買(かい)にやつたけれど、/夜(よる)/買(か) 00069170L16ふと同じねじやあつた。 00069180¥N5¥J 00069190¥X五/節供(せつく)の/売(うり)物 00069200L19/世(よ)に/借銭(しやくせん)/負(お)へバ人のしらぬ/苦(く)をする。あのかけながしの/売= 00069210M1物(うり=もの)をきくたびに、むねにこたへてびく+する/中(うち)に、たつ 00069220M2た/一色(ひといろ)/胸(むね)にこたへぬものがある。/扇(あふぎ)の/台(だい)、へぎハ+と/売= 00069230M3声(うる=こゑ)きけバ、/大晦日(おゝつごもり)の/事(こと)がおもハれてむねにこたゆる。それ 00069240M4(五オ)をしのぎとをせば、/絵櫃(ゑびつ)、ひつハとうるによつて、 00069250M5三月せつく/前(まへ)の/事(こと)をあんじる。/削(けづり)かけの/甲(かぶと)/長刀(なきなた)をうれハ、 00069260M6五月のせつ/句(く)/前(まへ)が/苦(く)になる。かんなかけ/茶(ちや)との/台(だい)を/売(うる)と、 00069270M7/盆(ぼん)前の事が/魂(たましい)へこたへる。それをやう+いひのバせば、 00069280M8はや/間(ま)もなふ/絵行器(ゑほつかい)+とうるで、八/朔(さく)/前(まへ)をおどろく。さ 00069290M9ふするとまた/絵櫃売(ゑびつうり)で、九月の/節供(せつく)前が心にかゝる。さり 00069300M10とハやるせない。かけながしの(五ウ)/売物(うりもの)の/声(こゑ)におどろか 00069310M11ぬ/事(こと)がないに、その内にたつた/一色(ひといろ)/苦(く)にならぬものがある。 00069320M12そりやなんぞ。/花皿(はなざら)+と/売声(うりごゑ)ばかりが、/聞(きい)て/何(なん)ともない。 00069330¥N6¥J 00069340¥X/遠国(ゑんこく)の/虚説(きよせつ) 00069350M15大坂の事を京でなんのかのと、/何(な)によらず、あつた事のや 00069360M16うに/嘘(うそ)をついて/咄(はな)すが/道理(だうり)じや。きのふの/朝(あさ)、太右衛門の 00069370M17見せにはなして/居(い)たれバ、/下女(げちよ)が/出(で)て、/旦那様(たんなさま)、おめし/上(あが) 00069380M18り(六オ)ませといふたれバ、ミな/朝食(あさめし)くやつたか。おりや 00069390M19まだ/朝飯(あさめし)くハぬほどに/喰(くう)ふてこふ。いなずとはなしやと、 00069400¥P229 00069410L1太右衛門が/内(うち)へはいつたによつて、/勝手口(かつてぐち)ののうれんあげ 00069420L2てのぞいて見たりや、/食(めし)じやなふて、/家内(やうち)がよつて/茶粥(ちやがゆ)く 00069430L3ふて/居(い)る。わづかのうれん/一重(ひとへ)のあいだでさへ/嘘(うそ)をいへバ、 00069440L4まして十三/里(り)へだつた/所(ところ)なれバ、うそついて/咄(はな)すが/尤(もつとも)じや。 00069450L5(六ウ) 00069460¥N7¥J 00069470¥X/年寄(としより)の/腫物(しゆもつ)ハ町の/煩(わづ□)ひ 00069480L8こなたの/家(いゑ)へ/今度(こんと)/金物類(かなものるい)の/細工(さいく)する/職人(しよく)が、かつてまいつ 00069490L9たとあるが、/用心(ようじん)/時分(じぶん)じやほどに、ずいぶん/気(き)をつけさつ 00069500L10しやれ。いかにも/金類(かなるい)のかざり師が/宿(やど)/替(かへ)て、/私(わたくし)の/借屋(しやくや)へま 00069510L11いつたが、/何(なに)ゆへに/気(き)をつけとハおつしやります。おとし 00069520L12よりのおつしやる/事(こと)でござれバ、なにぞおきゝなされたこ 00069530L13とかなござつて、/御意(ぎよい)なさるゝか。あしい(七オ)事がござ 00069540L14れハ、一/番(ばん)に/家主(いへぬし)か/難義(なんき)てこざれハ、いふてきかして下さ 00069550L15れませ。成ほと+、かならず/金物(かなもの)/細工(さいく)する人ハ、をし/入(いれ) 00069560L16の/引手(ひきて)をするものじやほどに、どこも/物騒(ぶつそう)にござれバ、心 00069570L17をつけさつしやれと申/事(こと)じや。ムヽさやうなら、おまへの 00069580L18/此度(このたび)の/御腫物(ごしゆもつ)もやめになされませ。コレハ/何(なに)をいはしやる。 00069590L19/身(ミ)が/出来(でき)ものをやめにせいとは。されバ/町(てう)の/銀(かね)を/取替(とりかへ)/置(おき)ま 00069600M1した(七ウ)に、御/年寄(としより)のよこねとあつてハ、/町(てう)中の/煩(わづらひ)でご 00069610M2ざる。 00069620¥N8¥J 00069630¥X/寄合(よりやい)に/親父(おやち)の/噂(うハさ) 00069640M5/今晩(こんばん)ハお/年寄様(としよりさま)、お/組(くミ)様、/御苦労(ごくらう)に/御寄合(およりやい)なされて下され 00069650M6ます。/御宿老(おしゆくらう)様へ、今日申ます/通(とを)り、/親(おや)どもが/私(わたくし)の/女房(にようぼう)に 00069660M7てんがう申されまして、あまり見ぐるしうござりますれど、 00069670M8/子(こ)の/口(くち)からハどふも/異見(いけん)ハ/成(なり)ませず、おまへがたをたのミ 00069680M9まして、/異見(いけん)いたしてもらひま(八オ)せふとぞんじ、おた 00069690M10のミ申ましたれバ、/何(なに)の/寄合(よりやい)やらしれぬやうにして、おや 00069700M11ぢを/会所(くハいしよ)へよびよせ、ひそかに/異見(いけん)してやらふと/仰(おほせ)られ、 00069710M12おやどもによるやうにと、/用人(ようにん)を以て/仰(おほせ)下されましたれど 00069720M13も、/俄(にわか)に/疝気(せんき)がおこりまして、/腹(ハら)がすぢばつてゆかれぬほ 00069730M14どに、/私(わたくし)にまわれと申つけまして/参(まい)りました。/親(おや)どもが参 00069740M15りませぬからハ、/先(まづ)/今晩(こんばん)の御より(八ウ)やいハ、/御引(おひき)なさ 00069750M16れて下さりませ。ヲヽそんならあすの/晩(ばん)でも、/疝気(せんき)のなを 00069760M17つた/時(とき)によびよせて/異見(いけん)いたさふ。いづれもお/立(たち)なされ。 00069770M18ヤレ+にが+しい。けんざいの/嫁(よめ)にてんがういハるゝゆ 00069780M19へ、お/町(てう)までに/御苦労(こくらう)をかける/事(こと)じや。まづかへらふ。 00069790¥P230 00069800L1ヤア/兄(あに)が/寄合(よりやい)から/戻(もど)つたか。コリヤ/何(なに)の/寄合(よりやい)てあつた。イヤ 00069810L2/御聞(おきゝ)なさるゝやうな/事(こと)じやござりませぬ。ハテ/寄合(よりやい)の/様= 00069820L3子(やう=す)を/善(ぜん)でも/悪(あく)でも(九オ)おれがきかぬといふ事ハない。/何= 00069830L4事(なに=ごと)じや、いへいの。イヤ/別(へつ)の/事(こと)じやござりませぬ。たれ 00069840L5かハ/存(ぞんじ)ませぬが、むす/子(こ)の/女房(にようほう)に、てんがういふ/親父(おやぢ)がご 00069850L6ざりますげで、/異見(いけん)せふとの/寄合(よりやい)さふにござります。ムヽ 00069860L7/何(なん)じや。/嫁(よめ)にてんがういふ/親父(おやち)かあるといふか。ハテ此 00069870L8/町(てう)で、ま/一人(ひとり)ハたれじやしらぬまて。(九ウ) 00069880¥Y1わらひ福の門第五 00069890M3△△目△△録 00069900M5○△/地震(ちしん)の/逃所(にげどころ) 00069910M6○△/唐人(とうじん)の/寐言(ねこと)/挨拶(あいさつ) 00069920M7○△三/年(ねん)/坂(ざか)の/因縁(いんゑん) 00069930M8○△/瓜(ふり)/二(ふた)つの/兄弟(きやうたい) 00069940M9○△一/生(しやう)に/見(ミ)ぬ/夜着(よぎ)/蒲団(ふとん)(一オ) 00069950¥P231 00069960¥T1咲かほ福の門五 00069970¥N1¥J 00069980¥X/地震(ぢしん)の/逃所(にけところ) 00069990L5ハテ/今朝(けさの)の/地震(ぢしん)ハよつほどでござつた。/身共等(ミともら)ハ/神鳴(かミなり)よ 00070000L6りいやでござる。こちのむかひのさしものやの/又(また)六ハ、/日= 00070010L7比(ひ=ごろ)/物(もの)おぢせぬ人じやが、/其(その)まゝ/表(おもて)へ/飛(とん)で/出(で)て、/隣(となり)の/紺屋(こうや)の 00070020L8もがり/竹(だけ)にとりついて、/世(よ)なをし+といふて/居(い)られまし 00070030L9たを、/紺屋(こうや)の/内儀(ないぎ)が/出(で)て、コレ/又(また)六さん、/其竹(そのたけ)あんまりゆ 00070040L10す(一オ)つてくださんすなといわれたりや、/又(また)六がいわる 00070050L11るにハ、なんぼゆすつても、/根(ね)かもがりじやによつて、こ 00070060L12つちにがつてんじやといはれました。 00070070¥N2¥J 00070080¥X/唐人(たうじん)の/寐言(ねごと)/挨拶(あいさつ) 00070090L15きのふこちの/町(てう)の/刀屋(かたなや)へ、りんとした/中間(ちうけん)が/屋敷方(やしきかた)からの 00070100L16/使(つかい)に/来(き)て、なべずミでつくつた/髭口(ひけぐち)をそらして、/亭主(ていしゆ)+、 00070110L17/近日(きんじつ)あつらへた/物(もの)を、/先日(せんじつ)でかしてくれられいと、/旦那(たんな)が 00070120L18申(一ウ)つけで/参(まい)つたと、なまりちらかして申シたりや、 00070130L19/亭主(ていしゆ)ぎよつとして、そりやどふいふ/事(こと)でござる。がてんが 00070140M1ゆきませぬ。ま/一度(いちど)お/使(つかい)の/趣(おもむき)を/仰(おほせ)きけられい。ハテ△ぐど 00070150M2んなていしゆだ。/近日(きんじつ)の/物(もの)を/先日(せんじつ)でかしてくれられいとい 00070160M3ふ事じや。アヽがてん+。さすが/武士方(ぶしかた)にこざる/奴(やつこ)どの 00070170M4ほどあつて、しさいに物をいはつしやる。いかにも/近日(きんじつ)の 00070180M5/物(もの)/先日(せんじつ)ちがひなふでかしませふ(二オ)とおつしやつて下さ 00070190M6れ。そんなら/其通(そのとを)り/書(かい)ておこしやれ。イヤ△わたくしハ/祐= 00070200M7筆(ゆう=ひつ)でござれバ、こなた/書(かい)て下され。イヤサ△身も/祐筆(ゆうひつ)だサ。 00070210M8/然(しか)らバ、/向(むかひ)の無/筆(ひつ)たのんで/書(かい)てもらひませふ。 00070220¥N3¥J 00070230¥X三/年(ねん)/坂(ざか)の/因縁(いんゑん) 00070240M11これ+おやぢどの。こけさつしやつたか。どこも/打(うち)ハな 00070250M12されぬか。イエ+/怪我(けが)ハいたしませ(二ウ)(三オ挿絵)ぬ 00070260M13が、かなしい/事(こと)ハ、/此(この)三/年(ねん)/坂(さか)で一/度(ど)ころんだものハ、かな 00070270M14らず三/年(ねん)めに/死(し)ぬると、むかしからいひつたへましたによ 00070280M15つて、三/年(ねん)めに/死(し)なふかと存じて、かなしうごさる。/当年(たうねん) 00070290M16六十一に/成(なり)ますれど、三/年(ねん)や五年の/内(うち)に/死(しに)ましては、なら 00070300M17ぬ/身(ミ)でござる。/大(たい)ぶんの/銀(かね)を/去人(さるひと)に/負(おふ)せましたれバ、/其(その)お 00070310M18ふせた人がたをれまして、十/年賦(ねんふ)のわびで/堪忍(かんにん)いたしたが、 00070320M19(三ウ)十/年(ねん)のものを、やう+三/年(ねん)とつて/死(し)なふかと/存(ぞん)ず 00070330¥P232 00070340L1れバ、/是(これ)が/何程(なにほど)か/残念(さんねん)で、いのちがおしうござる。コレ+ 00070350L2/気遣(きつかひ)めされずと、ころびついてに、まあ四五/度(と)もころバし 00070360L3やれ。ハテ/爰(こゝ)な人ハ、/年(とし)よつたものじやと/思(おも)ふてなぶらし 00070370L4やるか。イヤ+なぶりハいたさぬ。こなたの/為(ため)をそんじて、 00070380L5まあ二三/度(ど)もころハしやれといふ/事(こと)じや。すでにむかしか 00070390L6ら(四オ)/此坂(このさか)て一/度(ど)ころんだものハ、三/年(ねん)めに/死(しぬ)なと申つ 00070400L7たへますぞや。一/度(と)ころんで三/年(ねん)めに/死(し)ぬるなら、二/度(ど)こ 00070410L8ろんだら六/年(ねん)めに/死(し)にませふ。三/度(ど)ころんだら九年めに/死(し) 00070420L9にませふ。/数(かず)/多(おほ)ふころぶほと/年(とし)がのびる/道理(どうり)しやござらぬ 00070430L10か。こなたも十/年府(ねんふ)ミなとりきらふとおもハしやるなら、 00070440L11まあ三/度(ど)ころバしやれ。/以上(いじやう)三四の十二/年(ねん)ハ/慥(たしか)に(四ウ)/命(いのち) 00070450L12がのびませふ。ハア△かたじけないさふでござる。そんな 00070460L13ら/短(ミしか)ふとつて、まあ三十年/長(なが)いきいたすやうに、/膝頭(ひざかしら)がう 00070470L14ちわれませふとまゝ、/十(と)たびほどころびませふ。 00070480¥N4¥J 00070490¥X/瓜(ふり)二つの/兄弟(きやうたい) 00070500L17/世(よ)の/中(なか)に、そち/兄弟(きやうだい)ほど/似(に)た/顔(かほ)ハない。どれか/兄(あに)やら/弟(おとゝ)や 00070510L18ら/取(とり)ちかへるほど/似(に)たが、そちとハかふ/心(こゝろ)やすけれど、/舎= 00070520L19弟(しや=てい)ハわれとは(五オ)ちがふて、/中(なか)+/堅(かた)さふに見ゆるゆへ、 00070530M1をのづからたがひにいんぎんなあいさつじや。それにまあ 00070540M2きけ。/今朝(けさ)/用(よう)があつて、三/条(でう)の/橋(はし)をゆくに、むかふから/来(く) 00070550M3る/舎弟(しやてい)を、そちじやとおもふて、ゆふべ/祇園町(ぎおんまち)で/小(こ)しげと 00070560M4/我(われ)とが、くぜつの/仕廻(しまひ)をきかふと/思(おも)ふてな、/何(なに)かゆふへの 00070570M5さハぎの段+のたわけをすつきり/打(うち)あけ/咄(ハなし)かゝつたりや、 00070580M6/私(わたくし)ハ長五郎/弟(おとゝ)(五ウ)長四郎でござりますといはれて、びつ 00070590M7くりし/赤面(せきめん)してもどつたか、コリヤ/夕部(ゆふべ)のあそびの/品(しな)をそ 00070600M8ちじやとおもふて/打明(うちあけ)てしまふたが、/舎弟(しやてい)ハおれにあふた 00070610M9とハいはれなんだか。イヤ/私(わたくし)ハやはり/弟(おとゝ)の長四郎でござ 00070620M10ります。/兄貴(あにき)ハ/夜前(やせん)のさけにいたミましたか、/今(いま)に/枕(まくら)が/上(あが) 00070630M11らず、ふせつております。/御用(ごよう)もこざりませふバ、/起(おこ)しま 00070640M12せふかな。エヽまた(六オ)/弟御(おとゝご)でこざりますか。是ほど/同(おな) 00070650M13じやうでハ/重(かさ)ねてもちがひませふ。いまからこなたの/額(ひたい)に 00070660M14ハ、しるしをしておかれずバ、てつきり人がはきかへて/帰(かへ) 00070670M15らふ。 00070680¥N5¥J 00070690¥X一/生(しやう)に見ぬ/夜着(よき)/蒲団(ふとん) 00070700M18/太夫(たいふ)の/寝道具(ねだうぐ)ハかくべつ/結構(けつかう)な/段子(どんす)/繻珍(しゆちん)で、身がこそバか 00070710M19つた。エヽせんしやうらしい。こなたがなんの/太夫(たゆふ)にあハ 00070720¥P233 00070730¥G 00070740L12しやろ。ハテ/盃(さかづき)までいたゞいて(六ウ)/饗応(もてなし)にあづかつた。 00070750L13そんならどこのなんといふ大夫にあハしやつた。/外宮(けくう)の/福= 00070760L14太夫(さいわい=たゆふ)といふ/大(おゝ)きな/太夫(たゆふ)にとまりました。ムヽさてハ/御参= 00070770L15宮(こさん=ぐう)なされたか。ヲヽそりやめでたい+。/誠(まこと)に/信(しん)あれバ/徳(とく) 00070780L16あり。/笑(わら)ふ/門(かど)には/福太夫(ふくたゆふ)+。 00070790¥Y1/咲顔(ゑがほ)/福(ふく)の/門(かど)五終(七オ) 00070800¥Q 00070810M2/軽(かる)口/独機嫌(ひとりきけん)△△△@作者其磧△△|△△追而出来@ 00070820M7△△享保十七年△△△△△△江戸△須原屋茂兵衛 00070830M8△△△△子正月吉日△△△△京都△銭屋庄兵衛 00070840¥P234 00070850¥U噺本大系△第七巻 00070860¥T軽口独機嫌 00070870¥G 00070880¥Y 00070890L16享保十八年刊 00070900L17其磧作・序 00070910L18半紙本五巻 00070920L19都立中央図書館加賀文庫蔵 00070930¥Y/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきげん)/序(ぢよ) 00070940M3/古人(こじん)/琴詩酒(きんししゆ)を/友(とも)として、/独(ひとり)/楽(たのし)ミ給ふ。/今(いま)/当世(とうせい)の/軽口咄(かるくちばなし)、/伽= 00070950M4入(とぎ=いら)ずして/此艸子(このさうし)を/披(ひら)けバ、/可笑(おかし)き/友(とも)まねかざるに/集(あつま)りて、 00070960M5につこりほやりと/独機嫌(ひとりきげん)の(オ)よい/和颯利(わつさり)とした/春(はる)の/慰(なぐさ)ミ。 00070970M6△△△△△△△△△△△△△△△△作△者 00070980M7△△△△△△△△△△△△△△△△△△△其△△磧 00070990M8△△△于時享保十八 00071000M9△△△△△△△めてたい初春(ウ) 00071010¥P235 00071020¥Y1/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきけん)第一 00071030L3/目(もく)△△/録(ろく) 00071040L5○△正月のすハり/鏡(かゝミ) 00071050L6○△/武辺(ぶへん)な/奴(やつこ)/律義(りちぎ)な/蝮蝎(うハばミ) 00071060L7○△/発明(はつめい)な/猿(さる)が見たて 00071070L8○△/奉公人(ほうこうにん)の/述懐(しゆつくわい) 00071080L9○△/奇妙(きめう)な/痔(ぢ)の/薬(くすり) 00071090L10○△/家業(かげう)によせての/挨拶(あいさつ)(オ) 00071100L11○△/蛸(たこ)の/料理(りやうり)/好(ごの)ミ 00071110L12○△/名物(めいぶつ)の/南禅寺豆腐(なんせんじとうふ) 00071120L13○△/村中(むらちう)の/泪(なミだ)/雨乞(あまごい)の/祈(いのり)(ウ) 00071130¥T1/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきげん)一巻 00071140¥N1¥J 00071150¥X正月のすハり/鏡(かゞミ) 00071160M5一夜/明(あけ)てゆたかなる/春(はる)、はんじやうの/家(いへ)に/子孫(しそん)/多(おう)く/賑(にぎや)かに、 00071170M6すハり/鏡(かゞミ)の/数(かす)+あるを、/這出(はいで)のでつち見て、/子(こ)どもさま 00071180M7/方(がた)のかゝミハどれもちいさいといふを、/旦那(たんな)/聞(きか)れて、ヤイ長 00071190M8太郎。正月にハちいさいといハぬものじや。/鏡(かゞミ)が/若(わか)いといふ 00071200M9ものじやぞ。/今(いま)/礼(れい)に/出(で)る。/供(とも)にこしらへと/云付(いひつけ)、/上下(かミしも)/着(き)て、 00071210M10長太+。何をしてゐる。/待(まつ)てゐる(一オ)が、/主人(しゆしん)をま 00071220M11たせておくものか。はやうこいとしかられけれバ、長太、 00071230M12二/階(かい)の/上(あがり)口から/首(くび)を出し、/旦那(たんな)さま。まそつと/待(まつ)てくだ 00071240M13さりませ。/足袋(たび)が/若(わか)ふて/足(あし)へはいりませぬ。 00071250¥N2¥J 00071260¥X/武辺(ぶへん)な/奴(やつこ)/律義(りちぎ)な/蝮蝎(うハばミ) 00071270M16/肝(きも)のふとい/奴(やつこ)、/山道(やまミち)を/通(とを)りけるに、/蝮蝎(うハばミ)/出(で)てのまんとする。 00071280M17/奴(やつこ)刀に手をかけ、うハばミをにらミ、をのれ、身をのまふ 00071290M18としたらバ、/引(ひつ)つかまへ、はいでのけ、身/共(ども)が/紋所(もんところ)につけ 00071300M19てくれべいと、ねめつけ(一ウ)れバ、/律(りち)義なるうハばミに 00071310¥P236 00071320¥G 00071330M1て、/奴(やつこ)どの。/文盲(もんもう)な。/紋所(もんどころ)につけるハかたばミじや。おれ 00071340M2が事じやない。 00071350¥N3¥J 00071360¥X/発明(はつめい)な/猿(さる)が見たて 00071370M5/智恵(ちゑ)の/走(はし)る山/猿(ざる)、/柿(かき)の木へのぼり、おもふ/程(ほど)/柿(かき)を/喰(くふ)所へ、 00071380M6/蛇(くちなハ)、/猿(さる)をぶくせんと/下(した)より/上(のぼ)り、/猿(さる)が/尻(しり)へくいつけバ、/猿(さる) 00071390M7ちつともさハがず、かふしたていを/頼政(よりまさ)が見ざよかろ。 00071400¥N4¥J 00071410¥X/奉公人(ほうこうにん)の/述懐(しゆつくハい) 00071420M10/縁(えん)があつて、いよ+こちに/奉公(ほうこう)するか。そんなら(二オ) 00071430M11(二ウ・三オ挿絵)こちにハ二/度(ど)より/外(ほか)にハ/食(めし)をくハせぬが/合= 00071440M12点(かつ=てん)か。アヽ二/度(ど)お/食(めし)をたべますれバかたじけ/□□□□((なふござカ))りま 00071450M13すと、/悦(よろこ)んでつとめけるに、/来(く)る/日(ひ)もあくる/日(ひ)も/茶粥(ちやかゆ)ばか 00071460M14り/喰(くハ)しけれバ、奉公人、/晩方(ばんがた)にハ/腹(はら)さびしく、人をはめる 00071470M15やうな/旦那(だんな)殿じやと/腹(はら)をたつれバ、旦那/聞(きい)て、わりやはめ 00071480M16たといふてつぶやくが、/主(しう)が/偽(いつハ)りいふてたつものか。アヽ 00071490M17旦那さま。おつしやりますな。/居(ゐ)まする/時(とき)に、二/度(ど)より/外(ほか) 00071500M18/食(めし)を/喰(くハ)さぬとおつしやつたゆへ、/在所(ざいしよ)で/粉(こ)ふり/雑水(そうすい)や(三 00071510M19ウ)/麦(むぎ)のちやがゆにあいて御奉公に出ましたニ、参つてか 00071520¥P237 00071530L1ら卅日の/上(うへ)も、/朝晩(あさばん)ちやがゆバかり/喰(くハ)させらるゝ。/是(これ)がな 00071540L2んと、奉公人をはめさしやるでハないか。イヤ+はめハせ 00071550L3ぬ。こちにハ/生食(きめし)ハ、/盆(ほん)と正月と二/度(ど)より外ハ/喰(くハ)せぬによ 00071560L4つて、二度より外ハ/食(めし)をくハさぬといふたハさて。 00071570¥N5¥J 00071580¥X/奇妙(きめう)な/痔(ぢ)の/薬(くすり) 00071590L7ちと御/見舞(ミまい)申たふぞんじたれど、/寒気(かんき)で/痔(ぢ)がおこつて、ど 00071600L8こへも/出(で)ませぬゆへに、御ぶさたにな(四オ)ります。ヤア 00071610L9こなたハ/痔(ち)がござるか。それにハ/奇妙(きめう)な/薬(くすり)がござる。/教(おしへ)て 00071620L10しんぜふ。/飴(あめ)やにある/粉(こ)を/買(かい)にやつてふりかけさしやると、 00071630L11/忽(たちまち)かたまつてなをります。それハ心やすい薬でござるが、 00071640L12こなたもどれからぞ/伝授(でんじゆ)なされたか。ハテ/医書(ゐしよ)に、あめふ 00071650L13つてぢかたまるとござる。 00071660¥N6¥J 00071670¥X/家業(かげう)によせての/挨拶(あいさつ) 00071680L16/十露盤(そろばん)/自慢(じまん)の/算者(さんじや)と/小鼓打(こつゝミうち)とが、見せニ/咄(はなし)てゐる所へ、/鉢(はち) 00071690L17たゝきが/通(とを)りけれバ、米をやりて、とふ(四ウ)まいか、うそ 00071700L18/曇(くも)つた/日(ひ)じやが、/雨(あめ)ハふりますまいかととへバ、はちたゝ 00071710L19きがいふにハ、ちやつせんに入たものでござらふといへハ、 00071720M1/算者(さんじや)が、いや+、/是(これ)ハ/見一(けんいち)けんやうじやといふを、/小鼓= 00071730M2打(こつゝミ=うち)が、ハテこりやチツホぐれでござると、それ+の/家業(かけう) 00071740M3でいひけり。 00071750¥N7¥J 00071760¥X/蛸(たこ)の/料理(りやうり)/好(ごの)ミ 00071770M6川口へ/石持(はぜ)つりに/若(わか)い/者(もの)共五六人、/屋形船(やかたふね)にのりてゆきけ 00071780M7るに、むかふより/猟船(れうせん)/来(きた)るを見て、さいわひしや。よい/肴(さかな) 00071790M8があらバ、/買(かふ)て/料理(れうり)して/喰(くハ)ふ(五オ)とよび、何があるぞと 00071800M9とへバ、大かた/売(うつ)てまい/((つ脱カ))た。/蛸(たこ)の/生(いき)たが一/疋(ひき)ござると、/首(くひ) 00071810M10すぢつかんでひきあげてミせれバ、コリヤよからふと、/直(ね)を 00071820M11して代はらい、/扨(さて)/生(いき)た/蛸(たこ)をとらまへてゐて、さあ/料理(れうり)ハど 00071830M12ふしたものであらふぞといへバ、/桜煮(さくらに)かわれら/好(すき)なれバ、 00071840M13/薄(うす)ふ/切(きつ)てさくらに+といふを、イヤ+おれハ/酢(す)かけにし 00071850M14て/肴(さかな)にせふといへば、/身(ミ)どもハ/歯(は)がわるいによつて、/江戸= 00071860M15煮(ゑど=に)にしてたへふと、/面&(めん+)心+に/好(この)ミて、此せんぎはてね 00071870M16バ、(五ウ)(六オ挿絵)たこハたいくつして、あくび/片手(かたて)に、 00071880M17コリヤ又せいのつきる/事(こと)じや。さあ+、どちらへ成共/片(かた)づ 00071890M18くやうに、びんぼ/鬮(くし)とらしやれと、八/本(ほん)の/足(あし)をつき出した。 00071900¥P238 00071910¥G 00071920¥N8¥J 00071930¥X/名物(めいぶつ)の/南禅寺豆腐(なんせんしどうふ) 00071940L14/真如堂(しんによだう)から/黒谷(くろだに)へまいり、/下向(げかう)に南禅寺/前(まへ)のとうふ/茶屋(ぢやや)へ 00071950L15はいり、/名物(めいぶつ)のとうふ/喰(くハ)んと/上(あが)つて/台所(だいところ)をミれバ、/世(よ)にい 00071960L16ふ百/頬(づら)とやらにて、/小(こ)づらにくげにしかんでゐる/親仁(おやぢ)あり。 00071970L17/茶(ちや)をもてくる/女(をなご)に、あのおやぢハ/爰(こゝ)の/亭主(ていしゆ)か。かふした/客(きやく) 00071980L18する(六ウ)所のあるじにハ/似合(にあわ)ぬ、つらくせのわるい/男(おとこ)じ 00071990L19やといへバ、下女/打笑(うちわら)ひ、アレハこれの/旦那(たんな)でハござりま 00072000M1せぬ。/芥子(からし)をとく人でござるといふ。ムヽおれハ又ていし 00072010M2ゆなれバ人のくずじやとおもふたが、からしときとハあん 00072020M3の/外(ほか)じや。 00072030¥N9¥J 00072040¥X/村中(むらぢう)の/泪(なミだ)/雨乞(あまごい)の/祈(いのり) 00072050M6/永(なが)の/夏中(なつぢう)一/滴(てき)も/雨(あめ)ふらねバ、/田(た)に水/絶(たへ)て村中なんぎし、所 00072060M7の/氏神(うぢがミ)の/神主(かんぬし)へ/雨乞(あまごい)のいのりをたのミけるに、神主、村の 00072070M8/溜池(ためいけ)の/前(まへ)に/幣白(へいハく)をたて、/今日(けふ)を(七オ)/晴(はれ)と、/取(とつ)ておきの/装= 00072080M9束(しやう=ぞく)を/着(き)かざり、/買立烏帽(かいたてゑぼし)を/着(ちやく)し、/雨乞(あまごい)の/祈祷(きとう)に/出(で)られける 00072090M10を、庄屋どの見られて、コレハ/常(つね)とちがふて、さて+見 00072100M11事の御しやうぞくとほめられければ、神主/自慢(じまん)の/髭(ひけ)をなで、 00072110M12/在所中(ざいしよちう)からのおたのミゆへ、ずいぶんと大事に存じて一/跡(せき) 00072120M13/着(き)て/出(て)ましたが、/雨(あめ)がふらねばようこざるが。 00072130¥Y1軽口独機嫌一巻終(七ウ) 00072140¥P239 00072150¥Y1/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきけん)第二 00072160L3目△△録 00072170L5○△/矢数(やかず)の/腰(こし)おれ 00072180L6○△/神鳴(かミなり)を/知(しつ)た人 00072190L7○△/日本(につほん)一の/剛(こう)の/者(もの) 00072200L8○△/医者(ゐしや)の/三本(さんぼん)/論義(ろんぎ) 00072210L9○△/名月(めいげつ)の/夜食(やしよく) 00072220L10○△皃見世(かほミせ)/前(まへ)の御/医者(ゐしや)(オ) 00072230L11○△/誂物(あつらへもの)の/註文(ちうもん)に/判字物(はんじもの) 00072240L12○△/親子共(おやことも)に/好色者(こうしよくもの) 00072250L13○△四人の/僭上者(せんしやうもの) 00072260L14○△/油断(ゆたん)のならぬ/昼鳶(ひるとび)(ウ) 00072270¥T1/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきげん)第二 00072280¥N1¥J 00072290¥X/矢数(やかず)の/腰(こし)おれ 00072300M5とつと/昔(むかし)、/天下(てんか)/矢(や)かずをのぞむ人、/大分(たいふん)/物(もの)を入て/堂(どう)のまハ 00072310M6りに/行馬(やらい)をゆハせ、大かゞりを/所(しよ)+にたかせ、/爰(こゝ)を大事 00072320M7とゐハれけるに、/夜半(よなか)じぶんから、やう+二ぶ三ふの/通(とを) 00072330M8り/矢(や)なれバ、つき+のしゆ、あせりゐる所へ、あんばい 00072340M9よし+と/売来(うりきた)れバ、あんばいよしとハ/先(まつ)/吉相(きつさう)なり。物ハ 00072350M10いわゐからじやと/皆(ミな)+/買(かい)て、/射(ゐ)る人にも、いハふてじや 00072360M11と少ししんぜ、(一オ)/端(はた)まハりの/者(もの)共もくいけるに、いよ 00072370M12+/深夜(しんや)におよぶほど/通(とを)らねバ、是ハあんばいわるしじや 00072380M13と、手に/汗(あせ)にぎりしに、一人がいふにハ、じたいあんばい 00072390M14よしハいらぬものじやあつたに。なぜに。ハテ/焼(やか)ずに/味噌(ミそ)を 00072400M15/付(つけ)るものじやニ。 00072410¥N2¥J 00072420¥X/神鳴(かミなり)を/知(しつ)た人 00072430M18夕立あかりに、二三人見せにて、さても+、けふの/神鳴(かミなり) 00072440M19ハきびしいものじや。どこぞちかくへおちたであろふと/評(ひやう) 00072450¥P240 00072460¥G 00072470L12ばんしてゐるに、一人がいふにハ、/女(をなご)でも、あの(一ウ)や 00072480L13うにきつい/鳴音(なりをと)をさするものじやといへバ、をなごとハ何 00072490L14の事ぞ。ハテかミなりハ女じやが、きつい物じやといふ事 00072500L15じや。ハテわけもない。あれほど/虎(とら)の/皮(かハ)のふんどしかいて 00072510L16まてゐるものを、女じやとハもんもうなと打こめバ、イヤ 00072520L17+たしかに女で、/名(な)まで/知(しつ)てゐると、まがほに成ていへ 00072530L18バ、そんなら/名(な)ハ何といふそ。女じやといふしようこがあ 00072540L19るか。成ほど+、むかしから/神鳴(かミなり)おちよといふハさて。 00072550¥N3¥J 00072560¥X日本一の/剛(がう)の/者(もの)(二オ) 00072570M3二三人より合てはなしをしてゐけるが、/昔(むかし)から日本一のか 00072580M4うのものといふハ、きつう/強(つよ)い人であつたものであらふの。 00072590M5いかにも+。つよけれバこそ日本一のかうのものといふ 00072600M6ハさてといふを、一人つく+/聞(きい)てゐて、いや+つよい 00072610M7ともいハれぬ。かうの物の/相手(あいて)が、ぬか/味噌(ミそ)じやもの。 00072620¥N4¥J 00072630¥X/医者(ゐしや)の三/本(ぼん)/論義(ろんぎ) 00072640M10ゐしや/衆(しゆ)三人、/表(をもて)にはなしをしてゐられけるに、/格子(かうし)のさ 00072650M11きにて/小便(せうべん)する/音(をと)のだら+とするを/聞(きい)て、一人の(二ウ) 00072660M12(三オ挿絵)ゐしやのいへるハ、ミれバ/若(わか)いものじやが、/勢(いきお) 00072670M13ひのない/小用(しやうやう)の/仕(し)やうじや。あれハ/下元(げけん)のよわミ、たしか 00072680M14に/腎虚(じんきよ)とミましたとあれば、今一人が、イヤ+せつしやの 00072690M15見たてハ、/淋病(りんびやう)ゆへに/小用(しやうやう)がだらつくかと存るといわ/((る脱カ))れバ、 00072700M16又一人のゐしや、/額(ひたい)にしわよせ、じんきよでもりんびやう 00072710M17でもござらぬ。/内(ない)に/屁(へ)をふくんでゐるとかんがへました。 00072720¥N5¥J 00072730¥X/名月(めいげつ)の/夜食(やしよく) 00072740¥P241 00072750L1/名月(めいけつ)の/晩(ばん)に/客(きやく)/来(きた□)て、はなしゐたりけれバ、/内義(ないぎ)/座(ざ)(三ウ)し 00072760L2きへ出て、けつかうにものをいハふとて、/皆(ミな)様ゆるりとお 00072770L3あそびなされませ。おなら/茶(ちや)をして/上(あげ)ませふといわるれば、 00072780L4/亭主(ていしゆ)きのとくがりて、おなら茶とハぶしつけなと、しかり 00072790L5けるを/上客(しやうきやく)/聞(きい)て、イヤ+御/内義(ないぎ)様のおならちやといわ 00072800L6しやる/筈(はづ)じや。/芋名月(いもめいげつ)じやもの。 00072810¥N6¥J 00072820¥X/皃(かほ)見せ/前(まへ)の/御医者(おゐしや) 00072830L9御/内義(ないぎ)の/気色(きしよく)がよいじぶんに/快気(くわいき)で一/段(だん)に存る。もう/薬(くすり)ハ 00072840L10おかしやれ。ようござる。まことに/御(お)かげで(四オ)女ども 00072850L11が/達者(たつしや)になりまして、かたじけなふござります。扨わたく 00072860L12し、/当(とう)かほミせから/出(て)ますが、どふぞおまへの御/薬(くすり)にあや 00072870L13かりたふぞんじます。ナント/身(ミ)どもが薬にあやかりたいと 00072880L14ハな。ハテおまへの御薬/同然(どうぜん)に、きゝますやうにとねがひ 00072890L15ます。ハレヤレ/役者(やくしや)しゆといふ物ハ、よい/口(くち)をおつしやると、 00072900L16ゑミをふくんでかへられし/跡(あと)へ、又不/断(だん)心やすうわせるゐ 00072910L17しやの見えて、/新部子(しんべこ)の松太郎が/風(かぜ)ハよいか。まそつと薬 00072920L18やらふものといわるゝ所へ、女/房(ぼう)いでゝ、ていしゆが今い 00072930L19ふた/口(くち)/相(あい)いふて、此ゐしやも/悦(よろこ)ばせんと、(四ウ)ぬしハ/皃(かほ) 00072940M1ミせのいひ/合(あハ)せに、しばゐへまいられましたが、とふぞ/皃(かほ) 00072950M2ミせのぬしの/芸(げい)を、おまへの御薬にあやからせたふござり 00072960M3ます。ソレハどふいふ心でいわしやる。サレバおまへの御薬 00072970M4/同然(とうせん)に、よう/当(あた)りますやうにといふてのけられた。 00072980¥N7¥J 00072990¥X/誂物(あつらへもの)の/註文(ちうもん)に/判字物(はんじもの) 00073000M7/田舎(いなか)より、/誂(あつらへ)物のちうもんに、はんじ物をしてのぼりけり。 00073010M8すノ/字(じ)を/赤(あか)い/絵(ゑ)の/具(ぐ)にて/書(かい)てのほしぬ。/問屋(といや)の/手代(てだい)どもあ 00073020¥G 00073030¥P242 00073040L1つまりて/首(くび)をひねり、一人がいふハ、/是(これ)ハ(五オ)とけぬは 00073050L2んじものをのぼして。ほつと/赤(あか)ずといふ心じや。イヤ+/是(これ) 00073060L3ハ/朱(しゆ)すを/買(かふ)てくだせといふ事じやといへば、今一人がすゝ 00073070L4ミ/出(て)て、是が朱で/書(かい)てあらバ/朱(しゆ)すともいわれふが、/丹(たん)で/書(かい) 00073080L5てあるによつて丹すじやといへバ、のこつたうまい/手代(てだい)が、 00073090L6たんすとハようはんじやつた。おれも/長(なが)もちとまでハ/気(き)が 00073100L7ついた。 00073110¥N8¥J 00073120¥X/親子(おやこ)ともに/好色者(こうしよくもの) 00073130L10おやも/子(こ)も/悪性(あくせう)にて、/毎晩(まいばん)ぎをん/八坂(やさか)/辺(へん)の/色茶屋(いろぢや)へぞめき 00073140L11に/行(ゆき)けるが、おやぢハ/早(はや)くかへられ、せがれハ(五ウ)(六オ 00073150L12挿絵)まだかへらぬかと内義にとハれければ、イヤまだでご 00073160L13ざる。是ハ+にくいやつの。/深遊(ふかあそ)びをしおる。どこにお 00073170L14るぞ。よんで/来(き)て/急度(きつと)ゐけんせふと又出てゆかれ、むす/子(こ) 00073180L15ハたつねずに、なわてを一/軒(けん)+、/見(けん)してまいられけるに、 00073190L16/北(きた)の/方(はう)からむす/子(こ)、かへりがけに/親仁(おやぢ)に/逢(あふ)て、コリヤおや 00073200L17ぢ様。どこへゆかしやる。ヤア/忰(せがれ)か。いんだと、かならず 00073210L18女ぼう/共(とも)に、/爰(こゝ)であふたといふてくれな。 00073220¥N9¥J 00073230¥X四人の/僣上(せんしやう)もの 00073240M3むまれついてせんしやうをいひたがる者共四人出あい、一 00073250M4人(六ウ)がいふにハ、/吾等(われら)が/坪(つほ)の/内(うち)に/当年(たうねん)/牡丹(ぼたん)をこしらへ、 00073260M5/諸方(しよほう)から/名種(めいたね)をもらひあつめ/植(うへ)させけるに、此ごろ/盛(さかり)にて 00073270M6ながめにあかぬ所に、とふして/知(しる)/事(こと)やら、/一昨日(おとゝい)から/唐獅= 00073280M7子(からし=ゝ)が/来(き)てぼたんにたハふるゝ/躰(てい)、どふもいわれぬおもしろ 00073290M8い事じやといへバ、身共が方にハ一/丁(てう)/余(あまり)の明地があるゆへ、 00073300M9/桐(きり)の/木(き)を/近(ちか)い/比(ころ)からうへさせたれバ、/先度(せんど)から/鳳凰(ほうわう)がとん 00073310M10で/来(き)て/羽(は)をやすめてゐるが、中+/自余(じよ)の/鳥(とり)とハちがふて 00073320M11見事なものじやといふを、今一人きゝより、/皆(ミな)の/者(もの)がいふ。 00073330M12せんしやうの/上(うへ)をゆかんとおもひ、(七オ)せつしやが/裏(うら)に 00073340M13ハ/祖父(ぢい)の/代(だい)から大/薮(やぶ)があつて、/尺(しやく)にあまる大/竹(だけ)が/生(はへ)てある。 00073350M14/風(かせ)のきつく/吹(ふく)じぶんハ/虎(とら)が/出(で)て、やぶをあらしてたまらぬ 00073360M15といへバ、四人めのせん/上(しやう)もの、/皆(ミな)の/者(もの)に/先(せん)を/越(こさ)れていふ 00073370M16事なく、さま※/思案(しあん)してすゝみ出、こちのうらにハ大き 00073380M17な/柳(やなぎ)の木があるが、此ごろハ/毎日(まいにち)/梅若(むめわか)のゆうれいが/出(て)て/念= 00073390M18仏(ねん=ぶつ)申すが、/哀(あハれ)なことじや。 00073400¥P243 00073410¥N10¥J 00073420¥X/油断(ゆたん)のならぬ/昼鳶(ひるとび) 00073430L3やう+此/季(き)からおいたでつちに、/風呂敷(ふろしき)に/袷(あハせ)を(七ウ)つ 00073440L4ゝミもたせて/東山(ひかしやま)へゆかるゝに、ヤイ三太。京ハ/昼(ひる)でもう 00073450L5つかりとしてとをれバ、ぬす人が物を/取程(とるほど)に、とられぬや 00073460L6うに/気(き)をつけて、ふろしきづゝミをもてといひつけて、/供(とも) 00073470L7につれて/出(で)られけるに、しばゐ/前(まへ)の人ごミの所にて、でつ 00073480L8ち/旦那(だんな)の/袖(そで)を引、いかい事の人でござりますほどに、もの 00073490L9をとられぬやうに、ふところに御/気(き)をつけられませといへ 00073500L10バ、/旦那(だんな)/感(かん)じ、よう/気(き)をつけた。おれハ/用心(ようじん)してゐるほど 00073510L11に、/我(わが)もつたふろしきつゝミに/気(き)を/付(つけ)よといわれけ(八オ) 00073520L12れバ、イヤわたくしがふろしきづゝミを、今とられました 00073530L13によつて、それでおまへに/気(き)を/付(つけ)ます。 00073540¥Y1軽口独機嫌二巻終(八ウ) 00073550¥Y1/軽口(かるくち)/独機嫌(ひとりきけん)第三 00073560M3目△△録 00073570M5○△/幾人(いくたり)/産(うめ)ど/娘(むすめ)の子 00073580M6○△/胆(きも)の/潰(つふ)れた京の/看板(かんばん) 00073590M7○△/座頭(ざとう)の/坊(ぼう)の/挑灯(てうちん) 00073600M8○△/欲(よく)の/深(ふか)ひ/問屋(といや)ばすわ 00073610M9○△/隠(かく)れもない/葬礼好(そうれいすき) 00073620M10○△/看板(かんばん)ハ/輝(かゝや)く/鏡屋(かゞミや)(オ) 00073630M11○△/無筆(むひつ)の/親(おや)と/子(こ) 00073640M12○△/心斗(こゝろバかり)の/夕節(ゆふぜち)(ウ) 00073650¥P244 00073660¥T1軽口独機嫌三巻 00073670¥N1¥J 00073680¥X/幾人(いくたり)/産(うめ)ど/娘(むすめ)の子 00073690L5/去(さる)人、/娘(むすめ)の/子(こ)を/始(はじめ)てもうけ、おはやとつけて/重宝(てうほう)し、はや 00073700L6といふ/名(な)ハ/好(すい)た名じや。今からいくたりできたと、はやの 00073710L7/字(じ)をつけふといふてゐらるゝ内に、又/娘(むすめ)/出来(でき)けれバ、やが 00073720L8て/名(な)をバ小はやと/付(つけ)られける。/内義(ないぎ)いわるゝハ、こなたの 00073730L9なんぼはやの字が/好(すき)でも、此上に娘ができたら、はやの/字(じ) 00073740L10ハつけられまいといわるれバ、ていしゆ/片(かた)(一オ)いぢもの 00073750L11にて、いや+何人うまれても、はやの/字(じ)を/付(つけ)ると、/内義(ないぎ) 00073760L12の/身持(ミもち)にならるゝを/待(まつ)てゐられしが、ほどなふくハいにん 00073770L13して、/今度(こんど)も/安(やす)う/産(さん)をせられ、あまつさへ/二子(ふたこ)をうむで、 00073780L14しかもふたりながら/女(をなご)の/子(こ)なれば、内義/椅子(いす)にもたれかゝ 00073790L15りながら、コレ/旦那(たんな)どの。此ふたりのむすめに、もうはや 00073800L16の字ハ付られまいが。ハテそこをつけずにおくまいかと、 00073810L17/二子(ふたこ)の/娘(むすめ)共の名を、いやはや、又はやとつけてよびけり。 00073820L18(一ウ) 00073830¥N2¥J 00073840¥X/胆(きも)の/潰(つふ)れた京の/看板(かんばん) 00073850M3/遠国者(をんごくもの)/都(ミやこ)へのぼり、京の/町(まち)をあるきし所に、ある見世に大 00073860M4/看板(かんばん)に、/長崎(ながさき)こんへいとたいまいの/櫛(くし)所とあるを、/彼(かの)遠国 00073870M5者よんで見て、さて+/都(ミやこ)ほどあつて、大きな/事(こと)を引請て、 00073880M6せわをめさるる人がある。長崎/権兵衛(ごんへい)と/大(だい)まいの/公事所(くじどころ)と 00073890M7有。/身共等(ミともら)が山/公事(くじ)の/世話(せわ)もたのむべいか。 00073900¥N3¥J 00073910¥X/座頭(ざとう)の/坊(ぼう)の/挑灯(ちようちん) 00073920M10/勘(かん)の/深(ふか)ひ/座頭(さとう)、/去方(さるかた)へゆき、/夜(よ)に入てかへる/時(とき)、(二オ)/手= 00073930M11挑灯(て=ちようちん)かして下されといへば、そなた。目もミへぬなりして、 00073940M12挑灯何にしやるといへば、/闇(やミ)の/夜(よ)にハ目あきが/行(ゆき)あたりま 00073950M13す/故(ゆへ)、ちやうちんがなければあるかれませぬと、手ぢやう 00073960M14ちんかりてさげてゆくに、むかふから/来(く)るもの、ほうど/行(ゆき) 00073970M15あたれば、/座頭(ざとう)はらをたて、/生目(いきめ)くらめが。此挑灯が目に 00073980M16かゝらぬかと/上(あけ)て見せれば、ソリヤ何ぬかす。此/闇(やミ)の/夜(よ)に、 00073990M17きえてあるちやうちんが、どふミへる物じや。ム、きへて 00074000M18あるかの。そんなら挑灯にも/杖(つへ)つ(二ウ)(三オ挿絵)かせず 00074010M19バなるまい。 00074020¥P245 00074030¥G 00074040¥N4¥J 00074050¥X/欲(よく)の/深(ふか)ひ/問屋(といや)ばすは 00074060L14井筒やといふ北国/問(とい)屋に、ミやといふ小うつくしいはすわ 00074070L15ありしを、/敦賀(つるが)の/客(きやく)、此問屋へ/着(つき)て、/彼(かの)ミやを目にかけ、 00074080L16くどいてミれどがてんせぬゆへ、/明日(あす)立/宵(よい)に/夜(よ)ふけて、ミ 00074090L17やがねやへ/忍(しの)び、そなたにやらふと思ふて、国での/手織(ており)の 00074100L18/毛綿(もめん)をミやげにもつてのぼり、やるまがなさにおそなハつ 00074110L19て、あら+しけれど、正月/布子(ぬのこ)に/染(そめ)てきやと、くらがり 00074120M1(三ウ)にて/渡(わた)せバ、ほんに、にくうないお心ざしじやと/打(うち) 00074130M2と/げ((ママ))て、/仮(かり)の/枕(まくら)をならべ、/彼客(かのきやく)ハ/出立(でたち)いそひで、夜の中に 00074140M3立てゆきけり。ミやハ心うれしく、正月/布子(ぬのこ)ハしてやつた 00074150M4と、夜もあけぬれバ/部(へ)やから/取(とつ)て/来(きて)て見る/時(とき)、見世の手代 00074160M5共そろ+おきて、是ハおもての/暖簾(のうれん)がミへぬとせんぎす 00074170M6るを/聞(きい)てミれば、ミやがもらふたハ、もめんにあらず、$ 00074180M7染/込(こみ)ののうれんなれば、身の/恥(はぢ)をいわずに、/客(きやく)のこといふ 00074190M8てのゝしりけれバ、手代共おかしがり、(四オ)のうれんに 00074200M9/井筒(ゐつゝ)がついてあるもの。はまりやたが/道理(どうり)+。/客(きやく)の所も 00074210M10つるがものじや。 00074220¥N5¥J 00074230¥X/隠(かく)れもない/葬礼好(そうれいずき) 00074240M13/蓼喰虫(たでくふむし)もすき※とて、人のいやがる/葬礼(そうれい)をむしやうに/好(すい) 00074250M14て、/不断(ふだん)/上下(かミしも)こしらへおき、かどをそうれいが/通(とを)れば、ち 00074260M15かづきでもない/葬(そう)にも上下/着(き)て、/輿(こし)について/行(ゆき)けるに、此 00074270M16中ハ/葬礼(そうれい)のとぎれにて、久しう/門(かと)を/通(とを)らねバ、さりとハ/慰(なぐさ) 00074280M17ミがない。ちと七/条(てう)の/火屋(ひや)まで/行(ゆき)てミるべしと、/火屋(ひや)へ 00074290M18(四ウ)ゆきしに、むかふから/葬礼(そうれい)がくれバ/悦(よろこ)ひ、どふでも所 00074300M19じや。/町(まち)かたにハ此/比(ころ)ハ/払底(ふつてい)したに、さすがハ/所(ところ)がらじや 00074310¥P246 00074320L1と、此そうれいの/輿(こし)についてゆき、/火(ひ)屋を三/遍(べん)まハれば、 00074330L2/彼(かの)そうれい/好(ずき)のおやぢ、三度ハ/祝(いは)ひ/事(ごと)に/似(に)てわるい。四/遍(へん) 00074340L3まハらしやれとさしづすれバ、/白衣(いろ)/着(き)た/衆中(しゆぢう)見て、そなた、 00074350L4/誰(たれ)で此/葬(そう)の/支配(しはい)しやる。見/知(しら)ぬ人じやがと、/其(その)まゝ三/遍(べん)/廻(まハ) 00074360L5つてしまひけれバ、そうれい/好(ずき)のおやぢ、あたまをかいて、 00074370L6どふで/面&(めん+)の/家(いへ)から/出(だ)さぬものハ/自由(じゆう)にならぬ。(五オ) 00074380¥N6¥J 00074390¥X/看板(かんばん)ハ/輝(かヽや)く/鏡屋(かゞミや) 00074400L9/鏡(かゞミ)屋の見せに、大きなる鏡を/研立(とぎたて)て、/看板(かんばん)に出して/置(をき)けれ 00074410L10バ、/奴(やつこ)とをりて/立(たち)とまり、/幸(さいハい)だと、ふところより/毛(け)ぬき出 00074420L11して/髭(ひげ)ぬいてゐれバ、/往来(ゆきゝ)の人見て、是ハすかさぬ/事(こと)をし 00074430L12てゐる。さらばわれらも/額(ひたい)ぬかふと/立(たち)よりてぬくを見て、/拙= 00074440L13者(せつ=しや)も/鼻毛(はなげ)を仕らふと、/段(だん)+と/店前(ミせさき)へ人たまりて、をしあ 00074450L14ひて/髭(ひげ)/額(ひたい)をぬいて、どや+すれバ、かゞミやのていしゆ 00074460L15/興(けう)をさまし、此やうに人/立(だち)がしてハ、けん(五ウ)(六オ挿絵) 00074470L16くわがあらふもしれぬ。/皆(ミな)/追(をい)はらへといふを、/気転(きてん)のきい 00074480L17た/弟子(でし)が/鏡(かゝミ)とぎさし/棒(ほう)/持(もつ)て出、/門口(かどぐち)に/棒(ほう)つゝハつてゐて、 00074490L18さあ+/髭(ひげ)ぬいたしゆハ/西(にし)へ+。ぬかぬしゆハ/東(ひがし)へまハ 00074500L19らしやれ。 00074510¥G 00074520¥N7¥J 00074530¥X/無筆(むひつ)の/親(おや)と/子(こ) 00074540M14/無筆(むひつ)なるおやぢ、江戸にゐるむす/子(こ)にあひたふ思ひ、/状(ぜう)を 00074550M15やるべきも無筆ゆへ、/階子(はしご)にやいとすへた所を/絵(え)に/書(かい)てく 00074560M16だしけれバ、むす/子(こ)もおやぢ/同然(どうぜん)の無筆なれバ、ひらいて 00074570M17ミて、それ+とて、(六ウ)きうにのぼれといふ事とがて 00074580M18んし、その/返事(へんし)に、/階子(はしご)と/鐘木(しゆもく)/持(もつ)てゐる/膝行(いざり)を/書(かい)て/上(のほ)せけ 00074590M19れバ、おやぢミて女ぼうにむかひ、さて+、せがれめハ 00074600¥P247 00074610L1にくいやつじや。コレミヤ。いざりがしゆもくもつてゐると、 00074620L2はしごとを/書(かい)たハ、かねをたゝき/上(あげ)て/腰(こし)がぬけてのぼられ 00074630L3ぬといふ事じや。さたのかきりと/腹(ハら)をたつれバ、イヤ+こ 00074640L4なたのよミやうがわるい。/鐘木(しゆもく)バかりでかねがないといふ 00074650L5こと。いざりハはしごへ/上(のほ)ることがかなハぬといふ心で、 00074660L6かねがないゆへのぼら(七オ)れぬといふ事じやといへバ、 00074670L7さて+、せかれハいかいあて/字(じ)を/書(かき)おる。どこへもこんな 00074680L8あて/字(じ)を/書(かい)てやつたら、物ごとがちがハふ。/鐘木(しゆもく)バかりハ 00074690L9ないとよめれど、のぼることがならぬといふがあて/字(じ)じや。 00074700L10/正字(しやうじ)ハぬり/桶(おけ)の/端(はた)に/蛤(はまぐり)を/書(かけ)バ、どこへやつても、のぼられ 00074710L11ぬとよめるに。 00074720¥N8¥J 00074730¥X心/斗(バかり)の/夕節(ゆふぜち) 00074740L14/世(よ)にある人ハ、正月にハ/節(せち)をして/諸一門(しよいちもん)をよぶに、/鰤(ぶり)の/四= 00074750L15分一(し=ぶいち)さへかいかねた/貧家(ひんか)に、/女夫(めをと)/岩松(いハまつ)とて(七ウ)/坊主(ぼうず)の/子(こ) 00074760L16ひとり、以上三人/口(ぐち)いハふて、/夕節(ゆふぜち)の心もちにて、いハし 00074770L17を三/疋(びき)/買(かふ)て/岩松(いハまつ)に/焼(やか)せけるニ、岩松やきながら、コレ/嚊(かゝ)。 00074780L18此いわしハ/誰(たれ)が/喰(くふ)のぞ。ハテその/中(なか)で大きなハ/爺(とゝ)の。その 00074790L19/次(つぎ)ハかゝがの。三番ハ/坊(ぼん)がのじやほどに、ようやけよとい 00074800M1ひつけけれバ、此/子(こ)/悦(よろこ)び、/扇子(あふぎ)であふぎたて、あぶりゐて、 00074810M2ナフかゝ+、ちやつとおじや。とゝの/首(くび)が/落(おち)ると、いわし 00074820M3のあたまを/火箸(ひばし)でかゝへた。 00074830¥Y1軽口独機嫌三巻終(八オ) 00074840¥P248 00074850¥Y1軽口独機嫌第四 00074860L3目△△録 00074870L5○△/這出(はいて)の/根(ね)どい 00074880L6○△くじらうりと/口論(こうろん) 00074890L7○△ほし見せの/徳利(とくり) 00074900L8○△/親父(おやぢ)の/定癖(ぢやうくせ) 00074910L9○△/円光大師(えんくハうたいし)/御返答(ごへんとう) 00074920L10○△/親父(おやぢ)のぬけ参り(オ) 00074930¥T1軽口独機嫌第四 00074940¥N1¥J 00074950¥X/這出(はいで)の/根(ね)どい 00074960M5/表(おもて)へ/誰(たれ)やらをなご衆がミへた。かめよ。/出(で)よやい。アイど 00074970M6つちからござつた。イヤ/私(わたし)ハ此/町(てう)の/妙入(めうにう)よりまいりました 00074980M7が、/明日(あす)ハ/道入(だうにう)のひがんニあたられました。/明朝(めうてう)/是(これ)をお/菜(かず) 00074990M8になされて下されませとの御つかいに参りましたと、/里芋(さといも) 00075000M9を/重(ぢう)ばこにさし出せバ、/這出(はいで)のかめ、口上を/聞(きい)て、ぢうば 00075010M10こを/受(うけ)とり、コリヤ一升かゑと/使(つかい)の者にとへば、/内義(ないぎ)内に 00075020M11て(一オ)きゝ、/笑止(せうし)がりて、かめよ+と/呼入(よびこミ)、いかには 00075030M12いでじやとて、/余所(よそ)からいんしんに/来(く)るものを、一升かと 00075040M13いふてとふものか。/爰(こゝ)に/聞(きい)てゐて/汗(あせ)をかいたと、しかられ 00075050M14けれハ、此/這出(はいで)、ぬからぬ/皃(かほ)にて、それでも一升ニハすく 00075060M15ないもの。 00075070¥N2¥J 00075080¥X/鯨(くじら)うりと/口論(こうろん) 00075090M18コレ/鯨(くじら)/買(かふ)とよびこミ、身くじらを見て、コリヤくじらでハな 00075100M19い。/牛(うし)さふなといへバ、くじらうりはらをたて、大事のう 00075110¥P249 00075120L1り物に/難(なん)をつけ、/牛(うし)さふなといわれてハ、/外(ほか)で/買人(かいて)がない 00075130L2といひぶんして、/亭主(ていしゆ)とけんくハに成て(一ウ)つかミあふ 00075140L3を、となりのまんぢうやのていしゆ出て、両方へわけて、 00075150L4コレくじらや。そなたのくじらを/牛(うし)さふなといわれたとて、 00075160L5あんまりはらをたちやるな。/既(すで)にこちのまんぢうを、ゆき 00075170L6とをりの人が見て、あのまんぢうハむまさふなといへど、 00075180L7かんにんしてゐるわいの。 00075190¥N3¥J 00075200¥Xほし見せの/徳利(とくり) 00075210L10さる所の/旦那(たんな)、もの参りの/下向(けかう)に、いろ+の/古道具(ふるだうぐ)の/出(で) 00075220L11てあるほし見せに、きれいなる/徳利(とくり)(二オ)/出(で)てありしをミ 00075230L12て立より、/底(そこ)などに/疵(きず)ハないかと取まハして見らるゝ/中(うち)に、 00075240L13ひよつと/徳利(とくり)のくちへ/指(ゆび)をさしこまれしに、ぬけず。いろ 00075250L14+ともがくるほどぬけねバ、せふ/事(こと)なくて、是ハいくら 00075260L15ぞととハるれば、ほし見せのおやぢ、ぬけぬをミてむしや 00075270L16うに/高(たか)ばり、そりや五百文でござるといへば、ハレやくた 00075280L17いもない。卅バかりするものを、ぬけぬを見かけて/足(あし)もと 00075290L18見るやうな。五十にしやれといへどまけぬを、/側(そバ)に/乞食(こつじき)見 00075300L19てゐて/笑止(せうし)がり、あれハ(二ウ)(三オ挿絵)/気(き)をしづめてぬ 00075310M1かしやれば、ついぬける事じやにと、あせりゐる/中(うち)、とか 00075320M2くぬけぬゆへに、だん+/付上(つけあけ)、二百にしてかいとり、/道(ミち) 00075330M3+ぬいて見らるれどぬけぬを、/律義(りちぎ)なるこつじきにて、 00075340M4せうしに思ひ、ついてゆくほどに、/彼(かの)人/我(わが)内へかへり、お 00075350M5もてへ/上(あが)り、ぬいて見らるれどもぬけぬを、/乞食(こつじき)/今(いま)ハたま 00075360M6りかねて、おもてのかうしより/首(くび)をずつと入て、それハ/気(き) 00075370M7をしづめて、/徳利(とくり)の/口(くち)へあぶらをぬつてぬかしやりますと、 00075380M8ついぬけますといふを見て、をのれ、こつ(三ウ)じきのむ 00075390M9さいざまで、/格子(かうし)からくびを入て、どふした事じや。いに 00075400M10おるまいかとさん※しかれバ、こつじきどうてんして、 00075410M11/首(くび)をぬかん+とすれどぬけねバ、こつじき/難義(なんぎ)して、申 00075420M12し/旦那(たんな)様。此/家(いへ)、うらしやりませぬか。やすかかふて、い 00075430M13んで/首(くひ)がぬきたふござります。 00075440¥N4¥J 00075450¥Xおやぢの/定(ぢやう)くせ 00075460M16コレおやぢさま。/子(こ)の/口(くち)から申ハすいさんなれど、/町(てう)でも 00075470M17うわさがござるゆへに申す。/御法躰(ごほつたい)をなされ、/後生(ごしやう)でもお 00075480M18ねがひなさるゝじぶんに、/芝居事(しバゐごと)がお/好(すき)で(四オ)/開帳(かいちやう)まい 00075490M19りなされても、/役者(やくしや)のこハいろ、物まねを/聞(きい)て、おかへり 00075500¥P250 00075510¥G 00075520L12なされてハ、/不断(ふだん)/内(うち)でも/役者(やくしや)のこハいろをけいこなさるゝ。 00075530L13いかにしても御とし/不相応(ふさうおう)にござれば、もはや物まねを 00075540L14やめさせ候て、ちと/朝晩(あさばん)に/宥経(かんきん)をなされませ。いかにも 00075550L15+。おれもさふおもへど、/癖(くせ)になつたさふな。/町(てう)でも/沙= 00075560L16汰(さ=た)があらバ/止(やめ)ずハ成まい。もうすつきり物まねせまい。/明= 00075570L17日(あ=す)ハ/母(はゝ)の/日(ひ)じや。かんきんせふと/持仏堂(ぢぶつどう)へミあかし上、/鉦(かね) 00075580L18をたゝき、南無阿ミた仏+と申され、/願以此功徳平等施一(くわんにしくとくへうとうせ) 00075590L19(四ウ)/切同発菩提心往生安楽国(さいとうほつぼだいしんわうじやうあんらくこく)とハ、ぶてうほう申ました。 00075600¥N5¥J 00075610¥X/円光大師(ゑんくハうだいし)/御返答(こへんとう) 00075620M3/寿永(しゆえい)三年十月廿日ニ/法然(ほうねん)上人目/病(やミ)の/地蔵(ぢぞう)へたちよらせ給へ 00075630M4バ、地(ち)ぞうぼさつ、/誰(たれ)じやととがめ給へば、お目がわるふ 00075640M5ござりますか。/新(しん)くろだにの/法然坊(ほうねんほう)でござりますが、せい 00075650M6もんの/宮(ミや)へまいりました/故(ゆへ)、ちよと立よりました。ハレヤレ 00075660M7法然坊の/商人(あきうど)と同じやうニ、せいもんの/神(かミ)へ何しに参られ 00075670M8たぞ。/愚僧(ぐそう)も一/枚(まい)(五オ)/起請(きしやう)/書(かい)たゆへに、はらいニまいつ 00075680M9た。 00075690¥N6¥J 00075700¥X/親父(おやぢ)のぬけ参り 00075710M12うけ給ハれば/御参宮(ごさんぐう)なさるゝよし。/先(まづ)おめでたい。されば 00075720M13+ぬけ参りいたすが、/年(とし)/寄(よつ)て/子(こ)ゆへに、思ひもよらぬお 00075730M14伊勢さまへ、御くらうかけに参ります。しらしやるとをり、 00075740M15むす子があまり、/身共(ミとも)へ不/孝(かう)にござるゆへ、/度(たび)+ゐけん 00075750M16いたせど/聞(きゝ)ませぬゆへ、何とぞ心をなをし、かう+にな 00075760M17るやうに、それをいのりに/参宮(さんぐう)をいたさふと/存(ぞんじ)/立(たち)たれば、 00075770M18はやそのこゝろが(五ウ)あなたへ/通(つう)じたやら、/今朝(けさ)むす子 00075780M19が、/年(とし)よらしやつてひとりハ心もとない。/付(つい)て参らふと申 00075790¥P251 00075800L1て、かう+な心ざしが/出(で)たと/存(ぞん)じてよろこびます。/身(ミ)共 00075810L2ハ/国阿(こくあ)へ参ります。/跡(あと)でゆるりと/咄(はな)さしやれと/出(で)てゆかれ 00075820L3し/跡(あと)へ、むす/子(こ)/外(そと)より帰り、これハ宇兵衛様。ようござりま 00075830L4した。サレバ今もおやぢの今度のさんぐうに、ひとりハ心 00075840L5もとない、ついてゆくとむす/子(こ)が申といふて、きついよろ 00075850L6こびじやが、どふしてそんな心ざしにハなられたぞ。ハテ 00075860L7おやぢを此度/手(て)ばなして、ひとりハ(六オ)さんぐうさせら 00075870L8れませぬ。ついてゆかにや、/下向(げかう)ニてつきり/多賀(たか)へまいら 00075880L9るゝであらふによつて、参らせまいためについてゆきます。 00075890¥N7¥J 00075900¥X/田舎(いなか)/出家(しゆつけ)の/料理(りやうり)/好(この)ミ 00075910L12/夷中衆(ゐなかしゆ)じやと京/衆(しゆ)がつまんだやうにいへど、/田舎(いなか)ハ/律義(りちぎ)に 00075920L13/物事(ものごと)/堅(かた)し。/遠国(をんごく)より/出家衆(しゆつけしゆ)三人/連(つれ)にてのぼられ、/都(ミやこ)一/見(けん)の 00075930L14ため/宿(やど)をとりて/逗留(とうりう)し、/毎日(まいにち)/霊仏(れいぶつ)霊/社(しや)へ参り、扨四条のし 00075940L15ばゐけんぶつし/果(はて)てから、なんと、/皆(ミな)/腹(はら)がへつたでないか。 00075950L16此(六ウ)/辺(へん)のはたごやにて/夕食(ゆふめし)をくふまいかといわれけれ 00075960L17バ、中にもしゆせうなる/坊(ぼん)さまの、いかにもよからふ。/迚(とて) 00075970L18もの事に/国(くに)でハならぬ事じやニ、/爰(こゝ)でちと/魚類(ぎよるい)の/料理(りやうり)をく 00075980L19ふて見まひかといひ出さるれバ、/元来(もとより)/喰(くふ)た/同志(どうし)の/同腹中(どうふくちう)。 00075990M1いかにもよからふとうなづきあい、/併(しかしながら)、ころもかけた身で 00076000M2/魚(ぎよ)るいの/料理(りやうり)とハ/好(このま)れまいが、何としたものであらふと、 00076010M3さすが/田舎(いなか)の/出家衆(しゆつけしゆ)とて、ゑんりよして此/談合(だんかう)はてざりし 00076020M4を、中にもこんな/事(こと)ニ/気転(きてん)のきいた/西念坊(さいねんぼう)、/其段(そのだん)ハ(七オ) 00076030M5/愚僧(ぐそう)にまかされとのミこミ、/伴(ともな)ひて/料理茶屋(りやうりぢやや)へはいり、二 00076040M6人ハ/奥(おく)へやり、/西念坊(さいねんぼう)あとに/残(のこ)り、ていしゆをまねき、/身= 00076050M7共等(ミ=どもら)ハ一/向宗(かうしう)なれバ、その心をして/夕飯(ゆふはん)のりやうりをして 00076060M8/出(だ)しやれと、心をふくんでにほハせ、/扨(さて)/座敷(さしき)へとをり、い 00076070M9づれも/食悦(しよくえつ)せんと、/歯(は)の/根(ね)をといでゐらるゝ所へ、/膳(ぜん)をす 00076080M10へれバ、三人共に/喰(くハ)ぬさきから/舌打(したうち)して、/椀(わん)共のふたを/取(とつ) 00076090M11て見らるゝに、ミな/精進仕立(しやうじんしたて)にて、/腥気(なまぐさけ)といふものハけが 00076100M12になく、あてのつちが/違(ちが)ふて、コリヤ/西念坊(さいねんぼう)。どふぞと/云(いへ) 00076110M13バ、西念坊(七ウ)はらをたて、/亭主(ていしゆ)を/呼付(よびつけ)、さいぜん/其(その)方 00076120M14に、/身共(ミども)らハ/門徒坊(もんとぼん)じやと/念(ねん)を入て/断(ことハ)つてをくに、此りや 00076130M15うりハどふじやとわめけば、成ほど、さやうニ/御念(ごねん)入られ 00076140M16ましたによつて、なまぐさらないやうに/精進(しやうじん)にして/上(あけ)まし 00076150M17た。ムヽなんと。京の/門徒坊(もんとほん)ハ/魚(うを)ハくハぬか。サレハ/今日(こんにち)は 00076160M18廿八日でこさりますゆへ、門徒坊じやと御/念(ねん)が入と/存(ぞん)じて、 00076170M19しやうじんニ仕りましたが、/御開山(ごかいさん)様の日ニなまぐさいも 00076180¥P252 00076190L1の/上(あが)つてもくるしうござりませぬかといハれて、/□□□□((破レ不明)) 00076200L2とも+とあやまつてしまハれた。 00076210¥Y1四終(八オ) 00076220¥Y1軽口独機嫌第五 00076230M3○△/行平(ゆきひら)の/忠兵衛(ちうびやうへ) 00076240M4○△いたづらな/紙鳶(いか)のほり 00076250M5○△/達磨(たるま)の/掛絵(かけゑ) 00076260M6○△/乗合船(のりあいふね)の/附会(つきやい) 00076270M7○△/全盛(ぜんせい)の/太夫(たゆふ)さま 00076280M8○△/嫁御(よめご)の御/部屋入(へやいり) 00076290M9○△/佳例(かれい)の/節振舞(せちふるまい)(オ) 00076300¥P253 00076310¥T1軽口独機嫌五巻 00076320¥N1¥J 00076330¥X/行平(ゆきひら)の/忠(ちう)兵衛 00076340L5/行平(ゆきひら)の忠兵衛と/異名(ゐミやう)をつきて、/松風(まつかぜ)といふ/菓子(くハし)のはやるを 00076350L6見て思ひつき、/村雨(むらさめ)といふ/飴(あめ)を/仕出(しだ)し、/其日(そのひ)をおくり、さ 00076360L7りとハ/侘(わび)しき暮しにて、やう+と/須磨(すま)のうらがしやに、 00076370L8/女夫(めをと)ゆだんなくかせぎけれど、どふしても/埓(らち)あかざれハ、 00076380L9/分散(ぶんさん)にして、あらかたに/仕舞(しまひ)/払残(はらいのこ)りが、もしどこへと/問(とふ)人 00076390L10あらバ、すまさずに/立退(たちのい)たといふ心を/哥(うた)によみて、/障子(しやうじ)に 00076400L11/書付(かきつけ)、(一オ)/夜(よ)の/間(ま)に出て/行(ゆき)けり。 00076410L12△△△△△△△△△△△△△△△△行平の忠兵衛 00076420L13△△/立別(たちわか)れいなば/割符(わりふ)てすますべし 00076430L14△△△すむとしきかバ又かへりこん 00076440¥N2¥J 00076450¥Xいたづらな/紙鳶(いか)のぼり 00076460L17/当世風(とうせいふう)の女中、/姿自慢(すがたじまん)にて、ばつとした/模様(もやう)に/絹(きぬ)/被着(かづきき)て、 00076470L18/品(しな)をやり、こしもと/中居(なかゐ)つれて、ゆたかに四/条通(てうどをり)をとをら 00076480L19れけるに、/子(こ)共、/紙鳶(いか)を(一ウ)あげてゐたりしが、/俄(にハか)に/風(かぜ) 00076490M1/吹(ふき)、/紙鳶(いか)かへりて、/彼(かの)女中のかづきのすそへ/落(おち)しを、こし 00076500M2もととつてのけ、しづかに御/供(とも)してゆきけるに、一/丁(てう)あま 00076510M3りも/過(すぎ)て、女中、/腰元(こしもと)に、今のかづきのすそへ/落(おち)たハなん 00076520M4であつたぞ。アイ/子(こ)とも/衆(しゆ)のいかのぼりを/落(おと)されまして、 00076530M5おかづきへかゝつたでこさりました。ムヽおりやまた、/仙= 00076540M6人(せん=にん)かとおもふた。 00076550¥N3¥J 00076560¥X/達磨(だるま)の/掛絵(かけゑ) 00076570M9お/宿(やど)にござりますか。イヤ六兵衛殿。めづらしい御出じや。 00076580M10(二オ)サレバ/常(つね)に御ぶさた申て、何ぞ御たづね申たい/事(こと)がご 00076590M11ざりますれバ参ります。/是(これ)ハ/物知(ものしら)しやつてござる。/御(ご)ふし 00076600M12やうと申もの。あの/達磨(だるま)の/絵像(ゑぞう)を見ますに、いづれを見ま 00076610M13しても、/腰(こし)から/下(しも)が/書(かい)てござりませぬが、どふした事でご 00076620M14ざります。アレハ九年/面壁(めんへき)とて/達磨大師(だるまだいし)、/壁(かへ)にむかふて九 00076630M15年が/間(あいた)/座禅(ざぜん)してござつたによつて、/腰(こし)から/下(した)がくさつた。 00076640M16それゆへ/腰(こし)より/下(しも)を/書(かき)ませぬ。ハアこれで/久(ひさ)しいふしんが 00076650M17只今はれました。/扨(さて)その/達磨(たるま)どのゝ/両(りやう)の(二ウ)(三オ挿絵) 00076660M18/耳(ミゝ)に、/掛絡(くわら)のやうなものがつけてござるが、ありや又どふ 00076670M19したいハれでござります。あれにもいハれのある事でござ 00076680¥P254 00076690L1る。今申とをり、/腰(こし)より下がくさつて、どこへゆかしやら 00076700L2ふも、うごく事がならしやれぬによつて、あそこへ/行(ゆき)たい、 00076710L3/爰(こゝ)へゆきたいと/仰(おふせ)らるゝ時、両の/耳(ミゝ)の/鐶子(くわんす) 00076720L4をなをすやうに、あちらへなをし、こちらへなをしするた 00076730L5めでござる。 00076740¥N4¥J 00076750¥X/乗合船(のりあいぶね)の/附会(つきやい)(三ウ) 00076760L8/伏見(ふしミ)から大坂までの/乗(のり)あいにのつてゆくに、いかさま十人 00076770L9よれバ/十国(とくに)の人にて、さま+の/咄(はなし)をして、ついねんごろ 00076780L10になり、おまへのお/国(くに)ハどこでござります。ムヽ身ハ/芸州(げいしう) 00076790L11の/者(もの)でござる。そちらにござるお/方(かた)ハ。/拙者(せつしや)ハ/播州(ばんしう)でござ 00076800L12る。あなたハ。/我等(われら)ハ/江州(ごうしう)でござるが、とハせらるゝ/其元(そこもと) 00076810L13のお国ハどこでござるととハれ、/皆(ミな)と/同(をな)じやうにしさいら 00076820L14しう、/州(しう)といひたふて、/自分(じふん)義ハ/天州(てんしう)でござる。ハア天/州(しう) 00076830L15とハきいた事がないが、どこの/国(くに)の事てござる。サレバ(四 00076840L16オ)大坂の/天満(てんま)のものでござるといへバ、船こぞつて/笑(わらい)ひ、 00076850L17/次(つい)でに/爰(こゝ)な女中の国も/聞(きゝ)ませふ。そもじハどこの国でござ 00076860L18るぞ。此女、しやれものにて、わたしかヱ。わしや/八坂(やさか)の 00076870L19/山州(やましう)じやわいなア。 00076880¥N5¥J 00076890¥X/全盛(ぜんせい)の/太夫(たゆふ)さま 00076900M3ぜんせいの太夫、あげやの二/階(かい)へ上り、なふかなしやと、 00076910M4はしごからこけおちけれバ、あげや/女夫(めをと)、やり手、かぶろ、 00076920M5やがて太夫をだきかゝへ、水などまいらせ、お/気(き)がつきま 00076930M6したか。何でもお/肝(きも)をつぶされました(四ウ)ととへバ、サレ 00076940M7ハ二かいの/上(あか)り/口(くち)に、くちなわのやうな/物(もの)がのたくつてゐ 00076950M8たによつて、おそろしさに/気(き)をとり/失(うしな)ふたといへバ、/亭主(ていしゆ) 00076960M9そのまゝ二かいへかけ上りミれハ、/銭(ぜに)が百おちてあり。て 00076970M10いしゆ見て、さすが/太夫(たゆふ)様ほどあつて、/銭(せに)を/御(ご)ぞんしない 00076980M11と/感(かん)じて、/大臣(たいじん)衆へさたしけれバ、やさしい/太夫(たゆふ)じやと、 00076990M12もつハら/評判(ひやうばん)してはやりけれバ、一/家(け)の女郎にずいぶんは 00077000M13やらぬわろがあつて、やり手がちゑつけ、/花崎(はなさき)様ハ/銭(せに)さへ 00077010M14しらしやれぬ/上(うへ)+がた/御同然(ごどうぜん)ニ(五オ)/花車(きやしや)な/女郎(ちよらう)じやと 00077020M15て、はやります。おまへも、わしがあげやの二かいに/銭(せに)を 00077030M16おとしておかふほどに、花さきさんのやうに、きもをつぶ 00077040M17さんせといひあハせて、扨あげやへゆきけるに、/件(くだん)の女郎 00077050M18二かいへ/上(あが)り、なふかなしやとこけおちけれバ、/宿(やど)の/夫婦(ふうふ)、 00077060M19やりて、/是(これ)ハととりまハし、太夫様+とよべハ、/気(き)のつ 00077070¥P255 00077080¥G 00077090L12いたかほして、アヽおそろしやノウ。やり手、/仕組(しぐミ)なれば、 00077100L13けうとい。何におそれさんした。イヤこハふて物がいハれ 00077110L14ぬ。アノ二かいにの、すさまじいはした銭が/落(おち)てあつた。 00077120L15(五ウ) 00077130¥N6¥J 00077140¥X/嫁御(よめご)の御/部屋入(へやいり) 00077150L18見るから見/事(こと)なはな/聟(むこ)どの、十四になる/嫁御(よめご)をむかへ、/三= 00077160L19&九度(さん=+くど)のさかづき/納(おさま)り、御/部屋(へや)へ入せられしに、よめごの 00077170M1ふところから/茄子(なすび)がころ+/落(おち)けれバ、/聟(むこ)どの見たまひ、 00077180M2/是(これ)ハなすひでないか。/何(なに)になるぞととハれければ、/嫁御(よめご)は 00077190M3づかしげに、アノうばの、なすびハ/松茸(まつだけ)の/毒解(とくけし)じや/程(ほど)に、 00077200M4入ていよてゝ。 00077210¥N7¥J 00077220¥X/佳例(かれい)の/節振舞(せちぶるまい)(六オ) 00077230M7/今日(けふ)ハ/佳例(かれい)の/節(せち)で一/家(け)をよべバ、/料理(りやうり)をこしらへ、/姨御(おばご)ハ 00077240M8/精進日(しやうじんび)で/邪(じや)魔であらふが、/嘉例(かれい)なればゆかふといふて/来(き)た 00077250M9ほどに、精進のこしらへをせずバ成まい。三五郎よ。一文 00077260M10/麩(ぶ)を十かふてこいと、/銭(ぜに)十文わたされしに、九つ/買(かふ)て戻り 00077270M11しゆへ、/旦那(だんな)見て、十文やつて九つ/取(とつ)てうせるハ/正真(しやうじん)のふ 00077280M12ぬけじやと、/箒(はゝき)を取てたゝかんとせらるゝを、むす子とめて、 00077290M13おやぢ様。/御節(おせち)に/麩九(ふく)が入てめでたいと、/祝(いハ)ひしより、/段(だん) 00077300M14+/仕合(しあハせ)よく、/家(いへ)に家を/買(かい)そへ、九つ/小蔵(こぐら)を立(六ウ)なら 00077310M15へて、はんじやうの春にあふこそめでたけれ。 00077320¥Q 00077330M17@軽口|噺シ@/咲顔(ゑかほ)/福(ふく)乃/門(かと)△@作者其磧△△△|△先達本出シ候@ 00077340M19@当世|頓作@/軽(かる)口/臍世帯(へそせたい)△@同作△△△|△追而板行@ 00077350¥P256 00077360L2享保十八年△△△△京△△△銭屋庄兵衛板 00077370L3△丑正月吉日△△△江△戸△△小川彦九郎 00077380L4△△△△△△△△大△坂△△瀬戸物屋伝兵衛 00077390L5△△△△△△△△△△△△△△△△△(七オ) 00077400¥P257 00077410¥U噺本大系△第七巻 00077420¥T軽口蓬莱山 00077430¥G 00077440¥Y 00077450L16享保十八年刊 00077460L17和雄斉序 00077470L18半紙本五巻 00077480L19京大文学部図書室蔵 00077490¥Y/軽口(かるくち)/蓬莱山(ほうらいさん)/序(じよ) 00077500M3/何(いづ)れの/御時(おんとき)よりかはじまりにけん、/軽口咄(かるくちはな)しといふものあ 00077510M4りて、/人(ひと)の/耳(ミゝ)を/悦(よろこ)バしむる/事(こと)、/日&(ひゞ)にあたらしく、/年(とし)+ 00077520M5にいやまさりて、/浜(はま)の/真砂(まさご)をあゆむ/章魚(たこ)の/入道(にうだう)が/秀句(しうく)、/松(まつ) 00077530M6の/葉(は)のちりを(一オ)ひねる/新参(しんさん)ものゝ/噂(うハさ)、とりつけひつつ 00077540M7け/何(なに)やかや、/榧(かや)や/搗栗(かちぐり)、ほんにおかしい/事(こと)の山+なるを、 00077550M8/春(はる)のはじめの/口祝(くちいわ)ひに、/蓬莱山(ほうらいさん)とハ/名(な)づけ侍りぬ。 00077560M10△△享保十八@癸△|△丑@のとし△△△和△雄△斉 00077570M11△△△△△めてたい月日△△△△△△△△△(一ウ) 00077580¥P258 00077590¥Y1軽口蓬莱山巻の一 00077600L3目△△録 00077610L5つきぬハ/物(もの)たね 00077620L6三人の/商売形気(しやうばいかたぎ) 00077630L7/主(しゆ)も/家来(けらい)も/御同前(こどうぜん) 00077640L8/火(くハ)ゑんのりん/気(き) 00077650L9さしミ/皿(さら)の/書付(かきつけ)(二オ) 00077660L10/振廻(ふるまい)の/法度(はつと) 00077670L11うたひにまけぬ/碁(ご)の/拍子(ひやうし) 00077680L12もつとも/過(すぎ)た/助言(じよごん) 00077690L13/女郎(じよらう)もはだし 00077700L14とふ/合点(がてん)したこれの八/蔵(さう) 00077710L15/雨中(うちう)の/伊勢(いせ)まいり 00077720L16/小人嶋(こひとじま)/大人嶋(せたかじま)のうハさ(二ウ) 00077730¥T1軽口蓬莱山巻の一 00077740¥N1¥J 00077750¥Xつきぬハ/物(もの)たね 00077760M5/大日本(たいにつぽん)/唐土(から)/天竺(てんぢく)よろづたね/有(あり)と大かんばん。さても+く 00077770M6ちひろいこと。こまらしてやらんと二三人さそひゆき、/黄(き) 00077780M7/成(なる)/朝(あさ)がほのたね。かしこまりましたと/出(いだ)す、/朝鮮(てうせん)かぶら、 00077790M8/高麗(かうらい)ざくら、/天(てん)ぢくの/大根(だいこん)だね。さても+ことかゝぬ/商= 00077800M9売(しやう=ばい)、それなら、/是(これ)ばかりハあるまい。/噺(はなし)の/種(たね)をかいたい。 00077810M10てい主、しばししあんして、なるほどござりますと、うらへ 00077820M11つれて/行(ゆく)ほどに、つゝとおくにくずやあり。/是(これ)か噺のたね 00077830M12でこさる。コレガ噺の/種(たね)とハ。むかし+のぢいとばゝか 00077840M13/住(すみ)ました。(三オ) 00077850¥N2¥J 00077860¥X三人の/商売(しやうばい)かた/気(ぎ) 00077870M16/軍法者(くんほうしや)と/算者(さんしや)と/皷(つゝミ)うちとより/合(あい)て、軍法者いふハ、けふハい 00077880M17かふ/曇(くも)ツたが、/合戦(かつせん)に入たかといふ。算者イヤ+けふハ/其(その) 00077890M18はつじや。/見一(けんいち)/天上(てんじやう)しや。皷打いや+、おれハちつほう 00077900M19くれかと思ふた。 00077910¥P259 00077920¥G 00077930¥N3¥J 00077940¥X/主(しゆ)も/家来(けらい)も/御同前(ごどうぜん) 00077950M3ヤイ六すけ。つかひにやらねハならぬ。こしらへをせひ。 00077960M4かしこまりましたと、すぐにかけ/出(いで)、めつたに四五/町(てう)ほど 00077970M5/行(ゆき)て、コレハとこへ/何(なに)をとひにやらるゝことぞ。/今一度(まいちど)/問(と) 00077980M6ふてこふと、/道(ミち)より立かへりて、/主人(しゆじん)のまへゝ/出(で)たれば、 00077990M7六すけ、もとつたか。はやかつた。それでわけがきこへた。 00078000M8いてやすめ+。(三ウ) 00078010¥N4¥J 00078020¥X/火(くハ)ゑんのりんき 00078030M11山でらに/霊(れい)げんあらたなる/不動(ふどう)尊あり。/極寒(こくかん)の/夜(よ)、/脇立(わきたち)の 00078040M12こんがら、せいたか、/壇(たん)をおりて、だいどころの/長(なが)いろり 00078050M13に、しばおりくべ、あたつてゐられける。ふどう、うらや 00078060M14ましくおぼしめし、おなじくいろりのそばへ/行(い)て、/火(ひ)にあ 00078070M15たらんと/立(たち)たまへバ、うしろの/火(くわ)ゑんおいかけきたり、/是(これ)、 00078080M16こゝな/性(ひやう)わる。 00078090¥N5¥J 00078100¥Xさら/箱(ばこ)の/書付(かきつけ) 00078110M19コリヤこのはこに/書付(かきつけ)がない。さしミざらと書ておけ。/惣(そう) 00078120¥P260 00078130L1じて此やうなものゝかきつけハ、たれがめにも見ゆるやう 00078140L2に、/平(ひら)かなで/筆(ふで)ぶとにかいておけ。むすこかしこまりまし 00078150L3たと/硯(すゝり)ひき(四ノ五オ)(四ノ五ウ・六オ挿絵)よせ、さしミとま 00078160L4でかきけるに、せいのひくきはこなれば、さらとかけバ 00078170L5つまる。わきへかくも見くるし。ヱイ/大事(たいじ)かさらの/字(し)ハ/文= 00078180L6字(も=じ)にしておけと$と/書(かい)て、これでようこさりますか。 00078190L7おやぢヲ、ようできた。しかしながら、このしたの/書判(かきばん)ハ 00078200L8いらぬものゝ。 00078210¥N6¥J 00078220¥X/振(ふる)まいの/法度(はつと) 00078230L11みな+おはしなされとあいさつして、/汁(しる)のふたをとれば、 00078240L12ねぶかじるなり。そのまゝ/箸(はし)を/下(した)におき、けふのふるまい 00078250L13ハ、一/汁(しう)一さいのやくそくでハござらぬか。ていしゆいか 00078260L14にも一/汁(しう)一さいでござる。客人なにをいハしやるぞ。是ハ 00078270L15一/汁(じう)くさい。(六ウ) 00078280¥N7¥J 00078290¥Xうたひにまけぬ/碁(ご)の/拍子(ひやうし) 00078300L18/至極(しごく)/碁(ご)すきなる人、あいての来ぬをさびしかりて、町のや 00078310L19はんを/呼(よん)でうたれける。しあんなかばになつて、ごいしに 00078320M1てばんのはたをひやうしとり、山寺のはるのゆふぐれヤハ。 00078330M2やばんこれハわれらも何ぞいひたいこととおもへとも、う 00078340M3たひハしらす。覚へたこととてひやうしとり、なにとせう 00078350M4のゝいしやくしよハ万ねんのかめ山や。さて/碁(ご)も大かたな 00078360M5くなりて、ついだりだめさすひやうしに、ていしゆ山また山 00078370M6に山めくり+。やばんもまけじと、ヤア大よせきそろ+。 00078380¥N8¥J 00078390¥Xもつとも/過(すき)た/助言(じよこん)(七オ) 00078400M9五郎左との。うらにきくをつくつた。見てくだされ。五郎左 00078410M10どれ、見ませうと/花(くわ)たんへゆけバ、なにやら、むしやくさ 00078420M11とゆがみすぢりたるゑたに、いくつもはなさいてあり。五 00078430M12郎左これハつくるといふ物でハない。ていしゆどうつくつ 00078440M13たものぞ。まづめだちのときからゆがまぬやうに、そへた 00078450M14けをたてゝつくりのばし、あはい+へこゑだやめのでる 00078460M15を、ミなむしつてすてることじや。ていしゆそれでハはなの 00078470M16さくところがあるまいが。五郎左いや、はなハずつと/先(さき)に、 00078480M17たつた一りんつけるかつけぬかじや。 00078490¥N9¥J 00078500¥X/女郎(しよらう)もはだし 00078510¥P261 00078520L1あるおとこ、/色(いろ)あそびにふかくなしみ、しぬる/死(しな)ふの/中(なか)な 00078530L2り(七ウ)しが、あるとき/女郎(じよらう)いふハ、かねがすこしいるほ 00078540L3どにくださんせ。男なるほとやろふが、またおれがいふこ 00078550L4ときいてたもるか。女いかにも何でも/聞(きゝ)ませふ。男それな 00078560L5らバ、もはやよしにしてたもといふた。 00078570¥N10¥J 00078580¥Xどふ/合点(かてん)したこれの八/蔵(そう) 00078590L8おやどにか。たゞ/今(いま)/下(しも)の/町(てう)に/人(ひと)が/死(しん)ているとて、いかふ/群= 00078600L9集(くん=じゆ)いたしたゆへ、/立(たち)ながら見ましたが、これの八/蔵(そう)ではな 00078610L10いかナ。いや+八/蔵(そう)ハソレ、こゝに/木(き)をわつてゐますと 00078620L11いふを、八ぞうきいて、/南無三宝(なむさんぼう)とかけ/出(で)て、しバらくし 00078630L12て/汗水(あせミづ)に/成(なり)てもどり、ア、うれしや。/私(わたくし)でハござりませぬ。 00078640L13(八オ) 00078650¥N11¥J 00078660¥X/雨中(うちう)の/伊勢(いせ)まいり 00078670L16かしまだちの/朝(あさ)、けしからずあめふりけれバ、/近所(きんじよ)の/衆(しゆ)ミ 00078680L17まいに/来(き)て、コレハきつい/雨(あめ)じやが、これてもたゝつしや 00078690L18るかといふ。コレデモたちますると、あれこれ大ふんの見/廻(まい) 00078700L19に、あまりおなし/返事(へんじ)にたいくつして、/少&(せう+)ハ/照(てつ)ても/行(たち)ま 00078710M1す。 00078720¥N12¥J 00078730¥X/小人嶋(こひとしま)/大人嶋(せたかしま)のうハさ 00078740M4めつらしき/嶋(しま)+を見たいとて、/舟(ふね)のかゝりしだいに、い 00078750M5ろ+のしまを見めくり、ある/時(とき)こびと/嶋(しま)へいたりて、/四= 00078760M6方山(よ=もやま)のけしきをミるに、あしもとにて、かすかなる(八ウ) 00078770M7人こゑするを、うつふいて/目(め)をとめて見れハ、いかにも/人= 00078780M8家(じん=か)あり。人ハけし/粒(つぶ)ほどなり。うぢや+する所を見れは、 00078790M9/魚市(うをいち)と見へ、/耳(ミゝ)をすましてきけハ、あミしほからの/切(きり)うり 00078800M10じや+といふ。それよりまたふねに/乗(のり)てたゝよひ/行(ゆけ)バ、 00078810M11せたかじまにて、むせうにびやう+たるすなハらにあか 00078820M12りぬ。むかふよりふじの山か/来(く)るかと/思(おも)へば人なり。あふ 00078830M13ミのミづうみほどなかごを/荷(に)なひ、おゝがねのひゝくやう 00078840M14なこゑして、くじらじやこ+。(九オ) 00078850¥P262 00078860¥Y1軽口蓬莱山巻の二 00078870L3目△△録 00078880L5/神主(かんぬし)の/不挨拶(ふあいさつ) 00078890L6/日利(ひより)の/木履(ぼくり) 00078900L7一を/聞(きい)て/万(ばん)を/知(し)る 00078910L8/近目(ちかめ)の/御手紙(おてがミ) 00078920L9/借筆(かりふで)の/短尺(たんじやく)(一オ) 00078930L10/思(おも)ひの/外(ほか)のはんごんかう 00078940L11/簡略(かんりやく)の/問答(もんどう) 00078950L12見こし/入道(にうだう)の/答話(とうわ) 00078960L13/門(かど)うりの/水菜(ミづな) 00078970L14/名物(めいぶつ)/出(い)だす/客(きやく)の/誉言(ほめことば)(一ウ) 00078980¥T1軽口蓬莱山巻の二 00078990¥N1¥J 00079000¥Xかんぬしの/不挨拶(ふあいさつ) 00079010M5/律義(りちき)なる/侍(さふらい)、いなりへ/代参(たいさん)をつとめ、/武運(ふうん)/長久(ちやうきう)をいのる 00079020M6/最(さい)ちう、/神前(しんせん)の見すの/内(うち)より/白狐(ひやくこ)とびいで、/彼(かの)さふらひの 00079030M7/腕(うで)くひ、ほつかりとくらひついて、ゆきがたしらずにけぬ。 00079040M8かのさふらひ、もはや一ふんたゝず、/主人(しゆじん)の/武運(ふうん)をいのる 00079050M9に、かやうのことにてハかへりても申わけないと、/御殿(ごてん)へ 00079060M10あがり、/社家衆(しやけしう)をよびよせ、/右(ミき)のしたいをかたり、すなハ 00079070M11ち/此(この)ところにて/切腹(せつふく)いたすあいだ、/国元(くにもと)へ/此(この)だん/御(おん)つたへ 00079080M12といふやいな、/腰(こし)のかたなに/手(て)をかくるをおしとめ、さて 00079090M13+にか+しきこと。まづそのきつねは(二オ)どのやう 00079100M14ないろでござつた。/真(まつ)しろなきつねであつた。すれハ/白狐(びやつこ) 00079110M15なり。/御神躰(こしんたい)にまきれなし。さりながら/御了簡(こりやうけん)なされま 00079120M16せ。ひつきやうがちく/生(しやう)のしたことてござります。 00079130¥N2¥J 00079140¥X/日(ひ)よりの/木履(ぼくり) 00079150M19/御(ご)むしんながら、せきたかしてくたされ。/今朝(けさ)ふつたゆへ 00079160¥P263 00079170L1に、ほくりて/出(で)たれハ、ケウニミちがかたい。/御(お)かしなさ 00079180L2れ。かす人やすいこと。かしませうか、まだぼくりても、 00079190L3つたはれませう。 00079200¥N3¥J 00079210¥X一を/聞(きい)て/万(はん)を/知(し)る 00079220L6やれ、ぬす人をつかまへた。/出(で)あへ+。まつおのれハ/名(な) 00079230L7ハ何といふ。ぬす人仁へいと申ます。ていしゆヱ、おのれハ 00079240L8もんもうなやつじや。(二ウ)仁へいといふことがあるもの 00079250L9か。仁ひやうへとこそいふものなれ。ぬす人あやまりまし 00079260L10た。ていしゆさて、こゝへハとこからしのび入ツた。ぬす人 00079270L11ひがしの方の/高(たか)ひやうへをこしてはいりました。 00079280¥N4¥J 00079290¥X/掛(かけ)ものゝ/絵(ゑ)の/目利客(めきゝきやく) 00079300L14さて+見ごとな/絵(ゑ)でござる。これハこほうげんでござろ。 00079310L15今一人されバ、こほうげんよりハちとかたいやうに見へま 00079320L16すが、/松栄(せうゑい)でもこざろかい。ていしゆおの+ハ何をおゝ 00079330L17せらるゝ。あれハほていどのでござる。 00079340¥N5¥J 00079350¥X/近目(ちかめ)の/御手紙(おてがミ) 00079360M1三太よ。/此状(このじやう)を/作兵衛殿(さくびやうへどの)へもつてゆけ。ハアト/作兵衛(さくびやうへ)へゆ 00079370M2けば、(三ノ五オ)こちのでハないとおゝせられます。さて 00079380M3+、/作兵衛殿(さくびやうへどの)ハ/無筆(むひつ)じやナア、/我名(わかな)がよめぬか。どれ、ま 00079390M4/一度(いちと)見よ。いかにも/作兵衛(さくひやうへ)とかいてあるといはるれハ、三 00079400M5太郎おまへの/鼻(はな)に/墨(すみ)がついてござります。/左(ひだり)の方(ほう)の/目(め)でご 00079410M6らうじませ。どれ、ほんに/乍(ながら)兵衛/様(さま)じや。 00079420¥N6¥J 00079430¥X/借筆(かりふて)の/短尺(たんしやく) 00079440M9うなぎを/握(にきつ)たれバ、ぬつと/上(うへ)へあがるを、のかすまじとて 00079450M10/左(ひたり)の/手(て)にてつかまゆれバ、またぬつとのぼる。/又(また)/右(ミぎ)の/手(て)を 00079460M11/持(もち)かへ+、ついに/天(てん)へ/登(のほ)りぬ。一/座(ざ)の人&きもをつぶし 00079470M12けれどもぜひなし。あくるとし、/友(とも)だち、かの/所(ところ)へより/合(あい) 00079480M13て(三ノ五ウ)(六オ挿絵)/去年(こぞ)の/物(もの)がたりして、なミたをなが 00079490M14すおりふし、こくうより、たん/尺(じやく)一まちおちたり。見れば 00079500M15/哥(うた)也。 00079510M16△△こぞのけふうなぎにつれてのほりしが 00079520M17△△△いまにたへせすのほりこそすれ 00079530M18とあり。/短尺(たんじやく)のうらに、/手隙(てびま)なく/他筆(たひつ)/御免(ごめん)。 00079540¥P264 00079550¥G 00079560¥N7¥J 00079570¥Xおもひの外のはんごんかう 00079580L14人きやうの長きちとて、うつくしいでつち、内のむすめお 00079590L15菊とハいつのまにやら恋のうみ、そこしれぬ中なりしを、 00079600L16おやぢかぎつけ、うき名のたゝぬうちにと、長吉をひま出 00079610L17されぬ。おきくハそれよりぶら+やまひ、灸もくすりも 00079620L18(六ウ)しるしなけれハ、うばこれ御りよん。それほど長吉 00079630L19にあいたくバ、おまへのくびにかけてござるきせうを焼た 00079640M1らハ、/浅間(あさま)のだけのかくで、けふりのなかから出ることか 00079650M2あらふ。むすめそれならやすいことゝ、守ふくろよりとり 00079660M3いだし、火はちへなけ入るれば、ばつともえたるばかりに 00079670M4て、なにもです。むすめ是うバ。何もでぬげや。うバそれ 00079680M5+でたわいの。それ。むすめ、ハツトうしろむけバ、おやぢ 00079690M6ふすましやうじひきあけて、なにやらかんこくさいぞよ。 00079700¥N8¥J 00079710¥Xかんりやくの/問答(もんとう) 00079720M9/古(ふる)だうぐ見せに/相(あい)くちのありしを、/寸尺(すんしやく)と/直段(ねだん)と/簡(かん)(七オ) 00079730M10/略(りやく)して/一度(いちど)に、此あいくちの/直寸(ねすん)ハととひけれハ、/内(うち)より 00079740M11ていしゆこたへて、まつはいつて/茶(ちや)ばこまいれ。 00079750¥N9¥J 00079760¥X見こし/入道(にうだう)の/答話(とうハ) 00079770M14/夜(よ)ふけてもどる/大工(だいくの)/作(さく)兵へ、/間竿(けんざほ)さげて、はなうたをうと 00079780M15ふてかへりけれバ、いつくよりかハ/小坊主(こぼうず)、ひよいと/出(で)て 00079790M16うしろへまハると見へけるが、そのまゝせい/高(たか)くなりたり。 00079800M17作兵へさてハおとにきく見こし/入道(にうたう)ごさんあれ、まけてハ 00079810M18ならぬと、/持(もち)たる/間(けん)ざほのさきへづきんをきせ、ずつとあ 00079820M19げたれハ、入道もまたによつと見こす。見こすにしたかい、 00079830¥P265 00079840L1けんさほをによんによとあげけれバ、入道いまハかなはし 00079850L2とや(七ウ)おもひけん、もとのごとく/小(こ)ぼうずになつて、 00079860L3大ぶつ+。 00079870¥N10¥J 00079880¥Xかどうりの/水菜(ミづな) 00079890L6すぎよ。見せにミつなを買ふておいたほどに、あらふて干 00079900L7てくきに/漬(つけ)い。下女あいといふて、おもてへ/出(で)てミれとも 00079910L8何もなし。だんな様。ミづなハとこにこさります。ていしゆ 00079920L9それ、南の小見せにつんであるが見へぬか。下女何をおつ 00079930L10しやる。こさりませぬ。ていしゆがてんのゆかぬことゝ、見 00079940L11せへ出て見て、ハアこれハ一ほんもない。さてハ今のやつ 00079950L12ハ/水菜(ミつな)つかひじや。 00079960¥N11¥J 00079970¥X/名物(めいぶつ)出たす/客(きやく)のほめことば 00079980L15さる所に夕はんふるまいありけるに、正きやく、ていしゆ 00079990L16へ(八オ)あいさつに、さて+/御(ご)ちそうでごさる。此なま 00080000L17すの鮒ハ/慥(たしか)にあふミ/鮒(ふな)と存るとほめけれバ、次の客此さし 00080010L18ミの/鯉(こい)ハあつはれ、よど/鯉(こい)でござろう。次の客御やき物の 00080020L19うなぎハ此いぜん、せたでくだされたよりハ/風味(ふうミ)がまさつ 00080030M1ておほへましたなどゝ、いろ+名物をいゝたてゝほむれ 00080040M2バ、次の客もはや何もほめる/物(もの)なき/折(おり)ふし、てうしをもつ 00080050M3て/出(で)た。一ツうけて、すつとほし、さても/御酒(ごしゆ)かな。/是(これ)ハ 00080060M4ならもろはくでござろうといふ。次の客どうもほめるもの 00080070M5なくあんじいるうち、てうしもひけて、ゆを/持出(もちいづ)れバ、た 00080080M6ふ+とうけ、一くちのミて、おゆのかげんも/出来(でき)ました。 00080090M7もしこれハ、/有馬(ありま)の/湯(ゆ)でハござらぬか。(八ウ) 00080100¥P266 00080110¥Y1軽口蓬莱山巻の三 00080120L3目△△録 00080130L5/短(ミしかい)じまん 00080140L6/当世(とうせい)はをり/都(ミやこ)はなし 00080150L7あらたまの/紋日(もんび)ざた 00080160L8かミなりのけいはく 00080170L9/文盲(もんもう)のたとへ/事(こと)(一オ) 00080180L10いわれを/聞(きけ)ハ/銘(めい)のつほ 00080190L11たるまの/智恵(ちゑ)の/輪(わ) 00080200L12/色(いろ)どる/侍(さふらひ)ハ/顔(かほ)をふり/袖(そで) 00080210L13寸/白(ばく)のうけ取 00080220L14/海中(かいちう)の/会合(よりあい)(一ウ) 00080230¥T1軽口蓬莱山巻の三 00080240¥N1¥J 00080250¥X/短(ミしかい)じまん 00080260M5こなたのさいてござる相くちハ、見ことナものさうにござ 00080270M6るが、いかさまミじかいものハ、とりまハしがよふござら 00080280M7ふといへバ、いかにも。なににもつかへず、こじりとがめ 00080290M8もなく、さしようござる。/第(たい)一のちやうほうは、じやうろ 00080300M9くをかいてゐて、おとしざしにするによふござる。 00080310¥N2¥J 00080320¥X/当世(とうせい)ばをり/都(ミやこ)はなし 00080330M12それ+、すそがきれてあるぞや。これハいかな/事(こと)。ア、 00080340M13ぞうりハいかひそんじや。@こゝろハはをりのながひを|いはんばかり哉。@△△△△(二オ) 00080350¥N3¥J 00080360¥Xあら玉の/紋日(もんび)さた 00080370M16/大夫(たゆふ)殿のおねがひてござります。/正月(しやうぐハつ)をなされて/進(しん)ぜられ 00080380M17ませぬか。なるほどこゝろへたが、正月ハひまがない。正 00080390M18月してやつてからが、こぬ/日(ひ)ハおかしからぬことじや。ゆ 00080400M19るしてたも。それならバ、たつた一/日(にち)一かう/元日(くハんにち)バかりな 00080410¥P267 00080420L1されませ。イヤ+元日ハ/礼(れい)に/出(で)る。二日ハかれいの/商始(あきないはしめ)、 00080430L2三日ハ/寺(てら)まいり。しからハ五日になされませ。五日六日は 00080440L3かれいのきやくがある。七日ハな。イヤ七日より十三日/迄(まで) 00080450L4ハ、いつもさんぐうの/吉(きち)れいじや。さても/御用(ごよう)のおゝひこ 00080460L5とかな。しからバ十五日ハ。これをも一もんどもへせちに 00080470L6/行(ゆく)。廿日(二ウ)いかゞ。此ほうのたなおろしじや。ソレな 00080480L7らバ廿一日にハおそけれど、ぜひに御出なされませ。イヤ 00080490L8そう+ハうちのしゆびかわるいて。 00080500¥G 00080510¥N4¥J 00080520¥X/神(かミ)なりの/軽薄(けいはく) 00080530M3ぐわた+ひつしやりほん、それやかみなりがおちたハと、 00080540M4上下もんどりかへしける。ていしゆハ/立衆(たてしう)にて、/椽(ゑん)さきへ 00080550M5でられけるに、/神(かミ)なりハ/沓(くつ)ぬぎの/石(いし)にて、こしぼねをした 00080560M6ゝかに/打(うつ)て、あいた+となきゐたる。ていしゆこれハ+ 00080570M7/神(かミ)なり/殿(どの)。わるいところへおちられた。さぞいたからうと 00080580M8/腰(こし)のあたりをさすりて、あいすなどのませ、かいほうしけ 00080590M9るか、神なり(三オ)さても+、おかげですこしいたみが 00080600M10なをりました。かたしけなふこさります。あそこな/御(お)ちい 00080610M11さいハ、/御子(こし)そく様ざござりますか。ていしゆいかにも、/身(ミ) 00080620M12どもかせがれじや。神なりさてもうつくしいお/子(こ)やの。い 00080630M13と様、こゝへござれ。おぢがでん※しんぜましよ。 00080640¥N5¥J 00080650¥Xもんもうのたとへ事 00080660M16/湯(ゆ)ふろへ入ツてあかりばにて、ぼんよ。とゝがせなかもあ 00080670M17らふてくれといへば、かの子あいらしく、てぬくひもちて 00080680M18/背中(せなか)を/流(なが)せば、風呂やのていしゆさて+しほらしいお/子(こ)さ 00080690M19まや。ハアいかさま、/人間(にんげん)ものをしらぬじやナ。(三ウ)(四 00080700¥P268 00080710L1オ挿絵) 00080720¥N6¥J 00080730¥Xいはれを/聞(きけ)バ/銘(めい)の/壷(つぼ) 00080740L4さてもふるい/壷(つぼ)かな。何と、このつぼに/銘(めい)がござるけなが、 00080750L5/何(なに)と申ぞ。/成(なる)ほどござる。/銘(めい)ハ/古(こ)きんまんよう、/中将(ちうじやう)なり 00080760L6/平(ひら)、/真言(しんごん)の/秘密(ひミつ)のつぼと申ます。かう申しさいハ、まつこ 00080770L7のつほ一/斤(きん)までハ入ませぬ。/半斤(はんぎん)のすこし/余(よ)いりますゆへ、 00080780L8こきんといふ。万ようとハ/茶(ちや)ばかりにかぎらず、/梅(むめ)ぼしさ 00080790L9とう/其(その)ほか、なにを/入(いれ)うとまゝなるゆへ、万ようといふ。 00080800L10/中将(ちうじやう)とハずんどよいつぼでもなし、中の上じやといふこと。 00080810L11なり/平(ひら)とハ、なりがひらたいによつて。/扨(さて)また、しんごん 00080820L12ひミつといふハ、これ/御(ご)らんのごとく、つぼのどうなかに 00080830L13ひゞりあるを、/紙(かミ)で/張(はつ)(四ウ)ておけと、ある人が申された 00080840L14れバ、いつぞハはろうとぞんずる。是すなハち、おんあぼ 00080850L15きやべいろしやなうまかぼたらまにはんどまじんばらはら 00080860L16ハりたや。 00080870¥N7¥J 00080880¥Xだるまの/智恵(ちゑ)の輪 00080890L19とほうげんといふ/画工(ゑかき)、だるまの/絵(ゑ)をかいてゐられけれバ、 00080900M1客人大かたたるま/絵(ゑ)ハ/腰(こし)から/下(しも)ハかゝずにござるが、いは 00080910M2れのあることでござる/が((ママ))。絵師これハ/九(く)ねんがあいだざぜ 00080920M3んをなされ、こしよりしもハくさつてしまふたゆへ、/半分(はんぶん) 00080930M4かきます。客人そのやうにくさつてからハ、/立居(たちい)がどうも 00080940M5なりますまいの。絵師そのために/耳(ミゝ)にくわんを/付(つけ)ておいた 00080950M6/物(もの)じや。(五ノ八オ) 00080960¥N8¥J 00080970¥X/色(いろ)とる/侍(さふらひ)は/顔(かほ)を/振(ふり)そで 00080980M9こちのむすめ/子(ご)ほどなきりやうハ、およそひろい/京(きやう)に/有(ある)ま 00080990M10いと、うばがじまんで、四でうどをりをひがしへゆきける。 00081000M11むかふから/廿(はたち)ばかりの/侍(さふらひ)、下ばかまにはをり、ぞうりとり 00081010M12めしつれ、のし+と/来(く)る。そのきりやうのよさ、/今(いま)の世 00081020M13のなり/平(ひら)ともいゝつべし。うハおもふまゝならバ、あのや 00081030M14うなとのごを、こちのむこ様にしたらバうれしかろう。ず 00081040M15いぶんあの/殿子(とのご)に見らるゝやうにと、かづきをあげさせ、 00081050M16ゑもんつくろハせ、こゝを/大事(だいじ)よとあゆまるゝ。かのさふ 00081060M17らひ、すれちがふてとをりしが、むすめのかほに/目(め)もやら 00081070M18ず(五ノ八ウ)してゆきすぐる。うハさても+あのやうな 00081080M19おとこもある物か。こちのむすめこを/目(め)にかけぬものハあ 00081090¥P269 00081100L1るまいとおもふに、あいそうもないおとこめと、ゆきすご 00081110L2し見かへれば、侍やい/角介(かくすけ)。角介/何(なん)でこさります。侍今の 00081120L3むすめハ/身(ミ)どもがかほを見たかな。 00081130¥N9¥J 00081140¥X寸/白(ばく)のうけ/取(とり) 00081150L6/岩(いわ)くらのくわんおんハ/利生(りしやう)あらたなりとて、寸白わつらふ 00081160L7人、一七日こもりけれども、しるしなし。/病人(ひやうにん)なミだをな 00081170L8がし、よこ町の/作(さく)兵へハほんぶくいたされたに、わたくし 00081180L9ハいかなるごうなれバ、ごりしやうもなきことゝうらみけ 00081190L10れハ、/其夜(そのよ)(九オ)のゆめに、ほんぞん、まくらがミにたち 00081200L11たまひ、いかになんぢ、たしかにきけ。おれがじひにゑこ 00081210L12ハなけれど、作兵へが寸白ハ/右(ミぎ)なり。なんぢハ/左(ひだり)じやによ 00081220L13つて、どうもならぬ。病人ゆめ心に、ひだりハなぜに/御(お)ちから 00081230L14におよびませぬ。観音されハむかしより、/右之(ミぎの)/金(きん)たしかに 00081240L15うけとり申候とかくハ。 00081250¥N10¥J 00081260¥X/海中(かいちう)のよりあい 00081270L18ふぐがいわく、おれハ/懐中(くわいちう)にどくをたしなんでいれどもと 00081280L19らるゝ。なまこハぶようじんな/帯(おび)とりひろげていやる。さ 00081290M1ゝいハ/四方(しほう)かど/口共(ぐちとも)に/用心(ようじん)よふてうら山しいといへバ、サ 00081300M2ゞイなるほど、ようじんよふすまいハこしらへたが、きの 00081310M3どくハ/夏(なつ)むき、せつちんにこまる。(九ウ) 00081320¥P270 00081330¥Y1軽口蓬莱山巻の四 00081340L3目△△録 00081350L5/言葉(ことば)のてんどう 00081360L6ほうふりむしの/問答(もんどう) 00081370L7八兵衛のとりちがへ 00081380L8/聖人(せいじん)の/御子(ごし)そく 00081390L9ちか/目(め)の三はい(一オ) 00081400L10/茶(ちや)の/湯(ゆ)にまハす/陶(すへもの) 00081410L11/乗合(のりあい)ハ/鍬(くわ)かたげて/手(て)ばなし 00081420L12こまつたあミ/笠(がさ)(一ウ) 00081430¥T1軽口蓬莱山巻の四 00081440¥N1¥J 00081450¥Xことばのてんどう 00081460M5ヤイ仁すけのかぢやよ。はちのかき/巻(まき)して、/行(ゆく)へどこ。 00081470M6ヲレカ。おれハナア、ほたへせたる見にゆくハいヤイ。 00081480¥N2¥J 00081490¥Xぼうふりむしのもんどう 00081500M9くに+のほうふりむし、京三でうのはしに/会合(よりあい)して、此 00081510M10ひでりにて、われ+がすみかなし。いかゞせんといひけ 00081520M11れバ、一つの/老(らう)むしがいはく、だんこうもときによる。こ 00081530M12のひでりにてハ、なか+/水(ミづ)にすまれずと/云(いふ)ときに、/若(わか)む 00081540M13しがいはく、せめて/水(すい)へんになりとも(二オ)すミたしとい 00081550M14ふ。しからバ、ところも二でうがハらにちかし。いざミな 00081560M15+、/惣蚊(そうか)にならふ。 00081570¥N3¥J 00081580¥X八兵衛の取ちかひ 00081590M18なんと八兵衛。ひさしや。たつしやなか。道通りいや、わ 00081600M19たくしハおちかづきでハござらぬ。九兵へハアこれハそさ 00081610¥P271 00081620L1う申た。御めんな/((さ脱カ))りませ。さてもようにたかほかなとつぶ 00081630L2やき、二三/町(てう)ゆくむかふへ、八兵衛がくれば、九兵へ△こ 00081640L3れハ八兵へか。さてもそなたにあハふはしか。さいぜん、 00081650L4き様にようにた人にあふて、すでにそさうをいふた。何と 00081660L5かハることもないか。道通りいや、わたくしハお見しり申ま 00081670L6せぬ。九兵へこれハいかなこと。ムヽさてハせけん(二ウ)に、 00081680L7あのたちのかほがはやるそふな。 00081690¥N4¥J 00081700¥X/聖人(せいじん)の/御子息(ごしそく) 00081710L10こなたの/御子(ごし)そく/所平(しよへい)どのハ、ばんじごはつめいなるうへ、 00081720L11その/気(き)だてのよさ、/年寄(としより)にもわかいものにもうまがあい、 00081730L12けな人じやと申。/此(この)ぢうもさるところで申ハ、もはやあの 00081740L13/所平(しよへい)ハいまの/世(よ)のせいじんじやといふてほめます。おやぢ 00081750L14いかさま、そう/仰(おゝせ)らるれバ、そんしあたることがござる。 00081760L15せがれが申ハ、つゐにいまゝでゆめといふもの、見た事が 00081770L16ないと申ます。 00081780¥N5¥J 00081790¥Xちかめの三はい 00081800L19/開帳(かいちやう)+。これハ一寸八ぶのゑんぶだごんのごほんぞん、 00081810M1(三オ)/日(につ)ほんぶそうの/小(せう)ぶつでござる。ちかふよつて、ご 00081820M2ゑんをむすバしやれとありけれバ、あるちか目の人、ごほ 00081830M3ぞんのそばちかくよりて、見あげ見おろし、うなつくやう 00081840M4にしておがまれけれバ、コレ+ねぶることハなりませぬ。 00081850¥N6¥J 00081860¥X/茶(ちや)の/湯(ゆ)に/廻(まハ)す/陶(すへもの) 00081870M7/家主(いへぬし)を/正客(しやうきやく)にして、きんじよの/門(もん)ていども二三人、/茶(ちや)をふ 00081880M8るまハんと/招(まね)かれけるに、/家(いへ)ぬし、すきのミちハかつてし 00081890¥G 00081900¥P272 00081910L1らず。しらぬといふもくちおしく、なんでもにつこらしう 00081920L2やつてのけふとおもひ、上/座(ざ)になをり、さて/茶(ちや)をひたもの 00081930L3すゝりのミて、ちやわんをはなさねバ、次の客ちとこれへ 00081940L4ちやわんをおまハしなされませ。(三ウ)(四ノ七オ挿絵)いへぬし 00081950L5しからバ、まハしませうと、よほどある茶をすつと一くち 00081960L6にのミしまい、畳のうへにてちやわんのふちをつまミ、き 00081970L7りりとねぢけれバ、くる+とまふて、ていしゆのひざも 00081980L8とへ行て、まいやミぬ。一/座(ざ)どつとほめたりけれハ、家主 00081990L9ちかごろぶちやうほう申た。しかしわかいときとハちがふ 00082000L10て、手がくるひまして、まうばかりでうなりがござらぬ。 00082010¥N7¥J 00082020¥X/乗合(のりあい)ハ/鍬(くハ)かたげて手ばなし 00082030L13わかさのものとたんばのものと、よどの/乗合(のりあい)にてはなしし 00082040L14けるに、わかさ者わたくしが/国(くに)にハめいぶつのこんぶがある。 00082050L15たんば者なるほどうけたまハつた。あれハ海にはへるげな。 00082060L16(四ノ七ウ)いかやうにしてとりますぞ。わかさ者こんぶのと 00082070L17りやうハ、ひざんせうを大ぶんふねにつミ、おきへ/出(で)て、 00082080L18こんぶの見ゆるところにて、さんせうをはつ+と/海(うミ)へま 00082090L19けバ、こんぶどもうれしがりてうかみ/出(いて)て、きり+とさ 00082100M1んせうをまくところをとることじや。たんば者それなら、わ 00082110M2れらがざいしよで/鴫(しぎ)をとるが、ちやうどそのやうなものじ 00082120M3やわいの。わかさ者どうしてとります。たんば者いや/鴫(しぎ)のと 00082130M4りやうハ、鴫の大ぶんゐる山へ/仏(ぶつ)だんをもつて/行(いて)、しばら 00082140M5くまつていると、あまたの鴫、ぶつだんの/前(まへ)へあつまり、 00082150M6一しんふらんにかんきんするところを、かたハしからとる 00082160M7ことじや。(八オ) 00082170¥N8¥J 00082180¥Xこまつたあみがさ 00082190M10かほみせのはやりしばゐ、大ふんの人くんじゆするなかに、 00082200M11むかふのおとこ、あみがさふか+とかぶり居けるを、あ 00082210M12とがミへぬ。ぬげといふを、きかぬふりにてぬがず。たび 00082220M13+ぬけといへば、ふりかへりて、ぬいだら、ためにあし 00082230M14かろふといふ。にくきやつのといゝしな、うしろよりひき 00082240M15まくりけれハ、くさつたかさあたまじや。やはりめしてこ 00082250M16われ/ど((ママ))又きせた。(八ウ) 00082260¥P273 00082270¥Y1軽口蓬莱山巻の五 00082280L3目△△録 00082290L5もろふもやるも/茶(ちや)の/湯(ゆ)/形気(かたぎ) 00082300L6/刀(かたな)のきつさき 00082310L7/古哥(こか)を引りやうりばなし 00082320L8法花宗のうたひ/好(ずき) 00082330L9たはこ/問答(もんどう)(一オ) 00082340L10せつかく/建(たて)た/出(で)見せの/土蔵(くら) 00082350L11/噺(はなし)ハつきず/泉(いづミ)の/壷(つぼ)(一ウ) 00082360¥T1軽口蓬莱山巻の五 00082370¥N1¥J 00082380¥Xもろふもやるも/茶(ちや)の/湯(ゆ)/形気(かたき) 00082390M5/今日(こんにち)ハ/茶客(ちやきやく)を得(ゑ)まする。ごむしんながら、そなたの/名水(めいすい)を 00082400M6/所望(しよもう)いたしたしとあれバ、ていしゆにはのミづのこと、やす 00082410M7き/御用(ごよう)と、/手(て)おけうけとり、いつゝにかゝり、つるべもち 00082420M8ながら、ア、しんずるほどあれバよいが。 00082430¥N2¥J 00082440¥X刀のきつさき 00082450M11れつきとしたらう/人(にん)、かりたくして/家(や)うつりの/夜(よ)、/両(りやう)どな 00082460M12り、むかい、/家(いへ)ぬしなどをよびて、/酒(さか)もりの上にて、らう 00082470M13人お/町(てう)へまいりましたうへハ、ぶあんないのせつしや、(二 00082480M14オ)ばんじたのミぞんずる。町衆なにがさて、/町(てう)ないにおや 00082490M15ど申ますうへハ、さうおうの/御用(ごよう)もござらハ、ごゑんりよ 00082500M16なうおゝせられませ。また/町内(てうない)にも、まん一もやかましい 00082510M17/儀(ぎ)が/出来(しゆつらい)いたしたときハ、お/手(て)をかりませうとぞんじ、お 00082520M18たのもしうぞんじております。らう人いかにも、そのだんハ 00082530M19お/気(き)づかひなされな。せつしやがお/町内(てうない)にをるからハ、刀 00082540¥P274 00082550L1のきつさきじやとおほしめせ。町衆これハはやたのもしひ 00082560L2おことばとあいさつして、その/夜(よ)ハかへりぬ。そのゝち町 00082570L3内に酒のゑひのねだりものありて、/棒(ぼう)よすりばちよと、一 00082580L4町であいて、さハげとも、かのらうにん、おもての戸をしめ 00082590L5(二ウ)て/出(で)ず。やう+きんじよよりあひ、とりあつかひ 00082600L6すまして、ことおさまるじぶん、かのらうにん、/戸(と)をあけて 00082610L7/出(いて)けれバ、町衆さて+、こなたにハたのもしうもござら 00082620L8ぬ。ひごろ何ごとぞといふおりにハ、/刀(かたな)のきつさきじやと 00082630L9おもへといハせられなんだか。らう人さればそのこと。か 00082640L10たなのきつさきといふものハ、ぬき/出(だ)すときハずつとあと 00082650L11にでゝさやへおさめるにハ一ばんにはいるものでおじやる。 00082660¥N3¥J 00082670¥X/古哥(こか)を/引(ひく)りやうりばなし 00082680L14十兵へきのふのりやうりハ/何(なん)てあつた。九兵へいりとりな 00082690L15ますハ、はものかハであつた。十兵へいりとりハもつともじ 00082700L16やが、(三オ)はものかハなますハ、はれなるこんだてにハ 00082710L17ありそもないものじやのう。九兵へいや+、はものかハ 00082720L18大ていの/物(もの)でハない。/古哥(こか)にもよんである物じや。十兵へ 00082730L19なんとよんである。九兵へあかぬわかれの/鳥(とり)はものかハ。 00082740¥N4¥J 00082750¥X/法花宗(ほつけしう)のうたひ/好(ずき) 00082760M3かた法花のおやぢ、百万のうたひをすいて、へいぜいにう 00082770M4たハれた。同行こなたハいま+しい。またしても百万の 00082780M5うたひをうたハしやる、あのなむあミた仏をきけバ/胸(むね)かも 00082790M6へる。おやぢいや、そのやうにいはるゝな。いかにしても 00082800M7百万ハ、シテの/諷(うたひ)だしがありがたいぞや。同行なにがありが 00082810M8たい。(三ウ)(四ノ六オ挿絵)おやぢはて、あらわるの/念仏(ねふつ)のと 00082820M9うたふハ。 00082830¥N5¥J 00082840¥Xたばこ/問答(もんどう) 00082850M12たばこがいふやう、われらハいかい/世(よ)の/中(なか)のちやうほうに 00082860M13なるものじや。せいのつきたとき一ふくすハすれバ、/千(せん)ね 00082870M14んのいのちをものバヽるやうにおぼへるゆへ、人+/長命= 00082880M15草(ちやうめい=さう)と/賞(しやう)くわんなさるゝ。きせるいや、そなたがあつても、 00082890M16/身(ミ)どもといふものがなけれハ、すふことがならぬ。あまり 00082900M17にじまんめされな。火入か云。きせる、さういふな。/身(ミ)どもに 00082910M18/火(ひ)かいつてなけれハ/吸(す)ハれぬ。われらが/徳(とく)を見ておけ。い 00082920M19やわれこそハと、たがひにあらそふ。たはこぼんこれ+ 00082930¥P275 00082940L1/借屋(しやくや)のしゆ、やかましい。(四ノ六ウ)ミな/宿(やど)かへてたもれ。 00082950¥N6¥J 00082960¥Xせつかく/建(たて)た/出(で)見せの/土蔵(くら) 00082970L4/出(で)見せのうらに/土蔵(くら)一ケ/所(しよ)たてとうおもふが、二間半に三 00082980L5/間(けん)にして、しつかいそなたへ/渡(わた)す。じせつがらの事じやほ 00082990L6どに、ものゝいらぬやうに/建上(たてあ)げてたもれ。作兵へ心へま 00083000L7したと/請(うけ)とり、だん+出来そろひ、むねあげもすミて/手= 00083010L8打(て=うち)のとき、ていしゆけんぶんに行ミれハ、四ほうかべにし 00083020¥G 00083030M1て、とまへとおもふところなし。ていしゆこれ作兵へ。とま 00083040M2へハとちらぞ。作兵へとまへハござらぬ。ていしゆとまへ 00083050M3のないくらが、なんのやくにたつものぞとふくりうすれハ、 00083060M4作兵へはて、ものゝいらぬやうならバかうじや。(七オ) 00083070¥N7¥J 00083080¥X/噺(はなし)ハつきずいづみの/壷(つほ) 00083090M7/鑓(やり)もち/鑓(やり)つかハす、/弁当(へんとう)もち弁当つかハずとやらん。/諷(うたひ)を 00083100M8しらぬもの、/能(のふ)を見てもどり、/扨(さて)も+/能(のう)といふものハ、 00083110M9どんなものじや。/先(まづ)/聞(き)きや。/面(めん)きたおかたが/出(で)て、/何(なん)のか 00083120M10の+といふてまい+して、中ほどてわすれたかして/言(もの) 00083130M11いわず。またまい+して/這入(はいつ)た。夫から/猩&(しやう※)の/酒(さけ)のゑい 00083140M12(七ウ)が/出(で)て、コレハおもしろかつたが、もはやアノうしろ 00083150M13から、やかましういふにハこまりものじやとハ/息才(そくさい)+、 00083160M14/幾世(いくよ)かさなる/寿命(じゆめう)ハ、/蓬莱山(ほうらいさん)の/意味(いミ)ならんかし。 00083170¥Q 00083180M16△△△△△△△△△京松原通麩屋町西へ入町 00083190M17△△△書坊△△△△△△△谷口七郎兵衛 00083200M18△△△△△△△△△江戸日本橋南壱町目 00083210M19△△△△△△△△△△△△△△升屋五郎右衛門(八オ) 00083220¥P276 00083230¥U噺本大系△第七巻 00083240¥T水打花 00083250¥G 00083260¥Y 00083270L16刊年不詳(正徳・享保頃) 00083280L17東の鼠堂序 00083290L18半紙本五巻 00083300L19東大国語研究室蔵 00083310¥Y 00083320M1あらけなき武士も、しなやかにするは敷島の道とや。貴き 00083330M2賎きの人の心を慰むるハ、又咄なるへし。それも長きハ欠 00083340M3の下地、短くおかしきこそ、美女の靨を見出さむ種にもな 00083350M4らむかし。予、近年耳に新しきかる口噺を(一オ)一つふた 00083360M5つ反古の裏に書集たるに、はや一巻にあまるを、よしや腰 00083370M6張にせむより、桜に咲せて世の人の含んた水も吹出し給ハ 00083380M7ん便にもならは、水打花の仕合とやならむ。 00083390M9△△△△△△△△△△△△△東の鼠△堂(一ウ) 00083400¥P277 00083410¥Y1美津宇知はな一目録 00083420L3/御使者(おししや)の/無筆(むひつ) 00083430L4たからぶね 00083440L5/番太(ばんた)が/侘言(わびこと) 00083450L6おくさまの/目(め)ちがひ 00083460L7/精進(しやうぢん)ぎらひ 00083470L8/新(あたら)しいばけ物(一オ) 00083480L9/竹(たけ)のれうぢ 00083490L10/全盛(ぜんせい)のちじよく 00083500L11すの/字(じ)のかけ/物(もの) 00083510L12/鶴(つる)ハ/千年(せんねん) 00083520L13/道心(だうしん)の/栄花(えいぐわ) 00083530L14/狐(きつね)のそさう 00083540L15やめぬ小/盗(ぬすミ)(一ウ) 00083550¥T1 00083560¥N1¥J 00083570¥X/御使者(おししや)の/無筆(むひつ) 00083580M3れつきとしたる/侍(さふらひ)、/去(さる)屋/敷(しき)へ/年頭(ねんとう)の/使者(ししや)にゆきて、/玄関(げんくわん)に 00083590M4て/口上(こうじやう)の/趣(をもむき)のべければ、/奏者(そうしや)申すやう、/貴殿(きでん)の/御名(おな)ハ何 00083600M5と申ととひけれバ、/拙者(せつしや)ハ/小田川(をだがハ)/何(なに)右衛門と申候といへば、 00083610M6しからバ/帳(ちやう)に/留(とめ)申べく候。さりながら/拙者(せつしや)ハ/無筆(むひつ)にて/御座(ござ) 00083620M7候/間(あいだ)、/貴殿(きでん)/此帳(このちやう)に/御名(おな)を御かき下され候へといへば、かの 00083630M8/使者(ししや)も/無筆(むひつ)にて、いや、せつしやも/無調法(ぶてうほう)に候といへば、 00083640M9さやうに候ハヾ、/$(ぐる+)なりとも御しるし候へといへば、い 00083650M10や貴殿/被成(なされ)候へと、たがひにゆづりあひけれども、/使者(ししや)/是= 00083660M11非(ぜ=ひ)なく、かの(二オ)/帳(ちやう)に/$(ぐる+)をかきければ、そうしや見て、 00083670M12さて+/見事(ミごと)な事かな。/是(これ)ほどになさるれバ、れき+じ 00083680M13やといふた。 00083690¥N2¥J 00083700¥Xたからふね 00083710M16/節分(せつぶん)の/夜(よ)、/去御屋敷(さるおやしき)のおく/方(がた)より、/宝舟(たからぶね)を/女中衆(ぢよちうしゆ)へ下され 00083720M17ける。/扨(さて)あくる/朝(あさ)、ミな+/能夢(よきゆめ)ミたるやととひたまへバ、 00083730M18どれハ/何(なに)、かれハ/何(なに)見申候といへば、そのなかにそさうな 00083740M19るおつほね申されけるハ、わたくしもすいぶんよきゆめ見 00083750¥P278 00083760¥G 00083770M1申さんとぞんずるうちに、つゐねいりましたといはれた。 00083780M2(二ウ) 00083790¥N3¥J 00083800¥X/番太(ばんた)がわびこと 00083810M5/或夕(あるゆふ)ぐれ、/鯨(くじら)ハ+とうりけるを、さる/所(ところ)へかハんとてよ 00083820M6びこみけるが、これハあしゝ。/牛(うし)そうな。いやじやといひ 00083830M7ければ、くじらうり、/大(おほ)きに/腹(はら)をたて、いやならいやにて 00083840M8すむ事じや。それに人のうりものを/牛(うし)じやといやる。八ま 00083850M9ん、かんにんならぬなどゝ大はだぬぎてかゝれば、/近所(きんじよ)よ 00083860M10り大ぜいたちより、まづ+かんにんし給へといひけるが、 00083870M11となりの/菓子(くわし)屋たち出、/御身(おミ)の(三オ)/腹立(ふくりう)、もつともじや。 00083880M12さりながら/能(よく)ききやれ。このぢう、おらがまんぢうむした 00083890M13てゝ、見せへ/出(いだ)したれば、とをりのやつが、/此(この)まんぢうハ 00083900M14むまさうなといふていんだほどに、くじらをうしとハ、あ 00083910M15まりちがひハなひほどにといふた。そばより/番太郎(ばんたらう)まかり 00083920M16いで、いづれもの御れうけん、もつともじやハ。わたくし、 00083930M17此ごろ/夜(よ)ふけてうつら+ねふりゐたりしに、おもてへわ 00083940M18かひものきたり、/何時(なんどき)ぞととふたりけるに、ねふさにあい 00083950M19さつ(三ウ)をいたしませぬに、/彼(かの)やつ、こゝな/番太(ばんた)めハい 00083960¥P279 00083970L1ぬさうなと申て、いきおりました。 00083980¥N4¥J 00083990¥Xおくさまの目ちがひ 00084000L4/妾(めかけ)あがりのおくさま、あるとき/御簾(ミす)のうちにて、それ/鳥目(てうもく) 00084010L5+とのたまふ。/御番(ごばん)のさふらひしゆ、何事やらんと、そ 00084020L6こらをみれバ、/柿(かき)のへたあり。此ことかとおもひ、是ハ/柿(かき) 00084030L7のへたでござりますといへば、おくさま、ハて、おれはき 00084040L8せるのがんくびと見た。 00084050¥N5¥J 00084060¥X/精進(しやうじん)ぎらひ(四オ)(四ウ・五オ挿絵) 00084070L11おなじ/日(ひ)に、ふたおやしにけるに、その/子(こ)、/持仏(ぢぶつ)だうにむ 00084080L12かひいひけるハ、わたくし日ごろ、しやうじんぎらひとお 00084090L13ぼしめし、/同日(どうにち)に/御死去(ごしきよ)あそばし候だん、かたじけなひ。 00084100L14めうがのためにござれば、/二日(ふつか)のこゝろに、/中(なか)おちをつか 00084110L15まつりませう。もつともとおぼしめさば、/御返事(おへんじ)におよば 00084120L16ぬといはれし。 00084130¥N6¥J 00084140¥X/新(あたら)しいばけもの 00084150L19ばけもの/屋敷(やしき)じやと人もすまぬ/所(ところ)を、(五ウ)/何(なに)の/治部大夫(ちぶだゆふ) 00084160M1とやら、ちからじまんのおとこ、わたくしに/下(くだ)されませと 00084170M2ねがふを、/殿(との)もいらぬ事じやとおぼしめせども、/達而(たつて)申ゆ 00084180M3へ、こゝろしだひとおほせければ、かたしけなしと、/重代(ぢうだい) 00084190M4のたちはいて、その/夜(よ)ばけ/物(もの)/屋敷(やしき)へゆきけるに、はや、う 00084200M5しの/刻(こく)もすぐれど/何(なに)の事もなし。さてはおれがいきほひに 00084210M6おぢて/出(いで)ぬかと、そらねいりをしければ、/座敷(ざしき)のすみより、 00084220M7大きなる/女(をんな)のくび、くわゑんをふいて/出(いづ)る。/治部大夫(ぢぶだゆふ)見て、 00084230M8いや+、そんな事(六オ)ハふるひ+といへば、あるひ 00084240M9ハてんじやうから、/鬼(おに)の/手(て)を/出(いだ)すやら、あんどんがおどる 00084250M10やら、はしらに/目(め)はながつくやら、さま※とばけけれど、 00084260M11/皆(ミな)ふるし+といへるに、ばけものもたいくつして、その 00084270M12/後(のち)ハ/出(いで)ず。/夜(よ)もあけて、/朝日(あさひ)もきらめく/折(をり)から、/殿(との)より/御= 00084280M13使者(おん=ししや)きたりて、さても治部大夫、/今夜(こんや)のてがら、申さふや 00084290M14うもなひ。/則(すなハち)/御(ご)ほうびとして、弐百石/御(ご)かぞうなさるゝ 00084300M15ほどに、ありがたくおもはれよといへば、治部大夫うけた 00084310M16まハり、(六ウ)かうべを/地(ち)につけて、かたじけなくぞんじ 00084320M17たてまつるといひながらみれば、人ぎれなし。これハとお 00084330M18どろけば、/天井(てんじやう)から、治部太、何と、これでもふるひか。 00084340¥P280 00084350¥N7¥J 00084360¥X/竹(たけ)のりやうぢ 00084370L3/御(ご)ひさうの竹が、そろ+/枯(かれ)るが、/何(なに)としたものであらう 00084380L4と、/役(やく)にんしゆ御さうだんあるところへ、/下役(したやく)のものまか 00084390L5りいで、わたくしがちかづきに、/竹(たけ)のりやうぢつかまつる 00084400L6/医者(いしや)がござります。これにおほせつけられませと(七オ)い 00084410L7ふ。それこそとやがて/医者(いしや)をよびよせ、たけのりやうぢた 00084420L8のむといへば、/彼(かの)いしや、大きにはらをたて、こなたがた 00084430L9ハ人をよんてなぶりめさるか。人のりやうぢハつかまつら 00084440L10ふが、竹のりやうぢハぞんぜぬと、/座敷(ざしき)をけたてゝかへる。 00084450L11あとにて/下役(したやく)をしかり、そさうせんばんといへば、したや 00084460L12く/聞(きゝ)、いゑ+、そさうでハござらぬ。まだいふかとしか 00084470L13れば、それでも/世間(せけん)であれを、やぶいしやといふもの。 00084480¥N8¥J 00084490¥X/全盛(ぜんぜい((ママ))のちじよく(七ウ) 00084500L16/三浦(ミうら)の/高尾(たかお)ハ/代(たい)※うるハしく、くらゐありて、/道中(だうちう)八も 00084510L17んじにて、あげやへきたり、二かいへあがりしに、ふしぎ 00084520L18や、/塵(ちり)もなきたゝみに/銭(ぜに)おちてありしを、/高尾(たかお)見たまひ、 00084530L19もじ/野(の)よ。それ、何やら一もんあるといはれた。 00084540¥G 00084550¥N9¥J 00084560¥Xすの/字(じ)のかけ/物(もの) 00084570M14三人つれにて、さる/所(ところ)へゆきしに、とこのかけものに、す 00084580M15の/字(じ)を/赤(あかく)かきてをけり。あるじいふやう、/此(この)かけものを、 00084590M16はんじてごらうじ(八オ)ませ。ひとりがみて、わたくしハ 00084600M17/繻子(しゆす)とはんじました。/一人(ひとり)ハ、/単子(たんす)とときましたといへは、 00084610M18ひとりのそさう/者(もの)、さて+くちおしや。おれも/長持(ながもち)とま 00084620M19で、/気(き)がついたもの。 00084630¥N10¥J 00084640¥X/鶴(つる)ハ/千年(せんねん) 00084650L3/御(お)あづかりの/鶴(つる)が、たゞいまとんしつかまつりましたと申 00084660L4あぐれば、/殿(との)、おほきにはら/立(たち)たまひ、をのれハにくいや 00084670L5つの。/何(なに)のためにあづけをきしぞ。ことに/鶴(つる)ハ/千(せん)ねんのよ 00084680L6はひをたもつといふに、さだめて/餌(ゑ)など(八ウ)(九オ挿絵) 00084690L7を、ろく+にあてがハぬゆへ/死(しゝ)たであらふ。/向後(きやうこう)おれが 00084700L8/前(まへ)へ/出(いで)をるまひと、けしきかハりてしかりたまへば、/役人(やくにん) 00084710L9なるほど、/御(おん)しかりのだん、/御(ご)もつともにぞんじます。さ 00084720L10りながら、/餌(ゑ)もずいぶんあてがひまして、/大(たい)せつにつかま 00084730L11つりしが、/頓死(とんし)いたしたハ/大(おほ)かた、/今日(こんにち)がそのせんねんめ 00084740L12でかな、ござりませう。 00084750¥N11¥J 00084760¥X/道心(だうしん)の/栄花(ゑいぐわ) 00084770L15/駕篭(かご)かきの七助、おやの/忌日(きにち)にあたり(九ウ)ければ、/何(なに)と 00084780L16ぞ/出家(しゆつけ)を/供養(くやう)したきとおもへど、もとより/貧(ひん)なればまかせ 00084790L17ず。せめて/辻(つじ)に/出(いで)て、/御(ご)しゆつけのとをらせたまハヾ、/銭(ぜに) 00084800L18とらずに/駕篭(かご)にのせんとおもひ、あひかたにやうすをかた 00084810L19れば、/相(あひ)かたもあはれがりて、ともに/辻(つじ)へ出けるに、その 00084820M1日にかぎりて一人もとをらず。九つじふんになりて、やう 00084830M2+一人、いそがしさうにとをるを、七助よろこび、/衣(ころも)の 00084840M3そでをひかへて、/右(ミぎ)のだん※を申、いざ、かごにのらせ 00084850M4たまへと(十ノ五オ)いへば、/出家(しゆつけ)/聞(きゝ)、/心(こゝろ)ざしうれしけれど、 00084860M5おれハ/乗(のり)てハらちのあかぬ事か/有(ある)。ゆるしてたもれとゆか 00084870M6んとするを、をしとめ、/是非(ぜひ)をいハせず、むりに/駕篭(かご)にの 00084880M7する。是ハめいわくなといふもかまハず、かづき/行(ゆけ)ば、/彼= 00084890M8僧(かの=そう)うちにて、/回向院(ゑかうゐん)の/仏餉(ぶつせう)+とよばれた。@いやといふた|こそだうり。@ 00084900¥N12¥J 00084910¥Xきつねのそさう 00084920M11/鈴(すゞ)のもりに、ばけ/狐(きつね)すんで、人をまよハしけるに、あるも 00084930M12の、/其(その)きつねを見とゝけんとて、(十ノ五ウ)わざと日のく 00084940M13れに行、かなたこなたを見まハりしに、とある松の木のも 00084950M14とに、ふる/狐(きつね)一/疋(ひき)よねんもなく、ねいり/居(ゐ)たり。/此狐(このきつめ)めな 00084960M15らんと、やがてそばへより、もし+/女郎(じよらう)さまと、おこし 00084970M16ければ、きつねおどろき、目をさまして、さてハ/女(をんな)に/化(ばけ)て 00084980M17ゐたかとおもひ、なんでござんすといへば、/男(おとこ)おかしく、 00084990M18是、/池上(いけがミ)へハどうゆきますととへば、かのきつね、わしハ 00085000M19いけがみハしりやんせんとて、/又(また)ねた。(十六オ) 00085010¥P282 00085020¥N13¥J 00085030¥X/正直(しやうぢき)なほめやう 00085040L3/座敷(ざしき)の/床(とこ)に、/達磨(だるま)のすみ/絵(ゑ)をかけ/置(をき)たを、人+見て、さ 00085050L4ても/見事(ミごと)。これは/雪舟(せつしう)でもござらふか。いや+、/小法眼(こほふげん) 00085060L5であらふ。/探幽(たんゆう)/主馬(しゆめ)でこさらふなんど、とりどりへうばん 00085070L6するに、そさう/者(もの)すゝみ/出(いで)、もし、わたくしハ、やはり/達= 00085080L7磨(だる=ま)とみました。 00085090¥N14¥J 00085100¥Xやめぬ/小盗(こぬすミ) 00085110L10/調一(でつち)の仁助、さい+しかれとも、/小盗(こぬすミ)をいたしければ、 00085120L11せんかたなく、/隙(ひま)をつかハし(十六ウ)けり。四五日すぎて、 00085130L12かの仁助/来(きた)り、わたくしもたゞ今ハ、三町めの/酒(さけ)屋へあり 00085140L13つきましたと申。だんな/聞(きゝ)、/爰(こゝ)にゐたやうにぬすみしたら 00085150L14ば、大きなめにあハふほどに、かならず+/手(て)のながひを 00085160L15やめよといへば、さて+、御なじみとて御いけん/下(くだ)され、 00085170L16かたじけなふござります。/此御礼(このおれい)に、どふぞいたし、/酒(さけ)の 00085180L17かすをぬすんで/上(あげ)ませうといふた。 00085190¥Y1水打花一終(十七終オ) 00085200¥Y1見都う地花二之目録 00085210M3/聾(つんぼ)のこゝろえ 00085220M4からざしの/蛙(かいる) 00085230M5かんばんの/古事(こじ) 00085240M6/武道(ぶだう)の/茶(ちや)の/湯(ゆ) 00085250M7かハつた/痔(じ)の/名(な) 00085260M8/灯心(とうしん)の/出(で)どころ(一オ) 00085270M9/質屋(しちや)の/湯(ゆ)あがり 00085280M10/無類(むるい)のゆうれい 00085290M11/饅頭(まんぢう)のためし/物(もの) 00085300M12/終(つゐ)に見ぬ/字(じ) 00085310M13ふた/道(ミち)下リ/酒屋(さかや) 00085320M14/茶湯者(ちやのゆしや)の/改名(かいミやう) 00085330M15/茗荷(ミやうが)のつかひぞこなひ 00085340M16/番太(ばんた)がそさう(一ウ) 00085350¥P283 00085360¥T1 00085370¥N1¥J 00085380¥X/聾(つんぼ)のこゝろえ 00085390L3一とせ大がみなり/鳴(な)りしとき、いゑ+にて/香(かう)をたき、く 00085400L4わんをん経などとなへ、あるひハふとんよぎなどかぶり、 00085410L5おそれたりしに、/去(さる)ところにつんぼありしが、すこしもお 00085420L6そるゝけしきなし。/側(そバ)に有ける人+、高ごゑにて、そち 00085430L7ハ/仕合(しあハせ)じや。此はうどもハいきたこゝちハなきなどいひけ 00085440L8れば、つんぼうなづきながら、/芸(げい)ハ/身(ミ)をたすくるじやなあ 00085450L9といひけるもおかし。@つんぼをけいとこゝろえ|たる口上△一入おかし。@(二オ) 00085460¥N2¥J 00085470¥Xからざしのかいる 00085480L12/下(しも)おとこの八助、ぜに一/貫(くわん)ひろひ、うれしくおもひ、とら 00085490L13んとせしが、/使(つかひ)にゆくにぜに/持(もち)てハいかれまひと、しばら 00085500L14くあんじ、いつそ/地(ぢ)にいけて、かへりにとらんと、人の/気(き) 00085510L15のつかぬところを/堀(ほり)て、/彼(かの)ぜにをいれ、/因果(ゐんぐわ)をふくめける 00085520L16ハ、かならず+よの/者(もの)が/来(き)てとらんとせば、かいるにな 00085530L17りてみえよと、やがて/土(つち)かけて/行(ゆく)。それを/去(さる)もの、/木(こ)かげ 00085540L18にて/聞(きゝ)すまし、かの/銭(ぜに)をほり/出(いだ)し、あたりのかいるを四五 00085550L19(二ウ)/疋(ひき)/穴(あな)へいれ、もとのことく/土(つち)をかけて、何が仕合に 00085560M1ならふもしれぬと引かづき/行(ゆく)。その/跡(あと)へ八すけ、すた+ 00085570M2/来(きた)り、やれ+/待(まち)かねたであらふ。さらバおがみ申さんと、 00085580M3そろ+/土(つち)をのくれば、/蛙(かいる)一/疋(ひき)ひよいと/出(で)る。八助みて、 00085590M4是、おれじや+といふとき、又二三びき、ひよい+と 00085600M5/出(で)る。八助、あハてふためき、やれやれ、さしがきれる 00085610M6+。 00085620¥N3¥J 00085630¥Xかんばんの/古事(こじ) 00085640M9/湯(ゆ)屋のかんばんに/矢(や)はづをするほど、がてんの(三オ)(三ウ 00085650M10・四オ挿絵)ゆかぬ事ハなひといへば、そばから、あれは人 00085660M11のいるやうにとのことじや。そんなら又、/酢(す)など/売(うる)いゑの 00085670M12かんばんに、すいのうのやうな、そこのなひものをするハ 00085680M13どふぞ。あれハなんぼ/射(い)ても、す/矢(や)じやといはれた。 00085690¥N4¥J 00085700¥X/武道(ぶだう)の/茶(ちや)の/湯(ゆ) 00085710M16二三人、/数寄(すき)屋ぶるまひにゆきけるに、あるじ、さま※ 00085720M17の道具をかざりをかれしを、/賞客(しやうきやく)、いち+にほめそやし、 00085730M18さて+、/御(ご)ていしゆハよい道具もちやといはれけるを、 00085740M19(四ウ)/末座(ばつざ)のおとこ、したが、あつたら/道具持(だうぐもち)に/髭(ひげ)がなひ。 00085750¥P284 00085760¥G 00085770¥N5¥J 00085780¥Xかハつた/痔(じ)の/名(な) 00085790M3これ七兵衛。五六日すきとあはぬ。/手紙(てがミ)をやれど/返事(へんじ)もな 00085800M4し。/外(そと)へも/出(で)ぬか。どふじやぞ。こゝろもとなひといへば、 00085810M5されば、此ごろハさん※/痔(じ)がおこつて、ねてばかりゐる。 00085820M6それハなんぎであらふ。とふからしらば、こちによい/薬(くすり)が 00085830M7あるにやらふものを。して/先(まづ)、その/痔(じ)ハ/出痔(でじ)か、いぼじか、 00085840M8あなじかととへバ、(五オ)/出痔(でじ)てもあなじでもなひが、お 00085850M9やじがおこつた。 00085860¥N6¥J 00085870¥X/灯心(とうしん)の/出(で)どころ 00085880M12とうしんハ何から/出(で)るぞとおもへバ、あみがさにする/葦(い)か 00085890M13らでる。いや+、あみがさからハでぬ。/畳(たゝみ)の/葦(い)からじや。 00085900M14いや、あみがさからじやと、たがひにせりあひけるに、こ 00085910M15ざかしきおとこすゝみいで、/是(これ)+、あミがさからでも、 00085920M16たゝみからでもござらぬ。あれハあんどんの/引出(ひきだ)しから出 00085930M17ますといはれた。(五ウ) 00085940¥N7¥J 00085950¥X/質(しち)屋の/湯(ゆ)あがり 00085960¥P285 00085970L1しちを/置(をき)たるものと、その/質(しち)をとりたるものと、/銭湯(せんとう)へい 00085980L2りたりけるに、たがひに/岡(をか)へあがりて、しちをとりたる/者(もの) 00085990L3のいふやう、五兵衛どの、いらしやつたか。さあながしま 00086000L4せふものといへば、かの五兵衛もみ/手(で)して、どふぞ/今(いま)ひと 00086010L5月、まちて下されませといふた。 00086020¥N8¥J 00086030¥X/無類(むるい)なゆうれい 00086040L8/信州(しなの)あさまがだけのふもとへ、/道心(だうしん)じや(六オ)とまりて、て 00086050¥G 00086060M1いしゆにとひけるハ、この/山(やま)は/夜(よ)に三/度(ど)日に三どもゆると 00086070M2申が、まことでござるか。/亭主(ていしゆ)きゝ、なるほど、いまにも 00086080M3えます。/追付(おつつけ)もえるときになりましたといへば、たちまち 00086090M4/黒雲(くろくも)、あさま山を/引(ひき)つゝんで、そのうちよりほのほもえい 00086100M5で、ばんじやく/火(ひ)のことなりて、とぶをとのすさまじさ。 00086110M6/道心者(だうしんじや)、しばらくねんぶつ申て見ければ、かの山ぶる+ 00086120M7とふるひ、てんもひゞける大をんにて、あら/峯(ミね)くるしや。 00086130M8(六ウ)(七オ挿絵) 00086140¥N9¥J 00086150¥X/鏝頭(まんぢう)のためし物 00086160M11/去(さる)おとこ、/屋敷(やしき)へゆきけるに、/殿(との)おほせらるゝは、此ごろ 00086170M12かたなをもとめたが、きれあぢがしれぬゆへ、ためして見 00086180M13たひ。/人(ひと)のほかに、よいためしものハなひかといひたまへ 00086190M14ば、おとこ/聞(きゝ)、まんぢうを/十(と)をかさねて、/下(した)まできれます 00086200M15れば、三つ/胴(どう)をきりますとおなじ事でござります。それハ 00086210M16/何(なに)よりやすひ事じやと、やがてまんぢうを/十(と)をかさねてき 00086220M17りたまへば、ものゝ見事にたゝみまで(七ウ)きれけり。お 00086230M18とこ見て、さてもよふきれました。あつはれの/御道具(おだうぐ)や。 00086240M19さらハ/御(お)しがいを申うけませふ。 00086250¥P286 00086260¥N10¥J 00086270¥X/終(つゐ)に見ぬ/字(じ) 00086280L3/$(りつしんべん)に/$(おつ)の/字(じ)ハこゑよみともに何と申ぞと、ものしりの 00086290L4/医者(いしや)にとへば、つゐに見ぬ/字(じ)じや。/字書(じしよ)をかんがへて見ま 00086300L5せふと/帰(かへ)られて/後(のち)、四五日すぎて/来(きた)り、/書物(しよもつ)をみましたれ 00086310L6ど、あの/字(じ)ハござらぬといふ。ていしゆ/聞(きゝ)て、もはやこち 00086320L7で見/出(だ)しました。それハ何にござるぞ。(八オ)いや、よた 00086330L8れの/$(れ)の字でござりました。 00086340¥N11¥J 00086350¥Xふた道下り/酒屋(さかや) 00086360L11あそこの/酒(さか)屋ハさけに/水(ミづ)をいれて、人の/目(め)をかすめて/売(うる)。 00086370L12にくいことじやといふを、さか屋のだんな/寺(てら)きいて、さて 00086380L13+さたのかぎりや。わせたら、ゐけんをいはんとおもふ 00086390L14ところへ、/彼(かの)さか屋見/舞(まひ)に/来(きた)る。/住持(ぢうぢ)見て、こなたハさけ 00086400L15に水をいれて/売(うる)さうなが、/後生(ごしやう)こそねがハずとも、そんな 00086410L16事ハせぬがよいとしかれば、/御(こ)もつともでござります。今 00086420L17からやめ(八ウ)ませふといふてかへる。二三日すぐれど、 00086430L18/酒(さけ)のあぢミづくさく、もとのごとくなれば、だんなでら、 00086440L19ふくりうして、そのまゝ/酒(さか)屋へ/行(ゆき)、あれほど御ゐけん申た 00086450M1に、やめやうといつて、なぜ、/今(いま)にさけへ水いれやるとい 00086460M2へば、さか屋、/御(お)まへの/御(ご)ゐけんゆへ、その日から/無用(むよう)に 00086470M3つかまつりました。それでも、酒のあぢがおなじ事なハど 00086480M4ふぞ。されば、さけに水いれます事ハやめにいたし、たゞ 00086490M5/今(いま)ハ水に、すこしさけをまぜますといふた。(九ノ十四オ) 00086500¥N12¥J 00086510¥X/茶湯(ちやのゆ)しやの/改名(かいミやう) 00086520M8/茶杓屋(ちやしやくや)の吉兵衛ハもとより/無筆(むひつ)なれど、わかひときから/佗= 00086530M9数寄(わび=すき)をたのしミけり。ある時おもふやう、もはや/諸事(しよじ)むす 00086540M10この太郎兵衛にうちまかせ、/法躰(ほつたい)せふとおもふにより、むか 00086550M11ひの/浄室(じやうしつ)かたへ/行(ゆき)、かやう+おもひ/立(たち)ましたほどに、/入= 00086560M12道名(にう=だうな)をつけてたまハれとたのみければ、やすひ事じや。じ 00086570M13たい、そなたハ茶ずきじやほどに、/茶(ちや)の/春(はる)といふ/字(じ)(九ノ 00086580M14十四ウ)なれば、/茶春(さしゆん)とつきやれといへば、よろこびうちへ 00086590M15もどりけり。むすこハすこしにじりがきもするゆへ、おや 00086600M16じにむかひ、/浄室殿(じやうしつどの)ハなんと/名(な)をつきやつたととへば、さ 00086610M17て+、さつそくよい/名(な)をつけられた。おれハ/茶(ちや)ずきじや 00086620M18ほどにとて、/茶春(さしゆん)とつけられたといへば、太郎兵衛しばら 00086630M19くしあんして、さて+さたのかぎりな事じや。こなたの 00086640¥P287 00086650L1/無筆(むひつ)なゆへ、/浄室(じやうしつ)めがなぶりおつて、えしれぬ/名(な)をつけた 00086660L2と、/腹(はら)たて(十五オ)ければ、おやじ/聞(きゝ)、/茶(ちや)の/春(はる)とよむげな。 00086670L3さあれバよい/名(な)じやといへば、いや+、まだいやるか。 00086680L4/春(しゆん)の/字(じ)ハ/春日(かすが)のかすといふ/字(じ)なれば、/茶春(ちやかす)といふ事じや。 00086690L5これはいくらでもかんにんならぬといふた。 00086700¥N13¥J 00086710¥X/茗荷(ミやうが)のつかひそこなひ 00086720L8/去旅篭(さるはたご)屋へ、たび人/宿(やど)かりしが、ふところより/金子(きんす)の/入(いり)た 00086730L9るさいふをとり/出(だ)し、ていしゆにあづけをきけり。ていし 00086740L10ゆ、女ばうにいひけるハ、/今夜(こんや)もあすも、ずいぶんミやう 00086750L11(十五ウ)がを、/汁(しる)にもさいにもおほくつかへといへば、女ば 00086760L12う/聞(きゝ)、それハなぜにといへバ、ミやうがを/食(くへ)ば、ものわす 00086770L13れをするものじやげな。/旅人(たびびと)/立(たち)さまに、あづけをきしさい 00086780L14ふをわすれるやうにといふことじやといへば、もつともじ 00086790L15やとて、ミやうがをおほくくハせけり。あくる/朝(あさ)、かのた 00086800L16び人/立(たち)さまに、ていしゆにいふやう、さて+/御(ご)ちさう/過= 00086810L17分(くわ=ぶん)にぞんじ候。/扨(さて)/預(あづけ)をきしさいふたまハれとて、うけ/取出(とりいで) 00086820L18けれバ、/宿屋(やどや)めうとあきれて、さて+(十六オ)これほど 00086830L19ミやうがをくはせても、さいふをわすれぬハ。/人(ひと)のいふも 00086840M1うそじやといひければ、女ばういふやう、いや、ミやうが 00086850M2のきどくがみえて、はたこ/代(だい)をわすれて、はらハずにいん 00086860M3だといふた。 00086870¥N14¥J 00086880¥X/番太(ばんた)がそさう 00086890M6/去(さる)ところの/手代(てだい)、/茶屋(ちやや)へ/行(ゆき)あそびけるが、おもひのほか、 00086900M7/夜(よ)/更(ふけ)ければ、/主人(しゆじん)のしゆび、いかゞあらんと/案(あん)じ+もど 00086910M8るみちにて、/町(ちやう)の/番屋(ばんや)にて、/時(とき)をとハんとおもひ(十六ウ) 00086920M9たちよれば、/番太(ばんた)、/目(め)をすり+/立(たち)いでいひけるハ、もう 00086930M10し+、もはや/何(なん)どきでござりますととふた。 00086940¥Y1水うち花二終(十七終オ) 00086950¥P288 00086960¥Y1水打花三之目録 00086970L3/印篭(ゐんろう)の/目利(めきゝ) 00086980L4/五音(ごいん)のうらなひ 00086990L5/左官(さくわん)の/色(いろ)ぐるひ 00087000L6/下(した)おびのぜい 00087010L7/石塔(せきとう)の/奇瑞(きずい) 00087020L8/袈裟切(けさぎり)にあぶなひ事(一オ) 00087030L9猫(ねこ)のはん 00087040L10/赤銅(しやくどう)つば 00087050L11/茶碗(ちやわん)まハし 00087060L12二人/無筆(むひつ) 00087070L13/乞食(こじき)のとんさく 00087080L14/絵(ゑ)かきのじまん 00087090L15/三五(さんご)がはつめい(一ウ) 00087100¥T1 00087110¥N1¥J 00087120¥X/印篭(ゐんろう)の/目利(めきゝ) 00087130M3/去御(さるお)やしきがたにて、わかき/侍(さふらひ)しゆ三人より/合(あひ)、ふるきゐ 00087140M4んろう、めきゝしけるが、一人がいはく、/東山殿時代(ひがしやまどのじだい)じや 00087150M5と見たといへば、一人は/信長(のぶなが)じだひ、一人は/信長(のぶなが)じだひ、一人ハ/大閤御代(たいこうごだい)の/作(さく) 00087160M6とみえるなどゝいひけるところへ、こまもの屋/徳平(とくへい)、/御(お)見 00087170M7/舞(まひ)申とあんないあれば、そりや/能(よき)ものが/来(き)たハ。とをりや 00087180M8といへとあれバ、/徳平(とくへい)かしこまる。おじやつたか。/久(ひさ)しう 00087190M9こそあれ。まづ+見てもらふ/物(もの)あり。(二オ)見てたもと、 00087200M10/彼(かの)ゐんろうとり/出(いだ)し、是+ミやとて、さてミな+のお 00087210M11もハく/咄(はな)しけれバ、徳平一/目(め)見て、これはをの+さまの 00087220M12/御目(おめ)すこし/違(ちがふ)たり。/信長時代(のぶながじだい)と/大閤御代(たいこうごだい)の/間(あいだ)なりといへば、 00087230M13いづれも、とは、どふじやとあれば、/明智時代(あけちじだい)なり。/其(その)し 00087240M14やうこには、くすりを三日ともたぬといふた。 00087250¥N2¥J 00087260¥X/五音(ごいん)のうらなひ 00087270M17/浅草(あさくさ)に、五いんのうらなひする/者(もの)あり。さる/浪人(らうにん)、/出世(しゆつせ)の 00087280M18/吉凶(きつきやう)を見んとて、/彼(かの)うらなひ(二ウ)しやにあひ、さま※ 00087290M19と/吉凶(きつきやう)を見るところへ、/乞食(こじき)/二人(ふたり)きたり、一/銭(せん)/下(くだ)されませ 00087300¥P289 00087310¥G 00087320M1といふを、さんをき/聞(きゝ)て、あのこじき、一人ハ/針(はり)うりのは 00087330M2て、一人は/鑓(やり)つかひのはてじやといふ。らうにんふしぎに 00087340M3おもひて、二人にぜにをやり、われらハ/針(はり)うり、やりつか 00087350M4ひのはてかととへば、こじきども/大(おほ)きにおどろき、どふし 00087360M5て/御(ご)ぞんしなされました。なるほど/其(その)はてにてござります 00087370M6と、きもをつぶして、そのとなりへ/行(ゆく)ところへ、/又(また)ひとり 00087380M7/来(き)て、/銭(ぜに)をねだる。/浪人(らうにん)見て(三オ)(三ウ・四オ挿絵)とて 00087390M8もの/事(こと)に、あのこじきのいにしゑもうけたまハりたいと 00087400M9いへば、さんをき、しバらくかんがへ、/此(この)こじきハどふあ 00087410M10んじますれどしれぬ。五いんのうらなひと申ハ、人+の 00087420M11ことばのしなでうらなふにより、さいぜんのこじきも、も 00087430M12とより/針売(はりうり)なれば、ふだんはり+とよびましたがくせに 00087440M13なりて、あれに/迄(まで)、一/銭(せん)くだ/針(はり)ませといふた。/又(また)/鑓(やり)つかひ 00087450M14ハ/朝夕(てうせき)やりを/心(こゝろ)にかけてゐるゆへ、くだやりませと申たを 00087460M15もつて、うらなひしが、此こじきハ/其(その)五いんが(四ウ)はつ 00087470M16きりとしませぬといへば、かのこじき、つく※/聞(きい)て、さ 00087480M17て+もつともな事じや。わたくしハミなさまのおかげで、 00087490M18その日ををくりますれば、みなさまに/銭(ぜに)をもらハねば、/私(わたくし) 00087500M19はくたはりますと申ました。 00087510¥P290 00087520¥N3¥J 00087530¥X/左官(さくわん)の/色(いろ)ぐるひ 00087540L3さくわんの七/蔵(ぞう)、/髪(かみ)などりつぱにゆひ、/本町(ほんちやう)ふうになりて 00087550L4吉原へゆき、ぜひたくこきちらし、さはゑといふて/帰(かへ)るを、 00087560L5ぎう、/外(そと)までをくり、こしをかゞめて、又うらがへにハい 00087570L6つ御出なされ(五オ)ますといへば、七蔵おどろき、/手足(てあし)を 00087580L7見まわし、なむさんぼふ、あらハれた。 00087590¥N4¥J 00087600¥X/下帯(したおび)のぜい 00087610L10/去(さる)ならずもの、日のくれに/高田馬場(たかたはゞ)をとをりけるに、/浪人(らうにん) 00087620L11らしきおとこ、七八人なみゐて、これ+酒手を/置(をい)てゆけ 00087630L12といふ。もちあハせませぬほどに、かんにんしてたもれと 00087640L13いへば、それ、物ないはせそと、二三人立かゝり、/帯(おび)/引(ひき)ほ 00087650L14どきて、下おびまではぎとる。ならず/者(もの)、なミだをながし、 00087660L15せめて/下帯(したおび)ハゆるして(五ウ)下され。それが三文もするも 00087670L16のでハないにといふ。その中に年ばいなるぬすびと、いか 00087680L17さま、あれがいふとをり、なまわかひものが、かゝすにも 00087690L18ゆかれまひに、ふんどしばかりハゆるしやれとて、はぎと 00087700L19りたる下帯二三十出し、をのれがのハどれじやぞ。見てと 00087710M1れといふ。こはかたじけなしと、其うちにて一ばんあたら 00087720M2しきを、是がわたくしのじやと、さう+/宿(やど)へとりかへり 00087730M3みれば、下おびのはしに、/金子(きんす)三ぶくゝりつけてあり。や 00087740M4れ(六オ)うれしや。はがれた/着物(きもの)より、此方がましじや。 00087750M5ひとへに天のあたひとよろこび、その/手(て)にせんと、/明日(あした)又 00087760M6下おびばかりになりて、/高田(たかだ)へ/行(ゆき)、/大勢(おほぜい)のぬすびとの中を、 00087770M7ふんどしハいらぬか+とよびあるひた。 00087780¥N5¥J 00087790¥X/石塔(せきとう)の/奇瑞(きずい) 00087800M10今井なにがしとかやいへる/浪人(らうにん)、/江戸(ゑど)へ/下(くだ)るとて、/江州(こうしう)/粟(あハ) 00087810M11津の/兼平(かねひら)が/石塔(せきとう)をみて、下人にいふやう、おれが/先祖(せんぞ)の/兼= 00087820M12平(かね=ひら)のせきとうハ是じや。おれもおがむほどに(六ウ)われも 00087830M13そこでおがめと、かんたんくだき、はいしければ、ふしぎ 00087840M14や、/石塔(せきとう)ぶる+とふるひけり。/浪人(らうにん)/鼻(はな)をたかくして、い 00087850M15かに何すけ。せんぞのせきとうほどあつて、あのごとく/奇= 00087860M16瑞(き=ずい)がみえた。めいよじやな。/出世(しゆつせ)の門出がよい。いざ酒の 00087870M17まんと、そのあたりのちや屋へいれば、そこの/姥(ばゝ)が、のふ、 00087880M18/旅(たび)のおさふらひ。今の/地震(ぢしん)にハどこであはしやつた。 00087890¥P291 00087900¥G 00087910¥N6¥J 00087920¥X/袈裟切(けさぎり)にあぶなひ事 00087930L14やれ/切(きつ)たハ。/門(もん)をうてとさハぐをみれば、(七オ)まさしくき 00087940L15られたハ水茶屋の/与茂八(よもはち)なり。さて+かハひや。/妻子(さいし)に 00087950L16いそぎしらせんと、すぐにかけ行みれば、与茂八、なるほ 00087960L17どそくさいにて、はかまを/着(ちやく)し、れうりしてゐる。やれ、 00087970L18よも八。/息災(まめ)なか。さきの町で、おぬしによふにたおとこ 00087980L19が、/大(おほ)げさにきられたゆへ、もしやとこゝろもとなさに/来(き) 00087990M1たが、まづ何事もなふて仕合じやといへば、与茂八、やあ 00088000M2といふてかけ出る。何ことじやと/跡(あと)よりゆけバ、よも八、 00088010M3ひといきにきられた/者(もの)のそばへ行、かけて(七ウ)(八オ挿絵) 00088020M4あるむしろを引のけみて、あゝうれしや。おれでハなひ。 00088030¥N7¥J 00088040¥X/猫(ねこ)の/番(ばん) 00088050M7/鰹(かつお)をりやうりしてゐるところへ、となりのおとこ来たれば、 00088060M8これ+、たのみたい事がある。おれハ三町目まで用が有 00088070M9てゆくほどに、/跡(あと)でこの鰹を、ねこがとらぬやうに/番(ばん)して 00088080M10下されと、いふて出る。おとこ、ばんしてゐながら、つく 00088090M11※と/鰹(かつお)を見て、さてもあたらしい事じや。是ハちと、し 00088100M12よしめま(八ウ)せふとおもひ、くひにかゝれば、むかふに 00088110M13ねらふてゐた/猫(ねこ)が、ふう+といつておどした。 00088120¥N8¥J 00088130¥X/赤銅(しやくどう)つば 00088140M16四日/市(いち)のこまもの屋にて、しやくどう/鍔(つば)を見て、これハ/似(に) 00088150M17せでハなひかといへば、/売(うり)ぬし、いかにも/正身(しやうじん)にまがひご 00088160M18ざらぬ。しやうこにハむかでをのせてミやしやれ。/本赤銅(ほんしやくどう) 00088170M19なれバ、かならず/百足(むかで)が/死(し)するといふ。それこそと、あた 00088180¥P292 00088190L1りのむかでをひろひとり、/鍔(つば)にのせければ、/百足(むかで)/一段(いちだん)と/死(し) 00088200L2なず。これ見や。この/赤(しやく)(九ノ十四オ)/銅(どう)は/正身(しやうじん)でないとい 00088210L3へば、/売(うり)ぬし、なるほど、ほんしやくどうにちがひハこざ 00088220L4らぬが、そのむかでを/能(よく)見やしやれ。おほかた/似(に)せでござ 00088230L5らふぞ。 00088240¥N9¥J 00088250¥X/茶碗(ちやわん)まハし 00088260L8ちやわんまハしのおとこ、/乞食(こじき)をやめて、/去浪人(さるらうにん)のところ 00088270L9へ/奉公(ほうこう)に/出(いで)けるが、ある時/主人(しゆじん)、二かい/座敷(さしき)へ/客(きやく)をよんで、 00088280L10/彼(かの)ちやわんまハしに、でんがくだうふをいひ/付(つく)る。茶碗ま 00088290L11ハし、とうがらし/味噌(ミそ)をすりけるが、其(九ノ十四ウ)すり 00088300L12ばちを、しゆろばうきのえにて、くる+とまハし、二/階(かい) 00088310L13へさしあげ、/旦那(だんな)、此かげんでよふござるか。 00088320¥N10¥J 00088330¥X/二人(ふたり)/無筆(むひつ) 00088340L16むひつなおとこ、/吉原(よしハら)へ/状(じやう)を/二通(につう)もつて/行(ゆき)けれど、二つう 00088350L17ながら、おなじ/状(じやう)にて、どちがどちへゆくやらしれず。む 00088360L18かふより/大尽(だいじん)らしき、ふうの/能(よき)おとこ/来(き)たりしを、さいわ 00088370L19ひとおもひ、/御(ご)むしんながら、/此状(このじやう)壱つハ/大和(やまと)屋、ひとつ 00088380M1ハあふミ屋へまいりますが、わたくし(十五オ)/無筆(むひつ)ゆへし 00088390M2れませぬ。ちよと/御(お)見わけくだされとさし/出(いた)す。/此大尽(このたいじん)も 00088400M3むひつなれど、かの/状(じやう)を見て、/此状(このじやう)ハやまと屋、此状ハ/近= 00088410M4江(あふ=ミ)屋へじやとおしへる。かたじけなふござりますと、ゆか 00088420M5んとするを、よびもどし、もし、その/状(じやう)がちがふたら、そ 00088430M6ちらの状を/出(だ)しやれといふた。 00088440¥N11¥J 00088450¥X/乞食(こじき)のとんさく 00088460M9/酒(さけ)のえひまぎれに、ぶら+あるき、つじにねてゐるこじ 00088470M10きを、われしらずに/切(きり)けるに、(十五ウ)/明日(あす)になりておも 00088480M11ひ/出(いだ)し、さて+/夕部(ゆふべ)のこじきハふびんな事をした。まだ 00088490M12いきてゐるかと、/辻(つじ)へゆきてみれば、かのこじき、ものゝ 00088500M13見事に、あたまの/鉢(はち)をきりおとされ、其おちた/鉢(はち)を手にの 00088510M14せて、/是(これ)に一/文(もん)+といふた。 00088520¥N12¥J 00088530¥X/絵(ゑ)かきのじまん 00088540M17/大名(だいミやう)の/床(とこ)に、/鷺(さぎ)の/絵(ゑ)をかけて、/絵師(ゑし)に見せられけるに、ゑ 00088550M18しみてあざわらひ、さても/下手(へた)な/絵(ゑ)や。かんじんの鷺のか 00088560M19たちは(十六オ)ひとつもなひ。われらが/家(いゑ)のさぎハ又かふ 00088570¥P293 00088580L1したものでハなひと、じまんいふところへ、/本(ほん)の/鷺(さぎ)、/庭(にハ)の 00088590L2せんすいへ/来(き)たるを、そんならバあのやうなさぎでござら 00088600L3ふといへば、/絵師(ゑし)、いや+、あのやうなものでもなひ。 00088610¥N13¥J 00088620¥X/三五(さんご)がはつめい 00088630L6/都(ミやこ)/嶋原(しまばら)に、さんごといふならびなき太夫あり。ある時、け 00088640L7ハひしてゐたりしが、ふと心におもふやう、さてもわれに 00088650L8まさるきりやうも又とあるまひ。/誰(たれ)さまもなづまんす(十 00088660L9六ウ)はつじやと/自慢(じまん)してゐるところに、その/上(うへ)を/愛宕山(あたごさん) 00088670L10の/大天狗(だいてんぐ)、/飛行(ひぎやう)せられしが、もとより/通力(つうりき)の/身(ミ)なれば、/三= 00088680L11五(さん=ご)がかうまんのこゝろをたちまちさとり、さらバ/魔道(まだう)へ/引(ひき) 00088690L12いれんと、さんごがうしろにすつくりと/立(たつ)ておハしけるす 00088700L13がた、/鏡(かゞミ)にうつりければ、さんご、はつとおもひけれども、 00088710L14さすがはつめいなる/女(をんな)なれば、こゝろをしづめいふやう、 00088720L15さても/天(てん)さま。しやれた/御姿(おすがた)。とりわき/御鼻(おはな)のいとし(十 00088730L16七終オ)らしさハいのと、につとわらへば、/天狗殿(てんぐどの)も、さき 00088740L17の/思(おも)ひつきハうちわすれ、いかれるまなこにしほをもたせ、 00088750L18そんならまづ、たちつけをぬがふかといはれた。てんぐど 00088760L19のがさんごに、こゝろをうばハれたはおかし。 00088770¥Y1水打花三終(十七終ウ) 00088780¥P294 00088790¥Y1三都う知花四之目録 00088800L3/閻魔(ゑんま)の/懐旧(くわいきう) 00088810L4/神変(じンべん)にもかなハぬ 00088820L5/蝿(はい)の見たて 00088830L6かハり/御来迎(ごらいかう) 00088840L7/比丘尼(びくに)のうハなり 00088850L8/貧家(ひんか)のぬすびと(一オ) 00088860L9/食類(しよくるい)/百物(ひやくもの)がたり 00088870L10/甥(おい)ずきな/医者(いしや) 00088880L11/狸(たぬき)の/当話(とうわ) 00088890L12/貧病(ひんびやう)のれうぢ 00088900L13うすひ/鍔(つば) 00088910L14めいわくな/肥満(ひまん)(一ウ) 00088920¥T1 00088930¥N1¥J 00088940¥X/閻魔(ゑんま)の/懐旧(くわいきう) 00088950M3一とせ、/江戸(ゑど)ちかくのいなかより、ゑんまを/守(も)りたてまつ 00088960M4り、/江戸(ゑど)にて/開帳(かいちやう)ありしころ、/火災(くわさい)により、やう+/御(ミ)く 00088970M5しばかり、/難(なん)をのがれさせたまふ。その/後(のち)かり/小屋(こや)をしつ 00088980M6らひ、/再興(さいこう)のため、ミくしをすへ、くわんじんしけるが、 00088990M7/町(まち)+/困窮(こんきう)のをりふしなれば、/奉加(ほうが)もおもひのほかすくな 00089000M8かりし。ある/夕(ゆふ)ぐれ、わかきもの二三人つれだちまいりけ 00089010M9る。一人がいひけるハ、みよ+。ゐん(二オ)ぐわなゑん 00089020M10まのなりじやな。しつかい/獄門(ごくもん)を見るやうなといへば、壱 00089030M11人がいはく、この/小屋(こや)をみよ。/鳥屋(とや)を見るにひとしと。/今(いま) 00089040M12一人がいはく、とかくかやうなゑんまに、りしやうハおも 00089050M13ひよらず。いつそ/人(にん)ぎやう屋がかどへたちよりたらバ、り 00089060M14しやうあるべしなどゝ/雑言(ざうごん)はきちらし、いにけり。あとに 00089070M15て/堂(だう)もり、ゑんまにむかひ、なミたをながし、/扨(さて)+/末世(まつせ) 00089080M16といひながら、かれらがいへるも(二ウ)/一理(いちり)あり。なんと、 00089090M17/御(お)はらハたちませぬかといひければ、ゑんま、ぬからぬ/顔(かほ) 00089100M18にて、たつはらがなひといはれた。 00089110¥P295 00089120¥G 00089130¥N2¥J 00089140¥X/神変(じんべん)にもかなハぬ 00089150M3/夏(なつ)の日、三人よりあひて、そばきりをくひけるところへ、 00089160M4/衣冠(いくわん)たゞしき/老人(らうじん)/来(きた)る。三人のもの、ふしぎにおもひて、 00089170M5おまへハどこからござりました。らうじん、うちうなづき、 00089180M6おれは/会所(くわいしよ)の/稲荷(いなり)じや。そちたちにいひ/度(たい)事ありて/来(き)たが、 00089190M7(三オ)(三ウ・四オ挿絵)おれがいふことをきかふか。三人、 00089200M8はつとかうべを/地(ち)につけ、/何事(なにごと)なりともうけたまハりませ 00089210M9う。おゝ、まんぞく+。べつの事でもなひ。そちたち 00089220M10も、いかにすきなものでも、/毎日(まいにち)くハヾあきはてふ。/稲= 00089230M11荷(いな=り)もそのごとく、あのあかの/食(めし)と、このしろハすきなれど、 00089240M12まいにちゆへ、/鼻(はな)についてくハれぬ。あかのめしにかぎら 00089250M13ず、そばきりも/大好物(だいこうぶつ)を、/氏子(うぢこ)どもがしらひでくハさぬ。 00089260M14/時(とき)に/今(いま)そのそばきりのにほひ、はなにいり、どふもかん 00089270M15(四ウ)にんならひで、これまであらハれたほどに、/余(あま)りで 00089280M16もくるしふなひ。ちとばかりくハせてたもれ。むしんとい 00089290M17ふハ是じや。さあ、かなへてくれやれ。三人/聞(きい)て、おやす 00089300M18ひ事でござれども、/今(いま)どきハかんじんのからみ/大(だい)こんがわ 00089310M19るふて、えあがりますまひに、かさねてからみのよひじぶ 00089320¥P296 00089330L1ん、/宝前(ほうぜん)へさゝげませふといへば、いや+、それハまち 00089340L2どをな。からみがなくバ/今(いま)/出(だ)してやらふと、何やら/口(くち)にと 00089350L3なへければ、たちまちからみ/出(いづ)る。(五オ)三人のもの、/大(おほ) 00089360L4きにふしぎをすれば、らうじんいふやう、こんな事にかぎ 00089370L5らず、なんなりともねがひの/物(もの)、おれが/神変(じんべん)にかなハぬ事 00089380L6ハなひ。何なりといやれ。つゐかなへてやらふ。是はかた 00089390L7じけなひ。しからば申あげませふか。いかにも、いやれ 00089400L8+。三人のものよろこび、そんならばといはせもはてず、 00089410L9これ、/金(かね)ハならぬぞ。 00089420¥N3¥J 00089430¥X/蝿(はい)の見たて(五ウ) 00089440L12ものしりの/医者(いしや)、/大(だい)ミやうの/御前(おまへ)へ/出(いで)けるに、/殿(との)のいはく、 00089450L13むかし/荘子(そうじ)といふ人、ゆめに/胡蝶(こてう)になりしといふハまこと 00089460L14か。/医者(いしや)/聞(きい)て、なるほど/書物(しよもつ)にもありて、いつハりのなひ 00089470L15事でござります。しからバ又、いしやが/蝿(はい)になりたるとい 00089480L16ふは、/書物(しよもつ)にもある事か。ハて、やくたいもなひ。そんな 00089490L17事が何にござりませふぞとわらへば、いや、まことさうな 00089500L18ハ。おのしをはじめ、どの/医者(いしや)でも/下(した)に(六オ)ゐると、ま 00089510L19づ/羽織(はをり)をうしろへはねのけ、もみ/手(で)をするでハなひか。 00089520¥N4¥J 00089530¥Xかハり/御来迎(ごらいかう) 00089540M3/大坂(おほざか)くだり御らいかうが二文+と、/町(まち)まちを/売(うり)あるきけ 00089550M4るを、/去(さる)おとこ、うらやましくおもひて、ちいさきはまぐ 00089560M5り/貝(がい)に/目(め)くすりをいれ、/町(ちやう)+を、大ざかくだり、/五霊香(ごれいかう) 00089570M6が二もん+とよびあるひた。 00089580¥N5¥J 00089590¥X/比丘尼(びくに)のうハなり(六ウ) 00089600M9/去(さる)もの/八官(ハちくわん)町へきたり、ちかづきの/比丘尼(びくに)にいふやう、お 00089610M10のしのなじミのさぶハ、此ころ女ばうよんで、なか+い 00089620M11まは、おのしなどを見ることもいやじやといふてゐるとい 00089630M12へば、びくに/聞(きゝ)、だうりでこのごろみえぬとおもへば、さ 00089640M13てハ女ばう/持(もち)おつての事か。ゑゝ、はらたちやとはがみし 00089650M14て、いつとなくねいる。これ+とおこせば、/汗(あせ)ミづにな 00089660M15りて、めをさまし、やれ+、おそろしい/夢(ゆめ)をみました。 00089670M16あゝうらめし(七オ)やとおもふいちねんで、/三(さ)ぶさまのと 00089680M17ころへゆき、/鐘木(しゆもく)ふりあげ、うたんとせしが、あたまへ/手(て) 00089690M18をやつてミたれば、/髪(かミ)がなひゆへ、まがぬけて、つゐうた 00089700M19ずに/が((ママ))へりたとおもへバ、こなさまがおこさしやつたとい 00089710¥P297 00089720L1ふ。おとこきゝ、なぜ/髪(かミ)のこゝろに、すげ/笠(がさ)をかぶらぬと 00089730L2いへば、それでハ又、れんしやうのみち/行(ゆき)にならふもの 00089740L3を。 00089750¥N6¥J 00089760¥X/貧家(ひんか)のぬす/人(びと) 00089770L6/盗人(ぬすびと)、まづしき/家(いゑ)にいりて、はう※を(七ウ)(八オ挿絵) 00089780L7さがせども、きれいに/鍋(なべ)壱つなし。大きにはらをたちて、 00089790L8此やうなしよたいもちもあるものかと、つぶやきて/出(いで)んと 00089800L9するを、ていしゆ、/二階(にかい)にねてゐながら、これ+、いき 00089810L10やるなら/戸(と)をたてやれ。 00089820¥N7¥J 00089830¥X/食類(しよくるい)百物がたり 00089840L13ふゆの/夜(よ)、四五人より/合(あひ)て、さびしさのまゝ、いざ百もの 00089850L14がたりをせんといへば、かたハらより、いや+、ばけも 00089860L15のが/出(で)てから、おもしろふなひ事。百/物語(ものがたり)して(八ウ)/化(ばけ)も 00089870L16のゝ/出(で)る/理(り)をもつて、/食物(しよくもつ)を百物がたりしたらば、しよく 00089880L17もつが/出(で)て/座(ざ)の/興(けう)にならふ。/気(き)づかひなしに是+と、/座(ざ) 00089890L18をしめて語りけるに、五十番ごろになりて、/天井(てんじやう)から何や 00089900L19ら、ぐわたりとおつる。みればうどん/桶(おけ)なり。やれ是、よ 00089910M1ひは+と/食(くへ)ば、/又(また)五/升樽(せうだる)がおつる。そのあとより/吸物(すひもの)が 00089920M2/出(で)る。是ハよくしたものじやとよろこび、/猶(なを)+かたりけ 00089930M3るに、およそ八十ばんめあたりになりて、/天地(てんち)四はう屋/鳴(な) 00089940M4りすること、おびたゝし。(九ノ十四オ)こはそも何ものか/出(で) 00089950M5る事じやと、たましゐをひやすところに、まへだれしたる 00089960M6大(だい)の/の((の衍))おとこ、てんじやうより、どたりと/下(した)へ/落(おち)て、かき 00089970M7つけをふところより/出(いだ)し、/宵(よひ)からの/入目(いりめ)でござりますとわ 00089980M8たした。 00089990¥G 00090000¥P298 00090010¥N8¥J 00090020¥X/甥(おい)ずきな/医者(いしや) 00090030L3ぜいの八百もいふ/医者(いしや)とつれだちて/行(ゆく)に、いしやのいへる 00090040L4ハ、およそ/江戸(ゑど)ぢうにあらゆるぶげんな/町人(ちやうにん)に、おれが/甥(おい) 00090050L5てなひハ一人もござらぬ。それゆへ世もらく+と(九ノ 00090060L6十四ウ)/過(すぎ)ますといふところへ、/麻上下(あさかミしも)いためつけ、五匁ほ 00090070L7どあるさんごじゆをこしにつけ、むねのそつたなかまおと 00090080L8こ二人、/供(とも)につれ、あたりをはらつて/来(く)るを、/彼(かの)いしやみ 00090090L9て、これもおれが/甥(おい)じや。物をいはずハなるまひと、そば 00090100L10へ/行(ゆき)、是、どちへいきやるぞといへど、ちかづきでなけれ 00090110L11ば見むきもせずとをるに、いしや/鼻(はな)あいて、あれハおれが 00090120L12/甥(おい)でハなひさうなとおひかけて、是、そちハたれが/甥(おい)じや 00090130L13ぞ。(十五オ) 00090140¥N9¥J 00090150¥X/狸(たぬき)の/当話(とうわ) 00090160L16ものもう+といふにより、/戸(と)をあくれバ/何(なに)もなし。四五 00090170L17/度(ど)もその/手(て)をくひけるあいだ、なにものぞとよく+/気(き)を 00090180L18つけてみれば、/古(ふる)たぬきなり。さてもにくいことじや。ど 00090190L19ふぞ/仕(し)やうがあらふと/待(まつ)ところへ、又ものもふ+といふ 00090200M1を、どれいともいはず、/戸(と)のそばへそつとよるを、/狸(たぬき)しら 00090210M2ず、/物(もの)もふと、ひたものいふ/時(とき)、其まゝ/戸(と)をあけければ、 00090220M3うろたへにぐるに、/度(ど)をうしなひ、たぬき、(十五ウ)お見 00090230M4まひ申といふた。 00090240¥N10¥J 00090250¥X/貧病(ひんびやう)のれうぢ 00090260M7廿四五なる/乞食(こじき)きたりしを、/去人(さるひと)、さてもふびんや。何し 00090270M8てもくらしかねそもなひ/器量(きりやう)でこじきするハ、よく+な 00090280M9/道楽者(だうらくもの)でこそあらめと、/巾着(きんちやく)より/二朱判(にしゆばん)一つとり/出(だ)し、ど 00090290M10ふぞ人になれとてやられければ、こじきいたゞき、もし、 00090300M11是ハ/塩湯(しほゆ)でたべますか。 00090310¥N11¥J 00090320¥Xうすひ/鍔(つば)(十六オ) 00090330M14/去大明(さるだいミやう)、此ごろ/鍔(つば)をもとめたが、是みよと、つゐせうもの 00090340M15にミせたまへば、さても見事な/鍔(つば)かな。此やうなつばは、 00090350M16/世間(せけん)にもすくなふござります。さても+見事+といへ 00090360M17ば、なんぼほめても、/其鍔(そのつば)ハうすひゆへ、/気(き)にいらぬとの 00090370M18たまへば、いゑ+、うすひは/夏鍔(なつつば)によふござります。 00090380¥P299 00090390¥N12¥J 00090400¥Xめいわくな/肥満(ひまん) 00090410L3おろかなるおとこ、/大(だい)ミやうの/前(まへ)へ/出(いで)けるに、/殿(との)のいはく、 00090420L4さて+、/久(ひさ)しく見ぬうちに、(十六ウ)きつひ/肥満(ひまん)の/仕(し)や 00090430L5うかなとおほせければ、おとこ、ぶけうしてたちかへり、 00090440L6女ばうにいふやう、/久(ひさ)しぶりで/屋敷(やしき)へいたに、/殿(との)のおれが 00090450L7ことを、いかふひまんしたといはれた。つゐにあの屋しき 00090460L8でひまんをした事もなひに、あほふらしいと、はらたつれ 00090470L9ば、女ばう/聞(きゝ)て、こなたハどんな人じや。ひまんといふは、 00090480L10わるい事じやござらぬ。こなたにしゝがついたといふ事で 00090490L11ござるといへバ、さては、しゝがついたといふ事か。きつ 00090500L12ねの(十七終オ)ついたよりはましじやの。 00090510¥Y1水うち花四終(十七終ウ) 00090520¥Y1水打はな五之目録 00090530M3/龍宮(りうぐう)のふるまひ 00090540M4/鳶(とび)の/子(こ)/鷹(たか)に/似(に)た 00090550M5おとこ/浅間(あさま)がだけ 00090560M6/玉子(たまご)のまへ 00090570M7/浪人(らうにん)の/報討(ほうしや(ママ)) 00090580M8八つ/乳(ぢ)(一オ) 00090590M9/弾指(たんじ) 00090600M10じがひの/相談(さうだん) 00090610M11/揚屋(あげや)の/名(な)よせ 00090620M12/小僧(こぞう)がさいかく 00090630M13/下手(へた)のなが/談儀(だんき) 00090640M14あぢな/化物(ばけもの) 00090650M15/千秋楽(せんしうらく)(一ウ) 00090660¥P300 00090670¥G 00090680¥T1 00090690¥N1¥J 00090700¥X/竜宮(りうぐう)のふるまひ 00090710M3/龍宮城(りうぐうじやう)に/御客(おきやく)ありしに、/鯛(たい)、すゞきをはじめ、いろ+の 00090720M4/魚(うを)ども、ミな/料理(れうり)した/地(ぢ)になりて、/御(お)だいどころへつめか 00090730M5ける/所(ところ)へ、/鮹(たこ)の/入道(にうだう)、まるはだかになり、のさ+きたり 00090740M6て、なんと+、/湯(ゆ)のかげんハよいか。 00090750¥N2¥J 00090760¥X/鳶(とび)の/子(こ)/鷹(たか)ににた 00090770M9おろかなるおとこ、ことのほかりはつなむすこを/持(もち)けるに、 00090780M10/去(さる)人/来(きた)り、さても/此子(このこ)ハ、(二オ)こなたにゝぬ/利口(りこう)なむま 00090790M11れつきじや。/鳶(とび)の子たかに/似(に)ずといへど、この/子(こ)は、とひ 00090800M12が鷹をうんだといふものよといふ。てゝおや/聞(きゝ)て、/女(をんな)ども 00090810M13や。あの人が、おれをとびじやといやるにつけて、おもひ 00090820M14/出(た)した。だうりで此ごろ、/鼠(ねずミ)がくひたかつた。 00090830¥N3¥J 00090840¥Xおとこ/浅間山(あさまやま) 00090850M17わかひおとこ、/色(いろ)ぐるひにちやうじ、おやのかんどうをう 00090860M18けて、/漸(やう+)/目(め)かさめ、さても今までの/傾城(けいせい)のしかたハ、ミな 00090870M19だましで(二ウ)あつたに、うか+かよふて、つゐどらう 00090880¥P301 00090890L1つた。/此起請(このきしやう)もうそじやと、にはかに/口(くち)おしくなり、/引(ひき)さ 00090900L2きすてんと、はな/紙(がみ)ぶくろより/出(いだ)すところへ、/友(とも)だち/来(きた)り、 00090910L3これ+、ひきさかずと/此火(このひ)ばちでやきやれ。/中(なか)からゆふ 00090920L4れいが/出(で)て、うらみも/恋(こひ)ものこりねの、もしや/心(こゝろ)のとうた 00090930L5ふてきゆるにといへば、こゝろえたと/火鉢(ひばち)へくべ、/幽霊(ゆうれい)か 00090940L6/出(で)るかと、いまや+とまつところに、おもひのほかなる 00090950L7おとこ、はちまきして、てんびん/棒(ばう)を(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00090960L8もち、/煙(けふり)のうちにすつくりとたつ。/是(これ)はふしぎやと、や 00090970L9けのこりの/起請(きしやう)をよく+みれば、そさうな事の、うどん 00090980L10の/書出(かきだ)しであつた。 00090990¥N4¥J 00091000¥X/玉子(たまご)のまへ 00091010L13たまごを/好(このん)で/毎日(まいにち)くひけるに、ある/夜(よ)うつくしきむすめ/来(きた) 00091020L14る。ふしぎに/思(おも)ひ、おまへハどこからござりましたととへ 00091030L15ば、わたくしハ/日(ひ)ごろ/御好(おすき)なさるゝ/玉子(たまご)の/精(せい)でござんす。 00091040L16さて+さやうでござるか。(四ウ)まづ/酒(さけ)でもまいれと、 00091050L17/盃(さかづき)などをいだし、さま※とはなしけるに、八つ/半(はん)じぶん 00091060L18になりて、/一番鳥(いちばんどり)、こけこふとなけば、むすめ、もうおい 00091070L19とま申ますといふ。それハどふぞ、まそつとあそびたまへ 00091080M1といへば、あそこでおやぢが、しきりによばれます。 00091090¥N5¥J 00091100¥X/浪人(らうにん)のほうしや 00091110M4/右(ミぎ)やひだりの/長者(ちやうじや)さま一銭下されませと、/盲者(めくら)こじきの/来(きた) 00091120M5りしを、去浪人見て、まへぎんちやくより、ぜに一もん 00091130M6(五オ)たし、/碁石(ごいし)を/持(もつ)やうに、ぜにをつまみ、これ非人(ひにん)。 00091140M7ほうしやをせうといはれけるに、こじき、あいといふて、 00091150M8ひだりの/手(て)を/出(だ)しければ、/浪人(らうにん)、いや、/長者(ちやうじや)ハみぎにある 00091160M9といふた。 00091170¥N6¥J 00091180¥X八つ/乳(ぢ) 00091190M12/風呂屋(ふろや)にいりたりけるに、/去人(さるひと)の/背中(せなか)に、けんべきと七の 00091200M13/愈(ゆ)と九のゆと十一の/愈(ゆ)と、/以上(いじやう)/灸(きう)のあと、八つありければ、 00091210M14こなたのせなかを、/三味線(しやミせん)にはりたら(五ウ)よかろふ。/八(や) 00091220M15つ/乳(ぢ)じやとわらへば、/彼(かの)おとこ/聞(きゝ)、わたくしさいはい、/猫(ねこ) 00091230M16ぜなかでござるといはれた。 00091240¥N7¥J 00091250¥Xたんじ 00091260M19/弾指(たんじ)といふは、ゆびをはじいてならすことなり。ぬすみし 00091270¥P302 00091280L1た/者(もの)ハ、なんぼはじいても/鳴(な)らぬと、人※ならして見る 00091290L2/時(とき)、そのうちのおとこ、/日(ひ)ごろ/小(こ)ぬすみをいたしければ、 00091300L3こゝろもとなくおもひ、/用事(ようじ)のていにて/外(そと)へいで、そつと 00091310L4はしきてミるに、(六オ)なるほど/鳴(な)りければ、うれしさかぎ 00091320L5りなく、/座敷(ざしき)へ/来(きた)り、ひと※にむかひ、/是(これ)これ、あんま 00091330L6り/鳴(な)る+。 00091340¥N8¥J 00091350¥X/蟻(あり)のちからもち 00091360L9/蟻(あり)/大勢(おほぜい)あつまり、/米(こめ)/一粒(ひとつぶ)をちからもちしてあそびけるに、 00091370L10その中に/年(とし)ばいなる/蟻(あり)のいふやう、いかさま、おれらがち 00091380L11からは/力(ちから)でもなんでもなひ。たとへに、/米(こめ)つぶ/壱万(いちまん)を一/合(がふ) 00091390L12といひ、一合を/十(とを)かさねて/一升(いつせう)といひ、一升を/十(とを)かさねて 00091400L13/一斗(いつと)と(六ウ)いふ。それを五/斗(と)たハらにいれて、らく+ 00091410L14と/人間(にんげん)ハかづく。いかひ/力(ちから)じやなひかといへば、かたハら 00091420L15の/蟻(あり)、あくびしながら、そんな事ハよひかげんにきいてゐ 00091430L16やれ。 00091440¥N9¥J 00091450¥X/自害(じがい)のさうだん 00091460L19おはをからした/浪人(らうにん)あり。そのとなりにも、をとらぬらう 00091470M1にん/住(すミ)けり。十二月/卅日(つもごり)の夜、となりの/浪人(らうにん)/来(きた)り、御しま 00091480M2ひはどふじや。されば、いつもとハいへども、このきハヽ 00091490M3べつしてどふもならぬ。それゆへ(七オ)はらをきらふとお 00091500M4もふといへば、となりのらうにん/聞(きゝ)、いかさま、此くれハ 00091510M5まづそふもしてミやれ。 00091520¥N10¥J 00091530¥X/揚屋(あげや)の/名(な)よせ 00091540M8あげやのていしゆ、/女郎(じよらう)の/道中(たうちう)をあふぎかざして、いよ、 00091550M9/高尾(たかお)さま、/梅(むめ)がえ様、/江口(えぐち)様、/釆女(うねめ)様とほめけるとき、あ 00091560M10とからやりて/来(き)たるを、いよ、いき/山姥(やまうば)様。 00091570¥N11¥J 00091580¥X/小僧(こそう)かさいかく 00091590M13有やま/寺(てら)のこぞう、つね+ミやうがを/好(すき)て、(七ウ)(八オ 00091600M14挿絵)大ぶんくひければ、/師匠(ししやう)おほせけるハ、/茗荷(ミやうが)をくへ 00091610M15ば、かならず/物(もの)わすれするものなれば、/学(がく)文のためにきん 00091620M16もつじやほどに、/向後(きやうこう)/食(しよく)すべからずとのたまへば、小僧 00091630M17がいはく、されバこそ、ひだるさをわすれんためにたべま 00091640M18すといふた。 00091650¥P303 00091660¥N12¥J 00091670¥X/下手(へた)の/永(なが)だんぎ 00091680L3/寺号(じがう)ハ申されぬが、/去寺(さるてら)の/長老(ちやうらう)、だんぎことのほか下手なれ 00091690L4ば、いつも+まいりはなけれども、/明日(あす)はねはんなれば、 00091700L5だんぎ(八ウ)とかひてもなるまひとおもハれ、/朝(あさ)さう+ 00091710L6から、/小僧(こぞう)にわらちはかせて、だんなしゆへ、あすハせつ 00091720L7ほう/御(ご)ざ候。/御(ご)さんけいあれとふれさせける。だんな/衆(しゆ)も 00091730L8さいそくつけられ、ぜひなさに四五十人もまいりけれども、 00091740L9あまりたいくつさに、ひとり+はづして、そのうち/心(こゝろ)よ 00091750L10ハきだんな、やう+ひとり/二人(ふたり)のこりけれど、/談義(だんぎ)やめ 00091760L11られもせず、とかれけるハ、あミだ/如来(によらい)の/則(すなハち)、をの+わ 00091770L12れらごときの/則(すなハち)、しゆじやうを/則(すなハち)、すくひとらせられんと 00091780L13の(九ノ十四オ)/御(ご)せいぐわんハ/則(すなハち)、なんと、ありがたひ/事(こと) 00091790L14でハござらぬか、/御両人(ごりやうにん)といはれた。 00091800¥N13¥J 00091810¥Xあぢな/化(ばけ)もの 00091820L17/諸国(しよこく)/行脚(あんきや)のしゆぎやう/者(じや)、しらぬくにの/山中(やまなか)へ、/日(ひ)くれて 00091830L18/行(ゆき)かゝり、/雨(あめ)そぼぶるに/道(ミち)はみえす。/人家(しんか)の/火(ひ)かげも見え 00091840L19はと、あなたこなたつたひあるきければ、/谷(たに)そこにかすか 00091850M1に/火(ひ)かげ見えければ、うれしくおもひ、やう+と/行(ゆき)つき 00091860M2てみれば、あれたる/葛屋(くずや)にとしわかき/女(をんな)一人、ゆるりに/火(ひ) 00091870M3をたきてゐたり。(九ノ十四ウ)まづ/何(なに)となくあんないこふて、 00091880M4かやう+のなんぎにをよび候へは、/一夜(いちや)をあかさせて/給(たま) 00091890M5ハれといへば、をんな/聞(きゝ)、おやすひ事ながら、ていしゆの 00091900M6るすなればいかゞとぞんじ候へども、見ますれば/御(ご)しゆつ 00091910M7けさまの事なれば、/御(お)いとしくそんじ候へば、こなたへ 00091920M8いらせたまへと、わびしき/小屋(こや)のすみにとめけり。しゆぎ 00091930¥G 00091940¥P304 00091950L1やうじやおもふやう、此ふかき/山中(やまなか)に、わかきをんな一人 00091960L2すむべきやうもなき事とおもへハ、/何(なに)とやらすさまじくお 00091970L3もひながら、/草臥(くたびれ)しゆへ、(十五オ)ふら+とねふりける 00091980L4が、ふと/目(め)をさましみれば、さいぜんのをんなハゐず。ゆ 00091990L5るりのはたに、/五升鍋(こしやうなべ)のふたほどないろのしろき/大(おほ)きなる 00092000L6かほに、/目(め)一つまんなかにあつて、はなもなく、/大(おほ)きなる 00092010L7/口(くち)たつにきれて、ひげむさ+とはへたるもの、/火(ひ)にあた 00092020L8りてゐたり。しゆぎやうじや見て、されはこそおそろしや 00092030L9と/思(おも)ひ、おもハずしらず/念仏(ねんぶつ)/一(いつ)へん、/高声(かうしやう)に申ければ、か 00092040L10のばけもの、たちまちきえて、もとのをんなに/成(なり)たり。(十 00092050L11五ウ)しゆぎやうじや、いよ+おそろしく、ねられぬま 00092060L12ゝに、よく+おもへば、ばけものでハなかりけり。かの 00092070L13をんな、さむさのあまりに、おゐとをあぶつたさうな。 00092080¥N14¥J 00092090¥X/千秋楽(せんしうらく) 00092100L16いなかものに/能(のう)を見せけるに、/高砂(たかさご)の/切(きり)の、せんしうらく 00092110L17ハたみをなで、まんざいらくはいのちをのふといふを/聞(きゝ)て、 00092120L18もう御いとま申ます。/今日(こんにち)ハいかひ/御馳走(ごちさう)でかたじけなふ 00092130L19ぞんじますと、たゝん(十六終オ)とするを/引(ひき)とめ、まだ/能(のう) 00092140M1ハ/四番(よばん)ござるに、なぜかへらしやるといへば、いなかもの 00092150M2/聞(きゝ)、われらがざいしよで、/庄屋(しやうや)どのへふるまひにゆくに、 00092160M3/千秋楽(せんしうらく)をうたへば、いつでもかへりますといふた。 00092170¥Y1水うち花五終(十六終ウ) 00092180¥P305 00092190¥U噺本大系△第七巻 00092200¥T軽口もらいゑくぼ 00092210¥G 00092220¥Y 00092230L16刊年不詳(享保頃) 00092240L17作者不詳 00092250L18半紙本五巻 00092260L19国会図書館蔵 00092270¥Y1軽口もらいゑくぼ巻之一△目録 00092280M3第一△はなぐすり 00092290M4二△/鮓(すし)ずきの/坊主(ばうす) 00092300M5三△銀を/借(かる)手紙に/絵(ゑ)を/書(かい)てやる事 00092310M6四△/文盲(もんもう)なる者/能(のふ)のはなし 00092320M7五△仏前にて/房主(ぼうず)/魚肉(ぎよにく)の/訴(そ)訟 00092330M8六△文盲なる/宿老(しゆくらう)/制札(せいさつ)を/好事(このむ) 00092340M9七△子共の/相撲(すまふ) 00092350M10八△三人/寄(より)て/葬礼(そうれい)の/噂(うハさ)(一オ) 00092360¥P306 00092370¥T1 00092380¥K〔註・内題の部分一行空白〕 00092390¥N1¥J 00092400¥X壱△はなくすり 00092410L5△久しくしつをわづらひ、さま+りやうぢも、ての字を 00092420L6つくしけれどよふなく、あげくにはなぞをちけり。かのも 00092430L7の、あまりかなしく、心やすきものに、どうそ二たび/鼻(はな)の 00092440L8さくしあんあらば、かしたまへと申せは、/彼(かの)もの/聞(きゝ)て、い 00092450L9かさま、わかいものゝ見ぐるしく、むねんのはづ。ハア/何(なに) 00092460L10やら/覚(おほへ)し事あり。それにハ京にめいじんなるりやうしあり。 00092470L11/五条(こじやう)/辺(へん)に/家里(いへざと)ト/云(いふ)/目(め)いしや/有(あ)リ。こゝにたしかかんばんあ 00092480L12り。それをたづねたまへ。(二オ)それはきゝおよふだめい 00092490L13しや。それははなのりやうち、おぼえちがひであろふ。い 00092500L14や+そふでない。たしかかんばんに/目(め)を二つかいて、は 00092510L15なとおもふ/所(ところ)に、くすりとかいてあつた。すれは、はなの 00092520L16りやうしするはづといふてすゝめた。 00092530¥N2¥J 00092540¥X二△/鮓(すし)ずきの/坊主(ほうす) 00092550L19ある/長老(ちやうらう)、/年中(ねんちう)すしをこしらへ、/朝夕(あさゆふ)一はいの/肴(さかな)にし 00092560M1てたのしミける。長老るすの/折(をり)ふし、/小僧(こそう)/門番(もんはん)とかたらひ、 00092570M2かの/鮓(すし)をしたゝかくいて、/扨(さて)すしの/飯(めし)を/本尊(ほぞん)の/口(くち)のはたに 00092580M3にしり/付(つけ)、/其身(そのミ)はさあら((ぬ脱カ))/ていにて/居(ゐ)る所へ、(二ウ)(三オ挿 00092590M4絵)/住持(ぢうじ)かへりて、すし/桶(をけ)に目を付/吟味(きんミ)/仕(し)けるに、小僧も 00092600M5男も中+にあらがひ、何かはしらず、さき/程(ほと)本/堂(だう)より物 00092610M6/音(をと)の聞へたるよしを云ひければ、住持やがて本/堂(だう)へ/行(ゆき)見る 00092620M7に、仏の口のはたに/飯(めし)こそ付けり。住持本/尊(ぞん)に/向(むか)ひ、以之 00092630M8外/悪口(あくこう)申、/腹立(ふくりう)して、/足拍子(あしひやうし)をとん+ふミならし、さん 00092640¥G 00092650¥P307 00092660L1+にほとけヲしかりければ、此/響(ひゞき)にて/諸旦那(しよだんな)の/位牌(いはい)、こ 00092670L2と+く/棚(たな)より下へをちけるを、住持あハてゝ、両手をひ 00092680L3ろげていふ様ハ、いや、/鮓(すし)をくハぬ仏/達(たち)ハ、せくまひ+ 00092690L4といはれた。 00092700¥N3¥J 00092710¥X/銀(かね)を/借(かる)手紙に/絵(ゑ)を/書(かい)てやる事 00092720L7△去/文盲(もんもう)なる/絵(ゑ)屋あり。/隣(となり)へ銀子五匁かりにやるとて、 00092730L8書状を(三ウ)/書(かく)事ハならず、口上にて云ひやるもいかゞと 00092740L9思ひ、しばらく/思案(しあん)して、やがて/絵(ゑ)を書てやりける。/葵(あふひ)の 00092750L10/葉(は)に/両眼(りやうがん)を書、小むすめニもたせ、無心ながら、かねを是 00092760L11程かして下されよと云ひやりける。となりの/亭主(ていしゆ)ハ/少(ちと)/智恵(ちゑ) 00092770L12の有者ニて、返状書ても絵やハ/読(よむ)事ならず、//飯粒(めしつぶ)を/菜(な)の/葉(は) 00092780L13ニつゝミ、/銀(かね)ハ是じや云ふて使を/戻(もど)シけり。絵屋これをミ 00092790L14て/腹立(はらをたて)、となりへはしり/行(ゆき)、/直(ぢき)にあふて、只今/葵(あふひ)に/目(め)を書 00092800L15もたせ/越(こし)候ハ、銀子/御紋目(ごもんめ)と云ふ心にて候所に、其方と我 00092810L16とつね+心やすき中に、/菜(な)の葉ニ/飯(はん)をつゝミ/越(こさ)るゝハ、 00092820L17/手形(てがた)を書、/名判(なはん)をすへとの事かや。それ迄もなく、はや明 00092830L18日は(四オ)/返進(へんしん)申事也といひければ、/亭主(ていしゆ)申ハ、いや、な 00092840L19はんの事でハ候ハず。やすき用なれど、只今ハ銀子、手ま 00092850M1へニ/菜飯(ない)と云ふ返事じや。 00092860¥N4¥J 00092870¥X/文盲(もんもう)成者/能(のふ)のはなし 00092880M4△/金春(こんはる)太夫/勧進能(くハんしんのふ)ありける/折(をり)ふし、去しハき/田舎侍(いなかさふらひ)、見物 00092890M5に/罷(まか)るとて、/供(とも)人大勢めしつれ、夜の内より/白川橋(しらかハはし)の/能場(のふば) 00092900M6へ/行(ゆき)、角介と云ふ小者を壱人/留置(とめをき)、残る供人ハ/皆(ミな)早&宿へ 00092910M7帰して、明九つ時ニ此所へむかひに参るべしとて/戻(もど)しけり。 00092920M8明れば其時刻/迎(むかひ)に行けれ共、/折節(をりふし)其日は少/能(のふ)もおそく初り 00092930M9てや、九つ時分ニはてざりける。かゝる所へ(四ウ)小者の 00092940M10角介ハ少用事有て、/木戸(きど)の/外(そと)へ出けるに、/迎(むかひ)の/若党(わかとう)共にあ 00092950M11ひける。何と/能(のふ)ハまだはてぬか。いや、まだ二番有といふ。 00092960M12して今ハ何の能じやと/問(とひ)けるに、能ハ/鉢(はち)の/木(き)なれ共、角助、 00092970M13/能(のふ)の/名(な)をしらず。されば今拙者が内より木戸口へ罷出ル時 00092980M14に、/修行者(しゆぎやうじや)の/房主(ぼうず)が一人出て、女一人/居(い)る所へ来、一夜の 00092990M15宿をかせといふに、女ハ、あるじの留主にて候へば宿を/借(かす) 00093000M16事ハならぬと云ふせりふヲ申せしが、此房主ももがり者や 00093010M17ら、むりに/借(かる)べいと云ふて其/座(ざ)をさらず、/意地(いぢ)ばり居ける。 00093020M18今おれが出た/間(ま)に宿をかりたるかしらぬ。女も宿をかさね 00093030M19バよひがと云。角介も/法界(ほうかい)りんきか。(五ノ十オ) 00093040¥P308 00093050¥N5¥J 00093060¥X仏前にて房主/魚肉(きよにく)の/訴訟(そせう) 00093070L3△去長老、いまだわかき時は、かたのごとく/行義(ぎやうき)たゞしく 00093080L4/勤(つと)め給ひて、/殊勝(しゆせう)におハせし故、人も/尊敬(そんけう)申て/或寺(あるてら)の/住持(ぢうじ) 00093090L5に成給ふ。いつの比より、ひよつと/悪敷(あしき)/友(とも)にさそハれ/魚(うを)を 00093100L6/喰(くい)ならひて、其後ハひたすら/美食(びしよく)を/好(この)ミけり。され共、仏 00093110L7の御/罪(ばち)をおそろしく思ひて、或時仏前へ参り、/座具(ざぐ)を/敷(しき)三 00093120L8/拝(はい)ヲいたし、乍恐さんげを仕、/御訴訟(ごそせう)申ハ、私/形(かたち)ハ/沙門(しやもん) 00093130L9のすがたに候へ共、いまだ/凡心(ぼんしん)はなれず。いかにしても/魚= 00093140L10肉(ぎよ=にく)をたべねば気相あしく候。/御免(ごめん)を/蒙(かうふり)り度候。/向後(けふかう)も/喰(くい)た 00093150L11く候がいかゞ。たべて御ゆるしなく/科(とが)に成ますならば、/只(たゞ) 00093160L12今/急度(きつと)御申付被下べし。(五ノ十ウ)又たべてくるしかるま 00093170L13じくハ御/返答(へんたう)にをよバずと、三/拝(はい)申てうかゞひけれバ、何 00093180L14が/木仏(もくぶつ)なれば返事もなし。扨ハたべてもくるしからずとの 00093190L15/御意(ぎよい)とよろこび、それよりひたすら/喰(くふ)と也。仏に向ひわがま 00093200L16ゝなる問よ哉。 00093210¥N6¥J 00093220¥X/文盲(もんもう)成/宿老(しゆくらう)/制札(せいさつ)をこのむ事 00093230L19△むかし/東山(ひかし)/辺(へん)の宿老、町中をあつめ、物事せんさくする 00093240M1次テに、/鳥部(とりべ)山にてハ又しても+/首(くび)をくゝり/死(し)人ありて 00093250M2/造作(ざうさ)かゝり、何れも/難義(なんき)に思ふ也。何とミな/達(たち)ハ思ハるゝ 00093260M3ぞ。おれが/分別(ふんべつ)にハ、/制札(せいさつ)を立たらバよからふといはれけ 00093270M4れば、何と書て可然哉と問ふ。宿老申さるゝハ、先ツ覚ト 00093280M5書て、一、今からは(十一オ)こゝらでむさと御/首(くひ)を御つな 00093290M6き候事、御無用ニ被成可被下候。それなぜにと申に、/跡(あと)の 00093300M7とりをき代に、町一間ものこさず銭をくゝりあつめ、大分 00093310M8/損(そん)にて候ゆへ町もかんりやくいたし、いつほつこりと町/汁(しる) 00093320M9のさけをのむ事もなく、是程めいわくハなく候。あはれと 00093330M10/思召(おほしめさ)バ、あたまを御からけ下され間敷候。為其一ふて如件 00093340M11と、書たひ物じやと/好(この)まれたり。 00093350¥N7¥J 00093360¥X子共の/相撲(すまふ) 00093370M14△或手前よろしき人の子と、/貧(まづし)き人の子と、たかひに/相撲(すまふ) 00093380M15をとりけるに、/何番(なんばん)取ても/貧(まづし)き子ハまけて、口をしく思ひ 00093390M16ける。/殊(こと)に/年(とし)も二ツ三ツ大き也。よろしき人の子が云ふハ、 00093400M17(十一ウ)(十二オ挿絵)何ばんにても、おれに/勝(かつ)事ハ成まひぞ。 00093410M18おれハ米の/飯(めし)を/喰(くふ)ほどにといへば、あの/晩(ばん)にもやトうら山 00093420M19敷/顔(かほ)にて/問(とい)けるハ、をかしくも又あハれにも有。 00093430¥P309 00093440¥G 00093450¥N8¥J 00093460¥X三人/寄(より)て/葬礼(そうれい)の/噂(うはさ) 00093470L14△去れき+の人/病死(びやうし)せり。夜に入て、/結講(けつこう)なる/葬礼(さうれい)/仕(し)け 00093480L15るに、其/翌日(よくしつ)、宿老とわき年寄と二人つれ立、かの家へ見 00093490L16廻、/亭主(ていしゆ)ニあふて、/弥(いよ)&さひしく思すらん。扨又夕部の/葬(さう) 00093500L17ハ中+けつこう成事/哉(かな)。あのやうなるは/昼(ひる)の葬に被成た 00093510L18るがましじや物。/重而(かさねて)もさやう心得給へ。いかにしても/夜= 00093520L19会(や=ぐわい)にハ/惜(をし)ひ事じやと云ふ。わき年寄(十二ウ)が申ハ、あの 00093530M1入目でハ二度にも三度にも/仕(し)たひ物じやと云ふ。亭主いふ 00093540M2様ハ、さのミお/誉(ほめ)なさるゝ程の事でも御ざらぬ。せめてて 00093550M3んがいの二本ももたせたらバ、よく御ざらふけれ共、一本 00093560M4ひかへまして、わざと人の目にたゝぬやうニ/軽(かる)&といたし 00093570M5たるといふた。(十三オ) 00093580¥P310 00093590¥Y1軽口もらひゑくほ巻二△目録 00093600L3第一△しハき人の/手紙(てかミ)の/書(かき)やう 00093610L4二△大仏/建立(こんりう)の/勧進(くハんじん) 00093620L5三△同/博奕(ばくち)打の奉加 00093630L6四△江戸もとゆひの/簡盤(かんばん) 00093640L7五△/下戸(げこ)の/宿老(しゆくらう)を上/戸(こ)と云ふ 00093650L8六△東川原の/乞食(こつじき)が/誹諧(はいかい) 00093660L9七△/箔(はく)屋の/亭主(ていしゆ)ハ/古(ふる)だぬき 00093670L10八△たうふ屋の/姥(うば)に両/外(げ)ちがひの/沙汰(さた)(一オ) 00093680¥T1 00093690¥K〔註・内題の部分一行空白〕 00093700¥N1¥J 00093710¥X第一△しハき人の/手紙(てかミ)の/書(かき)やう 00093720M5△ずんどしはき人、/友立(ともたち)の所へ/使(つかひ)をやるとて、手紙を/遺(つかハ)し 00093730M6けるに、紙一枚ををしミて、/折節(をりふし)/秋(あき)の/末(すへ)つかたなれば、/庭(には) 00093740M7に色よき/柿(かき)の/葉(は)の/落(をち)しを取て手紙を書、小者にもたせやり 00093750M8ける。/先(さき)の人、此手紙を見/肝(きも)をつぶし、是はいかに心や 00093760M9すきとて、あまりなる/所行(しハざ)也。我も返事を書べきが、此や 00093770M10う成葉ハなし。紙に書も、思へばつらにくし。何と哉と、 00093780M11しバらく/思案(しあん)して、かの小者をそばへ/近(ちか)ク/呼(よび)、返事すへき 00093790M12に/汝(なんぢ)/肩(かた)をぬげとて、使のせなかに、すミ(二オ)くろ※と 00093800M13/書(かき)ければ、小者/早&(さう+)/帰(かへ)りて主人に/向(むか)ひ、/返簡(へんかん)の/趣(をもむき)、いさひ 00093810M14私がせなかのごとしと、口上に申たるも一笑。 00093820¥N2¥J 00093830¥X二△大仏/建立(こんりう)の/勧進(くハんじん) 00093840M17△過し比、なら大仏の/堂(だう)/供養(くやう)くハんしんとて、/貴僧(きそう)一人、 00093850M18/洛中(らくちう)/奉加(はうか)に御まハり被成ける時、/諸人(しよにん)/尊(たつと)ミ十念を/戴(いたゞき)、金銀 00093860M19/米銭(べいせん)を/捧(さゝげ)る。然る所へ/青菜(あをな)一/荷(か)/持(もち)て/売(うり)ける男来り、此御 00093870¥P311 00093880L1僧を奉見、/殊勝(しゆせう)に思ひ、一/跡(せき)の売だめ銭をさしにつなぎ、 00093890L2百文しんじける。僧仰らるゝハ、其方の/風俗(ふうぞく)にてハ此奉加 00093900L3ちかごろ太儀なるべし。/但(たゞ)シ六/親(しん)の年/忌(き)にもあたりたる/志(こゝろさし) 00093910L4有やとお/尋(たつね)ある。いやさやうニても御座(二ウ)なく候。ち 00093920L5らと見まいらせバ、おまへ様ハ/釈迦(しやか)じやと存、百文しんじ 00093930L6候と云ふ。僧、然れは其方の手に持けるを見れば、/慥(たしか)にあ 00093940L7を/二(に)とミへた。けつく、此方より百/上打(うハうち)をとらすべしとて、 00093950L8百文やられける。是ハ忝候。それならハ/迚(とても)の事ニ又六十文 00093960L9被下べし。/爰(こゝ)にあざが御座るとて、右のかいなに生れ付よ 00093970L10りくろ+としたるあざをミせ、/我進(わがしんじ)たる銭の外ニ、以上 00093980L11百六十文申/請(うけ)たると也。 00093990¥N3¥J 00094000¥X三△同/博奕打(ばくちうち)の奉加 00094010L14△同御僧、/洛外(らくぐハい)/在郷(ざいがう)御まハり被成けるに、/野(の)中ニ五七人 00094020L15/立寄(たちより)、つまミ銭にて/博奕(ばくち)を打/居(い)ける。其所を通らせ給ひけ 00094030L16る。何れもやれ、是ハかの大仏/堂(だう)の御/勧進(くハんじん)成ぞ。此度/善根(ぜんごん) 00094040L17に(三オ)もとづけとて、其/場(ば)の有たけ不残銭をかきあつ 00094050L18めしんじけるに、御僧ハ/受取(うけとり)給ハず。是ハいかにと、人& 00094060L19/不審(ふしん)をなしける。其方/達(たち)が/志(こゝろさし)ハ、此方の大き成/害(かい)になる 00094070¥G 00094080M12也。其したひハ、此方ハ堂を/建立(こんりう)の/大願(だいぐハん)也。/汝(なんぢ)らハ何とぞ 00094090M13してかはを/立(たて)テ/堂(だう)をつぶそうと思ふ/分別(ふんべつ)なるによつて、其 00094100M14/志(こゝろさし)ハこちハまづいや+と申されたる。一笑。 00094110¥N4¥J 00094120¥X四△江戸もとゆひの/簡盤(かんばん) 00094130M17△/遠国(をんこく)より/始(はしめ)て京へのぼりし人、三条/縄手(なはて)を通りけるが、 00094140M18江戸もとゆひの/簡盤(かんばん)を見て、やがて手をかけ、是を/買(かい)申さ 00094150M19んと云ふ。内より/女房(によばう)立出、それハかんばん成故、/売(うり)申事 00094160¥P312 00094170L1ハならすと云ふ。(三ウ)(四オ挿絵)/是非(ぜひ)共かいとらんといふ。 00094180L2女房ちやくと/思案(しあん)して、代十匁ならハ/売(うり)申べし。/去(さり)ながら、 00094190L3それを/求(もとめ)て何になさるゝやと/問(とい)ければ、此/輪(わ)を/求(もとめ)て、身が 00094200L4ねぶとのまハりの/輪(わ)ニすると/答(こた)ふ。然らバ五匁匁まけ侍ら 00094210L5んといふ。/田夫(でんぶ)聞て、それは大分/高直(かうぢき)也。三分ニ売候へと 00094220L6云ふ。女房あきれて、/空(そら)うそ/吹(ふい)て云ふやうハ、三分などに 00094230L7てハ成ほどちいさきにきびの/輪(わ)もなく候と。女房しやれたる 00094240L8返し哉。 00094250¥N5¥J 00094260¥X五△/下戸(げこ)の/宿老(しゆくらう)を上/戸(ご)といふ 00094270L11△去町の宿老ハ、かたのごとくの下/戸(こ)にて、/酒(さけ)と云ふ咄し 00094280L12もいやがる人なりけるを、/影沙汰(かげざた)に大上戸の/底(そこ)ぬけじやト 00094290L13(四ウ)云ふ。それは大きなうそじや。酒ハ一/滴(てき)もならぬ人 00094300L14を、扨も/無実(むしつ)の/難題(なんだい)をいひかける事、いとしげに、さりと 00094310L15は思ひちがひにて侍らんと、せりあひける。しても/字(じ)に書 00094320L16てハ成程さけのミ也。其/証拠(せうこ)にハ、宿老に御の字を書付て 00094330L17見給へ。/御(ご)しゆくろうトよむじやないかと云ふた。 00094340¥N6¥J 00094350¥X六△/東川原(ひかしかハら)の/乞食(こつじき)が/誹諧(はいかい) 00094360M1△/昔(いにしへ)ハよろしき人なりけるが、世の/盛衰(せいすい)とてあさましや、 00094370M2身のをき所もなく/乞食(こつじき)になり、東川原に、/俵(たハら)こも壱枚身に 00094380M3まとひ、二人/臥(ふし)ゐける。/冬(ふゆ)の/夜寒(よさむ)の折ふし一人が云ふ様ハ、 00094390M4其方ハ何と思ハるゝぞ。まことに過し/昔(むかし)ハ(五ノ十オ)花/時= 00094400M5鳥(ほとゝ=ぎす)、月/雪(ゆき)のたハむれ、かたのごとく/栄花(えいくハ)もせしが、今ハか 00094410M6やうの/躰(てい)になりはて口/惜(をしく)思ふ也。/殊(こと)に今/宵(よひ)などハ、/別而(へつして)/雪(ゆき) 00094420M7ぞらにて/寒気(かんき)もしのぎがたく侍ると、世をうらみ身をうら 00094430M8ミたる物語せり。されば其方の申さるゝ通り、殊の外さむ 00094440M9く候。何と、それに/火打(ひうち)が有ならバ、たばこ一ふくのミて 00094450M10あたゝまり侍らんといふ。やすき事。これ+火をまいら 00094460M11せんとて/渡(わた)シける。まてしばし、是ニ付一/句(く)つらねん。よ 00094470M12しあしともに、御身、わきをいたされよ。 00094480M13△△さむき夜やたばこをよぎにきせる哉 00094490M14△△△/鴈首(かんくひ)なりにあかしこそすれ 00094500M15△△△△△△評ニ金ハ朽てもくちぬしほらしき物語也。(五ノ十ウ) 00094510¥N7¥J 00094520¥X七△/箔(はく)屋の/亭主(ていしゆ)ハ/古狸(ふるたぬき) 00094530M18△去れき+の座敷にて、/箔(はく)屋の何かしと、/始(はしめ)て/参会(さんくハひ)/仕(し)け 00094540M19る。其座にとひやう成者/居(い)合て、はく屋と聞と其/侭(まゝ)、おま 00094550¥P313 00094560L1へハ/古狸(ふるたぬき)にて候といへば、何がしも/聞(きか)ぬ/躰(てい)ニもてなし、一 00094570L2両度ハかんにんをして、/座興(ざけう)のやうニにこ+と/笑(わら)ひてゐ 00094580L3けるを、/盃(さかつき)のうへにても名ハいはずして、くりかえし+ 00094590L4古狸殿と申ける。はく屋も今ハせんかたなく、かんにんな 00094600L5らず。かのとひやう者ニ/向(むか)ひ、何と、拙者を古だぬきと御 00094610L6申有ハ其しるし有や。又ハ/私(わたくし)に何そ/意趣(いしゆ)の有事か。/最前(さいぜん)よ 00094620L7りくりかへし+被申/段(たん)、/近比(ちかころ)/合点(かてん)にをよハず。其/謂(いは)れ 00094630L8(十一オ)/承(うけたまハ)らんと、/気色(きしよく)を/替(かへ)てりきミける。相手ハさらん 00094640L9躰ニて、成ほど、古狸殿にまぎれハなきぞ。其/証拠(せうこ)ハ、御 00094650L10身の/商(しやう)ばいにハ、きんをひろげのばさんかといふた。 00094660¥N8¥J 00094670¥X八△たうふ屋の/姥(うば)に/両外(りやうげ)/違(ちがい)のさた 00094680L13△或色ふかき者とそさう成者と、両人/寄会(よりあひ)て物語するニハ、 00094690L14上の町のたうふやのうばを、ずんど/望(のそミ)に思ふ也。あれが手 00094700L15に入ならば小判壱両ぎりで御座るハと云ひけるを、そさう 00094710L16者此よしを聞、いとやすき事也。我きもいり侍らん。先壱 00094720L17両わたし給へと云ふ。然らバひとへにたのむとて、壱歩を 00094730L18四つ/渡(わた)しける。やがて吉左右申べしとていそぎ/行(ゆき)、/所望(しよもう)申 00094740L19すれバ、夫婦口(十一ウ)をそろへて云ふ様、是のうばハあ 00094750M1なたこなたより/望(のぞ)ませ給へども、もつたひを付て、せう 00094760M2+の所へハやり申さず候へ共、下ノ町なればお/知人(ちかづき)に成、 00094770M3たがひに/往(ゆき)ちなミもよく候まゝ、しんじ候ハんとて、その 00094780M4まゝ/二階(にかい)より、ぬりつゝら、ぬり/長持(なかもち)などおろして/拵(こしらへ)ける。 00094790M5色ごのミの男ハ/待(まち)かね/居(い)けるに、夜ルの五つ時分ニ、/表(をもて)の 00094800M6戸をほと+とおとづれければ、すはやかの人こそ/帰(かへり)と悦、 00094810M7やがて戸をひらきける。件のそさう者帰りて、まつ是+ 00094820M8御請取あれとて、つゞら長持を渡シける。扨&過分や。/間(ま) 00094830M9も/透(すき)もなく/早速(さそく)恋が/叶(かな)ひたるとて、大きニ/喜悦(きゑつ)して、扨お 00094840M10うば殿ハ/跡(あと)から被参かと/問(とひ)けるに、そさう者ハ(十二オ) 00094850M11/有無(うむ)の事ハ/聞(きゝ)不入、きせるを口にくハへ、貴殿の仕合に 00094860M12て、ことの外よいうばじやぞ。よろこび給へとて、/恩(をん)にき 00094870M13せて、長持のふたをあけければ、/案(あん)に/相違(さうい)して、たうふの 00094880M14うばをたくさんに/買調(かいとゝのへ)来たる。色ごのミの男ハ手を打て 00094890M15あきれはてゝ物もいはざりける。一笑。いかひ両げちがひじや。 00094900M16(十二ウ) 00094910¥P314 00094920¥Y1軽口もらひゑくぼ巻の三△目録 00094930L3第一△くすりくい 00094940L4二△/祇園(ぎをん)二/軒(けん)/茶(ぢや)屋 00094950L5三△酒のえひ 00094960L6四△野郎の/書(かき)し/文(ふミ) 00094970L7五△ぬく太郎 00094980L8六△/嶋(しま)ざらし/奈良(なら)ざらし 00094990L9七△長老の/麁相(そさう) 00095000L10八△/文盲(もんもう)なる者/言葉(ことば)とがめ 00095010L11九△/夫婦(ぶうふ)よりて長老の目きゝ(一オ) 00095020L12十△はひ出の下女 00095030L13十一△/途中(とちう)にて/聞(きゝ)し/死去(しきよ)の/吊(とふらい)(一ウ) 00095040¥T1 00095050¥K〔註・内題の部分一行空白〕 00095060¥N1¥J 00095070¥Xくすりくい 00095080M5△おく病なるもの、おゝかミをくへば、心つよくなるよし 00095090M6を聞、ひと廻りくいて野中ニ出行ゐたりしに、ころはうし 00095100M7ミつの空にゆき通りもすくなかりしに、むかふよりかすか 00095110M8に人来り、すハやためし見んとてまつところに、ほとなく 00095120M9ちかつき、なんてもとおもひ、おのれは何ものじやといゝ 00095130M10けれは、かのもの聞て、身は行通るものなる。夜中にたゝ 00095140M11ひとりこゝにゐるやつ、かてんのゆかぬ。おのれハ何もの 00095150M12しやといふけしきにうろたへ、おまへハいくまハり上リま 00095160M13した。(二オ) 00095170¥N2¥J 00095180¥X/祇園(ぎをん)/二軒(にけん)/茶(ちや)屋 00095190M16△/或(ある)人、/毎度(まひと)小者を一人/供(とも)につれ、/祇園(きをん)へ/参詣(さんけい)/仕(し)ける。二 00095200M17/軒(けん)茶屋にて/腰(こし)をかけ/休(やすミ)、茶をのミて/帰(かへ)る時、小/者(もの)が/名(な)を云 00095210M18ふて/腰銭(こしせに)を/払(はら)ハせける。三文の時ハ三助、五文の時ハ五助、 00095220M19その時&/隙(ひま)の入を見合、いつも/相替(あひかハ)らぬ小者を/毎度(まいど)名を/替(かへ) 00095230¥P315 00095240L1て、主人云ひ付てさきへ/行(ゆき)ける。小者/跡(あと)に/残(のこ)り銭を/払(はら)ひけ 00095250L2る。茶屋の/家嫁(かか)ハ/不審(ふしん)成事/哉(をえ)。あの/供(とも)の名ハたひ+/替(かハり)け 00095260L3ると/気(き)を付見るに、扨ハ茶の銭を名によそへて/呼(よば)れけるよ 00095270L4と思ひしに、又或時/件(くだん)の主人来り茶屋へ/立寄(たちより)、かゝに云ふ 00095280L5ハ、身がいつもつれし小者が、(二ウ)/風呂敷包(ふろしきづゝミ)を/持(もち)て/跡(あと)か 00095290L6ら可参間、はやく/霊山(れうぜん)へ来るべしと云ふてたべとて、主 00095300L7人ハ/先(さき)へ/行(ゆか)れける。其跡へ小者すた+とはしり来る。/彼(かの) 00095310L8茶やのかゝハ/手(て)をたゝき、これ+百介殿と/呼(よび)かけ、/旦那(だんな) 00095320L9様の/言伝(ことづて)が有。百介に/霊山(れうせん)へはやく参れと御申被成候とい 00095330L10へば、小者ハきもをつぶし、/頓而(やがて)/腰銭(こしせに)の有たけぬき出し、 00095340L11/是(これ)おかゝ。百介迄ハなく候。内上ケに七十二介わたし候と 00095350L12いひ/捨(すて)て、/霊山(れうぜん)さしていそぎける。 00095360¥N3¥J 00095370¥X/酒(さけ)の/酔(えひ) 00095380L15△/極(ごく)月の廿日比に、京三条の/橋(はし)の上にて、大酒にえひて 00095390L16(三オ)よねんなく/寝(ね)てゐる男あり。又其日、大津/米問(こめとい)屋の 00095400L17手代京へのぼり、是もちくと/酔(えひ)たるが/彼(かれ)を見つけ、そちの 00095410L18/在所(さいしよ)ハいづくと/問(とふ)に、/言舌(ごんぜつ)まハらず、わけもなき/声(こゑ)にて/敦= 00095420L19賀(つる=が)と云ふ也。/不便(ふびん)と思ひ、大津迄/戻(もど)り/車(くるま)に/乗(のせ)つれ/行(ゆき)、/便舟(びんせん) 00095430¥G 00095440M12を/尋(たづね)て/敦賀(つるが)へやりぬ。/彼(かの)者を/旅人(たひにん)の/宿(やど)に/船(ふね)よりあげ/置(をく)。そ 00095450M13ろ+/酔(えひ)さめて目をあきミれば、/曽而(かつて)しらぬ国しらぬ人斗 00095460M14也。是ハ何事ぞ。我ハ京六条にて/敦賀屋(つるがや)と云ふ者にてこそ 00095470M15候へとあきれたゝずむ。件のわけを/語(かた)りきかするに/肝(きも)をつ 00095480M16ぶし、/舟賃(ふなちん)はたご代に/羽織(はをり)わきざしを/沽却(こきやく)し、/恥敷(はつかしき)/様(さま)にて 00095490M17京ニ帰る。一笑。(三ウ)(四オ挿絵) 00095500¥N4¥J 00095510¥X/野郎(やらう)の/書(かき)し文 00095520¥P316 00095530L1△/打続(うちつゝき)/徒然(とぜん)の折ふし、/懇比(ねんごろ)なる大じん方へ、野郎、/文(ふミ)を 00095540L2書やるとて、我身久&/目(め)を/煩(わつらゐ)、今程ハさん+/盲目(もうもく)の/躰(てい)に 00095550L3成まいらせ候。/日比(ひころ)の御なじみに少御見廻被下かしと、云 00095560L4ひやりければ、大じん/肝(きも)をけし、/早&(さう+)見廻てミるに、/眼病(かんびよう) 00095570L5の/躰(てい)にハミへざりけり。ふしぎや、先程の書状ハ其方の/手= 00095580L6跡(しゆ=せき)にてもなく、あまり気遣に思ひ参たるが、一/切(さい)目のあし 00095590L7きやうにハミへ侍らずといふに、野郎の申ハ、されば御な 00095600L8じミゆへ申/進(しんじ)したり。何をかくさん。久&/客来(きやくらい)なくあまり 00095610L9に/隙(ひま)故、あき/尻(じり)に成ましたと。(四ウ) 00095620¥N5¥J 00095630¥Xぬく太郎 00095640L12△或/分限者(ぶげんしや)の/一人(ひとり)むすこ、年/二十(はたち)斗にて少ぬけたるゆへ、 00095650L13/賢(かしこ)き手代有て/諸事(しよじ)さんばひして/有徳(うとく)成けり。しかれ共、人 00095660L14付合せでもかなハざれば、方+/振舞(ふるまひ)に/行(ゆき)、/馳走(ちそう)の/料理(りやうり)を 00095670L15/喰(くえ)共、/時宜(じぎ)もいはず/褒美(ほうび)もなければ、其所の/亭主(ていしゆ)、気をう 00095680L16しなふ/風情(ふぜい)、/粗(まゝ)あり。手代つね+云ひ/教(をしへ)けれは、/異義(いぎ)な 00095690L17く/合点(がてん)してげり。或時はれがましき所へ手代も召つれよば 00095700L18れ、れき+と/座列(ざれつ)あり。/給仕人(きうじにん)/膳(ぜん)を持出、/急度(きつと)つくばい 00095710L19たれば、件のむすこ、上/座(ざ)の/床(とこ)わきになをりゐて/高声(たかごへ)にて、 00095720M1/御亭(ごてい)+と/呼(よび)かけ、まだ/膳(ぜん)にすハらぬさきに、(五ノ九オ) 00095730M2いかひ/御馳走(こちそう)、/御料理(おりやうり)も/出来(でき)ましたと申されたり。手代に 00095740M3らミければ、打うなづいて、わすれぬさきにと。 00095750¥N6¥J 00095760¥X/嶋(しま)ざらしならざらし 00095770M6△/夏(なつ)の/比(ころ)、/嶋(しま)さらしなら/晒(さらし)と、/声(こへ)をなが+と/張挙(はりあけ)、売あ 00095780M7りく。或屋敷の内より、/中間(ちうげん)男、/門外(もんぐハい)へはしり出/呼(よび)ける。 00095790M8/商人(あきんど)内ニ入て見れば、うつくしき女中二三人立て、此さ 00095800¥G 00095810¥P317 00095820L1らし屋に/問(とひ)給ふ。ほの※とあかしちゞみハなひかと云ふ。 00095830L2嶋かくれて行て御座らぬと/答(こたふ)。然る所ニかの/中間(ちうげん)男が思ふや 00095840L3う、扨ハ/哥(うた)にて/売(うり)かひを致とミへた。身も/買(かい)申さん。/与作(よさく) 00095850L4/丹波布(たんばぬの)ハなひかと、こと/葉(ば)をなまりて問ければ、それもな 00095860L5し。今ハお江戸に(五ノ九ウ)刀さしで、/呉服(ごふく)ざしより/長(なが)ひ 00095870L6から是もないといふ。それなれば其方ハ何を売ぞと/問(とふ)。此 00095880L7方の売物ハ、/声(こへ)をはりあげなが+と、/嶋原(しまばら)や物ざらしと 00095890L8いふ。 00095900¥N7¥J 00095910¥X長老の/麁相(そさう) 00095920L11△さる長老、/冬(ふゆ)の/寒(かん)天に/業喰(くすりぐひ)とて、からざけを/鋸(のこぎり)にて引 00095930L12切/居(ゐ)ける所へ、ひよつと/旦那(だんな)/衆被参たり。/坊主(ばうず)/肝(きも)をつぶ 00095940L13し、やにはになんどへかくし/置(をき)、とば+として出るに、 00095950L14/衣(ころも)のすそに/彼(かの)からさけの/歯(は)かゝりて、ざら+引ずりなが 00095960L15ら罷出、/旦那(だんな)にあひける。旦那ゆびをさして、其衣に付て 00095970L16引ずり給ふハ何ぞと/問(とふ)。坊主あはてゝ、いや是ハ女房共の 00095980L17(十オ)/薬喰(くすりぐひ)で候。いや、申そこなひじや。/愚僧(ぐそう)もむかしの 00095990L18一/休(きう)和尚にあやからふと思ふてと。 00096000¥N8¥J 00096010¥X/文盲(もんもう)成もの/言葉(ことば)とがめ 00096020M3△/有徳(うとく)なれ共ずんど文盲なる人、或時、はれがましき/参会(さんくハい) 00096030M4の/場(ば)にて、去人申さるゝハ、久敷御目にかゝらず、/弥&(いよ&)貴 00096040M5殿の/御袋(おふくろ)も御無事にはハすやと/尋(たつね)ければ、御袋といふ事を 00096050M6しらず、問かへせバ、お袋とハそなたの/母御(はゝご)の事と申せば、 00096060M7此者大きに/腹(はら)を立、人の母を袋と云やうないひ分が有物か。 00096070M8おれか母が御袋ならバ、おぬしが母ハなんのへちまのかハ 00096080M9のだん袋よと。(十ウ)(十一オ挿絵) 00096090¥N9¥J 00096100¥X夫婦長老の目きゝ 00096110M12△或寺の長老、七月十四日ニ/棚経(たなぎやう))に/行(ゆく)とて、/文盲(もんまう)なる/旦= 00096120M13那(だん=な)所へ/篭(かご)に/乗(のり)まいられける。/亭主(ていしゆ)、長老にあふて/時宜(じぎ)もい 00096130M14はず、/挙足(あげあし)してゐける。女房/迷惑(めいわく)がりて、男にとかくと気を 00096140M15つけければ、あれハこちの寺の長老様じやなひと云ふ。成 00096150M16程+長老様じや。/先度(せんど)/墓参(はかまいり)したる時も、上座になをりて 00096160M17御十念おろし給ふて、かくれ/紛(まぎれ)もなひ事よとさん※にし 00096170M18かりける。男いふやうハ、しても/世間に云ふとハ/違(ちがふ)た。 00096180M19長老ハかちで殿様御/馬(むま)といふからハ、/篭(かご)にのり給へば、/定= 00096190¥P318 00096200L1而(さだ=めて)/和尚(わうしやう)にてあるまいといふ。(十一ウ) 00096210¥N10¥J 00096220¥Xはひ出の下女 00096230L4△京四条河原に、そろまと云ふたうけ/人形(にんぎやう)をまハす人有。 00096240L5本名ハ七郎兵衛と云ふ。此家に/田舎(いなか)よりはひ出の下女有。 00096250L6或時女房、かの下女を/芝居(しばゐ)へ使にやりける。七郎兵衛殿ニ 00096260L7少用事候まゝ、其元御しまひ次第早&かへり給へといふて 00096270L8やりける。下女ハ芝ゐにて、主人の/替名(かへな)そろまと云ふをし 00096280L9らず。やがて/行(ゆき)、少おそく/宿(やど)ニ帰る。女房申ハ、扨&おそ 00096290L10きかへりやう哉としかりければ、下女申ハ、旦那殿へ口上 00096300L11を申まして、かへりさまに、そろまが/狂言(けうげん)を立ながら一/番(ばん) 00096310L12見てかへりました。手かけを持て親に/勘当(かんだう)しられ、丸はだ 00096320L13かに(十二終オ)成、/楽(がく)屋へはいりました。扨も+どんな 00096330L14/楚呂間(そろま)めで御座る。あのそろまがやうな者の女房の/顔(かを)が見 00096340L15たひと云ふ。 00096350¥N11¥J 00096360¥X/途中(とちう)にて/聞(きゝ)し/死去(しきよ)の/吊(とふらひ) 00096370L18△/互(たがひ)に八十斗の老人、/途(と)中にて/行逢(ゆきあひ)、何とひさしや。たが 00096380L19ひにまめにて、目出度存ル也。して、其方のかみハ弥&そ 00096390M1く才ニ候かと。それバ+/労少不定(らうせうふでう)のならひ、ばゞも先月 00096400M2/果(はて)たるとかたれば、一方の老人、/慮外(りよくハひ)ながら、先此/杖(つえ)を持 00096410M3て給ハれとて、先の老人に/杖(つえ)を/預(あづけ)ケ、其身ハ/横手(よこで)を打て、 00096420M4扨も+/も((も衍))/努(ゆめ)にもしらず、ちからおとしやと。(十二終ウ) 00096430¥P319 00096440¥Y1軽口もらひゑくほ巻之四△目録 00096450L3第一△/宗門(しうもん)の/数(かす)ハ十一宗 00096460L4二△/文盲(もんもう)成者/寄合(よりあひ)/笛(ふへ)の/評判(ひやうはん) 00096470L5三△/篭(かご)かきの一/子(し)手ならひ 00096480L6四△/壁(かべ)に/耳(ミヽ) 00096490L7五△水せがき 00096500L8六△/親(おや)の/麁相(そさう)を子がわらふ 00096510L9七△/恵心(ゑしん)三/尊(ぞん)仏の出ミせ 00096520L10八△正月ぬのこ 00096530L11九△所ハ覚へて/名(な)をわすれた(一オ) 00096540L12△△まめ蔵がはなし 00096550L13△△/堅(かた)ぜうしき者の/喧嘩(けんくわ)(一ウ) 00096560¥T1 00096570¥K〔註・内題の部分一行空白〕 00096580¥N1¥J 00096590¥X第一△/宗門(しうもん)の/数(かず)ハ十一宗 00096600M5△或所に四五人/寄(より)て、よも山の物語を云ふてなぐさむ/折= 00096610M6節(をり=ふし)、一人申ハ、むかしより日本にて/宗旨(しうし)の数ハ十宗あり。 00096620M7然るに当世ハ十一宗あるといふ。それハ/何(なに)宗成ぞと/問(とふ)。こ 00096630M8なたやおれがやうな上/戸宗(ごしう)と申也。又一人が云ふハ、然ら 00096640M9バ/下戸(げこ)衆と云ふも有からハ、十二宗成ぞとせりあひける。 00096650M10尤なれ共、下/戸(こ)にハ/経(きやう)がなひと云ふ。してまた上戸ニ経が 00096660M11有やと/尋(たづ)ぬれハ、中+経こそおハすれ。/汝(なんぢ)しらずや。す 00096670M12いきやうと云ふ経也。(二オ) 00096680¥N2¥J 00096690¥X二△/文盲(もんもう)成者よりて/笛(ふえ)の/評判(ひやうはん) 00096700M15△或/村里(むらざと)に、/氏神(うちかミ)の/社(やしろ)を/造立(さうりう)/仕(し)けるに、/氏子(うちこ)目出度思ひて、 00096710M16/近国(きんごく)より/能(のふ)太夫を/呼(よび)、/能(のふ)を/始(はじ)めけり。/笛(ふえ)ふく/役者(やくしや)二人有。 00096720M17壱人ハ/老躰(らうたい)、一人ハ/若輩(ぢやくはい)なり。其日の/能(のふ)過て、見物の文盲 00096730M18もの/寄(より)あつまり/評判(ひやうばん)するハ、笛ハどふしても年寄の/老功(らうこう)成 00096740M19がよきと云ふ。然れ共年寄ハ/歯(は)もぬけて笛の/音(ね)あしゝ。/無= 00096750¥P320 00096760L1功(ぶ=こう)なれ共/若者(わかき)こそよけれ。何としても/歯(は)の/性(しやう)つよきゆへ、 00096770L2笛にかミ/付(つき)ぶりがよいと云ふ。 00096780¥N3¥J 00096790¥X三△/篭(かご)かきの一/子(し)/手習(てならい) 00096800L5△さる/篭(かご)かきの/子(こ)に、手習をさせけり。大坂と云ふ二/字(じ)を 00096810L6/始而(はしめて)(二ウ)ならひけるに、親が云ふハ、筆を/持(もつ)て/来(きた)り、目 00096820L7のまへにて/書(かい)て見せよといへば、/頓而(やがて)むすこ/書(かき)けるに、う 00096830L8への大の/字(じ)ハかきよいが、/下(した)の/坂(さか)の/字(じ)が/書(かき)にくゐと云ふを、 00096840L9親/聞(きゝ)て、いかにも坂ハ/書(かき)にくゐはづじや。そんな時ハ/杖(つへ)を 00096850L10してやすんたがよひと、おしゑた。 00096860¥N4¥J 00096870¥X四△/壁(かべ)に/耳(ミヽ) 00096880L13△或人云ひしハ、/隣(となり)の/古家(ふるいへ)にかへに、大きな/石(いし)がぬりこめ 00096890L14て有。あの石にハねばりもなき物なるに、よくも+/数(す)年 00096900L15の間/落(をち)ずに、かべにハ/付(つゐ)て有哉と思ふ事じやと/語(かた)れバ、一 00096910L16人が云ふハ、/土(つち)と石とハ何れも地にそだつ物なれば、/定而(さだめて) 00096920L17/相姓(あひしやう)こそ(三オ)よからめ。それより付にくゐ/壁(かへ)に/耳(ミヽ)とハい 00096930L18はぬかと。 00096940¥N5¥J 00096950¥X五△水せがき 00096960M3△/浅草(あさくさ)/辺(へん)さる寺の/住持(ちうじ)に、/水施餓鬼(ミづせかき)を頼つる/旦那(だんな)あり。 00096970M4程過て旦那ハ寺へ行て申ハ、扨&/甚深(ぢんじん)なる/御廻向(ごゑかう)、水せが 00096980M5きの/功徳(くどく)により/妄者(もうじや)も/受(うけ)よろこび、うかミ給ふらんとて、 00096990M6忝よしさま+礼を/述(のべ)ければ、住持あまりニ/卑下(ひけ)する事こ 00097000M7そおほかるべきに、とひやう成/返答(へんたう)申されたり。御礼ニ/痛(いたミ) 00097010M8入候。水の上の/商売(しやうはい)なれば、/常(つね)に水ごゝろをしらぬ/妄者(もうじや)ハ 00097020M9心もとないと申た。 00097030¥N6¥J 00097040¥X六△親の/麁相(そさう)を/子(こ)が/笑(わら)ふ(三ウ) 00097050M12△或/土民(とミん)親子三人住ゐけるに、親つね+/麁相(そさう)成けるが、 00097060M13或時/洗足(せんそく)をするとて、/湯(ゆ)のあつきをたらゐに入、/足(あし)より/先(さき) 00097070M14へあらひて、後に/顔(かを)をあらひけるを、むす子ハ見て、くつ 00097080M15+/笑(わら)ひけるを、親が云ふやうハ、そちハ何を笑ふぞと云 00097090M16ふ。されハ/親父(おやぢ)も/少(ちと)たしなミ給へ。/顔(かを)こそ先へあらふ物な 00097100M17れと云へば、へらぬ口ニて親が申ハ、あほふぬかすな。お 00097110M18のれも水風呂ニ入時ハ、/首(くび)から先へはめるかと云ふもおか 00097120M19し。 00097130¥P321 00097140¥N7¥J 00097150¥X七△/恵心(ゑしん)の作/三尊仏(さんぞんぶつ)の出ミせ 00097160L3△二月十五日ハ/涅槃像(ねはんざう)にて、/増上寺(ぞうしやうじ)へ/参詣(さんけい)おほかりける。 00097170L4然ルに去/俄(にはか)道心者、ゑしん御作りとて、/途中(とちう)に出ミせをして、 00097180L5口上/高(たか)+と、(四オ)何れも立よらせ、御/縁(ゑん)をむすび給へ。 00097190L6是ハ恵心三尊仏にて/御来迎(ごらいかう)の如来様じやと申て、/勧進(くハんじん)/仕(し)け 00097200L7るに、/面(おもて)ちかづきの/中間(ちうげん)男来りけるを、/幸(さいはい)の人が被参たり。 00097210L8御身少の間、此所ニ/番(ばん)して給ハれ。我しきりに用事有て、 00097220¥G 00097230M1一二町有所へ参リ度とて、/彼(かの)男をやとひ/置(をき)伝/房主(ぼうず)ハ用にぞ 00097240M2行ける。此男もなまなる口上を云ふて、一銭二銭づゝあつ 00097250M3めける所へ、無/二(に)無三のやつこ来り、/言葉(ことは)をなまりて、是 00097260M4ハなんだと/問(とふ)。/件の番の男、恵心三尊仏と/答(こたふ)。中に立てゐ 00097270M5るのハなんだと云ふ。彼番も様子くわしくハ覚へず、/返答(へんたう) 00097280M6にこまりて、中ニ立給ふハ、/源(ミなもとの)頼光仏(らいくハうふつ)、はたハ/綱(つな)きん 00097290M7とき也と云ふたも一笑。(四ウ)(五ノ十オ挿絵) 00097300¥N8¥J 00097310¥X八△正月/布子(ぬのこ) 00097320M10△或夫婦住ゐて、/頓而(やかて)正月成とて、男ぬのこの/表(をもて)を/好(この)ミに 00097330M11/好(このん)で/染(そめ)にやりければ、大晦日の/暮方(くれかた)に/染(そめ)来、やがて/綿(わた)を入、 00097340M12女房に/急(いそ)ぎぬはせける。何格田けく、ねむた/紛(まきれ)に右左の 00097350M13/袖(そて)を/取違(とりちが)へて/仕立置(したてをき)ける。明れば元朝、/亭主(ていしゆ)かのぬのこを 00097360M14/着(き)侍らんとて見れば、袖をぬい/違(ちがへ)有ける。以の外ニ/腹立(ふくりう)し 00097370M15て、さん+/高声(かうしやう)に成て女房をしかりける。これを聞て/隣(となり) 00097380M16の男参り、様子を聞ば尤也。去ながら世間の人のたとへを 00097390M17/聞(きく)に、あまり/腹(はら)を立給ふな。ほうを/面(かを)へなをしたと云ふか 00097400M18らハ、申ても右と左ハ同し手なれば、くるしかるまじきと 00097410M19(五ノ十ウ)云ふ。亭主聞て、何をいはします。そなたのあ 00097420¥P322 00097430L1ひさつハ、しつかひ/耳(ミヽ)を取て/鼻(はな)をかむ様なたとへじやと。 00097440¥N9¥J 00097450¥X九△所ハ覚へて名をわすれた 00097460L4△或/禅門(ぜんもん)、はじめての米屋へ行、米弐俵/買(かい)、後程これを我 00097470L5宿へもたせ給ハれと云ふ。/畏(かしこま)リ候。御宿所ハ何方やと/問(とふ)。 00097480L6禅門聞て、されば身が/名(な)ハ/宗甫(そうほ)と申也。所ハそんじやう其 00097490L7町の/行当(ゆきあた)りの家成が、/合点(がてん)かと云ふ。/委細(しさい((ママ))心得たり。後程 00097500L8もたせ可進とて、禅門ハ帰りけり。米屋の男、つねに物 00097510L9覚へのなき者なれば、ケ様の事も物によそへて覚へたるが 00097520L10よしと思ひ、やがて弐俵の米をせなかにおふて彼所へ/行(ゆき)、 00097530L11/宗甫(そうほ)と云ふ名を/忘(わす)れ、(十一オ)少たづね度候。行当りの新 00097540L12左衛門様と云ふ/御房(ごぼう)様ハ爰で御ざるかと問。いや、其やう 00097550L13成/俗(ぞく)の出家衆ハ、/爰(こゝ)らにハなしと云ふ。男も/重荷(をもに)を持せつ 00097560L14なさに、又思ひ出して、今申たハ覚へ/違(ちがひ)で御座る。/合点(がつてん)か 00097570L15弥左衛門様と云ふぼんさまじや物を。 00097580¥N10¥J 00097590¥X十△まめ蔵がはなし 00097600L18△/豆蔵(まめぞう)と云ふ者、町中おどけたる事を云ふて、/勧進(くハんじん)ニあり 00097610L19き、壱銭づゝもらゐける。ケ様に銭を被下ル御人ハ、来世 00097620M1にて/実(まこと)の/金(こがね)仏に成給ふと云ふニ、去人が申ハ、そちハ/死(しゝ)て 00097630M2来世にてハ何に成とわらひ+問ければ、されば私らが死 00097640M3でも仏に成ますと云ふ。それなれば、同し仏になるからハ、 00097650M4/今生(こんじやう)(十一ウ)にて/徳(とく)をするかましじやと云ふ。豆蔵申ハ、 00097660M5いや、仏に成ましても、/箱(はこ)に入られ、せなかにおハれて、 00097670M6又/勧進(くハんじん)いたする仏ニ生れますと。 00097680¥N11¥J 00097690¥X十一△/片(かた)じやうしき者の/喧嘩(けんくわ) 00097700M9△或/片(かた)じやうしき者二人/寄会(よりあひ)、よも山のはなしをすると 00097710M10て壱人が云やうハ、おれハ此中/珍敷(めつらしき)物を見た事よ。/鼠(ねずミ)の死 00097720M11たるかと見しが、/左(さ)ハなくて/蝙蝠(かうふり)にて有。しかれば人の云 00097730M12ひしに/違(ちがひ)たる事なし。鼠が其/侭(まゝ)/蝙蝠(かうふり)に成ハかくれなき/実(じつ)事 00097740M13也と語る。今一人聞て、それは大き成ひが/言(こと)なり。鼠と蝙 00097750M14蝠とハ/各別(かくべつ)の物成を、一つ口に被申ル事、以の外の(十二 00097760M15オ)あやまり也と、さん+云ひちらし、むくろ/腹(はら)を立て/居(ゐ) 00097770M16けるを、/最前(さいぜん)の者も同し様に/腹(はら)を立、/互(たがひ)に/高声(かうしやう)に成て、後 00097780M17ニハおのれしのれと、つかミあひける/折節(をりふし)、/東方(あつまかた)の人成が、 00097790M18/風斗(ふと)来かゝりて、此/喧嘩(けんくわ)のいはれを聞て、/双方(さうはう)ニ)理 00097800M19非(り=ひ)を付ず。只今/旁&(かた※)の云ひ分をきくに尤とハ思ハれず。さ 00097810¥P323 00097820L1りながら、二/疋(ひき)ながら/性(しやう)有物なれば、/鼠(ねすミ)が/蝙蝠(かうふり)に成まじき 00097830L2物にてもなし。まん/更(ざら)/性(しやう)のなき/巾着(きんちやく)が、いかのぼりニさえ 00097840L3成程にと、/了簡(れうけん)云ふて中をなをした。(十二ウ) 00097850¥Y1軽口もらひゑくほ巻の五△目録 00097860M3第一△ねすミの/忌中(きちう) 00097870M4第二△りやう理のちかひ 00097880M5第三△/名主(なぬし)の/子細(しさい)ハ町の/費(つゐへ) 00097890M6第四△/薮医者(やぶいしや)の/小者(こもの) 00097900M7第五△/雨乞(あまこい)の/紙装束(かミしやうぞく) 00097910M8第六△/文盲(もんもう)なる/親(おや) 00097920M9第七△すつはの/久三(きうざ)(一オ) 00097930¥P324 00097940¥T1 00097950¥K〔註・内題の部分一行空白〕 00097960¥N1¥J 00097970¥X鼠の忌中 00097980L5△けしからずねずみのあれけるに、ねすミおとしをしてこ 00097990L6ろしける。あるとき又、ねすミのかぢるをとしたり。やが 00098000L7て見ればあミかさなり。あるじ見て、てさて、にくいやつ 00098010L8の。やがて引ツつかまへ申やう、此中もかゝかくしばこを 00098020L9くいしゆへうちころせしか、それにこりぬわう/道(だう)もの。お 00098030L10のれもせいばいしてくれんといかりけれは、ねすミ、泪を 00098040L11ながし申やう、しばらく御まちくたされ。申たき事あり。 00098050L12此中ころされましたハ、わたくしのおや鼠。いまだ/忌中(きちう)て 00098060L13(二オ)こざりますゆへ、あミがさかぶりますといふた 00098070¥N2¥J 00098080¥Xりやうりちかひ 00098090L16△/鮒(ふな)をもらひ/料理(りやうり)せんとて、/下(け)人に申付ける。やかて料理 00098100L17してかげん見けるに、/殊外(ことのほか)うまし。どふやらこふやら、鮒 00098110L18のぬたをくひしまひ、さて/旦那(たんな)にいゝわけなく、/鯉(こい)を/買(かふ)て 00098120L19ぬたにつくり/出(いだ)しけれは、旦那、是、/鮒(ふな)てなしといゝけれ 00098130M1は、されば、さい/前(せん)鮒をつくりましたれば、ちんめがくひ 00098140M2まし、それで鯉をつくりました。旦那かんじ入、ムヽちん 00098150M3のぬすミに、鯉ノぬたじやなア。 00098160¥N3¥J 00098170¥X/名主(なぬし)の/子細(しさい)は町ノついゑ 00098180M6△六月の比、うちたへ酒事もなき折ふし、申/談(たん)ずる事あ 00098190M7り。(二ウ)/皆&(ミな+)/月行事方(ぐわちぎやうじかた)へ/寄合(よりあい)/致(いた)さるべしとて、/呼集(よびあつめ)けり。 00098200M8さていか/様(やう)の事やらんと、皆&名主の/皃(かほ)をまもれと、さし 00098210M9たる事もいはず。/先(まづ)/暑(あつ)きほと、ひやゝかに/酒(さけ)たべんとて、 00098220M10ひた物/飲(のむ)程に、日も/晩方(ばんかた)に/成(なり)ぬ。其/中(なか)に一人がいふやう、 00098230M11さて/今(こん)日の/参会(さんくわい)ハいか様の御事にて候やととひけれハ、名 00098240M12主いふやう、今日の参会ハ一大事に/及(およ)ぶ/相談(さうだん)なり。/昨日(きのふ)ミ 00098250M13れば、/屋鋪方(やしきがた)の/小性衆(こしやうしゆ)/通(とを)られしに、此町の子共/云(いふ)やう、/若= 00098260M14衆(わか=しゆ)+、/瓜(ふり)の/皮(かわ)ハいやかと、あとからはやしぬ。/今時分(いまじぶん)ハ 00098270M15くるしうもないが、/自然(しぜん)十月/比(ごろ)にさやうの/事(こと)をいふて、/瓜(ふり) 00098280M16の/皮(かわ)を/食(くハ)ふといふて町へねだつた/時(とき)にハ、/何(なに)とも/才覚(さいかく)がな 00098290M17るまい。しかれバ町の(三オ)/難義(なんぎ)じやほどに、子共に/急度(きつと) 00098300M18云つけらるへしと、/分別(ふんべつ)らしくいふて/立(たち)ぬ。 00098310¥P325 00098320¥N4¥J 00098330¥X/薮医者(やぶいしや)の/小者(こもの) 00098340L3△今の世ハ日の/出(で)/医者(いしや)と、/朝(あさ)から/晩迄(ばんまで)/咄(はなし)の/伽(とぎ)にありく、/薮= 00098350L4下竹庵(やふ=したちくあん)と/云(いふ)/薬師(くすし)有しが、ちかき比/田舎者(いなかもの)を一人/召(めし)かゝへけ 00098360L5るに、かねて/云付(いひつく)るやうハ、/外(ほか)へ/使(つかひ)に/行(ゆき)てハ、竹庵申ます 00098370L6ると云べし。又外に/居(お)るとき/呼(よび)に/来(きた)らバ、竹庵/是(これ)に/居(お)りま 00098380L7するかと、/他所(たしよ)にてハ/主(しう)をバあしくいふ物じやと、/念比(ねんごろ)に云 00098390L8/教(おしへ)けり。有とき、竹庵/病家(びやうか)にて/夕飯(ゆふはん)を/喰(くひ)、/暮方(くれがた)迄/咄(はなし)/居(ゐ)ける 00098400L9が、/彼(かの)小者、/腰掛(こしかけ)に/眠(ねふ)りおれども、/食(めし)/喰(くへ)といはねバ、あま 00098410L10り(三ウ)ひだるさのまゝ、/彼(かの)あほう/玄関(げんくハん)へゆき、/高(たか)らかに 00098420L11/云(いふ)やうは、/竹庵(ちくあん)是に/居(おり)ますか。おらゝハ/宿(やど)へかへり、/食(めし)を 00098430L12/焼(たい)て/喰(くひ)申す。/草履(ざうり)ハこゝにおき申といふて、やかてかけ/出(だ) 00098440L13して/帰(かへ)りぬ。 00098450¥N5¥J 00098460¥X/雨乞(あまごい)の/紙装束(かミしやうぞく) 00098470L16△/元禄(げんろく)/酉(とり)の/夏(なつ)ハ大/旱(ひでり)にて、/国(くに)+/在(ざい)&にて、/氏神(うぢかミ)へ雨乞を 00098480L17しけるが、/或(ある)在所ニ而雨乞のおどりをはじめ、さま+の 00098490L18/出立(でたち)、こゝをはれと/奇麗(きれい)なる/装束(しやうぞく)をしけり。其/中(なか)にずんど 00098500L19すり切なる者有しが、人/並(なミ)に/結構(けつかう)なる出立をしたきと、い 00098510¥G 00098520M12ろ+/思案(しあん)して、/金(きん)から/紙(かミ)のよき/模様(もよう)なるを/買(かふ)て/衣装(いしやう)にこ 00098530M13しらへきて/出(いで)ければ、あたりにかゝやきて壱/番(ばん)の出立(四オ) 00098540M14に見えて、/村(むら)中の人&きもをつぶし、手を打てほめけり。 00098550M15其とき此すり切、/自慢(じまん)がほにて、何とそ雨がふらねバよい 00098560M16がと、くりかへしいひければ、人&/聞(きゝ)とがめて、いな/事(こと)を 00098570M17おしやる人じや。大/分(ぶん)物いれてめん+かやうに出るも、 00098580M18/皆(ミな)/雨乞(あまごい)のためじやに、なぜに雨がふらねバよいとハいやる 00098590M19ぞとしかりけれバ、すり切聞て、あゝ/是(これ)ハおらゝがいひぞ 00098600¥P326 00098610L1こないじや。さりながら、おらが/衣装(いしやう)ハ/紙(かミ)じやによつて、 00098620L2雨がふつたらハ四十八/枚(まい)にならふと思ふて、/雨乞(あまごい)を/忘(ハす)れて 00098630L3/折角(せつかく)あんじた。そんならせまいものをといふてくやんだ。 00098640¥N6¥J 00098650¥X/文盲(もんもう)なる/親(おや)(四ウ)(五ノ十二オ挿絵) 00098660L6ある人/母親(はゝおや)わづらひけるに、/友(とも)たち見/廻(まい)に/来(きた)りて、/承(うけたまハ)れば、 00098670L7お/袋(ふくろ)さま御/気色(きしよく)あしく候よし。こなたニ御/苦労(くろう)ニ/思(おぼし)めさう 00098680L8といへば、/亭主(ていしゆ)、いかにも/仰(おほせ)の/通(とをり)で御ざる。/老母(らうぼ)わづらひ 00098690L9まする/故(ゆへ)、そばをはなれませぬ。/其故(それゆへ)/久&(ひさ+)御見廻も申ませ 00098700L10なんだなどゝあいさつして、/客(きやく)も/立帰(たちかへ)りぬ。亭主の/父(てゝ)、/文= 00098710L11盲(もん=もう)大/才(さい)なりしが、/勝手(かつて)にて/其(その)あいさつをきゝ、/子(こ)をよびて 00098720L12/云(いふ)様ハ、そちハいくつになりても/物(もの)の/云(いひ)やうもしらぬ。/只= 00098730L13今(たゝ=いま)/客(きやく)のあいさつにいふたハ、大きなかた/言(こと)じや。/馬(むま)の/年(とし)よ 00098740L14りたるをこそらうぼとハいへ、人の母の年よりたるをば、 00098750L15/老僧(らうそう)の/母(はゝ)とこそいふ物なれと、さん※にしかつた。(五ノ十 00098760L16二ウ) 00098770¥N7¥J 00098780¥Xすつはの久三 00098790L19△すつはの久三とて、人に/雇(やと)はれて其日を/送(おく)る/者(もの)有。何 00098800M1を/頼(たのミ)ても/間(あい)をとらぬと/云(いふ)/事(こと)なし。其/近辺(きんへん)に/出入(でいり)する所有し 00098810M2が、久三を/呼(よん)で、そちを/頼(たのミ)たい。こちのかゝが/産(さん)の/気(け)がつ 00098820M3いたほどに、/隣(となり)町の/取上(とりあげ)ばゝを、ちやつと/呼(よん)できてたもと 00098830M4いへば、心得ましたと云て、/台所(たいところ)へまハつて/湯漬(ゆづけ)を二三ば 00098840M5いかきこんでかけ/出(だ)した。此やうなせハしなき所でも、は 00098850M6やしてやりおつた。 00098860¥Q 00098870M9△△△△△△△△△△△△△大坂書林 00098880M10△△△△△正月吉日△△△△△安井彌兵衛(十三オ)