00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第八巻 00000030¥T軽口初売買 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L16元文四年刊板 00000070L17其摘作・序 00000080L18半紙本五巻 00000090L19大東急記念文庫蔵 00000100¥Y序 00000110M3/崑山(こんざん)のもとには玉をもつてからすを/抵(うつ)。/皷蠡(ほうれい)の/浜(はま)には/魚(うを)を 00000120M4もつて/犬(いぬ)に/食(かふ)といへることく、古今/浮世(うきよ)/頓作(とんさく)の咄も、/広大(くハうだい) 00000130M5なるなかよりよきヲひろひ、/筆(ふで)の/林(はやし)に詞の花をさかせ、/啌(うそ) 00000140M6を/種(たね)として、笑ひを/植(うへ)ル常世(1オ)咄にハ古文真宝な/親父(おやじ) 00000150M7の十/面(めん)/顔(かを)も/咲顔(ゑがを)になし、ぐわんぜなしのわんばく太郎も/姥(うば) 00000160M8がすかして、むかし+/祖父(ぢい)と/嫗(ばゝ)と咄スよりきげんをなを 00000170M9させ、あるひは女中または/裏(うら)にいらるゝ/隠居(いんきよ)のばゝ様/迄(まで)、 00000180M10どよミを作らせ、わらひをまねく。咄を/買人(かふひと)(1ウ)あり/売= 00000190M11人(うる=ひと)あり。かふてのわらひ/売(うり)ての/愛敬(あいきやう)、笑ふ/門(かど)には/福(ふく)きたる、 00000200M12軽口はつあきなひと/代号(だいがう)して、古キをはふき/新(はたら)しき咄を/桜= 00000210M13木(さくら=ぎ)にちりはめ、全部五冊となして、/春(はる)のおなくさみを売物 00000220M14ならし。 00000230M15△△△未ノ△△△△△△△△△△作△者 00000240M16△△△△△正月日△△△△△△△△△△其△△摘(2オ) 00000250¥P4 00000260¥Y1/軽口(かるくち)/初(はつ)/売買(あきない)△巻一之目録 00000270L3一△はつ/商(あきない)とんさく 00000280L4一△/無筆(むひつ)なる久三/頓作(とんさく) 00000290L5一△/昔咄(むかしはなし)が今ばなし 00000300L6一△身から出すくんなん 00000310L7一△はいりよふのさかな 00000320L8一△/音曲(おんきよく)の身じまん 00000330L9一△七小町のとんさく 00000340L10一△しよぶかたな取ちがへ 00000350L11一△/流(る)人しまニておそるゝ事 00000360L12一△なり上りのほめ/言葉(ことば) 00000370L13一△きにんのさくしつ(2ウ) 00000380¥T1 00000390¥N1¥J 00000400¥Xはつあきなひ 00000410M3ふくとく元年正月吉祥日に、思ひ+にふく/神(じん)たち、うり 00000420M4ものかたげ、としとくじんゑうりにゆかるゝすかたを見る 00000430M5に、ゑびすハ西のミやから、びち+/撥(はねる)たいは+、めで 00000440M6/鯛(たい)。あとよりハ、こさつた+、大黒殿は、こばんうちだ 00000450M7すたからのつちや+。ほていは/唐子(からこ)をさきにたて、/唐(とふ)う 00000460M8ちハや/布袋(ぬのふくろ)と、(一オ)としとくゑうり/初(ぞめ)に、大黒ゑびすほ 00000470M9てい、/殊外(ことのほか)けふりとくありて、これは、とふねんはほふ年 00000480M10のしるし。ふくじんハうちよりておミきに、ゑびすいわる 00000490M11ゝやふハ、さて大黒どの。けふのはつあきなひを、子をう 00000500M12ミかゝる/女房(によぼふ)とおなじ事と思ひます。心ハの。もふけがつい 00000510M13たといわれた。(一ウ)(二オ挿絵) 00000520¥N2¥J 00000530¥Xむひつなる久三とんさく 00000540M16/門(かど)まつのもり/砂(ずな)に、小べんをするものあり。うちよりだん 00000550M17なミつけ、あれ/久三(きうざ)よ。門まつのもりずなへ小べんしほる 00000560M18ハといふこゑに、おどろきにげてゆく/跡(あと)ゑ、久三/出(で)て見れ 00000570M19ば、/砂(すな)に/小便(せうべん)にて/竜虎(りようこう)とかいてあり。久三あきれて、今の 00000580¥P5 00000590L1やつがばりハ、よひ手しやといふた。 00000600¥N3¥J 00000610¥X/昔(むかし)はなしか/今咄(いまばなし)(二ウ) 00000620L4二三人より合、一人のもの申よふ、此よふにさけばかりで 00000630L5もおかしいなひ。めづらしいはなしがある。さかなにいた 00000640L6そふといわれけれバ、/残(のこ)りの人ミな+しやうもふしたれ 00000650L7バ、むかし+じいとばゝとあつたげな。いや、それハこ 00000660L8どもがいふはなしぢやといふ。いや、そのつぎかある。じ 00000670¥G 00000680M1いわ山へしばかりにゆく、ばゝハ川へせんだくにといふた 00000690M2れば、それハふるひ事しや。いやいふな。ふるひ(三オ)た 00000700M3めのせんだくじやといふた。 00000710¥N4¥J 00000720¥X身から出すくんなん 00000730M6さるむすこあそび/過(すご)し、八ツじふんに/帰(かへ)り、うちの/戸(と)はし 00000740M7める。ぜひなくきんぢよ一人やもめをたゝきおこし、とま 00000750M8らせてたもとたのめば、やすい事じや。さりながら、ふと 00000760M9んハ壱つならでなひがといへば、/大事(たいじ)ない+。あとさし 00000770M10てねるハひのと、/二(ふた)人リしてふとんきて、はじめの(三ウ) 00000780M11ほとは、きやくの方へ大ぶんきせおけども、/折節(おりふし)/夜(よ)さむさ 00000790M12のころなれハ、そろ+ていしゆふとんヲ引、きやくもは 00000800M13じめてハゑんりよして、ていしゆにひきしだいにしていれ 00000810M14ども、さむさつよひによつて、/客(きやく)の方ゑまたふとんをひく。 00000820M15あつちへひき、こちらへひき、夜が夜ひと、ふとんひきあ 00000830M16ふて、七ツ/時分(じふん)きやくおきて、たばこのミいれば、ていし 00000840M17ゆ目をあいて、おきやつたか。ヲヽ(四オ)ちつとをきて、 00000850M18やすまにやならぬといふた。 00000860¥P6 00000870¥N5¥J 00000880¥Xさかなのはいりよふ 00000890L3さるざいしよのしよや、講頭にて、むら中をはしりまハり、 00000900L4御もんぜきさまへ/銀(ぎん)壱〆五百目さしあげたれば、御とりつ 00000910L5ぎより、御せんのよけいなりとて、大いたのかまぼこ一ま 00000920L6い下され、庄や、めうがなくありかたき仕合とおしいたゞ 00000930L7き、まかり帰り、ところのどふじやうゑ、むら中をよびよ 00000940L8せ、その大いたのかまぼこ(四ウ)を、三日しやうじんして、 00000950L9ミないたゞかしやれといわれた。 00000960¥N6¥J 00000970¥X/音曲(おんきよく)の身じまん 00000980L12さるつゝミうつじまんする人に、さる者、/当地(とふち)でつゞみう 00000990L13ちのかしらは、たれて御ざります。はて、一ばんハどこそ 00001000L14このたれ、二/番(ばん)ハそんじよたれと、ゆび二本おりければ、 00001010L15とふひと、三ばんめはおまゑといへば、はれ、わけもない 00001020L16と、またゆひをおられた。(五オ) 00001030¥N7¥J 00001040¥X七/小町(こまち)とんさく 00001050L19とちうて久しふりにあふ人、まつ/其元(そこもと)は今はどこにぞとい 00001060M1へば、われらは、てんわうじ七小町に/住居(すまい)いたすと、あひ 00001070M2さつだん+/過(すぎ)てわかれけるが、あまりがてんゆかず、よ 00001080M3ひかへして、そのてんわうし七小町とハ、どこでござるぞ。 00001090M4はて、ミこ町のよこ町でござるといわれた。 00001100¥N8¥J 00001110¥Xしよふぶがたなとりちがゑ 00001120M7/御堂(ミだう)のまへをひかしへ、/諸侍(しよさふらい)やりをつかせて(五ウ)(六オ 00001130M8挿絵)/若(わか)とふをつれ通りけるを、六十斗なるばゝ行ちがふ 00001140M9て、申&やつこどの。其やり、なんぼてかふてござりまし 00001150M10たといふた。 00001160¥N9¥J 00001170¥X/流人(るにん)の/者(もの)おそるゝ事 00001180M13さるもの、ながし/物(もの)にあひて、しらぬしまへふねよりあが 00001190M14れば、くもつくことくなるおとこども、十人斗もすもふと 00001200M15つていたりける。それ+/鳥海(とりのうミ)、わたなべきんとき、はん 00001210M16くわい、とれ+なんどゝいふ。/今(いま)/参(まいり)り、あまりおそ(六 00001220M17ウ)ろしく思ひ、こちらを見れば、ころもをきたるぼふず 00001230M18一人あり。これさいわひとそばへ行、右のよふすをきけバ、 00001240M19いや+すこしもおどろかれな。あの/名(な)がはんくわひでも 00001250¥P7 00001260¥G 00001270L12きんときでもござらぬ。こゝは/法外(ほうくわひ)のところで、名ハつき 00001280L13したいでこざるといへば、さてハさよふで/御座(ござ)るか。しら 00001290L14いでおそろしくそんじました。/御坊(ごほう)の御名は何と申ますぞ 00001300L15といへば、ムヽわれは/法然上人(ほふねんせうにん)と申といわれた。(七オ) 00001310¥N10¥J 00001320¥Xなりあかりのほめ言葉 00001330L18さる人、したひにりつしんせられ、少&いゑなともとめ、 00001340L19あきなひせられしが、あるとき町のさんくわひにいてられ 00001350M1しが、ていしゆ、かの人をとれると思ひ、下女はしたまで 00001360M2ももてはやしけるが、かのせんしやうもの、づにのり、何 00001370M3がなほめんと思ひけるが、とこに、はないけたるを見つけ、 00001380M4さてもめづらしきと、おふけに(七ウ)ほめられければ、て 00001390M5いしゆ申様、これはせけんにたくさんなる/水仙(すいせん)と申せば、 00001400M6イヤ、われら、かくとしにいたるまで、ねぶかにかやうの 00001410M7はな見ずといわれた。 00001420¥N11¥J 00001430¥Xきにんの/昨日(さくじつ) 00001440M10さるわかいしゆ二三人/咄(はな)しけるが、壱人のいふ様、おれハ 00001450M11きのふ/芝居(しばい)へいたといふ。また壱人のいふよふハ、男のく 00001460M12ちから、きのふなどとハぬかつてわるい。きのふの事ハ昨 00001470M13日といふ。又きにんのまへにてハ一昨/□□((日とカ))いわれた。 00001480M14(八オ) 00001490¥P8 00001500¥Y1/軽口(かるくち)/初(はつ)/売買(あきない)△巻二之目録 00001510L3一△/大仏(だいぶつ)ミやげ 00001520L4一△/仏(ほとけ)のかほも/三度(さんど) 00001530L5一△うたひの/講釈(こうしやく) 00001540L6一△/音曲(おんきよく)のくちあひ 00001550L7一△のりてのとん/作(さく)(オ) 00001560L8一△/麁相(そさふ)がまたそさふ 00001570L9一△/俄(にわか)さむらいとん作 00001580L10一△からくりひやうばん 00001590L11一△/碁会(ごくハひ)のけんぶつ 00001600L12一△手づまのひやうばん(ウ) 00001610¥T1 00001620¥N1¥J 00001630¥X大/仏(ぶつ)ミやげ 00001640M3/京(きやう)/寺町通(てらまちとを)りにて十七八なる/女(おんな)、/南(ミなミ)をさして下リける。さ 00001650M4るわかいもの、ちらとミるより、さてもミめよきものと思 00001660M5ひつくより、ぞつと/恋風(こいかぜ)ふきさそひ、あとよりしとひ行け 00001670M6るに、大仏のほとりにて、かの/女(おんな)思ふよふ、大ぶつのみや 00001680M7げにはミヽかきをもとめかゑるときくに、われももとめん 00001690M8とて、こまものや見せに(一オ)かゝり、みゝかきかわんと 00001700¥G 00001710¥P9 00001720L1いふに、いづれなりともつかいなされといだしける。かのお 00001730L2とこ、さいぜんよりつけおくりたる事なれバ、もとめてゑ 00001740L3させんと思ひ、なにほどいるぞ。ねだんハいかほどととひ、 00001750L4そのまゝふところより、ぜに百文とりいだし、よきほどと 00001760L5らせ給へといふに、かのおんな、わたしがもちあひもこざ 00001770L6るといふ。/其義(そのぎ)なくして/行(ゆき)けるに、かの女、大ぶつ(一ウ) 00001780L7さんけいするをまちあわせ、うしろどふにてさみしく/人通(ひとどお) 00001790L8りもなく、よきおりと思ひ、かのおんなに、さいぜんより 00001800L9そもじを、いのちにかけてつけおくりしに、/今(いま)なにとそよ 00001810L10きしゆびなれば、こゝにて/叶(かな)ゑてとさゝやけば、こたまひ 00001820L11ゞき、こゝにてと/大(おふ)きふきこゑた。 00001830¥N2¥J 00001840¥X/仏(ほとけ)のかをも/三度(さんど) 00001850L14さるわろ、きよミづのくわんおんゑまいり、(二オ)われに 00001860L15なにとぞ、きんす百両さづけ給へと/心中(しんじう)にいのり、百両を 00001870L16さづけたまハらば九十九両ハくわんおんさまへさしあげん 00001880L17とねがわれけれは、ともたち聞て、これ、わがミわ百両も 00001890L18ろふて九十九両あげませふといのりやるが、壱両やなんぞ、 00001900L19なにしやるそといゝければ、ぬからぬかほで、はて、こふいふ 00001910M1てたますといふた。 00001920¥N3¥J 00001930¥Xうたひの/講釈(かうしやく)(二ウ)(三オ挿絵) 00001940M4さるわろ四五人よりあい、中にもおやじ分らしきわろ、し 00001950M5さいらしきかほして、なんと、きさまたち。なんとおもや 00001960M6る。むかしは人がおろかにあつた。まづ大/せふ((ママ))くわん、ふ 00001970M7はいのたまをりふぐふゑとられし時、/海(あ)まがまそつと、さ 00001980M8いかくをだせば、いたいめせづにすむ事じやといゝければ、 00001990M9ともだち/聞(きい)て、それはなぜにととゑば、はて、ちの下を/切(き) 00002000M10らずに、へその下へいるればよいにと(三ウ)いわれければ、 00002010M11ともたち、ぬからぬかほで、それでハ、めんこふくさいのたま 00002020M12になるといふた。 00002030¥N4¥J 00002040¥X/音曲(おんきよく)の/口合(くちあひ) 00002050M15/西国(さいこく)ふねにて、のりあひもあまたありける。てんきもよく、 00002060M16びぜんのほふへふねつきけるに、/俄(にわか)に大/風(かぜ)あらなみ、ふね 00002070M17のうちゑも、なミいるほどの事ニて、ミな+のりあひの 00002080M18しゆふ、おそれめいわくと、しゆふし+をとなへけれハ、 00002090M19/中(なか)に(四オ)/若者(わかいもの)壱人、ふねのへさきゑあがり、こゑはりあ 00002100¥P10 00002110L1け、/国太夫(くにたゆふ)ぶしをかたりける。/人&(ひと+)、これ+/若(わか)ひの。/此= 00002120L2風(この=かぜ)に/国太夫(くにたゆふ)どころかといゑば、はて、げいハ/身(ミ)をたすける 00002130L3といわれた。 00002140¥N5¥J 00002150¥Xのりてのとんさく 00002160L6さるひと、すミよしへさんけいするとて、しんけをさして 00002170L7/行(ゆか)れけるに、にわかに大あめふりけるゆゑ、/道(ミち)にてかごを 00002180L8かりけるに、(四ウ)かごのそこぬけたり。かごかきいふよ 00002190L9ふ、/何(なに)ともきのどくにそんずれども、これよりをりて/下(くだ)さ 00002200L10れといふ。いや、かまわずとやれ。/中(なか)であるひて/行(ゆく)といふ 00002210L11た。 00002220¥N6¥J 00002230¥X/麁相(そさふ)がまたそさふ 00002240L14そさふな/旦那(だんな)、でいりのものむすこをよびにやられしに、 00002250L15おやぢきたり、せがれハけさ、とてついたしまして/寝(ね)てお 00002260L16りまするといふ。だんなきいて、とてつとわ、なんの/事(こと)じ 00002270L17や。(五オ)いや、ちをはきました。そりやわれ、とけつじ 00002280L18や。ヱ&、われはそさふなものしや。そのわかいふとてつと 00002290L19は、てらの/庭(にハ)にうへるものしや。 00002300¥N7¥J 00002310¥Xにわかさむらいとんさく 00002320M3さるさむらい、かたなのそりうち/通(とを)りけるを、あとより/行(ゆき) 00002330M4けるおとこ、おかしくおもひ、むかふへまハり、かほミれ 00002340M5バ、でいりするやしきやく人なり。これはいづかたへと申 00002350M6せば、ミともハ/国(くに)もとより、/御用(ごよふ)すじニて/町(まち)へいづる。(五ウ) 00002360M7(六オ挿絵)お身ハといわれけれバ、イヤ、わたくしもだんな 00002370M8まハりいたします。しかし、おまへのおこしのものに、そり 00002380¥G 00002390¥P11 00002400L1がうつてござりますと、こゞへになりていへば、さむらい、 00002410L2ぬからぬかほで、ヱ&、風でといわれた。 00002420¥N8¥J 00002430¥Xからくりひやうばん 00002440L5さるところに若ひもの二三人より合、さて此度の/出羽(でハ)のか 00002450L6らくり、/紅葉(もミぢ)がりのけいきよし、手づま事よふできたとい 00002460L7へば、いや+、(六ウ)/竹田(たけだ)のからくり、だんじりのうゑに 00002470L8て、ものまね/人形(にんぎやう)かほのかわりさいく、とふこまかひ事。そ 00002480L9れにあふミ八けいといふは、こまかいつもりものじや。あ 00002490L10れよりうへハないとはなしけれバ、いや+、それよりこ 00002500L11まかひ事がある。こちのとなりのおかたハ、まきのひきこ 00002510L12で、かやをなられたといふた。 00002520¥N9¥J 00002530¥X/碁会(ごくハひ)のけんぶつ 00002540L15さるきんじよに碁ぐハひありけるが、けんぶつ(七オ)のひ 00002550L16と、きつてとれ+といふを、もんもふなるもの、/助言(じよごん)の 00002560L17すへはしらず、きれ+といふをきいて、さてハきつくい 00002570L18ふが碁のこと/葉(ば)じやと思ひ、切る事いらぬ物じやといふ。 00002580L19碁うつ人きいて、きらずによき/手(て)もやとあんしいれとも、 00002590M1ミへす。いかゞよく候ととハれければ、はて、切らずにふ 00002600M2ミつぶしたがよかろといふた。 00002610¥N10¥J 00002620¥X/手(て)づまのひやうばん 00002630M5さるところに、/若(わか)ひしゆふ二三人より/合(あい)、(七ウ)手づまの 00002640M6めいじんハ豆蔵しやといふ。いま壱人は、いや、ゑへんの 00002650M7かミがめいじんじやといふ。また一人のもの、いや+、 00002660M8それらハミなへたじや。こちのうらのかごかきの八兵へが、 00002670M9てづまのめいじん。まづあれほどのめいじんもなひといへ 00002680M10は、何ほどの上手かといへば、此間も、あしにしらめがい 00002690M11たをミつけ、手にてつまミ、はいふきの中へいれ、今のを 00002700M12こゝから出して見せましよとて、くびすじから出した。な 00002710M13んとめいじんかといふた。(八オ) 00002720¥P12 00002730¥Y1/軽口(かるくち)/初(はつ)/売買(あきない)△巻之三目録 00002740L3一△りくつ/者(もの)のさばき 00002750L4一△とん/作(さく)者がはなし 00002760L5一△/下女(げぢよ)ことバとりちかへ 00002770L6一△さかなうりがめいわく 00002780L7一△ねこのじまん(オ) 00002790L8一△にげるがてがら 00002800L9一△かごかきのとんさく 00002810L10一△/無筆(むひつ)の/男(おとこ)に/女房(にやうぼ)の/無学(むがく)(ウ) 00002820¥T1 00002830¥N1¥J 00002840¥Xりくつ/者(もの)のさばき 00002850M3さるところに、ぶげんしやなる人あり。/築山(つきやま)/泉水(せんすい)などかま 00002860M4へ、/家内(かない)もきれいにくらしけるに、なつのころ、しよゑん 00002870M5さきにいで、久三郎をよび、/庭(には)へ水をうてといわれければ、 00002880M6そのまゝ久三郎、/手桶(ておけ)に水くミ持いでしが、かの水をとり 00002890M7おとし、家内の庭を/海(うミ)のごとくにしけるを、/旦那(だんな)大きにり 00002900M8つふくして、かの久三郎(一オ)がうけ人をよび出しければ、 00002910¥G 00002920¥P13 00002930L1うけ人きたり、いかやうの御用で御ざるぞといへば、久三 00002940L2郎をそのほふにあづけるよし申ければ、請人おどろき、い 00002950L3かにも御りつふくの義は、いか様の事ニて御さるといへば、 00002960L4いや、たゞいまにはへ水をうつちやけた。あの水をあぶら 00002970L5にして、庭をたゝみにして、此月をしハすにしてミやしや 00002980L6れと、ねちられた。 00002990¥N2¥J 00003000¥Xとんさく/者(もの)か/咄(はなし)(一ウ) 00003010L9さる若ひ衆二三人より合、壱人のものはなすよふ、大坂の 00003020L10かぶきしばいに、あしや/道万(どふまん)をするといへば、のこりのも 00003030L11のいふ/様(よふ)ハ、あのげいは、人にてハ/与勘平(よかんべい)がならず、まづ 00003040L12のり物のうへにて、うすをたてゝあるいたり、何か身がか 00003050L13るなければならぬ事といへば、とんさくもの、いやいふな。 00003060L14此中もきよミづの/ちや((ママ))で、さかづきのうへでけんくわがあ 00003070L15つたといふた。(二オ) 00003080¥N3¥J 00003090¥X下女/詞(ことハ)とりちがへ 00003100L18つねに/行(ゆく)/茶(ちや)やへ/客(きやく)行ければ、いつもでる女子見ゑぬをたつ 00003110L19ぬれば、ねているよし。どれ見もふてやろとて、/寝(ね)て居る 00003120M1ところゑ行けれハ、今日ハはらあしくてねておりますとい 00003130M2ふ。どれ見てやろぞと、はらをなで、しやしるかといへば、 00003140M3ヱ&といふ。しやしるかいやい。ヱ&。はて、しやしるかい 00003150M4やい。サア。よふなつたらどふなといたしましよと云た。 00003160M5(二ウ)(三オ挿絵) 00003170¥N4¥J 00003180¥Xさかなうりがめいわく 00003190M8さるわろ、/珍客(ちんきやく)四五人もありけるが、ていしゆ、ずんど 00003200M9しハきわろにて、なにもこしらへもせずおき、さてぜんを 00003210M10だし、あいさつにいで、さて+きついしけにて、さかな 00003220M11と申ものハござりませぬ。そまつなりやうりでごさります 00003230M12けれども、よふあがつてくたされといふところへ、かどを、 00003240M13/鯛(たい)やはもとうりけれハ、ていしゆぬからぬかほで、あのわる 00003250M14くちをといふた。(三ウ) 00003260¥N5¥J 00003270¥X/猫(ねこ)のじまん 00003280M17さるもの一両人より合はなしけるに、さて+此あいだの 00003290M18もろふたねこが、あまりはしかさに、とらよ+と名をつ 00003300M19けしに、いぬについとられたといふ。また壱人のもの、い 00003310¥P14 00003320L1や、猫ハちいさいと、いぬにとられる。また大きふなると、 00003330L2米びつのふたをあけ、またハきやくのあるとき、かずのそ 00003340L3ろふたやきものなどをとり、たなにあるさらをおとし、/殊(こと) 00003350L4の/外(ほか)わるき(四オ)ものじや。もはや猫かふ事/無用(むよふ)にといゑ 00003360L5ば、そばにいるあわてたわろ、いふやうハ、いや、そのよ 00003370L6ふにいやんな。こちの猫は/鼠(ねすミ)もとらぬと、じまんさふにい 00003380L7ふた。 00003390¥N6¥J 00003400¥Xにけるがてがら 00003410L10さる中げん、大/手筋(てすじ)/辺(へん)にてかうろんに/及(および)、両人とも、かん 00003420L11にんならず、たがひにかたなにてをかけしに、両人とも、 00003430L12わきざしぬけず。壱人の中げんいふよふ、われから(四ウ) 00003440L13ぬけといふ。いやまづ、そなたからぬけといふて、たがい 00003450L14に/じぎて((ママ))はてず。ときに壱人、そのまゝしりひつからげ、 00003460L15さふりをこしにさし、南をさしてにげちらしけり。今壱人、 00003470L16むねんな。せんをとられたといふて、ひがしをさしてにげ 00003480L17た。 00003490¥N7¥J 00003500¥Xかごかきのとんさく 00003510¥G 00003520M12さる人、すミよしへさんけいするとて、/道頓堀(どうとんぼり)/辺(へん)にてかごを 00003530M13かられけるが、道中にて(五オ)東北のうたひをうたひかけ 00003540M14られければ、壱人のかごかきいふよふ、わたくしもまゑハ、 00003550M15かやうなしやうばいもいたしませず、/謡(うたひ)の壱番も/鞁(つゞミ)の一手 00003560M16もけいこいたしましたが、おまへのうたひ、中&おもしろ 00003570M17き事にてござるとほめければ、ずにのりてうたわれけり。 00003580M18ほどなくしんけにつきけれバ、かこをおろし、ぜにをとり、 00003590M19わかれけり。さて壱人のかごかきいふよふ、われハきつい 00003600¥P15 00003610L1ぜいをいふ者(五ウ)(六オ挿絵)かな。うたひの事ハさてお 00003620L2いて、めふとげんくわするすべもしらずにといゝけれハ、 00003630L3なにをいふぞ。あのどぶつ、/寝(ね)さしてよい物かといふた。 00003640¥N8¥J 00003650¥X無筆の男に女房の無学 00003660L6さる太郎七といふ者の女房、ちと書に心ざしありて、草紙 00003670L7子なとを見て、あるときめうとげんくわして、女房いふよ 00003680L8ふ、これこちの人。こなたハ何をいふてもむひつ。とかく 00003690L9此世はいんよふわがふとて、いんハ女なり。わハ(六ウ)男 00003700L10なり。すりや女房ハ先だつもの。男ハ下につく物と、りく 00003710L11つをいふてせり合すまず。かくときくよりとなりのおやじ、 00003720L12ふんべつして、とつかとさし、これ御内室。こなたハ/在所(さいしよ) 00003730L13でも物しりじやが、何と、大ほふといふ物しつてかととふ 00003740L14たれバ、女房すゝミいで、しつているとも+。サアそこ 00003750L15じや。たいほふとは、たいが/狐(きつね)ならバ、ほふハあなしやな 00003760L16いか。それならバ、こなたもあなじやによつて、下につか 00003770L17ねばならぬといふた。(七オ) 00003780¥Y1/軽口(かるくち)/初(はつ)/売買(あきない)△巻之四目録 00003790M3一△/開帳(かいちやう)の/頓作(とんさく) 00003800M4一△八百屋が頓作 00003810M5一△/長生(ながいき)のよろこび 00003820M6一△/宿老(しゆくろふ)のいめふ 00003830M7一△/山伏(やまぶし)いしやけん/脉(ミやく)(オ) 00003840M8一△/女房(にやうぼふ)のはつめい 00003850M9一△/手合(てあい)のすもふ 00003860M10一△京ぶし/伝受(でんじゆ) 00003870M11一△さる/智恵(ちゑ)があたぢへ(ウ) 00003880¥K〔註・「将碁のつめて」脱落〕 00003890¥P16 00003900¥T1 00003910¥N1¥J 00003920¥X開帳の頓作 00003930L3さるひと、二三人づれにて大さか/竹(ちく)りん/寺(じ)へまいり、/鬼女(きじよ) 00003940L4のくびの/開帳(かいちやう)ハとこぞとたづねければ、/坊主(ぼふず)きたり、そこ 00003950L5まハつて、にしゑこざれバそふじやとおしゑければ、さて 00003960L6くびをミんとて、むかふゑまハり、あれが鬼女のくびじや 00003970L7といゝけれバ、今壱人いふよふ、あれはがんくびじやとい 00003980L8ふ。それはどふ(一オ)してとといけれバ、ぬからぬかほで、 00003990¥G 00004000M1はて、せにゝなるといわれた。 00004010¥N2¥J 00004020¥X八百やがとんさく 00004030M4かどを、やまのいも+とうりけれバ、さる所より、これ 00004040M5いも+とよびけれバ、さあおかい被成と、にをおろせば、 00004050M6うちより下女出て、こなたハせんとハ、たけのこうらしや 00004060M7つたが、またいもうらしやる。よふばける人じやとわらひ 00004070M8けれバ、いもや、かどぐちをでしな(一ウ)に、くハい+ 00004080M9といふた。 00004090¥N3¥J 00004100¥Xながいきの悦 00004110M12あるおやぢ、さるところをとおりけるが、ぜに百文ひろい 00004120M13ける。うちへかゑり、かゝよ、むすめよ。よろこべ+。 00004130M14ながいきのきつさふあり。けふせにを百文ひろうた。百年 00004140M15いきるずいさふじやとよろこびければ、むすめきゝて、と 00004150M16ゝさん。そのよふによろこばんすな。百はころりと申ます 00004160M17れば、(二オ)いまのまもしれぬといふた。 00004170¥N4¥J 00004180¥X/将碁(せうぎ)のつめて 00004190¥P17 00004200L1さる人、あさくさのくわんおんゑきせいおかけ、われにた 00004210L2からをあたへ給へと心中にいのられければ、くわんおんあ 00004220L3われと思しめして、たちまちきん銀給ハりける。あまりう 00004230L4れしさに両手にもちていたゞかれけれバ、両ひたいにひた 00004240L5りとつきたり。手をかけともおちず。なにとせんとあん 00004250L6ぢ(二ウ)(三オ挿絵)わづらひいるところゑつれきたり、六兵 00004260L7衛。どこへ/参(まい)りやるとといけれバ、六兵衛なミたながら、 00004270L8くわんおんさまに/金(きん)/銀(ぎん)をもらひ、/嬉(うれ)しさにいたゞいたらバ、 00004280L9こゝゑついておちんとかたりければ、ともだちきゝて、そ 00004290L10れハ/貴(き)さま、さいかくがないゆゑじや。これ、はなの上に 00004300L11けいまをうてといふた。 00004310¥N5¥J 00004320¥Xしゆくろふの/異名(いめう) 00004330L14さる所の/年寄(としより)、くわい/所(しよ)へ行/毎(まい)に(三ウ)子ともかあつまり 00004340L15かの年寄どのを、さるよ+と手をたゝいてわらひけれバ、 00004350L16としよりきのどくに思ひ、丁代をよんで、なんと、子ども 00004360L17がおれをミれバ、さる+とわらふが、おれがかほがさる 00004370L18ににたかととわれけれバ、町代申ハ、いへ+。おまへの 00004380L19かほが一ッもさるににはいたしませぬ。さるがかほがおま 00004390M1ゑににましたといふた。 00004400¥N6¥J 00004410¥X/山伏(やまぶし)いしやけんミやく(四オ) 00004420M4さるあきんど、近年せうばいもあわずとて、ざいしよへひ 00004430M5つそくして、うらかたといしやとしていられしが、あると 00004440M6きぢげの百性のむすめに、おすけといふもの、一門中へよ 00004450M7めいりしければ、このむすめ、せふとして毎夜+よバり 00004460M8をたれしゆゑ、ふゑんにてかゑりけり。かのおやたち、山 00004470M9伏いしやにりやうじたのまんと申されけれバ、しばししあ 00004480M10んして、こなた(四ウ)のとしハいくつとたづねけれバ、と 00004490M11ふ/年(ねん)十六才と申けれバ、いかさま、さやうでこざろふ。け 00004500M12いにあたつて、四&の十六と見ゑますれバ、/来年(らいねん)ハなおり 00004510M13ませふといわれた。 00004520¥N7¥J 00004530¥X/女房(にようぼふ)のはつめい 00004540M16さるところに、いづまひわるきおとこ成リけるが、あるとき 00004550M17ふときやくありしに、かのおとこ、れいのいづまひゆゑ、 00004560M18女房きをつけ、/手(て)ぬぐいをなげやれバ、おとこ、ぬからぬ 00004570M19かおで、(五オ)テモよふかを見しつてじやといふた。 00004580¥P18 00004590¥N8¥J 00004600¥X手合のすもふ 00004610L3さる/大名(だいめふ)、/国中(こくちう)の名ある/大力(だいりき)どもをよせ/御前(ごぜん)ずもふをはじ 00004620L4めけるが、あまたの/内(うち)に、うでのなげすけといふもの、大 00004630L5力にて/手(て)にあわず見へけれバ、大名/御覧(ごらん)じ、いかになげす 00004640L6け。われと一しやうぶせんとおふせければ、なげすけ、こ 00004650L7とともせず、大名を見て、めてにさゝんとせしところを、 00004660L8こりや(五ウ)(六オ挿絵)+とかた/手(て)ミせ給へバ、なげ/助(すけ)、 00004670¥G 00004680M1かのていを見て、しゆびよくまけければ、一/座(ざ)の/人(ひと)&、と 00004690M2ふとぞほめにけり。さて大名より二三日してもおともせず。 00004700M3なげすけはらたて、やく/人衆(にんしゆ)にいさひを/願(ねが)ひけれバ、大名、 00004710M4そのなげすけ、これゑとめされ、いかになけすけ。すもふ 00004720M5といふには/手(て)あいもあるらんと御たづねあれば、なげ助、 00004730M6/惣(そう)じてすもふには四十八手と申せとも、中&それでハ(六 00004740M7ウ)参りがたくと申あぐれハ、サアそれであろ。其時の事も 00004750M8おれが手じやといわれた。 00004760¥N9¥J 00004770¥X京ふし/伝受(でんしゆ)の事 00004780M11国太夫ふしのでしとも、しゝやうのまへぇよりあい、おか 00004790M12げでとれ+も夜しよくになりまするが、しかし、/祝義(しうぎ)に 00004800M13心中事斗で、さてもこまります。何ぞ目でたきもの作つて 00004810M14下されませといふて、あつらへてかゑり、四五日(七オ)し 00004820M15てまたよりあひ、何と、いつぞや申ました/祝義(しうぎ)/浄(せう)るりハでき 00004830M16ましてこざりますかといへば、なるほど、ふし附ておきま 00004840M17した。おぼへてかたらしやれ。げだいハあいおい高砂。さ 00004850M18て、めでたきよきふし事、きりはなんでこさります。フウ 00004860M19たしか、せふとうばの心中かとおほゑたといわれた。 00004870¥P19 00004880¥N10¥J 00004890¥X/猿智恵(さるぢゑ)があたぢゑ(七ウ) 00004900L3さるちゑのさきばしつたもの、ミなの川のほとりにて、つ 00004910L4れしゆ、其元さまは/当地(とうち)ははしめてゞござりましよが、お 00004920L5とにきこゑしミなの/川(かハ)、/国(くに)もとゑおミやげに、よく+御 00004930L6らんなされませといゑば、なるほど+、あのむかふに/高(たか) 00004940L7ふミゆるやねのつくりハ、やうぜいゐんでこざるかといわ 00004950L8れた。(八オ) 00004960¥Y1/軽口(かるくち)/初(はつ)/売買(あきない)△巻之五目録 00004970M3一△/文盲(もんもう)なるおいもの 00004980M4一△世のせいすい 00004990M5一△ぶせふ/者(もの)のより合 00005000M6一△/風呂(ふろ)やのいりごミ 00005010M7一△まだもおふへい(オ) 00005020M8一△物じまんのおふへい 00005030M9一△こがねのいればの事 00005040M10一△/三角(さんかく)のこたつ 00005050M11一△つんぼの/巾着(きんちやく)(ウ) 00005060¥P20 00005070¥T1 00005080¥N1¥J 00005090¥X/文盲(もんもふ)なるおいもの 00005100L3さる何も知らぬもの、ちかづきのところへ行、さて+此 00005110L4間おめにかゝりませぬが、おかわりもこざりませぬか。さ 00005120L5て/承(うけたまハ)りますれバ、おまへにハむすめ子をおやしないなさ 00005130L6れたげなが、まづおめでたしとあいさつすれバ、おやぢ、 00005140L7/仰(おゝせ)のことく/養子(よふし)をいたしました。/則(すなハち)/此娘(このむすめ)で御ざりますと 00005150L8見せければ、さて+御きりよふといゝ、おとなし(一オ) 00005160L9きお生れつきとほめけれバ、おやじことの/外(ほか)/悦(よろこび)、/名(な)ハおそ 00005170L10めと申ます。/手(て)ならひもいたしませぬが、百人/首(しゆ)、/伊(い)せ/物= 00005180L11語(もの=がたり)もよミますると/自(ぢ)まんしられければ、かの/者(もの)、ても、/御(ご) 00005190L12きやうな事でござります。ちと承りませふといわれければ、 00005200L13おやじ、おそめ。よんできかしましやといわれけれバ、あ 00005210L14いといふて本を出し、むかし/男(おとこ)、こうふりしてならの京と 00005220L15よみければ、(一ウ)かの人殊外ほめ、さて+、あのお子 00005230L16の今物語で、まいつた心がいたしますといわれた。 00005240¥N2¥J 00005250¥X世のせいすい 00005260L19むかしは大がねもちの大じんなれと、世の/盛衰(せいすい)とて/近(きん)年を 00005270M1ちぶれ、/雑式(さうしき)の金ほうよりいたきびんぼふにたゝかれ、あ 00005280M2しこしもなやミはて、せんかたもなくこつしきになり、あ 00005290M3るときハきよミづ寺、またハ/北野(きたの)/辺(へん)にて/往来(おうらい)の人に/袖乞(そでこい)し 00005300M4てけり。/然(しか)る(二オ)ところゑ、/当流(とうりう)の大じんとミゑて、と 00005310M5もたちおゝくつれだち、たいこまじりにて/弁当(べんとふ)したゝかに 00005320M6もたせ、上下さゞめきありく/所(ところ)へ、かの/乞人(こつじん)、やぶれあみ 00005330M7/笠(がさ)かぶり物をこふ/折(おり)ふし、おとにきこゑし大こ、にへたとお 00005340M8ふむなり。はつかしく思ひ、ちやくと見ぬかほせしが、何 00005350M9か当流の通りものの大こなれば、むかし恩を見たるよしみ 00005360M10/有(ある)かの/袖乞人(そでこふひと)にことバをかけ、少し小ごしを(二ウ)(三オ挿 00005370M11絵)かゞめいふよふは、もふし、おまゑはそんぢやうどな 00005380M12たさまにてハ御ざりませぬか。さても久しや。してこれは 00005390M13いかなる事にて、かやうの御すがたにならせ給ふそと、い 00005400M14としミ+/と((ママ))たづねければ、むかし、せんしやういふたる 00005410M15くせにて、あゝおと高し+。かならずさたハない事。わ 00005420M16ざと此ミに成て、おやのかたきをねらふといふた。 00005430¥N3¥J 00005440¥Xぶせふものゝより合(三ウ) 00005450M19さる所へ若ひもの二三人よりあひ、なんと、せけんには三 00005460¥P21 00005470¥G 00005480L12月のはな見などゝて/弁(べん)とふこしらゑ、いさミいづるに、こ 00005490L13ちも少しなぐさみに、/貴様(きさま)と何ぞおもしろいはなしか、ま 00005500L14たハそれもむつかしくバ、貴様のぶしやうとおれがふしや 00005510L15うと、ぶしやうくらべをせまいかといゑば、一人のもの、 00005520L16いや、むつかしいと云た。 00005530¥N4¥J 00005540¥X風呂やの入込 00005550L19ちと御めんなれ。くたびれもので(四オ)ひゑもので、とふ 00005560M1もならぬか、あき/所(しよ)はいかゞ。御/通(とおり)りなされ。おくはむさ 00005570M2しのにて侍る。/近比(ちかころ)かたじけなし/抔(など)いふて、/風呂(ふろ)のうちゑ 00005580M3入けるに、さる人、/山(やま)/高(たか)きがゆゑにたつとからすと口ずさ 00005590M4ミに申を、なま物じりなるものかこれをきゝ、ても、/庭訓(ていきん) 00005600M5のたゞ中をいはるゝといふにおかしく思ひ、また一人がい 00005610M6ふ、そのほふは物知りかをな事をいふ。あれは庭訓にては 00005620M7なし。(四ウ)/節用集(せつよふしう)といふ/謡(うたひ)の本にある事じやと云た。 00005630¥N5¥J 00005640¥Xまだもおふへい 00005650M10さる小道具やゑ/紙子(かミこ)やぶれたるを/着(き)たるおやじ、/杖(つへ)をつい 00005660M11て、内にいやるかといふ。ていしゆ、おいで被成ませとあ 00005670M12いさつすれば、此間はおぢやらぬが、めつらしいものあら 00005680M13ハ、もつておぢやといふて、かいりければ、むかひのひと、 00005690M14あとゑきて、今のおやぢハおふへいなものでこさるといへ 00005700M15ば、ていしゆ、(五オ)あれは大へいでかゝりました。あの 00005710M16人がいんきんなれバ、こじきてこさると云た。 00005720¥N6¥J 00005730¥X物じまんのおふへひ 00005740M19さる物じまんする人の所へ、三十斗のおとこ、/小桶(こおけ)をもち 00005750¥P22 00005760¥G 00005770L11て/中戸(なかど)から/小腰(こごし)をかゞめ、/旦那(だんな)のまへえ行て、わたくしは 00005780L12ゝハちや好てござりまして、水をゑらまれます。内かたの 00005790L13井の水、めいすいのよし、うけ給ハりました。此おけゑ 00005800L14(五ウ)(六オ挿絵)すこし斗くださりませといへば、/旦那(たんな)ひげ 00005810L15ぬき+、あれおとこども。かう+とあれバやりたいが、 00005820L16あるか、見てしんせと云た。 00005830¥N7¥J 00005840¥Xこがねの/入歯(いれば)の事 00005850M1かねもちのだんな、むかふば二まいぬけ、入ばをせらるゝと 00005860M2き、はいしやに、なんでいれたがよい事でごさるそといへ 00005870M3ば、されば、ぞふげもよし。女中なれば、こくたんか/黒(くろ)が 00005880M4きでもいたしますが、そのもとさまハ/壱歩(いちぶ)(六ウ)ふたつで 00005890M5なされませ。いかにもとて二百疋ならべ、かけはづしにい 00005900M6れさせ、日をおつてとちうではいしやにあふとき、見れは、 00005910M7そのは、なきによつて、先日御世話いたしましたはは、な 00005920M8にとなされました。あしくばいれかへてあけましよものと 00005930M9いへば、いや+、よけれども、今日ハ人たちの/所(ところ)へまい 00005940M10るゆゑ、やどに残してまいつた。いれてまいれば、きんち 00005950M11やくきりが、くちすいた(七オ)がつて、どふもなりませぬ 00005960M12といわれた。 00005970¥N8¥J 00005980¥X三角のこたつ 00005990M15さる所に廿四五なるむすこありける。おや子三人くらしけ 00006000M16るに、ふゆ/気(き)におもむき、おやじ、むすこに、こたつあつら 00006010M17へてこいといへば、かしこまり、いそいであつらへに行け 00006020M18る。さて四五日も過て、おやぢ、かのやぐらはまだ持てこ 00006030M19ぬか。此やうにひゑる事をしらぬかといゑは、きのどくに 00006040¥P23 00006050L1思ひ、とりに参り(七ウ)ましよといふ所へ、御あつらへの 00006060L2やぐら/出来(しゆつたい)申たりとてをいて行。おやじ、このやぐらをミ 00006070L3れば三角なり。これは何とてかよふなあつらへをした。/畳(たゝミ) 00006080L4も四角に切らせ、今さらこれはといゑば、かのむすこ、四 00006090L5角にてはつふゑといふ。おやじ、それは何とて。はて、お 00006100L6まへとはゝじや人と私と、三人より外にあたるものはなし。 00006110L7しかればつふゑじやといふ。/親父(おやじ)しばらくしあんして、/近(きん) 00006120L8日よんでやろといふた。(八オ) 00006130¥N9¥J 00006140¥Xつんぼの/巾着(きんちやく) 00006150L11さるつんぼ、いたちをとらまへ、かわをはぎ、きんちやく 00006160L12にして人にミせんと、ほふ※ありきけるに、しる人にあ 00006170L13ひければ、御しんぶ、まめなかといへば、これか。これは 00006180L14あなからでるところをころした。いや、おやじはまめなか 00006190L15といゑば、またでたら、ころしてやろといわれた。(八ウ) 00006200¥Q 00006210M3元文四年未正月日 00006220M4△△△△△△△京都御幸町通リ戎川上ル町 00006230M5△△△△△△△△△笠△屋△半△右△衛△門 00006240M6△書△△林△△△大坂南久太郎町五丁目 00006250M7△△△△△△△△△同△△佐△△兵△△衛 00006260M8△△△△△△△同△六△町△目 00006270M9△△△△△△△△△伊△丹△屋△新△七 00006280¥P24 00006290¥U噺本大系△第八巻 00006300¥T軽口福おかし 00006310¥G 00006320¥Y 00006330L16元文五年刊 00006340L17風之作・序 00006350L18半紙本五巻 00006360L19大東急記念文庫蔵他 00006370¥Y口序 00006380M3此書を/軽(かる)口/福(ふく)おかしと/号(なつく)る。はなしは/都(ミやこ)おなじみの/米沢彦(よねさわひこ) 00006390M4八、/今(こ)とし/新作(しんさく)の/蔵(くら)をひらき、/軽(かる)口/重(おも)口/有頂天(うちやうてん)、すじり/文= 00006400M5字違(も=しり)とたんとんさく、これをちりばめ、五/節(せつ)のまき+に 00006410M6うつし/全部(せんぶ)するときは、/彼(かの)(一オ)/田(た)にしのねかひに/世(よ)の/中(なか) 00006420M7よかれと、/稲荷(いなり)の/初午(はつむま)よりしやべりそめて、/御笑(をハら)ひをもら 00006430M8ひ/増(ます)る。則/昇(のぼり)を目しるしに、御求めをこひねかひ/益(ます)而已。 00006440M10△△△元文五評判 00006450M11△△△△△まさる目出度月△△△△洛風之集之(一ウ) 00006460¥P25 00006470¥T1 00006480¥G(二オ挿絵) 00006490¥N1¥J 00006500¥X/口(くち)あけ 00006510L14正月二日早天より、/店(ミせ)を/開(あけ)て/売(うり)そめせんと待ける所へ、さ 00006520L15たう壱斤、こゝろよく直だん/済(すミ)て/掛(かけ)かゝりけるが、取おと 00006530L16して/秤(ハかり)を/打折(うちを)る。/常(つね)ならん日がらなれば、此手代、はつと 00006540L17/驚(おとろ)き、気にかけ/居(い)る処へ、/旦(たん)那聞つけ、/初(はつ)/商売(あきない)からあまひ 00006550L18もうけハ、おればか(二ウ)りじやと云れし。 00006560¥N2¥J 00006570¥X/問答(もんとう)おとし 00006580M3正月なれば、/旦那(たんな)/寺(てら)へ/礼(れい)に/行(ゆか)れけるが、さかづきのうへに 00006590M4て、/今日(けふ)ハこれのお/大黒(たいこく)さまを/拝(をが)まして下されませといへ 00006600M5ば、/住寺(ぢうし)/取違(とりちかへ)へ、おがますとハ御はづかしうござる。ずん 00006610M6ど/不器量(ふきりやう)に/御座(こざ)ると云。/旦那(たんな)、ちやくとがてん(三オ)して、 00006620M7/其(その)大こくではござりませぬといへば、/住寺(ぢうじ)いよ+/取(とり)ちが 00006630M8へ、/扨(さて)は、おりんが事も/知(しつ)てかといふた。 00006640¥N3¥J 00006650¥X/春(はる)の/長者(ちやうじや) 00006660M11/友(とも)だち/打(うち)あつまり、けふは正月八日じや。/禁中様(きんちうさま)にてしほ 00006670M12の/護摩(ごま)がはじまると云。又壱人は、手しほとハ/皿(さら)+ない 00006680M13事じや。うしほと/覚(おほへ)た(三ウ)と云。又ひとりは、それも/違(ちが) 00006690M14ふた。おれがいふので、ちやうど/三塩(みしほ)じや。 00006700¥N4¥J 00006710¥X/彼岸(ひがん) 00006720M17/親父(をやぢ)様。ひさ※御/目(め)にかゝりませぬが、ひがんゆへ/寺(てら)へ 00006730M18おまいり被成ますかといへば、いや+、/彼岸(ひがん)ハ寺では御 00006740M19ざらん。けだもので御/座(ざ)る。慥に見ましたと云。/聞(きく)人/驚(おどろ)き、 00006750¥P26 00006760L1いつ御ろうじたと(四オ)いへば、/昨日(きのふ)/裏(うら)で、/足本(あしもとへ)つる+ 00006770L2と/来(き)たを、いたちかとおもふてころそとしたれば、となり 00006780L3の/松兵衛(まつべい)が/垣越(かきごし)に、やれ/殺(ころ)しやんな。ひがんじやと云れた。 00006790¥N5¥J 00006800¥Xはつ/恋(こひ) 00006810L6/春(はる)の/野(の)/出(いて)て/遊(あそ)びけるが、つく+し、/嫁菜(よめな)のそばゑ/立(たち)より 00006820L7て、わしハお/前(まへ)(四ウ)がいとしいと云ふ。よめな、そんな 00006830L8らこちゑよらんせと/抱(だき)つけば、もう/袴(はかま)取ふかといふ/処(ところ)へ、 00006840L9せうゆ/売(うり)/通(とおり)りかゝり、/荷(にな)ひしせうゆのいへるハ、なんぼ/二(ふ) 00006850L10たりがどれよふても、わしがはいらざ、水くさかろと云た。 00006860¥N6¥J 00006870¥X/白梅(はくはい) 00006880L13/仁平(にへい)と云人、/坪(つほ)のうちに/梅(むめ)の花/育(そたて)て、(五オ)/友達(ともたち)をまねき 00006890L14けるが、/其中(そのなか)に/投(なげ)さいのすきなるもの、/発句(ほつく)に、 00006900L15△△▽/坪(つほ)のうち/仁平(にへい)のうらぞ梅の/花(はな) 00006910¥N7¥J 00006920¥X/見(ミ)たて 00006930L18/深山(しんざん)の/大木(たいほく)に/猿(さる)あがり居る。/下(した)よりハ/蛇(くちなわ)はひ/上(のほ)る。かの 00006940L19さる、/蛇(くちなわ)をのミけり。此くちなわ/驚(おとろ)き、/猿(さる)のいところゑ 00006950M1(五ウ)つらを/出(た)す。/猿(さる)、/是(これ)を/見(み)て、/南無(なむ)さん、おれをぬゑ 00006960M2にしをつた。 00006970¥N8¥J 00006980¥X/能(よ)ひ/覚(おほへ) 00006990M5/去(さ)るつき/米(こめ)屋、/夫婦(ふうふ)ながら/無筆(むひつ)にて、/得意(とくい)より/米(こめ)とりに/来(く) 00007000M6る。/丸(まる)屋へ弐/斗(と)、/備前(ひせん)屋ゑも三/斗(と)やる。よう/覚(おほゑ)ていやと、 00007010M7/内儀(ないき)に/覚(おほへ)させて/置(をか)れける。/有(あ)る/時(とき)、/松屋(まつや)から二/斗(と)五/升(せう)の/代(たい) 00007020M8が/来(き)たほどに、/覚(おほへ)て(六オ)いやるなら、わすりやと云れた。 00007030¥N9¥J 00007040¥X一ツ/宗(しう) 00007050M11さるかたい/日蓮宗(にちれんしう)の/所(ところ)ゑ、/奴奉公人(てつちほうこうにん)/肝煎(きもいり)ける。/此方(このほう)の/宗旨(しうし) 00007060M12にならバ/長(なが)く置てやろうと申さるゝ。きも/入(いり)もいろ+と 00007070M13すゝむれども、田舎者にて/合点(かてん)せず。/肝煎(きもいり)、いつわりてお 00007080M14ゐて/戻(もと)らんと、やう+/合点(かてん)/致(いた)しましたと(六ウ)いゑば、 00007090M15/旦那(たんな)よろこびて、一/部(ふ)八/巻(くわん)の/御経(おきやう)をいたゞかさんと、/仏壇(ふつたん) 00007100M16を/明(あ)ケけるに、/彼(かの)でつち、/腹(はら)を/立(たて)てにげんとするを、肝煎 00007110M17ぬからん/顔(かほ)にて、もはやいたゞかひでも御/宗旨(しうし)になりまし 00007120M18た。なぜにといへば、はて、あのかたいぢを御ろうじませ。 00007130¥P27 00007140¥N10¥J 00007150¥X/杉(すぎ)やき(七オ) 00007160L3/神主(かんぬし)の/女房(にようほう)とおぼしき/人(ひと)、/物(もの)まいりしけるを、/若衆(わかひしゆ)/評判(ひやうはん)す 00007170L4るとて、/扨(さて)も見/事(こと)じやと云。/又(また)たまらんなどゝつぶやく/中(なか) 00007180L5に、ひとり/杉(すき)やき/喰(くう)やうな物といふ。/扨(さて)は/其方(そのほう)ハ、ちよこ 00007190L6+/神主(かんぬし)の所へゆくが、/喰(くう)たかといへば、いや/喰(く)ひハせぬ。 00007200L7それに/杉(すき)やきとハ。ハテ、つまがねぎじやと云た。(七ウ) 00007210¥N11¥J 00007220¥X/御通夜(おつや) 00007230L10/真言宗(しんこんしう)は/御(ミ)ゑいく、/禅(せん)宗ハ/開山忌(かいさんき)、/浄土(しやうと)宗は/十夜(しうや)、一/向(かう)宗 00007240L11は/御正忌(こしやうき)。どれ+も/聞(きこ)えたけれど、/日蓮(にちれん)宗はおなごの/子(こ) 00007250L12のやうに、おめことハいゝにくひ。ハテ、/法花経(ほけきやう)にハ/女人(によにん)/成= 00007260L13仏(しやう=ふつ)と見ゑたり。それで妙法れん花経の/妙(めう)の/字(じ)を/女(おんな)に/少(すこし)、/又(また) 00007270L14/法(ほう)はのり、ほれ(八オ)んげきやうと云。/聞(きく)人ぬからん/顔(かほ)で、 00007280L15それでこちの/隣(となり)の八兵衛ハ、十月十二日のばんにお/通夜(つや)す 00007290L16ると云た。 00007300¥N12¥J 00007310¥X/東西(とうさい) 00007320L19はくじんを/見(ミ)て、あれは/払(はらい)せぬ/際(きわ)じやといふ。なぜに。ハ 00007330M1テ、やらずによい/顔(かほ)すると云。そんならそなたは/嶋原(しまはら)へい 00007340M2て、/女郎(ちよろう)が/虚(うそ)を、あれは/面白(おもしろ)ひ(八ウ)どしでぶんにやりて 00007350M3があるといやつた。 00007360¥N13¥J 00007370¥X/喰(くい)ちかひ 00007380M6/大勢(おゝせい)あつまりて/夜(よ)ばなしする/中(なか)え、でつち/出(いて)て、どなたも 00007390M7/御精進(をせうしん)はござりませぬかととふ。ヲヽ五兵衛様/斗(はかり)と云。五 00007400M8兵へ申さるゝハ、イヤ、わしもしやう/進(じん)ではござらぬ。なぜ 00007410M9に。/親父(おやぢ)様の/日(ひ)であらうが。イヤ、おやぢハ/昼(ひる)しなれ(九オ) 00007420M10ましたゆへ、/夜(よる)の/精進(せうしん)ハ御/座(ざ)らぬと云。大/勢(せい)の人/笑(わら)ふて/居(い) 00007430M11るうちに、/夜半(よなか)の/鐘(かね)が/聞(きこゆ)るゆへ、/長吉(ちやうきち)を/呼(よひ)、/夜食(やしよく)が/出(で)るな 00007440M12らはやう/出(だ)しやと云。イヤ、こよひは/何(なに)も/致(いた)しませなんだと 00007450M13いふ。そんなら/精進(せうじん)をなぜ/改(あらため)た。それハ/勝手(かつて)で/茶(ちや)ひしや 00007460M14くを失ひました/故(ゆへ)、/貝(かい)じやくしで/茶(ちや)を/汲(くミ)ました。(九ウ) 00007470¥N14¥J 00007480¥X/沖(おき)の/石(いし) 00007490M17三月三日は/住吉(すミよし)の/汐干(しほひ)とて、/京(きやう)から/手(て)代/衆(しゆ)、/見物(けんふつ)に/下(くだ)らる 00007500M18ゝに、/堺(さかい)の入くち、まんぢうやにうつくしき/娘(むすめ)のありける 00007510M19を/見(ミ)て/立(たち)とまる。/此(この)むすめも、よい/男(おとこ)じやとおもふて、/互(たかひ) 00007520¥P28 00007530L1に/目(め)と目をつかふを、/父親(てゝおや)気がつき、娘を/呼(よひ)こみ、/合点(かてん)の 00007540L2ゆかぬそぶりと、さん+に(十オ)しかる。/娘(むすめ)はおどろか 00007550L3ぬ/顔(かほ)にて、ハテ、/汐干(しほひ)の/所(ところ)をたづねさんすゆへ、/口(くち)でいふ/間(ま) 00007560L4がなさに/目(め)でおしゑました。そんならさし/汐(しほ)ばかりおしへ 00007570L5ひで、/引汐(ひきしほ)をしらすと、かならず/貝(かい)を/取(とる)る/物(もの)じや。 00007580¥N15¥J 00007590¥Xならわぬ/経(きやう) 00007600L8/伊勢(いせ)/道中(とうちう)にて/駕(かこ)かきの/替(かへ)ことばに、やみじや、くだりじや、 00007610L9ばんどうなど/□((とカ))いへば、(十ウ)おぼこなる/旦那(たんな)、あの/言葉(ことは) 00007620L10おぼへたひと、いろ+気をつけ、やう+さいなんとい 00007630L11ふ事を/聞(きゝ)はつりて、/関(せき)にて、/坂(さか)の/下(した)までさいなんでやらぬ 00007640L12かと申されけれバ、/駕(かこ)のもの、かしこまつたと/旦那(たんな)をのせ、 00007650L13坂の下大/竹(たけ)屋のかどにおろしけり。かのだんなハ、ことば 00007660L14は/覚(おほへ)けれど、/銭(せに)の/数(かす)をしらぬゆへ、百文なげ出して(十一オ) 00007670L15よいほどとれと云。かこかき、/扨(さて)ハ/白人(しろと)とがてんし、七百 00007680L16文で御座ると云。旦那ハおどろき、あたりの/馬士(むまかた)をよび、 00007690L17とはれければ、成ほと七百の事でござると云。ぜひなく銭 00007700L18わたし、一/里(り)/半(はん)の/所(ところ)を七百文とは、きつひさいなんじやと 00007710L19云れた。(十一ウ) 00007720¥T1 00007730¥G(一オ挿絵) 00007740¥N1¥J 00007750¥X/福蔵主(ふくそうす) 00007760M15さる/寺(てら)の/小僧(こそう)申けるは、のふ+/西念坊(さいねんほう)。きゝや。こちの 00007770M16/御住寺(をぢうじ)は、ことの外ごまのがふなが。/今朝(けさ)すえたハゑびす 00007780M17ぜんであつたが、よふだまつて/居(い)られた。さい/念坊(ねんほう)/聞(きひ)て、 00007790M18けさのは其はづじや。なぜに。ハテ、/主(ぬし)のしんかふの/大(たい)こ 00007800M19くどのと、ならんで/喰(くわ)れた。(一ウ) 00007810¥P29 00007820¥N2¥J 00007830¥Xふところ/子(ご) 00007840L3あるとき/髪(かミ)ゆひのついでを/窺(うかゞ)ひ、いと様のさかやきを/頼(たのミ)け 00007850L4れば、かしこまつたとかみ/剃(そり)をあわせて、いとさま。じよ 00007860L5り+なされと云。/此子(このこ)わやくばかりいふてそらず。/乳母(うば) 00007870L6ハいろ+すかして/合点(かつてん)させければ、マアおうばからじよ 00007880L7り+しやと云。うば/驚(おとろ)き、いと様。/何(なに)をおつ(二オ)しや 00007890L8るとしかる。それでも、うばのじより+が/足(あし)にさはつて 00007900L9わるひと云た。 00007910¥N3¥J 00007920¥X/夏座敷(なつざしき) 00007930L12さる/所(ところ)に、かいしやうのなひ/御内儀(をないき)が、/二歳(ふたつ)ばかりの/子(こ)を 00007940L13だき/店(ミせ)さきにする/さ((難読))わを、/道(ミち)とをり見て、/扨(さて)も此子は/東西= 00007950L14南(とうさい=なん)じやといふ。お/内義(ないき)ハ/嬉(うれ)しげに/内(うち)へはいり、のふ+。 00007960L15どこの人やら、/此(この)ぼんを東西南(二ウ)じやてゝ、/大(たい)ぶんほ 00007970L16めてじやあつた。/亭主(ていしゆ)/聞(きい)て、/行水(ぎやうすい)でもさせて、つれて/出(て)よ。 00007980L17それは/北(きた)ないと云事じや。 00007990¥N4¥J 00008000¥X/蓮(はす)の/実(ミ) 00008010M1/新地(しんち)/辺(へん)に、/阿辛(あから)/三清(さんせい)と云/医者(いしや)ありしが、/盆(ぼん)とさえいへば、 00008020M2/毎夜(まいよ)+おとりに/出(て)らるゝゆへ、/近所(きんじよ)よりあざけて、/前(まへ)ハ 00008030M3/身代(しんたい)がならなんだか、/今(いま)は大ぶんようなられた。(三オ)い 00008040M4かひ/雀(すゝめ)でハ/有(ある)ぞといへば、/其(その)はづじや。やぶから/篭(かこ)へとば 00008050M5れた。 00008060¥N5¥J 00008070¥Xはめ/句(く) 00008080M8/誹諧(はいかい)の/点者(てんしや)、ふたりづれにて/東本願寺(ひかしほんくわんし)/御門(こもん)を/見物(けんふつ)すると 00008090M9て、しばらく/観(くわん)ねんして、われらもいろ+と/新(あたら)しきまへ 00008100M10/句(く)を出せとも、/中(なか)+三人口はくゑませんが、此御/門徒宗(もんとしう) 00008110M11ハ五百/年(ねん)此かたの(三ウ)/古(ふる)ひ/念仏(ねんふ□)のはめ/句(く)で、此/門(もん)が出来 00008120M12た。 00008130¥N6¥J 00008140¥X/葉(は)やり/神(かミ) 00008150M15/北野(きたの)ゝ天満宮御/神殿(しんてん)こと+く御ぞうゑい/出来(てき)て、けちゑ 00008160M16んながら/諸(しよ)人へ/御内陳(こないちん)をおがませ/給(たま)ふ。/其比(そのころ)/嶋(しま)ばらの/天神(てんしん) 00008170M17しよくのけいせい、さんけいしてしん/中(ぢう)に/願(ねか)ひしは、わた 00008180M18くしハあなたのお/名(な)をかすめし故か、/客衆(きやくしゆ)もさびしく、お 00008190M19や(四オ)かたの/皃(かほ)もちもわるふござりす。どふぞ一はやり 00008200¥P30 00008210L1にぎ+と/致(いたし)ますやうにまもらしやつて/下(くた)されかしといの 00008220L2りければ、/天満宮(てんまんくう)/立(たゝ)せ給ひて、/時(とき)+おれがやうに/内(ない)ぢん 00008230L3をおがましや。 00008240¥N7¥J 00008250¥X/後分別(こふんへつ) 00008260L6/供(とも)の小ものか申けるは、/若(もうし)+/旦那様(たんなさま)。こゝは人ごみでご 00008270L7ざります。おこし(四ウ)まハり、御気をつけられませ。/旦= 00008280L8那(たん=な)聞て、/成(なる)ほど+よふ気がついた。/我(われ)にもたせし/風呂敷(ふろしき) 00008290L9つゝミを気をつけい。アイヽそれはさき/達(たつ)てとられました。 00008300¥N8¥J 00008310¥X/祖師(そし)まつり 00008320L12/日(にち)れん/上(せう)人の/御年忌(こねんき)にて、寺+に御法事あり。さる人、 00008330L13/旦那寺(たんなてら)へ見まわれ、お(五オ)/住寺様(ぢうしさま)。此たびの/御(を)とふらひ 00008340L14ハおびたゝしい/事(こと)で御/座(さ)りませうといへば、/住寺(ぢうし)/卑下(ひげ)して、 00008350L15アヽ、おめこに/毛(け)のはへたやうなものでござると云れた。 00008360¥N9¥J 00008370¥X/駕篭(かこの)/論(ろん) 00008380L18/京(きやう)から/岩(いわ)屋え/参(まい)るとて、とうげまで百/文(もん)とさだめて、/又(また)/戻(もとり) 00008390L19りものりけるが、/銭(せに)百/文(もん)なげ/出(だ)しけるゆへ、ゆきと(五ウ) 00008400M1/戻(もど)り/故(ゆへ)、/今(いま)百/文(もん)つかわされといへバ、/峠(とうけ)とは/山(やま)へんに/上下(ちやうけ) 00008410M2と/書(かく)ゆへ、それでよいと云。かごのものもあきれ、/文字(もんじ)に 00008420M3/当(あた)た事なりや/是非(せひ)もなしと/別(わか)るゝ。そんなら/其風呂敷(そのふろしき)つゝ 00008430M4ミたもといふ。ハテ、/字(し)せんさくなさるゝゆへ、/駕篭(かこ)に/付(つけ) 00008440M5た物はこちへいたすといふ。なぜに。ハテ、/万取坂(まんしゆさか)とハよ 00008450M6ろづとるさかと(六オ)/書(かき)ますと云た。 00008460¥N10¥J 00008470¥X心のあかり 00008480M9さる/律気(りちき)な/旦那(たんな)申さるゝは、おれは/向(むか)ひへとふらひに/行(ゆく)ほ 00008490M10どに、/長(ちやう)太郎よ、てうちんともせといふ。/長(ちやう)太郎聞て、ま 00008500M11だひるでこざります。/昼(ひる)でも/灯(とも)さねばならぬ。/一昨日(おとゝひ)見/舞(まい) 00008510M12にいたれば、/病(びやう)人のいはるゝハ、わしが/死(し)んだら、此(六 00008520M13ウ)うちはくらやミじやと云れた。 00008530¥N11¥J 00008540¥Xまこと 00008550M16ひかし本くわんじの御/門(もん)、ふしん/成就(ぜうぢう)しければ、/諸(しよ)人くん 00008560M17じゆの/中(なか)より、見事の/三門(さんもん)といふ。いや+、/木(き)で/立(たて)たから 00008570M18は/木(き)もんじやとあらそふ。/又(また)かた+より、/是(これ)ハ/門徒宗(もんとしう)の 00008580M19/勢(せい)りきで出来たゆへ、せいもんじやといふ。十二日/講(かう)/聞(きゝ)か 00008590¥P31 00008600L1ねて、マア(七オ)だまらしやれ。これは二十年/已来(このかた)のなぶ 00008610L2り/門(もん)じや。 00008620¥N12¥J 00008630¥Xしら/浪(なミ) 00008640L5/京(きやう)の/商人(あきんと)、あかしゑ/下(くた)りて/嶋(しま)ちゞみをかい/入(いれ)、/荷物(にもつ)/二丸(ふたまる) 00008650L6こしらへおきけるが、/其夜(そのよ)ぬす人はいり、/一(ひと)丸とりゆく。 00008660L7/大分(たいふん)の/銀高(きんたか)なれば、りやうけんしがたく、/所(ところ)の/地頭(ちとう)へ御/願(ねか) 00008670L8ひ申上る/処(ところ)に、/早則(さつそく)とら(七ウ)われて、/其荷物(そのにもつ)あきんどへ 00008680L9下さる。/商人(あきんと)よろこびて、/此上(このうへ)ながら/御慈悲(をじひ)のうへ、/盗(ぬす)人 00008690L10の/命(いのち)、御/赦免(しやめん)と申上る。/地頭(ちとう)きこしめし、ねがひ、さる/事(こと) 00008700L11なれども、/其荷(そのに)物ミな+とらば、たすくる/品(しな)も/有(ある)べけれ 00008710L12ども、此/明石(あかし)のうらで/人丸(ひとまる)ぬすミ/取(とり)候ゆへ、/則(すなわち)/明日(あす)の/朝(あさ) 00008720L13ぎりにすると/仰(おゝせ)ける。/盗(ぬす)人おど(八オ)ろき、/嶋(しま)かくれ/行(ゆく)/首(くひ) 00008730L14おしぞおもふ。 00008740¥N13¥J 00008750¥X/知恵(ちゑの)/粕(かす) 00008760L17さる人、/大学(たいがく)のそよみを/聞(きい)て、/何(なに)をよまるゝとおもへば、 00008770L18/硯(すゝり)の/墨(すミ)のこしらへやうじや。/読人(よむひと)あきれて、なぜにと云。 00008780L19ハテ、/人(ひと)におしゆるゆゑんの/法(ほう)なりといやつた。(八ウ) 00008790¥T1 00008800¥G(一オ挿絵) 00008810¥N1¥J 00008820¥X/音羽(をとわ)の/利生(りしやう) 00008830M14京のひかし山/清水寺(きよミつてら)くわんぜおん、/久(ひさ)+にて/御開帳(こかいちやう)、/午(むま) 00008840M15の二月十七日より御ひぼとき、/大分(たいふん)のくんじゆなれバ、中 00008850M16+/御(こ)めんぞう、/外(ほか)よりおがミがたし。/内陳(ないちん)入は三十弐文、 00008860M17/内(ない)+/陳(ちん)が百文とさだまりければ、人+これをあざけ、 00008870M18△○/清水(きよみつ)にせんじゆといへる/役者(やくしや)あり(一ウ) 00008880M19△△△ぶたいはれども/顔(かほ)見せもせず 00008890¥P32 00008900L1△○壱文で/仏(ほとけ)かず+おがますに 00008910L2△△△百で一たいたかひ/開(かい)ちやう 00008920L3△○人+に三十二文とるからは 00008930L4△△△たゞたのめとハいつわりの世や 00008940L5/此(この)ごとくらくしゆすれども、/日本(につほん)一の本/尊(そん)なるゆへ、/七(なぬ)日 00008950L6のうちにきずいあらわれ、/諸人(しよにん)おどろき、/参(さん)けい/山(やま)のごと 00008960L7し(二オ)/海(うミ)のごとく/日(ひ)※の/御利生(こりしやう)をいはゞ、いざりが/立(たつ) 00008970L8てもどる。/座頭(ざとう)が/目(め)/明(あい)てもどる。めあきがふさひでもどる 00008980L9とかや。まづ/百性(ひやくしやう)の/田(た)むしかなをる。/両(りやう)がゑやの/銭(ぜに)がさが 00008990L10なをる。/八百(やを)屋のはすねがなをる。/魚(うを)屋のなまずがなをる。 00009000L11/桧物(ひもの)やのしやくがなをる。/米(こめ)屋のひやうそがなをる。/植木(うへき) 00009010L12屋のらん(二ウ)きがなをる。たば粉屋の/切疵(きりきす)がなをる。/傘(からかさ) 00009020L13屋のほねうづきがなをる。/金(かね)がしの/利(り)びやうがなをる。/後= 00009030L14家(こ=け)のつまばらみがなおる。とうふやのそこ/豆(まめ)がなをる。こ 00009040L15んにやくやのふるいがなをる。/能師(のふし)のわきがゝなをる。/竹(たけ) 00009050L16屋のようがなをる。/刀(かたな)屋のさめはだがなをる。/湯(ゆ)屋のあか 00009060L17ぎれがなをる。/椀(わん)屋の(三オ)ぜんそくがなおる。かるたや 00009070L18のあざがなをる。/嶋(しま)屋のきじやくがなおる。/将棊(せうき)さしの/角(かく) 00009080L19がなをる。/弓(ゆみ)屋の/蔓(つる)ねぶとがなをる。たゝミやの/床(とこ)ずれが 00009090M1なをる。/紺(かう)屋のかたかひがなおる。/仕立物(したてもの)やのたちぐらミ 00009100M2がなをる。/箔屋(はくや)の/寸白(すんはく)がなをる。/乗物(のりもの)屋のこしけがなをる。 00009110M3/飛脚(ひきやく)のはしり/痔(ぢ)がなおる。/其外(そのほか)ハ、こと葉につくしがたし。 00009120M4(三ウ) 00009130¥N2¥J 00009140¥Xさしもぐさ 00009150M7/清水(きよミつ)のくわんおんさまハ、みくしが/後(うしろ)むきのはつじやが、 00009160M8/正面(しやうめん)へむひてござるハ、がてんがゆかぬと云。そのはづじ 00009170M9や。/国(くに)+より/一向(いつかう)しうが/登(のほ)つたゆへ、お/真向(まむき)におがまれ 00009180M10て御座る。 00009190¥N3¥J 00009200¥Xふしぎのためし 00009210M13あらたな御かいちやうゆへにや、三月十一日に(四オ)/雨(あめ)あ 00009220M14られとふりかゝりければ、/田舎衆(いなかしゆ)あきれて、あれを見よ。 00009230M15ふしぎやなと/軒(のき)にたゝずみ/居(い)たりけるが、/一(いち)人の申ハ、/明(ミやう) 00009240M16日から/奉加(ほうが)があるまいと云。なぜに。ハテ、きじんハのこ 00009250M17らず/打(うた)れにけり。 00009260¥N4¥J 00009270¥X/成仏(しやうぶつ) 00009280¥P33 00009290L1清水あたりのぼんさまが、/宮川(みやかわ)町へかよひ、/辰(たつ)之/介(すけ)と云/野= 00009300L2郎(や=らう)と/深(ふか)き中なりしが、/此(この)(四ウ)ごろハ/何(なに)とてか、/佐代野(さよの)と 00009310L3いへる/舞子(まひこ)になれそめて、辰之介が/事(こと)はゆひ出さす。ある 00009320L4夜あげやの/亭主(ていしゆ)の申けるは、/御坊(こほう)さまハ、にわかに/女道(によとう)に 00009330L5/被成(なされ)たハ、がてんがまいらぬと云。/坊主(ほうす)ぬからぬ/顔(かほ)で、此 00009340L6/開帳(かいちやう)から、まむきになをつた。 00009350¥N5¥J 00009360¥Xぬけ/道(ミち)(五オ) 00009370L9/清水(きよミつの)開帳にくんじゆする所に、/女中(ぢよちう)の/尻(しり)をはたと/扣(たゝ)く。/観= 00009380L10音(くわん=をん)見たまひ、これ+、/此寺内(このじない)でたゝかす事ハならぬとの 00009390L11給ふ。それハなぜにといへば、/是(これ)まてしりをたゝかれてこ 00009400L12りた。 00009410¥N6¥J 00009420¥X見たて/商売(あきなひ) 00009430L15/大坂(おゝさか)より此たびの開帳にあきなひものを見たてゝ、かり/銀(かね) 00009440L16して/仕入(しいれ)けれ/共(とも)(五ウ)/中(なか)+うれぬゆへ、くわんおんへき 00009450L17せいして、/何(なに)とぞ/元直(もとね)になりと/売(うれ)ますやうにまもらせ給へ 00009460L18と/祈(いの)る。くハんおんも/立(たゝ)せたまひ、/汝(なんち)がうりものはなんぞ。 00009470L19/鰹(かつほ)ぶしでごさります。そんなら/売(うれ)ぬはづじや。/京中(きやうちう)のわか 00009480M1ひ/者(もの)どもが、清水ゑまいるといふて、をれをだしにつかふ。 00009490¥N7¥J 00009500¥X/名鳥(めいちやう)(六オ) 00009510M4/今度(こんと)清水の/門前(もんせん)にて、くじやくの/鳥(とり)を見せるげな。おれも 00009520M5/見(ミ)よふと云。つれのいふ事にや、あれに/銭(せに)/出(た)そふより、こ 00009530M6ちの/在所(さいしよ)の/道伯(とうはく)様の/乗物(のりもの)かきをミやと云。それは/六尺(ろくしやく)じや。 00009540M7サア/三尺手(さんしやくて)ぬぐいかづくと、てふどくじやくじや。 00009550¥N8¥J 00009560¥X/生観音(いきくわんをん) 00009570M10清水の/御本(こほん)ぞんハ/生(いき)くわんおんじやと云。(六ウ)さる/針(はり)た 00009580M11て、/御内陳(こないちん)へはいりて、観音の御はらに針をひねりて、/其(その) 00009590M12はりをぬき見れバ、/血(ち)ながれ/出(いづ)る。/医者(いしや)おどろき、とびし 00009600M13さりて、たつた/一度(いちと)で/御座(ごさ)り/り((り衍))ます。御ゆるされませと云。 00009610M14くわんおん/仰(をゝせ)らるゝハ、/夫(それ)はめいわく。せめて/七日(なぬか)は見ま 00009620M15ふてたもと。 00009630¥N9¥J 00009640¥X二/軒(けん)/茶(ちや)屋(七オ) 00009650M18清水のもどりに/立(たち)とまりて、あの/二軒(にけん)ぢやゝは、/火燵(こたつ)とい 00009660M19ふものじやと云。なぜに。ハテ、/今度(こんど)の開帳に/大(をゝ)あたりじ 00009670¥P34 00009680L1やといふはさて。 00009690¥N10¥J 00009700¥Xふた/俣竹(まただけ) 00009710L4御かいちやうの/比(ごろ)、清水にしんぢうありと云て、/見物(けんぶつ)つね 00009720L5ならず。/其中(そのなか)より申ハ、/今度(こんど)ハ/内陳(ないぢん)/入(いり)が銭百文に三人つゝ 00009730L6の/切手(きつて)なれど(七ウ)/一人(ひとり)たらぬゆへ、二人ぶら+と云。 00009740L7又ひとりのいはく、イヤ+、/此(この)しんぢうハ/下手(へた)のとく/談儀(だんぎ) 00009750L8じやと云。なぜに。ハテ、したを見や。すなわちだらけと 00009760L9云れた。 00009770¥N11¥J 00009780¥X廿四/孝(かう) 00009790L12此/開帳(かいちやう)ハまそつとまいりがあるはづじやが、おもふた/程(ほど)に 00009800L13ないと云。壱人の申は、ハテ、/四六(しろく)におされて/埓(らち)が/明(あか)ぬと 00009810L14云。(八オ)四六とはどふぞといへば、/先(まづ)/六角堂(ろつかくとう)がじやまに 00009820L15なる。/今度(こんど)/六房(ろくほう)にもかいちやうが/出来(てき)る。六はら/堂(どう)も/御戸(ミと) 00009830L16びらき也。六条には/常盤(ときわ)の/御絵(ごゑ)が出る。此四六が/一同(いちと)にう 00009840L17ちあはせたゆへ、/当(あ)てが/違(ちが)ふたといふ。そばよりたらずめ 00009850L18なる人、それでけんどんがはやつた。なぜに。ハテ、/二六(にろく) 00009860L19じやものといはるゝ。(八ウ) 00009870¥N12¥J 00009880¥X/唐(とう)うちわ 00009890M3/仙台(せんたい)より/鬼海(きかい)がしまと云/関取(せきとり)のぼりて、清水ゑまいり、/私(わたくし) 00009900M4このたび、京の/都(ミやこ)のすまふ、たれにおそるゝ事はなけれど、 00009910M5/堺(さかい)の八/角(かく)ハこはものとそんじます。/何(なに)とぞ此八かくに/勝(かち)ま 00009920M6すやうに/守(まも)らせ給へと云。観音も/出現(しゆつけん)にて、/気(き)づかひなか 00009930M7れ。どふぞかたそ。はや/先(さき)(九オ)/達(だつ)て六角にハ/勝(かつ)たものと。 00009940¥N13¥J 00009950¥X/地主(ぢしゆ)の三月 00009960M10/清水寺(せいすいじ)へ大ぜいまいり、地主の/桜(さくら)見んといふ。/住寺(ちうし)ちらと 00009970M11見て、/小僧(こそう)に、/留守(るす)といへと云。ちかつきの/客(きやく)なれバ/腹(はら)を 00009980M12/立(たて)て、/其侭(そのまゝ)/紙(かミ)に、 00009990M13△△S/咲(さい)た桜になぜ/留主(るす)つかふ 00010000M14と/書(かい)て/枝(ゑた)に/付(つけ)けり。住寺ハ見て、/添書(そへかき)に、 00010010M15△△S客がいさめばものが入る 00010020M16といふた。(九ウ) 00010030¥P35 00010040¥T1 00010050¥G(一オ挿絵) 00010060¥N1¥J 00010070¥Xおぼこ 00010080L14/新参(しんさん)ものいゝ付られ、あんどに/火(ひ)をともし、/座敷(ざしき)ぢううろ 00010090L15+/持(もち)まわるゆへ、ついそこにおけといへば、かの/奴(てつち)、ぬ 00010100L16からん/皃(かほ)で、くらがりに/置(おい)ても大/事(じ)ござりませぬかと云た。 00010110¥N2¥J 00010120¥X/焼鳥(やきとり)にへを 00010130L19/長吉(ちやうきち)よ。とうふ/取(とつ)てこひといへば、あいと、(一ウ)ほんと 00010140M1/通(かよひ)をもちて、とうふ二丁/取(とり)、うへにかよひをおゝいてかへ 00010150M2る。/頓(やか)て/鳶(とひ)/舞下(まひさが)り、かよひをつかみゆく。/長吉(ちやうきち)ぬからんも 00010160M3のにて、とうふやへ/戻(もど)り、/鳶(とひ)が/通(かよひ)/持(もつ)て/来(き)たと、とうふ/渡(わた)し 00010170M4てくださんなと云た。 00010180¥N3¥J 00010190¥X/蓮(はす)の/糸(いと)もつれ 00010200M7いつも/卯月(うつき)十四日ハ、/大和(やまと)のたへまでらに(二オ)ねり/供養(くやう) 00010210M8があるが、/何(なん)としてか/今年(ことし)ハ、ぼさつ/中間(なかま)に大けんくわが 00010220M9/出来(でき)て大ぶんもめて、すでに/明日(あす)ハおめしと/語(かた)れば、/中(なか)よ 00010230M10り/文盲(もんもう)な人すゝみ出て、いや+けふの/夕食(ゆふめし)じやといふ。 00010240M11/聞(きく)人もをかしがりて、それは/徳左(とくざ)。めしが/違(ちかふ)たと云。/徳左(とくさ) 00010250M12/片意地(かたいち)ものにて、ぼさつがにゑかえるからハ、/明日(あす)までは 00010260M13また(二ウ)ぬはづじや。 00010270¥N4¥J 00010280¥X/二(ふた)つ/紋(もん) 00010290M16ある/夜(よ)ばなしに、/亭主(ていしゆ)の申されしは、こよひの/馳走(ちそう)に/石川(いしかわ) 00010300M17五右衛門をしん上といふ。何であらふとたのしミける/中(なか)へ 00010310M18出されけるを見れば、/芋(いも)をにたまでなり。おの+、/是(これ)を 00010320M19石川五右衛門といやるはととへば、ハテ、/親子(おやこ)ともに/鍋釜(なべかま) 00010330¥P36 00010340L1へ/入(い)るゝ(三オ)といはれし。 00010350¥N5¥J 00010360¥X/愚学問(ぐがくもん) 00010370L4たらずめな人、/四書(ししよ)五/経(きやう)のそよみせらる。ある夜あそびに 00010380L5出られ、/四方(よも)やまの/咄(はなし)の/中(なか)から、/孔子(かうし)はおなごなれども、 00010390L6/一生(いつしやう)はらを/立(たて)なんだ。/天晴(あつはれ)/聖人(せいしん)でハあるといへバ、座中か 00010400L7てんせす。孔子ハ男しやかと云。かの人/十面(しうめん)して、/女(おんな)のし 00010410L8やうこには、/孔(かう)(三ウ)/子(し)は/鯉魚(りきよ)をうむと申されし。 00010420¥N6¥J 00010430¥X/水縄(ミつなわ) 00010440L11さる/所(ところ)に、はじめハ/有徳(うとく)にくらされし/親父(おやち)さま、ある/日(ひ)/嶋(しま) 00010450L12ばらの/入口(いりくち)ゑ/水縄(ミつなわ)を/張(はり)、/間(けん)をうたるゝゆへ、/門番(もんばん)の/者(もの)とが 00010460L13めて、/何(なに)ゆへ、けん/地(ち)をおうちなさるゝととゑば、おやぢ 00010470L14ねぢむきて、/爰(こゝ)は/四間口(しけんくち)ならでなひが/合点(かてん)がゆかぬ。わし 00010480L15が(四オ)/男子(むすこ)ハ二十五けん口の/家(いゑ)を、このうちゑいれた。 00010490¥N7¥J 00010500¥X/三光(さんくわう) 00010510L18/大仏殿(たいふつてん)の/如来(によらい)、/伊勢(いせ)へ/参宮(さんくう)とこゝろざし、道中の/関(せき)にて、 00010520L19はたごやにかゝりとまらるゝ。/亭主(ていしゆ)おどろき、とめおんな 00010530M1おたけをまねき、あれハ京の/釈迦(しやか)とて/大(たい)わる/者(もの)なり。/今夜(こよひ) 00010540M2ぢうに、/家(いゑ)(四ウ)も道具もふミくたかりやうも知れす。早 00010550M3くいなしや。あのわろにかゝつて、此正月にも大分そんを 00010560M4したといへば、しやか、ていしゆを呼て、三光のあんしな 00010570M5ら気遣あられな。身うちにあざもなし、荷も持んと申され 00010580M6し。 00010590¥N8¥J 00010600¥X菊のもん 00010610M9さる旅人のいゑるハ、花の都にも今ハ(五オ)/焼(やき)もちがはや 00010620M10るそうなと見まハる/所(ところ)に、/大(たい)の/字(し)もあり、/本(ほん)の/字(し)もある。 00010630M11/皆(ミな)+その云わけ/有(あり)しが、/菊(きく)のもんつけたるもあるゆへ、 00010640M12/其方(そのほう)がやき/餅(もち)には、何ぞ/由来(ゆらい)にても/有(あり)て、きくをゆるされ 00010650M13しかと/問(と)ふ。/亭主(ていしゆ)罷/出(いて)て、/中(なか)に/大納言(たいなごん)といふ/小豆(あつき)をつゝミ 00010660M14ますと云。聞えた。それで/赤(あか)しやうぞくじや。(五ウ) 00010670¥N9¥J 00010680¥Xれんぼの/月(つき) 00010690M17さる/処(ところ)に、まおとこ/見付(ミつけ)られ、/漸(やふ)+に/佗(わひ)して、/小判(こはん)五/両(りやう) 00010700M18にてあつかひけれど、さいかくになんぎして/本妻(ほんさい)につげし 00010710M19が、/本妻(ほんさい)おどろき/吟味(きんミ)する。今ハ/是非(せひ)なく、たつた/一度(いちと)の 00010720¥P37 00010730L1事をおさゑられしと/語(かた)る。本妻ハそらさん/顔(かほ)にて、/重(かさね)てた 00010740L2しなましやれ。/去(さり)なから(六オ)此たひは/案(あんす)ることはないほ 00010750L3どに、/向(さき)さまから、さし引/金(きん)/十両(しうりやう)取て御/座(さ)れ。わしはあの 00010760L4お人と/三度(さんと)じやものといふた。 00010770¥N10¥J 00010780¥X/三輪(ミわ) 00010790L7ある人、ミわのうたひを/聞(きゝ)て、げんひん/僧都(そうつ)と云人は、/俗(そく) 00010800L8のとき市右衛門といふたが、どふして/出家(しゆつけ)せられた。なぜ 00010810L9に。ハテ、(六ウ)今のうたひにも、/御衣(おんころも)をいちゑたまわり候 00010820L10へとうたふた。 00010830¥N11¥J 00010840¥X/百(ひやく)だけの如来 00010850L13/東御門跡(ひかしこもんせき)さまの/大門(たいもん)御ふしんのうちに、/足代(あししろ)そんじて/日= 00010860L14雇(ひ=よう)あまた/落(おち)けるが、その中に/一人(ひとり)/死(しゝ)たり。此者日れん宗ゆ 00010870L15へ、/念仏(ねんふつ)の/寺(てら)でしんだとて、/一門(いちもん)ども一/入(しほ)なげきける。/其= 00010880L16家主(その=いゑぬし)ハひがし/門徒(もんと)にて(七オ)/悦(よろこ)び、さて+でかされた。 00010890L17/念(ねん)仏のろく地で/死(し)んだと云。/日雇(ひよう)の/女房(によほう)はらをたて、なん 00010900L18の、ねんぶつハ無けん、こちの人は/刎(はね)ざいもくで/死(しな)れまし 00010910L19た。(七ウ) 00010920¥T1 00010930¥G(一オ挿絵) 00010940¥N1¥J 00010950¥X/口合水(くちあいミす) 00010960M14さみだれのころ、/町(まち)かた/在(さい)かた/高水(かうすい)して/川(かわ)をこすゆへ、漸 00010970M15+と畳をあげ、二/階(かい)に/住居(すまい)して居る処へ、/座頭(さとう)一人きた 00010980M16る。/二那(たんな)、お/宿(やと)にかと云。/粕都(かすいち)か。このごろハ見へぬとい 00010990M17へば、わたくしハまへから見ゑませぬと云。こいつ口合を 00011000M18いふと/心得(こゝろゑ)て、/粕都(かすいち)。何しに/来(き)たぞ。(一ウ)見/舞(まひ)にまいり 00011010M19ました。/目(め)も見ゑぬ/形(なり)で。そこが/水見舞(ミつみまひ)で御座る。 00011020¥P38 00011030¥N2¥J 00011040¥Xおもいれ 00011050L3/真葛(まくす)がはらの大すまふじや。おすぎさん、おまつさん。見 00011060L4にゆかんせぬかといへば、あの/云(いわ)んす事は、/姫(ひめ)ごぜのすま 00011070L5ふ見る物じやごんせぬ。それでも/谷風(たにかせ)が初て/登(のほ)ツたときは、 00011080L6おまへかたハ/毎日(まいにち)見に(二オ)ゆかんした。ハテ、/其(その)ときは 00011090L7/大筒(おゝつゝ)を見にいたのじや。 00011100¥N3¥J 00011110¥X/縁(ゑん)につるゝ 00011120L10/鳥羽(とばの)百性から/京(きやう)のゑんじやへ、/唐(とう)の/芋(いも)がしらを/送(おく)らるとて 00011130L11/下(しも)おとこに/口(こう)上を申渡す。此ほうの/名物(めいふつ)で/御(こ)ざります。/其= 00011140L12元様(そこ=もとさま)でハ/珍物(ちんふつ)とぞんじ、しんぜますと云。/男(おとこ)そそふもの 00011150L13(二ウ)にて、/見物(けんふつ)をしんぜますといゝしゆへ、/其芋(そのいも)を/一日(いちにち) 00011160L14ながめ、/鳥羽(とバ)へ/戻(もとし)ければ、/旦那(たんな)気のとくがり、/使(つかひ)のおとこ 00011170L15を引つけ申けるハ、/珍(ちん)ハめづらし、/見(けん)ハ見るなり。これほ 00011180L16どちがふた事と、しかりけるが、/男(おとこ)ぬからぬ/皃(かほ)にて、いや 00011190L17+、ちんも/犬(いぬ)、けんも/犬(いぬ)とぞんじました。まだぬかすか。/人(ひと) 00011200L18さまにしんぜますものを(三オ)/犬(いぬ)にしをるかとねめけるに、 00011210L19/大事(たいじ)ござりませぬ。なぜに。ハテ、/出(だ)してつくばいました。 00011220¥N4¥J 00011230¥X/替名(かゑな) 00011240M3なんと/万右衛門(まんゑもん)、仕/合(あわせ)はいかゞ。イヤ、不仕合じや。そのふ 00011250M4/しわ((ママ))せとハ。されば、ちかき/比(ころ)/親(おや)どもにはなれた、/淋(さび)しう 00011260M5して/居(い)ル。ちと/咄(はな)しにおじや。/去(さり)ながら所もかへ(三ウ)/名(な)も 00011270M6かへ、/今(いま)ハ/市(いち)右衛門と/改(あらため)たと云。それは/尤(もつとも)じやか、/万(まん) 00011280M7右衛門を市右衛門とハ、きついちゞめやうじや。イヤ、/親= 00011290M8父(おや=ぢ)に/放(はな)れてから、/力(ちから)おとした。 00011300¥N5¥J 00011310¥X/百物(ひやくもの)がたり 00011320M11/極月(ごくけつ)の/末(すへ)ころハ/色里(いろさと)もかれ+にて、ひまなる/女(ちよ)らう一/間(ま) 00011330M12ゑうちあつまりて、/久(ひさ)しき/客(きやく)さんたちのうわさして/夜(よ)を 00011340M13(四オ)/明(あか)さんと、/是(これ)を百物がたりと/名付(なつけ)て、ともし/火(ひ)のか 00011350M14わらけへとうしん百/筋(すじ)/入(い)れ、/一(ひと)つはなして/一筋(ひとすし)つゝ/引(ひき)、す 00011360M15でに九十九すしまで引ける。/今(いま)一すじのあかりとなれるを、 00011370M16あおち/風(かせ)にてきゑければ、/霄(よひ)よりはなしたる/客(きやく)、こと+ 00011380M17くあらわれ/出(いて)たり。/女郎(ちよろう)共おどろき、/互(たかい)に/皃(かほ)つゝむもあり、 00011390M18/色(いろ)かわ(四ウ)りて、せつじの/体(てい)なり。/其中(そのなか)に/太皷女郎(たいこぢよろう)と見 00011400M19へて、/声(こゑ)/高(たか)+と申けるハ、これ+/客(きやく)さんたち。/此極(このきわ)は 00011410¥P39 00011420L1あげやの/払(はらい)、/不残(のこらす)/御(を)すまし/被成(なされ)といへば、かの九十九/人(にん)の 00011430L2きやくゆうれい、/是(これ)はならぬと/頭(あたま)をたゝいて/消(きゑ)うせけり。 00011440¥N6¥J 00011450¥X/神無月(かミなしつき) 00011460L5ある/人(ひと)、うたびくにを見て、/安椀(やすわん)かして(五オ)/剃(そつ)てあると 00011470L6いふ。又/一人(いちにん)のいはるゝハ、イヤ、/住吉(すミよし)のはしじやと云。 00011480L7なぜに。ハテ、そつても/人(ひと)をのぼすといわれた。 00011490¥N7¥J 00011500¥X/雨(あめ)が/下(した) 00011510L10/此(この)ごろは/日和(ひより)つゞきがわるふて、/夜(よふ)べの/雨(あめ)に/大(たい)ぶん/難儀(なんき)し 00011520L11たと云。ハテ、この/四五日(しこにち)ハつゞひて/天気(てんき)じや。/殊(ことに)に/夜部(ようべ) 00011530L12はなを+/日(ひ)よりじやに、/雨(あめ)(五ウ)とは。それでも、よし 00011540L13/原(ハら)へいたりや、よつぴとふられた。 00011550¥N8¥J 00011560¥X/今(いま)一/休(きう) 00011570L16/色町(いろまち)のあたりに、/張(はり)あんどんに、/酒(さけ)/肴(さかな)ありと/書付(かきつけ)て/出(いた)せり。 00011580L17さる/武士(さふらひ)立とゞまり、さけは/聞(きこ)えしが、/又(また)/有(あり)ハがてんゆか 00011590L18ずと、/亭主(ていしゆ)よび出し、とがめければ、亭主うろたゑ、/言葉(ことば) 00011600L19なし。さふらひ(六オ)かつにのり、あんどうを/踏(ふミ)くたき、 00011610M1/又(また)/有(あり)ハきひしい/御法度(こはつと)じやと、あたりをねめて/帰(かへ)られける。 00011620M2/其後(そののち)ハ/書付(かきつけ)をしかへて、/天悦(てんゑつ)/大悦(たいゑつ)/油(あふら)ひかすと/書付(かきつけ)ける。人 00011630M3+がてんせず。ある/所化坊主(しよけほうす)ながめ入て、/聞(きこ□)たことじや 00011640M4と云。/道(ミち)とをりたちよりて、/何(なに)と云事で御座ると云。ハテ、 00011650M5/天(てん)は二人なり。/悦(ゑつ)ハよろこぶと云/字(じ)(六ウ)なり。/是(これ)ハおや 00011660M6まを/売(うる)のじや。/大悦(たいゑつ)とは/一(ひとり)人よろこぶ/故(ゆへ)に、かげまと見ゑ 00011670M7たり。またあぶらひかずハ、びくにんもあるであらふと云 00011680M8れた。 00011690¥N9¥J 00011700¥X/浄土宗(じやうとしう) 00011710M11ある人、五/条橋(てうはし)通りをゆくとて、/人形店(にんきやうたな)に、みなもとの/頼= 00011720M12光(らい=くわう)にんぎやうのありけるを、立とゞまりて/大切(たいせつ)に(七オ)お 00011730M13がミけり。つれの人、気の/毒(とく)そふに、あれは/人形(にんきやう)じやが、 00011740M14なぜに/拝(おか)ミやるかといふ。ハテ、あミださまの御/家老(かろう)じや。 00011750M15なぜに。此中もおだんぎにいわしやるには、/弥陀(ミた)のらいか 00011760M16うをたのめといわしやつた。 00011770¥N10¥J 00011780¥Xさしづめ 00011790M19さるおやぢ、/知恵(ちへ)たくさんそうに/盆(ほん)の(七ウ)さし/鯖(さば)をぢつ 00011800¥P40 00011810L1と/打(うち)ながめ、/是(これ)ハ/心中(しんちう)の/生(むま)れがわりと云。/律気(りちき)な人聞て、 00011820L2わたくしハ/好物(こうふつ)でござれども、そんなら/喰(くひ)ますまひ。生れ 00011830L3がハりかして、さしちがへています。あのからだの/赤(あかひ)も、 00011840L4/血(ち)でかなあろと云。おやぢぬからん/■(かほ)で、あれは身から出 00011850L5したさびじや。 00011860¥N11¥J 00011870¥X/田楽(てんかく)そうじ(八オ) 00011880L8/唐土(もろこし)に/兄弟(きやうたい)むつまじき人ありけるが、/今霄(こよひ)ハとうふのでん 00011890L9がくをして/遊(あそハ)んといふ。/味噌(ミそ)にやせん/葛(くず)やよからんといふ 00011900L10事、/口論(かうろん)になりて、すでに/弟(おとゝ)を/義絶(きせつ)せんといへり。/友達(ともたち)の 00011910L11人※はしやうしがりて、いろ+となだめける。/兄(あに)のい 00011920L12へるハ、七/足(あし)あゆむうちに/詩(し)を/吟(きん)ぜば、/其罪(そのつミ)をゆるさんと 00011930L13云。またなき(八ウ)兄のこゝろばゑとはおもひながら、 00011940L14△煮豆燃豆箕、豆在釜中泣 00011950L15△本是同根生、相煎何太急 00011960L16ある人、この/句(く)ある事をきゝてよめる哥に、 00011970L17△△/味噌(みそ)も/豆(まめ)とうふも/豆(まめ)でありながら 00011980L18△△△おなじ/中間(なかま)のつらよごすかな(九オ) 00011990¥Q 00012000M3軽△口はなし/新年袋(はるふくろ)全五冊出来 00012010M5△△△右ハ来ルとりの正月£出し申候 00012020M6△△△噺しの外題御しらせ申候△已上 00012030M9△元文五年△△△△△京寺町通五条上ル所 00012040M10△△△△庚申正月吉日△△△額田正三郎板(九ウ) 00012050¥P41 00012060¥U噺本大系△第八巻 00012070¥T軽口新歳袋 00012080¥G 00012090¥Y 00012100L16元文六年刊 00012110L17風之作・序 00012120L18半紙本五巻 00012130L19大東急記念文庫蔵 00012140¥Y口序 00012150M3あまりおかしうて/胞(へそ)をつかんだといへば、/雷(かミなり)が/立聞(たちきゝ)すると 00012160M4/口(くち)の軽ひ/御衆(おしゆ)が、/昨日(きのふ)の/噺(はなし)はけふはふるいてゝ、/三(さん)ケの津 00012170M5を/暦(へ)/巡(めく)り、/鹿(しか)の/声(こゑ)に/耳(みゝ)をよせ、/足曳(あしひき)の/尾(を)の/永(なかひ)/日(ひ)を/費(ついや)し、ま 00012180M6だも/彦八(ひこはち)+と(オ)/新(あたらし)ひかぎりを/書付(かきつけ)て、/桜(さくら)にわたし、 00012190M7/新歳袋(はるふくろ)と云五冊物に/絵(ゑ)をものし、/朝腹(あさはら)/透(すき)腹/酔(ゑい)ざめの/遠慮(ゑんりよ)の 00012200M8なきハ、/笑(わろ)ふ/門(かと)に/福(ふく)きたると申が、/此(この)本の/趣向(しゆかう)で御座リま 00012210M9す。 00012220M11△△△元文六のとし 00012230M12△△△△△初売二日£△△△△△△洛風之集之(ウ) 00012240¥P42 00012250¥T1 00012260¥G(一オ挿絵) 00012270¥N1¥J 00012280¥Xはる袋 00012290L14早春の/比(ころ)、ひとつの袋を見付て、/是(これ)は何に見立たらんと云。 00012300L15さる人/指(さし)出て、/弁才(へんさい)天の/洗粉(あらひこ)入と云。イヤ、さにハあらす。 00012310L16/福祿寿(ふくろくしゆ)の/枕(まくら)かやじやと云。イヤ、それもちかふた。/布袋殿(ほていとの) 00012320L17よりかゝりと云処へ、大/黒(こく)/小声(ここゑ)にて、それハおれが身代ふ 00012330L18くろじやといわれた。(一ウ) 00012340¥N2¥J 00012350¥Xくゝミ/声(こゑ) 00012360M3あら/玉(たま)のとし/立帰(たちかへ)るあした、二八ごろなる/腰(こし)もと、/椽先(ゑんさき)へ 00012370M4立出けるに、/鴬(うくひす)とひ/来(き)たりてふところへ入。さて+やさ 00012380M5しき/風情(ふせい)やと、鴬の/皃(かほ)をつく+と/打(うち)なかめければ、ほほ 00012390M6ほと、ちいさき/初音(はつね)を出しける。こしもと/小声(ここゑ)にて、/何(なん)ぞ 00012400M7みやつたかと云れた。(二オ) 00012410¥N3¥J 00012420¥Xふく/耳(みゝ) 00012430M10正月とて、/友(とも)たちの/方(ほう)へ/礼(れい)に/行(ゆか)れけるが、/先(まつ)ほうらいとて 00012440M11嘉/例(れい)の/盃事(さかつきこと)も/過(すき)て、/亭主(ていしゆ)申されけるは、/私(わたくし)はけさから/耳(ミヽ) 00012450M12が/聞(きこ)へませぬが、としの/初(はしめ)にみゝのきかぬハ物事の/聞(きこ)えぬ 00012460M13と云事と気にかゝりますと申されけるを、イヤ+、それは 00012470M14(二ウ)ずんと目出たい事で御座る。なぜに。ハテ、今年から、 00012480M15ふくつんじやと云れた。 00012490¥N4¥J 00012500¥X大からくり 00012510M18大坂/竹田(たけた)近江が/新宅(しんたく)のふるまいに、れき+の/客(きやく)を申/請(うけ)て 00012520M19おの+/配膳(はいせん)のとき、/平皿(ひらさら)は/跡(あと)へ/引(ひき)さげ、/人数(にんず)にあはせて 00012530¥P43 00012540L1/座敷(さしき)のまん/中(なか)にならべおく。/客衆(きやくしゆ)も/合点(かてん)ゆかぬ/故(ゆへ)、/亭主(ていしゆ)を 00012550L2(三オ)/呼(よ)んで/尋(たつね)けるが、/竹田(たけた)/罷出(まかりいて)、おの+/御箸(をはし)/被成(なされ)ます 00012560L3れば、/平皿(ひらさら)おのれと/御膳(こせん)のわきへ参り/増(ます)と云。/是(これ)ハ不/審(しん)と、 00012570L4/一(ひ)ト口/二(ふ)タ口/喰(くひ)かゝると、/頓(やかて)て/平(ひら)ざらはぜんの/側(そば)へ/来(き)たる。 00012580L5/扨(さて)も+/珍敷(めつらしき)/御馳走(こちそう)じやと、平皿の/蓋(ふた)を/取(と)れバ、/中(なか)がぜん 00012590L6まいじやあつた。 00012600¥N5¥J 00012610¥X/福都房(ふくいちほう)(三ウ) 00012620L9正月の礼者も、松屋玉野末広やときくは、ぎゑんもよいが、 00012630L10位はいやの宗介なとゝは止てほしいとつぶやく所へ、ふく 00012640L11/都(いち)礼に巡るを見て、コレ+びんほいち。とこゑといへは、 00012650L12座頭ハさはく顔もなく、其元へ参ると云。カノ男気にかけ、 00012660L13是は祝ひ直させんと、座頭の道に待受て、ナント福都との。 00012670L14とれゑと云ば、其方から(四オ)今出てゐに増といふた。 00012680¥N6¥J 00012690¥Xまさる 00012700L17ある/猿(さる)まわし、大/津(つ)へ/行(ゆく)とて三/条(せう)の/橋本(はしもと)にて/駕篭(かこ)をかり、 00012710L18/猿(さる)を/乗(の)せて、/主(ぬし)はあるいて行。日の/岡(おか)のほとりにて、わら 00012720L19んじ/仕直(しなをす)うちに/後(おく)れしゆへ、/彼(かの)猿、駕篭の/中(うち)よりキヤツ+ 00012730M1と/叫(なき)けれバ、かごのもの、/杖(つゑ)を/立(たて)て/跡(あと)をねぢむき、/是(これ)+ 00012740M2(四ウ)/供(とも)の人。だんなが/御召(おめし)じやと云た。 00012750¥N7¥J 00012760¥X/悪太郎(あくたろう) 00012770M5/駕篭(かご)かき六兵衛がむすこ、/八歳(やつ)より十一まで/手習(てならひ)に遣す/所(ところ) 00012780M6に、よほど/味(あぢ)をやるゆへ、/清書(きよかき)を/親父(おやち)に/見(みす)る。おやぢ取あ 00012790M7げて、/何(ど)れもよいが、/此山(このやま)と云/字(じ)が/悪(わる)ひと云。むすこ/涙(なミた)ぐ 00012800M8ミて、わしは/山(やま)が/書(かき)にくひといへば、ハテ、そん(五オ)な/処(ところ) 00012810M9でハ/筆(ふて)を/杖(つへ)にしてかけと申されし。 00012820M10△狂哥 00012830M11△△/竹箆(しつへい)の/二字(にじ)にしぐるゝ/悪(あく)太郎 00012840M12△△△みな/車座(くるまさ)にならびそふろう 00012850¥N8¥J 00012860¥X/出(て)かわり 00012870M15さるこしもと/仕出(しだ)しの/女中(ちよちう)、/火達(こたつ)にあたり/居(い)る所へ、/男(おとこ)/一= 00012880M16人(ひと=り)/来(き)たりあたる。/暫(しはし)して女中ついと/出(いて)、あのさんハいかひ 00012890M17(五ウ)/猿(さるで)ではあるぞと云。/此(この)おとこ/腹(はら)を/立(たて)て、わしをけだ 00012900M18物にたとへたか。サア、なんぼはら/立(たて)さんしても/猿手(さるで)じや 00012910M19もの。なぜに。ハテ、/豆(まめ)をねんがけさんすと云た。 00012920¥P44 00012930¥N9¥J 00012940¥X/鐘(かね)の/声(こゑ) 00012950L3なんと、/寺(てら)+に/初夜(しよや)/後夜(こや)/明(あけ)くれと/鐘(かね)をつくが、あれにも 00012960L4/法(ほう)が/有(あ)るかととふ。/如何(いか)にも/不審(ふしん)/尤(もつとも)じや。まづ浄土宗は 00012970L5(六オ)廿五つく。/法花宗(ほつけしう)ハ十三、/真言(しんこん)が二十一、/門徒(もんと)宗が 00012980L6廿八、おうばくでハタツタ/三(ミ)つ。/六角堂(ろつかくとう)の/鐘(かね)は/京中(きやうちう)からも 00012990L7つが十八つくと云。そんなら/宗旨(しうし)+の/開山(かいさん)の/日数(ひかす)は/聞(きこへ)た 00013000L8が、/建仁寺(けんにんし)ハ久/敷(しう)つひて居るが、あれハどふした/故(ゆへ)と云。 00013010L9アレハ右のかず+を/〆上(しめあけ)て、百八つくゆへだらりと云れ 00013020L10た。(六ウ) 00013030¥N10¥J 00013040¥X/神国(しんこく) 00013050L13ずんどしわひ人、/友(とも)に/誘(さそわ)れ/嶋(しま)ばらへ/行(ゆき)、つれの申けるハ、 00013060L14/其方(そのほう)ハかふした/遊(あそ)ひは/初(はしめ)てゞあろうが、/太夫(たゆふ)もあまりじや。 00013070L15/天神(てんじん)にしや。天神が/徳(とく)じやと云。イヤ+、/我等(われら)は/鹿恋(かこひ)にい 00013080L16たそふと云。ハテ、/今(いま)すこしの事じやに天神にしやとすゝ 00013090L17める。イヤ+、其/金(かね)にハかまわんが、/天(てん)(七オ)じんはなら 00013100L18ぬ。なぜに。ハテ、/伯母(をばが)/死(しな)れて/間(あいた)がないと云れた。 00013110¥N11¥J 00013120¥X/入子算(いれこさん) 00013130M3ある人、/三十(さんしう)ばかりにて/女房(にやうほう)をもつ。/四十(ししう)ちかくなれども 00013140M4/子(こ)なし。/御内儀(おないき)も廿七八にて/気量(きりやう)もよく、/縫(ぬい)はりよみかき 00013150M5人にすくれたれど、/玉(たま)にも/疵(きす)といふて、いつの/比(ころ)よりか、 00013160M6/隠(かく)し/男(おとこ)が/出来(てき)、此/中(ちう)は(七ウ)/目(め)だつくらひなり。/友達(ともたち)ども 00013170M7/申合(もふしあは)せ、かふ+見ゆると/亭主(ていしゆ)へ/造(つけ)けれバ、成ほどおれも 00013180M8/遠(とふ)から/知(し)つて居るが、/此方(こち)にもちと/当(あて)があると云。/扨(さて)ハ/銀(かね) 00013190M9にしやうといふ事か。イヽヤ。/其(その)やうなむさい/心(こゝろ)じやなひ。 00013200M10そんならなぜに。ハテ、/女房(にやうほう)を/盗(ぬす)ませて/子種(こたね)を/取(とる)のじやと 00013210M11いわれた。(八オ) 00013220¥N12¥J 00013230¥X/放生日(ほうしやうひ) 00013240M14/此方(こち)の/御寺(おてら)は/魚類(きよるい)を/喰(くや)ると/聞(きゝ)て、/旦那(たんな)寺へゆきける。/折節(おりふし) 00013250M15/留守(るす)なれは、あたりに気を/付(つけ)て、/椽(ゑん)の/下(した)/小桶(こおけ)を見れば、う 00013260M16なき四五本あり。是こそ/住寺(ちうし)のたしなミと/和尚(をしやう)を/待(まち)、申 00013270M17+。/其元(そこもと)には/肴物(さかなもの)をまいると、/町中(まちちう)に/評判(ひやうはん)がわるひ。御 00013280M18/止(やめ)被成と(八ウ)いふ。イヤ+、/愚僧(ぐそう)はさやうな/覚(おほへ)が/御座(こさ)らぬ 00013290M19と云。しからば/此桶(このおけ)ハなんで御/座(さ)るとさし/出(いた)せば、/住寺(ちうし)ぬ 00013300¥P45 00013310L1からぬ/顔(かほ)で、ヱヽそれハ。ヤイ+/小僧(こそう)。アノうなぎは/山(やま)の 00013320L2いもにハ/成(なる)まひ。/川(かわ)へいなせと云れし。 00013330¥N13¥J 00013340¥X三角 00013350L5さる親仁、むすこを呼て、火燵の(九オ)やぐらを/買(かい)に/遣(や)る。 00013360L6/男子(むすこ)こゝろ/得(へ)て、/三角(さんかく)のやぐらを/買(かい)きたる故、/親(おや)はらを/立(たて) 00013370L7て、/終(つい)に三角の/矢(や)ぐら見たる事なし。/先(ま)ツ/畳(たゝミ)にあはぬと云。 00013380L8ハテ、こちのうちハ/是(これ)がよいといふ。なぜに。ハテ、/爰(こゝ)がこ 00013390L9なた。/此方(このほう)がかゝ様。こゝがおれといへば、おやぢハ/合点(かてん) 00013400L10して、成ほど+。/急(きう)によん(九ウ)でやろと云れた。 00013410¥N14¥J 00013420¥Xばけ合 00013430L13/箔(はく)屋の/子(こ)と/夜番(やばん)が子と/口論(こうろん)/出来(てき)、やばんが子を/狐(きつね)めと云ゆ 00013440L14へ、なミだぐミ/腹(はら)を/立(たつ)る。デモわれは/狐(きつね)じや。/日(ひ)が/暮(くれ)ると 00013450L15/姿(すかた)をかくして、/火(ひ)を/燈(とほし)すと云。こいつこらへかねて、そん 00013460L16ならおまへハ/狸(たぬき)じやと云。なぜに。ハテ、/商売(しやうはい)が/金(きん)(十オ) 00013470L17を/延(のば)すと云た。 00013480¥N15¥J 00013490¥X/喰(く)ひ/違(ちかひ) 00013500M1さる/所(ところ)に壱人の/小者(こもの)あり。/随分(すいふん)/律気(りちき)にてよく/動(はたらき)ゆへ、/旦= 00013510M2那(たん=な)の気に入けるが、ある/日(ひ)旦那、/他行(たきやう)せら/((れ脱カ))し故、/御内儀(をないき)の 00013520M3そばちかくへよりて、御はつかしう/御座(こさ)れども、/私(わたくし)が/心底(しんてい) 00013530M4おはなし申たきと云。内義ハ/顔(かほ)を(十ウ)あかめて、アラき 00013540M5やうこつや。おれに/何(なに)をいやる/事(こと)があろうと申されければ、 00013550M6/三吉(さんきち)もぢ+と、やう+と人/目(め)をしのびて/申(もう)せしに、/御= 00013560M7聞届(を=きゝとゝけ)がないからは、かくご/致(いたし)ましたと云。/内儀(ないぎ)もこわ※、 00013570M8ハテ、それほどにおもやるなら、/重(かさね)て/折(おり)もあろうと/申(もうさ)るゝ。 00013580M9イヤ、/今(いま)がよい/首尾(しゆひ)と、/内義(ないき)の(十一オ)/手(て)を/握(にぎ)りて/泪(なミた)をはら 00013590M10+こぼし、/耳(ミヽ)のはたへ/口(くち)をよせて、今からわたくしがお 00013600M11/飯(めし)は、おしつけて/盛(もつ)て/下(くた)されと云た。(十一ウ) 00013610¥P46 00013620¥T1 00013630¥G(一オ挿絵) 00013640¥N1¥J 00013650¥Xかよふや+ 00013660L14/町(まち)中で/飴(あめ)ざいく+とて、色&物をあめにて/作(つく)りて/売(うり)あり 00013670L15く所へ、/有(ある)ル/若(わか)イ/衆(しゆ)たちとゞまり、どれもどれもよふ/出来(てき) 00013680L16たが、アノ/鳥(とり)ハ/羽(はね)がのふて/悪(わる)ひと云。/飴(あめ)うり/聞(きい)て、今ちつ 00013690L17と見て/御座(こさ)れ。追付/小供衆(こともしゆ)へ/飛(とば)し/増(ます)と云た。(一ウ) 00013700¥N2¥J 00013710¥X/連歌師(れんかし) 00013720M1/宗祇法師(そうきほうし)ハ/髭(ひけ)がすきかして、/凡(をよそ)八寸ほどになりし/時(とき)、/門弟(もんてい) 00013730M2を/招(まねき)て、ナント、/愚老(ぐろう)がひげハ、世/間(けん)で/如何(いかゝ)申ぞと/問(とわ)れける。 00013740M3門弟の云ハ、アンナ/髭(ひげ)ハ/唐(から)物じやと申ますと云。/宗祇(そうき)こと 00013750M4ばに/乗(の)り、小/声(こゑ)にて、かならずさたはしあんな。/日(につ)本のも 00013760M5のじやと云れし。(二オ) 00013770¥N3¥J 00013780¥X/名対面(なたいめん) 00013790M8丸/福(ふく)屋七平と云/有徳人(うとくしん)の方へ/出(て)入する/米踏(こめふミ)二五介と云もの 00013800M9あり。/常(つね)に御目をかけらるゝ/故(ゆへ)、二五介おとゝ/在所(さいしよ)より/登(のほ) 00013810M10りけるを、/御(こ)一/礼(れい)に/参(まひ)リ、/私(わたくし)/兄(あに)二五介義、だん+御世/話(わ) 00013820M11に被成下され忝そんしますと云。/旦那(たんな)申されけるは、よふ 00013830M12こそのぼられたり。/先(まづ)/其(そ)(二ウ)/方(ち)の/名(な)はなんと云ぞといへ 00013840M13ば、/彼弟(かのおとゝ)も/旦那(たんな)とおなじ/名(な)なる/故(ゆへ)せきめんして、七平様と 00013850M14申ますと云。旦那もうろたゑ、/御茶(おちや)でも/上(あか)リませといわれ 00013860M15た。 00013870¥N4¥J 00013880¥X/矢田寺(やたじ) 00013890M18/大和(やまと)の/国(くに)より矢田の/地蔵尊(ちそうそん)を京の大/仏(ふつ)にて/出開(てかい)帳あり。/近(きん) 00013900M19年ハ(三オ)/芝(しば)にも/幕(まく)を/乱(ミた)し、桜にむすび、/遊人(ゆふしん)/諸(しよ)げいを/並(ならべ) 00013910¥P47 00013920L1ておびたゝし。此たびの/開(かい)帳ハはやらふと/思(おも)ふ処が/違(ちか)ふて、 00013930L2今京へ/地蔵(ちそう)とハ/古(ふる)しと云。イヤ+、/錫杖(しやくしやう)がないからは、 00013940L3ぢぞうでハあるまひといふもありて/参詣(さんけい)うすし。/住寺(ちうし)も/帰(かへ) 00013950L4るべき/方便(てたて)もなく、/自(ミつから)地蔵へうらみを申されし故、/成(なる)ほ 00013960L5ど+(三ウ)さこそおもへ。/明日(あす)より物をいふたら/参(まいり)が/出(で) 00013970L6よふと/仰(おふせ)られければ、/住寺(ちうし)ハことの/外(ほか)よろこひ、明日より 00013980L7地ぞう/御言葉(ミことハ)をかわさせ/給(たま)ふと、町/中(なか)へ/評判(ひやうはん)を/出(いた)しければ、 00013990L8一/先(まつ)まいりも/多(おゝ)かりしとき、/地蔵(ちそう)立/出(いて)させ給ひ、/左(ひたり)の御/手(て) 00014000L9をあげ、右の/印(いん)ざうを/見(ミせ)て、/玉(たま)+/来(き)たに、/是(これ)たもと申さ 00014010L10れし。(四オ) 00014020¥N5¥J 00014030¥X/湯(ゆ)の/山(やま) 00014040L13/例(れい)の三か月まちせんとすれども、月もいでざるゆへ、おの 00014050L14+/空(そら)をかこちて/寐所(ねところ)へはいられしが、/主(あるし)の/夢(ゆめ)に、ミか月 00014060L15さまは/有馬(ありま)の/湯(ゆ)に入てしやと云。さてはかたわ/故(ゆへ)やみに成 00014070L16たと云こゝろかといへば、/名月(めいけつ)も入てじやと云。そりやな 00014080L17ぜに。ハテ、/御自(こし)分に/闇(やみ)はなけれど、/御(こ)(四ウ)/養生(やうしやう)であろう 00014090L18と云れた。 00014100¥N6¥J 00014110¥X/地震(ちしん) 00014120M3/明六(あけむつ)ツまへに地震ゆり/出(いつ)る。/縄手(なわて)の/元結(もとゆい)屋の/親仁(おやぢ)うろ+ 00014130M4と、となりのいろ/茶(ちや)やを/扣(たゝ)く。/茶(ちや)屋の/花車(くわしや)これをしづめて、 00014140M5/申(もうし)おやぢさま。/朝(あさ)の/間(ま)ハきげんよふ被成。/商人(あきんと)は朝ゑひす 00014150M6が/大事(たいし)の/物(もの)じやと申ますと云。デモ(五オ)/今(いま)の/地震(ちしん)でもと 00014160M7ゆひのよりが/戻(もとつ)たといへば、/抱(かゝえ)のつとめ/女郎(ちよろう)さしいで、/御(お) 00014170M8まへの/御損(こそん)より、わたしハ/悪(わる)ひ/時分(しふん)のぢしんで、ツイ取は 00014180M9づしたと云た。 00014190¥N7¥J 00014200¥X/竹生嶋(ちくふしま) 00014210M12/近江(あふミ)のちくぶしまハ/浮嶋(うきしま)じやといやれど、かてんがいかぬ 00014220M13と云。なるほどうきしまに/違(ちか)ひはない。/先年(せんねん)も/大(おゝ)きな/鯨(くしら)が 00014230M14(五ウ)/下(した)をくゝつて/水湖(ミすうミ)へ/出(て)たと云。ハテ、やくたいもない 00014240M15事。/水海(みつうミ)といへとも/川(かわ)と/同前(とふせん)の/水(ミつ)じや。くじらは/塩(しほ)うみな 00014250M16らで/居(い)ぬものじやと云。いかにも、/其川鯨(そのかわくじら)じやあつたと云 00014260M17れし。 00014270¥P48 00014280¥N8¥J 00014290¥X/猿知恵(さるちゑ) 00014300L3ふたりづれにて/明寺(あきてら)を/見物(けんふつ)する/時(とき)、一人の申さるゝハ、ハ 00014310L4ア/此(この)てらも/漸(やう)+(六オ)三間もあろうと云。/今(ゐま)一人これを 00014320L5とがめて、/凡(およそ)三十けんも/有(あ)る/寺(てら)を、三間とハなぜいやると 00014330L6いへば、ハテ、/十字(じうし)がないといわれた。 00014340¥N9¥J 00014350¥Xあらし/山(やま) 00014360L9/先年(せんねん)は/西国(さいこく)/中国(ちうこく)の/虫入(むしいり)にて、五/畿(き)七/道(とう)まで/米(こめ)が/高(たか)かつたが、 00014370L10/夫(それ)から人がかしかふ成て、いろ+の/喰物(くいもの)に/世帯(せたい)を(六ウ)よ 00014380L11ふ/覚(おほへ)たといへば、今壱人は、/其時(そのとき)の/虫(むし)ハなんと云たぞと/問(と) 00014390L12ふ。ソレハうんかと云むしであつた。そんなら/今(こ)としも/油= 00014400L13断(ゆ=たん)ハならぬ。/夫(それ)はなぜに。ハテ、/三月(さんくわつ)から/嵯峨(さが)のこくざう 00014410L14が/出(て)ると/聞(きゝ)た。 00014420¥N10¥J 00014430¥Xむこ/入(いり) 00014440L17大/坂(さか)の/千日(せんにち)の/御坊(おんほう)、むすめ/一(いち)人もちて/京(きやう)の七/条(ちやう)のおんぼう 00014450L18へ/縁付(ゑんつき)させし(七オ)が、/幸(さいはひ)/今(こ)としハ天王寺/庚申(かうしん)かい/帳(ちやう)ま 00014460L19いりがてら、/聟入(むこいり)すべきよし申/遣(つかわ)す。/千日(せんにち)のかたにハ/此節(このせつ) 00014470M1の/外聞(くわいふん)と、ずいぶんちそうして、/南(ミなミ)/二階(にかい)をさらりと/明(あけ)けれ 00014480M2バ、/住吉(すみよし)から/阿辺野(あべの)まで/一目(ひとめ)に見ゆる。/殊(こと)にその日ハ/諸方(しよほう) 00014490M3の/道(ミち)+より/庚申(かうしん)まいり/群集(くんしゆ)しけれバ、京の/聟(むこハ)/目(め)をおどろ 00014500M4かし、きやうとひ(七ウ)/人(ひと)じやといへば、ナント、きつひ代 00014510M5ものかと、ちまんせられし。 00014520¥N11¥J 00014530¥Xこゝろ/太(ふと) 00014540M8/北野(きたの)ゝ/天神(てんしん)へさんけいするとて、内/野(の)にてところてん/店(ミせ)へ 00014550M9/立(たち)かゝり、/一(いち)ぜんいたそふが/古(ふる)ふはないかと云。/亭主(ていしゆ)きさ 00014560M10くものにて、ところは/新地(しんち)、あきなひはつき/出(た)しで/御座(こさ)る 00014570M11と云。/買(かふ)ふ/人(ひと)(八オ)ぬからぬ/客(きやく)にて、そんならおれが、/水(ミづ) 00014580M12あげせうと云れた。 00014590¥N12¥J 00014600¥X/仮名(かな)つかひ 00014610M15ばせをの/翁(おきな)とつれたち、/京(きやう)の/町(まち)をあるく。申+ばせをさ 00014620M16ま。/目高(めたか)ひ/花(はな)の/都(ミやこ)にも、はくらんの/薬(くすり)ありと/看板(かんはん)が出て御 00014630M17座り/増(ます)と云。ばせをハ何となく、ハテ、はくらん/病(やミ)が/買(かい)ま 00014640M18すと云れし。(八ウ) 00014650¥P49 00014660¥T1 00014670¥G(一オ挿絵) 00014680¥N1¥J 00014690¥X/鳥(とり)さし 00014700L14/道(みち)ばたのごもく/場(ハ)に/雀(すゝめ)おり/居(い)るを、/鳥(とり)さし/見付(ミつけ)てねらひか 00014710L15けけるが、さしそんじ、/古(ふる)さうりをさしければ、/見物(けんふつの)子共 00014720L16/手(て)をたゝき、いかい/下手(へた)じやと/笑(わろ)ふゆへ、/鳥指(とりさし)も/子(こ)どもに 00014730L17わらハれて、/餌竿(ゑさほ)とりなをし、はいてくりよとおもたと云 00014740L18れし。(一ウ) 00014750¥N2¥J 00014760¥X大/矢数(やかす) 00014770M3/大仏(たいふつ)の矢かずけんぶつがてら、/芝(しは)にて/酒(さけ)をのみ、/鮓(すし)など/喰(く) 00014780M4ふて/酔(ゑひ)がまわつたかして、てんでにしやべる/中(なか)に、一人の 00014790M5申は、ナントこんにやくのでんがくを、あんばいよしじや 00014800M6と/売(うる)ハ/無理(むり)じや。/扨(さて)も/梅味(あんはい(ママ))のよふなひものじや。/第(たい)一/此場= 00014810M7所(このは=しよ)へ、あの/商内(あきなひ)は(二オ)させぬがよいと云。なぜに。ハテ、 00014820M8やかずに/味噌(みそ)つけると云た。 00014830¥N3¥J 00014840¥X/螢篭(ほたるかこ) 00014850M11/四条河原(しちやうかわら)にてほたるを/売(うる)人あり。/此(この)あたりのつとめ/女郎衆(ちよろうしゆ)、 00014860M12きやくをつれ出て、此/螢(ほたる)をかふてくだんせと云。/客(きやく)たちも 00014870M13/色(いろ)にせがまれて、なんぼぞと/問(とふ)。/篭(かこ)の/細工(さいく)によつて五匁三 00014880M14匁から(二ウ)御/望(のそミ)/次第(したい)、このちいさい/篭(かこ)がほたる三つ/入(いれ) 00014890M15まして廿文と云。きやくハ/是(これ)+と/取(とり)あげて、此/螢(ほたる)は/光(ひかり)が 00014900M16ないが、/其(その)ひかるのと/替(かへ)てたもと云。螢うり、ぬからぬ/顔(かほ) 00014910M17で、弐拾では/火(ひ)ハとぼしませぬと云た。 00014920¥P50 00014930¥N4¥J 00014940¥Xねぶと 00014950L3さる人、/四書(ししよ)をよみ習ふとて一年もかゝりけれと、/漸(やう)+ 00014960L4/中葉(なかは)までに(三オ)/至(いた)るとき、/内股(うちもゝ)にちいさき/腫物(しゆもつ)を/出(て)かし、 00014970L5/是(これ)は/痒(やう)であろうと/驚(おとろき)さはく故、したしき/友達(ともたち)聞て、それ 00014980L6はねぶとゝいふものじや。ヤウテヤウハ四十/過(すき)ねば/出来(てき)ぬ物 00014990L7じやと云。イヤ+、/痒(やう)であろと云。なせに。ハテ、大/学(がく)にも、 00015000L8もゝのやう+たると/有(ある)と云た。 00015010¥N5¥J 00015020¥Xつかぬ/鐘(かね)(三ウ) 00015030L11/洛中(らくちう)の/釣鐘(つりかね)中間/打集(うちあつま)りて、なんと、ちよこ+/隙(ひま)じや。ぶ 00015040L12らりともして/居(い)られず、此間に/伏見(ふしミ)のしもくへ/行(い)てあそば 00015050L13ふかと、おの+/合点(かてん)してつれだち/下(くた)る所に、大/仏(ふつ)の鐘ハ 00015060L14中間のかしらなれば/乗打(のりうち)にもなるまじと立よれば、/是(これ)ハ 00015070L15+大/連(つれ)にて/何処(どこ)へと/問(と)ハれ、けふは/皆(ミな)+/日間(ひま)ゆへ、し 00015080L16もくへゆかふと(四オ)/と((と衍))云。マアそれハよしにして/被下(くたされ)。 00015090L17なぜに。ハテ、おれがしもくはあげつめと云た。 00015100¥N6¥J 00015110¥X上中下 00015120M1/町(まち)中に桶の/輪(わ)がへをして/居(い)る。/向(むか)ひの/軒(のき)にハやねをふきけ 00015130M2るが、かづらゆひつぶやきて、/同(おなし)/職(しよく)人でも/高(たか)見から/世上(せじやう) 00015140M3を見おろし、人より/上(うへ)にて/渡世(とせい)をするさへあるに、おれら 00015150M4ハ/犬(いぬ)ゑのころにも(四ウ)/蹴(け)ちらされ、/誠(まこと)に+よふない/商= 00015160M5売(あき=なひ)じやと云。/屋(や)ね屋/聞(きゝ)て、/高(たか)見に/居(い)るゆへに/冬(ふゆ)ハ/寒(かん)ざらし、 00015170M6/夏(なつ)は人一/倍(はい)/日(ひ)に/焼(やけ)、/眠(ねむ)れば/落(おつ)る、/中(なか)+/苦(く)のおゝひ/商(しやう)ばい 00015180M7じやと云。又壱人/立聞(たちきゝ)して、是+/上(うへ)を見れバほうづがな 00015190M8い。まだも/下(した)を/見(ミ)やしやれと云。/桶(おけ)屋聞て、おれより下で 00015200M9する/仕業(しごと)があるか。ハテ、おいらは(五オ)/井戸(いと)ほりじやと 00015210M10云れた。 00015220¥N7¥J 00015230¥X/暁空(あかつきそら) 00015240M13ある/旦那(たんな)、たび/立(たつ)事ありて、/明(あけ)六ツに/起(おこ)すのを/取(とり)ちがひて 00015250M14七ツに/出(て)たちくふて、/待(まて)ども+/夜(よ)/深(ふか)ければ、/下(け)人をよび 00015260M15て、ヤイ+、/表(おもて)へ/出(て)て、あかつきの/明星(ミやうしやう)がなんぼ/程(ほと)/出(て)てじ 00015270M16や、見てこいと云。おとこ/飛出(とひいて)、そらをながめ、まだ(五ウ) 00015280M17明星か三十四五こさりますと云。旦那聞て、アノたわけめ。 00015290M18明星か其やうにたんと出るものか。よふ出てからか、五ツ 00015300M19か六ツしやと申されし。 00015310¥P51 00015320¥N8¥J 00015330¥X/生洲町(いけすまち) 00015340L3さる/御出家(ごしゆつけ)、/弟子(てし)ひとりつれて/生洲(いけす)町を/通(とを)りて、/折節(おりふし)うな 00015350L4きのかざを/聞(きゝ)て、/小僧(こぞう)、なんと/喰(くひ)たひかと云。よふ(六オ) 00015360L5/御座(こざ)ろうといへば、/二人(ふたり)共についと/這入(はいり)、/手(て)まへは/焼(やき)やう 00015370L6に/望(のそミ)があるといふ。/如何様(いかやう)にもいたし申さんと云。然は二 00015380L7/尺(しやく)ばかりの/青(あを)き/竹(たけ)の/末(すへ)ぶしを/残(のこ)して、/生(いき)たうなぎをさし入、 00015390L8/醤油(せうゆ)を/一(いつ)ぱい/詰(つめ)て/遠焼(とふやき)にしてたもと云。/亭主(ていしゆ)ハきよつとし 00015400L9て、/左様(さやう)なむごひ/事(こと)は、/俗(ぞく)は/得(ゑ)いたしませぬと云た。(六ウ) 00015410¥N9¥J 00015420¥X三ケの/津(つ) 00015430L12/江戸役者(ゑとやくしや)/萩野(はきの)伊三郎ハ、/舅(しうと)大谷/広次(ひろし)ひさ+/京都(きやうと)づとめゆ 00015440L13へ見/舞(まひ)たきこゝろざし、其うへ/善光寺(せんくわうし)の御開帳も/拝(おか)ミたき 00015450L14/望(のそミ)にて、/俄(にわか)に/上(のほ)らんと/遣(つかひ)金の/才覚(さいかく)に、団十郎を/加(くわ)へて相談 00015460L15すれど、此こんたんも出来す。南北三ぶさし/出(いて)て、まだも 00015470L16大坂の/足曳(あしひき)清八か、京て/米沢(よのさわ)(七オ)彦八か、こゝで/鹿野(しかの)宇 00015480L17左衛門じやあろといふ。ハテ、それはげい/者(しや)がちがふた。 00015490L18なんぼ違ふても、/是(これ)より外に/軽口(かるくち)がないと云。 00015500¥N10¥J 00015510¥X/古風(こふう) 00015520M3/此方(こち)の/親仁(おやち)ハ何事もむかし/風(ふう)にて、/献立(こんたて)なども/当世(とうせい)にはあ 00015530M4はぬといふ。ある日/客来(きやくらい)にて、親仁に/鱠(なます)をもらせければ、 00015540M5/例(れい)のもんもうにて(七ウ)/高(たか)びくなしの/盛分(もりわけ)。これでハ/今日(けふ) 00015550M6のきやくゑは/出(た)されぬとて、こと+く/箸(はし)を/入(いれ)て、/片(かた)+ 00015560M7をへくり、しほらしくけんなどおきならべければ、跡より 00015570M8/親仁(おやち)是を/見(ミ)て、/扨(さて)&よふもつておひたもの、此つまみ/喰(くひ)に 00015580M9ハこまると云た。 00015590¥N11¥J 00015600¥X/老(おい)の/助(たすけ) 00015610M12/陰者(いんしや)とおぼしき/老人(らうしん)、/杖(つゑ)を買ふとて(八オ)/竹(たけ)屋へ/立(たち)より、 00015620M13なんぞをもしろきつゑたけハないかととふ。/亭主(ていしゆ)聞て、こ 00015630M14ゝに一本きれいなる/竹(たけ)をたしなみましたと云。/陰者(いんじや)これを 00015640M15/手(て)に/取(とり)、扨+見事な竹かな。なんとぞ/名(な)が/有(ある)かととへば、 00015650M16竹本儀太夫と申ますといふ。ふしがこまこひと云事かとい 00015660M17へば、イヤ、/手入(ていれ)がよさに/上(じやう)るりと云た。(八ウ) 00015670¥P52 00015680¥T1 00015690¥G(一オ挿絵) 00015700¥N1¥J 00015710¥X/新(にい)たば/粉(こ) 00015720L14ある人、たばこ/壱斤(いつきん)/何(なに)ほどゝ云。壱匁五分といへば、七八 00015730L15分から壱匁までねぎれどもまけぬゆへ、/扨(さて)ハそちは/是(これ)の/旦= 00015740L16那(たん=な)でハあるまひと云。/成程(なるほど)旦那で/御座(こさ)ると云共、イヤ+、 00015750L17/旦那(たんな)とハ見えずとさからへば、/亭主(ていしゆ)以之外/腹(はら)を/立(たて)て、其/侭(まゝ) 00015760L18うちより、/女房(によほう)を引さげていで、(一ウ)さん※に/打(うち)たゝき、 00015770L19ナント、/是(これ)でも旦那でないかと云れた。 00015780¥N2¥J 00015790¥X絵すかた 00015800M3/遠国(へんこく)の御屋/舗(しき)がたへ出入する/商人(あきんと)、其御屋/形(かた)の御/袋(ふくろ)八拾五 00015810M4才にて/落命(らくめい)被成候ゆへ、其/影像(へいそう)をうけ取上る。/則(すなハち)/絵師(へし)にち 00015820M5かづき、御ふくろ/生前(せうせんの)/姿(すかた)物がたりしけれど、/推量(すいりやう)にてす 00015830M6みがた(二オ)し。/存付(そんしつき)たる事あり。八十あまりのばゝ様へ 00015840M7/貴(き)様/同道(どう+)して/見(ミ)せ申さんと/誘(さそ)ひ/行(ゆく)。/併(しかし)/案(あん)内なくてハ/如何(いかゝ)と、 00015850M8/絵師(ゑし)/斗(はかり)内へはいり、/去(さ)ルかたより其元様見申/度(たい)と頼れ候間、 00015860M9見られて/被遣(つかわされ)と云。/成(なる)ほど心安御事と云バ、しからバ/追(おつ)付 00015870M10つれだち参らんと、/表(おもて)へ/出(で)る/処(ところ)をよび/返(かへ)し、/是(これ)+/絵(ゑ)や/殿(どの)。 00015880M11(二ウ)その御人に/継子(まゝこ)はないかと云れし。 00015890¥N3¥J 00015900¥Xおとりこし 00015910M14/田舎人(いなかひと)、/堺(さかい)のをとりこしに/登(のほ)るとて、/日暮(ひくれ)に/一類(いつるい)のかたへ 00015920M15/着(つき)けれバ、与五兵衛殿か。さてもよふのぼられたり。/幸(さいわい)け 00015930M16ふはうらに/水風呂(すいふろ)もあり。/拙者(せつしや)も/今(いま)あがりし/跡(あと)あきて、よ 00015940M17い/処(ところ)なり。うらへ/行(い)ていらしやれと云。/田舎人(いなかふと)うち/悦(よろこ)ひて 00015950M18うら/中(ちう)たづね(三オ)けれども見えざる故、/是(これ)成らんと/井(い)の 00015960M19/本(もと)へ/這(はい)る。/亭主(ていす)ハ/飯(めし)こしらへ、/待(まち)てくらせどあがらんゆへ、 00015970¥P53 00015980L1/風呂(ふろ)を見れどもいずして、/井(い)のうちに/声(こゑ)すなり。/是(これ)+お 00015990L2やぢどの。そこは/井(い)のもと。/扨(さて)+そゝな。はよふ/上(あか)らし 00016000L3やれと云。田舎人/下(した)から、イヤ+、もふ/上(あか)りますまひ。な 00016010L4ぜに。是から/直(すく)に/在所(さいしよ)へゐんだが、ちかふ御座ると云た。 00016020L5(三ウ) 00016030¥N4¥J 00016040¥X/石橋(しやつきやう) 00016050L8さるもんな同士、なんと/菊之丞(きくのてう)が石橋を見にゆかふとて、 00016060L9/道頓堀(どうとんほり)へ/行(ゆき)て/木(き)戸へかゝれども、中+大入リにてよりつ 00016070L10きがたし。それより/生(いく)玉へふら+/行(ゆく)/処(ところ)に、/辻能(つしのふ)より、/石= 00016080L11橋(しやつ=きやう)じや+と/呼(よひ)かける。一/人(にん)申けるハ、菊之丞が石橋をし 00016090L12てはやるとて、/今(いま)ハ/能(のふ)にさえ、しやつきやうを(四オ)しを 00016100L13るといわれた。 00016110¥N5¥J 00016120¥X/庚申(かのへさる) 00016130L16/大坂(おゝさか)天王寺かうしんの/開帳(かいちやう)にくたり、/私(わたくし)ハてならひ/修行(しゆきやう)の 00016140L17ため/参(まいり)りましたと/立願(りうくわん)すれば、/庚申(かうしん)の給ふは、/汝(なんち)がねかひ 00016150L18/処(ところ)ちかひつれ。/夫(それ)ハ/天神(てんしん)の方へたのめと/仰(おふせ)られしゆへ、此 00016160L19/男(おとこ)うつふき、/成(なる)ほど+、/外(ほか)へもだん+申ましたれども、 00016170M1手が上リ(四ウ)ませぬと云。さほどに/天神(てんしん)へたのんでも/得(ゑ) 00016180M2/書(かゝ)ねは、おれも代まちじやといふた。 00016190¥N6¥J 00016200¥X/竹光(たけミつ) 00016210M5さる人、やゝもすれば/脇指(わきさし)の/反(そり)うちさゝるゝゆへ、/是(これ)+、 00016220M6/貴様(きさま)のわきざしハ/反(そり)が/打(うつ)てあると云。此/人(ひと)、こしへ手をか 00016230M7けて、ヱヽ/風(かぜ)でと云れた。(五オ) 00016240¥N7¥J 00016250¥Xすまふ 00016260M10江戸/深川(ふかかわ)のすまふに、とび/入(いり)と云て三ばんながら/勝(かち)たる故、 00016270M11/名乗(なのり)はなんと申ぞと/問(と)ふ。イヤ、/私(わたくし)ハなのりはこざらぬと 00016280M12云ゆへ、そんなら所ハ/何処(とこ)じやといへば、/本町(ほんてう)壱丁目/現銀(けんきん) 00016290M13かけねなしじやと云。それでこそ/負(まけ)ぬはづじやと云れた。 00016300M14(五ウ) 00016310¥N8¥J 00016320¥X善光寺 00016330M17/信濃(しなの)のぜんくわうじ、/今度(こんと)京にて三度目の御/開(かい)帳じやが、 00016340M18所がよいほどに参があろうと云て、いろ+の見せものゝ 00016350M19中に、/鬼子(おにこ)じや+と云。さる人見れバ、/随(すい)分うつくしき 00016360¥P54 00016370L1/娘(むすめ)也。/是(これ)ほどきれいに/生(むま)れつきし/子(こ)を鬼子とハ云ぞととへ 00016380L2ば、されば、あの/子(こ)の/母(はゝ)ハ/顔(かほ)がいがんで、(六オ)みつちや 00016390L3で、がんちじや。それで/親(おや)に/似(に)ぬ/子(こ)ハ/鬼子(おにこ)じやと云れた。 00016400¥N9¥J 00016410¥Xはやりもの 00016420L6/米(こめ)が/高(たか)ひて、/一朝(ひとあさ)ハ/茶粥(ちやかい)をはじめければ、/男子(むすこ)こゞと云て、 00016430L7さてもしるふてどふもならぬと云。/親仁(おやち)はらを/立(たて)て、それ 00016440L8ほどしるくば、/下駄(げた)はひて/喰(く)へと云れた。(六ウ) 00016450¥N10¥J 00016460¥X/彦八(ひこはち) 00016470L11/米沢(よねさわ)彦八、/御影堂(ミゑいとう)の/入口(いりくち)にしばいを/立(たて)るゆへ、さる人さし 00016480L12でゝ、/本堂(ほんとう)/後(うしろ)にして、くちニ/居(い)るハよふあるまひ。ひらに 00016490L13/奥(おく)ゑいきやと云ば、/彦(ひこ)八がてんせず、人はかく/別(へつ)、/此方(このほう)お 00016500L14くへならぬと云。/夫(それ)ハなぜに。ハテ、ねが/口(くち)で過(すき)る/商売(せうはい)じ 00016510L15やと云た。 00016520¥N11¥J 00016530¥Xせいじん(七オ) 00016540L18さる人、あまり/我子(わかこ)をほめらるゝゆへ、/扨(さて)+/其元(そこもと)の御/子= 00016550L19息(し=そく)は、/何(なに)を被成ても御きりやうで御座る。人が/聖人(せいじん)じやあ 00016560M1ろと云ますといへば、/親仁(おやち)かつに/乗(の)り、/聖人(せいしん)かして、/終(つい)に 00016570M2/夢(ゆめ)ハ見ませぬと云た。 00016580¥N12¥J 00016590¥X/京(きやう)の/冬篭(ふゆこもり) 00016600M5△○/鐘(かね)の/音(ね)は/諸方(しよほう)/無用(むやう)とひゞくなり 00016610M6△△△/鶏(にハとり)たのむ/番(ばん)のひやうし木(七ウ) 00016620¥P55 00016630¥T1 00016640¥G(一オ挿絵) 00016650¥N1¥J 00016660¥X/木食(もくぢき) 00016670L14木食正/禅(せん)様に、申+、/御前(おまへ)ハ此たびの万日が/過(すき)たら/定(ぢやう)に 00016680L15入しやると/承(うけたまわ)りましたが、今にそうして御座るが、入は被 00016690L16成ませぬかと云。イヤ、/此方(このほう)から/左様(さやう)に申ハいたさぬとい 00016700L17へども/合点(かてん)せず。デモ、町(まち)中で/評判(ひやうはん)が御座ると云。成ほと 00016710L18+、/此堂(このとう)をたてるとき、/紙袋(かミふくろ)をまわしまし、日の(一ウ) 00016720L19/岡(おか)の車道のときも/出(た)しまして、二/度(と)共/米(こめ)二合五/勺(しやく)入やう 00016730M1にしましたけれど、こんどの万日は壱舛袋を/廻(まわ)した/故(ゆへ)、/何= 00016740M2処(ど=こ)でも/定(ぢやう)に/入(いる)+と云ます。 00016750¥N2¥J 00016760¥X/宗論(しうろん) 00016770M5文/盲(もう)な人/集(あつま)りて/仏法(ふつほう)はなしするとて、なんと、/釈迦(しやか)より/伝(つた) 00016780M6はりし/花厳(けこん)・/阿厳(あこん)・ほうどふ・/盤若(はんにや)・/倶者(くしや)・じやうじつ・ 00016790M7/法華(つけ)・ね(二オ)はんといへども、天/台(たい)・しんごん・/浄土(しやうと)・ 00016800M8日/蓮(れん)・一/向(かう)などゝ加/増(そう)もせしが、其中で/仏(ほとけ)に成よい/法(ほう)は、 00016810M9どれであろうと云。いつち/御門徒宗(こもんとしう)がよいそふな。なぜに。 00016820M10ハテ、/他宗(たしう)のぼんさまが、/門徒(もんと)宗のまねさつしやるといふた。 00016830¥N3¥J 00016840¥X/蛭子祭(ゑひすまつり) 00016850M13十月廿日ハゑびす/講(かう)とて、嘉/例(れい)の(二ウ)/客(きやく)のほうへ/手紙(てかミ)を 00016860M14/遣(つかわ)す。/今(こん)日ハ/手前(てまへ)の/夷講(ゑひすかう)にて御/座(さ)候/間(あいた)、早&御出あおく/処(ところ) 00016870M15ニ候。以上/仙(せん)右衛門様参る。としたゝめて遣す。仙右衛 00016880M16門/状(しやう)ひらき見て、殊の外にはらをたて、此/寒(さむ)ひ/時節(しせつ)、/早(そう)& 00016890M17御出あをくとハ何事じや。まだも御出被下候ハヽ/火燵(こたつ)も有 00016900M18之処ニ候と、かきそふなものじやと云れた。(三オ) 00016910¥P56 00016920¥N4¥J 00016930¥Xかるわさ 00016940L3/長崎(なかさき)きりん/太夫(たゆふ)がかるわざを/見(ミ)て、/綱(つな)のうへで/三番三(さんはそう)ふむ 00016950L4は、よふかね/合(あい)を/覚(おほへ)たものじやと云。/又(また)一人のいふは、イ 00016960L5ヤ+、綱の/上(うへ)でなら三番三もふまひじや。/此方(こち)の/町(ちやう)の/宿= 00016970L6老(しゆく=らう)殿ハ、/酒(さけ)の/上(うへ)ですまふとりやつたと云れし。 00016980¥N5¥J 00016990¥X/口(くち)あひ(三ウ) 00017000L9七十あまりの/老(らう)人、/加茂(かも)の/競馬(けいば)見にゆくと云。コレ+、あ 00017010L10の/人(ひと)ごみへいらざる事と云ば、イヤ+、/馬場(はゝ)さきでいたす 00017020L11のがたのしみじやと云。ハテ、すしな/祖父(ぢゝ)じやといへば、 00017030L12そりやわがミが/生(なま)なれじやと云た。 00017040¥N6¥J 00017050¥X/返(はん)こん/香(かう) 00017060L15ある/里(さと)の/遊女(ゆうちよ)、はからず/病(やミ)て/死(しゝ)たり。/年月(としつき)なしみたる/客(きやく)あ 00017070L16りて、なげき(四オ)/悲(かな)しむ/事(こと)かきりなし。/伝(つたへ)きく/返魂香(はんこんかう)を 00017080L17たけば/恋(こひ)しき人の/面影(おもかけ)もあらはるゝとかや。イザ/返魂香(はんこんかう)と 00017090L18/火鉢(ひはち)へくべければ、/忽(たちまち)けむりの/中(うち)にあらわれ、あらなつか 00017100L19しやと、一ツふたつもの云て、/遊女(ゆうちよ)は、おいとま申/増(ます)と、 00017110M1さらんとするを、これ+、/久(ひさ)しぶりのたいめん。せめて 00017120M2/今(いま)しばしと、うらみ/歎(なけき)てとゞめけれハ、サア(四ウ)わしも 00017130M3爰に居たいけれとも、方+て御さんすと云た。 00017140¥N7¥J 00017150¥X/願(ねか)ひ/地(ち) 00017160M6/大坂(おゝさか)西/高(かふ)津といふ処、/新立地(しんたてち)に/成(なり)けるが、/誠(まこと)にむかしはふ 00017170M7け/田(た)にて、/鴈鴨(かんかも)の/寝所(ねところ)なれバ、田地を/当(あて)にして/秋冬(あきふゆ)わたり 00017180M8/来(き)たるといへども、おの+/色茶(いろちや)屋に/成(なり)て、二/階(かい)/下座敷(したさしき)と 00017190M9さわきけるゆへ、(五オ)/鴈(かん)かも/腹(はら)を/立(たて)て、やにわに/乱(ミた)れ/入(いり)、 00017200M10/客(きやく)たちの/月代(つむり)をつゝきける。きやく/衆(しゆ)ハあきれたる/顔(かほ)にて、 00017210M11ヤイ+/鳥(とり)ども。おのらは/酒(さけ)にゑいたるか。なぜふけ/田(た)ゑは 00017220M12/行(ゆか)んぞと云ば、がんかも/口觜(くちはし)をそろへ、さてハこゝらへ/来(く) 00017230M13る客も、/根(ね)がどろじやそふなと云た。 00017240¥N8¥J 00017250¥Xかうやく(五ウ) 00017260M16/神鳴(かミなり)ふミはづし、足(あし)をくじき/難儀(なんき)のていを聞て、/風(かせ)の/神(かミ)よ 00017270M17り/見舞(ミまひ)に/行(ゆき)て、/寒(かん)のうちの御けがとハ/珍(めす)らしゝ。/何分(なにふん)かう 00017280M18やくでも/張(はり)たまへといへば、/如仰(おふせの)むら/上(がミ)やら/音羽(おとわ)やらふし 00017290M19ミの/赤(あか)かふやく、/御幸町(こかうまち)のめむきまで/付(つけ)たれと、なをりま 00017300¥P57 00017310L1せぬと云。風の神聞て、/貴様(きさま)には/外(ほか)のかうやくハきくまひ 00017320L2と云。なぜに。ハテ、(六オ)/雨(あめ)のもりがよかろと云た。 00017330¥N9¥J 00017340¥X/御触(をふれ)ながし 00017350L5さる/国(くに)かたの/若殿(わかとの)を/鶴松(つるまつ)様と申御触にて、/領分(りやうふんの)もの、/指合(さしあふ) 00017360L6名はこと+く/付(つき)かわるといへども、/門徒宗(もんとしう)の御仏だんに 00017370L7/有(ある)鶴亀ハなんとせうと、/道場(とうぜう)の/御寄講(およりかう)へ申出けれバ、/皆(ミな) 00017380L8+/小首(こくひ)をかたむけて、/如何様(いかさま)つる亀がのふてすミがたし。 00017390L9名を(六ウ)かへて、/鴉(からす)の/鴈(かん)のと/口(くち)+に云。/講頭(かうかしら)罷出、 00017400L10/鷺(さき)がよかろうと/決定(けつちやう)して、/鷺亀(さきかめ)ととなへければ、/御住寺(おしうし)さ 00017410L11し出て、/向後(きやうかう)鷺亀といふて/被下(くたされ)ては、どじやうのなん義じ 00017420L12やと申されし。 00017430¥N10¥J 00017440¥X/敵(かたき)うち 00017450L15とし比ほう※と/敵(かたき)をつけねろふニ付、/友達(ともたち)へもかね+ 00017460L16かたきの/形(なり)かつかう(七オ)/委(くわし)く物がたりして、/何方(いつかた)にても 00017470L17/見当給(ミあたりたま)ハヽしらされよと/頼置(たのミおき)けるが、有時/友(とも)だち、/俄(にわか)には 00017480L18しり/来(き)たり、御たのミ被成しもの、/只今(たゝいま)/上(かミ)の/町(てう)にて見かけ 00017490L19しが、御/尋(たつね)のかたきならん。/早&(そう+)/御本望(こほんもう)とげられよと云。 00017500M1/先(まつ)/以(もつて)/忝(かたしけ□)し。ソレ/女房(にやうほふ)ども。/火燵(こたつ)へ/白(しろ)むくかけよと云れし。 00017510¥N11¥J 00017520¥X/無分別(むふんへつ)(七ウ) 00017530M4ならず/者(もの)とよバれし/若(わか)ひもの/弐(に)人いふやう、ナント、/極月(こくけつ)も 00017540M5廿七日に/成(なつ)て、こし銭も壱/銭(せん)のあてなし。/貴様(きさま)と申合せ、 00017550M6/粟田口(あわたくち)へ出たら/大津(おゝつ)/往来(おふらい)の金銀(きんぎん)をこゝろかけふと云。そん 00017560M7なら/粟田口(あわたくち)ハ人の/用心(やうしん)をする所じや。/小関(こせき)のほうがよかろ 00017570M8うと、/二人(ににん)/打(うち)うなづき/山(やま)かげに/待居(まちい)る/所(ところ)へ、壱人/小(こ)ちやう 00017580M9ちん/提(さけ)て/通(とを)る。さいわひ/首筋(くひすし)には(八オ)おちがへも/見(ミ)ゆる。 00017590M10よい/首尾(しゆひ)なりと/其侭(そのまゝ)/仕(し)かけ、/酒手(さかて)をおひてゆけといへば、 00017600M11/小銭(こせに)は/無(ない)といふ/処(ところ)を、壱人うしろへ/廻(まわ)り、/首筋(くひすし)へ/手(て)をかく 00017610M12る。/心得(こゝろへ)たりと/取(とつ)て/投(なけ)る。/今(いま)一人は、やらじと/前(まへ)へまわれ 00017620M13バ、どつこひと/谷(たに)へなげる。二人共に/死(しぬ)るほどなる/目(め)を/見(ミ) 00017630M14せて/通(とおり)りけるが、/漸(やう)+/起(おき)あがり、をれがかふあろとおも 00017640M15ふて粟田口といふたに。(八ウ)/小(こ)ぜきは/常(つね)からが/用心(やうしん)のわ 00017650M16るひところじやと云た。 00017660¥N12¥J 00017670¥X/新店(しんミせ) 00017680M19さる人、はしめて/醤油(せうゆ)屋をおもひ立けるが、/詰樽(つめたる)より/斗(はかり)や 00017690¥P58 00017700L1らんとすれども、/呑口(のミくち)より/出(て)かねし/故(ゆへ)、/如何(いかゝ)せんとおもふ 00017710L2/所(ところ)え、/買手(かいて)/気毒(きのとく)がりて、/樽(たる)のかゝミにきりもみすれば/自由(じゆう) 00017720L3に/出(て)るものと云。/亭主(ていしゆ)(九オ)/聞(きゝ)て/泪(なミた)をながし、さしうつむ 00017730L4きて/居(い)る故、/恥(はち)をかいたとおもふてなげき/給(たま)ふか。誠にと 00017740L5ふは一たんのはぢとて、すこしも/大事(たいし)ないことゝなだむれ 00017750L6バ、/曽(かつ)て/夫(それ)がくち/惜(おし)ふてなくでハなひが、/只今(たゝいま)ならひし/事(こと) 00017760L7を三/年(ねん)/己前(いせん)に/知(しつ)たら、/親父(おやち)ハ/死(しな)しハせぬと云。それハなぜ 00017770L8にと云。されバ/私(わたし)が/親人(おやひと)は、/小便(せうへん)つまりで/相果(あいはて)(九ウ)られ 00017780L9しが、かふした/事(こと)をそんじたらバ、あたまへきりもりせう 00017790L10ものと云た。 00017800¥N13¥J 00017810¥X/人形(にんきやう)うり 00017820L13/火事(くわし)/最中(さいちう)に/風下(かさした)へ/箱(はこ)をおろして/腰(こし)をかけ/居(い)るゆへ、/何(なに)もの 00017830L14なれバ/其(そこ)ゑ/箱(はこ)をおろすといへば、/此箱(このはこ)の/中(なか)は/皆(ミな)けし/人形(にんきやう)で 00017840L15/御座(こさ)ると云た。(十オ) 00017850¥Q 00017860M3@軽△口|はなし@△福△お△か△し@全五冊|△出来@@去申年△|△△新板@ 00017870M5@軽△口|はなし@△春△ふ△く△ろ@全五冊|△出来@@当酉年△|△△新板@ 00017880M7@軽△口|はなし@△耳△△過△△宝@全五冊|△出来@@来戌年△|△△新板@ 00017890M9とし+新作軽口はなし 00017900M10外題御しらせ申候御求可被下候己上 00017910M11△元文六年△△△△△京寺町通五条上ル所 00017920M12△△△△酉正月吉日△△△△額田正三郎板(十ウ) 00017930¥P59 00017940¥U噺本大系△第八巻 00017950¥T軽口耳過宝 00017960¥G 00017970¥Y 00017980L16寛保二年刊 00017990L17風之作・序 00018000L18半紙本五巻 00018010L19東大国語研究室蔵 00018020¥Y口序 00018030M3/爽(わつさり)とした春のはじめの旦より、よい事はおぼへ、/悪(わる)ひこ 00018040M4とハ聞ぬが/花(はな)の都の耳過宝と、此/題号(たいかう)を定て、紅葉かこひ 00018050M5の山/陰(かけ)に持入、秋冬の/手業(てわさ)にふるひたる枝は打おとし、つ 00018060M6かゆる枝ハたはめもして、/斧(をの)をからりと(一オ)捨た処か、 00018070M7/軽口(かるくち)五つ/巻(まき)と成ル。より附に/祭(まつり)はなしを/絵(ゑ)に/写(うつ)したれバ、 00018080M8わらひのおゝひ/土産艸(ミやけくさ)とは、/福太夫(ふくたゆふ)が初うりの御評判+。 00018090M10△△△寛保二つのとし△△△△△△洛風之 00018100M11△△△△戌正月二日から△△△△△△△△△集ル(一ウ) 00018110¥P60 00018120¥T1 00018130¥G(二オ挿絵) 00018140¥N1¥J 00018150¥X/耳過宝(みゝくハほう) 00018160L14▽さる人申さるゝハ、此中こちの/娘(むすめ)をてら入させけるが、 00018170L15/伊勢(いせ)物がたりを/習(なら)ふといふゆへ、よませて/聞(きい)たが、伊勢へ 00018180L16まいつたこゝ地がするといはれた。 00018190¥N2¥J 00018200¥X/初芝居(はつしばゐ) 00018210L19▽/西(にし)の宮から大坂の/町(まち)中を、/海老(ゑび)ぞう※と/売(うり)あるく故、 00018220M1こりや/団(だん)十郎とよべば、/売(うり)(二ウ)手/頓作(とんさく)ものにて、あいと 00018230M2いふ。一ト/舛(ます)いくらじやといへば、百三十里といふ。ハテ、 00018240M3きついかけ/直(ね)じや。/扨(さて)ハ江戸から大坂/迄(まで)の/道法(みちのり)でいふたか。 00018250M4そんなら、をれも五十三/次(つぎ)で/買(かを)ふといふ。おもしろい。ま 00018260M5けませうと、三/舛(ぜう)はかるゆへ、是れ+、壱/舛(せう)でよいとい 00018270M6へば、それでも、ゑびぞうハ/$(ミます)じやといふた。 00018280¥N3¥J 00018290¥X/賃取船(ちんとりふね) 00018300M9▽津の国の川むかひから、/女房(にようぼ)を/持(もち)けれど、(三オ)もはやあ 00018310M10きめが/来(き)て、/明(あけ)すけに申/出(いだ)し、/久(ひさ)※なじミたるそなたな 00018320M11れど、いとまをやるぞ。いんでくれよといふ。/女房(にようぼう)もなミ 00018330M12だながらもせんかたなく、/髪(かミ)かたちをつくろい、/嫁入(よめり)せし 00018340M13/時(とき)の/小袖(こそで)を/打(うち)かさね、すげ/笠(がさ)/片手(かたて)に出る/所(ところ)を、/男(おとこ)つく※ 00018350M14見て、/拵(こしらへ)た/風俗(ふうそく)、又なひ女房じやが、一トたびいねとい 00018360M15ふたハ今さら/留(とめ)やうもなしと、川ふねに/竿(さほ)さして/送(をく)りける 00018370M16が、/堤(つゝミ)に/船(ふね)を(三ウ)つけて、もはやさらバといふ。/男(おとこ)/声(こへ)を 00018380M17かけ、/是(これ)+/船賃(ふなちん)ハといふ。ハテ、/今迄(いまゝで)のなじミに、さ/程(ほど)の 00018390M18事をといふ。イヤ、/舟(ふな)ちんがなくば、/跡(あと)へもどれと云た。 00018400¥P61 00018410¥N4¥J 00018420¥X/目利(めきゝ)ちがひ 00018430L3▽ある人、/奴(でつち)を/置(をく)とて、三月の/出替(でかハり)を/待(まち)て、ほう※と/頼(たのミ) 00018440L4けるが、/出(で)入する四右衛門といふもの、/夜中(やちう)に/一人(ひとり)つれ/来(きた) 00018450L5り、御/約束(やくそく)の/小供(こもの)で御ざるといふ。/旦那(だんな)よろこび、けつこ 00018460L6う/気(き)に入たり。(四オ)いざ/所(ところ)をきかんといふ。/何所(いづく)と/仰(をゝせ)ら 00018470L7るゝ。ハテ、/武蔵(むさし)の/者(もの)じやといふ。/成(なる)ほど/国(くに)ハ/合(あひ)ましたが、 00018480L8/在所(ざいしよ)ハといへば、/目黒(めぐろ)であろといふ。イヤ、/夫(それ)ハ/方角(ほうがく)がちが 00018490L9ひました。そんならどこじや。めじろの/者(もの)といふ。/旦那(だんな)せ 00018500L10んかたなく、/夜(よる)のでつちハ/白黒(しろくろ)がわからぬといはれた。 00018510¥N5¥J 00018520¥X/新(しん)手かゝミ 00018530L13▽/近年(きんねん)ハ世が/高上(かうじやう)に成て、/何所(いづく)も手/鑑(かゝミ)が(四ウ)はやるが、 00018540L14/誹諧師(はいかいし)のばせを/翁(をう)ハ、まだ五拾/年(ねん)の人じやが、手かゞミに 00018550L15くハへられた。/如何(いか)さま/道徳(とうとく)が/揃(そろ)ふて、/手跡(しゆせき)が又かく/別(へつ)じ 00018560L16やといへは、/文盲(もんもう)なる人/聞(きい)て、それ/程(ほど)よい/手(て)なら、/勅筆(ちよくひつ)と 00018570L17ゆひそうな物じやと云れた。 00018580¥N6¥J 00018590¥X三国一 00018600M1▽ある京の人、大津に/泊(とま)り/合(あハ)せて/相客(あいきやく)に/近(ちか)づき、/其元(そこもと)ハ/何= 00018610M2国(いつ=く)でこざるととふ。/遠(おん)国で(五オ)御ざるといふ。/何(なん)と申ス 00018620M3御/国(くに)じやととふ。はづかしながら/駿州(すんしう)で御ざるといへば、 00018630M4サテモきついひげをなさるゝ。/寔(まこと)にするがハ三/国無双(ごくふさう)の/冨= 00018640M5士(ふ=じ)の山と申、中+/名(めい)所などの事、るいのなき御/国(くに)じやと 00018650M6いふ。イヤ、あの/不二(ふじ)も、さのミどつとも申されませぬ。ナ 00018660M7ゼニ。/根(ね)が、いなか山で御ざるといはれた。 00018670¥N7¥J 00018680¥X/精進割(しやうしんわり) 00018690M10▽物ごとに/理屈(りくつ)をいふ人のかたへ見まひ(五ウ)けるが、/余= 00018700M11所(よ=そ)より/有気(うけ)入の/振廻(ふるまひ)とて、/廻文(くわいぶん)を見て/点(てん)をかけてやらるゝ 00018710M12ゆへ、/貴様(きさま)、/明日(あす)ハ御/親父(しんぶ)の日じやが、/夕飯(ゆふはん)に/行(ゆか)るかと云。 00018720M13ハテ、/当(とう)世の/精進(しやうじん)をしらずと見ゑた。/親父(おやぢ)なれハ/朝(あさ)、/母(はゝ)なれ 00018730M14ハ/夕食(ゆふめし)じや。/子供(こども)のが/昼(ひる)めし。/其外(そのほか)ハ/夜食(やしよく)が/精進(しやうじん)じやと申 00018740M15された。 00018750¥N8¥J 00018760¥X正月/言葉(ことば) 00018770M18▽/新参(しんざん)のはいでを/置(おい)て、ヤイ、そちが/在所(ざいしよ)でハ(六オ)どふい 00018780M19ふとも、/京(きやう)でハ正月ことばといふて、/茶(ちや)を/持(もつ)とても、/大(をゝ)ぶ 00018790¥P62 00018800L1く/上(あ)ゲませうといふがよひと、かねていゝ/聞(きか)せけるが、二 00018810L2月になれども大ぶくといふ故、/主人(しゆしん)おかしく思ひ、コリヤ、 00018820L3大ぶくとハ正月ばかりの事。今ごろハ/聞(きゝ)にくいといへば、 00018830L4ハテ、六月/朔日(ついたち)/迄(まで)ハ申ますといふた。 00018840¥N9¥J 00018850¥X/殿(との)の/白米(はくまい) 00018860L7▽ある人、/米(こめ)ふミを/雇(やと)ふて、コレ、此/米(こめ)は(六ウ)/殿(との)のまいる 00018870L8のじや。ねんの入てふみやと云。/暫(しハらく)/過(すき)て/中食(ちうしき)/時分(じぶん)にて、 00018880L9三ぜん/喰(く)ても四/膳(ぜん)くてもたらずして、五ぜん/迄(まて)くふ/故(ゆへ)、/亭= 00018890L10主(てい=しゆ)あきれて/米(こめ)ふミをまねき、/是(これ)まてハゑちぜんからのほる 00018900L11をやとひふませけるか、/中(ちう)食も二せんか三膳でよかつたか、 00018910L12そなたハ大しよくをしやるゆへ、そろばんにかゝらぬとい 00018920L13ふ。/米(こめ)ふミ/聞(きい)て、わたくしも(七オ)/越前(ゑちぜん)や加/賀(か)をふミまし 00018930L14た/時(とき)ハ、/其(その)くらひですミましたが、/今日(けふ)のハ/御前米(ごせんまへ)と/仰付(をゝせ) 00018940L15らるゝ故、/御時宜(おじき)なしにくだされたといふた。 00018950¥N10¥J 00018960¥X/百性引(もさひき) 00018970L18▽/都(ミやこ)の/春(はる)ハ/諸国(しよこく)より/道者(どうしや)/登(のほ)り/込(こミ)て、/宿(やど)屋のかねもふけと成 00018980L19事ぞかし。/一組(ひとくミ)にひとりづゝの/案内(あんない)をつけて/出(いた)す。/先(まづ)/東(ひかし) 00018990M1(七ウ)/本願寺(ほんぐハんじ)へつれ/行(ゆき)、/是(これ)か/山門(さんもん)じやといへば、銭三文づ 00019000M2ゝ/土間(どま)へなげ/通(とを)る。/又(また)/本堂(ほんどう)へ/行(ゆき)、/是(これ)が/御門跡様(ごもんぜきさま)じやといへ 00019010M3ば、おの+五文づゝなげけるが、/片(かた)+ゑこぞり/寄(より)て、 00019020M4/何(な)ンと、あの三十の/橋(はし)から五十のはしも/銭(せに)とハいわないか、 00019030M5どこで/出(だ)す事だといふ。一人小ざかしき/者(もの)、あれハ/宿(やと)の/請= 00019040M6込(うけ=こミ)にして、一/割(わり)づゝ/刎(はね)るであらずといふた。(八オ) 00019050¥N11¥J 00019060¥X/外科(げくハ)しまひ 00019070M9▽さるかたより、/赤貝(あかがい)を/台(だい)につミ/進物(しんもつ)に/来(き)たりしを、/下男(しもおとこ)、 00019080M10ひたとせゝりければ、小/指(ゆび)をはさまれて大キにいたむゆへ、 00019090M11/外料(げくハ)を/呼(よび)て見せけるが、/怪我(けが)のしさいを/問(とハ)るれども、/赤貝(あかがい) 00019100M12にくハれた共/得(ゑ)いわず、もぢ※する故、/外料(げくハ)もさしうつ 00019110M13むきうかゞひしが、/男(おとこ)/小(こ)ごゑにて、(八ウ)/赤貝(あかがい)にはさまれ 00019120M14しといふ。/外料(げくハ)心得すぎ、まだ、ゆびで御/仕合(しあハせ)じやといは 00019130M15れた。 00019140¥N12¥J 00019150¥X/安楽(やすらひ)まつり 00019160M18▲さる/女房(にようほ)、/祭(まつり)/見物(けんぶつ)に/行(ゆき)けるが、/着(きる)ものゝつまに/酒(さけ)のかゝ 00019170M19りけるゆへ、/顔(かほ)うちあかめてふいて/居(ゐ)るを、かたハらの女 00019180¥P63 00019190L1中/是(これ)をミて、/気(き)のどくさうに、さてもめして御ざるハよい 00019200L2もやうじや。何と申ものと/問(とい)ければ、(九オ)これハやすら 00019210L3ひ花でござりまするといふ。女中さてハ/地(ち)が/西陳(にしちん)の/絹(ねりもの)と 00019220L4いふこゝろで御ざんすかといへば、イヽヱ、そうじやござ 00019230L5んせぬ。かつたる/小袖(こそで)といはれた。(九ウ) 00019240¥T1 00019250¥G(一オ挿絵) 00019260¥N1¥J 00019270¥X/住吉(すミよし)おどり 00019280M15▽サア、すみよしさまのきしのひめまつめでたさよと、さる 00019290M16/米(こめ)屋の/門(かど)にて/踊(おど)れバ、/亭主(ていしゆ)、/紙袋(かミぶくろ)一ツ/指出(さしいだ)しけり。/是(これ)ハ+ 00019300M17御めでたい御はんじやうのずいそう。/今(いま)一トおどりと、サア、 00019310M18住吉さまの/岸(きし)の/米松(こめまつ)御めでたやと、かの/袋(ふくろ)を/箱(はこ)に入、/其夜(そのよ)/ 00019320M19/宿本(やどもと)にてあけて見たれハ、/上砂交米(うハづこを)であつた。(一ウ) 00019330¥P64 00019340¥N2¥J 00019350¥Xよしハら/雀(すゞめ) 00019360L3▽ある人江戸のよしハらにて/遊(あそ)ひ、/揚(あげ)代/払(はら)ふとて、金子弐 00019370L4/朱(しゆ)と/銭(ぜに)百文とを/遣(つかハ)し、/与風(ふと)あだくちに、/秋(あき)の田のかりほの 00019380L5いほの、といふて/止(や)ミけるが、女郎/耳(ミヽ)にさハりて、もふし、 00019390L6/夫(それ)ハ百弐/朱(しゆ)の哥かといふた。 00019400¥N3¥J 00019410¥X/手帳(てちやう)/小町(こまち) 00019420L9▽小/野(の)ゝ小町ハ見めかたち、/美人(びじん)の/名(な)/高(たか)く、(二オ)/哥(うた)ハ世 00019430L10にしれる所也。/誠(まこと)に一ト/目(め)見し人、/恋(こひ)+て、/日(にち)+の/袂(たもと) 00019440L11に/千束(ちつか)の/文(ふミ)を/通(かよハ)しけれど、/心(こゝろ)つよかりけるにや、/終(つい)の/返事(へんじ) 00019450L12もせざりしとや。中にも/深草(ふかくさ)の/少将(せう+)ハ、ふかく心をはこび、 00019460L13/車(くるま)のしゞに其/数(かず)かきて/百夜(もゝよ)の/数(かず)もみてしかど、/此恋(このこひ)/叶(かな)ハず 00019470L14して思ひ/死(じ)にせられしといふ取さた。女中/達(たち)/聞(きゝ)給ひて、小 00019480L15町の御/側(そば)へ/参(まいり)、/少将(せう+)さまにハ/終(つい)に御/果(はて)被成しと(二ウ)/造(つぐ)る。 00019490L16小町/聞(きい)て、さのミおどろくけしきもなく、/老女(らうぢよ)をめされ、 00019500L17/是(これ)+、其ほれ/帳(ちやう)をくり出し、少将どの所ハ/消(け)しやと申さ 00019510L18れし。 00019520¥N4¥J 00019530¥X御/茶(ちやし)師 00019540M3▽ある人はじめて山/城(しろ)の/宇治(うぢ)の/里見物(さとけんぶつ)して、/茶師(ちやし)/何某(なにがし)の/座= 00019550M4敷(ざ=しき)/所望(しよもう)せり。つれのうちに/文盲(もんもう)な人ありて、つくねんと 00019560M5/詠(ながめ)ゐらるゝ故、あれハ/茶臼(ちやうす)で御ざると云。此人、不/審(しん)がほ 00019570M6(三オ)にて、/兼(かね)ておれが/聞(きい)たとハちがふて、さてもきれいな 00019580M7ものじやといはれた。 00019590¥N5¥J 00019600¥X/灸(きう)のふた 00019610M10▽つね※/碁(ご)にせく/禅門(ぜんもん)と、あい/碁(ご)の/神主(かんぬし)と、一チ日/碁(ご)/打(うち) 00019620M11しこりて夕/暮(くれ)がた、其一チ/番(ばん)をつくりければ、/合碁(あいご)と見へ 00019630M12ける故、/神主(かんぬし)、ちやくと/我(わが)/灸(きう)のふたを/黒石(くろいし)にすり/替(かへ)、一チ 00019640M13/目(もく)の/勝(かち)なりといふ。/禅門(ぜんもん)、大キにせかれて、この/碁(ご)ハ/灸(きう)の 00019650M14ふた(三ウ)だけの/負(まけ)じやといはれた。 00019660¥N6¥J 00019670¥X/寺請状(てらうけじやう) 00019680M17▽さる人、/宿替(やどがへ)するとて、/旦那(だんな)寺へ/請状(うけじやう)を取に/行(ゆき)て、御/住= 00019690M18持(ぢう=し)さまわといへば、/留主(るす)といふ。しかればしばし/待(また)んとて、 00019700M19/裏(うら)の/方(かた)へ/出(いづ)れバ、/住持(ぢうじ)ハ/薮(やふ)かげに/鴨(かも)の/毛(け)をむしりて/居(ゐ)らる 00019710¥P65 00019720L1ゝゆへ、つらもにくしと、ずつとちかよりければ、/和尚(おせう)、 00019730L2ぎやうてんして、此/鳥(とり)のむく(四オ)/毛(げ)をふとんに/入(い)るれば、 00019740L3せん/気(き)の/助(たすけ)になると、/医者(いしや)が申さるゝけれど、扨も/手馴(てなれ)ぬ 00019750L4事ハならぬ物じやと/捨(すて)られけるを、/其(その)まゝ/拾(ひろ)ふ/と((ママ))て、/新宅(しんたく) 00019760L5の/馳走(ちそう)にせられけると云。 00019770¥N7¥J 00019780¥X/御印文(ごいんもん) 00019790L8▽/信濃(しなの)の/国(くに)の/善光寺(ぜんくハうじ)様ハ/去年(きよねん)の/春(はる)から、京で六十日の御/開= 00019800L9帳(かい=ちやう)が有て、/夏(なつ)さき八月一日まで大坂で六十日、御/帰(かへ)りがけ 00019810L10にハ/伏見(ふしミ)の(四ウ)御/旅宿(りよしゆく)で一チ日の御/戸開(とひらき)が大/分(ぶん)の/群集(くんじゆ)し 00019820L11て御/仕合(しやハせ)じやといふ所へ、八十/斗(ばかり)の/祖母(ばゞ)、/前(まへ)の/時(とき)も/今度(このたび)も 00019830L12御/印文(いんもん)にはづれましたと、銀一ト/包(つゝミ)/出(いだ)せば、壱匁三分六リ 00019840L13/有(あり)。今廿一文といふ。それハ六月に銭/売(うつ)た/相場(そうば)じやと云れ 00019850L14た。 00019860¥N8¥J 00019870¥Xかくれ/蓑笠(ミのかさ) 00019880L17▽/少将(せう+)も/仕(し)かゝりたる/恋(こひ)なれば、/雨(あめ)の/夜(よ)も/風(かぜ)の夜も、/深草(ふかくさ) 00019890L18山の/小隠(こかくれ)より小町の方へ(五オ)しのびし/数(かず)かさなりて、九 00019900L19十九夜目になり、しよんぼりとかゞミ居る所へ、女中罷出、 00019910M1少将様にハ御しんせつに御通ひ被成ました。小町申されま 00019920M2すハ、/是(これ)迄も御げんなき事、気づよきやうに思し/召(めす)らん。 00019930M3/去(さり)ながら今一ト/夜(よ)にて候まゝ、御/志(こゝろざし)/無(む)そくにハ被成まじ 00019940M4きよし申せと/仰(をゝせ)らるゝと/云(いへ)バ、其まゝ/蓑笠(ミのかさ)をぬぎ/捨(す)て/手(て)を 00019950M5つき、御/口(こう)上の/通(とを)り/少将(せう+)へ申/聞(きかし)ませうと云た。(五ウ) 00019960¥N9¥J 00019970¥X四人がくち※ 00019980M8▽ある人の子を/誉(ほめ)けれバ、イヤ、手/前(まへ)の忰ハ八/才(さい)て/口(くち)が/過(すぎ) 00019990M9るといふ。扨ハ/秀句(しうく)いはるゝと/心得(こころ)、こちのがきハ六才で 00020000M10/太鞁(たいこ)もちにいたと云。又壱人ハ、おれが/隣(となり)に二才て/野郎(やろう)ぐ 00020010M11るひするといふ。又さし出て、此方の町の/宿老(しゆくらう)ハ四/才(さい)らし 00020020M12い+と申された。 00020030¥N10¥J 00020040¥Xほてい/柿(がき)(六オ) 00020050M15▽さる人、/布袋(ほてい)がきを/鉢(はち)うへにして/重宝(てうほう)せられけるが、/時= 00020060M16節(じ=せつ)とて/柿(かき)一ツ/生(な)りけるを、/亭主(ていしゆ)、悦びの/余(あま)り、ヤイ、でつち 00020070M17共よ。此/柿(かき)に/障(さハる)なと/云(いゝ)付けれど、/朝晩(あさばん)/行(ゆき)て、ふとれ+と 00020080M18/撫(なで)まわすゆへ、/終(つい)にかき/色(いろ)に見へければ、/有(ある)時/旦那(だんな)ミられ、 00020090M19/是(これ)ハでつち共か/仕業(しハざ)也と/立腹(りつふく)せらる。/奴(でつち)共、尤の事に思ひ、 00020100¥P66 00020110L1町内に/夫婦(ふうふ)くらしの/医者(いしや)有けるに/行(ゆき)て、もふし/雲斎(うんさい)様。ち 00020120L2よと御出(六ウ)被下といふ。/誰(た)が何と/致(いた)されたととふ。 00020130L3イヤ、/鉢(はち)のうへの/生(な)り/柿(かき)が/色(いろ)が、わるう成ましたと云。/雲= 00020140L4斎(うん=さい)/腹(はら)を/立(たて)て、/柿(かき)が/落(おつ)るとて、りやう/治(じ)がなるものかとしか 00020150L5りければ、デモ、おまへハ、へた/医(いしや)+といふさかいでと 00020160L6いふた。 00020170¥N11¥J 00020180¥X/掛(かけ)づくり 00020190L9▽ある人、手かけをつれ、/生玉(いくたま)の/池(いけ)のはたに/遊(あそ)びけるが、 00020200L10やさしき女こゝろの/腰元(こしもと)にうち(七オ)まじわりて、あの池 00020210L11の/鯉(こい)が/取(とり)たひといふ。こしもと心得て、/落雁(らくがん)などなげけれ 00020220L12ハ、/鯉(こい)うき上リ、それ/風呂敷(ふろしき)よ、いかきよと/云(いふ)。/旦那(だんな)/是(これ)を 00020230L13ミて、/鯉(こい)などハ/其(その)やうな事でハとれぬ。ほしくば取てやろ 00020240L14かと、/其侭(そのまゝ)/茶碗(ちやわん)に水を/乞(こひ)、/高欄(かうらん)より手を/延(のば)し、ちよろ+ 00020250L15こぼされし故、それハめんどうな事じやといふ。ハテ、/滝(たき) 00020260L16かとおもふて/登(のぼ)る所を、/手(て)どらへにするのじやと云れた。 00020270L17(七ウ) 00020280¥N12¥J 00020290¥X/不用心(ふようじん) 00020300M1▽さる所へ/盗(ぬす)人しのび入、一ト/間(ま)/明(あく)れば、/蚊帳(かてう)がつりて女 00020310M2中が/寐(ね)入/居(ゐ)るゆへ、/是(これ)ハ+おもひがけぬ/仕合(しあハせ)なりと、そ 00020320M3ひよりければ、女中/目(め)をひらき、こりやたれじや。/何者(なにもの)じ 00020330M4やといへば、ヲレハぬす人じや。/声(こゑ)を/立(たて)たら、ぬくぞとい 00020340M5ふた。(八オ) 00020350¥P67 00020360¥T1 00020370¥G(一オ挿絵) 00020380¥N1¥J 00020390¥X/縁(ゑん)むすび 00020400L15▽さるかしこからぬ人、五十/過(すぎ)て/女房(にようぼ)を/呼(よぶ)とて、その/夜(よ)こ 00020410L16ん+の/座敷(さしき)さだまりけるゆへ、/先(まづ)てうしばかり/持出(もちいで)ける 00020420L17を、世/話(わ)をやく人※/口(くち)ぐちに、くわへも/出(いだ)せといふ。/聟(むこ) 00020430L18これをきゐて、その/調子(てうし)ハ/請(うけ)ませうが、/今晩(こんばん)ハくわへハよ 00020440L19しにいたしましやうといはれた。(一ウ) 00020450¥N2¥J 00020460¥X/競馬(けいば)の/道連(みちづれ) 00020470M3▽/北野(きたの)ゝ/右近(うこん)の/馬場(ばゝ)にて、せめ/馬(むま)を/立(たち)見する内に、壱人/知(し) 00020480M4つたやうに、ホヽウ、扨も/上手哉(ぢやうずかな)。したり+と/誉(ほむ)るゆへ、 00020490M5/側(そば)なる人いふやう、そこもとハ/元来(ぐハんらい)、/馬(むま)に/乗(のつ)た御人さうな。 00020500M6御/覚(おぼへ)がのふて、今のやうにハほめられぬ物じやといへば、 00020510M7イヤ、近年ハ/乗(のり)リませぬが、五年もいぜん、伊勢の/津(つ)のまゝ 00020520M8といふ。扨ハ/浪(らう)人の/身(ミ)かと云。(二オ)イヤ、/参宮(さんぐう)のとき三 00020530M9/宝(ぼう)かうじんのわりあひのことゝいはれた。 00020540¥N3¥J 00020550¥X空つぶて 00020560M12▽さる/侍(さむらい)壱人、京/稲荷(いなり)山へ/参詣(さんけい)し、/拝(はい)にしづミ居る所に、 00020570M13/何所(とこ)となく/礫(つぶて)をうち、/侍(さむらひ)の/面躰(めんてい)にあたりける故、/以(もつて)の外/腹(はら) 00020580M14にすへかね、/社檀(しやだん)もくだかんとのゝしる/処(ところ)へ、/神主(かんぬし)とび出、 00020590M15御/勘忍(かんにん)なされませ。/高(たか)が/狐(きつね)のことじやと/云(いは)れた。(二ウ) 00020600¥N4¥J 00020610¥X二/福神(ふくじん) 00020620M18▽ある人、/生(なま)なれな/神道者(しんとうじや)の所へゆき、/爰(こゝ)の/棚(たな)にも大/黒(こく)と 00020630M19/蛭子(ゑひす)がならんである。あれハ御/夫婦(ふうふ)か、又ハ/兄弟(けうだい)かと云。 00020640¥P68 00020650L1ていしゆ聞かね、ゑひすどのハ御/伊勢(いせ)様の/兄弟(けうだい)じや。大こ 00020660L2く殿ハ大あなもちの/尊(ミこと)といふて、そさのをの御子じや。い 00020670L3かさま/伯父(をぢ)/従弟(おい)のやうな物といへば、イヤ+、御/夫婦(ふうふ)てあ 00020680L4ろ。/惣(そう)じて(三オ)めうとのふてハ/家(いへ)が/治(をさま)らぬからハ、大/黒(こく) 00020690L5殿が女/神(がミ)じやあろう。ハテ、/片意地(かたいぢ)な人じや。デモ、大/穴(あな)も 00020700L6ちといふじやないかといはれた。 00020710¥N5¥J 00020720¥X/親父(おやじ)/気質(かたぎ) 00020730L9▽あるかたひ/親父(おやじ)の所へ/行(ゆき)、/明日(あす)ハ/螢(ほたる)見にわたくしもまい 00020740L10る/程(ほど)に、御/子息(しそく)もつかハされまひかと云。いかさま、こな 00020750L11たが御出なさるゝならやりませふとゆい、ヤイむす子。/明= 00020760L12日(あ=す)ハ佐三郎(三ウ)どのが/螢(ほたる)見につれふといはるゝによつて、 00020770L13やるぞ。かならず大/酒(さけ)などして、けんくハなどすな。/兎角(とかく) 00020780L14日の/暮(くれ)ぬ内に/戻(もど)れと云た。 00020790¥N6¥J 00020800¥X/胸算用(むねざんやう) 00020810L17▽下京/辺(へん)に/音(おと)に/聞(きこ)へし/化物(ばけもの)屋敷とて有。物ずき成/浪(らう)人、此 00020820L18/家(いへ)を/望(のぞミ)て/借宅(しやくたく)し、其/夜(よ)八ツ/時分(じぶん)に、/化(ばけ)物大/入道(にうどう)に成出る。 00020830L19/浪(らう)人打わらひ、ハテ、/古(ふる)めかしといへば、/家中(やうち)の/小道具(こどうぐ)に/手(て) 00020840M1(四オ)/足(あし)を付て/飛廻(とびまハ)る。/夫(それ)も/有(あり)ふれたる/仕形(しかた)也。何ぞ/打替(うちかハ) 00020850M2つた/趣向(しゆかう)ハなひかと/云(いへ)ハ、其まゝ/弐丈(にじやう)ばかりの/蛇(へび)となる。 00020860M3イヤ、其類おかしからずといふ。/化(ばけ)物、せんかたなく/尻込(しりごミ)し、 00020870M4井戸の中へ/落(おち)入ける。/浪(らう)人もそつと/覗(のぞ)き見れハ、一/冊(さつ)の本 00020880M5を見てゐるゆへ、何じやと引ツたくり、/外題(げだい)をミれハ、/新= 00020890M6板(しん=はん)/化(ばけ)物/尽(づくし)と有た。 00020900¥N7¥J 00020910¥X/不了簡(ふりやうけん)(四ウ) 00020920M9▽つくしがたにてこんもうして、/若衆(わかしゆ)をハ/持(もち)けるが、此/若= 00020930M10衆(わか=しゆ)/万事(ばんじ)/限(かぎ)リと/煩(わづら)ふて、すでにけふ/明日(あす)の日を/待(また)ず。/兄(あに)ぶん 00020940M11の人、ふかうなげきていふやう、もはやなき/命(いのち)ハ/是非(ぜひ)なし。 00020950M12/我等(われら)もともに/同棺(とうくハん)へ入て、おなじ火に/消(きへ)んと云。/友達(ともだち)ども、 00020960M13とゞむれ共/聞(きゝ)入ず。/棺(くハん)も/広(ひろ)※とあつらへ、一所に/這(は)いり 00020970M14てけり。/坊主(ぼうず)の/引導(いんどう)も/済(すミ)、火を/掛(かけ)る/段(だん)に成、/棺(くハん)の内よりこ 00020980M15ゑを(五オ)あららけ、/先(まづ)/蓋(ふた)を取て給ハれ。火も/消(け)してとい 00020990M16ふ。/如何(いかゝ)ととへば、イヤ、/命(いのち)ハおしからねど、何ぶんくさく 00021000M17てどふもならぬ。/幸(さいわい)/小便(しやうへん)も/出(で)かかりけるといはれた。 00021010¥N8¥J 00021020¥X/日光責(につかうぜめ) 00021030¥P69 00021040L1▽/下野(しもづけ)の日光山の/法師(ほうし)はら、けふハ山/狩(かり)に出るといふて、 00021050L2/小児達(こちこたち)に申置けるハ、九ツの/鐘(かね)がなり候ハヽ中/食(じき)をまいり 00021060L3ませ。/則(すなハち)(五ウ)/爰(こゝ)の/棚(たな)に候と出/行(ゆき)けるが、さる事/侍(はんべ)りて山 00021070L4がりも/隙(ひま)/入(い)らすに、四ツ/過(すぎ)にかへり、かの/棚(たな)をあけて見れ 00021080L5ば、/早(はや)/中食(ちうじき)ハたべた/跡(あと)なり。/是(これ)ハふしんと、/小(こ)ちご/達(たち)を/呼(よひ)、 00021090L6まだ九ツも/聞(きか)ずに/食(めし)をまいつたと云。イヤ、九ツハ/過(すぎ)たと 00021100L7いふ。ハテ、けふハまだ四ツ/鐘(かね)じやにといふ。デモ、九ツじ 00021110L8やとあらそへバ、それでも/今朝(けさ)五ツが/過(すぎ)、今四ツか/鳴(なる)ゆへ、 00021120L9てうと九ツじやと云れた。(六オ) 00021130¥N9¥J 00021140¥X/番(ばん)太郎 00021150L12▲京/都(と)にハ町+に/番(ばん)所あり。ある町の/番(ばん)太、たいこを/枕(まくら) 00021160L13にして/能(よく)/寐(ね)入居るを、町の/宿老(しゆくらう)見/付(つけ)て、ヤイ/番(ばん)太。此たい 00021170L14こハ/漸(やう)+/張替(はりかへ)て、まだ/間(ま)もないに、/枕(まくら)にして/寝(ね)入るとい 00021180L15ふ事、/近比(ちかごろ)不/届(とゝき)なりとて、さん※しかりければ、/番(ばん)太/起(おき) 00021190L16あがり、イヤ/太鞁(たいこ)ハまくらに致しませぬといふ。今(六ウ) 00021200L17して居たを見たが、それでも/偽(いつハ)るかと云。イヽヱ、わたくし 00021210L18ハ内から/枕(まくら)をもつてまいりましたといふた。 00021220¥N10¥J 00021230¥X/仲人耳(なかうどミヽ) 00021240M3▲むかし+/南可(なんか)/散(さん)人といふ人、/能(よ)ひ/娘(むすめ)壱人もたれけるゆ 00021250M4へ、さる所へ/仲人(なかうど)せんといふ。それハどふした人がらじや 00021260M5ととふ。/已前(いぜん)ハ四/国(こく)にありついてじやといふ。(七オ)南可、 00021270M6つく+/腹(はら)を/立(たて)て、こちらに七/石(こく)の人から/望(のそミ)てさへ、やら 00021280M7なんだと/云(いは)れし。 00021290¥N11¥J 00021300¥X/男(おとこ)ハ/時宜(じき)/深(ふか)ひ 00021310M10▲さる人、/細道(ほそミち)を/行(ゆき)かゝりける/処(ところ)に、/侍(さむら)ひ/小便(しやうべん)して居らる 00021320M11ゝ故/通(とを)りかね、/待(まち)あわせけるを、くるしうござらぬ。御と 00021330M12をりなされといふ。それでハ御/刀(かたな)を/越(こへ)ます故といへば、 00021340M13ハテ、そこにハ/身(ミ)ハ御ざらぬといはれた。(七ウ) 00021350¥P70 00021360¥T1 00021370¥G(一オ挿絵) 00021380¥N1¥J 00021390¥X/牛(うし)まつり 00021400L14▽さる人、とし※/太秦(うづまさ)の/牛(うし)まつりにゆきて、/我(わが)長/命(めい)を/祈(いの) 00021410L15られけるが、/行(おこな)ひ/中(うち)より白き/紙(かミ)ちり来る。月に/透(すか)して見れ 00021420L16ハ一/日(にち)と/文字(もし)あり。気にかけ居る所に、つれがいゝけるに 00021430L17ハ、/夫(それ)ハ/百(ひやく)の/字(じ)じやといふ。此人大きによろこび、/懐(ふところ)にし 00021440L18て/茶店(ちやや)に/休(やす)らふ(一ウ)ところへ、/駕(かご)のものと見ゑて、百の 00021450L19事をころりといふハ、いき/詰(つま)つたといふことじやといふた。 00021460¥N2¥J 00021470¥X/後(のち)の出かハり 00021480M3▲ある所に、/冬(ふゆ)気ハ下女をおかんとて、きも入をたのミけ 00021490M4れは、/頓(やが)てはたちばかりなる/若詰(わかづめ)を、目見へさせけるゆへ、 00021500M5御内義申さるゝハ、/是(これ)まての居(二オ)所ハ何やぞととふ。 00021510M6アイ、大/仏(ぶつ)のおならやに/居(い)ましたといへば、さてハ一/向宗(かうしう) 00021520M7かといふ。イヽヱ、おならやで御ざりますといふ。ハテ、/空= 00021530M8気(うつ=け)にした/家名(いへな)じや。デモ、おまへから/居(い)どころと、御とい 00021540M9なさるゝゆへにといふた。 00021550¥N3¥J 00021560¥Xむかしがたり 00021570M12▽ある人、物しりじまんするとて、かま(二ウ)くら/建長寺(けんちやうじ) 00021580M13の/鳥掃木(とりほうき)ハ/頼朝(よりとも)どの/時代(じたい)から、今に羽が/切(き)れぬといふ。/是(これ) 00021590M14ハまけじと、いま一人/聞(きゝ)かねて、こちのざいしよ/天拝(てんはい)山の 00021600M15うへで、/菅拯相(かんせう※)が/斧(おき)を/針(はり)に/摺(すら)しやつて、いまに/針摺(はりすり)のばゝ 00021610M16がつかふて居ると云た。 00021620¥N4¥J 00021630¥X鳴/尾(を)/土産(ミやげ) 00021640M19▽津のくにの/鳴尾崎(なるをさき)より、とり/貝(がい)と(三オ)いふものを/進物(しんもつ) 00021650¥P71 00021660L1ニせられければ、/亭主(ていしゆ)よろこび、さて+/鳥貝(とりがい)といふもの、 00021670L2久しうぶりで見たが、/気味(きミ)のよひ/貝艸(かいそう)じやと/誉(ほめ)ければ、/悋= 00021680L3気(りん=き)ふかき女/房(ぼう)、しり目にじつと見つけ、こゝろよからず。 00021690L4/亭主(ていしゆ)、何ごゝろもなく、是女房ども。此ふくろびを/縫(ぬ)ふて 00021700L5と、/小袖(こそで)をなげかけければ、にようぼう(三ウ)むつとして、 00021710L6ハテ、とり/貝(がい)さまにぬふてもらハしやんせといはれた。 00021720¥N5¥J 00021730¥Xふりこめ+ 00021740L9▽三/条(でう)どをりで/行烈(きやうれつ(ママ))を見ましたが、あの/赤(あか)ひふくろに/入(いつ)た 00021750L10ものをかたげて、四五十/本(ほん)ならんだハ、なにで御ざるとと 00021760L11ふ。ハテ、/猩&皮(せう※ひ)のてつほうといふ物じや。すりや、あの/色(いろ) 00021770L12(四オ)ハ/紅粉(べに)じやないか。イヽヤ、/海中(かいちう)にすむせう※の/血(ち) 00021780L13でそめたものじや。そんなら、たいせつなものじやが、一 00021790L14本ニハなんぼほと入ろふといふ。ヲ、二合半といふた。 00021800¥N6¥J 00021810¥X祝ふて三度 00021820L17▽物いわひするある酒屋の/門口(かとぐち)で、酒かひが/徳利(とくり)を打わり 00021830L18ければ、(四ウ)内義も/気(き)にかけ/居(い)らるゝ所に、また内の下 00021840L19女/走(はし)リ出て、/乞食(こじき)にあまりものをやるとて、いれものを/落(をと) 00021850M1して/是(これ)も打わりける故、下おとこ見て、いはふて三/度(ど)じや。 00021860M2何わろふもしれぬといふ。旦那きいて、/祝(いは)ふ/門(かど)にハ/福(ふく)/来(きた)る 00021870M3といへば、内義気のどくがり、/数(かす)かおゝふなるといへばと 00021880M4て、(五オ)ものゝわれるが、なにがめでたかろ。ハテ、わろ 00021890M5ふ/門(かど)にハ/福(ふく)きたるじやなひかといはれた。 00021900¥N7¥J 00021910¥X/矢瀬(やせ)の/里(さと) 00021920M8▽さる/後室(こうしつ)がた、/矢瀬(やせ)の/竈風呂(かまふろ)へ御こしなされければ、/在= 00021930M9所(ざい=しよ)の/外聞(ぐわいぶん)なりとて、あぼうなど打/悦(よろこ)び、ずいぶんねんを入 00021940M10るゝところに、(五ウ)つき※の女中たち、/手水(てうづ)の/粉(こ)さし 00021950M11あげよといふ。/亭主(ていしゆ)此/名(な)をしらぬゆへ、むらの/老人(らうじん)など/打(うち) 00021960M12あつまりて、/古来(こらい)の事などとり出し、ひやうぎすれども、こ 00021970M13ゝろあたりないゆへにぜひなく、てうづの/粉(こ)ハむかし+ 00021980M14大/乱(らん)のときに、ひゑい/山(ざん)の/法師(ほうし)(六オ)の/手(て)にわたりて/退転(たいてん) 00021990M15いたしましたと申上る。/後室(こうしつ)かたにハおかしく思しめされ、 00022000M16物の名も所によりてかハるならひあり。/吾妻(あづま)でふすまと/云(い) 00022010M17ひ、なにはでハもみぢとこそ、我ミやこにてから/子(こ)のかす 00022020M18といふぞかし。おの+/小(こ)むぎだんごの引がらをいふぞ、 00022030M19はづかしと仰られける。(六ウ) 00022040¥P72 00022050¥N8¥J 00022060¥X/鼻(はな)ばしら 00022070L3▽さる御/住持(ちうじ)、小/僧(そう)に申さるゝハ、/何(な)んと、正月の/旦那(たんな)あし 00022080L4らいも、こゝろをつけずばなるまひ。けうこうハ銀壱匁も 00022090L5ち来る人ハ、/其(その)ほうがはなのはたへゆび一本、弐匁ならば 00022100L6二本ならべて見せよ。そのこゝろへにて/馳走(ちそう)が/違(ちが)ふといふ 00022110L7所へ、(七オ)/旦那(だんな)一つゝミさし出しまいられけるが、/小僧(こぞう) 00022120L8ちやくとこゝろへ、ゆひ二本にて/鼻(はな)をはさミ出ければ、/住= 00022130L9持(ちう=じ)ハ三匁とこゝろへ、さて+よふハ御/参詣(さんけい)なされた。ま 00022140L10づすい物よ酒よともてなされけるが、ほどなく旦那も帰ら 00022150L11れければ、ヤイ+/小僧(こぞう)よ。ものハ/念(ねん)を入ふことじや。今 00022160L12(七ウ)の三匁ハいゝあわさぬ故尤じやが、今から三ツ/指(ゆび)で 00022170L13口上いへといはるゝ。小/僧(ぞう)/聞(きい)て、今のハ壱匁壱分で有たと 00022180L14いふ。/住持(ぢうじ)はらを立、あの/空気(うつけ)づらが。/中(なか)の山/道(ミち)ハどふす 00022190L15るかと云れた。 00022200¥N9¥J 00022210¥X/清書(せいじよ)/吟味(ぎんミ) 00022220L18▽さる人、むす子/清書(きよかき)をして寺からもちかへるを、/親父(おやじ)、 00022230L19手に取て、扨も(八オ)/出来(でき)た+。よい手にならふといふ。 00022240M1/母親(はゝをや)きゐて、手ばかりじやござんせぬ。おとなごゝろもあ 00022250M2るかして、/清(きよ)がきの/奥(をく)に、/穴(あな)かしこ小四郎と有/程(ほど)に。 00022260¥N10¥J 00022270¥X/朝寝(あさね)ずき 00022280M5▽さる所に、長三といふ人あり。/親(おや)より世/帯(たい)を/請取(うけとり)、とし 00022290M6※/暮(くら)せども、/生(うま)れつゐてあさ/寝(ね)ずきゆへ、/次第(しだい)に(八ウ) 00022300M7ほそ※になる故、/友達(ともだち)のうちに/若輩(じやくはい)といへども、壱町の 00022310M8/年寄役(としよりやく)ももつほどの世たいに、がてんのよき人ありて、是 00022320M9+長三。/貴(き)様のやうに/朝寝(あさね)してハ今ハ/暮(くら)しがたし。/朝(あさ)を 00022330M10きしな/しや((難読))、一/年(ねん)に小/判(ばん)十両づゝハ/慥(たしか)に/延(のび)る/身代(しんだい)じやとい 00022340M11ふ。長三、つく※/合点(がてん)して、いかさま、大き成(九オ)ち 00022350M12がひなり。そんならそなた、/此方(こち)へ/来(き)ておきてたも。十両 00022360M13のうちから五両やろうといふた。 00022370¥N11¥J 00022380¥X/薮入(やぶいり)ぜんさく 00022390M16▽さるところに、くされ/儒者(じゆしや)とてあり。壱人の小ものを/薮(やぶ) 00022400M17入させられけるが、五日十日にも帰らぬゆへ、けふや+ 00022410M18と/待(まち)けるところに、廿日(九ウ)めに帰りけり。ヤイ、けふま 00022420M19でハなにして居たぞ。/是(これ)までの小/者(もの)ハ/中(なか)二日か三日てもど 00022430¥P73 00022440L1つたが、そのほうハ廿日ぶりになるといへば、デモおまへ 00022450L2の/講尺(かうしやく)に、/薮(やぶ)の/字(じ)ハ/廾數(二十かず)/入(い)るとをゝせられしといふた。 00022460¥N12¥J 00022470¥X/浜(はま)の市 00022480L5▽大坂に/彦根(ひこね)屋八平次といふ人、(十オ)/北浜(きたばま)に/住馴(すミな)れ/米(こめ)/商(あきな) 00022490L6ひせらる。ある日、/米沢(よねざわ)一万石/売(うり)付て高/枕(まくら)で/寝(ね)て居らるゝ 00022500L7故、女房ふしんがり、なんとしてねやしやるといへば、/気= 00022510L8遣(き=つかい)すな。二三日中に大/銀(がね)もふけるといふ。なぜに。ハテ、近 00022520L9日京から米ざわが下ルときいたゆへ、扨ハ彦八ばなしじや 00022530L10と/売込(うりこ)ンだといはれた。(十ウ) 00022540¥T1 00022550¥G(一オ挿絵) 00022560¥N1¥J 00022570¥X/冠者殿(くハんじやでん) 00022580M14▲/神無(かミな)月廿日ハ/誓文払(せいもんはらひ)とて、/商人(あきうど)/年(ねん)中の/虚(うそ)を此/神(かミ)に/払(はら)ふと 00022590M15なり。京の四条京/極(ごく)の/辻(つぢ)/冠者殿(くハんじやでん)の/宮(ミや)へあゆミをはこぶ事 00022600M16おびたゝし。ある人、/平生(へいぜい)/偽(いつハ)りいはぬ/商人(あきうど)なりけるが、此 00022610M17中/田舎(いなか)の/門通(かどとを)リに、ひよつと/虚(うそ)をつひて、/鳥目(てうもく)壱〆(一ウ) 00022620M18四十文してやつた故、けふがほんの/千文(せんもん)ばらひじやといは 00022630M19れた。 00022640¥P74 00022650¥N2¥J 00022660¥X十/夜講(やかう) 00022670L3▲さる所の/親父(おやじ)、かね※/念仏講(ねぶつかう)に/出(で)ても、なにとぞ十月 00022680L4十五日にわうじやうがのぞミで御ざると申されしが、あん 00022690L5のごとく、十夜かけてりんじうせられし故、/講(かう)中/悔(くやミ)にきて、 00022700L6(二オ)さても/是(これ)の/親父(おやじ)様にハ、ねがひの/通(とを)り御/往生(わうじやう)にて、 00022710L7あやかり事じやといふ。/足(た)らずめなるむすこにて、/如何(いか)さ 00022720L8ま、/生(いき)て/居(い)られたら/自慢(じまん)も/致(いた)されませうが、死なれてのこ 00022730L9りおゝふ御ざるといはれた。 00022740¥N3¥J 00022750¥Xさい/鳥(とり)さし 00022760L12▲ある/有福(ゆうふく)なる/老(らう)人、/細工(さいく)に/鳥(とり)を(二ウ)さゝんとて、/竿(さほ)の 00022770L13/先(さき)にとりもちをつけて、/裏中(うらぢう)を/持(もち)あるきければ、むざんや、 00022780L14とんぼう/行(ゆき)あたりける故、/竿(さほ)をからりと/投(なげ)、此たんめいな 00022790L15物をころせし事よと/愁歎(しうたん)せられける所へ、たいこ/持(もち)の小/市(いち) 00022800L16さし出て、是ハおめでたい事といふ。それはなぜに。ハテ、 00022810L17とんぼうさすハ九千/歳(さい)(三オ)じや御ざりませぬかと云た。 00022820¥N4¥J 00022830¥X/日和(ひより)うらなひ 00022840M1▽道さへ/細(ほそ)き/薮(やぶ)かげに、/浪(らう)人とよばれしが、/理屈(りくつ)めきたる 00022850M2/生得(せうとく)/故(ゆへ)、何ぞこまらせんとおもへり。/明日(あす)ハ松の/尾(を)に神事 00022860M3/能(のふ)がござるが、天/気(き)て御さらうかとといければ、/浪(らう)人/立腹(りつふく) 00022870M4さうに、あすの天/気(き)をおれが/知(し)らふかと云。(三ウ)デモ、 00022880M5おまへを天ぢく/牢(らう)人といふ故じやといふた。 00022890¥N5¥J 00022900¥X/高砂(たかさご)の/浦(うら) 00022910M8▽さる人、手代の四郎助を以て/手形(てかた)金百/両(りやう)/受(うけ)取かへると 00022920M9て、/道(ミち)にて/落(おと)したりと云。/旦那(たんな)/以(もつて)の/外(ほか)しかり、/唯(たゞ)おとした 00022930M10りとばかりにてハ、/家(いへ)の/法式(ほうしき)を/立(たち)がたし。一チ/分(ぶん)の申わけ 00022940M11さへ(四オ)たゝばゆるすべしと申されけれバ、四郎助/罷(まかり)い 00022950M12で、不/調法(てうほう)ハ/年来(ねんらい)のよしミに御/免(めん)くださるべしと云。扨& 00022960M13にくきやつかな。あやまりもせず/口(くち)がしこくいふ事よとい 00022970M14へば、デモ、めでたひ御/客(きやく)にハ、/尾(お)の/上(へ)の/金(かね)もおとすなりと 00022980M15申されますと云た。 00022990¥N6¥J 00023000¥X御/料理(りやうり)/方(かた)(四ウ) 00023010M18▽さる御大/名(めう)、/板(いた)もとを/召(め)され、/是(これ)までしな※の/料理(りやうり)ハ 00023020M19/出(だ)せども/鯉(こい)のぬたを/不出(ださず)。けふの/茶客(ちやきやく)にハ/珍敷(めづらし)からんと/仰(をゝせ) 00023030¥P75 00023040L1られければ、かしこまつたと/鯉(こい)をたく山に作りたて、ぬた 00023050L2にあへ置けるに、御/秘蔵(ひそう)の/△来(ちんきた(ママ))りて、のこり/少(すく)なく/喰(くい)たり。 00023060L3おの+さわぎおど(五オ)ろき、/御膳(ごぜん)の御/案内(あんない)申あげて、 00023070L4かよふの事とハ申されずといふ所へ、/殿様(とのさま)より御/意(い)が出て、 00023080L5/切角(せつかく)申付たる/料理(りやうり)/盗(ぬす)まれしときこへ、/△(ちん)にも其ほうにも/罪(つミ) 00023090L6なしと仰せらるゝ故、/乍恐(をそれながら)御/意(い)のおもむきがうけ給りた 00023100L7しといふ。ハテ、/△(ちん)の/盗(ぬすミ)に/鯉(こい)のぬたといふハさて。(五ウ) 00023110¥N7¥J 00023120¥X/新道成寺(しんとうじやうじ) 00023130L10▽ある/田舎(いなか)に二五助とて、とし比の/奉公(ほうこう)大/律気(りちぎ)ものにて、 00023140L11/主人(しゆじん)よりくだされし/給銀(きうぎん)こと※く/豆(まめ)いたに/仕(し)かへ、/秤(はかり)目 00023150L12も知らざるかいにハ、/数(かず)をよミて二/階(かい)なる半ひつに入置け 00023160L13り。時+ハかの/銀(かね)を/畳(たゝミ)にならべ、跡ヘ+と/楽(たの)しミ(六オ) 00023170L14けるほどに、二/階(かい)の/口(くち)をわすれ、ころりと/落(おち)て、あいた+ 00023180L15といふを内/義(ぎ)かけつけ、なにゆへぞと、はしごをあがらん 00023190L16とすれハ、二五介すがりて上ゲず。旦那これをミて、さだ 00023200L17めて/道成寺(どうじやうじ)のうらの/裏(うら)かといはれた。 00023210¥N8¥J 00023220¥X/御命講(をめいかう)(六ウ) 00023230M1▽/新参(しんざん)のおなごを/産(さん)の見まひにやりける。その/返(へん)事に、/無(ぶ) 00023240M2事で/安産(あんさん)いたし、/殊(こと)に/門開(かどびらき)で御ざる。御よろこび被下とい 00023250M3ふ。口上の/通(とを)り申けれど、下女がてんゆかず。あの/門(かど)びら 00023260M4きとハ/何(な)んのことで御ざるといふ。ハテ、しれた事よ。おめ 00023270M5この事じやといふところへ、(七オ)御つかひが/有(ある)とて、下 00023280M6女はしり出、口上きいて、くつ+とわらひ、/妙蓮寺(めうれんじ)から、 00023290M7/明(めう)十三日ハかどびらきの御/斎(とき)/進(しん)じませうと云た。 00023300¥N9¥J 00023310¥X山出し/奉公(ほうこ) 00023320M10▽なんと、こゝにハ奉公人がすんだかといふ。アヽ此/季(き)ハ 00023330M11山出しにしたといへば、サア、その山だしとハ、つち(七ウ)/気(け) 00023340M12のとれぬといふ/理(り)じやか、あのはい/出(で)といふハ、どふてあ 00023350M13ろといふ。そりや小どもにかぎるといへば、なぜに。ハテ、 00023360M14京へ子をほうこうにやるにハ、おやのうちにて/着(き)せた物を 00023370M15はいでのぼす故じや。デモ、/文字(もじ)にハ/這(はふ)て/出(で)ると/書(かく)といへば、 00023380M16新/参(ざん)のでつち(八オ)きゐて、わたくしハあるいて/登(のほ)りまし 00023390M17たといふた。 00023400¥P76 00023410¥N10¥J 00023420¥X/冬篭(ふゆごも)リ 00023430L3▽ある/友達(ともだち)二三人/夜(よ)ばなし/講(かう)をむすびて、すでに/夜食(やしよく)にお 00023440L4よぶとき、一チ人のいふハ、なにやらわるひ/嗅(かざ)がするとい 00023450L5ふ。おの+、いかさまと、/鼻(はな)くん+(八ウ)するゆへ、/亭= 00023460L6主(てい=しゆ)/聞(きい)て、/家来(けらい)を/呼(よび)、内せうに何そくばつたか。見よといふ。 00023470L7あいといゝて、やがて申けるハ、なにもくばりハ/致(いた)しませ 00023480L8ぬといふ。テモくさひといへば、ソレハおなご/衆(しゆ)が、/俣火(またび)し 00023490L9てじやといふた。 00023500¥N11¥J 00023510¥X/同字別吟(とうじべつぎん) 00023520L12▽さる/狂言師(きやうげんし)に、/又介(またすけ)といふ人有。(九オ)/急(きう)にさかやきを 00023530L13そることあれば、かみゆひ/間(ま)にあはず。むかひの/寺(てら)へゆき、 00023540L14/弟子(でし)/坊主(ぼうず)をまねきて、ちよこ+と/△(そり)てたべといふ。こゝ 00023550L15ろへましたとそり/けり((ママ))けるが、/片(かた)かふびんを/■(そり)をとしけれ 00023560L16ハ、又介、はつといふて、是ハ+めいわくなりト、あた 00023570L17(九ウ)まをなてければ、/坊主(ぼうず)せきめんにて、わたくしハ不 00023580L18/断(だん)/亡者(もうしや)のあたま/斗(ばか)リ/剃(そり)つけました故、しつねんいたしまし 00023590L19たといふ。ハテ、けがとあれば/是非(せひ)なし。/次手(ついで)にこちらも/落(をと) 00023600M1してと云。/坊主(ぼうず)/辞退(じたい)してそらず。/漸(やう)&/口(くち)をたれて/入道(にうどう)して、 00023610M2/自身(じしん)の名を/又介(ゆうかい)と申されし。(十オ) 00023620¥N12¥J 00023630¥X/藝(げい)ハ身たから 00023640M5▽/鳶(とび)が/産(うん)だ/鷹(たか)之介といふ子、よく/鞁(つゝミ)を打ける故、ある人申 00023650M6されけるハ、其方の御/子息(しそく)ハきよふな/鞁(つゝミ)で御座る。今の/幸(かう) 00023660M7の新九郎と/競(くら)ぶとも、おとりハせまじとほむれば、/親父(おやじ)聞 00023670M8て、人がそのやうに云ます故、/囃(はやし)聞に参つたか、まだ小つ 00023680M9ゞミ打て居ましたと云た。(十ウ) 00023690¥N13¥J 00023700¥X冬もみぢ 00023710M12▲/猿(さる)と/鹿(しか)と川ばたに出て、此川/飛(とび)くらべせんと、一/足飛(そくと)び 00023720M13にわたりければ、/勝負(せうぶ)も分らず。/鹿(しか)がいふハ、其方何ほど 00023730M14いンげんいふとも、此山に/我(われ)ほど/古(ふる)きものハなしといふ。 00023740M15/夫(それ)ハ何として。ハテ、おく山に/紅葉(もみぢ)ふミわけなく/鹿(しか)と、/古= 00023750M16哥(こ=か)にも/読(よ)んだハ扨といふ。(十一オ)/猿(さる)が/聞(きゝ)かねて、ハテ、あ 00023760M17られもなひ。もと其哥をよんだハ、おれが/親(おや)どもじやとい 00023770M18ふた。 00023780¥P77 00023790¥Y 00023800L1△△△△/発句(ほつく) 00023810L2△△△△△豊年のとし浪を祝して跋となしぬ 00023820L3△△△△△△△△△△△△△△△△△洛風之 00023830L4△△冬かけて目のよろこひや麦と梅(十一ウ) 00023840¥Q 00023850L8△△△京米沢彦八はなし本 00023860L10申のとし△△△△△酉のとし 00023870L11△軽口福おかし△五冊△軽口はる袋△△五冊 00023880L12戌のとし△△△△△亥のとし 00023890L13△軽口耳過宝△△五冊△軽口ふくれ雀△五冊 00023900L14とし+の新作ゑ入かる口はなし 00023910L15本の外題御しらせ申候御求可被下候已上 00023920L16△寛保二年△△△△△△京寺町五条上ル所 00023930L17△△△△戌正月吉日△△△△△額田正三郎板 00023940¥P78 00023950¥U噺本大系△第八巻 00023960¥T軽口若夷 00023970¥G 00023980¥Y 00023990L16寛保二年刊 00024000L17梅岸序 00024010L18半紙本五巻 00024020L19東大国語研究室蔵(軽口噺物種による) 00024030¥Y開序 00024040M3につこりほやりと、/若恵(わかゑ)びす/大黒(だいこく)どのとシテワキして、/家= 00024050M4内(か=ない)をにぎわし、たゞ/笑(わら)ふ/門(かど)には/福神(ふくじん)/影向(ゑうがう)なしたまわんとて、 00024060M5/題号(だいがう)を(オ)/西(にし)の/宮(ミや)よりたまハりしに/任(まか)せ、/当世(とうせい)/和颯利(わさり)とし 00024070M6た/頓作(とんさく)/咄(はな)しハ/明(あく)ると、/若恵美須(わかゑびす)の/笑(わら)ひ/顔(がほ)。 00024080M8△△△△△△△△△△△△△△梅△岸△集△之(ウ) 00024090¥P79 00024100¥T1 00024110¥G(一オ挿絵) 00024120¥N1¥J 00024130¥X福神すもふ 00024140L13まづとしのはじめと、/大黒(だいこく)ゑびすよりあひ、/何(なに)をかなして 00024150L14あそばんと、いざ/布袋(ほてい)どのを/行司(ぎやうじ)にたのミ、すもふを一ば 00024160L15んとり申さんと、/双方(さうはう)/力(ちから)あしをふミ、どひやうにこしかけ 00024170L16/居(ゐ)られしかバ、/布袋(ほてい)ハ/団(うちわ)をしやにかまへ、いざ/立合(たちあハ)れよと 00024180L17あれバ、両人、ヤアといはるると、/布袋(ほてい)/団(うちわ)を上られ、かた 00024190L18やにおゐて、大(一ウ)/黒(こく)/勝(かち)とよバわらるれバ、ゑびすはな 00024200L19ハだいかり、いまだ/手合(てあひ)もせぬさきに、しやうぶをつけら 00024210M1るゝハ、いかにぞやとあれバ、/布袋(ほてい)どのいはるゝハ、そこ 00024220M2もとハ/最前(さいぜん)に、たいが/落(おち)た。 00024230¥N2¥J 00024240¥Xこじきも身かた 00024250M5正月のことなりしが、ある見せさきへこつじき/来(きた)り、おせ 00024260M6ちのおあまり/下(くだ)されませとねがひしが、/下女(げぢよ)ハいまだ/夕(ゆふ)ぜ 00024270M7ちの/米(こめ)をかしてゐ(二オ)たりしゆへ、とうりや。いまおせ 00024280M8ちの/米(こめ)をかしてゐるハといひける。その/店(ミせ)に見せまもりし 00024290M9て十二三バかりなるでつち/居(ゐ)たりしが、いかさま、こつじ 00024300M10きのせがむもどうりじや。いつもよりおそきやら、よほど 00024310M11ひだるいとおもふて/居(ゐ)たりしが、こつじきいふやうハ、こ 00024320M12なた様のおせちハ、きつふおそふござりますといひけれバ、 00024330M13かのでつち、こつじきのかほを見あわせ、うなついて、ナ 00024340M14アツ。(二ウ) 00024350¥N3¥J 00024360¥Xきつねもめいわく 00024370M17/去主人(さるしゆじん)、三太郎といへるでつちをめしつかひけるが、ある 00024380M18/夕(ゆふ)ぐれより、/何方(いづかた)へゆきけるにや、三日/斗(バかり)見へざりしが、 00024390M19やう+いなり/山(やま)にてさがしあたり、つれ/帰(かへ)りけれども、 00024400¥P80 00024410L1狐(きつね)つきけるゆへ、さま※として、きつねもやう+とお 00024420L2ちけるまゝ、そのまゝにめしつかひける。あるとき三太郎 00024430L3をよび、/手(て)のまわりの/用(よう)をいひつけけるが、あまりぶちや 00024440L4うほうなるゆへ、(三オ)あるじ、/女房(にようばう)にいわるゝハ、三太 00024450L5郎めハいつぞや/狐(きつね)つきけるより、あほうに/成(なり)おつたといわ 00024460L6るれバ、/窓(まど)よりきつね、/内(うち)をのぞき、あれハ/前(まへ)からじや。 00024470¥N4¥J 00024480¥X/子(ね)とうしみ 00024490L9さる人、/子(ね)とうしミをよび、ちとたかく/直(ね)をつけられ、し 00024500L10やうべん/心(ごゝろ)にてありしが、とうしミ/売(うり)たちもどり、あんま 00024510L11りさむふござる。はやふしまふて、いにたふござる。ねで 00024520L12ハござらねど、まけて(三ウ)しんぢよといひけるゆへ、/子(ね) 00024530L13でなくバ、けふハいやじやといわれた。 00024540¥N5¥J 00024550¥X/札付(ふだつき)の/百銭(ひやくぜん) 00024560L16さる人、わが/家(や)へ/帰(かへ)りしなに、となりのみぞのはたにて、 00024570L17/銭(ぜに)百文ひらいしが、ふけうがほして、うちすてゝかへり、 00024580L18/女房(にようばう)にかくとはなしけれバ、/女房(にようばう)きいて、/扨(さて)もこなたハあ 00024590L19ほうな人じやと、かけ/出(いで)けるを、/夫(おつと)ハおしとめ、おれじや 00024600M1とて、よくを(四オ)/知(し)るまいか。ひろふても/積(つも)りの/合(あハ)ぬ/銭(ぜに) 00024610M2じや。ナゼニナア。どこの/国(くに)にか、/銭(ぜに)百文/代(だい)四匁五分と/札(ふだ)が 00024620M3/付(つけ)て有た。 00024630¥N6¥J 00024640¥Xあふむゐけん 00024650M6/友(とも)だち二三人つれだち、四条の/河原(かハら)へあふむの見せ/物(もの)を/見= 00024660M7物(けん=ぶつ)に/行(ゆき)けるが、壱人のいふやう、なにやらのこりあふひや 00024670M8うなが、$か$やかへ、よろまいかといひけれバ、あふむ 00024680M9いゝや、ゐらぬもの。 00024690¥N7¥J 00024700¥Xいかのぼり(四ウ) 00024710M12さる/所(ところ)の子ども、てゝおやをせがミ、いかのぼりをあげて 00024720M13くだされと、ひたものいひけれバ、/母親(はゝおや)いはるゝハ、なぐ 00024730M14さみがてら/野(の)へつれ/行(ゆき)、あげてとらさしやれといひけるま 00024740M15ゝ、いそかしいに、おのれハといひながら/野(の)へつれ/行(ゆき)、い 00024750M16かをあげられしが、/風(かぜ)/心(こゝろ)よくふき、いかのいとを一/間(けん)のば 00024760M17し二/間(けん)のばし、六七/間(けん)も心よくのばし、もはやいともなく、 00024770M18おやぢも/今(いま)ハはなげをのばし、たわいもなふあげられ(五 00024780M19オ)しかバ、むすこハ、もふおれにくだされと、たび+ 00024790¥P81 00024800L1せがめども/聞入(きゝいれ)もせず、あげられしかバ、むすこハこらへ 00024810L2かね、くし+なき/出(いだ)せバ、しやうこともなし。どんな。 00024820L3おのれをつれてきて、じやまになる。 00024830¥N8¥J 00024840¥X/知(し)らぬ/碁(ご)けんぶつ 00024850L6さる所に/碁(ご)をうち/居(ゐ)られしが、一/座(ざ)の人&おもひ+に/助= 00024860L7言(ぢよ=ごん)を申されしが、/壱人(ひとり)かつて/碁(ご)をしらず。われも/一所(ひとところ)なり 00024870L8ともぢよごんを(五ウ)いわずんバ、/碁(ご)も/知(し)らぬと人&のお 00024880L9もわんも/気(き)のどくと、むかふの/角(すミ)があぶなふござるといひ 00024890L10けるまゝ、/打手(うちて)/気(き)をつけて見れども、さしてあぶなき/所(ところ)も 00024900L11見へざるまゝ、いづれの/所(ところ)かといひけれバ、されバ、むか 00024910L12ふの/角(すミ)の/一石(いつせき)が/落(おち)かゝつてある。 00024920¥N9¥J 00024930¥Xしらぬ/兄弟(きやうだい) 00024940L15さる/寺(てら)のお/大(だい)、/何心(なにごゝろ)なく/台所(だいどころ)へちやをくミに/出(いで)られけるに、 00024950L16つか+と/来(く)る人/有(あつ)て、(六オ)ぢうぢハるすかととわれし 00024960L17まゝ、/斎(とき)に/参(まい)られました。フウ、もどられたらバ松兵衛が 00024970L18まいつたといふて下されとてかへられける。ぢうぢ、やが 00024980L19てもどられけれバ、かくと申ける。ぢうぢ、そなたを何と 00024990M1も、とはれなんだか。されはいなあ。たれじやとたづね給 00025000M2ふゆへ、/住持(ぢうぢ)のいもうとでござると申ました。/南無三宝(なむさんぼう)。 00025010M3それハやくたいもない。おれがあにきじや。(六ウ) 00025020¥N10¥J 00025030¥X/背中(せなか)に/無心(むしん) 00025040M6/去人(さるひと)しまバらへ/行(ゆき)、なじミの/女郎(ぢよらう)と/夜(よ)とともねものがたり 00025050M7の折ふし、おまへにちと/無心(むしん)があるけれどと、いひかねし 00025060M8やうすなれバ、はて、/何(なに)なりともいはれよと申さるゝ。/女= 00025070M9郎(ぢよ=らう)、/左様(さやう)ならバ/口(くち)にてハはづかしいほどに、あちらむかん 00025080M10せ。せなかに/書(かい)て申ましよ。さあらバとて、あちらむけバ、 00025090M11せなかに、もみのとかけバ、大じん、(七オ)/心得(こゝろへ)た。@さだめて|/二布(ふたの)と△@ 00025100M12/女郎(ぢよらう)、マアまたんせと、もみの/下(した)に、よきふとかけバ、大 00025110M13じん、アヽこそば。 00025120¥N11¥J 00025130¥Xかけこゐのとめ/書(がき) 00025140M16さる/人(ひと)、/節季(せつき)ごとに/借銭乞(しやくせんこい)の/人別(にんべつ)を/帳(ちやう)にうつし、二かいへ 00025150M17もちあがり/居(ゐ)らけける。しかる/所(ところ)へこめや/来(きた)り、/此極(このきわ)にハ 00025160M18少&御かし/下(くだ)されと/内義(ないぎ)にいへば、いつものごとく、しな 00025170M19よくゆひかへしける。ていしゆ二かいより、/今(いま)のハ/何(なに)屋じ 00025180¥P82 00025190L1や。/米(こめ)屋(七ウ)でござつた。いかにもと、とめ/帳(ちやう)をけし、 00025200L2/又(また)その/跡(あと)へ/木(き)屋きたりけれバ、さいぜんの/通(とをり)にいひかへし 00025210L3ける。ていしゆ、たれじや。木やかと又一口けし、だん 00025220L4+/大方(おほかた)けし、/夜(よ)もふけけれど、さかなや一口きへざるゆ 00025230L5へ、かゝ、このさかなやハまだこぬか。いや、まだ見へま 00025240L6せぬといわれけれバ、ていしゆ、はてじやまな。いつでも 00025250L7らちのあかぬやつじや。(八オ) 00025260¥T1 00025270¥G(一オ挿絵) 00025280¥N1¥J 00025290¥Xいなりの御利生 00025300M13ある/所(ところ)に、ことの/外(ほか)ひんなる人あつて、/何(なに)とぞいなり様へ 00025310M14/百日参(ひやくにちまい)りしてなりとも/福(ふく)をいのり、/此(この)くげんの/の((ママ))がれば 00025320M15やとおもひ、/毎日(まいにち)+/参(まい)り、つゐに百日にまんずる/日(ひ)ハ、 00025330M16くれより参り、/神前(しんぜん)につやをして、きねんをこめけるが、 00025340M17うしミつごろ/衣冠(ゐくわん)/正(たゞ)しく/大明神(たいめうじん)あらハれ、/告(つげ)給ふハ、こよ 00025350M18ひ夜のあけざる/内(うち)、/下向(げこう)すべし。おはいなりの/神前(しんぜん)に、壱 00025360M19つの/袋(ふくろ)(一ウ)おちあるべし。/是(これ)をその/方(はう)にあたふるとの/夢(ゆめ) 00025370¥P83 00025380L1さめ、さて+ありがたきことと、やがて/下向(げこう)しぬれバ、 00025390L2つげにたがわず、/袋(ふくろ)ひろい見れバ、三百両の/小判(こばん)/也(なり)。これ 00025400L3ハかたしけなしと/悦(よろこ)びけるが、あくる/夜(よ)、またいなりへ御 00025410L4礼に/参(まい)り、しばらく/拝(はい)しいたりしが、うつゝ共なく/夢(ゆめ)とも 00025420L5なく/明神(めうじん)/仰(おほせ)らるゝハ、/夜前(やぜん)三百両の/金(かね)ハさづけぬれど、そ 00025430L6の/小判(こばん)を/身(ミ)に/付(つけ)ぬれバ、いのちあやうけれバ、もとの/所(ところ)へ 00025440L7すつべしと/示現(じけん)を/蒙(かうむ)り、(二オ)さて+なげかハしき事と 00025450L8思ひながら/下向(げかう)し、おばいなりのまへにいたりぬれバ、さ 00025460L9いふをいたし、/捨(すて)おかんとすれど、いかにしてもおしうハ 00025470L10あり、/我物(わがもの)にせんとおもへバ/命(いのち)おしし、/色&(いろ+)としあんして、 00025480L11/金(かね)を/持(もつ)てかけ/落(をち)した。 00025490¥N2¥J 00025500¥Xむまいゆめ 00025510L14よくふかき/者(もの)、ゆめに/唐(から)へ/渡(わた)り、/唐人(とうじん)の見せに、ぼんに/大= 00025520L15人参(だい=にんじん)をつミかさねありけれバ、/代(だい)ハ何ほどととへバ、/銭(ぜに)三十 00025530L16文といふ。又となりに、/舛(ます)にさんごじゆの/玉(たま)が(二ウ)一は 00025540L17いはかりありしを、/直(ね)をとへバ十五文といふ。いづれも/買(かい) 00025550L18たくおもひ、/懐(ふところ)をさがせど/銭(せに)ハなし。いそぎ/取(とり)に/帰(かへ)らんと 00025560L19するに、なんぼにもあるかれぬ。 00025570¥N3¥J 00025580¥Xとめるがすい 00025590M3/悪性(あくしやう)なるむすこ、何かかこつけ、/夜(よ)どまりをいたしける。 00025600M4八日の/夜(よ)ハ/薬師参(やくしまい)りとてあしたにかへり、十七日にハ/清水= 00025610M5参(きよミづ=まい)りとて/夜(よ)をあかしける。/廿日(はつか)の/夕(ゆふ)かた、/母(はゝ)にむかひ、/寺(てら) 00025620M6へまいつてこふといふ。/母(はゝ)/聞(きゝ)て、いや+、(三オ)けふハ/無= 00025630M7用(む=よう)といわれけるを、ぜひ、はか/参(まい)りいたさねバならぬとい 00025640M8ふ。/母(はゝ)、やくたいもない。こよひハいつぞ、/親父殿(おやぢとの)の/逮夜(たいや) 00025650M9に、はかへ/参(まい)らふとや。 00025660¥N4¥J 00025670¥X/楊貴妃(やうきひ) 00025680M12/去方(さるかた)にめしつかひの/下女(げぢよ)/有(あり)。/近所(きんじよ)の五郎兵へ八兵衛といへ 00025690M13る人、/毎日(まいにち)/遊(あそ)びに/来(きた)り、かの/下女(げぢよ)をいつの/比(ころ)よりか、/楊貴= 00025700M14妃(やうき=ひ)と/異名(ゐミやう)をつけける。/下女(げぢよ)ハ/此(この)わけもしらず、あるときほ 00025710M15うばいの/角(すミ)まへがミにとひけるハ、(三ウ)お/弐人(ふたり)ともに、 00025720M16わしを、ようきひ+とのたまふハ、いかなることにやと 00025730M17いふ。まへがミもござかしきものにて、あれハもろこしの 00025740M18/王(わう)様きさきに、三十二/相(さう)のびじんに、やうきひといふ人あ 00025750M19りしが、そなたがにたゆへ、かくハのたまふといひきかせ 00025760¥P84 00025770L1ける。下女ハうれしげに、あくる日ハあさめししまふやい 00025780L2なや、二かいへあがりかミゆひ、いつよりけしやうをいろ 00025790L3どり、たいどころにすわり/苧(を)をうミ、人&の(四オ)きたり 00025800L4たまわんとまちけるが、おり/節(ふし)、五郎兵へ八兵へきたり、 00025810L5いつよりもしろ+とぬりまハしたる/下女(けぢよ)がかほを見て、 00025820L6/楊貴妃(やうきひ)、けふハ又+どうも申されぬ。見事+。下女が 00025830L7いふやう、おまへがたもぎやうさんそうに、なんじやなあ。 00025840L8ちとバかりにたとて。 00025850¥N5¥J 00025860¥X/蚊(か)の/酒(しゆ)ゑん 00025870L11さる人、さて+手まへのさしきへハ、/薮(やぶ)ぢかなる(四ウ) 00025880L12ゆへか/蚊(か)/多(おほ)く、きやくらいのときなど、きのどくに/存(ぞんず)ると 00025890L13いへバ、壱人の申さるゝハ、よい/事(こと)をおしへましよ。さや 00025900L14うのときハ、さしきのかべに壱尺まハりほどに/酒(さけ)をふきか 00025910L15けをけバ、/座敷(ざしき)中の/蚊(か)がとまり、外へハ/出(で)ませんとおしゑ 00025920L16けれバ、あるとき、かのおしゑの/通(とをり)にし、きやくかへられ 00025930L17て、その所を見れバ、/蚊(か)ハうんかのごとくとまり/居(ゐ)たるを、 00025940L18皆ごろしにせんと、なべのふたを/持(もち)て、その上からおさゑ 00025950L19んと(五オ)せられたれバ、/蚊(か)ハふつといふてたちながら、 00025960M1/蚊(か)のいはく、此うへにおさへられたりや、つぶれましよ。 00025970¥N6¥J 00025980¥Xよいたしなミ 00025990M4/物(もの)ごとに用心ふかきおやぢあり。つねにかた/眼(め)を/紙(かミ)にては 00026000M5りゐられしが、わかき人、何してさやうに/紙(かミ)をはりおハす 00026010M6ぞととひけれバ、これハけがせぬやうに、片目とつてをく 00026020M7といわれける。/或時(あるとき)すだれにて、かためをつきつぶしけれ 00026030M8バ、いざ、かやう(五ウ)のこともあらんかと、かための/紙(かミ) 00026040M9をめくれバ、たばい/置(をき)たる/眼(め)ほどあつて、あきらかに見ゆ 00026050M10れども、/近付(ちかつき)が壱人もなかつた。 00026060¥N7¥J 00026070¥X/一休(いつきう)の/斎(とき)まゐり 00026080M13/一休(いつきう)、むらさき/野(の)におわせし/比(ころ)、/西陣(にしじん)に/和尚(おしやう)をうやまふ/織(をり) 00026090M14屋あり。/月(つき)なミに/斎(とき)をあげられしが、/身上(しんしやう)不/勝手(がつて)ゆへ、/奉= 00026100M15公人(ほう=こうにん)もひまいだし、はたもあげをくほどの/仕合(しあわせ)なれハ、お 00026110M16しやう(六オ)にも/当月(とうげつ)よりハ/斎(とき)もあげられずと、むらさき 00026120M17のへゆき、そのことハりを申ける。おしやうも、/尤(もつとも)のこ 00026130M18となり。さりながら、/仏前(ぶつぜん)へハ/毎月(まいげつ)/参(まい)り/廻向(ゑかう)申べし。かな 00026140M19らずちや壱ついだしたまふまじと/仰(おほせ)あれバ、/織(をり)や/夫婦(ふうふ)も/日= 00026150¥P85 00026160L1本(につ=ほん)/第(だい)一の/和尚(おしやう)様ほと/有(あり)。ありがたい/仰(おほせ)られやうかなとよろ 00026170L2こびあいけり。そのめいにちにもなれバ、そう+/和尚(おしやう) 00026180L3御/出(いで)あり。/仏前(ぶつぜん)へ御/参(まい)り/有(あつ)て、/硯箱(すゞりばこ)をこゐ給ひて、なにや 00026190L4らかき(六ウ)したゝめ、御かへりあれバ、あとにて見れバ、 00026200L5△△/西(にし)ぢんにいかなるてきがこもりけん 00026210L6△△△はたをあげつゝときあげにける 00026220¥N8¥J 00026230¥X/難波(なにわ)はなし 00026240L9/京(きやう)の/人(ひと)、/夜舟(よふね)にて/大坂(おほさか)よりのぼられしが、のりあひなれバ 00026250L10/四方山(よもやま)のはなしに、/京(きやう)の/人(ひと)いひけるハ、さていつも、/五月= 00026260L11雨(さミた=れ)/比(ごろ)ハ/大坂(おほさか)にくだり/居(ゐ)ますが、つゐに/大坂(おほさか)にて、ほとゝぎ 00026270L12すの/啼(なく)(七オ)/音(ね)をきゝませぬが、/土地(とち)のゆへかと申されけ 00026280L13れバ、/乗合(のりやい)の/人(ひと)、しさいらしく申けるハ、なかぬはづでご 00026290L14ざる。ナゼニナ。そうたい、/大坂(おほさか)といふところハ、じだらく 00026300L15にござる。(七ウ) 00026310¥T1 00026320¥G(一オ挿絵) 00026330¥N1¥J 00026340¥Xうづらかご 00026350M13さる/人(ひと)、/知(し)る人のかたへゆかれしが、/座敷(ざしき)にハまきへのう 00026360M14づらかごに、しんくのあミをはり、/大切(たいせつ)の/鳥(とり)と見へけるま 00026370M15ゝ、とりのよしあしハしらねども、ひさうなさるゝも/道理(どうり)。 00026380M16さて+よき/鳥(とり)かなとほめけれバ、あるじ、ことの外うれ 00026390M17しがり、/扨(さて)/貴様(きさま)も/御好(おすき)かと、/何(なに)もさかなハござらねども/御= 00026400M18酒(ご=しゆ)壱つと、ちそうせられ、もはやとり給へといへば、てい 00026410M19しゆ、しかし/今(いま)に/鳥(とり)も(一ウ)なき候ハんまゝ、いま壱つ/参(まい) 00026420¥P86 00026430L1られよと、またたぶ+とひかへ、さかづきを/持居(もちゐ)られし 00026440L2が、うづらハ、ちゝくわいと/と((衍))/大(おほ)きなる/声(こゑ)をしてなきけれバ、 00026450L3きやく人、はなハだおどろき、/持(もち)たる/盃(さかづき)をうちおとし、 00026460L4今のハマア、なんでゑす。 00026470¥N2¥J 00026480¥Xひゆうどろ+ 00026490L7さる人、/東山(ひがしやま)とりべのゝほとりを/通(とを)り、ともだちの源七ハ 00026500L8/此(この)ところにはかのあるよし。いざ(二オ)/参(まい)り、ゑかうせんと 00026510L9水を/手向(たむけ)、とんしやうぼたいと/手(て)をあわせしが、ひゆうど 00026520L10ろ+となるがいなや、そとはの/後(うしろ)より/青(あを)ざめたる/顔(かほ)にて、 00026530L11源七/幽霊(ゆうれい)あらハれ、/扨(さて)+/馴染(なじミ)とて御ゑかうこそうれしけ 00026540L12れといひけるまゝ、/友達(ともたち)、/其方(そのほう)ハ/世(よ)におわせしときハ、は 00026550L13なまでも/人(ひと)にかませしほどのぶせうなる/人(ひと)なりしが、めい 00026560L14どにてハいかやうにしてゐらるゝや。/幽霊(ゆうれい)のいふやう、さ 00026570L15て+、めいどの/道(ミち)にハつれそふ/人(ひと)ハ/壱人(ひとり)も(二ウ)なく、 00026580L16/今(いま)のひゆうどろ+も、ミづからでござる。 00026590¥N3¥J 00026600¥Xぞうり/取(とり)の/目(め)おぼへ 00026610L19さる/旦那(だんな)、/町(まち)を/通(とを)られしが、/小(こ)もんのたちつけをはきたる/人(ひと)、 00026620M1/旦那(だんな)を見て、ぢぎせられしか、いかさま、ひさがしらにし 00026630M2ゆもつにてもできたるにや、あしハ/□((立カ))てながら、きつとう 00026640M3つむき、/両方(りやうはう)の/手(て)をつき、すぎゆきぬ。/旦那(だんな)、ぞうりとり 00026650M4に、あれハ/誰(たれ)じや。わたくしも/□□((しかカ))とハ見/知(し)りませぬが、 00026660M5たしか、ぢんこう(三オ)きのなかの人でござります。 00026670¥N4¥J 00026680¥Xあぶなひことの 00026690M8ある/人(ひと)/小弓(こゆミ)を/持(もち)、弐人つれだち/野(の)に/出(いで)、/池(いけ)にかものたちゐ 00026700M9るを見て、一人がとらんといへバ、一人がいふやう、あれ 00026710M10ハはじろがもとて/味(あぢ)のわるい/鴨(かも)じや。いらぬものといはれ、 00026720M11しからバとて、すぎゆきける。/跡(あと)にてかも、くびをあげ見 00026730M12をくりて、マア、お気にゐらいで、しやわせ。(三ウ) 00026740¥N5¥J 00026750¥Xせんしやうもの 00026760M15/夏(なつ)の/日(ひ)さる/人(ひと)、/丸山(まるやま)へさそわれゆかれしが、/殊(こと)の/外(ほか)のあつ 00026770M16さにて、かたびらもしとしづくにあせしけるゆへ、でつち 00026780M17をよび、われハかへつて、ちゞミのかたびら類のうちにて、 00026790M18こまかき/嶋(しま)を/取(とつ)てこいといわれ、やがてちゞミをとつてき 00026800M19たりしが、/旦那(だんな)見て、これでハない。どんなやつの。なぜ 00026810¥P87 00026820L1たつ/嶋(じま)の/方(はう)をもつてこなんだ。いつそちやのきぬちゞミを 00026830L2(四オ)とつてこいといはれけれバ、でつち、さやうならバ、 00026840L3まぎらハしうござりますほどに、三ツながらみな、とつて 00026850L4さんじましよ。 00026860¥N6¥J 00026870¥X/名(な)をいはぬもおかし 00026880L7/浄土宗(じやうどしう)のだんぎに、/日蓮宗(にちれんしう)をさん+/破(は)して、とかれける 00026890L8が、また/大坂(おほさか)へもゆき、/右(ミき)のごとくとかれ、また/京(きやう)へのぼ 00026900L9られけるよしを、/日蓮宗(にちれんしう)/聞(きゝ)、/同行(どうぎやう)の/人(ひと)にあふて、またかの 00026910L10がのぼつたの。(四ウ) 00026920¥N7¥J 00026930¥Xこわい/夢(ゆめ) 00026940L13/海中(かいちう)に/大(おほ)きなるうろのありけるに、/夜(よ)ハうをどもはゐり、 00026950L14ねたりけるが、なにとしたりけん、/蛸(たこ)のこゑとして/殊(こと)の/外(ほか) 00026960L15おそわれける。ほかの/魚(うを)ども、やい、たこよ+。なんとし 00026970L16たとおこしけれバ、たこ/目(め)をさまし、さて+、がわ/太郎(たろう) 00026980L17に、ほそくびをとらへられるゆめを見た。どうりじや。む 00026990L18ねにあしがあつた。(五オ) 00027000¥N8¥J 00027010¥Xびんぼう/神(がミ)/開帳(かいちやう) 00027020M3ちか/比(ごろ)ハ/銘仏(めいぶつ)/秘仏(ひぶつ)かいちやう/多(おほ)く、/都(ミやこ)にも/最早(もはや)/名高(なだか)き/本(ほん)ぞ 00027030M4んもなく、さる/人(ひと)申ける。もはやかいちやうも/大(たい)ていのこ 00027040M5とにてハはんじやうせぬ。此うへハせいぐわん/寺(じ)の/如来(によらい)を 00027050M6へいちやうするより/外(ほか)ハなし。さりながら、こゝにびんぼ 00027060M7う/神(がミ)の/像(ぞう)おハすれバ、これをかいちやうせんとおもふとい 00027070M8ひけれバ、それハやくたいもないおもひつきなり。/福(ふく)の/神(かミ) 00027080M9にて(五ウ)さへ/参(まい)りのない/時節(じせつ)に、/誰(たれ)がおがミにくるもの 00027090M10ぞ。されハの/事(こと)よ、/開帳(かいちやう)の/札(ふだ) 00027100G1/此度(このたひ)ひんほう神の 00027110G2尊像令開帳候 00027120G3参詣無之方へハ 00027130G4此方£影向可有 00027140G5之候也 00027150¥N9¥J 00027160¥X/和尚(おしやう)あいさつ 00027170M18/旦那(だんな)寺の/和尚(おしやう)を/斎(とき)によび、ぜんもあげて、くわしなど/出(いだ)し 00027180M19けるが、ていしゆ、やうじさしを(六オ)きれにてよくいた 00027190¥P88 00027200L1したるをとりいだしつかひけるに、/和尚(おしやう)見/給(たま)ひ、さて+ 00027210L2見/事(ごと)なる/細工(さいく)かな。ことにぐめんよくいたしたるもの。/中(なか) 00027220L3のへだてハ/何(なん)のためぞとあれバ、ていしゆ、それハしやう 00027230L4じんとなまぐさきとのこゝろへと申。/和尚(おしやう)きゝ、/是(これ)ハもつ 00027240L5ともかな。/拙僧(せつそう)も/今(いま)から、さやうにいたそ。(六ウ) 00027250¥T1 00027260¥G(一オ挿絵) 00027270¥N1¥J 00027280¥X/無間(むけん)のかね 00027290M13/近年(きんねん)不/勝手(かつて)なる/人(ひと)、しんるいのかたへ/行(ゆき)、/御無心(ごむしん)ながら小 00027300M14判三両かしたまわれと申されける。なるほど/心(こゝろ)やすきこと 00027310M15なり。しかれども、なんぞあきなひごとのおぼしめしつき 00027320M16にて御/入用(いりよう)にも候や。いかにも/此度(このたび)ハたしかなる/存付(ぞんじつき)にて、 00027330M17おつつけ/仕合(しやわせ)つかまつり、御/返進(へんしん)申べしとあれバ、いかや 00027340M18うの/事(こと)にて候や。うけたまハりたしといふ。イヤ、/此(この)たび、 00027350M19さよの/中山(なかやま)に/下(くだ)り、(一ウ)六百両のねがひにて、むけんの 00027360¥P89 00027370L1かねをつく/存(ぞん)じよりなれバ、たしかなることにてごさると 00027380L2いふ。なるほど、/尤(もつとも)なる/事(こと)ながら、/能&(よく+)しあんなされ、か 00027390L3ねをつき給ふべし。六百両のかねハたしかに/出(いづ)べけれども、 00027400L4/此世(このよ)よりひるにせめられ給ふべし。とくとかくごをきわめ 00027410L5られての/事(こと)といへバ、なるほど、とくと/心得(こゝろへ)をきました。 00027420L6トハいかゞでござる。いや、かねをつき、六百両/手(て)に/入(いる)が 00027430L7いなや、/大坂(おほさか)へくだり、/大塩(おほしほ)/問(とい)屋をいたす。(二オ) 00027440¥N2¥J 00027450¥Xやじり/切(きり) 00027460L10ぬす/人(びと)、/夜半(よなか)すぎとおぼしき/比(ころ)、さる/家(いへ)のかべを/切(きり)おとし 00027470L11けるまゝ、ていしゆ、そつとおき/出(で)て、/切所(きるところ)のうちつらに、 00027480L12あかがねの/火(ひ)かきをあてけれバ、ぬす/人(びと)、こゝのかべ/下地(したぢ) 00027490L13にハかねがあてゝあると、/又(また)わきのかたをきる。そこへも 00027500L14また/火(ひ)かきをあてけれバ、またいふやう、こゝもかねがあ 00027510L15てゝあるぞ。ていしゆ、/内(うち)より、/何(なん)と、/念(ねん)の/入(いつ)たふしんか。 00027520L16(二ウ) 00027530¥N3¥J 00027540¥X/間(ま)ぬけおどり 00027550L19さる/田舎侍衆(いなかさふらひしゆ)を/馳走(ちそう)に、ぎおん/町(まち)のおどりを/同道(どう※)いたし 00027560M1見せけるに、をんど取、ひたいにあふぎをかまへ、さあら 00027570M2バ、そこらでまぬけおとりがしよもふじやが、がてんかと。 00027580M3おどり子、ヲヽサテがてんじやといふ。かの/侍(さふらひ)、さて+と 00027590M4/感(かん)じ、/都(ミやこ)ほどある。あの/者(もの)一人/所望(しよもう)じやといふに、この大 00027600M5勢の人が、ヲヽサテがてんじやと。やさしい、/一度(いちど)に/得心(とくしん)め 00027610M6されたほどにの。(三オ) 00027620¥N4¥J 00027630¥X/夜(よる)の/黒犬(くろいぬ) 00027640M9/闇(やミ)の/夜(よ)に、さる/人(ひと)/町(まち)をあるきけるが、/黒犬(くろいぬ)をふミけれバお 00027650M10どろき、キヤン+とほゆる。これハとおもひ、むかふへと 00027660M11びけれバ、また/黒(くろ)いぬをふミ、キヤン+となきけれバ、こ 00027670M12れハさて、ながい/犬(いぬ)じや。 00027680¥N5¥J 00027690¥Xあちらこちら 00027700M15さる/所(ところ)に、あやまつて/蔵(くら)バかりやけうせける。ある/人(ひと)いふ 00027710M16やう、/外(ほか)へハ/火(ひ)ハ/出(で)ませなんだか。いや、るい/火(くハ)は(三ウ) 00027720M17ござらなんだといへハ、さて+/蔵(くら)といふものハ、ちやう 00027730M18ほうなるものでござる。 00027740¥P90 00027750¥N6¥J 00027760¥X/牛(うし)ハうしづれ 00027770L3さる/処(ところ)に、/牛(うし)ハうしづれとやらにて、/利口(りこう)なることハ、人 00027780L4のいふた/事(こと)を/我(わが)いふたやうに、うそをつく/友(とも)だち三人あり。 00027790L5壱人かいふやうハ、おれがわかいときハ、/前句(まへく)などにて/名= 00027800L6句(めい=く)をつけ、ほうびなどとりました。いかやうの/句(く)などめさ 00027810L7れたと、そハなる/人(ひと)/尋(たづね)(四オ)けれバ、 00027820L8△△あたまの/上(うへ)にも/国(くに)ハ二/ケ国(かこく) 00027830L9といふ/前句(まへく)に、/扨&(さて+)こまりましたけれど、やう+つけま 00027840L10した。イカニトナア。 00027850L11△△/加賀(かゞ)がさや/下(した)にさしたる/薩摩櫛(さつまぐし) 00027860L12と/仕(つかまつ)た。はてやれ、/聞(きゝ)/及(および)し/銘句(めいく)といへバ、壱人のいふや 00027870L13う、手まへも/狂哥(きやうか)をすき、よミまするが、/此中(このぢう)/一首(いつしゆ)のうち 00027880L14へ、/国(くに)を十/ケ国(かこく)/入(いれ)てよめと人&申けるまゝに、やう+と 00027890L15/一首(いつしゆ)/仕(つかまつ)た。ナニトナア。 00027900L16△△すほう。でハ。あしう。かゝ。めハ。ひだおれて。 00027910L17△△△ミのいづ。まいが。むつ。かしうなる 00027920L18といたしたと、(四ウ)ますかゞみの/内(うち)にあるを、/我(わが)ものに 00027930L19して/咄(はな)しけれバ、また壱人ハ、うそにもかやうの/事(こと)さへい 00027940M1ふことのならぬわちよにて、なんぞゆひたふハあり。いや 00027950M2なるほど、よまるゝものやらして、わしが/母(はゝ)しや/人(ひと)ハ、ひ 00027960M3や国なつて百文の/銭(ぜに)を/国(くに)せずによまれます。 00027970¥N7¥J 00027980¥Xへおいぬす/人(びと) 00027990M6/夫婦(ふうふ)よりあひ、はなししてゐられしに、ていしゆおならを 00028000M7せられけれバ、/女房(にようばう)いゝかい、(五オ)いまのハなんでござ 00028010M8んす。たしなましやれといへば、ていしゆ、はれ、やくた 00028020M9いもない。いまのハそなたであつた。いゝや、こなさんじ 00028030M10やと、にぢりあひしが、女房いふやう、いや+、こなさ 00028040M11んでもあるまい。ゑんの下にぬす人でもゐて、それがとり 00028050M12はづしたものでござんしよといふ。おりふしぬす人、よひ 00028060M13よりゑんの下にしのびはいりゐしが、女房がいふをきいて、 00028070M14(五ウ)さりとてハめいわくでござる。 00028080¥N8¥J 00028090¥Xおやぢへらず口 00028100M17さるところにおやぢあつて、すき+にハ/書物(しよもつ)をたのしま 00028110M18れけるが、あるとき/本(ほん)よミ+いねむられしかバ、/子(こ)ども 00028120M19おやぢをおこし、ねむるにもめがねがいりますかといへバ、 00028130¥P91 00028140L1おやぢもぬからぬかほして、おれハねむるにも、うつかり 00028150L2とハいねむらぬ。ナゼニエ。夢を見るわれ。(六オ) 00028160¥N9¥J 00028170¥Xなるこ/参(まい)り 00028180L5/有徳(うとく)なる/人(ひと)、むすこ/参宮(さんぐう)いたし度、おやぢにねがひけるが、 00028190L6おやたちハはじめてのたびなれバ、こゝろもとなけれども、 00028200L7よく+おもへバ、かわゆひ/子(こ)ハたびをさせといふせわも 00028210L8あれバ、わかいときから、ういめつらいめにもあわせたがよ 00028220L9いと、/手代(てだい)/男(おとこ)などさしそへまいらせけるが、/無事(ぶじ)にてげか 00028230L10ういたしける。/親達(おやたち)ハむすこの/色(いろ)ぐろに、たびづかれに(六 00028240L11ウ)つかれたるを見て、/夫婦(ふうふ)/打(うち)より、いかさま、たびハつ 00028250L12らゐものじや。つねよりもきつうやせをつた。しかしなが 00028260L13ら、これもあいつが/為(ため)じやと、あくる/朝(あさ)/飯(めし)を、おやたち、 00028270L14むすこ、ならびたべられしが、むすこにむかひ、なんと、 00028280L15たびといふものハつらいものか。いつにてもわすれなよと 00028290L16いわれけれバ、むすこ、いゝや、おもしろかつた。(七オ) 00028300¥T1 00028310¥G(一オ挿絵) 00028320¥N1¥J 00028330¥X/了簡(りやうけん)ちがひ 00028340M13さる人、/去年(きよねん)の/夏(なつ)の/日(ひ)でりに、おもひ/入(いれ)/米(こめ)を/買込(かいこミ)たくおも 00028350M14ひけれども、こゝろもとなさのあまり、/日比(ひごろ)/清水(きよミづ)のくわん 00028360M15おんを/念(ねん)ずれバ、七/夜(や)こもり/通夜(つや)をして、御れいむをまち 00028370M16けるに、七日めのあかつきに、/御戸(ミと)ひらかせ給ひて、/千手(せんじゆ) 00028380M17のくわんおん/御出現(ごしゆつげん)あれバ、こハありがたしと、くわんぎ 00028390M18のなミだをうかめ、かうべを/地(ち)につけ、御つげもやと/相(あい)ま 00028400M19ち(一ウ)けれバ、くわんおんごらんじ、それハめいわく。 00028410¥P92 00028420L1/其方(そのはう)になにも/用(やう)ハない。こよひのちやとうがすぎたによつ 00028430L2て、/小用(しやうよう)にゆくのじや。 00028440¥N2¥J 00028450¥Xかミなりぎらひ 00028460L5あるびんぼうなるおやぢ、ことのほかのかミなりぎらいに 00028470L6てありけるが、/五月雨(さミだれ)のはれま、にハかにかミなりきびし 00028480L7くなりかゝれバ、おやぢハそのまゝおし入へはいり、よぎ 00028490L8ひきかづき、すくミゐける。そのうちに(二オ)七ツバかり 00028500L9の子、おなじくかミなりにおどろき、かゝさま、こわいと 00028510L10とりつけバ、/母(はゝ)おや、おれじやとてなんとしよ。とゝさま 00028520L11のあそこにじやと、おし入ををしゆれバ、かの子、かゝさ 00028530L12ま。/今日(けふ)もきわかへ。 00028540¥N3¥J 00028550¥X/仁義(じんぎ)ぬす/人(びと) 00028560L15さる/家(いへ)の見せの/下(した)を、ぬす/人(びと)、こち+こぢけるを、ある 00028570L16じきゝつけて、さてハぬす人めじやと、そのまゝうかゞへ 00028580L17バ、こぼちあなより/手(て)をいだし/居(ゐ)るを(二ウ)見て、あるじ、 00028590L18/銭(ぜに)弐百文もちゆき、ぬす/人(びと)の/手(て)ににぎらせ、はなしけれバ、 00028600L19ぬす/人(びと)、/此(この)やうになされてハ、かさねて/参(まいり)りにくい。 00028610¥N4¥J 00028620¥X/物(もの)いふくわゐ 00028630M3さる人、くわゐをこのミたべられしを、/女房(にようばう)ハ、どくじや 00028640M4に、まゐりますなといふを、くわゐきひていふやう、いや、 00028650M5おれよりそもし様が。 00028660¥N5¥J 00028670¥X/物(もの)まねのくすり(三オ) 00028680G1△役者こわ色の御薬 00028690G2市川団蔵△△荻野伊太郎 00028700G3花桐豊松△△芳沢いろは 00028710G4沢村宗十郎△中村仲蔵 00028720G5嵐三五郎△△同△十蔵 00028730G6姉川新四郎△嵐吉三郎 00028740G7其外いつれにても御望次第 00028750G8薬進し申候尤直段それ+に 00028760G9相違御座候△以上 00028770M8かくのごとく、ミや川町 00028780M9/辺(へん)にかんばんありけるが、 00028790M10わかいもの、これハめづ 00028800M11らしきくすりと、かの/家(いへ) 00028810M12へはいり、くすりかいま 00028820M13しよといへバ、ていしゆ、 00028830M14どのくすりを/進(しん)じましよ。 00028840M15まづ/市川(いちかハ)(三ウ)などは、 00028850M16なんぼいたします。/市川(いちかハ) 00028860M17ハ金五両いたします。そ 00028870M18れよりかんばんの/通(とを)りハ、だん+/直(ね)安でござります。さ 00028880M19やうならバ、/嵐(あらし)三五郎、一貝くだされと/持(もち)かへり、/友達(ともだち)に 00028890¥P93 00028900L1かくと見せけれバ、それハてうほうなるくすりじや。ちつ 00028910L2となめて見ておれもかわんと、友達すこし口へ入見けれバ、 00028920L3@おのづから△△|△嵐三五郎で、@これハしたり。たばこのやにじや。 00028930¥N6¥J 00028940¥X/和尚(おしやう)の/酢(す)ごのみ(四オ) 00028950L6さる/旦家(だんけ)へ、/和尚(おしやう)/斎(とき)に参られ、/膳(ぜん)のむかふのなますをたべ 00028960L7られ、さて+/心(こゝろ)よき/酢(す)かなと、/弟子(でし)の/了山(りやうざん)にむかひ、此 00028970L8すて、のふ+といわれけれバ、ていしゆきひて、この/酢(す) 00028980L9で/何(なに)か御/所望(しよもう)でござりますととひけれバ、/和尚(おしやう)もぬからず、 00028990L10されバ此/酢(す)で、そうめんがたべたい。 00029000¥N7¥J 00029010¥X/大切(たいせつ)の/井戸(ゐど) 00029020L13ある/家(いへ)によき/井戸(ゐど)あつて、わきの/水(ミづ)よりちや(四ウ)わんい 00029030L14つはいのめ/が((ばカ))三分づゝかるしと、/茶人(ちやじん)の/方(かた)より、ある日二 00029040L15三/軒(げん)もらいに来りしが、また夕方におよび、/念比(ねんごろ)なるかた 00029050L16より、御むしんながらと/手(て)おけをさげ、もらひに来りけれ 00029060L17バ、ていしゆ、こゝろやすき/事(こと)じやが、けさより二三/軒(げん)も 00029070L18らひに来ましたが、まだあろかしらん。 00029080¥N8¥J 00029090¥Xたこのはかまぎ 00029100M3たこ、/子(こ)のたこをよびいだし、ことしよりはかま(五オ)き 00029110M4そむるものじや。われも/着(き)て、/龍宮(りうぐう)へ/参(まい)れといへば、/子(こ)だ 00029120M5こ、はかまをもちいふやう、とゝ、どのあしからはいらし 00029130M6よぞ。 00029140¥Y〔軽口若ゑびす〕△大尾(五ウ) 00029150¥P94 00029160¥U噺本大系△第八巻 00029170¥T軽口へそ順礼 00029180¥G 00029190¥Y 00029200L16延享三年刊 00029210L17東鶴作・序 00029220L18半紙本五巻 00029230L19蓬左文庫(尾崎久弥氏旧蔵)蔵 00029240¥Y序 00029250M3/千早(ちはや)ふるかミ/屑買(くずかい)も、/袋(ふくろ)/担(かたげ)ては/大黒(だいこく)の/思(おも)ひをなし、あら/金(がね) 00029260M4の/土薑売(つちせうがうり)も、/辛(からひ)かほをやめて/笑(わらひ)をつくるは、/伊勢(いせ)の/蛤(はまくり)/難= 00029270M5波(なに=ハ)のあじ、/心(こゝろ)+の/気作(きさく)を/桜木(さくらき)に/鏤(ちりば)め、/開(ひらい)て/見(ミ)る/花(はな)の/咲皃(ゑがほ) 00029280M6につことして、/堅(かたき)/親仁(おやぢ)も/臍(へそ)をめぐらす/笑(わらひ)の/種(たね)は、/此草紙(このそうし)に 00029290M7/篭(こも)れるのミ。 00029300M9△△△△△△△△△△△△△△△作者 00029310M10△△△延享三とらのはる△△△△△△東鶴G(序オ) 00029320¥P95 00029330¥Y1目△△録 00029340L3一△/恵方(ゑはう)まいりの/幸(さいわい) 00029350L4二△みゝまちがひ 00029360L5三△/直(ね)うちいけん 00029370L6四△風流(ふうりう)さわぎ 00029380L7五△/有(あ)ル/物(もの)がなゐ 00029390L8六△物しらずの/芸(げひ)/自慢(じまん) 00029400L9七△/出(で)るまゝのとんさく(序ウ) 00029410¥T1軽口へそ順礼巻一 00029420¥N1¥J 00029430¥X恵方まいりの幸 00029440M5○/去(さ)ルあき人、せつぶんの/夜(よ)、/恵方(ゑはう)まいりをしける/道(ミち)にて、 00029450M6しごくやれたるぞうきんをひろひあげ、是こそゑほう/神(がミ)の 00029460M7あたへづきんなるべしといたゞきてくわいちうし、うちへ 00029470M8/帰(かへり)、ともしびにて/能(よく)みれば、すゝけたるぞうきんなり。/内= 00029480¥G 00029490¥P96 00029500L1義(ない=ぎ)ことの外きにかけ、かた/時(とき)も早ふ、おすてなされといふ。 00029510L2だんなもいかにもと、でつちにいひ/付(つけ)、このぞうきん、ほ 00029520L3かしてこいといゑバ、かの(一オ)でつちいうやふ、これは 00029530L4おめでたいごきつそう。ほかすにはおよばず。わたくしい 00029540L5わひなほして一しゆつかまつりましたといゑば、だんな、 00029550L6それはどうじや。きゝたしといゑバ、てつちいうやふ、 00029560L7△△ぞうきんをあて/字(ぢ)てかけバ/蔵(くら)の/金(かね) 00029570L8△△△いづれのみちにふくは/福(ふく)なり 00029580L9とよんだ。 00029590¥N2¥J 00029600¥X耳まちがひ 00029610L12○去ルかなつんぼ、大/仏(ぶつ)へまいり、りうぐわんをかけ、われ 00029620L13に/何(なに)とそ、よくきこゑる/耳(ミヽ)をあたへたまへとて(一ウ)一七 00029630L14日こもりしに、七日めの/夜(よ)、大仏ぢきにあらわれたまひて 00029640L15おほせけるは、なんぢがこゝろざしのやさしけれバ、のぞ 00029650L16みのごとく、よき耳をあたへゑさすへしと、みゝづかの下よ 00029660L17り、なるほどおほきなみゝを、かのつんぼのみゝにすりかゑ 00029670L18/得(ゑ)させ/給(たま)へバ、/大(おほき)に/悦(よろこ)び、かへりさまに/宮川(みやがわ)町のきんじよ 00029680L19をとほりけるに、むかふより、一けんしよう+とうたふ 00029690M1て/来(きた)りければ、かのつんぼいうやふ、ても/国(くに)もとの/哥(うた)をき 00029700M2く/事(こと)と/悦(よろこ)んだ。(二オ)(二ウ挿絵) 00029710¥N3¥J 00029720¥X/直(ね)うちいけん 00029730M5○有ルわかひ人二人リ、川ひがしへとこゝろがけ、四でう 00029740M6しばひかハをとをりけるに、北がわ、中むら喜代三郎、/夏= 00029750M7祭(なつ=まつり)のきやうげん/榊(さかき)山小四郎が大当リとて、御ひいきの連中 00029760M8より当リの御ほうび、あまたののほりたちならび有ヲ見て、 00029770M9/壱人(ひとり)の若イ者いうやうハ、コレ作兵。なんとおびたゝしい 00029780M10のぼりじやないか。まづこふ見ハたしたうちで、まん中カ 00029790M11にあるのほりが中カても見事にミゆる。アヽこれもざつと 00029800M12つもつ(三オ)て/銭(せに)の四五〆も入ロかい。作兵衛きいて、て 00029810M13もさてもにが+しい。/貴(き)さまハわるひくせじやぞや。か 00029820M14りそめにも/物(もの)に/直(ね)うちヲする。/人躰(じんたい)がやすう見ゑてきゝに 00029830M15くひ。たしなミやれといふ。かのものきいて、なるほどわ 00029840M16しが/物(もの)にねうちをするといふて、おやぢかつね+しから 00029850M17るゝ。いままたきさまがいけんしてくれる。ともたちなれ 00029860M18バこそかたじけなひ。いやもう+、きさまか(三ウ)今そ 00029870M19ふいふてくれたところが、とんと銭で弐百がところがある 00029880¥P97 00029890¥G 00029900L11といふもおかし。 00029910¥N4¥J 00029920¥X風流さわき 00029930L15○/若(わか)キ者四五人、ぎおん町/井筒(いづゝ)屋へ行てあそびけるか、さ 00029940L16かづきなかばになり、なかゐさし/出(いで)、さけのおあい手に、 00029950L17どなたなりともおよびなされとすゝめけるに、かの/客(きやく)ども 00029960L18いうやふ、女良もふるめかし。なんぞはねたものがよびた 00029970L19いが、よい思ひ付はないかといふところに、客のうちに今 00029980M1一人のもの、よき思ひ付有とて、みな+/注文(ちうもん)出、(四オ) 00029990M2方&のなだかひいしやの/名(な)をかき、なかゐにわたしける。 00030000M3なかゐこれを見て、これはあたらしき注文といふ。/残(のこり)の客 00030010M4も、/是(これ)はおもしろしと、思ひ+にいしやの名を/書(かい)てよび 00030020M5にやりけるが、/中(なか)に一人注文もせず、あんじ/顔(かほ)にてゐたり 00030030M6けれバ、/友(とも)だちいうやふ、なにをうぢ+していやる。い 00030040M7つそ/貴(き)様はきをかへ、げきやうにしやといゑば、かの者い 00030050M8うやふ、おれはさすりのたれそれにしやうと/思(おも)ふ。いや、 00030060M9あんまの/麦飯(ばくはん)かよかろふといゑバ、あれはさすといふ。友 00030070M10だち共、なぜにならぬとと(四ウ)ゑバ、かの者いうやふ、 00030080M11あれは/今(いま)、こちの/親(おや)仁がかゝつてゐるといふた。 00030090¥N5¥J 00030100¥X有ルものがない 00030110M14○/河原(かわら)にこじき二人/居(ゐ)ける。そのそばを去ルうとく人のい 00030120M15んきよとほりけるが、一人のこじきいうやふ、あのいんき 00030130M16よはかねもちそふな。/先(まつ)百貫めより/上(うへ)はいくらあらふもし 00030140M17れぬといゑば、今一人のこじき、いやそふいやるな。この 00030150M18ぢう町の人が、あのこしきには/虱(しらミ)が一舛もあろふといわれ 00030160M19た。それでおれもはかつ(五オ)て見たれバ、やう+この 00030170¥P98 00030180L1つゝれから三合でたといふた。 00030190¥N6¥J 00030200¥X物しらずの芸じまん 00030210L4○去ル小あきないするぶひやうなる人あり。せけんにて。 00030220L5あの万やのちよち/兵衛(へい)はまりをけるとて、もつはらさたし 00030230L6ける。ある/時(とき)ちよち兵衛、かゝりをしつらいたる/所(ところ)へあき 00030240L7なひにゆきあわせ、さま※まりのしまんをしけるが、そ 00030250L8れやのてい/主(しゆ)、おとにきいたるちよち兵衛なれバ、ちとし 00030260L9よまふいたし、けさせみんとて、貴様の(五ウ)(六オ挿絵) 00030270L10まりは、まあなにほどあがるぞととゑバ、十四五間は/心(こゝろ)や 00030280L11すいことゝいふ。その外けかへし、うけながし申におよば 00030290L12ずと、ことの外じまんしける。ていしゆやがてまりをもち/出(いで)、 00030300L13いざしよもうとすゝめけれバ、かのちよち兵衛、まりかゝ 00030310L14りにはゆかず、かど口へいで、/大道(だいどう)にてあしにかけ、よこ 00030320L15にけゝるが、上の町までけこかしける。ていしゆ大に/笑(わら)ひ、 00030330L16御じまんとはきつひ/相違(そうゐ)。あれがどこにあがりましたぞと 00030340L17いゑバ、あれほどよふあがるまりを御わらひなさるかと、 00030350L18まだじまんする。それはなぜにといゑバ、上の町へこ(六 00030360L19ウ)けた/間数(けんすう)、そらへなをして御らふぜといふた。 00030370¥N7¥J 00030380¥X出るまゝの頓作 00030390M3○去ル若者よりあひていうやふ、そちのむかひのだんなは 00030400M4さて+/万能人(まんのうじん)じや。まづゆうげいは申におよばず、よミ 00030410M5かきさんよふ、ひやうはうハうらのうらまでぬけめはない 00030420M6が、そのうちめでたいことぶきになるげいはうたひじやと 00030430M7いゑバ、又一人のいうやふ、いや+、けんじゆつがこと 00030440M8ぶきになるべしといふ。それハ/如何(いか)にととゑば、かのもの 00030450M9いうやふ、はて、やくはらひがいふのをきけ(七オ)バ、や 00030460M10あらめでたいといふた。 00030470¥Y1巻一終(七ウ) 00030480¥P99 00030490¥Y1へそ/順(じゆん)礼巻二△目録 00030500L3一△おやぢのさきぐり 00030510L4二△/乞食(こじき)の/身(ミ)じまん 00030520L5三△/間違(まちがひ)のひげ言 00030530L6四△/盗人(ぬすびと)の/入学(にふがく) 00030540L7五△/心中(しんぢう)に/似合(にあハ)ぬ/外題(げだい) 00030550L8六△/大(おほい)なる/取(とり)ちがひ 00030560L9七△/口合(くちあい)むけんのかね(一オ) 00030570¥T1かる口臍順礼巻二 00030580¥N1¥J 00030590¥X親仁のさきぐり 00030600M5○去ルかどを、ほうらく+とうり/来(きた)ル。おりふしふうふ 00030610M6共みせにゐあわせて、/内義(ないき)いわるゝやうは、だんなどの。 00030620M7あのほうらくをおよびなされて/下(くた)されといゑば、これ、ほ 00030630M8うらくかいませうとよび入れば、どのやうなるを見せませ 00030640M9うといふ。一ばんのよきのを見せやれといゑば、これが一 00030650M10ばんでござる。ねハ七十じやといふ。これはたかい。十文 00030660M11にしやれといふ。ほうらくうり、中+まけるもの(二オ) 00030670M12ではなく、ものをもいわず、おもてに出けるが、そのむか 00030680M13ひより、またよびこむ。おなじくこゝにても一はんを見よ 00030690M14うといふ。ほうらくうり、むかふにてこれが十文につきま 00030700M15したけれど、うらぬといふ。いや、こちはまだその/下(した)じや。 00030710M16七文ならかわふといふ。ほうらくうり、いよ+はらをた 00030720M17て、おこりちらし、かのほうらくを、にへいれさまにとりお 00030730M18とし、みぢんにくだきける。むかひの見せよりふうふ見て 00030740M19ゐて、ていしゆいうやふ、かゝ見やれ。今のをかわひでよ 00030750¥P100 00030760L1かつた。(二ウ) 00030770¥N2¥J 00030780¥X乞食の身じまん 00030790L4○/大節季(おふせつき)の/夜(よ)、三/条(でう)の/橋(はし)の上にかけこひおほくとほりける 00030800L5が、おりふしおやここじき、橋の下にねてゐたりけるが、お 00030810L6りふしこじきの/子(こ)、めをさましいうやふ、さてもあきんどは 00030820L7せわなことかな。おらゝはよひからねてゐるに、あのかけ 00030830L8こひは、とれることかとれぬことかしらぬが、とれねばこ 00030840L9そ、/今(いま)になるのにうろ+とありく。それから見れば、おら 00030850L10ゝはよひからねて、さて+らくなことじやとよろこべば、 00030860L11おやぢむく+とおきて、やかまし(三オ)ひ。なにをいふ 00030870L12としかれバ、ハテ、あのかけこひのありくを見やしやれ。 00030880L13あれから見れバ、こちらはらくな/事(こと)じやといゑば、おやぢ 00030890L14いうやふ、そのらくはだれがさするといふた。 00030900¥N3¥J 00030910¥X間違のひげことば 00030920L17○/有(あ)ル人きんざいへゆき、一/夜(や)とうりうしけるに、そのと 00030930L18ころのせど口へいでけれバ、ていしゆもともなひ/出(いで)、ざい 00030940L19かたのことなれバ、いづくも見ぐるしく、たまのおくだり 00030950M1に、なにの御ちそうもなきと、もてはやし(三ウ)(四オ挿絵) 00030960M2ければ、/客(きやく)いうやふ、いや+、みやこなぞには、直に/野= 00030970M3山(の=やま)を見はらし、かやうにうらのひろきはすくなし。にはの 00030980M4やまふき、いけのかきつばた、どうも申されぬ御すまいと 00030990M5ほめながら、ふとそらをながめ、あすもてんきと見ゑる。 00031000M6さてよいほしぞらとゐゑバ、ていしゆいふやう、なんの、 00031010M7いなかのことじやものといふた。 00031020¥N4¥J 00031030¥X盗人の入学 00031040M10○ある/儒者(じゆしや)の/家(いゑ)へぬす人いりければ、かの儒者きゝ/付(つけ)いる 00031050M11おりふし、ぬす人/少&(せう+)ものをとりだ(四ウ)し、ゐでんとす 00031060M12るところを、やがてけらいにいひ付とらへさせ、なわつき 00031070M13にて、げんくわんのまゑにひかせけるに、かのしゆしやい 00031080M14うやふ、おのれはにくきやつ。このいゑをバいづくと思ふ。 00031090M15ゑんごくにもきこゑたる/講席(かうせき)なり。このいゑへはいるふて 00031100M16きもの、いけてかへすはずはなけれども、けミやうをなの 00031110M17らバたすくべし。/何(なに)屋の何といふもの、つゝまずなのれと 00031120M18とひけれバ、ぬす人いうやふ、おたすけなされさへ/下(くだ)され 00031130M19バ、なるほどなのり申ませう。わたくしもはらからのぬす 00031140¥P101 00031150¥G 00031160L12人にてはなく、(五オ)御きんじよにすまいゐたす日/用(よふ)の五 00031170L13へいと申者といへば、かの儒者大キにはらをたて、そふあ 00031180L14つてはたすけられぬ。いかになんぢらふぜいとて、あやま 00031190L15りをいふやつ。五ひやうゑか+とといけれバ、ぬす人こ 00031200L16まりはて、なるほど、五ひやうゑでござりますといゑば、 00031210L17ムヽ、さてはそれならバ、この/家(や)へハどれからはいりしと 00031220L18いゑバ、かのぬす人、/気(き)づいて、うらのたかびやうゑより 00031230L19はいりましたといふた。 00031240¥N5¥J 00031250¥X心中に似合ぬ外題(五ウ) 00031260M3○/若者(わかいもの)よりあゐしに、その中に小むづかしき者一人あり 00031270M4て、いづれもがたはとうせいはやる/国太夫(くにたゆふ)ぶしをかたられ 00031280M5るが、ことぶきになるぜうるりはうをづくしか、しんたか 00031290M6だちより外はなきかととへバ、いや+まだ/外(ほか)にめでたい 00031300M7ぜうるりありといふ。それはなんといふぜうるりといゑば、 00031310M8/高砂相生初旅(たかさごあいおいのはつたび)といふのがあるといふ。それはどうした/文句(もんく) 00031320M9ぞととふ。かの者いふやう、高砂より/住(すみ)の/江(ゑ)までの/道行(みちゆさ)じ 00031330M10やといふ。さてもめでたいぜうるりじや。さぞ、きりはお 00031340M11もしろかろふ。どうした事じや(六オ)(六ウ挿絵)といふ。 00031350M12ハテ、ぜうとうばの/心中(しんぢう)じやといふた。 00031360¥N6¥J 00031370¥X大なる取違ひ 00031380M15○有ルものよりあひて/立花(りつくわ)ばなししけるが、一人いふやう、 00031390M16とかく立花といふものハ、のみかなづちをつかわねバなら 00031400M17ぬ。いつそ大/工(く)に/似(に)たり。おもしろからぬこと。/花(はな)さすこ 00031410M18とは/向後(きやうこう)やめにして、花ならバなげ入れがしかるべしとい 00031420M19へバ、みな+、いかにもといふ。その中にしごくもんも 00031430¥P102 00031440L1うなる者/有(あり)けるが、さしでゝいふやう、なげ入はたれもす 00031450L2るが、すいのうのあんばいがしれぬといふた。(七オ) 00031460¥N7¥J 00031470¥X/口合(くちあい)むけんのかね 00031480L5有ル旦那、あまりのあつさにゑんさきへいで、すゞみなが 00031490L6ら、ひけをぬきいられける。折ふし、はいとまりしを、ち 00031500L7よいととらゑ、さて+おのれ/□□((ハきカ))ミのわるひやつと、は 00031510L8ねをもぎて、せんざいへすてらるれバ、にわに有おふて 00031520¥G 00031530M1うずばちのひしやくのゑにとまり、かのはいがいわく、 00031540M2アヽはねがほしいなア。 00031550¥Y1巻二終(七ウ) 00031560¥P103 00031570¥Y1へそ/順(しゆん)礼巻三△目録 00031580L3一△ゐきかたものゝであひ 00031590L4二△かたことの/争(あらそ)ひ 00031600L5三△ふりくつのりくつ 00031610L6四△もんもうなる/遊芸(ゆうげい) 00031620L7五△/間(ま)にあわぬきれゐ/好(ずき) 00031630L8六△/寐(ね)て/居(ゐ)ての/辛労(しんどう) 00031640L9七△/落(おち)ぶれてもぜひ(一オ) 00031650¥T1軽口へそ順礼巻三 00031660¥N1¥J 00031670¥X意気かた者の出逢ひ 00031680M5○このごろやどばいりのせとものうり、あきなひにありく 00031690M6みちにて、ふと日ごろ、せわうちのものにあひ、さて+ 00031700M7ひさしふござる。まづ/貴様(きさま)のおしあわせはいかゞととゑば、 00031710M8かのせとものうりいふやう、わたくしもこのあいだ、すこ 00031720M9しの/店(たな)もちになり、しやうばいにもとりつきました。ちと 00031730M10今まで御せわになりしごおんをくりに、/御酒(ごしゆ)にてもあげた 00031740M11けれども、なにかとりつき(二オ)しんだゐ、/心(こゝろ)ばかりまづ 00031750M12これにて御/目(め)にかゝり、なにがなといふまゝ、/荷(に)の/中(なか)にあ 00031760M13る大ざらを一ツとりだし、さん※にぶちわりければ、か 00031770M14の者大におどろき、これは+なにごとをなさるととゑば、 00031780M15せとものうりいふやう、このさらハ十二文いたしまする。 00031790M16あまりなにもあいそ/□((うカ))のなさに、これにて御酒をあがつた 00031800M17と/思(おほ)して下されといゑば、かの者その/気(き)をとり、もろはだ 00031810M18をぬぎ、にぎりこぶしにて、せと物うりのあたまをくらわ 00031820M19しける。せとものうり、これはなにごとをなさるとおどろ 00031830¥P104 00031840¥G 00031850L12(二ウ)(三オ挿絵)きけれバ、かのものいふやう、たゞ今の御 00031860L13酒に、大キにたべよつたといふた。 00031870¥N2¥J 00031880¥X片言の争ひ 00031890L16○いなかもの二三人より/合(あひ)はなししけるが、あるものいう 00031900L17やふ、/金(かね)はてうほうなるものにきわまつた。/字(ぢ)にかきても 00031910L18/人(ひと)の/主(ぬし)なりといゑば、中にものとがめするものありていふ 00031920L19やう、いや、そうでかけば、いかにもそうなり。しんでは 00031930M1ちがうといふ。今一人そばよりさし/出(いで)て、しんではいらぬ 00031940M2といふた。(三ウ) 00031950¥N3¥J 00031960¥X不理窟なりくつ 00031970M5○去ル/浪人(ろうにん)もの、うらたなをかりゐけるに、友だち一両人 00031980M6ともなひ、かの浪人のところへゆきて、御みまひにまいり 00031990M7しが、おやどにかといゑば、かのろう人、うちより、るす 00032000M8じや+といふ。かのともたち、それほどうちにゐて、る 00032010M9すとハいかゞ。おぬしよりほかに、/此(この)いゑに人はないが、 00032020M10たれがるすじやといゑば、ハテ、じしんいふに、ちがひは 00032030M11ないといふた。 00032040¥N4¥J 00032050¥X文盲なる遊芸(四オ) 00032060M14○去ル若イ者よりあひしに、一人いふやう、/貴様(きさま)はこのご 00032070M15ろ、しやみせんのけいこなさるときいたが、/今(ゐま)がよしのゝ 00032080M16山かととゑバ、いや+といふ。それなら、きぬ+かと 00032090M17とふ。いや、きぬ※は一夜にあげたといふ。それハきよ 00032100M18ふなることじや。さて今はなにをならわるゝととゑば、か 00032110M19の者いうやふ、今はあけのむつごとじやといふた。 00032120¥P105 00032130¥N5¥J 00032140¥X間に合ぬきれひ好 00032150L3○去ルきれひ/好(すき)をする人ありけるが、つね+/用心(よふじん)き(四ウ) 00032160L4びしく、/手鑓(てやり)小/太刀(だち)などを家のうちにたしなミおきしに、 00032170L5ある/夜(よ)ぬす人はゐりけるに、ていしゆやがて見/付(つけ)、かけた 00032180L6る鑓をおろし、つきころさんとおもひしが、/両(りやう)手のゆびさ 00032190L7きにて、やりの/柄(ゑ)をつまみ、ながめゐる。そのうちに、ぬ 00032200L8す人おもてへにげていでけれバ、/内義(ないき)/出合(であい)て、ていしゆに 00032210¥G 00032220M1むかひいふやう、さて+今の/盗(ぬす)人は、ざんねんなること 00032230M2をなされた。なぜつきとめハなされいでとゐゑバ、ていし 00032240M3ゆぬからぬかほにて、この柄のほこりを見よといわれた。 00032250M4(五オ)(五ウ挿絵) 00032260¥N6¥J 00032270¥X寐てゐての辛労 00032280M7○ある/若(わか)キ者、ひとりうらたなにゐけるが、/友(とも)だち一人/夜(よ) 00032290M8ばなしにゆきて、かへるさをわすれけるに、もはやよもふ 00032300M9けかへらるまい。こよひはとめてくりやれといゑば、やす 00032310M10きことながら、きせてねさすものがない。やう+ふとん 00032320M11一まいはかないといゑば、そんならあとさしてねよふとい 00032330M12う。しからバねてゐにやれとてとめけるに、夜あけがたに 00032340M13なるまで、たかひにふとんをひつはりやい、くたびれける 00032350M14が、かの者いふやう、そちはお(六オ)きたそうなが、なぜ 00032360M15ねやらぬといふ。イヤ、あまりしんどゐに、ちとおきてや 00032370M16すもふといふた。 00032380¥N7¥J 00032390¥X落ぶれてもぜい 00032400M19○しんまいこじき、なるほどあたらしきこもをもらひ、/中= 00032410¥P106 00032420L1程(なか=ほと)より/切(きり)ほどき、すそにむすび、はだかミにかづき、ふる 00032430L2いごゑにて、下され+と/呼(よば)ハりける。/向(むかふ)より、ふるきこ 00032440L3じき一人きたり、いうやふ、そちはこの/寒(さむい)に、なせそのや 00032450L4うに、こもをみじかふきるぞといゑば、かのこじきいふや 00032460L5う、/長(ながい)といしやにまがうといふた。 00032470¥Y1巻三終(六ウ) 00032480¥Y1へそ/順(じゆん)礼巻四△目ろく 00032490M3一△/名香(めいかう)のきゝちがひ 00032500M4二△じまんのはきちがひ 00032510M5三△ものしらずが見立 00032520M6四△/上下(うへした)のとりちかひ 00032530M7五△おやぢのせきめん 00032540M8六△/遠慮(ゑんりよ)ぶかいあいさつ(一オ) 00032550¥P107 00032560¥T1かる口へそ順礼巻四 00032570¥N1¥J 00032580¥X名香の聞ちかひ 00032590L5○四/条(てう)なわてへんの/茶(ちや)屋にて、去ル/人(ひと)がらなる者、たゞ一 00032600L6人あそひゐけるが、おりふしよぶかにて、てうしのかんを 00032610L7かゑにやり、ちよと/懐中(くわいちう)より/香(かう)をとりだし、/火入(ひいれ)にくゆら 00032620L8しけれバ、なかゐ、なをしたるてうしをもちながら二/階(かい)へ 00032630L9あがりながら、かのかほりにおどろき、ハテどこやらよき 00032640L10おとがするといゑば、かの/女(しよ)ろういうやふ、どこぞで、も 00032650L11ち(二オ)をつくであらふといふた。 00032660¥N2¥J 00032670¥X自慢の吐ちがひ 00032680L14○去ル物ごとにじまんするおやぢ、むす子ひとり/持(もち)けるが、 00032690L15あるとききんじよの者さんくわいのおりふし、かのおやぢ 00032700L16にむかつていうやふ、さて+そちの/御子(ごし)そくは/生(うま)れつき 00032710L17といひ、こうせきといひ、しよげいにまで御きようじやと 00032720L18うけたまわりました。まづ/碁(ご)がおつよひそうなが、どれほ 00032730L19どになさるととゑば、かのおやぢいふやう、イヤハヤ、御き 00032740M1ゝなされ(二ウ)たやうにもこざらぬが、ほんにん/坊(ばう)ニかた 00032750M2手ちがい。ハテおつよい事かな。それなら/将棊(せうぎ)もおつよか 00032760M3らふ。イヤ、これもそうけいに、かたむまおろしますといふ。 00032770M4サテ+御きようなことかな。つゞみがまた/御上手(おぜうず)じやとう 00032780M5けたまわつたが、どうしやといゑば、これもやう+/新(しん)六 00032790M6にかたかわつよひといふた。 00032800¥N3¥J 00032810¥X物しらずか見立 00032820M9○去ル/茶屋(ちやや)にて、いなかより/中居(なかゐ)をかゝへけるが、ある/時(とき) 00032830M10きんじよのざとうをよびにやりしに、いまゆ(三オ)きませ 00032840M11ふといわれたといふてかへりしが、まてども+来ず。あ 00032850M12まりまちかね、これはなにしておるやら、いかふひまがゐ 00032860M13る。コレ、そちがいたときに、あのざとうはなにしていた 00032870M14ととゑば、イヤ、かわつたことをしてゞござるといふ。そ 00032880M15れはどうしたことをしていたといゑバ、アイ。のこぎりて、 00032890M16しやみせんひいていられましたといふた。 00032900¥N4¥J 00032910¥X上下の取ちがひ 00032920M19○/両国橋(りやうごくばし)すゞみのころ、こじきどもおほぜひ/橋(はし)(三ウ)(四 00032930¥P108 00032940¥G 00032950L12オ挿絵)の/下(した)をながめけるが、ゆさんぶねのおほくとほるを 00032960L13見て、よりあひいふやう、よのなかといふものは、あぢな 00032970L14ものしや。こちとらもあのしゆうも、べしてかわらぬ人げ 00032980L15んなれど、こちらはこのひだるいに、あまりものさへない 00032990L16のに、あのしゆうハさけさかなにあいたやら、とんづはね 00033000L17つ、うらやましひことじやといゑば、なかにも/了簡(りやうけん)らしき 00033010L18こじき一人ありて、これ+、/下(した)を見れバ、はうづかない 00033020L19といふた。(四ウ) 00033030¥N5¥N 00033040¥X親仁の赤面 00033050M3○ある/親仁(おやぢ)、むす子三人もちけるが、みなそろふたるどら 00033060M4ものにて、うちにはちつともよりつかず、おやぢ大にはら 00033070M5をたて、のらども、まだかへりおらぬか。にくきやつども 00033080M6かな。いけんきやうくんにてはきかぬやつ。こよひ、をれ 00033090M7がしよふがあるとて、かど/口(ぐち)へいで、大なる/棒(ほう)をついてま 00033100M8ちければ、/夜中(よなか)すぎに/戸(と)をほと+とおとづれければ、か 00033110M9のおやぢ、だれじや+ととがめけれバ、イヤ、わたしでご 00033120M10ざる。ナニ、わしじや。そうりやうの/善太(ぜんた)(五オ)めか。どこ 00033130M11へうせたといゐしま、戸をあけれバ、上ノ町ノうたひのく 00033140M12わいにまいりましたといゑば、おやぢ棒ふり上ケ、なんの、 00033150M13うたひのくわいであらふとて、をいだしける。そのあとよ 00033160M14り二番め、もふよい/時分(じぶん)と門口をたゝけば、いつもとはち 00033170M15がひ、おやぢのこゑにて、かへつたは善次郎か。今になつ 00033180M16て、どこからもどつたといゑバ、イヤ、ついきんじよ。なん 00033190M17のきんじよてあらふとて、おいゐたす。/末子(はつし)の善三郎も/門(かと) 00033200M18口までかへりしが、内のさわぎをきいて、しのんでゐると 00033210M19ころを、おやぢ/見付(ミつけ)、おのれもいまかへり(五ウ)おつたか。 00033220¥P109 00033230L1どこへうせたといへば、善三おちつき、ちや屋へゆきまし 00033240L2たといゑば、おやぢせいて、なんの、ちや屋だあらふとい 00033250L3ふた。 00033260¥N6¥J 00033270¥X遠慮深イあいさつ 00033280L6○去ル/処(ところ)ニじんじの日、その町に/不幸(ふかう)ありけるが、せけん 00033290L7をおもひ、そのていもなく、みせにぎわしきていにてゐた 00033300L8りける。そのいゑへでいりのもの、よそにて不幸のやうす 00033310L9をきゝあわせ、くやみにきかゝりけるに、うちのてい、さ 00033320L10もなきを見て、あいさつし(六オ)かね、もみ手をして、も 00033330L11ち+しゐたるところに、うちのてだい、きさまはてまへ 00033340L12だんな、不きやうのやうす、おきゝなされ、くやミにおい 00033350L13でと見うけ申すといゑば、なるほどそのとほり、ごすいり 00033360L14やうなされ下されませといふた。 00033370¥Y1巻四終(六ウ) 00033380¥Y1臍/順(しゆん)礼巻五△目録 00033390M3一△/病人(びやうにん)は/狂人(きやうじん) 00033400M4二△もんもうなさん/用(よふ) 00033410M5三△じまんものゝとんさく 00033420M6四△りうぐうのゆふらん 00033430M7五△あきんどの/名法(めいほう) 00033440M8六△/寝恟(ねほれ)たあいさつ(一オ) 00033450¥P110 00033460¥T1軽口へそ順礼巻五 00033470¥N1¥J 00033480¥X病人は狂人 00033490L5○あるうとくなるもの、一人のむすめをもちけるが、いか 00033500L6なることにや、とかくぶら+わづらひ、きのふれたるや 00033510L7まひにて、くすりをきらひ、いしやをいやがりしゆへ、や 00033520L8うちもあぐみはてしが、あるとき、かのむすめ、おやぢに 00033530L9むかつて、あの/良庵(りやうあん)さまをよふで下されと/云(いふ)。おやぢよろ 00033540L10こび、あのいしやぎらひな/病人(ひようにん)がのぞむからは、ほんぶく 00033550L11のしるしとよろこび、良庵かたへいそぎ人(二オ)をつかわ 00033560L12しける。このいしや、ちと/好色(かうしよく)ものにて、かうしたことも 00033570L13ありそうなことゝ、ずいぶんりつはにゑもんづくろひなぞ 00033580L14し、さつそく見まいければ、かないよろこび、まづ病人の 00033590L15そばへとほしけるに、良庵、そばぢかくよりけれバ、かの 00033600L16むすめいふやう、とゝさま、あつちへいんで下されといふ。 00033610L17おやぢつぎ/((へ脱カ))たてバ、又かゝさまもあつちへ。みんなもいん 00033620L18でくりやれといふ。これはと、みな+つぎへたてバ、/医= 00033630L19者(い=しや)はことの/外(ほか)のしゆびとよろこぶところを、いしやさまも 00033640M1(二ウ)あつちゑといふた。 00033650¥N2¥J 00033660¥X文盲な算用 00033670M4○さるもの、二三人よりあひ、さま+のはなしのうちに、 00033680M5/大坂(おほさか)/天王寺(てんわうじ)のとうはたかいものじや。/何(なん)ちうあらふという。 00033690M6一人いうやふ、四/重(ぢう)じや。一人/人((人衍))のいうやふ、ハレ、やく 00033700M7たいもない。あれほど五重あるのに四重とは、きついふお 00033710M8ぼゑ。イヤ、それでも四重じやといふ。さて+かたいじな。 00033720M9いざ天王寺へまいり、らちあけん。とかくこゝではすまぬ 00033730M10といゑバ、なるほと、それ(三オ)ならなんぞかけにして、 00033740M11まけたものがふるまいをしようとて、いそぎゆきける。か 00033750M12の/塔(とう)を見てゆびおりし、なんと、五重じやといゑば、かの 00033760M13ものぬからぬかほにて、ヱヽふたともにかといふた。 00033770¥N3¥J 00033780¥Xじまん者のとんさく 00033790M16○あるものいうやふ、あまたことりもおほいが/中(なか)ニ、ほと 00033800M17ゝぎすといふもの、さとにきてなかぬもの。あれはすくな 00033810M18きものかといゑば、いや+、ほとゝぎすはたくさんなる 00033820M19もの。こちらのうらへはま(三ウ)(四オ挿絵)い日きてなく。 00033830¥P111 00033840L1ことにつがいづゝおりてなくといふ。これはめつらし。さ 00033850L2て、なんとなくぞととゑば、ハテしれた/事(こと)。ほげんかけた 00033860L3かとなくといふ。今一人のいふやう、おん/鳥(どり)はそふじやが、 00033870L4めん鳥はなんとなくといゑば、かのもの、ハテしれた。か 00033880L5けなさんしたとないたといふた。 00033890¥N4¥J 00033900¥X竜宮のゆふらん 00033910L8○うみべにうをとも、あまたよりあひけるに、たい、ひれ 00033920¥G 00033930M1をふつていふやう、なんと、いづれもこうよる(四ウ)から 00033940M2ハ、めづらしきしゆかうをもよほし、みたてあそびをいた 00033950M3さんといゑば、みな+/尤(もつとも)といふところへ、はやたちう 00033960M4を/罷出(まかりで)、ひらりと、なみに身をてらして、まづこれはぬき 00033970M5身のてい、あをひしもさかとはなんとゝいふ。これは思ひ 00033980M6付と手をうつところへ、たこ、どびんをふりたて、/岩(いわ)ばな 00033990M7にこしをかけ、ナント、/安井(やすい)のふじでハないかといふ。これ 00034000M8はけうといとほむるうちに、ふぐのうを、なみまに、つと 00034010M9かほをだし、わかめのうちかけ八/文字(もんじ)にかいどり、ナント 00034020M10/太夫(たゆふ)の/道中(どうちう)、(五オ)きつひかと、じまん/顔(がほ)にてゐたる所へ、 00034030M11たこ、うしろより、へたとこしをたゝき、ヨヽこゝな、い 00034040M12のちとりめとほめた。 00034050¥N5¥J 00034060¥X商人の名法 00034070M15○去ルちや屋に、しごくきりやうよき/女郎(じよろう)をかゝへけるに、 00034080M16この女郎、げいしやにて/座(ざ)をもつこと/名人(めいじん)ゆへ、ひるのあ 00034090M17いだはずいぶんひまなくつとめしが、とかくとまりにやる 00034100M18ことならず。それはなにゆへかとゆふに、ねせうようを取 00034110M19はずしける。さま※/願立(くわんだて)、りやうぢもつ(五ウ)くせども、 00034120¥P112 00034130L1しるしなくこまりたる所へ、その/家(や)へ心安き/客(きやく)ありて、や 00034140L2うすをきゝ、それこそ心やすき事。なをしてやらんとて、 00034150L3かの女郎を二かいへつれゆき、ちよとまぢないしに、その 00034160L4よより、すきとなをりけれバ、みな+ふしぎにおもひ、 00034170L5かさねてかの客来りし/時(とき)たづねけれバ、かの客いふやう、 00034180L6心安/事(こと)。おしへませう。あれはなんと、こゝのしろものな 00034190L7らずや。そこでおれがかいしなに、/手(て)をうつていんだ。す 00034200L8りや、しよんべんはならぬといふた。(六オ) 00034210¥N6¥J 00034220¥X寐恟たあいさつ 00034230L11○ある所のにはに、あさがほ/見事(ミごと)にさきけるに、ある人は 00034240L12なを見て、サテ+このはなは、まいてう五ツまへにひらき、 00034250L13よきめざましじやといゑば、いかにもさやう。なる/程(ほど)、ま 00034260L14いてうよきたのしみといひける。さてそのよくてう、おき 00034270L15て見るに、一りんもさかず。四ツ/過(すぎ)まで/待(まて)どもひらかず。 00034280L16これはふしぎと、はなのもとに立よれば、かのつぼみ、ば 00034290L17つちりと目をあき、あたりを見まわし、テモ、けさはねす 00034300L18ごしたといふた。 00034310¥Y1巻五終(六ウ) 00034320¥Q 00034330M3延享三@丙△|△寅@正月吉日 00034340M5△△△△△京三条通寺町西江入町北がわ 00034350M6△△△△△△△△△△△菊△屋△利△兵△衛 00034360M9△△△△△京御幸町通ゑびす川上ル東がわ 00034370M10△△△△△△△△△△△笠屋半右衛門△板△行 00034380¥P113 00034390¥U噺本大系△第八巻 00034400¥T輕口瓢金苗 00034410¥G 00034420¥Y 00034430L16延享四年刊 00034440L17如毫集・序 00034450L18半紙本三巻 00034460L19東大図書館霞亭文庫蔵 00034470¥Y序 00034480M3/神(かミ)代より同し/御空(ミそら)に/幾廻(いくめぐ)り、めぐり/来(く)る/春(はる)ハふるけれど、 00034490M4あら玉といへば/別(べつ)の/春(はる)のやうに/覚(おぼ)へ、むかしから有ふれし 00034500M5/石畳(いしたゝミ)も、市/松染(まつぞめ)といへハ/新(あたら)しく、すゝ/竹色(たけいろ)のすゝけたるも、 00034510M6/当世茶(とうせいちや)といへバ、/珍敷(めづらしき)より思ひよりて、ふるとし/聞(きゝ)おく/軽口(かるくち) 00034520M7のふるきを、そのまゝしげきをかり、たらぬをたし、/新(あたらし)き 00034530M8/三(ミつ)の/巻(まき)に、/瓢金(へうきん)の(序一オ)/早苗(さなへ)を/植付(うへつ)け、つきせぬ/春(はる)の/初= 00034540M9笑(はつ=わら)ひ、/穂(ほ)に穂/栄(さか)ふる/豊年(ほうねん)の/慰草(なぐさミぐさ)ともなりバ、/作者(さくしや)の/悦(よろこ)び、 00034550M10/書林(しよりん)の/幸(さいわひ)、/只(たゞ)+文の/拙(つたなき)も、/笑(わらい)の/種(たね)と見ゆるし給へ。 00034560M11△△見る/度(たひ)にめづらしからぬ/軽口(かるくち)も 00034570M12△△△いつも/初音(はつね)の/心地(こゝち)せよかし 00034580M13△△△△△△△△△△△△△△△△集△者 00034590M14△△△△△△△△△△△△△△△△△△如△毫(序一ウ) 00034600¥P114 00034610¥Y1/絵本(ゑほん)/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)上巻 00034620L3目△△録 00034630L4一△/福神(ふくじん)の/寄合(よりやい) 00034640L5二△/蜘(くも)の/振舞(ふるまい) 00034650L6三△/当世(とうせい)ハうらの/裏(うら) 00034660L7四△/調法(てうほう)な/禁酒(きんしゆ) 00034670L8五△あちらこちら(目二オ) 00034680L9六△/新道成寺(しんどうじやうじ) 00034690L10七△/馬(むま)のあしらい 00034700L11八△/御達者(おたつしや)な/盗人(ぬすびと) 00034710L12九△/算用(さんやう)/合(あふ)て/銭(せに)たらず(目二ウ) 00034720¥T1 00034730¥N1¥J 00034740¥X/福神(ふくじん)の/寄合(よりやい) 00034750M3いづれも揃ひ給へバ、/料理(りやうり)の/献立(こんたて)になつて、やき/物(もの)の/鯛(たい)ハ 00034760M4さしづめ/蛭子(ゑびす)どの、お/出(だ)しなされよ。/米(こめ)は/大黒(だいこく)どの。引/肴(さかな) 00034770M5のいせ/海老(ゑび)ハ/具足(ぐそく)めした/形(な)りに/似(に)た/程(ほど)に、/毘沙門殿(びしやもんとの)より/出(だ) 00034780M6されよ。/座敷(ざしき)での三/味線(ミせん)ハ/弁才天(べんざいてん)にあてがわん。サア+/布= 00034790M7袋(ほ=てい)殿にもナンゾ/役(やく)をあてがハんといへバ、その/御料理(おりやうり)が/出来(でき) 00034800M8ましたらバたべまして、/腹(はら)をふくらす/役(やく)を/勤(つとめ)ませふと(三オ) 00034810M9(三ウ・四オ挿絵)いわれた。 00034820¥N2¥J 00034830¥X/蜘(くも)の/振舞(ふるまひ) 00034840M12/春霞(はるかすミ)たな引/初(そめ)て/長閑(のどか)なる/庭(にハ)の木/草(くさ)を、/去(さ)ル御/大名(だいめう)、/書院(しよゑん)口 00034850M13へ出て/御覧(ごらん)ありけるが、折ふし/少(ちいさ)き/蜘(くも)一疋、御/前(まへ)へ出ける 00034860M14を、/誰(たれ)か有+と/召(め)されけれバ、御/家老(からう)の/能春理(のうしゆんり)太夫罷 00034870M15出、御用ヤト/窺(うかゞ)へバ、アノ/蜘(くも)取ツて/捨(すて)よと仰ける。/彼家老(かのからう)殿、 00034880M16ことの/外(ほか)の/蜘(くも)ぎらいにて、ほうきおつとり、しさいな/顔(かほ)し 00034890M17て、/一昨日(おととひ)/登城(とじやう)いたせいと(四ウ)いわれた。 00034900¥N3¥J 00034910¥X/当世(とうせい)ハ/裏(うら)のうら 00034920¥P115 00034930¥G 00034940M1/時(とき)+の/風俗(ふうぞく)ほどおかしきハなし。/近比(ちかきころ)ハ/小袖(こそで)の/表(おもて)ハさも 00034950M2なきものをして、/裏(うら)にもやうを付ルことはやりて、人の/目(め)の 00034960M3/及(およバ)ぬ所に/念(ねん)の入るゝこそ/当世(とうせい)ぞかし。ある/縫箔(ぬいはく)屋へ能イ所 00034970M4の/腰元(こしもと)と見へて、/蝉(せミ)かわのぞうりを/持(もち)来テ、此/草履(ざうり)の/裏(うら)に 00034980M5/当世(とうせい)はやりもやうの/縫(ぬい)をばぬふてくだされと/云(いふ)。/亭主(ていしゆ)がて 00034990M6んせず、ぞうり(五オ)の/表(おもて)ならバ、もやうも/縫(ぬ)ハれませふ 00035000M7が、/裏(うら)に/縫(ぬい)をして一/度(ど)御はきなされたら、/皆(ミな)きれてしまい 00035010M8ませう。お/前(まへ)のならバよしになされませ。/腰元(こしもと)、いへ+ 00035020M9わたしがのでハござんせぬ。/奥(おく)様のおかごに/懸(かけ)るのでこざ 00035030M10んす。 00035040¥N4¥J 00035050¥X/調法(てうほう)な/禁酒(きんしゆ) 00035060M13/心(こゝろ)のあいし/友(とも)と/咄(はな)しあふぞ能キたのしミハなし。江戸で/藤= 00035070M14川(ふぢ=かわ)が/大当(おふあた)りといへハ、/長崎(ながさき)丸山の太夫が、ぶたの/黒炒(こくしやう)で/食(しよく) 00035080M15しやうしたと(五ウ)/云(いふ)。/尾張大根(おわりだいこ)ハふといといふ。/守口大= 00035090M16根(もりぐちだい=こ)ハほそいが/名物(めいぶつ)と、とり※の/咄(はな)しなかばに、/一人(ひとり)いふ 00035100M17やうハ、おれハ/此間(このあいだ)、三/年(ねん)/酒(さけ)を/呑(のむ)まいと/願(ぐハん)をかけたが、/扨(さて) 00035110M18ならんと思へバ、一ばいのミたいといふ。/中(なか)にも、/才覚(さいかく)な 00035120M19/男(おとこ)が云やうハ、/呑(のミ)つけた/酒(さけ)を/呑(のま)ずにもいられまい/程(ほど)に、三 00035130¥P116 00035140¥G 00035150M1/年(ねん)の/禁酒(きんしゆ)を六/年(ねん)にして、/夜(よる)ばかり/禁酒(きんしゆ)にして、/昼(ひる)ハ/呑(のめ)とい 00035160M2ふ。イヤ+、それでハ/寐(ね)ざけが不/自由(じゆふ)にあらふ。その六/年(ねん) 00035170M3を十二/年(ねん)にし(六オ)(六ウ・七オ挿絵)て、/昼夜(ちうや)のんだら/能(よ)か 00035180M4ろ。 00035190¥N5¥J 00035200¥Xあちらこちら 00035210M7あこぎが/浦(うら)に/引網(ひくあミ)だ/坊(ぼう)といふ僧、/悪所狂(あくしよぐるい)の/度(たび)かさなれバあ 00035220M8らわれて、/終(つい)に/寺(てら)を/追(おい)出され、/詮(せん)かたなさに/高熊(たかくま)/油平(ゆへい)と/名(な) 00035230M9をかへて、あてしまへな/神道(しんとう)の/講釈(かうしやく)して、世を/渡(わた)りける。 00035240M10ある時、/門弟(もんてい)と打つれ、/祇園(ぎおん)へ参られしが、/去(さ)ル/出家(しゆつけ)に/行= 00035250M11合(ゆき=やい)、ナントあミだ/坊(ぼう)。久しや。/姿(すがた)を/替(かへ)られしゆへ/見違(ミちがへ)しと、 00035260M12(七ウ)念比に/挨拶(あいさつ)して通られしを、/門弟(もんてい)、アレハ、となたで 00035270M13ござりますととへバ、アレハ、/拙僧(せつそう)が/俗(ぞく)のときの/色友達(いろともだち)でご 00035280M14さる。 00035290¥N6¥J 00035300¥Xしん/道成寺(どうじやうし) 00035310M17むかし+、まなごの/庄司(しやうじ)といふものあり。ひとりの/娘(むすめ)を 00035320M18/持(もつ)。その比、/熊野詣(くまのもふ)での/山伏(やまぶし)、/庄司(しやうじ)が/元(もと)を/宿(やど)と/定(さだめ)、来りけ 00035330M19るか、/庄司(しやうじ)娘/寵愛(てうあい)のあまりに、あの/客僧(きやくそう)こそなんじが/妻(つま)と 00035340¥P117 00035350¥G 00035360M1たわむれしを、/幼心(おさなごゝろ)にうるそふ(八オ)思ひ、/年月(としつき)を/送(おく)る。 00035370M2かの/山伏(やまぶし)、/是(これ)をまことゝおもひ、ある/時(とき)来り/娘(むすめ)にいふやう 00035380M3ハ、こんどハ/国(くに)へつれかへり/夫婦(ふうふ)にならんといふ。娘/大(おゝ)き 00035390M4におどろき、/漸&(やう+)内をぬけ出て、/知(し)る/辺(べ)の/方(かた)へ来り、右のわ 00035400M5けを/咄(はなし)けれバ、それハきのどくな/事(こと)じやが、/能(よ)イころな/釣(つ) 00035410M6り/鐘(がね)もなし。/先(まづ)つりがねの心て、/此(この)内へはいつて/居(ゐ)さしや 00035420M7れと、/大釜(おゝがま)の/内(うち)へかくし、/見世(ミせ)へ出て、さあらぬ/顔(かを)にて/居(ゐ) 00035430M8たりけるが、(八ウ)/暫(しバら)くありて内へはいり、サア/山伏(やまぶし)ハ行 00035440M9/過(すぎ)た。こちへ/出(で)ヤしやれと/云(いふ)。/内義(ないぎ)、/心元(こゝろもと)ながりて、おま 00035450M10へハその/山伏(やまぶし)を/見知(ミし)つてか。イヤ+、見しりハせぬが、今 00035460M11/下(さか)つた/山伏(やまぶし)の/鈴(すゞ)かけが、/慥(たしか)に$がたのもやうであつたほど 00035470M12に、あれに/違(ちがい)ハあるまいといわれた。 00035480¥N7¥J 00035490¥X/馬(むま)のあしらい 00035500M15/夏(なつ)の夕/暮(ぐれ)、/子(こ)ども/川端(かわばた)に出て、/魚(うを)をつり/居(ゐ)けるを、/馬(むま)かた、 00035510M16/通(とふ)りがけに見て、もどかし(九オ)(九ウ・十オ挿絵)がり、/子= 00035520M17供(こ=ども)に、そのやうな事で/魚(うを)ハ/釣(つ)れぬ。おれが/釣(つ)つてやらふと、 00035530M18/竿(さほ)をとり、/針(はり)を/川(かわ)へなげると見へしが、/大(おふ)キなる/鯉(こい)のかゝ 00035540M19りて、ひた+とはねる。馬かた、どう++。 00035550¥P118 00035560¥G 00035570¥N8¥J 00035580¥X/御達者(おたつしや)な/盗人(ぬすびと) 00035590M3/都(ミやこ)の/町(まち)へ、/夜(よ)ふけ人しづまりて/表(おもて)の/戸(と)をこじはなし、/盗人(ぬすびと) 00035600M4の入りけるを、ていしゆ/早(はやく)/聞付(きゝつけ)て、盗人入たるといふ/音(おと)に 00035610M5/驚(おどろ)き、にげ/出(いづ)るを、のがさじと/追(おつ)かけ/行(ゆく)ほどに、/伏見(ふしミ)(十 00035620M6ウ)おひ/行(ゆき)しが、夜もはやあけ/渡(わた)りければ、/追(おひ)つかれて、 00035630M7ある/茶見世(ちやミせ)へ/腰(こし)ヲかけて/休(やすミ)けれバ、/彼(か)ノ/盗(ぬす)人も立/帰(かへ)り、同 00035640M8じく/茶(ちや)見世へ/腰(こし)をかけていふやう、/私(わたくし)も/度&(たび+)/追(おつ)かけられま 00035650M9した事もござりますが、お/前(まへ)ほど/性根(じやうこん)に/追(おつ)かける御人もご 00035660M10ざりませぬ。/御足(おあし)ハ/痛(いたミ)ハ致シませぬかといふ。イヤ+、五里 00035670M11十里/追(おつ)かけたとて、/草臥(くたぶれ)ルことではないと、/互(たがい)に/茶(ちや)もたば 00035680M12こも/呑(の)んで、サア/休(やす)んだら、日のたけぬ/内(うち)(十一オ)(十一ウ・ 00035690M13十二オ挿絵)ににげぬか。/又(また)/追(おつ)かけるといふた。 00035700¥N9¥J 00035710¥X/算用(さんやう)/合(あふ)て/銭(ぜに)たらず 00035720M16/瀬戸物(せともの)屋の/見世(ミせ)へ行、つぼを/買(かを)ふといふ。/大(だい)が四百文、/小(せう) 00035730M17が二百文といふ。それならバ二百文の/方(ほう)に/致(いた)そふと、/銭(ぜに)わ 00035740M18たして/帰(かへ)りしが、/程(ほど)なく/持(もつ)て/来(き)て、四百文の/壷(つぼ)とかへて下 00035750M19されと、/疵(きず)など/改(あらため)て、さて、さいぜん/銭(ぜに)二百文/渡(わた)したハ。 00035760¥P119 00035770L1ていしゆ/受取(うけとり)ました。/買手(かいて)今又二百文の/壷(つぼ)/渡(わた)スハ。いかにも。 00035780L2(十二ウ)/買手(かいて)それで/都合(つがう)四百文。代ハ/済(すミ)ましたといふて、/壷(つぼ) 00035790L3をかたげ/帰(かへ)りける。/跡(あと)にて、さん/用(やう)ハ/合(あふ)たが/銭(ぜに)がたらぬと、 00035800L4いろ+と/思案(しあん)する所へ、/隣(とな)りの/者(もの)来りて、ナント/親仁(おやぢ)。ど 00035810L5こぞわるいか。いかふ/顔(かを)もちかすぐれぬといへバ、ていしゆ 00035820L6あたまをふつて、どふやら/壷(つぼ)かぶつたやうにござる。 00035830¥Y1/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)上終(十三オ) 00035840¥Y1/絵本(ゑほん)/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)中巻 00035850M3目△△録 00035860M4一△/紙入(かミいれ)の/重(おも)サ百/貫目(くハんめ) 00035870M5二△/遠耳鏡(とふミヽがね) 00035880M6三△/習(なら)い/安(やす)キハ/下司(げす)/仕事(しごと) 00035890M7四△/夢中(むちう)のさけ 00035900M8五△/長者(ちやうじや)の/門(かど)(目二オ) 00035910M9六△三/味線(ミせん)にのせる/念仏(ねんふつ) 00035920M10七△/物(もの)わすれの/会(くハひ) 00035930M11八△/風(かぜ)を/喰(く)ふ/鳥(とり) 00035940M12九△/二人(ふたり)とせぬ/考行(かう+) 00035950M13十△/兵法(ひやうほう)の/指南(しなん) 00035960M14十一△/桝(ます)おとしの/城廓(しやうくハく) 00035970M15十二△しまつな/橋(はし)の/銭(ぜに)(目二ウ) 00035980¥P120 00035990¥G 00036000¥T1 00036010¥N1¥J 00036020¥X/紙入(かミいれ)の重サ百/貫目(くハんめ) 00036030M3人にすぐれてせんしやういふ/友達(ともだち)/打(うち)つれ、/嵐山(あらしやま)へ/花(はな)見に/行(ゆき) 00036040M4しが、/友達(ともだち)にいふやう、いつも/駕篭(かご)にのり/往来(わうらい)する/故(ゆへ)、/適(たま) 00036050M5+/歩(あり)くと、いかふ/太義(たいぎ)なといへど、いつものせんしやう 00036060M6と/取(とり)あへぬに、けふハ/一力(いちりき)の/娘(むすめ)共がつれていけといふたれ 00036070M7ど、つれがある/程(ほど)に、/分(ぶ)ンにいけ。/是切(これぎり)で/楽(たの)しんでこいと、 00036080M8/金(かね)廿両やつてきたといふ/内(うち)、/大井川(おゝいがわ)になれバ、(三オ)(三ウ・ 00036090M9四オ挿絵)/舟(ふね)にのる。/舟頭(せんどう)、/棹(ざほ)をさし/下(く)ダせハ、/皆(ミな)+、ふね 00036100M10/珍敷(めづらしく)、/舟(ふな)ばたにもたれかゝり、/小鮎(こあゆ)ノ/上(のぼ)ルを見て/居(い)れバ、 00036110M11/舟頭(せんどう)/舟(ふね)がかたむきます。/真中(まんなか)へのらしやれといふ。/彼(かの)ノ 00036120M12せんしやうもの、/懐(ふところ)の/紙入(かミいれ)を/出(だ)シ、まんなかに/置(おい)テ、/是(これ)で 00036130M13つり/合(やい)がよかろといふた。 00036140¥N2¥J 00036150¥X/遠耳鏡(とふミヽがね) 00036160M16/遠(とふ)ミヽ/鏡(がね)、/遠目鏡(とふめがね)ありといふ/簡板(かんばん)を見て、/是(これ)ハ/珍敷(めづらし)イ/簡板(かんばん) 00036170M17と、やうすをとへば、(四ウ)/耳(ミヽ)にあてると五里十/里(り)/先(さ)キで 00036180M18いふ事が/近(ちか)ふ聞へまするといふ。/是(これ)ハ/調法(てうほう)なもの。もそつ 00036190M19と/遠(とふ)い/所(ところ)の/聞(きこ)へるハござらぬかといふ。五十里七十里、そ 00036200¥P121 00036210¥G 00036220M1の/上(うへ)ハ/出来合(できやい)にハないといふ。むかふのふくさのうへなハ、 00036230M2/形(なり)も/違(ちがい)まするか、/何里(なんり)ほど/聞(きこ)へまするぞ。アレハ/唐(から)を/聞(きく)ので、 00036240M3/日本人(につぽんじん)へハ/言葉(ことば)か/通詞(つうじ)ませぬといふ。それがどこへ/売(う)れま 00036250M4するぞ。アレハ/黄檗(わうばく)の/誂(あつらへ)てござり(五オ)まするといふた。 00036260¥N3¥J 00036270¥X/習(ならい)/安(やす)キハ/下司(げす)/仕事(しこと) 00036280M7/問(とふ)ハ一ツたんの/恥(は)ヂ、/問(とわ)ぬハ/末代(まつだい)の/恥(は)チとかや。おれハ/食(めし)の 00036290M8/焼(たき)やうを/知(し)らぬ。/教(おしへ)てもらいたいといへバ、/友達(ともだち)いふやう、 00036300M9さのミむつかしい事でもない。/先(ま)ツ/米(こめ)ヲ一升/焼(たこ)とおもへハ、 00036310M10/米(こめ)を/釜(かま)へ入、/其上(そのうへ)を手でおさへ、/水(ミづ)を入、ぐりほしの/上(うへ)へ 00036320M11あがる/程(ほと)に/仕(し)かけて/焼(たけ)バ/食(めし)になるといふ。/又(また)二升(五ウ)た 00036330M12く/時(とき)ハとふしかけると/問(とふ)。ハテ、二升の/時(とき)ハ/両手(りやうて)を入レた 00036340M13がよいといふた。 00036350¥N4¥J 00036360¥X/夢中(むちう)の/酒(さけ) 00036370M16/思(おも)ふ/事(こと)を/夢(ゆめ)に見るとかや。ある/酒好(さけずき)の/親仁(おやぢ)、/方(ほう)※よりい 00036380M17ろ+の/名酒(めいしゆ)を/貰(もろ)ふと見て、大キに/悦(よろこ)び、/是(これ)ハおびたゝし 00036390M18い/酒(さけ)じや。/呑(のミ)つゞけにしても五年や十年ハ/慥(たしか)シヤ。先ツ/祝(いわ) 00036400M19/び((ママ))に/鶴(つる)の/友(とも)を/間(かん)して/呑(のも)ふか。イヤ+、/伊丹(いたミ)/諸白(もろはく)がきつとし 00036410¥P122 00036420L1てよかろと、(六オ)(六ウ・七オ挿絵)ちろりへうつし、かん 00036430L2をすると思へば、/夢(ゆめ)さめたり。/南無(なむ)さんぼう、/冷(ひや)デのめバ 00036440L3よかつたにといふた。 00036450¥N5¥J 00036460¥X/長者(てうじや)の/門(かど) 00036470L6/長者(てうじや)の/門(かど)に/非人(ひにん)たへずとかや。すぐれてぜいいふ人の/門(かど)に、 00036480L7/非人(ひにん)/立(た)ツて、大キなお/家(いへ)、サア、なんぞ下されませといふ。 00036490L8/旦那(だんな)とおぼしく、/爰(こゝ)ハ/出(で)見世じや。おも屋へいけといふ。 00036500L9/非人(ひにん)おも屋ハどこで/御(ご)さります。/旦那(だんな)(七ウ)二三/町(てう)上ミの大 00036510L10キな/家(いへ)じや。/知(し)らずハ/教(おしへ)てやろと、/先(さ)キに/立(た)つて/行(ゆき)、/爰(こゝ)じ 00036520L11や。なんと/大(おゝ)キな/家(いへ)か。/非人(ひにん)大キな/御家(おいへ)でござります。/旦那(だんな) 00036530L12のこらず/桧(ひ)の/木(き)/作(づく)りじや。非人/結構(けつかう)な/御普請(こふしん)でござります。 00036540L13ひだるいものに、なんぞ下さりませ。旦那/通(とを)れといわれた。 00036550¥N6¥J 00036560¥X/三味線(さミせん)にのせる/念仏(ねんぶつ) 00036570L16/家業(かげう)ハ/知(し)らずに、/何(なに)を一つ/仕残(しのこ)す/事(こと)もなき/小柄(こずか)屋の/庄右衛= 00036580L17門(しやうゑ=もん)といふ/浮気(うわき)/子(む)(八オ)/息(すこ)、/習(なら)ふものに/事(こと)かいて、/念仏(ねんふつ)をけ 00036590L18いこして見んと、/羅人坊(らじんぼう)といふ/道心者方(とうしんじやかた)へ/弟子入(でしいり)せしが、 00036600L19/我等(われら)/斗(ばかり)かと思へバ、/大分(だいぶん)の/稽古人(けいこじん)。/壱人(ひとり)も/出家(しゆつけ)ハなく、/皆(ミな) 00036610M1われらに同し/浮気(うわき)/子息(むすこ)。/高弟(かうてい)と見へて、せめ/念仏(ねんぶつ)をけいこ 00036620M2して/帰(かへ)るを、/扨(さて)も/能(よ)イこへかなといへバ、されバ/声(こへ)がよさ 00036630M3に/素念仏(すねぶつ)ハ/面白(おもしろ)ふござれど、かねにかけると、めいりがき 00036640M4ますといわれた。(八ウ) 00036650¥N7¥J 00036660¥X/物(もの)わすれの/会(くわい) 00036670M7人にすぐれて/物(もの)わすれする/友(とも)/打(うち)より、/思(おも)ひ/出(だ)シ/会(ぐわい)といふ/事(こと) 00036680M8を/始(はじめ)て、/互(たがい)にわすれた/事(こと)を/思(おも)ひ/出(だ)スまいかといへバ、/是(これ)ハよ 00036690M9かろ。/先(ま)ツ/初会(しよくわい)を廿一日にして、/当家(とうや)ハ/東(あづま)加右衛門/殿(どの)/方(ほう)と 00036700M10/定(さだ)メ、/皆(ミな)+/別(わか)レて/帰(かへ)りける。/扨(さて)廿一日になれバ、/座敷(ざしき)さ 00036710M11うじ/夕食(ゆふはん)の/用意(やうい)も/出来(でき)て、/待(ま)てども+ひとりもこず。/亭主(ていしゆ)、 00036720M12/手代(てだい)を/呼(よ)ンで、廿一日の/約速(やくそく)を(九オ)(九ウ・十オ挿絵)/皆(ミな)わ 00036730M13すれたか。一人もこぬといへバ、/手代(てだい)あきれて、けふハ廿 00036740M14二日でござりますとゆふた。 00036750¥N8¥J 00036760¥X/風(かぜ)を/喰(く)ふ/鳥(とり) 00036770M17/広(ひろ)い/世(せ)かいなれバ、/様(さま)+のものあり。/蚊(か)ノまつ/毛(げ)に/巣(す)を 00036780M18くふ/虫(むし)あり。九/万里(まんり)に/羽(は)をのす/鳥(とり)あり。/風鳥(ふうてう)といふものハ 00036790M19/空(そら)に/居(い)て/風(かぜ)を/食(しよく)にして/居(い)ル/鳥(とり)じやといへバ、/夫(それ)ハ/食(しよく)/喰(く)ハず 00036800¥P123 00036810¥G 00036820M1バ/糞(ふん)ハせまいといへバ、いかにも。/屁(へ)ばかりこいて/居(い)ると 00036830M2いふた。(十ウ) 00036840¥N9¥J 00036850¥X/二人(ふたり)とせぬ/孝行(かう+) 00036860M5/孝(かう)ハ/百行(ひやくかう)の/第(だい)一とかや。そなたハいかう/親仁(おやぢ)に不/孝(かう)なと/聞(きい) 00036870M6た。/已後(いご)/改(あらため)て/孝行(かう+)にめされと/異見(いけん)に/心付(こゝろづき)、なんでも人の 00036880M7せぬ/孝行(かう+)をして、/絵草紙(ゑざうし)にものる/程(ほど)に/名(な)を/上(あげ)んと/思(おも)ふ/折(おり)か 00036890M8ら、/親仁(おやぢ)、/少(すこ)シ/腹心(はらごゝろ)があしいと/雪隠(せつゐん)へ/行(ゆか)ルヽを、/爰(こゝ)ぞ/孝行(かう+)の 00036900M9/初(はじま)りじやと、/頓(やが)て/雪隠(せついん)の/戸(と)をひらき、モウ/能(よく)バ、/尻(しり)をふき 00036910M10ませふかといへバ、/親父(おやぢ)/驚(おどろき)、(十一オ)不/作法(さほう)ものと、/大(おゝ)き 00036920M11にしかられ、/子息(むすこ)あたまをかいて、/孝行(かう+)といふ/事(こと)を/知(し)らぬ 00036930M12もんもうな/親仁(おやぢ)ハ、せうことがない。 00036940¥N10¥J 00036950¥X/兵法(へいほう)の/指南(しなん) 00036960M15/一眼(いちがん)二さそく間に/髪(はつ)をいれず。/兵法(へいほう)/程(ほど)いさぎよきものハな 00036970M16し。ある所に/竿竹(さをだけ)屋/秋(あき)右/衛門(ゑもん)といふ人、/何事(なにごと)を思ひ/付(つい)てか、 00036980M17/兵法(へうほう)の/指南(しなん)と/大看板(おゝかんばん)を/出(だ)シけるを、/近所(きんじよ)の/者(もの)見て、あの/男(おとこ) 00036990M18がいつ/兵法(へうほう)しられた/噂(うわさ)(十一ウ)も/聞(きか)ず。/扨(さて)も人ハ/知(し)れぬも 00037000M19のと/我(が)をおり、/秋(あき)右衛門/方(かた)へ/行(ゆき)て見れども、さのミ/弟子(でし)を 00037010¥P124 00037020¥G 00037030M1/取(と)る/躰(てい)とも見へず。不/思儀(しぎ)さに/様子(やうす)とへバ、/亭主(ていしゆ)/少(ちいさい)/声(こへ)に 00037040M2なつて、/此比(このごろ)ふ/用心(やうじん)なと申すゆへ、おどしの/為(ため)でござると 00037050M3いわれた。 00037060¥N11¥J 00037070¥X/桝(ます)おとしの/城廓(じやうくハく) 00037080M6/窮鼠(きうそ)/却而(かへつて)/猫(ねこ)をはむとかや。/頃日(このごろ)めつきりと/鼠(ねずミ)があばれると 00037090M7て、/升(ます)おとしを/仕(し)かけ/置(おき)しが、あんのごとく/年(とし)ふる/鼠(ねづミ)、/米(こめ) 00037100M8(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)/粒(つぶ)を/喰(くわ)んと/忍(しの)び/出(いで)シが、/升(ます)おと 00037110M9しを見て、かぶりをふり、わづかの/餌(ゑ)をくわんとて、/大事(だいじ) 00037120M10の/命(いのち)を/升(ます)おとしにかゝる/事(こと)こりや+と/帰(かへ)る。/後(うしろ)より/手飼(てがい) 00037130M11の/猫(ねこ)、一かミにとかけ/来(く)ル。/鼠(ねずミ)大キに/驚(おどろ)き、/隠(かく)るゝに/所(ところ)な 00037140M12く、/升(ます)をかぶつてかゞみ/居(い)る。/程(ほど)なくかけ/来(きた)りて、そこよ 00037150M13/爰(こゝ)よと/尋(たづ)ぬれバ、/鼠(ねづミ)、/升(ます)の/内(うち)にて/豊(ゆたか)なる/声(こへ)して、山/寺(でら)のと 00037160M14/諷(うた)ふた。 00037170¥N12¥J 00037180¥Xしまつな/橋(はし)の/銭(ぜに)(十三ウ) 00037190M17/木津川(きづがわ)の/渡(わた)りに、/板橋(いたばし)をかけて/往来(わうらい)を/渡(わた)しける。ある/夕暮(ゆふぐれ)、 00037200M18十六七の/娘(むすめ)/只(たゞ)ひとり、しほ+として/橋(はし)を/渡(わた)りかゝる。/橋= 00037210M19守(はし=もり)/袖(そで)を/扣(ひかへ)て、/勧進橋(くハんじんばし)なれバ二文ヅヽ/置(おい)てゆけといふ。アイト 00037220¥P125 00037230L1いふて壱文/出(だ)せバ、/橋守(はしもり)/腹(はら)を/立(た)て、二文より/負(まけ)ハない。/銭(せに) 00037240L2がなくバ/川(かわ)を/渡(わた)りやといへバ、/私(わたし)ハ/橋(はし)の/上(うへ)から/身(ミ)をなげる 00037250L3ものでござんす。 00037260¥Y1/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)中終(十四オ) 00037270¥Y1/絵本(ゑほん)/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)下巻 00037280M3目△△録 00037290M4一△あふひ/下坂(しもさか) 00037300M5二△/風(かぜ)の/神(かミ)の/手間取(てまとり) 00037310M6三△/豆腐(とうふ)の/夜見世(よミせ) 00037320M7四△/子(こ)の/心(こゝろ)/親知(おやし)らず 00037330M8五△とゞかぬ/灸治(やいと)(目二オ) 00037340M9六△すぐならぬ/蟹(かに) 00037350M10七△/扇(あふぎ)と/団(うちわ)の/喧嘩(けんくハ) 00037360M11八△/軽口(かるくち)/勝相撲(かちずもう)△/行司(ぎやうじ)の/詞(ことバ) 00037370M12九△/美童(でつち)の/後姿(うしろすがた) 00037380M13十△/和尚(おしやう)のげんぞく 00037390M14十一△/料理(りやうり)の/我侭(わがまゝ)(目二ウ) 00037400¥P126 00037410¥G 00037420¥T1 00037430¥N1¥J 00037440¥Xあふひ/下坂(しもさか) 00037450M3ある/仲間(ちうげん)、/古道具(ふるどうぐ)屋の/夜見世(よミせ)にて/刀(かたな)を百五十文にて/買(かひ)、/切(き) 00037460M4ルに/違(ちが)ひハないかと/念(ねん)を/入(い)レバ、二ツ/胴(どう)にしきうて、ずんど 00037470M5/能(よく)/切(き)レまするといへど、/大事(だいじ)の/男(おとこ)のたましいなれバ、/様(ため)し 00037480M6て/置(おき)たいと/思(おも)ふ/折(おり)から、四ツ/辻(つぢ)に/立(たつ)て/居(い)る/男(おとこ)を、/是(これ)/幸(さいわひ)と大 00037490M7げさに/切(きり)はなして、/跡(あと)をも見ずして/逃(にげ)のび、/扨(さて)+、わざも 00037500M8のかな。/心能(こゝろよく)/切(き)レたりと/思(おも)ひ、/猶(なを)も/切(きれ)(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00037510M9あんばいをミんと、/姿(すがた)をかへて、くだんの所へ/行(ゆき)見れバ、 00037520M10/大勢(おゝぜい)の人だかり。/扨(さて)ハ/切人(きりて)のせんぎならんと、さあらん/顔(かを) 00037530M11にて、/何事(なにごと)でござると/問(とへ)バ、世にハ/無法(むほう)なものもござる。 00037540M12/何心(なにごゝろ)なく/小便(せうべん)して/居(い)る人を、/後(うしろ)から/棒(ぼう)でたゝいたが、/今(いま)に 00037550M13/気(き)がつきませぬ。 00037560¥N2¥J 00037570¥X/風(かぜ)の/神(かミ)の/手間取(てまとり) 00037580M16いつの/年(とし)か、がいきはやりけれバ、/町(てう)+より/風(かぜ)の/神(かミ)を/拵(こしらへ)、 00037590M17たいこ、かねを/打(うち)たて、(四ウ)/東(ひがし)の/川(かわ)へ/送(おく)る。/今(いま)ハ/風(かぜ)の/神(かミ)も 00037600M18/都(ミやこ)の/住居(すまい)もならず、/東(あづま)へおもむかんと、/近江路(あふミぢ)さして/下(くだ)り 00037610M19ける。/道(ミち)にて/仲間(なかま)の/風(かぜ)の/神(かミ)に/行合(ゆきやい)、なんと、/貴風(きふう)ハ/北国(ほつこく)へ 00037620¥P127 00037630¥G 00037640M1ござつたと/承(うけたまわつ)たが、/早(はや)いお/帰(かへ)りといふ。イヤ、もふ/田舎= 00037650M2者(いなか=もの)バ、ほねがかたふて、/中(なか)+三日とハ/寐(ね)ませぬ。/貴風(きふう)ハ 00037660M3/広(ひろ)イ/都(ミやこ)ゆへ、さぞ/数(かず)がおでけなさりやうといへバ、ずいぶ 00037670M4ん/精(せい)/出(だ)シましたか、/漸(やう+)八千八/人(にん)。/何(いづ)れも三十日五十日/床(とこ)に 00037680M5(五オ)/付(つ)かせました。それハ/大分(だいぶん)の/人数(にんじゆ)を、よふおひとり 00037690M6で。イヤ+、/病(やまい)をおもらせたハ、/医師(いし)どもが/手伝(てつたい)ました。 00037700¥N3¥J 00037710¥X/豆腐(とうふ)の/夜見世(よミせ) 00037720M9/仕(し)なれた/商売(しやうばい)を/埓(らち)の/明(あか)ぬとて、めつたに/仕(し)かやうものでも 00037730M10なし。/此納(このおさま)りし/御代(ミよ)に、/具足(ぐそく)/甲(かぶと)の/商売(あきない)ハひまなはづと/見限(ミかぎ) 00037740M11り、なんぞ/朝夕(てうせき)うれるものを/思(おも)ひ/付(つき)、/豆腐(とうふ)屋に/取(とり)つきしが、 00037750M12しなれぬ(五ウ)/事(こと)とて、/出来(てき)ぞこのふて/売(う)れず。女/房(ぼう)きの 00037760M13どくがりて、アノ出来ぞこのふてくさつた/豆腐(とうふ)を、/乞食(こじき)に 00037770M14やらふと/云(いふ)。/亭主(ていしゆ)はらを/立(たて)、/元手(もとで)/入(い)レて/拵(こしらへ)た/物(もの)、たゞや 00037780M15るものか。そんなりやどふさしやるといへバ、/今夜中(こんやぢう)に/売(うつ) 00037790M16てしまふと、/暮(くれる)を/待(まつ)ておもてへ/行燈(あんど)を/出(だ)シける。/書付(かきつけ)に、 00037800M17/古(ふる)どふふ/売買(うりかい)。 00037810¥P128 00037820¥G 00037830¥N4¥J 00037840¥X/子(こ)の心/親(おや)/知(し)らず 00037850M3/初秋(はつあき)の/風(かぜ)/吹染(ふきそめ)て、/親仁(おやぢ)ハ/盆前(ぼんまへ)の/売(うり)(六オ)(六ウ・七オ挿絵)が 00037860M4けの/算用(さんやう)に/隙(ひま)なく、おばゝハなき玉/祭(まつ)るうり/茄子(なすび)のこし 00037870M5らへ、/子息(むすこ)ハ/今迄(いまゝで)人の/着(き)ぬおどり/浴衣(ゆかた)の思ひつき、/色(いろ)+ 00037880M6と/思案(しやん)して/居(い)る。ひとりの/友達(ともだち)いふやうハ、/紅縮緬(ひぢりめん)に/黒(くろ)じ 00037890M7ゆすのそぎつぎと/云(いふ)。/夫(それ)ハ三/条(でう)の/髭黒(ひげぐろ)がきて/古(ふる)イといふ。 00037900M8それならバ/赤地(あかぢ)の/錦(にしき)と/云(いふ)。それも/実盛(さねもり)がきて/古(ふる)イと云。そ 00037910M9んなら、しよつこうの/錦(にしき)に/緋(ひ)ぢりめんの/裏(うら)を/付(つけ)ふと/云(いふ)/相談(さうだん) 00037920M10を、(七ウ)/親仁(おやぢ)/聞(き)イてきもをつぶし、うぬらハ/其(その)やうなも 00037930M11つたいない事ぬかして、/追付(おつゝけ)、/後(のち)にハこもを/着(き)をれといへ 00037940M12バ、/親仁殿(おやぢどの)+。/夫(それ)も/乞食(こじき)が/着(き)て/古(ふる)イ+といふた。 00037950¥N5¥J 00037960¥Xとゞかぬ/灸治(やいと) 00037970M15やんことなきを/以(もつ)テ、さる/方(かた)の/姫君(ひめぎミ)、/御病気(ごべうき)にて、/典薬(てんやく)/医= 00037980M16術(い=じゆつ)をつくしけるが、とかく/灸治(やいと)をなされずバ/御平愈(ごへいゆ)あるま 00037990M17じくと申/上(あげ)けれバ、/大事(だいじ)の/姫君(ひめぎミ)の/御肌(おはだ)へ/直(ぢき)(八オ)に/火(ひ)をの 00038000M18せる/事(こと)なるまじとて、/味噌(ミそ)を/敷(しき)て/其上(そのうへ)へすへけり。その/後(のち)、 00038010M19/御(ご)きげんの/伺(うかゞ)ひけれバ、/姫君(ひめぎミ)/仰(おゝせ)けるやう、さて+、やい 00038020¥P129 00038030L1とハつめたいものじや。 00038040¥N6¥J 00038050¥Xすぐならぬ/蟹(かに) 00038060L4さて、けふハ/替(かわ)つたものをミました。何を/御覧(ごらう)した。まつ 00038070L5すぐにありく/蟹(かに)ヲ見ました。それハ/珍敷(めづらしい)ものといへバ、/勘(かん) 00038080L6の/深(ふか)い/親仁(おやぢ)が/聞(き)イて、大かた、それハ(八ウ)/蟹(かに)の/酒(さけ)の/酔(よい)で 00038090L7/御(ご)ざりましやう。 00038100¥N7¥J 00038110¥X/扇(あふぎ)と/団(うちわ)の/喧嘩(けんくわ) 00038120L10/比(ころ)しも/夏(なつ)の/夕暮(ゆふぐれ)、/扇(あふぎ)と/団(うちわ)/寄合(よりあふ)て、/団(うちハ)いふやう、さて+/此(この) 00038130L11なつハ、ことの/外(ほか)の/大暑(だいしよ)にて、/我等(われら)/一切(いつせつ)ひまハなし。/扇(あふぎ)も 00038140L12まけじと、われらもさやう。/扨(さて)/世上(せじやう)にて/扇(あふぎ)ハ/風(かぜ)のあんばい 00038150L13が、/又(また)+/格別(かくべつ)なものと/噂(うハさ)にて、/下拙(げせつ)も/悦(よろこび)申といへバ、/団(うちわ) 00038160L14いふやう、イヤ/拙者(せつしや)が/風(かぜ)ハよく仕ルとの/評判(へうばん)と、/互(たがい)(九オ)(九 00038170L15ウ・十オ挿絵)に/大(おゝ)げんくわになりけるを、/道(ミち)とふり見て、 00038180L16それハ/両方(りやうほう)ともに/御尤(ごもつとも)。先ヅ/拙者(せつしや)が/此(この)けんくわハもらい申 00038190L17と一/首(しゆ)、 00038200L18△△/扇(あふぎ)とものかぬうちわの事なれば 00038210L19△△△/中(なか)まるかれとあをぐ/斗(ばか)りよ 00038220M1と一/首(しゆ)つらねけれバ、/両方(りやうほう)しづまりける。/団(うちわ)ぬからぬ/顔(かを)に 00038230M2て、さて+、いかい/御骨(をほね)おりで/御(ご)ざりますといふた。 00038240¥N8¥J 00038250¥X/軽口(かるくち)/勝相撲(かちずもう)(十ウ) 00038260M5△△△△△△△△△△△△△△/行司(きやうし)の/詞(ことハ) 00038270M6それ/咄(はなし)ハおとしはねハ/口合(くちやい)、/口拍子(くちびやうし)の四ツ/手(で)より/起(おこ)るとい 00038280M7へども、とりわけてハ四十八口の/虚(うそ)を/心(こゝろ)の/種(たね)として、/万(よろづ)の 00038290M8/事(こと)の/花(はな)もミぢ、/咲(さく)も/散(ちる)も世の/一興(いつきやう)なれど、ある人、/此(この)一/部(ぶ) 00038300M9を/書(かき)ならべたるに、首に/物(もの)/書(かけ)となん。何がな/書(かく)べき見やげ 00038310M10ハなきかと、/藤川(ふじかわ)にとへバ、されバその事とて(十ウ) 00038320¥K〔註・この部分続かず。解題参照〕 00038330¥N9¥J 00038340¥X/美童(でつち)の/後姿(うしろすがた) 00038350M13/身上(しんしやう)よき/町家(まちや)へ、小でつちを/抱(かゝへ)んとたのミ/置(おき)しに、十四五 00038360M14なる/眉面(ミめ)よき/小(こ)でつちをつれ/来(きた)り、/今迄(いまゝで)ハいづかたに/勤(つとめ)た 00038370M15ぞ。さるお/寺(てら)様に十日/斗(ばか)りおりました。ムヽいかにもきり 00038380M16やうがよいほどに、/置(おき)もせうが、/座敷(ざしき)まわりの/給仕(きうじ)さする 00038390M17に/恰好(かつこう)が見たい。/立(た)つて見せよ。/畏(かしこま)りました。うしろむい 00038400M18て見せよ。イヱ+、/後(うしろ)(十一ウ)むくほどなれバ、今までの 00038410M19お/寺(てら)様に、やはりおりまする。 00038420¥P130 00038430¥G 00038440¥N10¥J 00038450¥X/和尚(おしやう)のげんぞく 00038460M3/慥(たし)かあれハ、こちの/寺(てら)の/和尚様(おしやうさま)とおもへど、あつびんに/当= 00038470M4世(とう=せい)ばをり。よく/似(に)た人もあるものかなと/行過(ゆきすぐ)るに、あちら 00038480M5から/言葉(ことば)をかけて、コレ+、こなたハなぜに見ぬかほをめさ 00038490M6るゝぞ。/扨(さて)ハ/和尚(おしやう)様か。そのびんつきハ/何(なに)とした/事(こと)(十二 00038500M7オ)(十二ウ・十三オ挿絵)でござりますぞ。ムヽ。/何(なに)もやうすを 00038510M8/聞(き)かずか。/旦那衆(だんなしゆ)にふかく/隠(かく)したれ/共(ども)、/内証(ないしやう)に/隠(かく)し/置(おい)たる 00038520M9女/房(ぼう)ともゝ/子(こ)どもゝ/相(あい)/果(はて)たれバ、/浮世(うきよ)をあぢきなくぞんじ 00038530M10て、げんぞくいたした。 00038540¥N11¥J 00038550¥X/料理(りやうり)の/我侭(わがまゝ) 00038560M13めつたにりやうり/人(にん)をしかる/旦那(だんな)、/客(きやく)へ/膳(ぜん)を/出(だ)シ、しかり 00038570M14たふても/塩梅(あんばい)よきゆへにしかられず。/吸物(すいもの)に/成(なつ)て、/客(きやく)(十 00038580M15三ウ)/衆(しゆ)、/是(これ)ハ+/又(また)とあるまいかげんかなと/誉(ほむ)れバ、てい 00038590M16しゆ、/料理人(りやうりにん)を/呼出(よびだ)シ、おのれハにくきやつかなと/云(いふ)を、 00038600M17/皆(ミな)+、それハ/何(なに)を/仰(おゝせ)らるゝ。/是程(これほど)よきかげんハないにと 00038610M18いへバ、されバの/事(こと)。/余(あま)りかげんが/能(よき)ゆへにしかりまする。 00038620M19/是(これ)が今/少(すこ)シからきかあまきかなれバ、ふかげんと/云(いふ)もの。 00038630¥P131 00038640L1/扨(さて)+、あぶない/事(こと)を/仕(し)おつたと云てしかつた。 00038650¥Y1/軽口(かるくち)/瓢金苗(へうきんなへ)下△終 00038660¥Q 00038670L5△△△△△△△△△知恩院新門前縄手東ヘ入町 00038680L6△△△△△△△△△△△△いせ屋 00038690L7△△延享四年卯正月吉日△△△△伊右衛門板(十四オ) 00038700¥P132 00038710¥U噺本大系△第八巻 00038720¥T軽口笑布袋 00038730¥G 00038740¥Y 00038750L16延享四年刊 00038760L17似嘯序 00038770L18半紙本五巻 00038780L19都立中央図書館東京誌料蔵 00038790¥Y序 00038800M3/雪月花(せつげつくハ)ハ四季のうつりゆく/景色(けいしよく)。/琴詩酒(きんししゆ)ハ/友(とも)に/遊(あそ)ぶの/賞翫(しやうくハん) 00038810M4なり。此外に/軽口(かるくち)にまさる/楽(たのしミ)なし。/抑(そも+)軽口と云/因縁(ゐんゑん)を/委(くハしく) 00038820M5/尋(たづね)けるに、/吾(わが)/朝(ちやう)のおとし/咄(はなし)に(一オ)/極(きハまつ)た。コリヤ/世(よ)の/興(けう)をの 00038830M6つとらんと、/此方(こつち)から/腹(はら)をかゝえて、/年(とし)の/始(はじめ)に、/笑(わらい)/布袋(ほてい)の 00038840M7/序開(じよびらき)とは、おこがましう存候。以上 00038850M9△△延享四つの海 00038860M10△△△△兎の耳の永き日△△△△△似△嘯G(一ウ) 00038870¥P133 00038880¥Y1軽口笑布袋巻一 00038890L3目△△録 00038900L4○△/歳旦(さいたん) 00038910L5○△かんきん/嫌(きらい) 00038920L6○△/百万(ひやくまん)/辺(へん) 00038930L7○△/居(ゐ)ねふり 00038940L8○△あつゆ/好(このミ) 00038950L9○△/客(きやく)人なミ 00038960L10○△からし/酢(す)(二オ) 00038970L11○△水/商売(しやうばい)(二ウ) 00038980¥T1軽口笑布袋巻一 00038990¥N1¥J 00039000¥X/歳旦(さいたん) 00039010M5/門松(かどまつ)にぎやかに/立(たて)わたして、/家居(いへゐ)大きなる/分限者(ぶげんしや)。/年(とし)の/初(はじめ) 00039020M6の/発句(ほつく)をし、たんじやくにかきて/柱(はしら)にはり、たのしミゐら 00039030M7るゝところへ、お出入のもの御礼に参りて、かのたん/尺(じやく)を 00039040M8見て、あれはなんでござりますととへバ、あれハ/歳旦(さいたん)とい 00039050M9ふて、/年始(ねんし)にかならずする物じやと云。さて+/存(ぞん)ぜぬ事 00039060M10かな。よんでおきかせ(三オ)(三ウ・四オ挿絵)なされませ。 00039070M11△△/年徳(としとく)や/巳(ミ)/午(むま)のあいだ万よし 00039080M12此やうに、としとくなどゝ/春(はる)の/季(き)を入、やの/字(じ)の/切字(きれじ)、さ 00039090M13てよろづよしと、めでたくするものじや。さて+おもし 00039100M14ろいことかな。とてもの事、わたくし、わきを仕たいがい 00039110M15かゞ。やれ+きどくじや。さらバうけたまハらふ。しか 00039120M16らば、おはづかしながらとて、 00039130M17△△こよみのやうなほつくなりけり 00039140¥P134 00039150¥G 00039160¥N2¥J 00039170¥Xかんきんぎらひ(四ウ) 00039180M3おやぢさま。としよりてハ念仏申たり御経よんだりするが 00039190M4大はうでござる。おまへのやうに、ごしやうぎらひハない。 00039200M5今からあさばんかならず御つとめなされませと、しんじつ 00039210M6に申せば、おやぢこまりて、なるほど+とうけあい、ぢ 00039220M7ぶつだうへむかふとおもへバ、たちまちしまひたり。むす 00039230M8子あきれて、是ハもう御しまひなされたか。いやはや、さ 00039240M9たのかぎりと、にがりかほにていふ。おやぢ、大にはらを 00039250M10たて、を(五オ)のらがしることでハない。をれハきめどこ 00039260M11ろをきめる。 00039270¥N3¥J 00039280¥X百万べん 00039290M14/数珠(ずゞ)をくりて居るところへ、わかきもの来りて、おまへハ 00039300M15一日に何ほどくらせらるゝととへば、されば、四五十万べ 00039310M16んもくるかと存ずる。さて+、おどろき入たる事かな。 00039320M17わたくしはおしやう様から、一日五千べんづゝのしよさを 00039330M18うけましたが、何としてたいていの事でハくれませぬ。/私(わたくし) 00039340M19におまへの/早(はや)くりの/法(はふ)を、御でん(五ウ)じゆなされて下さ 00039350¥P135 00039360L1れませと申す。やすい事。でんじゆいたさう。まづずゞの 00039370L2おや玉を取てひたひにいたゞき、なむあミだぶつと、一心 00039380L3に一こゑとなへて、そのあとは、/同(おな)じく+とさへとなへ 00039390L4れば、一日に三四十万ハらくじや。 00039400¥N4¥J 00039410¥X居ねふり 00039420L7ゐねふりずき、むかひの見せさきに/例(れい)のゐねふりして居る。 00039430L8内より/女房(にようばう)が大きな/声(こゑ)して、おやぢどの。あんまりじや。 00039440L9もどつて(六オ)ねさつしやれ。ムヽがてんじやとて、目を 00039450L10ふさぎ、さぐり+かえる。女房あきれて、/昼(ひる)/日中(ひなか)、人が 00039460L11ゆきあたるに、なぜに目をあいてござらぬとしかれば、ち 00039470L12いさいこゑで、やかましういふな。めをだましてゆく。 00039480¥N5¥J 00039490¥X/熱湯好(あつゆこのミ) 00039500L15/方&(はう※)かけあるきて、/腹中(ふくちう)さびしけれバ、ちかづきをおもひ 00039510L16出して、一ぜん仕らばやと存じ、立よりけるに、どうやら/躰(てい) 00039520L17あしくて云出され(六ウ)ず。そのうちに/茶(ちや)を/持(もち)来りけれバ、 00039530L18是ハぬるい。あつくしてたもれ。心得ましたと火をたきて、 00039540L19ちやわんの中でにえかへるをもつて来けれバ、これハまた 00039550M1あんまりあつうてのミにくひ。ひやめしをむめてたも。 00039560¥N6¥J 00039570¥X/客人(きやくじん)なミ 00039580M4これハ+めづらしき御/客(きやく)の御出じやと、てい主、つちで 00039590M5にはハき、やれ女ども。/御酒(ごしゆ)をあげませいと、さかなこし 00039600M6らへなどする。かゝハ(七オ)さかづき出して、酒のかんす 00039610M7るところへ、七ツ八ツバかりのわるさ/者(もの)かけ来り、おれも 00039620M8/酒(さけ)をのまふ+とせがみ/立(たつ)れば、かゝ、はらを立、/客人(きやくじん)と 00039630M9同じやうに、くらいたがるほどにの、ほんにうるさい。 00039640¥N7¥J 00039650¥Xからし/酢(す) 00039660M12/生(なま)がつを、さて+あたらしい。これハ何がよからふ。い 00039670M13りざけで/指身(さしミ)か。いや+。そんな手おもい事いふてゐる 00039680M14うちに、/魚(うを)がさがる。(七ウ)(八ノ十一オ挿絵)われらハからし 00039690M15ずじや。女ども、ぼうずに/酢(す)をかいにやりやれと、ぼうず 00039700M16にぜに五文とちやわんをわたして、すをかふてこい。ムヽ 00039710M17とがてんして/行(ゆき)けるが、まてども+かへらぬ。これハふ 00039720M18しぎと、/女房(かゝ)そとへ出て見れバ、/片(かた)手に/茶(ちや)わんをもち、か 00039730M19た手に/飴(あめ)四五本もちて、ねぶり+くる。かゝまちかねて、 00039740¥P136 00039750¥G 00039760L12やれ、はやふこい。そのあめハもらふたか。イヽヤ。/酢(す)はこ 00039770L13ぼれるによつて、あめかふてきた。(八ノ十一ウ) 00039780¥N8¥J 00039790¥X水/商売(しやうばい) 00039800L16/貸店(かしたな)とおもてに書付て有。家主殿へ、此店かりませうとい 00039810L17ふ。しやうばいハなんでござる。たうふ屋で御座ります。 00039820L18いや、水しやうばいハ/柱(はしら)も戸はめもそこねてたまらぬ。か 00039830L19しますまい。そのゝち又/借手(かりて)くる。しやうばいハ何でござ 00039840M1る。八百屋でござります。こちの店ハ水しやうばいの/衆(しゆ)ハ 00039850M2いやでござるとてかさず。又かりてが来る。何をする人ぞ。 00039860M3井戸/掘(ほり)(十二了オ)でござります。ナフいや+。たうふや八 00039870M4百やさへ水あきなひできらひじや。まして井戸の水しやう 00039880M5ばい、いやでござるといえば、家主様。それハ大きな御り 00039890M6やうけんちがひ。井戸ハよそでほるもので御座る。それが 00039900M7何ンの/家(いへ)のそこねるところへゆく事ぞとわらへバ、おれハ 00039910M8又井戸を内でほつて、うらしやるかと思ふた。 00039920¥Y1笑布袋巻一終(十二了ウ) 00039930¥Y1軽口笑布袋巻二 00039940L3目△△録 00039950L4○△よめぬふミ 00039960L5○△/薪(たきゞ)うり 00039970L6○△たらぬ薪 00039980L7○△五十手さき 00039990L8○△/相撲(すまふ)とり 00040000L9○△/古道具(ふるどうぐ)見せ 00040010L10○△/夜(よる)のそば切(一オ) 00040020L11○△灸すへそば 00040030L12○△それ+の願(一ウ) 00040040¥T1軽口笑布袋巻二 00040050¥N1¥J 00040060¥Xよめぬふミ 00040070M5今ほど/唐(から)やうのはやる事ハないが、/唐(から)やうハよめにくい。 00040080M6むかしから/名筆(めいひつ)にも、からやうはよめぬなどゝ、/筆法(ひつはう)の事 00040090M7をいふてゐるところへ、よそから状が来た。是もかの/唐様(からやう) 00040100M8なれば、いづれもよみかねけるが、やう+と/推量(すいりやう)がちに 00040110M9よみて、/肝心(かんじん)と思ハるゝ所、八九字バかり、いかやうにし 00040120M10てもよめかぬる。さる(二オ)によつて札を付て、此所よめ 00040130M11かね申候間、かな御付下さるべくと、其ところを/切(きり)て/遣(つか)ハ 00040140M12しければ、さきからの/返事(へんじ)に、かやうに/□((切カ))ぬき候てハ、わ 00040150M13れらもよめ申さず候。 00040160¥N2¥J 00040170¥X/薪(たきゞ)うり 00040180M16十四五なる子をもちて、あきなひをしならへとて、銭百も 00040190M17ちて木屋へつれ/行(ゆき)、/薪(まき)をかひ取うらせける。はや/昼前(ひるまへ)に内 00040200M18へかえり、ミな売ツたとて、銭六七十なげ出し、/昼(ひる)(二ウ) 00040210M19(三オ挿絵)めしくハふと、/鬼(おに)の/首(くび)とつたやうに、大きなかほ 00040220¥P138 00040230¥G 00040240L11してゐれバ、/母親(はゝおや)よろこび、日ごろハばかじやとて、こな 00040250L12たハしからしやれども、みごとあきなひをして来ました。 00040260L13此ぜにハさだめて利であらふな。/元(もと)ハどうしたといえば、 00040270L14もとハけさ、とつさまの木屋にをいてござつた。 00040280¥N3¥J 00040290¥Xたらぬ/薪(たきゞ) 00040300L17/始末(しまつ)なる人、/小者(こもの)を一人つかひ、/主従(しう※)二人くらしける。主 00040310L18人/朝(あさ)ねずきにて、ねながら(三ウ)/諸事(しよじ)のさし引する。/食(めし)を 00040320L19たくじぶんに、それ+/釜(かま)の下の木がおほい。三本ほど引 00040330M1ケといえば、りちぎなる小もの、三本引て、あとにたゞ一 00040340M2本もやしてゐたり。しばらくして、まだ+まきがおほい。 00040350M3まあ二本引ケといふ。小者、それでハ引ク木が一本たりま 00040360M4せぬ。 00040370¥N4¥J 00040380¥X五十手さき 00040390M7物にハ/上手(じやうず)/下手(へた)のある事じや。おれハ/将棊(しやうぎ)をさすに、五十 00040400M8手よりさきハ見へぬと/云(いへ)(四オ)ば、かれハいかい上手じや。 00040410M9三手さきが見へるものでハない。それほどにも/聞(きか)なんだが、 00040420M10そんならいざ一ばんと、/駒(こま)をならべて/先(さき)の人、/先手(せんて)いたす 00040430M11と、/角(かく)さきの/歩(ぶ)をつく。かのおとこ、しバらく/思案(しあん)し、駒 00040440M12もつかハず、見ぬゐた/顔(かほ)して、これハをれがまけじや。 00040450¥N5¥J 00040460¥X/相撲(すまふ)とり 00040470M15やはら取とすまひとりとたがひに/威権(ゐけん)をいひあい、/後(のち)には 00040480M16けんくわをしさふに見ゆる(四ウ)ゆえ、とかくすまふを取 00040490M17て、/勝(かつ)た人が上手にきハまると、そばからあつかへば、尤 00040500M18とて両人はだかになり、/手合(てあい)して取けるに、/相撲(すまふ)ハ大力に 00040510M19て、やハらを目より高くさしあげ、見へたか+といへは、 00040520¥P139 00040530L1上より、此さし上らるゝがやハらの手なり。サアなげて見よ。 00040540L2おちさまに、をとがひへ足を引かけて、けころすぞ。/放(なげ)よ 00040550L3+と云。すまふとりきもをつぶし、やはら取をさし上な 00040560L4がら、ヤレ人ごろしよ+。(五オ) 00040570¥N6¥J 00040580¥X古道具見世 00040590L7/古道具(ふるだうぐ)バかりでハあはぬとて、/餅(もち)をついてうる。五文どり 00040600L8を出し置けれバ、とへうもの来りて、此もちいくらでごさ 00040610L9ると云。それはきハまつた。五もんどりで御座る。是を三 00040620L10文にまけさつしやれ。ハテ、きハまつた五文どりを、まけ 00040630L11ることハござらぬ。ぜひ三もんにまけさつしやれ。五文な 00040640L12れば、あたらしいもちを/買(かい)ますハ。(五ウ) 00040650¥N7¥J 00040660¥X夜のそば切 00040670L15そばきりイ+と/夜(よる)四ツ時うりありく。さる所のずいぶん 00040680L16/門(もん)のきびしきやしきの門番、とくろのかうしから、そば切 00040690L17+と小/声(こゑ)によぶ。そば切、御用かと、かうしぎハへ/寄(よれ)ば、 00040700L18十六文もりを三ぜんこしらへ、さし出せといふ。心得まし 00040710L19たが、/去(さり)ながら、此やうな御門の出入のかたい御屋敷でハ、 00040720¥G 00040730M11くふてからおくへござると、どうもなりませぬによつて、 00040740M12御無(六オ)用になされて下され。/但(たゝ)シ銭をさきへつかハさ 00040750M13れますかといふ。なるほど、尤の事じや。しからば二ぜん 00040760M14づゝくふべしとて、百文まどよりさし出せば、あき人うけ 00040770M15とり、銭を/箱(はこ)へ打こミ/荷(に)をかづいて、あぶなげもなく、そ 00040780M16ろり+と、そばきりイ+。 00040790¥N8¥J 00040800¥X/灸(きう)すへそば 00040810M19日からよしとて灸をすゆる。友だち二三人来てはなしける。 00040820¥P140 00040830L1そは切をふるまふべしと、(六ウ)(七ノ九オ挿絵)よこ町のそ 00040840L2ばやへ、五百文がそばをいふてやる。日ごろ/銭(ぜに)ばらいあし 00040850L3きゆへ、/此方(こち)にハ/粉(こ)がないとて、をこさず。さて+、び 00040860L4んばうな事じや。そんなら下の町へゆけとてやれば、/爰(こゝ)に 00040870L5はかつてをしらず。けふハ/粉(こ)が/少(ちと)たりませぬ。三百文がそ 00040880L6ばより外ござらぬ。それでもよくハ、/打(うつ)てつかハしませう 00040890L7か、/今(も)一度/問(とふ)てござれと、つかひをかえしけれバ、/亭主(ていしゆ)聞 00040900L8て、扨&どこもひんな事じや。そんなら(七ノ九ウ)そばを 00040910L9三百がと、あと弐百文ハぜにでよこしやれといへ。 00040920¥N9¥J 00040930¥Xそれ+の/願(ねがい) 00040940L12わかき者ども打より、色+のはなしをしつくし、あまり 00040950L13の事に、をれハりんじうのよいやうに、らうがいをやんで 00040960L14/死(しに)たいと云。おれハ/内(ない)そんハびんばうくさいによつて、ふ 00040970L15く/病(びやう)かぜにがさがよいと云。ひとりハ、物のゐらぬやうに、 00040980L16かくがやミたいといふ。とかく何も/入(いら)(十了オ)ぬとんしが 00040990L17よい。をれハしぬるならとんしをやむぞといひけるが、あ 00041000L18んのごとく四五日して、とんししけれバ、友だち共打より、 00041010L19なミだをながし、さて+せんど、あれがしなふはしと、 00041020M1をれハとんしするといふたが、かはいやとくやむ。/其(その)中に 00041030M2とへうものありて、さぞあれがいきてゐたら、じまんいふ 00041040M3であらふ。 00041050¥Y1わらひ布袋巻二終(十了ウ) 00041060¥P141 00041070¥Y1軽口笑布袋巻三 00041080L3目△△録 00041090L4○△かしま/立(たち) 00041100L5○△万年つゞら 00041110L6○△/疱瘡(ほうそう)やミ 00041120L7○△にはかめくら 00041130L8○△/捨(すて)大こく 00041140L9○△/酒(さか)もりの字 00041150L10○△ふじミ西行(一オ) 00041160L11○△のぼり竹 00041170L12○△あたご参り(一ウ) 00041180¥T1軽口笑布袋巻三 00041190¥N1¥J 00041200¥Xかしま立 00041210M5/旦那(だんな)、はじめての参宮なり。品川までもおくつたら何ンで 00041220M6も壱角ハしてやつた物しやと、/落(おと)しつけてゆきける。扨品 00041230M7川/観音堂(くハんをんどう)まて/着(つき)、ヤレ+けふハ大義じや。もはや是から帰 00041240M8つてたも。/留主(るす)中万事気を付てたもれ。そなたも/随分(ずいぶん)まめ 00041250M9でゐやれと斗いふて、/件(くだん)の心がけてゐる壱分どころへゆか 00041260M10ねバ、(二オ)かの男、大キにごうをにやし、口の中にて、 00041270M11何、まめでゐるものだ。 00041280¥N2¥J 00041290¥X万年つゞら 00041300M14万年つゞらと大かんばん出してある所へ、つゞら壱つ/買(かい)申 00041310M15さふ。しごくよいのを見しやれと、/侍(さふらい)一人、小ものつれて 00041320M16見へたり。先御上りなされませと、極上一番の/葛篭(つゞら)出しけ 00041330M17る。則/直段(ねたん)もきハまりたる上ハ、金子渡し申間、受取手形、 00041340M18/奥(をく)に万年が間ハそんじ不申段請合の(二ウ)/印形(ゐんぎやう)いたし申さ 00041350M19るべしと云。/亭主(ていしゆ)、きよつとしながら、なるほど、万ねん 00041360¥P142 00041370¥G 00041380L11うけ合で御座りますからハ、/証文(せうもん)仕りませう。しかし、 00041390L12千年め+に/渋(しぶ)を御ひきなされませ。 00041400¥N3¥J 00041410¥X/疱瘡(ほうそう)やミ 00041420L15/蝶(てふ)か/花(はな)かと/愛(あい)したる子をうしなふたる人有。あのやうな所 00041430L16へハくやミにどふ云てよからふぞ。をしへてたもれとなら 00041440L17ひにくる。其やうなにハ、これのおさないハなくならせら 00041450L18れ(三オ)(三ウ挿絵)たげな。扨&御ちからをとしてござる。 00041460L19しかしあのやうないたいけざかりにしぬる子ハ、/先(さき)の世の 00041470M1かたきじやと申スなどゝいふて、おやの心をなぐさむるが 00041480M2よいとをしへければ、其/如(ごと)く口上をのぶる。ふたりの/親(をや)、 00041490M3仰のとをり大分ン物を入させて、其うへにしぬるやつハ、 00041500M4わが子ではなくてかたきじやと存ずれバ、かハゆい事ハさ 00041510M5て置、今ハにくうて+身がもへますと、はらをたつれバ、 00041520M6かの人、大きにおどろき、(四オ)ちいさい子の事じや。こ 00041530M7らへてやらしやりませ。 00041540¥N4¥J 00041550¥Xにはかめくら 00041560M10/夏(なつ)の/昼(ひる)中そとをあるきて、よその内へはいりたれば、人ひ 00041570M11とりもなし。手もとにぜに二百文有けれバ、そつとくわい 00041580M12中しけるを、そばに見てゐたるもの、おかしさにだまつて 00041590M13ゐる。さて気しづまり、/眼(まなこ)あきらかに見ゆるまゝ、見れば 00041600M14五六人そこにゐる。これハと/肝(きも)をつぶしたれども、かの二 00041610M15百の銭の出し(四ウ)かたなく、こまりはてたる所へ、又外 00041620M16より人来りて、さて+、/夏(なつ)ほどおかしい物ハない。すつ 00041630M17ぺりめくらじやといえば、これ、目の見へる/薬(くすり)やらふと、 00041640M18かの二百の銭を渡した。 00041650¥P143 00041660¥N5¥J 00041670¥X捨大黒 00041680L3あの大/黒(こく)がこちの内へはいると/損(そん)斗リする。どつちへなり 00041690L4と、とつとゝ/捨(すて)て/仕廻(しま)へ。小者、かしこまりましたと捨に 00041700L5ゆく。向ふから、コリヤ、どこへ/行(ゆく)。わしハ大こくをすてに 00041710L6ゆく。イヤ、捨ず(五オ)と、おれにたもれ。其代に弐百やらふ 00041720L7と云。しからばと大こくを渡し、ぜにを/取(とる)と、内へすた+ 00041730L8帰り、だんなに、かくといえバ、夫レ見い。先キのやつハも 00041740L9ふ二百そんをしをつた。 00041750¥N6¥J 00041760¥X/酒(さか)もりの字 00041770L12さい中/呑(のん)でゐるところへ、又ひとり来た。みなコリヤ/酒盛(さかもり) 00041780L13か。よい所へ来たと、ずつと上る。イヤ、酒盛のついてに、 00041790L14酒盛のもりの字ハどふかくの。ハテ、しれた事。/木(き)といふ 00041800L15字を三つ(五ウ)かく。さるによつてお/三木(ミき)と云ハさて。な 00041810L16るほど是ハりくつじや。道理で木/林(ばやし)にのめといふ。 00041820¥N7¥J 00041830¥X西行 00041840L19たしかに百両ハ持てゐると思ふ/旅僧(りよそう)一人、風呂敷づゝミせ 00041850¥G 00041860M12をい通りけるを、ごまのはい二人、/跡(あと)の/宿(しゆく)から付廻し、何ン 00041870M13でも此宿はづれにてはぎ取らんと待てゐる。あんのごとく、 00041880M14かの僧そこ迄くる。コレ/酒手(さかて)もらいましよ。イヤ/貧僧(ひんそう)でそん 00041890M15な物、ないでゑす。ないとい/しほ((難読))(六オ)ばらして取と、す 00041900M16らりと引ぬいて/切(き)るかとすれば、何ンの事もない。是でハ 00041910M17いかぬ。ひごろけいこする/軍法(ぐんほう)てやつてくれんと、又切か 00041920M18けてもびく共せぬ。是ハふしぎとあきるれば、/旅僧(たびそう)おちつ 00041930M19いて、なんぼわいらが軍法でやつても、をれハ藤身西行じや。 00041940¥P144 00041950¥N8¥J 00041960¥Xのぼり竹 00041970L3五月のぼり/立(たて)まへ、のぼり竹あらへと云付られ、かしこま 00041980L4りましたと前の川へ入、(六ウ)(七ノ九オ挿絵)めつたにこすつ 00041990L5ておる。旦那もあまり/隙(ひま)が入ルと、ゐて見らるれば、手もと 00042000L6ばかりあらいて、先キの方ハまだすゝだらけに成て有。だ 00042010L7ん那あきれて、コリヤ、手元ばかり洗ふて、さきの方ハなぜ 00042020L8あらハぬ。イヤ、あそこハ/深(ふか)ふござります。 00042030¥N9¥J 00042040¥X/愛宕(あたご)参り 00042050L11ひぢりめんのふんどしをかふて、どこぞのはれにして見せ 00042060L12んと、きつとおもひ出し、(七ノ九ウ)八内、あすハあたご 00042070L13へ参るそ。したくせよと云付、あさ七つ時、/湯(ゆ)をとれと、 00042080L14かのひぢりめんを湯/殿(どの)のさほに打かけ、扨/行水(ぎやうずい)をし、した 00042090L15くしてあはてふためき、あたごへ参る。心見の坂の/辺(へん)にて、 00042100L16七のず迄引からげ/行(ゆけ)ハ、跡よりのぼる人、にこ+と/笑(わら)ひ、 00042110L17前へ廻りて弥わらふ。扨ハはねたりと、じまん顔てゆく 00042120L18ほど、/清滝(きよたき)近所の茶やの/女(をんな)ども、はらをかゝへて笑ふ。/供(とも) 00042130L19の八内も同じくわらふ。あまりふしぎさに、/木影(こかげ)に寄て 00042140M1前を(十了オ)見れバ、ふんどしをかゝずに来りけり。さて 00042150M2+/外聞(ぐハいぶん)わるく、口をしき事かな。人のわらふハぜひにも 00042160M3をよハす、おのれ八内め。主にはぢをかゝせをつたと、は 00042170M4がみしていかる。八内、大きにおそれ、おまへほどぬから 00042180M5ぬ、かしこいだんなが、ふんどしをおかきなされぬハ、大 00042190M6ていの事でハ/有(ある)まい。何ンぞのぐわんかと存ました。 00042200¥Y1かる口笑布袋巻三終(十了ウ) 00042210¥P145 00042220¥Y1軽口笑布袋巻四 00042230L3目△△録 00042240L4○△/禁酒(きんしゆ) 00042250L5○△寺参り 00042260L6○△/自鬢(じびん) 00042270L7○△/目礼(もくれい)/福神(ふくじん) 00042280L8○△/鬼(おに)のよわみそ 00042290L9○△/若衆(わかしゆ)/順(じゆん)礼 00042300L10○△/灸(きう)しらず(一オ) 00042310L11○△たらぬ吸物 00042320L12○△あかゞね蔵(一ウ) 00042330¥T1軽口笑布袋巻四 00042340¥N1¥J 00042350¥X禁酒 00042360M5/酒(さけ)もらふて/置(をく)。/蛸(たこ)がある。一ツぱいせい。イヤ、おれハちと 00042370M6/願(ぐハん)が有て三年/禁酒(きんしゆ)した。これハ心もとない、/合点(がてん)がゆかぬ。 00042380M7きびしく/呑(のま)ぬ所を見ておきやれと云て帰る。次の/夜(よ)、皆の 00042390M8んでゐる所へ、酒のミにきたと云てくる。てい主もあきれ 00042400M9て、夫レ見やれ。きのふの事、モウやぶるか。/破(やぶ)りハせぬが、 00042410M10おれもはつめいを出して、(二オ)三年のきんしゆを六年に 00042420M11して、/夜(よる)斗リのむつもりじや。是も尤じやが、とてもの事、 00042430M12十二年にして/昼夜(ちうや)のミやれ。 00042440¥N2¥J 00042450¥X寺参り 00042460M15今日ハ心ざす日と、/女中(ぢよちう)二三人つれ立寺へ参り、扨/墓(はか)に/詣(まうで)、 00042470M16水/向(むけ)花立一ツしんにをがんでゐる。うしろからぞつとする 00042480M17と思へば、ゆうれい出たり。わつといふて、/客殿(きやくでん)の方へや 00042490M18う+にげ出る。/和尚(をしやう)はじめ、いづれも(二ウ)はしり出、 00042500M19何事で御座る。はか所へゆうれいか+といふて、ふるふ 00042510¥P146 00042520L1てゐる。和尚さハがず、小僧よ。又ゆうれいが出たげな。 00042530L2/追(おふ)て進ぜろ。 00042540¥N3¥J 00042550¥X/自鬢(じびん) 00042560L5貴さまハりつぱにかミ/月代(さかやき)して来た。/床(とこ)かミか。だがゆふ 00042570L6た。イヤ、/自鬢(じびん)じや。是ハ/我(が)を折た事。そんなら/幸(さいわい)おれが 00042580L7あたま、ざつとやつてたも。いや+、手前のハ此やうに 00042590L8/結(ゆふ)が、人のハ不/調法(てうほう)な。ハテ、わるふても大事ない。(三オ) 00042600L9(三ウ挿絵)ひらにたのむといはれて、そんなら、おれがせなか 00042610¥G 00042620M1へおわりやれ。 00042630¥N4¥J 00042640¥X/目礼(もくれい)福神 00042650M4/恵比須(ゑびす)大黒二人つれにて/吉原(よしハら)へゆかるゝ。/砂利場(しやりば)の辺にて、 00042660M5向ふからよぼけたやうな男が来る。そば近く成て、大こく 00042670M6と目礼して行過る。ゑびす、ふしぎさふに、今のハ/誰(たれ)じや。 00042680M7貴さましるまい。アリヤびんぼう神じや。ハテ、やくたいも 00042690M8ない。/福神(ふんじん)がびんぼう神に(四オ)目礼してよいものか。そ 00042700M9ふいやんな。あの男も今ハ、よい衆づき/合(あい)する。 00042710¥N5¥J 00042720¥X鬼のよわ味噌 00042730M12/日暮(ひくれ)過見世の戸を、くハらりとあけてはいるを見れバ、す 00042740M13さまじき/赤鬼(あかおに)が/真青(まつさを)に成て、人のかげや/小角(こすミ)へはいらんと 00042750M14する。見世の者ども、おそろしくも、コリヤ何者じや。か 00042760M15の鬼/小声(こごゑ)に、だまつてかくしてくだされ。そこへ酒のゑい 00042770M16が来ます。手代共おかし(四ウ)がり、そのこわいなりをし 00042780M17て、酒の/酔(ゑい)こわがるとは、どふした事じや。鬼が云。今こ 00042790M18そ酒のゑいなれ。さめると/正気(しやうき)になります。 00042800¥P147 00042810¥N6¥J 00042820¥X/若衆(わかしゆ)/順(じゆん)礼 00042830L3六十バかりのおやぢ、だん+じゆん礼して、/那知(なち)へゆく。 00042840L4入口へはいると、/坊主(ぼうず)が大ぜい見付て、ソリヤ若衆が来たぞ。 00042850L5つかまへよとさハいでくる。/順礼(じゆんれい)がてんゆかねど、小きみ 00042860L6わるさに人の内へにげ入て、/門(かど)(五オ)の戸はたとさしたり。 00042870L7/表(をも□)ハ大ぜいの声で、/爰(こゝ)の内へ若衆を付こんだ。出せ+と 00042880L8云。内から、いや+、門ちがいであろ。そんな物ハこぬ 00042890L9と云。それでも/爰(こゝ)にわか/衆(しゆ)がついたつえがあるハい。 00042900¥G 00042910¥N7¥J 00042920¥X灸しらず 00042930M3大義ながら/灸(きう)をすへてたも。イヤ、是迄ついど、すへてやつ 00042940M4た事がない。ハテ、灸をすゆるに、何ンの/秘伝(ひてん)ハない。/点(てん)お 00042950M5ろした上へ(五ウ)すえる。きへたら其上へすへ、/消(きへ)たら其 00042960M6上へすへるのじや。心得た。すゑてやらふ。そんならけん 00042970M7べきから/初(はじめ)んと、もぐさに火を付て、/点(てん)の上へのせる。も 00042980M8はや十四五ほどもすゆると思へど、次第+にあつく成/故(ゆへ)、 00042990M9/皮切(かハきり)バかりで/跡(あと)ハ此やうにあつふない/筈(はつ)じやが、すへるほ 00043000M10とあつい。先ツ/待(まつ)てたもといえバ、モウちつと、こらやれ。 00043010M11/追付(おつつけ)/肩(かた)迄とゞく。けんべきからかた先迄すへてゆく心。(六オ)(六ウ 00043020M12挿絵) 00043030¥N8¥J 00043040¥Xたらぬ吸物 00043050M15外より客五六人/同道(どう※)してかへり、すい物して出せと、/奥(おく)へと 00043060M16をる。/鯒(こぢ)一本かふて、/旦那(だんな)ともに七人なれば、七つに切て 00043070M17吸もの出ししまふところへ、又一人、ミなむまい事が有て 00043080M18来たげなと、すぐにおくへとをる。かつてのものめいわく 00043090M19して、いろ+せんぎすれども、とかくさかながなけれバ、 00043100¥P148 00043110L1こまりはてたるに、/料理人(れうりにん)きてんものにて、おすい物かえ 00043120L2(七ノ九オ)よとかへさせける。その中に少しも/魚(うを)に手のつ 00043130L3かぬのが有ければ、それを後の客人へ出しける。/件(くだん)の手を 00043140L4つけぬものハ、後のたのしみと思ふ所に、すいものわんの 00043150L5魚を取られ、/力(ちから)をとしてゐる。又其となりへ、お吸物おか 00043160L6えなされませいといふて来るに、かの人小ごゑに、だすな 00043170L7+といえども、/聞(きゝ)/付(つけ)ずして出しければ、大/声(こへ)あげて、出 00043180L8すなといふに。だすと/魚(うを)とるぞよ。(七ノ九ウ) 00043190¥N9¥J 00043200¥X銅蔵 00043210L11/盗(ぬす)人が/土蔵(くら)のしりを切ル/音(おと)がするとて、てい/主(しゆ)火かきをも 00043220L12ち行、かべをきりまはすむかふへあてけれバ、ぬす人/叶(かな)ハ 00043230L13ず、又わきを切まハす。又そのところへ火かきをあてたれ 00043240L14ば、ぬす人、ふしぎな事じや。/鉄(てつ)かあかゞねにあたるやう 00043250L15で、すきと切まはされぬと、つぶやきければ、内よりてい 00043260L16主が、なんと、ていねいな/普請(ふしん)か。 00043270¥Y1巻四終(十了オ) 00043280¥Y1軽口笑布袋巻五 00043290M3目△△録 00043300M4○△今/無間(むけん)の/鐘(かね) 00043310M5○△/植木(うへき)多葉粉 00043320M6○△大仏もち 00043330M7○△/知(しつ)てしらざれ 00043340M8○△へらぬ口 00043350M9○△いかゐ/田分(たわけ) 00043360M10○△大小の/目利(めきゝ)(一オ) 00043370M11○△/奈良漬(ならつけ) 00043380M12○△西の海(一ウ) 00043390¥P149 00043400¥T1軽口笑布袋巻五 00043410¥N1¥J 00043420¥X今無間の鐘 00043430L5/遠州(ゑんしう)/小夜(さよ)の中山、/無間(むけん)の/鐘(かね)/開帳(かいちやう)初ると、町中おびたゝしく 00043440L6/参詣(さんけい)有。/若(わか)き者二三人、是もかい帳へ参りて、何ンと、此/鐘(かね) 00043450L7ヲついたら、今でも金の出る事やと、そばなる/坊(ぼん)にとへば、 00043460L8/成(なる)ほど、望次第でござる。そんなら五十両つきましよ。つき 00043470L9ちんいくらで御座る。拾両にして進じましよ。しからバと 00043480¥G 00043490M1大はだぬぎニ(二オ)(二ウ挿絵)なり、大びしやくのゑで、壱 00043500M2つくらハすと、下からしのを/乱(ミだ)せるごとく、水さつ+と 00043510M3/涌(わき)出る。其中から小判が、/爰(こゝ)に三両かしこに五両、これハ 00043520M4夢かやうつゝかや。たつた八両出て、弐両そんをした。 00043530¥N2¥J 00043540¥X/植木(へんき)たばこ 00043550M7/年&(とし+)/骨(ほね)を/折(おつ)て/種(たね)から仕上た/庭(には)を/拵(こしらへ)た。見におじやれ。ヲヽ 00043560M8と/約速(やくそく)して、あくる日早&見に行。是ハ+よふおじやつた。 00043570M9先&(三オ)庭を御めにかけんと見する。是ハいはふ所もな 00043580M10い。/存(ぞん)の外よふ出来たと、段&見廻したれば、/泉水(せんすい)の片わ 00043590M11きに、たばこが/植(うへ)て有ル。/爰(こゝ)にハなぜ、見ぐるしい多葉粉 00043600M12を/植(うへ)たといはれて、/亭主(ていしゆ)ぬからず、おれハうへなんだが、 00043610M13/誰(だ)がすいがらおとしたやら。 00043620¥N3¥J 00043630¥X大仏餅 00043640M16/東(ひがし)山/大仏殿(だいぶつでん)の前なる/餅(もち)屋を大ぶつもちと云。其中に大か 00043650M17んばんに、大仏餅とかき(三ウ)て、其下に、/馬(むま)を壱/疋(ひき)絵に 00043660M18書たり。ある人これを見て、てい主に、馬をかゝれたる心 00043670M19ハ、大仏もちむまいといふ事か。いや+、さうした/義理(ぎり)で 00043680¥P150 00043690L1ハござらぬ。人のより大きなといふ事じや。 00043700¥N4¥J 00043710¥X/知(しつ)て/知(しら)ざれ 00043720L4たしかに/茶(ちや)の/湯者(ゆしや)と見へたるおやち、/古道具(ふるどうぐ)の店をのぞき 00043730L5あるく。ある所に、へちまをつるし置ければ、ふしぎそふ 00043740L6に見てゐら(四オ)るゝ。内より、此おやぢ、へちまをしら 00043750L7ぬさふなと思ふてゐる所へ、これハ何ほどしますると、へ 00043760L8ちまをひねり+いひけれバ、それは金弐分でござります。 00043770L9おやぢ、あきれたるていにて、さて+、世には/高(たか)いへち 00043780L10まも/有(ある)ものじや。 00043790¥N5¥J 00043800¥Xへらぬ口 00043810L13/劔術(けんじゆつ)の/師(し)をする人、/店(たな)がへして、うゐ+しき所へ/行(ゆき)、め 00043820L14つたにじまんする。/新規(しんき)に付たる(四ウ)/弟子(でし)ども、これを 00043830L15にくがり、どこぞでしたゝかぶつてくれふといひ合せし折 00043840L16から、あすのばんハさる御屋敷へ参るほどに、/各(をの+)御出ハ御 00043850L17無用と申渡せバ、心得ました。いづかたの御やしきへ御出 00043860L18ぞとゝへば、あたごの下と云。扨次の/夜(よ)、/辻番(つぢばん)のかげより 00043870L19かけ出て、かの/師匠(しせう)をしたゝか/棒(ほう)にて打すくめ、あれでも 00043880M1まだじまんをいふであらふと打わらひ、其次の夜、師匠の 00043890M2所へゐたれバ、さて+夕部ハあや(五オ)うい目に出合ま 00043900M3した。辻番のかげから何者かふつと出て、したゝか、をれ 00043910M4をたゝきました。それハあぶない事。さだめて日比のおた 00043920M5しなミ、うけ給ハりたい。されば其事。わしもあまり/急(きう)に 00043930M6ござつた/故(ゆへ)、せなかで三つうけました。 00043940¥N6¥J 00043950¥Xいかい/田分(たわけ) 00043960M9/僻(くせ)として、いかゐ/田分(たわけ)+と云さふらひ有。れき+なら 00043970M10びゐる中へ/家老(からう)どの出られ、何か咄し有て、おかしき事い 00043980M11はれたれバ、/例(れい)の(五ウ)くせ者、いかひたわけのといひけ 00043990M12るに、家老殿、少シ/立腹(りつふく)心にてたゝれける。扨はうばいど 00044000M13も、さて+、そなたハ/日比(ひごろ)のくせの、いかひたわけをい 00044010M14ふたによつて、/御家老(ごからう)ふきげんにてたゝれたといえば、何 00044020M15ンのそんな事を云ものぞ。ハテ、みなれき+聞てゐた。 00044030M16けうこうたしなめといえバ、さてハ云たか。いかい田分の。 00044040¥N7¥J 00044050¥X大小の/目利(めきゝ) 00044060M19をれハきのふ大小のめきゝをならふた。それハ(六オ)(六ウ 00044070¥P151 00044080¥G 00044090L11挿絵)ふしぎな事じや。ちがふといふ事がないといへば、 00044100L12是ハほんによい事をならふた。おれにもをしへてたもれ。 00044110L13そんなら、かならずさたしやるな。たとへくらがりであら 00044120L14ふとまゝ、其こじりをさぐつて見て、そこの/四角(しかく)なハ大、 00044130L15そこの丸いは小じや。 00044140¥N8¥J 00044150¥X/奈良漬(ならつけ) 00044160L18八九才の子を、よそへふるまひにつれてゆく。ぜんを、/先(まつ) 00044170L19子ども/衆(しゆ)へと、一ばんにもつてくる。(七ノ九オ)小/皿(さら)になら 00044180M1づけのかうの物/付(つい)てあるを見るといなや、コレ、きあいの 00044190M2わるい時の、かうの物がある。 00044200¥N9¥J 00044210¥X/西(にし)の/海(うミ) 00044220M5/師走(しハす)の/末(すへ)よそへ/行(ゆき)、銭五百文おかしなされて下され。明後 00044230M6日ハ/急度(きつと)/持参(ぢさん)仕らふと/約束(やくそく)し、一両日中にかの銭を/返(かへ)しに 00044240M7ゆくとて、六百文/懐中(くハいちう)して五百文ハ/済(すま)し、/残(のこ)りの百文を 00044250M8ふところへ入かへりしが、道にて/落(おと)しけれバ、大きに/腹(はら)を 00044260M9たてゝ内へかえる。/女房(かゝ)が、こなたハ/酒(さけ)にゑふたか。/師走(しハす) 00044270M10にハわざ(七ノ九ウ)とも/機嫌(きけん)よくするものじや。それに其 00044280M11やうにはらを/立(たて)さつしやるとしかれバ、てい主、/銭(ぜに)をおと 00044290M12したる事をいふて、/弥(いよ+)いかる。女房、それハ一/段(だん)めでた 00044300M13い事じや。少シも/腹(はら)を立給ふな。/昔(むかし)から云、五百はらい百 00044310M14おとしじやと/祝(いわ)ひ/直(なを)せバ、/次第(しだい)に/冨貴(ふつき)と/栄(さか)えけり。 00044320¥Q 00044330M16△△△△△△△△△△△京寺町五条上町 00044340M17延享四年卯正月吉日△△△△△梅村判兵衛新板(十オ) 00044350¥P152 00044360¥U噺本大系△第八巻 00044370¥T軽口浮瓢単 00044380¥G 00044390¥Y 00044400L16寛延四年刊 00044410L17探華亭羅山序 00044420L18半紙本五巻 00044430L19国会図書館蔵等 00044440¥Y序 00044450M3/頴川(ゑいせん)のかた/意地(ゐぢ)ものに/捨(すて)られたる/瓢単(へうたん)の、/河豚(ふぐ)のごとく/游(およ) 00044460M4ぎ、/水母(くらげ)のごとく/漂了(うぼつき)て、何となくおかしきはづみに、/牛(うし) 00044470M5を/牽(ひき)たる/理窟(りくつ)ものが、/笑(わらひ)の/鑰(かけがね)をはづして、/胡盧(ころ)+とも 00044480M6だへしといふ。むかしの/嘘説話(うそばなし)を/直(すぐ)さま/題(だい)(一オ)/号(がう)として、 00044490M7/軽口(かるくち)/浮(うき)/瓢単(べうたん)の口より、/笑(わら)ひの/種(たね)を/四方(しハう)にまきちらすといふ 00044500M8ならし。 00044510M9△△△未のとし 00044520M10△△△△△△はつ春△△△△△△探△華△亭 00044530M11△△△△△△△△△△△△△△△△△△羅△山(一ウ) 00044540¥P153 00044550¥Y1軽口浮瓢単巻之一△目録 00044560L3/謎(なぞ)つんぼう 00044570L4金といふ/字(じ) 00044580L5/刀(かたな)のきつさき 00044590L6はなしの/種(たね) 00044600L7/石塔(せきたう)のうなづき 00044610L8下女の/脉(ミやく) 00044620L9/昼(ひる)の月/夜(よ)(二オ) 00044630L10ゑびすの帳/買(かい) 00044640L11/蘇鉄(そてつ)の取ちがへ 00044650L12女人の名 00044660L13/鬼(おに)のより合 00044670L14/木戸(きど)の/念仏(ねんぶつ)(二ウ) 00044680¥T1軽口浮瓢単巻之一 00044690¥N1¥J 00044700¥X/謎(なぞ)つんぼう 00044710M5あら玉の年をむかへ、/幾千世(いくちよ)ながき春の日つれ+なる 00044720M6折から、二三人/寄合(よりあひ)、/謎(なぞ)をかけて/遊(あそ)ぶ其中に、いか成むつ 00044730M7かしき/謎(なぞ)にても、/奇妙(きめう)に/解(とく)男ありて、さま+の/謎(なぞ)もかけ 00044740M8/尽(つく)したる時、/才覚(さいかく)成ル人/思案(しあん)して、/古鼬(ふるいたち)とかけて何と/解(とく)と 00044750M9いへバ、/彼謎解(かのなぞとく)男、いろ+/工夫(くふう)して見れど/解(とけ)ず。是ハ一 00044760M10/番(ばん)/流(なが)すといふ。/謎(なぞ)かけたる者のいふハ、/古鼬(ふるいたち)とかけて、つ 00044770M11んぼうと/解(とく)といへバ、/彼(かの)男しバらく/思(し)(三オ)/案(あん)して、/古鼬(ふるいたち) 00044780M12をつんぼうとハ、どふも/義(ぎ)理が/聞(きこ)へぬといへバ、さあ、わ 00044790M13けが/聞(きこ)へぬゆへ、つんぼうと/解(とく)といふた。 00044800¥N2¥J 00044810¥X/金(かね)といふ/字(じ) 00044820M16/去(さる)所の/会所(くハいしよ)にて町ぶるまひ有しに、ある人のいふハ、なん 00044830M17ど/文字(もじ)といふ物ハ、よふした事でござります。/咄(はなし)といふ/字(じ) 00044840M18ハ/口篇(くちへん)に/出(で)ると/書(かき)ます。いづれ口から/出次第(でしだい)なものなれバ 00044850M19といへバ、/宿老(しゆくらう)申さるゝハ、それよりハ/金(かね)といふ/字(じ)ハ、人 00044860¥P154 00044870L1の/主(ぬし)と/書(かき)ます。よう/理窟(りくつ)をせめた物でハござらぬかと/云(いわ)る 00044880L2れバ、/皆(ミな)&、/尤(もつとも)な/義(ぎ)でごさりますといふ時、/少(すこ)し/小文(こもん) 00044890L3(三ウ)/才(さい)のある人さし出て、成程、/草(さう)で/書(かく)時ハ人の/主(ぬし)と/書(かき) 00044900L4ますれど、/真(しん)で/書(かく)時ハ人の/主(ぬし)とハ/書(かき)ませぬといへバ、/宿老(しゆくらう) 00044910L5ぬからぬ/顔(かほ)で、いや+、しんでハいらぬ物でござるとい 00044920L6ハれた。 00044930¥N3¥J 00044940¥X/刀(かたな)のきつさき 00044950L9去所に/臆病(をくびやう)なる/劍術者(けんじゆつしや)あり。ある時/弟子(でし)を/集(あつ)め申さるゝハ、 00044960L10/惣(さう)じて/世俗(せぞく)にも申ごとく、男ハ/外(そと)へ出れバ七人の/敵(かたき)が有と 00044970L11申せバ、/各(をの+)がたも/常(つね)+/刀(かたな)のきつさきのやうに気を/持(もち)給へ 00044980L12と申さるれバ、/皆(ミな)&/刀(かたな)のきつさきハするどなるものゆへ、 00044990L13男も気をするどに/持(もち)て/臆病(をくびやう)ならぬやうに/致(いた)し申せと(四オ) 00045000L14の御事ならん。/尤(もつと)もな/義(ぎ)てござりますといへバ、/師匠(ししやう)/云(いわ)る 00045010L15ゝハ、/各(おの+)がたハ何と/合点(がてん)なされた。/刀(かたな)のきつさきハ/跡(あと)か 00045020L16ら出て、/先(さき)へはいる物じやといハれた。 00045030¥N4¥J 00045040¥Xはなしの/種(たね) 00045050L19去所に、/万(よろづ)/種物(たねもの)ありといふかんばんを出しけれバ、こまら 00045060¥G 00045070M12してなぐさまんと、二三人づれにて行て、/咄(はなし)の/種(たね)がござる 00045080M13かといへバ、/種(たね)屋の/亭主(ていしゆ)、成程ござります。是へ御/通(とを)り、 00045090M14御/覧(らん)下されよと/奥(をく)へつれゆき、/藁(わら)ぶきの/小家(こいへ)の/障子(しやうじ)を/開(あけ)て、 00045100M15是が/咄(はなし)の/種(たね)でござります。むかし+、ぢいとばゞとか/居(ゐ) 00045110M16られました。(四ウ)(五オ挿絵) 00045120¥N5¥J 00045130¥X/石塔(せきたう)のうなづき 00045140M19ある人、年/久(ひさ)しく/馴染(なじミ)をかさねて/逢(あひ)し女/郎(らう)、かり/初(そめ)に/煩(わづら)ひ 00045150¥P155 00045160L1しが、/終(つい)に/本腹(ほんぶく)なく/死(し)しけれバ、/歎(なげ)きの/余(あま)り、我/頼(たの)ミ寺へ 00045170L2/石塔(せきたう)を立て、/仏事(ぶつじ)/供養(くよう)かたのごとくいとなミ、/毎(まい)日+/彼= 00045180L3石塔(かの=せきたう)の/前(まへ)に/行(ゆき)て、/過(すぎ)し事どもを/数(かぞ)へ立て、かなしミけるが、 00045190L4ある日/例(れい)のごとく/石塔(せきたう)にむかひて、さま+の事をいひけ 00045200L5るに、ふしぎや、此/石塔(せきたう)うなづきける。/扨(さて)ハ我こゝろざし 00045210L6の/通(つう)じけるかと、/泣(なく)+/帰(かへ)る/道(みち)にて、しる人に行/逢(あひ)しが、 00045220L7/彼(かの)人いふやう、今の/地震(ぢしん)ハきつい物の。(五ウ) 00045230¥N6¥J 00045240¥X/下(げ)女の/脉(ミやく) 00045250L10ある所に、/我身(わがミ)をめつたに/卑下(ひげ)する/下女(げぢよ)あり。其/家(いへ)の/内義(ないぎ)、 00045260L11風を引たるとて、/常(つね)に/念比(ねんごろ)成/医者(いしや)を/呼(よび)て、/脉(ミやく)を見てもらハ 00045270L12るゝ/次手(ついで)に、/下(げ)女を/呼(よび)て、そなたも心もちがすぐれぬとい 00045280L13やる。あなたに/脉(ミやく)を見てもらひましやといハるれバ、/彼下(かのげ) 00045290L14女、/例(れい)の/卑下(ひげ)して、なんの、/私(わたし)ら/風情(ふぜい)に/脉(ミやく)がござりましよ 00045300L15といふた。 00045310¥N7¥J 00045320¥X/昼(ひる)の/月夜(つきよ) 00045330L18ある所に大/勢(ぜい)の/弟子(でし)、見世にならびて/箱細工(はこざいく)して/居(ゐ)たる 00045340L19(六オ)見世さきを、十二三成/丁稚(てつち)、大/声(ごゑ)あげて/浄(じやう)るりを/語(かた) 00045350M1り/通(とを)りけれバ、/箱(はこ)屋の/弟子(でし)共、月/夜(よ)かと思ふてかと/笑(わら)ひけ 00045360M2れバ、/彼丁稚(かのでつち)立どまり、まだ/夜(よ)なべしてかといふた。 00045370¥N8¥J 00045380¥X/夷子(ゑびす)の帳/買(かい) 00045390M5ある人、正月の十日ゑびす/参(まい)りして、帳を/買(かふ)て/帰(かへ)りしが、 00045400M6/道(ミち)にて/溝(ミぞ)へ取/落(をと)し、/泥(どろ)によごれけれバ、/殊(こと)の/外(ほか)/気(き)にかけて 00045410M7/居(ゐ)たる所へ、/隣(となり)の/亭主(ていしゆ)/来(きた)り、帳のよごれるといふは、/商人(あきんど) 00045420M8の身にてハめでたい事也。/祝(いわ)ひ給へといふ。いや+、帳 00045430M9のよごれるハよけれ共、何/分(ぶん)/相手(あひて)が/泥(どろ)てござるといふた。 00045440M10(六ウ) 00045450¥N9¥J 00045460¥X/蘇鉄(そてつ)の取ちがへ 00045470M13大坂/砂場(すなば)のうどん屋に大き成/蘇鉄(そてつ)を/植置(うへをき)ける。/或(ある)時三人づ 00045480M14れにて/温飩(うどん)を/喰(くい)に/来(きた)り、/彼(かの)そてつを見て、一人がいふやう、 00045490M15扨&大き成/山葵(わさび)かなといへバ、一人くつ+と/笑(わら)ひ、あれ 00045500M16ハわさびじやない。とてつといふ物じやといへバ、今一人 00045510M17がいふやう、わいらハ/文盲(もんもう)な者じや。とてつといふハ、/血(ち) 00045520M18を/吐(はく)事でこそあれといふた。 00045530¥P156 00045540¥N10¥J 00045550¥X/女人(によにん)の/名(な) 00045560L3/木薬(きぐすり)屋の手代、/桃仁(とうにん)を/刻(きさ)ミ/居(ゐ)たる所へ、/近所(きんじよ)の/乳母(うば)(七オ) 00045570L4見世へ/来(きた)り、是ハ何といふ/薬(くすり)でござりますと/問(とへ)バ、是は/桃= 00045580L5仁(とう=にん)といふて/桃(もゝ)の/実(さね)でござるといへバ、/乳母(うば)がいふやう、何 00045590L6ンでも/実(さね)のあるものを/仁(にん)と申ますかといへバ、成程、/梅(むめ)の 00045600L7/実(さね)を/梅仁(ばいにん)といひ、/杏(あんず)の/実(さね)を/杏仁(きやうにん)といひますといへバ、/彼乳= 00045610L8母(かのう=ば)、それで/女子(おなご)を/女人(によにん)といふ事がしれましたといふた。 00045620¥N11¥J 00045630¥X/鬼(おに)のより/合(あひ) 00045640L11/今年(きんねん)/地獄(ぢこく)も/殊(こと)の外/衰微(すいび)せしゆへ、/数多(あまた)の/鬼(おに)共/談合(だんかう)して、風 00045650L12の神を/頼(たの)ミ風をはやらしけれ共、/世間(せけん)の(七ウ)/医者(いしや)の/匕加= 00045660L13減(さじか=げん)にて/死(し)するものなきゆへ、/鬼(おに)共又&より/合(あひ)して、此上ハ 00045670L14/娑婆(しやば)の/医者(いしや)共を取/殺(ころ)さんといへバ、中にも/分別(ふんべつ)らしき/鬼(おに)が 00045680L15いふやう、いや+それハ/無用(むよう)なり。あいらを/生(いけ)て/置(をけ)バこ 00045690L16そ、/間(あいだ)にハよい/代物(しろもの)が/来(く)るでないか。 00045700¥N12¥J 00045710¥X/木戸(きど)の/念仏(ねんぶつ) 00045720L19/芝居(しばゐ)の/木戸(きど)のもの、/熱病(ねつびやう)を/煩(わずら)ひ、いろ+/療治(りやうぢ)すれ共/叶(かな)ハ 00045730M1ず。今ハはや世に/頼(たの)ミすくなふ見へけれハ、一/門(もん)一/家(け)/打寄(うちより)、 00045740M2/念仏(ねんぶつ)をすゝむれど、/芝居(しばゐ)の事を/譫言(たハごと)にいひて/念仏(ねんぶつ)を申さね 00045750M3バ、/皆(ミな)&せんかた/涙(なミだ)にくれ/居(ゐ)たる折から、(八オ)/座本(ざもと)見ま 00045760M4いに/来(き)て、いで+/念仏(ねんぶつ)申させて見すべしとて、/病(びやう)人の/耳(ミヽ) 00045770M5に口を/当(あて)て、/是(これ)六兵衛。又/御停止(ごてうじ)じやといふといなや、病 00045780M6人、なむあミだ/仏(ぶつ)といふた。(八ウ) 00045790¥P157 00045800¥Y1軽口浮瓢単巻之二△目録 00045810L3/謎(なぞ)の/解(とき)ちがひ 00045820L4千両の/異見(いけん) 00045830L5/野郎(やらう)の/恨(うらミ) 00045840L6/智恵(ちゑ)の/升(ます) 00045850L7/医者(いしや)の米かい 00045860L8/非(ひ)人のせんしやう 00045870L9ほうらく/酒(ざけ)(一オ) 00045880L10/芝居(しばゐ)の/宝(たから)もの 00045890L11/刀(かたな)の/銘(めい) 00045900L12/妾(てかけ)の/知行(ちぎやう) 00045910L13おき/喰(くい) 00045920L14/浄土(しやうど)/法花(ほつけ)の/犬(いぬ)あらそひ 00045930L15/犬(いぬ)のまね(一ウ) 00045940¥T1軽口浮瓢単巻之二 00045950¥N1¥J 00045960¥X/謎(なぞ)の/解(とき)ちがひ 00045970M5/手前(てまへ)よろしき人の/娘(むすめ)、/婚礼(こんれい)しゆびよくとゝのひ、五日がへ 00045980M6りしけれバ、内の/腰元(こしもと)、娘にいふやう、/嫁入(よめり)の/夜(よ)とかけた 00045990M7る/謎(なぞ)ハなんと/解(とき)ますとなぶりけれバ、娘いふやう、それハ 00046000M8/逢(あい)そめ川と/解(とく)といへバ、/兄息子(あにむすこ)聞て、是ハ/妹(いもと)、/出(で)かした。 00046010M9をれハ又、/豆板(まめいた)と/解(とく)かと思ふたといふた。 00046020¥N2¥J 00046030¥X千両の/異見(ゐけん) 00046040M12何を見ても/直打(ねうち)をする/癖(くせ)ある人、/無(む)二の/友達(ともだち)/同道(どう+)に(二オ) 00046050M13て/参会(さんくハい)に/行(ゆき)ける/道(ミち)すがら、/友達(ともだち)いふやう、けふハ/晴(はれ)の/座(ざ)な 00046060M14れバ、/例(れい)の/癖(くせ)をたしなミ、/座敷(さしき)に出てある/道具(だうぐ)/万事(ばんじ)に/直打(ねうち) 00046070M15せらるゝなといへバ、/彼(かの)人いふやう、/貴様(きさま)の/異見(ゐけん)、かたじ 00046080M16けなし。我も/悪(わる)ひ事としりながら、/是非(ぜひ)もなき事也。此/癖(くせ) 00046090M17がなをる時ハ、/貴様(きさま)の/異見(ゐけん)が千両にも/買(かハ)れぬと、すぐに/直= 00046100M18打(ね=うち)をしてのけた。 00046110¥P158 00046120¥N3¥J 00046130¥X/野郎(やらう)の/恨(うらミ) 00046140L3ずいぶん/流行(はやら)ぬ/女郎(ちよろう)と/野郎(やらう)とつれ/立(だち)て、/天神(てんじん)様へ/立願(りうぐハん)かけ 00046150L4て、何とぞ我+によい/客(きやく)のつくやうに/守(まも)ら(二ウ)せ給へ 00046160L5と百/度(ど)/参(まい)りしけれバ、女郎の/方(かた)ハおびたゝしく/流行(はやり)けれ共、 00046170L6/野郎(やらう)ハ/結句(けつく)さびしくなれバ、/野郎(やらう)/腹(はら)を立て/天神(てんじん)へ/参(まい)り、同 00046180L7じやうに/立願(りうぐハん)せしに、女郎の/方(かた)を/流行(はやらし)給ひ、我を/結句(けつく)さび 00046190L8/敷(しく)なさるゝハ、さりとハ/片贔屓(かたひいき)なるなされやうでござりま 00046200L9すと、さま+/恨(うらミ)いへバ、/神殿(しんでん)の/扉(とびら)をひらき、天神立出給 00046210L10ひ、/汝(なんぢ)が/恨(うらミ)もつともなれ共、どふも/背(せなか)に/腹(はら)ハかへられぬと 00046220L11/仰(をゝせ)られた。 00046230¥N4¥J 00046240¥X/智恵(ちゑ)の/升(ます) 00046250L14/唐土(もろこし)の/白楽天(はくらくてん)、日本の/智恵(ちゑ)をはかりに/来(きた)らるゝと、/風(ふう)(三オ) 00046260L15/説(ぜつ)あるゆへ、/住吉(すミよし)/大明神(だいミやうじん)、/老翁(らうおう)と/現(げん)じ、/小船(こぶね)に/乗(のり)て、/魚(うを)を 00046270L16/釣(つり)てまち給ふ所へ、/白楽天(はくらくてん)の/唐船(たうせん)/来(きた)る。/明神(ミやうじん)の給ふやう、 00046280L17/夫(それ)成ハ/白楽天(はくらくてん)にてハなきか。日本の/智恵(ちゑ)を、いかゞしては 00046290L18かり申さるゝやと有けれバ、/白楽天(はくらくてん)壱/升(しやう)/升(ます)を取出し、日本 00046300L19ハ/粟散(そくさん)/辺土(へんど)といふて、/粟(あわ)をちらしたるやう成国ゆへ、此/升(ます) 00046310¥G 00046320M13にて/智恵(ちゑ)をはかる也と申さるゝ。時に、明神も壱/合(がう)/升(ます)を取 00046330M14出し、/某(それがし)も此升にて、/唐土(もろこし)の/智恵(ちゑ)をはからんと思ふ也と 00046340M15の給へバ、/白楽天(はくらくてん)かさねて、日本ハ/粟(あわ)を/散(ちら)したるやうな国 00046350M16といへバ、五/穀(こく)の/中(うち)なるゆへ、升にてはかる也。/其方(そのハう)も/唐= 00046360M17土(もろ=こし)の/智恵(ちゑ)をはかるに、/我(われ)(三ウ)と同じやうに、/升(ます)を/持(もち)て/居(ゐ) 00046370M18る心ハといへバ、/明神(ミやうじん)、はて、/貴殿(きでん)の国も/大唐(たいたう)といふで 00046380M19ハないか。 00046390¥P159 00046400¥N5¥J 00046410¥X/医者(ゐしや)の米かい 00046420L3/大晦日(をゝつごもり)に、ある/医者(ゐしや)の所へ、/米(こめ)屋でござりますと/音(をと)なひて、 00046430L4/懸(かけ)取に/来(きた)れバ、/医者(ゐしや)殿申さるゝハ、いつもこなたの所へ/残(のこ) 00046440L5した事ハござらぬが、/当節季(たうせつき)ハ/薬代(やくだい)が/寄(より)かねます。/不肖(ふしやう)な 00046450L6がら春まで/待(まつ)てくれらるべし。又/年(とし)取の/飯米(はんまい)がござらねバ、 00046460L7どふぞ今日米五/斗(と)をこして給ハれ。/過(すぎ)てから一/所(しよ)にさん/用(よう) 00046470L8/致(いた)さふと申さるれバ、成/程(ほど)、心へましてござります。米も 00046480L9/後程(のちほど)(四オ)もたせておこしましよと/請(うけ)あひ、/門口(かどぐち)まで/出(で)る 00046490L10所を、これ+、米屋殿と/呼(よび)もどし、/後(のち)に米を/越(こさ)るゝなら、 00046500L11五/斗(と)の/内(うち)三/斗(ど)ハ、/銀(かね)でおこして下されといハれた。 00046510¥N6¥J 00046520¥X/非(ひ)人の/僣上(せんしやう) 00046530L14/身代(しんだい)をつかひはたせし/放子(どらうち)、一/家(け)一/門(もん)にも見かぎられ、/終(つい) 00046540L15に/乞食(こつじき)と成、/下寺(したでら)町の/野(の)はづれに/寐(ね)て/居(ゐ)たる折ふし、/馴染(なじミ) 00046550L16の女/郎(らう)/通(とを)り合せ、此/体(てい)を見るより、扨も+いとしぼや。 00046560L17/我(われ)ゆへかゝるあさましき/形(なり)にならんしたかと、すがり付て 00046570L18なき/出(いだ)せバ、こりや+/声(こゑ)が/高(たか)ひ。おれハ/敵打(かたきうち)に/出(で)て/居(ゐ)る 00046580L19といふた。(四ウ)(五オ挿絵) 00046590¥N7¥J 00046600¥Xほうらく/酒(さけ) 00046610M3/身代(しんだい)を/酒(さけ)に/飲(のミ)つぶしたる男、/江戸(ゑど)へ行て、ほうらくを/荷(にな)ひ 00046620M4/売(うり)して/渡世(とせい)を/送(をく)り/居(ゐ)たる折から、/以前(いぜん)の/酒(さけ)/友達(ともだち)、是も/家財(かざい) 00046630M5を/飲(のミ)あげて、江戸へかせぎにくだりしが、日本/橋(ばし)のつめに 00046640M6て行あひ、是ハ+めづらしやと、/互(たがひ)に/飲(のミ)あひしむかしを 00046650M7/語(かた)りあふ/咄(はなし)の内より、/彼(かの)ほうらく屋、ほうらくを三/枚(まい)取て 00046660M8/地(ぢ)に打つけ、/微麈(ミぢん)になしていふやう、/貴(き)様に酒をふるまハ 00046670M9んと思へ共、/折節(をりふし)/売溜(うりだめ)の銭なし。此ほうらく一/枚(まい)が拾弐文 00046680M10づゝなり。三/枚(まい)にて三拾六文が酒をふるまふ心にて打/破(わり)た 00046690M11りと(五ウ)いへバ、扨+/昔(むかし)わすれぬ心ざし、千万忝しと 00046700M12いふより/早(はや)く、/脇指(わきざし)をするりとぬきてふりまハし、/酔狂(ゑひぐるひ)の 00046710M13心じやといふた。 00046720¥N8¥J 00046730¥X/芝居(しばゐ)の/宝(たから)もの 00046740M16ついに/芝居(しばゐ)を見ぬ/田舎(いなか)者、/初(はじ)めてかぶき/芝居(しばゐ)を見て/宿(やど)へ/帰(かへ) 00046750M17れバ、/宿(やど)の/亭主(ていしゆ)、なんと、おもしろござりましたかと/問(とへ)バ、 00046760M18いやはや、今日ハ/散(さん)+の事でござつた。/先(まづ)/芝居(しばゐ)へはいる 00046770M19と其まゝ、/役者(やくしや)/仲間(なかま)に何ンとやらいふ/宝(たから)物が見へぬと/云(いふ)て、 00046780¥P160 00046790L1一日が/間(あいだ)まぜかへして、/肝心(かんしん)の/狂言(きやうげん)ハ見ずにもどり申シた 00046800L2といふた。(六オ) 00046810¥N9¥J 00046820¥X/刀(かたな)の/銘(めい) 00046830L5/波平(なミのひら)/行安(ゆきやす)といふ/刀(かたな)の/銘(めい)よめがたく、ある/儒者(じゆしや)の所へ/読(よミ)にや 00046840L6りけれバ、/波(なミ)/平(たいらかにして)/行(ゆくこと)/安(やすし)と/読(よミ)て/来(きた)る。/刀(かたな)の/銘(めい)にハどふ 00046850L7やら/笑(をか)しひ事じやと、/頼(たのミ)寺の/和尚(おしやう)へ、/読(よん)で下さりませとい 00046860L8へバ、/和尚(おしやう)見て、是ハ/波平行安(はへいぎやうあん)じやが、どなたの/戒名(かいミやう)でご 00046870L9ざるといハれた。 00046880¥N10¥J 00046890¥X/妾(てかけ)の/知行(ちぎやう) 00046900L12ある/殿(との)様の/家中(かちう)に、/知行(ちぎやう)五百/石(こく)取/侍(さむらい)あり。/妾(てかけ)を/置(をき)たく思 00046910L13へ共、此/内宝(ないほう)、世にまれ成/悋気者(りんきしや)なれバ、いかゞせんと、さ 00046920L14ま(六ウ)+/思案(しあん)して、/内宝(ないほう)にいハるゝハ、今日/殿(との)様の仰 00046930L15にハ、/知行(ちぎやう)百/石(こく)より一人づゝ/妾(てかけ)を/置(をく)へしとの/御意(ぎよゐ)也。/身(ミ)共 00046940L16も五百/石(こく)なれバ、五人の/妾(てかけ)を/置(をか)ねバ成まじと申さるれバ、 00046950L17/内宝(ないほう)/聞(きゝ)て、/殿(との)様の/御意(ぎよゐ)ハ/是非(ぜひ)もなし。/然(しか)らバ/知行(ちきやう)四百石を 00046960L18さし/上(あげ)て百/石(こく)取に成て、わたくしひとりで/済(すま)しなされとい 00046970L19ハれた。 00046980¥N11¥J 00046990¥Xおき/喰(くい) 00047000M3/夜(よ)あるきするのら/息子(むすこ)あり。/親父(おやぢ)/呼付(よびつけ)、おのれ、/毎晩(まいばん)+ 00047010M4/出(で)あるき、それを/異見(いけん)すれバ、いつも/友達(ともだち)への/義理立(ぎりだて)(七オ) 00047020M5をいふが、/親(をや)のいふ事ハ/聞(きゝ)入レず、/友達(ともたち)のいふ事ハ何事に 00047030M6よらず聞いれる/所存(しよぞん)と見へたり。/友達(ともだち)が/火(ひ)を/喰(くへ)といふなら 00047040M7火でも/喰(くふ)かと申さるゝ。/息子(むすこ)いふやう、時の/品(しな)によつたら、 00047050M8/喰(くふ)まい物じやござりませぬといへバ、/親父(おやぢ)、/下(げ)女を/呼(よび)て、 00047060M9火を/持(もつ)て/来(こ)いと申さるゝゆへ、下女も/気毒(きのどく)ながら、十/能(のう)に 00047070M10火を入て/来(きた)れバ、/親父(おやぢ)、/息子(むすこ)に、はや+/喰(くへ)とせつかれて、 00047080M11/息子(むすこ)、/下(げ)女にいふやう、是おすぎ。これてハ/喰(くい)にくい。/大= 00047090M12義(たい=ぎ)なから/醤油(しやうゆ)をかけてたもといふた。 00047100¥N12¥J 00047110¥X/浄土(じやうど)/法花(ほつけ)の/犬(いぬ)あらそひ(七ウ) 00047120M15/浄土寺(じやうどてら)と/法花(ほつけ)寺と/殊(こと)の外中/悪(あし)く、/法花(ほつけ)寺に/犬(いぬ)を/飼(かい)て/法然(ほうねん)と 00047130M16付けれバ、/浄土(じやうど)寺にも/犬(いぬ)を/飼(かい)て/日蓮(にちれん)と/名付(なづけ)、たがひに/譏(そし)り 00047140M17あひけるが、両方の犬かミ/合(あひ)、/浄土(じやうど)のいぬ、かミ/負(まけ)けるゆ 00047150M18へ、/法花(ほつけ)の/方(かた)いきり出し、なんと見たか。こちの/法然(ほうねん)にハ 00047160M19米の/飯(めし)を/喰(くハ)して/置(をく)ゆへ/強(つよ)ひ所を見よと/笑(わらへ)バ、/浄土(じやうど)の/方(かた)いふ 00047170¥P161 00047180L1やう、其/筈(はづ)の事じや。こちの日/蓮(れん)にハ/屎(くそ)を/喰(くハ)して/置(をく)ゆへ、 00047190L2/負(まけ)たのじやといふた。 00047200¥N13¥J 00047210¥X/犬(いぬ)のまね 00047220L5/殊(こと)の外/犬(いぬ)をこわがる人あり。/友達(ともだち)いふやう、/犬(いぬ)の/吠(ほへ)かゝる 00047230L6(八オ)時ハ、四ツ/這(ばい)に成て/犬(いぬ)のまねをすれバ/止(やむ)ものじやと 00047240L7をしへけるが、/犬(いぬ)のほへかゝる時、右のやうにするに、/奇= 00047250L8妙(き=ミやう)にほへやミけれバ、ふしぎ成事かなと思ひ/行(ゆく)/折節(をりふし)、人/噛(かミ) 00047260L9/犬(いぬ)、/彼(かの)人の/後(うしろ)よりそろ+/来(き)て、/足(あし)のこぶらに/噛(かミ)付けれバ、 00047270L10/彼(かの)わろ、大きにおどろきながら、/片足(かたあし)あげて、くハい+ 00047280L11+と/泣(なき)+いなれた。(八ウ) 00047290¥Y1軽口浮瓢単巻之三△目録 00047300M3むかしの/恥(はぢ) 00047310M4/薬(くすり)ちがひ 00047320M5/後生(ごしやう)の物ずき 00047330M6/小姓(こしやう)の/発句(ほつく) 00047340M7米ふミ/医者(いしや) 00047350M8/真言(しんごん)のふしぎ 00047360M9かんたんのまくら(一オ) 00047370M10/礼者(れいしや)のじまん 00047380M11かミなりの状 00047390M12/三井(ミつゐ)の/煙草(たばこ)屋 00047400M13茶がゆの/飯(めし) 00047410M14/鬼(おに)の/死骸(しがい)(一ウ) 00047420¥P162 00047430¥T1軽口浮瓢単巻之三 00047440¥N1¥J 00047450¥Xむかしの/恥(はぢ) 00047460L5紙くず/買(かい)、ある/裏(うら)屋の女/房(バう)ひとり/居(ゐ)たる所にて、/紙(かミ)くずを 00047470L6/買(かい)けるが、其/篭(かご)の中に/琴(こと)の/爪(つめ)三ツありければ、紙くず/買(かい)い 00047480L7ふやう、/琴(こと)の/爪(つめ)を/持(もち)て/居(ゐ)給ふからハ、おまへはよい/衆(しゆ)の/果(はて) 00047490L8成べし。/世(よ)につれてかゝる/暮(くらし)をなさるゝ事、さりとハおい 00047500¥G 00047510M1としぼやといへバ、女/房(バう)いふやう、成ほど/私(わたし)も/以前(いぜん)ハ/美(び)& 00047520M2しう/暮(くらし)た者でござんした。其/琴(こと)の/爪(つめ)も、ちかい/比(ころ)まで五ツ 00047530M3そろふて/持(もつ)て/居(ゐ)ましたにといふた。(二オ) 00047540¥N2¥J 00047550¥X/薬(くすり)ちがひ 00047560M6/有徳(うとく)なる/旦那(だんな)、おく/座敷(さしき)より手をたゝき、/薬(くすり)を/温(ぬく)めて/持(もつ)て 00047570M7こいよといハれけるを、/茶(ちや)の/間(ま)に/居(ゐ)たる/腰本(こしもと)/聞(きゝ)ちがへ、/茶(ちや) 00047580M8を/汲(くん)でさし出せば、/旦那(だんな)ハ薬とこゝろへて、/茶碗(ちやわん)を取ツて 00047590M9いたゞかれけれバ、/腰本(こしもと)、目はぢきしていふやう、お/家(ゑ)さ 00047600M10んが見てござりますぞへ。 00047610¥N3¥J 00047620¥X/後生(ごしやう)の物ずき 00047630M13/酒好(さけずき)な者と/色(いろ)ぶかい男と/肴好(さかなずき)なものと三人より合、酒ずき 00047640M14がいふやう、おれハ/死(しん)だら/備前(ひぜん)/徳(とく)利に成たい。/不(ふ)(二ウ)/断(だん) 00047650M15/腹(はら)の中に酒が/絶(たゆ)るといふ事がなけれバ、是より上の/楽(たのしミ)ハ 00047660M16ないといへバ、/色(いろ)ぶかい者がいふやう、おれハ/紅裏(もミうら)に成た 00047670M17いと思ふ也。/常(つね)に女の/肌(はだ)を/離(はな)れねバ、是より外の事ハない 00047680M18といへバ、/肴好(さかなずき)がいふハ、おれハ又/鯛(たい)に成たい/願(ねが)ひ也。あ 00047690M19の/鯛(たい)といふものハ/煮(に)ても/焼(やい)ても、あれよりうまい物ハない 00047700¥P163 00047710L1といふた。 00047720¥N4¥J 00047730¥X/小姓(こしやう)の/発句(ほつく) 00047740L4/誹諧(はいかい)の/宗匠(そうしやう)の所へ、ある寺の/小姓(こしやう)、/歳旦(さいたん)の/発句(ほつく)を四五/句(く)し 00047750L5て/来(きた)り見せけれバ、/宗匠(そうしやう)つく+見て、是ハ/発句(ほつく)に成ませ 00047760L6ぬ。いづれも/切字(きれじ)がござらぬと申さるれバ、/小姓(こしやう)が(三オ) 00047770L7いふやう、其/筈(はづ)の事でござります。/私(わたくし)共にハ其きれじか、 00047780L8いかひ/禁(きん)もつでござりますといふた。 00047790¥N5¥J 00047800¥Xにはか/医者(いしや) 00047810L11いろはもしらぬ/米踏(こめふミ)の六兵衛が、/米臼(よねうす)/足庵(そくあん)と名を/付(つき)て、/医= 00047820L12者(い=しや)と成、あけくれ/呼(よび)に/来(く)るかと/待(まち)かけて/居(ゐ)たり。ある日/表(おもて) 00047830L13に、頼(たの)ミませうといふ。すハ呼(よび)に来(き)たると、/自身(じしん)いそ+ 00047840L14立出で、どなたからでござると/問(とへ)バ、/使(つかひ)の者、/扇箱(あふぎばこ)をさし 00047850L15出し、私ハあちら町の/石塔(せきたう)屋でござります。此/以後(いご)、おた 00047860L16のミ申ますといふていんだ。(三ウ) 00047870¥N6¥J 00047880¥X/真言(しんごん)のふしぎ 00047890L19/仏法(ふつバう)はなしの中に、/真言宗(しんごんしう)の人いふやう、私が/宗旨(しうし)に/降伏(がうぶく) 00047900M1の/法(ハう)と申て、人を/祈(いの)り/殺(ころ)し、又/祈(いの)り/活(いか)す事がござる。なん 00047910M2と/奇妙(きミやう)な/法(ハう)でハござらぬかといへバ、ある人いふやう、/祈(いの) 00047920M3り/殺(ころ)す事ハむつかしいが、/祈(いの)り/活(いか)す事ハ/我等(われら)でも/致(いた)すとい 00047930M4へバ、/皆(ミな)&、それハどふした/法(ハう)でごさると/問(とへ)バ、はて、/祈(いの) 00047940M5り/殺(ころ)す時の/経文(きやうもん)を、さかさまに/読(よミ)まするといふた。 00047950¥N7¥J 00047960¥X/邯鄲(かんたん)のまくら(四オ) 00047970M8ずいぶん/貧(まづし)き男、/邯鄲(かんたん)の/謡(うたひ)を聞て、もろこしの/盧生(ろせい)ハ、わ 00047980M9づか成/夢(ゆめ)の間に五十年の/栄花(ゑハぐわ)をしたり。我もせめて一日な 00047990M10り共/夢(ゆめ)に成とも/栄花(ゑいぐわ)をしたきと思ひながら、とろ+/寐(ね)た 00048000M11るに、/誰(たれ)共しらぬ/老人(らうじん)/来(きた)りて云やう、/汝(なんぢ)/栄花(ゑいぐハ)が/望(のぞミ)ならバ、 00048010M12我につきて/来(きた)るべしとの給ふゆへ、/夢(ゆめ)心にうれしく、/伴(ともな)ひ 00048020M13ゆくと思へバ、/道頓堀(だうとんぼり)にて名/高(たか)き/色茶(いろぢや)屋の大/座敷(ざしき)に/至(いた)ると 00048030M14いなや、/亭主(ていしゆ)/飛(とび)出て、/旦那(だんな)御出といふより/早(はや)く、酒/肴(さかな)ハい 00048040M15ふ迄もなく、さま+手を/尽(つく)したる/料理(りやうり)を出し、/数(す)百人の 00048050M16/素人(はくじん)、/芸子(げいこ)、/座頭(ざとう)、(四ウ)/牽頭(たいこもち)など/前後(ぜんご)を取まわし、いろ 00048060M17+の/芸(げい)を/尽(つく)せバ、其おもしろさ、かぎりなし。/既(すで)に/夜(よ)あ 00048070M18け/方(かた)に成て、/老人(らうしん)いふやう、是を/汝(なんぢ)にとらする也。最/早(はや)/帰(かへ) 00048080M19るへしとて、何やらん/封(ふうし)たるものを/貰(もら)ひ、かへると思へバ 00048090¥P164 00048100L1/夢(ゆめ)さめけるが、/枕(まくら)もとに/彼封(かのふうし)たるもの有けるゆへひらき見 00048110L2れバ、其/夜(よ)の/雑用(ざうよう)/付(づけ)であつた。 00048120¥N8¥J 00048130¥X/礼者(れいしや)のしまん 00048140L5ある人の/内儀(ないぎ)、引かけ+七人まで女の子を/産(うミ)ければ、此 00048150L6/亭主(ていしゆ)の/友達(ともだち)、/斎藤(さいとう)/別当(べつとう)と/異名(ゐミやう)を付たり。/実盛(さねもり)と(五オ)(五ウ 00048160L7挿絵)いふ心にて有べし。又かたハらよりハ、三十五と/異名(ゐミやう) 00048170L8をつけたり。是ハ/女(によ)七三十五といふ心成べし。かやうにさ 00048180L9ま+の事をいひてなぶりけれバ、口をしく思へ共せんか 00048190L10たなし。/然(しか)るに又/内儀(ないぎ)/懐胎(くハいたい)すれバ、うたてや、又/女児(めらう)を/産(むま) 00048200L11んかと/案(あん)じ、ふくれて/居(ゐ)られけるに、程なく/大晦日(をゝつこもり)の夜あ 00048210L12けがたに、玉のやう成/男子(なんし)、安+と/産(むま)れけれバ、此/亭主(ていしゆ) 00048220L13天にもあがる/心地(こゝち)にて、すぐさま/元日(くハんじつ)の/礼(れい)にあるくとて、 00048230L14物もう。/慮外(りよぐハい)ながら/男(をとこ)の子の/親(をや)、お/礼(れい)申まするといふてあ 00048240L15るかれた。 00048250¥N9¥J 00048260¥X/雷(かミなり)公の状(六オ) 00048270L18ある年の/夏(なつ)の/末(すへ)つかた、けしからず/白雨(ゆふだち)/降(ふり)しきり、おびた 00048280L19ゝしく/雷(かミなり)/鳴(なり)わたりしが、はたと/落(おち)てうご+して/居(ゐ)れバ、 00048290M1あたりの人&出あひ、/其方(そち)がやうなものハ/片(かた)時も/置(をく)事ハな 00048300M2らず。/早(はや)く天へのぼるべしとせめけれバ、/雷(かミなり)いふやう、 00048310M3私も/帰(かへ)らんと思へ共、/雲(くも)がなけれバのぼる事ならず。何と 00048320M4ぞ/雲(くも)を/呼(よび)にやりたく候間、状を/書(かい)て下されよといへ共、/雲(くも) 00048330M5の上の状ハどのやうに/書(かく)ものやらしらず。/殊(こと)に其状を/誰(たれ)が 00048340M6/持(もつ)てゆくものぞといへバ、いや、/人間界(にんげんかい)の状の/文躰(ぶんてい)と同じ 00048350M7もの也。状ハ風が/持(もつ)て/参(まい)れバ、人間の/飛脚(ひきやく)より/慥(たしか)也(六ウ) 00048360M8といふゆへ、さらバ/書(かい)てやらんと、/或(ある)人/筆(ふで)を取て、/一筆(いつひつ)/啓= 00048370M9上(けい=じやう)仕候。/然者(しかれバ)と/書(かく)時、/雷(かミなり)いふやう、/其処(そこ)が/少(すこ)しちがひま 00048380M10す。其/然(しか)れバを、ひかれバと/書(かい)て下されといふた。 00048390¥N10¥J 00048400¥X/三井(ミつい)の/烟草(たばこ)屋 00048410M13まづしき/刻煙草(きざミたばこ)屋、思ひもよらぬ一/家(け)の/跡(あと)式銀を取て、 00048420M14/俄(にハか)に見世を取ひろげ、日本に/我(われ)につゞく/煙草(たばこ)やもあらしと 00048430M15/自慢(じまん)心で/居(ゐ)たる/折(をり)ふし、/知音(ちいん)の人、/煙草(たばこ)を/買(かい)に/来(きた)り、扨 00048440M16+大き成見世にし給ふ物かな。たはこ屋ての/三井(ミつゐ)でごさ 00048450M17るといへバ、/亭主(ていしゆ)、大きな/顔付(かほつき)して、(七オ)/服部(はつとり)といふた。 00048460¥N11¥J 00048470¥X/茶(ちや)がゆの/飯(めし) 00048480¥P165 00048490L1すいふんしハき人、/朝夕(あさゆふ)/茶粥(ちやがゆ)を/喰(くハ)れける。/近所(きんしよ)へ/遊(あそ)ひに/行(ゆか) 00048500L2れし時、/夕飯(ゆふはん)の/茶(ちや)がゆ/出来(でき)たりとて、内より/丁稚(でつち)を/呼(よび)にや 00048510L3れバ、/丁稚(でつち)/先(さき)へ行て、茶がゆがようこさりますと、/遠慮(ゑんりよ)も 00048520L4なくいへバ、/亭主(ていしゆ)立かへりて/丁稚(てつち)を/呼(よび)つけ、扨+おのれ 00048530L5ハ/鈍(とん)なやつ也。此/以後(いご)/呼(よび)に/来(き)るなら、茶がゆといハず、お 00048540L6/飯(めし)といふべしといひ付/置(をき)ける。又ある時、/彼丁稚(かのでつち)/呼(よび)に行し 00048550L7が、/先方(さきかた)へ行ていふやう、申シ/旦那(だんな)様。お/飯(めし)が/盛(もり)さま(七 00048560L8ウ)してござりますといふた。 00048570¥N12¥J 00048580¥X/鬼(おに)の/死骸(しがい) 00048590L11/地獄(ぢごく)の/赤鬼(あかおに)/病死(ひやうし)しけれバ、/閻魔大王(ゑんまだいわう)五/道(たう)の/冥官(ミやうくハん)を/集(あつ)め申 00048600L12さるゝハ、此度/赤鬼(あかおに)/病死(びやうし)いたせ共、/鬼(おに)の/死(し)したるは、どこ 00048610L13へもやり所なし。いかゞ/斗(はか)らひ申さんや。/各(おの+)の/了簡(れうけん)を申て 00048620L14見らるべしと有けれバ、/初江(しよこう)王申さるゝハ、世の/喩(たとへ)にも、 00048630L15/鬼(おに)の目にも/泪(なミだ)といへバ、/彼(かれ)が/妻子(さいし)の/歎(なげき)も/不便(ふびん)なれバ、/悪(あし)く 00048640L16ハ/斗(はか)らひがたし。/鬼界嶋(きかいがしま)へほふむり給ハんかと申さるゝ時、 00048650L17五/官王(くハん)のいハるゝハ、いや+、/一度(ひとたび)/死(し)したるものを、/娑= 00048660L18婆(しや=ば)世/界(かい)の/鬼界嶋(きかいかしま)(八オ)へつかハさん事、/地獄(ぢごく)の/掟(おきて)をやぶる 00048670L19に/似(に)たり。/鬼(おに)も十八といへば、小/角豆(さゝげ)の/肥(こへ)に/埋(うづ)ミ給へと申 00048680M1さるゝ。/倶生神(くしやうじん)すゝみ出、おの+の/了簡(りやうけん)ハ、/鬼(おに)の/死(し)ん 00048690M2だに/遣(やり)所を/新法(しんぼう)にこしらへるといふものにて、此/以後(いご)の/格= 00048700M3式(かく=しき)に成申べしと、はゞかりなく申さるれバ、/然(しか)らバいかゞ 00048710M4/致(いたし)てよからんと有レバ、されハ、何のかのといハんより、 00048720M5/鬼味噌(おにミそ)にして/喰(くふ)てしまい給へといハれた。(八ウ) 00048730¥P166 00048740¥Y1軽口浮瓢単巻之四△目録 00048750L3しやくりの/妙薬(ミやうやく) 00048760L4/蜜夫(まをとこ)の/乳(ちゝ) 00048770L5/盗(ぬす)人に銭 00048780L6/名(な)の/仕(し)かへし 00048790L7万兵衛の/家(いへ)ぬし 00048800L8/夜尿(よばり)のまじなひ 00048810L9/笛(ふへ)ぞめ(一オ) 00048820L10/鈍漢(あほう)のしるし 00048830L11/闇(やミ)の/火打箱(ひうちばこ) 00048840L12/医者(いしや)のじまん 00048850L13/蝋燭(らうそく)/喰(くい) 00048860L14/鍵(かぎ)の持くさらし 00048870L15/細工(さいく)びんぼう(一ウ) 00048880¥T1軽口浮瓢単巻之四 00048890¥N1¥J 00048900¥Xしやくりの/妙薬(ミやうやく) 00048910M5れつきとしたる/侍(さむらい)、/住吉(すミよし)へさんけいせらるゝ/道(ミち)にて、ふ 00048920M6としやくり出て/止(やま)ず、/難義(なんぎ)成折ふし、/道(ミち)ばたに/寐(ね)て/居(ゐ)たる 00048930M7/非(ひ)人、むく+と/起(おき)上り、/親(をや)の/敵(かたき)のがさぬとつめよれバ、/彼= 00048940M8侍(かの=さむらい)大きにおどろき、身共ハ人を/討(うち)たる/覚(をぼへ)なし。かならず 00048950¥G 00048960¥P167 00048970L1はやまるなと申さるれバ、/非(ひ)人いふやう、しやくりがなを 00048980L2つたら、一/文(もん)下されませといふた。 00048990¥N2¥J 00049000¥X/蜜夫(まをとこ)の/乳(ちゝ)(二オ) 00049010L5ある/親父(おやぢ)、/孫(まご)を/寵愛(ちやうあい)するとて、/嫁(よめ)の/乳(ちゝ)をすハれけるを、 00049020L6/息子(むすこ)見て大きに/腹(はら)を立、/主(ぬし)のある女/房(バう)の/乳(ちゝ)を/吸(すハ)るゝハ、/親(をや) 00049030L7ながら/蜜夫(まをとこ)同前なれバ、/堪忍(かんにん)成がたし。むかしより/蜜夫(まをとこ)ハ 00049040L8三百匁のものなれ共、/親(をや)の事なれバ百五拾匁にて/了簡(れうけん)すべ 00049050L9し。はや+銀子を/渡(わた)し給へとねちかゝれバ、/親父(をやぢ)さハが 00049060L10す、成程其方がいふ通り、銀子を渡すべけれ共、其方から 00049070L11/余程(よほと)/債(つり)をとらねバならぬ事あり。其方ハ/産(むま)れてから五ツま 00049080L12で、五年が間おれが女/房(バう)の/乳(ちゝ)を/吸(すふ)た。此/蜜夫(まをとこ)代を/算用(さんよう)せい 00049090L13といハれた。(二ウ) 00049100¥N3¥J 00049110¥X/盗(ぬす)人に銭 00049120L16ある/儒者(じゆしや)の所へ/盗(ぬす)人/来(きた)り、/壁(かべ)の間より手をさし入レ、かけ 00049130L17がねをはづさんとする所を、/弟子衆(でししゆ)見付て、其手を/捉(とら)まへ、 00049140L18/釘(くぎ)にて打/付(つけ)んなんどゝひしめきけれバ、/彼儒者(かのじゆしや)、/奥(をく)より立 00049150L19出、よしなき事をせらるゝなとて、銭百文を/盗(ぬす)人の手にに 00049160M1ぎらせ、かさねて/来(きた)る事なかれとて手を/放(はな)せバ、/盗(ぬす)人/帰(かへ)り 00049170M2さまに、/鮮矣仁(すくないかなじん)といふた。 00049180¥N4¥J 00049190¥X名の/仕(し)かへし 00049200M5/男達(をとこだて)の/親父(おやぢ)ぶんのむすこ、/元服(げんふく)しけれバ、同じ/親父(おやぢ)(三オ) 00049210M6ぶんの男/達(だて)、悦びに/来(きた)り、/爰(こゝ)の/息子(むすこ)も/元服(げんぶく)せられたげな。 00049220M7/名(な)ハ何と/替(かへ)られたといへバ、庄兵衛といひます。扨もよい 00049230M8名じや。むかしの/獄門(ごくもん)の庄兵衛にあやからせんとおもふて 00049240M9ゞあろと、/苦(にが)口いふて/帰(かへ)れバ、/親父(おやぢ)/腹(はら)立て、扨+にくい 00049250M10/奴(やつ)かな。いつぞハ此/仕(し)かへしをせんと思ひ/居(ゐ)たる折ふし、 00049260M11/彼(かの)男/達(だて)の女/房(バう)、女の子を/産(うミ)けれバ、/彼親父(かのおやぢ)さつそく悦びに 00049270M12行て、/是(これ)の/内義(ないき)も/平産(へいさん)せられたとある。/先(まづ)ハ目出たし。扨 00049280M13/産児(むまれご)の名ハ何と/付(つけ)られたと/問(とへ)ば、お七と付ましたといへバ、 00049290M14成/程(ほど)よい名じやが、ずいぶん(三ウ)/火(ひ)の/用心(ようじん)をさしやれと、 00049300M15いひかへしてもどつた。 00049310¥N5¥J 00049320¥X万兵衛の/家主(いへぬし) 00049330M18/将碁(しやうぎ)ずき成人の所にて、ある人両人/初(はじめ)て/出(いで)あひ、/近付(ちかづき)に成 00049340M19ての/上(うへ)、/亭主(ていしゆ)申さるゝハ、御両人とも、よき/対手(あいて)成べし。 00049350¥P168 00049360L1いざ+、一/番(ばん)さして見給へとて、/将碁盤(しやうきばん)を出しけれバ、 00049370L2さらバ/致(いた)しみんとて/駒(こま)をならべ、さしかゝる時、/亭主(ていしゆ)申さ 00049380L3るゝハ、あなたハ/将碁(しやうぎ)に名/高(たか)き万兵衛殿のお/家主(いへぬし)でござる 00049390L4といへバ、/対手(あひて)に成人、/胆(きも)のつぶれたる/顔(かほ)にて、そんなら 00049400L5何ンとして、/私(わたくし)が/対手(あいて)にならるゝものぞと(四オ)いふて 00049410L6/逃(にげ)ていんだ。 00049420¥N6¥J 00049430¥X/夜尿(よばり)のまじない 00049440L9ある/有徳(うとく)成人の/娘(むすめ)、十四五までも/夜尿(よばり)をしければ、/親達(をやたち)心 00049450L10うき事に思ひ、さま+/療治(りやうぢ)をすれども/愈(なを)らざれバ、世/間(けん) 00049460L11へもふかく/隠(かく)して/居(ゐ)たる折ふし、日/比(ころ)出入する/呉服(ごふく)屋の手 00049470L12代此事を/聞(きゝ)て、ひそかにいふやう、私/奇(き)妙なる/咒術(まじない)を覚へ 00049480L13てをりますれバ、/愈(なを)してあげませ/ん((ママ))といへバ、それハ忝し。 00049490L14はやくましなふて給ハれと/頼(たの)まれ、/娘(むすめ)に/帯(おび)を/解(とか)せ、/彼(かの)手代 00049500L15/向(むか)ふへまハり、手を二ツたゝき、/最早(もはや)(四ウ)(五オ挿絵)よ 00049510L16うござりますといへバ、/親達(をやたち)/不審(ふしん)に思ひ、是ハどふしたま 00049520L17じないでござると/問(とへ)バ、手代いふやう、手を/打(うつ)てからハ、 00049530L18/小便(しやうべん)する事ハ成リませぬといふた。 00049540¥N7¥J 00049550¥X/笛(ふへ)ぞめ 00049560M3/染(そめ)もの御/望(のぞミ)次第といふかんばんを出しける所へ、/毛綿(もめん)を二 00049570M4/端(たん)もち/来(きた)り、これを/笛染(ふへぞめ)に/染(そめ)て下されと、あつらへて/帰(かへ)り 00049580M5ける。四五日して、御あつらへの/笛染(ふへぞめ)/出来(でき)ましたといふて、 00049590M6/持(もつ)てくるを見れバ、一/端(たん)ハ/茜(あかね)にて/染(そめ)、一/端(たん)ハ/茶(ちや)いろに/染(そめ)た 00049600M7り。是を/笛染(ふへぞめ)といふ心ハと/問(とへ)バ、/緋(ひ)うら/茶(ちや)うらでござり(五 00049610M8ウ)ますといふた。 00049620¥N8¥J 00049630¥X/鈍漢(あほう)のしるし 00049640M11ある町の/宿老(しゆくらう)、/茗荷(ミやうが)を/多年(たねん)/喰(くハ)れしが、ある時、町/代(だい)を/呼(よん)で 00049650M12いハるゝハ、世/間(けん)にて/茗荷(ミやうが)を/喰(くへ)バ/鈍漢(あほう)に成といふが、おれ 00049660M13ハ/数(す)年茗荷を/喰(くへ)ども、今日まであほうにならず。此通りを 00049670M14町/中(ぢう)へふれておじやれといひ付られた。 00049680¥N9¥J 00049690¥X/闇(やミ)の/火打箱(ひうちばこ) 00049700M17ある所へ/盗(ぬす)人はいりけるを、/亭主(ていしゆ)おき合せ、/闇(くらがり)まぎれに 00049710M18て/盗(ぬす)人をとらまへ、女/房(バう)を/呼(よび)をこし、火を/点(とぼ)せとけ(六オ) 00049720M19ハしくいへバ、女/房(バう)もおき出て、/火打箱(ひうちばこ)をさがせど手にあ 00049730¥P169 00049740L1たらず、うろ+すれバ、/亭主(ていしゆ)ハ心せくまゝ、何してゐる 00049750L2ぞ。やれ、火を/点(とぼ)せと、/噛(かミ)つくやうにいへバ、女/房(バう)/腹(はら)立て、 00049760L3扨+せハしない人じや。/火打箱(ひうちばこ)が見へませぬ。火をとも 00049770L4して、/火(ひ)打/箱(ばこ)を見て下されといふた。 00049780¥N10¥J 00049790¥X/医者(いしや)のじまん 00049800L7ある/医者(いしや)、つね+手がらじまんをせられ、/死(し)したる人を 00049810L8/再(ふたゝ)ひ/活(いか)し、世/間(けん)の/医者(いしや)共が手に/終(をへ)ざる/難病(なんびやう)を、たゞ一/服(ぶく)に 00049820L9て/快気(くハいき)させたなんとゝじまんせられける。(六ウ)此/医者(いしや)と 00049830L10日比心やすき人のいふハ、/毎(いつ)もおはなしのやうならバ、御 00049840L11手がら斗なり。なんと、是まで/匕(さじ)さきて/殺(ころ)し給ふ事ハなか 00049850L12りしやといへバ、/彼医者(かのいしや)いハるゝハ、/身(ミ)共が/殺(ころ)した事ハ、 00049860L13/先(さき)の/病家(びやうか)ではなしがござろゆへ、おれがいふに/及(をよ)びませぬ 00049870L14といハれた。 00049880¥N11¥J 00049890¥X/臘燭喰(らうそくくい(ママ)) 00049900L17とつと/遠国(をんごく)の百/姓(しやう)より、大坂の町人へ/娘(むすめ)を/縁組(ゑんぐミ)しける。/聟(むこ) 00049910L18の方より/舅(しうと)への/音物(いんもつ)に、/臘燭(らうそく)を/箱(はこ)入にしてやりけるが、/臘= 00049920L19燭(らう=そく)といふ事をしらずして、何ンといふもの(七オ)ぞと、さ 00049930M1ま+/評義(ひやうぎ)すれども、しれず。どふでも/喰(くふ)もの成べしとて、 00049940M2/焼(たい)て/喰(くい)けれ共、/香(か)/悪(あし)く/味(あぢ)も/宜(よろし)からねバ、庄屋殿の所へ/行(ゆき)て、 00049950M3右の/次第(しだい)を物がたりすれバ、庄屋ハ大きに/驚(おどろ)き、/胆(きも)をつぶ 00049960M4していハるゝハ、/去(きよ)年大坂へ/参(まい)りし時見申シたが、その物 00049970M5より/毎晩(まいばん)火を/出(いだ)す。/世(よ)におそろしき物を/喰(く)てたまるものか。 00049980M6/各(おの)+の/腹(ふく)中が/燃(もへ)ぬ内に、/池(いけ)へ行て水を/浴(あび)給へと申さるれ 00049990M7バ、/皆(ミな)+おどろき、/辺(あたり)の/池(いけ)に/飛(とび)こんで水を/浴(あび)けれバ、庄 00050000M8屋ハ/鉄棒(かなぼう)を引ならし、火のまハりといふて、/池(いけ)をまハられ 00050010M9た。(七ウ) 00050020¥N12¥J 00050030¥X/鍵(かぎ)の持ぐさらし 00050040M12/田舎(いなか)がよひする/商人(あきんど)、四五人づれにて大坂へもとる道にて、 00050050M13ひとりの/商人(あきんど)、銀の入リし箱を、夜の間に/盗(ぬす)まれけれバ、 00050060M14/伴(つれ)の人&/笑止(しやうし)におもひ、方+せんさくすれ共、しれす。 00050070M15/盗(ぬす)まれたる人のいふやう、/余(あま)りあんじて下さるな。ぬすま 00050080M16れたる/箱(はこ)に/錠(ぢやう)をおろして、/鍵(かぎ)ハこちに/持(もつ)て/居(ゐ)れバ、/気(き)づか 00050090M17ひハござらぬといふた。 00050100¥P170 00050110¥N13¥J 00050120¥X/細工(さいく)びんぼう 00050130L3打そろふて/器量(きりやう)のよい/娘(むすめ)の子を五人もちし人あり。(八オ) 00050140L4ひとりも子のない人来りていふやう、こなたにハよい/娘御(むすめご) 00050150L5を五人まで持給ひて、うら山しい事でござる。/我等(われら)ハたゞ 00050160L6ひとりも子/宝(だから)がござらぬといへバ、/彼(かの)人いふやう、/余(あま)りう 00050170L7ら山しう思ハるゝな。/細工(さいく)びんぼう人/宝(だから)てござるといふた。 00050180L8(八ウ) 00050190¥Y1軽口浮瓢単巻之五△目録 00050200M3/闇(やミ)の/白(しろ)酒 00050210M4/西行(さいぎやう)の/頓作(とんさく) 00050220M5/言葉(ことば)ちがひ 00050230M6/座頭(さとう)の/答話(たうわ) 00050240M7/小判(こばん)の/化(ばけ)もの 00050250M8/気(き)付の水 00050260M9銀のなる/樹(き)(一オ) 00050270M10十/文字(もんじ)の/墨打(すミうち) 00050280M11/半分(はんぶん)の/埓(らち)あき 00050290M12/戸(と)だながくれ 00050300M13/眼病(がんびやう)のてりふり 00050310M14/福(ふく)いのり 00050320M15/湯(ゆ)入のしゆつ/懐(くハい) 00050330M16/悪(あく)人/形(がた)の/評判(ひやうばん)(一ウ) 00050340¥P171 00050350¥T1軽口浮瓢単巻之五 00050360¥N1¥J 00050370¥X/闇(やミ)の白酒 00050380L5/五月(さつき)/闇(やミ)のくらき/夜(よ)、/手跡(しゆせき)/指南(しなん)する/師匠(ししやう)、/弟子(でし)を/同道(どう+)にて、 00050390L6新町の/夜(よ)見世を/見物(けんぶつ)に/行(ゆか)れしが、目さすもしらぬ/向(むか)ふより、 00050400L7/白酒(しろざけ)を/売来(うりきた)るを、/師匠(ししやう)聞て、/今夜(こんや)ハ/石摺(いしずり)のやうな夜じやと 00050410L8いハれた。 00050420¥N2¥J 00050430¥X/西行(さいぎやう)の/頓作(とんさく) 00050440L11/西行法師(さいぎやうはうし)、諸国/修行(しゆぎやう)の時、/三保(ミほ)の松原のあたりにて、/追剥(をひはぎ) 00050450L12二三人出て、/西行(さいぎやう)を取まハし、/酒手(さかて)を/渡(わた)せ。(二オ)さもな 00050460L13くバ切/殺(ころ)さんと、せちがへ共、/西行(さいぎやう)/少(すこ)しもさハぐ/気色(けしき)なく、 00050470L14其/方(ハう)共が/刀(かたな)にて/愚僧(ぐそう)が身ハ/切(きれ)まじと申さるれバ、/盗(ぬす)人聞て、 00050480L15なぜにといへバ、/汝(なんぢ)ら、此/西行(さいぎやう)がふじミをしらぬか。 00050490¥N3¥J 00050500¥X/言葉(ことば)ちがひ 00050510L18/関東(くハんとう)の/商人(あきんど)、京へのぼりしが、我国の/名物(めいぶつ)を/仕(し)こミ、又& 00050520L19京へ/売(うり)にのぼらんとおもへ共、心もとなけれバ、/北野(きたのゝ)天神 00050530M1へ七日/篭(こもり)て此事を/祈(いのり)けるに、米を紙につゝみて下されける。 00050540M2/急(いそ)ぎ国へ立かへり、/数多(あまた)の手代をあつめ、(二ウ)米を下さ 00050550M3れたハどふした心と/評義(へうぎ)すれ共、しれず。/番頭(ばんとう)/工夫(くふう)してい 00050560M4ふやう、是ハ/売米(うれべい)といふ心成べしと/判(はん)じけれバ、/皆(ミな)+、 00050570M5/尤(もつと)も成事と/感(かん)じ、それよりおびたゝしく/売(うり)物を/仕(し)こミ、京 00050580M6へのぼり/売(うり)かけて見るに、/根(ね)からうれざれバ、大きに/腹(はら)を 00050590M7立て/北野(きたの)へ参り、米を下されしゆへ、/売米(うれべい)といふ御/告(つげ)と思 00050600M8ひ、/仕(し)こミて参りし/貸(しろ)もの、/根(ね)からうれず。/関東(くハんとう)者だと思 00050610M9ひ、だましめさるゝか。八/幡(まん)、かんにん成リ申さないと、 00050620M10/神前(しんぜん)をにらんで/恨(うらミ)をいふ時に、天神立出給ひ、/汝(なんぢ)が/恨(うらミ)ハ 00050630M11/尤(もつと)もなれ共、/汝(なんぢ)ハ/都(ミやこ)の/詞(ことば)をしらぬ(三オ)ゆへ、/心得(こゝろへ)ちが 00050640M12ひせしなり。おれが米をとらせしハ、うれ/米(まい)といふ事じや 00050650M13との給ひける。 00050660¥N4¥J 00050670¥X/座頭(ざとう)の/答話(たうわ) 00050680M16正月/元日(ぐハんじつ)に、ある所の見世さきに、/若(わか)ひもの/寄(より)あつまり/居(ゐ) 00050690M17たる折ふし、/座頭(ざとう)通りけれバ、きやつをなぶつてなぐさめ 00050700M18とて、こりや+/貧乏都(びんぼいち)。どこへゆくぞといへバ、/其方衆(そなたしゆ) 00050710M19の所へゆくのじやといひ/捨(すて)て/通(とを)れバ、/皆(ミな)&/気(き)にかけて、き 00050720¥P172 00050730L1やつがもどりにハ/祝(いわ)ひ/直(なを)さんと/待(まつ)て/居(ゐ)る所へ、/彼座頭(かのざとう)/通(とを)れ 00050740L2バ、是+/福都(ふくいち)殿。どこへござるといへバ、そなた/衆(しゆ)の 00050750L3(三ウ)所から/去(いぬ)るのじやといふた。 00050760¥N5¥J 00050770¥X/小判(こばん)の/化(ばけ)もの 00050780L6ある所に/化(ばけ)物ありて人の/往来(わうらい)なし。心/不敵(ふてき)なる/若(わか)者、正/体(たい) 00050790L7を見とゞけんと、/彼(かの)所へ行けるに、/化(ばけ)もの出て/高入道(たかにうだう)と成、 00050800L8/小坊主(こぼうづ)と/変(へん)じ、さま+たぶらかしけれ共、/若(わか)もの/少(すこ)しも 00050810¥G 00050820M1おそれず、あざ/笑(わら)ふて立たる/向(むか)ふへ、/化(ばけ)もの、/小判(こばん)と/変(へん)じ、 00050830M2そこらあたりに見へけるが、しバらくして/消(きへ)けれバ、/若(わか)も 00050840M3の思ハずしらず、四五日も/化(ばけ)ておらいで、扨も+/残(のこ)り/多(をゝ) 00050850M4ひ事じやといふた。(四オ) 00050860¥N6¥J 00050870¥X/気付(きつけ)の水 00050880M7四五人づれにて/旅(たび)へ行しが、ある山中にて一人目を/廻(まハ)しけ 00050890M8れバ、/皆(ミな)&おどろき、やれ/気付(きつけ)よ水よと立さハげバ、ある 00050900M9人、我はきて/居(ゐ)たる/皮足袋(かハたび)をぬぎて、/病(びやう)人の口へ/当(あて)けれバ、 00050910M10是ハ何事をせらるゝと/不審(ふしん)すれバ、水を/飲(のま)します。/古(ふる)かハ 00050920M11に水/絶(たへ)ずといふでハないか。 00050930¥N7¥J 00050940¥X銀のなる/樹(き) 00050950M14/銀(かね)のなる/樹(き)をもつて/居(ゐ)ると聞て、/知音(ちいん)の人/来(きた)りて、/根(ね)を/分(わけ) 00050960M15て下されと、いろ+/所望(しよもう)すれバ、こなたハ/欲(よく)の(四ウ)ふ 00050970M16かい人ゆへ、しんぜ/難(がた)し。たとへ銀が/出来(でき)ても、待/兼(かね)て/青(あを) 00050980M17い内にむしらるゝであろといふた。 00050990¥N8¥J 00051000¥X十/文字(もんじ)の/墨打(すミうち) 00051010¥P173 00051020L1ある/放子(どらうち)、銀をつかひ/過(すご)し、/母親(はゝをや)をたのミ/親父(をやぢ)へ銀の事を 00051030L2いひけれ共、/度(たび)+の事ゆへ、/親父(をやぢ)大きに/立腹(りつぶく)して、/強異= 00051040L3見(こハい=けん)をせられけれバ、/息子(むすこ)ハ二/階(かい)へかけあがりてをりず。折 00051050L4ふし一/家(け)の人/来(きた)り、此よしを聞て、二/階(かい)へあがりて見れバ、 00051060L5/息子(むすこ)ハ/大(をゝ)はだぬぎに成て、/腹(はら)に十/文字(もんじ)に/墨打(すミうち)をして/居(ゐ)れバ、 00051070L6/彼(かの)人、其ゆへを/問(とへ)バ、/息子(むすこ)いふやう、銀三百目(五オ)(五ウ 00051080L7挿絵)なけれバ、男の一/分(ぶん)がたゝぬゆへ、/腹(はら)を十/文字(もんじ)に/切(きつ)て 00051090L8/死(し)なんとおもへ共、切/損(そこ)なへバ/恥(はぢ)なるゆへ、/墨打(すミうち)を/致(いた)せし 00051100L9と/語(かた)る。/彼(かの)人聞て、それハ/逸興(いつけう)也。銀の事を/親父(をやぢ)に/願(ねが)ふて 00051110L10見るべし。/必(かなら)ずはやまり給ふなと/止(とゞ)め/置(おき)て、二/階(かい)よりをり 00051120L11て、/親父(をやぢ)に/息子(むすこ)がありさまを/語(かた)り、三百匁やり給ハねバ/眼= 00051130L12前(がん=ぜん)に/息子(むすこ)を見/殺(ごろ)すといふもの也と、さま+/願(ねが)ハれけれバ、 00051140L13/親父(をやぢ)も/得心(とくしん)して、有/合(かひ)の銀百五拾匁を取出し、/残(のこ)りハ/明日(あす) 00051150L14やるべし。/先(まづ)此銀をあいつにやりて、/一筋(ひとすぢ)けして下されと 00051160L15いハれた。 00051170¥N9¥J 00051180¥X/半分(はんぶん)の/埓(らち)あき(六オ) 00051190L18ある所の/腰本(こしもと)に、/近所(きんじよ)の/若(わか)ひもの、/文(ふミ)を付けれ共、/否(いな)の/返= 00051200L19事(へん=じ)もなし。/友達(ともだち)いふハ、/貴様(きさま)が/兼(かね)ての事ハ、なんと/埓(らち)があ 00051210M1いたかととへバ、/半分(はんぶん)ハ/埓(らち)が/明(あい)てあるといふ。それハどふ 00051220M2した事じやといへバ、されバ、おれハ/合点(がてん)なれど、まだ/先(さき) 00051230M3が/合点(がてん)せぬといふた。 00051240¥N10¥J 00051250¥X/戸(と)だな/隠(がくれ) 00051260M6ある人、/懸(かけ)取の/苦(く)げんを/逃(のが)れん/為(ため)、いつの/節季(せつき)も、/戸棚(とだな)の 00051270M7中にかくれて、/留主(るす)をつかふてすましけるが、六月の/末(すへ)つ 00051280M8かた、/夕立(ゆふだち)して/雷(かミなり)すさましく/鳴(なり)けれバ、此/亭主(ていしゆ)、(六ウ) 00051290M9/臆病(をくびやう)ものにて、/戸(と)だなへ入てかゞみ/居(ゐ)るを、六ツに成/娘(むすめ) 00051300M10見て、/母親(はゝをや)にいふやう、かゝ様ン。又あしたハ/節句(せつく)かやと 00051310M11いふた。 00051320¥N11¥J 00051330¥X/眼病(がんびやう)のてりふり 00051340M14長+/眼病(かんびやう)をわづらひ/居(ゐ)る人あり。/友達(ともだち)見まひに/来(き)て、/眼(め) 00051350M15のやうすを見て、心もちハいかゞと/問(とへ)バ、/病(びやう)人いふやう、 00051360M16/別(べつ)にかわりし事もないが、おれが目も/寂(じやく)ハ/雨(あめ)でござるとい 00051370M17へバ、いや+、/気(き)づかいせらるゝな。/眼(め)の中ハ/星(ほし)だらけ 00051380M18じやといふた。 00051390¥P174 00051400¥N12¥J 00051410¥X/福(ふく)いのり(七オ) 00051420L3/泉州(せんしう)/石津(いしづ)のゑびす、京にて/開(かい)帳ありし時、まづしきもの、 00051430L4/福(ふく)をあたへ給へと、七日/篭(こもり)ていのりけるに、七日にあたる 00051440L5/夜半(やはん)の/比(ころ)、ゑびす立出給ひ、/汝(なんぢ)、我にいのる事/深切(しんせつ)なれバ、 00051450L6/福(ふく)をあたへたく思へ共、/汝(なんぢ)にあたふべき/福(ふく)があれば、をれ 00051460L7もはる+の所へ/開(かい)帳にハ/来(こ)ぬと仰られた。 00051470¥N13¥J 00051480¥X/湯(ゆ)入のしゆつくハい 00051490L10/貧(ひん)なる人、長+/湿(しつ)をわづらひ、/但馬(たじま)へ/湯治(たうぢ)して/夜道(よミち)をた 00051500L11どり/帰(かへ)りけるが、其所の/夜廻(よまハ)りの/役(やく)人/衆(しゆ)見とがめて、何も 00051510L12のぞといへバ、私ハ/但馬(たじま)へ/湯治(たうぢ)に/参(まい)つた者でござり(七ウ) 00051520L13ます。おまへハどなたてござりますといへバ、我&は/夜(よ)ま 00051530L14ハり也といハるゝを聞て、/彼(かの)人、さめ+と/泣(なき)出し、/扨(さて) 00051540L15+おまへがたハ/浦(うら)山しい事かな。私ハやう+/一(ひと)まハり 00051550L16て/帰(かへ)りますといふた。 00051560¥N14¥J 00051570¥X/悪(あく)人/形(がた)の/評判(へうばん) 00051580L19物がたき/儒者(じゆしや)、/芝居(しばゐ)を/見物(けんぶつ)に/行(ゆか)れ、/帰(かへ)りて/弟子衆(でししゆ)に申さる 00051590M1ゝハ、今日の/芝居(しばゐ)/役者(やくしや)の中にて、/色(いろ)の/白(しろ)い/若殿(わかとの)に成ツた/悪(あく) 00051600M2人/形(がた)ハ、何と申すと/問(とハ)るれバ、/弟子衆(でししゆ)いふ/様(やう)、あれハ/実形(じつがた) 00051610M3で、/悪(あく)人/形(がた)でハござりませぬといへバ、/儒者(じゆしや)申(八オ)さる 00051620M4ゝハ、あれが/悪(あく)人/形(がた)てござるハ。一/国(こく)の/主(ぬし)たる/身(ミ)として、 00051630M5/傾城(けいせい)にほだされ、身を/放埓(ほうらつ)に持くづして、/国(くに)の/乱(ミだ)れを引出 00051640M6すものが、/悪(あく)人で有まじきやといハれた。 00051650¥Q 00051660M8寛延四年辛/末((ママ))正月吉日 00051670M9△△△△△△△△△△△安堂寺町五丁目 00051680M10△△△△△△△△△△△△△△大塚屋宗兵衛 00051690M11△△△△△書△舗 00051700M12△△△△△△△△△△△心斎橋大宝寺町筋西へ入 00051710M13△△△△△△△△△△△△△△近江屋半次郎(八ウ) 00051720¥P175 00051730¥U噺本大系△第八巻 00051740¥T軽口腹太皷 00051750¥G 00051760¥Y 00051770L16宝暦二年刊 00051780L17矢木ひれすけ作・序 00051790L18半紙本五巻 00051800L19東大図書館霞亭文庫蔵 00051810¥Y序 00051820M3むかし+、/祖父(ぢい)と/祖母(ばゝ)の/流(なが)れを/汲(くミ)、/臍(へそ)の/茶釜(ちやがま)の一ト/踊(おど)リ、 00051830M4/口三味線(くちさミせん)の/調子(てうし)に/乗(のせ)、/腹(はら)の/皮(かわ)のよれによれて(一オ)ひつぱ 00051840M5るほど/可笑(おかし)がらすこともがなと、/軽口(かるくち)/腹太皷(はらだいこ)と/題(だい)して、/鳴(なり) 00051850M6わたらすものか。 00051860M8△△△申の歳 00051870M9△△△△△△新玉△△△△△△△△鰭△輔(一ウ) 00051880¥P176 00051890¥Y1軽口腹太皷巻之一△目録 00051900L3礼がへし 00051910L4/皷買(つゞミかい) 00051920L5春の見立 00051930L6/解(とけ)ぬ/謎(なぞ) 00051940L7/欲(よく)さんごじゆ 00051950L8/白黒(びやくこく)の娘(二オ) 00051960L9/灯時斗(ひどけい) 00051970L10/石摺(いしずり)/女(おんな) 00051980L11一/歩(ぶ)/違(ちが)ひ 00051990L12/夜明論(よあけろん) 00052000L13/謡講(うたいこう) 00052010L14/宝引(ほうびき)(二ウ) 00052020¥T1軽口腹太皷巻之一 00052030¥N1¥J 00052040¥X/礼(れい)がへし 00052050M5/一夜(いちや)/明(あく)れバ/天下(てんが)の/大福(おふぶく)。さて/元朝(ぐハんてう)の/長閑(のどか)さ、/心(こゝろ)にかゝる山 00052060M6の/端(は)はきのふ/越(こえ)、君が代に/幾世(いくよ)へぬらん、/古(ふる)ばかまを/着(ちやく)し 00052070M7/礼(れい)にゆき、/去所(さるところ)の/門口(かどぐち)にて、/物(もの)もうとやりかけたれバ、内 00052080M8よりも、物もうといふ。是ハしたりとおもひながら、物も 00052090¥G 00052100¥P177 00052110L1う+と、つゞけていへバ、又/内(うち)から、物もう+といふ。 00052120L2いく/言(こと)いふてもおなじことなり。あまりふしぎさに/覗(のぞい)て見 00052130L3たれバ、かうしの/間(ま)に/鸚鵡(あふむ)が/飼(かふ)て/有(あ)つた。(三オ) 00052140¥N2¥J 00052150¥X/鞁買(つゞミかい) 00052160L6ある日、/加賀屋(かがや)といふ/皷(つゞミ)やへ/買人(かいて)の/来(きた)りけれバ、ていしゆ 00052170L7/出(いで)られ、/御茶(おちや)よたばことあひしらい、扨おのぞミハ、まき 00052180L8ゑ/筒(どう)か。くろ筒、/木地筒(きぢどう)、/作(さく)も/色(いろ)+、/皮(かわ)もしな+。し 00052190L9らべハ/大倉(おふくら)と/幸流(こうりう)などのちがひもござりますが、/先(まづ)そこも 00052200L10と様の/御流義(おりうぎ)ハとたづねけれバ、/買人(かいて)もみ/手(で)して、そのや 00052210L11うにけつこうに、おしやますなよ。おらハ/大和(やまと)の万ざいじ 00052220L12や。 00052230¥N3¥J 00052240¥X春の/競(みたて) 00052250L15ごふくやの/内義(ないぎ)、/紙屋(かミや)のおいゑを/誘(さそ)ひ、つれだつて/春(はる)の 00052260L16(三ウ)/野(の)遊びに/出(で)られしが、/折(おり)ふし、げんげ花のさかりに 00052270L17て見事なりけれバ、/呉服(ごふく)やのおいゑのいふハ、これ+見 00052280L18なされ。/緋(ひ)がのこじやハいな。/紙(かミ)やの/内儀(ないぎ)こたへて、され 00052290L19バいな。べに/行成(かうぜい)のやうに/咲(さき)ましてござんすと、思ひ+ 00052300M1の見/立(たて)。/供(とも)の/下女(げぢよ)もしや+り/出(いで)、とんと、あづきの/飯(まゝ)ぶ 00052310M2ちあけたやうなといふた。 00052320¥N4¥J 00052330¥X/解(とけ)ぬ/謎(なぞ) 00052340M5/謎(なぞ)のときじまんする人に、その/友達(ともだち)が、ひとつかけう。な 00052350M6んとじや。よしなのいたを/猫(ねこ)がひく/所(ところ)なあに。/解人(ときて)、しあ 00052360M7んしてもゆかぬゆへ、/流(なが)そといふ。/富士(ふじ)の/雪(ゆき)ととくハいや 00052370M8い。その心ハどふぞ。(四ノ九オ)やつパりふじのゆきじや。 00052380M9それでハどふもとけぬといへバ、さあ、そのとけぬ所が、 00052390M10富士の雪じやといふた。 00052400¥N5¥J 00052410¥X/欲(よく)さんごじゆ 00052420M13まつや町の両替やに、此/季(き)からの/這出(はいて)の/下女(けぢよ)、だいどころ 00052430M14にしごとしながら、おいゑに/噺(はなす)ハ、わたしハ此あいだ、/門(かど) 00052440M15で/$(これ)ほどな/赤(あか)い玉をひろいました。まん/中(なか)にあながあつて、 00052450M16きんちやくにつけるやうな物じやといふを、/旦那(だんな)がきゝつ 00052460M17け、大かた、さんごじゆであろと思ひ、おれにうつてくれ。 00052470M18銭百文に/買(かを)ふとあれバ、下女ハよろこび、はり/箱(ばこ)のすミか 00052480M19ら、かみに(四ノ九ウ)/包(つゝん)だ丸い物をとり出しわたせバ、や 00052490¥P178 00052500L1くそくの通り銭を百やり、/頓而(やがて)/包(つゝん)だものを/明(あけ)て見たれバ、 00052510L2/餅(もち)ざいくの/天神(てんじん)花のぬけたのじや。 00052520¥N6¥J 00052530¥X白黒の娘 00052540L5なんと、かう+したのじや。/呼(よび)やらぬか。お/娘(むす)のきりや 00052550L6うハずんどよいがのと/咄(はなす)と、すぐに/所(ところ)を/書(かき)つけ、/媒(なかうど)も/供(ぐ)せ 00052560L7ず/只(たゞ)/一騎(いつき)ひよこ+とゆき、/立花(たちばな)通りの/餅(もち)やのかしや、/路= 00052570L8次(ろ=じ)口に$此かんばん有。おつと/爰(こゝ)じやと/出合(であい)がしら、う 00052580L9らから/出(で)る/嚊(かゝ)にとへバ、あの/井戸場(ゐどば)に/菜(な)あらふて(十オ)い 00052590L10やるのが、その/娘(むすめ)じやとおしへて、といとゆく。/扨(さて)よい所 00052600L11へ/来(き)たと、かの娘を見れバ、のふおそろしや、/顔(かほ)一ツぱい 00052610L12に/黒(くろ)あざあり。此/男(おとこ)、/肝(きも)つぶし/逃帰(にげかゑ)り、/仲人(なかうと)を大きにね 00052620L13だりけれバ、/媒(なこど)さハがず、其/筈(はづ)+。あの娘ハ此/比(ごろ)から/炭(た) 00052630L14団をしている。 00052640¥N7¥J 00052650¥X/灯時斗(ひどけい) 00052660L17/阿房(あはう)につける/薬(くすり)がない。しかも/薬種(やくしゆ)やの三太郎、/旦那(だんな)と/店(ミせ) 00052670L18に薬ごしらゑして/居(ゐ)けるが、旦那、そばなきせるおつとり、 00052680L19まつすぐに/立(たて)、もふ四ツの/日(ひ)あしじや。/博労(ばくらう)の/問屋(といや)ハ此/薬(くすり) 00052690M1を(十ウ)(十一オ挿絵)/持(もつ)てゆけと、注文に引あハせ持してや 00052700M2られける。三太郎いてもどり、旦那さん。/銀(かね)ハ/晩(ばん)の四ツに 00052710M3取に/来(こ)いとじやと/返事(へんじ)をいひ、扨その/夜(よ)になり、おやかた、 00052720M4三太をよび、大かた四ツじや。/銀(かね)取にいけ。あいといふて、 00052730M5/行燈(あんどう)さげ見せへ/行(ゆき)、いやまだ/早(はや)い。/来(き)て見さつしやれ。旦 00052740M6那、何事してゐると見せへ/出(で)て見れバ、三太郎、あんどう 00052750M7のひかげにきせるをつき/立(たて)、なんと、四ツのひあしじやあ 00052760M8ろまいがの。 00052770¥N8¥J 00052780¥X/石摺(いしずり)の女 00052790M11/中華流(からよう)おしゑる/人(ひと)、あるときよそへ/行(ゆき)、/暮(くれ)てから/内(うち)へ(十 00052800M12一ウ)帰られしに、まだ/灯(ひ)もともさずあれバ、なぜ/灯(ひ)を/点(あけ)ぬ 00052810M13と、お/内義(ないぎ)を/呼(よバ)るれバ、あいといふて、はしりもとから/出(で) 00052820M14てわせるを見て、扨++、そなたハ/石摺(いしずり)の/女(おなご)じやの。 00052830¥N9¥J 00052840¥X一/歩(ぶ)/違(ちが)ひ 00052850M17でつち弐人/途中(とちう)にて/行(ゆき)あひ、/一人(ひとり)の三太、/手(て)に/提(さげ)たとくり 00052860M18を/出(だ)し、此/中(なか)/何(なん)じや。さして見よといふ。むかふのでつち、 00052870M19とくりとつてふつて見、何じややら、ごぶ+いふといへ 00052880¥P179 00052890L1バ、おつと、そこらじや。/渋(しぶ)じや+。 00052900¥N10¥J 00052910¥X/夜明論(よあけろん)(十二オ) 00052920L4長兵へ、/起(おき)いよ。/夜(よ)があけたぞと、しきりに/起(をこ)せば、/下人(げにん) 00052930L5長兵へはら/立(たて)、まだ/夜(よ)ハあけませぬと、/寐所(ねどころ)からせりあふ。 00052940L6/親(おや)かたのいふハ、おれが/夜明(よあけ)ハ/身(ミ)におぼえがある。おきを 00052950L7れ。長兵へ、ねながら、/旦那(だんな)どの。何がおぼえじやととへ 00052960L8バ、旦那のいふやう、夜明になると、おれがものが/立(たつ)とい 00052970L9わるれバ、下人大きに/笑(わら)ひ、それで夜明がしれるものなら、 00052980L10おらハよひから夜があけてござるといふた。 00052990¥N11¥J 00053000¥X/謡講(うたひこう) 00053010L13何がしの本へ、謡講とて/朋友(ともだち)/大勢(おふぜい)うちよりて、その(十二ウ) 00053020L14/役(やく)+をつとめける中に、三/番(ばん)/目(め)のゆやのワキ、いまだ/初= 00053030L15心(しよ=しん)なれど、きじやうなる人にて、ワキの/座(ざ)へ/自我(じが)と/居(すハり)、こ 00053040L16ハづくろいして、ウタヒ詞/是(これ)ハ/宗盛(むねもり)なりとやり/出(だ)す。/聴人(きゝて) 00053050L17のうちに口かるきおとこ、どこのと/咎(とがめ)たれバ、うたひ/人(て)さ 00053060L18ハがす、/平(たいら)のといふた。 00053070¥N12¥J 00053080¥X/宝引(ほうびき) 00053090M3/御(お)出入の/八百屋(やをや)のおやぢ、/宝引(ほうびき)をせふとそゝのかし、女中 00053100M4のまん/中(なか)へなをり、大はだぬいで/縄(なわ)の/根取(ねどり)をして、そりや 00053110M5取レいもと打/出(だ)し/市(いち)のかゝの/者賀向(しやがむけ)のと、おもひ+に 00053120M6(十三オ)なわを/捩(より)、さてくミあひ+のなわをさバく/時(とき)、 00053130M7下女が見/付(つけ)て、それ+、だい+ハうしろに/落(おち)てあると 00053140M8いふに、見れは此おやぢ、大きなそゝりもので、/先(さき)に/不愚理(ふぐり) 00053150M9をつけるとて、だい+の/緒(を)と/我(わが)ゑつちふどしのひもと取 00053160M10ちがへ、ゆひつき有ければ、女中たち/是(これ)を見、おかしがり、 00053170M11こけあるいて/笑(わら)ふ。おやぢぬからぬ/顔(かほ)で、ミなわらハしや 00053180M12ますな。/是(これ)にも/睾丸(ふぐり)がござる。 00053190¥Y1軽口腹太皷一之巻終(十三ウ) 00053200¥P180 00053210¥Y1軽口腹太皷巻之二△目録 00053220L3/鍛平物(たんびらもの) 00053230L4らうの/毛彫(けぼり) 00053240L5/金(きん)けの/屁(へ) 00053250L6/寺子(てらこ)/喧嘩(げんくハ) 00053260L7/雷(かミなり)の/骸(しがい) 00053270L8/女夫(めうと)の/鈴振(すゞふり) 00053280L9/芝居(しばゐ)の/盆(ぼん)(一オ) 00053290L10/毒(どく)けし 00053300L11見通し 00053310L12/節季(せつき)の/感吟(かんぎん) 00053320L13/願(ぐハん)だち 00053330L14/画(かき)じまん(一ウ) 00053340¥T1軽口腹太皷巻之二 00053350¥N1¥J 00053360¥X/鍛平物(だんびらもの) 00053370M5/或夜(あるよ)、/順慶(じゆんけい)町/辺(へん)のどぶ/池(いけ)すじにて、そりやぬいたぞ。あば 00053380M6れものよと/往来(わうらい)にげまどふ中に、/兵法(とつたり)を五六匁がのならふ 00053390M7た/男(おとこ)ふミとゞまり、見れバ大の男が/千鳥(ちどり)あしで、だんびら 00053400M8物をぴらり++とふりまハし/来(きた)る。扨ハ酒のゑひ、何 00053410M9ほどの事あらんと、此/比(ごろ)/習(なら)ふた/捕手(とりで)にて、ずか+といり、 00053420M10なんの/苦(く)もなくうでねぢわげ、/先(まづ)かのだんびらをひつたく 00053430M11り見たれバ、/太刀魚(たちうを)で有ツた。(二オ) 00053440¥N2¥J 00053450¥Xらうの/毛彫(けぼり) 00053460M14/座摩(ざま)の/宮(ミや)のまへにて、きせるのらうに/毛彫(けぼり)する者有。ある 00053470M15人、/禰宜(ねぎ)が/珠数(じゆず)もつてゐる所をほらす。/見物(けんぶつ)の/衆(しゆ)、扨もか 00053480M16ハつた図じやといへば、あつらへた人のいふやう、是ハつ 00053490M17まらぬまじないじや。 00053500¥N3¥J 00053510¥X/金気(きんけ)の/屁(へ) 00053520¥P181 00053530L1/去所(さるところ)の/腰(こし)もと、/椽先(ゑんさき)で/屁(へ)をひとつはづした折ふし、久三/庭(にハ) 00053540L2そうぢしてゐて是を/聞(きゝ)、/箒木(はうき)をすて、こけあるいて/笑(わら)ふ。 00053550L3/腰(こし)もと、/気(き)のどくに思ひ、/金(きん)/壱歩(いちぶ)取出し、(二ウ)久三が口 00053560L4をふせがんためやりけれバ、久三請取、これハ/今(いま)の/屁(へ)の/代(しろ) 00053570L5かといへば、いや、ことし/中(ぢう)のじやぞや。 00053580¥N4¥J 00053590¥X/寺子(てらこ)/喧嘩(げんくわ) 00053600L8寺子屋の/休日(やすミ)に弟子の子ども、ほたへあるき、他門(たもん)とけん 00053610¥G 00053620M1くハして、そちの/師匠(ししやう)ハはつちばうずじやといへバ、おの 00053630M2れがししやうハ/山伏(やまぶ)じやと、まけずおとらずわめきける所 00053640M3へ、/両方(りやうはう)のししやう、/東西(とうざい)より/来(きた)りけれバ、わるさした子 00053650M4供ミな+にげちりしが、/兄(あん)でしらしい/子(こ)、/師匠(ししやう)のまゑへ 00053660M5ゆき、おまへ様を/坊主寺(ばうすでら)やが、山ぶじやと申ますと/告(つげ)る。 00053670M6(三オ)又こなたにも、おししやう様を/山伏(やまぶ)寺やが、はつ 00053680M7ちぼんと申ますとつげけれバ、/双方(さうはう)の/師匠(ししやう)/気(き)のどくさうに 00053690M8見えしが、/坊主(ばうづ)師匠のいふハ、そこもとハ/四方鬢(しはうがミ)、われら 00053700M9ハばうづ。両方いれあハしましたら、よいおとこが/二人(ふたり)/出= 00053710M10来(で=き)ませうに。 00053720¥N5¥J 00053730¥X/雷(かミなり)のしがい 00053740M13/雷(かミなり)がおちてあがり/損(そん)じ、/下界(げかい)のすまゐも/口(くち)おしくや思ひ 00053750M14けん、くびくゝりて/相(あひ)/果(はて)たり。所の/者(もの)どもうつたへ/出(いで)、御 00053760M15/検使(けんし)来り給ひ/御覧(ごらん)なされ、しやしん/相違(さうゐ)なし。/勝手(かつて)/次第(しだい)に 00053770M16とりをくべしとありけれども、ミな+かのしがいを/恐(おそろ)し 00053780M17がりし(三ウ)所に、/往来(わうらい)の/者(もの)壱人まかりいで、あのしがい、 00053790M18私に/下(くだ)さりませ。御/検使(けんし)/聞(きゝ)給ひ、/其方(そち)ハゆかりのものか。 00053800M19いへ+。私は天神の/社内(うち)のめつた/的(まと)やでござります。あ 00053810¥P182 00053820L1のしがいくださらバ、/吹矢(ふきや)の/的(まと)にいたしますといふた。 00053830¥N6¥J 00053840¥X女夫の/鈴振(すゞふり) 00053850L4/女夫(めうと)づれで/鈴振(すゞふり)ありく/神道者(しんたうじや)あり。さる所の/裏(うら)屋にて、か 00053860L5の/女(おんな)の/方(はう)、/茶(ちや)をふるまハれけるを、おとこ/路次口(ろじぐち)にまつてゐ 00053870L6たり。女やう+茶/呑(のミ)しまい/出来(いできた)れバ、/男(おとこ)はらを立、扨& 00053880L7きついひまのいれやうかな。茶の/返礼(へんれい)に、そちも/女根(まめ)(四 00053890L8ノ十オ)を/振(ふる)まふたか。いかうつとがばらついてあるとうた 00053900L9がひけれバ、おんなまなこを/閉(とぢ)、/秡(はらふ)て/曰(いわく)、/耳(ミヽ)にもろ+の 00053910L10ふじやうを/聴(きい)て、心にもろ+のふじやうをきかずといふ 00053920L11て、またぐらへ/鈴(すゞ)おし/当(あて)、しやご++。 00053930¥N7¥J 00053940¥X/芝居(しバゐ)の/盆(ぼん) 00053950L14とつと/田舎(いなか)の/客(きやく)、竹田の/芝居(しバゐ)見に/行(ゆき)しが、/折(おり)ふし/嶋(しま)の内八 00053960L15まんの/祭(まつり)にて、/例(れい)のにわかおびたゝしく、/黒頭巾(くろつきん)/黒(くろ)ゐしや 00053970L16うなどにて、かけり/狂(くる)ひあるくを見て、/戻(もど)りいふやう、い 00053980L17かさま、所+で/替(かハり)り申。けふハ/芝居(しばや)の/盆(ぼん)かして、(四ノ十 00053990L18ウ)(十一オ挿絵)/人形(でこ)まハしが/多(おゝ)くおどりに/出(で)申たといへバ、 00054000L19ていしゆきゝ、それハにわかの事でござりませう。フン/俄(にハか) 00054010M1のこととハ、/火急(くハきう)にぼんになり申たか。 00054020¥N8¥J 00054030¥X/毒(どく)けし 00054040M4/腎虚(ぢんきよ)にてひさしくわづらい、やう+此/間(あいだ)ハそろ+と心 00054050M5よく、けふも/気(き)ばらしに/生玉(いくだま)へんへゆくとて、/着物(きるもの)きかへ 00054060M6/出(で)られしが、/日(ひ)くれになれどもどられず。内にハ/内義(ないぎ)が/待(まち) 00054070M7やたいくつし、人をむかひに出し、かた※心づかひのと 00054080M8ころへぶらり+と/戻(もと)り、やれ+くたびれたと/座敷(ざしき)へ通 00054090M9れ(十一ウ)バ、内義のいふハ、扨も+をそいお帰り。大 00054100M10ていあんじた事かいな。ちと内のことも思ひなされ、おま 00054110M11へのびやう気ハそとのかせぎが過るから、此ごろハ心よい 00054120M12と、もふ内にござりませぬ。あまりをそさに、むかいがてら、 00054130M13/九軒(くげん)のよし田やへ見にやれバ、是へハ御出なされぬ。通り 00054140M14すじにであろとをしゑたげな。それも五軒や十軒かいな。 00054150M15マアしん町を/本社(ほんしや)にして/北(きた)から南へちやうちんもつて宮め 00054160M16ぐり、/内外(うちと)の者ハほんに+、足を/雷木(こがらし)にするハいな。せ 00054170M17いもん、りんきじやないぞへといふが、/悋気(りんき)の/極意(ごくい)なり。 00054180M18ていしゆ打笑ひ、けふハつゐでに(十二オ)お寺へ見まい、 00054190M19おしやう様の/後生(ごしやう)咄でひまどつた。なんの+、くるハが 00054200¥P183 00054210L1よひもふつゝりやめる。是からそもじひとりをたのしミじ 00054220L2やと、ねながらちよびとてんがうすれバ、女ばうもあぢな 00054230L3/身(ミ)ぶりにて、さあお/着物(きるもの)めしかへなされといひ+、ひた 00054240L4とだきつけバ、ふしぎや、/腰(こし)にさげたをしめのさんごじゆ、 00054250L5みぢんにくだけとびちつたり。 00054260L6△△△△△どふでもきやつが/毒(どく)に/極(きハま)ツた。 00054270¥N9¥J 00054280¥X見/通(どふ)し 00054290L9見通しの/法印(ほうゐん)、/道(ミち)にふミまよひ、うろたへてゐるところへ、 00054300L10(十二ウ)/柴苅(しバかり)一人来りけれバ、やがてはしり/寄(より)、道をたづ 00054310L11ねけるに、此おとこ、/理(り)くつもので、見れバ山ぶしさうな。 00054320L12人の/吉凶(きつけう)も見てやるものが、是ほどしれよい道を、なぜう 00054330L13らなふて通らぬぞとねちかゝれバ、山ぶしこたへて、われ 00054340L14らもそこにぬかりハないてや。さいぜんうらなふて見たれ 00054350L15バ、/算卦(さんぎ)のをもてに、/柴(しバ)かり壱人来るべし。これに道をた 00054360L16づねよとあるといふた。 00054370¥N10¥J 00054380¥X/節季(せつき)の/感吟(かんぎん) 00054390L19三月ぜつきの事なるが、去御公家方の/台(だい)所から、/魚(うを)やの/書= 00054400M1出(かき=だ)しが一まい/散(ちつ)ていた。/賄方(まかないかた)のさふらひしゆ、取にゆか 00054410M2(十三オ)れしに、はや、かのおくげ様の御手に取上ケ、つく 00054420M3※と/詠(なが)め給ひ、やさしや。是も哥さふなとよみ給ふやう、 00054430M4△△/書出(かきいだ)し十三匁/鰤(ぶり)/一(ひとつ)つ 00054440M5△△△内弐百文/極月(ごくげつ)に/取(とる) 00054450M6と吟じ給ひける。 00054460¥N11¥J 00054470¥X/願(ぐハん)だち 00054480M9/藤(ふぢ)江さん、よんで/来(こ)ふと、/花車(くハしや)がよびにゆき、やがて/来(く)る 00054490M10と/弾(ひき)かけ、/花(はな)の/香(か)ひとつひき、おあい/致(いた)しやんすと一ツう 00054500M11けた/時(とき)、きやく/梅(むめ)ぼしひとつ、さかなにはさめバ、ゆるし 00054510M12(十三ウ)なんせ。天神さんへ/願(ぐハん)かけたハいなといへバ、客 00054520M13のいふハ、おれも天神へ願かけた。それでも梅をあがるぞ 00054530M14へ。いや+、われらハ梅ぼしのやうなものハたゝぬ。そ 00054540M15んなら何をたちなんすととへバ、おれハ/一生(いつしやう)、/雷(かミなり)をくハ 00054550M16ぬですといふた。 00054560¥N12¥J 00054570¥X/画自慢(かきじまん) 00054580M19/友達(ともだち)の所からふすまの/絵(ゑ)をたのまれて、/白鷺(しらさぎ)のとびみだれ 00054590¥P184 00054600L1た/図(つ)をかいてやりけり。/其後(そののち)四五人つれだちて住よしへ参 00054610L2りけるに、はまべにしら鷺のとびこふけしきを見て、一人 00054620L3のいふやう、/誠(まこと)に、いつぞや/貴(き)さま/画(かい)た/鷺(さぎ)ハ(十四オ)よふ 00054630L4/出来(でき)た。とんとあの通りじやといへバ、かいたわろ、/調子(てうし) 00054640L5にのり、何の、いまとぶさぎどもハ、まだ+ほんのこと 00054650L6じやないてやといふた。 00054660¥Y1軽口腹太皷二之巻終(十四ウ) 00054670¥Y1軽口腹太皷巻之三△目録 00054680M3/彦(ひこ)すけ 00054690M4/鑓(やり)の/名人(めいじん) 00054700M5むさいくさい 00054710M6まじない 00054720M7思ひ/違(ちが)ひ 00054730M8/大概(たいがい)な/朔日(ついたち)(一オ) 00054740M9壱丁目物 00054750M10/夢(ゆめ)にも/悋気(りんき) 00054760M11/上塗(うハぬり)の/弟子(でし) 00054770M12/飛(ひ)きやく 00054780M13/凧医者(いかいしや)(一ウ) 00054790¥K〔註・「舟遊び」脱〕 00054800¥P185 00054810¥T1軽口腹太皷巻之三 00054820¥N1¥J 00054830¥X彦助 00054840L5/竹輿(かこ)かきの彦助が娘、/栄主(ゑいしゆ)にかこハれ、ことなふ/気(き)に入け 00054850L6れバ、/囲人(かこいて)の方から、/親(おや)彦助も/呼(よび)取ルべしと/竹輿(かご)にてむか 00054860L7ひにやれバ、彦介よろこび、/辞義(じぎ)にもおよバずとびのり、 00054870L8じゆんけい町筋を/舁(かい)て/来(く)るに、わうらいせりあふ所にてハ 00054880¥G 00054890M1/竹輿(かご)のうちから、はい++、/頼(たのん)ましよ+といふた。 00054900¥N2¥J 00054910¥X/鎗(やり)の/名人(めいじん) 00054920M4/去(さる)やしきの内にて/鑓(やり)のけいこ。/有時(あるとき)六十ばかりの/在所(ざいしよ)もの 00054930M5(二オ)立どまり、是を見ていふやう、わり様たちハ、それ 00054940M6でつくのを/稽古(けいこ)しやるさうなが、はて扨つきよいものを/得(ゑ) 00054950M7つかぬ/下手(へた)なわろたちじやと笑へは、/若侍衆(わかざふらひしゆ)はらをたて、 00054960M8しからばおやぢ、一ト/手(て)まいらふときしミけれバ、はてむ 00054970M9つかしいことをいわしやると、/竹刀(ちくとう)おつとり/相手(あいて)にむかひ、 00054980M10サア/何処(どこ)なりと/望(のぞ)ましやれ。それ/眼(め)か、/鼻(はな)か、/臍(へそ)かと/言葉(ことバ) 00054990M11にしたがひ、一ツもはづさず。その/早(はや)き事、/言語(いふ)にたへた 00055000M12り。/人&(ひと※)/奇異(きゐ)の思ひをなし、そこもとの御/仮名(けミやう)ハ何と申ま 00055010M13す。/宿所(やどもと)をも聞されよ。/向後(けうこう)/鑓(やり)のししやうにたのむべしと 00055020M14あれバ、ヲヽ/安(やす)いこと+。(二ウ)/弟子(でし)になりたか大和へ 00055030M15ござれ。おらハよしのゝ/鮎突(あゆつき)じや。 00055040¥N3¥J 00055050¥Xむさいくさい 00055060M18/孚斎(ふさい)/先生(せんせい)といふ人へ、出入の/商人(あきんど)、書出シをかくに、/仮名(かな) 00055070M19にて、むさい様とかき、/持(もつ)てゆきける。かの先生、/是(これ)を見 00055080¥P186 00055090L1て、是ハむさいとかいたハ。おれが/名(な)ハ/孚斎(ふさい)じやと申され 00055100L2しをきゝちがひ、/今度(こんど)ハまた、くさい様と/書(かい)て/来(き)た。 00055110¥N4¥J 00055120¥Xまじない 00055130L5/或人(あるひと)、/胸(むね)がやけるとてくるしむとき、/隣(となり)の/画工(ゑし)、丸めた 00055140L6(三オ)/紙(かミ)を/持(も)て/来(き)て/呑(のま)しけるに、たちまち/治(なを)る。これハ/奇= 00055150L7妙(き=めう)と/悦(よろこ)べハ、/向(むかい)の人いふハ、それハしれたこと。/愛宕(あたご)の/御= 00055160L8札(お=ふだ)じやといへバ、となりから、そのやうな物ハふるい+。 00055170L9いま/呑(のま)したのハ、/龍起水(ミづでつぽう)の/図(づ)じや。 00055180¥N5¥J 00055190¥X思ひ/違(ちが)ひ 00055200L12去所の娘ぶら+/煩(わづら)ひける。そのきんじよに/功者(こうしや)なあんま 00055210L13があつた。それを/呼(よび)、なでさしけるに、此あんま、ひよん 00055220L14な所までいらひけれど、とんとの/生娘(きむす)にて、これも/料治(れうぢ)じ 00055230L15やと思ひ、じつとこらへてゐたりけるが、ほどなくほんぶ 00055240L16くし、(三ウ)かの/按摩(あんま)へ/礼(れい)もつつかハすとて、/母(はゝ)おや/銀(ぎん)壱 00055250L17両/包(つゝミ)けるを、娘が見て、申かゝ様。まそつとやりなされ。 00055260L18それなら/銀(ぎん)弐両やろかといへバ、娘、まだ遣らしやんせと 00055270L19いふ。母おやけうさめ、あの/子(こ)ハつがもない。/七日(ひとまハり)に銀弐 00055280M1両ハ過るほどじや。そなたハなぜそのやうにぞいふ。娘の 00055290M2いふハ、はあて、あれもあまり/奇麗(きれい)なしやうばいじやござ 00055300M3んせぬ。 00055310¥N6¥J 00055320¥X/大概(たいがい)な/朔日(ついたち) 00055330M6/天性(むまれつき)おふへいな/人(ひと)有しが、折しもけふハ/八朔(はつさく)とて、/早朝(さうてう) 00055340M7から/家人(けにん)共に/掃除(さうぢ)させ、/其身(そのミ)ハたばこぼんひかゑ(四ノ九オ) 00055350M8ゆう+/寛&(くハん+)たる所へ、/出入(でいり)のもの、/中戸(なかど)の/障子(せうじ)ぐハらと 00055360M9/明(あけ)、だんな。是にござります。おゝ喜平。/来(き)たか。はい。 00055370M10/御礼(おれい)申ます。/今日(こんにち)ハけつかうなお/朔日(ついたち)でござりますといへ 00055380M11ば、/旦那(たんな)、ひげをなでながら、おゝ、/大概(たいがい)な/朔日(ついたち)じや。 00055390¥N7¥J 00055400¥X/舟遊(ふなあそ)び 00055410M14舟遊びに/行(ゆき)けるに、一人、川ばたで大きな/蟹(かに)をとらへ来り、 00055420M15/希有(けふ)な/蟹(かに)じや。まつすぐにあるく。/皆&(ミな+)見やれ+と/御座(ござ) 00055430M16ふねのまん/中(なか)にて下におけバ、ほんにほんぼに、まつすぐ 00055440M17にゆく。是ハめづらしいと/打寄(うちより)/見物(けんぶつ)する。中(四ノ九ウ)に 00055450M18も一人すゝミいで、/汝(なんぢ)、かにの/身(ミ)ぶんにて/横(よこ)にハゆかず、 00055460M19なぜすぐにゆくぞとのゝしつたり。その/時(とき)かの/蟹(かに)こたへて 00055470¥P187 00055480L1いふやう、はい。わたくしハちと/酒(さけ)にゑふております。 00055490¥N8¥J 00055500¥X壱丁目もの 00055510L4/去者(さるもの)わきざしを一ト/腰(こし)かい、/目利(めきゝ)に見せたれハ、これハ壱 00055520L5丁目ものじやといふ。此おとこ、壱丁目物をしらぬゆへに、 00055530L6どふいふ/事(こと)じやと/尋(たづぬ)れバ、はてしれたこと。/麁相(そさう)なるを壱 00055540L7丁目物といふといひけり。/扨(さて)/其後(そののち)さんくハいに、ある/人(ひと)の 00055550L8/脇差(わきざし)を見、/殊(こと)のほかけつこうなりけれバ、かのおとこ、 00055560L9(十オ)(十ウ挿絵)扨+見事な物かな。/私(わたくし)のハ壱丁目でごさ 00055570L10りますが、是ハなか+五丁や十丁目ではござるまいとほ 00055580L11めた。 00055590¥N9¥J 00055600¥X/夢(ゆめ)にも/悋気(りんき) 00055610L14いかにもりんきづよき/女房(によばう)有。そのおとこ、ひるねしてゐ 00055620L15るを、女房あらけなく/起(おこ)す。/男(おとこ)/目(め)をさまし、扨+むまい 00055630L16/夢(ゆめ)のまつたゞ/中(なか)を起したといへバ、女房、さては/金(かね)かな/拾(ひら) 00055640L17ふ/夢(ゆめ)かと/尋(たづぬ)れバ、いや+、そのやうなむさいゆめじやな 00055650L18い。ちやうど/清水(きよミづ)のやうな所で、しごく+うつくしい/女(おなご) 00055660L19が、おれが/顔(かほ)見て、にこ+笑ふ。ちかづきかとおもへば 00055670M1(十一オ)そうでもなしとおもふ内に、あちから手まねきす 00055680M2るによつて、ゆくとおもふたりや、りやうりやへはいり、 00055690M3/何(なに)が/奇麗(きれい)なざしきで、のむかおさへるか、扨よふのむ/女(おなご)の。 00055700M4おれも/大(おふ)かたいきついたが、その/女中(ぢよちう)ハたわいになつて、 00055710M5/雪(ゆき)のやうな/顔(かほ)がさくら/色(いろ)になつて、おれを/額(ひたい)でじつと見て 00055720M6ゐる/時(とき)、/加賀染(かがぞめ)に/緋(ひ)がのこ/裏(うら)の/小袖(こそで)のつまが、ほらりと/明(あい) 00055730M7てあつて、しろぬめを/七度(しちど)やきにしたやうな所が見ゆる。 00055740M8そこでわれらもたまられずだきつくを、またしやんせと、 00055750M9そバにあつた/木枕(きまくら)とり、ねよふとした所を、そなたにおこ 00055760M10されたと/噺(はな)せバ、(十一ウ)女房じたんだふミ、扨も+は 00055770M11らのたつ。/夢(ゆめ)に見るこなたもこなたじやが、見られるやつ 00055780M12がにくいハいのふ。 00055790¥N10¥J 00055800¥X/上塗(うハぬり)の/弟子(でし) 00055810M15/子曰(しののたふまく)を此比から/学(なら)ひ、けふも/師匠(ししやう)の本トへとばかハと、 00055820M16けいこにゆき、づかとはいれバ、/折(おり)ふし/先生(せんせい)、/庭(にハ)にゐられ、 00055830M17よふこそおいで。まづ+是へと、/例(れい)の/座(ざ)へなをられけれ 00055840M18バ、此おとこもひざまづき、おろ+なミだにていふハ、 00055850M19かねてうけ給ハる/七尺(しちしやく)さつて/師(し)の/影(かげ)をふむなと。それに/最= 00055860¥P188 00055870L1前(さい=ぜん)/先生(せんせい)の/庭(にハ)にござるをしらず、そのかげを(十二オ)ふミた 00055880L2り。是わたくしの/心(こゝろ)におかす/罪(つミ)ならず、わが足のとがなれ 00055890L3バ、此/足(あし)をいかやうともなされ下されよと、/両(りやう)そくぐつと 00055900L4なげ/出(だ)いた。 00055910¥N11¥J 00055920¥X飛きやく 00055930L7飛きやくが/状(じやう)のとゞけ/所(どころ)をわすれ、むかふから/来(く)る人に、 00055940L8是を見て下されと状を/出(だ)せバ、此おとこも/無筆(むひつ)なれど、し 00055950L9かつべらしく状の/上(うハ)がきを見て、此/書(かき)つけハさだめてこれ 00055960L10へ/来(く)るまでに、/誰(たれ)ぞに見てもらふたの。飛きやくが、/成(なる)ほ 00055970L11どさやうでござるといへバ、されバこそ、/大事(たいじ)の/事(こと)をしら 00055980L12れたり。(十二ウ)われより先に見た人がいろ+とよみく 00055990L13づし、根から/葉(は)からよめぬやうにしてのけた。 00056000¥N12¥J 00056010¥X/凧医者(いかいしや) 00056020L17/或(ある)とし/大(おふ)きに/疫(やく)びやうがはやり、此比までのやぶ/医(い)も/竹輿(かご) 00056030L18に/乗(の)り、/乗物(のりもの)にまたがり、いそがしさうにとび/歩行(あるく)。これを 00056040L19/去人(さるひと)が、/紙鳶(いかのぼり)どもが/通(とを)られるといふ。その心をとへバ、は 00056050M1て、あの/医者達(いしやたち)ハ/風(かぜ)がやむと/地(ち)へおちるといふた。(十三オ) 00056060¥Y1軽口腹太皷三之巻終(十三ウ) 00056070¥P189 00056080¥Y1軽口腹太皷巻之四△目録 00056090L3めつた/仏(ぶつ) 00056100L4/寒(ひへ)の花 00056110L5十一/念(ねん) 00056120L6/釜(かま)/盗人(ぬすびと) 00056130L7/口合(くちあい) 00056140L8/天犀角(うにかうる)(一オ) 00056150L9/衆道(しゆだう)の/氏神(うぢがミ) 00056160L10/髭代(ひげしろ) 00056170L11/祭(まつり)/乞食(こじき) 00056180L12/薬力(やくりき) 00056190L13/無常楽(むじやうらく) 00056200L14/年忘(としわすれ)(一ウ) 00056210¥T1軽口腹太皷四之巻 00056220¥N1¥J 00056230¥Xめつた/仏(ぶつ) 00056240M5/地(ぢ)ごくのあるじゑんま/王(わう)、/殊(こと)のほか/身(ミ)もちわるきよし、/極= 00056250M6楽(ごく=らく)へ/聞(きこ)へ、/西方(さいはう)の/旦那(だんな)どのからごろが/来(き)て、/官(くハん)を/取(とり)あげ/追= 00056260M7出(おひ=だ)されしが、地ごくもはんじやうの/所(ところ)なれば、あるじなく 00056270M8てハかなふまじと、さいハい/六道(ろくだう)の/地蔵(ぢぞう)をげんぞくさせ、 00056280¥G 00056290¥P190 00056300L1/地蔵大王(ぢぞうだいわう)とあらため、ゑんまのかわりに/地獄(ぢごく)へすへられし 00056310L2に、此/地蔵(ぢぞう)、もとよりけつこうじんにて、ばくちうち、/家= 00056320L3尻(や=じり)きりのたぐひまで、こと※くつミを(二オ)ゆるし、/極= 00056330L4楽(ごく=らく)へやられけれバ、/極楽(ごくらく)の/手代(てだい)しゆ、くわんおん、/勢至(せいし)、 00056340L5地ごくへ/来(きた)り給ひ、/地蔵大王(ぢぞうだいわう)に/申(もう)さるゝハ、/扨(さて)此ごろつか 00056350L6ハさるゝ/仏(ほとけ)どもに、/金(はく)をおき候へども/似(に)あひ/申(もう)さず。また 00056360L7/蓮台(れんだい)へのせれば/行義(ぎやうぎ)あしく、/何(なに)ともなんぎしごくに/存(ぞんず)る。 00056370L8ずいぶん/木地(きぢ)に/念(ねん)を/入(いれ)つかハさるべし。ゑんまがおこした 00056380L9/代物(しろもの)ハ、また++けうといものじやあつた。 00056390¥N2¥J 00056400¥X/寒(ひへ)の/花(はな) 00056410L12/仮(かり)そめにも/言葉(ことバ)どがめするおとこ有。/霜月(しもつき)比の事なるが、 00056420L13その/友(とも)だちの/来(きた)り、/内(うち)にゐやるか。ヲヽさむふて/外(そと)には 00056430L14(二ウ)/居(ゐ)られぬといふ。こりや/聞(きこ)えた。/扨(さて)めつきりと、/冷(ひへ)に 00056440L15/実(ミ)がいつたのといへバ、/冷(ひへ)の/花(はな)ハいつ/咲(さい)たと、又とがめた。 00056450¥N3¥J 00056460¥X十一/念(ねん) 00056470L18/去寺(さるてら)にて/説法(せつぽう)あり。やう+/談義(だんき)はてゝ/聴衆(ちやうしゆ)ミな+/帰(かへ)り 00056480L19し所に、十七八な/娘(むすめ)がひとり/残(のこ)りゐて、申、/和尚(おしやう)さま。/先(さつき) 00056490M1の/御十念(おじうねん)ハ十一/念(ねん)ござりましたほどに、どふぞ/今九念(まくねん)さづ 00056500M2けて二十/念(ねん)にしてくださんせといへバ、おしやういハるゝ 00056510M3ハ、十一/念(ねん)でそもじの/心(こゝろ)にかゝるならバ、/方丈(はうじやう)へござれ。 00056520M4一ツとつてやろが。(三オ) 00056530¥N4¥J 00056540¥X/釜(かま)/盗人(ぬすびと) 00056550M7/一村(ひとむら)大きに/盗賊(ぬすびと)がはいくハいする/時(とき)に、一人の百しやう、 00056560M8/身(しん)だいおちぶれ/家財(かざい)も/売(うり)はたし、いまハやう+大がま一 00056570M9ツ/残(のこ)したり。これをぬすまれてハなるまいと、きつとしあ 00056580M10んし、/夜(よる)ハ/番(ばん)がてらその/釜(かま)の/中(なか)に/寐(ね)たり。盗人/此家(このや)へはい 00056590M11り、かの/大釜(おふがま)をぬすミて/野原(のバら)へ/持(もつ)てゆくとき、はじめて/人(ひと) 00056600M12の/鼾(いびき)をきゝ、ふたをあけるに、/釜(かま)の/中(なか)なおとこ/目(め)が/覚(さめ)、/空(そら) 00056610M13を見ると、/青(あを)+として/星(ほし)あまた見へけれバ、/横手(よこで)をちや 00056620M14うど/打(うち)、さてハ/盗人(ぬすびと)、(三ウ)/屋根(やね)から/這(はいり)入しな。されども 00056630M15/釜(かま)ハとらなんだ。 00056640¥N5¥J 00056650¥X/口合(くちあい) 00056660M18となりうらの/権兵(ごんべ)へが/女房(によばう)よび、/今夜(こんや)ハ/酒(さけ)をふるまふとて、 00056670M19/友達中(ともたちぢう)を申入、/生鰯(いわし)のぬたに/茶碗(ちやわん)ざけが/過(すぎ)、/六畳敷(ろくでうじき)の権兵 00056680¥P191 00056690L1へが/宅(うち)にて、/大勢(おふぜい)のともだちともがゑひつぶれ、こけある 00056700L2いて/狂(くる)ひしハ、五合/舛(ます)で/木練柿(こぬりがき)はかるがごとくほたへしが、 00056710L3/押入(おしいれ)の/内(うち)がぐハた+くハつたり。/南無(なむ)三と/襖(ふすま)おし/明(あけ)見て 00056720L4あれバ、/釣仏壇(つりおまへ)の/位牌(いはゐ)がこけ/落(おち)て/破(めげ)たり。/権兵(ごんべ)へ殊のほか 00056730L5/気(き)にかける/時(とき)に、/口合(くちあい)よき/男(おとこ)すゝミ/出(いで)、こりや(四ノ八オ) 00056740L6/権(ごん)べ、よろこびやれ。いはゐめげたの/若松(わかまつ)さまじや。 00056750¥N6¥J 00056760¥X/天犀角(うにかうる) 00056770L9/天犀角(うにかうる)をたしなミ/持(もち)、われらのが/無類(むるい)/正真(せうじん)/吉瑞(きつすい)なりと、か 00056780L10ねて/自慢(じまん)しける。/或時(あるとき)/友達(ともだち)うち/寄(より)、/酒(さけ)のんでゐる所へ、三 00056790L11寸/斗(ばかり)な/百足(むかで)の/出(いで)ける。/達((ママ))だちのいふハ、/是&(これ+)、/貴様(きさま)の/天犀= 00056800L12角(うにかう=る)を/出(だ)し給へ。/正真(せうじん)ハ/毒(どく)むしのてきやくにて、/即座(そくざ)に/死(し)す 00056810L13といふほどに、/最(いざ)ためして見よふといへバ、/亭主(ていしゆ)、心得た 00056820L14りと、かの/天犀角(うにかうる)を取出し、/百足(むかで)に少し当さしつけ、いろ 00056830L15+とすれども、/何(なに)の/事(こと)もなく/這(はふ)てにげたり。そりやこそ 00056840L16/偽(にせ)よと(四ノ八ウ)/咄(どつ)と/笑(わら)へバ、/亭主(ていしゆ)かぶりをふつて、いや 00056850L17+、此うにかうるハ/正真(せうじん)にちがひないが、/但(たゞし)、その/百足(むかで) 00056860L18がにせ/物(もの)じやあろまいか。 00056870¥N7¥J 00056880¥X/衆道(しゆだう)の/氏神(うちがミ) 00056890M3ことし十四に/成(なる)/美(うつくし)い/少年(むすこ)を、/道修(だうしゆ)町の/何某(なにがし)へ/奉公(はうこう)に/遣(やり)し 00056900M4が、/此丁稚(このでつち)、おやの/本(もと)へをとづれ/来(きた)り、ふところより/朝鮮(てうせん) 00056910M5の大/人参(にんじん)一/両(りやう)ばかり/取出(とりいだ)し、/是(これ)をしんぜますといへバ、お 00056920M6や/共(ども)びつくりし、おのれハそれを/盗(ぬすん)でうせたか。/大胆者(たいたんもの)め。 00056930M7/旦那殿(だんなどの)へ/引(ひき)づゝてゆくと/引(ひつ)立れバ、むすこおろ+/涙(なミだ)で、 00056940M8わたくしは/盗(ぬす)ミやしませぬ。あのな、/奉公(はうこう)にいてから、/旦= 00056950M9那(だん=な)様が/可愛(かあい)がつて(九オ)くださりまして、/寐所(ねどころ)へ/御出(おいで)なさ 00056960M10んす。此/人参(にんじん)ハたしなミにもつてゐやといふて、おやぢど 00056970M11のにやれとて/下(くだ)さんしたと、はづかしさうに/言訳(いゝわけ)すれバ、 00056980M12おやぢ/肝(きも)つぶし、扨ハさうか。やれ+/勿躰(もつたい)なや、かたじ 00056990M13けなや。これ/嚊(かゝ)。/雪隠(せんち)の/神(かミ)様へ/灯明上(とうみやうあげ)や。 00057000¥N8¥J 00057010¥X/髭代(ひげしろ) 00057020M16/橋(はし)づめの/床(とこ)へ、やつこが/月代剃(さかやきそり)に来りしを、/髪(かミ)ゆひ、うか 00057030M17+とつりひげまで/剃(そり)こぼちければ、やつこはらを立、こ 00057040M18りやなんだ。おらハ/髭(ひげ)で/切米(きりまい)取。なぜすりおといた。びや 00057050M19くらい、きかないとねだりけれバ、せんかたなく/髭代(ひげしろ)とし 00057060¥P192 00057070L1て、ぜに(九ウ)(十オ挿絵)五〆文やりて/帰(か)へしけり。/其後(そのゝち)又 00057080L2かの/奴(やつこ)、此/床(とこ)へきたり、なんと、/剃(すつ)てくれないかといへば、 00057090L3/髪(かミ)ゆひ/身(ミ)ぶるひして、いや+。まだ/銭(ぜに)が五〆ハたまらぬ。 00057100L4やつこぬからぬ/顔(かほ)で、ちと/負(まけ)てやるべいといふた。 00057110¥N9¥J 00057120¥X/祭(まつ)り/乞食(こじき) 00057130L7/放子(どらうち)の/野等介(のらすけ)、つかいはたし/乞食(こつじき)と成、/祭(まつ)りの/余(あま)り物/心(こゝろ)が 00057140L8け、/道(だう)とんぼりを/喰物(もの)もらひあるく/所(ところ)に、むかふから、ち 00057150L9かづきの/女郎(ぢよらう)が/来(く)るを気のどくかり、どふせふぞとうろた 00057160L10へながらに思ひつき、/去色(さるいろ)ぢや屋の/店先(ミせさき)でうき/拍子(びやうし)(十ウ) 00057170L11にかゝつて、/罷出(まかりいで)たる/乞食(こつじき)ハよい、まかり出たるこつじき 00057180L12ハさあ、/罷出(まかりいで)たる/乞食(こじき)ハと、にわかの/躰(てい)にてくろめたり。 00057190¥N10¥J 00057200¥X/薬(やく)りき 00057210L15/或人(あるひと)すまふを見に/行(ゆき)しに、/何(なに)とかやいふすまふとりがまけ 00057220L16て、/腰(こし)のあたりを/四本(しほん)ばしらでしたゝかにうち、/目(め)をまハ 00057230L17したり。すまふ取ども/引(ひき)おこし、いろ+とすれど、ぐに 00057240L18やり+としてたわいなし。/見物(けんぶつ)の/中(なか)にたしなミのよい人、 00057250L19/丸(ぐハん)やく/一包(ひとつゝミ)取出しやれバ、やがて是をのますと、/俄(にハか)に/五躰(ごたい) 00057260M1ぬくもり、/次第(しだい)+に/火(ひ)のごとく、すつくと/立(たつ)てしやちば 00057270M2りたり。こりや/気(き)が/付(つい)た(十一オ)か。どふじや+といへ 00057280M3ど、ものもいわず、たゞしやちこばるばかりなり。大ぜい 00057290M4よつてがくやへつれゆき、とやかくして/本性(ほんしやう)つきけり。か 00057300M5の/丸薬(ぐハんやく)やつた人、扨も/希有(けふ)/希烈(けれつ)な/丸(ぐハん)じかな。さいぜんやり 00057310M6しハ/慥(たしか)にあさまの/万金丹(まんきんたん)じやがと、/紙入(かミいれ)取出し見れバ、/万= 00057320M7金丹(まん=きんたん)ハやはり有。めまいにやつたは、のふおそろしや、ひ 00057330M8がし口の/長命丸(ちやうめいぐハん)じや。 00057340¥N11¥J 00057350¥X/無常楽(むじやうらく) 00057360M11おやぢハ/一心不乱(いつしんふらん)にかんきんしてゐらるゝ時、むすこのど 00057370M12ら/打(うち)、/椽先(ゑんさき)でむさい所のひげを/焼(やき)しが、そのにほひ、はな 00057380M13ハだ(十一ウ)しく、おやぢの/鼻(はな)へふつと/入(いり)、/墓所(むしよ)の/死人(しにん)ほ 00057390M14うむる/嗅(かざ)とおもひ、/鉦(かね)たゝきながら、ハツア/無常(むじやう)じやな。/南= 00057400M15無(な=む)あミだ。 00057410¥N12¥J 00057420¥X/年(とし)わすれ 00057430M18/師走(しハす)ともいハずあそびあるく人、/新道(しんミち)で/牽頭(たいこ)もち二三人に 00057440M19ゆきあい、こりやおもしろい。さあ+、/浮瀬(うかむせ)で/呑(のミ)かけう 00057450¥P193 00057460L1といへば、/大壷(たいこ)ども/揉手(もミで)して、/旦那(だんな)。けふハゆるし給へと 00057470L2いふ。/旦那(だんな)きゝ、われらを/嫌(きら)ふな。おれでハもてぬか。い 00057480L3や+、おまへ様ハもて/過(すぎ)ますけれど、/今日(こんにち)ハごゆるされ 00057490L4ませ。フン。なぜそのやうにいふぞ。はい。あまり/気(き)がうき 00057500L5すぎます故、(十二オ)ちと/年(とし)わすれがてら、/寺参(てらまい)りをいた 00057510L6しますといふた。 00057520¥Y1軽口腹太皷四之巻終(十二ウ) 00057530¥Y1軽口腹太皷五之巻△目録 00057540M3/虎(とら)や/饅頭(まんぢう) 00057550M4丈六の/開眼(かいげん) 00057560M5口ごたへ 00057570M6/無筆(むひつ)やつこ 00057580M7/蓬(よもぎ)の/相談(さうだん) 00057590M8/熊野浦(くまのうら)(一オ) 00057600M9/金平(きんぴら) 00057610M10/大名気(だいミやうぎ) 00057620M11かけろく 00057630M12/東口(ひがしぐち) 00057640M13/七福神(しちふくじん) 00057650M14/大紋日(おほもんび)(一ウ) 00057660¥P194 00057670¥T1軽口腹太皷巻之五 00057680¥N1¥J 00057690¥X/虎屋(とらや)まんぢう 00057700L5/娘(むすめ)の/子(こ)を/行水(きやうずい)さし、まへを/洗(あら)ふとき、/乳母(うば)がいふやう、/御(ご) 00057710L6りやうにん様のハ、とんとまんぢうじやといへば、/此子(このこ)、 00057720L7いきすぎものにて、とらやのかといふた。 00057730¥N2¥J 00057740¥X丈六の/開眼(かいげん) 00057750L10四/天王寺(てんわうじ)/丈六(じやうろく)の/地蔵(ちぞう)/開元(かいげん)/供養(くよう)の/時(とき)、にハか/盲人(めくら)が/願(ぐハん)かけて 00057760L11/帰(かへ)りしに、/一眼(いちがん)ぽちとひらく。そのゝちお/礼(れい)まいりして、 00057770L12/地蔵(ぢぞう)のまゑにうつくまり、扨ありがたや(二オ)かたじけな 00057780L13や。わたくし/御無心(ごむしん)を申ました/所(ところ)、/早速(さつそく)/一眼(いちがん)ひらく。/今(ま)/一= 00057790L14眼(いち=がん)もひらきますを/待(まつ)ております。/南無地蔵尊(なむぢぞうそん)+とふし/拝(おが) 00057800L15む所に、ふしぎや/地蔵(ぢぞう)、あらたなる/御声(ミこへ)にて、/汝(なんぢ)よく/聞(きけ)。 00057810L16/我(われ)此度/一七日(いつしちにち)の/間(あいだ)に/開元(かいげん)あいすむ。しかるに/其方(そち)がたのミ 00057820L17しハ/開会(かいゑ)より四日/目(め)にて、/供養(くよう)の中日なり。それゆへやう 00057830L18+と我/半身(はんしん)に/性根(しやうね)/入(いり)たり。そこで/汝(なんぢ)が/両眼(りやうがん)とたのむ所を 00057840L19/一眼(いちがん)かなへたハ、/是(これ)そのときのおれがちから一ツぱいじや 00057850M1あつたと/宣(の給)ひける。(二ウ) 00057860¥N3¥J 00057870¥X/口(くち)こたへ 00057880M4大/和(まと)からはいでのでつちを、おやかたのいふやう、おのれ 00057890M5ハ/酒(さけ)のしやくさす/時(とき)、めんよう/立(たつ)。かならずたちおるまい 00057900M6としかつてゐる/折(おり)ふし、ゐんぎんな/客(きやく)のありけれバ、/亭主(ていしゆ) 00057910M7ていねいに/挨拶(あいさつ)し、やがて/盃(さかづき)を出し、三太に/酌(しやく)さす。三太 00057920M8郎、づか+とつげバ、/客(きやく)、おつとゝといふて/盃(さかづき)をあぐれ 00057930M9ば、/同(おな)じく三太も/立(たつ)たりけり。/親(おや)かたたまりかね、また/立(たち) 00057940M10おるかとにらミつくれバ、三太がいふやう、それでもあい 00057950M11つが/立(たち)おるものといふた。(三オ) 00057960¥N4¥J 00057970¥X/無筆奴(むひつやつこ) 00057980M14奴が/二人(ふたり)づれで/生玉(いくたま)/辺(へん)へ出けるが、/一人(ひとり)の/奴(やつこ)、/封(ふう)じたる/状(じやう) 00057990M15/一通(いつつう)ひろい、おしいたゞき、よきものひらつたと/悦(よろこ)へば、 00058000M16つれがいふハ、その/状(じやう)が/何(なに)になるものだ。ひらふた/奴(やつこ)ハ/無= 00058010M17筆(む=ひつ)にていふやう、/身(ミ)どもハ/久(ひさ)しく/国(くに)もとへたよりをせない 00058020M18から/幸(さいハい)だ。此状をやるべいといふた。 00058030¥P195 00058040¥N5¥J 00058050¥X/蓬生(よもぎ)の/相談(さうだん) 00058060L3/蓬生(よもぎ)が/相談(さうだん)し、あまり/春先(はるさき)から/生(は)へるゆへ、三月/前(まへ)にひき 00058070L4ぬかれ、/臼(うす)の/中(なか)でむごいめを見る。ことしハいつまでも、 00058080L5/地(ち)にかぶ(三ウ)りついてゐよと/言合(いひあハ)しけるに、いつの/比(ころ)よ 00058090L6り/生(は)へたふ/成(なり)、/談合(だんかう)がやぶれ、はへ/出(いづ)る。/中(なか)にもわれこそ 00058100L7とくひしばつてゐるよもぎも、たゞ/何(なに)ともなしに、づつか 00058110L8+++と、うつゝの/様(やう)にはへいで、是ハどふいふ事 00058120L9じやと/辺(あた)りを見れば、そのはづじや。/麻畠(あさばたけ)が/有(あ)つた。 00058130¥N6¥J 00058140¥Xくまの/浦(うら) 00058150L12/熊野浦(くまのうら)で/難風(なんぷう)にあひ、さもなごかりつる/大海(たいかい)/逆浪(さかなミ)つよくし 00058160L13て、/船人(ふなびと)もせんかたつきしにや、おの+/覚悟(かくご)し給へとい 00058170L14ふに/乗人(のりて)どもなきわめき、/念仏(ねんぶつ)やら/題目(だいもく)やら、/中臣(なかとミ)ばらい 00058180L15/経(きやう)(四ノ八オ)/陀羅尼(だらに)、/八宗(はつしう)/九宗(くしう)のしつぽく/煮(に)、/生(いき)た/心地(こゝち)な 00058190L16つかりける。/中(なか)にも/壱人(いちにん)、/住吉(すみよし)のかたへむかひ、/神力(しんりき)を/以(もつて)、 00058200L17此/浪風(なミかぜ)をしづめてたび給へ。住吉大明神++とせがむ 00058210L18にしたがひ、/風(かぜ)はおさまり、/二度(ふたゝび)/生(うま)れた/心地(こゝち)して、ミな 00058220L19+/悦(よろこ)びあへる/所(ところ)に、/白髪(はくはつ)たる/老翁(らうをう)一人小/船(せん)に/棹(さほ)さし、/網(あミ) 00058230M1ハおろさで、つりざほのいとゆう+とこぎ/来(く)る/気色(けしき)を見 00058240M2て、/一人(いちにん)きつと/心(こゝろ)つき、あれ+見給へ。あれこそ/住吉(すみよし)の 00058250M3/明神(ミやうじん)よ。さいぜんの/難風(なんふう)に、/勿躰(もつたい)なくもよび/出(いだ)しまいらせ 00058260M4し/信心(しんじん)、/神慮(しんりよ)に/通(つう)じつゝあらハれ給ひしものならん。ミな 00058270M5+/拝(おが)ミ給へや(四ノ八ウ)といふ内に、/互(たがひ)ひのふねハ/間近(まぢか) 00058280M6くなる。/乗合(のりあい)の/衆(しゆ)も/目前(もくぜん)に/明神(ミやうじん)を/拝(おが)ミ/奉(たてまつ)ることの/有(あり)がたや 00058290M7とふし/拝(おが)ミ+、/感涙(かんるい)をながす/所(ところ)に、/船中(せんちう)に/熊野(くまの)の/者(もの)があ 00058300M8つて、かの/翁(おきな)の/皃(かほ)を見、/大(おふ)きに/笑(わら)ひ、/拝(おが)む/事(こと)ハないぞや。 00058310¥G 00058320¥P196 00058330L1あれは/那知(なち)の/若衆(わかしゆ)あがりじやハいのよ。 00058340¥N7¥J 00058350¥X/金平(きんぴら) 00058360L4/石(いし)かけ/町(まち)の/何(なに)やとかやのていしゆ、/奉公人(はうこにん)にむごいおとこ 00058370L5/有(あり)。/折節(おりふし)/元朝(ぐハんてう)の事なるが、大/三十日(ミそか)の/懸方(かけかた)の/寄銭(よりぜに)を、/家内(かない) 00058380L6の/女郎(ぢよらう)どもにかたげさし、/蔵(くら)へはこバす所に、/冬(ふゆ)とし(九 00058390L7オ)/大坂(おふざか)から/仕(し)かへに/来(き)た/奉公人(はうこにん)ひとりがすこしも/手(て)つだ 00058400L8ハず。おやかたはらたて、/銭(ぜに)十〆ほど/縄(なわ)がらミにし、これ 00058410L9かたげてゆけといへバ、かのおやまが、いやじやぞへ。か 00058420L10たげる事ハなりませぬ。なぜならぬととがめたれバ、わし 00058430L11ハかた/三日(ミつか)/売(うつ)てゐますといふた。 00058440¥N8¥J 00058450¥X/大名気(だいミやうぎ) 00058460L14/歴&(れき+)の/御大名(おだいミやう)、/早朝(さうてう)に/茶道(さだう)を/御寐所(ごしんじよ)へめされて、/其方(そち)によ 00058470L15いものとらそとあれバ、/茶道(さだう)よろこび、/何(なに)をくださります 00058480L16といへハ、/夜前(やぜん)の/夢(ゆめ)に/富士(ふじ)の/山(やま)を見たが、おれハ(九ウ)(十 00058490L17オ挿絵)いらぬほどに、/其方(そち)に/遣(やら)ふ。 00058500¥N9¥J 00058510¥Xかけろく 00058520M1/冬(ふゆ)の/夜(よ)うちよりて/咄(はなし)けるが、かけろくに/成(なつ)て、/色&(いろ+)の/事(こと)を 00058530M2/言出(いひだ)す/中(なか)に、なんと/今時分(いまぢぶん)、/大峯山上(おふミねさんじやう)へまいる/者(もの)ハあろま 00058540M3いか。こりや/有(ある)まいといふ/所(ところ)に、ひとりすゝミいで、おれ 00058550M4がまいろといふ。はてめつぽうな。/今比(いまころ)ハ/天狗(てんぐ)どのゝ/住家(すミか) 00058560M5じやぞよ。それがてん。おれがゆけバ/参(まい)りやうがある。ど 00058570M6ふするぞととへバ、ゑさし/竹(だけ)にとりもちつけてゆくといふ 00058580M7た。(十ウ) 00058590¥N10¥J 00058600¥Xひがし/口(ぐち) 00058610M10/有徳(うとく)なる/人(ひと)の娘、/新町(しんまち)のひがし口を通り、/小間物(こまもの)や見せの 00058620M11/箱入(はこいり)の/物(もの)を見て、こしもとにさゝやき、あれハなにじやや。 00058630M12此/■(こしもと)、すいなもので、あい。あれハ/双六(すごろく)の/筒(つゝ)でごさんす。 00058640M13むすめのいふハ、わしハあれがほしハいの。おゝつがもな 00058650M14い。/何(なに)になされます。あの/筒(つゝ)でむして見たいハいの。 00058660¥N11¥J 00058670¥X/七福神(しちふくじん) 00058680M17/福人達(ふくしんたち)が/寄(より)あい、なんと、此やうに人に/福(ふく)をやるばかりで 00058690M18ハ/末(すゑ)がつまらぬ。ミなそれ+のすぎハいをして、/金銀(かね) 00058700M19(十一オ)をもうけためんと、/中(なか)にもゑびすハ/商(あき)なひ/功者(こうしや)な 00058710¥P197 00058720L1ゆへ、それ+の/所作(しよさ)を思ひつかれた。その/書付(かきつけ)/左之通(さのとをり)。 00058730L2△△△一△ゑびすハ△△△△△さかなや 00058740L3△△△一△/大黒(だいこく)ハ△△△△△△米△屋 00058750L4△△△一△/寿老人(ぢうらうじん)ハ△△△△△/目鑑(めがね)屋 00058760L5△△△一△/布袋(ほてい)ハ△△△△△△かるたや 00058770L6△△△一△/弁才天(へんざいてん)ハ△△△△△/琴(こと)/三弦(さみせん)のしなん 00058780L7△△△一△げほうどのハ△△△見せ/物(もの)の/太夫本(たゆふもと)(十一ウ) 00058790L8/毘沙門(びしやもん)、此かき/付(つけ)を見て、/甲(かぶと)の/鉢(はち)をかき、是ハしたり。わ 00058800L9れらも/相応(さうをう)のこと、いたしたいものじやにとあれバ、ゑび 00058810L10すの給ふやう、をゝさ。/気(き)づかひめされな。おもひつきが 00058820L11あるぞ。して、なにをいたさふととひ給へバ、そこもとハ 00058830L12ばくちの/掴(つかミ)がよかろか。 00058840¥N12¥J 00058850¥X/大(おほ)もんび 00058860L15/最中(さいちう)と/揚(あげ)や/入(いり)、いづれを見てもうつくしさ。八もんじのふ 00058870L16うぞくハさながら/天人(てんにん)の/巣立(すだち)ともいゝつべし。/若(わか)いしゆが 00058880L17/辻彳(つぢだち)して、なんと/松(まつ)ハけうといの。松ハ松のくらゐが/有(ある)ぞ 00058890L18や。それそこへも松が/来(き)た。松じや+などゝいふ/時(とき)、/荷(にな) 00058900L19ひ(十二オ)/棒(ぼう)のさきに、めし/篭裏(ごり)かつつけた/在所者(ざいしよもの)が、ふ 00058910M1しぎさふに、/申&(もうし+)と/呼(よび)かけ、松とハなんの事でござますぞ。 00058920M2はて、あの太ゆふを松といひます。/在所者(さいしよもの)しバらく/工夫(くふう)し、 00058930M3それなら太ゆふの/跡(あと)からついてゆく、あれ++、あの 00058940M4ちよつぽりとした/小女良(こめろ)ハ、/松茸(まつだけ)といひますでござますか。 00058950¥Q 00058960M7△△宝△暦△二△△△△△作△者△矢木ひれすけ 00058970M8△△△申正月吉日△△△△△心斎橋順慶町角 00058980M9△△△△△△△△△△△△△河内屋茂兵衛版(十二ウ) 00058990¥P198 00059000¥U噺本大系△第八巻 00059010¥T軽口福徳利 00059020¥G 00059030¥Y 00059040L16宝暦三年序 00059050L17故応斎玉花序 00059060L18半紙本五巻 00059070L19大阪府立図書館蔵 00059080¥Y富久徳利序 00059090M3目出度千代の春、年神棚の供物、戴く神酒には寿命をのべ 00059100M4屠蘇の酔には邪を除き、諸白に皺を延す、辛口に喉をなら 00059110M5させ、耳口に下戸を慰め、軽口には目を覚し、むだ口に夜 00059120M6を更す、兎角唯笑ふ門には福来ると、其よりどころに楽あ 00059130M7り。貧乏樽はやめにして、福徳利の口明、いざ一口づつ。 00059140M9△宝暦第三酉の長閑なる日 00059150M10△△△△△△△△△△△△△△△△故応斎玉花 00059160¥K〔註・「滑稽文学全集△第十一巻」に依る〕 00059170¥P199 00059180¥Y1軽口福徳利巻一△目録 00059190L3子の日の/奏者(そうしや) 00059200L4そさうな/年礼(ねんれい) 00059210L5あふき/箱(はこ) 00059220L6/仁王(にわう)もん 00059230L7/米(ちや(ママ))屋のはまり 00059240L8やつこのとれい(一オ) 00059250L9くさずり引 00059260L10ミふねがむしん(一ウ) 00059270¥T1軽口福徳利巻一 00059280¥N1¥J 00059290¥X子の日の奏者 00059300M5春のはしめの御礼とて、かミしもいためつけ、/万歳(まんさい)/扇(あふき)ざつ 00059310M6+と/門(もん)礼つとむるいそがしさ。ものもう。大黒や/福(ふく)右衛 00059320M7門、/年始(ねんし)の御礼申ますといへど、たれ出合て取次ものなし。 00059330M8ふしぎにおもひ/障子(しやうし)をあけてみれば、奏/者(しや)と見えし男、礼 00059340M9帳くりひろげながら/高(たか)いひきしてねてゐけり。どうりこそ 00059350M10と又高こゑに、福右衛門御礼申すといはれて、そこでやう 00059360M11+(二オ)目がさめ、大あくび二ツ三ツしながら、/何(なに)うそ 00059370M12斗といふた。 00059380¥N2¥J 00059390¥Xそさうな年礼 00059400M15かくれもなひつき米屋のそさう男、是も年始の御礼とて/上(かミ) 00059410M16下を着し、/先(まづ)ざうにまへにこゝらをつとめんとて出けるが、 00059420M17いかゝしたりけん、四五/軒(けん)礼しまふて、わが家の内をのぞ 00059430M18き、つき米屋/俵(ひやう)右衛門、御礼申入れますといひけるにぞ、 00059440M19女房もきもをけし、是内の人。こゝはそなたの家でござる。 00059450¥P200 00059460¥G 00059470M1あまりそさうなゆへ、家をも(二ウ)見ちかへ給ふかといへ 00059480M2ば、俵右衛門手をついて、いへ+。御盃ハはるながに仕 00059490M3リませうとて出られた。 00059500¥N3¥J 00059510¥Xあふぎ箱 00059520M6年礼/仕廻(しまふ)て家に帰り、けふはたれも礼にはござらぬかとい 00059530M7へば、/小女(こをんな)/罷出(まかりいで)、さきほど/供養(くやう)や/万蔵(まんざう)様が御出なされまし 00059540M8たが、はし箱にあふぎを入ておいてござりました。 00059550¥N4¥J 00059560¥X仁王もん 00059570M11いなかものと見えし、りちぎ一へんをかほに(三オ)(三ウ・ 00059580M12四オ挿絵)あらハしたる男、/浅草(あさくさ)/観音堂(くハんをんたう)の/寺中(じちう)を、あなたこ 00059590M13なたと見めぐり、山門の二王を、ふしぎそうに見あげ見お 00059600M14ろしけるが、そばなるおまへてうづ/売(うり)にむかひ、こゝなま 00059610M15つかいでくろぼうは、あんといふ物でおんじやり申ととふ。 00059620M16/手水売(てうづうり)/聞(きゝ)て、それはお仁王なりといへば、いなかもの、打 00059630M17うなつき、/扨(さて)ハこちらのハ、/堂(だう)三郎てこさるべいといふた。 00059640¥K〔註・次ページの挿絵は、巻二・二丁裏のもの〕 00059650¥P201 00059660¥G 00059670¥N5¥J 00059680¥X米屋のはまり 00059690L14/黒羽二重(くろはふたへ)に/毛(け)どろめんの/羽織(はをり)、/茶宇嶋(ちやうじま)の(四ウ)こり+し 00059700L15たるはかまに、金作りの大小、その外ゐんろうきんちやく 00059710L16/足袋(たび)せつたまで、ひとつとしてあたなハなく、出立たるさ 00059720L17ふらい、伊勢丁のある米やへ来り、こめとゝのへんよしい 00059730L18へば、手代たち出、/先(まつ)おあがりなされませ。それお/茶(ちや)よた 00059740L19はこよなど、あきなひ口にいひちらし、わりひざにもミで 00059750M1して、お米はいかやうなるが御/望(のそミ)にござりますといふ。さ 00059760M2ふらひ聞、とかくふえて/甘(うまい)のが/買(かい)たい。手代聞、ふえてう 00059770M3まい(五オ)のハ白河がよふござりますといへば、しからバ 00059780M4それをとゝのよふ程に、そのひやめしがあらバ、一はい/味(きい) 00059790M5て見たいの。 00059800¥N6¥J 00059810¥X/奴(やつこ)のどれい 00059820M8さるいしやの/玄関(けんくハん)へ、いとびんにつりゝんひげ、はなの下 00059830M9にはくしはらひ、いかな事一寸もひけハとりそもなひ、め 00059840M10つたにつよそふなるやつこ、/急(きう)なることく見えて、三/里(り)よ 00059850M11り/血(ち)の出るもかまハずかけ来りしか、/余(あまり)せいたるゆへにや、 00059860M12たのミませうといふをわすれ、(五ウ)どれいとぞ申けり。 00059870M13いしや聞ておかしく思ひ、/弟子(でし)をよびて、何ものなりや。 00059880M14見てまいれといふ。でし承り、/障子(しやうじ)のすきよりのぞきしが、 00059890M15たち帰りて申やう、どれいといふたこそ、もつともなれ。 00059900M16ほうに/反点(かへりてん)のひげがござりますといふた。 00059910¥N7¥J 00059920¥Xくさずり引 00059930M19/世間(せけん)ひろふ出入する男とつれたちて/行(ゆく)に、むかふよりれき 00059940¥P202 00059950L1+と見えたるさふらひ、かの男を見るとひとしく/馬(むま)より 00059960L2おりんとするを、(六オ)やはりめしませとゝめる。いやお 00059970L3りませう。ひらに御馬上+と、やう+とめてたがひに 00059980L4わかれぬ。つれの/男(おとこ)みて、さて+、今の/侍(さふらひ)が馬よりおり 00059990L5んとするを、そなたがおろさじととめたるいきほひ、その 00060000L6まゝ/絵(ゑ)にかいた五郎とあさいながくさずり引じやといへば、 00060010L7かのおとこ打わらひ、よい見たてかなといふ時、又むかふ 00060020L8より馬のり一人来る。是も/知(しつ)た侍じや。此たびハ/一(ひと)きわ手 00060030L9ぎハよふとめて見せうと立むかへハ、かのさふらひ、見つ 00060040L10けると(六ウ)いなや、馬よりおりんとするを、おろさしと 00060050L11とめしが、いかゝしたりけん、さふらひ、つゐにおりけれ 00060060L12ば、男、そのまゝ馬の口に取つき、ぬからぬかほにてつれ 00060070L13にむかひ、是+、しやのくどうしで、ゆるしやれ+。 00060080¥N8¥J 00060090¥Xミふねがむしん 00060100L16さりとははまるこひの/渕(ふち)。色のみなとやミふねとて、吉原 00060110L17中にかくれなき/遊君(ゆふくん)に、ふかくなじミてかよふおとこ/梶(かぢ)と 00060120L18いへる大臣、折しも/入梅(つゆ)の/中(うち)とて、ふりくらしたる雨の/夜(よ) 00060130L19に、(七オ)ふたりどんすのよぎの内、みふね、大じんにい 00060140M1ふやう、わしがきつふほしゐもの有。くださんなら申ませ 00060150M2ふといふに、さすがひかれぬ/梶(かぢ)が心、/何成(なになり)ともいやれ。の 00060160M3そミにまかせんといへば、こは忝し。さりなから、さすが 00060170M4いはんもはづかしけれハ、/書(かい)て見せませんと、/梶(かぢ)が/腹(はら)のう 00060180M5へにゆびにて、かねとかゝんとすれは、大しん、そのまゝ。 00060190M6あゝこそぼひ。よしやれ+。(七ウ) 00060200¥P203 00060210¥Y1軽口福徳利巻二△目録 00060220L3かみなりの色狂ひ 00060230L4六味ちわうぐハん 00060240L5ちかめのそさう 00060250L6あふなひ/碁(ご) 00060260L7/干葉飯(ひばめし) 00060270L8/狐(きつね)の/返報(へんほう)(一オ) 00060280¥T1軽口福徳利巻二 00060290¥N1¥J 00060300¥Xかミなりの色狂ひ 00060310M5あるとしのなつ、にハかに夕たちしきりにふりて、しやぢ 00060320M6くをなかすといなや、いなつまひか+とかゝやいて、な 00060330M7るかミのをとすさましきに、みな+きもをひやしける折 00060340M8から、そさうなるかミなり、くもふミはつして、大地へす 00060350M9てんどうとおちられけるに、そのまゝ天上せんとおもハれ 00060360M10しが、いや+此所へまたおちん事もふぢやうなれば、し 00060370M11ハらくとう(二オ)(二ウ挿絵)(又二オ挿絵)りうし、げかいの 00060380M12有さまもながめばやとて、まづ/浅草(あさくさ)のかミなり門へゆき、 00060390M13あんなひをこハれける。ていしゆのかミなり出あひ、さて 00060400M14+めつらしの御出。まづ+是へ御通りなされよ。なに 00060410M15かといたし、ひさしう御めにかゝらぬが、いよ+御そく 00060420M16さいそうなる御かほ見まして、ちんてうにそんじます。し 00060430M17てまづ、たゝいまの御出ハなにぞ御用ばし有ての事かとと 00060440M18へば、されハこん日おもひよらず此地へおちましたが、さ 00060450M19いはひ貴所にもおなつ(又二ウ)かしく、又此地のやうすを 00060460¥P204 00060470¥G 00060480L12も一/見(けん)つかまつりたく、かれこれそんじつゞけてとうりう 00060490L13いたせしといふに、ていしゆのかミなりほゝゑみて、やう 00060500L14こそ+御とうりう。一/月(げつ)も二月も御やどハわれらにまか 00060510L15せ給へ。さいはひ、こん日ひばんなれば、うさをはらさん 00060520L16いろのさとへ、いざ御出とすゝめられ、うかれいでたつ。 00060530L17両のつのづきんにかくしいそぐみち、ほとなくよしハらに 00060540L18なりぬれば、こゝかしこと見めくり、いなつまやといふあ 00060550L19げやへはいり、けふハちん(三オ)きやくをつれてきた。す 00060560M1いぶんちさうをたのむといへば、ていしゆ両人がかほをつ 00060570M2く+見て、おまへがたのやうなきやくハどうもなりませ 00060580M3ぬといふを、それはつらい。かたちこそおそろしけれ、心 00060590M4は/人間(にんけん)よりもやハらかな事じや。ひらにたのむといひけれ 00060600M5ハ、ていしゆかぶりをふり、いかなこと+。そのやうに 00060610M6たいこかおほふてハ、いくらてもそんがゆくとて、むりに 00060620M7おひ出した。 00060630¥N2¥J 00060640¥X六味ぢわうぐハん(三ウ) 00060650M10是もなつの事なるに、井の水ことの外かわききつて、みな 00060660M11人のなんぎ、こゝにきハまり、われさきにとはしりまハり、 00060670M12つてをもとめて水をもらひける。折ふし、さるおろかなる 00060680M13おとこ、わがまへの井戸へ六/味(み)ぢわう丸をひた物なけこみ 00060690M14けるを、何のためそととひければ、かのおとここたへて、 00060700M15されば、この/地黄丸(ぢわうくハん)ハ/井気(せいき)をさかんにして、水をますと聞 00060710M16しゆへ、けさからひたもの、もちひますが、いまたげんが 00060720M17見へませぬと(四オ)いはれた。 00060730¥N3¥J 00060740¥Xちか目のそさう 00060750¥P205 00060760L1かくれもなきちかめの/男(おとこ)、/手紙(てがミ)したゝめ/下(げ)人をよんで、此 00060770L2てがミ、伊兵衛とのへもてゆけといひ付けるに、下人ミて、 00060780L3もしたんな様。伊兵衛様とハごさりませぬ。平兵衛と/書(かい)て 00060790L4ござりますといへば、どれといふて、てがミを見、さて 00060800L5+そさうや。伊の字のにんべんをば、はなにかいたハ。 00060810L6(四ウ) 00060820¥N4¥J 00060830¥Xあぶなひ/碁(ご) 00060840L9/碁(こ)をうちけるに、そはよりなにもしらぬおとこ見て、それ 00060850L10あぶなひ+といふを、とこかあぶなふごさるととひけれ 00060860L11ば、いや、此すみのいしが、したへおちそふてあぶなふこ 00060870L12ざると。 00060880¥N5¥J 00060890¥X/干葉(ひば)めし 00060900L15おはうちからしたる/浪人(らうにん)、ひさしふりにてさるところへき 00060910L16たりけるに、ていしゆたち出、よくこそ御いてと、しばら 00060920L17くはなしけると(五ノ十五オ)ころへ、/女房(にようばう)/手(て)づからせんを 00060930L18もちいで、らうにんが/前(まへ)へすゑ、さて+ひさしぶりでの 00060940L19御出に、なんそ御ちそうとはぞんじますれど、をりふしな 00060950M1にもござりませぬ。これハけさたべしひばめしののこりに 00060960M2て候。さりとはそまつなものなれとも、御こゝろやすきに 00060970M3まかせ出しました。御しぶんもよふござりませふに、ちと 00060980M4あがりませといふに、らうにん、にはかにがんしよくかは 00060990M5り、なにとやらん/無興(ぶけう)なるていなれバ、ていしゆ大きにめ 00061000M6いわくし、いやはや女房(五ノ十五ウ)めが、あまり御こゝ 00061010M7ろやすきにまかせ、そそうなものをあげましたゆへ、御は 00061020M8らたちハ御もつともてこさります。こゝハ/拙者(せつしや)に御めんし、 00061030¥G 00061040¥P206 00061050L1御かんにんなされくたされと、/再三(さいさん)わびこと申けるに、ら 00061060L2うにんかしらをふり、いや+、御ていしゆさまや御/内方(ないハう) 00061070L3にむかひ、まつたくはらハたちませぬか、くちをしきハ此 00061080L4ひはめし。いかにまいにちくへバとて、このやうにさき 00061090L5+まてつゐてきたり、身ともにくわいふんをうしなわせ 00061100L6る。にくゐやつか(十六オ)なといはれた。 00061110¥N6¥J 00061120¥X/狐(きつね)の/返報(へんほう) 00061130L9/両国(りやうごく)はしのほとりに、よな+きつねばけて、ゆきかふ 00061140L10人をおびやかしけるを、かミゆひどこのわかひものども、 00061150L11にくきことにおもひ、有夜二三人いひあはせて、かのきつ 00061160L12ねをとらへ、をのれ、このあいだ人をばかしてめいわくさ 00061170L13するにくいやつのと、いそぎしばりからげ、うてよたゝけ 00061180L14よなんど、さま+にてうちやくし、/以後(いご)をたしなめとて、 00061190L15すてににがさんとせ(十六ウ)しが、おもへば+、たゞに 00061200L16がすもむねんなれとて、やがてとうけんびたいにぬきあげ 00061210L17て、をひはなしけり。それより四五日すぎてある/夜(よ)、かミ 00061220L18ゆいどこの/戸(と)をたゝくものあり。たそととへば、いや、わ 00061230L19たくしハ/先日(せんじつ)のきつねでこざります。御かげにてひたいハ 00061240¥G 00061250M12ぬいてもらいましたが、こよひまた御/隙(ひま)にござりますなら、 00061260M13何とぞゑりをぬいてくだされませ。(十七オ) 00061270¥K〔註・挿絵中、巻三の八丁表・四丁表の分入る〕 00061280¥P207 00061290¥Y1軽口福徳利巻三△目録 00061300L3子ゆへのやミ 00061310L4/今(いま)つぎのふ 00061320L5ぬすみの/当話(とうわ) 00061330L6/痔(ぢ)の見たて 00061340L7しゆびん 00061350L8はいかいじまん(一オ) 00061360L9/無筆(むひつ)の/使(つかひ)(一ウ) 00061370¥T1軽口福徳利巻三 00061380¥N1¥J 00061390¥X子ゆへのやミ 00061400M5/本郷(ほんがう)のほとりに、福田屋/富(とミ)右衛門とかや大がねもちの/惣領(そうれう) 00061410M6に、銀太郎といふもの有。心はうらつにしてあばれあるき、 00061420M7ふだん、すもふをこのミて、/奥(をく)の手のこらず/伝授(でんじゆ)しけれバ、 00061430M8いかなるちからじまんのものも、かれにてきとふ事なりが 00061440M9たし。それゆへ、をのづから/世(よ)にこわきものなしと思ひて、 00061450M10/親(おや)のいけんするをもかまハヾこそ、おや富右衛門もあきれ 00061460M11はて、ふびんながら、とうぶんこらしめのためにとてかん 00061470M12(二オ)どうし、家をおひ出しけるに、あるとき、となりの 00061480M13人きたりて申やう、これの銀太郎どのこそ、今ハろう+ 00061490M14の身となり、ふか川三十三間堂にて、此間/勧進(くハんじん)ずまふのし 00061500M15ばゐたちしが、そのしばゐの大/関(せき)になられましたといふに、 00061510M16にくしとは思へ共、子ゆへにまよふおやのミの、ひたすら 00061520M17なミだにむせびしが、心にきつとおもふやう、そのしばゐ 00061530M18へゆき、よそながら銀太郎めがそくさいなるかほを見て、 00061540M19もしも心のなをりしならば、かんどうをゆるさんと、その 00061550¥P208 00061560¥G 00061570L12あくる日ふか川(二ウ)にいたり、かのしばゐへはいり、い 00061580L13まやわが子の出るかと、よのすまふにハ目もかけず/待(まち)いた 00061590L14る所に、十三番めにより/方(かた)より、いだてんとつ衛門といふ 00061600L15七尺ばかりの大おとこ、ゆらり+とまかり出、ちからあ 00061610L16しふミならし、/歓(くハん)進もとをとつてハなげ+しける程に、 00061620L17のこりずくなになりにけり。今ハたまらず銀太郎、はやぶ 00061630L18さ/笹(さゝ)之助と/名(な)をかへ、すゝみ出て、かれととりけるにこそ、 00061640L19富右衛門/歯(は)をくひしめ、大あせをながして、わき目もせず 00061650M1見つめ、何とぞ銀太郎(三オ)(三ウ挿絵)(四オ挿絵)め、かて 00061660M2かしとおもふ折から、とつ衛門、ちからにまかせておしふ 00061670M3せむとするを、笹之助、八十八手をくだき、つゐにとつゑ 00061680M4もんを、まつさかさまになげたりけり。よりもみかたも一 00061690M5同に、さてもなげたり笹之助。おやハないか+とほめけ 00061700M6れば、富右衛門、あまりの事のうれしさに、おやハわたく 00061710M7しでこざりますとてかけ出た。 00061720¥N2¥J 00061730¥X/今(いま)つぎのふ 00061740M10/松(まつ)むら/能登守(のとのかミ)といふ/筆(ふで)屋、わが子の/名(な)をバ(四ウ)/菊王(きくわう)丸と 00061750M11つけたり。又其地ぬしに仁助といへるおとこありしが、つ 00061760M12ね※此/筆(ふて)しやうばゐをうらやましくおもひ、三月五日の 00061770M13/出(で)かわりより、すぐに能登守がでしとなりけるに、菊王丸 00061780M14がいへるは、能登守のでしに、仁介とはいはれまゐほどに、 00061790M15つぎのぶと名をかへやといふ。仁介きゝ、心ハいかにとと 00061800M16ひければ、はて、のとのかミの/大(おほ)やにいられたゆへに。 00061810¥N3¥J 00061820¥Xぬすみの/当話(とうわ)(五オ) 00061830M19小ぬすみの源六といふおとこ、/品川(しながわ)のいろぢや屋にとまり、 00061840¥P209 00061850L1あさのなごりのかへるさに、そつとからかねのたばこぼん 00061860L2をぬすみ、せなかにかくして/出(いで)けるを、女はやくも見つけ 00061870L3て、そのまゝかけいで、これ、かへらんすかと、せなかを 00061880L4たゝけば、ぐハんとなる。これはなんでごんすととハれて、 00061890L5源六、はつと思ひながら、そしらぬふうにて、いや、どら 00061900L6のまねしてあそぶ。 00061910¥N4¥J 00061920¥X/痔(ぢ)の見たて(五ウ) 00061930L9さん※ぢのおこりけるまゝ、いしやをよびてやうすをか 00061940L10たり、ミやくなどとらせけるに、/寸鉄(すんてつ)、とくとかんがへ、 00061950L11これは/大切(たいせつ)のぢでござるによつて、わたくしのくすりハ、 00061960L12ゑしんぜますまいといふを、なにとぞ御じひにたのミあげ 00061970L13ますと、やう+にねがひて、くすりをもらいぬ。さて此 00061980L14ぢハなにと申ぢなれば、かほど大切にハござるととふ。寸 00061990L15鉄きゝ、さればこのぢハ、なんぼでもなをらぬ、しでのや 00062000L16まぢといふでござる。(六オ) 00062010¥N5¥J 00062020¥Xしゆびん 00062030L19/瀬(せ)戸物やへいなかものきたりて、さま+のものをとゝの 00062040M1へけるに、/溲瓶(しゆびん)を見て、これハてうほうなものかなとて、 00062050M2/十(とを)ばかりもとめけり。ていしゆも手代も、ふしぎにおもひ、 00062060M3十までハなにになさるととふ。いなかものきゝて、われら 00062070M4が国にておほばんぶるまひのとき、そばきりをうち申すが、 00062080M5これを壱人まへのからみつぎにいたそふとぞんじて/買(かい)申た。 00062090¥N6¥J 00062100¥Xはいかいじまん(六ウ) 00062110M8/徳入(とくにう)とかやはいかいずきのらくぼうず、ある夜おなじ/友(とも)二 00062120M9人とつれだちて/会(くわい)よりかへりけるが、ひとりのともがいふ 00062130M10やう、わたくしが/宅(たく)ハこれてござる。かさねて御目にかゝ 00062140M11らふと、いとま申てわかれぬ。徳入ミて、いま壱人のつれ 00062150M12にむかひ、あいつハひさしゐすきなれども、いかひ/下手(へた)で 00062160M13ござるのといへば、つれも、さやうでござるなどあひさつ 00062170M14するうち、いや、わたくしやどハこれでござる。そのうち 00062180M15といふて、これもわかれぬ。いまハ徳入ひとり(七オ)にな 00062190M16りて、下人にいふやう、いまのやつもひさしゐ下手じやが、 00062200M17三人のうちにてハいづれが上手じやとおもふぞ。六介きゝ、 00062210M18わたくしはなにもぞんじませぬが、とかく人より/跡(あと)にのこ 00062220M19つた御かたが御/上手(じやうず)でござりませふ。 00062230¥P210 00062240¥N7¥J 00062250¥X/無筆(むひつ)の/使(つかひ) 00062260L3/無筆(むひつ)なおとこ、/状(じやう)を五つ六つことづかりけるが、/名(な)がきが 00062270L4しれぬゆへ、どの状がいづちへゆくやらしれねど、てんほ 00062280L5のかわと思ひ、まづ/近所(きんじよ)からしまハんとて、三町めの/伊(い) 00062290L6(七ウ)(八オ挿絵)/与(よ)屋へしかかり、あんないこひて状ひとつ 00062300L7とりいだし、これは/京都(きやうと)よりことづかりましたとてわたし 00062310L8けるに、とりつぎのおとこ見て、これは名がきがちがいま 00062320L9したとかへす。またひとつ出しけれバ、これもそでないと 00062330L10てかへし、とりつぎいふやう、こなたハ無筆そうな。その 00062340L11状どもミないだしてミせたまへといへば、かの無筆、かし 00062350L12らをふり、状をミな出さしておゐて、なかでよきのを、よ 00062360L13りどりにせふといふ事か。それハなりませぬ+。(八ウ) 00062370¥Y1軽口福徳利巻四△目録 00062380M3/目(め)見へおとこ 00062390M4くし/田(だ)川 00062400M5/疫病(やくびやう)のまもり 00062410M6さゞゐのかはり 00062420M7五十から 00062430M8/徒(いたづら)も人による(一オ) 00062440M9/曽根崎(そねさき)/心中(しんちう) 00062450M10かうしんまち(一ウ) 00062460¥P211 00062470¥T1福徳利四 00062480¥N1¥J 00062490¥Xめ見へおとこ 00062500L5三月四日のなミだ雨、一/年中(ねんぢう)しかりとをした三/介(すけ)も、ひつ 00062510L6にあしだをからげつけ、やぶれすげがさに/古手(ふるて)ぬぐひ、き 00062520L7れわらぢまでとりそろへ、なにひとつわすれもせず、一し 00062530L8よたいせなかにをひ、もしおかミ様。もふやどへさがりま 00062540L9す。いままでハ/何(なに)かと、りよぐハいばかり申あげました。せ 00062550L10つかく御きげんよふござりませと、ひごろとハちがふてし 00062560L11ほ+と(二オ)したる/口上(こうじやう)に、さすがなじミの事とて、あ 00062570L12ハれにかなしく、ずいぶんまめでいよ。そのうちとをらバ 00062580L13よるやうになど、/李花(りくハ)/一枝(いつし)/雨(あめ)をおびたる/女房(にうぼう)が/目(め)つき。な 00062590L14ミだもろいと/跡(あと)にてハ大わらひ。ほどなくかはりきゝたつ 00062600L15るに、さるところより/目(め)見へおとこきたるをたちいでミれ 00062610L16ば、ひげをじまんの大やつこ、/爰(こゝ)をはれと/出(いで)たち、あたり 00062620L17をにらんでひかへたり。そちハ/奉公人(ほうこうにん)か。/名(な)ハなにといふ 00062630L18ぞ。/門内(もんない)と申まらするといふ。/旦那(だんな)おどけて、なぜ門(二 00062640L19ウ)内といふといへば、やつこうろたへ返事せぬを、いや 00062650M1さ。どふして門内じやといはれて、やつこ、じうめむつく 00062660M2りながら、こんのだいなしでごわります。 00062670¥N2¥J 00062680¥Xくしだ川 00062690M5市助、仁介、三四郎、/同行(どうぎやう)三人のぬけ参り。もらい+のな 00062700M6が/道中(どうちう)。やうやく日をかさねて、いせのくしだ川につきた 00062710M7り。をりふし水かさまされりと見えて、さきへわたれる人 00062720M8をミれば、かたのほとりまで水つきけり。(三オ)市すけい 00062730¥G 00062740¥P212 00062750L1ふやう、ミな、あれをみよ。おとなさへあのとをりなれバ、 00062760L2ましてわれらハわたられまい。ゐかゞせん。きのどくやと 00062770L3いふを、仁介きゝて、しや、なにほどの事あらん。大神宮 00062780L4の御りしやうにまかせ、いのちをすてゝこすべきに、など 00062790L5かわたらでをくべきかといさみすゝむに、ふたりの子ども、 00062800L6いままでしほれし心より、にはかにいさむくしだ川。三人、 00062810L7手に手をとりくみて、ざんぶと入てこしけるに、ふかしと 00062820L8思ふところもなく、やす+(三ウ)とむかいのきしにつき 00062830L9けれバ、三人、めとめを見あはせて、さて+しんりよの 00062840L10御めぐミ、あら有がたやかたじけなやと、らいはいし、し 00062850L11ばらくやすらひいたりしに、さいぜんわたりし人を見れバ、 00062860L12いまだ川の中にありしが、やう+としてあがるをミるに、 00062870L13ふかきこそどうり、いざりであつた。 00062880¥N3¥J 00062890¥X/疫神(やくじん)のまもり 00062900L16あるとし、やくびやうはやりて、諸人なやミけるまゝ、/家(いゑ) 00062910L17+にやまぶしをたのミ、やくびや(四オ)(四ウ挿絵)(五オ挿 00062920L18絵)うよけのきとうをして、ふだまもりをもらひ、かど 00062930L19+にはりて、やくしんをふせぎけり。それをさるしはき 00062940M1おとこ、うらやましくおもひけれど、もとよりきとうをた 00062950M2のまバ/礼銀(れいぎん)やらでハすむまひが、まもりハほしゝ礼銀ハを 00062960M3しゝ。いかゞせんとあんじけるが、しよせん人の門にをし 00062970M4たるまもりをぬすみとり、わが家にはりてもおなじ事なら 00062980M5んと、そのよ、ひそかに人の家にをしてあるふだをめくり 00062990M6とり、わが/戸(と)にはりてをきたりしに、そのあくるあさ(五ウ) 00063000M7となりの人、ふとかの/戸(と)をミれば、かしだなありと、はり 00063010M8がミしてあり。ふしぎにおもひ、いそぎていしゆをたゝき 00063020M9をこし、あまりこなたがあさねするゆへ、さだめて子ども 00063030M10のいたづらならん。戸にかきつけをしてをゐたわといへば、 00063040M11ていしゆあくびしながら、それハわれらがはりたるやくび 00063050M12やうのまもりじやといふ。いや+、まもりならバ、かし 00063060M13だなとかくはずはあるまいと、ひきまくりてミせれバ、か 00063070M14のおとこ、きもをつぶしながら、ぬからぬかほにて、(六オ) 00063080M15いや+、それにハこゝろがある。やくじんがこれを見た 00063090M16らバ、この/家(いへ)にハぬしかないと思ひ、はいるまひとて、わ 00063100M17ざと、かしだなありとかきました。 00063110¥N4¥J 00063120¥Xさゞゐのかはり 00063130¥P213 00063140L1とつとやまがのつち/百性(ひやくしやう)、/江戸(ゑど)けんぶつのためとて、ちい 00063150L2んをたづねてきたり、四五日とうりうしけるに、あるとき 00063160L3のりやうりに、さざゐのつぼいりをしていだしけり。もと 00063170L4より山家そだちなれば、さゞゐを見しらず。たゞ(六ウ)く 00063180L5ふものとこゝろえて、やがて、ふたもとらずにかじりけり。 00063190L6あるしおかしく、もし、それはふたをとりて、なかのみば 00063200L7かりくふ物よとおしへけれバ、いなかものおどろき、さて 00063210L8+、ぞんぜぬ事とて、/大事(だいじ)の/御道具(おどうぐ)に、はがたをつけま 00063220L9したといひしもおかし。 00063230¥N5¥J 00063240¥X五十から 00063250L12かごやりましよといふを、めぐろまで/何(なに)ほどといへば、も 00063260L13ゝちどりでやりましよといふ。これハとりの/名(な)でくハせを 00063270L14るとおもひ、四十(七オ)からでまけよといへどまけず。そ 00063280L15んなら五十からかといへば、まけましよといふにぞ、やが 00063290L16てかごにとりのり、ゆくともなしにめぐろにつきぬ。かご 00063300L17よりをりてふところをさぐるに、をりふしぜになかりけれ 00063310L18バ、壱二匁ありけるかねをとりいたし、こまどりなれども 00063320L19とやりしかば、かごかき大きによろこび、これハだんな。 00063330M1おけつかうと、にはとりのまねをした。 00063340¥N6¥J 00063350¥Xいたづらも人による 00063360M4わが子の事といへばよねんもなきおとこ、(七ウ)(八オ挿絵) 00063370M5あるとき、よ所よりかへり、ざしきのかべをミれバ、いろは 00063380M6にほへとと、すみぐろにまがりくねつた筆のあとを、ミる 00063390M7とひとしく大にいかり、そのまゝ市介をよびて、をのれ、 00063400M8/留守(るす)させるハなにのためぞ。これ見よ。かべうちはすみだ 00063410¥G 00063420¥P214 00063430L1らけになつた。なにものゝしわざなれば、かやうににくさ 00063440L2げな事ハしたぞ。まつすぐに申せと、ことのほかにはらた 00063450L3てゝいふ。市すけきゝ、それはおまへの/御留守(おるす)のうち、与 00063460L4太郎さまがわやくになされましたといふにそ、た(八ウ)ち 00063470L5まちきげんをなをし、さてハ与太郎かかいたか。はてさて 00063480L6きような手の。 00063490¥N7¥J 00063500¥X/曽根崎(そねさき) 00063510L9そねざき心中ハ+とうりあるきけるを、何ものぞと、や 00063520L10がてよんでミたれハ、なまくじらなり。これハいかにとと 00063530L11ひけれバ、くじらうりきゝ、さればこのくじら、もりにて 00063540L12死ましたゆへに。 00063550¥N8¥J 00063560¥Xかうしんまち 00063570L15かうしんまちとて、わかきものどのあつまり、上るり、せ 00063580L16つきやう、やくしやのこハいろ、/野路(のろ)(九ノ十五オ)/麻(ま)のま 00063590L17ね、かしまのことふれ、よたかのふうなど、さま※のげ 00063600L18いを、/上座(かミざ)よりじゆんのまわりにいたしけるとき、ばつざ 00063610L19に何もしらぬおとこあり。かれがばんになりければ、人& 00063620¥G 00063630M12さあ+何ぞ所望+といはれ、めいわくそうなかほつき 00063640M13にて、ついたちて、かべへひつたりとだきつきたり。人& 00063650M14見て、それハなにのまねそととふ。されバくものまねじや。 00063660M15(九ノ十五ウ) 00063670¥P215 00063680¥Y1軽口福徳利巻五△目録 00063690L3きつね小/僧(そう) 00063700L4高砂の/浦(うら) 00063710L5小人しま 00063720L6/勘(かん)の/聞違(きゝちかひ) 00063730L7手びやうし 00063740L8そのまゝの/猫(ねこ)(一オ) 00063750¥T1軽口福徳利巻五 00063760¥N1¥J 00063770¥Xきつね小僧 00063780M5山でらの小僧、入あひのかねつくころ、ようじありてさと 00063790M6へくだりけるを、かたハらにゐたるきつね、そのまゝでつ 00063800M7ち三助とばけてかけきたり、小ぞうにむかひ、もしおしや 00063810M8うさまの、日くれにお小僧ひとりハ心もとなひほどに、わ 00063820M9れもともにをいついてゆけとおほせられますゆへまいりし 00063830M10といふを、小僧はやくきつねとさとり、よくこそきて(二オ) 00063840M11たまふたれと、うれしさうなるかほつきして、みち+は 00063850M12なしもてゆく。小僧ちとなぶりてみんとおもひ、これ三助。 00063860M13此あいたかしたる三百文のぜに、今日あいすむはづなるに、 00063870M14なぜかへさぬといはれて、きつね、まことゝおもひ、なが 00063880M15+かたじけなしと、ふところよりいだしてかへす。小ぞ 00063890M16う、またきのふかしたる金二/朱(しゆ)、これもたゝいまとらねバ 00063900M17ならぬと。きつね又ぜひなくかへす。又小僧、四年あとに 00063910M18かしたるひぢりめんの(二ウ)したおび、これもかへせとい 00063920M19ふにぞ、さすがのきつねもあきれはて、これハならずとに 00063930¥P216 00063940¥G 00063950M1げうせぬ。そのあくる日、小僧さとよりかへるに、かのき 00063960M2つね、はやくも見つけて、よのきつねにむかひ、あの小僧 00063970M3がとをるなら、かならすかならず、まゆげにつばきをぬり 00063980M4ややといふた。 00063990¥N2¥J 00064000¥X高砂のうら 00064010M7よふけ人しづまりて、ばんしう高砂のうらをも一/見(けん)せばや 00064020M8と存候と、大きなる(三オ)(三ウ・又三オ挿絵)こゑにてうたひ 00064030M9けるを、おりふし、ばん太郎ねみゝに、ばんじうといふを 00064040M10きゝつけ、そのまゝたち出て見ければ、うたひなり。一は 00064050M11いくふたとおもへとも、ぬからぬかほにて、又よきついて 00064060M12なれば、せうべんをいたさんと存候といふたもおかし。 00064070¥N3¥J 00064080¥X小人しま 00064090M15/長崎(なかさき)へゆくふね、じゆん/風(ふう)にほをあけて、おきをはるかに 00064100M16こぎいだすに、にハかにあくふうふき/来(きた)りて、しらなミう 00064110M17つをまき(又三ウ)けれバ、人+大きにあハてさハぎ、大あ 00064120M18せになりておせどもこげとも、風つよければじゆうならず。 00064130M19かぜにまかせていづくともなくながれゆき、やう+とし 00064140¥P217 00064150L1てひとつのしまにつきたり。みな+まづふねよりあがり 00064160L2て、かなたこなた、しまのうちを見ありきけるに、わづか 00064170L3なるむしのこときもの、いくつともなくゆき/来(く)る。なにな 00064180L4らんとよく+みれば、人のかたちなり。さてハ此しまハ 00064190L5をとにきく小人じまなるべし。ふしぎの(四オ)ところへも 00064200L6きぬるものかなと、をの+かのしま人をてのひらにのせ 00064210L7て見しが、なにと、これをひとつふるさとへのミやげにせ 00064220L8んとて、さゝいがらにいれ、ふたをして、ふねのうちにを 00064230L9きけり。さて風もしづかになりけれハ、ミなみなふねにと 00064240L10りのり、ふるさとさしてこぎゆくに、ひとりがいふやう、 00064250L11さきにとりたるしまの人を見たまへ。あれも/人間(にんげん)なれば、 00064260L12ものくハずにハいられまひに、なにそくハせたまへといふ 00064270L13に、人&いかさまそうじやと(四ウ)かのさゞいからのふ 00064280L14たをとり見れば、しま人ハなかりけり。ふしぎやと、よく 00064290L15+みれとも見えず。大かたおくへかなゆきけるものなら 00064300L16んと、さゞいがらをふりて見けれバ、しま人うちにて、よ 00064310L17なをし+といふた。 00064320¥N4¥J 00064330¥X勘の聞ちかひ 00064340M1あないちとかやいへるさとう、みちをゆくとて、ほそきみ 00064350M2ぞのありしに、なにのくもなくまたぎこしてとをりけるを、 00064360M3さる人見て、さて+、ざとうといふものハ/勘(かん)のふかひ 00064370M4(五オ)ものかな。えてしてハ目あきもはまるみぞを、もう 00064380M5じんの身として、よくもこへたり。いかさま、勘のふかい 00064390M6ものじやといひけるを、かのあないちきひて、されバあま 00064400M7り/疳(かん)がふかさに、目がつぶれましたハ。 00064410¥N5¥J 00064420¥X手びやうし 00064430M10くせといふはおかしきもの。なに事にても手ひやうしうた 00064440M11ねばおかぬおとこ、あるときみちにて、ともとちにあひ、 00064450M12なにかのはなしすぎて、友だちのいひけるハ、よハさだめ 00064460M13なき(五ウ)事や。となりの甚九郎、此あいたふとわづらハ 00064470M14れしが、きのふの七ツ時分、つゐにしなれましたといひけ 00064480M15れバ、かのおとこ、大きにあきれたるふぜいにて、ついた 00064490M16るつえを、もつて下されとてともだちにわたし、そのまゝ 00064500M17手をてうどうつて、さて+、それはせうしな事やといは 00064510M18れた。 00064520¥P218 00064530¥N6¥J 00064540¥X其まゝの猫 00064550L3水右衛門にハあらぬ/泥(とろ)右衛門といふおとこ、ねこのなくま 00064560L4ね、えてものにて、又となき上/手(ず)(六オ)なり。あるよ/ひ((ママ))た 00064570L5しき友だちの所へゆき、はなしけるに、おりふしおびたゝ 00064580L6しくねすミのさハぎけるを、ていしゆ、/泥(どろ)右衛門にむかひ、 00064590L7こなたの/得(え)手ものにて、此ねずミをしつめて下されといふ 00064600L8を、とろゑもん、やがてこゝろへ、ねこのまねをぞしたり 00064610L9けり。そのなきこゑのじやうずさ、まことのねこにもたが 00064620L10ハぬにや、一ツのねずミ、てんでうよりばたりとおち、あ 00064630L11へなくむなしくなりけるにぞ、ていしゆもがをおり、見る 00064640L12所に、いづくともなく、ねこ四(六ウ)五ひき、一やうに/上= 00064650L13下(かミ=しも)をちやくし、どろゑもんがまへにきたり、こうべを地に 00064660L14つけ、さて+、おしろうとげいには、御きとくでこざり 00064670L15ますといふた。 00064680¥Q 00064690L18△△/頓作噺鶏(とんさくはなしとり)△△△△△全部五冊 00064700L19△△△△△△△△△△△△△△正月二日より本出申候 00064710M1△△△△△△△△△△江戸日本橋通三町目 00064720M2宝暦十四甲申年△△△△△△吉文字屋次郎兵衛 00064730M3△△△△正月吉日△△△大坂心斎橋筋南久太郎町 00064740M4△△△△△△△△△△△△河内屋喜兵衛(七オ) 00064750¥P219 00064760¥U噺本大系△第八巻 00064770¥T軽口豊年遊 00064780¥G 00064790¥Y 00064800L16宝暦四年序 00064810L17聞遊閣笑楽作・序 00064820L18半紙本五巻 00064830L19東大国語研究室蔵 00064840¥Y序 00064850M3/昔(むかし)+より/今(いま)に/絶(たへ)せぬハ、/軽口(かるくち)とんさくなれど、/左(さ)ながら 00064860M4ぢいとバヽが/猿尻(さるかしり)まつかいなばつかりも、おかしからずゆ 00064870M5へ、/当世(とうせい)(一オ)のすいむき、/狂歌(きよか)、/口合(くちやい)、もぢりの/新作(しんさく)を 00064880M6/得(ゑ)り/集(あつめ)て、/今(いま)/軽口(かるくち)/豊年遊(ほうねんあそび)と/題(だい)し、/桜(さくら)にことぶく/物(もの)ならじ。 00064890M8△△△戌年△△△△△△△△△△△聞遊閣 00064900M9△△△△△正月△△△△△作△者△△笑楽G(一ウ) 00064910¥P220 00064920¥Y1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそび)巻一 00064930L3/目△△録(もくろく) 00064940L4/鴬(うくひす)の/聞(きゝ)ぞこなひ 00064950L5まりものをいう 00064960L6たとへのとりちがへ 00064970L7りかんがすかん 00064980L8/色事(いろこと)のしくじり 00064990L9/夜舟(よふね)のぬす/人(びと) 00065000L10/竹(たけ)の/子(こ)の/寄合(よりやい)(二オ) 00065010L11口くせにでかした 00065020L12/諷(うたひ)の/師(し)の/口合(くちやい) 00065030L13うたひ/聞(きい)てのあいさつ(二ウ) 00065040¥T1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそび)巻一 00065050¥N1¥J 00065060¥X/鴬(うぐひす)のきゝぞこない 00065070M5/田舎(いなか)の/女中(じよちう)、こしもとめしつれ、/京(きよ□)へのぼりしに、/鴬(うぐひす)のは 00065080M6つ/音(ねを)/聞(きゝ)、こしもとにもうされけるは、いまのを/聞(きゝ)やつたか。 00065090M7/鳥(とり)までがこちらをわらふといわれければ、こしもとが、/何(なに) 00065100M8というてわらいましたとゆへバ、ほゝうをへことないたと 00065110M9いわれた。 00065120¥N2¥J 00065130¥Xまりものをいう 00065140M12まりずきなむすこ/有(あり)。そのおやぢ/殊外(ことのほか)きら(三オ)い、/町人(ちよにん) 00065150M13のまり/遊(あそび)、をごりのいたりと、だん※ゐけんしられけれ 00065160M14ど、やまざれバ、をやじ、はらを/立(たて)、うらをほりて、かの 00065170M15まりをうめんとせられしに、まり、/箱(はこ)よりづつといで、を 00065180M16やぢにむかひて、しるしに/柳(やなぎ)をうへてたべというた。 00065190¥N3¥J 00065200¥Xたとへのとりちがへ 00065210M19/文盲(もんもう)なる/男(をとこ)、つまをよびけるに、/此(この)をんな、わるいくせに 00065220¥P221 00065230¥G 00065240L12て/米(こめ)をかみけれバ、/折&(をり+)いけんのしられけれども、やまず。 00065250L13あるとき、たとへを/聞(きい)てかへり、これで(三ウ)(四オ挿絵) 00065260L14ゐけんしられけるハ、そのほう、くせとゆひなから、さる 00065270L15ほどによろしからぬ/事(こと)。それゆへ、たとへにもいうてない 00065280L16か。かゝハうへても、ほハつまぬと、とりちがへられた。 00065290¥N4¥J 00065300¥Xりかんがすかん 00065310L19はなハだせちな/男(をとこ)、あるとき/五条(ごじよう)のはしをばとをりしに、 00065320M1/川(かわ)に/魚(うを)つりてゐるをみて、つい、せつたをかたしをとしけ 00065330M2るに、はしの/下(した)にこつじきいけるをみて、そのせつた、か 00065340M3たしとつ(四ウ)てくれよ。壱文やろとゆへば、こつじき、 00065350M4二文くだされとゆうゆへ、しやんして、まあかたしもはめ 00065360M5て、三文やろといわれた。 00065370¥N5¥J 00065380¥X/色事(いろこと)のしくじり 00065390M8はいでのでつちに、このきれをこんやへもつてゆき、そめ 00065400M9てこひとゆいつけやりしに、そめてかへりしきれを/見(み)て、 00065410M10これハゆいつけてやつたとちがうた。にくいやつめと、す 00065420M11さまじくしかりけれバ、となりの/男(をとこ)、わりことにきて、な 00065430M12ん(五オ)でかやうに、をんしかりとゆへバ、ゐや、すこし 00065440M13の/色事(いろことで)でござるというた。 00065450¥N6¥J 00065460¥X/夜舟(よふね)のぬす人 00065470M16/去(さ)る人、/大坂(おゝさか)へ/金持(かねをもち)くだりけるに、/夜舟(やせん)にてのりやいをゝ 00065480M17けれバ、/用心(やうじん)してかの/金(かね)を/枕(まくら)にしてぞねしに、かの/金(かね)に/手(てを)/ 00065490M18/掛(かけ)、ゆすりしゆへ、/如何(いかゞ)せんと/思(をも)ひけれど、なにぶん/舟中(せんちう) 00065500M19のことゆへ、/了簡(りよけんの)いたして、うたゝねのまくらにひゞくか 00065510¥P222 00065520¥G 00065530L12ねのをとゝうたひけれバ、ちやつと/手(てを)/引(ひき)ける。/又(また)(五ウ)(六 00065540L13オ挿絵)しばらくして、ゐびきいでければ、/又(また)/手(てを)/掛(かけ)しゆへ、 00065550L14また思ひでのとうたひければ、ぬすびと、ぬからぬかほで、 00065560L15しかれどもとうたうた。 00065570¥N7¥J 00065580¥X/竹(たけ)の/子(こ)の/寄合(よりや□) 00065590L18/竹(たけ)の/子(こ)/寄合(よりやい)して申ける。いつも/八百(やをや)やがはやクだして/高直(こうぢき) 00065600L19に/売(うる)とて、めをきらん/内(うち)よりほりいだすにより、/当年(たうねん)ハ/申= 00065610M1合(もうし=やハせ)て一/本(ほん)もてまいと、かたく申合せしに、そのうち一/本(ほん)こ 00065620M2らへかねて、そつとのぞきてみれば、はや/八百(やほ)やの/見(み)せで 00065630M3あつた。(六ウ) 00065640¥N8¥J 00065650¥X口くせにでかした 00065660M6なにをしてもなにゆうても、でかした※とゆう/旦那(だんな)/有(あり)。 00065670M7あるとき/念仏講(ねんぶつこう)つとめられしに、/下女(けじよ)のりんが、だんな/様(さま)。 00065680M8/仏前(ふつぜん)の/香(かう)ハ、をもりなされたかととへば、もつてをいたと 00065690M9ゆわれしかバ、でつち、これをきゝて、でかしたとゆうた。 00065700¥N9¥J 00065710¥X/諷(うたひ)の/師(し)の/口合(くちやい) 00065720M12/文盲(もんもう)なる/男(をとこ)、うたひの/師匠(しゝやう)の/所(ところ)へゆき、これをバをしへて 00065730M13たまわれとゆいけれは、/師匠(しゝやう)、/其本(そのほんを)み(七オ)られしに、/役= 00065740M14行者(えんの=きよじや)/大峯(をゝみね)/桜(さくら)という/新浄(しんぢよ)るりなりければ、/師匠(しゝやう)あきれて、い 00065750M15かに/観世(くわんぜ)にないとてもとゆわれた。 00065760¥N10¥J 00065770¥X/諷(うたひ)/聞(きゝ)てのあいさつ 00065780M18/文盲(もんもう)な/男(をとこ)、/諷講(うたひこう)/聞(きゝ)にゆきて、づつとうちへはいりしに、/地(ぢ) 00065790M19うたひやみ、/次第(して)うたひだしければ、かの/男(をとこ)がきのどくそ 00065800¥P223 00065810L1うなかほして、もし+、ごゑんりよなしに/御諷(をんうたひ)なされま 00065820L2せというた。 00065830¥Y1/軽口(かるくち)ほう年/遊(あそひ)巻一終(七ウ) 00065840¥Y1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそひ)巻二 00065850M3目△△録 00065860M4とんちなくすりや 00065870M5あたごのそうか 00065880M6/犬(いぬ)かつて/宗旨(しうし)ハ/負(まけ) 00065890M7/魚(うを)つり/指南(しなん) 00065900M8/米(こめ)ふみのしやん 00065910M9/火(ひ)の/玉(たま)もこわがる 00065920M10をくびよなさむらい(一オ) 00065930M11まりのゐけん 00065940M12もんもうな/雅人(がじん) 00065950M13かみゆいの物まね 00065960M14弐百両の/心中(しんぢう)(一ウ) 00065970¥P224 00065980¥T1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそび)巻二 00065990¥N1¥J 00066000¥Xとんちなくすりや 00066010L5とんちなくすりや/有(あり)。あるときこつじきが、はらくすりか 00066020L6ゐにきたりければ、それにハひにん/丸(ぐわん)をやれとゆわれし。 00066030L7/又(また)かちにもちが、づゝうの/薬(くすり)をかいにきたりけれバ、それ 00066040L8にハもつこう/丸(ぐわん)をバやれとゆわれし。そのつぎへ/百性(ひやくしやう)が/風(かぜ) 00066050L9ぐすりをかいにきたりけれバ、くハつかうしよせききさん 00066060L10をやれといわれた。(二オ) 00066070¥N2¥J 00066080¥Xあたごのそうか 00066090L13/雨(あめの)夜(よ)ハさびしきゆへ、/天(てん)ぐ/殿(どの)がこよひこそ、ひごろのぞみ 00066100L14の/立君(たちきみ)を/買(かう)てなぐさまんと/思(をも)ひ、/杉(すぎ)の/木(き)よりそつとをりて、 00066110L15かのをんなにさゝやかんとをもいけれども、はながつかへ 00066120L16て/耳(ミゝ)のはたへ/口(くち)がよらず、うぢ+している/所(ところ)へ、かごか 00066130L17きがとをりハして、/口(くち)より/耳(みゝ)へかごやろというた。 00066140¥N3¥J 00066150¥X/犬(いぬ)かつて/宗旨(しうし)ハ/負(まけ) 00066160¥G 00066170M12/去(さ)る/浄土寺(ちよどでら)に/犬(いぬ)をかひて、その/名(な)を/日連(にちれん)と/付(つけ)(二ウ)て、/日= 00066180M13連(にち=れん)+とよびけれバ、またそのきんじよの/法花寺(ほつけでら)に/犬(いぬ)をか 00066190M14いて、/法然(ほうねん)と/付(つけ)て、/法然(ほうねん)+とよびしに、あるときその/犬(いぬ) 00066200M15どをし、かみやいけるに、/法花寺(ほつけでら)の/犬(いぬ)かちけれバ、/法花寺(ほつけでら) 00066210M16の/小僧(こぞう)うれしがり、/日連(にちれん)がまけた+というた。 00066220¥N4¥J 00066230¥X/魚(うを)つり/指南(しなん) 00066240M19うをつり/指南(しなん)とゆうかんばんをみて、/川(かわ)がりのすきな/男(をとこ)、 00066250¥P225 00066260L1ならいにまいりけれバ、師/匠(しやう)つりざをゝいだし、これにて 00066270L2/二階(にかい)のあがりくちより(三オ)はりをおろしたまへとゆへば、 00066280L3かしこまつて/二階(にかい)へあかり、はりをおろしけれバ、/師匠(しゝやう)、 00066290L4/下(した)にて/扇(をゝぎ)にて、かのはりのさきへ、ちよとさわりけれバ、 00066300L5うへより、/今(いま)のわ、はいでござりますかといわれけれバ、 00066310L6/師匠(しゝやう)が、なるほど、はいでござる。あしたから、あいをお 00066320L7しへてしんじよといわれた。 00066330¥N5¥J 00066340¥X/米(こめ)ふみのしやん 00066350L10/上京(かみぎよ)のさる/大医(たいゐ)の/方(かた)へ、/朋友(ほうゆう)より/人(ひと)/参(まい)りけるに、/折(をり)ふしげ 00066360L11んくわに/人(ひと)なかりければ、/大(をゝ)ごへに(三ウ)(四オ挿絵)て、あ 00066370L12んないをこひけれバ、/米(こめ)ふみのみゝへゐり、いつものこと 00066380L13く/病家(びよか)よりの/使(つかひ)にてあるべしとをもい、はちまきをとりて 00066390L14いでしに、/茶振舞(ちやぶるまい)/寄(よび)にきたる/使(つかい)、なか+/口上(こうじやう)をぼへがた 00066400L15けれバ、/米(こめ)ふみしやんして、/又(また)もとのごとくはちまきして、 00066410L16からうすのうへにあがり、/表(をもて)にあんないが/有(ある)と、をおきな 00066420L17こへでいうた。 00066430¥N6¥J 00066440¥X/火(ひ)の/玉(たま)もこわがる 00066450M1/去(さ)る/人(ひと)、/妻(つま)しゝけれバ、めかけを/妻(つま)になをされける(四ウ) 00066460M2ゆへ、まいよ+/先妻(せんさい)のもうねん、/火(ひ)の/玉(たま)となりきたりけ 00066470M3れど、かどぐちまできてかへるゆへ、/近所(きんじよ)の/男(をとこ)これをみて、 00066480M4そのほうハさだめてせん/妻(さい)のもうねんじやが、それならバ 00066490M5なぜに、うちへはいらんぞとゆいければ、/火(ひの)/玉(たま)申やう、さ 00066500M6やうてごさりますが、/内(うち)にハわたくしより、まだをおきな 00066510M7/火(ひ)がふりますトいうた。 00066520¥G 00066530¥P226 00066540¥N7¥J 00066550¥Xをくびよなさむらい 00066560L3をくびよなさむらい、/有夜(あるよ)せつちんへゆくに(五オ)きみわ 00066570L4るくをもひ、/内義(ないぎ)にてしよくもたせゆかれしに、せつちん 00066580L5のうちよりもうされけるハ、なんと、そのほうハこハひ/事(こと) 00066590L6ハないかとゆわれければ、なんのこわひ/事(こと)がござりましよ 00066600L7とゆへば、ぬからぬかをで、さすが/武士(ふしの)/妻(つま)ほど/有(ある)といわ 00066610L8れた。 00066620¥N8¥J 00066630¥Xまりのゐけん 00066640L11まりずきなむすこ/有(あり)。をやぢ、はなハだきら/ら((ら衍))い、/町人(ちよにん)の 00066650L12まりのけいこ、むやくのいたりと、だん+/異見(いけん)して、さ 00066660L13てよく/日(ぢつ)まりの/箱(はこを)みて、/内義(ないぎ)に(五ウ)(六オ挿絵)もうされ 00066670L14けるハ、これみや。をれがゐけんしたれば、まりを/捨(すて)をつ 00066680L15たといわれけれバ、/内義(ないぎ)みて、をやぢどの、そそうな。ま 00066690L16りハふたのうらについてあるといはれた。 00066700¥N9¥J 00066710¥X/文盲(もうもう)な/雅人(がじん) 00066720L19もんもうなる/雅人(がじん)/有(あり)。/座右(ざう)にハ/雅物(がぶつ)をあつめてをきしに、 00066730M1あるとき/道具(とをぐ)やにて/琴(こと)のつめをバもとめかへり、つくへに 00066740M2有しを/朋友(ほうゆう)みて、/貴丈(きじやう)ハ/琴(こと)もなさるか。なにより/能(よき)御たの 00066750M3しみとゆへバ、ゐや、まへどハいたせしが、いまハすてて 00066760M4ごさると(六ウ)ゆへバ、しからば、われらしよもういたす 00066770M5べしとゆへハ、やすき/事(こと)。しんぜ申べし。これもまへかた 00066780M6/全盛(ぜんせい)なときハ/五(いつゝ)ツそろうてあつた。 00066790¥N10¥J 00066800¥Xかみゆいの物まね 00066810M9ものまねすきなかみゆいあり。あるとき、さかやきそりに 00066820M10きたりしをとらまへ、そのほうハものまねがよいげな。な 00066830M11んぞ一つしてみせとゆわれけれバ、かしこまりしと、/身(み)ぶ 00066840M12りにて十/蔵(ぞう)がかゞみとぎしけれハ、/中(なか)+をもしろい。ま 00066850M13ひとつなんぞせいと(七オ)ゆわれけれハ、/浅尾(あさを)/元五(もとご)郎を/致(いたし) 00066860M14ましよとゆう。いや、それハふるい。とをふうなものをと 00066870M15のぞまれけれバ、/当(とう)ふうの/御望(をのぞみ)ならバ、とこへ/御出(をいで)被成ま 00066880M16せと云た。 00066890¥N11¥J 00066900¥X弐百両の/心中(しんちう) 00066910M19/稲荷山(いなりやま)で/心中(しんぢう)せんとせしに、/何(なに)人やらきて、/其方(そのほう)ハ/何故(なにゆへ)/心= 00066920¥P227 00066930L1中(しん=ぢう)するとゆわれけれバ、弐百両の/金(かね)につまりし/故(ゆへ)とゆへバ、 00066940L2それならバかしてやろと/穴(あな)へとんではいり、/出(で)て、やすい 00066950L3/事(こと)じやが、どうもならんとゆゑバ、それハなせにでこさり 00066960L4ますとゆへバ、/今(いま)/親父(をやじ)が/鍵(かぎ)をくわへていかれたというた。 00066970¥Y1二之終(七ウ) 00066980¥Y1/軽口(かるくち)/豊年(ほをねん)/遊(あそび)巻三 00066990M3目△△録 00067000M4せんかたなしの/閑居(かんきよ) 00067010M5しびんの/花生(はないけ) 00067020M6かたいちな/親父(をやじ) 00067030M7/狂歌(きよか)/口合(くちやい) 00067040M8すどうふ 00067050M9そゝうなをとこ 00067060M10ぶきやうなをとこ(一オ) 00067070M11はいでの/下女(けじよ) 00067080M12/火用心(ひやうじん)/指南(しなん)(一ウ) 00067090¥P228 00067100¥T1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそび)巻三 00067110¥N1¥J 00067120¥Xせんかたなしの/閑居(かんきよ) 00067130L5/西山(にしやま)さがへんに/庵(あん)をむすび、/座敷(さしき)につくへにもたれ、/書物(しよもつ) 00067140L6などをみて/居(ゐ)るていをみて、あのやうにしてくらしたらば、 00067150L7さぞ/面白(をもしろ)き事であろとうらやみていけるに、かんきよの人、 00067160L8ゑんさきへづつとでて、あくび、のびして、アヽ/金(かね)がほし 00067170L9いなあというた。 00067180¥N2¥J 00067190¥Xしびんの/花生(はないけ)(二オ) 00067200L12もんもうな/男(をとこ)、/客(きやく)を/寄(よぶ)とて、なんぞめづらしき/物(もの)に/花(はな)をい 00067210L13けんと/思(をも)ひ、しびんを/買(かひ)きたりて/花(はな)/生(いけ)をきけれバ、/客(きやく)これ 00067220L14をみて、ていしゆをよび、/此(この)/花生(はないけ)ハしびんでハござりませ 00067230L15んかと、とわれけれバ、/亭主(ていしゆ)あわて、イヤ、さやうな/名(なの)/有(ある) 00067240L16/者(もの)でハござりませんと云た。 00067250¥N3¥J 00067260¥Xかたいぢな/親父(をやじ) 00067270L19/去(さ)る/所(とこ)に、かたいぢなをやじ/有(あり)しに、/様(さま)とゆうことをきら 00067280¥G 00067290M12いて、れき+にも/殿付(どのづけ)にてゆう(二ウ)ゆへ、/一家(いつけ)なども 00067300M13その/事(こと)をゆへど、とかく/様(さま)とハゆわず。あるとき、むすめ 00067310M14がはらをいため、/医者(いしやよ)よ、はり/立(たて)よとさわぎけれバ、/親父(をやじ)、 00067320M15/外(ほか)よりかへりて、どれ+、をれがたしなみの/薬(くすり)の/和中殿(わちうどの) 00067330M16をのまそといわれた。 00067340¥N4¥J 00067350¥X/狂歌(きようか)くちやい 00067360M19/去(さ)る/人(ひとの)/子(こ)つゞけて/死(しに)けれバ、/次男(しなん)の/名(な)を/寺(てら)の/和尚(をしやう)に/付(つけ)ても 00067370¥P229 00067380L1らいしに、/公時(きんとき)と/付(つけ)られしに、/又(また)/死(しに)けれバ、/親父(をやじ)ほつきし 00067390L2て、/狂歌(きよか)(三オ)よみて/和尚(をしやう)に見せける。/哥(うた)に、 00067400L3△△/公時(きんとき)が/此世(このよの)/綱(つな)ハ/切(きれ)はてゝ 00067410L4△△△/行(ゆく)すへたけハゐかゞなるらん 00067420L5と/読(よみ)て見せしに、/和尚(をしやう)みて、よくれんぞくハしたが、/四天= 00067430L6王(してん=をう)がたらんとゆわれけれハ、さだみつ、さやうとぞんじ、 00067440L7ほうしやうに/書(かひ)てまいつたといわれた。 00067450¥N5¥J 00067460¥Xすどうふ 00067470L10どのやうなものでも/食(しよく)する/人(ひと)あり。/有時(あるとき)(三ウ)(四オ挿絵)あ 00067480L11しきとうふをかうてふるまいしに、かの/男(をとこ)、これハわるい 00067490L12という。いや+、わるゐのでハなゐ。すどうふといふも 00067500L13のでござる。/貴様(きさま)のちそうにこしらへたとゆへば、/又(また)四五 00067510L14はいもくて、これハしろとの、ヱイくわぬものと云た。 00067520¥N6¥J 00067530¥Xそゝうな/男(をとこ) 00067540L17/去(さ)るそゝうなをとこ、/供立(ともだち)/同道(どう+)して、/新宅(しんたく)の/見舞(みまい)にゆきて、 00067550L18/座敷(さしき)よりみまわりて、さて/中戸(なかど)をみて/供立(ともだち)に申やうハ、な 00067560L19んとせ(四ウ)まいなかどじや。これでハそう/礼(れい)などはでま 00067570M1いかとゆへバ、/友立(ともだち)きのどくがりて、さやうなことハゆわ 00067580M2ぬものとゆゑバ、ムヽでる+というた。 00067590¥N7¥J 00067600¥Xふきやうな/男(をとこ) 00067610M5ふきやうな/男(をとこ)、/三味(さみ)せんけいこしけるを、/友立(ともだち)ききて、/貴= 00067620M6様(き=さま)ハ/三味(さみ)せんけいこしやるげなが、さだめてはやうをぼへ 00067630M7るであろとなぶりけれバ、いや+、をぼへゐで、どうも 00067640M8ならぬ。けふで三日めじやか(五オ)よう+と、きぬ+ 00067650¥G 00067660¥P230 00067670L1があがつたとゆへば、それハなか+はやい/事(こと)じや。そし 00067680L2てなんじやととへば、/今(けふ)ふから、あけのじやというた。 00067690¥N8¥J 00067700¥Xはいでの/下女(けじよ) 00067710L5/浄(しよ)るりの/作者(さくしや)へ、はいでの/女(をな)ごをほうこうにやりしに、に 00067720L6げてかへりけるゆへ、なぜにかへつたととへば、こわい/事(こと) 00067730L7がござつたゆへ、ぬけて/帰(かへ)りましたとゆへバ、それハどう 00067740L8した/事(こと)じやとゆへバ、/夜前(やぜん)、四五人御よりなされて、/御相= 00067750L9談(ごそう=だん)をなされるを/聞(きけ)バ、(五ウ)(六オ挿絵)このをなごわ、こゝ 00067760L10でころさねバ、はねがつかぬとをつしやつたというた。 00067770¥N9¥J 00067780¥X/火用心(ひのやうしん)/指南(しなん) 00067790L13/去(さ)る/所(ところ)に、/火(ひ)の/用心(やうじん)/指南(しなん)とゆうかんばん/出(いだ)しけれバ、/下(しも)の 00067800L14/町(ちよ)ばんた、ならいにまいり、けいこいたして、さて/何(なに)かは 00067810L15なしのうへ、/上町(かミのちよ)の七介ハ、もうならハんと、よさそうな 00067820L16ものでござりますとゆへば、/師匠(しゝやう)がもうされけるハ、いや 00067830L17+、まだわれ/竹(たけ)までハゆかぬといわれた。 00067840¥Y1三之巻終(六ウ) 00067850¥Y1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねん)/遊(あそび)巻四 00067860M3目△△録 00067870M4/薬名(やくめいの)とんさく 00067880M5/文盲(もんもう)なさして 00067890M6/名清水(めいしみづ) 00067900M7きつい/能(のう)ずき 00067910M8/捨(すて)/大黒(だいこく) 00067920M9とんびがたか 00067930M10ひそうのさくら(一オ) 00067940M11むりな+/旦那(だんな)(一ウ) 00067950¥P231 00067960¥T1/軽口(かるくち)/豊年(ほうねんの)/遊(あそび)巻四 00067970¥N1¥J 00067980¥X/薬名(やくめい)のとんさく 00067990L5はいでのでつちを/薬屋(くすりや)へをきけれバ、でつちが/親(をや)/登(のほ)り、か 00068000L6のくすりやへあいに/来(きた)り、/旦那殿(だんなどの)に一/礼(れい)をのべ、かのてつ 00068010L7ちにむかひ、ずいぶん+せいをだせよ。そしてそのわれ 00068020L8がもつてゐるのハなんじやととへバ、みかんのかわという。 00068030L9それハしれた/事(こと)。/薬名(やくめい)ハなんというとゆへバ、ちんひじや 00068040L10という。そのあた/((り脱カ))に、ふしの/有(あり)。これハととへハ、これハ 00068050L11ふしのじやと(二オ)ゆう。それハしれた/事(こと)。/薬名(やくめい)をしらぬ 00068060L12かとゆへハ、でつち、しやんして、ムヽをはぐろのさいじ 00068070L13やというた。 00068080¥N2¥J 00068090¥X/文盲(もんもう)なさして 00068100L16/文盲(もんもう)なくせにさしでる/男(をとこ)/有(あり)。あるとき/友立(ともだち)が、/妙心寺(みよしんじ)の/座= 00068110L17敷(さ=しき)/見物(けんぶつに)/行(ゆく)とてよりけれバ、われらも/同道(どうどう)せんとゆうゆへ、 00068120L18いかやうともじやが、/貴様(きさま)ハ/文盲(もんもう)なくせに、さしでやるゆ 00068130L19へ、/無用(むやう)にしやとゆへど、せひともとゆへバ、しからハと 00068140M1んと、さしでやん(二ウ)な/ど((とカ))ゆうて/同道致参(どうどういたしまい)り、さて/座敷(ざしき) 00068150M2みまハりしに、かのくせがをこつてきて、これハなんでご 00068160M3ざりますとゆへハ、/是(これ)ハちやうすでござるとゆへば、はて、 00068170M4/名(な)ににやわん、うつくしい/物(もの)とゆわれた。 00068180¥N3¥J 00068190¥X/名清水(めいしみづ) 00068200M7/名清水(めいしみつ)/有(あり)。/此水(このみづ)を/花壇(くわだん)へ/打(うて)は、/望(のぞみ)の/草花(そうくわ)たちまち/生(しよを)づなり。 00068210M8/去(さ)る人、/其水(そのみづ)をしよもうに/遣(つかハ)せしに、ひとしづくもくれざ 00068220M9れバ、/其(その)所の/久三(きうざ)をたのみしが、なか+/吟味(きんみ)の(三オ)き 00068230M10びしけれバならんとゆう。しからバ/客(きやく)/有(ある)/砌(みぎり)、/其水(そのみづ)を/打(うち)し/手(て) 00068240M11をけなどの/雫(しづく)を、これへしぼりくれよ。ひと/雫(しづく)金壱両つゝ 00068250M12と/極(きわめ)、ふたじやわんを/遣(つかハ)し/置(をき)しに、よく日/客(きやく)/有(あり)テ、かの/水(みづ) 00068260M13を/打(うち)、さて/手(て)をけをしぼり、しやくをしぼり、ひとしつく 00068270M14もなきゆへ、ゆびにてしごきけれバ、すゝきが出た。 00068280¥N4¥J 00068290¥Xきつい/能(のう)ずき 00068300M17/能(のう)ずきなる/男(をとこ)、能/見物(けんふつ)にゆき、かへりに(三ウ)(四オ挿絵)/雨(あめ) 00068310M18/風(かぜ)はげしけれバ、はやくかへり、こたつへあたり、さむさ 00068320M19をしのがんと/思(をも)ひけるに、三月/比(ころ)の/事(こと)なれバ、こたつに/火(ひ) 00068330¥P232 00068340L1なく、ふとんたゝみて、やぐらのうへにありけれバ、ふと 00068350L2んを、めはちぶんにたづさへて、みれバなつかしやとうた 00068360L3われた。 00068370¥N5¥J 00068380¥X/捨(すて)/大黒(だいこく) 00068390L6/去(さ)る/人(ひと)、てつちに、/此大(このだい)こくをすててこひとゆいつけられ 00068400L7ければ、でつちもう(四ウ)すやうハ、/是(これ)ハ/福神(ふくのかミ)じや。すて 00068410L8んとをきなされませとゆう。いや、/此大黒(このたいこく)をもとめてから、 00068420¥G 00068430M1そんはつかりすゆへ、はや+すてゝこひとゆわる。でつ 00068440M2ち、せんかたなく/捨(すて)にゆきしを、/近所(きんじよ)の/男(をとこ)みて、その/大(だい)こ 00068450M3くは、どこへもつてゆくととへバ、すてにゆくとゆう。し 00068460M4からバそれがしもとむべしとて、金一歩遣し/買(かい)けれバ、そ 00068470M5の/金(かね)をもつて/帰(かへ)りて、/旦那(だんな)にそのとをりゆへバ、/旦那(だんな)ぬか 00068480M6らぬかほで、(五オ)ソレ、/其男(そのをとこに)、もう一歩そんかけたとい 00068490M7われた。 00068500¥N6¥J 00068510¥Xとんびがたか 00068520M10さるれき+のむすこ、/茶湯(ちやのゆ)好ミものずきしけるに、その 00068530M11はゝ/殊外(ことのほか)しまつなはゝゆへ、/折&(をり+)その/事(こと)を/異見(ゐけん)しられけれ 00068540M12と、やます。それゆへきびしく/異見(ゐけん)のしられければ、むす 00068550M13こ、ぬからぬかほで、いやしきはゝのたいないにとうたを 00068560M14た。(五ウ)(六オ挿絵) 00068570¥N7¥J 00068580¥Xひそうのさくら 00068590M17/去寺(さるてら)に見/事(ごと)なさくら/有(あり)。あるとき/其(その)寺の/旦那(だんな)より、/一枝(ひとゑた)し 00068600M18よもうにやられしに、/只今(たゞいま)/和尚(をしやう)/留主(るす)にて候。しかしやどに 00068610M19ゐられてもしんせます/事(こと)ハならんでござりましよとゆへバ、 00068620¥P233 00068630¥G 00068640L12それハなぜにてござります。和尚がきつうさくらをあいし 00068650L13て、/花(はな)ざかりのあいだハ、/入間(いりやい)の/鐘(かね)さへつかせませぬとい 00068660L14うた。(六ウ) 00068670¥N8¥J 00068680¥Xむりな+/旦那(だんな) 00068690L17どのやうなかげんでも、/食(しよく)にこごとゆう/旦那(だんな)有。あるとき 00068700L18/客(きやく)有て、さかづき出て/吸物(すいもの)出しけるに、/又(また)/旦那(だんな)、こごとゆ 00068710L19へば、/客(きやく)、/是(これ)ハよいかげんでござるがとゆへば、/旦那(だんな)申さ 00068720M1れけるハ、これがいますこし、からいか水くさいかなれハ 00068730M2くわれぬといわれた。 00068740¥Y1軽口豊年遊巻四終(七オ) 00068750¥P234 00068760¥Y1/軽口(かるくち)ほう年の/遊(あそび)巻五 00068770L3目△△録 00068780L4/麩(ふ)や/口合(くちやい) 00068790L5/道具(とをく)やに/女郎(ちよろの)かんばん 00068800L6/大皷持(たいこもち)の/由来(ゆらい) 00068810L7壱人百両の/飯代(はんだい) 00068820L8はやらぬ/医者(いしや) 00068830L9たぬきの/同類(とをるい) 00068840L10ふんどし/吟味(ぎんみ)(一オ) 00068850L11/文盲(もんもうな)/男(をとこの)/参会(さんくわい) 00068860L12/金(かな)屋の/女子(をなご)の/見立(みたて)(一ウ) 00068870¥T1/軽口(かるくち)ほう年/遊(あそひ)巻五 00068880¥N1¥J 00068890¥Xふやの/口合(くちやい) 00068900M5/去(さる)る人、/錦(にしき)を通りしに、ふやにさま※のふあり。そのう 00068910M6ちの/碁(ご)ばんのごとくこしらへたるふをもとむへしとゆわれ 00068920M7けれバ、男かしこまつて、かのふをば、わらにてつなぎつ 00068930M8かわしけるをとつて、そのあたゑをわたさず、/帰(かへ)らんとす 00068940M9るゆへ、ふやの/男(をとこ)申やう、ふのぜにわとゆへば、よいわゐ 00068950M10のとゆう。それハいかにとゆへば、はて、ごはんたゞのふ 00068960M11じやといふ。(二オ)/男(をとこ)をゝきにはらをたて、くらわしにか 00068970M12ゝりけれバ、そのはづみに、ふをみぞへをとせしを、ふや 00068980M13の/旦那(だんな)みて、ハヽ、つぎのふにしをつたと云た。 00068990¥N2¥J 00069000¥X/茶道具(ちやとうぐ)やに女郎かんばん 00069010M16/去(さ)る/茶湯(ちやのゆ)の/道具(どうぐ)やに、女中/品(しな)&ありとゆふかんばんをみて、 00069020M17女中御みせ候へとゆへハ、かしこまりしと十七八なる大ふ 00069030M18り/袖(そで)、しかもき/りう((ママ))よきをバ見せしに、/直段(ねだん)をとゑバ/代金(だいきん) 00069040M19五拾両ともうす。又廿斗の同くよろしきをみせしに、/其直= 00069050¥P235 00069060L1段(そのね=だん)代(二ウ)/金(きん)/同(をなじ)事ともうす。又/八十(やそじ)/斗(ばかりの)女に、いかにも 00069070L2けつこうなるいしやうきせたるをみせしゆへ、此ハ/老女(らうによ)ゆ 00069080L3へ下直なるべし。いや、此女こそまれものにて候へバ、代 00069090L4金五百両と申ゆへ、それハいかにととへは、/此(この)女には、/千(せん) 00069100L5の/宗佐丈(そうさじよ)の入ぼくろがござりますというた。 00069110¥N3¥J 00069120¥X/大皷(たいこ)もちの/由来(ゆらい) 00069130L8大皷もち/寄(より)て、なんと、こちらが/由来(ゆらい)が/聞(きゝ)たいものとゆへ 00069140¥G 00069150M1ば、一人の/男(をとこ)いうやう、これハほしな(三オ)寺へゆきてと 00069160M2をたらばしれるであろとて、みな+つれだちて、ほしな 00069170M3寺へゆきしに、/和尚(をしやう)るすゆへ/帰(かへ)らんとするを、/小僧(こぞう)まかり 00069180M4いでゝ、なにのやうととへば、此ほうともわ/大皷(たいこ)ともでこ 00069190M5さりますが、此ゆらいをうけたまりたく/存(そんし)まいり候とゆへ 00069200M6ば、それハしれた/事(こと)。かたつてきかそ。いづくのうらても 00069210M7/金(かね)をもたぬものは、大皷もちじやといわれた。(三ウ)(四オ 00069220M8挿絵) 00069230¥N4¥J 00069240¥X壱人百両の/飯代(はんだい) 00069250M11/去(さ)る/有徳(うとく)なる人、五人五百両のふるまいせんとて、/丸山(まるやま)/辺(へん) 00069260M12へ申つかわされけれども、あまりの/金(かね)ゆへに、/請合(うけやい)申さず。 00069270M13それゆへ/りやぜん((ママ))へ申つかわされしに、さつそく/請合(うけやい)、ま 00069280M14づ/献立(こんだて)みせしに、さしてめづらしき事もなく、これてハか 00069290M15やうにむつかしくハ、かゝりそむなイものとゆわれけれバ、 00069300M16いや、/此方(このほう)のハなによりも/茶(ちや)を/念(ねん)入ますとゆわれけるが、 00069310M17なんぼ茶に/念(ねん)入ても、かやうにむつかしくハつきそむな 00069320M18(四ウ)ゐものとゆわれければ、いや、まつ此方ハ/茶袋(ちやふくろ)をハ 00069330M19ろでいたし、/茶釜(ちやがま)の/下(した)をきやらでたきますゆへといわれた。 00069340¥P236 00069350¥G 00069360¥N5¥J 00069370¥Xはやらぬ/医者(いしや) 00069380L14/去(さ)る/所(ところ)に/下手村(へたむら)よく/斎(さい)というやぶ/医(い)/有(あり)。/世間(せけん)あまたはしか 00069390L15はやりけれど、たゝひとりも/頼(たのみ)にこづ。あるとき/表(をもて)にあん 00069400L16ない/有(あり)ければ、さあしてやつたと/自身(ししん)/出(で)て、とうれといわ 00069410L17れしに、/少&(しよ+)/御頼(をんたのミ)申たき/義(ぎ)といわれしを、あとを/聞(きか)ずに、 00069420L18ムヽはし(五オ)かてござるかとゆへハ、ゐや、わたくしハ 00069430L19うらの町(ちよ)のいはいやでござります。/此以後(このいごう)よろしく/御頼(をんたの□) 00069440M1申ますとゆうていんだ。 00069450¥N6¥J 00069460¥Xたぬきの/同類(とうるい) 00069470M4/古(ふる)だぬきのすみて、かりてなきかし/家(や)をかりてうつりしそ 00069480M5のばんより、/色(いろ)&とばけて/出(いて)けれど、すこしもをどろくけ 00069490M6しきなかりければ、たぬきもあきれ、これまでなんほの/人(ひと) 00069500M7もみたが、こなたのやうな人ハみたことがない。さりとハ 00069510M8つよい(五ウ)(六オ挿絵)/人(ひと)という。ちとそうであろ。それに 00069520M9つき、そのほうへたのみたい/事(こと)が/有(ある)が、聞(きい)てくれんかとゆ 00069530M10へば、なになりと/此方(このハう)/手(て)にかないし事ならば、/仰(をゝせ)らるべし 00069540M11とゆへバ、それハくハぶん。さしてむつかしい事ハない。 00069550M12/此間(このあいた)うちつゞきふしやわせにて、なんぎいたすゆへ、/明(みよ)ば 00069560M13ん、ちよぼいちのどをとりにゆくにつけて、そのほうもき 00069570M14て、はたより一チ+とゆハば六をだし、三ン+といわ 00069580M15ば四をだしくれ候へとたのみ、さてよくばんゆきて、くだ 00069590M16んのごとく一チ+と(六ウ)ゆへば六だし、三とゆへは四 00069600M17をだししところに、五をはりて、/梅(うめの)/花(はな)+とゆいければ、 00069610M18/鴬(うぐひす)一わとんで出た。 00069620¥P237 00069630¥N7¥J 00069640¥Xふんどし/吟味(ぎんみ) 00069650L3/有時(あるとき)四五人つれ/立(だち)、/祇園町(ぎをんまち)へ/遊(あそび)にゆきしに、/其(その)うちにひと 00069660L4り、/其茶(そのちや)やの/中居(なかゐ)といしふしの有/男(をとこ)有。をりふしのし一人、 00069670L5もめんふどししてゆきしに、かの中居これを見て、なんと、 00069680L6こん/夜(や)わめづらしう、ふんどし/吟味(ぎんみ)してあそびなんせんか 00069690L7と云。(七オ)これハ一/段(たん)とよかろと、/素人(ハくぢん)、/花車(くハしや)、/大鞁(たいこ)な 00069700L8みいる/中(なか)で、さあ市兵衛さんとゆへバ、それ/古金(こきん)らん、よ 00069710L9いか。よし。さあ二兵衛さんとゆへハ、それ/金(きん)もをるの/昼= 00069720L10夜織(ちう=やをり)、よしか。よしと、だん+けつこうなふんどし出し、 00069730L11さてかのもめんふんどしの/男(をとこ)のばんになりしに、はなハだ 00069740L12あわて、それ/今織(いまをり)のつゝまもり、よしかと/守袋(まもりふくろ)を出した。 00069750¥N8¥J 00069760¥X/文盲(もんもう)な/男(をとこ)/参会(さんくハい) 00069770L15/文盲(もんもう)な/男(をとこ)、/町振舞(ちよふるまい)につきて、/亭坊(ていぼう)にむかひて、/表(ひよう)(七ウ)/具(ぐ) 00069780L16/見事(みごと)でござるとゆへば、いやはや、そそうなものでござる 00069790L17と/返答(へんとう)につき、/何(なに)よりあの/鬼(をにの)のずつと/手(て)を出した/所(ところ)が、ど 00069800L18うもゆへんとゆわれければ、/亭坊(ていぼう)あきれて、そこつながら、 00069810L19あれハをにでハござりません。して、なんてござるととハ 00069820M1れければ、あれハゑんこうでござるとゆへば、ムヽ、/吉田(よしだ) 00069830M2のかといわれた。 00069840¥N9¥J 00069850¥X/金(かな)屋の/女子(をなご)の/見立(みたて) 00069860M5/兄弟(きよだい)づれにて/祇園(きをん)のこつりの、ゐつもにぎをう(八終オ)/金(かな) 00069870M6やへゆきしに、そのいもと、/殊外(ことのほか)なるきりやう/人(じん)ゆへ、/遊= 00069880M7女(ゆう=しよ)をハつれゆきしやうに/人(ひと)の/思(を□)ひしヲ、きのどくにおもひ、 00069890M8/兄弟(きよだい)のわかちをみせんとて、だんばしこ二三だんをりて、 00069900M9いもをととゆへバ、うへよりハ、あに/様(さま)というを、こめろ 00069910M10がみて/木枕(きまくらを)/持(もち)、かち++と/打(うつ)た。 00069920¥Y1軽口豊年遊巻五大尾(八終ウ) 00069930¥K〔玉泉堂蔵板目録一丁〕 00069940¥Q 00069950M16△△△△△△△△△京六角通ふや町西ヘ入町 00069960M17△△△△△△△△△△△書林△岡権兵衛 00069970¥P238 00069980¥U噺本大系△第八巻 00069990¥T口合恵宝袋 00070000¥G 00070010¥Y 00070020L16宝暦五年刊 00070030L17春松子作・序 00070040L18半紙本五巻 00070050L19東大国語研究室蔵 00070060¥Y 00070070M1あら玉りぬる/初春(はつはる)は、/何方(いづかた)も/賑(にぎ)+しく、/手鞠(てまり)、はねつく、 00070080M2/穴市(あないち)、/宝引(ほうびき)、/弓矢(ゆミや)、/玉(たま)うち、ぶり+/毬打(ぎつてう)。よるハ/夜長(よなが)な 00070090M3れバ、/童子(わらべ)もわんちや、むかし+(一オ)/祖父(ぢい)ハ山へ/薪(しば)し 00070100M4に、/祖母(ばゞ)ハ川へ/洗濯(せんだく)も/古(ふる)めかしく、/今(いま)/又(また)/新(あらた)にせんだくして、 00070110M5いとさまのそひぢとなすもの乎。 00070120M7△△△亥の△△△△△△△作△者 00070130M8△△△△△初陽△△△△△△△春△松△子(一ウ) 00070140¥P239 00070150¥Y1口合恵宝袋巻之一 00070160L3目△△録 00070170L4/不動(ふどう)の/頓作(とんさく) 00070180L5むけんの/鐘(かね) 00070190L6/仏(ほとけ)の/力(ちから)ばなし 00070200L7すみだ/川(がハ) 00070210L8/井戸掘(ゐとほり)/位(くらい)あらそひ 00070220L9/道具(どうぐ)屋(二オ) 00070230L10/下疳病(げかんやミ) 00070240L11お/福(ふく)の/去状(さりじやう) 00070250L12しきがね/女房(にやうぼう) 00070260L13/女郎(ちよらう)(二ウ) 00070270¥T1口合恵宝袋巻之一 00070280¥N1¥J 00070290¥X/不動(ふどう)の/頓作(とんさく) 00070300M5/清水滝(きよミづたき)のうへのふどう/尊(そん)、/色茶(いろぢや)屋へゆかんとて、こんがら 00070310M6/童子(とうじ)を/供(とも)につれ、/八坂(やさか)、/高台寺(かうだいじ)、ぎをん町まて/出(で)られしが、 00070320M7いづ/方(かた)にて/遊(あそバ)んとしあんせられしゆへ、こんがら、ぎをん 00070330M8町こそよき/遊(あそ)び所じや。いざ/記張(きばり)へゆかんといひけれバ、 00070340M9/不動(ふどう)かぶりをふり、いや+、ほたる/茶(ぢや)やにせんといハれ 00070350M10けれバ、/童子(どうじ)も(三オ)あきれ、それハあまり御しまつをな 00070360M11されますといひけれバ、いや+、しまつでハない。/縄手(なハて) 00070370M12にあるからハ、をれに/相応(さうをう)じや。 00070380¥N2¥J 00070390¥Xむけんの/鐘(かね) 00070400M15ある/方(かた)の/下女(げぢよ)、/密夫(ミつふ)のかたより三百目のむしんいハれ、/何(なに) 00070410M16とぞとゝのへつかハし/度(たく)をもへど、三百の/銭(せに)さへできがた 00070420M17く、/思案(しあん)ばかりしてゐるに、をりしも/門(かど)とをる/人(ひと)、/盛衰記(せいすいき) 00070430M18の/浄(じやう)るりをかたつて/通(とを)る(三ウ)を/聞(きゝ)、むけんの/鐘(かね)のことを 00070440M19思ひ/出(いだ)し、なにもかねになぞらへるものなさに、/幸(さいハ)ひ/茶(ちや)を 00070450¥P240 00070460L1たいているゆへ、/茶(ちや)がまをかねとなぞらへ、/一心(いつしん)にきねん 00070470L2して/柄(ひ)しやくをつとり、すでにうたんとせし/時(とき)に、をくの 00070480L3ふすまをさつとあけ、旦那、声をあらゝげ、コリヤ+梅よ、 00070490L4なんぼそのかまたゝいても、ふるがまゆへ、かなけハてぬ 00070500L5ぞ。 00070510¥N3¥J 00070520¥X/仏(ほとけ)の/力(ちから)ばなし(四オ) 00070530L8/清水(きよミづ)のくハんをんのかたへ、/大仏(だいふつ)のゆかれ、/四方(よも)山のはな 00070540L9しして、/観音(くハんをん)いハれけるハ、/大仏(だいぶつ)どのハさぞ/力(ちから)がたんとあ 00070550L10ろうといハれけれバ、大仏、いや+、からだばかりをふ 00070560L11きうて、/力(ちから)ハ一つもない。たつことさへならぬ身じや。貴 00070570L12様ハ手が/多(をゝい)ほどに、すもふにハかたしやろといハれたれバ、 00070580L13くハんをん、/手(て)がをゝふても、すもふとりにハまけます。 00070590¥N4¥J 00070600¥X/須(す)見/田川(たがハ)(四ウ) 00070610L16ずんどしハき人あり。あるとき/友達(ともたち)どもに、けふハゆふべ 00070620L17あまりよろしき/夢(ゆめ)をミたゆへ、/貴様(きさま)をふるまい、/何(なん)ぞめづ 00070630L18らしきことをこしらへおましたいとおもふて、いろ+/工= 00070640L19夫(く=ふう)したところ、すミた川といふ/鱠(なます)をこしらへた。をじやれ 00070650¥G 00070660M11といへば、/珍(めづ)らしい。/終(つい)にきかぬ/料理(りやうり)なりとて/行(ゆき)てミれバ、 00070670M12あんのごとくしハき/料理(りやうり)にて、/鱠(なます)ばかりにて、/外(ほか)に/何(なに)もな 00070680M13く、/扨(さて)鱠を(五オ)ミれバ、大こんざく+/切(きつ)たばかりで、 00070690M14なにも/子(こ)ハなし。/是(こた)ハきやうがることかな。/此(この)なますをす 00070700M15ミだ/川(がハ)とハ、どふいふことじや。/亭主(ていしゆ)、されバ、こゝがを 00070710M16れがしゆかうじや。ナゼニ。はて、子を/尋(たづぬ)るハ。 00070720¥N5¥J 00070730¥X/井戸掘(ゐどほり)/位(くらい)あらそひ 00070740M19ある所に、井戸ほりとやねがへと一/度(ど)にせられける。もは 00070750¥P241 00070760L1や/夕(ゆふ)めしもすぎ、/昼休(ひるやすミ)して、やねやいふ/様(やう)、/互(たがい)に同し/職人(しよくにん) 00070770L2なれど、そなたよりハわしが/上(かミ)に(五ウ)(六オ挿絵)つく/位(くらい)じ 00070780L3や。なぜといへバ、/貴人(きにん)、/高人(かうにん)、/堂(とう)とうの/上(うへ)へでも/上(あが)る。そ 00070790L4なたハ/地(ぢ)の/底(そこ)の/商買(しやうばい)ゆへ、人のふむ所へはいるから/下(さか)リじ 00070800L5やといふ。/井戸掘(ゐどほり)/腹(はら)を/立(たて)、いや+、をれが/上(あが)リじや。さ 00070810L6つきにお/杉(すぎ)のいハれたをきかぬか。やねやどの、/下(お)リてめ 00070820L7しくハしやれ、/井戸掘殿(ゐどほりどの)、/上(あがつ)てめしくハしやれといふた。 00070830¥N6¥J 00070840¥X/道具(どうぐ)屋 00070850L10/縄手(なハて)/古道具(ふるどうぐ)やに、あたらしきつるべ/有(あり)。/或者(あるもの)、この(六ウ) 00070860L11つるへ、ねたんハいかほどゝ/尋(たつね)しかハ、てい/主(しゆ)、/口合(くちあひ)もの 00070870L12にて、むかいと/同直(とうね)でこさるといひけれハ、このものもぬ 00070880L13からず、それハたかい。ほたるにしやといひけれバ、いや 00070890L14+、まだ/水上(ミつあけ)ハしませぬといふた。 00070900¥N7¥J 00070910¥X/下疳病(けかんやミ) 00070920L17/徳助(とくすけ)か。/久(ひさ)しふあハなんた。見れバきつう/顔(かほ)いろがわるい。 00070930L18どこぞわるかつたか。されバてごさります。わたくし/此間(このあいた) 00070940L19ハ/車(くるま)うしをわづらいました。/是(これ)ハ/珍(めつら)(七オ)しい。ついにき 00070950M1かぬやまいじや。/夫(それ)ハどのやうな/病(やまひ)じやと/尋(たづね)けれバ、/徳介(とくすけ) 00070960M2いふやう、/下疳(けかん)てこさります。/下疳(げかん)を/車牛(くるまし)とハ。されバで 00070970M3ござる。くびがたゞれました。 00070980¥N8¥J 00070990¥Xおふくの/去状(さりしやう) 00071000M6おふく/女郎(ちよろう)、どこへいかしやる。されバ、わたしも/何(なん)の/落= 00071010M7度(をち=ど)もないに、/夫(をつと)にさられました。八兵衛さん。よい所が/有(ある) 00071020M8なら、きもいつてくだんせ。なるほど、ちと/心当(こゝろあた)りがある 00071030M9ほとに、せハしてしんじよ。したが、御/亭(てい)(七ウ)/主(しゆ)の/去(さつ)た 00071040M10といふ/印(しるし)に、かいたものても/有(ある)かと/尋(たつね)けれハ、なるほと、 00071050M11ごさりますとて、/古(ふる)きふんとしをだしけり。八兵衛、ふし 00071060M12んに思ひ、それをかいたものとハ。はて、ぬしがかゝれた 00071070M13のでごさります。 00071080¥N9¥J 00071090¥Xしきがね/女房(にようぼう) 00071100M16ある人、ちとよき/身代(しんたい)のかたより、五十両のしきがねをも 00071110M17つてくる/女房(にようぼう)を/持(もち)けり。/此(この)女房、五十両のひかりにて、こ 00071120M18との/外(ほか)わがまゝなり。/友(とも)たちども見て、きの(八オ)どくが 00071130M19り、/扨(さて)もそなたハけつかうな人じや。あのやうなめがねを 00071140¥P242 00071150L1もつものか。よほどはなげにミゆると/異見(いけん)しけれバ、され 00071160L2バ、をれもさうおもへど、五十両にこまつている。したが、 00071170L3/今(いま)/女房(にようぼう)をめがねとハ、どういふことじやと/尋(たづね)けれバ、され 00071180L4バ、はなに/懸(かけ)るでないかといふた。 00071190¥N10¥J 00071200¥X女郎 00071210L7去方のかゝへの女郎、きりやうもよく、こと(八ウ)のほか 00071220L8はやりけれど、/夜(よる)のとまり/客(きやく)なし。いかなることとおもへ 00071230L9バ/道理(どうり)こそ、/小(せう)やうたれなり。かゝへの/亭主(ていしゆ)なんぎに思ひ、 00071240L10ある/医者(いしや)にりやうじをたのんだれバ、なをしてやらんとて、 00071250L11にかいへつれ/上(あが)り、かの女郎のまへをむりにあけさせ、め 00071260L12がねをかけてとつくりとミて、/手(て)を三つたゝかれ、もはや 00071270L13/晩(ばん)から/夜便(よばり)のきづかいないといハるゝゆへ、これハふしぎ 00071280L14な/療治(りやうち)じや。これでなをるとハどふいふことでござるとた 00071290L15づね(九オ)たれバ、/医者(いしや)どの、されバ、しろものとつくり 00071300L16と見て/手(て)うつたゆへ、/小便(せうべん)ハなるまい。 00071310¥Y1口合恵宝袋巻之一△終(九ウ) 00071320¥Y1口合恵宝袋巻之二 00071330M3目△△録 00071340M4/俳諧師(はいかいし) 00071350M5/医者(いしや)の/発明(はつめい) 00071360M6/餌(ゑ)さし 00071370M7/桔梗屋(ききやうや) 00071380M8/心中(しんぢう) 00071390M9/金(かね)のなる/木(き)(一オ) 00071400M10/高尾(たかを)の/哥(うた) 00071410M11/沈香(ぢんかう) 00071420M12/挽茶(ひきちや) 00071430M13/魚(うを)の/口合(くちあい)(一ウ) 00071440¥P243 00071450¥T1口合恵宝袋巻二 00071460¥N1¥J 00071470¥X/俳諧(はいかい) 00071480L5俳諧/師(し)の/内(うち)の/下男(しもをとこ)、つぼの内のそうじしてゐる所へ、とな 00071490L6りの男/来(きた)り、/銭(せに)三百文かせといへバ、銭ハなし。此鋤かそ 00071500L7と/借(かす)を、/乳母(うは)見付、/旦那(だんな)へつげれバ、/腹(はら)を立、殊外しかり 00071510L8けれバ、此男、はいかいの内なれバこそくハぬすめ、とい 00071520L9へば、旦那きげんなをり、ワキハと/問(とふ)とき、まだ/鍬(すき)あらバ 00071530L10二/句(く)も三句も。 00071540¥N2¥J 00071550¥X/医者(いしや)の/発明(はつめい)(二オ) 00071560L13ことの/外(ほか)ひまなるいしやあり。/女房衆(にようぼうしゆ)きのどくにおもひ、 00071570L14なぜにおまへさまの/御療治(ごりやうじ)ハきゝませぬ。/世上(せじやう)で/下手(へた)いし 00071580L15やと申ませふといへバ、/医者(いしや)どのいハるゝにハ、いや 00071590L16+、をれハ/名(めい)じん/上手(じやうず)なれど、/病人(びやうにん)がミな/下手(へた)じや。そ 00071600L17れゆへりやうじがきかぬといハれた。お/内儀(ないき)、それハどう 00071610L18して/病人(びやうにん)が/下手(へた)でござります。されバ、をれハ/書物(しよもつ)にある 00071620L19とをり、/古(こ)ほうを(二ウ)もちいれど、びやうにんがミな、 00071630M1/古方(こほう)のとをり/煩(わづ)らハぬゆへじやといはれた。 00071640¥N3¥J 00071650¥X/餌(ゑ)さし 00071660M4/鳥(とり)さし、こゝかしこ見めぐり、ごもくばに/雀(すゞめ)四五羽、ゑを 00071670M5/拾(ひろ)ひゐるを、ずつとさしけるが、鳥ハにげて/古(ふる)ぞうりをさ 00071680M6しける。/大(をゝ)ぜい子ども、鳥ハさゝいで、ぞうりをさいたと 00071690M7わらへバ、とりさし、へらず/口(ぐち)にて、はいてくりよとおも 00071700M8ふてといふた。(三オ) 00071710¥N4¥J 00071720¥X/桔梗(ききやう)屋 00071730M11/桔梗(ききやう)やといふ/菓子(くハし)やに、正月/元日(ぐハんにち)の/夜(よ)、/鶏(にハとり)/宵(よひ)なきをした 00071740M12り。ていしゆ、ことの/外(ほか)/気(き)にかけ、中+/雑煮(ぞうに)も/祝(いハ)ハれず、 00071750M13/打伏(うちふし)てねられけれバ、お/内義(ないぎ)きのどくに思ひ、さのミ/心(こゝろ)に 00071760M14かけ給ふな。/此(この)よひなきハ/却(かへつ)て/家(いへ)の/吉相(きつそう)とてそのまゝ/一首(いつしゆ)、 00071770M15△△きゝやうやにごれバくハじにすめバくハし 00071780M16△△△こゝでかをうとよひなきぞする(三ウ)(四オ挿絵) 00071790¥N5¥J 00071800¥X/心中(しんぢう) 00071810M19さても/此(この)ごろハ/心中(しんぢう)がある。せんども/新地(しんち)で大工の心中が 00071820¥P244 00071830L1/有(あつ)た。されバ/其(その)ことよ。/米(こめ)がきつう/安(やす)ふなつたゆへ、/未来(ミらい) 00071840L2もくらしよいやら、/極楽(ごくらく)の/山門(さんもん)の/御普請(ごふしん)あるゆへ、/大工(だいく)の 00071850L3/入用(いりよう)につき、/女房(にようぼう)までつれてゆくのじや。/此(この)京よりハまた 00071860L4/西方(さいほう)がよひそうな。 00071870¥N6¥J 00071880¥X/金(かね)の/実(なる)/木(き) 00071890L7ある人、/金(かね)をうらやま/敷(しく)思ひ、/何(なに)とぞ金のなる木も(四ウ) 00071900L8あるならほしい+と、/日比(ひころ)いハれたを、てつちの/長太(てうた)き 00071910L9ゝて、あるをり、/旦那(だんな)さま。かねのなる木をかうてさんじ 00071920L10ましたといひけるを、旦那もふしんに思ひ、どのやうなも 00071930L11のじやといへバ、これでござるとて、しゆもくをだしけり。 00071940L12/大(をゝ)きなまちがい。 00071950¥N7¥J 00071960¥X/高尾(たかを)の/哥(うた) 00071970L15あるもの、/高尾(たかを)へ/紅葉(もミぢ)見にゆき、もどりにかごをかりてけ 00071980L16り。かごかきいふやう、/旦那(だんな)、たかをへ/御出(おいで)なら(五オ)さ 00071990L17ぞおうたがあつたであろといへバ、いかにも、/哥(うた)をよんだ。 00072000L18△△をく山にもみぢふミハけなく/鹿(しか)の 00072010L19△△△こへきくときぞ/秋(あき)ハかなしき 00072020¥G 00072030M11/扨(さて)+わたくしらハなんにもぞんじませぬが、おもしろそ 00072040M12うにござるといひ+、ほどなく/堀川(ほりかハ)の/辻(つじ)へきたりけれバ、 00072050M13/辻(つじ)のかごのもの、八兵衛。よい/旦那(だんな)のせたといへバ、かご 00072060M14かき、よい/旦那(だんな)か。/猿丸(さるまる)/太夫(たゆふ)さんじや。 00072070¥N8¥J 00072080¥Xぢんかう(五ウ) 00072090M17/薬屋(くすりや)の見せへいて、やせ馬五分がのを下されといひけれバ、 00072100M18薬や、がてんいかず、それハ/何薬(なにぐすり)でこざるといひけれバ、 00072110M19薬やでしらぬか。やすい/沈香(ぢんかう)じやといふ。ナセニ。ハテ、に 00072120¥P245 00072130L1をハぬのじや。 00072140¥N9¥J 00072150¥X/挽茶(ひきちや) 00072160L4/茶人(ちやじん)、はいでのてつちを/置(をき)、あすハ/客(きやく)が/有(ある)/程(ほど)に茶をひけと 00072170L5て、/静(しづか)にひきまハせ、茶がきりはくになつてをりる。それ 00072180L6でなけれバ/濃茶(こいちや)にならぬ(六オ)とねんごろにをしへいひつ 00072190L7けて、/自分(しぶん)ハ花など/取(とり)にゆかれ、/暫(しバらく)してかいられけれハ、 00072200L8/彼(かの)でつち、きのどくそうな/顔(かほ)にて、なんぼ/茶(ちや)をひいても、 00072210L9はくにハなりませぬ。やつはり/青(あを)ふごさるといふた。 00072220¥N10¥J 00072230¥X/魚(うを)の/口合(くちあい) 00072240L12/猟師(りやうし)、太刀/魚(うを)と/鯛(たい)とを、あミにて/打(うち)あげ、いざ、をのれが 00072250L13/命(いのち)をとらんといへバ、/太刀魚(たちうを)ひらりと(六ウ)身をまハし、 00072260L14あをい/下坂(しもさか)といへバ、/鯛(たい)そのまゝ、おや/十鯛(じうだい)でござるとい 00072270L15ふた。 00072280¥Y1口合恵宝袋巻之二△終(七オ) 00072290¥Y1口合恵宝袋巻之三 00072300M3目△△録 00072310M4ちよんの/間(ま) 00072320M5/万病円(まんびやうゑん) 00072330M6/歯(は)ぐすり 00072340M7なるもの/揃(ぞろへ) 00072350M8すもふの/飛入(とびいり)(一オ) 00072360M9/大(だい)こく 00072370M10/布袋(ほてい) 00072380M11/西行(さいぎやう) 00072390M12ひまん 00072400M13/伊勢(いせ)/参詣(さんけい)(一ウ) 00072410¥P246 00072420¥T1口合恵宝袋巻之三 00072430¥N1¥J 00072440¥Xちよんの/間(ま) 00072450L5二三/人(にん)/寄合(よりあい)、/何(なに)もめづらしいことハないか。されバ/此(この)ごろ 00072460L6/大工(だいく)の/心中(しんぢう)があつた。それハめづらしい。さぞ大工なら、 00072470L7のミか/斧(よき)かで、しんだであろ。いや+、そんなものでハ 00072480L8ない。そんなら、なんでしんだ。ちよんのまでしんだ。 00072490¥N2¥J 00072500¥X/万病円(まんびやうゑん)(二オ) 00072510L11/田舎(いなか)なまごしやくなるもの、京/内参(うちまい)りして、二/条(てう)の/薬(くすり)やの 00072520L12/店(ミせ)、/十三味(じうさんミ)/地黄丸(ぢをうぐハん)とあるをミて、/地黄丸(ちをうぐハん)ハ六/味(ミ)か八味より 00072530L13ないはづなるに、ふしぎなことと思ひ/尋(たづね)たれバ、/亭主(ていしゆ)、さ 00072540L14れバ八味の/地黄丸(ぢをうぐハん)、あまりにうれぬゆへ、/五味(ごミ)がかゝつて 00072550L15十三/味(ミ)なり。そんなら其そばに、/万病円(まんひやうゐん)とあるが、やまひ 00072560L16ハ/四百四病(しひやくしびやう)はかない。/万(まん)やまひが/有(ある)かと/尋(たづね)けれバ、されバ、 00072570L17/疝気(せんき)とて/千(せん)も/有(ある)といふ。それでからが/千四百四病(せんしひやくしびやう)じや。/張= 00072580L18満(てう=まん)(二ウ)とて、ちやうど/万(まん)ごさるといふた。 00072590¥N3¥J 00072600¥X/歯(は)くすり 00072610M3/五条(ごじやう)/辺(へん)の/歯医師(はいし)のかんばんに、かなにて、はくすしとあり。 00072620M4/田舎(いなか)のへんくつもの、/是(これ)をミて、/都(ミやこ)にハめづらしい。はく 00072630M5のすしが/有(ある)。/国(くに)もとへ/求(もと)めつかハさんとて、求んといふ。 00072640M6ていしゆもさるものにて、/只(たゞ)今ハきれましたといふ。田舎 00072650M7もの、そんなら、ないものをなぜ、かんばんをだすとねだ 00072660M8れバ、はた書をミやしやら(三オ)ぬか。/入歯(いれば)/仕(つかまつ)るとあるハ。 00072670¥N4¥J 00072680¥Xなるものぞろへ 00072690M11山の/芋(いも)ハうなぎになり、/雀(すゞめ)かはまぐりになり、いたちがう 00072700M12づらになると、とり+/咄(はなし)を/聞(きゝ)、/物(もの)がたい/親父(おやぢ)、そんなこ 00072710M13とも御ざろ。/築地(ついぢ)が/茶(ちや)やになりますといへバ、/其中(そのなか)に八十 00072720M14/斗(ばかり)の/禅門(ぜんもん)/出(で)られ、そればかりじやござらぬ。こちの/下(しも)の/町(てう) 00072730M15の/若(わかい)ものが、/浄(じやう)るりよふかたりましたが、きけバ/此(この)ころ、 00072740M16/大(たい)こになりました。(三ウ)(四オ挿絵) 00072750¥N5¥J 00072760¥Xすもふの飛入 00072770M19すもふ/見物(けんふつ)の中より、/少(すこし)き/痩男(やせおとこ)出て、/関(せき)ずもふと/取(とり)あい、 00072780¥P247 00072790¥G 00072800L11いかゞしけん、/関(せき)まけたり。とつと見物わらいのこへをあ 00072810L12げ、/名乗(なのり)ハ/何(なに)といふといへハ、/此(この)男、わしが/名(な)ハ/市(いち)兵/衛(べ)と 00072820L13いふ。よいやうにいふてくれといふ。/行事(きやうし)、それでハ/済(すま)ぬ。 00072830L14/御商売(こしやうばい)ていハと/尋(たつね)けれバ、ごふくやといふ。そこで行事、 00072840L15/只今(たゝいま)の/勝(かち)ずもふ、けんきんかけねなしと/名(な)のりけれバ、け 00072850L16んぶつ衆きゝて、それ(四ウ)でまけぬはづじや。 00072860¥N6¥J 00072870¥X/大黒(だいこく) 00072880L19大こくハづきんをぬがねバ、/坊主(ぼうず)やら/俗(ぞく)やらしれぬ。/貴様(きさま) 00072890M1ハ/知(しつ)ているかと/尋(たつね)けれバ、おれも/知(し)らぬといふ。/幸(さいはい)こちの 00072900M2となりに、/大(だい)こくを/信心(しんじん)するから尋みんとて、かの人様ハ 00072910M3大こくのあたまを/御存(ごそんじ)かといへバ、なるほど/存(ぞんじ)てをる。/坊= 00072920M4主(ぼう=ず)でもこざらぬ。かうがいわげでござるといハれた。 00072930M5(五オ) 00072940¥N7¥J 00072950¥X/布袋(ほてい) 00072960M8さる所に、/床(とこ)に/布袋(ほてい)のかけ/物(もの)かけてあるをミて、さて+ 00072970M9見事なるかけ/物(もの)。/誰(たが)/筆(ふで)でこざるなどゝ/感(かん)しけれバ、/中(なか)にな 00072980M10にも/知(し)らぬもの、われもほめんとて、さて+見ごとや。 00072990M11ことさら/腹(はら)の/大(をゝ)きいことや。なんぼ/米(こめ)がやすいとて、あの 00073000M12腹のていなら、米がたんといるであろといへバ、/布袋(ほてい)どの、 00073010M13いや+、腹が/大(おゝ)きふても、かゝつていてハくハれぬ。 00073020M14(五ウ) 00073030¥N8¥J 00073040¥X/西行(さいぎやう) 00073050M17/諸国(しよこく)/修行(しゆぎやう)の/法師(ほうし)、/駿河(するが)にて/夜盗(よたう)にあひ、かの/盗人(ぬすびと)うしろか 00073060M18ら/一太刀(ひとたち)/切(きり)かけたれど、なんぼでもきれなんだ。/是(これ)ハめい 00073070M19ようなことじやとおもへハ、/道理(たうり)こそ、ふじ見西行じや。 00073080¥P248 00073090¥N9¥J 00073100¥Xひまん 00073110L3三太郎。われハいかうしゝがつゐた。なにぞむまいものく 00073120L4ふたか。ようじんせよといへバ、なんと、きつねの(六オ) 00073130L5ついたよりハましかといふた。 00073140¥N10¥J 00073150¥X/伊勢(いせ)まいり 00073160L8ずんどものいミする人、/俄(にハか)につれにさそハれ/伊勢参(いせまいり)をせん 00073170L9とて、/扨(さて)/其日(そのひ)になり、つれ/衆(しう)さそひに見へたり。いまだ/出= 00073180L10立(で=たち)をくハぬほどに、/暫(しバら)く/待(まつ)てくだされとて、出立の/膳(せん)にす 00073190L11ハられけれバ、ぜんに木と竹とのはしがすへて/有(あり)。/是(これ)をミ 00073200L12て、ことのほか/気(き)にかけ、もはや参らぬといハれけるゆへ、 00073210L13/連衆(つれしゆ)も(六ウ)せつかく思ひたつたに、心にかけずまいらし 00073220L14やれといひつゝ、 00073230L15△△木と竹と/心(こゝろ)にかけふものならバ 00073240L16△△△松と竹とハいわゝざらまし 00073250L17とよまれけれバ、/悦(よろこん)で/出立(でたち)をくいしまい、/門口(かどぐち)へでられけ 00073260L18れバ、/又(また)/何(なに)やらにゐやりとあしにさハり、いよ+/気(き)にか 00073270L19け、もはや/足(あし)がけがれたから/参(まい)らぬ/を((ママ))いハれミれバ、/板間(いたま) 00073280M1のふいたぞうきんなり。(七オ)そこでつれ/衆(しゆ)また一/首(しゆ)、 00073290M2△△ぞうきんハ/蔵(くら)に/金(かね)とぞかくならん 00073300M3△△△とかくこなたハふく/人(ひと)とぞなる 00073310¥Y1口合恵宝袋巻之三△終(七ウ) 00073320¥P249 00073330¥Y1口合恵宝袋卷之四 00073340L3目△△録 00073350L4すもふの花 00073360L5/痔(ぢ)の/間違(まちかい) 00073370L6ぬけ/参(まい)り 00073380L7/鳳来鳥(ほうらいてう) 00073390L8/唐人(とうじん)の/若衆(わかしゆ) 00073400L9もやうごのミ(一オ) 00073410L10おやまのかけ/地(ぢ) 00073420L11かの/字(じ)の/赤子(あかご) 00073430L12ぐハん/懸(かけ) 00073440L13ひつの/当(あた)り(一ウ) 00073450¥T1口合恵宝袋巻之四 00073460¥N1¥J 00073470¥Xすもふの/花(はな) 00073480M5大坂にて/勧進(くハんじん)ずもふあり。/東(ひかし)の/関(せき)と/西(にし)の/小結(こむすび)と/取合(とりあい)、いか 00073490M6ゞしけん、東の/関(せき)まけたり。/見物(けんぶつ)の/中(なか)より、東の/関(せき)へと/花(はな) 00073500M7をやりたり。まけた/方(かた)へはなをつかハすハ/心得(こゝろへ)ずと、皆 00073510M8+ふしんに思ひ、よく+ミれバ、/敗毒散(はいどくさん)であつた。せ 00073520M9きをやめいといふことか。 00073530¥N2¥J 00073540¥X/痔(ぢ)のまちがい(二オ) 00073550M12/若(わか)いもの二三人、東わきへ/遊(あそ)びにゆくとやくそくして、/一= 00073560M13人(ひと=り)ミへなんだ。あくる/日(ひ)、そなたハゆふべ、なぜミへなん 00073570M14だと/尋(たづね)けれバ、されバ、ぢがおこつたといふ。それハきの 00073580M15どく。いぼ/痔(ぢ)か、あな/痔(ぢ)かと/尋(たづね)たれバ、いや+、おやぢ 00073590M16じやといふた。 00073600¥N3¥J 00073610¥Xぬけまいり 00073620M19てつち/長吉(てうきち)、ぬけ/参(まい)りしてかへりけり。/主人(しゆじん)、ことの/外(ほか)い 00073630¥P250 00073640¥G 00073650L11かられ、をのれハたがゆるして、いせまいりしたと(二ウ) 00073660L12いハれけれバ、たれもゆるしハいたさねど、/下(しも)の/丁(てう)のげた 00073670L13やのかんはんをミて、/伊勢(いせ)へ/参(まいつ)てもだいじないとぞんじ、 00073680L14まいりましたといふ。それハどふかいてあつた。ぬけをれ 00073690L15うけあいとこざります。 00073700¥N4¥J 00073710¥X/鳳来鳥(ほうらいてう) 00073720L18四条/川原(がハら)でめづらしい見せ/物(もの)があつた。それハ/何(なん)てあつた。 00073730L19鳳来鳥とておふきなしろい鳥じやが、さゝをくふたといへ 00073740M1バ、いや+、さゝをくふたとハそさうじや。(三オ)さゝ 00073750M2をのんだであろといふた。やつはりそさう。 00073760¥N5¥J 00073770¥X/唐人(とうじん)の/若衆(わかしゆ) 00073780M5/長崎(ながさき)へ唐人、/美(うつく)しき/小童(せうどう)をつれ/来(きた)り、/野郎茶(やろうぢや)屋へうつてか 00073790M6へりぬ。/此(この)小童/器量(きりやう)よく、ことのほかはやりけり。ある/出= 00073800M7家(しゆつ=け)、唐人の若衆こそめづらしけれ、いざゆきて/遊(あそバ)んとてゆ 00073810M8かれ、かの小童を/揚(あげ)屋へよび、夜日ともに遊ひ、もはや/帰(かへ) 00073820M9らんとせられしとき、揚屋も一げんの/客(きやく)ゆへ揚代をのぞめ 00073830M10バ、/腰(こし)より(三ウ)(四オ挿絵)ぜにを十六文ついてやられた。 00073840M11/揚(あげ)屋、これハどふしたことでごさる。/揚(あげ)代ハ二十五匁でご 00073850M12ざるといひけれハ、/出家(しゆつけ)、いや+、お/定(さだめ)の/通(とを)りやる。/公= 00073860M13儀(こう=ぎ)の/制札(せいさつ)を見ぬか。からしり十六文と/有(ある)ハ。 00073870¥N6¥J 00073880¥Xもやうごのみ 00073890M16/或人(あるひと)ひとり/娘(むすめ)を/持(もち)、ことの/外(ほか)ひそういたされしが、正月/小= 00073900M17袖(こ=そで)になにをしてやろうと、ふうふそうたんせられしを、む 00073910M18すめごきゝて、したきハひぢりめんにそうが(四ウ)のこ、 00073920M19/上着(うハぎ)ハはな/色(いろ)あやに/白(しろ)あがりのもやうをつけて/下(くだ)されとい 00073930¥P251 00073940L1ハれけれバ、てゝご、そのもやうハいてうがよかろといハ 00073950L2れる。それハなぜでござると/尋(たづね)たれバ、むしのつかぬやう 00073960L3にといハれた。 00073970¥N7¥J 00073980¥Xおやまのかけ/地(ぢ) 00073990L6/道具(どうぐ)やの見せのおやまのかけ/地(ぢ)を、ある人、代三匁にきハ 00074000L7め、/明日(あす)とりにまいろといふてかへりける。ていしゆかへ 00074010L8り、かけ/地(ぢ)ハ/何(なに)としたとたづね(五オ)けれバ、/内義(ないぎ)、三匁 00074020L9にうり、/明日(あす)とりにくるやくそくいたし、内へ/入(いれ)おいたと 00074030L10いひけり。二三日しても/取(とり)にこぬゆへ、/女夫(めうと)げんくハ、た 00074040L11がひに/云(いひ)つのる/時(とき)、/掛地(かけぢ)のおやまがいふやう、/若&(もし+)/旦那(だんな)さ 00074050L12ん、お/内義(ないぎ)さん。けんくハなされますな。/私(わたし)があすから見 00074060L13せへ/出(で)れハよい。 00074070¥N8¥J 00074080¥Xかの/字(じ)の/赤子(あかご) 00074090L16/下(しも)京うら/借(しやく)屋にいる/日雇(ひよう)の/女房(にようぼう)、さんをしたる。/此子(このこ)/男(おとこ)の 00074100L17/子(こ)にて、/左(ひだり)の/手(て)に、かの/字(じ)一/字(じ)かいたものを(五ウ)もつて 00074110L18/生(むま)れたり。七日めに/手(て)を/開(ひらい)たら、うしわかとあつた。その 00074120L19/隣(となり)の/日雇(ひよう)のかゝも、また/産(さん)をしたり。/此子(このこ)ハ/女子(おなごのこ)で、/右(ミぎ) 00074130M1の手に、かの/字(じ)をもつて/生(うま)れたり。それゆへ/隣(となり)ハうしわか 00074140M2とあつたから、/定(さだめ)てしづかであろうと/悦(よろこ)び、せいじんした 00074150M3ら/互(たがい)にめあハさんとやくそくせられ、さて七日めに/手(て)をひ 00074160M4らいたをミれバ、そうかであつた。 00074170¥N9¥J 00074180¥Xぐハんかけ(六オ) 00074190M7ねからはやらぬ女郎と/役者(やくしや)とあり。はくじん、うきことに 00074200M8思ひ、/清水(きよミづ)くハんをんへ七日/参(まい)りをしたり。それより、こ 00074210M9とのほかはやり/繁昌(はんじやう)したり。役者うら山しく思ひ、/是(これ)も/清= 00074220M10水(きよ=ミづ)へ七日参りをしたれど、とかくはやらず。/扨(さて)+/観音(くハんをん)さ 00074230M11まハ女郎の/願(ぐハん)ハかなへて、私ハをきゝ下さらぬと、うらみ 00074240M12申上たれバ、くハんをんおつげに、/其方(そのほう)も/如才(ぢよさい)にをもハね 00074250M13ど、せなかに/腹(はら)ハかへられぬと/仰(おふせ)られた。(六ウ) 00074260¥N10¥J 00074270¥Xひつの/当(あた)り 00074280M16/貧(ひん)なるものゝ/女房(にようバう)、ミうちうそばれ、手あしもをもし、/床(とこ) 00074290M17にふしたり。それゆへ/上(かミ)の/町(てう)のいしやどのに見てもらいけ 00074300M18れハ、いしやどのミやくをミて、これハしつのあたりであ 00074310M19ろうといハれたから、ていしゆ、いや+、それハをミた 00074320¥P252 00074330L1てがちがひます。このごろハぞうすいばかりたべて、ひつ 00074340L2ハたなへあげてを(七オ)きましたもの。なんの、ひつにあ 00074350L3たりませふ。 00074360¥Y1口合恵宝袋巻之四△終(七ウ) 00074370¥Y1口合恵宝袋巻之五 00074380M3目△△録 00074390M4/豆腐(とうふ)の/煩(わづらひ) 00074400M5ふんどし/自慢(しまん) 00074410M6/蝋燭(らうそく)の/身(ミ)の/上(うへ) 00074420M7/仁王(におう) 00074430M8/虎屋(とらや) 00074440M9ころび(一オ) 00074450M10もみぢ見 00074460M11しゆびん 00074470M12/業平(なりひら) 00074480M13/二百(にひやく)十日(一ウ) 00074490¥P253 00074500¥T1口合恵宝袋巻之五 00074510¥N1¥J 00074520¥X/豆腐(とうふ)のわづらひ 00074530L5とうふ、/此頃(このごろ)ハかぜをひき/枕(まくら)あがらぬよし。こんにやく、 00074540L6いざや/見廻(ミまい)にゆかんとて、/扨(さて)+/御風邪(こふうじや)の/由(よし)、きのどくに 00074550L7/存(ぞんず)る。しかし、われも/中風気(ちうふけ)にて、ぐにやつきますといへ 00074560L8バ、とうふ、いや+、そこもとハねが/丈夫(じやうぶ)にミへます。 00074570L9てまへハかやうにわづらふてからハ、もとのまめにハなり 00074580L10ますまい。(二オ) 00074590¥N2¥J 00074600¥Xふんどし/自慢(じまん) 00074610L13/帯(をび)いふやう、/人(ひと)の/身代(しんだい)をなをすハ、われならでハなし。/先(まづ) 00074620L14人の身だハ+として/取(とり)ひろげ、とりじめなく、そこをわ 00074630L15れハぐるりと/取(とり)まハしてしめているゆへ、人の/身(ミ)をたもつ 00074640L16といへバ、ふんどしきゝて、いや+、なんぼじまんしや 00074650L17つても、おれハ家の/番頭(ばんとう)しや。/金(きん)の/出入(でいり)ハをれより外にな 00074660L18い。 00074670¥N3¥J 00074680¥X/蝋燭(らうそく)の身のうへ(二ウ) 00074690M3/長芋(ながいも)、/平皿(ひらざら)よりはい/出(いて)て/云様(いふやう)、おれハ此さしきて/大臣(だいじん)じや。 00074700M4なぜなら、人がをれをミて、ミな/大腎(たいしん)じやといふと/云(いふ)。ら 00074710M5うそくきゝて、そんなら、わしハけいせいじやといふ。な 00074720M6ぜにといへバ、はて、ながれの/身(ミ)じやものといふた。 00074730¥N4¥J 00074740¥X/仁王(にをう) 00074750M9/大仏(たいぶつ)の/仁王(にをう)、いざわつさりと/嶋原(しまバら)へゆかんとて、/揚屋(あけや)町を 00074760M10/一辺(いつへん)/見物(けんぶつ)して、/女郎(ちよらう)をかつてといハ(三オ)れけれバ、/女郎(ちよらう)、 00074770M11/仁王(にをう)を見て、/扨(さて)もこハい/皃(かほ)しやといへハ、いや+、/顔(かほ)ハ 00074780M12こをうても、/身(ミ)ハきやらじや。 00074790¥N5¥J 00074800¥X/虎屋(とらや) 00074810M15/室町(むろまち)/虎(とら)やのかんばん、/虎(とら)を/出(た)して/有(あり)しを、/遠国侍(ゑんこくさむらい)ミて、 00074820M16これハとらをうるそうな。/扨(さて)+ミやこハ/自由(しゆう)なことかな。 00074830M17/国(くに)もとのミやげに、/子虎(ことら)を/一疋(いつひき)もとめんとて、/亭主(ていしゆ)にいひ 00074840M18けれハ、ていしゆ、とんさくものにて、/虎(とら)ハねだん/十郎(じうらう)で 00074850M19ござるといひけれバ、(三ウ)(四オ挿絵)/侍(さむらい)も口合にて、それ 00074860¥P254 00074870¥G 00074880L11ハたかい。/工藤(くどう)ハいハぬ。/五郎(ごろう)にまけいといへバ、/少将(せうしやう)ハ 00074890L12おまけもうそうが、/半分直(はんぶんね)にハなりませぬといふ。そんな 00074900L13ら/川津(かハづ)に/犬(いぬ)ぼう。 00074910¥N6¥J 00074920¥Xころび 00074930L16きりしたんころびの/宗旨(しうし)ハ、きつい/御法度(ごはつと)てござるが、き 00074940L17けバ/夷国(いこく)ハころびがあるげにござるといひけれバ、いや 00074950L18+夷こくばかりじやござらぬ。/此比(このごろ)も/東(ひがし)わきにござつた。 00074960L19それハ/何(なに)ものでござる。いや、/三(さ)(四ウ)/味(ミ)せんがこかして 00074970M1ござつた。 00074980¥N7¥J 00074990¥X/紅葉見(もミぢミ) 00075000M4/高尾(たかを)もみぢ/最中(さいちう)ならん。いざ/見物(けんぶつ)にゆかんとて、二三人/嵯= 00075010M5我(さ=が)をさして/行(ゆき)しに、これからミちをしらず。/貴様(きさま)しつてか。 00075020M6をれも/知(し)らぬ。さいハひはたけに/百性(ひやくせう)いれバ、/高尾(たかを)へどう 00075030M7まいりますと/尋(たつね)たれバ、/此薮(このやぶ)かげをいかしやれ。したが、 00075040M8/今比(いまごろ)/高尾(たかを)へ/何(なに)しにいかしやるといひけれバ、もみぢへ(五オ) 00075050M9ミにゆきますといふ。/百性(ひやくしやう)、それならよしにさつしやれ。 00075060M10もミぢハミな、/赤葉(あかば)になりました。 00075070¥N8¥J 00075080¥Xしゆびん 00075090M13/俄(にハか)に/茶(ちや)の/湯(ゆ)をならひ、/何(なに)ぞ/珍敷(めつらしき)/道具(だうぐ)を/求度(もとめたく)、/清水坂(きよミづさか)にてし 00075100M14ゆびんをミつけ、/是(これ)ハ/古(ふる)でなよき/水(ミづ)さしと思ひ、二十/文(もん)だ 00075110M15して/買(かい)とり、ことの/外(ほか)ほり/出(だ)しと思ひ、ひそういたされ、 00075120M16友だちミへたれバ、/手(て)まへハよきほり/出(だ)しをいたしたとて、 00075130M17かの/水(ミづ)(五ウ)こぼしを/出(だ)されたり。/友達(ともだち)ども見て、これハ 00075140M18けうがるしゆびんじやといへバ、ていしゆ、ぬからぬかほ 00075150M19で、それミやしやれ。/弘法(こうぼう)とハあまりしだいがちがハぬ。 00075160¥P255 00075170¥N9¥J 00075180¥X/業平(なりひら) 00075190L3なりひらといふ人ハまゆをそり、はをそめていらるゝとい 00075200L4ふことをきゝ、われも/業平(なりひら)にならんとて、まゆをそりをと 00075210L5し、一へんあるかれたれバ、(六オ)/道(ミち)にて/友(とも)だちにあい、/貴= 00075220L6様(き=さま)ハしつかいなりじやといへバ、すいめ。あとのひらをい 00075230L7ハぬかといふた。 00075240¥N10¥J 00075250¥X二百十日 00075260L10さるかたにて/日用大工(ひようだいく)をやとひ、うらに/小屋(こや)をたてられ、 00075270L11てうど十日めにしまいけり。もはやできました。/日雇代(ひようだい)を 00075280L12下されといへバ、/大義(たいぎ)でござるとて、ぜに二百やられた 00075290L13り。/日雇(ひよう)、これ/を((ママ))すくなふござる。十日かゝりましたほど 00075300L14に、百づゝにして(六ウ)から、一/貫(くハん)文でござるといへバ、 00075310L15いや+、むりハせぬ。/暦(こよミ)のとをりやるといハれる。それ 00075320L16ハどうでござるといへバ、二百十日じやといハれた。そこ 00075330L17で/日雇(ひよう)はらをたて、たてた/小屋(こや)をくづしたり。/亭主(ていしゆ)おどろ 00075340L18き、/気(き)がちがふたかといハれたれバ、いや+、二百十日 00075350L19のあれでござる。 00075360¥Y1口合恵宝袋巻之五終(七オ) 00075370¥Q 00075380M6宝暦五@乙△|△亥@年 00075390M8△△正月吉日 00075400M10△△△△△△△△江戸日本橋壱丁目 00075410M11△△△△△△△△△△△△梅村宗五郎板 00075420M13△△△△△△△△京寺町通五条上ル丁 00075430M14△△△△△△△△△△△△藤屋武兵衛板(七ウ) 00075440¥P256 00075450¥U噺本大系△第八巻 00075460¥T軽口東方朔 00075470¥G 00075480¥Y 00075490L16宝暦十二年序 00075500L17並木正三序 00075510L18半紙本五巻 00075520L19東大図書館霞亭文庫蔵 00075530¥Y序 00075540M3/夫(それ)うそといつぱ、/$(うつ)としたものが/$(そつ)とかたまつて、う 00075550M4そとなる。/其中(そのうち)にうつけとそろまの/両儀(りやうぎ)を/産(うむ)。/此(この)二ツの/中(なか) 00075560M5より/云訳(いひわけ)、/中詞(なかごと)、/間似合(まにあい)、/追従(ついせう)、/自慢(じまん)とわかれて、/此(この)五ツ 00075570M6を/五穀(ごく)つぶしといへり。/本卦還(ほんけがへり)じやとて、おやぢが/前髪(まへがミ)に 00075580M7なるでハなし。/唐(から)で/生(うま)れた/赤子(あかご)も、おぎやあ+と/啼(なく)より 00075590M8/外(ほか)かハつたなき/声(こゑ)/有(ある)べからす。/女(おんな)の/色(いろ)の/白(しろい)(序オ)も/顔(かほ)の/皮(かハ) 00075600M9からさいぜう/柿(がき)のごとき/粉(こ)の/吹出(ふきでる)とも思ハれず、/石灰(いしばい)の/様(やう) 00075610M10なる/物(もの)をぬり/付(つけ)たりと/存(ぞんずれ)ば、/金(かね)も/灰吹(はいぶき)/不通用(ふつうやう)、/裸(はだか)でハ/歩= 00075620M11行(あり=か)れず。はやるもやうのそめものハ/着(き)ても見よかし、/相応(さうおう) 00075630M12のうそならバついてもみたし。/飯喰(まゝく)や/毒(どく)にならぬほど、な 00075640M13ぐさみの/咄(はな)しにハ、いつそ/赤(あかい)もよろしからん/歟(か)。 00075650M15△△宝暦壬午の春△△△△浪華△△並木△正三(序ウ) 00075660¥P257 00075670¥T1軽口東方朔巻之一 00075680¥N1¥J 00075690¥X節分盃 00075700L5ある人、/家来(けらい)をよびて、/節分(せつぶん)の/盃(さかづき)を/買(かふ)てまいるべしと。 00075710L6家来うけ給ハり、/道具(どうぐ)やへ/行(ゆき)、ぬり盃にいわしひらぎなど、 00075720L7/金粉(きんふん)にてかきしを/買(かい)とゝのへもちかへり、/主人(しゆじん)へ見せける 00075730L8に、イヤ、節分の盃ハこれにてハなし。/今(いま)一/度(ど)ぎんみして買 00075740L9なをしきたるべしといひし/故(ゆへ)、家(一オ)来もぜひなく、又 00075750L10+道具やへ行、かくの/通(とを)りといひけれバ、道具やしあん 00075760L11し、しからバ此盃也とて、一/升(しやう)も/入(いる)べき/朱塗(しゆぬり)の/大盃(おゝさかづき)を/売(うり) 00075770L12わたしたり。家来/持(もち)かへり、主人へ見せしに、これこそほ 00075780L13んの節分の盃なりとてきげんよし。家来あまり/心得(こゝろへ)がたく、 00075790L14/何(なに)とて此大盃を、節分の盃とハ申ぞとたづねけれハ、主人、 00075800L15ミヨ。/酒(さけ)を此盃にひとつつぐと、かんがあくによつてじや。 00075810L16(一ウ) 00075820¥N2¥J 00075830¥X十一日ゑびす 00075840L19正月十日/初(はつ)ゑびすにハさんけいの人/多(おゝ)し。ゑびすハつんぼ 00075850M1とて、やしろのうしろを/手(て)にてたたき、まいりました+ 00075860M2とわめく事也。/翌(あくる)十一日に、かんぬし/神前(しんぜん)へまいりけるに、 00075870M3ゑびすあらハれ/出(いで)給ひ、いかにかんぬし。此/後(のち)ハさんけい 00075880M4のものども、わがやしろのうしろをたゝき、さもしきおゝ 00075890M5ぐちいふことをやめさすべし。かんぬしの/身(み)として(二オ) 00075900M6アノ/大口(おゝぐち)をきかぬか。した+。かんぬし、やう+がてん 00075910M7して、それハ/御耳(おみミ)のとをさに、まいりまノ/四字(よじ)がきこゑぬ 00075920M8ゆへの/御気(おき)まハりといへど、/何(なに)もきかず、/御簾(みす)の/内(うち)へ入給 00075930M9ふもおかし。 00075940¥N3¥J 00075950¥X/手代(てだい)のとうわく 00075960M12/富人(ぶんげんしや)/色町(いろまち)を/通(とをり)しに、あげやの/門口(かどくち)にて、/客(きやく)と/女郎(じよらう)と/大(おゝ)く 00075970M13ぜつあり。/立(たて)とまりて客をよく見れバ、わが/家(いゑ)にめしつか 00075980M14ふ手代也。客もわが/主人(しゆじん)に(二ウ)此ていを見つけられ、お 00075990M15どろきながら主人にもくれいして、/久(ひさ)しふ/御意(ぎよい)ゑませぬと 00076000M16いふてにげさりぬ。主人、/我家(わがや)にかへり、/早&(さう+)其手代をよ 00076010M17びいだし、/汝(なんぢ)が/色(いろ)あそびをしかるにあらず。さきほど/我(われ)に 00076020M18あふたる/時(とき)、久しふ御意ゑぬとハいかゞ。手代こたへて、 00076030M19アイ。/私(わたくし)も百/年(ねん)めとそんじました。 00076040¥P258 00076050¥N4¥J 00076060¥Xてうてき 00076070L3いなかより、/次郎松(じろまつ)といふでつちをかゝへおきけり。(三オ) 00076080L4此もの、みやまにむまれ、ひゑのめしびようたれをくいてそ 00076090L5だちしに、/今(いま)ハむまきこめのめしをたらふくくふことゆへ、 00076100L6てゝのわんに/山(やま)もりを/一飯(かたけ)に十はいヅヽくいけれバ、/主人(だんな)、 00076110L7次郎松が/異名(いめう)を、てうてきと/付(つけ)られたり。手代、がてんゆか 00076120L8ず、てうてきとよバるゝ心を主人にたづねけるに、主人こ 00076130L9たへて、ハテ、十ぜんのくらいを、ねんがけるゆへじや。 00076140¥N5¥J 00076150¥X/餅(もち)や/馬(うま)(三ウ)(四オ挿絵) 00076160L12もちやのかんばんに/木馬(もくば)をいだし/置(おき)しを、ある人、もちや 00076170L13のあるじに/問(とい)けるハ、もちのかんばんに馬とハ、さだめて 00076180L14むまいといふ心ならんか。あるじかぶりをふり、アレハ、 00076190L15人のよりハ/大(おゝき)なといふこゝろでごさる。 00076200¥N6¥J 00076210¥Xたはこ/呑(のミ)わふき 00076220L18よほどじまんの/芸(げい)なりとて、たばこの/煙(けふり)にて/大小(だいしよう)の/輪(わ)をい 00076230L19ろ+ふく人あり。/其(その)となり(四ウ)に、ふじの山をいくつ 00076240¥G 00076250M12もふくものありけれバ、これハきめうのじやうずなりと、 00076260M13ゆきて見れハ、すぐちの人が、たばこをすつパ+。 00076270¥N7¥J 00076280¥Xゆもじにない 00076290M16酒にゑひし客、ひぢりめんのゆもじを/弐(ふた)ツ、/棒(ぼう)のあとさきに 00076300M17/引(ひつ)かけにないて、色町の/家&(いゑ+)を一/軒(けん)+ありきて、/御用(ごやう)ハ 00076310M18ないか。めしませ+。ある人、そこもとハ/何(なに)を/売(うら)るゝと 00076320M19といけれハ、/酔(めれん)(五オ)/客(ぎやく)、われらハひつかけすだれや。 00076330¥P259 00076340¥N8¥J 00076350¥X/河船(かハふね)のなんぎ 00076360L3河船に/大勢(おゝぜい)のりけれハ、/沈(しづ)まんとしてすでにあやふかりけ 00076370L4り。/船中(せんちう)の人&おどろきさハぎし/折(おり)ふし、のり/合(あい)に/居(ゐ)たる 00076380L5/武士(ぶし)、/我(わが)/刀(かたな)/脇指(わきざし)を河の/中(なか)へざんぶとしづめたり。人&あ 00076390L6やしミ/尋(たづね)ければ、武士こたへて、/身(み)をすてゝこそうかむ/瀬(せ) 00076400L7もあれと。/座頭(ざとう)も一人のりあハせ居たりけるが、これも 00076410L8(五ウ)/三味線(さミせん)をいだし一/節(ふし)かなでけり。人&、/此(この)あやふき 00076420L9/場(ば)に/何事(なにごと)ぞやととがめけれハ、/座頭(さとう)がいハく、/芸(げい)ハ/身(み)をた 00076430L10すける。 00076440¥N9¥J 00076450¥X/大道(だいどう)あらそい 00076460L13/東側(ひがしがハ)ハ/法花宗(ほつけしう)、/西側(にしがハ)ハ/浄土宗(じやうどしう)の/寺町(てらまち)あり。其町すじ、大道 00076470L14のつちをならし/道(ミち)をつくらんと、むかいあハせなれバ、法 00076480L15花宗の寺と浄土宗の寺とよりあい/相談(さうだん)せしに、法花宗の寺 00076490L16ハ、/我(わが)/宗旨(しうし)のおしへによりて、此大道ところまんだらにつ 00076500L17くらん。浄土の寺がいへるハ、我宗旨の/大事(だいじ)なれハろくぢ 00076510L18に(六オ)つくらんと、たがいにあらそい、ついに/地頭(ぢとう)へ/訴(うつたへ) 00076520L19/出(いで)たり。地頭ぎんミの/上(うへ)にて、めい+宗旨の/本意(ほんい)をいひ 00076530M1たつること、とりあげがたし。此大道のつくりやうハ、そ 00076540M2の/方(はう)ども/内証(ないしやう)の、かまぼこなりがよかろ。 00076550¥N10¥J 00076560¥Xあさめし/遅(おそし) 00076570M5/乞子(こつじき)、/富(とめ)る/町人(てうにん)の/門口(かどぐち)にたち、あさめしのおあまりくださ 00076580M6りませ。めしたき/下女(げじよ)あさめしもいまだなるに、せハしい。 00076590M7こつじきさてもおそいあさめし也とそしりけれハ、(六ウ)/見= 00076600M8世(ミ=せ)になミゐるでつちとも、ナア+。 00076610¥N11¥J 00076620¥X/奴(やつこ)/飛脚(ひきやく) 00076630M11そりさげたる奴、/途中(とちう)にて/雪隠(せつゐん)へ/行(ゆき)けり。/早飛脚(はやびきやく)も/此道(このミち)を 00076640M12/通(とを)り、にわかに/大便(だいべん)したくて、奴の/居(ゐ)るせつゐんの/戸(と)をあ 00076650M13けたり。/奴様(やつこさま)へ申/上(あげ)ます。/我等(われら)ハ/急用(きうやう)の飛脚。にわかに 00076660M14雪隠へまいりたけれど、/折(おり)ふし/近所(きんじよ)にせつゐんもなし。/失= 00076670M15礼(ぶし=つけ)ながら御ゆるしあらバ、それへまいり、大便つかまつり 00076680M16たきよしにいひけれバ、奴も/気(き)よしにて、(七オ)くるしか 00076690M17らず。/爰(こゝ)へまいられ、大便めされよといひける/故(ゆへ)、飛脚も 00076700M18/尻(しり)/引(ひき)まくり、奴と尻つきあハせ大便せしに、飛脚ハさきへ 00076710M19らちあけ、尻をそこ+にぬぐい、奴様。これにゆるりと 00076720¥P260 00076730L1ごされとあいさつし、/出行(いでゆか)んとせしを、奴よびかへし、 00076740L2コレ+飛脚。ねんがいりねんごろに、われらがひげ/尻(じり)まで 00076750L3ぬぐいくれられしハ過分(くハぶん)+。 00076760¥Y1軽口東方朔巻之一終(七ウ) 00076770¥T1軽口東方朔巻之二 00076780¥N1¥J 00076790¥X/河太郎(がハたらう)@江戸にてハかつパ|といふ△△△△△@ 00076800M5うつくしき/女形役者(おんながたやくしや)をつれて/舟遊(ふなあそび)に出ぬ。/船中(せんちう)にて此/若(わか)女 00076810M6形、/俄(にわか)に/大便(だいべん)したきよしの/断(ことわり)いふて、船のへさきより川 00076820M7の中へ大便をしたり。/水中(すいちう)より河太郎并/子息(むすこ)小河太郎、/親= 00076830M8子(おや=こ)づれにてあらわれ出、若女形の/尻(しり)の/穴(あな)をつく※見て/居(ゐ) 00076840M9たりけるが、子息小河太郎、もはやこらへかね(一オ)て/手(て) 00076850M10をのばし、尻の穴をいらわんとす。親河太郎大にしかり、 00076860M11アレハ、売物じや。手をかけな。 00076870¥N2¥J 00076880¥Xやぶいしや 00076890M14ある人、やぶいしやに/薮(やぶ)といふ/由来(ゆらい)を/尋(たづね)けれハ、やぶいし 00076900M15やこたへて、ハテ、すこしの/風(かぜ)にもさわぎまする。 00076910¥N3¥J 00076920¥X/一人娘(ひとりむすめ)くわいにん 00076930M18よめりざかりの一人娘を/両親(ふたおや)てうあいあさ(一ウ)からぬに、 00076940M19/其娘(そのむすめ)ふとくわいにんせり。/両親(ふたおや)、/何者(なにもの)の/子(こ)ぞやと/尋(たづぬ)るも娘 00076950¥P261 00076960L1がきのどくがらんと、わざととふこともなく、しらぬ/顔(かほ)し 00076970L2て/居(ゐ)けるに、/早月(はやつき)もミちて、たくましき/小(こ)児を/産(うミ)たり。せ 00076980L3めて/胞衣(ゑな)に/父(てゝ)おやの/定紋(じやうもん)あるべし。/是(これ)にて何者の/子(こ)といふ 00076990L4ことをしらんと、両親、胞衣をあらわせて見けるに、紋ハ 00077000L5なくて/文字(もんじ)あり。よミて見れハ、/若者中(わかきものぢう)。(二オ) 00077010¥N4¥J 00077020¥X/下戸会(げこくハい) 00077030L8下戸の/人&(ひと※)より/合(あい)、/大(おゝ)ふるまいしけるを、/上戸(じやうご)どもはらを 00077040¥G 00077050M1たて、/門前(もんぜん)に/高札(こうさつ)を/建(たて)たり。$と/書(かき)けれハ、下戸 00077060M2の人&ふしんに思ひ、/尋(たづね)に/遣(つかハ)しけれハ、たゝのまんぢう。 00077070¥N5¥J 00077080¥X五百五十/年忌(ねんき) 00077090M5/円光(ゑんくハう)大/師(し)五百五十年忌/御執行(ごしゆぎやう)の高札を見て、卅/歳(さい)ばかりの 00077100M6人のいへるハ、さても+(二ウ)(三オ挿絵)大師の/遷化(せんげ)、 00077110M7きのふけふのやうに/覚(おほ)へしに、/早(はやく)五百五十年にならせ給ふ 00077120M8かなといふを、人皆あやしミ、/其元(そこもと)ハいづくの人なりやと 00077130M9/尋(たづね)けれハ、其人こたへて、ワレラハ大坂万年/町(てう)の/年寄(としより)じや。 00077140¥N6¥J 00077150¥X/夜番(やばん)/聞違(きゝちがい) 00077160M12夜番人ねとぼけ、/火事(くハじ)よ+と/早太皷(はやたいこ)を/打(うち)たり。/町中(てうぢう)おど 00077170M13ろきさわぎけれど、火事(三ウ)にてハなき/故(ゆへ)に、/町(てう)人、此 00077180M14夜番人をことの/外(ほか)しかり、ヲノレ、町中を/断(ことハり)にあるくべし 00077190M15といひ付けれバ、夜番人ぜひなく、太皷をどんつくどんつ 00077200M16くと打て、火事ハのびた+。 00077210¥N7¥J 00077220¥Xぶせう/会(くハい) 00077230M19ぶせうなる人四五人より合、何と、此れん中申合、ふせう 00077240¥P262 00077250L1会いたすべきかと。一人がいわく、/無用(むやう)+。それハナゼ 00077260L2ニと問(とい)けれバ、ハテ、むつかしい。(四オ) 00077270¥N8¥J 00077280¥X/小僕(でつち)/肴篭(さかなかご) 00077290L5小僕/篭(かご)に/入(いれ)たる肴と/手紙(てがミ)とを/両(りやう)の手に/持行(もちゆき)しに、手紙をも 00077300L6ちまいる/其先(そのさき)の人に、道にて行あいたれハ、コレハヨイトコロ 00077310L7テと、/主人(だんな)より手紙/差越(さしこし)候と、其人え手紙を/渡(わた)しけれハ、 00077320L8先の人/無筆(むひつ)なれども手紙の/封(ふう)をきり、さら+とよむ/顔(かほ)し 00077330L9て、コレハかたじけない。ソチハ/太義(たいぎ)なから、其肴/我等(われら)が/宿(やど) 00077340L10へ持行、はし(四ウ)りの/下(した)へ入/置(おき)くれよ。小僕おどろき、 00077350L11イヤ、あなたへハ其手紙ばかり也。此肴ハ/他家(よそ)へもちまい 00077360L12る/筈(はづ)といひけれハ、/彼(かの)無筆の人ぬからぬ顔にて、手紙を又 00077370L13よミかへして、ソウジヤ+。/猶&(なを+)/書(がき)に/返(へん)がへがしてある。 00077380¥N9¥J 00077390¥X/他国(たこく)へ/銭不可遣(ぜにやるべからず) 00077400L16ある国に、銭/相場(さうは)ことの外/高直(こうじき)なりけれバ、/地頭(ぢとう)より/国中(こくちう) 00077410L17へふれながして、此国の銭を(五オ)一文も他国へやるまじ 00077420L18く、もし/隠(かく)してやり候者ハ、/曲事(くせごと)に申付べしと也。ある人、 00077430L19/煮売屋(にうりや)へまいり、/蛸(たこ)を/煮(に)させて/大(だい)ぶんくい、銭をはらハず 00077440M1/出帰(いでかへ)る。煮売屋の/主人(あるじ)かけ出、其人をとらへ、蛸/代(たい)の銭を 00077450M2/何(なに)とてはらハぬとしかりけれハ、其人こたへて、/今度(こんど)地頭 00077460M3よりのふれながし、きかずや。ソレ、たこくい銭やるな。 00077470¥N10¥J 00077480¥X/坊主(ほうず)/盗人(ぬすびと)(五ウ) 00077490M6盗人をとらへ、ヤレ/棒(ほう)よ、火/吹(ふき)竹よとひしめき、/難(なん)なくた 00077500M7ゝきふせ、人&よりて見れハ、坊主ニて/息(いき)/絶(たへ)たり。コイツ/法= 00077510M8師(ほう=し)の/身(ミ)として/盗(ぬすミ)する事、よく+の/悪業(あくごう)といふ/声(こゑ)、/耳(ミヽ)へ/入(いり) 00077520M9たるか、むく+とおきあがり、コレハそせい法師にて候。 00077530¥N11¥J 00077540¥X/芸(げい)くらべ 00077550M12/蹴鞠(まり)の/上手(じやうす)と/弓(ゆミ)の/名人(めいじん)と/互(たがい)に/自慢(じまん)し、芸くらべして、めい 00077560M13+の/妙(めう)を/諸人(しよにん)に見せ、/各(おの+)(六オ)/勝負(しやうぶ)を/決(けつ)すべしとて/両(りやう)人 00077570M14いひ/合(あハせ)、/広(ひろ)き/海辺(うミべ)へ/出(いで)けり。/是(これ)を見んと諸人/群集(くんじゆ)する事お 00077580M15びたゝし。/蹴鞠(まり)の上手ハ/鞠(まり)をけあげけれバ、其鞠はるかに 00077590M16/雲(くも)の/中(うち)へ入て、やがて/落(おち)しを手にとり、/鼻(はな)にかぎて、人& 00077600M17見給へ。此鞠/雲(くも)/臭(くさ)し。弓の名人も/矢(や)をつかい/引(ひき)しぼり、/西(にし) 00077610M18の/方(かた)を/射(ゐ)たりしに、此矢はるか先へとび行て、其行方しれ 00077620M19ず。弓の名人ハ(六ウ)弓を/杖(つへ)につき、西の方をはるかに見 00077630¥P263 00077640L1やり、/涙(なみだ)をはら+とながし、/南無(なむ)三/宝(ぼう)。おもハぬ/殺生(せつしよう)を 00077650L2いたしたり。/今(□ま)の矢、西方へ行/過(すぎ)て、/極楽(こくら□)/東門(とうもん)の/門番(もんばん)を/射(ゐ) 00077660L3ころした。 00077670¥Y1軽口東方朔巻之二終(七オ) 00077680¥T1軽口東方朔巻之三 00077690¥N1¥J 00077700¥X/狐大臣(きつねだいじん) 00077710M5ある大臣/客(きやく)、/色遊(いろあそび)にふけり、/金銀(きんぎん)をつかふこと/湯水(ゆみづ)のごと 00077720M6し。/揚屋(あげや)の/亭主(ていしゆ)うかゞひ見れバ、/此(この)客ハ狐なり。しかし/神= 00077730M7通(じん=づう)の/力(ちから)を/得(ゑ)たる/獣(けだもの)なれバ、/結句(けつく)/人間(にんげん)客よりハたしか也と、 00077740M8思ふまゝにつかハせ、/節季(せつき)に/書出(かきだ)しを/持行(もちゆき)けれど、此節季 00077750M9/払(はらい)なしとて/埓(らち)/明(あか)ず。/是(これ)ハすまぬ事と、亭主/直(じき)にあ(一オ)いて、 00077760M10/其元様(そこもとさま)にハ神通/自由(じゆう)の御/身(ミ)、金銀/沢山(たくさん)とぞんじ御客にいた 00077770M11したるに、/ケ様(かやう)の/御延引(ごゑんゐん)、めいわく千万にそんじ候。何と 00077780M12ぞ/今日中(こんにちぢう)に御わたし/下(くだ)されたしといへバ、狐大臣、/小(こ)くび 00077790M13かたむけ、ワレラに/如在(じよさい)ハなけれど、おやぢ狐が/鍵(かぎ)をくわ 00077800M14へてはなさぬ。 00077810¥N2¥J 00077820¥Xひきがいる 00077830M17ある/家(いへ)の/小僕(でつち)、もらいためし/銭(せに)を/地(ち)へうづミ、(一ウ)コリヤ 00077840M18/銭(ぜに)よ。ヨクキケヨ。/我(わ)がほる/時(とき)ハ銭にて/出(いで)よ。もし/他人(ほかのひと)がほ 00077850M19るならバ、かいるにばけていでよといひて、/土(つち)を/上(うへ)へかけ 00077860¥P264 00077870L1て/置(おき)たり。となりの/男(おとこ)、ひそかに/見聞(ミきゝ)て、小僕が/外(よそ)へ/出(いで)た 00077880L2るをうかゞひ、地をほりて銭をとり、あとへかいる一/疋(ひき)う 00077890L3づミ置ける。小僕、/彼(かの)銭/入用(ゐりやう)ありて、くだんの/所(ところ)をほりけ 00077900L4るに、ふしぎや銭ハなく、かいる一疋とび出たり。/大(おゝき)にお 00077910L5どろき、/是(これ)ハ/間違(まちがい)で、はけぞこないたると/心得(こゝろへ)、(二オ)お 00077920L6のれ、そさうものめとて、おいはしらかしけれバ、かいる 00077930L7もおハれて/庭前(にハ)の/泉水(せんすい)へざんぶととび/入(ゐる)と、/外(ほか)のかいる/共(とも) 00077940L8一/同(どう)に、ざハ※とさわぎけるを、小僕ハ見て、ハア+、 00077950L9銭ざしがきれたハ。 00077960¥N3¥J 00077970¥X/土工利(とくり)うたがひ 00077980L12ある人、日のくれに/外(ほか)より/帰(かへ)り、あがり/口(くち)にてとくりをけ 00077990L13ころばしたり。/大方(おゝかた)醤油どくりならん。さだめてそこらハ 00078000L14醤油の/海(うミ)をなし(二ウ)たらん。ミな+/火(ひ)をともして見よ 00078010L15とて、火をてらし見れハ、よこづち。 00078020¥N4¥J 00078030¥Xりんき/男(おとこ) 00078040L18ある人、/遠方(ゑんほう)へまいるとて/妻(さい)にいへるハ、/我等(われら)/留(る)すにハ/身= 00078050L19持(ミ=もち)いよ+かたく/持(もつ)べしといひきかせ、/旅(たび)/装束(しやうぞく)して/出行(いでゆき)け 00078060M1るが、しばらくありて又/立(たち)帰り、/先程(さきほど)もいふ通、身持/至極(しごく) 00078070M2堅(かた)く/持(もつ)べし。それゆへ/大事(だいじ)の/札(ふだ)を/門口(もんくち)にはり/置(おく)なり。我等 00078080M3(三オ)/帰(かへ)るまで此/札(ふだ)/必(かならず)まくるべからすとて、ついに出行け 00078090M4り。妻もあまり/念入(ねんゐり)すぎたる事と思ひ、/亭主(あるじ)のはり置し札 00078100M5をよみて見れハ、此/家(いへ)の/内(うち)につゝもたせあり。 00078110¥N5¥J 00078120¥X/高下(こうげ)かごかき 00078130M8しわき/金持(かねもち)なる人、/住吉(すミよし)へ/詣(もふ)でしけるに、かごを/下直(げじき)にて 00078140¥G 00078150¥P265 00078160L1かりのり行けり。さき方ハ弐尺ばかりの/小男(こおとこ)、あとがたハ 00078170L2六尺あまりの大男也。(三ウ)(四オ挿絵)のりこゝろよろしか 00078180L3りける/故(ゆへ)よくねいりて、かごかき、かごをおろし、さきが 00078190L4たとあとがたと入(ゐれ)かハりけるもしらずしてかゝれ/行(ゆき)けるが、 00078200L5ふと/目(め)さめ、のりごゝろちがいけるにおどろき、かごの/衆(しゆ)。 00078210L6そりはしをかごにのりてハ/勿躰(もつたい)なし。はやふおろして+。 00078220¥N6¥J 00078230¥X/盲人(もうしん)/杖(つへ)うしない 00078240L9/壱人(ひとり)ありきする盲人、/橋板(はしいた)のふし/穴(あな)へ/杖(つへ)(四ウ)をつきこみ、 00078250L10手をはなしけれバ、杖ハふし穴より川/中(なか)へ/落(おち)たり。盲人、 00078260L11/両手(りやうて)にて/彼(かの)ふし穴を/念(ねん)入さぐり見て、こしにさしたる/扇子(あふぎ) 00078270L12を又+ふし穴へ入、手をはなし扇子をおとし見て、ヨシ 00078280L13+。是で/安堵(あんど)した。 00078290¥N7¥J 00078300¥X/知人(しるひと)にあらず 00078310L16町筋を/行(ゆき)ちがひに、しらぬ人を/目礼(もくれい)し、此/間(あいだ)ハ御目にかゝ 00078320L17らずと/挨拶(あいさつ)しけれバ、其人(五オ)ふしん/顔(がほ)して、さだめて 00078330L18御見ちがへならん。/我等(われら)ハ/其元様(そこもとさま)としる人にてハなしとい 00078340L19ひけるを、ぬからぬ/躰(てい)にて、イヤ、此ごろ其元のやうな顔が 00078350M1/世間(せけん)にはやります。 00078360¥N8¥J 00078370¥X/髪結会(かミゆいくハい) 00078380M4髪結やうの会を/興行(こうげう)して、人&さま※/風流(ふうりう)にゆひて/勝負(しようぶ) 00078390M5をあらそひし/中(なか)に、壱人/頭巾(づきん)をかぶりたるものあり。人& 00078400M6より(五ウ)あいて、此会に頭巾をかぶり/来(きた)るハ、さぞ/風雅(ふうが) 00078410M7のゆひやうならん。はやく見たしとて、頭巾をぬがせ見け 00078420M8れバ、/坊主(ぼうず)あたまを/石畳(いしだゝみ)に/剃(そり)たり。 00078430¥N9¥J 00078440¥X/煙草屋(たばこや)の/妻(さい) 00078450M11/名高(なたか)き/女郎(じよらう)、つとめをやめて、きざミたばこ屋の妻となり、 00078460M12たばこをかける/役(やく)をせし故、此妻のうつくしきを見んとて、 00078470M13/買人(かいて)おびたゝしく/来(きた)れり。ある/時(とき)、此妻たばこをかける 00078480M14(六オ)とて、はかりの/皿(さら)とおもりとつりあわず、おもりの 00078490M15かたさがり、皿のかた、ぴんと上りけれバ、ヲヽこハ。 00078500¥N10¥J 00078510¥X/若衆(わかしゆ)の/願立(ぐハんだて) 00078520M18若衆/形(がた)の/役者(やくしや)、/男色(なんしよく)はやらず。/是(これ)でハすまぬと/氏神(うぢがミ)へ願立 00078530M19しけるに、其/夜(よ)氏神まくらもとにあらわれ給ひ、なんぢが 00078540¥P266 00078550L1/願(ねかい)ハ、しりのつまらぬものじや。(六ウ) 00078560¥N11¥J 00078570¥X同くわいにん 00078580L4うつくしき若衆形、はらはりける/故(ゆへ)、/医師(いし)に見せけれハ、 00078590L5是こそ女ならハくわいにんと見ゆるよしいひしを、其/母親(はゝおや) 00078600L6/聞置(きゝおき)て、ひそかに此若衆形にとふていへるハ、ふかく/契(ちぎ)り 00078610L7しあにぶんハ/誰(たれ)ぞや。医師の見たてに、万一くわいにんに 00078620L8てもあるべしといへり。心に覚ありやと/尋(たづね)けれハ、若衆形、 00078630L9しばらくし(七オ)あんし、外に覚もなけれど、もしハくわ 00078640L10いにんか。あとの/月(つき)より、おならがトントでませぬ。 00078650¥Y1軽口東方朔巻之三終(七ウ) 00078660¥T1軽口東方朔巻之四 00078670¥N1¥J 00078680¥X/掛乞(かけこい)/除(よけ) 00078690M5/過分(くハぶん)に/借銭(しやくせん)おいし人、/節季(せつき)をしのぎかねしを、/友達(ともだち)きのど 00078700M6くに思ひ、/我(われ)/一(ひとつ)のはかりことをもつて、此節季の/難(なん)をすく 00078710M7ふへしと、其/家(いへ)の/表入口(おもていりくち)の/戸(と)を/閉(とぢ)て、/札(ふだ)一/枚(まい)を/張置(はりおき)たり。 00078720M8掛乞共此札を見て、これハ+とて/帰(かへ)りけり。/亭主(あるじ)もきめ 00078730M9うと思ひ、/彼(かの)札を見れハ、ぎやく/朱(しゆ)ニて、◇かしや◇(一オ)と 00078740M10/書(かい)たり。 00078750¥N2¥J 00078760¥X/銀(かね)ひろい 00078770M13/銀子(きんす)をひろいたる事ついになしとて、/我(わが)/所持(しよぢ)の銀子を/財布(さいふ) 00078780M14へ/入(ゐれ)、わざとおとして見てハひろい、おとして見てハひろ 00078790M15い、/幾度(いくたび)もして見て、/扨(さて)ハ銀子ひろいたる/躰(てい)もおもしろか 00078800M16らぬ/物(もの)といひながら、又+おとして見しに、/今度(こんど)ハかた 00078810M17わきの/溝(ミぞ)へはまり、財布/泥(どろ)まふれになりけれバ、其(一ウ) 00078820M18財布を/引上(ひきあげ)見て、ハヽア、コレテ/少(すこし)おもしろかつた。 00078830¥P267 00078840¥N3¥J 00078850¥X/化物屋敷(ばけものやしき) 00078860L3/勇気(ゆうき)の人、ばけものを見とゞけんと化物屋敷へ/行(ゆき)、よもす 00078870L4がら/待居(まちゐ)しに、/夜(よ)/明(あけ)ぬれど/何(なに)も/出(いで)ず。はやかへらんとする 00078880L5/時(とき)、/二階(にかい)より/大(おゝ)きなる/毛(け)のはへたるかいなを、ぬつと/出(いだ)し 00078890L6たり。夜明ける故、其人もおかしく、はしりよりて見れハ、 00078900L7/彼(かの)かいなに/大文字(だいもんじ)のひらかなにて/書付(かきつけ)あり。(二オ)よミて 00078910L8見れハ、ばけもの。 00078920¥N4¥J 00078930¥X/釘貫(くぎぬき)の/紋(もん) 00078940L11ある人、釘貫の紋をしらざりけれバ、物しる人に尋しに、 00078950L12其人こたへて、しやのめGの紋を/真(しん)に/書(かき)しが、くきぬき 00078960L13Gの紋。 00078970¥N5¥J 00078980¥X/叱(しかり)なし/年忘(としわすれ) 00078990L16/頓(とん)右衛門といふ人、/友達(ともだち)と年忘を/催(もよふ)しけるに、友達のいへ 00079000L17るハ、頓右衛門こと、いつもふるまいに(二ウ)/馳走(ちさう)ハせら 00079010L18るれど、/其席(そのせき)にて/小僕(でつち)/小婢(こめろ)を/叱(しか)らるゝこと、/甚(はなハた)きのどく也。 00079020L19/叱(しか)らるゝ事なくハ/皆&(ミな+)まいるべし。頓右衛門も、しからハ 00079030M1/必(かならず)しかるまじき/約束(やくそく)にて年忘にまねかれ、馳走のこる/所(ところ) 00079040M2なく、/客(きやく)も/亭主(あるじ)もきげんよろしきに、ふしぎや小僕の/面吉(めんきち)、 00079050M3ふすまのすミに/給仕盆(きうしほん)/持(もち)ながら、しく+と/泣居(なきゐ)たり。/客= 00079060M4人(きやく=じん)どもふしんに思ひ小/声(こゑ)にて、けふハ/旦那(だんな)が/叱(しか)らいてよか 00079070M5ろが。面吉(三オ)なきごゑにて、旦那が/叱(しか)る事がならぬと 00079080M6て、/私(わたくし)が/肩(かた)へかミつかしやつた。 00079090¥N6¥J 00079100¥X/捕蚤(のミとり(ママ)) 00079110M9色めける/女中(じよちう)七八人/遊居(あそびゐ)しに、/大(おゝ)き/成(なる)のミ一ツとびありき 00079120M10けれバ、ソレ+といふ/斗(ばかり)にて、/誰(たれ)も/得(ゑ)とらず。一人の女中、 00079130M11/痔病(しやミ)にてありけるが、ゆびをこそと痔の/所(ところ)へやり、其痔の 00079140M12うるおひのつきしゆびにておさへ、/難(なん)なふのミをとらへに 00079150M13けり。(三ウ)(四オ挿絵)さらハむし/目(め)がねにて見るべしとて 00079160M14/蚤(のミ)をめがねへ/入(いれ)、人&のぞき見しに、ふしぎや此のミ、/両(りやう) 00079170M15の/手(て)を/鼻(はな)にあてゝうごかず。 00079180¥N7¥J 00079190¥X/物(もの)かハずの人 00079200M18かんりやくを/第(だい)一とし、/万(よろづ)の/物(もの)を/手細工(てざいく)にこしらへ、物を 00079210M19かわぬ人あり。/土(つち)のかわらけも手細工にして、へそがわらけ 00079220¥P268 00079230¥G 00079240L12ハ/我(わが)/臂(ひぢ)のとがりを/形(かた)にし、/大(おゝ)がハらけハ我/膝(ひざ)がしらを形と 00079250L13せり。(四ウ)すり/鉢(はち)をも手細工につくらんと、ねばき/土(つち)を 00079260L14よくねりて、/我(わが)/尻(しり)を形にせんとて尻をまくり、しりもちを 00079270L15つき、すり鉢をつくりけるが、/出来(でき)あがりしとて/尻形(しりがた)をぬ 00079280L16き見て、/南無(なむ)三/宝(ほう)。/出来損(できそん)じたり。コレハかた/口(くち)にしての 00079290L17けた。 00079300¥N8¥J 00079310¥Xしらミ/薬(くすり) 00079320M1しらみうせ薬の/看板(かんばん)を、/能書(のうじよ)の人を/頼(たのミ)てかゝせけるに、其 00079330M2人、いか/様(やう)にしたゝめ申さんと尋(五オ)ける/故(ゆへ)、/世上(せじやう)の人 00079340M3きふくし此薬/売(うり)/弘(ひろまる)やうに、ゐんぎんに/書(かき)給ハるべしとた 00079350M4のミけれバ、なるほどとて、/御(おん)しらミうせ/薬(くすり)。 00079360¥N9¥J 00079370¥X/揃(そろへ)てうちん 00079380M7氏神の/祭礼(さいれい)に/町&(てう+)に一/様(やう)にともす揃挑燈あり。/是(これ)ハ氏神の 00079390M8/祭(まつり)/斗(ばかり)に、一/町内(てうない)大小の/家(いへ)&、一/軒(けん)ものこらずともす揃挑 00079400M9灯にて、/常(つね)にハともさぬ也。/或時(あるとき)町の年/寄(より)の門前に、祭礼 00079410M10ニても(五ウ)なきに、/彼(かの)揃挑灯を一本立られたり。町人、 00079420M11ふしんにおもひ、いかなる故と尋けれハ、/年(とし)よりこたへて、 00079430M12けふハ/我等(われら)かたんじよう日でこざる。 00079440¥N10¥J 00079450¥X/天王寺(てんわうじ) 00079460M15てんわうしといふがよし。イヤ、天のうしとよふがよし。イヤ 00079470M16+、てんぽうしととなへるが本じやとあらそひ、物しる人 00079480M17に尋しに、其人の/批判(ひはん)に、てんぽうしがよしといへり。人 00079490M18&あやしミうた(六オ)がひて、/何(なに)とて天ぽうじをよしとハ 00079500M19いわるゝとといけれハ、其人/答(こたへ)て、イヤ、天ぽうしがあたら 00079510¥P269 00079520L1しい。 00079530¥N11¥J 00079540¥X/直段付(ねだんづけ) 00079550L4ある人、/万(よろづ)の物に直段付するくせあり。/友達(ともだち)/異見(いけん)し、此く 00079560L5せハ/皆(ミな)人あしくいふ也。/向(この)/後(のち)ハたしなミ/止(やめ)られよと。其人 00079570L6/悦(よろこ)び、友達のよしミとて/忝(かたじけな)し。カウイフテ給ハる/所(ところ)、壱匁 00079580L7五分五厘が物ハある。 00079590¥Y1軽口東方朔巻之四終(六ウ) 00079600¥T1軽口東方朔巻之五 00079610¥N1¥J 00079620¥X/町年寄(てうとしより) 00079630M5/智恵(ちゑ)のたらぬ町年寄、/丁内(てうない)の/参会(さんくハい)に/出(いで)て/雪隠(せつゐん)へ/行(ゆき)て、/二時(ふたとき) 00079640M6/斗(ばかり)してももどり/来(きた)らず。/町人(てうにん)ふしぎに思ひ、雪隠の/前(まへ)へ/行(ゆき)、 00079650M7/病気(びようき)にてハなきや。あまりひま/入(ゐる)/故(ゆへ)、/気遣(きづかい)に思ふと/尋(たづね)けれ 00079660M8ど、年寄ハ雪隠の/内(うち)より、/唯(たゞ)いや+と斗いふて、/何分(なにふん)/出= 00079670M9来(いで=きた)らず。/丁代(てうだい)を/呼(よび)て、又+といに(一オ)/遣(つかハ)しけるに、丁 00079680M10代ハ雪隠の前へ行、/旦那(だんな)、ソレ御/身(ミ)を/隅(すミ)へクイト御よせ、 00079690M11其戸を内へズツト御/引(ひき)といふと、年寄ハ、ヤレ+と/悦(よろこ)び/出(いで) 00079700M12られ、サテモ、/間違(まちがい)で、/戸(と)を/外(そと)へ/押(おし)て/難義(なんぎ)したわいの。 00079710¥N2¥J 00079720¥X/皿箱(さらばこ)/書付(かきつけ) 00079730M15無/筆(ひつ)の人、さしミ皿を/買(かい)、/子息(むすこ)にいひつけ、/其(その)箱に書付せ 00079740M16よ。ひらかなにて/書(かく)べし。子息/心得(こゝろへ)、さしミ/皿(ざら)と/書(かい)たり。 00079750M17無筆おやぢ、むすこを(一ウ)ハタトにらみて、ヲノレ。これ 00079760M18に/書判(かきばん)がいるものか。 00079770¥P270 00079780¥N3¥J 00079790¥X/狐火(きつねび) 00079800L3十二三人/急用(きうやう)ありて/野道(のミち)を/行(ゆき)、やミの/夜(よ)なれバ、めい+ 00079810L4/挑灯(てうちん)一/張(はり)ヅヽともしつれ、いつも/此街道(このかいどう)ハ狐火おゝくとも 00079820L5すところといひて/通(とを)りけるに、ふしぎや街道のかたハらに 00079830L6狐十/疋(ひき)/斗(ばかり)なミ/居(い)て、/右(みぎ)の人どをりを見て居し/故(ゆへ)、人&ふし 00079840L7んに思ひ、/狐殿(きつねどの)。ナゼニ/今夜(こんや)ハ火をともさ(二オ)ぬととひ 00079850L8けれバ、狐/詞(ことバ)をそろへ、イヤ、/人間(にんげん)の火をともすが見たさに。 00079860¥N4¥J 00079870¥X三/階(がいの)/亭(ちん) 00079880L11/高(たか)き三階の/亭(ちん)へ、/天狗(てんぐ)そさうにて/行当(ゆきあた)り、/自慢(しまん)の/鼻(はな)をした 00079890L12ゝかうちていたミけるゆへ、ある/家(いへ)の/門口(かどぐち)にやすミ、/両(りやう)の 00079900L13/手(て)にて鼻をさすり/居(い)たるを、/其(その)家の/女房(にようぼう)見て、コレこもぞ 00079910L14う/殿(との)。/御無用(ごむやう)じや。とをらしやりませ。(二ウ) 00079920¥N5¥J 00079930¥X/雷(かミなり)の/玉子(たまご) 00079940L17ある人、/雷(かミなり)のおちたる/跡(あと)にて雷の玉子をひろい、ちやせん 00079950L18にて/水(ミづ)をそゝぎ、/時(とき)※ところてんをくわせ/調法(てうほう)し、/手(て)に 00079960L19のせ見とれ/居(い)けるに、たわむれにたばこの/煙(けむり)を/吹(ふき)かけけれ 00079970M1バ、雷の玉子、煙につれて天へずいゴロ※※。 00079980¥N6¥J 00079990¥X/猟人(かりうど)/仏事(ぶつじ) 00080000M4猟人、仏事をとり/行(おこなひ)しに、/貧(ひん)にして/布施(ふせ)に(三オ)/包(つゝむ)べき 00080010M5/銀子(ぎんす)なし。/折節(おりふし)/狸(たぬき)一/疋(ひき)いけどり/置(おき)たり。/猟人(かりうど)/此狸(このたぬき)にかたり 00080020M6ていハく、仏事の布施に包べき銀子なし。/汝(なんぢ)/畜類(ちくるい)たりとも、 00080030M7こゝをよくきゝわけ、/白銀(はくぎん)一/両(りやう)の/包銀(つゝミがね)に/化(ばけ)て、/坊様(ぼんさま)のふと 00080040M8ころへ/入(いり)、/御寺(おてら)まで/行(ゆき)、寺にて/戸棚(とだな)へ/入(いれ)らるゝ/時(とき)にげ/帰(かへ)る 00080050¥G 00080060¥P271 00080070L1べし。汝が一/命(めい)をたすけ/遣(つかハす)べしと。狸とくしんして、た 00080080L2ちまち包銀にばけたり。/其夜(そのよ)/仏事(ふつじ)/首尾(しゆび)よくつとめ、/布(ふ)(三ウ) 00080090L3(四オ挿絵)/施(せ)の/彼(かの)一/封(ふう)を/受取(うけとり)、きけんよく/帰(かへ)られたり。し 00080100L4ばらくして、/表(おもて)の/戸(と)を/急(きう)にたゝく/者(もの)あり。猟人/出(いで)て見れハ、 00080110L5彼狸、ふなら+としてにげ帰れり。/何(なに)とした。/仕損(しそん)じた 00080120L6かととへハ、狸、なき/声(ごゑ)にて、/道(ミち)にて、ひねりころそとし 00080130L7おりました。 00080140¥N7¥J 00080150¥X/失念講(しつねんこう) 00080160L10けしからずものわすれする人&、/失念講(しつねんこう|ものわすれ△)を(四ウ)むすびて 00080170L11より/合(あい)ちなミけるに、/大忘(おゝわすれ)や/覚(かく)右/衛門(ゑもん)、講の/月番(つきばん)にあたり 00080180L12けれバ、/講中(こうぢう)へ/廻状(くハいでう)をまハして、 00080190L13△△△/来(きた)ル廿五日/於私宅(わたくしたくにおいて)失念講/興行仕(こうぎやうつかまつり)候。/何茂(いづれも) 00080200L14△△△/無御闕席(ごけつせきなく)/御来臨(ごらいりん)/奉待(まちたてまつり)候。以上 00080210L15△△△△△月△日△△△△△大忘屋覚右衛門 00080220L16としるして/触(ふれ)ながし、覚右衛門ハ/何(なに)とそ廿五日の/日限(にちげん)わす 00080230L17れぬやうに/朝夕(あさゆふ)に心がけ、けふこそ(五オ)廿五日にて/彼(かの)講 00080240L18中まいらるべけれバ、ふるまいせばやと/女房(によばう)に、けふハ/客= 00080250L19来(きやく=らい)あれバ、/家内(かない)そうぢすべしと。女房あきれて、こちの人、 00080260M1/何(なに)いハしやる。けふハ廿六日じや。 00080270¥N8¥J 00080280¥X/女郎(じよらう)に/契(ちぎ)らぬ/客(きやく) 00080290M4/粋(すい)なる客、あいかたの女郎に/断(ことハり)いふて、ついにまことの/契(ちぎり) 00080300M5なし。女郎も/心(こゝろ)すまず、/御気(おき)にいらぬ/故(ゆへ)に契り給ハざるな 00080310M6らんとうらみけれバ、(五ウ)客ハ/涙(なミだ)をながし、/今(いま)までふか 00080320M7くかくせしが、/我(われ)ハまことハ/陰茎(ゐんきよう)の/大(おゝき)なる事/馬(むま)よりもすさ 00080330M8まじく、/弓削(ゆげ)の/道鏡(どうきやう)からつりとるくらいのてれつく也。そ 00080340M9れ故に心のちぎりばかり也と/念比(ねんごろ)にかたりけれバ、女郎も、 00080350M10御/志(こゝろざし)/忝(かたじけな)しと、其/夜(よ)ハひとつ/夜着(よぎ)の/内(うち)にねて、こしか 00080360M11たのもの/語(がたり)などしけるに、客もねいりたり。女郎、ソツト 00080370M12/手(て)をやり、ひそかにうかゞひ見しに、客の/詞(ことバ)と(六オ)/相違(そうい) 00080380M13して、二/歳(さい)/斗(ばかり)の/小児(しやうに)のごとき/小陰茎(ちんぼ)なりけれバ、女郎二/度(ど) 00080390M14おどろき、客をゆすりおこして、/ケ様(かやう)の事/見届(みとゞけ)たり。さり 00080400M15とハいつわり/多(お)ふしとうらミけれバ、客ハ/粋(すい)らしき/顔(かほ)して、 00080410M16/色町(いろまち)でぜいいふ事ハ、いつからはつとじや。 00080420¥N9¥J 00080430¥X/花見(はなミ)の/短尺(たんじやく) 00080440M19/盛(さかり)なる/桜(さくら)の/枝(ゑだ)に/詠哥(ゑいか)の短尺おゝくつけ(六ウ)たり。/仁躰(じんたい)よ 00080450¥P272 00080460L1き人/花見(はなミ)して、/一入(ひとしほ)短尺に/目(め)をとめ、よむ/躰(てい)なり。つれの 00080470L2人、此短尺ニ/書(かき)たる/哥(うた)、よミてきかせよといひけれバ、/彼(かの) 00080480L3人、/我等(われら)ハ/夜(よる)/手習(てならひ)せし/故(ゆへ)、/昼(ひる)ハトントよめぬ。 00080490¥N10¥J 00080500¥X/節季(せつき) 00080510L6/色好(いろこのミ)の人、/本妻(ほんさい)/合点(がつてん)にてうつくしき/妾(てかけ)をかゝへたり。はじ 00080520L7めて妾と/新枕(にいまくら)の/夜(よ)、本妻のいへるハ、/今夜(こんや)ハ/節季(せつき)で/御座(ござ)り 00080530L8ましよ。(七オ)/亭主(あるじ)ほどけがたく、/節季(せつき)とハいかゞ。本妻 00080540L9ハテ、とつたりやつたり+。 00080550¥N11¥J 00080560¥X/口松(くちまつ)/卜夢(ゆめうら) 00080570L12/開好堂(かいこうどう)/口松(くちまつ)といへる人の/老母(らうぼ)、ある/夜(よ)の/夢(ゆめ)に、/竿(さほ)をもちて 00080580L13ひがしのかたをさすと見たり。口松に、此夢/吉凶(よしあし)ハいかゞ 00080590L14と/尋(たづね)けれバ、口松とりあへす、此夢/至極(しごく)よき夢なり。ナゼ 00080600L15ニトイヘハ、/東方(とうぼう)さすハ九/千歳(せんざい)。(七ウ) 00080610¥Q 00080620M1絵本源氏山△△@月岡丹下画△|△△全三冊@新撰小諷太平楽△全一冊 00080630M2同△泰平楽△△@月岡丹下画△|△△全三冊@軽口東方朔△△△全五冊 00080640M3同△万歳松△△△△全二冊同△太平楽△△△全五冊 00080650M4@女中|品定@風俗競双六△@箱入上仕立△|△△折本一冊@同△豊年遊△△△全五冊 00080660M5今昔諸国噺△△@よみ本絵入△|△△全五冊@児鎧甲州軍記△@よみ本ゑ入△|△△全五冊@ 00080670M6世間自慢質気△@同近日出来△|△△全五冊@女伊達競雛形@同△△△△|△△全五冊@ 00080680M7風流源氏双六△@箱入△△△△|△△折本一冊@ 00080690M8△△宝暦十四@甲△|△申@年正月吉旦 00080700M9△△△△△△△△△△△△△△心斎橋順慶町 00080710M10△△△△大坂御書物所△△△△△△△△渋川大蔵 00080720¥P273 00080730¥U噺本大系△第八巻 00080740¥T軽口扇の的 00080750¥G 00080760¥Y 00080770L16宝暦十二年序 00080780L17並木正三序 00080790L18半紙本五巻 00080800L19東大国文研究室蔵 00080810¥Y序 00080820M3/夫(それ)うそといつば、/$(うつ)としたものが/$(そつ)とかたまつて、う 00080830M4そとなる。/其中(そのうち)にうつけとそろまの両/儀(ぎ)を/産(うむ)。/此(この)二ツの/中(なか) 00080840M5より/云訳(いひわけ)、/中詞(なかごと)、/間似合(まにあい)、/追従(ついせう)、/自慢(じまん)とわかれて、/此(この)五ツ 00080850M6を/五毅(ごく)つぶしといへり。/本卦還(ほんけがへり)じやとて、おやぢが/前髪(まへがミ)に 00080860M7なるでハなし。/唐(から)で/生(うま)れた/赤子(あかご)も、おぎやあ+と/啼(なく)より 00080870M8/外(ほか)かハつたなき/声(こゑ)/有(ある)べからす。/女(おんな)の/色(いろ)の/白(しろい)(序オ)も/顔(かほ)の/皮(かハ) 00080880M9からさいぜう/柿(がき)のごとき/粉(こ)の/吹出(ふきでる)とも思ハれず、/石灰(いしばい)の/様(やう) 00080890M10なる/物(もの)をぬり/付(つけ)たりと/存(ぞんずれ)ば、/金(かね)も/灰吹(はいぶき)/不通用(ふつうやう)、/裸(はだか)でハ/歩= 00080900M11行(あり=か)れず。はやるもやうのそめものハ/着(き)ても見よかし、/相応(さうおう) 00080910M12のうそならバついてもみたし。/飯喰(まゝく)や/毒(どく)にならぬほど、な 00080920M13ぐさみの/咄(はな)しにハ、いつそ/赤(あかい)もよろしからん/歟(か)。 00080930M16△△宝暦壬午の春△△浪華△△△並木△正三(序ウ) 00080940¥K〔註・解題(三四一頁)参照のこと〕 00080950¥P274 00080960¥G 00080970¥T1軽口扇の的初巻 00080980¥N1¥J 00080990¥X一△/訥(どもの)/主人(だんな) 00081000L16三介でござります。/旦那様(だんなさま)、よい/春(はる)でごさります。/返事(へんじ)、 00081010L17きうに/出兼(でかね)て、ムヽムヽヽヽヽだんない春じや。 00081020¥N2¥J 00081030¥X二△/欲阿弥(よくあミ)/訴訟(そせう)する事 00081040M1いつの比かとよ。欲あミといふ/爪(つめ)の/長(な)がき者、御訴訟に出 00081050M2けるが、/御奉行(おんふぎやう)/御覧(こらん)じ、何事やと/仰(おほせ)らるゝ。/欲(よく)あミ、かし 00081060M3こまり、/夢(ゆめ)(三ウ)の御訴訟と申す。/殿(との)/聞召(きこしめし)、/夢(ゆめ)とハ/寝(ね)ほれ 00081070M4者よと申させ給へば、かさねて申上ルやう、わたくし/昨夜(さくや) 00081080M5/御神(ごしん)の/夢想(むさう)をえました。此所の/町(まち)なミ/家(いゑ)/毎(こと)に、/壱軒(いつけん)につき 00081090M6/五銭(ごせん)つゝの/昆布(こんぶ)を/売(うり)候へと、おん/告(つけ)ましませしゆへに、御 00081100M7訴訟申上、売申度とのおんねがひと申す時、御奉行/聞(きこ)しめ 00081110M8させられ、そちに/売(うらさ)せてとらせとの/瑞夢(づいむ)のあらんず、/其時= 00081120M9ハ(左様の御つけあらハ又=身にも)申/付(つく)べし。その(四オ)やうなことをきけバ、あくびか/出(て) 00081130M10るさと仰らるゝ。/尓時(ときに)欲あミ、/一句(いつく)の/御名言(ごめいこん)に/礑(はた)とつまり、 00081140M11何ともえいはで、扨も+目の/覚(さめ)た/御上意(こしやうい)哉と言て/立(たつ)た。 00081150¥N3¥J 00081160¥X三△/分限(ふんけん)/■(はなし)の事 00081170M14/西国(さいこく)/辺(へん)のかねもち、京へのほりて、/分限(ふけん)なる/鍔(つば)屋が/店(たな)にた 00081180M15ちより、鍔を/買(かふ)てのち咄しに、我らハ西国方の/者(もの)なるが、 00081190M16いにしへ/鯨(くじら)をつきまして、/今(いま)かやうに/有(う)(四ウ)/徳(とく)になりま 00081200M17した。わかいときハ中+かせぎまして、/身(ミ)のあぶらから 00081210M18出まして、かやうに分限になりたとかたれば、/鍔(つは)屋のある 00081220M19し聞て、扨は/其方(そなた)さまハ以前に/鯨(くしら)をおつきなされて、/ケ様(かやう) 00081230¥P275 00081240L1になりたまへるとや。すれば身の/油(あふら)から出ました/有徳(うとく)とは、 00081250L2くじらによそへて/尤(もつとも)で御座る。わたくしも油から/出(て)まし 00081260L3て、このことく/富貴(ふうき)になりましたハ。あまたの(五オ)つば 00081270L4を/買(かふ)てハ、ふるべ+した/鼻(はな)あぶらから出たる/分限(ふけん)でごさ 00081280L5るといふた。 00081290¥N4¥J 00081300¥X四△/諷(うたひ)を/仏法(ふつほう)といへる事 00081310L8或/出家(しゆつけ)、うたひ/興行(こうきやう)の/座敷(さしき)にて申さるゝは、惣じて/諷(うたひ)程お 00081320¥G 00081330M1もしろきものハない。大方うたひをきくにも、ミな/仏法(ふつほう)の 00081340M2/道理(たうり)にをつるゆへ、世に諷ほと/殊勝(しゆしやう)なる物ハ御座らぬとい 00081350M3はるゝ時、ひとりのすねもの、/是(これ)ヲきゝ、/扨(さて)ハうたひハみ 00081360M4なぶつはうて御座るか。(五ウ)(六オ挿絵)さあらば、これも 00081370M5ちすこしもさハがすしても仏法/歟(か)と、たゝみかけて/問(とひ)けれ 00081380M6ば、/御坊(ごほう)さま、やかて、むつかしのことをバ/問(とひ)給ふや。/出= 00081390M7家(しゆつ=け)の事にて候へば、左様のことはしらず候と、/頭(づ)をふりま 00081400M8ハし、じうめんでやられた。 00081410¥N5¥J 00081420¥X五△/田舎(いなか)者しらぬ物の事 00081430M11京のはらはれ、田舎わたらいして、しりたる者の方へ/腰(こし)を 00081440M12かけられ、一/宿(しゆく)せら(六ウ)れしが、田舎の事なれば、京の 00081450M13きやくをはぢらひ、いつれも人&/打集(うちあつま)り、/夜食(やしよく)には何をか 00081460M14仕らふぞと/御内(ミうち)の人に/尋(たつね)ければ、下人いふやう、されば夜 00081470M15食は/一向(いつかう)おみいにわるむしがよからふといふ。此こと/合点(がてん) 00081480M16ハゆかねども、心得たりとうなづき、して是ハ何のことで 00081490M17あらふぞと/談合(たんかう)する時、京へ二三度のぼりたる者すゝミ出 00081500M18いふやう、/京(きやう)の/方(かた)におみいといふハ、(七オ)こゝもとにて 00081510M19のべうたれのことじや。又わるむしといふは、京にハあつ 00081520¥P276 00081530L1いといふことを、むすといふ程に、さだめてあつうせよと 00081540L2いふことにてあるべし。をらゝにまかせよといふほとこそ 00081550L3有けり。なる程/増水(ざうすい)をあつくこしらへ、/彼(かの)者、お客の前に 00081560L4かしこまり、/夜食(やしよく)にハおみいをば/随分(ずいふん)わるむしに仕たが、 00081570L5ぬるう御座らば、なんぼなりともわるむしに致しませう。 00081580L6さい(七ウ)にハ此ぬかみそをさせられといふた。 00081590¥N6¥J 00081600¥X六/助蔵(すけさう)/火事(くハし)見る事 00081610L9/夜(よ)/更(ふけ)て/火事(くハじ)よとさわぎけれハ、或家の/亭主(ていしゆ)はやくきゝつけ、 00081620L10助蔵をおこし、やねへ火もとを見せにあげければ、助蔵目 00081630L11をすり+やねへあがりて見る時、亭主/下(した)からこゑをはか 00081640L12りに、やれ助蔵。火もとハ/遠(とを)きかといふに、いや+とい 00081650L13ふ。/近(ちか)きかといへど、いや+といふゆへ、しか(八オ)ら 00081660L14ばどこらじやと/問(とへ)バ、かんにん/比(ころ)に御座るといふ。ていし 00081670L15ゆ/腹(はら)をたて、ときも時おりも折、にくゐやつめかなと、す 00081680L16なハちやねよりひきづりをろし、せめて/方角(はうかく)ハどこらじや。 00081690L17ぬかせといへば、助蔵いふやう、方角もことのほかくらき 00081700L18/夜(よ)で、/火(ひ)もとばかりあかうてしれませぬほとに、/明日(あした)あか 00081710L19りで見て申さうといふた。(八ウ) 00081720¥T1軽口扇の的二巻 00081730¥N1¥J 00081740¥X一△/天和(てんな)の/年号(ねんかう)に/福神哥(ふくしんうたの)事 00081750M5年号あらたまりぬる年、天和のことぶきをよめる。 00081760M6△△△△△△△△△△△△△△△△△△/恵美酒(ゑひす) 00081770M7△△/跡(あと)たるゝ/神代(かミよ)のつりハ久かたの 00081780M8△△△/天(そら)も/和(やハら)くとしの春かな 00081790M9△△△△△△△△△△△△△△△△△△/大黒神(たいこくしん) 00081800M10△△/福袋(ふくぶくろ)しめかさりする/国民(くにたミ)の(一オ) 00081810M11△△△/天(おさま)り/和(そふ)るとしのはるかな 00081820M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△/年徳神(としとくじん) 00081830M13△△/書初(かきそめ)の/大和(やまと)の/文字(もじ)に/一天下(いつてんか) 00081840M14△△△うちおさまれる/年(とし)の/春(はる)かな 00081850M15ゑびすの/詠哥(えいか)に、跡たるゝ神代のつりとつらねたる心こそ、 00081860M16/鯛(たい)の/外(ほか)に/尾(を)にひれをさかせたるこゝろ/言葉(ことは)/珍重(ちんてう)。大黒神の 00081870M17詠哥も、/俵(たハら)の外にめてたきこゝろをふまへられしも珍重。 00081880M18又年徳神(一ウ) 00081890¥K〔註・二オと続かぬ。解説ページ参照〕 00081900M19とき、このもんもう者きゝて、いやとよ。たゝみたゝきよ 00081910¥P277 00081920L1りハすこしミじかふしたいといふ。さやし、ふしぎに思ひ、 00081930L2たゝミたゝきとは何事をおほせらるゝといへば、かのわろ 00081940L3申さるゝハ、そなたがほこりをとしといふは、すゝはきの 00081950L4さたでハないか。しかるゆへ、たゝミたゝきよりハすこし 00081960L5ミじかふとこのむといわれた。 00081970¥N2¥J 00081980¥X二△土のせいものかたりする事(二オ) 00081990L8或人のはなしに、/万歳(まんざいの)/樹精(きのせい)/化(けして)/青牛(せいきう)と/成(なり)、/土精(つちのせい)/至(いたつて)/羊(ひつし)とな 00082000¥G 00082010M1るといふも、まことさうなハ。あるゆふくれに、のべをと 00082020M2をりたれバ、二人つちべにひざまついて、そのはなしのこ 00082030M3ゑ、/髣髯(ほのか)にしける程に、/彳佇(たゝずミ)てきけば、一人がいふハ、わ 00082040M4たくしハじゆらくのつちのせいにてこざるが、ことのほか 00082050M5くらうをいたす。/先(まつ)ほしつけられ、たゝかれして、あげく 00082060M6は身もさむうてふるいつちになりまするに、うらやましや 00082070M7の、そなたハびせんの(二ウ)(三オ挿絵)つちにてましませ 00082080M8ば、とくりにならせられ、つねにさけにつかりていたまふ 00082090M9といへば、このものがいふことハ、わたくしもとくりにば 00082100M10かりなりていますればよけれども、わるうすれバ、しびん 00082110M11にやかれまして、いちご、むさいめをしてくらしまするほ 00082120M12とに、びせんのつちとても、さのミけなりくおほしめすな 00082130M13といふた。 00082140¥N3¥J 00082150¥X三△ねりもの屋のはいでか事 00082160M16ねり物やに、はいでのわろををきしが、あなた(三ウ)こな 00082170M17たよりあつらへのはぶたへを、あくをけをとりよせ、かま 00082180M18へいれてねりけるを、このはいてがみていふことハ、何と、 00082190M19此きぬハふんどしになるむさゐきぬで、このせうべんをい 00082200¥P278 00082210L1れてにらるゝかととへば、だんなきゝて、せうへんとハう 00082220L2つけをいふ。あくといふものじやハとおしへけれバ、さて 00082230L3ハさやうで御座るか。うらゝハ、これをたごかとおもふて、 00082240L4このぢう、このおけにせうへんこいたハやれといふた。 00082250L5(四オ) 00082260¥N4¥J 00082270¥X四△わび人ゆふろへ入事 00082280L8わび人のありしが、ひさしくぎやうずいをこたり、身もあ 00082290L9かづきたればとて、むす子をつれ、せんとうへゆきけるが、 00082300L10入ごミのなかにて、こむすこがいふことハ、なふとゝ。こ 00082310L11のたらゐハ、をれがいつもうる/蚊(か)ふすべかやの木のにほひ 00082320L12がするハといへば、てゝおやきゝて、さてもわれハ身のほ 00082330L13どをしらするやうなことを、人中ともなくいふものかな。 00082340L14せめてよいしゆのす(四ウ)ごろくばんのにほひとなりとも 00082350L15ぬかさいでといふた。 00082360¥N5¥J 00082370¥X五△ぬかりもの見たての事 00082380L18ぬかりたるわこも、おもしろきひとことハいふもの也。あ 00082390L19るなつのころ、とも人とはなし、ゆふぐれになれば、にハ 00082400¥G 00082410M12ちかくはしゐしけるをりふし、みきハのせんすいに、あま 00082420M13たほたるのとびうつれるを、ぬかりのすけが見ていふやう 00082430M14ハ、あれ見給へ。せんすいへうつるほたるのかげハ、その 00082440M15(五オ)(五ウ挿絵)まゝなしぢをまきたるやうなといへば、/友(とも) 00082450M16人きゝて、これハおもしろき見たてじやとほめければ、そ 00082460M17のまゝじまんらしきかほをして、かさねていはるゝハ、ほ 00082470M18たるこい。むし+。そちの水ハにがゐ。こちの水ハあま 00082480M19いぞといはれた。はじめのぶんでをかるれはよいに。 00082490¥P279 00082500¥N6¥J 00082510¥X六△うつしゑひようぎの事 00082520L3/狩野(かの)のたれとかいふ人、わらんべのゑをかゝれし中に、め 00082530L4しをくゝめる所をうつせしを、その(六オ)ころのゑづかさ 00082540L5見られて、ひごんに、惣して子共にめしをくゝめるときハ、 00082550L6そのくゝめるものも、ひとしくくちをあく物也。しかるに 00082560L7此ゑ、もりが口をふさぎているハ、ゑかきのあやまりなる 00082570L8べしといはれしと也。げにや、よの人のぶけがたのことを 00082580L9はなしするにも、ぶしのいへることばのまねのときハ、か 00082590L10ならすこゑをなまらするにこそ。さなければ、なまぬかり 00082600L11てあしゝ。これ、そのものごとのはなしの(六ウ)いろに、 00082610L12うつすためしのこゝろいれ。このひとつにハかきるべから 00082620L13ずやも。(七オ) 00082630¥T1軽口扇の的三巻 00082640M3△△△△△△△△△付り△口ひらきする/鴬(うくひす)の/初音(はつね) 00082650¥N1¥J 00082660¥X一△/語(かたる)に/落(おつ)る事 00082670M6ぶたこなるおとこ有けり。此おとこ、うるハしき女をもち 00082680M7けるが、かね※おつとのむさき事をこゝろねにやおもひ 00082690M8ゐけん、あるときていしゆのるすのまに、となりよりつか 00082700M9いをこして/口上(こうじやう)に、あかまぶれでも、きたなうても、くる 00082710M10しく御座りませぬ程(二オ)に、こなさまに、いらぬのうれ 00082720M11んが御座らば下されませ。さうきんにことをかきましたと 00082730M12いふてきたれバ、かのないぎ、やかてやすき御事とて、返 00082740M13事をしてつかハれしが、そのうちていしゆもかへられけれ 00082750M14ども、その日ハわすれ、あくる日、ないぎ、ていしゆに申 00082760M15さるゝハ、まことにはたとうちわすれて、いひませなんだ。 00082770M16きのふあなたとのから、むさゐのうれんをもらひにきまし 00082780M17たとつげけ(二ウ)れば、ていしゆ聞て、何としてそれをい 00082790M18ま、にハかにハ思ひ出せるやとあれば、されば、かつてわ 00082800M19すれていましたけれども、そさまのくびすぢを見て、つゐ 00082810¥P280 00082820L1思ひいだしたといふて、そのまゝ口に手をあてられた。 00082830¥N2¥J 00082840¥X二△/富士(ふし)まふて/評判(ひやうばん)の事 00082850L4だうぎやう二人、あつまぢへをもむくみちにて、ふじまふ 00082860L5でのげかうにゆきあひしが、ことのほかくたびれたるてい 00082870L6なれバ、(三オ)(三ウ挿絵)ひとりがいふハ、さてもあの富士 00082880L7まふでハ、いかう/草臥(くたひれ)たるなりじや。そのまゝいせものが 00082890L8たりに、なりひらのあそんのかゝせたまふに、少もかわり 00082900¥G 00082910M1ハないなりじやと云ければ、ひとりのつれがきゝて、何と 00082920M2いせものがたりにハあるぞとといければ、いかにも+。 00082930M3いせものがたりに、ふじのかたちを、なりハふごじりのご 00082940M4とくとある。しかれば、あの富士まふでを見やれ。いき 00082950M5(四オ)てはたらくなりハ、ふごじりじやハさてといふた。 00082960M6△△しほしりをふごしりと覚へた也けり。 00082970¥N3¥J 00082980¥X三△/此方(こち)の寺にないうハさの事 00082990M9或人の/咄(はなし)に、 00083000M10△△△/遅(をそきを)/遅(おそなれは)/遅遅(ちゝとして)/遅(おそし) 00083010M11とあるに又、 00083020M12△△△/重(をもきを)/重(おもくすれバ)/重重(かさね+)/重(をもし) 00083030M13と。これ、ついしておもしろしとはなさるゝ。そのざしき 00083040M14に、/杉谷氏(すきたにうぢ)のたれとかいふ人有(四ウ)しが、一/文字(もんじ)を八ツ 00083050M15ならべて、そくじに狂哥をよまれしとぞ。 00083060M16△△△/一(はじめより)/一(もとより)/一(ともに)/一(またざれば) 00083070M17△△△/一(ひとり)/一(さびしき)/一(まさる)/一(ときかな) 00083080M18哥ハきこえがたくもやあらんかし。なれど、きゝしまゝに 00083090M19書つく。 00083100¥P281 00083110¥N4¥J 00083120¥X四△こもぞうと大工と/当座(とうさ)の事 00083130L3ある大工の所へ、こもぞうが立より/咄(はなし)を(五オ)(五ウ挿絵)し 00083140L4てゐけるが、大工のしわざを、つく+と見ていふことハ、 00083150L5ちかごろ大工殿ハ名にめでゝ、/大(をほき)なくをめさるゝさうなと 00083160L6いへば、だいくとりあへず、 00083170L7△△大工とておほきなくをばやむでなし 00083180¥G 00083190M1といへば、こもそう、あやまたず、かくバかり、 00083200M2△△こもぞうの身もこもハきませぬ 00083210M3とつけて、/双興(さうけう)をもよほしたと。 00083220¥N5¥J 00083230¥X五△/盗(ぬす)人の用心の事(六オ) 00083240M6ある町のとしより、しよやじぶんになると、としやおそし 00083250M7と町のりやうはうのもんをうたせ、たれによらず、ないげ 00083260M8の出入をとがめよ。ぬすびとの/用心(ようしん)がわるいと、ばんたに 00083270M9きつと申つけらるゝを、りん/町(ちやう)の人、かのおしゆくらうに 00083280M10いはるゝことは、申シにくう御座るけれども、おてまへ様 00083290M11の町内にハ、さしてぬす人のねらふべきいへも見へませぬ 00083300M12に、いかなれば、よいから(六ウ)きびしくもんをうたせら 00083310M13るゝぞととへバ、しゆくらう、こごゑにていはるゝハ、さ 00083320M14れば私がもんのせいたうがぬるいと、さたはなき事、町衆 00083330M15が、たちやうへ盗人にいてまして、らつしが御座らぬゆへ、 00083340M16よひからもんをきびしくうち、せめててうないから、よそ 00083350M17へぬすびとに出さぬせいたうをいたさねバ、それハその、 00083360M18ろくに夜がねらるゝ事でハ御座らぬ。(七オ) 00083370¥P282 00083380¥T1かる口扇の的四巻 00083390L1△△△△△△△当世めづらしきはなしをあつめ 00083400L2△△△△△△△御なぐさみに出し申候 00083410¥N1¥J 00083420¥X/三((ママ))△/秀句(しうく)をいふ事 00083430L5みしかよ、いともふけぬれど、たのめたるひともあやなく、 00083440L6ほとゝきすも/音(ね)を/絶(たえ)て、ものうきくさとこちわひ/居侍(いはべ)るを 00083450¥G 00083460M1りから、/不分戸(ねたいかなと)をごと+と/扣(たゝく)をきけば、まことに人も/木= 00083470M2末(こ=ずゑ)の/水鶏(くゐな)(三オ)(三ウ挿絵)にてなんありしを、めしつかふも 00083480M3のゝねふりいし/耳(ミヽ)に/風与(ふと)いりて、たそやと/戸(と)をあけて/出(いて)け 00083490M4れど、そのひとかげもなし。しゆじんをかしくおもひ、た 00083500M5れなるらんとたつねられければ、/下人(けにん)申すやう、さればに 00083510M6や、まちをりしおんかたさまかとおもひましたれば、につ 00083520M7くいなめがだましましたと、しうくにていゝければ、しゆ 00083530M8/人(じん)の申さるゝは、(四オ)それハ+、/戸(と)でもなききゝちか 00083540M9へじやといはれた。 00083550¥N2¥J 00083560¥X四△/無病作病之(やまひなしさくひやうの)事 00083570M12そゝるむすこありしが、/盆(ほん)の/比及(ころほひ)に、このおやじ、とりわ 00083580M13きせつかんして、そとへハ/出(いた)ささりしほとに、むす子すね 00083590M14まハり作病をおこし、うちふし居けれバ、/流石(さすが)/親(おや)ごゝろ気 00083600M15づかいにおもひ、くすしをまねきよせ、見せらる(四ウ)る。 00083610M16くすし、ミやくをうかゝひ見れど、何のことも見えざりけ 00083620M17れは申さるゝハ、おミやくにべちのことも御座らぬ。しか 00083630M18れども/時分(しぶん)がら/盆(ほん)ゆへにや、ミやくがうこ+とおどりう 00083640M19きまする。これは/拙者(せつしや)が/配剤(はいさい)よりハ、すなハちお/手前(てまへ)にて 00083650¥P283 00083660L1/金(きん)/銀(きん)/米(べい)/銭(せん)/湯(たう)をたくさんにつかハせられたらバ、/追付(おつつけ)に/験(けん)が 00083670L2みえて、なるほとたつしや、すくやかなるつらもちに(五 00083680L3オ)ならせられうといはれた。 00083690¥N3¥J 00083700¥X五△/衰(をとろへ)し/牢人(らうにん)の事 00083710L6/尾羽(をは)うちからしたるらうにん、ひさしくあハぬ/友(とも)にゆきあ 00083720L7ひ、さても+ひさしく/御意(きよい)を/得(え)なんだ。/先以(まつもつて)/御無(こぶ)為に 00083730L8て目出たいと。してそなたは、ことのほかにかびたるてい 00083740L9にてお/笑止(せうし)やといへば、牢人がいふことは、されば+、 00083750L10かやうにかびましてめいわく仕る。まことに(五ウ)いつの 00083760L11/土用(とよう)ともなしに、/腹(はら)も/虫干(むしほし)を/致(いたす)けれとも、/虫干(むしほし)をすればす 00083770L12るほと、かびけがさして、何とも/物怪(もつけ)で御座るといふた。 00083780¥N4¥J 00083790¥X六△/赤前垂(あかまへだれ)にはまる事 00083800L15或ぬめり者、/黄昏(たそかれ)/前(まへ)に/細図子(ほそづし)をゆくとて、いろくろく/鬚(ひげ)た 00083810L16くさんなる/住吉踊(すミよしをとり)のはなれ者にゆきあひしが、/手拭(てのこい)をかづ 00083820L17き/菅笠(すけかさ)に、うちわをとりそへ/持(もち)てゆくうしろすがたを見て、 00083830L18こハ/女(おんな)よとおもひ、/小大無(なにとなく)(六オ)(六ウ挿絵)うちわをもちた 00083840L19る手をしかと/握(にきる)と、この住吉おどり、ねぢひきけるを見れ 00083850¥G 00083860M13バ、あんのほかなるかほなりしゆへ、握たる手をはなすべ 00083870M14きしほなけれバ、/横手(よこで)をてうとうち、したり+。さても 00083880M15此うちわの/上髭(うハひげ)ハ、こまかなしほらしい/細工(さいく)かなといふて 00083890M16のいた。 00083900¥N5¥J 00083910¥X七△大きなるうそつきの事 00083920M19につこりともせずに居るうそつきありしか、/樒柑(ミかん)のはなし 00083930¥P284 00083940L1するとて、扨も紀国には(七オ)大きなミかんのある所じや。 00083950L2八/幡(まん)、かわをまりにつくのがあるといへば、きく人けうを 00083960L3さまし、さりとハ+大きなるうそをつく人かな。そもや、 00083970L4みかんの/皮(かハ)で/鞠(まり)がつかるゝものかといへバ、此人のいはる 00083980L5ゝハ、なるほと、まりにつくのかおりやる。惣じて/犬(いぬ)の皮 00083990L6でつゐたを/犬皮(けんひ)といひ、ミかんの皮でつゐたを/陳皮(ちんひ)といふ 00084000L7とやられた。 00084010¥N6¥J 00084020¥X八△目安のかきやうを/好(このむ)事(七ウ) 00084030L10或所の町の/犬(いぬ)を、/上(かミ)の町の犬か来て、散+にかミふせけ 00084040L11れバ、町の者/腹(はら)をたて、/会合(よりあい)をつけ、上の町へ使をたて、 00084050L12今一度犬をかミあハせんといゝやりけれとも、上の町の宿 00084060L13老あしらひもせねば、いよ+町の者共/腹(はら)をたて、さらば 00084070L14目安をしたゝめ/訴訟(そせう)申すべしと、めやすを書けるが、いか 00084080L15ゝ書へきと/評義(へうき)とり+なれとも、さらに/文躰(ふんてい)出ざれば、 00084090L16ひとりすゝミ出、我等文を/好(この)ミ申さんとて、其文躰に/曰(いハく)、 00084100L17(八オ)上の町の犬、/我侭(わかまゝ)をうなり申シ、一円かミあひ不申。 00084110L18つかまつるべきやうもなく候まゝ、白こいうわ+とめし 00084120L19出させられと/好(この)まれた。△△終(八ウ) 00084130¥T1軽口扇の的五巻 00084140¥N1¥J 00084150¥X一△/酒数寄(さけすき)/遺言(ゆいこん)の事 00084160M5/縦逸(ほしいまゝ)に酒を/呑(のミ)し/老人(らうじん)ありける。/末期(まつご)の時、/子(こ)に/遺言(ゆいこん)して 00084170M6いはく、我一/生(しやう)酒をたのしミてくらせり。今/已(すてに)/死(し)せんと 00084180M7す。われなくならバ/酒樽(さかたる)を/棺(くハん)にして、酒屋の/木香(きか)の/屑(くず)をも 00084190M8つて/火葬(くハさう)にし、/骨(こつ)をハ/酒徳(さけとく)りに/納(をさ)め、水にハ酒をむけてく 00084200M9れよ。我/死(しゝ)ても心ハ酒をはなれじ。/汝(なんぢ)のめる時ハ(二オ)わ 00084210M10れに/逢(あふ)とおもへといひをきて、つゐになくなりにたり。か 00084220M11くして/後(のち)に、其子友達を/呼(よひ)あつめ酒/呑(のミ)ける時、/俄(にハか)に/潜然(なミたくミ)し 00084230M12を友人ミて、何をおもひ出しなげくやといへバ、/彼者(かのもの)いふ 00084240M13やう、されば/別(べち)のことでなけくでハない。をれが/親仁(おやし)の/遺= 00084250M14言(ゆい=こん)に、そちが酒のむ時ハ我に/逢(あふ)とおもへ。親仁のこゝろハ 00084260M15さけじやといはれたが、親仁ハかしこい人で有しが、何と 00084270M16したことに、いまのむ親仁のかん(二ウ)が、とんになられ 00084280M17たぞとおもへバ、ありしことどもが/■迹(おもひやられ)てかなしいとい 00084290M18ふた。 00084300¥P285 00084310¥N2¥J 00084320¥X二△礼者にとひよういふ事 00084330L3/首長(くびたけ)/借銭(しやくせん)の/淵(ふち)に/沈(しつミ)し人、大/晦日(つこもり)に/借銭(しやくせん)こいに/陵轢(せたけ)らるゝ、 00084340L4/其(その)あいさつにひまなかりしが、夜に入ても借銭こひ/来(き)やま 00084350L5ず。/枕(まくら)をもかたふけで居たりしが、やう+/門(かど)を/行(ゆき)かふ/挑= 00084360L6灯(てう=ちん)の/影(かげ)もたえ、/東雲(しのゝめ)の/空(そら)も/白離(あけはなれ)、/世上(せじやう)ものしづまり(三オ) 00084370L7/礼者(れいしや)も出けるが、此者の/門(かど)にて、物もうといふ。内より、 00084380L8どれとこたふ。何のなにがし、御礼申ますると云ければ、 00084390L9おいでのよしもうとハいはで、ゆき/廻(まハつ)て御座れとミしらせ 00084400L10た。 00084410¥N3¥J 00084420¥X三△/発明(はつめい)なる/女義(によき)の事 00084430L13去所のおくがた四五人、折+ゆふなに打よりてあそひ/講(かう) 00084440L14ありしが、/四極山(よもやま)の/咄(はなし)のうへにて、をの+/添(そひ)たまふ/殿御(とのご) 00084450L15の/噂(うハさ)(三ウ)(四オ挿絵)せられて、/一人(ひとり)のいつくしき女義にむ 00084460L16かひ申さるゝハ、そもし様の殿ハ、おこゝろもかたちも/優(ゆう) 00084470L17にやさしく、/諸芸(しよけい)も人に/勝(すく)れたまへバ、いかなるものも心 00084480L18をうつしさふらふ御方様にて、さぞやむつ/語(がたり)につけても、 00084490L19なさけふかゝらん/殿(との)なれ。/我&(われ+)が殿ハさもあらされば、/一= 00084500¥G 00084510M12入(ひと=しほ)御うらやましやと申さるゝ時、かの/女義(によき)の仰らるゝハ、 00084520M13いかにもミづからの殿ハ、御ン申しなさるゝごとく(四ウ) 00084530M14にておハします。/然(しか)れども/我身(わかミ)ハあの殿ならで、外の殿を 00084540M15ぞんし候ハねバ、をしなへ殿の心は此ような物とのミおも 00084550M16ひ/居(を)りまするに、そもし様がたハ、えもいはれぬむつ/語(がたり)の 00084560M17ことまで、ことこまかに、いかゐお/功者(こうしや)さうなと/恥(はぢ)しめら 00084570M18れしとなん。 00084580¥P286 00084590¥N4¥J 00084600¥X四△/合点(がてん)のゆかぬ人の事 00084610L3ある人の/章句(しやうく)に、/■(ひばり)/上(あかれハ)/声(こゑ)/弥(いよ+)/下(ひくし)といふを、/去(さる)/愚(おろ)かなる/老= 00084620L4人(らう=じん)が聞て/不審(ふしん)(五オ)するやうハ、/■(ひばり)あがれば/声(こゑ)/弥(いよ+)/高(たかし)とあ 00084630L5り/左右(さう)なことしやに、/■(ひばり)あがれば/声(こゑ)/弥(いよ+)/下(ひくし)とは聞えぬと/不= 00084640L6審(ふ=しん)せらるゝ時、/作者(さくしや)おかしくおもひ、さればこそ、あがる 00084650L7ほと/遠(とを)ざかるゆへ/声(こゑ)のひくふなることハりじや。つゐ聞え 00084660L8たことじやといはるれバ、/彼老愚(かのらうぐ)、ろくにのミこミもせで、 00084670L9聞えた。扨ハひばりがさがれは声もひくふなるといふ/道理(たうり) 00084680L10と同じことじやの。/惣(さう)してをれを(五ウ)世間にて人がいふ 00084690L11ことハ、何とも/合点(かてん)のゆかぬ人じやといふげなわいのとや 00084700L12られた。 00084710¥N5¥J 00084720¥X五△/碁(こ)うちの/癖(くせ)の事 00084730L15/碁(ご)を/数寄(すき)てうちける人ありけり。いちもく+にて、/石(いし)を 00084740L16/鼻(はな)にあてゝかゞるゝゆへ、したしき/友(とも)/笑止(しやうし)におもひ、/異見(いけん) 00084750L17しければ、碁うちがいふことハ、をれハかつておほへぬ。 00084760L18/常石(じやうせき)の/癖(くせ)のことなれば、/定(さだめ)て、なをるまひとハおもへども、 00084770L19/随分(すいふん)たしなミ(六オ)(六ウ挿絵)て見やうと/所耳(うけがふ)て、又ある時 00084780¥G 00084790M12/碁(ご)をうちけるに、/半(なかば)までハ気がつゐて、たしなまれけるに、 00084800M13ひよつと/鼻(はな)へあてゝかゞるゝと、かのいけんせし人、/傍(そば)に 00084810M14見物してゐて、しゐ+といへば、/癖(くせ)人のいはるゝことは、 00084820M15いかなこと。/石(いし)をかぐ事てハおりない。鼻を/碁(ご)いしに/腰(こし)か 00084830M16けさするよのといふた。 00084840¥N6¥J 00084850¥X六△水がらくりを見にゆく事 00084860M19/千早振(ちハやふる)/神代(かミよ)もきかず/四条川原(してうかハら)から(七オ)くり/人形(にんぎやう)の水くゞ 00084870¥P287 00084880L1るとハと、/洛中(らくちう)/評判(へうはん)ありしに、/或所(あるところ)のかたゐ/親仁(おやじ)、見にゆ 00084890L2かれ、とある/芝居(しばい)の/簡板(かんはん)を/屹(きつ)と/向上(ミあけ)、これハ何ぞやと/問(とい)け 00084900L3れば、洛中御評判の/轆轤首(ろくろくび)といふ。/親仁(おやし)おもふやう、是ぞ 00084910L4井のもとの/道具(たうぐ)の名なれば、水がらくりよと/心得(こゝろえ)、おもひ 00084920L5のまゝに見て帰り、人にかたらるゝことハ、けふといふけ 00084930L6ふこそ、水がらくりを見にゆきたれ。/名(めい)(七ウ)/誉(よ)な事をす 00084940L7る。/先(まつ)大きなる/女房(にうハう)を出して、其/首(くび)を/剪(きる)と、その/首(くび)が/小哥(こうた) 00084950L8をうたふたり、/髪(かミ)をなでたりする。/然(しか)れどもあのぶんでハ、 00084960L9水がらくりとハいはれぬ。/肝心(かんしん)の水と/釣瓶(つるべ)とがなふて、く 00084970L10びのろくろばかりでハ、水からくりとハわけが聞えぬ。あ 00084980L11れハ/丼(どんぶり)と人をはめるやうなことじやといはれた。(八オ) 00084990¥P288 00085000¥U噺本大系△第八巻 00085010¥T軽口はるの山 00085020¥G 00085030¥Y 00085040L16明和五年刊 00085050L17高古堂 00085060L18半紙本五巻 00085070L19東大国語研究室蔵 00085080¥Y序 00085090M3春のはしめの御よろこひ、貴方にむかつて先はなし申候ひ 00085100M4おハんぬ。誠に以て、万福ふく+したる御/隠居(いんきよ)のかほも、 00085110M5/十面(じうめん)作る番頭衆も、/腹(ハら)のかわがより合て、(一オ)/臍(へそ)か西国 00085120M6順礼の、をいたる若き/差別(しやべつ)なく、御なくさミの/足(た)しにもと、 00085130M7かる口はなしの春袋、ひもをとく事しかり。(一ウ) 00085140¥P289 00085150¥T1軽口はるの山巻之一 00085160¥N1¥J 00085170¥Xゑひす大黒 00085180L5/豊(ゆたか)なるとしの元日、仕合なる/親父(おやぢ)、上下きて神の/棚(たな)にむか 00085190L6ひて申すやう、わたくし今年七十五、/婆&(ばゝ)も七十弐にて、 00085200L7/孫(まご)/子(こ)も/息才(そくさい)、かけやしきも四五ケ所も是あり。金銀に事も 00085210L8かけす、何にふそくもこれなし。これと申すも、神&の御 00085220¥G 00085230M1かけ、ありかたふ存しますと、信心におがミけれは、(二オ) 00085240M2ゑひす大黒、ちいさい声にて、何と、あのおやぢにあやか 00085250M3りたいとおつしやつた。 00085260¥N2¥J 00085270¥X/旅(たび)の/火燵(こたつ) 00085280M6ある旅人四五人、日くれてよろしきはたごやなかりけるゆ 00085290M7へ、百姓の家に宿をかりけるが、冬の事にて殊外さむきゆ 00085300M8へ、/火燵(こたつ)をかせといへは、こたつハなし。/仲間(なかま)より銭八十 00085310M9文いだされよとて、酒をかひに行き、ていしゆ其酒を皆の 00085320M10ミて、/夜着(よぎ)(二ウ)のすそへはいり、さあ+我等をこたつ 00085330M11になされと申けるにより、皆+ていしゆをこたつにして 00085340M12/寐(ね)たりける。夜ふけて旅人、ていしゆにいふやう、殊外さ 00085350M13むくなりたりといへハ、ていしゆぬからぬ/皃(かほ)で、それなら 00085360M14まあ四五合、かきさがさしやれぬかといふた。 00085370¥N3¥J 00085380¥X/比丘尼(びくに)の/自身番(じしんばん) 00085390M17あるとし、めてたき事ありて、/町中(まちぢう)/自身番(じしんばん)を(三オ)いたし 00085400M18けるか、名代にてはならずとありけれは、/比丘尼(びくに)の町も、 00085410M19女ながら/自身(じしん)に番をいたしける。所の/御役人(おやくにん)御通りありて、 00085420¥P290 00085430L1なぜに男に番ハさせぬと御とがめあれは、それでも名代ハ 00085440L2ならぬとの事ゆへと申せは、役人に口ごたへすると、/棒(ぼう)に 00085450L3てあたまをたゝかれければ、ぬからぬかほで、くハんとい 00085460L4ふた。 00085470¥N4¥J 00085480¥Xこたつ(三ウ) 00085490L7とある在所に、身上よろしきもの、こたつをこしらへける 00085500L8に、村中つゐにこたつを見たる事なけれハ、めつらしくお 00085510L9もひ、となりの与次兵衛殿の所には、/畳(たゝミ)を四/角(かく)にきり、四 00085520L10本/柱(はしら)をたて、くミ/天井(てんじやう)をしらるゝ、あれは何じやとて見に 00085530L11ゆきけるが、/跡(あと)よりゆきたるものかへりて、ざん/念(ねん)な、お 00085540L12そかつた。もはやふとんをかけて見せなんだ。 00085550¥N5¥J 00085560¥Xねぶりずき(四オ) 00085570L15/遠国(をんごく)に、何にてもねぶりてたのしむものありけり。世間に 00085580L16ありとあらゆるものをねぶり、さらバ是より京へのほりて、 00085590L17さま※のものをねぶりけるか、なにとそ東寺の/塔(とう)の/九輪(くりん) 00085600L18をねぶりたきものと、おゝくの金子をいれて出家衆をたの 00085610L19ミ、/足代(あししろ)をこしらへ、たいきくをたてゝ九りんの/先(さき)をねぶ 00085620M1りける。はしごをおりて、やつぱり三条のはしのぎぼうし 00085630M2のさきと、おなじ/味(あぢ)(四ウ)(五オ挿絵)じやといふた。 00085640¥N6¥J 00085650¥X大黒の口合 00085660M5あるものいはひする旦那ありけるか、正月の三ケ日を/宝(たから)を 00085670M6/掃(はき)出すとて、/掃除(そうぢ)もいたされす、其まゝにてをかれけるに、 00085680M7其冬来りける/丁僕(でつち)、勝手をしらすして、二日に/神棚(かミのたな)に火を 00085690M8とぼすとて、あまりにほこりありけるゆへ、/羽箒(はほうき)にて、大 00085700M9黒天のひざまではらひけるを、旦那見て、おゝきにきもを 00085710M10つぶし、やれ+なさけ(五ウ)なや。大事のたからをはき 00085720M11おとし、びんぼ大黒にしおつたとしかりけれハ、でつちさ 00085730M12ハがず、ぞうきんを持来り、是にて只今、ふく大黒じやと 00085740M13いふた。 00085750¥N7¥J 00085760¥X西寺町のゆうれい 00085770M16此比きけハ、西寺町のはか所よりゆうれいが出るといふて 00085780M17人か通らぬげなといゝける。一人のもの、それハおれがゆ 00085790M18うれいの出ぬやうにしてやろといふて、一はい引かけ、/墓(はか) 00085800M19所にゆき、/大石塔(おゝせきとう)の/陰(かけ)にかくれて待けるが、あんのごとく 00085810¥P291 00085820L1(六オ)よなか比に、ひうどろ+といふとおもへハ、すつ 00085830L2くりとゆうれい出て、南のほうへ行ける。かのもの、たも 00085840L3とよりねば土を出し、ゆうれいの出たる穴をうづめ、ふミ 00085850L4かためて、又そつとかくれてゐたりける。をつつけ、ゆう 00085860L5れいもとりて、さらハもとの穴へきへむとおもひ、ひうど 00085870L6ろ+といふて、きへんとおもへともきへられず。ひうど 00085880L7ろ+ひうとろ+といふても+、きへられす。ゆうれ 00085890L8い、とんとちからをおとし、あゝ、もはやおれが命もこれ 00085900L9ぎりじや。 00085910¥Y1一終(六ウ) 00085920¥T1軽口はるの山巻之二 00085930¥N1¥J 00085940¥Xかざりなわ 00085950M5長/者(じや)とミにあかずとて、五十間の/間(ま)口の人も、となりを買 00085960M6ひたすようにとて、正月のかざりなわの両方をなかくする 00085970M7に、ある人、かさりなわの両方をふつつりときりて、かさ 00085980M8りける。出入のもの、是をミて、旦那にハなぜに、かさり 00085990M9なハを両方へ御出しなされぬといへハ、旦那きゝて、いや、 00086000M10両ど(一オ)なりとも水かわるふて、のそミにないといはれ 00086010M11た。 00086020¥N2¥J 00086030¥X/橋(はし)の/制札(せいさつ) 00086040M14一筋ミちにほそき河あり。其橋に制札をたてゝ、壱貫目よ 00086050M15り上のもの/持(もち)て通るへからずとあり。あるかけこひ、/皮袋(かわふくろ) 00086060M16に銀子壱〆五百目いれて通り、此せいさつを見て、こまり 00086070M17はて、よく+しあんして、五百目つゝ三つにして、三つ 00086080M18を上へほりあけ+、てつ+てん+といふて、/品玉(しなたま)に 00086090M19して渡つた。(一ウ) 00086100¥P292 00086110¥G 00086120¥N3¥J 00086130¥Xまおとこのまちがひ 00086140L14かね+がてんがいかぬとおもひけれと、けふといふけふ、 00086150L15まおとこを見つけた。にくひやつとわめきける。かのまお 00086160L16とこ、すこしもさハがず、わきざしをひねくりまハし、お 00086170L17やぢ、やかましういやんな。おれが所へ、どこからもまお 00086180L18とこの/法度(はつと)といふおふれもまハらす。又じたい、われに/似= 00086190L19合(に=あわ)ぬよい女ぼうもつたが、ふてうほうじや。きつと以来を 00086200M1たし(二オ)なめといふて帰へりける。おやぢ、きもをつぶ 00086210M2し、あゝうれしや。よい女房もつたりやこそ、命をひろふ 00086220M3た。 00086230¥N4¥J 00086240¥X恋やまひ 00086250M6ひとり/娘(むすめ)ぶら+とわつらひけるにより、二人のおや、き 00086260M7のとくにおもひ、こゝろやすき出入のものに、いろ+と 00086270M8とハせけれは、恋わつらひ也。さきのひとハ、もはや女房 00086280M9もあり。何ともせん方なく(二ウ)(三オ挿絵)やせおとろへけ 00086290M10るにより、ふたおやのなけき、いはんかたなし。その家の 00086300M11はいでの下女、是をきゝ、それはよいしやうがござります 00086310M12と申ける。二人のおや、おゝきによろこび、そなたハむす 00086320M13めが命のおやじや。どふした事じやととはれけれバ、下女 00086330M14がいふやう、その恋ひしいとおもふお人をわすれてしまふ 00086340M15たがよいといふた。 00086350¥N5¥J 00086360¥X/蚤(のミ)のひようしきゝ(三ウ) 00086370M18あるひと、ふとねころびて居けるが、きせるにてたばこぼ 00086380M19んをたゝきけれバ、そのひようしにて、ほい+とおどる 00086390¥P293 00086400L1ものあり。よく+ミれハ/蚤(のミ)なり。是はよいなぐさミと、 00086410L2やおんはといふて、たゝミをたゝけは、そのひようしにさ 00086420L3んばさうをふむ。是ハおもしろきのミなりと、/袖(そで)のうちに 00086430L4入て友達の所にゆき、右のようすをはなしけれバ、是ハ 00086440L5+よひなくさミ。さあ+ミせられよといふ。さらばと 00086450L6(四オ)袖のうちより出せは、とりちがへて/虱(しらミ)なり。友達が 00086460L7いはく、是ハしらミじやぞやといゝけれバ、はて是ハ、/翁(おきな) 00086470L8じやわいの。 00086480¥N6¥J 00086490¥X/乞食(こじき)の/火事(くわじ) 00086500L11はやがねきびしく/鳴(な)りけれハ、川原のこつしきひとりおき 00086510L12あがり、やれちかひ+といふて、おゝきにさハぎけるを、 00086520L13近所のこじき共いふやう、何もやけるものハなし。何をさ 00086530L14ハくぞ(四ウ)ととひけれハ、いや、しはらく旦那衆のまね 00086540L15をしてたのしむといふた。 00086550¥N7¥J 00086560¥X/狐(きつね)のそさう 00086570L18さる所に、殊外きりやうのよき/娘(むすめ)あり。其あたりのきつね、 00086580L19是を見ておゝきにほれて、其娘につきける。つきハつきな 00086590M1がら、とふもしやうハなし。あゝ物かまゝなら、此娘が近 00086600M2所のよいわかいものにつけハ、勝手がよいといふた。(五オ) 00086610¥N8¥J 00086620¥X/魚(うを)の/講尺(かうしやく) 00086630M5常に物しりがほする人ありけるに、さるものとひけるハ、 00086640M6あのうをの名に/鱈(たら)といふものハ、なぜに魚へんに雪といふ 00086650M7字をかきまするととひけれバ、はて、冬むき出る魚じやに 00086660M8よつて、雪といふ/字(じ)をかくとこたへける。それならハおな 00086670M9しく冬出る/魚(うを)に、魚へんに/夏(なつ)といふ字をかきて、ふぐとよ 00086680M10ミますといへハ、さあ、そのやうに/時節(じせつ)のちかふものゆへ、 00086690M11/毒(どく)じやわいのふ。(五ウ) 00086700¥N9¥J 00086710¥X/若(わか)ごけ 00086720M14ある所のしんしやうもよろしき若後家ありしか、ある夜ミ 00086730M15な+出入のものなと打よりて申すやう、こなたの旦那は 00086740M16御気立もよく、しひふかふて人の世話もなされ、わたくし 00086750M17ともゝけつかうになされて下さつた、きかぬ気なおかたて 00086760M18あつたと申せは、若後家きゝて、成程、そなたのいやる通 00086770M19りしや。今なといきてなら、(六オ)おれを後家てはおかれ 00086780¥P294 00086790L1まひといはれた。 00086800¥N10¥J 00086810¥X/惣嫁(そうか)の/客(きやく) 00086820L4さる所のひんなるもの、かね+惣嫁をかひけるに、出入 00086830L5する酒屋へやとはれ、酒/袋(ぶくろ)を松原の川原へあらひに行ける。 00086840L6うつかりと立てゐたりけるを、外のものミて、何してゐる 00086850L7そととへば、夕部の/床(とこ)のうつりかゞなつかしいといふた。 00086860¥Y1二終(六ウ) 00086870¥T1軽口はるの山巻之三 00086880¥N1¥J 00086890¥X今きよひめ 00086900M5ある山伏、くま野へ参りて、道にてとまりけるに、いなか 00086910M6にハすぎて、きれいなるうまれつきのむすめらしきもの、 00086920M7/飯(めし)のきうじをしける。湯など取りてくれ、/寐(ね)所をしてねん 00086930M8ごろにしけるゆへ、うれしくおもひゐたれハ、夜ふけ、人 00086940¥G 00086950¥P295 00086960L1しづまつて、山伏の寐所へ来りて、むつまじく(一オ)かた 00086970L2り寐たりける。夜あけまへに山伏思ふやう、むかしもさる 00086980L3ためしあり。大かたあとよりおつかけて来るであらふと、 00086990L4そつとぬけて出んとするを、夜着のなかから、もふし、御 00087000L5帰りなら、ゆふべの花代二百おいていきなされといふた。 00087010¥N2¥J 00087020¥Xこまつたあいさつ 00087030L8おもてにて酒のよひ、けんくわしたりけるに、ことすミて 00087040L9あるものむかひへ行けれハ、内義、扨(一ウ)も+こはひ 00087050L10事にて、私はまだしやくりがおさまりませぬと申されける。 00087060L11かのもの、なんのこはい事かあるものぞ。さすがは女中し 00087070L12やといゝける。いや、私バかりてもなし。ぬしもびつくり 00087080L13して寐ていられますといゝけるに、どふもあいさつなく、 00087090L14さすがハ男じやといふた。 00087100¥N3¥J 00087110¥Xおさな子のあいさつ 00087120L17ある内義、祇園へ参りて/縄手(なわて)を通りけるに、(二オ)うはら 00087130L18しきおなご、うつくしき子をだきてゐけるを、内義見てこ 00087140L19しもとに、扨もよいお子てはないかといふて、/人形(にんぎやう)をやら 00087150M1せ、扨もうつくしいお子や。/女郎(ちよらう)のお子かととはせけれは、 00087160M2うばがいふやう、いゑ+、しろうとのおこでごさるとい 00087170M3ふた。 00087180¥N4¥J 00087190¥X/医者(いしや)どの/手柄(てがら) 00087200M6夜ふけて、やぶいしや壱人、四条通を通られしが、(二ウ) 00087210M7/巾着(きんちやく)切二人来りて、はながミ袋を取りたり。又わきざし 00087220M8を取らむとするを、医者どの、すこしあて身を覚へてゐた 00087230M9りしか、むねをとんとつきたれバ、うんといふて、せつじ 00087240M10したり。壱人のものいふやう、是ハぶてうほういたしまし 00087250M11た。何とそおたすけなされてやつて下されませといふ。そ 00087260M12れならそのはなかミ袋をかへせといふて、中より針を取出 00087270M13し、一本立けれハ、さつそくによミがへりたり。/医者(いしや)どの 00087280M14(三オ)ずつと立て帰へられけれハ、かのきんちやくきり、 00087290M15辻の門まて来り、こくらうてごさります。もふそれへは参 00087300M16りませぬ。 00087310¥N5¥J 00087320¥X/新米(しんまい)の哥よミ 00087330M19おやぢがいはるゝハ、そちもちと和哥をよめといはるゝに 00087340¥P296 00087350L1よつて、夕部からよむといひける。何とよミしととへハ、 00087360L2秋の田のかりほのいほの。それハ天智天皇の/古哥(こか)じや。そ 00087370L3れなら、あし引の山鳥のおのしたり(三ウ)(四オ挿絵)おの。 00087380L4それも人丸の古哥しや。そんなら/晩(ばん)から、いせ物かたりを 00087390L5よまふといふた。 00087400¥N6¥J 00087410¥X/異名(いめう)ずき 00087420L8とかく/誰(たれ)にも異名をつける旦那ありける。近所のもの来り 00087430L9て、こゝの手代を、なぜに螢といゝまするとといけれハ、 00087440L10とかく日かくれると出ます。めし/焼(たき)を景清とは。おならを 00087450L11時&とりはづし+するさかいじや。そんなら丁僕を/沖(をき)の 00087460L12石(四ウ)とは。是も/小便(せうへん)をたれて、人こそしらねかはくま 00087470L13もなしじや。 00087480¥N7¥J 00087490¥X/番太(ばんた)の茶や 00087500L16番太、/茶(ちや)屋へ行てあそびけるが、/余程(よほど)夜もふけて、たれも 00087510L17そばにゐさりけるゆへ、手をたゝきける。女郎きゝて、お 00087520L18まへの手のたゝきやうハ、どふやら/初夜(しよや)のひようしぎのよ 00087530L19うなわいなといゝけれハ、ぬからぬかほで、それハそなた 00087540M1の(五オ)/火(ひ)のまハりとこたふた。 00087550¥N8¥J 00087560¥X十二のゑと 00087570M4あるとき十二のゑとあつまりていふやう、この十二のうち 00087580M5に、ひつじとのバかりで、外に三字の名ハなし。何とぞ二 00087590M6字にして、ひつとなりと、つじとなりと、なされたらよか 00087600M7らふと申ける。ひつじがいはく、成ほと、これハ御尤でご 00087610M8ざる。それならちよつと/外科(げくハ)の所へ行てまいらふといふ。 00087620M9なぜにといへは、(五ウ)いや、/痔(じ)をきつてもらをふ。 00087630¥N9¥J 00087640¥X/河太郎(がハたらう)のいけん 00087650M12/芝居(しバの(ママ))の/野郎(やらう)、大坂ヘかゝへられて、皃見せに/夜舟(よふね)にてくだ 00087660M13りけるが、/淀(よど)のあたりにて、しきりに大用にゆきたくなれ 00087670M14ど、舟にてハ大用をしつけず。我/供(とも)につれしこんがうに、 00087680M15/帯(をび)をもちてもらいて、舟のふちに出て、大用をいたしける。 00087690M16河太郎の子供、是を見て、二三疋おいどの下へあつまり、 00087700M17(六オ)すでにとびつかんとしける。/親(おや)の河太郎、あとより 00087710M18来り、こりや+、それハ/代物(しろもの)て/銭(せに)がいるそととめた。 00087720¥P297 00087730¥N10¥J 00087740¥X/乞食(こじき)のばくち 00087750L3松原の河原に、こじきあつまりてばくちを打ける。あるひ 00087760L4ハ/鯖(さバ)のあたま、又ハ/鰡(ぼら)のほねをめんつうよりいだし、勝負 00087770L5をいたしける。跡より来る男、おれもはらふと、/鯛(たい)のあた 00087780L6ま出しけれハ、いや+、そちハいやじや。めんようどか 00087790L7ばりをするといふた。(六ウ) 00087800¥T1軽口はるの山巻之四 00087810¥N1¥J 00087820¥X/午(むま)の時まいり 00087830M5/貴船(きぶね)のやしろへ、むまの時+に、しろきものをきたるわ 00087840M6かきをんな、毎日まいりける。/禰宜衆(ねぎしう)とふて申けるハ、/丑(うし) 00087850M7の時まいりハ折&あるが、むまの時に毎日まいり給ふハい 00087860M8かなる事そと尋ぬれハ、おんなのいわく、されバ人をのろ 00087870¥G 00087880¥P298 00087890L1ふにハ丑の時にまいるよし。わたくしハいゝなづけのとの 00087900L2ごがいとしさに、そのうらで(一オ)ござります。それなら 00087910L3なぜに、かなつちハもつてゐると申せは、かなづちではご 00087920L4ざりませぬ。神木をなでるこてゞ御さりますといふた。 00087930¥N2¥J 00087940¥X物/真似(まね)のすき 00087950L7/若(わか)ひもの、物まね身ぶりをすき、とかく夜ふかしをいたし 00087960L8けるか、いけんすれどもやまず。ある夜、身ぶりの会あり 00087970L9て、いろ+身ぶりをいたし、中村/橘(きつ)右衛門か/所作(しよさ)をして 00087980L10しまへバ、はや夜なか(一ウ)すぎたり。南無さんぼう。又 00087990L11おやぢがしかろと、おしろい紅もそのまゝにて帰へれハ、 00088000L12おやぢハやハりおきて/居(い)て、そちか/皃(かほ)はなんじや。殊にあ 00088010L13すハ七つから大津へあきなひにゆくではないか。はやふね 00088020L14よと申ける。むすこ、まだ身ぶりがやまず。かたをいから 00088030L15して、おやぢどの。やすまれい。後にあをふといふた。 00088040¥N3¥J 00088050¥X/筒(つゝ)もたせ 00088060L18あるもの、/身上(しんしやう)しもつれて、心やすき友だちに、だん(二オ) 00088070L19かういたしけれバ、貴様ハさいわい、御内義のきりやうは 00088080M1よし。筒もたせをしたがよひ。わかいものをよせて、内義 00088090M2にいろ事をしかけさせ、貴様は戸棚の中から出て見付ると、 00088100M3三百目になるとをしへける。/彼(かの)もの、内義にいひふくめて、 00088110M4近所のわかいものにいろ事をしかけさせ、すはよいじぶん 00088120M5じやと、戸棚の中よりいでゝ、こりや筒もたせ、ミつけた 00088130M6とハ、いかひせきよう。 00088140¥N4¥J 00088150¥X車にあんど(二ウ) 00088160M9あるとき油小路通を、あんどを車につミて通りける。又そ 00088170M10のあとより、しよくだいをつミて通りける。近所のものあ 00088180M11つまりて、扨&おびたゝしい事じや。あれは何になる事じ 00088190M12やといふを、/格子(かうし)の内から、おやぢのこゑにて、とこぞに、 00088200M13一どきに日がくれるものでかなあらふといふた。 00088210¥N5¥J 00088220¥Xむすこの了簡ちがひ 00088230M16おれがいもとハきりやうはよし、あれか女房に(三オ)なる 00088240M17ものなら、物ハいらず、よいものじやに/((と脱カ))いふをきゝて、そ 00088250M18れてハどこもよけれとも、ちくしやう同前じやといふ。い 00088260M19や、そのやうにもいやんな。おやぢとはゝじやひとか、め 00088270¥P299 00088280L1うとじやもの。 00088290¥N6¥J 00088300¥Xつりかねの夫婦 00088310L4つりがねがいふようハ、是しゆもくさん。おまへとわしほ 00088320L5と中のよいめうとハないわいなといへハ、しゆもくがいは 00088330L6く、なるほど、つかれてもひとり、つきてもひとり。(三 00088340L7ウ)(四オ挿絵)おれはくさりでつなひであり、そなたハ/上(うへ)の 00088350L8かぎ/かぎ((かぎ衍))にかけてあり、たがひにりんきもなふてよいわい 00088360L9の。つりかね、につことわらふて、それゆへ、おまへがい 00088370L10としうごをんすといふた。 00088380¥N7¥J 00088390¥X/芝居(しバゐ)のそさう 00088400L13芝居の皃見せ、殊の外はんじやうして、さじきも上下つま 00088410L14りけるが、あるそさうもの、上さじきより、すいがらをお 00088420L15としけれバ、さむらひのあたまの上に落ける。(四ウ)おゝ 00088430L16きにはらを立て、しかりけれハ、きもをつぶし、是ハぶて 00088440L17うほうといふて、あたまの上へつはをはきて、/吸(すい)がらをけ 00088450L18しける。 00088460¥N8¥J 00088470¥X女郎のぬすミ 00088480M3ある色所の女郎にぬすミをするもの、夫ゆへいよ+はや 00088490M4りもせず、さびしけれハ、猶&/客(きやく)のものぬすミけるが、あ 00088500M5るとき客のそばに/寐(ね)たりけるが、きやくも/最早(もはや)ねたであら 00088510M6ふと、/鼻(はな)に手をあてゝ見て、そつと(五オ)/起(お)き、きやくの 00088520M7はなかミ/袋(ふくろ)をあけて、金一両と、かたてに小玉いつゝむつ 00088530M8ととらむとするとき、客めをあきて、それハ何をしやると 00088540M9いへハ、きつふ酒にゑふたさかいで、丸薬かとおもふての 00088550M10まふとしたといへバ、そのひだりの手の小判はととはれて、 00088560M11きつとゆきつまり、あひ。是ハな、/皃(かほ)をなでゝひやそとお 00088570M12もふて。 00088580¥N9¥J 00088590¥X/相撲(すまふ)ずき 00088600M15大百姓のむすこ、すまふをすきて取りけるが、(五ウ)京都 00088610M16のくわんしんすもふも上りて、近在の/関(せき)なりける。ある時 00088620M17/親父(おやぢ)いふやう、おれもきつふ年がよつて/孫(まご)がない。/嫁(よめ)をよ 00088630M18んだらよかろうといふ。むすこきゝて、女房をもてバちか 00088640M19らが落るによつていやじやと、其いさかひすまず。庄やど 00088650¥P300 00088660L1の、是をきゝて、いつれももつともなり。しかし/思案(しあん)かあ 00088670L2る。女房をよんで、其女房とすまふをとれバ、五ぶ+し 00088680L3やといはれた。 00088690¥N10¥J 00088700¥X/御酒(ごしゆ)くらふどの(六オ) 00088710L6ある町の/年寄(としより)、/大上戸(たいじやうご)にて、近所にても、おしゆくらうと 00088720L7はいはず、/御酒(ごしゆ)くらふとのと異名をつけたり。いつ+よ 00088730L8りも世間もしづかに、町内にも/寄合(よりあひ)もなく、酒のむ事もな 00088740L9かりしか、町の/役人(やくにん)もおなしく酒すきにて、夕かた年寄の 00088750L10所へ見廻、此間、すきと御/酒宴(しゆゑん)もござりませいで、さびし 00088760L11ふござりますといへハ、年寄きゝて、されバ/小利口(こりこう)な/捨子(すてご) 00088770L12さへないといはれた。 00088780¥Y1四終(六ウ) 00088790¥T1軽口はるの山巻之五 00088800¥N1¥J 00088810¥X/鰐(わに)の見入 00088820M5大勢のもの、大船にのりて沖へ出けるに、波あらくして船 00088830M6うごかず。/船頭(せんとう)申けるハ、是ハきハめて/鰐(わに)の見入なるへし。 00088840M7皆&はなかミ、又は/扇(あふぎ)なと海へなげて御らんなさるへしと 00088850M8て、海へなげけれハ、一人の侍の扇を、づぶ+と波に/巻(まき) 00088860M9こミけり。侍申やう、扨&/是非(ぜひ)なき事なから、大勢の/乗合(のりあい) 00088870M10の/命(いのち)にかハる事なれハとて、(一オ)舟ばたに出てミれハ、 00088880M11おゝきなる/鰐(わに)、口をあきて居ける。侍、口をしき事におも 00088890M12ひて、おゝき成/碇(いかり)を/投(なげ)付けれハ、ぐつと/呑込(のミこ)ミける。夫ゆ 00088900M13へ大勢も/手伝(てつた)ふて/綱(つな)をひきけれハ、鰐のはらわたひきかゝ 00088910M14り、碇にかけて、ぐいと引出しけれ。鰐はわたをぬかれて、 00088920M15あわせになりて、ひら+となかれける。 00088930¥N2¥J 00088940¥X道中のかんりやく 00088950M18さる大名の御/家中(かちう)に、ことの外しハきさふらい/衆(しう)あり(一ウ) 00088960M19けるか、江戸下りに男にいゝ付らるゝをきけバ、いよ+ 00088970¥P301 00088980L1明日江戸へ下るなり。供ハその/方(ほう)壱人なり。/若党(わかとう)のかハり 00088990L2に大小をさし、やりをかたげ、後にはさミ/箱(ばこ)をくゝりつけ、 00089000L3前にそうりをつけて供をすへしと申さるゝ。となりの人是 00089010L4をきゝて、馬はどふしらるゝか、さたがないと思ひ、気を 00089020L5付てミれハ、明六つ比に/旅立(たびだち)して、/彼供(かのとも)の/首(くび)に/縄(なハ)をつけ、 00089030L6さきへひつはつて、小むろぶしをうたふて下つた。(二オ) 00089040¥N3¥J 00089050¥X/天狗(てんぐ)の/草臥(くたびれ) 00089060¥G 00089070M1いなかの天狗、あたごへ見舞に行きてくたひれ、三条通の 00089080M2やねにやすミて、ふミかぶりておち、はなをすりむき、あ 00089090M3いたあ+と/鼻(はな)をなでゝなきけれハ、内よりめしたき見て、 00089100M4/御無用(ごむよう)といふた。 00089110¥N4¥J 00089120¥Xやくはらひ 00089130M7/節分(せつぶん)のあさ町の/番人(ばんにん)、町中をあるきて、/晩(ばん)ほどはわたくし、 00089140M8やくはらひに参りますほどに、たのミあげます(二ウ)とい 00089150M9ふてまハりける。日暮そう+より、町中両かわのこらす、 00089160M10旦那の御じゆめう申さうならバ、鶴ハ千年亀ハ万年といふ 00089170M11て相すミ、/我(わか)/番小屋(ばんごや)の口にたつて、やあら/番太(ばんた)の御/寿命(じゆめう)申 00089180M12さふならバといふた。 00089190¥N5¥J 00089200¥X千三 00089210M15むすこ/嶋原(しまバら)かよひをして、/毎夜(まいよ)おそくかへり、さま+う 00089220M16そバかりをつきて、いけんすれどもなをらず。/親父(おやぢ)ほつと 00089230M17こまりて/工夫(くふう)をして、あるとき(三オ)むすこ夜ふけて帰り 00089240M18けるが、折ふし/土用(どよう)のうちにて、はなハだあつかりける。こ 00089250M19わ+そつとはいれバ、おやぢ立いでゝ、せがれもどつた 00089260¥P302 00089270L1か。大分はやかつた。さためて/野道(のミち)もあつからふ。/行水(ぎやうずい)の 00089280L2ゆもわかさせておいた。やれ、ミなのもの。気がつかぬ。 00089290L3あをひてやれとせわをやけバ、むすこきもをつぶし、いゑ 00089300L4+、殊の外すゝしふて、千本通の/小(こ)みぞは、ひつしり/氷(こほり) 00089310L5がはつてあると、又うそをいふた。(三ウ)(四オ挿絵) 00089320¥N6¥J 00089330¥X/宿(やと)かへ 00089340L8ある所に大長屋のふしんして、三十/軒(けん)ばかり一/度(と)宿かへい 00089350L9たしけるか、皆&申すやう、是ハたがひにくバりものをす 00089360L10るもついゑなれハ、相やむべしといふ。いや+、祝義の 00089370L11事なれハやめられもせまいといふ。中でも年かさのいふは、 00089380L12おゝかたほら/貝餅(がいもち)の物なれハ、たがひに内義達のよろこび 00089390L13にゆかれたらバ、しうきハすむといゝける。/借屋中(しやくやぢう)ハそれ 00089400L14てもすむが、(四ウ)御/年寄(としより)へハそれでハかるすぎるとおも 00089410L15ふと申ける。/夫(それ)ならハとれなりと、御/亭主(ていしゆ)ついてゆかれた 00089420L16かよい。それハなぜに。はて、松/茸(たけ)をそへてやるのじや。 00089430¥N7¥J 00089440¥X/太皷持(たいこもち)の/栄曜(ゑよう(ママ)) 00089450L19たいこ持弐三人よりていふハ、なんと思ふぞ。旦那衆のや 00089460M1うにしてあそんでミたいものじやといふ。はて、それハな 00089470M2ることじやと、/祇園町(きをんまち)の茶屋にいゝふくめ、/隙(ひま)なる日夕か 00089480M3た、/彼(かの)/太皷持(たいこもち)二三人茶屋へゆき、/亭主(ていしゆ)(五オ)内かといふて 00089490M4はいれハ、ていしゆもがてんにて/庭(にわ)へとんており、これハ 00089500M5+かたじけない。/先(まつ)二かいへ御上りといふに、二/階(かい)へ通 00089510M6れハ、きれいにそうぢして、/床(とこ)にかけものもいまだかけず。 00089520M7これハ+/御(お)はやい御出ゆへ、まだかけものさへかけませ 00089530M8ぬと、たゝむとすれハ、これ+、/懸(かけ)物より花かよかろと 00089540M9いふた。 00089550¥N8¥J 00089560¥X女郎のせりふ 00089570M12ある/客(きやく)、茶屋へゆきて女郎を/呼(よ)びにやりて(五ウ)いふやう 00089580M13ハ、なんと此やうになじミて、もはや/女房(にようぼう)もおなし事じや。 00089590M14今から女房ともといはふといふて、/屏風(びようぶ)の中へはいりける 00089600M15が、夜ふけていかゝしたりけん、くぜつをして、いや、い 00089610M16にはせぬ。/気(き)にいらぬによつてさつた。いにおれと、めう 00089620M17といさかひをしける。/中居(なかい)とりさへて、それハたんきな。 00089630M18なぜにおさりなされますといへバ、いや、いなさねバ/高(たか)ふ 00089640M19/付(つ)くといふた。 00089650¥P303 00089660¥N9¥J 00089670¥X/芝居(しバゐ)の/場(ば)(六オ) 00089680L3/芝居(しハゐ)大入にて、おしも分られす、一向に人の山をなしける。 00089690L4ある男、あとより来りて場に居けるか、あまりおされて、 00089700L5おならを、ぶつとしける。近所のわかい女中、なんきにお 00089710L6もひ、かのおとこを四方よりよけて居けれハ、はなハだひ 00089720L7ろくなりにける。彼おとこ、とくと下にゐて、あゝ、/屁(へ)は 00089730L8身をたすくるじや。 00089740¥Y1巻之五終(六ウ) 00089750¥Q 00089760M2毘沙門天即座占△△△△△△全部△一冊 00089770M3△△△△△△△△△△△△△△△△先達而出シ申候 00089780M4絵本満都鑑△△△△△△全部△二冊 00089790M5△△△△△△△△△△△△△△△△△△出△△来 00089800M7明和五子正月 00089810M9△△△△△△△△△△△△京六角通油小路西へ入町 00089820M10△△△△△△△△△△△△△△書林△小幡宗左衛門板 00089830¥P304 00089840¥U噺本大系△第八巻 00089850¥T軽口片頬笑 00089860¥G 00089870¥Y 00089880L16明和七年刊 00089890L17作者不詳 00089900L18半紙本五巻 00089910L19東大国語研究室蔵 00089920¥T1/軽口(かるくち)/片頬笑(かたほゑミ)巻之一 00089930¥N1¥J 00089940¥Xうろたへても/気転(きてん) 00089950M5三月/花(はな)ざかりの/比(ころ)、/去(さる)/商屋(あきなひや)の/禅門(ぜんもん)、十三四/斗(ばかり)の/丁稚(でつち)に/破篭(わりご) 00089960M6/小竹筒(さゝへ)などもたせ、/祇園(ぎをん)、/知恩院(ちをんいん)より/高台寺(かうだいじ)/辺(へん)を/桜(さくら)がりし 00089970M7てたのしミ、ゆる+と/廻(まわ)られしに、/内(うち)の/手代(てだい)、おやま、/中= 00089980M8居(なか=い)、たいこを/大勢(おゝぜい)つれて、大さハぎにて花見に廻るに、/思(おも) 00089990M9わず/不斗(ふと)/行逢(ゆきあひ)ければ、/彼(かの)手代、/隠居(いんきよ)の禅門と(一オ)見て大 00090000M10きに/肝(きも)をつぶし、うろたへて、久敷お目にかゝりませぬと 00090010M11いふ。禅門ハミぬふりして/行過(ゆきすぎ)、あちこちと花見してかへ 00090020M12られけり。右の手代、/何気(なにげ)もなく禅門より先へ/帰(かへ)りゐたり。 00090030M13/隠居(ゐんきよ)ハ/休息(きうそく)して、/其後(そのゝち)かの手代を/呼(よび)、扨&そちハ/放埓者(ほうらつもの)か 00090040M14な。あまりなる/身持(ミもち)、さたの/限(かぎ)りなり。/仕様(しやう)もあれど/此度(このたび) 00090050M15はゆるす。/已後(いご)を/急度(きつと)たしなむべしといわれけれは、手代 00090060M16ハ/恐(おそ)れ入、/重&(ぢう+)の/誤(あやま)り。/此後(このゝち)ハかたくたしなミ(一ウ)ませ 00090070M17ふ。/御了簡(ごりやうけん)下され、/有難(ありがた)き/次第(しだい)と申。隠居、/此後(このゝち)/随分(ずいぶん)/慎(つゝし) 00090080M18むべし。/扨(さて)/今朝(けさ)内を/出(で)るまで/一所(いつしよ)にいたものが、/逢(あふ)た/時(とき)、 00090090M19ひさしうおめにかゝらぬといふたハいかにととへば、手代 00090100¥P305 00090110¥G 00090120M1ぬからぬ/顔(かほ)で、/其時(そのとき)は百年めじやとぞんじました。 00090130¥N2¥J 00090140¥Xなぞのとき過 00090150M4ある所に/娘(むすめ)二人、/姉(あね)ハ十六七、/妹(いもと)は十一二成しが、/妹娘(いもとむすめ)、 00090160M5/姉(あね)様。なぞかけませふ。/嫁入(よめいり)した/明(あけ)の/朝(あさ)ナアニ。(二オ)(二ウ 00090170M6・又二オ挿絵)/姉(あね)ハ/親(おや)のまへの/気(き)のどくさに、/顔(かほ)を/赤(あか)めて、 00090180M7あげませふといふ。妹、/藍染(あいそめ)のけさととくといふに、/親父(おやぢ) 00090190M8が/側(そバ)から、/扨(さて)もしほらしいとき/様(やう)じや。おれも/大豆板(まめいた)まで 00090200M9ハ/気(き)がついた。 00090210¥N3¥J 00090220¥X/傭医(やぶい)の/好色(かうしよく) 00090230M12/器量(きりやう)のよい/嫁(よめ)/病気(びやうき)ゆへ、はやり/医者(いしや)に見せしに、/脉(ミやく)を見、 00090240M13/病症(びやうしやう)を/考(かんが)へて、/薬(くすり)/調合(てうがう)して/帰(かへ)りしが、/心(こゝろ)のうちに、/扨(さて)も 00090250M14道具のそろひしよい/女房(にようぼう)かな(又二ウ)と/思(おも)ひしが、/翌日(よくじつ)も 00090260M15又/見廻(ミまひ)て/脉(ミやく)を見けれバ、/亭主(ていしゆ)出て、/昨日(きのふ)/御薬(おくすり)を/喰(たへ)させて、 00090270M16おかげで心よしといへば、/医者(いしや)/脉(ミやく)を見る。/亭主(ていしゆ)、きのふと 00090280M17ハ/何(なに)とござりますといふ。/医者(いしや)、/昨日(きのふ)ミたよりハよい/女房(にようぼう) 00090290M18でござる。 00090300¥P306 00090310¥N4¥J 00090320¥X/親(おや)のうりかい 00090330L3/貴様(きさま)は/親御(おやご)に/不孝(ふこう)なげな。/勿躰(もつたい)ない/事(こと)じや。/親(をや)の/恩(おん)は/須弥= 00090340L4山(しゆミ=せん)より/高(たか)く、/其上(そのうへ)/我身(わがミ)ハ/親(おや)のかげにてそたち、今日/暮(くら)すも 00090350L5/皆(ミな)/親(おや)のかげなり。/随分(ずいぶん)/孝行(かう+)(三オ)にしたまへ。/死(し)なれた/後(のち) 00090360L6にいかほど/悔(くや)んでも、又金銀を山ほど/積(つん)で/買(かい)たふても/叶(かな)ハ 00090370L7ぬといへは、/此息子(このむすこ)/聞(きゝ)て、/御尤(ごもつとも)/千万(せんはん)の/事(こと)かな。とくと/承= 00090380L8知(しやう=ち)仕り、/此後(このゝち)ハ/随分(ずいぶん)/孝行(かう+)に仕るべし。/成程(なるほど)/仰(おゝせ)の/通(とをり)、金銀に 00090390L9て/買(かい)たふてもならぬ事也。しかし又、今/売(うら)ふと/云(いふ)ても/買人(かいて) 00090400L10もないと/云(いふ)た。 00090410¥N5¥J 00090420¥X/明(あけ)てミれば/鳥(とり)のふん 00090430L13/有所(あるところ)の/若旦那(わかだんな)、/去&年(きよ+ねん)の/夏(なつ)、/器量(きりやう)/能(よき)/嫁(よめ)をむかへ、(三ウ)/名(な)を 00090440L14お松といふ。/随分(ずいぶん)中よくそふていられしが、/嫁(よめ)の/里(さと)より/付(つき) 00090450L15てきたこし/元(もと)、/名(な)を/今(いま)といふに/手(て)をかけしを、/嫁(よめ)の松しり 00090460L16て、/其腰元(そのこしもと)にひまをやりけり。/此旦那(このだんな)、のこり/多(をゝ)く/思(おも)へど 00090470L17も、/里(さと)より/来(き)た/者(もの)/故(ゆへ)せんかたなく、あまり/残多(のこりをゝ)さに、/此旦= 00090480L18那(このだん=な)、/心(こゝろ)/安(やす)き/友達(ともだち)に此わけをはなし、/何(なに)とぞ/腰元(こしもと)の今を取も 00090490L19どしたしと/談合(だんかう)すれバ、/友達(ともだち)のいふやう、/夫(それ)ハ/能(よき)/守(まも)り有。 00090500M1/認(したゝめ)て/遣(つかわ)すべし。/此守(このまもり)を/内義(ないぎ)のしらぬやう(四オ)に/掛(かけ)させ、 00090510M2/扨(さて)お/内義(ないき)の/年(とし)を/幾度(いくたび)も+/も((も衍))/尋(たづ)ぬべし。/斯(かく)のごとくすれば、 00090520M3今がもどる事/妙(めう)なりといへば、/其守(そのまもり)をもらひ、/教(をし)へのごと 00090530M4く/女房(にようハう)に/向(むか)ひ、そなたハいつ/嫁入(よめいり)して、/年(とし)ハいくつぞと/尋(たづね) 00090540M5けれバ、/私(わたくし)はをとゝしの/夏(なつ)/嫁(よめ)入して、十六にて参り、こと 00090550M6し十八と/答(こた)ふ。又二三日/過(すぎ)て、/同(おな)じ事をとへば、/右(ミぎ)の通に 00090560M7こたふ。又二三日/過(すぎ)て同じく/問(とひ)ければ、/嫁(よめ)/思(おも)ふやう、しれ 00090570M8た事を/度&(たび+)とふて/迷惑(めいわく)がらすのハ、今をいなした/腹(はら)(四ウ) 00090580M9/立(たち)/成(なる)べし。お/気(き)にさかふてハ/気(き)の/毒(どく)と、/親里(おやさと)へ申/遣(つか)わし、 00090590M10/件(くだん)の女を/呼戻(よびもど)せば、/旦那(だんな)もきげんよく、/夫婦(ふうふ)中よく、今も 00090600M11/前(まへ)の/通(とをり)に/成(なり)けり。/彼旦那(かのたんな)、/守(まもり)のあらたなるに/信心(しんじん)まし、/彼= 00090610M12友達(かの=ともだち)に/逢(あふ)て、/扨&(さて+)/奇妙成(きめうなる)/御守(おまもり)かな。/貴様(きさま)の御かげにて心の 00090620M13まゝに成、/忝(かたじけな)し。あれわ、いか成御守ぞと/尋(たづ)ねしに、/件(くだん)の 00090630M14/友達(ともだち)、さのミきめうなこともなし。先守りを/開(ひらい)てミやと/云(いふ)/ 00090640M15故(ゆへ)、/封(ふう)/切(きつ)て見れバ、/哥(うた)の/下(しも)の/句(く)なり。(五オ) 00090650M16△△松/年(とし)きかば今かえりこん 00090660¥N6¥J 00090670¥X/其筈(そのはづ)の事 00090680M19むかし、江戸/大火事(をゝくハじ)の/早飛脚(はやひきやく)、/又(また)大坂大/水(ミづ)の/早飛脚(はやひきやく)、/道中(どうちう) 00090690¥P307 00090700L1にて/行(ゆき)あひ、たがひに/詞(ことば)をかくると、じゆつといふて/両人(ふたり) 00090710L2ともにきへた。 00090720¥N7¥J 00090730¥X/誰(たれ)が/気(き)も/同(おな)し事 00090740L5/夜(よる)/門(かど)ちがひにて、/両替屋(りやうかへや)のとなりをたゝく。内より、たれ 00090750L6じやといへば、/表(をもて)より、ちと/銭(ぜに)がほしうござると(五ウ)/と((と衍)) 00090760L7いへば、内より、おれもほしゐ。 00090770¥N8¥J 00090780¥X/仏(ほとけ)の/顔(かほ)ても三/度(ど) 00090790L10大坂/北(きた)の/米市(こめいち)へかよふ/男(おとこ)、けふハ/買(かい)じやと心をきわめ、/行(ゆき) 00090800L11しなに、/先(まづ)/天満(てんま)の天神様へ参り、/祈念(きねん)をこめて/御(ミ)くじ/箱(ばこ)を 00090810L12いたゞき、今日ハ/買(かい)に/究(きわ)めました。/弥(いよ+)/買(かい)にきハまらバ、 00090820L13一を下されと/信心(しんじん)をこめて/御(ミ)くじを取に、二出たり。/御(ミ)く 00090830L14じをうたがふハ/勿躰(もつたい)なけれど、いよ+/買(かい)ならバ一を下さ 00090840L15りませと(六オ)取/直(なを)して見れは、又二なり。/是(これ)ハふしぎな。 00090850L16/慥(たしか)にけふは/買(かい)にきハまりしに、一の出ぬハ/合点(がてん)ゆかずと、 00090860L17一心をこらし、又取なをしたれば、/今度(こんど)ハ三出たり。此/男(おとこ) 00090870L18大きにはらをたて、御くじ/箱(ばこ)を/投(なげ)すてゝ、ナンノわいらか 00090880L19しつた事でハないと云た。 00090890¥N9¥J 00090900¥X/狂哥(きやうか)ずき 00090910M3ある/所(ところ)の/召(めし)つかひの/下女(げしよ)、/足(あし)がいたむとて、ちんばを引け 00090920M4れば、/主人(しゆじん)、/何(なに)としていたむととへば、(六ウ)あかゞりが 00090930M5きれましたといふ。/主人(しゆじん)/狂哥(きやうか)に、 00090940M6△△あかゞりハ/恋(こひ)しき人の/玉(たよ)づさか 00090950M7△△△ふミ見るたびにあいたあいたし 00090960¥N10¥J 00090970¥X文字ぞしり 00090980M10ある所にうばが子をたいて、もりして/居(い)たりしを、道通り 00090990M11の人が此/子(こ)を見て、/此子(このこ)ハとうざいなんな/生(うま)れ付しやとい 00091000M12ふて、/行過(ゆきすき)たり。/是(これ)を/聞(きい)て、うばハはしり/帰(かへ)り、/両親(ふたおや)に此 00091010M13よしをはな(七オ)(七ウ・又七オ挿絵)しければ、ふた親、そ 00091020M14れは/能(よき)事か、どふしたことと、いろ+/思案(しあん)すれど、わけ 00091030M15しれず。/後(のち)に/聞(き)ケバ、きたないといふ事しやげな。 00091040¥N11¥J 00091050¥X 00091060M17三/条(でう)ひがしの/宿(やど)屋へ、日/暮(くれ)て/男(おとこ)一人来り、ゆふべこなたに 00091070M18三十/斗(ばかり)のゆかた/着(き)た男ハ一人とまりハせなんだかと、家& 00091080M19をたゝきて/尋(たつね)けれど、/皆(ミな)/覚(おほ)へなしといふ。/段&(だん※)とひがしの 00091090¥P308 00091100¥G 00091110M1/方(ほう)へ尋ね/行(ゆき)けれは、/庭(には)より/下女(げじよ)が、それハ近江の人にて、 00091120M2/前(まへ)かた御出のよし。(又七ウ)ゆふべ/夜(よ)に入てとめましたが、 00091130M3/今朝(けさ)/早天(さうてん)から、あたご/参(まい)りするとて御/出(いで)たが、/今(いま)にお/帰(かへ)り 00091140M4なしといへバ、それハおれでござるといふてはいりけり。 00091150M5/宿(やど)をわすれしものと見へた。 00091160¥N12¥J 00091170¥X/無点(むてん)てすんた事 00091180M8/儒者(じゆしや)の/娘(むすめ)に、きりやうのよきむこを/取(とり)しに、/随分(ずいぶん)と/中(なか)よく 00091190M9むつまじく/暮(くら)すうちに、此/聟(むこ)、とかく/茶(ちや)屋ぐるひして内に 00091200M10/居(い)ず。/後(のち)には/夫(ふう)婦づれにて(八オ)/毎度(まいど)+あそびに/行(ゆき)しが、 00091210M11有時/娘(むすめ)のふところのふくれしゆへ、お/袋(ふくろ)が見とがめて、そ 00091220M12れハ何ぞと/問(とわ)れし/時(とき)、大きなる/姿(すがた)見のかゞみ/落(おち)たり。其あ 00091230M13とより、/枕(まくら)ざうしと/朱硯(しゆすゞり)とをおとした。 00091240¥Y1軽口片頬笑巻之壱△終(八ウ) 00091250¥P309 00091260¥T1/軽口(かるくち)/片頬笑(かたほゑミ)巻之二 00091270¥N1¥J 00091280¥X/遠(をん)国のかたくな 00091290L5/遠(をん)国の/大商人(をゝあきんと)、/毎年(まいねん)/仕込(しこミ)に京へ手代をのぼせられしが、こ 00091300L6としハなぐさみながら/旦那(だんな)がお/登(のぼ)りと、それゆへ/仕入(しいれ)/得意(どくい) 00091310L7の/商人衆(あきんどしう)、/凡(をよそ)十/軒(けん)ばかり、毎日かわり※に、一人は/亭主(ていしゆ)、 00091320L8のこりの九人は/取持(とりもち)として、/芝居(しばい)、嶋原、丸山、/祇園(ぎおん)町、 00091330L9三本木、下河原、/霊山(りやうぜん)其外、おもひ+に毎日の御馳走、 00091340L10(一オ)/芸者(げいしや)ハ/謡(うたひ)、はやし、/仕舞(しまい)いろ+の/趣向(しゆかう)、浄るり大 00091350L11夫、座頭、舞子、のこるところもなふしつくして、けふは 00091360L12めづらしううき世物まね、役者のこわいろ、/身(ミ)ぶり/物真似(ものまね)、 00091370L13とんだりはねたり。/取持(とりもち)中も、けふの/趣向(しゆかう)ハことの外はね 00091380L14たと、大きげんにて/面白(おもしろ)しとて、何と旦那。けふの御もて 00091390L15なしハ、/亭主(ていしゆ)の思ひつき、どふもいへませぬ。なんと、御 00091400L16国かたにもかやうな/面白(おもしろ)いおなぐさミがござりますかと/問(と) 00091410L17へハ、/客(きやく)聞(一ウ)て、イヤ、国元などでハ、/祈祷(きとう)をしたり 00091420L18滝にうたしたりするゆへに、是/程(ほど)にハなりませぬ。 00091430¥N2¥J 00091440¥X/油断(ゆだん)せぬ/自慢(じまん) 00091450M3/去田舎(さるいなか)人、京へ用事/有(あつ)てのぼるとて、/在所(ざいしよ)の庄屋殿へいと 00091460M4まごひに/行(ゆき)しに、庄やのいわるゝは、京ハだます所じや。 00091470M5万事ゆだんがならず、/随分(ずいふん)と/気(き)をつけて、たまされぬやう 00091480M6にせられよと云。心へましたといふて、/扨(さて)京へのぼり、京 00091490M7の入口三条白川(二オ)ばしの辺にて、/楊枝(やうじ)やの見せへかゝ 00091500M8り、此やうじハなんぼでござると/問(と)へは、壱文に三本づゝ 00091510M9でござると答ふ。イヤ+、/只(たゞ)一ツ本ほしうござるといへば、 00091520M10/亭主(ていしゆ)立出て、一ツ本なら銭ハいらぬ。たゞしんじやうとい 00091530M11へバ、/油断(ゆだん)はいたさぬ。まづ見合てもらひませうといふた。 00091540¥N3¥J 00091550¥X/雷(かミなり)の仲間入 00091560M14/天竺(てんぢく)かミなりの/在所(ざいしよ)のならひにて、むすこが十五六に成と 00091570M15仲間入させねばならず、/隣(となり)の/親仁(おやぢ)(二ウ)が/来(き)て、/何(なん)と、こ 00091580M16ゝなむすこももはや十五六そふなが、落ぞめさして、/角(すミ)で 00091590M17もいれさせ、/仲間(なかま)入の/振舞(ふるまい)したらよかろふといへば、/成(なる)ほ 00091600M18ど/落(おち)ぞめがさしたふござる/程(ほど)に、たのミますといへば、そ 00091610M19んならけふ/昼(ひる)/時分(じぶん)に、/夕立(ゆふだち)をしかけて落ぞめさそふ。/先(まづ)/仲= 00091620¥P310 00091630¥G 00091640M1間(なか=ま)/入(いり)にハ/先格(せんかく)の/嘉例(かれい)で、/臍(へそ)の/吸(すい)もので/酒(さけ)一つふるまへバ/済(すむ) 00091650M2事じや。/兄(あに)よ、落た所で/老若(らうにやく)/男女(なんによ)に/限(かぎ)らず、/臍(へそ)を二つ三つ 00091660M3取て/上(あが)るべしと申/含(ふくめ)て、さて(三オ)(三ウ・又三オ挿絵)とな 00091670M4りの/親父(おやぢ)が、/雨(あめ)をふらしかける。/手前(てまへ)の親仁ハ/太皷(たいこ)を/打(うつ)。 00091680M5よい/時分(じぶん)に/息子(むすこ)を/黒雲(くろくも)にのせて、/母親(はゝおや)がひか+とひから 00091690M6す。/兄(あに)息子はうすべりでひしや+と/打(うつ)て/廻(まわ)る。其ひやう 00091700M7しに、むすこを/落(おと)して、/夕立(ゆふたち)ふたしきりして、黒雲を/引上(ひきあげ)、 00091710M8むすこともに上りし/時(とき)、もはや/味噌(ミそ)もすり、/吸物(すいもの)の/用意(ようい)よ 00091720M9けれは、/扨(さて)/臍(へそ)ハととふ。/息子(むすこ)がいふは、臍ハ/方&(ほう+)と/尋(たづね)たれ 00091730M10ど、/銘&(めい+)きつい/用心(ようじん)にて、/念仏(ねんぶつ)やらお/経(きやう)やら(又三ウ)で、中 00091740M11&/寄付(よりつか)れず。/是(これ)ではすめぬと、はたけのあぜで、やう+ 00091750M12田にしを/少(すこ)し/斗(ばかり)つかんで/上(あか)りしといへば、それは/気(き)のどく。 00091760M13/去(さり)ながら/折角(せつかく)こしらへたすい物じや。/時節(じせつ)がらじやに、そ 00091770M14れなりと/臍(へそ)もときにせいといふた。 00091780¥N4¥J 00091790¥X/物(もの)しりじまん 00091800M17/貴様(きさま)は/遠方(ゑんほう)へ御/出(いで)と/聞(きい)たが、/何方(いづかた)へこざつた。されば、/幸(さいわ) 00091810M18ひのつれが/有(あつ)て、/筑波(つくば)山へ/参詣(さんけい)しました。そ(四オ)れはお 00091820M19うら山しや。/何(なん)と、/彼(かの)山は/殊勝(しゆしやう)な、また/景色(けいしよく)もよい/所(ところ)。/滝(たき) 00091830¥P311 00091840L1もあり、/麓(ふもと)に大きな川もあらふが。アヽ其川をなんとやら 00091850L2云た。ソレヨ。ミなの川。/渕(ふち)には/鯉(こい)などが/沢山(たくさん)にゐよふが。 00091860L3たしか其あたりに/寺(てら)が/有(あつ)たと/思(おも)ふたが。成ほど/何(なん)とやら申 00091870L4/奇麗(きれい)な/禅(ぜん)寺がごさつた。/有(ある)はづしや+。ソレガ/陽成院(やうぜいいん)じや 00091880L5といわれた。 00091890¥N5¥J 00091900¥X/了簡(りやうけん)ちがひ 00091910L8/独(ひと)り/住(ずミ)のやとわれ人、/田舎(いなか)へのつかひにやとハれ、/夜(よ)(四 00091920L9ウ)に入て/帰(かへ)りしに、/何(なに)やら/足(あし)にかゝりしゆへ、/引上(ひきあげ)て見 00091930L10れは/財布(さいふ)なり。/何(なん)でもしてやつたと、/宿(やど)へ帰ると/明(あけ)て見れ 00091940L11ば、/小判(こばん)百両/包(づゝミ)五つあり。大に/肝(きも)をつふして、/先(まづ)よく/口(くち) 00091950L12をしめて、/其夜(そのよ)はねずの/番(ばん)をして、/夜(よ)/明(あけ)て/思案(しあん)してミるに、 00091960L13内に/置(おい)て/外(そと)へ/出(で)れば/気(き)づかひなり。/置所(をきどころ)はなし。/夜(よ)はねら 00091970L14れず、/持(もつ)て出るハ/大(たい)そうなり。/床(ゆか)の/下(した)を/堀(ほつ)て/埋(うめ)て/置(をく)も/心元(こゝろもと) 00091980L15なし。人に(五オ)/咄(はな)すもこわし。/出(で)も/入(いり)もならず。是ハ一 00091990L16/生(しやう)の/難義(なんぎ)と/漸&(やう+)/分別(ふんべつ)の/底(そこ)をふるふて、弐百両を内に/置(をき)て、 00092000L17三百両/持(もつ)て/欠落(かけおち)をしられた。 00092010¥N6¥J 00092020¥Xにはか/分限(ぶんげん) 00092030M1さる所に、/手代奉公(てだいぼうこう)して/宿(やど)ばいりし/夫(ふう)婦、/精(せい)/出(だ)して、しま 00092040M2つ/第(だい)一にしてけるが、/運(うん)よくかせぎ/出(だ)して、/大分(だいぶん)/銀(かね)をもふ 00092050M3けしが、ふと/病(やミ)/付(つい)て、/終(つい)にむなしくなりぬ。/息子(むすこ)一人、十 00092060M4六七才に成リ(五ウ)しを、/俄(にわか)に/元服(げんぷく)させ、/跡(あと)/相続(さうぞく)さするに、 00092070M5此息子、/親仁(おやぢ)の/死(し)なれてこわい/者(もの)ハなし、/金(かね)もふけハしら 00092080M6ず、/世間(せけん)の/奢(おごり)が/浦山(うらやま)しうして見たふ/成(なつ)て、/宗旦(そうたん)の/花筒(はなづゝ)を金 00092090M7弐拾両に/買(かい)、/水仙(すいせん)の/早咲(はやさき)を金壱両に/買(か)ふて、/床(とこ)に/生(いけ)、/提(さげ)た 00092100M8ばこぼん引/寄(よせ)てたのしむ/後(うしろ)より、/母親(はゝおや)、そなたハ/何(なん)と/思(おも)ふ 00092110M9てぞ、/親仁(おやぢ)様の/宿(やど)ばいりの/艱難(かんなん)、やう+と銀五百匁の/元= 00092120M10手(もと=で)で、うらやの六/畳敷(じやうしき)の/長屋(ながや)を/借(かり)、おれが/嫁入(よめいり)ハ/葛篭(つゞら)(六 00092130M11オ)壱つで/来(き)て、/朝(あさ)ハ/霧(きり)をはらひ、/夕(ゆふ)べは/星(ほし)をいたゞき、 00092140M12/夜(よ)もねぬ/程(ほど)に/精出(せいだ)し、/朝夕(てうせき)にしまつして、/黒米食(くろごめめし)や/麦(むぎ)めし、 00092150M13ぬかミそ/汁(しる)、/焼塩(やきしほ)で/暮(くら)し、/身(ミ)にハ/木綿(もめん)/布子(ぬのこ)/布(ぬの)かたびらを/着(き) 00092160M14たれど、そなたハ/段&(だん+)/身上(しんしやう)も/取直(とりなを)しての/子(こ)なれば、人/並(なミ)に 00092170M15そだてられ、/是程(これほど)までに/取組(とりくま)しやつた/身上(しんしやう)なれども、一日 00092180M16の/栄燿(ゑよう)もせず、/根気(こんき)をつかひ/切(きり)、/往生(わうじやう)なされた。そなたハ 00092190M17手もぬらさず、/大分(たいぶん)の金銀、/諸道具(しよたうく)、/家屋敷(いへやしき)/迄(まて)(六ウ)ゆづ 00092200M18りを/受(うけ)、/大切(たいせつ)に/商売(しやうばい)を/勤(つとめ)、/家(いへ)/相続(さうぞく)する/筈(はず)の/事(こと)を、/其冥加(そのめうが)を 00092210M19おもはず/奢(おこり)の心か/出来(でき)てハ、/罸(はち)のあたる事がかなしひ。/宗= 00092220¥P312 00092230¥G 00092240M1旦(そう=たん)の/花筒(はなづゝ)とやらもそんして/売(うら)らハ、五両か三両にハうれて、 00092250M2人の/重宝(てうほう)に成べし。/水仙(すいせん)の/早咲(はやさき)も/漸&(やう+)一日か/半(はん)日、そなた 00092260M3/独(ひと)りながめて、/何(なん)の/詮(せん)もなし。よく+/聞(きゝ)わけて心をあら 00092270M4ため、/親仁(おやぢ)様の事/思(おも)ひいだし、/家業(かげう)を/大事(だいじ)に/勤(つとむ)るやうにし 00092280M5やと、/涙(なミだ)をながし、いわるれバ、(七オ)/聞(きゝ)たふはなけれど、 00092290M6/理屈(りくつ)なれば/返答(へんとう)もせず。たばこ/盆(ぼん)を/提(さげ)てのきしなに、うたひ 00092300M7かゝる/貴人(きにん)をいやしき/海士(あま)の/胎内(たいない)にやどりたまふも/一世(いつせ)な 00092310M8らずとうたふた。 00092320¥N7¥J 00092330¥X/奢(おごり)の/天井(てんじやう) 00092340M11/若(わか)い/衆(しゆ)二三人/寄合(よりあふ)て、/奢(おごり)の天/井(じやう)をしてミせふとて、かなだ 00092350M12らひに/水(ミづ)を/汲(くん)で/持(もて)こいと/取寄(とりよせ)、/手(て)を/洗(あら)ひ、/仏(ほとけ)をつれてこい、 00092360M13かんきんすると、とり(七ウ)/寄(よせ)おがミ、もふすんだ。い 00092370M14なせ。 00092380¥N8¥J 00092390¥X 00092400M16さる人、/田舎(いなか)へ/下(くだ)りしに、/先(さき)の/方(かた)へ/侍(さむらい)壱人/歩(あゆ)ミ/行(ゆか)れしに、 00092410M17/堤(つゝミ)のかげより、/非人(ひにん)壱人かけ出、こもの/下(した)に/竹杖(たけつへ)に/仕込(しこミ)の 00092420M18/刄物(はもの)と見へて、/小脇(こわき)にかいこみ、/親(おや)の/敵(かたき)やらぬといふ。此 00092430M19/侍(さむらい)/肝(きも)をつぶし、/我(われ)らさら+/覚(おぼ)へなしと云。八年/先(さき)に/身(ミ)/ 00092440¥P313 00092450L1共(ども)が/親(おや)を/討(うつ)て/立退(たちのき)き、/今(いま)さら/覚(おぼへ)ぬとハ/比興者(ひけうもの)。/抜合(ぬきあわ)せて/勝= 00092460L2負(しやう=ふ)せよ。/何程(なにほど)にいふても/此方(このハう)に/覚(おほへ)なし。しやくりが/直(なを)(八 00092470L3オ)(八ウ・又八オ挿絵)つたら、壱文くださりませ。 00092480¥N9¥J 00092490¥X/脾胃虚(ひいきよ)がしあわせ 00092500L6ある所に/脾胃虚(ひいきよ)の/病人(びやうにん)あり。いろ+と/療治(りやうぢ)すれと/験(しるし)なし。 00092510L7/医者(いしや)を/替(かへ)て見たらよかろふと/相談(さうたん)して、/今度(こんと)ハ/大医(たいゐ)にかへ 00092520L8し所、此/医者(いしや)どの、とくと/容躰(ようたい)を/考(かん□)へ、/腹脉(はらミやく)を見て、これ 00092530L9は/脾胃虚(ひいきよ)の/性(しやう)でなし。/見立違(ミたてちが)ひなり。まづ/食事(しよくじ)ハいかやう 00092540L10の事ぞととふ。されば/病人(びやうにん)ハたべた(又八ウ)かりますれと、 00092550L11/用心(ようじん)してひかへます。/医者(いしや)のいふにハ、いや+それは大 00092560L12きな/了簡(りやうけん)ちかひ。/脾胃(ひい)かやせると、せいが/落(おち)る。それかし 00092570L13か/療治(りやうち)するからハ、/食(しよく)をすゝめ/精(せい)を付て、/薬(くすり)のよふ/廻(まわ)るや 00092580L14うに仕る。/御病人(こひやうにん)/何(なん)成とも/望(のそミ)/次第(したい)に、/食事(しよくし)が/第(たい)一なり。/何(なに) 00092590L15かのそミそといふ。/病人(ひやうにん)がいふハ、/久(ひさ)しう/生肴(なまさかな)をたへませ 00092600L16ぬ。うなき/が((ママ))とせうか/鯉(こい)/鮒(ふな)の/類(るい)か、たべたふこさる。それ 00092610L17ハ一だんとよかろふ。いつれも/慥(たしか)に/思召様(おほしめすやう)に、/我(われ)ら/相伴(しやうばん)い 00092620L18(九オ)たすべし。/鯉(こい)のさしミ、うなきの/焼(やき)ものにとしやう 00092630L19/汁(しる)、/鮒(ふな)なます、/沢山(たくさん)に/拵(こしら)へらるべし。/久(ひさ)しうやせた腹に/精(せい) 00092640M1を付て/薬(くすり)をもちひは、/全快(せんくわい)ハ/受合(うけあい)といへは、/病家(びやうか)より、/御= 00092650M2尤(こ=もつとも)にハ候へとも、/大病人(たいひやうにん)の事。/先(まつ)一/色(いろ)つゝそろ+とた 00092660M3へさせ見申たし。いや+、/急(きう)に/精(せい)の付やうにせねば、/病(やまい) 00092670M4の/為(ため)にあしゝ。/気遣(きつかひ)な/事(こと)ハすこしもない。/其為(そのため)に/医者(いしや)が/相= 00092680M5伴(しやう=はん)する。/慥(たしか)な事じやと、こしらへさせてたへさせ、/自分(じふん)も 00092690M6(九ウ)/相伴(しやうはん)して、/又明日も/見廻(ミまい)、/替(かわ)る事ハないか。/同変(とうへん)て 00092700M7こさるといへは、/何(なに)かくいたゐ。そば/切(きり)かたへたい。/我(われ)ら 00092710M8/相伴(しやうはん)する。/随分(すいふん)/精(せい)/出(た)してまいれ。/晩(はん)にハ/餅(もち)がくいたい。/餅(もち) 00092720M9よかろ。/相伴(しやうはん)せふ。/雑煮(ざうに)にして、心のまゝにたべ給へと、 00092730M10/夜(よ)に入るまで/咄(はな)しして/出来(でき)るを/待(まつ)所へ、/門(かど)の/戸(と)をたゝく。 00092740M11/誰(たれ)ぞと/手代(てたい)が/明(あけ)に出れば、/岡部(おかへ)/春庵(しゆんあん)ハこなたに/居(ゐ)られます 00092750M12か。成ほと、/是(これ)にござります。/左様(さやう)ならバ/春庵(しゆんあん)内(十オ)申 00092760M13されます。/春庵(しゆんあん)/義(ぎ)ハ、/跡月(あとけつ)より/脾胃虚(ひいきよ)の/症(しやう)て、/食(しよく)をたべた 00092770M14がりますゆへ、/随分(すいふん)ひかへてたべさせませぬ。一/昨日(さくしつ)より 00092780M15/食(しよく)が/過(すき)るか、/夜(よ)に入と、かげんが/悪(わる)ふござります。/若(もし)/何(なん)ぞ 00092790M16たべたいと申ませふと、かならず/御無用(こむよう)に/成(な)されて下され 00092800M17とたのミにきた。 00092810¥Y1軽口片頬笑巻之二終(十ウ) 00092820¥P314 00092830¥T1/軽口(かるくち)/片頬笑(かたほゑミ)巻之三 00092840¥N1¥J 00092850¥Xすいちがひ 00092860L5ある/寺(てら)の/寺家(じけ)に、心/安(やす)き/坊(ぼん)様ゆへに、/近所(きんじよ)のむすこ/達(たち)あそ 00092870L6び所にして、けふハ/将碁(しやうぎ)、あすは/碁(ご)、あるひハ/鞠(まり)、/楊弓(やうきう)、ま 00092880L7たハ二文四文のよミ、あるひハ/浄(じやう)るりの/芸古(けいこ)と、/毎日(まいにち)/寄合(よりあい) 00092890L8て/遊(あそ)びしが、けふわ/住持(ぢうじ)/非時(ひじ)に参る。ゆる+とあそびた 00092900L9まへと/出行(いでゆき)けり。いづれもきげんよくあそび(一オ)て、/酒(さけ) 00092910L10をとゝのへ、/何(なん)ぞ/肴(さかな)がほしいと、/台所(だいところ)の/棚(たな)をさがしければ、 00092920L11/煮豆(にまめ)、/梅干(むめぼし)、はじかミなど/取出(とりだ)して、/是(これ)でハのめぬと、/何(なん) 00092930L12ぞ/坊主(ぼうず)がかくしざかながあろ。さがして見よと/方&(ハう+)さがし、 00092940L13/仏檀(ぶつだん)の下から/蛸(たこ)のあしを/捜(さが)し/出(だ)して/呑(のん)でゐる所へ、/住持(ぢうぢ)/帰(かへ) 00092950L14りけれハ、ぼん様+。/隠(かく)して/置(おか)れてもさがして見付た 00092960L15+と云。/何(なん)じや。さがして見付たか。ハアかなしや。/南= 00092970L16無(な=む)三ぼう、ぜひかない。おきよ、出てあや。(一ウ) 00092980¥N2¥J 00092990¥X/異見(いけん)の/聞(きゝ)やう 00093000L19/悪性(あくしやう)なむすことも、/親(おや)のいけんも/何(なん)共/思(おも)わず、うハ+と 00093010M1さわぎあるく。/中間(なかま)、こりや太郎兵。われが所へきのふい 00093020M2たれば、/親仁(おやぢ)がわれに/何(なに)やら/異見(いけん)して/居(い)るを見れば、そち 00093030M3ハ/畳(たゝミ)に/頭(かしら)を付て、あたまもゑあげず。/日比(ひごろ)の口にハ/似合(にあわ)ぬ 00093040M4ひきやうなものじやといふ。ナンジヤ、それを見たか。いか 00093050M5にも見た。アレハナ、あたまを上ると/毒気(どくき)がかゝるゆへ、上 00093060M6なんだ。(二オ) 00093070¥N3¥J 00093080¥X/椀(わん)のほめそこない 00093090M9/田舎(いなか)から/念比(ねんころ)な人がのぼり/立寄(たちより)しに、もはや/時分(しぶん)でござる。 00093100M10お/茶(ちや)づけをしんじよといへば、いや、したくハよふござる 00093110M11といふ。/何(なに)もない。/香(かう)のもので/茶(ちや)づけじや。おじぎなさる 00093120M12なといふ。/左様(さやう)ならバ一ぜん、おふるまひなされと云。あ 00093130M13がりませとハいふたが、/飯(めし)がやう+/椀(わん)に一ツぱいならで 00093140M14ハなし。/先(まつ)一ぜんそつくりともりて、/茶(ちや)/沢山(たくさん)にして/出(だ)し、 00093150M15/下女(げじよ)ハ(二ウ)/給仕盆(きうじぼん)/持(もつ)て/前(まへ)にすハる。/客(きやく)ハすこし/腹(はら)もへり 00093160M16かげんゆへ、さら+とかきこんで/仕廻(しまい)、かへたけれど、 00093170M17一ツたん/辞義(じぎ)ハする。/給仕(きうじ)はかへとハいわず。うぢ+と 00093180M18/椀(わん)のうら/表(おもて)を見て、/扨&(さて+)/是(これ)はよいぬりな/椀(わん)でござるといへ 00093190M19ば、/給仕(きうじ)の/下女(げじよ)が/食次(めしつぎ)を/横(よこ)にして/内(うち)を/客(きやく)に見せて、此/食次(めしつぎ) 00093200¥P315 00093210¥G 00093220M1と同じぬりでござりますといふた。 00093230¥N4¥J 00093240¥X/錫杖(しやくじやう)の取ちがへ(三オ)(三ウ・又三オ挿絵) 00093250M4/東寺(とうじ)の/大師(たいし)様/信心(しんじん)の人、廿一日の/朝(あさ)、/夜(よ)のうちより/起(おき)て朝 00093260M5/参(まい)りするに、七/条(てう)の/野(の)/辺(へん)を/通(とを)りしに、/錫杖(しやくじやう)と/鉢(はち)の子、け 00093270M6さ/衣(ころも)/捨(すて)て有。/是(これ)は/慥(たしか)に大師様/御修行(ごしゆけう)に御出と、/骨髄(こつすい)にてつ 00093280M7して/有難(ありがた)く、/早&(さう+)/持(もつ)て/帰(かへ)り、/床(とこ)にすへて/香花(かうけ)をそなへ、/拝(はい) 00093290M8して/居(い)る所へ、/坊主(ほうず)一人/走(はし)り/来(きた)り、/今(け)朝たくはつに出て、 00093300M9七条の野辺で/用事(ようじ)をかなへゐる内、/爰(こゝ)な/亭主(ていしゆ)そふなが、錫 00093310M10杖、鉢の子、けさ衣/迄(まて)/盗(ぬす)ミ帰りしを付(又三ウ)こんだ。大 00093320M11/盗(ぬす)人、/堪忍(かんにん)ならぬと、ねだりに/来(き)て、いろ+とわひこと 00093330M12してかへしぬ。 00093340¥N5¥J 00093350¥X/肝心(かんしん)のしぞこなひ 00093360M15大坂よりの/登(のぼ)り/舟(ふね)に、/諸国(しよこく)の人あまた/乗合(のりあひ)、/銘&(めい+)あいさつ 00093370M16して、いづれもさま。よふおのぼりなされます。/其元(そのもと)様ハ 00093380M17御/国(くに)ハどこてござる。/私(わたくし)ハ/丹波(たんば)のもの。大坂に/親類(しんるい)ござつ 00093390M18て、四五日/逗留(とうりう)いたし、/帰(かへ)りがけ京へ立/寄(よつ)て/国(くに)へ帰ります。 00093400M19/私(わたくし)は大坂/者(もの)。六/条(でう)様へ(四オ)参ります。/拙者(せつしや)ハ大坂/御城= 00093410¥P316 00093420L1内(ごじやう=ない)より江戸へ御/飛脚(ひきやく)。われらハ/伏見(ふしミ)より/昨夜(さくや)/舟(ふね)にのり、/今= 00093430L2晩(こん=ばん)/折帰(おりがへ)りに/登(のぼ)ります。/私(わたくし)は京から/浄(じやう)るり/聞(きゝ)に/下(くだ)りました。 00093440L3/愚僧(くそう)ハ大坂の/知恩院(ちおんゐん)/末寺(まつじ)、/本寺(ほんじ)へ参る者と、/乗合(のりあい)十四五人、 00093450L4めい+/四方(よも)山の/物語(ものがた)りをするに、/角(すミ)の方に四/十(ちゆう)余りの/親= 00093460L5仁(おや=ぢ)、/物(もの)もいわず、かんし入たる/躰(てい)なり。そばに/居(い)る人、其 00093470L6元様ハいつくのお人様ぞ。/最前(さいぜん)より/皆(ミな)様がお/咄(はな)しなさるゝ 00093480L7に、何にも/仰(おゝせ)られぬといへば、/成(なる)ほど(四ウ)/身(ミ)共/伊勢(いせ)の/者(もの) 00093490L8で、この/比(ごろ)から大坂に/逗留(とうりう)いたし、京へ立より、/近&(きん+)/国本(くにもと) 00093500L9へ下ります。/扨(さて)/方&(ハう+)の御かた様がた、大/勢(ぜい)御/乗合(のりあい)、/神妙(しんべう)に 00093510L10おはなし。/誠(まこと)につく※と/思(おも)へば、人ほど/有難(ありかた)いおとなし 00093520L11きものハござらぬ。これほど/諸方(しよほう)の/犬(いぬ)をのせたら、/嘸(さぞ)やか 00093530L12ましうかミ/合(あい)ませふといふた。 00093540¥N6¥J 00093550¥Xつわものゝまじハり 00093560L15/木曽(きそ)の山/家(か)より、/京内(けううち)/参(まい)りに十四五人のぼり、三(五オ)/条(でう) 00093570L16のはしひがしに/宿(やど)をとり/逗留(とうりう)せしか、/宿(やど)の/亭主(ていしゆ)/気(き)を付てき 00093580L17けば、/女(おんな)弐人の/名(な)ハともへ、/山吹(やまぶき)/御前(ごせん)、/男(おとこ)の/名(な)は/亀井(かめい)の六 00093590L18郎、/今井(いまい)の四郎、/根(ね)の/井(い)の/小弥太(こやた)、/樋口(ひぐち)の治郎などいふ、 00093600L19/昔(むかし)/木曽殿(きそどの)のつわものゝ/名(な)を/呼(よぶ)ゆへ、ふしんに思ひ、つれ 00093610M1の中に/出家(しゆつけ)壱人/有(あり)。/此(この)人に/尋(たづ)ねけるハ、/皆(ミな)様のお/名(な)をうけ 00093620M2給ハれば、いづれもむかし/木曽殿(きそどの)の御内にかくれなきつわ 00093630M3ものがたの御/名(な)也。其御/筋目(すじめ)の/衆中(しゆぢう)の(五ウ)御すへにて候 00093640M4や。/扨&(さて+)御たのもしき事かなといへば、/彼僧(かのそう)あきれた/顔(かほ)で、 00093650M5/扨&(さて+)/左様(さやう)な事にて候や。/面目(めんほく)もなき事かな。/我(われ)らハ/木曽(きそ)山 00093660M6/家(が)の者にて、/利口(りこう)に/名(な)を付る/者(もの)もなけれは、京より下る/商= 00093670M7人(あきん=ど)を/頼(たの)ミて/名(な)を付てもらひし也。/国(くに)では/何(なに)とも存ぜぬ事ゆ 00093680M8へ、たがひに/呼合(よびあひ)申せど、/都(ミやこ)へ/登(のぼ)りて/斯(かく)/恥(はぢ)をかき申事の/気(き) 00093690M9の/毒(どく)さよと云ければ、/亭主(ていしゆ)もおかしくきのどくなれど、い 00093700M10や+/昔(むかし)から/名高(なたか)きよい(六オ)御名也。/扨(さて)又/貴僧(きそう)の御名ハ 00093710M11ととへば、/拙僧(せつさう)ハ/太夫坊(たいふバう)/覚明(かくめい)といふた。 00093720¥N7¥J 00093730¥X/化(ばけ)ものゝ/新狂言(しんきやうけん) 00093740M14/諸国(しよこく)/行脚(あんぎや)の/僧(さう)、/国&(くに+)を/廻(めぐ)り、/或日(あるひ)山中に/行(ゆき)くれ、/宿(やど)もなし。 00093750M15/海道(かいどう)ばたにふるきあき/寺(でら)有。一/夜(よ)/明(あか)さんと/思(おも)ひ、人に/尋(たづ)ね 00093760M16しかば、/此寺(このてら)ハあるじなし。/其訳(そのわけ)は/昔(むかし)より/化(ばけ)もの/住(すん)で人を 00093770M17なやますゆへ、/住(すむ)人なしといふ。此/僧(そう)/思(おも)ひけるハ、/是(これ)こそ 00093780M18/諸国(しよこく)/修(しゆ)(六ウ)/行者(げうじ□)の望む所なれは、夜と共に/念仏(ねんぶつ)して/夜(よ)を 00093790M19/明(あか)すべしと、此寺にとまりしが、/初夜(しよや)の/比(ころ)より/家鳴(やなり)/震動(しんどう)し 00093800¥P317 00093810¥G 00093820M1て大き成女の/首(くび)、/髪(かミ)を/乱(ミだ)し、かねをくろ※と付てにこ 00093830M2+と笑ふて出たり。/古(ふる)い+。おけ+といへば引込て、 00093840M3又/鬼(おに)のかたちと/顕(あら)われ、/鉄棒(てつぼう)をさげて出たり。古い+と 00093850M4いへば、/今度(こんど)ハミだ/如来(によらい)廿五/菩薩(ぼさつ)あらわれ、/虚空(こくう)に花ふり、 00093860M5/音楽(おんがく)/聞(きこ)へたり。此僧中&/合点(かつてん)せず、古るい+といふて、 00093870M6取(七オ)(七ウ・又七オ挿絵)あわず。/其後(そののち)/色&(いろ+)に/化(ばけ)ても、古 00093880M7い+と云て/相手(あいて)にならず。/化物(ばけもの)も/仕様(しやう)もなく、/重(かさ)ねてい 00093890M8でず。行脚僧も/草臥(くたひれ)のうへ、化もの故ろくにねず。出ぬを 00093900M9/幸(さいわ)ひに、ゆるりと一トねいりして、/目(め)を/明(あい)て見れば、/東(ひがし)も 00093910M10しらむ、/海道筋(かいどうすじ)にも道/通(とを)りの/音(おと)するゆへ、そろ+と/起(おき)て、 00093920M11/荷(に)をかたげ出てミれバ、/夜(よ)はほの※と/明(あけ)て、六七丁/程(ほど)/行(ゆく) 00093930M12と/次第(しだい)にくらくなりぬ。/是(これ)はふしぎと立とまり、しあん 00093940M13(又七ウ)すれば、ナント、あたらしいかといふた。 00093950¥N8¥J 00093960¥X/利屈(りくつ)のいひわけ 00093970M16ナント、/自然(しねん)/居士(こじ)のうたひに、/皇帝(くハうてい)の/臣下(しんか)に/貨狄(くわてき)といへる/士= 00093980M17卒(し=そつ)あり。/蜘(くも)の/柳(やなぎ)の/葉(は)に/乗(のり)て/海(うミ)を/渡(わた)るを見て/思(おも)ひ付て/船(ふね)を/造(つく) 00093990M18り、/蚩尤(しゆう)をやすく/亡(ほろぼ)し、御/代(よ)を/治(おさ)め給ふ事一万八千/歳(さい)とか 00094000M19や。/是(これ)は/聞(きこ)へたが、/爰(こゝ)に/蚩尤(しゆう)といへる/逆臣(げきしん)有。/彼(かれ)を/亡(ほろぼ)さん 00094010¥P318 00094020L1とし給ふに、/烏江(うこう)といふ/海(うミ)をへだて、(八オ)せむべきやう 00094030L2もなき所にとあるが、ナント/互(たかひ)に/通路(つうろ)もなく、/勿論(もちろん)/舟(ふね)はな 00094040L3し。/出合(であい)ハ有まひし。何として/敵(てき)にハ成た事と/問(とい)けれは、 00094050L4是には/行(ゆき)つまり、さればあろふ事の。どふしても/毎度(まいど)川上 00094060L5から、ごもくを多く/流(なが)したと見へた。 00094070¥N9¥J 00094080¥X/大名(だいめう)のしわんぼ 00094090L8/殊(こと)の外しわき御大名、御/城(しろ)の/畳(たゝミ)の/表(おもて)が/破(やぶ)れて/足(あし)にかゝるゆ 00094100L9へ、/役人(やくにん)が/表(おもて)がへの事申上ても御/聞届(きゝとゞけ)(八ウ)なく、/詮方(せんかた)な 00094110L10く/若殿(わかとの)様へ申上けれハ、それは見くるしい。/表(おもて)かへしたら 00094120L11よかろと/仰(をゝせ)らる。/其段(そのたん)また大/殿(との)様へ申上れは、/然(□か)らハ/裏(うら)か 00094130L12へし申べしとの/仰(おゝせ)なり。/若殿(わかとの)/聞(きこ)し召、/武士(ふし)のうらかへると 00094140L13ハ/不吉(ふきつ)の/詞(ことハ)也。/気(き)がゝりなれば、/表(おもて)がへなされたきよし也。 00094150L14大/殿(との)/聞(きゝ)給ひ、/扨(さて)/畳数(たゝミかす)ハいかほどぞと/尋(たつね)給ふ。八百五十/畳(しやう) 00094160L15と申上れは、又/仰(をゝせ)にハ、/武士(ふし)のうらかへるといふは、/千畳(せんしやう) 00094170L16におよひての事なり。八百五十/畳(しやう)(九オ)ならバ、やはりう 00094180L17らがへしておけ。 00094190¥N10¥J 00094200¥X/味噌(ミそ)の/仕(し)こミやう 00094210M3サテ御/寺(てら)の味噌ハかくべつうまい事てこさります。さだめ 00094220M4て/大豆(たいつ)も御ぎんミなされん。いかやうに御しこミなさるれ 00094230M5ば、此/様(やう)にうまふなりますと問へば、いや、かくへつむつ 00094240M6かしい事もござらぬ。花かつほをかいて、一トかハ+に 00094250M7入れてしこめバ、此/通(とを)りに成ます。ハテナア。又/精進(しやうしん)ミそハ 00094260M8へつに(九ウ)なされますかと/問(と)へば、いかさま、/在家(ざいけ)にハ 00094270M9/精進日(しやうじんび)かござるの。 00094280¥N11¥J 00094290¥X/足(あし)のうらにきす 00094300M12/去所(さるところ)に/若(わか)むすこ、/女郎(ちよろう)を/連(つれ)て/清水(きよミつ)へ参り、ぶたいにて/遠(とを)め 00094310M13がねで五/条(てう)のはしをミれば、/友達(ともたち)のとをるか手に/取様(とるやう)に見 00094320M14へれば、コレ吉兵。かならす爰てあふたといやんな。 00094330¥Y1軽口片頬笑巻之三終(十オ) 00094340¥P319 00094350¥T1/軽口(かるくち)/片頬笑(かたほゑミ)巻之四 00094360¥N1¥J 00094370¥X御/公家(くげ)様の/勧化(くわんけ) 00094380L5むかし/応仁(をうにん)の/比(ころ)とかや、/大内方(をゝうちかた)さる御/公家(くげ)様、御こんきう 00094390L6にて/御殿(こてん)/大破(たいは)におよび、やねもりて御/難義(なんぎ)なれど、/乱世(らんせい)の 00094400L7/折(をり)からなれば、/家老衆(からうしゆ)を御/召遊(めしあそ)ばし、何とそやねふく/思案(しあん) 00094410L8ハないかと仰らる。/家老(からう)申さるゝハ、此せつ中&どれを/頼(たの) 00094420L9む/方(かた)もなし。然し此/時節(じせつ)でも/神仏(かミほとけ)は/結構(けつかう)なもの。(一オ)/堂= 00094430L10宮(どう=ミや)の/奉加(ほうが)/勧化(くわんけ)は、/相応(さうおう)にあつまります。/御前(ごぜん)様にも町中へ 00094440L11/奉加(ほうが)/勧化(くわんけ)に御/廻(まわ)り/遊(あそ)ばされましたら、/相応(さうおう)にあつまりま 00094450L12せふか。何とそ/夫(それ)で上ぶきして、やねのもりがとめたし。 00094460L13いかやうとも/能(よき)にはからへと仰付られ、さらバ/明(めう)日より/勧= 00094470L14化(くわん=け)に出べしと御こしらへ有。/先(まづ)八介ハ/白張(しらはり)にゑ/ば((ママ))しにて、 00094480L15/首(くび)にづだ/袋(ふくろ)、うわぶきの/奉加(ほうが)と/書(かき)付して、/旦那(だんな)様ハ御/装= 00094490L16束(しやう=ぞく)、かんむり/沓(くつ)にて、そろ(一ウ)+と御出。/其次(そのつぎ)に/家老(からう)ハ 00094500L17大紋にさむらひゑぼし。八助が/先(さき)に立、/大音(たいをん)にて、/何(なに)の/中= 00094510L18納言殿(ちう=なごんどの)、屋/根(ね)うわぶきの/奉(ほう)加と、はり上ていひければ、町 00094520L19中/家&(いへ+)より立出て、/扨(さて)も+、めづらしい御/勧化(くハんけ)と、/銘&(めい+) 00094530M1に/銭(ぜに)を/紙(かミ)につゝミ、/白米(はくまい)を/盆(ぼん)に入て/持(もち)出、あげませふとい 00094540M2へば、八助が/受取(うけとり)、御/詠哥(ゑいか)。 00094550¥N2¥J 00094560¥X/海(うミ)てさへつきあがり 00094570M5はりまなだにて/海舟(うミぶね)にのり、/追風(おいかぜ)にて心よく(二オ)(二ウ・ 00094580M6又二オ挿絵)はしるに、五六/尺(しやく)/斗(ばかり)の大/蛸(だこ)がでゝ/船(ふね)に取付、 00094590M7/上(あが)らんとする。/皆(ミな)&/驚(おどろ)き、たゝきたふても/棒(ぼう)はなし、あて 00094600M8たふても/石(いし)はなし。其内そろ+と/上(あが)りかゝりハする。/詮(せん) 00094610M9かたなく/銭(ぜに)を百文/取出(とりいだ)し、ねらいすまして/打(うち)付れば、あた 00094620M10まへ/当(あた)り、ずつと/引込(ひつこん)たり。/先(まづ)けがもなしと/悦(よろこ)び、一二/町(てう) 00094630M11ばかり/行(ゆく)と又/出(で)たり。/是(これ)ハ/難義(なんぎ)と/肝(きも)をつぶしければ、こん 00094640M12どはちいさい/蛸(たこ)(又二ウ)を一ツつれて/出(で)て、こいつにも百 00094650M13文くださりませ。 00094660¥N3¥J 00094670¥X 00094680M15○/去道具(さるどうぐ)やのむすこ、/名物(めいぶつ)の/井戸(いど)/茶碗(ちやわん)を取なやむとて打落 00094690M16し/破(わり)ければ、/親仁(おやち)大きに/腹(はら)を立、打たゝき、/勘当(かんどう)するとわ 00094700M17めく所へ、/隣(となり)より来りて/狂哥(きやうか)。 00094710M18△△ことわりや井戸/茶(ちや)わんならわりもせめ 00094720M19△△△さりとてはまた/兄(あに)がしたとは 00094730¥P320 00094740¥G 00094750¥N4¥J 00094760¥X 00094770M2○あるげん/気(き)な/若(わか)い/衆(しゆ)、/祇園町(きおんまち)へ/遊(あそ)びに/行(ゆき)、/座敷(ざしき)へ上ると 00094780M3すぐにはだかに成り、/酒(さけ)を/出(だ)すと(三オ)其まゝあばれのミ、 00094790M4/肴(さかな)をつかミ/喰(くい)なとする所へ、/名染(なじミ)の/女郎(しよらう)来り、おまへ/方(がた)ハ 00094800M5/余(あま)りげさくな事。それは/何(なん)のまねぞ。たしなまんせといへ 00094810M6バ、/客(きやく)取あへず、/是(これ)はそなた/衆(しゆ)の/身(ミ)じまい/部(べ)やのまねじや 00094820M7と/答(こたへ)ければ、/女郎(じよろう)/面目(めんぼく)をうしなひ、/座(ざ)をたち、/有(あ□)/合(あふ)/細引(ほそひき)を 00094830M8/鴨居(かもい)に打かけ、すぐに/首(くび)をくゝらんとするを見て、人&大 00094840M9きにさわぎ、/是(これ)は/余(あま)りかんしやくな。先しつまれととむれ 00094850M10ば、(三ウ)さわがしやんす事ハない。是はおまへがたの/節= 00094860M11季(せつ=き)のまねじや。 00094870¥N5¥J 00094880¥X 00094890M13○/芝居(しはい)/若女形(わかをんながた)、/俄(にわか)に/頓死(とんし)して、/閻魔王(ゑんまわう)の/前(まへ)へ引/出(いだ)す。/冥官(めうくわん) 00094900M14/御僉義(ごせんき)/有(あつ)て、/作(つく)りし/罪(つミ)もなく、又/善根(せんごん)もなく、/念仏(ねんふつ)も申さ 00094910M15ぬゆへ、/極楽(ごくらく)へも/地(ぢ)こくへもやられず、/娑(しや)婆へも帰されず。 00094920M16とくと/吟味(きんミ)する間、/此所(このところ)に/留置(とめをく)べし。しかし/只(たゞ)/置(をく)もつゐへ 00094930M17なり。/六道(ろくどう)の/辻(つち)へ/遣(つかわ)し、鬼の/役(やく)をすけさせ、/罪人(ざいにん)を(四オ) 00094940M18道びき、此所に/連来(つれきた)るべしと/仰付(おゝせ)られ、六道の辻に/罪人(ざいにん)を 00094950M19/迎(むかい)に出る所へ、江戸のすさまじき/髭奴(ひげやつこ)壱人、ちう/有(う)の/旅(たび) 00094960¥P321 00094970L1にまよひ来りたゝずみしを、/彼(かの)にわか/鬼(おに)こわ+、こちへ 00094980L2ござれといへば、かの/奴(やつこ)きつと見て、おのれは/何者(なにもの)じや。 00094990L3わたしハ/新(しん)まひの鬼でごさんす。はてなまぬるい、しろい 00095000L4/面(つら)じや。/己(おのれ)も/鬼(おに)の/中(うち)か。ついに人を/喰(くつ)た事は/有(ある)まいがな。 00095010L5ハテ、/私(わたし)じやとて、たべいでわいな。 00095020¥N6¥J 00095030¥X 00095040L7○/去(さる)所にりつはな/看板(かんばん)を出し、/夕立(ゆふだち)/売所(うりどころ)と有を(四ウ)見 00095050L8て、去年八月の日でりに、/浮気(うわぎ)な/若(わか)い者/買(かい)に/行(ゆき)、/代物(だいもつ)は/何(なん) 00095060L9ぼてござる。代銀壱枚と云。ちとまからんか。此方かけね 00095070L10なしと/答(こたふ)る所へ、/外(ほか)より/使(つかい)来り、へぎに銀壱両つゝミをの 00095080L11せて、/昨日(さくじつ)ハ忝しと出す。あれはと/問(と)へば、あれハ/忍(しの)ぶ/草(ぐさ) 00095090L12にかけたのでござる。 00095100¥N7¥J 00095110¥X 00095120L14○四五人/打寄(うちより)、いろ+/雑談(ざうだん)ばなしの中に、一人あたまを 00095130L15かきて、/世(よ)の中にりんき/強(づよ)い/女房(にようハう)/持(もつ)たほど、/迷惑(めいわく)な物はな 00095140L16し。ちよと/外(ほか)へ出て、夜に入て/帰(かへ)る(五オ)とやかましゝ。 00095150L17又/召遣(めしつか)ひの/下女(げじよ)こしもとに、/少(すこ)し/詞(ことは)/和(やわ)らかにいへは、/無性(むしやう) 00095160L18に/腹(はら)を立る。何につけても/迷惑(めいわく)な物と/咄(はな)せば、/夫(それ)も/悪(わる)い/合= 00095170L19点(が=てん)しや。/真実(しんじつ)に大事に/思(おも)ふ故、/吟味(ぎんミ)するであろふ。いや 00095180M1+それは了簡/違(ちがひ)しや。/生洲(いけす)に/鯉(こい)/鮒(ふな)を/飼(か)ふてをく/心(こゝろ)で、/猫(ねこ) 00095190M2やいたちのせいとうして、/我(われ)/独(ひと)りたのしむ/積(つもり)じや。 00095200¥N8¥J 00095210¥X 00095220M4○/或医者(あるいしや)、/絵師(ゑし)の所へ/見舞(ミまい)しに、折節、/橋(はし)の上を馬にのり 00095230M5大き成/笠(かさ)をかぶりて/行(ゆく)/人形(にんげう)を/画(ゑが)きて(五ウ)居たり。医者尋 00095240M6ねて、是ハ/面白(おもしろ)き/図(づ)なり。何と申やらんと/問(とひ)ければ、珍し 00095250M7からぬ、/東破(とうば)也と。医者の云、いや/唐馬(とうば)ハしれた事。/乗(のつ)て 00095260M8ゐる人はたれじや。 00095270¥N9¥J 00095280¥X 00095290M10○さる/儒者(じゆしや)、大のしまつしやにて、/奉公人(ほうこうにん)も/半季(はんき)/勤(つとめ)かね、 00095300M11/中途(ちうと)に/隙(ひま)もらふて奉公人なし。/近所(きんじよ)の人、/幸(さいわひ)の奉公人有。 00095310M12/第(だい)一/少(すこ)し/本(ほん)の/端(はし)も見し/者(もの)にて、しまつのこる所なく、/惣(さう)じ 00095320M13て/朝夕(てうせき)の/釜(かま)の下/木(き)のくべやうなど、/文字(もじ)にてたき、/茶釜(ちやがま)の 00095330M14/下(した)ぐらゐハ入といふ/字(じ)(六オ)にて/仕舞(しまい)、/飯汁(めししる)の下などハ大 00095340M15の/字(じ)くらいにてたき/仕廻(しまふ)、/其余(そのよ)はあらまし是に/准(じゆん)ずるよし。 00095350M16それは/至極(しごく)の者なり。早&御こし/頼(たのミ)入と有れば、/即刻(そくこく)同道 00095360M17して目見へさせ、/差置(さしをい)て/帰(かへ)りぬ。/扨(さて)翌日、/件(くだん)の儒者早く/起(おき) 00095370M18て、茶釜の下をたきけるをミれば、入の/字(じ)也。こいつハ/出= 00095380M19来者(で=きもの)と/悦(よろこ)び、/諸事(しよじ)打/任(まか)せ、有時飯の下、/無性(むしやう)に/燃上(もへあか)るゆへ、 00095390¥P322 00095400¥G 00095410M1/肝(きも)をつぶし立出ミれば、大/分(ぶん)木をくべてたきける故、やい 00095420M2+八助。あれハ(六ウ)なんといふ/字(じ)じやといへば、アイ、 00095430M3/奉(たてまつる)といふ/字(じ)でござります。 00095440¥N10¥J 00095450¥X 00095460M5○/或俳諧師(あるはいかいし)、/寒夜(かんや)にふと/起(おき)て見れば、/雪(ゆき)/夥敷(おびたゝしく)/降(ふり)つもり、 00095470M6/庭(には)の/気色(けしき)/面白(おもしろ)かりければ、此/躰(てい)なら/吉田(よしだ)/辺(へん)の/雪気色(ゆきげしき)/嘸(さぞ)と思 00095480M7ひ付、/家来(けらい)八助を/起(おこ)し、/俄(にわか)に吉田辺へ出たれバ、雪のけし 00095490M8き山も川も木も/草(くさ)も、さながら銀/世界(せかい)のけしき。/雪後(ゆきご)の月 00095500M9にかゝやきし/詠(ながめ)、とふもいへぬと、/独(ひと)り/悦(よろこ)び立たる向ふへ、 00095510M10/誰(たれ)やらん、(七オ)(七ウ・又七オ挿絵)ゆる+と、/歩(あゆ)ミ/行(ゆく)を/見(ミ) 00095520M11て、ふしぎや、/夜半(やはん)にも/過(すぎ)たり。人の/通(かよ)ふべき時にもあら 00095530M12ず。/我(われ)らが/風流(ふうりう)を/感(かん)じ給ひ、明神の御/示現(しげん)と覚たり。それ 00095540M13+見て参れと云ければ、八助ハ/寒(さむ)いやら/寝(ね)むたいやら、 00095550M14小ひだるいやら、むしやくしや/腹(ばら)を立、何のあれが神さま 00095560M15でござりませう。此/寒(さむ)いにあるく/者(もの)ハ、/盗(ぬす)人か、やつぱり 00095570M16/徘徊師(はいくわいし)てござりませう。 00095580¥N11¥J 00095590¥X 00095600M18○/遠国(をんごく)の/侍衆(さむらいしゆ)、/病気(びやうき)/養生(やうじやう)のため京へ登り、/座敷(ざしき)(又七ウ)が 00095610M19りして下人壱人/遣(つか)ひ養生しけるが、/程(ほど)なく/年(とし)の/暮(くれ)になり、 00095620¥P323 00095630L1/国元(くにもと)より/賄(まかな)ひ金として三拾両、/夜(よ)ニ入て/届(とゞ)きければ、下人 00095640L2つく※/思(おも)ふに、金三十両あらバ/相応(さうおう)の小/商(あきな)ひのもと手と 00095650L3も成らんと、ふと/悪念(あくねん)きざし、つか+と/主人(しゆじん)のそばへ/寄(より)、 00095660L4/旦那(だんな)さま。/主(しう)を/殺(ころ)して金を取た者ハ/何(なん)と成ますと/問(と)へは、 00095670L5主をころし金を取しものは、日本国中御たづねにて、/捕(とら)し 00095680L6上には/竹鋸(たけのこぎり)にてひかれ、其上を/磔(はつつけ)にかける(八オ)が、 00095690L7/天下(てんか)の御/大法(たいほう)じやといへは、そんなら、ねましよ。 00095700¥N12¥J 00095710¥X 00095720L9○大/黒(こく)天を/信心(しん※)し/感応(かんおう)を/得(ゑ)て、打出の小づちをさづかり、 00095730L10金銀/衣服(いふく)、何にても/望(のぞミ)の物を打出し、何に不/足(そく)なき/様(やう)に成、 00095740L11其上/米(こめ)を/夥(おびたゝ)しく打出し、/庭(には)一ぱいに/積置(つミをき)、/余(あま)りせばさに、 00095750L12ちと/売(うる)べしと、米やを/呼(よん)で見せければ、/扨&(さて+)/能(よい)米かな。し 00095760L13かし/近江(あふミ)米共見へず、又かゝ米とも見へず。ふしぎな上米、 00095770L14何でござるととひければ、イヤ、それはしれぬはづじや。 00095780L15(八ウ)大黒米じやといふた。 00095790¥N13¥J 00095800¥X 00095810L17○/去(さる)ル所の/丁稚(てつち)、/髪結(かミゆい)の/床(とこ)へ髪結に/行(ゆき)しに、/髪結(かミゆい)がいふに 00095820L18ハ、これ長吉。そつちにはよい/妾(せう)ができたなあ。/旦那(だんな)の/気(き) 00095830L19に入たかといへば、いや+其やうなものハないと云。か 00095840M1くすな。アノ/妾(せう)は/旦那(だんな)がだいてねるのじやといへば、フン、 00095850M2そんならあれは/妾(せう)といふものか。/夫(それ)て/聞(きこ)へた。したが、あ 00095860M3の妾ゆへに、/此比(このごろ)は大がやかましい。 00095870¥N14¥J 00095880¥X 00095890M5○/出替(でかわ)り/時分(じぶん)、下女をかゝへ、/給銀(きうぎん)何ほどゝ/万事(ばんじ)/極(きわ)め(九 00095900M6オ)事すミて、/扨(さて)そなたハ/名(な)は/何(なん)と/云(いふ)ぞと問ければ、/私(わたくし)は 00095910M7/名(な)はござりませぬ。/是(これ)まで/内方(うちかた)の/通(とを)り((の))/名(な)になされて下さり 00095920M8ませ。それはいか/様(やう)ともせふが、なぜに名ハないぞ。され 00095930M9ばでござります。是まで/方&(ハう+)へ/勤(つとめ)ましたが、さき※にせ 00095940M10んぐりに/名(な)は/置(おい)て/参(まい)りました。 00095950¥N15¥J 00095960¥X 00095970M12○/遠国(おんごく)の/田舎(いなか)人、京より/鞠(まり)を/進物(しんもつ)に/遣(つかハ)しけるに、/在所(ざいしよ)中/寄= 00095980M13合(より=あい)ても、見しりたる人なし。/誠(まこと)に/草堂(さうどう)の/坊(ぼん)様は京の人と、 00095990M14/呼(よび)にやり見せければ、/是(これ)ハまりと云(九ウ)物で、京てはや 00096000M15る物じや。/何(なに)に/成(なる)物ぞ。これはかうする物と手に取、/足(あし)に 00096010M16てければ、よこにころ+とこける。是が此/通(とを)りに上へあ 00096020M17がるのじや。 00096030¥N16¥J 00096040¥X 00096050M19○/去所(さるところ)の/子息(むすこ)、/里通(さとがよ)ひにしこりて/親仁(おやぢ)の/機嫌(きげん)/損(そん)し、一ト間 00096060¥P324 00096070L1へ/押込(おしこめ)、/他出(たしゆつ)/無用(ふよう)として、/親仁(おやぢ)見せへ/出(で)て、しよ事のせわ 00096080L2して/居(い)らるゝ所へ、なじミの女郎よりの/見舞(ミまい)文と見へて、 00096090L3/蒔絵(まきへ)の/文箱(ふばこ)に、しんくの/総(ふさ)付た文箱に入、十二三な小めら 00096100L4うが/持(もつ)て、うろ+と/門(かど)口に/首尾(しゆび)(十オ)を見/合(あわ)せ/居(い)るを、 00096110L5/親仁(おやぢ)がちらと見て、/是(これ)/姉(あね)。文ならば/置(をい)ていきやといへば、 00096120L6すいながらさすが/子供(こども)、/文箱(ふばこ)/渡(わた)シて/帰(かへ)りぬ。/親仁(おやぢ)そろ+ 00096130L7と/明(あけ)て見れバ、/息子(むすこ)が/当名(あてな)の文。また外に/小(ちいさ)キ/帛紗(ふくさ)/包(つゝミ)一ツ 00096140L8有。是ハ何じやと/明(あけ)てミれハ、/香箱(かうばこ)の中に今/切(きつ)たと/思敷(おほしき)/小= 00096150L9指(こ=ゆび)有。/肝(きも)をつぶしながら、/元(もと)の/如(ごと)く/蓋(ふた)して/奥(おく)へ/持(もち)行、/息子(むすこ) 00096160L10を/呼(よび)て、さて+おのれハ/里通(さとがよ)ひに/斗(ばかり)身を入、/家業(かげう)は一ツ 00096170L11も心にかけず。これ、今/持(もつ)て/来(き)た是を見をれと、/覚(おぼへ)有/文箱(ふばこ)。 00096180L12なむ三(十ウ)とハ思ひながら、うぢ※としてゐれば、其 00096190L13中の/香箱(かうばこ)を/明(あけ)て見よと有ゆへ、明てミれば/指(ゆび)也。其時/親仁(おやぢ) 00096200L14いふハ、よその人は/夫程(それほど)に/家業(かげう)に身を入らるを見よ。 00096210¥N17¥J 00096220¥X 00096230L16○/有所(あるところ)に/親仁(おやぢ)/夫婦(ふうふ)、/息子(むすこ)廿四五、廿一弐、十七八、三人有。 00096240L17/随分(ずいぶん)/中能(なかよく)/商売(しやうばい)も/精(せい)/出(だ)してゐられしが、/出替(でかわ)り時ニ/下女(げじよ)/置(をき)付 00096250L18るとて、/母親(はゝおや)せわやき、あれ是見られければ、親仁申され 00096260L19しハ、下女の/余(あま)り/見苦敷(ミくるしき)ハ/悪(わる)し。/給銀(きうぎん)/少(すこし)/高(たか)く共、小ぎれ 00096270M1い成をかゝへる/様(やう)にしやれとあるゆへ、(十一オ)/器量能(きりやうよき)女 00096280M2をかゝへ、/請(うけ)も/仕廻(しまい)、/今夜(こんや)より二かいにとまりしに、/夜更(よふけ) 00096290M3て二/階(かい)のはしご、ぎし+となり、/誰(たれ)やら二階へ上り、/彼(かの) 00096300M4女のそばへ寄、何やらぼや+と云と、又はしごぎし+ 00096310M5となり、又人が上るゆへ、/始(はじめ)の人/立退(たちのき)、/片(かた)すミへ/寄居(よりい)る。 00096320M6/後(のち)の人、又女のそばへ寄、もや+してゐると、又十七八 00096330M7の/息子(むすこ)、はしごをぎし+と上り、今の女をくどく。いや 00096340M8と云て取あわず。又はしごぎし+なるゆへ、是も/脇(わき)へ/退(のき) 00096350M9て居たり。/今度(こんど)は親仁殿上り、彼女のそ(十一ウ)ばへ寄、 00096360M10/色&(いろ+)くどいても、/元来(もとより)大/勢(ぜい)来りし故、/楢(なを)/相手(あいて)にならず。/母= 00096370M11親(はゝ=おや)、/今夜(こんや)は二かいのはしご、/余(あま)りぎし+なるゆへ、ふし 00096380M12んに思ひ、/手燭(てしよく)に火をともし、二かいへ上り見られければ、 00096390M13/真中(まんなか)に女がねて居る。四方の/角(すミ)にむすこ三人親仁、四人居 00096400M14たり。/顔(かほ)を/見合(ミあわせ)せ、親仁、へらぬ顔で、/角前髪(すミまへがミ)から/土俵入(どひやういり) 00096410M15なされ。 00096420¥N18¥J 00096430¥X 00096440M17○太郎兵衛は/土器(かわらけ)が/好(すき)で/喰(くふ)げな。ちと/呼(よん)て/喰(くわ)せて見よとて、 00096450M18/今夜(こんや)は/咄(はなし)に御出と呼にやれば、其まゝ(十二オ)来りし故、 00096460M19それ/嚊(かゝ)。御菓子を/持(もつ)ておじやと云へハ、/気(き)の/毒(どく)ながら/内義(ないぎ)、 00096470¥P325 00096480L1/菓子盆(くわしぼん)に/土器(かわらけ)を十四五/枚(まい)のせて/持(もち)出れば、是は/有難(ありがた)い。内 00096490L2でハ/思(おも)ふ/様(やう)に/喰(くわ)さぬ。さらバ御/辞義(じぎ)なしに喰ふと、めり 00096500L3++と/大方(おゝかた)喰ければ、/亭主(ていしゆ)も聞しよりハ大に/驚(おどろ)き、扨 00096510L4&きつい/好(すき)しや。ナント、まだ此上にもまいるかといへば、 00096520L5てうしにのり、かうくいかゝると、/西行(さいげう)でも/牛(うし)でも/喰(くい)ます。 00096530¥Y1軽口片頬笑第四△終(十二ウ) 00096540¥T1/軽口(かるくち)/片頬笑(かたほゑミ)巻之五 00096550¥N1¥J 00096560¥X 00096570M3○のらな/息子(むすこ)/留主(るす)の内、/友達(ともたち)/来(きた)り、/爰(こゝ)の弐分五厘ハ内に/居(い) 00096580M4るか。/留主(るす)と/答(こたへ)ければ/帰(かへ)りけり。/親仁(おやち)息子の/帰(かへ)るを/待(まち)かね、 00096590M5/帰(かへ)ると、おのれはのら故/友達(ともたち)かあなづり、今も/爰(こゝ)の弐分五 00096600M6リンハ内にかと/尋(たつね)にきた。ちとたしなめと云ければ、/息子(むすこ) 00096610M7/打笑(うちわらひ)、夫ハこなたの/聞(きか)しやる事じやない。しらぬ/顔(かほ)で御/座(ざ) 00096620M8れ。どうでも/直打(ねうち)がないといふ事であろがな。はて是は/差= 00096630M9合(さし=あい)じやゆへ、どふもいわ(一オ)れぬ。/何(なん)であろと云て/聞(きか)せ。 00096640M10/息子(むすこ)、あちら/向(むい)て、/下(しも)の/町(てう)の/胡粉(ごふん)やの/娘(むすめ)をわつたゆへしや。 00096650¥N2¥J 00096660¥X 00096670M12○/出替(でかわ)り/時分(しふん)に、/狂言(けうげん)/作者(さくしや)/近松(ちかまつ)門左衛門所へ、めしたき/女(おなこ) 00096680M13をかゝへて/請(うけ)もすミ、四五日/勤(つとめ)て/内義(ないき)に、此女、にわかに/暇(いとま) 00096690M14を/貰(もら)ひたしと云。そなたは/今朝(けさ)/迄(まて)/勤(つとめ)たしといふたに、/俄(にわか)に 00096700M15/隙(ひま)くれと云ハいか/様(やう)の事ぞ。/訳(わけ)をいや。只/今(いま)/旦那(たんな)様、/机(つくへ)に 00096710M16もたれ何やら/書(かい)て/御(ご)ざつて、/茶(ちや)をくれとおつしやつたゆへ 00096720M17/持(もつ)て参りましたれば、/私(わたくし)が/顔(かほ)を(一ウ)見て、どふでも此女 00096730M18ハころさねはすまぬとおつしやる。/命(いのち)がなふてハ奉公ハ成 00096740M19ませぬといふた。 00096750¥P326 00096760¥N3¥J 00096770¥X 00096780L2○/去(さる)御/公(く)家様、/出雲(いつも)の/大社(おゝやしろ)へ/勅使(ちよくし)に御/下(くだ)り、大坂ニ御/出入(でいり) 00096790L3の/町人(てうにん)/有(あり)。/歌(うた)の御/弟子(でし)にて御/目(め)見へに参りけれは、/短冊(たんしやく)に 00096800L4御/哥(うた)/遊(あそ)バし/遣(つかわ)されけれは、/是(これ)を/拝領(はいりやう)いたし、/有難(ありかた)しとて御 00096810L5礼に金子三拾壱両/差(さし)上し故、/披露(ひろう)に/及(およ)ひければ、お上にも 00096820L6御/満足(まんそく)に思し召、其人/帰(かへ)りて後、/家老殿(からうとの)を御/召遊(めしあそ)ばされ、 00096830L7/礼金(れいきん)ならバ三拾両にて有(二オ)へきに、三十一両とハ/珍(めつ)ら 00096840L8しき/数(かす)と御/尋(たづね)有けれハ、夫は御歌の/文字(もんじ)の/数(かず)と存られま 00096850L9すれば、/成程(なるほど)/尤(もつとも)也と申ければ、/名乗(なのり)ハ見なんだかい。 00096860¥N4¥J 00096870¥X 00096880L11○あの人はきつい大/上戸(しやうこ)。弐升でも三升でも/酒(さけ)を/呑(のま)れま 00096890L12す。すさまじい/酒呑(さけのミ)じや。/何(なに)のそれが大上戸。おれハ大坂 00096900L13の/船(ふね)で/酒(さけ)を一はい/呑(のん)だ。 00096910¥N5¥J 00096920¥X 00096930L15○/此夏(このなつ)は/蚊(か)がすさましふ出て/難義(なんき)ゆへ、/紙燭(しそく)て取ても、/飛(とん) 00096940L16で思ふ/様(やう)にとれぬ。/夫(それ)は/取様(とりやう)がこざる。/壁(かべ)に(二ウ)酒を吹 00096950L17かけると大分とまる。尤と、酒を/大分(たいふん)吹掛て置、暫くして 00096960L18見たれば、/夥敷(おひたゝしく)とまりしゆへ、早く/上(うへ)からおさへといへ 00096970L19は、/蚊(か)が/云様(いふやう)、/殊(こと)の外たへよいました。此うへおさへられ 00096980M1てハたまらぬ。 00096990¥N6¥J 00097000¥X 00097010M3○/朝鮮人(てうせんしん)/来朝(らいてう)の/時(とき)、/地頭(ちとう)より/役(やく)にさゝれて/馳走人(ちさうにん)に付しに、 00097020M4/上下(かミしも)を着て、/配膳(はいせん)して心に思ふ様、か様成/毛唐人(けとうしん)の下/官(くわん)に、 00097030M5/袴(はかま)を着て/夜(よ)/し((ママ))/寝(ね)ずに/遣(つか)わるゝ事の/腹立(はらたち)や。/言葉(ことば)の/通(つう)しぬを 00097040M6/幸(さいわひ)に、/悪(あく)口を(三オ)/云(いふ)べしと思ひ、/手(て)をつき/頭(かしら)を/下(さけ)、/身(ミ) 00097050M7ふりハ/随分(すいふん)いんきんにして、/是(これ)をくらへ。おどれはいかい 00097060M8/毛唐人(けとうじん)めと/云(いゝ)けれバ、/唐人(とうしん)どし、あれは/何者(なにもの)であろといへ 00097070M9ば、今壱人の/唐人(とうじん)、ひらかたのなら茶うりてあろ。 00097080¥N7¥J 00097090¥X/牢人(らうにん)の/城(じやう)くわく 00097100M12/去浪人者(さるらうにんもの)の所へ/節季(せつき)に/欠(かけ)とりに/行(ゆき)、/米(こめ)やでこさりますとい 00097110M13へば、/内(うち)からしわがれた/声(こへ)で、今ハ/留主(るす)てごさるといふ。 00097120M14いつも/留主(るす)をつかふゆへ、お/前(まへ)はどなたでこざります(三 00097130M15ウ)といへば、/近所(きんしよ)の/者(もの)てござるといふ。/余(あま)り/合点(かてん)ゆかす、 00097140M16障子にゆひにつわをつけて/穴(あな)を/明(あけ)、そつとのぞけバ、件の 00097150M17/浪人(らうにん)たはこのミ居る。/扨&(さて+)にくき/事(こと)と/思(おも)ひ、/夫程(それほど)内に居な 00097160M18から/留主(るす)をつかわるゝ。/銀子(きんす)/段&(たん+)/延引(ゑんいん)。せひに此季、請取 00097170M19らねば成らぬと/高声(かうしやう)にいひければ、/彼牢人(かのらうにん)、長/脇指(わきさし)をさし 00097180¥P327 00097190¥G 00097200M1て立出、/成程(なるほと)/銀子(ぎんす)の/催促(さいそく)、尤な事なれは、いかやうともい 00097210M2たそふ。しかし/浪人(らうにん)のはにふながらも/武士(ぶし)の/城槨(しやうくわく)。/町人(てうにん) 00097220M3の分として/障子(しやうじ)を/破(やふ)り、内の/様子(やうす)(四オ)(四ウ・又四オ挿絵) 00097230M4を見さがしたる/段(たん)、/堪(かん)忍ならずと、既に/柄(つか)に/手(て)をかけて/抜(ぬか) 00097240M5んとするを、/漸&(やう+)手に/取付(とりつき)、先御/待(まち)下さるへし。銀子のほ 00097250M6しきまゝ、/障子(しやうじ)に/穴(あな)を/明(あけ)て内を見こミ候段、/幾重(いくゑ)にも御/堪= 00097260M7忍(かん=にん)下さるへし。/障子(しやうし)ハもとの/如(こと)く/張(はり)して/置(おき)候ハんまゝ、御 00097270M8/赦(ゆる)し下されよと、/手(て)をすりて/侘言(わびこと)申ければ、/成(なる)ほど、さほ 00097280M9どに/誤(あやま)り、/障子(しやうし)も/張(はり)をかんとならハ/了簡(りやうけん)すへし。早&/張(はり)候 00097290M10/様(やう)にといふに、/忝(かたじけな)しと、/丁稚(てつち)に/糊(のり)一ツ買にやり、/懐(ふところ)より 00097300M11/半紙(はんし)一(又四ウ)まい/取出(とりいだ)し、/元(もと)の/如(こと)く/張(はり)て、御/覧(らん)下さるへ 00097310M12しと、こハ+申ければ、/浪人(らうにん)とくと見て、/成程(なるほと)、これで 00097320M13/了簡(りやうけん)せん。しかし/外(そと)から/内(うち)はミへぬかととへば、/曽(かつ)て内の 00097330M14/様子(やうす)見へ申さすといへば、そんなら/留主(るす)しや。 00097340¥N8¥J 00097350¥X/智恵(ちへ)しまん 00097360M17弐三人/寄合(よりあひ)て/咄(はな)しのうちに、一人がいふは、/扨(さて)/此比(このごろ)ハこち 00097370M18の/裏(うら)にけつねが出て、/子供(ことも)らがこわがると/咄(はな)せば、それは 00097380M19いやなる事じやか、貴様も/人中(ひとなか)でけつねと/云様(いふやう)な事ハ(五 00097390¥P328 00097400L1オ)いやんな。人か/笑(わら)ふといへば、大に/腹(はら)を立、けつねが 00097410L2でたといふに、/誰(たれ)が/笑(わら)ふものが有ふといふ。イヤ、/夫(それ)は/文盲(もんもう) 00097420L3なゆへじや。あれハけつねしやない。きつねしやと云。/夫(それ) 00097430L4がたがひの/云分(いゝぶん)に成て、/既(すて)につかミ/合(あわ)んとすれば、一人の 00097440L5/者(もの)/気(き)の/毒(とく)がり、/扨&(さて+)やくにもたゝぬ事の/詞論(ことはろん)をしやる。/互(たがひ) 00097450L6に/男(おとこ)の立/様(やう)に、おれが/訳(わけ)を/立(たて)てやろ。/先(まづ)/静(しづ)まりやとて、/分= 00097460L7別(ふん=へつ)らしう/取静(とりしづ)め、/扨(さて)きつねとけつねの/争(あらそ)ひ、どちらもとち 00097470L8ら共/理非(りひ)も付られぬが、/先(まつ)カキクケコの(五ウ)かなでミれ 00097480L9ば、どちらをいふても/能(よい)事しや。然し、けつねと云もよか 00097490L10ろうか、/元来(くハんらい)きやつめハ/毛沢山(けだくさん)で、/尾(お)なともふつとりと/穴(あな) 00097500L11のあたりへむけてハ、いよ+/毛(け)も/多(おゝ)し。/其上(そのうへ)/千年(せんねん)たつと、 00097510L12だつこといふものになるといわれた。 00097520¥N9¥J 00097530¥X/足(あし)もと見る/井戸替(いとかへ) 00097540L15しわん/坊(バう)の/隠居(いんきよ)/親仁(おやぢ)、水の/汲(くミ)やうか/荒(あら)い。それでハつるべ 00097550L16がたまらぬと、いらぬ世話をやいて、スホンと(六オ)はま 00097560L17られければ、/家内(かない)大にさわぎて、/息子(むすこ)も/嫁(よめ)も立出、/色(いろ)を/青(あを) 00097570L18ふして/騒(さわ)ぎ、まつ/井戸(いと)を/差覗(さしのそく)に、かたの/如(ごと)く/堀抜(ほりぬき)井戸にて、 00097580L19/誰(たれ)有てはいらふと/云者(いふもの)なし。/仕合(しあわせ)と、/隠居(ゐんきよ)は水の中にすつ 00097590M1くり立て、どこもけかハせぬ。/早(はや)ふ上てくれとせがまるゝ。 00097600M2いかゞせんと/思(おも)ふ所へ、/折能(おりよふ)/表(おもて)を、/井(い)のもとがへ+と大 00097610M3/声(こへ)て/呼(よび)あるく。/是(これ)井のもとゝ/呼(よび)こみ、かう+した/訳(わけ)じや。 00097620M4上てくれと、/息子(むすこ)がほろ+/涙(なミだ)て/頼(たの)めは、(六ウ)/心得(こゝろへ)まし 00097630M5た。/先(まづ)/様子(やうす)を見よふと/井戸(いど)をのぞひて、/扨(さて)も/深(ふか)い井戸じや。 00097640M6/棒組(ぼうぐミ)。/何(なん)ぼがよかろふなあ。サレバ/生(いき)ものといひ、/安(やす)けれ 00097650M7ど/先(まづ)五貫かい。それでからが/余(あま)り/望(のぞ)む/仕事(しごと)じやないといへ 00097660M8ば、/息子(むすこ)が、それハあまり足もとを見た/直段(ねだん)じや。/高(たか)けれ 00097670M9ど/親(おや)の事じや。壱/貫(くわん)で/頼(たの)むといふ。イヤ、/夫(それ)ならいやでご 00097680M10ざると、そろ+いにかける。ぜひなふ、まゝよ、二貫と 00097690M11付/上(あげ)る/声(こへ)が/井戸(いど)の/中(なか)へ/聞(きこ)へしやら、ゐんきよ(七オ)(七ウ・ 00097700M12又七オ挿絵)/親仁(おやぢ)が大/声(こへ)あげて、五百でなければ、/何(なん)ぼでも 00097710M13あがらぬといふた。 00097720¥N10¥J 00097730¥Xきれのなま/目利(めきゝ) 00097740M16さる/禅門(ぜんもん)、/談義(だんぎ)の/座(ざ)にてつぎ+のたばこ入を取出し、た 00097750M17ばこのミゐるそばに、なまものじりのこしやくな/男(おとこ)、御/隠= 00097760M18居(いん=きよ)様。おたばこ入をちとお見せなされませと/取上(とりあげ)て、ひね 00097770M19くりまわし、/扨&(さて+)是はミなけつこうな/切(きれ)てござります。/取= 00097780¥P329 00097790¥G 00097800M1分(とり=わけ)此/紺地(こんぢ)のにしき(又七ウ)は扨&見事なことでござります。 00097810M2/定(さだめ)てわけのござるきれでかなと/問(と)へば、/夫(それ)は/武蔵坊弁慶(むさしハうべんけい)が 00097820M3/袖(そで)の切てござると云。かの/男(おとこ)/肝(きも)をつぶし、/扨(さて)&/珍(めづ)らしい。 00097830M4左様なら/此白地(このしらぢ)の/金入(きんいり)も/何(なん)ぞでござるかといへバ、成程、そ 00097840M5れハ/巴(ともへ)/御前(ごぜん)の大口の切でござるといふ。これはいつれもけ 00097850M6つこうな切ども。それをか/様(やう)にたばこ入なとになさるゝハ、 00097860M7/憚(はゞかり)ながら/余(あま)り/勿躰(もつたい)なしといへバ、いや/沢山(たくさん)にござるゆへ、 00097870M8/買(かを)ふよりハと思ひ、/縫(ぬ)わせましたと(八オ)いふに、いよ 00097880M9&/肝(きも)をつぶし、/扨(さて)また、其/切(きれ)どもハいかゞしてお手にい 00097890M10りしといへば、イヤ、是は、むこが/人形(にんげう)やゆへもらふたと 00097900M11いわれし。 00097910¥N11¥J 00097920¥X 00097930M13○さる御/大名(たいめう)の御/留主居(るすゐ)、/祇園(ぎをん)参りなされしに、祇園町の 00097940M14/馴染(なじミ)の/中居(なかい)/行合(ゆきあい)、/先(まづ)御まめ様で御めでたい。/私(わたくし)も/宿(やど)ばいり 00097950M15/致(いた)し、此あたりに/居(おり)ます。ちと御より下さりませ。/夫(それ)はめ 00097960M16でたい事。/寄(よる)べし。/案内(あんない)いたせ。夫は/忝(かたしけな)くお/嬉(うれ)しやと、 00097970M17/先(さき)に立、新地のせはいろう(八ウ)じのうらへ御供申、/行当(ゆきあた) 00097980M18りの/小(ちいさ)い小/座敷(ざしき)の二/階(かい)へ、/旦那(だんな)様を御上ゲ申、/盃(さかつき)を出し、 00097990M19/隣(となり)の/芸子(げいこ)を/呼(よび)で引かける。/若党(わかとう)弐人、/身(ミ)どもら、どこに。 00098000¥P330 00098010L1/私(わし)の/部(へ)屋へと三/畳敷(しやうじき)へ入て、/挟箱(はさミばこ)/持(もち)、/身(ミ)はどこに居るの 00098020L2じや。/台所(だいどころ)の/肴棚(さかなたな)の/前(まへ)に/草履(ざうり)取と二人。はさみ/箱(ばこ)ハうら 00098030L3のミそ/桶(おけ)の/上(うへ)へ上ゲて。/沓篭(くつかご)/持(もち)、是はとうする。/心得(こゝろへ)まし 00098040L4て物をきへ上て、お前も/爰(こゝ)に。/鑓持(やりもち)、/扨&(さて+)せまい所じや。 00098050L5此/鑓(やり)はとふも成まい。それも/合点(がてん)と、さやをはづし、/逆(さか) 00098060L6(九オ)/様(さま)にして/井戸(いど)の中へいれた。 00098070¥N12¥J 00098080¥X 00098090L8○きのふ/余所(よそ)へ/振舞(ふるまい)にいたれば、/玉子(たまこ)の/香(かう)の/物(もの)を/喰(く)た。/塩(しほ) 00098100L9のからいものなれど、/珍(めづ)らしい物じやといふたれば、/夫(それ)は 00098110L10めづらしいもの。どふした物じや、しらぬ。それは/塩鳥(しほとり)の 00098120L11うんだ/玉子(たまご)であろ。 00098130¥Y1軽口片頬笑巻之五終(九ウ) 00098140¥Q 00098150M3明和七@庚△|△寅@年八月吉日 00098160M8△△△△△京都書林△△△△冨△生△堂 00098170M9△△△△△△△△△△△△△菱屋孫兵衛