00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第十三巻 00000030¥T/喜美談語(きびだんご)〔序題〕 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L15寛政八年正月序・刊 00000070L16水魚亭魯石・談洲楼焉馬序 00000080L17美満寿連作 00000090L18宗理画 00000100L19上総屋利兵衛等板 00000110L20中本一冊 00000120¥Y○落はなしもく録 00000130M3○雷神門△△△万羅作△○七両二分△△△竹里作 00000140M4○七段目△△△巴人亭ゝ△○しかた咄△△△談洲楼ゝ 00000150M5○三人生酔△△△狂歌堂ゝ△○からす猫△△△日頂庵ゝ 00000160M6○天狗△△△△有芳舎ゝ△○はつ雪△△△白鯉館ゝ 00000170M7○なぞ+△△△寛之ゝ△○三枚洲△△△吾友軒ゝ 00000180M8○不しん紙△△△談洲楼ゝ△○子がへり△△△淮南堂ゝ 00000190M9○六あミだ△△△振鷺亭ゝ△○雷見舞△△△船づミゝ 00000200M10○学文△△△△水魚亭ゝ△○五段目△△△先裏住ゝ 00000210M11○勧化△△だんじう楼ゝ△○お星さま△△△長雄ゝ 00000220M12○まじない△△△香東ゝ△○二階ずまい△△停&ゝ 00000230M13○すべり道△△△つら丸ゝ△○てうちんの大サ五十三次ゝ 00000240M14○女郎のぼせ△△菊人ゝ△○かけ取△△△△五十三次ゝ 00000250M15△△△△△△△△△△△△(目一オ)(目一ウ・目二オ挿絵) 00000260M16○どら息子△△△有芳舎作△○がくしや△△△△貢作 00000270M17○鰻のすじ△△△白鯉館ゝ△○雷△△△△△△竹里ゝ 00000280M18○酒△△△△△△ミつきゝ△○七福神△△△△美知丸ゝ 00000290M19○ぼうとる円△△玄黄ゝ△○開帳△△△△竹里ゝ 00000300M20○ぶせうな供△△紫江ゝ△○相撲見物△△てい+ゝ 00000310¥P4 00000320¥G(目一ウ・目二オ) 00000330M1○がく者△△△菊人ゝ△○七夕△△△五十三次ゝ 00000340M2○堀井戸△△△△竹里ゝ△○雷ばなし△△△百人ゝ 00000350M3○かみなり咄△△紫江ゝ△○多田薬師△△△玉嶌舎ゝ 00000360M4○大鵬△△△△鳰下道ゝ△○年の市△△△△礒名ゝ 00000370M5○うぬ惚△△△△蓬雨ゝ△○たうなす△△△雛丸ゝ 00000380M6○親こゝろ△△△未青ゝ△○水茶屋△△△△星衣ゝ 00000390M7○平家物語△△△有正ゝ△○たゝき牛房△△文馬ゝ 00000400M8○女郎買△△△恋川好町ゝ△○素人医者△△△談洲楼ゝ 00000410M9△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(目二ウ) 00000420¥P5 00000430¥Y/喜美談語(きみだんご)/叙(しよ) 00000440L3/宇治拾遺物語(うじしういものがたり)ハ/大納言(だいなごん)/隆国卿(たかくにきやう)、さつきより/八月(はづき)まで、/平等= 00000450L4院(べうどう=いん)/一切経蔵(いつさいきやうぞう)の/山(やま)ぎわ/南泉房(なんせんぼう)にこもりたまひ、/往来(ゆきゝ)のもの、 00000460L5/高(たか)きいやしきをいはず/語(かた)るにしたがひ、/大(おゝ)きなる/艸帋(そうし)にか 00000470L6ゝれけり。たふとき/事(こと)も/有(あり)、/哀成事(あわれなること)も/有(あり)、/少(すこし)&ハそら/物語(ものがたり) 00000480L7も/有(あり)、りこう/成事(なること)もありとかや。これ/咄(はなし)の/問(とい)屋にして、/竹= 00000490L8取物語(たけ=とりものがたり)ハ/桃(もゝ)太郎の/本店(ほんだな)、/万葉(まんやう)の/浦嶌(うらしま)がことハ/乙姫(おとひめ)の/元祖(ぐわんそ)な 00000500L9るべし。こゝに/談洲楼(だんじうろう)/大人(たいしん)、(一オ)/戯談(げだん)のむしろをひらき、 00000510L10/夘月(うつき)/半(なかば)より/文月(ふミづき)のすゑまでまきおさめ、/集吟(しうぎん)の/噺(はなし)その/数(かづ)/五= 00000520L11百(い=を)あまり/八十(やそ)におよぶ。かの/宴(えん)につとひ/来(く)る人&のおかし 00000530L12とあるを/聞(きゝ)、はたふるきを/捨(すて)、あたらしきを/拾(ひろ)ひ、/禁句(きんく)/遠= 00000540L13慮(えん=りよ)あるハ/引墨(いんぼく)におよはず、/秀逸(しういつ)七/点(てん)/以上(いしやう)をさくら/木(ぎ)にあら 00000550L14ハし、/先(まつ)/初篇(しよへん)一/冊(さつ)を/出(いだ)し、/猶(なを)も/巻(まき)をわかちて/春(はる)/深(ふか)きながめ 00000560L15とす。/鳴呼(あゝ)/此(この)はなしの/世(よ)に/流行(りうこう)せんこと、/西(にし)ハ/九州(きうしう)/長嵜(なかさき)か 00000570L16ら/赤飯(こハめし)、ひがしハ/奥州(おうしう)/白石(しらいし)ばなし、(一ウ)/遠(とお)からんものハ 00000580L17/聞伝(きゝつた)へ、ちかくハよつてみゝにきく、/談洲楼(だんしうろう)の/美満寿連(ミますれん)、 00000590L18/花咲爺(はなさきしゝ)の/花(はな)も/実(ミ)も、/夫(それ)ハさくらんぼう、/我(われ)ハ/花子房(はなしぼう)、いつ 00000600L19もなかよき 00000610M1△△△△△△△△△△△△/水魚亭(すいきよてい)/魯石(ろせき)述之 00000620M2たつの/初春(はつはる) 00000630M3△△めでたき日△(二オ) 00000640¥P6 00000650¥Y/落噺(おとしはなし)/六儀序(りくぎしよ)△△△△△△△/談洲楼(だんじうろう)/焉馬(えんば)/述(のふる)G 00000660L3むかし+一トむかし、天明六年午の四月、/釈伽(しやか)の/産(うま)れて 00000670L4四日めに、/牛嶌(うしじま)なるむさしやにおゐて、/落咄(おとしはなし)の/会(くわい)が/権三(ごんざ) 00000680L5りますと、/巴人亭(はじんてい)の/筆(ふで)にみしらせ、/三百(さんびやく)の/落咄(おとしばなし)ハ/四百余= 00000690L6洲(しひやくよ=しう)の/君子(くんし)もいまだまなびす。かの/隆国(たかくに)の/宇治(うじ)の/茶店(さてん)も/此(この)つ 00000700L7とひにハおとるべしと見ゆ。その/頃(ころ)、/狂歌(きやうか)/盛(さかん)なりといへど 00000710L8も、かゝるおこのゑせ/会(ぐわい)ハ、/天地(あめつち)/開(ひらき)はじめしよりためしな 00000720L9く、こん+とん+として一つの/物(もの)/生(なれ)り。かたち(二ウ) 00000730L10/芦(あし)の/筏(いかだ)のうえに/洗鯉(あらいこい)をのせ、名づけて/四方(よも)の/赤良(あから)、/朱楽(あけら)/菅= 00000740L11江(かん=こう)の/二(ふ)タ/柱(ばしら)をおしたて、おのれ、のみてうなごんすみかね 00000750L12/棟梁(とうりやう)して、/片(かた)そぎの/行合(ゆきあい)の/間(ま)より、しもがゝりの/咄(はなし)をおく 00000760L13り、ゆきすぎの/噺(はなし)ハ/無恙(つゝがなき)/穴(あな)をさがす。/今(いま)/寛政(くわんせい)七/夘年(うとし)、/落= 00000770L14咄(おとし=ばなし)の/大学(だいがく)を/談洲楼(だんじうろう)に/催(もよお)し、/吾家楽(わがいへらく)のかな/盤(だら□)の/銘(めい)に/曰(いわく)、/苟(まこと)に 00000780L15/日&(ひゝ)に/新(あらた)なるはなしをあつめ、もふけのむしろをひらき、 00000790L16/滑稽(こつけい)にあそぶ。こつけいハ/酒(さけ)の/器物(うつハもの)/也(なり)。/口(くち)より/出(いで)て/章(しやう)をな 00000800L17す。こつけいの/酒(さけ)を/吐(はく)がごとしとかや。(三オ)/口(くち)に/出(て)ると 00000810L18いふ/文字(もんし)にすがり、/咄(はなし)の/種(たね)をまきそめ、/誹諧歌(はいかいうた)とも/狂歌(きやうか)と 00000820L19も/一(ひと)つ/畑(はたけ)の/友(とも)とち、/畔(あせ)もへだてぬ/中(なか)の/郷(ごう)、/多田(たゝ)のやく/師(し)の 00000830L20/楼上(ろうせう)、また/虚空(こくう)に/流行(はやつ)て/雲(くも)のことく/集(あつま)る。/両(りやう)ごく/橋(ば□)のほと 00000840M1り/京屋(きやうや)/何某(なにがし)がもとにおいて、はなしのよふな/咄(はなし)の/会(くわい)ハのど 00000850M2づゝの/往来(わうらい)かまびすしく、おとがひのかけがねをはづし、 00000860M3/門前(もんぜん)に/市(いち)もさかへん。されバ/和歌(わか)に/六儀(りくぎ)あり、馬/鹿(か)に/律儀= 00000870M4者(りちぎ=もの)あり、/八重垣(やへかき)のかいまみに/歌道(かとう)の/六義(りくぎ)をのぞけハ、/風(ふう)/賦(ふ) 00000880M5/比(ひき)/興(やう)/雅(が)/頌(しやう)といへり。まづ、(三ウ) 00000890¥Q 00000900M6/風(ふう)ハ△そへ哥なり。風ハその/色(いろ)ミへず、その/品(しな)物によせ/合(あわ)せてあらハる 00000910M7△△△ゝ也。/八雲御抄(やぐもミせう)に云/十躰(じつたい)の内、/誹■(はいいん)に/類(るい)す。あらハにきこへず、 00000920M8△△△外のものにすがりて/狂(きやう)じたるなり。はなしにとつてハゆきすぎば 00000930M9△△△なし 00000940¥N1¥J 00000950¥X○/雷神門(らいじんもん)△△△△△△△△△△△¥A/万羅(ばんら)作 00000960M12S/風神(ふうじん)/雷神(らいしん)、/賽銭(さいせん)にもならず、たまさか/紙(かミ)をふき/付(つけ)られる 00000970M13/斗(ばか)り。なんぞ/商(あきな)ひをはじめよふとおもひつき、まんざらし 00000980M14つけぬこともできまひから、/風(かせ)の/神(かミ)ハ/五日(いつか)め+に/風(かぜ)をう 00000990M15ろうから、かみなりハ/十日(とうか)め+に(四オ)雨をうりやれ。 00001000M16こひつハよかろふと/売出(うりだ)すと大きにうれだし、/雨乞(あまこい)のとき 00001010M17などハ五両三両と、ひとくちにいなかへかつてゆき、/若殿(わかとの) 00001020M18さまのたこをおあげなさるに、きうに風が一チ両二歩うれ 00001030M19るやら。こひつハおつなことだとおもふ/所(ところ)へまた、風を/百= 00001040M20両(ひやく=りやう)、あめを百両、あわせて二百両。まづ百両かねをおひて 00001050¥P7 00001060L1/行(ゆき)ますから、雨も風も車ではやくよこしてくださひ。/跡(あと)が 00001070L2ね百両ハうちで払いませうといへバ、/雷(かミなり)もかぜの/神(かミ)も大き 00001080L3によろこび、扨も(四ウ)すさまじひ/仕込(しこミ)てごさります。シ 00001090L4テ、おまへのおやどもとハどこでござります。わしが/所(ところ)ハ 00001100L5/伊勢(いせ)町 00001110¥N2¥J 00001120¥X○七/両(りやう)二/歩(ぶ)△△△△△△△△△△△¥A/竹里(ちくり)作 00001130L8Sある/所(ところ)の/亭主(ていしゆ)、となりへきていふやう、なんでもおらが 00001140L9かゝアめハ、まおとこをしています。つけあてゝ/四(よつ)つにし 00001150L10てやるとせいていふゆへ、となりの/夫婦(ふうふ)、それハマアめつ 00001160L11たにせかぬがよい。きつと見すまして、切ともつくとも/存(ぞん) 00001170L12ぶんにしたがよいとなだめ、それよりていしゆ、いつもの 00001180L13ごとく/朝(あさ)(五オ)よりいでゝ、となりにしのんでやうすを/見(ミ) 00001190L14る。/密夫(まおとこ)のきたるを/見(ミ)すまして、/庭(にわ)からしのび/入(い)り、せう 00001200L15じをあけて見れバ、まくら/屏風(びやうぶ)のそとに/金(きん)八両ならべてあ 00001210L16り。/是(これ)をミるとていしゆ、/跡(あと)じさりにそろ+とつて/帰(かへ)る。 00001220L17/隣(とな)リにハ、めつたな/事(こと)でもできなひけれバよひがと、あん 00001230L18じる/所(ところ)へ、かのていしゆ、すご+/帰(かへ)るをミて、となりの 00001240L19/夫(ふう)婦、とふした+。見とゞけたかといへハ、かの/亭主(ていしゆ)、 00001250L20これおかみさん。ちよつと二/歩(ぶ)かしな(五ウ) 00001260¥N3¥J 00001270¥X○七/段目(だんめ)△△△△△△△△△△△△¥A/巴人亭(はじんてい)作 00001280M3Sあたりながめて/由良(ゆら)之介、つりどふろうのあかりをてら 00001290M4し、/読(よむ)ながぶミハ/御台(ミだい)より、かたきのやうすこま※と、 00001300M5/女(おんな)の/文(ふミ)のあとや/先(さき)、/与所(よそ)の/恋(こい)よとうら/山(やま)しく、おかるハう 00001310M6へよりのべかゝみ、/出(だ)してうつしてよみとる/文章(ぶんしやう)、下タや 00001320M7よりハ九/太夫(たゆう)が、月かげにすかしよむうち、おかるがかん 00001330M8ざしぱつたり/落(おち)て、それからじやらつき/出(だ)し、おかるうけ 00001340M9だそふ。イヱ+わたしにハ。ハテ、まぶがあるならそハ 00001350M10(六オ)してやろふ。/金(かね)わたしてくる/間(ま)、どつちへもいきや 00001360M11るな。コリヤ/女房(にようぼ)じやぞ。ソレモたつた/三日(ミつか)。それがつて 00001370M12ん。ア、かたじけのふござんす。チヤンと、めりやすにな 00001380M13つてはいる。おかるひとりいる/所(ところ)へ/平(へい)右衛門/出(て)て、そこに 00001390M14いるハおかるじやないか。/兄(あに)さん、/恥(はづか)しいところであいま 00001400M15したと、/是(これ)からいろ+あつて、おかるに/切(きり)つける。おか 00001410M16る、ぎやうてんする。平右衛門、/親(おや)おつとのさいごをかた 00001420M17る。おかるハしじうせき上ケ+、なんのいきておりませ 00001430M18う。さらバてござんす、/兄(あに)さんと(六ウ)いゝつゝ/刀(かたな)とりあ 00001440M19ぐる。やれ、まてしばしと、ゆらの介たち/出(いて)、/夫(おつと)かん平、 00001450M20/連判(れんばん)の/数(かづ)にハ/入(いつ)たれども、/未来(ミらい)で/主君(しゆくん)にいゝわけあるまじ。 00001460¥P8 00001470L1/其(その)いゝわけハコレこゝにと、ぐつと/突込(つつこむ)たゝみのすきま、 00001480L2/下(した)にハ九太夫、とふにうちへかへつて/居(い)ず。それもしらず、 00001490L3/又(また)こちらの/畳(たゝミ)のすきまへ、コレ/爰(こゝ)にと、つつこんでも/手(て)ご 00001500L4たへなし。ハテ、ふしぎなと/縁(えん)の下タへはいり、さがして 00001510L5もしれず。しようことなしに/上(うへ)へあがり、/蜘(くも)の/巣(す)のかほへ 00001520L6ひつかゝつたをとつて/羽織(はおり)をきて、(七オ)コレ/中居(なかい)ども 00001530L7+と/手(て)をうてバ、/中居(なかい)ども、アイ+。どなたさんじや 00001540L8へ。/水(ミづ)ぞうすいをくわせろ 00001550¥N4¥J 00001560¥X○しかた/咄(ばなし)△△△△△△△△△△△¥A/談洲楼(だんじうろう)作 00001570L11S/上野(うへの)の/山下(やました)を/二人(ふたり)づれてゆくと、むかふへくるハたしか 00001580L12に/大八(だいはち)だ。あいつハしかたばなしがくせだから、なんでも 00001590L13しかたをしゑゝねへよふに、/両(りやう)手をふたりでとらまへてや 00001600L14ろう。こいつハよかろふといふ内、そばへ/来(く)るから、だい 00001610L15八。とこへいつたと、/両(りやう)ほうから手をつかまへる。ウヽ、 00001620L16けふハと、しか(七ウ)たでいわふとするに、両手をはなさ 00001630L17ず。コレ、どこへいつた。コレ、車坂へいつたといふも/古(ふる) 00001640L18い。とふだ+。くるま坂か+といへバ、大八、くびを 00001650L19むかふへ/出(だ)して/大汗(おゝあせ)をながしながら、ヲヽサ、そこだア 00001660L20+ 00001670¥Q 00001680M1/賦(ふ)ハ△/心(こゝろ)を一ツへんにとゞめざる/義(ぎ)なり。かるがゆへに、かぞへうたと 00001690M2△△△いふ。こゝろをくばりはかる。十/躰(たい)にいふ/空戯(くうげ)、ひたすらたはむ 00001700M3△△△れ、じつすくなきかたなり 00001710M4△△△/是(これ)万八ばなし 00001720¥N5¥J 00001730¥X○三人/生酔(なまゑい)△△△△△△△△△¥A/狂歌堂(きやうかとう)作(八オ) 00001740M7Sどふだ。此ごろ仁三が所へゆくか。インニヤ、もふアノ 00001750M8やろふが内へハゆかねへ。/人(ひと)をばかにした、/芝居(しばい)のような 00001760M9やかばねだ。ウヽそりやアなぜ。マアきいてくりやれ。こ 00001770M10のぢうのばん、アノやろうが/所(ところ)で、/酒(さけ)を三/升(じやう)かつて/呑(のん)だ。 00001780M11アノかゝアもごうてきにくらうよ。三人で三じやうのんで、 00001790M12/又(また)二/升(しやう)かつた。あいつが子ぞうめも六つか七つだろうが、 00001800M13/親(おや)の/子(こ)だア。/茶椀(ちやわん)で二はいのんだ。モウ一ツはいのめとい 00001810M14ふ。かゝアもてつちりのんでいて、/子供(こども)にやアどくだから 00001820M15モウ/呑(のむ)なといふ。仁三めハ(八ウ)/大(だい)じなひといふ。/夫(それ)から 00001830M16ふうふげんくわになつた。おれが/留(とめ)て、コレ、おみたちハ 00001840M17どくたといふ/物(もの)を/呑(のま)せる/事(こと)ハない。おれがのむべいと、ど 00001850M18んぶりへついでひつかけた。ヱヽもう/四(よ)ツだろう。/帰(かへ)るべ 00001860M19いとたつたら、すこしよろけた。ハテもふ一つ/呑(のめ)ととめる。 00001870M20ヱヽめんどうなとふりきる。/四(よ)ツの/拍子木(ひやうしぎ)をチヨンとうつ 00001880¥P9 00001890L1と、あいつが/内(うち)がぐるりとまわつた 00001900¥N6¥J 00001910¥X○からす/猫(ねこ)△△△△△△△△△△△¥A/日頂庵(につてうあん)作 00001920L4Sある/女郎(じやうろ)屋の/内儀(ないぎ)、ひそうのからすねこが/子(こ)を/産(うミ)(九オ) 00001930L5しを/大事(だいじ)にそだてゝ、もふ二タ/月(つき)ほどにもなると/鼠(ねづミ)はとら 00001940L6ず、/料理場(りやうりば)のさかなをひくゆへ、りやうりばんが/庖丁(ほうてう)のむ 00001950L7ねで、あたまをくらわせる。/親(おや)ねこ/是(これ)をミて、はらをたち、 00001960L8/其晩(そのばん)/八(や)ツじぶんに、/戸棚(とだな)にいれてある/肴(さかな)を、どんぶりごと 00001970L9/小(こ)わきにかゝへ、そろ+ゆく。/料理(りやうり)ばん、まくらをあげ 00001980L10て/是(これ)を見れハ、ハテあやしや、まつ/黒(くろ)/出(で)たちにほうかむり、 00001990L11/眼(め)ハたまごの/光(ひか)りをあらわし、/刀(かたな)にあらぬごんほう/尻(しり)、さ 00002000L12ちやアけれぞと/身(ミ)づくろいして、/盗人(ぬすびと)め、シイといへバ、 00002010L13(九ウ)かみさまが、チヨ+++ 00002020¥N7¥J 00002030¥X○/天狗(てんぐ)△△△△△△△△△△△△¥A/有芳舎(ゆうほうしや)作 00002040L16Sコレ、/雷(かミなり)さまもこわひが、/天狗(てんぐ)さまもこわい。ムヽ、て 00002050L17んぐさまハどんな物だ。マア/鼻(はな)が高いハ。口ばしがながく 00002060L18てはねがあつて、/鳶(とんび)のよふな物さ。ムヽ、そんなら、き/様(さま) 00002070L19ハミたか。ヲヽサ。まいど/大山(おゝやま)でミた。廿五六なごうてき 00002080L20な/男(おとこ)が、らいこう/谷(だに)で大/太刀(だち)をかつゐで、かたつほうのう 00002090M1でに、くりからふどうをほつてゐたか、/何(なに)がミんなが/念仏(ねんぶつ) 00002100M2をもふすに、そいつば(十オ)かり、つがもない事だが、/天= 00002110M3狗(てん=ぐ)でも/鬼(おに)でも、こわい事ハないといふと、/山(やま)があれてきて 00002120M4な、すいとさらつて/持(もつ)てゆかれた。此やろうもあんまり口 00002130M5がすべつたからの事よ。そしてさらハれるはづた。ハテ、 00002140M6どこの/息子(むすこ)だな。あぶらげやのむすこよ 00002150¥Q 00002160M7/比(ひ)ハ△なぞらへうたなり。たくらべとも物の物に似たる也。十/躰(たい)にいふ 00002170M8△△△/謎字(めいじ)。なぞ+のよふにいへる也。是/秀句(しうく)ぢくち/落(おち)のはなし/△((ママ))の 00002180¥N8¥J 00002190¥X○はつ/雪(ゆき)△△△△△△△△△△¥A/白鯉館(ハくりくわん)作(十ウ) 00002200M11Sアヽふつたる/雪(ゆき)かな。/世(よ)にある人ハ/哥(うた)に/読(よミ)、/詩(し)をつくつ 00002210M12てたのしむであらう。おれも/狂哥(きやうか)ハめづらしくないから、 00002220M13ほつ/句(く)をかんがへよふと、/先(まづ)あつがんを一ツぱいひつかけ、 00002230M14/雪(ゆき)を/詠(なが)めてゐる/所(ところ)え、いつも/来(く)るせんざい/売(うり)/来(きた)り、だんな。 00002240M15わるい/物(もの)が/降(ふり)ました。/大根(だいこ)でもお/買(かい)なされぬかといふ。コ 00002250M16レ、わるい物がふつたとハ/不風雅(ぶふうが)なやつ。おれハ此雪で/発= 00002260M17句(ほつ=く)を/考(かんが)へて/居(い)る。こうもあろふか。/初雪(はつゆき)や人の/足(あし)あとあざ 00002270M18みの花。モシ、それハなんの事でござります。ハテ、(十一 00002280M19オ)/雪(ゆき)の/中(なか)に人の/足跡(あしあと)があざみの/花(はな)のようだから。ムヽ、 00002290M20きこへました。/面白(おもしろ)い。わたくしも一句いたしませふ。こ 00002300¥P10 00002310L1いつハ/下(した)におかれぬ。マア一ツはいのまつせへ。そして、 00002320L2こなたの/発句(ほつく)ハ。アイ。こふでござります。初雪や人の/足(あし) 00002330L3あと/小判形(こばんなり)。コレなぜ、人のあし/跡(あと)が小/判(ばん)なりだ。アイ。 00002340L4わたしハわらじをはいています 00002350¥N9¥J 00002360¥X○なぞ+△△△△△△△△△△△¥A/寛之(くわんし)作 00002370L7S/京(きやう)大/坂(さか)江戸の/者(もの)三人/寄合(よりあつ)ている/所(ところ)へ、ある人かけ(十一ウ) 00002380L8かねを持て/来(き)て、/是(これ)ハ/何(なに)といふ/物(もの)といへバ、京の者/夫(それ)ハお 00002390L9/妾(めかけ)さまといふ。その心ハ。とのさんについているわひな。大 00002400L10坂の者おゝゑらゐ事じや。大/坂(さか)てハ/是(これ)を大/船(ふね)といふ。その 00002410L11心ハ。ハテ、ミなとにつくでハないか。したり。/是(これ)ハおも 00002420L12しろいとほめれバ、江戸の者なんだ。おめかけ/様(さま)だの大ぶ 00002430L13ねのと、そんな事ではない。江戸でハ/是(これ)を/茶碗酒(ちやわんざけ)といゝや 00002440L14す。京大坂の人その心ハ。ハテ、ひつかけて/寐(ね)る 00002450¥N10¥J 00002460¥X○お/星(ほし)さま△△△△△△△△△¥A/長雄(なかを)作(十二オ) 00002470L17S/吉原(よしわら)の/新造(しんそう)、れんじへ/出(で)て、アレミなんし。こん/夜(や)ハた 00002480L18いふおそしさんがでなんした。/客(きやく)わらいながら、おそしさ 00002490L19までハない。おほしさまといふ/物(もの)だ。しんぞうイヱ+。/夫(それ) 00002500L20でも/内証(ないしやう)でお/寺(てら)へお/出(いで)なんした/時(とき)、わつちらも/参(まい)りんした 00002510M1か、むめいこうの/時(とき)、/飾(かざ)りものに/雲(くも)の/中(なか)からつるさがつて 00002520M2/大(だい)ぶんありんした。客それハ/星下(ほしくだ)りの/所(ところ)だ。もちろん/祖師(そし) 00002530M3/日蓮(にちれん)/大(だい)ぼさつハ、/星(ほし)のうまれかわりだといふ/事(こと)もある。新 00002540M4造そんなら、おほしさんが、おそしさんになりなんしたの 00002550M5かへ。(十二ウ)ヲヤばからしい。イヽぢくちだね 00002560¥Q 00002570M6/興(きやう)ハ△たとへうたなり。そへうたハかくれ、たとへうたハあらわるゝな 00002580M7△△△り。十躰にいわゆる/鄙諺(ひげん)、いやしきことはをきらハでいゝたてた 00002590M8△△△るなり 00002600M9△△△/是下(これしも)がゝりのはなし 00002610¥N11¥J 00002620¥X○三/枚洲(まいづ)△△△△△△△△△△△¥A/吾友軒(ごゆうけん)作 00002630M12S/海(うミ)の中へ/雷(かミなり)が/落(おち)て、よう+/洲(す)の/上(うへ)で/息(いき)をつき、あがろ 00002640M13うとしてもあかられず、二三日うろついて/居(い)る/所(ところ)へ、/漁師(りやうし) 00002650M14が/船(ふね)から/是(これ)を見、びつくりして、かつぱだと/思(おも)ふゆへ、ま 00002660M15づ(十三オ)/尻(しり)の/用心(ようじん)と、ふんどしをじつとしめる。其/時(とき)/臍(へそ) 00002670M16がつい/出(で)たをミると、雷じきにつかんで/引(ひつ)こぬき、すぐさ 00002680M17ま/天上(てんじやう)して/天帝(てんてい)えこれを奉る。/則(すなハち)御らんあつて、/今(いま)/汝(なんじ)が 00002690M18申ハ、/鉄炮洲(てつほうず)の/沖(おき)にて/悪人(あくにん)の/臍(へそ)をつかミ来るといへども、 00002700M19いつわりなり。/地眼鏡(ぢがんきやう)をもつて/此方(このほう)でハ見ていた。/咎(とが)もな 00002710M20き/漁夫(ぎよふ)のへそをとり/来(きた)る事、すばしりの/臍(へそ)にハおとるべし。 00002720¥P11 00002730L1其上/両(りやう)三日の/遅滞(ちたい)、かた※もつてふらちの/至(いた)り。そう 00002740L2+/下界(げかい)へおいおろすべしと、夫より雷ハてんぢく/浪人(らうにん) 00002750L3(十三ウ)となり/下界(げかい)へ/来(きた)りしが、/人界(にんがい)に/交(まじわ)らハ/見(ミ)せ/物師(ものし)の 00002760L4手に/渡(わた)り、ながくうきめを見べし。いつそ/海(うミ)になれたれバ 00002770L5むぐつて見よふと/飛込(とびこミ)、かいまん+と/分行(わけゆけ)ハ、/龍宮城(りうくうじやう)に 00002780L6いたる。/其時(そのとき)/門番(もんばん)の/水母(くらげ)、/何(なに)ものなれバ、あやしきやつと 00002790L7いふ。イヤ、/私(わたくし)ハ/雷(かミなり)でごさるが、はちぶされて/天竺浪(てんちくらう)人。 00002800L8なんと、/貴様(きさま)たちの/世話(せわ)で/龍宮(りうくう)の/小使(こづかい)にでもして/下(くだ)さるま 00002810L9いかといへバ、くらげとんだ/事(こと)をいふ。おらが/先祖(せんそ)が/猿(さる)を 00002820L10せわにした/斗(ばか)りで、此よふに/筋(すじ)ほねをぬかれた。なら(十 00002830L11四オ)ぬこと+。とハいふ/物(もの)、さぞこまるであらう。コ 00002840L12レ、/貴様(きさま)に/似(に)た/物(もの)ハ/川童(かつぱ)だ。/是(これ)へいて/頼(たの)むがよかろうとお 00002850L13しへられ、/夫(それ)より/雷(かミなり)、かつぱの所へ/行(ゆき)、/右(ミぎ)のわけをたのめ 00002860L14バ、かつぱがいふよふ、きさまハ/臍(へそ)、おれハ/尻(しり)。おなじよ 00002870L15ふでも/商売(しやうばい)ちがい。しかしちつと/見習(ミならつ)たならハ/出来(でき)もせふ。 00002880L16マアおれと/一(いつ)ツ/所(しよ)にあるくがよいと、/夫(それ)からかつぱか/同道(どう+) 00002890L17にて、まい/日(にち)人の/尻子玉(しりごだま)をぬくをミせる。二三日すぎて雷、 00002900L18モウ/覚(おぼへ)ました。/今日(けふ)ハやつてミませふ。そんならあそこに 00002910L19/子供(こども)(十四ウ)がおよいでゐる。あれをぬきやれ。/心得(こゝろえ)たと、 00002920L20/雷(かミなり)がずつとしりへ手をやつた所が、/思(おも)ひの/外(ほか)まへのほう 00002930M1へやり/過(すき)る。かミなりアヽそこ、まだへそだ 00002940¥N12¥J 00002950¥X○/不審紙(ふしんかミ)△△△△△△△△△△△△¥A/談州楼(だんじうろう)作 00002960M4Sある所の御/亭主(ていしゆ)、/学文(がくもん)を/好(この)ミ、/本(ほん)をよんで/居(い)ながら、/紙(かミ) 00002970M5をひつ/切(きつ)てつはをつけ、/本(ほん)の/中(なか)へはるを、/内儀(ないぎ)見てゐて、 00002980M6モシ/旦那(だんな)へ。なぜ/其(その)よふに紙をつはでお/張(はり)なさる。ていしゆ 00002990M7イヤ、これハとふも/分(わか)らぬ事を/先生(せんせい)に/聞(きく)(十五オ)/時(とき)のため 00003000M8に、/印(しるし)に/張(はつ)ておくのじや。/是(これ)をふしん/紙(かミ)といふ物じや。/女= 00003010M9房(にやう=ぼ)これを/聞(きい)て、/針仕事(はりしこと)をやめ、/紙(かミ)を/引(ひき)さき、つわをつけて 00003020M10/亭主(ていしゆ)の/鼻(はな)の/先(さき)へはる。コレ、/此女(このおんな)ハ何をするといへバ、女 00003030M11房たかくもないがと、ふしん/皃(かほ)。ていしゆ/笑(わらい)ながら、又紙を 00003040M12ひきさき、女房の/顋(ほう)ぺたえはる。女房何をなさるといへハ、 00003050M13ていしゆ/赤(あか)くもなひが 00003060¥Q 00003070M14/雅(が)ハ△物の/成就(しやうじゆ)してとゝのひたるてい也。たゞことうた也。/言雅(げんか)/意雅(いが)ア 00003080M15△△△リ。十躰にいはゆる/誹■(はいとう)/詞字(しじ)、からことばのうたなり 00003090M16△△△是りくつ/落(おち)のはなし(十五ウ) 00003100¥N13¥J 00003110¥X○子がへり△△△△△△△△△△△¥A/淮南(わ□なん)堂作 00003120M19Sある/遊女(ゆうしよ)屋へちいさな/奉公(ほうこう)人を/連(つれ)て来て、そう/談(たん)をする。 00003130M20ていしゆ/内証(ないしやう)へよんで、先親ゆびに/肉(にく)もある。手のすしも 00003140¥P12 00003150L1よい。面ざしも/能(よい)。きさまの/娘(むすめ)か。ハイ。じつの娘でこざ 00003160L2ります。ムヽ、/年(とし)ハいくつだ。アイ。七つでごさります。 00003170L3手いつぱいで拾両かさふ。ハイ。拾両でハどふもくめんが 00003180L4わるうござります。二十両程なら/相談(そうだん)をきめませふ。それ 00003190L5ハあんまりだといふ所へ、やりてがとた+/来(き)て、/旦(だん)那さ 00003200L6ん、(十六オ)/奉公(ほうこう)人かへ。ホンニいゝ/子(こ)てござりんす。コ 00003210L7レ、やり手しゆ。アノ/親父(おやじ)どのが二十両かりたいといふが、 00003220L8/素人(しろうと)りやうけんだ。今見た/所(ところ)ハよさそふだが、ゑて此よふ 00003230L9な子ハ子がへりがして、見ちがへるよふになる/物(もの)だ。十三 00003240L10四にならねバ/高金(たかがね)ハ/出(だ)されぬといへバ、/娘(むすめ)かやりての/顔(かほ)を 00003250L11じろ+ながめ/涙(なミた)ぐむを、/親父(おやじ)が、コレ、なぜほへる。/内(うち) 00003260L12でもいゝ/聞(きか)せたでなひか。/今(いま)/金(かね)がないと、かゝさまに/薬(くすり)を 00003270L13のませる/事(こと)ハならぬ。そふするとかゝハ/死(しぬ)ぞ。わりや/利根(りこう) 00003280L14に/似(に)ぬミれんな/者(もの)しやと、/涙声(なミたごへ)(十六ウ)て叱れハ、娘泣な 00003290L15がら、奉公ハいやでハないかね。ムヽ、そんなら何てなく。 00003300L16此おばさんのように、子返りがせうかと思て 00003310¥N14¥J 00003320¥X○六阿弥陀△△△△△△△△△△△¥A/振鷺亭(しんろてい)作 00003330L19Sあすハ六あミだへ行ほどに、コレ三助。七ツから起てめ 00003340L20しをたけ。おのしもまだ/参(まい)つた事ハあるまい。/供(とも)に/連(つれ)て行 00003350M1ふ。アイ。六あミた/位(ぐらい)なら、いつもの通りに起たらよふご 00003360M2ざりませう。ハテ、/何(なに)もしらずに、又/寐忘(ねわす)れおろう。いく 00003370M3らの/道(ミち)じやと/思(おも)ふ。ナニサ。たいがいしれた/物(もの)さ。/高(たか)が六 00003380M4阿弥陀だ。このぢうお/隣(となり)(十七オ)のおかみさんハそんな事 00003390M5じやアない。/昼飯(ひるめし)/過(すぎ)からじきにいつてごさつた。ソリヤア 00003400M6どこへ。/七観音(しちくわんおん)へさへ 00003410¥N15¥J 00003420¥X○/雷(かミなり)/見(ミ)舞△△△△△△△△△△△¥A/船積(ふねづミ)作 00003430M9S或所へ/雷(かミなり)が/落(おち)たといふ。夫から大/勢(ぜい)/見物(けんぶつ)がきて、/柱(はしら)の/引(ひつ) 00003440M10さばけたをひろうやら、/爰(こゝ)に/毛(け)がおちてある、イヤ/爪(つめ)の/跡(あと) 00003450M11があると、いろ+/評判(ひやうばん)する所へ、心やすき人/見舞(ミまい)に/来(き)て、 00003460M12ハテさて、おまへハ仕合ものだ。/是(これ)から大/金(かね)もふけがあろ 00003470M13ふ。イヤ/豊年(ほうねん)だといふ。/亭主(ていしゆ)大きに/腹(はら)をたち、コレあんま 00003480M14り人(十七ウ)をきよくるも/事(こと)による。此よふに/人立(ひとだち)かして 00003490M15/外聞(くわいぶん)がわるいのに、ほう/年(ねん)だの/金(かね)もうけたのとハ/何(なに)の事 00003500M16だといへは、ハテ、/今年(ことし)/地(ぢ)へおちた/物(もの)にわるい物ハない 00003510¥Q 00003520M17/頌(しやう)ハ△いわゐうたなり。世をほめ/神(かミ)につくる心あり。十躰にいふ/狂言(きやうげん) 00003530M18△△△ひとへにおかしきやうにのぶる。たとへバ/火(ひ)を水にいゝなし、又 00003540M19△△△心いきつうづるところあり 00003550M20△△△是/世話(せわ)にんじやう/芝居(しばい)によするはなし 00003560¥P13 00003570¥N16¥J 00003580¥X○/学文(かくもん)△△△△△△△△△△△△¥A/水魚亭(すいきよてい)作 00003590L3S金八、とふだ。かわる事もねへか。ヲヽ/次郎七(じろしち)、ひさし 00003600L4いな。この(十八オ)/頃(ごろ)ハいそがしいか、いゝ/工面(くめん)だな。ム 00003610L5ヽどうらくをやめて/細工(さいく)をせいだすから、/桁(けた)のさんたんに 00003620L6こまらねへ。ムヽそいつハいゝ。おれも此/頃(ごろ)ハとほうもね 00003630L7へ/物(もの)を/習(なら)ふ。ムヽ/何(なに)を/習(なら)う。アノ/学文(かくもん)をよ。/上方(かミがた)から/道二(とうに) 00003640L8さんといふ/坊(ぼう)さんか/来(き)て/道(ミち)を/教(をしへ)る。ハテナ、そりやア/極楽(こくらく) 00003650L9のか。ヱヽそりやア/引導(いんどう)の事だ。/夫(それ)しやアねへ、/読物(よミもの)よ。 00003660L10ムヽ、そいつハ/面白(おもしろ)かろう。/何(なに)をならう。アノ/大学(だいかく)を。コ 00003670L11レ、いつて/聞(きか)せうか。/大学(たいがく)ハ/孔子(こうし)のいしよにして、しよか 00003680L12く/徳(とく)に/入(いる)の/門(もん)なり。ナント/安(やす)くハあんめへがナ。/徳(とく)に/入(いる)の 00003690L13/門(もん)といへバ、マア(十八ウ)請合ても損をする気づかいハね 00003700L14へ。ムヽこいつハいゝ。おれもちつとハしつてるよ。アノ 00003710L15山高きかゆへといふ所をあげたか。インニヤ、まだそこへ 00003720L16ハゆかねへ 00003730¥N17¥J 00003740¥X○/五段目(ごだんめ)△△△△△△△△△△△¥A/先裏住(せんうらすミ)作 00003750L19Sさるおれき+、/茶番(ちやばん)/狂言(きやうけん)の/催(もよおし)につき、お側の家来に 00003760L20/忠臣蔵(ちうしんくら)の役/割(わり)。まづ五段目がかんしん。此/間(あいた)/見(けん)物した市 00003770M1川/団(だん)十郎が/定(さだ)九郎ハおれがする程に、/其方(そのほう)ハ/勘(かん)平、たれハ 00003780M2弥五郎、それハ与市兵衛との仰せ。/拙(せつ)者ハごめん(十九オ) 00003790M3といふものにハ/猪(しゝ)の役。いまた芝居も見物せぬものは/後見(こうけん) 00003800M4をいたせとの御意。いやともいわれす、夫より御出入の/踊(おとり) 00003810M5の/師匠(ししやう)か/毎(まい)日おしへて、いよ+其日になり、五段目の/口= 00003820M6幕(くち=まく)もよく、/親父(おやじ)ころしも/三升(さんじやう)をその/侭(まゝ)きれいによふお見あ 00003830M7げ申たとの/評判(ひやうばん)。この/幕(まく)が大/物入(ものいり)、/猪(いのしゝ)も/張子(はりこ)でハなるまひ 00003840M8と、/鼠(ねづミ)びろうどて/拵(こしらへ)たれハ、/猪(しゝ)か/出(て)ると/何(いづ)れもけつこうな 00003850M9もんだとじや+/誉(ぼめ)。それか/聞(きこへ)たゆへ、/猪(しゝ)になつた/役者(やくしや)も、 00003860M10ずつとはいるもほいないから、/色&(いろ+)二三/篇(べん)(十九ウ)/欠(かけ)まわ 00003870M11つている。定九郎ハ松の木の上から、はやふしゝを/追(おへ)+ 00003880M12と/御意(きよい)。/後見(こうけん)の/者(もの)、シイ+といふて、よふ+/追(おい)こみけ 00003890M13るを/切幕(きりまく)にて、/勘平(かんへい)の/役者(やくしや)これを見て、/是(これ)ハ定九郎にこん 00003900M14たんがあらうと思つてひかへて/居(い)る。定九郎ハあわやと/見= 00003910M15送(ミ=おく)れど、/鉄炮(てつほう)の/音(おと)もなし。あちらこちら/欠(かけ)あるきて小/声(ごへ)に、 00003920M16てつぽうを+といふを/聞(きい)て、/後見(こうけん)の/人(ひと)、/上下(かミし)モでずつと 00003930M17たち、勘平/召(めし)ます+ 00003940¥N18¥J 00003950¥X○/勧化(かんけ)△△△△△△△△△△¥A/談洲楼(たんしうろう)作(二十オ) 00003960M20Sある/寺(てら)の/和尚(おしやう)さま、/堂(どう)/建立(こんりう)のため、お/所化(しよけ)を/連(つれ)て/勧化(かんけ)に 00003970¥P14 00003980L1/出(で)る。/此間(このあいだ)かの/所化(しよけ)、/風(かせ)をひいて出られず。イヤ、こう/休(やす) 00003990L2んでゐてハよつぽどな/違(ちが)ひ。しかし/一(ひとり)人でハ/出(て)られぬから、 00004000L3いつそ/台所(たいところ)の三助に/頭巾衣(つきんころも)をきせ、/木魚(もくきよ)をたゝかせつれて 00004010L4/出(で)よふ。コレ三介。おミハ、ヲンアボキヤをしつているか。 00004020L5イヱ+、ぞんじませぬ。ハテ、/子供(こども)までしつている事を。 00004030L6そんならおしへてやろうと、/夜通(よどお)し/懸(かゝ)つて/教(おし)へ、あくる/朝(あさ)、 00004040L7/頭巾衣(つきんころも)で/僧(そう)からを/拵(こしら)へ、こいつハ/本(ほん)の/坊主(ぼうづ)のようだ。サア 00004050L8/夕部(ゆうべ)お(二十ウ)しゑた/通(とお)りいふてミろ。ハイ。おんあほぎ 00004060L9や/斗(ばか)りで、/跡(あと)ハ/忘(わす)れました。ハテ/扨(さて)ふきようなやつ。しよ 00004070L10うことがない。/木魚(もくきよ)はかりたゝいて/跡(あと)からこいと、/夫(それ)から 00004080L11二三/町(てう)、/和尚(おしやう)さまひとりてとなへて/行(ゆけ)バ、三助ほく+な 00004090L12らしなから、/何(なに)やらいふ/様(やう)な/口(くち)ぶり。モウ/覚(おほへ)たなと、おん 00004100L13あほきやといゝながら/振返(ふりかへ)つて見ると、三助、もくきよを 00004110L14たゝき/拍子(ひやうし)にかゝつて、ア、そふだハ。ア、/目出(めて)たい。ア、 00004120L15せきそろ 00004130¥Q 00004140L17/右(ミき)おゝけなき/和歌(わか)の六/儀(ぎ)によせて、/根(ね)もなき/咄(はなし)の一もとに 00004150L18しける/枝葉(えだは)をあらわすこと、/浅猿(あさまし)といふ人あらハ、/春(はる)の/林(はやし) 00004160L19の(廿一オ)/東風(とうふう)にうごき、/秋(あき)の/虫(むし)の/北露(ほくろ)になくもみな、/和= 00004170L20歌(わ=か)のすがたならすやと/高砂(たかさこ)の/謡(うたい)をうたハん、こや/四海波(しかいなミ)の 00004180M1しづかなる/御代(ミよ)のおゝんしるし、/四方(よも)の/好士(こうし)の/考(かうがへ)給ふ、 00004190M2その/数(かづ)+の/落(おとし)ばなしの/始(はしま)り+ 00004200¥N19¥J 00004210¥X○まじない△△△△△△△△△△△¥A/香東(こうとう)作 00004220M5Sある所の/娘(むすめ)、十二三まで/寐小便(ねしやうべん)をする/故(ゆへ)、/色(いろ)+/薬(くすり)だの 00004230M6/灸(きう)だのと手を/尽(つく)してもなをらす、/夫(それ)にハ/奇妙(きめう)な/法印(ほういん)さまが 00004240M7ある。/咒(ましなつ)て/貰(もらわ)つせへと、/連(つれ)て/来(く)る。しかつへらしく法印、 00004250M8娘(廿一ウ)を一ト/間(ま)にいれ、/六枚屏風(ろくまいひやうぶ)をたて/娘(むすめ)にむかひ、 00004260M9/前(まへ)をまくりなといふ。娘も/恥(はづか)しなから、よんどころなく/前(まへ) 00004270M10をまくれバ、/法印(ほういん)手を二つ/打(うち)、もふ/是(これ)でよいといふゆへ、 00004280M11/親仁(おやぢ)も/悦(よろこ)び、金百/疋(ひき)ふせ物に/出(いた)せバ、法印ちやくぶくして 00004290M12/帰(かへ)る。/跡(あと)にて/娘(むすめ)に/様子(やうす)を/聞(きけ)バ、恥かしい/所(ところ)をまくらせて/手= 00004300M13拍手(て=びやうし)を打たといふ。おやじ、/彼法印(かのほういん)の所へ/行(ゆき)、大きに/腹(はら)を 00004310M14/立(たつ)て、/右(ミぎ)のことをいへハ、法印ハテ、しろ/物(もの)を見て/手(て)を/打(うつ) 00004320M15たから、モウ/小便(しやうへん)どころでハない 00004330¥N20¥J 00004340¥X○二/階(かい)ずまい△△△△△△△△¥A/停々(てい+)作(廿二オ) 00004350M18Sどうらく/息子(むすこ)、二/階(かい)へ/押込(おしこめ)られて居て、/女郎買(しやうろかい)の事/斗(はか)リ 00004360M19あんじ、/何(なん)でも/忍(しの)んでぬけ/出(いで)んと、二階の/物干(ものほし)から/帯(おひ)を/提(さけ) 00004370M20て下タへ/釣下(つるさか)る。/今(いま)/少(すこ)しにて/足(あし)が/届(とゞ)かす、/思(おも)ひ/切(きつ)て/落(おち)る事 00004380¥P15 00004390L1もせずしてゐる/所(ところ)へ、/親父(おやじ)が此/音(おと)を/聞(きゝ)つけ/戸(と)を/明(あけ)て見る。 00004400L2/何(なに)やらあやしきてい。おやじそこにいるハといつじや。む 00004410L3すこアイ、/私(わたし)でござります。親父イヤ、こいつハ+。そ 00004420L4こに何をして/居(い)をる。むすこアイ、たゞぶらりと 00004430¥N21¥J 00004440¥X○すべり/道(ミち)△△△△△△△△¥Aつら/丸(まる)作(廿二ウ) 00004450L7S/箱(はこ)根のかしの木/坂(さか)を大/雨(あめ)のふるのに、/馬士(まご)が馬を引て、 00004460L8ハイ+、/夫(それ)すべるぞ+。ヱヽ此ちく/生(しやう)め。それころぶ 00004470L9な+。ハイヽ+といゝながら、とつさりころんで、コ 00004480L10レ見ろ。こうだわ 00004490¥N22¥J 00004500¥X○/提灯(てうちん)の大サ△△△△△△△△△¥A五十三/次(つき)作 00004510L13Sコレ、浅艸の/雷門(かミなりもん)へ/芝(しば)の/家根(やね)やから/上(あが)つた/提灯(てうちん)をミた 00004520L14か、とほうもない、てうちんの/底(そこ)が、/龍(りやう)の/丸(まる)をほつて付た。 00004530L15そしてかわかほんとうの/紅(へに)だから、/ひやう((ママ))でうしを見るよ 00004540L16うな/色(いろ)だ。大勢とんだ/物(もの)だな。そして/大(おゝき)サハどら/程(ほと)ある。 00004550L17口でハ/云(いわ)れねへ。(廿三オ)しかたでしねへけりやアわから 00004560L18ねへ。コレ+、ミんなが手をかしやと、かごめ+のや 00004570L19うに手に手をくミ/合(あい)、ぐるりと/廻(まわ)つて、マア此/位(くらい)な物だと、 00004580L20/力(ちから)を/入(いれ)てひくと、/中(なか)て/足(あし)のよわい/男(おとこ)が/向(むこ)ふの/方(ほう)へひつころ 00004590M1ばされてのめると、此べらぼうめへ。/挑(てう)ちんがやぶれるハ 00004600¥N23¥J 00004610¥X○女郎のぼせ△△△△△△△△△△¥A/菊人(きくんど)作 00004620M4Sコレ、/夕部(ゆうべ)よし/原(ハら)へいつたら、手めへの女郎が、此ごろ 00004630M5ハこなひといつて、しゆつ/懐(くわい)をいつたぜへ。/又(また)/嬉(うれ)しからせ 00004640M6うと/思(おも)つて。イン(廿三ウ)にや、/虚言(うそ)じやアねへ。ごうせ 00004650M7へにのぼせているぜへ。ソリヤアなぜ。ハテ、のぼせてゐ 00004660M8るせうこを、おれが見て来たといふに、少しましめに/成(なつ)て、 00004670M9ムヽ、/其証拠(そのしやうこ)といふハうでにほり/物(もの)でもしてゐるか。イン 00004680M10にや。/髪(かミ)を/切(き)つたか。インにや、ふけだらけだ 00004690¥N24¥J 00004700¥X○かけ取△△△△△△△△△△△△¥A五十三次作 00004710M13S/極月(しはす)の/晦日(ミそか)に/掛取(かけとり)ていの/者(もの)、/中田甫(なかたんぼ)を/通(とお)ると、/後(うしろ)よりさ 00004720M14かやきの/長(なが)いまつ/黒(くろ)な大/男(おとこ)、/腰(こし)に一本おとしざし、かの/定(さだ) 00004730M15九郎といふ/様(やう)な/出(て)たちでぬつと/出(いて)、/懸取(かけとり)の/懐(ふところ)へ手をいれ、 00004740M16(廿四オ)/嶋(しま)の財/布(ふ)を/引出(ひきた)して、さぐつて見ても、いかな四 00004750M17文銭さへ一文もなきから/財布(ざいふ)。/追剥(おいはぎ)ごうをにやして、そつ 00004760M18ぽうをはりのめし、/何国(いつく)ともなく/行(ゆく)/跡(あと)へ、てう/灯(ちん)/提(さけ)た所の 00004770M19者通りかゝり、どふさしつた。/盗人(ぬすびと)にてもあわしつたか。 00004780M20イヤ、/追剥(おいはぎ)に/逢(あい)ました。ムヽ、そんなら/剥(はが)れたのか。イヤ、 00004790¥P16 00004800L1はがれハいたさぬ。ハテ、/貴様(きさま)ハかけ/取(とり)そうなが、/金(かね)でも 00004810L2/取(とら)れたか。イヽヱ、/聞(きい)て/下(くだ)さい。けふハ/大晦日(おゝミそか)。そのうへ 00004820L3/爰(こゝ)ハ/気味(きミ)のわるい/中(なか)たんぼ。よる/夜中(よなか)あるくものが/心得(こゝろえ)が 00004830L4なくつて/済(すむ)ものか。ムヽそんなら/貴様(きさま)、/柔術(やわら)でもしつ(廿 00004840L5四ウ)ていさつしやるの。イヽヱ。けふハこうあろうと思 00004850L6つたから、一文もとれねへ所ばかりあるいた 00004860¥N25¥J 00004870¥X○どら/息子(むすこ)△△△△△△△△△△△¥A/有芳舎(ゆうほうしや)作 00004880L9Sあるなりあがりの/身上(しんせう)の/家(いへ)のひとり/息子(むすこ)、/親父(おやぢ)のしわい 00004890L10にハ/構(かま)わず、むせうに/金(かね)をつかい、吉原の/契情(けいせい)に/夜具(やぐ)の/敷= 00004900L11初(しき=ぞめ)をした/上(うへ)に、/鼈甲(べつこう)の/櫛(くし)をかつて/今宵(こよひ)/持(もつ)て/行(ゆく)つもり。/例(れい)の 00004910L12/朝寐(あさね)で/皃(かほ)を/洗(あら)ひに/台所(だいどころ)の/井戸端(いどばた)へをり、つい/辷(すべ)つて/袂(たもと)の/櫛(くし) 00004920L13を/取(とり)おとす。/夫(それ)ともいわれず、見せへ/来(き)て、(廿五オ)これ 00004930L14+だれぞ、一両だ。/井戸(いど)へおとした/櫛(くし)を/取(とつ)てくれろ+ 00004940L15とせいていへバ、/側(そバ)から/番頭(ばんとう)、あまりお/声(こへ)が大きうござり 00004950L16ます。/奥(おく)へ/聞(きこ)へましたら、大/事(こと)でござりませう。息子/聞(きこ)へ 00004960L17ても/大事(たいじ)ない。ばんとうさやうでハござらぬ。むすこなぜ。 00004970L18ばんとう大/旦(たん)那がとろうとおつしやりませう 00004980¥N26¥J 00004990¥X○/学者(かくしや)△△△△△△△△△△△△¥A/貢(ミつき)作 00005000M1S/学者(かくしや)/田舎(いなか)へ/行(ゆき)、/百性(ひやくせう)を/相手(あいて)にして/色(いろ)+/咄(はなし)をする。百性 00005010M2モシ、此/間(あいた)から/詩作(しさく)+とおつしやるハ、/何(なに)の事でござり 00005020M3ます。(廿五ウ)/詩作(しさく)といふハ、/五言(ごごん)またハ七/言(ごん)の/詩(し)といふ 00005030M4物を/作(つく)ります。/大(たい)がい/唐詩撰(とうしせん)などを/種(たね)にして/作(つく)ります。/左= 00005040M5様(さ=やう)なら/唐詩撰(とうしせん)とやらが/種(たね)になりますかといふそばから、モ 00005050M6シ、こやしハ/何(なに)を/致(いた□)ます 00005060¥N27¥J 00005070¥X○/鰻(うなぎ)の/筋(すじ)△△△△△△△△△△△¥A/白鯉館(はくりくわん)作 00005080M9S目/黒(くろ)から/碑門谷(ひもんや)のほうへ/廻(まわ)つて、/酒(さけ)が一ツぱい/呑(のミ)たいも 00005090M10んだが、どこぞにと見れバ、/幸(さいわ)ひ/江戸前(えとまへ)大かばやきと、/障= 00005100M11子(しやう=じ)に/書付(かきつけ)あり。/内(うち)へ/這入(はいつ)て、どふた。/能(いゝ)/魚(うお)があるか。てい 00005110M12しゆござります。客そんならいゝ/筋(すじ)を、三百/斗(ばか)リが/焼(やい)て/下(くた) 00005120M13さい。てい主/畏(かしこま)りましたと(廿六オ)/出(た)したを/喰(くつ)て見ると、 00005130M14/皮(かわ)がこわくていつこうな/物(もの)。きやく/是(これ)ハとんだ物だ。おれ 00005140M15が/魚(うを)ぶねをミてこよふと/勝手(かつて)へいつて、あれハ江戸/前(まへ)の/浅= 00005150M16黄(あさ=ぎ)でハあるまい。ドレ+、/浅黄(あさき)/所(ところ)か、まつ/白(しろ)になつたあ 00005160M17がり/鰻(うなき)。あたまハおたま/杓子(しやくし)のよふだ。そしてひつかきの 00005170M18/疵(きず)だらけ。/是(これ)がどこに/筋(すし)だろう。てい主ハテ/扨(さて)、/是(これ)でもす 00005180M19じさ。客/夫(それ)ハなぜ。ていしゆアノきうせん/筋(すじ) 00005190¥P17 00005200¥N28¥J 00005210¥X○/雷(かミなり)△△△△△△△△△△△△△¥A/竹里(ちくり)作 00005220L3Sコレ、雷/門(もん)をミたが、アレでハ/鬼(おに)だの。イヤ、/雷(かミなり)といふ 00005230L4/物(もの)ハ、/火(ひ)の/玉(たま)(廿六ウ)でござりますといふ。/脇(わき)から、/成程(なるほど)、 00005240L5/火(ひ)の/玉(たま)でござりませう。私が/釣(つり)に/出(で)て、/大夕立(をゝゆうだち)にあいまし 00005250L6た。/其時(そのとき)/沖(おき)の/方(ほう)を/見(ミ)たら、すさまじくひかつて、どろ+ 00005260L7+すつてんぢふ 00005270¥N29¥J 00005280¥X○/酒(さけ)△△△△△△△△△△△△△¥Aみつぎ作 00005290L10Sコウ八。おらアモウ酒をやめる気だ。/夕部(ゆふべ)内田屋から一 00005300L11/升(しやう)/買(かつ)て/来(き)たが、/其徳利(そのとくり)の/紋(もん)を見て、おらアあきれたぜ。 00005310L12/売人(うりて)かりこうで、/呑(のむ)ものを/馬鹿(ばか)にした。コレ、/印(しるし)をミや。 00005320L13ドレ、/是(これ)がどふして人をばかにしたといふのだ。ハテ、二 00005330L14/本(ほん)ぼうの/横(よこ)つたを(廿七オ)しへ/輪(わ)をかけたのだ 00005340¥N30¥J 00005350¥X○七/福神(ふくしん)△△△△△△△△△△△¥A/美智丸(ミちまる)作 00005360L17S/売人(あきんど)ハとり/分(わけ)、七/福(ふく)/参(まい)りをするがよい。ミんな/商売(しやうばい)の有 00005370L18/神(かミ)を/集(あつめ)た物だ。/先(まづ)大黒が米屋の/亭主(ていしゆ)、/恵比須(ゑひす)が/肴(さかな)や。ムヽ 00005380L19そんなら/弁天(べんてん)ハ。/女郎(しやうろ)やさ。びしや/門(もん)ハ。/鎗(やり)屋。/寿老人(じゆろうじん)ハ。 00005390L20鳥や。/福(ふく)ろく/寿(じゆ)ハ。/獣(けたもの)や。そして/布袋(ほてい)ハなんだ。ほていか。 00005400M1アレハアノ、唐子やのいんきよ 00005410¥N31¥J 00005420¥X○ぼうとる円△△△△△△△△¥A玄黄作(廿七ウ) 00005430M4Sよろづ/黒焼所(くろやきところ)とかいて、/獣(けもの)のくろやきを/売(うる)見せあり。/家= 00005440M5主(いへ=ぬし)がてい/主(しゆ)にむかつて、コレ、/珍(めづら)しい/商売(しやうばい)で、あきないハ 00005450M6あろうが、色+の/獣(けたもの)の/中(なか)にも、牛馬をやいて売るといつ 00005460M7て、/長(なか)屋/内(うち)でも、ちと/穢(けかれ)たとの/取沙汰(とりさた)。其やうな物ハどこ 00005470M8ぞへもつてゐて、/焼(やい)て/来(き)さつせへといふ。/亭主(ていしゆ)、/御(こ)尤でご 00005480M9ざりますが、/穢(けかれ)になる/物(もの)でハござりませぬ。ハテ、牛馬の 00005490M10/黒(くろ)やきがけがれにならぬとハ。そんならおめに/懸(かけ)ませう。 00005500M11外へハさたなしと/出(た)したのを見れバ、/苧(お)がらで/足(あし)を付た/茄= 00005510M12子(な=す)と/白瓜(しろうり)(廿八オ) 00005520¥N32¥J 00005530¥X○/開帳(かいてう)△△△△△△△△△△△△¥A/竹里(ちくり)作 00005540M15Sコリヤア/開帳(かいてう)だと思つたら/虚言(うそ)だ。こゝの/観音(くわんをん)ハ一寸八 00005550M16/分(ふ)あるといふのに、一尺八寸ほど有。本のを見へいといへ 00005560M17バ、/側(そば)にいるぼう様が、/本尊(ほんぞん)ハひぶつでござれバ、おがむ 00005570M18と目がつぶれます。おいてくんなせへ。きもがつぶれる。 00005580M19マアおれがおつひらいてと、みとてうをひつたくると、/光(ひか) 00005590M20り/電光(でんこう)のごとく、/両眼(りやうがん)ぴつしやり。/夫(それ)ミさつせへ。ホンニ 00005600¥P18 00005610L1うそハねへ 00005620¥N33¥J 00005630¥X○ぶせうな供△△△△△△△¥A/紫江(しこう)作△(廿八ウ) 00005640L4Sコレ三助。おのしハいつてもふせうな者だ。ちと/月代(さかや□)て 00005650L5もすつて、/髪(かミ)も/結(ゆつ)たがいゝ。/単(ひとへ)物もよごれた。/洗濯(せんたく)もしや 00005660L6れ。あす/供(とも)に/連(つれ)るぞと/云(いゝ)つけ、あくる日出る。先へたつて 00005670L7見ると、又いつもよりわるいなり。旦那大きにはらを/立(たち)、 00005680L8/夕(ゆう)べいひ付たに、/髭(ひげ)ぼう+と/湯(ゆ)にも入らず、其様なざま 00005690L9ハ/何事(なにこと)だといへバ、三介あたまをかき、ハイ、/左様(さやう)なら手 00005700L10/拭(ぬくい)でもかぶつて、お/供(とも)と見へぬやうに/参(まい)りませう 00005710¥N34¥J 00005720¥X○/相撲(すもう)/見物(けんぶつ)△△△△△△△△¥A/停々(てい+)作(廿九オ) 00005730L13S角力見物にゆき、だん+中入/前(まへ)に成て、手/前(まへ)のひいき 00005740L14の/角力(すもう)が/取組(とりくミ)になると、/立合(たちあい)から/息(いき)せいはつて、かたづを 00005750L15/呑(のミ)、/負(まけ)るな+。そふだ+とりきミかへつている内、思 00005760L16ふ様に/片透(かたすかし)に/土俵(どひやう)の/真(まん)中へ/相手(あいて)を/投出(なけだ)す。見/物(ぶつ)大/勢(ぜい)どつと 00005770L17いふ/声(こへ)。/嬉(うれ)しさこらへられず、/羽織(はおり)を/投出(なけだ)し、まだなんぞ 00005780L18やりたいから、/帯(おび)を/解(とい)て/着物(きもの)をぬきに/懸(かゝ)り、/何(なに)か気が付て 00005790L19べつたりすわりなから、友(とも)だちに、コレ、/下帯(したおひ)をかしてく 00005800L20れ 00005810¥N35¥J 00005820¥X○/学者(かくしや)△△△△△△△△△△¥A/菊人(きくんと)作(廿九ウ) 00005830M3S扨/先生(せんせい)。/私(わたくし)の/忰(せがれ)めハ、おまへ様へ/素読(ものよミ)に参ると申て、此 00005840M4間ハ吉原へ/通(かよ)ひます。御/異見(いけん)なされて/下(くだ)さりませと、/親父(おやぢ) 00005850M5がたのんだもしらす、/息子(むすこ)、/学文(かくもん)の/先生(せんせい)かたへ/来(く)る。先生 00005860M6/近(ちか)くまねき、/扨(さて)/足下(そつか)にハ此間、/甚(はなは)だほうとうなる事/承(うけた□ハる)。 00005870M7息子/夫(それ)ハ/何(なに)の事でござります。先生ハテ、かくすよりあら 00005880M8はるゝ事ハなしと。/足下(そつか)の/青楼(せいろう)へ/通(かよ)わるゝ事、/世(よ)もつてし 00005890M9る所で御座る。/父(ちゝ)います時ハ/遠(とお)く/遊(あそ)バすと申に、/近頃(ちかごろ)ハ両 00005900M10三日も/逗留(とうりう)いたされたげな。甚もつて/不仁(ふじん)の(三十オ)いた 00005910M11りといへば、息子先生の/仰(おうせ)御/尤(もつとも)。さりながら此程ふと/吉= 00005920M12原(よし=わら)へ/誘(さそ)はれ、よんどころなく/遊(あそ)びましたか、またあのよふ 00005930M13な/契情(けいせい)ハ、いかな先生でもお/通(かよ)ひなされずハなるまい。/誠(まこと) 00005940M14にはく/学(かく)/秀才(しうさい)と申てもよい。ウヽ、そんならよめますかの。 00005950M15むすこ/読(よめ)ますだんか。まづ/和漢(わかん)の/書(しよ)ハおろか、/客(きやく)の/鼻毛(はなげ)ま 00005960M16でよミます。/其上(そのうへ)に/色客(いろきやく)などの事をうけ/給(たまわ)れハ、しりんせ 00005970M17んと申。しらざるを/知(しら)さるとせよ、是しれるなり。又ばか 00005980M18らしうして、しののたまくなぞと申ますと(三十ウ)/咄(はな)しを 00005990M19聞て、先生、/横手(よこで)をうち、ハテ、それハ/誠(まこと)にぶつ/付(つけ)かうし 00006000M20だ。息子いゝへ。/籬(まがき)について、たつた/弐朱(にしゆ) 00006010¥P19 00006020¥N36¥J 00006030¥X○/七夕(たなばた)△△△△△△△△△△△¥A五十三次作 00006040L3S七月七日に/例年(れいねん)の通り、/天(あま)の/川(かわ)を/越(こへ)て、さゝげ/畠(ばたけ)へ/牽牛(けんぎう) 00006050L4の/星(ほし)/下(くだ)りて/見(ミ)給ふに、まだうすぐらき/所(ところ)を/織女(しよくじよ)をたづね給 00006060L5へバ、/畠(はたけ)のすみにて/何(なに)かものおとするを、すかし見れバ、 00006070L6/夜(よ)ばひ/星(ぼし)/来(きた)りて、/織女(おりひめ)をとらへ、/色(いろ)+/仇(あだ)つゐてゐる。/己(おの) 00006080L7れ/密夫(まおとこ)。につくひやつといわれて、よばひ/星(ぼし)、となりの/畠(はたけ) 00006090L8へ(三十一オ)/迯(にげ)て/行(ゆく)。/何国(いづく)までもと/追懸(おつかけ)て/行(ゆく)と、/何(なに)か/足(あし)へ 00006100L9ひつかけころんだゆへ、さぐつて見れバ、かぼちやのつる 00006110¥N37¥J 00006120¥X○/堀井戸(ほりいど)△△△△△△△△△△△¥A/竹里(ちくり)作 00006130L12S本/郷(ごう)/辺(へん)の/小高(こたか)き/所(ところ)に、うとくなる/人(ひと)、/金(かね)にあかして/井戸(いど) 00006140L13をほりしに、/数十丈(すぢうじやう)/堀(ほれ)ども、いまだ/能(よき)/水(ミづ)いです。/所詮(しよせん)/金(かね) 00006150L14にあかして/堀(ほる)がいゝと、/大勢(おゝぜい)して/段&(だん+)ほりけるに、/井戸堀(いどほり) 00006160L15/大声(おゝごへ)をあげて、/早(はや)く/引(ひい)て/上(あげ)てくれ+と/呼(よぶ)。/主(あるじ)をはじめ/皆(ミな) 00006170L16+、/余(あま)り/深(ふか)く/堀(ほる)ゆへ、あやしい/事(こと)でもあろうと、/急(きう)に/引(ひき) 00006180L17(三十一ウ)あげて、あわたゞしい。/何事(なにこと)だといへハ、井戸 00006190L18ほり/雪隠(せつちん)ゑゆきたい 00006200¥N38¥J 00006210¥X○/雷(かミなり)/咄(ばなし)△△△△△△△△△△△¥A/百人(もゝひと)作 00006220M1S火の/見(ミ)へ/雷(かミなり)が/落(おち)て、/家主(いへぬし)、/五(ご)人/組(ぐミ)、まづ/火(ひ)の/見番(ミはん)ハどう 00006230M2したと/欠(かけ)あがつて見れバ、/目(め)をまわしてゐる。やう+気 00006240M3がついても、うつかりとしてゐれバ、こいつハどふだ。コ 00006250M4レ八介。どふしたといつても、/目斗(めばかり)リきろ+。あんまり 00006260M5な事ゆへ、/撞木(しゆもく)をとつて、/中(なか)にも気のきいた/家主(いへぬし)が、はん 00006270M6せうをくらわせると、八すけ、(三十二オ)/耳(ミヽ)へゆびをさし 00006280M7て、とをひ+ 00006290¥N39¥J 00006300¥X○/雷(かミなり)ばなし△△△△△△△△△△¥A/紫江(しこう)作 00006310M10Sなんと/去年(きよねん)の六/月(かつ)ハ、すさまじい雷だの。やりて/衆(しゆ)も/久(ひさ) 00006320M11しいもんだが、/今(いま)まで/此(この)やうな/雷(かミなり)ハ/覚(おほへ)まい。やりてそれさ。 00006330M12廿八日のも十五日のも大きにお/鳴(なり)なさつたといふ。/側(そば)から 00006340M13/新造(しんぞう)が、ほんにねへ、/雷(かミなり)さんも/不順(ふじゆん)だね。二人/何(なに)がふじゆ 00006350M14んだへ。新造一ト/月(つき)に二/度(ど)なりなんした 00006360¥N40¥J 00006370¥X○/多田(たゞの)/薬師(やくし)△△△△△△△△¥A/玉嶌舎(ぎよくとうしや)作(三十二ウ) 00006380M17S本/所(しよ)の/多田(たゞ)の/薬師(や□し)へ、/何卒(なにとぞ)/忰(せかれ)が/眼病(がんびやう)/平愈(へいゆう)なさしめ給へ 00006390M18と七日の/願参(がんまい)り。三日目の/暁(あかつき)、/薬師(やくし)さまか/夢中(むちう)の/告(つげ)あつて、 00006400M19/善哉(よきかな)。/汝(なんじ)/忰(せかれ)が/目病(めやミ)の/祈願(きぐわん)、たちまち/平愈(へいゆ)なすべし。/去(さり)な 00006410M20がら、/汝(なんじ)日ごろ大/酒(しゆ)をすく事、/甚(はなはだ)わるし。/此後(こののち)/酒(さけ)を/禁(きん)ずべ 00006420¥P20 00006430L1しとの給ふと見へて/夢(ゆめ)ハさめ、ハテ/心得(こゝろえ)ぬ。目に/障(さわる)ゆへ、 00006440L2/忰(せがれ)に/呑(のむ)なとの/告(つげ)ならバ/尤(もつとも)な事だが、おれが/呑(のむ)のハじやまに 00006450L3/成(なり)そふもねへものじや。/薬師(やくし)さまにも、ちとつまらぬ事で 00006460L4ござりますと、お/別当(べつとう)さまに/聞(きゝ)たれバ、夫(三十三オ)ハ/其(その) 00006470L5はづさ。なぜでござります。ハテ、まんちうの/守本尊(まもりほんぞん) 00006480¥N41¥J 00006490¥X○/大鵬(たいぼう)△△△△△△△△△△△¥A鳰/下道(かどう)作 00006500L8S/親父(おやじ)の/留守(るす)に、/息子(むすこ)/友達(ともだち)を二三人/呼集(よびあつ)め、/狂哥(きやうか)の/咄(はなし)や/誹= 00006510L9諧(はい=かい)の/序(ついで)に、アノ/荘子(そうじ)に大きな事がいつてあると、/学者(かくしや)がい 00006520L10つた。まい+つふりの/角(つの)に/国(くに)が/有(あつ)て/軍(いくさ)をするとさ。まだ 00006530L11/蚊(か)のまつ/毛(げ)に/巣(す)をくふ/虫(むし)が/有(ある)などゝ、とほうもないことを 00006540L12いふもんだ。イヤ、/夫(それ)ハちいさゐ/物(もの)を大きくいふた/物(もの)じや。 00006550L13アノ/大鵬(たいほう)と云/鳥(とり)ハ、/片羽(かたは)がい三/千里(ぜんり)あつて、/九万里(くまんり)に/羽(は)を 00006560L14のすといふ。(三十三ウ)大きなもんてハないかといへハ、 00006570L15/成程(なるほと)マアこいつか/大(おゝ)きい+といふ所へ、/親仁(おやじ)、/表(おもて)から/戻(もと) 00006580L16つて/障子(しやうじ)をあけ、コレヤイ、べらほうも/能(よい)かげんにつくせ。 00006590L17/表(おもて)かちかい 00006600¥N42¥J 00006610¥X○/年(とし)の/市(いち)△△△△△△△△△△△△¥A/礒名(きめい)作 00006620L20S此間/遠(えん)国から/来(き)た/侍(さむらい)、/浅艸(あさくさ)の/市(いち)へさそわれ、/雲才(うんさい)の/羽(は)お 00006630M1りを/着(き)て/蔵前(くらまへ)を通り、/天王橋(てんのうはし)/辺(へん)て、/先(さき)へ/深(ふか)川の女と見えて 00006640M2/生植田(きうへだ)の小/袖(そて)、/黒(くろ)じゆすの/帯(おひ)、/其(その)かほの/美(うつく)しさ。見とれて 00006650M3段+ついて/行(ゆき)、/込合(こミやう)中てちよつと/尻(しり)をつめれハ、此女、 00006660M4ヲヤ(三十四オ)ついぞなひと、ふり/帰(かへ)り/顔(かほ)をミて、おへね 00006670M5へ/皮(かわ)ばおりだといへバ、侍ナニ、身ともハ/雲才(うんさい)の/羽織(はおり)だ 00006680¥N43¥J 00006690¥X○うぬ/惚(ほれ)△△△△△△△△△△△¥A/蓬雨(ほうう)作 00006700M8Sうす/白粉(おしろい)に/青(せい)たいを/付(つけ)、おれ/一人(ひとり)/色男(いろおとこ)と思つて/居続(いつゝけ)をし 00006710M9てゐる。/女郎(しやうろ)も又/外(ほか)の/客(きやく)か/来(き)たゆへ、そこへ/行(ゆく)。/新造(しんぞう)が其 00006720M10内二三人きて、/色(いろ)+ねだり/喰(くひ)をして、てふされるもしら 00006730M11ず、コレ、おいらんハどうした。新アイ。今てうつにお/出(いで) 00006740M12なんした。イヤ、/手水(てうづ)てハ/有(ある)まい。コハばからしい。ぬし 00006750M13をおいて、とこへお出なんせう。あ(三十四ウ)/ら((ママ))ほと/惚(ほれ)て 00006760M14いなんす/物(もの)を。客又うそ/斗(はか)り。新せいもん。おいらんばか 00006770M15りでハおつせん。/外(ほか)にも/惚(ほれ)ている物もあるけれど、/思(おも)ふよ 00006780M16ふになりんせん。客コレだれた。/座敷(さしき)/持(もち)の/内(うち)か。インヱ。 00006790M17/部屋(へや)か。インヱ。/新造(しんぞう)しゆか。インヱ。そしてだれた。お 00006800M18まへ/壱人(ひとり)で 00006810¥N44¥J 00006820¥X○とうなす△△△△△△△△△△△¥A/雛丸(ひなまる)作 00006830¥P21 00006840L1S夕/方(かた)、たうなすかぼちやの/仕舞(しまい)+と/売(うつ)て/来(く)る。おやじ、 00006850L2/此雨(このあめ)のふるのにふびんな事だ。おれが/残(のこ)らずかふてやろう 00006860L3と、/銭(ぜに)二百文/出(だ)して、コレ、ミんな/取(とつ)ても/仕方(しかた)がなひ。/半= 00006870L4分(はん=ぶん)こなたにやる。(三十五オ)/内(うち)でくふたがよい。/夫(それ)ハ/有(あり)が 00006880L5たふござりますと/悦(よろこ)ひて/立出(いでたち)しが、イヤ、/是(これ)ほどハおれも 00006890L6/喰(くわ)れぬ。/帰(かへ)りがけ/売(うつ)て/行(ゆこ)ふと、又/新道通(しんミちどお)りを、たふなすか 00006900L7ぼちやのしまひ+と/呼(よひ)あるく所へ、/初(はしめ)の/亭主(ていしゆ)に/出合(てあい)、/顔(かほ) 00006910L8を/見合(ミやわせ)て、たふなすかぼちや、たつた今のもらひたて 00006920¥N45¥J 00006930¥X○/親心(おやこゝろ)△△△△△△△△△△△¥A/未青(びせい)作 00006940L11S御/子息(しそく)さまハ御/発明(はつめい)そうにござりますといへハ、/親仁(おやじ)/嬉(うれ□) 00006950L12そふに、イヤ、またいたづら/斗(はかり)いたします。お年ハいくつ。 00006960L13ハイ、九つ(三十五ウ)でござります。ハテナ、十二三/位(くらい)と 00006970L14お見へなさる。お/手習(てならい)をなされますか。イヤ、/手習(てならい)/読(よミ)もの 00006980L15ハ/病身(びやうしん)になるとわるいから/止(やめ)させました。とかく/書事(かくこと)が/好(すき) 00006990L16でござります。/左様(さやう)なら、お/絵(え)でもお/書(かき)なさるかな。ハイ、 00007000L17/絵(え)のしたじかして、/此間(このあいだ)/丸(まる)をかきます。ソレハちと/拝見(はいけん) 00007010L18いたしたい。お/安(やす)い事。それ、おめにかけろと、/大奉書(おゝぼうしよ)へ 00007020L19/丸(まる)をいくつも/書(かい)たをミせる。コレハおそれいる。どふして 00007030L20お子/様(さま)がたの/筆(ふで)で此やうに。/私(わたくし)共ハぶん/廻(まわ)しでなけれバ 00007040M1/出来(てき)ませぬ。イヤ、/忰(せがれ)もやはりぶんまわしで(三十六オ) 00007050¥N46¥J 00007060¥X○/水茶屋(ミつちやや)△△△△△△△△△△△¥A/星衣(せいい)作 00007070M4Sコレ、/川端(かわばた)の/水茶(ミづぢや)屋の/娘(むすめ)のすいつけたばこを、おれハ/呑(のん) 00007080M5で/来(き)たといへバ、一人が、イヤ、おれハ/付(つけ)ざしを/呑(のま)せてき 00007090M6たといふ。また一人か、コレ、ふたりながらむりな/色仕懸(いろじかけ) 00007100M7のこわもてをしても、かん/心(じん)の/色男(いろおとこ)ハおれだ。イヤこいつ、 00007110M8/太平(たいへい)をいゝだした。/色男(いろおとこ)といふせうこが/有(ある)か。/夫(それ)ハしれた 00007120M9事。アノ/娘(むすめ)のうてに、おれが/名(な)をほらせた。/噂(うそ(ママ))なら/聞(きい)て見 00007130M10やれ。/南鐐(なんりやう)一/片(へん)がけだ。ムヽ、こいつハ/面白(おもしろ)い。サアゆ 00007140M11かふと/連立(つれだち)、コレあねさん。おめへ、/此男(このおとこ)を/知(しつ)てゐるか。 00007150M12アイ。それ見ろ。(三十六ウ)そしておめへ、此ぢうほつた 00007160M13のふといへバ、/娘(むすめ)/恥(はづ)かしそふに、/夫(それ)ハおまへも/堀(ほり)から、わ 00007170M14つちにもほつてくれと/云(いゝ)なさつたと/立派(りつぱ)にいふ。ナントど 00007180M15ふだ。サア/賭(かけ)にした/南鐐(なんりやう)一/片(へん)づゝ、おれによこせと/引(ひつ)た 00007190M16くつて/帰(かへ)る。/跡(あと)に二人が、とんだこつた。おめへも/男日(おとこひ)で 00007200M17りのしたよふに、ほる事もねへといへバ、娘、/夫(それ)でもたの 00007210M18ミなさるから、いやともいわれず。ムヽ、むりにほつたの 00007220M19か。どつちのうでだ。見せな。/腕(うで)じやアござんせぬ。そし 00007230M20てなんた。/蚓(ミヽず)を 00007240¥P22 00007250¥N47¥J 00007260¥X○/平家物語(へいけものかたり)△△△△△△△△¥A/有正(ありまさ)作(三十七オ) 00007270L3Sコレ、此/頃(ころ)おらがほうで/平家物語(へいけものがたり)を/講釈(こうしやく)にするが、/水鳥(ミづとり) 00007280L4の/羽(は)をとで/迯(にげ)たのなんのかのと、/面白(おもしろ)い/軍(いくさ)がなひ。ヲヽそ 00007290L5ふだろう。おれも/旦那(だんな)の/所(ところ)で、/源氏物(げんじもの)がたりの/講釈(こうしやく)を/聞(きい)た 00007300L6が、ちつとも/軍(いくさ)ハなひ 00007310¥N48¥J 00007320¥X○たゝき/牛房(ごぼう)△△△△△△△△△¥A/文馬(ふんま)作 00007330L9Sいたづらな小やろうに、コレ、/牛房(ごぼう)をゆでゝ、たゝき/牛= 00007340L10房(こ=ぼう)を/拵(こしらへ)ろと/云(いゝ)つけ、せんとうへいて/帰(かへ)つて見れバ、/牛房(ごぼう)ハ 00007350L11/俎板(まないた)の/上(うへ)にあげた/侭(まゝ)、/連木(すりこぎ)も/鍋(なへ)も/取(とり)ちらしてある。コレハ 00007360L12どこへ/行(ゆき)(三十七ウ)おつたと/外(そと)を見れバ、/犬(いぬ)をけしかけて 00007370L13いる/故(ゆへ)、すぐにつかまえて/来(き)て、うぬ、にくいやつと、/有= 00007380L14合(あり=わふ)すりこ/木(き)でくらわせる。此そうどうに/隣(となり)の/亭主(ていしゆ)来り、コ 00007390L15レハどう/致(いたし)た事でござる。イヤ、けふハ/内(うち)の/者(もの)も/留守(るす)ゆへ、 00007400L16たゝき/牛房(ごぼう)を/拵(こしらへ)ろと/云付(いゝつけ)たに、/犬(いぬ)をけしかけて/居(い)ます。こ 00007410L17んなやつハこふして+と、/又(また)/連木(すりこぎ)てたゝきのめせハ、コ 00007420L18レサ+。/夫(それ)ハたゝき/牛房(ごほう)でハのふて、たゝきやろうでご 00007430L19ざるといへハ、小やろう/泣(なき)ながら、こいつハいゝ+(三 00007440L20十八オ) 00007450¥N49¥J 00007460¥X○/女郎買(しやうろかい)△△△△△△△△△△¥A/恋川好町(こいかわすきまち)作 00007470M3Sコレ、/此頃(このごろ)ハ/丁子屋(てうじや)に/色(いろ)ができて、/節句(せつく)を/仕廻(しまつ)ておいた 00007480M4/着物(きもの)の/思(おも)ひ/付(つき)を/聞(きゝ)つせへ。/丁子小紋(てうじこもん)を丁子/茶(ちや)に/染(そめ)て、/羽織(はおり) 00007490M5も/同(をな)じ/事(こと)。/扇(おふぎ)もてうじびき。どうでごぜへす。こいつハイ 00007500M6ヽ。おれも/松葉(まつば)屋へ/行(ゆく)から、/松葉(まつば)小/紋(もん)をまつばいろの/対(つい)に 00007510M7せうといふ。そばから/昔通(むかしつう)のおやじ、/髭(ひげ)をぬきながら、/若(わか) 00007520M8い/時(とき)ハずい/分(ぶん)はでをするがよい。おれもまいど/越前(ゑちぜん)やへ/行(ゆく) 00007530M9ぢぶんにハ、づきんもなめしがわをかぶつた(三十八ウ) 00007540¥N50¥J 00007550¥X○/素人(しろうと)/医者(いしや)△△△△△△△△△△△¥A/談洲楼(だんじうろう)作 00007560M12Sおまへハ/医者(いしや)さまのまねをするが、アノ/癪(しやく)といふものハ 00007570M13とうした/物(もの)だな。ハテ、あれハはらの/内(うち)に一尺ばかりの/棒(ぼう) 00007580M14があつてつつぱる。/夫(それ)がつかえるのだ。ムヽ/聞(きこ)へた。アノ 00007590M15/男(おとこ)の/痔(じ)ハわかしゆの/時(とき)からの事でもありそうな物だが、/女(おんな) 00007600M16の/痔(じ)のあるといふハ、どふした事だな。ムヽ、あれハ/舂米(つきこめ) 00007610M17屋の/隣(となり)で/壁(かべ)のくずれるやうなもの(三十九了オ) 00007620¥P23 00007630¥Q 00007640L1/喜美談語(きミだんご)△△△後篇 00007650L2△△△△△近日出来 00007660L5△△△△南茅場町 00007670L6△△△書△△今福屋祐助板 00007680L7△△△△江戸橋四日市 00007690L8△△△林△△上総屋利兵衛板 00007700L10△△△△△△△△△△△△△△△△△△(三十九了ウ) 00007710¥P24 00007720¥U噺本大系△第十三巻 00007730¥T/噺手本忠臣蔵(はなしてほんちゆうしんぐら)△〔題簽〕 00007740¥G 00007750¥Y 00007760L15寛政八年正月刊 00007770L16振鷺亭主人作・跋 00007780L17多田屋利兵衛板 00007790L18小本一冊 00007800L19東大国文研究室蔵 00007810¥Y噺手本忠臣蔵△△△△△作者△△振鷺亭 00007820M3序詞/鮹(たこ)有リといへ共、/煮附(につけ)ざれバ其/鮑(あハび)をしらずとハ、/笑(わら)ふ 00007830M4/門(かど)にハ/福(ふく)来る、百/福咄(ふくばなし)の/会席(くわいせき)に、たとへバ/餅(もち)の/酔(よひ)見へず、 00007840M5/酒(さけ)ハミだれて廻さるゝ。/例(ためし)を/爰(こゝ)に/無■書(むだがき)の、ヲトシS咄や 00007850M6口/合(あひ)や、/足利(あしかゞ)/左兵衛能卿(さひやうへのかミ)/直義公(たゞよしこう)、/鶴(つる)が(口ノ一オ)/岡(おか)八まん 00007860M7/宮(ぐう)え御代/参(さん)として/下着(げちやく)なりけれバ、/馬場(ばゝ)先キにまく打まハ 00007870M8し、かうの/武蔵(むさし)の/守(かミ)/師直(もろなを)、/桃井(もゝのい)/若狹助(わかさのすけ)、ゑんや/判官(はんぐわん)、ゐぎ 00007880M9を/正(たゞ)して相/詰(つむ)る。うちかけ/姿(すがた)しとやかに、ゑんやがつまの 00007890M10かほよ御前、/遥(はるか)さがつてかしこまれバ、直義御らんじ、い 00007900M11かにかほよ。/義貞(よしさだ)が/着(ちやく)用の/甲(かぶと)、/誰(たれ)有ツて見しる人、外にな 00007910M12し。目きゝ(口ノ一ウ)+といふ所なれ共、そんなやぼな 00007920M13直義でハない。なんと、/甲(かぶと)を/着(き)て/寝(ね)らるゝ/仕方(しほう)ハ有ルまい 00007930M14か。かやうな事ハ女の/知恵(ちゑ)に有ル事なれバ/尋(たづぬ)るなりと、女 00007940M15子にハけんめいさへもやハらかに、お声も又なこやか。/随= 00007950M16分(ずい=ぶん)寐られますとも+。ムヽシテ何を着て寐らるゝ。/仕様(しやう) 00007960M17何ンと+。Sハテ、/柏餅(かしわもち)におよりまし(口ノ二オ) 00007970¥P25 00007980¥G(口ノ二ウ・口ノ三オ) 00007990¥G(口ノ三ウ・口ノ四オ) 00008000¥P26 00008010¥G(口ノ四ウ) 00008020¥N1¥J 00008030¥X○二段目 00008040M3/本蔵(ほんぞう)がしんてい、御らんに入んと、御そばのちいさ/刀(がたな)ぬく 00008050M4よりはやく、しよゐんなるめしがへざうり、かたしかた/手(て) 00008060M5の/早(はや)ねたバ、とつくと/合(あハ)せ、ゑん/先(さき)の(一オ)/松(まつ)のかた/枝(ゑだ)ず 00008070M6つパと/切(きつ)て、手ばしかくさやにおさめ、サア/殿(との)。マツ/此通(このとを) 00008080M7りにさつパりと/遊(あそ)バせ+と、しやくりかくれバ、わかさ 00008090M8之/介(すけ)、いつかうへい/気(き)で、その/手(て)ハふるひ+との/返答(へんとう)。 00008100M9(一ウ)/取(とり)あへず、サ、是ハ/荒神(くわうじん)松でござりますといへバ、 00008110M10S本蔵、モウかハぬぞよ 00008120¥N2¥J 00008130¥X○三段目 00008140M13/師直(もろなを)、まいないの金銀をしこためるにしたがひ、いつかう 00008150M14つかハ(二オ)ず、なめかハかしてばかりたのしミけるが、 00008160M15/後(のち)にハ/鉄(てつ)、/赤(あか)がね、しんちう、なまりまで、なめる/病(やまひ)とな 00008170M16り、/我(われ)いまだ、/塔(たう)のうへなる/玉(たま)をなめて見ず。/何(なに)と/と((ママ))ぞ、 00008180M17/浅草(あさくさ)の五/重(ぢう)の/塔(たう)のうへ(二ウ)に有るぎぼうしゆをなめて/見(ミ) 00008190M18たひとの/望(のぞ)ミ。/出頭(しゆつとう)/第(だい)一の/仰(おゝせ)、/何(なに)がさつそく五重の/塔(とう)へあ 00008200M19ししろをかけさせ、てつぺんのぎぼうしゆをなめて見、/多= 00008210M20年(た=ねん)の/望(のぞミ)/達(たつ)したりとよろこびける。(三オ)Sアノ/貴殿(きでん)にハ、 00008220¥P27 00008230L1/塔(たう)のぎぼうしゆをおなめなされたか△Sなめましたとも 00008240L2+△Sどのやうな/物(もの)でござるな△Sイヤ、思ふた/程(ほど)にも 00008250L3ござらぬ。/橋(はし)のぎぼうしゆに、/塩気(しほけ)のなひものさ(三ウ) 00008260¥N3¥J 00008270¥X○同 00008280L6/伴内(ばんない)、/判官(はんぐハん)様の御屋しきのまど下を/通(とを)るに、/恋人(こひひと)のおかる 00008290L7が/出(で)て/居(い)る。もとより大のうぬぼれゆへ、りきミが付て、 00008300L8わき目もふらず/通(とを)りすぎて(四オ)ふりかへり、まとを見れ 00008310L9バ、ヱヽばかな、/白鳥(はくてう)の/徳利(とつくり)さ 00008320¥N4¥J 00008330¥X○同 00008340L12そうたい、/貴(き)さまのやうな、内にばかりゐる/者(もの)を、/井戸(ゐど)の 00008350L13/中(なか)の/鮒(ふな)じやといふたとへがある。/貴様(きさま)(四ウ)もてうど井戸 00008360L14の中のふなと/同(おな)じ事、ハヽ+++と/悪口(あくこう)す。はんぐ 00008370L15わん/腹(はら)にすへかね、おれが井戸のふななら、こなたハイヤ、 00008380L16/水瓶(ミつかめ)の中のすいくわだ。シヤこいつ、/武士(ぶし)をとらへて、す 00008390L17いくわとハ。ヲヽ、まつかで/無(な)(五オ)けりや/銭(ぜ)ニヤとらぬ 00008400L18と、ぬきうちにまつ二つ 00008410¥N5¥J 00008420¥X○四段目 00008430M1/雷神門(かんなりもん)、/鳴(な)りものいつしきうけ/合(あい)にて、/忠臣(ちうしん)くら四だんめ 00008440M2の/幕(まく)、/石堂(いしだう)/右馬之丞(うまのぜう)に/立役(たちやく)にてハ(五ウ)/矢大臣(やだいしん)、やくし/寺(じ) 00008450M3次郎左衛門にハ/敵(かたき)やく/仁王(にわう)、/由良之介(ゆらのすけ)ハ/上下役(かミしもやく)といひ、に 00008460M4がミありて、くめの/平(へい)内よしときハまり、/地蔵(ぢぞう)の/顔(かほ)も三度 00008470M5なでれバ/腹(はら)が/立(た)つといふ所より、ゐんぐわ地蔵、ゑんや 00008480M6(六オ)はんぐわんの/役(やく)まハり。/扨(さて)/下坐(げざ)にハ/風(かぜ)の/神(かミ)、ヒウ 00008490M7++と竹ぶへ入リの/合(あい)かたになり、はんぐわん、/刀(かたな)さ 00008500M8か手に取なをし、ゆん/手(で)につき立、/引廻(ひきまハ)す。らうかのふす 00008510M9まふミひらき、かけ/込(こむ)大星由良之(六ウ)介、/主君(しゆくん)の有さま 00008520M10見るよりも、ハはつとばかりにどうとふすと、/ちよぼを(S浄るりの事)か 00008530M11たり切り、/雷(かミなり)ごろ+にて、平内ゆら之介の/出端(でハ)。/石(いし)の/像(ざう) 00008540M12ゆへ/花道(はなミち)の/間(あいだ)、思ふやうにかけられず、どたり+と、や 00008550M13う+(七オ)本ぶたいへきたれバ、Sはんぐわんヤレ、由良 00008560M14之介。おもかつたハやい 00008570¥N6¥J 00008580¥X○五段目 00008590M17忠臣くら五だんめ御すひものといふかんばん。/是(これ)ハ/珍(めづ)らし 00008600M18ひとはいつて見れバ、まづおち付に定九郎が(七ウ)ぼたん 00008610M19のすひもの。次にかん平がてつほう/汁(じる)。其次が/夜(よる)の/鶴(つる)の子 00008620M20を思ハぬハなひといふこゝろで、与一兵衛が/鶴(つる)のすひもの。 00008630¥P28 00008640L1是ハあたゝまつて/妙(めう)だ。/酒(さけ)ハととへば、Sかん酒弥五郎 00008650L2(八オ) 00008660¥N7¥J 00008670¥X○同 00008680L5まさつや、しろうときやうげんの定九郎のふり付をたのま 00008690L6れ、けいこをしてやり、/初日(しよにち)にまさつ屋、ぬいぐるミのし 00008700L7ゝをかぶつて、/花道(はなミち)からいつさんに、いなむらの(八ウ)か 00008710L8げへかけこミ、どうするかと定九郎を見て居れバ、せぼね 00008720L9をかけてどつさりとあばらへぬける二ツ玉。うんともぎや 00008730L10つともいふ間なく、ふすぼりかへりてたをれるしうち、あ 00008740L11つはれ/故人(こじん)(九オ)/仲蔵(なかそう)のもんきりかた。Sしゝ、/横手(よこて)をう 00008750L12つて、イヤ、/火縄(ひなハ)くさひ/物(もん)だ 00008760¥N8¥J 00008770¥X○同 00008780L15/桃(もゝ)太郎、/芝居(しバい)ごつこをしてあそバふといへバ、/猿(さる)と/雉子(きし)と 00008790L16犬と(九ウ)がいふにハ、/猪(しゝ)がてつほうにたすかるから忠臣 00008800L17くらがよひといふに、桃太郎、せうぶかたなを引ぬいて、 00008810L18定九郎の/身(ミ)ぶりをすると、S/猿(さる)が、キヤタ+++△ 00008820L19S/雉子(きし)が、ケンケン++ケン△S犬が、ワアン+ 00008830L20(十オ) 00008840¥N9¥J 00008850¥X○六段目 00008860M3かん平もろはだおしぬぎ、わきざし/腹(はら)につき立んとすると、 00008870M4御無用と/声(こへ)かけられ、ハテがつてんのゆかぬ。御無用とと 00008880M5ゞめたハ、此/刀(かたな)の手のうちかと申したひが、(十ウ)それハ 00008890M6九だん目。/何(なに)ゆへあつて本蔵どの、此あばら屋へ御出、か 00008900M7たじけなしと、かしらを下れバ、本蔵かさぬぎすてゝ内へ 00008910M8はいり、/殿(との)はんぐわん様の/切腹(せつぷく)も、/元(もと)ハといへバ、まいな 00008920M9い金をおしまれた(十一オ)ゆへの事。今/貴殿(きでん)のはら切るも、 00008930M10天よりわれにあたふる金などと、御用金からおこる事。あ 00008940M11まり気のどくゆへ、出るまくでも/無(な)ひに/出(で)ましたハ、本蔵 00008950M12がはら進上申たい。Sそれハ(十一ウ)かたじけなひが、/貴= 00008960M13殿(き=でん)どうばらがなくてハ、九段めの御役目が立ますまひがな 00008970M14Sイヤ、三段目で/自腹(じばら)を切つておきました 00008980¥N10¥J 00008990¥X○同 00009000M17弥五郎、与一兵衛がしがいをあら(十二オ)ため、/郷(がう)右衛門 00009010M18殿、これ見られよ。/麦(むぎ)わらざいくを見るやうな与一兵へが 00009020M19しがい、ことに/大森(おほもり)の/和中散(わちうさん)をくわゐ中いたしおるからハ、 00009030M20扨ハ大/師(し)がハらまいりの/帰道(かへりミち)、高なハからふねにのり、/難= 00009040¥P29 00009050L1舟(なん=せん)(十二ウ)して/吹(ふき)ながされ、/鉄炮洲(てつほうず)とハ見ゆれども、/是(これ)ハ 00009060L2/刀(かたな)でこじ付たきず 00009070¥N11¥J 00009080¥X○七段目 00009090L5おかる、/初会(しよくわい)のきやくのざしきへ出ていたりしが、/酒(さけ)ハの 00009100L6ミい(十三オ)せんといふ/折(おり)から、わかひもの、せんべいを 00009110L7/台(だい)につミて/出(いだ)す。きやく、/是(これ)ハ/気(き)が/付(つい)たと、にばなをさせ 00009120L8てすゝめる。おかるもせんべいに大きに/気(き)があれども、な 00009130L9じミもなけれバ、くわれ(十三ウ)もせず。そつとたもとへ 00009140L10いれ、あきざしきへはいつてくハんとせしが、だれぞ見ハ 00009150L11せぬかと、たもとから出しかねて、かふろをよびて、すゞ 00009160L12りをとりよせ、せんべいをとりてハむだ/書(かき)(十四オ)をする。 00009170L13由良之介ハつりどうろうのあかりをてらしよむながぶミ、 00009180L14思ひ付たるのべかゞミ出して、うつしてよミとるぶんしや 00009190L15う。おかるがかんざし、ばつたりおつれハ、下にハはつと 00009200L16(十四ウ)見あげてうしろへかくすふミ。Sゆらさんか 00009210L17Sおかるか。そもじハそこに何をかき給ふぞ。/定(さだめ)てうつく 00009220L18しひ手であらふ。ちと/拝見(はいけん)とさしよれバ、おかる、はづか 00009230L19しふござんすと、手でもん(十五オ)で口へ入れ 00009240¥N12¥J 00009250¥X○/道行(ミちゆき)/旅路(たびぢ)の/嫁入(よめいり)△八段め 00009260M3△△△△右ハ/口伝(くでん)の/噺(はなし)ゆへ、こゝにあらハさず 00009270¥N13¥J 00009280¥X○九段目 00009290M6/生国(しやうこく)/房州(ばうしう)下女のりん、どこか/能(よ)ひところが/有(あ)つて、ふと 00009300M7ゆら(十五ウ)之介の手がついて、めかけとなり、けしから 00009310M8ず/気(き)に入つて、お/石(いし)もおひ出され、今ハ内でも/外(そと)でも、お 00009320M9くさま+と、ちそうほんそうされるにしたがひ、/段&(だん+)お 00009330M10ごりがつき、/大童山(だいどうざん)をふのりに(十六オ)すつたにしき/絵(ゑ)と 00009340M11いふ身で、じよなめいてゐる。あるとき、うちかけすがた 00009350M12しとやかに、/昔(むかし)/馴染(なじミ)し/台(だい)どころへ出、ぶら+そこらを見 00009360M13まハし、Sコレ三介や。そこのまないたの上に、(十六ウ) 00009370M14何やら/白(しろ)ひものが/半(はん)てうのせてある。それハなんといふも 00009380M15のじや 00009390¥N14¥J 00009400¥X○同 00009410M18/父(ちゝ)本蔵、/家(いへ)のたから日本一のあほうの/鏡(かゞミ)、かゞみハおんな 00009420M19の(十七オ)たましゐなれバ、此度のよめいりに/遣(つか)ハすとい 00009430M20へバ、娘小なミ、ぴんとすねて、Sわつちやアいやよ、す 00009440¥P30 00009450L1かん△Sナゼいやだ△Sひよつと、ばかなつらに見へてハ 00009460¥N15¥J 00009470¥X○十段目(十七ウ) 00009480L4でつち/伊吾(いご)、あつらへおきし/夜(よ)うちのしやうぞくの/直(ね)だん 00009490L5を/呉服(ごふく)やへ/聞(きゝ)に/行(ゆき)、/直(ね)を/聞(き)ケバ、五十五両といふ。めんど 00009500L6うながら/書付(かきつけ)てくださいといへバ、/手代(てだい)がいふにハ、(十 00009510L7八オ)五十五両がおぼへにくゝハ、ソレ、ゆびを五十両よ。 00009520L8又こちらのゆびをおつて、五両と/覚(おぼ)へてござれといへバ、 00009530L9ヲツトよし+。のミ込ミ山と、両手をにぎつて立出しが、 00009540L10また立もどり、モシ+、(十八ウ)どうぞ、これ二両まけ 00009550L11てくれまひか。Sナゼヘ△Sこれでハ/戸(と)があけられぬ 00009560¥N16¥J 00009570¥X○同 00009580L14指を折て、了竹さん+。アノこわい/薬(くすり)の名ハなんといひ 00009590L15ましたね(十九オ)Sムヽウ、だいわうか△Sイヽヱ△Sそ 00009600L16んならまわうか△イヽヱ△Sそんなら、かうとぼうこん 00009610L17か△イヽヱ、ナニ、アノソレ、ばけもんどう 00009620¥N17¥J 00009630¥X○同 00009640L20れうちく、/病人(ひやうにん)のミやくをミて、(十九ウ)これハ此ごろは 00009650M1やるよい+といふやまひじやとて、/榊(さかき)の/葉(は)をせんじての 00009660M2ませけれバ、ふしぎや/病人(ひやうにん)さつそくなをりけれバ、よい 00009670M3+のやまひならハ、/了竹(りやうちく)さまにかゝるがよひと/聞伝(きゝつた)へ、 00009680M4(廿オ)よい+のはやりことばのごとくはやりける。ある 00009690M5/大医(たいゐ)、/足下(そくか)にはいかなる/名方(めいほう)にや。/医書(いしよ)に見/請(うけ)ざるくすり 00009700M6なりと/尋(たづぬ)れハ、/是(これ)ハ一/子(し)/相伝(さうでん)の/妙薬(めうやく)にて、わい+と申く 00009710M7すりなりと/答(こたへ)(廿ウ)ける。まことに了竹さまハいきやくし 00009720M8さまでハない、/生天王(いきてんわう)さまじやとて、よい+、ミなさん 00009730M9せんをなげてふしおがめバ、りやう/竹(ちく)、/扇(あふぎ)をあふぎながら、 00009740M10Sなげますと、すたりますぞや+(二十一オ) 00009750¥N18¥J 00009760¥X○同 00009770M13/長(なが)もちのうへにどつかと/居(すハ)り、ハヽヽ、女わらべをせめる 00009780M14やうに、人/質(じち)取つての御せんぎ。天川屋義平ハ男でござる 00009790M15とりきミちらせバ、とりての/人数(にんじゆ)、(二十一ウ)イヤ+、女 00009800M16じや+。男なら、まへをまくつて見せろとつめかけられ、 00009810M17まくらんとせしが、ばからしくなつて、ヨイハ。そんなら 00009820M18わたしや女じやハいなアと、なまけちらせバ、ヤア、いよ 00009830M19+うろんもの。女(二十二オ)なら、なをまくつて見せろ 00009840M20と、口+にわめかれ、義平、此へんとうに大きに手こず 00009850¥P31 00009860L1り、そんなら申なをしませふ。ヱヘン。S天川や義平、入 00009870L2ごミでござる 00009880¥N19¥J 00009890¥X○同(二十二ウ) 00009900L5おそのハひとり小てうちん、/伊吾(いご)のあほうが門おくり、ア 00009910L6ヽおかミさん。それハ大ぶんくすぼつてゐる、おだハらて 00009920L7うちんでハ、いきなとしまがやぼに見へる。/旦那(だんな)さんのあ 00009930L8だなぶらをもつて御出なさ(二十三オ)りやし。Sイヤ+、 00009940L9さられて/戻(もど)るに、見へハいらぬ△Sそれでもあんまりじや 00009950L10といへバ、Sおそのナアニ、/夜(よる)だからよひよ 00009960¥N20¥J 00009970¥X十一段目 00009980L13/貴殿(きでん)、/師直家(もろなをけ)の/浪人(らうにん)とや。/義(き)(二十三ウ)/士(し)ども/夜討(ようち)のせつ 00009990L14ハ、/病気(びやうき)にてお引ツ込ミか。Sイヱ+、/随分(ずいぶん)つとめてお 00010000L15りました△Sそんなら申さう。何ともつまりませぬ。たと 00010010L16へ大/星(ぼし)/鬼神(おにかミ)にもせよ、わづかの/人数(にんじゆ)。それに/切立(きりたて)らるゝと 00010020L17は(二十四オ)どうしたもの。むかしのほり川夜うちハ、/土= 00010030L18佐坊(と=さぼう)ハ三百/余(よ)/騎(き)、/義経(よしつね)がたハ/亀井(かめゐ)、/片岡(かたおか)、/伊勢(いせ)、/駿河(するが)、/弁= 00010040L19慶(べん=けい)、/静(しづか)御前にて、土佐が三百/余(よ)/騎(き)を。Sサア++、そ 00010050L20こをよく御れうけんなされい。その(二十四ウ)亀井、片岡、 00010060M1弁慶と申すやうなものが、四十七人まいりました 00010070¥N21¥J 00010080¥X○同 00010090M4としわすれに/狂言(きやうげん)をせんと、/縁機(ゑんぎ)の/吉兆(きつてう)、ゆらの介になり、 00010100M5其外(二十五オ)むかで小ばん、たからぶね、あふぎ、/福面(ふくめん)、 00010110M6ふくざんしよ。ゑびす大/黒(こく)、/注連(しめ)かざり、松竹、/海老(ゑび)、/昆= 00010120M7布(こ=ぶ)、かちぐり、しだ、ゆづりは、だい+、ところ、ほん 00010130M8だハら、ごまめ、かづのこ、/荒神(くわうしん)/絵馬(ゑま)、ミきのくち、(二十 00010140M9五ウ)とうめうざら、とうすミ/組入(くミいれ)、/太箸(ふとばし)、ざつき、さハ 00010150M10らの/手桶(てをけ)、まな/板(いた)、/庖丁(ほうてう)、すりこぎ、あぶりこ、ざる、/木= 00010160M11鉢(き=ばち)、/杵(きね)、/箕(ミ)、かます、まり、はご板、はま/弓(ゆミ)、すご六、は 00010170M12しら/暦(こよミ)、百介/油(あふら)、/紅(べに)やべに、地内やうじ、大/仏餅(ぶつもち)、/金龍山(きんりうさん) 00010180M13(二十六オ)もち、/都合(つがう)そのかず四十七いろ、師直/役(やく)あくま 00010190M14げだうのやしきへしかけると、師直手をあハせて、まけた 00010200M15++。 00010210¥Y是で市がさかへたと云々 00010220M17△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△大△尾 00010230M18△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二十六ウ) 00010240¥P32 00010250¥Y 00010260L1/源氏(げんじ)に/棲遑(しゞま)の/遊(あそび)あり。/余(よ)が/朋友(ともだち)、/催(もよふ)しの/会談(はなしぐわい)、/恰(あたかも)ジハ 00010270L2+トン+バリ+/而(として)、よく/雷(かんなり)の/堕(おち)を/採(とる)。/実(げに)も/荘周(そうしう)が/筆(ふで) 00010280L3を/棄(すて)ぜりふ、/羅月(らげつ)/松風(せうふう)/唇(くちびる)/飜(ひるがへ)りて、/弁(べん)ハ/雑司谷(そうしがや)の/風車(かざくるま)よ 00010290L4りも/軽(かろ)く、/疹瘡(はしか)の/鈴(すゞ)の/笹葉(さゝつぱ)に、/人間(にんげん)およバぬ(一オ)/狙(さる)の/狂= 00010300L5言(きやう=げん)。/捻(ひねつ)て/蟹(かに)の/復讐(かたきうち)、/咸(ミな)/惟(これ)/作者(さくしや)に/造化(ざうくハ)の無/尽蔵(はら)あり。/鬼(おに)か人 00010310L6か、インニヤ/天誕(てんたん)/虚無(きよむ)、/虚(うそ)から/出(て)た/実(まこと)にて、/竹(たけ)を/以(もつ)て/木(き)に 00010320L7/接(つく)/花咲翁(はなさきぢゝい)の/趣(おもむき)ハ、/闇(あん)に/観善(かんぜん)/帳元(ちやうもと)、/雖不当遠(あたらすといふともとほ)からず。 00010330L8/嗚呼(あゝ)/宰我子(さいがし)(一ウ)/貢舌(こうした)を/掉(ふる)ハヽ、/舌裁雀(したきりすゞめ)/天地(てんち)/乾坤(けんこん)、/幕(まく)なし 00010340L9の/閧&山(かち+やま)に/貍汁(たぬきしる)を/喰(くら)ハさん。こや/彼六義(かのりくぎ)の/比(ひ)の/体(てい)、/忠臣蔵(ちうしんくら) 00010350L10の/嵬説(こじつけ)、/雅素(もとより)/評番(ひやうばん)で/沽(かハ)つしやいと、/下手(げす)の/談(はなし)柄(二オ)/後(しりへ)に 00010360L11/序(じよ)す 00010370¥Q 00010380L13△△△/弥勒(ミろく)/旬稔(じうねん)/辰之年(たつのとし) 00010390L14△△△/百&太郎月(もゝたろうづき)天一天上 00010400L15△△△△△△△△△振△鷺△亭△主△人G 00010410L16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二ウ) 00010420G1△〔口絵中の詞書〕 00010430G2/桃太良(モモタロウ)/鬼嶋(ヲニガシマ)/夜討之図(ヨウチノヅ)/謀夫(ボウフ)之/話(モノガタリ) 00010440G3/弁士(ベンシ)之端聊擬談咲耳 00010450¥Q 00010460M6○惣目録并凡例 00010470M8@浄|留|理@△@力やさんの△|おやしきハ△|もふこゝかへ|もすさまじい@△/道行(ミちゆき)/旅路(たびぢ)の/嫁入(よめいり)△△@△三味せん|口伝之噺|△鳴物入@ 00010480M9△△△△△座中かけ合ニ御はなし申候 00010490M10△△△△役人替名△△△△△△△△△作△者△振鷺亭 00010500M11一高の師直△△△△雷△△神 00010510M12一天川屋義平△△△風△△神△@寛政八年△△△△七文舎作笑|辰正月△△△△遠杉戸右衛門@ 00010520M13一おかる母△△△そう塚ぢゝ△△△吉日ヨリ売出申候 00010530M14一やくし寺次郎左衛門仁△△王 00010540M15一石堂右馬之丞△△△矢大臣△千龝万歳大叶 00010550M16一塩冶判官△△△△△因果地蔵△△△△△△此外新作物 00010560M17一こし元おかる△△△多福弁天△△△△△△追&出板仕候 00010570M18一大星由良之介△△△久米平内△△△板元多田屋利兵衛 00010580¥P33 00010590¥U噺本大系△第十三巻 00010600¥T/雅興(がきよう)/春(はる)の/行衛(ゆくえ)〔内題〕 00010610¥G 00010620¥Y 00010630L15寛政八年三月刊 00010640L16一雄序・酒屋隣跋 00010650L17魯道等画 00010660L18大坂河内屋吉兵衛等板 00010670L19半紙本五巻五冊 00010680L20東大国語研究室蔵 00010690¥Y 00010700M1/伝聞(つたへきく)、/庚申(こうしん)の/夜(よ)、/三尸(さんし)ありて/人(ひと)の/身(ミ)の/善悪(ぜんあく)を/天(てん)に/告(つぐ)ると。 00010710M2さるによつて、/庚申待(こうしんまち)といふ事をなし、/淫欲(いんよく)を/戒(いましめ)て/清浄(せう※)に 00010720M3/身(ミ)を/護(まも)り、/君臣(くんしん)、/父子(ふし)、/夫婦(ふうふ)、/兄弟(けうだい)、/朋友(ほうゆう)に/睦(むつまじ)く、/罪(つミ)にな 00010730M4らぬ/落(おと)し/咄(はなし)が、/庚申様(こうしんさま)への/御馳走(ごちそう)なり。/謹(つゝしん)で/腹(はら)をかゝへ、 00010740M5/臍(へそ)が/宿替(やどがへ)するやうで、おかしうて+(一オ)/笑(わら)ふ/門(かど)へハ/福(ふく) 00010750M6/来(きた)る、/来(く)る/年(とし)も+、/花見(はなミ)の/座(ざ)にハ七/兵衛(べうゑ)、/咄(はな)しの/中(なか)にハ 00010760M7/長太郎(てうたろう)、/馬鹿(ばか)をつくしの/鄙(いなか)もの、/或(あるハ)/吾妻(あづま)の/通(つう)な/噺(はなし)、/乳母(うば)や 00010770M8/■鬟(こめろ)が/芝居噺(しばいはなし)、/人(ひと)/待(まつ)/宵(よい)の/恋噺(こいはなし)、/春(はる)の/行衛(ゆくゑ)を/花(はな)に/飲(のミ)、/噺(はなし)に 00010780M8/酔(ゑゝ) 00010790M9る/好事子(すけべい)か、/此度(このたび)の/噺会(はなしくわい)に/噺(はなし)の/数(かづ)を/算(かぞ)ふれバ、/凡(およそ)三万三千 00010800M10三百(一ウ)三十三ほど/有(ある)といナア。これを/聞猿(きゝさる)の/馬宥(ばゆう)が/聞(きゝ)、 00010810M11目あき/猿(ざる)の/魯道(ろどう)が見つけ、/山王(さんおう)の/桜木(さくらぎ)にかき上らんとする 00010820M12/所(ところ)へ、まだかけ+と口まめにはし/書(かき)するハ、/日(ひ)の丸の/扇= 00010830M13師(おふぎ=し)/一雄(かづを) 00010840M15△△寛政八丙辰の春に隣半の日△(二オ) 00010850¥P34 00010860¥G(二ウ) 00010870¥Y1雅興春の行衛壱 00010880M3△目次 00010890M5/壷中(こちう)/乾坤(けんこん)△△△△△△△△△△△△一雄 00010900M6/女荘子(おんなそうじ)△△△△△△△△△△△△△南& 00010910M7/雁(かり)と/燕(つばめ)△△△△△△△△△△△△△丸幸 00010920M8からくり/的(まと)△△△△△△△△△△△△酒林(三オ) 00010930M9/喜見城(きけんぜう)△△△△△△△△△△△△△△馬雄 00010940M10/出入(でいり)の/鄙(いなか)△△△△△△△△△△△△△永楽(三ウ) 00010950¥P35 00010960¥T1雅興春の行衛一 00010970¥N1¥J 00010980¥X/壷中(こちう)/乾坤(けんこん) 00010990L5/月(つき)と申升ものも、いづくの月も月にかわり/升(まし)た事ハ/厶(ごさ)りま 00011000L6せねど、水によつて/眺望(ながめ)も/深(ふこ)ふ厶り升。(/厶(ござ)り/升(ます)ハ/戯場家(げきでうか)に/用(もちゆ) 00011010L7る/詞(ことバ)にして、よく/人(ひと)の/知(し)るの/所(ところ)なれバ、/暫(しばらく)かりに用ゆ)/夫(それ)ゆへ/私(わたくし)も、 00011020L8/名所(めいしよ)の/水(ミづ)をとりよせ/升(まし)て、月を/泛(うかべ)て/楽(たのし)ミ升。S/夫(それ)ハ/一興(いつけう)な 00011030L9/儀(ぎ)。/拝見(はいけん)/仰付(おゝせつけ)られませ△Sサヽ/御覧(ごらん)下され。八けい/皿(さら)が 00011040L10/則(すなわち)/田毎(たごと)の月、/蛸坪(たこつぼ)が/須磨(すま)の/月(つき)。/翁(おきな)の/句(く)にも、/蛸坪(たこつほ)にはか 00011050L11なき/夢(ゆめ)や/夏(なつ)の月、と厶り升。これなる(四オ)/紫石(むらさきいし)にハ/石= 00011060L12山(いし=やま)の/秋(あき)の月、/汐竃(しほがま)が/松嶋(まつしま)の月、/富士(ふじ)の/模様(もやう)の/染付鉢(そめつけはち)ハ/清見(きよミ) 00011070L13の月で厶り升。/同(おな)じ/富士(ふじ)も/注連(しめ)の/有(ある)のが二見の月、/其外(そのほか)/更= 00011080L14科(さら=しな)、/姨捨(おばすて)と、/段々(だん+)と見せるうち、Sなる/程(ほど)、いづれもけし 00011090L15からぬ/面白事(おもしろいこと)で厶り升。此又/馬(ば)だらいに/轡(くつハ)の/入(いれ)て厶り升 00011100L16ハ、/武蔵野ゝ(むさしのゝ)月で/厶(ござ)り/升(ませ)うナア△S/成程(なるほど)、さやうで厶り升 00011110L17Sモシ、此/馬(ば)たらいハ/漏(も)り升が△Sイヤサ。/夫(それ)が/則(すなわち)/迯水(にげミづ) 00011120L18(四ウ) 00011130¥N2¥J 00011140¥X女/荘子(そうじ) 00011150M1@/夕(ゆう)ぎりの/身(ミ)△|しまい/部屋(べや)禿@Sモシ、こちのあんた(/禿(かむろ)、しんぞう、/引舟(ひきふね)など、/姉(あね) 00011160M2女郎をさして、こちのあんたとよぶ)とこのじや、ミへてゞ厶り 00011170M3升。S夕ぎり/聞(きい)てたも△Sどこのじやへ△S米やて厶り升。 00011180M4/米代(こめだい)弐〆八百五十四文、/段々(だん※)/遅(おそ)ふなり/升(まし)た△S夕きりびつ 00011190M5くりして、めつそふな。マアわたしにハ、/扇屋(あふぎや)といふ/親方(おやかた) 00011200M6さんが/厶(ござ)り/升(まし)て、そんなもの/買(かう)た/覚(おぼへ)/厶(ござ)り/升(ませ)ぬと、/言訳(いゝわけ)して 00011210M7/居(い)る/所(ところ)へ、/炭代(すミだい)、/木代(きだい)、/醤油代(せうゆだい)、/家賃(やちん)から/風呂代(ふろだい)迄/取(とり)に/来(く) 00011220M8るに/当(とう)わくし、/覚(おぼへ)ない事/言訳(いゝわけ)しても/中&(なか+)に/聞入(きゝいれ)す。(五オ) 00011230M9/口(くち)おしいやら/恥(はづ)かしいやら、いつそ/死(し)んでしまおふかと/心(こゝろ) 00011240M10づかひの/真最中(まつさいちう)、ばつたりと/夢(ゆめ)がさめて、/吉田屋(よしだや)の/二階(にかい)/座= 00011250M11敷(ざ=しき)、喜左衛門/夫婦(ふうふ)が/情(なさけ)にて、伊左衛門と久しぶりの/二枕(ふたつまくら)。 00011260M12/去(さり)ながら何にもせよ、わしハマアなんで、あのよふな/恥(はつか)し 00011270M13い/夢(ゆめ)ミたしらぬとおもへバ、そのはづじや。伊左衛門が/手(て) 00011280M14が、/夕(ゆふ)ぎりの/胸(むね)の上にあたつてあつた 00011290¥N3¥J 00011300¥X/雁(かり)と/燕(つばめ) 00011310M17ある/妾宅(せうたく)へ、/熊野(くまの)/辺(へん)から/下女(げしよ)おきしが、(五ウ)/寒中(かんちう)にも/袷(あわせ) 00011320M18でゑゝかげんの/所(ところ)から/出(で)てきて、大坂といふ所ハ/冷(ひへ)る所じ 00011330M19やとおもふて/居(い)るうち、ある/朝(あさ)、うらぐちへ/出(で)てびつくり 00011340M20して内へはいり、申+、うら/中(ぢう)せんざいにもどこにも、 00011350¥P36 00011360¥G(六ウ・七オ) 00011370G1見る程のものめつらしゝ雪の朝△一雄 00011380M1/塩(しを)のよふな物がおいて厶り升が、あれハ/何(なん)で厶り升へ。 00011390M2Sフウ、わがミの方にハないか。あれハ/雪(ゆき)じやわいの。ア 00011400M3ノ/台所(だいどころ)に、いまりやきの/坪(つぼ)がある。その/坪(つぼ)にまだ/去年(きよねん)のも 00011410M4有けれど、/其上(そのうへ)へあの/雪(ゆき)を/金杓子(かなしやくし)でなと、すくうて/入(いれ)てお 00011420M5いてたも。それを/雪(ゆき)の/水(ミづ)といふて、/夏(なつ)(六オ)(六ウ・七オ挿絵) 00011430M6になるといる物じや。Sハイといふて、/台所(だいどころ)へ/行(ゆき)、又ひよ 00011440M7んな/顔(かを)して/出(で)て/来(き)て、申、お/家(ゑ)さん。/上(うへ)のふたハとれまし 00011450M8たが、中のびいどろのふたがとれません 00011460¥N4¥J 00011470¥Xからくり的 00011480M11むかし+ぢゞハ山へ/柴刈(しばかり)に、ばゞハ川へせんだくに、 00011490M12@よく人の知ル|所なれバ略。@すゞめが/布(ぬの)おつている。Sぢゝお/定(さだまり)のせりふ 00011500M13じや。みやげにハつゞらくれるであろ。/重(おも)いのハ/化物(ばけもん)であ 00011510M14ろうし、/軽(かる)いのもどふやら物が(七ウ)/少(すくな)かろふかと、/今時(いまどき) 00011520M15のぢゞハ、ちと/爪(つめ)も/長(なが)ひ/方(ほう)也。/中(ちう)な所を下されといへバ、 00011530M16/雀(すゞめ)にチウとハ、こいつ、ゑらいとてうしあわして、やくそ 00011540M17くの事なれバ/葛篭(つゞら)を/出(だ)してあてがふに△おつと/心得(こゝろへ)、五右 00011550M18衛門もどき、こわいぢゞがおかしいかと、しやべりちらし 00011560M19てもどり/道(ミち)、おのれ、/今迄(いまゝで)こそ/柴刈(しばかり)のおやじなれ。せなに 00011570M20しつかり/負(おゝ)た/福(ふく)。マア大坂で/家(いへ)も/買(かい)、/揚屋(あげや)/茶屋(ちやや)の/味(あじ)もおぼ 00011580¥P37 00011590L1へ、まだ/泥亀(すつぽん)も/骨(ほね)ぬきで/喰(くわ)ふし、から/風呂(ふろ)で/粋(すい)をつかい、 00011600L2/振袖(ふりそで)の/妾宅(せうたく)おき、/吉(きち)(八オ)/文字屋(もんじや)の/補元丹(ほげんたん)で/精(せい)を/増(ます)のが第 00011610L3一也。/皺(しハ)くたの山の/神(かミ)ハどこへなと/授(さづけ)けてと、/味(むま)い/思案(しあん)の 00011620L4/棚(たな)おろし。いつの/間(ま)にやら/我屋(わがや)へ/戻(もど)り、としおそしと、つ 00011630L5ゞらのふたあけて見れバ/折琴姫(おりことひめ)。ぢゞもびつくり、/姫(ひめ)もお 00011640L6どろき、こゝハ/宗玄(そうげん)の/庵室(あんじつ)でハなゐかへ。Sぢゞ/宗玄(そうげん)かし 00011650L7らぬが、ゑらいどうげんじや(/野言(やげん)/鄙語(ひご)も/其(その)まゝに/記(しるす)。なを、/片= 00011660L8言(かた=こと)、/重言等(ぢうごんとう)も有ぬべし。/見(ミる)人/察(さつ)すべし) 00011670¥N5¥J 00011680¥X/喜見城(きけんぜう) 00011690L11/独(ひとり)ずミの/働人(はたらきど)。マアけふも/日和(ひより)もようて、百(八ウ)五十 00011700L12文が/辛度(しんど)しろ、/此内(このうち)から/家(や)ちんも/米代(こめだい)も、/扨(さて)/命(いのち)也けり/小半= 00011710L13酒(こなから=ざけ)、ごまめハ/金平(きんぴら)せハいらず、十二文の/栄耀栄花(ゑようゑいぐわ)、ゑつぼ 00011720L14に/入(いつ)て/居(い)る/所(ところ)へ、かべ/隣(となり)のとらねこが、ごまめの/皿(さら)へかゝ 00011730L15ろとする。おのれ、のらめと/追(おふ)ひやうしに、/酒(さけ)たんぽがこ 00011740L16ろり。/破(やぶれ)れたゝミへ/吸(すい)こむを見るにつけ、/力(ちから)を/落(おと)しての/独(ひとり) 00011750L17ごと。/扨(さて)も+++わし程不仕合なものハ/無(ない)ぞ。/去年(きよねん) 00011760L18ハかゝを/死(し)なし 00011770¥N6¥J 00011780¥X/出入(でいり)の/鄙(いなか)(九オ) 00011790M1/新町橋(しんまちばし)の/出入(でいり)から、/黒船(くろふね)ハ/女夫連(めうとづれ)で/欠落(かけおち)をしたとの/噂(うわさ)。庄 00011800M2兵衛ハまけたなりで/世間(せけん)へ/顔(かほ)が/出(だ)されぬと、忠右衛門が/有= 00011810M3家(あり=か)を/探(さが)せど、しれぬこそ/道理(どうり)、/遥(はるか)三十年も/後(のち)に/越後(ゑちご)の/新潟(にいがた) 00011820M4に/居(い)るとの/事(こと)をちらと/聞(きゝ)、/比(ころ)ハ/霜月(しもつき)/初(はじめ)の/比(ころ)、/乗(のり)こミも/顔(かほ)見 00011830M5せもあとに見/捨(すて)て/出(いで)て/行(ゆき)しが、とう※忠右衛門にめぐり 00011840M6/合(あい)、三十年あとの/出入(でいり)しなをしに/来(き)たとの/事(こと)。忠右衛門も 00011850M7いかさま、そふ/有(あり)そふなものじやが、こゝハ大坂と(九ウ) 00011860M8/違(ちが)ふて、きつふ/橋(はし)のふじゆうな所じやが、こゝ二十/町(てう)ばか 00011870M9りゆく山川にかけた/土橋(どばし)がある。そこまで/出(で)て下あれと、 00011880M10たがひに/身(ミ)づくろいすれバ、忠右衛門が女房が、これおや 00011890M11じどの。なんぼうがんぜうに見へても、/最早(もはや)七十といふ/年(とし)。 00011900M12このまあ/寒(かん)じるのに、あの山坂へいて/立引(たてひき)のなんと/若(わか)+ 00011910M13しゐ事。よしにして下されととめても、中+/聞入(きゝい)れず。 00011920M14庄兵衛/諸共(もろとも)山坂さして出て/行(ゆき)しが、/待(まて)ども+とんと/戻(もどら)ず。 00011930M15/其(その)(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)/夜(よ)も/殊(こと)に/大雪(おゝゆき)なるに、/夜(よ)が/明(あ)けて 00011940M16ももどらねバ、/近所(きんじよ)の/若(わか)ひ/衆(しゆ)/頼(たの)んで/来(き)て、/彼(かの)山坂へ/尋(たづ)ねゆ 00011950M17けバ、二人ながら/雪(ゆき)に/埋(むも)れ、/首(くび)だけになつている。こりや 00011960M18けしからぬと、めい+/鍬(くわ)でほりおこせバ、どふやらこふ 00011970M19やらほりおこしても、二人ながらいてつひて、しやきばつ 00011980M20たなりに/気(き)が/付(つか)ず。/夫(それ)からミなが/智恵(ちゑ)/出(だ)して、二人がぐる 00011990¥P38 00012000¥G(十ウ・十一オ) 00012010G1冬木立宿かせコヲレ若ゐ人△魯道 00012020M1りで火を/焼(たい)てあたるに、ぬくもりが入てや、忠右衛門も庄 00012030M2兵衛も(十一ウ)じミ+と、いてがとけて下へどつさり。 00012040M3S庄兵衛下にいたが、なんでごんす 00012050¥Y1雅興春の行衛一終(十二オ) 00012060¥P39 00012070¥Y1雅興春の行衛二 00012080L3△目次 00012090L5/後(のち)の/月(つき)△△△△△△△△△△△△△¥A筆彦 00012100L6/天(あま)の/邪鬼(じやき)△△△△△△△△△△△△¥A古新 00012110L7/桧笠(ひのきかさ)△△△△△△△△△△△△△¥A酒林 00012120L8/和哥(わか)の/道(ミち)△△△△△△△△△△△△¥A丸光(一オ) 00012130L9/後藤目貫(ごとうめぬき)△△△△△△△△△△△△¥A夢中館 00012140L10/五風十雨(ごふうぢうう)△△△△△△△△△△△△¥A大万(一ウ) 00012150¥T1雅興春の行衛二 00012160¥N1¥J 00012170¥X後の月(筆彦が咄の発も極て拵と言) 00012180M5/扨(さて)/藤屋(ふじや)伊左衛門おちぶれて、/吉田(よしだ)やへ行、夕ぎりに/逢(あハ)せて 00012190M6たもと/頼(たの)んでも、/喜(き)左衛門/甚(はなはだ)ふせうち。/伊(い)左衛門もさす 00012200M7がに/粋(すい)。なる/程(ほど)しりきれ/草履(ぞうり)に/紙子(かミこ)一くわん、此ざまにな 00012210M8りながら、/扇屋(おふぎや)の/太夫職(たゆふしよく)、心安ふ逢せてたもといふハ、こ 00012220M9ちのむり。たゞ/何事(なにごと)も/金(かね)でなけれバ/埒(らち)か/明(あか)ぬと、/夫(それ)からの 00012230M10/思(おもい)(二オ)/付(つき)。マア/鍋(なべ)/釜(かま)も/売払(うりはらい)、/八畳(はちぜう)しきの/身体(しんだい)かぎり、/新= 00012240M11屋敷(しん=やしき)からはりかけて、/千里(せんり)/一(ひと)とび/一勝負(ひとせうぶ)、/拍子(ひようし)がようて/江= 00012250M12戸堀(ゑ=どぼり)/堂嶋(どうしま)、/手(て)が/合(あふ)ほどに+、むかしの/藤屋(ふじや)の/百増(ひやくそう)ばい、 00012260M13万&〆目の/長者(ちようじや)となつて、/今(いま)こそ/大夫(たゆふ)を/根引(ねひき)の/時節(じせつ)、/千年(せんねん) 00012270M14も/万年(まんねん)も/花(はな)やか/暮(くらし)の/栄耀(ゑよう)せん、さかなやへハ/人魚(にんぎよ)の/注文(ちうもん)、 00012280M15/浦嶌(うらしま)が/玉手箱(たまてはこ)、あけくれ/恋(こい)しい/夕(ゆふ)きりが(二ウ)/顔(かを)/見(ミ)る/迄(まで)ハ 00012290M16おちつかぬと、/御出入(おでいり)の/牽頭(たいこ)/末社(まつしや)、大はなやかに/出立(いでたつ)て、 00012300M17/吉田屋(よしだや)へとぞなりこんだり。大こ/末(まつ)しやハ口+に、ソレ 00012310M18/扇屋(おふぎや)へ人ばしたてよ。/忠蔵(ちうぞう)、/多(た)八、/稲吉(いなきち)も/名(な)八も/巨連(これん)も/呼(よん) 00012320M19でこい。よしや/巴(ともへ)や/扇(おふぎ)大/折(おり)やのおさゝも、/筒井(つゝい)のミすへ 00012330M20も引さらへて/呼(よん)でこいと、いさミいさんでよばゝれハ、喜 00012340¥P40 00012350¥G(四ウ・五オ) 00012360G1雲となる烟に花の行衛かな△魯道 00012370M1左衛門ハとんで出、/芸子(げいこ)も大こも相かわらず、ミな/盛(さかん)にい 00012380M2られますが、御/残(のこ)り(三オ)/多(おゝい)ハ/夕(ゆふ)ぎりさま。あなたの/事(こと)を 00012390M3/句(く)にやんで、此七月の廿六日、はかなふなつて御しまひな 00012400M4されたと/聞(きい)て、ミな+あきれはて、伊左衛門の/力(ちから)おとし。 00012410M5/夫(それ)からのぶら+/病(やまい)。あんまさんより/灸(やいと)より、/恋(こい)しいハ夕 00012420M6/霧(きり)と、わするゝ/間(ま)なき有様に、/家内(かない)もあぐむ折こそあれ、 00012430M7大こ/医者(いしや)の/津賀摩(つかま)/耶三(やそう)、/敬(うや)+しう/持来(もちきた)りしハ、むかし/漢(かん) 00012440M8の/武帝(ぶてい)の/■残(たきのこ)しの/反魂香(はんごんこう)、/少&(せう+)(三ウ)/直段(ねだん)ハ/高(たか)けれど、/恋(こい) 00012450M9しいきミの/夕霊(ゆふれい)ハ、/請合(うけあふ)て出ますとの/口上(こうでう)。伊左衛門ハ/大= 00012460M10悦(おゝ=よろこび)。/直段(ねだん)ハとんとかまいなしと、/彼香(かのこう)を/買求(かいもと)め、/早(はや)夕き 00012470M11りに/逢(をふ)/心地(こゝち)に、/先(まづ)/髪月代(かミさかやき)さつはりして、/徐&(しづ+)と/彼香(かのこう)/■(たけ)バ、 00012480M12/案(あん)のごとく夕きりが/幽(ゆふ)れい、/烟(けふり)の/内(うち)より/立(たち)出たり。ヤレ夕 00012490M13ぎりか。なつかしやと、つもる思ひを/語(かた)らんと思ふ間に、 00012500M14/一陣(いちじん)の/天狗風(てんぐかぜ)に、夕ぎりが/形(かたち)ハきへて、伊左衛門ハたゞ/茫(ぼう) 00012510M15(四オ)(四ウ・五オ挿絵)/然(ぜん)、うつかりひよんとしていれバ、 00012520M16/魂(たましい)ハぬけて出て、こくうに/夕(ゆう)ぎりが/跡(あと)たづねまわるに、 00012530M17早あとかたも見うしなひ、/雲(くも)つかむよふな/事(こと)とハ/此時(このとき)より 00012540M18ぞ/初(はじま)れり。伊左衛門が/魂(たましい)、ほつとくたびれ、とある/森(もり)にや 00012550M19すらひけるに、ふしぎなるかな、/此森(このもり)の/梢(こずへ)に、さいたおさ 00012560M20へたと/酒(さか)もりの/声(こへ)。そつとのぞひて見た/所(ところ)が、/聞及(きゝおよび)し/天狗(てんぐ) 00012570¥P41 00012580L1さかもり。伊左衛門/興(けう)にいり、おれも七百〆目の/身代(しんだい)/捨(すて)て 00012590L2(五ウ)/揚屋茶屋(あげやちやや)の/座敷(ざしき)から/料理茶屋(れうりちやや)に/至(いたる)まで、/百物語(ひやくものがたり)、 00012600L3/百万遍(ひやくまんべん)、さらへ/講(こう)、/哥(うた)びらき、/拳会(けんくわい)、/舞会(まいくわい)、/噺会(はなしくわい)、/素人= 00012610L4芝居(しろと=しばい)と/舞上(まひあが)り、/種&(しゆ※)の/酒席(しゆせき)ハ/踏(ふん)だれど、/生身(せうじん)の/天狗酒盛(てんぐさかもり)。 00012620L5こいつハ/咄わる(はなせ(ママ))と/寐(ね)はらばい、/大通(だいつう)ばりの/銀(ぎん)きせる、やに 00012630L6さがりにくゆらせて、やゝ/興(けう)に/入(いる)/折(おり)からに、/大将(たいせう)/天狗(てんぐ)一座 00012640L7の内をきつと/見廻(ミまわ)し、いかに長吉/天狗(てんぐ)。/最前(さいぜん)/汝(なんじ)が/帰(かへ)りしよ 00012650L8り、さも/穢(けがら)らわしき(六オ)にほひのするハ、/察(さつ)する/所(ところ)、/汝(なんじ) 00012660L9/魔界(まかい)の/使(つかひ)をうけながら、/人界(にんがい)に/交(まじわり)りしやと/厳(きびし)き/詞(ことバ)に、長吉 00012670L10天狗ハびつくりし、/御大切(ごたいせつ)の御/使(つかい)に/行(ゆき)、/人界(にんがい)に/交(まじわ)わるべき 00012680L11/様(やう)、/且(かつ)もつてこれなく候と、/明(あき)らかに/言訳(いゝわけ)しても、くらい 00012690L12+、いかに/木(こ)の/葉(は)/天狗(てんぐ)ども、ソレ/吟味(ぎんミ)せよと/詞(ことバ)の下、ば 00012700L13ら++と/木(こ)の/葉(は)天狗、長吉天狗をぎんミしたれバ、長 00012710L14吉天狗がはねのうらに、/夕(ゆふ)ぎりが/幽霊(ゆうれい)が(六ウ)べつたりと、 00012720L15/蜘(くも)の/巣(す)のようになつて、ひつゝいてあつた 00012730¥N2¥J 00012740¥X/天(あま)の/邪鬼(じやき) 00012750L18はつたいや+と/売(うり)/歩行(あるく)。コレ、ちりの/粉(こ)やさん。なんぼ 00012760L19じやへ。Sはつたいの事なら、一/升(せう)で八十じや△Sそんな 00012770L20ら/一(ひと)ますおくれと、/直(ね)ぎりもせずに/買(かい)けれバ、はつたいや 00012780M1/感心(かんしん)して、ハア、/北(きた)わきハ/違(ちが)ふたもんじや。はつたいハち 00012790M2りのこといゝ、/一升(いつせう)を/一(ひと)ますといゝ、(七オ)そしてマア/直(ね) 00012800M3もねぎらす。/是(これ)からおれも、ちりのこといいましよと、/夫(それ) 00012810M4から/上町(うへまち)の/方(ほう)へ、ちりのこへ+と/売(うり)/行(ゆき)けるに、ある/職人(しよくにん) 00012820M5/見(ミ)て、はつたいや+といへバ、Sちりのこで厶り升とい 00012830M6ふに、S職人、内へはいり、かゝ。こんどからごもくハ/捨(すて) 00012840M7なよ 00012850¥N3¥J 00012860¥X/桧笠(ひのきがさ) 00012870M10/百敷(もゝしき)の/大宮人(おゝミやひと)にハあらで、/桜(さくら)かざして/春(はる)の/日(ひ)を/行(ゆき)くらし、 00012880M11/花(はな)のもとを/今宵(こよひ)の(七ウ)/宿(やど)りと/風雅(ふうが)ぐらしの/旅僧(たびそう)、しばし 00012890M12まどろむ/枕神(まくらがミ)に、さつまの守/忠度(たゞのり)の/幽霊(ゆうれい)、/忽然(こつぜん)としてあら 00012900M13われ、いかに/旅僧(たびそう)、なんじ/花(はな)にめづるの/心(こゝろ)ふかく、/且(かつ)しき 00012910M14しまの/道(ミち)に/執心(しうしん)なるがゆへ、/今(いま)/汝(なんじに)あたふべき/者(もの)ありと、 00012920M15/泥引(でいひき)の/古風(こふう)な/短冊(たんざく)をくれたり。/一首(いつしゆ)の/哥(うた)あるをミれバ、 00012930M16△△△/行(ゆき)くれ/此下(このした)かげをやどゝせバ 00012940M17△△△△/花(はな)やこよひのあるじなるらん 00012950M18とあり。/旅僧(たびそう)ミて、/成程(なるほど)(八オ)(八ウ・九オ挿絵)/聞及(きゝおよび)し/御(おん)よミ 00012960M19/哥(うた)。/此五(このいつ)もじハ、たしかに、/行(ゆき)くれてゞハ厶りませんか。 00012970M20Sムヽ、てハ/六弥太(ろくやた)にうたれたわやい 00012980¥P42 00012990¥G(八ウ・九オ) 00013000G1手おるにもとがなしいづれ花に風△魯道画 00013010¥N4¥J 00013020¥X/和(わ)哥の/道(ミち) 00013030M3へんぶつ/四五(しご)人あつまり、なんとマア、ことしハ/殊(こと)の/外(ほか)あ 00013040M4たゝかな/冬(ふゆ)でハないか。ちと/雪(ゆき)でもふれバよかろうなどい 00013050M5ふ内、壱人いふにハ、/年忘(としわすれ)がてら/面白(おもしろ)い/遊(あそび)を/趣向(しゆこう)したが、 00013060M6/今夜(こんや)こちの内へ/来(き)てくれまいかとの/事(こと)。そりや/一興(いつけう)と(九 00013070M7ウ)/暮(くれ)を/待(まち)かね、四五人/連(つれ)に/行(ゆき)けれハ、マア/座敷(ざしき)の/正面(せうめん)に 00013080M8/床(とこ)をしつらひ、/浄(ぜう)るり/会(くわい)の/趣向(しゆこう)と見へ、/拍子木(ひようしぎ)かち+、 00013090M9/拍子扇(ひようしおふぎ)の/音(おと)/高(たか)く、/黒(くろ)ぬりのかけ/板(いた)に、/北条時頼記(ほうぜうじらいき)/雪(ゆき)の/段(だん) 00013100M10/塚五(つかご)とかきつけ、いつの/間(ま)にかハ/庭(にハ)も/前(せん)ざいも/一面(いちめん)に/打(うち)わ 00013110M11たをしき、/扨(さて)かミ/屑(くづ)かごに/三角(さんかく)にきりたる/紙(かミ)を、したゝか 00013120M12いれて、いくつもこしらへ、/二階(にかい)へ/持行(もちゆき)、/扨(さて)/浄(ぜう)るりの/文句(もんく) 00013130M13も/丁(てう)ど/首筋(くびすじ)もとから、ひや++と/語(かたる)を(十オ)/相図(あいづ)に、 00013140M14/奥(おく)の/障子(せうじ)をさつとあくれバ、/一面(いちめん)の/雪景色(ゆきけしき)。/二階(にかい)よりハ/右(ミぎ) 00013150M15の/切(きり)かミをばら+。アレ御らんなされ。あつはれ/絶景(ぜつけい)。 00013160M16こりやおもしろい。/香炉峯(こうろほう)+といゝけれバ、たまらず/床(ゆか) 00013170M17のミすをちよいとあげた 00013180¥N5¥J 00013190¥X/後藤(ごとう)/目貫(めぬき) 00013200M20こゝの/虎(とら)さんが/酒(さけ)に/酔(よふ)て、/小路(せうじ)のミぞへはまつてじやあつ 00013210¥P43 00013220L1たぞへと、/子供(こども)がつげに(十ウ)/来(き)けれバ、/家内(かない)が/出(で)て/来(き)て、 00013230L2ほんになあ、めつそうな。からだも/泥(どろ)まぶれになつて、そ 00013240L3して/大道(だいどう)のまん/中(なか)にねて、このように、マアどこで/酒(さけ)のん 00013250L4だのじや。ゑゝかげんにのんだがゑゝわいのといゝけれバ、 00013260L5まわらぬ/舌(した)で、こゝこれが、ヱヽかげんじや 00013270¥N6¥J 00013280¥X/五風(ごふう)/十雨(じうう) 00013290L8これが/即(すなわち)こんど/建(たつ)た/内裏様(だいりさま)じや。なんとまあ、けつこうな 00013300L9/御普請(ごふしん)でハないかいのといふ(十一オ)て、ミな+/伏(ふし)おが 00013310L10ミ+してゐるところへ、/折(おり)ふしふき/来(く)るそよ+/風(かぜ)に、 00013320L11/築地(ついじ)の/内(うち)よりちら+と/桜(さくら)の/落花(らくくわ)。Sこの/花(はな)ハ/禁裏様(きんりさま)の/御= 00013330L12庭(お=にハ)の/花(はな)で/王様(おうさま)や/御(お)くげ様の/御覧(ごらん)なさる花じやのに、/風(かぜ)がふ 00013340L13いたおかげて、わしら/迄(まで)が見るとハありがたい/事(こと)ではない 00013350L14か△S/何(なに)いわしやるやら。そのけつこうな花が、なんの/風(かぜ) 00013360L15ぐらひでちるもので 00013370¥Y1雅興春の行衛二終△(十一ウ) 00013380¥Y1雅興春の行衛三 00013390M3△目次 00013400M5ちくらか/沖(おき)△△△△△△△△△△△魯道 00013410M6/似我蜂(じがはち)△△△△△△△△△△△△南枝 00013420M7/風雅人(ふうかじん)△△△△△△△△△△△△鈴吉 00013430M8/空(そら)ミヽ△△△△△△△△△△△△はし吉(一オ) 00013440M9/金太郎(きんたろう)△△△△△△△△△△△△灘平 00013450M10くら/天狗(てんぐ)△△△△△△△△△△△慶山 00013460M11/豊年(ほうねん)の/詞(ことバ)△△△△△△△△△△△筆彦(一ウ) 00013470¥P44 00013480¥T1雅興春の行衛三 00013490¥N1¥J 00013500¥Xちくらが沖 00013510L5/扨(さて)も/其後(そのゝち)、/盧生(ろせい)が/夢(ゆめ)の五十年も、/粟飯(あわいゝ)/炊程(かしくほど)ぞかしと/悟(さとり)ひ 00013520L6らいた/所(ところ)が、しかたもなし。いつそ/今一度(いまいちど)/面白(おもしろ)そふな/夢(ゆめ)ミ 00013530L7てこまそと、/宿(やど)のばさまにあつらへて、/夜食(やしよく)の/雑用(ぞうやう)/弐朱(にしゆ)/一= 00013540L8本(いつ=ほん)きつさりとはりこんで、こんどハやつぱりつねのめしに 00013550L9/羊(ひつじ)のすきやき、ぶたのきりミと、/夫(それ)+にあつらへて、 00013560L10(二オ)/又(また)/邯鄲(かんたん)のかり/枕(まくら)、ついとろ+と/眠(ねむ)るやいな、とあ 00013570L11る/浜辺(はまべ)に/釣(つり)の/舟(ふね)ゆら+と/漕出(こぎだ)して、/格別(かくべつ)/風(かぜ)にも/逢(あわ)なんだ 00013580L12が、大/日本(につぽん)へ/着(つき)にけり。こゝハ/即(すなわち)/長崎(ながさき)とて、/幸(さいわい)ちかづき 00013590L13の/商唐人(あきないとうじん)/居合(いあわ)せて、/長崎(ながさき)にも二三年、/吉雄氏(よしをうじ)もいりこん 00013600L14で/日本詞(につほんことバ)もいゝならひ、/四海(しかい)や/和荘兵衛(わそうひやうへ)ハ/外国(ぐわいこく)の/噺(はなし)が/合(あい)、 00013610L15/彼是(かれこれ)とするうち、上方へもちと出かけ、/一稼(ひとかせぎ)して見はやと、 00013620L16/程(てい)(二ウ)/赤城(せきぜう)を/少&(せう+)やるを/商売(せうばい)の/便(たより)にして、/大坂(おゝさか)でうら/店(たな) 00013630L17かり、三四年もくらせども、なじミのなゐ/大坂(おゝさか)で、しか 00013640L18+とした/事(こと)もなく、とかふ/思案(しあん)しているうち、ふと人の 00013650L19/世話(せわ)になつて、/町(まち)べんけいと/出(で)かけたが、/旦那衆(だんなしゆ)の/気(き)に/入(いつ) 00013660L20て、/真(まこと)の/牽頭(たいこ)になりすまし、/道頓堀(とうとんほり)の/大(たい)こ/店(ミせ)で八十八とい 00013670M1ふ/名(な)を出し、/夢(ゆめ)のよふな/人間(にんげん)じやと、ユメ+と/異名(いめう)しら 00013680M2れ、/罪(つミ)のない(三オ)のが/通(とほ)りもの、いつの/間(ま)にやら/客(きやく)の/世= 00013690M3話(せ=わ)で、/難波(なんば)/新地(しんち)で/呼屋(よびや)と/出(で)かけ、/夢(ゆめ)に見てさへよい+と、 00013700M4/文弥(ぶんや)おやまをかゝにもち、三吉といふ/子(こ)が/出来(でき)る。とまり 00013710M5の/御客(おきやく)にようねるおやま、ねるほど/楽(らく)ハない/物(もの)をと、/一休(いつきう) 00013720M6/自賛(じさん)の/懸物(かけもの)かけ、/夢想国師(むそうこくし)の/柱掛(はしらがけ)、/庚申(こうしん)の/夜(よ)も/甲子(きのへね)も/寐(ね)ま 00013730M7つりがよござり升と、/何(なに)をいふやら、うだら+/金(かね)ひろふ 00013740M8た/事(こと)も(三ウ)あり、/鱶(ふか)で/損(そん)した/事(こと)も/有(あり)、/死(し)んだ/人(ひと)に/逢(おふ)た/事(こと)、 00013750M9/高(たか)い/山(やま)からおちた事、/宙(ちう)をふハ+あるいたり、/恐(おそろ)しい/事(こと) 00013760M10おかしいこと、/夜(よる)かとおもへバ/昼(ひる)になり、/夏(なつ)かとおもへバ 00013770M11/雪(ゆき)もふり、/大坂(おゝさか)の/気(き)で/京(きやう)にもいたり、どぎらまぎらとくら 00013780M12せども、かり/初(そめ)にも五十年、/今(いま)ハとんとはへぬきの/日本人(につほんじん) 00013790M13になりすまし、/天竺(てんぢく)ハ/天(てん)と/心得(こゝろへ)、/唐(から)ハ/国性爺(こくせんや)の/楼門(ろうもん)より/外(ほか) 00013800M14しらぬ/人(ひと)になつて(四オ)(四ウ・五オ挿絵)しまひ、五十年の 00013810M15/夢(ゆめ)さめて、あたりを見れバ、/邯鄲(かんたん)の/里(さと)。/家内(かない)が/口(くち)+もの 00013820M16いへど、S@ろせい|いわく@ヽなんの/事(こと)じや。とんと/唐人(とうじん)の/寐言(ねごと) 00013830¥N2¥J 00013840¥X/似我蜂(じがはち) 00013850M19/鴬好(うぐひすすき)の/息子(むすこ)、/雛(ひな)を/飼(こふ)て/毎日(まいにち)/附(つけ)/親(おや)にかけて/楽(たのし)むを、/丁稚(でつち)ふ 00013860M20しぎそふに、申、/若旦那様(わかだんなさま)。/毎日(まいにち)+/河六(かハろく)の/附場(つけば)とやらへ 00013870¥P45 00013880G1霞けり先日の本の三笠山△魯道并題 00013890¥G(四ウ・五オ) 00013900M1御出なされて、此鴬をどうなされ升へ。Sアノ河六の/呉竹(くれたけ) 00013910M2といふ/鳥(とり)ハ、/直(ね)の(五ウ)/高(たか)ひ/親(おや)じやによつて、/此雛(このひな)もあの 00013920M3/鳥(とり)にかけて、/直打(ねうち)ものにするのじやと/聞(きい)て、/丁稚(でつち)も/合点(がてん)/行(ゆき)、 00013930M4/左様(さよう)なら、/申(もし)、よこ/町(まち)のアノのりやの/娘(むすめ)も、よい鳥にかけ 00013940M5るのじやてゝ 00013950¥N3¥J 00013960¥X/風雅人(ふうがじん) 00013970M8小むつかしい/男(おとこ)が言。むかしから、/雪(ゆき)ハ/豊年(ほうねん)の/貢物(ミつぎもの)に/随(したが)ひ 00013980M9とやら。(天と天ぢくのわからぬ人間ハ豊年の貢にしたがふの類其物也) 00013990M10よつほど/結構(けつこう)なものと見へる。Sサアそこで、/茶(ちや)の/湯師(ゆし)ハ 00014000M11/初雪(はつゆき)の/茶(ちや)といへば、/何時(なんどき)でも/臨時(りんじ)の/客(きやく)を/待(まち)、/俳諧師(はいかいし)が付 00014010M12(六オ)合の/発句(ほつく)、/狂哥師(きやうかし)の/結(むす)び/題(だい)といゝ立ていれバ、S一 00014020M13人そしてまだ/狗(いぬ)がよろこぶ 00014030¥N4¥J 00014040¥X/空耳(そらミヽ) 00014050M16い太夫といふ/浄(ぜう)るりかたりと、/常(つね)太夫といふ浄るりかたり 00014060M17と/田舎芝居(いなかしばい)へ/行(ゆく)。/野道(のミち)にいともの/寂(さび)しき/墓原(はかわら)を/行(ゆき)すぐれバ、 00014070M18さもあわれなる/声(こへ)に、い太夫、/常(つね)太夫ときくより、がた 00014080M19+/震(ふる)ひ出し、こハ※あたりを見まわせバ、/何(なに)もかわつ 00014090M20た/事(こと)もなし。(六ウ)/行(ゆ)かふとすれバ、い太夫、常太夫。よ 00014100¥P46 00014110¥G(八ウ・九オ) 00014120G1新客のまたくら潜る燕かな△酒屋隣馬宥 00014130M1く+見れバ、/石塔(せきたう)の/間(あいだ)に、こもかぶりの/乞食(こじき)ひとりすく 00014140M2ミ/居(い)て、あわれな/声(こへ)で、ひだるい、つめたい 00014150¥N5¥J 00014160¥X金太郎 00014170M5/大(だい)の/金太(きんた)郎、なにも/芸(げい)のないものゆへ、/格別(かくべつ)りこうのいら 00014180M6ぬ/事(こと)と、さほ/竹(たけ)にとりもちそろへ、/鳥(とり)さしてこいとをしへ 00014190M7たれバ、をつとこゝろへ、一日あるいて/来(き)て(几圭が句に、鴬 00014200M8の二疋になりて夕哉と有)/鳥(とり)ハ/一疋(いつひき)(七オ)とれなんだ。Sあほ 00014210M9うめ。なんにもゑゝさゝなんだか△Sイヤ、人がとりもち 00014220M10で/番所(ばんどころ)さすといふよつて、/番所(ばんところ)さいてきた△Sヱヽ、むま 00014230M11いもんじやナアといへバ、むまけりや/料理(れうり)せうか 00014240¥N6¥J 00014250¥Xくら/天狗(てんぐ) 00014260M14/天山(てんざん)が/講釈(こうしやく)、/弥助(やすけ)が/咄(はなし)に、/昼夜(ちうや)/眼(まなこ)をさらし、十二月/朔日(ついたち)、 00014270M15/波中(はちう)・/一雄(かづを)が/興行(こうぎやう)の/噺会(はなしくわい)にも、われ一人ぬきん/出(で)ておち 00014280M16をとり、おのれ(七ウ)/名(な)たゝる大万、/筆彦(ふでひこ)、/漁楽(ぎよらく)も/一雄(かづを)も、 00014290M17/芝(しば)も/花王(さくら)も一なでにしてこまさんと、うぬになつている/最= 00014300M18中(さい=ちう)さつと/吹来(ふきく)る/辻風(つじかぜ)に/誘(さそハ)れ、/遥(はるか)にちり行/高山(こうざん)の/巓(いたゞき)、これわ 00014310M19とばかり/茫然(ぼうぜん)としている所へ、/鼻(はな)の/高(たか)いわろがによつこり。 00014320M20/汝(なんじ)/今(いま)/大坂中(おゝさかぢう)にかくれなき/名人達(めいじんたち)を/押(をし)のけ、一人あてをと 00014330¥P47 00014340L1らんと/思(おも)ふ、その/高慢(こうまん)の/鼻(はな)を/挫(ひしが)んため、此所へつれ/来(きた)れり 00014350L2と、はつたとにらミし有(八オ)(八ウ・九オ挿絵)/様(さま)ハ/画(ゑ)にあ 00014360L3る/通(とほ)り/違(ちがひ)なし。Sハイ++。/何(なに)が/扨(さて)、/此後(このの□)/高慢(こうまん)やめ升 00014370L4う。/御免(おゆる)しなされて下さりませ。親や/女房(にようぼ)も厶り升。/小忰(こせがれ) 00014380L5も厶り升。モウ+++/此後(このゝち)ハ/商売(せうばい)を/精出(せいだ)して、/仙人= 00014390L6遊(せんにん=あそび)やめませうと、おろ+/声(ごへ)にあやまり/居(い)れバ、Sムヽ、 00014400L7/夫(それ)ならバ/今(いま)/汝(なんじ)にいふ事あり。/決(けつ)して/他言(たごん)ならぬぞよ△S何 00014410L8が/扨(さて)、/命(いのち)の/親(おや)、/弓矢(ゆミや)/八幡(はちまん)神かけて△Sきつと/他言(たごん)せぬか△ 00014420L9Sいたし升ぬ△S然らバ(九ウ)/言(いを)ふ。/金(かね)/壱歩(いちぶ)かせ 00014430¥N7¥J 00014440¥X/豊年(ほうねん)の/詞(ことバ) 00014450L12上町へんの/職人(しよくにん)、けふ/休日(やすミひ)と/新(あたら)し/手拭(てぬぐい)のほうかふり、ぞめ 00014460L13きはきのわり/下駄(げた)、はゞひろの/博多帯(はかたおび)、しりたれにちよい 00014470L14/結(むすび)で、まだ/持(もつ)て/居(い)る/瀧(たき)しまの/横長(よこなが)のぶらり/流行(りうこう)の/粋言(すいげん)とて、 00014480L15うれしや/願金(ねがひかね)やばしと/諷(うた)ふて/居(い)る/跡(あと)より、アヱイ。だれじ 00014490L16やぞい。人が/哥(うた)うたふてあるくのを、/跡(あと)からあへるのハ 00014500L17(十オ)とはら/立(たつ)れバ、/雪踏(せつた)なをし也。S/商買(せうばい)でいふのじや。 00014510L18/御了簡(ごれうけん)といへバ、/商買(せうばい)ならぜひがないと、/夫(それ)より/思案(しあん)ばし 00014520L19から/瓦町(かわらまち)、八百や町へうたひ/行(ゆけ)バ、又アヱイ。ふりかへり 00014530L20ミれバ鉄や也。/商買(せうばい)ならぜひかないと又うたい/流(なが)して、/備= 00014540M1後町(びん=ごまち)へ/行(ゆけ)バ、/北(きた)がわから、アヱイ。ミれバかまぼこや也。 00014550M2/商買(せうばい)ならぜひがないと、又うたひ/流(なが)して、/嶋之内(しまのうち)へ/行(ゆき)、/鰻= 00014560M3谷(うなぎ=たに)の/三臓円(さんぞうゐん)から又アヱイ。/心斎橋(しんさいばし)へ/行(ゆけ)(十ウ)バ、/吉文字屋(きちもんじやの) 00014570M4/補元丹(ほげんたん)でアヱイ。/商買(せうばい)ならバぜひがないと、おとなしう/一= 00014580M5日(いち=にち)くらし。/其夜(そのよ)もれいの/新町(しんまち)ぞめき。/大坂中(おゝさかぢう)の/入(いり)こミに、 00014590M6口+のはやり/哥(うた)、すへの/約束(やくそく)/松(まつ)とくや、/天王寺屋(てんおうじや)に/願(ぐわん)か 00014600M7けてと、/其谷(そのたに)の/方言(ほうげん)、やう/引(ひき)もちぎらずうたい/行(ゆく)に、/宵仕= 00014610M8廻(よひじ=まい)の/格子(かうし)のうちに、アヱイ+++。S職人はら/立(たて)て、 00014620M9なんぼう/商買(せうばい)じやとて(十一オ) 00014630¥P48 00014640¥Y1雅興春の行衛四 00014650L3△目次 00014660L5/粋(すい)の/味(あじ)△△△△△△△△△△△△△漁楽 00014670L6/三輪(ミわ)の/神(かミ)△△△△△△△△△△△△古新 00014680L7こたま△△△△△△△△△△△△△義中 00014690L8はやり/哥(うた)△△△△△△△△△△△△歌林(一オ) 00014700L9てん/違(ちが)ひ△△△△△△△△△△△△丸幸 00014710L10ひとり/住(すミ)△△△△△△△△△△△△ワタ 00014720L11/変生(へんぜう)/男子(なんし)△△△△△△△△△△△△花王(一ウ) 00014730¥T1雅興春の行衛四 00014740¥N1¥J 00014750¥X/粋(すい)の/味(あじ) 00014760M5/綿富(わたとミ)の/客(きやく)、どうじや。お/仲(なか)。S中居ヲヽ/理(り)三郎/様(さん)。/御遠(おとほ) 00014770M6※しう厶り升。すつきり/御見限(おミかぎり)りで厶り升ナア。さあ/御= 00014780M7上(お=あが)り/被成(なされ)ませと/奥(おく)へつれ/行(ゆき)、/客座(きやくざ)につく。どうじや、お/仲(なか)。 00014790M8さへぬ/顔(かほ)しているの。Sハイ。わたしも/此間(このあいだ)から/目(め)がわる 00014800M9ふて、むしやくしやで厶り升△Sムヽ、やつはり/右(ミぎ)のかせ 00014810M10ぎがひどいよつてじやワイ(二オ)△S/何(なに)いゝなさるやら。 00014820M11わたしらハもうきつゐもんで厶り升。そりやそうと、/南(ミなミ)ハ 00014830M12/陽気(やうき)な/事(こと)じやげに厶り升ナア△Sだれに/聞(きい)た△Sアノとせ 00014840M13んさんに/聞(きゝ)ました△Sフウヽ、/芝居(しばい)の事か△Sそればかり 00014850M14じや厶りません。ソレそりうさんの事を△Sイヤモ、やく 00014860M15たいじや△Sやつしにハ/違(ちがい)ないぞ△S/□((イカ))ヤモいふてくれな。 00014870M16そして/目薬(めぐすり)でもつけているか△Sハイ、いゝへ。此ぢうも 00014880M17/中町(なかまち)の/御医者(おいしや)さんにミてもらひましたが、(二ウ)やつはり 00014890M18ひへるによつて、ひへのぼせじやとおつしやつてゞ厶り升 00014900M19Sフウ。そんならわし、ゑゝ/事(こと)おしへてやろかい。/甘艸(かんぞう)ち 00014910M20とばかりと/石菖(せきせう)の/根(ね)とを/煎(せん)じてつけたらなをる△Sそれで 00014920¥P49 00014930G1きれ凧巾の舞あがりけり三輪の山△魯道画・腥風斎馬雄 00014940¥G(四ウ・五オ) 00014950M1/治(なを)りますかへ。ヲヽそんなら、コレおまつどん。アノノ大 00014960M2万さんの/所(とこ)のうらに/石菖(せきせう)が/有(ある)はづじや。その/石菖(せきせう)の/根(ね)、ち 00014970M3いとばかりもろて/来(き)ておくれ。そしてこの/西(にし)の升辰のむか 00014980M4いに/薬屋(くすりや)がある。(三オ)あそこで/甘艸(かんぞう)十文がん、こうてきて 00014990M5おくれ。アイと、おまつとんで/行(ゆき)、大万の/門口(かどくち)から、万さ 00015000M6ん、/御内(おうち)にかへ。S大万だれじや+。ヲヽわたとミの/子(こ) 00015010M7か。/何(なん)じや△Sアノナ、/御無心(ごむしん)ながら、/石菖(せきせう)の/根(ね)が/内(うち)かた 00015020M8にあるなら、ちとばかりおくれなさらんかといへハ、ヲイ 00015030M9+、またうがつた/吸物(すいもの)/出(だ)すの 00015040¥N2¥J 00015050¥X/三輪(ミわ)の/神(かミ) 00015060M12こちの/旦那(だんな)さんハなんでも、/南(ミなミ)が/新町(しんまち)に(三ウ)/深(ふか)い/御(お)なじ 00015070M13ミでも/出来(でき)たか、このぢうハいつでも/早(はよ)う/御(お)かへりなさる。 00015080M14わがミ、こんどハ/早(はよ)う御かへりのときミへがくれについて 00015090M15いて、さき/見(ミ)とゞけてきてたもと、/下女(げじよ)のりんとしめしあ 00015100M16わしのさいちう、/旦那(だんな)/御入(おい)り。/酒(さけ)一つ二つのミ、/初夜(しよや)そこ 00015110M17らに/例(れい)のごとく/御(お)かへり。/扨(さて)こそと、/旦那(だんな)の/着(き)ものゝ/裾(すそ)へ 00015120M18ちよつと/糸(いと)つけ、おだまきにかけて、/遥(はるか)あとより/付(つい)て/行(ゆく)/下= 00015130M19女(け=じよ)のりん。かくともしらず、/旦那殿(だんなとの)ハ/落付(おちつく)(四オ)(四ウ・五オ 00015140M20挿絵)/処(ところ)ハ/九軒(くげん)の/井筒(いづゝ)。下女ハ/其(その)まゝ/立(たち)かへり、申+、 00015150¥P50 00015160L1/旦那(だんな)さんの/御出(おいで)なさる/所(ところ)ハ、アノ/順慶町(じゆんけいまち)をずつといき升と 00015170L2な、/橋(はし)こへてまだにんやかな所が厶り升。そこを三/筋(すじ)ほど 00015180L3いき升と、北の方へいて、又西の方に大きなやしきミるよ 00015190L4うな/家(いへ)が厶り升。そこへおはいりなさると、なんじやあか 00015200L5い/緋(ひ)の/袴(はかま)ミるようなものはいた女の人が二三人/出(で)て、よう 00015210L6/御出(おいで)なさつたのなんのといふて、/旦那(だんな)さんを/奥(おく)へつれまし 00015220L7て/行(ゆき)(五ウ)升。そこでおだ/巻(まき)のいともきれてしまひ升よつ 00015230L8て、そのあとハ/存(ぞん)じませぬ。Sフウ、そんなら/井筒(いづゝ)じやワ 00015240L9イノ。やつはり/小間喜(こまき)さんのいふてじや、/玉琴(たまこと)さんたらか 00015250L10しらぬ。わがミもマア、もちつと/見合(ミあわ)して、とつくら/何(なに)も 00015260L11かも見とゞけて/来(き)てたもるとゑゝわいの△Sハイ。それで 00015270L12も又/今(いま)の/女中(じよちう)が/見付(ミつけ)たら、/馬士(まご)うたでもうたへと、いをふ 00015280L13かと/存(ぞん)じまして 00015290¥N3¥J 00015300¥Xこたま(六オ) 00015310L16ちりも/初(はじ)めず、さきもおわらぬよしのゝ/花(はな)の/最中(もなか)にハ、/出= 00015320L17家(しゆつ=け)、/侍(さむらひ)、あきんども/入(いり)まぜつての/花(はな)ぐるひ。中にも/若(わか)+ 00015330L18しい/侍(さむらい)、/酔(ゑい)に/乗(ぜう)してゆすりうた。こなたにハ十七八の/娘(むすめ)、 00015340L19/琴(こと)に/逢(あわ)せし/妙音(めうおん)に、/心安(こゝろやす)ふ打こんじて、又/酒事(さかこと)を/初(はじ)めしが、 00015350L20おりふし/入相(いりあい)の/鐘(かね)きこゆるやいな、/盛(さか)りの/花(はな)のちら+と 00015360M1ちりかゝる/風情(ふぜい)、どうともこふともいへぬばかり。かの/女(むすめ) 00015370M2もにつこりと(六ウ)/と((と衍))して、なるほど、/花(はな)ハさくらと申ま 00015380M3すはづで厶り升といへバ、S侍コリヤ/術(じゆつ)ない 00015390¥N4¥J 00015400¥Xはやり哥 00015410M6さくや/此花(このはな)むめだ/橋(はし)アヱイ(当時のはやり哥也)と、/昼中(ひるなか)にも 00015420M7/唄(うた)ふてあるくを、/旦那(だんな)見つけ、コリヤ/長吉(ちようきち)。あたあほらし 00015430M8い。/昼中(ひるなか)に/唄(うた)うたふてあるくといふ/事(こと)があるものか。そし 00015440M9てマア、アヱイとハなんの/事(こと)じや。こんどからあんな事い 00015450M10ふ/事(こと)ならぬぞよと/叱(しか)り(七オ)つけて/居(い)る/所(ところ)へ、/乳母(うば)、/坊(ぼ)ン 00015460M11を/負(おふ)てもどり、/坊(ぼん)、せなを/下(お)りしなに、アヱイ。S旦那わ 00015470M12がミまでが 00015480¥N5¥J 00015490¥Xてんちがひ 00015500M15ナニ/御亭(ごてい)。おらハ/芝居(しばい)といふ/物(もの)、ふあん/内(ない)じやがといへバ、 00015510M16/心得(こゝろへ)て、/手代(てだい)一人/案内(あんない)し、いろはから/場(ば)をとらせ、/三番= 00015520M17叟(さんばん=そう)からすわらせておいて、御帰(おかへ)りにハ/此(この)はますじ、まつすぐ 00015530M18に/御出(おいで)なされバ、/大(おゝ)きな/橋筋(はしすじ)に(七ウ)/私(わたし)かたのしるしが/出(で) 00015540M19て厶り升と、とつくりといゝふくめて/戻(もど)りしに、/程(ほど)なくい 00015550M20なかもの/帰(かへ)りけれバ、Sモシ、まだ/初(はじま)りませんか。/何(なに)しに 00015560¥P51 00015570¥G(八ウ・九オ) 00015580M1/御帰(おかへ)り/被成(なされ)升た△Sイヤ、もはや/一段(いちだん)見て/帰(かへ)りましたか、 00015590M2おも/白(しろ)くない/事(こと)でござんす。ほうろく/頭巾(づきん)きた/旦那(だんな)のよう 00015600M3なものが、口のゆがんだ/弁当持(べんとうもち)か/盗賊(とうぞく)のような/物(もの)か、/何(なに)が 00015610M4どぎら+としていまして、とんと/早(はや)わかり升ぬ。けふハ 00015620M5/冷(ひへ)る/加減(かげん)か、のほせまし(八オ)(八ウ・九オ挿絵)て/第一(だいいち)もん 00015630M6くハきこへ升ず 00015640¥N6¥J 00015650¥Xひとり/住(すミ) 00015660M9/夫(それ)/魯道(ろどう)が/住居(すまい)といつぱ、/前(まへ)に/一条(いちぜう)の/露路(ろじ)を/横(よこた)へ、/後(うしろ)に四十 00015670M10八/軒(けん)の/相長屋(あいながや)をしつらひ、/追手(おふて)に/扇屋(おふぎや)/箔屋(はくや)ありて、/丹青(たんせい)/三= 00015680M11昧(さん=まい)の/便(たより)とし、/搦手(からめて)に/酒屋(さかや)ありて/不時(ふじ)の/斗酒(としゆ)に/貯(たくわへ)あり。/門(もん)/設(もうけ) 00015690M12たりといへとも/平日(つね)にとざし、/金(かね)/儲(もうけ)たりといへともつねに 00015700M13/足(たら)ず。/家内(かない)の上下/都(すべ)て壱人、/月(つき)ハ/天窓(てんまど)に/漏(もれ)て/深閨(しんけい)(九ウ)を 00015710M14/照(てら)し、/雪(ゆき)ハ/厠(かハや)に/積(つもり)て/雪隠(せついん)の/名(な)をいつわらず。/妻子(つまこ)に/迷(まよ)わず、 00015720M15/途(ど)に/迷(まよ)わず、/悟(さと)りきつたる/本来(ほんらい)のひとり/星(ぼし)。/折(おり)+/出(で)て/来(く) 00015730M16る/扇屋(おふぎや)/馬雄(ばゆう)、あつらへ/置(おい)た/扇(おふぎ)の/絵(ゑ)まだ/出来(でき)ぬとハいつもの 00015740M17/口上(こうぜう)。/庭(にハ)のすミに/銭(ぜに)が/弐百(にひやく)あるを見付、/此(この)マア/大切(たいせつ)ない/銭(ぜに) 00015750M18を/沢山(たくさん)そふにしてあるなとのねつ。S/其銭(そのぜに)ハ/今(いま)/簣(す)の/子(こ)の/下(した) 00015760M19から/狗(いぬ)が/出(で)て、/打(うち)つけるものがなさに、ほうつたのじや△ 00015770M20Sそれじやとて(十オ)めつそふな。/銭(ぜに)ほらずともよさそう 00015780¥P52 00015790L1な/物(もの)△Sイヤ+、/狗(いぬ)じやよつて/銭(ぜに)ほつたが、ねこならバ 00015800L2/小判(こばん)でもほうるてや 00015810¥N7¥J 00015820¥X/変生(へんぜう)/男子(なんし) 00015830L5/三月(ミつき)/四月(よつき)ハ/袖(そで)にもかくす、つゝむにあまる/岩田帯(いわたおび)、ちらと 00015840L6/見付(ミつけ)て、申いとさん。/私(わたし)が/手(て)で/育(そだて)まして、/半時(はんとき)もそバ/離(はなれ)ぬ 00015850L7/私(わたし)にさへ御かくしなされて、いつの/間(ま)に/其御(そのお)なか。御かゝ 00015860L8さんも此ぢうから、/何(なん)でも/替(かわつ)たそぶりじや(十ウ)ほどに/聞(きゝ) 00015870L9たゞしてくれいとの御/頼(たのミ)。/相応(そうおう)な/事(こと)ならバ、たつたひとり 00015880L10のいとさまの/事(こと)、どうなりとなり/升(ます)ほどに、サアだれじや。 00015890L11わたしにおつしやれといへど、さすがにおぼこ/娘(むすめ)、はづか 00015900L12しいが/一(いつ)ぱいで、/顔(かほ)に/紅葉(もミじ)のてり/添(そ)ひて、たゞうつむいて 00015910L13/手(て)ももじ+。S申、/夫(それ)でハすミません。そんなら/店(ミせ)の善 00015920L14六どんとかへ。/徳(とく)兵衛さんか、佐兵衛さんか、久七どんか。 00015930L15フウ、そんならわしらこそ/子供(こども)じやとお(十一オ)もふてい 00015940L16れ、御/気(き)にいりの/勘三(かんざ)どんか。だれで厶り升ぞいナア。そ 00015950L17んなら/琴(こと)やで/御(お)ちか付の/新兵(しんべ)衛さんたらかへ。そのよふに 00015960L18かぶりふるてまで、サアおつしやれと、/段&(だん+)にせめ/立(たて)られ 00015970L19て、/乳母(うば)。わしや/恥(はづか)しい/事(こと)じやがのと、/手箱(てばこ)より/出(だ)す/東口(ひがしくち) 00015980L20のゑらいもの。/乳母(うば)もびつくり、めつそふな。マアなんの、 00015990M1こんなものでと、ポイとほれバ、/箱(はこ)のふたに、/左(ひだり)甚五郎/作(さく) 00016000¥Y1雅興春の行衛四終△(十一ウ) 00016010¥P53 00016020¥Y1雅興春の行衛五 00016030L3△目次 00016040L5/瓢箪(ひやうたん)/印(しるし)△△△△△△△△△△△△△芝叟 00016050L6/五音(ごいん)/相通(そうつう)△△△△△△△△△△△△△波中 00016060L7/室(むろ)の/遅咲(おそさき)△△△△△△△△△△△△△虫丸 00016070L8/地獄(ぢごくの)/献立(こんだて)△△△△△△△△△△△△△大万(一オ) 00016080L9△附録 00016090L10/目出(めで)たい尽し△△△△△△△△△△△魯道(一ウ) 00016100¥T1雅興春の行衛五 00016110¥N1¥J 00016120¥X/瓢箪(ひやうたん)/印(しるし) 00016130M5/久(ひさ)しいものじやが、/田舎(いなか)ものゝ/根問(ねと)ひ。/何御亭(なにごてい)。/此丸(このまる)い/板(いた) 00016140M6に/大(だい)の/字(じ)の/書(かい)て/有(ある)ハ/何(なん)で厶るの。Sヘイ。/夫(それ)ハ/当月(とうげつ)ハ大で 00016150M7厶り升ゆへ大の/字(じ)を/出(だし)、又小の/月(つき)ハうらなる小の/字(じ)を/出(だ)し 00016160M8ておき/升(ます)。すなわち/毎月(まいげつ)/朔日(ついたち)にハ/懸(かけ)かへますと/聞(きい)て、/田舎(いなか) 00016170M9もの/横手(よこて)をうち、/成程(なるほど)、大坂といふ/所(ところ)ハ/利口(りこう)なとこで/厶(ござ)る 00016180M10といゝ+、/夫(それ)より(二オ)/道頓堀(どうとんぼり)できもを/潰(つぶ)し、/扨(さて)/嶋之内(しまのうち)、 00016190M11/心斎橋(しんさいばし)すじ/行(ゆき)かゝり、/大丸(だいまる)の/門(かど)を/通(とほり)て、なんと、新五兵衛 00016200M12どのも市兵衛ごけもミやつしやい。/大(おゝけ)な/商人(あきんど)とミへて、此 00016210M13月ハ大なれバ、/暖簾(のうれん)も/金(かね)の/竃(くど)にも/水(ミづ)ためおけに/迄(まで)、大の/字(じ) 00016220M14が/書(かい)て厶ると、すかたんなる/感心(かんしん)して、/扨(さて)/阿弥陀池(あミだいけ)から/砂= 00016230M15場(すな=ば)、/新町(しんまち)、/御堂(ミどう)の/前(まへ)にさしかゝり、なんとミさつしやれ。 00016240M16こゝにも/大(おゝ)きな/商(あきな)い/店(ミせ)がござるが、/事(こと)おゝいとミへて、/跡(あと) 00016250M17の/月(つき)の(二ウ)小の/暖簾(のうれん)が、まだかけかへずにある 00016260¥N2¥J 00016270¥X/五音(ごいん)/相通(そうつう) 00016280M20/御宿(おやど)に厶り升が、こなた様の/御借屋(おしやくや)が/御無心(ごむしん)/申(もうし)たふ厶り升。 00016290¥P54 00016300¥G(四ウ・五オ) 00016310G1青柳ハ空ふく風にあまくたり△森周仙并画 00016320M1Sフウ、/何(なに)が/御商買(ごせうばい)で厶り升な△Sひものやで厶り升 00016330M2Sフウ、/商買(せうばい)がひ物屋ならバ、/塩物(しをもの)もなさるであろうし、 00016340M3/塩物(しほもの)といふ/物(もの)が/家(いへ)の/為(ため)にわるいものじやてや△Sイヱ+ 00016350M4/其(その)ひものでハ厶りません。/杓(しやく)やなどいたし升ひものやで厶 00016360M5り升(三オ)△Sフウ、夫ならバ、なを/借(かさ)れません△S/何故(なにゆへ) 00016370M6で厶り升△S/杓(しやく)やかしたら、おもやとらるゝ 00016380¥N3¥J 00016390¥X/室(むろ)の/遅咲(おそさき) 00016400M9おとよさん。けふハもふツイどないなとはらげておいてお 00016410M10くれ。Sアイ。/千代(せんよ)さん。ゆふべハ/橘喜(たちき)へじやあつたな 00016420M11Sフウ、おまへ、/新屋(あたらしや)の/門(かど)で、だれとしやものいふていゝ 00016430M12よがな△Sフウ、アリヤそれ、/松(まつ)さんの/弟(おとゝ)じや(三ウ)わい 00016440M13なト/鏡台(きやうだい)へかゝ/(ろとして、)/待(まつ)ておくれ。/座(ざ)ぶとんとつてこふ。ちと/手(て) 00016450M14あぶりんか△Sひへるナア△Sサア/寒(かん)ハ/寒(かん)だけじやナア 00016460M15Sわしやもう/早(はや)う/春(はる)になつてほしい△S/寒(かん)たら、いつ/明(あ)く 00016470M16いナア△Sサアわしもしらなんだが、/此間(このあいだ)/松(まつ)さんに/問(とふ)た 00016480M17らな、/年越(としこし)の/日(ひ)あくといナ△Sフウそふかへ△Sサ、/夫(それ)じ 00016490M18やてゝ、/人(ひと)の/言(いふ)/事(こと)のじやもの、/啌(うそ)じややら 00016500¥N4¥J 00016510¥X/地(じ)ごくの/献立(こんだて)(四オ)(四ウ・五オ挿絵) 00016520¥P55 00016530L1/鬼(おに)ども/寄合(よりあい)、/何(なん)とマア/娑婆(しやば)にハいつでも、/参会(さんくわい)じやの/年(とし)わ 00016540L2すれじやのと、/浮(うか)む/瀬(せ)や/西照庵(さいせうあん)で/色&(いろ+)の/料理(りようり)をこのミ、/面= 00016550L3白(おも=しろ)おかしう/飲喰(のミくい)しをるが、こちらハ/年中(ねんぢう)いそがしうて、/罪= 00016560L4人(ざい=にん)を/喰(くふ)とても、たゞむざ+と/喰(くふ)ふてしもふて、とつくら 00016570L5と/味(あじを)ふた/事(こと)がないが、なんと、こちらも/年忘(としわすれ)とおもふて、 00016580L6/味(むま)ひ/料理(りやうり)で/一日(いちにち)/楽(たの)しまふでハあるまいか。Sいかさま、そ 00016590L7りや(五ウ)よかろう△S/時(とき)に/赤鬼(あかおに)、/黒(くろ)おに、/白鬼(しろをに)、/黄鬼(きおに)、 00016600L8こび/茶鬼(ちやおに)も/承知(せうち)なら、マアおれが/料理(れうり)を/好(このむ)ハ△Sフウ/料理(れうり) 00016610L9とハ/何(なに)をつかふぞ△Sハテ、やつぱり/罪人(ざいにん)を/遣(つか)ふけれど、 00016620L10/料理方(れうりかた)で/喰(く)へるてや。マア/献立(こんだて)をいふて/聞(きか)そか。つき出し 00016630L11が/痘瘡子(ほうそうご)の/関東煮(くわんとうに)、/夜尿(よばり)たれのしたし物、/赤子(あかご)のあミじほ 00016640L12からに、/心中(しんぢう)の/塩漬(しをづけ)、すまふ/取(とり)の/結(むす)び/昆布(こんぶ)に、/芥子坊主(けしぼうず)の 00016650L13/小(こ)ぐし。これを/三種(さんしゆ)の/硯(すゞり)ふたにする。(六オ)/骨接(ほねつぎ)をなんは 00016660L14/煮(に)にして、/道心者(どうしんじや)をあんかけにする。/貧乏人(びんぼうにん)ハ/薄葛(うすくず)にして、 00016670L15なんきんの/鉢(はち)に/入(い)る。/博奕打(ばくちうち)ハ/賽(さい)にきり、/入痣(いれぼくろ)の/所(ところ)ばかり 00016680L16/吸物(すいもの)にせうか。/船乗(ふなのり)ハせんとうににして、/海士(あま)の/潮煮(うしほに)、/人= 00016690L17形遣(にん=ぎよつか)ひハ/黒(くろ)あへにして、/役者(やくしや)のしつほく。/侍(さむらひ)の/具足煮(ぐそくに)、/風= 00016700L18呂屋(ふ=ろや)の/亭主(ていしゆ)さつと/湯(ゆ)がいて、けいこやをだしに/遣(つか)ふ。これ 00016710L19で/前(まへ)酒を預つて/是(これ)からが/本膳(ほんぜん)。/先(まづ)/女髪(おんなかミ)(六ウ)/結(ゆひ)のなめしに、 00016720L20/娘(むすめ)の/子(こ)の/蜆(しゞミ)じる。/内義達(ないぎたち)ハ/肉(にく)あへにして、/大夫(たゆふ)のナマス。 00016730M1/天神(てんじん)/梅(うめ)ぼし、おやまのさしミ、/若衆(わかしゆ)の/菊座(きくざ)、かい/敷(しき)にして 00016740M2/花車(くわしや)の/白髪(しらが)。/平(ひら)ハ/坊主(ぼうず)を/丸剥(まるむき)にして/衣(ころも)かけ、/追剥(おいはぎ)のすり/身(ミ)、 00016750M3かたりの/厚焼(あつやき)、/樽屋(たるや)の/輪(わ)ぎり/上(うハ)おきにして、おんぼの/焼物(やきもの)。 00016760M4/扨(さて)三四郎を/引盃(ひきさかづき)にして、/浄(ぜう)るり/語(かた)りの/白湯漬(さゆつけ)、/下手役者(へたやくしや) 00016770M5の/香(こう)の/物(もの)と、/是(これ)で/膳(ぜん)ハすむ。/三(さん)こんを/出(だ)さずバなる(七オ) 00016780M6まい。/先(まづ)/初(しよ)こんが/昼(ひる)とんびのあげもの、/二献目(にこんめ)がとが人の 00016790M7/叩(たゝ)き/午房(ごぼう)、三/献目(こんめ)が/医者(いしや)をすましにして/生姜(せうが)/一片(ひとへぎ)の/吸口(すいくち)。 00016800M8これで/膳(ぜん)ハすむ。あと/酒(さけ)を/出(だ)さずバなるまい。/先(まづ)/付出(つきだ)しが 00016810M9/中居(なかゐ)のかまぼこ、/大(たい)こもちのおろし/醤油(せうゆ)、/芸子(げいこ)/青葉(あをば)にして 00016820M10/花鰹(はながつほ)たつぷり、/店(ミせ)つきの/引(ひつ)はりやきに、ぞめきの/引(ひき)ずり/豆= 00016830M11腐(とう=ふ)。/惣嫁(そうか)のはまやきと/砂(すな)ずりがよかろふといふ/鬼(おに)も/有(あり)。/支= 00016840M12離(か=たわ)ものをふぐ(七ウ)/汁(しる)にして、はらい玉へのわりねぎ、/座= 00016850M13頭(ざ=とう)の/眼(め)をす/牡蛎(かき)にして、/疳癖(かんへき)ものをいら/焚(たき)にする。/中風(ちうぶう)や 00016860M14ミの/骨(ほね)ぬき、/乞食(こじき)のぐつ/煮(に)、/箱屋(はこや)のひもの、/大工(だいく)のこけら 00016870M15/鮓(すし)、/手伝(てつたい)のすきやき、/左官(さくわん)ハこつてり/焚(たき)にして、/塗物(ぬりもの)に/入(いれ) 00016880M16て/出(だ)す。/百性(ひやくせう)の/作身(つくりミ)、/川(かハ)ほりのせびらき、/密男(まおとこ)ハ/四(よつ)きりに 00016890M17する。/巾着(きんちやく)きりハ/泥坊漬(どろぼつけ)、/盗賊(とうぞく)ハきり/込(ごミ)にして/泥亀(すつほん)だき。 00016900M18/高歩借(たかぶかし)ハ(八オ)(八ウ・九オ挿絵)くづしにして、/身体限(しんだいかぎり)ハ三 00016910M19ばい/鮓(す)、/会所(くわいしよ)のかき/立汁(たてしる)に/夜番(やばん)の/雷(かミなり)とうふ。/狩人(かりうど)の/鉄炮(てつぽう)あ 00016920M20へに/道具屋(どうぐや)のひやし物。さてこゝで一つ/吸物(すいもの)/出(だ)す。ふたを 00016930¥P56 00016940¥G(八ウ・九オ) 00016950G1来年へ笑初たり冬の梅△魯道并画 00016960M1取てミれば、はし+のすいがりの/若息子(わかむすこ)の/長髷(ながわげ)のせんば 00016970M2なハどふじや。こりやゑらいハ。のめるハ/喰(く)へるハ。ゑら 00016980M3い/馳走(ちそう)じやが、/扨(さて)かんじんの/酒(さけ)ハどうするぞ。サア/夫(それ)も/三= 00016990M4途(そう=づ)川かねつとう/酒(しゆ)にでもせうかと/相談(そうだん)して(九ウ)/居(い)る/所(ところ)へ 00017000M5/罪人(ざいにん)ひとり、ひよろ+として/出来(いできた)り、なんと/申(もうし)、/鬼(おに)さん 00017010M6がた。/私(わたし)その/酒(さけ)/進上(しんぜう)/致(いた)しましよかと、/何(なに)がなついせうの/気(き) 00017020M7でいゝけれバ、この/盲者(もうじや)を見るより、/鬼(おに)ども/残(のこ)らす/迯(にげ)ちつ 00017030M8たり。/迯(にげ)た/筈(はづ)じや。此/盲者(もうじや)ハ/上酣屋(ぜうかんや)の/親父(おやじ)也。/鬼殺(おにころ)しをも 00017040M9つて/来(き)たのじや 00017050¥Q 00017060M10△△/世(よ)に/地獄(ぢごく)の/献立(こんだて)と/題(だい)して、/好事家(こうずか)に/専(もつはら)/行(おこなハ)るゝ/咄(はなし)、/種&(しゆ※)ありとい 00017070M11△△△へども、/根元(こんげん)大万の/咄(はなし)に/遥(はるか)におとれり。ゆへに/其(その)/真(しん)なるものを、こ 00017080M12△△△ゝに/巻尾(くわんび)に/記(しるす)云&(十オ) 00017090¥Y附録 00017100¥N5¥J 00017110¥X/目出(めで)たい/尽(つく)し 00017120M17/今宵(こよひ)ハ/年越(としこし)の/夜(よ)なれバとて、/福(ふく)ハ/内(うち)/鬼(おに)ハ/外(そと)へと/目出(めで)たふ/豆(まめ) 00017130M18を/打揃(うちそろ)ひ、/家内(かない)がまめな/顔(かほ)を見て、/隠居様(いんきよさま)の/機嫌顔(きげんかほ)。/何(なん)と 00017140M19マア/毎年(まいねん)+/相替(あいかハ)らず/目出(めで)たふ/年(とし)を/取(とる)/内(うち)にも、ことしの/様(やう) 00017150M20な/目出(めで)たい/年(とし)ハないぞや。マア/春(はる)/早&(そう+)から/掛屋敷(かけやしき)も/大分(だいぶん)ふ 00017160¥P57 00017170L1へ、/新(あたら)しう/蔵(くら)も/建(たて)、/扨(さて)/嫁(よめ)を/取(とる)、/聟入(むこいり)する、/初(うい)の(十ウ)/曽孫(ひまご)の 00017180L2/顔(かほ)を見る。/鶴(つる)之/助(すけ)が/元服(げんぶく)に、/亀(かめ)太郎が元服。/伊勢参(いせまい)りする、 00017190L3/京巡(けうめぐ)りする。/節句初(せつくはじめ)も/有(あり)、/袴着(はかまぎ)も有。/店(ミせ)の/松(まつ)兵衛が/別家(べつけ)す 00017200L4る。/別家(べつけ)にハ又/別家(べつけ)。/新参(しんざん)ものも/実躰(じつてい)で、/丁稚等(でつちら)も/角入(すミいれ)る、 00017210L5/下女(げじよ)の/竹(たけ)/迄(まで)/旧行(きうこう)して/鉄漿(かね)付る。をれハことし八十八で、/升(ます) 00017220L6かけの/祝(いわい)したが、まだからだのがんぜうさ。ばゞも/丁(てう)ど七 00017230L7十で、これも/古来(こらい)/稀(まめ(ママ))なときけバ/相応(そうおう)に/祝(いわひ)する。/一家(いつけ)/一門(いちもん)仕= 00017240L8合(し=あわせ)よふて、むし/物(もの)したり(十一オ)人を/饗(よん)だり。此/大勢(おゝぜい)が/一= 00017250L9年中(いち=ねんぢう)/風(かせ)一つ/引(ひき)もせず、あらそハずしくじらず、/隣近所(となりきんじよ)も/念= 00017260L10比(ねん=ごろ)に、/全躰(ぜんたい)ことしハ/豊年(ほうねん)で、/世間(せけん)も/追(おい)+/賑(にぎハ)しく、/売買(うりかい)が 00017270L11/仕(し)よいので、人/気(ぎ)の/能(よ)ふなつた/事(こと)ミやしやれ。S此よふな 00017280L12/御治世(ごじせい)に/生(むま)れあわしたハ、/大(おゝけ)な/仕合(しあわせ)△Sさようで厶り升。 00017290L13/夫故(それゆへ)/商買(せうばい)も/繁昌(はんぜう)して、/掛(かけ)たものハ/滞(とゞこほ)らずと/語(かたる)うち、/門(かど)にハ、 00017300L14/払(はらい)ませう+ 00017310¥Y1雅興春の行衛五大尾(十一ウ) 00017320¥Y 00017330M1/仙台張(せんだいばり)のきせるハ/浮(う)くを/上品(ぜうぼん)とし、おとし/咄(はなし)ハうかざるを 00017340M2もて/佳作(かさく)とす。/鳥獣(ちようぢう)/草木(そうもく)の/言語(げんぎよ)なせるを/異成(ことなり)として、/今(いま)や 00017350M3/此道(このミち)の/正風体(せうふうてい)とやいハん。/身振(ミぶり)のあて、/声色(こハいろ)の/楽(がく)やおち、 00017360M4/書咄(かきはな)しあれば、はなし咄あり。/亦(また)/曲(きよく)あまりて、/彦八、/新内(しんない) 00017370M5が/類(たぐ)ひにや/堕(おち)なん。/諸好事(しよこうじ)の/舌(ぜつ)(十二オ)/頭(とう)にハ/蘇張(そちよう)も/爪(つめ)く 00017380M6ハゆるばかりぞ。/予(よ)もすける/道(ミち)とて、すゞろに/耄(ほれ)を/忘(わす)れて、 00017390M7/其殿(そ□しんがり)りに/毫(ふで)して、/舌(した)に/換(かゆ)ると/云(いふこと)/有(しかり) 00017400¥Q 00017410M9△△△/横(よこ)にひく/霞(かすミ)やけさハ/辰(たつ)の/春(はる) 00017420M10△△△△△△△△△△△△△△△△酒△屋△隣G 00017430M13△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十二ウ) 00017440¥P58 00017450¥G 00017460¥Q 00017470M1△酒屋隣馬宥閲 00017480M3△/今様(いまやう)/舌切雀(したきりすゞめ)△△△△△全五冊近刻 00017490M4御/存(そんじ)の/大万(だいまん)事こたび一世一代/噺会(はなしくわい)/興行(こうぎやう)被致候付/新噺(しんはなし)/数多(あまた) 00017500M5/出来(でき)申候を/悉(こと、※く)/輯(あつめ)/永(なか)く/笑(わらひ)の/種(たね)を/残(のこ)し候のとハなりはべる 00017510M7△寛政八年丙辰春三月 00017520M8△△△△△△△△北久太郎町心斎橋北江入西側 00017530M9△△△△△△△△△△△△△△河内屋吉兵衛 00017540M10△△△大坂書林△△△唐物町心斎橋南江西側 00017550M11△△△△△△△△△△△△△△同△△太助 00017560¥P59 00017570¥U噺本大系△第十三巻 00017580¥T落噺/詞葉(ことば)の/花(はな)〔尾題〕 00017590¥G 00017600¥Y 00017610L15寛政九年正月刊 00017620L16烏亭焉馬撰 00017630L17談洲楼焉馬序 00017640L18上総屋利兵衛板 00017650L19中本一冊 00017660L20国立国会図書館蔵 00017670¥Y○落はなし目録 00017680M3○八百屋△△△△万羅作○たぬき△△△△周朔作 00017690M4○芸尽し△△△△談洲楼ゝ○にハとり△△△治呂ゝ 00017700M5○龍△△△△△△富存ゝ○楽焼△△△△鶴声楼ゝ 00017710M6○すいくわ△△△吾友軒ゝ○地口しなん所△花咲翁ゝ 00017720M7○欠落しなん△△千別ゝ○午の日△△△△花菱ゝ 00017730M8○質物△△△△長綱ゝ○口うつし△△△美知丸ゝ 00017740M9○おや玉ひゐき△薮風ゝ○香の物△△△△甲岳ゝ 00017750M10○腎虚△△△△談洲楼ゝ○灸点△△△△花卿ゝ 00017760M11○寒国△△△△金龍斎ゝ○茶わん△△△△白鯉館ゝ 00017770M12○折句△△△△京吉ゝ○山科屋△△△△談洲楼ゝ 00017780M13○天王様△△△△懐戎ゝ○一人リ物△△△森陰ゝ 00017790M14○女郎買△△△△磯名ゝ○虎の画△△△△坪平ゝ 00017800M15△△△△△△△△△△△△△△(目一オ)(目一ウ・目二オ挿絵) 00017810M16○下戸のいひ付△菊人作○なめし△△△△角子作 00017820M17○端午△△△△烏欣ゝ○旅僧△△△△米長ゝ 00017830M18○雷きらひ△△△万善ゝ○道行はなし△△晋象ゝ 00017840M19○はかうり△△△如仙ゝ○かゝみとき△△仲澄ゝ 00017850M20○おもひつき△五十三次ゝ○馬のす△△△△部屋住ゝ 00017860¥P60 00017870¥G(目一ウ・目二オ) 00017880M1○てうちん△△△青人ゝ○まんぢう△△△北平ゝ 00017890M2○ふぐ汁△△△△蓬雨ゝ○禿の咄△△△△道頼ゝ 00017900M3○とらむすこ△△柳和ゝ○才蔵市△△△△事足ゝ 00017910M4○北野ゝ時鳥△△喜丸ゝ○塩△△△△△△下道ゝ 00017920M5○山門△△△△治呂ゝ○出家△△△△遠文ゝ 00017930M6○あて身△△△△慶賀ゝ○かみそり△△△浅草庵ゝ 00017940M7○かつけの薬△△先裏住ゝ○水茶屋△△△黒羽二亭ゝ 00017950M8○蜆汁△△△△淮南堂ゝ○浄留り△△△△狂哥堂ゝ 00017960M9△△△△△△△△△△△△△△○唐人△△△△談洲楼ゝ 00017970M10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(目二ウ) 00017980¥P61 00017990¥Y/落噺(おとしばなし)/六義序(りくぎじよ)△△△△△△△△△△△/談洲楼(たんしうろう)/焉馬(ゑんば)/述(のふる) 00018000L3むかし+ありつるとなん。おふぢハ山へうばハ川へ、/桃(もゝ) 00018010L4のながれしよりこのかた、その/噺(はなし)の/種(たね)/夭夭(よう+)として、その/端(は) 00018020L5/蓁&(しん+)たり。されバ竹に/鳴(なく)/舌(した)きりすゞめ、月にすむうさぎの 00018030L6/手(て)がらまで、いつれか噺にもれざらん。ちからをもいれず 00018040L7しておとがひの掛かねをはずさせ、高き/姉女郎(おいらん)のかほをや 00018050L8ハらぐるは是なり。此はなし、いつぞや下の/日待(ひまち)のとき、 00018060L9/友(とも)とちおれハれなれにかたり、/喜美談語(きミだんご)の/小冊(せうさつ)を(一オ)/丸(まる) 00018070L10めしより、/唯(たゝ)/滑稽(こつけい)にあそバんと、ことしも夘月の/始(はしめ)より、 00018080L11かんな月のすえにいたるまで、不/佞(ねい)がつたなき/舌講(ぜつこう)、/机下(きか) 00018090L12にたはれたるはなしをかいつけて、/判者(はんじや)をこハんと、/虚空(こくう) 00018100L13に/流行(はやつ)て/雲(くも)を/起(おこ)す/両国橋(りやうこくはし)のほとり、しびれものぼる京屋が 00018110L14もとに、噺のやうなはなしの/会(くわい)ハ、/門前(もんせん)に市も/栄(さか)へ、/楼= 00018120L15上(ろう=しやう)に人の山をなす。もとより/戯作談語(げさくだんご)といへとも、/官録(くわんろく)/公= 00018130L16辺(こう=へん)の/噂(うハさ)を/禁(きん)じ、/古(ふる)き/文(ふミ)をたねとして、のど/筒(つゝ)の/往来(わうらい)かまび 00018140L17すし。/誠(まこと)や/和歌(わか)に/六義(りくき)あり。/馬鹿(はか)に(一ウ)/律儀者(りちぎもの)あり。/八= 00018150L18重垣(や=えかき)のかいま見に、/歌道(かたう)の/六義(りくき)をのぞけハ、/風(ふう)/賦(ふ)/比(ひ)/興(きやう)/雅(が)/頌(しやう) 00018160L19といへり。まづ、 00018170¥Q 00018180M1/風(ふう)ハ△そへうたなり。かぜハその/色(いろ)見へず。そのしな物によせ合せてあ 00018190M2△△△らハるゝなり。/八雲御抄(やくもミせう)に/言(い)ふ十/躰(たい)のうち、/誹■(はいいん)に/類(るい)す。あら 00018200M3△△△ハにきこへず、外の物にすかりて/狂(けふ)したる也。はなしにとつてハ 00018210M4△△△ゆきすきはなし 00018220¥N1¥J 00018230¥X○八百屋△△△△△△△△△△△¥A橋&亭/万羅(ばんら)作 00018240M6Sかみ様ン。大根を一ツほんくだされ。大こんハこざりま 00018250M7せぬと、きり口上ていふ。ていしゆおくより出、コレおす 00018260M8ぎ。こなたハ今までおやしきにつとめたから、あきなひの 00018270M9(二オ)しやうをしらぬハ尤じや。/売(うり)きつた物かあるなら、 00018280M10それハこざりませぬが、これでハおまに合ますまいかとい 00018290M11へバ、それについて外の物もうる事がある。あいさつがか 00018300M12んじんじや。アイ。ずいぶんこゝろへましたといふ所へ、 00018310M13かミさん。/長(なか)いもを/下(くた)さい。ハイ。長いもハきれましたか、 00018320M14つくねいもでハどふてこざります。長いもがなくハ、つく 00018330M15ねいもでまに合せませうとかつてゆく。又かど/口(くち)へ、モシ、 00018340M16わさびを/下(くた)さいといふてくる。ハイ。わさびハきれました 00018350M17が、せうがでハとふでこざります。ムヽ、せうが(二ウ)で 00018360M18ハちとかゆひが、せうことがない。まに/合(あい)にしておけと、 00018370M19/是(これ)もかふて/行(ゆく)。ていしゆそれ見やれ。人にむりハない。物 00018380M20のいひやうでかつてゆくハさ。いつでもそふ/気(き)をきかせた 00018390¥P62 00018400L1がいゝといふ所へ、モシ、かみさん。たゝミいわしをくん 00018410L2なさい。ハイ。たゝみ/鰯(いわし)ハきれましたが、アノ、ふのりで 00018420L3ハどふでござりやす 00018430¥N2¥J 00018440¥X○たぬき△△△△△△△△△△△¥A亀/多楼(たろう)/秀朔(しうさく)作 00018450L6Sむかし+、ぢゝハ山へしばかりに、ばゝハ川へせんた 00018460L7くに行。もどつて見れバ、まだちゝいどのハかへ(三オ)ら 00018470L8れぬ。さぞひもじからふと、だんごをもつてむかひにゆき、 00018480L9二人リして/老(おい)のたのしみ。/清水(しミづ)を/汲(くん)でのミながら、だんご 00018490L10を一つおとしける。/土辺(つちべ)の/穴(あな)へころ+とおちたるを、そ 00018500L11のまゝおきけるに、やがて此/穴(あな)より、あやしきけものゝ手 00018510L12を出して、又/団子(たんご)をとらんとする。ぢゝ、その手をとつて、 00018520L13ばゝもろとも、ついに引出して見れバ/古狸(ふるたぬき)なり。すぐにた 00018530L14ゝきころし、/四足(しそく)をゆハへて/柴(しバ)の/荷(に)にゆひつけ、/帰(かへ)るミち 00018540L15にて、/庄(しやう)やのむすこ/行合(ゆきあい)、(三ウ)おやぢどの。その狸ハど 00018550L16ふして/取(と)つた。イヤ、かう+したわけでとりましたが、 00018560L17わしも/年(とし)よつて、くふもいやなり。またこいつハ内へをく 00018570L18と、/麦(むぎ)をついて/助(すけ)よふといつて、ばゝをつきころし、ばゝ 00018580L19にばけて、ばゝアくつたぢゝいヤイといふたためしもあれ 00018590L20バ、めつたにもつてもゆかれぬから、いつそ見せ/物師(ものし)にで 00018600M1も/売(うつ)てやりませう。コレ+、それよりハおれにください。 00018610M2/其代(そのかハり)ハ/年貢(ねんぐ)のときの/勘定(かんぢやう)にしようともらつて/帰(かへ)り、/若(わか)ひも 00018620M3のどもをよんで、コレ、この(四オ)狸を/汁(しる)にこしらへてを 00018630M4くから、わいらハ/店(たな)へいつて、/酒(さけ)を二三/升(しやう)とつてこい。お 00018640M5のしハはたけで大こんをぬいてこいといひつけやり、くる 00018650M6まもおそし汁ハできる。まづ此/身所斗(ミところはか)りくつてやらふと、 00018660M7二三ばいくつてゐる所へ、ミな+来り、アヽ/子旦那(こたんな)。い 00018670M8ぢのきたない。モウくハしつたか。ヲヽサ。わいらかおそ 00018680M9いゆへ、こたへられぬからくつた。サアわいらも/喰(くつ)たかい 00018690M10ゝ。/先(まづ)/酒(さけ)のかんをしようといふ内、むすこの/腹(はら)がポンとな 00018700M11る。男どもこなだんなどのハ、はら八(四ウ)はいくつて/屁(へ)べ 00018710M12へこくといふ。むすこ、いんにや、わいらだんべいといふ 00018720M13内、又ポンとなる。びつくりして、マアといふ。ポン。や 00018730M14あポンやあ。しりにて、チプポウやあポン。はあコリヤあ 00018740M15んたるこんだと、/村中(むらちう)がさハぎ、庄屋のおやぢももどつて、 00018750M16いしや/殿(どの)をよんで見せれバ、これハ/食(しよく)しやうじやそうでご 00018760M17ざる。アノ/狸汁(たぬきしる)をふんだんにくつたゆへか、はらの中で/鞁(つゝミ) 00018770M18をぶち申ス。どれと又ミやくを見ると、/腹(はら)でポンといふ。 00018780M19いしややあ引。ポン。ハヽアポンやあ引、ムヽこれハ(五 00018790M20オ)むつかしい。うつちやつておくと/死(しに)ますぞといへバ、 00018800¥P63 00018810L1きもをつぶして、上頭Sイヤア引 00018820¥N3¥J 00018830¥X○/芸(げい)つくし△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00018840L4Sサアお/客(きやく)ハすんだ。是からハ/内祝(うちいわい)じや。こん/夜(や)ハすいぶ 00018850L5ん酒てものんで、/内(うち)ぢうのものに、じゆんのまひの芸つく 00018860L6しが/所望(しよもう)じやと、旦那もいゝきげんでおつしやる事ゆへ、 00018870L7まづ/番頭(はんとう)が/謡(うたひ)をはじめとして、/手代(てだい)の治兵衛が義太夫、伝 00018880L8兵衛かぶんごぶしをかたれバ、こゑがハりのしたまへがみ 00018890L9が、/俄(にわか)(五ウ)じや+といつて、かるわざのさかがへり、 00018900L10かべたちもおかし。下女がてうしのあわぬいたこぶしに、 00018910L11めしたきの三助が/国(くに)ふうのおどり。此上もないおもしろい 00018920L12事。だんなも大きによろこび、どれも+大あたりじや。 00018930L13したが/子僧(こそう)めが何もせぬ。/気(き)にかゝつてわるい。なんぞわ 00018940L14れも/芸(げい)かあらふ。サアこゝへでろ。イヽヱ、/私(わたくし)ハ何もしり 00018950L15ませぬ。ハテなんでもわれが、ふだんいふ事でもちよつと 00018960L16こゝへでゝいふがよい。サア+と、むりにひきいだせバ、 00018970L17/子僧(こそう)、そこらをうろ+見て、モシ(六オ)/髪(かミ)いゝどのハお 00018980L18りやせぬか 00018990¥Q 00019000L19/賦(ふ)ハ△心を一へんにとゝめざる義なり。かるがゆへにかぞへうたといふ 00019010L20△△△心をくばりはかる也 00019020M1△△△十躰にいはゆる/空戯(くうげ)。ひたすらたはむれて実すくなきなり。是万 00019030M2△△△八はなし 00019040¥N4¥J 00019050¥X○にハとり△△△△△△△△△△△△¥A治呂作 00019060M5Sかい/鳥(とり)のすきなむすこが、十七八なきりやうのよい/娘(むすめ)を 00019070M6かこつておき、まいにち/庭(にハ)に/鳥篭(とりかご)をおき、せんすいにおし 00019080M7鳥をはなし、/椽(ゑん)がハにでゝ二人リながら、おしどりのやう 00019090M8にひつ付ているところへ、(六ウ)となりの内のにハとりが、 00019100M9/切戸(きりど)ぐち/が((ママ))らめん鳥をおつかけてくる。ハテ、いゝとりだ。 00019110M10どこの鳥だ。アレハおとなりのさ。ムヽ、かしわの/地(ぢ)すり 00019120M11だと見ている内、おんどりハ/娘(むすめ)のかほを見て、ハテいゝ娘 00019130M12だのと、こゝろにおもふている。むすこハめんどりを見て、 00019140M13見る程いゝめん鳥だ。こいつハほしい物だといへハ、にハ 00019150M14とりトツケイコウ 00019160¥N5¥J 00019170¥X○/龍(たつ)△△△△△△△△△△△△△△¥A/富存(ふぞん)作 00019180M17S/今(いま)ハむかし。/夕立(ゆふだち)に/龍(たつ)かまいて、ついお/屋敷(やしき)(七オ)のお 00019190M18もの見のまへにおつこち、そのうち/雲(くも)ハはれる。たつもあ 00019200M19がる事ハならず、たをれているゆへ、大ぜいの人だかり。 00019210M20あしがる/棒(ぼう)つき、/左右(さゆう)をかため、/殿様(とのさま)にもお物見へ御入り、 00019220¥P64 00019230L1おく/女中(ぢよちう)のけんぶつ。/龍(たつ)もおり+かほをあげて見ても、 00019240L2/雲(くも)ハなし、こまりきつている。お物見でハ、ホンニまあこ 00019250L3わいものだとおもへバ、おちて見れバそのよふにもないも 00019260L4のでござりますと、みな+たばこをのミなから御見物。 00019270L5そのた(七ウ)ばこのけむか/格子(こうし)のそとへでると、/龍(たつ)、くび 00019280L6をもちあげて、/嬉(うれ)しや。/雲(くも)がとたちあがらふとして、ゴホ 00019290L7ン++ 00019300¥N6¥J 00019310¥X○らくやき△△△△△△△△△△△¥A/鶴声楼(くわくせいろう)作 00019320L10S此ころ/楽(らく)やきの茶碗を見たが、/素人(しろうと)にも/器用(きよう)な人がある 00019330L11ものだとはなせバ、まけない/気(き)のやつがいふにハ、らくや 00019340L12きか。おれハなんでもこしらへる。Sムヽ、そんならこし 00019350L13らへて見さつせ△Sサレバその事。あれにハ/薬(くすり)がいるから 00019360L14/急(きう)にハできぬ(八オ)△Sそんなら/下地(したじ)でもこしらへて見せ 00019370L15ろと、つちをとつてきてだせハ、Sコレ、此つちを/丸(まる)めて、 00019380L16コウにぎりこぶしをこふ入レて、/茶(ちや)わんができる。もつと 00019390L17/大(おゝ)きくこしらへようと思へバ、ひじを入レる。これが/茶(ちや)の 00019400L18/湯(ゆ)のちやわんの下地だ△Sどんぶりハどうこしらへる 00019410L19Sどんぶりか。それハつちをうすくして、ひざかしらへか 00019420L20ぶせてぬけバ、コレ此とをり△Sこいつハいゝ。そして、 00019430M1すりばちハどうする△Sすりばちか。大きくつちを(八ウ) 00019440M2まるめて、しりをまくつて、こふサ。/南無(なむ)さん、かたくち 00019450M3になつた 00019460¥Q 00019470M4/比(ひ)ハ△なずらへ/歌(うた)也。たくらべとも物の物に似たる也 00019480M5△△△十躰にいはゆる/謎字(めいじ)、なぞ+のよふにいへる也 00019490M6△△△是/秀句(しうく)ぢくち落のはなし 00019500¥N7¥J 00019510¥X○すいくわ△△△△△△△△△△△△¥A吾友軒作 00019520M9Sこれ。こなたもいつまでおらが内に/居候(ゐそうろう)になる/気(き)だ。ら 00019530M10うのすげかへにだせハ、よう+三十弐文程とつてくる。 00019540M11いつそなすびてもうつたがよい。Sイヱ+、かたが(九オ) 00019550M12いたくつて、てんびんぼうハかつかれませぬ△Sそんなら 00019560M13/自身(じしん)ばんのわきをかりて、/夜(よる)すいくわのたち/売(うり)をはじめた 00019570M14がよい。さいわいと、ふだんくるぼていにたのんで、かい 00019580M15出してもらひ、しかし/行燈(あんどん)の/用意(ようい)があるまい。/赤紙(あかかミ)をかつ 00019590M16てきたかよい。Sそんなら/小僧(こそう)どの、/買(かつ)てきて/下(くだ)さい 00019600M17Sハテ、それか/貴様(きさま)のぶせうだから、あきなひができぬと 00019610M18しかられ、それから/近所(きんしよ)の/酒屋(さかや)へいつて、/赤紙(あかかミ)がござりま 00019620M19すか。Sアイ。/紙(かミ)もうりますが、/此間(このあいた)たんざくに(九ウ)う 00019630M20つて、あか/紙(かミ)ハきれました△Sそんならあをい紙でもよし 00019640¥P65 00019650L1と、/買(かつ)て/行燈(あんとん)をはつてゐる。Sコレ、あかい紙ではらねハ、 00019660L2たちうりハいかぬものじや。うすあかいすいくわでも、あ 00019670L3んどんのひかりであかくミへるハさ。貴様もよく+/馬鹿(ばか) 00019680L4な人だ△Sインヱ、/青(あを)い紙でもよしさ△Sソリヤアなぜ 00019690L5Sハテ、まるでうります 00019700¥N8¥J 00019710¥X○/地口(ぢくち)しなん所△△△△△△△¥A/自得庵(じとくあん)花咲翁 00019720L8Sアイ。おたのミ申ます△Sどちからおいでなされ(十オ) 00019730L9た△Sハイ。わたくしハぢぐちをけいこにまいりました 00019740L10Sしたぢでも、きさまハござるかな△Sアイ。ちつとづゝ 00019750L11しやれてみま/ず((ママ))。此あいだわたくしか/大屋(おゝや)さまにこんれい 00019760L12があつたとき、おゝやさん/女房(にようぼう)/大事(だいじ)とぢくりやした△Sム 00019770L13ヽ、こいつハよほとおもしろい。したか、ちと/手(て)おもいや 00019780L14うにぞんずる。それもいつてミようものならバ、おゝや/御= 00019790L15縁組(こ=ゑんくミ)(十ウ) 00019800¥N9¥J 00019810¥X○/欠落(かけおち)しなん所△△△△△△△△¥A/千別(ちわけ)作 00019820L18Sムヽ、きさまハかけおちかしたいといふが、いまのはな 00019830L19しでハ/正(しやう)じきすぎてわるい。まづかけおちをしようとおも 00019840L20ハヾ、/旦那(たんな)のるすか人のいないとき、なんぞ/手(て)あたりしだ 00019850M1いにとつて、内を/出(で)るのをかけおちといふ△Sハテネ、そ 00019860M2れでハぬす人になります。/何(なに)もとらずに出たいものでござ 00019870M3ります△Sハテさて、それでハかけ(十一オ)おちでハない。 00019880M4/出奔(しゆつほん)だトいわれてびつくりして、Sヱヽ、すつほんなら、 00019890M5/首(くび)をきられます 00019900¥Q 00019910M6/興(きやう)ハ△たとへ哥なり。そへうたハかくれ、たとへ哥ハ/顕(あら)ハるゝ也 00019920M7△△△十躰にいはゆる鄙諺、いやしき詞をきらハて云へる也 00019930M8△△△是下かゝりのはなし 00019940¥N10¥J 00019950¥X○/午(むま)の日△△△△△△△△△△△△¥A/花菱(くわりやう)作 00019960M11Sけふハ/王子(わうし)さまへまいらうとおもふが、こなたハゆくき 00019970M12ハないか。ゑび屋でなんぞうまいものをおごつてこやうと、 00019980M13てい/主(しゆ)が(十一ウ)いへバ、/女房(にようほう)が、イヽヱ、わたしハ/王子(わうじ) 00019990M14さまハ/春(はる)の/事(こと)にして、とふぞ/顔見(かほミ)せを見たうこざります。 00020000M15そんならそふさつせへと、ていしゆ、わうじさまをだしに 00020010M16つかつて、女郎/買(かい)にゆく。/跡(あと)へともだちがきて、Sかミさ 00020020M17ん。うちでハどこへといふ。/女房(にようほう)、アイ、わうじさまへ。 00020030M18Sおまへハなぜ行なさらぬ△Sアイ。わたしハちとわけが 00020040M19あつて/参(まい)りやせぬ△Sムヽ、けふハむまだのといへハ、女 00020050M20房、(十二オ)キツイおせハね。十二日たちやした 00020060¥P66 00020070¥N11¥J 00020080¥X○しち/物(もつ)△△△△△△△△△△¥A松友亭長綱作 00020090L3Sこのころハ/銭(ぜに)もなくなる。/質(しち)もおきつくした。もとでに 00020100L4いつそ/女房(にようほう)をしちにおくべいと、女房にのミこませ、しち 00020110L5屋のミせへきて、コレ/番頭(ばんとう)。ばんにハじきにうける。/壱歩(いちぶ) 00020120L6かしてください。Sしろものハなんでござるな△Sしろも 00020130L7のハかゝアだ。おれもついぞことばのちがわぬおとこだ。 00020140L8(十二ウ)一/分(ぶ)かさつせへ。なんほとしまでも、ものいわず 00020150L9だ△Sばんとう見て、ばんにうけなさるなら/壱歩(いちぶ)かしませ 00020160L10う。ながくおくと、/利(り)より/飯(めし)をくふしろものゆへこまると 00020170L11いひながら一/歩(ぶ)かす。そのばんまちがひなくうけてかへり、 00020180L12また二三日すぎて、かゝア。たいぎながら、けふもしちに 00020190L13おかれてくれ。S女ほうおらアいや。きのふからやくにな 00020200L14つて、むしかかぶるものを△Sハテ、ばん(十三オ)にハう 00020210L15けると、むりにひきずつてゆき、ばんとう。このぢうのか 00020220L16ゝアだ。みるにおよばぬ。/壱歩(いちぶ)かさつせへ。それでも見な 00020230L17いでハと、ばんとうがまへうしろをあらためて見て、これ 00020240L18ハ壱/歩(ぶ)ハつきませぬ。Sハテ、/此(この)ぢうのしろものた△Sそ 00020250L19れでも、とんだ/所(ところ)に/継(つぎ)かあてゝある 00020260¥N12¥J 00020270¥X○口うつし△△△△△△△△△△△¥A美知丸作 00020280M3S/権(ごん)八、とふだ。かわる事もないか。コレ、おのし(十三ウ) 00020290M4も/歯(は)ばかり白くして、やま/犬(いぬ)にあつた六兵衛/猿(さる)をミるやう 00020300M5に、つまらぬものだ△Sおきやアがれ。うぬかやうに、ぢ 00020310M6ゝむさいはみがきといふものハ、/仏(ぶつ)だんのりんとうをみが 00020320M7く物だとおもつてゐるか。コレ、われがはハくそづけの/碁= 00020330M8石(ご=いし)をミるやうだ。大ぜいはちにさゝれたとき、われが所へ 00020340M9/重箱(ちうばこ)をもたせて、はくそをもらひにやるべい△Sコレ、そ 00020350M10のやうにやすくいふな。/是(これ)でもいろ/男(をとこ)た。此ぢうむかふの 00020360M11むすめが、しやくで/目(め)をまハし(十四オ)たとき、おれがか 00020370M12け付て口うつしに/水(ミづ)をのませたら、ぢきに/気(き)がついてな。 00020380M13そふするとおふくろもよろこんで、ほんに/仕合(しやわせ)だ。コレお 00020390M14きち。どふしやうとおもつた所へ、どん吉さんが口うつし 00020400M15に/水(ミつ)をのませなさつたから、/気(き)かついたといつてきかせた 00020410M16ら、/娘(むすめ)ハぢきニうんといつて△Sどふした△Sこんどハへ 00020420M17どをついた 00020430¥N13¥J 00020440¥X○おや玉ひいき△△△△△△△△¥A/千里(せんりの)/薮風(やぶかせ)作 00020450M20S/鰕蔵(ゑびぞう)が一/世(せ)一/代(たい)しバらくを見やうと、あけ(十四ウ)六ツ 00020460¥P67 00020470L1より/切落(きりおとし)へはいり、一/番目(はんめ)の五/立(たて)めまで、せうべんにもた 00020480L2ゝず、もふ二はんめの口上のはじまらぬうち、ちよつと立 00020490L3てふたりづれ、せつちんへゆきてミれバ、ふさがつている 00020500L4ゆへ、おぬしハとなりうらのへでもゆきやれとはいる。さ 00020510L5きよりこちらのせつちんにゐるおとこ、ゑびぞうひゐきに 00020520L6て、われをわすれてひとりごとに、アヽおや/玉(たま)ハきついも 00020530L7のだといふを、となりのせつちんできいてうれしさのまゝ、 00020540L8モシ+、おまへハおや/玉(たま)ひゐきでご(十五オ)ざりますか。 00020550L9Sアイ。ひゐきとも+。たいていなひゐきでハござりま 00020560L10せぬと、いきばりながらいふ。こちらも、アイ。わたくし 00020570L11も大のひゐきさ。おしいものがひつこみます。どふぞもつ 00020580L12とだしておきたいもの。ムヽあのようなやくしやハござり 00020590L13ませぬと、いきみながらあいさつするうち、となりうらか 00020600L14らつれがきて、Sどうだ。まだたれてゐるか。もふしらせ 00020610L15をうつ。はやく/出(で)やれといへハ、Sモシ、おつれさまかへ 00020620L16Sアイ。つれでござります(十五ウ)△Sあなたもおや玉ひゐ 00020630L17きかへ△Sあの男もだいひゐきでござります△Sハテ/扨(さて)、 00020640L18お/待(まち)どうであろう。おいれ申て、お茶でもおあげなさい 00020650¥Q 00020660L19/雅(が)ハ△物の/成就(しやうじゆ)して/調(とゝの)ひたる/躰(てい)也。たゞことうた也。/言雅(げんが)/意(い)雅あり 00020670L20△△△意雅ハ/治定(ちちやう)なきてい也。言雅ハことバにあらハして一句を作る也 00020680M1△△△十躰にいはゆる/俳■(はいとう)詞字、からことバのうた也 00020690M2△△△是りくつおちのはなし 00020700¥N14¥J 00020710¥X○香のもの△△△△△△△△△△△¥A/甲岳(かうがく)作 00020720M5Sこんどの/奉公人(ほうこうにん)ハきてんのきいたやつだ。おれがとしよ 00020730M6りゆへ、めしもやわらかにたき、なにも(十六オ)かもじよ 00020740M7さいがない。/料理(りやうり)もするであらう。コレ八助。われハほう 00020750M8てうがきいてゐるか△Sアイ、さやうでござります△Sそ 00020760M9んならなをよい。イヤモウひるでもあらう。茶漬をくをふ。 00020770M10/何(なに)もないなら、かうのものをうすくきつてもつてこいとい 00020780M11へば、かしこまりましたと、ぜんを/持(もつ)てくる。Sサテモう 00020790M12すくきつたハ。これでハ/膾(なます)をうつにて手まハいるまいと、 00020800M13/箸(はし)で一トきれはさむと、十枚ほどつゞいてあるから、これ 00020810M14ハけしからぬ。(十六ウ)これほどの手きわで、きれはなれ 00020820M15ぬハどふいふことじやと、コレ八助。おぬしハどの/料理屋(りやうりや) 00020830M16にゐた。Sイヽヱ、料理屋にハおりませぬ△Sそして、何 00020840M17屋にゐた△S/艾屋(もぐさ)におりました 00020850¥N15¥J 00020860¥X○じんきよ△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00020870M20Sこん日ハ/放蕩先生(ほうとうせんせい)びやうきとうけたまハれバ、/訪(とむら)ふて/遣(つか) 00020880¥P68 00020890L1ハしましやう。/足下(そつか)御いでならバ、/不佞(ふねい)も御/同伴(どうはん)もうそう 00020900L2と、先生のかたへ行て、まづ御/所労(しよろう)ハいかんといへバ、先 00020910L3生(十七オ)ハこのほと女ほうをもちてじんきよして、あご 00020920L4て/蝿(はい)をおひなから、Sコレハ/両君子(りやうくんし)、/枉(わふ)駕/雀躍(しやくたく)/仕(つかまつ)る。/先(まづ) 00020930L5/投轄(くわつをとう)して/寛談可哉(くわんたんかならんや)といふ。/女房(にようほう)もそばにきのどくなかほ 00020940L6をしていれバ、二人の/儒者(しゆしや)いふよう、/先生(せんせい)/腎虚(じんきよ)して/不善(ふせん)を 00020950L7なす。/誠(まこと)に/疲(ひ)たる/君子(くんし)となりたまふ。この人にして此/疾(やまひ)あ 00020960L8りといへバ、先生@かたでいきを|しなから、△@Sアヽすくないかな/腎(じん) 00020970¥N16¥J 00020980¥X○/灸点(きうてん)△△△△△△△△△△¥A花卿作(十七ウ) 00020990L11Sコレ/寅(とら)松。おぬしの所へゆこふとおもつた。あのおらが 00021000L12ながやへ、このごろこしてきたいしやぼうずめハ、おゝき 00021010L13なつらなやつだ。あいつをちつとやつつけてくれべいと、 00021020L14おれがさんだんをしておいた△Sハテナ。おれもそうおも 00021030L15つてゐた。わりやアどふするつもりだ△Sヲヽサ。なんで 00021040L16もおれしたいにしてあゆびやれ。マアはちまきをして、お 00021050L17ぬし/病人(ひやうにん)になれと、ふたりづれで/医者(いしや)の/門(かと)口から、おたの 00021060L18ん申(十八オ)やすといふ。Sドウレといつて出、これハな 00021070L19んの御用。Sアイ。わつちやアこのながやのものでござり 00021080L20やすが、まだおちかづきにもなりやせぬ。こりやアわたし 00021090M1がともだち。このやろうがやまひをどふぞおめへさま、な 00021100M2をる薬をおくんなさいやし△Sムヽして、その/病気(ひやうき)ハどふ 00021110M3いたしたのじや△Sアイ。此やろうハ/借銭(しやくせん)でくびのまわら 00021120M4ぬやまひさ△Sハテ、/夫(それ)ハ御なんぎ。ドレ、おみやくをと 00021130M5みて、ハヽア、これハ(十八ウ)くすりでハいかぬ。/灸(きう)をす 00021140M6へたがよい。Sきうハどこへすゑやす△Sハテ、/借銭(しやくせん)でく 00021150M7びがまわらぬにハ、/横(よこ)に/寐(ね)て、しやうもんをやかつしやい 00021160¥N17¥J 00021170¥X○/寒国(かんこく)△△△△△△△△△△△△¥A/金龍斎(きんりうさい)作 00021180M10Sコレこなたハ国ハどこしや△Sアイ。わしが生れた所ハ 00021190M11ほつこくでござる△Sハテナ。いかふさむい所てハないか。 00021200M12さようでござる。江戸なとでハ土用のうち、ひや水をうり 00021210M13まするが、わしどもの国では、どこもかしこも/雪(ゆき)だらけで、 00021220M14(十九オ)土用のうち/氷(こをり)かはつてゐる。つぢ+ににないお 00021230M15けをすへて、水うりがよびまするにも、くみおきぬるつこ 00021240M16いのをあがれ 00021250¥Q 00021260M17/頌(しやう)ハ△いは井歌也。世をほめ神に/告(つく)るこゝろなり 00021270M18△△△十躰にいはゆる狂言、/偏(ひとへ)おかしきやうにのふる。たとへハ、火を 00021280M19△△△水にいひなし、またこゝろいきの通ずる所あり 00021290M20△△△是人情のはなし 00021300¥P69 00021310¥N18¥J 00021320¥X○茶わん△△△△△△△△△△△△¥A/白鯉館(はくりくわん)作 00021330L3Sよしハらのひる見せに、おいらんが、コレ喜助どん。ア 00021340L4ノ茶わんやどんがきたなら、ちやづけ(十九ウ)ちやわんを 00021350L5かつてくだせへよ。Sアイ。いまかつてあげませうといふ 00021360L6うち、/茶(ちや)わん/屋(や)か/来(く)る。Sコレ、此/茶(ちや)わんハいくらだ 00021370L7S弐百五十てこざります△Sとほうもねへ。百五十にさつ 00021380L8せへ△Sとんだ事をいひなさる。どふして△Sソンナラ、 00021390L9六十やろう△Sハテ、そのやうにちつとつゝつけあげずと 00021400L10も、もつとおかいなさいといふを、女郎がきいて小ごへで、 00021410L11コレ喜介どん。もつとたかくてもいゝわなといふ。/若者(わかいもの)ハ 00021420L12めまぜ(廿オ)でうなづきながら、そんなら七十弐もんやろ 00021430L13う。Sハテさて、おめへもよしハらにいる程もない、けち 00021440L14なつけようをなさるといへば、わかいものもはらをたち、 00021450L15/此商人(このあきんと)ハおかしなことをいふ。よしハらものハねきらぬも 00021460L16のかと、はやいひ/合(やい)になるゆへ、おいらんもきのどくかつ 00021470L17て、二/階(かい)へゆく。/茶(ちや)わん屋ハ/荷(に)をかついででるひやうしに、 00021480L18けつまづいて、/今(いま)の/茶(ちや)わんも/外(ほか)のちや(廿ウ)わんも、みぢ 00021490L19んにこわれるを見て、わかいものうれしがり、二/階(かい)へかけ 00021500L20あかり、もしおいらん。いまあの茶わんやめが、まけれバ 00021510M1いゝことを、りきミまわつて、あそこでころんで、あの茶 00021520M2づけちやわんをバぶちこわしましたといへバ、Sほんにか 00021530M3へ。かわねへてよかつたのふ 00021540¥N19¥J 00021550¥X○おり句△△△△△△△△△△△△¥A京吉作 00021560M6Sモシおいらん。此間ハ/狂哥(きやうか)よりまた、おり/句(く)かはやりや 00021570M7す。おまへさんもかんがへてころうじませ(廿一オ)Sソリ 00021580M8ヤアどふしていゝんすのだへ△Sまつ/題(だい)ハミソカといふだ 00021590M9いなれバ、/箕輪(ミのわ)からそつとくばりしかしわ/餅(もち)、といふよう 00021600M10なものでござります。/上(かミ)の/五(いつ)もじへみの/字(じ)をおき、/中(なか)の/七= 00021610M11文字(なゝ=もじ)にその/字(し)をおき、/下(しも)の五もじにかの字をすゑて、十七 00021620M12/文字(もじ)の/句(く)の心がごがてんがまいりますか△Sアイ、しれん 00021630M13したと、こくびをかたむけ、みそか、みそかと/考(かんかへ)、ヱヽど 00021640M14ふもみそかハできんせんといふ。そば(廿一ウ)にばんとう 00021650M15/新造(しんぞう)がゐて、Sモシおいらん。みそかゞできずハ、十四日 00021660M16にしておもらひなんし 00021670¥N20¥J 00021680¥X○/山科屋(やましなや)△△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00021690M19Sある所のむすこ、女郎をうけだして、かこつてをく所に 00021700M20こまり、/中宿(なかやど)のていしゆにそうたんすれハ、てうとよい所 00021710¥P70 00021720L1かこざります。/高輪(たかなわ)の/開帳(かいてう)に/山(やま)しな屋と/茶屋(ちやや)をだした/家(いへ)を、 00021730L2/直(ね)かよくハうりたいといふさた。(廿二オ)Sそれハみゝよ 00021740L3り。おやぢやばんとうにしれてハわるいから、よをしのぶ 00021750L4かくれ/里(さと)。/風雅(ふうが)でもなくしやれでもなく、しやう事なしの 00021760L5山しなやへたづねてゆかふとつれだち、まふこゝかへと内 00021770L6にいり、さきのていしゆにもちかづきになり、/家(いへ)のやうす 00021780L7をミれバ、ていねいなふしん、/雨戸(あまと)にあいせんあいくろゝ、 00021790L8/盗人(ぬすひと)の/用心(ようじん)ハよしと、だん+/座敷(さしき)へとふれハ、/椽側(ゑんかわ)の/雨= 00021800L9戸(あま=ど)せうじばた+ばた。Sコレハとふした事じやといへバ、 00021810L10(廿二ウ)ていしゆSイヤ、これハ/大雪(おゝゆき)のせつ、お/客(きやく)じんか/酔(ゑひ) 00021820L11まぎれに、せんざいの雪もつ竹を/鴨居(かもゐ)にあてゝのいたづら。 00021830L12/夫(それ)から/内法(うちのり)かわるくなりました。此/造作(そうさく)ハあなたでなされ 00021840L13ませ△Sヨシ+。九/段(たん)めの/茶(ちや)ばんだな。そんなら一つこ 00021850L14ゝでのみたい△Sハイ。/只今(たゝいま)でハ/料理(りやうり)もやすんて、/諸道具(しよとうぐ) 00021860L15もだん+/売(うり)ました。マア/御酒(ごしゆ)斗でもと、/盃(さかつき)を/塗三方(ぬりさんほう)もふ 00021870L16ちのはなれかゝつたをだす。むすこSこいつハいきだ。こ 00021880L17れでハ/奥庭(をくにハ)にハ/五輪(ごりん)のかたち二つ(廿三オ)までといふこゝ 00021890L18ろもちで、/雪(ゆき)見かたの/燈籠(とうろう)か/御影(ミかけ)のつくばいがあらふと、 00021900L19みぜんのさつして/障子(せうじ)をひらけハ、おもひの/外(ほか)/石(いし)の/七(しち)りん 00021910L20が一つ。これハどふじやといへバ、ていしゆSイヤモシ、五 00021920M1りんが二つなれバ/十(しう)りんなれど、雪見かたもミなうりはら 00021930M2ひ、/漸(やう+)七りんひとつでござります△Sヲヽ/承知(せうち)+。き 00021940M3さまもなりゆくはてをあらハしたな。シテ此/家(いゑ)の/直(ね)だんハ 00021950M4Sハイ。四十七両になれバ/本望(ほんまう)でござります△Sムヽ、七 00021960M5(廿三ウ)だん目なれバ、三十両になるやならずの/家(いへ)なれど 00021970M6も、九/段(だん)めだけに四十七両にかいましやう△Sさやうなら 00021980M7バ、とりきめの/証文(しやうもん)をといふ@所へばんとうかたつねて|きて、かどぐちから、△@S/御無用(ごむよう) 00021990¥Y 00022000M9右おほけなき和歌の/六儀(りくき)によせて、/根(ね)もなきはなし 00022010M10の一もとに、/繁(しけ)る枝葉をあらはす事、/浅猿(あさまし)といふ人 00022020M11あらバ、/春(はる)のはやしの/東風(とうふう)にうごき、/秋(あき)の/虫(むし)の(廿 00022030M12四オ)/北露(ほくろ)になくも、ミな和歌のすがたならすやと 00022040M13/高砂(たかさこ)の/謡(うたひ)をうたハん。こや/四海(しかい)/波(なミ)のしづかなる/御代(ミよ) 00022050M14のおゝんしるし、/四方(よも)の/好士(こうし)の/考(かんがへ)たまふ落はなしの 00022060M15はじまり+ 00022070¥N21¥J 00022080¥X○天王様△△△△△△△△△△△¥A壊戎作 00022090M18Sむかし+ある人の/夢(ゆめ)に、所ハ/出雲(いづも)の/大社(おゝやしろ)で神たちあつ 00022100M19まり、/浮世咄(うきよはなし)に、/神田(かんだ)の明神様と天王様が女郎/買(かい)にゆかれ 00022110M20て、明神様のおつしやるニハ、(廿四ウ)さて+、おれハ 00022120¥P71 00022130L1ちよつと/行(ゆく)にも、/新(しん)ぞうを七人あげろといふにハあやまる。 00022140L2そのうへ、きけバ女郎にいやがられるものを、かみといふ 00022150L3げな。おいらハかみでも、かみがられるすじハなひはづた。 00022160L4/天王子(てんわうし)、/貴君(きくん)ハとふだ。Sイヤ、どふして/知(し)るやら、じき 00022170L5に女郎めらハ見てとります。わしをも天王といふ事ハぞん 00022180L6じておるかして、此間/帰(かへ)るとき、せなかをたゝいて。Sな 00022190L7んと申た△Sぬしハヨイ+だと 00022200¥N22¥J 00022210¥X壱人リもの△△△△△△△△△¥A森陰作(廿五オ) 00022220L10S/弁八(へんはち)。/幾(いく)太郎ハどふした△Sムヽ、あれハ十三/間道(けんミち)の/糸(いと) 00022230L11やのうらにゐる△Sハテナ。あいつも/仕事(しこと)をさせてもあき 00022240L12なひをしても、/爪(つめ)のながいやろうだ△Sサレハサ、此ごろ 00022250L13ハあきなひも仕事もやめて、つめのながいてうほうにハ、 00022260L14ことを/習(なら)ふそふだ△Sナニ、うそばかり△Sうそじやアね 00022270L15へ。このぢうのぞいて見たら、内にたつたひとり、アノナ 00022280L16ケロリカン 00022290¥N23¥J 00022300¥X○女郎/買(かい)△△△△△△△△△△¥A磯名作(廿五ウ) 00022310L19Sコレ、おれハ此ころ/新町(しんてう)がしのだるまやといふ内へゆく。 00022320L20てめへも一トばんつきやつてくれ△Sヲヽゆくべい。なん 00022330M1といふ女郎だ△Sあしのはといふ女郎よ△Sさぞ手のある 00022340M2やつだろふ△Sナニサ。だるまやの内に手のある女郎ハな 00022350M3い。おれも今ハさとりをひらいたから、むづかしいことも 00022360M4いはず、たゞもちあそびにかうばかりだが、/真(しん)じつづくに 00022370M5なつたから、しりのしまひ迄見とゞける/気(き)だトイフ。Sも 00022380M6ちあそびもすさまじい。おきやアがれ(廿六オ) 00022390¥N24¥J 00022400¥X○とらの/絵(ゑ)△△△△△△△△△¥A杉箸亭坪平作 00022410M9Sおらが/長屋(なかや)の/画師(ゑし)めハ、おれがちんをかつて/置(をけ)ハ、むし 00022420M10やうにほめる。/毎日(まいにち)くわしをもつてくるから、おめへ、ち 00022430M11んがおすきだねといつたら、きついすきだといふから、一 00022440M12ばんいゝ子を一/疋(ひき)やつたら、こくうにうれしがつて持てい 00022450M13つた。きかつせへ。ふてへやつだ。そだてゝ三分に/売(うつ)てや 00022460M14つたげな。そこでおれもごふはらだから、/絵(ゑ)をかいてくだ 00022470M15さいといつたら、かけ物に/虎(とら)をかいてくれた。おやしきへ 00022480M16おれも/売(うら)ふと(廿六ウ)おもつてだしたら、あんまりさびし 00022490M17い。もそつと/竹(たけ)でもかき/入(いれ)てもらへといわれたから、また 00022500M18/絵師(ゑし)にたのんで、此とらの上へ、竹でもかいてくんなさい 00022510M19といつたら、絵師がいふ事にやア、やつぱりこゝハあけて 00022520M20おきなさひ。モシ/賛(さん)をせうといふ/者(もの)があらふもしれねヱと 00022530¥P72 00022540L1ぬかした。あつかましい。/又(また)/子(こ)をもらをふとおもつて 00022550¥N25¥J 00022560¥X○/下戸(げこ)のいつゞけ△△△△△△△¥A菊人作 00022570L4Sゐつゞけに/酒(さけ)ハのまず、/茶(ちや)をせんじさせて、(廿七オ)な 00022580L5んぞくわしを/仲(なか)の/町(てう)からとりよせて/喰(くを)ふと、/禿(かむろ)をよび、コ 00022590L6レまつのや。てめへ、ちよつとかづさ屋へいつてな、新治 00022600L7に、/竹村(たけむら)からようかんを二タさほばかりもたせてこいとい 00022610L8つてくれといへバ、かむろ、おや、けしからねへ。/長持(ながもち)で 00022620L9かへ 00022630¥N26¥J 00022640¥X○なめし△△△△△△△△△△△△△¥A角子作 00022650L12S/北野(きたの)のかい/帳(てう)について、/浅(あさ)くさへ/茶(ちや)屋をだして/銭(せに)もふけ 00022660L13をせうとかんがへた所が、十二文茶つけでもなし。また/女(め) 00022670L14川なめし/鴬(うくひす)なめしといふも(廿七ウ)ある。いつそ、きゝに 00022680L15/北野(きたの)のほとゝぎすなめしがよからふと見せをだした。大き 00022690L16にはやつたが、とふいふことか、モウ見せをしまつた故、 00022700L17ともだちがきて、コレ、あのよふにうれて、モウ見せをし 00022710L18まふとハどふした物た。そして、ほとゝぎすなめしのひや 00022720L19うばんもよかつたといへバ、Sサレバさ。てつへんからか 00022730L20けになつた 00022740¥N27¥J 00022750¥X○/端午(たんご)△△△△△△△△△△△¥A旭堂烏欣作 00022760M3Sことしハ/初(はつ)のせつくだが、/幟(のぼり)も金太郎や(廿八オ)/鍾馗(せうき)ハ 00022770M4ふるいから、ちつとひねつて、/左右(さゆう)の幟を、/業平(なりひら)と二/条(でう)の 00022780M5/后(きさき)にして、まん中をあくた川、あがりかぶとの所を/薬玉(くすだま)、 00022790M6せうぶ/刀(かたな)ハ/真(しん)の/御太刀(ミたち)、かぶと/人形(にんぎやう)ハ/源氏(けんじ)/蓬生(よもきう)の所をかざ 00022800M7り、/近所(きんじよ)の/狂哥(けふか)よみをよんで酒もりのばへ、出入のさかな 00022810M8やがきて、Sモシだんな。おつりきな思ひつきでござりや 00022820M9す。これでとてもの事に、/女(をんな)のお子ならバ 00022830¥N28¥J 00022840¥X/旅僧(たびそう)△△△△△△△△△△△△△¥A米長作 00022850M12Sいなか/寺(てら)のおせう様が、江戸へ/用(よう)かあつてこざると(廿 00022860M13八ウ)きゝ、/村中(むらぢう)のあつらへ物。おれにハ/下村(しもむら)でおしろい 00022870M14と/油(あぶら)をかつてくだされ。わしにハゆかた/地(ぢ)を/越後(ゑちご)屋でかつ 00022880M15てくだされといろ+のたのミ。おせうも/浅(あさ)くさへんの/寺(てら) 00022890M16に心やすいがあるゆへ、それにとうりうして久しぶりの江 00022900M17戸けん/物(ふつ)。けふハ日本/橋(はし)へんまて/行(ゆき)、ついでに下むらをき 00022910M18けバ、両がへてうといふ。まづおしろい油をとゝのへ、す 00022920M19るが町へかゝれバ、/三井(ミつゐ)の見世で、なんてござります。コ 00022930M20レヱおあがり+といふ。ほんにゆかたもたのまれたと見 00022940¥P73 00022950L1世へあかれバ、手代が、何を上ケますと(廿九オ)いふ故、 00022960L2イヤ、わしハゆかた/地(ぢ)がのそみじや。Sハイ。コリヤ/茂(も)三 00022970L3郎よ。その/鼠(ねすミ)小もんのゆかたをもてこい△Sアヽイと、も 00022980L4つてくる。おせうイヤ、もつとはでなのを。Sハイ。それ 00022990L5花いろの/中(ちう)がたのかなきんをもてこい△Sハアヽイヽと、 00023000L6持てくる。/是(これ)も/気(き)にいらぬ。モシ/是(これ)ハわしがきるのでハな 00023010L7い。もちつと/地(ぢ)がようて、だてな物がのそミじやといへバ、 00023020L8手代大ごへにて、コレ、/晒(さらし)の/嶋(しま)をもてこいといへバ、おせ 00023030L9うきもをつぶし、イヤ、おいとま申ます 00023040¥N29¥J 00023050¥X○/雷(かミなり)ぎらひ△△△△△¥A千林亭万善作(廿九ウ) 00023060L12Sそりやまたひかつた。こんどハ大きくなるであらふと、 00023070L13ていしゆハ/戸棚(とたな)へはいり、/戸(と)を引たてゝいきをころして、 00023080L14こゝろのうちで、くわんおんをねんじている。/女房(にやうぼう)ハおも 00023090L15ひのほか、なんともおもはず。/四(よ)つばかりな子をだいてゐ 00023100L16る内、/鳴(なり)もやミ/雲(くも)もはれれハ、モシ、もふ/出(で)てもよふござ 00023110L17りやすと戸をあけれバ、ていしゆはい出、さて+大きに 00023120L18きうくつなめをした。/高(たか)がしれた事だと思ひながら、どふ 00023130L19もこわくてならぬといふを、ちいさい子が、コレかゝさん。 00023140L20とつさんハの、かみなり様ンにも(三十オ)アノ/借(かり)があるか 00023150¥N30¥J 00023160¥X○/道行(ミちゆき)はなし△△△△△△△△△△¥A/晋象(しんぞう)作 00023170M3S今ハむかし。/夜(よ)ばなしのなかに、壱人リうそをいふやつ 00023180M4がすゝみいで、コレ、けふとほうもないものを見た。ばく 00023190M5ろ/丁(てう)をとふつたら、/井戸端(いとばた)に/米(こめ)をといで五十はかりな/男(おとこ)が 00023200M6いた。こゞんてゐるゆへ、しりのほうからミると、ふんど 00023210M7しがたるんで、きんたまかぶら+している。ミちとをり 00023220M8のものが見て、アノ人ハふんどしをあげるとも、きんたま 00023230M9をさげるともすれバいゝと(三十ウ)わらいなから見ている 00023240M10/中(なか)に、一人リきつとなかめていたが、やがてそバにあつた 00023250M11/竹(たけ)をひろつて、きん玉をくらハせたら、その/男(おとこ)ハうんとい 00023260M12つてたをれる。コレハ+とみな+きもをつぶすうち、 00023270M13みつけまへのゑんまやのミせへかけあがつて、/絵馬(ゑま)をとつ 00023280M14てそこらぢうまきちらし、ゑのぐ/皿(さら)をふみくだき、ごふん 00023290M15のすりばちをていしゆのあたまへかぶせ、すぐにむかふの 00023300M16/人形(にんきやう)見せへあがる。だるまをはりおとし、にんぎやうを両 00023310M17ほうの手にもつてかけだし、/御所(こしよ)おこしの見せへほうりこ 00023320M18んで、すぐ(卅一オ)におこしをつかんでくひながらかけて 00023330M19ゆく。みちにそば屋て/亀(かめ)のこざるに/箸(はし)が山ほとほして有た 00023340M20を、あしでひよいとけて、とうがらしやの見世へかけこん 00023350¥P74 00023360L1で、とふからしをひつつかんでほうはつたが、からいかし 00023370L2て手にもつたを、ていしゆの目へふりかけ、もち屋の見せ 00023380L3のとらやきをつかミくひながらかけだして、/海苔屋(のりや)の見世 00023390L4にこしらいてゐる一/枚(まい)をとつて/半分(はんぶん)くちへほうばり、半分 00023400L5てはなをかみ、/雷門(かミなりもん)へきて、くちにほうばつたのりをふ 00023410L6つと(卅一ウ)ふきつけ、かきうりのてんびんぼうをひつた 00023420L7くつて、どうぜなかをくらハせ、たるぬきをかぢりながら、 00023430L8/大川(おゝかわ)ばしへかけてくると、/渡銭場(とせんば)でざるをだしたを、ひつ 00023440L9たくつて、そのざるてあたまをくらハせ、さつまいもの大 00023450L10きながあつたを、両ほうのたもとへいれて、/橋(はし)をかけてゆ 00023460L11くとおもつたが、まんなかからぽんととびこんた。大ぜい 00023470L12Sそりやアマなんだ△S/気(き)ちがひ 00023480¥N31¥J 00023490¥X○ばか/売(うり)△△△△△△△△△△△¥A/如仙(じよせん)作 00023500L15S/年(とし)のころ廿二三なやろうが、まるびたいで、かほハ(卅 00023510L16二オ)おもなが、はなの下がなかくつて、ゆきのみじかい 00023520L17きものをきて、ミづはなをたらし、大ばかヱヽ+と/売(うつ)て 00023530L18くる。Sアレ見やれ。ほんに大ばか+といふが、あいつ 00023540L19がつらがばかのかんばんだとわらひなから、ばかをかつて 00023550L20くをふ。コレばか、ヤイ+とよべと、ゆきすぎる。大ご 00023560M1へあげ、ヤイ大ばか、ヤイ大ばかやろう。コレかつてやろ 00023570M2う。ばかヤイ+といへバ、やう+ときゝつけて、のら 00023580M3+もどり、Sばかハおめへかへ△Sムヽおれだ 00023590¥N32¥J 00023600¥X○かゞみとぎ△△△△△△△¥A仲澄作(卅二ウ) 00023610M6Sよし/原(ハら)の女郎屋でひる見せすぎ。かゝみとぎをよんで、 00023620M7とがせてゐる。うしろから/新造(しんぞう)大せい、のぞいて見ていて、 00023630M8コレかゝみときどん。そのひかる物ハなんだへ。Sコレハ 00023640M9ミづかね△Sホンニ、かんざしをとくにもようおつしやう。 00023650M10コレ、こんたハ/国(くに)ハどこだ△Sアイ。わしがくにハ加賀△ 00023660M11Sヲヤ、とうくだねへと@いふそはに|かむろが、@△Sモウ日かくれるハな。 00023670M12はやく/帰(けへ)らつせへよ 00023680¥N33¥J 00023690¥X○おもいつき△△△△△△△△△¥A五十三次作 00023700M15Sなんぞいゝおもひつきをして、/銭(せに)もふけをし(卅三オ)た 00023710M16いものじやと、わしがこゝろやすい見せ物しがいひます。 00023720M17おまへ、なんぞあんじてくんなさい△Sそれハちかいころ 00023730M18/開帳(かいてう)にも/扇合(あふきあわせ)の/美人(びじん)あわせのといふ/奉納(ほうのう)があるから、あ 00023740M19れからおもひついたら、/先(まづ)/毛(け)ぬき一しきの/細工(さいく)もので、け 00023750M20ぬきあわせ。その/次(つき)へ/摺(すり)ばちのふじ/山(さん)、かぶとばちや火ば 00023760¥P75 00023770L1ちの/作(つく)り物がはちあわせ。/畳(たゝミ)でこしらへたが敷合といふ物。 00023780L2こいつハどふだろう。Sハイ。そんな事でもふかりましや 00023790L3うかな△Sハテ、もふからぬ時ハぶしあわせサ(卅三ウ) 00023800¥N34¥J 00023810¥X○むまのす△△△△△△△△△△¥A部屋住作 00023820L6S今から/岡釣(おかづり)にでもゆかふと、つり/道具(とうぐ)をだしてみれバ、 00023830L7はりのむすひめから/鼠(ねすミ)めがくひきつた。とふぞ/馬(むま)のすがほ 00023840L8しいとたつぬる所へ、いなか馬がとふる。これさいわいと、 00023850L9あとからしつぽを二三本ひつこぬく。ともだちか見ていて、 00023860L10コレ、てめへもとんだ事をする/男(おとこ)だ。馬のしつぽをぬくと 00023870L11いふ事がある物か。Sムヽ、むまのしつぽをぬけバどふす 00023880L12る△Sどふする/所(ところ)か、とんだ事だといはれ、もふつりにゆ 00023890L13くき(卅四オ)もなく、Sコレ、とふぞ/其(その)わけをいつてきか 00023900L14せてくれ。壱升/買(かう)ハ△S壱升かうなら、いつてきかせうと 00023910L15/酒(さけ)をとりよせ、まづ二三ばいのむ。Sコレサ、/気(き)がおちつ 00023920L16かぬ。どふいふわけだといへハ、Sそんならいはふ。/大事(たいじ) 00023930L17のことだ。馬のしつぽをぬくと、馬がいたがる 00023940¥N35¥J 00023950¥X○てうちん△△△△△△△△△△△¥A緑青人作 00023960L20Sアノ/浅草(あさくさ)のかい/帳(てう)に、よしハらの女郎がりつぱなてうち 00023970M1んをあけるが、ひるのうちばかりつるして、よるになると 00023980M2しまふ。マアかんじんのあかりのやくにたゝ(卅四ウ)ぬも 00023990M3の。ほんのみゑばかりか、たゞしハ、らうそくのかんりや 00024000M4くでござらふ△Sハテさて、女郎ハてうちんを上れバ、も 00024010M5ふそれですむ事じや△Sそれハなぜ△S/客衆(きやくしゆ)にとぼさせま 00024020M6す 00024030¥N36¥J 00024040¥X○/饅頭(まんちう)△△△△△△△△△△¥A東南西北平作 00024050M9Sあいつハ/下戸(げこ)のくせに、まんちうを見ると、こわい+ 00024060M10とぬかす。なんでもあきだなへ入れておいて、一トせいろ 00024070M11う/買(かつ)てきて、まんぢうせめにしてやろふと、/友(とも)だちがいゝ 00024080M12合せ、引ずつてあきたなへ入、/戸(と)のあい(卅五オ)からまん 00024090M13ぢうをやたらになげこめハ、アヽこハい。おそろしいとさ 00024100M14ハぎしが、のちにハおともやみける。コレサ、あんまりみ 00024110M15ながまんちうせめにした/故(ゆへ)、大かためをまハしたであろふ 00024120M16と、/戸(と)を/明(あけ)て内へ入り見れバ、五十ほどのまんぢうを、た 00024130M17つた一つか二つまへゝのこしおき、つくねんとしている。 00024140M18Sへらぼうめハ、まんちうがこわい+とぬかして、みん 00024150M19なくらつてしまつた。人をばかにしたといへバ、につこり 00024160M20として、Sアヽ、いゝ/茶(ちや)か一ツはいこわい 00024170¥P76 00024180¥N37¥J 00024190¥X○ふぐ/汁(しる)△△△△△△△△△¥A蓬雨作(卅五ウ) 00024200L3Sコレ、おれハこのちう吉原のてつほう見世へいつて、ふ 00024210L4ぐ汁をくつて、酒をてつちりのんた。あつたまつていゝよ 00024220L5といへバ、Sめつたにくつて、ころりと/死(し)ぬな。くらひも 00024230L6のでしぬとハあんまりたと、/友(とも)たちかいけん。そばにゐる 00024240L7とし/寄(より)が、しかし/若(わか)いうちハ、ふぐもくつてミるがよい。 00024250L8まついつたい、てうがどくだ。Sムヽそんなら、こんどか 00024260L9らおかば/所(しよ)でくをふ 00024270¥N38¥J 00024280¥X○/禿(かふろ)の/咄(はなし)△△△△△△△△△△△¥A道頼作 00024290L12S吉原のかふろよりあい、はなしをするをきけバ、(卅六オ) 00024300L13コレまつのどん。アノおいらの/里空(りくう)さんハ/死(し)なしつたとよ 00024310L14Sほんにか。せんげつきさしつて、そのまんまだの△Sそ 00024320L15ふさ。おいらんでもいまきかしつて、ないていなんす。ア 00024330L16ノいゝきぜんな、いゝ/男(おとこ)だがの。かわいそふな事をしたの 00024340L17Sヱヽ此人ハ、かわいそふだといはない物だ△Sなぜ 00024350L18Sとりつくとよ 00024360¥N39¥J 00024370¥X○どらむすこ△△△△△△△△△¥A柳和作 00024380M1S/若(わか)いときハある事じやと、/用捨(ようしや)しておけハほうづかない 00024390M2と、おもての/小座敷(こさしき)へおいこミ、/次(つき)の/間(ま)におやぢが/居(い)るゆ 00024400M3へ、/夜(よる)でもひるでも/外出(そとで)のならぬゆへ、むすこ(卅六ウ)も 00024410M4こまりはて、/表(おもて)の/格子(かうし)から/通(とを)りを見てゐる所へ、ぞふり/取(とり) 00024420M5の/友助(ともすけ)がのぞいて、/若旦那(わかだんな)。さぞごきうくつでござりませ 00024430M6ふ。Sヲヽ友助か。さつしてくりやれ。どふぞこんやハぬ 00024440M7けて出るくめんハあるまいか△Sハイ。ゆふべ、おいらん 00024450M8からも/文(ふミ)か/参(まい)りました。/是(これ)を御らん。/何(なに)かの/事(こと)ハ/私(わたくし)がこん 00024460M9ばん四つすきに、せきばらひをいたします。/此格子(このかうし)のこを 00024470M10一本ぬいておきますから、そつとぬけておいでなされませ 00024480M11といひふくめ、/時(じ)こくになれバ、くだんの/格子(かうし)のこを一本 00024490M12ぬきて、せきばらひ。(卅七オ)むすこハよろこび、/首(くび)をさ 00024500M13しだし、からだハ半ぶん/出(で)かゝり、おびがひつかゝり、こ 00024510M14しをいため、やう+さかさまにおつこちるを、友助いだ 00024520M15きおこし、おけがハござりませぬかといへば、むすこSさ 00024530M16て+くるしい物だ。やつと/出(で)た。/是(これ)をおもへバ、おらが 00024540M17お/袋(ふくろ)ハおれをよく/産(うん)だそ 00024550¥N40¥J 00024560¥X○/才蔵市(さいぞういち)△△△△△△△△△△△△¥A事足作 00024570M20S/年(とし)わすれの大/一座(いちざ)のはなしに、なんと、ことしのみそか 00024580¥P77 00024590L1にハ才蔵市を見にゆかふといへバ、女郎が(卅七ウ)モシ、 00024600L2/才蔵市(さいぞういち)とハ座頭さんの事でおすか△Sイヤ、万ざいの/才蔵(さいそう) 00024610L3の事さ。アノ/万歳(まんざい)ハ/三河(ミかわ)からくる。才蔵ハかづさ/房州(ほうしう)のも 00024620L4のが/多(おゝ)い。それが/四日市(よつかいち)へ大みそかのばんに、いくらもな 00024630L5らんでゐると、まんざいの/太夫(たゆふ)どのが、才蔵におかしい事 00024640L6をしやべらして、よいのを見たてゝかゝへるといふ事じや 00024650L7Sそんなら才蔵を大みそかに見たてるのだね。ヲヤ+、 00024660L8そのお/茶(ちや)をひいた才蔵どんハどふしんす 00024670¥N41¥J 00024680¥X○/北野(きたの)のほとゝぎす△△△△¥A喜丸作(卅八オ) 00024690L11S/北野天満宮(きたのてんまんくう)/浅(あさ)くさにて/開帳(かいてう)ニつき、/鳴(なけ)きこふといわれし 00024700L12/時鳥(ほとゝきす)も御ともに/参(まい)りしが、/境内(けいだい)の/鶏(にハとり)あまた、いづれも江戸 00024710L13うまれのなんかんなれバ、はりこみをくわせて心やすくな 00024720L14らず。ほとゝぎすも、両こくあたりをとんであるいて/帰(かへ)る 00024730L15/道(ミち)に、/八幡(やわた)山に/住(すミ)ける/鳩(はと)にあひ、これハひさしや。こなさ 00024740L16んハどこにいさんす。Sはとおれハ五六年まへ、やしきへ 00024750L17かハれ、それから浅草の/寺内(じない)へはなされた。今ハもふ江戸 00024760L18ものになつたぞへ△Sムヽそんなら、こなんにたのむこと 00024770L19がある。/寺内(しない)のにハ/鳥(とり)(卅八ウ)しゆにちかづきにしてくだ 00024780L20んせ。ふるまいハ/何(なに)ほとでもよい△Sはと何さ。/物(もの)のいら 00024790M1ぬやうに/壱升(いつしやう)ひつさけてゆけバよい△S壱升くらゐならや 00024800M2すい事じやが、けふハもちあハせがない。こなんかひつけ 00024810M3の所でかふてたも△Sはとそんならはやくいへバよいに。 00024820M4こゝハ/並木(なミき)、おれがとりつけの所ハ/行(ゆき)すぎた△Sとりつけ 00024830M5の所ハどこじや△Sはとおれがとりつけの所ハざん/町(まち) 00024840¥N42¥J 00024850¥X○/塩(しほ)△△△△△△△△△△△△△¥A下道作 00024860M8S女郎屋へ出入のさかなや、コレ/料理(りやうり)ばんさん。けふハ/鯛(たい) 00024870M9(卅九オ)となま/貝(がい)をおきやしたが、あいなめと/鯵(あじ)ハとふだ 00024880M10ね。Sイヤ、小ざかなハ此あついにハわるくなるから、マ 00024890M11アそれでおこふ△Sそんならよし。ちつと/塩(しほ)をくんなさい。 00024900M12水をかへてゆかふと塩をもらひ、塩といふやつかなくつて 00024910M13ハならぬもの。アノまた、どこの/商(しやう)ばい屋にも、/神(かミ)たなに 00024920M14しほがあげてあるが、どふいふゑんぎだやら。おめへハし 00024930M15つているか。Sアレハ/客衆(きやくしゆ)につとめをさがらせねへため 00024940¥N43¥J 00024950¥X○/山門(さんもん)△△△△△△△△△¥A治呂作(卅九ウ) 00024960M18Sある/娘(むすめ)、/恋(こひ)のぐわんをかけ、もし此/恋(こひ)かなハすハ/命(いのち)をす 00024970M19てゝもたいじないと、くわんおんの山門の上から、からか 00024980M20さをもつてひらりととぶ。くわんおん様も、これハきのみ 00024990¥P78 00025000L1じかいやつ。けがをさせまいと、/御手(ミて)の/糸(いと)をおびへつけ、 00025010L2ひきとゞめ給ふが、あり/合(あい)のいとゆへみじかく、やう+ 00025020L3ちうに娘ハぶらつき、くわんおん様ハおとさじとひつぱる。 00025030L4娘ハ/傘(かさ)をもつていろ+ともがくを、あうんの/仁王(にわう)が見つ 00025040L5けて、Sなんきんあやつり/三番叟(さんはそう)+ 00025050¥N44¥J 00025060¥X○/出家(しゆつけ)△△△△△△△△△¥A遠文作(四十オ) 00025070L8Sコレ、/貴様(きさま)ハ大ぜい/子供(ことも)をもつてゐるから、/壱(ひと)人リハ/出= 00025080L9家(しゆつ=け)にしたがよい。/一子(いつし)出家のくりきによつて、/九(きう)ぞくてん 00025090L10にしやうずるといふ。そして出家/程(ほど)はやく/出世(しゆつせ)するものハ 00025100L11ない。アノひやうしぎを打つてねんぶつを申てくる七つ/坊(ぼう) 00025110L12様でも、ぢきにりんしをとると出世して/寺持(てらもち)になる。それ 00025120L13から十八だんりんへ、だん+/本所(ほんしよ)のりやうぜんじだの/伝(でん) 00025130L14づういんさまだのといふへぬけ、かまくらの/光明寺(こうめうじ)様へも 00025140L15ぬける△Sハテな。れいかんじ様からハどこへぬけます△ 00025150L16Sれいがんからぬけれバ/木場(きば)だ(四十ウ) 00025160¥N45¥J 00025170¥X○あて身△△△△△△△△△△¥A陽春亭慶賀作 00025180L19Sわしハ此ごろ/柔(やハら)をけいこいたす△Sそれハよいおたしな 00025190L20ミ。/小目録(こもくろく)でもおとりなされたかといへバ、Sそのくらゐ 00025200M1な事でハない。/死活(しくわつ)までゆるされました。ちと/手(て)の/内(うち)をお 00025210M2めにかけよう。どなたぞおあいてにといへども、めつたに 00025220M3ころされてみる/気(き)のものもない故、アヽたれぞあいてにと 00025230M4見まハす所に、ちいさい/子(こ)が/白鼠(しろねつミ)を/持(もち)あそびにしてゐる。 00025240M5ちよつとそれをかしなさいと取て、コレ/生物(いきもの)ハなんでも、 00025250M6にんげんもおなじ事。きうしよといふものがある。こゝを 00025260M7(四十一オ)ちよつとこふついても、アレあのとふり/死(しに)ます。 00025270M8/活(いか)そふとおもふと、又ゆびでこふつけバと、いくたびつい 00025280M9てもいきかへらず。ちいさい子ハ/鼠(ねつミ)をころされて/泣出(なきだ)せバ、 00025290M10Sヲヽぼうさん。/泣(なき)なさんなヨ。此かハりにいゝ鼠をかつ 00025300M11てあげよふ 00025310¥N46¥J 00025320¥X○/剃刀(かミそり)△△△△△△△△△△△¥A浅草庵作 00025330M14S女郎、/若(わかい)ものに剃刀をたのんで/買(かつ)てきてくれろといへど 00025340M15も、かつてくれず、茶やのおとこをたのんで、江戸へ出る 00025350M16ついでにかつてもらひ、Sコレ喜助どん。こんたをいつぞ 00025360M17やからたのんでもかつてきてくんねへから、大/野(の)やのおと 00025370M18こ/衆(しゆ)を(四十一ウ)たのんで、剃刀と/砥石(といし)をかつてもらつた 00025380M19よといへバ、/若者(わかいもの)が、Sヱヽめつたにかつてきたといつて、 00025390M20やくにたつ物でハござりやせぬ。まづ/砥石(といし)とかミそりを/合(あわ) 00025400¥P79 00025410L1せて見ねハきれやせん。Sムヽそんなら、あわせてミんし 00025420L2やう。/八重鶴(やゑつる)さん。そのかミそりと/砥(と)をもつてきなんしと、 00025430L3/砥石(といし)と/剃刀(かミそり)をくらべて、ホンニこれハ/切(きれ)まい。これほど/長(なが) 00025440L4い 00025450¥N47¥J 00025460¥X○かつけの薬△△△△△△△△△△¥A先裏住作 00025470L7S此ころきけバ、/脚気(かつけ)でこまるといふ事だが、ちつともい 00025480L8ゝかな△Sイヤ、いろ+/薬(くすり)もつけたが、どふもなをらぬ 00025490L9(四十二オ)Sヲヽそふだらふとおもつて、いゝ/薬(くすり)をもつて 00025500L10きた△Sそれハかたじけねへ。のミ薬か付薬か△Sインニ 00025510L11ヤ、そんな物じやアねへ。/表(おもて)にまたしておいた△Sアノお 00025520L12もてにまたせておいたとハ、マアどんな薬た△Sコレ、/坊= 00025530L13主(ぼう=づ)のけつハ/脚気(かつけ)の薬だといふから、わかい/坊(ほう)様をたのんで 00025540L14きた△Sとんだ事をいふ/男(おとこ)だ。/女房(にやうぼう)さへそばへよせぬに、 00025550L15ぼう様のしりをどふして。からだのどくた△Sインニヤ、 00025560L16どくにハならねへ△Sどくにならねへとハ△Sずいぶん/請= 00025570L17合(うけ=あい)だ△Sなんぼそふいつても△Sハテ、さらしたのだ 00025580¥N48¥J 00025590¥X○/水茶屋(ミつちやや)△△△△△△△△¥A黒羽二亭作(四十二ウ) 00025600L20Sコレ、/両国(りやうこく)の水茶屋へめつたにゆくな。たいてい/銭(せに)をだ 00025610M1さねハならねへ。此ぢうおれが十二文おいたら、あとから 00025620M2おつかけて引ずりもどした△Sそれハどふいふ事だ。上方 00025630M3でハ/茶代(ちやたい)ハ四もん五もんおけバすむ。なんぞとはりこんで 00025640M4やれハいゝに、きのよハい男だ△Sイヤ、おれも/大平(たいへい)をい 00025650M5はふと/思(おも)つたが、ひきもどすわけもあるよふだ△Sそのわ 00025660M6けハ△Sされバさ。/茶(ちや)をくんでだした。一ツぱいのんだか、 00025670M7あんまり茶わんが/気(き)に入ツたから、ちよつとたもとへぬす 00025680M8んで/出(で)た 00025690¥N49¥J 00025700¥X○/浄瑠理(じやうるり)△△△△△△△△△¥A狂歌堂作(四十三オ) 00025710M11S北のゝ/天神(てんしん)、江戸へ御/出(いて)、/湯(ゆ)しま/亀戸(かめいと)その/外(ほか)のてんじん 00025720M12様かより合て/振舞(ふるまい)。なんぞ/芸者(けいしや)をよばふか。イヤ江戸ぶし 00025730M13ハかたい。/長哥(なかうた)ハとふであらふ。マアすがたりにたれぞ/義= 00025740M14太夫(ぎ=だゆふ)がよからふといふ内、かたり出すを聞バ、ねつからお 00025750M15もしろくもない。Sなんぼお江戸でもあまりやくたいじや。 00025760M16こちのしつたものか、たれじやと/床(ゆか)をのぞいてミれバ、な 00025770M17まりの/天神(てんじん) 00025780¥N50¥J 00025790¥X○/蜆汁(しゝミじる)△△△△△△△△△△△△¥A淮南堂作 00025800M20Sしゞめといふものハきつい/薬(くすり)だ。此間わしがこゝろ(四 00025810¥P80 00025820L1十三ウ)やすいものが、わうだんのやまひで、いろかあをく 00025830L2なつたを、まいにちしゞめじるをくつたら、いろがしろく 00025840L3なつた。すべて/草木(さうもく)のこやしにも、しゞめじるをさまして 00025850L4おいて/根(ね)へかけると、/花(はな)のいろつやがよくなると申ますと 00025860L5/咄(はなし)をきいてうちへ/帰(かへ)り、しゞめじるをこしらへ、そのあま 00025870L6りを、コレ三助。/庭(にハ)の/木(き)の/根(ね)へこれをかけろ。Sこれをか 00025880L7けれハどふいたします△S此しゞめじるハ、人のかほの/黄= 00025890L8色(き=いろ)になつたやまひでも、これをくへバいろがしろくなる。 00025900L9(四十四オ)それで草木にも、ねへこやしにかけれバ、はな 00025910L10がよくさくといふ/事(こと)じや△Sハイ、そんなら/花(はな)のさく/木(き)へ 00025920L11ハたつふりとかけましやうが、/山吹(やまぶき)ハよしにいたしませう 00025930¥N51¥J 00025940¥X○/唐人(とうしん)△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00025950L14Sれいの/友(とも)だちうちつれ吉原へゆき、/大一座(おゝいちざ)のはなしに、 00025960L15コレ、りうきう/人(じん)を見たか。りつはなものだといへバ、/年(とし) 00025970L16のころ五十くらゐなものが、イヤ又てうせん/人(じん)も大ぜいで 00025980L17にぎやかなものだ。(四十四ウ)しかし、/くわげん((ママ))ハ江戸の 00025990L18/祭(まつり)のがおもしろいようだ。あげこしも/祭(まつり)のハりつはなふと 00026000L19んをたんと/敷(しい)て、あめ/売(うり)のくわげんが四五町さきからきこ 00026010L20へる所ハ、江戸の/唐人(とうじん)の/拍子(ひやうし)がおもしろいといへバ、女郎 00026020M1が聞て、Sホンニかへ。からの/唐人(とうしん)より江戸の/唐人(とうしん)がにぎ 00026030M2やかでおすかへ。ヲヤばからしい。/唐(から)でハ/唐人(とうしん)をしやうば 00026040M3いにしていて 00026050¥Y1落噺詞葉の花大尾△(四十五了オ) 00026060¥Q 00026070M9寛政九丁巳春 00026080M10△△△東都戯作 00026090M11△△△△△立川談洲楼 00026100M12△△△△△△△烏亭焉馬撰 00026110M16△△△△△△江戸橋四日市 00026120M17△△△板元△△上総屋利兵衛 00026130¥P81 00026140¥U噺本大系△第十三巻 00026150¥T/臍(へそ)が/茶(ちや)〔序文〕 00026160¥G 00026170¥Y 00026180L15寛政九年正月刊 00026190L16西口舎可候作 00026200L17随本舎梅山序 00026210L18一睡庵画 00026220L19大坂和泉屋卯兵衛板 00026230L20半紙本五巻五冊 00026240¥Y序 00026250M3/朝(あした)に/咄(はなし)を聞イて、/夕部(ゆふべ)に/死(し)すとも/可(か)なりとハ、/唐(から)の咄、/仙= 00026260M4人(せん=にん)の/言葉(ことば)とかや。/爰(こゝ)に/日本(につほん)/浪花(らうくハ)/西口舎(せいこうしや)/可候子(かこうし)、/夫(それ)におとら 00026270M5ぬ咄を/好(この)ミて、おさん、長吉がいねふり/眼(め)をも/覚(さま)さすの/妙(めう) 00026280M6を/得(ゑ)、とし/比(ごろ)の/作意(さくい)(序1オ)/有(ある)を、こたび/好士(こうし)のすゝめに 00026290M7より/桜木(さくらぎ)にのほし、/則(すなハち)/臍(へそ)が/茶(ちや)と/題号(だいかう)して、しぶい/顔(かほ)の/親仁(おやぢ)、 00026300M8/嫁(よめ)いぢるしうとめ/婆(ばゝ)様をはじめ、人&の/腹(はら)をかゝへるの/笑(わら) 00026310M9ひの/種(たね)に/備(そな)ふるとて、/其断(そのことハり)を、予ニしるしねとあれは、 00026320M10いざとて/両手(りやうて)を/拱(こまぬき)、小/首(くび)をかた(序1ウ)むけて、/思案坊(しあんぼう)/柿(かき) 00026330M11次郎、おろかにも/贅言(せいげん)を/述(のふ)るものならし 00026340M13△△△巳のはつ春 00026350M14△△△あつめしをよミぬるうちハ口薬 00026360M15△△△△皆鉄炮のあたり咄て 00026370M17△△△△△△△△△△△△随本舎梅山G 00026380M19△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序2オ) 00026390¥P82 00026400¥G(序2ウ) 00026410G1形りかたち其品玉の眠ふるまに 00026420G2△ちやつとかわつたとこか浮世しや△一睡庵 00026430¥T1へそが茶△第壱 00026440¥N1¥J 00026450¥X御代の春 00026460M5/時代(じだい)めいたおやぢ/同士(どうし)/寄合(よりあひ)て、/米(こめ)が/高(たか)ひの、イヤ/銭(ぜに)が/安(やす)ひ 00026470M6のと/泣事咄(なきごとはな)しのあげくに、いや+、/南方(なんぼう)じゆつなひの、 00026480M7/悪(わる)ひのといふても、/昔(むかし)のよふな事を/聞(きけ)ば、/有難(ありがた)ひ/納(おさま)つた/御= 00026490M8代(ミ=よ)で、ぜにさへあれバ/枕(まくら)を高ふしてねられます。いかさま、 00026500M9おつしやれバ/左様(さやう)な/物(もの)じや。どこの/浦(うら)+までも(一オ)/弓(ゆミ) 00026510M10は/袋(ふくろ)、/鎗(やり)ハ/鞘(さや)に納つた/有難(ありかた)ひ/御代(ミよ)で/御座(ござ)りますと咄しを、 00026520M11/台所(だいどころ)に仕事して/居(い)る/下女(げじよ)が/口(くち)の/内(うち)で、/旦那(だんな)さんも/啌(うそ)ばつか 00026530M12り。/毎(まい)はん/抜身(ぬきミ)で 00026540¥N2¥J 00026550¥X声のこたま 00026560M15/在処(ざいしよ)から/御堂(ミどう)まいりとおぼしくて、/巨燵(こたつ)の/矢(や)ぐらと/綿籠(わたかご)を 00026570M16/壱荷(いつか)にして、/壱方(いつほう)のやぐらのほうに、五つ斗リの子を入レ 00026580M17て、/門口(かどぐち)に(一ウ)/息杖(いきつへ)して/居(い)るを、内に居る子が見て、と 00026590M18ゝさん。あれハ/何(なに)するのじやへ。あれか。あれハな、あの 00026600M19子が/無理(むり)をいふさかいで/売(うり)に/行(ゆく)のじや。/我(われ)も/無利(むり)をいふと、 00026610M20あのよふにして/売(うり)にゆくぞよといふを、/表(おもて)な/矢(や)ぐらの内な 00026620¥P83 00026630L1子が聞イて、とゝさん。モウ/堪忍(かんにん)じや 00026640¥N3¥J 00026650¥X口真似 00026660L4何がな珍らしひ事をせんと、大うかちの(二オ)/風雅友達(ふうがともだち)/打= 00026670L5寄(うち=より)、ナント、よしの山の/桜見(さくらミ)ハ、/最(も)はや/面白(おもしろ)うなひ。/気(き)を 00026680L6/替(かへ)て、/吉野(よしの)ゝ/雪見(ゆきミ)はどふ有ふと言へば、是ハよかろと申/合(あハ) 00026690L7せ、/雪(ゆき)の/時分(じぶん)を/見合(ミあハ)せ、四五人/連(つれ)にて/行(ゆき)しが、おもひの/侭(まゝ) 00026700L8の/大雪(おゝゆき)、/一向(いつこう)/上(あが)られんのを/無利(むり)に上つて、どふぞ/茶店(ちやミせ)があ 00026710L9らば一ツ/盃(はい)/呑(のミ)たひ/物(もの)じやと思へども、いつかうなし。もう 00026720L10せん/敷(しく)所さへなく、からだハひへ上るほど(二ウ)/寒(さむ)し。そ 00026730L11れもこらへて、一ト目/千本(せんぼん)まで/至(いた)りしが、/一向(いつこう)/風雅(ふうが)も何も 00026740L12わきに/成(なつ)て、そうぞふが口を/揃(そろ)へて、/是(これ)ハ++ 00026750¥N4¥J 00026760¥Xしぎ蛤 00026770L15おやまにこりぬいて/居(い)る/手代(てだい)、うつゝにもおもひ出して、 00026780L16/行(ゆき)たひ、/顔(かほ)が見たいと思ふて/居(い)る/所(ところ)へ、/町飛脚(まちひきやく)が/文(ふミ)をほう 00026790L17り/込(こん)で/行(ゆく)。ヤレ/嬉(うれ)しやと/顔(かほ)を見る/心地(こゝち)して、人/無(なき)/間(ま)を(三 00026800L18オ)かんがへて、くり/返(かへ)し+見る。/奥(おく)に/庖丁(ほうちやう)がなかりし 00026810L19や、/引(ひき)さき/紙(かミ)に/紅(べに)がベツタリついて有ゆへ、是は忝なひと 00026820L20口を/吸(す)ふ心地して、ねぶつて/居(い)る所へ/友達(ともだち)が/来(き)て、見せい 00026830M1といふに見せければ、テモ能ひ手に/書(かい)て/貰(もら)ひおつた。てき 00026840M2めハ/無筆(むひつ)じや。いつでも/代筆(たいひつ)じやと/聞(きい)てびつくり、内へか 00026850M3け出すゆへ、是、何をしに/行(ゆく)と言へば、マチヤ。(三ウ)う 00026860M4がひして/来(く)る 00026870¥N5¥J 00026880¥Xおもかげ 00026890M7大/晦日(つもごり)に/掛取(かけとり)の/草臥(くたぶれ)も/休(やす)まらんのに、/元朝(ぐハんてう)早&から/旦那(だんな)の 00026900M8/代礼(だいれい)。ねふたひ目をこらへて、ぶら+と/行(ゆく)うち、ヲヽ/爰(こゝ) 00026910M9じやと内へはいれバ、/机(つくへ)に/帳(ちやう)が/直(なを)して/有故(あるゆへ)、/付(つけ)ていなんと 00026920M10帳に/向(むか)ひ、思ハすしらず、/覚(おぼへ)一と/書(かい)て、南無さんほうとお 00026930M11もふ所へ、内より人が出て、(四オ)(四ウ・五オ挿絵)/是(これ)ハ忝 00026940M12ふ/御座(ござ)りますと/言(い)へハ、礼者ハイ。マア/廻(まハ)ハつてさんじま 00026950M13しよ 00026960¥N6¥J 00026970¥Xあミだ笠 00026980M16/物好(ものずき)な/大名(だいミやう)、/鷹狩(たかがり)はおもしろふ無ひと、たかの/餌(ゑ)の小/鳥(とり)を 00026990M17さし/歩行(あるき)玉ふ。/毎日(まいにち)の事なれば、/御下(をした)の/見物(けんぶつ)、/往来(わうらい)を御め 00027000M18んにて、/毎日(まいにち)+の鳥さし。/殿様(とのさま)、/竹(たけ)をしやに/構(かま)へ、さし 00027010M19かゝりたまへは、御/小性達(こしやうたち)ハ/先(さき)へまハり、(五ウ)/小(ちい)さい/声(こへ)で、 00027020M20/念仏(ねんぶつ)申まい+ 00027030¥P84 00027040¥G(四ウ・五オ) 00027050¥N7¥J 00027060¥X猿月 00027070M3/家根(やね)ふきがやねを/叩(たゝい)て/居(い)る/後(うしろ)に、/奇麗(きれい)な/坪(つぼ)のうちに/青梨子(あをなし) 00027080M4がたんとなつて有ゆへ、壱つほしい物じやとおもひ、/昼休(ひるやす) 00027090M5ミの間に/割(わり)ばさミにて取つた/処(ところ)が、/彼坪(かのつぼ)のうちへころ+ 00027100M6と取り/落(をと)し、ヱヽ、けたいの/悪(わる)ひと思ふうち、/此音(このをと)を/聞(きゝ)し 00027110M7にや、十八九にて/美(うつく)しい(六オ)/妾(てかけ)のよふな/者(もの)立出、ハア、 00027120M8/梨子(なし)が/落(おち)たハと/拾(ひろ)ひあげた/処(ところ)へ、/旦那(だんな)らしき人も立出しが、 00027130M9/彼妾(かのせう)のよふな者が、申、むいて上ふと手をたゝき、水を/汲(く) 00027140M10んでおじやといふを、/木陰(こかげ)から見て/居(い)る/家根(やね)ふき、むしや 00027150M11くしや/腹(ばら)で、思ハずしらず/声(こへ)をあげ、/勝手(かつて)にせい 00027160¥N8¥J 00027170¥X桁はづれ 00027180M4/桜(さくら)の/元(もと)に毛せんを/敷(しき)、/舞子(まいこ)が/舞(ま)ふやら(六ウ)/芸子(けいこ)/法師(ほうし)が 00027190M15/弾(ひき)立る。/客(きやく)ハめれんの大さハぎハ、/極楽世界(ごくらくせかい)の/楽(たの)しミも、 00027200M16是にハいかで/増(まさ)るべしと、/美(うつく)し/揃(そろ)への有さまに、花もまバ 00027210M17ゆく思ふらん。かゝる/処(ところ)へ、/鶴(つる)に/乗(のつ)て/空(そら)を/飛歩行(とびあるく)/費長房(ひちやうぼう)、 00027220M18此さわぎにうつゝをぬかし、/鶴(つる)の/背中(せなか)をどふど/踏(ふミ)はづし、 00027230M19さわぎの/向(むか)ふへどふど/落(おつ)れバ、人が/落(おち)たと大そうどう。/能= 00027240M20&(よく=+)見れバ/仙人(せんにん)じやが、目がまふたと/皆(ミな)が/恟(びつく)り。(七オ)マア 00027250¥P85 00027260L1/呼(よび)いけんと思へ共/名(な)ハしらず。/仙人(せんにん)どのいのふ+と呼ぶ 00027270L2/声(こへ)に、ふつと/気(き)が付、めんぼくそふな/顔(かほ)つきにて、あたり 00027280L3見/廻(まハ)し、どなたもいかひお/世話(せわ)で/御座(ござ)り升と、/腰(こし)なで+、 00027290L4申+、どこぞそこらに、つるハ/居(い)ませんかなとたづぬれ 00027300L5ば、そばに/居(い)る/芸子(げいこ)が、コチヤいやいな。わしやそんなと 00027310L6ゝさんはないわへ(七ウ) 00027320¥N9¥J 00027330¥X石橋山 00027340L9太郎兵衛。何ンぞ/珍(めづ)らしい事ハないか。/有段(あるだん)かひ。此あい 00027350L10た、/嶌(しま)の内に/文弥(ぶんや)のおやまが出て、ヱラはやりじや。それ 00027360L11が何ンのめづらしい事が有ぞい。サア、おやまが/泣(なく)のなら 00027370L12/珍(めづ)らしないが、其女郎を/呼(よ)ふと/客(きやく)が/泣(なく)のじや。/夫(それ)はめづら 00027380L13しい。/余(あま)りはやるゆへ、おれも呼んで見たが、/咄(はな)して/居(い)る 00027390L14内、/早(はや)/悲(かな)し成ゆへ、/爰(こゝ)ぞとおもひ、こらへて見ても(八オ) 00027400L15かなしなる。/彼(か)の事にかゝると、いつそこらへられん。/余(あま) 00027410L16り/奇妙(きめう)じやゆへ、どこのやつじやととふて見たら、/黒(くろ)がう 00027420L17しといふ、みこの/娘(むすめ)じや 00027430¥N10¥J 00027440¥X浮たゝミ 00027450L20/法印様(ほういんさま)。御出被成ませ。/扨(さて)/此間(このあいだ)おたのミ申ました/足留(あしどめ)、な 00027460M1ぜに/早(はよ)ふなされてハ下されませんぞい。サ、さつそく/仕(し)ま 00027470M2したがの。イヱ+。夫でも/夜前(やぜん)/欠落(かけおち)いたしましたといふ 00027480M3に、/法印(ほういん)(八ウ)/小首(こくび)かたむけ、/夫(それ)はマア不/思義(しき)な事じや。 00027490M4おれが/仕(し)た/足留(あしとめ)が/利(きか)なんたといふ事ハなひが。そふして/手(て) 00027500M5がゝりでも/御坐(ござ)つたか。ハイ。マア/少(せう)&/手(て)がゝりも/出来(でき) 00027510M6ました。そしてどつちへ/行(ゆき)ました。ハイ。マア京へ/行(ゆき)まし 00027520M7たよふに/聞(きこ)へますと/聞(きい)て、/法印(ほういん)、ハアヽ、聞へた。それで 00027530M8ハ/足留(あしどめ)もきかんはづじや。何ンといたしましてナア。/呼(よび)や 00027540M9からかごに/乗(のつ)て、/舟(ふね)に乗りますゆへ(九オ) 00027550¥N11¥J 00027560¥X手尓葉違ひ 00027570M12/大伴(おゝとも)の/黒主(くろぬし)、/小町(こまち)と/倶(とも)に/哥(うた)の/勅命(ちよくめい)をば/蒙(かふむ)り、何とぞよき/哥(うた) 00027580M13を/詠(ゑい)ぜん/((と脱カ))思ひけれバ、/先(まづ)小まちが/作意(さくい)をさぐらんため、小 00027590M14町のやかたへしのび入り、/学文所(がくもんしよ)とおぼしき/床下(ゆかした)に/忍(しの)びて 00027600M15いたりしが、何の音もせず。/最早(もはや)/夜(よ)も/更(ふけ)しと思ふ/時分(じぶん)、何 00027610M16やらいふよふなと/耳(ミヽ)をそば/立(だて)/聞居(きゝい)しが、とんときこへず。 00027620M17/猶(なを)もみゝを(九ウ)/板(いた)につけて、よく+/聞(きけ)ば、いとやごと 00027630M18なき/声(こへ)にて、アヽ+/死(しに)ます 00027640¥P86 00027650¥G(十ウ・十一オ) 00027660¥N12¥J 00027670¥X梅松桜 00027680M3/去大名(さるだいミやう)、/姫君(ひめぎミ)を御/一門方(いちもんがた)へ御こし入れ有て、はや御/懐胎(くわいたい) 00027690M4にて/臨月(りんげつ)になれば、/初産(ういさん)の事ゆへ、/首尾(しゆび)よく/達者(たつしや)に成よふ 00027700M5にと、/諸寺(しよじ)/諸山(しよさん)への御/祈祷(きとう)。/親殿様(おやとのさま)御こゝろもやすからず、 00027710M6/折節(をりふし)/馬上(ばしやう)にて/使者(ししや)/馳来(はせきた)り、/只今(たゞいま)(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)/姫= 00027720M7君(ひめ=ぎミ)様、御/産(さん)の/気(け)が付たるとの/早打(はやうち)/来(きた)る。/下(した)※とちがふて 00027730M8/走(はし)つても/行(ゆ□)れず、/大殿(おゝとの)ハ/火(ひ)の見へ上つて、/遠眼鏡(とうめがね)にて/御覧(ごらん) 00027740M9ある所へ、又/馬上(ばしやう)にて、/只今(たゞいま)/玉(たま)のよふなる/若殿様(わかとのさま)御/誕生(たんじやう)と 00027750M10の/注進(ちうしん)。それハ目出たひ+と御よろこびの中へ、又+ 00027760M11/馬上(ばしやう)にて、/若殿様(わかとのさま)御たん生との知らせ。フウ、/扨(さて)は/双子(ふたご)か。 00027770M12マア+/母子(ぼし)共/達者(たつしや)で目出たひ+との/舌(した)も/引(ひか)せられ(十一 00027780M13ウ)ぬ所へ、又+/若殿(わかとの)様御/誕生(たんじやう)とのはやうち。/大殿(をゝとの)おど 00027790M14ろきながら、/遠(とふ)目がねをしやに/構(かま)へ、モウとまればよいが 00027800¥N13¥J 00027810¥X渡り始 00027820M17/長坊(ちやうぼう)。/千(せん)坊がチンホ見い。/座摩(ざま)の/氏子(うぢこ)じやによつて、い 00027830M18がんで有。ナアニ、千ぼうこそ/稲荷(いなり)の氏子じやによつて、 00027840M19いがんである。ナアニ/坐摩(ざま)こそいがめ、いなりの氏子ハな 00027850M20んのいがもぞい。(十二オ)イヽヤ。いなりじや。イヤ、/座= 00027860¥P87 00027870L1摩(ざ=ま)じやと、/子(こ)どものせり合ふを、/店(ミせ)に/仕事(しごと)して居るおやぢ 00027880L2が聞イて、ホンニ、どちらの/方(ほう)がいがむのじやあろと、ら 00027890L3つちも無ひ事に小/首(くび)かたむけ居たりしが、/横手(よこで)を打つて、 00027900L4ホヽウ、そふじや。/座摩(ざま)の/方(ほう)じや。うしろの橋も 00027910¥Y1臍か茶巻壱△終(十二ウ) 00027920¥T1臍か茶巻ノ二 00027930¥N1¥J 00027940¥X呼子鳥 00027950M5/明暮(あけくれ)/山路(やまぢ)や/獣(けだ)ものばかり見た/猟師(りやうし)の目からハ、大坂の/芝居(しばい) 00027960M6めづらしく、/道頓堀(とうとんぼり)をうそ+と/歩行(あるい)て/居(い)る/内(うち)、フト目に 00027970M7かゝる/緋(ひ)ぢりめんの五こくの/下駄(げた)、チヤツト/拾(ひろ)ひ上ケ、何 00027980M8ンでも此下駄て/笛(ふへ)をこしらへたらバ、/鹿(しか)取ル事はぬれ手で 00027990M9/粟(あわ)のつかミ取りと、大きに(一オ)よろこび、/山家(やまが)へ/戻(もど)り、 00028000M10/直(す)ぐに/鹿笛(しかふへ)に/彼下駄(かのげた)をこしらへ、/吹(ふい)て/鹿(しか)が/寄(よる)かと、ふけど 00028010M11も※鹿ハよらず。めんよふ、此/筈(はづ)でハ無ひがと、/能(よく)&下 00028020M12駄を見れば、/表(おもて)の方に、丸に/嵐(あらし)といふ焼/印(いん)が 00028030¥N2¥J 00028040¥X壁に耳 00028050M15/裏(うら)の住ミに/暮(くら)して、/贅(ぜい)のはつたおとこ、/宵(よひ)から/紙(かミ)やで/仙過(せんくハ) 00028060M16壱/枚(まい)買ふて/置(おい)て(一ウ)/元朝(くハんてう)のまたくらい間に、/家(いへ)ぬしの/門(かど) 00028070M17で、/物申(□のも)。お/礼(れい)申ますと、/上下(かミしも)のかわりに、/彼(かの)とゝのへ置 00028080M18し紙をグハサ+もんで/歩行(あるき)、/年寄(としより)も/付合(つきあひ)も/相(あい)長屋も/仕舞(しま) 00028090M19ふて内へ/戻(もど)り、/嚊(かゝ)。/上下(かミしも)たゝんておきやといへバ、/麻(あさ)につ 00028100M20るゝよもぎとやら、かゝもすかさず、サアわしもはかまの 00028110¥P88 00028120¥G(四ウ・五オ) 00028130M1たゝミよふハ能ふ知つて/居(い)ると、/紙(かミ)の/音(おと)をグハサ+、か 00028140M2さ高になやむを、/隣(とな)りの/女房(によばう)が/耳(ミヽ)をかたむけて、(二オ)モ 00028150M3ウとなりにハ、/姫(ひめ)はじめしまふたそうな 00028160¥N3¥J 00028170¥X本易 00028180M6くらまぎれに、とつはかわといそぎしが、何やら/ニ((ヒカ))イヤリ 00028190M7/踏(ふ)んだゆへ、ハアしまふた。/犬(いぬ)のくそじやそふな。是でハ 00028200M8/先(さき)へ/往(い)ても上へあがる事がならん。/知(し)らん処で/洗(あら)ハれもせ 00028210M9ず。しかしながら、/泥(とろ)かくそか、いろふても見られず、こ 00028220M10まり入りしが、はやみちより/銭(ぜに)を壱文取出し、/番所(はんところ)の(二 00028230M11ウ)火かけで、ぬならくそじや 00028240¥N4¥J 00028250¥X紅こより 00028260M14/太夫(たゆふ)が/疱瘡(ほうさう)/仕(し)て居るゆへ、/方(ほう)+/客(きやく)よりの見/舞(まひ)。/善尽(せんつく)し/美(び) 00028270M15を尽したるをバ取ならへ、是はよし田やの/半(なかば)さんよりの御 00028280M16/見舞(ミまひ)。是ハ又いづゝやふじさまよりの御みまひ。太夫す、 00028290M17コレ見なませ。住よしやから来た御/菓子(くわし)、/折(をり)の/上(うへ)のもよふ 00028300M18ハ/嶌台(しまだい)に/尉(せう)と/姥(うば)、見事でハ御坐り(三オ)ませんかといふに、 00028310M19太夫、わしや、イヤイナ。/能(よい)/年(とし)をして/箒(ほう)き/持(もつ)て 00028320¥P89 00028330¥N5¥J 00028340¥Xうわばミ 00028350L3/夕暮(ゆふぐれ)時のいそがしひ/最中(さいちう)、うなぎやの/走(はし)り/本(もと)に有たうなぎ 00028360L4の/籠(かご)が打あかつて、ヤレソレといふ間に、うなぎハぬらく 00028370L5らと/表(をもて)の方の/溝(ミぞ)へはまるを、/娘(むすめ)やはゝおやが、くらかりで 00028380L6めつたつかミを、/風呂(ふろ)へ入て/居(い)るていしゆがこらへかね、 00028390L7(三ウ)ふんどしもせずかけ出、是もくらがりで/掴(つか)んで/居(い)る 00028400L8を、/女房(によぼう)がつかミ上たうなぎを/取落(とりをと)し、是をとらんと、て 00028410L9いしゆの/代(しろ)ものをホウドつかまへ、テモふとひやつじや 00028420¥N6¥J 00028430¥X錦の袖 00028440L12むかしの長太郎も今ハ長兵衛と/名(な)を/改(あらため)、大坂へ出てから/久(ひさ) 00028450L13し/振(ぶ)りの/田舎戻(いなかもど)り。ふた/親(おや)のよろこびに一日の/饗(もて)なし。/旅(たび) 00028460L14/草臥(くたびれ)に、(四オ)(四ウ・五オ挿絵)/宵(よひ)からころり一ト/寐入(ねいり)して、 00028470L15目を/覚(さま)して/聞(きけ)ば、/市中(しちう)とハ事/替(かハ)り、/松(まつ)の/風(かぜ)/谷(たに)のみづ/音(をと)に、 00028480L16いとゞ目がさへて/寐(ね)られぬまゝに、/往事(わうじ)を思ひつゞけての 00028490L17/独(ひと)り/言(ごと)。アヽ/私(わし)が大坂へ出てからモウ十年/余(あま)り、しばしと 00028500L18思へど、ハヤむかし。/田舎(いなか)にもだん+じやうびて/来(き)たや 00028510L19ら、アノ/谷水(たにミづ)の/音(おと)さへも/高上(かうじやう)に(五ウ) 00028520¥N7¥J 00028530¥X笛の間ちがひ 00028540M3/在所(ざいしよ)から/這出(はいで)の下女、/表(おもて)にこも/僧(そう)が/笛(ふへ)を/吹(ふい)て/来(き)たゆへ、ヱ 00028550M4ヽやかましいと/声(こへ)をあげ、とふらしやれ+と/言(い)へバ、お 00028560M5/家(いへ)が/奥(おく)から、コレ+、御/無用(むよう)と言やいのふ。ハイ+。 00028570M6御無用+に、こも僧も/帰(かへ)りし/跡(あと)にて、お家、コレ+り 00028580M7ん。こんどから/笛(ふへ)を吹て/来(き)たら、御無用といふものじやぞ 00028590M8や。ハイ+といふて/居(い)る内に、(六オ)/乞食(こじき)の/坊主(ほうず)が/門口(かどぐち) 00028600M9にちよつくばひ、/笛(ふへ)を吹て/居(い)れバ、りんが、御無用+。 00028610M10お家是+、あれハとうらしやれじやわいの。下女ハイ 00028620M11+。/通(とふ)らしやれ+に、又/去(い)んでしまふ。其/跡(あと)へ又/越後= 00028630M12獅(ゑちご=し)&の/笛吹(ふへふき)、門ト口に立つて/居(い)れバ、下女、/奥(おく)を/覗(のぞ)いて、 00028640M13お家さん。/今度(こんど)はどちらで/御座(ござ)り/升(ます) 00028650¥N8¥J 00028660¥X犬梅枝(六ウ) 00028670M16/去(さる)おやまが/借(しやく)せんにつまり、此/節季(せつき)ハどのお/客(きやく)さんもまち 00028680M17がひたらけで、トント/銀子(かね)のさいかくが/出来(でき)ん。いつそ/欠= 00028690M18落(かけ=おち)でもせふか。とふしたもので有ふと、とつおいつの/思案(しあん) 00028700M19の内、フト思ひ付た事こそあれと/俄(にわか)に/手水(てうづ)をつかひ、口を 00028710M20すゝぎ、伝へきく、むけんの/鐘(かね)をつくときハ/金子(かね)がふると。 00028720¥P90 00028730L1梅かえさんも手水鉢を/叩(たゝ)かんしてかねが出た。ヲヽ+そ 00028740L2ふじやと、/杓(しやく)(七オ)おつとり、すでに/打(うた)んとする/所(ところ)に、其 00028750L3かね/爰(こゝ)にと、三百両ばらり+/投(なげ)出す。是は/夢(ゆめ)かやうつゝ 00028760L4かと/袖(そて)ひきちぎり、/拾(ひろ)ひ/込(こ)ミ+、なんぼうひろふても 00028770L5+/尽(つき)ばこそ、さしものおやまもほうどこまり、アヽもふ 00028780L6よいわいナアと言へ共/聞(きか)ず、ばら+。どうやらこふやら 00028790L7ひろい上て見た所が、テモ是ハマアたんと有そ。ほんにま 00028800L8へとちがふて、弐朱がまぜつて(七ウ) 00028810¥N9¥J 00028820¥X其道& 00028830L11/納屋(なや)下の/乞食(こじき)/同士(どうし)/寄(より)合ひ、八ヨ。我にチト相/談(だん)のしたひ事 00028840L12か有ワイ。おゝ相だんとハなんの事じやい。アノ我も知つ 00028850L13て居る/通(とふ)り、/吹(ふき)やの/浜(はま)の長が/娘(むすめ)のおへんめ、/日比(ひごろ)から、お 00028860L14れがこゝろをかけているゆへに、きのふ長にあふて、おれ 00028870L15に呉いと言ふたら、やろうと言ひおるゆへ、/乞食(こじき)も身/祝(いわ)ひ 00028880L16じや。あすでも/結納(ゆひのふ)をやらねばならんが、(八オ)何を/仕(し)た 00028890L17もので有ふソイ。其ゆひのふとハ何の事しや。マアいよ 00028900L18+/貰(もろ)ふといふ/印(しるし)じやワイ。なんの、それを/思案(しあん)する事が 00028910L19有ぞい。はりこんで、にしき手の茶わんの/割(われ)を 00028920¥N10¥J 00028930¥X灰汁のたれかす 00028940M3/東寺(とうじ)/羅生門(らせうもん)の/鬼(おに)、/渡辺(わたなべ)の綱にかひなをバきられ、/無念(むねん)に思 00028950M4ひ、/伯母(おば)に/化(ばけ)て、なんなく/腕(うで)を取/返(かへ)して戻り、/夫(それ)より/外科(ぐハいりやう)に 00028960M5かゝり、よふ+(八ウ)かいなをつぎ合し/本腹(ほんぶく)せしゆへ、 00028970M6/祝(いわ)ひ事と、/先(まつ)/医者(いしや)どのをはじめ、/方(ほう)+の鬼共をよびあつ 00028980M7めての/振舞(ふるまひ)。いろ+と/馳走(ちそう)のうちにも、/御菓子(おくハし)にとて/丸= 00028990M8盆(まる=ぼん)にだんごをたんと/盛(も)り上て出せしを、めい+に取くら 00029000M9ひしあとに、たつた三つ残りしを、/皆(ミん)なが見て、ヒリ+ 00029010M10とふるふた 00029020¥N11¥J 00029030¥X三人二王(九オ)(九ウ・十オ挿絵) 00029040M13/冬枯(ふゆが)れの/淋(さび)しき/折(おり)から、/門前(もんぜん)に/立(たち)はたかつた/二王(にわう)の/女夫(めうと)が 00029050M14/退屈咄(たいくつはな)し。ナント思ハんす。おんなじ/仏(ほとけ)/仲間(なかま)でも、こちら 00029060M15夫婦のよふな退屈な/役(やく)ハ無ひのふ。/幾日(いつか)/喰(くわ)ひでも/供物(くもつ)壱つ 00029070M16そなへてくれる人もなく、ぞうりわらんずも/店(ミせ)に出した斗 00029080M17リ。/常(つね)の人の足にあわねば/買手(かいて)もなし、出しかよふにも/元= 00029090M18手(もと=で)もなし。ほんの是が/喰(くハ)ず/貧楽(ひんらく)立/遊(あそ)びしやと、/男(おとこ)二/王(わう)が言 00029100M19へバ、女(十ウ)二王もおかしがり、ほんに二/王(わう)た口合イじ 00029110M20やと、/跡(あと)ハ笑ひの其/処(ところ)へ、のつさ+/来(く)る/参詣(さんけい)を、きやつ 00029120¥P91 00029130¥G(九ウ・十オ) 00029140M1/大(おゝ)きいものと能見れバ、/秋(あき)の/角力(すまふ)の/鰭(ひれ)が/嶽(だけ)。それと見るよ 00029150M2り/男(おとこ)二王が/目(め)配せして、/嚊(かゝ)、/高(たか)ふ言や。そうり/買(かい)じや 00029160¥N12¥J 00029170¥X犬さよ姫 00029180M5なしミのおやま、/玉(たま)か/返(かへ)つたやら、/面白(おもしろ)ふないと、/外(ほか)のお 00029190M6やまを/連(つれ)て、是見よかしに道頓/堀(ほり)の(十一オ)/浜(はま)から/舟(ふね)に/乗(の) 00029200M7り、/芸(げい)子をつれて住よし/参(まい)り。はや舟が出る/処(ところ)へ下/地(ぢ)のお 00029210M8やまか走つて/来(き)て、どふも/済(すま)んと、やかましういふを、客 00029220M9そらさぬ/顔(かほ)で、舟を/早(はや)ふ出せといふによつて、舟を出しけ 00029230M10れば、/彼(かの)おやま、マアふねへ/乗(の)せておくれと言へども/聞(きか)ず 00029240M11/漕(□ぎ)出す。けい子やおやまハ/気(き)のどくがり、マア舟へ/乗(の)せて 00029250M12あけ被成といふに、/客(きやく)、ヱヽワイ。石になと成りおろぞ 00029260M13(十一ウ) 00029270¥N13¥J 00029280¥Xしやほてん 00029290M16/美(うつく)しひお/家(いへ)と十七八なむすめと、十ヲはかりな/男(おとこ)の/子(こ)と三 00029300M17人、下女壱人/連(つれ)て/行(ゆく)/向(むか)ふ/格子(かうし)さきに、やんまのつるんでと 00029310M18まつて/居(い)るを見て、/彼(かの)男の子か、アレ、とんぼがつるんで 00029320M19いると大きな/声(こへ)ていふを、/姉(あね)ハ/顔(かほ)を/赤(あか)め、ほんにナア。か 00029330M20わひらしい。/肩(かた)くま/乗(の)せて 00029340¥P92 00029350¥N14¥J 00029360¥Xにし肴(十二オ) 00029370L3嶌の内のかごかき、/銭(ぜに)をのばして、なんば新/地(ち)で/呼(よひ)屋見世 00029380L4を出し、方+の久三を/客(きやく)にして、/二階(にかい)での大立テ大さわ 00029390L5ぎ。/台処(だいところ)にはていしゆが/料理人(れうりにん)やら仲/居(い)やら、壱人リして 00029400L6打つたり/舞(ま)ふたり、さらはちを片手に二かいへ上らふとす 00029410L7るはづミ、げい子が/下(お)りかゝる。/南無(なむ)さんぼう。こぼして 00029420L8ハならんと、こちらへよけてあがりかゝると、又きやくが 00029430L9/下(お)りて/来(く)る。さかなが(十二ウ)さめると、ていしゆかむし 00029440L10やくしや/腹(はら)に大/声(こへ)あげて、ハイ。たのミましよ。ヱイ、あ 00029450L11ほらしひ。/戎(ゑびす)かなんぞのよふに 00029460¥N15¥J 00029470¥X秋のにしき 00029480L14遊ひもいろ+と/仕尽(しつく)し、京の/高雄(たかを)や/通天(つうてん)の/紅葉(もミぢ)/盛(さか)りなれ 00029490L15バ、太夫げいこを打/連(つれ)、/見物(けんふつ)に/行(ゆか)んと思ひしが、イヤ+、 00029500L16京まて/行(ゆこ)ふよりハ、/揚(あけ)屋の/座敷(ざしき)を高雄、通天にして(十三 00029510L17オ)/楽(たの)しまんと、/俄(にわか)にしゆかうを立テ、/先(まつ)太夫に/紅葉(もミち)の/模= 00029520L18様(も=やう)のにしきのうちかけ。/芸子(げいこ)ハ/揃(そろ)へのもミぢゆうぜん。仲 00029530L19居ハ紅葉の/前(まへ)たれして、皆毛せんに/居並(いなら)ひしハ、さながら 00029540L20高雄、通天も是にハやわかおとらじと思ふ処へ、/大尽(たいじん)ハ/旅= 00029550M1出(たひ=で)立。たいこの喜作に/茶弁当(ちやべんたう)/荷(にな)ハせ、ズツト/座敷(さしき)へ通ふれ 00029560M2バ、ていしゆも立出、茶/風炉(ふろ)で酒のかんをするやら、片わ 00029570M3きでハ/田楽(でんかく)を/焼(やく)やら/賑(にぎ)ハしき(十三ウ)/最中(さいちう)、何が/言(い)ひ上つ 00029580M4たやら、太夫と/大尽(だいじん)が口ぜつ/喧嘩(けんくハ)で、たゝくやらつめるや 00029590M5ら/乱(らん)さわぎの/中(なか)へ、壱人のたいこが、何やら有合ふ/扇(あふぎ)にさ 00029600M6ら+と/書(かい)て、きせるにくゝり付ケ、坐しきの真ン中へ立 00029610M7しを見れば、/寺内(じない)の/諸木(しよぼく)/折(をり)取べからず 00029620¥N16¥J 00029630¥X冬の空 00029640M10大のうがちてのかね/持(もち)、壱人リ/息子(むすこ)を/元(げん)ぶくさしての/振舞(ふるまひ)、 00029650M11一ト/通(と)ふりでハおもしろふないと、(十四オ)/五色(ごしき)/仕立(したて)の/座(ざ) 00029660M12しき/飭(かざ)り、/始(はじ)めの座しきハ/白(しろ)ざしきにて、/床(とこ)の/間(ま)に/狩野(かの)ゝ 00029670M13しらふのたか、/白(しら)玉/椿(つばき)の/生(いけ)花、/盆石(ほんせき)にハ/富士(ふじ)のゆき/気色(けしき)、 00029680M14其外いろ+の白イ/尽(づく)し。又/気(き)を/替(かへ)て/黒(くろ)の座しき。/先(まづ)/床(とこ)の 00029690M15/間(ま)にハ/墨(すミ)絵の/龍(りやう)の/掛(かけ)もの、/伏見(ふしミ)より/貰(もら)ひましたと/墨染桜(すミそめさくら)の 00029700M16/投(なげ)いれ、るり/尽(づく)しの/鉢(はち)まハり、/黒(くろ)にからすの/蒔絵(まきゑ)の/盃(さかづき)で酒 00029710M17もり。是より/黄(き)の/座敷(ざしき)ハまづ床の間に(十四ウ)れんぎやう 00029720M18に小/鳥(とり)の/絵(ゑ)の/掛(かけ)もの、/屏風(びやうぶ)ふすまハ/皆(ミな)/山吹(やまふき)の玉川の絵、/庭= 00029730M19廻(にハ=まハ)りも山吹の花ざかり。/夫(それ)より大座しきの/庭(にハ)に/桜(さくら)の/盛(さか)りの 00029740M20下へもうせんを/敷詰(しきつめ)、/緋(ひ)ぢりめんの大/振袖(ふりそで)で、げい子/舞子(まひこ) 00029750¥P93 00029760L1が/舞(ま)ふやら/諷(うた)ふやら、/爰(こゝ)ぞ/座(ざ)しきの/性根(しやうね)成とて大さわぎ。 00029770L2もはや長座/致(いたし)ました。おいとま申ませうと、まき/舌(した)の一/礼(れい)。 00029780L3まだせうねの有/客(きやく)ハ、どふやら/色(いろ)が壱つ/足(た)らんと、ふしぎ 00029790L4(十五オ)そふな/顔(かほ)で/玄関(げんくハん)へ立/出(いづ)る。/跡(あと)より、/彼(かの)げんぶくし 00029800L5た/息子(むすこ)が、/能(よ)ふお出下されましたと、/玄関先(げんくハんさき)の/青石(あをいし)に手を 00029810L6ついた 00029820¥Y1臍か茶巻之二△終(十五ウ) 00029830¥T1臍か茶△第三 00029840¥N1¥J 00029850¥X臆病男 00029860M5/夜更(よふけ)てもどつて/来(き)たおくびやうな/親仁(おやぢ)、ぬす人が/近処(きんじよ)をこ 00029870M6ぢているを見て/肝(きも)をつぶし、/跡(あと)へも/先(さき)へもゑゝ/行(ゆか)ず、/軒(のき)の 00029880M7下にすくんで/居(い)るを/盗人(ぬすひと)が見つけ、すらりと/抜(ぬい)て、何やら 00029890M8ばつさり。此おとを/聞(きゝ)てかけ出し、我家の/戸(と)をわれるほど 00029900M9たゝき、はよふ/明(あけ)イ。/切(きつ)た+。(一オ)ヤレ明いといふに、 00029910M10/女房(にようぼう)も/恟(びつく)りして、と/し((ママ))やおそしと戸を明るやいなや、ヤレ 00029920M11切つた。/真(まつ)/一((ママ))つに切つた/((と脱カ))、さわぎあるく。女房もあきれて、 00029930M12何いわんすぞい。どつこも/切(きれ)てハないといふに、ヱヽイ。 00029940M13切つた。是見や。/提(さげ)て/戻(もど)つたなんきんを 00029950¥N2¥J 00029960¥X/身(ミ)がわり 00029970M16すミよしの/汐干(しほひ)の/時分(じぶん)、十七八なむすめが天王寺の/塔(とう)の上 00029980M17へ手よりを得て、こし/元(もと)/数(あま)(一ウ)/多(た)/打連(うちつれ)て上り、/遠目(とうめ)がね 00029990M18にてすミよしの/浜(はま)を見て居けるが、壱人のこし元が、アレ 00030000M19見被成。あのふねの内に、あなたの/言名(いゝな)づけむこ様が乗ツ 00030010M20て/御坐(ござ)らしやるといふに、娘がうき立思ひ。ドレ見しやと 00030020¥P94 00030030¥G(四ウ・五オ) 00030040M1/目鏡(めがね)を引取り、ほんにそふじや+と、そう※が壱つの 00030050M2目がねをひつはりあひ、アレ+、今ふねからお上り被成 00030060M3るゝ。ホンニおやまやげい/子(こ)もたんと/居(い)る。アヽにくてら 00030070M4しひ。アレ、おやまの(二オ)手を引て何やらいふていなさ 00030080M5ると、/少(すこ)しりん/気(き)のむしやくしやばら。ヱヽ/腹(はら)の立と、そ 00030090M6ばに/居(い)る/久三(きうざ)がしりをふつつり 00030100¥N3¥J 00030110¥X過上信心 00030120M9/去(さ)ル/所(ところ)のいん/居(きよ)、/開帳参(かいちやうまい)りをいたされしが、/戒名場(かいめうば)でかい 00030130M10名を付て、銭をおかんとせしが、こしのはやミちを/落(おと)した 00030140M11そうなと、はな/紙(かミ)入レより/随分(ずいぶん)ちいさい/小玉(こだま)壱つ取出して、 00030150M12(二ウ)もそつと/書(かい)て下されませと、/段(だん)&思ひ出して/書(かゝ)せし 00030160M13が、まだ御座ります。六兵衛、嘉兵衛、新兵衛。/夫(それ)はおじ 00030170M14やまながら、/朱(しゆ)で/書(かい)て/下(くだ)さりませ 00030180¥N4¥J 00030190¥Xあて粋 00030200M17/龍宮(りうぐう)/乙姫(おとひめ)、/数多(あまた)のけんぞくを/百足(むかで)にとられ、何とぞ/秀郷(ひでさと)を 00030210M18たのミ、/敵(かたき)をうつて/貰(もら)ハんと、/夜(よ)な+/橋(はし)づめへ出て、ひ 00030220M19でさとを/待(まて)ども+/通(と)ふりたまハず。/折(おり)ふしさむらひ壱人 00030230M20(三オ)通ふり合せしゆへ、是こそと、申+と/袖(そて)を引ケば、 00030240¥P95 00030250L1かのさむらひ、ふりはなし/行過(ゆきすぎ)しが、アヽ、はした/銭(ぜに)があ 00030260L2らバ 00030270¥N5¥J 00030280¥X花軍 00030290L5あまた/妾(せう)を/持(もち)し/旦那(だんな)、今に/定(さだ)まるつまもなく、/本妻(ほんさい)を/極(きわ)め 00030300L6んにも、あちらを本妻にせは、こちらが/恨(う)らミん。こちら 00030310L7をしたら、あちらが恨ミん。あれかこれかと、/鬮(くじ)とりもげ 00030320L8びてなる(三ウ)まい。いつそ/唐(とう)の/玄宗(けんそう)の/真似(まね)をしてと、 00030330L9/色(いろ)&の花を/妾(せう)どもの/髪(かミ)にさゝせて/蝶(てう)を/飛(とば)し、其/蝶(てう)のとまり 00030340L10しを/本妻(ほんさい)にするとの/趣向(しゆこう)。/数多(あまた)の/妾(せう)は爰をせんと、すがた 00030350L11をよそほひ、/衣裳(いしやう)を/着(き)かざり、あたまにハ/美(うつ□)しき花をバさ 00030360L12し、/匂(にほ)ひをふくませて立ならぶ。旦那、むし/篭(かご)を/持出(もちいで)、ふ 00030370L13たを明ると、/蝶(てう)ハ爰やかしこととび/歩行(あるく)。/多(お)ふくの/妾(せう)ハめ 00030380L14い+の/天窓(あたま)へ(四オ)(四ウ・五オ挿絵)とまらせんとあせる 00030390L15/体(てい)。いつちはしの妾のはなへ蝶はたハむるゝ。とまるかと 00030400L16おもへバ又、二はん目へとぶ。何んでもわしがと思ふうち、 00030410L17又三/番(ばん)目、四ばんめと、そこらあたりをとび/歩行(あるき)、蝶ハた 00030420L18ゞたハふるゝ斗り、どれへもとまらず。花もさゝぬかたへ 00030430L19の下女があたまへとまるを、みな+あきれて立/寄(よつ)てよく 00030440L20見れバ、下女ハたハひもなふ/居(い)ねぶつて/居(い)た(五ウ) 00030450¥N6¥J 00030460¥Xつなぎ馬 00030470M3/行末(ゆくすへ)ハたかはだふれん/紅(べに)の花と、/端哥(はうた)やなまめける/下駄(げた)の 00030480M4おとに呼び出されて出る/息子(むすこ)、おやまや/芸子(げいこ)が取まいて、 00030490M5早ふお出被成ませとせがまるゝ内も、/髱(つと)の/梅花(ばいくハ)やとめ木の 00030500M6かほりにこゝろうば/さ((わカ))れて、まつてくれ+。マアうちの 00030510M7/首尾(しゆび)を見て/来(こ)ふと立もどり見れば、/親父(おやぢ)ハスヤ+とねい 00030520M8りばな。サア仕てやつたとかけ出しが、(六オ)ぞうりがち 00030530M9がふたと立/帰(かへ)り、/庭(にハ)の/廻(まハ)りをたづね+、いそぐほど見ゑ 00030540M10んほどにの又、アノ/匂(にほ)ひハたまらんと、ぼやき+さがし 00030550M11て/居(い)るを、/台所(だいどころ)に仕/事(ごと)して居る/母(はゝ)をやの/耳(ミヽ)へ入しが、又と 00030560M12ばついて、犬のくそでもふミやつたか 00030570¥N7¥J 00030580¥Xあづま下り 00030590M15/久松(ひさまつ)のよふな/丁児(でつち)と、お/染(そめ)見るよふな/娘(むすめ)と、/伊勢(いせ)物がたり 00030600M16の/本(ほん)を見い+、コレ長吉。わし(六ウ)わの、わがミに/此= 00030610M17業平(この=なりひら)さんのやうな/冠(かむり)や/衣裳(いしやう)がきせて見たひ。長吉何をいゝ 00030620M18なさるゝやら。わたしやまた、おまへさんに十二/単衣(ひとへ)をき 00030630M19せたら、/生(い)きたひなさまで御坐りませう。何を言やるやら。 00030640M20そんな事言ハずと、なんでもわしがいふよふに、アイ+ 00030650¥P96 00030660L1といふてたも。なんぞいふと、わしや/去(いに)ます+と二タ/言(こと) 00030670L2めにハ言やる。長吉/夫(それ)でもわたくしハ/奉公人(ほうこうにん)、あなたハむ 00030680L3すめごゆへに、/何時(なんどき)/去(いな)されませうも(七オ)しれません。ア 00030690L4レまた、あんな事言やるハいの。そんな事ハ有まひけれど 00030700L5も、/若(もし)そふした事が有て、/去(いに)やらふともまゝよ、/必(かな)らず 00030710L6+お/公家(くげ)様の所へやなど行やんなや。コレ、此/供廻(ともまハ)りを 00030720L7見や。/雪(ゆき)のふるのに、みんなはだしで 00030730¥N8¥J 00030740¥X立春大吉 00030750L10おやま二三人/連(つれ)にて、/関帝堂(くハんていどう)へ/参(まい)り、コレ、よい/処(ところ)へ/来(き)た 00030760L11わいナア。けふハ御/開帳(かいちやう)が仕て有ハへと(七ウ)三人がとつ 00030770L12くりとおがミ、アレ見なされ。/長(なが)いおひげしやナア。ほん 00030780L13に御手で/持(もつ)て/居(い)なさるナアといふに、/振(ふり)そでのおやまがさ 00030790L14ゝやいて、けりやうを/髭(ひげ)ならこそよけれ、はなならナア 00030800¥N9¥J 00030810¥X壱尺送り 00030820L17/寒(さむ)ひの、イヤつめたひのといふても、/大坂(おゝさか)ほどけつかうな 00030830L18処ハない。/去年(きよねん)の十月まへから、/北国(ほつこく)へ/往(い)ていたが、/最(も)はや 00030840L19十一月/比(ころ)ハ大/雪(ゆき)で、とんと(八オ)/歩行(あるかれ)ん。/多(お)ふかた壱/丈(ぢやう)の 00030850L20/上(うへ)もつもつて、やねよりうへになると、とんと/往来(わうらい)ハ無ひ。 00030860M1まづ/来年(らいねん)の三月/時分(じぶん)でないと、あるかれんてや。フム。し 00030870M2て又、/貴(き)さまハ/春(はる)いつ/戻(もど)つたぞい。ウム。三月に戻つた。 00030880M3それにまた、よふあるかれたのふ。サア、また/銭(ぜに)さへ出せ 00030890M4バ、其/雪(ゆき)の中でもあるかれる/仕(し)よふがあるてや。フム。/夫(それ) 00030900M5はまたどふしたものじや。サア、まづ大/釜(がま)に/湯(ゆ)をたつふり 00030910M6とわかして、/一荷(いつか)にな(八ウ)わせ、其/先(さき)へ大きな/杓(しやく)を/持(もつ)て、 00030920M7其わいた/湯(ゆ)をバ、カノ/積(つも)つた/雪(ゆき)へかけると/消(きへ)る。其きへた 00030930M8あとを、かけてハ通り+ 00030940¥N10¥J 00030950¥X百鳥おどし 00030960M11/都(ミやこ)/清水(きよミづ)の/舞台(ぶたひ)から/美(うつく)しいむすめが/飛(とぶ)とのうわさ、何が京中 00030970M12へ/聞(きこ)へけれバ、/清水(きよミづ)のぶたひの/下(した)ハ大くんじゆ。かゝる処 00030980M13へ、こし/元(もと)/数多(あまた)打つれて美くしい娘が/参(さん)けい。見物ハ、ソ 00030990M14リヤかのじやと、ジヤ+(九オ)(九ウ・十オ挿絵)といふ中 00031000M15を、かのむすめハおし/分(わけ)+本/堂(どう)へ参り、しばらく/拝(おが)んで、 00031010M16かづき/着(き)ながら/舞台(ぶたひ)へ出て、かうらんに/片(かた)あし掛て、方 00031020M17+/見廻(ミまハ)し+、アヽけふハどふやら/飛(とび)ごゝろわるひ。よ 00031030M18しにしようと、/供人(ともびと)/打連(うちつ)れ立/帰(かへ)る。又あすも其通りにて/帰(かへ) 00031040M19りしが、/道(ミち)&こし/元(もと)とさゝやくを/聞(きけ)ば、アヽ、との/達(たち)をた 00031050M20んとあつめても、/能(よ)い/男(おとこ)ハないものじや(十ウ) 00031060¥P97 00031070¥G(九ウ・十オ) 00031080¥N11¥J 00031090¥X鉢まき仏 00031100M3馬かたの八、/商売(しやうばい)に/似合(にあハ)ぬ/後生(ごせう)ねがひにて、/念仏(ねんぶつ)の/徳(とく)にや、 00031110M4/死(し)ぬると其まゝほとけになりしが、何が/乗(の)り付ぬ/蓮(はす)のれん 00031120M5/台(だい)に/乗(のり)、是ハさて、/俄仏(にわかほとけ)もじゆつないものじやと、いた 00031130M6ひ/足(あし)をこらへて/居(すハ)つているうちも、どふやらすると、れん 00031140M7/台(だい)がゆぶ+するゆへ、/横(よこ)の/方(ほう)を壱つたゝいて、ドウ(十一 00031150M8オ) 00031160¥N12¥J 00031170¥X水かゞみ 00031180M11こし/元(もと)が/座(ざ)しきはきさし、ゑん先の/手水鉢(てうづばち)に/影(かげ)をうつし、 00031190M12けふの/髱(つと)ハよふ/出来(でき)た。こちらのほうがもそつとこふと、 00031200M13/手水(てうづ)鉢を/水(ミづ)かゞみにして、ためつすかしつして/居(い)る所へ、 00031210M14お/家(いへ)立出、コレ+、また/髱(つと)をいろふていやるほどにの、 00031220M15また其手で/襖(ふすま)の/明立(あけたて)したらよごれるとしかられ+、/床(とこ)の 00031230M16/間(ま)のかけものに/田毎(たごと)の/月(つき)の絵を見て、(十一ウ)ヱヽ、あの 00031240M17月さへ 00031250¥N13¥J 00031260¥X二八の海 00031270M20大/宝寺(ほうじ)町のつき/米(こめ)屋。うちハ姉のおせきに/任(まか)せ、/弟(おとゝ)の長吉 00031280¥P98 00031290L1ハうまれついての/喧嘩(けんくハ)ずき。夕部のけんくハの/草(くた)臥にや、 00031300L2/奥(おく)の一ト間で/高(たか)いびき。折ふし/表(おもて)さわがしく、ソリヤけん 00031310L3くわよ+と、やかましひのが/耳(ミヽ)へ入りしや、長吉ハ、ウ 00031320L4ムンとねかへるを、/台所(だいどころ)に/仕事(しごと)して/居(い)る/姉(あね)のおせきが(十 00031330L5二オ)チヤツトあちら向ひて、いんのこ+ 00031340¥N14¥J 00031350¥X本海道 00031360L8伊勢/参(まい)りの大ぜひ/連(つれ)、/酔(ゑふ)たんぼうの手を引、ヤレ、もそつ 00031370L9とじや。歩/行(け)やい。モウ日が/暮(くれ)るわいの。何の、暮たら大 00031380L10事か。/爰(こゝ)で/泊(とま)る。又無理をいひ出したハ。サア+/歩(ある)行。 00031390L11モウジヤ+、もそつとじや。/行(ゆく)と/筆(ふで)捨/山(やま)じやといふに又 00031400L12引かれてヒヨロ++。筆捨山ハどこじや。/伊勢参(いせまい)りが 00031410L13/筆(ふで)すて山を(十二ウ)見ねバ/咄(はなし)がならぬ。見せてくれ。アレ 00031420L14+、/向(むこ)ふの山が/筆捨(ふですて)山しや/じや((ママ))といふに、しばらく打/詠(なが) 00031430L15め、いかさまナア。/狩野(かの)も/筆(ふで)を/捨(すて)たも/道理(どうり)かい。アヽちら 00031440L16ついてハ 00031450¥N15¥J 00031460¥Xかんおつ 00031470L19/浄留利(じやうるり)のけいこやと、うたひのけいこやと/隣(とな)り/同士(どうし)に有し 00031480L20が、/朝(あさ)からのけいこ人に、ほうど/退屈(たいくつ)して、チト人/絶(たへ)の間 00031490M1に、ヤレ小べんがしたひと、/裏(うら)ぐちへかけ出しが、となり 00031500M2もおなじ時に(十三オ)人だへしたりけるにや、是も小/便(べん)に 00031510M3/行(ゆき)、たがひにうらぐちにて/顔(かほ)見あハせ、是ハ+おやかま 00031520M4しう御坐りませう。イヤ+、おたがひ+と、/浄留(じやうる)りや 00031530M5がまへをまくりて、はやけさからはづミきつたる/小便(せうべん)シヤ 00031540M6ツシヤ+、おもわずしらず大/声(こへ)あげて、しのを見だせる 00031550M7/矢軍(やいくさ)のと/語(かた)れバ、うたひやもまけまひと、/鳴(なる)ハ/瀧(たき)の/水(ミづ)+ 00031560¥N16¥J 00031570¥X玉の汗(十三ウ) 00031580M10/万(よろづ)ぬけめなきからい/時節(じせつ)なれバ、一ト/通(とを)りでハ/行(ゆか)ぬ。なん 00031590M11でも/新(あたら)しい/趣向(しゆこう)を思ひ付て、/銭(ぜに)もふけをせんと/工夫(くふう)を/仕出(しいだ) 00031600M12し、/水風呂(すいふろ)へ/湯(ゆ)をわかして、/大道(だいどう)を/行水(ぎやうずい)+とながし/歩行(あるき) 00031610M13けれバ、ヤレ/珍(めづ)らしいと一所へおろし、たらひへ湯を/分(わけ)る 00031620M14やら、ふろへはいる人もあつての大はやりに/乗(のり)がきて、二 00031630M15三/組(くミ)も/手訳(てわけ)してあるくうち、けふハ/北辺(きたへん)を/歩(ある)かんと、/高麗(かうらい) 00031640M16ばし/辺(へん)をあるひたら、いつかうに(十四オ)/呼(よ)び/人(て)が無ひゆ 00031650M17へ、けたひが/悪(わる)ひ。いつそ/今橋(いまばし)すじへいてこまそと、今ば 00031660M18しすじを/流(なが)し/歩行(あるく)うち、/跡(あと)より/丁稚(でつち)が、/行水(ぎやうずい)や+と呼ぶ 00031670M19ゆへ、サアしめたと、あとへ/戻(もど)れバ、コレ+/風呂(ふろ)や。か 00031680M20らふろハないか 00031690¥P99 00031700¥N17¥J 00031710¥Xしべさがし 00031720L3/馬(むま)かたの/参会(さんくわい)と見へて、/天神(てんじん)の小山屋から/絵馬堂(ゑまどう)をぞめき 00031730L4あるき、/絵馬(ゑま)をながめて、(十四ウ)コリヤ八公。是を見い。 00031740L5/美(うつく)しいげんさいをおふて/居(い)るわい。あのよふな/形(な)りをして 00031750L6/欠落(かけおち)したら、ついとらまへられそふなものじやナア。こち 00031760L7らのハ/何(なん)じや。/唐子(からこ)が/壷(つぼ)を/割(わ)つてけつかるハ。ハアヽ/聞(きこ)へ 00031770L8た。アリヤからの/十夜(ぢうや)の/晩(ばん)じやな。こちらハなんじや。/唐(から) 00031780L9の/山上参(さんじやうまい)りじやそふなと、/韓信(かんしん)が/股(また)をくゞつて/居(い)るを見て、 00031790L10あれ見い。マアぞべ+と、けたいな形りじやナア。そふ 00031800L11してマア、/股(また)をくゞつているやつも(十五オ)よい/年(とし)をして、 00031810L12またほうそふをせんそふな 00031820¥N18¥J 00031830¥Xむら雲 00031840L15/此間(このあいだ)ハ/久(ひさ)&御出被成ませんが、どふで御坐りますぞ。きつ 00031850L16いお見かきりでござりますナア。何とぞ被成ましたか。ア 00031860L17ヽ此間ハ/痔(ぢ)がおこつて、それでよふこなんだ。/夫(それ)ハマア 00031870L18+御/難義(なんぎ)で御坐りませう。おまへ様のハ/出痔(でぢ)でござりま 00031880L19すかへ。イヤ+、/親父(おやぢ)じや 00031890¥Y1臍が茶巻ノ三△終(十五ウ) 00031900¥T1臍が茶△第四 00031910¥N1¥J 00031920¥X夜の鶴 00031930M5/万代(まんよ)さん。おまへ、ねりものゝうわさ聞たか。サア、出る 00031940M6さうなナア。どふやら私シもこ/登(と)しハのがれんそうなわい 00031950M7ナ。いやな事じや。そふして/私(わたし)を何やらまへがミに/仕(す)ると 00031960M8やら、/旦那(だんな)さんがいゝじやわいナアと咄しを、/客(きやく)がきいて、 00031970M9何ンじや。/前髪(まへがミ)。よかろ+。/少(すこ)し/顔(かほ)がおも長で、きつと 00031980M10/仕(し)て有によつて、(一オ)おふかた/曽我(そが)の五郎にして、/江戸= 00031990M11仕立(ゑど=したて)のあるへいとう/作(つく)り。/顔(かほ)を/赤(あか)ふゑどつたら、ヱラあた 00032000M12りじや。コリヤさし/詰(づめ)、/衣裳(いしやう)ハおれが/仕(し)てやるぞと、/客(きやく)や 00032010M13/仲居(なかい)におだてられ、わしやイヤイナ。もしそんな/役(やく)に出に 00032020M14やならんといふよふな事なら、びやう/気(き)なと遣ふて、わし 00032030M15や出んわへといやがるを、なぜに其よふに言ひじやとたづ 00032040M16ぬれバ、コレ、/耳(ミヽ)かしと、/仲居(なかい)の耳へ口をよせ、ぼんがこ 00032050M17わがるわへ(一ウ) 00032060¥N2¥J 00032070¥X半粋 00032080M20いつでも/客(きやく)/絶(たへ)のせぬハ/道頓堀(どうとんぼり)の大正の座しき。/間(ま)かずのな 00032090¥P100 00032100L1いに/上(うへ)も/下(した)も、どいや+との大/客(きや□)。あそからも/爰(こゝ)からも 00032110L2/蓮池(はすいけ)で/亀(かめ)/呼(よ)ぶよふに、手を/叩(たゝ)いて呼び立る/賑(にぎ)ハしさ。/奥(おく)の 00032120L3/間(ま)の/客(きやく)がとり/分(わけ)てせわしのふ、どふじや。はやふ/焼(やい)てもら 00032130L4ひませうぞや。モウ/夜半(よなか)まへじや。/遅(おそ)ふ成と、/手形(てがた)がやけ 00032140L5る。ハイ+。モウ追つけあげますといへハ、客(二オ)コ 00032150L6レ+、まだ/焼(やか)ずバ、/随分(ずいぶん)/短(ミじ)かいのを、はやふ焼てもろを 00032160L7ぞや 00032170¥N3¥J 00032180¥Xさりとてハ又 00032190L10/小野(おの)の/小町(こまち)、/雨乞(あまこひ)のみことのりをかふむり、/都(ミやこ)/神泉苑(しんぜんゑん)にて 00032200L11/雨(あま)ごひの/歌(うた)をよまんと、/数(あまた)多の女中を打つれ、かの/池(いけ)のほ 00032210L12とりにて、ことわりやの哥を、たんざくに/書(かき)て/高(たか)+とよ 00032220L13ミあげ玉ふと、天も/納受(のふじゆ)したまふにや、たちまちそら(二 00032230L14ウ)かきくもり、大/雨(あめ)/降(ふり)出しけれバ、ソリヤふり出したと 00032240L15大さわぎ。つき※の女中、是ハマアきつい/雨(あめ)じや。けふ 00032250L16にかきつてあめがふらずバ 00032260¥N4¥J 00032270¥Xまやひん 00032280L19ミぞをさらへて、くぎのおれや/銭(ぜに)をひろふ/乞食(こじき)が、/両替屋(りやうがいや) 00032290L20のミぞをさらへあげた/処(ところ)が、/小判(こばん)一両出しゆへ、コリヤし 00032300M1てやつたと/悦(よろこ)んて/居(い)るを、そばに見て/居(い)たる/子供(こども)らが見付 00032310M2て、ヤレ小判が出た+と(三オ)/口(くち)&にいふを/聞(きい)て、両替 00032320M3やの/丁稚(でつち)が/飛(と)んで出、其小判ハ此あいた、おれが/落(おと)して見 00032330M4ゑんゆへに、/旦那(だな)さんにしかられて/居(い)るのじや。こつちへ 00032340M5くれい。イヤ+、それでも是ハおれがのじやと、こじき 00032350M6とでつちのせり/合(あい)のさいちう、/店(ミせ)の/神棚(かミだな)の/上(うへ)から、おれが 00032360M7のしや 00032370¥N5¥J 00032380¥X氷室 00032390M10/加藤(かとう)/主計頭(かずへのかミ)/清正(きよまさ)、/朝鮮征伐(てうせんせいばつ)して、/帰陣(きぢん)の/手(て)(三ウ)まへ、/日= 00032400M11本(につ=ほん)への/咄(はな)しのたねにもと、/名(な)にしあふ山の/絶頂(ぜつてう)に/登(のぼ)りて、 00032410M12/朝鮮(てうせん)の/大王(だいわう)より/送(おく)り玉ひし、/数万里(すまんり)の外までこゝろのまゝ 00032420M13に見へる/遠目鏡(とふめかね)を取出し、/方(ほう)+の/景色(けいしよく)を見/廻(まハ)し、/日本(につほん)の 00032430M14方に天もくのよふなる/印(しるし)の見へるハいかにととひ玉へば、 00032440M15あれこそ日本の/富士山(ふじさん)の見へる/印(しるし)なりといふに、イデふじ 00032450M16山をと目がね/振廻(ふりまハ)し見れバ、いかにもまがふ/方(かた)なき/富士(ふじ)さ 00032460M17ん、あり+と(四オ)見へけれハ、/清正(きよまさ)ほとんど/興(けう)に入り、 00032470M18けふハ/幸(さいわ)ひに六月朔日、/我朝(わがてう)の/氷室(ひむろ)なりと打/詠(なが)め、サテ 00032480M19+/久(ひさ)しぶりにてのたいめんといふて/居(い)るうちに、ふじも 00032490M20につと/笑(わら)ふた 00032500¥P101 00032510¥G(五ウ・六オ) 00032520¥N6¥J 00032530¥X矢しま 00032540M3/橋(はし)の上を/通(と)ふりかゝり、持ツたるあふぎを取りおとし、川 00032550M4へはまりしを、/南無三宝(なむさんぼう)と川ばたへかけおり見れば、/早(はや)/舟= 00032560M5頭(せん=どう)がひろい上ケて/持(もつ)て居る。(四ウ)ヲヽイ+、其/扇(あふぎ)ハお 00032570M6れがのじやほどに/戻(もど)して下されと言へバ、/舟頭(せんどう)はつかふど 00032580M7に、川を/流(なが)れて/行(ゆく)のをひろふたのなれバ、コリヤおれがの 00032590M8じやと言ふて/居(い)るうち、舟ハはるかに/行(ゆき)すぐれば、/詮方(せんかた)な 00032600M9さにふねをにらんで立/帰(かへ)る。/舟頭(せんどう)ハ、カノ扇を/干(ほし)ておき、 00032610M10/開(ひろげ)て見んとおもへども、とんと/明(あか)ねバ、舟頭ハまゆにしわ 00032620M11よせて、テモ/執心(しうしん)はこわひものじや(五オ)(五ウ・六オ挿絵) 00032630¥N7¥J 00032640¥X晦日の晩 00032650M14/獄(ごく)もんの庄兵衛、/夕部(ゆふべ)の出入りに、手に入りしはな/紙(がミ)ぶく 00032660M15ろ/明(あけ)て見れバ、思ひの/外(ほか)/銀(かね)がたんと入て有ゆへ、かけて見 00032670M16んと/片隅(かたすま)へ/寄(よつ)てひろげて/居(い)る所を、/女房(にようぼう)が見付ケ、是ハ見 00032680M17付ん/紙入(かミいれ)じやが、/買(か)ふてごんしたかと見て居る内に、ツイ 00032690M18目にかゝつた/川(かハ)が/起請(きしやう)、見るより女房くハつとせき上ケ、 00032700M19/角大師(つのだいし)見るよふな/顔(かほ)して、たゝミ打たゝき、めん(六ウ)よ 00032710M20う此あいだハ/戻(もど)りが/遅(おそ)ひと思ふたが/道理(どうり)しや。こんな事が 00032720¥P102 00032730L1有もの、/痩世帯(やせせたい)が/苦(く)にハならんか、/子(こ)まで有ルわしを、マ 00032740L2アどふしやうと思ふてぞと、何かなしにたゝミかけてのわ 00032750L3つはさつは。庄兵衛ハさながら夕部取ツて/来(き)たのじやとも 00032760L4ヱヽ言ハずに、手を/組(く)んで/居(い)たりしが、ふりあをむき、/名= 00032770L5書(な=がき)を見やんせ。おれじや有ルまいがの 00032780¥N8¥J 00032790¥X道の癖(七オ) 00032800L8/飛鳥井卿(あすかいけう)の/坪(つぼ)のうち、/鞠(まり)がゝりのさくらの/咲(さか)りなりとて、 00032810L9/御(ミ)だひ/諸(もろ)とも/打(うち)こんじての御/酒宴(しゆゑん)。/君(きミ)も一トしほ/興(けう)にいら 00032820L10せ玉ひて、イテ一トさしと、あふぎおつ取り立あかり玉ひ 00032830L11しが、ヒヨロ++。アヽあぶないと取りそへる間もな 00032840L12く、あり合ふ/長柄(ながへ)のてうしを、/足(あし)でひつくり/返(かへ)し、そらさ 00032850L13ぬ/顔(かほ)で/空(そら)を見て/御坐(ござ)つた 00032860¥N9¥J 00032870¥X敷の下(七ウ) 00032880L16/町(てう)の/参会(さんくわい)といへば、/宵(よひ)から/腹(はら)をほしておくやうなしわひ/親= 00032890L17父(おや=ぢ)、参会一ト/通(とふ)りハ/勤(つと)めて/居(い)れど、/跡(あと)だての/割合(わりあひ)ハめいわ 00032900L18くがり、ぬけてもどろにも/行司(ぎやうじ)ゆへ、そふもならねバ、思 00032910L19ひ/付(つい)て/尼(あま)でらでの/土器(かわらけ)なげ、壱文づゝて/買(か)ふてハ/割(わり)が/高(たか)ひ 00032920L20とてまけもせぬものを、無理にそへさして五十が/土器(かわらけ)、是 00032930M1をつばなかしてと思ふ処へ、/西照庵(さいせうあん)の/仲居(なかい)がうそ+とた 00032940M2づね/廻(ま)ハり、ヲヽ/爰(こゝ)に/居(い)被成/程(ほど)に(八オ)の、サア+お出 00032950M3なされませ。/皆(ミな)さんがあなたをお/尋(たづね)被成てじや。/芸子(げいこ)さん 00032960M4もお出たほどに、サアお出と手をとれば、かぶりをふり、 00032970M5イヤ+、おれハやつハり是が/面白(おもしろ)ひ。よいよふに言ふて 00032980M6くれとうごかねバ、/仲居(なかい)が、何の是がおもしろひ事がある。 00032990M7よしになされて、サアお出被成。サア+お出と言ひ+、 00033000M8カノ/土器(かわらけ)を/取(とつ)てハなげ+、しはしの内にみんな/投(なげ)てしま 00033010M9へバ、/親父(おやぢ)ハあきれた顔して(八ウ)ながめて/居(い)たりしが、 00033020M10何とかしけん、下の/谷(たに)へコロ+。/仲居(なかい)びつくりして、ヲ 00033030M11ヽあぶなと、/下(した)をのぞいて見れバ、/投(なげ)た/土器(かわらけ)をひろふてハ 00033040M12たもとへ入れ++ 00033050¥N10¥J 00033060¥Xことわりや 00033070M15/能師(のふし)堀井仙助、音次郎など/打寄(うちより)、六月の/土用(どよう)のうちハ/能(のふ)も 00033080M16/休(やす)ミゆへ、/将棊(せうぎ)をさしてたのしミ/居(い)ける/折(おり)ふし、/俄(にわか)に/空(そら)か 00033090M17きくもり(九オ)大/夕立(ゆふだち)に大かミなり。/家内(かない)の/者(もの)どもハ/皆(ミな)& 00033100M18こハがつて、おし入へはいるもあり、/念仏(ねんぶつ)を申て/居(い)るも有、 00033110M19/只(たゞ)クワバラ+とさわげ共、仙介ハ/落(おち)つき/顔(かほ)で、コリヤ長 00033120M20吉よ。/道具(どうぐ)/部(へ)やで/蚊(か)屋ばりの/釣鐘(つりがね)、取つて/来(こ)い 00033130¥P103 00033140¥N11¥J 00033150¥X空に入鳥 00033160L3去ルお/大名(だいめう)、/殊(こと)の/外(ほか)/雲雀(ひばり)を/好(すい)て/愛(あひ)せられしが、フト思召し 00033170L4付れ、/領分(れうぶん)の/篭細工(かごさいく)のもの(九ウ)どもを、のこらず召出さ 00033180L5れ、仰ふせ付られけるハ、雲雀入の篭を此たび申付る間、 00033190L6/随分(ずいぶん)/出精(しゆつせい)いたして、相はたらくべし。/先(まづ)/篭(かご)のさし渡しハ、 00033200L7一チ年の/日数(ひかず)をもつて三百六十/間(けん)、/長(なが)サハ/追(おい)&此/方(ほう)より/役= 00033210L8人(やく=にん)を/以(もつ)て/下知(げち)すべしと、何が/領分(れうぶん)の広のに/場(ば)をかまへ、細 00033220L9工人/数(じゆ)百人かゝりて、日&/篭(かご)をあミける。/最早(もはや)長サ一里ば 00033230L10かりもあミ/行(ゆけ)バ、大きなる村あり。/則(すなハ)ち領分にて/替地(かへち)を下 00033240L11され(十オ)其村を取りはらひ、又&あミ/行(ゆけ)バ大き成/池(いけ)あり。 00033250L12此池ハ領分の/用水(ようすい)なればとて、/近辺(きんへん)の/地(ち)へ池をほらせ、其 00033260L13土をもつて、かの池をうづめさせ、又+あミゆくに、此 00033270L14たびハ山&谷&なれバ、谷へハはしを/渡(わた)し、山ハ/平地(へいち)にな 00033280L15らしあミゆく/程(ほど)に+、竹/薮(やぶ)村里きらひなく、/他領(たれう)へハ/使= 00033290L16者(し=しや)を以て/道(ミち)をかり、とふ※/海辺(かいへん)まであミ/行(ゆき)、是から/先(さき)ハ 00033300L17/人力(じんりき)にハ/叶(かな)ひがたく、/大守(たいしゆ)へ申上れば、(十ウ)さらバ其/篭(かご) 00033310L18を/轆轤(ろくろ)を立て引上ケさせよとて、/数多(あまた)の/人歩(にんぷ)大あミをかけ 00033320L19て、ヱイヤ+とひき上ケるほどに、/件(くだん)の/篭(かご)、/霞(かすミ)をぬけ/雲(くも) 00033330L20をしのぎ、はるかの/空(そら)ハ/雲(くも)/霧(きり)へだたりて見へ/分(わか)ず。篭のさ 00033340M1きが天/竺(ぢく)の/横(よこ)まち、/天人(てんにん)の/坪(つぼ)の内へ、によつこりと出けれ 00033350M2バ、天人共大きにおどろき、かわつた物が/一夜(いちや)にはつた。 00033360M3なんじや有ふぞ。トントがてんの/行(ゆか)ぬ物じやと、いろ+ 00033370M4の/評判(ひようばん)。マア取りのけて(十一オ)見よふか、/叩(たゝ)きつぶそう 00033380M5かと言へバ、ばゝ天人ハまた/老功(らうこう)だけ、イヤ+、つぶす 00033390M6事ハやめにしたがよい。/幸(さいわ)ひ下からはへたものなれバ、い 00033400M7つそ/羽衣(はごろも)のふせごに/仕(し)たがよい 00033410¥N12¥J 00033420¥X天井板 00033430M10おやまを/買(か)ふて、ねまへ入しが、一/儀(ぎ)も/済(す)んで、/先(まづ)一ツふ 00033440M11くと、/田葉粉(たばこ)ぼん引キよせてすひ付る。おやまものまんと、 00033450M12たばこをつぎ、火入にて/付(つけ)ん(十一ウ)と見れば、/火(ひ)ハなし。 00033460M13ドレかしなされと、きやくの火ざらへ火ざらをつきつけて、 00033470M14すへども+、トント火はつかず。/客(きやく)ハキヨロリとして/居(い) 00033480M15れバ、おやま、ヲヽすかんといふに、客おもひしつたか 00033490¥N13¥J 00033500¥X有馬筆 00033510M18/都(ミやこ)をバ/霞(かすミ)とともに出しかど/秋(あき)かぜぞふく白川の/関(せき)。/能因= 00033520M19法師(のふいん=ほうし)、此哥、/我(わが)こゝろに/叶(かな)ひしかど、/居(い)ながら/詠(えい)ぜんもほ 00033530M20ひなしと、一/庵(あん)に(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)取り/篭(こもり)、/旅(たび)へ 00033540¥P104 00033550¥G(十二ウ・十三オ) 00033560M1/行(ゆき)し/体(てい)をせんと、/窓(まど)より/首(くび)を出し、日やけせんと思ひ、ま 00033570M2どより/顔(かほ)をさし出せバ、/雨(あめ)がばら+ふりかゝる。是ハわ 00033580M3るひと、かほを/引込(ひつこめ)ば/晴(はれ)わたる。又さし出せバふりかゝる。 00033590M4ひつこめバ日が/照(てつ)て来る。出せバ/降(ふる)。さしもの/能因(のういん)ホウド 00033600M5こまり、アヽまゝよ。はやくと/泊(とま)れ 00033610¥N14¥J 00033620¥X忠義者 00033630M8/只今(たゞいま)/帰(かへ)りましたと、お/家(いへ)の/前(まへ)へすわる。長吉。(十三ウ)な 00033640M9ぜはやかつたぞ。たま+のやぶいりじやに、ゆつくりと 00033650M10して/芝居(しばい)でもなぜ見て/戻(もど)らんぞ。それで/銭(ぜに)ももたしてやつ 00033660M11たのに。ハイ+。はゝもそふいふていられましたけれど、 00033670M12いつでもいそがしい。/其中(そのうち)にもけふハとりわけ/急(いそ)ぎの/註文(ちうもん) 00033680M13が有てゝ、/旦那(だな)さんもとふからおきて、こしらへて御坐るに、 00033690M14なんぼうやぶ入じやテヽ、ゆう+と/芝居(しばい)が見て/居(い)られま 00033700M15せうぞ。/夫(それ)ゆへ/早(はよ)ふ/戻(もど)りました。夫は(十四オ)マア+し 00033710M16んびやうな/者(もの)じやナア。/常(つね)からそなたハかげひなたの無ひ 00033720M17/精(せひ)を出す/者(もの)じやによつて、又/跡(あと)から/置(おく)ものや、うへの/若(わか)い 00033730M18者への/教訓(けうくん)のため、/今年(ことし)のそうぶつのふんどしに/綿(わた)を入レ 00033740M19てやりや、ちとじやらついたよふな事なれど、あれが/奉公(ほうこう) 00033750M20ぶりのよひが/知(し)れて/能(よい)と、/旦那(だんな)どんがいふてじやによつて、 00033760¥P105 00033770L1わたを入レておいたが、ナントぬくかろふがの。ハイ+。 00033780L2それハ/有難(ありがた)ふ御坐りますけれど、(十四ウ)モウこんどから、 00033790L3よしに被成て下されませ。けふもおばの所へさんじまして、 00033800L4其よふに申ましたら、おばが申ますにハ、そんならわがミ 00033810L5のちんほハ/白鼠(しろねづミ)の子じやテヽ 00033820¥N15¥J 00033830¥X其△二 00033840L8かの長吉、/元服(けんぶく)して長兵衛とあらため、/忠義(ちうぎ)を/尽(つく)し、/長(なが)ら 00033850L9く/勤(つと)め、/別家(べつけ)して/問屋(といや)/商売(しやうばい)。/客方(きやくかた)おや方のつとめよく、/段(だん) 00033860L10&/出世(しゆつせ)して、とかくに/普(ふ)(十五オ)しんをする事を/楽(たの)しミし 00033870L11が、/段(だん)&/蔵(くら)をたてならべ、いろは/付(づけ)にて四十八/揃(そろ)ひしが、 00033880L12/迚(とて)もの事に、/片仮名(かたかな)のいろは/蔵(くら)も/立(たて)ならべたいと思ひしが、 00033890L13是も/出来(しゆつたい)せしゆへ、本/家(け)の/旦那(だんな)が/来(き)て、/段(だん)&と/見廻(ミまハ)し+、 00033900L14さて+よく/普(ふ)しんも/出来(でき)たり。ひらかなといひ/片(かた)かなと 00033910L15いゝ、見事+と見/廻(まハ)すうち、アノ/片(かた)かなのならびに、よ 00033920L16うじ/場(ば)のよふなものが四つ見へるが、あれハ何じやの。ハ 00033930L17イ。(十五ウ)あれで御坐りますか。あれハ/厶■■■(うんしてこととも)で御坐 00033940L18ります 00033950¥N16¥J 00033960¥Xぎん箔 00033970M1/嶌(しま)の内のおやま、/近所(きんじよ)のぞうりや/来(き)て、佐兵衛さん。わた 00033980M2しがぞうり、/邪魔(じやま)ながら壱/足(そく)こしらへておくれ。ハイ。か 00033990M3しこまりました。/花緒(はなを)ハ/何(なに)に/致(いた)しませふ。お山アイ。/緋(ひ)び 00034000M4ろうどにして、/一重(ひとへ)のぞうりにしてナ、そしてナ、/両方(りやうほう)へ 00034010M5/金糸(きんし)で/桐(きり)のとの/紋(もん)(十六オ)をバ壱つづゝ/付(つけ)ておくれ。ハイ 00034020M6+、コリヤきついはでなもので御坐りますな。さりなが 00034030M7ら、ホンノぬいで有うちのはでといふものしやなア。おや 00034040M8まイヽヱ、是かへ。是ハな、/金(こん)ひら様へはだし/参(まい)りの/願(ぐハん)あ 00034050M9がりに 00034060¥Y1臍か茶巻ノ四終(十六ウ) 00034070¥P106 00034080¥T1へそか茶△第五 00034090¥N1¥J 00034100¥Xかた休め 00034110L5/在原(ありハら)の/業平卿(なりひらけう)、二/条(でう)の/后(きさき)を/武蔵(むさし)の/辺(へん)までつれて立のきしが、 00034120L6きさき、/俄(にわか)にばゝがしたひとおつしやるゆへ、かたへのよ 00034130L7うじ場(ば)へつれ/行(ゆか)んとハ思へど、十二ひとへがじやまに成ゆ 00034140L8へ、かたへの/松(まつ)の/木(き)にかけておき、/業(なり)ひら/諸(もろ)とも、ようし 00034150L9ばをたづねて御坐るうち、/通(とふ)りかゝりし/百性(ひやくせう)が見付て、ア 00034160L10レ見い。(一オ)/珍(めづ)らしい/物(もの)が松の/枝(ゑだ)にかけて有と見/廻(まハ)し 00034170L11+、是ハはごろもで有ふ。取て/返(かへ)つてたから物にせんと 00034180L12いふうち、/業平卿(なりひらけう)立出玉へバ、百性ども是を見て、ハアヽ 00034190L13/天人(てんにん)の御ていじやそふな 00034200¥N2¥J 00034210¥X六田の花 00034220L16かゝさん申、/隣(となり)のお市さんの正月/衣装(いしやう)ハな、/紫(むらさき)ちりめんに 00034230L17松のすそもやうじやげな。そして/帯(おび)ハ/黒(くろ)ひろうどの/裏打(うらうち)じ 00034240L18やげな。わしにも(一ウ)なんぞしておくれと、はゝおやま 00034250L19での/壁(かべ)そせうを、てゝ/親(おや)が聞て、何をいゝおるぞ。となり 00034260L20ハ/銭(ぜに)もふけが/多(おゝ)ひによつて、なんぼうせうと/侭(まゝ)かしらんが、 00034270M1こちの内ハぜにもふけがないゆへに、そんなおごつた事を 00034280M2する事ハならん。又となりじやてゝ、なんのそんな物をし 00034290M3てたまるものか。/夫(それ)ハうそじやといふて/居(い)るうち、/門口(かどぐち)か 00034300M4ら/丁稚(でつち)が/内方(うちかた)に御坐りますか。/向(むか)ひからでござりますと/指= 00034310M5出(さし=だ)す/絵(ゑ)らうそく。(二オ)/娘(むすめ)が/明(あけ)て見て、是見なされ。らう 00034320M6そくでさへ/江戸(ゑど)づまを 00034330¥N3¥J 00034340¥X菜種畑 00034350M9/北(きた)/辺(へん)/去(さる)/豪家(がうか)の/旦那(だんな)、/南(ミなミ)の/白人(はくじん)に/打込(うちこ)ミ、/雨(あめ)の/降(ふる)/夜(よ)もふらぬ 00034360M10夜も、/通(かよ)ひ/詰(つめ)ての/大立(おゝたて)。しかも/気(き)だてといひ、/男(おとこ)ハよし。 00034370M11おやまも/倶(とも)に相ぼれのきつしり。内ハ野となれやまとやの 00034380M12お/大尽(たいじん)とのもてはやしに、/年忘(としわす)れハ/芝居(しばい)の/趣向(しゆこう)、/間狂言(あいきやうげん)の 00034390M13/双蝶&(ふたつてう+)、(二ウ)たいこ/末社(まつしや)までもそれ+の/役割(やくわり)。其/身(ミ)ハ 00034400M14与五郎/役(やく)、あづまハさしづめおてきの/白人(はくじん)、/来芝(らいし)、/巴紅(はこう)を 00034410M15/呼(よ)んで/毎(まい)ばんのけいこ。内の/手形(てがた)ハ/焼次第(やけしだい)の/居続(いつゞけ)。/隠居(いんきよ)の 00034420M16不/機(き)げん、/番頭(ばんとう)のあてこすり、めいわくハ/奥(おく)様ひとり。/内= 00034430M17証(ない=しやう)で七/度半(どはん)のお/使(つか)ひも、/馬(むま)の/耳(ミヽ)に/風(かぜ)。せんほうつきて/相方(あいかた) 00034440M18のおやまへ奥様よりのお/文(ふミ)。/悋気(りんき)/嫉妬(しつと)ハ/棚(たな)へほうり上ケて、 00034450M19何とぞそもじの取なしにて、こよひ/旦那(だんな)さま御/戻(もど)らせのよ 00034460M20ふ、くれ※たのむとの事にハ(三オ)いかなおやまもほろ 00034470¥P107 00034480¥G(四ウ・五オ) 00034490M1りと、けいこ/最中(さいちう)で/去(いな)ぬ+といふ旦那を、/無理(むり)やりにか 00034500M2ごに/乗(の)せて/帰(かへ)しけるが、/翌日(よくじつ)いん/居(きよ)へチヨツト/顔出(かほだ)しして 00034510M3から、/直(すぐ)に/内蔵(うちぐら)へは入り、/昼時(ひるとき)になれ共出られぬゆへ、お 00034520M4く様ハ/腰元(こしもと)を/呼(よ)んで、コレ、わがミハ/蔵(くら)へいて、旦那さま 00034530M5に、/御膳(ごぜん)お上り被成ませと申ましておじやといへバ、/腰元(こしもと)、 00034540M6ハイ+とて蔵へ/行(ゆき)しが、/引返(ひつかへ)して/立帰(たちかへ)り、申+、旦那 00034550M7さまハお/気(き)がちがひましたそふなといふに、びつくりして 00034560M8蔵へ/走(はし)り/行(ゆき)、/簀戸(すど)より(三ウ)のぞき見れバ、旦那ハきよろ 00034570M9+目して、アレ++ソレ++と/蔵(くら)の内をかけま 00034580M10わり、トント/転(こけ)られしゆへ、おくさまハ/簀戸(すど)を/明(あけ)て/飛(と)んで 00034590M11は入り、申+、/正躰(しやうたい)もない。わたしや女房じや。見/忘(わす)れ 00034600M12てござるかと、トント/叩(たゝ)けバ、むつくと/起(おき)て、テモ/気(き)の/早(はや) 00034610M13ひやつじや 00034620¥N4¥J 00034630¥X花の隣 00034640M16お/家(いへ)が/裏口(うらぐち)で/行水(ぎやうずい)して/居(い)らるゝ/最中(さいちう)、/夕立(ゆふだち)がして、かミな 00034650M17りがなり出せしゆへ、お家コレ+、たれぞ(四オ)(四ウ・ 00034660M18五オ挿絵)いやらんかといふに、/男(おとこ)とでつちがかけ出し、た 00034670M19らひをかいて内へ入るゝうち、お/家(いへ)ハまへゝ手をあてゝ/居(い) 00034680M20らるゝを、でつちが見て、お家さん。もそつとうへじや 00034690¥P108 00034700¥N5¥J 00034710¥X文字がわり 00034720L3人にまけぬ/浪花(なにハ)かた/気(ぎ)、あたまに/血(ち)の/多(おゝ)ひうがち/連中(れんぢう)五六 00034730L4人、なんと此/春(はる)のい勢/参(まい)りハ、ゑらゆすりで/参(まい)ろふじや有 00034740L5ルまいか。ヲヽよかろ+。(五ウ)マアきるものハとびな 00034750L6ゝこ、/羽織(はをり)は八丈じまのぶつさき、/黒(くろ)びろうどの/半衿(はんゑり)に/登(のほ) 00034760L7り/龍(りやう)くだり龍、/馬乗(むまのり)の火/打(うち)の所へハ/銘&(めい+)の/定紋(ぢやうもん)を/縫(ぬ)ハせて、 00034770L8一/文字笠(もんじがさ)に/紫(むらさき)のさなだ/紐(ひも)ハ、どふで有ふといへハ、中にも、 00034780L9イヤ+、それハ/悪(わる)かろふ。御/時節(じせつ)がらの事なれバ、/絹(きぬ)け 00034790L10ハさつはりやめにして、/着(きる)ものハ古渡りの/奥嶋(おくじ□)、其うへニ 00034800L11/浴衣(ゆかた)を/着(き)るじや。其ゆかたも/唐(とう)毛/綿(めん)で/背(せ)ぬいなしに仕立さ 00034810L12せ、/肩(かた)から/裾(すそ)まで一ツばい、小六玉が(六オ)/関羽(くハんう)の/皃似(かほに)せ 00034820L13の立すがたを、色ざしの染/込(こミ)にして、/笠(かさ)も常のでハおもし 00034830L14ろない。/唐(とう)人/笠(かさ)をと/皆(ミな)まできかず、こいつハゑらいと一/同(どう) 00034840L15の/得(とく)心、下/画(ゑ)を名ある/絵(ゑ)師にかゝし、五六人が一チやうに 00034850L16三月の四日立、/昼(ひる)の四つ/時(じ)分から、北の新地より新町、/堀(ほり) 00034860L17江、道頓ぼりへと/流(なが)せしが、見る人ごとに、是ハ/珍(ちん)じやと 00034870L18のヱラ評/判(ばん)に/乗(の)りが/来(き)て、堺すじを北へ/高麗(かうらい)ばしを東へ、 00034880L19やう+/暮(くれ)+に八/軒(けん)やにさしかゝれば、(六ウ)三十/石(こく)の 00034890L20/舟頭(せんどう)どもが、/旦那衆(たんなしゆ)。のぼりじやないかナ。なんぞいふて 00034900M1か。/今度(こんど)染たのじや 00034910¥N6¥J 00034920¥Xいづれあやめ 00034930M4/店(ミせ)つきのおやまが思ひつきにて、いもりの/黒焼(くろやき)をこしらへ、 00034940M5/通(と)ふるほどの人にふりかけて、引ずり/込(こ)むゆへ、/殊(こと)の/外(ほか)は 00034950M6やりしを、/向(むか)ひのおやまがはらを立、よし+、/仕(し)やうが 00034960M7有と、ほこり叩きを持て出て、あたまから/叩(たゝい)てハ引ずり/込(こ) 00034970M8ミ+(七オ) 00034980¥N7¥J 00034990¥X奥ハ千畳敷 00035000M11/旦那(だんな)の/身持(ミもち)、あれでハどふも/済(すま)ぬと、/別家(べつけ)や/宿持(やどもち)の手代が 00035010M12/相談(そうだん)して、一ツ寸も/外(そと)へ出さぬやうにと、/相方(あいかた)の太夫を/身= 00035020M13受(ミ=うけ)して、内での遊びはこゝろのまゝにさしければ、又/曲輪(くるわ) 00035030M14よりハ/気(き)が/替(かハ)つて、おもしろひ所もあれど、/毎(まい)日+おな 00035040M15じ/座(ざ)しきでの/酒盛(さかもり)、/面白(おもしろふ)ないと、ホウド/退屈(たいくつ)して、太夫と 00035050M16ふたり/格子(かうし)の(七ウ)すき間から表の人/通(と)ふりヲながめ、ア 00035060M17レ、/向(むか)ふからにくてらしい人が来る。見なされ。ホンニ、 00035070M18あれハ/針医(はりい)の道作といふて、はゝじや人をはりで/殺(ころ)したに 00035080M19くいやつじや。アレ又、/今(いま)内へはいつた人ハ何ンじやへ。 00035090M20あれハ出入の喜兵へといふて、/若(わか)イ時ハめしたきのりんを 00035100¥P109 00035110L1はらまして、やかましかつたそいのといふて、又店の方を 00035120L2見て、申、アノすりがねのばち見るやうなもので、かねを 00035130L3チヤン+(八オ)たゝいて/居(い)るお/方(かた)ハ、なんといふ人じや 00035140L4へ。旦那あれハナ、佐兵へといふものじや。又/帳(ちやう)のまへに 00035150L5ナ、こわひ/顔(かほ)してノお方わへ。アレカ。あれハ/別家内(べつけうち)ての 00035160L6大イの/毛(け)虫じや。ホンニそふかして、むしや+と/顔中(かほぢう)か 00035170L7毛たらけしや 00035180¥N8¥J 00035190¥X雪水所 00035200L10/諸国(しよこく)/雪(ゆき)水所とかんばんを出し所へ、/買(かい)人が/来(き)て、/段&(だん+)とな 00035210L11らべし/坪(つぼ)を見て、アレハ(八ウ)どこの雪で御坐るナ。ハイ。 00035220L12あれハ/北国(ほつこく)の雪でござります。こちらのハナ。/佐野(さの)ゝ源左 00035230L13衛門か女房が、/鉢植(はちうへ)の/枝(ゑだ)から/落(おと)した/雪水(ゆきミづ)にて、/直段(ねだん)も/高直(かうぢき) 00035240L14にこざります。又こちらのハ、ふしのすそのゝゆきで、壱 00035250L15両弐分。是ハ/大石(おゝいし)どのが京の一力から/転(こか)して/戻(もど)られたゆき 00035260L16こかしの水でごされバ、壱両で御坐ります。客ムヽ、そん 00035270L17なら其佐野ゝ雪水と、ふじとを/少(すこ)しづゝマア下され。(九 00035280L18オ)ハイ+と出しにかゝれハ、イヤ+。またしやれや。 00035290L19佐野ゝ方/斗(ばか)りに/致(いた)そふ。ふじもよいが、どふやら/西行(さいぎやう)の/小= 00035300L20便(せう=べん)がまぜつて 00035310¥N9¥J 00035320¥X浦しま 00035330M3十六七なでつちが手ならひの/片手(かたて)に、/机(つくへ)の/下(した)から何やら/取(とり) 00035340M4出し、口にいつはいほうばつた所へ、是も十五六な内のむ 00035350M5すめが、長吉+。何を/書(かき)やると/声(こへ)かけられ、/南無(なむ)さんぼ 00035360M6う、/悪(わる)ひ所へと(九ウ)思ひながら、クツト/呑込(のミこミ)、目を/白黒(しろくろ) 00035370M7にしての/返(へん)じ。むすめ是長吉。わしハよいはんじ物を思ひ 00035380M8付た。はんして見やと、/有合(ありあ)ふ/紙(かミ)へ、いの/字(じ)をたんと/書(かい)て、 00035390M9コレ、此内へノ、しの/字(じ)を/書(かい)て見やといふて/居(い)るうち、人 00035400M10/音(おと)がして、ちやつと/娘(むすめ)ハ内へ/走(はし)りこんだ。/跡(あと)で長吉ハ/嬉(うれ)し 00035410M11そふに、何んでもしてやつた、/藤(ふぢ)の/花(はな)のいとしかと、いの 00035420M12字の/中(なか)へ、しの/字(じ)を/書(かい)て見たら、いの/字(じ)の/数(かず)が八つ有つた 00035430M13(十オ)(十ウ・十一オ挿絵) 00035440¥N10¥J 00035450¥X下りふね 00035460M16去ル/大名(だいミやう)、京より御下りの/節(せつ)、/天気(てんき)も/晴渡(はれわた)り、御きげんな 00035470M17ゝめならずして、つゝミの/気(け)しき/抔(など)御らん被成て御坐る/折(おり) 00035480M18ふし、すれちがふて/登(のぼ)るふねあり。/殿(との)御/覧(らん)なされ、テモ/早(はや) 00035490M19ひふねのりとのたまへバ、御/小性(こせう)が、行ちがひのふねハ、 00035500M20すべて早いもので御坐りますると申上れバ、/殿(との)そんなら、 00035510¥P110 00035520¥G(十ウ・十一オ) 00035530M1/身(ミ)/共(ども)が/舟(ふね)も行/違(ちが)ひニ/造(つく)れ(十一ウ) 00035540¥N11¥J 00035550¥X色町銭 00035560M4しわい商売の/質(しち)屋にも/似(に)あハぬじんばり/親父(おやぢ)。/黒(くろ)びんつけ 00035570M5/で((ママ))、しゆすびんのこつてりあたま、店さきにきせるをくわ 00035580M6へて/居(い)らるゝところへ、同行の/禅門(ぜんもん)が、どふじや。おかわ 00035590M7りも御坐りませんか。けふハ御寺のお/講(かう)じやゆへ、只今さ 00035600M8んけいいたす。/貴殿(きでん)にもサア御坐れ。参りませう。いかさ 00035610M9ま、さやうで御坐る。いかにもお供いたしませうが、まづ 00035620M10(十二オ)/夫(それ)へお出被成て下され。/髪(かミ)を一つ/結(ゆ)ふてから、跡 00035630M11より参りませう。長吉よ。かミゆひを/呼(よ)んで/来(こ)いよ。ハイ 00035640M12+とかけ出す。/禅(ぜん)もんハむつと顔。サテ+、もはや貴 00035650M13公の/黒(くろ)びん付もよしになされ。八十ちかふ成つて、しゆす 00035660M14ひんもあまり/能(よ)ふないものじやテエ。是、われらがよふに、 00035670M15こつそりとおそりなされ。さて+/世間(せけん)/構(かま)ハすによい物し 00035680M16やと言へバ、サア、/拙者(せつしや)もそふハおもへども、よふ思ふ 00035690M17(十二ウ)ても見やしやれ。八十があまりとハ言ハれません。 00035700M18今の/銭(ぜに)にして見やしやれ 00035710¥N12¥J 00035720¥X投頭巾 00035730¥P111 00035740L1/門口(かとぐち)トン+の/音(おと)に、/嚊(かゝ)ハ明に出て、めんよう酒がすぎる 00035750L2と、大ていでハ/戻(もど)りなんせん。どふでもろくな所へいたの 00035760L3でハ有まいと、お定まりの女の/癖(くせ)、はややきかけて、/角(つの)の 00035770L4はへそふな顔つき。てい主イヤ+、どこも/悪(わる)ひ所へ行ハ 00035780L5せぬ。/堀江(ほりへ)の作兵へが所へ(十三オ)いたら、マア/聞(き)きや。 00035790L6/友達(ともだち)うちが二三人/寄(よつ)て/呑(の)んで/居(い)たが、何やらいひ上つてか 00035800L7ら、それハ+ゑらやかましい事イノ。/能(よ)い所へおれが行 00035810L8合して、/挨拶(あいさつ)にはいつたとおもや、何がおのれらが/腹(はら)立ま 00035820L9ぎれにあいさつハきかぬとぬかして、とつとおれをバちよ 00035830L10うさい/坊(ぼう)に仕おつた。それでコレ見や。/羽織(はをり)もほころびた。 00035840L11しかしながら、あいらが中直りが出来たら嬉しいとて、 00035850L12作兵へも(十三ウ)よろこぶ、おれも又/折角(せつかく)あいさつにはい 00035860L13つた/顔(かほ)も立つ。ついでに中/直(なを)りのさかづきも/仕(し)てやつてく 00035870L14れいと、/夫(それ)から/酒(さけ)になつて、夫で/隙(ひま)が入つたのじやと、/長(なが) 00035880L15+といゝ/訳(わけ)すれバ、かゝサア+、もふよいわいナ。/早(はや) 00035890L16ふねやんせと、/行燈(あんど)の/影(かげ)で/顔(かほ)を見れバ、くちからほうへか 00035900L17けて、何やら/赤(あか)イ物が一ツはい付て有。ヲヽなんじやいな。 00035910L18おまへの/顔(かほ)ハ赤いぞへと言へバ、てい主ドレと、はな/紙(かミ)と 00035920L19り出しおしぬぐへバ、/紅粉(べに)が一ツぱい。(十四オ)ハツトお 00035930L20どろきたる/顔(かほ)にて、はをりぬぎ/捨(すて)て/欠(かけ)出す。かゝ取りつき、 00035940M1コレ、きつそうかへて、どこへ/行(ゆく)のじや。てい主チヱヽ口 00035950M2おしい。人/中(なか)でおとこのほうべたをうちわつたな 00035960¥Y1臍か茶巻ノ五終(十四ウ) 00035970¥Y跋 00035980M8やなきなくても柳巷といへる里の西に、世&陶器をひさき 00035990M9て業とせる人あり。湛翁の小しうとにもあらされは、誹士 00036000M10をにらまへ、笑話にハ黒眼して、初席より四十余の会席を 00036010M11かゝさす、作せる咄ハ口上におゝし。はた是を梓にものせ 00036020M12んとす。そか中に世の耳にきゝふる(十五オ)せしは、皆此 00036030M13人の秀作を、口つからつたへ+て、世間へ流れたる也と 00036040M14いへること書をなすは、是も流れの嶌の内に、淀川加茂川 00036050M15のほとりなる酒屋の叟にそありける 00036060¥Q 00036070M17△△寛政九@丁△|△巳@歳正月吉辰 00036080M18△△△△△△△△△△△△△△心斎橋北詰 00036090M19△△△△△△△大坂書林△△上田和泉屋卯兵衛 00036100M20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十五ウ) 00036110¥P112 00036120¥U噺本大系△第十三巻 00036130¥T/巳入吉原井(みいりよしわらい)の/種(たね)〔序題〕 00036140¥G 00036150¥Y 00036160L17寛政九年正月刊 00036170L18柳庵主人作 00036180L19越後屋初五郎板 00036190L20中本一冊 00036200¥T1巳入吉原井の種 00036210¥Y叙 00036220M5/鼻高(はなたか)きが/故(ゆへ)に/敬(たつと)からず、手あるを以て/尊(たつと)しとす。/蓋(けだ)し/是(これ)/傾= 00036230M6城(けい=せい)の/言(いゝ)、/将(はた)/意気地(いきぢ)/千金(せんきん)に/替(かへ)ずとは、/機有(はりある)/所以(ゆゑん)に(序一オ)し 00036240M7て、/虚実(きよじつ)/又(また)/其内(そのうち)にありと。/真(まこと)なる/哉(かな)/此話(このこと)と、/書林(しよりん)の/翁(をきな)と/雑= 00036250M8話(さつ=わ)/数刻(すこく)に/及(およん)で、/殆(ほとんと)/眠(ねぶ)るに/到(いた)れり。/亦(また)/夢(ゆめ)は久しひもんだと、 00036260M9/笑(わら)ふ/事(こと)なかれと云&(序一ウ) 00036270¥P113 00036280¥G(口オ・ウ) 00036290¥Y自序 00036300M3/笑(わら)ふ/門(かど)には/幸(ふく)/向(きたる)とハ/宜(むへ)なり。/七福神(しちふくじん)ハ二六/時中(じちう)わらひに/陰(よ) 00036310M4をあかし、/毘沙(びしや)門の/偏屈(へんくつ)神さへ、/片顔(かたかほ)に少しハ/笑(ゑミ)ひ給ふ。 00036320M5今/哉(や)/眉(まゆ)の(序二オ)/中(うち)に/皺(しわ)をあつめ、/苦(にかり)塩を/嘗(なめ)て/面(おもて)を/悪顔(しかめ)、 00036330M6/家女(よめ)を/白眼(にらん)で/小言(こごと)を/吐(はく)/邪見嫗(しやけんばゝあ)、/■髻(かぶろ)をさいなむ/廻女(やりて)が/盤若= 00036340M7頬(なまなり=つら)、/髭(ひげ)を/撫(なで)て/丁稚(でつち)/呵(しか)る/重手代(おもてたい)が/高慢(かうまん)顔を、/長閑(のどか)なる/陽(はる)の日 00036350M8(序二ウ)に/笑(ゑま)せん事を/欲(ほつ)し、/柳庵(やなきあん)の/主人(しゆじん)、/夢中(むちう)に/旁(かたハら)をさぐ 00036360M9るに、/奇(きなる)/哉(かな)、一つの/匣(はこ)あり。打/笑(わら)つて/蓋(ふた)を/開(ひら)くに、/一冊(いつさつ)の 00036370M10/小艸帋(こさうし)/出(いづ)。/是(これ)ぞ/実(まこと)に人に/語(かた)らバ、/巳入吉原井(みいりよしわらゐ)のたね(序三 00036380M11オ)ならむと、ホヽ/笑(ゑミ)て申/事(こと)/爾(しかり) 00036390M12△△△于時寛政九@丁△|△巳@年 00036400M13△△△△△初春日 00036410M14△△△△△△△△△△△△△△△△△△柳庵主人 00036420M15△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△戯噺 00036430M16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序三ウ) 00036440¥P114 00036450¥N1¥J 00036460¥Xむけんのかね 00036470L3@やたいハ大見世、部や持の女|郎、いろ男よりむしんの夜、@ひとりごと。Sコレ源さんへ。わ 00036480L4つちがこゝろあてのあると申イしたハ、うそでおざんす。 00036490L5もし、ぬしがたんきな/事(こと)をしなんせうかと、さつきのやう 00036500L6に/云(い)ひ(一オ)したのサ。こよひ/初会(しよくわい)のきやくじんが、どう 00036510L7してかねをくれんせふ。アヽどうしたらよからふ。いつそ 00036520L8アノ/夜具(やぐ)を、しちにやらふか。イヤ+、それてハ内せう 00036530L9から、やかましひ。もはや江戸ぢうに(一ウ)わつちがたの 00036540L10むきやく/人(しん)もないか。ヱヽかねがほしひナア。ほんにそれ 00036550L11よ。梅がへさんといふ女郎しゆハ、/源太(げんだ)さんといふいろの 00036560L12ために、むけんのかねをつきんしたときく。わつちもいや 00036570L13しひ(二オ)/川竹(かハたけ)の、おなじつとめのきミけいせい。梅がへ 00036580L14さんにおとらふかと、しのび出たるさしき口、おりからあ 00036590L15たりに人もなし。/是(これ)さいわひとゑんさきの、/手水(てうづ)はちのミ 00036600L16づむすびあげ、日本/堤(つゝミ)におとせし(二ウ)かね、ひとつとこ 00036610L17ろへよせなんし、むけんのかねとくわんねんし、手水/鉢(はち)の 00036620L18ひしやくおつとり、すでにうたんとふり上る。となりざし 00036630L19きのしやうじおしあけ、おゐらん。梅かえのミへ、めうで 00036640L20(三オ)ごぜへす。ヲヤばからしひ。手をあらひんすのサ 00036650¥N2¥J 00036660¥X目白 00036670M3不どうさま、女郎/買(かい)にミがいりて、あけくれの/居(ゐ)つゞけに、 00036680M4大じの/利劔(りけん)も/質(しち)やの二かいに(三ウ)ほうのうと、いかふく 00036690M5めんが左リなわとなり、ことしハひとつ、かいちやうとや 00036700M6らかすへしと、むなさんやう。さらバ/家老(かろう)のせいたかにそ 00036710M7うだんと出かけた所、どうやくのこんがら、ふせうちにて、 00036720M8(七オ)それハわるひ御りやうけん。/今年(ことし)ハ/雑司谷(ぞうしかや)、ごこく 00036730M9じにも、かいちやうをいたします。サアそれじやから、な 00036740M10をいゝ。Sイヱ+、よろしふござりませぬ△Sソリヤま 00036750M11たなせ△Sハテ、ぼんぶかおしやひ(七ウ)すると申ます 00036760¥N3¥J 00036770¥X雷神門 00036780M14モシ、あの/去年(きよねん)のはるハ、くハんおんさんのごらいじん/門(もん) 00036790M15の/咄(はなし)が、たんとおざんしたが、なぜかことしハおざんせん 00036800M16ねへ。Sその(八オ)はづさ△Sなぜへ△Sハテ、そなへに 00036810M17おちるとわるひから 00036820¥N4¥J 00036830¥Xかふろ 00036840M20しんざんのかふろ、/次(つぎ)の/間(ま)に/寐(ね)てゐたりしが、むつくとお 00036850¥P115 00036860L1きて、やりて/坐(ざ)しきに/来(き)(八ウ)て、あハたゞしく、やりて 00036870L2をおこす。やりて/腹(はら)をたて、この子はなんだ、いけそう 00036880L3※しひ。かふろ、なミだながら、今おいらんが、しぬる 00036890L4+といひなんすから 00036900¥N5¥J 00036910¥Xいきすぎ(九オ) 00036920L7女郎Sモシへ、かねハ一両がたんとか、壱分がたんとでお 00036930L8すかへ△客Sおらもしらぬから、おめへに/聞(きか)ふと思つた△ 00036940L9女郎Sばからしひ。ぬしやア御/大名(たいめう)のやうだ△きやくSお 00036950L10まへハそのおくさまのやうだ(九ウ) 00036960¥N6¥J 00036970¥Xしんぞう 00036980L13しんぞう、きん/所(じよ)のむすこと/色事(いろごと)をし、/死(し)ぬるいきるのむ 00036990L14つごとより、いつそつれてにげておくんなんしと/云(い)ひかハ 00037000L15し、引四つすぎ、あきざし(十オ)きのくらがりにはいり、 00037010L16/迯(にけ)したくして、/艸鞋(わらぢ)のひもを/通(とを)してゐるを、やりてが見つ 00037020L17けて、おめへ、そのわらぢをどうする気だ。しんざう、す 00037030L18かさず、Sおいらんの/道中(だうちう)の/供(とも)にいきんす(十ウ) 00037040¥N7¥J 00037050¥X八丈しま 00037060M1かし見世の女郎Sぬしやアこのごろ、かへりによるといつて、 00037070M2よくおだましだ△Sむしのいゝ。そのよにあがつてつまる 00037080M3ものか。なんだ、大ぶくめんがいゝな。(十一オ)その小/袖(そで) 00037090M4ハ八丈しまじやアなひか△Sそうさ。ほん八じやハな△ 00037100M5Sどうりで、ごうせいいゝ/地(ぢ)た。きぬきだらふ。二両も出 00037110M6したか△Sどうして△Sそんなら、いくらだ△Sそん両さ 00037120M7(十一ウ) 00037130¥N8¥J 00037140¥X/緋(ひ)おどしの/鎧(よろひ) 00037150M10女郎に十両のむしんを云ハれ、大きにふさぎ、行たさハ行 00037160M11たし、かねハおしく、いろ+とかんがへ、よひ/分別(ふんべつ)をあ 00037170M12んじだし、さらバ行かんと中の町へ(十二オ)ゆくと、はや 00037180M13女郎もむかひに出、かねのりくつで、いつよりもかくべつ 00037190M14の/上(じやう)うけ。そう+にして女郎のさしきへ行。きやく、そ 00037200M15しらぬかほでゐると、女郎Sもしへ、おたのミ申んしたも 00037210M16の、もつて(十二ウ)来ておくんなんしたかへ。きやく、手 00037220M17をたゝき、Sなむさん、とんとわすれた。しかもこしらへ 00037230M18て置て、気のせくまゝ、ついわすれた△女郎Sほんに、ぬ 00037240M19しでもおつせん。あれほど文にも、くれ+と/書(かひ)て(十三 00037250M20オ)あげんしたものを。こんやぢうになけれバなりんせん 00037260¥P116 00037270L1から、気のどくでおざんしたけれど、申てあげんしたもの 00037280L2を△きやくSいやサ。そりやアおれも/承知(せうち)だ。それだから 00037290L3もつて/来(こ)やうとおもつて、(十三ウ)/包(つゝん)でまで置て、ついわ 00037300L4すれて/来(き)た。おぼへて居てわすれたふりをするやうなおれ 00037310L5でもない。じよさいないといふせうこには、たとへ十が二 00037320L6十でも、金にハいとハぬ。うハぎなりと又/夜具(やぐ)なりと、(十 00037330L7四オ)のぞミのものをいや。こしらへてよこす△女郎Sイヱ、 00037340L8そんなものハいりひせんから、そんならどうぞ、ひおとし 00037350L9の/鎧(よろひ)をこしらへておくんなんし△きやくSなんのこつた。 00037360L10おもしろくもなひ。女郎が鎧を何ンにする(十四ウ)女郎 00037370L11Sぬしのてつぽうをふせぐ気さ 00037380¥N9¥J 00037390¥X人相 00037400L14かよひのわかひものSモシおいらん。わつちやアこの間、江戸 00037410L15で/人相(にんさう)を見る事をならつて来やした△Sほんにかへ。わつ 00037420L16ちを見てくんなんし(十五オ)若ひものSおいらんハ、おや 00037430L17ごに/孝行(かうこう)な人相だ△Sナニ、うそや。わつちやア/爺(とつ)さまも 00037440L18かゝさんも、二つのとし、なくならしつた。ドレ、その/鏡(かゝミ)、 00037450L19わつちにかさつし。こんたのを見てしんぜふ。ヲヤ、おつ 00037460L20だヨ。かほがあをく見へる(十五ウ)Sとうだね。しれやし 00037470M1たか△女郎Sどうもむつかしふヲスが、いづれ孝行な人相 00037480M2だ△Sいゝかげんな事を。わつちも、おやハとうからなし 00037490M3さ△女郎Sなに、かミさんに 00037500¥N10¥J 00037510¥Xこもそう(十六オ) 00037520M6あるむすこ、どうらくものにて、一人の/妹(いもと)をよしハらへつ 00037530M7とめさせ、その金にて、もふ一トどうらくやらかさんと、 00037540M8こもさうをおつはしめ、吉原中をあなさがしと出かけ、/小= 00037550M9空(こ=くう)とこくうをふきならしてあるくと、かの/妹(いもと)(十六ウ)見つ 00037560M10け、コレあにさん。おまへハまだそのどうらくをやめなん 00037570M11せんか。あんまりだよと、/格子(かうし)からの/異見(いけん)を聞て、外から 00037580M12S御無用+ 00037590¥N11¥J 00037600¥X/天神(てんしん) 00037610M15/北野(きたの)の天神さま、/浅艸(あさくさ)へ/開帳(かいちやう)に(十七オ)御くだりなされし 00037620M16か、ふとわかまつやの/紅梅(こうばい)といふおいらんを見そめ給ひ、 00037630M17あけくれの/郭(さと)かよひに、/開帳(かいちやう)のおさまりハいつしかつかひ 00037640M18はたし給ひしを、ゆしまの天神さま聞給ふより、(十七ウ) 00037650M19そう+/浅草(あさくさ)へかけつけ、どうしたものだ。よし原かよひ 00037660M20ハやめるが/能(い)ひ。世間のものがきひてもわるひ。/身代(しんだい)がい 00037670¥P117 00037680L1けんといひたて、此江戸まで/開帳(かいてう)に来て、壱文なしで京へ 00037690L2かへつてもつまらぬと、いろ(十八オ)+の/北野(きたの)さま、/良= 00037700L3薬(れう=やけ(ママ))口ににがしと、/却(かへつ)てはらたち給ひ、/湯嶋氏(ゆしまうち)ハかわつた事 00037710L4をいふもんだ。おらア開帳にハ来ハしねへよ。Sそんなら 00037720L5また、何しに来さした△Sミやこ座へふり付に(十八ウ) 00037730¥N12¥J 00037740¥X通人 00037750L8/所(ところ)ハ名に大坂町のかたほとりに、いきな/家(や)つくり。おもて 00037760L9ハ/板塀(いたへい)にしのびかへしといふところを、ぐつとひねつて羽 00037770L10しバ/垣(かき)のしをり門、/此下(このした)/秀吉(ひできち)と/書(かい)た/表札(ひやうさつ)ハ、い(十九オ)か 00037780L11にも/通人(つうじん)の下屋しきといふ見/込(こミ)。二/階(かい)の/半障子(はんしやうじ)をひらき、 00037790L12/碁(ご)をかこんでゐる/色男(いろおとこ)二人◇@/三成(さんぜい)|/秀吉(ひできち)@◇。/秀公(ひでこう)。此間はなした 00037800L13かの/玉婦(きよくふ)も、おとゝひ、さる所でころばしやした。Sフウ、 00037810L14/新道(しんミち)の/豊富(とよとミ)か△Sさやうサ。なるほど、/色事(いろこと)(十九ウ)ハ/三(ミ) 00037820L15つ/成(なる)をもつてよしとすといふ/金言(きんげん)にちげへねへ。よくむほ 00037830L16んを/企(くわだて)る男だ/づ((がカ))、あんまりあつくなつて、/関(せき)ケ/原(はら)とやると 00037840L17/討死(うちしに)するぜ。どうしてそういふむまひ/心中(しんちう)ハ/出来(でき)やせんと、 00037850L18はなすおりから、/表(おもて)を、/改(あらたま)り(廿オ)ました/新(しん)よしハら/細見(さいけん)、 00037860L19改りましたさいけんと/売(う)り行く。S秀こう、/武鑑(ぶかん)ハどうだ。 00037870L20/近(ちか)ころ、/丁子亭(てうじてい)にいゝつき出しが出やしたとサ△Sおきな 00037880M1せへ。何ンのやくにたゝぬ事た。ついどおらア、かつた事 00037890M2ハねへ△Sなぜだな(廿ウ)Sハテ、大/閣(かう)ハ/細見(さいけん)をかつて見 00037900M3ずといふ/地口(ぢくち)サ 00037910¥N13¥J 00037920¥X/琉球人(りうきうじん) 00037930M6よび出しのおいらん、モシ、此間わつちかところへ、/品川(しながハ) 00037940M7のほうの御やしきから、きやく人がきさしつ(廿一オ)て、 00037950M8わつちが/事(こと)を、りうきう人+といひなんすから、なぜそ 00037960M9ういひなんすと/聞(きゝ)ひしても、わらつてばかりいさしつて、 00037970M10いひなんせんが、なぜだねへ。客Sおめへ、それかけせん 00037980M11か△Sどうもしれやせん△客(廿一ウ)Sハテ、/中三王(ちうさんわう) 00037990¥N14¥J 00038000¥X/道具(だうぐ) 00038010M14道具/自慢(じまん)のおとこ、わつちが此/脇差(わきざし)の/目貫(めぬき)ハ/祐乗(ゆうじよ)が/作(さく)の/龍(れう) 00038020M15でごぜへす。此間も出入の小道具やが見て、そりかへり 00038030M16(廿二オ)やしたと、こくうとミそをあけると、ひとりの男、 00038040M17いま+しくなり、なるほど、けつかうな御道具でござり 00038050M18ます。しかしけつかうと/云(いふ)たばかりで、何のやくにたゝぬ。 00038060M19またわつちがしよぢの道具ハ、大キに(廿二ウ)なぐさミに 00038070M20なるから、しごく/重宝(ちやうほう)サといふに、かの男せきこミ、Sそ 00038080¥P118 00038090L1れハおうら山しひ事だ。ちと/拝見(はいけん)がいたしたふござりやす 00038100L2Sおやすひ事だ。下やしきにござりやす△S御/腰(こし)のものか 00038110L3へ△Sナニ、/遊女(ゆうぢよ)のめかけサ(廿三オ) 00038120¥N15¥J 00038130¥X/空寝入(そらねいり) 00038140L6ある男、あそびに行て、坐しきもおハり、さらバ御/床(とこ)へ入 00038150L7らつしやりませと、わかひものがあんないに、床へまハり、 00038160L8まてどくらせど女郎/来(きた)らねバ、あくびを千八百ほどす(廿 00038170L9三ウ)ると、/廊(らう)下をとん+とくるおとかするから、ヤレ 00038180L10うれしやとまつ間/程(ほど)なく、しやうしを/明(あけ)る。客ハ/夜着(よぎ)引か 00038190L11ぶり、/寐入(ねいり)たるふりしてゐると、女郎Sモシ+、ねなん 00038200L12したかへ+といへど、だまつてゐるゆへ、けし(廿四オ) 00038210L13からんよく寐さしつたと、またたつて出て行から、/客(きやく)、な 00038220L14むさん、やつてハならぬと、Sウヽといつて、ねかへりす 00038230L15ると、女郎ふりかへつて、Sいんのこ+ 00038240¥N16¥J 00038250¥X/間違(まちかひ)(廿四ウ) 00038260L18しんざう、/廊下(ろうか)にしく+/泣(な)ひてゐると、ちか付の/客(きやく)が見 00038270L19つけ、手めへ、/何(なん)で/泣(ない)てゐる。人が見てもわるひから、お 00038280L20らが/坐敷(ざしき)へ来さつしと手をとると、/新(しん)そう、なく+かほ 00038290M1をあげ、こしがぬけんしたといふに、きやく(廿五オ)わる 00038300M2く気どり、ソリヤとんだ事だ。/医者(いしや)にでも見てもらつたが 00038310M3いゝ。新そうSモウなくならしつたといつて来イした 00038320¥Q 00038330M5△△△△△△△△△△△神田鍛冶町弐丁目 00038340M6△△△△△△△△△△△△△△△△△越後屋初五郎板 00038350M7△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(廿五ウ) 00038360¥P119 00038370¥U噺本大系△第十三巻 00038380¥T新噺/庚申講(こうしんこう)〔題簽〕 00038390¥G 00038400¥Y 00038410L15寛政九年初冬刊 00038420L16慶山等合作 00038430L17九二庵ともくに序 00038440L18半紙本五巻五冊 00038450L19浪華△浅田清兵衛板 00038460L20東大国語研究室蔵 00038470¥Y 00038480M1はなしはミとり、舌ハくれなゐ、粋をさくりて奇と賞す。 00038490M2これ、滑稽也けり。いま新話を(序オ)ゑらひて、青黄赤白 00038500M3黒とわかち、いつゝの編となりけることを、きぬ+の我 00038510M4に是非とありて、序書するものハ 00038520M5△△△△△△△△△△△△△△△△△九二庵ともくに 00038530M6△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序ウ) 00038540¥P120 00038550¥Y1新噺/唐((ママ))申講壱 00038560L3△△目録 00038570L5みだれ/髪(かミ)△△△△/風見板(かざミいた) 00038580L6/鬼(おに)ミそ△△△△△/冬(ふゆ)のよしの 00038590L7/嵐(あらし)おと△△△△△/若(わか)やぐ/年(とし) 00038600L8/七色(なゝいろ)の/香(か)△△△△/氏(うじ)ハ/氏(うじ) 00038610L9/自業自得(じごうじとく)△△△△/江戸桜(ゑどざくら) 00038620L10/片足(かたし)かたし△△△ゑたの/子(こ)ハ/皮(かハ) 00038630L11/鉄(てつ)きせる△△△△/頭(かしら)に/神(かミ)(一オ) 00038640L12/思案(しあん)の/外(ほか)△△△△/七星(ななつほし)(一ウ) 00038650¥T1新噺庚申講壱 00038660¥N1¥J 00038670¥Xみだれ/髪(かミ) 00038680M5/庭前(ていぜん)の/長閑(のどか)さ、/今(いま)を/春辺(はるべ)と/匂(にほ)ふ/紅梅(こふばい)のさかり、/次(つぎ)に/初(はつ)さく 00038690M6らのつぼミも/口(くち)をときけれバ、/夫婦(ふうふ)ハ/餘念(よねん)なく打ながめ、 00038700M7/老(おい)のたのしミを/催(もよほ)し、/椽先(ゑんさき)にたばこ/盆(ぼん)/持出(もちいで)、千金の/価(あたい)もお 00038710M8しからじと/興(けう)じ、/隣家(りんか)の/柳(やなぎ)も/塀(へい)ごしの/春色(しゆんしよく)をふくミ、折 00038720M9ふし/春風(はるかぜ)さと/吹(ふき)おくるに、/我庭(わがにハ)の/桜(さくら)がもとへ、すれつもつ 00038730M10れつなびきかゝる/柳(やなぎ)(二オ)の/風情(ふぜい)に、/何(なん)とマア、/非情(ひぜう)のも 00038740M11のさへ/隣(となり)の/柳やなぎ)がいたづらさ。こちの/桜(さくら)をそゝのかして、お 00038750M12ちよ+と/口説(くとき)かゝる/有(あり)さま。ほんに/背戸門(せどかど)に/花(はな)も/植(うへ)らる 00038760M13ゝものじやないといへバ、女房が、さいなあ。そしてまあ、 00038770M14そバに/兄(あに)の見ているをもはゞからず 00038780¥N2¥J 00038790¥X/風見板(かざミいた) 00038800M17/段(だん)ばしごの下にて、/亭主(ていしゆ)/帳(ちやうあい)して/居(い)られし/折(おり)ふし、ばら 00038810M18+/雨(あめ)で/二階(にかゐ)のものほしに/干(ほし)ものゝあるを/取入(とりいれ)んと、女房 00038820M19ハ/段(だん)ばしごへ/上(あが)らん(二ウ)として、/亭主(ていしゆ)のうしろの/方(ほう)から、 00038830M20かたをおさへて上りしが、ふとこゝろつき、日ごろのものを 00038840¥P121 00038850¥G(五ウ・六オ) 00038860M1/気(き)にかける人じやのに、かたをおさへたハ大な/麁相(そゝう)也とお 00038870M2もひ、又段ばしご/下(お)りかゝり、亭主のかたを/後(うしろ)からちよい 00038880M3とつまミ/上(あげ)けるに、亭主ハあをむいて、アノ/昼(ひる)もかゐの 00038890¥N3¥J 00038900¥X/鬼(おに)ミそ 00038910M6/節分(せつぶん)の/夜(よ)、/鬼(おに)ども/家&(いへ+)をたゝき/出(だ)されて、うろたへ/廻(まハ)り/居(い) 00038920M7る/所(ところ)へ、/南(ミなミ)の/方(ほう)から/又(また)壱/疋(ひき)(三オ)にげて/来(き)て、たがひに/顔(かほ) 00038930M8/見合(ミあわせ)、どうじや。/貴(き)さまも/追出(おいだ)されたか。/是(これ)からどつちへ 00038940M9/行(ゆく)ぞい。いやも、どつちといふて、あてどハない。まあ 00038950M10+しづまつたら、やつはりどこへなとはいらざなるまい 00038960M11かゐ。Sサアおれも/其積(そのつもり)じや。しかし/門(かど)口にひゐらぎが有 00038970M12ので、めつたにはいられぬ。さればいの、そこが/智謀(ちぼう)じや。 00038980M13うか+/行(ゆく)によつて、/目(め)を/突(つい)たり/鼻(はな)を/突(つい)たりする。/高(たか)でち 00038990M14いさゐ/木(き)の/枝(ゑだ)じや。/腰(こし)をかゞめて/手(て)を/延(のば)し、(三ウ)/引(ひき)ぬひ 00039000M15て/捨(すて)てしまひ、そしてはゐる。こいつは/智恵(ちへ)じやと、そこ 00039010M16ら見まハし、こゝでこそと/小腰(こごし)かゞめて、カノ/柊(ひいらぎ)をぬきに 00039020M17かゝり、わつといふて/飛(とび)のくにそ、/何(なん)としたぞい。いや 00039030M18+、めつたにぬかれぬわいの。いわしめが/番(ばん)しておる 00039040¥P122 00039050¥N4¥J 00039060¥X/冬(ふゆ)のよし/野(の) 00039070L3これ、こちの人。/隣(となり)さんから/花見(はなミ)の/戻(もどり)じやとて、/桜(さくら)の/一枝(ひとゑだ) 00039080L4おくれなされた。Sいや+、よしにしや。/夫(それ)ハくれたの 00039090L5じやない。/売物(うりもの)じや。ふてうが/付(つゐ)て(四オ)/有(ある)△Sおまへも 00039100L6たしなまんせ。これハ/短冊(たんざく)といふて、隣のおかたが、此さ 00039110L7くらに/哥(うた)よんでじや/有(あつ)たのが、/夫(それ)がつけて有のじやわいな。 00039120L8そんならなをいやじや。人の哥のよミあまりを 00039130¥N5¥J 00039140¥X/嵐(あらし)おと 00039150L11/須磨(すま)の/百性(ひやくせう)、山へ/木(き)を/樵(こり)に/行(ゆき)けるが、/定(さだめ)て/親父(おやじ)どのもわせ 00039160L12られふ。/呵(しか)られぬ/内(うち)、/早(はよ)ふ/仕事(しごと)にかゝらんと、/斧(おの)をふり上 00039170L13ハ/上(あげ)ながら、アヽ今を/盛(さかり)のさくら花、いにしへ/忠度卿(たゞのりけう)も、 00039180L14花や/今宵(こよひ)の(四ウ)/主(あるじ)ならまじとの/哥(うた)のさた。又/貞柳(ていりう)ハ、ち 00039190L15れハ/抔(こそ)いとゞ/桜(さくら)ハめでたけれ△けれども+そふじやけれ 00039200L16ども、と/詠(よミ)給いしも、/又(また)、/花(はな)/咲(さひ)て/死(しに)とむないが/病(やまい)/哉(かな)といゝ 00039210L17しも、/皆(ミな)こゝろ/有(ある)人の花をめで、花をおしミ給ひし/志(こゝろざし)の 00039220L18やさしさ。/夫(それ)に引かへ、いかに/賎(しづ)の/男(お)なればとて、此花/伐(きる) 00039230L19ハむざんとやいわん、/心(こゝろ)なしとやいわんと、ひとりごとし 00039240L20てためらふうち、むかふの山より/親父(おやじ)/声(こへ)かけ、ヤア+/忰(せがれ)。 00039250M1/何(なに)をうか+しておるぞや。(五オ)(五ウ・六オ挿絵)/早(はや)くき 00039260M2れときめつくる。/息子(むすこ)ハはつと/立上(たちあが)り、/斧(おの)ふり/上(あげ)ハ/上(あげ)なが 00039270M3ら、おしや/盛(さかり)を/散(ちら)すかと、うでもなまるを、/親仁(おやじ)大/音(おん)にて、 00039280M4どうじや※に、ぜひなく打や/丁&&(ちやう++)。アヽ/翌(あす)から/鉢坊主(はちぼうず) 00039290M5にでもなろ 00039300¥N6¥J 00039310¥X/若(わか)やぐ/年(とし) 00039320M8/天王寺(てんおうじ)の/南門(なんもん)に、のぞきや/出(で)て、さま+との/口上(こうぜう)。/仁王(におう) 00039330M9/聞(き)かれて、おれにも見せてくれんか。のぞきや、さあ/御(ご)ら 00039340M10うじませ。仁王/覗(のそか)んとす(六ウ)れども、の/ど((ぞカ))きハ/低(ひく)し/背(せ)ハ 00039350M11/高(たか)し。/腰(こし)をかゞめてもやつはりひくうて見られぬゆへ、ど 00039360M12うも仕様ハなし。/尻居(しりい)になつて両足をぐつとのばし見てい 00039370M13らるゝを、/片家(かたや)の/仁王(にをう)が、アヽ、/乳(ち)のむまねならおよれい 00039380¥N7¥J 00039390¥X/七色(なゝいろ)の/香(か) 00039400M16/柳(やなぎ)さくらをこきまぜて、/誠(まこと)に/都(ミやこ)ぞ/春(はる)の/錦(にしき)なりけりじやなあ。 00039410M17しかしいとさくら、しだりもゝ、/連翹(れんぎやう)、/柳(やなぎ)なんども、/木= 00039420M18枯(こ=からし)になると、とん(七オ)と/分(わか)りませぬてな。/側(そバ)より、まだ 00039430M19ほうづきの/皮(かハ)もまじりますて 00039440¥P123 00039450¥N8¥J 00039460¥X氏ハうじ 00039470L3ふりよく/咲(さき)し梅の/枝(ゑだ)へ、すゞめ壱/羽(ハ)/飛(と)んで来て、チユウ& 00039480L4&チユ&、チユツ++++。どふやつて見ても、 00039490L5いきません 00039500¥N9¥J 00039510¥X/自業自得(じごうじとく) 00039520L8下男申、/和尚(おせう)さま。/薪(たきゞ)がきれました。どふ/致(いた)しませふ。 00039530L9和尚ヲイ/合点(かてん)じや。うしろの山を切(七ウ)/工面(くめん)しておい 00039540L10た。男そんなら/杣(そま)をやとふて参り升う。和尚いや+、人 00039550L11をやとふと銭が入る。われとおれと二人して切とて、山へ 00039560L12行。/木(き)に/登(のぼ)り/枝(ゑだ)をきりおろす/拍子(ひやうし)に、すとんと/落(おち)られ、和 00039570L13尚のおいどへ/樹(き)の/切株(きりかぶ)が、ぬうとはいる。あいた++。 00039580L14男びつくりして、これハ何とせふ。これハたまらぬと、小 00039590L15僧を/呼(よび)に/行(ゆき)、小僧さん+。ゑらい大事じや※。和尚さ 00039600L16んが/切株(きりかぶ)へ/尻(しり)こ□こんで、尻から/血(ち)が/出(で)ます。/薬(くすり)でも/持(もつ)て 00039610L17御出(八オ)なされといへバ、小僧、さわがぬ/顔(かほ)つきにて、 00039620L18ハヽアむくいじやナア 00039630¥N10¥J 00039640¥X江戸さくら 00039650M1/物(もの)/申(も)。Sどをれ△S吉野屋作兵衛、御礼申ます。/旦那(だんな)、こ 00039660M2れハ++。丁稚、そりや又はめ句じや 00039670¥N11¥J 00039680¥X/片足(かたし)かたし 00039690M5/春(はる)のしるし、/諸木(しよぼく)/芽(め)つくりし/庭前(ていぜん)を、/隠居(いんきよ)つく※/打詠(うちなが)め、 00039700M6扨まあ/去年(きよねん)/植置(うへおき)し/桃(もゝ)/柿(かき)なんど、よくつきたり。/皆(ミな)+/接(つが) 00039710M7(八ウ)せねバなるまい。コリヤ八助。/植木屋(うへきや)行て、/接(つき)にこ 00039720M8よといふてこい。/畏(かしこま)りまして厶り升が、どこで厶り升。天 00039730M9神の/裏門(うらもん)すじで、/植木(うへき)屋平兵衛と/尋(たつね)て/行(ゆけ)け。Sハイ+、 00039740M10/畏(かしこま)りましたと/急(いそ)ぎ/裏(うら)門すじへ行、申+、此あたりに植 00039750M11木屋平兵衛といふ/塗師(ぬし)屋ハ厶り升んか 00039760¥N12¥J 00039770¥X/穢多(ゑた)の/子(こ)ハ/皮(かハ) 00039780M14/八瀬(やせ)のさとに六十斗な/母親(はゝおや)、/若(わか)い時から/段(だん)+/精(せい)を/出(だ)し、 00039790M15/家内(かない)/繁昌(はんぜう)、/息子(むすこ)/成人(せいじん)、/能(よい)(九オ)/嫁(よめ)をよび、/早(はや)/孫(まご)もでき、五 00039800M16重がうけたいといへバ、御受なされませ+と、心よふ息 00039810M17子が/受込(うけこミ)、旦那寺の和尚のたのミ、扨/御剃刀(おかミそり)の段になつて、 00039820M18あたまに大きな/荷持(にもち)こぶ有。孫が見付ておかしがれハ、/爺= 00039830M19親(てゝ=おや)いふにハ、あれハばゞさまが/若(わか)い時から、京大坂迄もあ 00039840M20たまに/重荷(おもに)を/置(おい)て/商(あきなひ)にあるきなされたゆへに、あれハ/荷(に)こ 00039850¥P124 00039860¥G(十ウ・十一オ) 00039870M1ぶと/言(いふ)ものじやといへバ、ハヽア、わしハ又、打ばんのみ 00039880M2ばへかとおもふた(九ウ) 00039890¥N13¥J 00039900¥X/鉄(てつ)きせる 00039910M5/関取(せきとり)。/何(なん)とマア/貴公(きこう)、大坂の/角力(すもふ)を/仕舞(しまふ)と、此/京(きやう)に半年/餘(あま) 00039920M6り。もうおんじやり申も、やミそふな物じやがナア。S/旦= 00039930M7那(だん=な)さまの仰でハおんじやり申が、おんじやり申ハ/奥州(おうしう)の/手= 00039940M8形(て=がた)で、おんじやり申からやむ事でハおんじやり申さぬてな 00039950M9S成程、なまりハ国の手形也で、夫が国の風俗じやてナア。 00039960M10時に/奥州(おうしう)と京とたべ物、/着類(きるい)、道具迄、/勝手(かつて)の/違(ちがふ)た事だら 00039970M11けで有ふナア△Sいやも、(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)さしてか 00039980M12わつた事もおんじやり申さぬ。/金華山(きんくわさん)のきんこが/生洲(いけす)の/魚(うを) 00039990M13とおなじ事で、/大精薬(だいせいやく)でおんじやり申。/仙台嶋(せんだいじま)、ちゞミ布、 00040000M14/忍摺(しのぶずり)など/致(いたし)申ハ、こゝの/西陣(にしぢん)とおなじ事。/会津(あいづ)の/椀盆(わんぼん)へや 00040010M1Kぶの下の/道具屋(どうぐや)もかわり申さぬて。はてのう、なぐさミ/遊= 00040020M16山(ゆ=さん)ハどうじやの。/衣川(ころもがハ)で/鮭(さけ)をとり申が、/加茂(かも)川の/鮎(あゆ)くミ、 00040030M17/宮城野(ミやぎの)ゝ/荻(はき)ハ/高台寺(こうだいじ)さまも及ませぬ。扨又月見、/雪(ゆき)見な 00040040M18んどの/閑静(かんせい)な/遊(あそび)ハの。夫こそハ名に(十一ウ)しおふ/松嶋(まつしま)/象= 00040050M19潟(きさ=かた)と申て、月にも/雪(ゆき)にも/景色(けいしよく)ハけしからぬものでおんじや 00040060M20り申から、/酒(さけ)/肴(さかな)もたづさへて行ますてや。こゝの/山行(やまゆき)など 00040070¥P125 00040080L1ゝかわつた事もおんじやり申さぬ。S扨又/春(はる)の花ハめつら 00040090L2しいものハないか。何の花から/咲(さき)そめるの△S/此方(ワンチ)の国で 00040100L3ハ/梅(んめ)の花から/咲(さき)申が、/都(ミやこ)でハ何から/咲(さき)申な 00040110¥N14¥J 00040120¥X/頭(かしら)に/神(かミ) 00040130L6/親父(おやじ)さま。町へいかんすならバ、/小挑灯(こてうちん)/一(ひとつ)(十二オ)/買(かふ)て/来(き) 00040140L7て下されとたのめバ、/親父(おやし)町へ/来(き)て、小/挑灯(ちやうちん)を/買(かい)、/上(うへ)のく 00040150L8わんに/紐(ひも)をつけ、ぶら+とかたげ、ふといすりこぎも一 00040160L9本/買(かい)、是も/立(たつ)にひも付て、ぶら+と/長縄手(ながなハて)を、てうちん 00040170L10とわいがけにして行。/女中達(じよちうたち)見て、あの/親父(おやじ)さんハちやう 00040180L11ちんをたゝんでいたがよいと/笑(わらい)+、申+/親仁(おやじ)さん。そ 00040190L12の/挑灯(ちようちん)ハおまへのかといへば、親仁大の/正直(しようじき)もので、Sい 00040200L13へ+。わたくしのハこれで厶り(十二ウ)升と、すりこぎ 00040210L14を見せけれバ、女中おまへもよい年して、/達者(たつしや)なおかた 00040220L15じや 00040230¥N15¥J 00040240¥X/思案(しあん)の/外(ほか) 00040250L18/龍泉寺(りうせんじ)の/桜見(さくらミ)に、/富家(ふか)の小/息子(むすこ)、あいかたの大夫/芸子(げいこ)を引 00040260L19つれ/行(ゆ)かれ、ほろ/酔(ゑい)のよいきげんに、/帰(かへ)る事をも/忘(わす)るゝハ、 00040270L20花と花との/美(び)にほだされ、/早(はや)日も西に/傾(かたむ)けバ、/御寺(おてら)の門も 00040280M1しまると、ざんざめかして/帰(かへ)りがけ、芸子のうつくしもの 00040290M2めが、/此(この)桜/一枝(ひとゑだ)/手折(たおつ)て、/家(いへ)づとに(十三オ)したいとあまへ 00040300M3だし、イヤ、/叱(しか)られるの何のかのいふうち、何の/苦(く)もなく 00040310M4酒きげんに、大きな枝を一本/折(おつ)て、跡をも見ずに門を出た 00040320M5れバ、/茶店(ちやミせ)の/嚊(かゝ)ハ、/早速(さつそく)/和尚(おせう)へかくと/告(つげ)しに、和尚大には 00040330M6らをたて、いかに/女童(おんなわらべ)じやとて、/餘(あま)りこゝろなきふるま 00040340M7いかな。いで/其(その)桜、とり/返(かへ)さであるべきかと、/横(よこ)はちまき 00040350M8で/飛(とん)で出、あれにこそと/目(め)をつくれバ、芸子ハいきせき、 00040360M9口なハ坂を/下(お)りかゝり、/一(ひと)いきつ(十三ウ)ゐで、アヽしん 00040370M10どゝふりむく顔ハ、/廓(くるわ)での/魁首(くび)芸子、ましてほろ酔の/薄紅= 00040380M11梅(うすこう=ばい)といふ/面像(めんぞう)。/怒(いか)りきつたる和尚さまも、たちまちくにや 00040390M12+++。しんどけりや、/持(もつ)てあぎよか 00040400¥N16¥J 00040410¥X七ほし 00040420M15二八十六で/文(ふミ)付られて、二九の十八でツイ其こゝろ、四五 00040430M16の二十なら/一期(いちご)に一ど、わしや/帯(おび)とかん、チン++ 00040440M17+。其金こゝにと弐朱で三百両。/二階(にかい)の/障子(せうじ)をさつと/明(あけ)、 00040450M18はらり+となげ出す。(十四オ)これハ/夢(ゆめ)かやうつゝかや、 00040460M19つゝむに/餘(あま)る/重(おも)たさに、/誰(たれ)ぞ人ひとりやとふておくれ 00040470¥P126 00040480¥Y1新噺庚申講壱終(十四ウ) 00040490¥Y1新噺/唐((ママ))申講弐 00040500M3△△目次 00040510M5/夜討(ようち)/曽我(そが)△△△△△/三巴(ミつともへ) 00040520M6/柿(かき)の/渋(しぶ)△△△△△△/泥(どろ)/仙人(せんにん) 00040530M7/木地(きぢ)のまゝ△△△△/裏(うら)はら 00040540M8/木具(きぐ)の/膳(ぜん)△△△△△/火(ひ)の/用心(やうじん) 00040550M9/痩田(やせた)の/論(ろん)△△△△△/遠目鏡(とほめがね) 00040560M10/目利(めきゝ)くらべ△△△△/五分(ごぶ)※ 00040570M11にわたつミ△△△△/日南(ひなたの)/豆(まめ)(一オ) 00040580M12/当返(あてかへ)し△△△△△△/紅茗荷(べにミやうが) 00040590M13あへ/交(まぜ)/膾(なます)(一ウ) 00040600¥P127 00040610¥T1新噺庚申講弐 00040620¥N1¥J 00040630¥X/夜討(ようち)/曽我(そが) 00040640L5旦那ふつと目をさませバ、/有明(ありあけ)きへてまつくらがり。コレ 00040650L6りん。火がきへてある。火を打てたもといへど、下女ハね 00040660L7いりばな。ゑゝ、おこすもせつせうじやと、そろ+おき 00040670L8て/台所(だいどころ)、/火打箱(ひうちばこ)をさがして居る。ごそつく/音(おと)に、又/内義(ないぎ)目 00040680L9をさませバ、火ハきへてまつくらがり。/寐所(ねどころ)にハ旦那ハ見 00040690L10へず。/台所(だいどころ)ハごそつく音。/誰(たれ)じや+。Sいや、おれじや 00040700L11Sフウ旦那さん。何して(二オ)居なさる△Sイヤ、有明が 00040710L12きへて/火打箱(ひうちばこ)さがしている△内義Sなんの、わたしがしる 00040720L13まいかとおもふて 00040730¥N2¥J 00040740¥X三つ巴 00040750L16/遠国(をんごく)より/客(きやく)を/得(ゑ)て、天王寺へ/参詣(さんけい)いたしたいといふ故、小 00040760L17もん才なる男を/案内(あんない)に/付(つけ)て/出(だ)す。先/高津(こうづ)を見物させんと坂 00040770L18を/登(のぼ)れバ、客扨/立派(りつぱ)な宮様だ。/爰(こゝ)ハ何と申所だな。男/是(これ)が 00040780L19/則(すなはち)、/高津(こうづ)。/仁徳天皇(にんとくてんわう)、高き屋にのぼりて見れバ/煙(けむり)たつ 00040790L20民のかまどハ/賑(にぎわひ)にけりの/御製(ぎよせい)有し所。客それハ(二ウ)/向(むか)ふ 00040800M1に見ゆる/煙(けふり)の事か。イヱ+、あれハ/瓦(かわら)/焼(やく)のでござります。 00040810M2フウ、しからバ此/左(ひだり)の方の/遥(はるか)むかふに見ゆる/煙(けふり)、あれがそ 00040820M3うか。いへ+、あれハ千日の煙でこざります。客フウ、 00040830M4千日とハどうしたものだ。はゐ。/墓所(はかしよ)でござります。客毎 00040840M5日あれか。男毎日あの通り。/七墓(なゝはか)と申まして、外にまだ六 00040850M6/墓(はか)ござり升。客はて、/繁花(はんくわ)の/地(ち)だな。此/前(まへ)に見ゆる煙ハな。 00040860M7是ハ/黒焼屋(くろやきや)で厶り升。客/黒焼(くろやき)屋とハどうだ。男ハイ。/狐(きつね) 00040870M8/狸(たぬき)あるひハ/狼(おゝかミ)などを/焼(やき)升る。客はてな。(三オ)/繁花(はんくわ)の地だ 00040880M9な。けだものゝ/墓所(はかしよ)迄あるか 00040890¥N3¥J 00040900¥X/柿(かき)の/渋(しぶ) 00040910M12/大家(たいか)の/旦那(だんな)、/妾宅(せうたく)をこしらへ/置(おか)れしが、/本妻(ほんさい)少しもりんき 00040920M13の心なく、きげんよくくらしいられしを、旦那ふしぎな事 00040930M14とおもはれし折ふし、/妾(てかけ)、/男(おとこ)の/子(こ)を/産(うミ)しに、/本妻(ほんさい)ハ/別(べつ)して 00040940M15/悦(よろこ)び、/産着(うぶき)なども/数(かず)※おくる。旦那も/本妻(ほんさい)のこゝろを/感= 00040950M16心(かん=しん)しながら、又外に不/埒(らち)な事でもありて、/夫(それ)ゆへりんきせ 00040960M17ぬ事もやと、(三ウ)/色(いろ)+/気(き)をつけられけれども、あやし 00040970M18き事なく、折ふし本妻の/留主(るす)を/幸(さいわゐ)に、/長持(ながもち)、/箪笥(たんす)、/手道具(てどうぐ) 00040980M19の/中迄(なかまで)、あやしき/文(ふミ)やあらんかと見れども何もなし。夫よ 00040990M20り/鏡台(けうだい)の引出しをさがし、/鼈甲(べつこう)のものゝ入し/箱(はこ)を/開(ひらい)てミれ 00041000¥P128 00041010¥G(五ウ・六オ) 00041020M1バ、ミな/反橋(そりはし) 00041030¥N4¥J 00041040¥X/泥(どろ)仙人 00041050M4松屋町/二井戸(ふたついど)/辺(へん)/普請場(ふしんば)/大屋根(おゝやね)の/軒中(のきなか)ぬりさい中、/若盛(わかざかり)の/左= 00041060M5官(さ=くわん)が、/花見(はなミ)/遊山(ゆさん)(四オ)のと/世間(せけん)ハざわつくに、/受取(うけとり)ぶしん 00041070M6で日をかゝす事ならず。うら山しそふに、きよろつく/折(おり)か 00041080M7ら、/隆専寺(りうせんじ)も/盛(さかり)であろか、/道善寺(どうぜんじ)がさい中じやのと/噂(うわさ)とり 00041090M8※。/町(まち)からも/嶋(しま)からも花見る人の/花(はな)ざかり。おやまげい 00041100M9こがよひきげんのあばづれを、/左官(さくわん)ハ/屋根(やね)から、よう+ 00041110M10かわいらしい。ほれましたといへバ、/芸子(げいこ)が下から、をゝ 00041120M11うれしといふを、/左官(さくわん)ほんにかいなといゝつゝ、やねから 00041130M12ころり、下にある土こねの(四ウ)船へはまり、からだ/中(ぢう)/泥(どろ) 00041140M13まぶれ。左官ぬからぬ/顔(かを)で、土になつてもわすれハせぬ 00041150¥N5¥J 00041160¥X/木地(きじ)のまゝ 00041170M16ほんにむかひうらの子ハ、日がな一日、こちの/火鉢(ひばち)にあた 00041180M17つてじや。そちにハ火がないかといへバ、おばさん。わし 00041190M18が目にハ見へぬけれとな、こちにハ火がふるといふじや 00041200¥N6¥J 00041210¥Xうらはら 00041220¥P129 00041230L1正月十四日に、/子供(こども)あまたより/合(あい)、おしめなハ/下(くだ)(五オ)(五 00041240L2ウ・六オ挿絵)んせと/言(いゝ)てあるく。ある/富家(ふか)の/子(こ)、おれもい 00041250L3こうと、やんちや/言(いふ)を、/色(いろ)+とすかせども/聞入(きゝい)れず。ぜ 00041260L4ひなく/丁稚(てつち)長吉を/付(つ)けて/出(だ)す。やがて/別家(べつけ)の門口へ/往(い)て、 00041270L5/旦那(だな)さんお/家(ゑ)さん。おしめ/縄(なハ)下んせとわめく。ヤ、これハ 00041280L6本/家(け)のぼんさんじや。長吉も長吉じや。こちの/門(かど)へ来て、 00041290L7おへさんだんなさんとハ何の事じやと/呵(しか)つたら、もうあし 00041300L8たからいやせん 00041310¥N7¥J 00041320¥X/木具(きぐ)の/膳(ぜん)(六ウ) 00041330L11ある/女郎(ぢよろう)、いさゝかの/金(かね)を/客(きやく)にたてゝもらひ、/一人(ひとり)ずミの 00041340L12/妾宅(せうたく)。けふ/家移(やうつり)のはきそうぢ、/仕(し)つけぬ事といゝながら、 00041350L13/勤(つとめ)ひいたがうれしさに、/飯(まゝ)も/焚(たい)たり/水(ミつ)も/汲(くん)だり。/先(まづ)/神(かミ)さま 00041360L14へ御/燈明(とうめう)をあげ、/夫(それ)より/荒神棚(こうじんたな)へ/線香(せんこう)/上(あげ)しなに、/鼠(ねずミ)なき 00041370¥N8¥J 00041380¥X/火(ひ)の/用心(やうじん) 00041390L17マアおのぶさん。/聞(きい)ておくれ。/此方(こち)の/男(おとこ)めハ大のどさで、 00041400L18内にハ/火(ひ)がふる。/何(なに)/喰(くう)まいと/侭(まゝ)じやに、/妾(てかけ)(七オ)/狂(ぐるひ)でな、 00041410L19わしにハ/地獄(ぢごく)のくるしみさせながら、おのれがやうなお/福(ふく) 00041420L20ハいやじや。/去(いん)でしまへの、/死(しに)くされの/小忰(こせがれ)も/捨(すて)てなとし 00041430M1まへの、もうおのれがやうな/古(ふる)くさい/女房(にようぼう)ハいやじや。ま 00041440M2くり/出(だ)して、すいた女房いれにやならぬのと、/忌(いま)+しい 00041450M3事の有でう。/腹(はら)がたつて+ならぬ。どうしてこまそうや 00041460M4ら、なミだがこぼれて、むねがくら+もへるわいな+ 00041470M5+。おとらアヽそのやうにもへるなら、まあ/一口(ひとくち)水をの 00041480M6ミ(七ウ) 00041490¥N9¥J 00041500¥X/痩田(やせた)の/論(ろん) 00041510M9/世帯初(せたいはじめ)の/若女夫(わかめうと)、あんまり/中(なか)が/能(よ)ふすぎ、/子(こ)の/出来(でき)ぬのハ 00041520M10つき/潰(つぶし)なさるのじやと、/近所(きんじよ)からもおだてられ、ほんにけ 00041530M11ふハ/節分(せつぶん)、/麦飯(むぎめし)にとろゝ/汁(じる)するものじやげなと、/女夫(めうと)して 00041540M12/笑(わらい)+こしらへ、山のいもの/皮(かハ)むき+、此/芋(いも)ハそなたに 00041550M13よふ/似(に)たきつゐ/土(つち)じやといへバ、/女房(にようぼう)、ハイ。どふで、わ 00041560M14たし/等(ら)ハ/土(つち)でござんす。すいな/芋(いも)さんと御/仕(し)かへなされと、 00041570M15/千話(ちわ)まじりの/喧嘩(けんくわ)。あじやらが(八オ)こうじて、/後(のち)にハか 00041580M16たりめの/盗人(ぬすびと)めのと、わつぱさつぱ。/聞(きゝ)かねて/隣(となり)の/内義(ないき)あ 00041590M17いさつに/来(き)て、マアよいわいな。/祝日(いわひび)とじやと、女房から 00041600M18なだめ、もうわしがもらひ升。/今夜(こんや)ハ/年越(としこし)じや。/寐(ね)て/中直(なかなをり) 00041610M19しなされといへバ、女房ハはら/立顔(たてがほ)で、かり/初(そめ)にも、わた 00041620M20しをかたりじやのぬす人じやのと/人聞(ひとぎゝ)のわるい。わしが何 00041630¥P130 00041640¥G(十ウ・十一オ) 00041650M1をぬすんだ事が有へといへバ、亭主、/産(うま)ぬによつてじや 00041660¥N10¥J 00041670¥X/遠目鏡(とをめがね)(八ウ) 00041680M4申、わたしの/所(ところ)の/庭(にハ)ハ、/土龍(うごろもち)で/一(いつ)こふ、どふもなりませぬ。 00041690M5ヱヽつゐ/取(とつ)て/仕(し)まいなされといへバ、でも/地(じ)の/下(した)に/居(ゐ)ます 00041700M6れバ、どふもとれ申せぬといふ。イヤサ。/其穴(そのあな)へ、/無二膏(むにこう) 00041710M7を/張(はつ)て/置(おき)なさい 00041720¥N11¥J 00041730¥X/目利(めきゝ)くらべ 00041740M10/乗合(のりあい)の/船中(せんちう)にて、/四方山(よもやま)の/咄(はなし)のうちにも、京大坂の人のく 00041750M11せ。/例(れい)の/芝居咄(しばいはな)しに、/何(なん)と、小六/玉(たま)が/死(しん)で、今でハどれが 00041760M12玉であろふ。サアまあ/団蔵(だんぞう)かゐ。イヤ+、三五郎が玉じ 00041770M13や。イヤ+/市紅(しこう)じや。/雷(らい)(九オ)/子(し)じやとせり/合(あう)中に、/在= 00041780M14所(ざい=しよ)の人さし出て、/音松(おとま□)も玉で厶り升ぞへといへバ、/何(なに)をあ 00041790M15ほらしい。あいらハひよこじやわいのうといへバ、ハヽア 00041800M16さよなら、玉がかえつたのじやな 00041810¥N12¥J 00041820¥X/五分(ごぶ)※ 00041830M19/粋(すい)がりの/坊主(ぼうず)/客(きやく)、/道頓堀(どうとんぼり)の/茶屋(ちやゝ)へ/行(ゆき)、久しいものじやが、 00041840M20あミだの/光(ひかり)を/始(はじめ)、/自身(じしん)/鮹(たこ)の/料理役(りやうりやく)にあたり、あたまかき 00041850¥P131 00041860L1+/鮹(たこ)買てもどりて、すぐに/川(かハ)ばたへ/持(もつ)て/行(ゆき)、/鮹(たこ)をあらふ 00041870L2ているを、(九ウ)/土舟(つちふね)の/船頭(せんどう)ども見つけて、アレミゐ。/鮹(たこ) 00041880L3が/鮹(たこ)/洗(あらを)ているわいと/笑(わらへ)バ、/坊主(ぼうず)あたまをふりたて、/何(なに)ぬか 00041890L4すやら。/土(つち)めらが/土(つち)さいておつて 00041900¥N13¥J 00041910¥Xにはたつミ 00041920L7/貴様(きさま)の/所(ところ)に、/今度(こんど)おいた小めろハあほか。イヽヤ、あほう 00041930L8でもなけれど、とんとの/這出(はいで)じやよつて、ちつと/鈍(とん)なが、 00041940L9何とした。いやさ。此間こちの/店(ミせ)で、いとの/守(もり)しい+、 00041950L10むかし/咄(ばなし)をしておるを/聞(きけ)バ、ぢいハ/川(かハ)へせんだくにいたげ 00041960L11な。ばゞハ山へ/芝刈(しばかり)(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)にいたげなと、 00041970L12/間違(まちがふ)た/事(こと)ばつかりいふているよつて。フウ、/夫(それ)ハそういふ 00041980L13/事(こと)もあろ。きやつが/産(うまれ)ハ/八瀬(やせ)じや 00041990¥N14¥J 00042000¥X/日南(ひなた)の/豆(まめ) 00042010L16申かゝさん。/名月(めいげつ)の/夜(よ)月/明(あか)りで/針(はり)にいと/通(とほ)すと、/思事(おもいごと)が/叶(かなふ) 00042020L17とやら。どふぞ針と/糸(いと)とをおくれといふにびつくり。子/共(とも) 00042030L18じや+と思ふていたれバ、ゆだんのならぬ、/糸(いと)と/針(はり)とハ 00042040L19ほしくバやろが、思ひ事が/有(ある)とハ、そりやまあだれじや。 00042050L20母にゑんりよハない。おもひ事をつゝまずいやと、すかし 00042060M1たらしてとがむれバ、/娘(むすめ)、はづ(十一ウ)かしそふに、アノ 00042070M2ナ、/隣(となり)の/芋(いも)とだんごがぬすミたい 00042080¥N15¥J 00042090¥Xあて返し 00042100M5しわん/坊(ぼう)の/親方(おやかた)にかゝれバ、/召遣(めしつか)ひ/迄(まで)/朱(しゆ)にまじハり、あか 00042110M6ら/顔(がを)にて、ほうばいどしせり合、旦那にが+しい/顔(かを)にて 00042120M7/店(ミせ)へ/出(いで)、やかましい。/何事(なにごと)じや。清助ハやう+/此頃(このごろ)/阿波(あハ) 00042130M8より/来(く)る。其/手次(てつぎ)といふハ、せり合六兵衛じやないか。/我= 00042140M9身(わが=ミ)たちハわるかたいじで、土けがはなれぬといへバ、/二人(ふたり) 00042150M10の/手代(てだい)ハ/詞(ことバ)をそろへて、そんなら/毎晩(まいばん)/風呂(ふろ)も/焚(たい)たがよい 00042160M11(十二オ) 00042170¥N16¥J 00042180¥X/紅茗荷(べにミやうが) 00042190M14/牽頭(たいこもち)が/客(きやく)を/買(か)ふといふことハどうした事じや。夫ハ客をい 00042200M15なすのじや。客をいなしたら/損(そん)であろうが。イヤ+、い 00042210M16なすとハ客をむまいと見ると、いろ+さんしよをつかふ 00042220M17て、しらぬよふにわる口いふのじや。そんなら、すしにし 00042230M18て/喰(くふ)のじやな 00042240¥P132 00042250¥N17¥J 00042260¥Xあへまぜ/膾(なます) 00042270L3/扨(さて)京江戸大坂/三ケ津(さんがのつ)、夫+に人/気(き)が/違(ちがふ)ハ(十二ウ)どうし 00042280L4た物でござります。夫ハ大坂のものが江戸でそだてハ江戸 00042290L5物になる。又京でそだてバ京の人になるもので、其/国(くに)※ 00042300L6の/土地(とち)になれるので厶り升。そんなら京の/土(つち)と大坂の土と 00042310L7江戸の土と/一所(いつしよ)にして、三ケの津へ/置土(おきつち)をしたらバ、/人気(ひとぎ) 00042320L8も/一所(いつしよ)になり升ふなあ。/夫(それ)ハ/一所(いつしよ)になりそふなもので厶り 00042330L9升。しかし/思召(おぼしめし)の/通(とほり)いたしたらバ、たんと/金(かね)の/入(いり)そふな 00042340L10事で厶り升ナア。S夫ハ/鴻池(こうのいけ)を/銀主(ぎんしゆ)(十三オ)につけます 00042350L11Sそのように/仕(し)おふせてから、何ぞ/徳用(とくやう)の/付(つき)ます事でも厶 00042360L12り升か。さして/徳用(とくやう)でも厶らねど、ならふ事なら/致(いた)したい 00042370L13ものじやなあ。そふいたしたらどうなり升。そういたした 00042380L14らバ、三十/石(こく)の/船(ふね)でせり合が/出来(でき)ませぬ 00042390¥Y1新噺庚申講弐終△(十三ウ) 00042400¥Y1新噺庚申講三 00042410M3△△目次 00042420M5/樹(き)から/落(おち)た/猿(さる)△△△/餅(もち)ハ/餅屋(もちや) 00042430M6つれ※△△△△/関寺(せきでら)/小町(こまち) 00042440M7/迷(まよい)ちがひ△△△△/気(き)ハこゝろ 00042450M8/壱本立(いつほんだち)△△△△△/朧月(おぼろつき) 00042460M9/荷附馬(につけむま)△△△△△/商売質気(せうばいかたき) 00042470M10/太夫落(たゆふおち)△△△△△/得手勝手(ゑてかつて) 00042480M11弐匁つなぎ△△△/我(われ)かおれか(一オ) 00042490¥P133 00042500¥T1新噺庚申講三 00042510¥N1¥J 00042520¥X/木(き)から/落(おち)た/猿(さる) 00042530L5/福(ふく)ハ/内(うち)/鬼(おに)ハ/外(そと)、はやしたてる/向隣(むかふとなり)の/笑(わらい)声に、やもめぐら 00042540L6しの八兵衛、なんでも/今夜(こんや)ハ/横槌(よこづち)なと/抱(だい)てねる物じやげな 00042550L7と、/銭(ぜに)三百/持(もつ)て出て、/早速(さつそく)/美(うつく)しい/横槌(よこづち)壱つ/買(かう)て/戻(もど)り、其/夜(よ) 00042560L8ハ/仮(かり)の/妻心(つまこゝろ)で、なでつさすりつ/抱(だい)て/寐(ね)た所、/真夜(まよる)かの/横槌(よこづち) 00042570L9もの/言出(いゝだ)し、もしへ、わたしやおまへの/女房(にようぼう)じやほどに、 00042580L10これからかわゆがつておくれ(二オ)と、ほてくろしいむつ 00042590L11/言(ごと)も、八兵衛ハびつくりしなから、幸やもめの身の/上(うへ)なれ 00042600L12バ、/成程(なるほど)※二世も三世もかわらぬ/女夫(めうと)と、夫からハ/夜(よ)と 00042610L13もにむつまじい女夫せりふ。/壁(かべ)/隣(となり)に/聞耳(きゝミヽ)たて、八兵衛さん 00042620L14の所へ/嫁(よめ)が来たそふなと、/夜(よ)が/明(あく)れバ、/長家中(なかやぢう)/相談(そうたん)して、 00042630L15御/定(さだま)りのつなぎを入る。八兵衛も此まゝ/置(おか)れず、ひろめの 00042640L16むし物せざ成まい。三斗にせうか五斗にせうかと、おつち 00042650L17にとへば、おつちハきつい/勘(かん)りやくもので、壱斗でよい 00042660L18(二ウ)といふ。八兵衛、/夫(それ)でハ/少(すくな)ひといへバ、イヱ+、 00042670L19ものハ/随分(ずいふん)うちばんがよい 00042680¥N2¥J 00042690¥X/餅(もち)ハ/餅屋(もちや) 00042700M3二三人づれで/伊勢参(いせまい)りに/道連(ミちづれ)も/出来(でき)、段&/咄(はな)し/合(あい)、皆/同宿(どうしゆく) 00042710M4して、扨/其夜(そのよ)ハ/銘(めい)+の覚へた事、/謡(うたひ)、/浄(ぜう)るり、はうた/迄(まで) 00042720M5/芸尽(げいすく)しをやりかけるに、中で一人、なんにもいわずに居ら 00042730M6れけれバ、申、おまへもなになりとゝいふに、私ハとんと 00042740M7覚ました事、一もござりませんといへバ、いや+(三オ) 00042750M8そふでハ有まい。ひらに/何(なに)なりとゝいへば、さやうならバ 00042760M9/足角力(あしすまふ)でもとりませうかといへば、是ハ/気(き)がかわつてよい 00042770M10と、/我(われ)も+と/足角力(あしすまふ)とれど、いつこう叶わぬ+と/言(いふ)。 00042780M11いかさま、足角力といゝなさるはづじや。とんと叶ませぬ。 00042790M12いつたいマア、あなたの御/商売(せうばい)ハ/何(なん)で厶り升と/問(と)へバ、/言(いゝ) 00042800M13にくそふに、ハイ。/桶(おけ)の/輪屋(わや)で厶り升 00042810¥N3¥J 00042820¥Xつれ※ 00042830M16/田舎(いなか)の人、大坂にてまりをひろい/持(もち)かへり、(三ウ)色+ 00042840M17/評定(ひやうでう)しけれども、/知(し)りたる物壱人もなし。庄屋/殿(どの)へもつ 00042850M18て行たづねけれハ、庄屋どのもしらず。されどもさすがに 00042860M19村のたばねもする程あつて、しばらく/思案(しあん)して、/奥(おく)の/間(ま)へ 00042870M20/行(ゆき)、本をあまたかゝへ/出(いで)、くりかへし+とふ+/考(かんがへ)/出(だ) 00042880¥P134 00042890¥G(五ウ・六オ) 00042900M1し、しれたぞ+。是ハむかしの/柳(やなき)の/実(ミ)じやといへバ、ハ 00042910M2ヽア、わたくしどもハ、/白馬(しろむま)の/卵(たまご)かと/存(ぞんじ)ました 00042920¥N4¥J 00042930¥X/関寺(せきでら)小町(四オ) 00042940M5おさよさん。おまへの所へ見へる/尼御(あまご)さんハ、うつくしい 00042950M6きりやう。あのおかたに/髪(かミ)があつたら、/世界(せかい)の男ハミなふ 00042960M7るいつくであろふな。Sあの尼さんハ大てい/罪(つミ)の/深(ふか)いおか 00042970M8たじやないぞへ。あのきりやうで、/是迄(これまで)/坊(ぼん)さんを三人/迄(まで)こ 00042980M9ろしてゞあつたわいナ△Sムヽ、そんなら/丙午(ひのへむま)のとしかゐ 00042990M10な。イヽヱ、きのへ/子(ね)じや 00043000¥N5¥J 00043010¥X/迷(まよひ)ちがひ 00043020M13/息子(むすこ)/店先(ミせさき)で、きけがしの/自慢(じまん)/浄瑠璃(せうるり)。(四ウ)ばさまハ/看経(かんきん) 00043030M14しい+、これ/兄(あに)や。/精霊(せうれう)さまの/送火(おくりび)、たいてたも。/息子(むすこ) 00043040M15おくり火を/焚(たき)+、/好(すき)の/浄(ぜう)るり。五年十年おくれうとも、 00043050M16かならず+/死(し)イ/出(で)の山。ばさま、/珠数(じゆず)もんで、南無あミ 00043060M17だ++。/息子(むすこ)、/三途(さんづ)の/川(かハ)の川ばたで/待(まつ)ていてくださん 00043070M18せと。ばさま、びつくりして、いへ+、かならず/待(まつ)て下 00043080M19さり升な 00043090¥P135 00043100¥N6¥J 00043110¥X/気(き)ハこゝろ 00043120L3こりや長吉よ。御/神酒(ミき)も御めしも上る(五オ)(五ウ・六オ挿絵) 00043130L4なら、/火(ひ)を/打(うち)かけいよ。Sはい+、あのおりん殿。此火 00043140L5を打かけると、どうなるぞいな△S夫かい。しれた事。/物= 00043150L6事(もの=ごと)をなんでもきよめる。むさゐ事のなゐやうにしたものじ 00043160L7やわいの。内かたの/旦那(だんな)さんハ、なをきれいずきじやよつ 00043170L8てといへバ、Sフン、夫でじや。お/家(へ)さんと旦那さんとの 00043180L9/枕(まくら)もとに、/毎晩(まいばん)火打が/有(ある)と思ふた 00043190¥N7¥J 00043200¥X壱本立 00043210L12旦那、/妾宅(せうたく)へ/丁稚(でつち)をつれて/通(かよ)ひ、其まゝ/座(ざ)(六ウ)/敷(しき)へ/通(とほ)り、 00043220L13こしもと、はしたハ、とさん/盃(さかづき)/持(もつ)て/出(いで)、さかなもあまた 00043230L14/持出(もちいづ)る。/下女(げしよ)ハこゝろへ、ヲヽ長吉とん。/大義(たいぎ)+。けふ 00043240L15ハことのふひへるのう。旦那さんの御かへりハまだ+程 00043250L16がしれぬ。マア+こゝへ来て、こたつへあたりといふ/侭(まゝ)、 00043260L17/釜(かま)の下の火おきかきに二三ばい、ひつすくゐ入けれバ、こ 00043270L18れハ/忝(かたじけな)いと、長吉、/其侭(そのまゝ)こたつ引まくり、/是(これ)ハゑらゐ/火(ひ) 00043280L19じや。こりややつばりおれがんかへ(七オ) 00043290¥N8¥J 00043300¥X/朧月(おほろつき) 00043310M3/取(とり)つきのけいこや、七八人の/連中(れんぢう)にて/初会(しよくわい)/興行(こうぎやう)/仕(し)けるが、 00043320M4/露(つゆ)はらいより/段&(だん※)かたりけるうちに、/三勝(さんかつ)の六つ目、たと 00043330M5へていはゞ/深山木(ミやまぎ)といふ/所(ところ)にて、/大(おゝき)に火を出しけれバ、/聞= 00043340M6人(きゝ=て)どもハ、おいてくれいよ。おもしろないぞよ。/何(なん)じやや 00043350M7ら/今夜(こんや)の/浄(ぜう)るりハ、/夕(ゆう)べむしたさつま/芋(いも)見るやうなといへ 00043360M8ば、そばに/居(い)る/人(ひと)が、そりや、/もむ((ママ))ないと/言(いふ)/事(こと)かと/問(と)へば、 00043370M9Sイヤ+、どれも(七ウ)※ほつこりせぬ 00043380¥N9¥J 00043390¥X/荷付馬(につけむま) 00043400M12/田舎(いなか)の/人(ひと)、/始(はじめ)て大坂へのぼり、/天神(てんじん)さまの/祭礼(さいれい)/拝(おがミ)たいと思 00043410M13ひ、/天神橋(てんじんばし)へ/来(き)かゝり、/往来(おうらい)の人に/尋(たづね)けれバ、まだ/大分(だいぶん)/刻= 00043420M14限(こく=げん)が/早(はや)いとのこと。夫より/橋台(はしだい)の/煮売(にうり)屋へは/入(いり)、なんぞ/吸= 00043430M15物(すい=もの)ハ御座らぬかといへバ、/只今(たゞいま)/売(うり)きらせましたが、御/望(のぞミ)な 00043440M16ら、つゐ/焚(たい)てあげませう。マア壱ぶく御上りなされて、西 00043450M17の(八オ)方でも見はらしなされ。/追付(おつゝけ)しら玉をバたき升と 00043460M18いへば、/田舎人(いなかひと)/聞(きい)て、手まへハしら玉ハきらいでござると 00043470M19いふ。/亭主(ていしゆ)、いや/申(もうし)、/白玉(しらたま)はかりじや厶り升ぬ。らんちう 00043480M20もたき升ぞへといふに、田舎もの、にがりきつた顔をして、 00043490¥P136 00043500¥G(十ウ・十一オ) 00043510M1手まへハ/金魚(きんきよ)をたべた事ハござらぬてや 00043520¥N10¥J 00043530¥X/商売(しやうばい)かた/気(ぎ) 00043540M4米屋の子、/両替(りやうがへ)屋の/子(こ)、/干物(かんぶつ)屋の子、八百やの子、正月に 00043550M5より合て/遊居(あそびゐ)る。中にも米(八ウ)屋の子が/言(いふ)。/是(これ)から一文 00043560M6づゝで、だいがらふもか。干物屋の子、いや+、そんな 00043570M7事ハはつとじや。こちにつぶが有。あな一せうかといふ。 00043580M8八百やの子ハ、こちに/道中双六(どうちうすごろく)が有。いつちおもしろいが 00043590M9なといふ。両がへ屋の子、いや+、そんな事より、ひま 00043600M10わしならせう 00043610¥N11¥J 00043620¥X/太夫落(たゆふおち) 00043630M13/近年(きんねん)/雷中間(かミなりなかま)/行義(ぎやうぎ)くずれ、/不順(ふじゆん)になつて、/夏(なつ)むき/夕立(ゆふだち)の/時= 00043640M14分(し=ぶん)ハ/鳴(な)らず、/冬(ふゆ)/度&(たび+)(九オ)/鳴(なり)わめく/事(こと)、/甚(はなはだ)不/埒(らち)也。/何(いづ)れも 00043650M15/言合(いゝあハ)して/行(ぎやう)義を/定(さた)めたがよかろふと、/則(すなハち)天/竺(ぢく)の四日市に 00043660M16おゐて/参会(さんくわい)有。八万四千のかミなりども/寄集(よりあつまつ)て、のめや 00043670M17うたへと、めれんに成てさわぐ。中にも五郎太夫といふ/雷(かミなり)、 00043680M18むすこの五郎一をつれて出、/扨(さて)/何(いづ)れもことしから此/忰(せがれ)をつ 00043690M19れてあるく/積(つもり)で、大ぶんに/芸(げい)も/仕(し)こんで置ました。さかな 00043700M20に何ぞ一曲させませう。/夫(それ)ハ/一興(いつけう)。さあ+五郎ぼ。(九 00043710¥P137 00043720L1ウ)/所望(しよもう)じや+。はつと五郎一/立上(たちあが)り、/先(まづ)/最初(さいしよ)/曲(きよく)大/鼓(こ)/色(いろ) 00043730L2+と/打分(うちわけ)る。其/次(つぎ)に/稲妻(いなつま)の/曲(きよく)、/両(りやう)の/袖(そで)よりピカリ+と 00043740L3ひらめかし、/呉竹(くれたけ)あるいハ布こらしやら、しばらく/拍子(ひやうし)ど 00043750L4り、/秘術(ひじゆつ)を/尽(つく)して見せけれバ、/座中(ざちう)大に/興(けう)をもよほし、よ 00043760L5ふ+けつこう+。これおやじ、もふ上にハおかれぬぞ 00043770L6や 00043780¥N12¥J 00043790¥X/得手勝手(ゑてかつて) 00043800L9/念仏無間禅天魔真言亡国律国賊(ねんぶつむけんせんてんましんごんほうこくりつこくぞく)と、/近(きん)(十オ)(十ウ・十一オ挿 00043810L10絵)/辺(へん)の/堅法花(かたほつけ)、/御影供講(おめいこう)の/供養(くやう)に/風呂(ふろ)をたき、/長家中(ながやぢう)を 00043820L11ふれ廻れバ、/寒空(さむそら)の/時分(じぶん)、よふまあ御たきなされましたと、 00043830L12/皆(ミな)/我一(われいち)と/入(いりて)人/待(まち)かけ/居(い)る。女房/会釈(ゑしやく)し、申ばゞさま。此次 00043840L13にお/入(いり)なされ。Sハイ、さよなら、どなたも/御前(おさき)へ入升と、 00043850L14/遠慮(ゑんりよ)もなく/着物(きもの)ぬぎ、さあ御/入(いり)なされませ。Sさよなら御 00043860L15ゆるしなされませと、ずぶ+とはいりけれバ、S申、お 00043870L16ぬるふハござりませぬか△Sいへ+、けつこうな入かげ 00043880L17んで(十一ウ)厶り升と、/首(くび)すじ迄つかつて、やれありがた 00043890L18や+、/南無(なむ)あミだぶつ 00043900¥N13¥J 00043910¥X弐匁つなぎ 00043920M1/遠国(をんごく)がたの/武士(ぶし)、/今宮(いまミや)の十日/戎(ゑびす)にまいり、おさだまりの/売= 00043930M2物(うり=もの)かわんと、/直段(ねだん)ハいくらだといへバ、どうれとつても壱 00043940M3〆じや。/何(なん)じや。/遠国者(をんごくもの)とあなどつて、壱文にも/高(たか)いもの 00043950M4を壱〆じやとハ、びやくらい、/了簡(りやうけん)ならないと、/刀(かたな)の/柄(つか)に 00043960M5手をかくれバ、/商人(あきんど)おどろき、申+、/今日(こんにち)ハ(十二オ)/戎(ゑびす) 00043970M6さまのたからものを/売(うり)ます日で、なんでも壱文のものハ壱 00043980M7〆と申ます。そこが/福神(ふくじん)の御/庭(にハ)ゆへ、/宝物(たからもの)にもつたい/付(つけ)て 00043990M8申ますので、/一統(いつとう)/今日(こんにち)の/商人(あきんど)のいゝならわしで御ざり升と 00044000M9いゝわけすれバ、やう+/納得(なつとく)して、しからバ/了簡(りやうけん)すべい 00044010M10と/買物(かいもの)をとゝのへて、/夫(それ)より/御本社(ごほんしや)へ/参(まい)り、/紙(かミ)に/銭(ぜに)をつゝ 00044020M11ミ/高声(こうぜう)に、十二〆 00044030¥N14¥J 00044040¥X/我(われ)かおれか(十二ウ) 00044050M14/喜兵(きひやう)。/今度(こんど)の/祝義(しうぎ)、/貴(き)さまとおれとして、/南鐐(なんれう)/壱片(いつぺん)やらざ 00044060M15なるまいの。/何(なん)のいの。そないせいでもよいわひ。/夫(それ)より 00044070M16ツイ、/弐朱(にしゆ)一本やつておけやい 00044080¥Y1新噺庚申講三終(十三オ) 00044090¥P138 00044100¥Y1新噺庚申講四 00044110L3△△目次 00044120L5/生姜酒(せうがさけ)△△△△△△ふねふな 00044130L6/今(いま)/薄雪(うすゆき)△△△△△△/抓(つかミ)どり 00044140L7きぬ※△△△△△さいたら/畠(はたけ) 00044150L8/大黒舞(たいこくまい)△△△△△△/職人気(しよくにんき) 00044160L9/始末(しまつ)/孔明(こうめい)△△△△△/金花(こがねはな)/咲(さく) 00044170L10/鰒(ふぐ)/喰(く)ふた/夜(よ)△△△△/南朝味方(なんてうミかた)(一オ) 00044180¥T1新噺庚申講四 00044190¥N1¥J 00044200¥X/生姜酒(せうがさけ) 00044210M5/急(きう)に/逢(あい)たいと/度&(たび+)の/文(ふミ)、/何事(なにごと)やらんと、/中磯方(なかいそかた)/迄(まで)かけ行バ、 00044220M6/早(さつ)速/出合(でおふ)て、さあ/急(きう)に/思案(しあん)しておくれ。今の/二(りやん)が/請出(うけだ)すと 00044230M7いふて/相談(そうたん)をしかけてゐるわいなあ。S/夫(それ)ハやくたいじや。 00044240M8どふといふて、/今(いま)/急(きう)にハどふも△Sさあ/出来(でき)ぬと、わしや 00044250M9/覚悟(かくご)きハめているぞへ△Sはて、其/様(やう)にもむ事ハない。/急(きう) 00044260M10につもりをすると、きつと(二オ)/受合(うけあふ)てハもどりながら、 00044270M11五十両といふ金の才/覚(かく)に/行(ゆき)つまり、ふつとおもひ/付(つい)て、今 00044280M12からすぐに、さよの中山へ/行(いこ)ふか。いや+、/夫(それ)でハ/日(ひ)が 00044290M13/延(のび)る。アヽとふせふなあ。ヲヽ/夫(それ)よ、あの/権兵衛(ごんへい)といふ人 00044300M14ハ、/日比(ひごろ)たのもしうするねんごろ/合(あい)。ことに/金(かね)のたくさん 00044310M15な男。あの人を/頼(たのん)で見よふ。そふじや+と、夫より/一(いつ)さ 00044320M16んにかの男の/宅(たく)へ/行(ゆく)。/時(とき)に権/兵衛(べい)さん。おまへ/日比(ひころ)の/実(じつ)心 00044330M17を/見込(ミこミ)、けしからぬ/無心(むしん)が有。こんど五十両と(二ウ)いふ 00044340M18金がなけれバ、わしが/命(いのち)にかゝわる大事。何とぞ/一生(いつせう)のた 00044350M19のミじやほどに/借(かし)て下されまいかなと、/思(おも)ひこんでのたの 00044360M20ミの/様子(やうす)。なる程日比まつすぐな/貴(き)さまのこゝろ、夫がそ 00044370¥P139 00044380¥G(五ウ・六オ) 00044390M1ふいふてたのミに/来(く)るハよく+の事であろふと、/早速(さつそく)五 00044400M2十両の金をかしけれバ、ヤレ/有難(ありがた)や/忝(かたじけな)やと、/早&(そう+)/一礼(いちれい)の 00044410M3べかゑり、/天(てん)へも上るこゝちして、すぐに/南(ミなミ)へかけ出し、 00044420M4もう/宿房(しゆくぼう)へ/近付(ちかつき)しが、まてしばし、此金さへ/持(もつ)て/行(ゆけ)バ/引(ひき) 00044430M5(三オ)ぬくハいと/安(やす)いが、又こゝで此/金(かね)を/商売(せうばい)の/本銀(もとで)に/打(うち) 00044440M6こんで見たがよい/銀(ぜに)もふけの/仕(し)しだい。これも又おもしろ 00044450M7い。しかしかあいそふに、おれが/受合(うけあふ)ておいたよつて、此 00044460M8/返事(へんじ)をまつて/居(い)よふが、/命(いのち)をすてゝも/二(ざぶ)のほうへハいきと 00044470M9むないといゝおつた。やつはりないものにしていこふか、 00044480M10いや+、/商売(しやうばい)の方へ/入(いれ)たら、どんな/出世(しゆつせ)に/成(なる)まいものて 00044490M11もなし。よしにせうか、/行(ゆか)ふか、どちらへしても、アヽ金 00044500M12がおしゐナア(三ウ) 00044510¥N2¥J 00044520¥Xふねふな 00044530M15/節季(せつき)/前(まへ)の/事(こと)なれバ、/隣(となり)の/内義(ないき)/髪結(かミゆふ)て/出(で)らるゝを、ヲヽおの 00044540M16ぶさん。/髪(かミ)いゝなさつたな。ハイ。/髪(かミ)ハ/出来(でき)たが、かねが 00044550M17たらぬよつて、かりにいかねバならぬわいなといへバ、お 00044560M18はぐろの/鉄漿(かね)ととりちがへ、そんならわたしが所にも/少&(せう+) 00044570M19あるよつて、/遠慮(ゑんりよ)ハない事。たくさんに御つかいなされと 00044580M20いへバ、是ハ+、さよならおかしなさるかとはいる。 00044590¥P140 00044600L1(四オ)さあ+おやすゐ事。むかふの/壷(つぼ)になんぼなとごさ 00044610L2ります。フウ、そしておまへさんのハ、ミな大かた小玉で 00044620L3ござりませふなあ。いへ+、ぜうせん玉で 00044630¥N3¥J 00044640¥X/今(いま)/薄雪(うすゆき) 00044650L6/京(きやう)/三条(さんせう)/小鍛冶(こかじ)/宗近(むねちか)の所へ、大坂の/一家(いつけ)より見事なる/大刀= 00044660L7魚(たち=うを)/到来(とうらい)しけれバ、これかゝ、見や。此まあ見事な/大刀魚(たちうを)、 00044670L8むざ※内で/喰(くを)ふより、何ぞ+と/思(おもふ)ていた。/幸(さいわい)/西(にし)の/洞= 00044680L9院(と=い)(四ウ)の/医者殿(いしやどの)へやろかい。いかさま、よふ厶り升ふと、 00044690L10/紙(かミ)のはしに三/条(てう)/小鍛冶(こかじ)/宗近(むねちか)とかいて、/大刀魚(たちうを)に/張(はり)付、/肴篭(さかなかご) 00044700L11に/風呂敷(ふろしき)かけ、/丁稚(でつち)を/呼(よん)で、/西(にし)の/洞院(とい)の/医者殿(いしやどの)へ/持(もつ)て/行(ゆけ)と 00044710L12/口上(こうてう)/言付(いゝつけ)/遣(つかハ)しける。/丁稚(でつち)ハれいのでうだんに、二三丁/行(ゆく)と、 00044720L13天/狗風(ぐかぜ)にふきまくられ、/風呂敷(ふろしき)もかごもすでに吹ちるを、 00044730L14どうやらこふやら/肴(さかな)とかごとハ手にのこり、/風呂敷(ふろしき)ハふき 00044740L15ちり、/書付(かきつけ)も見へず。/南無三(なむさん)、/書付(かきつけ)がないとわ(五オ)(五 00044750L16ウ・六オ挿絵)るかろふか、あゝまゝよ。無/銘(めい)でやつてこま 00044760L17そ 00044770¥N4¥J 00044780¥Xつかミどり 00044790L20/田舎(いなか)の/欲太郎(よくたろう)、/噂(うハさ)に/聞(きい)て大坂といふ/所(ところ)ハ/自由(じゆう)な所じや。/今(いま) 00044800M1の/世(よ)にも/無間(むけん)の/鐘(かね)をこしらゆる所が有げなと、わざ+と 00044810M2/登(のほつ)て/聞合(きゝあハ)せしに、/新道(しんミち)の/辺(ほとり)にて、/漸(やう+)たづねあたり、/店(ミせ)に/立= 00044820M3寄(たち=より)、/無間(むけん)の/鐘(かね)/所望(しよもう)のよし/述(のべ)らる。手代立いで、御/望(のぞミ)/次第(しだい)/出= 00044830M4来(で=き)まする。/只今(たゞいま)/出来合(できあふ)た/鐘(かね)ハ三百両/出(で)ます/鐘(かね)で厶り升。 00044840M5Sフヽ、/夫(それ)をちよと(六ウ)見たい物じやと、かの/鐘(かね)をとく 00044850M6と/改(あらため)、これで何ほどに付ます。百五十両で厶り升。しから 00044860M7バ/是(これ)をもとめ升う。/大義(たいぎ)ながら/宿迄(やどまで)/持(もた)せてくだされまひか。 00044870M8/心得(こゝろへ)ました。しからバ/少&(せう+)/手附(てづけ)の/鐘(かね)を。/成程(なるほど)と/紙入(かミいれ)より/弐= 00044880M9朱(に=しゆ)/一片(いつへん)/出(だ)して/渡(わた)し、何と、ちよつと/撞(つい)て見ても大事あるま 00044890M10ひか。/随分(ずいぶん)/御勝手(ごかつて)/次第(しだい)と、男/共(ども)にさし/荷(にな)ハせ、サア、此し 00044900M11ゆもくで/撞(つい)て御らふじ。/心得(こゝろへ)たりと/一(ひと)つきつけバ、五ヲン 00044910M12/匁(め)ヱ引五分+++。(七オ)はて、よくしたものじや。 00044920M13もう大かた/手附(てづけ)だけハ取もどした 00044930¥N5¥J 00044940¥Xきぬ※ 00044950M16何とマア/寒山寺(かんざんじ)の/鐘(かね)ハ、三里四方へ/聞(きこ)へるといふが、/名高(なたか) 00044960M17ひ/鐘(かね)じやナア。されバ+、あの/鐘(かね)ハ/黄金(おうごん)がまぜてあると 00044970M18いふ事しやが、/音(おと)にきこへた/名鐘(めいかね)じや。サアその/代(かハり)にハ、 00044980M19よふ人ににくまれる 00044990¥P141 00045000¥N6¥J 00045010¥Xさいたら/畠(はたけ)(七ウ) 00045020L3/去富家(さるふか)の/主人(しゆじん)、/扨(さて)/世間(せけん)に/用水桶(やうすいおけ)もさま※/出来(でき)、てしまあ 00045030L4るひハほりこミ、しつくい又ハ/楠(くす)の/箱船(はこふね)、此/外(ほか)いろ+/有= 00045040L5故(ある=ゆへ)、/此方(こち)の/用水桶(やうすいおけ)もとりかへ、/類(るい)のない/水溜(ミづため)に/仕(し)たいとお 00045050L6もひ、/先(まづ)/新道(しんミち)の/鋳物屋(いものや)へ/行(ゆき)、/扨(さて)/用水桶(やうすいおけ)をあつらへに/来(き)たが、 00045060L7/直段(ねだん)にハいとひハない。めづらしい/類(るい)のないのにしたいが、 00045070L8まあ/赤銅(しやくどう)にして、高さ五尺/斗(ばかり)、/幅(はゞ)四尺/余(あまり)にして、/銀(ぎん)にて/象= 00045080L9眼(ぞう=がん)の/唐草(からくさ)を/入(いれ)、/向(むこ)ふへ/金(かね)にて/用水(やうすい)と言/文(も)(八オ)/字(じ)を/篆書(てんしよ)に 00045090L10/鋳(い)こミ、うき/上(あげ)にして、/扨(さて)/両方(りやうはう)へ/鉄(てつ)のくわんを打てほしい 00045100L11が、どう/有(あろ)うなといへバ、/鋳物屋(いものや)いふ。/成程(なるほど)かしこまり升 00045110L12たが、其まあ/鉄(てつ)のくわんハ/何(なん)の/為(ため)で厶ります。Sフウ、/夫(それ) 00045120L13ハもし/近火(きんくわ)の/時(とき)、/其(その)くわんに/棒(ぼう)を/通(とほ)し、/大勢(おゝぜい)かゝつて、/壱= 00045130L14番(いち=ばん)に/持(もつ)て/迯(にげ)る 00045140¥N7¥J 00045150¥X/大黒舞(だいこくまい) 00045160L17/大和(やまと)のへぐり/谷(たに)から、ほつくり+/出(で)て/来(き)て、玉つくりに 00045170L18/世帯(せたい)して、わづかの/元銀(もとで)にて、(八ウ)がつくりそつくりし 00045180L19て、/節季(せつき)ハいつてもぎつくり+していたが、ちつくりひ 00045190L20やうしが/直(なをつ)てくると、ひよつくり+/金(かね)もうけができ、/今(いま) 00045200M1ハむかしにひつくり/返(かへ)して、すつくりと/大金(おゝかね)をもち、とつ 00045210M2くりとしあんして、しつくりとしづまり、ゆつくりとした 00045220M3/身上(しんせう)になつて、さつくりとよい正月、こたつにぬつくりね 00045230M4ころんでいる所へ、/門口(かどぐち)から、でつくりとした男が四五人 00045240M5つゝくりと/立(たつ)。びつくりして(九オ)むつくりと/起(おき)かへり見 00045250M6れバ、ふつくり/御繁昌(ごはんせう) 00045260¥N8¥J 00045270¥X/職人気(しよくにんぎ) 00045280M9/相応(そうおう)にくらしける人、うつくしき/娘(むすめ)/壱人(ひとり)/持(もち)、其あてやかさ。 00045290M10/楊貴妃(やうきひ)、/西施(せいし)ハ見ぬもろこしの事なれバしらず、衣/通姫(ほりひめ)も 00045300M11/小野(おの)ゝ/小町(こまち)も/中&(なか+)及まじとの/評判(ひやうばん)。/諸方(しよほう)より/所望(しよもう)せられて 00045310M12も、おもハしい事もなかりしが、有時/分(ぶん)に/過(すぎ)たる所よりも 00045320M13らひかけられ、然らバいつをと、天/赦日(しやにち)をゑらミ、/両親(りやうしん)も 00045330M14/嬉(うれ)しく、(九ウ)こしらへも/一(ひと)しほはり/込(こミ)、けふ/婚礼(こんれい)の/日(ひ)に 00045340M15なれバ、/早朝(そうてう)よりの/身(ミ)こしらへ、/十分(ぢうふん)に/作(つく)りすまし、/送(おく)り 00045350M16の/乗物(のりもの)/舁(かき)すゆれバ、とゝさま。/参(まい)りますといふしとやかさ、 00045360M17/日比(ひごろ)に/倍(ばい)してうつくしさ。/更(さら)に/我子(わがこ)とおもわれぬ/出立栄(でたちばへ)。 00045370M18ちよつと立てミや。ちと/歩行(あるい)てミや。そちらむいてミや。 00045380M19いやはや/望人(のぞミて)の/多(おゝい)のも/尤(もつとも)。アヽ/細工(さいく)/貧乏(びんほう)人だからじやナア 00045390M20(十オ)(十ウ・十一オ挿絵) 00045400¥P142 00045410¥G(十ウ・十一オ) 00045420¥N9¥J 00045430¥X/始末(しまつ)/孔明(こうめい) 00045440M3/道頓堀(どうとんほり)いろは/茶屋(ちやゝ)の/亭主(ていしゆ)、/大晦日(おゝつもごり)前日、うつとりして居る 00045450M4所へ、/牽頭(たいこ)の音八/来(きた)り、コリヤ旦那。なんとなされた。さ 00045460M5れバ※、/此節季(このせつき)ハ/不計(はからず)/大敗軍(おゝはいぐん)。よせ/手(て)の/大軍(たいぐん)/勢(いきほひ)つよく、 00045470M6/我本陣迄(わがほんぢんまで)/切入(きりいら)ん/事(こと)十が九。さすれバ/落城(らくぜう)/近(ちかき)に/有(あり)。もはや/謀= 00045480M7計(ぼう=けい)の/種(たね)/尽(つき)たり。/但(たゞ)し/足下(そつか)よき/計略(けいりやく)あらバ/聞(きか)まほしと/有(あれ)バ、 00045490M8音八/完尓(につこ)と/笑(わらい)、/愚(おろか)+、/一旦(いつたん)の/勝敗(せうはい)/驚(おどろく)に(十一ウ)あらず。 00045500M9/伝聞(つたへきく)、/諸葛(しよかつ)/孔明(こうめい)、/司馬(しば)/仲達(ちうだつ)に/囲(かこま)れ、/既(すで)に/事(こと)/急(きう)に/及(および)しに、/孔= 00045510M10明(こう=めい)さハがず、/矢倉(やぐら)の/上(うへ)にて/香(こう)を/焼(たき)、/琴(こと)を/弾(ひい)て/居(い)られしを、 00045520M11/仲達(ちうだつ)/粋(すい)がうらへ/廻(まハ)り、/若(もし)/謀計(ぼうけい)やあらんかと、/大軍(たいぐん)/忽(たちまち)/囲(かこミ)を 00045530M12/解(とく)。/是(これ)をもつて見る時ハ、/明日(めうにち)の/懸乞(かけこひ)ハ/僅(わづか)の/小勢(こぜい)、/何条(なんでう)/恐(おそ) 00045540M13るべからずと、いさましくぞかたりける。/亭主(ていしゆ)/喜悦(きゑつ)/斜(なゝめ)なら 00045550M14ず、/天晴(あつはれ)/謀計(ぼうけい)/大先生(だいせんせい)、/謀(はかりこと)ハ/密(ミつ)なるべしと、/其夜(そのよ)こて+ 00045560M15/用意(やうい)をなし、(十二オ)/三雲(ミくも)屋で/衣裳(いせう)をかり、さも/仰山(ぎやうさん)に出 00045570M16立て、大晦日の/昼過(ひるすぎ)から、おだれの上に/席(せき)を/設(もうけ)、/香(こう)を/焼(たき)、 00045580M17/琴(こと)をならし、/悠&(いう+)とかまへしを、/往来(おうらい)の/懸乞共(かけこひども)、/雲霞(うんか)のご 00045590M18とく/集(あつま)りて、ハヽア、ゑらいめづらしい/釣看板(つりかんばん)じやナア 00045600¥N10¥J 00045610¥X金花さく 00045620¥P143 00045630L1/稲荷山(いなりやま)の/松茸(まつたけ)と/同(おな)じ事。/我物(わがもの)で/我自由(わがじゆう)にならぬ/富家(ふか)の/息子(むすこ)、 00045640L2千両や二千両ハ/早道(はやミち)の/銭(ぜに)三文つかふよりも/安(やす)い/身上(しんせう)なれど、 00045650L3(十二ウ)/番頭(ばんとう)がしめて/合点(がてん)せねバ、/甘(あま)い/母(はゝ)がゆるして/身受(ミうけ) 00045660L4せいといわるゝ太夫へ/一分(いちぶ)が/立(たゝ)ぬと、衆+思て/過(すぐ)る月日、 00045670L5かの/番頭(ばんとう)、ふとした/病気(びやうき)ニ取あへず、たつた三日わづらふ 00045680L6てころり。/息子(むすこ)ハ/天(てん)へも/上(あが)るこゝちして、さあ+してや 00045690L7つたと、太夫へもかくとつげ、/天(てん)を/拝(はい)し/地(ち)を/拝(はい)し、かねて 00045700L8の/念願(ねんぐわん)、/時節(じせつ)/到来(とうらい)。ハヽア/悦(よろこ)バしや+、/誠(まこと)に/天道(てんとう)人を/殺(ころす) 00045710L9じやナア 00045720¥N11¥J 00045730¥X/鰒(ふぐ)/喰(く)ふた夜(十三オ) 00045740L12/大黒(だいこく)が/言(いふ)。/蛭子(ゑびす)三郎殿、/私(わし)ハゆふべかわつた/夢(ゆめ)を見た。マ 00045750L13アわしが/長(なが)+/煩(わづら)ふて、/大事(だいじ)に/持(もつ)て/居(い)る/槌(つち)迄/売(うつ)て/喰(く)て仕ま 00045760L14い、/其上(そのうへ)/工面(くめん)の/種(たね)も/尽(つき)て、/中間(なかま)の/六福人(ろくふくしん)をたのミ、百文づ 00045770L15ゝの/掛捨(かけすて)のたのもし仕てもらふたとおもへば、/夢(ゆめ)がさめた。 00045780L16/蛭子(ゑびす)Sほう、/夫(それ)ハ/能(よ)ひたのしミな夢じや有たな 00045790¥N12¥J 00045800¥X/南朝(なんてう)/味方(ミかた) 00045810L19ばさん。/盆(ぼん)の/礼(れい)に/来(き)やんした。五郎吉か。よふ(十三ウ)お 00045820L20じやつた。よい男になつて。そしてまあ/能(よい)かたびらじやの 00045830M1ふ。Sアイ。ミて/下(くだ)んせ。ならじや。ヲヽそふじやそふな。 00045840M2うつくしい/縞(しま)じや。そしてマア/脇差(わきざし)もよいのをさいて。 00045850M3Sアイ。ミて下んせ。これもならじや 00045860¥Y1新噺庚申講四終(十四オ) 00045870¥P144 00045880¥Y1新咄庚申講五 00045890L3△△目次 00045900L5/遊行柳(ゆぎやうやなぎ)△△△△△△うハすべり 00045910L6/胎内(たいない)くゞり△△△△こゝが/味(あじ) 00045920L7/性(せい)ハ/善(ぜん)△△△△△△/青瓢箪(あをひやうたん) 00045930L8/間(ま)に/合(あい)/小祠(ほこら)△△△△/友(とも)ぐい 00045940L9/鎌倉街道(かまくらかゐどう)△△△△△/箔(はく)すり/錦(にしき) 00045950L10/奥(おく)の/手(て)△△△△△△/初(はつ)ゆめ(一オ) 00045960¥T1新噺庚申講五 00045970¥N1¥J 00045980¥X/遊行柳(ゆぎやうやなぎ) 00045990M5/道(ミち)の/辺(べ)に/清水(しミづ)/流(なが)るゝ/柳蔭(やなぎかげ)と、/夏(なつ)の/比(ころ)/世(よ)にも/風雅(ふうが)に見ゆる/壱= 00046000M6人(ひと=り)の/旅僧(たびそう)、/柳(やなぎ)の/木蔭(こかけ)にちよろ+の/流(ながれ)あるほとりにつくば 00046010M7い、/何(なに)か/思案(しあん)/有(ある)/顔(かほ)なるを、/遥(はるか)かたへに/鍬遣(くわづかひ)して/居(い)る/百性(ひやくせう)、 00046020M8此ていを見、/何(なん)でもよしある/坊(ぼん)さまならん。もしや/遊行上= 00046030M9人(ゆぎやうせう=にん)にてもましまさバ、/一宿(いつしゆく)をもなし参らせ(二オ)ばやとお 00046040M10もふ/内(うち)、/彼僧(かのそう)ハ/跡(あと)をも/見(ミ)ずして/立行(たちゆけ)バ、なふ+、それな 00046050M11る/御僧(おんそう)と/声(こへ)かけしに、/彼僧(かのそふ)いよ+/足早(あしばや)にゆくゆへ、/合点(がてん) 00046060M12ゆかず、もと/居(い)し/所(ところ)へ/行(い)て見れバ、つんねりといわしてあ 00046070M13つた 00046080¥N2¥J 00046090¥X/表(うハ)すべり 00046100M16/北浜(きたばま)/辺(へん)の/大家(たいか)に、/若水祝(わかミづいわひ)とて、そろへの/若(わか)もの十人/斗(ばかり)/花(はな)や 00046110M17かに入こミ、/手代(てだい)四五人、はかまを/付(つけ)て出むかい、これハ 00046120M18(二ウ)+/余寒(よかん)の御いとひもなふ/能(よふ)ぞや。/花(はな)むこ/御祝(おいわひ)下さ 00046130M19れ、まづもつて/忝(かたじけ)なし。おやかたハ/今朝(こんちやう)御やしき/方(がた)へ/御= 00046140M20礼(お=れゐ)に/上(あが)られ候。しかしながら/手代(てだい)ども/御馳走(ごちそう)申やうにと申 00046150¥P145 00046160L1/残(のこ)されました。先&/御上(おあが)り下され。/御酒(ごしゆ)/一献(いつこん)進上/致(いたす)と、/大= 00046170L2切(たい=せつ)に/挨拶(あいさつ)するに、/揃(そろ)への/若者(わかもの)はり/合(あい)ぬけ、たべ付ぬ/切(きり)口上 00046180L3に、/初(はじめ)の/勢(いきほひ)どこへやら、/何(なん)とマア/皆(ミな)のもの。さしづめ/親= 00046190L4父分(おや=じふん)か/関取(せきとり)の/顔物(かほもの)(三オ)が/出(で)て、さゝへ事で/有(あろ)ふとハ/思(おもい)の 00046200L5/外(ほか)、あの様に/手代衆(てだいしゆ)のしこなし。こつちがはづかしいて、 00046210L6あいさつの仕やうがない。いかさま、/根生(ねをい)のよい/衆(しゆ)といふ 00046220L7ものハ/格別(かくべつ)じやナア。いやも、ゑらじや。ヲヽ/夫(それ)/玉(たま)じや。 00046230L8きやうといもんじやナアと、口&にほめそやせバ、/是(これ)ハ 00046240L9+御あいさつ、いたミ入。/水斗(ミづばかり)でない、きつい/油(きつい(ママ))じや 00046250¥N3¥J 00046260¥X/胎内(たいない)くゞり 00046270L12/娘(むすめ)に/聟(むこ)とつて、/何(なに)ひとつくらからぬ/老(おひ)(三ウ)/夫婦(ふうふ)、/何(なに)とぞ 00046280L13/初孫(うゐまご)見たくおもへども、/最早(もはや)六七/年(ねん)になれども、/娘(むすめ)に壱人 00046290L14の/子(こ)も/出来(でき)ず。/母(はゝ)も/余(あま)りとけしなくおもひ、/地蔵(じぞう)さまへ 00046300L15/願(ぐわん)をかけ、/何(なに)とぞ/娘(むすめ)に/子(こ)をもうけ升やふにとて、/一七日(いつしちにち)/参= 00046310L16詣(さん=けい)しけるに、いつのころより、/母(はゝ)/腹(はら)に一のかたまり/出来(でき)、 00046320L17もしも/難病(なんびやう)にてあらんかと、/娘(むすめ)の/願(ぐわん)の/外(ほか)、/我身(わがミ)の/病気(びやうき)も/平= 00046330L18愈(へい=ゆ)なし給へと/願(ねがひ)けるに、いよ+/身(ミ)おもく/成(なり)、ひそかに/医= 00046340L19者(い=しや)に/見(ミ)せけれバ、/病(びやう)(四オ)/気(き)でハなくて/懐姙(くわいにん)也と/聞(きい)て、/母(はゝ) 00046350L20ハ/大(おゝき)に/驚(おどろき)、/頓(やが)ておやじにいふにハ、何とぞ/初孫(うゐまご)見たく/思(おもい)、 00046360M1/娘(むすめ)に子をもうけ升やうにと/願(ぐわん)を/掛(かけ)しに、よい/年(とし)して/居(い)るわ 00046370M2しが/子(こ)を/孕(はらむ)といふ事ハ、なんたる/因果(いんぐわ)な事じややら。/聟(むこ)や 00046380M3/娘(むすめ)の/手前(てまへ)も/面目(めんぼく)なく、/地蔵(じぞう)さまも/何(なん)と/間違(まちがふ)て御ざるやらと、 00046390M4/涙(なミだ)こぼしてうらミたら※。/親仁(おやじ)も子の/手前(てまへ)はづかしく、 00046400M5あたまを/掻(かき)て、/其(その)マア/願懸(ぐわんかけ)た/地蔵(ぢぞう)さまハどこじやと(四ウ) 00046410M6/問(とへ)バ、ハイ。/御茶湯(おちやと)の 00046420¥N4¥J 00046430¥X/爰(こゝ)が/味(あじ) 00046440M9/嵐(あらし)小六/死後(しご)、其/芸(げい)をそのまゝ/忰(せがれ)/雛(ひな)助/相(あい)つとめけれバ、/亡父(ぼうふ) 00046450M10小六が/魂魄(こんはく)や見いれけん、/以(もつて)の/外(ほか)の/出来(でき)にて、/町(まち)中/評判(ひやうはん) 00046460M11よくつゞいて、/今年(ことし)も/一周忌(いつしうき)の/追善(ついぜん)の/芸(げい)に/相応(そうおう)の/当(あたり)をとり 00046470M12しも、/全(まつた)く/亡父(ぼうふ)の御/影(かけ)也とおもひ、/何卒(なにとぞ)/高野山(こうやさん)/納骨所(のうこつしよ)へも 00046480M13/参詣(さんけい)し、/我行末(わがゆくすへ)も/祈(いの)らんとおもひ立、(五オ)(五ウ・六オ挿絵) 00046490M14/旅(たび)の/用意(やうい)/調度(てうど)して、/高野(こうや)山へと/登(のぼ)りける。/先(まづ)/骨堂(こつどう)へ/参(まい)りし 00046500M15とき、しミ※と/拝礼(はいれい)し、/夫(それ)より/奥(おく)の/院(いん)へとこゝろざし/行(ゆく) 00046510M16/所(ところ)、折ふし/殊(こと)の/外(ほか)/咽(のど)かわき、ほとりなる渓/水(ミづ)のいさぎよく 00046520M17見ゆるに/目(め)をつけ、/一口(ひとくち)のまんとおもひしに、不/思義(しぎ)なる 00046530M18かな、/俄(にハか)に/薄(うす)どろ+にて、小六が/亡霊(ぼうれい)/顕(あらハ)れたり。やれ/父= 00046540M19上(ちゝ=うへ)か。なつかしやと/立(たち)よりけれバ、いかに/忰(せがれ)。其/方(ほう)にあた 00046550M20ゆるものあり。それ。(六ウ)/一(雛介)ハアトうけ取いたゞき見る/短= 00046560¥P146 00046570¥G(五ウ・六オ) 00046580M1冊(たん=さく)に、/一首(いつしゆ)の/哥(うた)有。わすれてもくミやしつらん/旅人(たびゝと)の/高野(たかの)ゝ 00046590M2おくの玉川の水。こりやこれ、/六玉(むたま)川の/古哥(こか)の/一首(いつしゆ)。して 00046600M3/親人(おやびと)。其こゝろハな。/一(小六)かならず、なめなよ 00046610¥N5¥J 00046620¥X/性(せい)ハ/善(ぜん) 00046630M6/申(もうし)/五兵衛(ごへい)さま。/水(ミづ)ハ/方円(ほうゑん)のうつわものに/随(したがい)、人ハ善/悪(あく)の 00046640M7/友(とも)によるといゝますが、あれハ(七オ)/何(なん)の事で/厶(ござ)り/升(ます)。/夫(それ) 00046650M8ハむかしの人の/金言(きんげん)。/先(まづ)水ハ/正直(せうじき)なものにして、/丸(まる)いもの 00046660M9に/入(いる)れバ丸うなり、/角(かく)なる/物(もの)に/入(いる)れバ/角(かく)になる。よい人で 00046670M10もわるい友によれバわるふなる。/能(よい)/水(ミづ)でも芥/柄(がら)うちこめバ 00046680M11/濁(にご)る。ミな其わりじや。フン、/夫(それ)でも/此方(こち)の/隣(となり)の/水(ミづ)くミの 00046690M12/息(むす)子、まへハ/泥坊(どろぼう)で有たが、今ハけしからぬま/子(こ)になりま 00046700M13した。あれハどうしたものじやの。/夫(それ)ハおゝかた薬のまし 00046710M14たもので(七ウ)あろ。フウ、/夫(それ)ハ/何(なに)を。S/明礬(めうばん)を 00046720¥N6¥J 00046730¥X/青瓢箪(あをびやうたん) 00046740M17八助。/何(なに)しておるぞい。Sおらハ/水(ミづ)こゝろしらないよつて、 00046750M18/溺(およい(ママ))で見よふと、浅い所でやつて見るが、とんとおよげぬ。 00046760M19あの/子供(こども)めらハ/深(ふか)い所で/水入(すいり)など/自由(しゆう)にしをるは、どうし 00046770M20たらおよげる/事(こと)だ△Sいやさ。それハ浅い/所(ところ)でけいこしめ 00046780¥P147 00046790L1さるよつて覚へぬ。ずつと/深(ふか)い所で/稽古(けいこ)するがゑゝそよ。 00046800L2(八オ)いや+、/深(ふか)い/所(ところ)へいて/沈(しづん)だらハ/術(じゆつ)ないわさ。そこ 00046810L3を/辛抱(しんぼう)して、なを/深(ふか)いところへ/行(い)てけいこしろ。/夫(それ)でハ/水(ミづ) 00046820L4をのむ。さあ高が水を/呑(のん)で/死(しぬ)る/分(ぶん)の事さ 00046830¥N7¥J 00046840¥X/間(ま)に/合(あい)/小祠(ほこら) 00046850L7/狸(たぬき)、/一人(ひとり)/息子(むすこ)に/付(つい)て、/大(おゝき)になやます。てゝ親もはなはだ/怒(いかつ) 00046860L8て、/抜身(ぬきミ)を/突付(つきつけ)、のかねバうち/切(き)ると、きつそうかへてのゝ 00046870L9しれども、/狸(たぬき)さハがず、/成(なる)ほど/退(のく)ならバのひて/進(しん)ぜませう。 00046880L10(八ウ)けれども今/退(のひ)てハ居所が厶り升ぬ。/夫故(それゆへ)/無拠(よんところなく)/付(つい)て 00046890L11/居(い)ますが、/居所(いところ)さへ御せわ下さらバ、/早速(さつそく)のきませうとい 00046900L12ふに、/成程(なるほと)/尤(もつとも)也とて、/裏(うら)に/土穴(つちあな)をこしらへかゝれバ、/狸(たぬき) 00046910L13いふにハ、/御案内(ごあんない)の/通(とほり)、わたしハ/睾丸(きんだま)ばかりでも八/畳敷(でうしき)厶 00046920L14り升れバ、中+あんな所へハはいられませぬといふにぞ、 00046930L15又+/手(て)つがひ。しからバ/隣(となり)に十/畳(でう)ばかりの/借屋(しやくや)有を/借(かつ)て 00046940L16/遣(つかハ)さんと/相談(そうだん)すれバ、八/畳敷(てうじき)に/居所(いどころ)が一/畳(でう)、/庭(にハ)が一(九オ) 00046950L17/畳(でう)、かじくろしい/物(もの)ながら、/夫(それ)に/致(いたし)ましよかい。Sそんな 00046960L18ら/幸(さいわい)、けふハ日もよし、/早(はや)/掃除(そうじ)もしてあれバはいるばかり 00046970L19と、/宿(やど)ばいりやら/家(や)わたり/粥(がゆ)やら。/扨(さて)+大に御世話さま 00046980L20と、コト+いふて/悦(よろこ)び、/時(とき)に、/迚(とて)もの事に、/今夜(こんや)/仲間内(なかまうち) 00046990M1二三人よびたふ厶り升といへバ、/貴(き)さま、よう/合点(かてん)してミ 00047000M2や。此上/仲間(なかま)壱人/呼(よん)でも、/睾丸(きんたま)ばかり/貴(き)さまとも十六/畳(でう)/居(い) 00047010M3るに、三人も/呼(よん)だらハ五十/畳(でう)ぐらいの/座敷(ざしき)でなけれバ、は 00047020M4(九ウ)いられぬぞや。イヱ+、/今晩(こんばん)/呼(よび)ますハ/嚊達(かゝたち)ばかり 00047030M5で厶り升 00047040¥N8¥J 00047050¥X/友喰(ともぐひ) 00047060M8/爰(こゝ)に/和州(わしう)/郡(こほり)山大/安(あん)寺の/三昧(さんまい)に、/春藤(しゆんどう)次郎右衛門が/仮住居(かりすまい)。 00047070M9/近辺(きんへん)の/非人(ひにん)共が、なんでもきやつハ/敵討(かたきうち)じやげなと、うす 00047080M10+/聞(きゝ)、/敵(かたき)うちならバ/定(さだめ)て/路銀(ろぎん)をたくわへて/居(い)るハ/必定(ひつぜう)。 00047090M11これをぬすミ/取(とる)べしと、弐三人/忍(しの)び入しに、治郎右衛門む 00047100M12つくと/起(おき)、何やつな(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)れバ此/小家(こや)へ 00047110M13しのびよるぞと、/例(れい)の/竹杖(たけつへ)に/仕込(しこミ)し/刀(かたな)/抜(ぬく)より/早(はや)く/切付(きりつく)る。 00047120M14こりや/叶(かな)わぬと/迯(にげ)出しなに、外にある/釜(かま)/引(ひつ)さげて、/息(いき)を/切(きつ) 00047130M15て四五丁ばかり。ヤレ++/恐(おそろ)ろしや。やう+/戻(もどり)がけ 00047140M16の/駄賃(だちん)と、/釜(かま)をミれバ/土(つち)の/釜(かま)。/南無(なむ)三。ハヽアけふハ/晦日(つもごり)。 00047150M17/闇(やミ)の/釜(かま)にハ/油断(ゆだん)がならぬ 00047160¥N9¥J 00047170¥X/鎌倉街道(かまくらかいどう) 00047180M20/鵜(う)、ほどよき/鰻(うなぎ)を見つけ、ぐつと/一(ひと)のミにする。/直(じき)に/尻(しり)へ 00047190¥P148 00047200¥G(十ウ・十一オ) 00047210M1ぬける。/又(また)/呑(のむ)。ぬける。/又(また)/呑(のむ)。(十一ウ)/鰻(うなぎ)くたびれ、もう 00047220M2大がいなら/置(おか)しやれ。/幾度(いくたび)してもおなじ事じや。/入(いれ)たりぬ 00047230M3いたり、/面白(おもしろう)もない。/鵜(う)、いやさ。/斯(こう)しているうちが/性根(せうね) 00047240M4じや 00047250¥N10¥J 00047260¥X/箔(はく)すり/錦(にしき) 00047270M7十日/戎(ゑびす)の/帰(かへ)るさ、ふと/浜(はま)/雪隠(せつゐん)へ/行(ゆき)しが、ふミいたの上に/何(なに) 00047280M8かあり。よく+みれバゑびすの/像(ぞう)也。/日(ひ)と/言(いゝ)、/参詣(さんけい)の/帰(かへ) 00047290M9るさといゝ、/誠(まこと)に/福(ふく)を/得(ゑ)たりとて/袖(そで)に/入帰(いれかへ)り、さあ(十二 00047300M10オ)/御神酒(おミき)よ/御鏡(おかゞミ)よ、/膾(なます)よ/洗米(あらいよね)よと大に/祭(まつり)、/金銀(きんぎん)/財宝(さいほう)/沢山(たくさん) 00047310M11につりよせ、あたへ給へと/祈(いの)りけれバ、/戎(ゑびす)にこ+顔にて、 00047320M12その/様(やう)に/馳走(ちそう)おしやつても、/有様(ありやう)おれハちぬはかよふ/釣(つ)ら 00047330M13んぞ 00047340¥N11¥J 00047350¥X/奥(おく)の/手(て) 00047360M16/劔術(けんじゆつ)けいこして、/一手(ひとて)/二手(ふたて)おぼゆると、めつたに人がなげ 00047370M17て見たく、/胴金入(どうがねいり)の/長(なが)ゐわきざしを/落(おと)し/差(さし)にいかつ(十二 00047380M18ウ)がましく、/夜毎(よごと)に/往来(おうらい)をかたふつてあるき、むかふか 00047390M19ら/来(く)る/人(ひと)に、わざと/行(ゆき)あたつても、/向(むか)ふハよけて/通(とほ)るを、 00047400M20/劔術(けんじゆつ)の/徳(とく)とこゝろへ、いよ+/大道(だいどう)せばしとのさばりある 00047410¥P149 00047420L1き、/町人(てうにん)ぐらいハおとなげない。/侍(さむらい)に/出合(であふ)て見たいと、う 00047430L2かゞふ/向(むかふ)より、/田舎侍(いなかさむらい)とぼ※/来(く)るを、/行違(ゆきちがひ)にばつたり/行= 00047440L3当(ゆき=あた)る。/侍(さむらい)すかさす、うで/首(くび)とつてねじあぐれバ、アイタヽ 00047450L4ヽヽ/両眼(りやうかん)ナ/叶(かない)ませぬ(十三オ) 00047460¥N12¥J 00047470¥X/初(はつ)ゆめ 00047480L7/一(いちや)夜あくれバきのふにかわる/人心(ひとこゝろ)、/何(なに)かに/付(つけ)てわつさりと 00047490L8するハ、なんとよいからくりでハないか。Sさやうで厶り 00047500L9升。此/世界(せかい)のからくりほど、よふしたものハ厶りません。 00047510L10あのまあ、ふじの山御らうじませ。たつた/一夜(いちや)に、ふじと 00047520L11/湖(ミづうミ)とが/出来(でき)たとのよ△Sされバ+、しれた事。/前(まへ)の/近= 00047530L12江(おふ=ミ)がさいくじやもの 00047540¥Y1新噺庚申講五畢(十三ウ) 00047550¥Q 00047560M3△△△△△△△△盤玉 00047570M4寛政九丁巳初冬△一九 00047580M5△△△△△△△△波中 00047590M6△庚申講蔵版△△一雄 00047600M7△△△△△△△△酒林 00047610M8△△△△△△△△清香 00047620M9△△△△△△△△慶山 00047630M10△△△△△△△△△△△(オ) 00047640¥Q 00047650M12新曲かのえ申△全五冊出来 00047660M13同△△△後篇△近刻 00047670M15△△△△△北久太郎町堺筋東 00047680M16△浪華書林△△△浅田清兵衛 00047690M17△△△△△△△△△△△(ウ) 00047700¥P150 00047710¥U噺本大系△第十三巻 00047720¥T/新話違(しんばなしちがい)なし〔内題〕 00047730¥G 00047740¥Y 00047750L16寛政九年霜月刊 00047760L17野暮天作・序 00047770L18奈何亀毛跋 00047780L19半紙本五巻五冊 00047790L20浪速△塩屋長兵衛等板 00047800¥Y 00047810M1/軽口話(かるくちはなし)は、/人(ひと)のこゝろを/種(たね)として、よろづの/落(おと)しとそなれ 00047820M2り。/世(よ)の/中(なか)にある事みな+/話(はなし)とな/梨(り)て、/見(ミ)るもの/聞(きく)もの 00047830M3につけて/作(つく)り書せるなり。/花(はな)を/売(うる)/唱的(げいこ)、/水(ミづ)にすむ/船夜発(ふなまんぢう)、 00047840M4いつれか/話(はなし)とならざるはなし。/酒(さけ)/肴(さかな)に/物(もの)入すくて、/雨(あめ)の 00047850M5(序1オ)ふる/夜(よ)、/目(め)の/見(み)へぬ/法師(ほうし)をも/面白(おもしろ)しとおもはせ、 00047860M6/男(おとこ)/女(おんな)の/媒共(なかだちとも)なり、/猛(たけ)き/武士(ものゝふ)の/詰番(つめばん)/供待(ともまち)に、/精(せい)のつきさ 00047870M7るハ/話(はなし)/也(なり)けり。/祖父(ぢい)は山への/昔話(むかしはなし)よりつたハりて、いま 00047880M8た/落(おと)しもさだかならさりけるを、いつの/頃(ころ)よりか、/鄙人(いなかひと)の 00047890M9/麁相(そさう)、/早合点(はやがてん)の/間違(まちがひ)、うき世の/穴(あな)の/秀(ち)(序1ウ)/句(ぐち)、おの 00047900M10+/落(おと)しとなりて、/当世(とうせい)/大通(すいがり)の/行過話(ゆきすぎはなし)/迄(まて)も、/世(よ)の/弄(もてあそ)びと 00047910M11そなりけらし。/露(つゆ)の/五(ご)郎兵衛は/彦八(ひこはち)か/上(かミ)にたゝん/事(こと)かたく、 00047920M12/彦八(ひこはち)は/五(こ)郎兵衛か/下(しも)にたゝむ/事(こと)かたかりける/話上手(はなししやうず)とか 00047930M13や。/我(われ)この/頃(ころ)/作(さく)せる/話(はなし)ひとつふたつ/書集(かきあつ)めしか、いつか/五= 00047940M14巻(いつ=まき)となりける/故(ゆへ)、/新話違(しんはなしちがひ)なしと(序2オ)/題号(だいがう)して、/世(よ)に 00047950M15/弘(ひろ)ふせんと/寿(す)る。されは/話(はなし)の/種(たね)ハ/青柳(あをやぎ)の/糸(いと)たへす、/松(まつ)の/葉(は) 00047960M16のちりうせずして、/正木(まさき)のかつらなが+しき/間話(むだこと)をはふ 00047970M17き、いにしへを/捨(すて)、/今(いま)の/新(あたら)しきをこひさらめかも 00047980M18△△△△△△△△山東京伝門人△△△G 00047990M19△△△△△△△△△△△洛東野暮天 00048000M20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序2ウ) 00048010¥P151 00048020¥Y/新話違(しんはなしちがひ)なし/目録(もくろく) 00048030L3△△第一 00048040L5/文屋(ぶんや)/康秀(やすひで)△△△△△△/都(ミやこ)の/錦(にしき) 00048050L6/登龍(のぼりれう)△△△△△△△/流光斎(りうくわうさい) 00048060L7/仏方便(ほとけほうべん)△△△△△△△かたたがひ 00048070L8/空腕(そらうで)△△△△△△△一/本駄右衛門(ほんだへもん) 00048080L9/長羽降(ながばをり)△△△△△△△ 00048090L10△△第二△(目録一オ) 00048100L12/夢(ゆめ)の/浮橋(うきはし)△△△△△△/外法眼(とほうげん) 00048110L13/詰(つま)り/肴(ざかな)△△△△△△△/顔吉華(かほよばな) 00048120L14/三十日限(ミそかぎり)△△△△△△/鉄拐(てつかい)/仙人(せんにん) 00048130L15/山中(やまなか)/左衛門(さへもん)△△△△△/万年草(まんねんぐさ) 00048140L16/小笠原(おがさはら)△△△△△△△ 00048150L17△△第三 00048160L19/仮名違(かなちが)ひ△△△△△△/昔(むかし)/俤(おもかげ) 00048170L20/餅(もち)の/皮(かハ)△△△△△△△/門(かど)の/切水(きりミず)(目録一ウ) 00048180M1/青江(あをい)/下坂(しもさか)△△△△△△/蛙(かいる)の/子(こ) 00048190M2/恋(こひ)の/闇(やミ)△△△△△△△/粋違(すいちが)ひ 00048200M3/里(さと)に/杖(つへ)△△△△△△△ 00048210M5△△第四 00048220M6/乗合舟(のりあひぶね)△△△△△△△/木芽(きのめ)/出(だ)し 00048230M7/拍子幕(ひやうしまく)△△△△△△△/■出(こしもとで) 00048240M8/凾谷関(かんこくくわん)△△△△△△△/宇津(うつ)の/山(やま) 00048250M9/三世相(さんぜさう)△△△△△△△/田舎(いなか)/蕉門(せうもん)(目録二オ) 00048260M10/蓮(はす)の/実(ミ)△△△△△△△/哥(うた)びらき 00048270M12△第五 00048280M13/羅紗(らしや)の/耳(ミヽ)△△△△△△/涅槃像(ねはんざう) 00048290M14/猿(さる)の/智恵(ちへ)△△△△△△/粟(あハ)の/岩起(いわおこし) 00048300M15/梅(むめ)が/枝(へ)でんぶ△△△△/空(から)ぞめき 00048310M16/痰切店(たんきりミせ)△△△△△△△/餅(もち)の/札(ふだ) 00048320M17うらはら△△△△△△/当意(とうい)/即妙(そくめやう) 00048330M20△△/目録(もくろく)/終(おハり)(目録二ウ) 00048340¥P152 00048350¥T1/新話違(しんばなしちがひ)なし/巻(まき)の一△△△△△△△△△¥A野暮天著 00048360¥N1¥J 00048370¥X/文屋(ぶんやの)/康秀(やすひで) 00048380L5/当時(とうじ)/川東(かハひがし)にて/名高(なたか)き/女郎(ぢよらう)、とかくぶら+として/病(やまひ)がちな 00048390L6りけれハ、なんぞ/願(ぐわん)でもかけし/仏神(ぶつじん)のたゝりか、またハ/誰(たれ) 00048400L7ぞのうらみにて、かくなやむ/事(こと)もしれがたしと、さつそく 00048410L8/甚太夫(じんだゆふ)のかたへゆき、/占(うらな)ハせけれバ、コレハ/当年(とうねん)あたり 00048420L9(一オ)たまひし/星(ほし)、大きにあしく、いそぎて/星祭(ほしまつり)なし/給(たま)へ 00048430L10と申せバ、/女郎(ぢよらう)そんなら/今年(ことし)、/私(わたし)があたりました/星(ほし)さまハ、 00048440L11なんといふ/星(ほし)さまでござりますと/尋(たつね)けれバ、ハテ、/黒星(くろぼし)で 00048450L12ござります 00048460¥N2¥J 00048470¥X/都(ミやこ)の/錦(にしき) 00048480L15/四条(しぢやう)の/戯場(しばい)。サア/初日(しよにち)+と/表(おもて)かた/呼(よび)こミける/所(ところ)へ、/田舎(いなか) 00048490L16もの四五/人(にん)、ナント(一ウ)/土左衛門(とざへもん)。/上(かミ)がたの/芝居(しばゐ)だそう 00048500L17な。/見(ミ)申べいか。よく申べいと、/皆&(ミな+)/切見(きりミ)の/札(ふだ)を/買(か)ふて、 00048510L18どちこミ/場(ば)に/居(すハ)りまちけるが、/初日(しよにち)のならひとて、何が 00048520L19/衣裳道具(いしやうとうく)の/都合(つごう)に/隙(ひま)どり、やゝ一/時(とき)しても、/未(いまだ)/序(じよ)の/幕(まく)も/明(あか) 00048530L20ず。やう+/脇狂言(わききやうげん)はじまりける/所(ところ)、/例(れい)のシヤデン+に 00048540M1て、/壬生狂言(ミぶきやうげん)の/花盗人(はなぬすびと)すミけれバ、/彼田舎(かのいなか)(二オ)の四五 00048550M2人、もはや一/切(きり)/果(はて)たるとこゝろえ、おの+/表(おもて)へ/出(いで)、かん 00048560M3ばんの/絵(ゑ)をためつすがめつ/見廻(ミまハ)し+、/土左衛門(どざへもん)、見さつ 00048570M4しやれ。/今(いま)の/芸(けい)ハ、/此/画看板(ゑかんばん)のうちにハ/書(かい)ておりない 00048580¥N3¥J 00048590¥X/登(のぼ)り/龍(れう) 00048600M7やんことなき/若君(わかぎミ)の、また八九才はかりなるが、お/手(て)なら 00048610M8ひのあいだ、(二ウ)/坐敷(ざしき)のうちをあちこちと、お/伽(とぎ)の/衆(しゆ)を 00048620M9つれてお/遊(あそ)びの/折(おり)から、/夕立雲(ゆふだちぐも)/出(いで)て、そら一/面(めん)にまつ/黒(くろ)に 00048630M10なりけれバ、/若君(わかぎミ)、つか+とゑん/先(さき)へ/出(いで)、/空(そら)を/見(ミ)給ひて、 00048640M11/誰(たれ)が/墨(すミ)をこぼしたやら 00048650¥N4¥J 00048660¥X/流光斎(りうくわうさい) 00048670M14/丁稚(でつち)、/医者(いしや)の/所(ところ)へ/薬料(やくりやう)もつて/行(ゆく)/道(ミち)にて、/文筥(ふばこ)の/蓋(ふた)にふと/顔(かほ) 00048680M15を/写(うつ)(三オ)し見るに、よううつるを/面白(おもしろ)くおもひ、にらん 00048690M16で見たり/笑(わら)ふて見たり、/顔(かほ)をしかめたり/舌(した)を/出(だ)したり、い 00048700M17ろ+さま※の/皃(かほ)して/行(ゆく)/所(ところ)へ、/通(とふ)りかゝる/旦那(だんな)か見て、 00048710M18ヤイ/長吉(ちやうきち)よ。/其顔(そのかほ)ハなんじや。長吉ハイ。ぼんさまがこん 00048720M19な/面(めん)/買(か)ふてくれテヽ 00048730¥P153 00048740¥N5¥J 00048750¥X/仏方便(ほとけほうべん)(三ウ) 00048760L3/大通寺(だいつうじ)といへる/寺(てら)の/和尚(おせう)、/頭巾(づきん)まぶかくかぶり、/相(あい)かたの 00048770L4/女郎(じよらう)/芸子(げいこ)などもつれて、/祇園(きおん)/下河原(しもがわら)/辺(へん)をながし/廻(まハ)り、ほど 00048780L5なく/定宿(ちやうしゆく)へ/戻(もど)り、又+/奥坐敷(おくざしき)にてさやしかけけるが、/隣(となり) 00048790L6ざしきの/襖(ふすま)の/間(あいだ)すこし/明(あ)きありて、これもたて/居(い)る/客(きやく)の/顔(かほ) 00048800L7を見れハ、かなしや/一檀家(いちだんけ)のある(四オ)(四ウ挿絵)じゆへ、 00048810¥G(四ウ) 00048820M1/大(をゝ)きに/赤面(せきめん)して、/絃婦(けいこ)の/後(うしろ)へ/身(ミ)をちゞめ、ちいさうなつて 00048830M2/居(い)るうち、/隣(となり)ざしきにもそれとさとり、そろ+ふすまを 00048840M3/明(あ)けかけるゆへ、/和尚(をしやう)、/今(いま)ハかなハじと、/扇(あふぎ)を/天窓(あたま)にかざ 00048850M4し、コレハ/大通寺(だいつうじ)の/和尚(おしやう)か/顔似(かほに)せものまね、どうであろ 00048860¥N6¥J 00048870¥Xかたたがひ(五オ) 00048880M7/祖母(ばゞ)、なんと見や。また/放蕩(のら)めが/東(ひがし)へうせおつたやら。も 00048890M8う/彼是(かれこれ)、/亥刻(よつ)じやが、またもどりおらぬ。けふハ/円山(まるやま)に/書= 00048900M9会(しよ=くわい)かあるの、イヤ、/祇園(きをん)に/能(のう)があるのと、さま※に/虚言(うそ) 00048910M10/斗(ばつか)りぬかして、/東(ひがし)へばつかりはいつておる。コリヤ/長吉(ちやうきち)よ。 00048920M11大かたおのれか/知(しつ)て/居(い)るてあらう。のらめか/往(い)て(五ウ)を 00048930M12る/青楼(ちやや)へ/往(い)て、よんで/戻(もど)れ。サア/早(はや)う/身(ミ)ごしらへして、/東(ひがし) 00048940M13へ/行(ゆき)おれと、/睡(ねむ)たがる/長吉(ちやうきち)に/言(い)ひ/付(つく)れハ、/長吉(ちやうきち)、/眼(め)をすり 00048950M14+、ナンジヤ。/息子(むすこ)が/東(ひがし)へ/行(い)くと、/東(ひがし)+とやかましい 00048960M15わ。ぬしたちも/毎日(まいにち)/西方(さいほう)へ/往(いき)たいてゝ 00048970¥N7¥J 00048980¥X/空腕(そらうで) 00048990M18/奥(おく)の/間(ま)の/侍客(さむらいぎやく)に、/中居(なかゐ)が、お/床(とこ)(六オ)とりました。お/休(やす) 00049000M19ミなされませと/言(い)へハ、侍/身(ミ)ハ/鼠(ねずミ)か/大(だい)の/禁物(きんもつ)じや。/殊(こと)にけ 00049010M20ふハ/爰(こゝ)のうちに/餅(もち)を/搗(つい)たそうな。/鼠(ねずミ)か/出(で)おらう。/身(ミ)か/坐敷(ざしき) 00049020¥P154 00049030¥G(九オ) 00049040L14へ来ぬやうにたのむといへは、中ゐ/取(とつ)ております。シタガ 00049050L15あなた、/其(その)やうにおつしやつても、/御主人(ごしゆじん)様のまへでハど 00049060L16うなされます。侍なんの+、/乱世(らんせい)の/時(とき)ハ(六ウ)/何万(なんまん)とい 00049070L17ふ/大軍(たいぐん)の/中(なか)へひとりかけ/入(いつ)て、/手(て)がらをあらハすそれが 00049080L18し、ねずミこそきらひなれ、/人間(にんげん)ハどのやうなつよいやつ 00049090L19でも、なんともないと/太平(たいへい)いふて、/女郎(ぢよらう)と/寝間(ねま)へ/入(いり)、/家内(かない) 00049100L20も/餅(もち)つきの/草臥(くたびれ)に、はや/子(ね)もすぎ/丑満(うしミつ)ごろ、/宵(よひ)より/忍(しの)び/居(い) 00049110M1たる/盗賊(とうぞく)、/時分(じぶん)ハよしと/戸棚(とたな)へかゝり、(七オ)/錠前(ぢやうまへ)こち 00049120M2+。/音(おと)に/家内(かない)ハ/眼(め)をさまし、ヤレ/盗人(ぬすびと)じや+と、/大声(おゝこへ) 00049130M3にわめくに、/盗賊(とうぞく)ハびつくりして/迯帰(にげかへ)る。おやま、/奥(おく)より 00049140M4/出(いて)て/来(き)て、お/客(きやく)さんか見へませんと/言(い)ふに、/家内(かない)/驚(おとろ)き、こ 00049150M5ゝかしこ/尋(たつぬ)れバ、/椽(ゑん)の/下(した)に/以前(いぜん)の/侍(さむらひ)かゞみ/居(い)る。/皆&(ミな+)申、 00049160M6モウぬすびとハ/迯(にげ)ました。/早(はや)うお/出(で)なされませといへバ、 00049170M7(七ウ)侍、/心(こゝろ)おちつき、/何(なに)もとられいで/目出(めで)たい+。/家= 00049180M8内(か=ない)おかしく、/宵(よひ)におつしやつた/御詞(おことば)とハ/違(ちが)ひ、ぬす人をき 00049190M9つうこわがりなされますナア。侍/夫(それ)ハ/其(その)はづ。/盗賊(とうぞく)ハ/国(くに)の 00049200M10/鼠(ねずミ)だから 00049210¥N8¥J 00049220¥X/一本駄右衛門(いつほんだゑもん) 00049230M13/去(さ)ル/富家(かねもち)の/旦那(だんな)、けしからぬ/浄(じやう)るり/好(ずき)にて、/方(ほう)+にて/語(かた) 00049240M14られけれ/共(とも)、(八オ)/一向(いつかう)に/聞(きゝて)人なけれバ、/金(かね)にハ/事(こと)ハかゝ 00049250M15ねど/聞人(きゝて)に/事(こと)をかいて、/色(いろ)+/工夫(くふう)して居らるゝを、お/出= 00049260M16入(て=いり)の/医者(いしや)/山井(やまい)/養仙(ようせん)の/思(おも)ひ/付(つき)にて、/来(きた)る/何(いつ)日に/浄留理(じやうるり)。/聞人(きゝて) 00049270M17壱人/前(まへ)に/南鐐(なんりやう)/壱片(いつへん)つゝ/遣(つかハ)すとの/廻文(くわいぶん)を/出(いだ)しけれバ、/其日(そのひ) 00049280M18になると、/何(なに)か/来(く)るほどに+、/坐敷(ざしき)、/中(なか)の/間(ま)、/台所(だいどころ)、/表(おもて)、 00049290M19/供部屋(ともへや)(八ウ)(九オ挿絵)/味噌部(ミそべ)や、二/階(かい)/迄(まて)、/聞人(きゝて)ならぬ/所(ところ) 00049300M20もなく、ウン+/言(い)ふて人の/鮓(すし)。/旦那(だんな)ハ/悦喜(ゑつき)かきりなく、 00049310¥P155 00049320L1/年来(ねんらい)の/本望(ほんまう)、/今宵(こよひ)こそ/大勢(おゝせい)に/聞(きか)すべしと、一ト/調子(てうし)/上(あ)げて 00049330L2/語(かた)らるゝ。/半過(なかバすぎ)に/表(おもて)の方、わいや+けんくわの/様子(やうす)。旦 00049340L3那、/何事(なにごと)やらんと/久三(きうざ)を/呼(よ)ひ、/表(おもて)のもやつきハなんじや。 00049350L4ハイ。/悪(わる)ひやつが来(九ウ)て/居(お)りました。モウ六つてござ 00049360L5ります。ムヽ、ソシテ/何(なん)といふぞ。ハイ。どふぞいなして 00049370L6くれテヽ 00049380¥N9¥J 00049390¥X/長羽織(ながばをり) 00049400L9/若(わか)き/友(とも)だち四五人/寄(より)こぞり、/横町(よこてう)の/太郎兵衛(たろべい)ハ/粋(すい)なれども、 00049410L10/折(おり)+の/肝積(かんしやく)にこまるし、/上(かミ)の町の/次郎兵(じろべい)へハ/気(き)ハ/丸(まる)けれ 00049420L11ども、/遅(おそ)ひ/事(こと)ばかりいふて、/土(つち)(十オ)/気(け)がとれず。またマ 00049430L12ア/裏町(うらまち)の八兵衛が、/中(なか)でも/粋(すい)であらうかい。イヤ+、八 00049440L13兵衛よりハこちの町の六兵衛の/方(ほう)が/粋(すい)であろう。八兵衛と 00049450L14ハ二三/目(もく)も/上(かミ)じや。そう/言(い)ふ/貴(き)さまがきつい/野暮(やぼ)じや。六 00049460L15兵衛よりハ八兵衛の/方(ほう)がすいが/上(かミ)しや。イヤ+、六兵 00049470L16衛の方か/上(かミ)じやとせり/合(あ)へバ、/傍(そバ)に/居(い)る/友(とも)たち、せり/合(あ)ふ 00049480L17二人を/押(おし)しづ(十ウ)め、そのやうに/角(つの)/目(め)だつ事ハない。/高(たか) 00049490L18で六兵衛と八兵衛との/粋論(すいろん)でハないかといふて居る。/表(おもて)へ 00049500L19/来(き)かゝりし/西(にし)の/岡(おか)の/小便(しやうべん)とりが小/耳(ミヽ)にはさみ、申+、/其= 00049510L20水論(その=すいろん)ハどこの川/筋(すじ)でごさります(十一オ) 00049520¥T1巻二 00049530¥N1¥J 00049540¥X/夢(ゆめ)の/浮橋(うきはし) 00049550M5さる御/大名(たいめう)、/御厠(おんかハや)へ/御出(おいで)なさるれハ、はや/御手水(おてうず)をかける 00049560M6/役人(やくにん)、/柄杓(ひしやく)をひかへ、/廊下(らうか)に/相(あひ)/待(まち)ける/所(ところ)、/殿様(とのさま)/厠(かハや)よりつか 00049570M7+と/出(いで)給ひ、お/手水(てうず)をなされず、/奥(おく)の御/居間(いま)へ/入(いり)給へバ、 00049580M8/役人(やくにん)大きに/驚(おどろ)き、いつも/厠(かハや)へ御/出(いて)なされて、お手水なされ 00049590M9ぬ/事(こと)あらじ。/今日(けふ)にかぎりお手水なされぬハ、さだめて/我= 00049600M10事(われ=こと)(一オ)/何(なん)ぞ/御意(ぎよい)にかなハぬ事もありやせん。さすれバ/後= 00049610M11日(ご=にち)の/咎(とが)め/気(き)づかわしと、/御家老職(ごからうしよく)へ此よしを申上けれバ、 00049620M12/早速(さつそく)/御家老(こかろう)、/殿様(とのさま)の/御前(ごぜん)へ/罷出(まかりいで)、/今日(こんにち)/殿様(とのさま)/午時後(ひるご)、御/厠(かハや)へ 00049630M13御入り/遊(あそば)され、御/手水(てうず)なされず候よし。/夫故(それゆへ)御手水の/役人(やくにん) 00049640M14/水木(ミづもと)/石右衛門(いしへゑもん)、もしや/殿様(とのさま)の/御意(ぎよい)にかなわぬ事もや、/某(それがし)に 00049650M15/窺(うかゞ)ひ奉りくれ候/様(やう)、相/願(ねが)ひ候ゆへ、/御窺(おんうかゞひ)(一ウ)に/罷(まかり)あが 00049660M16りたり。いかゞの/事(こと)にや、/御心置(おんこゝろおき)なく/某(それがし)へ/仰(あふせ)きけられ下さ 00049670M17りませと、/手(て)をつかへ申上らるれハ、/殿(との)さまにつこりとし 00049680M18て、イヤ、けふハ/屁(へ)/斗(ばかり)じやあつた 00049690¥P156 00049700¥N2¥J 00049710¥X/外法眼(とほうげん) 00049720L3/偖(さて)、/貴君(きくん)ハ/郭公(ほとゝぎす)きゝに御/出(いで)なされたげな。どうじや。/鳴(なき)ま 00049730L4すかナ。ハイ。/拙者(せつしや)ハ/画(ゑ)を/好(この)ミますゆへ、/何(なに)とぞ/子規(ほとゝぎす)の/生= 00049740L5写(しやう=うつし)を(二オ)/画(かき)ませうと/存(ぞんし)て/参(まい)つたが、中+早い/鳥(とり)で、い 00049750L6つかう/姿(すがた)を見せませぬゆへ、とんと/画(かけ)ませぬ。あまりの/事(こと) 00049760L7でしゆらがもえて、/筆(ふで)を/捨(すて)ましたら、お/聞(きゝ)なされ。あちら 00049770L8の/枝(ゑだ)からもこちらの/枝(ゑだ)からも、かけたか++と 00049780¥N3¥J 00049790¥Xつまり/肴(さかな) 00049800L11ある/女郎(ぢよらう)、/真夫狂(まぶぐる)ひをして、大に/金(かね)に(二ウ)つまり、/既(すで)に 00049810L12金の二三十両も/工面(くめん)せずしてハ、もはやその/男(おとこ)と/欠落(かけおち)せう 00049820L13か、また/心中(しんぢう)でもして/死(し)ナねバならぬせつパの/手(て)づめ、あ 00049830L14れこれ/馴染(なじミ)の/客(きやく)の/方(ほう)へ/無心(むしん)いふてやつて見ても、/埒(らち)の/明(あか)ぬ 00049840L15/返事(へんじ)ばかり。もはやなんとすべき/術(てたて)もなく、とほうにくれ 00049850L16て/居(い)たりしが、ふと/心(こゝろ)づきしハ、/古(いにしへ)の/梅(むめ)がへハ/小夜(さよ)の/中山(なかやま) 00049860L17へ/祈念(きねん)をかけ、(三オ)/無間(むけん)の/鐘(かね)になぞらへ、/手洗鉢(てうずばち)をたゝ 00049870L18き、三百両といふ/金(かね)を/出(いだ)せしためしあれバ、/幸(さいわ)ひ/庭(にハ)の/手洗= 00049880L19鉢(てうず=ばち)にて、/我(われ)も/無間(むけん)の/鐘(かね)をつくべしと、すぐさま小/褄(つま)かいと 00049890L20り、/奥坐敷(おくざしき)の/庭(にハ)へ/折(おり)しも/手水(てうず)ばち、イサヤ/柄杓(ひしやく)とらむとす 00049900M1れバ、/極寒(こくかん)の/厚氷(あつごほり)にて/杓(しやく)も/凍(いて)つき、中+/手(て)にとれねバ、 00049910M2ハアかなしや。モウこれで/運(うん)もしれた(三ウ) 00049920¥N4¥J 00049930¥X/顔吉花(かほよばな) 00049940M5/前(せん)の/中村(なかむら)/粂(くめ)太郎かもとに、/奥丹波(おくたんば)の/水呑百性(ミづのミびやくせう)、/年貢(ねんぐ)の/未進(ミしん) 00049950M6のため、/若衆奉公(わかしゆぼうこう)に/売(うら)れ/来(きた)りしはなたれ/息子(むすこ)、/鴨河(かもがハ)の水に 00049960M7て、/在所(ざいしよ)に/居(い)しとき/水入(すいり)せし/日焦(ひやけ)の/黒(くろ)ミをさらし、/南蛮(なんばん)き 00049970M8びの/穂先(ほさき)みるやうな/赤(あか)がしらを/匂(にほ)ひ/油(あぶら)ですき/入(い)れ、/今(いま)ハ一 00049980M9かどの/若衆(わかしゆ)ざかりに(四オ)(四ウ挿絵)なりし/時(とき)、/在所(ざいしよ)の/母= 00049990M10親(はゝ=おや)が/九死一生(きうしいつしやう)の/病(やまひ)にて、いまハの/願(ねが)ひにハ、とうぞ/京(きやう)に/居(い) 00050000M11る三太郎に/一目(ひとめ)/逢(あふ)てからしにたいとの/一言(いちごん)。やるかたなく 00050010M12/爺親(てゝおや)、すぐさま/京(きやう)へ/登(のぼ)り、/世話(せハ)せし/肝煎(きもいり)をたづね、それよ 00050020M13り/粂(くめ)太郎か/方(かた)へおもむき、しか+のよしをかたりけれバ、 00050030M14あるじ/粂(くめ)太郎ハ/世(よ)に/名(な)たかき/女形(おんながた)にて、/艶(やさ)かたなること、 00050040M15いはん(五オ)かたなく、/内(うち)に/居(い)るとても/中(なか)+/男(おとこ)のさまな 00050050M16ることハ、いさゝかもなく、/殊(こと)に手などつたなからず、/学= 00050060M17文(がく=もん)を好ミ、/風流(ふうりう)の/聞(きこ)へあるものなれバ、/母(はゝ)が/病(やま)ひときゝ、 00050070M18/何(なん)のいらへもなく、/遇(あ)ひに/行間(ゆくま)の/暇(いとま)を/遣(つかハ)し、/見舞(ミまひ)の/土産(ミやげ)も 00050080M19のハ/勿論(もちろん)、/路金(ろぎん)の/用意(やうい)まで、のこる所なく心をつけつかハ 00050090M20しけれバ、田/舎(か)/律儀(りちぎ)のかのてゝ/親(おや)、(五ウ)さても世にしん 00050100¥P157 00050110L1せつなる/奥(おく)さまと/心得(こゝろえ)、/感涙(かんるい)をながし、/只(たゞ)/何事(なにごと)もお/旦那(だんな)さ 00050120L2まへハよろしう 00050130¥N5¥J 00050140¥X/三十日切(ミそかぎり) 00050150L5/神無月(かミなづき)の/比(ころ)、/栗栖野(くるすの)といふ/所(ところ)を/過(すぎ)て、ある山ざとに/尋入(たつねい)る 00050160L6ことの/侍(はべ)りしに、/幽(かすか)なる/苔(こけ)の/細道(ほそミち)ふミわけて/来(く)る/僧(さう)あり。 00050170L7/近(ちか)よりてよくミれバ、/我(われ)久し(六オ)き/朋(とも)の/剃髪(ていはつ)せる也。/互(たか) 00050180¥G(四ウ) 00050190M1ひに/珍(めづ)らしく、いづちに/居(い)給ふとたづぬるに、かの/僧(そう)いふ 00050200M2は、/来(きた)れるミちのおくにこゝろぼそくすミなしたる/菴(いほり)あり。 00050210M3/木(こ)の/葉(は)に/埋(うも)るゝ/筧(かけひ)の/雫(しづく)ならでハ/露(つゆ)/音信(おとづ)るゝものなしと/聞(きい)て、 00050220M4カノ/男(おとこ)/左様(さやう)ならバ、/阿伽棚(あかだな)に/菊(きく)もミぢなど折ちらして/有(あら)ふ 00050230M5が。僧あるとも+。おとこさすかに/住(す)む人のあれハ(六ウ) 00050240M6なるべし。かくてもあられけるよと、あはれに見るほとに、 00050250M7かなたの/庭(にハ)に/大(おゝき)なる/柑子(かうじ)の/樹(き)が/有(あら)ふが。僧あるとも+。 00050260M8おとこ/枝(えだ)もたハヽに/生(お)ひたるが、/廻(めぐ)りに/墻(かき)きびしく/結(ゆ)ひま 00050270M9ハして/有(あら)ふが。僧あるとも+。しかしあの/木(き)ハ/家主(いへぬし)のじ 00050280M10や 00050290¥N6¥J 00050300¥X/鉄拐(てつかい)/僊人(せんにん) 00050310M13/親仁(おやじ)アヽ/息子(むすこ)めが、けふも/戻(もど)りがきつう(七オ)おそいぞや。 00050320M14/兎角(とかく)/近比(ちかごろ)ハいろ+の/啌(うそ)ついて、/出(で)おると/戻(もど)りが/遅(おそ)い。/其= 00050330M15上(その=うへ)いつでもめれんに/喰酔(くらひえう)ておるがの。はゝおや/親父(おやじ)どのゝ/云(いわ) 00050340M16しやることじやけれど、/養子(ようし)にあの/様(やう)な/実(じつ)なものハない。 00050350M17たいがいのことなら、/大目(おゝめ)に見たがよいわいの。イヤ+、 00050360M18そうでないわいの。ハテ/言(いわ)しやんなと、/互(たがい)ひに/火花(ひばな)をちら 00050370M19してせり合ふ(七ウ)て/居(い)る/所(ところ)へ、/息子(むすこ)/例(れい)のことく、/大酩酊(すだいぼう) 00050380M20にて、ぶら+もどり、なんじや+とひよろつけハ、お 00050390¥P158 00050400¥G(九オ) 00050410L14やちはらをたて、又おのれ、/酔(よう)てうせたな。/何(なに)を/喰(くろ)ふてそ 00050420L15のやうに酔おると、大きに/呵付(しかりつけ)られ、/息子(むすこ)ハ/負(まけ)おしミに、 00050430L16ドレ/喰(くらう)たもの/出(た)して/御(ご)らんに入んと、/口(くち)へ/指(ゆび)をつゝこめバ、 00050440L17はゝ、その手をおさへて、いかになさぬ中じや/迚(とて)、(八オ) 00050450L18/其義理(そのぎり)だてハよしに/仕(し)や 00050460¥N7¥J 00050470¥X/山中(やまなか)/左衛門(さへもん) 00050480M1/乳母(うば)ひとり、/店(ミせ)ばんしてゐる/所(ところ)へ、まんざいハイ。おめて 00050490M2たうござります。/徳若(とくわか)に御/万歳(まんさい)。ヲヽ、コレハ八左衛門さ 00050500M3んじやないかいナ。ヲヽ、/次郎作(じろさく)のとこのお六か。コレハ 00050510M4ひさしい。/内(うち)にもかハる/事(こと)ハない。うば/夫(それ)ハ/嬉(うれ)しうこざり 00050520M5ます。/誰(たれ)ぞ/来(き)てじやあつたら(八ウ)(九オ挿絵)/問(とを)ふとおもふ 00050530M6て/居(い)る。此お/隣(となり)に/居(い)てじやあつたおかたが不/仕合(しあわせ)で、おま 00050540M7への/方(ほう)へ/引(ひつ)こしてゆきなされたがある。/知(しつ)てかいな。まん 00050550M8ざいヲヽそりやツイこちの/筋(すじ)むかひ、/京(きやう)でハ/歴&(れき+)じやあつ 00050560M9たげなが、/今(いま)ハ/女夫(めうと)ながら/藁(わら)/打(うつ)たり/紡(いと)/績(つむい)だり、/兄(あに)の/背(せ)むし 00050570M10ハ/田(た)の/草(くさ)/取(とる)、ちんばのむす/子(こ)ハ/麦(むぎ)をふむ、/仕(し)つけぬ/事(こと)とて 00050580M11い(九ウ)た+しい。うバイヤ、/夫(それ)ハかまハぬが、いつち 00050590M12の/弟御(おとゝご)に/廿(はたち)ばかりのよい/男(おとこ)さんがあらふがな。ようわしか 00050600M13おいどをたゝいてじやあつたが、/今(いま)ハどうしてじやぞいな 00050610M14ア。まんざいムヽ、その人か、やつぱり/尻(しり)たゝいて/牛(うし)/追(お)ふ 00050620M15て/居(い)られるわいの 00050630¥N8¥J 00050640¥X/万年草(まんねんぐさ) 00050650M18/若(わか)き/女夫(めうと)つれだつて、/住吉(すミよし)の/御田(おんだ)(十オ)まいり、/伊丹屋酒(いたミやざけ) 00050660M19のほろ/酔(ゑい)きげん、/新家(しんけ)はなれると、/俄(にハか)に/空(そら)/曇(くも)りて/日傘(ひがさ)へぽ 00050670M20ち+あたる/雨(あめ)の/音(おと)、なんでもけふハ/当(あて)たりと、/懐中(くわいちう)より 00050680¥P159 00050690L1/日傘(ひがさ)へ/覆(おほ)ふ/雨合羽(あまがつぱ)をとり/出(いだ)して、ひがさの/上(うへ)へひらりと/打(うち) 00050700L2きせ、/是(これ)ミよがしの/落(おち)つき/顔(かほ)にて、/女夫(めうと)/相合傘(あひあいがさ)にて、/殿可= 00050710L3茶(てんが=ちや)や/辺迄(へんまて)/戻(もど)れバ、/白雨(ゆふたち)ハそれ(十ウ)て/入日(いりひ)ハクハツト/照(て)り 00050720L4かゝれハ、/空(そら)をながめて、エヽぶ/粋(すい)な/降(ふ)りやうしや 00050730¥N9¥J 00050740¥X/小笠原(おがさわら) 00050750L7/友(とも)だち二三人より/合(あ)ひて/噺(はなし)のうちに、何と、けふハ/日和(ひより)も 00050760L8よし。東山の/花(はな)見に/出(で)かけうかい。そんなら/嵐子(らんし)へも知ら 00050770L9そうと、/亭主(ていしゆ)ハ/手帋(てがミ)したゝめ、/封目(ふうじめ)せんとおもひ、/糊(のり)入に 00050780L10のりがなけれバ、コリヤ長吉よ。/飯粒(めしつぶ)/持(もつ)て(十一終オ)こい。 00050790L11ハイ+と/盆(ぼん)にのせて/持(もつて)/来(く)る。/亭主(ていしゆ)一/粒(つぶ)とつて、おのれも 00050800L12めつそうな。此やうにたんと取て/来(く)るものかい。あとハ/喰(く) 00050810L13て/仕舞(しまい)おれ。長吉ハイ+と/盆(ぼん)さし出して、ハイ。どなた 00050820L14さまもおあがりなされませんか(十一終ウ) 00050830¥T1巻三 00050840¥N1¥J 00050850¥X/仮名違(かなちが)ひ 00050860M5/有徳(うとく)の/町人(てうにん)、両三人よりて申けるは、さりとてハ/世(よ)に/我(われ) 00050870M6+のやうに/金銀(きんぎん)/沢山(たくさん)にありて、/朝(あさ)から/寐(ね)るまて/諸方(しよほう)の/貸= 00050880M7附(かし=つけ)の/利足(りそく)のさいそく、/有金(ありがね)の/都合(つごう)、/毎日(まいにち)の/銀(かね)ざた、/扨(さて)&う 00050890M8とましき/金銀(きんぎん)也。あわれ/此世(このよ)へ/生(むま)れし/甲斐(かい)にハ、一日なり 00050900M9とも金銀の/沙汰(さた)(一オ)/聞(きか)ずに/居(い)たしと申けれバ、/傍(かたへ)のひと 00050910M10りも、/我(われ)+とても/其通(そのとう)り也。とかく/金銀(きんぎん)が/有過(ありすぎ)て一日も 00050920M11/心安(こゝろやす)からず。/何(なに)とかして、/此苦患(このくげん)のがれんと/語(かた)りけれバ、 00050930M12/今壱人(もひとり)の/男(おとこ)、/此方迚(このほうとて)も/其通(そのとふ)り也。/我此(われこの)ごろつく※/思(おも)ひけ 00050940M13るハ、/下岡崎(しもおかさき)か、またハ/北嵯峨(きたさが)へ/隠居(いんきよ)して、/浮世(うきよ)に/離(はな)れ、 00050950M14/金(かね)のことを/聞(きか)ぬ(一ウ)やうにしたし。/是(これ)ハ/能(よ)き/了簡(りやうけん)也。/我(われ) 00050960M15+も/其通(そのとう)りにいたすべし。/先(まづ)いそぎ/嵯峨(さが)へゆきて、よき 00050970M16/閑清(かんせい)なる/借屋(しやくや)をかるべし。/若(もし)なくバ三人/相(あい)くミて、/庵(いほり)を/建(たつ) 00050980M17へき/空地(あきち)を見るべしと、三人すぐさま/嵯峨(さが)へおもむき、こ 00050990M18ゝの/家(いゑ)かしこの/菴(いほり)、/籔(やぶ)のうしろ/松(まつ)の/前(まへ)を/尋(さが)しもとむるうち、 00051000M19/藁(わら)やぶき/軒(のき)(二オ)ふかく/苔(こけ)むして、/壁(かべ)もこぼれ/落(おち)て、/蘿(つた)/這(は) 00051010M20ひかゝり、/庭(にハ)の/小草(をぐさ)、/所(ところ)せまきまでに/生茂(おひしげ)りて、/虫(むし)の/音(ね)あ 00051020¥P160 00051030¥G(四ウ) 00051040L14われに/聞(きこ)へて、さりとてハ/風流(ふうりう)なる/住居(すまい)。かゝる/所(ところ)にハ/何= 00051050L15人歟(なに=びとか)おわすやらん、/床(ゆか)しさのあまり/窓(まど)より/覗(のぞ)きけれバ、と 00051060L16しごろ/四十斗(しぢうばか)りのおのこひとり、/鬢髭(びんひげ)おどろに、/洋羹色(ようかんいろ)の 00051070L17/黒小袖(くろこそで)(二ウ)/所(ところ)※やぶれて、綿(わた)のぼろそ/下(さか)り、/炉(ろ)にハふ 00051080L18すぼりし/茶瓶(ちやびん)をかけ、/机(つくへ)にかゝり、/何(なに)やらもの/案(あん)じ/顔(がほ)に、 00051090L19もの/書(かい)て/居(い)るさまをミて、三人おもへらくハ、大かた/歌(うた)か 00051100L20/詩(し)か、たゞし/発句(ほつく)でも/案(あん)じて/居(い)るのであらう。さて+/世(よ) 00051110M1にハうらやましき/身(ミ)の上もあるもの也と、また+かはる 00051120M2+のぞきけれバ、/内(うち)のあるじ(三オ)大あくびして、アヽ 00051130M3/金(かね)ほしや 00051140¥N2¥J 00051150¥X/昔(むかし)/面影(おもかげ) 00051160M6/河東(かハひがし)へかよへる/大尽(だいじん)、かねて/色(いろ)たちより/来(きた)りし/文(ふミ)にて、/文= 00051170M7帋帳(ふミ=してう)といふものをこしらへ、/月(つき)の/夕(ゆふべ)にハ/蚊(か)をふせぎ、/雪(ゆき)の 00051180M8/曙(あけぼの)にハ/寒(さむ)さをしのぎ給ふ/所(ところ)、いかゞの事にや、その/紙帳(してう) 00051190M9/釣(つ)る/夜(よ)にハ/居間(いま)/震動(しんとう)して、/夢(ゆめ)ごゝろ、そゞろ(三ウ)におそ 00051200M10はれ給ふ。こハたゞことならずと、いそぎ/陰陽(うらなひ)師をまねき、 00051210M11/占(うら)なはしけれハ、コレハまつたく女の/所為(しよい)也と申ける。中 00051220M12+女の/業(わざ)にて、かやうの/物怪(ものゝけ)、/更(さら)に/覚(おぼへ)なきよしこたへけ 00051230M13れバ、うらなひ、さやうおぼしめし候ハヽ、/先(まづ)/其紙帳(そのしてう)を/出(だ) 00051240M14してミせ給へといふに、/直様(すぐさま)/帋帳(してう)を/出(いだ)し見せけれハ、/道(とう) 00051250M15(四オ)(四ウ挿絵)/理(り)でこそ、ミな/鱗(うろこ)の/文(ふミ)であつた 00051260¥N3¥J 00051270¥X/餅(もち)の/皮(かハ) 00051280M18/嚊(かゝ)さん。/何(なに)を/仕(し)なます。/母(はゝ)/鱠(なます)きざんて/祝(いわ)ふわいの。むすめ 00051290M19そんな事せずと、/何(なんに)もかまひなますな。イヤ+、なんぼ 00051300M20/田舎住居(いなかすまい)ても、/近(ちか)ひ/内(うち)/身請(ミうけ)があるときけバ、/祝(いわ)ハにやなら 00051310¥P161 00051320L1ぬ。たま+の/薮(やぶいり)入じやもの。/親父(おやぢ)どのもうれしさに、は 00051330L2りこん(五オ)で/鯛(たい)/買(か)ふて見へた。娘ヲヽすかん。とゝさん 00051340L3とした事が、/鯛(たい)かいな。わしや/否(いや)へ。はゝ/鯛(たい)/な((ほカ))どめでたい 00051350L4ものハないのに、なんでまたきらやる。むすめこちや/町(まち)が 00051360L5/好(すき)じやわへ。あんな/在所(ざいしよ)めいた/肴(さかな)ハきらひじやハへ。はゝ 00051370L6ソリヤどうして。むすめアイ。/鯛(たい)にハ/鎌(かま)や/鋤鍬(すきくわ)があるもの 00051380¥N4¥J 00051390¥X/門(か□)の/切水(きりミづ)(五ウ) 00051400L9/田舎(いなか)もの/国(くに)へ/戻(もど)りて、/息子(むすこ)に/云(い)ふにハ、サテ+/上方(かミがた)ハき 00051410L10ついけんやくじや。わいらもずいぶんと/気(き)を/付(つけ)い。こんど 00051420L11大坂へ/往(い)て、/今橋(いまばし)とやらいふ所を/通(とう)つたら、/金持(かねもち)の/所(ところ)と見 00051430L12へて、/角(かと)/引廻(ひきまハ)した大きな/内(うち)があつたが、マア水/打(う)つにさへ、 00051440L13/半分(はんぶん)の/手桶(ておけ)に/杓(しやく)も二つにへいだ/半分(はんぶつ)の/柄杓(ひしやく)、/水(ミづ)も/大道(だいどう)へ/半(はん) 00051450L14(六オ)/分(ぶん)づゝキツシリと/打(うつ)て/居(い)る。むすこそれハきつい/始= 00051460L15末(し=まつ)な/物(もん)じやナア。イヤ+、まだ+きつい事かあるてい。 00051470L16/内(うち)から/旦(だん)那じやそうなが、どこへやら/出(で)て/往(い)かれたが、し 00051480L17わい人ノ、めんめハ/絹(きぬ)もの/着(き)て/居(い)られたが、/息子(むすこ)どのにハ 00051490L18/木綿(もめん)の/振袖(ふりそで)/着(き)せて 00051500¥N5¥J 00051510¥X/青江(あをい)/下坂(しもさか)(六ウ) 00051520M1/三輪(ミわ)の/謡曲(うたひ)とハひきかへて、/昼(ひる)ハ/来(く)れとも/夜(よる)見へぬハ/入聟(いりむこ) 00051530M2の/妾宅通(しやうたくがよ)ひ。京の/内(うち)でハ/本妻(ほんさい)の/聞(きこ)へをおそれて、一/里(り)あま 00051540M3り/離(はな)れた/辺土(へんど)の/在所(さいしよ)に、二/階(かい)つきの/坐敷(さしき)を/買(か)ひもとめ、/北= 00051550M4野(きた=の)/赤山参(せきざんまい)りをかこつけての/妾宅通(しやうたくかよ)ひ。お/供(とも)の/長吉(てうきち)も/本妻(ほんさい)か 00051560M5らの/眼代(めしろ)なれど、/戯場(しばゐ)や/生洲(いけす)(七オ)の/鰻魚(うなぎ)で/口(くち)をとめ、/道(ミち) 00051570M6/遠(とを)なれバ、/妾宅(しやうたく)へ/来(く)ると/其侭(そのまゝ)長吉を二/階(かい)へ/追(を)ひ/上(あ)ケ、/下(した)か 00051580M7らはしごを/引(ひ)き、/下女(けぢよ)ハ/外(そと)へ/遊(あそ)びに/出(だ)して、/誰(たれ)も見るもの 00051590M8ゝない/様(やう)に/仕(し)て/置(おい)てのたのしミ。/妾(てかけ)も/舟(ふね)になつたり/帆(ほ)にも 00051600M9なつたりして/旦那(だんな)の/楫(かぢ)づかに/身(ミ)をまかせ、/心(こゝろ)よげなる/物音(ものをと) 00051610M10に、長吉ハ二(七ウ)/階(かい)から/逆(さか)さまに/成(なつ)て/是(これ)を/見付(ミつけ)て、/上(か)ミ 00051620M11づりになつて、たまらず下へどうど/落(おつ)るに、二人ハびつく 00051630M12り/走(はし)りよつて、長吉か/顔(かほ)へ/水(ミづ)/吹(ふき)かけ、コリヤ+/長吉(ちやうきち)よ。 00051640M13/気(き)がついたか+。長吉、/息(いき)/吹(ふき)かへし、ハイ。/気(き)ハそこら 00051650M14だらけへつけました 00051660¥N6¥J 00051670¥X/蛙(かいる)の/子(こ) 00051680M17ちいさい/忰(せかれ)に一つまミ御遣りなされ(八オ)て下さりませと、 00051690M18/乞食(こじき)の/声(こへ)。/内(うち)より/下女(けぢよ)が一つまみもつて/出(いで)、/子供(こども)の/乞食(こじき)に 00051700M19/遣(や)らんとする/拍子(ひやうし)に、/袋(ふくろ)をそれて、/米(こめ)ばら+とこぼれけ 00051710M20れば、/親乞食(おやこじき)はらをたて、/我子(わがこ)のあたまをたゝき、ヱヽこ 00051720¥P162 00051730¥G(九オ) 00051740L14ゝな/冥加(めうが)しらずめ。/親(おや)の/商売(せうばい)を/麁抹(そまつ)に/仕(し)をる 00051750¥N7¥J 00051760¥X/恋(こひ)の/闇(やミ)(八ウ)(九オ挿絵) 00051770L17/世(よ)に/稀(まれ)なる/背(せ)の/低(ひく)きちんこの/男(おとこ)、かねて/東(ひがし)へ/通(かよ)ひけるが、 00051780L18ある/夜(よ)いさゝかの/工合(ぐあい)ありて、/忍(しの)び/姿(すがた)に/頬(ほう)かふりして、/井= 00051790L19筒(い=づゝ)かもとの/格子(かうし)より/内(うち)を/覗(のぞ)き/居(い)る/所(ところ)へ、/呼(よ)びものにゆく/小= 00051800L20女(こ=めろ)か/出(て)て、コレ/源(げん)さんと/背(せ)なをたゝけバ、/南無三(なむさん)。おれと 00051810M1しられたか 00051820¥N8¥J 00051830¥X/粋違(すいちが)ひ(九ウ) 00051840M4十六七な/田舎(ゐなか)めいた/娘(むすめ)と、わかき/男(おとこ)とふたりづれにてゆく。 00051850M5/道(ミち)+かの/娘(むすめ)、サアもう/切(きつ)て下さんせといふ。おとこ/此(この)や 00051860M6うな/町中(まちなか)できらるゝものかといふを、/跡(あと)からふと/聞(きゝ)し/男(おとこ)、 00051870M7さてハ/心中(しんぢう)そうなとおもひ、/付(つい)て/行(ゆけ)バ、/誓願寺(せいぐわんじ)の/門(もん)のうち 00051880M8へはいる。大かた/後世(こせ)をたのむのであらんと見て/居(い)れハ、 00051890M9むすめ(十オ)またも、/切(きつ)て/下(くだ)さんせといふ。おとこ人の/見(ミ) 00051900M10て/居(い)るにと/目(め)くばせして、/堂(だう)の/後(うしろ)へゆく。/付(つけ)てきたるおと 00051910M11こ、いよ+/心中(しんぢう)の/場所(ばしよ)をたづぬるならん。なんでもとめ 00051920M12てやらんとおもふうち、むすめサア/切(きつ)て/下(くだ)さんせといへハ、 00051930M13かの/男(おとこ)のたもとから、/琉球芋(りうきういも)を/出(だ)した 00051940¥N9¥J 00051950¥X/里(さと)に/杖(つへ)(十ウ) 00051960M16/子供(こども)か大ぜい、わいやわや/云(い)ふて/居(い)るを、/親父(おやぢ)か、コリヤ、 00051970M17/見(ミ)れバアノ/前髪(まへがミ)をませよ+と/言(い)ふておだてるか、/行過(いきすぎ)た 00051980M18ものてもないが、/何(なん)として/其(その)やうにおだてるぞい。子とも 00051990M19なんじやしらんが、/皆(みな)ませよ+といふゆへに、おたてる 00052000M20のじやといへば、そばに/居(い)る/百性(ひやくせう)が、いかさま、そんな事 00052010¥P163 00052020L1もあろかい。(十一オ)あいつハ/此村(このむら)はづれの/菊作(きくつく)りの/息子(むすこ) 00052030L2ジヤ(十一ウ) 00052040¥T1巻四 00052050¥N1¥J 00052060¥X/乗合舟(のりあひぶね) 00052070M5/按摩痃癖吹笛去(あんまけんびきふへふいてさり)、/温飩蕎麦焚火行(うどんそばきりひをたいてゆく)。/冬(ふゆ)の/夜(よ)の/寒(さむ)さをし 00052080M6のぐちろり/酒(さけ)。もはや/火鉢(ひばち)の火もきえ※の/境節(おりふし)、/夜売(よなき)の 00052090M7/蕎麦屋(そばや)門を通りけれバ、是/幸(さいわ)ひと/呼(よび)もどし、コレそばや。 00052100M8なにとも/邪魔(じやま)ながら、此酒ちよつとつけて下されとたのむ 00052110M9に、そばやも/拠(よんところ)なく、ちろりの(一オ)さけを/燗(かん)して/遣(や)り 00052120M10けれバ、あるじよろこび内へ/這入(はい)り、いざや/呑(のま)んとするを、 00052130M11/女房(にようぼう)申、おまへさんハマアめつそうもない。せつかくそ 00052140M12ばやに酒のかんをさして、/蕎麦(そば)ハ/買(かわ)ぬのでござりますかへ。 00052150M13ヲヽ、/肴(さかな)ハ/昼(ひる)の/棒鱈(ぼうだら)があるゆへ、これですますつもりじや。 00052160M14女房/夫(それ)ハ/余(あんま)り/心(こゝろ)ない。せめてハ一/膳(ぜん)/買(か)ひましよと/表(おもて)に/出(いで)て、 00052170M15コレ+蕎(一ウ)麦屋+と/呼(よ)べども、もはや半丁/余(よ)も過 00052180M16て、/声(こへ)とゞかず。いかゞハせんとおもふ所へ、/戻(もどり)りかゝり 00052190M17し/隣(となり)の/左平次(さへいじ)、わたしが呼て上ケませう。ヲヽイ+、/蕎= 00052200M18麦(そ=ば)や+。東/側(がわ)の三/軒目(げんめ)から呼んでじやといへハ、ソバヤ 00052210M19ヱヽ、また/次目(つぎめ)であろ 00052220¥P164 00052230¥G(四オ) 00052240¥N2¥J 00052250¥X/木(き)の/芽出(めだ)し 00052260L16/畑(はたけ)から/仕事(しこと)しまふて/戻(もど)る/久作(きうさく)、ヤレ+、/今(け)(二オ)/日(ふ)ハひ 00052270L17へる日じやあつた。かゝヲヽ/親父(おやじ)どの。戻らしやつたか。 00052280L18大坂へ/奉公(ほうこう)にやりました/久松(ひさまつ)が、さいぜん久しぶりてもど 00052290L19りましたわいの。久さくなんじや。久まつか/戻(もど)つたか。四 00052300L20五/年(ねん)も/逢(あハ)なんだ。久しぶりの/薮入(やぶい)りじや。早う逢ふ。かゝ 00052310M1サア/其(その)事に付て/噺(はなし)がござる。けふハお/出入(でいり)方の仁助どのが 00052320M2ついて見えて、久松ハ/大事(だいじ)の内の/娘御(むすめご)お/染(そめ)(二ウ)様とわけ 00052330M3のある/様子(やうす)じやゆへ、/薮入(やぶいり)させます。/急度(きつと)/異見(いけん)をしてくれ 00052340M4との/奥(おく)さまよりの/御口上(ごかうじやう)じや。ムヽ/何(なん)と/云(い)やる。そんなら 00052350M5/久松(ひさまつ)めが、/内(うち)のおそめさまと/訳(わけ)のあるやうすじやよつて、 00052360M6/異見(いけん)のための/薮入(やぶいり)か。かゝおいのふ。久さくテモ/大(おゝ)きうな 00052370M7りおつたナア 00052380¥N3¥J 00052390¥X/拍子幕(ひやうしまく)(三オ) 00052400M10/裏長家(うらながや)に/独住(ひとりずミ)にて/居(い)し中村久五郎といふ/中通(ちうどふ)りの/役者(やくしや)、/新= 00052410M11狂言(しん=きやうげん)の/惣稽古(そうけいこ)、/夜更(よふけ)てほろ/酔(ゑい)/機嫌(きげん)のうかれ/心(こゝろ)にて、/宿(やど)へか 00052420M12へり、/扉(とぼそ)の/明(あ)きありし/事(こと)も/気(き)ハつかず、/灯(ともしび)をてんじて、お 00052430M13のが/役(やく)の/仕内(しうち)の/工夫(くふう)いろ+して、/何(なに)おもひけん、うす/着(ぎ) 00052440M14に/着(き)かへ、/戸棚(とだな)より大だら一/腰(こし)さし、/腕(うで)まくりして、つか 00052450M15+と/出(いで)けれハ、/庭(にハ)(三ウ)(四オ挿絵)の/隅(すミ)に/宵(よひ)よりしのび 00052460M16/居(い)し/盗賊(とうぞく)/肝(きも)をつぶし、ふるひ+かゞミ/出(いで)、申シ+、モ 00052470M17ウ+お/赦(ゆるし)しなされて下さりませ。/何(なんに)も/取(とり)ハいたしませな 00052480M18んだと、/宙(ちう)を/飛(とん)で/迯帰(にけかへ)りければ、久五郎コン+クハタリ 00052490M19の/間(ま)にて、/曲者(くせもの)マテ 00052500¥P165 00052510¥N4¥J 00052520¥X/■出(こしもとで) 00052530L3此ごろ/突出(つきだ)しの/新造(しんぞう)/女郎(しよろう)、/身仕舞(ミじまい)/部屋(べや)にて、ほうばいの/女= 00052540L4郎(じよ=らう)に/噺(はなし)けるハ、コレ/重野(しげの)(四ウ)さん。ゆふべさしこみで/井= 00052550L5喜代(い=きよ)へゆきやんしたが、その客めがナ、いかにわたしか/新= 00052560L6造(しん=ぞう)じやてゝ、どこの/国(くに)にか/初対面(しよたいめん)から、/起請(きせう)を/書(かく)か/指(ゆび)きる 00052570L7かと/無理斗(むりはつか)り。あんまり/腹(はら)がたつて/中途(ちうと)から/戻(もと)ろかとおも 00052580L8ふたら、モウそれなりに/寝入(ねいり)おつたわいナア。しげのゑら 00052590L9い太郎四郎な/客(きやく)じやナア。イヽヱ、そんな名でハこざんせ 00052600L10なんだ(五オ) 00052610¥N5¥J 00052620¥X/凾谷関(かんこくくわん) 00052630L13/放蕩息子(のらむすこ)、いつもの/中宿(なかやと)へ/来(き)て、/今夜(こんや)ハ/東(ひがし)へちよつとゆか 00052640L14ねバならぬ。おもわしい/虚言(てがた)がない。/今夜(こんや)とうぞ/貴公(きこう)がこ 00052650L15ちへ/来(き)て、なんなとよい/手形(てがた)こしらへて、/呼(よ)びに/来(き)て下さ 00052660L16れぬか。/畏(かしこま)りました。/取(とつ)ておりまする。そんな事ハ/得(ゑ)もの 00052670L17でこざります。かならず/違(ちが)ハぬやうにと/念(ねん)を入て、/息(むす)(五 00052680L18ウ)/子(こ)ハ/帰(かへ)れハ、なんでも/今夜(こんや)きやつか/東(ひがし)へ/行(ゆき)おつた/跡(あと)か 00052690L19ら/仕(し)かけて、ヱラ/呑(のミ)にして、/礼(れい)にハ/妓買(きがい)さゝんと、たのし 00052700L20んで/暮(くる)るを/待(まち)かねて/出(て)かける/所(ところ)へ、/家主(いへぬし)が/来(き)て、/家賃(やちん)の/催= 00052710M1促(さい=そく)。いろ+と/啌八百(うそはつひやく)いふて、/御尤(ごもつとも)だらけで/去(いな)した/跡(あと)へ、 00052720M2また/米屋(こめや)の/親父(おやぢ)。/南無三(なむさん)とおもへども、ぬけられもせず、 00052730M3/桃尻(もゝじり)になつてのことハり。かれこれと/隙入(ひまい)ル(六オ)あいだ 00052740M4に、/四(よ)つの/太鼓(たいこ)。コリヤ/遅(おそ)うなつたと、/上(か)ミづりに/成(なつ)てか 00052750M5け/出(た)した/所(ところ)が、/行先(ゆくさき)の/門(もん)ぴつしやりと/〆(しま)つて/通(とう)られず。/爰(こゝ) 00052760M6らが/知恵(ちゑ)と、/急(きう)ナこと、とりあけ/婆(ば)さま/呼(よ)びに参りますと 00052770M7/打(うち)たゝけバ、アタめんどうなと、ふせう※に/明(あけ)る。/忝(かたじけ)な 00052780M8しと/走(はし)り/行(ゆく)。さきの/門(もん)また/〆(しま)つてあるを、/是(これ)も/苦(く)にせず、 00052790M9/婆(ば)様+と/毛谷村(けやむら)もときの/棒(ほう)て/段(だん)+と/関(せき)(六ウ)をこへ、 00052800M10かの/息子(むすこ)の/所(ところ)へやう+と/行(ゆき)、/表(おもて)をたゝけバ、/内(うち)から/番頭(ばんとう) 00052810M11が/狼声(おゝかミこへ)で、/誰(たれ)じや+に/気(き)をとられ、とりあげばさまハ/内= 00052820M12方(うち=□た)かな。イヤ、/是(これ)から/北(きた)へ三/軒目(げんめ)じや。/忝(かたじけの)ふござります 00052830M13と、すぐに三/軒目(げんめ)を/割(われ)るほどたゝき、とりあけばさまハ/爰(こゝ) 00052840M14かなといへば、/戸(と)をあけて、/婆(ばゝ)ハわししやが、こなさんハ 00052850M15とこから見へた。ハイ。/只今(たゞいま)/謡講(うたひかう)にお/出(いで)なされ(七オ)と申 00052860M16てゞござりましたと、うろたへながら/言(い)へバ、ばゞ、しば 00052870M17らく/思案(しあん)して、アヽ、/謡屋(うたいや)に/請取(うけとつ)たのハなかつたがナア 00052880¥N6¥J 00052890¥X/宇津(うつ)の/山(やま) 00052900M20コレ+長吉どん。まだ日か/暮(くれ)るやくれぬに、もう/行燈(あんとう)見 00052910¥P166 00052920¥G(九ウ) 00052930L14ると/居眠(いねむ)らんす。そうしてマア此/鼾(いびき)わいのふ。コレ長吉ど 00052940L15ん+とゆり/起(おこ)され、長吉およしどん。なんじや。およし 00052950L16なん(七ウ)じや/所(ところ)かいナア。/宵(よひ)から/居眠(いねむつ)て、そうして今の 00052960L17/高鼾(たかいびき)。ちとたしなまんせ。長吉どこにおれがいびきかいた。 00052970L18よいかげんな/啌斗(うそばか)り。およしなんでわしがうそつくもので。 00052980L19イヤ+うそじや。/啌(うそ)といふ/証拠(せうこ)ハナ。/現在(げんざい)おれが/鼾(いびき)、お 00052990L20れがしらんもの 00053000¥N7¥J 00053010¥X/三世相(さんぜさう) 00053020M3/去(さ)る/御大名(おたいめう)、/長(なが)き日のつれ※に、お/物見(ものミ)(八オ)より/往来(わうらい) 00053030M4を/御覧(ごらん)なされける。/折節(おりふし)六十六/部(ぶ)の/通(とふ)りけれバ、アリヤ/何(なに) 00053040M5ものなるぞと、/御傍(おそば)の/御近習(ごきんじゆ)にお/尋(たつね)ありけれバ、近習あの 00053050M6/者(もの)は/日本回国(につほんくわいこく)の/修行者(しゆきやうじや)でござります。大名ソリヤまた/何(なん)の 00053060M7ために/日本回国(につほんくわいこく)をするぞ。近習/日本回国(につほんくわいこく)をいたしまする 00053070M8と、/来世(らいせ)でハ/大名(たいめう)に/産(むま)れますと申ますゆへ、/其願(そのねがひ)でござり 00053080M9ます。大名きついたわけものじや(八ウ) 00053090¥N8¥J 00053100¥X/田舎(いなか)/蕉門(せうもん) 00053110M12なんとかいへる/俳諧(はいかい)の/宗匠(そうしやう)、/社中(しやちう)/両(りやう)三人いざなひ、/長閑(のどか)な 00053120M13る/春(はる)の/空(そら)いたづらに/過(すご)さんやと、/御室(おむろ)の/花(はな)のみやびやかな 00053130M14るを/眺(なか)め、おの+くだらぬ/発句(ほつく)を/短冊(たんざく)に/書(かき)ちらし、/我(われ)に 00053140M15おそれぬ/自慢顔(じまんかほ)に、/枝(ゑだ)もたハヽになるほどさげて、/夫(それ)より 00053150M16また+/西山(にしやま)の/春(はる)の/気色(けしき)をも/残(のこ)さじと、/菜(な)の/花(はな)/咲(さけ)(九オ) 00053160M17(九ウ挿絵)る/野面(のつら)を/互(たが)ひに/語(かた)りつゝ/行(ゆき)けるが、/比(ころ)しも/苗代(なハしろ) 00053170M18水にせき/入(い)るゝ/野川(のがわ)の/中(なか)へ、/蛙(かハず)一つ/飛込(とびこみ)けれバ、かの/社中(しやちう)、 00053180M19ナント/宗匠(そうしやう)。/御(ご)らんなされたか。/野川(のがハ)の中へ/蛙(かハず)の/飛込(とびこむ)/風情(ふぜい)、 00053190M20どふも/言(い)へぬでハこざらぬか。宗匠しかし/池(いけ)なら 00053200¥P167 00053210¥N9¥J 00053220¥X/蓮(はす)の/実(ミ) 00053230L3/旦那(だんな)が/参宮(さんぐう)の/下向(げかう)に、/一家(いつけ)/知己(ちかづき)をまねきて(十オ)/宴(さかもり)の/所(ところ) 00053240L4へ、/出入(でいり)の/小道具(こだうぐ)や/来(きた)り、/旦那様(だんなさま)にも/御機嫌能(こきげんよ)うお/下向(げこう)、 00053250L5おめでたうぞんします。/御道中(ごとうちう)/何(なんに)も/珍(めづ)らしい事もござりま 00053260L6せなんだか。旦那イヤモ/別(べつ)にかわつた事もなかつたが、/下= 00053270L7向(け=こう)にハ/石山(いしやま)へ/参(まい)り、/夫(それ)から/銚子(てうし)の/口(くち)、/猪飛(しゝとび)のあたりへ/往(い)た 00053280L8が、又/格別(かくべつ)な/所(ところ)じやあつた。@客△△△|小道具や@それハ/能(よ)う御/出(いで)なされ 00053290L9ました。/私(わたくし)どもゝ/承(うけたまわつ)てハおりますけれど、/未(まだ)/参(さん)じません。 00053300L10どうぞ一/度(ど)ハ/見物(けんぶつ)いたしたいと(十ウ)/存(ぞんし)ております。旦那 00053310L11/噺(はなし)に/身(ミ)を/入(い)れて、/夫(それ)よりハ/未(まだ)、/米(こめ)かしのあたりなとハ/凄(すご)ひ 00053320L12ものでござる。小道具や/私(わたくし)もまだ/見(ミ)ませんか、どの/様(やう)な/所(ところ) 00053330L13でござりますな。旦那/先(まづ)/凡(およそ)と/立上(たちあが)り、/傍(そバ)にある/娘(むすめ)の/稽古琴(けいこごと) 00053340L14を/引(ひつ)かゝへ、すこし/碁盤(ごばん)にもたせかけ、此/流(ながれ)の/爰(こゝ)らが/大岩(おゝいわ)、 00053350L15此/岩(いわ)へ/打当(うちあたる)る/水(ミづ)があとへ/戻(もど)るが、/米(こめ)を/洗(あら)ふごとく/真白(まつしろ)にな 00053360L16りまする/其勢(そのいきほひ)ひ、此あたりハ水/烟(けふり)で/居(い)られませんと、/跡(あと) 00053370L17へより(十一オ)しなに、/琴(こと)が/辷(すべ)りて/転(こけ)る/拍子(ひやうし)、/琴柱(ことち)ハポン 00053380L18トはしる。/是(これ)ハしたり。/飛(とバ)しりがかゝつた。/誰(たれ)ぞ/着(き)がへ/持(もつ) 00053390L19て/来(こ)いよ 00053400¥N10¥J 00053410¥X/哥(うた)びらき 00053420M3/三本木(さんぼんぎ)の/坐敷(さしき)にて、/法師(ほうし)、ごせ、/素人交(しろとまじ)りのさらゑ/講(かう)。/日(ひ) 00053430M4のうちより/夜(よ)をかけての/賑(にぎハ)ひ、/聞場(きくは)ハ/毛氈(もうせん)/敷(しき)ならし、/琴(こと)/三= 00053440M5絃(さミ=せん)に心ある/娘(むすめ)たち、/所(ところ)せきまで/居(い)ならびける中(十一ウ)に、 00053450M6さも/荒(あら)くれたる/男(おとこ)ひとり、そも+/露(つゆ)はらひより/終(おハり)の/曝布(さらし) 00053460M7ひく/迄(まで)、/身動(ミうご)きもせず/聞居(きゝい)たりけれバ、あたりの人+、 00053470M8/不思議(ふしぎ)におもひ、あのやうな/不骨(ぶこつ)なるおとこのわきめもふ 00053480M9らず/聞居(きゝい)るハ、さだめて此/道(ミち)が/好(すき)にて、/琴歟(ことか)/三絃(さミせん)をたしな 00053490M10ミ給ふ人ならんと、心ゆかしくおもひけれバ、はじめから 00053500M11/終迄(おハりまで)も/居(い)たこそ/道理(どうり)、(十二終オ)/検校(けんけう)の手ひきであつた(十 00053510M12二終ウ) 00053520¥P168 00053530¥T1巻五 00053540¥N1¥J 00053550¥X/羅紗(らしや)の/耳(ミヽ) 00053560L5/但馬(たじま)から/酒屋(さかや)はたらきに/来(き)た/男(おとこ)、一文ぜにも/大切(たいせつ)にして 00053570L6/漸(やう+)二三十匁たまりし/銀(かね)を、/時(とき)※ハ/出(だ)しておしいたゞき 00053580L7/暮(くら)しけるが、/旦那衆(たんなしゆ)が/奢(おご)らるゝを、かね※/羨敷(うらやましく)おもひ、 00053590L8/或日(あるひ)からき/暇(いとま)に/昼過(ひるすぎ)から、百の/孔方(ぜに)をふところに入て、/先(まづ) 00053600L9/道場(どうじやう)の/戯場(しばい)十(一オ)六文切で/果(はて)、/太皷(たいこ)もはや日の/暮(くれ)かた、 00053610L10そろり+と/御旅町(おたびてう)を/流(なが)して、/辻売(つじうり)の/鮨(すし)、/焼(やき)ずるめに八文 00053620L11/酒(さけ)、/米饅頭(よねまんぢう)に/串団子(くしだんご)、にしんの/昆布巻(こぶまき)のつまミ/喰(ぐ)ひ、/夫(それ)よ 00053630L12り五条の/橋(はし)したと/出(で)かけ、/店(ミせ)つきを/覗(のぞ)き/廻(まハ)り、アノ/紫(むらさき)ちり 00053640L13めんか、こちらの/黒羽二重(くろはぶたへ)にしやうか。イヤ+、その/隣(となり) 00053650L14の/緋縮綿(ひちりめん)、/有(あり)たけのこらず見/廻(まハ)り+、(一ウ)/果(はて)ハ/松原(まつハら)の 00053660L15よし/簾(ず)のうちへ/引(ひつ)ぱられ、/爰(こゝ)でかの/緋(ひ)ぢりめんのおもハく 00053670L16との/念(ねん)をはらし、またお近ひを/幕(まく)にして、/足早(あしばや)に/親方(おやかた)の/門= 00053680L17口(かど=ぐち)へもどれハ、/折(おり)ふし/北(きた)から/東(ひがし)へのもどり、/竹輿棒(かごぼう)ばなに 00053690L18/挑灯(てうちん)ぶらつかせて/行過(ゆきすぐ)るを、見/送(おく)り+、ヲヽ/皆(ミな)/太儀(たいぎ)てあ 00053700L19つた 00053710¥N2¥J 00053720¥X/涅槃像(ねはんぞう) 00053730M3モシ/元伯(けんはく)さま。あなたハなんでも/能(よう)/御存(ごぞんし)で(二オ)ごさりま 00053740M4すゆへ、いつぞハおたづね申たいと/思(おもふ)ておりましたが、ア 00053750M5ノ女を/豆(まめ)と申ハ、どう/致(いたし)た/訳(わけ)でござりますな。元伯しれた 00053760M6事。豆に/似(に)たものゆへ、そこで/豆(まめ)といふのじや。/夫(それ)てもお 00053770M7まへ、豆にも/段&(だん+)ごさりますが、マア/白(しろ)豆ハ/何(なに)てござりま 00053780M8すぞ。元伯しろ豆は/素人(しろうと)て、/爰(こゝ)らの/娘(むすめ)やこの/嚊(かゝ)と/言(い)ふ/様(やう)な 00053790M9もんじや。ソンナラ/青(あを)まめハな。ソリヤ/素人(しろと)の(二ウ)/中(なか)で 00053800M10も/亦(また)一/段(だん)/青(あを)ひ/在所(ざいしよ)むすめや/山家(やまが)の女かい。ソンナラ/黒豆(くろまめ)ハ 00053810M11な。ソリヤお/妓(やま)や/絃婦(げいこ)や/妾(てかけ)のるいじや。ソンナラまだら/豆(まめ) 00053820M12ハな。ソリヤ月がこひやこそをはたらく/女(をなご)じや。/刀(なた)豆ハな。 00053830M13ソリヤ/刀(かたな)屋の/女房(にようぼう)。ゐんげんまめハな。ソリヤ/禅寺(ぜんでら)の/尼(あま)じ 00053840M14や。/空(そら)豆ハな。ソリヤしれた事。/天人(てんにん)じや 00053850¥N3¥J 00053860¥X/猿(さる)の/知恵(ちゑ)(三オ) 00053870M17/流行(はやり)うた/浄留理(しやうるり)にて、ざハ+かしましき/風呂屋(ふろや)へ、/田舎(いなか) 00053880M18もの/入(い)り/来(きた)りけれども、/在所(ざいしよ)の/居風呂(すへふろ)とハ/事(こと)/替(かハ)り、いかゞ 00053890M19して入るべきものや/知(し)らず、うかゞひけるうち、/余所(よそ)の人 00053900M20の/仕(し)て/行(ゆく)やうに、/先(まつ)/裸(はだか)になり、/跡(あと)からついて/入口(いりくち)へ/往(い)けハ、 00053910¥P169 00053920L1/先(さき)なる/男(おとこ)が、ハイ。ごめんなされませ。/冷物(ひへもん)でござります 00053930L2といふをきゝ、/一人(ひとり)の/田舎(いなか)もの、ハイ、/伊(い)(三ウ)/右衛門(ゑもん)で 00053940L3御座ります 00053950¥N4¥J 00053960¥X/粟(あハ)の/岩起(いハおこし) 00053970L6/伊(い)右衛門どの。いつ/戻(もど)らしやつた。/上方(かミかた)にハなんぞ/珍(めづ)らし 00053980L7いことが御座ろう。伊右衛門イヤ、もう見るもさハるも/魂(たま) 00053990¥G(五オ) 00054000M1ぎる事/斗(ばか)りサ。大かた、しばゐを見やしやつたであろう。 00054010M2伊右衛門/見(ミ)申たとも+。マア/其戯場(そのしばい)の/自由(じゆう)さ、大/芝居(しばい)と 00054020M3いふがあり、/又(また)(四オ)/中(ちう)しばいといふがあり、/小戯場(こしばい)とい 00054030M4ふがある。/夫(それ)ハ/自由(じゆう)にした/物(もん)だの。イヤ、まだ※/其外(そのほか)に 00054040M5も自由なことハ、/門(かど)+へ/首(くび)に引かけて、小/売(うり)にあるくサ 00054050¥N5¥J 00054060¥X/梅枝(むめかへ)でんぶ 00054070M8あるむすめにふかく/云(い)ひかハせし/男(おとこ)が、/此節季(このせつき)ハ/金(きん)三両な 00054080M9けれバ、/欠落(かけおち)せねハならぬ。/夫(それ)でハそなたの/傍(そば)はなれ(四 00054090M10ウ)(五オ挿絵)るといへバ、むすめ/涙(なミだ)ぐミ、/気遣(きづか)ひなさるな。 00054100M11三両や五両は、わたしがどふなとすると/請(うけ)あへバ、かな 00054110M12らずたのむと/男(おとこ)ハ/帰(かへ)る。あとにむすめハ、今のやうに/言(い)ふ 00054120M13たれと、五両ハさておき、二/朱(しゆ)も/工面(くめん)ハ/出来(でき)ぬ/身(ミ)。アヽ/何(なん) 00054130M14とせうと/思(おも)ふ/折(おり)ふし、/傍(そば)にある/金盥(かなだらひ)。ヲヽそうじや。むか 00054140M15しの/梅(むめ)がえハ/手水鉢(てうずばち)をたゝ(五ウ)ゐて/金(かね)を/出(だ)す。わしハ此 00054150M16かなだらいたゝいてと、/雷木(れんぎ)おつとり、/一念(いちねん)ハ/誰(たれ)におとら 00054160M17んと、グハンとならす。/金(かね)ならたつた三両じやとグハン 00054170M18+とたゝき/立(たつ)れハ、金ハ/出(で)ずに/近所(きんじよ)から出て、/火事(くハじ)ハど 00054180M19こらじや 00054190¥P170 00054200¥G(八ウ) 00054210¥N6¥J 00054220¥X/空(から)ぞめき 00054230L16/虱(しらミ)の/皮(かハ)でも/八裂(やつざき)といふ大のしわんぼ(六オ)/親父(おやぢ)、/内儀(ないぎ)の/寐= 00054240L17入(ね=いり)ばなをかんがへて、そろ+/忍(しの)ぶ/下女(げぢよ)の/寐間(ねま)。コレ、り 00054250L18ん+とゆすりおこせバ、ふつと/眼(め)/覚(さま)し、/旦那(だんな)さんといふ 00054260L19口おさへ、コレじや+と/手(て)に/握(にぎ)らする/銭(ぜに)二百。ヲヽすか 00054270L20んとあちらむく。おやぢ、/是(これ)でハいかんと/出直(でなを)して、/今度(こんど) 00054280M1ハはづんて/銭(せに)壱/貫(くわん)、/亦(また)ゆりおこして/手(て)にわたせバ、/寐(ね)た/顔(かほ) 00054290M2してだまつて/居(い)るを、ムヽ/直(ね)がなつた(六ウ)と/蒲団(ふとん)の/中(うち)へ 00054300M3ぐす++。/彼是(かれこれ)と/隙(ひま)どるうち、/下女(げぢよ)ハスヤ+/寐入(ねいり)ば 00054310M4な。/親父(おやじ)ハそつとぬけて/出(で)て/戻(もど)りがけに、壱貫の銭/提(さげ)ても 00054320M5どつた 00054330¥N7¥J 00054340¥X/痰切店(たんきりミせ) 00054350M8/長崎(ながさき)へ用あつて/往(い)た/庄屋(しやうや)、/無事(ぶじ)で/帰国(きこく)をせられしよろこび 00054360M9に、/村方(むらかた)の/百性(ひやくしやう)ミな+/来(き)て、サテ四郎左衛門様にも此度 00054370M10ハ(七オ)/御苦労(こくらう)で御座りました。シカシ一/生(しやう)のお/徳(とく)じや。 00054380M11どうぞこちとらも/行(ゆき)たひとそやされて、庄やアヽ/貴様(きさま)たち 00054390M12に見せたいわいの+。マア/紅毛舟(おらんだぶね)が入て/来(く)るか、/丸山(まるやま)と 00054400M13いふ/所(ところ)でハ/唐人(とうじん)がさわいで/居(い)るか、イヤモいつかう/戻(もど)りた 00054410M14いことハなかつた。/夫(それ)にこんどハ/代官様(たいくわんさま)のお/供(とも)じやゆへ、 00054420M15/長崎(ながさき)での/馳走(ちそう)、/家具(かぐ)の/奇麗(きれい)、/皆(ミな)/硝子細工(ひいどろさいく)じや。/硝子(ひいどろ)のこつ 00054430M16ふ、(七ウ)びいどろの/鉢(はち)、びいどろの/膳(せん)、/硝子(びいどろ)の/椀(わん)、イヤ 00054440M17モウなにもかも/硝子(びいどろ)/尽(づく)し。/夫(それ)にマア/聞(き)かしやれ。びいとろ 00054450M18の/水風呂(すいふろ)へ入りました。百性それハめづらしい。硝子も/多(おゝ) 00054460M19いが、/居風呂(すへふろ)とハさだめし/奇麗(きれい)な/物(もん)てござろう。サテ、き 00054470M20れいなハきれいなが、こまつたことか一つあるてい。百性 00054480¥P171 00054490L1それハなんでござります。庄やサア、/手(て)をはなすと、/外(そと)か 00054500L2ら大きう見へる(八オ)(八ウ挿絵) 00054510¥N8¥J 00054520¥X/餅(もち)の/札(ふだ) 00054530L5/春(はる)から/春(はる)まで/花(はな)の/咲(さく)/比(ころ)を/楽(たの)しんで/暮(くら)さるゝ/旦那(だんな)、此ごろハ 00054540L6/坪(つぼ)の/内(うち)のさくらのさかりを、/明(あけ)ても/暮(くれ)てもたのしみ/居(い)られ 00054550L7しか、フト/隣町(りんてう)の/寺(てら)の/和尚(おしやう)を/招(まね)き、/花見(はなミ)の/宴(さかもり)、/何(なに)が大/盃(さかづき) 00054560L8/出(だ)してのひらじい。ホンニ/寺(てら)へ/行(ゆく)と、いつもお/小僧(こぞう)のお/世= 00054570L9話(せ=わ)になる。/呼(よび)ませいと/呼(よび)よせて、(九オ)/是(これ)もゑらじいに/強(しい) 00054580L10つけ、/和尚(をしやう)も小/僧(ぞう)も/一向(いつかう)たはひ、旦那/手(て)をたゝき、ついで 00054590L11に/寺(てら)の/男(おとこ)もよんでこい。いつ/往(い)てもこゝろよう/草履(ぞうり)でも/直(なを) 00054600L12してくれると、/是(これ)もゑらじいに/呑(のま)しけれバ、三人はもりつ 00054610L13ぶされ/高鼾(たかいびき)かいて/寐(ね)て/居(い)る。旦那、/仕(し)すまし/皃(がほ)にて、アヽ 00054620L14/嬉(うれ)しや。/是(これ)で/入相(いりあひ)ハ/撞(つ)く/気遣(きづか)ひなしジヤ(九ウ) 00054630¥N9¥J 00054640¥Xうらはら 00054650L17八兵衛さん。おまへの/所(ところ)の/乳母(うば)ハどこから/置(を)きなされまし 00054660L18た。けぶなやつじやナア。八兵へなんといたしましたな。サ 00054670L19イナア。此間こちの/乳母(うば)と/喧嘩(けんくわ)を/仕(し)をつたが、/其(その)せり/合(あ)ひ 00054680L20かおかしいテイ。八兵へ/何(なに)をせり/合(あひ)ましたな。サア、こちの 00054690M1/坊主(ぼうず)めに/乳母(うば)が/噺(はなし)をして/聞(きか)しをるに、/祖父(ぢい)ハ/山(やま)へ/柴(しば)(十オ) 00054700M2/苅(かり)に、/祖母(ばゞ)ハ川へ/洗濯(せんたく)にといふたら、おまへの/所(ところ)の/乳母(うば)か、 00054710M3ヱヽめつそうな。ぢいハ山へじやない。ばゞか/山(やま)へ/柴苅(しバかり)に、 00054720M4/祖父(ぢい)か川へせんたくじやといふた。サア/夫(それ)から、うば/同士(どし) 00054730M5か、つのめ/立(だつ)てせり/合(あ)ふた。/余(あんま)りやかましかつたゆへ、/何(なに) 00054740M6を/埒(らち)もない事せり/合(あ)ふと、わしが/呵(しかつ)たら、/夫(それ)から/漸(やう+)/止(や)め 00054750M7をつた。アリヤまあどう(十ウ)した/物(もの)じや。あいつハあほ 00054760M8うでハないかナ。ハヽア、それならそんな事もあろわい。 00054770M9アノうばハ/八瀬(やせ)の/産(むまれ)じやテイ 00054780¥N10¥J 00054790¥X/当意(とうい)/即妙(そくめう) 00054800M12ある/女郎(ぢよろう)、/馴染(なじミ)の/客(きやく)と/噺(はなし)など/仕(し)けるうち、/女郎(ぢよろう)、/客(きやく)にむか 00054810M13ひ、助四さん。せんど/中新(なかしん)がした/古手屋(ふるてや)八郎兵衛見イたか。 00054820M14客ヲヽ二日/目(め)に見た。女郎わたしや三(十一オ)日目にさん 00054830M15じたかナ、アノ/中新(なかしん)が/千人(せんにん)/万人(まんにん)の/男(おとこ)の/中(なか)でも、/可愛(かあい)とおも 00054840M16ふおとこハたつた、といふとき、/客(きやく)、/女郎(ぢよろう)の/皃(かほ)を見て、/其= 00054850M17跡(その=あと)ハどうじやつた。女郎サアわたしがお/妻(つま)なら、お/前(まへ)さん 00054860M18と/共(とも)にたつた/二人(ふたり)(十一ウ) 00054870¥P172 00054880¥Y/序((ママ)) 00054890L3/当時(いまどき)/粋(すい)を/遺(ふる)ふのともがらが、/粋(すい)の/元手(たね)とせるものは、/先(まづ)/流= 00054900L4行唄(はや=りうた)はやくおぼへ、/戯場(しばゐ)の/玄々(くろがり)、/噂(うハさ)に、/小短(こみぢ)かき/笑話(おとしばなし)なり。 00054910L5/其粋(そのすい)を/尽(つく)せし/話(はなし)をこゝに/野暮天(やぼてん)のぬし、まめやかに/書集(かきあつ)め、 00054920L6おのれも/世(よ)にしばらく/粋(すい)をふるハむと(跋オ)/仕(し)給ふ。/予(われ) 00054930L7/洛(ミやこ)にありし/日(ひ)、かのぬしがうたゝ/寐(ね)の/間(ひま)に、/艸稿(したがき)を/閲(けミ)する 00054940L8に、よくもその/姿(すがた)を見つけ、よくもその/情(おもむき)を/探(さぐ)りし/話(はなし)こそ 00054950L9あなれバ、これや/新話違(しんばなしちが)ひなしと、/請人(うけにん)の/証判(しようはん)をすゆるも 00054960L10のは、/浪華(なには)の/隠子(いんし)奈河亀毛△G(跋ウ) 00054970¥Q 00054980M3寛政九年丁己霜月新刻 00054990M5△浪速書林△塩屋長兵衛 00055000M9△皇都書林△@蓍屋儀兵衛|林△安五郎@ 00055010¥P173 00055020¥U噺本大系△第十三巻 00055030¥T落噺;/無事志有意(ぶじしうい)〔内題〕 00055040¥G 00055050¥Y 00055060L16寛政十年正月跋 00055070L17立川談洲楼焉馬撰 00055080L18団十郎白猿序 00055090L19紫園春潮画 00055100L20中本一冊 00055110¥Y落噺;/無事志有意(ぶじしうい) 00055120M3△△△△△△△△△△△△△立川談洲楼焉馬判 00055130¥Y序 00055140M7/庭増気色(にハにきそくをませバ)、/晴沙緑(せいのきさこミとり也)。/林変容輝(はやしにようきをへんずれハ)、/宿雪紅(のこんのゆきくれない也)と 00055150M8いへり。/草木(そうもく)も/春(はる)を/迎(むか)へて、/長閑(のどか)なる/折(おり)から、/吉例(きちれい)の/噺初(はなしそめ) 00055160M9の/三立目(ミたてめ)、/気楽(きがらく)と/声(こへ)をかけたハ、/何(なに)やつだヤイ 00055170M10@牛嶋の方より|市川白猿△△@気が楽きがらくきがらぷう 00055180M11/当時(とうじ)なんでもおほひまあけ、ほくてきせけんをはゞからず、 00055190M12天地/乾坤(けんこん)の其あいだに、/苦労(くろう)ハちつともない田の/不動(ふどう)に 00055200M13(一オ)五代のこういん、七左衛門といふしんまいいんきよ、 00055210M14/当年(とうねん)正月廿一日、なんとみな様、まださむいじやござりま 00055220M15せぬか。かじけハもとより御ぞんじの、/納豆(なつとう)ゑぼしをぬぎ 00055230M16すてゝ、/黒(くろ)い/頭巾(づきん)にねづミの/胴服(どうぶく)、あかざの/杖(つへ)に高あしだ、 00055240M17高いハおやじがゆづりの/鼻(はな)、はなが見たくバ秋葉へござれ、 00055250M18はるハあきはの花/盛(さかり)、/年&(ねん+)/歳&(さい+)花あいくち、/焉馬(ゑんバ)がはなし 00055260M19をするならバ、七左衛門が/聞(きこ)ふとハ、/河豚(ふぐ)に大こん/鴨(かも)に/葱(ねぎ)、 00055270M20/市(いち)が/栄(さかへ)る/下津町(したつまち)、/祖父(ぢゝ)ハ山の手/祖母(ばゝ)ハ/川端(かハばた)橋&に、/咄(はなし)の/評= 00055280¥P174 00055290L1判(ひやう=ばん)四里/四方(よほう)、/聞(きく)べい見るべいはなすべい、/庚申(こうしん)まちに白猿 00055300L2が、三筋たらねへ/序(じよ)のせり/譜(ふ)、/福(ふく)茶に(一ウ)うかれた/戯言(たハこと) 00055310L3と、ホヽうやまつて、/坊主(ぼうず)にハなりませぬ 00055320L5△△△△△△△/噂斗(うハさばかりの)/入道(にうとう)/先(さきの)/肝癪(かんしやく)/団十大尽(だんぢうたいじん)/白猿(はくゑん)/述(のぶる) 00055330L7△△△幾千代も葉なしにしげれ梅の花(二オ) 00055340¥G(二ウ) 00055350¥T1落噺;/無事志有意(ぶじしうい) 00055360¥A立川談洲楼焉馬撰 00055370¥N1¥J 00055380¥X歳旦若水△△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00055390M7春ハ/曙(あけほの)。やう+しろくなりゆく山ぎハ、すこしあかりて、 00055400M8むらさきだちたる/雲(くも)の/細(ほす)くたなびきたると、/清女(せいぢよ)のかゝれ 00055410M9しもむべなるかな。/一夜(いちや)明れバかけ/乞(こい)の、つれなく見へし 00055420M10わかれより、/暁(あかつき)がたハ扇+、宝舟+と/売(うり)声に、/裏住居(うらすまい) 00055430M11のひとりものも目をさまし、/若水(わかミづ)/汲(くま)んと/手桶(ておけ)さげて、/井戸(いど) 00055440M12ばたにいたれバ、とくにもおきて、/釣瓶(つるべ)ながら水をあびて 00055450M13/居(い)るもの有。だれだ。福蔵か。ムヽ徳右衛門か。いゝ/春(はる)だ 00055460M14な。ヲヽサ。いゝ春(三オ)だな。いつもげんきだ。はやく 00055470M15おきたな。何さ。/夕(ゆふ)べからおやかたのかけとりの/供(とも)にいつ 00055480M16て、今かへつたから、すぐに水をあびるハ。/去年(きよねん)の春もあ 00055490M17びたら、一チ年中風もひかねへ。おのしもあびやれ。ムヽ 00055500M18おれもあびべいと、はだかになり、あたまからざつぷり。 00055510M19ヲヽひやつこいといふ所へ、十五六な娘か手桶をさげて/来(き) 00055520M20て、ヲヤ+、ふたりながら水をあびてさ。/一寸(ちよつと)つるべを 00055530¥P175 00055540L1かしておくれ。おとみさんか。とつさんハどうした。とつ 00055550L2さんハ/福寿草(ふくしゆそう)を売に。そう+銭もうけだの。あぶない。 00055560L3おれがくんでやろふと、手桶へいつぱい。其/跡(あと)へ/長屋(なかや)の女 00055570L4房二三人。サアいゝ所へ来た。おいらにもくんでくんなと、 00055580L5/面(めん)+たのんで/汲(くん)でもろふところへ、壱人ずみのどうしん 00055590L6/者(じや)のばゝアが(三ウ)/手桶(ておけ)をさげて、ヲヽいゝ所へ来やした。 00055600L7どふぞ一ツぱいおくれといへバ、/顔(かほ)を見て、おいらハもふ 00055610L8/恵方(ゑほう)参りに/行(ゆく)から、たれぞにたのみな。コレ、そんなにい 00055620L9ゝなさるな。娘や/若(わか)いかみ様たちにハ/汲(くん)でやつて、そふハ 00055630L10しないものといわれ、てめへ、くんでやれ。ヱヽ、おらア 00055640L11/着物(きもの)を/着(き)たといゝながら、ふせう※井戸をのぞいて、お 00055650L12やすい事だが、あれバいゝが 00055660¥N2¥J 00055670¥X春興神遊ひ△△△△△△△△△△△¥A松友亭△長綱作 00055680L15ゑびす/大黒(たいこく)、/初夘(はつう)参りより梅やしきへ/行(ゆか)んと、/福神(ふくじん)/仲ケ間(なかま) 00055690L16をさそいに/行(ゆく)。/寿老人(しゆろうじん)ハ/福禄寿(ふくろくじゆ)と二人リこたつにあたつて、 00055700L17けふハよしにせふといふ。/布袋(ほてい)ハ、どぶつであるくハごめ 00055710L18ん。そんならバ、びしやもんと/弁天(へんてん)、是(四オ)で/面白(おもしろ)かろ 00055720L19ふと、むだをいゝながら/野道(のミち)を行、亀井戸の玉やへあがり、 00055730L20めづらしく/蜆(しゞミ)のすい物、/外(ほか)になんぞ/呑(のめ)るものを/出(だ)してくれ 00055740M1とあつらへ、出来る内たばこをのんでいる。大こく、コレ 00055750M2ゑびす。貴様のたばこハ/匂(にほ)ひが/能(よい)が何ンじや。おれハきつ 00055760M3いのがすきじやによつて、まいをのみます。ムヽゑびすま 00055770M4いじやな。おれも/大黒(たいこく)まいをのむ。びしや門ハ何をのまつ 00055780M5しやる。おれハ此よろいかぶと/小手(こて)すね/当(あて)、/軍(いくさ)のなりの/様(よう) 00055790M6じやによつて、たてをのみます。イヤ是ハ/尤(もつとも)。弁天ハ何を 00055800M7のまれるぞ。アイ。わたくしハ/竜王(りうわう)。なる/程(ほと)、こいつもい 00055810M8ゝハといふ所へ、/稲荷(いなり)が跡から/来(き)て、福神たち、/爰(こゝ)にか。 00055820M9なんぞめづらしい/事(こと)でもござるか。イヤ、たばこのはなし 00055830M10さ。時に/貴公(きこう)ハ何をのまつしやる。(四ウ)おれハまづ/五穀(ごこく) 00055840M11を/守(まも)る/役(やく)じやによつて、/新田(しんでん)をのみます。まことにそれ 00055850M12+のおもひつき、どふも+いへたものでハないといふ 00055860M13内、となりの/座敷(さしき)をのぞけハ、/面躰(めんてい)/髪(かミ)の/毛(け)迄/赤(あか)く、/俳純子(ひどん(ママ)) 00055870M14の/羽織(はおり)に、ひざやのうわ/着(ぎ)、下着ハひぢりめん、ひじゆす 00055880M15のおび、/少(すこ)ししつそを守るとミへて、あかねのたびをはき、 00055890M16ひいろの大きせるに/朱(しゆ)らうをすげ、がん/首(くひ)あがりに、くわ 00055900M17ん+とくゆらせている/者(もの)あり。あれハだれだ。/猩&(せう+)とや 00055910M18らいふやつか。なにさ。ほうそう神だ。こつちへよんだか 00055920M19いゝ。コレほうそう神。これハ+どなたもさつきにから、 00055930M20おものごしハうけたまわりましたが、ゑんりよいたしてお 00055940¥P176 00055950L1りました。イヤ、ゑんりよにハ/及(およ)バぬ。おて(五オ)まへも 00055960L2きんねんハ/流行(りうこう)して、だいぶくめんがよいげな。いふくと 00055970L3いゝきせるまで。ちとおたばこ入をはいけん。ムヽ、/是(これ)ハ 00055980L4/紅皮(べにかわ)。おじめハさんごじゆ。ねつけハだるま。さだめてよ 00055990L5いたばこであろふ。一ツふくおもらい申さふ。イヤ、そハ 00056000L6でござります。何さ。此たばこ入でハと、一ツふくのめバ、 00056010L7ことのほかわるいゆへ、コレハどふしたものだ。ほうそう 00056020L8神、あんまりわるいの。アイ、わるふござります。これハ 00056030L9何だ。ハイ、まつかわでござります 00056040¥N3¥J 00056050¥X歳暮年の市△△△△△△△△△△△△△¥A談洲楼作 00056060L12あるおやしきにて、/浅草(あさくさ)の市のミやげに、はりこの/松(まつ)だけ 00056070L13を/奥女中(おくちよちう)へ/小買物(こかいもの)方より進上す。ヲヤ+、いつも/大黒(たいこく)様 00056080L14か大ばんをかつて(五ウ)来てくれながら、此よふな物を/銘(めい) 00056090L15+にくれたハ、いかな事でもあんまりなといへハ、ハテ、 00056100L16おまへ様方にハずいぶんおよろこびの/土産(ミやけ)、ことしハしだ 00056110L17しの松だけ、役者の/彼物(かのもの)をせう/写(うつし)にいたしたのゆへ、この 00056120L18うちに女がたでも立やくでも/敵役(かたきやく)の御ひいきのお方のまで、 00056130L19色+の/形(かたち)、/違(ちか)ひハござりませぬといふ咄が、殿様へしれ、 00056140L20いか様めづらしい事。/併(しかし)四十七本もあるを、どれがたれが 00056150M1のじやといふせうこハある/が((ママ))。/御意(きよい)でござります。其/証拠(せうこ) 00056160M2ハ、/仲間(ちうけん)どもへ竹の/皮(かわ)を売ます与兵へと申者、/彼(かれ)ハ/役者(やくしや)の 00056170M3/一物(いちもつ)こと※くぞんじておる/故(ゆへ)、是を/御召(おんめし)、/御聞被遊(おんきゝあそハされ)ませ。 00056180M4/然(しか)らハ皮与をよべとて御前へ召れ、此四十七(六オ)本のは 00056190M5りこの松だけ、其方/目利(めきゝ)を/以(もつ)て、是ハどの役者といふ事を、 00056200M6きつと申べしとの/仰(あふせ)。かしこまりましたと、おめる色なく 00056210M7立よつて、見れバ所も名にしおふ、/浅草市(あさくさいち)のこみ合に、馬 00056220M8じや+といふ/程(ほど)の、/紫色(ししき)/雁高(かんこう)しゝ/頭(かしら)、/扨(さて)/白黒(しろくろ)ハ其人の、 00056230M9うまれ立にもよるぞかし。あるひハちよつぺい/筋太(すしふと)く、しこ 00056240M10ろのなきハすぼけ物、/皆(ミな)それ+に名を印し、一つも/違(ちか)ひ 00056250M11ハそうらわずと/指出(さしいた)せバ、ありあふ人+、殿にも/感心(かんしん)あ 00056260M12そバして、ハテ/扨(さて)/能(よく)も/覚(おほへ)しものかな。かくせうぜきを申/子= 00056270M13細(し=さい)ハ。ハイ、わたくしハもと堺町の/芝居(しばい)に、二十年程おり 00056280M14ました。ムヽ、役者といふ/面(つら)でもなし。木戸番でもいたし 00056290M15ておつたか。イヽヱ。そんなら/幕引(まくひき)か。イヽヱ。/髪(かミ)ゆひか。 00056300M16(六ウ)イヽヱ。そして何をしておつた。がくやにおりまし 00056310M17た。ムヽ、がくやにてハ何の/役(やく)を/勤(つとめ)た。ハイ、/居風呂(すへふろ)を/焚(たい) 00056320M18ておりました 00056330¥N4¥J 00056340¥X蓮牡丹△△△△△△△△△△△△△¥A緑青人作 00056350¥P177 00056360L1/今ハ昔(いまむかし)。/本所(ほんしよ)/猿江(さるへ)の寺に、めづらしき/蓮(はす)の花が/咲(さき)、/其(その)花/形(かたち) 00056370L2ぼたんの/様(よふ)なるとて、/貴賎(きせん)/群集(くんしゆ)して/是(これ)を見る。かほどの/賑(にきハ) 00056380L3ひでも、銭を/儲(もふけ)る心なきは/出家(しゆつけ)かたぎ。とかくめんどうだ 00056390L4から、花ハもふちつてしまふたといふてかへしたがよいと、 00056400L5/切戸口(きりどぐち)をしめて人を入ず。/旦方(だんほう)から/来(き)ても、ことわりをい 00056410L6ふ折から、/門(もん)前にかご立させ、/供(とも)の女中二人リが、/下男(しもおとこ)に 00056420L7何かさゝやくとうなづき、/台所(たいところ)へ/行(ゆき)、ちとおたのみ申ませ 00056430L8う。/遠方(ゑんほう)から参りまし(七オ)たものでござりますが、此お 00056440L9/寺(てら)様に、めづらしいはすがござりますと/承(うけ給り)ました。どふぞ 00056450L10はいけん/致(いたし)とふござりますといへバ、/寺(てら)の男、イヤ、もふ 00056460L11ちつてしまいました。それハこまつた/物(もの)じやと、かごのそ 00056470L12バへ/来(き)て右の/次第(したい)をいへば、こんどハ女中が/来(き)て、/只今(たゝいま) 00056480L13/承(うけたまハ)れハ、花ハもふちりましたよふにござります。せめて 00056490L14/其跡(そのあと)なりと、はいけんを/願(ねか)/び((ママ))ますと/主人(しゆしん)も申ます。何とぞ 00056500L15御/取次(とりつき)被成て下さりませ。ハテ、おまいがたハ/遠方(ゑんほう)+と 00056510L16いゝなさるが、どこだへ。ハイ、/品川(しなかわ)/辺(へん)でござります。ム 00056520L17ヽ、とおひ所からだの。したが、花ハまだ/咲(さい)ていれど、/見= 00056530L18物(けん=ふつ)があつて/面倒(めんとう)だから/見(ミ)せるなと、おせう様の/言付(いゝつけ)でござ 00056540L19る。モシ御/納所(なつしよ)様。今お聞なさる通りだ。見せておやり被 00056550L20成ませ。そん(七ウ)なら/外(ほか)ハならぬ。/其(その)人斗りと、見せて 00056560M1かへす。そのあくる/日(ひ)又来て、きのふハ/有(あり)がたうござりま 00056570M2す。/今(こん)日も又/参(まい)りました。ハア/羅漢(らかん)へかへ。イヱ+、あ 00056580M3なた様へ/蓮(はす)を/見物(けんふつ)に。夕べ/主人(しゆじん)も/帰(かへ)りますと、あのよふな 00056590M4めづらしい蓮かある物かと、きついほめてゞござりました 00056600M5が、今日ハ/朝(あさ)£したく/致(いた)して/参(まい)りました。とほふもない。 00056610M6/一度(いちど)見たらよかろふに、/早(はや)く見て/帰(かへ)りなさいといへば、悦 00056620M7び/主従(しう※)見てかへる。又そのあくる日もきて、/見物(けんふつ)を/願(ねか)う。 00056630M8とんだすいきような。おまへの/旦那(だんな)ハなんだ。ハイ、/芝口(しはくち) 00056640M9の/町人(てうにん)の/後家(ごけ)でござりますが、むすこにやしきの十ケ所も 00056650M10ゆずつて、今ハ/高輪(たかなわ)の/石橋(いしはし)万やのとなりへ/隠居(いんきよ)しておりま 00056660M11す。ハテな、/風雅人(ふうかじん)だな。そんならハおせう様に(八オ)そ 00056670M12う申て/見(ミ)ませうと、右の/次第(したい)をはなせバ、おせうきいて、 00056680M13ハテかわつた/物好(ものずき)。けふで三日/来(く)るか。/左様(さよふ)でござります。 00056690M14/其上(そのうへ)に/後家(ごけ)か。左様でござります。そんなら見せろさとい 00056700M15へバ、女中ハ/庭(にわ)の/内(うち)へ/皆(ミな)+はいる。/和尚(おせう)も/衣(ころも)をひつかけ 00056710M16てあいさつに/出(で)よふと/座敷(さしき)の/障子(せうじ)の内、たばこぼんなど/出(だ) 00056720M17させている。/庭(にハ)の方に女の/声(こへ)として、/誠(まこと)に/蓮(はちす)ハ花の/君子(くんし)、 00056730M18ぼたんハ花の/富貴(ふうき)なる物といふが、いくど見てもあかぬ/詠(なか) 00056740M19めじやのふといふ。物ごしおく/床(ゆか)しく、/障子(せうじ)からのぞゐて 00056750M20見ると、/後家(ごけ)の/皃(かほ)が/獅子鼻(しゝつはな) 00056760¥P178 00056770¥N5¥J 00056780¥X/直段(ねたん)△△△△△△△△△△¥A金銀舎△作米作(八ウ) 00056790L3五六人/連(つれ)にて深川へ/遊(あそ)びに来て、/硯(すゝり)/蓋(ふた)が/出(て)ると、コレ/見(ミ)や 00056800L4れ。くわへにふきのとう、/九年(くねん)ぼ、/蒲鉾(かまほこ)、/黒(くろ)い物ハよく/跡(あと)へ 00056810L5のこるやつだから、/直(ね)ぶみなしにいくらが物が有。ドレ 00056820L6+、八/分(ふん)+。もちつとかつたり。九分+。壱匁+。 00056830L7まけろ。ヨイ+と手/拍子(ひようし)を打。サア此てうしと/盃(さかつき)。こい 00056840L8つハ/飛鳥(あすか)山でかりるよふな/銚子(てうし)だ。いくらが物がある。壱 00056850L9匁+。壱匁弐分。壱匁五分++。ヱヽまけろ。ヨイ 00056860L10++と手をうつ所へ、/女郎(じよろう)が/並(なら)ぶと/小(こ)ごへになつて、 00056870L11アノ/上座(せうさ)に居る/中(ちう)どしまハいくらだ。あれハ七匁五分が物 00056880L12ハある。五分つけよふ。おれにくりやれ。どふして+。 00056890L13そんなら八匁五分。ヱヽ/売(うつ)てやれ。ヨイ+。その次ハ。 00056900L14やつと七匁五分よ。三/番(はん)めハ/新(しん)ぞうだ。きれ(九オ)いな物 00056910L15だが、ほねぶとで/首(くび)がみじかい。六匁五分。七匁+。ヨ 00056920L16イ++。サアあのとしまハ/引(ひき)まみゑへ、/其次(そのつぎ)ハ/耳(ミヽ)のわ 00056930L17きにかんにうが有。いつちあとのハひたひがやかんで、き 00056940L18ハすみでかくしてある。よく見やれ。へこがあるそふな。 00056950L19三人一所にいくら。/文(ぶん)で壱/分(ふ)よ。あんまりだ。拾六匁+。 00056960L20拾八匁+。ヱヽまけろと手をうつゆへ、/女郎(ちよろう)もずつと/立(たつ)。 00056970M1/廻(まハ)しの/女(おんな)が、モシ、お/前(まへ)がたハ/何(なん)の/事(こと)でござりやす。つい 00056980M2ぞねへといへバ、コレ、此ついぞねへが/尻(しり)ハいくらが物が 00056990M3ある。三匁。+でも/気(き)がねへ。サアちつとねよふ。ミん 00057000M4などこへ行のだといへバ、廻しの女が/廊下(らうか)へでゝ、コレお 00057010M5よしどん。此お/客(きやく)を見たおしへとふさつせへ(九ウ) 00057020¥N6¥J 00057030¥X以上△△△△△△△△△△△△¥A伊豆千別作 00057040M8コレ、お/前(まへ)ハ/物(もの)しりだが、アノ手紙に、/以上(いぜう)と/書(かく)が、なん 00057050M9のいわれでござります。ハテ、以上とハ/上(かミ)を/以(もつ)てするとい 00057060M10ふ事よ。人の/位(くらい)にも、/上(かミ)の人を/以上(いでう)といふハさ。ムヽ、か 00057070M11みをもつてするといふ事か。ハヽア、それで/穴賢(あなかしこ)がわかつ 00057080M12た 00057090¥N7¥J 00057100¥X竹光△△△△△△△△△△△¥A砂邑亭△文好作 00057110M15今ハむかし。/神田(かんた)/辺(へん)を折助が酒によつて/千鳥(ちとり)足を、子供が 00057120M16はやして、ヱヽなまゑいやい、べらぼうめと/笑(わら)ふを/聞(きい)て、 00057130M17なんだ、なまゑいだ。うぬ、いつ酒をのませた。おれがす 00057140M18きでおれがのむに、すいさんなやつだといふ。(十オ)すい 00057150M19さんもすさまじい。折介やい、のろまやいとはやす。何ぬ 00057160M20かす。真二つにするぞと/脇差(わきさし)にそりをうつと、ハアイ、う 00057170¥P179 00057180L1ぬがどう/切(きる)/事(こと)がなるものだ。ぬいて見ろ+といふゆへ、 00057190L2こたへかねてひらりとぬけバ/竹光(たけミつ)。それミやアがれ。それ 00057200L3で/切(きれ)る物か。ハアイ+と/笑(わら)へバ、何うぬら、とげを/立(たつ)て 00057210L4やるぞ 00057220¥N8¥J 00057230¥Xけん酒△△△△△△△△△△△¥A月盛楼△紫園作 00057240L7両国の/駒止橋(こまとめはし)のあたりへ/非人(ひにん)があつまり、けふハ三河屋に 00057250L8/大寄合(おゝよりあい)があつて、おあまりのむまいものを大ぶんもらつて 00057260L9きた。おのしハどふした。おれハ、コレ見やれ。めしと鯛 00057270L10のあら。六ハどのよふな物に有ついた。ヲヽサ。京屋で太 00057280L11&/講(こう)があつて、一チばんすきなしたみ/酒(さけ)、/梅干(むめほし)おけに一ツ 00057290L12ぱいある。(十ウ)こいつハありがたい。まんふく/長者(てうじや)三人 00057300L13/連(つれ)で、外の宿なしどものこぬ内、お屋敷の/塀(へい)のかげでたの 00057310L14しもふと打つれ、時に酒ハ一ト口つゝ/茶(ちや)の/湯(ゆ)にまハして、 00057320L15肴ハぶれいこう。手をつつこみ、アヽ手前ばかりのむ。イ 00057330L16ヤこうせう。けんをせう。てまへしつているか。こいつ、 00057340L17/乞食(こしき)をばかにした。けんをしらぬ事がある物か。いぜんハ 00057350L18三つぶとんにも座した男だ。ヲヽそんなら/旦那衆(だんなしゆ)の時とハ 00057360L19ちがふ。けんにかつた/者(もの)が/呑(のミ)つこ。がつてんだ。三けん折 00057370L20づめだ。ムメヤ。りやん。さんな。むつつ。ぱまで。/九(きう)と 00057380M1いふと、/辻番(つちはん)から、/通(とを)れ 00057390¥N9¥J 00057400¥X大/皷(つゝミ)△△△△△△△△△△△¥A紅楓亭△丹盛作 00057410M4ある/地主(ぢぬし)のむすこ、大つゞみを/毎晩(まいばん)けいこせしを、/長屋(なかや)の 00057420M5者共、家主へ(十一オ)/言(いふ)よふ、まいばんの大つゞみの音で、 00057430M6/盤木(ばんき)かとぞんじて夜がねられませぬ。大風の/吹(ふく)時などハ御 00057440M7無用になされて下されと/願(ねが)うゆへ、此/旨(むね)を/親(おや)ぢへいへハ、 00057450M8もつともな/事(こと)とて/止(やめ)させける。出入の/仕事衆(しことしゆ)が/来(き)て、/若旦= 00057460M9那(わかたん=な)。此頃ハなぜつゞみをお打なされませぬ。イヤ、それハ 00057470M10つゞみの音が、火の見のばん木の音にまちがふから止てく 00057480M11れろと、大屋のたのみ。夫で何のなぐさみもないといへバ、 00057490M12それハわたしが/仕様(しよう)かござりやすと、/小(ちい)サな板へつゞみを 00057500M13/絵(ゑ)に/書(かい)て、小刀をもつてほりぬくから、/夫(それ)ハ何にするとと 00057510M14へば、/是(これ)ハ家根の火の見へ、つゞみのけいこのけむじるし 00057520M15さ 00057530¥N10¥J 00057540¥Xけいこ所△△△△△△△△¥A千林亭△万善作(十一ウ) 00057550M18今ハむかし。/娘(むすめ)のけいこ所へ、/年比(としころ)四十五六の米やの手代、 00057560M19何かのせハをやいて、/有時(あるとき)、けふハ/雪(ゆき)もふれバ、/誰(たれ)もけい 00057570M20こにこず、お/前(まへ)もこたつにあたりなさいと、/母(はゝ)おや娘のあ 00057580¥P180 00057590L1たつている中へ足をふみ込、ついあぢな心になつて、娘の 00057600L2手だと思ひ、/母(はゝ)の手をにぎりけれバ、はゝも大きにきもを 00057610L3つぶし、此/里風(りふう)さんハあきれもしない。何をしなさるとい 00057620L4ふこへに、娘も/気(き)の/毒(とく)がりて立てゆく。/母親(はゝおや)の/云様(いふよふ)、是里 00057630L5風さん。おまへにかぎつて、こふゆふ事ハ有そふもない物。 00057640L6あの子の親ぢともお心やすいゆへ、何もかも御ぞんじの上 00057650L7の事。/後家(ごけ)を立て居るのも、あの子を/相応(そうわう)な所へ遣りたい 00057660L8ばつかり。夫に娘の手と取ちがへて、わたしが手をにぎる 00057670L9といふハ、おへ(十二オ)ねへおまへもしつぶかな人だ。コ 00057680L10レおふくろ。まつたくそふゆふわけでハない。おまへの手 00057690L11としつてにぎつたのだ。そんならわたしをなぶるのか。な 00057700L12ぶるのでもない。/相応(そうわう)な所が有から、/縁付(ゑんつけ)なさるかといふ 00057710L13/相談(そうだん)さ。ばからしい。手を/握(にき)らずと、口て言たがよい。イ 00057720L14ヤサ。手をにぎつたわの、五十両の/支度金(したくきん)と/言(いふ)事よ 00057730¥N11¥J 00057740¥X/蛇(へび)△△△△△△△△△△△△△△△¥A美知丸作 00057750L17/是(これ)も今ハむかし。隅田川/辺(へん)へ/摘草(つミくさ)に/行(ゆき)しに、下女のまたぐ 00057760L18らへ蛇がはい/込(こミ)、大らんを入る。江戸へ/医者(いしや)を/呼(よび)にやろふ 00057770L19と言所へ、/武蔵(むさし)やの/若(わか)い/者(もの)/来(き)かゝり、/気遣(きつか)ひなされますな。 00057780L20蛇ハ今/出(で)て行ますと言(十二ウ)うち、へびハよわつたかた 00057790M1ちでぬけて出る。人+、こいつハきみやう。どうして今 00057800M2出るといふ事をしつて居るといへバ、若者、そこにハちつ 00057810M3と見/所(ところ)がごさりますと云。そんなら夫を/伝授(てんじゆ)してくれろと、 00057820M4/旦那(だんな)か金弐分出して頼めハ、大事のことだか、おしへて上 00057830M5ケませう。女中のまへゝはいつた蛇の/直(ちき)ニ出ると申たハ、 00057840M6アノ女中の/顔(かほ)をころうじろ。/皃(かほ)がどうした。ほうが/赤(あか)い 00057850¥N12¥J 00057860¥Xりちき者△△△△△△△△△¥A黒羽二亭△金埓作 00057870M9今ハむかし。かせぎにせいをだして、/芝居(しはい)を一度見た事も 00057880M10なく、/女郎(ちよろう)かいハなをの事、/銭(せに)の出る事ハつき合もせず、 00057890M11/夜(よる)から夜まで/遊(あそ)ぶ事きらいなもの有。/長(なか)やのうちにそうれ 00057900M12いがありて、ゆかねバならぬゆへ、浅草/辺(へん)の(十三オ)寺ま 00057910M13で行、かへりに/友(とも)だちが、あんまり/吝(しわ)いやつじやによつて、 00057920M14あいつを吉原へつれていて、やみつかせてやろう。こいつ 00057930M15ハよかろうと/相談(そうだん)して、コレ/徳(とく)兵へ。おのしハ三十になる 00057940M16まで吉原を見た事ハあるまい。せめてけん物にでもあゆみ 00057950M17やれ。銭さへ出ぬ事ならゆかふと/連立(つれたち)、大門をはいると女 00057960M18郎の/道中(とうちう)。コレ、あれが女郎か。ヲヽサ。モウ見世が出た 00057970M19と/格子(こうし)/先(さき)へつれて行見せれバ、うつくしい物だ。一トはん 00057980M20壱両もでるか。何さ。あれが弐朱だ。うそをいふぜへ。う 00057990¥P181 00058000L1そじやアねへ。酒肴に本膳めしをはら一ツぱいくつて、ね 00058010L2どうぐがにしき、ひぢりめん。アノ女郎を/抱(だい)て/寐(ね)て弐朱よ。 00058020L3ハテな。それで弐朱とハ、弐朱/銀(きん)ハありがたい。内へかへ 00058030L4つてだいて寐よふ(十三ウ) 00058040¥N13¥J 00058050¥X大屋△△△△△△△△△△△△△¥A裏住翁作 00058060L7おまへの御/子息(しそく)様ハ、/扨&(さて+)御はつめいでござります。まこ 00058070L8とにすへたのもしいとほめけれバ、イヤ、左様おつしやつ 00058080L9ても、/忰(せがれ)めもはつさいで口がすぎますといふ。さてハ思ひ 00058090L10つきのしやれをいふとこゝろへ、なる/程(ほと)、人にハ/色(いろ)+が 00058100L11ござる。此間大の/男(おとこ)がこしにもへぎのふといひもで、/文箱(ふミはこ) 00058110L12とごぜんかごを/荷(にな)つて/行(ゆく)を、あれハ何だと/言(いつ)たら、/五才(こさい)し 00058120L13やと云ましたといへバ、壱人の男かいふにハ、/夫(それ)ハ/珍(めつ)らし 00058130L14くない。むかし/利久(りきう)/時分(しふん)にハ、/茶(ちや)の/湯(ゆ)をした人に、三才さ 00058140L15へあると云。こちらに/居(い)た男が、ましめな/顔(かほ)で、何さ。夫 00058150L16より私共の大屋さんのむすこハ、二才て、まいばん五人/組(くミ) 00058160L17を/頼(たの)みます(十四オ) 00058170¥N14¥J 00058180¥X湯どうふ△△△△△△△△△△△△¥A奥久作 00058190L20ある所へ/夜噺(よはなし)に/行(ゆき)ける折から、/子僧(こそう)/出(て)/で((ママ))、/旦那(たんな)さま。お/夜= 00058200M1食(や=しよく)をおあがり被成ませといふ。あなたにもあげろ。何ぞ/出= 00058210M2来(で=き)たか。ハイ。どうふでござります。ムヽ八はいどうふか。 00058220M3イヽヱ。いしやきか。イヽヱ。くずかけか。イヽヱ。そし 00058230M4て何だ。ハイ、ゆでたの 00058240¥N15¥J 00058250¥X○地口/好(すき)△△△△△△△△△△△△¥A三楽作 00058260M7/今(いま)ハむかし。/地口好(ぢくちずき)の/伴頭(ばんとう)、見世に/帳合(てうあい)をして/居(い)る。又地 00058270M8口ずきの/按摩(あんま)、おもてを、やんまはりのりやうじといふて 00058280M9/通(とお)るを/呼(よび)こんで、コレ、おぼうハ地口ずきか。おれも地口 00058290M10ハすきだ。/今夜(こんや)ハりやうじをしながら地口が/聞(きゝ)たい。/是(これ)ハ 00058300M11/願(ねが)ふ所。左様ならバ、御せうばいの/酒(さけ)づくしで、おまへ様 00058310M12からおはじめ被成ませ。ヲヽそれ(十四ウ)なら、まづ/劔(けん)び 00058320M13しが/伊丹(いたミ)やす。/上(かミ)から/富士(ふじ)のあたり迄もんて/貰(もら)ひたい。お 00058330M14つと/焼酌(せうちう)+。なんぼおまへがふじ身でも、こうもんだら 00058340M15紙屋のきくかねへ。是ハありがた山+、もつとぴんとす 00058350M16るよふに、九のあたりから七ツ梅まで頼ます。三/州(しう)でハな 00058360M17い/按州(あんしう)といへバ、アイ。あひ/酒(しゆ)+と/言(いゝ)ながらもんでも、 00058370M18もつとぴんともめといふゆへ、是ハもめんやの/男(おとこ)山だとい 00058380M19ふと、ばんとうむつとして、コレ、/銭(せに)を/取(とり)ながら、もめん 00058390M20やとハなんの事だ。ハイ、/御免酒(ごめんしゆ)+。ヤア/口功者(くちこうしや)なべら 00058400¥P182 00058410L1ぼうめだと、とつてかゝる。/勝手(かつて)から/大勢(おゝせい)出て、/満願寺(まんくわんじ) 00058420L2しなせへ+ 00058430¥N16¥J 00058440¥Xけだ物△△△△△△△△△△△△△¥A何見亭作 00058450L5是も今ハ/昔(むかし)。/深川(ふかかわ)/辺(へん)に山がやといふ/女郎(ちよろう)やができ、/客(きやく)三人 00058460L6/一座(いちさ)にて/行(ゆけ)バ、/唐紙(からかミ)ハ(十五オ)もみぢにぼたんの/絵(ゑ)、/中居(なかい) 00058470L7のまへだれハ/松杉(まつすき)の/大木(たいほく)、/或(あるい)ハ/萩(はき)すゝきを/染(そめ)、花やかに/銚= 00058480L8子(てう=し)盃を/持出(もちいて)、サアお/鹿(しか)さん、お/猪(いの)さん、お/猿(さる)さん。おいで 00058490L9といふと、づらりとならんだ/所(ところ)が、とれもいゝぶんハない 00058500L10しろ物。盃がすんで/床(とこ)へまわる。客三人ながら/小(せう)用にたち、 00058510L11どふだ。てめへのおしかとやらハ。ヲヽきつい者よ。ちと 00058520L12さみしいが、コレ/泣(なく)ハな。ムヽそいつハあやかり物だ。お 00058530L13れがおいのとやらハ/首(くび)かみじかい。そして床へはいると、 00058540L14/寐(ね)てばかり居る。おれがおさるとやらハ、ちつともねずに、 00058550L15いたづら斗りしている。コレ女中。外によぶのハないか。 00058560L16アイ。お猿さんの内から/出(で)るとしまのお/狒々(ひゝ)さんがよかろ 00058570L17ふ。しかしあの子ハ、しらがだらけだ。べらぼうめ。そん 00058580L18な大どしまハいや。そんならお/狸(たぬき)さんハ、したつぱらに/毛(け) 00058590L19がなし。お/狐(きつ)さんハ/面白(おもしろい)が/情(ぜう)がなひ。ムヽ(十五ウ)こゝで 00058600L20一/番(はん)の/板頭(いたかしら)ハだれだ。アイ。おとらさんとおふかみさんで 00058610M1ござりやす。そんなら/其(その)ふたりをよんで来てください。ア 00058620M2イ、きいて/参(まい)りませふと/行(い)て/帰(かへ)り、モシ、わるふござりや 00058630M3す。おとらさんハ竹/屋(や)に/居(い)つゞけ。おふかみさんハどふし 00058640M4た。アイ。今/客衆(きやくしゆ)をおくつてゆきやした 00058650¥N17¥J 00058660¥X名酒屋△△△△△△△△△△△△△¥A橘作 00058670M7今ハ昔。深川へ/名酒(めいしゆ)やといふ/茶屋(ちやや)ができた。まづいゝ/女郎(ちよろう) 00058680M8ハ/紙(かミ)やのお/菊(きく)、もめんやの/梅(むめ)といふから、/呼(よび)にやつた所が、 00058690M9/今(いま)/汐留(しほとめ)まで二だん/送(おく)り/荷(に)いつたといふ。/隅田川(すミだかわ)のお/汲(くミ)ハ/寒(かん) 00058700M10の/見舞(ミまい)にいつたといふ。どふで此一/座(さ)で、ずつとハ/帰(かへ)られ 00058710M11ぬ。ちつとわるいのでもいゝといつたら、アイサ。ちつと 00058720M12わる(十六オ)いのも、/新川(しんかわ)の/出(で)ばんで/直(なを)しになりやした 00058730¥N18¥J 00058740¥X祭り△△△△△△△△△△△△△¥A反哺斎作 00058750M15/今年(ことし)のまつりにハ何がよかろふ。ばか/太鞁(だいこ)や/唐人(とうしん)でもねへ 00058760M16から、おどりを/町内(てうない)の/子供(ことも)にをしへ、二十人ばかりそろへ 00058770M17たらりつぱでよかろふといへバ、また/雀(すゝめ)おどりか。こいつ 00058780M18も久しい物だ。ハテ、/雀(すゝめ)おどりでハない。/鴬踊(うくいすおとり)といふ思 00058790M19ひ付。まづいせうを/鴬茶繻子(うくいすちやしゆす)の/半(はん)/へ((ママ))り、ひぢりめんに/梅(むめ) 00058800M20をぬつた/下帯(したおひ)のそろひで二十人、どふたろふ。こいつハよ 00058810¥P183 00058820L1かろふと、やたいを/梅(むめ)の/大木(たいぼく)にして、/囃子方(はやしかた)梅の花/笠(かさ)。そ 00058830L2の日にもなつて、おし出した所が花やか。/所望(しよもう)の/拍子木(ひやうしき)を 00058840L3打バ、うぐひす/踊(おとり)が所望じやが、がつてんか。ヲヽサテが 00058850L4つてんじや(十六ウ)とおどりを見て、/皆(ミな)+が、こいつハ 00058860L5いゝ。あれハ/何所(どこ)のまつりだ。おふ/桶(おけ)町 00058870¥N19¥J 00058880¥X女郎の/■(かご)△△△△△△△△△△△△¥A千露作 00058890L8今ハ昔。/吉原(よしわら)へ/通(かよ)ふ道に、/女郎(ちよろう)の/■駕舁(かごかき)があるといふ/噂(うハさ)に 00058900L9ちがハず、/雪(ゆき)のちら+ふるに、こま/下駄(げた)で/裾(すそ)を/引(ひき)ずりな 00058910L10がら、かごをやりんせう+といふ。大門迄いくらでやる。 00058920L11/今宵(こよひ)ハ雪がふりんすから/弐朱(にしゆ)でおざんす。三百にまけねへ。 00058930L12ばからしうおす。そんなら四百よ。マアおのりなんしとの 00058940L13せて、/棒組(ほうくミ)さん。よふおすか。アイお出なんし。ヨウス、 00058950L14ヲウス+といつて、そろり+とやる。コレ、こゝハど 00058960L15こだ。アイ。/駒形(こまかた)でおす。どふもゆきでなりんせん。/酒手(さかて)を 00058970L16おくんなんし。どうでもせう。はやくやつてくん(十七オ) 00058980L17な。アイ。だんなもやぼでハありんせん。ヨウス、ヲツス 00058990L18+といつても、ねつからやらず。/客(きやく)もきをもんで、ヱヽ 00059000L19じれつてへ。はやくやらねへかといへバ、ばからしい。お 00059010L20めへさんばかりおやりなんし 00059020¥N20¥J 00059030¥X米△△△△△△△△△△△△△△△¥A始亭作 00059040M3/是(これ)も今ハむかし。つき米やの/荘治(そうじ)が/蔵(くら)にて、/仙台米(せんたいまい)の/仲人(なこうど) 00059050M4にて、/播州(はんしう)米の方へ/美濃(ミの)米が娘お/米(よね)を/嫁(よめ)にやりし所、ほど 00059060M5なく/懐胎(かいたい)して、/当(あた)ル/十月(とつき)に/虫気(むしけ)つき、やれ/米(こめ)あげざるよ、 00059070M6さん/俵(だわら)とさハきたち、/升取(ますとり)ばゝが/来(き)て、コレハちとむつか 00059080M7しい。大門/通(とおり)りの/万石(まんこく)どうしを/呼(よび)、/俵(たわら)をもみながら、/通(とおし)に 00059090M8かけても/出(で)かねるゆへ、/腰(こし)のあたりを二つ(十七ウ)三つた 00059100M9ゝけバ、とたんの/拍子(ひやうし)に/子米(ここめ)が出る。ミな+、いゝ子米 00059110M10だと見れバ、/糠(ぬか)ア+ 00059120¥N21¥J 00059130¥X/白眼競(にらめくら)△△△△△△△△△△△△△¥A三毛作 00059140M13今ハ昔。にらめくらの/会(くわい)を/催(もようし)、/角力(すまふ)のことく/東西(とうざい)に立わ 00059150M14かれ、/土俵(とひやう)へあがりにらみあひ、/笑(わらい)たる/者(もの)ハ/負(まけ)と、/行事(きようじ)是 00059160M15をさだめる。扨だん+に取あがり/大関(おゝせき)になり、/東(ひかし)大目玉 00059170M16+、/西(にし)ハまじめ/顔(かほ)+と、/双方(そうほう)立/向(むか)ひにらめる。しばら 00059180M17く/勝負(せうふ)つかねバ、水をのませ、それよりひしゆつをつくし 00059190M18てにらめて/居(い)ると、だん+目玉がいたくなるゆへ、両方 00059200M19の/関取(せきとり)も手を出して、目をいぢろふとすれバ、/見物(けんふつ)から、 00059210M20こすりハならねヱぞ+ 00059220¥P184 00059230¥N22¥J 00059240¥X/柔術(やわら)△△△△△△△△△△¥A青奴作(十八オ) 00059250L3コレ八や。此比おらが/長(なが)やへ、やわらの/師匠(しせう)がこして来た。 00059260L4おのしやおいらも、どんな事があるめへ物でもねへ。/習(ならい)に 00059270L5ゆかふと、アイ、おたのん申やすといへバ、/先生(せんせい)/立出(たちいて)、ど 00059280L6つちからござつた。ハイ。長やの者でござりやす。どふぞ 00059290L7おしへて下さりやせ。ムヽ、/下地(したち)でも/貴様(きさま)たちハあるか。 00059300L8したぢと申て、けんかといふと、そつほうをなぐるよりほ 00059310L9かハそんじませぬ。ハヽヽヽ、それハ/何(なん)の/役(やく)にたゝぬ。ま 00059320L10づぶつてかゝつて見さつしやい。それどうだ。アイタ+。 00059330L11こいつハいたい。/時(とき)に/是(これ)が/露(つゆ)のあたりむそうがへし。アヽ 00059340L12/先生(せんせい)様。あやまりました。サ、是が/表(おもて)。又/裏(うら)をとれバ、す 00059350L13ぐにこういたす。吉や、とんだこつたなア。モシ先生様。 00059360L14やわらに/裏表(うらおもて)がござりやすか。/私(わたし)ハおもてより、うらにい 00059370L15たしやせふ。(十八ウ)おもてハわるふござりやす。なぜ、 00059380L16おもてハわるい。ハテ、おもてハ/知(し)つた人にあつた/時(とき)、め 00059390L17んどうだ 00059400¥N23¥J 00059410¥X玉手/筥(はこ)△△△△△△△△△△△¥A玄武亭△亀楽作 00059420L20今ハむかし。/堀貫(ほりぬき)の/井戸(いと)ことの外はやり、ある所のむすこ、 00059430M1/井戸(いと)をのぞき、つい中へ/落(おち)たる所、そこともしらぬ/大海(たいかい)に 00059440M2まん+とわけ/行(ゆけ)バ、/金銀(きん※)/珠玉(じゆきよく)をつくしたる/楼門(らうもん)に、/海月(くらげ) 00059450M3の/門番(もんはん)出て、何者ぞと云。/我(われ)ハ日本の者也。こゝハいつく 00059460M4ぞととへバ、/龍宮城(りうぐうぜう)也。あやしきやつと/竜王(りうわう)の/御前(こぜん)へ引す 00059470M5へ、/大魚(たいぎよ)あつまり、せんぎの所、/乙姫(おとひめ)ちらと見給ひ、/鰒(ふぐ)の 00059480M6/局(つほね)をめされ、どふぞあのものをミづからが/殿御(とのご)にしたひと 00059490M7の/願(ねが)ひ。/龍王(りうわう)にも、(十九オ)いにしへ/浦嶌(うらしま)が/例(ためし)もあれバ、 00059500M8/早速(さつそく)/聟(むこ)になされける。/扨(さて)かのむすこ、/竜宮(りうくう)ハ日本ほど/面白(おもしろ) 00059510M9くなけれバ/帰(かへ)りたく思ひ、乙姫をそゝなかし、/欠落(かけおち)の/相談(そうだん) 00059520M10をすれバ、そんならわたしハ/跡(あと)から。おまへハ先へ、此玉 00059530M11手/筥(はこ)をもつてと、ある/夜(よ)ひとりしのび出、むせうにおよぎ 00059540M12て/海辺(かいへん)につきしが、くらさハくらし、いづくともしらずけ 00059550M13つまづきて、玉手筥をほうり出し、/蓋(ふた)のあいた/侭(まゝ)とり/集(あつめ)て 00059560M14いる所へ、/鯱(しやちほこ)をはしめ/鰐(わに)/鮫(さめ)其外/追(おつ)かけ来り、こゝに/居(い)る 00059570M15と、ゑりかみつかんで引立、こいつでハなひ。コレ、今こ 00059580M16ゝへ/若(わか)い男ハ/来(こ)なんだか 00059590¥N24¥J 00059600¥X十軒店△△△△△△△△△△¥A明石月影作(十九ウ) 00059610M19/比(ころ)ハ二月のすへ、ある/小道具(ことうく)やにて、/去年(きよねん)の/売残(うりのこ)りの/雛(ひな)を 00059620M20出し、/今年(ことし)ハはやくうれるよふに/御酒(ミき)を上ケていわふ。か 00059630¥P185 00059640L1の雛、大きに/酔(ゑい)て、なんと次郎左衛門。おのしなどハむか 00059650L2しでの/安(やす)くない男だが、/近年(きんねん)の出/来(き)ぼしめらにおし付られ 00059660L3て、うれないとハごふはらな事だ。なる/程(ほと)、/善次(せんじ)が云通り 00059670L4だ。もふ十/軒(けん)/店(たな)に/下(くた)りめらが出ているだろふ。たゝきこわ 00059680L5してやろふと、/大勢(おゝせい)づれで/雛(ひな)店へ/行(ゆき)、こいつらハなんだ。 00059690L6しやきばつて/居(い)るが、まだ江戸の/料理(りやうり)ハくつた事ハあるま 00059700L7い。どけへぞうせろ。つがもないといへバ、/京人形(きようにんきよう)ども、 00059710L8こなんハどこからござんした。めつそうな、きよとひことい 00059720L9わんす。何おきやアがれとさわぐゆへ、/近所(きんぢよ)から/盃台(さかづきたい)/小= 00059730L10重筥(こ=ちうはこ)が来て、の(二十オ)ぞひて見て、わるいやつらが来た。 00059740L11二三年あと、まへ店にいた次郎左衛門と/善次(せんじ)だ。どふぞし 00059750L12よふがあろふと出て、コレ、おのしたちがいふもむりでハ 00059760L13ない。マアこつちへ来やれとつれて/行(ゆく)。しばらくあつて、 00059770L14モウすんだといへば、/京人形(きようにんきやう)共、どういふ事でいんだぞ 00059780L15い。酒でもこうたか。いんにや、あの/上(うへ)に酒でハやかまし 00059790L16いから、/大孫(たいまこ)で/樟脳(せうのう)を/買(かつ)て出したら、コリヤたまらぬ、/首(くび) 00059800L17をひつこぬいてしまわれるといふて/迯(にげ)た 00059810¥N25¥J 00059820¥X釣り好△△△△△△△△△△△¥A世事広丸作 00059830L20/深川(ふかかわ)の/木場(きバ)の/辺(へん)て、/一心(いつしん)ふらん/岡釣(おかつり)をしている所へ、もし、 00059840M1こゝへ廿四五な男ハ/参(まい)りませぬかといへバ、アイ/来(き)ました。 00059850M2/嶋(しま)の/羽(は)おりを/着(き)ておりま(二十ウ)したか。アイ。はおりを 00059860M3/着(き)ていました。なんぞ/喰(くい)ながらきましたか。アイ。くひま 00059870M4す+。アノ女のつれがありましたか。アイ。ありました。 00059880M5女も/若(わか)い/娘(むすめ)でござります。アイ。左/様(よう)+。ホイ迯たわい。 00059890M6どつちへ迯ました。イヱ、大きな/鮒(ふな)を。イヤサ。其人ハど 00059900M7こへ/参(まい)りましたといへバ、ヱ、何をいゝなさる 00059910¥N26¥J 00059920¥X虎△△△△△△△△△△△△△△¥A烏亭△百馬作 00059930M10/和藤内(わとうない)、/異国(いこく)をしたがへ、日本へ/帰(かへ)り、こふしているもむ 00059940M11だなれバ、なんぞあきないをしよふ。まづ/国性爺(こくせんや)/藤内(とうない)とい 00059950M12ふ/町人(てうにん)になり、/料理(りやうり)見世も/松東庵(せうとうあん)とまちがへバ、/呉服(こふく)やが 00059960M13よかろふと、/幸(さいわい)/唐(から)より/持来(もちきた)りし/織物(おりもの)を/売(うり)、正札付の大見 00059970M14世、/唐(とう)人を/野良(やろう)にして、手代とんきんひやうへ、(二十一オ) 00059980M15じやが太郎兵へ、かぼちや右衛門、そろばんをひかへて、 00059990M16はんとり、ハア、ちやばんよ、ハアといへバ、とらハ/大伴= 00060000M17頭(おゝばん=とう)、ことの外/商内(あきない)があれバ、/虎(とら)も半分いろ男になつて/女郎= 00060010M18買(ちよろう=かい)。/地獄(ぢごく)になじみができて、/着(き)た物をぬいで、ふんどしの 00060020M19/敷(しき)ぞめをしてやるとの/沙汰(さた)。/和藤内(わとうない)是を聞、につくいやつ。 00060030M20/生胆(いきぎも)を取て/木薬(きくすり)やへ/売(うつ)てやろふといふを、/母(はゝ)かとゞめ、虎 00060040¥P186 00060050L1をよび付、コレ、こなたハ女郎になじんて虎をうつげな。 00060060L2此のち、やめにしや。たび/重(かさ□)ると、また/御祓筥(おはらいばこ)だよ 00060070¥N27¥J 00060080¥X畳ざん△△△△△△△△△△△△△¥A前庄作 00060090L5/吉原(よしわら)の/安(やす)見せの女郎、/馴染(なじミ)の/客(きやく)が/外(ほか)へ行を、つけことわり 00060100L6の/文(ふミ)を(二十一ウ)やつても、やつぱり/呼(よぶ)ゆへ、とらまへて 00060110L7やろふと、/新造(しんぞう)を大門へつけて/置(おく)。新ぞうも/寒(さむ)いゆへ、と 00060120L8ふもしれんせんといふ。又あすの/夜(よ)、おいらんのいふよふ、 00060130L9あしたハ/早(はや)く七ツから大門へつけていなんしといへバ、/新= 00060140L10造(しん=ぞう)、アイと/言(いゝ)ながら、かんざしを/畳(たゝミ)へ/打付(うちつけ)、かぞへて見て、 00060150L11モシおいらんへ。あすきつと/居続(いつゝけ)でありんす。/行(ゆく)ハむだて 00060160L12おざんす。おや、けしからねへ。おめへの畳ざんて、きつ 00060170L13とした事がしれる物か。イヱ+、居続に/違(ちかい)ハおつせん。 00060180L14夫がどうして/知(しれる)るへ。此かんざしハ流しでおつす 00060190¥N28¥J 00060200¥Xひろい物△△△△△△△△△△△△¥A鶴歩作 00060210L17今ハ/昔(むかし)。せつた/直(なお)し弐朱銀一枚ひろい、/女郎(ちよろう)を/買(かい)に/行(いき)、二 00060220L18/階(かい)へあがると、廻しの女が、モシ、おなじみがござります 00060230L19か。いんにや、ふりだ。そんなら/中(ちう)ど(二十二オ)しま/衆(しゆ)か 00060240L20よかろふと、/盃(さかつき)もすみ、/酒(さけ)もしたゝかのんで/床(とこ)へいれバ、 00060250M1/女郎(ちよろう)もてのあるやつで、こんやハおめへのなじみがなくて 00060260M2わるいねへ。わつちも/名代(ミやうだい)のこゝろさといへバ、何さ。こ 00060270M3ゝへハはじめてよ。そんなら/是(これ)から/来(き)てくんなさい。/一度(いちと) 00060280M4はかりてこられないでハ、/新造衆(しんそうしゆ)とちがつて、わつちも/茶(ちや) 00060290M5やの手めへがわるい。うらハつけてくんなさい。夫からハ 00060300M6又はなしあひもある物た。ヲヽサ。/裏(うら)ハイヽ/皮(かわ)があつた。 00060310M7ばからしい。人をてうす/事(こと)はかりといふ/所(ところ)へ、モシおむか 00060320M8ひでござりやすといふ。ヲイ、もふ/帰(かへ)ろふといへバ、コレ 00060330M9サ。/裏(うら)にくる/気(き)なら/直(なお)していなと/引止(ひきとむ)れバ、/眼(め)の/下(した)へ/指(ゆび)を 00060340M10おつ付て、ベヱイ+ 00060350¥N29¥J 00060360¥X勘略の巻△△△△△△△¥A曳尾亭△素的作(二十二ウ) 00060370M13/殊(こと)の外しわいやつ、/夜咄(よはなし)に来て、とかく/勘略(かんりやく)が第一でごさ 00060380M14る。/鬢(びん)もあついと油がいります。/糸(いと)びんにすりこかして、 00060390M15/夏(なつ)のうちハぼうずでもすみます。また/飯(めし)のさいにハ/干物(ひもの)。 00060400M16これも朝ハ/頭(かしら)をとつて、よくやいて、もんで、きらずの/汁(しる) 00060410M17の中へ入レて/喰(くい)、/其跡(そのあと)を/片身(かたミ)つゝ一日おきにくへバよい。 00060420M18此外だん+御/指(し)なん申さふ。イヤ、おいとま申ませふ。 00060430M19おかへり被成ますか。ろうそくをともせ。おぞうりが見へ 00060440M20まい。それがもふついゑでござる。是ころふしろ。くら/闇(やミ) 00060450¥P187 00060460L1でも、ぢきにしれます。ハテ/扨(さて)/寄妙(きミやう)。手さくりでしれます 00060470L2かな。/ヤサ((ママ))。/爪(つめ)のさきのあかりで 00060480¥N30¥J 00060490¥X十露盤△△△△△△△△△△△¥A本肆楼△要賀作 00060500L5コレサ、おのれも十五になるが、/行燈(あんとう)を見ると/眠(ねむ)る/丁稚(でつち)た。 00060510L6/手習(てならひ)をしおれ。(二十三オ)そろばんハ三年かゝつて/八算(はつさん)を 00060520L7まだおぼへぬたわけづら。サアこゝへ来て、おいて見ろ。 00060530L8/夫(それ)十二万三千四百五十六石七斗八升九合。それからおいて 00060540L9見ろ。なんと申た。べらぼうめ。二一天作の五、アヽ又わ 00060550L10すれたか。/是(これ)よく/訳(わけ)をきゝおれ。二一天/作(さく)の五とハ、/上(うへ)の 00060560L11玉をおろして、それ此十といふ玉を、上の玉を五玉といふ 00060570L12ハ。/十(とう)を二つにわると五ツになるハ。これ、わけがしれた 00060580L13か。玉をミろやい。アイ。アイでハすまぬ。ヱヽ玉をミや 00060590L14アがれ。なんとしれた。アイ。しれました。なんとしれた。 00060600L15ハイ。/洲走(すばし)りの/臍(へそ)と 00060610¥N31¥J 00060620¥X/脇差(わきさし)△△△△△△△△△△△¥A古今亭△独歩作 00060630L18今ハむかし。/有徳(うとく)な町人有。出入の/道具(とうぐ)や来りて、/旦那(だんな)。 00060640L19よい/脇差(わきさし)のさしぬきが(二十三ウ)でました。おかい被成ま 00060650L20せぬか。どれ見せさつせへと/目鏡(めがね)をかけて、ムヽなんだ。 00060660M1/目貫(めぬき)ハ/稲穂(いなぼ)、/縁(ふち)ハ麦/藁(わら)すじに/稗(ひへ)、/蒔頭(まきかしら)ハ/芥子(けし)、なゝこ/鍔(つバ)ハ 00060670M2/阿波(あわ)の/鳴戸形(なるとかた)、/鞘(さや)ハ豆かいらぎ。こいつハよい思ひつきだ。 00060680M3身ハなんだ。ハイ、/小豆長光(あつきなかミつ)でござります。テモ/好(このミ)がおも 00060690M4しろい。/直段(ねたん)ハいかほど。アイ、此間の相場でハ五十両ほ 00060700M5ど。天気次第で相場かくるひます。今一ト/腰(こし)の/脇差(わきざし)ハ。ム 00060710M6ヽ目/貫(ぬき)が/狼(おゝかミ)に衣、頭ハ鳶に/鷹(たか)、/縁(ふち)ハ狐を馬にのせた所、/鍔(つバ) 00060720M7ハ/鯰(なまづ)にひやうたん、/小柄(こつか)は/猫(ねこ)に小判、/鐺(こじり)に月かあるから、 00060730M8/兎(うさき)かさぐりに有そふな物じやが、身ハなんじや。アイ、身 00060740M9ハおまへ様のおすきな物。ムヽ、/亭主(ていしゆ)の/好(すき)な/赤鰯(あかいわし)か。イヽ 00060750M10ヱ、/鐺(こじり)の/銀(きん)の月を用ひて、きせるいれに。なに、月をもち 00060760M11ゆるとハと/引(ひつ)こぬけバ、すつぽん(二十四オ) 00060770¥N32¥J 00060780¥Xミヘ坊△△△△△△△△△△¥A仙台△文珎尾守作 00060790M14/女郎買(ぢよろうかい)の/居(い)つゞけに、/新造(しんぞう)が/鼠(ねつミ)を/飼(かつ)ているを、ドレちつと 00060800M15かしな。白鼠だの。/近年(きんねん)ハ大ぶんある。アイ、わつちがの 00060810M16ハ/唯(たゞ)の鼠でありんす。ムヽ、こいつハいたづらをするやつ 00060820M17よ。国に/賊人(ぬすびと)/家(いへ)に鼠と、ミんなわき物だ。それだからむさ 00060830M18くろしい人にハ/虱(しらみ)がわく。身だしなみが第一だ。おいらハ 00060840M19/薬(くすり)にせうといつてもねへ。しらみたかりにハおめへがたも 00060850M20あやまるだろふといふ内、モシヱ、ぬしのゑりを見なんし。 00060860¥P188 00060870L1それ、うハばいをしんすにへといへバ、どれと見て、ハヽ 00060880L2ア、/噂(うハさ)をいへば/影(かけ)がさす 00060890¥N33¥J 00060900¥X○富士講△△△△△△¥A芝楽亭△慈悲成作(二十四ウ) 00060910L5どふだ権八。/替(かわ)る事もねへか。ヲヽ/能(よく)きたな。サアあがり 00060920L6やれ。ムヽあがるか、一ツはい/呑(のま)せるか。酒を/買(か)うにも銭 00060930L7が一文ねへが、/質(しち)くさもなし。ホンニおつりきな物が有。 00060940L8富士講の/行衣(きやうへ)が/有(ある)。今ハ/止(やめ)になつて、こいつもいらねへ。 00060950L9二三百ハかすだろふ。/待(まつ)て/居(い)やれ。今かりてくると/質(しち)やへ 00060960L10行。コレ/伴頭(はんとう)。/是(これ)で三百かしてくだせへ。何、こんな/背(せ)中 00060970L11に/仏(ほとけ)様とふじ/山(さん)に/猿(さる)がおして有。どう/貸(かさ)れる物か。ハテ扨、 00060980L12是にハかまハずと、おれが/皃(かほ)で二百でもかさつせへ。おめ 00060990L13への/顔(かほ)づくも久しい物だといゝながら、銭五十だして、サ 00061000L14ア是でよくバ持てゆかつせへといへバ、手を合、コレ富士 00061010L15せんげん様のだ。/何(なに)とぞ一ト筋にたのみたてまつる(二十五 00061020L16オ) 00061030¥N34¥J 00061040¥Xはやり/諷(うた)△△△△△△△△△¥A四角堂△治呂庵作 00061050L19今ハ昔。/妓女(げいこ)二人リありけり。/姉(あね)ハ/実子(じつし)にて、/妹(いもと)ハかゝへ 00061060L20の娘なれど、あね様+といゝけり。そのいもと、外にて 00061070M1/湖来節(いたこぶし(ママ))の/新文句(しんもんく)の/唄(うた)をかいてもらい、内へかへり取/落(おと)し 00061080M2てありけるを、母ひろいけれども、/無筆(むひつ)ゆへわからず。此 00061090M3程/座敷(さしき)に出ても/夜更(よふけ)て/帰(かへ)る事/度(たひ)+なれバ、/色(いろ)事の文とこ 00061100M4ゝろへ、/実(じつ)の娘を/呼(よび)ていふよふ、なんでもあいつハ虫がつ 00061110M5いたと見へる。/油断(ゆだん)しやるなよ。コレかゝさん。かわいそ 00061120M6ふに、おとなしくしている物を。インにや、おれが/証(せう)拠を 00061130M7/持(もつ)ている。是を/読(よん)で見やとさし出す。娘、おしひらいてよ 00061140M8む。まゝよ/田舎(いなか)もまた/住(すミ)よかろ。はゝおやふといあまめだ。 00061150M9(二十五ウ)/欠落(かけおち)をする/気(き)だ 00061160¥N35¥J 00061170¥X星△△△△△△△△△△△△△△¥A烏亭△龍馬作 00061180M12/是(これ)も今ハむかし。むせうに/虚言(うそ)をつく者有。どうだ、うそ 00061190M13つ/八(ぱち)。ひさしくあわぬが、どこへいつた。ヲヽとんだ所へ。 00061200M14去年/雷(かミなり)にさらわれて/天竺(てんぢく)へよ。ナニ、てんぢくへ。こいつ 00061210M15ハ/面白(おもしろ)かつたろう。てんぢくハどこに/居(い)た。四日/市(いち)に。ハ 00061220M16テナ。あつちもさむいか。/寒(さむ)いだんか。/雨(あめ)がミな/氷(こふつ)て、ふ 00061230M17らせる事がならねへ。ひねの雨をあられにして、/漸(よふ+)ふらせ 00061240M18るくらいだ。/天(あま)の川を見たか。ヲヽサ、見た。/星(ほし)ハ大ぶん 00061250M19あろふな。ぬかぼしハ/皆(ミな)/踏(ふん)て通るハ。まづ/牽牛(けんぎう)/織女(しよくちよ)とい 00061260M20ふハ七夕様よ。夫から七/曜(よう)九よう、夜ばい/星(ほし)ハはだかでい 00061270¥P189 00061280L1る。/渋柿(しぶかき)の(二十六オ)よふな/面(つら)のを、/何(なん)だと/聞(きい)たら/甘干(あまほし)。 00061290L2/皃(かほ)のしわのよつたハ/梅(むめ)ぼし。二つ/巴(ともへ)の/侍(さむらい)ハ/大星(おゝほし)。又やせ 00061300L3こけて、あごで/蝿(はい)を/追(おつ)ている、あの/星(ほし)ハ/何(なん)といふと/聞(きい)たら、 00061310L4あれハとぼし/過(すぎ)たの 00061320¥N36¥J 00061330¥X化物△△△△△△△△△△¥A琴多楼△鹿児善作 00061340L7百物/語(かたり)のひまにや有けん、/化物(ばけもの)大/勢(せい)あつまり、中にも見こ 00061350L8し入道、ナント、いづれもじよさいなく、/秘術(ひじゆつ)を/尽(つく)してば 00061360L9けるといへども、当時の/歌舞妓(かぶき)/役者(やくしや)ほど、ばける事ハなる 00061370L10まじ。/岩井(いわい)半四良などハ、壱人リして/七化(なゝはけ)をするよし。是 00061380L11ハ見ておかしやれといわれて、一つ/眼(まなこ)と/河童(かつハ)が、/其芝居(そのしはい)ハ 00061390L12どこだと/猫(ねこ)またにきく。まづ/富沢丁(とミざハてう)から/長谷川町(はせかわてう)(二十六ウ) 00061400L13/横(よこ)へ人/形(きよう)町といふを/行(ゆく)と、/虎(とら)やといふ菓子やの/蒸篭(せいろう)がつん 00061410L14で有。/角(かど)から右を見ると、/芝居(しばい)の/看板(かんばん)あつてにぎやかなと、 00061420L15さすが/飼猫(かいねこ)のあがり程あつて、くわしくおしゑる。そんな 00061430L16ら化物とミへぬよふにしてゆかふと、かつぱハ/手拭(てぬくい)を米や 00061440L17かぶりにすれバ、一つまなこハほうかぶりを/鼻(はな)の下で/結(むす)び、 00061450L18おしへられた通り行。中村やの前の木戸をはいると、向ふ 00061460L19より芝居者が、ほうかふりかつぱといへバ、化物おきやア 00061470L20かれ、づおふへいな 00061480¥N37¥J 00061490¥Xにわか△△△△△△△△△△△△△¥A五明作 00061500M3年わすれに思ひつきの/俄(にハか)/狂言(きやうげん)。/忠臣蔵(ちうしんくら)がよかろふと、てん 00061510M4※にこんたんをする中に、あんまの/椀伯老(わんはくろう)ハなで付ゆへ 00061520M5本蔵の/役(やく)。せりふのしれぬ所ハ(二十七オ)/浄(ぜう)るりでとつて 00061530M6/間(ま)に合せ、もふ/鑓(やり)をつつこまれ、手おひながらもぬからぬ 00061540M7本蔵。イヤ+、それハひが事ならん。用心きびしき/高(こう)の 00061550M8/師直(もろなを)、/障子(せうじ)ふすまハミなしりざしト、浄るりをかたる内、 00061560M9どふも身ができぬゆへ、思ひついて、たばこ入レよりたば 00061570M10こを出し、/鑓(やり)の/疵口(きつくち)へおしこむ。見物が、イヨ、こまかと 00061580M11/誉(ほめ)ると、インニヤ、こまかでハない。/五分切(こふきり)だ 00061590¥N38¥J 00061600¥Xほしいもの帳△△△△△△△△△△¥A富存作 00061610M14今ハむかし。ほしい物/帳(てう)といふ帳をこしらへ持ている男有。 00061620M15中にハたばこ入レ、きせるハ/銀(ぎん)と書付、あるひハ八丈/羽織(はおり)、 00061630M16/上着(うハき)ハ/黒(くろ)ちりめんに/五所紋(いつところもん)、/下着(したき)ハ八丈/嶋(しま)、/唐(とう)ざらさ、/帯(おひ) 00061640M17ははかた/織(おり)、ミな/絵(ゑ)にかき、其外たんす(二十七ウ)/長持(なかもち)、 00061650M18/手道具(てどうく)までこと+く/記(しる)し、女房ハ/近所(きんじよ)の/器量(きりやう)よしのおひ 00061660M19な。めかけおさく。なじみの女郎ハ/扇(あふき)やの/滝(たき)川。是ハにし 00061670M20きゑをはりつけ、ふだんながめてたのしみいる。又其あた 00061680¥P190 00061690L1りに此とおりこしらへ持ている者とよりあい、たがいに 00061700L2/帳(てう)をひろげ、おれがたばこ入ハ/越川(ゑちがわ)、てめへのハ/丸角(まるかく)でか 00061710L3つたと/書(かい)てある。あれ是と見る内、女房おひなハ手まへの 00061720L4/帳(てう)にも有。コレ、おのしハ間男だ。インにや、こなたが間 00061730L5男だといゝつのり、けんくわになる。大屋きて、/貴様(きさま)たち 00061740L6ハなんのけんくわをする。モシ、御聞なさい。わたしがほ 00061750L7しい物帳にある女房を、あいつが間男をして、帳にかいて 00061760L8あります故の事でござる。どれ二人リの帳を見せさつせへ。 00061770L9ムヽ成程。貴様の帳ハ(二十八オ)おとゝしの/年号(ねんごう)、こなた 00061780L10のハ/去年(きよねん)の書付だ。ま男にちがひハない。七両弐分ださつ 00061790L11せへ。大やさん。とんだ事をおつしやる。ハテ、此大やが 00061800L12かしてやる。イヤ、金でハない、ちゑをトいゝながら、二 00061810L13つ/帳(てう)へ/書(かい)て出したを見れバ、あちらの帳へ、金七両弐分/出(で)。 00061820L14こちらの帳へハ、七両弐分入 00061830¥N39¥J 00061840¥X松魚△△△△△△△△△△△¥A東南西△北平作 00061850L17/儒者(しゆしや)めきたる/浪人(ろうにん)の門口を、/鰹(かつを)+と/売(うる)こへ。あるし立出、 00061860L18コリヤ/魚売人(きよばいにん)+と/呼(よぶ)。ヱヽわしが事かへ。ヲヽサ。その 00061870L19/松魚(せうぎよ)ハ/価(あたい)いか程じや。なんの事だ。あきんどにあだ名を付 00061880L20てなぐさむのか。イヤ、左様でハなひ。魚売人とハ/肴(さかな)うり 00061890M1の事、/松魚(せうぎよ)とハかつをの事じや。/小(こ)むづ(二十八ウ)かしい 00061900M2/言(いゝ)よふだな。/鰹(かつを)ハそくろんじさ。ムヽ、そくろんじとハい 00061910M3か程の事しや。アイ。そくハ一/貫(くわん)の事、ろんじハしれやせ 00061920M4う。イヽヤ知れぬ。ハテ、ろんじハ六百の事さ。/不侫(ふねい)はじ 00061930M5めてゑとく/致(いた)したといへバ、肴うりヱヽ、おめへも/論語(ろんご)よ 00061940M6みのろんじしらずだ 00061950¥N40¥J 00061960¥X唐女△△△△△△△△△△△△¥A山徳作 00061970M9今ハ昔。/筑紫(つくし)/松浦潟(まつらかた)へ/唐船(とうせん)一/艘(そう)ふきよせたり。/浦(うら)人たちよ 00061980M10り是/((を脱カ))見るに、/宮女(きうちよ)と見へて、/羅綾(らりやう)のたもと/錦(にしき)の袖、花のか 00061990M11ほばせ雪のはだへ。ヲヤ、てんこちもねへ、/唐(から)の女だとい 00062000M12へバ、/日本人(につほんじん)+、なむからたんのうとらやア+といへ 00062010M13ども、ひとつもわからねバ、コレ女中。とおい所を(二十九 00062020M14オ)たつた一人リか。おやじどのかおふくろても、ついて 00062030M15来たのかといへハ、唐女、バア+といふ。ムヽ、ばア様 00062040M16とか 00062050¥N41¥J 00062060¥X玉△△△△△△△△△△△△△¥A桃多楼△語昔作 00062070M19屋しき出入の/道具(とうく)や、/劔持(けんもち)力右衛門様に/毛巾着(けきんちやく)をたのまれ、 00062080M20王子の/稲荷(いなり)参り。/帰(かへ)りに/本郷(ほんこう)のほし見世にて、/狐(きつね)の/皮(かわ)のた 00062090¥P191 00062100L1ばこ入レに/尻尾(しつぽ)をきせる/筒(つゝ)にしたのを/買(かい)、是でけふの小遣 00062110L2ひハ有と酒をのみ、/唐(とう)の/芋(いも)を二つ、/子僧(こそう)がミやげにせうと 00062120L3両方の/袂(たもと)へ/紙(かミ)に/包(つゝミ)て入レ、日も暮方にのろ+/行(ゆ)けバ、/駕(かこ) 00062130L4をやりませふ。/安(やす)い+といふ。/市谷(いちかへ)迄いくらだ。二百/下(くだ) 00062140L5さりませ。とんた事を。百なら/乗(のる)べい。ヱヽもどりかごで 00062150L6もあんまり安いが、/旦那(たんな)も(二十九ウ)じよさいハあるまい。 00062160L7サアおのりとのせて、だん+お/茶(ちや)の水のほうをいそいで 00062170L8ゆく。/駕(かこ)がゆれるひやうしに、かの/尻尾(しつほ)のきせる/筒(つゝ)が、/羽= 00062180L9織(は=おりの)/合(あい)から出るを跡/棒(ぼう)か見付て、たてる時、/棒組(ほうくミ)。ちよつ 00062190L10と見やと、めくばせして、うさんなかほで、モシ、おめへ 00062200L11さんハ/王子(わうじ)へお出被成ましたとおつしやつたが、市谷ハと 00062210L12こ迄参ります。/茶(ちや)の/木(き)の/稲荷(いなり)の/近所(きんぢよ)迄。エ扨こそ。棒組、 00062220L13ことしハ仕合がいゝぞ。モシ/旦那(たんな)、お願ひがござります。 00062230L14ムヽ願ひとハ酒手か。イヽヱ、もつたいねへ事。おまへ様 00062240L15の物をどうして。何とぞ/福(ふく)を御/授(さつけ)被下ませといふから、道 00062250L16具やもさくつて見れバ、きせる/筒(つゝ)がさがつてあるから、扨 00062260L17ハとこゝろへ、まじめになつて、あすハ又/半田(はんた)/稲荷(いなり)迄用事 00062270L18がある。へヱ御/苦労(くろう)でござりますといふうち(三十オ)/市谷(いちかや) 00062280L19へつけバ、/太義(たいき)+。其方たちへ是をやると、/唐(とう)の/芋(いも)を一 00062290L20つ/宛(つゝ)やれば、ハア有がたいと、/跡(あと)ふしおがみ/分(わか)れ/行(ゆく)よふす 00062300M1を見て、/狐(きつね)二疋立出、今のを見たか。サレバ、今ハ/素人(しろうと)に 00062310M2ゆだんがならぬ 00062320¥N42¥J 00062330¥X○三人男△△△△△△△△△△¥A橋々亭△万羅作 00062340M5今ハ昔。/仇(あだ)なる女、/夫(おつと)にかくして/忍(しの)び男二人リ有けり。あ 00062350M6る時壱人リの/間(ま)男来りいる/折(おり)ふし、又壱人リの男来て、/寐(ね) 00062360M7て/居(い)る所をおさへ、此/野郎(やろう)めハふといやつだ。おれが/念(ねん)ご 00062370M8ろしている女を、よくしめやアがつた。どふしたと。コレ 00062380M9ヱうぬが/色(いろ)をして居る事を、だかしる物だ。うぬ/惚(ぼれ)なやろ 00062390M10うだと、つかみ合いる所へ/亭主(ていしゆ)/帰(かへ)り、是ハどふした事だ。 00062400M11人の内へ来て。ヲヽ御/亭主(ていしゆ)か。こ(三十ウ)な様がくれバモ 00062410M12ウ百年めだ。つがもねへ事だが、あの女を三年/色(いろ)をして/居(い) 00062420M13る夫に、あいつが/太(たい)平をぬかすから、がつてんしねへ。コ 00062430M14レヱ、うぬが三年なれバ、おらア五年のなじみだ。サア/間(ま) 00062440M15男にちがひハなひ。/是(これ)からハ見事におれにくれろ。はなし 00062450M16のよふな、なんの事だといへバ、/亭主(ていしゆ)、こいつらハ五年の 00062460M17三年のと、あかくなつた/味噌(ミそ)をあげやアがるが、おれハあ 00062470M18の女を女房に十年して/居(い)る 00062480¥P192 00062490¥N43¥J 00062500¥X俊寛△△△△△△△△△△△¥A白宝舎△晋家作 00062510L3今ハむかし。/中宮(ちうぐう)/御産(こさん)の/御祈(おんいのり)によつて、/非常(ひぜう)の大/赦(しや)/行(おこな)ハる。 00062520L4/鬼界(きかい)が嶋の/流人(るにん)丹波少将/成常(なりつね)、平判官/康頼(やすより)二人/赦免(しやめん)にして 00062530L5船にのせて(三十一オ)こぎ出す。/俊寛(しゆんぐわん)一人リ/跡(あと)に残り、 00062540L6/磯(いそ)ばたに/伏(ふし)まろびいる所へ、/海人(あま)の/千鳥(ちとり)かけ来り、てゝ様 00062550L7よ。せなや/兄丈(あにんぜう)ハどこへいきめしたときけバ、ヤア千鳥か。 00062560L8二人ハおゆるしあつて/都(ミやこ)へかへる。/早(はや)く/呼(よび)かへしやといへ 00062570L9バ、アイと、千鳥か/岩(いハ)の上へかけ上りて、コンナむかふの 00062580L10ふね引 00062590¥N44¥J 00062600¥X伊勢参り△△△△△△△△△△△△¥A紫雄作 00062610L13/丁稚(でつち)/子供(ことも)より/合(あい)、コレ竹松どん。おいせ様の/太&(だい+)をうつと、 00062620L14うまい物をたんと/喰(くふ)とよ。ホンニか。そんなら亀吉どん。 00062630L15おいらもぬけ参りをして、だい+をうたふと、そこらの 00062640L16心ざしある人をたのみ、ろぎん少&こしらへ、お師の名ハ 00062650L17聞およべバ、なんなく/山田(やまだ)のお/師(し)をたづねて、お頼(三十 00062660L18一ウ)申ませふ。御師の手代出、どこからござつた。アイ。 00062670L19江戸/蔵前(くらまへ)の/伊勢(いせ)やから参りました。/太&(だい+)をうちとうござり 00062680L20ます。コレハよふ御出。/旧冬(きうとう)参つた時おはなしもなかつた 00062690M1が、/存(ぞんし)寄らぬ事。跡から大ぜい御出か。イヽヱ、私共二人 00062700M2リ。ハテなといふ内、/銭(せに)百文つゝ/紙(かミ)に/包(つゝミ)、モシ、/是(これ)で太& 00062710M3を打とふござります。ナニ太&を。此子ハ/気(き)がちがつたか。 00062720M4コレ、そつちの/旦那(だんな)の太々ハ五十両、ざつとして二十五両 00062730M5だ。とんだ事をいふといへバ、竹松どん。どうせう。モシ、 00062740M6そんなら此百で、太&がならずハ、きんかんでも 00062750¥N45¥J 00062760¥X百夜車△△△△△△△△△△¥A水魚亭△魯石作 00062770M9今ハ昔。/小野(おのゝ)小町ハ/美人(びじん)の名/高(たか)く、哥ハ世にしれる所也。 00062780M10されバ/恋(こい)(三十二オ)したわざる物なし。中にも/深草(ふかくさ)の/少将(せう+)、 00062790M11思ひのたけをしらせんと、/雨(あめ)のふる/夜(よ)も/雪(ゆき)の夜も通ひて、 00062800M12車の/橸(しゞ(ママ))に/其数(そのかづ)を書て、九十九夜通ひしかど、此/恋(こい)/叶(かな)わずし 00062810M13て、思ひ/死(しに)せられしと云取/沙汰(さた)。女中達これを聞、小丁の 00062820M14おそバへ参り、少将さまにハ/終(つい)におはて被成ましたといへ 00062830M15バ、小町聞て、/局(つぼね)を呼給ひ、コレ、/其惚帳(そのほれてう)を出して、少将 00062840M16どのゝ所ハ/消(けし)ておきや 00062850¥N46¥J 00062860¥X稚名△△△△△△△△△△△△¥A坂彦作 00062870M19/是(これ)も今ハ昔。ある人の/出生(しゆつせう)の男子、おさな名を/非人(ひにん)に付て 00062880M20もらへば、そく才/延命(ゑんめい)也と聞て、/早(そう)+非人をよび/寄(よせ)る。 00062890¥P193 00062900L1旦那様。なんの御用でござります。外の用でもない。/忰(せかれ)が 00062910L2/名(な)をつけてくりやれ。ハイ。お(三十二ウ)生れなされたの 00062920L3か。よふおふとり被成て。そして男の御子でござりますか。 00062930L4ヲヽサ。たつしやな/名(な)がよい。/達者(たつしや)なお名なら、/虎松(とらまつ)様か 00062940L5牛蔵様か。アイヤ、ずいぶん/丈夫(ぜうぶ)な目出たひ名がよい。左 00062950L6様なら/石蔵(せきぞう)様。ムヽ、せき蔵とハなぜ。ハテ、/石蔵(せきそう)/毎年(まいねん)ま 00062960L7いとし。ムヽめでたい。はびろのおにわへどんどゝとびこ 00062970L8む、そふだハはねこむ、ごいわい申せバ目出たいそふだハ。 00062980L9アヽコレ+、/昔(むかし)からある名で/寿命(じゆミやう)の/長(なが)い名がよい。左様 00062990L10なら、アノ三/浦(うら)の大助様ハどふでござります。三浦の大助 00063000L11とハ。百六つさ。まつと長いハなひか。/浦嶌(うらしま)太郎ハ八千/歳(ざい)。 00063010L12まつと長いハなひか。/東方朔(とうほうさく)ハ九千歳。まつとながひハ。 00063020L13/西(にし)の/海(うミ)へさらり(三十三オ) 00063030¥N47¥J 00063040¥X妙薬△△△△△△△△△△△△¥A鶴声楼作 00063050L16コリヤア/寸伯(すんぱく)様。よふ御出被成ました。おやじか/気色(きしよく)がわ 00063060L17るいと申ます。どふぞ/御薬(おくすり)を。ドレ+/脉(ミやく)を見ませふ。是 00063070L18ハ/痰(たん)じや。此くすりをのませて見さつせへ。あす参らふと 00063080L19いふて/帰(かへ)り、/翌日(よくしつ)来て、どふだな。アイ。/同(おな)し事でござり 00063090L20ます。ドレ/脉(ミやく)を見ませふ。これハきのふよりわるい。/腫(しゆ)が 00063100M1見へるといへバ、モシ、どこもそふハ見へませぬが。ハテ、 00063110M2どふしてこなたしゆにしれよふ。かほの内、手足にむくみ 00063120M3のあるのが、しゆのあるのだ。此薬がよかろふとおいて行。 00063130M4跡へ/友達(ともたち)か来て、どふだ、おやじハ。ヲヽ/徳(とく)右衛門。聞て 00063140M5くりやれ。アイ。/医者(いしや)どのが、きのふハ/丹(たん)だといつたが、 00063150M6けふハ/朱(しゆ)だといつた。(三十三ウ)毎日/赤(あか)くなる/病(やまい)だそふな。 00063160M7ハテな。夫にハおれが/妙薬(ミやうやく)をしつている。おらが/子僧(こぞう)が/疱= 00063170M8瘡(ほう=そう)の時、紅を/顔(かほ)へなすつた。おやじも/朱(しゆ)から紅にならねへ 00063180M9内、上からなするがいゝと、/病人(ひやうにん)の/皃(かほ)へ紅をなすると、お 00063190M10やしか、コレ/徳(とく)右衛門。どふする。ハテ、だまつていさつ 00063200M11せへ。跡から直してやる。コレ、はながでるが風だろふ。 00063210M12はなをかんでやろふ。ふんといわつせへ。まつと+とい 00063220M13ふ内、のぼせて/鼻血(はなぢ)が出ると、おやじどの、/病(やま)ひハ直る。 00063230M14おれが/請合(うけあい)だ。コレ、丹から/朱(しゆ)になつて、はな/血(ち)が出た。 00063240M15赤い物ハ/是(これ)ぎりだ 00063250¥N48¥J 00063260¥X野狐△△△△△△△△△△△¥A一陽亭△秀朔作 00063270M18今ハむかし。/田舎(いなか)にて/狐(きつね)出て人を/化(ばか)すといふ事。/武辺(ぶへん)/自慢(ぢまん) 00063280M19の/侍(さむらい)、/退治(たいぢ)(三十四オ)せんと、かの所へ行てまちいたる。 00063290M20十六七の/器量(きりやう)のよき娘来り、私ハ/向(むか)ふの村迄参る者でござ 00063300¥P194 00063310L1ります。どふぞおつれ被成てくださりませといふ。ふとい 00063320L2やつ。うぬハ此あたりに/住(すん)で人をたぶらかす/狐(きつね)であろふ。 00063330L3おれが女/好(すき)だといつて、そふうまくばかされるものか。お 00063340L4きにしろ。出なをせ+と言バ、/忽(たちまち)男に/化(ばけ)、私ハ江戸の 00063350L5者。壱人リ/旅(たび)なれば、何とぞ御/同道(とう+)と/言(いふ)。うぬも今の狐だ。 00063360L6よしにしろといへバ、ぢゝいに成、モシお/侍(さむらい)様。ナンタ。 00063370L7又/祖父(ぢゝい)に/化(はけ)たか。/古(ふる)い+といへバ、こんどハ/祖母(はゝア)になる。 00063380L8ばゝアでも狐だといわれて、しよふがなさに狐に/成(なる)。それ 00063390L9ミろ、狐め。/己(おのれ)/生捕(いけどり)にするぞと/追欠(おつかけ)れバ、狐ハ/叶(かな)わじと/迯(にけ)、 00063400L10/追詰(おつつめ)られて/薮(やふ)の(三十四ウ)中へは入ル。/尻尾(しつぽ)をとらへひつ 00063410L11はる/拍子(ひようし)に、コン+くわい+と、きつねハなきながら、 00063420L12しつぽがぬける。扨こそみせしめに、/是(これ)をミやけにすると 00063430L13いふうしろから、/百性(ひやくせう)か、なぜ/大根(たいこん)をぬいた 00063440¥N49¥J 00063450¥X雷の玉子△△△△△△△△△△¥A桑柿亭△喜丸作 00063460L16今ハ昔。/雷(かミなり)の玉子をもらい、本の物か、どふぞかへしても 00063470L17らいたいといふても、しよふがなひ。イヤ、私が雷にかへ 00063480L18してお目にかけませふが、是にハ大ぶん物か入ますから、 00063490L19金子二十両ばかりお出し被成ませ。ムヽすいぶん物にさへ 00063500L20ならバとたのみ、夫より十日/程(ほと)/過(すき)て、モシ/旦那(たんな)。玉子がわ 00063510M1れて、中からちいさなかみなりが出ました。/夕部(ゆふへ)も、コヨ 00063520M2++と/鳴(なり)ました。ハテな、(三十五オ)どれはやふ見たい。 00063530M3ソレおめにかけませふと、/袂(たもと)をさがして、コレ道で/落(おとし)たか、 00063540M4とんだ事だと大はだをぬいて、ヲヽ有た+。是ごろふじ 00063550M5ませ。あらそわれぬ物でごさります。どふした。/臍(へそ)にひつ 00063560M6ついて 00063570¥N50¥J 00063580¥X文△△△△△△△△△△△△△¥Aうす柿敷婦作 00063590M9吉原の/女郎(ちよろう)より、/毎日(まいにち)+の文。こん/夜(や)もゆかねバならぬ 00063600M10と、/客(きやく)もあつくなつて行。/友達(ともたち)が、うそをいふやつといへ 00063610M11バ、うそなら/髪結床(かミゆひどこ)の市五郎に聞て見やといふから、床の 00063620M12/亭主(ていしゆ)に聞バ、アイサ、毎日此よふに。/情(ぜう)のある女郎でごさ 00063630M13りやすと、/文(ふミ)を一ト/束(たばね)出して見せる所へ、かの男来り、な 00063640M14んと、/浦(うら)山しいか。ほんにおのしハ(三十五ウ)あやかり物 00063650M15だ。/定(さた)めて/面(おも)白い事があろふとあけて見れバ、/漸(よふ+)いろは 00063660M16を習ふたよふなかな/釘(くき)の/折(おれ)。コレハよめぬ。/是(これ)をおのしハ 00063670M17わかるかして、まいばん行な。ハテ、やぼな事をいふ。わ 00063680M18からぬから、まいばん/聞(きゝ)に行わさ 00063690¥N51¥J 00063700¥Xそゝか△△△△△△△△△△△¥A三升鶴女作 00063710¥P195 00063720L1/殊(こと)の外そゝかわしき女房、堀の内へ参りて/帰(かへ)り、モウ五ツ 00063730L2でもあろふ。大きにくたびれた。湯へはいつてこよふと下 00063740L3女をつれてゆけば、/入口(いりくち)でひたいをくらわせ、いたくハな 00063750L4かつたかといへバ、下女も/承知(せうち)して/居(い)れバ、いゝへ、きず 00063760L5ハ付ませぬといふ。湯の中にて/近所(きんちよ)の/内義(ないき)に/逢(あい)、おそふ御 00063770L6出被成たねといへバ、アイ、今日ハ/堀(ほり)の内へ。それハおく 00063780L7たびれ。イヤ、(三十六オ)もふ/鳴子(なるこ)から先が道かわるくてと 00063790L8いゝながら、その内義の/足(あし)を/洗(あら)ふゆへ、おかみさん。何を 00063800L9ぜうだんしなさるかといへバ、コレハごめんなさい。わた 00063810L10しがおみ足かとぞんじて 00063820¥N52¥J 00063830¥X無筆△△△△△△△△△¥A万葉の仮名女作 00063840L13/一字(いちじ)/不通(ふつう)の者、/年(とし)玉の半切へ近所の人を二人リたのんで、 00063850L14名を書てもらふ。/扨&(さて+)/無筆(むひつ)といふ物ハふじゆうな物。おか 00063860L15げてあすはやく礼に出ますといへバ、壱人リの男、何さ。 00063870L16/字(ぢ)といふ物ハよく/拵(こしらへ)た物。/気(き)をつけれバしれます。/先(まつ)、/口(くち) 00063880L17といふ字ハ口のなり、/目(め)といふ字ハめのかたち、/耳(ミヽ)といふ 00063890L18字も同じ事。/鼻(はな)ハはな/毛(げ)まであります。(三十六ウ)のふ仁 00063900L19兵へさん。左様+。時に夫でわしも思ひ出した。いつぞ 00063910L20や本店へいきやしたら、/小僧(こそう)が小づかい/帳(てう)をつけて/居(い)る。 00063920M1なか+あじをやると帳を見たら、なが三文、八文あぶら 00063930M2げ、四文/子(こ)と書てあるから、是ハなんだと聞たら、/酢(す)でご 00063940M3ざりやすといふ。酢に/子(こ)の字を/書(かく)ものかといつたら、それ 00063950M4でも金子の/子(す)の/字(ぢ)でござるといゝやした。ハヽヽと両人/笑(わら) 00063960M5へバ、/亭主(ていしゆ)、仁兵へさん。おめへ、/子供(ことも)にはぢしめられた 00063970M6の 00063980¥N53¥J 00063990¥X孝行△△△△△△△△△△△△¥A千鳥連作 00064000M9今ハむかし。まづしく/暮(くら)せしもの、/母親(はゝおや)、春の/末(すへ)に/笋(たけのこ)を望 00064010M10む。安き事なりとて、はる/雨(さめ)のふりけれバ、ミの/笠(かさ)を/着(き)て 00064020M11/鍬(くわ)をもち(三十七オ)竹の/林(はやし)をたづね/堀(ほり)けれども、一本も/得(ゑ) 00064030M12ざりけれバ、扨ハ/我孝心(わがこうしん)天へ/通(つう)じざるか。又あすも来り/堀(ほり) 00064040M13て見んと帰る。/其夜(そのよ)竹の林の/近所(きんちよ)の/桜(さくら)の木がいふよふ、な 00064050M14んと/桃(もゝ)の木。竹といふやつハ物をしらねへやつだ。/親孝行(おやこう+) 00064060M15な者が、たけの子をほりに来たのに、つらも出さねへ。/唐(から) 00064070M16でハ廿四/孝(こう)の/孟宗(もうそう)が雪の中でさへほり出したげな。心ない 00064080M17やつらだ。日本の/面(つら)よごしだ。おいらが/先祖(せんぞ)は、/正直(せうじき)ぢゝ 00064090M18いが、/枯木(かれき)に花を/咲(さか)せふといつて、/灰(はい)をぶつかけられてさ 00064100M19へ、花の/盛(さかり)を見せた。左様+。おいらハ/子供(ことも)が、/桃(もゝ)の木 00064110M20/柿(かき)の木とたづねてくれバ、/実(たね)の中から/芽(め)を出してやるに、 00064120¥P196 00064130L1竹の(三十七ウ)しれねへやぼなやつらだと/噂(うハさ)を、竹か/聞(きい)て、 00064140L2/仲間(なかま)/一(いつ)とう/相談(さうだん)して、あいつらにいわれてハすまぬ。あし 00064150L3たハ/残(のこ)らず出ろと/待(まつ)ている所へ、又/箕笠(ミのかさ)に/鍬(くハ)を/持(もち)、けふこ 00064160L4そ/授(さづ)け給へと、てうど/堀(ほれ)バ、/待(まち)かまへたる/笋(たけのこ)、によひと五 00064170L5尺ばかりのが出る。びつくりして又堀ハ二本三本、/前(まへ)/後(うしろ)出 00064180L6る程に、一町/四方(よほう)ハ竹の子。/孝行(こう+)ものも出る事がならずい 00064190L7る内、下から六尺ばかりの竹の子、/尻(しり)をつきかけるから、 00064200L8/前(まへ)へ/飛(とぶ)/拍子(ひやうし)、/帯(おび)へつつかけてさしあげられ、コレハどふじ 00064210L9やと/鍬(くわ)をかついで見廻す所へ、/家主(いへぬし)が通るゆへ、モシ+ 00064220L10大屋さん。/稗(ひへ)/蒔(まき)ハいりませぬか 00064230¥N54¥J 00064240¥X七十二候△△△△△△¥A扇鶴亭△百人作(三十八オ) 00064250L13/吉原(よしわら)の/居(い)つゞけの/客(きやく)へ、仲の町よりおくり物に/蛤(はまくり)の/千鳥焼(ちとりやき) 00064260L14を/持(もつ)てくる。こいつハいゝ物が来た。/雀(すゝめ)/閨中(けいちう)に入て蛤と成。 00064270L15一つのもふとしやれる。女郎が、モシ、あのすゞめが/蛤(はまくり)に 00064280L16なるといゝすが、ほんの事かへ。違ひハなひのさ。七十二 00064290L17/候(こう)の内にいろ+かわる物が有。/腐草(ふそう)/化(け)して/螢(ほたる)と成、/田鼠(でんそ) 00064300L18/化(け)して/鶉(うつら)と成、/芋虫(いもむし)がてふ+となり、/船虫(ふなむし)がとんぼにな 00064310L19る。其外、虫も色+/変化(へんくわ)する物よといふ。/側(そバ)に/新造(しんぞう)が、 00064320L20モシそんなら、遣り手衆ハ/毛虫(けむし)のなつたのかへ 00064330¥N55¥J 00064340¥X駕好△△△△△△△△△△¥A仙路亭△蘆翠作 00064350M3/子供(こども)にも/色(いろ)+の/好(すき)がある物にて、/商人(あきんど)やの/丁稚(でつち)、十二三 00064360M4にて/使(つかい)にやると、(三十八ウ)一町ほど/歩行(あるく)と、/木戸際(きどきわ)の/駕= 00064370M5舁(かこ=かき)に、コレ浅草迄いくらでやる。アイ、二百てござりやす。 00064380M6百五十にまけな。だれが/乗(のり)なさる。/旦那(たんな)か、おかみ様か。 00064390M7インにや、おれがのる。/ど((ママ))んだこつたの。サア/使(つかい)にゆくの 00064400M8だ。/負(まか)らバはやく。/棒組(ぼうくミ)、まけてしんぜろとのせてゆく。 00064410M9いつでものるゆへ、/後(のち)ハ/駕(かご)かきもなじみになつて、けふハ 00064420M10/子僧(こぞう)様が/使(つかい)が有そふな物だとまつて/居(い)る。扨/其(その)かごちんハ 00064430M11どこからもやりてがなけれバ、見世の小/銭(せに)をちつとつゝた 00064440M12めてのる。それがだん+しれて、/伴頭(はんとう)が、どふもふしぎ 00064450M13なやつとひつとらへて、コレ、うぬハ此頃/銭(せに)を二百おとし 00064460M14たが、なんにした。/使(つかい)にいつても/早(はや)く帰る。どふも気かし 00064470M15れねへ。/訳(わけ)をぬかせとくらハせれバ、/泣(なき)ながら、お使に行 00064480M16とき、駕にのりやした。何、(三十九オ)かごに/乗(のつ)た。おご 00064490M17つたがきめだ。おごりじやアござりませぬ。おごりでなく 00064500M18つてなぜ。/足(あし)をかばつておくのだ。なんとぬかす。あしを 00064510M19かばつて、/何(なん)の/用(よう)にたてる。/抜参(ぬけまい)りにいきやす 00064520¥P197 00064530¥N56¥J 00064540¥X○茶漬△△△△△△△△△△¥A吾友軒△米人作 00064550L3/武蔵野(むさしの)御/茶漬(ちやづけ)といふ見世を出して、/殊(こと)の外うれる。/友達(ともたち)が 00064560L4来て、コレきつい/繁昌(はんぜう)だげな。時に/障子(せうじ)に、むさしの/御茶(おんちや) 00064570L5づけとかいたが、ちつとむりだと思ふ。アノ茶づけの始り 00064580L6ハ、浅草に/海道茶漬(かいどうちやつけ)といふが有た。夫から/銀座町(ぎんさてう)へ/山吹(やまふき)茶 00064590L7漬がおちやづけの始り。/宇治(うち)の茶に山吹といふが有からき 00064600L8こへたに、むさし野に茶があつて、つまる物か。/成程(なるほど)、そ 00064610L9ふいふハ(三十九ウ)もつともだが、おれも/海道茶漬(かいとうちやつけ)が有か 00064620L10ら、/木曽海道(きそかいとう)茶漬としよふとおもつたが、/一度(いちど)でこり+ 00064630L11せふとおもつて、むさし/野(の)とつけた。心ハ、はら一ツぱい 00064640L12/喰(くわ)せる思ひ月さ 00064650¥N57¥J 00064660¥X田舎者△△△△△△△△△△△¥A森羅亭△万象作 00064670L15どうらく/成(なる)むすこを、おやじ、/勘当(かんどう)せふといふを、/母親(はゝおや)の 00064680L16/情(なさけ)にて、/田舎(いなか)の/乳母(うば)を頼み、こゝろの/直(なを)るよふに、一二年 00064690L17もそつちでせハしてくれとの/事(こと)。乳母の/亭主(ていしゆ)も、もんもう 00064700L18なれど/正直者(せうちきもの)ゆへ、まことの/主人(しゆしん)のごとく、/朝夕(あさゆふ)こゝろを 00064710L19付ける。むすこも/始(はし)めの内ハ小づかひ不/自由(じゆう)ゆへ、内にば 00064720L20かり/居(い)けるが、のちハ村のむすこどもとつれだち、宿(四 00064730M1十オ)/場(ば)へ二三里、馬にて/泊(とま)りに/行(ゆき)けれバ、/乳母(うハ)も/亭主(ていしゆ)と 00064740M2/相談(そうだん)して、/一ト先(ひとまつ)親旦那へわび/言(こと)してかへし申がよかろふ 00064750M3と、江戸へ来て/両親(りやうしん)の/前(まへ)へ/出(いて)、さて+/若旦那(わかたんな)様にも、は 00064760M4や一年/程(ほと)いなかに御出被成ましたゆへ、おこゝろも直りま 00064770M5した。ばゝアめも参るはづでござりやすが、しつけ/時(とき)でい 00064780M6そかしくござり申から、わしが参りやした。どふぞ御かへ 00064790M7し申てくださりませといへバ、おやじ成ほど、/忰(せかれ)めももふ 00064800M8二十五といふもの。ちつとハ思ひしりおつたろふ。おれも 00064810M9六十に/及(およ)ぶ。じつていになりおつたら、とりしまりの/用心(よふじん) 00064820M10にも/呼事(よぶこと)もあろふ。アイ。じつていまでハ参りませぬが、 00064830M11/鼻(はな)ねじり/位(くらい)には(四十ウ) 00064840¥N58¥J 00064850¥X閑居△△△△△△△△△△△¥A清凉亭△菅伎作 00064860M14江戸より/田舎(いなか)へ引/込(こミ)し/医者(いしや)、/久(ひさし)ぶりにて/来(きた)りて、さて+ 00064870M15私も/唯今(たゝいま)でハ/在所(さいしよ)へまいりてモウ五年。貴公様にも御/堅勝(けんせう) 00064880M16でお目出とふこざります。イヤ、おまへ様も只今でハおら 00064890M17くで、いなかに御出被成との事。いつミてもおわかい。江 00064900M18戸よりハおなぐさみがおゝいそうで、いぜんよりおふとり 00064910M19なされた。夫ハふだん/麦飯(ばくはん)をたべて、/野(の)びろい所におるゆ 00064920M20へでもござりませふ。何事も不/自由(じゆう)がちさ。其かわりに/衣= 00064930¥P198 00064940L1服(い=ふく)にりつはもいりませず、家来ハ壱人あれども/供(とも)もつれず 00064950L2とよし。左様でござりませう。/羽織(はおり)も/袖(そで)なしですみませう。 00064960L3左様+。薬もおまへがふところへ入レて御出ですみ。 00064970L4(四十一オ)左様+。/病人(ひやうにん)も/向(むこ)うから/歩行(あるい)て参りませふ。左 00064980L5様+。/人参(にんじん)のかわりに、干/大根(たいこん)を入レてもすみませう。 00064990L6いしや夫ハちと/出来(でき)ませぬ 00065000¥N59¥J 00065010¥X丁稚の無心△△△△△△△△△△△¥A紀軽人作 00065020L9ある/年(ねん)季の/丁稚(でつち)、/下女(げちよ)のりんが/側(そバ)へよつてハ、コレおりん 00065030L10どん。こんたに無心が有+とたび+いふ。なんだ、小 00065040L11ましやくれたがきだ。いけすかねへといへ共、/余(あま)りたび重 00065050L12れバ、いな舟のいなにはあらず。少しハとうがらしでもく 00065060L13つて見たひ心の所へ、又おりんどん。無心があると言。さ 00065070L14いわひ人もあたりにいず。コレ太郎吉どん。無心とハなん 00065080L15だよといわれ、どふもはつかしくて言にくい。コレ、おつ 00065090L16つけてください。なんの事だ。おつ付てくれろ(四十一ウ) 00065100L17とハ。おれにおつつけてくんなさいといふ事よ。コレサ。 00065110L18そバへよつていわつせへ。おつつけろとハ/何(なに)を。おれがく 00065120L19ふ/飯(めし)をバ/杓子(しやくし)で 00065130¥N60¥J 00065140¥X高尾△△△△△△△△△△¥A万亀亭△江戸住作 00065150M3今ハ昔。/足利(あしかゝ)/頼兼(よりかね)公、/遊女(ゆふちよ)/高尾(たかを)が/追善(ついぜん)の/為(ため)、大川におゐて 00065160M4花火をあげ給ふ。こゝに/土手(どて)の/道哲(どうてつ)とて、たつとき/道心(とうしん)の 00065170M5/念誦(ねんじゆ)して有ける時、ふしぎや、/紅葉(もミち)のかげよりもたへなる 00065180M6こへにて、たばこのんでもきせるより、のとがとふらぬう 00065190M7すけむりと、あらわれ出たる高尾かゆふこん。申+/道哲(どうてつ) 00065200M8さん。そふいふハ高尾でないか。/頼兼(よりかね)公の/仁心(じんしん)にて、大川 00065210M9にて花火をともし給ふも、そなたの/追善(ついぜん)くようのため。/未(ま) 00065220M10だうかま(四十二オ)ぬか。ヱヽ浅ましやなア。サアその/追= 00065230M11善(つい=せん)ハ、どふぞ花火より外の事を。ムヽ、花火ハそなたの/為(ため) 00065240M12にハわるいか。アイ。とぼされるにハあきんした 00065250¥N61¥J 00065260¥X辻八卦△△△△△△△△△△△¥A白鯉館△卯雲作 00065270M15/願(ねか)ひのぞみ/当卦(とうけ)ほんけのうらない、/失物(うせもの)/待人(まちひと)夢はんじ、/相= 00065280M16場(さう=ば)の/高下(こうけ)まで見どふしのうらないと、/辻(つち)に立て居るところ 00065290M17へ、きおひが二三人つれて/来(き)て、万八。ちつとまつてくれ。 00065300M18おらがかゝアがはらんだが、/男(おとこ)のがきかあまか、十二文が 00065310M19うらなつてもらふべい。コレさ、よしやれ。おのしが子な 00065320M20ら、男だとも女ともいへバいゝが、/鬼子(おにこ)だともいわれると、 00065330¥P199 00065340L1/外聞(くわいふん)がわるい。ハテ、おに子なら見世物に/出(だ)(四十二ウ)し 00065350L2て/銭(せに)もふけをするわい。なにさ、しよせん/辻(つぢ)/八卦(はつけ)、/言(いふ)事が 00065360L3あたる物しやアねへ。夫よりハ十二文出して、一ツぱい/呑(のむ) 00065370L4がいゝといふを、/八卦(はつけ)おきが聞て、コレあんまり安くする 00065380L5な。そんなのじやアねへ。なんでも見どふしだ。なんだ、 00065390L6見通しだ。おく/座敷(さしき)が聞てあきれるハ。こいつが+、/家= 00065400L7業(か=ぎやう)の/邪魔(じやま)をしやアがる。うぬハどこのやつだといへば、き 00065410L8おひあてゝ見や 00065420¥N62¥J 00065430¥X家名△△△△△△△△△△△¥A浅草庵△市人作 00065440L11コレ、/此中(このちう)/土手(どて)で/里遊(りゆう)にあつたら、/五明楼(ごめいろう)へいつたといふ 00065450L12たが、どこの事だ。扇やの事さ。五明の扇といふ/事(こと)がある 00065460L13から、夫ていふのさ。そんなら大文字やハ何と/言(いふ)。/文楼(ぶんろう)と。 00065470L14ハテな、/丁子(てうじ)やハ。/丁子楼(てうしろう)よ。/松葉(まつば)やハ。/枩(せう)(四十三オ)/葉= 00065480L15楼(よう=ろう)よ。こいつハおつりきな。そして/玉(たま)屋ハ何といふ。あれ 00065490L16ハ/玉(ぎよく)楼と言。そんならゑちぜんやハといわれて、こまつた 00065500L17/顔(かほ)をして、/越前(ゑちぜん)やか。アノ、/番多楼(ばんたろう) 00065510¥N63¥J 00065520¥X閏七月△△△△△△△△△△△¥A四方真顔作 00065530L20/年(とし)ごとにあふとハすれど七夕の△ぬる夜のかずハすくなか 00065540M1りけり、といへど、七月に/閏(うるふ)ありて、/職女(しよくちよ(ママ))も二度/逢(あい)給ふ。 00065550M2御よろこびかず+にて、/牽牛(けんぎう)のかたより御/文(ふミ)に、こんど 00065560M3ハ/牛(うし)もおそくのろつき候まゝ、そくじつ/鬼(き)が四つ手かごに 00065570M4て参り候ハん。そもじにも/家根船(やねふね)にて天の川の/岸(きし)に御まち。 00065580M5めじるしにハ竹の/枝(ゑだ)に/短尺(たんざく)をおつけをきとの事。(四十三ウ) 00065590M6/職女(しよくちよ(ママ))もそう+したくなされて、天の川に/待(まち)給ふ。/牽牛(けんきう)も 00065600M7かごより/乗(のり)うつり給ひ、/今宵(こよひ)ハ/船(ふね)にとまる/支度(したく)。/蚊(か)が出た 00065610M8らどふせふといふ所へ、風の神のこへとして、/萌黄(もへぎ)の/風(かせ)や 00065620M9アかぜ+と/売(うり)きたる。さいわいと是ヲもとめ、サア/是(これ)か 00065630M10らハ、天人の/芸者(げいしや)を/呼(よび)にやれと、夫よりびわ・/琴(こと)をひいて、 00065640M11/弁天乙女(へんてんおとめ)といふ芸者のこへに、/天道丸(てんとうまる)の/出来星(てきぼし)が、ありが 00065650M12たい+といふ/所(ところ)へ、/船頭(せんどう)の/明星(ミやうせう)が、もし、舟をさげやせ 00065660M13ふといふ。それハなぜ。今あそこへ/雷(かミなり)が、ばか/太皷(たいこ)で/来(き)ま 00065670M14す 00065680¥N64¥J 00065690¥X福鼠△△△△△△△△△△¥A談洲楼△焉馬作 00065700M17今ハ昔。/甲子(きのへね)の/夜(よ)、/白鼠(しろねつミ)一疋来り、見ている内、十二疋子 00065710M18を/産(うむ)。その十(四十四オ)二疋がまた十二疋つゝ/産(うむ)と、だん 00065720M19+/産(うん)で二三千疋になると出ていつて、しばらく/過(すぎ)て、大 00065730M20きな/鼠(ねづミ)ハ/大判(おゝはん)をくわへて/来(きた)る。/中(ちう)鼠ハ/小判(こはん)、/小鼠(こねつミ)ハ小つぶ 00065740¥P200 00065750L1をくわへてくる。/後(のち)にハ千/両筥(りやうばこ)を/車(くるま)につんで、鼠がひいて 00065760L2来るやら、もふ内に/置所(おきところ)がないゆへ、/居(い)所にこまり、二/階(かい) 00065770L3へ上ると、又/二(に)かいへもいられぬ/程(ほと)/金(かね)をはこぶ。/戸(と)を/明(あけ)て 00065780L4/庇(ひさし)へ出よふとすると、ひさしへもだん+金がつんである。 00065790L5こいつハたまらぬと、/漸(よふ+)大/家根(やね)へにげて出、ほつといき 00065800L6をついでいる/間(ま)に、出る事のならぬよふに金をならべ、/下(した) 00065810L7を見れバ/大勢(おゝせい)のねづみが、/車(くるま)て/金(かね)をつんで来る。コレハた 00065820L8まらぬ。アヽ/宝船(たからふね)+(四十四ウ) 00065830¥Y跋 00065840M3いさましき物、初/鶏(とり)の/声(こへ)、/顔(かほ)見勢のしばらくと、/例(れい)の/潜上(せんせう) 00065850M4なごんも、/三升(ミます)/贔屓(ひいき)の口/癖(くせ)なり。/遠(とを)からん者ハ/落噺(おとしはなし)にきけ、 00065860M5/近(ちか)くハ/読(よん)で目にも見よ。/桃栗(もゝくり)/山人(さんしん)/柿(かき)の/素袍(すほう)、/談洲楼(たんしうろう)の/戯談(げたん) 00065870M6のむしろ、/其秀逸(そのしういつ)を/開(ひら)き見れハ、/頓(そミ(ママ))に/笑(わらい)を/催(もよふ)して、お/臍(へそ)に 00065880M7福茶を/沸(わか)す。/嗚呼(あゝ)、此/草紙(そうし)の世に/弘(ひろま)らん事、東ハ/奥州(おうしう)/外(そと)八 00065890M8文字の/姉女郎(おいらん)、西ハ/新造(しんそう)・/禿(かむろ)・/遣(やり)手、南ハキの/字(し)や/台(たい)の物、 00065900M9北ハ/夜毎(いつも)の/地侠客(ぢまわり)まで、/通言(つうけん)の及ふ所、千里も行、/万冊(まんぶ) 00065910M10(四十五オ)も/売(う)れ、/春(はる)の始の初/幸便(こうひん)、/無事志有意(ふししうい)と/題(たい)せしを、 00065920M11/巻末(くわんはつ)せよと/需(もとめ)に/応(おうし)、/智恵(ちゑ)をふるつて/花咲(はなさき)の/翁(おきな)、おこがまし 00065930M12くも/是(これ)をしるす 00065940M14△△△寛政十歳 00065950M15△△△△△午の初春(四十五ウ) 00065960¥P201 00065970¥U噺本大系△第十三巻 00065980¥T新作;/鶴(つる)の/毛衣(けごろも) 00065990¥G 00066000¥Y 00066010L16寛政十年正月序 00066020L17桜川慈悲成序 00066030L18歌川豊広画 00066040L19小本一冊 00066050L20東大国語研究室蔵 00066060¥G(序1オ) 00066070¥Y 00066080M14四海治り、おそろしき物語りも今ハ昔となり、関の戸さゝ 00066090M15ぬ頤に、大平楽の戯噺のど筒の往来しげく、万ゆきすぎか 00066100M16たこと早がつてんに、天竺をてんぢよく、大海をでヱけヱ 00066110M17とおぼへし文盲慈悲成、われおもしろ狸の金玉八畳敷のう 00066120M18ら家に、めしよりすきやの落し噺を作りて笑ひ楽に、わら 00066130M19う門に福きたりて、諸君子の新作(序1ウ)日毎にあつまり 00066140M20ぬ。されと評する智恵なし猿、やたらひつかきちらし置た 00066150¥P202 00066160L1る反故とぢの、常+草てう中より取出し、長き噺のあと 00066170L2さきかいつまんてうつしぬゆへ、御はなし上手の口車に、 00066180L3ヱイさらウンヽヽとひきづり+、おもしろく春の雨夜の 00066190L4常+艸、御ふいてうねかふのミ 00066200L6△△△午ノはつ春△△△△△△△慈悲成△G 00066210L8△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序2オ) 00066220¥N1¥J 00066230¥X小人嶋の雷△△△△△△△△△¥A麻布亭気知兼 00066240M3此間小人嶋へ渡り、雷をとらへたりといふを、友たち、ま 00066250M4た此男ハうそをつく。いや+、うそでハない。しかも爰 00066260M5にと、たもとより取出す。手のひらにのせれハ、畳へはら 00066270M6+と雨(二ウ)ふり雲をもやうし、ガラヽヽと鳴る。そり 00066280M7やうそでハあるまいと、そう+たもとへいれる。友だち、 00066290M8きもをつぶし、まことに雷しや+。今一度見せたまへと 00066300M9いへバ、万八、たもとをさかし、かミなりがどれへやら 00066310M10(三オ)にげた+と、はだかになりて、よく+見れバ、 00066320M11かミなりハ万八がへそへはいりて、くわばら+ 00066330¥N2¥J 00066340¥X年礼△△△△△△△△△△△△△¥Aしゆう 00066350M14万年や福右衛門、御しうぎ申(三ウ)ますといへバ、子ぞう 00066360M15出て、ハイ。ことの外おしつまりました。さぞおせハしう 00066370M16御ざりませう。ふく右衛門Sイヤ、はつ春の御しうぎじや 00066380M17ぞや△こぞうSなんぞきうな御用ならハ、云おいておいで 00066390M18なさりまし。(四オ)(四ウ・五オ挿絵)福右衛門きもをつぶし 00066400M19て、イヤ、あきれはてるというてかへる。おくより女房、 00066410M20こぞう。今のハとなたさましや。こぞう△Sハイ、只今ね、 00066420¥P203 00066430¥G(四ウ・五オ) 00066440M1あきれが礼にまいりました 00066450¥N3¥J 00066460¥X彫もの△△△△△△△△△△△△¥A紫色主(五ウ) 00066470M4ある狂哥師、品川の女郎になしミ、ほりものをしろという。 00066480M5女郎、そんならあした来て見なんし。主の名を彫ておきん 00066490M6す。そんならあしたこやうから、しまつていやれと、其夜 00066500M7ハそう+かへり、あしたたの(六オ)しんでゆき、サア彫 00066510M8ものをしたか。女郎Sアイ、ほりんした。見なんしと、う 00066520M9でを出せハ、狂哥師の名五六人ならべて彫てある。客Sは 00066530M10らを立、これ、摺物てハあるまヱし、こんなにならへてほ 00066540M11られてハいやた+△女郎Sそんなら主の名の所へね(六ウ) 00066550M12客Sどうする△女郎S/星(ほし)わけをしんせう 00066560¥N4¥J 00066570¥X猫△△△△△△△△△△△△△△¥A川越△硯畊 00066580M15子供の多ひ人か、六十にあまりて、又ひとりできる。ねん 00066590M16ごろなもの見まひに来て、お目出たう御ざりますといへハ、 00066600M17ていしゆSモウハヤできねヱでもいゝに、(七オ)年よつて 00066610M18/陰事(いんじ)なぞもつゝしむけれとトいへハ、こたつの上の猫が、 00066620M19ていしゆの顔を見ておかしくなり、猫Sニヤアプウ引 00066630¥P204 00066640¥N5¥J 00066650¥X龍△△△△△△△△△△△△△△△△¥A松露 00066660L3龍、吉原へあそひにゆき、大キに酒に(七ウ)酔、おもいれ 00066670L4大平らくをいう。若イもの来て、ちとあちらへと床をまハ 00066680L5す。龍、部屋へきたり、まてどもいつこう女郎かこぬゆへ、 00066690L6龍はらを立、ふとんの上へころりねて、大いびきをかく。 00066700L7あまり大キないびきゆへ、女郎、(八オ)屏風のそとからそ 00066710L8つとのぞく。若イもの来て、もし、あのいびきハこゝかへ。 00066720L9女郎Sアイ。此目貫さ 00066730¥N6¥J 00066740¥Xかミなり△△△△△△△△△△△¥A湯屋芝住 00066750L12雷寄合て、これおやかた。おまへハたび+落て、だいぶ 00066760L13へそをとらじやツ(八ウ)たらう。おやかたS落るたびに、 00066770L14へそを四五十ほどつゝ取てくるといへバ、それハうそてあ 00066780L15らう。何、うそでハない。是見やれと、へそをガラヽヽと 00066790L16出して見せる。これハおひたゝしいへそじや。おやかた、 00066800L17(九オ)是をこんなにためて、なんにするのじや。おやかた 00066810L18Sハテ、そろばんをこしらへます 00066820¥N7¥J 00066830¥X狂哥△△△△△△△△△△△△¥A虚呂利 00066840M1狂哥を一首しました。なんとよんだときけバ、はつ春や 00066850M2(九ウ)あれも人の子樽ひろひ。友たちSそれが狂哥か。お 00066860M3かしな狂哥じや△Sナセおかしい。よつほとよかろうか 00066870M4友たちSそんな狂哥があるものか。そしてきさま、/狂名(きやうめい)が 00066880M5あるかときけバ、Sナニ、狂名ハないが、大坂においが御 00066890M6ざる(十オ) 00066900¥N8¥J 00066910¥X大名貧きらひ△△△△△△△△△△¥A魚州人 00066920M9ひんほうといふをおきらひの殿様、わが目通りてまづしい 00066930M10の、ひんじやの、びんぼうしやのといふものハ、手うちに 00066940M11なさるとのことゆへ、御きんじ/よ((ママ))衆つゝしんで、(十ウ)か 00066950M12ならすびんぼうなこといふまいと申合ける。ある日殿さま、 00066960M13お馬を御もとめあるとて、御馬場へ見せ馬まいりける。殿 00066970M14さま、つく+と御らんあれハ、かの馬、ヒンヒンとなき 00066980M15けれハ、殿S耳をおさへて、まんざいらく+(十一オ) 00066990¥N9¥J 00067000¥Xけんくハ△△△△△△△△△△△△¥A表具粘人 00067010M18なま酔のさむらいにゆきあたりけれハ、さむらい、大キに 00067020M19はらを立、ふとゞきせんばんなやつ。此両こしが目に見へ 00067030M20ぬか。きやんS二本さしたのがこわけれハ、/焼豆腐(やきとうふ)ハみん 00067040¥P205 00067050L1なこわひ(十一ウ)武士Sなんじや。焼豆腐じやきやんS焼 00067060L2とうふだといつたがとふしたといへバ、武士S/柄(つか)をひねく 00067070L3つて、おれが竹みつを、どふしてしつていおる 00067080¥N10¥J 00067090¥X女房を牛△△△△△△△△△△△△△¥A礒苔成 00067100L6なんでもめつらしい事をして(十二オ)金をもうけんとそふ 00067110L7だんする。ある人、女房をうしにして、見世ものに出しや 00067120L8れといふ。おつとのミこみ山と内へかへり、女房におもい 00067130L9れめしをくわせ、そう+ねかして、かならずねて(十二 00067140L10ウ)居てくりやれといゝなから、友だちの所へゆき、女房 00067150L11をねかして置た。今に牛になるとはなす。友たちSはやく 00067160L12内へいつて見やれ。もふうしになつたらう。がつてんじや 00067170L13と内へかへれハ、女房ハ(十三オ)ねて居るゆへ、ていしゆ 00067180L14Sかゝア。牛になつたかと、ふとんをまくれハ、女房Sア 00067190L15イ、もちつとさつきから、お馬になりやした 00067200¥N11¥J 00067210¥X物しり顔△△△△△△△△△△△¥A歌川豊広 00067220L18神にも相縁きゑんじや。まづ(十三ウ)大こくさまがねづミ 00067230L19がお好。ゑひすさまハ鯛がおすき。布袋さまが唐子がおす 00067240L20き。天神さまが梅がおすき。びんぼう神がうちわがすき。 00067250M1ほうそう神ハたるまがすき。正直神ハあたまがおすき(十 00067260M2四オ)だとはなせバ、コレヽヽ、山の神ハ何がおすきだ。 00067270M3Sナニ、山の神か。ほかのハしらぬが、おらか山の神ハ、 00067280M4とふなすとさつまいもだ 00067290¥N12¥J 00067300¥Xうたひ△△△△△△△△△△△△△¥A槌音人 00067310M7ある人、羽衣のうたひをうたふて(十四ウ)居る所へ、友だ 00067320M8ちきたり、是先生。天人に羽衣をかへしたかの。先生Sイ 00067330M9ヤヽヽ、はくりやうが天人へ衣をかへさぬ。それゆへに天 00067340M10人がはくりやうの家へ衣をとりにきました。それでもかへ 00067350M11さぬゆへ、天人かむりに(十五オ)羽衣を取かへし、にげん 00067360M12とした。その時はくりやうか所の火鉢へ、羽衣のすそが引 00067370M13からんて、天人がかけ出す事かならなんだ。其時、はくり 00067380M14やうが哥をよミました。友たちSなんといふ哥じや△先生 00067390M15Sハテ、乙女の(十五ウ)すかた火鉢とゞめん、と 00067400¥N13¥J 00067410¥X夜具△△△△△△△△△△△△△¥A鹿児全 00067420M18しわひ男、夜具をだいしにして、夜る+/薦(コモ)をかけてねる 00067430M19を、子供ねむくなると、かゝさん。/薦(コモ)をきてねやうといふ 00067440M20ゆへ、母、気の(十六オ)どくかり、これぼうや。あれはこ 00067450¥P206 00067460L1もといふものてハない。ふとんといふものじやといゝきか 00067470L2す。子、よく覚へて、/翌日(あす)の朝、見せに出て居ると、むか 00067480L3ふを折助、わらをかついで通りけるを、子Sよく+見て、 00067490L4(十六ウ)△子Sアレかゝさん。ふとんのくづれたをかつひで 00067500L5ゆくよ 00067510¥N14¥J 00067520¥X/揚((ママ))弓△△△△△△△△△△△¥A勇々館△有義 00067530L8さつまいもハ/琉球(りうきう)から出たと申が、ほんのことかのときく。 00067540L9ていしゆS誠にさつまいもハ、りうきうから出たに(十七オ) 00067550L10ちかひないのさ△客Sハテナ。そして畳のおもても、りう 00067560L11きうからくるのか御ざりますか△ていしゆSりうきうとい 00067570L12ふのが御ざります△客Sおまへにうけたまハれハ、なんで 00067580L13もしれますの。そして、ちいさなゆみは(十七ウ)あれもり 00067590L14うきうからきますか△ていしゆSアイ。あれハ/揚((ママ))弓からき 00067600L15ます 00067610¥N15¥J 00067620¥X植木屋△△△△△△△△△△△¥A桜川慈悲成 00067630L18これ植木や。此福寿草ハいくらだ。うへ木やS百五十で御 00067640L19ざります△武士S八十文にまけぬか△うへ木やSてうどにお 00067650L20めしなさ(十八オ)れま/ま((衍))せ△士Sてうどとハなんのことじ 00067660M1や△うへ木やS百のことで御ざります△士S百ハてうどゝい 00067670M2ふか△うへ木やSハイ。さやうで御ざります△士Sそんなら 00067680M3めでたく、それで買ふ△士Sときにうへ木や。きさまハい 00067690M4くつじや△うへ木やSおあて(十八ウ)なされまし△士S二十 00067700M5八か九であらふ△うへ木やSよくおあてなされました。てう 00067710M6どで御さります△士Sきさま、百才になるか△うへ木やSゆ 00067720M7びを三本出して、はて、てうどで御座りますといへハ、 00067730M8士Sきもをつぶして、三百才にハ(十九オ)若イ男じや 00067740M9(十九ウ) 00067750¥P207 00067760¥U噺本大系△第十三巻 00067770¥T/新玉箒(あらたまはばき)〔序題〕 00067780¥G 00067790¥Y 00067800L17寛政十年四月序 00067810L18墨洲山人序 00067820L19峨眉丸画 00067830L20半紙本五巻五冊 00067840¥Y/新玉箒序(あらたまはゞきじよ) 00067850M3東方朔か滑稽、楚呂利か軽口、是ひとり咄しの濫觴なるへ 00067860M4し。今此雙紙は、新か中より新を撰ミ、古きを去て、さつ 00067870M5はりさつと掃ちきつたる新玉箒、手に取からに玉の緒も 00067880M6(一オ)千とせを延る気の薬。サア、一貝ツヽおかひなさい 00067890M7+ 00067900M9△△△東都墨洲山人鍋二丸於華洛旅舎誌之 00067910M10△△于時寛政戊午盂夏潅仏日(一ウ) 00067920¥P208 00067930¥Y目録 00067940L3△△△一之巻 00067950L4一△鴬おとり△△△△△一△焙炉 00067960L5一△合かゞみ△△△△△一△駿河もの 00067970L6一△築山△△△△△△一△新世帯 00067980L8△△△二之巻 00067990L9一△旅からす△△△△△一△屁(目一オ) 00068000L10一△乗合船△△△△△△一△無筆 00068010L11一△女中の正直△△△△一△合羽の下着 00068020L12一△寒中の小便 00068030L14△△△三之巻 00068040L15一△虱△△△△△△△△一△紙鳶 00068050L16一△郭公奈良茶△△△△一△傾城の無心 00068060L17一△貧乏浪人△△△△△一△お乳人の生写(目一ウ) 00068070L18一△無常屋△△△△△△一△貸雪隠 00068080L19一△女郎買勘略 00068090M1△△△四之巻 00068100M2一△劔術指南△△△△△一△悔 00068110M3一△家主の異見△△△△一△盲人の間違 00068120M4一△大屋の眼病△△△△一△鼻帋袋 00068130M5一△たはこ入△△△△△一△水稽古(目二オ) 00068140M7△△△五之巻 00068150M8一△娘の恋煩△△△△△一△幇間の年礼 00068160M9一△画師の弟子△△△△一△毛蒲団 00068170M10一△盗人△△△△△△一△火の用心 00068180M11一△浪人△△△△△△一△霖雨 00068190M12一△番頭の侘言 00068200M13△△△目録終(目二ウ) 00068210¥T1軽口;新玉箒巻之一 00068220¥N1¥J 00068230¥X鴬おとり 00068240L5江戸/神田(かんだ)大明神御/祭礼(さいれい)は、/隔(かく)年九月十五日にして、/東都(とうと)第 00068250L6一の/壮観(そうくわん)なり。ねり物あまた氏子中より出す中に、年&お 00068260L7なじ/趣向(しゆかう)もおもしろからずと、ことしハ鴬おどりといふ事 00068270L8を思ひ付、/着物(きもの)も/帯(おひ)も、のこらず鴬茶揃の/装束(しやうそく)、廿人はか 00068280L9り/飛(とん)だりはねたりおどり行バ、(二オ)ことしのはねハ鴬お 00068290L10とりと、とり+の/評判(へうばん)。あまり/面白(おもしろ)さに、アレハどこ町 00068300L11のおとりじやと、/吃(どもり)に/問(と)ふたれバ、あれかへ。あれハ、ヲ 00068310L12ヽおけ町 00068320¥N2¥J 00068330¥X焙炉 00068340L15ある人、山出しの男をつかいけるに、その気のきゝたる事 00068350L16江戸者は/跣足(はだし)。まづ朝、/亭主(ていしゆ)がむつくりおきると、/歯磨(はミがき)に 00068360L17/楊枝(やうじ)、/手水(てうず)の/湯(ゆ)をとり、/座敷(ざしき)へすハると/茶(ちや)を/汲(くん)ンで、/手塩= 00068370L18皿(てしほ=ざら)に(二ウ)/梅干(うめぼし)。/朝飯(あさめし)の/菜(さい)も旦那の口に合ふ物こしらへ、 00068380L19/昼前(ひるまへ)になれバ、/土瓶(とびん)で/■(にばな)。かゆひ所へ手のとゞく/仕打(しうち)。大 00068390L20きに旦那の気に入て、ある日/友達(ともたち)の/出合(であい)に、コレ/皆(ミんな)、/聞(きか)つ 00068400M1せへ。ことしおいた山出し男ハ、とんだ気のきいたやつ。 00068410M2なんでもおれがいわぬ先から、ちやんとしておく。きめう 00068420M3なやつだとはなしけれバ、ナニ、山出しにそう気の/利(きい)たや 00068430M4つがある物か。どふやらうそらしいと(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00068440M5いへバ、イヤサ、うそでハない。そんならあすでもきてミ 00068450M6やれと約束し、内へ帰つて男にいゝ付、あす友達がくるか 00068460M7ら、/直(すぐ)に茶を入、/■(にばな)を出せといゝ付置。さてあす友達が二 00068470M8三人、どふだ。御宿にかとずつと/這(は)入れバ、旦那が、ソレ 00068480M9八助。アイ、かしこまりましたと、/湯(ゆ)を/煮立(にたて)る。アレ、見 00068490M10さつしやい。あゝ気がつくハ。成ほど、きつい物とほめて 00068500M11いれば、八助ハ湯がにえ立と、/直(すぐ)に茶を入にかゝる故、 00068510M12(四ウ)旦那が見て、コレサ、八助。ほいろよ。ハイ。いや 00068520M13さ、ほいろよ。ハイ。いやさ、ほいろよと/叱(しから)れて、八助、 00068530M14わん+ 00068540¥N3¥J 00068550¥X合鏡 00068560M17/髪結所(かミゆいところ)へ行、ひとつ/剃(そつ)てくださいと、さかやきをもミ、/剃(そり) 00068570M18しまい、/髪(かミ)もちやんとゆひ/上(あが)れバ、とんだけふハよく出来 00068580M19た。/鏡(かゞミ)をかしやれと、かりて見て、とふも是でハうしろか 00068590M20見へぬから、もう一/面(めん)ないか。(五オ)アイ、たつた一/面(めん)で 00068600¥P210 00068610¥G(三ウ・四オ) 00068620M1ござります。ハテ、うしろが見たい物だの。モシ、それな 00068630M2ら/柄杓(ひしやく)に水を入て、うつしてごろうじませ。こいつハとん 00068640M3だよい/知恵(ちゑ)だと、ひしやくに/汲(くミ)、うつして見て、こいつハ 00068650M4/妙(めう)+。とんだよく/出来(でき)たと、われを/忘(わす)れて鏡とひしやく 00068660M5を上下にすると、/天窓(あたま)からざつふり 00068670¥N4¥J 00068680¥X駿河者 00068690M8/駿河(するが)の/府中(ふちう)から、江戸の/店(たな)へ/商得意(あきないどくい)が(五ウ)/下(くだ)られ、何 00068700M9か年中にハよほどの商旦那/故(ゆへ)、/家内(かない)こぞつての御/馳走(ちそう)。/殊(こと) 00068710M10に/亭主(ていしゆ)が大はむき。/昼(ひる)のうちハ江戸の/名所(めいしよ)+へ/同道(どう※)、帰 00068720M11ると/罷出(まかりいで)ての御/伽(とぎ)ばなし。サテ御/国元(くにもと)ハ、御/当地(とうち)にもま/た((さカ)) 00068730M12つた/繁花(はんくわ)と/承(うけた給り)りました。ナニ、御当地におよふ所か、と 00068740M13こにある物でござりますと/卑下(ひげ)すれバ、イヱ+、それて 00068750M14もあたゝかさハちかいます。ソレモ江戸の/築地(つきぢ)程にハござ 00068760M15らぬ。(六オ)シカシ/茄子(なすび)ハどこよりもはやく出来ますげな。 00068770M16イヤ、それもこつちの/砂村(すなむら)が早いそふにこざると、何を/讃(ほめ) 00068780M17ても/卑下(ひげ)斗すれバ、亭主も大きにこまり入、モシ+、そ 00068790M18れても/富士(ふじ)ばかりハ、/誠(まこと)に三/国(ごく)一の/大山(だいさん)でごさるといへバ、 00068800M19イヱサ、あのやうに高く見へても、あれでも半分ハ/雪(ゆき)でご 00068810M20ざる 00068820¥P211 00068830¥G(七ウ・八オ) 00068840¥N5¥J 00068850¥X築山 00068860M3ある人の所へ/見舞(ミまい)しに、/御亭主(ごていしゆ)ハ/他行(たきやう)。(六ウ)/内義(ないき)が/立出(たちいて)、 00068870M4コレハ+徳右衛門様。よふこそ御出。何か御用もこざり 00068880M5ましやうに、折あしき他行。マア+御上りなされませ。 00068890M6さんよ。御茶もつてこい。御多はこ盆と、おくそこもなき 00068900M7/挨拶(あいさつ)に、徳右衛門も座敷へ/通(とう)り、扨今日ハちと御目にかゝ 00068910M8り度用事かこされと、御帰りハまだ/間(ま)かこさりましやうか。 00068920M9イヱ+、/早(はや)う出られましたれバ、/押付(おしつけ)、帰られましやう。 00068930M10くるし(七オ)(七ウ・八オ挿絵)からすハ御/待(まち)と、/四方(よも)山のは 00068940M11なしなとして、たばこ/呑(のミ)ながら/庭(にハ)を見れバ、/築山(つきやま)/泉水(せんすい)なと 00068950M12物/数寄(すき)なこしらへ。扨御庭がよふ出来ました。/福(ふく)右衛門様 00068960M13ハ御まめな事とほめれば、内義か、イヱ、あれも内の/若(わか)い 00068970M14/衆(しゆ)の、てんがうにこしらへましたと/卑下(ひけ)の/詞(ことば)。其内亭主も 00068980M15帰り、用事とゝのへ、徳右衛門は立帰て、女房にむかい、 00068990M16扨+福右衛門の内義ハ/発明(はつめい)な女。(八ウ)おれが庭をほめ 00069000M17たれバ、かう+いつたと咄しに、内義ハあつくなり、な 00069010M18んの、そのくらゐの事、わしもいわいでどふする物。庭を 00069020M19こしらへ、客を/呼(よん)で見なさいといふに、亭主ハ、なんの、 00069030M20こなたが又しくぢつてハ/外聞(ぐわいぶん)がわるいといへども、内義ハ 00069040¥P212 00069050L1/得心(とくしん)せず。庭もこしらへ客をよび、茶、たばこ、/吸物(すいもの)など 00069060L2いだして、庭をほめるかと待ていても、此客、/生得(しやうとく)/木訥(ぼくとつ)に 00069070L3て不/風雅者(ふうがもの)。(九オ)/一向(いつかう)に/気(き)が/付(つか)ねバ、内義ハ少し/待(まち)どを 00069080L4しく、モシ、庭をごらうじましといへども、いかさま、よ 00069090L5ふ出来ましたといつたばかり。折ふし内義ハ/懐胎(くわいたい)、ふくら 00069100L6かなる/腹(はら)のやうすを客がみて、おまへハ又御懐胎か。徳右 00069110L7衛門様も/大勢(おゝぜい)の御/子持(こもち)たか、御/達者(たつしや)な事といへバ、内義か、 00069120L8イヱ、是もぬし斗でハなく、内の若い衆のてんがうにこし 00069130L9らへました 00069140¥N6¥J 00069150¥X新世帯(九ウ) 00069160L12コレ八や。此/頃(ごろ)次郎か/世帯(しよたい)を/持(もつ)たげな。/家見(いゑミ)に行ずハなる 00069170L13まいと、二三人いゝ合、ぬり/樽(だる)さげて家見に行。次郎。内 00069180L14にかと、ずつと/這入(はい)れバ、ヲイ、八/公(かう)、/松(まつ)公。ありがてへ。 00069190L15しかし樽とは、いたミいるぜへ。コレ見てくだせへ。/押(おし)入 00069200L16の戸と/銅壷(どうこ)に、ごふせへ/銭(ぜに)がかゝつたぜへ。ヲヽそふだろ 00069210L17う。ごふたきりつぱだ物を。ドレ、目出たく一ふく呑へい 00069220L18と、火入を見れバ、さつはり火がなし。八や。火がないぜ 00069230L19へ。それなら(十オ)打つけて/呑(のま)せふと、火打/箱(ばこ)取出し、打 00069240L20共+一向につかず。松か見て、そんな世帯持がある物か。 00069250M1どれ、よこしやれと、かつちり一つ打と火かつけば、これ 00069260M2見やれ。此くらゐな物だと/味噌(ミそ)を/上(あげ)られ、ナンノ、あんま 00069270M3り味噌をあげるな。ぢきにつくはつだ。/下地(したぢ)をおれが、よ 00069280M4つぽど打て/置(おき)た物を 00069290¥Y1軽口;新玉箒巻之一△(十ウ) 00069300¥P213 00069310¥T1軽口;新玉箒巻之二 00069320¥N1¥J 00069330¥X旅立 00069340L5ある/有徳人(うとくじん)、/参宮(さんぐう)せんとのもよほし。御/供(とも)の若い者二三人、 00069350L6/出入(でいり)/医師(いし)まじりに、あすハ/出立(しゆつたつ)。/前(ぜん)日より大/雨(あめ)にて、/暇乞(いとまごい) 00069360L7にくるおはい+ども、此/雨天(うてん)でも、あすハ御立なさりま 00069370L8すかと、くる人も+/も((も衍))おなじ/挨拶(あいさつ)に、/旦那(たんな)もぐつと/退屈(たいくつ) 00069380L9して(一オ)/欠(あくび)たら+の所へ、またひとり/幇間(たいこもち)がきて、モ 00069390L10シ旦那。あすハ御出立、お目出たふござります。しかし此 00069400L11雨天でもお立なさりますかと/例(れい)の口上。旦那も大きにじれ 00069410L12のきた上なれバ、アヽ立とも+。雨天ハおろか、少&ハ 00069420L13/日和(ひより)でも立ます 00069430¥N2¥J 00069440¥X屁 00069450L16ある人、女郎/買(かい)にいつた所が、/盃(さかづき)も/済(すミ)、/床(とこ)も/納(おさま)り、(一ウ) 00069460L17ひとりまぢ+していれバ、やう+/九ツ頃(ひけごろ)に来て、モシ、 00069470L18/寝(ね)なんしたかへと、たばこ/吸付(すいつけ)、/打掛(うちかけ)ひらりと/屏風(べうぶ)へかけ、 00069480L19/床(とこ)へは/入(いつ)て、ぬしハどふか見申しいしたやうでありいすよ。 00069490L20ナニ、とんだ、けふ初て/吉原(てう)といふ所を見た物を。ヲヤば 00069500M1からしい。/腹(はら)の内から見たが/聞(きい)てあきれいすよと、だん 00069510M2+手事などありて、一寝入して二人なから目を/覚(さま)し、も 00069520M3ふ六ツかの。ナニ、まだでありいしやうといゝなから(二 00069530M4オ)/莨(たばこ)吸付る/拍子(ひやうし)に、おいらんがつい取はづして、ブウと 00069540M5一つやらかせバ、ヲヤ、いゝ/音(おと)だのといわれて、どふもめ 00069550M6んぼくなく、モウ+ゆるしておくんなんし。/嘸(さぞ)/下作(げさく)な/者(もの) 00069560M7だと思ひなんしやうが、かゝさんが久しい大病で、どふぞ 00069570M8よく成るやうにと、/観音(くわんおん)様へ、/客衆(きやくしゆ)の前で/恥(はぢ)をかきいしや 00069580M9うと/願(ぐわん)をかけいして、月に一度づゝかふして、はしたない 00069590M10事をして、はぢをかきいすといふ内、又一つ、ブウととり 00069600M11はづ(二ウ)して、アヽうれしや。来月分も取越した 00069610¥N3¥J 00069620¥X乗合船 00069630M14/乗合船(のりあいぶね)のといや+。多葉粉すい付、思ひ+の十所ばな 00069640M15し。おまへ、御/国(くに)ハ。アイ。わたしハもと/築紫(つくし|(ママ))/彦山(ひこさん)の者。 00069650M16七つの年お江戸へ出て、ことしててふど三十年います。わ 00069660M17しハ又/九州(きうしう)/肥後(ひご)の国あその宮の神主のしくぢり。わしハ/近= 00069670M18江(あふ=ミ)、/越中(ゑつちう)、/備前(びぜん)と、ミな夫+の国所。/最初(さいしよ)から/側(そハ)に聞て 00069680M19(三オ)(三ウ・四オ挿絵)いた/老人(ろうじん)か/横(よこ)手を打て、扨+人間 00069690M20といふ者ハ、アヽ/不思義(ふしぎ)な物と、/殊(こと)の外の/感心(かんしん)。いつれも 00069700¥P214 00069710¥G(三ウ・四オ) 00069720M1不審し、お/親父(やぢ)様。おまへハ何をそのやうに感心成れます。 00069730M2イヱサ、人間ほどふしぎな物ハござらぬてさ。なにといわ 00069740M3しやる。おまへがたも皆+/他国(たこく)もの、/同国(どうこく)の衆ハない。 00069750M4それでも此やうに、しづかにしてごさる。これか/犬(いぬ)なら、 00069760M5/嘸(さぞ)やかましくてなりますまい 00069770¥N4¥J 00069780¥X無筆(四ウ) 00069790M8内義が御亭主に/向(むか)つて、モシたんなへ。あすあたり、おと 00069800M9よに/灸(きう)をすへてやろうとおもひますが、どふしましやうと 00069810M10問れて、亭主が、ヲヽよかろふが、灸にはたいぶ/忌(いむ)日があ 00069820M11るから、日を見てやろう。/暦(こよミ)を出しやれ。ヲヽ暦は、たし 00069830M12か/隣(となり)へかしましたと取て帰れバ、/仁物(じんぶつ)らしく亭主がひらい 00069840M13て、ウヽこふと。あすハ二日、午の日と、見ている/側(そバ)か 00069850M14ら、/娘(むすめ)か、モシおとつさん。暦か/逆(さか)さでごさりますといわ 00069860M15れて、/無筆(むひつ)といふが(五オ)子の/手前(てまへ)も/恥(はつか)しく、モウ/隣(となり)へハ 00069870M16かさぬがよい。めんやう隣てハ、/逆(さか)さにしてもどす 00069880¥N5¥J 00069890¥X女中の正直 00069900M19ある/少身(しやうしん)なる人の/奥様(おくさま)、女中二三人/供(とも)につれ、/実盛役(さねもりやく)の/斎= 00069910M20藤(さい=とう)/森(もり)右衛門御供して、江戸/橋(はし)/辺(へん)を/通(とふ)りしに、/髪結所(かミゆいどころ)に/若(わか)い 00069920¥P215 00069930L1者四五人/寄居(よりい)て、あの奥様ハうまい/尻(しり)だ。イヤ、あいつハ 00069940L2くさいふうたとの咄しか、森右衛門か/耳(ミヽ)へ入。/立(たち)とまつて 00069950L3(五ウ)おのれハにつくいやつ。人の御ともして行大事の奥 00069960L4様を、くさいなどゝハ/法外(ほうぐわい)/千万(せんばん)。今一/言(ごん)ぬかして見よと、 00069970L5/切刄(きつは)/廻(まハ)せど、江戸者の/常(つね)とて、そのくらゐなおどしハひく 00069980L6ともせず。なんのこつた。/赤鰯(あかいわし)をひねくりまハしたとて、 00069990L7どふする気だ。イヤ、にくいやつ。なぜくさいといゝおつ 00070000L8た。ナニ、くさいからくさいといつたがどふした。/ど((ママ))んだ 00070010L9とんちきな、べらぼうじやアねへか。あんな/頬(ほう)ぺたの(六 00070020L10オ)/赤(あか)い女に、くさくねへのがあつたら、二つとない/首(くび)を 00070030L11やるべい。イヽヤ、くさくハない。イヤ、くさいと大げん 00070040L12くわ。奥様ハ/橋(はし)の/袂(□もと)に立ている内、/懐(ふところ)よりそつと手をやり、 00070050L13かいで見て、コレ+森右衛門。/理非(りひ)ハともあれ、どふで 00070060L14もけんくわハ、こつちがまけだ 00070070¥N6¥J 00070080¥X合羽の下着 00070090L17/風雅(ふうが)でもなく、しやれでなく、しやう事なしに(六ウ)/馬道(うむミち) 00070100L18/辺(へん)の/貸寮(かしりやう)かりて/夫婦(ふうふ)ぐらし。/亭主(ていしゆ)が少しつかひ/過(すご)しに、此 00070110L19/頃(ごろ)は内の/工面(くめん)も大むづかし。されども/沾徳(せんとく)ごのミのしかミ 00070120L20/火鉢(ひばち)に/土瓶(どびん)をかけ、/巨燵(こたつ)に/首(くび)きり/這入(はいつ)て、女房相手に/咄(はなし)し 00070130M1ている所へ、/例(れい)の/友達(ともだち)が二三人どや+と内へ入、どふだ 00070140M2/露夕子(ろせきし)。/一別(いちべつ)/以来(いらい)。時に此頃の御/世界(せかい)が/拝聞(はいもん)いたしたいの。 00070150M3ナニサ。此頃ハ/一向(いつかう)のわる工面で、やろうの/閉戸(へいこ)/先生(せんせい)見る 00070160M4/様(やう)(七オ)(七ウ・八オ挿絵)に内にばつかり。おもしろい/世界(せかい) 00070170M5などゝいふ所ハない/点(てん)さ。おまへがたハうらやましい。さ 00070180M6ぞおさえの/幕(まく)だろふ。ノウお/時(とき)。ヲヤ、よくうらやましが 00070190M7んなさる。モシ/皆(ミな)様、聞ておくんなさい。わたしらが内で 00070200M8も、モウつゞや/廿(はたち)じやアあるまいし。此頃もてふど八日ほ 00070210M9ど内へ帰らねへでばからしい。やきもちじやアございやせ 00070220M10んが、あんまりでござります。ホヽウ、これハ/御台所(ミだいどころ)の御 00070230M11/尤(もつとも)。こふいふ/矢先(やさき)(八ウ)へいゝ出して、おいらもしから 00070240M12れやうかしらねへが、おまへをさそう気で、ミんなが来た 00070250M13が、どふだ、つき合気ハなしか。しかしお時様ンへハ気の 00070260M14どくだ。ナニ、つき合でいきなさる物。どふしてわたしが 00070270M15かまう物か。ヲヽ夫ならあゆばつし。アイ、いきやしやう。 00070280M16時に此/形(なり)でハどふもいかれめへ。/素小袖(すこそで)壱つだ物を。モシ 00070290M17だんな。わたしが/合羽(かつぱ)があるから、下へきていきなさいと、 00070300M18取出してわたせバ、こいつハ/妙(めう)だ。(九オ)/天鵞絨(びろうど)の/半襟(はんゑり)、 00070310M19これでハ/下着(したぎ)と見へると下へきて、道+もむだ口たし 00070320M20+、やう+玉やへなり込、皆+見立も/済(すん)で、おいら 00070330¥P216 00070340¥G(七ウ・八オ) 00070350M1んの座敷での大さわぎ。いづれも/片肌(かたはだ)ぬいでしやれのめせ 00070360M2ど、/露夕(ろせき)ひとりハ肌もぬがれず、まし+しているを、/雛= 00070370M3妓(しん=ぞう)が見て、ぬしも肌をおぬぎなんしと、むりにぬがせて、 00070380M4ヲヤ、ぬしハ下に/合羽(かつぱ)をきてござるよといわれて、大きに 00070390M5手こすり、ナニ、おれハ此頃(九ウ)/盗汗(ねあせ)をかいて、どふも 00070400M6ならぬから 00070410¥N7¥J 00070420¥X寒中の小便 00070430M9あるおやぢ、夜るもたび+小/便(べん)におきてなんぎするに、 00070440M10殊にこまるハ/寒中(かんちう)になれハ、戸か/冰(ごほり)ついて、さつぱり/明(あか)ず。 00070450M11其内/急(きう)になると猶しもこまると、ある人に咄けれバ、夫ハ 00070460M12その冰ついた戸の/敷居(しきい)へ小便をすると、あたゝかミで冰が 00070470M13/解(とけ)て戸が明く物とかた(十オ)れバ、おやぢハよろこび、/晩(ばん) 00070480M14にハそうして明やうとおもひ、扨夜明前に/例(れい)の小便に/起(おき)た 00070490M15所が戸が明ず。こゝこそと小便をしかけければ、なるほど 00070500M16戸ハ心やすく明たり。おやぢ、/表(おもて)を/詠(なかめ)て、なんの事だ。/用(やう) 00070510M17もないに 00070520¥Y1軽口;新玉箒巻之二終(十ウ) 00070530¥P217 00070540¥T1軽口;新玉箒巻之三 00070550¥N1¥J 00070560¥X虱 00070570L5女郎と/弐人(ふたり)/寝(ね)ていて、/客(きやく)が/襟(ゑり)をかくとて、ごろりと壱つ、 00070580L6大きなやつをとらまへ、/捨(すてる)にハ捨られず、そつと口に入、 00070590L7ぴちりといわすれバ、女郎が見て、ヱヽきたない。ぬしハ 00070600L8しらミでハありいせんかといわれて、一/言(ごん)もなく、客はま 00070610L9じ※一寝入して目が/覚(さめ)、/今度(こんど)ハまた(一オ)女郎か/尻(しり)のあ 00070620L10たりで/壱疋(いつひき)。こいつも捨所にこまり、火入引寄て、ぷちり 00070630L11といわすれば、/客(きやく)ハ/起(おき)かへり、コレ、先におれか/喰(くい)つぶし 00070640L12たら、手まへ、きたないと/笑(わら)つて置て、ソレ、手まへも火 00070650L13入へいれたでハないかときめつけられ、アイ。ぬしハ/生(なま)で 00070660L14/食(くい)なんすが、わつちハ/焼(やい)てたべんす 00070670¥N2¥J 00070680¥X紙鳶 00070690L17/親父(おやぢ)が/商(あきない)から帰ると、小僧が、コレとつさん。(一ウ)紙鳶(△たこ△|いかの事) 00070700L18を/上(あけ)つけてくんなといへバ、おやぢが、ばかをいへ。/草臥(くたびれ) 00070710L19きつて帰つた物を、とんだ事をいふやつだといへども、/小= 00070720L20僧(こ=そう)ハとかく/得心(とくしん)せず。上てくんなよ+とせがむに、女房 00070730M1が、おまへも/一寸(ちよつと)上てやんなさいといふゆへ、ソンナラこ 00070740M2いと/広小路(ひろこうぢ)へつれて行、風にまかせて上た所が、どふもお 00070750M3もしろく、/手拷(たぐつ)たり引たりすれバ、小僧が、とつさん。モ 00070760M4ウくんなよ+といへども、マア(二オ)まて。よく上つけ 00070770M5てやろふとわたさず。小僧ハいつそ/泣(なき)出せハ、おやぢが見 00070780M6て、ヱヽいま+しい。ようもないわれをつれてきた 00070790¥N3¥J 00070800¥X郭公なら茶 00070810M9/午(うま)の/年(とし)/故(ゆへ)、所+に/観音(くわんおん)の/開帳(かいてう)/多(おゝ)き中に、/別(べつ)して/浅草寺(せんさうじ)の 00070820M10/観世音(くわんぜおん)ハ/参詣(さんけい)/夥(おびたゝ)しく、/地内(ちない)から/門前(もんぜん)へかけて/諸(しよ)/商人(あきんど)さま 00070830M11+の思ひ付して、/磐昌(はんじやう)する中に、/鴬菜飯(うくひすなめし)(二ウ)からの思 00070840M12ひ付にて、ほとゝぎすなら茶といふをはしめた所、殊の外 00070850M13/評判(へうばん)よろしく、初日から人の山。毎日+にきやかなりし 00070860M14に、どふした事やら、七日八日すると、見せをしまいし故、 00070870M15ある人ふしんし、/亭主(ていしゆ)にむかい、モシ、あれ程評判のよか 00070880M16つたに、なぜしまいなさつたといへハ、亭主が、アイ。/随= 00070890M17分(すい=ぶん)評判もよく、客もおびたゝしくありましたが、/郭公(ほとゝぎす)のせ 00070900M18いか、来る客が(三オ)(三ウ・四オ挿絵)のこらす、てつへん 00070910M19からかけだ 00070920¥P218 00070930¥G(三ウ・四オ) 00070940¥N4¥J 00070950¥X女郎の無心 00070960M3さるおいらん、/馴染(なしミ)の客に/逢(あふ)て、モシぬしへ。申かねいし 00070970M4たが、どふぞ/百疋(ひやつひき)もつてきておくんなんしとやくそくし、 00070980M5扨あくるばんに客がきて、コレ、/過夕(ゆふべ)の百疋と、金を出し 00070990M6てやれハ、おいらんが見たはかり、あれほど百疋くんなん 00071000M7しとやくそくを申しいしたに、(四ウ)ナンタへ、たつた壱 00071010M8疋はかり 00071020¥N5¥J 00071030¥X貧乏浪人 00071040M11こゝに/大狩(おゝかり)/根太弥(ねたや)といへる/浪人衆(らうにんしう)、日まし+に/尾羽打(おはうち)か 00071050M12らし、どふにもこふにもせんかたなく、/殊(こと)に此/節季(せつき)ハ/諸方(しよほう) 00071060M13に/買(かい)がゝりも/多(おゝ)く、いろ+/工面(くめん)/才角(さいかく)しても、一/銭(せん)のあて 00071070M14も/出来(てき)ず。といふて/首(くひ)もくゝられず、とやかくする内大/晦= 00071080M15日(つご=もり)。かけ取が来てハ(五オ)たまらずと、/表(おもて)の/障子(しやうじ)をしつか 00071090M16としめ、女房にいゝ付て、/掛(かけ)とりがきても、おれハ/留守(るす)じ 00071100M17やといへと、/隅(すミ)にかゞんて/小(ちいさ)く成ている所へ、ハイ。/薪屋(まきや) 00071110M18でござります。おはらいをといふ声に、女房が、アイ。内 00071120M19でハけふハ出られました。/後ぼ(のち(ママ))どお出と、薪屋を帰した/跡(あと) 00071130M20へ、ハイ。/味噌(ミそ)屋でござりますとの/声(こゑ)。こいつも/初(はしめ)の/伝(でん)で 00071140¥P219 00071150¥G(七ウ・八オ) 00071160M1帰してしまへバ、跡へくるのハ/米屋(こめや)の/亭主(ていしゆ)。(五ウ)こいつ 00071170M2ハよつぽどむつかしく、薪屋味噌屋の/形(かた)でハ行す。障子を 00071180M3立て留守とはふしんと、障子へ/穴(あな)を明/覗(のそい)て見れバ、内にハ 00071190M4亭主がまじ+。モシ、夫ほと内にいなから留守とは、聞 00071200M5ぬなされかたといふに、浪人、/刀(かたな)おつとり、/目(め)をむき出し、 00071210M6おのれ、/素町人(すてうにん)の分として理/不尽(ふじん)千万。浪人しても大狩根 00071220M7太弥、/武士(ぶし)の/住居(すまい)ハ/城廓(じやうくわく)/同前(とうせん)。其まゝにして/置(おく)(六オ)べ 00071230M8きかと/飛(と)んで出んとする所を、米屋の亭主ハ手を/摺(すつ)て、コ 00071240M9レハわたくし不/調法(てうほう)、/真平御免(まつひらごめん)下さりませ。元の通りに/張(はり) 00071250M10ましやうと/懐(ふところ)£/鼻紙(はながミ)取出し、/唾(つばき)にて張付れバ、浪人が見て、 00071260M11夫でハ内ハ見へハせぬか。イヱモウ、さつはりと見へませ 00071270M12ぬ。ウヽいよ+見へぬか。アイ。とんと見へませぬ。ソ 00071280M13レナラおれハやつはり留守だ 00071290¥N6¥J 00071300¥X御乳の人の生写(六ウ) 00071310M16ある大/家(け)のお/姫(ひめ)様、大事の所へ御/腫(しゆ)もつが/出来(てき)させられて 00071320M17御なやミ。御/手医師(ていし)/不残(のこらず)、御/脉(ミやく)を見ても御腫物のやうすし 00071330M18れされバ、御/療治(りやうち)のいたしかたもなく、/外療衆(くわいりやうしゆ)もこまり 00071340M19入しかども、とかく御見せなさる事ハ/死(し)んでもいやとの御 00071350M20事。お/乳(ち)の人の/工風(くふう)にて、かの所を/絵(ゑ)にかき、どこらへ出 00071360¥P220 00071370L1来ましたか。其所を御/意遊(いあそ)バせと御目にかけれバ、御姫様 00071380L2ごらん(七オ)(七ウ・八オ挿絵)なされ、/乳母(うば)や。ミつからに 00071390L3ハ此やうな毛ハはへてハいぬわいなと御意なさるれバ、御 00071400L4乳の人ハ/承(うけ給)り、イヱ+、此毛をかきませねバ、/上下(うへした)が 00071410L5わかりませぬ 00071420¥N7¥J 00071430¥X無常屋 00071440L8いつの頃にか、吉原に/無常屋(むじやうや)といへる/新(しん)見せ。殊の外、/繁= 00071450L9昌(はん=じやう)との/評判(へうばん)をきゝ、ある人あそびに行たりしに、おいらん 00071460L10の名は/後(のち)の世、しろむくに白き/帯(おび)、/悉皆(しつかい)/八朔(はつさく)といふ(八ウ) 00071470L11/衣装付(いしやうつけ)にて、/床(とこ)の/掛(かけ)物、/兆殿司(てうでんす)の十六/羅漢(らかん)、/常香盤(しやうかうはん)に/抹香(まつかう) 00071480L12/薫(くゆ)らせ、/酒(さけ)の/肴(さかな)ものこらず/精進(しやうじん)、気のめいつた事斗。さび 00071490L13しさに/芸者(げいしや)を/呼(よび)にやつた所が、/鉦(どら)・/鐃鉢(にようはち)にて/観音経(くわんおんぎやう)のつれ 00071500L14/節(ぶし)。御/非時(ひじ)をあかりましと/膳(ぜん)を出したハ、/禅家(せんけ)の/法事(ほうじ)に行 00071510L15たなり。其内もおいらんハ、/輪数珠(わしゆず)つまくつて、/禿(かむろ)のしき 00071520L16ミにいゝ付て、常香盤の抹香つぎかへ(九オ)さするなど、 00071530L17どうやら/後家(ごけ)の/仕打(しうち)に/似(に)てこのもしく、此客、大きにのり 00071540L18が来て、かよふほどにくるほどに、/雨(あめ)の/夜(よ)も/風(かぜ)の日も、又 00071550L19ハ/仏参(ぶつさん)/葬礼(そうれい)帰り、大方かゝさすの/揚詰(あげづめ)に、つい二三日の仕 00071560L20/過(すこ)し。内義がきびしい/異見(いけん)に、二月ほども/遠(とお)ざかり、ちよ 00071570M1と/格子(かうし)まで立/寄(より)しに、おいらんが出て大うらミ。サアおれ 00071580M2も/鳥渡(ちよつと)きたかつたが、かゝアがやきもちやきで、とふ(九ウ) 00071590M3もこられなんだと咄せバ、ヲヤ、ばからしい。そのやうに 00071600M4やかずとも、ちつと又、/土葬(どそう)にもしなんすれバよい 00071610¥N8¥J 00071620¥X貸雪隠 00071630M7/浅草(あさくさ)/観音(くわんおん)の/開帳(かいてう)に、かし/雪隠(せついん)御壱人前四文といふ所を初し 00071640M8に、御/蔵前(くらまへ)十八町か間にハ、/表(おもて)に/雪隠(せついん)/小便(しやうべん)所といふ物が 00071650M9なければ、/参詣(さんけい)の女中ハ大ごまり故、殊の外はやりて、あ 00071660M10じな事にて/銭(せに)もうけ。/隣(となり)の亭主が(十オ)うらやましく、又 00071670M11かし雪隠をはしめた所が、/古(ふるい)/方(ほう)へハ一向に人がはいらず、 00071680M12/新(あたら)しき方はかりにぎやかなれバ、古方の亭主が/不思義(ふしぎ)に思 00071690M13ひ、手前の雪隠を見た所が、はいらぬこそ/尤(もつとも)。/隣(となり)の亭主が 00071700M14/朝(あさ)から/這(は)入ていて、人が来ると、ヱヘン 00071710¥N9¥J 00071720¥X女郎買の勘略 00071730M17コレ、手まへハ/西河岸(にしがし)へ行さうだが、きつ(十ウ)い/損(そん)だぜ 00071740M18へ。おらア/千住(せんじゆ)へ行が、手まへも千住へ行つせへ。まづ/夜= 00071750M19具(や=ぐ)も/絹布(けんふ)でおなし事。酒も/食類(しよくるい)もちつとも替た事ハなし。 00071760M20そして/勤(△つとめ|花代の事)が西河岸ハ弐朱、今の/相場(そうば)でハ八百何かし。千住 00071770¥P221 00071780L1ハたつた六百たハさ。夫、今夜/行(ゆく)と弐百/違(ちがう)。あすの/晩(ばん)行、 00071790L2四百違。/明後(あさつての)/晩(ばん)行、六百違。ソレ、行けバ行ほど/徳(とく)がある 00071800L3ハさ 00071810¥Y1軽口;新玉箒巻之三終(十一オ) 00071820¥T1軽口;新玉箒巻之四 00071830¥N1¥J 00071840¥X劔術指南 00071850M5/義経流(よしつねりう)の/劔術(けんじゆつ)の/師範(しはん)、おのれハ日本にひとりといわぬはか 00071860M6りの/高慢(かうまん)ばなし。めくら千人にて弟子も多く、にきやかに 00071870M7くらしけり。ある夜、若い弟子が壱人、すた+息を切て 00071880M8/欠込(かけこめ)バ、先生立出、とふそされたかと問けれバ、ハイ。あ 00071890M9の四/辻(つじ)に/追剥(おいはぎ)か/抜身(ぬきミ)でいて(一オ)大きに/追(おハ)れましたとの事。 00071900M10/先生(せんせい)、大きに/嘲笑(あさわらい)、日頃劔術/稽古(けいこ)ハ何の為でござる。さや 00071910M11うの折に/役(やく)に立やうとての事でハござらぬか。さりとは/臆= 00071920M12病(おく=びやう)/千万(せんばん)な。イデ/拙者(せつしや)が参て、見せ付て御目にかけやうと、 00071930M13/刀(かたな)ぼつこミ/欠(かけ)出し、そのまゝ立帰れバ、モシ、追剥ハ御/仕= 00071940M14留(し=とめ)なされましたかと、弟子に問れて、イヤ、まだあそこに 00071950M15抜身で立ています(一ウ) 00071960¥N2¥J 00071970¥X悔 00071980M18亭主か/外(ほか)より立帰れバ、内義が夫に/向(むか)つて、モシ、むかふ 00071990M19の/病(びよう)人もとふ+よくないかして、殊の外の人出入。おま 00072000M20へもくやミに行てきなさらぬかといふに、亭主が、ハテ、 00072010¥P222 00072020¥G(三ウ・四オ) 00072030M1気のどくな。若い人じやが。トレ、/悔(くやミ)に行てこよふと、/羽= 00072040M2折(は=おり)引かけ、むかふの/玄関(げんくわん)にいたり、取/次(つぎ)にあふて、扨承り 00072050M3ますれバ、御病人様も御/養生(ようじやう)御/叶(かない)(二オ)なく御/死去(しきよ)のよ 00072060M4し。扨+おどろき入ました。さぞ御/力落(ちからおとし)でござりまし 00072070M5やうと悔を/述(のべれ)バ、取次か、ハイ。大病でござりまして、/所= 00072080M6詮(しよ=せん)/療治(りやうぢ)ハとゞきますまいが、いまだ事ハきれませぬといわ 00072090M7れてびつくり。へヱ引、まだかへ。さやうならバ、御/臨終(りんじう) 00072100M8の/節(せつ)ハ/宜敷(よろしく)/頼(たのミ)ます 00072110¥N3¥J 00072120¥X家主の異見 00072130M11ある人、/家越(やごし)しをしてきた所が、殊の外(二ウ)の/■手(かせぎて)。/昼(ひる) 00072140M12ハ/終日(しうじつ)人に/雇(やとハ)れ、夜に入ると、さつまいものふ/((か脱カ))したて。/昼= 00072150M13夜(ちう=や)/油断(ゆたん)なく/精(せい)出すゆへ、/家主(いへぬし)わ悦びしが、/夜商(よあきない)に出る所を 00072160M14バ見ても、ついに帰る/躰(てい)を見た事がなければ、是はかりか 00072170M15心がゝり。ある日呼よせ、コレ、貴様は/随分(ずいぶん)何も申分のな 00072180M16い人。商売もよく精を出さるゝが、夜あきないに出ても、 00072190M17帰らしやる所を見た事がない。さりとは/済(すま)ぬ事といわるれ 00072200M18(三オ)(三ウ・四オ挿絵)ハ、ハイ。わたくしハいつも九ツ過、 00072210M19八ツてなけれバ帰りませぬ。毎晩+/遅(おそ)く帰つて、おまへ 00072220M20様を起し申ますもお気のどく故、路次の上を/飛越(とびこ)しますと 00072230¥P223 00072240L1咄せハ、家主ハ以の外/肝(きも)をつぶし、イヤ、夫ハさん+の 00072250L2事。八ツ七ツでもくるしうないから、たゝかしやれ。ハテ、 00072260L3それがわしか/役目(やくめ)じやわいの。その飛越す所を/役人衆(やくにんしう)にで 00072270L4も見付つて見たがよい。/大事(おゝごと)じや。かならず+、是から 00072280L5ハ/遠慮(ゑんりよ)(四ウ)なしにたゝくがよいぞやとの/異見(いけん)に、ハイ。 00072290L6かしこまりましたと、夫よりハ/毎晩(まいばん)+/明(あけ)てもらつて/出入(でいり) 00072300L7せしが、ある夜/宵(よい)より大雪にて、今夜も八ツ過に帰り、/例(れい) 00072310L8の通り戸をたゝけバ、家主が聞て、こん夜ハ/飛(とん)だり 00072320¥N4¥J 00072330¥X盲人の間違 00072340L11かし/家(や)の/前(まへ)に引/寄(よせ)てある/車(くるま)に、/盲人(もうしん)が行あたり、コレ、目 00072350L12を明てあるきおれ。めくらに(五オ)行あたるといふ事かあ 00072360L13る物か。こゝなあきめくらめと、したゝかに/小言(こごと)をいつて 00072370L14も、だまつているゆへ、さぐつて見れハ/車(くるま)。マア、人なら 00072380L15バこふいふのだ 00072390¥N5¥J 00072400¥X家主の眼病 00072410L18女房か/夫(おつと)にいふにハ、/大屋(おゝや)様か/眼病気(がんひやうけ)で、四五日引込んで 00072420L19ござるげな。ミんな/店(たな)の/衆(しう)が見/舞(まい)に行から、おまへも行 00072430L20なさいといわれて、ヲイ。行てこよふと家主へ行。モシ大 00072440M1屋さん。(五ウ)おまへハ御/眼病(がんひやう)気でこさりますげな。/嘸(さぞ) 00072450M2御こまりでござりましやうといへバ、大屋ハ/起直(おきなを)り、よふ 00072460M3/尋(たつね)て下さつて/忝(かたじけな)い。わしも大きに/難義(なんぎ)しますと、目をふ 00072470M4き+の/挨拶(あいさつ)に、ハア大屋様。おまへハ御眼病の上に、御 00072480M5目までわるうござりますの 00072490¥N6¥J 00072500¥X鼻紙袋 00072510M8かねて/訳(わけ)ある/内義(ないき)の所へ、亭主の/留守(るす)を見/済(すま)して、のかり 00072520M9としかけ、今そ/雲雨(うんう)の/最(さい)(六オ)中へ、/表(おもて)に/音(おと)なふ亭主の声。 00072530M10びつくり/廃亡(はいもう)。/砕陽侯(まおとこ)ハ/裏(うら)の/路地(ろぢ)よりこそ+と迯帰りぬ。 00072540M11外へ出て/懐(くわい)中を見れバ、鼻紙袋を忘れて来たり。南無三、 00072550M12是ハ大かぶりと、何喰ぬ顔で立帰り、権右衛門様。御宿に 00072560M13かと、ずつと通れバ、コレハ+御久しい。今時分に何と 00072570M14思ふて。イヤ、御目にかゝつて、ちと御/知恵(ちゑ)をかりねバな 00072580M15らぬ事。と申ハ外でもなし。何を/隠(かく)さふ。/今夜(こんや)さる(六 00072590M16ウ)の内義と一所に/寝(ね)ていました所へ、亭主が帰り、うろ 00072600M17たへ廻して/裏(うら)から帰りましたが、とんだこまつた事にハ、 00072610M18紙入を忘れて帰りました。其紙入ハ亭主も知つている故、 00072620M19大きに気にかゝりますと咄せバ、女房が/側(そハ)から、ソレハど 00072630M20この御内義様ンかしりませぬが、いたづらする程の女だ物 00072640¥P224 00072650¥G(七ウ・八オ) 00072660M1を、どふして亭主の目にかゝる所に、おく物でござります 00072670M2かと、おちつけがしの(七オ)(七ウ・八オ挿絵)/挨拶(あいさつ)に、亭主 00072680M3も、ナニサ。あんじなさるな。/密夫(まおとこ)をされるほとの亭主だ 00072690M4物を、たとへ側に有ても気ハつくまい 00072700¥N7¥J 00072710¥X多葉粉入 00072720M7友達に/逢(あつ)て、コレ、女郎/買(かい)に行なら大ミせの事だぜへ。ゆ 00072730M8ふべおれか/扇屋(あふきや)へ行て、/花(はな)扇を/買(かつ)たが、たばこ入を/落(おと)して 00072740M9来たといつたら、/雛妓(しんぞう)にいゝ付て、コレミさつしやい。こ 00072750M10の(八ウ)多葉粉入に/国府(こくぶ)のたばこを一はい入てくれて、又 00072760M11朝帰る時に此/袖頭巾(そてつきん)。/莨(たばこ)入が五匁、此/頭巾(づきん)か廿匁が物。ソ 00072770M12レ/勤(つとめ)ハちツとに外付ぬハさと/咄(はなせ)は、友達ハいたつての/吝= 00072780M13嗇(りん=しよく)者。其夜すくに花扇が所へ行、座敷にてむせうに/袂(たもと)を 00072790M14さがして、ヱヽたばこ入を/落(おと)したそふたといへバ、おいら 00072800M15んが、ぬしハたばこを御あんなんすかへと問れて、アイ。 00072810M16たはこも/呑(のミ)やすが、頭巾もかぶりやす(九オ) 00072820¥N8¥J 00072830¥X水稽古 00072840M19/游指南(およきしなん)所といふ/看板(かんばん)を見て、ある人、/弟子(でし)入せんと/目録(もくろく)/持= 00072850M20参(ち=さん)し、/案内(あんない)して、御弟子に/罷成(まかりなり)たく/推参(すいさん)いたしました。/先= 00072860¥P225 00072870L1生(せん=せい)御宿にならハ御目にかゝり、游の御/伝授(でんじゆ)うけ申たしとい 00072880L2ゝ入れバ、先生立出、コレハ+よふこそ御出。殊に御目 00072890L3録、いたミ入ました。/先(まつ)/外(ほか)の事ハお覚なくとても/済(すミ)ますが、 00072900L4水斗ハ御心がけなくてハ、まさかの(九ウ)時にハ一/命(めい)にも 00072910L5及ます事。拙者方の/稽古(けいこ)は手間入らず、只一/度(ど)にて御一生 00072920L6の/徳(とく)になります事。今日/直(すぐ)に御伝授いたしましやうか。ソ 00072930L7レハ/早速(さつそく)ありがたふござります。コレ/小僧(こそう)よ。/硯箱(すゞりばこ)/持(もつ)てこ 00072940L8いと取寄、サア足を御出しなされと足を出させ、三里のあ 00072950L9たりへ/横(よこ)に/墨(すミ)を引故、こふしてどふいたしますと問へバ、 00072960L10それより/深(ふか)い所へ/這入(はいら)つしやるな(十オ) 00072970¥Y1軽口;あら玉はゝき巻の四終(十ウ) 00072980¥T1軽口;新玉箒巻之五 00072990¥N1¥J 00073000¥X娘の恋煩 00073010M5去る所の娘御、ぶら+とわづらひて、いろ+/養生(やうじやう)して 00073020M6もはかどらず。両親の大あんじ。ある日、娘御の/乳母(うは)をひ 00073030M7そかに/呼(よん)で、お袋のいわるゝにハ、むすめが病気ハ、いか 00073040M8にしてもがてんが行ぬ。/誰(たれ)しも若い中にハある事。気に入 00073050M9た男のあるにハきわまつた。そなた、ひそ(一オ)かに聞て 00073060M10見やといふに、乳母ハ心得て、娘御の部屋へ行、モシお花 00073070M11様。おまへも久しい御病気。いろ+にしても御心よから 00073080M12ず。わたしか/推量(すいりやう)いたしますに、大かた/誰(たれ)そに御/執心(しうしん)と見 00073090M13た目ハ、少しも違ますまい。わたしに御かくしなさる事ハ 00073100M14ない。どふでもして上やうから、つゝまずお咄しなされま 00073110M15せといへバ、アノ乳母の/ど((ママ))んだ事斗。わしハそんな事ハし 00073120M16らぬわいなといわるれど、乳母ハ(一ウ)一ゑんがてんせす。 00073130M17アノむかふの/幸吉(かうきち)様か。イヽヤ。それなら/東隣(ひかしとなり)の/藤助(とうすけ)様か。 00073140M18イヽヤ。そんならてつきり、/横町(よこてう)の/長蔵(てうぞう)様であろふの。イ 00073150M19ヽヤ。そしてマア誰でござります。娘御、誰てもよい 00073160¥P226 00073170¥G(四ウ・五オ) 00073180¥N2¥J 00073190¥X幇間の年礼 00073200M3一夜/明(あく)れバ人の心ものびらかに、殊に/豪家(こうか)のおだやかさ。 00073210M4亭主ハ/褥(しとね)に/物数寄(ものすき)の火鉢、たはこ/盆(ぼん)、きん+としている 00073220M5所へ、御目かけ(二オ)らるゝ/幇間(たいこもち)が/年始(ねんし)の御/礼(れい)。イヤ、旦 00073230M6那。御/機嫌(きげん)よふござりますか。まづ明ましてハ/結構(けつこう)な春で 00073240M7ござりますといへハ、旦那か/髭(ひげ)を/撫(なて)ながら、ウヽ中ぐらゐ 00073250M8な春だ 00073260¥N3¥J 00073270¥X絵師の弟子 00073280M11/絵師(ゑし)のむすこが/親父(おやぢ)に向つて、わたくしハどふも、山が/画(かき) 00073290M12にくふござりますといへば、親父も、いかさま、山ハかき 00073300M13にくひ物。おれさへまだ(二ウ)山ハ、思ふやうにかゝれぬ 00073310M14といふを、十二三になる/弟子小僧(でしこぞう)が聞て、わたくしか親父 00073320M15も、山ハかきにくいと不/断(だん)申ました。フウ、そしてわが親 00073330M16父も/絵(ゑ)かきか。イヱ、/駕篭(かご)かき 00073340¥N4¥J 00073350¥X毛蒲団 00073360M19ある人、/知音(ちいん)の所へ/見舞(ミまい)、扨+久しう御/無沙汰(ぶさた)仕ました。 00073370M20イヤ、こなたよりも御同前。時に此/頃(ごろ)ハ/下冷(げれい)いたしますか 00073380¥P227 00073390¥G(七ウ・八オ) 00073400M1ら、敷物ハ(三オ)/ハ((衍))/御免(ごめん)下さりませ。ハイ。して其/皮(かハ)ハ、 00073410M2何皮でござります。イヤ、是ハ/熊(くま)でござります。下冷のき 00073420M3つい/薬(くすり)じやげにござります。その上、/冬(ふゆ)ハ殊の外あたゝか 00073430M4で、よい物でござる。ハテナと、さぐつて見て、イヤ、/妻(さい) 00073440M5も/宜(よろ)しう申ました 00073450¥N5¥J 00073460¥X盗人 00073470M8/独身(とくしん)者、/喰(く)ふ物もくわずに金を百両余/溜(ため)、/毎晩(まいばん)+四つ過 00073480M9になると、/畳(たゝミ)の(三ウ)上へ壱両づゝならべて/楽(たの)しミ、/余念(よねん) 00073490M10なき所へ、/盗人(ぬすびと)、/屋根伝(やねつた)ひに来り、引/窓(まと)より/覗(のぞい)て見た所が、 00073500M11こいつも金に余念なく、つい取はづして引窓より落、/綱(つな)に 00073510M12かゝつて、上へも下へも行ず、中にぶら+していれバ、 00073520M13亭主がふりかへり見て、そこにいるハ何者だ。アイ。わた 00073530M14くしハ盗人でござります。なぜそふしている。ハイ。綱に 00073540M15かゝつて、ぶら+(四オ)(四ウ・五オ挿絵)しています。フ 00073550M16ウ、そふぶら+していてもつまるまい。何ぞ/商売(しやうばい)でも/始(はじめ) 00073560M17たらよかろふ 00073570¥N6¥J 00073580¥X火の用心 00073590M20火の用心なさりましやうと、/割竹(わりたけ)引て、/毎晩(まいばん)+町/抱(かゝへ)が、 00073600¥P228 00073610L1夜に入と度+の/廻(まハり)。ある家の亭主が/寝酒(ねさけ)/呑(のん)でいて、コレ 00073620L2かゝアとの。あの町抱も、毎晩+火の用心/呼(よん)であるいて 00073630L3/嘸(さそ)/寒(さむ)かろう。殊に/今夜(こんや)ハ/寒風(かんふう)。(五ウ)/呼(よん)で一/盃(ぱい)/呑(のま)してやろ 00073640L4うでハあるまいか。ソレハよふござりましやうと、下女に 00073650L5いゝ付、/呼込(よびこん)で、サア+/貴様(きさま)も/寒(さむ)かろう。幸/寝酒(ねざけ)を一つ 00073660L6/呑(の)んているから、/振舞(ふるまお)ふと思つて/呼(よバ)した。ソレハ/難有(ありがたふ)ござ 00073670L7りますと、一つ呑。あり合せの/肴(さかな)、/味噌(ミそ)、/吸物(すいもの)と大きに/馳= 00073680L8走(ち=そう)になり、ハイ。ありがたふござります。殊の外/給(たべ)/酔(よい)まし 00073690L9た。御/休(やす)ミなされませと、/表(おもて)へ出て又立帰り、(六オ)モシ、 00073700L10おまへ様の所てハ、火の用心ハ/大概(たいがい)になさつてもよふござ 00073710L11ります 00073720¥N7¥J 00073730¥X浪人 00073740L14ある/浪人(ろうにん)、/尾羽(をは)打からして、/裏店(うらたな)の/隅(すミ)に/借宅(しやくたく)。毎晩まハる 00073750L15火の用心も、/面倒(めんだう)さに、/隣(となり)の家の前までハ来ても、浪人の 00073760L16所ハ隅故、来らす。浪人、大きに/腹(はら)を立、いかに浪人して 00073770L17/貧(ひん)にくらせバとて、あまり/踏(ふミ)つけ(六ウ)にした/仕方(しかた)と、日 00073780L18ごろむし+している所に、又火の用心なさりましやうと、 00073790L19例の通り隣迄来て、立帰らんとするを呼とゞめ、コレ、い 00073800L20かに/貧乏(びんぼう)なとて、隣までハきなから、こちの前へハこぬと 00073810M1いふ事がある物か。おれじやとて、今ても火を出しかねる 00073820M2物か 00073830¥N8¥J 00073840¥X霖雨 00073850M5去おいらんを/根曳(ねびき)にして、/本所(ほんじよ)の(七オ)(七ウ・八オ挿絵)下 00073860M6屋敷にかこつておいての/楽(たの)しミ。あすあたり花見につれて 00073870M7行んとの事。おいらん、大たのしミの所に、/宵(よい)より大雨。 00073880M8何が/降(ふる)ほとに+、十日あまりも降つゞけハ、おいらんハ 00073890M9しれつたく、旦那にむかい、モシヱ。/吉原(てう)にいゝした時 00073900M10ハ、天気がよふありんしたが、こゝハよく雨の降所であり 00073910M11いす 00073920¥N9¥J 00073930¥X番頭の侘言(八ウ) 00073940M14/旦那(だんな)が/箒(はふき)を/持(もつ)て、/奥(おく)から小/僧(ぞう)を追かけて出る故、/番頭(ばんとう)がと 00073950M15ゞめて、モシ、どふいたしましたと問へバ、マア聞て下さ 00073960M16い。にくいやつだ。いたづらをした故、おれが/叱(しかつ)たら、お 00073970M17れがいふ事を、/屎(くそ)とも思ハぬといゝおつたと、きつい/立腹(りつぷく)。 00073980M18番頭が聞て、ソレハにくいやつでござります。コレ、旦那 00073990M19のおつしやる事を、/屎(くそ)とも思ハぬといふ事がある物か。/今= 00074000M20度(こん=ど)から、屎と(九オ)思ひおろふ 00074010¥P229 00074020L1△二丸曰、/下司(げす)の咄ハ屎ではてると申ますから、まづ咄ハ是 00074030L2△切にいたしましやう 00074040¥Y1軽口;新玉箒巻之五大尾(九ウ) 00074050¥Y跋 00074060L8罷出たる/僕(ヤツガレ)ハ、遥に遠き東のもの。重い口から軽口咄し。 00074070L9井外しらぬ蛙の口より、恥もそしりも御笑も、かえり都の 00074080L10真中て、あつかましゐとも、にくいやつとも御叱りなく、 00074090L11只よい+との御贔屓評判、(十オ)皆様、ねかひあげます 00074100L12る(十ウ) 00074110¥P230 00074120¥U噺本大系△第十三巻 00074130¥T/新製欣&雅話(しんせいきんきんばなし)〔題簽〕 00074140¥G 00074150¥Y 00074160L17寛政十一年正月刊 00074170L18魯道序 00074180L19京都△鈴屋安兵衛等板 00074190L20半紙本五巻合一冊 00074200¥G(見返扉) 00074210G1/新製欣&雅話(しんせいきん+ばなし)/全五冊 00074220G2△隴陽書舗△△萬基堂 00074230¥Y 00074240M11/欣&(きん+)/先生(せんせい)、/平日(つねに)/酔(ゑひ)て/泥(とろ)のごとし。/既(すて)に/闌(たけなハ)にして/例(れい)の/管(くた)を/捲(まく)。 00074250M12/又(また)/側(かたハら)に/両三輩(れうさんはい)/有(あり)て、おなしく/管(くた)を/捲添(まきそゆ)る。/而(しかうじて)/竪(たて)と/横(よこ)と 00074260M13に/縦(ほしいまゝ)にす。/忽(たちまち)あやしの/衣(きぬ)となれり。/経(たて)は//木綿(もめん)の/絲(すじ)右/衛= 00074270M14門(へ=もん)、/緯(よこ)ハ/絹(きぬ)の/摩敝(すれからし)、(序一オ)身に/纏(まとふ)て/中廓(にし)に/江南(ミなみ)に/玄服(ゆすらん)と 00074280M15す。/後家(ごけ)の/質屋(しちや)も/指(ゆびさし)て/曰(いわく)、/俗医(そくい)歟、/俳諧師(はいかゐし)ならんと。/果(はた)し 00074290M16て/茶話(さハ)/一篇(いつへん)を/輯(あつ)む。/欣&(きん+)/先生(せんせい)みつから/欣&(きん+)雅話(はなし)と/題(だい)して、 00074300M17/茶菓(ちやくわし)/珍慶(ちんけい)(序一ウ)/糖(とう)に代とす也△△△魯道序す 00074310M18△△△戊午の永き日△△△△△△GG 00074320M20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序二オ) 00074330¥P231 00074340¥G(序二ウ) 00074350G1△△欣&先生之像 00074360G2春駒や瓢箪町のうかれごろ△△△魯道併題 00074370¥Y1新製欣&雅話壱 00074380M3△△目録 00074390M5/祝義状(しうきせう)△△△△△△△百両 00074400M6/絵面(ゑめん)△△△△△△△/宮角力(ミやすまふ) 00074410M7/今(いま)/韓信(かんしん)△△△△△△△/女(おんな)/大学(たいかく) 00074420M8/赤(あか)いぬ△△△△△△△/夢(ゆめ)の/世(よ) 00074430M9/珊瑚珠(さんごしゆ)(一オ) 00074440¥P232 00074450¥G(四ウ・五オ) 00074460¥T1新製欣&雅話/三((ママ)) 00074470¥N1¥J 00074480¥X祝義状 00074490M5さる/魁芸(たまけい)子、/師走(しはす)の/中(なか)ごろ/揚家(あげや)へ/来(きた)りて、おしけとん。あ 00074500M6の/牛慶(きうけい)さんへな、祝義/状(せう)出すのしやかね、字でかくと、ど 00074510M7うかくそいな。Sそりやわしらもしらぬけど、あのな、西 00074520M8ざしきの/鶴(つる)の/絵(ゑ)の/襖(ふすま)ハ、あのおかたの/絵(ゑ)じやよつて、そこ 00074530M9に名も/書(かい)てあるわいな△Sフウ、そんなら/夫(それ)ミて(二オ)書 00074540M10てやろと、西ざしきへ/行(い)て書て来て、祝義状おくりける。 00074550M11その/表書(うハかき)に、/法眼牛慶画(ほうけんきうけいぐわ)さま 00074560¥N2¥J 00074570¥X百両 00074580M14/安場所(やすばしよ)の/親(おや)かた、/奉公人(ほうこうにん)にむかい、同しつとめの身ぶんで 00074590M15も、大夫の/白人(はくじん)のといふと、/客衆(きやくしゆ)に/無心(むしん)いふにも、五十両 00074600M16の百両のといふに、客も又きく事も有じやといへば、Sも 00074610M17し/旦那(たんな)さん。わたしらじやてゝ、百両の(二ウ)むしんいふ 00074620M18まいもんでもないぞへと、すこしむつとした顔でいたりし 00074630M19が、ある時かのおやま、不/相応(そうおう)な/金(かね)もち/客(きやく)にとりいり、こ 00074640M20ゝでこそと、百両むしんいゝけれバ、/客(きやく)もびつくりしなが 00074650¥P233 00074660L1ら、事によつたら百両のむしんきくまいもんでもなひか、 00074670L2その金をどうせうとおもふと/問(と)われて、Sハイ。四十八両 00074680L3で身ぬけして、四十八両ハとゝさんへあげて/商買(せうばい)のもとで 00074690L4にさせます(三オ) 00074700¥N3¥J 00074710¥X/絵面(ゑめん) 00074720L7ある/扇屋(あふぎや)、/絵師(ゑし)の所へゆき、/先生(せんせい)。/御面(ごめん)どうながら、此/地= 00074730L8紙(じ=かミ)百/枚(まい)ハ竹にさくすゞめのもやう、此百まひハ/小原女(おはらめ)をバ、 00074740L9ずいふんと美なんに御かき下されませ 00074750¥N4¥J 00074760¥X/宮角力(ミやすまふ) 00074770L12ことしハ/近年(きんねん)の/豊年(ほうねん)也とて、ある在所の/秋祭(あきまつり)に、/宮角力(ミやすまふ)/殊(こと) 00074780L13の/外(ほか)はづミ、/近在(きんざい)の/若(わか)ものども、入かわり+角力とりけ 00074790L14るが、(三ウ)/西(にし)のかたやより/大(だい)の/男(おとこ)/出(て)て、二三人もつゞけ 00074800L15なげになけたりけれバ、/東(ひかし)のかたやハ/色(いろ)めいて、たれかれ 00074810L16といへど、/壱人(ひとり)も出るものなかりしに、中にもいたつて小 00074820L17男のひよハそうな/男(おとこ)とんで出て、しこふミならして立たり 00074830L18ける。/見物(けんぶつ)の/大勢(おゝぜい)も、/扨(さて)+きものふとい男かな。あれで 00074840L19もなんぞ/心(こゝろ)おほへてもあるのかと、ざゞめきける。すでに 00074850L20/双方(そうほう)なのりかけ、/行司(ぎやうじ)がうちハ(四オ)(四ウ・五オ挿絵)ひく 00074860M1を/相図(あいつ)、ヱイとかけごへ、くミ合かとおもうより/早(はや)く、な 00074870M2んの/苦(く)もなく、小/男(おとこ)ハまけたり 00074880¥N5¥J 00074890¥X/今(いま)/韓信(かんしん) 00074900M5/流行(はやる)/芝居(しばい)の/幕(まく)の間に、/桟敷(さじき)のうしろの行かよひ、けしから 00074910M6ず人こずミけるに、人かどのよい男、ふと/人物(じんぶつ)くさき男の 00074920M7/足(あし)につまづきふミけれバ、まつぴら/御(お)ゆるし/下(くだ)されとあい 00074930M8さつしけるに、Sハイ+。くるしうござりませぬ。(五 00074940M9ウ)ふいて御いでなされ 00074950¥N6¥J 00074960¥X/女(おんな)/大学(だいかく) 00074970M12/轟(とゞろき)/半三(はんざう)といふ/儒者(しゆしや)ハ/粋(すい)の/果(はて)にて、/女房(によほう)ももとハ/芸子(げいこ)とや 00074980M13らん、/大(だい)の/酒(さけ)のミにて/喧嘩(けんくわ)を/仕出(しだ)し、どうらくいわんかた 00074990M14なけれバ、半三ハさすがに儒者ほどあつて、/女(おんな)/大学(たいかく)といふ 00075000M15/本(ほん)を/買(かう)てもどり、/故町(こまち)のむすめの/子(こ)など、/小(ちい)さい/時(とき)からて 00075010M16らやへ/行(い)て、女大学などよミ/習(ならい)、/身持(ミもち)をバたしなむ。そな 00075020M17たも(六オ)あまり/行几(ぎやうき)がわるひ。ちと/是(これ)を/読(よん)でミたがよい 00075030M18といへバ、女房わらい+、わしも小いとき、/女大学(おんなたいかく)も/女= 00075040M19庭訓(おんな=ていきん)も/習(ならふ)て、よふ/覚(おほへ)へているけれど、よう/思(おも)ふて御らうじ。 00075050M20ありや/皆(ミな)/男(おとこ)の/作(つくつ)たものじやよつて、男の/勝手(かつて)のよい事ばあ 00075060¥P234 00075070¥G(八ウ・九オ) 00075080M1かりじや 00075090¥N7¥J 00075100¥X/赤犬(あかいぬ) 00075110M4/赤狗(あかいぬ)よんで/来(き)て、/餘(あま)りものくわせよといふを、/田舎(いなか)の/客(きやく)き 00075120M5ゝつけ、身ともらが/国(くに)でハ、(六ウ)つゐに/赤(あか)いぬといふも 00075130M6の見た/事(こと)ごさらぬ。大坂にハ赤いぬがござるかと、ふしぎ 00075140M7がるに、/家内(かなひ)もおかしがり、/赤犬(あかいぬ)よんで/来(き)て、それ御らう 00075150M8じませといへバ、Sこれハいくらもござるが、こび/茶狗(ちやいぬ)を 00075160M9/赤狗(あかいぬ)といゝまする 00075170¥N8¥J 00075180¥X/夢(ゆめ)の/世(よ) 00075190M12長吉よ。/横町(よこまち)の太郎兵衛さまへいてな、/今日(こんにち)ハ/日和(ひより)もよろ 00075200M13しう/御(ご)ざります。/先日(せんじつ)おやくそくの/住吉(すミよし)へ/御(ご)さんけいなさ 00075210M14れませぬかと(七オ)いふて、/返事(へんじ)/聞(きい)てこいといゝつけられ、 00075220M15ハイといふまゝとんで出、やがて/戻(もどつ)てきて/言(いふ)やう、/御(お)ふく 00075230M16ろさまがおつしやつてゞござります。よう御さそひ下され 00075240M17ます。太郎兵衛/義(ぎ)も/今朝(こんちよう)/他行(たきやう)いたしましてといふよりびつ 00075250M18くり。ナニ太郎兵衛どの、/他行(たぎやう)とか。/扨(さて)も++/老若男= 00075260M19女(ろうにやくなん=によ)/貴賎(きせん)/郡聚(くんじゆ(ママ))じやナア 00075270¥P235 00075280¥N9¥J 00075290¥X/珊瑚珠(さんごじゆ) 00075300L3ある/大名(たいめう)/客(きやく)に/取入(とりい)り、/牽頭(たいこ)の/駄(だ)八がゆびの(七ウ)また/金銀(きんぎん) 00075310L4をちりばめし、/紙入(かミいれ)さげもの、ほしいものだらけ。/中(なか)にも 00075320L5いたつて/見事(ミごと)なさんごしゆのおしめ。ものほしそふなほめ 00075330L6やうに、さすがハ大名。これハ/身(ミ)がひそうのじやけれど、 00075340L7ほしくハやろうとの/御詞(おことバ)。/夫(それ)ハありがた山のいもうなぎ、 00075350L8/泥亀(すつほん)どせう/汁(しる)と、むちうになつてうれしがり、/店(ミせ)へもどつ 00075360L9てひけらかせバ、よりたかつて/評判(ひやうはん)せしが、ふと壱人がい 00075370L10ふハ、/是(これ)ハねり/玉(たま)のさんごじゆじやそよと(八オ)(八ウ・九オ 00075380L11挿絵)いふに、ぢやら+いふなといゝながら、/合点(がてん)ゆかね 00075390L12バ、/錆物屋(さびものや)に見てもらひけるに、ねり玉に/違(ちがい)なく、百がも 00075400L13のもなひといふに、/力(ちから)をおとし、/夫(それ)より又かの御大名/客(きやく)の 00075410L14まへゝ出て、/恐(おそれ)ながら、/昨日(きのふ)いたゞきました/珊瑚珠(さんごじゆ)ハ、も 00075420L15ちでいたしました物そうに/厶(ござ)り/升(ます)といへバ、S大名されバ 00075430M16+、夫だから身がひそういたした。なんとよくこしらへ 00075440L17たものでハなひか 00075450¥Y1新製欣&雅話壱終(九ウ) 00075460¥Y1新製欣&雅話弐 00075470M3△△目録 00075480M5/辻能(つしのう)△△△△△△/里(さと)すゞめ 00075490M6仝△△△△△△△△/御髭(おひげ) 00075500M7/幼(おさな)こゝろ△△△△△/迷惑(めいわく) 00075510M8/古筆(こひつ)△△△△△△/腥睡笑(せいすいせう(ママ)) 00075520M9/性善(せいぜん)△△△△△△/孝心(こうしん) 00075530M10/心(こゝろ)の/外(ほか)△△△△△△/生(なま)くら/街道(かいどう)(一オ) 00075540M11/莫耶(はくや)の/劔(けん)(一ウ) 00075550¥P236 00075560¥T1新製欣&雅話弐 00075570¥N1¥J 00075580¥X辻能 00075590L5仙助が/能(のう)大はづミにて、けふの/番(ばん)ぐミの内、/船弁慶(ふなべんけい)の/役人(やくにん) 00075600L6そろわず、いやがる/床山(とこやま)をむりやりに出し、此ふねにあか 00075610L7ゞ付て候といふ事だけ/覚(おぼへ)させ、/扨(さて)おしへの/通(とほり)いゝけるとき、 00075620L8/船中(せんちう)にて/左様(さやう)な事申さぬものにて候と、きつとして言けれ 00075630L9バ、かの男顔を/赤(あか)め、そふじやによつて、おれが/出(で)まいと 00075640L10いふ物(二オ)をと、/楽屋(がくや)へとんではいりける 00075650¥N2¥J 00075660¥X/里(さと)すゞめ 00075670L13/禿(かむろ)ども打よりはなしけるハ、わしらハひよつと/心中(しんぢ□)して/死(し) 00075680L14ぬのても、川へはまつて死ぬのハいやじやといへバ、外の 00075690L15かむろが、いや+、外の心中しやてゝ、ミな/痛(いた)いぞへ。 00075700L16Sそれでも川へはまつて、中に/死人(しぶと)がいたら、こわいわな 00075710¥N3¥J 00075720¥X仝(二ウ) 00075730L19/全盛(ぜんせい)の/女郎(じよろう)、/二日着(ふつかき)のうちかけの/相談(そうだん)に、どふしたらよか 00075740L20ろうか、こう/染(そめ)たがよかろかと、いろ+こゝろまよひ、 00075750M1まんざら/新造(しんぞう)の/衣裳(いせう)のように、ばつとしたものもわるしと 00075760M2/評定(ひやうぜう)していれバ、はたからかむろの/榊(さかき)がさし/出(で)て、いつそ 00075770M3すつはり/白(しろ)に/染(そめ)させて、/縫(ぬい)にしなませ 00075780¥N4¥J 00075790¥X/御髭(おひげ) 00075800M6ある/御大名(おだいめう)、/髪月代(かミさかやき)あるとき/口(くち)のはたを(三オ)/剃(そる)にハ、/顔(かを) 00075810M7すこしあげ、/頬(ほう)べらをふくらし、あるひハ/上(うハ)あごをふくら 00075820M8せ、/又(また)ハおとがひをつき/出(だ)しなどしてそらせ、なんと/工夫(くふう) 00075830M9か 00075840¥N5¥J 00075850¥Xおさなこゝろ 00075860M12/貧乏人(ひんぼうにん)、/小忰(こせがれ)と/親子連(おやこづれ)にて/大家(たいか)へよばれけるとき、/座敷(ざしき)へ 00075870M13/通(とほ)り、しばらくひかへいるうち、/床(とこ)のまへに/菓子盆(くわしほん)に上/菓= 00075880M14子(くわ=し)、みかんなど/盛(もつ)てあるを、/小児(せうに)/見付(ミつけ)、(三ウ)とゝさん。 00075890M15あのみかん、/買(かう)ておくれ 00075900¥N6¥J 00075910¥X/迷(めい)わく 00075920M18ある/方(かた)の/使者(ししや)、/玄関(げんくわん)にてしばらく/返事(へんじ)/相待(あいまつ)あいだ、内より 00075930M19/菓子(くわし)たばこ/盆(ぼん)など/出(だ)し、/挨拶(あいさつ)ありて/入(いり)けれバ、/使者(ししや)ハ/厳重(げんぢう) 00075940M20にひかへ/居(い)たり、やゝ/暫(しばらく)ひまどつて、ふすまのあく音にき 00075950¥P237 00075960¥G(四ウ・五オ) 00075970M1つと見れバ、/五(いつゝ)ばかりの/小児(せうに)也。つる+と/出(で)て/来(き)て、か 00075980M2の/菓子盆(くわしぼん)なる/菓子(くわし)/一(ひと)つかミつかんで、/喰(くい)+はいる。/使者(ししや) 00075990M3もあ(四オ)(四ウ・五オ挿絵)きれ居たりしに、又しばらく有 00076000M4て、ふすまの/音(おと)。又/今(いま)の/小児(せうに)、/菓子(くわし)つかミ/行(ゆく)。又しばらく有 00076010M5て、ふすまのおと。/使者(ししや)もたまらす、目と口へゆびひつか 00076020M6け、$べかこして見せけるニ、/今度(こんど)ハ小児でハなくて、 00076030M7/奏者(そうしや)はんであつた 00076040¥N7¥J 00076050¥X/古筆(こひつ) 00076060M10/羽衣(はごろも)/着(き)ぬばかりの/古筆(こひつ)やの/生仙人(なませんにん)、とある/豪家(こうか)へ/来(きた)り、古 00076070M11筆の/掛物(かけもの)/一(いつ)ぶくもち/来(きた)り、/見(ミ)事なものが/出(て)ましたが、御も 00076080M12とめ(五ウ)/遊(あそハ)されまいかといふ。ひらきミれバ、書の善/悪(あく) 00076090M13ハ/格別(かくべつ)、/袁氏(ゑんしが)/題別業(べつぎやうにだいす)/賀智章(かちせう)と書た/一行物(いちきやうもの) 00076100¥N8¥J 00076110¥X/腥睡笑(せいすいせう) 00076120M16そろり、/御前(ごぜん)へ/出(いで)、たゞ/今(いま)御門/外(ぐわい)にて、きうりが/真瓜(まくわ)/喰(くふ)て 00076130M17/居(お)りますといゝけれバ、/君(きミ)も、そろりかれいのざれ/言(こと)なら 00076140M18めと、/御近習(ごきんじゆ)/出(いだ)して見せたまふに、いかにも/薪売(たきゞうり)がまくわ 00076150M19喰て/居(い)たるにぞ有ける(六オ) 00076160¥P238 00076170¥N9¥J 00076180¥X/性(せい)ハ/善(ぜん) 00076190L3次郎吉よ。/七夕(たなばた)でよばれてきたか。Sアイ△Sまゝいくつ 00076200L4/喰(くふ)た△S三つ△S御ひらも有たか△Sアイ△S/汁(しる)も△Sア 00076210L5イ△S/肴(さかな)もついて有たか△Sアイ△S/味(むま)かつたか△Sいゝ 00076220L6や、肴ハくわなんだ△Sなんとして△S/夫(それ)でも肴ハ/膳(ぜん)の/外(そと) 00076230L7にあつたもの 00076240¥N10¥J 00076250¥X/孝心(こうしん) 00076260L10とゝさん。をれもおつゝけ大きうなつたらな、(六ウ)/銭(せに)も 00076270L11うけたんとして、おまへらにあけるぞへ。Sヲヽそふじや。 00076280L12/随分(すいふん)おや/孝行(こうこう)にせいよ。/味(むま)いものもくわすか△Sアイ。/海(うミ) 00076290L13へいてな、とぜう/汁(じる)たんと取て来てあけるハへ 00076300¥N11¥J 00076310¥X/心(こゝろ)の/外(ほか) 00076320L16/貝正(ばいせう)といふ/料理亭(れうりてい)の/主人(しゆじん)、/此(この)ごろ/置(おき)つけた/新参(しんざん)の/下女(げしよ)に/小= 00076330L17美目(こ=ミめ)のよいのが有しを、ちよつこりあたつて見れバ、どふ 00076340L18やら/直(ね)かなりそふなあんばい。こいつむまいと/色(いろ)+/工(く) 00076350L19(七オ)/夫(ふう)している/内(うち)、かゝが/色(いろ)目を見てとりて、/夫(それ)とハな 00076360L20しに/隙出(ひまだ)してしまいけるにそ、あるしハ/力(ちから)をおとしけるが、 00076370M1/慥(たしか)に/内(うち)ハなんはとやら/聞(きい)たれども、/雲(くも)つかむやうなせりふ 00076380M2で/打(うち)すて/置(おき)しが、/折(おり)ふし/近所(きんじよ)のいろは/茶(ちや)屋で、/難波(なんば)の/大根= 00076390M3売(だいこん=うり)が大根すゝめている/所(ところ)へ行、ほしくもない大こん大やう 00076400M4に/買(かう)てやり、/今(いま)の/女(おなご)のやうす/噺(はな)しけれバ、さいわゐと大根 00076410M5うりの近所のよしにて、/母親(はゝおや)と弐人で/随分(すいふん)わるふないもの 00076420M6とのくわしいやうす。(七ウ)貝正ゑつぼに入り、とふぞ/工= 00076430M7合(ぐ=あい)してくれまいかとたのめバ、こゝろよふのミこんで/帰(かへ)り 00076440M8しが、/其侭(そのまゝ)とんとさたなく、/漸(やう+)十四五日も/過(すき)てのち、/日本= 00076450M9橋(につほん=ばし)へんで、ヲイ/旦那(だんな)と/呼(よび)かけるもの有。ふりかへりて見れ 00076460M10バ、右の大こん/売(うり)。/扨(さて)ハかのやうすと、そバへよりて、ど 00076470M11うじや※といへバ、此大こん、これで/仕廻(しまい)じや。/買(かハ)んせ 00076480M12んかといふ事しや 00076490¥N12¥J 00076500¥X/生(なま)くら/街道(かいどう)(八オ)(八ウ・九オ挿絵) 00076510M15/大名衆(だいめうしゆ)の/御参府(ごさんふ)に/人足(にんぞく)にやとわれ、/江戸(ゑど)のそバもいて/来(き)た 00076520M16/男(おとこ)、/道中(だうちう)て/覚(おぼへ)た江戸/詞(ことハ)で、はへぬきの江戸ツ/子(こ)のような事 00076530M17いふている男と、/親(おや)の/内(うち)とんで/出(で)て道中/半分(はんぶん)して/戻(もどつ)つた男 00076540M18と/出合(であい)、どうだ。かわる事もねゑか。おらも/久(ひさ)しく江戸へい 00076550M19つていたが、/上(かミ)がたとちがつて、どう/楽(らく)にくらすにハ/一番(いちばん) 00076560M20いゝ/所(ところ)だといへバ、Sフウ、/貴(き)さまも江戸へいつたか。お 00076570¥P239 00076580¥G(八ウ・九オ) 00076590M1らもこのぢうまで江戸へいつていたが、とんだきさんじな 00076600M2所だなあ。(九ウ)/上(かミ)がたへけゑつたが、くやしくてならぬ 00076610M3Sフウ、そんならきさまも此間まで江戸にいたか。こりや 00076620M4はなせるわい。シて、しばいハどうだな△Sしはいも/大(おゝ)は 00076630M5づミさ△S/浅草(あさくさ)ハどうだ△Sフウ、浅草か。浅草ハ/死(し)んだ 00076640M6Sナニ、浅草ハ死んだか。/扨(さて)も+ゑゝすまふ取で有たに 00076650M7ナア 00076660¥N13¥J 00076670¥X/莫耶(ばくや)の/劔(けん) 00076680M10わしハよいさし/科(れう(ママ))の/脇差(わきざし)の身をほり出したのでとがした 00076690M11が、よつほど見事な(十オ)ものじや。マアなかごのあんば 00076700M12い、やき/刄(ば)のあんはい、/銘(めい)もあり。御らうじませ。Sへヱ、 00076710M13/成程(なるほど)見事そふに/御座(ござ)ります。さだめてようきれるでござり 00076720M14/升(ませ)うなあ△Sイヱ+、なんにもきれませぬ△Sどうした 00076730M15物でござりますな△Sサア、きれぬのがきずでござります 00076740¥Y1新製欣&雅話弐終(十ウ) 00076750¥240 00076760¥Y1新製欣&雅話三 00076770L3△△目録 00076780L5/胴人形(どうにんぎや□)△△△△△△/食弁慶(しよくべんけい) 00076790L6/息才(そくさい)△△△△△△/一得(いつとく)/一失(いつしつ) 00076800L7/米相場(こめそうば)△△△△△△/墨絵(すミゑ) 00076810L8/千三(せんミつ)△△△△△△/奴部屋(やつこべや) 00076820L9仝△△△△△△△△/老楽(おいらく) 00076830L10/初心(しよしん)△△△△△△/尿瓶(しびん)(一オ) 00076840¥T1新製欣&雅話三 00076850¥N1¥J 00076860¥X/胴人形(どうにんきやう) 00076870M5きし。そなたハ/灸(きう)すへた事が有か。Sイヱ+、つゐにす 00076880M6へました事ハござりません△Sフウ、何もむつかしい事ハ 00076890M7なゐもんじや。灸点のおろしてある所へすへて、其上へハ 00076900M8すへ+さへすれバよい。十四五ほどすへてたもと、かた 00076910M9をぬき、七九のあたりに/灸点(きうてん)有所へすへさせけるに、すへ 00076920M10/仕廻(しまう)まで、皮きりのよふに/熱(あつ)(二オ)うて+たまらぬゆへ、 00076930M11外のものに見てもらひけれバ、/道理(どうり)こそ、七九のあたりか 00076940M12ら/其上(そのうへ)へすへ+、ちりけのあたり迄すへたりける 00076950¥N2¥J 00076960¥X/食弁慶(しよくへんけい) 00076970M15/東来(とうらい)といふ/大皷持(たいこもち)、/喰(く)ふ事/一切(いつさい)にハ/食弁慶(しよくへんけい)と/呼(よハ)れし男、/灰= 00076980M16吹(はい=ふき)のむハ/金(きん)/壱歩(いちぶ)が/御定(おさだま)り、/蕎麦(そハ)も十四五人前ハしてやり、 00076990M17/塩俵(しほたわら)さへ五寸ばかり/喰(く)ふたとの事。ある時/客(きやく)に/向(むかい)、大の/真= 00077000M18顔(ま=かほ)でいゝける。あなたがた、なんても(二ウ)御あかりなさ 00077010M19れ/升(ませ)うとも、とかけハ/喰(くわ)ぬものでござりますぞへ 00077020¥P241 00077030¥G(四ウ・五オ) 00077040¥N3¥J 00077050¥X/息才(そくさい) 00077060M3/下女(げしよ)/丁稚(でつち)あつまり、ちんこ/芝居(しばい)の/評判(ひやうばん)から、むかし/噺(はなし)にい 00077070M4たる迄、さま+のふつまりな事いふて/居(い)けるか、中にも 00077080M5/弁慶(べんけい)の事を、へゑけん+といふに、/手代(てだい)の/権(ごん)兵衛きいて、 00077090M6そのようにかた言いふもんじやない。べゑけん+ときゝ 00077100M7くるしいといへバ、そんならべけん(三オ)でごさりますか 00077110¥N4¥J 00077120¥X/一得一失(いつとくいつしつ) 00077130M10よつほど/下手(へた)な/髪結(かミゆひ)の/日(ひ)/手間(てま)/廻(まハ)りけるに、/町中(てうぢう)にもよく/心= 00077140M11得(こゝろ=へ)、/夫(それ)がまわる/時(とき)ハ、一人も/髪(かミ)ゆわせるものなけれバ、/朝(あさ) 00077150M12の間に廻りしまいて、アヽ/芸(げい)ハ身を/助(たすけ)るしやナア 00077160¥N5¥J 00077170¥X/米相場(こめそうバ) 00077180M15/諸国(しよこく)の/大名(たいめう)、/鎌倉(かまくら)へ/出仕(しゆつし)の/折(おり)ふし、/秩父殿(ちゝふとの)、/例(れい)の/篤実噺(とくじつはなし)の 00077190M16上、/銘&(めい+)の/国元(くにもと)の米の(三ウ)/相場(そうハ)を/尋(たつね)有しに、/何(いつ)れも御存 00077200M17なく、/赤面(せきめん)に/及(および)けるに、一人ある大名、/拙者(せつしや)が/国許(くにもと)の米/相(そう) 00077210M18場ハ、/当時(とうじ)五十八両仕り/升(ます)と有けるに、扨+能き御こゝ 00077220M19ろがけ也と/感心(かんしん)あれバ、/殿中(でんちう)にても/評判(ひやうばん)/高(たか)く、/面目(めんぼく)をほど 00077230M20こし、其日/彼(かの)大名/帰館(きくわん)あれバ、/一家中(いつかちう)の/面&(めん+)も/悦(よろこび)に出られ 00077240¥P242 00077250L1ける。中にも/家老(かろう)/分別(ふんべつ)左衛門、/早速(さつそく)出仕して、/殿(との)にハよく 00077260L2米相場御存じ有といへバ、S殿いや、おれも知らなんたけ 00077270L3れど、昨日(四オ)(四ウ・五オ挿絵)ものミから/下&(した※)の/者(もの)のさ 00077280L4たを/聞(きい)た/所(ところ)が、米の/直段(ねだん)五十八両といふ事/聞(きこ)へしゆへ、/早= 00077290L5速(さつ=そく)/今日(こんにち)/間(ま)に/合(あハ)せしが、シテ、五十八両といふハ、百石の/直= 00077300L6段(ね=だん)か、千石の直段か 00077310¥N6¥J 00077320¥X/墨絵(すミゑ) 00077330L9/魯道(ろどう)さん。/手細工(てざいく)で/枕屏風(まくらびやうぶ)を/張(はつ)たが、なんなと/一筆(ひとふで)かいて 00077340L10おくれんか。Sずゐぶんかきましよが、/何(なに)がよかろ△Sい 00077350L11やさ。/何(なに)もむつかしい/事(こと)ハ/入(いり)ませぬ。ツイ/墨絵(すミゑ)で也と(五 00077360L12ウ)/何(なん)ぞこふ/寒山(かんざん)/拾得(じつとく)のやうな/物(もの)が、/岩(いわ)の/間(あいだ)からすか+ 00077370L13と/出(で)てある/所(ところ)で/宜(よろ)しうござります 00077380¥N7¥J 00077390¥X/千三(せんミつ) 00077400L16けふおれハ/道頓堀(どうとんぼり)へいた/所(ところ)が、ゑびす/橋(ばし)の/西(にし)の/方(ほう)でゑらひ 00077410L17/事(こと)が/有(あつ)た。/川(かハ)うそを/大勢(おゝぜい)が/見付(ミつけ)てな、/色(いろ)+とさわいだけ 00077420L18れど、ねゑから/手(て)にあわぬわい。そこでおれがちへでなけ 00077430L19れバいかぬとおもひ、/川(かハ)の/中(なか)へとんで(六オ)/入(い)り、かの/川(かハ) 00077440L20うそのあたまのさらをひつとらまへ、/水(ミづ)をのこらずこぼし 00077450M1てやつた。そこで/何(なん)の/苦(く)もなく、/皆(ミな)&いけどりにしおつた 00077460M2わい 00077470¥N8¥J 00077480¥X/奴部屋(やつこべや) 00077490M5/徳内(とくない)。おらハ/夜具(やぐ)をこしらへた。見てくれろ。Sなんだ。 00077500M6/大平楽(たいへいらく)な/事(こと)いふな。どれ+、どこに有△Sそのおし/入(いれ)の 00077510M7/内(うち)にさといふに、おし/入(いれ)/明(あけ)て見れバ、大きな石が三つ四つ 00077520M8あり。Sこりやなんの事だ△Sさればさ。此よふな(六ウ) 00077530M9/寒(さむ)い/夜(よ)、その石で/力持(ちからもち)すれハ、よくぬくもるわさ 00077540¥N9¥J 00077550¥X仝 00077560M12/時(とき)に/可内(べくない)。/奥(おく)さまハがん/病(びやう)だが、/見舞(ミまひ)にいたか。Sイヤ、 00077570M13とんとしらねゑ。よくゆつてくれたと、さつそく/親(おや)かたへ 00077580M14/行(ゆき)、おくさまへ御見舞に可内上りましたといへバ、/内室(ないしつ)ハ 00077590M15もミの/切(きれ)て目をふき+出て、あいさつありけるニ、可内 00077600M16見て、ホウ、おくさまハがん病だと/承(うけたまハ)りました(七オ)が、 00077610M17御目もわるふこさりますか 00077620¥N10¥J 00077630¥X/老楽(おいらく) 00077640M20/北(きた)へんの/達衆(たてしゆ)の年よつたの、/何(なに)がな/老楽(おいらく)のなくさミにと、 00077650¥P243 00077660¥G(八ウ・九オ) 00077670M1/幸(さいわい)/近所(きんじよ)にこゝろ安いあいだがらの人に、/俳偕(はいかい(ママ))する人の有 00077680M2けるゆへ、つねに入こミ、ちとやりかけてハ見れと、根が 00077690M3そふいふ/生(むま)れつきでないゆへ、とかくふのミ/込(こミ)にて有ける 00077700M4が、あるときかの/俳人(はいじん)、おやじぶんの/所(ところ)へ/立(たち)よつた所、ヲ 00077710M5ヽこれハ/先生(せんせい)。さゐわいの/所(ところ)で(七ウ)有たと、先酒など出 00077720M6してもてなし、/扨(さて)けふハ大ぶん/自慢(しまん)の/句(く)か一句てきたと、 00077730M7/鉢(はち)うへに見事に出来てあるほうづきを、/葉(は)をミなむしり、 00077740M8ほうづきばかりのこして、マア/是(これ)が/題(だい)じや。時に句ハこう 00077750M9じや。 00077760M10△△△鬼灯や/祭挑灯(まつりてうちん)どうてあろ 00077770¥N11¥J 00077780¥X/初心(しよしん) 00077790M13これもおなじくかの/俳人(はいじん)の/所(ところ)へ入こむおとこ、いつたいま 00077800M14あ/俳諧(はいかい)といふものハ、とふいふ(八オ)(八ウ・九オ挿絵)気も 00077810M15ちにいふたがよゐものでござりますと/尋(たづね)られ、/俳人(はいじん)もめい 00077820M16わくな/顔(かほ)で、どふといふて、しかたでもおしへられず、ま 00077830M17あいふて見よふなら、こういゝたひとおもふ事を打あけて 00077840M18いふてしまふてハ/句(く)にならず。つゝんでいふて、/夫(それ)ときこ 00077850M19へるように、/余情(よせい)の/有(ある)を/悦(よろこ)ぶじや。まあなんであろと/精出(せいだ) 00077860M20して、して御らうじ。十七/文字(もじ)につゞけてさへ/御出(おいて)あらハ、 00077870¥P244 00077880L1/直(なを)して上ませうといへバ、よろこんて立かへり、早速(九 00077890L2ウ)/一句(いつく)いたしましたと/持(もつ)てくる。見れハ、 00077900L3△△△/鼻(はな)/高(たか)くたちつけはいて/羽(はね)はへて 00077910L4とあり。Sこりやまあ、なんの事じやといへバ、S/□((ハ脱))イ。 00077920L5/天狗(てんぐ)でござります 00077930¥N12¥J 00077940¥X/尿瓶(しびん) 00077950L8/俄(にハか)/分限者(ぶんげんじや)、/古道(ふるどう)具/店(ミせ)見あるひて、/尿瓶(しびん)を見つけ、/是(これ)ハめづ 00077960L9らしい/花器(くわき)也と、/直(ね)を/問(とへ)バ十八文。こりや/堀出(ほりだ)しと/買(かい)もと 00077970L10め、さつそく/持帰(もちかへ)り、/床(とこ)の/間(ま)に/直(なを)し、/花(はな)を/生(いけ)て/楽(たのし)ミ(十オ) 00077980L11いたる所へ、/出入(でいり)の/古道屋(ふるどうぐや)/来(きた)りけれバ、ヲヽ、よい所へよ 00077990L12うこそ。/扨(さて)けふハちと、/掘出(ほりだ)しな物/買(かう)てきた。/目利(めきゝ)して/下(くた) 00078000L13されよといへバ、さび/道具屋(どうぐや)見て、きのどくそうな/顔(かほ)て、 00078010L14/是(これ)ハもし、しびんでこざりますがといへバ、もとよりしび 00078020L15んしらぬゆへ、アヽどふぞ、/正(せう)のしびんならバよいが 00078030¥Y1新製欣&雅話三ノ巻(十ウ) 00078040¥Y1新製欣&雅話四 00078050M3△△目録 00078060M5/密談(ミつだん)△△△△△△/大皷(たいこ) 00078070M6/変者(へんもの)△△△△△△/燈占(ともしびうらない) 00078080M7/古道具(ふるとうぐ)△△△△△△/道楽(どうらく) 00078090M8/文珠(もんじゆ)△△△△△△喩(たとへ) 00078100M9同△△△△△△△△同 00078110M10/別業(しもやしき)△△△△△△/雀(すゝめ)百/迄(まで)(一オ) 00078120M11/盗賊(とうそく)(一ウ) 00078130¥P245 00078140¥T1新製欣&雅話四 00078150¥N1¥J 00078160¥X/密談(ミつだん) 00078170L5さる/御大名(おたいめう)、/御家中(ごかちう)の/面&(めん+)へおゝせ/有(あり)けるハ、明日/密談(ミつだん)の 00078180L6事ある/間(あいだ)、/船(ふね)にて/沖中(おきなか)へ/出(で)る/用意(やうい)せよと/有(あり)に、/早速(さつそく)そのと 00078190L7ほり用意有て、明日/早朝(そうちやう)より船に/召(めさ)れ、沖中へ/漕出(こきだ)し、/扨(さて) 00078200L8密談の/御用(ごやう)を/尋(たづね)けれバ、/外(ほか)のぎでもない。/前(せん)ざいへ/豆(まめ)がま 00078210L9きたいと/仰(おゝせ)あるに、其義ならバ/御館(おやかた)にてもおゝせ有(二オ) 00078220L10そうな/義(き)と申上れバ、いやさ、/館(やかた)にてハ/鳩(はと)めがきくよ 00078230¥N2¥J 00078240¥X/大皷(たいこ) 00078250L13/大皷打(たいこうち)の/例(れ□)の/大(たい)びんぼう。けいこにつかふ大皷まで打ころ 00078260L14し、てこづり/居(い)る折ふし、よい所の/若息子(わかむすこ)、/弟子入(でしいり)せしか 00078270L15バ、さつそくけいこさせる/大(たい)こなく、/思(おも)ひ/付(つき)ニ/大(おゝ)きな/紙(かミ)へ 00078280L16/丸(まる)きものをかき、/初心(しよしん)のうちハ/先(まつ)こうして/習(ならふ)ものてこざる 00078290L17といゝて、/毎日(まいにち)(二ウ)/稽古(けいこ)させらるゝか、/余程(よほど)たつて、/弟= 00078300L18子(て=し)も/拍子(ひやうし)なくやおもひけん、/先生(せんせい)。どふぞわたしも/早(はや)う、 00078310L19ほんまの/大皷(たいこ)でけいこするやうになりとうこざります 00078320¥N3¥J 00078330¥X/変物(へんもの) 00078340M3/表太(ひやうた)といふ/変物(へんもの)ありける。つねにいゝけるハ、わしもど 00078350M4ふぞ/畳(たゝミ)の上のりんちうハ/仕(し)とむないものじやといふにぞ、 00078360M5/皆(ミな)+、たれも畳の上のりんちうを/悦(よろこ)ぶに、おまへハなせ 00078370M6きらい(三オ)なさるといへバ、わたしハからだが/痩(やせ)て御ざ 00078380M7り/升(ます)ゆへ、ふとんの上のりんちうでなけれバ、からだがい 00078390M8たミ升 00078400¥N4¥J 00078410¥X/燈占(ともしひうらなひ) 00078420M11二三人集り、/去年(きよねん)ハ/元日(くわんじつ)に/雨(あめ)がふつて/淋(さびし)かつたと、壱人が 00078430M12いへバ、壱人が元日に雨のふつたハ/去&年(おとゝし)じやといふ。去 00078440M13年しやといふ/論(ろん)になりけれバ、そバから/丁稚(てつち)が、去年のこ 00078450M14よミ、とてきませうか(三ウ) 00078460¥N5¥J 00078470¥X/古道具(ふるどうぐ) 00078480M17/御大名(おだいめう)、/御通(おとほり)に/古道具店(ふるどうぐミせ)に/釣(つゝ)てある/鍔(つバ)が御目にとまり、/御= 00078490M18近習(ご=きんじゆ)をめされ、/買(かう)てとらせよとおゝせらる。御近習かしこ 00078500M19まり、道具屋の/主人(しゆじん)をよび出し、その鍔が/御意(ぎよい)ニ入た。直 00078510M20段を申上いといへバ、古道具屋の主人おつ※、三十八文 00078520¥P246 00078530¥G(四ウ・五オ) 00078540M1てござりますといふ。御近習、そてをひかへて、もそつと 00078550M2高く申せ。S道くやハイ+。三十八文△S御近習高く申 00078560M3せといふに(四オ)(四ウ・五オ挿絵)S大声にて三十八文 00078570¥N6¥J 00078580¥Xどうらく 00078590M6あるやもめぐらしの/雅人(がじん)、/浮世(うきよ)壱分五厘の/境界(きやうかい)にて、/冬(ふゆ)の 00078600M7よの/寒(さむ)きふとんに/纏(まとハ)れ、くわず/貧楽(ひんらく)、/高枕(たかまくら)に夜/鳴(なき)のうどん 00078610M8の/声(こへ)ひゞき、枕もとさぐりまわせハ、二八だけのはした/銭(ぜに) 00078620M9ハ有。手にあたり/次第(しだい)、/肴皿(さかなさら)が/平(ひら)ミな/鉢(はち)をとり出し、はら 00078630M10ばいながら/荒(あら)い/格子(こうし)の内から、うどん/一膳(いちぜん)下されと、/皿(さら)を 00078640M11(五ウ)よこにして、$/格子(こうし)からつき/出(だ)し、/銭(ぜに)もわた 00078650M12し、/温飩(うとん)もりて来た/時(とき)、$/横(よこ)にすれバ、うどんがこ 00078660M13ぼれる。/平(ひら)ミにしてハはいらず。うどんよべども/声(こへ)もせず、 00078670M14どうしても/工夫(くふう)つかず。其内/次第(しだい)に手も/冷(ひ)へる。むねんな 00078680M15がら、/外(そと)へこぼしてしまいける 00078690¥N7¥J 00078700¥X/文珠(もんじゆ) 00078710M18わたしの/所(ところ)の/者(もの)も、もう七つになりますが、けしからぬ/利= 00078720M19口(り=こう)もので、/何(なに)させても/一(いつ)かと(六オ)間に/合(あい)ますと、そやし 00078730M20たてゝ、/酢(す)壱文がの/買(かう)てこよといゝ/付(つけ)けれバ、アイといふ 00078740¥P247 00078750L1まゝとんで出、やかて/戻(もとつ)て/来(き)て、かゝさん。すハこほれた 00078760L2らわるいよつて、のり買てきたそへ 00078770¥N8¥J 00078780¥Xたとへ 00078790L5いづれもかしこそふな男、二三人あつまり、なんと、きつ 00078800L6ふものゝそくはくに/違(ちが)ふた事の/喩(たとへ)に、/泥亀(すつほん)とお月さまほと 00078810L7/違(ちがう)といふが、/一(いつ)たいマア、どちらがよいのじやぞいといへ 00078820L8バ、壱人が(六ウ)そりやしれた事。/泥亀(すつほん)のほうが/味(むま)ひじや 00078830L9なひか 00078840¥N9¥J 00078850¥X仝 00078860L12こちの長吉めハ、とかくのミといわゞ/槌(つち)とこゝろへて、ど 00078870L13うもなり升ぬ。Sそりやよいのじやござりませんか△Sい 00078880L14へ+、のミといわゞ、やつはりのミ取ておこせバよう/厶(こさ) 00078890L15り升 00078900¥N10¥J 00078910¥X仝 00078920L18/果報(くハほう)ハ/寐(ね)てこず、/■(かせぐ)に/追(おい)つく/貧乏(びんほう)あり。(七オ)/早牛(はやうし)ハ/淀(よと)、 00078930L19/遅牛(おそうし)ハふしミ。/下戸(げこ)の/建(たて)た/蔵(くら)も有ハ、/酒(さけ)の/酔(ゑい)/本性(ほんせう)/忘(わす)れる。 00078940L20/地黄丸(ちおうぐわん)ハねりやくて、/長命丸(ちやうめいぐわん)ハ/短命丸(たんめいぐわん)。/天道(てんとう)人をいろ 00078950M1+にし、/惣躰(そうたい)つとめの/奉公(ほうこう)ハ、/楽(たのしミ)なふてもつとめねばな 00078960M2らず 00078970¥N11¥J 00078980¥X/別業(しもやしき) 00078990M5/東(ひがし)の/山(やま)/近(ちか)くに/別荘(しもやしき)をしつらひ、たのしミ/居(い)る所へ、/朋友(ほうゆう)わ 00079000M6ざ+/尋(たづ)ね/来(きた)れバ、/限(かき)りなくよろこび、さま+もてなし 00079010M7けるにぞ、朋友も(七ウ)つゐせう半分、ざしきのかゝり、 00079020M8/前(せん)ざいの/様子(やうす)ほめそやしけるに、こなたも/図(づ)にのり、いや 00079030M9も、どうも思ふやうにハなりませぬ。/紅葉(もミじ)を/植(うへ)れバ/鹿(しか)が/来(き) 00079040M10て/啼(なく)がかしましく、松を植ハ/鶴(つる)が/巣(す)にせうとする。夫に又 00079050M11此ごろハ/狼(おゝかミ)が来て、/馬(ば)ふんいたしてこまり升てや。S/夫(それ)ハ 00079060M12にくい事しや。ぶちころして/熊(くま)の/胆(い)おとりなされませ 00079070¥N12¥J 00079080¥X/雀(すゞめ)百迄(八オ)(八ウ・九オ挿絵) 00079090M15/牽頭(たいこ)の勘六、/客(きやく)を/送(おく)りて、さんさめかして/通(とほ)るを、勘六が 00079100M16/小忰(こせがれ)見つけ、とさんといふを、目でしかり/行(ゆき)すぎしが、/其= 00079110M17日(その=ひ)内へ/戻(もど)り、小忰をさん※しかり、おいらが/商売(せうばい)ハ、/随= 00079120M18分(ずい=ぶん)とうハきらしうせねバいかん。/夫(それ)にあたしゆミそんな/旦= 00079130M19那(だん=な)しゆのそバで、とさんとぬかしおつて、ひやあせをかゝ 00079140M20せおつたと、はら/立(たつ)れバ、/女房(にようぼう)もあいさつして、こんどか 00079150¥P248 00079160¥G(八ウ・九オ) 00079170M1らたしなミややといへバ、小忰ハなく+、もうこんどか 00079180M2ら、とさんと(九ウ)いやせん。ぢさんといおふかいの 00079190¥N13¥J 00079200¥X/盗賊(とうそく) 00079210M5/盗賊(とうぞく)、/表(おもて)の/戸(と)をこじかけるに、/内(うち)より、たれじやといふ/声(こへ)。 00079220M6/暫(しばらく)/耳(ミヽ)すまして/聞(きけ)バ、/鼾(いびき)の/声(こへ)するに、ねておるそふなと、 00079230M7こぢはなし内へはいれハ、又たれじやといふ。よく見まわ 00079240M8せバ、/皆(ミな)ねているゆへ、内へはいらふとするに、又だれじ 00079250M9やといふ。あたり見まわせバ、/店(ミせ)のものゝ/寐言(ねごと)なり。こい 00079260M10つ、かしましいと、手ぬぐい(十オ)で口をくゝりおき、/扨(さて) 00079270M11内へはいり、おもふまゝ/盗(ぬすミ)、/外(そと)へ出しなに、かの/口(くち)へあて 00079280M12し手ぬくいほどきけれバ、/一時(いつとき)に、だれじや+++ 00079290¥Y1新製欣&雅話四終(十ウ) 00079300¥P249 00079310¥Y1新製欣&雅話五 00079320L3△△目録 00079330L5/別世界(べつせかい)△△△△△△△/癖説(へきせつ) 00079340L6/腐儒(ふじゆ)△△△△△△△小六が/孫(まご) 00079350L7/贅(ぜい)八百△△△△△△△ぜつく 00079360L8/坪(つぼ)△△△△△△△△△/仏師(ぶつし) 00079370L9/箱入嚊(はこいりかゝ)△△△△△△△/極楽世界(ごくらくせかい) 00079380L10/想像(おもいやう)△△△△△△△/喜見城(きけんぜう)(一オ) 00079390L11/鬼(おに)/一掴(ひとつかミ)(一ウ) 00079400¥T1新製欣&雅話五 00079410¥N1¥J 00079420¥X/別世界(へつせかい) 00079430M5/人形芝居(にんぎうしばい)の/楽屋(がくや)にて、/十餘(とうあまり)の/小児(せうに)、てゝ/親(おや)にしかられ/泣(ない)て 00079440M6いるを、ミな+立より、なんとした+といへバ、泣目 00079450M7をこすり+、/日(にち)りんのさいこもじりに、さんねのたらこ 00079460M8ハ助四郎しや。助右衛門ならびてもじりたいといふたんで、 00079470M9しゆミまへびきはたかれたといふて/泣(ない)たりける(二オ) 00079480¥N2¥J 00079490¥X/癖説(へきせつ) 00079500M12/至(いたつ)てりくつくさき男いゝけるハ、高さごのぜうと/姥(うバ)を、/何(なん) 00079510M13でめでたがる事じやしらぬ。/一生(いつせう)めしつかひ/壱人(ひとり)、/得(ゑ)つか 00079520M14わず、/定(さだ)まつた/家(か)とくもないかして、/女夫(めうと)があたふた松の 00079530M15下で/落葉(おちば)かいて、年よつて/楽(らく)もゑゝせず、かゝり子もない 00079540M16かして 00079550¥N3¥J 00079560¥X/腐儒(ふしゆ) 00079570M19ある/田舎(いなか)/儒者(じゆしや)、不/相応(そうおう)な/粋(すい)、はだの/美(うつく)し(二ウ)/女房(にようぼう)持て居 00079580M20りしか、/壁隣(かべとなり)へちよこ+南/辺(へん)の/牽頭(たいこもち)来りてさやしけるに、 00079590¥P250 00079600¥G(四ウ・五オ) 00079610M1ある時となりのかゝ来りし時、/儒者(しゆしや)の/女房(かゝ)いゝけるハ、お 00079620M2まへへ/毎(まい)日ミへるのハ、南のけいしやしゆかいなと/問(とひ)ける 00079630M3を、儒者そバから、/何(なに)いやるやら。ミな/大(たい)こ持しゆじやは 00079640M4いの 00079650¥N4¥J 00079660¥X小六が孫 00079670M7嵐小六が/孫(まご)、五つばかりにて、さいじんな子にてありけれ 00079680M8バ、小六、けしからず/寵(ちやう)あい(三オ)せしかバ、/朔日(ついたち)十五日 00079690M9ハ/上下(かミしも)に/一本(いつほん)さゝせ、小六が屋敷へ礼にゆけバ、小六ハい 00079700M10つでもねりの/人形(にんぎよ)、上/菓子(くわし)などやりて/愛(あい)しけるに、小六さ 00079710M11ゐこの時、かの/小児(せうに)にも、白むく上下/着(き)せておくらせんと 00079720M12て、家内の/愁傷(しうせう)の中にも、これほん。御ぢゞさんのそバへ 00079730M13いて、いとまごいしておじやと、/仏(ぶつ)ぜんへつれゆけバ、い 00079740M14つもの通に手をつかへて、御じゞさん。/今日(こんにち)ハ御めでたふ 00079750M15存ます(三ウ) 00079760¥N5¥J 00079770¥Xぜい八百 00079780M18/南(ミなミ)へんでずゐぶん/安場所(やすばしよ)へかり/店(ミせ)て出ている/自(じ)まへ/芸子(げいこ)の 00079790M19内へ、/客(きやく)でもなく、まぶかとおもへバそふでもなしに、/常(せう) 00079800M20ぢう/遊(あそ)びに/来(き)て、ちつとづゝの/小銭(こぜに)つかふて、ぜいいふて 00079810¥P251 00079820L1/居(い)る男。けふも/酒(さけ)五合に/百(ひやく)が/鮓(すし)ぐらいのせりふて、/一(いつ)かど 00079830L2/酩酊(めいてい)といふ/顔(かほ)で、/例(れい)のぜいたくに、此間ハ/道(どう)とんぼりの一 00079840L3文字屋で、/朝(あさ)からさやし、音八につけこまれ、/昼(ひる)ハ大正て 00079850L4すまし。(四オ)(四ウ・五オ挿絵)Sげいこ/又(また)/大(だい)が/初(はじま)つた△S/夫(それ) 00079860L5からふら+と南へ出かけ、/浮瀬(うかむせ)で/大(おゝ)のミ△Sげいこフウ 00079870L6と/鼻(はな)でそやす。S又もどりが/生玉(いくたま)のわたや△Sけいこフウ 00079880L7Sとふ※とめがさの吉へ打こんで/卓子(しゆつほく)といへバ、Sけい 00079890L8こをゝ、/夫(それ)ばつかりが、いつちせうに合てある@此芸子/貴得斎(きとくさい)|をしらず。さ@ 00079900L9@の吉といふを、つねの二八|のけんどんやと心得たり△@ 00079910¥N6¥J 00079920¥Xぜつく 00079930L12八百蔵といふ/役者(やくしや)、大のせつく/言(いゝ)にて有ける。ある/新芸(しんげい)の 00079940L13/初日(しよにち)に、/家来(けらい)ども、はやまるまい(五ウ)ぞといふ/事(こと)を、は 00079950L14やるまゐぞといゝける。はたして/其(その)しばい、十日うたずに 00079960L15やめける 00079970¥N7¥J 00079980¥Xつぼ 00079990L18/田舎(いなか)もの、/瀬戸物(せともの)/町(てう)を/通(とほ)り、/大(おゝき)な/水坪(ミづつぼ)のふせてあるを見て、 00080000L19此つぼにハ/口(くち)がないといへバ、壱人が/坪(つぼ)をすこし/上(あげ)て見て、 00080010L20そこもござらぬ 00080020¥N8¥J 00080030¥X/仏師(ぶつし) 00080040M3まだ/取付(とりつき)の/仏師屋(ぶつしや)で、/何(なん)なりと/注文(ちうもん)ほ(六オ)しく、/店(ミせ)さき 00080050M4ではでに/仕事(しごと)がしたい事じやとおもふている/折(おり)ふし、さる 00080060M5/大寺(おゝてら)の/二王(におう)、あらたに/造立(ぞうりう)ある/間(あいだ)、/何(なに)ほどで/受(うけ)とらしやる 00080070M6といゝて、/世話人(せわにん)/来(きた)りけれバ、/仏師(ぶつし)もとうわくして、/暫(しばら)く 00080080M7/思案(しあん)せしが、どふも是ハ/受(うけ)とれませぬといふ。S講中なぜ 00080090M8にといへバ、/是(これ)/受取(うけとり)升と、/急(きう)に/大(おゝ)きな/家(いへ)へ/宿替(やどがへ)せねバなり 00080100M9升ぬ 00080110¥N9¥J 00080120¥X/箱入嚊(はこいりかゝ)(六ウ) 00080130M12うら/屋住(やずミ)のかゝ、/井戸(いど)ばたへあつまり、よも山の/評判(ひやうばん)して 00080140M13いる/中(うち)に、/壱人(ひとり)が、おいわさん。見なされ。なんでも/直(じき)に 00080150M14/買(かう)と/安(やす)い事じや。けさこちのが市の/側(かハ)で、此大こん/買(かう)て/来(き) 00080160M15てじや有たが、五文につく。安い/事(こと)じやないかいなといへ 00080170M16バ、壱人が、さあこちらでも、ちつと/肴(さかな)がよけいる/事(こと)があ 00080180M17ると、ざこ/場(ば)へいてじやが、きつふ/違(ちがふ)わいなといふに、又 00080190M18/壱人(ひとり)、そんならこちも、ちと/大義(たいぎ)して、/米(こめ)も/江戸堀(ゑどぼり)(七オ) 00080200M19たらで/買(かう)て/来(き)てもらを 00080210¥P252 00080220¥G(八ウ・九オ) 00080230¥N10¥J 00080240¥X/極楽世界(ごくらくせかい) 00080250M3いたつてかた/門徒(もんと)の/親父(おやじ)、/安心(あんじん)/決定(けつぜう)といふ/顔(かほ)にて、/今日(こんにち)/此= 00080260M4世界(この=せかい)をてらさつしやる/日天(につてん)さまといふも、やつぱりあミだ 00080270M5/如来(によらい)じやほどに、おまへがたもいろ+の/雑行(ぞうぎやう)せずに、/御= 00080280M6念仏(お=ねんぶつ)さへ/悦(よろこ)バしやれバ、/間違(まちがふ)た/事(こと)ハ御ざらぬといへバ、/中(なか) 00080290M7にも/壱人(ひとり)、/他宗(たしう)にて/信心者(しんじんしや)ありけるが、とかく/門徒(もんと)ものし 00080300M8らずといゝて、そのような(七ウ)もんもうな/事(こと)いわつしや 00080310M9る。/此日(このにつ)てんさまといふハ/観音(くわんおん)さまじやわゐのといふに、 00080320M10/門徒(もんと)/大(おゝき)に/腹(はら)を/立(たち)、そふいわしやれバ、/御日(おひ)さまハくわん/音(おん) 00080330M11といふ、なんぞせふこがござるか。S他宗なんの、/無事(ないこと)ハ 00080340M12いゝませぬ。/観音(くわんおん)さまを/拝(おがむ)に、/南無(なむ)/大(だい)ひ+の/観世音(くわんぜおん)とい 00080350M13ふじやないか 00080360¥N11¥J 00080370¥X/想像(おもいやう) 00080380M16/痢病(りびやう)にてこまりいる/所(ところ)へ、/朋友(ほうゆう)/見舞(ミまひ)に/来(きた)れバ、/扨(さて)も+/御= 00080390M17心切(ご=しんせつ)かたじけない。(八オ)(八ウ・九オ挿絵)びろうながら、 00080400M18/此(この)ごろハ/何十(なんぢう)たびといふて、/雪隠(せついん)へ/通(かよ)ひますので、せつな 00080410M19い/事(こと)じや。これをおもへバ、/小野ゝ小町(おのゝこまち)ハ/気(き)づよい/女(おなご)でご 00080420M20ざります 00080430¥P253 00080440¥N12¥J 00080450¥X/喜見城(きけんぜう) 00080460L3/粋(すい)がりの/払底(ひつてん)/連中(れんぢう)、/宵(よひ)から/方(ほう)※ぞめきけれど、/一軒(いつけん)も/顔(かほ) 00080470L4がなけれバ、ミななげ/首(くび)の/折(おり)ふし、/一人(ひとり)ふと/心当(こゝろあて)ありて、 00080480L5/損(そん)にしていて見んと/立(たち)よれバ、/思(おもい)の/外(ほか)うけよく、/夫(それ)£ミな 00080490L6/打込(うちこん)で、/奥(おく)へ/通(とほ)るに、/一(いつ)かどのゆすり(九ウ)/茶屋(ぢやヽ)、/互(たがい)に/顔= 00080500L7見(かほ=ミ)あわせ、のどならして/悦(よろこ)びあひ、/夏(なつ)の/夜(よ)の/事(こと)なれバ/宵(よひ)か 00080510L8らの/草臥(くたびれ)、/椽先(ゑんさき)へ/足(あし)なげ/出(だ)し、/手水鉢(てうずばち)の/水(ミづ)を/足(あし)へだら+ 00080520L9ながしかけ、あらこゝちよや。/流(なが)れるような+といへバ、 00080530L10壱人が、アヽゑゝのが/有(ある)けどいわんといへバ、わしもしつ 00080540L11ているけれど、いふとわるい。アヽ/流(なが)れる+といふてい 00080550L12る/所(ところ)へ、たつた/今(いま)/来(き)た/芸子(げいこ)が、をゝ/流(ながれ)るなら、/利上(りあげ)しなさ 00080560L13れいなあ(十オ) 00080570¥N13¥J 00080580¥X/鬼(おに)/一(ひと)つかミ 00080590L16/乞食(こじき)、大としの/夜(よ)、/門&(かど※)へ/立(たち)、/厄(やく)はらひけるに、いろ+ 00080600L17の/新文句(しんもんく)いゝて、かゝる/目出(めで)たき/折(おり)ふしに、いかなる/悪魔(あくま) 00080610L18/降伏(がうぶく)が/来(きた)るとも 00080620¥Y1新製欣&雅話五終(十ウ) 00080630¥Q 00080640M2△△一寸御願申上ます 00080650M3/通俗粋(つうぞくすい)の/腸(はら)△△全部五冊 00080660M5右近日板行仕候御もとめ御覧可被下候 00080670M7寛政十一年已末春正月 00080680M8京都書肆△△鉛屋安兵衛板 00080690M9浪花書肆△△和泉屋源七板 00080700M13△△△△△△△△△△△△△△△△(大東急本奥付) 00080710¥P254 00080720¥U噺本大系△第十三巻 00080730¥T/意戯常談(いけじようだん)〔尾題〕 00080740¥G 00080750¥Y 00080760L17寛政十一年正月序 00080770L18正徳鹿馬輔序 00080780L19小本一冊 00080790L20東大国語研究室蔵 00080800¥Y序 00080810M3/落噺(おとしばなし)ハ/日用(にちよう)/人事(じんじ)/時(とき)の/過(あやまち)、あやまちの/笑(わらひ)ハ/情之(じやうの)/過不及(かふきう)にし 00080820M4て、/或(あるひ)ハ/行(ゆき)すぎ、或ハ/至(いた)らず、或ハ/地口(ぢぐち)、或ハ/誤(あやま)り。され 00080830M5ハ/恵遠(ゑおん)/法師(ほうし)も、/虎渓山(こけいざん)の/禁足(きんそく)を/忘(わす)れて、/高笑(たかわらひ)の/頤(おとがい)をは 00080840M6(一オ)づせしも、/跡(あと)の/一杯(いつぱい)の/過(すぎ)たるが/所以(ゆゑん)。/如何(いか)なる/大賢(たいけん) 00080850M7も、/柄鉄鉋(からでつぽう)の/雑談(さつたん)には/横腹(よこはら)をかゝへん/歟(か)。/一夜(ひとよ)/囲炉(いろり)のかた 00080860M8ハらに/友(とも)どちあつまりて、/車坐(くるまざ)に/炭俵(すミだわら)をかたむけ、/温(ぬく)ばい 00080870M9の/欠(あくび)たら+に/居寐(いねむり)の(一ウ)/猪牙舟(ちよきふね)ハ/漕(こけ)ど、/土(つち)舟/木(き)ぶねの 00080880M10むかし/語(がた)りをやめて、/忽(たちま)ち/新(しん)さくの/草稿(さうこう)/一冊(いつさつ)となるを、/意= 00080890M11戯常談(い=けじやうだん)と/題(だい)す。/嗚呼(ああ)むなしく/紙屑篭(かミくづかご)に/入(いつ)て、/浅草(あさくさ)の/漉返(すきがへし)と 00080900M12/変(へん)し、/番場(ばんバ)におゐて/張篭(はりこ)(二オ)とならんことも/悔(くひ)/有(あ)れバ、 00080910M13/華(はな)さく/枯木(かれき)の/桜木(さくらぎ)にちりばめ、/一陽(いちやう)/開(ひら)く/桃太郎月(もゝたろうづき)、/唐天竺(からてんぢく) 00080920M14ハうそ/八百八町(はつぴやくやてう)に/売(うり)/広(ひろ)めんことしかり 00080930M16△△△寛政十一稔未のはつ春 00080940M17△△△△△△△△△△△△正徳鹿馬輔識G 00080950M18△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二ウ) 00080960¥P255 00080970¥N1¥J 00080980¥X○うぬぼれ 00080990L3四五人一座て、よしハらの大見せへ女郎買にゆき、二階 00081000L4へ上ルと、若物が来て、おミたてなさいましといへハ、 00081010L5◇うぬぼれ◇ウヽ、今おれをじろりとミた新造がいゝ。たしか格 00081020L6子の口に居るのがそだ△◇若者◇とんだへらぼうと思つて、 00081030L7しんぞう五人座しきについて、いろ+なはなしをしてい 00081040L8る。◇うぬぼれ◇きのふ深川で、いろをひとりこしらへたが、あ 00081050L9の女郎も(三オ)とんだうはきなやつだ△◇女郎◇ほんに、おめ 00081060L10へさんハとんだいゝ男たねへ。あのよくあさぎの頭巾て、 00081070L11狂言とやらをするものによくにてヲツスヨ△◇うぬぼれ◇それハ 00081080L12やくしやだか、たれに似ているの。訥子か、中車か△◇女郎◇ 00081090L13イヽヱ、そんな名でハおつせん。なんでも、ぞうの字がつ 00081100L14きひした△◇うぬぼ◇はてな△◇女郎◇ウヽそれ+△◇うぬぼ◇こま蔵 00081110L15か△◇女郎◇イヽヱ、まめ蔵(三ウ) 00081120¥N2¥J 00081130¥X○女郎買 00081140L18/田舎(いなか)から初て江戸へ出た金持、よしハらハ先まづこわいか 00081150L19ら岡場所へ行こふと、深川の土ばしへ名染が出来、毎晩 00081160L20+かよひしが、かつてがしれぬゆへ、まごつひていると 00081170M1ころへ、◇女◇モシ、今晩ハおなじミの女郎衆ハ客人が来て、 00081180M2あしたまでしまひになつておりますが、ちよつときやく人 00081190M3がいつてくるとつて、かへりましたから、(四オ)そのうち 00081200M4ぬすミにでもなさりまし△◇田舎者◇なんでもハア、あのお子 00081210M5におめにかゝりさへすりやようござる△◇女◇左様なら、すぐ 00081220M6にお床にいたしませう△◇田舎◇インヤ、そりやあよして、こ 00081230M7んばんな、たゞ帰りませう△◇女◇ばからしい。まあこつちへ 00081240M8お出なせへ△◇田舎◇イヤ、どふあつても、いやでござる△◇女◇ 00081250M9なぜへ△◇田舎◇ハテ、盗をすると、/首(くび)がねへ(四ウ) 00081260¥N3¥J 00081270¥X○下駄 00081280M12あるとうふ屋で、宝ものにしてをく頼兼公よりはいりやう 00081290M13の下駄を、内のでつちが盗だすところを、亭主ミつけて、 00081300M14跡からおひかける故、ぜひなくあさ草の川へ、けたをもつ 00081310M15て身をなけしゆへ、あたり八けん大さわぎにて、ちう夜七 00081320M16日ばかりたづねしが、げたハ大海へなかれ出て天竺へわた 00081330M17り、てんぢく(五オ)にてひきあげ、日本より下駄といふ物が 00081340M18わたつたと大評判にて、てんぢくの山師どもが三千両に付 00081350M19けしが、◇引上ケた男◇イヤ、五千両でなければうられぬ△◇山師◇ 00081360M20四千両にまけさつせへ△◇男◇安ひもんだが、まけてやりませ 00081370¥P256 00081380L1うと、ねが出来、すぐに金をわたして山師ハ内へかへり、 00081390L2あくる日山師、下駄をもち、うりての内へゆき、モシ、 00081400L3とんだ事だ。わしハあの下駄で(五ウ)しんしやうをしまわ 00081410L4ねバなりませぬ。きさまハあの下駄が、日本のわたりもの 00081420L5だと、よくうそをつかしやつた。あの下駄ハこつちてハ三 00081430L6文にもならぬ△◇うりて◇なぜへ△◇山師◇ハテ、伽羅の匂ひがす 00081440L7る 00081450¥N4¥J 00081460¥X○不動 00081470L10ふどうさまをしんじんな男、大ぐわんあつて、瀧に三七廿 00081480L11一日があいだうたれたならば、(六オ)いにしへの/文学(もんがく(ママ))にも 00081490L12おとらぬ御利生があるだらうと、たきつぼに七日があいだ 00081500L13うたれ、ついに/息(いき)がたへて夢のこゝちに、そつとめをひら 00081510L14いてミたれバ、おりふし不動様、こんがら・せいたかどう 00081520L15じ両人をおつれなされて、たきつぼのふちをおとふりなさ 00081530L16るゆへ、かの男、今ハ大ぐわんもじやうじゆせん。たすけ 00081540L17給へ、ふどう明王と、夢のこゝちに手を(六ウ)あわせてお 00081550L18がめバ、せいたか・こんがら、これをミつけ、アレおとつさ 00081560L19ん。アノ土左衛門がこわいかほをして、おまへさんをおがミ 00081570L20ます。◇ふどう◇ナニ、死人がおれをミる△◇どうじ◇はい△◇ふどう◇ 00081580M1コレ、そんなものをミるな。きミのわるひ 00081590¥N5¥J 00081600¥X○化物 00081610M4わかいむすこ、ひるねをして、枕もとへ十七八なむすめ、 00081620M5もしへ、かわいひねとだきつくゆへ、(七オ)むすこもだん 00081630M6+おもしろきはなしやひになつて、すでに馬のりにのる 00081640M7ところを、娘とびあがつて、なにをなさると、蛇の目のご 00081650M8とくの/眼(まなこ)をひらき、はつたとにらミけれバ、むすこ起あが 00081660M9つて、おのれ、しやうたいをあらハせ。今ひるねのよわミ 00081670M10をつけ/込(こん)で、たぶらかそうとハこしやくなやつと、わきざ 00081680M11しおつとり、ひとうちとつめよすれバ、◇娘◇(七ウ)まつぴら 00081690M12ごめんなさりまし。今ハなにをかつゝミませう。わたくし 00081700M13ハこのゑんのしたに、/凡(およそ)三千年ばかりもたちます/傘(からかさ)でござ 00081710M14ります。何とぞ、ふるかねかいに一度ミせてくださりませ 00081720M15ぬがおうらミと、一本のやぶれかさとなる。むすこ、その 00081730M16かさを手にとつてミて、よこ手をうち、ハヽア、させねへ 00081740M17ももつともだ(八オ) 00081750¥N6¥J 00081760¥X○あきうど 00081770M20◇八介◇もしだんなさん。このごろあきなひをしますが、さつ 00081780¥P257 00081790L1ぱりうれませぬ△◇だんな◇ウヽ、なにをうるのだ△◇八介◇ハイ。 00081800L2/印(いん)にくと/印判(いんばん)をうりますが、あんまりたんと、りをとろう 00081810L3といたすせへか、すミハうれますが、判ハさつぱりうれま 00081820L4せぬ△◇だんな◇そして、なんといつてよんであるひた△◇八介◇ 00081830L5三文判がやすい八文づゝ(八ウ) 00081840¥N7¥J 00081850¥X○きをひ 00081860L8きをひ、/学者(がくしや)のうちへ大学をならひにゆき、あまりまちく 00081870L9たびれて、◇きおい◇モシせんせい様。さつきからまつていま 00081880L10すか、そちらをむゐて何をなされます△◇と◇イヤ、いま/詩(し)を 00081890L11つくつて/平灰(ひやうそく(ママ))をふミました△◇きおい◇おけがハなされません 00081900L12か。あぶらがついたら、ふいてあげませふ△◇学者◇あきれは 00081910L13てゝ、ナニ、とんだ事をいつたもん(九オ)だ△◇きおい◇はて、 00081920L14ごゑんりよハござりやせん 00081930¥N8¥J 00081940¥X○さむらゐ 00081950L17さむらい、とちうでせついんへゆきたくなり、/辻(つぢ)ばんの戸 00081960L18をたゝいて、◇武士◇ちとむしんながら、せついんをおかしな 00081970L19さい△◇ばん人◇イヤ、かされませんといへバ、さむらいこた 00081980L20いかねて、しりひんまくり大用をすれバ、◇ばん人◇これ、そ 00081990M1こハとのさまのおものミの下だハ。はやくわきへゆかぬか 00082000M2◇武士◇(九ウ)ハテ、そのやうにしかる事ハねへ。あとでさら 00082010M3つておくハへ△◇ばん人◇ウヽ、そんなら跡でよくさらつてお 00082020M4きやれ△◇武士◇ナニ、さらつておきやれ。をのれ、/武士(ぶし)にむ 00082030M5かつてりよぐわひなやつの△◇ばん人◇ハテ、跡をさらつてお 00082040M6きやれ△◇武士◇イヤ、いよ+をのれ、ミろ。ひりずてにす 00082050M7るぞ 00082060¥N9¥J 00082070¥X○つんぼう 00082080M10つんぼうな/欲(よく)ぶか/爺(ぢゞい)、両国のはしをとをると、(十オ)◇こじき◇ 00082090M11たんな。もし、壱文おくんなさりやし△◇ぢゞひ◇アヽおしひ 00082100M12もんだが、けふハほとけの日だと、おしそふにきんちやく 00082110M13から四文ぜにを出してやれバ、/乞食(こじき)も気のどくがつて、モ 00082120M14シ、つりを三文あげませうかといへバ、/耳(ミヽ)がとをいゆへ、 00082130M15つりをとりたそうに、そばにゐるはなしうなぎを一疋かつ 00082140M16て、◇ぢゞい◇コレうなぎやどん。ぜにハこのこじきのつりを 00082150M17とらつせへ△◇うなきや◇(十ウ)あきれはて、モシ、是ハはなし 00082160M18うなぎでござりやす。おうかたおめへハもつていつて、か 00082170M19ばやきにするだあろふ。そんなめそつこがくわれるものか 00082180M20といへバ、ぢゞい、つんぼうゆへ、だまつてうなぎをさけて 00082190¥P258 00082200L1ゆく。うなぎ屋、ぢゞいの袖をひつぱり、◇うなぎや◇それハ 00082210L2/食(く)ふのでハなひ。はなすのだといへバ、ぢゞい耳をあげ 00082220L3て、◇ぢゞい◇なんだ△◇うなぎや◇大声あげて、/後(ご)(十一オ)/生(しやう)にハ 00082230L4ならねへヨ。◇ぢゞい◇イヤ、これでもどぜうにハましだ 00082240¥N10¥J 00082250¥X○娘の子 00082260L7むすめのこふたりづれにて、/近所(きんじよ)の/祝義(しうぎ)によばれて行。大 00082270L8ぜいの/客(きやく)に手をつひてじぎをすれバ、◇客人◇はて、よい御 00082280L9/兄弟(きやうだい)だとほめているところへ、◇かミさま◇ヲヽよくおいで 00082290L10だの。おかゝさんハなぜおそひへ△◇あね娘◇いまね、(十一ウ) 00082300L11/顔(かほ)をあらつて△◇かミさま◇そしておとつさんハ△◇妹むすめ◇アノ、 00082310L12虱をミておいでなさりますといへバ、ざしきの客いちど 00082320L13にどつとわらへバ、あねむすめ、まつかになつて/妹(いもうと)へむ 00082330L14かひ、◇姉娘◇おめへ、そんな事をいふと、内へいつつけるに 00082340L15よ△◇妹娘◇そしてなんといふのだ△◇あね娘◇ナアニ、おとつさ 00082350L16んハ/蚊(か)をつぶして 00082360¥N11¥J 00082370¥X○ゆき女(十二オ) 00082380L19ひとり/者(もの)、雪のふる夜つくねんとして居るところへ、まつ 00082390L20白な着ものをきて、三十ぢかくなうつくしい女、ひとりも 00082400M1のゝむすこ六つばかりになるを、しきりにかわひがるゆへ、 00082410M2男もふしぎに思ひながら、ミればミるほどうつくしひゆへ、 00082420M3ついゆき女をそのばんハとめて、◇おとこ◇その子をだいて/寐(ね) 00082430M4やれといへバ、◇雪女◇わたしや、この子(十二ウ)をだひてね 00082440M5る事ハどうもなりませぬ△◇男◇なぜ、だひてねられぬといへ 00082450M6バ、◇雪女◇どふも/寐小便(ねせうべん)をしそうだ 00082460¥N12¥J 00082470¥X○/煙草(たばこ)の/曲(きよく)のミ 00082480M9たばこの曲のミをする男、穴のあるところなれバ、/耳(ミヽ)から 00082490M10でも/臍(へそ)からでも、すきな所からけむをだしてミせるといへ 00082500M11ハ、◇見物◇それハどふぞ、ミたひ物でござりますといへバ、 00082510M12(十三オ)△◇曲のミ◇さやうならおめにかけやうと、/尻(しり)をまくつ 00082520M13ている。見物のもの、/煙(けむ)がさつぱりでませんといへハ、か 00082530M14の男、ウントいきむと、とりはづしてびち+とやれば、 00082540M15◇見ぶつ◇モシ、けむハでませんが、なにかでました△◇曲のミ◇ 00082550M16/尻(しり)へ手をやつてミて、ぬからぬ/顔(かほ)で、ウヽ、是ハやにでご 00082560M17ざる 00082570¥N13¥J 00082580¥X○/化物(ばけもの)屋しき(十三ウ) 00082590M20ばけもの屋しきに、たれあつてすまひてもなく、から/家(いへ)に 00082600¥P259 00082610L1なりしを、五六才になるきしやうなむすこ、わしがゆこふ 00082620L2と、かのあき家ニたつたひとり居しが、/餘(あま)りさミしくなり、 00082630L3つくへによりかゝつて/手習(てならい)をして手ほんをたし、よミをさ 00082640L4らわんと、らむうのおくやま+とばかりいつて、跡がつ 00082650L5かえていれバ、筆たての筆、しだひにうごきだして、手本 00082660L6(十四オ)のうゑゝのる。かの小僧、けの/字(じ)とさとつて、や 00082670L7まけふこえてとよんでしまひ、はて、き/妙(めう)な事だと、/国= 00082680L8尽(くに=づくし)の手本をだして、/上総(かづさ)/下総(しもふさ)/東山道(とふさんどう)とよミ、あとをわすれ、 00082690L9東山道近江と、なんべんも+くりかへしよめバ、まへの 00082700L10せうじうごきだして、かた+といふ。◇こぞう◇それでもさ 00082710L11とれぬから、なんだ+といへバ、◇せうじ◇/美濃(ミの)+ 00082720¥N14¥J 00082730¥X○どうらく/者(もの)(十四ウ) 00082740L14どふらく/者(もの)、友だちのうちで酒をしたたかのミ、大さわぎ 00082750L15にさわひでゐれバ、◇おふくろ◇こなたハマア、このごろ内を 00082760L16しくじつているしやあねへか。それにそのよふに酒をのん 00082770L17で、ちとたしなまつせへとしかれバ、◇ともだち◇モシおふくろ 00082780L18さん。わたしやあ是からぐつとしまつて、ちとあきなひ 00082790L19でもいたしましやう。そのかわり、もとでをかしておくん 00082800L20(十五オ)なせへ△◇おふくろ◇なにをさつしやるつもりだ△◇友たち◇ 00082810M1なんにも思ひつきかござりやせんが、いつそ/小間物(こまもの)屋で 00082820M2もだそうと思ひやす△◇おふくろ◇ウヽ、そんならいわつてやる 00082830M3ものがある△◇友だち◇なんでござりやす△◇おふくろ◇このミヽだ 00082840M4らいでも/持(もつ)てゆきやれ 00082850¥N15¥J 00082860¥X○/疱瘡(ほうそう) 00082870M7ある御大家のわかとのさま、御ほうそう(十五ウ)をなさつ 00082880M8て、ミなあかひものづくしにて、たゝミハもふせんにてし 00082890M9きつめ、/柱(はしら)はひぢりめんでまき、/奥(おく)の女中ハそろつてあか 00082900M10ひかひどりをし、御せんもさゝぎめし、おもりもおそばも、 00082910M11若とのさまの御気にいらぬゆへ、/家老(からう)・/用人(ようにん)大きにこまり、 00082920M12/家中(かちう)/一統(いつとう)、女房も下女もわかとのゝまへゑならび、おめの 00082930M13つい(十六オ)たものをおもりにするがいゝと、わかさまを 00082940M14つれもふせバ、ゆびをおさしなされて、おはしたのもミぢ 00082950M15といふ、はなはだぢゞむさそうな女がおめにつき、あまり 00082960M16ふしきに思ひ、かの女をそばへよひ、◇からう◇今日若殿様の 00082970M17御目につきしそのほうゆへ、御もり/役(やく)に申付るぞ。しかし 00082980M18其方ハなんぞ、ほうそうのゑんのあるものでもあるかな 00082990M19(十六ウ)と/問(と)へば、◇下女◇ハイ、いゝへ。何もゑんハござり 00083000M20ませんが、わたくしがからだハ、とばかりいつて、どうも 00083010¥P260 00083020L1おはづかしうごさります。◇からう◇ハテ、かまわずもうせ 00083030L2さ△◇下女◇ハイ。わたくしがからだは△◇かろう◇いかゞいたし 00083040L3た△◇下女◇ハイ。あかだらけ 00083050¥N16¥J 00083060¥X○/調市(てつち) 00083070L6いきすきた小僧、かひものにいつて/帰(かへり)、(十七オ)△◇小ぞう◇ハ 00083080L7イ、だんなさん。おあつらへのものをかつてまいりました。 00083090L8そして、さつまいもをまけてもらひました△◇だんな◇いくら 00083100L9に△◇こぞう◇百に壱貫五百目のを、おがむやうにいたしてさ 00083110L10◇だんな◇ウヽ、いくらにまけてもらつた△◇こぞう◇ハイ、壱〆 00083120L11四百目に 00083130¥N17¥J 00083140¥X○/高慢者(かうまんもの) 00083150L14/唐土(もろこし)に/晋(しん)の/■隆(かくりやう)といふ者あつて、/世(せ)(十七ウ)/間(けん)でハミなに 00083160L15しきをかざり、土用ぼしをするといふ事あれど、/我(われ)ハ/学文(がくもん) 00083170L16の/虫干(むしぼし)せんと、/大道(たいどう)にあをむけになつて、/腹(はら)をほしたとい 00083180L17ふ事をきひて、あるかうまん/者(もの)、内の/前(まへ)にあをむけになつ 00083190L18て寐ていれバ、近所の友だち大ぜいにて、かのかうまんも 00083200L19のをいぢめにきて、かのかうまん男のまハりにならび、大 00083210L20ぜいこへをそろへて、(十八オ)◇友だち◇/貴(き)さまハなにしに、 00083220M1そうやつているといへバ、◇こうまん◇おれハむねにおほへた 00083230M2/書物(しよもつ)を、虫干をしやうと思つさて、。どうも物しりハ是にこ 00083240M3まりやす。なろう事なら、/胸(むね)にある書もつをミんなうつて 00083250M4やりてへもんた△◇友だち◇はらをたちわつてうるなら、ちと 00083260M5/買(かい)たいもんだ。さあうりやれ+とせめられ、◇かうまん◇ど 00083270M6ふしてはらのうちのたましいが、(十八ウ)うりものになる 00083280M7ものか△◇友たち◇それでもうつてやりたいもんだと、おぬし 00083290M8の口からいつたがあやまりだ。なんでもかわねバならぬと 00083300M9せめられて、/高(かう)まんもの、大きにこまりはて、そばにある 00083310M10/脇(わき)ざしをだして、◇かうまん◇マア是でもとつておひてくりや 00083320M11れさ(十九オ) 00083330¥Y/意戯常談(いけじやうだん)終(十九ウ) 00083340¥P261 00083350¥U噺本大系△第十三巻 00083360¥T/新作(しんさく)/塩梅余史(あんばいよし)〔内題〕 00083370¥G 00083380¥Y 00083390L16寛政十一年正月序 00083400L17曲亭馬琴序・撰 00083410L18子興画 00083420L19蔦屋重三郎板 00083430L20小本一冊 00083440¥Y有序△G 00083450M3古人有言曰。詼諧劇譚甘如飴 00083460M5密。有旨哉言也。夫聴之而可喜 00083470M7可嗔可笑可泣可驚可怖者。特 00083480M9在談者與聴者之工拙耳。若以(序一オ) 00083490M11無爲有認假爲眞。乃所謂 00083500M13癡人面前説夢也。鳴呼談何 00083510M15容易也。予以筆墨游戯者 00083520M17有年於此矣。去歳追記舊話 00083530M19登録新聞。聊擬艾子軒(序一ウ) 00083540¥P262 00083550L2■之諸篇。可以資筵席之 00083560L4噴飯。亦可以破獨坐之岑寂 00083570L6也。書成挿架。偶坊賈來竊 00083580L8袖之而去刻櫻。因書數行 00083590L10於簡端。(序二オ) 00083600L12寛政己未人日呵硯書于 00083610L14飯台之寓居 00083620L16△△曲亭野史馬琴 00083630L18△△△△△△G△G(序二ウ) 00083640¥Y/戯聞(おとしばなし)/塩梅餘史(あんばいよし) 00083650M3○/腐(くされ)/儒(じゆしや)△△△△△/矮談(ミじかいはなし) 00083660M4○/鮫人(こうじん)△△△△△△/長話(ながいはなし) 00083670M5○/夜行翁(ひのようじん)△△△△△△矮談 00083680M6○/両婦(にようぼの)/換魂(かへだま)△△△△△長話 00083690M7○/俳諧(はいかい)△△△△△△矮談 00083700M8○/閨中(けいちうの)/魔法(まほう)△△△△△長話 00083710M9○/美人(びじんの)/怪力(だいりき)△△△△△矮談(一オ) 00083720¥Y凡例 00083730M15○/凡(およそ)/談者(はなすもの)に/巧(ぜうず)/拙(へた)あれバ、又/聴者(きくもの)に/工(ぜうず)/拙(へた)あり。/談(はなす)と/聴(きく)と/孰(いづれ) 00083740M14か/難(かた)しとせん。/聴(きく)ハ易くして、/話(はなす)こと/最(もつとも)/難(かた)し。/譬(たとへ)バ/初鰹(はつかつほ) 00083750M15を/煮(に)て/喰(く)ふ人ハ、/松魚(かつほ)の/罪(つミ)にあらず。/料(りやう)る人の/拙(つたな)ければ、 00083760M16/廼(すなハち)/芥子(からし)のきゝ/下手也(べたなり)。/夫(それ)/鳥銃(てつぽう)の/的(まと)を/外(はづ)して、/隣(となり)の/寺(てら)から 00083770M17/責(しり)の/来(く)るハ、/嘴銃(てつぽう)の/罪(つミ)にあらず。/放(はなす)ものゝ/拙(つたな)ければ、/是(これ)/鉄= 00083780M18砲(てつ=ぽう)のはなし/下手(べた)といふべし(一ウ) 00083790M19○/著(あらハ)す所の/談叢(はなしぼん)ハ/世間(せけん)に/■(もてあそ)ぶ所の/俗談(おとしばなし)とハ/大異(るいぬけ)にして、 00083800M20/稗史(はいし)/小説(せうせつ)の/旨(すじ)をのべ、/終(おハり)に一句の/狂言(きやうげん)をまじへ、/読(よむ)ものを 00083810¥P263 00083820L1して/解(おとがいを)/頤(おとさ)しむ。/巻(くわん)中の/題話(はなしげだい)/都(すべ)て七/品(ひん)。/長(ながき)あり/短(みじかき)あり、 00083830L2長といへども長/崎(さき)から/剛(こハ)飯も/来(こ)ず、/短(ミじかし)といへ共、冬の日に 00083840L3/縫揚(ぬいあげ)もせず。/只(たゞ)/勧善懲悪(くわんぜんてうあく)の/好味(うまミ)を以て此/書(しよ)の/大意(たいゐ)とす。/是(こゝ) 00083850L4を以て、/目(なづけ)て/塩梅餘史(あんばいよし)といふ(二オ) 00083860¥GG1しら梅や夜はあつめて星の数△仙水散人羅文△(二ウ) 00083870¥T1/新作(しんさく)/塩梅餘史(あんばいよし) 00083880¥A江戸飯台△曲亭馬琴撰 00083890¥N1¥J 00083900¥X○/腐(くされ)/儒(じゆしや) 00083910M7/宋儒理学(さうじゆりがく)の/糟粕(さうはく)を/喰(くらつ)て、/愚癡(ぐち)/偏古(かたいぢ)の一/腐(くされ)/儒(じゆしや)あり。/慣(つね)に/漢= 00083920M8土(もろ=こし)に/生(うま)れざることを/歎(なげ)き、/平生(へいぜい)人と/話説(ものがたり)するにも、/漢(から)でハ 00083930M9/個様(かやう)、/唐土(もろこし)でハかやうと、/万事(ばんじ)/漢土(もろこし)のことのミ/称歎(ほめそや)しけれ 00083940M10バ、門人もその/立意(かたいぢ)をうとミ、/受業(けいこ)するものも(三オ)すく 00083950M11なく、まして/時勢(せじ)にうとけれバ、/右(かた)のごとくの/寒士(びんぼう)にて、 00083960M12/年(とし)/暖(あたゝか)なれども/身辺(ミのまわり)/寒(さむ)く、/世(よ)/豊(ゆたか)なれども/口腹(こうぷく)/餓(うへ)たり。つね 00083970M13に/雪花菜(きらず)を/以(もつ)て/糧(かて)とせしかバ、人/綽号(あだな)して/白兎(はくと)先生と/喚做(よびな) 00083980M14せり。ある時門人、先生の/膳(ぜん)をミるに、/椀中(わんちう)/飯(めし)すくなくし 00083990M15て、ミな/雪華菜(きらず)なりけれバ、門人大に/呆(あきれ)はて、/孔子(こうし)も/疏食(そしい) 00084000M16を/喰(くら)ひ/水(ミづ)を/飲(のミ)、/肱(ひぢ)を/曲(まげ)て/枕(まくら)とす。/楽(たのしミ)/亦(また)/其中(そのうち)(三ウ)にあり 00084010M17とハ/宣(のたま)ひしかど、いにしへの/聖人(せいじん)、/雪花菜(きらす)を/喰(くひ)しことを/聞(きか) 00084020M18ず。/先生(せんせい)の/高論(かうろん)うけたまハりたしといゝけれバ、先生、/点= 00084030M19&(ほく=+)/打(うち)うなづき、/否(いや)、/不侫(われら)が/雪花菜(きらず)を/好(この)むこと、さのミ/別(べつ)に 00084040M20/子細(しさい)なし。/俗(ぞく)/豆腐(とうふ)の/糟(かす)を/呼(よん)で/雪花菜(きらず)といひ、又/殻(から)といふ。 00084050¥P264 00084060L1/殻(から)ハ/唐(から)に/音(おん)/通(かよ)ひてゆかしけれバ、/慣(つね)に/漢土(から)の/禄(ろく)を/喰心(はむ)にて、 00084070L2/殻(から)をたべ申スなりと、/仮腥&的(しかつべらしく)いゝけれバ、門人大に/感(かん)じ 00084080L3/入(いり)、/誠(まこと)に(四オ)先生の/唐(から)をしたひ給ふ/老実(おこゝろいれ)ハまた/格別(かくへつ)なり。 00084090L4とてもの事に、今より/玉蜀(とうもろこし)を/喰(くひ)給ハば、/唐(とう)といひ、もろ 00084100L5こしといひ、その/音(をん)よく/通(かよ)ひ申さんといひけれバ、先生、 00084110L6けにもと大に/歓(よろこ)び、/是(これ)£/雪花菜(きらず)と/玉蜀(とうもろこし)のミくひけれバ、 00084120L7/忽(たちまち)/面部(かほ)に/種物(しゆもつ)/出来(でき)て、/起居(たちい)も心のまゝならず。ある日先生、 00084130L8わづか二三人ある門人を/呼(よび)あつめ、/吾(われ)/不幸(ふかう)にして/疥癬(できもの)を/患(うれ) 00084140L9ひ、今は/各位(をの+)/教育(ものおしゆる)(四ウ)事も心くるしけれバ、今より/別(べつ) 00084150L10の/師(し)にたよりて/稽古(けいこ)をはげミ給へ。此としごろ/愚叟(われら)に/随身(ずいしん) 00084160L11したまひしこゝろざしのうれしさに、これを/紀念(かたミ)にまいら 00084170L12するなりとて、/一個(ひとつ)の/古葛篭(ふるつゞら)をとり出し、是ハ/愚叟(われら)つね 00084180L13※/唐土(もろこし)をしたふ心より、かねて/秘蔵(ひそう)せし/葛篭(つゞら)なり。これ 00084190L14を/分(わけ)て/各位(をの+)/退散(たいさん)あるべしといひけれバ、門人も/感涙(かんるい)をとゞ 00084200L15めかね、先生の/漢土(もろこし)をしたひ給ふ(五オ)/尊慮(おこゝろ)より、/是(これ)まで 00084210L16/秘蔵(ひそう)したまひし/葛篭(つゞら)なれバ、/中(なか)にハさだめて/舜(しゆん)の/冕(かむり)か、/孔= 00084220L17子(こう=し)の/琴(こと)か、たゞし/孟母(もうぼ)の/■車(はたくるま)か、/何(なに)にもせよ、/漢土(もろこし)にたぐ 00084230L18ひ/希(まれ)なる/重宝(てうほう)ならんと、/諸生(そう※)が/立寄(たちよつ)て/葛篭(つゞら)の/蓋(ふた)を/明(あけ)て見れ 00084240L19バ/中(なか)ハさつぱり、からつゞらであつた 00084250¥N2¥J 00084260¥X○/鮫人(こうじん) 00084270M3むかし/俵屋(たわらや)/藤(とう)太郎といふものあり。/常(つね)に美婦(五ウ)を/娶(めど)ら 00084280M4んことをねがへしも、いまだその/鳳(あいて)を/得(へ)ず。ある日、/瀬田(せた) 00084290M5の/橋(はし)をわたりけるに、かたハらなる/砂(すな)の上に、/一個(ひとり)の/漢子(おとこ) 00084300M6/眠居(ねむりい)たり。その/形状(かたち)ミるに、/碧(ミどり)の/眼(まなこ)、/蟒(うハばミ)の/鬚(ひげ)、/満身(まんしん)、/墨(すミ) 00084310M7のごとく/黒(くろ)くして、/鬼(おに)に/似(に)たり。/喚起(よびおこ)して、/何者(なにもの)ぞと/問(と)へ 00084320M8バ、そのもの/対(こたへ)て、/我(われ)ハ/海中(かいちう)の/鮫人(こうじん)なり。/八大龍王(はちだいりうわう)につか 00084330M9へて、/龍宮(りうぐう)の/小吏(やくにん)なりしが、いさゝか/罪(つミ)あつて/龍宮(りうぐう)を/所放(おひださ) 00084340M10れ、今/漂泊(ひようはく)して此ところに/吟来(さまよいきた)りたり。(六オ)あはれ/一= 00084350M11扁(いつ=へん)の/慈悲心(じひしん)をたれて、/救(すく)ひ給へかしと、手を/合(あハせ)て/頼(たのミ)けれバ、 00084360M12藤太郎も/可得(さすが)/不便(ふびん)にや思ひけん、/遂(つい)に/鮫人(こうじん)を/伴(ともな)ひ、わが/家(や) 00084370M13へ/立(たち)かへり、/幸(さいわ)ひ/薗(にわ)に/些(すこし)ばかりの/泉水(せんすい)ありけれバ、そのう 00084380M14ちへ/入(いれ)て/養(かひ)おきけり。/却説(かくて)その秋七月のことなりしが、藤 00084390M15太郎、三井寺の/女人詣(をんなもふで)を/見物(けんぶつ)に/行(ゆき)たりしに、/参詣(さんけい)あふきそ 00084400M16の/中(なか)に、/一個(ひとり)の美女、としハ二八ばかりとミへ、山ハ/西施(せいし) 00084410M17が/破瓜(はくわ)のご(六ウ)としと、/白楽天(はくらくてん)が/口遊(くちすさミ)たるおもかけにて、 00084420M18/満身(はだへ)ハ/消残(きへのこ)る/雪(ゆき)かと/疑(うたが)ひ、/言(ものいふ)/語(こへ)ハ/鴬(うぐひ□)の、/梅(むめ)の/木伝(こづた)ふ/風情(ふぜい) 00084430M19なれバ、藤太郎/看一(ひとめ)/看(ミる)より/眼中(がんちう)/忽(たちま)ち/春(はる)を/生(せう)じ、/迹(あと)をつけて 00084440M20/行(ゆき)てミれバ、/八早瀬(やばせ)あたりに、よしありげなる/廬(いほり)をむすび 00084450¥P265 00084460L1て、/母子(おやこ)/二(ふたり)/口(ぐらし)とミへたれバ、/密(ひそか)に/合壁(となり)の/老媼(ばゞ)に/便(たより)て、そ 00084470L2の思ひを/通(かよハ)せけるに、/渠元(かれもと)より/対(むこ)を/撰(えら)ミていまだ/嫁(よめら)ず。/女= 00084480L3児(むす=め)の/名(な)を/珠名(たまな)といへバ、/只(たゞ)のぞむところハ、/万顆(まんりう)の/明玉(めいぎよく)を 00084490L4/納聘(ぢさん)(七オ)にする人あらバ、/壻(むこ)にせんとの/難題(なんだい)。/鳴乎(あゝ)藤太 00084500L5郎、/仮令(たとへ)/産(さん)を/破(やぶ)りて/千金(せんきん)をつむとも、/万粒(まんりう)の/明(めい)玉。いかで 00084510L6/容易(たやすく)/求得(もとめゑ)んやうあらざれバ、/納悶(うれひもだへ)て、ついに/相思病(きやミ)とな 00084520L7り、/枕(まくら)もさらにあがらねバ、さつそく/医師(いしや)をまねきて/容= 00084530L8子(やう=す)を/問(と)ふに、/医師(いしや)/脉(ミやく)を/診(とつ)て大きに/駭(おどろ)き、/雑症(ざつせう)ハ/医(なをる)べし。/相= 00084540L9思病(さう=しびやう)ハ/活(いき)がたし。むかし/瑯■王伯(ろうやわうはく)/輿情(よじやう)のために/死(し)す。/君(きミ)が 00084550L10/病(やま)ひ、/唯(たゞ)/空手(てをむなしく)して/斃(し)を/俟(また)んのミと、/袖(そで)をはら(七ウ)つて 00084560L11立かへる。/却説(かくて)藤太郎が/泉水(せんすい)にいたりし/鮫人(かうじん)ハ、/主人(しゆじん)の/疾(やまい) 00084570L12/重(おも)しときゝ、/昼夜(ちうや)/枕(まくら)にそふて/看病(かんびやう)すれバ、藤太郎もその 00084580L13/志(こゝろざし)を/感(かん)じ、/誠(まこと)に/不思儀(ふしぎ)の/縁(ゑん)によつて、/汝(なんぢ)をやしなふこと 00084590L14/既(すで)に/半載(はんねん)におよべり。しかるにわが/病(やまい)日&におもく、/旦(あしたの) 00084600L15/露(つゆ)、/夕(ゆふべ)をまたぬ/牽牛花(あさがほ)の/杖(つへ)とたのミしかひもなく、われ/亡(なき) 00084610L16/後(あと)ハ/誰(たれ)あつて/汝(なんじ)を/養(やしな)ふものもなし。/実(げに)まゝならぬ世なりけ 00084620L17りと、かきくどきて申スにぞ、/鮫(かう)(八オ)/人(じん)この/言(ことは)を聞より 00084630L18も、/失声(わつとはかり)/泣出(なきいだ)し、/鬼燈(ほうづき)ほどの/血(ち)の/涙(なミだ)、/蘇&(はら+)と/落(おと)せしが、 00084640L19たちまち/光(ひかり)/輝(かゞやき)て、/粒&(りう+)ミな/珠(たま)となる。藤太郎これをミる 00084650L20よりも/■(よぎ)はねのけて/岸破(かば)と/起(おき)、わが/病(やまい)/既(すて)に/愈(いへ)たり。/鮫人(かうじん) 00084660M1よろこんでその/訳(わけ)をきくに、藤太郎、ありし事とも/説話(ものがたり)、 00084670M2万/粒(りう)のたまなけれバ、/想(おも)ふ/女家(おんな)にそふことならず。/夫(それ)ゆへ 00084680M3にこそ、/右(かく)ハ/愁(うれい)にしづミしに、/今(いま)/憶(おもわ)ずも、/汝(なんぢ)が/涙(なミだ)/珠(たま)となり 00084690M4しゆへ、/吾願(わがねがひ)(八ウ)/既(すで)に/成就(せうじゆ)せり。然共/恨(うらむ)らくハ/珠(たま)の/数(かず)い 00084700M5まだそろハず。/汝(なんし)わか/為(ため)に今一たび/哭(ない)て、/積日(ひごろ)の/鬱悶(おもひ)をは 00084710M6らさせくれよとたのめバ、/鮫人(かうじん)/不肯(かむりをふり)、/君(きミ)、/古人(こじん)の/書(しよ)をミ 00084720M7たまハずや。/海中(かいちう)に/鮫人(かうじん)あり、/哭則(なくときハ)/涙(なミだ)/珠(たま)となる。かゝる 00084730M8/一奇事(ふしぎ)ありといへども、その/実情(じつじやう)より/出(いで)たる/悲(かな)しミにあら 00084740M9されバ、/一滴(いつてき)の涙もこぼしがたし。かの/娼妓(けいせい)の/漂蝶(きやく)を/哄(だま)す 00084750M10/作弊(てくだ)を以て/泣(なく)がごときは、/小的們(わがともがら)、かりそめにもなすこと 00084760M11あたわず。(九オ)しかれども/大恩(だいおん)ある/花主(ごしゆじん)の、/月老(なかたち)となる 00084770M12なミだなれバ、われに一つの/通風(くふう)あり。/明旦(めうにち)/酒(さけ)/肴(さかな)を/携(たづさ)へ、 00084780M13/瀬田(せだ)の/橋(はし)にゆき、はるかに/海上(かいしやう)を/眺望(のぞミ)なバ、/古郷(こきやう)をしたふ 00084790M14/実情(しつじやう)のかなしミ出て、/涙(なミだ)の/落(おつ)る事あるべしといゝけれバ、 00084800M15藤太郎大きに/歓(よろこ)び、/早旦(さつそく)/酒(さけ)/肉(さかな)を/携(たづさへ)へ、/瀬田(せた)の/橋(はし)の/真中(まんなか)にて、 00084810M16/鮫人(かうじん)とさし/向(むか)ひ、/海上(かいしやう)を/眺望(てうぼう)す。/鮫人(かうじん)/盃(さかづき)をあげて/杳(はるか)の/澳(をき) 00084820M17を打ながめ、/煙波(ゑんは)/汨没(はくぼつ)して、わが/家(いへ)いつくにかある。/鳴呼(あら) 00084830M18(九ウ)なつかしの/龍都(ふるさと)やと、/帰思(きし)しきりに/箭(や)のごとく、/■= 00084840M19然(けん=ぜん)として一トたび/哭慟(なげけ)ば、/紅涙(なんだ)おちて/蘇&(はら++)。/忽(たちまち)/化(け)して 00084850M20/珠(たま)となる。藤太郎よろこび、/珠(たま)をとつて/玉盤(きよくはん)に/盛(も)り、/数(かず)を 00084860¥P266 00084870L1ミるに/既(すで)に/万顆(まんりう)に/充(ミち)たり。かゝる所に、/海上(かいせう)/赤城(せきじやう)/霞(かすミ)/起(おこつ)て、 00084880L2/蜃気楼(しんきろう)/珊瑚嶌(さんごとう)をめぐり、/音楽(おんがく)しきりに聞へけれバ、/鮫人(こうじん)/欄= 00084890L3干(らん=かん)に/躍騰(おどりあがり)、有がたや、/龍宮(りうぐう)に/吉事(きちじ)あつて、/龍王(りうわう)の/赦免(しやめん)あ 00084900L4りて、われを/召(め)す。/君(きミ)が/半年(はんねん)の/高恩(かうおん)、/今(いま)(十オ)/報(ほう)じたり。 00084910L5/帰去来(さらバ)+といひ/捨(すて)て、海中に/飛入(とびいり)つゝ、/行衛(ゆくゑ)もしらずな 00084920L6りけれバ、藤太郎いそぎ/彼万顆(かのまんりう)の/珠(たま)を/携(たづさ)へ、/矢橋(やばし)と/急(いそ)ぎけ 00084930L7るが、さるにても/万粒(まんりう)の/珠(たま)を/聘(ぢさん)にのそむといふも/不解(がてんゆかず)。 00084940L8かの/女児(むすめ)/母子(おやこ)が/世業(せうばい)ハ/何(なん)であらふと、/珠(たま)を/入(いれ)た/盆(ぼん)を/引(ひつ)かゝ 00084950L9へ、/廛(ミせ)のほうを/私(そつと)のぞけバ、/商売(せうばい)ハかんろふ/糖(とう) 00084960¥N3¥J 00084970¥X○/夜行翁(ひのやうじん)(十ウ) 00084980L12/幾(いくばく)/年(としか)/辛苦(しんくして)/得従容(ぢうようをへたる)。/力(ちから)/尽(つき)/筋(すぢ)/痩(やせたり)/白頭翁(はくとうおう)。/愛惜燈油(とうゆを 00084990L12あいじやくして) 00085000L13/坐黒夜(こくやにざす)。/家中(かちう)/従(したがつて)/不置燈篭(とうろうをおかす)と、/明人(もろこしびと)の/口実(くちづさミ)しも/宜(むべ)なるか 00085010L14な。つら+/此詩(このし)の/意(こゝろ)を思ふに、むかし+/一個(ひとり)の/老爺(おやぢ)あ 00085020L15り。/老婆(ばゞあ)ハ川へ/浣布(せんたく)にもゆかず、/巨富(さうわう)の/良賈(あきんど)にて、/生涯(せうがい)/身(ミ) 00085030L16の/脂(あぶら)をしぼつて/行燈(あんどう)へつぎ、/爪(つめ)に/灯(ひ)をともして/燈心(とうしん)へうつ 00085040L17すくらいの/節倹家(しまつしや)にて、/吾一代(われいちだい)に/撰(かせぎ)/得了(ため)て、今ハ/大家(いつけん)の/花= 00085050L18主(だん=な)となれども、万事/主管(はんとう)まかせといふ所ハちつとも(十一 00085060L19オ)なく、/旦(あさ)から/夕(ばん)までせわのやきづめ。/這&(こりや+)、人ハ/左右(とかく) 00085070L20/火(ひ)の/元(もと)が/肝心(かんじん)、/煙艸(たばこ)の/灰殻(ふきがら)もほぢつて/灰(はい)へつきこめ、/門前(かどぐち) 00085080M1に火ばやいものなど/必&(かならず※)おくまいぞ。/天水桶(てんすいおけ)が/氷(こほつ)たら、 00085090M2/毎朝(まいあさ)/水(ミづ)を/汲(くミ)かへろと、/小厮(こでつち)を/睨(にらミ)まハせバ、/主管(ばんとう)も/清早(むくおき)から、 00085100M3/堂下(たなした)の/芥(ごミ)を掃せ、/水溜(ミづため)の/水(ミづ)をミれバ、/夜前(ゆうべ)の/寒(かんじ)で/氷(こほり)がはり 00085110M4つめ、その/厚(あつき)事、/諏方(すハ)の/湖水(こすい)に/彷(さも)/彿(に)たり。/左右(とかく)してやう 00085120M5+/打砕(うちくだき)、のこらず/氷(こほり)を/汲(くミ)出して、水をくミ/入(いれ)させるとこ 00085130M6ろへ(十一ウ)/主翁(あるじ)/喘&(ずた+)と/廓前(ミせさき)を見まハり、/氷(こほり)の/砕(くだけ)てあるを 00085140M7ミつけ、/員怪(だいの)/眼(まなこ)を/睨(むきいだし)、/愚将(ぐせう)の/下(した)に/猛卒(もうそつ)なしといふこと/誠(まこと) 00085150M8なるかな。/主管(ばんとう)/堕弱(だじやく)にして、人を/仕(つかふ)の/道(ミち)をしらず。/右(かく)まで 00085160M9/那廂(そこら)/這廂(こゝら)に/火(ひ)ばやい物を/散乱(ちらか)しておく事、/恨(うら)むべし+と 00085170M10/憤(いきとを)れバ、/主管(ばんとう)/更(さら)に/不解(がてんゆかず)。/言(もし)/老家(おやかた)。/那首(どこ)に/火(ひ)ばやいものが 00085180M11と、いわせもはてず、/夫(それ)それが/眼(め)に/遮(かゝら)ぬかと、/今(いま)/打砕(うちくだひ)た/氷(こほり) 00085190M12に/指(ゆび)をさせバ、/主管(ばんとう)も/冷笑(ふきいだ)し、/老家(おやかた)。(十二オ)/這(これ)ハ/夜前(ゆふべ)こ 00085200M13ほつた/氷(こほり)をうち/砕(くだい)たのでござります。/甚麼(どふして)これが、火ばや 00085210M14いものでござりませふといへば、/老爺(おやぢ)、/仮実的(ぬからぬ)/模様(かほ)で、ハ 00085220M15テ、/看一(ちよつと)/看(ミれ)ハ、/燧石(ひうちいし)とまちがふハさ 00085230¥N4¥J 00085240¥X○/両婦(にようぼの)/換魂(かへたま) 00085250M18むかし/泉州(いづミのくに)に、/安部(あべの)/安麿(やすまろ)といふものあり。/家小(つま)ハ/真葛(まくず)とて、 00085260M19/標致(きりやう)/意態(ものごし)いふたぐひなく、/一個(ひとり)の/児女(むすめ)をもうけ、名を/蘭菊(らんぎく) 00085270M20となづけ、夫婦が(十二ウ)/掌中(しやうちう)の/珠(たま)と/寵愛(てうあい)/限(かぎ)りなし。しか 00085280¥P267 00085290L1るに/児女(むすめ)/蘭菊(らんぎく)二才の/春(はる)、/母氏(はゝ)の/真葛(まくず)/血労(ちらう)の/症(やまひ)を/煩(わづら)ひ、/医薬(いやく) 00085300L2のこるかたなく/介抱(かいほう)すれども、/君臣(くんしん)/佐使(さじ)の/匙(さぢ)も/折(お)れ、/旋旃(せんだん) 00085310L3/枝上(しぜう)の/薬(くすり)も/救(すく)ふ事あたわず、/北州(ほくしう)三千年の/寿(いのち)もかぎりあり 00085320L4て、/終(つひ)にむなしくなりけれバ、/安麿(やすまろ)が/嘆(なげき)き大かたならず。 00085330L5/却説(かくて)月日に/関令(せきもり)なくして、/光陰(くわういん)の/小馬(こま)、/道草(ミちくさ)をくわず。/程(ほど) 00085340L6なく/中陰(ひがら)もたちけれバ、/合壁(あたり)の/舎親(ともだち)(十三オ)/氷人(なかうど)して、/榊(さかき) 00085350L7といへる/後妻(こうさい)をむかへける。/這個榊(このさかき)、/毛牆(もうせう)/西施(せいし)が/顔色(がんしよく)あつ 00085360L8て、/蓮臉(れんげん)/春(はる)を/生(せう)じ、/秋波(しうハ)/媚(こび)を/送(おく)るそのうつくしさ、/花月(くわげつ)の 00085370L9/妖(よう)とも/謂(いつゝ)べし。されども/其(その)こゝろざし/直(すぐ)ならず。/慣(つね)にいろ 00085380L10を/以(もつ)て/安麿(やすまろ)に/媚(こび)をもとめ、その/看守(るす)をうかゞひてハ、らん 00085390L11菊を/打擲(てうちやく)し、/唯(たゞ)つらくのミ/款待(もてな)しければ、/安麿(やすまろ)も/後(のち)には此 00085400L12ことを/知(し)りて、/意(こゝろ)に/憤(いきどを)り思へ共、/可得(さすが)/榊(さかき)がいろに/愛(めで)て、/気(き) 00085410L13を/忍(しの)びてくらしける。(十三ウ)しかれども、/児女(むすめ)が/朝暮(あさゆふ)/折= 00085420L14檻(せつ=かん)されて、/泣叫(なきさけぶ)をミるにしのびす。/今旦(けふ)も/里中(あたりちかき)/野山(のやま)に 00085430L15/逍遥(あそび)て、その/鬱気(うつき)をはらしけるが、/天(そら)さだめなき/秋(あき)の日の、 00085440L16/驟(にわか)に/猛雨(むらさめ)ふり/来(きた)り、/避雨(あまやどり)せん/家(いへ)もなけれバ、/渓蔭(たにかげ)の林にか 00085450L17け入て、/少選(しばらく)/雨(あめ)をしのぎけるに、/大地(だいち)/俄(にわか)に/崩(くへ)て、たちまち 00085460L18/穴(あな)の/中(なか)へ/堕(おち)けるが、その/深(ふかさ)をしらす。/遂(つい)に人のやねの上に 00085470L19/堕(おち)止りけれバ、下に人ありて、/賊(ぬすびと)ありと呼りけれバ、一人 00085480L20はやくも走来り、なハを/以(もつ)て/安麿(やすまろ)を/高手(たかて)/小手(こて)(十四オ)に/縛(いめしめ) 00085490M1ける。/安麿(やすまろ)よく+/個(この)人をミるに、三年/已前(いぜん)に/病死(びやうし)したり 00085500M2し/亡僕(しもべ)/世可平(よかへい)なり。/世可平(よかへい)、/安麿(やすまろ)を/倩(つく※)見て、大きに/駭(おどろ)き、 00085510M3はやくも/■縛(いましめ)を/釈(とき)、/内(うち)に/走(はし)り入て/右(かく)と/告(つげ)けれバ、/安麿(やすまろ)が/父= 00085520M4母(ふ=ぼ)はしり/出(いで)、まづ/手(て)をとりて/嘆(なげき)ける。/父(ちゝ)なミだを/袖(そで)にうけ、 00085530M5/生死(せうじ)/道(ミち)を/異(こと)にすれバ、わが/児(こ)/安麿(やすまろ)にわかれてより十七年、 00085540M6/今(いま)/相見(あいミる)ことの/奇事(ふしぎ)さよと、/遂(つい)に/一室(ひとま)に/伴(ともない)入れバ、さりし 00085550M7/頃(ころ)むなしくなりし/先妻(せんさい)/真葛(まくず)、(十四ウ)/窓(まど)の/下(もと)に/引針刺繍(ものぬい)て 00085560M8いたりしかバ、/安麻呂(やすまろ)/傍(かたハら)に/走(はし)りよつて、/言(ことバ)をかけんとした 00085570M9りしに、/真葛(まくず)はやくも/解脱(げだつ)して、その/座(ざ)を/立(たち)さりけるにぞ、 00085580M10/安麻呂(やすまろ)/更(さら)に/不解(がてんゆかず)。/母(はゝ)これをミて/安麻呂(やすまろ)にいひけるハ、/汝(なんぢ)ふ 00085590M11たゝび/妻(つま)をむかへつらん。/凡(およそ)/男子(なんし)/後妻(こうさい)を/娶(めど)れバ、/前妻(せんさい)/結髪(ふうふ)の 00085600M12/情(じやう)なきがゆへに、/死(しゝ)してふたゝび/相見(あいミ)る事/叶(かな)ひがたしとて、 00085610M13/母(はゝ)/先(ま)つ/内(うち)に入て/真葛(まくず)に/耳語(さゝやけ)バ、/真葛(まくず)はじめて/夫(おつと)の/顔(かほ)をミて、 00085620M14まづ/涙(なミだ)をぞ/流(なが)し(十五オ)ける。/偖(さて)/亡後(なきあと)の事ともくわしくた 00085630M15つねとふに、/安麻呂(やすまろ)/般&(いち+)/説話(ものがたり)つゝ、/後妻(こうさい)の/榊(さかき)/邪見(じやけん)にして、 00085640M16/児女(むすめ)/乱菊(らんぎく)、/慣(つね)に/折檻(せつかん)せらるゝ事/共(ども)くわしく/談(かたり)けれバ、/真葛(まくず) 00085650M17/聞(きゝ)もあへず、/声(こへ)を/失(のん)て/哭(なげき)かなしむ。/父(ちゝ)この/分野(ありさま)をミて、/汝(なんぢ) 00085660M18/淫婦(いんふ)の/色(いろ)にまよひ/鸞雛(ひなとり)を/念(おも)ハず。/妄(みたり)に/鴟鳥(ふくろう)を/招(まねき)てその/巣(す)を 00085670M19/破(やぶ)る。これ/自(ミづから)まねく/■(わざわい)なり。/今(いま)さら/何(なに)をか/悔(くやミ)なげかん。 00085680M20/母(はゝ)/涙(なミだ)をおさへて、/勿言(さなのたまひ)ぞ。/渠(かれ)が/愚蠢(あほう)ハ/惜(おし)むに/足(た)らず。 00085690¥P268 00085700L1/只(たゞ)(十五ウ)/憐(あハれむ)べきハ/孫女(まこむすめ)。もし万一の事あらバ、/吾儕(われ+)が 00085710L2/血脉(ちすじ)/忽(たちまち)/絶(た)へて、長く/宗■(まつり)を/受(うけ)がたからん。父、/有理(もつとも)とう 00085720L3ちうなづき、しからバ/孫女(まご)が/成人(せいじん)するまで、/新婦(のちぞい)/榊(さかき)をこ 00085730L4のところへまねき/教訓(きやうくん)せんと、/前婦(せんさい)/真葛(まくず)を/近(ちか)く/招(まね)き、/児(こ)の 00085740L5/為(ため)なり。/家(いへ)の/為(ため)なり。今より/安麻呂(やすまろ)と/同伴(うちつれだち)ふたゝび/家(いへ)に 00085750L6たちかへり、/孫女(まこ)が/成長(おいさき)ミとゞけくれよと、/母(はゝ)もろともに 00085760L7いひけれバ、/真葛(まくず)ハ/辞(ぢ)するにことばなく、/舅姑(しうと)の/命(さしづ)に/已(やむ)こ 00085770L8と(十六オ)を/得(ゑ)ず。/安麻呂(やすまろ)とうちつれ出るとおもへバ、/忽(たちまち) 00085780L9もと/避雨(あまやどり)せし林の中に来りけれバ、安麿は/忙然(ぼうぜん)と、はじめ 00085790L10て/夢(ゆめ)の/覚(さめ)たるごとく、/前妻(せんさい)/真葛(まくず)が/手(て)を/引(ひい)て、わが/家(や)の/門(かど)へ 00085800L11/立(たち)かへれバ、/真葛(まくず)ハ/夫(おつと)に/先(さき)だちて、内へはいるとミへたり 00085810L12しが、/飄&然(ひやう+ぜん)として/蝴蝶(こてう)の/飛(とぶ)がごとく、そのゆくさきを 00085820L13ミず。安麻呂もつゞひて内にいれバ、/児女(むすめ)/乱菊(らんぎく)、/父(ちゝ)のかへ 00085830L14りしとミるより、/且(かつ)/歓(よろこ)び、/且(かつ)/悲(かな)しミ、/■遽(あわてふためき)/立(たち)(十六ウ)出 00085840L15しが、/手足(てあし)ハ/腫(は)れて/落花(らつくわ)のごとく、/頭髪(かミ)ハ/乱(ミだれ)て/血(ち)を/流(なが)し、 00085850L16けふハ一日/大人(ちゝうへ)の/看守(るす)なるゆへ、/継母氏(まゝはゝさま)に/折檻(せつかん)され、/這様(このよう) 00085860L17な/身(ミ)になりましたといふ/声(こへ)さへも/息(いき)きれて、/既(すで)に/危(あやう)くミへ 00085870L18けれバ、/安麿(やすまろ)/周章(あわて)/介抱(かいほう)も、/左(と)やせん/右(かく)やと/狼狽(うろたへ)まハる。/奥(おく) 00085880L19より/後妻(こうさい)/榊(さかき)/徐&(しづ+)と/歩(ある)ミ出、わづか四つや五つの/稚子(おさなご)を/右(かく) 00085890L20までむごく/折檻(せつかん)させて/余所(よそ)に見る/夫(おつと)のうらめしやと、らん 00085900M1ぎくを/膝(ひさ)に/抱(だ)きあげ、/奴家(わし)(十七オ)ハ/孩児(そなた)の/実(まこと)の/母(はゝ)。二つの 00085910M2/春(はる)わかれたゆへ、/皃(かほ)もしかとハ/認(おぼへ)まい。/可愛(かわい)の/児(こ)や、/可恨(うらめし) 00085920M3の/漢(おとこ)やと、/雨&(さめ※)と/泣(なく)声をきけバ、/前妻(せんさい)/真葛(まくず)に/方(さも)/弗(にたり)と、/安麻= 00085930M4呂(やすま=ろ)よく+心をつくるに、/容顔(かほかたち)ハ/後妻(こうさい)/榊(さかき)にたがわねども、 00085940M5/言語(ものいゝ)/意態(なりふり)ハ/疑(うたがひ)ひもなき/前妻(せんさい)/真葛(まくず)なりけれバ、さては/亡父母(なきちゝはゝ) 00085950M6の/情(なさけ)にて/前妻(せんさい)/真葛(まくず)が/魂(たましい)の/入(いれ)かわりしとはじめて/悟(さと)り、/乱菊(らんぎく) 00085960M7も/実(まこと)の/母(はゝ)と/歓(よろこ)びて、/迭(たがい)に/慕(した)ひなつかしミ、/親子(おやこ)(十七ウ)の 00085970M8/歓喜(よろこび)かぎりなし。/妻(つま)ハわか/家(や)の/形状(ありさま)も/掃眉(くしげ)/安鏡(きやうだい)/篋笥(こそでびつ)、/屏= 00085980M9風(ひやう=ぶ)にかけし/袙(あこめ)まで、ありしにかわる事のミを、ミるにつけ 00085990M10ても/味気(あぢき)なく、/実(げに)や/妻子(さいし)ハ/衣服(いふく)のごとしと、/世(よ)の/諺(ことわざ)もこ 00086000M11とハりなり。/奴家(わがミ)此世を/辞(さり)しより/多(おゝ)くの年ハつもらねども、 00086010M12/旧(むかしの)/衣(こそで)ハ一つもなく、その/香嗅気(うつりが)に/意(こゝろ)もとめぬ。/癡(あたし)/男(おとこ) 00086020M13の/難面(つらにく)やとかきくどき/哭(なげき)けれバ、安麻呂もよしなき/後妻(こうさい)を 00086030M14むかへし事を/悔(くや)ミける。/却説(かくて)/夫婦(ふうふ)の(十八オ)/中睦(なかむつま)しく、 00086040M15/已(すで)に十二年の月日を/送(おく)りけれバ、/児女(むすめ)らんぎく、はや十六 00086050M16の春をむかへ、/幸(さいわ)ひ/配偶(ゑんだん)の/鳳(くち)ありて、/信田(しのだ)の/某(なにがし)とかいへる 00086060M17/豪家(すぢよきいへ)の/婦(つま)となり、/好事(めでたきこと)のミ/重(かさ)ねける。しかるに/一夕(あるよ)、/真= 00086070M18葛(ま=くす)、安麿にいひけるハ、/日作(きのふ)/阿翁(しうとぎミ)/夢(ゆめ)にきたり給ひて、はや帰 00086080M19るべしと/告(つげ)給ふ。/閨房(ふうふ)の/親(したしミ)/是(これ)までなり。/一旦(いつたん)/舅姑(しうと)の/命(あふせ)に 00086090M20よつて、/児女(むすめ)を/養(やしない)/育(そだて)しも/星霜(とし)つもりて十二年。今ハ児女 00086100¥P269 00086110L1も人のつまとなれバ、此世の(十八ウ)/念(おもいで)/更(さら)になし。/只(たゞ)ね 00086120L2がハくハ、/児女(むすめ)/乱菊(らんきく)が/後来(ゆくすへ)を見とゞけ、百年の/後(のち)/亡父母(なきちゝはゝ)に 00086130L3/孝行(かう+)を/尽(つく)し給へといひけれバ、安麻呂も/涙袖(なんだそで)を/分(わか)ちて、 00086140L4/是也(こハ)/憶(おもひ)よらぬ事の/聞(きこ)ゆるものかな。/倶(とも)に/頭(かしら)に/雪(ゆき)をいただき、 00086150L5/偕老同穴(かいらうどふけつ)とこそ/契(ちぎり)まいらせしに、今/中途(ちうと)にして/別(わかれ)んとハ、 00086160L6/情(なさけ)なき/人心(ひとごゝろ)やとかきくどき/痛哭(なげき)しが、やう+に/顔(かほ)をあ 00086170L7げ、/真葛(まくず)をミれバ、はやこときれて/気息(きそく)なし。/這(こ)ハ/甚(なに)とせ 00086180L8んと/慟哭(たちさわぎ)(十九オ)/薬(くすり)よ/水(みづ)よと/喚(よひ)かへせバ、やう+に/蘇= 00086190L9生(いきふ=きかへ)し、/前妻(せんさい)/既(すで)にかへり給へバ、今より君に/事(つかへ)よと、/阿翁(しうとぎミ) 00086200L10の/命(あふせ)によつて立かへりしといふこへハ、/疑(うたが)ふべきもなき/後= 00086210L11妻(こう=さい)/榊(さかき)が/語音(こゑ)なれバ、安麻呂大きに/色(いろ)を/失(うしな)ひ、/黙然(もくねん)として/守(まも) 00086220L12りいる。榊、/夫(おつと)の/傍(そば)へ/坐起(いなをり)て、君、/疑(うたが)ひ給ふ事なかれ。/妾(わがミ) 00086230L13/舅姑(しうとぎミ)の/傍(そば)にありて、/教訓(をしへ)を/受(うく)ること十二年。むかし/婦(おんなの)/道(ミち) 00086240L14を/失(うしな)ひ、/邪見(じやけん)/短慮(たんりよ)の/罪(つミ)、今はじめて思ひあたりたり。/児女(むすめ) 00086250L15/乱菊(らんぎく)(十九ウ)今ハ人の/婦(つま)となりて/嘸(さぞ)や/成人(せいじん)なしつらん。/相(あい) 00086260L16ミる事も/恥(はづ□)しけれど、/君(きミ)/幸(さいわ)ひに/旧悪(きうあく)を/念(おもひ)給ハすバ、/一面(ひとめ)あ 00086270L17ハせてたび給へと、/身(ミ)を/悔(くや)ミて/歎詑(なげきわぶ)れバ、安麻呂も榊が/善= 00086280L18心(ぜん=しん)に立かへりしに/安堵(あんど)して、乱菊に/右(かく)と/告(つげ)やれバ、らん菊、 00086290L19とるものもとりあへず/走(はし)り/来(きた)り、此年月の/養育(ごよういく)、/前母氏(まへのはゝうへ) 00086300L20の/劬労(ごくらう)ハ、やつばり/後母公(のちのはゝうへ)の/肢体(からだ)なれバ、/東西无方(どちらをどちら)とわけ 00086310M1/隔(へだて)んやうもなしと、/半喜(よろこび)/半嘆(なミだ)(廿オ)に榊もうれしく、/昔時(むかし) 00086320M2の/意(こゝろ)に/引(ひき)かへて、/夫(おつと)を/敬(うやまひ)、/女児(むすめ)をあわれミ/恩愛(おんあい)のこる方 00086330M3もなし。安麻呂ハかゝる/形状(ありさま)をミるにつけても、/飽(あく)まで/邪= 00086340M4見(じや=けん)の榊なりしに、/志(こゝろ)むかしに/且吾(うつてかわり)、かくも/良婦(けんぢよ)となりし 00086350M5こと、まつたく/亡父母(なきちゝはゝ)の/高恩(かうおん)といひ、また一つには/前妻(せんさい)/真= 00086360M6葛(ま=くず)が/婦徳(ふとく)のなす所なれバ、何とぞ今一度相ミて、此とし頃 00086370M7の/労(れい)も/謝(いひ)たく、/今更(いまさら)/頻(しき)りになつかしく、(廿ウ)もしやむか 00086380M8し/避雨(あまやどり)せし/林(はやし)の/中(うち)にたづねゆかば、/再(また)/見(あふ)事もあるべしと、 00086390M9/潜(ひそか)に/叢林(はやし)にわけ入て、/那廂(そこよ)/這廂(こゝよ)よと/吟(さまよ)へバ、/楠(くす)の/古木(こぼく)/寂= 00086400M10莫(しやく=ばく)として、/莽&(ぼう+)たる/葛(くず)の/葉裏(はうら)、/山風(やまかぜ)に/飜(ひるがへ)り、その/傍(かたハら)に大き 00086410M11なる/穴(あな)のあるは、たしかにそれぞと/走(はし)りよれバ、穴の/四方(しほう) 00086420M12に/注連(しゆめ)を引て/新(あたらし)き/檄(ふだ)を立たるハ、/不解(がてんゆかず)と立よつて/読(よん)で見れ 00086430M13バ、/神主(かんぬし)の/筆(て)と見へて、/霊狐(きつね)の/穴(あな)に、(廿一オ)小べん無用 00086440¥N5¥J 00086450¥X○/俳諧(はいかい) 00086460M16/予(よ)が/故人(こじん)/仙水(せんすい)/先生(せんせい)、/甞(つねに)/好(この)んで/和漢(わかん)の/書(しよ)を/読(よミ)、又/誹諧(はいかい)の/連哥(れんが) 00086470M17を/嗜(たしなミ)て、/平生(へいぜい)/独楽(どくらく)の/佳吟(めうく)/甚(はなはだ)/多(おほ)し。ある日/一個(ひとり)の/後生(おとこ)来 00086480M18たりて、/誹諧(はいかい)の門人とならんことを/請(こ)ふ。その名をとへバ 00086490M19/白癡(はくち)といふ。/生(うまれつき)/文盲(もんもふ)にして/癡鈍(あほう)なり。先生/元来(もとより)/軟善人(ものやわらか)に 00086500M20し(廿一ウ)て、/叮嚀(ていねい)にこれに/教授(おしへ)て/曰(いハく)、まつ/仮(かな)十七/字(もし)。こ 00086510¥P270 00086520L1れを/発句(ほつく)といふ。/発句(ほつく)ハかならず切レ/字(じ)あり。十四字を/短= 00086530L2句(ミじか=く)といふ。/附合(つけやい)に百/員(いん)、五十/韵(いん)、/哥僊等(かせんとふ)の/式(しき)あり。式に/表(おもて) 00086540L3/裏(うら)、/月(つき)/花(はな)、/去(さり)/嫌(きらひ)の/差別(しやべつ)あり。/空(そら)を/天相(てんさう)といひ、/雨(あめ)/露(つゆ)の/類(るい)を 00086550L4ふり物といふ。又/風(かぜ)を/風体(ふうたい)、人を/人倫(じんりん)、/家(いへ)を/居所(きよしよ)、山を/山= 00086560L5類(さん=るい)、水を/水辺(すいへん)、/着(き)ものを/衣体(いたい)、/夜(よる)(廿二オ)を/夜分(やぶん)、/鳥獣(とりけもの)を 00086570L6/生類(せうるい)といふたぐひ。ミな/悉(こと※く)/去(さり)きらひあり。/女(おんな)、/娘(むすめ)、/娵(よめ)、 00086580L7/句(く)がらによれども、/多(おほ)くハ/恋(こひ)とこゝろ/得(へ)べし。/偖(さて)/前句(ぜんく)にさ 00086590L8し/合(あい)あつて、/附句(つけく)をいひ/直(なを)し/出(で)なをすを、/一直(いつちよく)するといひ、 00086600L9/按(あん)じなおすを/再案(さいあん)といふと、くわしく/教(おしへ)/論(さと)しけれバ、/白癡(はくち) 00086610L10/誦(くり)かへし+、これを/口授(きゝ)て、やう+/記臆(おぼへ)てわが/家(や)へ帰 00086620L11りけるが、その/夜(よ)/里中(きんじよ)に/結婚(こんれい)(廿二ウ)ありて、/白癡(はくち)/祝(よろこび)に 00086630L12/行(ゆき)、まづ/奏請(あんない)するに/婢(げぢよ)立出て、/孰辺(いづかた)よりと/問(と)ふ。/白癡(はくち)/大摸(さも) 00086640L13/大様(おほへい)に、/拙子(せつしや)ハ/里中(きんじよ)の/山類(さんるい)に/居(お)る/人倫(じんりん)でござる。今ン日ハ 00086650L14/降物(ふりもの)もいたさず。/天相(てんさう)もよろしく、/令郎(ごしそく)の/居所(きよじよ)へ/恋(こひ)をお/引= 00086660L15取(ひき=とり)なされて、/夜分(やぶん)/衣体(いたい)の/中(なか)で、/水辺(すいへん)をおだしなさるゝよし、 00086670L16/千秋万歳(めてたふそんじます)といふに、/婢(げぢよ)/解不解(ふしぎな)/摸様(かおほ)をして、/雅言(ごかうぜう)(廿三オ)が 00086680L17/釈(わかり)かねます。/早些(もちつと)ミじかく/演説(おつしやつ)て下さりませといへバ、/白= 00086690L18癡(はく=ち)、/短句(ミじかく)ハ十四/字(もじ)なれども、/婦人(ふじん)の/耳(ミゝ)にさし合がござらば、 00086700L19/再案(さいあん)いたすも/姑(しばらく)あいだがござるゆへ、いづれ/一直(いつちよく)いたそ 00086710L20うと/帰(かへ)りにかゝれバ、/婢(げぢよ)/弥(いよ+)/迷惑(めいわく)して、/一直(いつちよく)とハ/貴客(あなた)の/佳= 00086720M1名(お=な)でござりますかと/問(と)へバ、/白癡(はくち)、/聞(きゝ)も/敢(あへ)ず、/這女児(このおなご)ハ/文= 00086730M2盲(もん=もう)なることをいふ(廿三ウ)ものかな。/一直(いつちよく)とハ/出直(でなを)さふと 00086740M3いふことでござるといへバ。/婢(げぢよ)、そんなら/奴家(わたし)もとりつが 00086750M4ぬぶんにいたしませう(廿四オ) 00086760¥N6¥J 00086770¥X○/閨中(けいちうの)/魔法(まほう) 00086780¥N7¥J 00086790¥X○/美人(びじんの)/怪力(だいりき) 00086800¥Y右の/両話(りやうハ)、/稿(したがき)/成(あり)といへども、/歳(とし)/既(すで)に/黄鐘(くわうせう)に/迫(せま)り、/前(まへ)に 00086810M9△△/書肆(ほんや)あり、/後(しりへ)に/剞■氏(はんきや)あり。/倉卒(さうそつ)として/校正(きやうごう)を/加(くハふ)るに 00086820M10△△/不遑(いとまあらず)。/斯(こゝ)に/遺(のこし)/漏(もら)して、/姑(しばらく)/筆(ふで)を/半(なかバ)に/絶(たち)ぬ。/尚(こひねがハく)ハ/四= 00086830M11△△方(し=ほう)/雲顧(うんこ)の/諸君子(しよくんし)、/後(のち)の/編撰(へんぜん)を/俟(まち)給へと云 00086840M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△曲亭主人書 00086850M13△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(廿四ウ) 00086860¥P271 00086870¥Q 00086880L1珍らしき新板諸品追&出来 00086890L2申候御求メ御覧可被下候 00086900L6△△△江戸通油町 00086910L7△書林△△△蔦屋重三郎 00086920¥P272 00086930¥U噺本大系△第十三巻 00086940¥T/腮(あご)の/掛金(かけがね)〔序文〕 00086950¥G 00086960¥Y 00086970L15寛政十一年正月跋 00086980L16桜川慈悲成編 00086990L17式亭三馬序 00087000L18豊秀斎冬渓跋 00087010L19歌川豊国・豊広画 00087020L20小本一冊 00087030¥G(一オ) 00087040¥Y序 00087050M17/開口(かいかう)/新語(しんご)、/開巻(かいくわん)/一笑(いつしやう)は、/狂話(おとしはなし)の/大帳(だいてう)も/趣向(しゆこう)に、つき/待(まち)、 00087060M18/三夜(さんや)待、/日(ひ)まちにごさる/唐人(とうじん)さんの/戯(たハむれ)にて、/更(さら)に/鄙俗(きりおとし)へ/落(おち) 00087070M19ず、/古(いにし)へ/浪華(なにハ)に/名(な)を/得(ゑ)たる/頓口(どんかう)が/噺本(はなしぼん)ハ、トツト/文盲(もんもう)、/何(なん) 00087080M20じややら、けたいのわるひ(一ウ)/口調(くてう)にして、/東産(ゑとつこ)の/中腹(ちうつぱら) 00087090¥P273 00087100L1にこたへず。/夫(それ)に/依(よつ)て/是(これ)を/憶(おもふ)に、/宿昔語(むかしはなし)の/枯木(かれき)ニも、/今(いま)ま 00087110L2た/花(はな)のさくら/川(かわ)、/慈悲(じひ)/成子(なりし)か/咄(はなし)の/妙弁(めうべん)、/諸君子(しよくんし)/妙作(めうさく)、/魚虎(しやちほこ) 00087120L3のきん+/然(ぜん)、/水道(すいとう)の/酔(すい)にかなふ/彼苦虫(かのにかむし)の/黙止坊(だんまりぼう)、/笑(わらつ)て/三= 00087130L4百(さん=ひやく)/損(そん)をしたる/幽王(ゆうわう)の/后(かゝア)/女(ざへむ)も、/忽(たちまち)お/釜(かま)の/前(まへ)に(二オ)/至(いた)らむ。 00087140L5/嗚呼(ああ)/此書(このしよ)をひらいて、/腮(あご)の/掛金(かけかね)/引(ひつ)ツぱづして、お/臍(へそ)の/囀宅(たながへ) 00087150L6する/事(こと)なかれと 00087160L8△△△△△△△△△△△△△△△△式亭三馬誌 00087170L10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△G 00087180L12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二ウ) 00087190¥N1¥J 00087200¥X四季庭△△△△△△△△△△△¥A麻布亭気知兼 00087210M3/物好(ものすき)キの男、/庭(にハ)を/芝居(しばい)の廻り仕かけにこしらへ、四季のな 00087220M4がめとて、近所/評判(ひやうばん)しける。さる所の女房、娘をつれて 00087230M5庭見物にきたり、色+世事のあいさつすミて、/座舗(さしき)へ通 00087240M6ると、うしろで/亭主(ていしゆ)、/拍子木(ひやうしき)カチ+と打と、障子がさら 00087250M7り+と(三オ)両方へあく。先春の庭とて、白梅紅梅見事 00087260M8ニ咲、鴬の声きこゆ。またカチ+拍子木に、春の庭ぐる 00087270M9りと廻るしかけにて、夏の庭になり、/泉水(せんすい)に/杜若(かきつばた)、これハ 00087280M10+と見物する。また拍子木がなる。こんどは少し廻りす 00087290M11ぎたあんばいにて、秋と冬との庭。/片(かた)&ハ紅葉、こなたハ 00087300M12(三ウ)かれ芝。是はよひ仕かけと見物するに、雪がちら 00087310M13+ふりかゝる。こちらの方にハ/松茸(まつたけ)がによき+。娘、 00087320M14きもをつぶして見物する。しほり戸のそとへ、大松茸がに 00087330M15よき+と出る。女房S娘にむかひ、あれ、おなミ、見や。 00087340M16おもてにこむそうが 00087350¥N2¥J 00087360¥X/女惚(おんなほれ)△△△△△△△△△△△△¥A紫色主(四オ) 00087370M19女郎おふぜいにて、何さんかきなんしたと、色男をとりま 00087380M20き、いろ+のしやれありて、女郎、わつちハぬしの/眼付(めつき) 00087390¥P274 00087400¥G(八ウ・九オ) 00087410M1キにどふもほれんしたといゝ、また壱人リハ、口付キにさ。 00087420M2またわきから、わつちハこゝろいき、わつちハこへにと、 00087430M3そこら中から、ほれんしたよ+と、口くちにわや+ 00087440M4+(四ウ)さわく。あひかたの女郎、かなしひかほをして、 00087450M5めそ+なひて居るを、ほうばい女郎か見て、ぬしはなぜ、 00087460M6なきなんすヱ。相方女郎Sミんなかいゝ所をとんなんした 00087470M7から、わつちがほれるところがおつせんから 00087480¥N3¥J 00087490¥X伊吾△△△△△△△△△△¥A勇々館△有義(五オ) 00087500M10与一兵衛か/忰(せかれ)/伊吾(いご)といふ、百の口少したらぬ前かミあり。 00087510M11与一兵衛、おかるをつとめにやるより、伊吾をでつちほう 00087520M12かうにやるがよいと、一もんしやをたのむ。一もんじや、 00087530M13おつとのミこミ、とある日、伊吾をむかいにきたり、段& 00087540M14いゝきかせても、伊吾は、いやじや+とわかまゝをいふ。 00087550M15(五ウ)一もんじやSこれ伊吾どの。おらか所へゆくと、なん 00087560M16てもうまい物のくひあきをさせるが、いやか+△伊吾 00087570M17S/才兵衛(さいべへ)さんの所へゆけば、うまひものがたんとくわれる 00087580M18かヱ△一もんじやSなんでものそミのものをくわせる△伊吾 00087590M19Sうれしかりて、そんならば、おらア伊吾+。一もんじや 00087600M20Sはやく才兵衛+△@伊吾△△△|一もんじや@両人S伊吾か+、才兵衛 00087610¥P275 00087620L1+、伊吾か+、才兵衛+(六オ) 00087630¥N4¥J 00087640¥X尺八△△△△△△△△△△△△¥A松川亭一鼠 00087650L4門口にこむ/僧(そう)、尺八をふいているところへ、此家のあるじ 00087660L5すた+帰り、ごむやう、ごむやうだによと、つけ+と 00087670L6いうに、こむ僧はそう+ゆく。ていしゆ、女房にむかひ、 00087680L7是かゝアどん。いつまでもそのよふに、かミをいつて居る 00087690L8のだ。そして、そんなにかミを(六ウ)うつくしくいつて、 00087700L9あのこむ僧めに見せるのか。よしてくれろと、亭主まじめ 00087710L10に成ていふ。女房Sきもをつふし、おめヱ、とんだ事ばか 00087720L11りいつたものだ。かミをいつて、こむ僧に見せるかとハ、な 00087730L12んの事だヱ△ていしゆSなんの事たも気がつヱヽ、△女房Sそ 00087740L13して、わたしとこもそうと、なんぞあやしいといふしやう 00087750L14こでも(七オ)あるかヱ△ていしゆSある+。有すぎる 00087760L15女房Sなにかあるヱ△ていしゆSたつたいま、れんほなかし 00087770L16をふいたハ 00087780¥N5¥J 00087790¥X八十八の賀△△△△△△△△△△¥A玉兎楼満丸 00087800L19だんなさま。ことしハ八十八の御祝でござりますから、わ 00087810L20たくしがおいはひ申て、手/細工(さいく)に/鳩(はと)の/杖(つへ)をこしらへて、も 00087820M1つて(七ウ)まいりました。だんなSそれハかたじけなひ。 00087830M2さて、その鳩の杖は、ふかひ古事かあるが、其古事をしつ 00087840M3てこしらへたか△番頭Sハイ。ぞんじてこしらいました 00087850M4だんなSこれハ+おとろきいつた。さてその古事ハ△番 00087860M5頭Sハイ+。とかく豆でおひろいなさるやうに 00087870¥N6¥J 00087880¥X金太郎△△△△△¥A草屋△花持(八オ)(八ウ・九オ挿絵) 00087890M8/足柄山(あしからやま)の月よくさへて、金太郎、けだものをあつめ/角力(すまふ)を 00087900M9/取(とつ)てあそぶ。金太郎Sサア+おれか行司をするから、 00087910M10/猿(さる)と/犬(いぬ)ととれ+。さると犬と角力とる。其跡は/狸(たぬき)と/鹿(しか)。 00087920M11そのあとはむじなと/猪(いのしゝ)。それから/猫(ねこ)と/狐(きつね)と、段&とり仕廻 00087930M12ふと、もはや角力もなし。金太郎S是からハお月さまと、だ 00087940M13れぞ角力をとれ+(九ウ)△さるS罷出て、お月さまには、 00087950M14うさぎがよひ。うさき。一番とりたまへといへば、うさき 00087960M15Sハテ、おれより、見やれ。お月さまにはとうに、くまか 00087970M16かゝ((つ脱カ))て居る 00087980¥N7¥J 00087990¥X寐物語△△△△△△△△△△△△¥A川越△硯ノ■ 00088000M19ふうふ/寐物語(ねものかたり)に、なんとかゝアどん。貴様のほまちあきな 00088010M20いに、なんぞいゝしやうばい(十オ)をも壱つはじめやうか。 00088020¥P276 00088030L1女房Sそふすると、たいていいゝこゝろもちで御座りやす 00088040L2から、おもひきつて、おだしなさいな。何がよかろうやら 00088050L3ていしゆSおれがたしたいは、こまもの見せよ△女房Sう 00088060L4れしかりて、もし、こまもの見世をはやくおだしよ+と 00088070L5いへば、おやじS座舗から顔を出して、其やうにせつない 00088080L6(十ウ)酒を、だれかのめと 00088090¥N8¥J 00088100¥X七福神△△△△△△△△△△△¥A青山耳ノ遠人 00088110L9四五人寄合、宝船を見て、なんと亀さん。七福神ハとれも 00088120L10+ミな目出たいが、中で/布袋(ほてい)さまハ、ちと/坊主(ぼうず)だけ、あ 00088130L11れが目出度ないようだ。亀S此男ハとんだ事をいふ男だ。 00088140L12/布袋(ほてい)さまが一番お目でたい(十一オ)△友S亀さん。それハ 00088150L13どふして布袋か一番目出たいの△亀Sハテ、中で一チはん、 00088160L14布袋さまがはらつふくれだから 00088170¥N9¥J 00088180¥X鴬△△△△△△△△△△△△△△△¥A上紋△桐丸 00088190L17むすこ、鴬を/朝夕(あさゆふ)てうあいする。もふおしつけ/初音(はつね)をたす 00088200L18と、たのしんでいる。ある日、鴬、ほけきやうと初音を出 00088210L19す。(十一ウ)むすこきいて、なぜ此鴬は、ほふほけきやう 00088220L20と鳴ぬやらと、おやじの前へ/持(もつ)てゆき、もし此鴬は、ほけ 00088230M1きやうとばかり鳴キます。ほうといゝませぬといへば、お 00088240M2やしSほけきやうとばかりないて、ほうとなかぬなら、ほ 00088250L3うをしらぬのじや△むすこSほうをしらぬので御座りませ 00088260L4うよ△おやじSハテこまつたものじや。ちと、せつ/法(ほう)でも 00088270L5きゝにやれ(十二オ) 00088280¥N10¥J 00088290¥X大晦日△△△△△△△△△△△△¥A版木△些志 00088300M8大晦日に門を芝居のしかけにして、亭主、/台所(だいどころ)にかくれて 00088310M9居る。かけとりきたり、おたのミ申ます。/米(こめ)やて御座りま 00088320M10すといへば、其まゝ引道具にて/塀(へい)に成ル。是ハ+、御て 00088330M11いしゆ+とせかす。また其あとから、酒やとまきやかき 00088340M12て、(十二ウ)おはらいをといへば、其まゝ塀か半ぶんひけ 00088350M13て、さゝやぶになり、米や、酒や、/薪(まき)やあきれはてゝいる 00088360M14所へ、亭主が出る。三人のかけとり、亭主をとらへ、かし 00088370M15た金はどふするのだ。亭主S其かりハ、ミんなあて身でち 00088380M16よん+/幕(まく)だ 00088390¥N11¥J 00088400¥Xでんがく△△△△△△△△△¥A湯屋△芝住(十三オ) 00088410M19ちと人よりハそげたる男、でんがく見世を出して、/味噌(ミそ)を 00088420M20摺ている所へ、近所の人きたり、よひミせつきじや。其ミ 00088430¥P277 00088440L1そハさんしよ味噌かへ。てんかくやSイヤ+、さんしよ味 00088450L2噌でハない。砂糖ミそじや△近所人Sでんがくにさとう味 00088460L3噌ハ、ちとおかしなもの。評判がよければよひが△てんか 00088470L4くやSそこがあんじじやと(十三ウ)摺こ木をふりまハす。 00088480L5近所人Sこれ+、あぶない+。何をするのじや△てんか 00088490L6くやSすりこぎをふりまハしながら、砂糖味噌、はやつて 00088500L7くれろ+ 00088510¥N12¥J 00088520¥Xさしで者△△△△△△△△△△△△¥A表具△粘人 00088530L10/判摺(はんすり)、年の/暮(くれ)ハ/問(とい)やの/仕事(しこと)。其外/摺(すり)物いそかしく、/弟子(でし)も 00088540L11/親(おや)方も、/少(すこ)しも(十四オ)/隙(ひま)なく、せわしや+といふ所へ、 00088550L12近所のひま人、毎日+あそびにくる。亭主、ひま人に、 00088560L13これ+八ほう。しろう人でもできることがある。/草(くさ)の/汁(しる) 00088570L14ハめんどうだか、ちよつとから摺をしてくれるきハないか。 00088580L15ひま人Sおつと、のミこミ山だと、ミそこしをもつて外へ 00088590L16/飛(とび)出す。亭主Sコレ+、(十四ウ)八ぼう。とこへにける 00088600L17のだ△ひま人Sなに、にげるものだ△亭主Sそんなら、か 00088610L18ら摺をしてくれる気か△ひま人Sその気だから、ひしこの 00088620L19八文がも/買(かつ)ていれる 00088630¥N13¥J 00088640¥X元日△△△△△△△△△△△△¥A文窓△貞重 00088650M3元日、子供ハ朝からはねをつき、/几巾(たこ)をあけて居る。鳶 00088660M4たこと/奴(やつこ)だことそらへ(十五オ)あがり、鳶たこSなんと奴 00088670M5たこ。一チ夜あけての空のけしき。どふもいゝの△奴たこ 00088680M6Sそれ+、門松に春風の音、どふもいへぬ春のけしきと 00088690M7いゝなから、くる++と廻る。鳶たこSこれ+奴た 00088700M8こ。なにをするのた△奴たこSぬからぬ/顔(かほ)して、ハテ、若 00088710M9水をくミます 00088720¥N14¥J 00088730¥Xりちぎ△△△△△△△△△△△¥A砂辺△松露(十五ウ) 00088740M12おやじ、むすこに、とかく世の中ハ人にさからわす、人の 00088750M13言事を、さやう+とうけていれば、まちかひハなひと言 00088760M14きかせける。ある日、近所の若ゑひす/講(こう)によはれて、むす 00088770M15こがゆく。色+ちそうが出て、客か、是ハ+御ていね 00088780M16いな事で御座りますといへば、むすこSさやうて御ざりま 00088790M17す(十六オ)あい客Sもふ御盃も、おつもりでよう御座りま 00088800M18しやう△むすこSさやうで御座りますと、あわせて居る所 00088810M19へ、亭主出て、是ハ+、どなたさまもおよびたてもふし 00088820M20て、何もあげます物もなく、あまりおそまつて、お/気(き)のと 00088830¥P278 00088840L1くで御座りますといへば、むすこSさようで御座ります(十 00088850L2六ウ) 00088860¥N15¥J 00088870¥X見立△△△△△△△△△△△△¥A歌川△豊広 00088880L5肴やのむすこ、あたこさまへ/参(まいり)り、/植木(うへき)やを見て、とつさ 00088890L6ん+。あのうへきを/買(かつ)てくんねヱ。親Sどれを+△子 00088900L7Sあのうへきよ△親Sどれ+。どのうへ木がほしいのだ 00088910L8子Sあれよ+と、ゆびをさす。親Sあれ+といつて 00088920L9ハ、ねからわからぬ。どれた。うへ木の名を(十七オ)いや 00088930L10れよ△子Sおやじの袖を引ぱり、植木屋の前へつれゆき、 00088940L11さぼてんへゆびをさして、とつさん。これよ+。親Sこ 00088950L12の事か△子Sアイ+。此なまこのちから持がほしい 00088960¥N16¥J 00088970¥X/鏡(かゝミ)△△△△△△△△△△△△△△¥A生綱屋△生綱 00088980L15とふも女がほれて+こまりはてるとて、浅草のくわんお 00088990L16んさまへぐわんをかけ、(十七ウ)とふぞ女のほれませぬよ 00089000L17うにと、七日こもりし其しるしにや、七日目のあけがた、 00089010L18くわんをんさま、/夢中(むちう)にかの男のそばへ御出あつて、是、 00089020L19色男。女かほれてうるさくハ、女のほれぬやうにしてやる 00089030L20から、必かゝミを見る事なかれとの御つげ。そふ+内へ 00089040M1帰り、とんと百日ばかり鏡を見すに居る(十八オ)と、ふし 00089050M2きや、いつこう女ハほれぬゆへ、是ハありかたい事しやと、 00089060M3人にもはなしてよろこぶ。あまりふしきと、ある日どふも 00089070M4かゝミが見たくてならぬゆへ、たばこぼんの引出しから、 00089080M5びいどろさいくの/四角(しかく)な鏡を取出し、よく+見て、ふし 00089090M6ぎなものじや。もふおれにおれがほれました(十八ウ) 00089100¥N17¥J 00089110¥X画△△△△△△△△△△△△△△△¥A槌ノ△音人 00089120M9けふ御/屋舗(やしき)で、御/座(ざ)舗を/拝見(はいけん)したが、けつこうなこと。ま 00089130M10つたいそうな/物(もの)が、金の御屏風に/馬(むま)の/墨絵(すミゑ)よ。客Sそれハ 00089140M11たれかかいたのじや△あるじS其馬ハ/古法眼(こほうけん)/元信(もとのふ)。其外に 00089150M12極さいしきの一ノ谷の御屏風△客Sそれハたれた△あるし 00089160M13S是ハ土佐か筆よ△客Sその外に(十九オ)また見事なもの 00089170M14があるか△あるしSあるとも+。御/居間(いま)のおはりつけか、 00089180M15極さいしきの/鷹(たか)の絵じや△客Sそれハだれが筆しや△ある 00089190M16しS是ハどふも、だれじやかしれぬ△客Sたかなら見づと 00089200M17も、たいかいしれた+△あるしSそしてたれじやろふと 00089210M18おもふぞ△客Sハテ、たかならは、早ぶさ/一蝶(いつちやう)さ(十九ウ) 00089220¥N18¥J 00089230¥X下男△△△△△△△△△△△△△¥A魚州人 00089240¥P279 00089250L1しわひ男、女房をもち、/里帰(さとかへ)りもすむと、女房にむかい、 00089260L2まづきさまにゆふておく事かある。わしハ伊勢者しやによ 00089270L3つて、ちとしわひ。先干物てもくうハ朔日か十五日、其外 00089280L4はひしこ八文かも買事ハならぬ。香物でちと色の黒いめし 00089290L5(廿オ)ばかりくうてもらわにやならぬそヱ。そして客人が 00089300L6来ても、めつたに酒を出す事ハ、茶を出すもそんしやぞヱ 00089310L7といへば、女房Sあきれて、たゞ、はい+といつて居る。 00089320L8亭主Sそしてまた、きさまにいふ事がある。伊勢ふうじや 00089330L9から、きさまの事を、女房どもとよぶから、きさま、おれ 00089340L10を、こちの人とよん(廿ウ)でたも。先ちよと、よんで見よ 00089350L11ふ。女房とも△女房Sぬからぬかほで、けちな人 00089360¥N19¥J 00089370¥X義太夫好△△△△△△△△△△△△¥A礒苔成 00089380L14/義太夫好(きだゆふすき)の男、/友達(ともたち)の所へきて、大さん。きいてくだアし。 00089390L15/此頃(このころ)二つてう+の/紋(もん)所の/羽織(はおり)に、/昔(むかし)八丈の/下着(したぎ)をこしら 00089400L16へて、かゝアにもせんだい/萩(はき)のつまあかり、盃紋づ(廿一 00089410L17オ)くしの下着に、清十郎/染(そめ)のしゆばんをこしらへてやつ 00089420L18た。そして本町/育(そだ)ちの小/僧(ぞう)を/供(とも)につれて、/毎日(まいにち)+ふうふ 00089430L19づれのふらつきに、おやじの金を千両のぼり程つかひこん 00089440L20だ。此そんをどふぞ/梅川(むめかわ)忠兵衛にしたいとはなす。友たち 00089450M1Sそして、うちにはぬしハどんな物を/着(き)て/居(い)る(廿一ウ) 00089460M2Sおれが内に居るなりか△友Sとんな形りだ△義太夫Sつ 00089470M3ゞれの/錦(にしき)のどてらさ 00089480¥N20¥J 00089490¥Xどふらく△△△△△△△△△△△¥A本志楼△要賀 00089500M6もし/若(わか)だんな。おまへもちとさけをおやめなさいまし。酒 00089510M7をあがつて、そしてふら+して、ちとへんじんじや。む 00089520M8すこSおれより、おやじがへんじんじや。そこで(廿二オ) 00089530M9とゝヲのへんじんが、おれを/勘当(かんどう)せうといふから、おれが 00089540M10/狂歌(きやうか)をよんだ△番頭Sなんとおよミなさつた△むすこSこ 00089550M11ふもあろふかの△番頭Sなんとへ△むすこS勘き△このた 00089560M12びハたれもとりさへすまぬけ山△おやじのこゞと酒のばち 00089570M13+。なんと、おもしろからうといふと、おやじSまつく 00089580M14ろになりて(廿二ウ)はらを立チ、おのれ、天神棒でもくら 00089590M15うな 00089600¥N21¥J 00089610¥X見立△△△△△△△△△△△△¥A芝鹿児全 00089620M18わしがおこゝろ安いおいしやさまに、宗十郎によくにて御 00089630M19/坐(ざ)るのかある。まづ目つき/鼻(はな)つき口つき、あるきあんばい、 00089640M20きものゝこのミ、もの言迄、宗十郎に其まゝじやて。てい 00089650¥P280 00089660L1しゆSして、そればかりか△友たちSいや+、そのよふ 00089670L2なこと(廿三オ)でハない。むねのあんばい、はらのあんば 00089680L3い、/金玉(きんたま)まで似て居る△ていしゆSもふそればかりか△友 00089690L4S金玉もにているが、またひとつ、よくにた物がある△て 00089700L5いしゆSそれハなんじや△友S是ハどふもいわれぬ△ていし 00089710L6ゆSそこがきゝたい。なんじや+△友Sそんなら言ふか 00089720L7ていしゆSなんじや△友Sあのゝ△ていしゆSなんじや△友 00089730L8Sあたまが丸い(廿三ウ) 00089740¥G(廿四オ) 00089750¥Q○ 00089760M3△△△△△△△△△△△△△△△△立川談洲楼作 00089770M4△△△△△前編 00089780¥K〔太平楽巻物の図〕 00089790M6△△△△△後編 00089800M7△△△△歳旦咄△△△△△△△△△桜川△慈悲成(廿四オ) 00089810M9さるものしり顔な男、六日年こしにきたり、是ていしゆ。 00089820M10今宵はやすこの七種ハ、ほんとふは/芹(せり)、五ぎやう、たびら 00089830M11こ、仏のざ、すゝな、すゝしろ。是七味の/薬草(やくそう)を用て、/諸= 00089840M12病(しよ=びやう)を/除(のぞ)くゆへて御座る。ていしゆS諸病をのそいて、しか 00089850M13られはしませんか△客S馬鹿なことばかりいつた(廿四ウ) 00089860M14ものしや。十五日の/粥(かゆ)ハ/陰陽(ゐんやう)を和/合(こう)して/祝(いわつ)たものよ△てい 00089870M15しゆSゐんやうとハ、なんで御座ります△客Sハテ、ゐん 00089880M16やうとハ、それゐんやう。まつはやく言ふならハ、/餅(もち)が/男= 00089890M17根(なん=こん)△ていしゆS男根とハなんの事で御座ります△客Sハテ、 00089900M18男根よ。まづはやく言ふならば、/男(おとこ)のそれ、/道具(とうく)よ△てい 00089910M19しゆSそんなら、男のとふぐ(廿五オ)を男根といゝますか。 00089920M20それでしれた。十五日の/粥(かゆ)の/餅(もち)は、男根しやね△客S餅ハ 00089930¥P281 00089940L1男根よ△ていしゆSそして/椀(わん)ハ/女根(によこん)て御座りますか 00089950L3△△/長兵衛(ちやうへい)/酒物語(すきものかたり)△△△△一△巻 00089960L4△△/青楼客(せいろうきやく)物語△△△△△一△巻 00089970L6△△△△△未△春△△△△△桜川慈悲成作 00089980L7△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(廿五ウ) 00089990¥Y跋 00090000L9昔男ありけるとかゝれしより、はなしの種つきすして、年 00090010L10+あつまる諸君子の妙作、ことしも桜木にものして、か 00090020L11わらぬことの目出た(廿六オ)や+と、よろこひのあまり、 00090030L12落咄の尻に、ちよびと慈悲成■ 00090040¥Q 00090050L14△△△寛政十一 00090060L15△△△△△未の初春 00090070L16△△△△△△△△△△△△△豊秀斎冬渓積雲書贈 00090080L18△△△△△△△△△△△△△△GG 00090090L20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(廿六ウ) 00090100¥P282 00090110¥U噺本大系△第十三巻 00090120¥T/虎智(こち)のはたけ 00090130¥G 00090140¥Y 00090150L17寛政十二年正月刊 00090160L18桜川慈悲成序 00090170L19上総屋忠助板 00090180L20小本一冊 00090190¥G(序ノ壱オ) 00090200¥Y序 00090210M16/漢(かん)の/高祖(こうそ)の/臣下(しんか)/張良(てうりやう)、/夢(ゆめ)見て、ほくやの/傍(かたハら)に、/下■(かひ)の土/橋(けう) 00090220M17あり。此/橋(はし)に/遊(あそ)び/居(い)けるに、/老(らう)人一人はいひんどうと馬に 00090230M18/乗(のつ)て、/行(ゆき)合ふ/折節(おりふし)、/馬(ば)上より左りの/沓(くつ)をおとし、いかに/儒= 00090240M19子(じゆ=し)、(序ノ壱ウ)/其沓(そのくつ)を/取(と)れといふ。張良、/我(われ)に/斯(かく)言ふはぞ 00090250M20んざひなりとて、沓をくらへと、/地口(ぢぐち)落をぞ/作(つく)られけるが、 00090260¥P283 00090270L1/老(おひ)たるを/敬(うやま)ふハ父母のごとしといふ/利屈(りくつ)落を/案(あん)じて、沓を 00090280L2とりてはかせければ、/黄石公(くハうせきこう)、/張良(てうれう)が地口落、利屈(序ノ弐 00090290L3オ)落を/感(かん)じて、/其後(そのゝち)一/巻(くハん)を/与(あた)へ給ふ。/是慥(これたしか)に/土橋(とけう)から沓 00090300L4を落はなしの一巻ならむと、/瀬戸物町(せとものてう)せんべい屋のもふし 00090310L5子 00090320L6△△△△△△△△△△△/芝桜川(しばさくらがハ)/慈悲成(じひなり)、/利口(りこう)らしく述 00090330L8△申ノ初春(序ノ弐ウ) 00090340¥G(三オ) 00090350¥N1¥J 00090360¥X/鶴亀(つるかめ)△△△△△△△△△¥A麻布亭△気知兼公 00090370M15/初春(はつはる)の/長閑(のどか)なる/空(そら)に、鶴/羽(は)をのして/舞(まひ)、やがて/沢辺(さハべ)におり 00090380M16て居ル所へ、/尾(を)のたんとある亀が出て、どちらも+/嬉(うれ)し 00090390M17そふにとちくるつて、/羽(はね)を引たり亀の/尻(しり)をつめつたり、ち 00090400M18わをするを、そばの松と竹か見付ケ(三ウ)て、アレ見やれ。 00090410M19鶴と亀が色事だ。おしつけ/夫婦(ふうふ)に成だらふといへハ、竹が、 00090420M20なるほど、/色(いろ)事と見へる。松、はやしてやらうじやアねヱ 00090430¥P284 00090440L1か。松Sはやしてやれ+△竹Sアレ、鶴さんと亀さんと 00090450L2よヲ引△鶴亀Sなんだへ、ばからしひ。松竹、ゆびをさし 00090460L3て、ほうらいほう引(四オ) 00090470¥N2¥J 00090480¥X/初買(はつがい)△△△△△△△△△△△△△¥A文義 00090490L6吉原へ初買に出かけた所が、/名染(なじミ)の女郎が/折(おり)あしく/客人(きやくじん)に 00090500L7て、ちと不/機嫌(きけん)で、ごうはら/酒(さけ)に/廻(まハ)され、むや+した/所(ところ) 00090510L8へ、女郎が来て、/掛硯(かけすゞり)の/引(ひき)出しから、大そうに/巻(まい)た文を出 00090520L9し、客人に/封(ふう)じ/紙(かミ)をおくんなんしと(四ウ)言ふ。客人、も 00090530L10ふかんしやくが/合点(かつてん)せず。其文を見せろと引ぱる。女郎、 00090540L11見せまいとせり合ふ所を、ふしぎや、/床(とこ)の間の/懸(かけ)物の/寿老= 00090550L12人(じゆらう=じん)手を出して、くだんの文をむんずと/取(とる)。客人それやつて 00090560L13ハと、見へになると、寿老人/長(なが)ひ/色文(いろぶミ)、三つぶとんの/敷初(しきそめ)、 00090570L14ずんとよめます。夫から/寿老人(じゆらうじ□)(五オ) 00090580¥N3¥J 00090590¥X/双六(すころく)△△△△△△△△△△△△△¥A亀水 00090600L17十六七の/花嫁(はなよめ)、近所の/娘達(むすめたち)を/寄(よせ)、/毎(まい)ばん/哥(うた)かるた、/針(はり)打な 00090610L18ぞして遊び、/今宵(こよひ)ハ/若旦那(わかだんな)さんも御内也。/道中(だうちう)双六にいた 00090620L19しませふと、/嫁(よめ)も/息子(むすこ)のそばにひつゝひて、双六を/振(ふつ)て居 00090630L20ル。むすこサアこなたのばんだと、さいを/取(とつ)て(五ウ)やる 00090640M1と、嫁わたくしはどふもふられません。むすこなせ+。嫁 00090650M2とまりましたハなア。むすこハア、とまつちやアもうされね 00090660M3ヱか。嫁アイ。うしろのこたつにかゝ様が/聞(きひ)て居て、あの 00090670M4子もとまつたそうだ。はやく/初孫(ういまご)が見たひ 00090680¥N4¥J 00090690¥X初ゑびす△△△△△△△△△△△¥A有よし(六オ) 00090700M7初ゑびすとて、大/商人(あきんど)の/家(いへ)にて、/台所(だいどこ)ハ、ソレ/硯(すゞり)ぶたよ、 00090710M8/吸物(すいもの)よ。またお客が五人御出なさつた。先こちらのお客へ 00090720M9御/膳(ぜん)を出せ。そちらの/鉢肴(はちさかな)をお二/階(かい)のお客へといそがしく、 00090730M10/下女(けちよ)ハまいだれのひもむすぶ/間(ひま)もなし。/料理人(れうりにん)ハ、ソレそ 00090740M11の/肴(さかな)をこちらへといふ(六ウ)に、小ぞう、ひよこすかして、 00090750M12/丼鉢(どんぶり)を取おとして二つに割ル。ていしゆ大きにはら立、お 00090760M13のれ、そうたいそんざい物。なぜ物を大事にせぬ。/憎(にく)ひや 00090770M14つと/呵(しか)れバ、小ぞうハイ。御免ンなさりませ。したが、旦 00090780M15那様。あきなひも/今年(ことし)から/利(り)ハはちわりに/廻(まハ)ります。旦那 00090790M16/機嫌(きげん)を/直(なを)し、いくつでも(七オ)われ+ 00090800¥N5¥J 00090810¥X/年礼(ねんれい)△△△△△△△△△△△△△¥A貞重 00090820M19何屋何兵衛、御/祝義(しうき)申ますといへバ、コレハありかたふ御 00090830M20座ります。チト御/祝(いわひ)申ませう。礼者また/永日(ゑいじつ)と/隣(となり)へ/行(ゆき)、御 00090840¥P285 00090850L1祝義申ます。ちと御祝ひ申ませふ。また永日と、あまたの 00090860L2/門(かど)を/大概(たいがい)つと(七ウ)めて、七つ時/屠蘇(とそ)のきげんか、ざゞん 00090870L3さうたふて帰りながら、イヤ、こゝらを二三/軒(けん)つとめて帰 00090880L4らふ。小ぞう。まだ年玉があるか。小ぞうもふ年玉ハ/皆(ミんな)に 00090890L5成ました。ていしゆそんなら/翌日(あす)のことにしやうか。小そ 00090900L6う/序(ついて)におつとめなさりまし。ていしゆそれでも年玉かない 00090910L7ではないか。(八オ)小そう旦那。こゝらハ/永日(ゑいじつ)ばかりほふ 00090920L8りこんでおゝきなさりまし 00090930¥N6¥J 00090940¥X/無筆(むひつ)△△△△△△△△△△△△¥A川越△硯/研((ママ)) 00090950L11/奴(やつこ)、/肴篭(さかなかご)に/鯛(たい)を入、手紙もちて、/去(さる)かたへ/来(きた)り、手紙を出 00090960L12せバ、旦那/封(ふう)おし切り、見れとも無筆にてよめず。さそく 00090970L13の早がつてん。これ(八ウ)ハ+御/使(つかい)御くろう。帰られ 00090980L14たらそう/言(い)ふて下され。見事な御/肴(さかな)を下さります。御目に 00090990L15かゝりまして御礼申ませうといへは、奴ハイ。此肴ハ/神田(かんだ) 00091000L16のおやしきへもつて参るので御坐ります。あなたの/所(とこ)へ参 00091010L17りましたのでハ御ざりません。ていしゆあたまを(九オ)か 00091020L18きながら、又手紙を見るふりにて、成程+。/返(かへ)す/書(かき)に有 00091030L19ツた。奴何ンと致て御ざります。ていしゆ猶&そちへハや 00091040L20らぬと 00091050¥N7¥J 00091060¥X/初夢(はつゆめ)△△△△△△△△△△△△¥A芝△柳交 00091070M3正月二日夜、/家内(かない)より合、道中双六をして居るそばに、下 00091080M4女ハ/暮(くれ)のくたひれやら、/居眠(いねむつ)て居ゆへ、おさんハ早ク(九 00091090M5ウ)寐やれとおゆるしか出て、そう+二/階(かい)へ上りねる。 00091100M6あすの/朝(あさ)早くおき、/雑煮(ぞうに)のしたくしながら、/権介殿(こんすけどん)。夕べ 00091110M7/宝舟(たからふね)をまくらへあてゝ寐たら、とんだいゝ夢をたんと見た 00091120M8よ。権介たんと見さつしやつたか。下女しこたま見たハな。 00091130M9権介そふだらう。貴様/宵(よい)からこぎ出した(十オ) 00091140¥N8¥J 00091150¥X/長尻(なかしり)△△△△△△△△△△△△¥Aしら魚 00091160M12かミ様、二/階(かい)にふとんの/綿(わた)を入かゝつて/居(い)る所へ、近所の 00091170M13おもしろくなひおとこかあそひに/来(き)て、/長(なが)+と/咄(はなし)をして 00091180M14こまらせるゆへ、かミ様、/下女(げぢよ)の/耳(ミヽ)に/口(くち)をあてゝ、/箒(はうき)を立 00091190M15やれといふ。下女のみこミ、二/階(かい)へ上り箒をたてゝ(十ウ) 00091200M16おく。/客(きやく)、ねから帰らす。かミ様もたいくつして、大きな 00091210M17あくびをすると、客、御たいくつかな。おかまひなさりま 00091220M18すな。わたくしハお/坐敷(さしき)をかりて一/寐入(ねいり)いたしますと、ま 00091230M19くらをかりて寐る。かミ様あきれて、二かいへあがり見れ 00091240M20ハ、/綿(わた)入ものゝふとんの(十一オ)上に、はうきかたをれて 00091250¥P286 00091260¥N9¥J 00091270¥X/間違(まちかひ)△△△△△△△△△△△△△¥A一鼠 00091280L3/高(かう)まん男、此間/去(さる)御方の所へ/茶(ちや)によばれました。/道具(たうぐ)もさ 00091290L4ま+/珍(めつ)らしひ物を見ました。ときに先/会席(くハいせき)がうまひ事で 00091300L5御坐りました。客それハけつこうな事。とんな/味(うま)ひ(十一 00091310L6ウ)ものが出ましたな。高まん先そのうつハものがけつか 00091320L7うさ。先茶といふ物か。其座敷のかゝり、/亭主(ていしゆ)の/物好(ものずき)、/床(とこ) 00091330L8がおまへものじやて。アレハおまへに御目に懸たひ/沢庵(たくあん)の 00091340L9ふミさ。客ハイ。ふうミがよくても、もふこの/歯(は)てハかめ 00091350L10ません(十二オ) 00091360¥N10¥J 00091370¥X/大三十日(おゝミそか)△△△△△△△△△△△△¥A粘人 00091380L13大三十日、目出度くらすこまかゐ/旦那殿(だんなとの)、/飯(めし)たきに、ナン 00091390L14ト三介。よひ/年(とし)のくれじや。三介/左様(さやう)てござります。おだ 00091400L15やかなよい年の/暮(くれ)でござります。旦那様ハいつも+お/若(わか) 00091410L16ふござります。ま事ハおいくつに(十二ウ)おなりなさりま 00091420L17すヱ。だんなてうど四十才じや。三介是ハはしめてうけ給 00091430L18りました。さて+お/若(わか)ひ事。なんても三十二三にお見へ 00091440L19なさります。旦那夫ハ/嬉(うれ)しゐ。三介。酒をちと/買(かふ)て/来(こ)ひ。 00091450L20三介ハイ。私へなら御無用に/被成(なさり)ませ。旦那イヤ、あした 00091460M1/雑煮(ぞうに)へいれる(十三オ) 00091470¥N11¥J 00091480¥X/鳥屋(とりや)△△△△△△△△△△△△△¥A小高 00091490M4鳥屋の見せに/聾(つんほ)の/親父(おやじ)、火にあたつて居ル所へ、/屋敷者(やしきもの)/来(き) 00091500M5て、かハる事もないかといへば、つんほ何そ御/召(めし)なさりま 00091510M6せ。士イヤ+/買物(かいもの)でハない。/亭主(ていしゆ)ハ内にかと/奥(おく)へ/指(ゆひ)をさ 00091520M7せバ、つんぼふり/返(かへ)つて、アレハ/鳩(はと)で(十三ウ)御座ります。 00091530M8士やどゝ聞て、やとなら、ちよと/咄(はなし)たい。/爰(こゝ)へ/呼(よん)でくりや 00091540M9れと、又/奥(おく)へ指をさせバ、つんぼ又ふり返り、ハイ。あれ 00091550M10かな。あれハ/栗鼠(りす)で御座りますといへば、士そんなら/帰(かへ)ら 00091560M11れたら、/能(よく)いふて下され 00091570¥N12¥J 00091580¥X/能書(のうじよ)△△△△△△△△△△△¥A芝住(十四オ) 00091590M14コレ亀松どん。おれハ/此比(このころ)/手習(てならい)をはじめた。亀それハよい 00091600M15事じや。手をかゝぬハ不/自(じ)由な物。そして/誰(たれ)に/手本(てほん)を/書(かい)て 00091610M16もらつた。小そう手本か。てほんハ旦那様ンに書てもらつ 00091620M17た。旦那さんハ/御家流(おいへりう)で、何ても/能男(のうなん)だ。亀能男とはなん 00091630M18のことだ。小そう(十四ウ)手をよく書事よ。亀ばかな事ば 00091640M19かりいふ。能男といふものが、どこに有ものか。手をよく 00091650M20/書(かく)のハ/能書(のうじよ)よ。小そうきさまが/馬鹿(ばか)じや。能書とは女の事 00091660¥P287 00091670L1だ 00091680¥N13¥J 00091690¥X/書初(かきそめ)△△△△△△△△△△△△△¥A豊広 00091700L4/画師(ゑし)相/替(かハ)らず書初とて、/心(こゝろ)安キ(十五オ)/友達(ともだち)をまねき、/弟= 00091710L5子(で=し)/多(おゝ)く来て、/熨斗(のし)に玉/書(かき)て、/年神(としかミ)にさゝげ、夫より/酒(さけ)なん 00091720L6ぞ出して、何もさしたる事もなし。目出たく一つ御/過(すご)し下 00091730L7され。いつも八兵衛様が御出なさる。ちよつと/手紙(てかミ)をやつ 00091740L8て見ませうと、さら+としたゝめ、(十五ウ)弟子にもた 00091750L9せ、コレ八兵衛様に何もお/肴(さかな)もないが、御出一ツ盃召あが 00091760L10りましと口上いふてやる。/頓(やが)て弟子/戻(もど)りて、御/師匠(ししやう)様。八 00091770L11兵衛様がよくお人を下さります。わたくし少&こせうが御 00091780L12座りますから、今日ハゑヱまへりませんとおつしやりまし 00091790L13た。(十六オ)師匠八兵衛様もこしやうか。やつぱりあすこ 00091800L14も/鱈(たら)だナ 00091810¥N14¥J 00091820¥X/団(だん)十郎△△△△△△△△△△△△△¥A谷弥寿 00091830L17/極(ごく)団十郎びいきの/男(をとこ)、何もかも三升づくめの/形(なり)にて、団十 00091840L18郎とさへ人が言へバ/嬉(うれ)しかる三升好キ。見せに団十郎の心 00091850L19もちにて、たばこ/呑(のん)で(十六ウ)居る。/徳利(とくり)あつめの小ぞう、 00091860L20見せへかけて入、旦那さん+。今あすこのうらのていし 00091870M1ゆが酒によつて/帰(かへ)りまして、かミ様をたゝきのめすやら、 00091880M2/茶(ちや)わんをなげるやら、其上/摺鉢(すりハち)をほふり出して、こなミぢ 00091890M3んにぶちわり、大きに団十郎をおこしました(十七オ)と、 00091900M4せい+はなしけれバ、ていしゆSやに/下(さが)りに、きせるを 00091910M5もち、それハしほらしひ男だ 00091920¥N15¥J 00091930¥X/利口(りこう)△△△△△△△△△△△△△¥A松露 00091940M8さま+の事が/有物(あるもの)。/雀(すゞめ)、/海中(かいちう)に入てハ/蛤(ハまぐり)となり、かの山 00091950M9の/芋(いも)がうなぎに成ます。客はて、山の芋が(十七ウ)うなぎ 00091960M10とハ/珍(めつ)らしひ。ときに/鯨(くじら)なんぞは何になります。ていしゆ 00091970M11鯨ハびんさしに成ます。客成ほと。鯨がびんさし、雀がは 00091980M12まくり、山の芋かうなぎ。そしてあの/鯰(なます)なんぞは何になり 00091990M13ます。ていしゆハテ、鯰ハひやうたんかんざしに(十八オ) 00092000¥N16¥J 00092010¥X弾初メ△△△△△△△△△△△△△¥A魚州 00092020M16/機嫌(きげん)上戸、元日から/酒(さけ)びたしにて、二日は/引初(ひきそめ)とて、/心安(こゝろやす) 00092030M17き/友達(ともだち)大/勢(ぜい)/寄合(よりあい)、また酒のみ引やらうたふやら、/殊外(ことのほか)にぎ 00092040M18やか/夜(よ)に/入(いり)ける。/亭主(ていしゆ)ハ機嫌で/踊(おどり)などおどりて、おもしろ 00092050M19い+。(十八ウ)ことしも元日から/呑(のん)てくらすぞ+と/楽(たの) 00092060M20しミ/好(すき)とて、人に三味せん引かせ、/寐(ね)ころんで/聞(きい)て居る。 00092070¥P288 00092080L1内の/娘(むすめ)見せへ出ると、/番頭(ばんとう)が、もし旦那さんハあすこにか 00092090L2ゑ。娘おとつ様ンハ/河東(かとう)のそばに寐ころんて聞て居なさる 00092100L3よ。番頭何、/兼好(けんこう)じやア有めヱし(十九オ) 00092110¥N17¥J 00092120¥X/女郎買(ちよろうかい)△△△△△△△△△△△△△¥A苔成 00092130L6女郎、ぬしハなんさんすへ。客おらア/劔術(けんしゆつ)つかひだ。ちよ 00092140L7つとにも、これ、こゝをこふしたら/痛(いた)からふと、やミくも 00092150L8に女郎/を((ママ))手をねちつたり、/突倒(つきたを)したりする。女郎ばからし 00092160L9い。よしなんましよ。いたうおすハナ。客ところを/胸(むな)ぐら 00092170L10を(十九ウ)こう取る。それ、うごけまいが。女郎しつこい。 00092180L11すかねヱよと、ずつと立。客そこをこうとらまへると、/足(あし) 00092190L12をいためにかゝれバ、女郎およしなんまし。いやでおすよと 00092200L13/迯(にげ)出すひやうしに、かんざしがはたと落ると、客/枕(まくら)でかんざ 00092210L14しを/押(をさ)へ、しゆりけんなんぞハ、こうして/留(とめ)るハ(二十オ) 00092220¥N18¥J 00092230¥X/七福神(しちふくじん)△△△△△△△△△△△△△¥A鹿児全 00092240L17七/福神(ふくじん)/寄合(よりあひ)、/俳諧(はいかい)し給ふ。今日一/評(ひやう)びらきとて、たから/舟(ふね) 00092250L18にこぞり/寄(より)、そりや引/墨(すミ)の/釣竿(つりさほ)三点、ゑびす。小/槌(つち)の五/点(てん) 00092260L19ハ大/黒(こく)。/巻物(まきもの)の七点ハ/寿老人(じゆらうじん)。/鉾(ほこ)の十点ハびしやもん。鶴 00092270L20の十五点/福禄寿(ふくろくじゆ)。/恋(こひ)の/書(かき)(二十ウ)/抜(ぬき)はさすがうつくしい弁 00092280M1天さま。それ+に点〆がすみ、弁天様から二ばんハ/福禄(ふくろく)、 00092290M2三番びしやもん、皆/相応(そうおう)に点があつたが、/布袋(ほてい)先生、貴様 00092300M3ねから点がなふて、/気(き)のどくじやといへば、布袋/寄(より)かゝつ 00092310M4て、おれハ/袋(ふくろ)じや+(二十一オ) 00092320¥N19¥J 00092330¥X/猿(さる)△△△△△△△△△△△△△△△¥A慈悲成 00092340M7/猿(さる)、いきな/姿(なり)をして、/作者(さくしや)の/所(ところ)へ/来(きた)り、さる/先生(せんせい)。/今年(ことし)ハ 00092350M8/私(わたし)の年だから、ぐつと一ばんしやれるつもり。/晩(ばん)にハ/初買(はつがい) 00092360M9と出やす。先生も御出なさい。先私がなりが/柿色(かきいろ)ちりめん 00092370M10の小袖下に、ひかのこ三升つなぎの袖なし/羽織(はおり)、(二十一ウ) 00092380M11/桃(もゝ)山の/帯(おび)に/栗色(くりいろ)のはんくつ、座敷でのしやれか。もし私が 00092390M12ちい様ののら廻り、とんぼう/返(かへ)り、おしゆん伝兵衛を一/段(だん) 00092400M13かたりやす。よしかへ。御くろうながら、此/風呂敷包(ふろしきつゝミ)を、 00092410M14先生、おまへ持ていつておくんなさりやし。船もまだ/寒(さむ)ひ 00092420M15から、/浅草(あさくさ)から/田町(たまち)土手をふら+(二十二了オ)いきやせ 00092430M16う。そして/先(まづ)/中(なか)の丁でどんと/呑(のミ)の、それから、/京町(けうまち)の/猿(さる)か 00092440M17よひくる/揚(あけ)やまち、ハどふであります。とつぴんちやんと、 00092450M18やミくもに猿がしやれるゆへ、作者もあきれて、成ほど、 00092460M19/初買(はつがい)としやれやうか。/猿(さる)。貴様、/金(つとめ)があるか。さるそこは 00092470M20おまへにおぶさつてまへります(二十二了ウ) 00092480¥P289 00092490¥Q 00092500L1寛政十二年申初春 00092510L2△△落咄作者 00092520L3△△△芝楽亭 00092530L4△△△△△桜川慈悲成 00092540L5△△板元 00092550L6△△△日本橋四町目 00092560L7△△△△△上総屋忠助 00092570¥P290 00092580¥U噺本大系△第十三巻 00092590¥T@慶山|新製@/曲雑話(きよくばなし)〔内題〕 00092600¥G 00092610¥Y 00092620L16寛政十二年九月刊 00092630L17麒麟館慶山序 00092640L18浪速△池内八兵衛等板 00092650L19半紙本五巻五冊 00092660L20東大国語研究室蔵 00092670¥Y 00092680M1風雅てもなく、しやれてもなく、しやう事なしの山寺に、 00092690M2冬枯の淋しき折から、ほつ+とあんし出せし/敷((ママ))&の中に 00092700M3も、(序一オ)当時もてはやす音曲をきゝはつり、予も一口 00092710M4浦山しく思へとも、ならわぬ経ハ無據、好める道の友呼千 00092720M5鳥、ちゝくちやの一ふしをまし(序一ウ)へて、曲雑話と題 00092730M6号し、庚申講のあと追ふて、まつかいな空言八百を、なく 00092740M7さめ本となして一せうをもふくも、納る御代に(序二オ)鳳 00092750M8凰の羽をのしたやうな顔してゐるはけものは、ゆるやけき 00092760M9まつりこと十二かのゑさるのはる、きりんくわんけいさん 00092770M10謹序(序二ウ) 00092780¥P291 00092790¥T1@/慶山(けいざん)|/新製(しんせい)@/曲雑話(きよくばなし)巻之一 00092800¥N1¥J 00092810¥X/的違(まとちが)ひ 00092820L5/行衛(ゆくへ)/定(さだ)めぬたびなれや+、こしかたもいづくならまし。 00092830L6/是(これ)ハ/泉州(せんしう)/佐野(さの)の/辺(ほと)りより/出(いて)たる/沙門(しやもん)にて候と、/雨(あめ)のふる/夜(よ) 00092840L7に/一人(ひとり)のたび/僧(そう)、/新町通(しんまちどを)り/筋(すし)をうろ+あるき、/去(さる)/格子先(こ□しさき) 00092850L8に/二八斗(にはちばかり)の/小(こ)めろ/立(たち)出、/往来(ゆきゝ)の/人(ひと)を/引(ひつ)はるてい。/扨(さて)ハ/人(ひと)を 00092860L9とめる/所(ところ)と/心(こゝろ)へ、/申(もふし)+/御女郎(おしよろう)。/越後町(ゑちごまち)から/西(にし)/辺(へん)へはいく 00092870L10わいする/坊主(ほうず)、/今(こん)ばんの/大(をゝ)(一オ)/雨(あめ)、/跡(あと)へも/先(さき)へも/参(まい)りが 00092880L11たし。すのこのはしに/只(たゞ)/一夜(いちや)、/頼(たの)ミますると/有(あり)ければ、ヲ 00092890L12ヽすかん。/何(なん)じやいな。こゝハおまへがたとめる/所(ところ)じやな 00092900L13い。/是(これ)より/十八丁程(ぢうハつちようほと)いきなますと、/長町(ながまち)といふて/宿屋(やどや)か 00092910L14たんとある。/早(はや)ふあつちへ/行(ゆき)なませと、ひんしやんとして 00092920L15/入(いり)にける。アヽラきよくもなや。よしなき/人(ひと)を/頼(たの)ミしと、 00092930L16ぬれしよほたれて/行過(ゆきすき)る。/東(ひがし)どなりにお/茶(ちや)ひいて/居(い)るおや 00092940L17まが/飛(とん)で/出(いて)、なふ+/旅人(たびびと)。お/宿(やと)/参(まい)らせふ。なふあ(一ウ) 00092950L18まりの/大雨(おゝあめ)に、/申事(もふすこと)も/聞(きこ)へぬよ。なふいたわしの/有(あり)さまや 00092960L19な。しとゝふる/雨(あめ)に/道(ミち)ハすべり、/今(いま)ふる/雨(あめ)にへこどけ/廻(まわ)りの 00092970L20きのこかげにたゝずミて、/袖(そで)なるどろを/打(うち)はらひ+した 00092980M1もふけしき、ちよんがれ/坊主(ほうず)に/似(に)たるぞや。なふ、たびの 00092990M2/僧(そふ)、たびのずほとぞまねかれて、ヤレ+/嬉(うれ)しや。/留(とめ)てく 00093000M3れるそふなと、ひよこ+/跡(あと)へ/戻(もど)り、/誠(まこと)に/一樹(いちじゆ)の/蔭(かげ)も/他生(たしやう) 00093010M4のゑんとやら、/忝(かたじけ)なしとにじりこむ。○ほんにこよひハき 00093020M5つい/雨(あめ)。さぞ/御(ご)なんぎ(二オ)でござりませふ。しバらく/是(これ) 00093030M6てやめなされ。ホンニマアせつかくおとめ申たが、/玉(たま)づさ 00093040M7さん。/何(なん)ぞあげる/物(もの)ハないかいな。ヲヽ/幸(さいわ)い、こゝに/粟(あわ)の 00093050M8/岩(いハ)、さもしけれども/是(これ)なりと。アヽ/是(これ)、そんな/物(もの)なんのい 00093060M9な。アヽ/是(これ)/御両人(ごりやうにん)。あわのいわとハ、/日本一(につぽんいち)のだんご/£(より)う 00093070M10まからふ。/御馳走(ごちさう)に/預(あづか)りたしとの給へバ、ヤレ+/夫(それ)ハお 00093080M11/嬉(うれ)しや。せめてハきれいにと、のへ/紙(かミ)ニのせてさし/出(いだ)し、 00093090M12はづかしやお/僧(そう)さま。/此(この)あわと/申物(もふすもの)ハ、いにしへ/我(われ)+/世(よ) 00093100M13にありし/時(とき)ハ、/哥(うた)できゝ、(二ウ)/芝居(しバい)の/中£(なかより)/外(ほか)たべざりし 00093110M14か、/今(いま)ハ/此粟(このあわ)を/以(もつ)て/居(い)ねむりをさまし候ぞや。げにや/渡世(とせい) 00093120M15ハ/皆(ミな)/栄花(ゑいぐハ)の/身(ミ)とも/御(ご)らんぜん。/此(この)かんなんのかなしミに、 00093130M16/一(いつ)すいのねむりをさますも、/粟(あわ)/岩(いわ)おこしの/徳(とく)ぞかし。あわ 00093140M17れや、げに/我(われ)+も/客(きやく)と/寐(ね)て、ゆめでもゆるりと見るなら 00093150M18バ、なぐさむ/事(こと)も/有(ある)べきに、なふ/御覧(ごらん)候へ。まいばん+ 00093160M19お/茶(ちや)/引(ひい)て、/親賢(おやかた)にハいぢられ、ほうばいにハそしられ、た 00093170M20いていつらい/事(こと)でハない。せめて/御出家(こしゆつけ)でもお/頼(たの)ミ(三オ) 00093180¥P292 00093190¥G(三ウ・四オ) 00093200M1(三ウ・四オ挿絵)申て、どふぞよい/客(きやく)のつく/様(よう)に。○ムヽ、 00093210M2/加持(かじ)きとうでもしてほしいか。○イヽヤ、ぶんやのけいこ 00093220M3せうとおもふて 00093230¥N2¥J 00093240¥Xくつさめ 00093250M6/米(こめ)ふミより/段(だん)+もふけのばして、/近年(きんねん)/数百〆目(すひやくくわんめ)の/俄(にわか)ぶげ 00093260M7んしやになり、/両替店(りやうがいミせ)を/出(だ)して、/召遣(めしつか)ひも/大勢(おゝぜい)かゝへ、/何(なに) 00093270M8くらからぬ/身(ミ)の/上(うへ)なれ/共(とも)、/以前(いぜん)を/忘(わす)れぬかた/親仁(おやじ)、/朝(あさ)ハ/七(なゝ) 00093280M9ツからおきて/家内(かない)をきめ/付(つけ)、しまつ/第一(だいいち)にくばり、ヤイ(四 00093290M10ウ)/長太郎(ちやうたろう)よ。/又(また)きよろりと/何(なに)見ておる。/用(よう)がなけりや、 00093300M11わら/打(うつ)て/銭(せに)ざしないおれ。/喰斗(くらうばかり)がのうじや有るまい。の 00093310M12ら/松(まつ)めとしかられ、こそ+とうらへ/行(ゆき)、/納屋(なや)のすミで/銭(ぜに) 00093320M13ざしないながらぼやく。あたいま+しい。あの/旦那(たんな)づら 00093330M14め。/朝(あさ)ハ/七(なゝ)ツからおこして、/六(ろく)な/物(もの)ハ/喰(くわ)さず。/芝居(しはい)/一(しと)ト/切(きり) 00093340M15見せニはやらず。/朝(あさ)からばん/迄(まて)しかり/廻(まわ)して、こんな/内(うち)ハ 00093350M16/有物(あるもの)じやないわいとつぶやきながら、はな/哥(うた)。/一(いつ)へんめに 00093360M17ハいぢりおる。/二(に)へんめにハにらミを(五オ)る。/三(さん)へんめ 00093370M18にハさるまなこ。/四(し)へんめにハしかりおる。/五(ご)へんめに 00093380M19ごろ※と、/六(む)つむぎめし/喰(くわ)しおる。おのれら/斗(ばかり)ハ/米(こめ)のめ 00093390M20し。/七(ひち)へんめにハひねりおる。/八(はち)へんめにハはり/廻(まわ)す。/九(こゝの) 00093400¥P293 00093410¥G(七ウ・八オ) 00093420M1つこじきの/様(よう)なやつじや。十ヲでどうよくに/遣(つか)ひおる。/其(その) 00093430M2くせにぢんばりで、かゝにあまへてけつかる。いま+し 00093440M3い、ごたがわく。はらが/立(たつ)。こんな/内(うち)に/長(なか)ゐをすれバと云 00093450M4うち、うしろから/旦那(たんな)せきばらひすれハ、○/目出(めで)たいな/大(だい) 00093460M5こく(五ウ) 00093470¥N3¥J 00093480¥X/綿操馬(わたくりむま) 00093490M8/申(もふし)、/喜兵衛(きへい)さん。おまへ/所(とこ)の/小(こ)まんさんハ、なにとやら/聞(きい) 00093500M9たが、せうしな/事(こと)じや。わしもせつかくなじんだ。どふぞ 00093510M10/了簡(りやうけん)ハつかぬかいな。○イヤモ/了簡(りやうけん)/所(どころ)じやない。いつか 00093520M11うかゝつたやつじやござりませぬ。おまへハ/何(なんに)もいさいし 00093530M12らずじやが、咄したらびつくりしてじやあろ。ぜんたいあ 00093540M13いつハ、/元(もと)/難波(なんバ)のぢんきまきしてゐたやつ。ふとなじんで 00093550M14から/母親(はゝおや)とふたり、不/自由(しゆう)な(六オ)くらししてゐおるゆへ、 00093560M15/随分(ずいふん)気をつけてせわもやき、/又(また)あいつも/相応(そうおう)に/銭(せに)ももふけ 00093570M16をるよつて、わしが/事(こと)かけの/時(とき)ハ/三百(さんひやく)/五百(ごひやく)ハふりかへもし 00093580M17てくれおつた。そこて/互(たが)ひに/勝手(かつて)づくに仕あふて/居(いた)た/所(ところ)、 00093590M18/去年(きよねん)の/冬(ふゆ)しバらくたよりかなかつたゆへ、ゐて見れハ、い 00093600M19つかうやくたい/親子(おやこ)ながら、ひぜんわつらふて、/寒(かん)の/内(うち)に 00093610M20あわせきてふるふてゐる。/米(こめ)/一粒(いちりう)あらハこそ/薪(たきゞ)/一本(いつほん)なし。 00093620¥P294 00093630L1/是(これ)ハとふじやといへば、されはいな。/聞(きい)ておくれ。(六ウ) 00093640L2さん※の/仕合(しあわせ)。せんどからもめ/事(ごと)て/仕事(しごと)ニハ/行(ゆか)ず。/此通(このとを) 00093650L3りにひせんわづらふて、くうや/喰(くわ)ずて/難義(なんぎ)してゐる。○ソ 00093660L4リヤ/又(また)どふいふ/物(もの)て/仕事(しこと)ニ/行(ゆか)ぬ。○サイナ。/仕事(しこと)やで、/三= 00093670L5〆五百(さん=ぐわんごひやく)といふ/物(もの)さきかりしたゆへ、/是(これ)をすめねハどつこ 00093680L6へも/行事(ゆくこと)ならぬ。かてゝくわへて、○フシ折からひへの/病(わつら) 00093690L7ひにて、しば/薪(たきゞ)のあたひもなく、見るに見かねて不/便(びん)さに。 00093700L8○/夫(それ)でも/仕事(しごと)に/行(ゆか)いでハどふもなるまいと/思(おも)ふて/三〆五= 00093710L9百(さんぐわんご=ひやく)なげ/出(だ)して、ねんなふ身ぬけをた(七オ)(七ウ・八オ挿絵) 00093720L10すけやり、○そふしてもめといふハ、とふいふもめ事じや。 00093730L11○フシいかなるもめとたづぬる/内(うち)、/打手(うつて)と見へてこへ+ 00093740L12に、/其女(そのおんな)こそぢんきまき/莚綿(むしろわた)/盗(ぬす)ミとつたるそや。ソレ、 00093750L13うハひ/取(とれ)ばひ/取(とれ)と、よバヽる/声(こへ)を/聞(きゝ)しより、そバに/居合(いあわ)す 00093760L14/平野屋(ひらのや)/三右衛門(さんへもん)/飛(とび)かゝつてもぎ/取(とら)ん。イヽヤ/渡(わた)さじと、/女(おんな) 00093770L15ハいぢはる。もしや/此綿(このわた)あつちへ/渡(わた)さにや/末代迄(まつだいまで)もぢんき 00093780L16ハまかれず。/女(おんな)か/一世(いつせ)の/難義(なんき)ぞと、/莚綿(むしろわた)/持(もつ)たるかいなをバ、 00093790L17きゆつとねぢ/上(あけ)、もぎはなし、/其場(そのは)の/難(なん)ハのがれしが、 00093800L18(八ウ)かいなハきつういたみハせぬか、/親(おや)もしかない/子(こ)も 00093810L19しかない/難義(なんぎ)しおるが不/便(びん)やと、サ/是程(これほと)に/迄(まて)/思(おも)ふてこまし 00093820L20た。/夫(それ)にちつとしりかぬくもると、こんないたづらしくさ 00093830M1る。/何(なん)とわしが/腹(はら)が/立(たつ)のがむりか。○/成程(なるほど)+、わしも/聞(きい) 00093840M2てあきれる。ソリヤまあ/定(じやう)かいな。○イヤ、ゑらいかぎじ 00093850M3や 00093860¥Y1巻之一終(九オ) 00093870¥P295 00093880¥T1@/慶山(けいさん)|/新製(しんせい)@/曲雑話(きよくばなし)巻之二 00093890¥N1¥J 00093900¥X/馬鹿念(ばかねん) 00093910L5/去御大名(さるおたいめう)、/鎌倉(かまくら)へ/参勤(さんきん)の/道中(とうちう)/駄荷廻(だにまわ)しのさゐりやう、/道中(どうちう) 00093920L6にて、/俄(にわか)に/急病(きうびやう)に/付(つき)、/役(やく)人さしかへ、/則(すなわち)/組頭(くミかしら)より/目利(めきゝ)し 00093930L7て、北風三郎右衛門を/呼出(よひいだ)し、/扨(さて)/今度(こんど)/分田(ふんだ)/兵衛(ひやうへ)/病気(びやうき)に/付(つき)、 00093940L8/貴殿(きてん)に/替(かわ)り/役(やく)を御/頼申(たのミもふす)。/都(すべ)てさいりやう/役(やく)といふ/物(もの)ハ、 00093950L9/万事(はんじ)きてんがきかねバならぬ。/外(ほか)の/仁(じん)でハゆかぬゆへ、さ 00093960L10しづめ/貴殿(きでん)を御/頼(たの)ミ/申(もふす)。/兎角(とかく)/上下(せうげ)の/者共(ものども)ハ、めだれを見る 00093970L11(一オ)/物(もの)で、ちつとあまいと見ると/気侭(きまゝ)ぬかしてゆすりお 00093980L12る。/貴殿(きでん)におゐて、そこらのぬかりハ/有(あ)るまいけれと/随分(ずいぶん) 00093990L13/気(き)をつけて、あいつらにあなどられぬ/様(よう)に、さいりやう/役(やく) 00094000L14をつとめ/下(くた)されと/念(ねん)を入て/頼(たのま)れ、○/何(なに)が/扨(さて)、/其段(そのだん)ハ/御気遣(おきつか) 00094010L15ひなされな。/急度(きつと)/承知(せうち)/致(いた)したと、/則(すなわち)/本陣£(ほんしんより)/駄荷(だに)について 00094020L16いで、/半道斗(はんミちばか)り行と、/上下(しやうけ)の/雲介共(くもすけとも)うたひ/出(だ)す。S/酒(さけ)のナ 00094030L17ヱ、さの/字(じ)ハナハンハヱ。/役人(やくにん)、コリヤ/何(なに)をいふぞ。/漸(やう+)/今(いま) 00094040L18/宿(しゆく)でのんだでハないか。/夫(それ)にはや/酒(さけ)を/言出(いひだす)ス。(一ウ)まだ 00094050L19/早(はや)い。/立場迄(たてばまて)ゆけろ。○サア/又(また)/一里斗(いちりばか)り/行(ゆく)と、うたひかけ 00094060L20る。Sばんのサヱ、/夜食(やしよく)ハナハンハヱ。○コレハ/又(また)きたない 00094070M1やつらだハい。もふ/夜食(やしよく)のさいそくを/仕(し)をる。/去(さり)とてハい 00094080M2げちないやつらだ。はんに/宿(やど)へついたら、/食(めし)なりと/酒(さけ)なり 00094090M3と、ぞんぶんに/喰(く)へさ。○/又(また)/四五丁(しごちやう)/行(ゆく)と/哥(うた)。Sまけりや 00094100M4サヱ、まける/程(ほと)ナハンハヱ、長持ハかるいナハンハヱ。○ヤ 00094110M5イまて+。/其荷物(そのにもつ)おろせ。/中(なか)/一(いつ)ぺん/改(あらた)めにやならぬ 00094120¥N2¥J 00094130¥X/道明寺(とうめうし)(二オ)(二ウ・三オ挿絵) 00094140M8/霜月(しもつき)/廿五日(にじうごにち)、/何(なん)と/源兵衛(げんぺい)さん。/天神参(てんしんまい)りせふじやないか。 00094150M9○よかろ+と、/二三人(にさんにん)/連立(つれだち)、/参詣(さんけい)して、ほんに/喜兵(きひやう)の/所(ところ) 00094160M10ハ/菅原町(すがわらちやう)とやら/聞(きい)たが、ついでによつてやろかい。いかさ 00094170M11ま、かね※/来(き)てくれといふてゐた。よいついでじや。喜 00094180M12兵、/内(うち)にか。○ホ、コレハ+/打(うち)そろふてよふ/来(き)て/下(くだ)さつた。 00094190M13サア/上(あが)り+。○イヤ、けふハ/天神参(てんじんまい)りして、ついでなが 00094200M14らちよつと。○サア+/幸(さいわ)ひ/半兵衛(はんべい)やも/来(き)て、/今(いま)のミかけ 00094210M15る/所(ところ)じや。○イヤ、もふ/入(いれ)て/来(き)た。○サア、そふしやあろ 00094220M16(三ウ)けれど、/是肴(これさかな)が/有(ある)。コレ、/鯛(たい)/一(いち)まいはり/込(こん)だ。まだ 00094230M17/有(ある)じや。あの/鶏(にわとり)をしめるつもりじや。サア+/上(あが)らしやれ。 00094240M18そりやゑらいしゆこうじやな。サア+。S/今(いま)/此跡(このあと)で/鶏(にわとり)た 00094250M19く、/浜焼(はまやき)もする。/此鯛(このたい)をにわに/聞(きい)てゐる鶏が、Sふせごの 00094260M20/内(うち)にもれ/聞(きい)て、/女鳥(めん)の/思(おも)ひハはぬけ/鳥(とり)、/膳(せん)と/茶(ちや)わんをたつ 00094270¥P296 00094280¥G(二ウ・三オ) 00094290M1さへて、○/時(とき)に/酒(さけ)ハ/有(ある)かや。○/有共(あるとも)+。/弐升樽(にしやうだる)/出(だ)して、 00094300M2S/酒(さけ)ハ/元(もと)よりかくの/通(とお)り。ヒヤアこいつハゑらい。何じや。 00094310M3しかも/銘酒(めいしゆ)しや。/雲井(くもゐ)として/有(ある)わい。S/雲井(くもゐ)の/銘酒(めいしゆ)しめて 00094320M4ゐ(四オ)る。サア+□Sあちらへずつと/御(お)なをり。/何(なん) 00094330M5でも今/夜(や)ハS/夜(よ)があけるとも/心(こゝろ)をゆるしのますハ/呑(のむ)そ。ゑ 00094340M6らしこいむちや/酒(ざけ)きげん、てらす/顔(かほ)ちよつこり/吸物(すいもの)。Sど 00094350M7じやう/汁(じる)とハむまいきミ、/酒(さけ)ものめます。おかげんもこい 00094360M8つハいけるが、御ちそう/御肴(おさかな)、/是(これ)でのまざる/物(もの)ハなし。つ 00094370M9ぎめの/合(あい)を/受(うけ)かぬる、ウヽなぐさみ/酒(さけ)のきげん/上戸(しやうご)、くだ 00094380M10の/数(かず)&くりかへし、サアモウ/是(これ)から/流(なか)し/取(どり)にせふ。S/流(なか)し 00094390M11のこへに、たゞ/一(ひと)のミ。/是(これ)ぞ/今宵(こよい)の/別(わか)れ/共(とも)、しどろにひよ 00094400M12ろ+(四ウ)/門(かど)ト/口(くち)へ/出(いて)、/戸(と)をどん+とたゝいて、よふ 00094410M13たんじや+ 00094420¥N3¥J 00094430¥Xさらへ/講(かう) 00094440M16/友達(ともだち)/三人(さんにん)/連(づれ)で/馬場(ばば)さき/辺(へん)へ/遊(あそ)びに/行(ゆき)、げい/子立(こだて)してさわき 00094450M17あばれのミ、/中(なか)にもおれが/肴(さかな)するハ/一(いつ)ツぱいのめ、/一(ひとつ)つひ 00094460M18いておくれ。/露(つゆ)のてうをうたふと、はなつまらせ、Sうき 00094470M19をしらすや/草(くさ)にねて、/花(はな)にあそびしあしたにハ、/露(つゆ)に/養(やしな)ふ 00094480M20てう+の。ヨウ++、ゑらい+。○まて+。お 00094490¥P297 00094500L1れも/何(なん)ぞやるハ。/貴(き)さま(五オ)/露(つゆ)のてうやつたよつて、お 00094510L2れハきゞすじや。ひいておくれ。S/人(ひと)のよめなといつかさ 00094520L3て、こがれこがるゝくがいのふねも、ヨウ++、ひど 00094530L4い+。サア/喜兵(きひやう)。/貴(き)様も/何(なん)そやらぬかい。ヲツト/待(まつ)てく 00094540L5れ。やるぞ+。/源兵(けんへ)衛やハつゆのてう、/貴(き)さまハきゞす。 00094550L6おれハいつそさわぎにせう。/早(はや)めて/引(ひい)て/下(くた)さんせと、/高調= 00094560L7子(たかてう=し)になつて、せび+++ 00094570¥N4¥J 00094580¥X/用心蔵(やうじんぐら) 00094590L10/去(さる)/遠国(ゑんごく)の/御城下(ごしやうか)、/御政道(ごせいとう)きびしく、/別(へつし)て/火(ひ)の(五ウ)/元(もと)/等(とう)/御= 00094600L11念入(ご=ねんいれ)られ、/毎度(まいど)/仰渡(おゝせわた)されける。/御領分(ごりやうぶん)/庄屋方£(せうやかたより)も/随分(ずいふん)/気(き)を 00094610L12/付(つけ)、/家別(かべつ)に/申渡(もふしわた)し、/取(とり)わけ/風(かぜ)はげしき/夜(よ)ハ、/庄屋(せうや)、/陣笠(ぢんかさ)に 00094620L13/革羽織(かわはおり)、/野袴(のばかま)はいて、/家(いへ)&をたゝき/廻(まわ)り、/火(ひ)の/元(もと)ゆだんな 00094630L14き/様(よう)に/心(こゝろ)を/付(つけ)る。/時(とき)しも/冬(ふゆ)の/夜風(よかぜ)はげしく/吹(ふき)ければ、/庄屋(せうや)、 00094640L15/件(くだん)の/姿(すがた)にて/会所(くわいしよ)へ/来(く)る。/下役人(したやくにん)びつくりして、/是(これ)ハ/旦那(だんな)。 00094650L16/此頃(このころ)ハ/御不快(ごふくわい)の/由(よし)/承(うけたまわ)りました。/私共(わたくしども)/随分(ずいぶん)/気(き)を/付廻(つけまわ)りま 00094660L17すれバ、あなたにハまづ/御休(おやす)ミ/下(くだ)されませ。○イヤ+、 00094670L18そふでない。(六オ)/此様(このよう)に/風(かぜ)が/吹(ふけ)ば、/此方(このほう)も/随分(ずいぶん)/精(せい)に/入(いれ)て 00094680L19/廻(まわ)らねバならぬ。○コレハ+/大(おゝ)きに/御苦労様(こくろうさま)。イヤ/申(もふし)、 00094690L20/五介(ごすけ)さん。旦/那様(なんさま)が/御出(おいて)なされた。○/丁代(ちやうだい)/五介(ごすけ)/飛(とん)で/出(いて)、コ 00094700M1レハ+/旦那様(だんなさま)。お/勝(すぐれ)なされぬに/御苦労様(ごくろうさま)。/只今(たゞいま)/私(わたくし)が 00094710M2/廻(まわ)りましてござり/升(ます)。もふあなたハ/御無用(ごむよう)ニなさりませ。 00094720M3イヤ+、そち/達(たち)ハかくべつ。/此方(このはう)も/廻(まわ)らねば/御上(おかミ)へす 00094730M4まぬ。○/左様(さやう)ならば、かうなされませ。あなたの/装束(せうそく)を 00094740M5/憚(はゞかり)ながら/私(わたくし)に/御(お)かし/下(くだ)さりませ。/私(わたくし)が/則(すなわち)あなたの/替(かわ)り 00094750M6になりまして、(六ウ)/一軒(いつけん)+たゝき/廻(まわ)り、/御庄屋(おんせうや)さま、 00094760M7/直(しき)に/御廻(おまわ)りと、ふれあるきませう。さすれバあなた、/御廻(おまわ) 00094770M8りなされたも/御同(ごどう)ぜんてござり/升(ます)。○ムヽ、それハ/近頃(ちかごろ)/大= 00094780M9義(たい=ぎ)でござる。/有様(ありよう)ハおれも/今夜(こんや)ハ/休(やす)ミたい。もし/風(かせ)もやま 00094790M10ずバ、/又(また)あすのばんにも/廻(まわら)ふ。/如才(しよさい)も/有(ある)まいけれど、/諸事(しよじ) 00094800M11/万事(ばんし)/気(き)を/付(つけ)て/何(なに)もかもなSあすの/夜(よ)ふけて/廻(まわ)るべしと、ず 00094810M12つといなれた。/丁代(てうだい)すかさずS/我(われ)ハ/幸(さいわ)ひ/御庄屋(おしよや)さまの/廻(まわ)り 00094820M13/姿(すかた)をわが/姿(すがた)と、/腰(こし)うちかけて/陣笠(ぢんかさ)も/銭(せに)を(七オ)(七ウ・八オ挿 00094830M14絵)いたゞくほうしやがへし。/裏(うら+)やまでも/心(こゝろ)を/付(つけ)て、こ 00094840M15よひ/一夜(いちや)ハ/御庄屋(おせうや)さまへ/会所(くわいしよ)が/情(なさけ)のへんぽうがへしと、/裏= 00094850M16口(うら=ぐち)しめて/立出(たちいづ)れハ、いわねとかしこい/会所(くわいしよ)の/内義(ないき)、アヽヽ 00094860M17ヽヽコレ/申(もふし)、/御苦労(こくろう)さま。/廻(まわ)しともなさ/数(かず)&を、いわぬ/心(こゝろ) 00094870M18ぞいぢらしき。○/夜半(よなか)に/成(なつ)てやとい/番(はん)/入(いり)かわり、Sやとひ 00094880M19は/今(いま)を/替(かわ)り/時(どき)、ふけさん、/申(もふし)ふけさんと、/呼(よべ)とこたへも/旦= 00094890M20那衆(たん=なんしゆ)。/町役(ちやうやく)/銭(せん)も/月別(つきべつ)も/切(きれ)て、/一(いつ)せんなきびんぼう。○/気(き)の 00094900¥P298 00094910¥G(七ウ・八オ) 00094920M1/毒(とく)な/事(こと)ハいねむつて(八ウ)/犬(いぬ)をふんだ。○わんとなく。/赤(あか) 00094930M2なく。むくめともにしらすに、けつまづく。Sいねる/足(あし)も 00094940M3/立留(たちどま)り、/六十四文(ろくしうしもん)ふけの/直(ね)ハ、なんぼてやとふ。なんぼじ 00094950M4やぞ。ふけハ/百八文(ひやくはちもん)つゝにやとひ/極(きわま)るついでのぐめん。/後= 00094960M5夜(こ=や)の/限(かき)りハ/一夜(しとよ)ぎり、/心(こゝろ)をつけてヱン+ヱヱンヱヱン 00094970M6+。/今夜(こんや)ハどゑらひ/風(かぜ)じや。/鉄(てつ)ぼうでチン+チチンチ 00094980M7チン+。/随分(ずいぶん)/用心(やうじん)さんせ。チンチンチン+++、 00094990M8ヽヽヽヽと、/庄屋(せうや)の/門口(かとくち)へ/行(ゆく)と、/庄屋(せうや)、くゞりをぐわら 00095000M9+とあけて、よふ/番(ばん)、/頼(たの)ミますぞふ+(九オ) 00095010¥N5¥J 00095020¥Xむねんの/金(かね) 00095030M12/相方(あいかた)の/伯人(はくじん)をつれて/住吉(すミよし)/参(まい)り。ぶら+とたのしみ、/日暮(ひくれ) 00095040M13/過(すぎ)に/長町(なかまち)/七丁目(ひちちやうめ)/辺(あた)り/迄(まて)/戻(もと)りかゝれハ、/北(きた)の/方(はう)から/灯(ちやう)ちんと 00095050M14ほして、いつきせき、のミとりまなこて、かごもたせ/来(きた)か 00095060M15ゝり、ヤレ+/糸(いと)さん、まちかねた。/屋敷(やしき)のお/客(きやく)が/身請(ミうけ)の 00095070M16/相談(そうたん)/極(きわま)つて、/早(はや)ふ/呼(よん)てこいと/急(きう)の/御使(おつかひ)。サア+ちやつと 00095080M17かごへのりなされと、むりやりに/引立(ひきたて)る。/客(きやく)/大(おゝ)きにおどろ 00095090M18き、ソレやつてハとふもならぬ。/兼(かね)て/深(ふこ)ふ/言(いひ)かわして/有事(あること) 00095100M19ハ、(九ウ)/貴(き)さま/達(たち)も/知(し)つてゐよふ。とふあつても/外(ほか)へハ 00095110M20やられぬ。○/夫(それ)てもモウ/手附(てつけ)ハ/請取(うけとり)ました。/只今(たゞいま)ても五十 00095120¥P299 00095130L1両の/金(かね)さへ/御出(おだ)しなされば、おまへの/方(はう)へ/札(ふだ)か/落(おち)ます。/何= 00095140L2分(なに=ふん)せきますゆへ、/御先(おさき)へ/帰(かへ)りますと、かごを/飛(とは)して/連帰(つれかへ)る。 00095150L3/跡(あと)にほつとといきつぎ、コリヤ/何(なん)とせふ。どふせふ。あれ 00095160L4をのけてハ/生(いき)ても/死(しん)てもしや。/何(なん)でも/五十両(こしうりやう)の/金(かね)/工面(くめん)せね 00095170L5ば、/手(て)にいらぬといふて、/今(いま)/俄(にはか)に/才覚(さいかく)ハ/出来(てき)ず、むねんや 00095180L6/口(くち)おしやと、しだんだふんで、ふつとおもひ/付(つき)、ヲヽ/夫(それ)よ。 00095190L7かなしい/時(とき)の/神(かミ)たゝき(十オ)とハ/此事(このこと)。かのむけんのかね 00095200L8をついて、おのれ/取戻(とりもと)さいで/置(おこ)ふか。/此用水桶(このようすいおけ)をかねとな 00095210L9そらへ、おけにもせよ、しつくいにもせよ、/心(こゝろ)ざす/所(ところ)ハむ 00095220L10けんのかね。/今夜(こんや)か/昼(ひる)になつてもだんない+、/大事(たいじ)ない。 00095230L11むけんのかねとくわんねんし、/既(すで)に/扇(あふき)をふり上る。/屋根(やね)の 00095240L12上よりふりかゝる/小玉(こたま)の/数(かず)+はら++。/爰(すて)に/三十(さんじう)か 00095250L13しこに/五十(こしう)、ひろい/集(あつめ)三〆目。/是(これ)ハ/夢(ゆめ)かうつゝかやと/取上(とりあげ) 00095260L14て、/待(まて)しばし、ハテがてんの/行(ゆか)ぬ。おれか/望(のぞミ)ハ五十両なれ 00095270L15は、/金(きん)て下さるはづじやか、/小玉(こだま)とハふしぎなと、あをむ 00095280L16いて見れは、屋根(やね)ニひやうたんが/有(あ)ツた 00095290¥Y1巻之二△終(十ウ) 00095300¥T1/@慶山(けいざん)|/新製(しんせい)@曲雑話(きよくばなし)巻の三 00095310¥N1¥J 00095320¥X/埃(ほこり)たゝき 00095330M5/町(まち+)+を/浄留(せうる)り/語(かた)りて、/半金太夫(はんきんたゆふ)と/異名(いめう)を/取(とり)たる/非人(ひにん)、/夏(なつ) 00095340M6の/頃(ころ)/上(うへ)ヱ/町(まち)/辺(へん)を/浄(せう)るり/語(かた)り、もらひあるきくたびれて、さ 00095350M7すが/非人(ひにん)の/気(き)さんじ、/京橋(きやうばし)の/詰(つめ)にころりとこけて/高(たか)いびき。 00095360M8/折(おり)ふし/御鉄鉋(おんてつほう)のけいこ/場(は)より、おもひがけなく、ぽん/響(ひゞき)に、 00095370M9/非人(ひにん)ハむつくとおき、Sあゝらふしぎや。/今(いま)/打(うち)してつぽう 00095380M10ハ、/筒(つゝ)に/音(ね)あつて/向(むか)ふに/音(おと)なし。(一オ)/扨(さて)ハ/玉(たま)なきから/鉄= 00095390M11鉋(でつ=ぼう)。/何者(なにもの)のしわさぞと、あたりをにらんて/立(たつ)たる/有(あり)さま、 00095400M12げにことわざにいひ/伝(つと)ふ、/心(こゝろ)がけある/侍(さむらい)ハ、くつわの/音(おと)に 00095410M13目をさますたとへをひくもおろかなり。○といふてゐる/内(うち)、 00095420M14/又(また)ぽん。S見よや/盛綱(もりつな)、そこのそこまでうたがひぶかき/北= 00095430M15条(はう=てう)の/隠(かく)し/目附(めつけ)、/御辺(こへん)が/手(て)にかけざれば、/不忠(ふちう)ニあらず。か 00095440M16れめが不/運(うん)。/今(いま)/又(また)/御(ご)へん、じがいせハ、/鎌倉(かまくら)への/義(き)ハ/立(たつ)へ 00095450M17きが、/腹(はら)の/切様(きりやう)、/早(はや)い+。ハヽヽヽヽけにはやまつたり 00095460M18/我命(わかいのち)といふ/内(うち)、/又(また)ぽん。たこあがれ。そふハのらぬ(一ウ) 00095470¥P300 00095480¥G(三ウ・四オ) 00095490¥N2¥J 00095500¥X月夜に釜 00095510M3/山中(やまなか)/左衛門(さへもん)/義継(よしつぐ)といふ/侍(さむらい)、かの/小(こ)ごうといふ/女(おんな)になれそめ、 00095520M4/古郷(ふるさと)を/捨(すて)て/在所(ざいしよ)/住居(ずまい)。/頃(ころ)しも/弥生(やよい)なかば、なたねの/花(はな)ざか 00095530M5り。/女房(にようほう)/小(こ)ごうを/牛(うし)にのせ、/堤(つゝミ)づたひに/野辺(のへ)を/見渡(ミわた)し、/扨(さて) 00095540M6+/咲(さい)た+。まばゆきほど/咲(さい)たじやないか。/花(はな)にハ/蝶(てう)が 00095550M7たわむるゝ。/我等(われら)ハそなたにたわむるゝと、よだれながし 00095560M8てよねんなく、/牛(うし)の/上(うへ)から/女房(にようほう)、ほんに/縁(ゑん)ハいな/物(もの)あぢな 00095570M9/物(もの)と、たれ/有(あろ)ふ/山中(やまなか)/左衛門(さへもん)/義継(よしつぐ)(二オ)/様(さま)とて、/景図(けいづ)たゞし 00095580M10い/御侍(おさむらい)が、いやしいわたしゆへに、あられもなひ/苦労(くらう)をさ 00095590M11せますとおもへは、いたわしいやらいとしいやら、おもハ 00095600M12ず/涙(なミだ)が。○アヽぐちな+。/弓矢(ゆミや)をすてゝ、すきくわ/持(もつ)も、 00095610M13そなたとかうして/楽(たの)しミたいばつかり。/唯(たれ)/憚(はゞか)らずかふした 00095620M14/所(ところ)が/誠(まこと)の/喜見城(きけんぜう)、まだ/此上(このうへ)どの/様(よう)にならふとも、そなた/故(ゆへ) 00095630M15なら/水(ミづ)も/汲(くミ)ませよ、/手(て)なべもさげませう、そいねや+さ 00095640M16んまさげませう。さんまさげませう。さげがミも/今(いま)ハ/在所(ざいしよ) 00095650M17のはらげ/髪(かミ)。ハヽヽヽヽヽ、どふも(二ウ)いへぬとたわむ 00095660M18るゝ。/半反(はんだん)ばかり/向(むこ)ふのしげミより、さつと/物音(ものおと)。/年経(としふる)/鷲(わし) 00095670M19/一(いつ)さんに/飛下(とひさが)り、/牛(うし)に/乗(のつ)たる/女房(にようぼう)をひつつかミ、/雲井(くもい)はる 00095680M20かに/飛(とん)で/行(ゆく)。/左衛門(さへもん)うろたへて、アレヱ/間男(まおとこ)じや+ 00095690¥P301 00095700¥N3¥J 00095710¥X/追善供養(ついせんくよう) 00095720L3/七月十五日(ひちぐわつじうごにち)/聖霊会(せうりやうゑ)、/例年(れいねん)/亡者(もうじや)を/迎(むか)へ、さま※/馳走(ちそう)して、 00095730L4/則(すなわち)/送(おく)りだんごこしらへ、/婆(ばゝ)さま、/仏前(ぶつぜん)に/向(むか)ひよまいごと。 00095740L5せつかくはる※/御出下(おいてくだ)されても、いつもながら/何(なん)の/御(ご)あ 00095750L6いそも/御座(ござ)りませぬ。(三オ)(三ウ・四オ挿絵)/来年(らいねん)ハどふぞ 00095760L7/御馳走(ごちそう)/申(もふし)ませふと/涙(なミだ)かたてにかんきん/仕(し)まい、サア/兄(あに)や。 00095770L8/御(ご)きげんよふおくりまして/下(くだ)されや。○/息子(むすこ)ハ/一心(いつしん)ふらん 00095780L9/浄(ぜう)るりにこつて/耳(ミヽ)へも/入(い)れず。S/白太夫(しらたゆふ)ハへんしも/早(はや)く/菅= 00095790L10相丞(かん=しやう※)の/御跡(おんあと)したひ、○サア+ちやつと、おくりまして 00095800L11たもいの。○ヲツトがてんと、おがらに/火(ひ)を/付(つけ)、/門口(かどぐち)へ/持(もつて) 00095810L12/出(いて)れハ、/婆(はゝ)さまハしゆずつまくつて/送(おく)り/出(いで)、なむあミだぶ 00095820L13+。/息子(むすこ)/火(ひ)たきながら、/五年(こねん)/十年(じうねん)かくれふと。/婆(はゝ)なむあ 00095830L14ミだぶ+。(四ウ)かならず+/死出(しで)の/山(やま)。○なむあミだ 00095840L15ぶ+。/三途(さんづ)の/川(かわ)の/川(かわ)ばたで、ヱヽヱヽヽヽヽ/待(まつ)てゐて/下(くだ) 00095850L16さんせと。/婆(ばゝ)アヽ/申(もふし)+、/待(また)ずとずつと/御帰被成(おかへりなされ)や 00095860¥N4¥J 00095870¥X/道理打(とふりうち) 00095880L19/岩国屋(いわくにや)/藤六(とふろく)といふ/親仁(おやじ)、/扇屋(あふきや)/尾上太夫(おのへだゆふ)に/打込(うちこミ)、/場詰(ばつめ)にして 00095890L20/夜毎(よごと)+に/通(かよ)へ/共(とも)、ふつて+ふりつめられ、かわいさあ 00095900M1まつてにくさもにくし、/何(なに)とかして/此(この)むねんをはらさんと、 00095910M2さま※/心(こゝろ)をつくし、よし+、/今宵(こよい)きやつにつらはぢか 00095920M3ゝ(五オ)せてはらハんと、たくミすまして、いつもの/刻限(こくけん) 00095930M4に/住吉屋(すミよしや)へのり/込(こむ)。ていしゆ/飛(とん)で/出(いで)、ソリヤ/岩藤大臣(いわふしだいじん)の/御= 00095940M5成(お=なり)しや。ちやつと/太夫(たゆふ)さまへ/御(お)しらせ申せ。さぞ/御待(おまち)かね 00095950M6とそやし/立(たて)る。/岩藤(いわふし)、/今宵(こよい)ハ/一物(いちもつ)/有(ある)ゆへ、/扨(さて)/此頃(このころ)ハ/太夫(たゆふ)も 00095960M7どふやら/気(き)のうかぬ/様子(ようす)に見へる。/何(なん)でも/今夜(こんや)ハわつさり 00095970M8と/大(おゝ)さわきして/太夫(たゆふ)を/引立(ひきたて)、おもしろふ/楽(たの)しむ/積(つも)りじや。 00095980M9げいこも/四五(しご)まい、/天神(てんしん)も/四五(しご)ひき、/芸者共(げいしやども)も/集(あつ)めてこい 00095990M10と、/大座敷(おゝさしき)に/万燈(まんど)のごとくてらして/待間(まつま)(五ウ)/程(ほど)なく、/太= 00096000M11夫(た=ゆふ)を/始(はじ)め/天神(てんじん)、げい/子(こ)/追&(おひ+)にあつまりひき/立(たて)る。おどりさ 00096010M12わげ/共(ども)、/太夫(たゆふ)ハすゝまぬ/顔付(かほつき)に、/岩藤(いわふじ)/今(いま)こそとにぢり/寄(より)、 00096020M13/何(なん)と/太夫(たゆふ)。うかぬ/顔(かほ)じやの。/此岩藤(このいわふじ)ハ/先(せん)もじより、/君(きミ)かき 00096030M14げんを/取(とら)ふとて、ことなふ/心労(しんろう)いたし、きつふかたがつか 00096040M15へた。/御苦労(ごくろう)ながら、かた/一(ひと)つもんで/給(たま)われ。○コレ/吉弥(きちや)。 00096050M16おかたをもんて/上(あけ)ましや。○イヤ+、われハ/頼(たの)まぬ。/太= 00096060M17夫(た=ゆふ)。/毎夜(まいよ)/通(かよ)ふので/足(あし)に/大(だい)ぶん/身(ミ)が/入(いつ)た。ちともんでもらを 00096070M18ふと、ひざの/上(うへ)に/足(あし)なけ/出(た)せバ、おしのけて、わたしハ 00096080M19(六オ)あんまのけいこハいたしませぬ。○ムヽもつとも。 00096090M20ヤコレ、/尾上(おのへ)どのヤ。/尾上殿(おのへどの)へ。こなさんの/親(おや)ごハ/大名(たいめう)で 00096100¥P302 00096110¥G(七ウ・八オ) 00096120M1ゑすか。/又(また)/御公家(おくげ)でごんすか。サ、/何(なん)といふ大/名(めう)で、どこ 00096130M2の国を/取(とり)てござるへ。/名(な)ハ/何(なん)といひますぞ。○そんな/事(こと)ハ 00096140M3そんしませぬ。○ムヽしらしやるまい。よもや/大名(たいめう)/高家(かうけ)の 00096150M4/娘(むすめ)を、けいせいにハ/売(うる)まい。/町人(ちやうにん)でも/中(ちう)から/上(うへ)の/娘(むすめ)を、/売= 00096160M5女(はい=じよ)にする/者(もの)ハ/有(ある)まい。/大(おゝ)かたかあんま/取(とり)か、かごかきか、 00096170M6/雲介(くもすけ)か、/鉢坊主(はちぼうす)か、/六(ろく)な者の/娘(むすめ)ハなひ。/夫(それ)に/何(なん)じや。あん 00096180M7まのけいこハしらぬ。ヤ、おきあが(六ウ)れやい。/大(だい)まい 00096190M8の/金銀(きんぎん)ついやして/楽(たの)しミにくる/此岩藤(このいわふじ)、/何(なに)が不/足(そく)ですねる 00096200M9のじや。その/全盛(ぜんせい)がほ、おいてもらをふ。/大(おゝ)キなかほ、お 00096210M10いて/下(くた)されや。ヤ、/此岩藤(このいわふじ)ハお/金(かね)持。ヲヽお/大臣(だいしん)。/金(かね)のい 00096220M11こふで/自由(じゆふ)にする。/此月中(このつきぢう)ハおれか/揚詰(あげづめ)、/又(また)あすのばんに 00096230M12/来(き)ていぢつて見よふ。そふおもふて/待(まつ)て/居(い)よと、/心(こゝろ)ハあと 00096240M13に/尾上(おのへ)をハSにらミ/廻(まわ)して/立帰(たちかへ)る。/尾上(おのへ)は/跡(あと)を/打(うち)見やり、 00096250M14こらへ+しため/涙(なミだ)、一どにわつとふししづミ、/身(ミ)もうく 00096260M15斗になき/居(い)たる。あまたの(七オ)(七ウ・八オ挿絵)/女郎衆(じよろしう)が 00096270M16/立寄(たちよつ)て、コレ+/申(もふし)、/尾上(おのへ)さん。あのにくてらしいおひぼ 00096280M17れの、/気侭(きまゝ)ハつねからよふ/御(ご)ぞんし。おはら/立(たち)ハお/道(どふ)理な 00096290M18れど、いがミのくせじやと/思召(おほしめせ)。かならずお/気(き)にさへられ 00096300M19ずと、まづ+/一(しとつ)つお/上(あが)りとすゝめ/立(たて)られ、さかづきを/取= 00096310M20上(とり=あけ)ながらにさしうつむき、あんなごくどが/広(ひろ)い世/界(かい)に、/又(また) 00096320¥P303 00096330L1も/一(ひと)人リとすくない/親仁(おやじ)。/早(はよ)ふてこねてしまわぬか。あす 00096340L2ハ/又(また)/来(き)ていぢりをろ。わしやどふせふぞいな。とふぞしあ 00096350L3んをしておくれんかいな。中/居(い)が、待なされ。わしがよい 00096360L4/事(こと)(八ウ)見/付(つけ)て/置(おい)た。あの/客(きやく)のくせとして、たゞひざをふ 00096370L5るわす。あれハびんほうゆぶりとやらいふ。/是(これ)をたねにし 00096380L6て/打(うち)かへす/仕様(しよう)ハ/有(ある)まいか。○ヲヽ/成程(なるほど)+。/夫(それ)ハわしも 00096390L7しつてゐる。/此(この)あなをたねにして、あすのばんに/敵打(かたきうち)。/首= 00096400L8尾(しゆ=ひ)よふほんもふとげ給へと、しめし/合(あハ)せて、/明(あく)る日を/待間(まつま) 00096410L9/程(ほど)なく、/又(また)よく/日(じつ)いつもの/刻限(こくけん)、/岩藤大臣(いわふじだいじん)/来(く)ると/其侭(そのまゝ)、/夫(それ)、 00096420L10/雲介(くもすけ)が/娘(むすめ)を/呼(よん)でこいと、/例(れい)の/悪口(あつこう)。/太夫(たゆふ)も/今宵(こよい)ゐしゆがへ 00096430L11しせんと/工(たく)ミすまして、/機(き)(九オ)/嫌(げん)よふはじめからべたづ 00096440L12き/合(あい)。ホ、かごかきの/娘子(むすめご)。/夜前(やぜん)ハさぞ/御腹立(おはらたち)てござりま 00096450L13せふ。○/何(なん)のまあ/改(あらたま)つた。わたしを/思(おも)ふておくれりやこそ、 00096460L14おく/底(そこ)のない/真身(しんミ)のお/詞(ことハ)。おろそかにハぞんしませぬ。し 00096470L15たが、わたしを/思(おも)ふておくれるからハ、おまへの/事(こと)もゑん 00096480L16りよなしにいふぞへ。○ヲヽ/何(なに)なりと/承(うけたまわろ)ふ。サヽ/早(はや)ふ/仰(おゝせ) 00096490L17られ。○アノおまへハいつでも/膝(ひざ)をゆぶりなさるが、あれ 00096500L18ハ/何(なん)の/為(ため)でござんすへ。○ハヽアあれハの、/貴(き)さまのおや 00096510L19のまねじや(九ウ) 00096520¥N5¥J 00096530¥X/勝手(かつて)/推量(すいりやう) 00096540M3/端哥(はうた)のけいこにこつて、/毎日(まいにち)+/通(かよ)ひ、/忘(わす)れぬ様に/道(ミち)すが 00096550M4ら/三味(さミ)の/手品(てしな)して、/中音(ちうおん)に、/一(ひと)つや/二(ふた)つや/三(ミつ)つや/四(よつ)つ、/四(よつ) 00096560M5つ/橋(ばし)/四(よ)すし/四(よ)つ/辻(つじ)をと、/我(われ)を/忘(わす)れてうたふて/通(とふ)る。/行違(ゆきちが)ひ 00096570M6に/顔(かほ)をながめて、あつたら、/月夜(つきよ)に/星(ほし)がないといへば、 00096580M7○ふり/返(かへ)つて、てきめもゑらふこつておるそふな 00096590¥N6¥J 00096600¥X/大身鑓(おふミやり) 00096610M10/浄留(せうる)りにゑらふこつて、/無(な)ひ/声(こへ)をむりにかすり/出(た)し、/毎晩(まいばん) 00096620M11+/夜(よ)のふける/迄(まて)、/近所(きんしよ)もかまわす/菅原(すがわら)の/三段(さんだん)め。(十オ) 00096630M12/憚(はゞか)りありやめうがなや、/百(ひやく)ぺん/程(ほと)やつて見ても、なんぽう 00096640M13にも上ミに/通(とを)りにくひ。/折(おり)から/下役(したやく)が/門(かと)ト/口(くち)とん+とた 00096650M14ゝいて、/火(ひ)の/元(もと)/御用心(ごようしん) 00096660¥Y1巻之三△終(十ウ) 00096670¥P304 00096680¥T1@/慶山(けいざん)|/新製(しんせい)@/曲雑話(きよくばなし)巻之四 00096690¥N1¥J 00096700¥X/芸(けい)は/身(ミ)を 00096710L5/道楽橋(とうらくバし)の/両詰(りやうつめ)に、/四軒(しけん)の/床髪結(とこかミゆひ)あり。/中(なか)にも/茂介(もすけ)といふ/者(もの)、 00096720L6/端哥(はうた)にゑらふこつて、しぜんとくせが/手(て)にうつり、/哥(うた)に/合(あわ) 00096730L7せて/髪(かミ)のゆひぶりが/替(かわ)るとて/評判(ひやうばん)になり、/若(わか)い/衆(しう)が/物(もの)ずき 00096740L8に、ナント/喜兵(きひやう)。/茂助(もすけ)が/店(ミせ)ゑらい/物(もの)じや。/端(は)哥の/文句(もんく)で/髪= 00096750L9結(かミ=ゆ)ふか、/何(なん)でもこちから/望(のそミ)/次第(しだい)じや。いて見い。おつと/合= 00096760L10点(か=てん)と、/件(くだん)の/床(とこ)へゆき、/御苦労(こくろう)ながら(一オ)一つ/御頼(おたのミ)じや。 00096770L11ハイ+。/何(なん)ぞ/御望(おのぞミ)がござりまする。イヤ+、/何(なんに)も/望(のぞミ)ハ 00096780L12ないが、なんぞ/面白(おもしろ)そふなものでやつて/下(くだ)んせ。ハイ。/心= 00096790L13得(こゝろ=へ)ましたと、髪をとき、○いつぞや/和田(わた)の/大(おゝ)よせに、しや 00096800L14うじけやぶり、/三宝(さんぼう)をみぢんになして/二王立(にをうたち)。ハイ。よふ 00096810L15ごさります。わげをまき/立(たて)にごついあたま。/是(これ)ハどふいふ 00096820L16/文句(もんく)でごんす。ハイ。ゐけん/曽我(そか)/五郎(ごろう)わげてござり/升(ます)。な 00096830L17るほど/是(これ)ハおもしろいと、/悦(よろこ)んで/戻(もと)り、/友達(ともだち)に、コリヤ見 00096840L18い。/五郎(ころう)わげじや。/何(なん)とゑらいか。○ヲツト、おれもいて 00096850L19見(一ウ)よふと、ずつとはいり、/一(しとつ)つ/御頼(おたのミ)申さふ。わしハ 00096860L20あんまりごついのハいやじや。おとなしうやつて/下(くだ)んせ。 00096870M1/心(こゝろ)へましたと/櫛(くし)/取出(とりだ)し、/坂田(さかた)/藤十郎(とうじうろ)、/杉山(すきやま)/勘弥(かんや)、/扨(さて)ハ/玉川(たまがわ) 00096880M2/半太夫(はんだゆふ)。ハイ。よふござります。/高(たか)づとに/丸(まる)わけ。コリヤ 00096890M3どふいふ/物(もの)じや。ハイ。/是(これ)ハ/当世(とうせい)やつしふう/金屋(かなや)/金五郎(きんごろ)わ 00096900M4げ。/成程(なるほど)/上手(ぜうず)じやと/悦(よろこ)び、/又(また)/友達(ともだち)にふいちやうすれバ、お 00096910M5れもいて見よふと/急(いそ)いで/走(はし)り、どふぞ一つしておくれ。/折(おり) 00096920M6ふし/用事(ようじ)ありて、/替(かわ)りにすけが/居合(いあわし)、/只今(たゞいま)ちと/用(よう)が/有(あつ)てい 00096930M7なれましたが、(二オ)/大事(たいじ)なくバわたし、いたしませふか。 00096940M8○お前もやはり/哥(うた)で/出来(でけ)るかへ。ハイ。まだけいこでござ 00096950M9りますけれと、/随分(ずいぶん)いたしませふ。そんならバ/御(ご)くらうな 00096960M10がらと/取(とり)かゝり、/雲(くも)にかけはしかすミにちどり、およびな 00096970M11いとてほれまい/物(もの)か、しづがふせやの/月(つき)を見よ。/哥(うた)に/性根(せうね) 00096980M12をいれて/手(て)ハおるすになり、/耳(ミヽ)のきわニわげをつけて、ハ 00096990M13イ。よふござり/升(ます)。○コリヤどふじや。/耳(ミヽ)の上にわげが/有(ある)。 00097000M14/何(なん)の/事(こと)じや。ハイ。/夫(それ)て/始(はじめ)からお/断(ことわり)申ます。ほんのけい 00097010M15こでござります。○/何(なん)ンほふ(二ウ)けいこじやといふても、 00097020M16あんまりあほらしい/事(こと)じや。どふでも/貴(き)さまハへたじや/物(もの)。 00097030M17○ぬからぬ/顔(かほ)で、ひでま+ 00097040¥N2¥J 00097050¥X/両面鏡(りやうめんかゝミ) 00097060M20/扨(さて)/茂介(もすけ)の/店(ミせ)、/右(ミき)の/通(とをり)にてゑらふはづますゆへ、むかいの/頓= 00097070¥P305 00097080¥G(三ウ・四オ) 00097090M1作(とん=さく)、/一通(ひととを)りでハゆかぬと/工夫(くふう)して、もふ/端哥(はうた)でハいかぬ。 00097100M2こつちハ/義太夫(きたゆふ)て/仕似(しに)せて見せると、/道行(ミちゆき)かんばん出せハ、 00097110M3サアはづミ/出(だ)した。/頓作(とんさく)が/店(ミせ)ハ/道(ミち)行でするげな。こいつハ 00097120M4/花(はな)やかでよからふと、(三オ)(三ウ・四オ挿絵)/我(われ)も+と/結(ゆ) 00097130M5ひに/来(く)る。/御苦労(こくらう)ながら/一(ひとつ)つ、/忠臣蔵(ちうしんぐら)の/道行(ミちゆき)でやつておく 00097140M6れ。/心(こゝろ)へたりと/声(こへ)はり/上(あげ)、/母(はゝ)のおもひハ/山科(やましな)の、むこの/力= 00097150M7弥(りき=や)をちからにて、/住家(すミか)へおして/嫁入(よめいり)ハ、/世(よ)にあるなしの/義= 00097160M8理(ぎ=り)/遠慮(ゑんりよ)、こしもとつれず/乗物(のりもの)も、やめて/親子(おやこ)の/二人(ふたり)づれ。 00097170M9/都(ミやこ)の、ハイ。よふござります。わげをてつへいにまき/立(たて)に 00097180M10いふてある。コレハどふいふ/気(き)で/忠臣蔵(ちうしんぐら)じや。○あの/道行(ミちゆき) 00097190M11ハ、/鎌倉(かまくら)から/京(きやう)/登(のほ)りの/道中(ミちゆき)でごさります。/右(ミき)のびんからが 00097200M12/東海道(とうかいとう)、/左(ひたり)リのびんからが/中仙道(なかせんどう)、/真(まん)(四ウ)/中(なか)のわげがふ 00097210M13じ/山(さん)のかたちでござります。なるほど/尤(もつとも)じやと/友達(ともだち)に見せ 00097220M14て、/義太夫(きたゆふ)のほうが/上手(ぜうず)じや。ヲツトおれもいこふと、の 00097230M15れんあげ、とふぞ/頼(たの)ミます。ハイ。なんでいたしませふ。 00097240M16○なんぞ/花(はな)やかな/物(もの)でやつておくれ。/妹背山(いもせやま)の/道行(ミちゆき)ハどふ 00097250M17でござりませふ。○よかろ+。ずいふんはりこんでやつ 00097260M18ておくれ。かしこまつたと/高調子(たかてうし)。/水(ミづ)ぎハの/立(たつ)よいとのご、 00097270M19/外(ほか)の/女(おな)ごハきんぜいと、しめてかためたはだとはだ、/女(おんな)て 00097280M20いきんしつけがた。よふおもふても見やしやんせヱヽヽ 00097290¥P306 00097300L1(五オ)/女中(じよちう)さん。ハイ。よふござります。びんをたかくと 00097310L2きあげ、うしろをそり/下(さ)げ、/本田(ほんだ)わげにいふてある。コレ 00097320L3ハどふして/妹背山(いもせやま)じや。ハイ。まへから見るとお/公家(くげ)さま、 00097330L4うしろから見ると/侍(さむらい)さまじや 00097340¥N3¥J 00097350¥Xおやまの/禁物(きんもつ) 00097360L7サアむかいがハの/床(とこ)ハ、/端哥(はうた)やら/道行(ミちゆき)やで、ゑらふはづま 00097370L8すゆへ、こちらがハの/客(きやく)もミな、/向(むか)ひがわへ/行様(ゆくよう)になり、 00097380L9/是(これ)でハつまらぬと/心案(しあん)して、しよせん/同(おな)じ(五ウ)/形(かた)でハい 00097390L10かぬ。こつちハ/宮園(ミやぞの)てやつて見よふと、かんばん/出(だ)す。ヒ 00097400L11ヤアこいつハ/又(また)めづらしいと、ずつとはいり、/園(その)で/一(ひとつ)つや 00097410L12つておくれ。/心(こゝろ)へました。/何(なに)がよふござりませふな。/千両= 00097420L13幟(せんりやう=のぼり)か/梅川(むめがわ)か、/夕(ゆふ)ぎりか/桂川(かつらかわ)か。なんなりとお/望(のぞミ)なされ。 00097430L14ハヽア、かつら/川(がわ)がよかろふかい。ヲツト/合点(かてん)とせきばら 00097440L15ひ。/是(これ)ハかつらの/川水(かわミづ)に、/浮名(うきな)を/流(なが)すうたかたの、あわと 00097450L16きへ/行(ゆく)/信濃屋(しなのや)の、おはんを/背(せ)なに/長右衛門(ちやうへもん)、/負(おふ)てそぐわぬ 00097460L17あだ/枕(まくら)、/一時(しととき)ほどかゝつてやう+/結(ゆひ)しまい、ハイ。よふ 00097470L18ござります。(六オ)これがすなわち/桂川(かつらがわ)、/長右衛門風(ちやうへもんふう)てご 00097480L19ざります。/客(きやく)あたまをなでゝ、/是(これ)ハ/御苦労(こくろう)と、/三十弐文(さんじうにもん)/払(はら) 00097490L20ふて/出(で)るを、/申(もうし)+、これハちつと/銭(ぜに)がたりませぬ。○な 00097500M1ぜに。どこでも/直(ね)ハ/極(きわま)つて/有(ある)。/端哥(はうた)でも/道行(ミちゆき)でも、/三十弐= 00097510M2文(さんじうに=もん)づゝでいふてもらふが。ハイ。/外(ほか)ハそれでも、/此方斗(これほうばかり)ハ 00097520M3/百文(ひやくもん)づゝでござります。/三十弐文(さんじうにもん)でハどふをもあいませぬ。 00097530M4/是(これ)ハ/又(また)かわつた/事(こと)。こゝ/斗(はかり)あハぬといふハどふした/物(もの)じや。 00097540M5ハイ。よふおもふてごらふじませ。/今(いま)の/日(ひ)でやう+/三(ミ)つ 00097550M6ならで/出来(てき)ませぬ(六ウ) 00097560¥N4¥J 00097570¥X/仕打当(しうちあた)り 00097580M9/三軒(さんけん)の/床(とこ)、/件(くだん)の/通(とを)り/色(いろ)+に/仕方(しほう)をつけてはづますゆへ、 00097590M10/一軒(いつけん)のこつて、とんと/客(きやく)ハこず。あくミはてゝ、よう+ 00097600M11/工夫(くふう)をこらし、とふぞ/仕様(しよう)ハない/事(こと)かとしあんをめぐらし、 00097610M12/有(ある)ぞ+。/哥(うた)や/浄(ぜう)るりより、こつちハ/謡(うたひ)を/出(た)してゆすつて 00097620M13こまそ。/又此方(またこのほう)ハひんがあるゆへ、よい/旦那衆(たんなしう)が/来(く)るて/有(あろ) 00097630M14ふとおもひ/付(つき)、/則(すなわち)/番組(ばんぐミ)のかんばん/出(た)せハ、/初日(しよにち)より/仁(じん)た 00097640M15いらしい/親仁(おやじ)、/入口(いりくち)に(七オ)(七ウ・八オ挿絵)たゝずミ、なふ、 00097650M16/此店(このミせ)へあん/内申(ないもふし)候。あまり/頭(かしら)が見/苦(ぐる)しく候/程(ほと)に、/御苦労(ごくらう)な 00097660M17がら/御手(おて)をからはやと/思(おも)ひ候。○いざまづ/是(これ)へ/御(おん)入候へ。 00097670M18/扨(さて)/謡(うたひ)ハ/何(なに)が/御所望(ごしよもう)てござりますな。されバ/何(なん)ぞ/修羅物(しゆらもの)がよ 00097680M19からふかい。ハイ+。/左様(さやう)ならハ/頼政(よりまさ)か/兼平(かねひら)か、/綱(つな)がよ 00097690M20からふかい。/承知(せうち)いたしたと/髪(かミ)ときほどき、/尤(もつとも)らしい/声(こへ)に 00097700¥P307 00097710¥G(七ウ・八オ) 00097720M1て、/羅生門(らしやうもん)の/石(いし)だんに/上(あが)り、/印(しるし)の/札(ふた)を/取出(とりだ)し。/客(きやく)、のりが 00097730M2きて、ひやうし取、ハツハツ、/檀上(だんせう)に/押立(おしたて)/帰(かへら)んとするを。ハ 00097740M3ツハツハツ。うしろより(八ウ)かぶとのしころをつかんで 00097750M4/引上(ひきあけ)たりと、りきむ/拍子(ひやうし)に、たふさつかんで/引上(ひきあく)れば、/客(きやく) 00097760M5/両手(りやうて)を/上(あ)けて、ヒヤヒヤア 00097770¥N5¥J 00097780¥X/打(うち)かぎ 00097790M8/松屋町(まつやまち)/筋(すじ)/松山町(まつやままち)に、/松本屋(まつもとや)/松右衛門(まつゑもん)といふ/分限者(ふげんしや)/有(あり)。/此松(このまつ) 00097800M9右/衛門(へもん)、/生得(せうとく)/松(まつ)すきにて、/諸木(しよほく)の/中(なか)に/松程(まつほと)/目出(めて)たい/木(き)ハな 00097810M10い。/千歳(ちとせ)をたもつ/名木(めいほく)と、/甚(はなはた)/松(まつ)を/愛(あい)して、/家蔵(かそう)のふしんに 00097820M11/余木(よほく)を/一本(いつほん)もまじへず。/松(まつ)/一色(いつしき)に/作(つく)り/立(たて)、らんまのほり/物(もの)、 00097830M12/屏風(ひやうぶ)/襖(ふすま)、ついたての(九オ)/絵迄(ゑまて)ものこらす/松(まつ)をかゝせ、/坪(つぼ) 00097840M13の/内(うち)にハ/日本国(につぽんごく)に/名(な)の/通(とを)つた/名木(めいぼく)の/松(まつ)をうつし/植(うへ)ならベ、 00097850M14/或(あるい)ハ/高砂(たかさこ)/尾上(おのへ)の松、/曽根(そね)の松、/唐崎(からさき)の松、/住吉(すミよし)の松、/其外(そのほか) 00097860M15あらゆる松/一色(いつしき)をうつし、/内室(ないしつ)ハ/松坂(まつざか)から/呼迎(よひむか)へて、/名(な)ハ 00097870M16おまつ。むすこが松之助。/娘(むすめ)ハ/小(こ)まつ。/孫(まこ)ハ松太郎。/手代(てだい) 00097880M17が松兵衛、松八、松助。/丁稚(てつち)の長松、三松、久松。/扨(さて)/例年(れいねん) 00097890M18/正月(せうくわつ)松の/内(うち)に、松はやしのせちとて、/一家中(いつけぢう)/別家中(べつけぢう)あつ 00097900M19めて松の/間(ま)にて/大振舞(おゝふるまい)。/主(あるし)松右衛門/上座(ぜうざ)に/居(い)て、/扨(さて)+/何(いづ) 00097910M20れも/今日(こんにち)ハ/賑(にぎ)&しう/御出被下(おんいてくたされ)、/大慶(たいけい)/此上(このうへ)なし。(九ウ)/扨(さて) 00097920¥P308 00097930L1/我等(われら)、/今年(ことし)/丁(てう)/七十(ひちゞう)なれ/共(ども)、ついに/今日(こんにち)まで/風薬(かせぐすり)/一(いつ)ふくの 00097940L2まず、/灸(やいと)一つすへた事ハない。/是何(これなに)ゆへ。/生(うま)れ/付(つい)て/松(まつ)を/愛(あい) 00097950L3するゆへ、/誠(まこと)に/千歳(せんざい)をあやかるといふもの。あれ/御(こ)らうじ。 00097960L4/庭(にわ)にハ/諸国(しよこく)/音(おと)に/聞(きこ)へたる松を、/言&(こと+)く/植込(うへこミ)、/高砂(たかさこ)/住吉(すミよし)、/其= 00097970L5外(その=ほか)/松(まつ)におゐてハ不/足(そく)ハ/有(ある)まいといふてゐる/折(おり)から、/門(かど)ト/口(くち) 00097980L6へ/出入(ていり)の/肴屋(さかなや)が、/五葉(ごよう)ハ+ 00097990¥Y1巻之四△終(十オ) 00098000¥T1@/慶山(けいさん)|/新製(しんせい)@/曲雑話(きよくはなし) 00098010¥N1¥J 00098020¥Xことば/質(じち) 00098030M5わしや/袷羽織(あわせばおり)/一(しとつ)つ/買(かふ)てかふと/思(おも)ふか、ひとりハゆきにくい。 00098040M6/貴(き)さま、ちよつと/座摩(ざま)の/前(まへ)まて/来(き)てくれぬか。○ヲヽいて 00098050M7やろふと、/二人連(ふたりづれ)て/古手屋(ふるてや)ぞめき。やう+/拾五匁(じうごもんめ)で/京奥(きやうおく) 00098060M8の/羽織(はおり)/買(かふ)て、すぐに/着(き)てゐのふと、/袖通(そでとを)しあるきながら、 00098070M9ゑり/袖(そて)/見廻(ミまわ)して、/何(なん)とわしに/似合(にあふ)か、見て/下(くだ)され。○ヲヽ 00098080M10/似合(にあう)+。ゑらふひんがよふなつた。そふした/所(ところ)ハ、とん 00098090M11と/紙治(かミじ)(一オ)といふ/風(ふう)じや。○/何(なに)をじやら+と。ほんま 00098100M12の/所(ところ)いふてくれ。○イヤ、うそじやない。とんと/紙治風(かミじふう)じ 00098110M13やとおだてられ、ちとのりがきて、S/天満(てんま)に/年(とし)ふるちはや 00098120M14ふる/神(かミ)にハあらぬかミさまと、/塩町(しをまち)うつしてやつて/通(とを)る。 00098130M15/行違(ゆきちが)ひに、ヨウ+かたつてさま+。○/何(なに)をぬかすのじ 00098140M16やい。かたりやせぬわい。/今(いま)/買(かふ)て/来(き)たのじやわい 00098150¥N2¥J 00098160¥X/果太皷(はてだいこ) 00098170M19/治(おさま)りし/世(よ)を/恨(うら)ミたる/浪(ろう)人の/大小(たいしよう)さすが、/一(ひと)ト(一ウ)くせ/有(ある) 00098180M20つらを/隠(かく)せし/深(ふか)あミがさ。のつさ+と/一人(ひとり)の/浪人(ろうにん)。/南(ミなミ)の 00098190¥P309 00098200¥G(二ウ・三オ) 00098210M1/御堂(ミとふ)の/内(うち)へはいり、/椽(ゑん)がハかららんかにもたれて、/東(ひかし)の/方(かた) 00098220M2を見はらし、/坂本(さかもと)の/方(はう)をきつと見て/軍慮(ぐんりよ)の/工夫(くふう)。ムヽ/当城(とうぜう) 00098230M3をのつ/取(とる)にハ、/石山(いしやま)を/本陣(ほんぢん)と/定(さだ)め、/二万余騎(にまんよき)を/三手(ミて)に/分(わけ)、 00098240M4/一方(いつはう)ハ/勢田(せた)/粟津(あわす)にたむろをかまへ。/折(おり)ふし、/御堂(ミどふ)の/前(まへ)を/山= 00098250M5上参(さん=ぜうまい)りの/下向(げかう)が、ほら/貝(かい)ブウ。/太皷(たいこ)/矢倉(やぐら)からドン。ブウ、 00098260M6ドン。/今(いま)/一方(いつはう)ハ/堅田(かたた)/唐崎(からさき)に/舟手(ふなて)を/取切(とりきり)。ブウ、ドン。/残(のこ)る 00098270M7/惣勢(そうぜい)、/坂本(さかもと)のふもとに/押寄(おしよせ)。(二オ)(二ウ・三オ挿絵)ブウ、ト 00098280M8ン。残るとあをむいて見れば、/土手一面(どていちめん)にさつきの/花(はな)ざか 00098290M9り。ハヽア/見事(ミごと)+。げに/誠(まこと)、/明智光秀(あきちミつひて)が/愛宕山(あたごさん)の/発句(はつく)に、 00098300M10/時(とき)ハ/今(いま)といふたら、そバにゐる/婆(は)さまが、/今(いま)なるのハ/八(や)つ 00098310M11でござります 00098320¥N3¥J 00098330¥X/薮仙人(やふせんにん)/物語(ものがたり) 00098340M14/梶原(かじわら)/玄宅(げんたく)といふ/鍼治(けんち)のゐしや、/病家(びやうか)へ/見舞(ミまい)、/様躰(ようだい)を見て、 00098350M15/是(これ)ハ/余程(よほど)の/大病(たいびやう)じや。/併(しかし)/肝症(かんしやう)から出る/病(やまい)なれハ、/格別(かくべつ)/命(いのち)に 00098360M16/気遣(きつか)ひハ/有(ある)まい。これまでどれぞに見せさつしやれたか。 00098370M17ハイ。/左様(さよう)でござ(三ウ)ります。/先達(さきたつ)而/£(より)あれこれ見ても 00098380M18らひましたれども、とんとはか※しうござりませぬ。 00098390M19○/何(なん)として、/此病(このやまい)ハ/中(なか)+/一通(ひととを)りでハ行ぬ。/又(また)/煎湯(せんとう)などハ 00098400M20あびせても、/急(きう)にハ/廻(まわ)るまい。○/左様(さよう)でござります。/是迄(これまで) 00098410¥P310 00098420L1/御薬(おくすり)もたんと/下(くた)さりましたれども、どふかきゝめが見へま 00098430L2せぬ。それゆへ/先日(せんじつ)から、/私方(わたくしはう)こんゐの/法印(はういん)さまに/御頼(おたのミ) 00098440L3/申(もふし)て、/加持(かぢ)を/致(いた)してもらふておりますれど、/是(これ)もいまだ 00098450L4/何(なん)のげんも見へませぬ。○ハテ/扨(さて)、/夫(それ)ハおろかなせんさく。 00098460L5(四オ)加/持(ち)やきとうで/此病(このやまひ)ハなをる/物(もの)なら、/世界(せかい)にゐしや 00098470L6ハいりませぬ。ミな/物取(ものとり)のする/事(こと)。あんな/事(こと)に/迷(まよ)わぬがよ 00098480L7い。/近頃(ちかころ)ハあんなまい/主(しゆ)かはやつて、/世界(せかい)の/人(ひと)を/大(をゝ)きにま 00098490L8よわす。/皆(ミな)/盗人(ぬすひと)/同然(どうせん)じやとそしつてゐる。/次(つき)の/間(ま)へ/山伏(やまぶし)/毛= 00098500L9知院(けい=ぢいん)/聞耳(きゝミヽ)/立(たて)、たまりかねてつか+とかけ入、イヤ、/是御(これお) 00098510L10ゐしや/殿(どの)。/手前(てまへ)ハ/当家(とうけ)/親(した)しう/致(いた)す/毛知院(けいちいん)と/申(もふす)/者(もの)じやが、/先= 00098520L11刻£(せん=こくより)あれにて/聞(きゝ)ていれバ、あぢな/事(こと)を/仰(おゝせ)られる。/加持(かし)きと 00098530L12(四ウ)う/致(いた)すが/物取(ものとり)じやの/盗人(ぬすびと)のと、さま+の/悪口(あつこう)。/其= 00098540L13訳(その=わけ)/聞(きこ)う。/何(なん)で/盗人(ぬすひと)じや。○イヤ、あまりこわ/高(だか)に/仰(おゝせ)られな。 00098550L14/其訳(そのわけ)申さふ。/何(なん)と/胎内(たいない)から/出(で)る/病(やま)ひが、/加持(かじ)きとうて/直(なを)る 00098560L15/法(はう)かござるか。○ヲヽあれバこそ、/上(うへ)つ方にも/諸寺(しよし)/諸山(しよさん)へ 00098570L16/御(ご)きとうが/有(ある)でハないか。○イヤ、/夫(それ)ハ/病(やまい)による。/或(あるい)ハつ 00098580L17き/物(もの)か、/外(ほか)から/身入(ミいれ)/等(とう)の/病(やまい)なれハ、/加持(かし)きとうでのく/事(こと)も 00098590L18/有(あろ)ふが、/五臓(ごぞう)から/損(そん)じて/出(て)る/病(びやう)き、どうで/治(おさま)る/道理(とうり)がない。 00098600L19/其段(そのたん)ハ/此方(このはう)の/鍼術(しんしゆつ)でなけ(五オ)れバ/行(ゆか)ぬ。/定(さだ)めて/其元(そのもと)も/聞= 00098610L20及(きゝ=およ)んでこざらふが、/当春(とうしゆん)/北(きた)のたじまやの/隠居(いんきよ)/大病(たいひやう)で、/十= 00098620M1四五人(じう=しごにん)のゐしやが/残(のこ)らす/手(て)をはなした/所(ところ)て、/我(われ)らが/鍼(はり)/一本(いつぽん) 00098630M2てほんぶくさせたハ、たれしらぬ/者(もの)ハない。○ハヽアこり 00098640M3や/一(ひとつ)つ/聞所(きゝどころ)じや。/夫(それ)ハいつ/頃(ころ)の/事(こと)てごんす。○しかも/早= 00098650M4春(そう=しゆん)S/頃(ころ)ハ/睦月(むつき)の/末(すへ)つかた、/四方(よも)の/病(やま)ひハさいほつとき、 00098660M5/水(ミつ)もりはれ/出(だ)すかの/大病(たいびやう)、うち※する/間(ま)に/取(とり)つめる/夢中(むちう) 00098670M6の/気(き)/上(のほ)り、/乱心(らんしん)たわ/言(こと)すき/間(ま)もなく、/狂(くる)う/目(め)まひは(五ウ) 00098680M7/五六(ごろく)べん、/歯(は)を/喰(くひ)しバれば、いかゞせんと/手(て)にあせにぎつ 00098690M8てつめかけたり。かゝる/病(やま)ひをなをさずハ、いつかほまれ 00098700M9をあらハさんと、/我家(わかいへ)に/伝(つた)ハりし/神伝(しんでん)といふ/名鍼(めいけん)、/羽織(はおり)ぬ 00098710M10ぎ/捨(すて)ひらりと/立寄(たちより)、かの/胸先(むなさき)を/一鍼(いつけん)にさしおろせバ、つゞ 00098720M11いて/跡(あと)へゐしや/一騎(いつき)、はるか/跡£(あとより)/駕(かご)つらせ、はしる/六尺= 00098730M12音(ろくしやく=おとこ(ママ))ハとん+、/誰(たれ)なるらんとふり/返(かへ)れば、/佐&木(さゝき)の/真龍(しんりやう)/赤= 00098740M13顔(あか=つら)、/流義(りうき)ハおとらぬ/本道(ほうとう)/鍼術(けんじゆつ)ゐしや、/相(そう)/并(なら)んで、/何(なん)と+ 00098750M14とはいざ(六オ)いす。○イヤ、コレ+おゐしやどの。/是(これ) 00098760M15までハ/咄(はな)しもならふ。/是(これ)から/先(さき)がりやうじのかんもん。/自= 00098770M16身(じ=しん)にハ/言(いひ)にくかろ。ほうゆうのよしミ、/毛知院(けいしいん)が/替(かわつ)つて/咄(はな) 00098780M17そふといふに、/家来(けらい)が/聞(きゝ)かねて、/旦那(だんなん)さまの/高名咄(かうめうばな)し。/横= 00098790M18合(よこ=あい)からちよこいわずと、だまつてすつこんていさしやませ。 00098800M19○ヤアゐしやらしい、かた/持(もつ)な。われにハかまわぬ。/今(いま)の 00098810M20あとハかふて/有(あろ)ふ。/佐&木(さゝき)ハ/聞(きこ)ゆる/功者(かうしや)もの。/貴(き)さまハし 00098820¥P311 00098830¥G(七ウ・八オ) 00098840M1れた/赤(あか)べた/殿(との)。ついに/佐&木(さゝき)にもりまけたり。○イヤ+ 00098850M2++、(六ウ)/何(なん)の/旦那(たんな)がまけ/給(たま)わん。しらぬながらも 00098860M3/我(われ)らがすいりやう。/積(しやく)ハ/肝(かん)の/臓(ぞう)をやぶり/胸先(むなさき)に/横(よこ)たわり、 00098870M4/十(しう)ぶんにさし/込(こん)で/五臓六府(ごぞうろくふ)をなやませしに、とんちの/旦那(だんな) 00098880M5/玄宅(けんたく)さま、/鍼(はり)をするりとぬき給ひ、/大骨(おゝぼね)/小骨(こぼね)つきさがし 00098890M6+なされたでござりませふ。○ホヽ/家来(けらい)がいふに/違(ちが)ひな 00098900M7く、/積(しやく)ハ/忽(たちま)ち/追(おひ)おろし、/佐&木(さゝき)か/盛(もつ)たる/一薬(いつやく)ハ、/一時斗(いつときはかり)お 00098910M8そかつたり。○アレ/聞(きゝ)給へ、まけハなされぬ。/嬉(うれ)しや+。 00098920M9/夫(それ)/聞(きひ)てきもかおへたと/悦(よろこ)へば、○/毛知院(けいしいん)(七オ)(七ウ・八オ 00098930M10挿絵)どたまを/打(うち)ふつて、/某(それかし)/佐&木(さゝき)になりかわり、/一(ひと)トも 00098940M11んどう/仕(つかまつ)らん。/其時(そのとき)/赤(あか)づら/大音(たいおん)/上(あげ)ケ、コレ+/薮医者(やふいしや)、/鍼(はり) 00098950M12がいかんて見へ候。/折込(おりこま)してけがさすなと、/声(こへ)をかけたて 00098960M13/有(あろ)ふがの。オヽヽヽくわしくもよくしつたり。/某(それかし)はつと/心(こゝろ) 00098970M14つき、/右(ミき)のはりを/口(くち)にくわへ、/胸(むね)と/腹(はら)とに/諸手(もろて)をかけ、お 00098980M15しさげなで/下(さ)げ、しつかとだく。○ソレ+/夫(それ)かうつかり。 00098990M16/折(おれ)ぬはりを/折(おれ)たといふハ、こなたをへたと見ぬいたけいり 00099000M17やく。うぢ+めさるゝ/其(その)ひまに、さつと/佐&木(さゝき)が(八ウ) 00099010M18/早(はや)/気付(きつけ)、ゐしやの/天上(てんしやう)/件(くたん)の/功能(こうのう)、/今(いま)/近江(あふミ)/伝授(てんしゆ)の/一流(いちりう)、/佐&= 00099020M19木(さゝ=き)の/真龍(しんりやう)/赤顔(あかづら)内方の/典薬(てんやく)なりと/呼(よハ)わつたり。/何(なん)とミぢんも 00099030M20/違(ちが)ひハ/有(ある)まいが、/返(へん)答あらバいふて見やれ。それでも/貴(き)さ 00099040¥P312 00099050L1まじまんするか。/似合(にあふ)た/様(よう)に、あんまでもひねつてゐやれ。 00099060L2○イヤ、ぞん/外(くわい)な/一言(いちこん)。/人(ひと)の/悪口(あつこう)を/聞(きゝ)ばつりて、さま+ 00099070L3のたハ/言(こと)。/凡(およそ)/今(いま)/日本(につぽん)に、/此方(このほう)の/流義(りうき)の/鍼(はり)かあらバ/聞(きこ)ふ。耆 00099080L4婆流のりやうじする/者(もの)ハおれ/斗(はかり)。/人(ひと)の/病(やまい)の/有(ある)/所(ところ)、とくと見 00099090L5/定(さだ)め、あて/殺(ころ)して/置(おい)て、その(九オ)/所(ところ)を/切(きり)あばき、/悪血(あくけつ)を 00099100L6/引出(ひきだ)し、/病(やまい)の/根(ね)をぬいて/仕(し)まい、/跡(あと)を/縫(ぬふ)て/又(また)/活(いけ)いれて本ふ 00099110L7くさすりやうじ。外にしてハ/有(ある)まい。○ムヽ/是(これ)ハ大ぶんお 00099120L8もしろい。もし/又(また)/活(いけ)いれて/戻(もど)らぬ/時(とき)にハどふする。○イヤ、 00099130L9いらざるばか/念(ねん)。/此方(このはう)の/術(しゆつ)をもつてする/事(こと)、めつたに/殺(ころ)し 00099140L10てたまる/物(もの)か。○サア/夫(それ)でも、ひよつと/死(しん)だらどふする。 00099150L11○ハテ、/其時(そのとき)ハ/礼物(れいもつ)とらぬぶんじや 00099160¥N4¥J 00099170¥X/牛(うし)ハ/牛(うし)つれ 00099180L14/謡(うたい)/連(れん)中に/少&(せう+)/取(とり)かへ/有(あつ)て、/度(たい)&さいそくにゆけ(九ウ)と 00099190L15も、しゞう/留主(るす)/遣(つか)ふて/出合(てあわ)ぬ。/扨(さて)+にくい/仕方(しかた)じや。ど 00099200L16ふそ/出(て)合て、めつきしやつきして見たいと/工夫(くふう)して、よし 00099210L17+。てきめハ/謡(うたひ)にかゝつてハ、/食物(くうもの)も/忘(わす)れる/好(すき)じや。謡 00099220L18のふしていて見よふと、/門(かと)ト/口(くち)へ/行(ゆく)と、Sなふ+、/此家(このや) 00099230L19の/内(うち)へあんない申候。/是(これ)ハ/謡(うたい)/修行(しゆきやう)の/者(もの)ニて候が、/一夜(いちや)の/宿(やと) 00099240L20を/御(おん)かし候へ。主/立出(たちいて)、/何(なに)+、/謡(うたい)/御修行(おんしゆきやう)の/御方(おんかた)と/有(あれ)ハ、 00099250M1/此(この)方も/好(す)キの/道(ミち)に候/程(ほと)に、いざ+/是(これ)へ御入候へ。然らハ 00099260M2ごめん候へと、くゝりを/明(あけ)て入/顔(かほ)を、○見る£びつくりに 00099270M3げ/込(こめ)ハ、Sふしきやな、今/迄(まで)(十オ)ありしおもかげの、見 00099280M4へぬハ扨ハゆうれいか。○一ト/間(ま)の/内(うち)よりSかきけすこと 00099290M5くに失にけり 00099300¥Y1巻之五△終(十ウ) 00099310¥Q 00099320M13寛政十二庚申九月 00099330M16△浪花書林△△西村仁兵衛 00099340M18△浪花書林△△池内八兵衛 00099350¥P313 00099360¥U噺本大系△第十三巻 00099370¥T@新作|落咄@/馬鹿大林(ばかたいりん)〔題簽〕 00099380¥G 00099390¥Y 00099400L16寛政十三年正月刊 00099410L17桜川慈悲成序 00099420L18桜鯛人跋 00099430L19大和屋久兵衛板 00099440L20小本一冊 00099450¥Y口上 00099460M3益御噺好様方御機嫌良被遊御座、恐悦至極奉存候。当年も 00099470M4相かハらず新作落噺、色&袋入差出し候所、御贔屓厚御笑 00099480M5ニ叶、難有仕合奉存候と、まじめに申上候ハ、此本の序文 00099490M6にてハ無御座。序文之儀ハ、向嶋成田屋の親玉ヨリ、気が 00099500M7楽のせりふとうらい、是も御はなしのたねと存、則序に一 00099510M8幕御目にかけG東西&& 00099520M10△△△酉初春△△△△△△△桜川慈悲成@イヨ|口上@引 00099530M11△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一オ) 00099540M12△△△市川白猿気楽のせりふ△△△△△△△自作 00099550M14とうじなんにもくらうなし、ほくてきせけんにつき合ず、 00099560M15天地けんとんのそばきりに、あるへいなどハふじゆなとこ 00099570M16ろ、牛のごぜんのこゝうじぼくとよバれたる、かつしか七 00099580M17左衛門のでうふしつなし(一ウ)生れついたるわがまゝもの、 00099590M18当年つもつて六十才、引こミじやんのゐんきよとハ、なん 00099600M19とミなさま、まだはやいじやござりませぬか。なミ+な 00099610M20らぬ別荘の、なかにはぢざるあばらやハ、けにがんくハい 00099620¥P314 00099630L1からうこうと、ひぢをまくらの独り(二オ)もの、のミます、 00099640L2くひます、きがのびます、合てみますの定紋ハ、孫にゆづ 00099650L3り葉かやかちぐり、ゑびがうしろミ、おほつかなじミのい 00099660L4つれも様、八百八町のかひごろし、花の御江戸のやつかい 00099670L5おやぢと、ほゝ敬白(二ウ) 00099680L6△△△△△△△△△△△成田屋七左衛門戯述G 00099690L7△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(三オ) 00099700¥G(三ウ) 00099710G1なんとみなさま、おもしろいことで御座り升。是よりおはなしを 00099720G2いたし升。鳥渡一句いたします 00099730G3△△私もちやはかりなから桜川 00099740¥N1¥J 00099750¥X鶏 00099760M3初春芝の神明御社内に、鶏たんとあつまりて、壱羽のとり、 00099770M4なんと、今年ハ酉のとしで、おいらがとしだから、ちと寄 00099780M5合て、どこぞへしやれに出かけやうでハないか。とうまる 00099790M6なるほど、おれもその心だ。芝居へでも行べヱカ。白のお 00099800M7ん鳥何、おいらが芝居を見たとて、おもしろいことが有も 00099810M8のか。(四オ)おれがあんじハ、しほどめから家根船で、う 00099820M9まきものをたんといれの、向嶋から真崎、すみだ川の辺を 00099830M10ぶらつきたいこゝろだ。おのしとおれと、あの黒のおんと 00099840M11りと、みんな男鳥ばかり、いやミなしの船遊山はハどうだ。 00099850M12とうまる男ばかりのいやミなしもいゝが、酒でも呑ニハ、 00099860M13それでハちと、はり合のないものよ。白のおん鳥(四ウ)ぬし 00099870M14がそのやうに云ならバ、うつくしいちやぼを一まい、入て 00099880M15行べヱ 00099890¥N2¥J 00099900¥X元日 00099910M18浪人もの、下男壱人つかひて居けるが、元日、下男をそば 00099920M19へよびよせ、なんと徳内。能春でハないか。徳内左様で御 00099930M20座ります。しづかなよい正月で、御目出たう御座ります。 00099940¥P315 00099950L1旦那そうじや+。一夜あけると、かく(五オ)べつ若+ 00099960L2としてよいもの。徳内旦那さまもかくべつ若くお見へなさ 00099970L3ります。旦那おれも当年ハ五十になるが、其くらひに見へ 00099980L4るか。徳内五十とハ旦那、うそをおつきなさります。はゞ 00099990L5かりなから、わたくしが目からハ、三十四五におミへなさ 00100000L6ります。旦那徳内。そんならおれが三十四五に見へるか。 00100010L7徳内何しにわたくし、いつわりを申ませう。(五ウ)ま事に 00100020L8お若くおミへなさります。旦那初春そう+若く見らるゝ 00100030L9ハ目出たい。壱合買ふぞ。徳内何、およしなさいまし。旦 00100040L10那ハテ、目出たいから買ふてこい。徳内左様ならと、徳内、 00100050L11徳利をもつて酒屋へ行、旦那を若いとほめたから壱合おご 00100060L12られた。よくしたもの。壱合呑て寐ませうとよろこんで、 00100070L13酒買ふて帰り、(六オ)旦那。壱合とつてまいりました。左 00100080L14様ならバおぢぎなく、あなたハお下戸なり、わたくしいた 00100090L15ゞきますといへば、旦那イヤ+、それハ明日の客の用い 00100100L16じや 00100110¥N3¥J 00100120¥X紅葉狩 00100130L19此間紅葉狩の能の画を見ましたが、はんにやが出ますの。 00100140L20亭主是、権次どの。はんにやとハ子供の云やうじや。/鬼女(きしよ) 00100150M1と(六ウ)いうたがよい。権次それでも、はんにやで御座る。 00100160M2御そんしないか。亭主はんにやハ鬼女。おにの女と/書(かい)て、 00100170M3きぢよ。きハ鬼といふ字、ぢよハ女と云字。すべて女と云 00100180M4字ハぢよの字。そこでからの女が唐女、/能(よい)女が美女、わる 00100190M5い女が悪女、かたい女が貞女、女郎が遊女、その外下女老 00100200M6女小女と、ミな女はぢよで御座る。権次左様ならバ、私ど 00100210M7もの(七オ)女房もぢよで御座りますか。亭主しれたこと。 00100220M8/妻(つま)女。権次おふくろハへ。亭主ハテ、しれた事。/袋(ふくろ)女よ 00100230¥N4¥J 00100240¥X女郎買 00100250M11今ハ昔。戸塚金左衛門と云人、きハめて金大きくて有ける 00100260M12が、人のつき合にて吉原へ行、座敷もひけて床に入り、夜 00100270M13具ひつかけて、ひとりころりと女郎(七ウ)もこず、まじ 00100280M14+して、もうきそうなものじや。今宵もさむしくひとり 00100290M15ねか。こんなことなら宵に帰れバよかつたと、くちなこと 00100300M16を云ながら、あをのけになつて、金玉をなでながら、とろ 00100310M17+と寐入と、らうかにうハぞうりの音がして、部屋の障 00100320M18子をさらりと明ケ、女郎枕元へ来て、たばこを一ぷく吸、 00100330M19又すい付て、ぬしも一(八オ)ふくのミなんせんかといへと 00100340M20も、金左衛門は金玉をおさへて、たわひなく寐入、へんじ 00100350¥P316 00100360L1もなし。女郎、おかしがりてゆりおこしながら、もし、お 00100370L2きなんしな。イヤヨ、ぬしハ狸寐入をしていなんすといへ 00100380L3ば、金左眼をさまして、イヤ+、狸でハない。わしハせ 00100390L4うとく、せんき持じや 00100400¥N5¥J 00100410¥X雷電(八ウ) 00100420L7いなか者、らいでんを見て、あれハ仁王様かときく。江戸 00100430L8者ナニ、あの大きな男ハ、らいでんと云角力取サ。いなか 00100440L9あんにしても、仁王様のお子さまだんべヱ。どうぞおらが 00100450L10ざいごへおよひ申て、村の女共にもおがませてヱもんだア。 00100460L11江戸者そんならバ、あした堀の内へ関取がいかれるから、 00100470L12おれがつれたつて、貴様の所へいきませうと約束をして、 00100480L13いなか(九オ)者をかへす。いなかさう+帰り、村中をま 00100490L14ねき、あしたおらが所へ仁王様がお出なさるから、ミなの 00100500L15衆、上下で御座れと云ふらす。さて明日になれバ、村中上 00100510L16下で、かの男の所へつめて居ル。昼比、かの江戸者、らい 00100520L17てんをつれだちて田舎へきてミれバ、村中おびたゝしく、 00100530L18上下にてひれふして居る。江戸者是ハけしからぬこと。其 00100540L19やうに上下で(九ウ)つめかけて、関取をバ、マアどこへを 00100550L20くので御座る。いなかミな+一どに扇をひろげて、らい 00100560M1でんハ是へ上ケられませうと、座敷をあける 00100570¥N6¥J 00100580¥X仲人 00100590M4豆右衛門とて、わけてちいさき男、いまだ定まる女房もな 00100600M5く、日ごろ此事を申て居ルに、心安き友だち遊ひにきたり、 00100610M6(十オ)(十ウ・十一オ挿絵)よい女があるが、豆右衛門どの、 00100620M7もつきはないかとすゝめる。豆渡りに船、てうどよいはな 00100630M8しじや。せハしてたもれと云。友そんならバめんどうてな 00100640M9いやうに、明日晩方におれがつれて来て、ちよつと盃をさ 00100650M10せて、何もかも手かるにやらかしませう。豆ばんじたのミ 00100660M11ますと約束する。豆右衛門ハ明日のはんハ(十一ウ)女房か 00100670M12くるとたのしミ、其日にハ内もさうじして待て居ル。仲人 00100680M13ハ暮方より花嫁をつれてくるに、此花よめ、いかにも大き 00100690M14な女にて、やう+豆右衛門か内へはいる。豆右衛門ハ女 00100700M15房の大きなハ、おそない夫婦にて、しやわせもなをるぞと 00100710M16よろこんで、盃もすむ。仲人、そんなら早く寐るがよから 00100720M17うと、せわをしながら何か(十二オ)思ひ出してけら+わ 00100730M18らひ出す。豆是仲人どの。おもひ出し笑ハつミになる。何 00100740M19がおかしくてわらひ玉ふときけば、仲人イヤ、きさまとあ 00100750M20の大きなかミ様とだかつてねたらバ、貴様がてうど目貫の 00100760¥P317 00100770¥G(十ウ・十一オ) 00100780M1やうじやらうとおもへば、おかしくてならぬ。豆おれが目 00100790M2貫なら、今宵の女房のはだハさめはだか(十二ウ) 00100800¥N7¥J 00100810¥X軍噺 00100820M5是親方。軍の時分も、金時の渡辺のと云ものハ強イものた。 00100830M6あれでもさうをうに女房かあつて、女房をバかわひかつた 00100840M7らうナア。親分しれた事よ。つよひとつて、女房をもたず 00100850M8にゐられるものか。強イものほど、あとが大じだから、女 00100860M9房をもつて子をこしらいるハ。それだから(十三オ)見やれ、 00100870M10金時さまの子にハ、金太郎小ぞうと云子があるでハないか。 00100880M11女房がなくて子が出来やうはづがない。子分成ほど、親分 00100890M12の云とうりだ。金時の子ハ金太郎小ぞうだ。時に親方。あ 00100900M13の弁慶なんぞも、女房を持そうなものだが、弁慶ハ女きら 00100910M14ひだといつて、女房をもたねエの。親分弁慶だといつて、 00100920M15女ぎ(十三ウ)らいと云事もねヱけれども、弁慶ハ女房もた 00100930M16れぬわけがあつたのよ。子分親分。そのわけと云ハ。親分 00100940M17ハテ、りんぼうでくハせる事がならぬからだらう 00100950¥N8¥J 00100960¥X蛙 00100970M20古池へ蛙飛込ミ、おのが子ども、おたましやくしのあそん 00100980¥P318 00100990L1でゐるを見て、まづ子供が達者で目出たいとよろこんで、 00101000L2(十四オ)にこ+してわらつている。おたましやくし三び 00101010L3き寄合、頭をひとつ所へよせ、丸くなつて、とつさん。巴 00101020L4の紋所ハどふだといへバ、蛙ひけをなでゝ、おらが子供ハ 00101030L5とれもみな、きやうに生れついたな 00101040¥N9¥J 00101050¥X仕合 00101060L8八兵衛さま。御きゝなされ。目出たい(十四ウ)/たい((ママ))事にて、 00101070L9ふいといたしたことて、金子を千両もらひました。八兵衛 00101080L10それハ御目出たいことで御座ります。亭主よい時にハよい 00101090L11事ばかり有もの。左様いたすと、かしました金子へ利をつ 00101100L12けて、千五百両かへしました。左やういたすと、さる御や 00101110L13しきからお米を壱万俵下しおかれます。さて+(十五オ) 00101120L14身にあまる仕合。女房も私も、まことにうんがむいてまい 00101130L15りました。お心安ひ八兵衛様。よろこんで下され。八兵衛 00101140L16うらやましくなり、それハま事にけつこうな事。時にそれ 00101150L17ハいつころの事で御座るぞ。亭主さく晩のはつ夢で御座る 00101160¥N10¥J 00101170¥X娘(十五ウ) 00101180L20さる所のひとり娘、琴をならひに行キ、内へかへり、琴を 00101190M1出してさらひけるが、しやうとくぶきやうにて、ねからお 00101200M2ぼへぬゆへ、母大きにはらを立、これ、あの子や。あんま 00101210M3りといへば、あんまりな事だ。けふで何日けいこすると思 00101220M4ひやる。なぜ其やうに覚へやらぬ。ぶきやうな者も見たが、 00101230M5おのしのやうな物おぼへのわるひ(十六オ)ものが有ものか。 00101240M6一かう覚へずハ、琴もモウやめにしてしまやれ。ほんに 00101250M7+おれもおのしにハあきれはてたと、泪をこぼしてしか 00101260M8れば、娘についてけいこに行乳母、だい所よりとんていで、 00101270M9御しんそう様。御もつともて御座りますが、琴の御師匠様 00101280M10もおししやうさま。此お子さまのやうに、もの覚のわるひ 00101290M11おこ(十六ウ)におゝしへなさるうたが、わたくしハ気に入 00101300M12ません。母乳母や。そんなら、なんと云うたをならつて来 00101310M13るのじや。乳母物おほへのわるい此おこに、ふきじさいめ 00101320M14うがとおしへます 00101330¥N11¥J 00101340¥X女房りんき 00101350M17亭主、毎日+船にてよしハらへ通ふ。女房大きにりんき 00101360M18して、もし、(十七オ)おまへハ毎日+汐留から猪牙船と 00101370M19やらで、よし原とやらいふおもしろい所へお出なさるそう 00101380M20で御座ります。大かた、わたくしにおあきなさつての事で 00101390¥P319 00101400L1御座りませう。ほんに男と云物ハ、さりとハなさけないも 00101410L2のでハあると、さめ※とくどけバ、亭主何、おれか貴さ 00101420L3まにあきて、よし原へ行ものだ。おれが(十七ウ)毎日船で 00101430L4行のハ、向島の秋葉様へねがう事があつて、それで日参す 00101440L5るのよ。女房そんなら船に乗て、向じまの秋葉様へ、わた 00101450L6しをいのりころしにお出かへ。亭主めつそうな。何、きさ 00101460L7まをいのりころすものだ。女房それでもぬしの猪牙参りだ 00101470L8から、きミがわるひ 00101480¥N12¥J 00101490¥X餅つき(十八オ) 00101500L11夫婦にてつましくして、小金も少し有くらしの商人。十五 00101510L12六のでつちを、すにも酒しほにもおひつかひける。あると 00101520L13しの暮の餅つきに、座敷一はい餅むしろをひろげすハり、 00101530L14のし餅をならべ、ほうがへしのならぬせ/((わ脱カ))しさ、亭主ハあき 00101540L15ない、内ハかミさまと小ぞうばかり。冬の日のみじかくて 00101550L16(十八ウ)はや夜に入けるゆへ、かミさま小ぞうや。あののし 00101560L17餅を切ておきやよといひ付ると、小ぞう、はい+、かし 00101570L18こまりましたと云ながら、のし餅を二三まい切ルと、昼の 00101580L19くたびれ、こくり+といねむる。かミさまハ気をせき、 00101590L20小そうや。今に旦那がおかへりだ。はやく餅を切てしまや 00101600M1と云へども、小ぞう、いつこう寐むり(十九オ)て返事なし。 00101610M2かミさまハ大声にて、小ぞう。此やうに云のがきこへぬか。 00101620M3つんぼか。おのしハ耳ハないかと、きせるてせなかをたゝ 00101630M4けバ、小ぞう、ふいと眼をさまし、ハイ。耳も御座りまし 00101640M5たが、あられとかき餅にしました 00101650¥N13¥J 00101660¥X日本記 00101670M8高まんな亭主、時&女房にむつかしい(十九ウ)古事なんぞ 00101680M9云ていちめるゆへ、女房も少しむつとし、おまへさんのや 00101690M10うにひねつた事をおつしやるお方ハない。なんぼむかしの 00101700M11事じやとて、男が女になつたり、女が男になつたりして、 00101710M12つまるものかといへば、亭主なるとも+。ずいぶんなり 00101720M13ます。貴さまハものしらず(廿オ)だか、おれハものしりだ。 00101730M14なぜといふに、おれハ色&の書物を見て云事だ。女房そし 00101740M15てそんな事ハ、なにと云書物に御座りますヱ。ていしゆ日 00101750M16本記といふ本にある。女房そんなら、その日本記をお見せ 00101760M17なさい。ていしゆおれハ持て居ねヱが、おらが先生の所に 00101770M18ある。かりにやらふと、小ぞうをよび、小ぞう。先(廿ウ) 00101780M19生の所へいつて、鳥渡入用で御座ります。日本記をおかし 00101790M20なさいと、かりてこいと云つけると、小ぞう、かしこまり 00101800¥P320 00101810L1ましたと、先生の所へかけて行、あまりせきて日本記をわ 00101820L2すれて、小そうハイ先生さま。どふぞ入用て御座りますか 00101830L3ら、先生さまの二本ゆびをおかしなさり(廿一オ)ましと申 00101840L4ました。先生あきれはてゝ、小ぞう。おれが二本ゆびを、 00101850L5なんにするのだ。小ぞう二本ゆびの入用ハね。先生ハテ、 00101860L6なんにする。小ぞう旦那か、おかミさんをいぢるので御座 00101870L7ります 00101880¥N14¥J 00101890¥Xぬす人 00101900L10ぬす人、手下の者をつれて、ある一人リ者の内へしのび入、 00101910L11押入なぞさがせ(廿一ウ)ども、何もぬすむべき品もなし。 00101920L12親方、是ハけしからぬうちへぬすミにきたことじや。今宵 00101930L13ハまんかわるいと、こゞとをいふ。手下親方。此やうなけ 00101940L14ちなうちへはいりやしてハ、ぬす人のふりあひがわるくな 00101950L15ります。こゝハ早く出て、又よい家へしのび込ませう。親 00101960L16方それがよからう。ときに(廿二オ)もふ今宵ハなん時だ。 00101970L17手下もふ七つ半で御座りやす。親方そんならいつそ、此内 00101980L18へとまつていかう。手下なせ其やうな、ぶせうなことを云 00101990L19なさる。親方ぶせうでハない。夜ふけにあるいて、おひは 00102000L20ぎにでも合と、きミがわるい 00102010¥N15¥J 00102020¥X夜噺 00102030M3これ新八。大きな声で云ことでハ(廿二ウ)ないが、向のか 00102040M4ミさまハとんだうつくしいかミさまだが、間男かあるの。 00102050M5新八それハけしからぬ。あのうつくしいかミさまが、間男 00102060M6があるか。間男ハきんしよの者か、だれだ。金八たれだ所 00102070M7か、間男のかづが十四五人ある。新八夫ハおのしがわる口 00102080M8だらう。金おれが何しにうそをつくものだ。ほんの事(廿 00102090M9三オ)よ。新八ほんの事なら、まづけしからぬ女だ。あの 00102100M10うつくしいかほをして、間男の十四五人もあるとハ、あき 00102110M11れはてたものだ。金八それだから、おらかおやぢが、あの 00102120M12かミさまハほうじやく美人だといつた(廿三ウ) 00102130¥N16¥J 00102140¥X年礼 00102150M15小ぞう。八兵衛どのゝ所へハ年玉ハ扇子、六兵へどのゝ所 00102160M16へハ半切、久右衛門とのゝ所へハ水引、其/隣(となり)へハ手札でよ 00102170M17かろう。其向のいせやへハ扇も過る。半切でもなし。手札 00102180M18でハちときのどく。何にしたものじや。小ぞうやはり手札 00102190M19がよふ御座ります。旦那おれが名をかいた手札はかりでハ、 00102200M20あまりきのどくじや。小ぞうそん(廿四オ)なら二枚さ 00102210¥P321 00102220¥N17¥J 00102230¥X正月二日 00102240L3弐三人よりあひ噺して居る所へ、宝ふね+と売てくる。 00102250L4なんと善兵衛さん。たから船を買ませうと、宝船をよび込 00102260L5ミ、弐三枚下さい。是ハどうするものしや。商人ハイ。こ 00102270L6の宝船ハ今宵げしなる時、お枕紙になさると(廿四ウ)しご 00102280L7くよい夢を御らうじます。善それハよい事じや。此七福神 00102290L8が福でもさづけるであらう。商人それハしれませぬ。まづ 00102300L9今宵、ものハためし、枕にあてゝ御らうじまし。善きさま 00102310L10がそう云事なら、まちがいもあるまい。まて+。何か哥 00102320L11がかいてある。なかきよのとをの(廿五オ)ねふりのミなめ 00102330L12さめ△なミのりふねのおとのよきかな。おつな哥だの。商 00102340L13人それが上からおよミなされても下からおよミなされても、 00102350L14同じ事て御座ります。善なるほど、是ハ下からよんでも上 00102360L15からよんでも同し事じや。商人との。此上からよんでも下 00102370L16からよんても同じ(廿五ウ)哥ハ、よミてハたれじやぞや。 00102380L17商人こまり、あたまをかきながら、よミてハ。善たれじや。 00102390L18商人ハイ。助高屋高助サ 00102400¥N18¥J 00102410¥Xりんき 00102420M1若イ男、ねんころないしやどのへ行、ちよんなんさん。ど 00102430M2うもおらが女房ハりんきぶかひか、なんと、りん(廿六オ) 00102440M3きのなをる薬ハ有まいか。ちよんなんそれハたちまち、お 00102450M4れがりやうじてなをりやす。はて、ぬしがあんまり吉原や 00102460M5深川へ通ひ、其上にげい者や何かと色事をするから、かミ 00102470M6さまのむねのけむりかたへぬハ。よしか。そこで其むねの 00102480M7火のないやうにする薬があるが、ちと金がいる。(廿六ウ) 00102490M8ていしゆ直りさへすれバ、いくら金が出ても大事ない。ちよ 00102500M9んなんさん。金ハいくらほど入用だ。ちよんなんたんともい 00102510M10らぬが、マア十二三両入のさ。ていしゆそれハいかい事い 00102520M11るの。時にちよんなん子。どんなくすりを女房に用ひてく 00102530M12れるのだ。ちよんなんハテ、マアおれがおもひ付の薬ハ、 00102540M13マア、ヱレキテルサ(廿七オ) 00102550¥N19¥J 00102560¥X無筆 00102570M16久しく国元へ状をやらぬが、御そんじの通り、わしハ無筆 00102580M17じやほどに、清介どの、壱本状をかいてください。清介安 00102590M18いことじや。書てしんじやう。たゞかハる事もないかと云 00102600M19てやるのじやらう。無筆其とをり+。清介よし+。そ 00102610M20んならバまづ、一筆啓上致候にしやうか、(廿七ウ)以手紙 00102620¥P322 00102630L1申上にしたものか、どちらがよからうな。無筆なるほど、 00102640L2そこがかんじんの所だ。清介このやうな事も、ぞんさいに 00102650L3なると又あがめるとがあるものじや。無筆そんならバ、国 00102660L4の親父ハかたいから、やつはり覚一つにして下さい 00102670¥N20¥J 00102680¥X間違 00102690L7かゝアや。/隣(となり)の大工さんハ、此ころハ(廿八オ)何かかたいこ 00102700L8とばかりいつていさつしやるが、けんじんとやら仙人とや 00102710L9らにでもなつて、鶴にでものつて、ひようたんから馬でも 00102720L10だして、あすぶさんだんたんべヱ。女房何サ、松さん。そ 00102730L11んなことじやアねエよ。このごろきけバ、あの隣の旦那ハ、 00102740L12ゐんとくをなさるとよ。おめヱもちつと、ゐんとくでもは 00102750L13じ(廿八ウ)めなよ。松おきやアがれ。おいらがやうなびん 00102760L14ぼう人が、よいごしのせにもなくつて、ゐんとくもすさま 00102770L15じい。銭でも出きた時分に、ゐんとくもやらかすべヱ。女 00102780L16房おめヱの云とをり、こんなにびんぼうだから、ちつとゐ 00102790L17んとくをはじめなと云事だハな。松かゝア。ゐんとくをは 00102800L18じめれバ、銭金で(廿九オ)も出きるか。女房しれたことよ。 00102810L19松かゝア、どふして。女房ソレ、其ゐんとくで富を付るよ 00102820¥N21¥J 00102830¥Xさしで者 00102840M3今日ハ旦那、きうをすへやうと存ますが、日ハよう御座り 00102850M4ますかへ。ていしゆ暦を出して、今日ハ十ほうくれじや。日 00102860M5がわるい。明日の事にしたかよい。女房(廿九ウ)そんなら、 00102870M6よしにいたしませう。たま+すへるに、日のわるいにす 00102880M7へる事もない。小ぞうや。お隣へいつての、御しんぞさんに、 00102890M8さきほどハせん湯へおさそひなさりましたが、今日ハ少し 00102900M9風を引ましたから、私ハ参りません。お待なさらずに、お 00102910M10先へお出なさりましと、鳥渡いつてきてくりや。小そう(三 00102920M11十オ)かしこまりましたと隣へ行、其通り口上を云。隣女房 00102930M12是ハ+小ぞうどの。御くらう。そんならおかミさんハお 00102940M13風けで、せん湯へハお出なされぬかへ。小そう左様だそうで 00102950M14御座ります。わたくしがミましてハ、風もひかれたやうで 00102960M15ハ御座りませぬが。隣女房そんならおほかた、ひでもわる 00102970M16くおなんなさつたらう。(三十ウ)小そうさしでゝ、ハイ。たしか 00102980M17おかミさんハ、十ほうくれになりましたそうで御座ります 00102990¥N22¥J 00103000¥X高まん 00103010M20竹村上あんさん。ちとわしがミやくを見て下さい。上あん 00103020¥P323 00103030L1ミやくミるにおよバぬ。朝夕頭つうがするであらう。てい 00103040L2しゆ其通り+。上あんそして、物にたいくつするであら 00103050L3う。ていしゆ是ハきめう。その(三十一オ)通り+。上あん 00103060L4そこで時&ねつが出るじやらう。ていしゆ其通り+。上あ 00103070L5んそれからせきが出るだらう。ていしゆ是ハおそろしい。 00103080L6なにもかも、わしが身にひし+とあたります。さて+ 00103090L7上あんさま。御こうしやな事で御座りますとほめると、上 00103100L8あんゑつにのり、わしが薬ハ、其通り身にあたります(三 00103110L9十一ウ) 00103120¥N23¥J 00103130¥Xしなの者 00103140L12是久八。此中つけたかうじつけの菜づけハ、てうどけふで 00103150L13七日になる。もはやよくついたじぶんじや。物をきへいつ 00103160L14て出してきやれ。女房久八や。それ、そのふた茶わんでも 00103170L15もつていきやれ。久八かしこまりましたと物をきへゆき、 00103180L16菜つけを出してくる。夫婦是ハ(三十二オ)よくついた。是 00103190L17でおちやつけがよからうと、ちやづけさら+、あんどの 00103200L18そばでやらかして居ル。おもてにて角力勝負付とうる声。 00103210L19ていしゆはしを下に置、久八。けふハ七日目。勝負付をか 00103220L20つてくれろ。久八ハイ+。ふた茶碗でももつてまいりま 00103230M1せうか 00103240¥N24¥J 00103250¥X道具屋(三十二ウ) 00103260M4あるいしやどの、是新平。此間此へんで直段をつけた香炉、 00103270M5三分弐朱と云か、弐分ぐらひにまけおれバよい。けらいお 00103280M6まへさまを道具好のお方じやとぞんして、足元を見てまけ 00103290M7ぬので御座りましやう。今日ハわたくしの此手ぬくひを、 00103300M8おつふりへおまきなされて、いなか者になつてお買なされ 00103310M9て御(三十三オ)らうじまし。旦那是ハ新平、よい所へ気が 00103320M10ついた。今日ハいなか者てきいて見やうと、ほどなく道具 00103330M11やの前へ行、しばらく立て見て居て、是+御亭主。あの 00103340M12向にあるあのこんろんハいくらで御座ると、いなかこと葉 00103350M13でやらかせバ、道ぐや顔を見て、どのやうにおはねなされ 00103360M14ても、三分弐朱(三十三ウ) 00103370¥N25¥J 00103380¥X船遊山 00103390M17亭主、うミ月の女房をつれて向嶋としやれやうと、船にて 00103400M18出かける。折あしく両国辺へ乗出すと、女房にハかにむし 00103410M19がかぶり、しきりがたつてくる。亭主是ハこまつたもの。 00103420M20とんだ所で子が生れるそうだ。船頭どの、マアこゝらへ船 00103430¥P324 00103440L1をつないて下さい。船頭かしこまり(三十四オ)ましたと、 00103450L2しゆびの松のあたりへ船をつなぎ、取あげばゝもなければ、 00103460L3亭主ハ女房のこしをだく。船頭ハ前へまハり、さア+、 00103470L4わしにとらまつて、いきんだり+と、ちからをつける。 00103480L5女房しかたなく、船頭のかたにとらまりて、船しう。てう 00103490L6どさし汐だのと云ながら、ちから一ぱいにいきむと、なん 00103500L7のくもなく(三十四ウ)玉のやうな男の子が生れる。船頭こ 00103510L8れ旦那。御らうじろ。こんなよい男のお子がといへば、生 00103520L9レ子船頭の顔を見て、船しう、こきやア++ 00103530¥N26¥J 00103540¥X雪 00103550L12ちら+雪の降夕暮、旦那が、是+五助。庭の水仙がだ 00103560L13いなしになるから、たいぎなから、まハりの雪をかいて 00103570L14(三十五オ)くれろ。五助明日雪が降やんでからの事になさ 00103580L15りまし。旦那ハテ、今宵中に水仙がだいなしになるから、 00103590L16どふぞ今のうち、鍬てかきのけてもらひたい。五助かしこ 00103600L17まりました。あしたでもよからうにと、口のうちでこごと 00103610L18を云なから、竹のこ笠をかふり、ミのをきて鍬をかつき出 00103620L19かける。(三十五ウ)下女此なりをミて、五助どの。二十四孝 00103630L20と出かけるのとわらへバ、五助大きにはら立、いつ、おれ 00103640M1が夜たかをかひにいつた事がある 00103650¥N27¥J 00103660¥Xせつこミ 00103670M4寒気見まひにそゝかしい男、あまりさむさに玄関に立、ど 00103680M5うれといへば、(三十六オ)内から、ものもうと、とりつぎ 00103690M6の男が障子をあける。客今日ハ暑寒の御見まいにまいりま 00103700M7した。ミなさま御機嫌よう御座りますか。六左衛門で御 00103710M8座る。よろしうといへば、取次ちとお上りなさりまし。 00103720M9今日ハ旦那もたぎやうで、やとにおられます。六左衛門そ 00103730M10れハざんねん。鳥渡お目にかゝつて参りませう。(三十六ウ) 00103740M11お座敷かな。取次ハイ。只今こたつにすゞんでゐられま 00103750M12す 00103760¥N28¥J 00103770¥X雨乞 00103780M15しばらく雨ふらぬ事ありて、みめぐり辺の百姓、これハな 00103790M16んでも、むかしの其角さまのやうな上手なはいかいしに、 00103800M17一句やらかしてもら(三十七オ)うがよからうと、浅草辺へ 00103810M18出、こゝらに上手なはいかい師さまハ御座らぬかとたづぬ 00103820M19れバ、向のかうしつくりのが、はいかいしで上手じやそう 00103830M20なとおしゑる。百姓これハありかたふ御座りますと、向の 00103840¥P325 00103850L1かうし作りのうちへはいり、たのミませうといへば、おく 00103860L2より、いかにも高まんくさい坊主出、たれじや。(三十七ウ) 00103870L3なんぞ用かとたつねる。百姓ハイ。わたくしハミめぐり辺 00103880L4の百姓て御座りますが、おまへさまハむかしの其角さまの 00103890L5やうなお上手なはいかい師さまで御座りますかヱ。はいか 00103900L6いし高まんなかほして、なか+其角のやうな事でハない。 00103910L7其角より十段も上をこした、おれハ名人しやが、しらぬか。 00103920L8百姓(三十八オ)これハよいおかたさまへたづねあたりまし 00103930L9た。御存の通り、此間中雨がふりませんで、ことの外、百 00103940L10姓なんぎで御座ります。どふぞ雨のふりますやうなお句を、 00103950L11一句なされて下さりまし。はいかいしそれハ心安い事。鳥 00103960L12渡一句してやろう。ちとそこに待て御座れ。今かんかへて 00103970L13と(三十八ウ)しばらくかんがへているうち、おもてを角力 00103980L14のたいこ、どゝどん++とたゝいてくるうち、はや雨 00103990L15がはら++。百姓もし先生さま。もふお句にハおよび 00104000L16ませぬ。今の角力の太こで、雨がふつてまいりましたとい 00104010L17へば、はいかいし角力のたいこでふつてきてハ、はいかい 00104020L18師ハはだし+(三十九オ) 00104030¥N29¥J 00104040¥X無筆 00104050M1よそから廻状をもつて、すた+と見せへきて、ハイ。番 00104060M2頭さま。御廻状で御座りますとなげ出せバ、番頭取て、ひ 00104070M3らき見れども、無筆にてよめず。よし++との/ミ((ママ))顔。 00104080M4つかいもし番頭さま。てんをかけて下さりまし。また外へ 00104090M5も持てまいります。番頭なにへてん(三十九ウ)をかけるの 00104100M6じや。つかひしれた事。こゝの旦那のお名まいへ。番頭だ 00104110M7んなの名へ、てんとハ。つかいハテ、鳥渡棒をお引なされ 00104120M8ばよふ御座ります。番頭おつとのミこミと筆へ墨をつけ、 00104130M9廻状をひろげ、名まいへのこらず棒を引。つかいもし+ 00104140M10番頭さま。そのやうにミんな、ぼうをおかけなさるのでハ 00104150M11御座りませぬ。(四十オ)こゝの旦那のお名はかりへおかけ 00104160M12なされといへば、無筆番頭イヤ、かうミなかけれバ、どこ 00104170M13ぞでハ旦那へぶちあてる 00104180¥N30¥J 00104190¥X目出たはなし 00104200M16ある人、浅草の市にてゑびす大黒をぬすんで帰り、是+、 00104210M17かゝア(四十ウ)どん。今日ハゑひす大黒をぬすんできた。 00104220M18是から仕合がよくなる。何でも此ゑひすさまと大こくさま 00104230M19へ、よいおくさまをおもたせもふして、おらが内でおふた 00104240M20夫婦おむつましくおくらさせ申スつもりだ。女房ゑひすさ 00104250¥P326 00104260L1まや大こくさまが、おくさまをおもちなさつたら、さぞお 00104270L2子(四十一オ)だからがふへるだらう。亭主それこそおれが 00104280L3ふくとくの三年めだ。女ぼうお子がふへると、なぜふくと 00104290L4くの三年目だヱ。亭主ハテ、しれた事。せんへい屋へやう 00104300L5しにやる 00104310L7△△△△△△△△△△△△△△桜川慈悲成作 00104320L8△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(四十一ウ) 00104330¥Y 00104340L10下手の長言と、みじかく作るハ、おやちか落し咄のもやし 00104350L11也。猶口上手にうへつけて、御ふいてうあらば、作者の豊 00104360L12年、うまひこと、あつたかい事と、大福餅とともに、はや 00104370L13りたまへ、きよめたもうと申引△カラ+ 00104380L14△△△△△△△△△△△△△△△△慈悲成忰 00104390L15△△△△△△△△△△△△△△△△△△桜鯛人 00104400L16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(四十二オ) 00104410¥Q 00104420M3寛政十三 00104430M4△△酉の初春 00104440M6△板元 00104450M7△△山下町 00104460M8△△△大和屋久兵衛 00104470M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(四十二ウ) 00104480¥P327 00104490¥U噺本大系△第十三巻 00104500¥T/滑稽好(こつけいこう)〔序文〕 00104510¥G 00104520¥Y 00104530L15寛政十三年正月刊 00104540L16桜川慈悲成編・序 00104550L17鐘木ノ角女跋 00104560L18山田屋三四郎板 00104570L19小本一冊 00104580L20国立国会図書館蔵 00104590¥Y序 00104600M3/土橋(とはし)に三人/笑(わら)ひしを/虎渓(こけい)の/三笑(さんしやう)とかいへり。三笑ひりりと 00104610M4して、からのやまとの/昔語(むかしかたり)りハ、こちらの/釜(かま)にあらず。 00104620M5こちらの/茶釜(ちやかま)の三笑、/福(ふく)茶ニ入と、口チ/豆(まめ)にしやべれハ、 00104630M6ナニおきやアかれの一/興(きやう)、/友(とも)ニ/滑稽(こつけい)をたの(序一オ)しむ。 00104640M7/爰(こゝ)に/於(おい)て/老武者(らうむしや)の慈悲成、/子供大将(こともだいしやう)天川屋伊吾左衛門と 00104650M8/名乗(なの)り、おのか/噺(はなし)のミかたか/原(はら)、/火鉢(ひばち)の/縁(ふち)に/陳取(ぢんとり)して、い 00104660M9つもかはらぬ一/冊(さつ)をよと、すゝめにまかせて/諸子(しよし)のおかし 00104670M10/噺(はなし)をあつめ、/題(だい)を/滑稽好(こつけいかう)として/酉(とり)の初春(序一ウ)/新板(しんはん)。/新= 00104680M11作(しん=さく)わらふは、はるの山田屋のあるしをたのむと言 00104690M13△△△△△△△△△△△天川屋伊吾左衛門尉 00104700M14△△△△△△△△△△△△△△△△△△△慈悲成 00104710M15△△△△△△△△△△△△△△△△△△鼻ノ下長名ニ書ク 00104720M16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序二オ) 00104730¥P328 00104740¥G(序二ウ) 00104750¥N1¥J 00104760¥X元日△△△△△△△△¥A麻布亭△気ノ知兼公 00104770M3池のみぎはに、鶴と亀とがのとかに舞遊びて、亀が鶴を見 00104780M4て、鶴どの。よい春で御座るといへば、鶴も空から、亀ぼ 00104790M5う。其岩の上に甲をあつためて、よひこゝろもちで有まし 00104800M6やう。亀貴さまハなをのどかな空を(一オ)ぶらついておも 00104810M7しろかろうといふ。鶴なに、このよふにそらをぶらついて 00104820M8やすむ事ハならず、たいぎな役よ。亀ぼうハ時&その岩へ 00104830M9のつて、気やすめにこくり+と居ねむりなぞも出るであ 00104840M10らう。亀なに、おれハ寐られるものだ。貴さまこそ(一ウ) 00104850M11鶴のすごもりと、時&松枝でひる寐でもするだらう。鶴お 00104860M12れハねぬが、おふかた亀ぼう、寐るであらふ。亀いや+ 00104870M13鶴。こなたが寐る。鶴ハテ、おれハ御祝儀にも、鶴ハしよ 00104880M14千年とうたハれるハな。亀そんなら亀ハまづねんじやない 00104890M15か(二オ)(二ウ・三オ挿絵) 00104900¥N2¥J 00104910¥X末広△△△△△△△△△△△△△¥A文義 00104920M18罷出たる者ハ、此あたりの大名で御座る。今日初茶番をい 00104930M19たすによつて、景物になにをいだそうか。いや+、はつ 00104940M20春のことで御座れば、目出たう、めい+さまへ末広を壱 00104950¥P329 00104960¥G(二ウ・三オ) 00104970M1本つゝ、景(三ウ)物にいだそうとぞんずる。まづ太郎くわ 00104980M2じやをよび出し、申つけよふとぞんずる。やひ+、太郎 00104990M3くわじや。あるかやいとよび出すと、下人旦那さま。御用 00105000M4で御座りますか。旦那今日の御客方へ、末広をめい+に 00105010M5しん上しやうとお(四オ)もふが、なにとあらふぞ。下人、 00105020M6ふしぎそうな顔をして、お客ハおいくたりで御座ります。 00105030M7旦那、先五十人か六十人のお客じやと申せば、下人さよふ 00105040M8なら、いつそひねつて、すへひろより、せん/湯(とう)になさりま 00105050M9せんか(四ウ) 00105060¥N3¥J 00105070¥X初鶏△△△△△△△△△△△△¥A砂辺松露 00105080M12鶏おゝく集りて、なんと、とふまる。ことしハ酉の年て、 00105090M13おいらがしやれる年だが、ちと初日からしやれかけよふて 00105100M14ハないか。とふまるそれハよひ。何をして遊ぶぞ。ちやぼ何 00105110M15をして遊ぶとて、しれた物だ。大勢つれて、目くろさまハ 00105120M16どふた。(五オ)とふまる目黒といふしやれも、まださむいか 00105130M17ら、いつそちよこんと女郎かいハどふだ。ちやぼぬしたち 00105140M18ハ男だから女郎かいもよからうが、おいらハ女だから、女 00105150M19郎買ハいやだ。ちやぼもおん鳥もいちどきに遊ふ所かいゝ 00105160M20ハなといへば、おんどりそんなら、どけヱかう引(五ウ) 00105170¥P330 00105180¥N4¥J 00105190¥X初買△△△△△△△△△△△△△¥A花香庵 00105200L3やしきもの初買に行、座舗もにきやかにて生酔になり、さ 00105210L4あ+、是から部屋へ行と、廻しの女にひかれて部やに行、 00105220L5たばこすぱ+のんて居る所へ、女郎が来て、つんとして 00105230L6すハる。客、女郎の名を、これお岩(六オ)さん。ちとこち 00105240L7らへよりなさひといへば、女郎わつちハお岩とハいゝんせ 00105250L8んよ。客それでも、かさねだんすに梅鉢の紋がついている。 00105260L9女郎あの梅鉢ハ岩おこしのとハちがいやすよ。客つんとし 00105270L10た所がお岩さんじや。女郎なぜへ。客ハテ、お顔に、けん 00105280L11があるハいな(六ウ) 00105290¥N5¥J 00105300¥X万歳△△△△△△△△△△△△△¥A雪ノ△綿丸 00105310L14大三十日に四日市で才蔵市といふがあつて、万歳がより合、 00105320L15よい才蔵を見立てかゝへるそうだ。気の合た才蔵を、国か 00105330L16らつれて来てもよさそうなものを、大三十日にかゝへて、 00105340L17はや元日から、千年も召つかう(七オ)やうにつれてあるく。 00105350L18とんと座舗へあがつてもはなれず、あるくにもはなれず。 00105360L19あのようにくつつき合て居るものハなひ。友達二人リがく 00105370L20つつひているから万歳じや。亭主くつつひて居れバ、なぜ 00105380M1万歳じやの。友達ハテ、がつてんのわるひ。それで、にか 00105390M2わ万歳よ(七ウ) 00105400¥N6¥J 00105410¥X人相△△△△△△△△△△△△△¥A中住 00105420M5是先生。わしが人相ハどふ言ものじや。先生まづぬしハ福 00105430M6相しや。ことしから、よい仕合がむひてくる程に、よろこ 00105440M7んで御座れ。福そう是ハかたしけない。そんなら福の来る 00105450M8相か有るかといへば、わきから、先生。わしが相ハどふじ 00105460M9やと(八オ)きく。先生おまへの相ハ世話やき相じや。なん 00105470M10と、人のせわがしとう御座ろふが。セハヤキ成ほと、よく 00105480M11あたりましたと、かんしんしている。わきから廿五六の女 00105490M12出て、先生さま。わたくしハどふで御座りますヱ。先生、 00105500M13よく見て横手を打、さて+、きさまは(八ウ)よいゑんそ 00105510M14うじやと言。女もし+、先生さまへ。わたくしばかり、 00105520M15なぜよいゑんそうとおつしやりますへ。先生ハテ、きさま 00105530M16ハ丸顔じやから 00105540¥N7¥J 00105550¥X薬喰△△△△△△△△△△△△△¥A上村 00105560M19是、八ほうや。こん夜はかしハめん鳥で、壱盃呑つもりだ。 00105570M20八吉。よしにし(九オ)やれ。今年ハ酉のとしだ。吉はて、 00105580¥P331 00105590L1酉のとしだから、酉を喰ハ。八酉の年にハ酉を喰ものか。 00105600L2吉しれたことよ。八そんなら、戌の年にハ犬を喰か。吉戌 00105610L3のとしには、いのしゝを喰ハな。八成程、是ハもつともだ 00105620L4か、戌の年にいのしゝをくつて、そして(九ウ)亥の年には 00105630L5何を喰つもりだ。吉ハテしれた事。亥のとしには又、いり 00105640L6つけにして喰ハな 00105650¥N8¥J 00105660¥Xこわ色△△△△△△△△△△△△¥A表具△粘人 00105670L9亀、壱つやらねヱか。亀そんならば壱つつかいやせう。じ 00105680L10よに出ますは、沢村宗十郎で御座りますと、扇を(十オ)顔 00105690L11にあてゝ、コハ色遊興にふけり、大酒にしやうねをうばハ 00105700L12れ、日本一のあほうの鏡、かいるの子はかいるになるナ、 00105710L13かいるの子ハかいるになると、同しことを二つ言と、友達 00105720L14が、これ+、亀ぼう。かいるの子ハかいるになると、同 00105730L15し事をなぜ二つやらかした(十ウ)とわらへは、亀ハテ、か 00105740L16いるの子ハおたまじやくしてハないか。友達しれたことよ。 00105750L17亀其おたましやくしが二つならぶと、由良之助が紋所だハ 00105760L18ナ 00105770¥N9¥J 00105780¥X十四日年越△△△△△△△△△¥A湯屋ノ△芝住 00105790M1しわひ隠居、十四日とし越に、近所の手づまつかひをよび、 00105800M2座舗へ(十一オ)とふし、隠居、そばへにしりよりて、もし 00105810M3+、此間見ましたあづきの手妻が、中+おもしろひこ 00105820M4とでござる。あの手づまを頼ます。手妻かしこまりました 00105830M5と、あつきの手づまをすると、隠居、是ハきめう+。も 00105840M6ふ一つとこのむ。手つま、またする。隠居もふ一つと(十一 00105850M7ウ)このむ。手つま、はらを立、同し事を其様におこのミ 00105860M8なさるハ、手づまをお覚なさるおこゝろかといへば、隠居 00105870M9イヤ、あすのかゆのたしにします 00105880¥N10¥J 00105890¥X大三十日△△△△△△△△△△△¥A大平堂△皷腹 00105900M12申のとしも今宵ぎりだと、番頭が十露ばんおきながらいへ 00105910M13は、小ぞうが(十二オ)番頭さん。なぜ申のとしが今宵ぎり 00105920M14だね。番頭今宵大三十日で今年のかぎり。一夜あけると、 00105930M15あすは酉のとしだ。よくおぼへていろ。小僧そんなら、申 00105940M16ハ今宵ぎりで、あすハ酉かへ。ばん頭しれたことよ。ひつ 00105950M17じ、さる、酉というでなひか。今宵がさる、あすが酉、(十 00105960M18二ウ)それじやから申酉とならんでいるハ。小ぞう番頭さん。 00105970M19ほんの事かへ。番頭なに、うそを言ものた。今宵とあすの 00105980M20朝で、そこが申酉たいしの所といへば、小ぞう、ちいさな 00105990¥P332 00106000L1声をして、申酉ならば、今夜もだんなさんとおかミさんと、 00106010L2おまつりをわたすだらうのウ引(十三オ) 00106020¥N11¥J 00106030¥X身ぶり△△△△△△△△△△△△△△△¥A谷弥寿 00106040L5市川白猿か此度、又ふきや町の顔見せに出ますと聞て、霜 00106050L6月朔日に待かねて見物に行、ひいきなれば、よく身ぶりを 00106060L7覚てかへり、内の者に、是+、けふ見てきた親玉の身ぶ 00106070L8りをして見せよふと、(十三ウ)しろぼうきをかつぎ、足を 00106080L9はだけて、くひとにらむと、ミんなが、いよ親玉ア引とほ 00106090L10める。なんと、よくにたらうがと高まんをいふ。小ぞう、よ 00106100L11く見て居て、成ほど、だんなの親玉ハせうた。あのやうに 00106110L12もよくにるものか。とんと親だまに五分もちがつた(十四オ) 00106120L13所ハなひとほめると、旦那しれたことよ。五分もちかうも 00106130L14のか。六部の所だハヤイ 00106140¥N12¥J 00106150¥X色噺△△△△△△△△△△△△△¥A口うら△茶丸 00106160L17だれが色男だといつても、昔のありはらの業平程の色男ハ 00106170L18なひ。ひのはかまをはいているうつ(十四ウ)くしひ哥よみ 00106180L19が、ミんなほれたハ。そして紀のありつねの娘を女房にし 00106190L20て、その上で河内の国たか安へ、かこひものをしておいて 00106200M1かよふハよしか。それでありわらのなりひらハ、まめ男と 00106210M2いふ。なんとすきだらうが。客亭主。それでよくなりひら 00106220M3ハ、しん(十五オ)きよしねヱの。亭主じんきよもしたが、 00106230M4なんでもつめて/地黄(ちおう)をのんでいるから、大じやうぶよ。客 00106240M5是+亭主。ぬしハまあよく業平が地黄をのんだ事までし 00106250M6つているの。亭主しらぬことがあるものか。今朝もおもて 00106260M7を、なりひらの地黄をうつてきた。(十五ウ)客それハきゝつ 00106270M8けなんだ。なんと言て。亭主かごに入れて、なりひら七味 00106280¥N13¥J 00106290¥X酒△△△△△△△△△△△△△△△△¥A新井氏 00106300M11めしつかいの男、大酒すきにて、つかいにやるたびに酒を 00106310M12のませければ、よろこんでつかいに行。ある日だんなが、 00106320M13これ八助。神田まで此(十六オ)手紙をもつて、つかいにゆ 00106330M14けと言つけると、けらい、また酒になるとおもひて、かし 00106340M15こまりましたと、身ごしらいすれども、だんな、酒をのめ 00106350M16といはぬゆへ、八助、まご+して居る。旦那八助。はや 00106360M17くゆかぬか。八介ハイ+と言ながら、まだゆかず。だんな 00106370M18是八助、(十六ウ)いそぎじや。はやく。八介、だんなへ気を 00106380M19つけやうとおもひて、だんなさまへ。今年ハ何の年で御座 00106390M20ります。旦那ことしハ酉のとしよ。八介だんなへ。さんず 00106400¥P333 00106410L1いに酉といふ字ハ、何と申字で御座ります。旦那さんずい 00106420L2に酉といふ字ハと、いひなから、気がついて、(十七オ)八助。 00106430L3呑たくハ五合とつてかう引 00106440¥N14¥J 00106450¥X高まん△△△△△△△△△△△△△¥A芝△柳交 00106460L6是金兵衛どの。わしハだいいしやが名人。たいかいな事ハ 00106470L7わしが薬でぢきになおります。金素人の薬をもるというか、 00106480L8たいぶはやりますが、ぬしハぶしつけながら、(十七ウ)無 00106490L9筆でハなひか。清兵へなるほど、わしハ無筆じやか、よく 00106500L10薬を覚た男じや。金無筆で薬を覚たと言ハ、本もよむまい 00106510L11し、どふして。清兵へ色&薬種をなめて見た男よ。金それ 00106520L12ハどこでなめて見て覚た。清兵へしれた事。諸&の山&谷 00106530L13&で(十八オ)なめて見て覚たから、人がおれがことを、し 00106540L14んのうさまだと言。金兵衛どの。わしハしんのうさましや 00106550L15ぞやといへ/((バ脱カ))△金兵へ草アくらやあかれ 00106560¥N15¥J 00106570¥X茶人△△△△△△△△△△△¥A清冷亭△笑丸 00106580L18茶人、利久の/像(ぞう)を画たるかけものを取出し、是ハめづらし 00106590L19い。能出来(十八ウ)たと、座舗へかけてたのしんで居る所 00106600L20へ、隣の亭主遊びに来り、かけものを見て、是ハ+、い 00106610M1つも見なれませぬおかけ物でござりますな。寿老人、見事 00106620M2に出来ましたとほめる。亭主、きのどくにおもひ、なる程、 00106630M3寿老人と見へますが、寿老人(十九オ)でハ御座りませぬ。 00106640M4隣の亭主是ハ+ふてうほう。何か仙人てござりますの。 00106650M5亭主仙人でも御座りませぬ。あれハ利久の像で御坐る。隣 00106660M6の亭主なるほど、わたくしも左様見ましたが、あつたら事 00106670M7に、あげ巻か助六をあしらへば、猶よふ御座ります(十九 00106680M8ウ) 00106690¥N16¥J 00106700¥X女郎△△△△△△△△△△△△¥A哥川△豊広 00106710M11女郎、あき部屋に寄合、みきさん。ぬしの客人ハいゝ男で 00106720M12おざんす。みきあれハ芝の米やのむすこでおざんすよ。お 00106730M13いよさん。ぬしの客人はなんざんすへ。いよわたしが客人 00106740M14ハお屋舗ざんすよ。それだからいつそ、しつ(廿オ)ぶかで 00106750M15ざんすハナ。お竹さん。ぬしの今夜の客人ハヱ。お竹おい 00106760M16しやさんでありますよ。そしていつそ気がよくつて、今夜 00106770M17はうれしうおざんす。おしげさん。ぬしの客人ハヱ。しげ 00106780M18きいておくんなんし。わつちが客人ハしれんせんから、ぬ 00106790M19しハ何しやう(廿ウ)ばいでさんすときゝんしたら、ちんこ 00106800M20切りだといゝなんしたが、ちんこ切りか、なぜ女郎かいに 00106810¥P334 00106820L1きんしたか、わかりんせんよ。お竹それハ客人のおきわす 00106830L2れたのでも有なら、ぬしにもらう気でおざんしやう 00106840¥N17¥J 00106850¥X力じまん△△△△△△△△△△¥A磯の△苔なり 00106860L5ある力じまんの男、わしハ世の中に(廿一オ)こわひものと 00106870L6言がこさらぬ。そこておそろしいことに、ちとあつて見た 00106880L7いとぞんじますが、さておそろしいと言こともないもので 00106890L8ござるといへば、客軍平さま。此間八丁堀の辺へ、ばけ物 00106900L9が出ると申ますが、おきゝなさりましたか。軍平いや+、 00106910L10うけたまハらぬ。それは(廿一ウ)一段とおもしろひこと。 00106920L11今晩さいわい雨も降、ばけ物の出そうな晩。したくいたし 00106930L12て罷出、手どらまいにいたそうと、はや夜も九つ時頃、大 00106940L13小きめつけ、雨のふるもいとハず、八丁堀のかしのあたり 00106950L14をぶらつくと、一つ目のある、せいのひくい小そうが、大 00106960L15きな笠をかむりて立テ居る。軍平、(廿二オ)こいつ、かの 00106970L16とふふかいの一つ目小僧こさんなと、づか+と寄、笠の 00106980L17上からおしつけれとも、いつこううこかず。さて+化物 00106990L18といふ物は、ちからのつよいものじやとあきれはてゝ、よ 00107000L19く+見れば、雪見がたの石どうろう(廿二ウ) 00107010¥N18¥J 00107020¥X茶番△△△△△△△△△△△△△△¥A鹿児全 00107030M3若いむすこ七八人、年わすれの茶番に行、なんと、忠臣蔵 00107040M4五段目から七段めまでやりかけやう。先鉄ぼうが定九郎、 00107050M5助さんが与一兵衛、安さんが勘平、おれが由良之助、ぬし 00107060M6が平右衛門、松ぼうに九太夫と弥五郎二役と、それ+に 00107070M7(廿三オ)役わりをする。助おらあ与一兵へハいや。鉄おれ 00107080M8も定九郎ハ気なしかしだとしやれると、松ミんなが其やう 00107090M9に役ぶそくをいふと、いつこう此芝居ハたゝけぬと言もの 00107100M10た。鉄おきやあかれ。うぬばかり二役有とおもつて高まん 00107110M11ばかりぬかすことハなひ。松いつこを(廿三ウ)まんをいつ 00107120M12た事がある。此べらぼうめと立あがると、鉄よくべらぼう 00107130M13とぬかしたな。松いつたがとふしたと、たがいに大げんく 00107140M14わ。其芝居も出来す、ミな+大腹立にてかへる道にて、 00107150M15鉄と松、さつきのこと、わすれハしまひと、鉄、わきざし 00107160M16をぬき、松にきり(廿四オ)かけると、松、こゝろへたと同 00107170M17しくぬき、切合。のこりのむすこも、ミな+ぬき、たが 00107180M18いにどしうち、てう++たゝき合。近所よりあふぜい 00107190M19飛出してとりさへ、まづ+あふなひと、刄ものをとりあ 00107200M20げ、よく+見ると、ミな木太刀に銀紙(廿四ウ) 00107210¥P335 00107220¥N19¥J 00107230¥X按摩△△△△△△△△△△△¥A豊秀斎△冬渓 00107240L3あんまのなかま二三人あつまりて、さて文器さん。おれハ 00107250L4去年から人におそハつてするが、なるほどあゝすると、そ 00107260L5のとしにハおそろしく仕合がよい。またこの春も、あれを 00107270L6するつもりだ。文器何をすれは、しあハせかいゝ。あんまな 00107280L7んでもその年(廿五オ)の守本尊さまのあんまをとり初ニと 00107290L8ると、その年ハおそろしく仕合かよい。それたから去年の 00107300L9守本尊さまハ申の年だつ/け((ママ))から、大日さまのをとり初に取 00107310L10た。文器そんなら、こ年もそうするかいゝと、程なくとり 00107320L11初の日に成りて、友だちか来て、またとり初をしなひか。 00107330L12あんまいましたくををして居る(廿五ウ)と、何かかわ羽おりを 00107340L13きて、その上へぬれごもをきて、手へゆがけをはめて、又 00107350L14そのうへから水をあびる。友達これあんま。きさまハ気で 00107360L15も違たか。てあひてもありハすまいし、其様にぬれごもを 00107370L16きたり、なにかする。あんまはて、今年ハなんだとおもふ。 00107380L17酉の年でハなひか。守本尊ハ今年ハ不動さまだハ(廿六オ) 00107390¥N20¥J 00107400¥X年礼△△△△△△△△△△△△△¥A慈悲成 00107410L20高まんむすこ、上下をきめつけて年礼に出かける。むかふ 00107420M1より、りちぎそうな男、ちよこ+来ると、高まんむすこ、 00107430M2りちぎ者をミつけて、これ+そつか。どこへお出じや 00107440M3と言ふ。りちき私も(廿六ウ)少&礼の残りか有て、今日つ 00107450M4とめてあるきます。高まんふねいも今日ハ足下が所を仕廻 00107460M5にまハり、足下と壱盃いたそうとぞんじたか、足下おるす 00107470M6でハわるひ。足下、今から酒となさらぬか。足下、其おぼ 00107480M7し召なら、足下が所へ参上いたすか、足下気なしか。足下 00107490M8し(廿七オ)だい。足下、どふじや+と、やミくもに足下 00107500M9+と言。りちぎものはい+。さやうならば、今にわたく 00107510M10しもかへります。わたくしの所へ御出なされてお待なさり 00107520M11まし。高まん左様なら、足下か所で相待申そうと、立わか 00107530M12れると、下人が、旦那さま。今のハはいかい師かな。高ま 00107540M13ん(廿七ウ)なぜ。下人それでも足下+と、はい名をおよ 00107550M14びなさりました。高まんあれハはい名でハない。其様な馬 00107560M15鹿なことをいはずとついてこいと、又高まんな顔をして行。 00107570M16是けらい。ちよとこゝの/眼家(がんか)へ寄てゆこう。下人もし、眼 00107580M17家さまとハ、はい名かへ。高まんナニ、いしやだハ。下人 00107590M18なんの眼家さ(廿八オ)まと申ます。高まんハテ、名でハな 00107600M19いと言に。是、能きけ。是ハ眼のりやうじをするいしやじ 00107610M20やによつて、そこで眼家と言のじやといへば、下人なる程 00107620¥P336 00107630L1わかりました。そんならさいぜんの足下も、足袋屋で御座 00107640L2りますか(廿八ウ) 00107650¥Y跋 00107660L7一語三日倦ざるは、淳于■か滑稽、今桜川の正説、一時に 00107670L8笑を催し、腹の皮も絞りの手拭、猫も隣からゑミをふくミ、 00107680L9こゝろ鶴ひしに羽を延し、アヽツカモナイ三升の大盃、よ 00107690L10ろこびわらひたのしむ(廿九オ)も、酔るハおなし三笑にし 00107700L11て、兄分の朝いなかさるくまは、暮やあざむき、よろこび 00107710L12を酉のはつ春、女子小童の三つの笑種と、滑稽好の跋に然 00107720L13云 00107730L14△△△日之見下番正かすゝりの 00107740L15△△△△△△そばによりて 00107750L16△△△△△△△△△△△△△△△△△鐘木ノ角女誌 00107760L17△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(廿九ウ) 00107770¥Q 00107780M3△落噺作者 00107790M4△△△芝桜川慈悲成評 00107800M5△芝神明前 00107810M6△△△板元△山口屋三四郎 00107820M10寛政十三年 00107830M11△△酉のはつ春 00107840M13△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(三十終オ) 00107850¥P337 00107860¥U噺本大系△第十三巻 00107870¥T/太郎花(たろうばな) 00107880¥G 00107890¥Y 00107900L15寛政頃刊 00107910L16山東京伝作 00107920L17北尾政美画 00107930L18蔦重板 00107940L19中本二巻二冊 00107950L20国立国会図書館蔵 00107960¥T1 00107970¥N1¥J 00107980¥Xけんくハ 00107990M3おや子けんくハをする。ていしゆが、此おいぼれのやくた 00108000M4ゝず、しにさがりのばかおやぢと、あくたいをつけバ、孫 00108010M5がきゝかねて、うしろから、わがおやをくらハせながら、 00108020M6此いけぬすつと。げんざいのおやにむかひ、あくたいをつ 00108030M7くものが、どこのくにゝあるものか(六オ) 00108040¥N2¥J 00108050¥X床花 00108060M10三くわいめのきやく、あさかへりに、小ばんの上へ小つぶ 00108070M11をのせ、これハなじミになるしるしさといだす。女郎いた 00108080M12ゝいて、たばこほんのひきだしへしまハうとすると、きや 00108090M13く、/台(だい)をバおかへしなさい(六ウ・七オ) 00108100¥N3¥J 00108110¥Xはやり詞 00108120M16とのさま、家中の衆をめされ、はやりことばハ、いつせつ 00108130M17てうじたるべしと、おふせいだされけるに、おそばの衆の 00108140M18うちにて、こいつハよいといひけるが、おミヽにとまる。 00108150M19はやり詞てうじと申付しに、こいつハよいなどゝ申せしだ 00108160M20ん、もつての外ふらちなりと、おはらたちありけれバ、御 00108170¥P338 00108180¥G(六オ) 00108190M1からうとりなして、たゞいま申せしハ、はやり詞にてハご 00108200M2さなく、(七ウ)との様御めしのおはをりのこびちやのいろ 00108210M3をほめまして、こびちやハよいと申たのでござりますとい 00108220M4へば、とのさまきいて、なるほど、こいつハよい(八オ) 00108230¥N4¥J 00108240¥X柳 00108250M7だんな、柳を数十本にハにさして、子供のぬかぬようじん 00108260M8に、小ぞうにいひつけ、ばんをさせしか、日かづたちて、 00108270M9だんな、小ぞうにとハるゝハ、子どもらがきて、よる柳を 00108280M10ぬすミハせなんだかといへば、小ぞう、よるハようじんが 00108290M11わるいゆへ、ぬいてしまつてをきました(八ウ・九オ) 00108300¥N5¥J 00108310¥Xつくり酒 00108320M14ふたりそうだんして、さけをつくらふといふとき、ひとり 00108330M15がいふ。をれが水を出すから、きさま、米を出しやれ。 00108340M16Sばかをいやんな。おれひとりで、米を出すくらいなら 00108350M17(九ウ) 00108360¥N6¥J 00108370¥X狐 00108380M20ばけならいの小きつね、いけの中へはいり、/藻(も)をあたまの 00108390¥P339 00108400¥G(六ウ・七オ) 00108410M1上へのせれバ、もがすべりおちる。又とつてハのせてミて 00108420M2もすべるゆへ、いくたびものせてミれど、もがをちるゆへ、 00108430M3せいをつからし、ヱヽめんどうな。モウばけまい(十オ) 00108440¥N7¥J 00108450¥X禁酒 00108460M6おぬしハさけをやめたじやアねへか。Sされバよ。ぐハん 00108470M7だてをして、五年が間きんしゆをした△Sそりやアふじゆ 00108480M8ふであらふ。なんと、十ねんのきんしゆにして、よるばか 00108490M9りのんだかよかろう△Sそれもよかろうが、いつそ廿年の 00108500M10きんしゆにして、ちうやのむべいか(十ウ) 00108510¥N8¥J 00108520¥Xじまん 00108530M13せつしや、あらミのかたなをとゝのへ申た。あつはれきれ 00108540M14ものなれハ、こんばん、のぶせりのひにんをころし、ため 00108550M15し見やうとぞんずる。御同道くだされと、さむらひ四五人 00108560M16さそひあわせ、野はづれへいで、アレ+、あそこにひに 00108570M17んがねてをる。きかうたちハこれにおいでなされ。せつし 00108580M18や壱人にてためしまいると、たゞ壱人にてかしこへゆく。 00108590M19うまくねてゐる(中十一オ)ひにんをまつふたつになし、あ 00108600M20しはやに立かへり、さて+めいさくのかたなでござると、 00108610¥P340 00108620¥G(七ウ・八オ) 00108630M1じまんすれば、みな+、かのひにんがしかひを見とゞげ 00108640M2ませうと、一同にゆきかゝれば、かのひにん、むつくとお 00108650M3き、又ぶちにうせたか 00108660¥N9¥J 00108670¥X証文 00108680M6しんしやうのよいおやぢのところへ、かねをかりたものと 00108690M7もあつまり、壱人がいふは、あなたにかりましたかねを、 00108700M8ミなわたくしに(中十一ウ)くだされますなら、らいせハ馬 00108710M9となつて、あなたのいゑのほうこうをいたしませうといへ 00108720M10ば、おやぢよろこび、せうもんをかへしてやる。また壱人 00108730M11がいふは、わたくしハうしになりまして、御おんをほうじ 00108740M12ませふといふ。おやぢよろこんで、しやうもんをたゞくれ 00108750M13る。三人めのおとこ、わたくしはおまへのおやにうまれま 00108760M14せうといふ。おやぢきいて、大きにはらたち、かねをかり 00108770M15たうへに、おれがおやにならふとハふとゞきせんばんと 00108780M16(中十二オ)いひて、はらをたてバ、そのおとこ、ハテさて、 00108790M17うしやうまになつてハ、御おんハほうじられませぬから、 00108800M18おやになつて、わしがしんせうのこらず、おまへにゆつり 00108810M19ます 00108820¥P341 00108830¥G(八ウ・九オ) 00108840¥N10¥J 00108850¥X不孝 00108860M3ふかうもの、おやぢをてうちやくするに、おやぢ、まごを 00108870M4だいてはなさす、かわゆがるを、となりのもの見かねて、 00108880M5あのやうなふかうなむすこの子を、大事にさつしやる事は 00108890M6ござら/ぬい((ママ))へバ、おやぢ、せめて孫をそたて(中十二ウ)あ 00108900M7げ、いまのむねんをはらさせるきでござる 00108910¥N11¥J 00108920¥X鰒汁 00108930M10このふぐはちときたやうだが、だれぞにくわせたあとでく 00108940M11いたひ。さいわいあそこにゐるこじきめにくわせて、あた 00108950M12らずは、おいらもくわふと、ふぐ汁をこじきにやり、しば 00108960M13らくして見にいつたところが、こじき、なんともないかほ 00108970M14つきなれバ、あんどして、みな+ふぐをくいしまひけれ 00108980M15バ、こじき来て、もし+、おまへがた。さき程の(中十 00108990M16三オ)あがりましたか。ヲヽサ。おいらハいまくつた。こ 00109000M17しき、おまへがたもあかつたらバ、わたくしもたべませう 00109010¥N12¥J 00109020¥X色男 00109030M20ずいといきなふうのいろおとこが、五丁まち中をあちこち 00109040¥P342 00109050¥G(九ウ・十オ) 00109060M1とそゝり、ひまな見せにたつて見れば、Sアヽ見なんした 00109070M2か。よい男がちらつく△Sほんに助六を見るやうだねへ。 00109080M3うそハありんせん△Sなにさ。きついとうふうさ△Sなぜ 00109090M4へ。ハテ、かわずに見とれてさ(中十三ウ) 00109100¥P343 00109110¥G(十ウ・十一オ) 00109120¥T1 00109130¥N1¥J 00109140¥X医師 00109150M3いしやのけらいがふとゝきをしたといふて、いしや、大き 00109160M4にはらをたち、こぶしをあげてうたふとするを、けらい、 00109170M5手をあわせて、どふぞあしげになされて下さりまし。あな 00109180M6たの手にかゝつて、これまでいきたものハござりませぬ 00109190M7(十一オ) 00109200¥N2¥J 00109210¥Xゐしや 00109220M10びんぼういしやのうちへ、たま+くすりとりがくる。い 00109230M11しや、くすりばこをあけれバ、ぞよ+とむしがでるを、 00109240M12くすりとり見て、これハなんでござります。(十一ウ)いし 00109250M13や、ほしたかいこさ。くすりとり、ほしたかいこが、どふ 00109260M14していきております。いしや、わしがくすりをくらふゆへ 00109270M15さ(十二オ) 00109280¥N3¥J 00109290¥X/吝虫(シワムシ) 00109300M18しわきおとこ、さけをかふておきしが、一どにのむ事のを 00109310M19しさに、はしを酒の中へいれ、ひたしてハはしをなめる。 00109320M20その子、はしをとりて、ふたはしつゞけてなめれハ、おや 00109330¥P344 00109340¥G(十一ウ・十二オ) 00109350M1ぢ、まなこをむき出し、なぜ、そのやうに/大酒(たいしゆ)をするぞ 00109360M2(十二ウ・十三オ) 00109370¥N4¥J 00109380¥X井戸 00109390M5井戸ふしんをのぞきながら、まつさかしまに穴の中へをち 00109400M6る。ヤレ、八があなの中へをちたハとさわぎて、のぞいて 00109410M7ミれバ、八、/清水(しミづ)のながれを手にくんでのんでいる。ヤレ 00109420M8+、八ハめをまわしたかとおもつたといへば、八、わし 00109430M9もおほかた目をまハしたとおもつて、水をのんでゐます 00109440M10(十三ウ・十四オ) 00109450¥N5¥J 00109460¥X丁稚 00109470M13でつち、火をたきながら、火吹竹のあなをゆびでおさへ、 00109480M14むせうにふいてゐるを、だんなが見つけて、コレ又や。あ 00109490M15なをおさへてハ、かぜがでぬハとしかれバ、かうふきこん 00109500M16でおいて、手をはなします(十四ウ・十五オ) 00109510¥N6¥J 00109520¥X盗人 00109530M19びんぼうにんの内へどろぼうがはいり、そこらさがしても 00109540M20なにもなし。戸だなをあけても、かミくづばかり。だん 00109550¥P345 00109560¥G(十二ウ・十三オ) 00109570M1+さがしてもなにひとつなくて、ぬす人もあきれてゐる 00109580M2を、ていしゆ、よぎの中から見て、あまりおかしさに、く 00109590M3つ+とわらへバ、どろぼう、イヤ、わらいごつちやアな 00109600M4い 00109610¥Q 00109620M5△△△△△△△△△△△△△△△△△△北尾政美画 00109630M7△△△△△△△△△△△△△△△△△◇京伝作◇ 00109640M8△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十五ウ) 00109650¥N7¥J 00109660¥X助太刀 00109670M11女郎、なじミのきやくにむかいて、なにをかくしんせう。 00109680M12わたしハおやのかたきがありんす。ぬしのたのもしいこゝ 00109690M13ろを見こんでたのミんすから、すけたちをしてくんなんし 00109700M14といふ。きやく、てめへのかたきなら、おれがためにも、 00109710M15しうとのかたき。見事うつて見せようといへバ、女郎、そ 00109720M16れでもぬしの手のうちがこゝろもとないといひながら、か 00109730M17んざしをぬきかける。きやく見て、さてハおれが手のうち 00109740M18をためすために(下十六オ)しゆりけんをうつかとこゝろへ、 00109750M19そばなるまくらをとつて、うたバうけんと身がまへすれバ、 00109760M20思ひの外、かんざしをたゝミへなげ、たゝミの目をかぞへ 00109770¥P346 00109780¥G(十三ウ・十四オ) 00109790M1ながら、うたれるかうたれぬか++ 00109800¥N8¥J 00109810¥Xたゝミ 00109820M4とのさま、御たゝミのおもてがへを御らんなされて、これ 00109830M5+、めい+にしかへるもついへな。うらがへしたらバ 00109840M6よかろふとのぎよゐ。からうまかり出て、ぶしのうらがへ 00109850M7ると申ハ、いミ事でござりますと申上たれバ、イヤ、高が 00109860M8五百畳か六百でうの事た。そなたのいふハ、千畳のうへの 00109870M9事だ(下十六ウ) 00109880¥N9¥J 00109890¥X/屁(へ) 00109900M12女郎、きやくのまへで、おならをして、さすがにはづかし 00109910M13くていひけるハ、すへてきやく人へハ、ゆひを切、かミを 00109920M14きつて、あげくにハあいそをつかしなんすが、もとミづく 00109930M15さいからおこりんす。わつちがいま、ぬしのこゝろをひい 00109940M16て見るばかりに、おならをしいんした。ぬしアあいそがつ 00109950M17きなんしたらふ。きやく、どうして、屁ぐらひてあいそが 00109960M18つきるものかといへば、女郎、そのこゝろならうれしうご 00109970M19ざんすといひさま、またひとつひれば、S/客(きやく)ハテ、うたが 00109980M20いふかひ(下十七オ) 00109990¥P347 00110000¥G(十四ウ・十五オ) 00110010¥N10¥J 00110020¥Xかつほうり 00110030M3さかなうりが、かつほを一ぽんわすれていつた。となりの 00110040M4ていしゆ。どうしたものであらふ。S@こちらとなり|のていしゆ△@より合ふ 00110050M5てくわふといふ。Sそして又、ひよつと銭とりにきたら、 00110060M6たれがやるぞ△Sそんなら、ばんまでおいたがよかろふ 00110070M7Sそれでハあついからわるくならふと、ろんしてゐるとこ 00110080M8ろへ、Sむかふのていしゆそのかつほ、こつちへおこさつし 00110090M9やい△S二人どうさつしやるぞ△Sむかふのていしゆハテ、し 00110100M10ほにして、大屋へあづける 00110110¥N11¥J 00110120¥Xかミなりの手間取(下十七ウ) 00110130M13らうにんもの、こうりよくをたのミ申スと、門にたつても 00110140M14らひけれバ、Sていしゆもし+、そなたはなにせうばい 00110150M15をさつしやるそ△Sせつしやハかミなりの手間とりでござ 00110160M16る。いつもなつの内ハ、くちすぎもできますが、ふゆハと 00110170M17んとひまで、ほんのてんぢくらうにんさ 00110180¥N12¥J 00110190¥X大ふつ 00110200M20京の大ぶつ、こんきうにおよび、さかのしやかへむしんに 00110210¥P348 00110220¥G(十五ウ) 00110230M1ゆき、さて、われらつく+と思ひますに、そこもとハな 00110240M2りがちいそうても、人のもちいがござる。(下十八オ)われ 00110250M3らハなりばかりたいそうで、いつかう銭もうけがなく、さ 00110260M4て+なんぎいたす。ちかごろ御むしんながら、さんもつ 00110270M5のたまりがあらバ、せう+かしてくださるまいか△Sな 00110280M6るほど、おやすい事でござる。さいわいこゝに四もんぜに 00110290M7で百くわんもんほとござるから、御ようだちもふしませう 00110300M8Sそれハせんばんかたじけなふござりますといふて、まへ 00110310M9きんちやくへいれた(下十八ウ)