00000010¥P3 00000020¥U噺本大系△第十五巻 00000030¥T/百生瓢(ひやくなりふくべ)〔尾題〕 00000040¥G 00000050¥Y 00000060L16文化十年正月刊 00000070L17瓢亭百成序・作 00000080L18辰斎老人画 00000090L19柏屋半蔵板 00000100L20小本一冊 00000110¥Y 00000120M1予/這箇冊子(このさうし)の/題号(だいごう)に、あたま/割(わらん)ンとする/折(をり)しも、/或人(あるひと)来て 00000130M2/教(をしえ)て曰、/直(たゞち)に/足下(おまへ)の/号(な)を以て、/百生瓢(ひやくなりふくべ)と題すへし。/雅俗(がぞく)の 00000140M3/論(ろん)にからまる事なかれ。/不形(ぶなり)な/趣向(しゆこう)を/恥(はづ)る/事(こと)なかれ。つま 00000150M4らぬ/噺(はなし)でも、つまる/処(ところ)はお/子様方(こさまかた)のお/笑(はら)ひ/草(ぐさ)、ふつと/吹出(ふきだ) 00000160M5す/飴細工(あめざいく)の/瓢箪(へうたん)/程(ほど)ハ/甘(あま)からぬ、/花(はな)も/根(ね)もない(一オ)/葉(は)なし 00000170M6でも、たねのあるゆゑがら+と、/鳴(な)るハ/実(ミ)のあるお/手遊(てあそ) 00000180M7びと/云(い)はれて、あたまを/割(わる)るに/及(およ)バず。これを/以(もつ)て/序(ぢよ)とす 00000190M8といふ 00000200M10△△△△△△△△△△△△△上毛山中 00000210M11△△文化十癸とりのとし△△△△瓢亭百成述 00000220M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△G 00000230M14△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一ウ) 00000240¥P4 00000250¥G(二ウ・三オ) 00000260¥N1¥J 00000270¥X長寿 00000280M3/春(はる)の/始(はじめ)の御ことぶきといふ/中(なか)にも、◇若者◇モシおぢいさん。 00000290M4そのきぬのくゝり/頭巾(づきん)ハ、/妙(めう)に/似合(にやい)ましたねへ△◇老人◇この 00000300M5頭巾にハ、むづかしい/格式(かくしき)のあることじやテ。まづ/寿官(じゆくわん)と 00000310M6いふて、八十八からハおもき/位(くらい)にすゝむによつて、/貴人(きにん)の 00000320M7/御前(ごぜん)へも、このづきんハはなさぬてや△◇若◇へヱ、/百歳(ひやくさい)にお 00000330M8なりなさつたら△◇老◇/紫(むらさき)ちりめんの/頭巾(づきん)になる△◇若◇/千歳(せんざい)に 00000340M9おなりなさつたら(二オ)(二ウ・三オ挿絵)◇老◇しよくこうの/錦(にしき) 00000350M10の頭巾になる△◇若◇/万(まん)ざいにおなりなさつたら△◇老◇ゑぼしさ 00000360¥N2¥J 00000370¥X/茶(ちや)ミせ 00000380M13/両国(りうごく(ママ))の茶店にて/田舎娘(いなかむすめ)をかゝへ、しやれた/前(まへ)だれなどかけ 00000390M14させ、いきにつくつて茶ミせへ出すとて、◇かミさん◇コレお六 00000400M15や。とかく茶ミせといふものハ、/愛(あい)そうが/第一(だいいち)だから、お 00000410M16/客(きやく)をミかけたら、ちやほやと、ゑがほしたがいゝよといひ 00000420M17ふくめ(三ウ)て、ミせへ出すと、やがてお客がくる。お六 00000430M18ハ客のかほを見て、やたらに笑ふゆゑ、客はらをたち、◇客◇ 00000440M19うぬハマア、きちげへ女じやアねへか△◇お六◇イヽヱ、/越谷= 00000450M20女(こしげへ=をんな)だアもさ 00000460¥P5 00000470¥N3¥J 00000480¥X浅草 00000490L3/国足軽(くにあしがる)、はじめて浅草のくわんをんへまゐり、まづ二王門 00000500L4をはいると、/楊枝(やうし)ミせに、てんにんのやうなむすめがゐる。 00000510L5/足軽(あしがる)、/見(ミ)とれてむちうに(四オ)なり、/口(くち)ぱつかり、よだれ 00000520L6だら※。その口の中へ鳩がふんをしこむ。びつくりして 00000530L7刀にそりを打、Sヤア不礼ものめ。うぬハマア、/身共(ミども)を/何= 00000540L8組(なに=ぐミ)だとおもふ△◇はと◇てゝつぽう、てつぽう+ 00000550¥N4¥J 00000560¥X老耄 00000570L11おいぼれ/親仁(おやぢ)/一人(ひとり)つかつている/旦那(だんな)どのあり。あるとき親 00000580L12仁、/錦手(にしきで)の/砂鉢(さはち)をとり/落(おと)してこわす。旦那、/大(おほ)きにいかつ 00000590L13て、Sヤイ、/死(しに)さがりめ。(四ウ)此大切な鉢を、なぜこわ 00000600L14しおつた△◇親仁◇アイ+△◇だんな◇アイですむものか。おの 00000610L15れ、しばるぞ△◇親仁◇アイ+△◇旦◇サアしばつてくれうと、 00000620L16/高手(たかて)/小手(こてに)に/縄(なわ)をかけ、サア/是(これ)から/手打(てうち)にするぞ。◇親◇アイ 00000630L17+△◇旦◇かくごひろげ△◇親◇アイ+△◇旦◇それとも/に((ママ))にあやま 00000640L18つたか△◇親◇アイ+△◇旦◇そんなら、ゆるしてやろう 00000650¥N5¥J 00000660¥Xうぬぼれ 00000670M1とんだうぬぼれなかミさん、けせうをしてゐる。(五オ) 00000680M2◇でつち◇モシおかミさん。おまへのさつき、お/昼(ひる)ねをなさつ 00000690M3たお姿を、あの/格子(かうし)から、いきな/男(をとこ)が/覗(のぞき)こんで、につこり 00000700M4と笑ひました△◇かミさん◇へヱ、そして、何とかほめハしなん 00000710M5だか△◇でつち◇アイ。うきねの鳥にあらねどもトうたひてへ 00000720M6などゝ申ました△◇かミさん◇アノをし鳥の△◇でつち◇イヽヱ、あ 00000730M7ひるの 00000740¥N6¥J 00000750¥X大/箪笥(たんす) 00000760M10◇出入の者◇モシ/旦那(だんな)。あてこともねへ、大きな/箪笥(たんす)を(五ウ) 00000770M11おもとめなさつて、これハ何をお入レなさります△◇旦那◇こ 00000780M12りやア/通人(つうじん)の/玉(たま)づさ/文庫(ぶんこ)さ△◇出入◇はてねへ。何か/引出(ひきだ)しの 00000790M13おもてに/書付(かきつけ)がはつてある。ムヽ、まづ一ばんの引出しが 00000800M14/北国(ほつこく)、二番が/辰巳(たつミ)、三ばんが/岡場所(をかばしよ)/昆雑(こんさつ)。これハとういふ 00000810M15もんでござります△◇旦◇もろ+の/遊里(ゆうり)から、あんまりふミ 00000820M16がふりこむやうだから、そこで引出しに/口取(くちとり)をして、/返事(へんじ) 00000830M17のいりこまねへやうにするあんじさ△◇出入◇(六オ)ハヽア、 00000840M18あつぱれ妙計+。どふりでおまへの事を、せけんで△◇旦◇ 00000850M19なんといふ△◇出入◇ふみもちだ+とさ 00000860¥P6 00000870¥N7¥J 00000880¥X生酔 00000890L3したゝか/酒(さけ)にゑひて、/足(あし)ひよろつきてあるかれず、道ばた 00000900L4にのたれふして、少しとろ+として、おきて見れバ、/日(ひ) 00000910L5もくれて、/月(つき)かげにわがかげぼしの/向(むか)ふにうつるを見つけ 00000920L6て、Sさても+ゆるりと/御馳走(ごちさう)にあづかりました。しか 00000930L7らバ(六ウ)おいとま申上ますと、いんぎんにじきをして立 00000940L8上り、又向ふに我かげぼしのうつるを見て、Sこれハイヤ 00000950L9はや、御ていねい 00000960¥N8¥J 00000970¥X片おもひ 00000980L12きいたふうなる男、茶屋の二かいで、内の娘にしやくをと 00000990L13らせ、ちよびとおすけなどゝしやれたうへで、これさ。ど 00001000L14うぞ+と娘へだきつく。娘、とつてつきのけ、◇娘◇もし、 00001010L15わたしがやうなふつゝかなものを(七オ)△◇客◇ヱヽ、よく/裏(うら) 00001020L16ばかりおつしやる△◇娘◇いゝかげんにおなぶりよ△◇客◇ヱヽ、 00001030L17よく/裏(うら)ばかりおつしやる△◇娘◇あれさ、うるさいよ。おめへ 00001040L18のやうな/猿(さる)まなこのしゝツぱなハいやだよ△◇客◇ヱヽ、よく 00001050L19/裏(うら)ばかりおつしやる 00001060¥N9¥J 00001070¥X/家樽(ゑたる) 00001080M3いかにも酒ずきなる/男(をとこ)、/酒(さけ)がのミたくツてならねども、も 00001090M4はやふんどしまで/質(しち)にまげ(七ウ)しまひ、のむべきくめん 00001100M5なけれバ、そこにころりとなきたふれ、とろ+すると思 00001110M6ふ処へ、表の方より酒やのごようが、Sもし、是ハいせや 00001120M7金八さまの御進物でござりますと、/家(ゑ)だるを置てゆく。 00001130M8Sマア是ハなんたる神仏のおたすけか。有がたし+。さ 00001140M9て、かん鍋でかんをするまも待かね山、とつくりのじかや 00001150M10き、うまい+とひとりごといふて、へつついのたき火 00001160M11へ、とつくりを(八オ)おつつけると、とつくりがぱつちり 00001170M12われて、酒ハミんなこぼれてしまふにぞ、はつとおもふ 00001180M13と、めがさめて見れバ、夢也。Sヱヽ、ひやでのめバよか 00001190M14つた 00001200¥N10¥J 00001210¥X女郎 00001220M17近めそゝう兵衛といふ人、女郎/買(かい)にゆき、よく見へるふう 00001230M18で、そゝうばかりいふゆゑ、女郎にもなぐさまれ、はらを 00001240M19立て、つれの(八ウ)とこへはなしにゆくとて、外の客人の 00001250M20とこへずつとゆき、いろ+わる口をならべけれバ、これ 00001260¥P7 00001270L1さ。こなたハ気ちがひじやアねゑかととがめられ、これハ 00001280L2ごめんと、そう+迯いだし、うぬがとこへとびこむ。女 00001290L3郎、しやくがおこつたといふふうで、うつむけにねてゐる 00001300L4を見て、◇近め◇こいつハばけ物じやアねへか。つらのねへ女 00001310L5郎だトいひしま、ひつくり返し見て、Sヒヤア、ぼんの 00001320L6(九オ)くぼに、めはながついてゐた 00001330¥N11¥J 00001340¥Xきん句 00001350L9Sこれハ伝公。よくお出なさつた△Sアイ。けふハむかふ 00001360L10がしまできやしたが、あまりおなつかしさに、ちよびとと 00001370L11むらひやした△Sこれさ。わつちがごへいかつきをしりつ 00001380L12ゝ、とむらひとハなんのことだな△Sハテ、とむらひとハ 00001390L13見まふといふことで、何がわるい事があるもんだ。すなハ 00001400L14ち、とむ(九ウ)らふといふぼうの字だハナ△Sアヽこれ 00001410L15+、ぼうの字のとむらひが、なほいやだ 00001420¥N12¥J 00001430¥X下女 00001440L18田舎から下女をかゝへしに、あくるあさ、奥さまにむかひ、 00001450L19◇下女◇かゝアどの、ハアおきめさつたか△◇おく様◇これハした 00001460L20り。そのやうないやしい事ハ、いやらぬものじや。それも 00001470M1いはふならバ、奥さまにハ今朝もごきげんさま、よう(十 00001480M2オ)おひなり遊バしましたかと、とかく女ごのことばハ、 00001490M3おの字と様の字をはなさずに、ていねいにいやるものじや 00001500M4◇下女◇アイ+△◇おくさま◇そして第一、ことばかずのすくない 00001510M5がよいぞよ。それゆゑ古人も、口を鼻のやうにせいと仰ら 00001520M6れた△◇下女◇とんだおべらほう様だ 00001530¥N13¥J 00001540¥X/生(なま)ゑひ 00001550M9/人家(じんか)はなれし/野(の)はらに、/追剥(おひはぎ)かんばつて(十ウ)ゐる所へ、 00001560M10とつちら孫左衛門、よろ+とよろけ来る。/追剥(おひはぎ)、うまい 00001570M11+と打うなづき、すぐにとつつかまへて、のどをしめる 00001580M12と、追剥のあたまの上から、げろ++。おひはぎ、こ 00001590M13いつはかなハぬとにげいたせバ、◇孫左◇これ+、丸薬でも 00001600M14おいてゆけ 00001610¥N14¥J 00001620¥Xざとう 00001630M17/大(おほ)ミそかにさいそく/座頭(ざとう)/来(きた)り、/高声(たかごゑ)に(十一オ)のゝしる。 00001640M18◇座頭◇いくらいつても、つんぼ/程(ほど)もきかつしやらぬの。そん 00001650M19なに/盲人(もうじん)をばかにさつしやらぬものだ。ヱヽこれ、此めが 00001660M20ぱつかりとあいたなら、/貴様(きさま)ののうてんをぶつつぶしてや 00001670¥P8 00001680L1りてへ△◇てい主◇これ+/座頭(ざとう)どの。めがあけてほしくハ、 00001690L2よい/呪(まじない)をおしゑてしんじやう△◇ざ◇それハどうするのだ 00001700L3◇てい主◇まづはかたのはかまに/はかまに((はかまに衍))、はかたの/帯(おび)に、は 00001710L4かたの/頭巾(づきん)をかぶつて、/元日(ぐわんじつ)に/年神様(としがミさま)を(十一ウ)おがむと、 00001720L5ぢきにめがあきやす△◇ざ◇それハどうか、うそらしい△◇てい主◇ 00001730L6そんなら、こよミを見なせへ△◇ざ◇なんとあるね△◇てい主◇はか 00001740L7ためくらひらきよし 00001750¥N15¥J 00001760¥X/富(とミ)の札 00001770L10折介、よき/夢(ゆめ)を見て、ひどくめんにて富の札を/買(か)ひしに、 00001780L11とんと一番にあたり百両とる。まことに夢ごゝちにて、し 00001790L12つかりふんどしにゆひつけ、ひよつと/追(おひ)はぎに/取(と)られハし 00001800L13まいかと用心(十二オ)して、そう+とび帰り、/供(とも)べやに 00001810L14ねたところが、ひよつとなかまにしられたら取られハしま 00001820L15いかと、/夜(よる)もしつかりだいてねて、まんじりともせず。/昼(ひる) 00001830L16もそとへ出てハ/追(おひ)はぎがおそろしさに、病気といひ/立(たつ)て、 00001840L17/内(うち)にばかり、たいてねてゐる。かくの/通(とほ)り四五日すると、 00001850L18よるひるねづにこゝろづかひせしゆへ、/大(おほ)きにつかれはて 00001860L19ゝ、これでハ命がたまらぬとかんべんして、百両の/内(うち)を壱 00001870L20両(十二ウ)弐分もつて、かけをち 00001880¥N16¥J 00001890¥X身うけ 00001900M3あるむすこ、女郎にのぼせ、なが+ゐつゞけのうへ、す 00001910M4でに身うけせんとのさたきこへけれバ、親父、大きにおど 00001920M5ろ/ろ((衍))き、そう+かの女郎やへゆき、むすこをしたゝかし 00001930M6かつた上にて、◇おやぢ◇かうしかるのも、只しんせうがだい 00001940M7じ。又われがかハゆいからのことじやほどに、こゝをよく 00001950M8きゝわけて、(十三オ)女郎をふつつりと思ひきつて下され 00001960M9◇むすこ◇この義ばかりハ、/何(なに)ぶんごめん/下(くだ)さりませ△◇おや◇そ 00001970M10んならお女郎様。コレおがむから、どうぞ思ひきつて下さ 00001980M11れ△◇女郎◇ヲヤ、ばからしいよ。いやでおす△◇おや◇ムヽよし 00001990M12+。そんならおれが思ひきる 00002000¥N17¥J 00002010¥Xだんぎ 00002020M15ある/小(こ)でらに、だんぎがあるとて、大ぜいきゝにゆきしが、 00002030M16づぶのへたなれバ、皆たいくつして、そろ+と(十三ウ) 00002040M17にげ、もはやさつぱり迯きつてしまひけるゆゑ、だんぎ僧 00002050M18もあきれはてゝ、そこら見まハせバ、さらに人けなし。し 00002060M19かるに、かたすミに只一人、かんしんしてきゝゐるてい也。 00002070M20◇僧◇これ+、きさまハしん※/厚(あつ)き/人(ひと)と/見(ミ)へた。かやうな 00002080¥P9 00002090L1る/邪見(じやけん)なところにハめづらしい。/十念(じふねん)にてもさづかりたき 00002100L2や△Sイヽヱ。/線香(せんかう)とろうそくをかしましたから、その/代(だい) 00002110L3がとりたさに(十四オ) 00002120¥N18¥J 00002130¥X橋のうへ 00002140L6日本ばしのうへで行あひて、Sこれハ先生。お久しぶり 00002150L7Sハヽア民部どの。まづ御堅固でめでたい。時に、貴殿ハ 00002160L8金銀をたくさんおためなさつたげなが、さて+めし物の 00002170L9そまつさ。もそつとナ、よいものをめせバよい△Sイヤ、 00002180L10只金のたまるのが面白さに、ねから美服をきたい共存ぜぬ 00002190L11Sいかさま、/守銭(しゆせん)の/奴(やつこ)ハ/美服(びふく)をも/着(き)ること(十四ウ)あたハ 00002200L12ずじや。ハヽヽヽヽと笑ふを、供の三平が小ごゑに、S/無= 00002210L13銭(む=せん)の/奴(やつこ)ハ、よたかも/買(かふ)ことあたハずだ 00002220¥N19¥J 00002230¥X下女 00002240L16/鑓持(やりもち)の/角内(かくない)が、下女のりんをとらへ、◇かく内◇ひごろほれて 00002250L17+かつほれぬいてゐた。コレサ、どふしてくれべい 00002260L18◇りん◇ヲヽうれしトきまるところが、ふと心づき、◇りん◇コレ 00002270L19かくさん。わつちがやうな、どぶつて、大あばたで、めつ 00002280L20かちで、そつぱナ/者(もの)に、(十五オ)マアどこにおほれだへ 00002290M1◇角◇飯のたきあんばいにほれた 00002300¥N20¥J 00002310¥Xはつ/鰹(かつほ) 00002320M4きん/番(ばん)/長屋(ながや)のまへを、/初(はつ)がつほうりがいさミとほる。◇ぶし◇ 00002330M5コリヤ+/魚(うを)うりよ。このかつほハいかほどじや△◇肴や◇壱 00002340M6両三分さ△◇ぶ◇ヤアなんじや。武士をたわけにしたやつじや。 00002350M7去年/其方(そのほう)からとゝのへたせつハ、/鰹(かつほ)一本が弐百銅であつた。 00002360M8(十五ウ)あまりなる間ちがひをぬかすな△◇肴◇そりやア六月 00002370M9ごろあげやしたからさ。又弐百ぐらゐの鰹が/上(あが)りたくハ、 00002380M10六月までまちなせへ△◇ぶ◇然らバ、相まちおろう△◇肴◇それが 00002390M11ようごさりやす。ハイ、おいとま申やす△◇ぶ◇こりや+、 00002400M12六月になつて、また間違なねだんを申すな 00002410¥N21¥J 00002420¥Xこわいろ 00002430M15申上ますにも/役(やく)まけのする/役者(やくしや)、/芝居(しばゐ)から(十六オ)かへり 00002440M16きて、◇役者◇これ、お袋もかゝアもきかつせへ。けふの大雪 00002450M17に、ぐつとひねつた思ひつき。いま人形町で、きんひらご 00002460M18ぼうに芝ゑびを八文がかつてきた。酒といふまくハ、とて 00002470M19も雲にかけ/橋(はし)だから、こいつで茶をのんで、/哥(うた)さんや/三津(ミつ) 00002480M20さんのきどりで、/雪見(ゆきミ)ハどうだろう△◇女ぼう◇ナニ、/面白(おもしろ)く 00002490¥P10 00002500L1もねへ。かゝさんもわつちも、こんなに/留(とめ)メばのしきせ/羽= 00002510L2織(ば=をり)/一枚(いちまい)づゝきて、ほんにおめへのやうな(十六ウ)役者とか 00002520L3はくしやとかいふ御きようなおかたにつれそへバ、寒くて 00002530L4ならねへ。それにマア、雪見処か、あんまりわるくしやれ 00002540L5なさんな△◇やくしや◇これさ。いま時ハわるくしやれねへと、 00002550L6一枚になられやせん。そこでいさいかまハずに、/雪見(ゆきミ)の酒 00002560L7の/酔(ゑひ)ざまし序に出ますハ、中嶋おれ様でござります△Sア 00002570L8ヽいかに、ひんくにせまれバとて、/桧舞台(ひのきぶたい)をふミながら、 00002580L9きらづやふすまで/口腹(こうふく)をやしなひ(十七オ)かぬるも、うき 00002590L10世じやアなあ△◇@はゝ△△|めりやす@◇雪のふる日ハ一しほくるし◇@女ぼう△△|口ざミせん@◇ 00002600L11てんつるてん 00002610¥N22¥J 00002620¥X琵琶 00002630L14旦那どの、供のでつちに向ひ、◇旦◇コレ/丁稚(でつち)よ。いま/検校(けんぎやう)さ 00002640L15まの/所(とこ)で、びわといふものを見たが、なんでもしやくしの 00002650L16こうろをへたやうなものであつた△◇でつち◇ヘヱ△◇旦◇それに 00002660L17/曲(きよく)の/名(な)をきいたが、おれハ/物覚(ものおぼ)へがわるくて、どうも/覚(おぼ)へ 00002670L18られぬ。(十七ウ)まづぼくばの曲といふがあるが、アヽ何 00002680L19をおもひ出したらよかろう△◇でつち◇ぼくばならバ、/絵書(ゑかき)の 00002690L20こびんさきに/痰(たん)こぶの二ツある/所(ところ)を、おもひ/出(だ)すがようご 00002700M1ざります△◇旦◇なるほど+。イヤ、まだあつたてや。ヲヽ 00002710M2それ+、/流泉啄木(りうせんたくぼく)といふ/曲(きよく)があつたが、これハ/何(なに)を思ひ 00002720M3出そうぞ△◇でつち◇アヽ、それハ/針医(はりゐ)のあたまの/出(で)たりひつ 00002730M4こんだりした所を(十八オ) 00002740¥N23¥J 00002750¥X/妹(いもが)/許(もと) 00002760M7ある金もちの/隠居(いんきよ)、金のひかりにて、ほつとりものをかこ 00002770M8ひ、よるひるなしに通ふ。◇女◇モシ、よくまい日+お出遊 00002780M9バす。マアお年に/似合(にやい)ませぬ、おミあしのおたつしやな事 00002790M10じや△◇いんきよ◇足ばかりじやない。何もかもたつしやさ。 00002800M11時におれがこゝへくるのを、娘めがとかくこゞとをぬかす。 00002810M12不孝ものさ△◇女◇アノお娘ごさんハきつい御/病身(びやうしん)ゆゑ、(十 00002820M13八ウ)おあんじをなさると見へます△◇いんきよ◇ムヽ、よくし 00002830M14たらバ、はやくしぬだろうよ△◇女◇ヲヤ+、こわい事をお 00002840M15つしやる。世の中に/若(わか)いものがさきだつほど、わるい事ハ 00002850M16ござりません△◇いんきよ◇イヤ、年寄のさきだつが、猶わる 00002860M17い 00002870¥N24¥J 00002880¥X/質屋(しちや) 00002890M20名鳥茶やのていしゆ、/工面(くめん)あしく、ミせ/先(さき)の/狸(たぬき)をだまし、 00002900¥P11 00002910L1ちよつと/金(かね)にばけさせ、その(十九オ)金を持て、/出来分限(できぶげん) 00002920L2の/質屋(しちや)へゆき、/質(しち)をうける。/狸(たぬき)ハ/金箱(かねばこ)の/中(なか)へ/入(いれ)られ、いき 00002930L3つまり、くるしきにうん+とうなる。茶やハそしらぬか 00002940L4ほで、◇茶や◇あれハ何でござります△◇質や◇金のうなるこゑさ 00002950L5◇茶◇はてな。あの/箱(はこ)にハ、マアモシ、いくらばかりはいつて 00002960L6ゐませう△◇質◇/是(これ)ハ/小出(こだ)しの金箱だから、わづか三ぞくばか 00002970L7りさト、大へいをいふ内に、金箱をくひやぶりて(十九ウ) 00002980L8狸かけ出す。◇茶◇是ハ何事だ△◇質◇@ぬからぬ|かほにて、@金がぢきに四そく 00002990L9になつた 00003000¥Y百生瓢終(二十了オ) 00003010¥Q 00003020M2文化十癸酉年 00003030M3△△△△はつはる 00003040M8△板元 00003050M9△△△神田通鍋町 00003060M10△△△△△△△柏屋半蔵 00003070M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二十了ウ) 00003080¥P12 00003090¥U噺本大系△第十五巻 00003100¥T@落△△|はなし@/笑嘉登(わらうかど)〔扉〕 00003110¥G 00003120¥Y 00003130L15文化十年刊 00003140L16談洲楼焉馬序・立川銀馬作 00003150L17喜多川月麿画 00003160L18西村屋与八板 00003170L19中本一冊 00003180L20国立国会図書館蔵 00003190¥Y 00003200M2立川銀馬戯作△△東都馬喰町 00003210M3喜田川月麿画図△△△弐丁目角 00003220M6@落△△|はなし@/笑嘉登(わらふかど)△全 00003230M8談洲楼△△△△△永寿堂 00003240M9△△焉馬校合△△西村屋与八梓 00003250¥Y序 00003260M16むかし+/其(その)むかし、/爺(ぢい)ハ/山(やま)へ/嫗(ばゝ)は/川(かハ)へ、/桃(もゝ)の/流(ながれ)しより/以= 00003270M17来(この=かた)、/其噺(そのはなし)の/種(たね)/夭々(よう+)として、/其派(そのは)しん+たり。/強(こハく)/長(なが)き/咄(はなし)は 00003280M18/長崎(ながさき)から/強飯(こわめし)、/天竺(てんぢく)より/鬼(をに)の/褌(ふどし)と/云(いひ)しも、/今(いま)の/子供(こども)は/不承= 00003290M19知(ふしやう=ち)なれバ、/過(すぎ)し/天明(てんめい)/六(む)ツの/年(とし)、かつしかの/五百崎(いほざき)において、 00003300M20/落噺(おとしばなし)の/会(くわい)が/権三(ごんざ)り/升(ます)と、/牛込(うしごミ)の/親方(おやかた)の/筆(ふで)にミしらせ、/予(よ) 00003310¥P13 00003320L1を/催主(さいしゆ)とす。/夫(それ)より/十年余(ととせあまり)は、/狂哥(きやうか)の/友(とも)とち、/戯(たハむれ)にかい/付(つけ)、 00003330L2/席上(せきじやう)に(一オ)/披口(ひこう)せしを、/後世(こうせい)/恐(おそ)るべつ/世界(せかい)と、/今(いま)ハ/産業(たつき) 00003340L3に/奈良坂(ならさか)や、この/手(て)/柏(かしわ)の/二表(ふたおもて)のかけ/行燈(あんどう)に、/噺(はなし)の/元祖(ぐわんそ)、ま 00003350L4たハ/忠孝(ちうこう)の/二字(にじ)を/筆太(ふでぶと)に/書(かき)たるもあれバ、/心有人(こゝろあるひと)はこれを 00003360L5/大笑(おほわらひ)とせ/舞(ん)。/或日(あるひ)/門人(もんじん)/銀馬(ぎんば)、/咄(はなし)の/小冊(せうさつ)を/携見(たづさへミ)する。/予(よ)/謂(いへらく)、 00003370L6いにしえより、/噺(はなし)を/絵(ゑ)にかいたるやうだとの/諺(ことハざ)は、/褊綴(へんてつ)も 00003380L7なき/事(こと)をいふ。また/文字(もじ)に/書(かき)しもおかしからず。/噺(はなし)の/道(ミち)に 00003390L8/口授(くじゆ)・/伝法(でんほう)・/秘事(ひじ)といつぱ、/声(こゑ)ハ/高(たか)きを/不厭(いとハず)、/面皮(めんぴ)は/厚(あつき)き 00003400L9をいとハず、/人品(じんぴん)を/捨(すて)て(一ウ)/馬鹿(ばか)を/表(おもて)とす。/此小冊(このせうさつ)を/閲= 00003410L10者(ミる=もの)、/糸瓜(へちま)のやうだと/笑(わらハ)ば、/先(まづ)/一番(いちばん)の/笑(わらひ)の/種(たね)を/求(もとむ)る也と、/頓(とミ) 00003420L11にかれハ/是(これ)ハと/校合(きやうがう)なす/折節(をりふし)、/永寿堂(えいじゆだう)の/主(あるじ)、/逸(いちはやく)も/乞(こ)ひ/得(え) 00003430L12て、なんでも/徳(とく)を/酉(とり)の/新版物(しんはんもの)と、さきかける/梅(むめ)の/笑顔(ゑがほ)に/山(やま) 00003440L13まで/笑(わら)ふ/春(はる)の/商内(あきなひ)、/東風(こち)といふも/風(かぜ)の/名(な)、/西与(にしよ)といふも/家(いへ) 00003450L14の/名(な)、/峯(ミね)の/松風(まつかぜ)/通(かよ)ふらじ、/琴(こと)に/暦(こよミ)も十三/月(つき)、いともめでた 00003460L15き/春(はる)なれバ、/能(よい)お/年(とし)ばなし、/笑嘉登(わらふかど)ト/題(たい)すると/云爾(しかいふ) 00003470L17△△△△△△△△△△△△△△△立川談洲楼G 00003480L19△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二オ) 00003490¥G(二ウ) 00003500¥N1¥J 00003510¥X○/元日(ぐわんじつ) 00003520M14/春(はる)ハ/曙(あけぼの)。やう+しろくなりゆく/山際(やまぎハ)すこしあかりて、む 00003530M15らさき/立(だち)たる/雲(くも)のほ/ほ((ママ))くたなびきたると、/清女(せいぢよ)が/筆(ふで)のすさ 00003540M16みもおもしろく、/泰平(たいへい)の/御代(ミよ)のありがたさ。正月/言葉(ことば)/目出(めで) 00003550M17たい/最中(さいちう)へ、/亀松(かめまつ)屋/幸(こう)兵衛、/年始(ねんしゆ)の/御祝義(ごしうぎ)まうし入れます。 00003560M18コレハ+/吉例(きちれい)かハらずお/年玉(としだま)、ちといわゐませう。いへ 00003570M19+、/方(ほう)※でござりますれバ、/永日(ゑいじつ)+と/帰(かへ)る。/跡(あと)にて 00003580M20/二本(にほん)入の/扇(あふぎ)ばこを/明(あ)ケて、コレ、いつもの/通(とほ)り/団(だん)十郎びゐ 00003590¥P14 00003600L1き/故(ゆゑ)、一本ハ/三升(ミます)に/福(ふく)ぼたん、一本ハ/月麿(つきまろ)の/画(ゑ)で/富士(ふじ)、/誠(まこと) 00003610L2に二本に(三オ)ふじと/団(だん)十郎ハ/三国一(さんごくいち)のまれものじや。/芝= 00003620L3居(しば=ゐ)で、/工藤(くどう)のたいめんの/時(とき)も、/扇(あふぎ)をさかさにして/富士(ふじ)のか 00003630L4たちにすると、ひらひて見せれバ、/女房(にようぼう)が、Sなるほど、 00003640L5ふじの/形(かたち)に見えやす。そしてたゝんだ時ハ/何(なん)になりやすト 00003650L6/聞(きか)れて、Sハテ、たゝんだときハ/腰(こし)へさすのさ 00003660¥N2¥J 00003670¥X○/折句(をりく) 00003680L9Sモシ、おいらん。/此(この)あひだハ、/狂哥(きやうか)より/折句(をりく)がはやりま 00003690L10す。おまへさんもかんがへて/御(ご)らうじませ△おいらんSそり 00003700L11やアどふしていふのだへ△Sまづ/題(だい)ハ、ミソカトいふ/題(だい)サ 00003710L12S/箕(ミ)の/輪(わ)からそつと(三ウ)くばりし/柏餠(かしハもち)、ト/云(いふ)やうな/物(もの)で 00003720L13ごさります。/上(かミ)の/五(い)ツ/文字(もし)へ、みの/字(じ)をおき、/中(なか)の/七文字(なゝもじ) 00003730L14へ、その/字(じ)をすえ、/下(しも)の/五(こ)もじに、かの/字(じ)をおくので、十 00003740L15七/文字(もじ)の/心(こゝろ)が/其中(そのうち)にこもる。ほつ/句(く)/附合(つけあひ)のやうに/云(い)ひまハ 00003750L16すのさ。/御合点(ごかてん)がまゐりますか△Sアイ。しれんしたト、 00003760L17こくびをかたむけ、みそか、ミそかトあんじ、アヽどふも 00003770L18わつちにハ、みそかはできんせんトいふ所へ、ばん/頭(とう)しん 00003780L19/造(ぞう)が/来(き)て、Sモシおいらん。みそかが/出来(でき)ずハ、十四日に 00003790L20しておもらひなんし 00003800¥N3¥J 00003810¥X○わすれ/艸(ぐさ)(四オ) 00003820M3おもてを、/忘草(わすれぐさ)や+と/売(うつ)て/通(とほ)る。めづらしいものだと/呼(よび) 00003830M4て見れバ、ハテ/扨(さて)、/花(はな)もさかぬへんてつもなひものだが、 00003840M5/薬(くすり)にでもなるかの。Sアイ。/是(これ)ハ/気(き)の/薬(くすり)に/成(なり)ますそふでご 00003850M6ざります。ふだん見てお/出(いで)なさると、/苦労(くろう)をわすれ、/土用(どよう) 00003860M7にはあつさを/忘(わす)れ、/寒(かん)にハさむさをわすれ、/年(とし)のくれにハ 00003870M8/年(とし)をわすれます△Sこれハ/奇妙(きミやう)だ。そんなら/買(かつ)ておこふ。 00003880M9シテ、/直段(ねだん)ハいくらだ△Sハイトかんがへて、いくらだか、 00003890M10わすれました 00003900¥N4¥J 00003910¥X○/芝居(しばゐ)(四ウ) 00003920M13/去年(きよねん)の/顔見世(かほミせ)、/木挽町(こびきてう)の/芝居(しばゐ)大あたりにて、/木戸番(きどばん)、/中売(なかうり)、 00003930M14/外(そと)の/仕切(しきり)四五人、/横町(よこてう)の/煮売酒屋(にうりざかや)へ/来(き)て、/有(あり)がたい。けふ 00003940M15も五百になつたと/云(い)へバ、おれハ六百に/成(なつ)た。コレ/何(なん)ぞな 00003950M16ひかな。Sハイ。まだ/昼(ひる)まへゆゑできませぬが、あわびの 00003960M17ふくら/煮(に)と/鮹(たこ)がござります△Sそれでもよし。/早(はや)くいつて 00003970M18もふけねバならぬト、めん+/酒(さけ)を/呑(のむ)もあり、/飯(めし)を/喰(く)ふも 00003980M19ありて、S/扨(さて)此かほミせハ、/下(くだ)りの八百蔵を/色事仕(いろごとし)と/云(い)ふ 00003990M20所を、/春(はる)でなけれバ/来(こ)ぬといふ。/夫(それ)を又/三升(さんじやう)さんが、/勇(いさ)ミ 00004000¥P15 00004010¥G(五ウ・六オ) 00004020M1の/色事仕(いろごとし)で、/四六(しろく)の/女郎(ぢようろ)かいハ大/当(あた)り、女/形(がた)の/大吉(だいきち)といふ 00004030M2所も(五オ)(五ウ・六オ挿絵)/春(はる)でなけれバ/来(こ)ぬといふ。/是(これ)で 00004040M3/二枚(にまひ)ぬけた。/音羽屋(おとはや)の/親方(おやかた)ハ/年寄(としより)なり。/高麗(こうれい(ママ))やのおやかた、 00004050M4/杜若(とじやく)さん、三升さんに/川(かわ)たきや、/丈夫(じやうぶ)な所ハ/四枚(しまひ)ほどある 00004060M5で、/此(この)やうにあわびやたこを/喰(く)ふといふハありがたひ事だ 00004070M6と/咄(はな)すを、/側(そハ)にてゐなかものが/茶(ちや)めしを/喰(く)つて/居(ゐ)ながら、 00004080M7Sモシおまへ/方(がた)ハ、/三(さん)まいほど/丈夫(じやうぶ)で/鮹(たこ)やあわびをくハつ 00004090M8しやるとハ/仕合(しあハせ)だ。わしハたつた二/枚(まひ)ぬけたが、/香物(こうのもの)も/喰(くハ) 00004100M9れぬ 00004110¥N5¥J 00004120¥X○/雷見舞(かミなりミまひ) 00004130M12ある所へ、/雷(かミなり)が/落(おち)たといふ。それから/大勢(おほぜい)/見物(けんぶつ)がきて、/柱(はしら) 00004140M13の(六ウ)ひつさばけたを/拾(ひろ)ふやら、/爰(こゝ)に/毛(け)がおちてある、 00004150M14イヤ/爪(つめ)の/跡(あと)があると、いろ+/評判(ひやうばん)する所へ、/心(こゝろ)やすき人、 00004160M15/見舞(ミまひ)に/来(き)て、Sハテさて、おまへハ/仕合(しやハせ)ものだ。/是(これ)から大 00004170M16きに/金(かね)もふけ。イヤ/豊年(ほうねん)だといふ。/亭主(ていしゆ)/腹(はら)をたち、Sコレ、 00004180M17あんまり/人(ひと)をきよくるも、ことによる。/此(この)やうに/人立(ひとだち)がし 00004190M18て、ぐわいぶんがわるひのに、/金(かね)もふけだの/豊年(ほうねん)だのとハ 00004200M19/何(なん)の事といへバ、Sハテ、/今年(ことし)/地(ぢ)へおちたものに、わるひ 00004210M20ものハない 00004220¥P16 00004230¥N6¥J 00004240¥X○/七福神(しちふくじん) 00004250L3まづ/結構(けつこう)な/春(はる)でござります。/私(わたし)も/今日(けふ)ハ/恵方(ゑほう)まゐり(七オ) 00004260L4ながら、/一寸(ちよつと)お/寄(より)申ました。S/是(これ)ハ+、/大黒様(だいこくさま)へか 00004270L5Sさやうでござります△Sそれハ/御(ご)きどく。/私(わたし)もおまへも 00004280L6/米商売(こめしやうばい)なれバ、/大黒(だいこく)さまを/信心(しん※)いたすがよい。七/福神(ふくじん)の/持(もち) 00004290L7まへで、みなしやうばいをお/守(まも)りなさる。ゑびすハ/肴(さかな)やを 00004300L8守り、/弁天(べんてん)ハ/女郎(ちようろ)や、びしや門は/具足(ぐそく)屋/鎗(やり)や。/寿老人(しゆらうじん)は/鳥(とり) 00004310L9や。/福(ふく)ろく/寿(じゆ)ハ/獣(けだもの)や△S/布袋(ほてい)ハ/何(なに)やでござりますト/聞(き)かれ 00004320L10て、Sあれハ/何(なに)さ。アノはらぶと/餅(もち)、あつたかい+ 00004330¥N7 00004340¥X○/講釈(こうしやく) 00004350L13/夕部(ゆふべ)、/横町(よこてう)のこうしやくを/聞(きゝ)にいつたが、ごふてきに/面白(おもしろ) 00004360L14かつた。(七ウ)S/何(なん)の/講釈(こうしやく)だ△Sアノ/三国志(さんごくし)といふ/唐人(とうじん)の 00004370L15/軍(いくさ)よ。からには、ごふてきにつよひやつがあるの△Sムヽ 00004380L16/夫(それ)ハ/関羽(くわんう)か/張飛(ちやうひ)だらう△Sいんにや、そんなものじやアね 00004390L17ヱ。むしやうに/出(で)てはたらくやつよ△Sそんなら/趙雲(てううん)か 00004400L18Sいんにや、それでもねへ。ヲヽそれ+、アノたんへい 00004410L19きう 00004420¥N8¥J 00004430¥X○おなじく 00004440M3Sさて、/源平(げんへい)せいすい/記(き)とやらの/講釈(こうしやく)を/聞(きい)たが、/木曽義仲(きそよしなか) 00004450M4のおもひもの/巴(ともへ)ごぜんといふ/女(をんな)ハつよひものだ。むかしハ 00004460M5女にさえ、あのやうな/力(ちから)がある。/定(さだ)めしきりやうも、よか 00004470M6つたであらう(八オ)トいふ。そバに/何(なん)にもしらぬ/癖(くせ)にさし 00004480M7/出(で)もの、Sイヤ、むかしとおつしやるが、/今(いま)もござります 00004490M8S/夫(それ)ハどこに△Sイヤ、あの/吉原(よしハら)の/新町(しんてう)とやらの/女郎(ぢようろ)だと 00004500M9申スが、/私(わたし)のとなりの/角力取(すまうとり)が、その/女郎(ぢようろ)を/買(かい)にまゐつて、 00004510M10/大(おほ)こごとサ。Sいま+しい、くちをしい。女郎にまハし 00004520M11をとられて、ふられたト 00004530¥N9¥J 00004540¥X○/仁田(にたん)の四郎 00004550M14/富士(ふじ)の/御狩(ミかり)の/折(をり)から、さもすさまじき/猪(いのしゝ)かけ/来(きた)るを、/仁田(にたん) 00004560M15の/四郎忠常(しらうたゞつね)、かの/猪(ゐのしゝ)の/背(せなか)へとびのり、/短刀(たんたう)を/引(ひき)ぬき、/突(つか)ん 00004570M16とする。しゝハ/一生懸命(いつしやうけんめい)と/欠出(かけだ)すひやうし、/仁田(にたん)ハさか 00004580M17さまに(八ウ)/落(おと)され、/腰(こし)のほねを/岩(いわ)に/打(うち)つけしを見て、/家= 00004590M18来(け=らい)を/始(はじ)め、せこの/者(もの)ども/走(はし)りつき、/薬(くすり)よ/水(ミづ)よと/介抱(かいほう)に、/漸(やう+) 00004600M19におき/上(あが)り、Sヤア/者(もの)ども。/万夫(ばんぷ)/不当(ぶたう)と/呼(よバ)れたる/某(それがし)、ふか 00004610M20くをとつてなるものか。それ、/薬(くすり)より/酒(さけ)をもてト大/盃(さかづき)に 00004620¥P17 00004630L1/引(ひき)うけ+/四五(しご)はい/呑(の)ミ、/此(この)いきほひに/追(おつ)かけんといへど 00004640L2も、大きに/酒(さけ)に/酔(えひ)、ひよろ+ものにくだをまき、Sコリ 00004650L3ヤ/者(もの)ども。わいらが/其太皷(そのたいこ)や/鉦(かね)で/狩出(かりだ)すハ、/迷(まよ)ひ/子(ご)を/呼(よぶ)や 00004660L4うでやぼらしい。/工藤(くどう)どのゝ/狩(かり)やへ/往(い)て、/喜瀬(きせ)川の/亀(かめ)づる 00004670L5か、/少将(せう+)が/新造(しんぞう)どもにさう/云(いつ)て、/三弦(さミせん)をかりてこふと/取寄(とりよせ)、 00004680L6すがかきをひかせ、あの大きな/猪(しゝ)めハ、/只(たゞ)の(九オ)/畜生(ちくしやう)で 00004690L7ハねへ。あら/立(だて)て/怪我(けが)をするな。/三味(さミ)せんにたいこをまぜ 00004700L8て、しゝをうかしてたづねろ。サアひけ+といふに、ミ 00004710L9な+/声(こゑ)をそろへ、ヤアしゝハどこじや。しゝハどこじや 00004720L10ト、@三ミせんにすがゞきを|チリ+++と、@/太皷(たいこ)かねにて、/尾笹茅原(をざゝかやハら)をしわけて、 00004730L11Sしゝハどこじや+ト大さハぎ。Sしゝもうかれて、/茂(しげ) 00004740L12ミの/中(うち)よりおどりでる。Sミな+しゝハそこだ+@トい|へバ@ 00004750L13@猪もにげ|ながら、@S/仁田(にたん)ハいたさぬ。コリヤ++ 00004760¥N10¥J 00004770¥X○むかで/小判(こばん) 00004780L16/是(これ)、わしハ/春(はる)そう+、こんな/小判(こばん)を/拾(ひろ)ふた。Sどれ、ミ 00004790L17せなさい。これハ/百足小判(むかでこばん)といつて、/恵方(ゑほう)ミやげの/翫(もちやそ)びじ 00004800L18や。/通用(つうよう)ハ(九ウ)いたしやせぬ△Sハテ、むかし/鎌倉(かまくら)の/武= 00004810L19士(ぶ=し)に、/随分(ずいぶん)/通用(つうよう)した人がある△Sそれハむかでか△Sいん 00004820L20にや、げち+よ 00004830¥N11¥J 00004840¥X○/半鐘(はんしやう) 00004850M3/今日(こんにち)お/寺(てら)のせがきに、ちいさな/鐘(つりがね)をたゝきますと、/大(おほ)ぜい 00004860M4/坊(ぼう)さま/達(たち)が/寄(よつ)てまゐつたが、あれハ/何(なん)でござります。S/夫(それ) 00004870M5ハ/釣(つり)がねでハあんまい。はんしやうさ△Sどうりで、すり 00004880M6こぎ/坊主(ぼうず)がたゝきました 00004890¥N12¥J 00004900¥X○なぞ+ 00004910M9一ツなぞをかけやうが、/手前(てめへ)とく/気(き)か。Sムヽ、なんでも 00004920M10かけやれ。(十オ)/解(とひ)て見せう△Sそんなら、/密柑(ミかん)とかけてハ 00004930M11Sそれハほたけか△Sベらぼうめ。ほたけにみかんといふ 00004940M12/心(こゝろ)ハ△Sハテ、ほたけになげるでハねへか△Sおきやアが 00004950M13れ。コレ/蜜柑(ミかん)とかけて、/田原藤太(たハらとうだ)トとく△Sムヽ、/其心(そのこゝろ)ハ 00004960M14Sむかでかなハぬトいふ事よ△Sそんな事なら、/己(おれ)もいふ 00004970M15ハ。Sむかでくつたあミだ/様(さま)△Sこいつアとんだことを/云= 00004980M16出(いひ=だ)した。これハむづかしい△Sナント、/解(とけ)まいか△Sムヽ 00004990M17どふもしれねへ。あげたあげた△Sそんなら/云(いつ)て/聞(きか)せう。 00005000M18むかでくつた/阿弥陀(あミだ)さまとハ△Sナントとく△Sハテ、/川= 00005010M19口(かハ=ぐち)のぜんくわうじよ 00005020¥P18 00005030¥N13¥J 00005040¥X○/鳶(とび)/烏(からす)(十ウ) 00005050L3/鳶(とひ)と/烏(からす)、/夜(よ)ばなしをして、だん+/夜(よ)がふけ、/九(こゝの)ツのかね 00005060L4がなる。とびがいふにハ、/明日(あす)もひよりであらう。/早(はや)く/朝(あさ) 00005070L5の/内(うち)に/八百(やを)やの/家根(やね)へいつて、/馬鹿気(ばかげ)たやつが、あぶらげ 00005080L6を/買(かひ)に/来(き)たらさらつてやらう。モウおいとま申す。/今(いま)とろ 00005090L7ゝツを/打(うつ)たといへバ、からすSコレ、そのやうに/巻舌(まきじた)でい 00005100L8ハづと、/言(いひ)やうがあらう△とびSどふ/云(いへ)バよいトいハれて、 00005110L9からすSカア+のつ 00005120¥N14¥J 00005130¥X○/奴凧巾(やつこだこ) 00005140L12/吉原(よしハら)の/女郎(ぢようろ)、/急(きう)に/紋日(もんび)のやくそく/間違(まちが)ひ、/番頭(ばんとう)/新造(しんぞう)と/相談(さうだん)、 00005150L13Sばからしい。けふになつて/用事(ようじ)ができたと、/返替(へんがへ)の/文(ふミ)。 00005160L14(十一オ)いつそじれつてへよ△ばん新Sそんならかうしん 00005170L15せう。/根岸(ねぎし)の/文(ぶん)さんの/所(とこ)へ、どふぞぬしのぶんに/仕舞(しまつ)て、 00005180L16ならふことならお/出(いで)なんしと、/文(ふミ)をおかきなんし。したが、 00005190L17/茶屋(ちやや)の/男(をとこ)しゆも、/用(よう)があるとて/帰(かへ)りイした。だれぞを/使(つかひ)に。 00005200L18Sモシ、いゝ/物(もの)がをす。/此中(このぢう)/客人(きやくじん)の、/内(うち)へミやげにする 00005210L19とて/忘(わす)れて/置(おい)た/奴(やつこ)だこ、/是(これ)へ/文(ふミ)をむすびつけて、/根岸(ねぎし)のほ 00005220L20うへやるがよふをすト、やがておいらんに/文(ふミ)をかゝせ、/糸(いと) 00005230M1めへつけて/火(ひ)の/見(ミ)からあげると、おいらんはれんじから見 00005240M2て、よふあがりイした。ばん新Sいへ+。まだ/糸(いと)が/足(た)り 00005250M3イせんと、だん+/糸(いと)まきをほぐすと、しりが/結(むす)バずに/有(あつ) 00005260M4て、ヲヤ+(十一ウ)あれ、どふしんせうトいふ/内(うち)、きれ 00005270M5て/凧巾(たこ)ハ/虚空(こくう)に/行(ゆ)く。モシおいらん。アレ/今(いま)、/正燈寺(せうとうじ)の/森(もり) 00005280M6の/木(き)へ/引(ひつ)かゝつてゐんす。どうしんせう。おいらんSミちく 00005290M7さをせずと、/早(はや)くいけと/云(いひ)なんし 00005300¥N15¥J 00005310¥X○/通仁(つうじ囗) 00005320M10なんと、/此(この)ぢうの/茶(ちや)屋の/娘(むすめ)ぶんハ、たゞの/者(もの)じやアねへ。 00005330M11たしかに/女郎(ちようろ)のあげくだ。/諸事(しよじ)とり/廻(まハ)しが/手(て)ずれたしろも 00005340M12の。/隣(となり)の/真木(まき)やの/娘(むすめ)とならぶとわかりやす。/何(いづ)れ、/女郎(ちようろ)と 00005350M13/地(ぢ)ものとハ、/碁石(ごいし)といふ/物(もの)だト/咄(はな)すをきいて/居(ゐ)た/男(をとこ)、/宅(うち)へ 00005360M14/帰(かへ)り、/近所(きんじよ)の人に、お/前(まへ)ハもの/知(し)りだが、此あひだ、とん 00005370M15だ事を/云(い)ふ人がある。(十二オ)/女郎(ぢようろ)と/地(ぢ)ものとハ/碁石(ごいし)だと 00005380M16申ましたが、/何(なん)のことでござります。Sハテしれた/事(こと)。/白(しろ) 00005390M17ウと、/黒(くろ)ウと 00005400¥N16¥J 00005410¥X○/海鼠(なまこ) 00005420M20七十二こうといふて、/物(もの)にハ/色(いろ)+/変化(へんくわ)するものだ。/雀(すゞめ)/海= 00005430¥P19 00005440L1中(かい=ちう)に/入(いつ)て/蛤(はまぐり)となり、/田鼠(でんそ)/化(け)して/鶉(うづら)となるといふ。/鶉(うづら)にハ/田(た) 00005450L2の/鼠(ねずミ)が/成(なる)とハ/奇妙(きミやう)なことだ。Sそれハほんの事かへ。アノ 00005460L3なまこも、/文字(もじ)にハ/海(うミ)の/鼠(ねずミ)と/書(かく)とやら/聞(きゝ)ましたが、あれも 00005470L4ねずみの/化(け)したのでござりますか△Sあれハ/違(ちか)ひます 00005480L5S/何(なん)でござるな△Sムヽ、/何(なに)さ。あれハ/木瓜(きうり)でござる(十 00005490L6二ウ) 00005500¥N17¥J 00005510¥X○/化(ばけ)もの 00005520L9/挑灯小僧(てうちんこぞう)といふ/化物(ばけもの)が/出(で)るといふ。/是(これ)を見とゞけやうと、 00005530L10四五人/若者(わかいもの)つれだち/行(ゆき)けれバ、うわさの/通(とほ)り、いろ+の 00005540L11/挑(てう)ちんのばけ/物(もの)、おもひの/外(ほか)こハくも/何(なん)ともなく、/赤(あか)く見 00005550L12えし/提灯(てうちん)ころげ/出(で)るゆゑ、Sうぬハ/何(なに)やつと/云(い)へバ、Sア 00005560L13イ。わたくしハかう見えても、女の/子供衆(こどもしゆ)の/口(くち)へも/這入(はい)り 00005570L14ます△Sムヽ、/名(な)ハ/何(なん)といふ△Sアイ、ほうづきと申ます 00005580L15Sそして、あすこに/大小(だいせう)を/指(さし)て/居(ゐ)るハ△S/只今(たゞいま)ハ/浪人(らうにん)の/身(ミ) 00005590L16の/上(うへ)。むかしハ/弓張(ゆミはり)でこざります△Sソシテ/大勢(おほぜい)、/何(なに)か/相= 00005600L17談(さう=だん)をしてゐるハ△Sあいつらハみな、/小田(おだ)ハら(十三オ) 00005610L18Sすみに/遊(あす)んてゐる、/物(もの)ぐさいやつハなんだ△Sハイ、ぶ 00005620L19ら/提灯(でうちん)でござります 00005630¥N18¥J 00005640¥X○/宝塔(ほうたう) 00005650M3/毘沙門天(びしやもんでん)、/寅待(とらまち)の/夜通(よどほ)しおきてお/出(いで)なされて、/卯(う)の日にハ 00005660M4/疲(つか)れを/休(やす)めんと/昼寐(ひるね)して/御座(ござ)る/内(うち)、/天(あま)の/邪鬼(じやき)も/足(あし)を/延(のば)し、 00005670M5/百足(むかで)にいふにハ、/扨(さて)おれも/年中(ねんぢう)/踏(ふま)へられて/居(ゐ)るが、をらが 00005680M6/旦那(たんな)ハにらんで、こはひ/顔(かほ)つきじや。/福(ふく)の/神(かミ)とハ思ハれぬ。 00005690M7Sハテ、/皃(かほ)ハともかくも、お/持(もち)なされた/宝塔(ほうたう)が/第(だい)一じや 00005700M8Sその/宝塔(ほうたう)が第一とハ/聞(きこ)へぬ。おれハ/金銀(きん※)が(十三ウ)/第(だい)一 00005710M9とおもふ。/宝尽(たからづく)しにも/塔(たう)ハないで/知(し)れたものだ。/大黒(だいこく)さま 00005720M10にも、/一(いち)に/俵(たハら)をふんまへて、二に/完示(につこ(ママ))とわらふといふに、 00005730M11につこり/所(どこ)か、ほんにあきれる△Sハテ、/塔(たう)の/中(なか)に/玉(たま)のあ 00005740M12る事ハ、おのしもしつて/居(ゐ)やう。/塔(たう)ハ大の/宝(たから)じやト、/大声(おほごゑ) 00005750M13/上(あげ)て/争(あらそ)ふゆゑ、びしや門、/目(め)を/覚(さま)し給ひ、Sわいらハなに 00005760M14をいふ。一ツ/釜(かま)の/飯(めし)を/喰(くひ)ながら、/野暮(やぼ)らしい。一も二もな 00005770M15い。ぶん/流(なが)せ+△Sだんなさま。お/言葉(ことば)でござりますが、 00005780M16/此(この)あらそひハ、一も二も/通(とほ)りすぎました△Sそれハ又どふ 00005790M17して△Sハテ、/十(とを)からおこりました 00005800¥N19¥J 00005810¥X○/目病(めやミ)(十四オ) 00005820M20/此(この)あひだハお/遠(とほ)※しうござりますト/内(うち)へ/這入(はい)る。Sてい 00005830¥P20 00005840L1/主(しゆ)、どなたかトすかし見て、コレハばく右衛門さま。よふ 00005850L2お/出(いて)なされた。/私(わたし)も/眼病(がんびやう)で、此間ハ/困(こま)ります。Sハテ/扨(さて)、 00005860L3/存(ぞん)ぜぬこととて/御(ご)ぶさたト/云(いひ)ながら、じろ+見て、/時(とき)に 00005870L4/眼(め)ハどふなされました△Sハテ、/是(これ)ハ/流行目(はやりめ)とぞんじたが、 00005880L5四五日いたんでこまります△Sなる/程(ほど)、はやり目じや。ど 00005890L6れ+、ハヽア/是(これ)ハむづかしい。/大切(たいせつ)の事じや。/随分(ずいぶん)と/気(き) 00005900L7をつけなさい。これにハ/咄(はなし)があるが、/今日(けふ)はいそがしひ。 00005910L8此間に/参(まゐ)つて、おはなし申ませうと/帰(かへ)る。それより/気(き)にか 00005920L9ゝり、あすの/朝(あさ)そう+おきると/尋(たつ)ねて/行(ゆ)き、きのふ(十 00005930L10四ウ)おつしやつた/私(わたくし)の/目(め)の/事(こと)。/大切(たいせつ)とあつたゆゑ、/気(き)に 00005940L11かゝり/参(まゐ)つたが、どふした事でござります。Sどれ、お見 00005950L12せなされ。ほんに大きにはれた。目ハ/人間(にんげん)の/第一(だいゝち)のものじ 00005960L13や。/御存(ごぞんじ)か△Sそんじませぬ。ソシテ目ハ/人間(にんげん)の何でござ 00005970L14るな△Sハテ、/眼(まなこ)てこざる 00005980¥N20 00005990¥X○/廿四孝(にしうしかう) 00006000L17Sモシ、廿四/孝(こう)とハ/何(なん)の事だへ△S廿四孝とハ/唐土(もろこし)の廿四 00006010L18人の/親孝行(おやかう+)。まづ/雪(ゆき)の/中(なか)へ/竹(たけ)の子を/堀(ほり)に/行(いつ)たり、/氷(こほり)のはつ 00006020L19てゐる/池(いけ)へ/魚(うを)を/取(とり)に/行(ゆく)。ミな/親(おや)の/心(こゝろ)をそむかぬ事でござる 00006030L20Sそんなら/私(わたくし)ハそれより/多(おほ)い、/廿六夜講(にじうろくやこう)にはいつて/居(ゐ)ます 00006040M1(十五オ)△S/夫(それ)ハ/親(おや)への/孝(かう)でハない△Sイヱ、まだ/親(おや)の/為(ため)に 00006050M2こうもござります△Sそれハ/何(なに)を△Sハイ。/念仏(ねんぶつ)かうには 00006060M3入りました 00006070¥N21¥J 00006080¥X○/洗湯(せんたう) 00006090M6/房州(ぼうしう)屋/喜右衛門殿(きゑむどの)ハこれでござるかと/這入(はい)る。Sどちから 00006100M7お/出(いで)なされた△Sわしやア/房州(ぼうしう)から/来(き)まうした。これの/内(うち) 00006110M8ハ、わしらア/先祖(せんぞ)の/親子(おやこ)だアと、お/袋(ふくろ)ノウはなし。わしや 00006120M9アその/徳右衛門(とくゑむ)といふ/者(もの)でござる△Sヲヽ、/徳(とく)右衛門どの 00006130M10でござるか。/成程(なるほど)、わたしかおやちの/縁者(えんじや)だ△Sイヤ、わ 00006140M11しも/江戸(えど)サアはじめて/来(き)申た△Sそれならおくたひれだら 00006150M12う。/直(すぐ)に/湯(ゆ)へはいるに/勝手(かつて)がしれ(十五ウ)まひ。/同道(だう+)せう 00006160M13と/連(つれ)ゆき、サアおれと/一所(いつしよ)にト、/風呂(ふろ)の/入(い)り/口(くち)こミ/合(あふ)ゆゑ 00006170M14/這入(はいり)ながら、Sハイ、ごめんなされませ。ひゑもんでござ 00006180M15りますト@いふを聞ちがへて|ゐなかもの、△△@Sハイ、ごめんなされませ。/房州(ぼうしう) 00006190M16の/徳右衛門(とくゑむ)でござい 00006200¥N22¥J 00006210¥X○/初(はつ)がつほ 00006220M19はつ/鰹(かつを)をおめしなされませト、/出入(でいり)の/肴屋(さかなや)がもつて/来(く)る。 00006230M20/直段(ねだん)ハ/壱貫(いつくわん)八百でござります。いつもなら/二貫(にくわん)五百がも 00006240¥P21 00006250L1のハあるが、/一本(いつぽん)おめしなされませ。Sイヤ+、/一本(いつぽ)ハ 00006260L2/多(おほ)い。/一節(ひとふし)/買(かハ)ふ。さし/身(ミ)にしてくりやれト、/壱人(ひとり)して/酒(さけ)を 00006270L3/呑(のミ)ながら、/内(うち)の(十六オ)/者(もの)に見せて/置(おい)て、Sナント三助。 00006280L4/江戸(えど)ハありがたひ。此かつほが/一本(いつぽ)で/壱貫(いつくわん)八百が/安(やす)いとい 00006290L5ふ/位(くらひ)だ。/誠(まこと)に/兼好(けんこう)がつれ※/草(くさ)に、かまくらに/鰹(かつほ)といふ/毒= 00006300L6魚(どく=ぎよ)とハ/野暮(やぼ)な事。/夫(それ)だに/依(よつ)て/川柳(せんりう)の/柳樽(やなぎだる)にも、/兼好(けんこう)は/喰(くひ)の 00006310L7こしたる/初(はつ)がつほ、ト/云句(いふく)があるといへバ、三助Sハイ。 00006320L8そんな事ハ、/私(わたくし)どもにハ/分(わか)りませぬト、ぶつてう/面(づら)をする 00006330L9ゆゑ、Sわいらにハ/聞(きこ)えぬはず。/心(こゝろ)こゝにあらざれバ、見 00006340L10れども見へずじやトいへバ、三助Sアイ。お/前(まへ)/御一人(おひとり)、/誉(ほめ) 00006350L11てあがりませ。/家来(けらい)ども、/其味(そのあぢハひ)をしらずじや 00006360¥N23¥J 00006370¥X○/慈童(じどう)(十六ウ) 00006380L14/年越(としこし)の/疫(やく)はらひの/云(い)ふをきけバ、/三浦(ミうら)の/大介(おほすけ)/百六(ひやくむつ)ツトい 00006390L15へど、七十/余才(よさい)にして/衣笠(きぬがさ)の/城(しろ)にて/討死(うちじに)と/云(い)ふ。/浦島(うらしま)太郎 00006400L16が/八千歳(はつせんさい)、/東方朔(とうぼうさく)が/九千歳(くせんざい)とハめつぽうかひな事。きつと 00006410L17した/書物(しよもつ)にあるものハ、/芝居(しばゐ)てする/菊慈童(きくじだう)じや。これハも 00006420L18ろこし/周(しう)の/穆王(ぼくわう)につかへて、/寵愛(てうあひ)のあまりに、/主人(しゆじん)のまく 00006430L19らをまたいだとて、山へすてられたが、それでもありがた 00006440L20ひ事にハ、/四句(しく)の/経文(きやうもん)を/菊(きく)の/葉(は)に/書(かい)たといふ事だ。/其功徳(そのくどく) 00006450M1で七百/余歳(よさい)をたもちたれど、/年(とし)もよらずに十五六の/童(わらへ)のか 00006460M2たちで/居(ゐ)たといへバ、こんなめでたい/者(もの)ハ(十七オ)なひ。 00006470M3/寿命(じゆミやう)でハこれが/親玉(おやだま)。このうへハ/有(ある)まひといふ。/側(そバ)に/聞(きい)て 00006480M4ゐるものが/感心(かんしん)して、Sそれでわけが/知(し)れた。/昔(むかし)からたと 00006490M5へに/云(い)ふに、ちがひハなひものじや△Sコレ、/貴(き)さま。む 00006500M6かしから、たとへにいふに/違(ちが)ひハなひとハ△Sハテ、なく 00006510M7/子(こ)ト/慈童(じどう)にハかたれぬ 00006520¥Y◇筆耕△石原駒知道◇ 00006530M10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十七ウ) 00006540¥P22 00006550¥Y跋 00006560L3/白鶴(はくくわく)の/一声(いつせい)は、/宜(よく)/天(てん)に/通(つう)じ、/燕雀(ゑんじやく)の/千声(せんこゑ)/多(おほく)して/足(たら)ず。/諸先= 00006570L4生(しよせん=せい)の/一話(いちハ)は/四方(よも)に/響(ひゞ)き、/予(よ)が/落語(らくご)は/聞人(きくひと)/無(なけ)れバ、よいかわ 00006580L5るひかしら/紙(かミ)に、/恥(はぢ)をかひたる/筆(ふで)の/垢(あか)を、/立川(たてかハ)の/流(ながれ)に/洗(あら)ひ、 00006590L6/晒(さら)して/見(ミ)ても/鼠色(ねずミいろ)、ちうの/字組(じぐミ)のほうかむりも(十八オ)/三= 00006600L7升(ミ=ます)に/染(そめ)ぬく/贔負(ひゐき)の/鯉(こひ)、/竜門(りうもん)ならぬあいたくちの、/大門通(おほもんどほり)の 00006610L8/片辺(かたほとり)、/赤暖簾(あかのうれん)の/揚幕(あげまく)より、/申(さる)の/顔見勢(かほミせ)/智恵(ちゑ)も/毛母(けも)、/三筋(ミすぢ)/足(た) 00006620L9らざる/筆(ふで)をもつて、/嗚呼(をこ)がましくも/記(しるす)にこそ 00006630L11△△△△△△△△△△△△△談洲楼門人 00006640L12△△△△△△△△△△△△△△立川銀馬△G 00006650L13△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十八ウ) 00006660¥P23 00006670¥U噺本大系△第十五巻 00006680¥T落噺;/駅路(えきろの)/馬士唄(まごうた)△二篇△〔題簽〕 00006690¥G 00006700¥Y 00006710L15文化十一年正月刊 00006720L16二世恋川春町作 00006730L17二世喜多川哥麿画 00006740L18山口屋板 00006750L19中本二巻合一冊 00006760L20国立国会図書館蔵 00006770¥G(前後冊表紙) 00006780¥P24 00006790¥Y1 00006800L3△恋川春町作△@二編|前冊@ 00006810L6/落噺(おとしばなし)/駅路(えきろの)/馬士唄(まこうた) 00006820L9△甲戌春新鐫△山口屋梓 00006830L11△△△△△△△△△△△△(見返扉) 00006840¥Y 00006850L12/昔(むかし)/赤本(しゆほん)に、/親父母(じゝばゝの)/片言(かたこと)、/童子(わらべ)/寐物語(ねものがたり)にたよりて、/駅路(ゑきろ)の 00006860L13/馬士歌(まごうた)と題して、/東都(とうど)より/始(はじめ)、/箱根(はこね)の/駅(ゑき)にて/筆(ふで)を/止(とゞ)めけれ 00006870L14ど、/再(ふたゝ)び山口の主人、/好(このミ)に/任(まか)せ、/三嶋(ミしま)のゑきより/舞坂(まひさか)のあ 00006880L15たり迄/綴(つゞる)といへども、/海道(かいどう)/不案(ふあん)の/旅人(たびゞと)なれバ、/名所(めいしよ)/名物(めいぶつ)あ 00006890L16らましにして、/国&(くに※)の/訛(なまり)/穴癖(あなくせ)ハ、/年(ねん)+/大冊(たいさつ)に見ゆれバ、 00006900L17此/一冊(いつさつ)ハ/只(たゞ)/一宿(ひとしゆく)のおかしみを、おとしばなしにつゞるのミ 00006910L19△△△甲戌のはつ春△△△△△△恋川春町誌G 00006920L20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一オ) 00006930¥G(一ウ) 00006940¥N1¥J 00006950¥X三しま△@ぬまづへ|一里半△@ 00006960M14たどりゆくほどに、はや三しまのしゆくにいたり、りん 00006970M15Sあれ見せい。女郎が出ていらア。此茶やへこしをかけて、 00006980M16ちよつとひからう△くまSこいつハおもひつきと、こしを 00006990M17かけると、ばアさんSちやをくんでくると、りんSいゝてん 00007000M18きだの△ばゝSさやうさ。あめがふらねへから、よいてん 00007010M19きだと、おもしろくないあたりまへをいふ。りんS此女郎 00007020M20屋について、はなしがある。客が来て、づいと二かいへあ 00007030¥P25 00007040L1がると、まづざしきもすんで、客がとこへまハると、女郎 00007050L2ハよひにちよいとミたばかりで、よぢうこなんだが、客ハ 00007060L3はらもたゝず、にこ+わらひながらかへると、あんまり 00007070L4ふしぎだから、客人にきいたら、きやくSふるがようござ 00007080L5ります△りんSナゼ△きやくSハテ、からかさや(二オ)だ 00007090L6から 00007100L7△△Sよひにきてちよいとおかほを三しま女郎 00007110L8△△△△ふるをよろこぶからかさやとは 00007120¥N2¥J 00007130¥Xぬまづ△@はらへ|一り半@ 00007140L11二人Sかの茶やを出て、ほどなくぬまづのへんをぶら+ 00007150L12とゆく。向ふよりくるハ近所のたいけなるこんれいとミへ 00007160L13たり。りんSなんと、こんれいにまじハつて、とものふり 00007170L14をして、ちそうになるハどうだ△くまS妙&とついてゆく。 00007180L15ほどなくむかふへつきけれバ、よめご、こしもとハおくへ 00007190L16とをりて、ともハげんくわにゐると、あんにたがハず、の 00007200L17んだりくつたり、とつたりにげたりとハ大がくにあると、 00007210L18わるじやれにてゐると、御祝義とて、一人ニ付五百文ヅヽ 00007220L19つゝんだを出す。それをとりておひらきと、そのざもなに 00007230L20ごとなくすミて、おもてへ出ると、(二ウ)りんSほろよひ 00007240M1にて、ちやばんきやうげんのきどり。Sさけハのむさかな 00007250M2ハくらふよめいりに△なにとてめしではらハはるらん 00007260M3くまSそうほうよろこべ。しうぎハ五百になつたハゑへ引 00007270M4△△S今までもぬまづのしゆくのよめいりで 00007280M5△△△△十ぶんくふてはらハよし原 00007290¥N3¥J 00007300¥Xはら△@よしハらへ|三り六丁△@ 00007310M8それより、はらのしゆくにいたれバ、おうらいに白狐がね 00007320M9てゐるを見て、くまSさらバきつねをばかしてやらんと、 00007330M10権助+とよびけれバ、かの狐も、ばかしてうまい物くら 00007340M11ハんと、とものふりにて、たゞ、はい+といふてついて 00007350M12ゆきけれバ、さいハひこゝににうりざかやがあると、二人 00007360M13ハごん助をともなひ(三オ)はいり、酒さかなさん※にく 00007370M14ふてしまへバ、狐、久しぶりにてくらひすぎけれバ、つい 00007380M15ひとねいりやらかしてゐるうち、二人も、今ごん助が所か 00007390M16らとつたがいゝと、さかやへいひつけてたち出けり。よほ 00007400M17どすぎて、ごん助めをさませバ、酒やS二人のしゆハ、と 00007410M18うにおたちなされましたが、御かんぢやうハ弐朱ト二百文、 00007420M19おまへからとれと申ましたといハれて、ごん助、もはやか 00007430M20なハぬと、しり尾をあらハしてにげんとするをつらまへて、 00007440¥P26 00007450L1この狐め。にくいやつと、てうちやくされて、狐もごうは 00007460L2らがりて、男にとりつきけれバ、山伏をたのんできとうを 00007470L3すると、狐もかなハずにげ出しければ、男Sナゼにげると 00007480L4きけバ、きつねSハテ、白狐もきとうにハかたれぬ(三ウ) 00007490L5△△△四ツあしのわしを狐の穴どりて 00007500L6△△△△すこしハはらのたつたたび人 00007510¥N4¥J 00007520¥Xよしハら△@かんバらへ|三り△△△@ 00007530L9きつねも、そのばをにげさりて、いしゆがへしをせんと、 00007540L10よしハらのしゆく中にねてまちてゐたりければ、ふたりハ 00007550L11それともしらず、あとのしゆくのあじを覚へて、ごん介 00007560L12+とよびけれバ、きつね、こゝこそいしゆがへしせんと 00007570L13はねおきて、まゆげにつばをつけて、ごん介のふりにて、 00007580L14ともをしたり。さいハひ此酒屋へよりて、おごりたまハら 00007590L15んと、のミくひしてゐるさいちうに、きつねハそのざをた 00007600L16ちのきけれバ、二人も(四オ)ほう※を見ると、Sはゝア、 00007610L17はら中だやつさ 00007620L18△△△ごん介がにごりをとれバこんすけが 00007630L19△△△△こんどハきつねのしゆびハよし原 00007640¥N5¥J 00007650¥Xかんばら△@ゆゐへ|一り△@ 00007660M3林Sあれミな。右にハ山、左ハうミ。きもせい※とする 00007670M4といひながらゆくと、くまS鴬がなく。いつしゆやらうか 00007680M5林Sなんと△くまS鴬もほうほけきやうとさへづるは 00007690M6どふりよミのぶのミちがありけり、と口すさミてゆけど、 00007700M7いつたいほろよひなれバ、向よりくるハざとう二人、下り 00007710M8ミちとミへていそぎあしにて、くまS一ツきもをつぶさせ 00007720M9うかと、下タに+++といへバ、ざとうSどなた(四 00007730M10ウ)様かおとほりじやと、したにすハりけれバ、Sふたりも 00007740M11をかしがりて、わらひながらゆくと、ざとうSなあに、な 00007750M12まへゝだそうだ△一人のざとうSやつぱりそんなら、くげだ 00007760M13ざとうSナゼ△一人のざとうSハテ、くらひだおれだ 00007770M14△△△見へぬほどかんばらもよきざとうたび 00007780M15△△△△壱ばんだましをくらひだおれハ 00007790¥N6¥J 00007800¥Xゆゐ△@おきつへ|二り半△@ 00007810M18此所のわかれの明神へさんけいしゆかんとする所へ、たび 00007820M19こむそうがくれバ、くまSなんだ、こむそうか来る。こむ 00007830M20そうなら、おろしてやすミなさい△りんSおらアまつだけ 00007840¥P27 00007850L1かとおもつた△くまSおらアめしたきのしくじりかと(五 00007860L2オ)おもつた△りんSなぜ△くまSそれでもこめあげざるを 00007870L3かぶつて、ひふきだけをさしてゐらア。まいらせ候に、ま 00007880L4がさしたやうだと、わる口をいふてそバへより、モシ、こ 00007890L5むそうさまハ、そのてんがいとやらハ、やどへついても、 00007900L6ねてもおきても、かぶりどほしかへ△こむさうSアイ。かむ 00007910L7りどほしでござる△林Sおらがおやぢハしやくをひとつも 00007920L8つてゐますから、とき※かぶつたが△こむそうSわしハね 00007930L9んぢうかぶりどほしだ△りんSナゼ△こむそうSハテ、しや 00007940L10く八をもつてゐます 00007950L11△△△こむそうもゆいかげんなるあいさつで 00007960L12△△△△これからつれにわかれミやうじん(五ウ) 00007970¥N7¥J 00007980¥Xおきつ△@ゑじりへ|一り二丁@ 00007990L15入あひのかねのねハ、いづくできいてもこゝろほそきもの 00008000L16なり。りんSこゝいらへとまりのばあさん、ちやをまいれ 00008010L17ハどふだといふ所へ、下女Sサアおとまりと、てをとれバ、 00008020L18りんSあじな心もちになつて、かさをぬいで、はたごやSソ 00008030L19レおきやくと、すへふろもめしもすミて、下女Sとこをも 00008040L20つてくると、りんSじやうだんまじりに、こあたりにあた 00008050M1つてミる。下女Sおかしなめつきで、いやらしくとこをし 00008060M2いて行。りんSなんだかねつかれぬと、まじり+してゐ 00008070M3ると、くまSはや四ツ過ごろに、かの女の所へゆかんとす 00008080M4れバ、あいにくますおとしがかけてあつて、がつたりとお 00008090M5ちれバ、女ぼうSめをさまして、ぼんぼりをもつて(六オ) 00008100M6くると、かのをとこと女、左右にわかりて、女ぼう、男 00008110M7につまづき、男、あいてゝ+て、九ツのかね、ごん引。 00008120M8女ぼうSこハいろにて、Sますおとしとおもひのほか、二 00008130M9人しのびしふぎものめ。ゆるす事ならぬぞよ△男Sやど女 00008140M10下女Sたび人どの△女ぼうSこのばハたがひに△二人かけ合 00008150M11Sのちにはをふ引 00008160M12△△△ねづミいておきつのしゆくのはたごやで 00008170M13△△△△いとゞおもひハますおとしかな 00008180¥N8¥J 00008190¥Xゑじり△@ふちうへ|二り廿丁@ 00008200M16それよりたちて、ゑじりのしゆくにいたりて、りんS世の 00008210M17中ハうきしづミあるとハいひながら、ごまのはいに、(六 00008220M18ウ)ろぎんをぬすまれ、つまらぬ物だ。しかし、人げんハ 00008230M19なゝころび八おきだ。あきらめるがいゝ△くまSおめへハ 00008240M20あきらめがいゝが、おいらハわづらひさうだ。あるくもら 00008250¥P28 00008260L1ちがあかねへと、まのぬけたやうにうか+する。りん 00008270L2Sあれ見なさい。さいハひこゝに、いしやさまがある。ミ 00008280L3てもらひなせへと、あるうちへはいりて、何とぞ此人のミ 00008290L4やくをミてくだされまし。いしやSかうまんなかほで、お 00008300L5まへハと手をとりて、これハたんじや。りんS此人ハたん 00008310L6といふてハ、つね※すこしもござりませんが、何をかく 00008320L7しませう。さくばんはたごやで、ろぎんをとられましたを、 00008330L8たんとハミたてちがひじや△いしやSじやによつて、たん 00008340L9も+(七オ)大たんじや。まづたんといへバ、こくたんに 00008350L10ハびやくたん、いろ+あるが、これたんじや△林Sぜう 00008360L11のこハい。ゆふべ、ごまのはいに金をとられたといふに 00008370L12いしやSハテさて、ごまのはいにかねをとられたから、た 00008380L13んじや△りんSシテ、なにたんでござります△いしやSハテ、 00008390L14ゆだんでござります 00008400L15△△△やぶいしやにごまにあをだけうかゞへバ 00008410L16△△△△ミやくのかんちくちがひもうそう 00008420¥N9¥J 00008430¥Xふちう△@まりこへ|一り半△@ 00008440L19ほどなくふちうのしゆくにいたり、日もくれかゝりけれど、 00008450L20此はたごやへとまらんとおもへども、ろぎんハ(七ウ)なし。 00008460M1しかたなしに、きちんでとまらんと、やどへかゝれば、あ 00008470M2しハミづであらひ、すへふろもなけれバ、二人ハきもひき 00008480M3いれるていにて、林Sどうだ。きたない内だ。こゝへねる 00008490M4も、しミつたれだの△くまSいゝハな。まりこへゆくと、 00008500M5金の三両や五両ハできるといひながら、うへゝあがりけれ 00008510M6バ、あいやどの人は山ぶし・ろくぶ・じゆんれい・こんぴ 00008520M7らまゐり・ぬけまゐりのたぐひ。ミな+よりあひてゐる 00008530M8所へ、ろくぶSわしはなんだか、むしがかぶつてきた。アヽ 00008540M9いたい+++△山ぶしSたしやうのえんじや。きの 00008550M10どくな。これがむしにハようござると、くわいちうよりか 00008560M11ミづゝミをだして、Sいたゞいて、のまつせい。これハわ 00008570M12しが大ミねへさんけいのせつ、いたゞいて(八オ)きたが、 00008580M13だらにすけと申て、ごまのはいをねつたものだ△りんSそ 00008590M14れでハわしもむしのくすりだらうね△山ぶしSナゼ△りん 00008600M15Sハテ、ごまのはいにあつたものだ 00008610M16△△△ひんすれバどんなはたごもいとハずに 00008620M17△△△△しゆにまじハりてあかつきぞまつ 00008630¥N10¥J 00008640¥Xまりこ△@おかべへ|二り△△@ 00008650M20やどをすご+いでゝ、りんSなんと、こゝいらできいた 00008660¥P29 00008670L1らしれるだらうと、もし、ちつとうけ給ハりたいが、この 00008680L2へんに、梅がへや源太と申すハござりませぬか男Sあい。 00008690L3それハとんびの/((と脱カ))まつてゐるやねに、からすがとまつて、ひ 00008700L4さしにすゞめが三びき、下にハちやぼがこめをひろつてゐ 00008710L5る(八ウ)所が、そこでござります△くまSそんなら、なんで 00008720L6も四いろながらうごかぬうちにゆかずハなるまいと、いそ 00008730L7ぎあしにてゆきてミれバ、そのあしおとで、ミなにげてし 00008740L8まひけれど、こゝいらであらうとのぞきミれバ、源太Sか 00008750L9ほをミると、ちくばのともだちゆゑ、ヤレ+めづらしき 00008760L10たいめんじや。まづごぶじでめでたいと、ぎりじぎもすミ、 00008770L11いひださんとハおもヘども、なんのなかでも金をかせとハ 00008780L12いハれぬゆゑ、あたりをミれバ、てうづばちにあるひしや 00008790L13くをとりてふりあぐれバ、梅がへやSそれハすなハちむけ 00008800L14んのかねか△りんSイヽヤ、むしんのかねじや 00008810L15△△△物ごとにこまりこまでハふじゆして(九オ) 00008820L16△△△△これからむけんをつかふぜにかね 00008830¥N11¥J 00008840¥Xおかべ△@ふぢゑだへ|一り廿六丁@ 00008850L19林Sこまつたものだ。あめがふつてきた△くまSなに、は 00008860L20りこじやアあるめへし、こハがる事ハない。やりでもふり 00008870M1やアしめへし△林Sしかし、やりでもふれバ、かまでもか 00008880M2むらアといひながら、とうふやのミせへこしをかけて、も 00008890M3し、こゝをすこしおかしなさいまし△ていしゆSおかけな 00008900M4さりましといふうち、小ぞうSミそこしをもつて、とう 00008910M5ふをくんなせへ△ていしゆSヲイと、ミそこしをとれバ、 00008920M6小ぞうSおれがくるミちで、今壱寸八分のけんくわがあつ 00008930M7た△りんS江戸のあさくさにハ、壱寸八分のくわんのんが 00008940M8あるが、一寸八分の(九ウ)けんくわとハなんだらう△小ぞ 00008950M9うS六ぶが三人でけんくわをしたのだ△三人Sハヽ+ 00008960M10+。小ぞう、大でき+△小ぞうSそのけんくわを、小 00008970M11めくらがミへもせぬにたちよつてゐるから、わたしがなぜ 00008980M12たちよつてゐるときいたら、こめくらSこれも世のたとへだ 00008990M13小ぞうSわたしがなぜといつたら、こめくらSハテ、ざとう 00009000M14のがきのぞきだ△くまSおらがほうに、一丈八尺のけんく 00009010M15わがあつたつけ△ていしゆSこいつハ大きなけんくわだ。 00009020M16それハどういうもんだ△くまS六尺が三人でけんくわをし 00009030M17た△りんSまけぬきで、おらがほうに、一寸のけんくわが 00009040M18ありやした。小ぞうSおぢさん、ちいさなけんくわだが、 00009050M19どういふのだ△りんSハテ、両方が五分+だ(十オ) 00009060M20△△△ミそこしをもつておかべのとうふかふ 00009070¥P30 00009080L1△△△△小ぞうが口ハまめとミへけり 00009090¥N12¥J 00009100¥Xふぢゑだ△@しまだへ|二り△△@ 00009110L4さてとうふやを出て行と、むかふからすまふとりがきて、 00009120L5Sモシ、おまへハ江戸かへ△林Sアイ。せきとりさん、お 00009130L6まへハいゝかつぶくだが、おつよからう△角力取Sアイ。 00009140L7わしハゑかういんでも、くらまへでも、めうじんでも、か 00009150L8つてばかりじや。まけたこと、いちどもないと、かつたは 00009160L9なしばかりする。林Sおまへハなぜ、かつたはなしばかり 00009170L10なさる△角力Sハテ、まけたはなしハ見物がする 00009180L11△△△かつたのをかほのさきへもぶらさがる 00009190L12△△△△ふぢゑだじゆくの花すまふかな(十ウ) 00009200¥Y1 00009210M3△恋川春町作@二編|後冊@ 00009220M6/落噺(おとしはなし)/駅路(えきろの)/馬士唄(まごうた) 00009230M9△甲戌春新版△山口屋梓 00009240M10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(見返扉) 00009250¥N1¥J 00009260¥Xしまだ△@かなやへ|一り△△@ 00009270M14林Sさミだれやきのふにかハる九十川と、ほつくにもある 00009280M15から、今にも川がとまるもしれぬ。すこしいそぎませう 00009290M16くまSなアに、いそぐ事もねへ。もうこゝが大井川だ△り 00009300M17んSほんに川だのすしか、たいのすしだといふうち、大井 00009310M18川にぞつきけれバ、川ごしS申し、おきやく様。そしさま 00009320M19でこしませうか△りんSなんだ、そしさまとハ△川ごしSれ 00009330M20んだいでやらうといふことさ△りんSれんだい+、われ 00009340¥P31 00009350L1ハこれ△くまSれんだいミもんのはなしのたねだ△りんSそ 00009360L2れよりおびときでやつてくんな△川ごしSおびときとハ△ 00009370L3りんSかたぐるまの事よ△川こしSハヽハヽア、そんなら 00009380L4はだかになつて、うしろをむきな△りんSお(十一オ)やす 00009390L5い御用だが、此間ぢがいたくてならねへと、むだまじりで 00009400L6うしろをむけバ、川ごしSしりへくびをつつこむと、りん 00009410L7Sしつかい、すつぽんにミこまれたやうだ。アヽいたい 00009420L8+。きんたまがつぶれらア△川こしSなに、玉がつぶれ 00009430L9る。一ツや二ツハつぶれてもだいじない。このながどうち 00009440L10うをする人が、きんたまのかけがへをもつてあるかぬ人が 00009450L11あるものか△りんSひたいへ手をやると、川ごしSそれで 00009460L12ハめがミへぬ。つぶれるやうだ△りんSめの玉がつぶれて 00009470L13も、一ツや二ツハいゝハな。この川ごしをしながら、めの 00009480L14玉の三ツや四ツ、かけがへをもたぬ人があるものか△わう 00009490L15らいSおまへがたハふたりして、たまだ+とあらそふが、 00009500L16そのやう(十一ウ)にたまをもつてあるくかときけバ、りん 00009510L17Sもつてあるくはずだ△わうらいSナゼ△りんSハテ、品玉 00009520L18つかひだ 00009530L19△△△大井川の水かけろんのあらそひに 00009540L20△△△△玉のあせをもかくぞをかしき 00009550¥N2¥J 00009560¥Xかなや△@につさかへ|一り廿九丁@ 00009570M3なんなく川もこして、かなやのしゆくにいたりて、むだ口 00009580M4いひながらゆく。あとになりさきになりて、さむらひのゆ 00009590M5きけるに、りんSおさむらひさまにハ、どちらへおとほり 00009600M6でござります△侍Sイヤ、せつしや事ハ此たび、とのの御 00009610M7用でかミがたへまかりとほるものでごさる△りんSイヤ、 00009620M8町人よりおさむらひさまハ道中でもはがきゝ(十二オ)ます。 00009630M9よのたとへに、人ハぶしといひますから、たつといもので 00009640M10ござります△侍Sイヤ+、そこもとたちハ道中するも、 00009650M11こゝろのまゝじや。せつしやどもハ、とのゝ御用とあれバ、 00009660M12ひにちもきまつてゐるし、そして江戸やしきでつとめと申 00009670M13すハ、につきんでござる△りんSシテ、ぶしつけながら、 00009680M14ごちぎやうハ△侍Sいやはや、せうしんものゝかなしさハ、 00009690M15六こく二人ふちでござるが、このながのたびに、馬にもの 00009700M16らず、かごにものらず、たゞあるいて、京とまであるきづ 00009710M17めじや△りんSあるいてばかりおいでなさるとおつしやる 00009720M18が、シテ、おやしきのおつとめハ△侍Sあるくハじやうず 00009730M19なはずだ(十二ウ)△りんSなぜ△侍Sハテ、あしがるだハ 00009740M20な 00009750¥P32 00009760L1△△△かくされぬミどもがはなしせうぶかハ 00009770L2△△△△いハずとしれたミせるかんばん 00009780¥N3¥J 00009790¥Xにつさか△@かけ川へ△|一り廿九丁@ 00009800L5ほどなくにつさかのしゆくにいたり、こゝのめい物ハわら 00009810L6びもち。これをくハんとたちとまりて、りんSぢいさん、 00009820L7もちハいくらだ。@このおやぢ、すこ|しつんぼなれバ、@Sこゝのめいぶつだよ 00009830L8りんS$これで$こうか△おやぢSイヽヤ、 00009840L10ひとぼんで三文にハうらねへよ引△りんSさて、きゝわけ 00009850L11のわるい。ひとつが三文かト大ごへでいふと、おやぢSう 00009860L12なづいて、そふだ+りんSそんなら五ツで十五文にま 00009870L13けねへか(十三オ)△おやぢSねぎらずにかひねへ。むかし 00009880L14からきまつたものだといふところへ、馬かたSもし、おま 00009890L15にのらまいか。やすくしてのしよが、わしがおまハじや 00009900L16+おまで、だれでもいちどのると、こり+して、のり 00009910L17てがねへ。そこでだちんはとらねへ。そのかハりに、さけ 00009920L18二升ばかりのませたとおもつて、ぜにの四五百もくれなさ 00009930L19ろ。そふすれバ、すこしふそくでものせますべい△りん 00009940L20Sそれでも今こゝで、むまをいくらでやるときいたら、二 00009950M1百でやろうといつたに、それを四五百といへバ、しつかい 00009960M2三百もおれがおごりのやうだ△馬かたSおぐりでなけれバ、 00009970M3のられません△りんSナゼ△馬かたSハテ、馬かじや+ 00009980M4馬だ(十三ウ) 00009990M5△△△めいぶつとしほけでいだすわらびもち 00010000M6△△△△三文づゝハからきねだんぞ 00010010¥N4¥J 00010020¥Xかけ川△@ふくろ井へ|二り十六丁@ 00010030M9りんSこゝハござのめいぶつだが、ござをかつていかうじ 00010040M10やあねへか△くまSとんだ事をいふぜ。くひものならいゝ 00010050M11が、ござをかふと、大きなじやまものだ△りんSそれでも 00010060M12めいぶつをかハねバ、江戸へいつてはなしができぬ。なぶ 00010070M13りづけにしてまけぬやうに、ねをつけてミやうとたちより 00010080M14て、りんSこれハいくらだ△ござやS弐匁五分でござりま 00010090M15す△りんSもつとやすいのハないか△ござやSこれハいか 00010100M16ゞ。弐匁でござり(十四オ)ます△りんSもつとやすいのハ 00010110M17ねへかへ△ござやSこれがやすいのうちどめでござります 00010120M18りんSいくらだの△ござやS百三十二文でござります△りん 00010130M19Sこれをこうと、七十二文にハまからねへか△ござやSと 00010140M20んだ事をおつしやります。それでハもとねにもなりません 00010150¥P33 00010160L1が、たんとかハば、まけてもあげませう△りんSまけらバ 00010170L2十/枚(まい)もとらうハさ△ござやSいゝ、まけませうといハれて、 00010180L3りんSふしやう※に、七百四十八文はらひて、かのござ 00010190L4をもつて、このところをいでけれども、おもさもおもし、 00010200L5つまらぬものだと、にやつかいにして行ながら、こう、お 00010210L6めへももつてくんねへな。たびハミち(十四ウ)づれ世ハな 00010220L7さけだ。そうしよにんにすることはねへといハれて、くま 00010230L8Sハヽヽヽ、かわいそうだ。ぼうずもちにでもしやうハさ。 00010240L9まづおめへ、もつていきねへ△りんSそんならもつていか 00010250L10ふといふところへ、むかふから、ぼうずらしいものがくる 00010260L11と、そらこそきた。おめへにわたすぞ。くまSいや+、 00010270L12まつてくれ。こいつハふたりでもちませう△りんSなぜ 00010280L13くまSハテサ。いとびん/奴(やつこ)だから 00010290L14△△△うりものに花ござかざる名物ハ 00010300L15△△△△あきなひじやうずにおめにかけ川(十五オ) 00010310¥N5¥J 00010320¥Xふくろゐ△@ミつけへ|一り半△@ 00010330L18かのござをせおひてゆくほどに、ふくろゐにぞなりぬ。 00010340L19やど引S申し、ほていやでござります。わたくし方へおとま 00010350L20りなされませといふ、わかいものゝかほをミて、りんSこ 00010360M1れハ吉こうじやアねへかといハれて、びつくり。@かの男ハ|江戸での@ 00010370M2@ともだ|ちなり。@やど引Sこれハしやばいらいじや。シテ、おめへた 00010380M3ちハこんど、どこへこゝろざすつもりだ。おいらもつまら 00010390M4ねへから、かミ方へでもいかふとおもつての事だ。やど引 00010400M5Sまづ、なんにしろ、おらがところへとまんなせへ。はな 00010410M6しが山+だ。しつぽり三人で、きまぐればなしをならべ 00010420M7よう(十五ウ)といひながらミれバ、ござをもつてゐるゆゑ、 00010430M8そのござハなんにするきでもつてきた△りんSこれか。あ 00010440M9とのしゆくで、なぶりづけにしたら、まけたから、しかた 00010450M10なしにかつたのだ。このござにハこり+した。もちあつ 00010460M11かいものだよ△やど引Sまて+、それにハいゝ事があり 00010470M12やす。おれがいまつれてゆくはたごやハ、こよひハてうど 00010480M13ミせびらきだから、このござを十まい、内へのしんもつに 00010490M14すると、ミせびらきだから、はたごちんもとらずに、いろ 00010500M15+とちそうになるハひつぢやうだ△くまSきめう+と 00010510M16いひながら、こしからやたてをだして、 00010520M17もくろくをかく。(十六オ)〔G=のし進上 00010530M18花ござ拾枚△@熊△△吉|林右衛門@△ほていやふく右衛門様〕か 00010540M19くのごとくかきてもちゆくに、はやほど 00010550M20なく門口にぞなりけれバ、やど引Sもし、 00010560¥P34 00010570L1おきやくでござりますといふと、女ぼう、ミせへかけ出て、 00010580L2Sこれハ+、ようこそわたくしかたへ御とまり下さりま 00010590L3す。こん日ハミせびらきの事ゆゑ、ひとしほよろこびにそん 00010600L4じますといふところへ、かのござ十枚もち出し、りんSあ 00010610L5んまりけいせうながら、わざつとおいハひ申ます△てい 00010620L6しゆSこれハ+御こゝろづかひ、御きのどくにぞんじま 00010630L7す。およしなされバよいのに(十六ウ)と、いちれいのべて、 00010640L8大きにふうふともよろこびて、ソレ酒よ、さかなよと、ち 00010650L9そうしてゐるところへ、きんじよのわかいしゆきて、Sお 00010660L10やかた、めでたうござりやす△ていしゆSやうやくミせびら 00010670L11きにハなりやしたが、それハそうと、だいぶねむそうなめ 00010680L12つきだの△わかいものSイヤよんべ、こうしやくしの花げへ 00010690L13で、よがなよつぴてへねずにゐた△ていしゆSなるほど、 00010700L14おらがへもわりまへがきて、二三百もとられたから、きて 00010710L15きかつせへといつたが、うちがミせびらきゆへ、いかなん 00010720L16だが、こうしやくハなんだ△わかいしゆSぜんざが源平せい 00010730L17すい記△ていしゆSそいつハおもしろかつたらうが、(十七オ) 00010740L18そしてござハ△りんSイヤ、そのござにハこまりました 00010750L19△△△ごちそうではらハぽつてりふくれたり 00010760L20△△△△こゝハほていやふくろゐのしゆく 00010770¥N6¥J 00010780¥Xミつけ△@はままつへ|四り八丁△@ 00010790M3くまのゝごんげんさんけいしてゆかんとするほとりに、小 00010800M4どうぐやの見せさきに、さむらひ、ともをつれて、何かね 00010810M5だんをきいてゐるを、りんSおなじくたちどまりてきくに、 00010820M6さむらひSこの茶わんハいかほどな△ていしゆS七十五匁で 00010830M7ござります△さむらひSずいぶんしぶのまハりもよし、ミ 00010840M8どころハ。(十七ウ)しかしながら茶わんといふものハ、も 00010850M9とハ土でやくものでハないか。してミれバ、へつゝいハや 00010860M10すいものだ。むかふにあるかけものハ、よくかいた。さん 00010870M11すいのすミあんばいといひ、よほどよきゑとミえる△てい 00010880M12しゆSあれハかのふでござります△さむらいSよくかいた。 00010890M13山といふものハ、かきにくいものだ△りんSよくかいた。 00010900M14山といふものハかきにくいものだ△さむらひSよくかいた。 00010910M15山ハかきにくい△りんS又おなじやうに、山ほどかきにく 00010920M16いものハない。さむらひS大きにはらをたちて、にくひや 00010930M17つ。せつしやが山がかきにくいといへバ、口まねをしをつ 00010940M18て、山がかきにくいとぬかすが、おのれ、ふとゞき(十八 00010950M19オ)なやつだ。りんSわたくしのおやぢが、山がかきにく 00010960M20いと申ましたから、そこで山ハかきにくいといふのでござ 00010970¥P35 00010980L1ります△さむらひSして、おのしがおやぢハ、ゑかきかとき 00010990L2けバ、りんSなアに、かごかきでござります 00011000L3△△△どうぐやの見せでかけ物見つけ宿 00011010L4△△△△ねだんハたかき山のすミゑは 00011020¥N7¥J 00011030¥Xはま松△@まひさかへ|二り三十丁@ 00011040L7てんりうのわたしをこえて、ゆくともなく、はままつにぞ 00011050L8なりけれバ、しきりにそらがかわりて、あめハしのをつく 00011060L9がごとし。りんSさア雨がふつて(十八ウ)きたといふうち、 00011070L10いなびかりがひか+++、大がミなりごろ++ 00011080L11+++となりて、やむ事なし。又ごろ+++ 00011090L12+ぴつしやりぴしや++と、そばへおちけれバ、ふ 00011100L13たりハ、そりやこそおちたといろをけし、ひとちゞミにて、 00011110L14かのあきいへののきしたにはいりて、まことにいきたこゝ 00011120L15ちはなかりしが、かのかミなり、まご+してゐるところ 00011130L16へ、わかいもの二人Sながもちをかつぎて来り、かのかミな 00011140L17りをながもちへいれて、かつぎながら、ながもちうたSこひ 00011150L18のなアへ引△ちわぶミハなうハへヱ引ねづミがアヽひきや 00011160L19るか、なうハゑへ引とうたひ、(十九オ)もつていつてしま 00011170L20へバ、りんSあのやうに、うたで手がるくかついでゆくハ、 00011180M1なんだらう△くまSかついでゆくはずさ△りんSなぜ 00011190M2くまSはて、このしゆくのくもだからさ 00011200M3△△△かミなりがころげてきたと思ひしハ 00011210M4△△△△どうりよそバが天りうのかハ 00011220¥N8¥J 00011230¥Xまひさか△@あらゐの△△△|ふなわたし一里@ 00011240M7すハ明神のやしろにて、しばらくはいをして、それよりま 00011250M8へなる小茶屋にやすんでゐたる所へ、かミゆひS申し、か 00011260M9ミゆひハようござりますかへ(十九ウ)△二人Sてうどよい 00011270M10ところだ。ひとつたばねてくんな△かミゆひSおもミなせ 00011280M11りんSまげをきつてくんな△くまSそれでハざんぎりにな 00011290M12るだらう△りんSこいつハあやまつた。元ゆひをきつてく 00011300M13れといふ事だといふうちに、さかゆきもすつてしまへバ、 00011310M14りんSねをつめてたのむ△かミゆひSかしこまりました。こ 00011320M15のくらゐでいゝかへ△りんSアヽいたい++。上のか 00011330M16もゐより下ハミへねへ。もつとゆるくしてくんな△かミゆひ 00011340M17Sそんなら、これでよしかへ△りんSそれでハたぼのあい 00011350M18だへ、人がとほられるよ。もちつと、ねをしめてくんな△ 00011360M19かミゆひSこれでようござり(二十オ)ますか△りんSアヽい 00011370M20た+。それでハ又きつくなつた。もうよし+。これで 00011380¥P36 00011390L1よしにしよう。ときに、かミゆひせんハいくらだの△かミ 00011400L2ゆひS江戸でハ廿八文だが、いなかハ三十二文だ△りん 00011410L3Sそんなら三十二文/((と脱カ))だせば、かミゆひSイヤ+、七たび 00011420L4ゆひなほしたから、七人まへ弐百三十二文だ△りんSこれ 00011430L5ばかなつらだ。七人まへが二百三十二文だせとハ△かミゆひ 00011440L6Sナゼ△りんSハテ、八人まへでさへ、百もだせバかうハ 00011450L7サ 00011460L8△△△かミゆひのところかわれバ品かハる 00011470L9△△△△ゆひそこなひもくにのなまりぞ 00011480¥Q来亥春不残出板仕候。御求御覧可被下候。めでたし+ 00011490L12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二十ウ) 00011500¥P37 00011510¥U噺本大系△第十五巻 00011520¥T@おとし|譚△△@/富久喜多留(ふくきたる)〔扉〕 00011530¥G 00011540¥Y 00011550L16文化十一年正月序 00011560L17立川談洲楼序・立川銀馬作 00011570L18勝川春亭画 00011580L19丸屋文右衛門板 00011590L20中本一冊 00011600¥Y 00011610M2談語楼銀馬戯作△△東都大門通 00011620M3勝汲壷春亭画図△△弁慶橋筋 00011630M6@おとし|△△/譚(はなし)@/冨久喜多留(ふくきたる)全 00011640M8談洲楼△△△△△△文寿堂 00011650M9△△焉馬校合△△△△九屋文右衛門版 00011660M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(見返扉) 00011670¥Y叙 00011680M16/東夷(とうい)/南蛮(なんばん)、/北狄(ほくてき)/世間(せけん)、/趣意(しゆゐ)/発行(はつこう)のをとしはなしは、/年&(ねん+)/歳= 00011690M17&(さい=+)/月(つき)まち/日待(ひまち)、/昼席(ひるせき)/夜講(やこう)、いまはたつきになら/坂(さか)や、/児手= 00011700M18柏(このて=かしハ)のふたおもて、/根元(こんげん)/根本(こんもん)/噺(はなし)の/問屋(といや)、/当年(とうねん)つもつて/七十二= 00011710M19候(しちじうに=こう)、/田鼠(でんそ)かえつて/鶉(うづら)と/成(なり)、/素人(しろと)も/小釈(こしやく)に(一オ)/作者(さくしや)となる。 00011720M20/銀馬(ぎんば)が/述(のべ)る/小冊(せうさつ)も、はなし/鰻(うなぎ)に/江戸前筋(えどまへすぢ)、/長芋(ながいも)あれば/短(みじか)ひ 00011730¥P38 00011740¥G 00011750G1△△△元日や今朝より人も花こゝろ△△銀馬 00011760G2△△△山笑ふ春ハ来にけり松竹に 00011770G3△△△△千代万歳を富久喜多留門△△烏亭焉馬△(二ウ) 00011780G1〔挿絵中の句〕 00011790G2△△風ならて花にはあてな茶の煙△△女玉英 00011800G3△△行鳥も心して飛へはなの頃△△木下川生馬 00011810G4△△先へ行く人は隠れて桜かな△△銀馬△(六オ) 00011820M1もあるは/丸屋(まるや)の/新板(しんはん)もの、/若(わか)やぐ/春(はる)の/年始状(ねんしでう)、/千里同風(せんりどうふう)/筆(ふで) 00011830M2とりて、こんな/物(もの)かと/校合(きやうがう)/謹言(きんけん)、/耳(みゝ)にさハつて/亦(また)/親爺(おやぢ)が、 00011840M3/太平楽(たいへいらく)とわらをとまゝよ、/笑(わら)ふ/門(かど)からおもひつき、/則(すなハち)/題(だい) 00011850M4して(一ウ)/富久喜多留(ふくきたる)、/書肆(みせ)も/賑(にぎほ)ふ/文寿堂(ぶんじゆだう)に、/価(あた)ひ/千金(せんきん)は 00011860M5つ/商内(あきない)と、ホヽうやまつて/序(じよ)するにこそ 00011870M7△△△きのえ戌の初春 00011880M8△△△△△△△△△△△△△△立川談洲楼述 00011890M9△△△△△△△△△△△△△△△△G△G 00011900M11△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二オ) 00011910¥P39 00011920¥N1¥J 00011930¥X○/年始(ねんし) 00011940L3/飛(とぶ)/蝶(てふ)も/春(はる)めく/袖(そで)のふりはじめ、人も/衣紋(ゑもん)をつくろひて、/老(おひ) 00011950L4も/若(わか)やぐ/新玉(あらたま)の/門口(かどぐち)より、/亀松(かめまつ)屋/幸兵衛(こうべゑ)。/年始(ねんし)の/御祝義(ごしうぎ)申 00011960L5/入(い)れます。Sコレハ+、はや※と/忝(かたじけな)ふござる。/先(まづ)お 00011970L6/上(あが)りと、/例(れい)の/蓬莱(ほうらい)三/宝(ぽう)にかはらけ、/屠蘇酒(とそさけ)の/酔(ゑい)きげんに、 00011980L7/床(とこ)のかけものを見て、あの/絵(ゑ)ハ/鶴亀(つるかめ)で/御座(こざ)りますな。Sさ 00011990L8やう+。/家重代(いへぢうだい)/持伝(もちつた)へて/居(を)るゆゑ、/吉例(きちれい)に/掛(かけ)ます。こち 00012000L9らの/絵(ゑ)は、/何(なん)とかいふ/仙(せん)人が、/不老不死(ふらうふし)の/薬(くすり)を、ほうらい 00012010L10/山(さん)へ/取(とり)に/行(ゆく)ところさ△Sハテ、きミやうな。/仙人(せんにん)といふも 00012020L11のハ、どこにをりますな△S/仙(せん)人ハ山の/奥(おく)に、/間(ま)口三百/間(けん)、 00012030L12/奥行(おくゆき)(三オ)五百/間(けん)ほどの/家(いへ)に/住(すむ)といひます△Sおまへもめ 00012040L13つぽうかひな/嘘(うそ)をいひなさり升ス。その/様(やう)な/家(いへ)があるもの 00012050L14か△Sハテ、/五人(ごにん)や/拾(じう)人のくらしじやアねヱ。/千人(せんにん)の/暮(くら)し 00012060L15だものを 00012070¥N2¥J 00012080¥X○/夜(よ)ばい/星(ぼし) 00012090L18二三人/連(つれ)にて/吉原(よしハら)へ/行(ゆき)、まだ/馴染(なじミ)もなけれバ、/世間(せけん)のはな 00012100L19しに/成(な)り、Sコレ、/誰(たれ)が/此間(このぢう)、ひかり物が/飛(と)んだを見たと 00012110L20いつたが、本のことか△Sヲヽサ、/金玉(かねだま)だといつたが、/嘘(うそ) 00012120M1らしい。/大(おほ)かた/夜這星(よばいぼし)だらうトいふを、/側(そバ)に/聞(きい)てゐる/新造(しんぞう) 00012130M2が、Sほんに夜ばい星とやらハ、わつちも見イした。いつ 00012140M3ぞや/灯篭(とうろう)のじぶんに、/朝(あさ)はやく/客人(きやくじん)をおくつて、/仲(なか)の/町(てう)で 00012150M4(三ウ)たしか/五十軒(ごじつけん)の/方(ほう)からお/星(ほし)さんが、/田甫(たんぼ)の/方(ほう)へ/夜這(よばい) 00012160M5なんしたが、ありやア/七夕(たなバた)さんへ/行(ゆき)なんすかへ 00012170¥N3¥J 00012180¥X○/姿八景(すがたはつけい) 00012190M8/親(おや)かた、どこへお/出(いで)だ。S/今日(けふ)ハ/孫(まご)の/三(ミつ)ツのいわゐがある 00012200M9から、その/買(かい)ものに/大丸(だいまる)へ/行(ゆき)、そして/姪(めい)を/縁(えん)につけるその 00012210M10/相談(さうだん)に、/仲人(なかうど)の/所(ところ)へいつて、/帰(かへ)りに/上野(うへの)の/大師(だいし)さまの/御鬮(みくじ) 00012220M11をとつたが、/是(これ)も/能(いゝ)のに、また/相性(あいせう)はどふだか見て/貰(もら)つて 00012230M12と、/女(をんな)といふものハ/愚痴(ぐち)なことをいふゆゑ、/占者(うらない)の/所(とこ)へ/行(ゆき) 00012240M13ます。/序(ついで)に/評判(ひやうばん)があんまりな事ゆゑ、/団(だん)十郎が/姿八景(すがたはつけい)を見 00012250M14て/来(こ)やうとおもふ△Sそふなら(四オ)おくたびれだらう。 00012260M15マア、/茶(ちや)でも/呑(の)んで、/休(やす)んで/行(ゆき)なさい△Sイヤ、/早(はや)く/行(ゆか)ね 00012270M16バならぬと/行(ゆく)。あとにて、Sアレ見やれ。あのおやぢもモ 00012280M17ウ七十だが、/達(たつ)しやだ。/世話(せわ)やきずきだ。/孫(まご)のことや/姪(めい)の 00012290M18事ハしよう事もないが、団十郎が姿/八卦(はつけ)まで、いらぬせわ 00012300M19だ 00012310¥P40 00012320¥G(五ウ・六オ) 00012330¥N4¥J 00012340¥X○すし屋 00012350M3/奉公人(ほうこうにん)/口入(くちいれ)すしやといふ所へ、/国侍衆(くにざむらひしゆ)と見へて、/木柄(きづか)の 00012360M4大小をさし、/桟留(さんとめ)のはかま/着(き)たるが、/亭主(ていしゆ)に/逢(あひ)まうさうト 00012370M5/云(いふ)。Sハイ。/何(なん)の/御用(ごよう)でござります△Sイヤ、/外(ほか)の/義(ぎ)でも 00012380M6ないが、十七八な/女子(をなご)。/器量(きりやう)も/相応(さうおう)に、すこしハ/三味線(さミせん)な 00012390M7ども(四ウ)/得手(えて)てをるのがあらふか△Sそれハお/望(のぞミ)/次第(しだい)。 00012400M8シテ、おやしきハ/何所(どこ)で/御(ご)ざります△Sイヤ、/旦那(だんな)の/名(な)も 00012410M9/手(て)まへの名も、/書付(かきつけ)まゐつた。/貴様(きさま)の/名(な)ハ、/何(なん)と申すナ 00012420M10Sハイ。/私(わたくし)の名ハ/憚(はゞか)りながら、すしやとお/聞(きゝ)なされバ、い 00012430M11づ/方(かた)さまでも/御存(ごそんじ)でござります△Sハテナ。すしやとあれ 00012440M12バ、/鮓(すし)を/商(あきな)ひいたさるゝか△Sイヤ、/左様(さやう)でハござりませ 00012450M13ぬ△Sムヽ、きこえた。/此(この)やうに/大勢(おほぜい)こみ/合(あ)ふほどの/奉公= 00012460M14人(ほうこう=にん)、すしを/漬(つけ)たやうなれバ、/自慢(じまん)で/鮓(すし)やといふのか△Sイ 00012470M15ヱ、/奉公(ほうこう)人をめしにつけますから 00012480¥N5¥J 00012490¥X○/王子参(わうじまゐり)(五オ)(五ウ・六オ挿絵) 00012500M18/女中(ちよちう)つれだち、/王子(わうじ)のいなりへ/参(まい)り、うしろの山へのぼり 00012510M19て、/狐(きつね)の/穴(あな)に/祠(ほこら)が/建(たつ)てあるを/覗(のぞ)ひて、Sヲヤ+、お/吉(きつ)さ 00012520M20ん。ちよつとお見。アレ、/穴(あな)のおくに/狐(きつね)さまが/居(い)ますよ 00012530¥P41 00012540L1Sドレ、ほんにねへ。/毛(け)の/色(いろ)が/黄(き)いろでござりますねヱ 00012550L2Sイヱ+、うす/鼠(ねずミ)いろさ△Sナアニ、すゝ/竹(たけ)で/御座(こざ)りま 00012560L3すトいろ+あらそふ。S/穴(あな)の/中(なか)で/狐(きつね)が、こん 00012570¥N6¥J 00012580¥X○/女夫中(めうとなか) 00012590L6山の/神(かミ)めといへバ、/喰(くら)ひだほれと/言(いひ)かへす。Sまだ/口(くち)をし 00012600L7やべるかト、すりこ/木(き)でぶつと、むしりつく。/薬(や)くわんを 00012610L8/蹴飛(けとバ)す、/摺(すり)ばちを/打(うち)わるやら、/近所(きんじよ)が/寄(よつ)て、やう+なだ 00012620L9むる。さいハひ/店(たな)うけが(六ウ)/来(き)かゝり、Sこれハどふし 00012630L10た/事(こと)じや。Sどふした/所(どころ)か、/聞(きい)てくんなさい。/此(この)ひきづり 00012640L11め。/縫(ぬい)ものといへバ/綻(ほころ)び一ツ/出来(でき)ないくせに、水をバわし 00012650L12に/汲(くま)せ、/年中(ねんぢう)/糠(ぬか)みそまで、おれに/掻(かき)まハさせながら、それ 00012660L13に/何(なん)だ。くらひ/倒(だほ)れの、イヤべらぼうのト、いけツ口をた 00012670L14ゝきやアがる△Sハテさて。それハ/貴様(きさま)がおとなしうない 00012680L15といふもんじや。コレ、わしハ/廿年(にじうねん)も/添(そつ)てゐるけれど、つ 00012690L16いぞ/女房(にようぼう)に、Sあたま一ツはられた/事(こと)ハない 00012700¥N7¥J 00012710¥X○/岡釣(おかづり) 00012720L19/木場(きば)の/材木(ざいもく)の上で/釣(つり)をして/居(ゐ)る。/向(むか)ふにも/年来(としごろ)五十/余(よ)の/男(をとこ)、 00012730L20(七オ)/一心(いつしん)ふらんに/釣竿(つりざほ)をおろし、/筌(うき)を見つめてゐけるが、 00012740M1やがて/引(ひき)あげんとするに、/何(なに)かかゝりて、/漸(やゝ)しばらく/困(こま)り 00012750M2し/体(てい)に見へけるが、/糸(いと)を/手操(たぐり)よせしを見れバ、/縞(しま)の/財布(さいふ)。 00012760M3かのもの、/手(て)にさぐりてあたりを見まハし、/其侭(そのまゝ)/釣道具(つりだうぐ)を 00012770M4しまひ、いづちへか/帰(かへ)りける。S/川(かハ)を/隔(へだて)たれバ、しかとハ 00012780M5しれねど、/慥(たしか)に四五十両の/岌(かさ)。イヤ、/斯(かう)してハゐられぬと 00012790M6/立(たつ)て、/向(むか)ふへ/橋(はし)を/渡(わた)り、こゝらであらふと/釣(つり)ざほ二三/本(ぼん)お 00012800M7ろして、たばこも/呑(のま)ず。目を/放(はな)さずゐる/所(ところ)、一本の/竿(さほ)を/引= 00012810M8込(ひき=こま)んとする/程(ほど)の/当(あた)り也。すハこそト、そろり+とひきよ 00012820M9せ、はねまハるをしつかととらへて見れバ、その/形(さま)八九寸 00012830M10も(七ウ)ある/大鮒(おほふな)なり。そのまゝ川へほふり/込(こミ)ながら、 00012840M11Sべらぼうめ。うぬじやアねへハヱ 00012850¥N8¥J 00012860¥X○/初(はつ)ゆき 00012870M14きいた/風(ふう)の/男(をとこ)、はつ/雪(ゆき)の/降(ふ)るを/一人(ひとり)でよろこび、/加賀(かが)みの 00012880M15を/出(だ)しておけ。今から/向(むか)ふ/島(じま)へ/雪見(ゆきミ)にゆくぞ。しかし、/出(で) 00012890M16しなに/一(い)ツ/杯(はい)のんでゆかふ。きのふの/鴨(かも)ハあるか。/菜(な)でも 00012900M17/葱(ねぎ)でもあれバよいがトいふ/所(とこ)へ、五十ばかりなるおやぢ、 00012910M18/簑笠(ミのかさ)に雪の/降(ふり)かゝりたるを、いとふ/気(け)しきもなく、/小松菜(こまつな) 00012920M19の/大把(おほたば)と/呼来(よひきた)る。Sコレ、/菜(な)を/買(かを)ふ。いくらだ△Sハイ。 00012930M20二十でござります△Sちと/高(たか)ひが/買(かつ)てやらう△Sそれハ 00012940¥P42 00012950L1(八オ)/有(あり)がたふござります△Sコレ、おやぢどの。/年寄(としより)の 00012960L2此大/雪(ゆき)にあるくハ、さぞなんぎであらうと思つて、いひ/直(ね) 00012970L3に/買(かつ)てやる△Sアイ、だんなさまハおじひ/深(ぶか)ひおこゝろ。 00012980L4見れバ/能(よい)/簑(みの)に/陣笠(ちんがさ)。ハヽア、雪見にお/出(いで)かな△Sイヤ、/貴(き) 00012990L5さまハ/助才(じよさい)のない人だの△S/何(なに)サ、おまへ。ぢよ/才(さい)がある 00013000L6ゆゑ、/此(この)ざまでござります。/旦那(だんな)さま。雪のお/句(く)ハ/何(なん)とお 00013010L7つしやりました△Sムヽ、/初雪(はつゆき)のほつ/句(く)か。たつた/今(いま)/考(かんがへ) 00013020L8た△Sシテ、そのお/句(く)ハ何と△Sアノ/何(なに)さ。初ゆきや/犬(いぬ)の 00013030L9/足跡(あしあと)/梅(むめ)の/花(はな)△Sおもしろそふにござります。/私(わたくし)も/一句(いつく)いた 00013040L10しました△Sそれハ何と△Sアノ、はつ/雪(ゆき)や人の/足(あし)あと/小= 00013050L11判形(こ=ばんなり)△S人のあし/跡(あと)が小判/形(なり)とハ(八ウ)つまらぬことをい 00013060L12ふ人だ△Sハイ。/私(わたくし)ハ/艸鞋(わらじ)をはいて/居(を)ります 00013070¥N9¥J 00013080¥X○/朝寝(あさね) 00013090L15/年季明(ねんあけ)の/女郎(ぢようろ)、/囲(かこ)ハれて/居(ゐ)て、/縫(ぬい)ものゝ/出来(でき)ぬゆへ、お/針(はり) 00013100L16を/月雇(つきやとひ)にして、そのおはりが/毎日(まいにち)+/来(きた)る。ある/時(とき)、おは 00013110L17りと/言争(ものいひ)していひつのり、/彼(かの)おはりも、/身上崩(しんしやうくづ)しのてん 00013120L18ばものなれば/腹(はら)をたち、なんぼそのやうに/利口(りこう)なことをい 00013130L19ひなハつても、/縫物(ぬいもの)のことハ、/糠(ぬか)ぶくろがやつと/出来(でき)なが 00013140L20ら、さし/図(づ)がましひことばかり。こつちからごめんなさい 00013150M1だと、はり/込(こミ)/交(まぢ)りに/出(で)て/行(ゆけ)バ、/女郎(ちよらう)もぐつと/腹(はら)がたつて、 00013160M2/何(なん)でも/一(いち)ばん/縫(ぬつ)て見せる/気(き)にて、(九オ)/晩(ばん)がたに/彼(かの)をとこ 00013170M3の/来(きた)りし/時(とき)、/昼(ひる)お/針(はり)がかう+/云(いひ)したから、いつそ/腹(はら)がた 00013180M4つて+なりイしなんだ。もふたのミイせん。あすはおも 00013190M5ひきつて/四(よ)ツから/起(おき)て/縫(ぬひ)かゝらう 00013200¥N10¥J 00013210¥X○/唐人(とうじん)/来朝(らいてう) 00013220M8モシ、/唐人(とうじん)のらいてうとハ、/何(なん)の/事(こと)でごさります。S/貴様= 00013230M9達(きさま=たち)ハ/若(わか)いによつて/知(し)らぬはづ。五十/年(ねん)いぜんの/事(こと)よ。/朝鮮= 00013240M10人(てうせん=じん)/来朝(らいてう)して、/江戸中(えどぢう)ハいふにおよバず、/近国(きんごく)/近在(きんざい)から/見物(けんぶつ) 00013250M11のおびたゝしさ。/賑(にきや)かなことであつた△Sそして、/唐人(とうじん)ハ 00013260M12どこにゐましたな△S/唐人(とうじん)はあさくさの/門跡(もんぜき)に/来朝(らいてう)してゐ 00013270M13ました△Sハテナ。(九ウ)とても/来朝(らいてう)するなら、/門跡(もんぜき)より 00013280M14/回向院(ゑかうゐん)がよからふに△Sそれハ/開帳(かいてう)の事だSハテ、/寺(てら)に 00013290M15ゐれバ、らいてうも/開帳(かいてう)もおなじ事サトいひ/合(やい)て/居(ゐ)る/所(ところ)へ、 00013300M16/友達(ともだち)ひとり/来(き)て、S/何(なに)をむづかしく/云(い)ふ△Sイヤ、らいて 00013310M17うの事よ△Sムヽ、/来朝(らいてう)の事か。それハ/頼朝様(よりともさま)の事だ 00013320¥N11¥J 00013330¥X○/早脚(はやあし) 00013340M20/楠木(くすのき)やといふ/内(うち)の/主人(あるじ)、/一芸(いちげい)あらバ/何人(なんにん)でも/家来(けらい)に/抱(かゝえ)んと 00013350¥P43 00013360L1いひけれバ、/諸芸(しよげい)に/達(たつ)したるもの、おびたゝしく/来(きた)る。/中(なか) 00013370L2にも/足(あし)のはやきをいひ/立(たて)に/来(き)た/男(おとこ)を/抱(かゝへ)たりし。その/夜(よ)/盗人(ぬすびと) 00013380L3/這入(はいり)けるが、ソレと/声(こゑ)をかけられ、/盗人(ぬすびと)ハいつさんに/迯出(にげいだ) 00013390L4す。S/待(まち)まうけ(十オ)たることなれバ、/彼(かの)はや/足(あし)の/男(をとこ)、む 00013400L5かふ見ずの/猪之助(ゐのすけ)と/名(な)を/得(え)たりしものなれバ、/逸参(いつさん)にかけ 00013410L6/出(いだ)す。/盗人(ぬすひと)ハ/一町(いつてう)ほどにげると、/少(すこ)しわきへ/身(み)をひそめる。 00013420L7/夫(それ)もしらず、四五/町(てう)ほど/大汗(おほあせ)に/成(なつ)て、どろぼう+と/大声(おほごゑ) 00013430L8によばハり/追(おつ)かけゆく。/跡(あと)から/盗人(ぬすびと)も/大汗(おほあせ)になつて、Sべ 00013440L9らぼう+ 00013450¥N12¥J 00013460¥X○/聾(つんぼ) 00013470L12つんぼのくせに/悋(しハ)いおやぢ、/両国(りやうごく)の/橋(はし)を/通(とほ)るを、/薦(こも)かぶり 00013480L13の/非人(ひにん)、Sだんな。/一文(いちもん)おくんなさりやしトついてくるか 00013490L14ら、しやうことなしに、Sけふは/仏(ほとけ)の/日(ひ)だと、をしそふに 00013500L15/巾着(きんちやく)より/四(し)もん/銭(ぜに)(十ウ)/壱文(いちもん)/出(だ)して、コレ、つりがあらバ、 00013510L16三/文(もん)よこせトいふ。/非人(ひにん)もあきれた/顔(かほ)で三文/出(だ)せバ、/側(そバ)に 00013520L17ゐるはなし/鰻(うなぎ)を/一疋(いつひき)かつて/持(もつ)て/行(ゆく)ゆへ、うなぎ/売人(うるひと)も、/非= 00013530L18人(ひ=にん)から/釣(つり)をとるを見てゐて、/悋(しハ)ひ/親父(おやぢ)と思ふゆゑ、Sモシ、 00013540L19おめへは/持(もつ)て/往(いつ)て、/蒲焼(かばやき)にするのか。そんなめそつこが、 00013550L20くハれるものかといへば、つんぼゆゑ/耳(みゝ)へゆびをさして、 00013560M1だまつてゆく。さてハ/聞(きこ)へぬと/袖(そで)をひつぱつて、それハ/喰(く) 00013570M2ふのでハないよ。/放(はな)すのだといへバ、ぢゝい、/耳(ミヽ)を/寄(よ)せて、 00013580M3/何(なん)だといふ。Sうなぎや、/大声(おほごゑ)あげて、それをくつてハ/後= 00013590M4生(ご=しやう)にハならねへヨウト/云(い)へバ、Sイヤ、これでも/鰌(どでう)にハま 00013600M5しだ(十一オ) 00013610¥N13¥J 00013620¥X○/女郎(ちようろ)の/文(ふミ) 00013630M8コレ/鳶松(とびまつ)。/昨宵(ゆふべ)ハどこへ/往(いつ)た。S又よし/原(ハら)のきやつがとこ 00013640M9ろへよ△Sムヽ、きやつとハ/河岸(かし)のなじみか。/成(なる)ほど、き 00013650M10やつといふのハ/尤(もつとも)だ△Sなぜ△Sハテ、/猿(さる)のつらによく/似(に) 00013660M11てゐる△Sおきやアがれ。それでも/立引(たてひき)をして/呼(よび)にもよこ 00013670M12す。/又(また)あいつが/物(もの)だといつて、/高(たか)が/知(し)れたものだが、まづ 00013680M13/第一(たいゝち)ものをよく/書(かい)て、/文(ふミ)をよこすから、/毎晩(まいばん)ゆくハ△Sう 00013690M14そをいふやつだ△S/嘘(うそ)なら、これ見ろ△Sムヽ、/何(なん)だか/蚯= 00013700M15蚓(めゝ=ず)ののたくつたやうでわからねへが、われにハ/知(し)れるか 00013710M16Sその/事(こと)よ。おれにもしれねヱ△Sそのしれねへ/文(ふミ)の/所(とこ)へ 00013720M17ゆくハ(十一ウ)△Sしれねヱから、/毎(まい)ばん/行(ゆく)ハさ 00013730¥N14¥J 00013740¥X○/学者(がくしや) 00013750M20/筆学(ひつがく)/読書(とくしよ)/指南(しなん)と/札(ふだ)を/出(だ)した/隣(となり)にゐるひとりもの、ある時、 00013760¥P44 00013770L1/先生(せんせい)さま。けふハお/宿(やど)にお/出(いで)かへといふ。Sこれハ/隣家(りんか)の 00013780L2/主人(しゆじん)、よふお/出(いで)。/今日(こんにち)ハ/休日(きうじつ)ゆゑ、くわろにぼうつういた 00013790L3して/居(を)る△Sもし、けふは/血忌(ちいみ)だと、/大屋(おほや)さんのかみ/様(さん)が 00013800L4いひなさるから、/私(わたし)も/日三里(ひざんり)をすゑねへに、/跡(あと)でとがめる 00013810L5と申やすに△Sイヤ、/素読(そどく)の/休日(きうじつ)といふことサ△Sイヱ、 00013820L6そどくより/苦(にが)ひけれど、/解毒(げどく)がよく/利(きゝ)やす。ハヽア、/虫(むし)が 00013830L7かぶりなさるかへ。/机(つくえ)に/寄(より)かゝつてゐなさるハ△Sイヤ、 00013840L8/気分(きぶん)は/何(なん)ともござらぬ。(十二オ)いま/詩(し)をつくつて/平仄(ひやうそく)を 00013850L9ふみました△Sそりやアとんだ事だ。おけがはねへか。/油(あぶら) 00013860L10が/附(つい)たら/吹(ふい)て/上(あ)ゲやしよう 00013870¥N15¥J 00013880¥X○/熨斗目(のしめ) 00013890L13/年礼(ねんれい)の/先(さき)から、よし/原(ハら)へさそハれて、/腰替(こしがハ)りの/熨斗目(のしめ)を/着(き) 00013900L14たまゝで、ずつと/茶(ちや)やへ/居(すハ)る。/茶屋(ちやや)にしつた/女郎(ぢようろ)しん/造(ぞう)、 00013910L15/大(おほ)ぜいゐて、お/出(いで)なんしたか。けふハ正月でどつちへ/往(いき)な 00013920L16んした。Sどうだ、こんなものを/着(き)て/来(く)る/客(きやく)もないものだ。 00013930L17そして此/着(き)た/物(もの)は、なんだか/知(し)るまいのトいへバ、/中(なか)にも 00013940L18/年(とし)かさなる/新造(しんぞう)、Sヲヤ+、なんぼわつちらがやうな/者(もの) 00013950L19でも、しつてゐんすよ△Sそんなら/何(なん)だ△S/紙子(かミこ)さ(十二ウ) 00013960¥N16¥J 00013970¥X○/附馬(つきむま) 00013980M3/親方(おやかた)、/内(うち)にか。Sだれだ、八か。/朝(あさ)つぱらに/何(なん)の/用(よう)で/来(き)た 00013990M4S/昨宵(ゆんべ)/中(なか)なほりの/帰(かへ)りに、/立引(たてひき)になつて/行(いか)ねバならねへか 00014000M5ら、/吉原(よしハら)へいつて、つひ/桓根(かきね)のそとをやつて、/馬(うま)をつれて 00014010M6/来(き)た。どふぞ内へ/帰(けへ)つたらよこそふ。/一分(いちぶ)かしてください 00014020M7S/何(なに)、/馬(むま)をつれて/来(き)た。どこへ/繋(つな)ひておいたのだ△S/何(なに)さ。 00014030M8/馬(むま)といふのハ/女郎(ちようろ)やの/若(わかい)ものよ。さがりを/取(とり)に/付(つい)てきたの 00014040M9さ△Sそんなら、/揚代(つとめ)を/借(かし)たをとりに/来(き)たのか。アヽむか 00014050M10しと/違(ちが)つて、/今(いま)ハおとなしい/名(な)になつたなア△Sむかしハ 00014060M11なんといひました△Sおくり/狼(おほかミ)と(十三オ) 00014070¥N17¥J 00014080¥X○/柔術(じうじつ) 00014090M14/今(いま)ハむかし。あるやハらの/師匠(しせう)の/所(ところ)へ、おたのみ申ましよ 00014100M15トいふ。Sどつちからござつた△Sハイ。わたくしハ/御近= 00014110M16所(ごきん=じよ)の/店(たな)の/奉公人(ほうこうにん)てござりますが、/掛取(かけとり)などに/出(で)ました/時(とき)、 00014120M17ひよつと/盗人(ぬすびと)に/出会(でやひ)ました/時(とき)のため、やハらとやらおぼえ 00014130M18ておつたなら、/味(あぢ)よう/痛(いため)てこまそとぞんして/参(まゐ)りました。 00014140M19どふぞ/御指南(ごしなん)なされて/下(くだ)さりませ△Sそれハよい/心(こゝろ)がけな 00014150M20れど、/町人衆(てうにんしう)にハいらぬこと。しかし、/身(ミ)の/用心(ようじん)の/為(ため)なら 00014160¥P45 00014170L1/止(とめ)るもいなもの。/小目録(こもくろく)でもとる/位(くらゐ)になれバよい。した 00014180L2が、人を/慰(なぐさ)ミに/投(なげ)たりする事ハ、きつと/禁(いましめ)て(十三ウ)ござ 00014190L3るぞや△Sなんの、あほらしい。/左様(さよ)なこと、いたしまし 00014200L4よぞひ△Sそれなら、まづ/表(おもて)をおぼえてから、/裏(うら)ををしへ 00014210L5ましよといへバ、/少(すこ)しこまつた/顔(かほ)にて、Sイヤ/先生(せんせい)さま。 00014220L6おねがひがござります。/今晩(こんばん)ハ/夜分(やぶん)ゆゑ、だいじござりま 00014230L7せぬが、/奉公人(ほうこうにん)の/事(こと)なれバ、/表(おもて)からハゑんりよでござりま 00014240L8す 00014250¥N18¥J 00014260¥X○/地口(ぢぐち) 00014270L11/摂津(せつつ)の/国(くに)/一(いち)の/谷(たに)ハ、いにしへ/元暦(げんりやく)のころ、/源平(げんぺい)/戦場(せんじやう)の/跡(あと)と 00014280L12て、/平家(へいけ)の/公達(きんだち)、/無官(むくわん)の/大夫(たいふ)あつもりの/墓(はか)とて、/何人(なにひと)が/建(たて) 00014290L13けん、/五輪(ごりん)の/石碑(せきひ)のこれり。/今(いま)ハそのまへ/並木(なミき)のかたに、 00014300L14/海(うミ)の/面(おもて)を(十四オ)見はらしたる/所(ところ)に、そばを/商(あきな)ふものあり 00014310L15て、/往来(ゆきゝ)の/旅人(たびゝと)を/日(ひ)の/丸(まる)の/扇(あふぎ)にて/呼(よ)びかけ、そばのあつも 00014320L16りあがらんか。あんばひ/義経(よしつね)といふ。/地口(ぢぐち)ずきの/江戸(えど)もの、 00014330L17/是(これ)を/聞(きゝ)てよろこび、/代銭(だいせん)いかほどトいへバ、Sあつもり十 00014340L18六/才(さい)の/時(とき)といふ。Sこれハおもしろい。/供(とも)にも/食(くハ)せん。と 00014350L19も/盛(もり)これ/盛(もり)と、/何(なん)ばいも/喰(くひ)、これでハ/平家(へいけ)の二十四もりも 00014360L20/喰(く)ふたであろ。/外(ほか)に/酒(さか)もりがなくてハならぬといへバ、/亭= 00014370M1主(てい=しゆ)Sだんな。/秀句(しうく)/口合(くちあ)ひはゑらひもんじや。/有盛(ありもり)+と/出(いだ) 00014380M2す。その/時(とき)江戸もの、あり/合(あふ)/呉主茶椀(ごすぢやわん)おつとり、/酒(さけ)をつぎ 00014390M3/呑(のむ)といへバ、/亭主(ていしゆ)、S/扇(あふぎ)を(十四ウ)もつて/仰(あほ)ぎたて、イヨ、 00014400M4/咽(のど)の/守(かミ)/呑(のみ)つね/公(こう)とほむれバ、Sイヤ、我こそハ/劔(けん)びし五位 00014410M5の上/戸(ご)、/胸(むね)もとの/義経(よしつね)と/名(な)のるうへは、平/家(け)の一文もはら 00014420M6ひなしとかけいだす。ていしゆ/肝(きも)をつぶし、/供(とも)の/者(もの)を引と 00014430M7め、こなさんも酒を/呑(の)んだ。サア梶原の二/度(ど)のかけハいた 00014440M8さぬ。代物が/浦(うら)の/浪銭(なミせん)を、此/場(ば)に於ゐて/払(はら)つた+トいへ 00014450M9バ、Sイヤ、おれハ/梶(かぢ)原でハない。よしつねの/御(ミ)内におい 00014460M10て△Sなんと△S酒をたゞのむじや 00014470¥N19¥J 00014480¥X○/贔屓(ひいき) 00014490M13/団(だん)十郎が/評(ひやう)ばん日にまし、/取(とり)わけ此かほ見世ハ座頭と(十 00014500M14五オ)なりて、相馬の狂言に七やくの大あたり。二けんの 00014510M15しば居の大入。/桟敷(さじき)も四五日まへから/言込(いひこん)でさへ出/来(き)かね 00014520M16るくらゐなり。やう+/末(すゑ)の土間のうり/込(ごミ)に/押合(おしあひ)見物する 00014530M17/者(もの)、幕のあひだに二人リづれにて、ぬけ/裏(うら)の/雪隠(せついん)へ用たし 00014540M18に/行(ゆき)しところ、二/軒(けん)つゞきある一ツけんハふさがりけれバ、 00014550M19マアおれを/先(さき)へと、/壱人(ひとり)はゐると、つひわれをわすれ、 00014560M20アヽおもしろかつた。団十郎ハきついもんだといへバ、/隣(となり) 00014570¥P46 00014580L1の/雪隠(せついん)の男がこれをきいて、Sモシ、きつくなりやしたね。 00014590L2モウ/気(き)づかひはないね△Sさやうさ。/団(だん)十郎がひゐきかへ 00014600L3Sイヤ、/贔屓(ひゐき)どころか、(十五ウ)三升が居ない芝居ハ見や 00014610L4せぬ△Sそれはおたのもしひトはなすを、外に/待(まつ)てゐる/連(つれ)、 00014620L5/自(じ)分の用もつまり、/是(これ)、おれもこまる。はやく/出(で)ないか。 00014630L6そしてモウしらせを/打(うつ)ぞへといふを、/隣(となり)のもの、Sそとに 00014640L7お/出(いで)なさるハお/連(つれ)さまかね。あなたも三/升(ぜう)びゐきか△Sア 00014650L8イ、大ひゐきサ△Sヱヽ/左(さ)やうなら、さつきから内へ/入(い)れ 00014660L9申て、お/茶(ちや)でもあげましやうに 00014670¥Y◇筆耕△石原知道◇ 00014680¥Y落話富久喜多留畢(十六オ) 00014690¥Y自跋 00014700M3蛙有曲井、不知滄海寛といえども、/■(ごまめ)の/魚交(とゝまじり) 00014710M4と、/常(つね)に/落譚(おとしはなし)を/好(この)ミて、/談洲楼(だんじうろう)の/門(もん)に/遊(あそび)、/頓(とミ)に/談語桜(だんごろう)と 00014720M5/名(な)を/得(え)たれど、/偶(たま+)/三五(さんご)の月の/夕(ゆふべ)にも、一ツ/咄(はな)しやれ、/夜= 00014730M6食(や=しよく)を/喰(くハ)しよと/言(いふ)/人(ひと)も/稀(まれ)なり。/爾(しか)ハあれど、/止(やミ)なんも/本意(ほゐ)な 00014740M7く、立川の/流(ながれ)に/出(いで)て、これも命の/洗濯(せんたく)と筆にいはせ、/去年(こぞ) 00014750M8の/春(はる)、/笑嘉登(わらふかど)といふ小/冊(さつ)を/著述(ちよじゆつ)す。/先生(せんせい)/閲(ミ)て、/莞尓(にこ+)(十六ウ) 00014760M9/而(して)/曰(いわく)、/最(も)一ツこい、/爺(ぢゝ)によましよト/有(ある)にまかせ、/桃太郎(もゝたらう)に 00014770M10お/供(とも)申た/山鳥(やまどり)の/尾(を)の/長&(なが+)しき/秋(あき)の/夜(よ)より、かひ/付置(つけおき)し/噺(はなし)の 00014780M11/種(たね)、/戌(いぬ)の/春(はる)の/新版(しんはん)とハ、/猿(さる)にても/鳴呼(をこ)がまし。/大(おほ)きなこけ 00014790M12いの/三笑(さんしやう)と、/人&(ひと※)の/大笑(おほわらひ)/有(ある)とも、/夫(それ)ぞ/寔(まこと)に/富久喜多留(ふくきたる)、/三= 00014800M13升(ミ=ます)の/手拭(てぬぐひ)ひつかぶり、/談洲楼(だんじうらう)のしりへに/跋(ばつ)して$$ぬ 00014810M14と/爾(しか)/云(いふ) 00014820M16△△△きのえ戌の 00014830M17△△△△△△△△△△△△談洲楼門人 00014840M18△△△△△めてたき春△△△△△談語楼銀馬G 00014850M19△△△△△△△△△△△△△△△△(十七オ) 00014860¥P47 00014870¥U噺本大系△第十五巻 00014880¥T/山(やま)の/笑(わらい)〔序〕 00014890¥G 00014900¥Y 00014910L19文化十一年正月頃序 00014920L20小本一冊 00014930¥Y序 00014940M3ちかころの/名家(めいか)、もはら/風調(ふうてう)とせるは、/其(その)さま/酒宴(しゆゑん)に長し 00014950M4たる口とりの如し。すまし/仕立(したて)の/一寸(ちよつ)としたる/軽(かる)き/唇(くちびる)に、 00014960M5/聞上手(きゝぢようず)の/耳(みゝ)をとつて、/咄(はなし)ふりのてうしを(一オ)はつさす、 00014970M6/盃(さかづき)のおはらをかゝへさせ、/笑(わらひ)上戸とぞなしぬ。/爰(こゝ)に/柴苅(しばかり) 00014980M7/山中(さんちう)の/里(さと)に、/爺(ぢゝ)か/年(とし)/百歳(ひやくさい)のぬし、その/姿(すかた)を/得(え)て、口つき 00014990M8おかしうそらしとり、/此道(このミち)の/下戸(けこ)ならぬをのこにそ/有(あり)ける。 00015000M9/一夜(いちや)つくり出たるをかいあつめて、(一ウ)/里(さと)のめさしのわ 00015010M10らハべに、/冬(ふゆ)の/山(やま)の/眠(ねむり)を/覚(さま)さ/勢(せ)んと、/初春(はつはる)の山の/笑(わらひ)と/題(だい)し 00015020M11て、此はしつかた、/書(かき)てよともとめにより、とそ/酒(さけ)のゑひ 00015030M12こゝち、/書(かき)そめのふんでを(二オ)とるハ、ミつのあさ/艸(くさ)の 00015040M13/何(なに)かしなりけり 00015050M15△△△いぬのはつ春△△△△上毛山中△瓢子作 00015060M16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二ウ) 00015070¥P48 00015080¥N1¥J 00015090¥X春宵 00015100L3/春宵一刻(しゆんせういつこく)ハ/千両道具(せんりやうどうぐ)とかやいへる、/詩(からうた)の/意(こゝろ)もむべ也。/東(とう) 00015110L4/方朔(ほうさく)/夫婦(ふうふ)の/寐物語(ねものがたり)に、◇女房◇もし/旦那(だんな)へ。わつちやア、こん 00015120L5やハひよんな事を思ひ出しやした。アノおまへとわつちが 00015130L6/新枕(にゐまくら)のとき、/恥(はづ)かしいやらうれしいやら、ちん+かもと 00015140L7たのしんだハ、こうと/何百(なんびやく)/昔(むかし)さきじややら。もふ+ 00015150L8(三オ)わつちやアきがいそ+するやうだへ△◇方さく◇ホヽウ、 00015160L9/今(いま)/千年(せんねん)としが/若(わか)くハナア 00015170¥N2¥J 00015180¥X京鹿子 00015190L12ひまな女郎と/芸者(げいしや)/寄合(よりあつ)て、◇女郎◇アノわつちハ/長唄(ながうた)の内でも、 00015200L13/京鹿子(きやうかのこ)の/上(じやう)がゑんぎがいゝから、いつでものぞミんすよ 00015210L14◇げいしや◇そりやアなぜへ△◇女郎◇どふもならぬ程、ヲヽあひに 00015220L15きたといふ/文句(もんく)が、わつちらが(三ウ)にもいゝからさ 00015230L16◇げいしや◇なる程さうだねへ。わつちらも京鹿子の上ハすきで 00015240L17ござりやすが、下といつちやア、いつそすかねへよ△◇女郎◇ 00015250L18そりやアなんといふ文句ておつすへ△◇げい◇只たのめとさ 00015260¥N3¥J 00015270¥X/系図(けいず) 00015280M1/山家(さんか)の/百姓(ひやくしよう)二人よりて、◇でく兵衛◇コレ/茂次作(もぢさく)。それさまの 00015290M2家には、/柄(ゑ)のをれた/鑓(やり)が(四オ)見へるが、大かた/先祖(せんぞ)ハ/武= 00015300M3士(ぶ=し)だんべい△◇茂次作◇イヤ、おらが家ハ武士どころでハない。 00015310M4/桓武天皇(くハんむてんわう)九代のこうゐん、/悪(あく)七兵衛/景清(かけきよ)の/末孫(ばつそん)/武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけん(ママ)) 00015320M5の家だもさ△◇でく◇ムヽ、そして/平氏(へいじ)か/源氏(げんし)か△◇茂次◇何、ば 00015330M6か+しい。源次の平次のといふやうな/安(やす)い/名(な)の先祖ハな 00015340M7い 00015350¥N4¥J 00015360¥X/懐胎(くわいたい)(四ウ) 00015370M10これ吉/公(こう)。そこの御しんもじハ、/去(きよ)年/神田祭(かんだまつり)で/貴(き)公が見そ 00015380M11め、どふやらかふやら/婚礼(こんれい)が/済(すん)だと思ふうち、もふいつの 00015390M12まにか、はらがたいこのやうにふくれたねへ。◇吉◇アイサ。 00015400M13今にどん+かゝとなりやす 00015410¥N5¥J 00015420¥X熊坂 00015430M16/熊坂(くまさか)/長範(てうはん)/一子(いつし)長松、ことし七才のあいらしざかり。手を引 00015440M17つれて花見と(五オ)出かけける。とりわけけふハのどかに 00015450M18て、/貴賎(きせん)のくんじゆもおびたゝし。◇長はん◇これ長ま/((つ脱カ))や。あ 00015460M19のさきへゆく子のよい/巾着(きんちやく)をさげをつたが、ぼうハほしく 00015470M20ハないかや△◇長松◇イヽヤ、ぼうハあんな古い巾着ハいやぢ 00015480¥P49 00015490L1や△◇長はん◇ハテもつたいない。取るものだ 00015500¥N6¥J 00015510¥X/下帯(ふんどし) 00015520L4/呉服(ごふく)屋へ折介来り、◇折介◇/旦那(たんな)の/絹(きぬ)ふん(五ウ)としと、おら 00015530L5が/木綿褌(もめんふんどし)と、此二色をくだされ△◇手代◇ハイ、かしこまり 00015540L6ました。サアどれなつと、ごらうじませ△◇折◇イヤ、おらハ 00015550L7見ハけが/出来(でき)ないから、なんでも/丈夫(ちようぶ)むきを下され△◇手代◇ 00015560L8ハイ。お左様ならば、/是(これ)とこれをさしあげませう。/直段(ねだん)ハ 00015570L9こうと、きぬ下帯地が七匁三分、木綿の下帯地が二匁七分、 00015580L10〆て十匁でごさります△◇折◇これさ。(六オ)しめたのハいら 00015590L11ない 00015600¥N7¥J 00015610¥X/商売(しようばい) 00015620L14/麒麟(きりん)と/獅子王(しゝわう)のやりくりばなし。◇きりん◇なんと、しゝ公。 00015630L15/先(まづ)/当世(とうせい)のやうすを見るに、れき+はだでハくへぬ。とか 00015640L16く/商(あきない)がはや/廻(まハ)りじや/程(ほど)に、貴公もわれらも、是から商人に 00015650L17ならふじやあるまいか△◇しゝ◇なる程、是ハ尤じや。そんな 00015660L18らいよ+あき内に(六ウ)いたそうと、そうだんして別れ 00015670L19る。あくる/朝(あさ)、/売(うり)あるくをきけば、S獅子王きんざんじ 00015680L20Sそばきりん+ 00015690¥N8¥J 00015700¥X/地震(ぢしん) 00015710M3/四海(しかい)/一統(いつとう)に/角(かど)とれて、まるき玉子の君が代なれば、ぢしん 00015720M4の/鯰(なまず)もかくべつのしごとなれけは、やりくりもよもやでき 00015730M5じのかなめいし、/鹿島(かしま)の神のさん(七オ)もつでもかりて、 00015740M6しつぽを見せめへと、あゆミもなれぬ土の上へゆりいだし 00015750M7てハゆりもどし、まんざいらくと/唱(とな)へしハ、ふくべておさ 00015760M8へたごとく也。/通(とふ)りの人か立とまり、◇見物◇あれハ地しんの 00015770M9鯰と見へたが、それならゆりさうなものだが、なぜゆるが 00015780M10ぬの△◇ぢしん◇ばかめ。/内証(ないしよう)がゆるがぬから、/銭(ぜに)かりにゆく 00015790M11のだ(七ウ) 00015800¥N9¥J 00015810¥X馬好 00015820M14◇友たち◇イヤ、是ハ久&にて/御意(ぎよい)得ました。先以さつそく/承(うけたま) 00015830M15ハらふハ、/貴公(きかう)御名ハ、やはり先年の通り馬右衛門殿と申 00015840M16ますかナ△◇馬太夫◇アイヤ、/当時(とうじ)にてハ馬太夫と/改(あらため)ました 00015850M17◇友◇はてさて、貴公ハとかくに馬がおすきでごさるナ△◇馬◇ハ 00015860M18イ。ヒヽヽヽヽンと/笑(わら)ふ(八オ) 00015870¥P50 00015880¥N10¥J 00015890¥X幽霊 00015900L3ある/御寺(おてら)へ、わかいもの/奉公(ほうこう)にすミて、/夏(なつ)の事なれば/本堂(ほんどう) 00015910L4のゑんがわにうたゝねして、よなか頃めをさまして見るに、 00015920L5しろせうぞくの女、あらハれたり。◇男◇何ニもせよ、夜中の 00015930L6ぼつとり。どふも/只(たゞ)ハとふされぬといだきつけば、かれも 00015940L7うぬぼれにて、にこ+/笑(わら)ひながら、◇女◇これさ、よしなよ。 00015950L8(八ウ)わつちハ何をかくさう、ゆうれいぢやが、がつてん 00015960L9かへ△◇男◇なんじや、幽霊しや。なむさんぼう、/腰(こし)より上ハ 00015970L10なくともよいに 00015980¥N11¥J 00015990¥X仝 00016000L13/新川(しんかわ)の/酒蔵(さかくら)に/幽霊(ゆうれい)が出るとの/取沙汰(とりさた)。此家のはん、少&/角= 00016010L14力(すま=ひ)の手も/知(しつ)てゐるゆへ、/何程(なにほど)の事あらんと、/今宵(こよひ)此酒蔵ニ 00016020L15ねたりしに、うしみつ/比(ごろ)とおぼしきに、(九オ)ふしぎや、 00016030L16なゝつぼしの/印(しるし)の/酒樽(さかたる)より、ひやうばんのゆうれいあらハ 00016040L17れたり。其時ばんとう大おんあげ、ヤア+、此/伴(ばん)しうが 00016050L18/前(まへ)をもはゞからず、のめくりつんでたしろん/坊(ぼう)、ませうの 00016060L19ものか、けせうのものか、へんとうハ、ナヽヽ/七星(なゝつぼし)のこも 00016070L20つかぶりめ、なんとだヱヽ△◇幽◇どふも/九曜(くよう)がたりませぬ 00016080¥N12¥J 00016090¥X/掛乞(かけこひ)(九ウ) 00016100M3大晦日のばん、あるひんかに掛取来りしが、家内みな/迯(にげ)て 00016110M4内に/居(ゐ)ず。かけとりもあきれながら、すハりこんでゐる/所(とこ) 00016120M5へ、又/跡(あと)から掛取来り、ごていしゆ。お払ひをとのぞきこ 00016130M6めば、S内の掛取ていしゆは/留主(るす)でごさります△S外の掛取 00016140M7イヤ、このせつきハそんなあまい手じやアいかぬ。サアど 00016150M8ふするのだ△S内の掛取ハイ。めんぼく(十オ)しだひもござ 00016160M9りませぬ 00016170¥N13¥J 00016180¥X/一角(いつかく) 00016190M12ある/後家(ごけ)どの、手代にうつぽれ、ある時/土蔵(どそう)にてひつとら 00016200M13へ、くどきければ、手代あまりいやさに、しよくせうした 00016210M14りとて、そら/虫(むし)をおこす。後家せきこみ、手ばやく/懐中(くわいちう)の 00016220M15たとうがみより、うにこふるを取いだせしが、折ふしあた 00016230M16りに/刄物(はもの)なきゆへ(十ウ)けづるへきやうなく、大きに気を 00016240M17もみつゝ手を合せ、何とぞ仏神の力を持て、この一角をた 00016250M18ち所にこになし、かわひ男にのませたまへ。きめうてうら 00016260M19い+と一心にとなふれバ、ふしぎや、一角おのづと/舞(まひ)上 00016270M20り、かのごけのせなかへとびつくとおもふとひとしく、こ 00016280¥P51 00016290L1になりけり。手代、あまりふしぎさによく+見れバ、さ 00016300L2めはだ(十一オ) 00016310¥N14¥J 00016320¥X/欠落(かけをち) 00016330L5◇旦那◇ヤイ三平。きのふから下女とやりもちが見へぬが、な 00016340L6んとした△◇三平◇ネイ。二人ともにうなぎ/沢(ざハ)の方へ、すつぽ 00016350L7んいたしたげにごわります△◇旦那◇それではもふ、江戸/前(まへ)に 00016360L8ハゐをるまい 00016370¥N15¥J 00016380¥X/喧嘩(けんくわ) 00016390L11/仕事師(しごとし)ふうふ、/酒(さけ)によひ、かやへはいつて(十一ウ)ねた所 00016400L12が、いざこざをはじめてたゝきあひ、かやにひつくるまつ 00016410L13て、二人ともにおきんとすれど/腰(こし)たゝず。あきれはて/居(ゐ)る 00016420L14所へ、大屋かけつけ、此やうすをたちぎゝしてゐる。/夫婦(ふうふ) 00016430L15思ふやう、此やうにあしこしのうごかぬといふハたゞ事で 00016440L16ハなし。たしかにふどうのかなしばりならんと、しんを取 00016450L17て、さんげ+/六根(ろつこん)せう+、大山/大聖(たいせう)ふどう(十二オ)め 00016460L18うわうととなへければ、◇大ヤ◇ハテ、きんめうてうらいなけ 00016470L19んくわだ 00016480¥N16¥J 00016490¥X/武芸(ふげい) 00016500M3あるこはたもとの/台所(たいどこ)にて、/田舎(いなか)のいもうりが/腰(こし)かけばな 00016510M4し。◇いもうり◇さてもおこつちのおとの様ハ、中&/人並(ひとなミ)のおか 00016520M5たとハ見へませぬねへといへば、めしたきぢゞがわらじを 00016530M6/作(つく)りやめて、◇ぢゝ◇いかにも、/我(わ)がしゆくんハ(十二ウ)事も 00016540M7おろかや、くらまさんのそうぜう坊の/門弟(もんてい)にて、おそらく 00016550M8けんじゆつハ天下一。それゆへ/僧正坊(そうじやうぼう)より/直伝(ぢきでん)の太刀打 00016560M9はやわざの/御守(おんまもり)を、しゆくん方より出さるゝ。おそるべし 00016570M10+◇いもうり◇それハてんこちないおとの様でごさりますね 00016580M11へ△◇めし◇イヤ、また/柔術(やわら)ござれ/鑓(やり)ござれ、とりわけゐやい 00016590M12ハ大めいじん△◇いも◇へヱ、おさやうなら、はミがきはんご 00016600M13んたんもお出しなされますか(十三オ) 00016610¥N17¥J 00016620¥X七夕 00016630M16七夕のひこぼしハ、/元来(ぐわんらい)/好色(こうしよく)のほしなれば、ふとして吉原 00016640M17へはまりこミ、いつのまにやら丸はだか、そも天上へハ帰 00016650M18られず。やう+茶屋がなさけにて、はんてん壱枚きせま 00016660M19いらせ、そらおそろしきゐそうろう。それとハ知らず此/里(さと) 00016670M20のむすめ子ともが、いちやうに手をひきつれて、ぼんうたや 00016680¥P52 00016690L1(十三ウ)七夕様のぼんかたびら見たか△◇七夕◇くそをくらへ。 00016700L2かたびらをきやうときまいと、うぬらが世/話(わ)になるものか 00016710¥N18¥J 00016720¥X神主 00016730L5ある/神主(かんぬし)、/遊(あそ)びにゆきしに、まわしをくらひ、よのあける 00016740L6まで/一人(ひとり)ねかされけれバ、大きに/腹(はら)をたち、むせうに手を 00016750L7たゝく。したからわかいもの来り、Sモシ、しづかにしな 00016760L8さい。わるい(十四オ)おんべへのかつぎやうだ△◇神主◇ヤア 00016770L9若者、すいさん也。身ハ/忝(かたじけな)くも/天王(てんわう)の/神職(しんしよく)にて、なか 00016780L10+おんべいなどかつく身分にあらず。おのれ、其むきで 00016790L11ハあいすまぬぞ△◇若者◇アヽ、是ハ私がいゝそこなひ。只よ 00016800L12い+だと申事さ△◇神主◇ムヽ、よいときゐて、気がすんだ 00016810¥N19¥J 00016820¥X/中間(ちうけん) 00016830L15ちうげんべやのよるの雨、ぶんぬきばらの(十四ウ)へるを 00016840L16もいとハず、つじばんだきあふての/高噺(たかはな)し。中にもへやが 00016850L17しらがしさいらしげに、◇関助◇イヤ、おらハおそらく、わた 00016860L18つてあるかぬ所ハねへ△◇門介◇ムヽ、それでハめつらしい物 00016870L19を見さしつたらう△◇関助◇ヲヽヨ。おれがはたちのとし、/長= 00016880L20崎(なか=さき)から/唐(から)の方へわたつたが、其時とらを手づらまへにして、 00016890M1それにくらを置て、/毎日(まいにち)千りづゝのつてあるいた△◇門◇はて 00016900M2の、そしてとらと(十五オ)いふものハ、マアどんなものだ 00016910M3ね△◇関◇なんの事ハねへ。ねこにふのあるやうなものさ△◇門◇ 00016920M4そして、なくこゑハ△◇関◇ムヽ、ソレハアノ、ごろにやん 00016930M5+ 00016940¥N20¥J 00016950¥X/弁天(へんてん) 00016960M8壱文銭をへがしてつかひ、つめに火をとぼす旦那どの。け 00016970M9ふハ内からおさいせん三文/握(にぎ)りつめ、しゆつせ弁才天へま 00016980M10いり、どふぞ銭金をつかミとりになさしめ/給(たま)へといのりて、 00016990M11(十五ウ)それより我が家へ帰り、◇亭主◇かゝ、いまもとつた 00017000M12ぞや△◇かゝあ◇やれ+、まちかねました△◇ていしゆ◇イヤ、時 00017010M13にそなたを、けふお参り申た弁天様のやうにしておかまう 00017020M14と思つて、/清(きよ)水のぶたいからとぶ/気(き)に成て、これ+、此 00017030M15油壱本廿四文でかふてきた△◇かゝあ◇ヱヽ、おまへもよく 00017040M16+しわひ事じや。其やすあぶらつけたとて、ナニ(十六 00017050M17オ)弁天様のやうになるものか。それよりハ思ひきつて、 00017060M18べつこうのくしこうがいでもかふてきてハくださらんで 00017070M19◇ていしゆ◇ハテ、らちもない。くしかうがいさした弁天さまが 00017080M20あるものか 00017090¥P53 00017100¥N21¥J 00017110¥X夫婦 00017120L3◇女房◇今夜ハなんだか酒がのみてへ。廿四文おごるべい 00017130L4◇仕事師◇これ、酒をかハうも/気(き)が(十六ウ)つゑゝ。其ぜにハ 00017140L5おれがたちめへだハ△◇女房◇こいつハおかしい。夫婦の中で、 00017150L6だれがぜにだ、かれがせにだがある物か。わしが物ハこな 00017160L7たの物、こなたの銭ハわしが銭さときめつけられ、くやし 00017170L8くもふるぶとんひつかぶつてねる。◇女房◇酒をたらふくひつ 00017180L9かけ、おなじく古ぶとんの中へはいりながら、ヱヽぐじ 00017190L10+と、うるさいこじらみめがくらやアがると、(十七オ) 00017200L11あてつければ、仕事師、大きにせきこみて、おきやアがれ。 00017210L12われがしらミハおれが/虱(しらミ)た 00017220¥N22¥J 00017230¥X酒興 00017240L15はや/開帳(かいてう)もおへぬれば、ゑこうゐん/門前(もんぜん)の/乞食(こじき)ども、もら 00017250L16ひためたる銭にて酒を/買(かい)、みな+たのしミ、すでににわ 00017260L17かをはじめける。/先(まづ)ハ此所てがたり/所作(しよさ)事のきどりにて、 00017270L18上るりS其たて/板(いた)に水流すべん(十七ウ)ざいてんでかハい 00017280L19ゝと、ひとことくわんおんいふたとて、おまへのひけてあ 00017290L20ろかいな引△S立かたハねじやかのきどり、口さミせんびん 00017300M1つるそんてん 00017310¥N23¥J 00017320¥X/法事(ほうじ) 00017330M4百年きの法事ゆへなくすミて、かないつかれてねいりける。 00017340M5ぢぶつどうのまへのつくへの上にて、木のはせんべいの 00017350M6/袋(ふくろ)(十八オ)ゆるぎ出、これ茶袋よ。こなたハ大きななりで 00017360M7/横(よこ)に/成(なつ)てゐるから、せきがない。なりが大きいとてこわい 00017370M8ものか。こなたも五十の袋、おらも五十の袋だ。あんまり 00017380M9おらを茶にせぬがよいぞや。Sなんだ。いゝかと思つてあ 00017390M10まつたるい事をぬかしやアがる。うぬ、たわことをつくと、 00017400M11はり++とふみくだくそと、/茶袋(ちやぶくろ)、大きにふく(十八 00017410M12ウ)れる。せんべいぶくろ、大きにへこむ 00017420¥N24¥J 00017430¥X/長唄(ながうた) 00017440M15とくいやしきの国ざふらひをさそひて、深川の二けん茶や 00017450M16にて、/芸者(けいしや)まじりの大さわぎ。◇丁人◇もしだんな。とかくう 00017460M17たの内でも、アノせきでらやどうじやうじハ、いつでもね 00017470M18いらぬものでこさりますねへといへば、/国侍(くにざむらい)しつたふう 00017480M19で、ヲヽサ。せん(十九オ)がくじも、めざとひほうつだ 00017490¥P54 00017500¥N25¥J 00017510¥X梵論 00017520L3/虚無僧(こむそう)、ある門に立て尺八をふく。内から、とふれ。◇こむそう◇ 00017530L4しからばごめんと、づつと、しきゐをまたぎこむ。◇ていしゆ◇ 00017540L5これさ。とふれといふのに△◇こむそう◇しからばごめんと、つ 00017550L6ちげたのまゝにて、かつてへあかる。◇ていしゆ◇はてさて、 00017560L7(十九ウ)とふらつしやれ△◇こむそう◇しからば御めんと、座し 00017570L8きへ通る。◇ていしゆ◇こいつハきちがひがとふりやアかれ+ 00017580L9+と、大おんにていへハ、◇こむそう◇しからばごめん+ 00017590L10+と、うら口から出てゆく(二十オ) 00017600¥P55 00017610¥U噺本大系△第十五巻 00017620¥T@璃寛|芝翫@/花競二巻噺(はなくらべにかんばなし)〔扉〕 00017630¥G 00017640¥Y 00017650L16文化十一年二月刊 00017660L17一九老人・谷十丸輯 00017670L18菅松峰画 00017680L19大坂△加賀屋弥助等板 00017690L20半紙本二巻二冊 00017700¥Y 00017710M3○浪華△@一九老人|谷△十九@輯 00017720M5○@璃寛|芝翫@花競二巻噺 00017730M7○菅松峰画 00017740M11(見返扉) 00017750¥Y 00017760M12浪華津に咲やこの花とよめる歌右衛門は、此みちの親玉な 00017770M13り。狂言の意気に心をつくしへ、とんたしうちをはねにし 00017780M14て、彼一九の梅ほしおやちか粋はなしのたね残さんと、一 00017790M15巻となし、今をはるへの作や、長き日の寐ふりさましとな 00017800M16らんかし 00017810M18△△梅のきのえ鼻△△△△△△△△△木辺某 00017820M19△△△くん+する戌の春△△△△△しるすG△(オ) 00017830¥P56 00017840¥G 00017850G1△△△/謎(なぞ) 00017860G2/三ケ村(さんがむら)の/上下(かミしも)をとつて、たうえ/哥(うた)のうへからうへもなきも 00017870G3のと、ゆすつたいしやうの/上着(うハぎ)はまつかい、/下着(したぎ)ハうこん 00017880G4△△△△△△△△△△△△中村哥右衛門ヒイキ△(ウ) 00017890¥T1/花競芝翫(はなくらへしくわん)はなし△△△△△△△△△△梅の巻 00017900¥N1¥J 00017910¥X/芝翫茶染(しくわんちやぞめ)の/話(ばなし) 00017920M5/長町(なかまち)の/南(ミなミ)に、哥右衛門/贔屓(ひいき)の/左官(さくわん)あり。/紺(こう)やより/芝翫茶(しくわんちや) 00017930M6/染来(そめきた)りしを見て、コリヤ/丁吉(ちやうきち)。此/染(そめ)ものを、九丁目の/紺屋(こうや) 00017940M7へ/持(もつ)て/往(い)て、是ハ/芝翫茶(しくわんちや)じや厶りません。是ハにぶ/色(いろ)て 00017950M8厶り升。是てハ/気(き)に入りません。これてなりや、/銭(せに)五百 00017960M9(一オ)(一ウ挿絵)文お/呉(く)れ被成と/紺屋(こうや)へ/持(もつ)ていけ△S丁吉ハ 00017970M10イ、/畏(かしこま)りましたと、/染(そめ)もの/持(もつ)てかけ出す。S内ぎ申、染も 00017980M11のが何ンといたしました△Sアリヤ/芝翫茶(しくわんちや)じや/無(な)イ。/淀= 00017990M12屋壁(よと=やかべ)ニ/似(に)た弐ぶいろじや。そこで持して/遣(や)つた。四貫/色(いろ)を 00018000M13/弐歩(にぶ)て/了簡(りやうけん)すりや、マア弐歩を三貫五百とミて、マア五百 00018010M14たらぬと/咄(はな)し/最中(さいちう)、S丁吉/旦那様(たんなさん)。/紺屋(こうや)へ持つて/参(さん)じまし 00018020M15たりや、/何(なに)ともいはずに、/一昨日(おとゝい)こい(二オ)+といふて 00018030M16/戻(もど)しました△Sハテ、/合点(かてん)のいかん。紺屋の/明後(あさつて(ママ))ハ聞へた 00018040M17が、/一昨日(おとゝい)/来(こ)いとハ。マア/誰(たれ)に/渡(わた)した△Sハイ。誰しや/知(し) 00018050M18らんが、/縮伴(しゆぱん|(ママ))/一枚(いちまい)て/乞喰(こじき)のよふな/人(ひと)でムりました△Sハヽ 00018060M19ア、ソリヤおとゝい来いといふはづじや。/蜘(くも)でかなあろぞ 00018070¥P57 00018080¥N2¥J 00018090¥X/芝翫(しくわん)/狂言(けうげん)/定(さだめ)はなし(二ウ) 00018100L3/関東(くわんとう)にて/殊(こと)の/外(ほか)/御贔屓(ごひいき)の/御(お)やしきゆへ、/哥(うた)右衛門、/当地(たうち) 00018110L4/着(ちやく)早&/御礼(おれい)に/上(あが)り、/内玄関(ないけんくわん)より/案内(あいない(ママ))して、哥右衛門御礼 00018120L5に/参上(さんせう)仕候/由(よし)、申いれける。/折(をり)ふし/御留主居(おるすゐ)様、/御客来(おきやくらい) 00018130L6にて大ニ御/悦(よろこ)びなされ、くるしからず。/是(これ)へ+/罷(まか)り/通(とほ)レ 00018140L7と/有(あ)る。久+ニて/御目見(おんめミ)へ。S旦那ヤレ+/珍(めづ)らしい。 00018150L8まづ/無事(ぶし)て/目出度(めてたい)。久しぶりた。/觴(さかつき)さそふ△Sハテ、何ン 00018160L9ぞ/肴(さかな)(三オ)を。ヤ、/是(これ)ハ/身(ミ)どもが大切の/肴(さかな)だから、外のも 00018170¥G(一ウ) 00018180M1のニハ/決(けつ)してやらねヱけど、/贔屓(ひいき)の/芝翫(しくわん)だ。たつた七ツは 00018190M2ちやネヱけど、一ツくりやうと、はさんて/下(くだ)さる。S哥右 00018200M3衛門/手(て)に/受(うけ)ていたゞいてよく見れバ、/手足(てあし)があり、/何(なに)じや 00018210M4いやらしい/塩漬(ひしこ)ゆへ、御旦那/様(さま)。/是(これ)ハ何ンて厶り升。S旦 00018220M5那それハ/鼠(ねつミ)の/赤子(あかこ)だ。大切なヱ/肴(さかな)だ。身ともが/贔屓(ひいき)ゆへ、 00018230M6はづんで一ツ/呉(くれ)た。マア/喰(くふ)て見(三ウ)ヨ。イヽ/物(もの)だ△S哥 00018240M7右衛門大きに/繊(こま(ママ))り、/思案(しあん)して/懐中(くわいちう)の/紙(かミ)に/包(つゝ)む。S旦那なぜ 00018250M8/喰(くハ)ん△S哥是ハ/結構(けつかう)な/薬(くすり)に/成(なり)ます。第一、/小児(せうに)かん、かた 00018260M9かい/或(あるひ)ハ/驚風抔(けうふうなど)ニハ/妙(めう)じやげに厶り升。是をむさ+/喰(たべ)る 00018270M10でも厶りません。/戴(いたゞい)てかへり、/小児(こども)の/土産(ミやけ)にいたします△ 00018280M11S旦那/其方(そのほう)ハ/子供(こども)がすきだと聞た。/勿論(もちろん)/京風(きやうふう)も/江戸(えど)風ニ 00018290M12もイヽといへバ、ハテ、/何(なに)と/仕用(しよう)。大切な/肴(さかな)なれど、今一 00018300M13ツ(四オ)/呉(くれ)る。そこで/喰(く)へ△S哥右衛門又/手(て)に/受(うけ)て、/扨(さて)此 00018310M14/御肴(おさかな)ニて/不思儀(ふしぎ)の/御咄(おはな)しが厶り升。/今度(こんど)/久(ひさ)+ニて上りま 00018320M15して、大坂/初舞台(はつぶたい)の/狂言(けうげん)、いろ+と/工夫(くふう)いたしおります。 00018330M16/然(しか)るところ、/今日(こんにち)/子(ね)の日に/鼠(ねづミ)をいたゞきます。/鼠(ねずミ)ハチウの 00018340M17/声(こゑ)なれバ、此度の/狂言(けうげん)/忠臣蔵(ちうしんぐら)に/定(さだ)めましたと/戴(いたゞ)くを、S御 00018350M18留主居コリヤ/其肴(そのさかな)/喰(く)ふな。/忠臣蔵(ちうしんくら)なら、かならず/当(あた)るぞ 00018360M19(四ウ)(五オ挿絵) 00018370¥P58 00018380¥G(五オ) 00018390¥N3¥J 00018400¥X/伊勢(いせ)/代参(たいさん)のはなし 00018410L14/芝翫(しくわん)かね+/弟子(でし)にいふは、/猶(なを)/国所(くにところ)、/時之(ときの)/風俗(ふうぞく)ニ/可応(わうすべき)なり 00018420L15と、/商売往来(せうばいわうらい)ニあるが、/商人衆(あきうとしゆ)すら/其通(そのとほ)り。/況(いはん)や/芸者(けいしや)にお 00018430L16いてをや。三ケのつハいふに/及(およハ)ず、/津&浦&(つゝうら+)の物/言(い)ひ、/姿= 00018440L17風俗(なり=ふり)に/気(き)を/付(つけ)るが/要用(やう+)なりとの/咄(はな)し。/今年(ことし)/伊勢(いせ)/代参(だいさん)ニ/誰(た)レ 00018450L18かれといふ内、中村哥七/参(まい)りたきよしなれバ、/幸(さいわ)いの事と 00018460L19(五ウ)て、吉日をゑらミ旅立し、まゐりハあを越にて、/天= 00018470L20気(てん=き)まんも/能(よ)く、/日(ひ)ならずして/宮川(ミやかは)を/渡(わた)りける。この/辺(へん)に卅 00018480M1四五ばかり、此方まゐるは/下向(けかう)ニ/取付(とりつき)、/勧進(くわんじん)を乞ふ/比丘尼(ひくに) 00018490M2二人あり。一人は小もん/才(さい)もあるゆへ、/才覚(さいかく)の/寿(じゆ)りんと/名= 00018500M3附(な=つけ)、一人ハ物の/終(をハ)りを/知(し)るとて、/織留(をりどめ)めの/清春(せいしゆん)と異/名(めう)/付(つい)て 00018510M4/通(とほ)し/馬(うま)、/駕篭(かこ)かきまて、/見知(ミし)らぬハなし。/哥(うた)もうたハす、 00018520M5/立寄(たちよつ)て、/是(これ)/伊(い)よの/松山(まつやま)の(六オ)衆様。これはりまの/書写(しよしや)の 00018530M6/御出家(ごしゆつけ)さま、これ/備前(ひせん)/岡山(をかやま)の女中さまと、人を/見立(ミたて)て/国= 00018540M7所(くに=ところ)をいふに、/違(ちが)ふ/事(こと)、/千度(せんど)に一/度(と)なり。中村/飛鶴(ひくはく)、/此所(このところ)へ通 00018550M8りかゝるを、コレ、/年号(ねんかう)の/文退(ふんのけ)さまと/取(と)り付。/飛鶴(ひくわく)ふしぎ 00018560M9ゆへ/立留(たちとま)り、/此方(こなた)の/国所(くにところ)もいはず、/年号(ねんかう)の/文(ふん)のきとハ。フ 00018570M10ウ、扨は/通用(つうやう)のならぬ/露銀(こたま)といふ/悪口(わるくち)か。S/何(なん)のマア、あ 00018580M11なた/方(かた)ハ/繁花(はんくわ)の中のはん/華(くわ)、/粋(すい)の/中(なか)の/粋(すゐ)さん。(六ウ)年号 00018590M12の文/退(のき)とハ、文化の文を取つて人/編((ママ))に/匕(さし)かげんして、人の 00018600M13/眼(め)を/楽(たの)しませ、七/変化(へんけ)まてなさるゝおかたといふ/事(こと)で厶り 00018610M14ますといふに、/飛鶴(ひくわく)ハひつくりし、かね+/師匠(しせう)の/咄(はな)しに 00018620M15/聞(きい)たハ/此所(こゝ)なりと、二人の/比丘尼(ひくに)に/南鐐(なんりやう)壱片とらせ、/其= 00018630M16方(その=ほう)たちの/妙術(めうしゆつ)を/聞(きゝ)たいと、/茶見世(ちやミせ)の/内(うち)へ/這入(はいり)、一ツ+/様= 00018640M17子(やう=す)を/尋(たづね)る/折(をり)ふし、/京(けう)女と見えて廿二三の/風俗(ふうぞく)/人(ひと)の/目立(めだ)つほ 00018650M18どなり。(七オ)通し/駕篭(かこ)ならへて、/男盛(をとこさか)りの/若(わか)いもの、/乗(のり) 00018660M19ちらして通りける。二人の/比丘尼(ひくに)はしりつき、是/都(ミやこ)の/大尽(たいじん) 00018670M20さま。/此春中(このはるちう)にあんな/御姿(おすかた)は見ませんといへば、此/男(をとこ)、/目(め) 00018680¥P59 00018690L1を/細(ほそ)うして、/璃寛(りくわん)の心/持(もち)にて/世界(せかい)も/迫(せば)イなどいひさま、/白= 00018700L2銀(こ=だま)/壱粒(ひとつふ)づゝとらせて/通(とを)りける。Sあれハ/何(なに)ものと/問(と)ひけれ 00018710L3ば、あれハ其侭、/祗園(きをん)/八坂(やさか)のものと見へて、人の/娘(むすめ)なり。 00018720L4今の/若(わか)イものが/参宮(さんぐう)をかこ付いたづら(七ウ)/参(まゐ)りといふ所 00018730L5へ、卅六七の/嚊(かゝ)が此/茶屋(ちやや)までやう+あゆミて/腰(こし)かけて、 00018740L6/先(さき)へ/通(とを)りし/駕篭(かご)の/事(こと)を/尋(たつね)て/人(ひと)ののせぬに、アノ/罸(はち)あたりめ 00018750L7どもが、/大事(たいじ)の/神参(かミまゐり)に/宿(やど)+て/夜(よ)の/明(あく)るまて/物語(ものがたり)をしをつ 00018760L8て、/男(をとこ)のある/女房(にようぼう)をぬけまゐりをすゝめ、/親(をや)かたへ/聞(きこ)えた 00018770L9らば、/追出(おひいだ)さるゝハ/知(し)レた/事(こと)。ひよつと/雇(やと)はれて/足(あし)が/痛(いたむ)に 00018780¥G(八ウ) 00018790M1/三宝荒神(さんぼうこうじん)に/乗(の)れともいひをらず、/己(おの)レらはかり/先(さき)へうせく 00018800M2さつて(八オ)(八ウ挿絵)と、にくげにいふてはしりける。又 00018810M3三人/連(つれ)かひとり+/風呂敷(ふろしき)づゝミを/肩(かた)にかけて/通(とを)るを、/一= 00018820M4銭(いつ=せん)/下(くだ)されといへば、/下向(けかう)に取らしよふといふ。此/海道(かいだう)へは 00018830M5/帰(かへ)らぬ/衆(しゆう)といふ。それハ/何(なに)と/見立(ミたて)ていふぞ。そな/達(たち)ハ/次手(ついで) 00018840M6に/参宮(さんぐう)して、/江戸(えと)かせぎに行かしやる/職人衆(しよくにんしゆ)じやといふに、 00018850M7三人/一度(いちど)に/立留(たちとま)り、/是(これ)は/子細(しさゐ)を聞たしといふ。/関(せき)からの/出= 00018860M8来心(て=きこゝろ)の参りなれバこそ、/先(まつ)下の/帯(おひ)が/古(ふる)し、(九オ)そのうへ 00018870M9三人ながら/本海道(ほんかいだう)の/道中扇子(とうちうせんす)もつて/御坐(こざ)るハ、江戸/初(はつ)くだ 00018880M10りといふ。/皆&(ミな+)/惘(あき)れはて、/跡(あと)をも見ずしてとほりける。/最= 00018890M11前(さい=せん)より/向(むか)ふの/茶店(ちやミせ)で/始終(しじう)を/聞(きゝ)たる人、此所にきたり、いか 00018900M12になれたるとて、あまり/名誉(めいよ)なり。われらは/何国(いづく)のものと 00018910M13おもふぞ。なにをして/世(よ)をわたるぞ。いふて見よといへば、 00018920M14こなたは/唐(たう)しんに(九ウ)見せても、見る/事(こと)/長崎(なかさき)の人といふ。 00018930M15此/男(をとこ)びつくりして、/何(なに)として/目印(めじるし)ありや、/物(もの)いひ聞てかと 00018940M16いへば、お/言葉(ことバ)ハ/其侭(そのまゝ)其/催((ママ))、/出雲(いづも)の/言葉(ことバ)なれど、/内衆(うちしゆ)二人 00018950M17ながら長崎なり。こなたの/年程(としほど)五十五六にも見へて/肌着(はだき)に 00018960M18/白綸(しるじゆす)にひろふどのゑりをかけ、/唐(とう)さらさの/内着(うちぎ)、/金拵(きんこしらへ) 00018970M19の/脇(わき)さし、/我(わが)まゝに見ゆる所、長崎でないかといへバ、い 00018980M20よ+/興(けう)(十オ)さめて、/我(われ)若年の時、/雲州(うんしう)へ/養子(やうし)に行しが、 00018990M20よ+/興(けう)(十オ)さめて、/我(われ)若年の時、/雲州(うんしう)へ/養子(やうし)に行しが、 00019000¥P60 00019010¥G(十二ウ・十三オ) 00019020M1/帰(かへ)る/首尾(しゆび)あつて/此仕合(このしあハせ)。さりとてハ+、/扨(さて)/商売(せうばい)を/迚(とて)もの 00019030M2事にいへといふ。それハいひかねます/子細(しさゐ)/有(あ)りといふ。/是= 00019040M3非(ぜ=ひ)いへといふに、/傾城町(けいせいまち)の人でハ/御座(ござ)らぬか。先ほとより 00019050M4こなたの/目遣(めづかひ)を見るに、十五より内の/美女(びじよ)、しミ+と/恋(こひ) 00019060M5にハあらずといふ。此人、/様子(やうす)を/聞(きゝ)、/肝(きも)をつぶし、さても 00019070M6(十ウ)+はづかしき/見立(ミたて)かな。/天照大神(ていせうたいじん)何&/誓言(せいもん)、/我(われ)/女= 00019080M7郎屋(じよう=ろや)にあらず。/能(よ)き/娘(むすめ)の子に/目(め)の付事ハ、/我(われ)只/一人(ひと)リ娘を 00019090M8もちけるに、いかなる/前世(ぜんぜ)の/因果(いんぐわ)にや、/当歳(たうねん)十三に成ける 00019100M9が、いまに/足(あし)/立(たゝ)ずして、/然(しか)も/亀腹(かめバら)とか申て/見苦(ミぐる)しく、/其上(そのうへ) 00019110M10/両眼(りやうがん)見へねハ、/縁(えん)に付くべき/沙汰(さた)/絶(た)へて、/明暮(あけくれ)是を/歎(なけ)き、 00019120M11/同(おな)じ/年(とし)ほどの娘を見てハ、/我子(わがこ)も(十一オ)あれならバと/思(おも) 00019130M12ふからなりと、/泪(なミだ)をこぼして/語(かた)られ、/銭(ぜに)百文つゝ/取(と)らせ/通(とほ) 00019140M13りける。其/跡(あと)へ三人/連(づ)レ、/揃(そろ)への/出立(でたち)、ゑらゆすりはどこ 00019150M14/衆(しゆ)といふ。あれハ京からの/参(まゐ)り。ミな/歴&(れき+)に見へても、そ 00019160M15れハ+/始末(しまつ)な/参宮(さんぐう)なり。/何程(なにほど)口/乞(こひ)しても、アノ/仲間(なかま)から 00019170M16一文よりハ/貰(も)らはれぬといふ。/案(あん)のごとく/跡(あと)から/銭(せに)はらひ 00019180M17の/男(をとこ)、/貫(くわん)ざしよりぬきて、二人が中へ(十一ウ)一/銭(せん)とらせ、 00019190M18其侭/腰(こし)より/矢立(やたて)の/筆(ふで)/染(そめ)て、/跡(あと)より七八丁も/付(つい)て、さま+ 00019200M19口を/叩(たゝ)き、/引(ひ)かれぬ/首尾(しゆび)となつて、/無拠(よんところなく)/鍋(なべ)せん一/銭(せん)とら 00019210M20せましたと、/小遣帳(こつかひてう)に/付(つけ)ける。是ハ/気(き)のつまるせんさくな 00019220¥P61 00019230L1り。又/角前髪(すミまへがミ)のとび上り/連(づ)レ、四五人/揃(そろ)へ/湯(ゆ)かたに/気(き)を/尽(つく) 00019240L2し、/道筋(ミちすぢ)を/我(わが)ものにして、あれハどこ/者(もの)ぞ。/大津(おゝつ)の/浜辺(はまべ)の 00019250L3/者(もの)どもといひもあへず、(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)/勧進(くわんしん)を/乞(こひ) 00019260L4けるに、/無理(むり)に/所望(しよもう)して/哥(うた)をうたハせ、此あたりの/名所(めいしよ)を 00019270L5/語(かた)らせすまして、/比丘尼(びくに)もおいらか顔見知つておいて、/石= 00019280L6山(いし=やま)へまいりやつたら/寄(よ)りやといゝ/捨(すて)て、/独(ひと)り+/迯(にけ)て/行(ゆく)。 00019290L7コレ申+と/呼(よひ)かへせと、/御縁(ごえん)あらハ/重(かさね)てと、はや其人/影(かけ) 00019300L8はなし。/比丘尼(ひくに)/大笑(おゝわら)ひして、/鬢鏡(ひんかゝミ)おとした/程(ほと)に/呼(よひ)かへせは、 00019310L9/勧進(くわんじん)一文にかへて行しハ大神宮/即座(そくさ)に(十三ウ)/罪(はち)を/当(あて)させ 00019320L10給ふ、/彼(かれ)レ/等(ら)/誠(まこと)の/運天連鑑(うんてれかん)の/道中行妾(とうちういくせう)なりと、/即興(そくせき)の/口合(くちあひ)。 00019330L11飛鶴も/始終(しぢう)/興(けう)に/入(い)り、/扨(さて)も+/浮世(うきよ)ハ/芝(しバ)居なりと/肝心(かんしん)して、 00019340L12/参詣(さんけい)しられける 00019350¥N4¥J 00019360¥X/文字(もじ)/間違(まちが)いの/話(はなし) 00019370L15/哥(うた)右衛門のうたの/字(じ)ハ、どふやら/書(かく)の。/哥(うた)右衛門のうたの 00019380L16/字(じ)ハ、/年寄(としより)のしよりの/字(じ)じや。しより(十四オ)の/字(じ)ハどふ 00019390L17書の。しよりの字ハ/壱歩(いちぶ)のちぶの字しや。壱歩のちふの字 00019400L18ハ、とふ書の。Sそばから二人なから、/性(せう)もない/事(こと)をいふ。 00019410L19哥右衛門ハ/哥切(さんきり)には、/ゝ(ちよいと)でも出にやならぬ字じや 00019420¥N5¥J 00019430¥X/役者(やくしや)/浄(ぜう)るり/話(はなし) 00019440M3/追善(つひぜん)/浄(せう)るり/会(くわい)の/相談(そうたん)。/華(はな)ハ/立花(りつくわ)、/供物(くもつ)(十四ウ)虎屋/饅頭(まんぢう)五 00019450M4百ニ/仕用(しよふ)といふ。イヤ、/多人数(たにんじゆ)の事なれバ、猿屋まんぢう 00019460M5千五百ニ/仕用(しよふ)といふ。イヤ、そんな/野卑(やひ)な物ハ出されんと 00019470M6いふ。子供にハ/多(おほ)イがよいといふ。マア/芝翫(しくわん)さんに/相談(さうだん)し 00019480M7たが能イといふ。哥右衛門聞て、取りハ/誰(たれ)がかたる。S取 00019490M8りハ七ツ目のかけ合て厶り升△Sマテヨ。/猿(さる)屋と虎屋ハ丁 00019500M9度七ツ目に当る。寅と申とハ七ツ目しや。といふて、やは 00019510M10り/分(わか)らん。/斯(かう)(十五オ)しよふ。取りを/三曲(さんきよく)にして、/饅頭(まんぢう)も 00019520M11あこやか/能(よ)かろ 00019530¥N6¥J 00019540¥X/思(おも)ひちがひのはなし 00019550M14アノ嵐吉は/岡嶋屋(をかじまや)といふそうなが、かゞ屋の/家(いへ)名ハ/何(な)ンと 00019560M15いふぞいのふ。Sハア、哥右衛門ハ/大(おほ)かた、中村屋じやあ 00019570M16ろ(十五ウ) 00019580¥N7¥J 00019590¥X初午 00019600M19御侍S/今(こ)年の初午のやうに、からしの/利(きい)た事はネヱ。先御 00019610M20主人/御死去(ごしきよ)の後、ケ様に/涙(なミだ)のこぼるゝ事はネヱ△奴Sソリ 00019620¥P62 00019630¥G(次十五ウ・十六オ) 00019640M1ヤお旦那の涙でハ/御坐(こさ)ナヱ。/商人(あきんど)どものなミだでゴザイ△ 00019650M2Sイヤ、そふばかりでもネヱ。哥右衛門が/病気(びやうき)がかなしい 00019660M3(次十五オ)(次十五ウ・十六オ挿絵) 00019670¥N8¥J 00019680¥X/皆(ミな)よつてちよつと/生化(なまばけ) 00019690M6今度七化の狂言、江戸表にも/大評判(おゝひやうはん)なりける。近年江戸 00019700M7本の中の/幽霊(ゆうれい)、/蟒(うハばめ)、/蛇(くちなハ)、或は/骸骨(かいこつ)・/髑髏(しやれかうべ)・/山賊(さんぞく)・/魂火(ひのたま)・/鬼= 00019710M8婆(おに=ばゝ)の類寄あつまり、何れも何ンとおもふぞ。大坂て/芝翫(しくわん)七 00019720M9化と評判。われ+はいまだ/訓蒙図彙(きんもうつい)・三才図絵の御世話 00019730M10に預からす。勿論金と化物とて(十六ウ)七/宝(ほう)/第(だい)一の/金(かね)と/肩(かた) 00019740M11をならべ、/京伝(けうでん)・/馬琴(はきん)をはじめ、其外数多の作者の/道具(とうぐ)に 00019750M12つかハれ、/北斎(ほくさい)・/豊国(とよくに)を初め/諸画工(しよくわかう)の/筆(ふで)さきに/懸(かゝ)り、書林 00019760M13の$印になりしハ、我+が手柄ならずや。見/習(なら)ふ 00019770M14てちよつと当り/振舞(ふるまゐ)ハどふあろふ。いかさま、是は尤の思 00019780M15ひ立。一会/催(もよふ)さふと、/早速(さつそく)/相談(さうたん)/極(きハま)り、/扨(さて)/寄(より)合の場所は。サ 00019790M16ア金と化ケものと言へは、/金原(こかねハら)が/能(よ)かろふ。なまりを(十 00019800M17七オ)/遣(つか)ふ事なかれと、/一統(いつとう)相談極り、/定日(せうしつ)をきハめ、暮 00019810M18早+よりおひ+寄集り、呑やら舞やら、/雄(を)ゆふ/霊(れい)の/恨(うら) 00019820M19めしや、/雌(め)ゆふ/霊(れい)の申+も古めかしく、犬・/狼(おゝかめ)か/吠(ほゆ)る、 00019830¥P63 00019840L1/蟒(うハばめ)・/蛇(くちなハ)ハだまつている、/骸骨(かいこつ)が/坐頭(ざたう)の/所作(しよさ)、/幽霊(ゆうれい)が/越後= 00019850L2獅子(ゑちご=じゝ)、/山賊(さんぞく)か/鐘馗(せうき(ママ))のこなし、/蟒(うはばミ)が太夫の身ふりにゑら/笑(わら)ひ 00019860L3を見て、/幽霊(ゆふれい)が/斯(か)ふも/有(あろ)ふか。S蟒の太夫はゆるせ/闇(やミ)の/梅(うめ) 00019870L4と、口合の/発句(ほつく)にどつとわらひ、(十七ウ)我も+と/芸尽(げいづく) 00019880L5し、舞やら弾やら謡やら、一寸さきハ白昼と、酒酩酊にお 00019890L6よびける。時に幽霊のいふやう、/最(も)早東の空のもやう、明 00019900L7方も近からむ。いづれも足本のくらいうちに席を開らきま 00019910L8せふといふ所へ、/可愛(かはい)らしい声て、おまへがたハ聞えませ 00019920L9ん。今程の御趣向、/何(なに)ゆへ/私(わた)しに知らして下さんせんと、 00019930L10/泣(なき)声の恨ミごと。皆+びつくりして、仲間うちハ残(十 00019940L11八オ)らす出席じやが、マア/誰(たれ)さんじやとすかして見て、 00019950L12何しや、ちいさい鱗かたで、薮から/棒(ほう)のやうに。おまへは 00019960L13誰しや。ハイ。私しや京伝の▲@読書丸△|たはこ入@の口上 00019970¥N9¥J 00019980¥X馬かへ直ざね話 00019990L16嶋之内八幡すじハ大道も/狭(せま)く、殊に往来多し。畳屋町辺の 00020000L17米屋の門に、馬二(十八ウ)三/疋(ひき)つなぎ有る/故(ゆへ)、/往来(わうらい)とほり 00020010L18かね、/軒下(のきした)に/見合(ミあハ)している/中(うち)に、/年比(としころ)三十ばかりの女中、 00020020L19彼の馬と馬との間をツイと通るゆへ、見合していた/往来(わうらい)も 00020030L20通りかけるを、S米屋男アヽこれ+、めつそふな。馬の 00020040M1うしろ、/通(とを)らしやんな△S往来今の女さへとをつた△S米 00020050M2やアリヤ通るはづしや△S往来女中ハどふして通る△S米 00020060M3やアノ女中の御亭主ハ、/跡足(あとあし)/勤(つとめ)じや(十九オ) 00020070¥N10¥J 00020080¥X/菅原(すかハら)見て肝じんのはなし 00020090M6遠国の客、菅原を見て/宿(やど)へ/戻(もど)り、/扨(さても)+哥右衛門ハけしか 00020100M7らねヱ上手だ。/序切(じよき)りの/伝授場(てんじゆバ)、二段目、すくね太郎、四 00020110M8段目松王、イヤモ、とんだ名人だ。アノ又/薪水(しんすい)とやら/腎(しん)水 00020120M9とやらが天拝ざん/雷(かミなり)になる所、/一向(いつかう)おそろしくて、/誠(まこと)に/太= 00020130M10宰府(だ=ざいふ)て/雲(くも)へ上らせらるゝ/様(やう)ふだ△S宿屋男太宰府て雷ハ上 00020140M11つたはづ(十九ウ)(二十オ挿絵)しや。ださい/府(ふ)から辰を上ま 00020150M12す。/然(しか)しソリヤ、見る事ハなりません 00020160¥N11¥J 00020170¥X/氏神(うぢがミ)のはなし 00020180M15道頓堀は/何所(どこ)が/氏神(うぢがミ)て厶り升。S東は高津の/氏子(うぢこ)、太左衛 00020190M16門/橋(ばし)/辺(へん)より西ハ、/難波(なんバ)の氏子て厶り升△Sハテ、それで/芝= 00020200M17翫(し=くわん)ハぎをん/守(まも)りしや。どふても/祇園(きをん)かして/桟敷(さしき)/買(かふ)と(二十ウ) 00020210M18いつても香せんか出る 00020220¥P64 00020230¥G(二十オ) 00020240¥N12¥J 00020250¥X/性(せう)をかへるはなし 00020260L14/勝尾寺(かつをじ)から/能勢(のせ)へ/行(ゆく)/道(ミち)に、ちよろ+/流(なかれ)の川に、/山(やま)のいも 00020270L15が/半分(はんぶん)/鰻(うなぎ)になりかゝつてある。/昔(むかし)からやまの芋が鰻に成と 00020280L16いふ/事(こと)は聞ていれど、見るのは/初(はじ)めてじや。こいつ/取(と)つて 00020290L17いんで、/見(ミ)せ/物(もの)にして、ゑらもうけしやと(廿一オ)おもへ 00020300L18ど、/入(い)レものかないゆへ、/其所(そこ)に/目印(めじるし)を付て/置(おい)て、/近在(きんざい)て 00020310L19/桶(おけ)かつて/来(き)たら、もふ/鰻(うなぎ)/変(へん)したか、とんとおらなんた。/扨(さて) 00020320L20+をしい/事(こと)しや。Sソリヤ/啌(うそ)じや。しやら+した人を 00020330M1おたてるやふな△S/何(なん)の啌をいふものじや。/然(しか)し取つて/戻(もと) 00020340M2らなんだが、あやまりしや。扨+おしい事したといふを、 00020350M3/芝翫(しくわん)聞て、それハ/啌(うそ)ともいはれぬ。おれが江戸にいた時、 00020360M4/北斎(ほくさい)(廿一オ)/先生(せんせい)の/所(ところ)へ/往(い)たら、/机(つくへ)のうへに、/帯(おび)か/半分(はんぶん)、 00020370M5/蝿(くちなは(ママ))になつてあつた 00020380¥N13¥J 00020390¥Xかの/字(じ)のはなし 00020400M8/蟹嶋(かにしま)の/貸(かし)さしきに、/紙屋(かミや)の/旦那(たんな)の/妾宅(せうたく)に、/買物(かいもの)かたしたり、 00020410M9/勝手(かつて)/賄(まかない)していた。フト/上(か)ミの/女(をなご)とかたらふて、/笠屋町(かさやまち)の 00020420M10/河作(かはさく)のかしやかつて、/帋(かミ)くず/買(か)ふたり、/川魚(かハうを)/売(うつ)たりする 00020430M11(廿二オ)うち、フト/角(かと)の/芝居(しばい)の/門口(かとぐち)かつて、/川魚(かハうを)のかたか 00020440M12へて、/焼(やき)いもやと/出(て)かけ、/金物打(かなものうち)の/火鉢(ひはち)をかんはんにして、 00020450M13サア/買(かい)にくる+/買人(かいて)かつかへる、モウ/川(かハ)たけでの/皃役(かほやく)と 00020460M14いふ。/扨(さて)/加賀(かゞ)やかゑら/贔屓(ひいき)。又しても加賀や+といふを、 00020470M15/彼芝居(かのしはい)の/勘定場(かんじやうハ)から/聞(きゝ)て、あのやふに、かゞや+いふ 00020480M16ものに/門(かど)はかされぬがといふ。いかさま、/門(かと)はかされん。 00020490M17/勝手(かつて)にたち(廿二ウ)/退(のけ)といふ。/彼(かの)いもやも/肝積(かんしやく)じや。モウ 00020500M18/嚊(かゝ)/連(つれ)て/西国(さゐこく)に/出(で)るか、/譬(たと)へかつゑて/死(しん)でも、/角(かど)の/芝居(しばい)の/門(かと) 00020510M19へは出んといふを、かゞや/聞(きい)て、そんなかんへき、かたい 00020520M20じはいはずと、かんにんして/貰(もろ)ふて、角の門にいたが/能(よ)イ 00020530¥P65 00020540L1に、○といふて、わしゆへかんなんするといはれてハ、/此(この) 00020550L2/加賀(かゞ)やの/顔(かほ)が/立(たゝ)ん。マア/此方(こち)へ/来(き)て、/勝手(かつて)/賄(まかなひ)したり、用 00020560L3も有ふと、かゞやの/世話(せわ)で、かれこれしているが、/其替(そのかわ)り 00020570L4(廿三オ)/烏(からす)の/啼(なか)ぬ日ハ/有(あ)れど、加賀やに付て居/事(こと)は/無(な)イ。 00020580L5S客も/負(まけ)ぬ/気(き)て、カア++と/笑(わろ)ふた 00020590¥N14¥J 00020600¥X/清(せい)げん/所作(しよさ)はなし 00020610L8/去年(きよねん)/極月(ごくげつ)十六日△△/御葬式(ごさうしき)にて、 00020620L9/御所(ごしよ)の/年越(としこし)、二月十八日といふ/評判(ひやうバん)。もふ桜もよかろし、 00020630¥G(廿四オ) 00020640M1/花(はな)かけての京のぼり。どふじや、/上京(ぜうけう)(廿三ウ)(廿四オ挿絵) 00020650M2なさらんか。Sサア、わしもつゐに/御所(ごしよ)のとし/越(こし)/拝見(はいけん)せん。 00020660M3どふぞ/上(のほ)りたいものじや△Sサアまた/能(よ)イ/事(こと)がある。/矢瀬(やせ) 00020670M4の/百性(ひやくせう)が/例年(れいねん)/鬼(おに)になるが、/其鬼(そのおに)に成る百性ハ、御/扶持(ふち)/頂= 00020680M5戴(ちやう=だい)しているげな。その鬼も/見度(ミたい)ものじや△Sイヤ+、御 00020690M6所の/年越(としこし)/拝見(はいけん)、十八日なら/決(けつし)てゆかん/事(こと)△Sソリヤどふし 00020700M7た事て、のぼられん△Sハテ、十八日ならおそれあり。鬼 00020710M8も十八(廿四ウ) 00020720¥N15¥J 00020730¥X花の兄といふ話 00020740M11/梅(うめ)ハ/花(はな)の/兄(あに)といふハ、どふしたものじやいな。Sサア、/南= 00020750M12枝(なん=し)はじめてといふ/事(こと)じやといナア△Sそんなら、かゞやハ 00020760M13/惣領(さうりやう)かへ△Sイヽヤ、あれは/南(ミなみ)の/陽気(やうき)じやはへ 00020770¥N16¥J 00020780¥X/徳本(とくほん)/上人(せうにん)の/御弟子(おんでし)の/話(はなし)(廿五オ) 00020790M16江戸からも/西国(さいこく)/順礼(じゆんれい)に/出(で)ますかの。Sイヤ、/関東(くわんたう)ハすべて、 00020800M17ちゝぶ/坂東(はんどう)/順礼(しゆんれい)じや△Sハヽアそれで/聞(きこ)えた。ひらかなて 00020810M18工左衛門か/権四(ごんし)に/成(なつ)て、/西国(さいこく)/順礼(しゆんれい)した/彦三(ひこさ)が/重忠(しげたゞ)になつた。 00020820M19ソコテちゝぶ/坂東(ばんだう)じや 00020830¥P66 00020840¥G(廿六オ) 00020850¥N17¥J 00020860¥X二の/替(かハ)り/外題(けだい)の/咄(はな)し 00020870L14/扨(さて)、/中(なか)の/芝居(しはゐ)もはじめハ/何(な)ンの/歟(か)のと/沙汰(さた)(廿五ウ)(廿六オ 00020880L15挿絵)して入もかひなかつたが、/加賀屋(かゞや)の/場(ば)においては申 00020890L16/分(ぶん)なく、/夫故(それゆへ)此ころにてハ/入(いり)も/増(まし)て、/場(バ)もないくらゐの/事(こと)。 00020900L17イヤモ、かゝやさへ/抱(かゝへ)ておけハ、/外題(げだい)のとほり、かねのな 00020910L18る/木(き)じや。/成(なる)ほど、/芝翫(しくわん)さへ/抱(かゝへ)ておけは/気遣(きづか)ひけハない。 00020920L19しかし、あれハかねのなる木でハない。かねの/鳴(な)る木じや。 00020930L20それなれバこそ、/釣鐘(つりかね)ざくらとある。ムヽ、かねの/鳴(な)ル木 00020940M1なら、つりかねさくらと(廿六ウ)/書(かこ)ふより、しゆもくを/書(か) 00020950M2ケハ/能(よ)いに 00020960¥N18¥J 00020970¥X/道成寺(とうせうじ)のはなし 00020980M5/加賀屋(かゝや)の/道成寺(たうぜうじ)、いやはやきついもの。立/役(やく)てあれほどこ 00020990M6なすハ、きつと/手(て)だれのほとが見える。/全体(ぜんたい)/此道成寺(このたうせうじ)ハ、 00021000M7/故慶子(こけいし)はじめて/勤(つとめ)し/所作事(しよさこと)ニて、/其時(そのとき)の/句(く)が、S咲からハ 00021010M8/龍頭(るうづ)へとゞけ山ざくら、といふ句にて、/諸人(しよにん)の(廿七オ)/知(し) 00021020M9る所。/其後(そのゝち)、のしほつとめしときの句が、S鐘の/乳(ち)に/我(われ)も 00021030M10すがるや/児桜(ちござくら)。/蘭耕(らんかう)の/句(く)、/至(いたつ)ておもしろい。加賀屋にも/何(な) 00021040M11ンぞ/句(く)か/有(ある)かな。なんの、/芝翫(しくわん)ハ/道成寺(たうぜうし)ぐらゐ、/何(な)ンの/苦(ぐ) 00021050M12が/有(あ)ロ 00021060¥Y1花競芝翫話終(廿七ウ) 00021070¥P67 00021080¥Y1 00021090L1ある日、一九老人のやつかれか草庵に来り、此李冠丈か草 00021100L2帋に、はしかきしてよとなむ有けるに、あえす一句を儲け 00021110L3しまゝ、序に替るのミ 00021120L4△△△桜より外に見るへき花もなし 00021130L6△△△△△△△△△△△東筵楚堂 00021140L8△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(オ) 00021150¥G 00021160G1△△△/謎(なぞ) 00021170G2/道風(たうふう)の/道(ミち)のく、あとへ/山(やま)/付(つけ)て、 00021180G3△△△たきのうへの、たのき、ちはやのはや、にげて 00021190G4△△△△/風(かぜ)/吹(ふ)く/穴(あな)の/城(しろ)に/篭(こも)れり 00021200G5△△嵐△吉三郎丈(ウ) 00021210¥P68 00021220¥T1/花競璃寛話(はなくらへりくわんはなし)△△△△△△△△△△△△△△△桜の巻 00021230¥N1¥J 00021240¥X/春(はる)に/夏(なつ)のはなし 00021250L5/此方(こち)らハとんと/覚(おぼ)えぬ/事(こと)じや。正月に/彼岸(ひがん)かある/故(ゆへ)、/木(き)の 00021260L6/芽(め)が/出(て)る、/蕨(わらひ)が/出(で)る、さや/豆(まめ)が出る、/竹(たけ)の/子(こ)が正月に/出(で)る 00021270L7わ、けしからん/早(はや)いとしじや。Sそふでもあろ。/蕣(あさかほ)がさい 00021280L8中じや(一オ) 00021290¥G(二オ) 00021300¥N2¥J 00021310¥X/耕(たかへし)のはなし 00021320M3/遠国客(をんごくきやく)、/長町(なかまち)に/旅宿(りよしゆく)し、/明日(あす)ハ/芝居(しばゐ)が/見(ミ)たへものだ。S宿 00021330M4屋/芝居(しばい)ハどれへ/御出(おいで)なされます△Sどれといつてハ/面白(おもしろ)い 00021340M5がいゝ△S中の/芝居(しバゐ)ハ/中村(なかむら)/哥(うた)右衛門、/角(かと)ハ/嵐(あらし)吉三郎。どち 00021350M6らも/面白(おもしろ)い事で厶り升△Sハア、/何(なん)ンても田之介がいゝ 00021360M7S田之介/御贔屓(ごひいき)かな。さ/様(やう)なら(一ウ)(二オ挿絵)/嵐吉(あらきち)と/一= 00021370M8所(いつ=しよ)て/角(かと)の/芝居(しばい)で厶り升。/田(た)之介はお/名染(なじミ)で厶り升/歟(か)△Sイ 00021380M9ヤ、/名(な)じミでもねエが、おらハ/百性(ひやくせう)だから、/荒(あら)き/地(ち)に/田(た)の 00021390M10すけない/わ((ママ))、いやだ 00021400¥N3¥J 00021410¥X/仕打(しうち)上るりばなし 00021420M13/初会(しよくわい)に、おしゆん/伝(でん)兵衛/猿廻(さるまハ)しを、/璃寛(りくわん)ソコ/退(のけ)てやつてこ 00021430M14まそと、/初夜(しよや)/過(すぎ)に/語(かた)りかける。(二ウ)△Sサア/鎗(やり)がくる+ 00021440M15とつ川の、/千本(せんほん)鎗おきくされ、/置(おき)あかれ/引(ひき)すり/出(だ)せ、とい 00021450M16ふ。此をとこ、/大(たい)の/肝(かん)へきもの/故(ゆへ)、/御簾(ミす)/引(ひき)まくり/皃(かほ)/出(た)して、 00021460M17/見知(ミし)つてゐるそ。おのいら、そのやうにおだてくさるが、 00021470M18/語(かた)られるものなら此所へ/来(き)て、/語(かた)つて見されといふに、/聞= 00021480M19人(きゝ=て)びつくりして、/暫(しハら)くあきれてゐる。/門(かと)から、おのれが/浄(しやう) 00021490M20るりが/聞(き)かれるものなら、此所へ/来(き)て/聞(きい)て見され(三オ) 00021500¥P69 00021510¥N4¥J 00021520¥X/商人(あきんど)/同士(どうし)のはなし 00021530L3/芝翫(しくわん)の/古手(ふるて)やがよいか、/璃寛(りくわん)の/呉服(ごふく)屋かよいか、どちらか 00021540L4/能(よ)かろの。Sソリヤ古手や£、/呉服(ごふく)屋かちつと/能(よ)イ。/商売(せうはい) 00021550L5からといゝ、八郎兵衛と十兵衛と、マア一郎兵衛/半(はん)ちがふ 00021560¥N5¥J 00021570¥X/女(をんな)/恵美須(ゑびす)のはなし(三ウ) 00021580L8/京(きやう)/四条(しせう)の/芝居(しはゐ)て、/小野道風(をのゝたうふう)ゑら/当(あて)て、/四位(しゐ)の/装束(せうそく)/花(はな)やか 00021590L9に、/衣紋(えもん)の/袖(そで)ももつたいも、/位(い)も/備(そなハつ)て/見(ミ)えにけると、チヨ 00021600L10ボ/語(かた)る。サア、/璃寛(りくわん)の/出端(では)、/誠(まこと)に/堂上(とうせう)かた、/御公家様(おくけさま)にも 00021610¥G(五ウ) 00021620M1あるまいといふ此/殿(との)ぶりに、どんぐりの/辻子(つし)のかやとい 00021630M2ふ/評判(ひやうはん)の女、カノ/道風(たうふう)ニゑら/凝(こ)りと也。/度&(たひ+)/楽屋(かくや)へも/状(せう)ふ 00021640M3ミもおこし、/宿元(やともと)へも/度&(たひ+)/逢(あひ)にくれと、/岡嶋(おかしま)や、へいせい 00021650M4(四オ)/堅(かた)い/男(をとこ)なれハ、とんと/取(とり)あへす、/今(いま)ハかや/女(しよ)もこた 00021660M5へかね、/直(じき)+に/応対(おうたい)せんと、/宿元(やともと)へ/来(きた)り、/璃寛(りくわん)さんのお 00021670M6/目(め)にかゝりとふ厶り升といふ。/取次(とりつき)/金剛(こんかう)か/出(で)て、太夫/様(さま)ハ 00021680M7/只今(たゝいま)/他行(たぎやう)いたしました。ハアヽ、/璃寛(りくわん)申置れましたは、も 00021690M8し女中かお/出被成(いてなされ)たら、/度&(たひ+)/御文(おんふミ)/拝見(はいけん)/仕(つかまつ)りました。/千万(せんばん) 00021700M9ありがたふ厶り升。然し/芸者(けいしや)のならひにて、左様なみだら 00021710M10な/事(こと)ハ出(四ウ)/来(き)ません。お気にさハらぬ/様(や)ふに、御こと 00021720M11わり申せといひ付られました。S女中/赤面(せきめん)して、ソリヤ/余(あま) 00021730M12りおつれないと申もので厶り升。私しも数ならねど、かや 00021740M13て厶り升。四位の/姿(すがた)にほれて、どんぐりから通いました。 00021750M14なんぼどんぐりじやテヽ、/喰(く)て見ずに、聞えません 00021760¥N6¥J 00021770¥X/素(す)また/聟(むこ)はなし(五オ)(五ウ挿絵) 00021780M17備中/哲多郡(てたごほり)/下原(しもバら)の辺に、田地山抔おびたゝしく持り/寄嶋(よりしま)正 00021790M18左衛門といふ郷家有。一人の娘を持ける。此娘、甚た/美女(ひしよ) 00021800M19にして、近辺の人、/皆(ミな)今小町と/異名(いめう)しける。父正左衛門、 00021810M20/異人(いじん)にて、かね※/聟(むこ)を/撰(えら)まれける。其/好(このミ)ミは、何にても 00021820¥P70 00021830¥G(九オ) 00021840L12一/芸(げい)に妙を得たる人を/聟(むこ)にとり、/家督(かとく)/譲(ゆづ)りたき所存なり。 00021850L13/勿論(もちろん)/貧(ひん)福はいとはず、人から/素性(すぜう)をハ(六オ)/専(もつハ)ら吟味せら 00021860L14れける。/誠(まこと)に狂言ならハ高/札(さつ)でも/立(た)て/度(たき)心持ゆへ、此事/近= 00021870L15在(きん=ざい)にしらぬものはなかりける。或日/玄関(げんくわん)に/案(あん)内すると、手 00021880L16代と覚しき者立いで、となた/様(さま)といふ。/拙者(せつしや)は阿州徳嶋も 00021890L17のにて候。/承(うけたま)はれば、御当家には何によらず、/一芸(いちげい)に妙を 00021900L18/得(え)たる/者(もの)に/御息(こそく)女を下され、御/養子(やうし)になされ/度(たき)との御事、 00021910L19近頃おこかましう厶れど、/下(け)(六ウ)/拙(せつ)は/幼(やう)少より水/練(れん)に妙 00021920L20を得、水中に廿四時あつて、水を/游(およ)ぐ事、水とりの如し。 00021930M1是のミの事にて候。是ハ/珍(めづ)らしき/術(しゆつ)を/得(え)させらる。近年当 00021940M2所も水あぶれ/難義(なんき)いたす。其段旦那へ申入ませふ。まづ御 00021950M3通と、/案内(あんない)につきて入ける。又/玄関(けんくわん)に、モノモ。内より、 00021960M4どをれと/答(こた)へ出向ふ。御免や。/拙者(せつしや)ハ関/東(たう)もので厶るが、 00021970M5うけ給ハれハ/一芸(いちげい)に妙を(七オ)得たるものを御養子になさ 00021980M6れ/度(たき)との御事。/某(それかし)/武術(ぶじゆつ)に/達(たつ)し武者/執行(しゆげう(ママ))とこゝろざし、諸 00021990M7国を廻れども、いまだ手に立つものも是なく、本国へ立帰 00022000M8らんと思ふ折ふし当家の/風聞(ふうぶん)。/拙者(せつしや)ハ兵法ハいふに及はず、 00022010M9/死活(しくわつ)の/一件(いつけん)ハ/譬(たと)へいかやうの事で死すとも、廿四時のうち 00022020M10ならバ/忽(たちま)ち/蘇(そ)生いたさせます。S取次是ハ/一入(ひとしほ)の妙/術(しゆつ)。先 00022030M11某子細、主人へ申入(七ウ)ませふ。幸ひ先に御客の御/入来(しうらい)、 00022040M12まづ御通下されと、是もおくへ通る。折ふし又/玄関(けんくわん)に、モ 00022050M13ノモの声。どをれと/答(こた)へ立出る。/某(それがし)ハ京都にて/土御門(つちミかど)の/御= 00022060M14配下(ご=はいか)、永居/駿河(するが)と申もの。天文、/暦学(れきがく)、家相、人相、/易(えき)八 00022070M15卦、/誠(まこと)に清/明(めい)の/再来(さゐらゐ)なりと人の/噂(うハさ)。右の/芸(げい)御/試(こゝろミ)下され、 00022080M16/何卒(なにとぞ)御/息(そく)女に御縁組下され候か、/憚(はゞかり)をかへりみず/参(さん)上仕る 00022090M17と申ける。扨&/珍敷(めつらしき)(八オ)/御芸(ごげい)、是また/万端(はんたん)入用の事なれ 00022100M18バ、定て主人満足いたされん。まづ是も御入と、ともない 00022110M19奥へとほれバ、/最前(さいぜん)より来る三人/同席(とうせき)にてならひゐる所へ、 00022120M20主正左衛門罷り出、一礼のべ、扨&御/歴&(れき+)様がた、/不肖(ふせう)の 00022130¥P71 00022140L1娘/御懇望(ごこんもう)とあつて御/入来(しゆらい)の/段(たん)、/下拙(げせつ)身にとり/恐悦(きやうえつ)仕る。ま 00022150L2づ御酒一/献(こん)/召(めし)上られ、其あいだに娘にも申聞ケ/用意(やうゐ)いた 00022160L3させ申べし。/然(しか)し/縁(えん)(八ウ)(九オ挿絵)の事ハ/親(おや)の/心(こゝろ)にもま 00022170L4かせぬものにて候へバ、/頓(やが)て娘が/御茶(おちや)を/汲(くま)せ申べし。/其茶(そのちや) 00022180L5をさしあげ候/御方(おかた)御一人/御留(おんとまり)/下(くだ)され。/其上(そのうへ)/縁組(えんぐミ)何か/御咄(おんはな) 00022190L6し可仕と、/亭主(ていしゆ)ハ/一間(ひとま)へいられける。/扨(さて)/偏鄙(かたいなか)なれど大かね 00022200L7/持(もち)、/勿論(もちろん)/材木(さいもく)/沢山(たくさん)なれバ、/坐敷(さしき)ハ/何間(いくま)といふ/数(かず)をしらず。 00022210L8見通しの/坐敷(さしき)/襖(ふすま)こと※く、さつと/引明(ひきあけ)たるありさまハ、 00022220L9/千畳(せんぜう)じきの/覗(のそき)の/画(ゑ)を見るごとく(九ウ)にて三人とも大おそ 00022230L10れ。/此所(こゝ)ぞ/肝心(かんしん)の所也と、/略(やつ)しのうへに/略(やつ)し/気(ぎ)ハ、おれか 00022240L11/璃寛(りくわん)、わしがりくわん、/此方(こち)が/璃寛(りくわん)+に、又りくわん、 00022250L12三りくわんとハめいわく。/扨(さて)/娘(むすめ)が出るか、/茶(ちや)を/汲(くん)で来るか 00022260L13と、/衣紋(えもん)/繕(つくろ)ひ/待(まち)いる折ふし、はるか向ふの/襖(ふすま)ざつとあけ、 00022270L14/年(とし)の頃十七八と見え、目八ぶんに/茶台(ちやだい)を/持(もち)、ふり/袖(そて)のすそ 00022280L15/揃(そろい)しと+あゆむ/其姿(そのすがた)、/小野(をの)の小町か/天人(てんにん)か(十オ)/楊貴妃(やうきひ) 00022290L16か/李夫人(りふじん)に/物(もの)もいはれず、三人共/現(うつゝ)ぬかし、見ぬ/顔(かほ)して見 00022300L17るもあり、/正面(せうめん)きつているもあり、おれじやあろふと/心待(こゝろまち)、 00022310L18/茶碗(ちやわん)が来るかと/心待(こゝろまち)、さし/出(だ)して/呉(くれ)るかと心待、おれか 00022320L19+と待いるハ、/世間(せけん)に取り/退(の)きたのもしの/鬮(くじ)を見ている 00022330L20/心地(こゝち)なり。しと+と/歩(あゆ)ミ来て三人の/前(まへ)をうちとほり、ツ 00022340M1イと/椽(えん)さきへ/出(いて)、/駒下駄(こまげた)はいて/飛石(とひいし)/伝(つた)ひ、コトリ+と/奥= 00022350M2庭(おく=にハ)の/前栽(せんざい)(十ウ)さして入にける。三人なから/惘(あきれ)はて、物も 00022360M3いはすゐる処へ亭主立いて、扨どなた様に御茶を上ケまし 00022370M4たな△Sハイ。何しや存せぬか、三人ともにすかたん。/誠(まこと) 00022380M5に月夜に釜かけて茶かないのて厶り舛△S主ハテ、それハ 00022390M6心得ぬ。先ほど縁たんの事申たれハ、縁組ハ暫し待呉と申 00022400M7せしを、/達(たつ)てすゝめしか、扨ハそれゆへの事ならん。家内 00022410M8をさかせと言やいな、奥さしき、離(十一オ)れさしき、二階、 00022420M9内蔵、納屋ぐらまで、誰も彼もさかせとも、さらに娘ハ見 00022430M10えざれハ、其騒動大かたならず。すかたん聟も気のとく顔。 00022440M11S主思案して、/永井(なかゐ)/駿(する)河に向ひ、貴公様ハ天文/易(えき)に妙を得 00022450M12給ふと有り。幸イ娘が行がた、御/占(うらなひ)/下(くだ)さるへし。心得ま 00022460M13したといふやいな、懐中より/算木(さんぎ)取出し/考(かんかへ)て、娘御ハ十七 00022470M14歳とこされハ、御うまれとしハ/寛政(くわんせい)九年/己辰((ママ))の(十一ウ)さ 00022480M15てともしびの火性なり。今秋の末なれバ、火剋金なれども、 00022490M16早冬にいたる。是金生水也。さすれハ/刄物(はもの)に気遣ひなし。 00022500M17/水辺(すゐへん)に事あり。早酉の刻に近し陰におもむく/甚(はなハ)た悪し。方 00022510M18角ハ南東也。いそぎ水辺に/気(き)を付られよといふ。サア辰巳 00022520M19か/渕(ふち)へとかけ出す。おの+も御出下され。/畏(かしこ)まり升たと、 00022530M20すまた/聟(むこ)諸とも/走(はし)りゆけバ、案のごとく池の端に駒下(十 00022540¥P72 00022550¥G(十三ウ・十四オ) 00022560M1二オ)駄あり。扨こそ+、此渕に相違なし。いかゞせん 00022570M2といふ内、主人又思案して、/阿州(あしう)の先生、貴公様ハ水中に 00022580M3あつて水鳥のごとしとある。/急(いそ)キ娘を引上ケてたべといふ 00022590M4やいな、得たりやかしこしと池へ飛込、娘を小/脇(はき)にひん/抱(だか) 00022600M5へ安&あかりける。/不便(ふびん)や娘ハはや息たへ切て、五躰ハ氷 00022610M6とひへたり。/皆(ミな)+惘れゐたりしが、又主思案して、イヤ、 00022620M7関東兵法の先生。貴公(十二ウ)様ハ廿四時のうちならバ、 00022630M8いかやうの/事(こと)にて/死(しす)るとも/活(くわつ)を/入(いれ)てふたゝひもとの/如(ごと)くに 00022640M9するとある。サア/此所(こゝ)で/其術(そのじゆつ)/御見(おんミ)せ下さるべしといふをも 00022650M10/待(また)ず、カノ/死骸(しがい)をひん/抱(たか)へ、ぐつと/引〆(ひきしめ)、ひばらを/足(あし)にて 00022660M11おしけれバ、/不思儀(ふしき)や/忽(たちまち)/口(くち)より/水(ミづ)を/吹(ふき)いだし、/即坐(そくざ)に/元(もと) 00022670M12の娘となりけり。親の/悦(よろこ)ひ大かたならず、まづ+娘を/連(つれ) 00022680M13かへれバ、/家内(かない)/一度(いちど)に/悦(よろこ)びの/声(こゑ)を/発(はつ)しける。(十三オ)(十三 00022690M14ウ・十四オ挿絵)/永井(なかゐ)するが、/不拙(げせつ)が/易(えき)がなくハ娘/御(ご)ハ/命(いのち)ハ/無(な) 00022700M15い。S/阿波(あハ)のいふにハ、/拙者(せつしや)が/水練(すゐれん)が/無(なう)てハ、いかがなさる 00022710M16ゝ△S江戸侍/拙者(せつしや)が/武(ぶ)じゆつなくハ、いかゞなさるゝと三 00022720M17人/自慢(しまん)二、あるじも/肝心(かんしん)して、いつれも+/恐(おそ)れ入ました。 00022730M18/然(しか)らハ/何(なん)と、此/御賀(おんよろこび)に、いづれ壱人のこりましてハ、ど 00022740M19ふ/御座(ござ)ろふといへば、二人の/浪人(らうにん)も、いかさま、/是(これ)ハ/御= 00022750M20尤(ご=もつとも)。然るべく御さし/図(づ)といふに、S主、(十四ウ)しバらく 00022760¥P73 00022770L1/思案(しあん)して、女をはじめて/娶(めとる)を/水上(ミづあけ)といへハ、/水練(すゐれん)の/御(おん)かた 00022780L2/様(さま)、御のこり下されと/聞(きい)て、娘ハかぶりふり、/私(わた)しやイヤ 00022790L3いな。/聟(むこ)さんが/水(ミつ)へ/這入(はいり)なさるハ、むこ見ずじやと/言(いひ)ます 00022800L4といふに、二人が、げにもつとも。/然(しか)らハさしづめ/武芸(ふけい)/拙= 00022810L5者(せつ=しや)のこりませふか。S娘イヤいなア。/池(いけ)の/端(はた)で/活(いけ)いれなさ 00022820L6つたハ、いけ+といふて人が/剛(こハ)かりますと、二人なから 00022830L7素股(十五オ)/聟(むこ)。わたしハ/独(ひと)り/残(のこ)つて、/早速(さつそく)/娘(むすめ)と/婚礼(こんれい)する 00022840L8も、/全(まつた)く/易(えき)の/妙(めう)を/得(え)た/徳(とく)也。扨婚礼すんで娘と/寝(ね)ました。 00022850L9/其(その)ときのうれしさ、娘もよろこび、はつかしさふに、ほん 00022860L10に/御前(おまへ)のやふな/殿御(とのご)が/外(ほか)ニあろかいなアと、/抱付(たきつく)と思ふた 00022870¥G(十七オ) 00022880M1ら目が/覚(さめ)ましたと、/冠(くわん)十郎/備中(びつちう)ての夢咄し。/何(なん)と、此/夢(ゆめ)ハ 00022890M2/能(よ)イ夢で厶り升ふか、/悪(わる)い夢であり升ふかな。S璃寛それ 00022900M3ハ(十五ウ)/其(その)易の/名人(めいしん)に/見(ミ)て/貰(もろ)ふがよい 00022910¥N7¥J 00022920¥X/明医(めいゐ)中村/丸光(くわんかう)/療治(りやうじ)話 00022930M6/先生(せんせい)。ソノ/牽牛子(けんごし)ハ/毒(どく)て厶りますか。S先生/草金鈴(さうきんれい)ハ/寒(かん)に 00022940M7して、/味(あちはい)/辛(からき)ハ/毒(どく)あり。二月に/種(たね)を/植(うへ)、三月に/苗(なへ)を/生(せう)し、 00022950M8/蔓(つる)となり、七月に/花(はな)をひらく。正月にてる/朝皃(あさがほ)は、かなら 00022960M9ず/当(あた)る(十六オ) 00022970¥N8¥J 00022980¥X/坂町(さかまち)がよひのはなし 00022990M12坂町/三輪杉(ミわすぎ)の/芸子(けいこ)おだ/巻(まき)ハ、/李冠(りくわん)の/逢(あひ)かたと/聞(きゝ)、/男自慢(をとこじまん)の 00023000M13/椿玉(しゆんぎよく)、おだ/巻(まき)を/手(て)にいれんと、/親仁(おやし)にハ/謡講(うたひかう)と/偽(いつハ)り、/毎= 00023010M14晩(まい=ばん)+の坂町がよひ。S親仁、謡講も大がい/程(ほど)がある。/合= 00023020M15点(か=てん)ゆかぬと、とふ※坂町がよひを/聞(きゝ)いたし、/扨(さて)+/不届(ふとゝき) 00023030M16ものめ。/今夜(こんや)こそ/見付(ミつけ)て/呉(くれ)ん(十六ウ)(十七オ挿絵)と、/暮(くれ)早 00023040M17&から、/三輪杉(ミわすき)/横(よこ)町用水の間に/待(まつ)てゐるとハ、息子/夢(ゆめ)にも 00023050M18/知(し)らす、/頭巾(つきん)に/顔(かほ)を/隠(かく)し、 00023060M19△謡されども此人、夜るハくれとも/昼(ひる)見えず。ある/夜(よ)のむ 00023070M20△△つことに、御身いかなる/故(ゆへ)により、/斯(かく)とし月を/送(おく)る身 00023080¥P74 00023090¥G(十九ウ) 00023100L12△△の、/昼(ひる)をバ何とうハ玉の、よるならで通ひ給ハぬは、 00023110L13△△いとふしん/多(おほ)きことなり。 00023120L14S親仁とこしなへに仕て/呉(くれ)んと、(十七ウ)杖にて叩けバ、 00023130L15S息子びつくりして、ヒヤア。S親仁/横道(わうどう)めが△S息子イ 00023140L16ヤ、/小皷(こつゝミ)の/間(ま)しや 00023150¥N9¥J 00023160¥X/朝皃(あさかほ)のはなし 00023170L19扨/李冠(りくわん)の/宮城(ミやき)/阿蘇(あそ)次郎/役(やく)の前髪きれいな事、成ほど女コの 00023180L20/好(すく)が無理でもなし。にくてらしいほと/美(うつく)しい。今を/盛(さか)りの 00023190M1嵐氏、/全体(ぜんたい)徳な/役者(やくしや)ニて、地てハ/左程(さほど)にもないが、/兎角(とかく)/舞(ふ) 00023200M2(十八オ)/台(たい)つきが/美(うつ□)しい。是によつて、S朝かほの/盛(さかり)ハに 00023210M3くし/舞台(ふたい)附、とした。ハア、それハ聞たやうな句じやか、 00023220M4ヲヽ、それハきぬ+の/別(わかれ)の句しや。ヱヽなんの、別の句 00023230M5じやない。当りの句しや 00023240¥N10¥J 00023250¥X/白楽天(はくらくてん)もどきの咄し 00023260M8白楽天、日本へ/渡(わた)り給ふて、いかに/漁翁(きよわう)。和国にも/哥舞妓= 00023270M9芝居(かぶき=しはい)のはやるやとありけれバ、(十八ウ)漁翁/唐土(もろこし)にもかぶき 00023280M10のはやるといふ/事(こと)の有や/否(いな)や。楽天いざさらハ/目前(もくぜん)の/気色(けしき) 00023290M11を申さふすぞ。/青(せい)たいひたいに/塗(ぬり)りて、/今比(いまごろ)/芸(げい)にかゝり、 00023300M12/客分(きやくぶん)/取(とり)に/来(き)て、/上(うへ)のさじきをめくる。/心得(こゝろへ)たるか、/漁翁(きよわう)。 00023310M13漁翁上のさじきをめくるとハ/面白(おもしろ)しおもしろし。/我国(わかくに)の/芝= 00023320M14居(しは=ゐ)も/青田(あをた)とて、/上(うへ)のさじきをめくるあり。かくて/田舎(いなか)に/住(す) 00023330M15めるそれがしも、/役者(やくしや)の/誹名(はいめう)、/家名(かめう)まで/知(し)る。こけどもが 00023340M16見たる(十九オ)(十九ウ挿絵)/芝居(しはい)はさもなくて、町+/役者(やくしや) 00023350M17のひいきするかな。楽天ふしぎやな、/田舎(いなか)にすめる/汝(なんじ)まて 00023360M18/委(くハ)しく/知(し)るや。老翁/人間(にんげん)ハおろか、/梅(うめ)に/来(きた)る/鴬(うぐひす)も/物真似(ものまね)を 00023370M19して/女形(をんながた)のわらひをなし、ホヽヽケキヨ。/池(いけ)にすむ/蛙(かハず)も/立= 00023380M20役(たち=やく)の/笑(わら)ひの/物真似(ものまね)をして、ウフヽヽワハイとまうすと有け 00023390¥P75 00023400¥G(廿一ウ・廿二オ) 00023410M1れハ、白/楽天(らくてん)もおそれ給ひ、なかゐハおそれ、/爰(こゝ)らでせい 00023420M2と/迯(にけ)ていんだ(廿オ) 00023430¥N11¥J 00023440¥X/幟(のぼり)のはなし 00023450M5/難地(なんち)の/贔屓(ひいき)より、/李冠(りくわん)へ/唐木綿(たうもめん)の/幟(のほり)を/拵(こしら)へ、白に/朝皃(あさかほ)のう 00023460M6たを、/李冠茶(りくわんちや)/地白(ぢしろ)にそめんといふ。イヤ、/地白(ちしろ)なら/茶(ちや)てハ 00023470M7きつはりとせぬ。/浅黄(あさき)に/染(そめ)ふと/言(い)ふ。/相談(さうだん)/落合(おちあハ)ず、もめの 00023480M8/最中(さいちう)へ/来芝(らいし)びいきが/来(き)て、/紺(こん)にやれ+(廿ウ) 00023490¥N12¥J 00023500¥X/切穴(きりあな)のはなし 00023510M11/李冠様(りくわんさん)。あなたハ/画合(ゑあハせ)をなされますが、/高津(かうつ)の/絵馬(ゑま)にこざ 00023520M12り升。/其気(そのき)に/成(な)つてナ、/物(もの)といふのに/切穴(きりあな)から/大工(たいく)が/出(で)て 00023530M13いる/画(ゑ)は、とふいふ/心(こゝろ)て厶り升。ハテ、/出来(てき)上つた/工合(ぐあひ)を 00023540M14みるのに、モウ/其気(そのき)になつてゐるといふ/付方(つけかた)/上手(せうず)のした 00023550M15/画合(ゑあハせ)じや。アノ/切穴(きりあな)が/工合(くあひ)もので、/上(あか)ると(廿一オ)(廿一ウ 00023560M16・廿二オ挿絵)下ると一リン/違(ちが)ふても、どふもならぬ。Sハ 00023570M17テ、南だけじや。/北(きた)でなら、/上(あが)ると/下(さが)ると、二リン五毛か 00023580M18/定(さたま)まりじや 00023590¥P76 00023600¥N13¥J 00023610¥X/蛸(たこ)の/腕(かひな)のはなし 00023620L3/嶋之内(しまのうち)/畳屋(たゝミや)の/弟子(でし)、/大(だい)の/芝居天狗(しはゐてんぐ)にて、/李冠(りくわん)びいき。/角(かど)の 00023630L4/芝居(しはゐ)の/果(はて)からすぐに/難地(なんち)へゆき、/妓婦(おやま)と/寝間(ねま)へ/入(い)つて/咄(はな)し 00023640L5するうち、(廿二ウ)おやま、/客(きやく)の/手(て)を/撫(なで)、ひじの/蛸(たこ)をいろ 00023650L6ふて、/御前(おまへ)さんハ/畳(たゝミ)やさんしやナ。/何(な)ンのマア、おれハ/力(ちから) 00023660L7わざの/指南(しなん)する物しや。アノ/兵法(へいほう)とやらいふのかへ。イヤ 00023670L8+、/腕押(ひじおし)の/先生(せんせい)しや。アノ/腕(ひし)こかしとやらにも、/弟子衆(でししゆ) 00023680L9か有かへ。ヲヽ、ひじの有事 00023690¥G(廿五ウ) 00023700¥N14¥J 00023710¥X/大和(やまと)はいかいのはなし 00023720M3/李冠(りくわん)、よしの/参(まゐ)りより/小泉(こいつミ)のしるべに/泊(とま)り、/誹(はい)(廿三オ)/諧(かい) 00023730M4五十/韵(ゐん)/終(をハ)ると、/安堂村(あんだうむら)の/几山(きさん)といふ/誹天狗(はいてんく)、/其夜(そのよ)/我在(わがざい)へか 00023740M5へらむといふ時に、/夜半過(よなかすぎ)なり。/皆(ミな)/是非(せひ)/此夜(こんや)ハ/泊(とま)られとい 00023750M6ふを、イヤ+、/近道(ちかミち)を/通(とを)りや、ツイいぬといふ。其/近(ちか)道 00023760M7には/大池(おほいけ)あり。/釣(つる)べおとしといふ/化(ばけ)もの/有(ある)よし、/必(かな)らず/往= 00023770M8来(わう=らい)をおどすとの/噂(うハさ)。/近道(ちかミち)ハいなぬか/能(よ)イといふ。其化もの、 00023780M9/見度(ミたひ)のじやと、めつたに/広言(くわうげん)はいて/戻(もと)る。カノ大池のはた 00023790M10にさしかゝれば、はたして、トフンといふ(廿三ウ)/音(おと)、その 00023800M11すさましさおそろしさ。びつくり/仰天(きようてん)したれど、/此所(こゝ)が/性= 00023810M12根(せう=ね)じやと、/池(いけ)をきつと/見(ミ)て、/古池(ふるいけ)へ/獺(かハうそ)とび/込(こむ)水のおと、ゝ 00023820M13いふに、/獺(かハうそ)あたまを/上(あ)ケて、ゑらいものをはめおつた 00023830¥N15¥J 00023840¥X/忠臣蔵(ちうしんくら)の/咄(はな)し 00023850M16/閻魔王(ゑんまわう)の/御前(ごせん)へ、/猪獅子(いのしゝ)一/疋(ひき)かけ来る。/鬼(おに)とも引とらへ、 00023860M17/吟味(ぎんミ)すれバ、勘平にうたれし/由(よし)いふ所へ、(廿四オ)/門外(もんぐわい)に 00023870M18廿五六の/男(をとこ)、上を下へと/掴(つかみ)あふ。/鬼(おに)共、/鉄棒術(かなぼう)をふりたて両 00023880M19人を/引分(ひきわけ)、/各&(おの+)/口書(くちがき)を/取(と)ル。 00023890¥P77 00023900L1△△△△△/定(さた)九郎/願書(ねかひかき) 00023910L2一、/私(わたくし)/塩冶判官(ゑんやはんくわん)/高定(たかさだ)の/家来(けらい)/斧(をの)定九郎と申者。/彼(か)レハ/早= 00023920L3野勘平(はや=のかんへい)と申/者(もの)ニ候。/彼(かれ)、/主君(しゆくん)に/仕(つか)へ候/内(うち)、御/家(いへ)の/法度(はつと)を/破(やぶ) 00023930L4り、/不義(ふき)致候事 00023940L5一、判官/師直(もろのふ)殿/喧嘩(けんくわ)のもとハ、/彼(かれ)か/馴染(なしミ)し/腰元(こしもと)かる/持参(じさん)の 00023950L6/短冊(たんざく)より/騒動(さうたう)に/及(および)し事(廿四ウ) 00023960L7一、/主人(しゆしん)/師直(もろのふ)殿と/喧嘩(けんくわ)の/場所(ばしよ)ニ居合せす、/馴染(なじミ)しかると、 00023970L8/門外(もんくわい)の/腰掛(こしかけ)へ/行(ゆき)、二人/相楽(あいたのし)ミ、主人をないがしろに/致(いたし)、甚 00023980L9/不埓(ふらち)之事 00023990L10一、師直殿/家来(けらい)/鷺坂伴内(さきさかはんない)と申者を/打擲(てうちやく)いたし候事 00024000L11一、/奥方(おくかた)/召遣(めしつか)ひの/腰元(こしもと)を/勾引(かとわかし)、/主家(しうか)を/欠落(かけおち)之事 00024010L12一、/夜(よ)る+山中へ/入(いり)、/鹿猿(しゝさる)を/取(とり)、/殺生(せつせう)之事 00024020L13一、忠臣之/私(わたくし)を/鉄炮(てつほう)ニて/打留(うちとめ)、/懐中(くわいちう)/之(の)金子/盗取(ぬすミとり)候事 00024030L14(廿五オ)(廿五ウ挿絵) 00024040L15一、私に/向(むか)ひ/不忠(ふちう)/呼(よバは)り致/及(およひ)、/口論(かうろん)ニ御門前/騒(さわか)し申事 00024050L16右八ケ/条(せう)、御/糺(たゞ)シ被下候ハ、/有難(ありかたき)/仕合(しあハせ)ニ奉存候。已上 00024060L17一、私/主家(しうか)ぼつ/落(らく)ニ相成候へは、/切取(きりとり)之義、/一重(ひとへ)ニ/御免(ごめん)な 00024070L18し被下候/様(やう)奉願上候 00024080L20△△△△△△△△△△△△△△△斧△定九郎△G 00024090M1サア勘平。/言(い)ふ事あらハ/言(い)へ。/聞(きか)ふとのゝしれば、勘平、 00024100M2/口(くち)おしさの/余(あま)り、アヽツト/言(い)へバ、/李冠(りくわん)/内義(ないき)(廿六オ)が、 00024110M3申+、きつうおそはれなさつた 00024120¥Y1花競李冠話終(廿六ウ) 00024130¥K〔吉文字屋市右衛門版蔵版目録二丁省略〕 00024140¥Q 00024150M11花競二巻噺後篇@角中両芝居狂言|をおもしろく噺|にしたる也△△|△△△近日出来@ 00024160M12文化十一年戌如月 00024170M13△△△△△△△△京寺町御池上ル△鉛屋安兵衛 00024180M15△△△△△△△△大阪心斎橋南四丁目△吉文字屋市右衛門 00024190M17△書林△△△同新町橋東詰北へ入△△△△同△△△△△彦七 00024200M19△△△△△△△△同心斎橋北久宝寺町△加賀屋弥助 00024210¥P78 00024220¥U噺本大系△第十五巻 00024230¥T/落咄熟志柿(おとしばなしじゆくしがき)〔序題〕 00024240¥G 00024250¥Y 00024260L16文化十三年頃刊 00024270L17十返舎一九校 00024280L18美屋一作作 00024290L19栄邑堂板 00024300L20小本一冊 00024310¥Y/落咄熟志柿(おとしばなしじゆくしがき)叙G 00024320M3/渋柿(しぶかき)の/甘(あま)きハ、其渋の/変(へん)じたるにて、/噺(はなし)の/上手(じやうづ)ハ、其/下手(へた) 00024330M4の/功(こう)/経(へ)しなり。今や/御所(ごしよ)柿の/尊(たつと)きも、/樽抜(たるぬき)の/卑(いやし)きも、/棹(さほ)を 00024340M5もて/落噺(おとしばなし)に/童(わらハベ)のころ柿、/怡(よろこバ)しむるハ、/熟(じゆく)し(序1オ)柿の 00024350M6甘きにこそと、つるし/柿(がき)の/序(いとぐち)を/開(ひら)き、予か/天窓(あたま)の/黒(くろ)き/烏(からす)の 00024360M7/口嘴(くちはし)をして、此柿の/種本(たねほん)を、こゝにつゝき出せる/事(こと)/爾(しかり) 00024370M8△△△△△△△△△△△△△△△十返舎一九識 00024380M9△△△△△△△△△△△△△△△G 00024390M11△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序1ウ) 00024400M12△冬こもりさくや此はなし本、今を春辺とうり出せしハ、ゑん 00024410M13△とりの出傍題。栄邑堂に会合の諸君子、煮はなの茶なるをお 00024420M14△ちとして、金米糖のひと口つゝ、いゝ出せるをしるせしなり。 00024430M15△そよやとて、十返舎のうしか校合を乞もとめて、幸にあらま 00024440M16△しのおもふ事なりぬ 00024450M17△△△兼題の紙を丸めてふり合す 00024460M18△△△△袖も他生の縁とりはなし 00024470M19△△△△△△△△△△△△△△△十返舎門人△美屋一作 00024480M20△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序2オ) 00024490¥P79 00024500¥G(序2ウ・序3オ) 00024510¥Q 00024520M1@前|座@△/噺(はなし)の/会(くハい)近刻十返舍社中寄合作一冊 00024530M3@後|座@△/仕形(しかた)ばなし同十返舎作全部一冊 00024540M5△△△△△右は此所ニて御披露申上候当年出板可仕候処、草稿手 00024550M6△△△△△間取、間ニ合不申候故、来丑春出板差出シ申候。御求 00024560M7△△△△△御らん下さるへく候 00024570M8△△△△△△△△△△△△△△△△書肆△栄邑堂 00024580¥G(序3ウ) 00024590¥P80 00024600¥T1落咄じゆくし柿 00024610¥A十返舎一九校 00024620¥N1¥J 00024630¥Xてうし;○ちろり;とくり 00024640L7てうし、ちろり、とくりの子ども、戸だなのまへにあそび 00024650L8ゐるを、/親(おや)の一/升樽(しやうだる)見てゐて、◇たる◇さて+、どれもミ 00024660L9な/機嫌上戸(きげんじやうご)でめでたい。コリヤ+、さつきおしへたこ 00024670L10とをして見ろといハれて、◇てうしの子◇てうし+あはゝ 00024680L11◇ちろりの子◇ちろりてん+よといへバ、はくてうの◇とくりの子◇ 00024690L12/首筋(くびすじ)へ(咄ノ一オ)手をかけて、にぎ++よ 00024700¥N2¥J 00024710¥Xふうりん;○ぜにばこ 00024720L15◇ぜにばこ◇コレふうりん。きさまハつまらねへぞ。いつぞや/銭(ぜに) 00024730L16を壱もんかしてやつたが、今にかへさぬ。どふしたもんだ 00024740L17といへバ、◇ふうりん◇ばかなことをいふ。いつきさまに銭をか 00024750L18りた△◇せにばこ◇はて、ものおぼへのわるいおとこだ。もとで 00024760L19が一もんなくちやアしやうばいができぬ。どふぞ(咄ノ一ウ) 00024770L20かしてくれろと、ソレ、その時の銭ハ、きさまのあたまに 00024780M1ぶらさがつてゐるぜにだ△◇ふうりん◇ナニ、これハぬしにか 00024790M2りたぜにでハない△◇せにばこ◇ハテ、おいらがかしたのだ 00024800M3◇ふうりん◇イヤ、/借(かり)ないといふせうこがある。此おとをきゝ 00024810M4やれと、ふうりん、あたまをふりまハせバ、かのぜにが、 00024820M5カラン+と/鳴(なる)。◇ぜにばこ◇ナニ、からんことがあるものか。 00024830M6ふてへやつだと、ふうりんをふミたをし、サアおのれ、こ 00024840M7れでもかと(咄二オ)あたまを石にこすりつくれバ、◇ふうりん◇ 00024850M8カリ+++ 00024860¥N3¥J 00024870¥Xにハとり;○あひる 00024880M11◇にハとり◇あひるの所へ来り、サテ/近年(きんねん)ハきさまの/玉子(たまご)も、お 00024890M12いらが玉子のやうにうれるが、それについてとんだことが 00024900M13ある。おらがとなりのめんどりが、四/角(かく)な玉子をうミおと 00024910M14した。◇あひる◇こいつハめづらしい。むかしからたとへにも、 00024920M15女郎のまことゝ玉子の四かくといふが、目ぐろにひ(咄二 00024930M16ウ)よくづかゞ出来たから、四かくな玉子もありそふなも 00024940M17のだ△◇にハとり◇イヤ、その玉子がこのあいだけへつて/鶏(とり)にな 00024950M18つたが、へんちきよ△◇あひる◇ハテノ、どんなとりになつた 00024960M19◇にハとり◇なんの事ハねへ、かたハものよ。/胴(どう)がほそくて/首(くび)が 00024970M20ふとく/足(あし)がちんばで、はねがよこつちやうへぐつとのびて、 00024980¥P81 00024990L1イヤ、もふ/変(へん)なふうのとりになつた△◇あひる◇そしてそのと 00025000L2りハ/鳴(なく)か△◇にハとり◇なくのが又大わらひだ(咄三オ)△◇あひる◇そ 00025010L3りやアどふなく△◇にハとり◇ぶかつこう 00025020¥N4¥J 00025030¥Xなべ;○ほうろく 00025040L6/棚(たな)のすミに/鍋(なべ)とほうろくがよりあひ、◇なべ◇イヤ、もふおら 00025050L7がとなりのすりばちにハこまりはてる。まいあさくらいう 00025060L8ちから、がら+とやかましくて、ねられるもんじやアね 00025070L9へ。もふあいつもわれてしもふしぶんだが、にくまれ子よ 00025080L10にはゞからずとハ、あいつが(咄三ウ)ことだ△◇ほうろく◇イヤ、 00025090L11又あのすりこ木めが、年中すりばちの中からつつぱだかつ 00025100L12てゐて、おいらが出はいりのじやまになつてならぬ。い 00025110L13ま+しいやつらだとわるくいへバ、うしろのほうで、 00025120L14◇すりばち◇ハアくつさめ、ヱヽみそをくらへ 00025130¥N5¥J 00025140¥Xけんだい;○本 00025150L17◇けんだい◇ヲヤ、本こう、どふした。わるい/顔(かほ)付だ△◇本◇いま 00025160L18+しい。ゆふべもねずミにくハれたハな。(咄四オ)まい 00025170L19ばん+あいつらが来て、ほんばこをかきさがすにハこま 00025180L20りはてる。そしてこんなにくハれちやアつまらねへものだ 00025190M1◇けんだい◇/晩(ばん)からわしが所へとまりに来るがいゝ。/鼠(ねずミ)のくるき 00025200M2づかひハなしさ△◇本◇どふしてぬしの所へハねずミが来ねへ 00025210M3◇けんだい◇おいらがあしを見やれ。ソレ、ねこあし 00025220¥N6¥J 00025230¥Xかんなべ;○とくり△(咄四ウ);さかづき 00025240M6かんなべとさかづきとつれだちゆく道にて、とつくりにあ 00025250M7ひ、◇とつくり◇ヲヤ、ぬしたちやアどけへゆく△◇かんなへ◇女郎/買(けへ) 00025260M8だ。いかねへか△◇とくり◇コリヤ行べい。まちなよ。ちよつ 00025270M9と/小便(せうべん)と、またしておいて小便するうち、◇さかつき◇ときに、 00025280M10こんやのせかいハてうしやか△◇かんなべ◇なんでものめるとこ 00025290M11ろがいゝ。イヤ、とくり。ながい小べんだ。らちのあかね 00025300M12へ△◇とくり◇もちつとだ。まち給へ△◇さかつき◇コレ(咄五オ)いゝ 00025310M13かけんにしていかねへか。おそくなるハ△◇とくり◇ヲツト今 00025320M14しまいだと、からだをふつてミて、もふ出ない+ 00025330¥N7¥J 00025340¥Xうさぎ;○きつね 00025350M17うさぎ、/柳(やなぎ)ばしからのり出すと、おなじくたぬきが土ふね 00025360M18にのつて出かけ、けんくハとなつて、なんのくもなく/狸(たぬき)を 00025370M19川へうちこミ、うさぎ、大手がらといふのぼりをたてゝ、 00025380M20(咄五ウ)ふねよりあがれバ、なかまの/猿(さる)、きつねがかけつ 00025390¥P82 00025400L1け、◇きつね◇うさぎどの、おてがら+。なるほど、きこう 00025410L2ハ/筋(すじ)のわかつたものたといへバ、◇うさぎ◇しれたことさ。お 00025420L3らア江戸まへのうさぎだハ 00025430¥N8¥J 00025440¥Xとうぐわ;○とうなす 00025450L6ひとつはたけにそだちし◇とうぐハ◇、とうなすのところへ来り、 00025460L7どふだ。久しくあハねへが、(咄六オ)かわつた事もなしか。 00025470L8◇とうなす◇イヤ、もふさつはりひまでいけやせん△◇とうぐハ◇ナニ、 00025480L9うそをつく。ぬしなんぞハいつも女にすかれるからいゝ。 00025490L10おいらハ又/病人(びやうにん)ばかり/相手(あいて)だから、はじまらねへの△ 00025500L11◇とうなす◇わつちも/近(きん)年ハさつぱり人にすかれやせぬ△◇とうぐハ◇ 00025510L12それでも、とし※出来るとうなすに、ひとつもあそんで 00025520L13いるものハねへ△◇とうなす◇そふさ。どうやらこうやら(咄六ウ) 00025530L14くわれてしもふけれ共、それでもいかねへ△◇とうぐハ◇それハ 00025540L15又なぜだ△◇とうなす◇ハテ、今くうやつらハ、ミんなよい+ 00025550L16だ 00025560¥N9¥J 00025570¥Xさゞゐ;○はまぐり 00025580L19◇はまぐり◇さゞゐの所へきたり、どふだ。けふハふきやてうの 00025590L20きりを見にいかふじやアねへか。◇さゞゐ◇これハよかろふ。 00025600M1行べいとつれたち出、だん+しやれながら、おやぢばし 00025610M2あたりへくると、(咄七オ)さゞゐが見へず。◇はまぐり◇ハテめ 00025620M3いよふな。今までいつしよにきたが、さゞゐめハどこへい 00025630M4きおつたしらぬと、そこらあたりをさがし見れバ、いつの 00025640M5まにか、つぼやの内に 00025650¥N10¥J 00025660¥Xねこ;○ほうろく 00025670M8◇男ねこ◇子どもをよびつけ、わいらハどふもふんしがわるい。 00025680M9コリヤアほうろくをかつて来てやろふと、すぐに八百やへ 00025690M10ゆき、ほう(咄七ウ)ろくをかつてきたり、上ケ/板(いた)の下へい 00025700M11れて/砂(すな)をいれにかゝると、◇ほうろく◇はらをたて、イヤ、とん 00025710M12だことをする。おらア又/茶(ちや)をほうじるのかとおもつたら、 00025720M13すなをいれやアがつて、どふするのだと、こゞとをいへバ、 00025730M14◇ねこ◇イヤ、そんなにこゞとをいふほうろくハいらぬ。コリ 00025740M15ヤア八百やへかへしてこよう△◇ほうろく◇コレ、小べんハなら 00025750M16ぬぞ+(咄八オ) 00025760¥N11¥J 00025770¥Xさつまいも;○さといも 00025780M19◇さつまいも◇さといものかしらに行合、さて+、いつもおた 00025790M20つしやでめでたい。そして子どもしゆがたくさんでおうら 00025800¥P83 00025810L1やましい。◇さといものかしら◇イヤモ、がきどもがおほくて、う 00025820L2るさへばかりさ。しかし、もふ子どもがきのへねや巳まち 00025830L3のやくにハたつが、わつちらアおいこんだね。だい所のお 00025840L4さんまでが、かしらハいれるなと(咄八ウ)いやがられるか 00025850L5らはじまらねへ。それにぬしなんぞハいろ/男(おとこ)だ。かミさん 00025860L6たちやむすめ子どもに、かあいがられるからおもしろいと 00025870L7いへバ、◇さつまいも◇ヱヽ、よく人を/揚(あげ)なさるの 00025880¥N12¥J 00025890¥Xおほかミ;○たぬき;ねこ 00025900L10◇狸◇はらつゞミをうつて、けだものゝまじハりたぬきある中 00025910L11のしゆゑんかな。ハヽヽヽヽ、イヤ(咄九オ)これでハのめ 00025920L12ぬ。ナント、此あいだ来たげいしやをよびにやらうじやア 00025930L13ねへか。◇おほかミ◇いか様よかろふと、よびにやれバ、ねこの 00025940L14げいしや、三みせんばこをもたせて来り、大きにしやれの 00025950L15めし、やがてさかづきもおさまりけれバ、げいしやの◇ねこ◇ 00025960L16さやうならわたくしハおいとまをいたゞきやせう△◇おほかミ◇ 00025970L17まちな。わつちがおくつていかふ△◇たぬき◇ちくしやうめ。 00025980L18(咄九ウ)ころばそふとおもつて 00025990¥N13¥J 00026000¥Xあひる;○はと 00026010M1女つれのじゆん礼、ふだらくやきしうつなミハミくまのゝ 00026020M2と、うたつてくる。あひるの鳥、しりをふつて川の中より 00026030M3はひあがり、/鳩(はと)をよんで、◇あひる◇アノじゆんれいを見やれ。 00026040M4まんざらじやアねへ△◇はと◇ほんにうつくしいもんだ△◇あひる◇ 00026050M5かゝとへでもくひついてやらうと(咄十オ)ちよこ+はし 00026060M6れバ、◇はと◇おれもくひつきてへと、おなじくはしる。◇あひる◇ 00026070M7こいつ、おれがまねをするな△◇はと◇イヤ、おいらもアノか 00026080M8ゝとにやア/気(き)がある△◇あひる◇そりやアまたどふして△◇はと◇ア 00026090M9ノあしをミや。/豆(まめ)だらけだ 00026100¥N14¥J 00026110¥Xむま;○いぬ 00026120M12/黒(くろ)犬、女郎かいにゆき、あさかへりて、ろじのとを、がり 00026130M13++とかぢる。うちから◇あか犬◇ヲイ+(咄十ウ)だれ 00026140M14だ。黒か。今けへつたか△◇くろ◇はやくあけてくれろ△◇あか◇ 00026150M15手めへ、ゆふべハ/女郎買(ぢようろけへ)にいつて仕合だ。うちでハ大さわ 00026160M16ぎをやらかしたハ△◇くろ◇なぜに△◇あか◇どろぼうがはいつた 00026170M17と、となりうらのぶちめが、ほへ出しやアがつて、おいら 00026180M18もしろめも、けさまでほへつゞけで、まんじりともしねへ 00026190M19と、はなしながらろじの戸をあけて、サアはいりや。ヲヤ、 00026200M20あとの(咄十一オ)ハだれだといへバ、◇むま◇ヒヽヽヽヽヒン 00026210¥P84 00026220L1◇あか◇ヱヽ、むまをつれてきやアがつたな 00026230¥N15¥J 00026240¥X四文ぜに;○なんりやう 00026250L4◇四文ぜに◇一本、弐/朱(しゆ)/銀(ぎん)のところへ来り、どふだ。今からあそ 00026260L5びにゆくが、いかねへか。◇二しゆ◇なぜおそく出かけた△◇ぜに◇ 00026270L6おらア一本ありぎりだから、てうど今からいくといゝわな 00026280L7◇二しゆ◇イヤ、その一本のところへハ、おいらハ/附合(つきヤハ)れねへ 00026290L8(咄十一ウ)△◇ぜに◇そりやアなぜだ△◇二しゆ◇ハテ、身をくづさに 00026300L9やアならねへわな 00026310¥N16¥J 00026320¥Xいしうす;○ちやわん;じうのう 00026330L12がらくた道具あつまり、さかもりをはじめ、◇なべ◇なんと、 00026340L13一ばんうたをふか△◇火ふき竹◇われなべごへ、きゝたくねへ。 00026350L14それよりか、おれが/尺八(たけ)を/吹(ふい)てきかせよふ△◇ちやわん◇イヤ 00026360L15+、おいらがちやわんきやうげんがよかろふといへバ、 00026370L16◇十のう◇ナニサ、おいら(咄十二オ)こそ/十能(じうのう)にたつしてゐるが、 00026380L17ぬしたちのげいハミな、といゝさしてうしろをミれバ、石 00026390L18うすがゐるゆへ、イヤ、ほんの/茶(ちや)うすげいだ。◇ミな+◇なぜ、 00026400L19ちやうすげいだ△◇十のう◇ハテ、ほんとうのことでハない 00026410¥N17¥J 00026420¥Xしゆろばう木;○くさばうき 00026430M3◇しゆろばうき◇けふもアノ/客(きやく)の/長尻(ながじり)に、またおれがひき出され 00026440M4た。コレくさばう木。おれハちつと(咄十二ウ)用があるか 00026450M5ら、手めへかわつて、こゝにたつてゐてくれろ△◇くさはう木◇ 00026460M6よし+。うけとつたと、しゆろばうきにかわれバ、/客(きやく)の 00026470M7/供(とも)につれてきた小ぞう、モシだんなさま。御用がなくハ、 00026480M8わたしハおさきへかへりませう 00026490¥N18¥J 00026500¥Xたぬき;○かなぼう 00026510M11たぬき、もちまへのきんたま大きなうへに/疝気(せんき)をわづらひ、 00026520M12なを大きくなり、あるく(咄十三オ)時ハくるまにのせて、 00026530M13じしんにひいてあるき、ある/橋(はし)にさしかゝると、/自身番(じしんばん)か 00026540M14ら、かなぼうのこへにて、コリヤ、其橋ハくるまハならぬ 00026550M15といハれて、◇たぬき◇こいつハしまつたと、きんたまをくる 00026560M16まよりおろし、引すつてはしをとふるを、子どもが見つけ、 00026570M17アレ、大きなものをひきずつてゆくハとわらへバ、又ばん 00026580M18どころ£、◇かなぼう◇コレ+、/馬(むま)もならぬぞ(咄十三ウ) 00026590¥N19¥J 00026600¥Xあなご;○どじやう 00026610¥P85 00026620L1/近年(きんねん)あなごのかばやきはやり、いつも◇どぜう◇がおはい+ 00026630L2にて、イヤもふ、うなきもいけやせん。青だのすじだのと 00026640L3りきんでも、とうじのきゝものハ、あなたのことさ。何で 00026650L4も今ハゑどぢうが、おめへさんになびいているから、きつ 00026660L5いものさ。ごうぎにあなたのはなか、たかくなつた△◇あなご◇ 00026670L6はなが/高(たか)いはづだ。おらア(咄十四オ)/芝(しば)のあなごさまだハ 00026680¥N20¥J 00026690¥X小おけ;○さるぼう;ほうてう 00026700L9さるぼうや。ぬしやアけいせいかいハすさまじいもんだぜ。 00026710L10◇さるぼう◇また久しいものよ。手があるといふことか、ぬしも 00026720L11まるいおとこだぜ△◇小おけ◇うさアねへ。ときに、ほう丁が 00026730L12べつそうへたづねて行ふしやアねへか△◇さるぼう◇よかろふと、 00026740L13ふたりづれにて出かけ、ほどなくほうてうが門口へ来り、 00026750L14あんないをいゝ(咄十四ウ)いれると、おくのかたより、 00026760L15◇ほうてう◇ヲヤ、おそろいでよくたづねてきなさつたの△◇両人◇ 00026770L16でへぶ、ふうがなおすまいだね△◇ほう丁◇ナニサ、さびたば 00026780L17かり 00026790¥N21¥J 00026800¥Xかゞミ;○毛ぬき 00026810L20かゞミ山人のしがからさきこへて△わが身の上をかえりミ 00026820M1づうミ、といふとふり、おゐらハたとへにいわるゝほどの 00026830M2せうぢきものゆへ、天下一のぶけんしやだよといへバ、 00026840M3◇毛ぬき◇なるほど、お(三オ)めへの身のうへハうら山しひよ。 00026850M4おいらもぶげんになるのだけれども、今の世ハひたひへ毛 00026860M5ぬきをあてねへのがはやるから、ひまでくう事がならねへ 00026870¥N22¥J 00026880¥Xかけぢ;○いけ花 00026890M8水仙、はないけにさゝれながら、めをひらいてうしろをミ 00026900M9ると、しぎ立沢の秋のゆふぐれ、とかいたかけものがかけ 00026910M10て有ゆへ、(三ウ)◇水せん◇なむさん、はやくさきすぎた 00026920¥N23¥J 00026930¥Xすミとり;○あんどん 00026940M13すミとり、女郎に下げられて/廊下(らうか)をとふると、すミつこに 00026950M14居ずくまつていた◇あんどん◇コレ+、/貴様(きさま)ハしやわせもの 00026960M15だ。夜ル昼となく女郎/衆(しう)に手をひかれ、いちやついてとふ 00026970M16るのをミると、うら山しくつてならねへ△◇すミ取◇そふいわ 00026980M17つしやるな。ぬしも/女(ぢよ)(四オ)郎衆の部屋へハ、よるになる 00026990M18としのびこむじやアねへかといへば、◇あんどん◇それもそふだ 00027000M19が、ひるハきへつゝものこそおもへだ 00027010¥P86 00027020¥N24¥J 00027030¥Xせうじ;○火いれ 00027040L3火入れ、つく※かんがへるに、障子ほどらくな身ぶんハ 00027050L4ねへ。◇せうじ◇とんだことをいふ。ねんぢう立はだかつて、 00027060L5すわるまハねへ△◇火入◇そりやアいゝが、おゐらなぞハきせ 00027070L6るでぶたれる(四ウ)にハよハるよといえば、◇せうじ◇そうい 00027080L7ふな。おれもはられる 00027090¥N25¥J 00027100¥Xけんだい;○火のし 00027110L10/見台(けんだい)がうちへ火のし、あそひにゆき、◇火のし◇ときに、けふ 00027120L11ハ天気もよし、野あそびと出かけるきハなしかへ◇けんだい◇ 00027130L12わしハ出あるく事ハ、けんだいきらひだといへバ、◇火のし◇ 00027140L13コレモ冬としのしわをのばすのよ(五オ) 00027150¥N26¥J 00027160¥Xすりこ木;○ミそこし 00027170L16すりこ木ハだいのふせうものゆへ、ミそこしをよびよせ、 00027180L17けさハ年礼にくる+とまハらうと思ふが、めんどうだか 00027190L18ら、おぬし、/名代(めうだい)をつとめてくれろといへバ、◇ミそこし◇そし 00027200L19て年礼の口上ハなんと申ます△◇すりこ木◇ほかに何もいわずと 00027210L20よしさ。只山/椒(しよ)のすりこ木、年始の御/祝儀(しうぎ)申上ますとばか 00027220M1りさ△◇ミそこし◇それハ(五ウ)むつかしい御口上でごさります。 00027230M2今一おうおきかせなされませ△◇すりこ木◇又れいのしりへぬけ 00027240M3たのか 00027250¥N27¥J 00027260¥Xとくり;○かきね 00027270M6かき根に山吹の花、今をさかりとさきミだれてあれバ、/徳= 00027280M7利(とく=り)口をすぼめて、かきねさん。あの花を一ト枝くんなせへ 00027290M8といへバ、◇山吹◇あのやうにほしがるから、一トゑたやれ 00027300M9がき+と(六オ)いふゆへ、◇かき根◇つく※かんがへて、 00027310M10/葭(よし)にしやう 00027320¥N28¥J 00027330¥Xしゆろぼうき;○草ぼうき 00027340M13/客(きやく)をはやくかへそうとおもひ、しゆろ/箒(ほうき)ハさかさにたつて 00027350M14いると、◇草箒◇モシ+、てんぜうのくものすハ、わたしが 00027360M15とりました 00027370¥N29¥J 00027380¥Xとふふ;○うなぎ 00027390M18うなぎ、貴様ハとかくぬらくらしてくらすの。◇うなぎ◇さう 00027400M19いわつしやるな。これでも二本/串(くし)を(六ウ)さゝれると、お 00027410M20さむらゐで世をわたるわな△◇とうふ◇それもおぬしばかり、 00027420¥P87 00027430L1やしきだと思ふか。おいらもやつこにつかわれるハさ 00027440¥N30¥J 00027450¥Xきせる;○茶わん 00027460L4きせる、つく※かんがへ、とふぞ茶わんやの/錦(にしき)さんとい 00027470L5ろごとがしてミたいが、それにしても、こんななりでハつ 00027480L6まらねへ。マア何がよかろう。まづくだりやあめらうなぞ 00027490L7ハ子供らしく、(七オ)しら竹ハにやけてわるし。ぐつと人 00027500L8がらにさびときめて、ちやわんのひざにもたれてくどきけ 00027510L9れバ、◇茶わん◇ばからしい。おめへさんにもにやわねへとい 00027520L10へバ、◇きせる◇おめへ、われかゝつていながら、ぴん+し 00027530L11なさんな 00027540¥N31¥J 00027550¥Xふせがね;○あぶらげ 00027560L14あぶらげ、ふせがねにむかひ、さりとハおめへの/様(やう)なうま 00027570L15れつきハねへ。あたまをたゝかれ、なきなが(七ウ)らも物 00027580L16いゝをしたことがねへの。◇ふせがね◇わたしもぐつとハすれど 00027590L17も、むねにおさめていやすのさ△◇あぶらげ◇それがだい一チだ 00027600L18よ。おゐらなぞハそれがならねへハな。いつでもそれとい 00027610L19ふときにやあ、わらではちまきをしてかゝらア 00027620¥N32¥J 00027630¥Xごとく;○はいふき 00027640M3五とくハおやこ三人づれにて、うたいをうたひながら、門 00027650M4口へ立て、壱文のこうりよくを/請(うけ)(八オ)ている所へ、◇はい吹◇ 00027660M5コレハおひさしぶり。ときにわたしも、はいもふきたてら 00027670M6れぬしぎゆへ、あきないをはじめやした△◇五とく◇それハ何 00027680M7より。わたしがうちも火がふるゆへ、右の仕合せ 00027690¥N33¥J 00027700¥Xさかな;○たゝみ 00027710M10正月がくるといつて、/畳(たゝミ)の/表(おもて)がへをして/敷(しき)けれバ、たゝミ 00027720M11もぐつとかうまんなかほ付にて、どふぞおれが身を肴めら 00027730M12にミせてへ(八ウ)もんだと思ひ、ある日さかなをよびよせ 00027740M13しあとから/鯛(たい)、はやあしにかけきたり、◇鯛◇おふきにをそく 00027750M14なつた。ゑびすにつられていやしたと、いつてゐるところ 00027760M15へ、せうさいふぐきたれば、◇ミな+◇ごうぎにおそかつたの。 00027770M16そんなつらをして、またれいのとふり、いちやついていた 00027780M17あろう△◇ふぐ◇大きにふくれる 00027790¥N34¥J 00027800¥Xつりがね;○らうそく(九オ) 00027810M20夕べうちにいると、てうちんがきて、こんや吉原へ、ぶら 00027820¥P88 00027830L1+ながしにいかねへかといつたが、五丁町のことハおい 00027840L2て、壱丁もあるくのハいやだといつてことわつた。◇つりがね◇ 00027850L3それがいゝ。おいらハ夕/部(べ)けで、いつそつかれきつている 00027860¥N35¥J 00027870¥Xねこ;○にわとり;ねづミ 00027880L6十六七のむすめがとふると、◇猫◇アヽ、イヽむすめだ。ぐつ 00027890L7とふたまた迄わりこミてへもんだ(九ウ)◇とり◇なるほど、と 00027900L8つけこひといふ女だ△◇ねづミ◇ミんなハほめるが、ちうだぜ 00027910¥N36¥J 00027920¥Xいたち;○りす 00027930L11りす、門口に出ていると、いたちがとふるゆへ、◇りす◇此頃 00027940L12ハさつパりとミかぎつたの。いたちの道をきつたとハ、お 00027950L13めへのこつたぜ△◇いたち◇わたしもこうをへたやうに、てん 00027960L14と出られねへから、それゆへさ△◇りす◇そんなら、けふハゆ 00027970L15るりとはなしねへ。内ぢうミん(十オ)なりすだから 00027980¥N37¥J 00027990¥Xすりばち;○しやくし 00028000L18◇すりばち◇しやくしさん。おまへハすなをなうまれつきで、そ 00028010L19して人をすくつてやんなさるから、さだめてしやくしによ 00028020L20らいとでも、いわれなさるだらう△◇しやくし◇それハあたりま 00028030M1へさ。おまへハみかけににやいなさらねへ、かたひ生れ 00028040M2つきだそ△◇すりばち◇そうミへますかへ△◇しやくし◇ミへますとも 00028050M3+(十ウ)△◇すりばち◇そりやあうれしいが、あらぎな人手に 00028060M4かゝると、つひおちて、われますよ 00028070¥N38¥J 00028080¥Xかなづち;○茶わん 00028090M7たとへにさえ、石部金吉、かなづちハかたひものだといわ 00028100M8るゝなかに、ぬしのやうなどうらくなものハねへ。なんで 00028110M9もよくむねの火のやきつぎに、われてもすへハあをふと思 00028120M10ひなすつても、モウにし木手といふ女郎しゆハうけ出され 00028130M11(十一オ)て、いなかへいきやしたといわれ、◇茶わん◇ふさい 00028140M12だかほつきにて、くだけてものを思ふころ、だねヱ 00028150¥N39¥J 00028160¥Xあふぎ;○わきざし 00028170M15浅草の二十間茶屋にて、わきざし、あふぎに出合、モシ、 00028180M16こんやハ七軒の茶屋から、五明らうと出かける気ハなしか 00028190M17へ。◇あふぎ◇わたしやア用があるから、よしにしやせう△ 00028200M18◇わきざし◇コウ、金がねへのなら、どふともしようぜ△◇あふぎ◇ 00028210M19ナニ、きんけな(十一ウ)ぞハてんちにありやすが、ふた 00028220M20おやぼねがやかましいからさ△◇わきざし◇おめへもやぼなこと 00028230¥P89 00028240L1をいふぜ。おいらなざあ、つばらねへとしりながら、せつ 00028250L2ぱつまりやア、かしらの目だまをめ/貫(ぬき)として、それでいか 00028260L3ねへと、ゆけていきやすハな 00028270¥N40¥J 00028280¥Xこんにやく;○まき 00028290L6おなじ女にうまれながらも、こんにやくさんなぞハいろ 00028300L7ごとをするときハ、ぶる+ふるへな(十二オ)がら、ぷり 00028310L8+してミせなさるくせだよといえバ、◇こんにやく◇ヲヤ+ 00028320L9ばからしいよ。おまきさんなぞハ、わられるとき、よくそ 00028330L10げたがる 00028340¥N41¥J 00028350¥X尺八;○門ト札 00028360L13春の雪ちら+とふりけれバ、尺八ハかど札がまへゝきた 00028370L14り、たゞいまより、むかふじまとしやれなさる思召ハござ 00028380L15らぬかといへバ、◇門ト札◇ソレハ御無用になされませ(十二ウ) 00028390¥N42¥J 00028400¥X三味せん;○すゞり石 00028410L18すゞりハつくえによりかゝつていると、うしろから◇三味せん◇ 00028420L19岩にせかるゝ瀧川の、水かなミだかする墨の、筆のいの 00028430L20ち毛ばら※と、こぼれかゝるや袖のはるさめ、といろ 00028440M1+くどけども、いつこふ返事をせぬゆへ、じれつてへよ 00028450M2といゝながら、かたをつめれバ、◇すゞり◇アイタヽヽヽヽ。 00028460M3こんなにはだが、むらさき石になつた(十三オ) 00028470¥N43¥J 00028480¥Xへび;○わらじ;印らう 00028490M6料理茶やへゆき、へびハのんたり、わらじハくつたりして 00028500M7いるなかばへ、印らうきたり、てうし、さかづきをもつて 00028510M8ゆくゆへ、◇二人◇コウ、なぜもつてゆくといへバ、◇印らう◇ハ 00028520M9イ。さげるのでござります 00028530¥N44¥J 00028540¥X四ツ手かご;○つゞら 00028550M12夜の五ツに出てのるかごハ、四ツをうつゝか土手ハ夢、と 00028560M13うたひながらゆくと、向ふからつゞら(十三ウ)きたりけれ 00028570M14バ、◇かご◇てめへ、こんやあそびにいかねへか△◇つゞら◇壱文 00028580M15もねへが、いゝか△◇かご◇それじやあ、つまらねへ△◇つゞら◇ 00028590M16おいらハおぶさつて行きだ 00028600¥N45¥J 00028610¥Xふね;○いかり 00028620M19いかりハ、ふねはらからのためにしづミし恋のふち、うか 00028630M20ミもやらぬと、おも+しくひとりごとをいつて居るとこ 00028640¥P90 00028650L1ろへ、船きたり、◇ふね◇あまりなつかしさに、こがれていた 00028660L2わな(十四オ) 00028670¥N46¥J 00028680¥X金ざいふ;○たばこ入 00028690L5さいふ、女郎かいにゆかんとするところへ、たばこいれ来 00028700L6りけれバ、おのしもこんやゆきやれといへバ、◇たばこ入◇さや 00028710L7うなら、かミにして下さりませ 00028720¥N47¥J 00028730¥Xうぐひす;○油とくりこよミ 00028740L10鴬、あるおやしきへ哥でよばれてゆくが、おめへもいつて 00028750L11くんなさるめへか。◇こよミ◇ゆきやせふが、(十四ウ)おさんば 00028760L12かりたんとじやアあやまるの△◇鴬◇むだハよしなせへ。だが 00028770L13まづ、おめへハきまつたが、あぶら徳利が、つれていつて 00028780L14くれろといふが、どうしたもんだらう△◇暦◇そふいふものを 00028790L15はぶかれもしめへ。とかく、たいらかなのがいゝハな△◇鴬◇ 00028800L16それでも、あいつア口がすべると、とんだことをいふやつ 00028810L17だからさ△◇暦◇ハテナ。そんなら、のぞくことだ 00028820¥N48¥J 00028830¥Xうゑ木;○/鍬(くわ)(十五オ) 00028840L20夕部の女郎かいハおもしろかつたと、うへ木どふしゐる所 00028850M1へ、鍬きたりて、◇鍬◇おめへがたハ何をはなしなさる△◇うへ木◇ 00028860M2ちよつとしたわけさ△◇鍬◇どふ云ふわけだと、根をおしてき 00028870M3けども、はなさぬゆへ、Sそんなにかくすと、根をほるぜ 00028880¥N49¥J 00028890¥X琴;○そろばん 00028900M6◇こと◇酒がのミてへもんだといへバ、◇そろばん◇そりやアむだだ 00028910M7せ△◇こと◇かんじやう高ひ事をいわずと、一ト口のミ(十五ウ) 00028920M8なせへといゝながら、居酒屋へ行キ、ちよつと五合ちろり 00028930M9んかんをしてくんな 00028940¥N50¥J 00028950¥X筆;○手本 00028960M12◇筆◇手ほんさん。おめへをなぐり書にかひてやろうと思ふが、 00028970M13どふだ△◇手本◇そうきくと、身がぞく+する△◇筆◇そりやア 00028980M14またなぜ△◇手ほん◇それでも、ミゝづがのたくるやうだ 00028990¥N51¥J 00029000¥Xたぬき;○馬(十六オ) 00029010M17◇狸◇おれが女郎かいにゆくと、ぬしやあ、せんきもちかへと 00029020M18いふぜ△◇馬◇そのほうハまだいゝが、おゐらハいつでも、さ 00029030M19きからおことハりだ 00029040¥P91 00029050¥N52¥J 00029060¥X/土(ど)びん;○かミそり;こきう 00029070L3こんやハおとしはなしでもしながら、にばなでたのしもう 00029080L4じやアねへか。それにつひても、かミそりをよびにやろう。 00029090L5◇こきう◇かミそりをよぶなら、おいらハ帰るぜ△◇どびん◇なぜと 00029100L6いへバ、◇こきう◇ハテ、あの人(十六ウ)とハ、すれ+だ 00029110¥N53¥J 00029120¥Xつゞミ;○たいこ 00029130L9日待の夜、茶番きやうげんに、つゞミハさわ村源之介気ど 00029140L10りにて、花道から出ると、たいこハ嵐冠十郎といふ身で出 00029150L11きたり、◇たいこ◇さる川つゞミの介どの。足利家につたわる 00029160L12ほうけん/紛失(ふんじつ)なすからハ、きでんのぬすんだにそういハあ 00029170L13るまいがな△◇つゞミ◇こハ思ひよらざるきでんのおこ(十七オ) 00029180L14とば△◇たいこ◇イヤ、せつしやがとくににらんでおいたとい 00029190L15ゝながら、扇をもつてたゝきけば、◇けん物◇ばちがあたる 00029200L16ぞ 00029210¥N54¥J 00029220¥Xだい※;○ゑび 00029230L19だい※とゑひ、柳ばしからふねにのると、◇船頭◇モシだん 00029240L20な。深川ハ夜ルよりか、ひるがよふござりますねへ△◇代&◇ 00029250M1ひるいきてへが、此せつハくいつミでいそがしいから、夜 00029260M2ルたのしむのよ△◇船頭◇(十七ウ)へヱ、そんなら十五日過か 00029270M3らハ、おひまでございますかへ△◇ゑび◇そうさ。十五日ハセ 00029280M4ンシウらくだよ 00029290¥N55¥J 00029300¥X米あげざる;○つるべ;なわ 00029310M7◇つるべ◇モシだんな。女郎かいにいきなさるハ、かまいもし 00029320M8ねへが、ちつとハ内にもいなさるがいゝのさ△◇ざる◇コレ、 00029330M9そねへにやきもちをやくな。おれだつても、つきやいとい 00029340M10ふものがあるから、出ずにもいられねへハな△◇つるべ◇久し 00029350M11いものよ。わたしがちつとなんぞといふと、付(十八オ)/合(やい) 00029360M12だ+といゝなさるが、吉原のわけもうす+ハせふちさ 00029370M13トいわれ、ざる、大きにあつくなり、◇ざる◇ナニ、よし原の 00029380M14わけをしつてゐる。イヤ、しつているもすさまじい。其つ 00029390M15らハなんだ。そんなにほうをふくらかすな。てうどつる 00029400M16べずしのおもしがすぎたといふつらだと、いつぺいをなら 00029410M17べてゐる所へ、/縄(なわ)きたり、◇縄◇コレ+久しいもんだ。又ふ 00029420M18うふげんくわだの。ちとたしなミなせへトいわれ、女房 00029430M19つるべ、表の方へ/欠(かけ)出ス。◇縄◇コレ+、どこへゆくきだ△ 00029440M20◇つるべ◇井戸へ身をなげにさ(十八ウ) 00029450¥P92 00029460¥U噺本大系△第十五巻 00029470¥T/落咄口取肴(おとしばなしくちとりざかな)〔序題〕 00029480¥G 00029490¥Y 00029500L17文化十五年正月序 00029510L18十返舎一九序 00029520L19愚舎一得画 00029530L20小本一冊 00029540¥Y/落咄口取肴(をとしはなしくちとりさかな)/序(じよ) 00029550M3/四海(しかい)/波(なミ)しづかに、/門松(かどまつ)の/枝(えだ)をならさぬ/時津風(ときつかぜ)を/得(ゑ)て、/青柳(あをやぎ) 00029560M4の/糸(いと)くりいだす/凧巾(いかのぼり)のをちのくる跡を、/春(はる)風の/袋(ふくろ)入となし 00029570M5たる/梅(むめ)の/噺(はなし)の/種本(たねほん)を、/百囀(もゝさへづり)の口びやうしに/書(かき)(一オ)/集(あつめ)め 00029580M6たる/筆(ふで)の/試(こゝろミ)。/重詰(ちうづめ)の/口取(くちとり)さかなと/題(だい)せしは、/煮豆(にまめ)/数(かづ)の子に 00029590M7ひとしき/嘉例(かれい)の/新版(しんはん)。是でひとつ、きこしめせとしかいふ 00029600M9△△/戍((ママ))寅春△△△△△△△△△△△△十返舎一九誌 00029610M10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一ウ) 00029620¥P93 00029630¥G(二オ) 00029640G1〔口絵中の歌詞〕 00029650G2△△愛敬に紅をさしたる口もとは 00029660G3△△△梅のはなしのひらく種本△△五返舎半九 00029670G4△△△△△△△△△△△△△△△△愚舎一得画△(二オ) 00029680G5△△一文もはらハぬうちへかけとりの 00029690G6△△△あきれか礼に来る元日△△十返舎一九△(二ウ・三オ) 00029700¥N1¥J 00029710¥X/年玉(としだま) 00029720M3/一夜(いちや)あくれバ/御慶(ぎよけい)申入ますの/声(こへ)/賑(にぎ)ハしく、ある人、/去暮(きよくれ)ハ 00029730M4/相応(そうおう)にしまひて、ことしこそ/年礼(ねんれい)に出かけんとて、だんな 00029740M5Sコレ+三すけ。見る通り、礼者がいろ+のとしだま 00029750M6をもつてくるが、おれハことし/工夫(くふう)した。なんでも、さき 00029760M7の/商売(しやうばい)によつてうれしがるものを、としだまにやろうとお 00029770M8も(三ウ)つて、/買(かひ)あつめておゐた。コレ見やれ。/先(まづ)となり 00029780M9の/米(こめ)屋へハ、米をさす竹のさし△三助Sなるほど。コリヤ、 00029790M10向ふでじきに/用(よう)にたつものだから、/嬉(うれ)しがりませう△だん 00029800M11なSそのとなりハ/指(さし)ものやだから、竹の/釘(くぎ)壱合。それから 00029810M12となりの/表具(ひやうぐ)屋へはけ壱本△三助Sひやうぐやのとなりハ 00029820M13お/医者(ゐしや)さま。これへハなんでござります△だんなSこのと 00029830M14しだまがむつかしかつた。(四オ)やう+とあんじてかつ 00029840M15て来た、この/和藤内(わとうない)の/人形(にんぎやう)。/医者(ゐしや)といふものハ、人が/煩(わづら)ハ 00029850M16ぬと/銭(ぜに)にならぬものだから、和藤内がはちまきをしてゐる 00029860M17所を/病人(びやうにん)と見て、医者どのへ/祝(いは)つてやるのだ△三助Sなる 00029870M18ほど、病人ハはちまきをするものだから、これハ医者さま 00029880M19が/悦(よろこ)びませう。とてものことに、/斯(こう)なされませと、かの人 00029890M20形をとつて(四ウ)板の間にうちつけ、あたまをぶつかく。 00029900¥P94 00029910¥G(二ウ・三オ) 00029920M1だんな/肝(きも)をつぶし、だんなSとんだ事をした。/疵(きず)ものにし 00029930M2てハやられぬ△三助Sイヤ、それでよふござります。あの 00029940M3医者さまハ、/本道(ほんだう)より/外科(げくハ)がお/上手(じやうず)でごさりますげな 00029950¥N2¥J 00029960¥X/大黒(だいこく) 00029970M6とし男Sをにハそと+/福(ふく)ハ内+と、/豆(まめ)をまいて(五オ) 00029980M7ゐるそばに、/頭巾(づきん)をかぶつた人がうろ+と、なにか/尋(たづね)る 00029990M8やうす。としおとこ見つけて、Sコリヤ、おまへハ見なれ 00030000M9ぬ人だが、どなたでござります△大こくSおれハ大こくじ 00030010M10やが、こなたへ/福(ふく)をさづけやうとおもつて出て来たが、/肝= 00030020M11心(かん=じん)の/槌(つち)を今とりおとして、たづねてゐる△とし男Sさてハ 00030030M12さやうか。ドレ+、とこらへお/落(をと)しなされましたと、と 00030040M13も+/尋(たづね)て(五ウ)ゐるうち、大こく、つまづきころげて/足(あし) 00030050M14をすりむき、大こくSあいた+△とし男Sヲヤ、お/怪我(けが)を 00030060M15なされましたか。/膏薬(かうやく)でもつけて上ケませうと、無二かう 00030070M16を取出し、/紙(かみ)にのばしかけると、おもてをとをる人が、 00030080M17Sチヽヽヽンチン+、あハれなるかないしどう丸ハ、と 00030090M18うたつてゆくと、大こくSつちをたづねてかうやくのばす 00030100M19(六オ) 00030110¥P95 00030120¥N3¥J 00030130¥X/毒(どく)まんぢう 00030140L3おせうSコリヤ/小僧(こぞう)よ。おれが/留主(るす)のうち、戸だなのまん 00030150L4ぢうをくふなよ。あのまんぢうにハ/毒(どく)があつて、くふとじ 00030160L5きにしぬから、かならずくふな。きつといひつけたぞと出 00030170L6てゆかれし/跡(あと)にて、小ぞう、かのまんぢうを取出し、/残(のこ)ら 00030180L7ずくつてしまひし所へ、おせうの/声(こへ)がするゆへ、(六ウ)小 00030190L8ぞうたちまち、おせうがひそうの/茶碗(ちやわん)を/板(いた)の間へうちつけ、 00030200L9みぢんに打くだきて、わざとないてゐると、おせう/帰(かへ)り、 00030210L10おせうS小ぞう、なぜなく。どふした△こぞうSわたくしハ 00030220L11申わけもない事をいたしました。あなたのおるすに、/門前(もんぜん) 00030230L12の市と/角力(すまふ)をとつて、わたくしが御ひそうのちやわんの上 00030240L13へ打こけて、此やうに打くだひて(七オ)しまひました△お 00030250L14せうSヱヽにくひやつ。おれが/大事(だいじ)のちやわんをみぢんに 00030260L15しをつた△こぞうSそれで申わけがござりませぬから、/生(いき) 00030270L16てハゐられぬ。いつそのこと、しんでしまをふとぞんじま 00030280L17して△おせうSどふした△こぞうSまんぢうをミなくつてし 00030290L18まひましたが、まだしにませぬ 00030300¥N4¥J 00030310¥X/竹(たけ)の/子(こ)(七ウ) 00030320M1となりの/薮(やぶ)の/根(ね)がはつて、竹の子はへしをとつてゐると、 00030330M2となりの/亭主(ていしゆ)見つけて、やぶぬしSコレ+、その竹の子 00030340M3ハこつちの/薮(やぶ)からはへたのだから、こつちのものだ。/断(ことハり)な 00030350M4しに、なぜとるぞ△はたけぬしSイヤ+、おいらが/畑(はたけ)へは 00030360M5へたのだからとるのだ。/尤(もつとも)、そつちの薮から根ハはつてゐ 00030370M6るか、はへた所がおいらのはたけだから、竹の子ハこつち 00030380M7のものだ△やぶぬしSそつちの(八オ)はたけにはへたとつ 00030390M8て、その竹の子をとるなら、おれもそつちからとるものが 00030400M9ある△はたけぬしSソリヤ何をとる△やぶぬしSソレ、いつぞ 00030410M10やきさまの所の/牛(うし)が、おらが/牛部屋(うしべや)で子をうんだことがあ 00030420M11つたが、おぼへてゐるか△はたけぬしSヲヽおぼへてゐる△ 00030430M12やぶぬしSその時おれハ/律義(りちぎ)に、その/親(おや)うしも子もそつち 00030440M13へひかせてやつたが、其竹の子をとるくらひなら、うしの 00030450M14子もこつ(八ウ)ちのうしべやで生れたのだから、こつちへ 00030460M15よこせと、この/理(り)づめにぎつちりつまりて、はたけぬしSそ 00030470M16んなら、おいらもまだとるものがある△やぶぬしS何をとる 00030480M17ぞ△はたけぬしSきのふおいらがそつちへいつたとき、せつ 00030490M18ちんをかりたが、そのときたれたのをよこせ+ 00030500¥P96 00030510¥N5¥J 00030520¥X/徳利(とくり) 00030530L3むすこSおらが/親父(をやぢ)ハきつい/酒(さけ)ずきで、おれがしん(九オ) 00030540L4たら/古郷(こけう)/備前(びぜん)のくにへやつて/葬(ほうむ)つてくれ。そふするとおれ 00030550L5ハ/備前(びぜん)の/徳利(とくり)になつて、/不断(ふだん)/腹(はら)にさけをたやさずにゐたい 00030560L6と、くち/癖(くせ)のやうにいひじにゝせられたから、その/骨(こつ)をわ 00030570L7ざ+備前へやつて/葬(ほうむ)つたが、/今頃(いまごろ)は/徳利(とくり)になつてゐらる 00030580L8ゝことやら。さいわゐ、となりへ/巫女(いちこ)が来てゐるから、よ 00030590L9せて見やうと、さつそく(九ウ)となりへゆき、いちこのま 00030600L10へゝ水をむけると、やがていちこ、しやべり出し、いちこ 00030610L11Sよくぞたづねてくれた。うれしい。/去(さり)ながら、今ハ/備前(びぜん) 00030620L12のくにでな、/徳利(とくり)になつて△むすこSそれハ/本望(ほんもう)でござろ 00030630L13う。つね※おまへが/願(ねが)ひのとをりで△いちこSイヤ、/徳(とく) 00030640L14利になりハなつたが、/悲(かな)しい事にハ△むすこSどふしまし 00030650L15た△いちこSしやうゆどくりになつてゐるハ(十オ) 00030660¥N6¥J 00030670¥X/熊(くま)の/皮(かハ) 00030680L18Sヤレ+/御隠居(ごゐんきよ)さま。お久しうござります。いつも御/機= 00030690L19嫌(き=げん)よくて、おめでたうぞんじます。ちよつとお/伺(うかゞ)ひ申ませ 00030700L20うとぞんじても、とりまぎれて大きに御/無沙汰(ぶさた)いたしまし 00030710M1た。モシ、このあなたのしゐてござる/皮(かハ)ハ、/熊(くま)の/皮(かハ)でござ 00030720M2りますか。さて+やハらか(十ウ)そふな皮でござります。 00030730M3ドレ+となでまハして見て、Sホンニ、/妻(さい)もよろしくと 00030740M4申ました 00030750¥N7¥J 00030760¥X/無筆(むひつ) 00030770M7をやぢSコリヤ/長松(てうまつ)。おのれハなぜ手ならひにゆきおらぬ。 00030780M8あそんでばかりけつかつて。にくひやつだ。はやくいけ 00030790M9+△長まつSとつさんハそんなにおいらをしかるが、お 00030800M10まへも手ならひハきらいじやア(十一オ)ないか△をやちSナ 00030810M11ニ、きらいなものか。おれハわいらの/時分(じぶん)にハ、/精(せい)/出(だ)して 00030820M12/習(なら)らつたものだ△長まつSヲヤ+、うそをつく。そんな 00030830M13らおまへ、おいらがかく/字(じ)をあてゝ見な△をやぢSべらぼ 00030840M14うめ。うぬらがかく/字(じ)を、しらねへでなるものか△長まつ 00030850M15Sそんなら、これハなんといふ/字(じ)だと、/米(こめ)といふ字をかく。 00030860M16/親父(をやぢ)/無筆(むひつ)ゆへ、その字ハ+とばかりいつてこまるを見 00030870M17(十一ウ)かねて、/女房(にようぼう)、米びつへゆびをさし、をしへると、 00030880M18をやぢSヲヽ、それハ/米(こめ)といふ/字(じ)だ△長まつSヲヤ、よく 00030890M19しつてゐなさる。そんならこの字ハと、/酒(さけ)といふ字をかく。 00030900M20をやぢS米といふ字さへしつてゐるくらひだもの、その字 00030910¥P97 00030920L1もしらねへでなるものか△長まつSそんならなんといふ字 00030930L2だ△をやぢSそれか+と、女ぼうのほうを見るゆへ、女 00030940L3ぼう、をしへてやらんとすれども、何もをし(十二オ)へる 00030950L4ものがなきゆへ、そつとをやぢの/耳(ミヽ)へくちをよせて、おま 00030960L5へのすきなものだといへバ、をやぢSヱヽおのれ。/親(をや)のま 00030970L6へで、そんな大ぐちをなぜかく 00030980¥N8¥J 00030990¥X/早呑込(はやのミこミ) 00031000L9ある男Sこのあいだ/上野(うへの)の/花見(はなミ)にいつて、/一首(いつしゆ)よんだ△友 00031010L10だちSイヤ、きさまが/歌(うた)とハめづらしい。なんとよんだ△ 00031020L11男Sうへのゝ山の花を見ながら、/吸筒(すひづゝ)の/酒(さけ)をのんで、/弁(べん) 00031030L12(十二ウ)/当(とう)をくひにけるかな、とよんだ△友S大かたそん 00031040L13な事であろうとおもつた。/歌(うた)といふものハ三十一/文字(もじ)によ 00031050L14むものだ。きさまのやうに、そんなながたらしいうたがあ 00031060L15るものか△男Sハヽア、うたハ三十一もじにきめてよむも 00031070L16のか。よし+、/今度(こんど)ハ三十一もじによんで見せやう。時 00031080L17にこゝの/床(とこ)の/間(ま)の七/福神(ふくじん)のかけ地ハ、だれがかいたのだ 00031090L18友たちSあれハ(十三オ)/英(はなぶさ)/一蝶(いつてう)の/筆(ふで)さ△男Sヲツト、そ 00031100L19れで一首よんだ。こんどのハ/急度(きつと)、三十一もじによんだ 00031110L20友たちSなんとよんだ△男Sとこの/絵(ゑ)にじゆろじふくろに 00031120M1ゑべでこく△ほてにびしやべてはなぶいちよ筆 00031130¥N9¥J 00031140¥X/白籏(しらはた) 00031150M4かた++かたり+と、/黒(くろ)しやうぞくのしのびのもの、 00031160M5/薮(やぶ)だゝミを切ぬき、くちにしらはたをひつ(十三ウ)くハへ 00031170M6て出、あたりを見まハし、しのひSまんまと/宝蔵(ほうぞう)へしのび 00031180M7いり、うばひとつたる此/白籏(しらはた)。これさへあれバ/大願(だいぐハん)じやう 00031190M8じゆ、かたじけないと/懐中(くハいちう)へおさめゆく所へ、うしろから 00031200M9/丸裸(まるはだか)の/男(をとこ)、Sくせもの、まつた△しのびSなんと△男Sコ 00031210M10レ+、おれがふんどしを、どこへもつていく 00031220¥N10¥J 00031230¥X/棚(たな)の/字(じ) 00031240M13/無筆(むひつ)の男、Sアノ/酒(さけ)といふ/字(じ)ハ、どふかきやす(十四オ)友 00031250M14たちSさけといふ/字(じ)か。/斯(こう)かくハと、ゆびにてたゝみの上 00031260M15へかいて見せ、あとをけしておくと、むひつS字をかいた 00031270M16ハきこへたが、そのあとを、なぜけしたのだへ△友Sハテ、 00031280M17/畳(たゝミ)ハ人のふむものだ。字をかいたうへをふむハ/勿体(もつたい)ないか 00031290M18ら、かいたあとをけしておくのさ△むひつSハヽアきこへ 00031300M19やした。時にまだ/聞(きゝ)たい字がある。/棚(たな)といふじハどふかく 00031310M20ね△友Sそれハかうだと、ゆびにて/宙(ちう)へ/棚(たな)(十四ウ)といふ 00031320¥P98 00031330L1じをかいて見せ、又あとをけしておくと、むひつSモシ、 00031340L2/畳(たゝミ)の上へかいたのハ、人がふむからあとをけしておくハき 00031350L3こへたが、何もちうとへかいたのを、けさずとものことだ 00031360L4に、なぜそれもけしなすつたのだへ△友Sイヤ、これもけ 00031370L5しておかぬと、ひとがあたまをうつ 00031380¥N11¥J 00031390¥X/間違(まちがひ)(十五オ) 00031400L8/去(さる)所のかミさまが、/亭主(ていしゆ)の/他国(たこく)したるすにて/頓死(とんし)した所、 00031410L9/長屋中(ながやぢう)が/寄合(よりあひ)、/店受(たなうけ)と/相談(そうだん)して、おてらへもつてゆき、/湯(ゆ) 00031420L10くハん/場(ば)にてゆくハんをして、もとの/桶(おけ)へ入れ、サアおか 00031430L11うずりといふ時、おてらの/坊(ぼう)さま、Sコレ+、/仏(ほとけ)ハ与太 00031440L12九郎どのゝ/内儀(ないぎ)でハござるまい。コレ見なさい。どふも女 00031450L13でハない、男のよふだ。そして(十五ウ)この/仏(ほとけ)にハ/首(くび)がな 00031460L14い。むなひげがはへてあるからハ、/首(くび)ハなけれど、おとこ 00031470L15のしがいにちがひハない。なんにしろ、是ハがてんのいか 00031480L16ぬ事でござるといふに、ミな+おどろき、/桶(おけ)の中を/覗(のぞ)き 00031490L17見る所に、なるほど/首(くび)が見へず。ハテかわつたことだ。今 00031500L18ゆくハんするまであつたくびが、どふしたことだと、大さ 00031510L19ハぎとなり、大屋さまをよんで(十六オ)来れバ、さつそく 00031520L20桶の中をあらためて見て、大屋Sイヤ、きづかいさつしや 00031530M1るな。くびハありますぞ△ミな+Sあるとハ、ドレ、どこ 00031540M2にあります△大屋Sひつくりかへして見さつしやい。是ハ 00031550M3/逆(さか)さまにいれたのだ 00031560¥N12¥J 00031570¥X/大工(だいく) 00031580M6Sモシ+大工さん。きのふおまへにつつてもらつた/棚(たな)が、 00031590M7もふをちました。どふぞ/今度(こんど)ハをちぬ(十六ウ)やうに、/じ((ママ)) 00031600M8つかりとぶつつけて下さい△大工Sハイ+、かしこまり 00031610M9ましたと、さつそく打つけてしまひ、大工Sサア+これ 00031620M10でよい。モシ、かならずこゝへものを上ケなさいますな。 00031630M11あげると、おつこちますから 00031640¥N13¥J 00031650¥X/爺(てゝ)なし子 00031660M14いたづら/娘(むすめ)、てゝなし子をはらミ、/母親(はゝをや)、いろ+/詮義(せんぎ)す 00031670M15れども、/相手(あいて)が大ぜいにて/誰(たれ)の子と(十七オ)/たれの子と((ママ))い 00031680M16ふことわからず。/生(うま)れた上でハその子の/顔(かほ)が、ぜひそのぬ 00031690M17しに/似(に)るであろうから、そこでわかるだろうと、/打捨(うちすて)てお 00031700M18くうち/臨月(りんげつ)になり、やがてむすめが/産(さん)をすると、男の子が 00031710M19/生(うま)れる。母をやSこの子ハマア/誰(たれ)に/似(に)たろうか、どふもし 00031720M20れぬ。誰の子であろうといふと、生れた/((子脱カ))むつくとたつて、 00031730¥P99 00031740L1そばにあるかなだらゐを(十七ウ)グワントならして、S/法= 00031750L2界(ほう=かい)の/忰(せがれ) 00031760¥N14¥J 00031770¥X/貧乏神(びんぼうがミ) 00031780L5Sヤレ+/煤(すゝ)はきをしたら、/気(き)がせい+としたと、/台所(だいどころ) 00031790L6にのミかけてゐる所へ、/棚(たな)のうへから、どつさりとおちる 00031800L7を、何かと見れば、/色(いろ)/黒(くろ)く/小(ちい)さきおとこ、手に/渋団扇(しぶうちわ)をも 00031810L8ちたり。さてこそ/貧報神(びんぼうがミ)めと、そう+にたゝき出して、 00031820L9ていしゆSサテ+(十八オ)今までハすることなすこと、 00031830L10まちがひだらけで、なぜこんなに/仕合(しあハせ)がわるいとおもつた 00031840L11に、アノびんぼう神めがおつたゆへだ。あいつめを、もふ 00031850L12/追出(おひだ)してしまつたから、是から仕合がなをるだろうといつ 00031860L13てゐるうち、/棚(たな)の上にてびんぼう神ども、Sコリヤ+、 00031870L14そんなにおすな。おすとまたおちる 00031880¥N15¥J 00031890¥X/鯛(たい)のあたま(十八ウ) 00031900L17ある山中の/村(むら)へ、/鳶(とび)が/鯛(たい)のあたまをさらつてきたり、おつ 00031910L18ことしてゆくと、村中があつまり、Sこれハついに見たこ 00031920L19とハないものだが、なんであろうと、いろ+/評議(ひやうぎ)した所 00031930L20が、わからず。/庄(せう)屋、しばらくかんがへて、Sハヽアしれ 00031940M1た+。これハゑびすさまのつかぶくろだ 00031950¥N16¥J 00031960¥X/小僧(こぞう)(十九オ) 00031970M4小そうSおらがたんなさまハ、おれに/手習(てなら)ひをしろの、そ 00031980M5ろばんをならへのといわつしやるが、/精(せい)/出(だ)しておれに/十露= 00031990M6盤(そろ=ばん)や手ならひをならハして、おれを/番頭(ばんとう)にでもする/気(き)だそ 00032000M7ふなが、ナニ、おれがその手をくふものか(十九ウ) 00032010¥P100 00032020¥U噺本大系△第十五巻 00032030¥T/一雅話三笑(いちかわさんしよう)〔題簽〕 00032040¥G 00032050¥Y 00032060L16文化頃刊 00032070L17曼亭鬼武序 00032080L18蔦屋重三郎板 00032090L19小本一冊 00032100L20国立国会図書館蔵 00032110¥Y序 00032120M3/御慶(きよけい)申入/升(ます)ス。/忝(かたしけな)ふ/厶(こざる)ルト、一/夜(よ)あくれば世の中の、ミ 00032130M4るものきくもの/皆(ミな)あたらしく、中にもわきて水きハの、た 00032140M5つた今来た/新作(しんさく)/荷物(にもの)、一たび/聞(きけ)ハ、七十五日/生(いき)のびるのが 00032150M6うけ/合(あひ)うり、(オ)はなしのてつへんかけねなし、そこか/作= 00032160M7者(さく=しや)の/山(やま)ほとゝきすはつ/堅魚(かつを)と、/目(め)に/青表帋(あをびやうし)のはじめにしる 00032170M8す 00032180M10△△△△△△△△△△△△△△京伝門人 00032190M11△△△△△△△△△△△△△△△△△曼鬼武述 00032200M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(ウ) 00032210¥P101 00032220¥N1¥J 00032230¥X/七種粥(なゝくさかゆ)△@▽女郎△△△△|○ほうはい女郎@ 00032240L3/女郎(じようらう)二人よりて/睦(むつま)しく/咄(はな)す。▽アノ、けふは正月七日だ 00032250L4から、七くさがゆをたべるもんだと、吉さんが御いひなん 00032260L5したによつて、/薺(なづな)とつて/貰(もら)いひして、御/粥(かゆ)を/煮(に)んしたが、 00032270L6たべて御見なんし△○そりやアよふおつせう。しかしなが 00032280L7ら、此御かゆハ、わつちらより(一オ)二ツすくないね 00032290L8▽なぜへ△○ハテ、わつちらは七/種粥(くさかゆ)より二ツ/多(おほ)く、/苦界(くがい) 00032300L9の身でおつす△▽ヲヤ+、そんならぬしとわつちと二人 00032310L10あハせると、十八かいてありんすヨ引 00032320¥N2¥J 00032330¥X/小町(こまち) 00032340L13ある/娘(むすめ)、大あバたなれど、うぬぼれでゐる。/近所(きんじよ)のわかひ 00032350L14もの/来(きた)り、コレおきちさん。(一ウ)けふ小/町様(まちさま)が/■(あまこひ)をなさ 00032360L15つたから/見物(けんぶつ)にいつたが、なるほど/美(うつく)しいもんだ。ときに 00032370L16おめへにせうだよといへば、/娘(むすめ)にこ+/嬉(うれ)しがり、アノ小 00032380L17町さんがわつちに、どこか/似(に)たへ。若イ者/眉毛(まゆげ)の/兀(はげ)た所が 00032390¥N3¥J 00032400¥X/壬生(ミぶ) 00032410L20/酒屋(さかや)の/樽拾(ごよう)、/壬生狂言(ミぶきやうげん)にうき身を(二オ)やつし、人を見る 00032420M1と/物(もの)いわずに、もうかほつき目つき、/手品(てじな)にてやりかける。 00032430M2ミな人ハ/気違(きちがひ)かとおもひ、/何(なん)の/真似(まね)だなどゝいひけるゆへ、 00032440M3/拍子(ひやうし)がぬけて/面白(おもしろ)くなし。/兎角(とかく)人を/相手(あいて)にしてハ物を/云(いふ)て 00032450M4ならぬから、/今度(こんど)ハ/犬(いぬ)を相手にせんと、/握飯(にぎりめし)にて犬をよび、 00032460M5さて手品/足取(あしとり)/顔(かほ)つき(二ウ)/目(め)つきにてやりかけれバ、/犬(いぬ)ハ 00032470M6にきり/飯(めし)をとらんと、/飛(とん)だりはねたり/尾(を)を/振(ふつ)たり、/甚(はなハ)だひ 00032480M7やうしよく、あまり/面白(をもしろ)さに、/御用(ごやう)大きにうかれて、/思(おも)ハ 00032490M8ず犬の/尻(しり)を一ツたゝきければ、犬も/気取(きどり)にて/迯(にげ)ながら、き 00032500M9やんちき+きやん+ 00032510¥N4¥J 00032520¥X同(三オ) 00032530M12/壬生狂言(ミぶきやうげん)/大繁昌(おほはんしやう)なり。/群集(くんじゆ)の中に一人、/烏帽子(ゑぼし)/直垂(ひたゝれ)/着(き)た/男(おとこ)、 00032540M13/木戸(きと)を/這入(はいら)んとする。/木戸番(きどばん)、コレ/札(ふだ)を/買(かつ)て+といへば、 00032550M14イヤ、おれハ/壬生(ミぶ)の/忠見(たゞミ)じやと云て、づゝと/這入(はいる)。ミなあ 00032560M15きれて/居(ゐ)る所へ一人、/烏帽子(ゑぼし)/直垂(ひたゝれ)/着(き)た/男(おとこ)来り、/銭(ぜに)を/出(いだ)して 00032570M16/札(ふだ)を/買(かい)/這入(はいる)。/木戸番(きどばん)共、/何(なに)とも/合点(がてん)ゆかずと(三ウ)いへ 00032580M17ば、/中(なか)に壱人の/木戸番(きどばん)が、アヽよめた+。あれハ/壬生(ミぶ)の 00032590M18たゞ見ねへ/様(さま)だらう 00032600¥P102 00032610¥N5¥J 00032620¥X/劔術(けんじゆつ)△@○客△|▽亭主@ 00032630L3/時(とき)に/求馬殿(もとめどの)。さつそくながら/近来(きんらい)/劔術(けんじゆつ)がはやり/物(もの)にて、ミ 00032640L4な/相番(あいばん)共も/其(その)はなしばかり。/拙者(せつしや)ハ/夢(ゆめ)にも/存(ぞん)ぜぬから、/日= 00032650L5&(ひ=※)/恥(はぢ)入て/罷在(まかりある)。しかし、/年(とし)/罷寄(まかりよつ)て/稽古場(けいこば)(四オ)へも/出憎(でにく)く、 00032660L6/夫(それ)ゆへ/此程(このほど)ハちりからも/止(やめ)まして、しなへを/調(とゝの)へ、/独(ひとり)でや 00032670L7つてミますが、どふも/知(しれ)ませぬ。/御手前(おてまへ)にも、あの/道(ミち)ハ 00032680L8/一向(いつこう)御/存知(そんじ)なきよし、/嘸(さぞ)/御難儀(ごなんぎ)て御/座(ざ)らう。▽コレハ/如何(いかゝ) 00032690L9で御座る。/拙者(せつしや)ハわかいとき/鞍馬山(くらまさん)におゐて/僧正坊(そうじやうぼう)の/弟= 00032700L10子(で=し)と成、/奥儀(をくぎ)をゆるされて/罷在(まかりある)△○/是(これ)ハ/失礼(しつれい)を申ました。 00032710L11(四ウ)左様なら、/幸(さいはい)ひそかに/御指南(ごしなん)下されたい△▽心得ま 00032720L12した。/貴殿(きでん)ハ其しなへで御出なさい。/拙者(せつしや)ハ扇であしらい 00032730L13ます。ヤツトウ+△○/ケ様(かやう)に先生の御/肩(かた)を/打(うち)ましてハ 00032740L14▽イヤ、なんとも御座らぬ。ヤツトウ+△○又かやうに 00032750L15御/天窓(あたま)を打ましてハ△▽イヤモ、いくら/打(うた)れても、/痛(いたミ)もな 00032760L16んともござらぬ。是を/堪(こらへ)る所か/僧正坊(そうじやうぼう)(五オ)の/伝受事(でんしゆごと) 00032770L17○ハヽア、あやまり入ました 00032780¥N6¥J 00032790¥X同△@▽女房|○浪人@ 00032800L20さる/浪人(らうにん)、今こそ/能時節(よきじせつ)なりと、/劔術指南(けんじゆつしなん)所を/出(いだ)したるが、 00032810M1さつぱり弟子が付す。らう人、/腮(あご)をつるしけれバ、/思案(しあん)し 00032820M2て、とかく/淋(さび)しくてハ人の/気取(きどり)がわるい/筈(はづ)と、夫より女房 00032830M3を/相手(あいて)に、/早朝(さうてう)から/日暮(ひくれ)迄たゝき(五ウ)/合(あつ)て/居(ゐ)る。/女房(にようぼう)く 00032840M4るしがり、▽いつそもふ、/太刀(たち)を/持(もつ)ちからも御座りませぬ 00032850M5○それハ/腰(こし)のすハらぬせゐであらふ△▽/涙(なミだ)を/流(なが)して、イヽ 00032860M6ヱ、/腰(こし)より、ひもしくて/腹(はら)かすハらぬから 00032870¥N7¥J 00032880¥X/心学(しんがく)△@▽野良|○友達@ 00032890M9/知(し)らぬといふ事のきらひな/野郎(やらう)、しかつへらしく、▽/拙者(せつしや) 00032900M10ハ今日、/如何様(いかさま)/道理(どうり)先生(六オ)の/心学(しんがく)の/講釈(こうしやく)を承り、それ 00032910M11から/会得(ゑとく)いたした所が、/先(まづ)壱/番(ばん)に目と/耳(ミヽ)を/預(あづけ)られました。 00032920M12/夫(それ)から/帰(かへ)る時ハ、ミな目と耳がないから人につきあたり、 00032930M13/御免(ごめん)なされといつても、さきも/聞(きこ)えず。こいつハふとひや 00032940M14つとぶちのこす。こつちも/誤(あやま)るのに、/無法(むほう)なはつゝけ/野郎(やらう) 00032950M15めとつかミかゝる。ぶつやらふむやら(六ウ)大さハぎ。 00032960M16○それハ/心学(しんがく)といふものハ、そう※しいもので御座るの 00032970M17▽ナニサ、まだ+口と/鼻(はな)を/預(あづけ)られたのハ、こんな事しや 00032980M18アござらぬ 00032990¥N8¥J 00033000¥X/狂哥(きやうか)△@▽虎丸|○乞食@ 00033010¥P103 00033020L1をしなべて/夷哥(ゑびすうた)大はやり、/猫(ねこ)も/杓子(しやくし)もつらねる/世(よ)の中。/酒= 00033030L2庭(さけ=にハ)/虎丸(とらまる)といふ狂(七オ)/哥師(かし)の/門(かと)に、/菰(こも)かふり一人、おづ 00033040L3※はいこミ、○私ハ/狂哥(きやうか)を一ツ致しましたが、/憚(はゞかり)ながら 00033050L4御/直(なを)し下されませと/短冊(たんざく)を出しける。S/辻(つぢ)つまも合ぬつゞ 00033060L5れの/世渡(よわた)りや△/橋(はし)の/袂(たもと)の/短夜(ミじかよ)の/夢(ゆめ)△▽ハヽア、/腰折(こしをれ)だなと 00033070L6いへは、/乞食(こじき)、/吃相(きつさう)をかへて、つつと立、○イヤ、/瘡(かさ)ハか 00033080L7ゐて/居(ゐ)ますが、まだいざりにハ(七ウ)なりませぬ 00033090¥N9¥J 00033100¥X/釣舟(つりふね) 00033110L10つり舟の/三(さ)ぶハ、いしもちを/釣(つり)に/出(で)て、/疫神(やくじん)に/逢(あふ)たりとの 00033120L11/沙汰(さた)。/天竺(てんぢく)/徳(とく)兵衛も/聞(きか)ぬ/気(き)になり、/工夫(くふう)しけるハ、三ふめ 00033130L12ハよく/病人(びやうにん)の/喰(く)ふ/魚(うを)を釣に出たゆへ、/疫病神(やくびやうがミ)に/出合(であつ)た。さ 00033140L13らは/鰒(ふぐ)を釣に出たら、(八オ)てつきり/福神(ふくじん)に御めにかゝら 00033150L14んと、さう+/鰒(ふぐ)をつりに、/中洲(なかず)から/永久橋(ゑいきうばし)の/辺(へん)にて/舟(ふね)を 00033160L15おき、/釣(つり)をしけるが、日のくれるまで/福神(ふくじん)も見えず。ごう 00033170L16をにやし/死身(しにミ)に/成(なつ)て、今や+と/待(まつ)てゐると、やがて/舳先(へさき) 00033180L17の/方(かた)で/妙(たへ)なる/声(こへ)にて、モンシ+といふから、そりやこそ 00033190L18/福神(ふくじん)よと/釣竿(つりさほ)/投捨(なけすて)、/平(へい)(八ウ)/伏(ふく)すれバ、/舟饅頭(ふなまんぢう)が、/商売(しやうばい)の 00033200L19/邪魔(じやま)になりますから、どふそ/外(ほか)へ/漕(こい)で/下(くだ)さりやし 00033210¥N10¥J 00033220¥X/倹約(けんやく) 00033230M3/倹約指南所(けんやくしなんどころ)といふ/看板(かんばん)、/何(なに)か/珍(めづ)らしいと/立寄(たちよれ)バ、/間口(まぐち)壱尺 00033240M4五寸の/玄関(げんくハ)。/是(これ)ハ/狭(せま)いことだと、やう+/這(はい)こミ、/座敷(ざしき)へ 00033250M5/通(とを)れば、八/畳敷(てうじき)の/間(ま)にたつた一/畳(でう)/敷(しい)てある。/取次(とりつぎ)(九オ)の 00033260M6男が、/敷居(しきゐ)と/鴨居(かもゐ)の/間(あいだ)を/潜(くゞつ)て/出(で)て/来(く)る。さて+/感心(かんしん)した 00033270M7ものだと、/夫(それ)より/取次(とりつぎ)に/向(むか)ひ、/先生(せんせい)ハ/御在宿(ございしゆく)でござるかと 00033280M8尋れバ、/只今(たゞいま)/仕廻湯(しまいゆ)の/桶(をけ)を/片付(かたつけ)に/参(まい)られました。客そんな 00033290M9ら/御新造様(ごしんざうさま)に御/目(め)にかゝりたいといへば、/取次(とりつぎ)、/心得(こゝろへ)まし 00033300M10たと又+/奥(をく)へ/這(はい)こむ。やがて/御新造(ごしんざう)が/出(で)ら(九ウ)れたを 00033310M11ミれば、/一寸(いつすん)ぼし 00033320¥N11¥J 00033330¥X/仮宅(かりたく) 00033340M14/嵯峨(さが)の/御釈迦様(おしやかさま)、/御困窮(ごこんきう)にて/御出立(ごしゆつたつ)/出来(でき)ず。ばあさまたち 00033350M15御いとしかり、けふハ/皆(ミな)いひ/合(あハ)せ、かうせき/和尚様(をしやうさま)の/和讃(わさん) 00033360M16にて/無間(むけん)の/鐘(かね)をつくとの/評(ひやう)ばん。是ハ/珍(めづ)らしいとて、見物 00033370M17のくんじゆおびたゝし。/既(すで)ニ/和讃(わさん)(十オ)の/骨(ほね)といふ所にて、 00033380M18/婆&様(ばあさま)たち、ミなそろいの/肌脱(はだぬぎ)にて、/桧杓(ひしやく)を/振上(ふりあげ)る。/見物(けんぶつ)、 00033390M19今こそとミつめて/居(ゐ)れハ、/法恩(ほうをん)の/御勧化(ごくハんけ)+ 00033400¥P104 00033410¥N12¥J 00033420¥X/柔術(やハら) 00033430L3/時(とき)のぞめきとて、/鳶(とび)の/者(もの)も/此頃(このごろ)少しやハらを習ひ、めつた 00033440L4に人が/投(なげ)て/見(ミ)たくて、どふぞ/弱(よハ)さふな/侍(さふらひ)を/投(なげ)て、/高慢(かうまん)を/云(いハ) 00033450L5ふ(十ウ)と、/大道中(たいどうなか)にて/年(とし)のよつた/侍(さむらい)に、わざとつきかゝ 00033460L6り、むなぐらを/取(とら)うとすると、/侍(さむらい)、/狼藉者(らうぜきもの)めといゝさま、 00033470L7刀をすらりと/引(ひき)ぬくさう+まつくらさんぼう、/友達(ともだち)の/内(うち) 00033480L8へ/迯(にげ)こむ。友だちよハひやつだ。ナゼにげたといへバ、ナ 00033490L9ニサ。/馬鹿者(ばかもの)と見へたから、はづしたのだ 00033500¥N13¥J 00033510¥X/布袋(ほてい)(十一オ) 00033520L12日ぐらしの/布袋(ほてい)さま、手も足もぼろ+になり、/目(め)もあて 00033530L13られぬ/御困窮(ごこんきう)とミへたり。/福神(ふくじん)/仲間(なかま)をしよせ給ひ、さて 00033540L14+/其許(そこもと)ハつまらぬ人かな。其やうに/貧乏(びんぼう)な/有様(ありさま)になると 00033550L15いふ/事(こと)があるものか。/第(だい)一われ+の名をれ、そこもとに 00033560L16ハ/別(べつ)して/知識(ちしき)の/事(こと)なるに、其/悟(さとり)の/本心(ほんしん)ハどこへ/行(ゆき)ましたそ 00033570L17といへば、(十一ウ)布袋/花見(はなミ)に 00033580¥N14¥J 00033590¥X/三太郎(さんたらう) 00033600L20/八王寺(はちわうじ)の三太郎、/豊年(ほうねん)がつゞいて/工面(くめん)がよいゆへ、/吉原(よしハら)へ 00033610M1/女郎買(ちようらうかい)と/出(で)かけ、/先(まづ)/揚屋(あげや)の/門口(かどぐち)から、モシ、御女郎を/弐百= 00033620M2分(にひやく=ぶん)くんなさろ。わかいものイヽヱ、こつちの/内(うち)にハ、/銭(ぜに)でう 00033630M3る女郎/衆(しゆ)ハござりやせんといへば、ホイ、そんだら(十二 00033640M4オ)/麦(むぎ)でよこすべゑか 00033650¥N15¥J 00033660¥X/役者(やくしや)△@○母|▽子@ 00033670M7/役者(やくしや)+と/声(こへ)のかゝるやくしやの/子(こ)が/母(はゝ)にむかひ、▽アノ、 00033680M8おとつさんハ/芸(げい)ハ御/上手(しやうず)かねへ△○ヲヽサ。今での日の/出(で) 00033690M9さ△▽それでも/海老(ゑび)さんの所で、けふ/役者附(やくしやづけ)を見やしたら、 00033700M10おとつさんハ/隅(すミ)の/方(ほう)に、御つむりばかり出して御/出(いで)なさ 00033710M11(十二ウ)りやしたが、なぜ/真中(まんなか)の/高(たか)い所へ御出なさらぬね 00033720M12へ△○ナニサ、おとつさんハけんのん/症(しやう)だからヨ 00033730¥N16¥J 00033740¥X/和尚(おしやう) 00033750M15小僧もしへ。アノおせきさまの事をバ、/門(もん)ぜんの/樒屋(しきミや)で、 00033760M16/弁天様(べんてんさま)のやふな/大黒(だいこく)だと申ますよ△和尚又をしつけ、あれ 00033770M17が/腹(はら)を/布袋(ほてい)のやうにして見せやう(十三オ) 00033780¥N17¥J 00033790¥X同 00033800M20かの/和尚(おしやう)、/博奕(ばくゑき)にまけて、/木魚(もくぎよ)を/質(しち)に/置(をき)けるが、/世間(せけん)にし 00033810¥P105 00033820L1れてハ/済(すま)ぬゆへ/工夫(くふう)して/小僧(こぞう)をよび、/木魚(もくぎよ)/取(とり)もどすまで、 00033830L2/其方(そのほう)があたまを/当分(とうぶん)かしてたゝかせてくれろと、いやがる 00033840L3小ぞうを引とらへ、むりやり/天窓(あたま)をこち+たゝき、中 00033850L4+/音(ね)がよい(十三ウ)と、/和尚(おしやう)よろこびける。それより又 00033860L5+/思案(しあん)して、/今夜(こんや)の/博奕(ばくゑき)にハひどゐ事をしても/出(で)ねバな 00033870L6らぬ。どふしやうぞ。ヲヽそれ+、あの/鉦(どら)を/質(しち)にやらか 00033880L7さうと、一人つふやけバ、小僧、こハ※手をついて、モ 00033890L8シ、/私(わたくし)が/尻(しり)にハねぶとが/出来(でき)てをりますよ 00033900¥N18¥J 00033910¥X/酒宴(しゆゑん)(十四オ) 00033920L11どうらく/和尚(おしやう)と/腐儒者(くされじゆしや)との/大宴(おゝざかもり)にて、しゆしやハ/頗(すこぶる)/酩= 00033930L12酊(めい=てい)いたしたといへバ、/和尚(おしやう)ハ/百味(ひやくミ)の/飲食(をんじき)より/旨(うま)しなどゝ/洒= 00033940L13落(しや=れ)のめす。いやはやかゝらぬけしき也。和尚なんと/先生(せんせい)。 00033950L14此さけほと/有難(ありがた)いものハなひと/存(ぞんず)る。/先(まつ)/釈迦如来(しやかによらい)もそこぬ 00033960L15け/上戸(しやうご)と見へて、壱/升(しやう)ハ/夢(ゆめ)の/事((ママ))しと御(十四ウ)/説(とき)なさつた。 00033970L16じゆ者いかさま。/足下(そつか)の/仰(あふせ)のとをり、/孔子(こうし)も/酒(さけ)に/酔(ゑひ)てハふ 00033980L17ざけさしやつたと見へて、/子(し)のたまく+と申ス 00033990¥N19¥J 00034000¥X/聾(つんぼ)△@▽女郎△|○きやく@ 00034010L20/客(きやく)もつんぼ、/女郎(ぢようろ)もつんぼで、/初会(しよくハい)なれバ/互(たがい)にきこへる/振(ふり) 00034020M1で/座(ざ)もすミ、/床(とこ)へはいり、▽ぬしはどこてざんすへ△○ヲ 00034030M2ヽサ、さむい/晩(ばん)だよ(十五オ)△▽ヲヤ+、どふりで見申 00034040M3たやうだ 00034050¥N20¥J 00034060¥X無筆△@▽家来|○旦那@ 00034070M6▽もし/旦那様(だんなさま)へ。此/手跡(しゆせき)を御らうじませ△○ドレ。さて 00034080M7+/読(よめ)にくい書やうだ△▽イヽヱ、/仏(ほとけ)といふ/字(じ)を/大篆字(だいてんじ)と 00034090M8やらでハ、かう/書(かく)と申ました△○ぬからぬ/皃(かほ)で、サレバ、 00034100M9/感応寺(かんをうじ)てハさうハかゝぬ(十五ウ) 00034110¥N21¥J 00034120¥X/薬(くすり) 00034130M12/遠国侍(ゑんごくさむらい)、江戸へ出、/珍(めづ)らしいゆへ、むしやうにあるきま 00034140M13ハり、/舟宿(ふなやど)の/障子(しやうじ)を見て、ナンダ、/吉野(よしの)ぐハん、川一ぐハ 00034150M14ん、/大福(だいふく)ぐハん。ハヽア、/返魂丹(はんごんたん)ハ/御座(ござ)ないか 00034160¥N22¥J 00034170¥X/色(いろ)おとこ 00034180M17いかぬ/似田山(にたやま)、とかくいろ/男(おとこ)の/気(き)で(十六オ)見えをせしが、 00034190M18/少(すこ)し/鼻(はな)の/低(ひく)いをくやしがり、/常(つね)に/新粉(しんこ)で/付鼻(つけばな)をして、/近所(きんじよ) 00034200M19の/芸者(げいしや)の所へゆき、いやがられるとハしらず、/十分(じうぶん)はる/気(き) 00034210M20にて、めつたにうぬをいふ。イヤ/夕部(ゆふべ)、さる/契情(けいせい)めがわつ 00034220¥P106 00034230L1ちに/惚(ほれ)て、なんでも/心中(しんじう)と/出(で)かけやうとぬかすから、まづ 00034240L2だまして/髪(かミ)を/切(きつ)てやりサ。所が、きか(十六ウ)ねへと思ひ 00034250L3ねへ。夫から/小指(こゆび)を切てひらりとやりサと、/噺(はなし)にのつて、 00034260L4/付鼻(つけばな)の/落(おち)たもしらず。げいしやヲヤ+、ぬしの鼻ハどうし 00034270L5なさつたといはれ、/恟(びつくり)して/撫(なで)て見て、その時、/是(これ)も/切(きつ)てや 00034280L6つた 00034290¥N23¥J 00034300¥X/香炉(かうろ) 00034310L9/頼朝公(よりともこう)/御秘蔵(ごひさう)の/獅子(しゝ)のかうろが/紛(ふん)(十七オ)/失(じつ)しけれバ、御 00034320L10香炉あづかりの御/坊主(ほうす)、/色(いろ)/真青(まつさを)にして/訴(うつたへ)けり。/重忠(しげたゞ)ハ/例(れい)の 00034330L11/智恵袋(ちゑぶくろ)をふるひ、/広間(ひろま)へ/出(いで)て、/手(て)にて/拍子(ひやうし)をとりながら、 00034340L12/獅子(しゝ)ハとこだ+と/宣(のたま)へバ、かの御ぼうずも/拍子(ひやうし)にうかれ 00034350L13て、ハア、/由断(ゆだん)をいたした 00034360¥N24¥J 00034370¥X/哥人(かじん)(十七ウ) 00034380L16/人丸(ひとまる)様の御/屋敷(やしき)に、/日雇(ひやう)に来て見れば、/奥(おく)ハけふ/哥(うた)の御/会(くわい) 00034390L17とて、/猿丸太夫(さるまるたゆふ)様、/貫(つら)之様、/喜撰法師(きせんほつし)様など、御出のやう 00034400L18す也。御/次(つき)の/間(ま)を/覗(のそひ)て見れば、女中/衆(しゆ)がうハさ噺に、わた 00034410L19しハ/業平(なりひら)様に、身をつくしても/逢(あハ)んと/思(おも)ひやんすが、あな 00034420L20たの方でハまだ文も見ず/天(あま)の/橋立(はしたて)さといへバ、一人(十八オ) 00034430M1の女中が、ソレハいつくもおなじ秋の夕暮でござんすとい 00034440M2ふ。/日雇(ひやう)も、さすがハ人まる様の御やしきだとかん/心(しん)して、 00034450M3夫より中間部屋を/覗(のそい)てミれば、大/勢(せい)/車座(くるまざ)にならび、/壺皿(つぼざら)を 00034460M4/明(あけ)ながら、/長歌(ちやうか)/短哥(はんか) 00034470¥N25¥J 00034480¥X/居続(いつゞけ) 00034490M7/此頃(このごろ)/息子(むすこ)、一刀屋といふ/女郎(ちようろ)屋にて、毎(十八ウ)日のゐつゞ 00034500M8けゆへ、/迎(むかひ)をやつても+/帰(かへ)らず。/親父(おやぢ)大に/腹(はら)を/立(たち)、/自身(ししん) 00034510M9に一刀屋へ/行(ゆき)、なんでも/爰(こゝ)へ出たらつかまへて引ずつてか 00034520M10へらうと、上り口にしやきばりかへつて/待(まつ)て/居(ゐ)れど、おく 00034530M11ざしきて大さわぎの/体(てい)にて出てこず。/猶(なを)じれきつてゐる内 00034540M12に、をくにて/息子(むすこ)の/声(こへ)にて、とらまへてさけのま(十九オ) 00034550M13しやう+といへば、/大勢(おゝぜい)が、手のなるほうへ+とはや 00034560M14し/立(たつ)る。あまり/拍子(ひやうし)の/面白(おもしろ)さに、/親父(おやぢ)もうかれて、/忰(せがれ)ハま 00034570M15だか+ 00034580¥N26¥J 00034590¥X/振袖(ふりそで) 00034600M18/医者(ゐしや)の/若党(わかとう)、/夜半(やはん)/時分(じぶん)大にねぼけて、/小便(しやうべん)にゆくとて、/供= 00034610M19部屋(とも=べや)のほうへ行しに、/何(なか(ママ))かふハりとつきあたるゆへ、とら 00034620M20まへ(十九ウ)てミれバ/振袖(ふりそで)としられたり。是ハふしぎと、 00034630¥P107 00034640L1又さぐつて/見(ミ)れバ、/帯取(をびとり)はだけゆへ、こいつハ/有(あり)がたいと、 00034650L2ひつたり/抱付(だきつけ)バ、/小部屋(こべや)から/陸尺(ろくしやく)が、ミなをきろ。/干(ほし)て/置(おい) 00034660L3た/看板(かんばん)に、どろぼうかついた 00034670¥N27¥J 00034680¥X/貝焼(かいやき) 00034690L6/仕事師(しごとし)、うちへ/帰(かへつ)てミれば、女房と/居(ゐ)候と(廿オ)二人、こ 00034700L7つちり/猪(しゝ)を/貝(かい)やきにして/呑(のミ)かけて/居(ゐ)る。/亭主(ていしゆ)もつての外の 00034710L8はら/立(たち)、女房をぶつやらふむやら、なりこハしてもまだ腹 00034720L9がいぬやら、それよりすぐにせきこんで、/仲人親(なかうとおや)の所へ/行(ゆき)、 00034730L10/上(あが)り/端(はな)から、コレおバさん。まづ/聞(きい)てくんねへ。けふわつ 00034740L11ちが/留主(るす)をねらつて、/内(うち)の/居(ゐ)候めが/猪(しゝ)を/買(かつ)てうしや(廿ウ) 00034750L12がつて、マア貝焼でたのしミやアがるとおもひねへ。仲人 00034760L13おやそれハわるいことた。/猪(しゝ)ハ/不浄(ふじやう)になるから、神さまへ 00034770L14ハ/参(まへ)らせぬがよいぞや△仕事師ナニサ。/其(その)くせ、かゝアめ 00034780L15がしたゝか/喰(くら)つたさうさ 00034790¥N28¥J 00034800¥X/編綴(へんてつ) 00034810L18/俳諧師(はいかいし)の/男(おとこ)、三介にいひ付、/柳原(やなぎハら)の/土(ど)(廿一オ)/手廛(てミせ)へいつ 00034820L19て、へんてつを/買(かつ)てこいといひけるを、三介かしこまつて、 00034830L20/土手廛(どてミせ)へ/行(ゆき)しに、買ものゝ/名(な)をわすれ、コレわかいしゆ。 00034840M1わしハ/何(なに)かいひつけられて/買(かい)に/来(き)ましたが、つゐわすれま 00034850M2したから、なんだあらふ、どうぞあてゝミて/売(うつ)てくれさつ 00034860M3しやい。土手見せこなたハ/気(き)ちかひしやアねへ(廿一ウ)か。 00034870M4そつちの買ものが、こつちでとうして知れるもんだ。へん 00034880M5てこな男だ△三介ヲヽそれよ。其へんてこを下さい 00034890¥N29¥J 00034900¥X/祈祷(きたう) 00034910M8/新(しん)まい/山伏(やまぶし)、おのれハ大にたかい/気(き)になつてゐる所へ、/狐(きつね) 00034920M9つきがあるとて/呼(よび)にくる。さつそく/行(ゆき)て/高慢(かうまん)らしく、たか 00034930M10+と(廿二オ)いのりかけければ、きつねつき、とんとた 00034940M11まり、おとなしくして/居(ゐ)る。かの山/伏(ぶし)、ゑつぼに入、なを 00034950M12大/汗(あせ)かいていのりけるに、いよ+だまりかへつてうごか 00034960M13ず。山伏なんと、/愚僧(ぐそう)が/行力(きやうりき)で、もふ出て行おつたであら 00034970M14ふといへば、狐つき/馬鹿(ばか)め。あんまり/面白(おもし□)いから/聞(きい)てゐる 00034980M15のだ(廿二ウ) 00034990¥N30¥J 00035000¥X/琴曲(きんきよく)△@▽足軽△|○むすめ@ 00035010M18/国足軽(くにあしがる)、/得意(とくゐ)の/酒(さか)屋へ行、よほど/酔(ゑふ)て、▽コレ/娘女(むすめぢよ)。こな 00035020M19さまハ/琴(こと)の/名人(めいじん)ものだと聞申た。なんぶん/所望(しよもう)申べい。○ 00035030M20アイ、/畏(かしこま)りやした。なんに/致(いた)しやしようね△▽身共ハしら 00035040¥P108 00035050L1ないから、よかものを/頼(たのミ)ぞんずる△○そんなら/唄(うた)にいたし 00035060L2やせふ。/表組(おもてぐミ)などハ(廿三オ)いかぬものてござりやすとい 00035070L3へば、▽/俄(にハか)に/刀(かたな)の/反(そり)をうち、おのれ、/鉄炮組(てつほうくミ)とでもぬかし 00035080L4て見おれ 00035090¥N31¥J 00035100¥X/家老(からう)△@▽家老|○別当@ 00035110L7/国家老(くにがらう)山出し/猿(さる)太夫どのへ、/厩別当(むまやべつとう)まかり出、○此両三日、 00035120L8/沢(さハ)かげが/相痛(あいいたミ)まする△▽ムヽ、まだ/長局(ながつぼね)に/病(びやう)人か△○イ 00035130L9ヽヱ、/御馬(おむま)の(廿三ウ)/義(ぎ)で御座ります△▽ヲヽサ、女ハし 00035140L10れたことた 00035150¥N32¥J 00035160¥X/山下(やました) 00035170L13/御寺様(おてらさま)、けころの/見世(ミせ)より/皃(かほ)をかくして、/出合(であい)がしらに、 00035180L14さる/檀方(だんほう)の/堅(かた)おやぢに出やい、/迯(にげ)んとするを、/親父(おやぢ)/引(ひき)とめ、 00035190L15御まへさまハ/尊(たつと)い/和尚(おしやう)さまだとそんじておつたに、/是(これ)も/如= 00035200L16来様(によ=らいさま)の/教(をしへ)でござるか。(廿四オ)和尚されバさ。/爰(こゝ)ハ/仏店(ほとけだな)と申 00035210L17ゆへまいるが、/誤(あやま)りてござるか。/貴(き)様のやうな/文盲(もんもう)な/年寄(としより) 00035220L18ハ、此やうな/有(あり)がたい/活如来(いきによらい)ハしるまいと、/理詰(りつめ)にきめつ 00035230L19けられ、おやぢ一/言(ごん)もなく、/挑灯店(てうちんたな)のほうへ/迯(にげ)て/行(ゆく) 00035240¥N33¥J 00035250¥X/起請(きしやう)△@▽ミヘ男|○友だち@ 00035260M3▽/夕部(ゆふべ)ハ/妙(めう)な女郎を/買(かつ)た。まつ/顔(かほ)が/路(ろ)(廿四ウ)/考(こう)で、/肌(はだ)が 00035270M4/万菊(まんぎく)で、仕うちが/杜若(とじやく)といふもんで、其うへに何ひとつく 00035280M5らひ事がねへ△○そいつハおそれるの△▽ヲヽヨ。それに 00035290M6おれがぐつとかきのめしたによつて、大にのぼせて、まこ 00035300M7とに/楊枝(やうじ)のやうなかわいらしい手で、さら+と/起請(きしやう)を/書(かい) 00035310M8てくれた。これ見やれ△○ドレ、さて+けちな手だの。 00035320M9(廿五オ)なんだか一ツも/読(よめ)ねへぜへ△▽何さ。それハ口/筆(ひつ) 00035330M10て/書(かい)たのだ 00035340¥N34¥J 00035350¥X/奴凧(やつこだこ) 00035360M13/片田舎(かたいなか)へやつこ/凧(だこ)か切れて/落(おち)ければ、/村中(むらぢう)/打寄(うちより)、いろ+ 00035370M14/評議(ひやうぎ)すれど、何やらわからず。其所へ/庄屋(せうや)来り、しつた/振(ふり) 00035380M15にて、何さ、これハ御江戸の/奴(やつこ)の/干物(ひもの)といふ物(廿五ウ)た 00035390M16アヨ。村中ハテナ、やつこの/丁((干カ))ものも/喰(くい)申スカ。庄屋ナニ、 00035400M17/奴(やつこ)くらいでハない。御江戸の/御亭主(ごていしゆ)がたハ、/山(やま)の/神(かミ)さへく 00035410M18ひめさるげな 00035420¥N35¥J 00035430¥X/参詣(さんけい) 00035440¥P109 00035450L1/回向院(ゑこういん)に/開帳(かいてう)ありて、くんじゆしければ、びんづる様も一 00035460L2日はあさまや(廿六オ)/子供(こども)に/撫(なで)まハされ、うるさがつて/居(い) 00035470L3給ふところ、十六七のよいむすめ来り、御つむりよりなで 00035480L4おろす。ひんづる様も目をちいさくしたり、口をすぼめた 00035490L5り、/衣紋(ゑもん)をつくつたりして見へをなされしに、あまり/身(ミ)も 00035500L6だへなされ、つゐとりはつして、/屁(へ)をひらせたまひ、(廿六 00035510L7ウ)/恥(はづ)かしがつて、/顔(かほ)を/真白(まつしろ)になさつた 00035520¥N36¥J 00035530¥X/息子(むすこ) 00035540L10/万福長者(まんふくちやうじや)の一/番(ばん)むすこ、/兎角(とかく)/親仁(おやぢ)が/女郎買(ぢようろかい)の/邪魔(じやま)の/神(かミ)だと 00035550L11小ごといふを、/番頭(ばんとう)きゝつけ、/膝元(ひざもと)ににじりより、御まへ 00035560L12様ハ+どふいたしたものてござります。/先(まつ)となたの御/蔭(かげ) 00035570L13で、/左様(さやう)に/結構(けつこう)(廿七オ)にハ御くらしなされますぞ。ちつ 00035580L14とも/親御様(おやごさま)の御くらうをやすめ、とふぞおやごさまの御 00035590L15/長命(ちやうめい)/遊(あそバ)さるか、御まへさまの御/為(ため)によろしさふな物でご 00035600L16ざりませぬかといへば、/息子(むすこ)、口のうちで、はやく/死(しね)バな 00035610L17をいゝ 00035620¥N37¥J 00035630¥X/文盲(もんもう)(廿七ウ) 00035640L20/角力取(すもふどり)、/姉聟(あねむこ)のところより/手紙(てがミ)来りければ、/隣家(りんか)の/年寄(としより)に 00035650M1/読(よ)んでもらふ。&/何(なか(ママ))+、/手帋(てがミ)を/以(もつ)て/啓上致(けいじやういたし)候。/余(あま)り御 00035660M2/遠&敷(とを+しく)候間、/一寸(ちよつと)御左右(ごさう)なから、今日人/差上(さしあげ)申候。角力取 00035670M3せゝらわらひ、ナニ大さうらしい。おらア四十/貫目(くハんめ)の石 00035680M4さへさしあげたに(廿八オ) 00035690¥N38¥J 00035700¥X/心中(しんじう) 00035710M7はぜとたなご、いつしか/馴(なれ)そめ、今は/汐水(しをミづ)も/洩(もら)さぬ中とな 00035720M8り、/浮名(うきな)をながしければ、二人/欠落(かけおち)して、/漂杭(ミほぐゐ)の間に/侘住= 00035730M9居(わびすま=ゐ)。此事/親(おや)+の/耳(ミヽ)に入、/詮議(せんぎ)きびしとの/沙汰(さた)。どうて/済(すま) 00035740M10ぬ事ゆへ、二人手に手をとりかはし、/南無阿弥(なむあミ)(廿八ウ)/陀= 00035750M11仏(だ=ぶつ)と、つりばりへふらり 00035760¥N39¥J 00035770¥X口上 00035780M14/権田原(こんだハら)/大納言殿(だいなごんどの)、/急(きう)に御/召(めし)の/勅使(ちよくし)立ければ、にはかにあハ 00035790M15てゝ御/仕度(したく)ある。/雑掌(さつしやう)、/勝手(かつて)へはしり出、コレ、今参りの 00035800M16三平よ。/其方(そのほう)ハ/鮫ケ橋(さめがはし)/中納言(ちうなごん)様の御/屋形(やかた)へいて申さうにハ、 00035810M17大/納言殿(なごんとの)、/只(たゞ)今/急(きう)に御/(廿九オ)/召(めし)ゆへ、/束帯(そくたい)をしにかゝつ 00035820M18て居られますが、/御無心(ごむしん)ながら/沓持(くつもち)を御かし下されますや 00035830M19うに、御/頼(たのミ)申入られますといふてこいと云付る。三平、 00035840M20/恟(びつく)りし、/飛(とぶ)がことくに/中納言殿(ちうなごんどの)へ参り、ちと御/頼(たのミ)申ます。 00035850¥P110 00035860L1こちの大/納言殿(なごんどの)、/只今(たゞいま)/急(きう)に御/飯(めし)をくはれ、/食滞(しよくたい)をいたし、 00035870L2/死(し)かゝつて/居(ゐ)られます。中なごん殿(廿九ウ)それハ/笑止(せうし)や。 00035880L3御/膳(ぜん)が/過(すき)たであらふ。三平/何(なに)さ。それにまだ/葛餅(くずもち)がくひた 00035890L4いとさ 00035900¥N40¥J 00035910¥X/浅草(あさくさ) 00035920L7/鳶(とび)の/者(もの)二人、/浅草観音(あさくさくハんおん)へまいり、/天井(てんじやう)の/画(ゑ)を見て、コレ、 00035930L8/権(ごん)や。あの/仙(せん)人ハよく/書(かい)たじやアねへか。権こいつは/文盲(もんもう) 00035940L9な/野郎(やらう)だ。あれハ/仙(せん)人でハねへ。/天神(てんじん)といふもんだ。ハテ 00035950L10ナ、(卅オ)おらア又、/天神(てんじん)とハかげま/茶屋(ぢやや)の事だとおもつ 00035960L11た 00035970¥N41¥J 00035980¥X/乗合(のりあひ) 00035990L14/葛西(かさい)のわたし/舟(ふね)にて、一人の/侍(さむらい)、/出家(しゆつけ)にむかつて、御僧 00036000L15ハいづくへ御心さして御出なさるぞ。出家いや、/愚僧(ぐそう)ハ此 00036010L16/葛西(かさい)のさる/寺(てら)に、/六祖(ろくそ)をとびこへた/名僧(めいそう)おハす(卅ウ)よし 00036020L17/承(うけたまハ)り、はる+参るなり。侍ハテナ。六そう/飛(とび)こへたく 00036030L18らいで、/名僧(めいそう)とハ事おかしや。われらが/武門(ぶもん)にハ、/昔(むかし)/義経= 00036040L19公(よしつね=こう)八/艘(さう)とびこへ給ひし事、かくれなし。それにくらべてハ、 00036050L20なんでもないとあざわらへバ、/船頭(せんどう)がさし/出(で)て、まだ+ 00036060M1それより、わしらハ江戸へ/乗(のつ)て/出(で)ると、いつでも/糞(くそ)を飛 00036070M2(三十一オ)こへ申す 00036080¥N42¥J 00036090¥X/間違(まちがひ) 00036100M5/自身番(じしんばん)に/大屋衆(おゝやしゆ)がより合て/噂(うハさ)ばなし。イヤ/時(とき)に、あの/紺屋(こうや) 00036110M6のむすめハ、/今年(ことし)十九だが、さつはり/男(おとこ)にいやミがねへ。 00036120M7あれハどうしても/小野(おのゝ)ゝ/小町(こまち)だらうと、ミな+/笑(わら)ふを、 00036130M8/番(ばん)太郎が/聞(きい)て/居(ゐ)て、/扨(さて)ハおとこの/嫌(きら)(三十一ウ)ひな女をバ/小= 00036140M9野(お=のゝ)ゝ小町といふものとミへた。よい事を/聞(きい)たり。/友達(とちだち(ママ))に 00036150M10あふて/自慢(しまん)せんとおもひ、それより/近所(きんじよ)の心やすひ/裏店(うらたな)へ 00036160M11ゆき、いろ+はなしのうちに、番太/時(とき)に、/此近処(このきんじよ)に男ぎ 00036170M12らひの女ハないかの友たちイヽヤ、それハきかぬが、/湯= 00036180M13屋(ゆ=や)の/親父(おやぢ)どのハことし三十九になられるが、あの(三十二オ) 00036190M14人ハわかひ時から女がきらひだげなといへバ、/番太(ばんた)、心あ 00036200M15たりさらりとちがひ、大きにせきこんで、それは/小野(おのゝ)ゝ/道= 00036210M16風(とう=ふう)だらう 00036220¥N43¥J 00036230¥X/誹諧(はいかい)△@▽此方△|○となり@ 00036240M19/組屋敷(くミやしき)の/飯焚(めしたき)が、となりの/飯炊(めしたき)と/小半(こなから)づゝ引かけて、▽/時(とき) 00036250M20に、おらが/旦那(だんな)ハ/俳諧(はいかい)が/大(たい)すきで、/毎日(まいにち)より合てさつしや 00036260¥P111 00036270L1る。おら(三十二ウ)もすこぶる/好(すき)の/道(ミち)だから、いつでも/覗(のぞ) 00036280L2いて/見(ミ)て/居(ゐ)るが、アヽ又/格別(かくべつ)なもんだ。なんと一/会(くハい)やらか 00036290L3さふじやアねへか△○こいつハよからふ。先われからいや 00036300L4れ△▽イヤ、まづわれからいへ△○そんならおもひきつて、 00036310L5からひんぞろからまき出すべえ。S山かぜに/横(よこ)ぞつぽうの 00036320L6/寒(さむ)さかな△▽これハ/感吟(かんぎん)だ。御/名(な)はナ△○(三十三オ)/権(ごん)八 00036330L7さ△▽イヤサ、/俳名(はいミやう)をいやれヨ△○ナニ、/役者(やくしや)じやアある 00036340L8めへし(三十三ウ) 00036350¥K〔蔦屋重三郎板晒落本類目録二丁省略〕 00036360¥Q 00036370M2珍らしき新板諸品追&出来 00036380M3申候御求メ御覧可被下候 00036390M8△△△江戸通油町 00036400M9△書林△△蔦屋重三郎 00036410¥P112 00036420¥U噺本大系△第十五巻 00036430¥T@新作|落咄@/無塩(ぶえんの)/諸美味(もろあじ)〔題簽〕 00036440¥G 00036450¥Y 00036460L17文化頃刊 00036470L18柳&居主人画 00036480L19小本一冊 00036490L20都立中央図書館加賀文庫蔵 00036500¥Y@/新作(しんさく)|/落咄(おとしばなし)@/無塩(ふえんの)/諸美味(もろあじ) 00036510M4△△△△△目録 00036520M5△△/狂哥(きやうか)△△/西瓜売(すいくハうり)△△/心中(しんぢう) 00036530M6△△/渡(わた)し/守(もり)△△/大和(やまと)/廻(めぐ)り△/雷嫌(かミなりきらい) 00036540M7△△/首売(くびうり)△△/芝居好(しばゐすき)△△/天文(てんもん) 00036550M8△△/懸橋(かけはし)△△/百物語(ひやくものかたり)△△/心学(しんかく) 00036560M9△△/名酒(め□しゆ)△△/男禁制(おとこきんせい)△△/断喰(だんじき)(オ) 00036570M11△△/駕舁(かこかき)△△/禁酒(きんしゆ)△@其二△△|△七段目@ 00036580M12△△/祭(まつ)リ/咄(はな)シ△△/化物女(はけものおんな)△△/評判(ひやうはん) 00036590M13△△同其二△△/物祝(ものいまゐ) 00036600M14△△/見廻物(ミまいもの)△△/七段目(しちだんめ) 00036610M16△△△右二十五種(ウ) 00036620¥P113 00036630¥N1¥J 00036640¥X/狂歌(きやうか) 00036650L3モシ/先生(せんせい)。アノ/私(わた)しもチト、/狂哥(きやうか)をやらかして/見(ミ)とふござ 00036660L4りまする。先Sムヽそれハよい/心(こゝろ)がけだ。又きさまのやう 00036670L5なきやうな人ハ、ぢきにできまするて△Sヘイ。まづ狂哥 00036680L6と申升るものハ、どふいたせバよめまする△先Sハテ、何 00036690L7もむづかしい事ハない。アノきさまハはいかいをすこしし 00036700L8たでハないか。いつて/見(ミ)さつせへ△Sハイ。去年のくれに 00036710L9(一オ)申ましたのをおきゝ下さりまし。初雪や馬の足跡冬 00036720L10牡丹△先Sムヽ成程。コリヤア能出来た。まづそれを狂哥 00036730L11でいわふなら、初雪にわらじの跡をよく見れバ小判のな 00036740L12りにさもにたりけり、といふのだ。なんの事ハない。はい 00036750L13かいの十七文字を三十一文字にさへすれバ、はいかいも狂 00036760L14哥も、別にかわつた事ハない△Sヘイ。そしてアノ、又む 00036770L15すび/題(だい)(一ウ)と申まする事がござりまするか、あれハ又ど 00036780L16ふ致したことでござりまする△先Sムヽあれか。アノむす 00036790L17び/題(だい)といふ事ハ、すべて人に物をやるに、たとへバかミへ 00036800L18/包(つゝミ)て、そのうへを水引でむすんでやるといふやふなもので、 00036810L19/□((アカ))ノ又梅の花へ、たんざくをむすひ付たりなぞ、すべてそ 00036820L20の上と下とはなれぬやうに、しつかりとむすびつけた(二オ) 00036830M1やうによむを、むすび/題(だい)といゝます。梅に/鴬(うぐいす)、/桜(さくら)に/生酔(なまゑい)と 00036840M2むすぶやふなものでござる。まあわしがよんだをきかつし 00036850M3やい。S/鴬(うぐいす)のなきつる方をながむればたゞあり明の月ぞ 00036860M4のこれる△Sモシ+先生。ソリヤア/時鳥(ほとゝぎす)なきつる方でハ 00036870M5ござりませんか△先Sハテ、そこが狂哥だ 00036880¥N2¥J 00036890¥X/渡(わた)し/守(もり)(二ウ) 00036900M8/跡(あと)を/慕(した)ふて、S@三重此所道具がハりして、△|チヨンヽヽヽチヨンヽヽヽ。@折しも雨風/烈敷(はけしく)て、 00036910M9夜ハ/丑満(うしミつ)のころといゝ、名にしあふ日高川の事なれバ、水 00036920M10かさ/増(まさ)りて/物淒(ものすごき)き。されども不/敵(てき)の/清姫(きよひめ)ハ、そこよ/爰(こゝ)よと 00036930M11/懸廻(かけめぐ)れと、兼て/宵(よい)より致したる事なれバ、舟も渡しもあら 00036940M12ざれハ、いかゞハせんとためらいしかど、などか此川ひと 00036950M13つを、やわか渡らでやみ+と(三オ)(三ウ・四オ挿絵)かへら 00036960M14んやと、清姫ハその/侭(まゝ)/丸裸(まるはだか)となりて、ざんぶと川へ/飛込(とびこん)で、 00036970M15うきつしづミつやう+と、向ふの岸へおよぎしが、ふと 00036980M16きかついて見た所が、いかに/恋路(こいじ)なれバとて、此侭あか裸 00036990M17でもゆかれまじと、又元のこなたへおよぎかへり、からだ 00037000M18をふき、/着(き)ものをきて見た所か、又着ものをきてハおよが 00037010M19れぬゆへ、又裸になりて川へはいり、ゆき(四ウ)つ/戻(もと)りつ 00037020M20しているうち、はや夜も次第に/明行(あけゆき)、宮&寺&の/鐘(かね)の/声(こゑ)、 00037030¥P114 00037040¥G(三ウ・四オ) 00037050M1くだかけ/頻(しき)りにつげ渡れば、渡し/守(もり)のずぶ六ハ、いつもの如 00037060M2く小舟に/棹(さほ)さして出来り、此/躰(てい)見るより声を/懸(かけ)、船頭Sコ 00037070M3レ+/姉(あね)さん。おめへ、何ヲしなさるといへば、清姫、ま 00037080M4さか/蛇(じや)になつて安/珍(ちん)を/追懸(おつかけ)升るともいはれず、たゞうぢ 00037090M5+しているゆへ、船頭/図(づ)にのりて、船Sコレサおめへ。 00037100M6何のまね(五オ)(五ウ・六オ挿絵)だよといへバ、清姫Sアイ。 00037110M7水のけいこをしやす 00037120¥N3¥J 00037130¥X首売 00037140M10/鯛(たい)のすし、こはだの/鮓(すし)、玉子ゆで玉子も、モウひまだから、 00037150M11又外に/商売(せうはい)をかへずハなるまいが、しかし世間にないせう 00037160M12ばいを/始(はしめ)て、なんでも/銭(ぜに)をまうけませうと、/昼夜(ちうや)かんがへ 00037170M13て、やう+と/案(あん)じをつけて、ある夕(六ウ)方から、風呂 00037180M14敷/包(つゝミ)をしよつて出かけ、まづ山の手番町辺から始て、本所 00037190M15・下谷・おかち町辺、すべて物/淋(さむ)しい人通りのないやしき町 00037200M16がいゝと、商人S首や++。むゑんの/生(なま)首やアト売て 00037210M17あるくと、ある屋しきへ呼込れ、ハイと内へ這入ると、い 00037220M18かさま主人と見へて、としの比五十有余とおほしき大の男、 00037230M19白ざやの刀を引さげ、ゆう+と立出、士Sコリヤ(七オ) 00037240M20首商人ハ其方か。いかさま、是ハ珍らしい商売を始た。さ 00037250¥P115 00037260¥G(五ウ・六オ) 00037270M1いわひ某、今日新ミの刀を求たれバ、何とぞ一刀/例(ため)し見ん 00037280M2と思ふ折からなれバ、サア+代物の義ハ、いか程にても 00037290M3くるしうない。ずんどきれにくい首ヲきりて見んといへバ、 00037300M4商Sハイ。かしこまりました。マアお刀をおぬきあそばさ 00037310M5れまし。其時私しめがさつそく、その首ヲ(七ウ)さし出し 00037320M6ませうといへば、侍、心得たりと、ナニガ白さやの刀をす 00037330M7らりとぬきはなすと、商人、たもとから、チヨイと/張子(はりこ)の 00037340M8首をほうり出す。侍、是ヲ見て大きに腹ヲ立、コリヤ+ 00037350M9商人。是ハ/張(はり)子の首。このやうなものが、あらミの刀のた 00037360M10めしになる物か。誠正じんの生首かなくバ、其方が首ヲた 00037370M11めし見ん。爰な大/陀防(だハけ)め。ソコ(八オ)一寸もうごくなと、 00037380M12きつそうかわれバ、商人ハきもをつぶし、商Sアヽモシ 00037390M13+、それハ至極御尤でござりまするが、/私(わ)しが此首斗り 00037400M14ハ、とうぞ御めんなされて下さりまし。そのかハりにハ、 00037410M15今度ハきつと本の首ヲ持参致しませうと、ひらわびにわび 00037420M16るゆへ、侍Sハテ、人の首も我が首も同じ事た。ぜひ+ 00037430M17今其方が首をかいたい。(八ウ)又なぜそのやうに、其方が 00037440M18首ハ大事だ△商人Sハイ。是ハ/看板(かんばん)でござりまする 00037450¥P116 00037460¥N4¥J 00037470¥X/懸(かけ)橋 00037480L3Sおそろしや/岐蘇(きそ)の/桟(かけはし)丸太橋と、/空仁和尚(くうにんおしやう)のことぐさの 00037490L4/如(こと)く、十八反の/朽(くち)木をかけ、下ハ/遥(はるか)に/数(す)十/丈(じやう)、/昼(ひる)さへ/凄(すご)キ 00037500L5渡り川の/難所(なんじよ)、ならおう£なれろ/迚(とて)、/岩壁(がんへき)のいとひもなく、 00037510L6山の奥より/杣(そま)人が二三人/連(づれ)ニ(九オ)て、/彼(かの)/桟(かけはし)にさし/懸(かゝ)れ 00037520L7バ、/跡(あと)より/旅(たび)人壱人/来(き)かゝりて、彼杣人と/諸(もろ)共に渡らんと 00037530L8するを見て、杣人共/声(こゑ)をかけ、Sコレ+お旅人。アノ貴 00037540L9さまハさりとハふてらつこひふとだ。今/此(この)/日(ひ)のくれかゝる 00037550L10に、わしらと同じやうに、此桟を渡る気かへ△タビ人Sア 00037560L11イ。わしもこのんで渡りたくハござりませぬが、きうに行 00037570L12ねばならぬいそぎの道中ゆへと、皆迄ゆわさず、杣人共、 00037580L13アイ、(九ウ)わるい+。なんぼいそぎの道中しやといふ 00037590L14て、/命(いのち)あつての物/種(たね)だ。ひと/雫(しづく)雨がふつてさへ水の出る谷 00037600L15川。それに此間のふりつゞきで、大水の増てある此大河。 00037610L16アレ、アノ水せいのはやき、そのなる音のすさまじさ。ど 00037620L17ろ+++ごろ+++から+++ピツシ 00037630L18ヤリとんト@拍子にのつ|てはなせバ、@タビ人Sモシ+、ソリヤアノ/雷(かミなり)の 00037640L19まねでハござりませぬかトイへば、(十オ)ぬからぬかほで、 00037650L20杣Sサアその雷さへ、こゝへハこハがつて落ませぬ 00037660¥N5¥J 00037670¥X名酒屋 00037680M3今度所&に天神様の/開(かい)帳があるから、なんぞ/商内(あきない)をして/銭(ぜに) 00037690M4もふけをしませうと、天神さまからの思ひつきで、名酒/店(ミせ) 00037700M5を出し、/菅原伝授(すかハらでんじゆ)御名酒といふ/看板(かんはん)ヲ出した所が、殊の外 00037710M6はやり/繁昌(はんしやう)(十ウ)する所に、ある日いきな男が一人リ/来(き)て、 00037720M7男Sコレ/亭主(ていしゆ)。その菅原酒ヲせう+きいて見たいといへ 00037730M8ば、亭主、かしこまり升たと、ちや/碗(わん)ときゝ酒ヲもつて出 00037740M9て、まづ是が/菅(かん)せう※でござりまするといふから、客一 00037750M10ト口/呑(のん)で見た所が、いかさま、菅せう+と見へて、始の 00037760M11口あたりハ至極やはらかで、しまいへゆくと、ひんときつ 00037770M12くなる。それから桜丸ヲき(十一オ)いた所が、これハたわ 00037780M13ひもなくやわらかい。夫から又松王ヲきいて見た所が、始 00037790M14ハがうぎにきつくて、しまいになるとやわらかい。夫から 00037800M15白太夫の、イヤ源蔵の、梅王の、すくね太郎のなんのと、 00037810M16あらまし菅原の役/割(ハり)通りのきゝ酒ヲのんで、ツイと表へ出 00037820M17かけるゆへ、モシSと亭主、客を呼かへし、そのやうに 00037830M18おきゝなされてハ、うだいべんヲ(十一ウ)少しおもらいも 00037840M19ふさねバなりませぬといへバ、客S此間までかりや姫S。 00037850M20@亭主おかしな|/皃(かほ)ヲして、△@亭Sシヘヽヽヽヽヽヽヽ 00037860¥P117 00037870¥N6¥J 00037880¥X/西瓜売(すいかうり) 00037890L3はんか通ナ男、とをり丁の西瓜屋へきたり、客Sコリヤア 00037900L4いくらだ△商人Sハイ。ソリヤアちつと高うござり升。こ 00037910L5ちらのになさりまし。こちらのハ大きくてやすうござりま 00037920L6するといへば、(十二オ)客、ハテナ。ちいさくつてもたか 00037930L7いといふハ、どふ/□□((したカ))ものだ。アキンドSハイ。ちいさくつ 00037940L8ても、ソリヤア物がやふござりまする。こちらのハ大きく 00037950L9つても、チトあたりがござりまするトイへバ、客Sべら/棒(ほう) 00037960L10め、色事じやアあるめへし 00037970¥N7¥J 00037980¥X大和廻り 00037990L13なる程、世けんを/歩行(あるい)て見ると、珍らしい事がある物だ。 00038000L14わしが今度大和廻りに(十二ウ)/行(いき)ましたが、まづ東海道の 00038010L15大磯に/虎(とら)が石といふがある。むかし虎といふ女郎が、祐成 00038020L16か事ヲ思つて石になつたといふ事だ。又/肥前(ひせん)の国にも、ひ 00038030L17れふる山といふに松浦左与姫といふが、是もおつとのから 00038040L18へゆくを見て、いきながら石に成たといふ事だ。また/蛇(じや)に 00038050L19成たり/鬼(をに)になつたりしたも、むかしの事だ。今時ハモウそ 00038060L20んなぜうの有る(十三オ)女もねへトはなせバ、そはな男が、 00038070M1Sナニ、それが珍らしいものか。石や鬼とこじやアねへ。 00038080M2おらかむかふの娘ハ、やう+まだ十四五にハなるめへが、 00038090M3百両といふ大がねになつた 00038100¥N8¥J 00038110¥X芝居好 00038120M6/去(さる)所に/芝居好(しバゐずき)な人が有て、三度のめしをくふにもチヨツト 00038130M7/買物(かいもの)をするにも、/始終(しじう)(十三ウ)役者の身/振(ふ)り、こハ色です 00038140M8るといふ男。ある時、表を/青菜(あをな)売り通りけれバ、亭Sコリ 00038150M9ヤ+商人。しばらく/待(ま)て。/汝(なんじ)か/持参(ぢさん)の其青菜、少&もと 00038160M10めてつかわさう@トいへバ、商人もきもをつぶして、コリヤきちがひか|しらんと思ひしが、フトきがつ□、いや+コノ人@ 00038170M11@ハ芝居好と見へ|るとさとり、△@商Sハイ。おつけのミならバ至極よい此つま 00038180M12ミを、づひぶんと沢山まけてさしあげませうト、@かめのこざ|るへあてが@ 00038190M13@つてい|れる。@亭Sコレ+、それであたへハ何(十四オ)程△アキント 00038200M14Sこれで八文、大安/売(うり)△亭Sイヤ+、それハたかいぞよ 00038210M15商Sイヱ+、さやうおつしやつても、これハ今度の/路= 00038220M16好(ろ=こう)が/名残(なご)りで/厶(コザ)り升る△亭S厶ヽがでんの行ぬ。この青菜 00038230M17が/路考(ろこう)の名残りといふ心ハ△商Sハイ。大きにあべの/安(やす)な 00038240M18と申事で/厶(ござり)/舛(ます)る△亭Sべらぼうめ。どうりでくすの/葉(は)が 00038250M19ある 00038260¥P118 00038270¥G(十六ウ・十七オ) 00038280¥N9¥J 00038290¥X百物語(十四ウ) 00038300M3いさみでやひ四五人/集(あつ□)り、ナントむかしから、アノ百物語 00038310M4リ+といふ事があるが、一/番(ばん)やらかしてミやうじやアね 00038320M5へかといへバ、Sコイツアよかろう+。はやくやらかし 00038330M6やせうと、皆+がいふゆへ、其中での頭分が、そんなら 00038340M7アノ、おらかとなり長屋に/明店(あきたな)があるから、なんでもあそ 00038350M8こで、晩にやらかすべいと、さつそく/相談(さうだん)がきまり、何が 00038360M9大勢(十五オ)彼明店へ集て、のんだりくつたりして、色 00038370M10+なこハい咄しを段&すると、例のことく夜も早次第に 00038380M11ふけて、/燈(とう)心もモウ是ぎりといふになる。サアだれも咄し 00038390M12が出ず。たがひに/顔(かほ)ヲ見あハせて/斗(ばか)りいて、イヤ、今度ハ 00038400M13吉がばんだの。イヤ安がばんだのといつて、ろんがひぬゆ 00038410M14へ、一人リきついやつが、ヱイ、とうするもんか。いゝわ。 00038420M15おれが一(十五ウ)/番(ばん)はなすべい。今度アノ、向新道の/角(すミ)の 00038430M16内から、毎晩今時分になると、車程ナ大きい火の玉がころ 00038440M17げて出るといゝさま、かのあんどんの火をふつとけすと、 00038450M18/表(おもて)の戸ががらりとあく。ソリヤこそ出たと、大勢がうろた 00038460M19へると、/隣(とな)リの/亭主(ていしゆ)が門口から、Sモシ、病人が/厶(ござ)ります 00038470M20るから、チトおしづかになさつて下さりまし(十六オ)(十六 00038480¥P119 00038490L1ウ・十七オ挿絵) 00038500¥N10¥J 00038510¥X/男禁制(をとこきんぜい) 00038520L4今度道成寺て、ふたゝび/鐘鐘(つりがね(ママ))/建立(こんりう)が/出来(でき)、/鐘(かね)の/供養(くよう)が 00038530L5/弥(いよ+)始つた所が、住寺のおもひつきで、男禁制といふ札ヲ 00038540L6出して、何が女ハゆるしておがませるが、男をバやかまし 00038550L7くいふと、ある日三十位な/浪人躰(らうにんてい)な物か、深あミ/笠(かさ)をかぶ 00038560L8つて来て、どうぞ/鐘(かね)の供養をおかませて下さりませといふ。 00038570L9(十七ウ)両僧立出、Sならぬ+。此寺ハ男禁制てござる 00038580L10といへバ、浪人もの、S成程、むかしから女禁制と申ます 00038590L11ることハうけ給ハりましたが、男禁制と申升ることハ、又 00038600L12是ハどふ致たわけでござりまするといへバ、両僧S成程、 00038610L13ソノ男禁制にハわけのあることだ。むかし当寺へ/清姫(きよひめ)とい 00038620L14ふ女が、せんの釣/金(かね)をバ/湯(ゆ)になしてしまつた。それもかの 00038630L15安(十八オ)ちんといふ山伏が、清姫を女房にしやうといふ 00038640L16てだましたからのことだ。して見れバ、何にも女にとがハ 00038650L17ない。とかくわるい事をするは男に/極(きハまつ)たと、今度の和尚さ 00038660L18まのおもひつきで、此度ハ男禁制だといへバ、浪人Sそう 00038670L19おつしやれハ、一+/至極(しごく)、あなたのが御尤でござります 00038680L20るが、わたくしめハチト/心願(しんくわん)がこざりまするゆへ、さやう 00038690M1なら、どう(十八ウ)ぞそつと内所でおがませて下さりませ 00038700M2両僧Sイヤ、ならぬ+。そういふ程あやしい。なんぼそ 00038710M3のやうにいふても、おゝかたしまいにハ、つりがねでもは 00038720M4づして行であろう。ふとひやつだ。そして其/方(ほう)は浪人もの 00038730M5ゝやうに見ゆれども、おゝかた、われも/彼白拍子(かのしらひやうし)であろう 00038740M6が△Sイヽヱ、まつたくもちまして△Sそして又、何もの 00038750M8だ△Sハイ。/青(あを)びやうし(十九オ)の類ひて厶り升る 00038760¥N11¥J 00038770¥X心中 00038780M10白玉が何ぞと人の問ひし時露とこたへて二人リ/連(づれ)。/死(し)ね 00038790M11死のふとの中たんぼ、迷ひ出たる/浮気(うハき)/同士(どし)。詞S是お/妻(つま)。 00038800M12道&もいふ/通(とほ)り、此八郎兵衛こそ死なねバならぬ身のうへ。 00038810M13そなたハどうぞながらへて、我なき跡をとふてたも△クドキ 00038820M14Sソリヤきこへませぬ八郎兵衛(十九ウ)さん。いつ所に死 00038830M15ぬをたのしみに、/爰(こゝ)まで二人リ/来(き)たものを、今更そんなぐ 00038840M16ちなこと△男Sそんならどうでも△女Sアイ△男Sはてぜ 00038850M17ひもなひ。サアおじやと、手に手を/とり(カヽリ)てとりべのゝ、鳥 00038860M18かあらぬか犬の声、梅若寺のこなたなる、森の/木陰(こかげ)にたと 00038870M19りつく。@ト送り三重ニなりて、ほん舞台へ至ると、ふつとミれんな心か|起ツて来て、コリヤアつまらねへ。とふぞ女をさきへころして、@ 00038880M20@迯延ひませうと思ひてゐると、又女も、コリヤアつまらねへ。よしねへこ|とをした。男ヲさきへころして、ナンでも迯ませう(二十オ)と、たがひ 00038890¥P120 00038900L1@にミれんなこ|ゝろになり、@男Sサアかくごハよいか△Sアイ。/南無阿弥陀= 00038910L2仏(なむあミだ=ぶつ)と、半分いゝかけて、モシ八郎兵衛さんへ。アノ私しハ 00038920L3日ごろ/信心(しん※)する/観音経(くハんをんきやう)ヲ、せめてめいどのつみほろぼしに 00038930L4一巻よむ程に、おまへハマア、さきへ/死(しん)て下さんせへとい 00038940L5へば、Sムヽ、おれも日ころ信心する堀の内、せめて/未来(ミらい) 00038950L6ヲたすかるやうに、ならひ/覚(おほ)へし/自我経(じがぎやう)を壱巻(二十ウ)い 00038960L7つ所によもうと、まけぬ気になつて、ヨミクセ/妙法蓮花経(めうほうれんけきやう) 00038970L8/寿量(しゆりやう)品第十六しかアとくぶつらいしようきやうしようこ 00038980L9つしゆ@トよみ|出すと、@S妙法蓮華経/観世音(くハんせおん)/普門品(ふもんほん)第廿五にじんむ 00038990L10じんいぼさつそくじうざアきへんたんうけんぐわつせうが 00039000L11うふつにざぜごんぜそんくわんぜおんぼさつト、@たかひにま|けずおとら@ 00039010L12@ず、観音経へのん自我経とを、かけ合によんてゐるうち、はや冬の夜んの|ことといへと寺+(二十一オ)のかねのこえ、夜あけをつくるくたかけ@ 00039020L13@に、男ハふつ|ときかついて、@男Sコレ、今鐘かなるか、アリヤモウ何時て 00039030L14あろう△女Sアイ。モウ七ツでござんせう△男Sイヤ+ 00039040L15+、/烏(からす)が鳴くぞよ△女Sそんなら、夜明でござんせう 00039050L16男Sなる程、そういへば、むかうで人声がするぞへ。人目 00039060L17にかゝらバ一大事。コリヤまあどうせうぞ△女Sとてもか 00039070L18う成たからハ△男Sモウ一日のばそうか(二十一ウ) 00039080¥N12¥J 00039090¥X/雷嫌(かミなりきらい) 00039100M1S/爰(こゝ)に雷のきらいな人があり。ツイごろ+といつても、 00039110M2ヤレ/蚊屋(かや)ヲつれの、/線香(せんかう)をたてろのと、らんごくをやらか 00039120M3す位。ある時かの雷どのが、ゴロ+++++と 00039130M4なつて来る。サア++、かゝア、蚊屋ヲ++とい 00039140M5つた所が、折わるくかやハ七ツ屋へやつて、内にハないと 00039150M6いふ。/南無(なむ)三宝と、/亭主(ていしゆ)おし入レの戸を明て、(二十二オ)(二 00039160M7十二ウ・二十三オ挿絵)戸棚の内へかくれて、内からしつかり 00039170M8と戸をおさへてゐると、内の子ざうが是ヲ見て、Sかゝさ 00039180M9んや。アノとつさんハ、雷さまにもかりがあるか 00039190¥N13¥J 00039200¥X天文 00039210M12けふ両国へいつたら、/珍(めづ)らしいものを見升た。アノからく 00039220M13りの中で、八人/芸(げい)をするのを。成程後世おそるべしだと咄 00039230M14せバ、(二十三ウ)/側(そハ)にいる男か、Sナニ、それが珍らしいも 00039240M15のか。まだ+そんなこつちやアねへ。/目鏡(めかね)で/天道(てんとう)さまさ 00039250M16へ四文つゝでおがまれる。ヱヽそんならあの四文出すと、 00039260M17天道様がおがまれ升るかへ。Sおがまれるとも+△Sそ 00039270M18んならあの、お月さまもお/星(ほし)様もおがまれませう。成程、 00039280M19マアあの天道さまハ/遠(とを)目鏡のやうなものでおがま(二十四オ) 00039290M20せ、又アノお月様ハ天眼鏡のやうなものでおがませますて 00039300¥P121 00039310¥G(二十二ウ・二十三オ) 00039320M1Sそして又、あのお星様なぞハ、こまかなものでござるが、 00039330M2いくら有といふ其/数(かす)迄しれますて△Sハテねモシ。そんな 00039340M3ら天道様ハ遠目鏡でおがミ、お月様ハ天眼鏡とやらでおが 00039350M4ミ、そして又アノお星様ハ何で/見升(ミます)れハ、其数までしれま 00039360M5する△Sハテ、お/星(ほし)様ハ/細見(さいけん)で(二十四ウ) 00039370¥N14¥J 00039380¥X/心学(しんがく) 00039390M8八や。アノてめへ、心学といふ物/□((をカ))/聞(きい)た事があるかへ。 00039400M9Sいんにや。つひぞくつた事ハねへ△Sべらぼうめ、くら 00039410M10いもんじやアねへわへ。いぢのきたねへやろうだ。あの心 00039420M11がくと云ハな、がくもんの事だへ△Sハテナ。そしてどん 00039430M12なもんだへ△Sあんまり人がヱヽべ+といふからナ、き 00039440M13のうむかふのぢい(二十五オ)さんと/大家(をゝや)さんのおかミさんと 00039450M14一ツ所に/聞(きゝ)に行た所がナ、へんちきなもんだへ。まづ其心 00039460M15学とやらを/始(はしめ)るとな、/茶(ちや)もたばこものましやアがらねへわ 00039470M16へ。そこてナ、うつくしいたぼか、うしやアかつてからナ、 00039480M17おれもそのそはへいつて、なんでも手でもにぎつてやるべ 00039490M18いとおもつたら、そのそばへもやりやアがらねへ。あんま 00039500M19り(二十五ウ)いまへましく、がうがやけていたらな、ナニ 00039510M20が其心学をするしせう様が、高イ所へのぼりやアがつてな、 00039520¥P122 00039530L1まづ両手のてをたゝいて、今のハどつちらの手がなるつさ。 00039540L2べらぼうめ、しれた事だ。手をたゝくからならアさなア。 00039550L3そこで又茶わんを出しやアかつてな、こけが女郎/買(かい)にいき 00039560L4やアしめへし、きせるを出しやアがつて、その茶わん(二 00039570L5十六オ)をたゝいて、今のハ何がなるつさ。しれたことよ。 00039580L6ちやわんがなるわサ。そこで又其や/郎(らう)がいふにやア、おめ 00039590L7へ方ハあたまがあるかつさ。ヱヽひとをつけにしやアがつ 00039600L8た。あたまのねへ/人間(にんげん)かあるものかへ。そこで又目かある 00039610L9かつサ。そんなら又/耳(ミヽ)があるかとサ。いろ+ナことを/を((を衍)) 00039620L10ぬかしやアかるからナ、へら/棒(ぼう)め、かたわじやアあるめへ 00039630L11し、目やみゝのねへ人間がある物(二十六ウ)か。目や耳と 00039640L12ころしやア、手もあしも、しかも両方でゆびが拾本、/手足(てあし) 00039650L13ヲいれて廿本、/片(かた)&に六本あると、六ツゆびといつて見せ 00039660L14物に/出(だし)やすといつたらな、そのやろうがな、やゝひさしく 00039670L15だまつてうしやアがつたつけが、ナニがおれがわすれたろ 00039680L16うと思つて、半時斗リすぎてぬかすにやア、そんなら、お 00039690L17めへ、小/指(ゆび)があるかとさ△Sムヽ、其時てめへ、(二十七オ) 00039700L18又何といつた△S/□((イか))ヤサ、おれも是にやアへこんだ 00039710¥N15¥J 00039720¥X/断喰(だんじき) 00039730M1甚兵衛さん。どうもおらア此比ハ/工面(くめん)がわるくてならねへ 00039740M2が、なんと工面のよくなるさんたんハあるめへか。Sソリ 00039750M3ヤアぞうさもねへこつた。アノ貴様、とこぞの橋へ行て、 00039760M4/二((ママ))/枚(まい)めの板ヲ一枚とつて/来(き)て、(二十七ウ)其板で大黒さま 00039770M5をこしらへ信心すれバ、ぢきに工面がよくなる△Sハテな、 00039780M6そんなら今度、アノ大川橋がふしんだから、なんでも其三 00039790M7枚目の橋板ヲもらつて来て、何が大黒様をきざんて御/神酒(ミき) 00039800M8やおそなへをあけて信心した所が、サテ金が出来ぬゆへ、 00039810M9又/友達(ともだち)の所へきたり、Sモシ甚兵衛さん+。おめへのお 00039820M10しへの(二十八オ)通り、三枚目の板で大黒さまヲこさへて 00039830M11信心しやしたが、どうもきゝませんといへば、Sソリヤア 00039840M12また、おめへの信心がかへねへのたから、/今度(こんと)ハなんても 00039850M13断喰でもして、いのりなせへといわれ、何が又それから内 00039860M14へかへると、断喰ヲ始ていのりけれとも、やつぱり工面が 00039870M15/増(ます)+わるいゆへ、又+そのおしへた人の所へ来り、 00039880M16(二十八ウ)Sモシ+聞なせへ。おめへのいふ通り断喰を 00039890M17していのりやしたか、さつぱり/利生(りしやう)がござりやせんといへ 00039900M18ば、Sムヽ、そしておめへ、いくにちが断喰をしなさつた 00039910M19Sアイ、七日どころじやアござりやせん。しかも三七廿一 00039920M20日致しました△Sムヽ、そして其内ハめしを喰ハしめへな 00039930¥P123 00039940¥G(三十一ウ・三十二オ) 00039950M1Sどふ致まして。めし所で(二十九オ)ハござりません。す 00039960M2きな酒さへ下さりません△Sそれ見さつせへ。すなわちそ 00039970M3れがモウ、金の出来たのだ△Sハテね、そして其金と申ま 00039980M4するのハへ△Sイヤサ、廿一日くわずにいたら、それだけ 00039990M5米の銭がのびたのだ 00040000¥N16¥J 00040010¥X/駕舁(かごかき) 00040020M8◇辻駕◇ハイかご+。/旦那(だんな)、やすくめへりま(二十九ウ)せう 00040030M9◇客◇いくらた△Sハイ、おやすくめへりませう。やミいたゝ 00040040M10きませうといへば、客、やミとハいくらのことかしらねど 00040050M11も、しらぬといふもがうはらだとおもひ、◇客◇月夜にまけろ 00040060M12と@いへば、月夜とハいくらの事とおもへとも、これ|もまけをしみにて、しらぬといふもこうはらと、@◇駕◇そうおつしや 00040070M13らずと、左様なら、宵闇いたゝきませう△◇客◇イヤサ、まけ 00040080M14さつせへ。まけるならの(三十オ)ろう△◇駕◇ヨウこざります。 00040090M15めしませトかつぎかけて、/例(れい)のごとく、/棒組(ぼうくミ)。旦那ハ御じ 00040100M16よせいハねへのナンノト、程なく大門に至/□((れカ))バ、Sハイ、 00040110M17めへりましたと/駕(かこ)をおろす。客、ヲイ、御くろうといゝな 00040120M18がら、づか+と行うとするゆへ、◇駕◇モシ+旦那。かこ 00040130M19ちんヲいたゞきとうござりますといへば、◇客◇駕ちんハ直ヲ 00040140M20して置た△◇かこ◇ハイ。やミと申升た(三十ウ)ら、あなたか、 00040150¥P124 00040160L1月夜にまけろとおつしやりましたから、まけてあけ升たが、 00040170L2月夜とハいくらの事てござりまするといへば、◇客◇ムヽ、又 00040180L3そしてやミとハいくらの事た△◇かこ◇ハイ。やミと申升るハ、 00040190L4三十日をかたどりまして三百文でござりまする。/宵(よい)やミと 00040200L5申升るが、二十日ヲかたどりまして弐百文でござりまする 00040210L6から、月夜とおつ(三十一オ)(三十一ウ・三十二オ挿絵)しやり 00040220L7まするからハ、おゝかた十五日の百五十でござりませうと 00040230L8存じましており升たが、いかゞでござり升るといへば、◇客◇ 00040240L9インにや、おれが月夜ハそうでハない。月夜ニ/釜(かま)をぬかれ 00040250L10たと思つて、たゞのせろといふ事だ 00040260¥N17¥J 00040270¥X/祭(まつ)り/咄(はな)し 00040280L13此中十五日にナ、山王さまのまつりをミた(三十二ウ)か、 00040290L14かうせい大きいぞうが出たが、アリヤアとつから出るの。 00040300L15Sどつからつて、しれたことた。/糀(かうし)丁からよ。そんなこつ 00040310L16ちやアねへ。又おいらが方の神田/祭(まつ)りを見や。ごうせいな 00040320L17/鬼(おに)の/首(くひ)が出らア。/頼光(らいこう)金時四天王の山入でなト@はなせバ、|そばにゐる@男 00040330L18Sナニ、おめへがた、そねへナ、ぞうたの鬼だのといふが、 00040340L19めづらしいことがあるもんだへ。わしらがくにの(三十三オ) 00040350L20氏神様のまつりにやア、いつてもとふから/蛇(じや)が出ます 00040360¥N18¥J 00040370¥X同其二 00040380M3Sモシ、そして其ぞうハ、マア何をくひ升ね。ハテ、しれ 00040390M4たことサ。まんぢうをくひやす。しかも、そんなやすいま 00040400M5んぢうハくわねへ。鳥飼の上あんのまんぢうを一荷づゝく 00040410M6いやす。Sヱヽそして又、アノ神田の鬼の首(三十三ウ)ハ、 00040420M7コリヤア亦、何をくいやす△Sハテ、しれた事タ。鬼の首 00040430M8ア/金(かな)ぼうをくひます 00040440¥N19¥J 00040450¥X/見舞物(みまいもの) 00040460M11友達の権兵衛も久しい病気だが、とても今度ハよくあるめ 00040470M12へ。なんぞ病気ミまいを/持(もつ)ていつてやりてへもんだが、と 00040480M13てもやつててうほうになるものがいゝと、ナニガ/桶屋新道(おけやしんミち) 00040490M14へいつて、/丈夫(じやうぶ)なはや桶を(三十四オ)/買(かつ)て来て、/浅風呂敷(あさふろしき) 00040500M15へ/包(つゝん)でしよい、かの権兵衛が所へゆき、おもての戸を明て、 00040510M16Sどうた。かわる事もねへかといへバ、権兵衛、おもひの 00040520M17外大丈夫。鬼のやうに成て、さつさ+と/仕事(しごと)ヲしてゐる 00040530M18ゆへ、大きに手持ぶさたにうろ+してゐるト、権兵衛 00040540M19Sサア八公、あからつせへ。なんだな。きさまがしよつて 00040550M20るものを、まあ下へおろさつせへとゆわれ(三十四ウ)て、 00040560¥P125 00040570L1せうことなしに/風呂敷(ふろしき)ごとほうり/出(だ)して、Sコレ権や。コ 00040580L2リヤアちつと/斗(ばか)りだか、たき付にしやれ 00040590¥N20¥J 00040600¥X/禁酒(きんしゆ) 00040610L5/徳(とく)さん。おめへ、きん酒をしたといふ事だか、やつはりの 00040620L6むの。Sイヤサ。是にハ/段(だん)&だいぶ/故事来暦(こじらいれき)の有こつた。 00040630L7去年おらがかゝアざへむが大病を/煩(わづら)つた時、何がアノ盃へ、 00040640L8ぴんと(三十五オ)/錠(ぢやう)をおろして、/堀(ほり)の内へあけて、モウ酒 00040650L9ハ一ト/雫(しづく)もたべ升すまへと/願(ぐハん)をかけたの。ありがてへ事よ。 00040660L10アノかゝアざへむの大病が直り升た。所が、彼のめし£す 00040670L11きな酒のこつたから、何がどうものミたくつてならねへと 00040680L12おもひねへ。そこで一つ/思案(しあん)を出しやした。よく+かん 00040690L13がへて見た。盃ハ手にもとり升すめへと、がんハかけたが、 00040700L14ちやわん(三十五ウ)をばなんともゆわねへと。それから茶 00040710L15わん酒のあをつ/切(きり)さ。それだが、たゞ酒といつてのんじや 00040720L16ア、あんまりもつてへねへとおもふからの、/酒汐(さかしほ)といつて 00040730L17のむがいゝと、かのちやわん酒の中へチヨイと、しほをひ 00040740L18とつまミつまミこんだり、又ちやわんのうへに、はしをわ 00040750L19たして/呑(のん)だりするから、何と是じやア、ばちやアあたるめ 00040760L20へと、まじめ(三十六オ)に成てはなせバ、◇友達◇成程、コリ 00040770M1ヤア尤だ 00040780¥N21¥J 00040790¥X/化物女郎(はけものじやうろ) 00040800M4爰に新吉原江戸町上総屋何某といへるが/元(もと)に、/怪(あや)し/野(の)とい 00040810M5へる/傾城(けいせい)あり。その/美(うつ)くしさハ、いにしへの/衣通(そとをり)姫、/小町(こまち) 00040820M6にもおさ+おとらぬ/美人(びじん)なりしが、いかゞの事にや、此 00040830M7女郎の/元(もと)へ/通(かよ)ふ客ごとに、二度と/行(ゆく)もの/希(まれ)にして、皆一度 00040840M8行と、こり+(三十六ウ)して/行(ゆか)ざりし。いつとなく、た 00040850M9れいふともなく、/化物(はけもの)女郎+といゝふらし、次第に/客(きやく)も 00040860M10/遠(とほ)さかりぬ。しかるに又爰に、神田八丁堀辺に/気風(きふう)といふ 00040870M11ものあり。正/得(とく)此やうなるものゝ/例(ため)し見る事のすきなる男 00040880M12ありしが、いで我、その化物女郎をためし見んと、彼上総 00040890M13屋へぞ通ひけり。さる程に気風が/友達(ともたち)ハ/打寄(うちよつ)て、気(三十七 00040900M14オ)ふうのかへるを今や+と/待(まち)ゐるに、ほどなくきふう 00040910M15かへり来りけれバ、大勢の友達、/詞(ことバ)をそろへていふやう、 00040920M16S/定(さだ)めし気風先生、化物の正/躰(たい)見とゞけておかへりであろ 00040930M17う。サアなんと+といへバ、Sイヤサ。まづおきゝなさ 00040940M18れ。なるほど+、化物と申もむりでハござらぬ。かの女 00040950M19郎めハ、とこが/廻(まハ)ると、あんどんの火ヲふつと吹けしまし 00040960M20た(三十七ウ)てな△Sヱヽイ△Sそれから、かの/雪(ゆき)のやう 00040970¥P126 00040980L1な氷のやうな、まつ/白(しろ)なつめたいあしを、せつしやがまた 00040990L2へぐつとふミ/込(こミ)ました△Sヱヽイ△Sイヤモ、その時にハ 00041000L3せつしやもぞつと致升たが、/爰(こゝ)の所と存じ升るから、/例(れい)の 00041010L4/通(とを)りいろ+と、かきのめしに/懸(かゝ)りましたら、其女郎がた 00041020L5つた一度、ぬしやアばからしいといつたきり△Sどふし升 00041030L6た△S手のねへ女だ(三十八オ) 00041040¥N22¥J 00041050¥X/物祝(ものいまい(ママ)) 00041060L9/爰(こゝ)に又、/家主(いへぬし)長八といふものあり。此男、人にかわつて物 00041070L10ずきなる/生(うま)れつきにて、むしやうに/店(たな)をつる事かすきにて、 00041080L11/棚(たな)といふものハ、イヤてうほうなものだ。イヤけつかうな 00041090L12物だなそと、まつよそからかへ/((り脱カ))て、はをりをぬいで、かけ 00041100L13さほへかけやうとするのも、たなへのせ、チトいやらしい 00041110L14が、なじミの女郎の(三十八ウ)ところから来た/文(ふミ)なぞも、 00041120L15女房のしらぬやうに、そつと棚のすミへあげておき、それ 00041130L16/斗(ばか)りでなく、いつたい此男、至てきの長ひ男にて、たいが 00041140L17いの用事ハ四五日、五六日がうちハ棚にあげておく/位(くらい)。今 00041150L18度わたくしぎ、/勝(かつ)手に付、小柳丁新道へ/転宅(てんたく)した所が、彼 00041160L19のたなをつるに斗り、大工ヲ二人リ遣ひ、マアいきなりに 00041170L20/竃(かまど)ヲ/直(なを)スと、まづ/荒神(くハうじん)さまの(三十九オ)棚に、ソリヤ/仏(ほとけ)さ 00041180M1ま、ソリヤ/太神宮(だいじんぐう)さま、ソリヤ/鍋(なへ)棚、ソリヤとし/徳(とく)さまの 00041190M2棚よなぞと、モウ正月の棚迄もつゝて/置(おく)位。大工もあまり、 00041200M3たなをつるで、ツイ年徳様の棚ヲハ、来年の事ゆへ、あき 00041210M4のかたをまちがへて、あちらこちらへつりちかへしかば、 00041220M5/亭主(ていしゆ)、大きにきにかけると、大工もさすがさるものにて、 00041230M6◇大工◇モシ/旦那(たんな)。アノ/店(たな)ヲつりそくなひやしたかハり、(三十 00041240M7九ウ)わたくしかめでたく/祝(いハ)ひ/直(なを)して、/狂(きやう)かを/一首(いつしゆ)よミ升 00041250M8たといへば、◇亭主◇ソリヤアいゝ。まあなんとよんたといへ 00041260M9ば、大工、くわへぎせるをはたきなから、モシ、かうもあ 00041270M10ろうか。S目出たさハ此うへもなし/年徳(としとく)の△/店(たな)をあちこち 00041280M11つるかめ+@トいつたら、亭主、大きに祝て、作料も|二人りまへよけいにくれたといふ咄しが@あると/咄(はな)せ 00041290M12ハ、そハにきいてゐる男、ソリヤアマア、そして其男のせ 00041300M13うばいハ何せうばい(四十オ)をしますといへば、Sハテ、 00041310M14/亭主(ていしゆ)ハ/店(たな)もので、かゝアハ/店(たな)つちりだ 00041320¥N23¥J 00041330¥X七段目 00041340M17◇仲居◇手の/鳴(なる)ほうへ++△◇由良介◇とらまへて酒のませう 00041350M18++。サア++とらまへた。酒++◇客◇由 00041360M19良の介さま。御目さまされませう△◇由良◇ヤヽヽ、S/千崎(せんさき) 00041370M20弥五郎、矢左間十太郎、/竹森(たけもり)喜太八めでござり升る(四十ウ) 00041380¥P127 00041390L1@トいはれて、ゆらの介びつくりして、例のとをり思入レよろしくありて、|そのまゝそこへ倒れ伏すと、三人ハ立上り、各+方。いよ+ゆらどの@ 00041400L2@の性根ハくさつたと見へますると、刀の柄へ手をかける所へ、足軽平右衛|門たち出、しばし+とおしとゞめ、やう+三人のものをなだめて、い@ 00041410L3@つものことく奥へやり、跡にひとりのこりて、|酔ふしたるゆらの介の枕がミをなをして、△@△◇平右衛門◇ヱヽ/情(なさけ)ない。 00041420L4/誰(たれ)有ふ大星由良の介さまともあろう御身が、/敵(かたき)/高(かう)の/師直(もろなう)か 00041430L5為に、色&さま※との千/心(しん)万/苦(く)。成程御酒でもめしあが 00041440L6らずハ、お/命(いのち)がつゝき升まひ@トいへば、ゆらの介|ふつと目をさまし、@◇ゆら◇平右衛 00041450L7門+△◇平◇ハア(四十一オ)◇由◇命ハつゝくが、/銭(せに)かつゞか 00041460L8ねへ 00041470¥N24¥J 00041480¥X同其二 00041490L11@千崎|矢さま|竹森@三人、/奥(おく)より立出て、由良の介どの。一+あやまり 00041500L12入り升て/厶(ござ)り/升(ます)ル。◇平右衛門◇くらい/酔(ゑふ)たる此客人@ト九太夫が死|骸へはをりヲ@ 00041510L13@き|せ、@加茂川て水そう水を△◇ゆら◇平右衛門△◇平◇ハア△◇ゆら◇ヲレ 00041520L14モ一膳せうばんしてへ 00041530¥N25¥J 00041540¥X/評判(ひやうはん)(四十一ウ) 00041550L17此咄し本の/外題(けだい)ヲ、なぜ、ぶゑんのもろあじとつけたの。 00041560L18◇作者◇ハテしれた事。あたらしいといふことた△Sインにや、 00041570L19それでも中にふるくさいがあるぜへ△◇作◇べら/棒(ぼう)め。おいら 00041580L20かこさへる咄しに、ふるひがあつてつまるものか。/西河岸(にしかし) 00041590M1の/肴(さかな)しやアあるめへし、/焼(やき)なをし/煮(に)かへしの/宵(よい)ごしのもの 00041600M2かあるものか。そんないやミハねへのだ△Sアヽ、そこで 00041610M3ぶゑん(四十二オ)のもろあじか△◇作◇何ヲいわつしやる。し 00041620M4れた事だ(四十二ウ) 00041630¥P128 00041640¥U噺本大系△第十五巻 00041650¥T/笑(わら)ふ/門(かど)〔序文〕 00041660¥G 00041670¥Y 00041680L16文化頃刊 00041690L17三笑亭可楽序・珍蝶亭夢楽作 00041700L18西村屋与八板 00041710L19中本一冊 00041720L20国立国会図書館蔵 00041730¥Y序 00041740M3/百鳥(ひやくてう)のさいずりにハ、/山&(やま+)も/笑(わら)ひを/催(もよふ)し、/春風(しゆんふう)のたハれ 00041750M4/声(こへ)にハ、/梅(むめ)もやゝ/笑(ゑミ)をもとむ。/寧(むしろ)、/犬馬(けんば)ハ/笑(わら)わずといへど 00041760M5も、/来歳(らいさい)のうわさには、/鼠(ねずみ)も/笑(わら)ふとかや。/魚(うを)にすら、笑ひ 00041770M6すゞき、わらひごいの(壱オ)こじ/付言葉(つけことば)あり。/時鳥(ほとゝぎす)も笑わ 00041780M7ゞいかにと、/去誹人(さるはいじん)の/口(くち)ずさまれし、むべなり。/笑上戸(わらひぜうご)に 00041790M8笑ふよめ、笑ふ/門(かど)にハ/福(ふく)/来(きたる)ルといふ/古言(ここと)にめでゝ、/鉄炮(てつほう)が 00041800M9しの/若(わか)イ/衆(しゆ)も、/顔(かほ)をすら見れハ、お笑ひ+ト 00041810M10△△△△△△△△△△△△△三笑亭 00041820M11△△△△△△△△△△△△△△△可楽述G 00041830M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(壱ウ) 00041840¥P129 00041850¥N1¥J 00041860¥X○瀬戸物道行△△△△△△△△△△¥A夢楽著 00041870L3おちよくをつれて五郎八ハ、なまじうき世にながらへて、 00041880L4ひとの手塩にかゝろより、今川橋どんふりとゆかんとせし 00041890L5が、とつくりと亦も心をとり直し、今われ+が二人リ共 00041900L6ちりれんげの身とならバ、よいきびしせうとわらわれても、 00041910L7さら+いとひハせぬけれど、そなたをわりしハ、じしん 00041920L8のとが。片口なればいゝわけなし。ひとまづ此場を立のか 00041930L9んと、(二オ)なまづにあらでひやうたんの、新道さしてぞ 00041940L10いそきゆく。Sイヤ何、申、焼継屋様。なにとぞあなたの 00041950L11御せわ、三日なりとも元の身に、立帰らせて下されと、な 00041960L12ミだなかして、ひたすらに頼めば、焼継うなついて、Sハ 00041970L13ヽア、見れバなり風俗、其人がら。おふかた、あの子ハや 00041980L14しきでゞあろふといへバ、◇五郎八◇イヱ、錦手で御座ります 00041990¥N2¥J 00042000¥X○琴三味せん 00042010L17やげんほりの湯治場で、◇三味◇これハおことどの。(二ウ)め 00042020L18つらしい所でおめにかゝりましたが、わしハさほへきづが 00042030L19出来たから、それゆえに、こゝへ湯治に来ましたか、きさ 00042040L20まは何ゆへ△◇こと◇ハイ。わたくしハぢがいたんでなりませ 00042050M1ん 00042060¥N3¥J 00042070¥X○布袋の水入 00042080M4◇筆◇ミづ入レのところへ来り、門口から、イヤ、ほていしゆ 00042090M5ハうちかな。◇ほてい◇是ハきらびやかで、いづれへ行たまふ 00042100M6◇筆◇いまツから、帳へ女郎かいにゆくつもりたが、とふだ、 00042110M7気ハなし地の(三オ)すゞり箱か△◇ほてい◇よしやれ。またか 00042120M8ゝれよふと思つて 00042130¥N4¥J 00042140¥X○なまかい兵介 00042150M11扨町人方え御てふほうハ鳶のうを、御武家様方にハ、かの 00042160M12太刀のうを、まづ最初つかいまする棒だらの義ハ、大しば 00042170M13ゑびに小芝なきくらげ、ひだいにからさけわり、西国ハ三 00042180M14十三ケ所の札所かたどる順礼棒、順礼な笠ごのひらきほし 00042190M15あげて、コリヤ奴コ、お肴か。◇奴◇なか+、さよふでござ 00042200M16い△Sあんほんたん、御用なら此間に(三ウ) 00042210¥N5¥J 00042220¥X○両替町 00042230M19わしが内で、今南鐐か古人龍蔵をつかつたり、小銭か常世 00042240M20につふかぐにやとみで晒落ている所へ、丁銀めらが石を 00042250¥P130 00042260L1なけましたといへバ、◇小判◇かんにんさつせへ。先ハ小玉た 00042270¥N6¥J 00042280¥X○船のいしや 00042290L4両国へんに、川のせん中とて、船のりやうじを(四オ)する 00042300L5と、船頭か来て、とふぞわたくしがふねがいごきません。 00042310L6御見まい被下ましと、連立てミせれバ、◇いしや◇是ハよほど 00042320L7むづかしい。いつたい病症ハじんきよじや。家根船、猪牙 00042330L8と違イ、此様に帆はしらが立すきて、水のへりじやから、 00042340L9地黄ざいをもちひたら、さつそく直りますと、くすりを渡 00042350L10して帰る。二三日過て見舞と、◇船頭◇これ、おいしや様。す 00042360L11こしもげんがミへませぬといへハ、◇いしや◇いこかぬはづハ 00042370L12(四ウ)ないかと、川かミを見て、きかぬりくつじや。◇船頭◇ 00042380L13なぜ△◇いしや◇かわ上で、大こんを洗つた 00042390¥N7¥J 00042400¥X○三国志 00042410L16夕部、三ごくしを夢にミて、あんまり玄徳かいゝから、関 00042420L17羽して、一ツはいのむから、どふぞあいているなら、頂飛 00042430L18をかしねへ 00042440¥N8¥J 00042450¥X○さそく 00042460M1夜前、横町の両替やへ、盗人か這入りましたら、内義か飛 00042470M2んておきて、きんをしつかり(五オ)にきりました。◇家主◇そ 00042480M3れハけしからぬこと。両がへやの内義ゆへに、金をにぎつ 00042490M4たが、船宿の女房たと、直にさほをつかまへます 00042500¥N9¥J 00042510¥X○十露盤の占 00042520M7爰ニけん市といふざとう有りて、呉市、哥市といふ弟子 00042530M8二人リ、今壱人リハ九しんかいつしにて子供ゆへ、けいこ 00042540M9をしているところへ、若イ男壱人リ来り、どふぞわたくし 00042550M10がミのうへを、御ろふじてましといへハ、◇けん一◇十露ばん 00042560M11を(五ウ)はつち+とおいて、是ハ御まへ様。ゆふべ女郎 00042570M12かいにいつた所か、壱人リの女郎に、御まへ共ニ客人かふ 00042580M13たりありましたか△◇若イ男◇夫ハきめう。どふしてしれます 00042590M14な△◇けん一◇二人ンか仕と出ます。そしておまへハ宿へリか 00042600M15ら、気まぐれにならしつたな△◇男◇是もきめう。とふしてし 00042610M16れます△◇けん一◇ハテ、遊参か毒と出ます 00042620¥N10¥J 00042630¥X○半過通 00042640M19細見を見て、何ともし、扇屋には花扇が(六オ)二人リ出来 00042650M20ましたね。◇友達◇何、二人リ有ものか△◇半◇それても見なせへ 00042660¥P131 00042670L1まし。$花扇△とかいたそばハ、$/司(おなじく|つかさ)△と書てあ 00042680L3りやス 00042690¥N11¥J 00042700¥X○狂歌 00042710L6△△△むつことにかよふてあしをすりこふ木 00042720L7△△△△おもひかなへてくたさんしやうのき 00042730L8といふ狂歌にくどき落されて、摺子木と摺鉢がふうふにな 00042740L9つて、まいばんすると、そバであぶり子か、やきもちをや 00042750L10くヤツサ(六ウ) 00042760¥N12¥J 00042770¥X○しぎやき 00042780L13おなすも此ころハ、くしをさしたり、あぶらをつけたりし 00042790L14て、こふぎにつくるか、おしゐ事にハ、◇友◇どふした。ハテ、 00042800L15色のくろひので、味噌をつける 00042810¥N13¥J 00042820¥X○舌切すゝめ 00042830L18/老人(ぢゞ)ハ山より雀を連て帰り、これから茶を煮て、くわしで 00042840L19もとつて、ちそふをしませうといへバ、◇雀◇イヤ、おぢいさ 00042850L20ん。わたくしハ(七オ)もちハきついきらいで御座ります 00042860M1◇ぢゞ◇そして、何か好じや△◇雀◇アイ。さゝかすきさ 00042870¥A珍蝶亭△夢楽戯作 00042880M6△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△G 00042890M8△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(七ウ) 00042900¥P132 00042910¥U噺本大系△第十五巻 00042920¥T落噺;/恵方棚(えほうだな)〔題簽〕 00042930¥G 00042940¥Y 00042950L15文政二年正月刊 00042960L16小野秋津序・撰 00042970L17玉僊画 00042980L18名古屋△万巻堂板 00042990L19小本一冊 00043000L20尾崎久彌氏蔵 00043010¥Y序 00043020M3/霞(かすミ)/棚(たな)びく/春(はる)のはしめ、/売初(うりぞめ)の/市(いち)の/棚(たな)に、めつらしき/趣向(しゆかう) 00043030M4をと/思(おも)へと、/年&(ねん+)/歳&(さい+)/棚(たな)/相似(あひに)たり、/棚(たな)の/牡丹餅(ぼたもち)/焼直(やきなほ)しも/珍(めづ) 00043040M5らしからずと、/新(あたら)しく/釣(つゝ)た/恵方棚(ゑハうだな)、ゆがミなりにもつゞり 00043050M6しハ、たな(一オ)もとの/権助(ごんすけ)、/棚尻(たなしり)のお/乳母(うば)か/耳(ミヽ)にも入や 00043060M7すき/落(おと)し/咄(はなし)を、/同(おな)し/心(こゝろ)の/友(とも)にもすゝめて、おと/棚機(たなばた)のうな 00043070M8がせる/玉(たま)の/言葉(ことば)に、おのれがつたなき/膳棚(ぜんたな)の/道具(だうぐ)ぞろへも 00043080M9うちまぜて、/戸棚(とたな)/風呂(ふろ)の入ごみに、/黒棚(くろたな)の/黒人顔(くろとがほ)してかく 00043090M10(一ウ)しるすも、/棚(たな)の/藤(ふち)が枝/長(なが)き/日(ひ)の、御わらひ/艸(ぐさ)に/備(そな)ふ 00043100M11るにこそ 00043110M13△△△△△△△△△△△△△耳風改 00043120M14△△△夘のはつ春△△△△△△小野秋津△△G 00043130M16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二オ) 00043140¥P133 00043150¥G(二ウ・三オ) 00043160¥G(三ウ) 00043170G1〔口絵中の歌句〕 00043180G2△△子をすかすむかし噺に引かへて 00043190G3△△△はておもしろきおちのひとこと△△△胡椒亭丸呑 00043200G4△△こからしのさそひて枝ハはなし本 00043210G5△△△落てきれいな庭の紅葉は△△△△△△東銭軒鶴寿 00043220G6△△大わらひ絶し冠の纓とみむ 00043230G7△△△おとしはなしの見台のふさ△△△△△龍ノ屋弘器 00043240G8△△おもしろき噺にしかみ火鉢まて 00043250G9△△△わらふか口の明てミゆるハ△△△△△玉流園沢丸 00043260G10△△山わらひ蛙もはらをかゝゆるや 00043270G11△△△はなしに花をさかすはるの日△△△△小野△秋津 00043280¥P134 00043290¥T1落噺恵方棚 00043300¥A小野秋津撰 00043310¥N1¥J 00043320¥X/生子(うまれご)△△△△△△△¥A桑名倉積事△一返舎半分作 00043330L7/道楽寺(だうらくじ)といふ寺に、おすけといふむすめ、/忍(しの)び/男(をとこ)いくたり 00043340L8となく、たれかれなしに、いちやつきしが、とう+/懐胎(くわいたい) 00043350L9し、/是(これ)ハマアたれが子だと、せんきのうちに、月ミちて、 00043360L10ころりうミ(四オ)おとした所か、/衣(ころも)をきて、手に/帳(ちやう)をさげ 00043370L11た子、うまるゝやいなや/走(はし)り出して、帳をさし出し、S/奉= 00043380L12加(ほう=が)ア+ 00043390¥N2¥J 00043400¥X/狸(たぬき)ねいり△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00043410L15さる所の/女房(にようぼう)、まをとこを引すりこみ、おくの間にてたの 00043420L16しむさい/中(ちう)、もとつてくるていしゆのせきばらひに、びつ 00043430L17くりながら、にげて出る(四ウ)もいかゞ、かくれる所もな 00043440L18し。いつそくそ/落(おち)つきに、だきついたまゝそらねいり。て 00043450L19いしゆハもどりて、おくをのぞいて、Sハヽア、かゝアハ 00043460L20まをとこの/夢(ゆめ)でも見てゐるそふだ 00043470¥N3¥J 00043480¥X大仏出火△△△△△△△△△△△△△¥A同 00043490M3/大仏(だいふつ)の/火事(くわじ)の/時(とき)、/早(はや)御からだへ火がまハり、もへあがるに 00043500M4つれ、御/鼻(はな)の/穴(あな)から、まつかな/煙(けふり)(五オ)が出るを見て、き 00043510M5のきいた/火(ひ)けし、おせなかへはし子をかけ、はせのほつて、 00043520M6ぼんのくほの/毛(け)をぬいた 00043530¥N4¥J 00043540¥X/火事(くわじ)△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00043550M9さる/国(くに)の/殿(との)さま、御やしき近く火もえ出、御/居間(ゐま)へうつる 00043560M10と、/殿(との)さま、うまれてからはじめて/火事(くわじ)をちかく見たまひ、 00043570M11大うろたえにて、/漸(やう+)(五ウ)御/下(しも)やかたへ御たちのき被成、 00043580M12/翌日(よくじつ)ミな+をめしあつめられ、/仰(おゝせ)出さるゝハ、此のち/火= 00043590M13事(くわ=じ)御はつと 00043600¥N5¥J 00043610¥X天神社△△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00043620M16やミの/夜(よ)、/社(やしろ)のうしろから、/何(なに)かしろいものか、ふハ+ 00043630M17とミゆると、わつといふて/参詣(さんけい)の人にげもどり、Sアレハ 00043640M18何だらふ△▽Sされハ大かた、せんころ(六オ)こゝで、い 00043650M19さりの/仇討(あだうち)の/芝居(しばゐ)をしたから、三平のゆうれいてあらふ 00043660M20▽S何、そりや/芝居(しはゐ)だから、ゆうれいの出るはつハねへ。 00043670¥P135 00043680L1/天神(てんじん)さまのそばだから、しへいのゆうれいであろう。きつ 00043690L2いこたアねへ。いつて見やうと、/鉢(はち)まきしめていつて見た 00043700L3ら、/御幣(ごへい) 00043710¥N6¥J 00043720¥X/灸(きう)△△△△△△△△△△△△¥A平安亭七辻作(六ウ) 00043730L6Sコリヤ三助。こゝへきて/灸(きう)すゑてくれ△三Sかしこまり 00043740L7ましたと、すゑかゝる。Sヤレ、あついハ+。コリヤと 00043750L8ふする△三Sこれハかはきりてこざりますから、ちとあつ 00043760L9うこさりませう。御しんぼうなされませ△Sべらほうめ、 00043770L10きのきかねへ。かハきりハあとへまハせ 00043780¥N7¥J 00043790¥X/駕篭(かご)△△△△△△△△△△△△△¥A同△(七オ) 00043800L13/背(せ)のいたつてたかい/男(をとこ)と、ひくい男と/相棒(あいぼう)にて、/駕(かご)をかい 00043810L14てゆく。壱二/町(てう)ゆくと、のり人Sこれハ/前(まへ)へひつくりかへ 00043820L15りそふで、はながあぶない。まへとうしろとかハれ+ 00043830L16かごかきSハイ、かしこまりましたと、かハつて又二三町ゆ 00043840L17くと、のり人Sこれでハ又、/背骨(せぼね)がたまらぬ△かごSまた 00043850L18かハりませうか△のり人Sイヤ、それてハ/同(おな)じ/事(こと)だ。いつ 00043860L19そおれが出てかこう(七ウ) 00043870¥N8¥J 00043880¥X/建立(こんりう)△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00043890M3/門口(かとくち)へ/坊主(ほうず)か、はつちといふてくる。/丁稚(でつち)、/銭(ぜに)一文ほり出 00043900M4してやる。あとへ又ひとりくると、又ほり出してやる。引 00043910M5ちかへて、又一人くる。また/銭(せに)をほり出してやると、でつ 00043920M6ち/気(き)か/付(つき)、なむさん、いまのハ/四文銭(しもんせん)だ。つりをよこせと 00043930M7いふと、/坊主(ぼうず)ふりかへつて、Sつりがねへのこんりう(八 00043940M8オ) 00043950¥N9¥J 00043960¥X茶碗△△△△△△△△△△△¥A玉流園沢丸作 00043970M11/小道具屋(こだうくや)/来(きた)りて、Sもし、おもしろい一/軸(ぢく)かござりますが、 00043980M12おめしなされませぬか△Sドレ+と取てミて、ハア、/木= 00043990M13庵和尚(もく=あんをしやう)だな。アヽ/見事(ミごと)そふなが、/意地(いち)わるの/姑(しうとめ)ときて、よ 00044000M14めにくいハへ。道ぐやSイヤ、姑のかハりには、/直(ね)うちで 00044010M16こざります△Sそんなら、もとめておきませふ△道ぐや 00044020M16Sついでに、此/萩(はぎ)の/茶(ちや)わんもおめし(八ウ)なされませぬか 00044030M17Sドレ、いや、これハいかぬ。しうとめハまだかんにんが 00044040M18なるが、/是(これ)ハ/出(で)もとりの/娵(よめ)た△道ぐやSナゼでこさります 00044050M19Sもふわれてゐる 00044060¥P136 00044070¥N10¥J 00044080¥X子日△△△△△△△△△△△△¥A東銭軒鶴寿作 00044090L3/正月(しやうぐハつ)/子(ね)の/日(ひ)に、/歌(うた)よみあつまり、歌をあんじてゐる所へ、 00044100L4/隣(となり)の/儒者(じゆしや)きたり、/何事(なにこと)だととへば、ていしゆ、けふハ/狂歌(きやうか) 00044110L5の/友(とも)だちか二三人きやしたから、(九オ)一/首(しゆ)よみやす。お 00044120L6めへさんも/何(なん)ぞ、御よみなせへといふに、/儒者(じゆしや)、/座敷(ざしき)へと 00044130L7ほりミれば、/座中(ざちう)のこらず、/短冊(たんざく)に子日と書て、どうもよ 00044140L8めぬと、あんじてゐるを見て、/儒者(しゆしや)ハ/早(さう)+さしきをたち 00044150L9出、/扨(さて)+/狂歌(きやうか)よみといふものハ、/文盲(もんもう)なものだといへば、 00044160L10あるじ、むつとして、どふして狂哥よみは文盲なといふ。 00044170L11ハテ、アヽ大ぜいよつて/居(ゐ)なから、(九ウ)/子曰(しのゝたふまく)がひと 00044180L12つよめぬといふてゐる 00044190¥N11¥J 00044200¥X/地震(ぢしん)△△△△△△△△△△△△△△¥A作者しらず 00044210L15七Sおかミさん。けふハいゝおてんきだね△女房Sヲヽ、 00044220L16となりの七兵へさん。ようおいて。ちとおあがりなされま 00044230L17し△七Sほんに、ゆふべハけしからねへ/地震(ぢしん)であつたねと 00044240L18いへば、/女房(にようぼう)、かほをあかくして、Sまたなぶりなさる 00044250L19(十オ) 00044260¥N12¥J 00044270¥X/腹(はら)の/内(うち) 00044280M3さる所の/生子(うまれご)、うまるゝよりすぐに、おとなのやうにいろ 00044290M4+のことをいふゆへ、めづらしがり、人があつまりては 00044300M5なしをするうち、一人が子にむかひて、/腹(はら)のうちに/居(ゐ)た/時(とき) 00044310M6のことも、おぼへが有だらう。どのやうなこゝろもちで有 00044320M7たととへバ、かの子がいふにハ、はらのうちハ、八九月ご 00044330M8ろのやうた。Sそりや(十ウ)どふして△子Sてうと、あつ 00044340M9くもなし、さむくもなし。そふしてをりS、下から/松茸(まつたけ) 00044350M10がはへる 00044360M11△△右の二ツハ、たれ人の/作(さく)とハしらねと、/此頃(このごろ)きゝておもしろ 00044370M12△△かりしまゝくハへたり 00044380¥N13¥J 00044390¥X/節季(せつき)△△△△△△△△△△△△△¥A里桃作 00044400M15/大三十日(おゝミそか)になりて、くめんのわるきていしゆ、在/郷者(ごうもの)の/男(をとこ) 00044410M16にいひつけ、かけ/乞(こひ)か/来(き)たら、他行(十一オ)いたしたとい 00044420M17へといひつけ、/二階(にかい)にかくれてをると、やがて米屋がきて、 00044430M18Sヘイ。おやかましうごさりませう△男Sだんなハ/他行(たぎやう)い 00044440M19たしました△米やSさやうなら、のちほどさんじませうと 00044450M20/出(で)てゆく。入かハつて/丁稚(でつち)が、Sハイ。/酒屋(さかや)でこざります 00044460¥P137 00044470L1男Sだんなハ他行だ△でつちS他行とハ、なんのことでこ 00044480L2さりますととへバ、/男(をとこ)、ぬからぬ/顔(かほ)て、S他行といふハ、 00044490L3二/階(かい)にねて(十一ウ)をることだハ 00044500¥N14¥J 00044510¥X/古傘(ふるがさ)△△△△△△△△△△△△¥A小野秋津作 00044520L6八兵へといふやつハ、/物(もの)をしらぬやつだ。おれが/先日(せんじつ)あそ 00044530L7こへいつた/時(とき)、/雨(あめ)がふり出したら、/古(ふる)いかさてもかしてや 00044540L8らうと、ぬかしやアがる。おのれ、ミろ。此/意趣(いしゆ)がへしを 00044550L9やらかしてくりやうと、ふくんでゐる所へ、八兵へSどふだ、 00044560L10三/公(こう)。かハることもなしか。ときにおれは(十二オ)ちかい 00044570L11うちに京へのほるか、いつが/日(ひ)がいゝ。ちよつと見てくだ 00044580L12つし三Sヲヽ、/古(ふる)い/暦(こよミ)でなと、見てやらう 00044590¥N15¥J 00044600¥X菊五郎△△△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00044610L15/権(ごん)兵へといふ/男(をとこ)、ふしあハせにて、/段(だん)+つまらぬものに 00044620L16なりしが、きつとこゝろ/付(つき)、/大須(おゝす)の/芝居(しばゐ)にて、/江戸役者(えどやくしや)/尾= 00044630L17上(をの=へ)/菊(きく)五郎が、/天竺(てんぢく)/徳(とく)兵へになり、/術(じゆつ)をつかふて、/身(ミ)を/自由(しゆう) 00044640L18に/変(へん)ずるとのこと。どふぞ(十二ウ)此術をおぼへたら、か 00044650L19ねまうけが出来さうなものとおもひ、おしつけて/楽屋(がくや)へゆ 00044660L20き、/菊(きく)五郎にあふてたのめば、きく五郎Sすいぶんをしへ 00044670M1てあげやせう。なんのぞうさもないことサ。わたしがする 00044680M2とほりに、手をくんで、此文をおほへなせへ。なむさつた 00044690M3らまふんだり、ぎやしごしやうでんはらひそ+△権兵へ 00044700M4Sよし+、おぼへました。是ハさつそくありかたしと、 00044710M5一/礼(れい)(十三オ)のべてかへり、夫より何かにきをつけ、かせ 00044720M6ぎければ、ほどなくよき/身代(しんだい)になりしを、となりの/欲(よく)兵へ、 00044730M7うらやましく、どふぞわしにも、をしへてくださるまいか 00044740M8とたのめば、権Sなるほど、をしへませうが、此術をする 00044750M9にハ、ずいぶんほしいものもこらへ、くいたいものもくハ 00044760M10ずに、心かけねばなりやせん△よくSそれハもふ、すいぶ 00044770M11んしやうちサ△権Sそんなら、わしがいふとほり、おほ 00044780M12(十三ウ)へなせへ。アヽなんとやら、ヲヽそれよ。なにか 00044790M13つたやら、ふんだくに/少(すこし)/用心(ようじん)、/払(はらひ)しよ+と、此/秘文(ひもん)をと 00044800M14なへて、とかく、かねをつかハぬやうにするのさ△よく 00044810M15Sそして、これハ/何(なん)といふ/術(じゆつ)だね△権Sしれたこと。/不買(かハづ) 00044820M16の/術(じゆつ)さ 00044830¥N16¥J 00044840¥X/日雇(ひやう)△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00044850M19/金(かね)もちの/旦那(だんな)、/夏(なつ)のあつさによわり、どふぞ/手(て)(十四オ)ば 00044860M20やに、/下(しも)やしきのうちへ/堀(ほり)をほりいれて、/水(ミつ)のながるゝや 00044870¥P138 00044880L1うなしやうハないかと、/大工(だいく)/日雇(ひやう)をあつめて/相談(さうだん)するに、 00044890L2いづれ水ハどこからなりとも引やうハあれと、/堀(ほり)をほるて 00044900L3まに、三十日かそこらハかゝるとのこと。それでハきうな 00044910L4/間(ま)にあハぬと、いろ+/工夫(くふう)するうち、ひとりの/日雇(ひやう)が、 00044920L5Sもし+、よいしあんかござります。/世間(せけん)の/古井戸(ふるゐど)をか 00044930L6ひ(十四ウ)/出(だ)して/継合(つきあハ)したら、どうでござりませふ 00044940¥N17¥J 00044950¥X/医者(いしや)△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00044960L9/三角(ミつかど)/吟庵(ぎんなん)といふ/医者(いしや)、/病家(びやうか)よりかへり、くたびれてとろ 00044970L10+とうたゝ/寐(ね)に、あたりの/手道具(てだうぐ)あらハれ/出(いで)、中にも/鼻= 00044980L11紙袋(はな=がミふくろ)がいふにハ、Sナント、こんやハ/女郎買(ぢよらうかひ)にいかうじや 00044990L12アねへか△相口Sよからう。/貴公(きこう)が/懐(ふところ)なら、おれもさしぞ 00045000L13へにいかう。/胴乱(どうらん)もゆく(十五オ)だらうから、/根付(ねつけ)ハさし 00045010L14づめ、ひつ/付(つき)だ△ネツケSもふひとりもつれがあれバよい。 00045020L15いつかう/銀庵坊(ぎんなんぼう)を/連(つれ)てゆかうかとゆすりおこせハ、医Sイ 00045030L16ヤ+、わしハ/昼(ひる)のれうちでくたびれたから、/代脉(だいミやく)に/唐卓(たうしよく) 00045040L17をつれていかつし△Sそんならそふせうと、みなつれだち 00045050L18て/卓(しよく)のそばへ行、皆+Sどふだ。女郎/買(かひ)だが、いかねへ 00045060L19か△卓Sヤア、おそろひだな。いきてへもんだがト、れん 00045070L20中(十五ウ)を見まハして、イヤ+、こんやハどふもいき 00045080M1たくねへ。よしにせう△皆+Sナゼ△卓Sなぜでも、ど 00045090M2ふもゆきたくねへといふに、しかたなくかへりて、S/銀庵(ぎんなん) 00045100M3/先生(せんせい)。どうしたものか、/卓(しよく)がいやだといひます△医Sハア、 00045110M4あいつハ/桐(きり)だから、/足(あし)のかるいやつだが、なぜゆかぬか。 00045120M5大かたそれハ、れん中のうちにわるいものでもあるだらう 00045130M6相口Sハア、それでおもひ出した。/一角(うにこふる)の(十六オ)ねつけ 00045140M7が、いつやら/卓(しよく)のうへでけづられた/時(とき)、卓に/疵(きづ)をつけやし 00045150M8たが、こんやねつけが/一所(いつしよ)にゆくゆへであらうよ△医Sそ 00045160M9うさ+。ねつけが有てハ、/卓(しよく)がすゝまぬも/尤(もつとも)だ 00045170¥N18¥J 00045180¥X花好△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00045190M12S/上(かミ)の/町(てう)の吉ハ、とんだ/花(はな)ずきだせ。うらの/花檀(くハだん)ハもちろ 00045200M13ん、/家(いへ)のうちにハ/生花(いけはな)だらけだ。(十六ウ)さしきにハ/花生(はないけ) 00045210M14が/置筒(おきつゝ)につりふね、うすばたに/馬(ば)だらひの二三十もいけて 00045220M15ある。そのほか、/茶(ちや)がま、/水(ミづ)がめ、/手水(てうづ)ばち、水つぼ、水 00045230M16だめ、つぼのうちの/泉水(せんすい)まで、水けのあるほどの所に、花 00045240M17のいけてねへ/所(とこ)ハねへ。そのうちたつた一所、はなのない 00045250M18ところがある△Sそれハどこだ△Sくそがめさ△Sヱヽき 00045260M19たねへ。たれがまた、そんな所に(十七オ)はなをいけるも 00045270M20のだ△Sなに、はじめハそれても、いけたそふだが、よし 00045280¥P139 00045290L1にしたとさ△Sそりやなぜ△Sせつかくいけても、はなも 00045300L2ちがならねへ 00045310¥N19¥J 00045320¥X福寿艸△△△△△△△△△△△△△△¥A同 00045330L5S此/春(はる)ハ/福寿艸(ふくじゆさう)もふるいから、/床(とこ)にめづらしい花を/置(をき)やし 00045340L6た△Sヘイ、/夫(それ)ハどふいふ/艸(くさ)でこさります△Sねかほそく 00045350L7て、上がひらいて、所+につばのやう(十七ウ)なふしか 00045360L8有て、/珠数粒(じゆすつぶ)のやうな/実(ミ)がなります。それをくうと、/飴(あめ)の 00045370L9やうな/味(あぢ)さ。まだめづらしいことハ、風がふくと、/笛(ふへ)のや 00045380L10うなねが出ます。/全躰(ぜんたい)、をらんだ/伝来(でんらい)の物たといひやす△ 00045390L11Sそして名ハ、何といふものでこざります△S名ハらつぱ 00045400L12/艸(さう)さ 00045410L13△△右ハ此ころ/唐人衣装(たうじんいしやう)にて、らつぱをふき、らつぱさうといへ 00045420L14△△るくわしうりの/来(く)るについての/急案(きうあん)也(十八オ) 00045430¥Q 00045440M1@恵方棚|二△篇@/落噺初午詣(おとしはなしはつうままうで)△@夘正月△△△|△廿八日集切@ 00045450M3右御望の御方様加入仕候はなしハ、題何によらす思召次 00045460M4第、御壱人分入料銀弐匁御そへ被下、万巻堂へ御出し可 00045470M5被下候。撰出候分出板すり本壱部ツヽ呈上仕候 00045480M6△△△△△△△△△△△△△△△△△△撰者△秋津 00045490M7△△△△△△△△△本町三丁目△△△万巻堂梓 00045500M9△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十八ウ) 00045510¥G 00045520¥P140 00045530¥U噺本大系△第十五巻 00045540¥T/仕形落語(しかたばなし)/工風(くふうの)/智恵輪(ちえのわ)〔序題〕 00045550¥G 00045560¥Y 00045570L16文政四年正月刊 00045580L17東里山人作 00045590L18勝川春好画 00045600L19甘泉堂板 00045610L20中本一冊 00045620¥Y/仕形落語(しかたばなし)/工風(くふうの)/智恵輪(ちゑのハ)序 00045630M3このはなしをあつめんとて、はるけきみちのくのそとがは 00045640M4まなる、またしらぬひのつくしなるうハさ、ひとふたとか 00045650M5ぞへ、十くさ廿くさとゆびをり、こぬ人をまつほのうら 00045660M6のみるめともがらハ、もにすむ/虫(むし)のわれからと、人のあど 00045670M7うつとしもなく、げにめをさますわざならめと、ふかきね 00045680M8もなきうきくさの、はなかきあつめぬるぞ、こゝろのミづ 00045690M9のさそひものなれ。そハをとこやまのはなも、いたづらに 00045700M10(一オ)たをり、おとめつかのをミなへしも、まさなくハち 00045710M11ぎらざれとや。こゝろのたねのすなほならバ、むべなでし 00045720M12このすえはまで、かれうつろハぬいさをしなるべし。おき 00045730M13なぐさのおも+と、うバたけのよしあるハいはず、たゞ 00045740M14わかむらさきのよそふくかぜのてになびきやすく、いろて 00045750M15ふふかくときめくはなし/家(か)の、はたけにハいまだうへざ 00045760M16るたねなれバ、さちにかんせんだうのあるじにあたへて、 00045770M17さくら/木(ぎ)にいのちながふす。ときに、ふミのまつりごとな 00045780M18る(一ウ)よつのとし、むづきのうりものとて、ミつのとし 00045790M19のしもおくはじめに、 00045800M20△△△△△△△△△△△△△△東里山人しるす△G 00045810¥P141 00045820¥G(二ウ・三オ) 00045830M1△△△やま+の笑ふにつけて春風の 00045840M2△△△△こらえかねてハ吹出しつゝ(二オ) 00045850G1〔口絵中の句詞〕 00045860G2△○/仕形(しかた)ばなしの/身(ミ)ぶり/振附(ふりつけ)の/図(づ) 00045870G3△△ゆくすえハ/誰(たが)はだふれん/紅(べに)のはな△△はせを 00045880G4△△/花(はな)の/雲(くも)かねハ/上野(うへの)か/浅草(あさくさ)か△△其△角 00045890¥Y/仕形落語(しかたばなし)/目録(もくろく)並/道具建(だうぐだて) 00045900M11△△△○/万歳(まんざい)の/頓智(とんち) 00045910M12〔ほん〕二さつ〔はし〕一ぜん〔あふぎ〕一ぽん〔きせる〕 00045920M13〔たばこ入〕△〔手ぬくひ〕一すじ 00045930M14△△△○/文屋(ぶんやの)/康秀(やすひで)の/古事(こじ) 00045940M15/道具立(だうぐたて)のこらず/前(まへ)を/用(もち)ゆる 00045950M16△△△○/四季(しき)の/誂望(ながめ)(三ウ) 00045960M17/道具立(だうぐだて)のこらず/前(まへ)を/用(もち)ゆる。/但(たゞ)シ△〔ちやわん〕△一ツ/添(そへ)る 00045970M18△△△○/猟人(かりうど)の/難義(なんぎ) 00045980M19〔とつくり〕〔かよひ帳〕〔ちよく〕〔やたて〕〔あふぎ〕 00045990M20〔手ぬぐひ〕 00046000¥P142 00046010¥G(三ウ・四オ) 00046020M1△△△○/太神楽(だいかぐら)の/災難(さいなん) 00046030M2/道具立(だうぐだて)のこらず/前(まへ)を/用(もち)ゆる 00046040M3△△△○/大鵬(たいぼう)の/発明(はつめい) 00046050M4/道具立(だうぐだて)のこらず/前(まへ)を/用(もち)ゆる。/但(たゞ)シ〔はし〕一ぜん/添(そへ)る(四 00046060M5オ) 00046070M6△△△○/鬟(かつら)の/夜遊(よあそび) 00046080M7〔まくら〕〔長ぎせる〕〔たばこ箱〕〔あふぎ〕〔手ぬぐひ〕 00046090M8△△△○/虫尽(むしづくし)の/世界(せかい) 00046100M9〔あふぎ三ぼん〕〔ちよく〕〔はし〕一ぜん 00046110M10△△△○/七変化(しちへんげ)の/所作(しよさ) 00046120M11〔丸ぼん〕〔ちよく〕〔さいはい〕〔手ぬぐひ〕 00046130M12△△△○/向島(むかふじま)の/滑稽(しやれ)(四ウ) 00046140M13〔とつくり〕〔ちやわん〕〔はし〕一ぜん〔しつほくなべ〕 00046150M14〔ちりれんげ〕〔手ぬぐひ〕 00046160M15△△△以上通計十種△△○/化粧道具(けせうだうぐ)にて十二ケ月の 00046170M16△△△後篇巻十五種△△△/所作(しよさ)となるはなし 00046180M17△△△稿成△△近刻△△○/勝手(かつて)の/小道具類(こだうぐるい)にて 00046190M18△△△△△△△△△△△△/忠臣蔵(ちうしんぐら)となる/話(はなし) 00046200M19道具建目録終(五オ) 00046210¥P143 00046220¥G(四ウ・五オ) 00046230¥N1¥J 00046240¥X○/万歳(まんざい)の/頓智(とんち)△@○ほん二さつ△○はし一ぜん△○あふぎ一ほん|○きせるたばこ入△○手ぬぐひ一すじ△△△△@ 00046250M3/初春(はつはる)の/朝(あし)た、/松竹(まつだけ)とともに/門(かど)に/立(たち)しハ、/一歳(ひとゝせ)を/寿(ことぶ)く 00046260M5G/万才(まんざい)、G/才蔵(さいぞう)(たばこ入を 00046270M7すミちがいに折て三角となる)を/引連(ひきつ)れて、/徳(とく)ハ/堪忍(かんにん)/五万才(ごまんざい)と/謠(うた) 00046280M8ふ。あるじ/聞(きい)て、コレハ+/珍(めづ)らしい万才どの。/招(まね)がずし 00046290M9て/来(きた)るとハ、/何(なん)でも目出たい/吉相(きつさう)ならん。/座敷(ざしき)へ/通(とふ)つて、 00046300M10一ツいはふて下されトいえバ、万才も/心得顔(こゝろえがほ)にて、ズツト 00046310M12/上(あが)る。/主人(あるじ)も初春のことなれバ、G上下で/寿(ことぶ) 00046320M14き/囃(はや)すを/聞(きく)に、/拍子(ひやうし)どるつゞみがなきゆへ、大きに不/興顔(けうがほ) 00046330M15にて、万才の/素語(すがたり)ハ/始(はじ)めて/聞(きゝ)しと/笑(わら)ひけるに、/万才(まんざい)もぬか 00046340M16らず、私義ハ/三河国(ミかハのくに)/勝&山(かち+やま)のふもとなる/狸(たぬき)(五ウ)/太夫(だいふ)と申 00046350M17ス万才でござるトいえバ、/主人(あるじ)、グツト/承知(しやうち)して、ヲツト 00046360M18/跡(あと)はいふまい。/諸事(しよじ)/腹(はら)にある+ 00046370¥P144 00046380¥N2¥J 00046390¥X○/文屋(ぶんやの)/康(やす)ひでの/古事(こじ)△○だうぐ立まへを用ゆる 00046400L3/昔&(むかし+)/伊勢国(いせのくに)にG文屋の康秀といふ者あり。 00046410L6/重(おもき)/病(やまひ)の/為(ため)にくるしんで/遂(つひ)に身まかりぬ。G/独(ひとり)、 00046420L8/死出(しで)の/山(やま)、/三途川(さんつのかハ)を/越行(こへゆけ)バ、かのせうづかG 00046430L11の/姥(ばゞ)に、六/道銭(だうせん)をむさぼられ、/又(また)/赤(あか)鬼にG 00046440L14いざなハれて、たちまち、ゑんまG大王 00046450L17の前に/至(いた)りける。時に大王の/曰(のたま)ハく、/此(この)ものハ/未(いま)だ/定業(ぢやうごう)の 00046460L18/死(し)にあらす。/早&(はや+)(六オ)/娑婆(しやば)へ/甦皈(よミがへら)せ、しかるべしとあり 00046470L20けれバ、/五道(ごだう)のG/冥官等(ミやうくわんら)/奏(そう)しけるハ、/此(この)もの、 00046480M1/最早(もはや)/体(たい)を/焼(やき)けれバ、/蘇生(よミかへら)すべきからだ、これなしといふに、 00046490M2/大王(だいわう)、/然(しか)らバ/同日(おなじひ)おなじ/刻限(こくげん)に死せる者の/死骸(しがい)へ、/魄霊(たましゐ)を 00046500M3/皈(かへ)すべしとありけるゆへ、是を/鑿穿(せんさく)なす所に、其日/其刻(そのこく)に、 00046510M4/九州(きうしう)/日向(ひうが)の国の/鳶(とび)のものにて、のふてん吉とG 00046520M6いふもの死せるよしにて、/渠(かれ)が/死骸(しがい)へ康秀を/甦皈(よミかへら)せけ 00046530M7る。しかる所に、吉がG女ぼうハ、/夫(おつと)に/別(わか)れ 00046540M9し/悲(かな)しさに、日&/墓(はか)へまいり、水を/手向(たむけ)てありけるが、/塚(つか) 00046550M10の/中(うち)にて、うめく/声(こへ)するに/驚(おどろ)き、すぐさま(六ウ)/墓(はか)を/堀(ほり)て 00046560M11見けれバ、夫の/蘇生(そせい)せしに/嬉(うれ)しく、/欣(よろこ)ぶ/事(こと)かぎりなし。さ 00046570M12れども、吉ハ/忙然(ぼうせん)として/聊(いさゝ)か/悦(よろこ)ぶ色なく、/吾(われ)ハ/其方(そなた)の/夫(おつと)に 00046580M13あらず。まづ此所ハ/何国(いづく)ぞといふて、/只管(ひたすら)伊勢国の事、ま 00046590M14た我妻の事など/語(かた)れども、女ぼうハ/一円(いちゑん)に/合点(がてん)せず。/日向= 00046600M15国(ひうがの=くに)のこと、我家の事、また/死期(しご)の/為躰(ていたらく)など/語(かた)るに、吉ハ/更(さら) 00046610M16に/得心(とくしん)せず、/只(たゞ)/伊勢国(いせのくに)の事のミいひける/侭(まゝ)、/是(これ)よりして、 00046620M17はなしの手に葉合ざる/訳(わけ)の/知(し)れざることを、伊勢と日向の 00046630M18/物語(ものがたり)とハいひ/習(ならハ)せける。/斯(かく)て吉ハ女ぼうを/引連(ひきつれ)て、はる※ 00046640M20と日向の国より伊勢の国へ下り、我ハG(七オ) 00046650¥P145 00046660L2/文屋(ぶんやの)/康秀(やすひで)なりとて、/妻(つま)に/対面(たいめん)なすに、Gつまハ 00046670L4/夫(おつと)の/顔色(がんしよく)、/容形(すがたかたち)の/換(かハ)れるに、/実(まこと)とも/思(おも)ハざりしが、/兼(かね)て 00046680L5/言(い)ひ/遺(のこ)せる事とも、またたしなめる/和歌(わか)の道など/物語(ものかた)るに 00046690L6つけて、妻も/漸&(よう+)/康秀(やすひで)が/蘇生(そせい)なしたるを/知(し)りて、/夫婦(ふうふ)のち 00046700L7ぎり浅からざりしとかや。/日向国(ひうがのくに)の女ぼうも、また/捨(すて)かた 00046710L8くて、/異妻(ことづま)となし、伊勢国に/住(すミ)けるが、/素(もと)より/鳶(とび)のものゝ 00046720L9吉が/体(からだ)なれバ、/兎(と)に/角(かく)むかふG/鉢= 00046730L11巻(はち=まき)、/日和下駄(ひよりげた)にて、くりから/龍(りやう)の二の/腕(うで)をふりまハし、/此(こん) 00046740L12/■子(べらばア)、/某子(おれう)/誰(だれ)だと思やアがる。(七ウ)/文屋(ぶんやの)/康秀(やすひで)さまといふ 00046750L13/歌詠(うたよミ)だぞ。/三秤五厘(さんびんごりん)、/蹴飛(けとび)を/喰野郎(くふやろう)じやアねへわへト、/太= 00046760L14平楽(たい=へいらく)をいふ所へ、/日向(ひうが)の国の/友達(ともだち)、/参宮(さんぐう)として/通(とふ)りかゝり、 00046770L15/此躰(このてい)を見て、コレ吉や。手めへは/甦皈(いきけへつ)たといふ/噂(うハさ)を/聞(きい)たが、 00046780L16/爰(こゝ)に/居(ゐる)か。/未(ま)だ/殻太平(からでへへい)が/止(やま)ねへなトいへバ、おきやアがれ。 00046790L17/昔(むかし)の吉とおもふか。/今(いま)ハ文屋の康秀といふ/歌人(かじん)だハ。コイ 00046800L18ツア/大笑(おほわら)ひだ。/歌人(かじん)ハ/居(ゐ)ながら/糞(くそ)をひるといふハ。コレ/■= 00046810L19子(ば=かア)いへ。/吹(ふく)からに秋の/草木(くさき)のしほるれバ、むべ山風をあら 00046820L20しといふらんトいふ/歌(うた)ハ、おれが/詠(よん)だのダハへ。コレ+ 00046830M1吉や。(八オ)あんまり人の名を/衒(かたつ)て/太平(てへへい)をいやんな。むか 00046840M2ふの/自身番(じしんばん)に、/百人一首(ひやくにんしゆ)が/聞(きい)て/居(ゐ)さつしやる 00046850¥N3¥J 00046860¥X○/四季(しき)の/誂望(なかめ)△@○だうぐ立まへを用ゆる△|△但しちやわん一ツそへる@ 00046870M6まづ正月ハGお/礼者(れいしや)。二月ハG 00046880M8はつ午ののぼり。三月ハGG/紙雛(かミひゐな)。 00046890M10四月ハG/釈迦(しやか)の/誕生(たんぜう)。五月ハG/餝(かざ)り 00046900M12かぶと。六月ハG/涼(すゞ)ミ/舟(ぶね)。七月ハG/燈= 00046910M14篭(とう=ろう)。さて八月ハ(八ウ)G/月見(つきミ)。九月ハやつぱりG月見。 00046920M17十月ハG/夷講(ゑびすこう)。十一月ハG/顔見世(かほミせ)の 00046930M20/門看板(もんかんばん)。十二月ハさつ+とござれやG/節= 00046940¥P146 00046950L1季候(せ=きぞろ)。/毎年(まいねん)/毎歳(まいとし)とびこめはね/込(こめ)と/勢(いきほ)ひよく、/糀屋(こうじや)の見世/先(さき) 00046960L2へ/踊(おど)り/込(こミ)しが、/遂(つ)ひふミはづして/糀室(こうじむろ)の中へ/落(おち)けるに、/亭= 00046970L3主(てい=しゆ)これを見て、むかし+、節季候が/室(むろ)へ/落(おち)しを/引上(ひきあげ)て見 00046980L4たれバ、/万才(まんざい)になりしといふ事あり。物ハためし、さらバ 00046990L5引あげて見んと、/早速(さつそく)/室(むろ)へ入り、かの/節季候(せきぞろ)を/引上(ひきあげ)けるに、 00047000L6/矢張(やつぱり)節季候にて、コレハ+(九オ)/旦那(だんな)さま、/有難(ありがたふ)ござり 00047010L7ます。/余(あま)り/踊込(おどりこミ)/過(すぎ)まして、/遂(つひ)/此室(このむろ)へ/落(おち)ました。/真平(まつぴら)/御免(ごめん)下 00047020L8さりませと、/早&(さう+)に出て行に、/亭主(ていしゆ)/愕然果(あきれはて)、コレヤイ、/昔(むかし) 00047030L9ハ/節季候(せきぞろ)が/室(むろ)へ/落(おち)ると、/万才(まんざい)に/成(なつ)たためしもあるに、よく 00047040L10+気のきかねへ/節季候(せきぞろ)だ。大べらぼうめと/呵(しか)り/附(つけ)られて、 00047050L12/節季候(せきぞろ)も/聞(きか)ぬ/気(き)になり、/編笠(あミがさ)を/取(とつ)てGハイ。/其(その) 00047060L14/跡(あと)の/福大黒(ふくだいこく) 00047070¥N4¥J 00047080¥X○/猟人(かりうど)の/難義(なんぎ)△@○とつくり一ツ△○かよひ帳一さつ△△△|○酒のミちよく一ツ△○やたて一ほん△△|○あふぎ一ほん△○手ぬぐひ一すじ(九ウ)@ 00047090L17G/猟人(かりうど)、ある山に/至(いた)り、よき/得(え)ものせんと/佇立(うろつく) 00047100L19/所(ところ)に、たに/間(あひ)に、きじの/如(ごと)きG/鳥(とり)/一羽(いちは)/居(ゐ)るを見て、 00047110M2さつそく/鉄炮(てつほう)へ/玉(たま)をこめ、G/念(ねん)なふうちとめて、 00047120M4/傍(かたハら)を見れバ、G/此山(このやま)/殺生禁断(せつせうきんだん)といふ/石(いし)ぶミあ 00047130M5り。/猟人(かりうど)、これを見るより/心驚(ぎやうてん)なし、/若(もし)/咎(とがむ)る/人(ひと)もあらバ一 00047140M7大事と、/急(いそ)ぎ/立帰(たちかへ)らんとする/後(うしろ)より、G/猟人(かりうど)、 00047150M9/動(うご)くな。とつた+ト/声(こへ)かけられて、/猟人(かりうど)も一トちゞミと 00047160M10なり、/素(もと)より/不案内(ふあんない)にて、/係(かゝ)る/御山(おんやま)とも/存(ぞん)ぜす/這入(はいり)し/者(もの)ゆ 00047170M11へ、/何卒(なにとぞ)いのちを/御助(おんたす)けと/侘(わび)けれども、とり/手(で)の/者(もの)承知(しやうち)せ 00047180M13ず、/縄(なハ)かけて/引(ひか)んとする(十オ)/所(ところ)へ、G/襟立衣(ゑりたてごろも) 00047190M15に/柄香炉(ゑかうろ)を/持(もち)し/僧(そう)/一人(ひとり)、/忽然(こつぜん)として/顕(あらハ)れ、ぜんざい+。 00047200M16/我(われ)ハこれ、/此(この)山を/巡(めぐ)る/行者(ぎやうじや)なり。その/猟人(かりうど)、とび/道具(だうぐ)を/持(もち)、 00047210M17此山に/入来(いりきた)れども、いまだ/殺生(せつせう)をせざれバ、ゆるし/遣(つかハ)すべ 00047220M18しとありけれバ、とり/手(て)の/者(もの)、/僧(そう)の/言葉(ことば)に/随(したが)ひ、/猟人(かりうと)を/見= 00047230M19遁(ミ=のがし)て/立去(たちさり)ける。/偖(さて)/猟人(かりうど)ハ、/危(あやう)き/命(いのち)を/拾(ひろ)ひしも/偏(ひとへ)に/御僧(おんそう)の/蔭(かげ) 00047240M20なりとて、かの/僧(そう)を/伴引(ともなひ)、/梺(ふもと)に下り、/向(と)ある/酒屋(さかや)へ/立(たち)より、 00047250¥P147 00047260L1Gさけをとり、/僧(そう)にも/呑(のま)せ、おのれも/呑(のミ)て/大生酔(おほなまえひ)と 00047270L3なり/立出(たちいづ)るに、/酒屋(さかや)の/亭主(ていしゆ)、/酒(さけ)の/代(だい)を/貰(もら)ハんといふに、/吾(われ) 00047280L4ハ/素(もと)より/猟人(かりうど)なれバ、/酒代(さかだい)も(十ウ)かりうどなりといふ。 00047290L5/然(しか)らバ/僧(そう)におはらひをトいえバ、/僧(そう)も、はらひはいたしが 00047300L6たし。/経(きやう)にても/読(よミ)て/遣(つか)ハすべしと、/取(とつ)ても/附(つか)ぬ/挨拶(あいさつ)ゆへ、 00047310L7G/亭主(ていしゆ)、ハテ/心得(こゝろえ)ぬ/両人(ふたり)の/奴等(やつら)。/酒(さけ)を/呑(くらつ)て、/其(その)/代(だい) 00047320L9をかりうどなどゝ/不敵(ふてき)の/挨拶(あいさつ)。/連(つれ)の/僧侶(ぼうず)も/神職(しんしよく)にあらざる 00047330L10ゆへに、はらひハ/出来(でき)ぬと/口功者(くちごうしや)な/言訳(いひわけ)。でんぼう/野人(やじん)の 00047340L11/人非(にんぴ)にん。ぜひもなき/商売(しやうばい)じやなアトりきむト、そばから 00047350L12/番頭(ばんとう)が、Gカタリ+++ 00047360¥N5¥J 00047370¥X○/太神楽(だいかくら)の/災難(さいなん)△○だうぐ立まへを用ゆる(十一オ) 00047380L16/或(ある)/御屋敷(おやしき)の/御物見(おものミ)下にて、/太神楽(だいかぐら)の/丸(まる)一/篭(かご)まりのおこのミ。 00047390L18G/見物(けんぶつ)のG女中/達(たち)ハ、かごまりよ 00047400L20りハ/男(をとこ)を見んと、こうしのあひだから/覗(のぞ)ひてゐる。/其中(そのうち)に 00047410M1/一人(ひとり)、/水際(ミづぎハ)の/立(たつ)て/美(うつくし)きG女中に、丸一も/見惚(ミとれ)て、/遂(つい)/篭(かご) 00047420M3まりの/手(て)が/外(はづ)れ、/茶碗(ちやわん)が/目(め)だまへ/当(あたつ)て、/即座(そくざ)に/盲人(めくら)となりけ 00047430M4れバ、/御屋敷(おやしき)にても/気(き)の/毒(どく)におぼしめされ、/御出入(おでいり)を/仰付(おゝせつけ)ら 00047440M5れて、/往&(ゆく+)ハ/倹校(けんぎやう(ママ))にもとり/立(たて)つかハすべしと/有(あり)がたき/上= 00047450M6意(じやう=ゐ)に、/名(な)もその/侭(まゝ)に/丸都(まるいち)とよび、Gとき※ 00047460M7/御屋敷(おやしき)へ/上(あが)るに、/素(もと)より/俄盲人(にハかめくら)の/疳(かん)の/悪(わる)さに、/御用之外(ごようのほか) 00047470M8(十一ウ)/車留(くるまとめ)といふG/立札(たてふだ)に/突当(つきあた)り、 00047480M10ヤイ、/何奴(なにやつ)だ。コレ、/気(き)を/附(つけ)て/往来(おうらい)なせ。/盲人(めくら)に突当ると 00047490M11いふハ/不埓(ふらち)な奴だト、引/捕(とらへ)て見れバ車留の札ゆへ、ヱヽい 00047500M12めへましい。往来の/真(まん)中にたつてゐずと、/片脇(かたわき)へ/寄(よつ)て立て 00047510M13ゐろ。べらぼうづらめ。うぬがおかげで、おれにやアこん 00047520M14なG/瘤(こぶ)を/額(ひたい)へこしらへさせた。アヽいたい+と 00047530M16いひながら行ひようしに、Gとつくりの上へ/踏(ふミ)かけて、 00047540M17のけさまに/辷(すべ)り/転(ころ)び、ヤア、だれか/投(なげ)おつたな。ヤア、/腰(こし) 00047550M18の/骨(ほね)がぬけて立ことがならぬ。/何(なん)でもコリヤア/只(たゞ)じやア/済(すま) 00047560M19ねへぞ。ヤイ、/爰(こゝ)へうしやアがれと、わめき(十二オ)立て 00047570M20も人ハ/居(ゐ)ず。/腰(こし)をさすり+/立(たと)ふと/思(おも)つても、/痛(いた)んでたつ 00047580¥P148 00047590L1ことならず。/困(こま)り/切(きつ)て居るを、/駕篭舁(かごかき)が見付て、モシ/座頭(ざとう) 00047600L2さん。Gかごをやらうかトいえバ、/丸都(まるいち)、イヤ、も 00047610L4ふかごまりハごめんだ 00047620¥N6¥J 00047630¥X○/大鵬(たいぼう)の/発明(はつめい)△@○だうぐ立まへを用ゆる。|△但しはし一ぜんそへる@ 00047640L7/北海(ほくかい)に/鯤(こん)といふG/魚(うほ)あり。/化(け)してG大鵬とな 00047650L9る。/片羽(かたはね)が千/里(り)づゝ、一とび/飛(とぶ)ときハ一万里行といふ。ある 00047660L10とき/此(この)大鵬、五六百/万里(まんり)の/道(ミち)を/飛(とん)で/南海(なんかい)に/至(いた)りけるが、(十二 00047670L11ウ)/翼(つばさ)、/殊(こと)の外に/草臥(くたびれ)けるゆへ、/暫(しバ)し/羽(はね)を/休(やす)めんと、/海上(かいしやう) 00047680L12を/見渡(ミわた)せバ、/最(いと)/平&(べう+)たる一ツの/島(しま)ありけるに/欣(よろ)こび、さつ 00047690L13そく/爰(こゝ)に/下(おり)て、二千里/余(あま)りの羽をひろげ、/快然(こゝろよく)/休息居(やすミゐ)ける 00047700L14/所(ところ)に、/此(この)しま/俄(にハか)に/鳴動(めいだう)して、/湖(うしほ(ママ))にしたがひ/浮(うか)び上り、海中 00047710L15に/声(こへ)あつて、/某(おれ)が/背中(せなか)へ/乗(のり)しハ/誰(だれ)ぞといふに、/大鵬(たいぼう)は大きに 00047720L16/驚(おどろ)き、/飛(とび)上りてこれを見れバ、およそ五六千里もあらんと 00047730L18/覚(おぼ)しきG/蟹(かに)にてありけれバ、さすがの大鵬も/肝(きも)を/消(け) 00047740L20し、/惣(そう)じて天地の/間(あいだ)に/我(われ)よりおほきなる(十三オ)/形容(かたち)のも 00047750M1のハあるまじと/思(おも)ひの外、/偖(さて)おそろしき/光景(ありさま)やと/羽(はね)を/縮(ちゞ) 00047760M3めて/北海(ほつかい)の/古巣(ふるす)へ立かえりける。こゝにかのG蟹ハ、 00047770M5/大鵬(たいぼう)の/怖(おそ)れ/去(さり)けるを見て、/吾容(わがすがた)の/広大(くハうだい)なるをさとり、/或= 00047780M6日(ある=ひ)/南海(なんかい)の/水底(すいてい)をはなれて、/東海(とうかい)にあそび行ける。およそ七 00047790M7八百/万里(まんり)の道を/横這(よこばひ)して、大きに/足(あし)も/労(つか)れければ、すこし 00047800M8/休(やす)まんと、海中に/浮(うか)ミある大木の上へ/這(はひ)のほり、/甲良(こうら)を/乾(ほし) 00047810M9て/暫(しバ)し/息(いき)を/突居(つきゐ)たる/所(ところ)に、/此(この)大木、にハかに/動(ゆる)ぎ出して、 00047820M10おれが/髭(ひげ)へ/止(とま)りしハ/何奴(なにやつ)といふ/声(こへ)に、/蟹(かに)また/心驚(ぎやうてん)(十三ウ) 00047830M11なして、/足(あし)を/縮(ちゞ)め/泡(あハ)を/吐(はき)、おそれ/戦慄(おのゝき)、/南海(なんかい)へ/迯(にげ)さりける。 00047840M13/偖(さて)此大木と見えしハ、/東(とう)海を/住居(すまゐ)とするG 00047850M15/海老(ゑび)にてぞありける。/蟹(かに)の/恐(おそ)れ/去(さり)しを見て、/凡(およそ)天地/広(ひろ)しと 00047860M16いえども、中+/我(われ)に/勝(まさ)れる/形(かたち)のものハ/亦(また)あるまじと、東 00047870M18海の/底(そこ)/深(ふか)く行に、/遥(はる)か/向(むか)ふに/金殿(きんでん)/銀閣(ぎんかく)Gの/楼= 00047880M20門(ろう=もん)あり。コハ/珍(めづら)しき/都(ミやこ)に/至(いた)りしと、かの楼門にすゝミ、/腰(こし) 00047890¥P149 00047900L1をかゞめて内に入見れバ、八大/龍王(りうわう)の/姫達(ひめたち)、おもてに出て 00047910L2/羽子(はね)をつくあり。また/椽先(えんさき)に/手鞠(てまり)つきて/唄(うた)うたふもあり。 00047920L3いかさま、これハ/龍(りう)(十四オ)/宮城(ぐうじやう)の正月ならめと、大きに 00047930L4心を/慰(なぐさ)めて、とある/酒店(さかや)へ立より、/屠蘇(とそ)の/土器(かハらけ)/傾(かた)むけて、 00047940L5/叩(たゝ)きごぼうの/胡麻(ごま)びたしに/生酔(なまえひ)となり、/真赤(まつかく)なつて/拮歩行(はねあるきし) 00047950L6が、/思(おも)ハづすまんりの/道(ミち)に/草臥(くたびれ)て、チト足を/休(やす)めんと、大 00047960L7/岩(いハ)の上に/這登(はひのぼ)り、腰をのばして居たるに、亦/声(こへ)あつて、お 00047970L8れがあたまへ/跨(またが)りしハ/何奴(なにやつ)といふに、海老も/暫(しバ)しは/驚(おどろ)きし 00047980L9が、/髭(ひげ)を/撫(なで)て、おそらく/我形(わがかたち)に/勝(まさ)れるもの、天地の間にな 00047990L10きはづなるに、/斯(かく)いふハ/誰(たれ)にてやありけるぞ。なのれ+ 00048000L11ト声かくれバ、下から、/鏡餅(かゞミもち)だわへ引(十四ウ) 00048010¥N7¥J 00048020¥X○/鬟(かつら)の/夜遊(よあそび)△@○まくら△○長きせる△○たばこ箱|○あふぎ△○手ぬぐひ△△△△△△@ 00048030L14市川/団(だん)十良、/矢(や)の/根(ね)五郎の/時(とき)/用(もち)ひしG 00048040L16鬟、あるとき/気(き)まぐれとなり、よし原へかよふと/聞(きい)て、団 00048050L17十郎大きに/腹(はら)を立、その/行跡(ゆくあと)を/附(つけ)て見れバ、かの/柳(やなぎ)ばしか 00048060L19らGやね舟にて行ときもあり、/又(また)/馬道通(うまミちどふ)りをかご 00048070M2Gにて/急(いそ)がする時もあり。さて+/悪(にく)き/行状(ふるまい)かな。/首(くび) 00048080M4ばかりにて女郎かいハ大わらひなり。/定(さだ)めて/吸(すい)つけGた 00048090M6ばこを/吹(のむ)/楽(たの)しミの/郭通(くるハがよ)ひもばからしきと、(十五オ)あると 00048100M7き、かつらを/傍(そバ)ちかく/呼(よび)で、だん+/異見(ゐけん)を/加(くハ)へけれバ、 00048110M8G/鬟(かつら)も/面目(めんぼく)を/失(うしな)ひ、申/訳(わけ)もなき/仕合(しあハせ)なり。 00048120M10さりながら/私子(わたくし)の/花街(くるハ)がよひハ一文も入ませぬトいふに、 00048130M11団十良/嘲笑(あざわら)ひ、金銀を/持(もた)ずして、どふして女郎を/買(かふ)といへ 00048140M12バ、ハイ。わたくしハかミで/斗(ばかり)まいります 00048150¥N8¥J 00048160¥X○/虫尽(むしづくし)の/世界(せかい)△@○あふぎ二ほん△○ちよく一ツ|○はし一ぜん△△△△△△△△@ 00048170M15/心(こゝろ)なき/身(ミ)にも/知(しら)るゝ/秋(あき)の/夕暮(ゆふぐれ)、/草葉(くさば)にすだくむしの/音(こへ)+ 00048180M16(十五ウ)/何(なに)となく/物哀(ものあハ)れに、ひやつく/荻(おぎ)の/上風(うハかぜ)にこぼるゝ 00048190M18/露(つゆ)を/命(いのち)と/頼(たの)むGてふ+、Gとんぼう、G 00048200M20きり※す、草のむしろに/五徳(ごとく)となつてはなし/居(ゐ)るも/面白(おもしろ) 00048210¥P150 00048220L1からねバ、ナント、今からよし原の/燈篭(とうろう)を見に/行(ゆか)んと/打連= 00048230L2立(うちつれ=だつ)て、草の/庵(いほ)りをたち/出(いづ)れバ、/此催(このもよ)ふしを/聞付(きゝつけ)て/梢枝(こずえ)を/下(おり) 00048240L3るハ、GせミトGはち。おいらも/一緒(いつしよ)に/行(いつ)て 00048250L5見ん+ト、はね/掻(かき)なでゝ/衣(ゑ)もんをつくろひ/行道(ゆくミち)にて、 00048260L7G土ぐもに/出逢(であ)ひ、しか※のよしを/聞(きい)て、/蜘(くも)も一 00048270L9座となり、/道(ミち)+/廓(くるハ)の/噂(うハさ)、/遊(あそ)びの/手管(てくだ)など、/思(おも)ひ+に(十 00048280L11六オ)はなす中にも、Gきり※すトGせミ 00048290L12ハ、/只管(ひたすら)おのれが/音(こへ)の/能(よき)を/高慢(かうまん)して、何でも/殺(ころ)し/文句(もんく)の新 00048300L14内で、一ばん/当(あて)て見せんトいふに、Gてふ+も、 00048310L16せめて/暫(しバ)しハ手に/止(とま)れと、かねて覚へし手おどりの/所作事(しよさごと) 00048320L17にて、/契情(けいせい)を/迷(まよ)ハせんといえバ、Gとんぼうもきか 00048330L19ぬ気になり、おれハ/面中(つらぢう)が/目玉(めだま)ゆへ、目もとへとんぼ打こ 00048340L20んでト、/恋(こひ)の/種(たね)まきをやるつもりだトはなせバ、アヽ/悪(わる)ひ 00048350M1+。そんな/地口(ぢぐち)をいふと、ふられる/種蒔(たねまき)だトいふに、 00048360M2Gはちハまた/拳(けん)の/先生(せんせい)ゆへ、しつかり女郎に酒を/呑(のま) 00048370M4せて、/夫(それ)からの事と、/互(たが)ひ(十六ウ)に/手管(てくだ)の/芸尽(げいづく)しをはな 00048380M5せバ、Gくもハ/素(もと)より何にも/知(しら)ず、/無(む)げい/大食(たいしよく)の事 00048390M7なれバ、おれハはやく/巣(す)へ/這入(はいつ)て、/会方(あいかた)の引/懸(かゝ)るを/待(まつ)ばか 00048400M8りと、/皆(ミな)/自惚(うぬぼれ)て/花街(くるハ)に/至(いた)れバ、/軒端(のきば)を/照(てら)す/燈篭(とうろう)に、うてう 00048410M9てんと成て火の中へ/飛込(とびこむ)もしらず、/見物(けんぶつ)し/終(おハつ)て、おもひ 00048420M10+に女郎を見立、/何屋(なにや)とかいえる内へ上ると、/速急(たちまち)/鼻紙(はながミ) 00048430M11に/包(つゝ)まれて、/乙日(おとゝひ)/来(こ)ひと/格子(こうし)の/外(そと)へほうりいだされ、てふ 00048440M12+もとんぼうもきり※すも、せミもはちもくもも、/皆(ミな) 00048450M13/顔(かほ)を見あハせて、コレハどふだト一ツりきむト、/格子(こうし)の内 00048460M14にて、Sちはや(十七オ)振夘月八日ハ吉日よ神さげ虫を 00048470M15せいばいぞするトいふ声をきつかけに、/引(ひけ)の/拍子木(ひようしぎ)チヨン 00048480M16++++。ばつたりト/簾(すだれ)が/下(おり)るに、虫どもぬからず、 00048490M17/甘茶(あまちや)よしか+ 00048500¥N9¥J 00048510¥X○/七変化(しちへんげ)の/所作(しよさ)△@○丸ぼん一ツ△○ちよく一ツ△○さいは|△い一ぽん△○手ぬぐひ一すじ△△△△@ 00048520M20酒ハはかりなし、/乱(らん)におよバずトいえども、/兎角(とかく)/酒(さけ)のうへ 00048530¥P151 00048540L1にハ/本心(ほんしん)を/失(うし)なふて/乱(らん)ちき/騒(さハ)ぎとなるものなり。/或(ある)人のも 00048550L2とにて、二三人/寄集(よりあつま)りて/酒(さけ)のミしあげくに、一人がいえり 00048560L3(十七ウ)けるハ、/我(われ)、/七変化(しちへんげ)の/所作(しよさ)をして見せんといふに、 00048570L4ミな+、/是(これ)ハ/面白(おもしろ)からう。はやう/所望(しよもう)じや+トはやし/立(たて) 00048580L6られ、/東西(とうざい)+、まづはじまりがG 00048590L9/鑓(やり)おどり、/宿入(しゆくい)リ/下馬(げば)さき、よんやサアト、/身(ミ)ぶりをなす。 00048600L10コレハ/奇妙(きめう)+とほめ立れバ、その/跡(あと)が、/千本(せんぼん)ざくらの 00048610L12Gしづか/御前(ごせん)、イヤハヤ奇妙+。 00048620L15/其跡(そのあと)がG/金(きん)ときのさかづきあらそひ。イヤ、 00048630L17これも/奇妙(きめう)+。そのあとがG/悪(あく)だまおどり。コ 00048640L19レも奇妙+。その跡がかしまのことふれ。G 00048650M1これハまた、こゝんとつほ、(十八オ)/奇妙(きめう)+。その/跡(あと)がお 00048660M3なじくGかしまおどり。コレも/古今(こゝん)奇妙+。 00048670M5その跡が/切狂言(きりけうげん)の/伝授(でんじゆ)ものにて、G/猩&(せう※)の/乱(ミだ)れじ 00048680M7や。コレハ/奇代(きたい)+。サア+猩&の/謡曲(うたひ)を/諷(うた)ふてくれね 00048690M8バ、/所作(しよさ)が/出来(でぬ(ママ))ぬ。はやく/謡(うたひ)をたのむ+トいふに、/折節(おりふし)、 00048700M9/此席(このせき)に謡曲を/知(し)りし/者(もの)なけれバ、/仕形(しかた)なしに、Sおまへ、 00048710M10そのやうに/酒(さゝ)のんで/猩&(せう※)にならんす/下心(したごゝろ)、と/諷(うた)ひけれバ、 00048720M11猩&あきれはて、/夫(それ)ハうたひか、なんだ。ヲツト、これハ 00048730M12しらないぶしだ(十八ウ) 00048740¥N10¥J 00048750¥X○/向島(むかふじま)の/滑稽(しやれ)△@○とつくり△○ちやわん△○はし一ぜん△△|○しつほくなべ△○ちりれんげ△○手ぬぐひ@ 00048760M15G/鷺(さぎ)が/池(いけ)のほとりに、つくねんとして/眠(ねむ)り/居(ゐ) 00048770M16る/所(ところ)へ、G/泥亀(すつぽん)/来(きた)り、/何(なん)ぞ/能事(よいこと)でもござりますかトい 00048780M18えバ、イヤモウ、/近(きん)ねんハよい/儲(もふ)け口もなく、/偶(たま+)/古道具(ふるだうぐ) 00048790M19の/市(いち)へ出ても、とかく/踏(ふミ)そくなつて/損(そん)ばかり致します。/定(さだ) 00048800M20めて/泥亀子(すつぽんし)なぞハ/全盛(ぜんせい)な事であらう。イヘサ、/泥水(どろミづ)の/住居(すまゐ) 00048810¥P152 00048820L1もとんだ/不景気(ふけいき)で、いくじやアござりませんトはなして居 00048830L4るうち、/早(はや)夕ぐれちかく(十九オ)なりてG/蝙蝠(かふもり)/飛(とび)来り、 00048840L7ハヽア、/安初着(やすうぶぎ)鷺と泥亀まひあそぶ、ト/川柳点(せんりうでん)をやらるゝな。 00048850L8/何(なん)ぞ/能(よい)/相談(そうだん)なら、わしも半口/乗(のせ)て/貰(もら)ひたい。イヤ、ふたり 00048860L9して/身(ミ)のうへの/述懐(じゆつくわい)ばなしサ。アヽそれハ/面白(おもしろ)うない。サ 00048870L10ア+今から/新梅(しんうめ)やしきの/木母寺(もくぼじ)としやれる気ハなしかへ。 00048880L11/和尚(おしやう)の所か半右衛門で/一杯(いつぱい)/呑(の)ミヤしやう。いかさま、是ハ 00048890L12よからうト/鷺(さぎ)、/泥亀(すつぽん)、/蝙蝠(かふもり)つれ/立(だつ)て/向島(むかふじま)と出かけ、/道(ミち)すがら 00048900L13/諸名家(しよめいか)の立られしG/碑(ひ)の/銘(めい)、あるひハG 00048910L15/狂歌(きやうか)の/碑(ひ)、G/発句(ほつく)の碑などを(十九ウ)/誂望(ながめ)、/梅= 00048920L17若塚(うめ=わかづか)へ/詣(ま)ふでG/鰐口(わにぐち)をならして/伏拝(ふしおが)ミ、半ゑも 00048930L19んが/亭(うち)へ/至(いた)り、/酒(さけ)さかな/抔(など)いださせて/呑(のミ)ながら、/庭(にハ)の/景色(けしき) 00048940L20をながむれバ、/春日形(かすががた)のG/石燈篭(いしとうろう)も/誂(あつら)へに/苔(こけ)むし 00048950M2Gながれにそふて咲Gかきつばた、奇妙+ 00048960M4と大きにしやれて、/酔(えい)に/乗(ぜう)じ、さぎとすつぽんが/踊(おど)り出せ 00048970M5バ、/蝙蝠(かふもり)も/羽(はね)をひろげて、高ふハござりますれど、御免の 00048980M6かふもりまして、是より口上な申上ケ奉ります。/只(たゞ)今/鷺(さぎ)が 00048990M7/鯲(どせう)を/踏(ふ)むまね、/泥亀(すつぽん)がおこし/米(ごめ)/喰(くふ)/身(ミ)ぶり。/首尾(しゆび)(二十オ)よ 00049000M8ふ/相済(あいすミ)ますれバ、まづ/此板(このはん)ハこれぎり 00049010¥Q/跡(あと)ハ/後編(かうへん)+ 00049020M12/絵本(ゑほん)/当世粧(いまやうすがた)△再板△@式亭三馬著|歌川豊国画@ 00049030M14絵本/武者篩(むしやふるひ)△袋入△@東里山人著|歌川豊国画@ 00049040M16絵本/岩磐石(いハばんじやく)△同春扇改@東里山人著|勝川春好画@ 00049050¥Y/仕形(しかた)ばなし終△(二十ウ) 00049060¥P153 00049070¥U噺本大系△第十五巻 00049080¥T/春興噺万歳(しゆんきようはなしまんざい)〔内題〕 00049090¥G 00049100¥Y 00049110L16文政五年正月刊 00049120L17桂文来作 00049130L18三木探月画 00049140L19大阪△吉文字屋荘助等板 00049150L20半紙本五巻五冊 00049160¥Y 00049170M2桂文来著△△全五冊 00049180M6春興噺万歳 00049190M10△浪華△岡田群鳳堂 00049200M11(後板本扉) 00049210¥Y春興噺万歳 00049220M17△△△△△序 00049230M18浪華に名たゝる桂が噺なん、日&新なる事を種として、万 00049240M19のおどけたる噺となれりける。年の寄たるぢい様ばゝさま 00049250M20をはじめ、色里に住芸子、たいこ持に至る迄、打しめりた 00049260¥P154 00049270¥G(序二ウ・一オ) 00049280M1る折ふし毎に、是が噺をうつしとりて興をそゆれば、笑を 00049290M2催ふす事になん。(序一オ)花を粧ふ嫁御寮様、いたいけ盛 00049300M3りの御子様がたも、桂が噺を申上れバ、お笑艸の一ツとな 00049310M4れりけり。されば、目出度初春のめでたいづくしをはじめ 00049320M5とし、おかしいづくしのかず+をかきあつめ、噺万歳五 00049330M6巻となし、桂文来子が尽せぬ春の御伽草帋となせり。これ 00049340M7やおかしい言の葉にして、(序一ウ)またたぐひなき滑稽草 00049350M8紙にありけり。されば、其よしを巻のはじめに物せよとこ 00049360M9われて、其よしをその侭しるして、笑を引事にこそ 00049370M11△△△文政壬午の 00049380M12△△△△△△△はつ春△△△△△△△△市中庵題 00049390M13△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序二オ) 00049400G1〔口絵中の歌詞〕 00049410G2△△年の名も神にねかひの絵馬なれバ 00049420G3△△△誰も皆令満足の春△△由縁斎 00049430¥P155 00049440¥Y1/春興噺万歳(しゆんけうはなしまんざい)一目録 00049450L3一△三ツ/農(の)/朝(あさ)△△△△一△/杓子定木(しやくしぢやうぎ) 00049460L4一△はや/合点(がてん)△△△△一△/花(はな)もみぢ 00049470L5一△/船弁慶(ふなべんけい)△△△△△一△ふしあな 00049480L6一△/古剃刀(ふるかミそり)△△△△△一△/三寸(さんずん)の/劔(けん) 00049490L7一△きづに/玉(たま)△△△△一△よりどり 00049500L8一△もらひ/祭(まつ)り△△△一△/許(きよ)ゆふもどき(一ウ) 00049510¥T1/春興噺万歳(しゆんけうはなしまんざい)一之巻 00049520¥A浪花△△△桂文来著 00049530¥N1¥J 00049540¥X/三(ミつの)ツ/朝(あさ) 00049550M7S御出入女房、礼ニ来り、はつ/春(はる)の御/祝義(しうぎ)、御/目出度(めでとふ)ぞんじ/升(ます)。 00049560M8あなた様をはじめ/旦那(だんな)さま、御/家(いへ)さま、おぼんさま。どな 00049570M9たもお/揃(そろ)ひあそばしまして、おめで/度(と)そんじ升△S隠居お 00049580M10ゝいのふ、そなたの方も/皆(ミな)/揃(そろ)ふて、ゑい正月で目出/度(たい)ノウ 00049590M11Sおまつありがとふ(一オ)ぞんじ升。御/隠居(いんきよ)さま。/今年(ことし)ハ 00049600M12正月が二ツござりまして、春がゆつくりし升のんを、たの 00049610M13しんで/居(ゐ)升△S隠居おいのふ。/私(わたし)も春の/永(なが)いのをたのしん 00049620M14でゐるわいのふと/言(いへ)バ、そばから、S下女が出て、申、御/隠= 00049630M15居(いん=きよ)さま。あなたのよふに御年がよつても、正月が御/嬉(うれ)しふ 00049640M16厶り升かへ△S隠居しれたこといのふ。また/今年(ことし)ハ正月が 00049650M17二ツ有し、ひがん/時(じ)分ハよつぽど/暖気(ぬく)なるゆへニ、もの/参(まい) 00049660M18りするに出よいのがうれしい△S下女さやうでござり升(一 00049670M19ウ)が、もうし、/出入(でいり)のおまつさんハ、/何(なに)がたのしミじや 00049680M20へ△Sおまつはい。/私(わたし)ハ/此忰(このこ)のはつせつ/句(く)が、正月二ツあ 00049690¥P156 00049700¥G(二ウ・三オ) 00049710G1たくさんな月日ができて梅の花 00049720M1るゆへ、/物入(ものいり)の月がおそひよつて、それがうれしふござん 00049730M2すと、/咄(はな)しのそばから、S/丁児(でつち)ハイ。/私(わたし)もうれしふござり 00049740M3升△S下女ヲヽませやのふ。/世帯人(せたいにん)か/年(とし)よりのやうに。お 00049750M4ま/衛(へ)ハなにがうれしいへ△S丁児ハイ。正月が二/度(ど)あると、 00049760M5やぶ入が二へんできる 00049770¥N2¥J 00049780¥X/杓子定木(しやくしぢやうぎ)(二オ)(二ウ・三オ挿絵) 00049790M8/信(しん)あれバ/徳(とく)あり。まづ+ふくの/神(かミ)を/祈(いのり)て/富貴(ふうき)をいたした 00049800M9し。/別(べつ)して/戎(ゑびす)さまハ/商売神(あきなひがミ)なれバ、/裏(うら)に/社(やしろ)を/建(たて)て/勧請(くわんじやう)せ 00049810M10んとおもひ、出入の/大工(たいく)を/呼(よ)んで/絵図(ゑづ)を/書(かゝ)せ、いそいで/建(たて) 00049820M11たしとあつらゆれバ、S大工/畏(かしこ)まりました。/明日(あす)から/此方(このはう) 00049830M12で木ごしらへいたしますが、/併(しか)し勧請なされますは西の/宮(ミや) 00049840M13でござり升か、但し/今宮(いまミや)でござり升か△Sてい主/私(わたし)の/積(つも)り 00049850M14ハ/今宮(いまミや)じや△S大工(三ウ)さやうなら、/後(うしろ)の/板(いた)ハ/丈夫(じやうぶ)にい 00049860M15たしましやう 00049870¥N3¥J 00049880¥X/早合点(はやがてん) 00049890M18/去(さる)ル/北辺(きたへん)の/相応(さうをう)な/家(いへ)がらの/台所(だいところ)にて、Sぼん申し、お/爺(とゝ)さ 00049900M19ん。/今日(こんにち)お/師匠(ししやう)さんのおつしやるには、/君子(くんし)ハ/水(ミづ)のごとし、 00049910M20/小人(せうじん)ハあま/酒(ざけ)のごとしと/言(いふ)てゞござり升たが、あれハなん 00049920¥P157 00049930L1のことでござり升△S爺親それハ/君子(くんし)といふて、/聖人(せいじん)は心 00049940L2きよく、/流(なが)るゝ水のごとく、(四オ)/小人(しやうじん)といふものハ/性(せう)の 00049950L3わるい/物(もの)で、心がむちやくちやして、あまざけのやうなと 00049960L4いふことじやわいのふ。/実語教(じつごきやう)にも、/詞(ことバ)/多(おほ)きハ/品(しな)すくなし 00049970L5と/有(あつ)て、/其(その)べり+としやべる/口(くち)の/軽(かる)ひものは、あまざけ 00049980L6のごとしと/教訓(きやうくん)/最中(さいちう)、/在(ざい)へ/帰(かへつ)て/居(ゐ)る/乳母(うば)、/重箱(ぢうばこ)よふのもの 00049990L7/風呂(ふろ)しきニつゝミ、/是(これ)をさげて/門口(かどぐち)より、Sうばはい+、 00050000L8/旦那(だんな)さま。/御機(ごき)げんさんにござり升か。ぼん様(四ウ)も大 00050010L9きうおなりなされましたナア△S旦那ヲヽ/乳母(うば)。とんとお 00050020L10じやらぬゆへあんじていたが、まあ+/達者(たつしや)で/目出度(めでたい)。又 00050030L11きのふはそなたの/在所(ざいしよ)のまつりじやげな△Sうばハイ+。 00050040L12/御意(ぎよい)の/通(とを)り、/此(この)/重箱(ぢうばこ)の/内(うち)ハさもしい物でござり升けれど、 00050050L13/祭(まつ)りの/祝(いは)ひでござり升。わたしも/去年(きよねん)の/冬(ふゆ)から、ちよとお 00050060L14/尋(たづ)ね申たひと/気(き)にかゝつており升たが、/冬中(ふゆぢう)(五オ)ハ/春(はる)の 00050070L15こしらへでいそがしい/暮(くら)して/居(ゐ)ましたゆへ、春/早&(さう+)ニとぞ 00050080L16んじ、/年(とし)の/明(あけ)るを/待(まち)ておりましたなれど、/婦人(をんな)の/元日(ぐわんじつ)から 00050090L17/出(で)られもせず、また二日は水なの/初(はつ)うりに/私処(わたしところ)のが/出(で)られ 00050100L18升。三日は/福(ふく)わかしの/菜(な)/配(くば)りの/積(つも)り。七日正月まへ/七草(なゝぐさ)/売(うり)。 00050110L19十日/戎(ゑびす)には今宮へ/笹(さゝ)ミせを/出(だ)し升。十四日ニハ/小豆(あづき)がゆの 00050120L20小豆うりに出て、(五ウ)/小(こ)正月の/小遣(こづか)ひ/銭(ぜに)でもとらんなり 00050130M1ませず、其うちニハやぶ入がもどつて/来(き)てでられず。また 00050140M2つい二月になり升と、それはつ/午(むま)じや、からしあへじやの 00050150M3なんのと、ほんに/婦人(おなご)ほどせつろしいものハござりません。 00050160M4/涅(ね)はんには、はなくそ/煎(い)れの、やれ/彼岸(ひがん)のくどく/湯(ゆ)/焚(たけ)じや 00050170M5の、三月の/節句(せつく)まへには、ひしの/餅(もち)のこしらへ。また/妹(いもと)の 00050180M6/方(はう)が/雛(ひな)さま/錺(かざ)りで(六オ)くれの/春(はる)、/休(やすミ)が/来(き)ても/世帯持(せたいもち)はち 00050190M7よつとも/出(で)られず。其うちニハあつなりますと、やれ五月 00050200M8/麦入(むぎいり)、/田植(たうへ)、はんげ/生(しやう)じや、はつたい/配(くば)り/水(ミづ)かき。それハ 00050210M9+/は((ママ))とつかゝつて/咄(はな)しかける。そばニ/居(ゐ)るSぼんおとゝ 00050220M10さん+。うばハゑらひあま/酒(ざけ)じやナア△Sうバ/何(なに)おつし 00050230M11やる。あま/酒(ざけ)じやござりませぬ。此おまつりハ餅でござり 00050240M12ます(六ウ) 00050250¥N4¥J 00050260¥X/花紅葉(はなもミぢ) 00050270M15/鰕(ゑび)十/郎(ろう)か/団蔵(だんざう)、/坂重(ばんちう)といふやうな男ぶりの/伊達(だて)こもそう、 00050280M16/藤色(ふぢいろ)ちりめんの上/着(ぎ)ニ/有栖川(ありすがハ)の/帯(おび)、三/衣袋(ゑふくろ)ハゑぞ/錦(にしき)、/袈裟(けさ) 00050290M17ハもとより黒びろうどにしげ/藤(とう)の/尺(しやく)八、五/枚(まい)/重(かさね)の/雪踏(せつた)。し 00050300M18かも/上手(じやうず)の/妙(めう)音にしてしらべ居ると、/格子(かうし)のうちから/覗(のぞ□)て 00050310M19/居(ゐ)る二八/頃(ごろ)なるそのうつくしき(七オ)大ふり/袖(そで)の/当世娘(たうせいむすめ)、 00050320M20目もはなさずに見とれ居る。/此方(このはう)も色/持(もつ)/筒(つゝ)の/音(をん)に/聞入(きゝい)る 00050330¥P158 00050340¥G(九ウ・十オ) 00050350G1太郎冠者なぞとよびたし今朝の春 00050360M1/娘(むすめ)、見とれるこもそうもうつゝに/成(なる)時に、内から、S下 00050370M2女のりん、/簀戸(すど)ぐハら+と、ぼんに米入れ/持(もつ)て出ると、 00050380M3Sこもそう、あハてゝ、御無/用(よう) 00050390¥N5¥J 00050400¥X/船弁慶(ふなべんけい) 00050410M6/講釈場(かうしやくば)にくんじゆ山をなし、/聞(きく)人もかた/臂(ひじ)はつて/聞(きゝ)居る 00050420M7と、/軍書読(ぐんしよよミ)、はづミが(七ウ)きて、四条/縄(なハ)手の/合戦(かつせん)の/修羅(しゆら) 00050430M8となり、かさにかゝつて大音はり上、S講釈師此時/楠正= 00050440M9行(くすのきまさ=つら)方には/名(な)にしおふ/恩地(をんち)/左近(さこん)、/八尾(やを)/顕(けん)幸、/湯浅(ゆあさ)/入道(にうとう)、楠正 00050450M10/成(しげ)、/新田義貞(につたよしさだ)などハ/一騎当(いつきたう)千にして、其はたらき/誠(まこと)ニと、 00050460M11口から出しだいしやべりちらかすと、S聞人申、/先生(せんせい)さま。 00050470M12今おつしやつた正行ニ/付随者(つきそふもの)は、/皆(ミな)先/達(だつ)て/討死(うちじ)にした人ば 00050480M13かりで(八オ)ござりますが、どふしたものでござり升とと 00050490M14がめられ、S講釈師されバナアト/行(ゆき)つまり、/則(すなハち)今日ハ/南朝(なんてう) 00050500M15北朝/分(わけ)目のはれいくさゆへに、/忠臣(ちうしん)の/銘&(めい+)、/幽霊(ゆうれい)ではたら 00050510M16いて/居(ゐ)るのじや 00050520¥N6¥J 00050530¥Xふし/穴(あな) 00050540M19S旦那長兵へ、/起(おき)んかいやい。さりとは+なんぎなやつ。 00050550M20/毎朝(まいあさ)+/起(おこ)すので/声(こへ)がかれる△S長さよふなら、ちつと七 00050560¥P159 00050570L1ツ/星(ぼし)のねりやくでも(八ウ)お上りなされませ△S旦那いつ 00050580L2までもそんなことばかり。もふ長松の/時分(じぶん)とハちがふ。ち 00050590L3と目も/明(あき)ならへ△S長そふおつしやても、いつ/夜(よ)が/明(あけ)ると 00050600L4も/覚(おぼ)へません△S旦那そふゆふ/気(き)の/無(ない)ものじや。男にかぎ 00050610L5りて/夜(よ)あけは/知(し)れる/処(ところ)があるものじやが△S長イヤ申、旦 00050620L6那さま。今おつしやた、/知(し)れる所とハなんでござり升△ 00050630L7S旦那はて/扨(さて)、/小便(せうべん)をして見おろう(九オ)(九ウ・十オ挿絵) 00050640L8S長なんじや、小べんしてミい。ハヽンしれた。それハ/聞(きこ) 00050650L9へたが、一チがいには/言(いハ)れぬ△S旦那どふぞしたか△S長 00050660L10ハア、わたしらはよこニ/寐(ね)升と、/直(すぐ)ニ/夜(よが)あけ升 00050670¥N7¥J 00050680¥X/古剃刀(ふるかミそり) 00050690L13/心斎橋通(しんさいばしとを)り二三人うち/連立(つれたち)/往来(ゆく)むかふより、/衣装(ゐしやう)の/好(このミ)、/年(とし) 00050700L14かつかう、きりやうハ/勿論(もちろん)/衣通姫(そとをりひめ)も/顔(かほ)をそむけるくらひの 00050710L15/上女房(じやうによぼう)三四人(十ウ)/行違(ゆきちが)ひに、/彼(かの)男/立(たち)とまろふとして、 00050720L16S男なんと/助(すけ)右衛門さん。アノ/女房(によぼう)見なさつたか。マアと 00050730L17ほうもないものじやナア。あないなうつくしひ者でも、/亭= 00050740L18主(てい=しゆ)があちら/向(むけ)のこちらむけのと/言(いゝ)升じやあろか△S助/好蔵(こうぞう) 00050750L19さんのいふてじやことわいナア。けつくであんな/嚊(かゝ)もつて 00050760L20/居(ゐ)るものゝくせで、/猶(なを)ごつ+/言(いひ)升じやあろうかい△S好 00050770M1そうかな。/私(わたし)らもあのよふ(十一オ)な/嚊(かゝ)もつて、/何(あ)ちら/向(むけ)、 00050780M2/此方(こちら)むけと、ヱロウあちら/此方(こちら)をむかして見たいと、はな 00050790M3ししながら/行(ゆく)。うしろ£/来(く)る/隠居(いんきよ)、/連(つれ)に、S隠居太郎兵へ 00050800M4さん。/向(むか)ふへ/行(ゆく)人ハ、どふでも/木津(きづ)か、なんばの/干瓢(かんひやう)つく 00050810M5る人と見へ升 00050820¥N8¥J 00050830¥X三寸の/劔(けん) 00050840M8/問(とひ)やの/手代衆(てだいしゆ)、/門口(かどぐち)へ出て、S手代ヤレ+、/払(はら)いも/大方(おほかた) 00050850M9かた/付(づい)たといふて/居(ゐ)る折から、(十一ウ)/粒(つぶ)三文ないくせに、 00050860M10/日頃(ひごろ)/太平楽(たいへいらく)ばかりいふ男、むかふより/来(く)れバ、/手代(てだい)ども、 00050870M11きやつ、こまらせてなぐさまんとおもふて、S手代どふじ 00050880M12や/先生(せんせい)。/今日(こんにち)はさだめて/御(ご)はん/多(た)、おはらひもおかた/付(づけ)な 00050890M13されたか。/手前(てまへ)ども、やう+/只今(たゞいま)大かた/方(かた)づけました。 00050900M14モウはらひ口は/多(おほ)し。さて+くたびれまして、かたや/腰(こし) 00050910M15がめり+いたし升といふ。S太平楽もの(十二オ)なるほど、 00050920M16/内(うち)かたのよふな御/大家(たいか)のおはらひハさやうでござり升とも。 00050930M17/手前(てまへ)どものやうなわづかな/払(はら)ひでさへも、/大(たい)てい/口(くち)のだる 00050940M18いことじやござりません 00050950¥P160 00050960¥N9¥J 00050970¥X/疵(きず)に/玉(たま) 00050980L3コレ、わがミのやうに、/丁児(でつち)や/下女(げぢよ)をくしや+いふて/呵(しか) 00050990L4るものでハない。/向(むか)ひの/甚(じん)兵へさんの/所(とこ)の/御内義(おないぎ)ミや。い 00051000L5つでもにこ+とあい(十二ウ)がよふて、/針(はり)は/手利(じやうず)て/手跡(しゆせき) 00051010L6ハ見ごと、/風俗(ふうぞく)ハよし。しうと/姑(しうとめ)ニハ/孝行(かう+)なり。/連合(つれあい)を/大= 00051020L7切(たい=せつ)に、/世帯(せたい)かたハミまつめよし。ちよつときやくが/有(あつ)ても、 00051030L8さかなの/出(だ)しかた、/吸物(すいもの)のあんばい、とり/持(もち)から/拶挨(あいさつ)/が((ママ))ら、 00051040L9/何(なに)一つくせのない/女房(によぼう)ハ、も一ト人リとあるまひ。S嚊/余= 00051050L10処(よ=そ)の/花(はな)は見ごとなと。其やうなおかたでも、一つハ/行(ゆき)とゞ 00051060L11かん/処(ところ)がある/物(もの)じや△Sてい主ヲヽまけ(十三オ)おしミな。 00051070L12あの/内義(ないぎ)に、なんのぬけめがある物か△S嚊/聞合(きゝあハ)せてミい。 00051080L13そんなおかたなら、おふかた、からしねらしたらきくまひ 00051090¥N10¥J 00051100¥Xよりどり 00051110L16/嵐(あらし)/橘(きつ)三郎も五十三を一チ/期(ご)として、巳九月廿六日/往生(わうじやう)し 00051120L17て、くらき/道(ミち)にとぼ+と、ついに/無仏世界地獄(むぶつせかいぢごく)にいたり 00051130L18て、ゑん/魔(ま)の/皇居(くうきよ)/森羅殿(しんらでん)ニいたり、あたり(十三ウ)を見れ 00051140L19ば、/魏&(ぎゝ)として、じやうはりの/鏡(かゞミ)、がうのはかり、/見(ミ)る/眼(め) 00051150L20かぐ/鼻(はな)、/十王(しうわう)/左右(さゆう)にならび/居(ゐ)る。ゑん/魔大王(まだいわう)の/聴前(ちやうぜん)ニ/平伏(へいふく) 00051160M1して、S橘/恐(おそ)れながら/顕覚相順李冠居士(けんがくさうじゆんりくハんこじ)にて候。/何卒(なにとぞ)/極楽(こくらく) 00051170M2へ御/通(とを)し下されとたのむ。S魔フヽン、聞およぶあら吉。 00051180M3此/土(ど)にても/待(まち)かね/居(ゐ)る。/顔(かほ)をあげて見せおろう△S橘ハア 00051190M4ト、/顔(かほ)を上ゲると、S魔/大(おゝい)にいかり、ヱヽ/爰(こゝ)な/偽(いつは)りもの 00051200M5(十四オ)め。おのれ、/頭(かしら)ははげ、/頬(ほう)はおち、/鬢(びん)ハ/薄(うすく)、其や 00051210M6うな見るかげもない。おのれ、いかにしやば/世界(せかい)、/男(おとこ)がふ 00051220M7じゆうじやとて、/惚(ほれ)るはづハない。其/方(はう)、あら/吉(きち)ではある 00051230M8まい△S橘御/尤(もつ)ともではござり升れど、そこが/役者(やくしや)にて、 00051240M9/頭(かしら)の/赤(あか)きには/青(せい)たいをぬり、/鬢(びん)の/薄(うす)きにはかずらをはめ、 00051250M10/頬(ほう)の/落(おち)たるハふくミわたをいたし、/顔(かほ)は紅おしろい(十四 00051260M11ウ)にてゑどり升ゆへ、/若(わかい)もの/同(どう)やうに相見へ升△S魔し 00051270M12からバ、/病気(びやうき)まへハ/何(なに)の/芸(げい)をいたした△S橘北の/新地(しんち)にて、 00051280M13/頼政(よりまさ)のきやうげん仕、七日めニ/病気(びやうき)ニ取/合(あい)、/当地(とうち)へ/参(まい)りま 00051290M14した△S魔そんなら、其きやうげんを此所ニていたして見 00051300M15せい△S橘かしこまりましたが、/相手(あいて)の/女形(おんながた)壱人、かし 00051310M16て/下(くだ)されませ△S魔/心得(こころえ)た。/当時(たうじ)しやばのやうニ不/自由(じゆう) 00051320M17(十五オ)にはないわい。/好(この)ミしだい、かしてやろ。まづ/富(とミ) 00051330M18十郎、/国(くに)太郎、/金作(きんさく)、八百/蔵(ざう)、あづま、東/蔵(ざう)、/仙女(せんぢよ)、/路孝(ろかう)、 00051340M19/友(とも)吉、一/徳(とく)、よしを。此うち/何(いづ)れなりともつかハそうかひ 00051350M20S橘其うちは一ト/人(り)も間ニ/合(あひ)ません。此/相手(あいて)ニハ、/近頃(ちかごろ)の 00051360¥P161 00051370G1花の春こんな親父じやなかつたに 00051380¥G(十六ウ・十七オ) 00051390M1よし沢あやめでなければ、/相手(あいて)にいたしにくうござり升△ 00051400M2S魔/其方(そのハう)が/巴紅(はこう)と/限(かぎ)つたは、どふした/道利(どうり)じや△S橘/狂言(きやうげん) 00051410M3がより/政(まさ)ゆへ、(十五ウ)/何(いづ)れあやめでなけれバ△S魔フヽ 00051420M4ン、それゆへきやうげん/中場(なかば)で、/引(ひき)てわづらふたか 00051430¥N11¥J 00051440¥Xもらひ/祭(まつり) 00051450M7/四海浪(しかいなミ)も/目出度(めでたく)相すミ、/色(いろ)なをしもとゞこふりのふ/調(とゝの)ひ、 00051460M8/寐家入(ねやいり)となると、おさだまりの/一義(いちぎ)はじまると、/床(とこ)の/間(ま)に 00051470M9/直(なを)しある/尉(じやう)とうば、たがひにかほ/見合(ミあハせ)て、S尉/是(これ)、あれを 00051480M10/聞(き)きや。お定とはゆふ/物(もの)の、(十六オ)(十六ウ・十七オ挿絵)あ 00051490M11んなことを/見(ミ)たり/聞(きい)たりすると、むかしをおもひ出し、お 00051500M12かしい/気(き)になつて/来(き)たと、うばの/手(て)を/取(とれ)バ、Sうばふりは 00051510M13なし、たしなミなんせ。しらが/天窓(あたま)して、そんなことを 00051520M14S尉しらがになつてせんものなら、六十のむしろ/破(やぶ)りとは、 00051530M15いつの/時代(じだい)から/言(い)ひ出して、なんのたとへじやと、むりや 00051540M16りに/松竹梅(しやうちくばい)の/蔭(かげ)へ/連(つれ)てはいる。/跡(あと)には(十七ウ)/鶴(つる)/亀(かめ)、また 00051550M17これもそろ+/這(は)ひ出し、Sかめおつる。ちつとおじや。 00051560M18/当家(たうけ)の/御主人達(ごしゆじんたち)ハ/是(これ)はけんたい。/夫(それ)にこちらが/中間(な□ま)の/尉(じやう)ど 00051570M19のまであんなこと。もう+こちらもしんぼうができん。 00051580M20ちよつとおじやと、/鶴(つる)の/手(て)を取ると、Sつる/何(なに)をいわんす 00051590¥P162 00051600L1やら。あの/衆達(しゆたち)ハ/皆(ミな)わかひわいのふ 00051610¥N12¥J 00051620¥X/許由(きよゆう)もどき(十八オ) 00051630L4申、甚兵へさん。此/間(あいだ)、/隣(となり)の吉兵へとけん/嘩(くわ)をしましたが、 00051640L5/今(いま)/門口(かどぐち)で/立(たち)ぎゝしたら、/私(わたく)しのこと、ゑろうそしつて/居(ゐ)く 00051650L6さる。にくいやつじやなひかいといふ。S甚それはおまへ 00051660L7がわるひ。/立(たち)ぎゝといふことは、とんとせんものじや。第 00051670L8一/耳(ミヽ)があるよつてじや。また/耳(ミヽ)のけがれとなる。/唐土(もろこし)/許由(きよゆふ) 00051680L9は、/天下(てんか)をゆづろといふてさへ、/耳(ミヽ)の/穢(けがれ)になると/耳(ミヽ)をは/洗(あら) 00051690L10ふた。おまへも(十八ウ)はらが/立(たつ)なら/耳(ミヽ)をあらひなされと 00051700L11/言(いわ)れ、それより/川(かハ)へ/耳(ミヽ)をあらひに/行(ゆく)と、せんに/耳(ミヽ)を/洗(あら)ふて 00051710L12/居(ゐ)る人あり。Sもし、おまへは/何故(なにゆへ)に/耳(ミヽ)をあらふととへば、 00051720L13S先の人/私(わたく)しハ立ぎゝいたしましたゆへ、あらひ升△Sも 00051730L14し、私も立ぎゝした/所(ところ)が、/許由(きよゆう)のわけを/聞(きい)てあらひに/来(き)ま 00051740L15したが、おまへも/許由(きよゆう)のわけ/聞(きい)ておゐでたか△S先の人イ 00051750L16ヽヱ。わたくしが/立聞(たちぎゝ)(十九オ)した/壁(かべ)が、ぬりたてじやあ 00051760L17つた 00051770¥Y1春興噺万歳一之巻終(十九ウ) 00051780¥Y1春興噺万歳二之巻目録 00051790M3一△あかぎれ/足(あし) 00051800M4一△あわせ/水(ミづ) 00051810M5一△/名(な)より/徳(とく) 00051820M6一△/鴉(からす)を/鷺(さぎ) 00051830M7一△/片(かた)ゑくぼ 00051840M8一△/無処(ないところ)どり 00051850M9一△/二度(にど)/恟(びつ)くり(オ) 00051860M10一△はるの/噂(うわさ) 00051870M11一△/法(ほう)が/違(ちが)ふ(ウ) 00051880¥P163 00051890¥T1/春興噺万歳(しゆんけうはなしまんざい)二之巻 00051900¥A浪花△△桂文来著 00051910¥N1¥J 00051920¥Xあかぎれ/足(あし) 00051930L7/此季(このき)/西国(しも)から/初出(はいで)の/田舎女(おなご)を/供(とも)につれて/開帳(かいちやう)/参(まい)り。/何(なに)が 00051940L8大坂の町めづらしく、S下女申、御/家(へ)さん。アレ見なされ。 00051950L9/此(この)うちには/手(て)ぬぐひや/小(こ)もんや/帯(おび)が、たんとござり升。あ 00051960L10そこには/大根(だいこん)やびわが/沢山(たんと)ある。/爰(こゝ)ニハ(一オ)/櫛箱(くしばこ)やつゞ 00051970L11ら、また/赤(あか)ひまんぢうや/砂糖(さとう)/付(つけ)た/餅(もち)もござり升と、/見(ミ)る/物(もの) 00051980L12をめづらしふいひ/立(たつ)れバ、お家もじゆつなく、/人通(ひとどを)りの/間(ま) 00051990L13を/見合(ミあわ)せ、Sお家コレ、そのやうなこと、/門中(かどなか)でいふもの 00052000L14じやない。そうして/供(とも)といふものハ、もちつとあとからお 00052010L15じやいのふ。そないに、わしとならんであるくものじやな 00052020L16い△S下女ハイ+と、しばらくハだまつていれど、どふ 00052030L17やら/淋(さび)しくおもひ、申、(一ウ)お/家(へ)さん。あしたの/朝(あさ)もかゆ 00052040L18を/焚(たき)ますのか。/香(かう)のものハ/古(ひね)を/出(だ)し升のか。お/家(いへ)もあまり 00052050L19のことで、しかられもせず、/足(あし)ばやにあるくと、S下女申、 00052060L20お/家(へ)さん。そうして/昼(ひる)のさいは、はじき/豆(まめ)にしましやうか、 00052070M1しゞめにいたしましやうかと/言(いふ)。おりふし/向(むか)ふより、S/蜆(しゞ) 00052080M2め+と/売来(うりきた)ると、S下女コレ、しゞめやさん。/何程(なんぼう)じや 00052090M3Sしゞめやハイ、三十弐文てござり升(二オ)(二ウ・三オ挿絵) 00052100M4S下女申、御/家(へ)さん+の/高声(たかごへ)に、お/家(いへ)たまらず、Sお家 00052110M5コレ+、/田舎(いなか)ものじや。あいてニなつてくだんすな 00052120M6Sしゞめやめつそうな。/地(ぢ)しゞめで/厶(ござ)り升 00052130¥N2¥J 00052140¥X/合(あわ)せミづ 00052150M9/坂町(さかまち)/辺(へん)の/置(おき)やの二かいにて、/芸子(げいこ)や/遊女(おやま)うちまじり/客(きやく)/噂(うわさ) 00052160M10のそしりばなし。あだ口+の/高声(たかごへ)に、Sコレナア/梅路(むめぢ)さ 00052170M11ん。(三ウ)/此間(このあいだ)から/枡十(ますじう)で/居(ゐ)つゞけ、/佐印(さじるし)さんの御出と見 00052180M12へて、きついおたのしミじやナア△S梅じそれならよいけ 00052190M13れど、/遠(とを)ひところの御/客(きやく)でナア、しかも/坊(ぼん)さんていやらし 00052200M14い。/大(だい)きらひナ/客(きやく)いナア△S姉それでも、そんな/御客(おきやく)で/居(ゐ) 00052210M15つゞけなら、またたんともらひがあろう。しんぼうしてつ 00052220M16とめいナア△S梅じ/姉(あね)さんのいふてじやことじや(四オ)け 00052230M17れど、/金(かね)づくにはかゝわらず、どふもうけて/居(ゐ)られぬこと 00052240M18してじやさかゑナア、/今日(けふ)よびに/来(き)ても/行(ゆ)かん/積(つもり)じやハヱ 00052250M19S姉そのよふにいやがりじやハ、どんなことする/客(きやく)じやい 00052260M20ナア△S梅じさいな。/奈良(なら)の二月/堂(どう)の/坊(ぼん)さんじやといふて、 00052270¥P164 00052280¥G(二ウ・三オ) 00052290G1おもふ事なしとも見ゆる蛙哉 00052300M1わるじやれ/仕(し)しなに、/若狭(わかさ)+といふてじやハイナア 00052310¥N3¥J 00052320¥X/名(な)より/徳(とく)(四ウ) 00052330M4これ/源(げん)さん。ちつとたしなミんか。とんと/遊女買(おやまかい)が/直(なを)らん 00052340M5げな。/商売(しやうばい)はおよそにして、げに/孔子(こうし)も、/吾(われ)いまだ/徳(とく)を/好(この) 00052350M6むこと/色(いろ)を/好(このむ)がごとくする/者(もの)を見ずと。/仰(をゝせ)、御もつともか 00052360M7な。S源それは/何(なん)のことでござり升△S年寄さいのふ。/婦= 00052370M8人(おん=な)には/身命(しんめい)をなげうつて、/色(いろ)にふける人は/多(おほ)いが、/徳(とく)をほ 00052380M9どこすことに/命(いのち)をも/捨(すつ)るほどな(五オ)人は、むかしよりす 00052390M10くないと見へるハイ△S源イヤ△むかしハしらんが、/今(いま)は 00052400M11/色(いろ)より/徳(とく)を/好(このむ)が、たんとござり升△S年/何処(どこ)ぞきんじよニ 00052410M12あるかいのふ△S源たんとあるけれど、/先(まづ)/第(だい)一チばんに、 00052420M13よこ町のよく/助(すけ)さんは、/御内義(おないき)ひまやるに、/退(のき)しろ十/両(りやう)と 00052430M14られました 00052440¥N4¥J 00052450¥Xからすを/鷺(さぎ) 00052460M17/店(ミせ)ばんがてらの/隠居(いんきよ)、/百人一首(ひやくにんいつしゆ)の/本(ほん)を(五ウ)/読(よん)でごさるそ 00052470M18ばから、S愚太郎申、/隠居(いんきよ)さん。此百人/一首(いつしゆ)の/中(なか)に、/天智= 00052480M19天皇(てんち=てんわう)じやの/持統天皇(ぢとうてんわう)と申のは、/何(なん)の事でござり升△S隠居 00052490M20それは/代&(だい+)の/主上(しゆじやう)の/贈(をく)り/号(がう)、/何院(なにいん)+といふやふなものじ 00052500¥P165 00052510L1や△S愚太郎/其主上(そのしゆじやう)とハへ△S隠居京の/禁裏(きんり)さまじや△S愚 00052520L2太郎/関白(くわんぱく)、/左大臣(さだいじん)、/右大臣(うだいしん)、/大中納言(だいちうなこん)とハへ△S隠居それ 00052530L3は/禁裏(きんり)さまの/御家来(ごけらい)じや△S愚太郎そんなら(六オ)/伊勢(いせ)じ 00052540L4やの/和泉式部(いづミしきぶ)、/相模(さがみ)、/讃岐(さぬき)、/紀伊(きい)、/周防(すほう)といふハ/何(なん)でござ 00052550L5ると、/根(ね)どひするゆへ、/隠居(いんきよ)も/甚(はなハ)だこまりて、ちつとなぶ 00052560L6らんと、S隠居それは/禁裏(きんり)さまが/所&(ところ※)へ御/使(つかい)ニ/遣(やり)なさる/飛= 00052570L7脚(ひ=きやく)じやアロウ△S愚太郎/赤染衛門(あかぞめのゑもん)の/赤人(あかひと)、/右近(うこん)、/紫(むらさき)式部 00052580L8といふは△S隠居それは/何(なに)や/角(か)や/染(そめ)さしなさる/御染物方(おそめものがた)と 00052590L9いふやうな物であろう△S愚太郎そんなら(六ウ)△S隠居ま 00052600L10たかいのふ△S愚太郎ま一ツ、アノ/兼輔(かねすけ)、/顕輔(あきすけ)、/元輔(もとすけ)、/大= 00052610L11輔(だい=すけ)といふのハへ△S隠居それか△S愚太郎なんじやヱ△S隠 00052620L12居/行(ゆき)つまつて、/大(おほ)かた百人一首のうちのきうざしやアロ 00052630¥N5¥J 00052640¥X/片(かた)ゑくぼ 00052650L15/山&(やま+)より/合(あひ)て、さま+の/物(もの)がたりニ、/高野山(かうやさん)、S高ノウ 00052660L16/愛宕山(あたごさん)。おなじ山でも、こちらはとんとおもしろない。/年= 00052670L17中(ねん=ぢう)まつ/香(かう)のかざや(七オ)ぢん/香(かう)のかざばかりで、いつかう 00052680L18じや。またちいさい山でも、/吉野(よしの)の/妹山(いまやま)/背山(せやま)は、じやうじ 00052690L19う/夫婦(ふうふ)/向(むか)ひ/合(あわ)せで/楽(たの)しんで/居(ゐ)て、けなりい山じやないかい 00052700L20のふ。また/駿河(するが)の/御頭(おかしら)と/近江(あふミ)との一/夜(や)の/契(ちぎ)りニ/御夫婦合(ごふうふあひ)は、 00052710M1/誰(たれ)しらぬ/者(もの)なし。/富士公(ふじかう)と/近江(あふミ)どのとは/深(ふか)い/中(なか)でと/言(い)へバ、 00052720M2S富士其やうにうらやミ給ふナ。/深(ふかい)じやのなんのと(七ウ) 00052730M3いふたとて、/大(たい)てい/水(ミづ)くさいやついのふ 00052740¥N6¥J 00052750¥X/無所(ないところ)どり 00052760M6S庄七コレ/茂(も)兵へさん。アノ/忠臣蔵(ちうしんぐら)といふ/狂(きやう)げんは、よふ 00052770M7/出来(でき)た/物(もの)じや。/別(べつ)して九ツ目で、/由良之介(ゆらのすけ)が/内(うち)&かたづけ、 00052780M8/諸事(しよじ)/万事(ばんじ)/心(こゝろ)のこりの/無(な)いやうにナア、/翌日(あす)の/夜(よ)ふねに/下(くだ)る 00052790M9べしといふ所ハ、少し/気味合(きミあひ)が/有(あつ)て、どふも/言(い)ゑんじやな 00052800M10い(八オ)かいナア△S茂庄七さん。いふてじや/通(とを)りじや。 00052810M11/勿論(もちろん)よふできた/物(もの)、/歌舞妓芝居(かぶきしばい)でも、/菊(きく)五郎がするか/雛介(ひなすけ) 00052820M12がするか、/団(だん)ざう、/近頃(ちかごろ)で/芝翫(しくわん)。/皆(ミな)/名人(めいじん)が/仕(し)たけれど、/誰(たれ) 00052830M13がしても、アノ九ツ目につまらぬ所があるわいナア△S庄 00052840M14/何処(どこ)がへ△S茂サア/由良之介(ゆらのすけ)ハ出て/行(ゆく)、/力弥(りきや)も/夜(よ)ふねに下 00052850M15つて十/段目(だんめ)の/天川(あまかハ)やへ出るが、/跡(あと)にのこつた(八ウ)となせ、 00052860M16おいし、/小浪(こなミ)、/下女(けぢよ)のりんは、どふするへ△S庄ソリヤし 00052870M17れたこと。となせは/国(くに)へ/去(い)ぬる。/下女(げぢよ)のりんは/請人(うけにん)へ/去(いな)す 00052880M18じやあろふカイ△S茂そんなら、おいしと/小(こ)なミハ△S庄 00052890M19フヽンおいし、/小浪(こなミ)ハ、アノ/楽屋(がくや)で/風呂(ふろ)へ/入(いる)であろう 00052900¥P166 00052910¥G(十ウ・十一オ) 00052920G1是ハ+起上りこぼし福寿草 00052930¥N7¥J 00052940¥X/二度(にど)びつくり 00052950M3/北辺(きたへん)の/大通(だいつう)二三人うちより、コレ/喜楽(きらく)さん。(九オ)/今夕(こんゆふ)は 00052960M4/此間(このあいだ)御はなし申た/高田(たかだ)やの/菊(きく)といふ/芸子(げいこ)の、かねつけの 00052970M5/岩井(いわゐ)。きやつの/親(おや)のうちへとなり/込(こむ)/積(つもり)てござり升が、御出 00052980M6なされぬか。S喜サア、/下拙(わたくし)も/其姫(そのひめ)の/御面僧(ごめんざう)/拝(はい)しがてら、 00052990M7御/供(とも)申升と/同道(どうどう)して、/彼親元(かのおやもと)へ/行(ゆき)、/奥(をく)へとをり、あたりを 00053000M8/詠(ながむ)れバ、/凡(およ)そ八九/畳(でう)の/座(ざ)しきにて、/花生(はないけ)ニは/菊(きく)のなげ/入(いれ)、 00053010M9/床(とこ)の/間(ま)には/菊童子(きくどうじ)の(九ウ)かけもの。/大菊(おほぎく)の/白(しろ)上ケもやふ 00053020M10ののふれんにて、ふすまは/同(おなじ)く/乱菊(らんぎく)の/絵(ゑ)で、/出(で)てあるしよ 00053030M11くだいが/菊燈(きくとう)にて、たばこ/盆(ぼん)は/菊(きく)のまき/絵(ゑ)、/茶(ちや)だいは菊が 00053040M12たかうりんの菊の/茶(ちや)わん、/茶(ちや)は/喜(き)せんか/山吹(やまぶき)かとのんで見 00053050M13れば、菊のほいろの/煮(に)ばなで、とさん/盃(さかづき)、菊の/高(たか)まき/絵(ゑ)。 00053060M14S喜/是(これ)はけしからぬこつた/物(もの)じや。/定(さだ)めて(十オ)(十ウ・ 00053070M15十一オ挿絵)/姫(ひめ)は、ヱラうつくし/者(もの)であらう。はやふ/菊(きく)の/顔(かほ) 00053080M16が見たいと/待(まつ)て/居(ゐ)るところへ/出(で)て/来(く)る/顔(かほ)。ずつと見たら、 00053090M17ヱライさる/眼(まなこ)で、/顔(かほ)は/菊石(ミつちや)じやあつた 00053100¥N8¥J 00053110¥X/春(はる)のうわさ 00053120M20/二人連(ふたりづれ)にて/境(さかい)へ/行(ゆき)ける/道(ミち)、/壱人(ひとり)リは/駕(かご)に/乗(の)り、壱人はかち 00053130¥P167 00053140L1/行(ゆく)に、/駕(かご)の/中(なか)と/外(そと)とのはなし。S外客申/福蔵(ふくざう)さん。この 00053150L2(十一ウ)二の/替(かは)りには、/中(なか)が/芝翫(しくわん)に/片岡(かたおか)に/鰕(ゑび)、/角(かど)が/幸(かう)四郎、 00053160L3/半(はん)四郎、/坂(ばん)三津。どちらもよふござり升。所で、/私(わた)しが此 00053170L4度/役者(やくしや)づくして、/春(はる)の/気(き)によせて、口づさミの/発句(ほつく)でもな 00053180L5し、/狂哥(きやうか)でもなしじやが、/御(お)きゝくだされませ。 00053190L6△哥いさぎよし/祇園守(ぎをんまもり)や/神(かミ)の春 00053200L7△△S/注連縄(しめなわ)の/真中(まんなか)にある鰕十郎 00053210L8△△S/家&(いへ+)の/我童(がどう)に/立(たて)たる松しまや(十二オ) 00053220L9△△S/大(おゝ)ぶくを/誰(たれ)しも/岩(いわゐ)井半四郎 00053230L10△△Sわつさりと/祝(いわ)ふ坂東/三津(ミつ)の/朝(あさ) 00053240L11とまでしましたが、/幸(かう)四郎がとんとできませぬと、/噺(はな)し 00053250L12/仕(し)て/居(ゐ)れば、/駕(かご)/舁(かき)て居るくも介が、ソノ幸四郎、/私(わた)しがし 00053260L13ましやうか。S客それハ一/興(けう)。一ツ/遣(やつ)て見やしやれ△Sか 00053270L14ごかきハイ+ト/思案(しあん)して、こふはとふで厶り升。 00053280L15△△Sあの/鼻(はな)では大かたまへのも/午(むま)の/春(はる) 00053290L16S客(十二ウ)なるほどよいけれど、それでは/句(く)にひんがな 00053300L17いのふといへば、S駕かき/合点(がてん)のわるひ人じや。ひんはま 00053310L18へに/持(もつ)てゐるがナア 00053320¥N9¥J 00053330¥X/法(ほう)が/違(ちが)ふ 00053340M1/向(むか)ふより/鳥(とり)さし/来(きた)れば、/若(わか)いもの/二人(ふたり)づれにて、鳥さしの 00053350M2/跡(あと)より、/念仏(ねんぶつ)を/口(くち)のうちにて申て/廻(まハ)る。鳥はミな+にげ 00053360M3て/仕舞(しもふ)なり。またむかふの(十三オ)/梅(むめ)が枝にとまるをさし 00053370M4か/か((ママ))ゝると、S若/南無(なむ)あミだ仏といふに、此鳥、さゝれる 00053380M5ゆへに、ふしぎにおもひ、/立(たち)よつて鳥をミれば、/念(ねん)ぶつで 00053390M6もさゝれたはづしや。/鴬(うぐひす)でアツタ 00053400¥Y1春興はなし万歳二之巻終(十三ウ) 00053410¥P168 00053420¥Y1/春興噺万歳(しゆんけうはなしまんざい)三之巻目録 00053430L3一△/竹(たけ)の/春(はる) 00053440L4一△ゑて/勝手(かつて) 00053450L5一△ごいし 00053460L6一△/此下蔭(このしたかげ) 00053470L7一△わかれのかね 00053480L8一△/湖水(こすい)の/馬(むま) 00053490L9一△/出(で)あひ/頭(かしら)(オ) 00053500L10一△うかひぶね 00053510L11一△/三五(さんご)の/夜(よ) 00053520L12一△もがり/竹(たけ)(ウ) 00053530¥T1/春興(しゆんけう)はなし/万歳(まんざい)三之巻 00053540¥A浪花△△桂△文来著 00053550¥N1¥J 00053560¥X/竹(たけ)の/春(はる) 00053570M7/富家(ふうか)の/隠居(いんきよ)、/今年(ことし)は/米寿(ますかけ)の/賀(よろこび)と、/大座(おほざ)しきに/机(つくへ)をかまへ、 00053580M8/米(こめ)といふ/字(じ)を/書(かく)/程(ほど)に+、/床(とこ)の/間(ま)、/広縁(ひろゑん)、/座(ざ)しき/中(ぢう)へ、/大= 00053590M9字(たい=じ)から/細字(さいじ)に/至(いた)る迄、/爰(こゝ)をせんどト/書(かく)所へ、/手代(てだい)の/親(おや)、/在= 00053600M10所(ざい=しよ)から此/御祝儀(ごしうぎ)に(一オ)/来(きた)りて、つぎの間に手を/突(ついて)、S在 00053610M11親まづ御/目出(めで)たふそんじ升。サテマアおびたゞしうお書あ 00053620M12そバされました。/御苦労(ごくらう)ナ/義(ぎ)でござり升△S隠居されば、 00053630M13これにハ/訳(わけ)がござるテヤ。まづおれが/米寿(ますかけ)の/祝(いわ)ひ、/忰(せがれ)の/本= 00053640M14卦(ほん=け)の/賀(が)、/孫(まご)は/初老(しよらう)の/悦(よろこ)び。其/上(うへ)/曽孫(ひまご)が/元服(げんぶく)。なんとマア、 00053650M15よふ/巡(めぐ)りあふた/年(とし)ではござらぬか。それで/珍(めづ)らしい/果報人(くわほうにん) 00053660M16と、/一類(いつけ)はいふに(一ウ)およばず、聞つたへ+、あやか 00053670M17りたい、/守護(まもり)にするのといふて、/米(こめ)といふ/字(じ)の/所望(しよもう)。/元(もと)よ 00053680M18りおれは/好(すき)の/道(ミち)、/面白(おもしろ)ふおもふて/書(かき)升が、おもふ/程(ほど)には/出来(でき) 00053690M19ませぬ△S親それはマア、/別(べつ)して御/目出(めで)たい/義(ぎ)でござり升。 00053700M20/私(わたくし)は/百性(ひやくしやう)の事なれは、/書(しよ)の/義(ぎ)はとんとぞんじませねど、 00053710¥P169 00053720L1おびたゞしい/出来(でき)でござり升と/見渡(ミわた)し+、Sマア+ 00053730L2(二オ)/近(きん)ねんのまん/作(さく)でござり升 00053740¥N2¥J 00053750¥X/得手勝手(ゑてかつて) 00053760L5/亭主(ていしゆ)は/年中(ねんぢう)/高慢(かうまん)くさい事ばかりいふていると、/女房(によぼう)だいの 00053770L6あばにて、S女コレイナア。/何(なん)の/事(こと)じやいナア。/今日(まいにち)+ 00053780L7/本(ほん)ばつかり見て、/何(なに)になることじや。/商売(しやうばい)はろく+にせ 00053790L8ず、/女房(によぼう)には不/自由(じゆう)さして/置(おい)て、アタしんきナ(二ウ)かい 00053800L9しやうのない/男(おとこ)、ひまなとほしいわいナア△S亭やかまし 00053810L10い/言(い)やんな。ひまやることハかまわんけれど、/朱(しゆ)/買臣(ばいしん)や/大= 00053820L11公望(たい=こうぼう)の/女房(によぼう)ミたやうに/後悔(こうくわい)しやうとおもふて、/年中(ねんぢう)/男(おとこ)を二 00053830L12文ともおもハずニ/尻(しり)にしき、ほんにそなたのやうな女は、 00053840L13あいそがつきた。そつちから/乞(こハ)いでも、/此方(こつち)からひまやり 00053850L14たいわいのふと、せり/合(あふ)てゐれど、(三オ)(三ウ・四オ挿絵) 00053860L15/近所(きんじよ)も/度&(たひ※)ゆへあいさつもせず、そのまゝにして/置(おく)と、/仕= 00053870L16舞(し=まひ)もつかず。女房/寐所(ねどころ)/敷(しい)て/這入(はいり)てしまふと、そろ+S男 00053880L17/帯解(おびとい)て/其(その)中へはいり、/尻(しり)むけし女房に、/猫(ねこ)なでごへにて、 00053890L18S男こちらむきや+と/言(い)へば、S女なんじやいナア。/今(いま) 00053900L19まであいそがつきた、ひまやるといふて/居(ゐ)て、あた、いや 00053910L20らしいと/突(つき)のける。S男あふけな/声(こへ)しやんナ。(四ウ)/君子(くんし) 00053920M1ハ/其罪(そのつミ)を/憎(にく)んで其人を/憎(にく)ます 00053930¥N3¥J 00053940¥X/碁(ご)石 00053950M4/長家(ながや)の/下女(げぢよ)、/井戸端(ゐどばた)にうち/寄(より)て/高(たか)ばなし。Sお咲おさんど 00053960M5ん。やぶ入には/芝居(しバゐ)はきらひなり、/定(さだめ)てよいなりして、/在= 00053970M6所(ざい=しよ)へ/去(い)んでじやあろう。またおよし/殿(どん)、/中(なか)の/芝居(しばい)見いたか。 00053980M7/芝翫(しくわん)はおまへ、/好(すき)かへ。/向(むか)ひの/茂八(もはち)さんナ、芝翫によふ/似(に) 00053990M8て(五オ)あるナア△Sよしおさきどんは/茂八(もはち)どんに、ほ/印(じるし) 00054000M9じやナア。/私(わた)しや茂八どんより/男(おとこ)はわるふても、/隣(とな)りの 00054010M10/武(ぶ)兵へどんがすきじやわへ。/第(だい)一/気(き)はいがよし、/商(あきな)ひは/上= 00054020M11手(じやう=ず)なり、/旦那(だんな)さんには/大気(だいき)に入りなり。/私等(わたしら)こんど/世帯(せたい)す 00054030M12るときには、あなひに/商(あきな)ひよふする/武(ふ)兵へどんミたやうな 00054040M13男、/持(もち)たいわいナア△S咲なんの、アノ(五ウ)/武(ぶ)兵へづら 00054050M14がよいことがあるもので。わたしがうらへ/出(で)る/度(たび)に、こつ 00054060M15て/牛(うし)+といふておだてくさる。おのれは人が、/白(しろ)ねずミ 00054070M16といふをもしらず 00054080¥N4¥J 00054090¥X/此下蔭(このしたかげ) 00054100M19/至(いたつ)て/気(き)のミじかいS/旦那(たんな)長吉よ。/向(むかひ)/行(い)て、/糊(のり)をちつとば 00054110M20かりおくれなされと/貰(もら)ふて/来(こ)い。サア+/急(きう)じや+と、 00054120¥P170 00054130¥G(三ウ・四オ) 00054140G1梅が香やつぼミこぼるゝ清閑寺 00054150M1れいのかんへきに、(六オ)S長ハイ+と/走(はし)つて/行(ゆく)とおも 00054160M2へば、とんで/戻(もど)り、S長申、むかひにさつまの/守(かミ)ハござり 00054170M3ません△S旦那ヲノレ、/糊(のり)もらひにうせたんじやないか△ 00054180M4S長ハイ。たゞのりを/貰(もら)ふによつて、さつまの/守(かミ)でござり 00054190M5升△S旦那ヱヽ/世話(せわ)しい/中(なか)で何をぬかすと、/持(もつ)た/煙筒(きせる)で右 00054200M6の/腕(かい)なをびつしやり 00054210¥N5¥J 00054220¥Xわかれの/鐘(かね)(六ウ) 00054230M9S弟子/先生(せんせい)。けしからぬ/寒(さむ)さでござります。/今年(ことし)ハ御/室(むろ)の 00054240M10/富(とミ)ができまして、ひどいはづミようでござり升。/評(ひやう)ばん、 00054250M11御/聞(きゝ)被成ましたか△S先なるほど、北野不/動寺(どうじ)でござりま 00054260M12して、/挑灯(ちやうちん)やが一の/富(とミ)とりましたと聞ましたが△S弟子其 00054270M13/挑灯(ちやうちん)や、わたしのなじミでござり升。/悦(よろこ)びニ/狂哥(けうか)をよんで 00054280M14つかハしました。 00054290M15△△△梅がえの/莟(つぼミ)も今ハ三部一 00054300M16△△△△ひらくや/運(うん)の/盛(さか)り前也(七オ) 00054310M17と、百両/取(とり)ましたゆへ、梅がへの三部一とよミましたとい 00054320M18へバ、S先生梅がえの/莟(つぼミ)と/運(うん)の/盛(さか)り/前(まへ)ハよいが、中のひら 00054330M19くがわるい。/時分(じぶん)ハ/冬至(とうじ)じや。梅ハ/春(はる)ひらく物なれば、/余(あま) 00054340M20り/早(はや)いニよつて、/開(ひら)くといわずニ、/灯(ひ)ともす/運(うん)のさかり/前(まへ) 00054350¥P171 00054360L1といふたら、/挑灯屋(ちやうちんや)の/気(き)もあつてよい△S弟子冬でも/開(ひら)き 00054370L2ます。こんどの/富(とミ)ハ御/室(むろ)でこざり升(七ウ) 00054380¥N6¥J 00054390¥X/湖(こすい)の/馬(むま) 00054400L5S旦那コリヤ/長太(ちやうた)よ。/我(われ)はまたしても/二階(にかい)や/火(ひ)のミへ/上(あが)つ 00054410L6て、北の方/向(むひ)て/泣(ない)て/居(ゐ)るが、何で/泣(なく)のじや。/里心(さとごゝろ)でも/出(で)て、 00054420L7/去(いに)とふなつたか△S長イヽヱ、/去(いに)たいことはござりませぬ 00054430L8が、/私(わたし)が/在所(ざいしよ)ハ/丹波(たんば)の/氷上(ひかミ)で厶り升ゆへ、北の方の/風(かぜ)が/吹(ふく) 00054440L9と、/爺(とゝ)さんや/嚊(かゝ)さんの事おもひ出しまして、なミたがこぼ 00054450L10(八オ)れ升△S旦そんなら/北風(きたかぜ)が/恋(こひ)しいか△S長/芝居(しばゐ)より 00054460L11/花見(はなミ)より何より、北風が/恋(こひ)しふ厶り升△S旦それならしや 00054470L12うがあると、/新(あたら)しい/深草団(ふかくさうちハ)に、北といふ/字(じ)を書。コリヤ長 00054480L13太。此/団(うちハ)/遣(や)るほどに、/古郷(こきやう)/恋(こひ)しい時ハ此/文字(もんじ)の/団(うちハ)をつかへ 00054490L14はよいじやナイカ△S長さやうなら、とてものことに、此 00054500L15/団(うちハ)、/油引(あぶらひき)にしてヲクレ/被成(なされ)ませ。ヱテ/風呂(ふろ)の/中(なか)でおもひ/出(だ) 00054510L16し升(八ウ) 00054520¥N7¥J 00054530¥X/出合頭(であひかしら) 00054540L19/芸子(げいこ)/牽頭(たいこもち)を/呼(よび)、大さわぎの/酒(しゆ)ゑんの/席(せき)にて、Sげいこ申、 00054550L20/佐(さ)しうさん。おまへさんハきつい/奈良(なら)じまがお/好(すき)で厶り升 00054560M1ナア。いつ見ても+きれいナ/奈良(なら)じまばかり/着(き)て/居(ゐ)なさ 00054570M2るトいふト、そばからSたいこ/旦(だん)しうハ/奈良(なら)ニゑらごりじ 00054580M3や。/別(べつ)してあなたのならじまハべつじや。/私(わた)しどもがこ 00054590M4んな/嶋(しま)(九オ)たづねても、とんとヱヽ/買(かい)ませんと/誉(ほめ)そやす 00054600M5にぞ、/客(きやく)も/乗(のり)が/来(き)て、Sさ、/私(わ)しは奈良/生(うま)れで、/帷子(かたびら)/斗(ばかり)じ 00054610M6やナイ、奈良物が/好(すき)で、/内(うち)に/置(おく)/手代(てだい)・/子供(こども)・下女までが、な 00054620M7ら/者(もの)ばかり/遣(つか)ふて/居(ゐ)る。これから内へ/去(いぬ)ると、なら/茶飯(ちやめし)を 00054630M8奈良/茶(ちや)わんニよそい、奈良づけをそへて/喰(くふ)し、そばから奈 00054640M9良/団(うちわ)であをぐかと、口から/出(で)しだい(九ウ)/太平(たいへい)らくを/言(いふ)は 00054650M10づミに、Sヘイヲブウ+。/芸子(げいこ)あきれて、Sヲヽイヤ。 00054660M11それまでカイナア 00054670¥N8¥J 00054680¥Xうかひ/船(ふね) 00054690M14S旦那/長(ちやう)吉よ。/我(われ)はどふしたものじや。/何(なに)をいふても/尻(しり)へ 00054700M15ぬけるが、/今日(けふ)は/大事(だいじ)の/使(つかひ)じやによつて、よふ/呑込(のミこん)で/往(ゆこ)ぞ。 00054710M16コリヤよふ/呑(のミ)こんでといふに、S長そのよふに、/呑込(のミこん)で 00054720M17+とおつしやるニよつて、(十オ)わたしがのミ/込(こミ)すぎて、 00054730M18それで/尻(しり)ぬけるのじや 00054740¥P172 00054750¥G(十一ウ・十二オ) 00054760G1咲にけり梅の木の間の/桜((ママ))の花 00054770¥N9¥J 00054780¥X三五の/夜(よ) 00054790M3S旦那三介。/実(げ)に/能(よい)/月夜(つきや)じやノウ。此/月見(つきミ)の/夜(よ)は/海(うミ)のそこ 00054800M4まであかいげナ。/今夜(こんや)はうミの/底(そこ)で/珊瑚珠(さんこうじゆ)をとるとのこと 00054810M5S三介さんごうじとは/何(なん)でござり升△S旦/私(わし)がたばこ入に 00054820M6/付(つけ)て有ものじやと/言(いへ)バ、(十ウ)S三介/月見(つきミ)の/晩(ばん)は/用心(やうじん)がわ 00054830M7るいことじや。/海(うミ)のそこにも/巾着切(きんちやくきり)がゐ升か 00054840¥N10¥J 00054850¥Xもがり/竹(だけ) 00054860M10S女房いかにこちの/内(うち)が/染物(そめもの)やじやテヽ、お/前(まへ)のやうに/色(いろ) 00054870M11ごとばつかりニ/心(こゝろ)がけてよいカイナア。/何(な)にも/角(か)も/黄(き)いて 00054880M12いれど、口へ/出(だ)してはいわれぬ/色(いろ)。/此間(このあいだ)も/横町(よこまち)のびんろう 00054890M13じの/内(うち)で、おなんどんと/鼠付(ねづミつい)たりねぶられたり。(十一オ)(十 00054900M14一ウ・十二オ挿絵)アノやうすなら、ちよこ+あいびろうど 00054910M15でアロトおもふて、/私(わたし)の/紫(むらさき)へ心の/火(ひ)が/萌黄(もへぎ)なれど、りん 00054920M16きハ/藍桔梗(あいきゝやう)のつきるものと、/花色(はないろ)の/先(さき)へも/出(だ)さぬ。これ 00054930M17/烏羽色(からすばいろ)からカハイ+といふて/下(くだ)さんせ△S亭主/黄茶(きちや)まに 00054940M18は、おかしい/事(こと)いふな。おれが/季冠(りくわん)茶のやうな/男(おとこ)じやある 00054950M19まいし、/芝翫茶(しくわんちや)のやうな/芸(げい)の/有(ある)男じやなし。/常(じやう)じすゝ/竹茶(たけちや) 00054960M20のふすぼつた(十二ウ)やうな/顔(かほ)して/居(ゐ)るものニ、おなんど 00054970¥P173 00054980L1んがほれるものか。アノ/女子(おなご)に/相見(あひミ)る/茶所(ちやところ)か、/遠州(ゑんしう)茶いた 00054990L2こともないわいヤイ△S女房またるりこんそうな/顔(かほ)してい 00055000L3ふてじや。そんなことを/桔梗(きゝやう)で/居(ゐ)よふカイナ。ホンニ/相人(あいて) 00055010L4さへあると、/誰(たれ)かれなしにあいねづミ/色(いろ)ごとの/湊鼠(ミなとねづミ)じやと 00055020L5いふこといナア。/浅黄(あさぎ)から/晩(ばん)/迄(まで)、/内(うち)のことハうハの/空色(そらいろ)ニ 00055030L6して、/日(ひ)のくれないやくれぬから(十三オ)/鳶(とび)出やしやんす 00055040L7が、マタむかふの/女中(ぢよちう)の/顔(かほ)を見て、/尻目(しりめ)/引遣(ひきづか)ひして/居(ゐ)るの 00055050L8であらふ。よいかげんに/生壁(なまかべ)さんせいナア△S亭/何(なん)じや。 00055060L9/栗皮茶(くりかわちや)のはぜるやうに、ゑらうホン+いふな。われハお 00055070L10れの/心(こゝろ)をしらぬであろふ。/白茶(しろちや)だまつてイヽ。せんさい/茶(ちや) 00055080L11を/誉(ほめ)るじやないが、せんさいのお/茶(ちや)かは、りんきハせなん 00055090L12だに、おのれは/丁子茶(てうじちや)がナア△S女房ヲヽ/知(し)れた(十三ウ) 00055100L13事イナ。/何(なん)ぼおまへがべん/桔梗(きゝやう)にまかせて/言(いハ)しやんしても、 00055110L14/鉄(てつ)なんどゝかたいやくそくした女があること、しつかりと 00055120L15/水浅(ミづあさ)ぎ、/人(ひと)の/口葉色(くちばいろ)にかゝるがいやじやわいナア。おまへ 00055130L16と/私(わた)しのなれ/染(そめ)を、おもひ出して見やしやんせ。/日外(いつぞや)か 00055140L17ちんの/内(うち)に/泊(とま)りし/夜(よ)さ、/藤色(ふじいろ)のやふ/這(はふ)て/来(き)て、うこんの中 00055150L18へ/這入(はいつ)て、其/時(とき)私しが、/否(いや)じや+といふに、/無利(むり)やりニ 00055160L19(十四オ)ふと/桃色(もゝいろ)へ手を入て、またかわらけ/色(いろ)じやと/祝(よろこ)ば 00055170L20んしたであろうがな△S亭主/青茶(あをちや)いま+しい。/鴬茶(うぐひすちや)の 00055180M1/法花経(ほけきやう)をよむやうに、よふマアしやべるナア。こげ/茶(ちや)引さ 00055190M2くぞよ。そふぬかせばモウやけじや。外には/焚(に)ぬき/玉子茶(たまごちや) 00055200M3のやうなおきせんがある。おのれは/路孝茶(ろかうちや)へなりとも/出(で)て 00055210M4/行(ゆ)きやがれ△S女房ヲヽ、/其詞(そのことば)を/松葉色(まつばいろ)で/居(ゐ)る。サアひま 00055220M5下さん(十四ウ)せ。/郡山(こほりやま)の/兄(あに)さんところへ/行(ゆく)といふて/居(ゐ)る 00055230M6/所(ところ)へ、/近所(きんじよ)からよつて/来(き)て、S近所の人マア+/待(まち)なんせ。 00055240M7コレお/内義(なぎ)。どふで/商売(しやうばい)がらじやによつて、/色(いろ)にはこりう 00055250M8ちかいナア 00055260¥Y1春興はなし万歳三之巻終(十五オ) 00055270¥P174 00055280¥Y1春興噺万歳四之巻目録 00055290L3一△/心(こゝろ)のにごり 00055300L4一△/堀江(ほりえ)の/市場(いちば) 00055310L5一△/胸算用(むなざんよう) 00055320L6一△たとへの/金玉(きんだま) 00055330L7一△/深山木(ミやまぎ) 00055340L8一△/唐(から)と/日本(につぽん) 00055350L9一△/何処(どこ)を/折(をり)ても(オ) 00055360L10一△/柱懸(はしらかけ)のにしき/絵(ゑ) 00055370L11一△/目引縞(めひきじま) 00055380L12一△/夜光(やくわう)の/珠(たま) 00055390L13一△/娘(むすめ)の二八 00055400L14一△/遠眼(とをめ)の/案山子(かゞし) 00055410L15一△/松(まつ)のうち(ウ) 00055420¥T1/春興噺万歳(しゆんけうはなしまんざい)四之巻 00055430¥A浪花△△桂△文来著 00055440¥N1¥J 00055450¥X/心(こゝろ)のにごり 00055460M7うら/長家(ながや)に/能(よい)/水(ミづ)の/井戸(ゐど)/有(ある)ゆへ、/隣町(となりまち)から/汲(くミ)に/来(く)るゆへ、/喧= 00055470M8嘩(けん=くわ)となりしを、/相長家(あいながや)のもの、あいさつして/事済(ことずミ)し、Sあ 00055480M9いさつ人どふじや。/今(いま)/仲直(なかなを)り/そさ((ママ))ふかといへば、S長家者イ 00055490M10ヤ+、/水(ミづ)のもや+をすますのなら、/明(めう)(一オ)ばんがよ 00055500M11かろふ 00055510¥N2¥J 00055520¥X/堀(ほり)江の/市場(いちば) 00055530M14十四五/迄(まで)の/丁児(でつち)二三人/打(うち)より、S岩長松ヨ。アノ/横町(よこまち)の/質= 00055540M15屋(しち=や)の/丁児(でつち)ナア、/内(うち)のいとさんと、いろごとして/居(ゐ)るぜい 00055550M16S長そふか。ほんマカといふを、/質屋(しちや)の丁児、/聞(きい)て/居(ゐ)て、 00055560M17S質丁何をぬかすぞひ。おいらはなんのそんなことするも 00055570M18ので△S岩したわい+△S質丁そんなら(一ウ)したとい 00055580M19ふ、/何(なん)ぞ/慥(たしか)な/証拠(しやうこ)があるかい△S岩のふていふものかい 00055590M20S質丁そんなら何が/証拠(しやうこ)じやい△S岩/証拠(しやうこ)ハ此/間(あい)だ、おの 00055600¥P175 00055610G1猿曳やむちの先なる人心 00055620¥G(二ウ・三オ) 00055630M1れが/帳箱(ちやうばこ)にもたれて、/居寐(ゐね)ぶつていたわい 00055640¥N3¥J 00055650¥X/胸算用(むなさんよう) 00055660M4S引舟/太夫(たゆふ)さんも、とんと/御病気(ごびやうき)/全快(なをり)かね升が、/私(わたし)の/近付(ちかづき) 00055670M5ニ/心安(こゝろやす)ひおいしやさまが厶り升が、かゝつて見なさらんか 00055680M6とすゝめられ、其/医者(いしや)ニかゝると、/早速(さつそく)病気/平愈(へいゆ)せし(二 00055690M7オ)(二ウ・三オ挿絵)ゆへニ、其よろこびニ/心安(こゝろやす)き/揚(あげ)やを/頼(たの)ミ 00055700M8て、/本腹(ほんぶく)の/振舞(ふるまひ)にて、かの/医者(いしや)/勿論(もちろん)、たいこ・/末社(まつしや)もとも 00055710M9+に大さわぎとなる。/太夫(たゆう)も/医者(いしや)の/膝(ひざ)ニもたれ、うつゝ 00055720M10ニなりて/居(ゐ)る。/松位(たゆう)、/何(なに)やら/仲居(なかゐ)の/耳(ミヽ)ニさゝやくと、しば 00055730M11らくあつて太夫、/次(つぎ)へ/立(たつ)て/行(ゆく)。/跡(あと)£/禿(かむろ)、/医者(いしや)の/手(て)を/取(と)る。 00055740M12S禿申、/先生(せんせい)さん。ちよつとこちらへ御/出(いで)と、/連(つれ)て/次(つぎ)の/間(ま) 00055750M13へ/出(で)る。/屏風(びやうぶう)/引廻(ひきまハ)しある此内ニて、S仲/太夫(たゆう)す、まつて 00055760M14/居(ゐ)られ升と/無利(むり)ニ/押(おし)いれば、(三ウ)いしや、/心中(しんちう)ニ/味(むま)ひ、 00055770M15/此内(このうち)ニて/何角(なにか)の/礼(れい)をいふつもりじやそふなと、づつと/這入(はいる) 00055780M16と、太夫、/蒲団(ふとん)のうへニ/居(す)わり、/帯(おび)といて/居(ゐ)る。Sいしや 00055790M17どふじや、太夫。ゑらうよふたともたれかゝれバ、S太夫 00055800M18/先生(せんせい)さん。どふぞ/留灸(とめきう)すへておくれなされ 00055810¥P176 00055820¥N4¥J 00055830¥Xたとへの/金玉(きんだま) 00055840L3/女房達(によぼたち)二三人うちより、お元さん。あなたの/髪(かミ)は/一向(いつかう)よふ 00055850L4/出来(でき)ました。わげくゝりも(四オ)よし。/私(わたし)ミなされ。くせ 00055860L5が/付(つい)てゆひにくいといふて、とんとできぬゆへ、しんきで 00055870L6+なりません。また/源(げん)兵べさんハ、お元さんをだいじに 00055880L7かけて/物買(ものかふ)てあげなさるさかい、きれいにして/居(ゐ)なさるゆ 00055890L8へ、北から/出(で)てゐてじやときも/同(おな)じ事のよふな。/私(わた)しらの 00055900L9所の/多介(たすけ)さんハ、/間(あい)に一〆文ほど/私(わたし)が/買物(かいもの)があると、どな 00055910L10いにやかましいとおもひじや。このあひも(四ウ)ソレデ八 00055920L11九百はらひがあるゆへ、きつう/心(しん)ぱいしてゐるハへ△Sお 00055930L12元ヲヽイヤ。/何(なん)の、それを/心(こゝろ)づかひしいじやことがある 00055940L13もので。/私(わた)しらハ/是(これ)まで/勤(つとめ)していたときニ、/多(おほ)くの人に/逢(あ) 00055950L14ふて、/男(おとこ)のあんばい/知(しつ)てゐるが、つねハしわい人でも、は 00055960L15り/合(あひ)さへよいとおしげのないが/男(おとこ)の/常(つね)。一/間(あい)に八百や九百 00055970L16のこと、/何(なん)のあんじることが/有(ある)ぞいナア。/茶(ちや)や/町(まち)の花なら、 00055980L17十本や二十本ハツイつまるぞへ。ホンニ/此(この)やうに(五オ)/女= 00055990L18房(によ=ぼう)になつてゐても、/其気(そのき)じやヱ。/私(わた)しら、こちの人にそふ 00056000L19いふて、/常(つね)の/花(はな)ハ/侭(まゝ)にして、/寐間(ねま)ばかり花を/積(つも)つて、/節季(せつき) 00056010L20にはこわげなしにもらふわいナア。これからおまへもそふ 00056020M1しなされ△Sホンニ、これハよいこと/教(おし)へておくれた。/夫(それ) 00056030M2でハ/気(き)がはらいでよいわいナ。/私(わたし)も/晩(ばん)から、こちの人ニそ 00056040M3ふいふておこわいなア。シタガまちへ。/夫(それ)でハわるいこと 00056050M4があるわいナ。ひよつとかずがすくなふなりやせまいかナ 00056060M5ア(五ウ) 00056070¥N5¥J 00056080¥X/深山木(ミやまぎ) 00056090M8/遠方(とをい)/一家(いつけ)より/近(ちか)ひ/他人(たにん)の/念頃(ねんごろ)なる/所(ところ)の/忰(せがれ)、つね※/遊(あそ)びに 00056100M9/来(く)ると、/松(まつ)よ、どふせいこふせいと、たくさんそふにいふ 00056110M10てゐるときに、たのむこと有て、S近所者/松(まつ)さん。/頼(たの)ミた 00056120M11いことがあるが、ついそこまでつかひに/往(い)てくだんせんか。 00056130M12よい/子(こ)じやガ、/松(まつ)さんと言バ、Sまつ/何(なん)じやい。わいらに 00056140M13/様付(さまつけ)しられる/覚(おぼ)へ/わ((ママ))ないわい(六オ) 00056150¥N6¥J 00056160¥X/唐(から)と/日本(につぽん) 00056170M16此たび/宇治(うぢ)の/黄檗(わうばく)の/僧(そう)、むかひに/入唐(にうとう)いたし、/唐(から)の/磯部(いそべ)に 00056180M17/船(ふね)をつなぎ/置(をく)と、/唐子(からこ)ども/遊(あそ)び/居(ゐ)るゆへ、S日本船人/菓子(くわし)ぶ 00056190M18くろを/出(た)して、何ぞやろか。Sから子パア+と、わから 00056200M19ぬゆへ、/舟中(せんちう)より、かき/餅(もち)の/焼(やい)たのを/出(だ)して、やろかとい 00056210M20ふに、Sから子とらやあ+といふたら、こいつ、ゑよふ 00056220¥P177 00056230L1なやつじや。五文の/饅(まん)ぢうくれといひをる(六ウ) 00056240¥N7¥J 00056250¥X/柱懸(はしらかけ)のにしき/絵(ゑ) 00056260L4/利主公(りすこう)。ゆふべ、/金毘羅参(こんひらまい)りしたゲナ。S利/辰(たつ)さん。参り 00056270L5じやとよいに△S辰/何(なん)ぞ/珍(めづ)らしいちやりが/有(あつ)たか△S利あ 00056280L6つただんか△S辰/何(なん)じや/有(あつ)た△S利/女(をなご)のはだか参り△S辰 00056290L7ぎやうさんそふに。何の/夫(それ)が/珍(めづ)らしい/事(こと)が/有(ある)ものか△S利 00056300L8それでも/夕(ゆふ)べのハゑらじや。/丸(まる)のはだかでナア。/又(また)、/其色(そのいろ) 00056310L9の/白(しろ)さ、ぼつてらとよふ/肥(こへ)て/居(い)てナア△S辰そいつハゑら 00056320L10いは。して、きりやうハ△S利きりやうか。フント/行(ゆき)つま 00056330L11り、Sそれハ/見(み)なんだ(七ノ八オ) 00056340¥N8¥J 00056350¥X/目引(めひき)じま 00056360L14/清姫(きよひめ)の/日高川(ひたかがハ)、/佐代姫(さよひめ)のひれふる山、何れも/夫(おつと)を/恋(こひ)しとお 00056370L15もふ/心(こゝろ)も、ついにハりん/気(き)の/端(はし)と、/老若(らうにやく)のへだてもなく、 00056380L16S伊兵へさん、御出なされ。わたしの/処(ところ)の/親仁(おやぢ)どの、/昨日(きのふ) 00056390L17/花見(はなミ)に/行(ゆく)といふて出られましたが、/今(いま)に/帰(かへ)られませんが、 00056400L18/聞(きけ)ば/馬場(ばゞ)さきに、なじミの/遊女(おやま)が/出来(でき)ましたと。/一向(いつかう)あき 00056410L19れて/物(もの)がいわれません△S伊兵へおたくさん、(七ノ八ウ)ヱ 00056420L20イわいナ。S権介様も/精出(せいだ)す/御(お)かたゆへ、/商売(しやうばい)のすき/間(ま)に 00056430M1/気(き)ばらしに、一ツぱい/呑(のミ)に/往(い)ての事でござり升。/夕(ゆふ)べも大 00056440M2かた/呑(のミ)すぎて/泊(とま)りなさつたんであろう△S女イヱ+、な 00056450M3んでも/済(すミ)ません。/元服(げんぶく)した子の有なりをして、ちつと/息子(むすこ) 00056460M4の/手前(てまへ)もはぢたがよふ厶り升と、はら/立(たち)まぎれに、Sコレ 00056470M5/権(ごん)七+と/息子(むすこ)をよんで、わがミ、/馬場(ばゞ)さきへ/往(い)て、/親仁(おやじ) 00056480M6のなじミの/遊女(おやま)はいて(九オ)(九ウ・十オ挿絵)おじや 00056490¥N9¥J 00056500¥X/夜光(やくわう)の/珠(たま) 00056510M9きついはんじやうな/商人店(あきうどミせ)へ、/隠居(いんきよ)らしき人、Sコレハ 00056520M10+/御精(ごせい)が/出(で)升ナ。お/店(ミせ)ハきつうおこと/多(おほい)と/見(ミ)へる△Sホ 00056530M11ヽ、御/隠居(いんきよ)さま。よふおいでなされました。ハイ、おかげ 00056540M12で/相応(さうをう)にいそがしいござり升△Sいん居/夫(それ)ハマア/結構(けつかう)なこ 00056550M13と。お店もだん+と御はんじやうで、御ふしんハ/出来(でき)る 00056560M14し、/手代衆(てだいしゆ)は(十ウ)/多(おほ)し。お/若(わかい)にきりやうものしや。アヽ 00056570M15御/目出(めで)たいことじや△Sハイ。/是(これ)と申も、/親(をや)どもが何も/角(か) 00056580M16も、ぬけめなふいたして/置(おか)れました/故(ゆへ)、たゞ/今(いま)にては/何(なに)く 00056590M17らからずくらします△Sいん居ムヽン、何くらひことはな 00056600M18いかの△S店ハイ△S隠居ハアヽ、/親(をや)の/光(ひか)りじや 00056610¥P178 00056620¥G(九ウ・十オ) 00056630G1春雨の中や都の山のなり 00056640¥N10¥J 00056650¥X/娘(むすめ)の二八 00056660M3/北辺(きたへん)にくらす/内(うち)の十七八で、/今(いま)をさかりの(十一オ)/娘(むすめ)、/母(はゝ) 00056670M4と/格子先(かうしさき)に/立(たつ)てゐて、かうしの/間(あいだ)より/往来(わうらい)の人/詠(なが)めゐる/所(ところ) 00056680M5に、S娘申+かゝさん。/今(いま)そこを/通(とを)りなさるおかたな、 00056690M6/日外(いつぞ)や/都(ミやこ)て/見初(ミそめ)た、よいとのごじやわいナア。/母親(はゝおや)あきれ 00056700M7て、Sソナタ、まだ京へハ/連(つれ)て/行(ゆか)ぬに、いつの/間(ま)に。ゆめ 00056710M8ではないか△S娘/嚊(かゝ)さん、ソレイナ、/天王寺参(てんわうじまいり)のもどりに 00056720M9/松(まつ)や町の 00056730¥N11¥J 00056740¥X遠眼の案山子(十一ウ) 00056750M12/茂(も)八さん。おまへもよつほど/物好(ものずき)じやが、/下拙(わたし)の/知(し)るべに、 00056760M13京の/白木(しろき)や四郎兵へといふ/雅人(がじん)があるが、/大(だい)の白ずきで、 00056770M14大坂の/島(しま)のうちの/白人(はくじん)を/女房(によぼう)にしてゐられたが、それにお 00056780M15くれてから、/息子(むすこ)に/世(よ)をゆづり、こんどハ/素人(しろうと)がよいとい 00056790M16ふて、/伊勢(いせ)の/白子(しろこ)から/来(き)てゐる/色(いろ)の/白(しろ)い/霜(しも)といふこし/元(もと)を 00056800M17/妾(てかけ)にして、/白川辺(しらかハへん)ニ/隠居(いんきよ)して居られたが、/去冬(きうとう)用事があつ 00056810M18て京へゆき(十二オ)とまりましたが、/其夜(そのよ)は/大雪(おほゆき)で、何が 00056820M19しろいずきの/隠居(いんきよ)、/自慢(じまん)心の/雪景(ゆきげ)しき、/夜(よ)もすがら/諸白(もろはく)で 00056830M20もてなし、/三弦(さミせん)を出して雪をヒクカ、小四郎のはら/切(きり)/語(かた)る 00056840¥P179 00056850L1か、/琴(こと)を出して/稲(いな)むしろの/手事(てごと)を/弾(ひか)すがおもしろさに、お 00056860L2もハず/夜明(よあけ)になり、/朝(あさ)げしきも/一入(ひとしほ)と、東しらミに/白書院(しろしよいん) 00056870L3を/明(あけ)て見たら、よつぼど白にこつた/物(もの)じや、/雪(ゆき)もつ/松(まつ)の/下= 00056880L4枝(した=えだ)に、ねぐら/放(はな)れしつがひの/烏(からす)迄が(十二ウ) 00056890¥N12¥J 00056900¥X/松(まつ)の/内(うち) 00056910L7S申、おかゝさん。/今年(ことし)ハ正月が二ツ/有(ある)と人がいひ升が、 00056920L8/初手(しよて)の正月と/後(のち)の正月と、どちらが/大(をう)きうごさり升ととへ 00056930L9バ、S母親さいのふ、まへの正月ハ/大(だい)で、/跡(あと)の正月ハ小じ 00056940L10やないか。そんなら/前(まへ)が大けいと/咄(はな)し/仕(し)てゐると、/乳母(うば)が 00056950L11/聞(きい)てゐて、Sうバ申、お/家(いへ)さん。まへが大きいはづで厶り 00056960L12升。/午(むま)の正月でござり升(十三オ) 00056970¥Y1春興噺万歳四之巻終(十三ウ) 00056980¥Y1/春興(しゆんけう)はなし/万歳(まんざい)五之巻目録 00056990M3一△/相庭(さうば)ゐん/乱(らん) 00057000M4一△/国(くに)から/聞合(きゝあハせ) 00057010M5一△/江戸(えどの)/敵(かたき)/長崎(ながさき) 00057020M6一△/貝(かい)あわせ 00057030M7一△/軒(のき)の/燕(つばめ) 00057040M8一△そふかいナア 00057050M9一△はげしい/風(かぜ)(オ) 00057060M10一△/呼子鳥(よぶこどり) 00057070M11一△/句(く)は/物(もの)かは 00057080M12一△/差手(さすて)/引手(ひくて) 00057090M13一△/巨(こ)たつで/酒盛(さかもり)(ウ) 00057100¥P180 00057110¥T1/春興(しゆんけう)はなし/万歳(まんざい)五之巻 00057120¥A浪花△△桂△文来著 00057130¥N1¥J 00057140¥X/相庭(さうば)ゐん/乱(らん) 00057150L7/親仁(おやぢ)ハ/大(だい)のかたくろしもの、/息子(むすこ)ハ/至(いたつ)て/相庭好(さうばずき)にて、一/家(け) 00057160L8の/異見(ゐけん)ハうハのそらに/聞(きゝ)なし、内の/金子(かね)を/持出(もちだ)し、/堂(だう)じま 00057170L9にてつかひ/無(な)くするによつて、しばらくこら/〆(しめ)のため、/山= 00057180L10寺(やま=てら)の/伯父(おぢ)の方へあづけおかれるニ、/或夕(あるゆふ)(一オ)ぐれ、S住 00057190L11持これ/作(さく)治郎。/太義(たいぎ)ながら/入相(いりあい)の/鐘(かね)をついてたも△S作治 00057200L12郎ハイと/鐘楼(しゆらう)のかたへ/行(ゆき)、/境内(けいだい)の/桜(さくら)、今を/真盛(まつさかり)なるをなが 00057210L13め、S作此/桜(さくら)もこんな山寺ゆへ、しるものもないが、大坂 00057220L14/近(ちか)くにあるなら、おびだゞしい/見物(けんぶつ)じやうあろうのに、/鐘(かね)を 00057230L15つくのもおしい。また/今時(いまじ)ぶん/堂(だう)じまニゐると、とんと/前= 00057240L16水(まへ=ミづ)うち/時(じ)ぶんで、/商(あきな)ひの/手(て)が/合(あふ)ておもしろいことじやと、 00057250L17おもわずも二分五りで(一ウ)/千(せん)じや/万(まん)じやのと、壱人/商(あきな)ひ 00057260L18のていをして/居(ゐ)るに、あまり/入相(いりあい)が/延引(ゑんいん)なるゆへ、/住職(じうじ)/出= 00057270L19来(いで=きたり)、此ていを見る。其まゝニ/鐘楼(しゆろう)に/登(のぼ)り、入相をS鐘音ゴ 00057280L20ントつくと、/桜(さくら)がバラ+と/首(くび)すじへ/這入(はい)ると、おもはず 00057290M1あを/向(むき)て、アヽつめた 00057300¥N2¥J 00057310¥X/国(くに)から/聞合(きゝあわせ) 00057320M4/台所(だいどころ)にて、S茂八何とお/家(へ)さん。/南側(ミなミがハ)の/顔(かほ)見せ/芝居(しばゐ)、/最初(さいしよ) 00057330M5のひる/芸(げい)/妹背山(いもせやま)、/評(へう)ばんハ(二オ)よかつたけれど、少&不 00057340M6入で、/今度(こんど)ハかゞミ山にお/染(そめ)/久松(ひさまつ)、いつとてもきれいナハ 00057350M7半四郎、大坂でも小六と、まい/日(にち)/替(かハ)りの/権(ごん)八、お七。/何(いづ)れ 00057360M8も大/当(あた)り、大入はんじやうしたが、/幸(かう)四郎、/団(だん)蔵、/勇(ゆう)治郎、 00057370M9どれも+よいが、/別(べつ)して半四郎、おそめ久松/早(はや)がハりお 00057380M10はつ、どふもいへぬと/咄(はな)す。そばニ/是(これ)も/大(だい)のS半四郎好茂 00057390M11八さんのいふてやことじやが、イヤまた/誰(た)れがよつても、 00057400M12/当時(たうじ)/杜若(とじやく)ニかなふものハない。この(二ウ)/顔(かほ)見せでも南が 00057410M13ハ/芝居(しばゐ)も、半四郎で丸で/持(もつ)てあるのじや。半四郎でゑろう 00057420M14/這入(はいる)のじや。南がハは半四郎で/持(もつ)てあると、かさにかゝつ 00057430M15ていふを、/此季(このき)/丹波(たんば)から/這出(はいで)のS下女そふ/判代(はんしろ)が/這入(はいつ)て/持(もつ) 00057440M16てあるとハ、南側の/芝居(しばゐ)は/口入(くちいれ)もなさるのか 00057450¥N3¥J 00057460¥X/江戸(えどの)/敵(かたき)/長(なが)さき 00057470M19おべんさん、御/内(うち)ニかへ。Sおべんお/光(かう)さん。サアこちら 00057480M20へおはいり△Sお光おゆるしなされ。きつふ日ながニなり 00057490¥P181 00057500G1花に又ゆかし浪花の国の花 00057510¥G(三ウ・四オ) 00057520M1(三オ)(三ウ・四オ挿絵)ました△Sお弁さやうじやいなア。 00057530M2/一向(いつかう)ねぶとふて+ならぬわへ。それに/男(おとこ)ほど/悪性(あくしやう)なもの 00057540M3ハない。やつぱり二三べんほどづゝおこされるゆへニ、/大(たい) 00057550M4てい/女房(によぼう)もつらひ/役(やく)じやない△Sお光お/弁(べん)さんの、もつた 00057560M5いないこといふてじやわいナア。/私(わた)しらの/処(ところ)のは、/大(だい)のよ 00057570M6わミそじやゆへ、/月(つき)に一ぺんも/覚束(おぼつか)ない。そんな/男(おとこ)もつて 00057580M7ミなされ。おまへさんの処のはなしきくと、大ていうら山 00057590M8しいことじやない(四ウ)わいナア。それにわたし/処(ところ)のは、 00057600M9よいかとおもふてゑらひくわへずきで、/冬(ふゆ)の/歳暮(せいぼ)ニもろふ 00057610M10たくわへ、まだ/砂(すな)ニうずんである。あた/憎(にく)てらしい。もう 00057620M11/喰(く)ふてじやないやうにと/立行(たちてゆき)、/堀出(ほりだ)して、こんなものが/世= 00057630M12界(せ=かい)ニないとよいに、あたはらの/立(たつ)。/何処(どこ)へなりと/捨(すて)てしま 00057640M13いたいと、むしやくしやばらニて、そこへ/打付(うちつけ)ると、Sく 00057650M14わへあをむき、Sおりばかりわるふいふて、おの(五オ)れ 00057660M15は/薬(くすり)かい 00057670¥N4¥J 00057680¥X/貝合(かいあわせ) 00057690M18S亭主おまつ。/隣(とな)りのお/娘(むす)のお/梅(むめ)さん。/気(き)どくなことじ 00057700M19や。/気癆(きらう)じやといノウ。よいお/医者(いしや)さまニかけて上ケたい 00057710M20S女房サアそないにきいたが、/私(わたし)がおもふには、あの/娘(こ)ハ 00057720¥P182 00057730L1ひよつと/愡(ほれ)た/男(おとこ)でも/出来(でき)、おもふやうにならぬゆへニ、あ 00057740L2んな/病(やまひ)がでたのじやあるまいか△S亭主/知(し)れんわい。なん 00057750L3ぼうおと(五ウ)なしふても、もう/時分(じぶん)じやによつて、そん 00057760L4なことで/癆(らう)になつたも/知(し)れんと、いふこときいてゐて、 00057770L5S丁児申、ほれた/男(おとこ)があると、/癆(らう)といふ/病気(びやうき)ハどふしたも 00057780L6ので/出(で)升△S亭主其/男(おとこ)におもふやうにものハいわれず、/逢(あハ) 00057790L7れもせず、/夢(ゆめ)に見たり、しんき+とおもふのが、ついに 00057800L8ハこつて/癆(らう)となる△S丁児さやうなら、/蛤(はまぐり)も/医者(いしや)にかけん 00057810L9なりませぬ△S亭主どふして△S丁児ハイ。この(六オ)あ 00057820L10いだ、/余処(よそ)の/絵(ゑ)に/蛤(はまぐり)が/夢(ゆめ)見て/居(ゐ)るやうなうへに、/龍宮(りうぐう)見た 00057830L11やうな/楼門(らうもん)が/書(かい)てあつて、/私(わたし)が/尋(たづね)たら、むかひの/甚(じん)兵へさ 00057840L12んが、あれは/蛤(はまぐり)のしんきろうじやといふてゞあつた 00057850¥N5¥J 00057860¥X/軒(のき)の/燕(つばめ) 00057870L14/惣領息子(そうりやうむすこ)のいせ/参宮(さんぐう)、/機(き)げんよふたつたあとにて、まづ 00057880L15+目出たいと、/家内(かない)うちより/酒盛(さかもり)。/親仁(おやぢ)も/少(すこ)しほろ/酔(ゑい)き 00057890L16げんにて、(六ウ)S親ヤレ+、/今日(けふ)は/日和(ひより)もよし、/若(わか)い 00057900L17もの/同士(どうし)、/道中(どうちう)もおもしろかろ。ほんにだいじの/鹿(か)しまだ 00057910L18ちじや。ちよつと/氏神(うぢがミ)さまへ参りてこふかいのふ△S女お 00057920L19/参(まい)りなさつて、/道中(どうちう)/達者(たつしや)なやうに/頼(たの)んでおゐでなされと、 00057930M1/扇(あふぎ)、/鼻(はな)がミ/手渡(てわた)しすれバ、S親/羽織(はをり)ひつかけて/氏神(うぢがミ)へ参り、 00057940M2/拍手(かしハで)トン+。/今日(こんにち)/忰(せがれ)が/鹿(か)しま立で厶り升。/何卒(なにとぞ)/道中(どうちう)/無= 00057950M3難(ぶ=なん)に(七オ)/参詣(さんけい)いたし、/水(ミづ)のかわりにあてられぬやう、/手= 00057960M4足(て=あし)もそくさいで/下向(げこう)いたし升やうに、/守(まも)らせ給へ++ 00057970M5+と、くりかへし+/頼(たの)んで、/小宮(こミや)も/残(のこら)ず/拝(はい)して、/鳥居(とりゐ) 00057980M6をずつと/出(で)かけると、むかふに/何(なに)やらワヤ+と/大勢(おほぜい)の/人= 00057990M7声(ひと=ごへ)に、/親仁(をやじ)其/音(おと)きいて、また/宮(ミや)へ/立(たち)もどり、/拍手(かしわで)トン+。 00058000M8どふぞけん/嘩(くわ)もいたしませぬやうに 00058010¥N6¥J 00058020¥Xそふかいナア(七ウ) 00058030M11S芸子勝路お/中(なか)さん、/久(ひさ)しぶりじや。一ツあがれ。とんとし 00058040M12らしておくれんナア△Sお中/勝路(かつぢ)さんの、ヲヽイヤ。/此(この)あ 00058050M13いだから/見(ミ)せにあげても+、河内屋ばつかりへお/出(いで)て、 00058060M14こちらへハめつたニハお出ハなされず。それハそふと、か 00058070M15わ/作(さく)ニハなんぞよいことでもあるかへ△Sかつぢイヽヱイ 00058080M16ナフ。そふじやないけれど、河内やの御/客(きやく)はかわつたこと 00058090M17がお/好(すき)で、まい/晩(ばん)+お/蔵(くら)の/辺(ほう)から/広田(ひろた)さん(八オ)のあた 00058100M18りまで、/虫(むし)の/音(ね)を/聞(きゝ)にお出てナア。/今宮(いまミや)ハ/虫(むし)所なり、/聾(つんぼ)な 00058110M19りじやのといふて、いつでも戻りハ/豆茶(まめちや)や/立(だ)ていナア△Sお 00058120M20中フヽン。そんならかんにんしてあげふ。したがおまへ、 00058130¥P183 00058140L1虫のなくのんおもしろいかへ△Sかつぢしれたこと。/大(たい)て 00058150L2いおもしろいもんじやないわへ△Sお中ヲヽすいがり。な 00058160L3んにもおもしろいことあるまいガナ△Sかつぢお中さん。 00058170L4ちよつと/耳(ミヽ)かし。しんでいふわへとサヽヤキ、(八ウ)/三味(さミ) 00058180L5せん/弾(ひか)ぬのが、うれしいわへ 00058190¥N7¥J 00058200¥Xはげしい/風(かぜ) 00058210L8Sおとくお/民(たミ)さん。わしや、はらが立て+ならんわへ 00058220L9Sおたミおとくさん。わけもいわずニ、なんじやいナア 00058230L10Sおとくマアきいておくれ。あの/男(おとこ)/面(づら)めがよいかとおもふ 00058240L11て、此あいだうちから、おかしいそぶりじやとおもふて居 00058250L12たにナア、夕べきいたら、南のげい/子(こ)といろごとしている 00058260L13(九ウ)といナア。あたいま+しい△Sおたミそふかいナア。 00058270L14そりやおまへ、だまつて/居(ゐら)れまいぞへ△Sおとく/夫(それ)でマア 00058280L15+なにかなしに、/退(の)キ/状(じやう)を/遣(や)つてこまそとおもひ、/今朝(けさ) 00058290L16/書(かい)て/置(おい)たと/咄(はな)しさい中へ、S町飛脚/御用(ごよう)は厶りませんか。 00058300L17これ平助どん、/這入(はいつ)ておくれ。此/状(じやう)、/急(きう)に吉さんのかたへ 00058310L18とゞけておくれ△S平介ハイ、かしこまりましたと/受取(うけとる)と、 00058320L19/何(なに)がはら立まぎれニ、Sおとく(九ウ)これ、/状(ぢやう)ちんも、あ 00058330L20つちで取ておくれ 00058340¥N8¥J 00058350¥X/呼子鳥(よぶこどり) 00058360M3/或深山路(あるミやまぢ)を/只(たゞ)/壱人(ひとり)わけ/登(のぼ)るに、しきりニ/咽(のんど)がかわき、/元(もと)£ 00058370M4/水(ミづ)ハなし、/人家(にんか)も/跡(あと)さきニとんと見へず。/甚(はなハ)だ/難義(なんぎ)して/居(ゐ) 00058380M5て、むかふを見れバ、/白髪(しらが)の/老女(らうぢよ)の/杖(つへ)にすがりて/行(ゆく)を見/付(つけ) 00058390M6て、/是(これ)ハ/定(さだ)めて/此辺(このへん)の人なるべし。水のある/処(ところ)を/問(とハ)んと、 00058400M7やう+/追付(おひつき)、S咽かわく人(十オ)申+、ちつと/物(もの)/御尋(おたづね)申 00058410M8升といへバ、かの/老女(らうぢよ)、/跡(あと)をふりかへる。かほを見たら、 00058420M9/口(くち)に/水(ミづ)がたまつた 00058430¥N9¥J 00058440¥X/月(つき)ハ/物(もの)かは 00058450M12S妾宅ノ下女申、お/知恵(ちへ)さん。此間はとんと/旦那(だんな)さんのお出 00058460M13が厶りませんナア。/其(その)かわり、/茂(も)八さんがちよこ+お/出(いで) 00058470M14て、おまへさん、/嬉(うれ)しふ厶り升ナ△Sおちへとよとしたこ 00058480M15とが、何を/言(い)やるやら。/日(ひ)(十ウ)/影者(かげもの)に一/生(しやう)なるものじや 00058490M16ない。人ニハ、てかけ+とたくさんさうにいわれ、あん 00058500M17な/旦那(だんな)さんでも、いやな/顔(かほ)は/出(で)きず、/折&(おり+)におもふ人が/来(きて) 00058510M18であつても、/旦那(だんな)さんが御/出(いで)かとひや+として、それハ 00058520M19/大(たい)てい/気苦労(きぐらう)なことしやない。とつくりと/咄(はな)しもできず 00058530M20Sとよそれはあなた、/知(しれ)たこと。おもふことかなわねバこ 00058540¥P184 00058550¥G(十二ウ・十三オ) 00058560G1春の月これにつけても秋の月 00058570M1そ/浮世(うきよ)とは、よくあきらめし/無利(むり)なことと、/起証(きしやう)といふ 00058580M2(十一オ)めりやすニも、いふてあるやうなもの。其うちニ 00058590M3ハ、かの人と/天下(てんか)はれて/一所(いつしよ)ニなりなさるわいナア△Sお 00058600M4ちへサア其/茂八(もはち)さんも、/夕(ゆふ)べもちよつとお/出(いで)たけれど、な 00058610M5んじや/用(よう)があるといふて、/直(すぐ)に/去(いん)んでじやあつた。しんき 00058620M6で+ならぬわへ。どふぞ/今(いま)ニも/来(きて)であつたら、/咄(はな)したい 00058630M7こともたんとあるニよつて、あないに/去(いに)たがつてじやない 00058640M8やふに/仕(し)たいもんしやノウ△Sとよそれニハよいことが 00058650M9(十一ウ)ござり升。/今夜(こんや)でもお/出(いで)なされたら、あのお/方(かた)の 00058660M10/知(し)つてじやないやうに、/草履(ざうり)の/表(おもて)へ/灸(やいと)/居(す)へ升 00058670¥N10¥J 00058680¥X/差手(さすて)/引手(ひくて) 00058690M13/言(いひ)かわした/間夫(まぶ)のある/妓婦(おやま)、/親方(おやかた)の内ニてうたゝ/寐(ね)の/夢心(ゆめこゝろ) 00058700M14ニ、いつも/間夫(まぶ)ニ/出逢(であ)ふ/茶(ちや)やの/二階(にかい)ニて、S遊女これ八さ 00058710M15ん。きこゑんじやないカイナア。/此(この)あいだから/何(なん)べん/文(ふミ)/上(あげ) 00058720M16(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)ても、ちよつともへんじもせず、 00058730M17/来(き)てもくれず、あんまりじやないかいナア。/何処(どこぞ)にまた、 00058740M18よい事が/出来(でき)たのじやあろう。せいだしてそないに/仕(し)い。 00058750M19これからどふするぞ、よふ/覚(おぼ)へていゝや△S間夫よふそん 00058760M20なことがいへるナア。此あいだから/呼出(よびだ)しても+、/仕切(しきり) 00058770¥P185 00058780L1ニいたの、あげさきへ/往(いて)ゐるのと、ちよつとでも/私(わし)くさい 00058790L2かざがすると/来(こ)ずに/置(おい)て、そんないやミ、おいておくれ。 00058800L3(十三ウ)/宇三子(うさこ)と/何(なん)たら/角(か)たらといふわけもきいてゐる 00058810L4S遊女ヲヽイヤ。/宇三(うさ)さんじやてゝお/客(きやく)じやもの、どふで 00058820L5/呼出(よびだ)してじやと/出(で)んならんわへ。またおまへのことハ、/誰(たれ) 00058830L6にもかくしてある。/内(うち)へでも/知(し)れたら、/大(たい)ていやかましい 00058840L7ことじやない。それにそんなことばかり、大かたいやニな 00058850L8つたのじやあろう△S間夫なんぞいふてか、そんなことそ 00058860L9ふかいナアトいふやうな/男(おとこ)じやと(十四オ)おもハれるのが 00058870L10いま+しい。あたけつたいのわるい△S遊女よいかとお 00058880L11もふてそんな事。また/私(わし)が/宇三(うさ)さんとどふぞじやあつたら、 00058890L12どふしてじや△S間夫ヲヽかふすると、/胸(むな)ぐら/取(とつ)て/顔(かほ)二ツ 00058900L13三ツ/叩(たゝ)くと、S遊女アヽいたゝ+。どふなと/仕(し)い。/殺(ころ)し 00058910L14++と、おもわずもおそわれると、そばニゐるS/小女= 00058920L15郎(こめ=ろ)、コレミや+さんとゆり/起(おこ)すと、Sミヤフヽン△S小 00058930L16女郎コレイナア、ミやさんといわれて/目(め)を(十四ウ)あいて 00058940L17見て、Sミヤ/跡(あと)じや。/去(いな)して 00058950¥N11¥J 00058960¥X/巨(こ)たつの/酒盛(さかも)り 00058970L20/芝居好(しばいずき)三四人/打(うち)より、中にも、S芝翫好/今度(こんど)の中、見いた 00058980M1か、どふじや。/芝翫(しくわん)といふものは、なんとゑらひものでは 00058990M2ないか。此マア/極月(ごくげつ)ニなつてあるに、大入はんじやう/仕(す)る 00059000M3とハ△S鰕好ゑらひものじやが、/何(なん)にも/芝翫(しくわん)ばかりで入る 00059010M4のじやないナア。けりよう/鰕(ゑび)十郎があるゆへ(十五オ)じや。 00059020M5マア三十石で平太よし、/知恵内(ちゑない)のきれいサ。/獄門(ごくもんの)庄兵衛/役(やく)。 00059030M6/何(いづ)れも/恐(おそ)れ入た物じや△S芝翫ずきそんなこといふてじや 00059040M7けれど、マア/顔(かほ)見世/芸(げい)/退(のけ)て/鬼(き)一/出(だ)し、三十石やめて/出入(でいりの)/湊(ミなと) 00059050M8/付(つけ)ても、一日もやすミなしにするといふが、芝翫が/無(なふ)ては、 00059060M9あんなことハ/出来(でき)ん△S片岡好おまへがたがそふいふてじ 00059070M10やけれど、あれが/片岡(かたをか)と/言(いふ)もんがあるによつて、あのやう 00059080M11ニ/狂(きやう)げん/何(なに)を/出(だ)しても(十五ウ)/工合(ぐあひ)よふ/当(あた)るのじや△S鰕 00059090M12好さやうじや。/芝居(しバゐ)といふものハ、たいが見る物じやニよ 00059100M13つて、ずつと出た処が大がらな/我童(がどう)じやの、よい/男(おとこ)の/鰕(ゑび)十 00059110M14郎といふやうな/者(もの)が無いと、なんぼほど/芝翫(しくわん)が/上手(じやうず)でも、 00059120M15入りがすくない△S芝翫好そないに/利口(りこう)らしいいふてじや 00059130M16おまへがたハ、/見物(けんぶつ)に/往(い)て/何(なに)を見て/来(く)るのじや。/眼(め)ハない 00059140M17かいナア△S@我童|ゑび@好/眼(め)が/無(な)いかとハ△S芝翫好サア/芝翫(しくわん)の 00059150M18やうナ(十六オ)不/男(おとこ)で/小兵(こひやう)でも、/出入(でいりの)/湊(ミなと)の新町/橋(ばし)の/場(ば)へず 00059160M19つと/出(で)ると、/片岡(かたをか)や/鰕(ゑび)のやうな大けな/能(よい)男をぐつと/呑(のん)で/狂= 00059170M20言(きやう=げん)するがな。/何(なん)じやあろうと一/座(ざ)/皆(ミな)、/芝翫(しくわん)ニ/喰(くハ)れて/居(ゐ)るが 00059180¥P186 00059190L1ナア。あんなことを見ておいでんかいナアト、口から出し 00059200L2だいほめて/居(ゐ)ると、そばから、S年寄/夫(それ)ハ芝翫が/呑(のん)だり/喰(く) 00059210L3たりするはづじや。/役(やく)が五郎八じや 00059220¥Y1巻之五終(十六ウ) 00059230¥Q 00059240L7桂文来作 00059250L8/御伽(おとぎ)/一寸噺(ちよつとはなし)△小本△全二冊△浪華△△桂△文来作 00059260L9△△△△△△△近△刻△同△△△△三木探月画 00059270L11此はなし本は女中殿がた子△文政五壬午年 00059280L12供衆までもわかりやすふ、 00059290L13おもしろ新咄のかず+△△△△△春△新△板 00059300L14をかきあらわし、絵入にな△△京都書林 00059310L15し、時おりふしの御とぎ草△△△△鉛屋安兵衛 00059320L16紙とせり△△△△△△△△△△大阪書林 00059330L17△△△△△△△△△△△△△△△△吉文字屋荘助 00059340¥G 00059350¥P187 00059360¥U噺本大系△第十五巻 00059370¥T/小倉百首類題話(おぐらひやくしゆるいだいばなし)〔序題〕 00059380¥G 00059390¥Y 00059400L16文政六年五月刊 00059410L17独酔序 00059420L18暁鐘成作・画 00059430L19浪華△河内屋平七板 00059440L20大本三巻三冊 00059450¥Y/小倉百首類題話(おぐらひやくしゆるいだいばなし)/序(じよ) 00059460M3/夫(それ)、/笑話(はなし)にふたつのけじめあり。/■肥(ひゝ)/淫陋(ゐんろう)/聴(きく)にたへざるは、 00059470M4/猶(なを)/懸鶉(けんじゆん)/繿縷(らんろう)なり。談詩説歌、滑稽可歓は、/猶(なを)/錦繍(きんしう)/羅= 00059480M5綾(ら=りやう)/也(なり)。/今(いま)/此小話(このしやうハ)、/咸(こと※)く/寸錦(すんきん)/尺繍(しやくしう)なり。しかも/謙(けん)して/色紙(しきし)の 00059490M6/話(はなし)あり。されバ、/秋(あき)の/夜(よ)の/寐覚(ねざめ)には/夢(ゆめ)のやれめをつゞり、 00059500M7/春(はる)の/日(ひ)のつれ※にはあくびの/口(くち)をふさぐ。これ、/強(あながち)に/御= 00059510M8国(ミ=くに)ぶりのなゑばみたる/言葉(ことば)をもからず、(上ノ一ウ)/亦(また)から/学(まなび) 00059520M9の/異国(ゐこく)ばりたる/話(はなし)にもあらず。/只(たゞ)/人(ひと)の/心(こゝろ)の/染(しミ)をおとし、/年= 00059530M10寄(とし=より)のしわをのばす。/亦(また)/能(よく)/美人(びじん)の/唇(くちびる)を/綻(ほころば)し、/老爺(をやぢ)の/顔(かんばせ)を 00059540M11/破(やぶ)る/頤(おとがい)をときては、/命(いのち)をも/洗(あらひ)はり、/腹(はら)すじをよぢらしては、 00059550M12/笑袋(わらひぶくろ)の/底(そこ)をも/縫(ぬふ)べし。/予(よ)応需、/其緒(そのいとぐち)を/解(とく)。/必(かならず)/出洗(せんだく) 00059560M13/覆盆的(ばなし)とおもふべからず。/只(たゞ)/暁氏(あかつきうじ)の/口(くち)に/糊(のり)かう/業(わざ)/成(なる)べし 00059570M15△△△△政壬之夏△△△△△△応需 00059580M16△△△△△△△△△△△△△△△独酔戯題G 00059590M19△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(二オ) 00059600¥P188 00059610¥G(二ウ・三オ) 00059620¥T1 00059630¥N1¥J 00059640¥X/小倉山(をぐらやま)の/説話(はなし) 00059650M3/嘗(かつ)てきく、/百首(ひやくしゆ)の/歌(うた)は、/京極(きやうごく)/中納言(ちうなごん)/定家卿(さだいへけう)の/撰(えら)ミ給ひしと 00059660M4なん。されども、/黄門(くハうもん)/御在世(ございせ)には、/人(ひと)しらざりしを、/御= 00059670M5子(おん=こ)/為家卿(ためいへけう)の/世(よ)に/出(いだ)させ玉ひしより、/人(ひと)あまねく/知(し)る/事(こと)には 00059680M6なれりとぞ。/又(また)/小倉山(をぐらやま)ハ/洛西(らくさい)/嵯峨(さが)にあり。今の/往生院(わうぜういん)/二尊= 00059690M7院(じそん=ゐん)の/辺(ほと)りの山の/惣名(そうめい)なり。/此中納言(このちうなごん)の/山荘(さんしやう)の/旧跡(きうせき)は/小倉(をぐら)の 00059700M8/常寂寺(じやうじやくじ)の/内(うち)にありなど、/老人(らうじん)、/説話(ものがたり)をなすかたわらに、 00059710M9おろかしき/男(おのこ)、/一両輩(いちりやうはい)ありて、/問(とふ)ていわく、その/小倉(をぐら)の 00059720M10/山荘(さんしやう)と/仰(おふせ)られしは、いかなるものにや。/老人(らうじん)/答(こた)へて、/三体= 00059730M11詩(さんたい=しの)/註(ちうに)/曰(いハく)、荘猶村。唐人(二ウ)呼別業、為荘とあ 00059740M12つて、/山里(やまざと)に/別業(べつげう)をするを/山荘(さんしやう)と申ます。◇男◇ヘヱヽ、さよ 00059750M13ふなれバ、その/亦(また)/小倉(をぐら)と申ますは、/山荘(さんしやう)のあつた/所(ところ)でござ 00059760M14りますかな△◇老人◇さよふ+△◇男◇/先生(せんせい)。それハ/小倉(をぐら)と/仰(おゝせ)ら 00059770M15れますが、ちと/間違(まちが)ふてはござりませぬか△◇老人◇それハ又 00059780M16なぜでござると、ちとむつとした/皃(かほ)して/尋(たづ)ぬるに、こなた 00059790M17の/男(おのこ)ハ/平気(へいき)な/皃(かほ)て、◇男◇されバでござります。/山荘(さんしやう)なれバ/小= 00059800M18倉(を=ぐら)ではない。/朝倉(あさくら)で/有(あり)そふなものじやといへるを、又かた 00059810M19わらの/男(おのこ)が/聞(きい)て、これハまた、からひ/説話(はなし)を/仰(おゝせ)らるゝ。 00059820M20(三オ)むかし+/祖父(ぢい)と/祖母(ばゝ)とがあつたげなと。/祖父(ぢい)がた 00059830¥P189 00059840¥G(三ウ) 00059850L12つきの/柴(しば)ならで、かりそめの/咄(はな)しにも/言(いひ)もてはやし、/稚子(おさなご) 00059860L13もよく/聞(きゝ)およびし/古(ふる)きはなしを/暁(あかつき)が、/祖母(ばゝ)のまねして/洗濯(せんだく) 00059870L14なし、よなべ/仕業(しごと)につゞりたる/拙(つたな)き/手(て)ぎハいときたなく、 00059880L15/針(はり)のみゝずに/引(ひき)かへて、/棒(ぼう)ほどな/穴(あな)だらけであらふといへ 00059890L16ば、/編者(へんしや)、ぬからぬ/皃(かほ)をして、サア/其(その)あなをふさがふとお 00059900L17もふて、/小倉(をぐら)の/色帋(しきし)をあてゝおいた(三ウ) 00059910¥N2¥J 00059920¥X◇/天智天皇(てんちてんわう)△△@/秋(あき)の/田(た)のかりほの/庵(いほ)の/笘(とま)をあらミ|わが/衣手(ころもで)ハつゆにぬれつゝ△△△@◇ 00059930M3/常盤(ときハ)なる/松(まつ)の/緑(みど)りも/春(はる)くれバ、/今(いま)/一(ひと)しほに/色(いろ)まさり、/百千= 00059940M5鳥(もゝち=どり)の/朝気(あさけ)の/空(そら)に/遊(あそ)び、さへづる/声(こへ)もはなやかに、/長閑(のどか)なる 00059950M6/日影(ひかげ)ハ/去年(こぞ)にも/似(に)ず、/野花(やくわ)/啼鳥(ていてう)/一般春(いつはんのはる)といへる/詩(からうた)もおもひ 00059960M7/出(いで)られ、/只(たゞ)/何(なに)となく心うき/立(たつ)/比(ころ)しも、/浪花(なには)に/名高(なだか)き/富家(ふか)の 00059970M8/女児(むすめご)、こしもとあまた/打(うち)つどへ、/暮(くれ)やらぬ/春(はる)の/日(ひ)の/慰(なぐさミ)にと 00059980M9て、/続松(ついまつ)とりてたのしミ居けるに、/此比(このごろ)/田舎(いなか)より/来(きた)りし/新= 00059990M10参(しん=ざん)のはした、/次(つぎ)の/間(ま)£/出来(いできた)りて、下女Sヲヽ、いとさんの 00060000M11よいお/慰(なぐさミ)が/出来(でき)ますな△こしもとSヲヽおりんどん。よふお 00060010M12いでた。/一人(ひとり)でも/多(おほ)ひがよい。おまへも/爰(こゝ)へすハつてより 00060020M13なされ△下女Sだいじない(四オ)(四ウ・五オ挿絵)かへ。それ 00060030M14はいつそ/嬉(うれ)しいハへ。したが/何(なん)じやいな。わたしや、/諺(たとへ)が 00060040M15るたかと/思(おも)ふたりや、/哥(うた)がるたかいな。モシいとさん。/是(これ) 00060050M16よりやつと、/諺(たとへ)がるたが/面白(おもしろ)ふござりますぞへ。マア/論語(ろんご) 00060060M17やミの/論語(ろんご)しらず、/紙(かミ)に/鉄炮(てつぽう)、/寺(てら)から/砂糖屋(さとうや)へなどゝいふ 00060070M18て、/大(たい)てい/面白(おもしろ)いものじやごさりませぬ△こしもとSホヽヽ 00060080M19ヽ、おりんどんとした/事(こと)が。アノマア/間違(まちが)ひばつかりいふ 00060090M20て下女S何じやへ△こしもとS/寺(てら)から/里(さと)へ、/闇(やミ)にてつぽう、 00060100¥P190 00060110¥G(四ウ・五オ) 00060120M1/論語読(ろんごよミ)の/論語(ろんご)しらずでこそあれ、らつちもない/事(こと)いひ/出(だ)し 00060130M2て、/続松(ついまつ)をあへさがしたわいなアトいひつゝ、まただん 00060140M3+に/上(かミ)の/句(く)にあハせて/下(しも)の/句(く)のがるたをとるうち、下女 00060150M4Sもし、いと様。あなたが/今(いま)おとりなさつたかるたは、/田= 00060160M5地天皇(でん=ぢてんのう)でござりますかへ△娘Sホヽヽ、あの/人(ひと)とした/事(こと)が。 00060170M6またかた/言(こと)をいやる/程(ほど)にの、/是(これ)ハ/天智天皇(てんぢてんのう)じやわいのふ 00060180M7下女Sイヱ+、それハあなたの/覚(おぼ)へ/違(ちが)ひ。/田地天皇(でんぢてんのう)でご 00060190M8ざります△娘Sアノ/片意地(かたゐぢ)な事わいなア。申、おかゝ様。 00060200M9/是(これ)は/天智天皇(てんぢてんのう)でござり(五ウ)ますなア△母Sそふはかいの 00060210M10ふ。いかに/田舎(いなか)そだちじやとて、おりんとした/事(こと)が△下女 00060220M11Sおいゑ/様(さん)。/其(その)よふに/田舎(いなか)+とおつしやるな。/京(きやう)に/田舎(いなか) 00060230M12あり/田舎(いなか)に/京(きやう)あり、と申ます/諺(たとへ)もござります。わたしが/在= 00060240M13所(ざい=しよ)の/村長(しやうや)どのに/聞(きゝ)ましたが、あれハ/田地天皇(でんちてんのう)といふて、/百= 00060250M14性(ひやく=しやう)のよんだ/哥(うた)じやと申されました。/其証拠(そのしやうこ)は、/秋(あき)の/田(た)の 00060260M15かりほの/庵(いほ)の/笘(とま)をあらミ△/我衣(わがころも)でハ/露(つゆ)にぬれつゝと/詠(よん)でご 00060270M16ざります。とんと/其通(そのとふ)りで、/百性(ひやくしやう)の/身(ミ)ほど、つらひものは 00060280M17ござりませぬ。/秋(あき)の/田(た)をかります/時分(じぶん)のせわしなさ、/袖(そで)も 00060290M18/袂(たもと)も/露(つゆ)にぬれての/野辺(のべ)しごと。/其(その)つらさを/詠(よん)だものじやと 00060300M19申されました△母S/成程(なるほど)、/哥(うた)の/心(こゝろ)はわがミの/言(い)やる/様(やう)なも 00060310M20のなれど、其お/哥(うた)をおよミあそバしたは、/舒明天皇(ぢよめいてんのう)さまの 00060320¥P191 00060330L1/皇子(わうじ)、/人皇(にんわう)/卅九代(さんじうくだい)/天智天皇(てんちてんわう)さまといふて、/江州(ごうしう)の/志賀(しが)の 00060340L2/都(ミやこ)におゐで/遊(あそ)バした/帝(ミかど)さまじやわいのふ。/哥(うた)の心は、/百= 00060350L3性(ひやく=しやう)が/田(た)を/守(もる)ため、/仮(かり)そめに/作(つく)りし(六オ)/庵(いほ)の/秋(あき)のすへにな 00060360L4りゆくにつけて、/笘(とま)もまバらに/荒(あれ)はてゝ、/露(つゆ)をふせぐにた 00060370L5よりなく、/袖(そで)やたもとも/露(つゆ)にぬれての/憂業(うきわざ)を、/不便(ふびん)なこと 00060380L6と/帝(ミかど)さまがおもひやりあそバしての/御製(ぎよせい)。/宋(そう)の/仁宗皇帝(じんそうくハうてい) 00060390L7は/一衣(いちゑ)を/用(もち)ゆる/毎(ごと)に、/紡績(はうせき)の/煩(わづら)ひをおもひ、/一食(いつしよく)をもちゆ 00060400L8る/毎(ごと)に、/稼稷(かしよく)の/功(こう)を/案(あん)ずるとのたまひしと/似(に)かよふた、あ 00060410L9りがたひおうたじやわいのふ△下女Sそふでござりました 00060420L10かいなア。わたしは/村長(しやうや)どのゝいわしやつたを、ほんまじ 00060430L11やとおもふて、/田地天皇(でんぢてんのう)といふ/百(ひやく)しやうにしておりました 00060440L12こしもとSおりんどんもめつそふな。/雲井(くもゐ)にこざる/天皇(てんわう)さま 00060450L13と、/土(つち)にまみれた/百性(ひやくしやう)と、とりちがへるにもほどがあると、 00060460L14こしもとども大ひにわらふを、お/家(いへ)は/気(き)のどくそふな/皃(かほ)し 00060470L15て、母Sこれがたとへの/天地(てんち)の/間(ま)ちがひじや(六ウ) 00060480¥N3¥J 00060490¥X◇/持統天皇(ぢとうてんわう)△△@/春(はる)/過(すぎ)て/夏(なつ)きにけらし/白妙(しろたへ)の|/衣(ころも)ほすてふあまのかぐやま@◇ 00060500L19/春(はる)の/暮(くれ)つかた、/心(こゝろ)のあいし/友輩(ともどち)/医師(くすし)/雪景(せつけい)、/狂哥師(けうかし)/月成(つきなり)、/花= 00060510L20屋(はな=や)/咲兵衛(さくびやうへ)の/三個(さんにん)、/都(ミやこ)にのほりて/散(ちり)のこりし/花(はな)など見めぐ 00060520M1らんと/談(だん)じつゝ、やがて/夜舟(よふね)にのりて/直(たゞち)に/京師(ミやこ)にいたり、 00060530M2/此所(こゝ)/彼所(かしこ)とうかれゆきて、/長(なが)+しき/日(ひ)もあかね/色(いろ)なる 00060540M3/上戸(しやうこ)づれ、/皃(かほ)は/照(てり)そふ/百敷(もゝしぎ)や/大宮人(おほミやびと)にあらぬ/身(ミ)の、/酒(さけ)の 00060550M4かざして/今日(けふ)もくらしつ。十日あまりも/滞留(たうりう)せしが、いつ 00060560M5しか/花(はな)も/散(ちり)はてゝ、/青葉(あをば)になり/行(ゆく)に心つき、それより/大和= 00060570M6路(やまと=ぢ)へまハりて/浪華(なには)にかへらんと/相談(さうだん)なしつ、/身(ミ)がるに/出(いで)た 00060580M7つあし/曳(びき)の/大和(やまと)の/国(くに)に/立(たち)こへ、/名所(めいしよ)/旧跡(きうせき)を/尋(たづ)ねめぐり、/往(ゆく) 00060590M8+/十市郡(といちごふり)に出たり。(七オ)/月成(つきなり)は/流石(さすが)に/雅客(がじん)のことなれ 00060600M9バ、ふと心つきて/両人(りやうにん)にむかひ、月Sなんと/両公(りやうこう)。きけバ 00060610M10/爰(こゝ)ハ/十市郡(といちごふり)といふ/事(こと)じやが、/聞(きゝ)およんだ/天(あま)の/香具山(かぐやま)をたづ 00060620M11ねて見よふじやあるまいか△雪Sこれはよふ/気(き)がついた。 00060630M12/百人一首(ひやくにんいつしゆ)の/哥(うた)にあるゆへ、/子供(こども)までがしつて居る/名所(めいしよ)じ 00060640M13や。それを見ずんバあるべからず△花Sそふとも+。さ 00060650M14いわひ/向(むか)ふから/百性(ひやくしやう)が/来(き)た。/尋(たづ)ねて/見(ミ)よふ。もし+、ち 00060660M15よつと、ものがお/尋(たづ)ね申たい△百性Sなんでごんす△花 00060670M16Sこの/辺(あたり)に/天(あま)の/香具山(かぐやま)といふ/名所(めいしよ)がござりますか△百Sあ 00060680M17るとも+。それハ/此十市郡(このといちごふり)で/一番(いちばん)の/名所(めいしよ)じや。/此道(このミち)を壱 00060690M18丁あまり/南(ミなミ)へゆきなんすと、/左(ひだり)へゆく/道(ミち)がある。/其所(そこ)を四 00060700M19五丁いかんすと、/天(あま)の/香具(かぐ)山の/麓(ふもと)へ/出(で)やんす△花Sこれは 00060710M20ありがたい。ごめんどふといひつゝ、やがて/百性(ひやくしやう)のおしへ 00060720¥P192 00060730¥G(八ウ・九オ) 00060740M1し/道(ミち)をたどり+て、ほどなく/香具(かぐ)山の/麓(ふもと)に/出(いで)たり。月 00060750M2Sヤア/来(き)たぞ+。これが/両公(りやうこう)、/香具(かぐ)山であらふといひ 00060760M3(七ウ)つゝ、来かゝる/百性(ひやくしやう)にたづぬるに、はたして/是(これ)、 00060770M4/天(あま)の/香具山(かぐやま)なりしかバ、ミな+/気色(けしき)を/詠(なが)めやるに、/此方(こなた) 00060780M5に/立派(りつぱ)なる/門(もん)がまへの/家(いゑ)ありて、/前(まへ)なる/物(もの)ほしに/竹棹(たけざほ)をか 00060790M6けわたし、/白(しろ)き/着物(きもの)/一(ひとつ)ツほしたるを、/月成(つきなり)、/早(はや)くも見てと 00060800M7りて、こりや/妙(ミやう)じや。かんしん、/市人(いちびと)のまたをくゞつて、 00060810M8/睾丸(きんだま)で/頭(□しら)をうつと/来(き)ているぞ△雪S何をいふのじやぞいの 00060820M9ふ△月Sイヤ、なんのかのといふやうなことじやない。ア 00060830M10レ、あの/物(もの)ほしを見やんせ△雪Sどれ+、なんじや。/白(しろ) 00060840M11い/着物(きもの)がほしてあるの△月Sサアそこじや。よふものを思 00060850M12ふて見やしやれ。/内(うち)を/出(で)たのは/三月(さんぐハつ)の/末(すへ)つかた△花Sそれ 00060860M13+△月S京でとふ※/春(はる)をくらしたは。それから/此大和= 00060870M14路(このやまと=ぢ)へまハつて、内へいのふといふ/相談(そうだん)じや△雪Sそれがど 00060880M15ふした△月S百人一首の/哥(うた)に、/春(はる)/過(すぎ)て/夏(なつ)/来(き)にけらし/白妙(しろたへ)の 00060890M16/衣(ころも)ほすてふ/天(あま)の/香具山(かぐやま)。それ見やんせ。/春(はる)/過(すぎ)て/夏(なつ)になつて 00060900M17/爰(こゝ)へ/来(き)た(八オ)(八ウ・九オ挿絵)/所(ところ)が/哥(うた)の/通(とふ)りじや。/白妙(しろたへ)の/衣(ころも) 00060910M18かほしてあるは、なんと/奇妙(きミやう)じやないか△雪Sいかさま/奇= 00060920M19妙(き=ミやう)じや。なるほど/帝(みかど)の/御製(ぎよせい)といふものは/格別(かくべつ)じや。/下&(げゝ)の 00060930M20われ+が/詠(よん)だ/哥(うた)や/発句(ほつく)は、/其時&(そのとき※)の/流行(りうかう)にしたがふて、 00060940¥P193 00060950L1あやかして/置(おく)ものじやによつて、/今日(けふ)の/事(こと)は/翌日(あす)のまにあ 00060960L2わぬ。/帝(ミかど)の/御製(ぎよせい)はめつそふなものじや。/藤原(ふじハら)の/都(ミやこ)の/時分(じぶん)によ 00060970L3ませられた/御哥(おうた)が、/末世(まつせ)の/今(いま)に/至(いた)つて/違(ちが)ハぬといふものが 00060980L4/感心(かんしん)じや△花Sなるほど、いわれを/聞(きけ)バありがたい。しかし、 00060990L5どこぞで/一(いつ)ふくのむとハどふじやあろ△両人Sよかろ+ 00061000L6と、/爰(こゝ)を/過(すぎ)て/一丁(いつてう)ばかり/行(ゆく)に、今を/盛(さか)りの/藤(ふじ)の/棚(たな)の/下(もと)に、 00061010L7/床(とこ)二三きやくならべたる/茶店(ちやミせ)あり。三人は/爰(こゝ)に/休(やす)らふに、 00061020L8十五六の/女児(むすめ)、/茶(ちや)を/汲出(くミいで)て、むすめSハイ、お/茶(ちや)あげませ 00061030L9ふ△月Sアイ+△雪Sあねさん、/日(ひ)ハ/永(なが)ふなつたのふ 00061040L10むすめSさよふでござります△花Sしかし/夜(よ)が/短(ミぢか)ふて、ぬ 00061050L11しにあふのにかつ/手(て)が/悪(わる)からふ(九ウ)むすめSホヽヽ、/旦= 00061060L12那(だん=な)さん/方(がた)の/何(なに)おつしやるやら。ヲヽおかし△月S/咲(さく)しう。 00061070L13ちとうだつくのを/止(やめ)んかいの。これ/姉(あね)様。アノ今見て/来(き)た 00061080L14が、あの/香具山(かぐやま)といふ山は/奇妙(きミやう)な/高(たか)い/山(やま)じやのふ△むすめ 00061090L15Sさよふでござります。むかしはまだ+/高(たか)い山でごさり 00061100L16ましたそふで、/空(そら)のにほひが/来(き)ましたよつて、/天(あ□)の/香具山(かぐやま) 00061110L17と申ますそふにござります△月Sなるほど、そふいふ/事(こと)も 00061120L18/聞(きゝ)およんでいます。したが、あの/麓(ふもと)に/門(もん)がまへの/立派(りつぱ)にし 00061130L19て、/前(まへ)な/物干(ものほし)にしろい/着物(きもの)がほして/有(あつ)たが、あれハ/地(ところ)の/村= 00061140L20長(しやう=や)どのか。たゞし/又(また)/春(はる)/過(すぎ)て/夏季(なつき)になると、/白(しろ)い/着物(きもの)を/干(ほす)の 00061150M1が/格式(かくしき)で、/其役人(そのやくにん)といふやうなことかな△むすめSイヽヱ、 00061160M2あれハトいひかけて、/名(な)を/忘(わす)れし/面色(おもゝち)しつゝ、Sヱヽあれ 00061170M3は/何(なん)とやらいひます。/何(なん)でも、/天(あま)の/香具(かぐ)山の/哥(うた)をおよみなさ 00061180M4つた/天皇(てんわう)さまとおなじ/名(な)でござります△月Sフン、そんな 00061190M5らやつはり/天皇(てんわう)さまの/御子孫(ごしそん)であらふ△むすめSイヱ+、 00061200M6/天領(てんれう)の/御支配(ごしはい)で、ヲヽそれ+、/地頭(ぢとう)様と申ます(十オ) 00061210¥N4¥J 00061220¥X◇/柿本人麿(かきのもとのひとまる)△△@あしびきの/山(やま)どりの/尾(を)のしたり/尾(を)の|なが+し/夜(よ)をひとりかもねん△△@◇ 00061230M10/近世(ちかごろ)/異国(いこく)より、カナリヤといへる/小鳥(ことり)/渡(わた)り、/此頃(このごろ)/流行(りうこう)なす 00061240M11こと/夥(おびたゞ)し。はじめてわたりし/比(ころ)は、/諸人(しよにん)やしなひかふこと 00061250M12をしらずして、/卵子(たまご)をなせどもかへりがたく、/空(むな)しく/年月(としつき) 00061260M13を/送(おく)りしが、いつしか/育(そだつ)ることを/考(かんが)へ出し、おひ+に雛 00061270M14の/鳥(とり)/出来(いでき)て、あまつさへ/毛色(けいろ)まで/異様(ことやう)なるもの/出来(いできた)り、こ 00061280M15れをもてあそぶこと/甚(はなはだ)し。/爰(こゝ)に、/浪花(なには)の/傍辺(かたほとり)に/独居(ひとりずミ)なす与 00061290M16次郎兵衛、かのカナリヤを/愛(あい)し/育(そだ)てけるが、/隣(とな)れる/家(いへ)ハ 00061300M17/老人(らうじん)の/隠居(いんきよ)なるが、これもひとしくカナリヤを/飼(かふ)てたのし 00061310M18ミける。与次郎兵衛、ある/日(ひ)/隣(とな)れる/家(いへ)に(十ウ)いたり、与 00061320M19S/御隠居(ごいんきよ)。どふくらしてござらしやる。/此方(こなた)のカナリヤは 00061330M20/巣入(すいり)していますか△老人Sアイ。/昨日(きのふ)から/卵(たま)をだかへてい 00061340¥P194 00061350¥G(十ウ・十一オ) 00061360M1ます。お/前(まへ)の/所(ところ)のはどふじや△与Sハイ。こちのやつも、 00061370M2三四日/後(あと)から/巣入(すいり)してゐます△老S今はどこも/巣入(すいり)の/旬(しゆん)と 00061380M3見へる。そして/繁縷(はこべ)がいるなら、/遠慮(ゑんりよ)のふもつていんで/喰(くわ) 00061390M4しなんせ△与Sそれハ/有(あり)がたふござります。/此間(このあいだ)から/繁縷(はこべ) 00061400M5をきらして/難義(なんぎ)しております。/扨(さて)/埓(らち)もないはなしじやが、 00061410M6カナリヤといふものは(十一オ)けしからん/番(つがひ)の/中(なか)のよい/鳥(とり) 00061420M7じやござりませんか△老Sさよふじや。アノ/雌(めん)が/巣入(すいり)して 00061430M8居る/所(ところ)へ/雄(おん)が/餌(ゑ)をもつてはこぶ/所(ところ)は、めつそふなものじや 00061440M9与Sいつたい、/巣入(すいり)せん/時(とき)からして、たがひに/口(くち)から/口(くち)へ 00061450M10/餌(ゑ)をくハしあふあんばい。どふもいへぬものじや△老Sな 00061460M11か+/鳥類(てうるい)といふてあなどられぬものじや。/鳩(はと)に/三枝(さんし)の/礼(れい) 00061470M12あり、/烏(からす)に/反哺(はんぽ)の/孝(かう)ありといふことがあつて、/人間(にんげん)も/恥(はづ)べ 00061480M13き/事(こと)がまゝござる。/亦(また)/焼野(やけの)の/雉子(きゞす)/夜(よる)の/鶴(つる)、/梁(うつば)りの/燕(つばめ)などは、 00061490M14/子(こ)/故(ゆへ)に/物(もの)を/思(おも)ふと/言(いふ)事があるが、/其恩愛(そのおんあい)の/甚(はなはだ)しさはけしか 00061500M15らぬ。しかしカナリヤも、/小鳥(ことり)ながらにあの/様(やう)にするは、 00061510M16/中(なか+)/情(じやう)のふかひものじやが、/鳥(とり)の中で/一番(いちばん)つがひ中のよ 00061520M17ひものハ/鴛鴦(おしどり)で/有(あら)ふ△与Sイヤ、おしどりより/鴨(かも)が/一番(いちばん)/中(なか) 00061530M18がよかろ△老人Sたわひもない/事(こと)いわしやれ。/鴛鴦(をしどり)の/愛着(あいじやく) 00061540M19の/深(ふか)ひといふ/事(こと)は、/故事(こじ)があつて/詩(し)につくり/歌(うた)に/詠(よミ)、ちか 00061550M20ひ事は/野水(やすい)の/句(く)に、/腹(はら)の/立(たつ)/人(ひと)に見せばや/池(いけ)の/鴛(をし)。/柳居(りうきよ)か/句(く) 00061560¥P195 00061570L1にも、おし/鳥(どり)や(十一ウ)/水(ミづ)もらさじとふたつづゝ。/又(また)/近(ちか)ひ 00061580L2/比(ころ)/大江丸(おほへまる)の/句(く)に、おし/鳥(どり)よ/一夜(ひとよ)/離(はな)れて/恋(こひ)をしれなどゝ、/皆(ミな) 00061590L3たれでも/番(つが)ひはなれぬ/所(ところ)を/趣向(しゆかう)に/取(とつ)てある△与Sイヤ+、 00061600L4/其(その)やうにかたくろしふもいへぬてや。/此間(このあいだ)も/去(さる)人に/聞(きい)たが、 00061610L5/哀(あハれ)にも/独寐(ひとりね)すらんおし/鳥(どり)の△/氷(こふり)の/床(とこ)を/立(たち)うかれゆく、とい 00061620L6ふ/古哥(こか)があるといハれた。それでは/鴛鴦(おしどり)も/番(つが)ひはなれて、 00061630L7/独寐(ひとりね)をしをることがあると見へる△老Sサアそこじや。/独= 00061640L8寐(ひとり=ね)するが/稀(まれ)なれバこそ、/哀(あハれ)にもといふて/有(ある)じやないか△与 00061650L9Sイヤ又、/鴨(かも)といふものは、どんなことがあつても、/番(つが)ひ 00061660L10はなれてねる/夜(よ)はたゞの/一夜(ひとよ)もないといふ/事(こと)じや△老Sハ 00061670L11テナア、それにはなんぞ、たしかな/証拠(しやうこ)でもあるか△与 00061680L12Sあるとも。あの/百人(ひやくにん)一首(しゆ)の内の/人麿(ひとまる)の/哥(うた)が/証拠(しやうこ)じや△老 00061690L13Sあほういわしやれ。あれハ/山鳥(やまどり)の/哥(うた)でこそあれ△与Sそ 00061700L14んならいふて見やんせ△老S/何(なん)てもない事じや。あしひき 00061710L15の山どりの/尾(を)のしだり尾の△なが+し/夜(よ)をトいひかける 00061720L16ト、与Sそれ見やんせ。ひとり/かも(鴨)ねん、とよんであらふ 00061730L17が(十二オ) 00061740¥N5¥J 00061750¥X◇/山辺赤人(やまべのあかひと)△△@/田子(たご)の/浦(うら)にうちいでゝミれバ/白妙(しろたへ)の|ふじのたかねに/雪(ゆき)ハふりつゝ△△△@◇ 00061760M1/五月雨(さミだれ)のうちつゞきて、/小田(おだ)のミかさもまさりなん思ひや 00061770M2られ、いとしめやかなるに、/徒然(とぜん)を/慰(なぐさ)めんと、/去富家(さるふか)の/女= 00061780M3房(にやう=ばう)、/台所(だいどころ)に/出(いで)て、/此(この)ころかゝへし/下女(けぢよ)のおたまの/傍(そば)により、 00061790M4/四方山(よもやま)のはなしなしけるうち、女房Sアノたまや。そなた 00061800M5の/生(むま)れハ/何(なに)とやらいふ/国(くに)じやといやつたのふ△玉Sハイ。 00061810M6/私(わたくし)の/生(むま)れは、/上総(かづさ)の/国(くに)の/山部郡(やまべごふり)と申ます△女房Sヲヽそ 00061820M7れ+、/其山部郡(そのやまべごふり)といふ/地方(ところ)ハ、/山辺(やまべ)の/宿禰(すくね)/赤人(あかひと)といふ人 00061830M8の/出(で)やしやつた/所(ところ)で、今にも/御廟(こべう)があるといふ/事(こと)を、/作者= 00061840M9部類(さくしや=ふるい)といふ/本(ほん)でよんだことがあるが、そふかや△玉Sイヽ 00061850M10ヱ、そんなことハ、とんと/聞(きゝ)ませぬ△女房Sしつていやり 00061860M11そふなものじやがのふ。ソレ/百人一首(ひやくにんしゆ)のうちに、/田子(たご)の 00061870M12(十二ウ)/浦(うら)にうちいでゝミれバ/白妙(しろたへ)の△ふじの/高根(たかね)に/雪(ゆき)は 00061880M13ふりつゝ、といふ/哥(うた)をよましやつた/哥(うた)の/名人(めいしん)じやわいのふ 00061890M14玉Sイヱ+、そんな/事(こと)はぞんじませんが、/在所(ざいしよ)で/聞(きゝ)まし 00061900M15たハ、たごでうらへこへかけに/出(いで)て/仕業(しごと)する△ふじも/三里(さんり) 00061910M16も/泥(どろ)にそミつゝ、といふことを/聞(きい)ておりますが、とんと/違(ちが) 00061920M17ハぬところでござります。たごでうらの/圃(はたけ)へこへを/荷(にな)ふて 00061930M18/行(ゆき)まして、/麦(むぎ)や/菜種(なたね)にかけましたり、/鋤鍬(すきくわ)もつてほりかへ 00061940M19したりいたしますと、ふぢも/三里(さんり)もどろまミれ、/百性(ひやくしやう)ほど 00061950M20つらひものはござりませぬ△女房Sホヽヽ、ほんにマア/在= 00061960¥P196 00061970L1所(ざい=しよ)/相応(そふおう)な/哥(うた)じやのふ。ホヽヽ、/百性(ひやくしやう)ほどひどひはたらきす 00061980L2る/物(もの)ハない。しかしその/哥(うた)はやつぱり、/田子(たご)の/浦(うら)にうちい 00061990L3でゝ見れバ/白妙(しろたへ)の△ふじの/高根(たかね)に/雪(ゆき)ハふりつゝ、といふ/赤= 00062000L4人(あか=ひと)の/哥(うた)をもぢつたものじやわいのふ△玉Sイヱ+、/檐桶(たご) 00062010L5でうらへこゑかけに/行(ゆき)ますのは、/赤人(あかひと)じやござりません。 00062020L6ミな/若(わか)い/人(ひと)でござります(十三オ) 00062030G1〔上巻挿絵中の歌詞〕 00062040G2△△(続古今集)露霜のをくらの山に家居して 00062050G3△△ほさても袖の朽ぬへきかな△△定家卿 00062060G4△忍はれん物とハなしに小倉山 00062070G5△△軒端の松よなれて久しき△△同(三オ) 00062080G6△徒然をしらぬをのこもをしなへて 00062090G7△△好まぬはなき初明の色△△千種楼△墨之江 00062100G8△寒かつた去年にひきかへ梅か香を 00062110G9△△もて来た東風に窓あけの春△△浪華△里住(四ウ・五オ) 00062120G10△しなたれつまとひつはいつ猫ならて 00062130G11△△春はさかりと見ゆ藤かつら△△呉羽△綾成 00062140G12△紫のゆかりの色か藤かつら 00062150G13△△五十よしやうもはひこりてさく△△真間野△川成(八ウ・九オ) 00062160¥T1 00062170¥N1¥J 00062180¥X◇/猿丸太夫(さるまるたいふ)△△@/奥山(をくやま)にもみぢふミわけなく/鹿(しか)の|こゑきく/時(とき)ぞ/秋(あき)はかなしき△△@◇ 00062190M4/弥生(やよひ)の/比(ころ)は/京師(けいし)・/浪花(なには)をはじめ、/諸国(しよこく)の/衆人(しゆうじん)、/伊勢(いせ)の/神廟(しんべう) 00062200M5に/参詣(さんけい)なす/事(こと)/夥(おびたゞ)しく、/道中(だうちう)の/賑(にぎハ)ひ、たとへんに/物(もの)なし。 00062210M6/参(まい)りかねたる/男(おのこ)/両三個(りやうさんにん)、うちよりて/宿意(のぞミ)をうしなひ、し 00062220M7ば+しゆミきつて居る/折(をり)しも、/隣家(りんか)に/名(な)を/得(ゑ)し/太平楽(たいへいらく)の 00062230M8/親仁(おやぢ)/出来(いできた)り、親仁Sなんと/皆(ミな)、/若手(わかて)に/似合(にあわ)ぬきついおとな 00062240M9しい/事(こと)しやのふ。/伊勢参(いせまい)りはどふじやいの△男Sどふの/斯(かふ) 00062250M10のといふやうな/事(こと)じやない。せつかく/参(まい)らふと/思(おも)ふて、/三= 00062260M11個(さん=にん)そろへの/装束(しやうぞく)までこしらへたを、/親仁(おやぢ)に見つけられて、 00062270M12ミなとり/上(あげ)られて、/何(なん)の/事(こと)やら、/夢(ゆめ)に/屁(へ)ふんだ/様(やう)な心もち 00062280M13じや。くそいま+しい(中ノ一オ)△親仁S/腹立(はらたて)さんすな。 00062290M14そりやおうけのないのじや。おうけさへあると、きのふ迄 00062300M15/其気(そのき)でのふても、ついさそハれて、そんなら行ふかと、/心= 00062310M16安(こゝろ=やす)ふ/参(まい)れるものじや。あんまりならすと、ゑてはけちの/入(いる) 00062320M17ものじや。/来年(らいねん)にさんせ。おいらが/参(まい)つたのハ/仰山(ぎやうさん)なまい 00062330M18りやうじやあつたぞへ△男Sなんと/親仁(おやぢ)さん。/其咄(そのはな)し、し 00062340M19てかしなんせんか。/咄(はな)しなと/聞(きい)て/虫(むし)を/得心(とくしん)さしたいわいな 00062350M20親仁Sやすひ/事(こと)じや。いふて/聞(きか)しませふ。しかし/聞(きい)て、け 00062360¥P197 00062370¥G(二ウ・三オ) 00062380M1つく/行(ゆき)たふなるとわるいけれど△男Sイヤ+、もふ/今年(ことし) 00062390M2はどんなことがあつても/止(やめ)じや+△親仁Sそんならいひ 00062400M3ませふ。マア/大坂(おほさか)はなれて/早(はや)/玉造(たまつく)り、/笠(かさ)を/買(かふ)なら/深江(ふかへ)が/名= 00062410M4所(めい=しよ)、それやあとこせよふいやなア△男Sこれ+、そのや 00062420M5うに/大(おほ)けい/声(こへ)すると、/表(おもて)に/人(ひと)だかりがあるわいのふ△親仁 00062430M6Sヲイ+、おれとしたことが。つい/拍子(ひやうし)にのつてのけた。 00062440M7ハヽヽ、それから/松原(まつわら)くらがり/峠(とうげ)△男S/其峠(そのとうげ)は/昼(ひる)でも(中ノ 00062450M8一ウ)くらひかな△親仁Sイヤ+、くらがりは/名斗(なばかり)で/随分(ずいぶん) 00062460M9あかい/山(やま)じや。そこを/下(くだ)つて/尼(あま)が/辻(つぢ)、/奈良(なら)の/旅篭屋(はたごや)、/三輪(ミわ) 00062470M10の/茶屋(ちやゝ)、/廿日(はつか)あまりに/四十両(しじうりやう)、つかひはたしてやう+/二= 00062480M11歩(に=ぶ)のこつた△男Sソリヤ/梅(むめ)川/忠(ちう)兵衛じやないか△親仁Sサ 00062490M12アその/梅(むめ)川/忠(ちう)兵衛の/伝(でん)で、おれも/太夫(たゆふ)をつれてまいつた 00062500M13男Sゑらひ/活(くハつ)なことじやなア△親仁Sそれから/長谷(はせ)の/観音(くハんをん)、 00062510M14こゝは/桜(さくら)の/名所(めいしよ)で、よしの/初瀬(はつせ)といふて、/吉野(よしの)山にもくら 00062520M15べる/程(ほど)の/所(ところ)じや。こちらは/此所(こゝ)から、あをごへといふ/街道(かいだう) 00062530M16へ/往(い)たが、これはちとしんどかつた。しかし、それも二日 00062540M17/路(ぢ)/程(ほど)で六けんへ/出(で)た/心地(こゝち)よさ。/爰(こゝ)から/山田(やまだ)へ六/里(り)のあいだ、 00062550M18ずつと/町(まち)つゞきで、からくりまとふ/白酒店(しろざけミせ)、/熊(くま)の/丸薬(ぐハんやく)かミ 00062560M19ゆひ/床(どこ)、/松坂(まつざか)は/名物(めいぶつ)のぬりやうじ、/松坂染(まつざかぞめ)、松坂/嶋(じま)、/商人(あきふど) 00062570M20/軒(のき)をならべての/繁昌(はんじやう)、/櫛田(くしだ)川を/越(こし)て/稲木(いなぎ)ハ/壺屋(つぼや)のたばこ/入(いれ)、 00062580¥P198 00062590L1/宮川(ミや)こへると/両(りやう)かわに、/比丘尼(びくに)がならすびんざゝら、/妙見= 00062600L2町(ミやうけん=まち)の/宿(やど)の(二オ)(二ウ・三オ挿絵)/賑(にぎハ)ひ、/相(あい)の山のお/杉(すき)お/玉(たま)のお 00062610L3もしろさ、/古市(ふるいち)の/青楼(ちやや)の/結講(けつかう(ママ))、いやもふ、もどる心ハとん 00062620L4とないぞ△男Sそふであろ+。其古市の/青楼(ちやや)のおどりと 00062630L5いふハどんなものじやな△親仁Sこいつは/咄(はな)しの/種(たね)になる。 00062640L6マア/青楼(ちやゝ)の/玉(たま)かぶが/備前(びせん)やにさくらの/間(ま)、/油屋(あぶらや)が/梅(むめ)の/間(ま)、 00062650L7/盃(さかづき)の/間(ま)、/千切屋(ちきりや)に/皷(つゞミ)の/間(ま)、/柏屋(かしハや)に/松(まつ)の/間(ま)、/杉本屋(すぎもとや)に/菊(きく)の/間(ま)、 00062660L8/其外(そのほか)/湊屋(ミなとや)、/料理屋(りやうりや)でハ/浅吉(あさきち)の/三階(さんがい)ざしき。/爰(こゝ)らをずつとま 00062670L9ハらふと/思(おも)ふと、/大分(だいぶん)つくさんと/行(ゆか)れんでや。又/踊(おど)りとい 00062680L10ふものは、/其青楼(そのちやゝ)+の/抱(かゝ)への/女郎(ぢよろう)が五十人/有(あれ)バ五十人、 00062690L11百人あれバ百人が、ミなそろへの/衣装(いしやう)を/着(き)て、/三味線(さミせん)、/皷= 00062700L12弓(こ=きう)の/手(て)にあハして、/川崎音頭(かわさきおんど)でおどる/事(こと)じやが、いや、め 00062710L13つそふなものじや。/音頭(をんど)の/哥(うた)はこと※くすり/物(もの)にして/客(きやく) 00062720L14へくれる。なか+おそれ入たものじや△男Sサア+そ 00062730L15ふじやげな。かねて/其事(そのこと)は/聞(きゝ)およんでいるが、こちらも/参(まい) 00062740L16つたら、どふぞ/踊(おど)りを見たいものじや(三ウ)△親仁Sこちら 00062750L17ハ/内宮(ないくう)の/猿丸太夫(さるまるたゆふ)といふ/御師(おし)に/滞留(とうりう)して居たが、これも又 00062760L18ていねいなものじや△男Sハア、それはどふやら、/百人(ひやくにん)一 00062770L19首(しゆ)の内にあるやうな/名(な)じやなア△親仁Sそれ+、其百人 00062780L20一首の内にある/猿丸(さるまる)太夫の/末孫(ばつそん)で、/彼紅葉(かのもみぢ)ふミわけの/短冊(たんざく) 00062790M1をかけものにして、/床(とこ)にかざつてあるが、いやまた、もて 00062800M2なしはかくべつなものじや△男Sそふであろ。/其太夫(そのたゆふ)とい 00062810M3ふものは、おまへがつれていてじやあつた/新町(しんまち)の/太夫(たゆふ)とは、 00062820M4/工合(ぐあい)のちがふたものかな△親仁Sイヤもふ、ちがふたのちが 00062830M5ふのといふやうなことじやない。/滞留中(とうりうちう)のもてなしぐあひ 00062840M6といふものは、とんと/格別(かくべつ)な/物(もの)じや。どんなものでもほれさ 00062850M7しおる△男Sハヽア、どふりで/伊勢(いせ)へゆく人が、/其工合(そのぐあい)にほ 00062860M8れるかして、/大(おほ)かたミな、/太夫(たゆふ)ずきになると/聞(きゝ)ました(四オ) 00062870¥N2¥J 00062880¥X◇/中納言(ちうなごん)/家持(やかもち)△△@/鵲(かさゝき)のわたせるはしにをく/霜(しも)の|しろきをミれバ/夜(よ)ぞ/更(ふけ)にける△@◇ 00062890M12言不中理、不如不言。/一言(いちげん)/不中(あたらざれバ)、/千言(せんげん)/無用(もようなし)といへ 00062900M13るを/思(おも)ひやらずして、/世(よ)には/虚言(けよごん)/妄語(もうご)を/伝(つた)へて/人(ひと)をあやか 00062910M14し、たのしめるものまゝあり。おろかしき/男(おのこ)の/妄談(もうだん)を/聞(きゝ)つ 00062920M15たへて/実(まこと)とし、/一日(あるひ)ちかきわたりの/老人(らうじん)のもとに/至(いた)りて、 00062930M16いろ+さま※に/説話(ものがたり)をなしけるうち、男S/隠居(いんきよ)様。 00062940M17/此間(このあいだ)さる/所(ところ)の/生(いき)た/節用集(せつようしう)に、あの/中納言(ちうなごん)/家持(やかもち)の/哥(うた)の、かさ 00062950M18ゝぎのはしといふわけを/聞(きゝ)ました△老Sそれはマアよい/事(こと) 00062960M19を/聞(きか)しやつた。/一生(いつしやう)の/徳(とく)といふものじや。どんな/故事(こじ)じや。 00062970M20いふて/聞(きか)さつしやれ△男Sサア、あの/鵲(かさゝぎ)のはしといふもの 00062980¥P199 00062990L1は、(四ウ)むかし/役(ゑん)の/行者(ぎやうじや)が/葛城(かづらき)の/神(かミ)に/言(いゝ)つけて、/葛城(かづらき)の 00063000L2/峯(ミね)から/金(かね)の/御嶽(ミたけ)までの/間(あいだ)に、かさゝぎのはしをわたせとい 00063010L3わしやつたそふな。ところが、なか+/大(たい)そふなことじや 00063020L4によつて、ついに/出来(でき)にくい。なんでも/人柱(ひとばしら)をいれんとも 00063030L5たんといふて、/人柱(ひとばしら)にする/者(もの)をせひらくさつしやつた。と 00063040L6ころが/長柄(ながら)の/里(さと)に、/岩氏(いわじ)といふものがあつたをとらへて、 00063050L7/人柱(ひとばしら)にさつしやつたそふな。/其執心(そのしうしん)がとゞまつて、/其(その)はし 00063060L8のほとりへ、/仰山(ぎやうさん)に/杜若(かきつばた)が/咲(さい)たげな。/其所(そこ)へ/在原(ありわら)の/業平(なりひら)が 00063070L9/行(ゆか)れて、/哥(うた)を/詠(よま)しやつたそふな。それが/後(のち)には/朽(くち)たによつ 00063080¥G(六オ) 00063090M1て、/鶴(つる)に/仕(し)かへて/鶴(つる)のはしといふたそふなが、/今(いま)はたへて 00063100M2ないといわれました△老人Sハテなア。それハマアよつぽ 00063110M3ど/奇妙(きミやう)な/説話(ものがたり)じや。わしはそふハ/聞(きゝ)ませなんだ。かの/鵲(かさゝぎ) 00063120M4の/橋(はし)といふ/事(こと)は、/准南子(ゑなんじ)に、烏鵲墳河成橋、以度織 00063130M5女といふてござる。/是(これ)(五オ)は七月七日の/夜(よ)に、/烏鵲(かさゝぎ)が 00063140M6/銀漢(あまのがハ)に/羽(はね)をならべ、/橋(はし)と/成(なつ)て/織女(しよくぢよ)をわたすゆへに、/天漢(あまのがハ)を 00063150M7やす+と/越(こへ)て、/牽牛(けんぎう)に/年(とし)に/一度(いちど)の/契(ちぎ)りをなし玉ふといふ 00063160M8/説(せつ)によつて、/鵲(かさゝぎ)のはしといふと/聞(きゝ)ました。/又(また)、/役(ゑん)の/行者(ぎやうじや)が 00063170M9/葛城(かづらき)の/一言主(ひとことぬし)の/神(かミ)におふせられたは、かづらきの/峯(ミね)より/金(かね) 00063180M10の/御嶽(ミたけ)の/間(あいだ)に/岩橋(いわはし)をわたすべしと/仰(おふせ)られたところが、/明神(ミやうじん) 00063190M11のかたちが/甚(はなはだ)/見(ミ)ぐるしかつたそふで、はづかしくおぼし 00063200M12めして、/昼(ひる)をはゞかり/夜毎(よごと)に/出(いで)て/作(つく)られたそふな。それを 00063210M13/役(ゑん)の/行者(ぎやうじや)がいかり玉ふて、/明神(ミやうじん)をかづらをもつて、いまし 00063220M14められたといふ/故事(ふること)がごさる。さるによつて、/岩橋(いわはし)は/其(その)ま 00063230M15ゝになつて、/明神(ミやうじん)がわたしも/果(はて)ざるゆへ、/粂路(くめぢ)の/橋(はし)は/中絶(なかたへ) 00063240M16てと、/絶(たへ)たる/恋(こひ)の/哥(うた)にとりて/詠(よミ)ます。/岩橋(いわはし)のよるの/契(ちぎ)りも 00063250M17たへぬべし△あくる/佗(わび)しき/葛城(かづらき)の/神(かミ)、と申/証哥(せうか)が(五ウ)ご 00063260M18ざる。また/人柱(ひとばしら)の/事(こと)は、/嵯峨天皇(さがてんわう)/弘仁(こうにん)の/比(ころ)、/摂津(せつつ)の/国(くに)/難波(なには) 00063270M19の/岸(きし)と/垂水(たるミ)の/里(さと)とは、/凡(およそ)/其(その)あいだ/二里(にり)の/余(よ)もござつて、こ 00063280M20の/中(なか)に/数多(あまた)の/小(こ)じまが/有(あつ)たそふで、それに/小橋(こばし)をかけて、 00063290¥P200 00063300¥G(六ウ・七オ) 00063310M1/京師(ミやこ)へ/登(のぼ)る/便(たより)とせしが、/平生(つね)に/波(なミ)つよくよせて、/嶋(しま)も/橋(はし)も 00063320M2/押流(をしながし)などして、/往来(ゆきゝ)の/旅客(たびゝと)、うれひ/歎(なげく)こと/甚(はなはだし)く、/天皇(てんわう)、 00063330M3/是(これ)を(六オ)(六ウ・七オ挿絵)きこしめして、/長柄(なから)の/橋(はし)を/作(つく)ら 00063340M4せらる。/其時(そのとき)/人柱(ひとばしら)をいれて/嶋(しま)を/築(きつか)ずんバ、/永(なが)く/嶋(しま)/橋(はし)ともに 00063350M5たもちがたしと、/奏(そう)せしもの/有(ある)によつて、/垂水(たるミ)のさとに/新= 00063360M6関(しん=せき)をしつらひ、/人柱(ひとばしら)にすべき/人(ひと)をもとめられしが、/此長柄(このながら) 00063370M7の/里(さと)に/岩氏(いわじ)といふものがあつて、/此事(このこと)を/聞(きゝ)、/此人柱(このひとばしら)になら 00063380M8ん/者(もの)は、/縫補(つき)ある/袴(はかま)を/着(き)たる/者(もの)こそよかるべしと、/戯(たハむ)れに 00063390M9いひ出しおつたを、/里(さと)の/人等(ひとら)が/口(くち)※にいひふらしたが、 00063400M10/関守(せきもり)の/耳(ミゝ)に/入(いつ)て、さることもよしあることにぞあらんと、 00063410M11/夫(それ)から/関(せき)を/往来人(ゆきかふひと)をとらへて、/袴(はかま)を/改(あらた)められた/所(ところ)が、/彼岩= 00063420M12氏(かのいわ=じ)、/此関(このせき)を/通(とふ)る/折(をり)から、/縫補(つぎ)のある/袴(はかま)をあやまつて/着(き)たり 00063430M13しゆへ、/忽(たちまち)とらへて/人柱(ひとばしら)に/入(いれ)られたといふ/説話(はなし)がある。こ 00063440M14れによつて/今(いま)の/世(よ)にも、/袴(はかま)につぎをあてぬといふ/事(こと)は、/此= 00063450M15旧事(この=ふること)によつてのことじやげな。/其岩氏(そのいわじ)の/娘(むすめ)が/後(のち)に、/物(もの)いハ 00063460M16ず/父(ちゝ)は/長柄(ながら)の/人柱(ひとばしら)△なかずバ/雉子(きじ)も/射(い)られざらまじ(七ウ) 00063470M17といふ/哥(うた)をよんだといふ事じや。また/杜若(かきつばた)が/咲(さい)て、/業平(なりひら)が 00063480M18/歌(うた)を/詠(よま)しやつたハ、/三河(ミかわ)の/国(くに)の/八ツ橋(やつはし)の事じや。から/衣(ころも)き 00063490M19つゝなれにしつましあれバ△はる※きぬる/旅(たび)おしぞおも 00063500M20ふと、かきつばたといふ/五文字(ごもじ)を、/句(く)の/上(かミ)におゐて/詠(よま)しや 00063510¥P201 00063520L1つたといふ/事(こと)。/鶴(つる)のはしといふは、/觜(くちばし)の/事(こと)をいふたものじ 00063530L2や。なんぼう/間違(まちが)ふかてゝ、/其様(そのやう)に/齟齬(くひちがふ)たはなしは/聞(きい)た/事(こと) 00063540L3がないと、/老人(らうじん)が/長(なが)ものがたりを、つく※/聞(きく)につけて、 00063550L4だん+と/合点(がてん)ゆき、さてはあの/節用集(せつようしう)めが/欺(だま)しおつたに 00063560L5ちがひはないと/心(こゝろ)つき、男Sさて+、いわれを/聞(きけ)バあり 00063570L6がたい。なんの/事(こと)じややら、わしが/聞(きい)てきたは、さつはり 00063580L7/間(ま)ちがひで、/鵲(かさゝぎ)のはしの/事(こと)ではござりませんなア△老人 00063590L8Sなんの、そのやうなかさゝぎのはしがあるもので。/其(その)や 00063600L9うにくひちがふたのは、/大(おほ)かたいすかの/觜(はし)であらふ(八オ) 00063610¥N3¥J 00063620¥X◇/安倍仲麿(あべのなかまろ)△△@あまの/原(はら)ふりさけミれば/春日(かすが)なる|みかさの/山(やま)にいでし/月(つき)かも△△△@◇ 00063630L13/此四年(このよとせ)あまりまへつかた、/漢&踊(かん+おどり)といへる/事(こと)を、/浪花津(なにはづ)の 00063640L14/堀江(ほりへ)なる/荒木(あらき)の/戯場(しばゐ)にて/興行(こうげう)なせしより/已来(このかた)、/世(よ)こぞつて 00063650L15/大(おほひ)に/流行(りうこう)し、/犬(いぬ)うつ/童(わらべ)まで/此踊(このおど)りをなせること/夥(をびたゝ)し。/有人(あるひと)、 00063660L16/附会(こじつけ)/先生(せんせい)の/方(かた)にいたりてとふていわく、友人S/先生(せんせい)。/近頃(ちかごろ) 00063670L17やたらにはやりますかん+おどりといふものハ、あれは 00063680L18どふしたわけなものでござります△先生Sヱヽ、あれでご 00063690L19ざりますか。あれハむかし/安倍仲麿(あべのなかまろ)、/入唐(につたう)のミぎりより/日= 00063700L20本(につ=ほん)にわたり、/今(いま)では/長崎(ながさき)おもてゞ、もつぱらもてあそびま 00063710M1す/事(こと)となりました△友人Sフン、/其(その)いわれはどふでござる 00063720M2先生S其いわれハ、むかし/仲(なか)まろ、(八ウ)/学生(がくせい)にゑらまれ、 00063730M3/遣唐使(けんたうし)にしたがふて/唐土(もろこし)にわたり、/年月(としつき)を/経(へ)て/日本(につぽん)にかへ 00063740M4られし/時(とき)、/明州(めうじう)の/津(つ)の/海辺(うミべ)までござつた/所(ところ)が、/夜(よ)に/入(いつ)て/月(つき) 00063750M5のさしいづるを/御覧(ごらん)あつて、アノ/百人一首(ひやくにんいつしゆ)に/入(いつ)てある、/天(あま) 00063760M6の/原(はら)ふりさけ見れバかすがなるみかさの山にいでし/月(つき)か 00063770M7も、といふ/哥(うた)を/詠(ゑい)ぜられた。これはたれでも/知(し)つてゐるこ 00063780M8とじや△友Sそれ+、/其事(そのこと)はわしも/聞(きゝ)およんでゐます 00063790M9先Sそれから/追(おゐ)+/順風(じゆんぷう)に/帆(ほ)をまいて、/日本(につほん)をさしてかゑ 00063800M10られた。/折(をり)ふし、/俄(にハか)に/風(かぜ)がかわつて、はからず/外国(ぐハいこく)へたゞ 00063810M11よふたじや△友Sハテナア△先Sそこで/地(ぢ)かたへ/舟(ふね)をよせ 00063820M12て、/風(かぜ)のなをるを/待(また)せられた。/其嶋(そのしま)がすなハち、かん+ 00063830M13/踊(おど)りのはじまつた/国(くに)じやて△友Sハテなあ△先S/其国(そのくに)の/名(な) 00063840M14をたつねられたれバ、かん+/国(こく)といふとこたへた。/爰(こゝ)は 00063850M15/一向(いつかう)に/何(なに)もしらぬ/夷国(ゑびすぐに)で、/仲麿(なかまろ)の/舟(ふね)を見るとひとしく、/嶋= 00063860M16中(しま=ぢう)のものがよつて/来(き)て、/三(さん)(九オ)/拝(ぱい)して/神(かみ)の/如(ごと)くに/尊敬(そんきやう)し 00063870M17をる。そこで/仲麿(なかまろ)も不/便(びん)に思われて、/舟(ふね)にある/書物(しよもつ)などを 00063880M18わけてつかハされ、しバらく/此国(このくに)に/逗留(とうりう)して/学文(がくもん)をおしへ 00063890M19てやらしやつた。/何(なに)が/無学文盲(むがくもんもう)な/夷(ゑびす)どもが、/急(きう)にかしこふ 00063900M20なつて、/仁義礼智信(じんぎれいちしん)の/五常(ごじやう)をおぼへ、/日本(につぽん)の/下(した)に/属(ぞく)したい 00063910¥P202 00063920L1とねがひをるによつて、/日本風(につほんふう)にさつしやつた。/其時(そのとき)のよ 00063930L2ろこびに、/嶋中(しまぢう)がよつておどつたげな。それでかん+/国(こく) 00063940L3の/踊(おと)りじやよつて、かん+おどりといふげな△友人Sな 00063950L4るほど、だん+わかつて/来(き)ます△先生Sそこで/家僕(けらい)に/命(めい) 00063960L5じて、/日本風(につぽんふう)に/頭(かしら)をかへいとあつて、/長(なが)い/髭(ひげ)もそり、/惣髪(そうはつ) 00063970L6もやつこにして、/名(な)も/太郎(たろ)兵衛・/治郎(じろ)兵衛とかへいといふ 00063980L7/仰(おゝせ)じやによつて、/家来(けらい)は/嶋中(しまぢう)のものをずつとならべて、一 00063990L8人+/髭(ひげ)/額(ひたい)をそつて、だん+/名(な)を/尋(たづ)ねる/所(ところ)が、/嫡子(そうりやう)にう 00064000L9まれたものは/初一官(しよいつくハん)、/二(に)ばんめに/生(うま)れたものは/二一官(にいつくわん)、こ 00064010L10れが(九ウ)/西方二一官(さいほうにいつくわん)さんとうたふたものじやそふな。/三(さん) 00064020L11ばんめは/三一官(さんいつくわん)、/四(よ)ばんめは/四一官(しいつくハん)と、ミなかん+/踊(おど)り 00064030L12でうたふた/通(とふり)の/名(な)じや。だん+そつてしもふたが、/仲麿(□かまろ) 00064040L13の/御前(ごぜん)へ/出(いで)て/礼(れい)をしをるときに、/仲麿(なかまろ)、/家来(けらい)にむかふて、 00064050L14かのものらが/名(な)ハ/何(なん)といひしぞとたづねられたれバ、/家来(けらい) 00064060L15/平伏(へいふく)しながら、どふれそつても/一官(いつくわん)じやともふしますとこ 00064070L16たへたら、/仲麿(なかまろ)もぬからぬ/顔(かほ)で、さすがはゑびすの/国(くに)じや 00064080L17といわれた 00064090¥N4¥J 00064100¥X◇/喜撰法師(きせんほつし)△△@わが/庵(いほ)ハミやこのたつミしかぞすむ|よをうぢ/山(やま)と/人(ひと)はいふなり△△△△@◇ 00064110M1/二月(きさらぎ)/初(はつ)の/午(むま)の/日(ひ)は、/遠近(おちこち)の/稲荷(いなり)の/社(やしろ)/祭礼(さいれい)にて、/子供等(こどもら)がた 00064120M2ゝく/太皷(たいこ)の(十オ)/音(をと)かしましく、こゝに/血気(けつき)の/若者(わかもの)、/朝香= 00064130M3山(あさか=やま)の/稲荷(いなり)に/参詣(さんけい)せんと、/父(ちゝ)に/此(この)よしを/告(つげ)て/立出(たちいづ)る。/父(ちゝ)なる 00064140M4ものとゞめて、父Sこりや+、/傘(かさ)をさげてゆきや。たと 00064150M5へにもいふとふり、/日和(ひより)の/雨合羽(あまがつぱ)、こけん/先(さき)の/杖(つへ)といふじ 00064160M6やないか。/此頃(このごろ)は/二八月(につはちぐハつ)といふて、/天気(てんき)の/定(さだ)まらぬ/時候(じこう)じ 00064170M7や/程(ほど)に、/邪魔(じやま)にならふと/持(もつ)てゆきや△むすこS/親仁(おやぢ)さんの、 00064180M8/何(なに)いわんすやら。/此天気(このてんき)で、なんの/傘(かさ)が居るものでと、/親(おや) 00064190M9の/言葉(ことば)をもちひずして、/足(あし)ばやに/出行(いでゆき)けるが、/広田(ひろた)/今宮(いまミや)を 00064200M10/過(すき)て/新家(しんけ)に/来(き)たる/所(ところ)に、たちまち/空(そら)のけし/く((きカ))あしく、今や 00064210M11ふり/出(いだ)さんずありさまなり。むすこSアヽ/親仁(おやぢ)はさすが/老= 00064220M12功(ろう=こう)じや。こけんさきの/杖(つへ)、/日和(ひより)の/雨合羽(あまがつぱ)といわしやつたが 00064230M13/尤(もつとも)じや。どふやら/空(そら)がわるなつた。ふらねハよいがとい 00064240M14ひつゝ、/天下茶屋(てんがちやや)むらにさしかゝるに、さゝやかなる/茶店(ちやミせ) 00064250M15あり。/喜撰(きせん)としるせし/暖簾(のうれん)をかけ、/軒(のき)さきに/鹿(しか)をつなぎて、 00064260M16/傍辺(かたへ)に/煎餅(せんべい)のたぐひをならべたり。これ(十ウ)なん/鹿(しか)の/餌(ゑ) 00064270M17として、/衆人(もろびと)に/買(かわ)しめんが/為(ため)なり。しばし/爰(こゝ)にやすらひて、 00064280M18そらの/気色(けしき)を見さだめんと、/床几(せうぎ)にこしをかくるに、/茶店(ちやミせ) 00064290M19のばゝが/何(なに)やらん、/筥(はこ)に/入(いれ)たるものを/持出(もちいで)て、一つおあが 00064300M20りなされませといふを、ひらき見れば/粟(あハ)の/岩(いわ)おこしなり。 00064310¥P203 00064320¥G(十二ウ・十三オ) 00064330M1むすこSハヽヽヽ、こりやおかしい。ばゝさん。/菓子(くハし)より 00064340M2/茶(ちや)をさきへ/下(くだ)んせ△ばゝSハイ+今あげます。しかし/爰(こゝ) 00064350M3の/名(めい)物じや。あがつてくださりませ△むすこSハテなア。 00064360M4/岩(いわ)おこしがなぜに/名物(めいぶつ)じやな△ばゝS/爰(こゝ)は/喜撰茶屋(きせんぢやや)と申ま 00064370M5して、/彼喜撰法師(かのきせんほうし)の/哥(うた)の、/都(ミやこ)の/辰巳(たつミ)といふ/趣(おもむき)をとりまして、 00064380M6お/茶(ちや)は/喜撰(きせん)をあげます。/家(いへ)はすなハち/辰巳(たつミ)ばり。/軒(のき)には/鹿(しか) 00064390M7をつなぎまして、/岩(いわ)おこしは/宇治山(うぢやま)といふ/気(き)で/名物(めいぶつ)といた 00064400M8します△むすこSこれハ/奇妙(きめう)+。それなら/名物(めいぶつ)を/喰(くひ)ませ 00064410M9ふ。しかし/茶(ちや)はどふじや△ばゝSハイ+、/只今(たゝいま)あげます 00064420M10と、きれいなる/煎茶茶碗(せんちやぢやわん)に/入(いれ)てもちいづる。(十一オ)むすこ 00064430M11Sばアさん、これはかんしんじや。/此茶(このちや)はよふいりました。 00064440M12/喜撰(きせん)だけあつて、めつさうよいわいな。マア/一(いつ)ふく下んせ 00064450M13ばゝSハイ+といひつゝ、きびしよをたづさへ/来(きた)り、/茶(ちや) 00064460M14をつぐ。むすこSさすが/喜撰茶屋(きせんぢやや)といふだけあつて、こつ 00064470M15たものじや。/客毎(きやくごと)にきびしよでわかすとは/妙(めう)+といふう 00064480M16ち、/空(そら)のけしき、だん+にあしくなるゆへ、これをあん 00064490M17じ、/天(そら)をながめながら、むすこSばアさん。こりやふろか 00064500M18なといへば、はゝはなんの/気(き)もつかず、/茶(ちや)の/事(こと)とおもひ、 00064510M19ばゝSめつそうな。きびしよハミな/昆炉(こんろ)でわかします 00064520¥P204 00064530¥N5¥J 00064540¥X◇/小野小町(をのゝこまち)△△@/花(はな)の/色(いろ)はうつりにけりないたづらに△△|わが/身(ミ)/世(よ)にふるながめせしまに△(十一ウ)@◇ 00064550L4/日&(ひゞ)に/新(あらた)にして、/又(また)/日(ひ)&にあらたなる/色(いろ)をあらわすゆへに、 00064560L5/新町(しんまち)となづけしにや。/此所(こゝ)はおしてるや/浪花(なには)の/華街(くるわ)にして、 00064570L6/松(まつ)の/緑(ミど)り/色(いろ)をかへず、/梅(むめ)が/香(か)/四時(しいぢ)ともにかんばしく、/繁栄(はんえい) 00064580L7たとへんにものなし。しかるに/此四(このよ)とせあまりまへより、 00064590L8/九軒町(くけんてう)なる/揚屋(あげや)の/前(まへ)に、あまたの/桜(さくら)をうへならべ、/廓(くるわ)を/花(はな) 00064600L9の山となし、よし/野(の)/初瀬(はつせ)も/居(ゐ)ながらに、/揚屋(あげや)の/楼上(にかい)よりな 00064610L10がめやる/風色(ありさま)、これによて/繁栄(はんえい)むかしにまさり、/入相(いりあい)の/鐘(かね) 00064620L11のひゞきもいとハず、/花(はな)見んとむれつどふ/人(ひと)おびたゞしく、 00064630L12/遊女(よね)はなじミの/客(きやく)をまつ。/其(その)さゝ/蟹(がに)の/糸桜(いとざくら)、こがれてむね 00064640L13も/烟(けふり)たつ/塩竈(しほがま)ざくら、/通(かよ)ふ/禿(かふろ)の/児(ちご)ざくら、/引舟(ひきふね)/花車(くわしや)の/姥(うば)ざ 00064650L14くら、にげる/客(きやく)をバよびかへす/熊谷(くまがへ)ざくら、あだざくら、 00064660L15こいにくゝられ/糸(いと)くゞり、/色(いろ)にはふける/夜(よ)ざくらや、つい 00064670L16かゑり/路(ち)も/遅桜(おそざくら)、/手(て)がたのやける/緋(ひ)ざくらや、きぬ※お 00064680L17しむ/朝(あさ)ざくら、/陰(いん)(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)/気(き)をしらぬ/楊= 00064690L18貴妃(やう=きひ)ざくら、/今(いま)をさかりときゝつたへ、/群来(むれく)る/人(ひと)の/其中(そのなか)に、 00064700L19/年(とし)の/比(ころ)/四十(よそじ)にミたざるとおぼしき/女性(をふな)、/後家(ごけ)と見へて、/嶋= 00064710L20田髷(しま=だわげ)に/憲法(けんぼう)の/小紋(こもん)/縮緬(ちりめん)の/小袖(こそで)に/黒繻子(くろじゆす)の/帯(おび)をまへにてむす 00064720M1び、/粋(すい)なすがたの/打扮(いでたち)、十一二の/女児(むすめ)を/連(つれ)、これもひとし 00064730M2く/粋(すい)なる/姿(すがた)に/仕立(したて)、/桜(さくら)のもとを、そこよこゝよとながめい 00064740M3たりしが、むすめSモシ、わたしや/此桜(このさくら)でおもひ/出(だ)した/事(こと) 00064750M4がござります△母Sなにをおもひ/出(だ)しやつた△娘S/花(はな)のい 00064760M5ろはうつりにけりないたづらに△/我身(わがミ)よにふるながめせし 00064770M6まに、といふ/哥(うた)は、どふいふ/心(こゝろ)でござりますへ△母Sその 00064780M7/哥(うた)の心かや。それは/花(はな)の/咲(さい)たらバ、/花(はな)に/身(ミ)をなさんと思ひ 00064790M8しに、/世(よ)にすめバ/事(こと)しげくて、とやかくと/打(うち)まぎれ/過(すぐ)るう 00064800M9ちに、つい/花(はな)の色もいつかうつらふ/心(こゝろ)とも、/又(また)ある/説(せつ)に、 00064810M10/身(ミ)のおとろへしは/我(われ)とはしらぬもので、花のうつらふを見 00064820M11て、/我身(わがミ)の/花(はな)もこのよふにうつりてこそ(十三ウ)あらめと 00064830M12/思(おも)ひやる心とも、いづれ/両説(りやうせつ)ともにもつともな/事(こと)じやわい 00064840M13のふと、はなしして/行(ゆき)すぐるを、/吉田(よしだ)屋の/格子(かうし)に/太夫(たゆふ)/芸子(げいこ) 00064850M14をあつめて、/酒宴(しゆえん)を/催(もよふ)す/客(きやく)ありしが、かたハらにすハりし 00064860M15/禿(かふろ)、/桜(さくら)のもとに/二人(ふたり)が/哥(うた)のはなしするを/聞(きゝ)居たりしが、/後= 00064870M16家(ご=け)の/風俗(すがた)のあまり/粋(すい)なるいでたちゆへ、/子供(こども)心にかの/両人(りやうにん) 00064880M17を、/引舟(ひきふね)と/禿(かふろ)なりとおもひ、こなたなる/太夫(たゆふ)にむかひ、禿 00064890M18Sもしな/太夫主(たゆふす)。アノ今花の/色(いろ)はうつりにけりないたづら 00064900M19に△/我身(わがミ)よにふるながめせしまに、といふ/哥(うた)のはなしをし 00064910M20てゐた/引舟衆(ひきふねしゆ)やかぶろ/衆(しゆ)は、とんと見/付(つけ)ん/皃(かほ)でおますが、 00064920¥P205 00064930L1あれハどこのかゝへでおますいなア△太夫Sアノ/民野(たミの)とし 00064940L2た事が、/何(なに)いやるやら。あれハ/廓(くるわ)のお/方(かた)じやないわいのふ 00064950L3禿S/太夫主(たゆふす)のいひなますことわいなア。/引舟衆(ひきふねしゆ)と/禿衆(かふろしゆ)の/風(ふう) 00064960L4に、ちかやしませんがな△太夫Sめつそふな事いやる。は 00064970L5なの/色(いろ)はうつりにけりなといふ/哥(うた)のはなししたは、/小町(こまち)の 00064980L6おかたじやわいのふ(十四オ) 00064990G1〔中巻挿絵中の歌詞〕 00065000G2△△八卦にはあらねと銭を擲せんハ 00065010G3△△△お杉お玉か皆ゑきとなる△△烏足斎△文成 00065020G4△△三味の糸にひかれてしたふ旅人は 00065030G5△△△三輪ならなくにおすきおたまき△△浪花△里住(二ウ・三オ) 00065040G6△△(/長柄(ながら)の/新関(にひぜき))橋はしらハつくるといへといつまても 00065050G7△△△朽ぬなからの長きよかたり△△烏足斎△文成 00065060G8△△物いわし皆口からの川きゝす 00065070G9△△△なかすは蛇にのまれさらまし△△花月庵△雪成(六ウ・七オ) 00065080G10△△入相にちらさるさとの夕桜 00065090G11△△△揚屋の軒に火をともしけり△△雪成 00065100G12△△りふしんに枝をなをりそえミふくむ 00065110G13△△△傾城町の花の俤△△文成 00065120G14△△帰り路を打忘れつゝ咲花の 00065130G15△△△色には誰もふける夜桜△△浪華△里住(十二ウ・十三オ) 00065140¥T1 00065150¥N1¥J 00065160¥X◇/蝉丸(せミまろ)△△@これやこの/行(ゆく)もかへるもわかれては|しるもしらぬもあふさかの/関(せき)△△△@◇ 00065170M4/峯(ミね)の/松(まつ)/入日(いりひ)/涼(すゞ)しき/山陰(やまかげ)の△/裾野(すその)の/小田(おだ)に/早苗(さなへ)とるなりと、 00065180M5/順徳院(じゆんとくいん)の/御製(ぎよせい)も/思(おも)ひ/出(いで)らるゝ/比(ころ)、/夕(ゆふ)つかたに/門(かど)の/戸(と)をほと 00065190M6+とたゝくは、/水鶏(くいな)の/啼音(なくね)かと/耳(ミヽ)そハだつれバ、さにあ 00065200M7らず、/若(わか)き/男(おのこ)の/声(こへ)して、/先生(せんせい)。/御在宿(ございしゆく)にかといふに、これ 00065210M8はしたりと/戸(と)をひらけバ、/近(ちか)き/頃(ころ)より/俳偕(はいかい)の/門(もん)に/入(いり)し/待名= 00065220M9斎(まちな=さい)/行安(ゆきやす)といへるものなり。/胴楽(どうらく)/先生(せんせい)、はたと/手(て)をうつて、 00065230M10先生Sイヤこれはしたり、/行安公(ゆきやすかう)。よふこそおいで。さて 00065240M11/此間(このあいだ)は/御無沙汰(ごぶさた)。まづ/御壮健(ごそうけん)でと、たがひにあいさつおわ 00065250M12り、/四方山(よもやま)のはなしとり※なるうち、行安S/先生(せんせい)。おは 00065260M13づかしい/事(こと)でござり(下ノ一オ)ますが、/問(とふ)は/当座(とうざ)の/恥(はぢ)とや 00065270M14ら。あの/百人一首(ひやくにんいつしゆ)の/中(なか)の/画(ゑ)に、/蝉丸(せミまる)のもつてゐます、/蛸(たこ)の 00065280M15どふびん見たよふなものは/何(なん)でござります△先生Sハヽヽ、 00065290M16あれでござるか。あれは/琵琶(びわ)と申ものでござる。/盲人(もうじん)など 00065300M17はよく/弾(ひき)まするもので、もと/胡国(ここく)より/伝(つた)へしものゆへ、/胡= 00065310M18琴(こ=きん)ともいひます。/風俗通(ふうぞくつう)に、/琵琶(びわ)は近代楽家所造、長 00065320M19三尺五寸、象三才五行。四弦象四時とござる。また、 00065330M20/座頭(ざとう)などの/平家(へいけ)をかたつて/弦(ひき)まするハ、/柱(ぢ)/五(いつゝ)ツにして、/其= 00065340¥P206 00065350L1音(その=ね)も/楽(がく)の/琵琶(びわ)より/微音(びをん)にござる△行安Sこれはありがたい。 00065360L2それで/琵琶(びわ)の/故事(こじ)がわかりました。してまた、その/文字(もんじ)は 00065370L3どふ/書(かき)ますな△先生Sその/文字(もんじ)はかふでござると、/硯(すゞり)/引(ひき)よ 00065380L4せ/紙(かミ)のはしに◇琵琶◇とかきしるしあたふれバ、/行安(ゆきやす)は/大(おほ)ひ 00065390L5によろこび、はなしやゝ/時(とき)をうつし、いとまごひしてかゑ 00065400L6りけるが、それより/行安(ゆきやす)は/琵琶(びわ)の/文字(もんじ)をおぼへ、いつぞは 00065410L7これをはなしして、/天狗(てんぐ)をつ(下ノ一ウ)かわんと/思(おも)ふおり 00065420L8ふし、/庭先(にハさき)の/枇杷(びわ)、すゞのことくに/実(み)のりしかバ、これさ 00065430L9いわひと/朋友(はうゆう)のかたへ/書面(しよめん)をしたゝめ、/枇杷(びわ)の/文字(もじ)をしら 00065440L10ざれバ、おなじことのやうにこゝろへ、/琵琶(びわ)/一篭(ひとかご)/進上(しんじやう)いた 00065450L11すなどゝ/書(かき)て、/枇杷(びわ)を/手折(たをり)てかごに/入(いれ)、つかハしける。/先(さき) 00065460L12の/男(おのこ)、/大(おほ)ひにわらひ、/日(ひ)を/経(へ)て/来(きた)り、/時候(じこう)のあいさつおわ 00065470L13つて、友人Sさて/先日(せんじつ)は/御庭前(ごてゐぜん)の/菓(このミ)をくだされ、ありがた 00065480L14ふぞんじます△行安Sヱヽ、すこしばかりでござりますけ 00065490L15れど、/今年(こんねん)はなり/年(どし)かして、/余程(よほど)/実(ミ)のりましたゆへ△友人 00065500L16Sさて、もらひながら/申(もふす)ハいかゞじやが、/先日(せんじつ)の/御書翰(おてがミ)は、 00065510L17ちとあて/字(じ)があるよふにおもひますが△行Sどの/字(じ)でござ 00065520L18りますな△友人Sイヤ、/別(べつ)の/字(じ)でもごさらぬが、/枇杷(びわ)/一篭(ひとかご) 00065530L19と/書(かく)ところを、/琵琶(びわ)と/書(かき)ちがふてござるが、あれハ/思(おぼ)しめ 00065540L20しがあつての/事(こと)でござるかなといわれて、/行安(ゆきやす)もちつくり 00065550M1/胸(むね)にこたへしか(二オ)ども、まけおしミのつよき/男(おのこ)ゆへ、 00065560M2行Sヱヽ、あれは/随分(ずいぶん)、あの/字(じ)を/書(かい)てもよふござります 00065570M3友Sハア、それはどふいふわけでござりますと、おしてと 00065580M4へバ、/行安(ゆきやす)はつよい/皃(かほ)して、行Sハテ、/枇杷(びわ)と/琵琶(びわ)とは、 00065590M5どちらもなりものじやよつて 00065600¥N2¥J 00065610¥X◇/参議(さんぎ)/篁(たかむら)△△@/和田(わだ)のはら/八十嶋(やそしま)かけてこぎ/出(いで)ぬと|/人(ひと)にはつげよあまのつりふね△△△@◇ 00065620M9/夏(なつ)の/暑(あつさ)を/忘(わす)れんと、/夕(ゆふ)ぐれかた、/軒端(のきば)に/床(とこ)をすへて、/父子(おやこ) 00065630M10/二個(ふたり)すゞみ/居(ゐ)つゝ、むすこSアノ/親仁(おやぢ)さん。/百人一首(ひやくにんいつしゆ)の/中(なか) 00065640M11にある/参議(さんぎ)/篁(たかむら)といふのは、/小野篁(おのゝたかむら)の事かいなア△親父Sそ 00065650M12ふ+、あれは/哥字(うたじ)づくしを/作(つく)りはじめさつしやつたお 00065660M13/人(ひと)じや△むすこSヲヽ、その/哥字尽(うたじづくし)のはじめは、何とやら 00065670M14いひますなア△親Sまたわすれたかい。/春(はる)つばき/夏(なつ)は(二 00065680M15ウ)ゑのきに/秋(あき)ひさぎ△/冬(ふゆ)はひいらぎおなじくハきり△む 00065690M16すこSおやぢさん。そふじやない△親Sなんとじや△むすこ 00065700M17S/春(はる)/芝居(しばゐ)/夏(なつ)はすゞみに/秋(あき)ははぜ△/冬(ふゆ)はこたつで/千話(ちわ)のたの 00065710M18しミ△おやぢS/何(なに)をぬかすやら。そんな/哥字(うたじ)つくしがある 00065720M19ものかといへバ、むすこ、ぬからぬ/皃(かほ)で、むすこSヲヽそ 00065730M20ふじや。これはばかむらのうハきづくしじや 00065740¥P207 00065750¥G(三ウ・四オ) 00065760¥N3¥J 00065770¥X◇/僧正遍昭(そうじやうへんじやう)△△@/天津風(あまつかぜ)/雲(くも)のかよひぢふきとぢよ|/乙女(おとめ)のすがたしばしとゞめん△@◇ 00065780M4/古今集(こきんしう)の/序(ぢよ)に、/僧正遍昭(そうじやうへんじやう)は/哥(うた)のさまはえたれども、まこ 00065790M5とすくなし。たとへバ/画(ゑ)にかけるおうなを見て、いたづら 00065800M6にこゝろをうごかすがごとしと。それにはあらねど、/浪華(なには) 00065810M7の/片田舎(かたいなか)に、ひとりずみなす/男(おのこ)あり。ある/日(ひ)/浪花(なには)の/町(まち)に、 00065820M8/青物(あをもの)など(三オ)(三ウ・四オ挿絵)もて/売(うり)に/出(いで)けるかへるさ、ふ 00065830M9と/古道具店(ふるどうぐミせ)をながめやるに、いとうつくしき/女雛(めびな)壱ツ/出(いだ)し 00065840M10あり。その/容顔(ようがん)/美麗(びれい)なること、/唐土(もろこし)の/李夫人(りふじん)、/楊貴妃(ようきひ)、/本= 00065850M11朝(わか=てう)の/小野小町(をのゝこまち)なとにも、まさるともおさ+おとるまじく 00065860M12おほへて、しきりに/恋(こひ)しくなりしかば、/価(あたひ)をたづぬるに、 00065870M13/女雛(めびな)のかたしにて/買人(かいて)なきものゆへ、あたひいたつて/安(やす)け 00065880M14れバ、/売(うり)ものゝ/銭(ぜに)をもて、これをもとめ、/直(たゞち)に/我家(わがや)にかゑ 00065890M15り、/床(とこ)の/間(ま)とおぼしきところにすへ、/日毎(ひごと)に/此顔(このかほ)をよねん 00065900M16なくうちながめ、/後(のち)には/酒(さけ)さかなをこしらへ、/酒(さけ)をのミつ 00065910M17ゝ、/生(いけ)る/人(ひと)にむかふがごとく、さま※にかきくどきける 00065920M18が、/不思議(ふしぎ)なるかな、/男(おのこ)の/一心(いつしん)、/木偶(にんぎやう)にてつせしにや、/此= 00065930M19女雛(この=めびな)、/声(こへ)をはつし、ひなS/此間(このあいだ)から、だん+とあついお 00065940M20こゝろざしの/程(ほど)、うれしうこざんす。/其御詞(そのおことば)にちがハずバ、 00065950¥P208 00065960L1ずいぶん/女房(にやうぼう)になりませふ。しかし、見やしやんすとふり、 00065970L2/此(この)よふに十二ひとへ(四ウ)に/緋(ひ)の/袴(はかま)では、/一向(いつこう)/自由(じゆう)もしに 00065980L3くし。/女房(にやうほう)になれバ/飯(まゝ)もたいたり/水(ミづ)しごともせねバならぬ。 00065990L4/緋(ひ)の/袴(はかま)では/前垂(まへだれ)のかわりにもなりにくひ。どふぞ/衣装(ゐしやう)をこ 00066000L5しらへてくださんせといふ/声(こへ)きいて、/男(おのこ)ハ/大(おほ)ひによろこび、 00066010L6男Sなるほど、もつとも/承知(せうち)さへしてくれるなら、ゐしや 00066020L7うぐらひはなんでもない。/今(いま)からいて/買(か)ふてこふと、うつ 00066030L8ゝのごとくになりて、いそがハしく/立出(たちいで)つ。/直(たゞち)に/浪花(なには)の/町(まち) 00066040L9にゆき、/座摩(ざま)の/前(まへ)の/古手店(ふるてミせ)にいたり、かれこれと見づくろ 00066050L10ひ、/紬(つむぎ)じまに/黒繻子(くろじゆす)の/帯(おび)なんどもとめ、/引(ひき)かたげつゝもち 00066060L11かへり、おとこSサア+/買(か)ふて/来(き)た+。ちやつと/着(き)か 00066070L12へてたもと、はや/女房(にやうぼう)の/気(き)どりになつてよろこびいさむに、 00066080L13/女雛(めびな)もすかさず、十二ひとへ、ひのはかまぬぎすて、つむ 00066090L14ぎじまに/黒繻子(くろじゆす)の/帯(おび)/引(ひき)しめ、さげがミもときあげなどする 00066100L15に、/天晴(あつぱれ)の/女房(にやうぼう)なれバ、/男(おのこ)は/天(てん)へものぼる/心地(こゝち)して、/手(て)の 00066110L16まひあしのふミ/所(どころ)をしらず、(五オ)さま※といつくしミ、 00066120L17/朝夕(あさゆふ)むつまじくくらしける。/此(この)またとなれる/家(いへ)にも、ひと 00066130L18りずミの/男(おのこ)すみけるが、/此(この)ありさまに/大(おほ)ひにいぶかり、/何(いづ= 00066140L19方(いづ=く)よりしてかゝる/美女(ひぢよ)をむかへしや、いかゞせしことよと、 00066150L20/一日(あるひ)/此(この)よしを、かの/男(おのこ)にたづぬるに、/如此&(しか※)&/箇様&(かやう+)&と、 00066160M1/女雛(めびな)のわけをものがたるに、それはいと/心安(こゝろやす)きことなり。 00066170M2われも/其伝(そのでん)をなして/女房(にやうぼう)にせんと、/浪花(なには)の/町(まち)にいでゝ/此所(こゝ) 00066180M3/彼所(かしこ)と見めぐり、/女雛(めびな)をさがしもとむれども、かつてなく、 00066190M4/人形店(にんぎやうミせ)をたづぬれども、/男雛(おびな)/女雛(めびな)とそろへざれバ、はな 00066200M5してハ/売(うり)がたしとてとりあへざれバ、/大(おほ)ひにのぞミをうし 00066210M6なひ、/丼池(どぶいけ)すじをしほ+とかへるに、/古道具店(ふるどうぐミせ)に/聯板(れんいた)と 00066220M7おぼしく、うつくしき/女(おふな)のゆかたを/着(き)て/立(たつ)たる/湯(ゆ)あがり/風(ふう) 00066230M8に/画(ゑが)きたるものあり。これさいわひのものなり。/人形(にんぎやう)にて 00066240M9も/画像(ゑぞう)にても/一心(いつしん)をこめたれバ、やはかかわれることあら 00066250M10んやと、これをもとめてたづさへかへり、/上座(かミざ)の(五ウ)/柱(はしら) 00066260M11にかけ、/隣(とな)りの/男(おのこ)の/伝(つた)へしごとく、/酒(さけ)さかなをもとめ、/画= 00066270M12像(ゑ=ぞう)のまへにもちゆき、/数盃(すはい)をかたぶけ、/酔(ゑひ)に/乗(じやう)じて/日毎(ひごと)に 00066280M13くどきしかバ、これもふしぎや、/一心(いつしん)の/通(とふ)りししるしにや、 00066290M14七日めの/夕(ゆふ)つかた、/画像(ゑぞう)につことうちわらひ、/声(こへ)を/発(はつ)して 00066300M15いふやう、女Sだん+のおこゝろざし、/此身(このミ)にあまりて 00066310M16もつたいなし。ずいぶんお心にしたがひませふ。かならず 00066320M17/見捨(ミすて)て/下(くだ)さんすな。しかしおまへも見てのとふり、ゆかた 00066330M18/一(いち)まいで/帯(おび)さへせずにいるによつて、どふも/人(ひと)さんの/手(て)ま 00066340M19へもはづかしいと、ミなまでいわさず、おとこSしやう 00066350M20ち+。なんにもいひなのくもじじや。となりの/衣装(ゐしやう)より、 00066360¥P209 00066370L1こつちハはりこんで/買(か)ふて/来(く)るつもりじや。/又(また)もや/御意(ぎよゐ)の 00066380L2かわらぬうち、/一(ひと)はしり/町(まち)へいて/買(か)ふてこふと、しり/引(ひつ)か 00066390L3らげ/出行(いでゆき)ける。/時(とき)をうつさず/一(いつ)さんに/走(はせ)かへり、/小袖(こそで)と/帯(おび) 00066400L4を/画像(ゑぞう)にわたせバ、/女(をふな)はこれをうけとり、/直(たゞち)にゆかたと/着(き) 00066410L5かゆる(六オ)に、すきあげがミに/湯(ゆ)あがりの/桜色(さくらいろ)なる/皃(かほ)ば 00066420L6せにて、もとより/粋(すい)な/風俗(ふうぞく)なれバ、/男(おのこ)は/大(おほ)ひによろこび、 00066430L7あらひ/風(かぜ)にもあてまじと、すぎわひさへもうちわすれ、/女= 00066440L8房(にやう=ぼう)をいつくしミ/居(ゐ)ける。ある/日(ひ)ふとこゝろつき、/此(この)四五日 00066450L9は/活業(すぎわひ)にもいでずありしが、かくては/末(すへ)のつまらぬことよ 00066460L10と、/此男(このおのこ)もとなりにひとしき/笊籬振(ざるふり)といへるものなれバ、 00066470L11/菜大根(なだいこん)のたぐひもて、/浪花(なには)の/町(まち)に/売(うり)にいで、八ツ/下(さが)る/頃(ころ)、 00066480L12/家(いへ)にかへり見るに、/女房(にやうぼう)いづくに/行(ゆき)けん、うちにあらざれ 00066490L13ハ、しば+いぶかり、となりにゆきて、男Sもし、わた 00066500L14くしところの/嚊(かゝ)は、こなたにはおりませんかな△ひなSイ 00066510L15ヱ+、わたしのところには/御出(おいで)なさらんが、/今(いま)の/先(さき)まで 00066520L16こへがしましたが、どこへいてじやあつたいなといふに、 00066530L17/男(おのこ)ハます+おどろき、そこよこゝよとさがしもとむれど 00066540L18も、其たよりをゑず。これはなんでもたゞごとならずと、 00066550L19/浪花(なには)に/名高(なたか)き(六ウ)/一貫堂(いつくハんどう)といへる/易者(ゑきしや)の/方(かた)にいたり、/案= 00066560L20内(あ=ない)を/乞(こひ)て/右(ミぎ)のよしを/告(つぐ)るに、/一貫堂(いつくハんどう)ハ/此男(このおのこ)にむかひ、一貫 00066570M1堂Sシテ、/其女中(そのぢよちう)のお/年(とし)は/何才(なんさい)でござる△男Sへヱ、/何歳(なんさい) 00066580M2か、しかとぞんじませんが△一Sしかれバ、お/名(な)はなんと 00066590M3申ます△男Sヘヱ、/名(な)もまだしかとしりませぬが△一Sそ 00066600M4れなれバ、/親元(をやもと)の/方角(ほうがく)は/何方(いづかた)でござる△男Sヘヱ、/親(おや)の/内(うち) 00066610M5はない/女(おふな)でこさります△一Sはてさて、それハとんとつら 00066620M6まへどころがない、こまつたものじやといひつゝ、しばし 00066630M7かんがへて、一Sハヽア、しれました。これはまつたく/俗(ぞく) 00066640M8にいふ/神(かミ)かくしのたぐひでござるといへバ、/彼男(かのおのこ)、かしら 00066650M9をふつて、男Sイヱ+、/神(かミ)かくしではござりませぬ△一 00066660M10S/是(これ)はけしからぬ。それ/程(ほど)/知(しつ)てござれバ/尋(たづ)ねにござらんが 00066670M11よい。なぜに/神(かミ)かくしでハござらんぞととハれて、/此男(このおのこ)、 00066680M12あたまかき+、男Sハイ。あれは/有様(ありやう)は、はしらかくし 00066690M13でござります 00066700¥Q1 00066710M14/此説話(このはなし)ハ/東都(とうと)/滑稽家(こつけいか)/何某(なにがし)の/作(さく)なるを、/先年(せんねん)、/僕(やつがれ)/聞(きゝ)および 00066720M15しが、あまり/其趣向(そのしゆこう)(七オ)/奇談(きだん)にして/且(かつ)/風流(ふうりう)なり。よて/其= 00066730M16趣向(その=しゆこう)をこゝにかり/用(もち)ひたり。/是(こ)は/予(よ)が/拙(つたな)き/説話(はなし)をいさゝか 00066740M17/補(おぎ)なハんのミ。見る/人(ひと)、うたがふことなかれ 00066750¥P210 00066760¥N4¥J 00066770¥X◇/陽成院(やうぜいゐん)△△@つくばねのミねよりおつるみなの/川(がわ)|/恋(こひ)ぞつもりて/淵(ふち)となりぬる△△△△@◇ 00066780L4/諺(たとへ)にいへる/菜種(なたね)から/蕪(かぶら)までと、/世(よ)にはよく/根(ね)どひをするも 00066790L5の、まゝあり。/秋(あき)の/夕(ゆふ)べのさミしきに、/友(とも)どち/両三輩(りやうさんぱい)あつ 00066800L6まりて、うちかたらひけるが、/中(なか)にも、かのよく/根(ね)どひな 00066810L7すものありていふやう、男Sアノ/百人一首(ひやくにんいつしゆ)の/中(なか)に、/陽成院(ようぜいゐん) 00066820L8の/御製(ぎよせい)に、つくばねの/峯(ミね)よりおつるみなの/川(がわ)△/恋(こひ)ぞつもり 00066830L9て/淵(ふち)となりぬる、といふは、どふいふものじやあらふなと 00066840L10いふに、かたハらなる/高慢者(かうまんもの)、/鼻(はな)を/少(すこ)し/高(たか)くなして、(七 00066850L11ウ)高まんSあれハ/恋(こひ)の心をよんだものじや。筑/波根(ばね)も/美奈(ミな) 00066860L12の/川(かわ)も/常陸(ひたち)の/国(くに)の/名所(めいしよ)しやが、/此川(このかわ)の/末(すへ)は/桜川(さくらがハ)といふ/川(かわ)へ 00066870L13おちるといふ。そのもとは、つくば山から/真砂(まさご)の/下(した)をくゞ 00066880L14つて/一滴(ひとしつく)づゝ/流(なが)れて/出(で)るのじやが、/末(すへ)は/大(おほ)きい/河(かわ)と/成(なる)とい 00066890L15ふを、/恋(こひ)にたとへたものじや。/恋(こひ)もはじめは、ちよつと見 00066900L16そめたが/縁(ゑん)のはしになつて、/深(ふか)ひ/思(おも)ひとなる/事(こと)じやによつ 00066910L17て、/水(ミづ)のかすかながつもり+て/淵(ふち)となるといふにたと 00066920L18へたものじや△男Sなる/程(ほど)、それで/恋(こい)の/淵(ふち)といふのじやな 00066930L19高Sそこで/恋(こひ)の/淵瀬(ふちせ)などゝいふ/事(こと)を、/哥(うた)にまゝよむこと 00066940L20がある△男Sフン、そんなら/恋(こひ)の山といふものがあるか 00066950M1な△高Sあるとも。いかばかり/恋(こひ)の/山路(やまぢ)のしげけれバ 00066960M2/入(いる)と/入(いり)ぬる人まどふらん、といふ/哥(うた)があつて、/恋(こひ)の山とも 00066970M3いふ△男Sフン、そんなら/恋(こひ)の/海(うミ)といふものがあるか△高 00066980M4Sあるとも。/君(きミ)ゆへに/思(おも)ふ/思(おも)ひは/大(おほ)うミの△/波(なミ)をバ/袖(そて)にか 00066990M5けぬまもなし(八オ)(八ウ・九オ挿絵)とよんで、/恋(こひ)の/情(じやう)を/海(うミ) 00067000M6によそへたものじや△男Sフン、そんなら/恋(こひ)の/川(かわ)といふ/物(もの) 00067010M7が/有(ある)か△高S有とも、/泪川(なミだがハ)/袖(そで)にながるゝ/水(ミづ)の/泡(あハ)の△よるこ 00067020M8そまされ/消(きへ)かへりつゝ△男Sフン、そんなら/恋艸(こいぐさ)といふ物 00067030M9があるか△高Sあるとも。しらざりしわが/恋草(こいぐさ)や/茂(しげ)るらん 00067040M10△/昨日(きのふ)ハかゝる/袖(そて)の/露(つゆ)かハ△男Sフン、そんなら/恋(こい)に/関(せき)ハ 00067050M11あるか△高S/有(ある)とも。かずならでいひてんことをとゞめつ 00067060M12る△うきミや/恋(こい)の/関(せき)となるらん、とだん+とこたへるゆ 00067070M13へ、いかなる/根問(ねどひ)もたんのふして/指(ゆび)をおりつゝ、男Sマア、 00067080M14/恋(こい)の山、/恋(こい)の/海(うミ)、/恋(こい)の/淵瀬(ふちせ)、恋の川、恋/草(くさ)、恋の/関(せき)とかぞ 00067090M15へつゝ、男Sヲヽまだある+。/恋(こい)の/里(さと)といふものがある 00067100M16かと/問(とハ)れて、/高慢者(かうまんもの)もちつくりいき/留(どま)りなから、すかさず、 00067110M17高まんSあるとも+。/恋(こい)の/里(さと)は/色町(いろまち)のことじや 00067120¥N5¥J 00067130¥X◇/河原(かわら)/左大臣(さだいじん)△△@みちのくのしのぶもぢずり/誰(たれ)ゆへに|ミだれそめにし/我(われ)ならなくに(九ウ)@◇ 00067140¥P211 00067150¥G(八ウ・九オ) 00067160M1/陸奥(ミちのく)/信夫(しのぶ)の/郡(こふり)に/大(おほ)ひなる/石(いし)あり。/其面(そのおもて)たいらにして、/戻(もぢ)の 00067170M2やうなる/紋(もん)あり。それに/藍(あい)をもてすれる/布(ぬの)を、むかし/天智= 00067180M3天皇(てんち=てんわう)の/御時(おんとき)、/年貢(ねんぐ)にたてまつりしとなん、これをしのぶも 00067190M4ぢずりといへるよし。このふる/事(こと)をうつして、/今(いま)も/絹木綿(きぬもめん) 00067200M5などにそのかたちをなして、うつくしく/摺(すり)あげしものあり。 00067210M6ある/家(いへ)の/旦那(だんな)、/友(とも)どちのかたにいたりし/折(おり)ふし、/呉服屋(ごふくや)の 00067220M7もて/来(きた)りしを見て、/家(いへ)にかへり/女房(にやうぼう)にはなしせしが、それ 00067230M8はめづらしきものなり。/何(なに)とぞ見たきよしを/告(つぐ)るに、/旦那(だんな) 00067240M9は/長吉(てうきち)をよびて、旦那Sこりや+/長(てう)吉。/西(にし)の/丁(てう)の太郎兵 00067250M10衛様のところへいて、/先刻(せんこく)は/御馳走(ごちそう)にあづかりましてあり 00067260M11がたふぞんじます。そのせつ、ちよつと/拝見(はいけん)いたしました 00067270M12/忍(しの)ぶずりを、/女房(にやうぼう)どもが見たいと/申(もふし)ますゆへ、どふぞしば 00067280M13し/御(お)かし下されませと、かつてこいといふに、長吉は/最前(さいぜん) 00067290M14よりつく※(十オ)/聞(きい)ていたりしが、/此(この)よしを/聞(きい)て/旦那(だんな)に 00067300M15むかひ、長吉Sもし+/旦那(だんな)さん。そのやうに/忍(しの)ぶずりは 00067310M16/大切(たいせつ)なものでござりますか△旦那Sイヤ+、/大切(たいせつ)なとい 00067320M17ふ事はなけれど、マアめづらしいものじやによつて△長吉 00067330M18Sヘヱヽ、わたくしはたくさんなよふに/思(おも)ふて/居(ゐ)ます△旦 00067340M19那Sそれハ/又(また)なぜに△長Sハイ。しのぶずりハミな、ふと 00067350M20い/針(はり)がねでいたしますよつて 00067360¥P212 00067370¥N6¥J 00067380¥X◇/光孝天皇(くハうかうてんわう)△△@/君(きミ)がため/春(はる)の/野(の)にいでゝわかなつむ|/我(わが)ころも/手(で)に/雪(ゆき)はふりつゝ△△△△@◇ 00067390L4/初雪(はつゆき)のちら+と/降(ふり)くるを、/弥治(やぢ)・/助(すけ)四郎といへる/男(おのこ)/二個(にゝん)、 00067400L5つどひてながめながら、助四郎Sなんと弥治さん。/初雪(はつゆき)の 00067410L6ながめといふものは、しほらしいものじやないか△弥治 00067420L7Sそふとも。/初雪(はつゆき)はかうすくないので、人か/賞翫(しやうくハん)するのじ 00067430L8や。/古(ふる)い/句(く)にも、/初雪(はつゆき)の/続(つゞ)かバ人にあかるべし(十ウ)とは、 00067440L9もつともなことじや△助Sなる/程(ほど)、よふできた/句(く)じやなア。 00067450L10ほんに、その/雪(ゆき)でおもひ/出(だ)した。/漢土(もろこし)の/孟宗(もうそう)は、/雪(ゆき)の/中(なか)の 00067460L11/笋(たけのこ)をとつて/親(おや)にあたへ、/王祥(わうしやう)は/氷(こふり)の/中(なか)の/魚(うを)を/得(ゑ)て/孝(かう)をつ 00067470L12くしたと、/廿四孝(にじうしかう)のはなしで/聞(きい)たが、/漢土(もろこし)にはめつたに/孝(かう) 00067480L13をつくす/人(ひと)があるが、/日本(につぽん)には/孝子(かうし)の/名高(なだか)いのはないかし 00067490L14て、とんと/聞(きか)んが、おまへ/聞(きい)てか△弥Sサア、あんまり/高= 00067500L15名(かう=めい)な/人(ひと)もないが、アノ/百人一首(ひやくにんいつしゆ)にいれてある/天皇(てんわう)さんに、 00067510L16/孝行天皇(かう+てんわう)といふのがあるが、あれは/哥(うた)からして/孝行(かう+)らしい。 00067520L17/笋(たけのこ)じやないが、/雪(ゆき)のふるのに/若菜(わかな)をつましやつたと見へ 00067530L18る△助Sイヤ+、あれは/孝行(かう+)じやない、/忠義(ちうぎ)じやあろ△ 00067540L19弥Sなにいわんすやら。/名(な)から/孝行天皇(かう+てんわう)とつけてあるもの、 00067550L20/忠義(ちうぎ)であらふはづがない△助Sそふいわしやんな。/忠義(ちうぎ)と 00067560M1いふ/証拠(しやうこ)にハ、/哥(うた)の/初文字(しよもじ)をよんでミやんせ。/君(きミ)がためと 00067570M2してあらふがな(十一オ) 00067580¥N7¥J 00067590¥X◇/中納言(ちうなごん)/行平(ゆきひら)△△@/立(たち)わかれいなばの/山(やま)のみねにおふる|まつとしきかバ/今(いま)かえりこん△△△@◇ 00067600M6きのふとくれ/今日(けふ)とくらして、いつしか/年(とし)も/暮(くれ)つかたに/成(なり) 00067610M7ゆき、/春(はる)をまつもふけにいそがハしき/中(なか)に、/須磨(すま)の/浦辺(うらべ)の 00067620M8/漁夫(りやうし)/農人(ひやくしやう)などうちつどひ、/例年(れいねん)としわすれととなへ、/心(こゝろ) 00067630M9きゝたる/男等(おのこら)、/俄雑劇(にハかしばゐ)のたぐひをなして、/夜(よ)とともにたの 00067640M10しむことあり。/今年(ことし)もかわらずつとめんと、/薮(やぶ)の/下(した)の五郎 00067650M11兵衛、/堤(つゝミ)の七助、どんどろの/九郎作(くろさく)など、/其外(そのほか)/若(わか)いものう 00067660M12ちよりて、/今度(こんど)の/狂言(きやうげん)はなにゝせふと、/毎夜(まいよ)+よりあつ 00067670M13まり、/忠臣蔵(ちうしんぐら)がよからふといへバ、いや/金門五三桐(きんもんごさんのきり)がよい、 00067680M14いや/恋女房(こひにやうぼう)にせふと、/評定(ひやうじやう)まち+にて/一向(いつかう)にきまりつか 00067690M15ず。/中(なか)にもこゝろ(十一ウ)きゝたる/九郎作(くろさく)いふには、九郎 00067700M16Sなんと、ミなの/衆(しゆ)。かふ/毎夜(まいよ)+よつて、ぢや+いふて 00067710M17/居(ゐ)るばかりで、とんときまりがつかいでは、むかふに/日(ひ)の 00067720M18ないことじやによつて、/稽古(けいこ)する/間(ま)がなふてはめいわくじ 00067730M19や。/此頃(このごろ)/浪花(おゝさか)から、こちのとなりへきて居る/客人(きやくじん)があるが、 00067740M20あの人は/作者(さくしや)とやらいふものじやそふな。いつかふ、その 00067750¥P213 00067760¥G(十二ウ・十三オ) 00067770M1/人(ひと)をよんで/来(き)て/相談(そうだん)したら、どふじやあろ△七Sそれハよ 00067780M2かろ。なんといふても/浪花人(おゝさかびと)といひ、/殊(こと)に/作者(さくしや)なら、こん 00067790M3なことは/手(て)がけていやしやるじやあらふ。よかろ+と、 00067800M4/一統(いつとう)に/承知(せうち)ゆへ、/急(きう)にこれをたのミに/行(ゆき)て、/評定(へうじやう)の/場所(ばしよ)へ 00067810M5むかへ、しか※のよしをものがたれバ、/作者(さくしや)はしばし/沈= 00067820M6吟(し=あん)して、作者Sそれはもふ、かれこれとむつかしい/狂言(きやうげん)よ 00067830M7りは、/所(ところ)がらのことじやによつて、/磯馴松(そなれまつ)を/出(だ)して、/松風(まつかぜ) 00067840M8/村雨(むらさめ)の/趣向(しゆかう)がよからふ△九郎作Sなるほど、/作者(さくしや)はさくし 00067850M9やだけじや。/三(ミ)とせはこゝに/須磨(すま)の/浦(うら)と(十二オ)(十二ウ・十 00067860M10三オ挿絵)いふやつは、いやでもおふでもせんならん/所(ところ)じや。 00067870M11/中納言(ちうなごん)様の/配所(はいしよ)のことじやによつて、マア/所(ところ)の/規矩(きく)じや。 00067880M12それがよからふと、ひとりがいへバ、/口&(くち※)に、よかろ+ 00067890M13と/一統(いつとう)に/承知(せうち)して、さつそく/磯馴松(そなれまつ)にきまりしかバ、/翌日(あす) 00067900M14から/本(ほん)よみして、/稽古(けいこ)にかゝらふと/相談(そうだん)するところへ、/是(これ) 00067910M15をきゝつけ、/村(むら)の/老分(おやぢぶん)/来(き)たり、おやぢSこれハ+/浪花(おゝさか)の 00067920M16/御客(おきやく)さん。おゝけい/御世話(おせわ)さんでござります。モウ/此間(このあいだ)か 00067930M17ら、あの/若(わか)い/者等(ものら)がよつて、/毎夜(まいよ)+ぢや+といふばか 00067940M18りで、とんと/煮(にへ)るといふことがない。おまへ様が/来(き)て/下(くだ)さ 00067950M19つたので、まあ/相談(そうだん)もさつそくにへまして、うれしうござ 00067960M20りますと、/大(おゝ)ひによろこべバ、/作者(さくしや)も/少(すこ)し/鼻高(はなたか)ふして、作 00067970¥P214 00067980L1Sイヤもふ、べつによい/智恵(ちゑ)も/出(で)ませねど、あんまりぢや 00067990L2+いふて、にへぬときゝましたゆへ、はよふにへるよふ 00068000L3に、/行平(ゆきひら)にしました(十三ウ) 00068010G1〔下巻挿絵中の歌詞〕 00068020G2△△(はなしのこゝろによせ)あまさかるひなに見なれぬ都風 00068030G3△△△これや官女のはてこゝろへぬ△△烏足斎△文成 00068040G4△△くとかれていなにはあらぬいなしきの 00068050G5△△△男にそへるひなの女房△△柳女(三ウ・四オ) 00068060G6△△文よりもかきなす琴のしらへにて 00068070G7△△△君にこゝろをかよハせてひく△△浪華△里住 00068080G8△△嬉しさにときめく胸のさゝ波や 00068090G9△△△志賀も互に見へぬはつ恋△△鶏鳴舎(八ウ・九オ) 00068100G10△△浦風にふかれ千鳥はなミよりも 00068110G11△△△須磨の磯辺にうちよりてなく△△浪華△里住 00068120G12△△松風と村雨のみか須磨の浦 00068130G13△△△朝夕かよひ吊ふ友千鳥△△太平△御代成(十二ウ・十三オ) 00068140¥Q 00068150M3摂都△暁鐘成戯作併画図 00068160M5同△△△△和田正兵衛書 00068170M6京都△△△井上治兵衛刀 00068180M7△文政六癸未年夏五月発販 00068190M8△△△△△心斎橋通南久太郎町 00068200M9浪華書肆△△河内屋平七版 00068210¥P215 00068220¥U噺本大系△第十五巻 00068230¥T/落噺屠蘇喜言(おとしばなしとそきげん)〔内題〕 00068240¥G 00068250¥Y 00068260L16文政七年正月刊 00068270L17桜川慈悲成作 00068280L18丸屋文右衛門板 00068290L19中本一冊 00068300L20国立国会図書館蔵 00068310¥Y 00068320M3桜川慈悲成作 00068330M6@おとし|はなし@/屠蘇喜言(とそきげん) 00068340M9文政七年甲申孟春 00068350M11文寿堂寿桜 00068360M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(見返扉) 00068370¥P216 00068380¥Y/落噺屠蘇喜言(おとしばなしとそきげん)序 00068390L3どふだ/先生(せんせい)。/何(な)ンぞおもしろき/言(こと)ハなしかとハ、/唐(から)も/日本(やまと) 00068400L4もまづ、/夜噺(よばなし)の/兼題(けんだい)なり。/文車(ふぐるま)に/似(に)たる/箱火鉢(はこひばち)の/引出(ひきだ)しに 00068410L5ハ、/歌仙(かせん)せんべいあり。また/詩(し)百ぺん(壱オ)/酒(さけ)ハ/壱斗(いつと)の/書= 00068420L6出(かき=だ)しも/出(で)る。/春雨(はるさめ)むすぶつれ※にも、/虚(うそ)らしゐうそは、 00068430L7いと/目出(めで)たし。はた/馬鹿(ばか)らしい/馬鹿(ばか)も/猶(なを)おかしく、/利口(りかう)ら 00068440L8しい/利口(りかう)な/子僧(こぞう)どんハよけれども、/理屈(りくつ)らしい/理屈者(りくつしや)ハ、 00068450L9こつちの(壱ウ)/茶釜(ちやがま)でこしらいた/百茶(ひやくぢや)の/煮(に)ばなは、のませ 00068460L10まひぞ+といふ 00068470L12△△△文政七年△△△△△△△△桜川 00068480L13△△△△△申初春△△△△△△△△△慈悲成 00068490L14△△△△△△△△△△△△△△△△G 00068500L16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(弐オ) 00068510¥G(弐ウ・ロ三オ) 00068520¥P217 00068530¥Y目次 00068540L3△△へちまの/述懐(じゆつくわい) 00068550L4△△/猪牙舟(ちよきふね)の/利口(りこう) 00068560L5△△/貧福神(ひんふくじん)の出合 00068570L6△△/蚰(けじ+)の/中(ちう)ツ/腹(ぱら) 00068580L7△△ありさうな/嘘(うそ) 00068590L8△△@まじめで△|こハらしい@/虚談(うそ) 00068600L9△△一口/気性(きしやう)の/噺(はなし) 00068610L10△△△△△通計△七種△(ロ三ウ) 00068620¥G 00068630¥T1/落噺屠蘇喜言(おとしばなしとそきげん)△△△△△△△△△¥A桜川慈悲成作 00068640¥N1¥J 00068650¥X○/軒(のき)にぶらりと/絲瓜(へちま)の/述懐(じゆつくわい) 00068660M5Sアヽまゝならぬよの中じやナア。/同(おなじ)かたちと/云(いひ)ながら、 00068670M6/夕顔(ゆふがほ)の/肌(はだ)もきれいな/生(むま)れつきゆへ、/源氏(げんじ)なぞにも/召出(めしだ)され 00068680M7て、いまでハ/高(かう)まんな身の/上(うへ)。/夫(それ)に/引(ひき)かえわが/身(ミ)の/上(うへ)。お 00068690M8らが/親父(おやぢ)が/己(おれ)が/名(な)を、なぜに/絲瓜(へちま)とつけたことじややら。 00068700M9へちまと/言(いふ)を/能(よい)ことのやうに思ハれし、へちま/親父(おやぢ)どのゝ 00068710M10こゝろのうち、(三オ)うらめしや+。今此やうに/言(いへ)バ/愚= 00068720M11痴(ぐ=ち)のいたり。アヽいふまひ+。われじやとて、/生(むま)れ/子(こ) 00068730M12の其ときハ、山の/二軒茶屋(にけんぢやや)、/向(むかふ)じまのあたりでハ、へちま 00068740M13+と/持(もて)はやされ、/味噌(ミそ)をあげるじやなけれども、/田楽(でんがく) 00068750M14にでもなる/其時(そのとき)ハ、/能(よき)/御方(おんかた)の/御口(おくち)にも/入(いり)、きミやうでご 00068760M15ぜすの/吸物(すひもの)と、/一坐(いちざ)をしたることもあり。その/時(とき)、/外(ほか)か 00068770M16ら心づかひハ、アノ/下戸(げこ)たち、ナンダへちまか、いかぬ 00068780M17ものと、さもきたなそうにつまゝれて、/前歯(まへば)で弐三/分(ぶ)/喰(くひ) 00068790M18きられ、(三ウ)/顔(かほ)をしかめて/灰吹(はいふき)へ、ほき出される其つ 00068800M19らさ。/一坐(いちざ)の/肴衆(さかなしゆ)へ、どうもかほがむけられぬハいのう。 00068810M20ちいさい時からその心づかひ。うきが中にもたのしミハ、 00068820¥P218 00068830L1うぬぼれらしいやうなれども、ソレ十五夜の月あかり、わ 00068840L2しも/若気(わかげ)の恋ざかり、引手あまたの/徳利(とくり)どの、忍び+に 00068850L3口と口、水の出ばなのしのびあひ、/錦(にしき)手どのや/白鳥(はくてう)どのへ、 00068860L4思ひの水をもらすうれしさ。/貧乏(びんぼ)徳利やふらそこの、ちぎ 00068870L5りハ/辻(つぢ)ぎみ/長崎(ながさき)の、けいせいにあふ心もち。こゝがへちま 00068880L6のぬれごと(四オ)やつし。三津五郎か菊五郎と、たのしん 00068890L7でいるかひもなく、/雨露(うろ)のめぐミに/成(せい)人しすぎ。/影(かげ)ぼしと 00068900L8やらなんとやら、今此ごとく/軒(のき)に/釣(つり)さげられ、やせおとろ 00068910L9えし此身のうへ。つらい心も知くさらいで、今もいまとて、 00068920L10ぶじやれな人のわる口に、/己(おれ)が/形(なり)見て、馬どの+たいこ 00068930L11をうちやれと、あちらへぶらり、こちらへふらり、はりま 00068940L12ハされし其くやしさつらさ。/老(おい)てはかくぞと色けをさり、 00068950L13クツト心をあらためて、/浮世(うきよ)のすがたをむきとりて、(四 00068960L14ウ)真を水衣のごとくになし、こゝろ/清浄(せう※)に暮さんと思へ 00068970L15バ、かなしいかなや、/疾(しつ)かきにとらまつて手足をかゝれ、 00068980L16あるひハ/足袋(たび)の/底(そこ)にいれられ、それから後ハお定り、お湯 00068990L17どのゝくらやミ、/居風呂桶(すへふろおけ)のかたすミに、年月へちまの身 00069000L18のなり行、かる石やぬか/袋(ぶくろ)への心づかひに、かハくまもな 00069010L19きぬれ衣。こゝに一ツのまよひといふハ、/行水(ぎやうずい)だらいのあ 00069020L20さましや、雪のはだゑの御姿、小町/楊貴妃(やうきひ)にめさるゝ時ハ、 00069030M1さとつたへちまのだらくして、やさしいお手でにぎらるれ 00069040M2バ、われも(五オ)うれしくしつかりと、にぎりかえした其 00069050M3ときに、老のへちまのきのかなしさ、ひからびすぎてきハ 00069060M4とげはり、いたいへちまとなげ出され、めんぼくもなく、 00069070M5/乳母(うば)や下男にとらまつて、なんにもいハず尻こぶら、いや 00069080M6な所もこすられて、あげくのはてハお湯どのゝ、せまいき 00069090M7たない/樋(ひ)の口から、すぐに此身を大どぶへ、/俊寛僧都(しゆんくわんそうづ)のご 00069100M8とく也。へちまの一生、あらましかくの通りなり。あなか 00069110M9しこ+。人にさたばししたもふなと、/軒吹風(のきふくかぜ)にぶら※ 00069120M10と、(五ウ)ばゝアを言テいれバ、はなれ/坐敷(ざしき)の/化粧(けせう)の間で、 00069130M11うつくしい/娘子(むすめ)子が、ちいさな/徳利(とくり)から、水を出して/顔(かほ)へぬ 00069140M12るを、へちま、つく※見て、/嬉(うれ)しや+。アレでやつと 00069150M13利になつた。哥にS水からも/化粧(けせう)のものと見へにけり△さ 00069160M14れバ、/胡瓜(きうり)をかつぱじやという 00069170¥N2¥J 00069180¥X○/猪牙舟(ちよきぶね)が/云(いふ)/利口(りかう) 00069190M17S/能(よ)ク心をすまして、/猪牙(ちよき)のきしむ/音(おと)をきけバ、猪牙Sコ 00069200M18レ/息子(むすこ)。此中ぬしが/買出(かいだ)しの帰りがけ、ぬけにくひ所を/鳥= 00069210M19渡(ちよ=と)/顔(かほ)が見たさに、ぬけて/行(いつ)タ所が、あいにく其日は(六オ) 00069220M20(六ウ・七オ挿絵)あの/女(こ)も/屋敷(やしき)の/客(きやく)人に出ていたハ。其/客(きやく) 00069230¥P219 00069240¥G(六ウ・七オ) 00069250M1人か/生酔(なまえい)になつて、/洲崎(すさき)へつれて/行(いつ)タ日よ。そこでぬしが 00069260M2/疳積(かんしやく)をおこして、すぐに帰ルと云。マア一/盃(ばい)あがれと云所 00069270M3へ、あの/女(こ)か/客(きやく)人と帰テきたハ。よしか。それから/早&(そう+)、 00069280M4ぬしが来ていなさるから、とふぞわけをつけてはやくと言 00069290M5テやつたハ。アレ、あの女もぬしが方へきたき事、言もさら 00069300M6なり。サア、それからあつちの/客(きやく)人に、もらいにかゝりや 00069310M7した所が、大のめんどうよ。どふめへつた、かうめヱつた、 00069320M8/隣(となり)のばアさん(七ウ)/茶(ちや)をめヱつたのと、むづがかじるしよ。 00069330M9それから/色&(いろ+)/狂言(きやうげん)をかき直し+、やう+もらいとし 00069340M10て、ぬしが所へきたハ。よしか。ソレそこで、ぬしがさつ 00069350M11してやれバいゝけれども、ぬしもまだ/青物(あをもの)町のはしりと言 00069360M12ものだから、クイトきた/顔(かほ)が/久米(くめ)ノ/平内(へいない)、/角大師(つのだいし)。/二役(ふたやく)つ 00069370M13とめているハ。よしか。コヽガあの/女(こ)もさすが/玉垣(たまがき)、/荒馬(あらうま)。 00069380M14/万(まん)と/手(て)が有ルと云ものだから、よしか。ソレ、あの女があ 00069390M15じな目ヲして、吉さん。けふハ吉原の帰りかへ。あんまり 00069400M16おとふ※しいから、しかた/無(な)ク(八オ)ちよツとけふハお 00069410M17つき合かヱト、ちよつヒリ左リをさしたハ。よしか。其 00069420M18時ぬしが/直(なを)かん/積(しやく)。ヨセ、いやらしイ。そこらでいくの 00069430M19じやアねヱ。いき/所(どころ)ガ/違(ちがう)だらうト、ソレ、其きせるの/雁首(がんくび) 00069440M20を、/茶漬屋(ちやづけや)でもらつたやうな/楊枝(やうじ)てほじツて/居(い)タらう。よ 00069450¥P220 00069460L1しか。そこであの/女(こ)もそばに有タ/茶椀(ちやわん)ニ、/青(あを)ツきり/息(いき)なし 00069470L2のグイ。少し/目尻(めじり)/引(ひき)上ゲの、/雁首(がんくび)でたばこぼんヲ/引(ひき)づりな 00069480L3がら、ナンダナ吉さん。/腹(はら)ヲ/立(た)ツわけが有なら、コレ、か 00069490L4うダから/是(これ)が/気(き)にくわねへと、男らしく、こらすとも(八 00069500L5ウ)どふともしねヱナ。ぬしにも/似合(にあハ)ねヱ、ミれんらしい。 00069510L6わつちやアぬしにころされれバ、/善光寺様(ぜんくハうじさま)の/御(ご)いんもんよ 00069520L7り/能(よ)クうかむよト、それ、河津をかけたハ。よしか。其時 00069530L8ぬしもさすが立ものだ。いんにや、ころすめヱ。うぬがや 00069540L9うなけだものを、ころす/刄(は)ものがねヱ。こんだくるとき、 00069550L10/木鼈(まちん)でももつてきてころしてやらうと、ソレ、ひどてんを 00069560L11なげだしたハ。それからあの/女(こ)も/泪(なみ)ダぐんで、あんまりだ 00069570L12ニヨ、吉さんと、ぬしがひざへしがミついたハ。サアらん 00069580L13ちき大さわぎ。(九オ)それから内の女が、マアちつと/寐(ね)こ 00069590L14ろんで、/気(き)を/直(なを)してお帰りなさいましとすゝめても、ぬし 00069600L15が/中(なか)&きかず、やらうの/玉子(たまご)のやうに、/帰(けへ)る+というハ。 00069610L16あの/女(こ)も、あゝいゝなんすから、はやく/帰(かへ)しもふしてくん 00069620L17なと/言(いふ)ハ。あの/女(こ)がかいれといつたものだから、ぬしか/直(なを) 00069630L18/火焔(くハゑん)のごとくあつくなつて、帰りやした。コヽヲさつして 00069640L19やらにやアならねヱ。ぬしハ五ツ時に内ヱ帰らねヱと、と 00069650L20つさんがやかましい事を/承(せう)ち之助だから、よしか。ソレソ 00069660M1コガ、こゝろで/留(とめ)て手で/帰(かへ)し(九ウ)かわひ/男(おとこ)をわる留せぬ 00069670M2もと云はやり/唄(うた)ダハナ。/猪牙(ちよき)のふとんの/夜露(よつゆ)にぬれてと、 00069680M3おれがつれて帰りやした。よしかヱ。そこで/其日(そのひ)ハ、うちの 00069690M4あんばいもいゝといふやつよナ。それ、よしか。そこで/昨日(きのふ) 00069700M5/文(ふミ)がきたと言やつだらう。/其文(そのふミ)に、/昨(さく)日ハいらせられと/書(かき) 00069710M6出して、なんだかいつそわからぬ事ばかり。かんしやくに 00069720M7て御/帰(かへ)り、たゞ+今にすめやらず/気(き)にかゝり、けふしハ 00069730M8/湯(ゆ)にもはいらず、/髪(かミ)もいわず、うつら+と、たゞくやし 00069740M9きハ人になぶられて(十オ)くらしまいらせ候。/酒(さけ)もりにお 00069750M10ちおもしろからず。いつそしぬがましと、おもひくらしま 00069760M11いらせ候。しよせん、いやならいやのやうに、きれいにお 00069770M12わかれ申まいらせ候。どふぞ/今宵(こよひ)/鳥渡(ちよと)なりとも御出、ふび 00069780M13んとおもつて今一度、/顔(かほ)ヲ見せてくれとかなんとか。ちく 00069790M14しやうめ、あわれにぬかしてよこしたらう。ソレ、そこで 00069800M15/主(ぬし)が/正直(せうじき)なこゝろから、気のどくせんばん。あの時ハつい 00069810M16/腹(はら)を立て帰ツたが、あれハおれがわるかつた。あつちハ/勤(つとめ) 00069820M17の身、/外(ほか)の/客(きやく)にも出ねヱで(十ウ)どふするものだ。それを 00069830M18おれが壱人リで/買(か)ふものゝやうに、かんしやくをおこす所 00069840M19だ。それをかんしやくもおこさず、其上おれゆへけふハこ 00069850M20ゝろ/持(もち)がわるひと、おれが事を/気(き)にして/居(い)ルとハ、/気(き)のど 00069860¥P221 00069870L1くな事だ。おれにほれて/居(い)れバこそ、かうもいつてよこせ。 00069880L2なに、ほれねヱ/客(きやく)なら、かまう事じやアあるまイ。此やう 00069890L3に言てよこすもの、/義理(ぎり)にも/今夜(こんや)、/鳥渡(ちよと)いかねヱきやアな 00069900L4らねヱと思ひこむ。/是(これ)/人間(にんげん)の/義(ぎ)の/強(つよ)イ所。ソレそれから、 00069910L5ぬしが行ク/気(き)にハなれ(十一オ)ども、うちの/親父(おやぢ)のまいが 00069920L6むづかしいから、/色&(いろ+)あんじをめぐらして、/神田(かんだ)の/兄(あに)の所 00069930L7から/晩程(ばんほど)/謡講(うたいかう)に候まゝ、/暮方(くれがた)£/是非(ぜひ)+御ン出可有候と 00069940L8の/似(に)せ/手紙(てがミ)。/親父(おやぢ)に見せると、親父ころりとしてやられ、 00069950L9/謡講(うたいかう)なら早く行がよからう。おそくハ/兄(あに)の所へとまつてき 00069960L10たがいゝなんのと、/親馬鹿(おやばか)をもつたいなくもだまかすハ、 00069970L11/是(これ)/智(ち)なり。/義有息子(ぎありむすこ)、/智有息子(ちありむすこ)、/義智子(ぎちこ)++、お/船(ふね)ハ 00069980L12/義智子(ぎちこ)、なんなくはかりことなりて、柳ばしから、ギチコ 00069990L13++(十一ウ) 00070000¥N3¥J 00070010¥X○/福神(ふくじん)/貧神(ひんじん)の出/合(やい)をきけバ 00070020L16S世に/疾(しつ)かきほど、人にもいやがらるゝものハあらじ。/近= 00070030L17頃(ちか=ごろ)の/事(こと)、/予(よ)/疾(しつ)をやミて、やがて/女房(にやうぼう)にもうつし、/只(たゞ)/薬湯(くすりゆ) 00070040L18に入て帰りてハ/寐(ね)、ものくうてハ/寐(ね)、/枕(まくら)と/首引(くびゝき)してくらし 00070050L19ける。/有(ある)人の/来(きたり)て、/疾(しつ)ハ/貧乏病(びんぼうやみ)ぞと言けり。其人帰りて、 00070060L20また/寐(ね)むけづくまゝに、/疾(しつ)ハ/貧(びん)ばうやまひなれバ、/我家(わがいへ)に 00070070M1貧ばう/神(かミ)の/住居(すまい)たりけるよ。/此神(このかみ)をおひ出したきものよと 00070080M2おもひ+、とろり+と/眠(ねむ)り、/夢中(むちう)に/硯(すゞり)(十二オ)/引寄(ひきよ)せ 00070090M3たるこゝろ/持(もち)して、いたき手に/筆(ふで)とると/覚(おぼへ)しが、/一首(いつしゆ)の/狂= 00070100M4哥(きやう=か)。 00070110M5△△S/貧乏神(びんぼがミ)ぬしもこわくハ出て/行(ゆきや)れ 00070120M6△△△△ながくござるとしつをうつすよ 00070130M7/夢中(むちう)に/詠(ゑい)じけれバ、ふしぎや、/押(をし)いれのやぶれふすま、/音(おと) 00070140M8もなく明キ、うちより、さもむさくろしき/老(おひ)ぼれ、あらめの 00070150M9ごとくなるものを身にまき、せうゆで/煮(に)しめたやう/成(なる)ふん 00070160M10どし、ほしか/問屋(どいや)の/前(まへ)を/糞取(こひとり)が通るやうな/匂(にほ)ひ、(十二ウ) 00070170M11/右(ミぎ)の/手(て)にしぶ/団扇(うちハ)を/持(もち)、/左(ひだ)リの/手(て)して/尻(しり)のあたりのしらみ 00070180M12くひを、バリ++ト/引(ひつ)かきなから、/青(あを)ばなをたらし、 00070190M13よだれをたらしながら/出(で)てきたりて、やつとまかせドツコ 00070200M14イなと、やう+/居(すハ)り、/先生(せんせい)。/只今(たゞいま)の/御秀作(ごしうさく)、/貧乏神(びんぼかミ)、ま 00070210M15事にかんしんいたして/罷有(まかりある)。/成程(なるほど)/永(なが)ク/居(い)申たら、/足下(そこ)の/疾(しつ) 00070220M16を、わしにうつそうとの事。こわやナ+。わしもまだ十 00070230M17四五年も、/足下(そこ)の所に/居(い)ル/気(き)で/御座(ごさ)ツたが、/中&(なか+)つかの/間(ま) 00070240M18も/居(い)ル事ハ、いやな事+。かならず、ぜうの(十三オ)ない 00070250M19/神(かミ)とおもひたもふなよ。さらバ++ト、またヱイやら 00070260M20やつと/立(たつ)て、/門口(かとぐち)へよろ++。どふやら/残(のこり)おしそうに 00070270¥P222 00070280L1ふりかへり、こゝの/亭主(ていしゆ)ハぶせうもので、そして/銭(ぜに)が/無(なく)ツ 00070290L2テ、とんだ/居(い)ルにハ/極(ごく)上&吉と言所だか、/疾(しつ)をうつされてハ 00070300L3たまらぬ+。おいとま申と、わらじをはき、びんぼう/神(がミ) 00070310L4ハ出て行ける。/扨(さて)/亭主(ていしゆ)、/眼(め)をさまして/女房(にやうぼう)をよび、/是(これ)かゝ 00070320L5アどん。/今(いま)わしが/夢中(むちう)に、/狂哥(きやうか)をよんだらバ、さて+め 00070330L6い/人(じん)の言事といふものハふしぎなもので、そのうたに(十 00070340L7三ウ)かんじて、/今(いま)おらがうちのびんばう/神様(がミさま)が/出(で)ていか 00070350L8れた。/是(これ)からハ、/福神(ふくじん)たちのお出でなさるばかりじやほど 00070360L9に、うちをきれいにそうじをして、お/待(まち)申かいゝと、/夫(ふう)婦 00070370L10はいたりふいたり、/今(いま)に/福(ふく)の/神(かミ)さまがお/出(い)で※と/待(まつ)て/居(い) 00070380L11ル。かのびんぼう/神(がミ)ハ、/虫(むし)のはうやうにぶら++、/道(ミち) 00070390L12三四丁/程(ほど)/行(ゆく)向ふから、にこ+して/福(ふく)の/神(かミ)きたり、びんば 00070400L13う/神(がミ)にあい、/是(これ)ハ+びんばう/先生(せんせい)か。びんぼう/神(がミ)、やつ 00070410L14と/顔(かほ)をあげ、はゝア/福(ふく)の/神(かミ)どのか。/今日(きやう)ハいづれへのお/出(い) 00070420L15でじやと(十四オ)/問(とハ)れて、/福神(ふくのかミ)、コレハ+/先生(せんせい)。いづれ 00070430L16へとハなんの事。/貴公(きかう)が/今(いま)/出(で)ておいでの所へ、わたくし、 00070440L17/貴公(きかう)のお/替(かハ)りに/勤(つとめ)にまいる所でござる。いづれびんぼう/神(がミ) 00070450L18と/福(ふく)の/神(かミ)とハ、/出(で)かわらねバならぬ。/是(これ)が/世(よ)の/中(なか)のならひ 00070460L19で/御座(ござ)ると/言(いふ)を、びんぼう/神(がミ)、/気(き)のどくそうな/顔(かほ)で/聞(きひ)て/居(い) 00070470L20たり。/是(これ)+、/福(ふく)の/神(かみ)。それハわるひ/御(ご)りやうけん。今ま 00070480M1で/私(わたくし)がおりました/所(ところ)、しごく/能所(よひところ)なれども、/亭主(ていしゆ)が/疾(しつ)をか 00070490M2いて/居(おり)ます。うつり/安(やす)イものゆへ、わしもそれがこわさに、 00070500M3(十四ウ)/出(で)てきましたといへバ、大こくSわしハそれがか 00070510M4んじんじや△Sそれハまたなぜでござります△大こくSは 00070520M5てさ。金をふやしてやれバ、おのづから、ひつハおもくな 00070530M6ります 00070540¥N4¥J 00070550¥X○/蚰(げじ+)の/忠(ちう)ツ/腹(ばら) 00070560M9Sコレまちなんし、あねさんたち。おらアチツトかんしや 00070570M10くにさわるよ。ヲヽこわだの、イヤだのと。なんだ、おれ 00070580M11が/出(で)れば、やく/病神(ひやうがみ)かかけとりのきたやうに、てん※に 00070590M12にげあるきやアがる事アねヱ。たかゞかう/言(いふ)でヱりダア。 00070600M13たつた今迄(十五オ)/寄(よ)りたかりやがつて、/明日(あす)ハ/浅草(あさくさ)のく 00070610M14わん/音(おん)さまから/上野(うへの)の方えまいりやすが、おてん/気(き)ハどふ 00070620M15で/御座(ござ)りませうね。どふぞ/降(ふら)ぬけれバやう/御座(ござ)りやすがの 00070630M16なんのと、へチヤ++ト、/女護(にようご)の/島(しま)で/油揚(あぶらげ)をくらツたや 00070640M17うにしやベルから、こゝが/一番(いちはん)、おちをとつてくれベヱと 00070650M18思つて、れんじのすかしからはしらをおりて、/座敷(ざしき)へぞよ 00070660M19++/出(で)て、コレ/姉(あね)さんたち。なんぼ/明日(あした)をたのしんで 00070670M20/居(い)ても、/明日(あした)ハ/雨(あめ)だ。かう/言(いつ)チヤみそじやアねヱが、おれ 00070680¥P223 00070690L1さまが(十五ウ)/雨(あめ)ダと言チヤほんの事ダガ、てり+/坊主(ぼうづ) 00070700L2が壱万人とんぼうげヱりをしても、天気じやねヱ。よしか。 00070710L3それだから、はやく/浅草(あさくさ)/上野(うへの)の云むだじやれを、てんじけ 00070720L4ヱて、ソレ/吹屋(ふきや)町か/堺(さかい)町と言/狂言(きようげん)を、かきけへたらよさそ 00070730L5うなものダと、おらアほれられる気じやアねヱけれども、 00070740L6こゝろいきをしらせたのダ。それになんだ。はきだせの、 00070750L7ぶちころせのと。コレ、おらアしらきちよふめんの/蚰(げじ)さま 00070760L8ダソ。どふともしろ+。つゝむならしづかに/包(つゝミ)アがれ。 00070770L9一本でも足が(十六オ)おれると、がつてんしねヱぞ。おと 00070780L10ゝひこひも、能ク石の上へほうり出したなア。おれが今此 00070790L11中からはいだして、うぬらがあたまやゑりをなめちらかし 00070800L12て、/尼(あま)にしてくれるぞ。上田の/鼻紙(はながミ)を能クもんで/包(つゝミ)おつた 00070810L13から、出られるものじやねヱ。人がらよく、小菊の紙でざ 00070820L14つと/包(つゝ)んでくりやアがると、紙の/折目(おりめ)の日やわひから、は 00070830L15い出す事もあるに、けちいま+しい。コウひどくつゝま 00070840L16れてハ、しよせん、はいだす事もならぬがざんねんな。コ 00070850L17レ、だれだと(十六ウ)おもふ。おらア/鎌倉(かまくら)のお/大名(だいミやう)/梶原(かぢわら) 00070860L18さまダハと、/太平楽(たいへいらく)を言時、@おもてを紙くずひろいが通り、はし|にはさんで、篭の中へつゝき込ムト、@ 00070870L19/蚰(げぢ+)、/篭(かご)の中で、/梶原(かぢわら)が/乗物(のりもの)、/立(た)テイ引 00070880¥N5¥J 00070890¥X○まじめでこわらしいうそヲきけバ 00070900M3S是もいつの昔のことかとよ。/浅草辺(あさくさへん)に/河井(かハい)/仙沢(せんたく)とて、よ 00070910M4ほどの金持/医者(いしや)どの、/先祖(せんぞ)ハ/名医(めいゐ)にて、其時せつこしらい 00070920M5た金で、今の/仙沢(せんたく)、所で/福(ふく)いしや+といわれてくらし 00070930M6ける。あるとしの極月しかも十七八日の頃、浅草ハ(十七 00070940M7オ)/御見附外(おミつけそと)より、正月の/錺(かざり)もの、/伊勢海老(いせゑび)・だい+・ 00070950M8かや・/勝栗(かちぐり)・手桶・まな板・神の/道具(どうぐ)、まけた+。しだか 00070960M9ゆづり葉、かざりをまけた+と、市のくんじゆの其中を、 00070970M10はい+、たのもふ+と、/仲間(ちうげん)に先をはらわせ、年頃の 00070980M11/侍(さむらひ)両三人つきそひて、しのびと見へし女中/乗物(のりもの)、/河井(かハい)/仙= 00070990M12沢(せん=たく)が/玄関(げんくハ)におろし、五十ばかりの/侍(さむらい)、/玄関(げんくハ)にかゝり、もの 00071000M13もふ+とあんないすれバ、仙沢が/弟子(でし)壱人、玄関に/飛(とび)出 00071010M14し、どちらより御出て御座りますと(十七ウ)もふせバ、/侍(さむらい)、 00071020M15わたくしの/住家(すミか)ハおつて申入ん。マヅ+御/主(しゆ)人/川井(かハゐ)/仙沢= 00071030M16老(せんたく=らう)、/御宅(おたく)に候ハヽ、/是(これ)にて/鳥渡(ちよと)御目にかゝり御/頼(たの)ミ申たき 00071040M17/義(ぎ)、/俄(にわか)の御むしん。此よし/仙沢老(せんたくらう)へ/御通達(ごつうだつ)下され。/鳥渡(ちよと)此 00071050M18所で+と、けたゝましく申けれバ、/弟子(でし)さつそく/奥(おく)へ/行(ゆき)、 00071060M19此よし/仙沢(せんたく)に、/右(ミぎ)かやう+と申バ、/仙沢(せんたく)、いやしからざ 00071070M20る/供廻(ともまハ)りのよし。事に女のり物。何ぶんまた+金もふけ 00071080¥P224 00071090L1の入きたるぞと、こゝろによろこび、チウ+と/鼠(ねづみ)なきし 00071100L2ながら、みじかきわきざし(十八オ)/引(ひつ)かけて、/弟子(でし)にあん 00071110L3ないさせ/玄関(げんくハ)に出きたり、/私(わたくし)、/川井(かハゐ)/仙沢(せんたく)なり。いづれの御 00071120L4/方(かた)かハぞんぜず、まづ+これへ+と申にぞ、左様なら 00071130L5バ御/免(めん)下されと、/玄関(げんくハ)に上り、/時(じ)こふ御あいさつもいたし 00071140L6たく候へども、さしかゝりきうに御むしんと申ハ、何とや 00071150L7ら/壁(かべ)に/馬(むま)をのりかけたと/思召(おぼしめし)もあらんながら、/御家(おいへ)を見か 00071160L8け/参(まい)りし/義(ぎ)ハ、わたくし/主(しゆ)人の/娘(むすめ)、今日しのびにて/浅草(あさくさ)/参= 00071170L9詣(さん=けい)に参られし所、とちうより/持病(じびやう)の/積(しやく)/差(さし)こみ、ことの/外(ほか) 00071180L10(十八ウ)なん/義(ぎ)。もとよりけらいのわたくしども、ま事に 00071190L11/心(しん)ぱい仕、しばらくいづ方にてもとぞんじ候へども、しの 00071200L12びの/義(ぎ)、/茶屋(ちやや)なぞへもゑんりよいたし候まゝ、/貴宅(きたく)ハきゝ 00071210L13および/罷在(まかりある)/名家(めいか)、何とぞしばしが間、/御座敷(おざしき)/御無(ごむ)しん申た 00071220L14く、又ハ/服薬(ふくやく)もねがひたし。/只今(たゞいま)さしこみ、/差(さし)あたつての 00071230L15御むしん。けらいとふわくの所、御さつし下されと、/色(いろ)/青(あを) 00071240L16く成てもふせバ、/仙沢(せんたく)心のうちに、きたりやどつこい。/扨(さて) 00071250L17こそ金のつるとうなづき、御らんの通り、/高位(かうい)の(十九オ) 00071260L18御通りなさるやうなわたくし/宅(たく)にハ候ハねども、さやうの 00071270L19義に/相成(あいなり)、/長(なが)口上御じたいなぞもことに/寄(よつ)たもの。かるひ 00071280L20おもひによらず、人をたすけますが/医道役(いだうやく)。早&御/姫様(ひめさま)を 00071290M1こちらへ+と/立(たち)さわぎ、そちらの/障子(しやうじ)/立(た)テきれ、こちら 00071300M2へ/御屏風(おびやうぶ)、お/白湯(さゆ)のしたくせよと、けらいをしかりちら 00071310M3してはたらきぶりに、/侍(さむらい)、/仙沢老(せんたくろう)。何とも申上にくゝ候へ 00071320M4とも、女の/義(ぎ)に御座る。ことさら/持病(じびやう)なんぎの義。/御座敷(おざしき) 00071330M5まで/駕(かご)入ます。此段御めん。其上/殊(こと)の/外(ほか)(十九ウ)こゝろせ 00071340M6まき/生(むま)れの/娘(むすめ)。しばらく、/仙沢老(せんたくらう)御壱人にて、御/家内(かない)を御 00071350M7ンとふざけ下さらバ、此上も/無(な)キありがたき/仕合(しやわせ)と、/畳(たゝみ)に 00071360M8手をつき、いかにもていねひのあいさつ。/仙沢(せんたく)、/何(なに)が/扨(さて) 00071370M9+お/気(き)まかせに候べく候と、/喜(き)左衛門/気(き)どり。御礼ハし 00071380M10つかり/生鯛(なまだい)一/折(おり)、ひかるものもこれほど+とむなざん/用(よう)。 00071390M11どつぱくさしてさわぎける。其内/駕(かご)ハ/一間(ひとま)に入。お/姫様(ひめさま)ハ 00071400M12お/駕(かご)ぶとんの上に、きよくろくにもたれ、ものおもわしき 00071410M13ありさま。かの/侍(さむらい)、/一間(ひとま)に入、何やらぐや+(二十オ)申 00071420M14上、マツ/一間(ひとま)を/立(たち)出て、/仙沢(せんたく)に/向(むか)ひ、さて++/仙沢老(せんたくらう)。 00071430M15/俄(にわか)の/義(ぎ)に、とくと御あいさつも/不仕(つかまつらず)、何とか/思召(おぼしめし)。扨 00071440M16++、今日の所さつそく御せうち下され、ま事に/地(ぢ)ご 00071450M17くて/仏(ほとけ)とやら、/仏(ほとけ)で/地獄(ぢごく)と御/礼(れい)の外に申やうなし。マヅわ 00071460M18たくし/旦那(だんな)ハ、山の手/辺(へん)にて/何(なん)の/何(なに)がし、すミやかに/其名(そのな) 00071470M19を申てもよろしく候へども、何を申も今日ハかくがひに/供= 00071480M20廻(とも=まハ)りもすくなく、旦那の/名(な)も申も/旦那(だんな)のはぢ。さつそく/明(めう) 00071490¥P225 00071500L1日にもいづれ御/礼(れい)。其/折(おり)からハ/旦那(だんな)の名も御/聞(きゝ)(二十ウ)下 00071510L2され。わたくしハ/奥用(おくよう)人/役(やく)/相勤(あいつとめ)/罷在(まかりある)/鷹(わし)の/爪(つめ)/四九郎左衛(しくらうざへ)門 00071520L3と申者。/以後(いご)御こゝろ/安(やす)く下さりまし。もちろん/旦那(だんな)少し 00071530L4んにハ候へども、わたくし/屋敷(やしき)へも/御立(おんたち)入下さるやうに、 00071540L5早&御/取持(とりもち)仕らん。何ハともあれ、/主人(しゆじん)も御目にかゝり、 00071550L6/段&(だん※)御礼も申たきやうす。ことにハ/脉(ミやく)てい、いかゞ候や、 00071560L7御らん下され、御/家伝(かでん)も候ハヽ、さつそく/腹薬(ふくやく(ママ))いたさせた 00071570L8し。とかく/素人(しらふと)にハわかり/兼(かね)ます。よろしくよろしくとも 00071580L9ふせバ、/仙沢(せんたく)、/高(かう)まんの/鼻(はな)ひく+して、(二十一オ)とく 00071590L10よりわたくしも、御/脉(ミやく)もうかゞひたく存候へども、御ゑん 00071600L11りよ仕さしひかへ/罷在(まかりあり)。かつハ御/持病(じびよう)とあれハ、御/合薬(あいぐすり)も 00071610L12御/所持(しよじ)とぞんじ候所、お/姫(ひめ)様に御目/通(どふ)りあふせ付られ、/難= 00071620L13有(ありが=たき)/仕合(しやハせ)。あふせの通り、御/素人(しろふと)千人有より、/医者(いしや)壱人のほ 00071630L14ふが、御/病(びやう)人様のおこゝろ/強(づよ)イもの。さやうなものでハ 00071640L15な/御座(ござ)りませんか。もちろん/積(しやく)といふ病が/気(き)からせうじま 00071650L16す。気からせうじて、しこふして/後(のち)に/気積(きしやく)となる。/気積(きしやく)と 00071660L17なりて、しこふして/後(のち)につらい/病(やまい)と(二十一ウ)なる。/紀(き)の 00071670L18つらゆきと也、/紀友則(きのとものり)となり、/久(ひさ)かたのひかりのどけき/春(はる) 00071680L19の/日(ひ)にしづ/心(こゝろ)なく/腹(はら)のへるらん、と申て、/腹(はら)がへると/積(しやく) 00071690L20が/差込(さしこ)ム。/則(すなハち)、これをひだる/積(じやく)とも、/左(ひだ)リ/積(じやく)とも申て、/左(ひだ) 00071700M1リの/腹(はら)にくひつき、のつつそつつとなさるゆへ、あちらの 00071710M2いしやへはしり、こちらの/針医(はりい)おりかさなり+、/名法(めいほう)/家= 00071720M3伝(か=でん)なんぞともふして、/熊胆(ゆうたん)/頗(すこぶる)さつかんあつて、あぶるほ 00071730M4ど/呑(のミ)ても、かつぱの/屁(へ)ほどもきかず。ます+くるしみ/強(つよ) 00071740M5くなる。/其折(そのおり)から、これ/川井(かわゐ)/仙沢(せんたく)が/先祖(せんぞ)のいたされ(二十二 00071750M6オ)おひたる/家伝(かでん)/名方(めいほう)の/万龍丸(まんりうぐわん)。/薬種(やくしゆ)さま※入中にも、/得(ゑ) 00071760M7がたきもの二三/味(ミ)あり。/一味(いちミ)ハ/蚯蚓(みゝづ)の/胴骨(どうぼね)、/女鹿(めじか)のきんた 00071770M8ま、/空(そら)をはしる/泥亀(どろがめ)の/生胆(いきゞも)をとつて/製法(せいほう)したる/万龍(まんりう)丸。二 00071780M9三/粒(りう)/水湯(ミづゆ)にてめしあがるト、口中をさわやかにして、/胸(む)ナ 00071790M10/先(さき)を通ると、かの/積(しやく)の/虫(むし)のかしらにかゝる。其とき/積(しやく)の/虫(むし) 00071800M11がにがい/顔(かほ)をして、びる++と/元(もと)の所へ引こむ。こり 00071810M12や/是(これ)、/桜川(さくらがハ)/甚孝(じんかう)が/積(しやく)の/虫(むし)の/身(ミ)ぶりにもしれたもの。しかし 00071820M13/薬(くすり)のじまんばかりで、かんじんのうかゝひが(二十二ウ)手 00071830M14のびになる。さらバ御ン/脉(ミやく)うかゞわんと、ゑもん/直(なを)して/一間(ひとま) 00071840M15に入リ、/両手(りやうて)をついてひかひけれバ、お/姫(ひめ)さまハいとやさ 00071850M16しき御ン/声(こへ)にて、/川井(かわい)/仙沢(せんたく)とやら。よふこそ/世話(せわ)してたも 00071860M17りやつた。とかく/積(しやく)がいたい+。/薬(くすり)もあらバ、せん/沢(たく)、 00071870M18そなた、よひやうにして、はやくよふして。たのむ+と 00071880M19ありけるに、/仙沢(せんたく)、はゝはつと頭を/下(さ)ゲて、こハありがた 00071890M20い/御意(ぎよい)。まづ/御脉(おミやく)をと、つく※お/姫様(ひめさま)を見れバ、お/姫(ひめ)様 00071900¥P226 00071910L1のうつくしい事、/大和屋(やまとや)の/太夫(たゆう)がさくら/姫(ひめ)に/其侭(そのまゝ)。こんな 00071920L2(二十三オ)うつくしい/女(おんな)があれバあるものと、しばらくお 00071930L3/脉(ミやく)と/云(いゝ)ながら、お/姫(ひめ)様の/手(て)をとらまへてはなさず。/夫(それ)より 00071940L4少&おはらをともふせバ、お/姫(ひめ)様ハ/雪(ゆき)の御ンはだを/胸(むね)まで 00071950L5/出(だ)して、/仙沢(せんたく)、こゝがいたひとのたまへバ、/御(ご)もつとも/至極(しごく)。 00071960L6/只今(たゞいま)/薬(くすり)さし上ますと、お/姫(ひめ)様の/胸(むね)へ/手(て)を入る其時、お/姫(ひめ)様 00071970L7ハ、なに/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)。しばらく/仙沢(せんたく)に/料治(りやうじ)たのむ。其う 00071980L8ち、そなたハ/次(つぎ)にて/休足(きうそく)しやれと有けれバ、/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)、 00071990L9/難有(ありが□き)/仕合(しやわせ)。/御用(ごよう)候ハヽさつそく御ン/召(めし)、少&のうち/休足(きうそく)と 00072000L10(二十三ウ)/次(つぎ)の/間(ま)へ行。/仙沢(せんたく)、身ハがた+ふるへだし、 00072010L11さぞ+/此様(このやう)に御さしこみでハ、/中&(なか+)おせつなひはづて/御= 00072020L12座(ご=ざ)ります。/仙沢(せんたく)、/只今(たゞいま)よろしうしてあげませうか、あげま 00072030L13せうか。イヤ、させうか+++。せうが/湯(ゆ)ぐらいな 00072040L14事でハ中+なをりませんが、そこを/直(なを)す。そこを直して、 00072050L15しかうしてたがをかげる。イヤ、/是(これ)ハ/桶屋(おけや)のいたすこと。 00072060L16さりながら、此お/積(しやく)ハはやく/直(なを)りましてハおわるいおしや 00072070L17く。とかくおしやく+とたくさんそうに、十日も廿日も 00072080L18三十日も(二十四オ)マヅさし/込(こミ)どふしにおさしこみなら、 00072090L19/仙沢(せんたく)が方に御とふりう。/其(その)うちにハわたくしが/積(しやく)も/直(なを)りま 00072100L20す。どふかいやミを申やうて御座りますが、おまへ様が/積(しやく) 00072110M1でもおこらずハ、どふして+、かやうな/坊主(ぼうず)か所へもい 00072120M2らせられますまひ。まい+つぶり、つのだせぼうだせ、 00072130M3ぼう+まゆに、うすきねすりばちばち++。どろ 00072140M4++ぐハら++と、はめをはづして、/今日(こんにち)/御出(おいで)の 00072150M5かた※さまへ。うらねバならぬ上ゲねバならぬと、いき 00072160M6せい/引(ひつ)ぱり(二十四ウ)/薬(くすり)のもとじめ、やくしによらいもせ 00072170M7うらんあれと、ほゝうやまつて、/蒲(かば)やきでお/茶漬(ちやづけ)でもおあ 00072180M8がりなさりましとしやれのめせバ、お/姫(ひめ)様もにつこりわら 00072190M9い、ほんに/気(き)さくでかわいゝ/仙沢(せんたく)とお/言葉(ことば)に、/仙沢(せんたく)のりが 00072200M10きて、さて+、あなた様ハおしほらしくツて、おせ/事(じ)が 00072210M11よくて、そしてマアべらぼうにおうつくしいと、しなだれ 00072220M12かゝるを、お/姫(ひめ)様、/仙沢(せんたく)がゑりくびつかんで引たをし、お 00072230M13き上る所をとらへて、向ふへゑのころなげ。/一間(ひとま)どしめく 00072240M14その(二十五オ)うちに、お/姫(ひめ)さま/声(こへ)/高(たか)く、/仙沢(せんたく)がふてきの 00072250M15ふるまい。/四九郎左衛門(しくらうざへもん)/其外(そのほか)、みな+はやまいれと/有(あり)け 00072260M16れバ、/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)、おつとりがたなにて/一間(ひとま)に/入(い)ル。/仙= 00072270M17沢(せん=たく)ハあたまをかゝへて、ふすまのすみになげられなりにお 00072280M18きあがりもせず、/御(ご)めん+とわびて/居(い)る。お/姫(ひめ)さま、/段&(だん+) 00072290M19のしまつを/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)に/御(お)きかせあれバ、/四九郎左衛門(しくらうざへもん)、 00072300M20/仙沢(せんたく)をとらへ/声(こゑ)あらゝげ、ヤイ、しゝしんぢうの/虫(むし)とハ/己(おのれ) 00072310¥P227 00072320L1が/事(こと)。/何(なん)とこゝろへ、お/姫(ひめ)さまに/御(ご)ぶれひ申ぞ。さやうな 00072330L2/仙沢(せんたく)にハ(二十五ウ)あらざるとぞんぜしに、いかなるてん 00072340L3まが/見(ミ)いれたるぞと、/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)、/由良之助(ゆらのすけ)と/郷右衛門(ごうゑもん) 00072350L4をいつしよにして/利口(りかう)をいゝちらし、何ぶん/殿様(とのさま)の/御耳(おみゝ)に 00072360L5入、/仙沢(せんたく)を/急度(きつと)いましめんともふせバ、/仙沢(せんたく)、/畳(たゝみ)にかしら 00072370L6をすりつけ+、年の/暮(くれ)と申ますものハ、とかく人の/気(き)が 00072380L7せか++いたしまして、/色&(いろ+)なことをいたすもので御 00072390L8座ります。何とぞ/夢(ゆめ)となし下さらバありがた/山吹(やまぶき)と、しや 00072400L9うこりもなく/地口(ぢぐち)まじりにしやれけれバ、/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)、 00072410L10/声(こへ)をひそめ、(二十六オ)今もふされしハありがた/山吹(やまぶき)とな。 00072420L11金子にてあつかわんとハ、/猶&(なを+)ぶれいのいたり。さりながら、 00072430L12此ほどお/姫(ひめ)さま御手/道具(どうぐ)のうち、御ほしき御/品(しな)十/品(しな)廿品あ 00072440L13り。さりながら御/勝(かつ)手むづかしけれバ、きうに御手に入ら 00072450L14ず。金子と申候てハいかゞに候間、此御/道具(どうぐ)をお/姫(ひめ)様にさ 00072460L15し上、今日/仙沢老(せんたくらう)が御ぶれいの御わび。かつハ此/義(ぎ)、/夢(ゆめ)と 00072470L16なしたまわるやう、/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)よろしく取はからひ申べ 00072480L17しと言に、/仙沢(せんたく)、/夢(ゆめ)さめたる心ちして、さて+(二十六ウ) 00072490L18おなさけ/深(ふか)き/四九郎左衛門(しくらうざゑもん)さま。何とぞ其御/道具(どうぐ)、/私(わたくし)さし 00072500L19上、/只今(たゞいま)の御ぶれい御/他言(たごん)なきやう、ひとへに+/願(ねがひ)上候 00072510L20ともふせバ、こゝろいたんぽのかわざい/布(ふ)といふ/顔(かほ)にて、 00072520M1お/姫(ひめ)さまに何やらさゝやきけれバ、お/姫(ひめ)さまハ/半(はん)四郎が/土= 00072530M2手(ど=て)のお六といふ/顔(かほ)にて/舌(した)をだし、うまくいつたじやアねヱ 00072540M3じやアねヱかと、ふところから手を/出(だ)し、ゆびを三本出し 00072550M4て、/四九(しく)さん。かうだによといへハ、/四九郎(しくらう)もうなづき、 00072560M5しやうちの/浜(はま)ていわしが/取(と)レると、(二十七オ)口のうちで 00072570M6しやれながら、あたまをおさへて、たゝみをなめて/居(い)ル/仙= 00072580M7沢(せん=たく)にむかひ、これ/御主(ごしゆ)人。/扨&(さて+)いたしにくひ所、まだおと 00072590M8しのいかぬお/姫(ひめ)さまだけ、むりにおだまし申て、/夢(ゆめ)となし 00072600M9くださるやうに申上ました。それと申も/只(たゞ)おほしいお手/道= 00072610M10具(どう=ぐ)。それがおだまし申壱ツの手だて。/是(これ)ハどふぞ今日にも 00072620M11はやいがよふ/御座(ござ)る。われらお/供(とも)で/帰(かへ)りがけ、かの/道具屋(どうぐや) 00072630M12へ/参(まい)りとゝのひ/帰(かへ)りますつもりで御座る。其/金高(きんだか)ハわづか 00072640M13(二十七ウ)三百両といふをきいて、/仙沢(せんたく)またびつくり。そ 00072650M14れハあんまり/大(たい)金/利(り)きんのしゝがしらとにげ出す所を、四 00072660M15九郎とらまへ、そんなら今のぶれいを申出そうかといわれ 00072670M16て、何ともへんとふなく、/仙沢(せんたく)なく+三百両、かわひと 00072680M17いふて/暮(くれ)の市、さらになさけもあら金の、/土(つち)にもあらぬ三 00072690M18百両、のせて/出行(いでゆく)女中/駕(かご)、/市(いち)のくんじゆを/押分(をしわけ)て、たのも 00072700M19ふ+といへバ、/市商人(いちあきうど)が口をそろへて、 00072710M20△S/姫(ひめ)かかたりか/橙(だい+)か+(二十八オ) 00072720¥P228 00072730¥N6¥J 00072740¥X○一/口(くち)ばなし 00072750L3S/口(くち)まめな/子(こ)ぞう、/旦那(だんな)のそバへ手をつき、/旦那(だんな)様+。 00072760L4/只今(たゞいま)四日/市(いち)で、まき町の/先生(せんせい)と/柳斎(りうさい)様にお目にかゝりまし 00072770L5た。どちらへおいでなさりますと申ましたら、今日ハ/色(いろ)男 00072780L6の/寄初(よりぞめ)で/御出(おいで)なさります。/旦那(だんな)様にもおはやくおいでなさ 00072790L7りましと、御口上で/御座(ござ)りました。/旦那(だんな)、ナニ/馬鹿(ばか)な。/色(いろ) 00072800L8男の/寄初(よりそめ)といふがあるものか。それハ/万(まん)八だ+といへバ、 00072810L9子ぞう、まじめに(二十八ウ)なつて、これハしたり。お/茶= 00072820L10屋(ちや=や)をバ/聞(きゝ)ましなんだ 00072830¥Q 00072840L12文政七年甲申新板 00072850L13△△△江戸弁慶橋通松枝町 00072860L14△△△△△△丸屋文右衛門板 00072870L15△△△△△△△△△△(二十九オ) 00072880G1〔挿絵中の歌詞〕 00072890G2△△水からも/化粧(けしやう)のものと見ゆるかな 00072900G3△△△されば/胡瓜(きうり)もかつぱとハいふ(口三オ) 00072910G4△△発声飛駕東叡北 00072920G5△△借船入堀聖天西△蜀山人△(六ウ) 00072930¥P229 00072940¥U噺本大系△第十五巻 00072950¥T新作/咄土産(はなしみやげ)〔序文〕 00072960¥G 00072970¥Y 00072980L16文政七年正月序 00072990L17旭文亭序 00073000L18尾州△味岡久次郎板 00073010L19小本一冊 00073020L20尾崎久彌氏蔵 00073030¥Y自序 00073040M3/落咄(おとしはなし)は/滑稽(こつけい)に/に((衍))/起(おこ)る。近頃/流行(りうかう)して、又/盛(さかん)也。/理(り)を/備(そな) 00073050M4へ、/洒零(しやれ)/過(すき)て/味(あぢ)なし。/仕形(しかた)咄ハ/書事(かくこと)ならねは先置ぬ。/当時(とうじ) 00073060M5(1オ)の咄は、只/道行(ミちゆき)大/造(そう)にして/落(おち)/少(すくな)し。予かい/撮(つまん)て/童蒙(どうもう) 00073070M6のみやけにもなるへしと、/新作(しんさく)/咄土産(はなしミやけ)と/題(だい)する而已 00073080M8△△△文政七ツとし 00073090M9△△△△△△△申春△△△△△△△△旭文亭述 00073100M10△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(1ウ) 00073110¥P230 00073120¥G 00073130¥Y 00073140L12東西+。此所へ罷出まして、一寸口上申上升。/落(おとし)はなし 00073150L13もだん+/流行(りゆうかう)ゐたし、/素人(しろうと)げい/者衆(しやしゆ)御/座(ざ)しき、或ひは日 00073160L14まちなどにて/評判(ひやうばん)よろしく(2オ)大はやりニ付まして、追 00073170L15&/軽口(かるくち)/浮世(うきよ)ばなし/取替(とりかへ)引かへ、御/覧(らん)に入奉り升。/則(すなわ)チ是よ 00073180L16り、はなしの/始(はじ)まり、さやふ 00073190L17△△△△△△△△△△△△△△△△旭亭主人述 00073200L18△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(2ウ) 00073210¥T1新作/新((ママ))土産 00073220¥N1¥J 00073230¥X福禄寿 00073240M5/八百(やを)屋の内へ/福禄寿(ふくろくじゆ)行て、/宿(やど)かりたいと云に、八百屋/一向(いつかう) 00073250M6取込ゆへ、/椽(ゑん)の下ニ/寐(ね)やれと云て、椽の下に寐られける。 00073260M7(二オ)有時/買人(かいて)来て、とう/瓜(ぐハ)はないかと云つゝ、/椽(ゑん)の下を 00073270M8見て、/爰(こゝ)にあるハといへば、ハテ、あれハふくろくじゆと 00073280M9いへバ、客イヤ、百六十ハ/高(たか)ひ 00073290¥N2¥J 00073300¥X/水仙(すいせん)(二ウ) 00073310M12/麁相(そそう)もの、/水(すい)せんの/花(はな)を見て、/是(これ)ハなんでござります。亭 00073320M13なんと/早咲(はやざき)で有ふが。/貴様(きさま)が/国(くに)も/暖国(だんこく)じやが、此やうに早 00073330M14う/咲(さく)か。客/成程(なるほと)、あたゝかにござりますれど、(3オ)(3ウ 00073340M15・四オ挿絵)此やうにねぶかに/花(はな)ハさきませぬ 00073350¥N3¥J 00073360¥X/律義者(りちぎもの) 00073370M18コレ/勘(かん)六よ。/仏具(ふつぐ)屋へ行、/随分(ずいぶん)まけてもらひ、/位牌(いはい)を/買(かふ)て 00073380M19こいといへバ、ハイ、/畏(かしこま)りましたと、(四ウ)/早速(さつそく)に小さき 00073390M20/位牌(いはい)一本まけに取来るを、/主(しゆ)人見て、大きに/気(き)にかけ、/叱(しか) 00073400¥P231 00073410¥G(3ウ・四オ) 00073420M1りければ、勘六、ぬからず、ハテ、是ハ取て置て、/坊(ぼん)さま 00073430M2のになされませ 00073440¥N4¥J 00073450¥X/臆病(をくべう)もの(五オ) 00073460M5/臆病(をくべう)なお/侍(さふらい)、夜/裏(うら)へ行が/気味(きミ)わるく/思(をも)ひ、/奥(おく)に/手燭(てしよく)をとも 00073470M6させ行しが、/雪隠(せつちん)の内より、何と、そなたハおそろしうハ 00073480M7ないかといふ。奥何の、/私(わたくし)かおそろしい事がござり(五ウ) 00073490M8ませふといへば、さすが/武士(ぶし)の/妻(つま)ほどある 00073500¥N5¥J 00073510¥X/聾(つんぼう) 00073520M11小/僧(ぞう)、とうふを/売(うり)に出、内へかへり、けさハうれませぬ。 00073530M12やう+半てう/売(うり)まし(六オ)たといへは、つんほう/親父(をやぢ)、 00073540M13ナニ、/半鐘(はんしやう)/打(うつ)たか。イヽヱ、とうふの事さ。親/遠(とを)くなら 00073550M14よい+ 00073560¥N6¥J 00073570¥X/火事(くわし) 00073580M17/不孝(ふこう)な/忰(せがれ)、/勘当(かんとう)して置けるが、有時/近火(きんくハ)ありけれバ、(六ウ) 00073590M18勘当の忰、/早速(さつそく)かけ来り、取持ける故、/親父(をやぢ)、忰がこゝろ 00073600M19/直(なを)りしと、勘当ゆるしけれバ、忰/悦(よろこ)び、/箪笥(たんす)の/羽織(はをり/袴(はかま)出し 00073610M20てくれよと云。此取こみに何にすると(七オ)いへは、息子 00073620¥P232 00073630L1/一寸(ちよつと)/火元(ひもと)へ礼に行ます 00073640¥N7¥J 00073650¥X/鶏(にはとり) 00073660L4/朝鮮(てうせん)人/来朝(らいてう)につき、所&の/社(やしろ)のにはとり共申合、山へ/迯(にげ)行 00073670L5けるが、右の処へ鳥の(七ウ)/絵馬(ゑま)/売(うり)に来りけれバ、鳥が云。 00073680L6あれ見よ。あのごとく/絵図(ゑづ)を以て/尋(たづね)に来れバ、モウ/爰(こゝ)にハ 00073690L7/居(ゐ)られぬ 00073700¥N8¥J 00073710¥X息子 00073720L10どうらくな/忰(せがれ)、ある夜、まつ(八オ)くらがりにて/親父(をやぢ)にけ 00073730L11つまづき、/其侭(そのまゝ)大ニあやまりけれバ、親父、/我(われ)ハいかふ/実= 00073740L12躰(じつ=てい)に成たなといへば、忰ウヽ、親父/ハ((かカ))。おれハ/飯(めし)つぎかと 00073750L13思ふた 00073760¥N9¥J 00073770¥X/夜廻(よまハ)り(八ウ) 00073780L16夜あそびする/若(わか)ひもの、/折(をり)+夜まハりに/逢(あ)ひ、めいわく 00073790L17する/故(ゆへ)、ある時夜まハりに/出合(であい)、其/侭(まゝ)/黒(くろ)の/羽織(はをり)をぬいでか 00073800L18ぶり、地にふして/竹(たけ)の/先(さき)に/紙(かミ)をつけて/持居(もちい)る(九オ)に、夜 00073810L19廻り、ふしんにおもひ、たつた今まで/人声(ひとごゑ)したがと、ふし 00073820L20たる上をつゝきいれバ、ハイ。土ごへでござります 00073830¥N10¥J 00073840¥X/上戸(しやうご) 00073850M3/至極(しごく)のねち上戸、/酒屋(さかや)へ(九ウ)行て/銭払(ぜにはらひ)、酒ハ其まゝ/差(さし)置 00073860M4帰りかけれバ、/亭主(ていしゆ)、申、此酒をおあがりなされませんか 00073870M5といへば、立もどり、そふいはねば/呑(のま)ぬ 00073880¥N11¥J 00073890¥X/女郎(ぢよろう)(十オ) 00073900M8/茶屋(ちやや)へ行、酒の/肴(さかな)にくわゐが出けれバ、女郎、其まゝ/庭(にハ)へ 00073910M9/捨(すて)けれバ、/客(きやく)見て、何するといへば、是ハ/毒(どく)でござります 00073920M10といへば、くわゐ、むつくと/起(おき)上り、おれが/毒(どく)か、/己(をの)れ 00073930M11(十ウ)が毒か 00073940¥N12¥J 00073950¥X/節分(せつぶん) 00073960M14せつぶんに/鬼(をに)ひとり/息(いき)を/切(きつ)て、人の内へはしり/込(こミ)ければ、 00073970M15/亭主(ていしゆ)気にかけ、此年こしに、/福(ふく)ハ内こそよけれ、/鬼(をに)ハ内 00073980M16(十一オ)とハ是ハ何事じやといへば、鬼いふやう、今/爰(こゝ)へ 00073990M17/酒(さけ)の/酔人(ゑいど)が来る。たまらぬ。/隠(かく)してくれいといふゆへ、そ 00074000M18れハどふしたわけじやといへば、鬼/酔(ゑい)がさめると、せうき 00074010M19になる(十一ウ) 00074020¥P233 00074030¥N13¥J 00074040¥X/晴天(せいてん) 00074050L3三人/寄集(よりあつま)り、何と九兵衛、見よ。けふの/様(やう)なよい/日和(ひより)ハな 00074060L4い。/至極(しごく)のせいてんじや。ちり雲が一ツないといふ/所(ところ)へ、 00074070L5/黒雲(くろくも)/通(とを)り、ヱヘンと、せき/払(はらい)(十二オ)して/通(とを)る 00074080¥N14¥J 00074090¥X/燈心(とうしん) 00074100L8アノとうしんハ、どこから/出(で)る。あれハ/畳(たゝミ)からでる。イヽ 00074110L9ヤ、あミ/笠(かさ)からでるで/有(あら)ふといへバ、ひとりが、イヤ、お 00074120L10りや/行燈(あんどう)の(十二ウ)引出しから出ると思ふた 00074130¥N15¥J 00074140¥X/長吉(てうきち) 00074150L13ヲヽよいお子じや。/西(にし)も/東(ひかし)も/南(ミなミ)/に((もカ))ないお子じやと、した 00074160L14ゝかほめれば、長吉聞て、そんなら、きたない子しや(十 00074170L15三オ) 00074180¥N16¥J 00074190¥X/文字(もんじ)の/論(ろん) 00074200L18/或家(あるいへ)ののうれんの/印(しるし)に、/丸(まる)の内に、くの字付、/下(した)に/屋(や)の字 00074210L19付あるを、/若(わか)き/者(もの)二人見て、一人ハわく屋じやと/云(いふ)。一人 00074220L20ハくわ屋じやと/云(いふ)。たがひに(十三ウ)せり/合(あい)、/終(つゐ)に/御番所(ごばんしよ)/沙= 00074230M1汰(さ=た)になつて、/奉行所(ぶぎやうしよ)へ出ければ、/其方(そのほう)共ハ/願(ねがひ)の/有(ある)よし、申 00074240M2て見よと/有(あり)けれハ、/私(わたくし)ハわくやと申ます。あの/者(もの)ハくわや 00074250M3と申ます。奉行聞て、/夫(それ)でハいつ(十四オ)まても/終(をハ)らぬ。 00074260M4とかく中を取て、わやくにして/仕(し)まへ 00074270¥N17¥J 00074280¥X/友達(ともだち) 00074290M7/友(とも)たち、/途中(とちう)にて/行合(ゆきあい)、今ハ/何商売(なにしようばい)じや。おれハ今は/酒(さか) 00074300M8屋をする。ハテさうか。きけバ(十四ウ)/質(しち)も取げなが、そ 00074310M9んならをれと/同(をな)じ/商売(しようばい)じや。トハ、どふして/仕合(しあハせ)が/直(なをつ)た。 00074320M10イヤ、/質(しち)もをくが、/酒(さけ)ものむ 00074330¥N18¥J 00074340¥X/地獄(ぢごく) 00074350M13/地獄(ぢごく)へ/落(をち)ている/罪(ざい)人、/極楽(ごくらく)(15オ)(15ウ・十六オ挿絵)へ/行(ゆか)んと、 00074360M14そうづ川の/関所(せきしよ)を/通(とを)れバ、ゑん/摩王(まわう(ママ))とがめて、/己(をのれ)ハ/何者(なにもの) 00074370M15じや。ハイ、/私(わたくし)ハ/嵐(あらし)/吉(きち)三郎と申/役者(や□しや)でござりますといへ 00074380M16ば、/通(とを)れ+と云。/又(また)/跡(あと)より一人来て、私ハ吉三郎と 00074390M17(十六ウ)申者、/爰(こゝ)お/通(とを)し下されといふ。イヤ、まて。今吉 00074400M18三郎と云て通つたれバ、そちハ/紛(まき)れ/者(もの)ぞといへバ、イヱ、 00074410M19/私(わたくし)が/本(ほん)の/嵐吉(あらきち)/璃寛(りくハん)でござります。そんなら/先(さき)のが/紛(まぎ)れ者 00074420M20か。此/時(とき)のミる目かぐ/鼻(はな)、/急(いそぎ)(無丁オ)/追(をつ)かけ、引とらへ、 00074430¥P234 00074440¥G(15ウ・十六オ) 00074450M1/吟味(ぎんミ)せよといへば、ミるめかぐ/鼻(はな)、/畏(かしこま)り、/追(をつ)かけしが、/程(ほど) 00074460M2なく/戻(もど)り、モシ、/埓明(らちあ□)ませぬ。/夫(それ)ハなぜに。ハイ、ミれば 00074470M3腰より上が、大かたはく/置(をき)になられました(無丁ウ) 00074480¥N19¥J 00074490¥X/千本(せんぼん)ざくら 00074500M6ある人、/人足(にんそく)を見て、/我(われ)ハ/何(なに)人じやといへば、/私(わたくし)ハたゞの 00074510M7ぶでござります。そんなら、/八島(やしま)の/合戦(かつせん)を/知(し)つて/居(い)るで/有(あら) 00074520M8ふ。どふじやといへば、ハイ。(十六オ)次のぶに/御聞(をきゝ)なさ 00074530M9れませ 00074540¥N20¥J 00074550¥X/血(ち)とめ 00074560M12/茶屋(ちやや)の/料理(りやうり)人、/包丁(ほうてう)にて手を/切(きり)しに、そのまゝ/女郎(ぢよらう)、その 00074570M13ゆびをちやつとにぎりけれバ、其まゝ/血(ち)とまりぬ。/料(りやう)(十 00074580M14六ウ)/理(り)人、/是(これ)ハふしぎといへば、女/郎(ろう)こたへて、ハテ、 00074590M15/血(ち)とめの身じや 00074600¥N21¥J 00074610¥X/将棊(しやうぎ) 00074620M18/将棊(しやうき)にじよごんいふ者あり。/連(つれ)いふよう、/貴様(きさま)ハとかく 00074630M19(十七オ)しよごんをいふ。/大事(だいじ)の/勝負(しようぶ)、壱分づゝかけて/指(さす) 00074640M20に、/貴様(きさま)ハ来てくれるな。其/替(かハ)り、/兼(かね)+/望(のそミ)の此/鍔(つば)、そち 00074650¥P235 00074660L1にやると、/鍔(つば)をもらひ、/帰(かへ)る/道(ミち)にて/連(つれ)にあひ、どこへ行。 00074670L2おれハ八兵衛が/所(ところ)へ(十七ウ)/将棊(しやうぎ)見に行。ムヽ、そんなら、 00074680L3七右衛門にそふいふてくれよ。この/鍔(つば)/返(かへ)すほどに、/端(はし)の 00074690/$(ふ)をついてくれよといふてたも 00074700¥N22¥J 00074710¥X/草履(ぞうり)の/紋(もん) 00074720L8ぜいな女、是、三吉よ。/番(ばん)が/来(き)(十八オ)たら、/草履(ぞうり)の/裏(うら) 00074730L9にもんを付て、/一足(いつそく)/作(つく)つて持てこいといふ/所(ところ)へ、/番(ばん)/来(きた)る故、 00074740L10其よし云てあつらへけれバ、番聞て、夫ハ/聞違(きゝちがひ)でござりま 00074750L11せふ。よく+聞てくれと云ゆへ、又(十八ウ)其/通(とを)り、/違(ちがひ) 00074760L12なしといへバ、/番(ばん)、是ハ又/替(かハ)つた/御注文(をあつらへ)じや。/草履(ぞうり)のうら 00074770L13に/定紋(じやうもん)を付るとハ、ない/図(づ)と、ふしんにいへバ、ハテ、/駕(かこ) 00074780L14のうしろにかける 00074790¥N23¥J 00074800¥X/魚(うを)ばなし(十九オ) 00074810L17/魚共(うをども)/寄合(よりあい)、いろ+/芸尽(げいづく)しする。なまこ/出(で)て、しやつほこ。 00074820L18是ハ/出来(でき)た+。/鯉(こい)出て、/瀧(たき)のぼり。ふぐ出て、もかぶり 00074830L19の/女形(をんながた)に/成(なり)けれバ、魚寄合かたを/打(うつ)て、ヱヽ、この/命(いのち)とり 00074840L20めが(十九ウ) 00074850¥N24¥J 00074860¥X/盗人(ぬすひと) 00074870M3きれい/好(ずき)な者の/所(ところ)へ/盗人(ぬすびと)はいり、そこよ/爰(こゝ)よとさわぎけれ 00074880M4バ、盗人、/椽(ゑん)の下へかくれけり。/其侭(そのまゝ)/亭主(ていしゆ)、/鎗(やり)を持て出、 00074890M5ヤイ盗人。出ぬかといふゆへ、(二十オ)/盗人(ぬすびと)、/椽(ゑん)の下£出 00074900M6て、ヤイ、其/鎗(やり)の/持(もち)やうハどうだ。にぎつて持ものじやと 00074910M7いへば、亭主これ見よ。ほこりだらけじや 00074920¥N25¥J 00074930¥X/夫婦(ふうふ) 00074940M10/夫婦(ふうふ)げんくわする所へ、/役人(やくにん)(二十ウ)/来(き)かゝり、是ハどふ 00074950M11だ。うぬらハ/博奕打(ばくちうち)じやな。イヤ、さやうでハござりませ 00074960M12ぬ。私ハ/女房(にようほう)が口ごたへ/致(いた)しましたで、/夫(それ)ゆへ、さいを/表(おもて) 00074970M13へ/投出(なげだ)しました。ソレ見よ。さいをなげた(二十一オ) 00074980¥N26¥J 00074990¥X御/師匠(しせう) 00075000M16/親(をや)、我子を/手習(てならひ)に/遣(つかハ)し、是、三四郎よ。手本見せよといへ 00075010M17バ、持来てよミけれバ、/親(をや)とがめて、我ハいつぞや、此/字(じ) 00075020M18を/月(つき)といふたが、又ぐわつといふか。是(二十一ウ)ハどふ 00075030M19じやといへば、子是ハよミごへといふて、/月(つき)ともぐわつ共 00075040M20いふげな。お/師匠(しせう)さまのいはしやるハ、/丁(ちやう)ど、しよくをつ 00075050¥P236 00075060¥G(24ウ・二十五オ) 00075070M1くへと云よふな物じやといはした。ムン、/聞(きこ)へた。/或時(あるとき)、 00075080M2師匠/煩(わつら)ひける(二十二オ)/故(ゆへ)、/見舞(ミまひ)に行て、御わづらひなさ 00075090M3るゝけなが、なんと、つくへハ/参(まい)りまするかといふゆへ、 00075100M4師匠の/内義(ないぎ)、したゝか/腹立(はらたち)、いま+しい。/病人(べうにん)につくへ 00075110M5をくへとは、何の事といへば、ぬからぬ/顔(かほ)で、(二十二ウ)ヱ、 00075120M6此/師匠(しせう)もよミごへも/知(し)らいで 00075130¥N27¥J 00075140¥Xけんやく 00075150M9/公義(こうぎ)£御けんやく/廻(まハ)り。/朝(あさ)めしに/粥(かゆ)を/喰(く)へとふれあり。/庄= 00075160M10屋(せう=や)、/毎日(まいにち)廻り、/或時(あるとき)(二十三オ)/内(うち)へ入、/吟味(ぎんミ)しけれバ、/唐= 00075170M11紙(から=かミ)のあちらにて、/茶漬(ちやづけ)/喰(くい)ゐるゆへ、/庄屋(せうや)とがめけれバ、/亭= 00075180M12主(てい=しゆ)、ヱヽ、あれハ/病(べう)人でござります 00075190¥N28¥J 00075200¥X/女郎(ぢよろう)(二十三ウ) 00075210M15/揚(あげ)屋へ/出家(しゆつけ)行て/床(とこ)入し、/寐(ね)いりけるが、/出家(しゆつけ)、/目(め)をさまし、 00075220M16/女郎(ぢよろう)あまり/寐(ね)くさるゆへ/腹立(はらたち)、女郎のあたまをすりこぼし、 00075230M17/坊主(ぼうず)にして/帰(かへ)りければ、/夜明(よあけ)て女郎、目をさ(24オ)(24ウ・ 00075240M18二十五オ挿絵)ましてうろたへ、/自分(じぶん)の/天窓(あたま)をなでゝ、おまへ 00075250M19ハまだ/寐(ね)てかいナア 00075260¥P237 00075270¥N29¥J 00075280¥Xまじなひ 00075290L3/娘(むすめ)の子、/成(せい)人して/夜(よる)+小/便(べん)するよし聞て、おれが/直(なを)(二 00075300L4十五ウ)してやらふといふて、/是(これ)、/爰(こゝ)へござれ。まじないじ 00075310L5や/程(ほと)に、/先(まづ)こなた、/手(て)を一つ/打(うた)しやれといへバ、其/侭(まゝ)手を 00075320L6しやん+と打けれバ、おらが手をうたしたからハ、/小便(しやうべん) 00075330L7ハさせぬ(二十六オ) 00075340¥N30¥J 00075350¥Xしわい/同志(どうし) 00075360L10長吉よ。/今夜(こんや)ハ/蚊(か)て/寐(ね)られぬ。/向(むか)ふへ行て/鉄槌(かなづち)かりてこい。 00075370L11/蚊屋(かや)の/釣手(つりて)がない。ハイ。御内にござりますがといへバ、 00075380L12/先(まづ)かりてこいと云付られ、向へかりに(二十六ウ)行けるが、 00075390L13向ふの/親父(をやぢ)、何にするのだ。木か竹でも/打(うつ)のか。/金釘(かなくぎ)で 00075400L14も打なら、/鉄槌(かなづち)がへるゆへことハりじやといへバ、長吉、 00075410L15内へ/帰(かへ)り、/旦那(だんな)さん。かやの/釣手(つりて)なら、/定(さだめ)て/鉄釘(かなくぎ)で/有(あら)ふ。 00075420L16こ(二十五オ)ちのかなづちがへるによつて、/貸事(かすこと)ハならぬ 00075430L17と、かしていこしませぬといへば、/旦那(だんな)、そんなら/是非(ぜひ)が 00075440L18ない。内のかなづち出せ(二十五ウ) 00075450M1△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(無丁オ・ウ) 00075460¥Q 00075470M3△△△△△△△△△△宮町 00075480M4文△△△△△△△△△△味岡久次郎 00075490M5貫△△△△△△△△噺本問屋 00075500M7△恵方棚△全一冊 00075510M8△かつら噺△全一冊 00075520M9△初恵比須△全一冊 00075530M10△@申年|新板@はなし土産△一冊 00075540M12△△△△△△△△△△△△△△旭甫画 00075550¥P238 00075560¥U噺本大系△第十五巻 00075570¥T俳諧/百(もゝ)の/種(たね)〔扉〕 00075580¥G 00075590¥Y 00075600L16文政八年正月刊 00075610L17三笑亭可楽作 00075620L18歌川国安画 00075630L19山口屋板 00075640L20小本一冊 00075650¥Y 00075660M2△△春新作落シはなし 00075670M5@俳|諧@/百(もゝ)の/種(たね) 00075680M8△△△△三笑亭可楽戯作 00075690¥P239 00075700¥G(序一オ・序二ウ) 00075710¥Y 00075720M1夘のとしハ三笑亭の七ツめ、文化子のとしハ、三題ばなし 00075730M2のほつたん、むかしばなしのつたはりて、今なをさかりな 00075740M3るを思へば、 00075750M4△△△はなしするうさぎハおろかきく人の 00075760M5△△△△ミヽにもおちをとりのはつはる 00075770M6△△△△△△△△△△△△△△△式亭三馬即賛 00075780M7△△△△△△△△△△△△◇三笑亭可楽作△山口屋板◇ 00075790M9△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序一オ) 00075800M10△△△△△△△△△△△△△△△可楽忰 00075810M11△△△△△△△△△△△△△△△△△十三才亦三郎述 00075820M12S丸ゑびのあふミがもとへ、きやくじんの方より、あとぎ 00075830M13小そでのしゆかう、かも川ぞめもふるいとて、玉川ぞめを 00075840M14おくりけれバ、イヤ、近江のいしやうに、玉川とハきめう 00075850M15とあけて見れバ、のこらず/刷(はぎ)だらけ 00075860M16△△△△△△△△△△△△△△△△△△△国安筆 00075870M17△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(序二ウ) 00075880¥P240 00075890¥G(序一ウ・序二オ) 00075900¥N1¥J 00075910¥X/万福(まんふく)長/者(じや) 00075920M3/蓬莱(ほうらい)にきかばや/伊勢(いせ)の/初(はつ)だより。二タ見が/浦(うら)の/初日(はつひ)の出、 00075930M4こよみのよふな/初文(はつふミ)に、此/杉本(すぎもと)の三がいつくり、/四季(しき)のな 00075940M5がめによねんなく、千とせのよハひものぶべしと、とその 00075950M6きけんの水魚れん、万守・舛成・米守・捨魚、四季のしゆ 00075960M7かふの出ほふだい。 00075970M8△△△さく/梅(むめ)の/花笠(はながさ)をどりおもしろや 00075980M9△△△△/旅鴬(たびうぐひす)のとまる/古市(ふるいち) 00075990M10△△△いく千代もかれぬながめや/風(かぜ)いれて 00076000M11△△△△/涼(すゞ)しき/松(まつ)の三かい/造(つく)り 00076010M12△△△/盃(さかつき)もまはりろうかに/月影(つきかげ)を 00076020M13△△△△いつぱいうける酒の杉本 00076030M14△△△いせ音頭よりもながめのよい+と 00076040M15△△△△手拍子うてる雪の/高(たか)どの 00076050M16ト、(ロノ一オ)おの+うたをよミけれバ、長者大キによ 00076060M17_ろこんで、これハミなさま、大/出来(でき)+。めで度一ツ〆ま 00076070M18せふと、此大おんに/下女(げじよ)のさん、モシ、だんなさま。おめ 00076080M19ざめなれバ、おそふにをおいわいあそバしませトいわれて、 00076090M20ふつと/目(め)をさまし、さてハ/今(いま)のハ/夢(ゆめ)であつたかト、かたへ 00076100¥P241 00076110L1を/見(ミ)れハ、伊勢ゑびに大&。これハます+めでたいト、 00076120L2よろこぶところへ/若(わか)イもの、さもおもたげにさいふをかつ 00076130L3ぎ、ハイ、ほう※から、おはらいがまいりました 00076140L5△△△坂本氏の御ひろう 00076150L6△△御かほにもちゐて美ゑん仙女かう 00076160L7△△△△△お江戸京ばしいなり新ミち(ロノ一ウ) 00076170G1〔口絵中の歌詞〕 00076180G2△△/甘(あま)き酒にがき/良薬(りやうやく)うしや/世(よ)は 00076190G3△△△/胸(むね)のやけるとせわのやけるに△△玉粒題 00076200¥N2¥J 00076210¥X/角力(すまふ)/好(すき)の伝吉 00076220M3角力の/帰(かへ)りに、内田の宮戸川ト/三(ミ)くに山を/呑(のミ)のすくねとし 00076230M4て、それから/岡(おか)の戸ノ/錦(にしき)木ヲ/買(かう)と、きものが龍門で、おびが 00076240M5小柳さ。こいつハまだ、おつなしゆこふが有馬山だろうト 00076250M6おもつていると、そこへ/出(で)た/禿(かむろ)の名が/揚(あげ)羽さ。こいつハあ 00076260M7りがてへと、弐朱が/干(ひ)菓子をとつたり、まくのうちをとつて、 00076270M8ミんなに小むすびをくわせたり(一オ)していると、にしき 00076280M9木ニまわしがあるといふから、なんでもいちばんとつてや 00076290M10ろうと、/床(とこ)えまわつて四ツにわたろうとおもふト、向に手 00076300M11があるから、おもいれ、ふつて+ふりぬいて、とう+ 00076310M12わたしがなげられやした。このはなしをきくと、うちの山 00076320M13のかミが、なんだナ、おめへ。女郎子供にひき手をくつて、 00076330M14それでせけんが角力とおもふかと、/荒(あら)馬のごとくにあれや 00076340M15アがるから、なんだ、このねこまためへと、(一ウ)/閂(かんぬぎ)で二ツ 00076350M16三ツなぐると、もう+こんな内にはいな川だと、あいつ 00076360M17が方から/出水(いづミ)川だが、どつちがわるいか、おめへがたア、ま 00076370M18ア天/秤(びん)ニかけてミてくんなせへと、あくまで角力づくして 00076380M19いふゆへ、長家の者も、まんざらかねたいこでもあるまいと、 00076390M20大きなたいこをさしにないにして、ついの手ぬくい、かわ 00076400¥P242 00076410L1羽おりで、/先(さき)えたつた男が大きなこゑで、○ところハ深川 00076420L2八まんまへ(二オ)じや。角力けんくわで女がミへませんぞ 00076430L3や引トいへば、たいこをうつ男が、/伝(でん)がかゝア++ 00076440¥N3¥J 00076450¥Xふじの山 00076460L6あを/空(そら)やふじハ日本のたてゑぼしトいふ句があるが、アヽ 00076470L7いふ大きなゑぼしがあつたなら、さぞしやうぞくニこまる 00076480L8だろうといへバ、そんなせまい事をいゝなさんな。国ひと 00076490L9つで、(二ウ)すハうといふ所がある 00076500¥N4¥J 00076510¥Xきいたふう 00076520L12はいかいれん両三ン人あつまり、いろ+のはなしにつき、 00076530L13/翁(おきな)なぞの事ハ、われ+ふぜいのごん/語(ご)におよぶところで 00076540L14なしさ。かの/名句(めいく)だといふ、古池や/蛙(かハづ)/飛(とび)こむ水の/音(おと)トいふ 00076550L15句のよしあしすら、此/方(ほう)共にハげせぬといふ。そばにきい 00076560L16たふうな男、○アツアなるほど、かわづとびこむハ(三オ) 00076570L17おもしろい。しよじ、ほつ/句(く)ハかわづニとゞめた。なるほ 00076580L18ど/蛙(かハづ)ハ/奇妙(きめう)+とほめてかへる。/跡(あと)にて、イヤハヤ、こま 00076590L19つた男だ。わかりもせぬくせに、かわづ+と、ごうぎニ 00076600L20かわづの句ヲのミこんでいつたトいへバ、かわづをのミこ 00076610M1んでゆくはづさ。あいつハめくら/蛇(へび)だ 00076620¥N5¥J 00076630¥X/花見(はなミ) 00076640M4その/夜(よ)/寐(ね)て/眼(め)にミゆるなり山さくらト(三ウ)ゆうべのよふ 00076650M5に、あべこべをくつたばんもねへ。はな見のかへりにさく 00076660M6ら屋へまづよしサ。そして吉さんのあいかたが/花人(はなひと)、/久(きう)さ 00076670M7んのが/八重咲(やゑさき)、わたしのかつた/新(しん)ぞうが、としが十四で/名(な) 00076680M8がひとゑ、それもいゝが/床(とこ)へくると、おや+、ぬしのは 00076690M9なハてんぐさまのようだねへと、/夜(よ)ツひとへ、はな/斗(ばか)りミ 00076700M10ていやアがつて、いまに/寐(ね)るか+トおもつているうちに、 00076710M11/夜(よ)がからりと/明(あけ)たから、(四オ)日くらしでなくつて/夜(よ)くら 00076720M12しサ。/花(はな)見でなくて、はなミられ。それよりまだ、あべこ 00076730M13べな事をきゝなせへ。かわらけに、なげられやした 00076740¥N6¥J 00076750¥Xさとり 00076760M16きのふ山ひらきのかへりに、/平清(ひらせい)えよると、/向(むか)ふのざしき 00076770M17に、/仲町(なかてう)のはをりのうちでも、ひつこぬきといふてやいが 00076780M18六七人ンいやしたが、(四ウ)そのうちでも、みや吉・さよ 00076790M19吉・ひな吉・三八なぞハ、/客人(きやくじん)なしの/桜丸(さくらまる)と見へて、まつ 00076800M20/白(しろ)な手を/出(だ)して、けんなぞうちながら、/雪(ゆき)のごとくなるは 00076810¥P243 00076820L1だをあらわして、/何(なに)かおたがいにのろけていやしたが、な 00076830L2るほど、いかなる/君子(くんし)も/城(しろ)をかたむけ、/家(いへ)くらをうしなふ 00076840L3ハもつともな/事(こと)ト、じつにかんしんいたしました。○コレ 00076850L4+、それハ/貴公(きこう)にもにやわぬ事をのたまうものかな。か 00076860L5の(五オ)/鬼貫(おにつら)の/句(く)ニ、がいこつのうへをよそふて/花見(はなミ)/哉(かな)。 00076870L6かならず/色(いろ)にまよう事なかれ。さとりたまへ+としめせ 00076880L7バ、○ハヽア、あゝ見へましても、しようハがいこつかな。 00076890L8どうりこそ、ミなしやれておりました 00076900¥N7¥J 00076910¥Xはつ/松魚(かつほ) 00076920L11/煮(に)てくろう/下戸(げこ)こそにくめ/初(はつ)かつほトいふ/句(く)もあれバ、/骨(ほね) 00076930L12つきのほうハきやくの(五ウ)/来(く)るまでのこしておいて、半 00076940L13分ハさしミにしてのむべいと、ふうふむつましくのんでい 00076950L14る/所(ところ)え、となりの/上(かミ)かた/者(もの)めが、いつものとをりかぎつけ 00076960L15て/来(き)おるゆへ、うろたへておくえかくれ、今うちじやア、 00076970L16しやくがおこつて、いつそくるしがつているから、なんぞ 00076980L17御用なら、のちにおいでなせへ。○イヤ、しやくなら、わ 00076990L18しがおしてあげましやう。○イヱ、モウありようハ/死(し)んで 00077000L19しまいましたといへバ、あたりをきよろ+と(六オ)見ま 00077010L20わし、とう+ほね/付(つき)のほうを見付/出(いだ)し、モシおいへさん。 00077020M1あれほど/心安(こゝろやす)うして、ひとつなべの/物(もの)/迄(まで)たべあふた/治郎(ぢろ)さ 00077030M2んが、ほんまにしんでなら、せめてかた/身(ミ)など、もろうて 00077040M3さんじませう 00077050¥N8¥J 00077060¥Xしよくらん 00077070M6/紫陽花(あぢさい)や/何(なに)ひと/色(いろ)も/咲(さき)とげすト、おのれハ/何(なに)をさせても三 00077080M7日ぼうずなれば、なに(六ウ)なりと、おのれがすいた/喰(くふ)た 00077090M8ねの/商売(しやうばい)せいと云て金をわたしたニ、三日このかた/内(うち)えも 00077100M9かへらず。どこへゆきおつたときけバ、○ハイ、まづ内を 00077110M10出ますと、/船(ふな)はし屋の/軍治(ぐんぢ)が見せで、ねりようかんを三さ 00077120M11ほたべまして、それからあたけの松がすし、/出羽(でハ)屋の松が 00077130M12まくのうち、/権三(ごんざ)がわきでおまへの/蕎麦(そば)をたべまして、す 00077140M13だのつゝミのさくらもち、/山谷(さんや)の/角(かど)の/玉庄(たましやう)で、しゞミの/汁(しる) 00077150M14を五六ぱい、(七オ)/酒(さけ)ハ内田の/宮戸(ミやと)川、/宝来(ほうらい)茶つけニ、か 00077160M15や町の喜八だん/子(ご)のしるこもち、/千(ち)とせのあなごに/菊屋(きくや)の 00077170M16うなぎ、/笹(さゝ)や治兵衛がかもなんばん、かの吉兵衛がてんふ 00077180M17らから、/明月堂(めいげつだう)におまんすし、江戸に/名高(なたか)キ/名物(めいぶつ)ハ、のこ 00077190M18らずたべてそうろうと、はらをなで+いゝけれバ、ヤイ 00077200M19+、こゝなくらゐぬけめが。しやうばいせいと金やつた 00077210M20ニ、あまい物から酒/肴(さかな)、てんふらまでも(七ウ)うちくらい、 00077220¥P244 00077230L1なにしやうばいをはじむるぞといへば、むす子、ぬからぬ 00077240L2/顔(かほ)で、ハイ。今ニ小間/物(もの)ミせを/出(だ)しませう 00077250¥N9¥J 00077260¥Xなぞ/合(あハせ) 00077270L5/雪(ゆき)の日やあれも人の子/樽(たる)ひろいト、ヤレ+、この大雪に 00077280L6さぞたいぎであろう。まア+手でもあたゝめてゆきやれ 00077290L7といへば、○御用、それハ/誠(まこと)ニ/真節(しんせつ)と云、なぞ/坊主(ぼうず)でハな 00077300L8いが、(八オ)/私(わたくし)のあしとかけて、へたのしようぎ。其心ハ、 00077310L9/王(わう)つめたい。○イヤ、これハおもしろい。てまへハいくつ 00077320L10ニなる。○わたくしのとしとかけて、もたれたおなら。/其(その) 00077330L11心ハ/九才(くさい)+。○いや、これハかんしん。/内(うち)はとこだ。 00077340L12○ハイ、わたくしの内トかけて、/寐(ね)おきのおならサ。○フ 00077350L13ウ、してその心ハ。○ハイ、/浅艸(あさくさ)で厶り升。○さても+ 00077360L14はつめいな。こういふ子ぞうを御用の/奉公(ほうこう)させるとハ。し 00077370L15て、おぬしが両しんハ、じつの(八ウ)おやたちか。○ハイ、 00077380L16/私(わたくし)の/両(りやう)しんトかけて、/紅葉(もミぢ)の/名所(めいしよ)。○フウ、して/其心(そのこゝろ)ハ。 00077390L17ハイ。/真間(まゝ)で/厶(ござ)り/升(ます) 00077400¥N10¥J 00077410¥X/白(しろ)ねづミ△△△△△¥A可楽忰△十二才△東希又三郎作 00077420L20ひるがほやよらずさハらず/中(なか)をさくトハ、おもしろい/句(く)じ 00077430M1や。/何事(なにごと)によらず、あまりほむるハへつらうにちかし。あ 00077440M2しくいへばそしるにちかし。よろづの事、ミな/中(なか)を(九オ) 00077450M3ゆけバまちがいハないといふはなしのおりから、/極楽落(ごくらくおと)し 00077460M4へ/鼠(ねづミ)がかゝると、/三介(さんすけ)かけつけ、イヤ、これハめでたい。 00077470M5○だんな/様(さま)。はつ※しく/極楽(ごくらく)おとしへ/白鼠(しろねづミ)がはいりまし 00077480M6た。○それハ/吉(きつ)そう。○/大(おほ)キイか。○イヽヱ。○ちいさい 00077490M7か。○イヽヱ。○そして、どんなじやトいへバ、おとしの 00077500M8/中(なか)で/鼠(ねづミ)が、Sチウ+(九ウ) 00077510¥N11¥J 00077520¥X/両国(りやうこく)ばし△△△△¥A可楽忰△十二才△東希又三郎作 00077530M11/初雪(はつゆき)や/犬(いぬ)のあしあと/梅(うめ)の/花(はな)。はやむろざきのひらくころ、 00077540M12あまざけうり、両こくばしの/上(うへ)にて、犬の/尻尾(しりを)をふみけれ 00077550M13バ、犬、わんといふ。あまざけやふりかへつて、わんハな 00077560M14いから/茶(ちや)わんで/上(あが)れと云。そばに十六七ないさミはだの娘 00077570M15か/居(ゐ)て、なんだな、あまざけやさん。おめへもこふうな 00077580M16(十オ)人だ。わんハないから/茶(ちや)わんであがれとは、げんろ 00077590M17く/時代(じだい)のいゝぐさだハな。/犬(いぬ)も犬だ。しつぽをふまれたつ 00077600M18て、/何(なに)もわんとないてくれる事もねへ。あんまりな/地(ぢ)犬だ 00077610M19のうといへば、犬S/娘(むすめ)の/顔(かほ)をつく※見て、○キヤン 00077620¥P245 00077630¥N12¥J 00077640¥X/地口(ちぐち)のかけ/取(とり) 00077650L3かけ/取(とり)のさいふはおもし/大晦日(おほミそか)。/けふ(|今日)は(十ウ)いちばん/結= 00077660L4城(ゆう=き)縞、◇あらき◇を出スじやなけれ共、なんぼこつちやが◇恵比寿屋◇ 00077670L5の/笑寿(ゑびす)のような男でも、またるゝたけハ◇松坂屋◇、ぢぞうの 00077680L6/顔(かほ)も/桟留(さんとめ)じや。こちハ/青梅(あふめ)に見る/気(き)でも、そつちやの心が 00077690L7/太織縞(ふとおりしま)、/一反(いつたん)はらふたうへなれバ、またなんぼでも◇柏屋◇じ 00077700L8や。たま+/来(き)ても△/◇布袋(ほてい)◇しゆハ、/内出(うちで)の/◇槌屋(つち)◇で◇伊豆蔵◇じ 00077710L9や。/一寸(ちつと)もこちに◇近江屋◇なら、ぬしを/◇伊藤(いとう)◇てヨウいハん。 00077720L10いゝたい事ハ◇山本◇でも、/◇岩城升屋(いハきます)◇でもどる/気(き)じや。くどいよ 00077730L11うじやかおいへさん、(十一オ)ゑうていふのじやござんせん。 00077740L12◇越後屋◇二合の酒のんで、けんくわ◇しま屋◇で◇沢の井◇の、さわぐ 00077750L13こゝろハミぢんもない。トハいふ/物(もの)の、かれこれいふうち 00077760L15◇白木◇をミれバ/夜(よ)ぞふけにけりじや。おまへの/都合(つがう)が/$(だいわる) 00077770L17で、はらひがならざ/奈良(なら)ざらし、こつちやもりやうけん/縞(しま) 00077780L18こはく、/東雲純子(しのゝめどんす)の/帯(おび)の/代(だい)、/長(なが)イせりふハ/縮緬(ちりめん)どう、たが 00077790L19ひの/心(こゝろ)も/◇住吉屋(すミよしや)◇、/◇水口(ミなくち)◇からの/出(で)ほうだい、めでたふ/笑(わら)ふても 00077800L20どりましやうト、かの/呉服屋(ごふくや)が/出(で)てゆくト、@子ぞう、△△|かど口へ出て、@ 00077810M1Sこりやアいゝ+引(十一ウ) 00077820¥P246 00077830¥U噺本大系△第十五巻 00077840¥T@軽口|頓作@ますおとし〔題簽〕 00077850¥G 00077860¥Y 00077870L16文政九年正月刊 00077880L17林屋正蔵序・作 00077890L18歌川豊国画 00077900L19西村屋与八板 00077910L20中本一冊 00077920¥Yたゞの口上 00077930M3Sハイ、申上升。むかしからござ 00077940M4り升/落(おとし)ばなしの/本(ほん)ハ、/短(ミぢか)ひばかり 00077950M5で、/御(お)なぐさみがうすふござり升 00077960M6ゆへ、わたくしが/御座敷(おざしき)へ/罷出(まかりいで)ま 00077970M7するせついたします、ちつともさ 00077980M8し/合(あひ)なしのはなしを、/此度(このたび)/出板(しゆつぱん)い 00077990M9たし、/御高覧(ごかうらん)にそなへまする。御 00078000M10ひゐきあつく/御評判(ごへうばん)+ 00078010M11△△西両国広小路定席にて 00078020M12△△御客様へ申上ルはなしの間&に 00078030M13△△△△△△△林屋正蔵誌G 00078040M14△△△△△△△△△△△△△△(一オ) 00078050¥P247 00078060¥G(一ウ・二オ) 00078070¥Q御かほのくすり△美艶仙女香 00078080M3△△△△△△△△△△△△△△弘所南伝馬町△坂本氏 00078090¥N1¥J 00078100¥Xうす/粧(けせう)のはなし 00078110M5こうまんな人S女をおやまといふ事ハ、まゆハ/遠山(とうやま)のごとく、 00078120M6/富士(ふじ)びたひといゝ、又あかする所ハ/湯(ゆ)どの山、/歯黒(かね)を(一 00078130M7ウ)つけるハ/羽黒山(はくろさん)、/顔(かほ)ハほんのり/桜色(さくらいろ)、よし/野(の)の/名(な)をや 00078140M8かりぬらん。うすげせうする/仙女香(せんぢよかう)、きゝめの/功能(こうのふ)/御(ご)ぞん 00078150M9じの、/日(ひ)をかさねるほど/白(しろ)くなる、/都(ミやこ)の/雪(ゆき)の/比(ひ)ゑい/山(ざん)△そ 00078160M10ばの人Sそのはづじや。/弘所(ひろめどころ)が/比(ひ)ゑの/下(した)の/坂本(さかもと)じや(二オ) 00078170¥P248 00078180¥G(二ウ・三オ) 00078190¥N2¥J 00078200¥X/三番叟(さんばそう) 00078210M3/青陽(せいよう)あらたまる/年(とし)とるはじめのあしたにハと、/万歳(まんざい)が/日(ひ)も 00078220M4/永&(なが+)とうたふにつれ、/人(ひと)のこゝろもゆつたりと、/古年(こぞ)より 00078230M5すこし/寐(ね)がちな/人(ひと)も、/御慶(ぎよけい)/申入升(もうしいれます)の/礼者(れいしや)のこゑに/起(おき)上り、 00078240M6うがひ/手水(てうづ)などつかふてゐる/表(おもて)へ、あきんどのこゑ。あき 00078250M7んどSすゞなすゞしろ+△亭主Sこれ+あきんど。/水= 00078260M8菜(みづ=な)/大根(だいこ)といわずして、すゞなすゞしろとハ(二ウ)/高慢(こうまん)なよ 00078270M9びやうじや。/其(その)すゞなハなんぼじや△あきんどSハイ。壱/把(わ) 00078280M10三文でござりますが、三/把(ば)ならバ八文にしてあげませう 00078290M11亭主Sこれハ/安(やす)イ。こうもあろうか。S八文に三ばそうな 00078300M12るすゞなこそ△なによりもつてやすうそうろう、ハどふじ 00078310M13や△あきんどSこれハおそれ入ました。わたくしも、いや 00078320M14+といわずにあげませう△S/貴(き)さまも、よほどの/年(とし)とみ 00078330M15ゆる。さしづめ/翁(おきな)じやの△あきんどSハイ。せうばいハ、せ 00078340M16んざいでござります(三オ) 00078350¥N3¥J 00078360¥X/九段目(くだんめ) 00078370M19きのふ/忠臣蔵(ちうしんぐら)を/見物(けんぶつ)に/行(いつ)たが、/九段目(くだんめ)の/本蔵(ほんぞう)の/文句(もんく)に、/力= 00078380M20弥(りき=や)の/事(こと)を、/蛙(かへる)の/子(こ)ハかへるになるとハ、なるほど/利(り)づめじ 00078390¥P249 00078400¥G(三ウ・四オ) 00078410M1や。そバの人S/今(いま)しれた(三ウ)やうに。むかしから/通(とを)り/文句(もんく) 00078420M2じや△見物Sそれでも、とりわけ/利(り)づめじや△そばの人Sそ 00078430M3りや/又(また)なぜに△見物S/力弥(りきや)が/紋所(もんどころ)を/見(ミ)たらバ、だきお玉じ 00078440M4やくしだ〔印入ル〕(四オ) 00078450¥N4¥J 00078460¥X/太鞁(たいこ)うり 00078470M7あきんどのよびこへに、ひやうしとりて、/心太(ところてん)やてん+ 00078480M8++といふかとおもへバ、/玉子(たまご)/玉子(たまご)と、二ツ(四ウ)つ 00078490M9ゞけていふもあり。あんまハ/笛(ふへ)におのれがわざをあらわし、 00078500M10/夜(よ)そばうりハ/風鈴(ふうりん)にこゑをやすめ、たいこうり/行人(ゆくひと)は、た 00078510M11いこや+といへば、/大根(だいこ)と/間違(まちが)ふ(五オ)ゆへ/が((ママ))、/我(わが)さし 00078520M12/荷(に)のふたる/太鞁(たいこ)を、どん+とうちながら/行(ゆく)を、ある/内(うち)の 00078530M13/亭主(ていしゆ)、Sこれ/太(たい)こよ。その/朝比奈(あさひな)を見せさつせへ△太こうり 00078540M14S朝ひなとハ、/人形(にんぎやう)ハござりません△亭主S/人形(にんぎやう)でハない。 00078550M15/内(うち)の/子供(こども)に/買(か)ふてやる。/子供(こども)がはやすから、/子(こ)ばやしとい 00078560M16ふしやれよ△太こうりSこれは/旦那(だんな)。いゝそこないを、むり 00078570M17こじつけな△亭主Sイヽヤ、いゝそこないでハない。/小(ちい)さ 00078580M18い/太鞁(たいこ)じやから、/朝(あさ)ひなよ△太こうりSそりや/又(また)なぜな△亭 00078590M19主Sハテ、/巴(ともへ)の/子(こ)じや(五ウ) 00078600¥P250 00078610¥G(四ウ・五オ) 00078620¥N5¥J 00078630¥Xくじら 00078640¥G(六ウ下) 00078650M3ある人、/年代記(ねんだいき)をくりひろげ 00078660M4て、/替(かハ)つた事もあるものじや。 00078670M5/寛政(かんせい)/十年(じうねん)、/品(しな)川へ/大(おほ)くじらが 00078680M6/上(あが)る。/京(きやう)の/大仏(だいぶつ)、/雷火(らいくハ)にて/焼(やけ) 00078690M7ルとしてある。/又(また)/文政(ぶんせい)六/年(ねん)、 00078700M8かな川へ/大(おほ)くじら/上(あが)ると、/京(きやう) 00078710M9の/御門跡(ごもんぜき)/御類焼(ごるいせう)とは、どふい 00078720M10ふものだろう。そバの人Sくし 00078730M11らが/上(あが)れバ/七里(なゝさと)にぎおふと。 00078740M12/江戸(ゑど)ハはんぜうだが、(六オ)/上方(かミがた)にはかわつた/事(こと)がある。 00078750M13/是(これ)ハ/利(り)づめじや。ハテ、/鯨(くじら)といふ/字(じ)ハ、/京(きやう)に/魚(へん)がある(六ウ 00078760M14上)(六ウ下絵) 00078770¥N6¥J 00078780¥X/茶番狂言(ちやばんきやうげん) 00078790M17$/|(チヨン)しらせがなつたから、どなたも/座敷(ざしき)へおいで 00078800M19よ。女客S/今(こん)ばんハありがたふござります。Sごしんぞさ 00078810M20ま、ありがとふ+++。十五六から廿四五/入(いり)まじり 00078820¥P251 00078830¥G(七ウ・八オ) 00078840M1の/小娘(こむすめ)としま、/男女(なんによ)/同席(どうせき)ゆるさずと、/大竹(おほたけ)にて/手摺(てすり)の/堺(さかい)、 00078850M2/世話(せわ)やきの/若(わか)イもの、Sみんな/下(した)に/居(ゐ)よふ+。/押(おし)ちやア 00078860M3わりい+。Sおばアさん。よう/入(いら)つしやりました。サア 00078870M4+もつとまへえおいでなさりませ△ばアさまSハイ+、 00078880M5ありがたふござります。/耳(ミヽ)ハとふし、/目(め)はかすむ。どふ 00078890M6も、なにかわかりかねまする。わかひ/時(とき)からたのしミハ/芝= 00078900M7居(しバ=ゐ)ばかりで、こちらの/御内(おうち)の/御茶番(おちやばん)ハ、とんと/本(ほん)との/芝居(しバゐ) 00078910M8を見るやうで、たのしんでおりました。/今(いま)の/若(わか)イ/衆(しゆ)は、 00078920M9きようでござります△かミさまS/左様(さやう)でござります。おばア 00078930M10さんも、まへどごひゐきがござりませう△ばアさまSハイ。 00078940M11わたしが(七オ)ひゐきハ/中村(なかむら)/仲蔵(なかぞう)、せんの/幸四郎(こうしらう)、その/時= 00078950M12分(じ=ふん)ハ/今(いま)の/幸四郎(こうしらう)が/三(ミつ)ツ/四(よつ)ツで、わたしがそのころハもう廿 00078960M13四五の/年増盛(としまざかり)で、/此(この)ごろのやうじやか、もうやがて六十/年(ねん) 00078970M14ぢかくなります。わたしが/見物(けんぶつ)しているさじきのうしろへ、 00078980M15/乳母(うば)に/抱(だか)れて/来(き)てゐるから、さても+きれいなよい子じ 00078990M16やとほめたら、/高(こう)らいやのむす/子(こ)じやといふから、(七ウ)な 00079000M17んぞあぎようかとだくと、じきにわたしに/小便(しやうべん)をしかけた 00079010M18ものが、/今(いま)ハ/舞台(ぶたい)へ/出(で)ると、/人(ひと)をいくたりともなくころす、 00079020M19そのにくらしさトいふものハあんまりじやから、いつぞや 00079030M20も見物をしながら、そふいつてやりました。おれがひざへ 00079040¥P252 00079050¥G(八ウ・九オ) 00079060M1/小便(しやうべん)をしかけた/事(こと)をわすれて、そんなにのさばるな。も 00079070M2ういゝかげんに/後生(ごせう)を/願(ねが)ひ、/今(いま)までころした/人(ひと)のぼだいで 00079080M3もとふてやれといゝました。ヲホヽヽヽ△むすめSヲヤ 00079090M4+、おばアさんハおかしいね。(八オ)わたくしハ/幸四郎(こうしらう) 00079100M5ハまことにこわいよ。/又(また)/団十郎(だんじうらう)もちかごろハ/幸四郎(こうしらう)のやう 00079110M6に、にくらしひあくばかりしておるよ△S/菊五郎(きくごらう)もかたき 00079120M7やくばかりいたすし、どふいたそうね△Sそれでもおまへ 00079130M8さんの/両(りやう)ざしハ$だから、/団十郎(だんじうらう)のかいもん、/御(ご)ひゐ 00079140M10きだろう。ヲヤ+、とんだいゝくしだねへ。ドレお見せ。 00079150M11/政子形(まさごがた)だね。/此(この)ぽち+と二ツあるのが、つまミふといふ 00079160M12(八ウ)べつこうだと。ヲヤ+、/気(き)の/多(おほ)い。かんざしのも 00079170M13んハ/抱(だき)がしわだよ。/菊五郎(きくごらう)も/御(ご)ひゐきかへ。ヲヤ++ 00079180M14+△Sわたくしも/菊五郎(きくごらう)がひゐきだが、/此間(このあいだ)おツかさん 00079190M15のまへで、菊五郎さんと申たら、しかられて、しばやのき 00079200M16ん/所(じよ)のものでハあるまいし、菊五郎・団十郎といやとおつ 00079210M17しやるから、おツかさんのまへでハ、よびずてにいたした 00079220M18が、まことに+ひゐきだから、はなしをしまつて、まど 00079230M19からかほをだして、かんにんして下さりませ。おつかさん 00079240M20のまへだから、よびすてにいたしたが、かげでハやつぱり、 00079250¥P253 00079260¥G(九ウ・十オ) 00079270M1さまづけにいたします。/梅幸(ばいこう)さん+と申たら、/歯(は)みが 00079280M2きうりがまいつて、/一袋(ひとふくろ)あげますかと申ましたよ△てんぼう 00079290M3かゝアSナンダ、よくしやべる。やかましいわな。べちや 00079300M4くちやべちやくちや、つまミふより、つとふにして、たぼ 00079310M5さしのしいたけ、(九オ)/白粉(おしろい)のしらあい、ぎん/出(だ)し/油(あふら)のあ 00079320M6んかけ、しらが/元結(もとゆひ)のそうめん、/丈長(たけなが)のかんぴやう、それ 00079330M7をあがると、じきしよくしやうだ。/小間物(こまもの)見せでも/出(だ)せバ 00079340M8いゝ△まくの内S/東西(とうざい)+。しらせの/拍子木(ひやうしぎ)、チヨン+ 00079350M9Sサア、もう/幕(まく)があくそうだ。あれさ、おしてハわるいよ。 00079360M10ヲヤ+いやだよ。/又(また)/髪(かミ)へおさわりだよ。ふかいきなねへ 00079370M11(九ウ) 00079380M12S/台所(だいどころ)の/角(すミ)にハ、/下男(げなん)の/権介(ごんすけ)が、/青首(あをくび)の/鴨(かも)の/毛(け)をふいてゐ 00079390M13る/所(ところ)へ、/犬(いぬ)が/口(くち)を/出(だ)すゆへ、権Sそつちへいげ。いがねへ 00079400M14か。たわことな。わいらが/口(くち)へはいる/物(もの)でハねへとしかる 00079410M15を、せうじ/一重(ひとえ)へだてゝ/亭主(ていしゆ)がきゝ/付(つけ)、亭Sナンダ、/権介(ごんすけ)。 00079420M16そう※しい△権Sそれでも、わしが/鳥(とり)をこしらへてゐる 00079430M17/所(ところ)へ、/犬(いぬ)が/口(くち)をつんだすから、けんくわをしています。こ 00079440M18のちくせうめ、いげ△亭S口でばかりしからずと、くら 00079450M19わせろ△権Sハイ。くらわせますか△亭Sくらわせろ 00079460M20S@すこししづかになり、それより又権介、なたに|て鳥のほねをたゝきながら、大きなこゑにて、@△(十オ)権S又口を 00079470¥P254 00079480¥G(十一ウ・十二オ) 00079490M1つんだすか。いがねへか。此ちくせうめ△亭S/権介(ごんすけ)。そう 00079500M2※しい。なんだ△権S/骨(ほね)をたゝいていれバ、/又(また)/犬(いぬ)めが/口(くち) 00079510M3をつんだすから△亭Sそれだから、くらわせろといふのだ 00079520M4権Sくらわせたが、いぎましねへ△亭Sたゝきくらわせろ 00079530M5権Sハイ。たゝきくらわせるのかね。ハイ+△S@それより|すこしす@ 00079540M6@ぎて、亭主台|所へ立いでゝ、@亭S/料理(りやうり)ばんさん。こゝで/茶(ちや)わんものをだし 00079550M7てくんな△料りばんSコレ権介どん。さつきの/鳥(とり)をよこして 00079560M8くんな△権S/鳥(とり)ハちつともござりません△料Sナゼ+ 00079570M9権Sおまへにこしらへてもらつて、ほねをたゝいている/所(ところ) 00079580M10へ、/犬(いぬ)が/口(くち)をだすから、/旦那(だんな)がくらわせろといつたゆへ、み 00079590M11んなくらわせた△料S大へん+。そしてほねハどうした 00079600M12権S/旦那(だんな)がたゝきくらわせろといつたから、たゝいたのを 00079610M13くらわせた。なんと、きついものか△S@亭主も料りばんもあき|れて、/小言(こごと)をいつても@ 00079620M14@しかたなく、わらひとなりしが、|又しらせ拍子木チヨン+。△@がくやSサアまわろう++ 00079630M15見物S口上++△口上S此/所(ところ)/第壱番目(だいいちばんめ)/三立目(ミたてめ)はじまり 00079640M16さやう、チヨン++++++△なり物S/波(なミ)の 00079650M17/音(おと)/時(とき)の/鐘(かね)にて/幕(まく)/明(あく)く、/正面(しやうめん)/波(なミ)まく。すべて/由井(ゆゐ)が/浜(はま)のこし 00079660M18らへ。/近江(あふミ)/太郎(たらう)と/八幡(やわた)のつぼね、/白(しら)はたを/引合(ひきあふ)て、見へよ 00079670M19くきつとなりて、つぼねS/源氏(けんじ)の/継目(つぎめ)の/此白(このしら)はた。やわか 00079680M20(十ウ)なんじにわたそうや。/道(ミち)をひらいて、とふしや+ 00079690¥P255 00079700L1近S/梶原(かぢわら)さまからたのまれた、/此身(このミ)の/出= 00079710L2世(しゆつ=せ)のその/壱品(ひとしな)、きり+わたしてうしや 00079720L3アがれト、S@二人/立(たち)まわり、はげしき大たてと|なり、ついに近江/太郎(たらう)、/八幡(やわた)のつ@ 00079730L4@ぼねを手にかけ、/白(しら)はたをうばい/行(ゆか)んとする。つぼ|ねが/一念(いちねん)、/白鳩(しらはと)となり、あとをしたひゆく。チヨン@ 00079740L5@+をきつかけに、/波(なミ)まくおちると、つるがおか八|まんのかいろうのかざりつけ。/近江(あふミ)太郎ハかけ来り、@ 00079750L6近Sすんでの事に/此白(このしら)はた。/大願成就(だいぐわんじやうじゆ)、△△△G(十一ウ中) 00079760L7かたじけねへ。ちつともはやく/梶原(かぢわら)さまへ、そうだト、S行 00079770L8@んとするうしろより、白刃のきつさき、近江太郎をさしとふし、うんと|たをるゝしがいをバ、あしにてけかへすくせものハ、廿三四の武者出立、@ 00079780L9@あたりをとくと見廻して、白はたうばい行んとす。うしろの方より一人の|女、/非人(ひにん)と見ゆれども、かほかたちハうつくしく、つゞれをまとひ、こも@ 00079790L10@ぬぎすて、白はたをやらじと行あふ。そのおりから、/白鳩(しらばと)壱わ/飛(とび)来り、/武=|者(む=しや)をなやまし、かの女に白はたをわたさんと、とびかふさまをきつと見て、@ 00079800L11なり物S@うすどろ+に、はちまんのか|いろうにて/夜(よ)かぐらのはやし。@△武者Sあゝらあやしや。 00079810L12/今(いま)/白(しら)はたを、ばいおふ/折(をり)から、/一(ひと)ツの/鳩(はと)の/飛来(とびきた)り、(十一オ) 00079820L13さまたげなすハこゝろへぬ。/此鳥(このとり)まさに/人(ひと)の/一念(いちねん)。つたへ 00079830L14きく、/蜀国(しよくこく)の/杜宇(とう)ハ/死(し)して/其魂(そのこん)ほとゝぎすとなり△女S/我= 00079840L15朝(わが=てう)の/実方(さねかた)/朝臣(あそん)ハ、/死(し)して/一念(いちねん)、/雀(すゞめ)となり、/大(だい)ばん/所(しよ)の/飯(いゝ)を 00079850L16はみしためしもあり。それハ/古(いに)しへ△武者Sこれは/目前(もくぜん)。 00079860L17ハテあやしき/鳥(とり)の△二人Sふるまいじやよなあ(十一ウ) 00079870M1Sどろ++△権介Sちつとまたつせへ。そのふるまひ 00079880M2ハできましねへ△みな+Sそりや、なぜ+△権介S/鳥(とり)ハ 00079890M3さつき、/犬(いぬ)にくわせてしまつた(十二オ) 00079900¥N7¥J 00079910¥X/源氏(げんじ)五十/四帖(よじやう)の/夫婦(ふうふ)けんくわ 00079920M6/京育(きやうそだ)チの/者(もの)、/親子(おやこ)三人/江戸(ゑど)え/下(くだ)りて、/手習(てならひ)の/師匠(ししやう)して、 00079930M7/此亭主(このていしゆ)/色好(いろごの)ミゆへ、やゝともすれバ、/女房(にようぼう)が/八里半(はちりはん)ほどの 00079940M8/角(つの)をはやして、りんきのほむらハ/大(おほ)ふかしのゆげのごとく、 00079950M9/大福餅(だいふくもち)ほどふくれてやきかける。ある/時(とき)/亭主(ていしゆ)、/弁慶嶋(べんけいじま)の/木= 00079960M10綿(も=めん)/一反(いつたん)/買(か)ふて(十二ウ上)/帰(かへ)り、/向(むかふ)の/娘(むすめ)に/仕立(したて)てもらふとい 00079970M11ふを、/女房(にようぼう)/引(ひつ)とつて、/内(うち)に女もないやうに、/外分(ぐわいぶん)がわるい。 00079980M12/今(いま)/目(め)のまへで、わしが/仕立(したて)て見せませうと、まづ弐丈八尺 00079990M13を五ツにきり、/五布(いつの)ふろ/敷(しき)見るやうに/四角(しかく)にぬふて、まん 00080000M14/中(なか)へ/穴(あな)をあけ、サアでけました。ずつとたつて、/其穴(そのあな)へく 00080010M15びを/入(いれ)て見やんせといふゆへ、/其通(そのとを)りに/着(き)て見れバ、/風合= 00080020M16羽(かせかつ=ぱ)のごとく/手(て)もいです。/亭主(ていしゆ)あきれて/笑出(わらひだ)せバ、/女房(にようばう)がへ 00080030M17らず口。どふでも/仕立(したて)おろしをめして、/御(ご)きげんがよいと 00080040M18いふを、/亭主(ていしゆ)ハはらたち、ぬぎすてゝ、そばに/有(あり)あふ/源氏= 00080050M19物語(げんじ=ものがたり)の/本(ほん)をとつて(十三オ上)うちつくれバ、又/女房(にようぼう)がなげか 00080060M20へし、/母親(はゝおや)ハ/中(なか)へいり、とめるもきかず。女房Sわしも/着(き) 00080070¥P256 00080080¥G(十二ウ・十三オ) 00080090M1ものゝ一ツぐらゐ/仕立(したて)る事、/女(をんな)のたし(十二ウ下)なミ、し 00080100M2つていれど、なんぞといふと、/向(むかひ)の/小娘(こむすめ)+と。あんまり 00080110M3はらかたつゆへに、わざと/反物(たんもの)ずん+にしたわいな△亭 00080120M4Sおのれハ(十三オ下)にくいやつじやなア。かりそめにも/亭= 00080130M5主(てい=しゆ)に、/源氏(げんじ)の/本(ほん)をうちつけ、/日(ひ)にいくたびかりんきいさか 00080140M6ひ。/一&(いち+)いへバ/言(いひ)つくされぬ。/源氏(けんじ)でいふても、マアこれ 00080150M7ほどもう+ゑんを/◇桐壷(きりつぼ+)◇とおもふていれど、/◇帚木(きゝきゞ)◇が/◇蜻蛉(かげろう)◇ 00080160M8になり/日(ひ)なたになりて/◇澪漂(みをつくし)◇、/◇早蕨(さわらび)◇の/手(て)を/◇絵合(ゑあわせ)◇て/◇乙女(おとめ)◇/なさ 00080170M9るゆゑ、そのまゝに/◇須磨(すま)◇しておけバ、むかひの/◇橋姫(はしひめ)◇とわけ 00080180M10がある、/◇明石(あかし)◇ていへと、いらざる/事(こと)に/気(き)を/◇紅葉賀(もみぢのが)◇、もふ/堪= 00080190M11忍(かん=にん)がなら/坂(さか)や、この/手(て)/◇柏木(かしわぎ)◇この/◇真木柱(まきはしら)◇で/◇空蝉(うつせミ)◇にするぞ△女 00080200M12房Sいかに/◇賢木(さかき)◇げんでも、いゝかげんに(十三ウ)/◇夕顔(ゆふがほ)◇。 00080210M13/◇花宴(はなのゑん)◇のあれバこそ、/◇末摘花(すへつむはな)◇をたのしミに、まだ/◇若紫(わかむらさき)◇の 00080220M14ころよりも、/人目(ひとめ)/◇関屋(せきや)◇の/◇雲尾(くもがくれ)◇、/心(こゝろ)の/◇竹河(たけがハ)◇いゝもせで、/身(ミ) 00080230M15をのミこがす/◇螢(ほたる)◇火(び)の、思ひおもふて/◇寄木(やどりき)◇の/宿(やど)ばいり、 00080240M16/◇槿(あさがほ)◇から/◇夕霧(ゆふぎり)◇まで、それ/◇蘭(ふじばかま)◇をたゝめ、それ/◇常夏(とこなつ)◇をとれ、 00080250M17/飯(まゝ)がでけたら/◇椎本(しいがもと)◇、/今朝(けさ)のおつけハ/◇薄雲(うすぐも)◇じや。/茶&(ちや+)があ 00080260M18つい、/水(ミづ)を/◇梅枝(むめがえ)◇と、/水仕(ミづし)わざさせながら、/◇横笛(よこぶえ)◇の/横(よこ)いがミ、 00080270M19/其(その)うへむかいの/年(とし)/◇若菜(わかな)◇/娘(むすめ)と〔/上下(ぜうげ)〕の(十四オ)へだてハなけ 00080280M20れども、まだ十四五なあの/◇胡蝶(こてふ)◇と、あんまりなうハきもの。 00080290¥P257 00080300L1/◇藤裏葉(ふじのうらは)◇のうらはら/男(をとこ)、/◇御法(ミのり)◇ころしてくりやうぞや△亭主 00080310L2Sヱヽ/◇松風(まつかぜ)◇のかしましい。/◇蓬生(よもぎふ)◇ぎふとしやべる事じや。 00080320L3/◇夢浮橋(ゆめのうきはし)◇/◇幻(まぼろし)◇にも、そ/◇野分(のわけ)◇ハないわい。そふいふおのれが/気(き) 00080330L4まゝあそび。/春(はる)は/鴬(うぐひす)の/◇初音(はつね)◇をきかふと、/飼鳥(かいとり)をしくさる。 00080340L5/夏(なつ)ハ/◇浮舟(うきふね)◇で/◇鈴虫(すゞむし)◇、/芝居(しバゐ)の/替目(かわりめ)+ハ/◇御幸(ミゆき)◇、/冬(ふゆ)になれバ/◇四阿= 00080350L6屋(あづま=や)◇の/戸(と)を/引(ひき)たてゝ、/◇篝火(かゞりび)◇のにじりやき(十四ウ)。/世間(せけん)へぱつ 00080360L7と/◇薫中将(かほるちうぜう)◇。/◇手習(てならひ)◇/子供(こども)のまへもある。/◇玉鬘(たまかづら)◇を/◇紅梅(こうばい)◇にし/◇葵(あふひ)◇ 00080370L8にして、/亭主(ていしゆ)のざんそう。/◇総角(あげまき)◇が/手(て)がらか。こふなるから 00080380L9ハやぶれかぶれ、/◇花散里(はなちるさと)◇の/山(やま)おろし。/山(やま)の/神(かミ)め、/出(で)てうせ 00080390L10ふ△女房Sイヽヤ。いなぬと△@せり/合(あふ)を、/家主(いへぬし)の/子僧(こぞう)が/立(たち)ぎゝし|て/内(うち)へ入、子僧Sもし+/旦那(だんな)さ@ 00080400L11@ま。むかふの/手習(てならひ)しせうの内で、大げんくわでご|ざります△大やSどふいふけんくハじや△△△△@△子僧Sむかふのとし 00080410L12わかと、/弁慶(べんけい)をかつぱにして、/手(て)がでぬといふ/源氏(げんじ)と/源氏(げんじ) 00080420L13のたゝかいでござります△大やSそれはまちがいじや。/弁= 00080430L14慶(べん=けい)ならば(十五オ)としわかでハない。うし/若(わか)だろう。/源氏(げんじ) 00080440L15と/源氏(げんじ)のあらそいは、/五条(ごぜう)の/橋(はし)か△子僧Sイヽエ、/反物(たんもの)ハ 00080450L16弐丈八尺でござります 00080460¥Q 00080470L17筆工△道友 00080480L18林屋正蔵作 00080490L19歌川豊国画 00080500L20△△△△△△△△(十五ウ上) 00080510M2△西両国定席毎日 00080520M3△相勤メ升ル連中 00080530M4△林屋正蔵 00080540M5△喜久亭寿楽 00080550M6△林屋正作 00080560M7△寿笑亭巴上 00080570M8△松花堂林鳥 00080580M9△林屋正吉 00080590M10百まなこ可上 00080600M12△△△△△(十五ウ下) 00080610¥K〔書林永寿堂新刻目録一丁省略〕 00080620¥P258 00080630¥U噺本大系△第十五巻 00080640¥T/落噺顋懸鎖(おとしばなしあごのかきがね)〔内題〕 00080650¥G 00080660¥Y 00080670L16文政九年正月刊 00080680L17和来山人作 00080690L18有楽斎長秀画 00080700L19京△山城屋佐兵衛等板 00080710L20半紙本五巻五冊 00080720¥Y/序(じよ) 00080730M3/夫(それ)、むかふの/嬶(かゝ)ハおしやべりにして/人(ひと)の/短(たん)をいひあるき、 00080740M4/隣(となり)の/嬢(むすめ)ハおちやツひゐにして/己(をのれ)が/長(てう)を/説(とき)ちらし、/華売(はなうり)の/婆= 00080750M5&(ば=ゞ)、/人(ひと)の/言葉(ことば)の/先(さき)を/折(をり)、/馬喰(ばくろ)の/孫介(まごすけ)、/人(ひと)の/咄(はなし)の/尻馬(しりうま)にのり、 00080760M6/穀物屋(こくものや)の/下女(げぢよ)、/口豆(くちまめ)にして、/髪結(かミゆひ)が/女房(にようぼう)、/口(くち)はかミ/剃(そり)に/似(に) 00080770M7たり。/隠居(ゐんきよ)は/歯(は)もなき/僻(くせ)に、/食(くひ)かぢりの/学問(がくもん)に/高(たか)(一オ)/振(ぶり)、 00080780M8/妾(てかけ)ハ/小(ちいさ)な/口(くち)をして/大口斗(おほぐちばかり)/敲(たゝき)あるくも、/烏(からす)は/色(いろ)の/黒(くろ)きを/憎(にく) 00080790M9まず。/予(われ)/今(いま)、/我口(わがくち)を/棚(たな)へ/上(あげ)るといへども、/世間(せけん)の/口(くち)へ/戸(と)を 00080800M10/建(たて)ることなし。/素(もと)より/笑(わらつ)て/三百(さんびやく)/損(そん)をせし/黙止坊(だんまりぼう)の/徒(たぐひ)にあら 00080810M11ねバ、しやべりて/爰(こゝ)に/徳(とく)を/得(え)んと、/例(れい)の/憎(にくま)れ/口(ぐち)を/明(あき)の/方(かた)に 00080820M12/向(むかひ)て/開(ひら)けり 00080830M14△△△わん+のはつ春△△△△△△△和来山人題 00080840M15△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一ウ) 00080850¥P259 00080860¥G(二オ・三ウ) 00080870¥Y巻之壱△△△△巻之弐△△△△巻之三 00080880M2水はもと水△△こけぬ先△△△冬至うめ 00080890M3むかし+△△意気すき△△△ありのまゝ 00080900M4返りさき△△△当世の人気△△一ツは難 00080910M5寐みたれ髪△△ではう題△△△今仲景 00080920M6さとりの道△△大和言葉△△△(二オ)(二ウ・三 00080930M7△△△△△△△田から行も△△オ口絵) 00080940M8△△△△△△△△△△△△△△牛ハうし 00080950M9△△△△△△△△△△△△△△網代木 00080960M10△巻之四△△△△△巻之五△△夫か誠 00080970M11さすがハ心掛△△商売は商売 00080980M12とかく在所△△△よるの梅 00080990M13ものハ八分△△△これは尤 00081000M14知つた同士△△△其はづ+ 00081010M15よみと唱△△△△御代の恵(三ウ) 00081020M16ぬかぬ太刀 00081030¥P260 00081040¥G(二ウ・三オ) 00081050¥T1/落噺顋懸鎖(おとしばなしあごのかきがね)巻一 00081060¥A洛東△和来山人作 00081070¥N1¥J 00081080¥X水ハもと水 00081090M7/下(しも)見れバけちなることぞ思ハるれ。たとへ/蹴(け)つまづくとも、 00081100M8/人(ひと)ハうへ+を見ならひて/暮(くら)すべし。/五文字(ごもじ)の/句(く)、/焼跡(やけあと)の 00081110M9/釘(くぎ)、/紙屑拾(かミくずひろ)ひ、/木拾(きひろ)ひ/抔(など)ハ/格別(かくべつ)のさたにて、/落(おち)たる/物(もの)をひ 00081120M10ろハざるハ、/仁政(しんせい)に/浴(よく)しぬる/太平(たいへい)の/民(たミ)の/志(こゝろざし)なるべし。/雪(ゆき)に 00081130M11(四オ)/銭(ぜに)の/氷(こほり)しを/夢(ゆめ)見て、/寐小便(ねせうべん)をたれたる/丁稚(でつち)、/遠目鏡(とふめがね) 00081140M12にて/財布(さいふ)を/見付(ミつけ)、/手(て)を/出(いだ)してかきさがしたる/欲心婆&(よくしんばゞ)ハい 00081150M13ふにも/足(た)らず、/蚫貝(あわびがひ)のかけたるを/南鐐(なんりやう)かと思ひしハ、/両替= 00081160M14屋(りやうがい=や)の/亭主(ていしゆ)が/一生(いつしやう)の/誤(あやまり)にして、/南蛮黍(なんばきひ)の/殻(から)を/御布施(おふせ)の/落(おち)た 00081170M15ると/心得(こゝろえ)しも、/和尚(おせう)が/生涯(しやうがい)の不/覚(かく)なるべし。/昔(むかし)より/物(もの)を/拾(ひろ) 00081180M16ひて/出世(しゆつせ)せしハ、/源三位入道(けんざんミにうとう)/頼政(よりまさ)ばかりにして、/拝法(はいはう)ハ/大= 00081190M17金(たい=きん)を/顧(かへ)りミず(四ウ)と、/諸候(だいミやう)の/先歩行(さきかち)などハ、/百両(ひやくれう)百/貫(くハん)お 00081200M18ちてあつても、ふりむきもせず/行過(ゆきすぎ)るハ、/武士(ぶし)の/行儀(ぎやうき)のよ 00081210M19ろしきがゆゑなり。されば/人(ひと)として/恥(はぢ)/慎(つゝ)しむべきハ、/只(たゞ)/貪= 00081220M20欲(とん=よく)のひとつなり。むかし/京(きやう)の/四条(しでう)の/畷(なハて)にて、/弐人(ふたり)の/穢多(せきだなほし) 00081230¥P261 00081240¥G(六ウ・七オ) 00081250M1ども、/百両包(ひやくりやうづゝミ)の/入(いり)たる/財布(さいふ)を/拾(ひろ)ひ大によろこび、/密(ひそか)にさ 00081260M2ゝやきけるハ、/此金(このかね)ハわれとをれとが/山(やま)わけじや。Sなん 00081270M3ととん/六(ろく)、ゑらう/運(うん)がむいたじやないか△とん六Sヲヽサ。 00081280M4まんが/直(なほ)つて(五オ)/来(き)たわいの。シテ、わりや/此金(このかね)を/何(なに)に 00081290M5せうと思ふぞ△よく七Sされバいの。ゑゝきりものこしら 00081300M6へて、おやまかひと/出(で)かける/心(こゝろ)じや△とんSそうじや。こ 00081310M7ちらハまたお/山(やま)より/芸子(げいこ)だてじやと、/弐人(ふたり)ハ/立派(りつぱ)に/衣服(ゐふく)を 00081320M8こしらへ、/形躰(かたち)をつくらふて/新地(しんち)へ/行(ゆき)、とある/茶屋(ちやや)にあが 00081330M9りて/手(て)をたゝき、/酒(さけ)よ/肴(さかな)よ/芸子(げいこ)よと、/拾(ひろ)ふた/金(かね)をまきちら 00081340M10せバ、/芸子(げいこ)ハならんで/連弾(つれびき)に、/唄(うた)ふせうがのをもしろく、 00081350M11/唄(うた)S/坂(さか)でころんで(五ウ)こま/下駄(けた)の、よしやはな/緒(を)ハきれ 00081360M12るとも、おまへとわしがその/中(なか)ハ、むすんですげて/一対(いつつい)の、 00081370M13/女夫(めうと)といはれ/暮(くら)したら、うれしからふじやないかいな 00081380M14@よく七△|小声ニて@Sナントとん六。どふやらけどりくさつたじやない 00081390M15か△とんSなんのいの。/唄(うた)の/唱歌(しやうが)じや。/気(き)にかけな。だま 00081400M16つてゐい△/唄(うた)Sすねにきずもちやさゝはらはしる、よその 00081410M17うわさもむねに/釘(くぎ)△@よく|小声@Sどふでも/知(しり)くさつたわいの△と 00081420M18んSなんのいの。/唱哥(しやうが)じや。だまつて(六オ)(六ウ・七オ挿絵) 00081430M19/居(ゐ)い△唄S/大津(おほつ)わかいしゆハせきだはいて、チヤラ+/芝= 00081440M20屋町(しバ=やまち)がよい、ソコデもつて/月(つき)に/雪踏(せつた)が五十/五(ご)そく△よく 00081450¥P262 00081460L1Sゑらふたんとはきくさるな。おりや、チト/大津(おほつ)へもつて 00081470L2いこかいの△とんS/何(なに)をいふぞい。そんな/事(こと)ぬかすと、け 00081480L3どられるわい△よくSおりや/何(なん)じや、/気(き)がおかれてならん。 00081490L4モウいのふじやないか△とんSあはういふな。/是(これ)からがか 00081500L5んじんかんもんじやといふ/所(ところ)へ、/下(した)から/仲居(なかゐ)がかほを/出(いだ)し 00081510L6て、Sハイ。/花尾(はなを)(七ウ)さん、/菅野(すがの)さん、おむかひといへ 00081520L7バ、とんSなんじや+△中居Sハイ。ミなさんおむかひ 00081530L8でおます△とんSゑゝわいの△中Sゑゝとハどうでおます 00081540L9いな△とんSハテ、しれた/事(こと)じやわいの△中Sしれた/事(こと)と 00081550L10ハナ△とんSしれたことゝハ、ゑいといふ/事(こと)じやわいのと 00081560L11いへバ、/中居(なかゐ)ハ/笑(わら)ひながら/下(した)をのぞいて、/御弐人(おふたり)さんとも 00081570L12にお/直(なほし)じやぞへといへバ、よくSなむさん、/化(ばけ)があらハれ 00081580L13た 00081590¥N2¥J 00081600¥Xむかし+(八オ) 00081610L16/利休居士(りきうこじ)の/詞(ことバ)にハ、かけ/茶(ちや)わん・かけ/摺鉢(すりばち)なりとも、/其折(そのをり) 00081620L17からの/間(ま)にさへあはバ、/事(こと)たるべし。/無用(むやう)のうつわを/多(おほ)く 00081630L18あつめ、/無益(むゑき)の/土(つち)くれに/財宝(ざいはう)を/費(つゐや)すハ、ものしらぬやから 00081640L19のいたす/所(ところ)なりといへり。/此道(このミち)に/達(たつ)せずして、なまものじ 00081650L20りとなり、/茶(ちや)の/本意(ほんゐ)を/明(あき)らめずして/業(わざ)のミに/長(ちやう)ずるが/故(ゆゑ)に、 00081660M1/世話(せわ)にいふ/下手(へた)の/横(よこ)ずきといふ/事(こと)に/落(おち)て、/隠逸(ゐんいつ)の/境(さかひ)にあり 00081670M2ながら、/古道具屋(ふるだうぐや)と/同様(どうよう)の/行(おこなひ)をいたし、(八ウ)/閑静(かんせい)の/侘(わび)に 00081680M3/入(いり)ながら、/名聞(ミやうぶん)の/為(ため)に/気(き)ぜハしなくなるなり。されバ、/潜(くゝり) 00081690M4の/石(いし)に/青菜(あをな)をすりて、/日陰(ひかげ)に/苔(こけ)のふかきをもとめ、/垣根(かきね)の 00081700M5/蔦(つた)にべにがらをぬりて、/時雨(しぐれ)をいとふの/心(こゝろ)やまず。/所(ところ)ハ京 00081710M6の/川東(かハひがし)、/石(いし)/半分(はんぶん)に/土(つち)/半(はん)ぶん、/住居(すまゐ)ハ/俗(ぞく)な/侘(わび)がまへ。/風雅(ふうが)で 00081720M7もなく/洒落(され)でもなく、せうことなしの/文(もん)もう/隠(かく)し、/亭主(ていしゆ)ハ 00081730M8/例(れい)の/古物好(こぶつずき)、ふるくさへあらバ/古足踏(ふるたび)・/古褌(ふるふんどし)ハいふにお 00081740M9よハず、/破(やぶ)れ/傘(がさ)・やれ/莚(むしろ)・(九オ)かけ/椀(わん)・/欠下駄(かけげた)にいたる/迄(まで)、 00081750M10すべて/弐百年(にひやくねん)/此(この)かたの/物(もの)ハ/取所(とりどころ)なしとて、/集(あつめ)るもの/皆(ミな)こ 00081760M11と※く/古代(こだい)の/品(しな)なり。/自慢(じまん)の/茶(ちや)の/湯(ゆ)に/客(きやく)をよび、とりな 00081770M12らべて/客(きやく)に/向(むか)ひ/高慢(かうまん)しけるハ、/凡(およそ)、/洛中(らくちう)/洛外(らくぐハい)に/茶人(ちやじん)/多(おほ)しと 00081780M13いへども、われら/程(ほど)の/古(ふる)き/道具(だうぐ)を/持(もち)たるハあるべからず。 00081790M14/先(まづ)それなる/燈篭(とうらう)ハ/平(たひら)の/忠盛(たゞもり)、/祇園(ぎおん)の/火(ひ)ともしを/捕(とら)へしとき 00081800M15の/燈篭(とうろう)なり。これなるくつぬぎの/石(いし)ハ/真田(さなだ)の/与市(よいち)/義忠(よしたゞ)が/股= 00081810M16野(また=の)が/手(て)より(九ウ)うけ/止(と)めたる/盤石(ばんじやく)也。こゝなる/手水鉢(てうづばち)と 00081820M17/柄杓(ひしやく)ハ、/神崎(かんざき)の/千歳(ちとせ)がもとより/買取(かひとり)し/梅(うめ)がえが/無間(むけん)の/鐘(かね)に 00081830M18なぞらへし/品(しな)なり。/此雪隠(このせつちん)ハもろこし/漢(かん)の/高祖(かうそ)、/項羽(こうう)の/難(なん) 00081840M19に/逢(あ)ひしときかくれたる/雪隠(せつちん)にて、あれなる/釣燈篭(つりどうろう)ハ/大星(おほぼし) 00081850M20/由良之介(ゆらのすけ)が/文(ふミ)を見たる/時(とき)の/燈篭(とうろう)なり。/拙者(せつしや)が/家根(やね)に/葺(ふき)たる 00081860¥P263 00081870L1ハ/唐(とう)の/感陽宮(かんようきう)の/古瓦(こぐハ)にて、/則(すなハち)/家(いへ)の/礎(いしづへ)にせし/石(いし)といつパ、こ 00081880L2と※くミな/四十七騎(しぢうしちき)の/石塔(せきとう)なりと、/開帳場(かいてうば)の/霊宝(れいはう)の/如(ごと)く 00081890L3(十オ)にいひたて、さて/改(あらた)めて/又(また)いひけるハ、/各(おの+)も/茶(ちや)の 00081900L4/道(ミち)を/誠(まこと)に/御執心(ごしうしん)とあらバ、/新(あた)らしき/物(もの)ハとんと/益(ゑき)なし。と 00081910L5にもかくにも、/古(ふる)きもののミを/御集(をんあつめ)あれかし。/百年(ひやくねん)や/五十(ごしう) 00081920L6年此かたの/物(もの)ハ、/茶(ちや)の/席(せき)に/出(いだし)てすこしも/興(けう)に/入(いる)ことなしと、 00081930L7/物知(ものし)り/顔(がほ)に/述(のぶ)るにぞ、/客(きやく)ハいかさまさやう+といひなが 00081940L8ら、/此御茶碗(このおちやわん)ハ/何年(なんねん)ほどに/成(なり)ますぞ。/亭主(ていしゆ)Sそれハのんこ 00081950L9と申て、/最早(もはや)三百年の/余(よ)にもなりますナ△客Sしからバ/今= 00081960L10日(け=ふ)の(十ウ)/御席(おせき)にハ/妙(ミやう)でござる。/此御茶杓(このおちやしやく)わな△亭Sこれ 00081970L11は/自妙(じめう)が/作(さく)で、/百八十年(ひやくはちじうねん)たらずになります△客S/是(これ)も/妙(ミやう)じ 00081980L12やナ。此/御(をん)なつめハ△亭Sこれハ/巽阿弥(せんあミ)がこのミで、弐百 00081990L13九年ほどになります△客Sこれも/妙(ミやう)じや。/此風炉(このふろ)と/釜(かま)ハな 00082000L14亭S/風炉(ふろ)が三百年、/釜(かま)が五百年△客S/此柚(このゆ)の/香合(かうがう)わな△亭 00082010L15Sハテしれた/事(こと)。/桃栗三年(もゝくりさんねん)/柿(かき)八年、/柚(ゆ)の/香合(こう※)ハ/九年(くねん)になり 00082020L16ます△客S/今日(けふ)の/御会(ごくわい)、まことに/恐入(おそれいつ)た/事(こと)じやが、(十一オ) 00082030L17(十一ウ・十二オ挿絵)/此御席(このをせき)で、わたくしが/心(こゝろ)に/叶(かな)ひませぬ、 00082040L18あたらしい/品(しな)が/二品(ふたしな)ござり升△亭Sそりや又/何(なん)じやな△客 00082050L19Sされバさ。/九年(くねん)になる/柚(ゆ)の/香合(かうごう)と、/其許(そこもと)さまとじや 00082060¥N3¥J 00082070¥X返り咲 00082080M3/庇(ひざし)をかせし/手拭売(てぬぐひうり)も、いつしか/呉服(ごふく)ものゝ見せ/出(だ)しじやと 00082090M4さハぎ、/茶(ちや)づけを/振舞(ふるまふ)たる/小糠買(こぬかかひ)も、/此比(このころ)/米問屋(よめどいや)を/始(はじ)めし 00082100M5ときけバ、/兎角(とかく)/世中(よのなか)ハ/正直(しやうじき)を/専一(せんいち)として、かせぐにしくハ 00082110M6なかるべし。(十二ウ)はかどらぬとて/地道(ぢミち)をゆかねバ、/河= 00082120M7伯(かつ=は)も/一度(いちど)ハ川/流(ながれ)となり、/埓(らち)/明(あか)ぬとて/一足(いつそく)とびにするときは、 00082130M8/龍(りやう)にもかならずけつまづきあり。/或山師(あるやまし)、さる/山子(やまこ)に/証文(せうもん)な 00082140M9しに/百両(ひやくれよう)の/金(かね)をか/し((リカ))たるが、この/山子(やまこ)/死(しん)でのち、/其山子(そのやまこ)の 00082150M10/兄(あに)、/此事(このこと)をきゝて、/弟(おとゝ)のかねを/取戻(とりもど)さんとて、/催促(さいそく)に/行(ゆき)た 00082160M11りけるが、/借(かり)たる/山師(やまし)、/一切(いつさい)/借(かり)たる/覚(おぼへ)なしとて、たがひに 00082170M12/争(あらそ)ひ/募(つの)りて、つゐに/大喧嘩(おほげんくハ)となり、/上(うへ)を/下(した)へと/騒動(そうどう)する/処(ところ) 00082180M13へ、/仲間(なかま)の/山子(やまこ)/入(いり)(十三オ)/来(きた)りて、此/様子(やうす)を見て、/双方(さうはう)を 00082190M14なだめいふやう、/貴(き)さま/達(たち)ハ/日頃(ひごろ)こんゐにさつしやるにも 00082200M15/似合(にあハ)ぬ。/何事(なにごと)でさうどうするのじや。Sさればいの。こち 00082210M16の/弟(おとゝ)のかねをかりて、/今(いま)/死(しん)だから/口(くち)がないゆゑ、/借(かつ)た/覚(おぼ)え 00082220M17がないとて/戻(もど)さぬから/此喧嘩(このけんくわ)じや。なんと、/太(ふと)いやつじや 00082230M18ないかい△Sあほうぬかすな。かりそめにも百両といふ/金(かね) 00082240M19に、/証文(しやうもん)なしに/貸(かす)ものがあらふか。せうこのない事いひか 00082250M20けして、/百両(ひやくれやう)といふ/金(かね)をたゞとらふとハ、/己(おのれ)こそ(十三ウ) 00082260¥P264 00082270¥G(十一ウ・十二オ) 00082280M1ふといやつじやと、また/両方(れうはう)からたゝきかゝるを、/漸(やう+)にを 00082290M2しわけて、マア+/弐人(ふたり)とも/心(き)を/鎮(しづ)めて、わしがいふ/事(こと)を 00082300M3きかしやれ。いつたい/此商売(このせうばい)をして/世(よ)をわたる/者(もの)どもが、 00082310M4せめて/一箱(ひとはこ)と二/箱(はこ)との/行(ゆき)さつならバ/格別(かくべつ)、わづか百両やそ 00082320M5こらのはした/金(がね)を/貸(かし)たの、いや/借(か)らぬとのけんハゝ/外聞(ぐわいぶん) 00082330M6のわるい/事(こと)じや。そのやうな/少(ちいさ)い/心(こゝろ)でハ、/大(おほ)きな/仕業(しごと)はで 00082340M7けんぞや。/是(これ)からこふさんせ。/貸(かし)たといふ(十四オ)ても/借(か) 00082350M8らんといふても、/互(たがひ)に/耳(ミヽ)にかけず、なんじやいふてゐるハ 00082360M9と/耳(ミヽ)にかけんがよいハいのゥと、/相方(さうはう)をなだむれバ、かし 00082370M10たる/山子(やまこ)、いよ+はらをたてゝ、ハテ、とほうもない事 00082380M11をいふ人じや。/百両(ひやくれう)といふ/金(かね)を、/耳(ミヽ)に/掛(かけ)ずに/居(ゐら)るゝ/物(もの)か。 00082390M12Sソリヤまたなぜに△Sさればいの。/己(おれ)が/隣(となり)の/娵(よめ)ハ、五十 00082400M13両の/持参(ぢさん)でさへ、/常住(しやうじう)、はなにかけて居る 00082410¥N4¥J 00082420¥X寐ミだれがミ 00082430M16/芝居(しばい)ずきの/商人(あきんど)、/朝(あさ)から/晩(ばん)まで、/商内(あきない)するにも(十四ウ)/飯(めし) 00082440M17くふにも/狂言(きやうげん)の/身(ミ)ぶり・/物(もの)まねにて/用(よう)を/達(たつ)しけるが、/元来(ぐハんらい) 00082450M18この/主人(あるじ)、大なる/朝寐坊(あさねぼう)にて、/毎朝(まいてう)四ツすぎならでハ/目(め)さ 00082460M19めず。さて/昼(ひる)めしをくふと、はや/午眠(ひるね)をなし、/日(ひ)がくれる 00082470M20やいなや、すぐに/床(とこ)をとらせて、あすの/四(よつ)ツすぎまでも/寐(ね) 00082480¥P265 00082490L1てゐるゆへ、/店(ミせ)の/伴頭(ばんとう)、これを/笑止(せうし)におもひ、さま※/思= 00082500L2案(し=あん)して、あるとき、/例(れい)の/朝寐(あさね)の/枕元(まくらもと)にて、クワタ++ 00082510L3といたまを/叩(たゝ)かせて、/丁稚(てつち)一人、/主人(あるじ)の/居間(ゐま)へはし(十五オ) 00082520L4らせ、でつちSハツ、/申上(まうしあげ)ます。主人もおもひがけなきか 00082530L5げの/音(おと)に/目(め)をさまし、主Sあハたゝしい。/何事(なにごと)じや△でつ 00082540L6ちS/伴頭(ばんとう)/新六(しんろく)、なにか申/上(あげ)たき/事(こと)ありとて、/只今(たゞいま)/御次(おつぎ)にひ 00082550L7かへをります。いかゞはからひませう△主S是へとふせ 00082560L8新S申/旦那(たんな)さま。つく※と/思(おも)ひまうしますれバ、/商人(あきんど)と 00082570L9申/升(ます)るハ、/明(あけ)六ツに/起(おき)て、くれ六ツに/仕舞(しまい)、五ツ迄ニ/帳合(ちやうあい) 00082580L10して四ツに/寐(ね)まするが/世間(せけん)の/習(なら)ひ。それにあなたハ/引(ひき)かへ 00082590L11て、いかに御主(十五ウ)/人(じん)なれバとて、/奉公人(はうこうにん)の手/前(まへ)もい 00082600L12とハず、/朝寐(あさね)して/昼寐(ひるね)をこのむ/宵寐坊(よひねはう)、とき※/起(おき)て/居(ゐ)ね 00082610L13ぶりたまひて、見世の事ハ御かまひなく、たゞうかうかば 00082620L14かりし給ひてハ、よもや/御身帯(ごしんだい)もたまり/升(ます)まい。/起(おき)ての上 00082630L15の/御分別(ごふんべつ)、しかるべうぞんじ奉ると、こハいろにて/異見(ゐけん)す 00082640L16れバ、/主(あるじ)も大に/悦(ゑつ)に入て、むくと/起(おき)て、主Sコリヤ+新 00082650L17六トいゝながら、/背中(せなか)にて/蚤(のミ)を/一疋(いつひき)とりひねりて、/新六(しんろく)が 00082660L18/掌(てのひら)にのせると、(十六オ)新S/此死(このし)がいをいかゞはからひ 00082670L19升ふ△主Sくらいおつたその/蚤(のミ)にな△新Sハア△主Sかも 00082680L20/川(がハ)で/水(ミづ)ざうすいをくらわせい 00082690¥P5¥J 00082700¥Xさとりの道 00082710M3/念想真実(ねんさうしんじつ)の/法(はう)にハ/経文(きやうもん)のをしへをいれず、/自得見性(じとくけんしやう)の/悟(さとり)に 00082720M4ハ、さらに/文字(もんじ)を/立(たつ)る事なしとあれども、/法師(ほうし)となりてよ 00082730M5みかきせざれば、/寺持(てらもち)となりても、さし/当(あた)りて/当惑(たうわく)の事も 00082740M6/多(おゝ)かるべし。こゝにさる/無筆(むひつ)の/出家(しゆつけ)/入院(じゆゐん)せし/頃(ころ)、(十六ウ) 00082750M7/旦方(だんばう)/古手屋(ふるてや)の/婆&(ばゝ)、久しく/煩(わづら)ひ/往生(わうじやう)し、/戒名(かいめう)を/乞(こ)ハれし/時(とき)、 00082760M8三七日が/間(あひだ)ハ、あすのあさつてのと/云延(いひのバ)し/置(おき)たれども、け 00082770M9ふといふ/今日(けふ)ハ/最早(もはや)/絶躰(ぜつたい)ぜつめい、/書(かい)てやらねばならぬに 00082780M10/極(きわ)まり、/和尚(おせう)も/今(いま)ハせんかたなく、/自我偈(じかげ)をたづさへ、/手= 00082790M11習師匠(て=ならひしせう)のもとへ/行(ゆき)、此うちにてしかるべき/字(じ)を二三字な 00082800M12らべて、/戒名(かいめう)一まい/書(かき)たまハれと/頼(たの)ミけるに、師匠ハ大に 00082810M13/律義(りちぎ)なる者にて、/是(こ)ハけしからぬ(十七オ)(十七ウ・十八オ挿 00082820M14絵)ことを/承(うけたま)ハるものかな。/中&(なか+)/俗躰(そくたい)の/身(ミ)として、/法名(はうめう)を 00082830M15/付(つけ)申/事(こと)ハ/思(おも)ひもよらず。/此義(このぎ)ハ/御用捨(ごやうしや)/下(くだ)さるべしと/辞退(じたい)す 00082840M16るゆゑ、和尚もさすが、をしても/頼(たの)まれず、すご+と/寺(てら) 00082850M17へ/帰(かへ)り、とやせんかくなさんとさま※/心配(しんはい)し、つく※ 00082860M18とあたりを見れば、/位牌堂(ゐはいだう)の/古位牌(ふるゐはい)に/戒名(かいミやう)をはり/付(つけ)たるが、 00082870M19いくつもあるを見て大によろこび、そつと/新(あたら)らしい/戒名(かいめう)を 00082880M20めくりて/紙(かミ)につゝみ置、八兵衛が(十八ウ)/来(く)るをまつ/処(ところ)に、 00082890¥P266 00082900¥G(十七ウ・十八オ) 00082910M1/案(あん)のごとく/古手屋(ふるてや)、/門口(かとぐち)より/小腰(こごし)をかゞめて、古手やSハ 00082920M2イ、御めん/下(くた)されませ△和尚Sヲヽ、八兵衛どの。ござつ 00082930M3たか△ふるてやSハイ+、まいど申かねましてござり/升(ます)が、 00082940M4どふぞ母の/戒名(かいめう)がいたゞきとふござります△和Sヲヽそふ 00082950M5であろ+。サヽこしらへておきましたと、/彼(かの)ふる/戒名(かいめう)を 00082960M6さし/出(いだ)せバ、八兵衛ハよろこび/押(おし)いたゞき、つく※と見 00082970M7て、/和尚(おせう)さま。これでなんと申まする/名(な)でござり/升(ます)。和 00082980M8Sウヽ/名(な)ハ/戒名(かいめう)(十九オ)じや△ふるてやSかいめうハなんと申 00082990M9/事(こと)でござり/升(ます)るぞ。/和尚(おせう)、あたまをなでながら、イヤサア、 00083000M10その/名(な)ハ/何(なん)とかいてあるぞ。あてゝ見やしやれ。古Sめつ 00083010M11さうな。わたくしがどふよめまするものでござり/升(ます)。どふ 00083020M12ぞをしへなさつて/下(くだ)さりませ△和S/教(おし)へるハやすい事じや 00083030M13が、そこをさとるが、こちらの/宗旨(しうし)の/一大事(いちだいじ)じやわいの△ 00083040M14古Sじやと申ましても、しらぬ/字(じ)ハどふもよめませぬ△和 00083050M15Sいや+、そこがあミだの/御(お)(十九ウ)かげにて、いんで 00083060M16/仏(ふつ)だんにおかしやれ。二三日のうちにハきつとよめるやう 00083070M17になるじや。なんと/有(あり)がたい/事(こと)じやないかといへば、八兵 00083080M18衛ハふせうぶせうに、そんならさやういたしませうといひ 00083090M19ながらよく+見るに、/上(うへ)の/文字(もじ)ハよめねども、/下(しも)の/二字(にじ) 00083100M20ハ/信士(しんじ)とかいてあるゆゑ、ふしんに思ひ、古Sモシ/和尚(おせう)さ 00083110¥P267 00083120L1ま。此/戒名(かいめう)にハ/信士(しんじ)とござりますが、/此方(このはう)ハ/婆&(ばゞ)でござれ 00083130L2バ/信女(しんによ)でハござりませぬ/が((ママ))。/和尚(おせう)大におどろき、(廿オ)な 00083140L3むさん。それハちがふた。たんと/旦方(だんばう)のを/書(かい)ておいたゆゑ、 00083150L4/間(ま)ちがふたのじや。どれ※、/取(とり)かへてしんぜませうと/位= 00083160L5牌堂(ゐ=はいだう)へ/行(ゆき)、/中(なか)にて/新(あた)らしさうなをとつて/来(き)て、サア+/是(これ) 00083170L6じや+と/出(いだ)せバ、八兵衛見て、/是(これ)も/信士(しんじ)でござりまする 00083180L7といふに、そうか、またちがふた。どれ※と/又(また)/位牌堂(ゐはいだう)へ 00083190L8はしり、/別(べつ)のを/以(もつ)て/来(く)る。見れバやはり/信士(しんじ)とかいてある 00083200L9ゆゑ、また/取(とり)かへに/行(ゆき)、七八/度(ど)も/取替(とりかへ)て(廿ウ)ハ/持来(もちきたり)+ 00083210L10するに、ミな+/信士(しんじ)ばかりなれば、/和尚(おせう)もあぐミはてゝ 00083220L11もてあまし、ときに八兵衛どの。/当時(たうじ)/持合(もちあハ)せハ、まづその 00083230L12やうな/処(ところ)バかりじやが、なんと/当分(たうぶん)の/所(ところ)ハ、それでふせう 00083240L13ハできまいかな。古手やS/小首(こくび)をかたげて、イヤモウ、ふ 00083250L14せうしてならぬといふでもござりませぬが、とてもの/事(こと)な 00083260L15ら、/女(をなご)もので/最(も)そつと/新(あた)らしい/所(とこ)がほしうござり升 00083270¥Y1落噺顋懸鎖巻一了△(廿一オ) 00083280G1△〔巻一挿絵中の詞書〕 00083290G2落咄/大入(おほいり)/大評判(おほへうばん)、/御一人前(ごいちにんまへ)/十八文(じうはちもん)、前座諸客抱腹笑、後坐 00083300G3見物弛顋(二ウ)聞。右題顋掛鎖△△桃山人(三オ) 00083310G1Sおもしろいの。をれも/一首(いつしゆ)よんだ。けいせいの/飲(のま)ぬばかりをき 00083320G2づにして△/汲(くま)ん/初会(しよくわい)の/玉(たま)の/杯(さかづき)(六ウ);Sモシ/旦那(だんな)。/一首(いつしゆ)うかびや 00083330G3した。/花(はな)の/色(いろ)に/思(おも)ひのたねをまきばしら△ふときのかわるさとの 00083340G4/夕栄(ゆふばへ)(七オ) 00083350G1まけまじといろか/争(あらそ)ふ/花(はな)の/山(やま)に△きて/鳥(とり)/囀(さへ)る/春(はる)の/曙(あけぼの);Sべらぼ 00083360G2うナいゑぬしだ。/狂歌(けうか)どころじやァねへぞ;Sヤ、どつこい、か 00083370G3うらいやァ(十一ウ);Sふうがのないといふものハ、とうなすの 00083380G4ないやかぼちやのないにハおとりだ(十二オ) 00083390G1Sぐそうが、コヲいたした所ハ、/師直(もろなほ)がほつたいしたといふ/身(ミ)で 00083400G2あらふがナ(十七ウ);Sいかさまナ。さなきだにおもきがうへの 00083410G3/袈裟衣(けさころも)だ(十八オ) 00083420¥P268 00083430¥T1/落噺顋懸鎖(おとしばなしあごのかけがね)巻二 00083440¥A洛東△△和來山人作 00083450¥N1¥J 00083460¥Xこけぬ/先(さき) 00083470L7/油断(ゆだん)とハあぶらたゆると/書(かい)て、/油(あぶら)をたやすときハ、/夜(よ)に/入(いつ) 00083480L8てもくらき/処(ところ)に/居(お)らねバならず。/日(ひ)くれてさハがんよりハ 00083490L9/昼(ひる)のうちに/用意(やうゐ)すべき也。すべて何事ニても、ゆだんして 00083500L10ハ/世(よ)ハわたられぬなり。/世(よ)の/中(なか)をやすらかに/渡(わた)らんと思ハ 00083510L11ヾ、/士農工商(しのうこうせう)ともに、/際細工人(きハさいくにん)のやうにすべし。正月の/破= 00083520L12魔弓(は=まゆミ)・/羽(は)(一オ)/子板(ごいた)・まりのたぐひをこしらへるものハ、 00083530L13まへの/年(とし)の十月/頃(ごろ)より/細工(さいく)をはじめ、正月になれバ、もハ 00083540L14や三月の/雛細工(ひなざいく)、三月になれバ/五月(ごくハつ)の/幟(のぼり)・/兜(かぶと)・/菖蒲刀(しやうぶかたな)、 00083550L15五月になれば/七夕(たなバた)の/色(いろ)がみ・たんざく・/盆(ぼん)のとうろう、/盆= 00083560L16後(ほん=ご)にハはや/暮(くれ)の仕込(しこミ)にかゝる。/大概(□いがい)/皆(ミな)かくのごとし。/足袋(たび) 00083570L17・/綿入(わたいれ)等ハ/夏(なつ)こしらへ/置(おき)、/扇(あふぎ)・うちわハ/冬(ふゆ)こしらへ、/来年(らいねん) 00083580L18の/食(しよく)も/今(こ)としたくハへ/置(おく)ときハ、こゝろ/静(しづか)にして、/世(よ)わた 00083590L19りゆたか也。/金銀(きん+)/米服(べいふく)の/不自由(ふじゆう)なるも、/四民(しミん)ともにゆだん 00083600L20を/常(つね)とするが故に、/差当(さしあた)りて/利(り)にふけり(一ウ)/欲(よく)にまどひて、 00083610M1/世(よ)をのどやかに/過(すぐ)る事なし。/武家(ぶけ)の人人より/合(あひ)て、/家(いゑ)の/重= 00083620M2宝(てう=はう)を/自慢(じまん)する/折(をり)から、/唐(から)の/倭(やまと)のめづらしき/品&(しな※)をいひ/出(いだ)し 00083630M3てものがたる/席(せき)に、一人ものをもいはず/居(ゐ)たりし人に、/貴殿(きでん) 00083640M4/御家(をんいゑ)にハ/何(なん)ぞ/珍重(てうはう)なる/品(しな)/御所持(ごしよじ)ハなきやととふに、/仰(あふせ)のご 00083650M5とく、/拙者(せつしや)がもとにハ、/何(なに)も/是(これ)ぞと/世(よ)の/用(やう)、/人(ひと)の/役(やく)に/立(たつ)べ 00083660M6きほどの/品(しな)も候ハず。しかし、いかほどの/大敵(たいてき)たりともふ 00083670M7せぐべき/品(しな)を、/只(たゞ)/一(ひと)ツ/持居(もちお)り候のミ也といふに、/皆&(ミな+)/聞(きゝ)て、 00083680M8それハ/何(なに)より(二オ)(二ウ・三オ挿絵)/珍(めづ)らしきもの也。いか 00083690M9やうの/品(しな)にて候や、/拝見(はいけん)いたし申たしといへバ、/御執心(ごしうしん)と 00083700M10あらバ/御伝授(ごでんじゆ)申べし。/身(ミ)を/清(きよ)め/衣服(ゐふく)の/礼(れい)を御たゞし有て、 00083710M11/吉日(きちにち)をえらミ/御入来(ごじゆらい)有べしと有ければ、/各(をの+)さいかい/沐浴(もくよく)し 00083720M12て、/吉日(きちにち)をゑらミ、/彼(かの)もとへ/行(ゆき)て、/大敵(たいてき)をふせぐ/品(しな)、/拝見(はいけん) 00083730M13いたし/度(たし)といひければ、/主人(しゆじん)も/礼儀(れいぎ)を/改(あらため)/出(いで)て、まづ/杯(さかづき)を 00083740M14とりかハし、/師弟(してい)のけいやくをむすびて、さて申けるは、 00083750M15/抑(そも+)/大敵(たいてき)をふせぐ/品(しな)といふハ、/道具(どうぐ)にあらず/器(うつハもの)に/非(あら)(三 00083760M16ウ)ず、只/油断(ゆだん)の/二字(にじを)もつて/拙家(せつか)の/重宝(てうはう)とす。/常住座臥(じやうじうざぐハ)と 00083770M17も、ゆだんの二字を/忘(わす)れざれバ、/大事(たいじ)たりとも/過(あやま)つ/事(こと)なし。 00083780M18/故(かるが)ゆへに、/大敵(たいてき)たりとも/防(ふせ)ぐべきの/重宝(てうはう)なりといはれしと。 00083790M19/油断大敵(ゆだんたいてき)とハ/誰(たれ)もしりたる/事(こと)ながら、/是(これ)を/守(まも)る人ハすくな 00083800M20し。/爰(こゝ)にさる/柔術者(やハらつかひ)、此事を/聞(きゝ)て、かたく/油断(ゆだん)の/道(ミち)を/守(まも)り、 00083810¥P269 00083820¥G(二ウ・三オ) 00083830M1/油断(ゆだん)の二字を守るを以て、/家(いゑ)の/免許(めんきよ)となしたるが、あると 00083840M2き人&/多(おほ)く/集(あつま)りて、/碁(ご)を/囲(かこ)ミて/楽(たの)しミけるとき、/柔術者(やハらつかひ)、 00083850M3/巳(すで)に/一(ひと)ト/手(て)にして(四オ)/負(まけ)んとするとき、/先(さき)の人、いまだ 00083860M4/其手(そのて)を/見出(ミいだ)さず。両人/半時(はんとき)/斗(ばかり)、/無言(むごん)にて/考(かんかへ)ゐたりしに、/傍(そバ) 00083870M5に見ゐたりし人、Sハテナアといひけれバ、/柔術者(やハらつかひ)、/腕(うで)を 00083880M6まくり、おのれ/推参(すいさん)なり。さし/出(いづ)るなとしかりけれバ、見 00083890M7てゐたる/者(もの)/腹(はら)をたて、ハテナアといふたを/推参(すいさん)なりとハ/心= 00083900M8得(こゝろ=え)ずといへば、柔術Sされバとよ。/助言(しよごん)しさふなる故かく 00083910M9ハいふ也見る人S/助言(しよごん)したらバ/兎(と)も/角(かく)も、いまだ/助言(じよごん)なさ 00083920M10ぬさきに/叱(しか)り/付(つく)るハいかに△柔S/不心得(ふこゝろえ)なる男かな。せぬ 00083930M11まへ(四ウ)なれバこそ/叱(しか)りもすれ。してのちいふてハ/何(なに)の 00083940M12/役(やく)にたつものか。/此方(このはう)ハ/武芸(ぶげい)の/家(いへ)にてゆだんを/守(まも)るハ/家(いゑ)の 00083950M13ゆるしなり。よつて/助言(じよごん)なさぬさきに、これを/防(ふせぐ)也といへ 00083960M14バ、かの人あざわらひ、それハきつい御/心(こゝろ)づかひしやとあ 00083970M15くびをする/処(ところ)を、/柔術者(やハらとり)、またこぶしをにぎりて、あくび 00083980M16する人のほうげたをしたゝかにたゝく。かの者大ひに/立腹(りつふく) 00083990M17し、Sハテナアといへば、すいさんなとのゝしり、あくび 00084000M18をすれバ、くらわしめさるハ、/貴殿(きでん)ハ/気(き)でも/違(ちが)ひハめ(五 00084010M19オ)されぬかと/詰(つめ)よれバ、柔Sイヤ、あくびとぞんずれバ、 00084020M20たゝきハいたさぬ△見る人Sしからバ/何(なに)ゆゑたゝき/召(めさ)れた 00084030¥P270 00084040L1柔S/拙者(せつしや)を、/貴殿(きでん)がくらひつくかとぞんじた 00084050¥N2¥J 00084060¥X/意気(ゐき)すぎ 00084070L4/豊嶋(てしま)/源左衛門(げんさゑもん)といへるもの、/古法眼(こはうげん)/元信(もとのぶ)にはじめて/対面(たいめん)し、 00084080L5/世(よ)に/上(うへ)なき/阿房(あほう)なるものを/画(かき)て給ハれと/望(のぞ)ミしかバ、/元信(もとのふ)、 00084090L6/心得(こゝろえ)たりとて/釣(つり)をしてゐる/図(づ)を/画(ゑがき)たり。/豊嶋(てしま)見て、いかに 00084100L7もおもしろく/覚(おぼゆ)るなり。(五ウ)しかしまだ、/此上(このうへ)にもあほう 00084110L8あらバかき/給(たま)ハれ。/古法眼(こはうげん)、また/筆(ふで)をとりて、/其釣(そのつり)する人 00084120L9のそバに見てゐる人を/書(かき)たりとぞ。/是等(これら)ハ/昔(むかし)/元信(もとのぶ)/時代(じだい)のあ 00084130L10ほうにて、/今(いま)どきの/阿房(あはう)にハすこし/当(あた)らざる也。/太公望(たいこうぼう)が 00084140L11/曲(まが)らぬはりの/引事(ひきこと)ハさておき、/当時(とうじ)ハゑびで/鯛(たい)/釣(つる)/時節(じせつ)にて、 00084150L12/隠居(ゐんきよ)/役(やく)にふなをつりてハ、/昆布巻(こぶまき)やへうりて/小遣(こづかひ)をかせ 00084160L13ぎ、/愚(おろか)な/丁稚(でつち)も/竿(さほ)をおろして、/昼飯(ひるめし)のさいにハ/銭(ぜに)をつかハ 00084170L14ず。よくつるものは(六オ)/借財(しやくざい)と/名付(なづけ)て、/千金(せんきん)/多(おほ)きも/引上(ひきあげ) 00084180L15ケ、つらるゝ者ハ/利欲(りよく)の/餌(ゑバ)につきて、/身帯(しんだい)の/大(おほ)ひなるもな 00084190L16げうてり。こゝに/釣(つり)ずきの/老人(らうじん)、/亀(かめ)の/甲(かう)を/烟草(たばこ)いれに/作(つく)り、 00084200L17こしにさげゐたりしが、/或者(あるもの)これを見て、Sモシ/隠居(ゐんきよ)さん。 00084210L18おまへのたバこ入れハ、コリヤ、/彫(ほつ)たもので/厶(ごさり)り/升(ます)かとい 00084220L19へバ、Sなんのいの。コリヤ/本真(ほんま)の/亀(かめ)の/甲(かう)じや△Sそうか 00084230L20いな。わしも/一(ひと)ツほしいが、うり/物(もの)に/厶(ござり)り/升(ませぬ)か△Sイヤ 00084240M1+、うりものにハあるまい△Sおまへハどこで買(六ウ) 00084250M2なさつた△Sこれハわしが/釣(つり)たのじや△Sどこで/釣(つり)なさつ 00084260M3た△S/五条(ごでう)の/八(はち)まんの/池(いけ)へ、/針(はり)さきにめし/粒(つぶ)をつけておろ 00084270M4すと、じきにつれるわいの△Sツイつれまするか△Sつれ 00084280M5るだんか。いくつもかゝるわいの△Sそれハ/妙(ミやう)じや。しか 00084290M6し/釣(つゝ)てから、どふするのじやへ△Sどふといふたら、/中(なか)の 00084300M7/肉(にく)ハくてしまひ、/跡(あと)を/日南(ひなた)へほしておくと、このやうにな 00084310M8る△Sありがたい。よふおしへて/被下(おく□)なさつたと、/早&(さう+)/釣= 00084320M9針(つり=ばり)をもとめ、/若宮(わかミや)八まんへ行、おし(七オ)へのやうにして 00084330M10/竿(さほ)をおろせば、すぐにビク+と引ゆゑ、すハ/烟草入(たバこいれ)よと 00084340M11/引上(ひきあぐ)れバ、/亀(かめ)にハあらずして、大きなるうなぎを/一疋(いつひき)/釣上(つりあぐ) 00084350M12れハ、Sありがたい。/先(まづ)きせる/筒(づゝ)から/釣上(つりあげ)た 00084360¥N3¥J 00084370¥X/当世(たうせい)の/人気(ひとぎ) 00084380M15/人(ひと)ハ/読書算用(よミかきさんやう)といへど、/万能(まんのう)よりハ/一心(いつしん)たに/正(たゝし)けれバ、/出= 00084390M16世立身(しゆつ=せりつしん)なすべし。/志(こゝろざし)たゞしくなきときは、/奉公(はうこう)なしても 00084400M17/主人(しゆじん)の/気(き)に/入(いり)がたく、人と/付合(つきあ)ふても(七ウ)/愛(あい)そつかされ、 00084410M18せんかたなく/浪人(らうにん)して、やう+/手習(てなら)ひ/師匠(しせう)をなし、/一= 00084420M19生(いつ=しやう)を/朽(くち)はてる人/多(おほ)し。ある/師匠(しせう)、いつかうもんまうなる/者(もの) 00084430M20ながら、すこしにぢりがきの/出来(てき)るをさいわい、/手習子(てならひこ) 00084440¥P271 00084450¥G(八ウ・九オ) 00084460M1をあつめしが、/弟子(でし)のうちに、/寒山(かんざん)/拾得(じつとく)の/画(ゑ)を/表紙(ひやうし)にせし 00084470M2/艸紙(さうし)を/持来(もちきた)りける時、師匠見て、此/河伯(かつパ)ハめんだうのよい 00084480M3かつぱじやといへバ、弟子のいふやう、お師匠様。こりや 00084490M4/河太郎(かハたろ)じやごさり升せぬ。Sソレナラ何じや(八オ)(八ウ・ 00084500M5九オ挿絵)S/寒山(かんざん)/拾得(じつとく)でござります△Sあほうめ。わいらハ 00084510M6まだ/物(もの)をしらぬさかい、そんな事をいふわいの。寒山拾得 00084520M7のとう/人(じん)が/功(こう)をへて、かつぱといふ/河太郎(かハたらう)になるのじや 00084530¥N4¥J 00084540¥X/出放題(ではうだい) 00084550M10何と/雅公(かこう)さん。此/頃(ごろ)は/謎(なぞ)+にをしつけられて、/狂哥(きようか)もは 00084560M11いかいも/西(にし)の/海(うミ)へさらりじやナ。Sさればナ、イヤまた、 00084570M12なぞにもおもしろいが有じや△Sなんぞよい(九ウ)のをき 00084580M13ゝなさつたか△S/聞(きゝ)ましたが、たんとある中にも、/一(いち)ばん 00084590M14よいのが/風呂屋(ふろや)のなぞじや△S/何(なん)といふのじや△S/風(ふ)ろ屋 00084600M15とかけて/松竹梅(せうちくばい)ととく△Sその/心(こゝろ)ハ△Sこめハまつ、ぬる 00084610M16けれバたけ、あつけれバうめじや。ナント/妙(ミやう)じやないか 00084620M17S/奇妙(きミやう)にいゝくさるナ。ときに一ツかけよふか△S/何(なん)なり 00084630M18とおかけなされ。じきじや△Sそんなら/廻(まハ)りちら+/中(なか)く 00084640M19ハつくハ、これハ何じや△Sあほうらしい。おかんせ。ソ 00084650M20リヤ/子(こ)どもでもいふ/事(こと)じや。まちつ(十オ)とあたらしい事 00084660¥P272 00084670L1をかけさんせ。/何(なん)なりと、といて見せませう△Sそんなら、 00084680L2/山(やま)でこい+/畠(はたけ)でいや+、何じや△Sソリヤ/芋(いも)のはじや。 00084690L3おまへハなぞハあかんわいナ△Sあかん事ハないけれど、 00084700L4むつかしい/事(こと)いふたらとけまいと思ふて、やさしくいふの 00084710L5じやわいノ△Sなんなといはんせ。/凡(およそ)なぞ一ト/通(とふ)りの事な 00084720L6ら、/天(てん)狗でゐるわしじや△Sさうかいな。そんなら/石(いし)の/片(かた) 00084730L7われとかけて、/何(なん)ととかんす△Sまてよ。/石(いし)の/片(かた)われ。こ 00084740L8いつ(十ウ)チツトむつかしい△Sなんと、むつかしからふ 00084750L9がや△Sナンノ+、むつかしくとけバ/六(むつ)かしいが、やさ 00084760L10しくとけバ/何(なん)の/事(こと)ハないハいの△Sやさしくといてミさん 00084770L11せ△S/石(いし)のかたわれ、/石(いし)かた、かた/石(いし)、われ/石(いし)、石われ。 00084780L12ドツチヤにしても、けたいななぞじや△Sながそふかいの 00084790L13Sまたんせ。/口(くち)をしい。といてミしよ△Sそないにてまが 00084800L14とれてハたいくつな。コリヤながしませうか△Sざんねん 00084810L15千万じやが、是一ツハへいこうじや。/何(なん)ととくな△S/石(いし)の 00084820L16/片(かた)われハ/赤飯(せきハん)(十一オ)じや△Sがてんがいかぬわいの 00084830L17Sハテ、/石(いし)ハせきとよむ。/片(かた)われハ/半(はん)じや。そこで/赤(せき)はん 00084840L18じや△Sゑらふむつかしいナ△Sコリヤ/字学(じがく)がなふてハと 00084850L19けぬなそじや△Sムウ、/赤飯(せきはん)が/石(いし)の/片(かた)われじやナ。さりと 00084860L20ハ/残念(ざんねん)なことをしたわいの△Sそりやまた/何(なん)で△Sこちや、 00084870M1こわめしと/迄(まで)ハ/心(こゝろ)が/付(つい)たけれど 00084880¥N5¥J 00084890¥X/大和(やまと)ことバ 00084900M4かくれたるよりあらハるゝハなしと、/物(もの)ハ/包(つゝ)むとすれバ 00084910M5(十一ウ)猶あらハるゝものにて、/遊所(ゆうしよ)/色里(いろまち)などの/事(こと)も、/坊(ぼん) 00084920M6さまハ/羽織(はおり)わきざしにて/医者(ゐしや)のまねをしてゆけども、/杯(さかづき)の 00084930M7とりやうに、/手先(てさき)で/衣(ころも)の/袖(そで)をたくり/上(あぐ)るくせにてしれ、 00084940M8/侍(さふらひ)が/町人(てうにん)のまねして/行(ゆき)ても、どこやらに/武(ぶ)ばりが見えて、 00084950M9かへつてどちらつかずの/詞(ことバ)にしられり。大坂/一(いち)のかハとい 00084960M10ふ所に、/万(よろづ)屋/千介(せんすけ)とて、せんざいの/問屋(といや)あり。/内(うち)の/伴頭(ばんとう)千 00084970M11右衛門といふもの、/新町(しんまち)/吉田(よしだ)やへ/行(ゆき)ける/頃(ころ)、あやめ太夫と 00084980M12いふ/遊女(ゆうじよ)(十二オ)をあげ/床(とこ)に入て、おまへさまハ/何(なに)御せう 00084990M13ばいへととハれしとき、/差当(さしあた)り/八百屋(やおや)ともいひがたけれバ、 00085000M14/木薬屋(きくすりや)じやといふに、/御所(おところ)ハどこでおますといへば/道修= 00085010M15町(どせう=まち)三丁目じやといひはぐらかしてゐたりしに、此/遊女(ゆうぢよ)、も 00085020M16とハ/京(ミやこ)にて、ある/医者(ゐしや)の/娘(むすめ)のなれのはてなれバ、/薬(くすり)の事に 00085030M17/明(あき)らかゆゑ、さま※のことを/聞(きく)。モシナ、/一角(いつかく)といふ物 00085040M18ハ/海(うミ)にいるものじやかナ。八百やS/一角(いつかく)ハうミに/千年(せんねん)、山 00085050M19に千年(十二ウ)ゐて/三千年(さんぜんねん)をへて、うわばミに/成(なる)といふ/事(こと) 00085060M20かあるわいの△お山Sさいかくハどこにゐるもので升ナ△ 00085070¥P273 00085080L1八百Sさいかくハとかく/貧乏人(びんぼうにん)の/処(とこ)に/沢山(たくさん)じや△お山Sゆ 00085090L2うたんハ/何(なに)に/聞(きく)ぞいな△八百Sゆうたんハどこにゐるもの 00085100L3か、つひに/聞(きい)た/事(こと)がないわいのトいへば、お山も、コリヤ 00085110L4/生薬屋(きぐすりや)といふハうそにて、/似(に)た/山(やま)じやと/思(おも)ひて、アノナ、 00085120L5/人参(にんじん)にもいろ+おますが、/一(いつ)たい、/大人参(だいにんじん)がトツトの/高(たか) 00085130L6いのじやなアといへば、(十三オ)八百Sなんのいの、/大人= 00085140L7参(だいにん=じん)にもいろ+あるが、/直段(ねだん)ハたバの/大小(だいせう)によるじやて 00085150¥N6¥J 00085160¥X田から行も 00085170L10/下郎(げろう)ハ/以(もつ)て/主(あるじ)となすべからず、/下司(げす)ハ/取(とつ)て/長(ちやう)とすることな 00085180L11かれとハ、ものしらぬ/輩(ともがら)を/主人(あるじ)として人の/上(うへ)に/立(たつ)るな、/下= 00085190L12司(げ=す)を/村(むら)の/長(おさ)などにつかふなとのたとへ也。それも/人情(にんじやう)に/行(ゆき) 00085200L13わたりて、ものをよく/弁(わきま)へ/知(し)り、/万事(ばんじ)に/行届(ゆきとゝき)たる人ならバ 00085210L14/格別(かくべつ)のこと(十三ウ)にて、/先(まづ)/大(おほ)かたハあしき人のうへには 00085220L15びこるときハ、/必(かなら)ず/其下&(そのした+)にうれいをいたすもの也。いな 00085230L16かに/草分(くさわけ)といひ/都会(とくハい)に/芝切(しバきり)とて、/古来(こらい)より/久(ひさ)しく/持伝(もちつた)へ/来(きた) 00085240L17り、/地主(ぢぬし)・/家主(いへぬし)等ハ/其久(そのひさ)しき/功(こう)にて、/何事(なにごと)も/其家(そのいゑ)によき/仕= 00085250L18法(し=はう)の/残(のこ)りつゞきて、/店子(たなこ)等をも/大事(だいじ)にかけるものなれども、 00085260L19/京(けう)も/田舎(いなか)もなり上りたる/者(もの)にハ、とにも/角(かく)にもよき/心(こゝろ)がけ 00085270L20の/輩(ともから)ハすくなしとぞ。こゝに/所(ところ)ハ/上立売辺(かミだちうりへん)にて、もと/貧乏(びんぼう) 00085280M1よりなり上り(十四オ)し/店子持(たなこもち)の/地主(ぢぬし)あり。その/店(たな)にすま 00085290M2ひする者おほきが中にも、人の/心(こゝろ)/千差万別(せんじやまんべつ)にして、よくて 00085300M3もよきをよしといはぬハ、あまねく/世上(せじやう)のならひなるに、 00085310M4/地主(ぢぬし)のもの共なり上りなれバ、/店子(たなこ)のものをひくゝ見/下(くだ)し、 00085320M5すべてのことをけんへい/附(つげ)にいひ/付(つけ)けれバ、/長屋(ながや)の/輩(ともがら)、う 00085330M6ハべにてハしたがへども、/心(こゝろ)のうちにハ/何(なん)とも思ハず。あ 00085340M7たじけなしの/地主(ぢぬし)めが、たま+/持付(もちつけ)ぬ/地面(ぢめん)を/手(て)のひらほ 00085350M8ど/持(もち)たりとて、/天下(てんか)をも/取(とり)たる(十四ウ)/気(き)ニ/成(なり)、/地内(ちうち)ニお 00085360M9くものを/犬(いぬ)か/猫(ねこ)と/同様(おなじやう)に思ひ、あたま/下(くだ)しにものをぬかす 00085370M10ハ、/金持(かねもち)といふ/名(な)バかりで、ちく/生(しやう)/同前(どうぜん)の/奴(やつ)也。おのれが 00085380M11/店(いゑ)をかしたれバとて、/只(たゝ)/置(おい)てくれるでハなし、其くせに/高= 00085390M12直(かう=じき)の/宿賃(やちん)を/取(とり)くさり、かゝめハ/百万石(ひやくまんごく)もとる/大名(だいめう)の/奥(おく)さま 00085400M13の心で、人を/鼻(はな)であしらいくさるが、あいつが/京(けう)へ/始(はじめ)て/出(で) 00085410M14た/時分(じふん)にハ、/河内(かハち)もめんか/手(て)おり/嶋(じま)一つで、/大仏前(だいぶつまへ)の/順礼= 00085420M15宿(じゆんれい=やど)で、/風呂(ふろ)の/下(した)を/焚(たき)くさつたを/忘(わす)れ、(十五オ)(十五ウ・十六 00085430M16オ挿絵)めつさふなつらつきをして、人を/安(やす)くにらミくさる 00085440M17と、/悪口(あくこう)たら※いはるゝも、よれバさハれバ/地主(ぢぬし)が事也。 00085450M18此/長屋(ながや)の/奥(おく)にゐるハ、もと大坂/北浜(きたばま)そだち、/店賃(たなちん)のとゞこ 00085460M19ほりに/毎日(まいにち)+よび/付(つけ)られ、/上(あげ)られたり/下(さげ)られたり、よい 00085470M20のわるいの/御談義(おだんぎ)に、/此男(このおとこ)も/堪忍袋(かんにんぶくろ)の/緒(を)が/切(きれ)て、あくたい 00085480¥P274 00085490¥G(十五ウ・十六オ) 00085500M1たら※/家主(いゑぬし)の/門(かど)を/出(いで)、ナンジヤ、しさいらしい。/地主(ぢぬし)じ 00085510M2やの/家主(いゑぬし)じやのと、/太平(たいへい)ナおとがいたゝいて、/六七年(ろくひちねん)此か 00085520M3た、此/長屋(ながや)にぢう/居(きよ)(十六ウ)するが、/屋根(やね)ハもつて/野田(のでん)同 00085530M4ぜん、/壁(かべ)ハくづれてゐながら/月見(つきミ)、そうか/小屋(こや)同ぜんの/借= 00085540M5屋(しやく=や)を、/間(あい)ニ弐〆ヅヽも/出(た)して、/誰(た)が/有(あり)がたふをるものじや。 00085550M6一ト月や二タ月の/屋賃(やちん)に、/常(つね)の/心(こゝろ)がけもへつたくれも/入(いろ)か 00085560M7い。こちらがばゝのおかげて、/暮(くれ)にハ三/斗(とう)五斗の/餅(もち)もつき 00085570M8くさるハ。おどれら、かたわ/事(こと)ぬかしくさつても、くそと 00085580M9も思ふ事じやないと大あくたいを、/家主(いゑぬし)ハ/聞(きゝ)て大に/立(りつ)ふく 00085590M10し、/此上(このうへ)ハ/引受人(ひきうけにん)を/呼(よん)(十七オ)でこいと、/辰巳上(たつミあが)りの大げ 00085600M11んくハ。/隣(となり)のていしゆハ/走(はし)りきて、Sマア/御家主(おいゑぬし)さま。/御= 00085610M12待(お=まち)/下(くだ)されませ。/先(せん)こく£/聞(きい)ておりましたが、さて+不/届(とゞき) 00085620M13な/男(おとこ)で、/御腹(おはら)だちハ/至極(しごく)/御尤千万(ごもつともせんばん)。イヤモ、とにも/角(かく)にも 00085630M14あの/男(をとこ)が/了簡(れうけん)たがへいたしてをります。ハテ、たとへにも 00085640M15申通り、なく/子(こ)と/御地頭(おぢとう)じや。その/御地頭(おぢとう)さま/同前(どうぜん)の/御家= 00085650M16主(おいゑ=ぬし)にむかつてのあくたい、くれ※あなたさまが/御尤(ごもつとも)でご 00085660M17さります。しかしあの/者(もの)も中&/御家主(おいゑぬし)さまを/麁(そ)(十七ウ)/末(まつ) 00085670M18にハぞんじませねども、さだめて/酒(さけ)きげんでござりませう。 00085680M19/何(なん)ぶん/此度(こんど)の/儀(き)ハ、/私(わたくし)に御あづけ/被下(くだされ)まして、/御了簡(ごれうけん)なさ 00085690M20れてくださりませといへバ、家主も/少(すこ)し/顔(かほ)を/和(やハ)らげ、イヤ 00085700¥P275 00085710L1モ、そこ/元(もと)のやうに、こしを/低(ひく)ふしていふて/下(くだ)さりや、何 00085720L2も/腹(はら)を/立(たて)る/事(こと)もないが、/一(いつ)たい、あの/男(おとこ)ハなんでも/頭(あたま)がち 00085730L3じや。ソレハともあれ、どふも/家主(いへぬし)を、くそとも思ハぬと 00085740L4いふた/一言(いちごん)ハ、どふも/聞(きゝ)ずてにハなりませぬ。Sサヽ/御尤(ごもつとも) 00085750L5じや。しかし、そこを/何事(なにこと)も(十八オ)/私(わたくし)にめんじて/御了簡(ごれうけん) 00085760L6下さりませ。コレ+与七さん。こゝへ/来(き)て/御(お)わび申なさ 00085770L7れ。たとへ/一抔(いつぱい)きげんでも、/大切(たいせつ)な御家主さまを、くそと 00085780L8も思ハぬといわつしやつたがすまぬと御/立(りつ)ふくじや。そこ 00085790L9をだん※と、わしが/御頼(おたの)ミ申た事しやさかいに、此うへ 00085800L10にも/有(ある)まい/事(こと)でもないさかいにナ、是からきつと/心得(こゝろえ)て、 00085810L11家主さまの/事(こと)を、きつと/屑(くそ(ママ))とおもわつしやれや 00085820¥Y1落咄顋掛かね巻二畢(十八ウ) 00085830G1△〔巻二挿絵中の詞書〕 00085840G2Sなむさん、してうにかゝつたか。してうべらぼうにしたことだ 00085850G3;Sしてうかるかやおミなめし;Sヲツト、ふるい+;Sして 00085860G4うわたしが心をバ;それも/古手(ふるて)や/八郎兵衛(はちろべい)だ;コレをふるいとい 00085870G5ツちやア、/大丸(だいまる)へでもおいでなせへだ(二ウ) 00085880G1Sこれハコレ、もろこしからのとうじんのちんふんかんこのかん 00085890G2+、あめねぶりか、とんぼうとんでつた、とらんかとうてんと 00085900G3ゝらがとうといふことだ。ナンと、こどもしゆ。がてんか+; 00085910G4子どものいわくSなんぞいふてるハ△Sあほナおツさんた△Sチン 00085920G5チチンチリガン(八ウ) 00085930G1かゝSおめへハそふてへ、/口(くち)がわりい。ふだんしらぬかほできい 00085940G2ていれバ、アノかゝアハけまりのつき/直(なほ)しのやうな、しわだらけ 00085950G3ナつらへ、おしろいをぬつて、/粉屋(こや)へはいつた、ぬすツとねこを 00085960G4見たやうだと、よくわるくいつたの;ていしゆSわしがかゝが/猫(ねこ) 00085970G5で(十五ウ)もしやくしでも、きさまのせわにハなり申さぬ。わし 00085980G6がねづミのとしだから、まいばん+かゝにくわへてひかれるの 00085990G7じや。わしらがねこやねづミなら、きさまハいぬかさるだらう。 00086000G8サアどふだ。いぬかさるか。けふぢうに此へんじがしてもらひた 00086010G9いわへ;両人Sイヤモ、/一(いち)+/御尤(ごもつとも)でござります。いちごんも 00086020G10なしの/木(き)さいかちさるすべり。ごらうじろ。しやれもでません 00086030G11(十六オ) 00086040¥P276 00086050¥T1/落噺顋懸鎖(おとしばなしあごのかけがね)巻三 00086060¥A洛東△△和来山人作 00086070¥N1¥J 00086080¥X/冬至梅(とうじうめ) 00086090L7/蕎麦(そば)と/奈良茶(ならちや)の十六文ハ、/上代(じやうだい)よりの/御定(おさだ)まりにして、/団子(だんご) 00086100L8とあまざけは五文に/極(きハ)めしハ、/万治年中(まんぢねんぢう)迄のならハしなり。 00086110L9今や二の/椀(わん)つきに/百膳(ひやくぜん)あれバ、/七色茶(なゝいろちや)づけに/五分(ごふん)屋あり。 00086120L10三十八文の/料理(りやうり)四条にさしかけのいらかをならべるときハ、 00086130L11五十(一オ)五文の/夜見世(よミせ)を/出(いだ)し、われ/劣(おと)らじと/安売(やすうり)すれバ、 00086140L12我/負(まけ)じと/安買(やすがひ)し、/出店(でミせ)/本店(ほんミせ)/差別(しやべつ)なく、/新古(しんこ)/仕(し)にせもいとハヾ 00086150L13こそ、/下直(げしき)に/付(つく)が/世(よ)の/習(なら)ひ、おつかぶするも/商人(あきんど)の/習(なら)ふに 00086160L14なれる。/食物(くひもの)見世も/多(おほ)きが中に、/珍(めづ)らしきハ/畷(なハて)の/唐(から)の/御茶= 00086170L15漬(をんちや=づけ)、四条の/魚類(ぎよるい)/御茶漬(をんちやづけ)、/別(べつし)て此頃/先斗(ほんと)丁に/諸薬御料理(しよやくをんれうり)とい 00086180L16ふあんどうを/出(いだ)し、/医者(ゐしや)/生薬屋(きぐすりや)ハいふに/及(およ)バず、ばい/薬店(やくミせ) 00086190L17のでつち/迄(まで)、是ハきミやうな/茶屋(ちやや)なりとて、われも+と 00086200L18/此見(このミ)(一ウ)せに/行(ゆき)て、/一時(いちじ)に/大評判(おほへうばん)と成りたり。茶や手代 00086210L19Sナント、此ごろぽんと/丁(てう)に/薬茶(くすりぢや)づけといふがでけたが、 00086220L20/貴公(きこう)いたか△同し手代Sヲヽいたわい。ゑらうゑゝ/趣向(しゆかう)じや。 00086230M1トント/薬一式(くすりいつしき)じやが、/素人(しろうと)ハがてんの/行(ゆか)ぬ/事(こと)もあろうが、 00086240M2こちらにハ/面白(おもしろ)い△Sどないな事じや△Sマア、ずつとは 00086250M3いると、/料理人(れうりにん)が/両手(れうて)ばんで/野菜(やさい)を/切(きつ)てゐるし、/片手盤(かたてばん)で 00086260M4/肴(さかな)を/料理(れうり)する。かつほハ/薬研(やげん)でおろして、ふるひでふるふ 00086270M5ている。/是(これ)で/一事(いちじ)が/万事(ばんじ)じや△Sゑらうおか(二オ)(二ウ・ 00086280M6三オ挿絵)しいな。そして料理ハどんなものじや△Sサレバ、 00086290M7のつけにきん+/花(くハ)のせんじ/茶(ちや)に、くハしが/龍(りう)がんにくの 00086300M8/小倉野(おぐらの)じや△Sそいつけつかうじや△Sめしが/■苡仁(よくゐにん)で、 00086310M9/汁(しる)が/青葉霍香(あをばくハつかう)に/角茯令(かくぶくれう)△Sひねりくさるな△Sゑゝおもひ 00086320M10つきじやないか。/平(ひら)が/芍薬(しやくやく)の/千(せん)ぎりに、/割防風(わりほうふう)をボウトル 00086330M11の/油(あぶら)でけんちんにして、/吸口(すいくち)が/丁子(てうじ)じや。/焼(やき)ものが/穿山甲(せんさんかう) 00086340M12のぐそくやき、くハし/椀(わん)が/羌活(きやうくハつ)と/大腹皮(たいふくひ)と/檳榔子(びんろうじ)の/丸煮(まるに) 00086350M13じや(三ウ)△S/猪口(ちよく)ハ何じやナ△Sサ、ちよくハちよつと 00086360M14した/物(もの)であつたハいな△S何じやいな△Sアヽなにやらで 00086370M15あつた。ヲヽそれ+、/朝鮮人参(てうせんにんじん)のしたしものじや 00086380¥N2¥J 00086390¥X/有(あり)の/侭(まゝ) 00086400M18さる/劔術(けんじゆつ)の/師範(しはん)、大の/高慢(かうまん)にて、/弟子(でし)どもと/道(ミち)の/物(もの)がたり 00086410M19の/序(つゐで)に、/己(をの)が/流義(りうぎ)を/自慢(じまん)するに、/弟子共(でしども)ハたゞヘイ+と 00086420M20/聞(きゝ)ゐたるに、づに/乗(のり)て、/某(それがし)が/流義(りうぎ)ハ、/凡(およそ)/日本(につぽん)/広(ひろ)しといへど 00086430¥P277 00086440¥G(二ウ・三オ) 00086450M1も、/外(ほか)に/類(るい)なき/流義(りうぎ)にして、(四オ)/故(かるがゆへ)に/古今無雙流(ここんぶさうりう)と/名= 00086460M2号(な=づけ)たり。/世(よ)に/武道(ぶだう)の流義さま※あれども、/只(たゞ)/劔法(けんはう)の一つ 00086470M3のミにして、/合戦(かつせん)の/場(ば)にいたりてハ/間(ま)に/合(あひ)がたし。/当流(たうりう)に 00086480M4/於(おゐ)てハ、まづ第一ニ、/兵法(へうほう)/軍学(ぐんがく)を/旨(むね)とするが故に、/鎗術(さうじゆつ)・ 00086490M5/長刀(なぎなた)・/弓(ゆミ)・/馬術(ばじゆつ)・/鎌(かま)・くさり・/棒(ぼう)・/礫打(つぶてうち)・うでをし・すね 00086500M6をし、・/枕引(まくらびき)・/居角力(ゐずまふ)・/組打(くミうち)・しころ引・/草摺(くさずり)引に/至(いた)る/迄(まで)、 00086510M7/何(なに)一ツとして/武(ぶ)の/道(ミち)に/洩(もれ)たる事ハござらぬといへバ、/傍(かたハら)よ 00086520M8り/弟子(でし)ハ/忙果(あきれはて)て、/火術(くハじゆつ)も/武道(ぶどう)の/内(うち)でハござりませぬか。 00086530M9師Sイヽヤ、/火術(くハじゆつ)ハ/大筒(おほづゝ)/小筒(こづゝ)、其(四ウ)外/火術方(くハじゆつかた)とて、/別(べつ) 00086540M10にあるじやといへバ、/弟子(でし)わらひながら、/先生(せんせい)の/御流儀(おりうぎ)に 00086550M11も、少しハてつぽうもこもり/升(ます)な 00086560¥N3¥J 00086570¥Xひとつハ/難(なん) 00086580M14ある/後家(ごけ)の/所(とこ)へ/入聟(いりむこ)の/世話(せわ)してやりけるに、/初(はじめ)のほどハ/夫= 00086590M15婦(ふう=ふ)なか/至極(しごく)むつまじくくらしけるが、ふと/心付(こゝろづく)に、/何(なん)でも 00086600M16/与所(よそ)よりものをもらへバ、これハ/先(せん)の/亭主(ていしゆ)がすき也とて、 00086610M17ひらうもせず/仏(ぶつ)だんへそなへるを、/亭主(ていしゆ)/心(こゝろ)よからず思ひゐ 00086620M18たりしが、/或時(あるとき)(五オ)/大(おゝき)なる/鯛(たい)をもらひたるに、/女房(によばう)さつ 00086630M19そく、これも/先(せん)の亭主(ていしゆ)がすき也とて、/仏(ぶつ)だんへそなへけれ 00086640M20バ、亭主あきれて/仲人(なかうど)の/所(とこ)へ行、亭Sせつかく/貴公(きこう)の御せ 00086650¥P278 00086660¥G(七ウ・八オ) 00086670M1わなれど、あまりのあはうゆゑ、/女房(によぼう)にしておもしろくな 00086680M2い/故(ゆゑ)、りゑんしてもらひたしといへば、仲人Sそりや、な 00086690M3にがきに/入(いら)なんだ。ずいぶん/発明(はつめい)な女で、/世間(せけん)にもよい/噂(うハさ) 00086700M4じやが、何がまたそのやうにきに/入(い)らんのじや△亭主Sさ 00086710M5れバ、/別(べつ)に/是(これ)がわるいといふ/事(こと)も(五ウ)ないけれ/共(とも)、とか 00086720M6く/世間(せけん)から/物(もの)をもらひますると、/先(せん)の/仏(ほとけ)+と、/私(わし)にハ見 00086730M7せもせずに/仏(ぶつ)だんへ上まする。それもしんぼうしてゐまし 00086740M8たが、/此間(このあひだ)/鯛(たい)を/一(いち)まいもらひましたを、コレハ/先(せん)の/仏(ほとけ)がき 00086750M9つい/好物(こうぶつ)じやと/直(じき)に/仏(ぶつ)だんへそなへた。なんと、/仏(ぶつ)だんへ 00086760M10/肴(さかな)をそなへるとハ、よつぽと/阿房(あはう)じやと思ふゆゑに、りゑ 00086770M11んが/仕(し)とふごさり升△仲人Sなるほど、ソリヤおまへの/心(こゝろ) 00086780M12もちがわるい/筈(はづ)じや。しかし/夫(それ)バかりの事なら、/御内義(おないぎ)に 00086790M13わしがいひきかせます。まあ+/此度(こんど)ハれう(六オ)けんさ 00086800M14つしやれと、さま※あいさつをして/亭主(ていしゆ)をつれ、/仲人(なかうと)、 00086810M15かの/内儀(ないぎ)にむかい、仲人Sおまへ、よくものを思ふて見や 00086820M16しやれ。そりや/先(せん)の/御亭主(ごていしゆ)に/恩(おん)もあれど、今の/亭主(ていしゆ)にも、 00086830M17又/今日(こんにち)たゞ/今(いま)の/義理(ぎり)があるじやないか。それに/何(なん)でも、先 00086840M18の/亭主(ていしゆ)+といひなさつてハ/義理(ぎり)がすまぬゆゑ、これから 00086850M19ハあまり/先(せん)の/仏(ほとけ)の事をいふまいぞや。とかく/先(せん)の/仏(ほとけ)+と 00086860M20おまへがいふさかい、今のほとけがはらたてるじや(六ウ) 00086870¥P279 00086880¥G(十三ウ・十四オ) 00086890¥N4¥J 00086900¥X/今(いま)/仲景(ちうけい) 00086910M3/大医(たいゐ)ハ/国(くに)を/療治(れうぢ)し、/小医(せうゐ)ハ/病(やまひ)を療治すとありて、/医者(ゐしや)ハ/仁(じん) 00086920M4の/術(じゆつ)にて、/大慈大悲(たいじたいひ)の/心(こゝろ)を/起(おこ)し、あまねく/天下(てんか)の/万民(ばんミん)をす 00086930M5くふが/故(ゆゑ)に、/国手(こくしゆ)とも/医師(くすし)ともいふなり。されバ/学問(がくもん)あつ 00086940M6ても/効者(こうしや)なけれバ、人の/命(いのち)を/助(たすく)ることかたく、/効者(こうしや)ばかり 00086950M7にても/学問(がくもん)なけれバ、/死生(しせい)の/要(よう)を/知(し)ることかたし。しかる 00086960M8に/近頃(ちかごろ)ハ/陳皮(ちんぴ)・/甘艸(かんざう)の/名(な)を/知(し)ると、あたまをはやして/医者(ゐしや) 00086970M9と成、/素問(そもん)(七オ)(七ウ・八オ挿絵)/難経(なんけう)もよめずして、/黒縮緬(くろちりめん) 00086980M10の/羽(は)おりをきれバ、/何(なに)の/何庵(なにあん)とか/名(な)を/更(かへ)て、/昨日(きのふ)の/按摩(あんま)/針(はり) 00086990M11も、けふハ/桂母敗毒(けいぼはいどく)さん、けふの/撫療治(なでれうぢ)も、はかまをはい 00087000M12て、あしたに/不換金正気散(ふかんきんせうきさん)とかはり、/番(ばん)ぎせるのごとくに、 00087010M13あたまを/横(よこ)にして/脉(ミやく)を見る。たとへバ/尺八(しやくはち)を/習(なら)ふがごとく、 00087020M14/何(なに)が何やら/彼(か)が/彼(か)やら、さつハり/分(わか)らぬ/見脉按方(けんミやくあんほう)・/夢中配= 00087030M15剤(むちうはい=ざい)・/無茶療治(むちやれうぢ)、/下剤(げざい)がよいか/温補(うんほ)がよいか、/発(はつ)して見よか 00087040M16/吐(はか)かせふか、/半表(はんひやう)半/裏(り)(八ウ)のしあんばし、どちらつかず 00087050M17のあぶな/医者(ゐしや)、おつな/才覚(さいかく)といふ/薮医者(やぶゐしや)あり。/無学(むがく)/文盲(もんもう)に 00087060M18して/薬名(やくめう)の/文字(もじ)もしらねバ、/百味(ひやくミ)だんすの/引出(ひきだ)しへ、/書付(かきつけ) 00087070M19のかハりに/絵(ゑ)をかいて、/人(ひと)の見ぬ/所(とこ)へかくして/置(おき)しが、/心(こゝろ) 00087080M20やすい/男(おとこ)の/入来(いりきた)りて、ずつと/通(とふ)りて/奥(おく)へ入り、客Sコレハ 00087090¥P280 00087100L1+/才覚(さいかく)さま。御/留主(るす)かと/存(ぞん)じたら/御調合(こちやうごう)さいちう。いつ 00087110L2も/御流行(ごりうこう)で/珍重(ちんてう)といひつゝ見れバ、/薬(くすり)だんすハさま※の 00087120L3/絵(ゑ)なり。Sハヽア/是(これ)ハめづらしい。(九オ)あなたの/御薬(おくすり)だ 00087130L4んすハ/皆(ミな)/絵(ゑ)でござりますな△ゐしやSさやう+。イヤモ、 00087140L5これハ/古人(こじん)/甲斐(かひ)の/徳本(とくほん)が/家伝(かでん)にて、それにいづくを見まし 00087150L6てもあたりまへの/薬(やく)だんすゆゑ、ちとおもしろく/趣向(しゆこう)いた 00087160L7して、/不侫(ふねい)ハ/絵(ゑ)にいたしましたじや△客Sイヤモ、/御工夫(ごくふう) 00087170L8といひ/御趣向(ごしゆかう)、/至極(しごく)おかしくてよふごさります。アノゑん 00087180L9まさんのかいてあるハ/何(なん)のくすりでごさります△Sアリヤ 00087190L10/大黄(だいわう)でござる△客Sハヽア、ゑんま/大王(たいわう)じやナ。あの/犬(いぬ)が 00087200L11/火(ひ)にあたつてゐるハ(九ウ)何でござるな△Sアレハちんぴ 00087210L12じや△Sよい/趣向(しゆこう)ナ。あの大きな/金玉(きんだま)をかゝへてゐるのハ 00087220L13Sあれハせんきうじや△Sこちらの/方(ほう)の/土(つち)を/荷(にの)ふてゐるハ 00087230L14Sありやもつこうじや△S其したの二ツ/目(め)の/引出(ひきだ)しに、/女(をんな) 00087240L15のはらを/押(をさ)へて、くすりのんでゐるハ/何(なん)でこざります△ 00087250L16Sアレハしやくやく△S其うへハナ△Sかねをかぞへてゐ 00087260L17るのハわうごんじや△Sすみから三ツ/目(め)のハナ△Sどれじ 00087270L18や△Sアノ/鼻(はな)のあなへ/小(こ)よりを入れているハ、/何(なん)でござり 00087280L19ます(十オ)△Sハヽアあれかな。あれハ△S/何(なん)といふ/御薬(おくすり) 00087290L20じやナ△Sあれハ/沢瀉(たくしや)じや 00087300¥N5¥J 00087310¥X/牛(うし)ハ/丑(うし) 00087320M3京都四条通/御旅町(おたびてう)のわたりにハ、あらゆる/諸国(しよこく)の/名物(めいふつ)/名産(めいさん) 00087330M4のこる/方(かた)なく/軒(のき)をならべ、きせるハ/村田(むらた)、たばこ入ハ/越川(ゑちかハ)、 00087340M5/袋物(ふくろもの)ハ/丸角(まるかく)、その外、/川原(かハら)には/山海(さんかい)の/珍味(ちんミ)をならべて、/入= 00087350M6来(いり=く)る人の/鼻(はな)をつらぬく。うまいものやのむかふにハ/福山(ふくやま)の 00087360M7そば、/雨蛙(あまがいる)の(十ウ)でんがく、/布袋(ほてい)の/茶(ちや)づけ、/井上(いのうへ)の/歯(は)ミ 00087370M8がき、/梅(うめが)えでんぶ、さくら/味噌(ミそ)、ぎうひこん/布(ぶ)に/祇園(ぎをん)かう 00087380M9せん、/御望(おのぞミ)/次第(しだい)の其中に、いと/珍(めづら)らしきかんばんハ、/江戸= 00087390M10一流(ゑど=いちりう)/喧嘩指南所(けんくハしなんしよ)と書たり。/若者(わかきもの)ども是を見て、Sナント/伝= 00087400M11公(でん=かう)。ゑらい/師匠(しせう)がでけたな△Sなんじや。/江戸一流(えどいちりう)けんく 00087410M12ハの/指南(しなん)じや。こりやおもしろい。どんなけいこじや。/些(ち) 00087420M13と/仕(し)て見やうか△Sサレバ、なにも/慰(なぐさ)ミじや。チト/習(なら)ふか 00087430M14と両人うちへはいり、/小腰(こごし)をかゞめ、(十一オ)Sハイ。御ゆ 00087440M15るし/下(くだ)されませ△師Sだれだ。人の/内(うへ)へへヱるに、御ゆる 00087450M16しなせへも/御(ご)てへそふだナ。なんだ。なんの/用(よう)だへ△Sハ 00087460M17イ+。わたくしどもハ/御近所(ごきんじよ)の/者(もの)でござりますが、すこ 00087470M18し/稽古(けいこ)がいたしとふござります。/御指南(ごしなん)あそバされて/下(くだ)さ 00087480M19りませ。おたのミ申ます△Sあそバされてのなんのかのと、 00087490M20そんななまぬるこい/事(こと)で、けんかゞできるものだねへ。べ 00087500¥P281 00087510L1らぼうめら。マアきり+と、こちらへ/上(あが)れ。上れといふ 00087520L2たらあがりあがれ△Sハイ+、御(十一ウ)めん/下(くだ)さりま 00087530L3せ△S御めんもへちまもいるものか。わりやアマアどこの 00087540L4やらうどもだ△Sハイ+、わたくしどもハ/三条(さんでう)からすま 00087550L5のものでこざり/升(ます)△Sナンダ、/烏丸(からすまる)だ。/枇杷葉湯(びはようとう)がきいて 00087560L6あきれらア。くそでもくらつたのか△Sイヱ+、そのやう 00087570L7なものハいつこうねぶりました/事(こと)もござりません△Sコレ 00087580L8サ、ねぶりませんが/気(き)にくハねへぞ。ナニサ、くそをくつ 00087590L9たおぼへハねへといやアがれ。うぬらがやうナぼんぐら共 00087600L10ハ、/中&(なか+)/一年(いちねん)や/三年(さんねん)ならつたとて、いざこざもできる(十 00087610L11二オ)こつちやアねへ。マアおらがとけへ、五六年もかよへ 00087620L12サ。けふハけへれ+。けへつて又こい。べらぼうめが 00087630L13Sハイ+、さやうならおいとま申ます。/此(これ)ハ大に御めん 00087640L14どうにござりませう△Sけとうじんめら。/足(あし)もとのあかい 00087650L15うちに、うしやアがれトいふに、/両人(ふたり)ハきもをつぶし、/早= 00087660L16&(さう=+)ににげかへると、/其(その)あとへ、うでにほりものしたる男四 00087670L17五人づれにて/来(きた)り、ずつとはいり、Sおやじ、/内(うち)か△Sヲ 00087680L18イ、だれだ△Sおいらだ△Sおいらだア、どいつだ△Sど 00087690L19いつもこいつもいらないハ。けん(十二ウ)くハを/習(なら)ひにき 00087700L20たしや△Sウヽよくうせた。サア/上(あが)れ。やろふども/三疋(さんびき)だ 00087710M1ナ△Sヲヽ三人じやといふ中に、/江戸(えど)ツ/子(こ)一人まじりゐて、 00087720M2やにハにむかふ/鉢巻(はちまき)しめ、かたはだぬきで、江戸子Sコレ、 00087730M3けんかの/師匠(しせう)だの/指(し)なん/所(とこ)たのと、人もねへように四条/川= 00087740M4原(か=□ら)の/弓手(ゆんて)めてに、御ていさうにかんばんを/掛(かけ)あがつて、そ 00087750M5れもマアいゝにしてやらふが、かざツぷいたやらふじやね 00087760M6へがヱ。おいらを/犬(いぬ)かねこのやうに思ひあがつて、/三疋(さんひき)う 00087770M7せたア何のこつた。サアしせうやろうめ。/今(いま)ツからうぬと 00087780M8(十三オ)(十三ウ・十四オ挿絵)をれがしんけんせうぶで、/腕(うで)づ 00087790M9くで/看板(かんはん)をたゝツこハして、やてへ/骨(ぼね)をふミくだきて、/夜= 00087800M10食(や=しよく)のめしのたきものにするぞ。四も/五(こ)もいらねへハ。うぬ 00087810M11が/方(かた)に/百両(ひやくれう)あつて、おれが/方(かた)に一文あつても、/此権(このごん)さんか 00087820M12せうぶをしてやるのだ。たわことをぬかしやアがらずと、 00087830M13すぐすなをに、うつつくばつて、ごめんなせへとぬかせ。 00087840M14あやまりやうがおそいと、はなの/穴(あな)へせがきぶねをけこん 00087850M15で、三げいばんれへのくしやミをさせるぜへといへバ、/師= 00087860M16匠(し=せう)、/立(たて)たる/膝(ひざ)を/直(なほ)して、モシ、おめへハよつ(十四ウ)ほど 00087870M17/御下地(おしたぢ)があるハへ 00087880¥N6¥J 00087890¥X/網代木(あしろぎ) 00087900M20/京(ミやこ)ハ/売薬(ばいやく)の/根元(こんほん)・/本家(ほんけ)・/家本(いへもと)/沢山(たくさん)なる/中(なか)にも、/縄手(なハて)のあか 00087910¥P282 00087920L1まんのう、/臘丸長命通知(らうぐハんてうめいつうわ)さん、/勝利向運長寿(せうりかううんてうじゆ)の/薬(くすり)、/種&(しゆ※) 00087930L2さま※と/多(おほ)きがうちに、/奇妙頂来(きめうてうらい)の/伝法(てんはう)/一時百里韋駄天= 00087940L3丸(いちじひやくりいだてん=ぐハん)といふ/薬(くすり)有。此薬を一日に/一粒(いちりう)づゝもちふれバ、/一時(ひとゝき)の 00087950L4/間(あひだ)に/百里(ひやくり)を/走(はし)る事うたがひなし。ある/町(まち)づかひに/早蔵(はやざう)と 00087960L5て、さなき(十五オ)だに/足(あし)のはやきこと/人(ひと)に/倍(ばい)せしが、此 00087970L6いだてん丸を一日に十二/粒(りう)づゝ/服用(ふくやう)しけれバ、其/足(あし)/早(はや)きこ 00087980L7と、/鳥(とり)の/飛(とぶ)がごとし。/故(ゆへ)に/爰(こゝ)からも/早蔵(はやぞう)、/彼方(かしこ)よりも/早蔵(はやざう) 00087990L8とよびつかハれて、大にかねをもふけ、/五条(ごでう)のほとりに/茶= 00088000L9店(ちや=ミせ)を/出(いだ)し、よるハ/豆茶(まめちや)・あまざけをうるに、そのはんじや 00088010L10う又たぐひなし。ある/夜(よ)見世の/客(きやく)ことに/多(おほ)くて、/夫婦(ふうふ)大に 00088020L11/取(とり)こミゐたるをうかゞひ、ぬす人一人まぎれいり、/銭入(ぜにいれ)の 00088030L12かごを/引(ひつ)かたげて、/西(にし)をさしてにげ/行(ゆく)を、ソレ/盗人(ぬすびと)よ、と 00088040L13うぞく(十五ウ)よと/騒(さハ)ぎ/立(たて)れバ、/早蔵(はやぞう)ハ/落付(をちつき)て、Sどなた 00088050L14もおさハぎ下されまするな。じきに/取(とり)かへしてさんじます 00088060L15と、きせる/筒(づゝ)を/腰(こし)にさし、/女房(によぼう)にいひつけ、/弁当(べんとう)をつめさ 00088070L16せ、わらじをはきかへ、まづ/御客方(おきやくがた)。ゆるりとお/休(やす)ミなさ 00088080L17れませ。ドレ、つかまへてまゐりませうと、/西(にし)をさしてと 00088090L18ぶよと見えしが、/夜(よる)の/事(こと)なれバすがたも見えず。さて/早蔵(はやぞう) 00088100L19ハ/東寺(とうじ)/四(よつ)ツ/塚(づか)の/辺(ほと)りの茶やニやすみて/食(めし)をくふてゐるを、 00088110L20茶屋の亭主Sモシ、おまへさんは/今頃(いまごろ)、どこへ御出なされま 00088120M1す早Sサア、さいぜんわしがうちへ(十六オ)/盗人(ぬすびと)めが/這= 00088130M2入(は=いつ)て、/銭(ぜに)かごを/持(もつ)てにげましたによつて、/追(おつ)かけてきまし 00088140M3たのじや△亭Sそれハにくい/事(こと)をいたしました。ソシテ其 00088150M4ぬす人ハおつかまへなされたか△Sいや+、まだつかま 00088160M5へませぬ△Sおまへさんもまあ、人を/追(おつ)かけるに、そのや 00088170M6うにゆう+としてござつてハ、/盗人(ぬすびと)ハといとにげてしま 00088180M7い/升(ます)るが△Sイヘ+、そのぬす人ハ、をつゝけ/跡(あと)からき 00088190M8ます 00088200¥N7¥J 00088210¥Xそれが/誠(まこと) 00088220M11/江戸(えど)の/手伝(てつたひ)、京のおやまを/女房(によぼう)にもつて、/夫婦(ふうふ)(十六ウ)の 00088230M12/中(なか)むつまじくくらしけるが、ある/夜(よ)/寐(ね)ものがたりに、/夫(おつと)の 00088240M13あくしやうを/悋気(りんき)して、お山のいふやうハ、おまへの/様(やう)な 00088250M14あくしやうなおかたハ見た/事(こと)がない。Sなんだ、べらぼう 00088260M15め。あくせうを見た/事(こと)がねへ。見たか/在郷(ぜへご)へ/出(で)ろ。いくら 00088270M16もあらア。おらア又てめへのよふナ、のんべんくらりナす 00088280M17けべい/女(をんな)ハ、つゐに/付合(つきあふ)た/事(こと)もねへハ。一ツてへ/上(かミ)がた/女(をんな) 00088290M18ハ/性(しやう)がわるくて、ぜうがねへぜ△Sぜうがうすふて/性(しやう)がわ 00088300M19るいかハりにハ、しうねんがふかいぞへ。おまへもわしを 00088310M20だまし(十七オ)てじやあつたら、きかんぞへ△Sきかんぞ 00088320¥P283 00088330L1へぐらゐで、/江戸(えと)ツ/子(こ)がせうちするものか。/手(て)めへも/又(また)お 00088340L2れがかゝアに成て、ていしゆをだましやアがると、ふミ/殺(ころ) 00088350L3して/川(かハ)へたゝツこむぞよ△S/川(かわ)へはめても、/一念(いちねん)といふも 00088360L4のがあるさかいに、こつちや/取付(とりつい)てくい/殺(ころ)してしまふわい 00088370L5な△Sそんな/事(こと)ぬかしても、おれが/死(し)んでしまつたら、/一(ひと) 00088380L6ト/七日(なぬか)もたゝねへうちに、/亭主(ていしゆ)を/入(いれ)やアがるだらう△Sな 00088390L7んのいナ。こちやつむりをそつてナ、/黒谷(くろだに)へいて/尼(あま)になる 00088400L8わい(十七ウ)△Sソリヤおいらも/御同前(ごどうぜん)だ。てめへがくた 00088410L9バると、/道心坊主(だうしんぼうす)に成て、/御(ご)ほうしやでございともらつて 00088420L10/歩(ある)かア△S/啌(うそ)いハんせ。/大(おほ)かた/直(すぐ)に、うつくしい/女房(にやうぼ)さん 00088430L11をもたんすじやあろ△Sなんの、そんなものを入れる/気(き)ハ 00088440L12さら+ねヱ△Sイヽヤ、ある+。あるせうこがあるわ 00088450L13いな△Sせうことハ/何(なん)だ△Sそのせうこといふハ、こちら 00088460L14がある/内(うち)さへ/女(をなご)を見ると、ねバ+さんす△Sナニ、とほ 00088470L15うもねへ/事(こと)をぬかすぜへ。うぬこそ/男(をとこ)を見ると、べた+ 00088480L16しやアがるくせに△Sそん(十八オ)ならこちもべた+を 00088490L17/止(やめ)るさかひに、おまへもねバ+を/止(やめ)さんせや△Sソリヤ 00088500L18いはずとぬかさずとしれし/御事(おんこと)だ△Sねバ+さんしたり、 00088510L19わしが/死(し)んで/女房(にようぼ)さんをもたんしたら、たゞハおかんぞへ 00088520L20Sおかんぞへといつて、どうする△Sゆうれいになつてき 00088530M1て、/二人(ふたり)とも/取殺(とりころす)ぞゑ△Sそりやアうそだ△Sイヘ、うそ 00088540M2じやない。ほんまじや△Sほんまもくそもいるもんか。あ 00088550M3たまで/白無垢(しろむく)の/工面(くめん)も/出来(でけ)やアしめへ 00088560¥Y1落噺顋懸鎖巻三了(十八ウ) 00088570G1△〔巻三挿絵中の詞書〕 00088580G2/町人(てうにん)、/心(こゝろ)のうちにていふ。Sコヲ/見(ミ)たところハ、アノ/侍(さむらい)ハ、ちん 00088590G3こ/芝居(しハや)の/伴内(ばんない)に/外(ほか)つかハれねヱつらだ。またこツちらのやつハ、 00088600G4どんナミたをしにミせても、申/上升(あげます)と/外(ほか)ふむめヱ。どいつもこい 00088610G5つも、よくのふかそうナつら/付(つき)だ。おらアまた、うぬぼれるやう 00088620G6だが、/坂三津(ばんミつ)か/菊五郎(きくこらう)、/関三(せきさん)、ずツとやすめにでゝ(二ウ)/額十(がくぢう) 00088630G7か/目(め)とくあたりだ(三オ) 00088640G1Sおらがかゝアめハ、/女(をんな)もよし、けつもちいさし、/口(くち)もそうおう 00088650G2にしやべり、めしも/人(ひと)すぐれてくらやアがるが、チツトきがたぢ 00088660G3れているのがきづた。たつたひとつの/取得(とりえ)といふハ、よなべのし 00088670G4ごとかいゝばかりで、/何(なに)もかも/気(き)でくつてゐるのだ(七ウ) 00088680G1Sせんせいのおくすりだんすハ、めつけゑかはなあわせのかるた 00088690G2のやうじや。とかく/当(とう)せいハ、/何事(なにこと)もあたらしいがよいじやナ 00088700G3(十三ウ);Sあたらしい/事(こと)でなけりや、びやうかもとくしんしま 00088710G4せんじや。世にふるくてよいものハ、/神社(じんじや)/仏閣(ぶつかく)となべかま・ちや 00088720G5がまばかり。わけてあたらしくしたいが、/女房(にようぼ)とおとしばなしじ 00088730G6やが、とかく/作者(さくしや)めがせんだくをしたがるには、こまりのばアさ 00088740G7ん、/茶(ちや)をあがれだ(十四オ) 00088750¥P284 00088760¥T1/落噺顋懸鎖(をとしはなしあごのかけかね)巻四 00088770¥A洛東△△和来山人作 00088780¥N1¥J 00088790¥Xさすが/心掛(こゝろかけ) 00088800L7/茶(ちや)の/湯(ゆ)ずきの/隠居(いんきよ)、/風呂屋(ふろや)へ/行(ゆく)と、はいるから/出(で)る/迄(まで)/茶(ちや)の 00088810L8/心(こゝろ)にて、/手(て)まへをなしゐるを、/風呂(ふろ)屋の/亭主(ていしゆ)も/同(をな)じく茶の 00088820L9/湯(ゆ)ずきなるが、/番台(ばんだい)よりこれを見て大に/感(かん)じ、/人(ひと)も/其一(そのいち)チ 00088830L10/道(だう)に/入(いり)てハ、アノ/隠居(いんきよ)のやうに、/事&(じゞ)/物&(もつ+)にその/心(こゝろ)がけな 00088840L11くてハ、/名人(めいじん)とハなられぬ(一オ)もの。さりとハ/恐(おそ)れ入た 00088850L12る/事(こと)なりと、またゝきもなさず見とれゐたるが、/隠居(いんきよ)ハ/一= 00088860L13心不乱(いつ=しんふらん)に/諸事(しよじ)/茶(ちや)の/行義(ぎやうぎ)。あがり/場(は)をも/摺足(すりあし)にて/行(ゆき)、風呂へ 00088870L14/入(いる)にも、にじり/上(あが)りの/心持(こゝろもち)にて/入(いり)、しばしにて/又(また)かこゐを 00088880L15/出(いづ)るやうにしづかにあがり、/手桶(ておけ)を/目八分(めはちぶん)に/持(も)チ、/水(ミづ)さし 00088890L16を/運(はこ)ぶ/心(こゝろ)もちに/湯(ゆ)をくミ、又/水(ミづ)ぶねににじり/寄(より)、/柄杓(ひしやく)にて 00088900L17/水(ミづ)をくむにも、/惣(さう)じて/手(て)まへを/正(たゞ)し、/手拭(てぬくひ)ハ/帛紗(ふくさ)を/取扱(とりあつかふ) 00088910L18心持にて、/茶杓(ちやしやく)をぬぐふが/如(ごと)く、/男根(なんこん)より/陰嚢(ゐんのう)をあらひ、 00088920L19(一ウ)其外あたまのきり※より/足(あし)のつまさきまで/丁寧(ていねい)に 00088930L20あらひすゝぎ、/手拭(てぬごひ)をもよくあらひ、からだをとくとふき、 00088940M1/板(いた)の/間(ま)にすハり、/手(て)ぬぐひを/茶巾(ちやきん)のごとく/折(をり)て、/陰茎(ゐんきやう)の/上(うへ) 00088950M2に/置(おき)てすゞみゐれば、/亭主(ていしゆ)ハ/一&(いち+)に/感(かん)じゐたるが、此とき 00088960M3/台(だい)をとび/下(お)り、/隠居(いんきよ)のまへに/手(て)をつき、チト/御道具(おだうぐ)/拝見(はいけん)仕 00088970M4りたふごさります 00088980¥N2¥J 00088990¥X/読(よミ)ととなへ 00089000M7さる/男(をとこ)、/大悪女(だいあくじよ)を/女房(によぼう)として、/天(てん)にあらバとんびとなり、 00089010M8(二オ)(二ウ・三オ挿絵)/地(ち)にあらバむくらもちと/成(なり)て、二/世(せ) 00089020M9三/世(せ)ちぎり/違(たが)へまじと/堅(かた)く/契(ちぎ)りしが、女房ふと/病付(やミつき)て、/終(つひ) 00089030M10にはかなくなりけるが、/実(げに)や/去(さる)ものは/日&(ひゞ)に/疎(うと)く、ある人 00089040M11のすゝめにて、いまだ/中陰(ちうゐん)のうちより、/早(はや)うつくしき/後妻(ごさい) 00089050M12を/迎(むか)へ、/偕老(かいらう)を/契(ちぎ)り/同穴(どうけつ)を/誓(ちか)ふを、/先妻(せんさい)の/亡魂(ぼうこん)、これを/聞(きく) 00089060M13より大に/嫉妬(しつと)をおこし、につくき/男(をとこ)め。わが/死(し)して/七&(しち+)も 00089070M14たゝぬうちに、/後妻(ごさい)をむかへて/連理(れんり)をちぎるうらめしさ。 00089080M15やハか/夫婦(ふうふ)とも/生置(いけおく)べきかハ。おのれやれ(三ウ)/一度(いちど)/地(ぢ)ご 00089090M16くにをもむき、/幽霊(ゆうれい)と成てしやばにあらハれ、ともになら 00089100M17くの苦しミ見せんと、/尻(しり)ひつからげ、身づくろひ、/地(ち)ごく 00089110M18をさしてぞいそぎけるが、/六道(ろくだう)のちまたくらく、/煩悩(ほんのう)の/闇(やミ) 00089120M19/幽盲(ゆうもう)の/魂(たましひ)をてらすことなく、/三途(さんづ)の/波(なミ)はげしくして、/菩提(ぼだい) 00089130M20の/心(こゝろ)を/静(しづ)むるによしなく、やよと/一声(ひとこゑ)さけぶとひとしく、 00089140¥P285 00089150¥G(二ウ・三オ) 00089160M1/峩&(がゝ)たる/巌洞(がんどう)の/中(うち)に、まつさかさまに/落入(おちいる)と/覚(おぼ)えしが、た 00089170M2ちまち/熱湯(ねつとう)の/大釜(おほがま)の/内(うち)にくるしミ、せうねつ大せうねつの 00089180M3/呵責(かしやく)をうけて、ヤレ、/助(たす)けて(四オ)たび/玉(たま)へとなげきさけ 00089190M4ぶを/聞(きく)より/早(はや)く、/午頭(こづ)/馬頭(めづ)の/両人(れうにん)、かなあミの/杓子(しやくし)を/以(もつ)て、 00089200M5ゆでたる/団子(だんご)をすくふがごとくにすくひ出して、クワツ 00089210M6+といきを/吹(ふき)かくれバ、/悪女(あくぢよ)ハやう+/心(こゝろ)つき、あたり 00089220M7きよろ+/見廻(ミまわ)す/所(ところ)を、/鉄(てつ)のくさりを/以(もつ)て、/高手(たかて)/小手(こて)にい 00089230M8ましめ、いざをれたとうと/引立(ひつたて)て、/焔魔(ゑんま)の/庁(てう)へうち/居(すへ)たり。 00089240M9/時(とき)に一百三十六/地(ち)ごくの/親方株(おやかたかぶ)、/十王(じうわう)の/頭取(とうとり)/焔羅王(ゑんらわう)。日月 00089250M10のごとき目をむき出し、/神楽舞(だいかぐら)の/獅&(しゝ)(四ウ)の/如(ごと)き/口(くち)をあ 00089260M11ひて/大声(おほごへ)あげ、おのれ/罪人(ざいにん)。/大(おほ)べらぼう大だハけ。/何用(なにやう)あ 00089270M12つて、こゝにハ/来(きた)れるや。おのれハ/娑婆(しやば)にありしとき、/五= 00089280M13戒(ご=かい)/十戒(じつかい)の/悪事(あくじ)を/犯(おか)したるによつて、かゝるくらやミへハ/来(きた) 00089290M14りしならん。/冥官(めうくハん)たち、こやつが/罪業(ざいごう)の/軽重(けいぢう)をあらため見 00089300M15て、/直(ね)だん/次第(しだい)にて、/罪(つミ)/相応(さうおう)の/地(ぢ)ごくへ/送(おく)り/遣(やる)べしとのた 00089310M16まへバ、/冥官(めうくハん)、/帳面(てうめん)を改め見るに、かく/別(べつ)の/悪事(あくじ)もなしと 00089320M17いへども、いまだ/壱人(ひとり)も/子(こ)を/生(うま)ざれば、まづ/竹林(ちくりん)じごくに 00089330M18つかハして、/竹(たけ)の/根(ね)を(五オ)ほらすべしと有けれバ、/女(をんな)ハ 00089340M19/午頭(こづ)/馬頭(めづ)を/伏(ふし)おがミ、たとへ/竹(たけ)の/根(ね)ハおろか、/松(まつ)の/根(ね)をも 00089350M20/穿(ほり)申べし。さりながら、たつた一ツのねがひがござります。 00089360¥P286 00089370¥G(八ウ・九オ) 00089380M1どふぞ+/一(いつ)たんしやバへ/御帰(おかへ)し/下(くだ)されませといふに、ゑ 00089390M2んまもさすがなさけ有て、Sナンじや。ひとたび/娑婆(しやば)へ/帰(かへ) 00089400M3りたきとハ、/金銀(きん※)にても人しれず/埋(うづ)ミおきしや△Sイヽヱ、 00089410M4/私(わたし)が/夫(をつ)と/二世(にせ)/三世(さんぜ)と/契(ちき)りおきながら、/七&(ちういん)もすまぬうちに、 00089420M5うつくしい/後妻(ごさい)をよんで、/日夜(よるもひるも)たのしんでゐられますが、 00089430M6あまり(五ウ)けたいがわるうござり/升(ます)さかひ、どふぞ/幽霊(ゆうれい) 00089440M7になつて、ふたりとも/取殺(とりころ)して/来(き)とふござり升といふに、 00089450M8/焔魔王(ゑんまわう)、大にわらい、Sヤイ/女(をんな)、よくきけ。たとへうらみ 00089460M9があるにもせよ、/惣(さう)じて/幽霊(ゆうれい)にこしらへるにハ、まづ/器量(きりやう) 00089470M10もよく、/第(だい)一かほのいろ/青白(あほしろ)く、/手足(てあし)ほそ※として、/背(せ) 00089480M11もすらりとせざれば、幽霊とハなしがたし。/其方(そのほう)ハ第一/色(いろ) 00089490M12/黒(くろ)く、かほハほうたかく/鼻(はな)ひしやげ、ひたいはつかミだし 00089500M13たるごとく、しかも/黒(くろ)ミつちや、/手足(てあし)ハ/赤(あか)(六オ)まつのご 00089510M14とく、/背(せ)ハつゝこミ、/腰(こし)ハふごじり。しつかい、かさねニ 00089520M15/似(に)たる/女(をんな)を、/幽霊(ゆうれい)となして/娑婆(しやば)へつかハするハ、/地(ぢ)ごくの 00089530M16/外聞(ぐハいぶん)なれば、/此願(このねが)ひ、けつして/叶(かな)ふべからず。そのつらに 00089540M17て幽霊の願ひとハ、/鬼(おに)どもがふんどしより、なほ/厚皮(あつかハ)なり。 00089550M18おゝかた、なんぢハいまだ/鏡(かゝミ)といふものハ、見た事がない 00089560M19と/覚(おぼ)えたり。それ+/者(もの)ども。こやつを/引(ひつ)たてゆき、じや 00089570M20うはりの/鏡(かゝミ)をミせ、其のち/竹林(ちくりん)へ/追(おひ)やれと、/大王(たいわう)大にふき 00089580¥P287 00089590L1げんにして/入(いり)給ふに、ハツと斗、/牛頭(ごづ)/馬(め)(六ウ)/頭(づ)は女を/引(ひつ) 00089600L2たて、ぜうはりのかゞミの前へをし/直(なほ)す。女ハかゞみを見 00089610L3るよりも、あるにあられぬおもひ。しやばにあるさへ見に 00089620L4くき/顔(かほ)、/地(ぢ)ごくに/落(おち)て/黒(くろ)くすぼり、これがわが/身(ミ)の/有(あり)さま 00089630L5か、あたりに人ハなき事かと、わが/身(ミ)ながらもあいそがつ 00089640L6きる。ましてや、しやバのていしゆがきで、よふまあ/今(いま)ま 00089650L7で此やうなみくるしい、此わしをかあいがつて/下(くだ)さんした。 00089660L8/心(こゝろ)の/内(うち)がはづかしい。もつたいないとハ思へども、いくた 00089670L9び思ひかへしても、(七オ)思ひきられぬ此うらミ。わしや 00089680L10/何(なん)とせう、どうせうと、/午頭(ごづ)に/取(とり)つきうらみなき、/馬頭(めづ)に 00089690L11すがりてかこちなき、ぜんご/不覚(ふかく)になきしづむ。やゝあり 00089700L12て/午頭(ごづ)/馬頭(めづ)は、Sコリヤ+女△Sアあい△Sないている 00089710L13所でない△Sじやといふて、/是(これ)がまあ、モヲシおふたりさ 00089720L14ん、/何(なん)としたらよふござんしよナア△S/何(なに)もかもいる事じ 00089730L15やないは。/幽霊(ゆうれい)と/願(ねが)ふから/事(こと)がめんどうじや。ナア/馬頭坊(めづぼう) 00089740L16Sそふじや+△Sそんなら/何(なん)と/願(ねが)ふて(七ウ)よふござん 00089750L17しよぞいなア△Sハテ、/化物(ばけもの)と/願(ねが)へ+ 00089760¥N3¥J 00089770¥Xとかく/在所(ざいしよ) 00089780L20なんと/和尚(おせう)さん。/お前(おまへ)さまがたハ、/仏書(ぶつしよ)におゐてハ/何事(なにごと)も 00089790M1/明(あか)るくていらせらるゝが、/儒者(じゆしや)が/日本(につほん)の事をしらぬやうな 00089800M2もので、/哥学(かがく)にハおくハしうはござりませぬか△おせう 00089810M3Sそれを/知(し)らひで、/坊主(ばうづ)になられるものか△Sしつてござ 00089820M4るかな。わたくしハ/此(し)ぢうハ/哥学(かがく)にこつていまするが、ア 00089830M5ノ/百人(ひやくにん)しゆで(八オ)(八ウ・九オ挿絵)さへ、よふいにハわか 00089840M6らぬものでござりますて△S百人しゆぐらいの/事(こと)がわから 00089850M7いでハ、うたよミにハまづなられぬ。ありや/子(こ)どもてもし 00089860M8つてをるわいの。まづ/心(こゝろ)見にわしが/名(な)をいふから、うたを 00089870M9つけて見さんせ△Sこれはおもしろい。サア+おつしや 00089880M10れ△和尚S/孝光天皇(かうくハうてんわう(ママ))△Sはるすぎて/夏(なつ)/来(き)にけらし/白(しろ)たへの 00089890M11Sしからバ/柿本(かきのもと)の/人(ひと)まる△S/奥山(おくやま)にもみぢふミ/分(わけ)なく/鹿(しか)の 00089900M12Sそんなら/中納言(ちうなごん)(九ウ)あつたゞ△Sあふ/事(こと)のたえてしな 00089910M13くバ中+にS/兼徳公(けんとくこう)△S/小(お)ぐら/山(やま)/岑(ミね)のもみぢバ/心(こゝろ)あら 00089920M14ば△S/恵慶(ゑけい)法師△Sわが/庵(いほ)は/都(ミやこ)の/辰巳(たつミ)しかぞすむ△Sむら 00089930M15さき/式部(しきぶ)△Sあらざらん/此世(このよ)の/外(ほか)の思ひ出に△S/右近(うこん)△ 00089940M16Sうらみわびほさぬ/袖(そで)だにあるものを△おせうSこれはゑ 00089950M17らひ。/恐入(おそれいつ)た事じや△Sそんならわたくしがいゝますから、 00089960M18/付(つけ)てごろうじませ△おせうSサア+いふたり+△S/権= 00089970M19中納言(ごん=ちうなごん)/定頼(さだより)△Sまたんせや。(十オ)こぬ人をまつほのうら 00089980M20の/夕(ゆふ)なぎに△Sコリヤどふも/叶(かな)ハぬ。ソンナラちと/早(はや)ふや 00089990¥P288 00090000L1りませう△Sサア+どふとも+△S/能因法師(のうゐんほうし)△Sさび 00090010L2しさに△S/大納言(だいなごん)/経信(つねのぶ)△Sたきの/音(おと)はたへて久しく△S/中= 00090020L3納言(ちう=なごん)/匡(まさ)ふさ△Sたち/別(わか)れ△Sさんぎ/等(ひとし)△Sわだのはら 00090030L4S/紀貫之(きのつらゆき)△S/久(ひさ)かたの△S/猿丸太夫(さるまるだゆう)△Sあし引の△S/持統(ぢとう) 00090040L5天皇△Sあきの田の△S/僧正遍昭(そうぜうへんぜう)△S/十方世界(じつほうせかい)/念仏衆生(ねんぶつしゆぜう)/摂= 00090050L6取不捨(せつ=しゆふしや)△Sどうしても、おせうにハ/叶(かな)ハぬ+(十ウ) 00090060¥N4¥J 00090070¥X/物(もの)は/八分(はちぶ) 00090080L9此ごろ/在所(ざいしよ)から/下女(げぢよ)を/奉公人(ほうこうにん)におきましたが、イヤまた、 00090090L10/田舎(いなか)ものは/至極(しごく)/正直(せうじき)ばかりでなし、すべてていねいでよい 00090100L11が、しかしあまりていねいすぎて、/万事(ばんじ)きう/用(やう)にハ/間(ま)に/合(あい) 00090110L12かねまする。アノやうにもへりくだるうまれ/付(つき)といふも、 00090120L13/又(また)すくないものじや。それにつけて/此頃(このごろ)おかしい/事(こと)があつ 00090130L14たハいの△Sどのやうな/事(こと)で(十一オ)ござりました△Sさ 00090140L15れば、こちのおくさんが/病気(べうき)でねてゐるかいほうを、かの 00090150L16/下女(げぢよ)がよるひるよふしやつた/所(ところ)が、フトかぜをひきおつて、 00090160L17こへがとんと出ぬじや。そこで/御医者(おゐしや)のござつたとき、お 00090170L18くさんが、/下女(げぢよ)がすこしすぐれませぬ。どふぞおくすりを 00090180L19つかハされて/下(くだ)されといはれたら、下女がじたいしていふ 00090190L20にハ、/中(なか)+もつたいない。あなたがたとちがいまして、 00090200M1わたくしらハいなか(十一ウ)ものでこざりますれば、わづ 00090210M2らひましても、お/薬(くすり)ハおそれおほふござり/升(ます)といふて、/遠= 00090220M3慮(ゑん=りよ)するさかい、そふでない、/病(やまひ)がこぢけると、こちもこま 00090230M4るさかいに、/薬(くすり)をのんだがよい。まづミやくを見てもらへ 00090240M5といわれたら、なんのめつさうな。わたくしどもに、どう 00090250M6してミやくがござりませうぞ 00090260¥N5¥J 00090270¥X/知(しつ)た/同士(どし) 00090280M9ずつとの/山中(さんちう)の/山(やま)なかの/大山奥(おほやまおく)の/山在所(やまざいしよ)へ、(十二オ)とんび 00090290M10が/鯛(たい)のあたまをとり/落(おと)しけるに、/村(むら)の/者(もの)ミつけ、大におど 00090300M11ろき、/早(さつ)そく/庄屋(せうや)どのへつげるに、/庄屋(しやうや)、/五人組(ごにんぐミ)たち/合(あひ)て、 00090310M12さま※/評義(へうぎ)をなし、いろ+にぎんミすれども、いつか 00090320M13う/何(なん)といふものかしれず。こりや、おてらの/和尚(おせう)さまへ/持(もつ) 00090330M14てゐて、とふて見るがよいと、みな+つれだち、かの/鯛(たい) 00090340M15のあたまを/大切(たいせつ)にして/寺(てら)へ/持行(もちゆき)、庄やS和尚さん。ひよん 00090350M16な/妙(ミやう)なものが、/村(むら)うちへ/落(おち)てござりました。(十二ウ)なん 00090360M17といふものじや、ごらふじて/下(くだ)さりませ△Sハテナ。そり 00090370M18やどんな/品(しな)じやな△S/品(しな)じやござりませぬ。/目(め)もはなもく 00090380M19ちもついてあるものでござるてや△Sそれハとんだ/事(こと)じや。 00090390M20どれ+/先(まづ)だして見せさつしやれ。/庄屋(せうや)、ふろしきをとき 00090400¥P289 00090410¥G(十四ウ・十五オ) 00090420M1て、かの/頭(あたま)をいだせバ、/和尚(おせう)ハ/手(て)にとつてうちながめ、う 00090430M2らがへしてはつく※見て、S/是(これ)ハめづらしいものが/手(て)ニ 00090440M3/入(いり)ましたハいの△S/何(なん)でござり/升(ます)ぞ△Sコリヤこれ、ま 00090450M4(十三オ)がうかたもない。ゑびすどのゝつかぶくろじや 00090460¥N6¥J 00090470¥X/抜(ぬか)ぬ太刀 00090480M7/銀(ぎん)むくの/大黒天(だいこくでん)と/銀(ぎん)ながしの大黒天と、/両人(ふたり)/久(ひさ)しく/古道具(ふるだうぐ) 00090490M8やの/見世(ミせ)にあれども、あまりにくろくすゝびて、たれもか 00090500M9ふ/人(ひと)がなかりし所に、ある日/客(きやく)きたりて、/此大黒(このだいこく)ハいくら 00090510M10じやと/取(とつ)て見れば、/重(おも)いゆへ、コリヤ、かね/細工(ざいく)と見える 00090520M11は/何(なん)のかねじや。/鋳(ゐ)ものか、ほりものかといへバ、ていしゆ 00090530M12S(十三ウ)何かぞんじませぬが、ふるいものでござります。 00090540M13/去目利(さるめきゝ)のおかたが、これはふたつとも/銀(ぎん)むくじやといはれ 00090550M14ました。/安(やす)う/買(かひ)ましたゆゑ、おまけ申ませう。おかいなされ 00090560M15て下さりませ△S何ぼじやナ△Sサア、ずつとまけて/壱対(いつつい) 00090570M16で弐/歩弐朱(ふにしゆ)にさし/上(あげ)ませふ△Sソリヤえらう/高(たか)いナ△S/高(たか) 00090580M17ふハござりませぬ。/銀(ぎん)むくなりや/壱〆匁(いつくハんめ)や弐十/両(れう)のものハ 00090590M18ござりますといふうち、/買人(かいて)、(十四オ)(十四ウ・十五オ挿絵)そ 00090600M19つと/指(ゆび)さきにて/銀(ぎん)ながしの大黒をこすりミれバ、/銀(ぎん)ながし 00090610M20なれば、客Sイヤ+、まづ/見合(ミあハ)せませう△Sなぜでござ 00090620¥P290 00090630L1ります。高ふハござり/升(ませ)ぬが△Sイヤ、/高(たか)ふもあるまいが、 00090640L2/土(つち)やらかねやら、せうがわからぬ。いよ+/銀(ぎん)むくなら、 00090650L3/三歩(さんぷ)が/壱両(いちれう)でもかハふが、まづみがいて見ねばわからんじ 00090660L4やないか△S/御尤(ごもつとも)でハござり升が、かやうなものハさび/道= 00090670L5具(どう=ぐ)と同じ/事(こと)で、/古(ふる)いがしんかうがござり升れバ、みがき/升(ます) 00090680L6/事(こと)(十五ウ)ハいたしにくうござり/升(ます)といへば、/客(きやく)ハまた/其= 00090690L7内(その=うち)にとかへる。/跡(あと)にて、/銀(ぎん)むくの/大黒天(だいこくでん)、/銀(ぎん)ながしの大黒 00090700L8にむかい、/大(おほひ)に/恨(うら)ミをいふは、銀むくSいつたいお身がわ 00090710L9るいから、こちらまでも/買(か)ハれぞこなふた△銀ながしSソリ 00090720L10ヤ又、/何(なん)でこちらがわるいのじや△銀むくSサイノ、一た 00090730L11いそちや/銀(きん)でもないくせに、こちらがやうに/銀(ぎん)むくとかた 00090740L12をならべているさかい、人が見ぞこなふて、/買(か)ふこゝろの 00090750L13ある/者(もの)もかハずにいきをるのじや。御(十六オ)/身(ミ)とならん 00090760L14でゐるこちらまでがめいわくといふものじや。あほらしい。 00090770L15此やうな/古道具(ふるだうぐ)やの/店(ミせ)ばんして、三年の五ねんのと/絶食(ぜつしよく)し、 00090780L16たれが/一度(いちど)もふたまた一本、/塩(しほ)一/合(がう)くふた/事(こと)もないめにあ 00090790L17ふといふも、そちらがやうなものとならんでゐるからじや。 00090800L18おれひとりならバ、とふに/小豆(あづき)めしで、きのへ/講中(かうちう)に御ち 00090810L19さうされてゐるものを。アヽうき/世(よ)といふものは、ぜひに 00090820L20/及(およ)ばぬものじやと/大述懐(おほしゆつくハい)に、/銀(ぎん)(十六ウ)ながし大にいか 00090830M1り、Sだまりめされ。ソリヤわが/罪(つミ)を人にあぶせるといふ 00090840M2ものじや。たとへ/古道具(ふるだうく)やハおろか、/紙屑(かミくず)かごの/底(そこ)にゐる 00090850M3とも、/身(ミ)に/徳(とく)さへそなハりあれば、/見出(ミいだ)す/人(ひと)ハ見だすわい 00090860M4の。それにかりそめにも、/銀(ぎん)むく+と/有(あり)がたさふにじま 00090870M5んして、こちらがそバにゐるが不/仕合(しあハせ)などゝハ、ちとあご 00090880M6がすぎるぞ△Sイヽヤすぎぬ。そちがにせ物ゆへに、まき 00090890M7ぞへになるのじや△Sまきぞへになるの(十七オ)ハ、そち 00090900M8がからだもにせものじやあろ△Sなんじや、にせものじや。 00090910M9ハン、はゞかりながら/正真(せうじん)/正(せう)めい、まじりなし。すいどの 00090920M10/水(ミづ)で/生湯(うぶゆ)をつかつた/銀(ぎん)むくの/大(たい)こくさまだわへ。/上(かミ)がたへ 00090930M11/来(き)ているから、うぬらがやうな/銀(ぎん)ながしのにせ大こくとつ 00090940M12き/合(あふ)けれど、/内(うち)にいれば、/銀(ぎん)の/茶(ちや)がまで/銀箔(ぎんはく)おきの/一(ひと)つぶ 00090950M13よりのおめしをくつているわへ△Sあほうつくな。おどれ 00090960M14もにせじや+△Sくそでもくらへ。にせか、(十七ウ)に 00090970M15せでねへかハ、/此(この)/大(だい)さんの/御身(おミ)へさハつて見やアがれ。こ 00090980M16がね/白(しろ)がねの/音(おと)がするぞよ。コレ/太平(たいへい)らくじやアねへが、 00090990M17うてばうつほど手のでる男だ。おいろハちと/黒(くろ)くてもナ、 00091000M18心のうちハ/清浄(せう※)/潔白(けつはく)だぞ。たハ事ぬかすと、/横(よこ)づほうをコ 00091010M19ヲするぜへと、/小槌(こつち)を/振上(ふりあげ)ケ、あたまをづきんの/上(うへ)からく 00091020M20らハすと、/銀(きん)ながし、こらへかねて、同しく/小槌(こづち)を/左(ひだ)リ/手(て) 00091030¥P291 00091040L1に/持(もち)かへ、/右(ミき)のはだぬぐと、/下(した)ハ/赤銅(あかがね) 00091050¥Y1落噺顋掛鎖巻四終(十八オ) 00091060G1△〔巻四挿絵中の詞書〕 00091070G2Sきちこうや。てめへハごうてきにうたをあげたナ。/新(しん)まつのへ 00091080G3うばんハめつそふだぜへ;Sゆやぢやア、とかく/長唄(ながうた)でなけりや 00091090G4アあかハおちねへ。/義太(ぎだ)(三ウ)/夫(ゆふ)の/乗地(のりぢ)なんぞじやア、つらのか 00091100G5わをすりむくヨ。アヽいゝゆだ。せんとう人ころさずとハ、この 00091110G6事だ(三オ) 00091120G1ふミぬかばぢこくなるらむしなのなる/諏訪(すわ)の/氷(こほり)の/冬(ふゆ)のぜうばり 00091130G2△三千麿(九オ) 00091140G1おせういふ。Sこれハむかし/神代(かミよ)のどうぐて、/在家(ざいけ)の/衆(しゆ)のしらぬ 00091150G2/物(もの)じや(十四ウ);/庄(せう)やいわく、Sわしがかんがへてミ申たが、こ 00091160G3りやもくぎよのわれたのじやないかナ;ひとりのおやぢがいふ。 00091170G4Sこちのせうやどのハ、よくこじつけをいふ人じや。せんども、 00091180G5/而(しかうして)とかいふ/字(じ)を、まぐわといふじぢやといふて、じゆしやどの 00091190G6ニわらわれくさつた(十五オ) 00091200¥T1/落噺顋掛鎖(をとしはなしあごのかきがね)巻五 00091210¥A洛東△△和来山人作 00091220¥N1¥J 00091230¥X/商売(せうばい)ハ/商売(せうばい) 00091240M7ことし/大角力(おほずまふ)ありとて、/二条(にでう)の/川原(かハら)にて/小屋(こや)をかけ、/諸国(しよこく) 00091250M8より/力者(りきしや)あつまりけるが、/勿論(もちろん)/晴天(せいてん)十日の/興行(かうぎやう)、/来(きた)る二日 00091260M9/吉日(きちにち)にして、/東西(とうざい)に/部屋(へや)をわかち、/行司(げうじ)/木村(きむら)/何(なに)がし/軍配(ぐんはい)を 00091270M10とりて、うや+しく/土俵(どひやう)の/上(うへ)にたち/出(いで)、/四本柱(しほんばしら)/天(てん)まく等 00091280M11のいわれを(一オ)のべ、ならびにすまひの/古実(こじつ)等をものが 00091290M12たり、/左(ひだ)りの/方(かた)によりてひかへけるに、/呼出(よびだ)しの/奴(やつこ)、/扇(あふき)を 00091300M13ひろげて/東西(とうざい)よりよび/入(いる)れば、げにや、ばせをの/句(く)のごと 00091310M14く、/秋(あき)のからにしきのごとくに、/各(おの+)おもひ+のまわしを 00091320M15/〆(しめ)て、/土俵入(どひやういり)のはでやかなること、ものにたとへていふ 00091330M16べくもあらず。こゝに京三条のほとりに、ごふく/現銀見世(げんぎんミせ) 00091340M17をあづかりし/番頭(ばんとう)、/元来(ぐハんらい)すもふずきにて、/尤(もつとも)/力(ちから)も人にこ 00091350M18えたりければ、/一生(いつしやう)の/思(おも)ひ/出(で)に(一ウ)かゝる大ずまふの/中(なか) 00091360M19へとびこミ、たとへなげころさるとても/一番(いちばん)/取(とつ)て見たしと、 00091370M20/兼(かね)ておもひゐたりしが、/此日(このひ)も/早天(さうてん)より/見物(けんぶつ)にきたりしに、 00091380¥P292 00091390¥G(二ウ・三オ) 00091400M1/初(しよ)くち/中入(なかいり)大ぜき等すミてのゝち、しかるべき/角力(すもふ)とりの 00091410M2/出(いで)たるを見て、ひそかに/仕(し)たくなして/待(まち)かけ、/呼出(よびだ)し/扇(あふぎ)を 00091420M3/上(あ)げ、/西(にし)はよしの山+といふよりはやく、/土俵(どひやう)へかけ/上(あが) 00091430M4り、/飛出(とびいり)なりとて、よしの山と/組合(くミあひ)たり。/吉野山(よしのやま)ハこがら 00091440M5なれどもすまふとり也。(二オ)(二ウ・三オ挿絵)こなたハ/大= 00091450M6男(おほ=をとこ)なれども/素人(しろと)なり。/組合(くミあひ)たち合のもやう、見るかげなけ 00091460M7れバ、/見物(けんぶつ)ハミな+/声(こゑ)たてゝ、Sおけやい+と/声(こゑ)かく 00091470M8れども、さらに/聞入(きゝいれ)ず。/暫(しば)しもみ/合(あい)いたりしが、吉野山は 00091480M9かの/男(をとこ)の/左(ひだ)りをさし、ヱイ+とこえを/出(いだ)し、/土俵(どひやう)ぎハま 00091490M10でおしてゆき、/手(て)がるにつき/出(いだ)さんとするときに、かの男 00091500M11ハ、アツト/一声(ひとこゑ)さけびながら、/身(ミ)をひねれば、よしの山は 00091510M12おのがちからにはづミをうち、土俵より/一間(いつけん)バかりむかふ 00091520M13へ(三ウ)どふどころぶ。/見物(けんぶつ)ハおもハずしらず、いちどに 00091530M14どつと/声(こへ)をあげ、ヤンヤ+とほめけれバ、/行司(げうじ)ハうちハ 00091540M15を/上(あげ)たれども、かの/男(をとこ)が/名(な)のりなけれバ、Sかちずまふ/現= 00091550M16銀(げん=ぎん)かけ/直(ね)なしトいへば、見物Sどふりでまけおらなんだ 00091560¥N2¥J 00091570¥X/夜(よる)の/梅(うめ) 00091580M19/上(せう)かんや六兵衛、/名代(なだい)/名(めい)ぶつあんばいよし。おでん/上(ぜう)かん 00091590M20うまい+と、/夜(よ)ふけてうりあるき、ある(四オ)/御屋敷(おやしき)の 00091600¥P293 00091610¥G(八ウ・九オ) 00091620M1/塀(へい)のそバに/荷(に)をおろしゐたるに、其/高塀(たかへい)よりぐつすりとふ 00091630M2す/白刄(しらハ)のひかり。六兵へハきつと見て、/我袖(わかそで)なし/羽織(ばおり)をぬ 00091640M3ぎて、/行燈(あんだう)にふたをして、てんひん/棒(ぼう)を/小(こ)わきにかまへて 00091650M4うかゝふうち、/塀(へい)を/切(きり)やぶりて/壱人(ひとり)の/盗賊(とうぞく)、ぬつと/出(いで)てあ 00091660M5たりをうかゞひ、/懐中(くハいちう)より/何(なに)か/一巻(いつくハん)をとり/出(いだ)し、Sまんま 00091670M6と/宝蔵(ほうざう)へしのび入て、うばい取たる此一巻。これさへあれ 00091680M7バ/大望成就(たいもうじやうじゆ)。チヱイ(四ウ)かたじけないとゆかふとするを、 00091690M8六兵へハずつとむかふへ/立(たち)ふさがる。/盗賊(とうぞく)は/袖(そで)にて/皃(かほ)をか 00091700M9くし、こちらへ/戻(もど)らんとする/刀(かたな)の/小(こ)じりをしつかととらへ、 00091710M10Sうバたまのやミハあやなし/黒仕(くろじ)たて、/色(いろ)こそ見えね/皃(かほ)を 00091720M11かくし、/此御屋敷(このをんやしき)へしのび/入(いり)、/盗(ぬす)ミくひするどぶねずミ、 00091730M12おゝこのはしをくらハぬうち、/其一巻(そのいつくハん)を/置(おい)てゆけ△Sこ 00091740M13しやくなやつ。さしへだてして/後悔(こうくハい)すな。そこのけ△Sわ 00091750M14たせと、両人たちまハりあつて、トヾ/盗賊(とうぞく)ハ(五オ)六兵へ 00091760M15をきう/所(しよ)のあて/身(ミ)。ウンと六兵へハ/倒(たふ)るゝを、盗賊ハとく 00091770M16と見て、Sへヽもろいやつ。ナンノ/出(で)ずともよい/所(ところ)と/行(ゆ)か 00091780M17んとせしが、/上(せう)かんを見つけ、これ/幸(さいハ)ひと、かん/酒(ざけ)を/引(ひつ)か 00091790M18け、でんがくあんばいよし、したゝかぞんぶんにのミくひ 00091800M19し、/其上(そのうへ)うりだめの/銭(ぜに)までも/引(ひつ)さらへて、ゆう+と/立帰(たちかへ) 00091810M20れば、此とき六兵へは/息(いき)ふきかへし、/荷物(にもつ)のそバへはしり 00091820¥P294 00091830L1/行(ゆき)、むかふをきつと見て、Sのミにがしたか。チヱヽざん 00091840L2ねんナ(五ウ) 00091850¥N3¥J 00091860¥Xこれは/尤(もつとも) 00091870L5/所(ところ)ハ/新宮川町(しんミやがハてう)の/新道(しんミち)、/間口(まくち)弐間に/奥行(おくゆき)五間半、/表(おもて)にハ/一間= 00091880L6半(いつけん=はん)のゑいちやこうしに、/三尺(さんじやく)の/簀戸(すど)、/尤(もつとも)べにがらぬりのと 00091890L7き/上(あ)ゲにて、/開(ひら)きくゞりならばなる/子(こ)なれども、/明(あ)き/戸(と)ゆ 00091900L8ゑに中ざる/附(つき)なり。三尺のけこミの/口(くち)へ、/下駄入(げたいれ)をけんど 00091910L9んぶたにて/取(とり)つけ、/造作(ざうさく)は/旦那(だんな)のこのミにて、/紅大津(ベにおほつ)のか 00091920L10べにはうきどめのこしばりを、いんきんどんすのから/紙(かミ)に 00091930L11て(六オ)二尺/高(たか)にはり、/床(とこ)はてうのめのしをじのおとしが 00091940L12きに、同じく/置床(おきどこ)。此上にあさがほの/木(こ)ふり/立(だち)を、/南京(なんきん)の 00091950L13はちにうへて、/尤(もつとも)わりだけにてからみの/杖(つえ)を/立(たて)たり。はし 00091960L14らにハ、かものおやぢが/書置(かきおき)たる/狂歌(きやうか)のたんざくをかけ、 00091970L15/次(つぎ)の/間(ま)の入口にハ、しやがたら/絵(ゑ)のさつた/峠(とふげ)の/富士(ふじ)のがく 00091980L16をかけたり。きちん/宿(やど)のふとんの/小(こ)もんのごとき、大がら 00091990L17くさのさらし/暖簾(のれん)を四尺バかりの/長(なが)さにして、/三布(ミの)(六ウ) 00092000L18にさげ、/大和(やまと)ぶろの/仕込(しこミ)しはこ/火(ひ)ばち有。すりものにては 00092010L19りたるじよたんをかけたり。其かたハらに/壱〆(いつくハん)ばかりのあ 00092020L20ミ/戸棚(とだな)其外、/勝手道具(かつてだうぐ)ハあげてかぞへがたし。いかほどあ 00092030M1たじけなき/古道具(ふるどうぐ)やにふませても、きやうだいから/鍋釜(なべかま)ま 00092040M2で入れては壱両弐歩弐朱と、/銭(ぜに)が三百六拾四文ほどのもの 00092050M3也。こゝに/年(とし)の/頃(ころ)二十八九の/美人(びじん)といへば御たいさうに/聞(きこ) 00092060M4えれど、十人なミにすこしかけたる(七オ)女。ちよつと見 00092070M5るとびつくりするやうな/代呂物(しろもの)なれども、よく+/近(ちか)ふよ 00092080M6つて/御拝見(ごはいけん)あるときハ、/白(しろ)あバたにして、/笑(わら)ふと/歯(は)ぐきの 00092090M7/出(で)る女。三条室町あたりの/商人(あきんど)の/隠居(いんきよ)、其かミ/祇園新地(ぎをんしんち)に 00092100M8てのなじミより、見すてまいといふせりふの、こりかたまり 00092110M9が一つの/世話(せわ)となり、/三日(ミつか)おきか/四日(よつか)置ぐらゐに、安井の 00092120M10/金毘羅(こんひら)へ/心願(しんぐハん)といつハりて、こゝに/来(く)る。其/隣(となり)ハ/津田(つた)/熊右= 00092130M11衛門(くま=ゑもん)といふ/九州(きうしう)がたの/浪人(らうにん)にて/劔術(けんじゆつ)。(七ウ)/左(ひだ)りどなりハ 00092140M12/大七(だいしち)とて、/手伝(てつたい)のかしらかぶ。/此筋(このすぢ)の/顔役(かほやく)にして、/内(うち)に/子= 00092150M13分(こ=ぶん)のあら/男(をとこ)、七八人も/居候(ゐさふらふ)にて、なに/事(こと)にもさつばつなれ 00092160M14バ、この/妾宅(せうたく)がふろにでも/行(ゆく)と、/門口(かとぐち)に/出(いで)て、いつにてもわ 00092170M15る/口(くち)どく口。熊右衛門が/家(いへ)にも、/未(ミ)じゆくの/弟子(でし)ども/入来(いりき) 00092180M16て、めんこてあてゝ、まいにちのけいこ。ドタリクサリバ 00092190M17タ+クワタ+。かべもはしらもたまらバこそ。/右(ミぎ)と/左(ひだ) 00092200M18りのそふどうわる口。是にハかの/妾宅(せうたく)も大によわり、(八オ) 00092210M19(八ウ・九オ挿絵)たび+/隠居(いんきよ)にやどがへの/事(こと)をいぢれども、 00092220M20/今(いま)/暫(しハ)らくしんぼうせい。ひつけう/両(れう)どなりとも/身(ミ)がるのも 00092230¥P295 00092240L1のなれバ、/長(なが)ふハ/居(ゐ)まい。もしいつまでもゐるやうすなれ 00092250L2ば、二三両の/金(かね)さへやりや、いつでも/宿(やど)がへハするさかい 00092260L3に、マヽ/今(いま)しばらくしんぼうしやといふて、/宿(やど)がへをまち 00092270L4ゐたるに、/此事(このこと)いかゞしてか/両(れう)どなりへきこへけん、ひそ 00092280L5かに/談合(だんこう)し、かの/隠居(いんきよ)が/来(き)たる日に、大七、となりへ行、 00092290L6大七Sハイ、御めんくださりませ△いんきよSヤ、(九ウ)とな 00092300L7りの/大七(だいしち)どの。よふござつた。なんと思ふて△Sイヤ、わ 00092310L8たくしも/久&(ひさ※)御となりにをりましたが、/近日(きんじつ)やどがへをい 00092320L9たしまするによつて、おいとま/乞(ごひ)かた※まゐりました 00092330L10Sソレハのこり/多(おほ)い/事(こと)じや。シテ、いつ/頃(ごろ)やどがへしやし 00092340L11やる△Sハイ、そこでござり升。いゑもかつてござり/升(ます)け 00092350L12れども、/丸印(まるじるし)のくめんがわるふござり/升(ます)るよつて、まあ 00092360L13+やはりおとなりにをりますじや△Sソレハ/何(なに)ほどの/事(こと) 00092370L14じやぞ△Sイヤ、よけでもござりませぬ。わ(十オ)づか弐 00092380L15両ほどあれバよござり升△Sかしてしんぜうか△Sソレハ 00092390L16ありがたふござりますと、なんなく二両をひつたくり/出(いで)て 00092400L17/行(ゆく)。/其(その)あとへ、Sイヤ、御めん/下(くだ)されい△いんきよSどな 00092410L18たじや△Sイヤ、/御隣家(ごりんか)の/津田(つだ)/熊右衛門(くまゑもん)でござり升△Sヤ 00092420L19ア、是ハおめづらしい。まづ※これへSイヤ、心ぜき 00092430L20ますれバ、やはりこのまゝ。/拙者事(せつしやこと)も、よん所なきかたより 00092440M1すゝめにあづかり、/近&(きん+)/宅(たく)がへ仕るが、それ故/鳥渡(ちよと)ごあい 00092450M2さつに/参上(さんぜう)いたしたSコレハ又(十ウ)ぞんじがけもない。 00092460M3さて+/御残念(ござんねん)/千万(せんばん)。して、いつ頃/御引越(おひきこし)なされ升△Sさ 00092470M4れバでござる。/支度(したく)ハとくいたし/置(おき)たれども、/先方(せんはう)よりい 00092480M5まだ/支度金(したくきん)がまゐり申さず。門人どもへ/頼置(たのミおき)ましたれども、 00092490M6/今以(いまもつて)/調達(てうだつ)いたし/呉(くれ)ませず。かく御いとま/乞(ごひ)ハ申ものゝ、 00092500M7其金子/不調達(ふてうだつ)に/於(おゐ)てハ、やハり/御隣家(ごりんか)に/足(あし)をとゞめ申さね 00092510M8バならぬしぎ。さて+/赤面(せきめん)のぎで/厶(ござ)るてや△Sソレハ御 00092520M9こゝろづかひでござりませうが、何程(十一オ)の/金高(きんたか)でご 00092530M10ざりますぞ。わづかの/事(こと)ならバ、ぶしつけながら/御取(おとり)かへ 00092540M11申ませうが△S/御心(ごしん)せつ、まづ/以(もつ)てかたじけなし。/支度(したく)と 00092550M12申/所(ところ)が、わづか二両/御(ご)ざれハ/万事(ばんじ)とゝのひまする△Sさや 00092560M13うならバ、おとりかへ申ませう△Sしかし/何(なに)ともはや、/御(お) 00092570M14きのどくにござるて△Sなんの+、いつなりとも/御都合(ごつがう) 00092580M15のせつ、おかへしなされませと、弐両の金子をさし/出(いだ)せバ、 00092590M16/熊右衛門(くまゑもん)ハ大に/悦(よろこ)び、/明日(めうにち)ハさつそく/引越(ひきこし)申べしとたち/帰(かへ) 00092600M17る。それ£(十一ウ)/両(れう)どなりハ、ばた+どさ+と一度 00092610M18のさハぎ。隠居ハ/妾(てかけ)とさゝやき/合(あひ)て大に/悦(よろこ)び、やがて隠居 00092620M19ハかへりがけに、Sヲヽ大七どの。はや/御(お)とりかたづけか 00092630M20△なSイヤモ、おかげさまで、さつそく引こしてござり/升(ます) 00092640¥P296 00092650¥G(十四ウ・十五オ) 00092660M1Sマア+めでたい+。そして、どこへ/家(や)がへさつしや 00092670M2るのじや△Sハイ+。わたくしハ/熊右衛門(くまゑもん)さまの/処(ところ)へ/宿(やど) 00092680M3がへをいたしまして、熊右衛門さまハわたくしが/跡(あと)へ/御出(おいで) 00092690M4なされ升(十二オ) 00092700¥N4¥J 00092710¥X/其筈(そのはづ)+ 00092720M7/嶋原(しまバら)はしまバらほどの/風流(ふうりう)をとゞめ、/傾城(けいせい)は松の/位(くらゐ)をそな 00092730M8へ、/詩哥(しいか)/連俳(れんはい)はもとより、/書画(しよくハ)の道さへたしなミて、たと 00092740M9へいかなる人に/対(たい)しても/少(すこ)しも/臆(おく)せず、/優美(ゆうび)なるハ、げに 00092750M10も/廓(くるわ)の/最上(さいじやう)にして、/遊宴(ゆうえん)なせるならバ/嶋原(しまバら)に/上(うへ)こゆるなし 00092760M11といふに、/新地(しんち)びゐきの人、Sイヽヤ、西ハ/何事(なにごと)も/流行(りうこう)に 00092770M12/後(おく)れ、/古風(こふう)で/不粋(ぶすい)じや。どふしても/粋中(すいちう)の粋といふハ(十 00092780M13二ウ)/新地(しんち)のげいこらにとゞめさしたり。/先(まづ)/第一(だいいち)、/風俗(ふうぞく)がど 00092790M14のやうなものが/来(き)て見ても、/目(め)のつくハ/川東(かハひがし)のやうだいじ 00092800M15や。そのせうこといふハ、/西(にし)へいてハとんとゐんきになつ 00092810M16て、いふことさへも/取(とり)つきばがなふて、/野暮(やぼ)らしいじやと 00092820M17いへば、Sハテ、そふじやないわいの。/道具(だうぐ)でさへも、か 00092830M18た/地(ぢ)ぬのぎせにして/高蒔絵(たかまきゑ)したは、どこともなしによい/所(ところ) 00092840M19が見えるが、ばつとしてうつくしうこしらへても、/木地細= 00092850M20工(きぢざい=く)は/道具(だうぐ)にならぬ。よい(十三オ)/道具(だうぐ)ハ/手重(ておも)くて、まハり 00092860¥P297 00092870L1/遠(とふ)い/所(とこ)に、いふにいはれぬ/妙(ミやう)があるが、/当世(たうせい)/出来(でき)るものは、 00092880L2/早手廻(はやてまハ)してよけれど、きつとした/所(とこ)の/手道具(てだうぐ)にハ見ざめが 00092890L3してなりかねる。/何(なに)もろんずるにハ/及(およ)ばぬ。くるわの/傾城(けいせい) 00092900L4たちハ、ちよつとしても/書画(しよぐハ)などをすいて、はなし/相手(あいて)に 00092910L5なるか、/新地(しんち)へも/久(ひさ)しういたが、つひにあを/表紙(びやうし)/一(いつ)さつよ 00092920L6んだ/女(をんな)ハつきあハぬわいの。いつぞや、にしへいたとき、 00092930L7さる/太夫(たゆう)が、/文(ぶん)/徴明(てうめい)の(十三ウ)/書(しよ)と/子昂(すごう)の/画讃(くハさん)のはなしし 00092940L8たが、いやも、恐れたものじや。/新地(しんち)のはなしハ/当世(たうせい)の/画= 00092950L9師(ゑ=し)や、せいさい/月僊(げつせん)ぐらゐのとこじや△Sそふでないわい。 00092960L10/此間(このあひた)さるげいこに/才(さい)ぶつがあるじや△Sムヽ、ソリヤちと 00092970L11/文才(もんさい)があるか。がてんがゆかぬ△Sゆくのゆかぬじやな 00092980L12い。/蜀山人(しよくさんじん)のかいたれんを見て、/東坡(とうぱ)によく/似(に)た/書(しよ)じやと 00092990L13いふたわい△Sハテナ。それハすこしはなせるわい△Sサ 00093000L14レバ、そふしてミれバ、/新地(しんち)もまんざらでハないせ(十四 00093010L15オ)(十四ウ・十五オ挿絵)Sそのげいこはなんといふものしや。 00093020L16よんで見たい△S/井筒(いづゝ)の/若江(わかえ)といふものじや△Sよし+ 00093030L17と、さつそくある/茶(ちや)やにゆき、/若江(わかえ)をよひ、さま※/風流(ふうりう) 00093040L18のものがたりをするに、若江ハたゞさよかいな+とばか 00093050L19りにて、なにもいはず。こいつ、/腹(はら)のあるやつにて、/初(しよ)た 00093060L20いめんゆゑ、こちのはらをゑぐる也とおもひ、客Sナニわ 00093070M1か/江(え)さん。おまへハそのやうに/初心(しよしん)ぶつていなさるが、お 00093080M2まへか/才子(さいし)をきいて、わざ+と(十五ウ)/尋(たづ)ねてこゝに/来(く) 00093090M3る人じや。たすきはづして、はなしておくれ。きりやうの 00093100M4ある/人(ひと)ハ/才(さい)をかくし、/能(のう)あるたかハ/爪(つめ)をかくすと/承(うけたま)ハるが、 00093110M5すゑだのもしい御/心(こゝろ)ざし。/誠(まこと)に/恐入(おそれいつ)たる/御事(をんこと)、なか+わ 00093120M6れらづれが、さけのあひてにハならぬ/都(ミやこ)の/八重(やえ)ざくらじや 00093130M7げいこSきついおいためじや。ゑいかげんにおなぶりいな 00093140M8ア△Sいためるじやない。/真(しん)じつじや。いつの/事(こと)かハしら 00093150M9んが、おまへ、/蜀山人(しよくさんじん)の/書(しよ)を見て、(十六オ)/東坡(とうぱ)によふに 00093160M10た/書(しよ)じやといふてじやあつたけなナ△Sさいナ。そりや、 00093170M11くすりゆの/丁(てう)のおたきさんのとこの/掛(かけ)ものたらに/書(かい)てあつ 00093180M12た/字(じ)の事じやないかヱ△Sさふじや+。おまへ、マアど 00093190M13うして、/蜀山人(しよくさんじん)が/東坡(とうぱ)の/書躰(しよてい)を/書(かい)たものじやと見てじやあ 00093200M14つた△Sそりや/外(ほか)でもないわいな。ソレ/鳥辺山(とりべやま)のはかしよ 00093210M15にあつた/字(じ)によふ似たさかいに 00093220¥N5¥J 00093230¥X/御代(ミよ)の/恵(めぐミ)(十六ウ) 00093240M18/三国一(さんこくいち)のよめ/取(とり)すました。シヤ+ンノシヤンと、/手(て)を 00093250M19うちおさめたる/祝言(しうげん)の/夜(よ)、/舅(しうと)/姑(しうとめ)は/座(ざ)をひらき、/聟(むこ)よめ 00093260M20ハ/初(にゐ)まくらの/屏風(べうぶ)もひそまれバ、/家内(かない)も/今宵(こよひ)ハ/大抵(たいてい)にかた 00093270¥P298 00093280L1よせ、ミな+/臥処(ふしど)に入たるが、おもてに/壱人(ひとり)の/盗(とう)ぞく、 00093290L2/宵(よひ)より/祝言(しうげん)のくたぶれをかんがへ、/袖(そで)かべを/切(きり)ぬき、ずつ 00093300L3と/手(て)を/入(いれ)て、うちをさぐる/処(ところ)に、/番頭(ばんとう)これを見つけ、とさ 00093310L4んを/其手(そのて)にそつとのせるに、/盗(とう)ぞくおどろき、手を/引(ひき)ミれ 00093320L5バ(十七オ)さかづき也。/盗(とう)ぞく、ふしぎに思ひ、/又(また)/手(て)を/入(いる) 00093330L6れば、こんどハてうしなり。さてハ/今宵(こよひ)のいはひに/酒(さけ)をく 00093340L7れる也。じぶんハよしと、/又(また)/手(て)を/入(いる)れバ、/吸(すい)ものその/外(ほか)い 00093350L8ろ+のさかな也。/盗(とう)ぞく大に/悦(よろこ)び、/引(ひき)うけ+/呑(のむ)ほどに、 00093360L9うちより/番頭(ばんとう)、/小声(こごへ)にて、Sはなハだそまつ、よろしくお 00093370L10あがり。御てうしハいかゞとたづぬれバ、盗ぞくもよほど 00093380L11/酩酊(めいてい)して、/丁寧(ていねい)にひざまづき、同じく/小声(こごへ)にて、Sぞんじ 00093390L12よらざるおいはゐ、/千万(せんばん)(十七ウ)かたじけなふぞんじます。 00093400L13もはや/数(す)こん/頂戴(てうだい)いたしたれば、/目出(めで)たくそこ/元(もと)おをさめ 00093410L14くだされと、さかづきを/番頭(ばんとう)へかへし、トヲ/扇(おふぎ)をかまへ、 00093420L15@小声△|にて、@ぬす人S四かいなミしづかにて 00093430¥Y1落咄顋掛鎖巻之五大尾(十八オ) 00093440G1△〔巻五挿絵中の詞書〕 00093450G2Sしもふた。またやられた。こふいふてハまけをしミのやうじや 00093460G3が、まけぬ+トいふわけハ、/此本(このほん)をよこのほうからミると、こ 00093470G4ちがかちじや。あいつを/天井(てんせう)へほかしあげたのじや。ナンと/御見= 00093480G5物(こけん=ふつ)がた、えらい/力(りき)じやあろまいか;Sヤアこれわいサのサ。ミさ 00093490G6んせ。この(二ウ)くらいなやつハ、おちやのこだ;/行司(けうじ)Sわあい、 00093500G7まけた+のおわかしさまヨ、へたなさかいでまたまけた。ヤア 00093510G8とこナア、よをいやサア。サヽ、なんのこツちやいナア(三オ) 00093520G1S/香(か)をとめて/闇(やミ)をのぞけバ/花(はな)と/鼻(はな)(八ウ)/身(ミ)にしむるほどうち/匂(にほ)ふ 00093530G2/梅(うめ)(九オ) 00093540G1Sとミはん、いつこおとふ※しいナ。きついおミかぎりしや/有(あつ) 00093550G2たナ;S此/間(あいだ)ハめツそふにいそがしいから、/戸(と)ぼぐちへも/出(で)ずだ 00093560G3;Sそうかいナ。/狂哥(けうか)がえらふはやるさかい、チトけいこしてお 00093570G4くれんかいナ;S/何(なん)ぞよんでミせナ。/直(なほ)し(十四ウ)やせう。この 00093580G5ぢうよみやした;ふミこミしゆきのいてミちうらとけてかた 00093590G6+ぬける/鹿(しか)の皮たび(十五オ) 00093600¥P299 00093610¥Q 00093620L3花洛△@和来山人作|有楽斎画@ 00093630L5文政九△△△△△△河内屋茂兵衛 00093640L6△△△△△浪花△河内屋長兵衛 00093650L7丙戌稔△書△△△△秋田屋良助 00093660L8△△△△△東武△大阪屋茂吉 00093670L9春王新△肆△尾陽△永楽屋東四郎 00093680L10△△△△△△△△△美濃屋清七 00093690L11鐫発兌△△△京都△山城屋佐兵衛 00093700L12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(十八ウ) 00093710¥K〔蔵版小説目録@京三条通|麸屋町角@山城屋佐兵衛△三丁省略〕 00093720¥P300 00093730¥U噺本大系△第十五巻 00093740¥T/七福神落噺(しちふくじんおとしばなし)〔題簽〕 00093750¥G 00093760¥Y 00093770L18文政十二年刊 00093780L19晞幹堂主人序 00093790L20中本一冊 00093800¥Y序 00093810M3/夫(それ)、/落(おと)しばなしは、/日&(ひゞ)に/流行(りうかう)のおかしみにして、かのお 00093820M4つこちの/噺(はなし)にあらねど、/妻(つま)乞ふ/鹿(しか)野/武(ぶ)左衛門この/方(かた)、/古人(こじん) 00093830M5の/口調(くちやう)をうつし、ふるきを/以(もつ)てあら/玉(たま)の、/春(はる)の/初(はじめ)のおわら 00093840M6ひ/種(ぐさ)に、/七福神(しちふくじん)を/題(だい)にとり、/素(もと)より/流行(りうかう)にハ/後(おく)れたれども、 00093850M7/唯(たゞ)/芽出(めで)たいを/取得(とりえ)にして、/七福神(しちふくじん)/落(おと)し/噺(ばなし)と/名(な)づくるのミ 00093860M10△△△△△△△△△△△△晞幹堂主人誌G 00093870M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(一オ) 00093880¥P301 00093890G1誰やらか姿に似たり今朝の春△△芭蕉 00093900¥G(一ウ・二オ) 00093910¥N1¥J 00093920¥X/恵比須(ゑびす) 00093930M3/七福神(しちふくじん)/寄合(よりあひ)給ひ、ゑびすさまのたまうやう、/毎年(まいねん)+/初(はつ)は 00093940M4るから/宝船(たからぶね)に/乗(のつ)て、/遊山(ゆさん)がましく/見(ミ)へても、めづらしくも 00093950M5ないから、/今年(ことし)ハなぐさミながら、/何(なに)か/商(あきなひ)をはじめやうと 00093960M6/思(おも)ひますと/仰(おほ)せらるれバ、/大黒(だいこく)さまを/初(はじ)め、/是(これ)はおもしろ 00093970M7からうとありけるに、まづゑびすさまは、おかぶの/鯛(たい)を/沢= 00093980M8山(たく=さん)/釣(つり)たまひ、かつぎをやとひ、/御自分(ごじぶん)ハ/先(さき)へ/立(たち)、/目出(めで)たい 00093990M9や+/有(あり)がたいや+と、/大(おほ)ごゑあげて(三ウ)うりあるき 00094000M10たまへバ、これハ/珍(めづ)らしい。ゑびすさまが/肴屋(さかなや)ニおなりな 00094010M11されたとて、/門並(かどなミ)にうれける。なかに/勇(いさミ)の/若(わか)もの、勇Sモ 00094020M12シ、おめへさんのお/売(うり)なさるのハ、なにが/有(あり)がたい、めで 00094030M13たいのでござりやす△ゑびすSサレハ、/今日(こんにち)まめそくさい 00094040M14でくらすのが、/何寄(なにより)ありがたい、めでたいのぢや。/此(この)あぢ 00094050M15ハひを、よくかミしめてミなさい。/誠(まこと)に/安楽(あんらく)なものだ△勇 00094060M16Sわつちハそんなたいは、いりやせん。/遊(あそ)びたい、/朝寐(あさね)が 00094070M17したい、/呑(のミ)たい、/喰(くひ)たい、/富(とミ)でも/取(とり)たい。/此(この)うちのたいが 00094080M18あるなら、(四オ)/一枚(いちまい)おごりたいといへば、ゑびすさま、 00094090M19かぶりをふり給ひ、ゑびすSそんなたいはうらぬ。それハ 00094100M20ミな/本真(ほんま)のたいでない△勇Sそして、/何(なに) 00094110¥K(三○四ページへ) 00094120¥P302 00094130¥G(二ウ・三オ) 00094140G1まづ/初(はつ)はるハことさらに、わらふ/門(かど)+おほけれハ、/福神(ふくじん) 00094150G2がたハおせハしく、あん/内(ない)もなく/入(いり)給ふ。ふく/徳(とく)やのある 00094160G3じ、Sこれハ+ありがたふごさります。これ、つるや。 00094170G4/福(ふく)の/神(かミ)さまがおいでなされた。お/備(そなへ)やおミきを、はやくお 00094180G5あげもふせ△Sコレサ、かまハしやるな。/只(たゞ)きさまのにこ 00094190G6+わらひが、/何(なに)よりのちそうじや。/家内(かない)ぢうがわらひず 00094200G7きだから、つい/長座(てうざ)をします△S/仕合(しあハせ)にハ、ことしをきま 00094210G8した/下男(けなん)も、ようわらひます。/田舎(いなか)ものゆへ(二ウ上)はづ 00094220G9かしいやら、くつ+と/斗(ばか)りわらひます△Sハテ、いなか 00094230G10/者(もの)ハ/正(せう)じきじや。/履(くつ)+わらふが、(三オ上)/下部(しもべ)のあたり 00094240G11まへじや。しかし、ちと/江戸(ゑど)なれたら、/下駄(げた)+ともわら 00094250G12ふであらふ(二ウ下) 00094260¥P303 00094270¥G(六ウ・七オ) 00094280G1まいにち+ほこりだらけになつてゐるが、これでもばん 00094290G2にハ、さミせんでもかぢつてしやれるのだ。しかし、こん 00094300G3げつハかゝアがうミ月だ。また子だからが十二ひきふへる 00094310G4から、大こくさまのすねも、かちらねバならぬ(六ウ) 00094320G1よりどり見どりが一しな十二文。まへどをりハたゞの三文。 00094330G2三せんや十二とうハ、よしないかミへもおあげなさる。こ 00094340G3れハ大こくやのおろしなミ、ふくとくの大やすうり、おか 00094350G4いまちかいはござりません(七オ) 00094360¥P304 00094370L1だいでござりやす△ゑびすSミな/苦労(くらう)だいじや 00094380¥N2¥J 00094390¥X/大黒(だいこく) 00094400L4/大黒(たいこく)さまは/米商売(こめしやうばい)をはじめ給へバ、/早速(さつそく)/買人(かひて)/来(きた)り、Sモ 00094410L5シ、/飯米(はんまい)の/下直(げぢき)な/所(ところ)をお見せなさりまし大こくS/承知(しやうち)し 00094420L6ましたと、/手(て)を二ツ三ツ/打(うち)たまへバ、/奥蔵(おくぐら)から/小俵(こびやう)/壱(いつ)(四 00094430L7ウ)/俵(びやう)ちよろ+あるいて/来(く)る。買人Sこれハ/何方米(どこまい)でご 00094440L8ざります△大黒Sちと/鼠(ねずミ)くさいが、/中国米(ちうごくまい)で/徳用(とくよう)でござり 00094450L9ます△買人S/中国(ちうごく)でも/鼠米(ねずミまい)は/恐(おそ)れます。もちつと/上米(じやうまい)をお 00094460L10見せなさい。/大(だい)こくさま、また/手(て)を/打(うち)給へバ、/今度(こんど)はうつ 00094470L11くしい/俵(たハら)が、/踊(おど)りををどりながら/出(で)て/来(きた)る。買人Sこれハ 00094480L12おもしろい/俵(たハら)だ。どこ/米(まい)てござります△大Sそれハ/大(だい)こく 00094490L13/米(まい)さ。/買人(かひて)、/俵(たハら)をつゝいて/見(ミ)て、/此俵(このたハら)の/中(なか)ハ/木(き)でござりま 00094500L14す。大S/是(これ)ハしたり。わしが/踏台(ふミだひ)と/間違(まちが)ふた(五オ) 00094510¥N3¥J 00094520¥X其二 00094530L17/大黒(だいこく)さまは/白鼠(しろねすミ)をおよびなされ、/手(て)まへハ/遊(あそ)バせておけバ、 00094540L18/米(こめ)びつをかぢつたり、/戸棚(とだな)へ/穴(あな)をあけたり、いたづら/斗(ばか)り 00094550L19しをるから、おれが/代物(しろもの)をおくるから、/安(やす)うり/見世(ミせ)でもは 00094560L20じめやれと、/小槌(こづち)の/中(なか)より/宝物(たからもの)をかず※ふり/出(だ)し、あた 00094570M1へたまへバ、/是(これ)を/莚(むしろ)へならべたて、白鼠Sかくれミのニか 00094580M2くれ/笠(がさ)、ほうじゆの/玉(たま)てもさんごじゆでも、こはくにめの 00094590M3ふ/巻物(まきもの)でも、/蔵(くら)の/鍵(かぎ)にはしんくのふさが/付(つき)まして、(五ウ) 00094600M4/何(なん)でもかでも/撰(より)どり/見(ミ)どりが一ト/品(しな)十二/銅(とう)。お/手(て)にとつて 00094610M5御らうじませト、/大(だい)こくさまへのおはつを十二/銅(とう)ツヽにて、 00094620M6/大安売(おほやすうり)のことなれバ、/手(て)の/廻(まハ)らぬ/程(ほど)うれけるが、しろ/鼠(ねずミ)ハ 00094630M7ふきげんにて/来(きた)り、白Sモシ/大黒(だいこく)さま。うれます事ハよう 00094640M8/売(うれ)ますが、とてもの/事(こと)に、/直段(ねだん)をずつと/高(たか)う/売(うり)ましたら、 00094650M9/猶(なほ)よくうれるでござりませう△大Sそれハどうした/訳(わけ)だ 00094660M10白Sミながわたくしの/顔(かほ)を見まして、/此(この)やうに/安(やす)くうるの 00094670M11ハ、/大(おほ)かた、あいつめがどこからか/引(ひい)て/来(き)たのであらうと 00094680M12申ます。(六オ)(六ウ・七オ挿絵)/余(あま)り/腹(はら)が/立(たち)ますから、よつぽ 00094690M13と/喰付(くひつい)てやらうかとぞんじました△大Sそれだから、/常(つね)に 00094700M14/引(ひい)たふうをするな 00094710¥N4¥J 00094720¥X/弁天(へんてん) 00094730M17ゑびすさまは/弁天(べんてん)さまの/所(ところ)へ/行(ゆき)給ひ、ゑびすSコレお/弁(べん)さ 00094740M18ん。おまへはなりものがすきだから、/琴(こと)/三味(さミ)せんの/指南(しなん)で 00094750M19もはじめなせへ。/琵琶(びわ)は/此節(このせつ)ハむかねへから△弁天Sさや 00094760M20うさ。わたしもあすから、/櫁柑(ミかん)でもうつて/見(ミ)やうかと/存(ぞんじ)ま 00094770¥P305 00094780L1す△ゑびすSハテ、ミかんを/売(うる)とハ/余(あま)りちゑのねへやうだ 00094790L2弁天S/夫(それ)でも(七ウ)なりものゝうちで、びわの/次(つぎ)ハミかん 00094800L3が/好(すき)でござりますから 00094810¥N5¥J 00094820¥X/毘沙門(びしやもん) 00094830L6/毘沙門(びしやもん)さまは/鎗(やり)の/指南(しなん)をはじめたまふに、たちまちお/弟子(でし) 00094840L7あまた/付(つき)けれバ、/今年(ことし)ハ/御年礼(こねんれい)に/御供(おとも)を/大(おほ)ぜいおつれなさ 00094850L8れけれど、/鎗(やり)は/御自身(ごじしん)に/持(もち)給ふを、/御弟子(おでし)たち、/是(これ)をふし 00094860L9ぎに/思(おも)ひ、ある/時(とき)、弟子S/先生(せんせい)さまにハ、/此間(このあひだ)/御年礼(ごねんれい)のせ 00094870L10つ、お/鎗持(やりもち)をおつれなさりながら、/御自身(ごじしん)にお/持(もち)なされし 00094880L11ハ、いかゞ/致(いた)した/義(ぎ)でござりますびしや門Sサレハ、/其(その)や 00094890L12りばなしハ(八オ)けして/流義(りうぎ)にござらぬ。/又(また)なげ/鎗(やり)なぞハ 00094900L13/猶更(なほさら)だ。/序(ついで)だから、/貴様(きさま)たちに/大切(たいせつ)な/極意(ごくい)を/伝授(でんじゆ)しましや 00094910L14う。/此鎗(このやり)を/持(もつ)て/見(ミ)さしやれと/出(いだ)し給へバ、お/弟子(でし)/持(もち)て見る 00094920L15に、/中(なか)+/重(おも)くて/持(もち)あがらず。弟子Sこれを/御伝(ごでん)じゆとハ 00094930L16びしや門S/諸事(しよじ)、/此(この)おもいやりがなけれバおさまらぬ 00094940¥N6¥J 00094950¥X其二 00094960L19/百足(むかで)は/足(あし)の/多(おほ)きをじまんにて、/人間(にんげん)なんぞハ/五十人(ごじうにん)/寄(よつ)て、 00094970L20やう+おらが一/疋(ぴき)まへだと、/鼻(はな)を/高(たか)うするゆゑ、(八ウ) 00094980M1/毘沙門(びしやもん)さま、/大(おほ)きに/御立腹(ごりつふく)なされ、かりそめにも/人間(にんげん)を/見(ミ) 00094990M2くだす心ていでハ、/遣(つか)ふておかれぬと/勘当(かんだう)なされけれバ、 00095000M3/百足(むかで)はしほ+と、げぢ+の/処(ところ)へゆき、おわびを/頼(たのミ)けれ 00095010M4バ、げぢ+もあきれはて、げぢS/貴様(きさま)のあしが/多(おほ)いとい 00095020M5つても、/百(ひやく)そくぎりた。/人間(にんげん)の/足(あし)を/洗(あら)ふを/千足(せんそく)といふ△百 00095030M6足Sそうか△げぢSまだそんな事でハねへ。わしハ/万足(まんそく)じ 00095040M7や。おまへも/五万(ごまん)そくだのといふがあるといへば、/百足(むかで)き 00095050M8もをつぶし、百足Sさういふ/事(こと)とは、/今(いま)までさつぱりしら 00095060M9なんだ。とう(九オ)からはなしてくれゝバいゝ。それでハ 00095070M10まだ/其(その)うへも/有(ある)だらう△げぢ+Sナニナ、まう/是(これ)が/億足(おくそく)の 00095080M11ないのだ 00095090¥N7¥J 00095100¥X/布袋(ほてい) 00095110M14/布袋(ほてい)さまは/奇妙(きめう)なお/案(あん)じにて、/堪忍(かんにん)ぶくろの/破損(はそん)つくろひ 00095120M15/直(なを)しといふ/看板(くハんばん)をかけたまひしに、/是(これ)はめづらしい御りや 00095130M16うじなりとて、/大(たい)そうにはやりけるが、/若者(わかもの)きたり、若者 00095140M17Sわたくしハ/生得(しやうとく)、/堪忍(かんにん)と申/事(こと)のすこしも/出来(でき)ねへのでご 00095150M18ざります。/是(これ)でもつくろひ(九ウ)が/出来(でき)ませうか△ほてい 00095160M19S/腹(はら)を見せなせへ。これハ/随分(ずいぶん)/直(なを)る/性(しやう)だ。しかし、なほし 00095170M20たてに/腹(はら)をたつと、じきにほころびるから、/夫(それ)さへ/気(き)をつ 00095180¥P306 00095190L1けさしやるなら、/直(なを)して/進(しん)ぜやうと、/胸(むね)から/腹(はら)へかけて、/堪= 00095200L2忍(かん=にん)五/両(りやう)と/書(かき)たる/膏薬(かうやく)を、べた+と/一(いち)めんに/張(はり)たまひ、/腹(はら) 00095210L3のたつとき、/此(この)かんにん五/両(りやう)をおもひ/出(だ)して、しんぼうす 00095220L4れバ、/段(だん)※とふくろが/大(おほ)きうなる。若者Sわたくしのハ 00095230L5/只今(たゞいま)、とのくらゐの/大(おほ)きさでござります△ほていSサウサ。 00095240L6たび+/破(やぶ)つたから、/子(こ)(十オ)どもの/時(とき)の/侭(まゝ)そだつ/間(ま)がな 00095250L7い。せめて/糠(ぬか)ぶくろ/程(ほど)もあれバよいが、/漸&妙(やう+めう)ふり/出(だ)しの 00095260L8/袋(ふくろ)ぐらゐな/物(もの)だ△若者Sもふ/破(やぶ)れたところハ/継(つげ)ましたか 00095270L9ほていS/疵(きず)はさつパり/直(なをつ)た△若者Sきつとてござりますか 00095280L10といへバ、/布袋(ほてい)さまはずつと/立(たち)あがり、くどい/男(をとこ)だと、/如= 00095290L11意(によ=い)にてしたゝか/打(うち)すゑ給へバ、かの/男(をとこ)/起(おき)あがり、Sモシ、 00095300L12わたくしをなんとなされます△ほていSハテ、かんにん/袋(ぶくろ) 00095310L13のもりを、あらためて見るのじや 00095320¥N8¥J 00095330¥X/福禄寿(ふくろくじゆ)(十ウ) 00095340L16/福(ふく)ろく/寿(じゆ)さまの/所(ところ)へ、/菓子屋(くわしや)のていしゆ/来(きた)り、Sあなたさ 00095350L17まのお/好(このミ)にて、/亀(かめ)の/子餅(こもち)をこしらへましてから、よく/売(うれ)ま 00095360L18したが、/近年(きんねん)は/処&(しよ+)でまねをいたしますから、/此(この)たびハた 00095370L19からづくしの/焼(やき)がたをつけまして、たから/餅(もち)と/名(な)をつけて 00095380L20うりませうと/存(ぞんじ)ますといへば、ふくろく/寿(じゆ)ハしばらくかん 00095390M1がへたまひ、福ろくSそれハよくあるまい。よしにさしや 00095400M2れ△菓子やSなぜてござります△福Sもしあんがすへると、 00095410M3そんきんものだ△菓Sこのせつ/寒(さむ)い/時分(じぶん)、わるくなる/気(き) 00095420M4(十一オ)づかひはござりません△福Sハテ、たからのもち 00095430M5ぐさりといふ/事(こと)がある 00095440¥N9¥J 00095450¥X其二 00095460M8/福禄寿(ふくろくじゆ)さまは/亀(かめ)をおよびなされ、/手(て)まへも/長(なが)いきするばか 00095470M9り、のふでハない。/何(なに)か/一(いち)げい、/得手(えて)た/事(こと)ハないか。かめ 00095480M10Sさやうでござります。わたくしの一げいは、たばこの/煙(けふ) 00095490M11りで/寿(じゆ)の/字(じ)をふきますが/得手(えて)ものでござります△福Sハテ、 00095500M12/夫(それ)はおもしろからう。ふいて/見(ミ)せやれ△かめSかしこまり 00095510M13(十一ウ)ましたと、すぐにふき/出(だ)し、まづこんなものでご 00095520M14ざります。福Sこれハきミやう+。/何(なに)か/外(ほか)のものハ/出来(でき) 00095530M15ないか△かめS/今度(こんど)は/千羽鶴(せんばづる)をふきましやうト、/鶴(つる)を/大(おほ)き 00095540M16く/吹(ふき)、そのあとにて、ちいさな/輪(わ)をおびたゝしくふきけれ 00095550M17バ、ふくS/千羽(せんば)づるをふくとて、たゞ/一羽(いちは)ふいて、こまか 00095560M18なわを/吹(ふい)たハ、どうした事だ△かめSわでハござりません。 00095570M19/同同同同同同同(おなじく+++++)でござります 00095580¥P307 00095590¥N10¥J 00095600¥X/寿老人(じゆろうじん)(十二オ) 00095610L3/寿老人(じゆろうじん)さまは、/老(おい)をやしなふにハ/落(おと)しばなしにまさるもの 00095620L4なしとて、にぎやかなる/町中(まちなか)へ/庵(あん)を/結(むすび)たまひ、ゆきゝの/人(ひと) 00095630L5にせん/茶(ちや)をふるまひ、おとしばなし一ツづゝ/所望(しよもう)し給へバ、 00095640L6/朝(あさ)から/晩(ばん)まで、かはる+いり/来(く)るを、よろこび給ふに、 00095650L7/大(だい)こくさま、/御出(おいで)なされ、/寿老先生(じゆろうせんせい)はよい事を/初(はじめ)られた。 00095660L8ちと、/其(その)はなしを/聞(きゝ)たいものだ。寿Sさやうさ。ふと/茶見= 00095670L9世(ちやミ=せ)をはじめましたら、/朝(あさ)から/喜撰(きせん)くんじゆして、たかの/爪(つめ) 00095680L10もたゝぬほど/人(ひと)(十二ウ)の/山本(やまもと)山をなしますが、ミなちや 00095690L11なはなしばかりでござります 00095700¥Y 00095710L13△△/寿老人(ぢゆらふじん)/問(とひ)給ふハ、/此小冊(このしやうさつ)の中に/大(だい)こくの跡に/鼠(ねずミ)、びしや門の 00095720L14△△つぎに/百足(むかで)、ふく/禄(ろく)の跡に/亀(かめ)を出して、わしが/家来(けらい)の/鹿(しか)をバ 00095730L15△△なぜ出してくれぬのじや。S/作者(さくしや)、ぬからぬ/顔(かほ)で、/序文(じよふん)に鹿 00095740L16△△の/武(ぶ)左衛門が見へました 00095750¥Y七福神落噺終(十三オ) 00095760¥P308 00095770¥U噺本大系△第十五巻 00095780¥T@御かげ|道△中@/噺栗毛(はなしくりげ)〔内題〕 00095790¥G 00095800¥Y 00095810L15文政十三年四月刊 00095820L16東籬亭主人校合 00095830L17都喜蝶作 00095840L18有楽斎長秀画 00095850L19京△伏見屋半三郎板 00095860L20中本二巻二冊 00095870¥Y 00095880M2右△おかけ道中 00095890M3左△噺栗毛 00095900G1東籬 00095910G2よむ人は 00095920G3はなし 00095930G4栗毛に 00095940G5のりか 00095950G6きて 00095960G7かけ出し 00095970G8見たき 00095980G9おかけ道中 00095990M12△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(見返扉) 00096000¥YG 00096010M15/客(かく)あり。/机前(きぜん)に/来(きた)りていはく、/子(し)、/奚(いかん)ぞ/抜(ぬけ)ざる。/答(こたへ)て/曰(いはく)、 00096020M16/業(げう)といふ/脂(やに)に/閉(とぢ)られ、/火(ひ)を/以(もつ)て/暖(あたゝむ)れともぬけがたく、/貧(ひん)と 00096030M17いふ/熱(ねつ)に/絆(からま)れ、/水(ミづ)をかけて/驚(おどろ)かせ/共(ども)ぬけず。/客(かく)、/笑(わら)ふて曰、 00096040M18/嘗而(かつて)、/子(し)が/爪(つめ)/長(なが)きを/知(し)ると/雖(いへど)も、/御蔭(おかげ)(ロノ一オ)まゐりは 00096050M19/稀(まれ)の/事(こと)なり。/参(まゐ)らざれば/施(ほどこ)すべし。いはく、/何(なに)をかほどこ 00096060M20さん。/曰(いハ)く、/米(こめ)にあらず、/又(また)/銭(ぜに)にあらず。/只(たゝ)この/序(しよ)を/施行(せぎやう) 00096070¥P309 00096080¥G(ロノ二ウ・ロノ三オ) 00096090M1せよ。予/則(すなハち)/繙(ひもとけ)ハ、/喜蝶(きてふ)が/述(のぶ)る処の/興話(おとしはなし)にして、/其(その)/滑= 00096100M2稽(しや=れ)、/尽(つくさ)ざることなく、その/可笑(をかしさ)、/留(とゞ)めがたし。(ロノ一ウ) 00096110M3/既(すで)に/己(おのれ)を/忘(わす)れて、/終(つゐに)/腹筋(はらすぢ)を/捻(よ)る。/故(かるがゆゑ)、/右手(かたて)に/抜(ぬけ)とする/顋(あご) 00096120M4を/捕(とら)へ、/左手(かたて)に/参宮(さんぐう)せんとする/臍(へそ)を/押(おさ)へて、/嗟歎(あゝ)、/喜蝶(きてう)が 00096130M5/弁(べん)、よく/世俗(せぞく)をぬけたとさ 00096140M7△△△△△△△△△△△△△△△東籬亭戯序△G 00096150M9△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△(ロノ二オ) 00096160¥Y 00096170M11△△/流行(はやり)ことば△△△△おかけの/片鬢(かたびん) 00096180M12△△/施行駕(せぎやうかご)△△△△△△/地獄(ちごく)のたとへ 00096190M13△△/世間(せけん)の/噂(うハさ)△△△△△/報謝宿(はうしややど) 00096200M14△△ひるの/宿(やど)とり△△△/団(だん)十郎 00096210M15△△/仕(し)かた/落(おと)し△△△△/仏(のゝ)さまの/草鞋(わらじ) 00096220M16△△さかむかひ△△△△/狸(たぬき)の/参宮(さんぐう) 00096230M17△△おかげはしめ△△△/川(かハ)どめの/杓(しやく) 00096240M18△△/茶屋(ちやや)の/御祓(おはらひ)△△△△△△△△(ロノ三ウ) 00096250¥P310 00096260¥T1@御かげ|道△中@/噺栗毛(はなしくりげ)巻上 00096270¥A都△喜蝶述 00096280¥N1¥J 00096290¥X/流行言葉(はやりことば) 00096300L7かさかふて/杖(つえ)たつ人もありなんと、/子(こ)どもこゝろに/杓(しやく)ふつ 00096310L8て、かの/御神(をんがミ)の/導(ミちびき)給ふ、/不思議(ふしき)ハ/同(おな)じ/浪花江(なにはえ)の、/足(あし)にま 00096320L9かせて/浜荻(はまおぎ)の、いせの/内外(うちと)へぬけまゐり。/前後(せんご)うつゝ(一 00096330L10オ)の/旅立(たびだち)に、/何(なに)もかも川/大橋(おほはし)に、/松(まつ)の/木(き)/丁(てう)どよいぐあひ、 00096340L11あと/白川(しらかハ)のいしばしは、こゝに/休(やす)まんとおもへども、/心(こゝろ)/粟= 00096350L12田(あハ=た)のあハてつゝ、/追手(おつて)やこんと見かへれハ、ヲヽイ+と 00096360L13うちの/手代(てだい)、/追人(おつて)をさいハひぬけまゐり、/一(いつ)しよにならん 00096370L14とよびかくるに、/子供(ことも)ハいちづに/追人(おつて)とおもひ、/一(いち)もくさ 00096380L15んにはしりながら、うた(一ウ)おつかけてさ、にげたとさ 00096390¥N2¥J 00096400¥X/施行(せぎやう)かご 00096410L18/施(ほどこ)しとてあまた/出(いづ)るかご。おひ+いろ+おもひつき、 00096420L19/上(かミ)ノ丁ハ/獅&(しゝ)がしらのそろへ、/白川(しらかハ)はしで/駕(かご)かきながらか 00096430L20ミあらひ、/仕(し)まひハぼたんとおとしたげな。/下(しも)ノ丁ハ/道成= 00096440M1寺(どうせう=じ)、/駕(かこ)にゆられてかず+ござる。/初夜(しよや)(二オ)のかねをつ 00096450M2くまでも、/施行(せげう)むしやうとはしるなり。また西丁かはやり 00096460M3哥て、ヱツサ+のひやうしやら。けしからぬにぎハひに、 00096470M4ある/町(てう)の/若(わか)い/衆(しゆ)うちより、ナント、此/町(てう)からハなんぞ、 00096480M5かはつた/趣向(しゆかう)をしたいものじやが。Sなんと、うまと/駕(かご)と 00096490M6にせうが△Sイヤ+、それでハ/物(もの)がよけい/入(いり)ます△Sソ 00096500M7コガ/趣向(しゆこう)じや。/駕(かご)の/中(うち)へ(二ウ)ひとりのせ、やねへ又/壱人(いちにん) 00096510M8またがらせ、さてさき/棒(ぼう)がヒン+といふと、/跡棒(あとぼう)がブウ 00096520M9++といふじや△そばからSそれでハ/女(をなご)ハのせられぬ 00096530M10Sなぜに△Sとき+/内(なが)でたいこをうたんならん。ハヽヽ 00096540M11ヽヽヽ△Sふたりのせるハ、よつほどおもくろい/趣向(しゆこう)じや 00096550M12また一人Sなんと、こふしたらどふじや。かごのあとさきに 00096560M13/舟(ふね)のかたちを/付(つけ)て、かごハ(三オ)やかたに見たて、すそに 00096570M14/浪(なミ)のかきわり。かこかきのはつちハ、/浪(なミ)ぞめのそろへにし 00096580M15て、/駕(かご)の/屋根(やね)に/帆(ほ)をかけて、/施行丸(せぎやうまる)としるし、かけこゑ、 00096590M16ヤツシツシ+とはしつたら、どふあろう△ミな+Sこれ 00096600M17ハめづらしい。/妙(めう)じやと、それより/急&(きう+)に/趣向(しゆかう)して/道筋(ミちすぢ)へ 00096610M18/出(いで)、/旅人(たびゝと)ひとりのせ、/皆&(ミな+)こへそろへ、/徳蔵(とくざう)がてんか(三 00096620M19ウ)ヤツシツシ++といふほどに、/往来(わうらい)の/旅人(たびゝと)ハもと 00096630M20より、/家&(いへ+)よりも、これハめづらしいとけんぶつするゆゑ、 00096640¥P311 00096650¥G(四ウ・五オ) 00096660M1/若(わかい)ものとも、のりがきて、Sおもかぢ△Sともかぢ、がつ 00096670M2てんか△Sがつてんじやと、むせうにはしりしが、/先棒(さきばう)、 00096680M3いしにけつまづき、どうどこけると、/旅人(たびゞと)、かごからころ 00096690M4+とこけいでしが、両手をあげて、Sたすけふねやあい 00096700M5(四オ)(四ウ・五オ挿絵) 00096710¥N3¥J 00096720¥X/世間(せけん)の/噂(うハさ) 00096730M9/才(さい)兵へさん。どふじや。御かげまゐりもはじめハめづらし 00096740M10かつたが、チトこのせつハほつこりした。Sソリヤほつこ 00096750M11りするはづじや。Sさつまがでるさかい 00096760¥N4¥J 00096770¥Xさかむかひ 00096780M14サヽやあとこせい引よをいやなと、にぎやかな(五ウ)おと 00096790M15がするゆゑ、ミな+/門(かど)をミれハ、/宮川丁(ミやがハてう)あたりの/坂(さか)むか 00096800M16ひと見えて、げいこ、わか/衆(しゆ)、/多勢(おほぜい)/手(て)をうちてきたるに、 00096810M17/見物(けんぶつ)のうちより、/老人(らうじん)ひとりはしり/出(いで)、ひとりの/若衆(わかしゆ)をつ 00096820M18かまへ、やにハにくらハさんとす。人&おどろき、これを 00096830M19とりさへ、/何(なに)ゆゑの/打擲(てうちやく)ぞといへば、Sこいつハ、かどわ 00096840M20かしでハござらぬか(六オ) 00096850¥P312 00096860¥N5¥J 00096870¥X/仕形(しかた)おとし 00096880L3まゐるほどに+、/丁稚(てつち)が/寐所(ねところ)からふんどし一ツでまゐれ 00096890L4ハ、めしたきおさんがたすきがけてまゐる。/老若(らうにやく)/男女(なんによ)、/入(いり) 00096900L5ごミにまゐるなかに、さすが/一(ひと)きハ/目(め)だつハ、/都(ミやこ)/嶋原(しまバら)に/名= 00096910L6高(な=だか)き/大夫(たゆう)のぬけまゐり。やう+/相(あひ)の/山(やま)にさしかゝるに、 00096920L7むかふより/竹本(たけもと)/綱大夫(つなたゆう)、これもぬ(六ウ)け/参(まい)りの/下向(けこう)かけ。 00096930L8◇竹◇いや、/大夫(たゆう)さん。参りなさつたか△◇嶋◇大夫さんもまゐり 00096940L9なんしたかト、あいさつしてゐる所へ、/内宮(ないくう)の/御師(おし)/彦大夫(ひこだゆう) 00096950L10/出(いで)きたり、/弐人(ふたり)の/大夫(たゆう)を見るに、/近付(ちかつき)なれバ、Sこれハ/竹= 00096960L11本(たけ=もと)の大夫さんに/嶋原(しまばら)の大夫さん△◇竹◇Sイヤ、これハ/御師(おし)の 00096970L12大夫さんと、たがひにあいさつして、◇彦◇なんと、/大夫(たゆう)が三 00096980L13人そろふとハ、/今(いま)まできかぬ事(七オ)じや。これが/三大夫(ミたゆう) 00096990L14きかざるじやトいへハ、◇太夫◇/口(くち)に/手(て)をあてゝ、$こう 00097000L15しんか 00097010¥N6¥J 00097020¥Xひるの/宿取(やどとり) 00097030L18おかけ/参(まゐ)りで、/早(はや)ふ/宿(やど)とらねバないときゝ、ひるまへより 00097040L19/内(うち)をたつて、/大津(おほつ)にとまらんと/思(おも)ふに、はや/宿(やど)なし。せん 00097050L20かたなく、/尾花川(おはながハ)に/伯父(おぢ)あるにより、そこにとまらんと/尋(たづ) 00097060M1ね(七ウ)/来(き)たり、たしかこゝらとさがす/向(むか)ふに、/伯父(おぢ)の/息= 00097070M2子(むす=こ)、/鳩(はと)の/子(こ)をつかまへてゐるを/見付(ミつけ)て、 00097080M3△△△おはな川/伯父(おぢ)をたづねて/甥(おひ)のふと 00097090M4△△△△よへバいとこか/鳩子(はとこ)だかへつ 00097100M5といへれハ、そこの/門口(かとぐち)からおぢがのぞひて、Sきやうか 00097110¥N7¥J 00097120¥Xおかげの/初(はじま)り(八オ) 00097130M8/市介(いちすけ)さん。こんどのおかげまゐりハ、はじめて/出(で)たところ 00097140M9ハ、/道中(どうちう)おどりもつて/参(まゐつ)たげな。Sソリヤうそじや。/京(きやう)/大= 00097150M10坂(おほ=ざか)のものならしれんが、/田舎(いなか)ものが、なんでおどつてまゐ 00097160M11るもので△Sイヤ、さふもいへんて。はじめハミな、/阿波(あは) 00097170M12でものばかりじや 00097180¥N8¥J 00097190¥X/御祓(おはらひ)の/奇特(きどく)(八ウ) 00097200M15さる/大家(たいか)の/息子(むすこ)、うたひ/講(かう)をだしにして/茶屋(ちやや)にあそひ、/思(おも) 00097210M16ハず/夜(よ)があけて、/手(て)がたもなけれハ、いかゞせんと/評義(へうぎ)な 00097220M17すに、/牽頭(たいこもち)の/思(おも)ひ/付(つき)にて、/茶(ちや)やの/神棚(かミたな)にある御はらひさま 00097230M18を/取出(とりいだ)し、からだぢうへへバり/付(つけ)、さてうちへかへり、か 00097240M19やう+にし給へとおしへしかバ、/息子(むすこ)大によろこび、/駕(かご) 00097250M20にて/内(うち)へかゑり、(九オ)/親父(おやち)のまへにつゝたちて、/其方(そのはう)し 00097260¥P313 00097270L1ん※のとくにより、/太神宮(だいじんぐう)、/忰(せがれ)にのりうつり/来(きた)る也ト/大= 00097280L2声(おほ=ごへ)にていへバ、/親父(おやち)、大におどろき、/早&(さう+)ざしきの/床(とこ)の/間(ま) 00097290L3へあらこもを/敷(しき)、/其上(そのうへ)へ/息子(むすこ)をすハらせ/礼拝(らいはい)し、/造酒(ミき)/燈明(とうめう) 00097300L4をあぐるに、/店(ミせ)の/番頭(ばんとう)、/旦那(だんな)のそてを引て、Sモシ、/若旦= 00097310L5那(わかたん=な)のからだに/付(つい)てある/御祓(おはらい)さま、(九ウ)御らうじませ。く 00097320L6すぼつて/厶(ござ)り/升(ます)。どうやら、がてんの/行(ゆか)ぬ事で/厶(ござ)り升ぞへ 00097330L7Sおやちいや+、だいじない。小ごへニて、アヽしておく 00097340L8と、/出(で)あるかれぬ 00097350¥N9¥J 00097360¥Xおかげの/片鬢(かたびん) 00097370L11ぬけまゐりと見えて、/早朝(さうてう)より/髪(かミ)ゆひ/床(どこ)へきて、一ツいふ 00097380L12ておくれ。Sハイ+。おあらひなさ(十オ)れませと、や 00097390L13がて/月代(さかやき)そりにかゝり、此/髪結(かミゆひ)、/大(だい)のはなしずきにて、 00097400L14Sおまへさんも御さんけいか。わたしハ/此間(このあひだ)/参(まゐ)りましたが、 00097410L15ゑらくんじゆ。/宿(とま)りに十五人の/中(なか)へふとん/三帖(さんてう)。/中(なか)ニひめ 00097420L16が五人。そのまん/中(なか)へわたしが/寐(ね)ました。/次(つき)の/間(ま)か/姫(ひめ)ばか 00097430L17り十人ぐミ。/何(なん)の/事(こと)ない。/女護(にようご)のしまへいたやうなもの。 00097440L18そこであちらへあたり(十ウ)こちらへあたり、/岩永(いはなが)じやな 00097450L19いが、/神武(じんむ)いらいないづなほたへト、しやりんになつて/咄(はな) 00097460L20すうち、/手(で)がすべつて/左(ひだり)の/片(かた)びん、うしろへかけてすりお 00097470M1とし、かミ/結(ゆひ)/心(こゝろ)つき、Sこれハ+ぶてうほうと、いろ 00097480M2+あやまる。たび人Sどふもしやうがない/事(こと)じやが、こ 00097490M3れでハはへるまでまゐられもならぬ△Sイへ+。/半(はん)ぶん 00097500M4のこつた(十一オ)/方(ほう)で、わげをこしらへ、/左(ひたり)の/方(かた)へかさを 00097510M5/横(よこ)にめしたら、しれませぬ△Sそんなら/早(はや)ふたのミ/升(ます)と、 00097520M6これよりかさを/横(よこ)にきて/参宮(さんぐう)し、/宮(ミや)めぐりせんとするとき、 00097530M7つよい/風(かせ)がふいて、/横(よこ)にきたかさが、くるりと/右(ミぎ)へまはつ 00097540M8たら、神主、ミつけて、S/坊主(ほうづ)ならこちらじや 00097550¥N10¥J 00097560¥X/地(ぢ)ごくの/喩(たとへ)(十一ウ) 00097570M11/無仏世界(むぶつせかい)/地(ち)ごくの御あるし、ゑんま/大王(だいわう)。/鬼(おに)どもをあつめ 00097580M12給ひ、S/此度(このたび)、しやば/世界(せかい)におかげ/参(まゐ)りといふ事ありて、 00097590M13此ぢこくよりも、そろ+ぬけ/参(まゐ)りをするよし。/抑(そも+)おかけ 00097600M14参りハ、六十一年があたり也。しかるに、/今(こ)としハ六十年 00097610M15なり。/今(いま)一年はやし。そちたちもまゐりたくハ、/当年(たうねん)ハや 00097620M16めて(十二オ)(十二ウ・十三オ挿絵)/来年(らいねん)にしたがよいトいふた 00097630M17ら、/鬼(おに)どもが/口(くち)をそろへ、/一(いち)どきに、笑アハヽヽヽヽヽヽ 00097640¥N11¥J 00097650¥X/報謝(はうしや)やど 00097660M20/施行(せぎやう)にとめてもらい、めい+/国所(くにところ)を/帳(てう)に/付(つけ)るとて、めい 00097670¥P314 00097680¥G(十二ウ・十三オ) 00097690M1+/名前(なまへ)を/付(つけ)てゐると、そバにいたるとんきよな/男(おとこ)、Sお 00097700M2めへ、御ついでだから、おらが/国所(くにところ)も/付(つけ)てくんなせへ 00097710M3Sヲイ+、(十三ウ)/何(なん)と/書(かき)て/上升(あけます)うな△S/武州(ぶしう)/戸葉(とは)でご 00097720M4ざりやす△Sヲイ+、/武州(ぶしう)/戸葉(とは)の/住人(ぢうにん)△Sコレ+、ま 00097730M5ちな。/十人(じうにん)じやない。をらタツタひとりだ△Sソリヤ/字(じ)の 00097740M6/間(ま)ちがひじや。おまへのいふのハ/十(とう)のぢう。わしのハ/住(ぢう)の 00097750M7ぢうしや。/十(とう)のぢうとハちがふ。とをしやないといふと、 00097760M8かつてから/亭主(ていしゆ)が、Sコレ+、/報謝(はうしや)やどで、ばくちハ 00097770M9(十四オ)なりません 00097780¥N12¥J 00097790¥X/団十郎(だんじうろう) 00097800M12/成田屋(なりたや)がおかげ/参(まゐ)り、見なさつたか。/仰山(ぎやうさん)な事。/荷持(にもち)が十 00097810M13弐三人、あせながしてかいて/行(ゆき)ました△Sハヽア、つれハ 00097820M14/一座(いちざ)かな△Sイヱ+、/成田(なりた)やひとりじや△Sソレニまた、 00097830M15/仰山(ぎやうさん)な/荷(に)しやナア△S/白猿(はくゑん)ぼにハ/大荷(おほに)がいる(十四ウ) 00097840¥N13¥J 00097850¥X/仏(ほとけ)のわらぢ 00097860M18ぬけるほどに+、のちにハ/小判(こばん)・/歩判(ぶばん)、またハ/丁銀(てうぎん)・/小(こ) 00097870M19つぶまでが、われいちとまいるに、/銭(ぜに)一文もまいらぬハふ 00097880M20しぎといへハ、Sソリヤ/銭(せに)がまゐらぬはつじや。/今(こ)としの 00097890¥P315 00097900¥G(十六ウ・十七オ) 00097910M1ハ、Sおかねまゐりじやもの 00097920¥N14¥J 00097930¥X/狸(たぬき)の/参宮(さんぐう)(十五オ) 00097940M4/狸(たぬき)十/疋(ひき)ばかりぬけまゐりして、ある/宿(やど)やにて、/同行(どうげう)十人 00097950M5じや。壱人前三匁づゝにて/宿(とま)らんといふ。/亭主(ていしゆ)、きもをつ 00097960M6ぶし、いや+、きさまたちハ、/金玉(きんたま)バかりでも/八帖敷(はちでうしき)い 00097970M7るから、/百帖(ひやくでう)もなけねバならぬといへハ、/狸(たぬき)が/小(こ)ごへて、 00097980M8+わたしらハ/女(をんご)ばかりじや 00097990¥N15¥J 00098000¥X川とめ/杓(しやく)(十五ウ) 00098010M11/閏月(うるつき)十四日五日/頃(ころ)より、二三日/雨(あま)つゞきにて、ぬけ/参(まゐり)もた 00098020M12ちまち、ござたわらと/変(へん)じ、/其(その)うへ/横田川(よこだがハ)とまれバ、/参(まゐ)り 00098030M13/下向(げこう)の/旅人(たびびと)、/両岸(れうきし)にとゞまり、いかゞハせんと/見合(ミあはせ)たるに、 00098040M14/下向(げこう)と見えし/壱人(ひとり)のたびゞと、/川(かハ)ばたに/立(たち)いでわたらんと 00098050M15するを、/人&(ひと※)/制(せい)しとむれども、ふりのけ+/川中(かハなか)にざんぶ 00098060M16とはいると、(十六オ)(十六ウ・十七オ挿絵)見えけるが、たち 00098070M17まち/流(なが)れに/足(あし)をとられ、どふどたをれてながれしに、/此(この)も 00098080M18の、/水心(ミつごゝろ)やしりたりけん、/流(なが)れながらも/声(こへ)をあげ、ヲヽそ 00098090M19れよ。おかげゆゑにハ、いせへまいりしためしもあり。わ 00098100M20れハくやしき/流(なが)れの/身(ミ)なれど、/一(いつ)へんハ/水(ミづ)におよがん。/岩(いは) 00098110¥P316 00098120L1をもながれる/洪水(こうずい)に、/水(ミづ)くゝミあげ/口(くち)すぼめ、ふしおぼれ 00098130L2+、(十七ウ)ひとり/流(ながれ)じしづまじと、ひしやくおつとり、 00098140L3つたへきく、/水(ミつ)/出(いで)る/川(かハ)をこすときハ、うろうろするハ/心(こゝろ)の 00098150L4まよひ。これよりさきは/中&(なか+)に、/少(すこ)しの/水(ミづ)ハへだつれど、 00098160L5おぼれつめたるわがむねんりき。このやうなばちはかねて 00098170L6名のらじ。/石(いし)にもせよ、がけにもせよ、こゝろざすところ 00098180L7ハ/向(むか)ふの/川(かハ)。こない(十八オ)だハひるの/施行(せぎやう)あつて、もら 00098190L8ひへい+うけるせぎやうのござハうくとも、だんないだ 00098200L9んない/大事(たいじ)ない。ふち/川(かハ)にすたれるからだ、/一度(いちど)むかふへ 00098210L10よせたまへ。むねんな/川(かハ)とくわんねんす。/三尺(さんじやく)たちまちこ 00098220L11うかけも、はなれちり+、こなたのかたへ/坂立(さかだち)/上(のぼ)りト、 00098230L12やう+きしにたち/上(あが)り、おはらひさんのおかげ(十八ウ) 00098240L13でたすかりながら、Sてうどゆかたのせんだくができた。 00098250L14つゐでに/糊(のり)がつけてほしい。見てゐる人Sもつたいない事い 00098260L15はんすな。しかし、さい/前(ぜん)からのハ梅がへか△Sイヽエ、 00098270L16ぬれがへじや(十九オ) 00098280G1〔上巻挿絵中の歌詞〕 00098290G1△△いせ暦かと出よしとぬけまゐり 00098300G2△△△まいにち+おし合てゆく△△東籬戯述(ロノ二ウ) 00098310G1△△参宮を施行にのせる素人かこ 00098320G2△△△ふりまはされてのるもほとこし△△東籬(五オ) 00098330G1△△西国かぬけはしめたるいせまゐり 00098340G2△△△地獄にさたもかねてきくらし△△いが丸(十二ウ) 00098350G1△△きよ姫にあらて日高の川つかえ 00098360G2△△△まなごせうしなぬけ参り衆△△いが丸(十七オ) 00098370¥P317 00098380¥G 00098390G1玉の輿に 00098400G2△のらぬ女か 00098410G3△△おとこしの 00098420G4うしにゆらるゝ 00098430G5△△三宝荒神 00098440G6△△△△とりはら 00098450G7△△△△△△伊賀丸 00098460¥Y1 00098470M1△△降る御祓△△△△△△附録 00098480M2△△矢走の乗合△△△△流石ハ小娘 00098490M3△△一樹のかけ△△△△鯨も信心 00098500M4△△亭主の立腹△△△△是は尤 00098510M5△△夜店のぬけ参△△△時の流行 00098520M6△△女同行△△△△△△まはり気 00098530M7△△田舎正直△△△△△田舎も粋 00098540M8△△理屈あらそひ△△△水ハもと水 00098550M9△△施行づくし△△△△一トまわり(下ノ一ウ) 00098560¥T1@おかげ|道△中@/噺栗毛(はなしくりげ) 00098570¥A都△喜蝶述 00098580¥N1¥J 00098590¥X/降(ふ)る/御祓(をはらひ) 00098600M17おかげ/参(まゐ)りにて、/諸方(しよほう)に御はらひ/降(ふつ)たるに、ある/家(いへ)に、ま 00098610M18どよりおはらひふり/来(き)たれバ、/亭主(あるし)大に/悦(よろこ)び、/神(かミ)だなへお 00098620M19さめ、/造酒(ミき)などそなへいたる/折(をり)ふし、/易(ゑき)をたてる/人(ひと)きたり、 00098630M20(二オ)これをきゝ、よく+かんがへ、これハ/降(ふつ)たるのじ 00098640¥P318 00098650L1やない。となりのろうしの/家(いへ)からちつたのじや。/亭主(あるじ)、ふ 00098660L2しぎにおもひ、ろうしの/家(いへ)をのぞいて見たら、まことに、 00098670L3/御神(ごしん)さんの/飛(とば)しやたやうな/内(うち)であつた 00098680¥N2¥J 00098690¥X/矢(や)ばせの/乗合(のりあひ) 00098700L6きのふ/下向(げこう)に、/矢(や)ばせの/舟(ふね)てゑらい事が(二ウ)ござり升た。 00098710L7のり合に、/江戸(ゑど)ツ/子(こ)が/弐人(ふたり)ゐまして、/何(なに)やらほつ+とい 00098720L8ふてゐるがにくさに、わたしが/浄(じやう)るりを/一口(ひとくち)かたりかけま 00098730L9したとおぼしめせ。そふしたら、かの/江戸ツ子(ゑとつこ)が、しやん 00098740L10としやべりやミました。アヽよいきミじや。こゝらできか 00098750L11してやりませうと、ぐつとはりこんでやりますうち、/一人(ひとり) 00098760L12の/江戸ツ子(ゑどつこ)が、ぶんご(三オ)をかたりかけおる。サテよい 00098770L13/声(こへ)な。さふすると、も/壱人(ひとり)が/新内(しんない)。イヤハヤ、ふたりなが 00098780L14ら/声(こへ)といゝ、ふしといゝ、どふもこふもおもしろうて、/乗= 00098790L15合(のり=あひ)が、/浄(じやう)るりやめてくれいと、わしやとつくりとてうされ 00098800L16て、いま+しい/事(こと)でござり升たが、御いせさまの/御(お)かげ 00098810L17ハ/有(あり)がたいものじや。/舳(へ)さきの/方(ほう)にゐる人が、又/浄(じやう)るりを 00098820L18かたりかけまし(三ウ)たが、イヤもう、とほうもない/上手(しやうす) 00098830L19で、さすがの/江戸ツ子(ゑとこ)も、しゆつと、きへでござり/升(まし)た。 00098840L20Sハテそれハよいきミじやあつた。しかし、その人ハどこ 00098850M1の/人(ひと)じやな△Sサレバ、どこの/人(ひと)かハしりませぬが、せん 00098860M2ど/四条(しでう)のしばゐて、/九(く)だんめかたつた/竹本(たけもと)/組太夫(くミたゆう)といふた 00098870M3人でござり/升(まし)た。それでわたしも、ぐつと/色(いろ)あげました 00098880M4(四オ)△Sソリヤ、いろあげるはづしや。アリヤあゐ玉じや 00098890¥N3¥J 00098900¥X/一樹(いちじゆ)の/陰(かげ) 00098910M7/若(わか)き/男(をとこ)、/宿(やど)をとりかね、/百姓家(ひやくせうや)を/頼(たの)ミとまりしに、/追&(をい+)に 00098920M8/宿(とま)り/人(ど)、/頼(たの)ミきたりし/中(なか)ニ、七十バかりの/老爺(をやぢ)、十七八の 00098930M9/小(こ)ぎれいな/娘(むすめ)をつれて、こゝにとまり、やがて/夕(ゆう)めしも 00098940M10すミて、/皆&(ミな+)ころ+とこけるより、あとハ/野(の)となれ/山(やま) 00098950M11(四ウ)/寺(でら)の、/後夜(ごや)のかねの/音(ね)つぐる/頃(ころ)、かの/若男(わかきおとこ)そつと 00098960M12おき、/有(あり)あけふき/消(け)し、/四(よ)ツばいに、かの/小(こ)むすめがふと 00098970M13んをさぐり、すそよりそつとはいこめとも、/老爺(おやぢ)ハひるの 00098980M14くたぶれに、/前後(ぜんご)もしらずグウ+++。むすめハふ 00098990M15つと/目(め)をさまし、アレ、わるい/事(こと)といふくちを、チヤツと 00099000M16おさへて/耳(ミヽ)にくち。なにやらぼち+と(五オ)さゝやきし 00099010M17が、いかなる/夢(ゆめ)をかむすひけん。しばらくありてかの/男(をとこ)、 00099020M18わが/寐所(ねところ)にかへると/其(その)まゝ、たびくたぶれて/寐入(ねいり)たり。や 00099030M19がて/娘(むすめ)ハてゝ/親(をや)をゆりおこし、Sコレ、とゝさん。むかふ 00099040M20のすミに/寐(ね)てゐる/人(ひと)を、わしが/聟(むこ)さんにもらふて/下(くだ)されと、 00099050¥P319 00099060¥G(六ウ・七オ) 00099070M1やふから/棒(ぼう)ニいゝ/出(だ)せバ、おやぢハほんさうむすめなれバ、 00099080M2おのしが/気(き)に/入(いつ)た/人(ひと)(五ウ)ならもらふてもやろが、くらが 00099090M3りでハしれぬと、すり/火(び)うちだし/火(ひ)をともして、よく+ 00099100M4見れハかの男、かねてかゝる/病(やまひ)あるかして、/首筋(くびすぢ)ほそ/長(なが)う 00099110M5のび/出(いで)たり。おやぢ、/大(おほき)にびつくりし、Sテモまあ、/娘(むすめ)も 00099120M6めつさうな。Sろくろくびに/見合(ミあひ)もせずに 00099130¥N4¥J 00099140¥X/亭主(ていしゆ)の/立腹(りつふく)(六オ)(六ウ・七オ挿絵) 00099150M9さし/向(むか)ひの/夫婦(ふうふ)、とくゐさきへやる/金子(かね)を/女房(にようぼう)にもたせや 00099160M10りたるに、此/女房(にようばう)、そのかねをもちて、すぐにぬけまゐり 00099170M11せしかバ、/亭主(あるじ)大にはらをたて、/日(ひ)を/経(へ)て女ぼうかへると 00099180M12/其(その)まゝ、ひま/状(じやう)をかきて、いねといふに、女ぼうハわがあ 00099190M13やまりゆへ、さま※にことハれども、/一(いつ)かうきかず。/此(この) 00099200M14うへハせんかた(七ウ)なしと、/髪(かミ)をすき/直(なほ)し、うす/化粧(げしやう)し、 00099210M15/着(き)ものをも/着(き)かへ、たちいでんとするを、/亭主(ていしゆ)これを見て、 00099220M16なにとやら、いなしをしく/成(なり)たれど、/一(いつ)たんいねといひし 00099230M17うへハ、/今(いま)さらよいハともいはれず。つよい/顔(かほ)して、亭 00099240M18Sコリヤ、/門(かど)からいぬる/事(こと)ハならぬ△女Sそんなら、うら 00099250M19/口(ぐち)から△亭Sいや、うらからも/窓(まど)からもならん(八オ)女 00099260M20Sそれでハ/出(で)る/所(とこ)がないがな△亭Sでるところがなくバ、 00099270¥P320 00099280L1いなんとおけ 00099290¥N5¥J 00099300¥X/夜店(よミせ)のぬけ参 00099310L4/大津(おほつ)の/有福人(ゆうふくじん)。ぬけ参に/壱人(ひとり)に/米(こめ)壱升づゝ/施行(せぎやう)をはじめし 00099320L5が、/中&(なか+)おびたゝしき/参(まゐ)りゆゑ、壱升づゝはかる/間(ま)がなき 00099330L6ゆへ、/大(おほ)ぜい/連(つれ)ハ其/割(わり)にて、十人に一/斗(とう)、三十人に三/斗(どう)と、 00099340L7(八ウ)/大(おゝ)あせになつてほどこす/所(ところ)へ、/京中(きやうぢう)/夜店仲間(よミせなかま)いひ合、 00099350L8弐百五十人/組(ぐミ)といふのぼりをたてゝ来る。せ行人Sこの/連(つれ) 00099360L9ハ弐百五十人、/合(あハせ)て弐/石(こく)五/斗(とう)。ソレ/五斗俵(ことうひやう)五ツと、ほりだ 00099370L10せバ、ミな+S/夜(よ)見せまゐりニ/五俵(ごひやう)じや 00099380¥N6¥J 00099390¥X/女(をんな)/同行(どうぎやう) 00099400L13五六十/軒(けん)ばかりの/大長屋(おほながや)の/家(いへ)ぬし、/大(だい)の(九オ)/爪長(つめなが)なりし 00099410L14かハ、かね+/借屋(しやくや)のものども、にくミゐたりしに、/此度(このたび) 00099420L15御かげまゐりにつき、/人(ひと)にすゝめられ/施行(せぎやう)をせんと、やう 00099430L16+/米(こめ)五斗ばかりたきて、にぎりめしの/施行(せぎやう)なせしに、/長= 00099440L17家中(なか=やぢう)のかゝたちいひ/合(あハ)せ、此/屋(や)ぬしに/恥(はぢ)かゝさんと、ミな 00099450L18+ぬけまゐりにすがたをこしらへ、どや+と(九ウ)/家= 00099460L19主(や=ぬし)の/門(かど)ぐちにおしよせ、/施行(せぎやう)をおくれ+とわめきちらせ 00099470L20バ、/家主(いへぬし)びつくりして、Sマア+まつたり。そうとゝう 00099480M1して/来(き)てハ、/施行(せぎやう)ができぬといへハ、女ミな+/声(こへ)をそろ 00099490M2へ、+とゝうじやない。かゝばかりじや 00099500¥N7¥J 00099510¥X/田舎(いなか)/正直(せうじき) 00099520M5/遠国(をんごく)のおかげまゐり、/京(きやう)にとまり、/案内(あんない)(十オ)をつれて、 00099530M6/京(きやう)けんぶつ。/先(まづ)一ばんに/御所(ごしよ)さまへ/参詣(さんけい)するに、むかふよ 00099540M7りお/公家(くげ)さま、/装束(しやうぞく)にてござると、遠国ものSアレ+、い 00099550M8きてゐさつしやるお/天神(てんじん)さまがござらつしやる。あのお人 00099560M9も、やはりぬけ/参(まゐ)りかの△あん内Sめつさふな。あれハご 00099570M10さんだいなさるのじや△遠国ものSイヤ+、それでもしや 00099580M11くをもつてござるもの(十ウ) 00099590¥N8¥J 00099600¥X/理屈(りくつ)あらそひ 00099610M14/若(わか)ひもの、たか※と、こんどおかげまゐり+といふけ 00099620M15れど、いぬねこ、/其外(そのほか)けだものまでまゐるから、/狼(おゝかめ)まゐり 00099630M16じやとわらへハ、/老人(らうじん)ひたいにしわよせて、コレ+/若(わか)ひ 00099640M17の。いかにわる/口(くち)いふとて、/狼(おゝかめ)/参(まゐり)じや、もつたいない。 00099650M18その/様(やう)な事いはぬものじや。若Sハヽヽヽ。いふたらなん 00099660M19じ(十一オ)や△老Sいはぬものじやて△若S/貴(き)さま、おい 00099670M20せ/様(さま)の/一家(いつけ)じやあるまいし、すつこんでけつかれ△老Sい 00099680¥P321 00099690¥G(十二ウ・十三オ) 00099700M1や、すつこんでハゐぬわい△若Sそうぬかしや、モウ/百年(ひやくねん) 00099710M2めじやと、つかミかゝる。老Sなにぬかす。/今(こ)としが六十 00099720M3/年(ねん)めじや 00099730¥N9¥J 00099740¥X姫三社△/施行尽(せぎやうづくし) 00099750M6こゝに/一人(ひとり)のぬけ参り。/諸&(しよ+)にて/施行(せぎやう)ニあひ、(十一ウ)ひ 00099760M7る八ツごろ、/松(まつ)ざかに/来(きた)り、ひとり/旅(たひ)の/悲(かな)しさハ、とある 00099770M8/宿屋(やどや)の/門口(かとぐち)から、とふそ申、わたしひとりで御さり升が、 00099780M9大せいさんの/中(なか)へわり/込(こん)で、おとめなされてくださりませ 00099790M10ていしゆSハイ+、とめて/上(あげ)たいか、見なさる/通(とふ)りの/大入(おほいり) 00099800M11で/厶(ござ)り/升(ます)さかい、わり合ハでけません△旅人Sむかふさじき 00099810M12でも、たいじないが△ていしゆS/芝居(しバい)見る(十二オ)(十二ウ・十三 00099820M13オ挿絵)やうに、コノいそかしいに、あほらしい△旅人Sそ 00099830M14れでも、/一間(ひとま)+に/番付(はんつけ)かうつてあるさかい、なしかふす 00099840M15まのあはいから、のぞくといふ/身(ミ)で、たつたなりにてもと 00099850M16めてほしい△ていしゆS人をなぶりものにするのかいト、ぼ 00099860M17やき+はいる。@此とき近所にて三社のうたを引|かけるをキツカケに施行つくし@△S@三△社|かへ哥@○/米(こめ)し 00099870M18ろのにぎりめしや。/紙(かミ)をいつときに、ほとこそや。合手ど 00099880M19つこいつりだい/銭(せに)つんで、(十三ウ)どつこいつりたいぜにつんて、 00099890M20五文ヅヽじや。それとつてゆけ。手にとつて、ついでにとりつぎ 00099900¥P322 00099910L1すんでる、ちく+だい※。ちく+だい※。やるわい+ 00099920L2+。どんどゝやるもてうしよく、やるとわらじハ、/し(ワ)や 00099930L3くふるせきやうじ。どん+さかやき。合ぢより+。 00099940L4しゆう+。しゆうそるぞへ。/し(ワ)めてしやんとゆふ。ひよろ 00099950L5++。ひよろりんしやん。ゆるかごを。になふ+。合 00099960L6ちよといえしんか。おふよ。わいた(十四オ)よ茶&やくむ。 00099970L7合ちりがミやるもつて行。かさのむぎめしのふねはしる、ま 00099980L8ゝの合ころもん。いかいこと、白あかいや、うまのひん 00099990L9+。しやん+。/(ワ)見事へ。あまたせぎやうハ、ヲヽたく 00100000L10さんや」此まへより、とまり/客(きやく)大ぜいきいていて、@この|とき@ヨウ 00100010L11+++。Sなんとおもしろい人じや△Sコレ、/三社(さんじや) 00100020L12さん。おまへハひとりじやさかい、とめんげな。きのどく 00100030L13な。わしらの/中(なか)へいれであげよ。三社さん。こちらへお 00100040L14(十四ウ)は/入(いり)。それハありがたうござり升ト、これより/此= 00100050L15男(この=おとこ)を/三社(さんじや)さん+とよひ、/酒(さけ)などのみて/寐(ね)る。みじか/夜(よ)の 00100060L16はや七ツとき、/宿(やど)より/皆&(ミな)をおこし、/朝(あさ)はんくひしまひ、 00100070L17/宿賃(やどちん)を/払(はら)ふとき、三社Sハイ。わたくしの/分(ぶん)も、御いつし 00100080L18よにと、/銭(ぜに)をいだす。たひゝとSハヤ、よいわいな。おまへ 00100090L19の/分(ぶん)ハ、こちらがだしておくほどに、そちらへ/取(とつ)ておきな 00100100L20さ(十五オ)れと、もどしなから/銭(ぜに)を見て、Sおまへさんハ/奥= 00100110M1州(おう=しう)の/御方(おかた)か。こりや/皆(ミな)/仙(せん)だい/銭(せに)バかりじやな△三社Sハテ、 00100120M2/三社(さんじや)の/角銭(かくせん)じや(十五ウ) 00100130¥Y1附録 00100140¥N1¥J 00100150¥X/流石(さすが)ハ/小娘(こむすめ)△△△△△△△△△¥A京△文主作 00100160M7娘もしおかゝさん。アノおとつさんがお/伊(い)せさんへ御まゐ 00100170M8りなさつたに、/杓(しやく)をもつておいてたかへ△母をやS/何(なに)いや 00100180M9るやら。おとつさんなどハ、/荷(に)もちをつれてお/出(いて)なさるゆ 00100190M10へ、/杓(しやく)のやうなものを/持(もつ)てお/出(いて)じや(十六オ)ない。ソシテ 00100200M11おいせさんでハ/大夫(たゆう)つきしや△娘Sフン。おとつさんハ/大= 00100210M12夫(た=ゆう)ずきかへ。ソンデおあにさんハ、おやまさんずきしやな 00100220M13ア 00100230¥N2¥J 00100240¥X/鯨(くじら)の/信心(しん+)△△△△△△△△△△△△¥A同作 00100250M16/熊野(くまの)うらより/鯨(くしら)/一疋(いつぴき)、/太神宮(だいじんぐう)へおかけ参りいたし、/何(なに)とぞ 00100260M17/漁人(きよじん)の/手(て)にかゝりませぬやうと/祈(いの)りしかバ、/太神宮(だいじんぐう)、/御戸= 00100270M18帳(ミと=てう)の(十六ウ)/内£(うち)/御声(をんこへ)たかく、なんぢ、/朕(われ)をしん※なす 00100280M19といへども、その/願(ねが)ひ、かなひがたし。其ゆゑハ/遠国(ゑんごく)の/老= 00100290M20若(らう=にやく)、/手足(てあし)をはこび、/人(ひと)のあたゆる/施行(せぎやう)をうけて/参(まゐ)るこそ、 00100300¥P323 00100310¥G(二十ウ・二十一オ) 00100320M1/正直(せうしき)/信心(しん※)也。なんぢハ/水中(すいちう)をわがもの/皃(かほ)ニうかれあるき、 00100330M2/其上(そのうへ)いはしを見れハ/一飲(ひとのミ)とし、/同(をな)じ/仲間(なかま)をともぐひをなし 00100340M3ながら(十七オ)/朕(われ)を/念(ねん)ずる。Sアノこゝな、/海一番(うミいちはん)の/油(あぶら)と 00100350M4りめ 00100360¥N3¥J 00100370¥X/是(これ)ハ/尤(もつとも)△△△△△△△△△△△△¥A唐里作 00100380M7/出入(でいり)のかごかき、/門口(かどぐち)から/小腰(こごし)をかゞめて、コレハ/旦那(たんな)。 00100390M8此あひたハ/御(ご)ぶさたをいたしました。これハおはづかしう 00100400M9/厶(こさ)り/升(ます)れどもト、おはらひとさいはしを/出(いだ)す。旦那Sヲヽ、 00100410M10/此(この)ぢうハおじやらんと/思(おも)ふたが、これハぬけ参りしやつた 00100420M11か(十七ウ)△かごSハイ。御かけで/入参(いれまゐ)りをいたしました 00100430M12旦Sナンジヤ、いれまゐりじや△Sハイ。とふしかごにま 00100440M13ゐり升た 00100450¥N4¥J 00100460¥X/時(とき)の/流行(りうこう)△△△△△△△△△△△△¥A同作 00100470M16さる/処(ところ)の/丁稚(てつち)、ぬけ/参(まゐ)りしたるを、/主人(しゆじん)大ニはらをたて、 00100480M17あとより/追(おつ)かけ、/蹴上(けあげ)まで/行(ゆく)といへども、かいくれ見えず。 00100490M18せんかたなく、ぼやき+(十八ノ九オ)かへるに、/三条小(さんじやうのこ) 00100500M19ばしのもとに、/人(ひと)だかりあり。たちより見れバ、/杭(くひ)の/間(あひだ)よ 00100510M20り、うなぎ一/疋(ひき)/釣上(つりあげ)たる/処(ところ)なり。これを見て、ほつこりし 00100520¥P324 00100530L1たる/折(をり)なれバ、これを/買(か)ふて一ぱい/呑(の)まんと、/猟師(れうし)にむか 00100540L2ひ、○Sそのうなぎ、おれにうらんか△猟▲Sハイ、御か 00100550L3いなされ。うりませう△○Sなんぼじや△▲S弐百なら/上(あげ) 00100560L4ませう△○S百五拾にまけい△▲S/朝商(あさあきな)ひじや。まけませ 00100570L5う(十八ノ九ウ)と/直(ね)だんできて、/猟人(れうし)、うなぎの/針(はり)をとる。 00100580L6○Sなんぞ/入(いれ)ものハないか△▲S/入(いれ)ものハござり/升(ま)せぬ。 00100590L7/首(くび)の/所(ところ)を、こう、しつかりと/持(もつ)て、おかへりなされませ△ 00100600L8▲○Sヲイ+、こうか+と、かた/手(て)でにぎると、ぬる 00100610L9りと/向(むか)ふへ/出(で)るを、ちやつと/左(ひだ)りでにぎると、/又(また)/向(むか)ふへ/出(で) 00100620L10る。/右(ミぎ)でにぎると、又/向(むか)ふへ/出(で)る。Sヱイ。こいつも/又(また)ま 00100630L11ゐろうとおもふて(二十オ)(二十ウ・二十一オ) 00100640¥N5¥J 00100650¥Xまはり/気(ぎ)△△△△△△△△△△△△¥A同作 00100660L14/女夫(めうと)さしむかひぐらしの/内(うち)に、ひる/飯(めし)すぎより、/女房(にようばう)いづ 00100670L15かたへゆきしやら、うちに見えず。/亭主(ていしゆ)、大に/腹(はら)たてども、 00100680L16せんかたなく、/其日(そのひ)もやう+くれて、あけのひるどき、 00100690L17女房/杓(しやく)をもちながら/帰(かへ)りきて、女房Sモシ、こちの/人(ひと)。と 00100700L18ふぞかんにんしておくれ△亭Sおのれ、きのふからどこへ 00100710L19いて(二十一ウ)いた△女S/人(ひと)さんがぬけなさるがけなりさ 00100720L20に、おまへにいふたらやりなさらんさかい、だまつて/出(で)ま 00100730M1した△ていしゆSそのいせまゐりが、いまじぶんにもどる/物(もの) 00100740M2か△女Sさいなア。/出(で)た/事(こと)ハでたけれど、/女(をなご)ひとりじやさ 00100750M3かい、/道(ミち)でわるい事をしてじやによつて△ていしゆSなんじ 00100760M4や、わるい事をする。シテ、/夕部(ゆふべ)ハどこにとまつた△女 00100770M5Sサア/夕部(ゆふべ)(二十二オ)ハ/大津(おほつ)でとまつたがナ。まことに/大群= 00100780M6集(おほくん=じゆ)で、ふとん/一(いつ)でうに五六/人(にん)も一しよにねるのでナ△てい 00100790M7Sなんじや。五六/人(にん)も一しよじや。そりやたれと△女Sた 00100800M8れじやしらん。しらぬおかたじや△ていしゆSソリヤ/男(おとこ)か/女(おなご) 00100810M9か△女S/男(おとこ)も/女(おなご)もいつしよに△ていしゆSにつくいやつ。 00100820M10おれといふ/夫(をつと)をもちながら、どこの/牛(うし)の/骨(ほね)やらしれぬ/男(おとこ)と 00100830M11一しよにねるとハ、おのれまあ△女Sさいなア。(二十二ウ) 00100840M12それじやによつて、せつかくぬけかけたけれど△ていしゆ 00100850M13Sまいりやせんか 00100860¥N6¥J 00100870¥X/田舎(いなか)も/粋(すい)△△△△△△△△△△¥A夢輔作 00100880M16/田舎(いなか)のおやぢ、/何(なに)やらうろ+してゐるゆへ、所の人Sこ 00100890M17れ+おやちどの。さいぜんから見りや、うろ+してゐ 00100900M18やしやるが、/何(なん)ぞおとしたのか△おやぢSイへ+、おと 00100910M19しハしませぬが、わすれて/来(き)ま(二十三オ)した△所の人S/何(なに) 00100920M20をわすれてごんした△おやちS/向(むか)ふの/茶(ちや)やまでつれてきた、 00100930¥P325 00100940L1わしが/女房(にようぼ)どもを、わすれて/来(き)ました△所Sハヽヽヽヽ、 00100950L2じぶんの/嚊(かゝ)をわすれるとハ、こいつ、大わらいだ。ハヽヽ 00100960L3ヽヽヽ△おやちSイヤこれ、かゝをわすれたを/笑(わら)ハしやま 00100970L4すな。アノ/報謝(ほうしや)かごかく人見なされ。われをわすれてゐる 00100980¥N7¥J 00100990¥X/水(ミづ)ハもと/水(ミづ)△△△△△△¥A持曲作(二十三ウ) 00101000L7八兵へさん。此あひだ、ぬけなさつたさふな。○Sサア、 00101010L8おかげてぬけました△▽Sにきやかなさふな△Sいやはや、 00101020L9/道中(どうちう)/大(おほ)くんじゆ。/別(べつし)て/六(ろつ)けんからハ、あをごへ、いがこへ 00101030L10が/打込(うちこ)んで、/小(を)ばたまで/五里(ごり)があひだハ、おされどふしで 00101040L11厶り升た△▽Sソリヤ/五里(ごり)おしじや△○Sさふかして、/宮= 00101050L12川(ミや=がハ)へ/出(で)てたすかつた 00101060¥N8¥J 00101070¥X一トまはり△△△△△△△¥A同作(二十四オ) 00101080L15おかげまゐりハ六十一/年(ねん)めじやときゝましたが、/明和(めいわ)八年 00101090L16から、ことして六十年め。どういふものでござり升な△ 00101100L17Sソリヤ、/諸国(しよこく)の人が、まゐらふといふ/一(いち)ねんが/入(い)る(二 00101110L18十四ウ) 00101120G1〔下巻挿絵中の歌詞〕 00101130G1△△はさんたるかミも納受あれかしと 00101140G2△△△そろ+夜着をぬけかけにけり△△伊賀丸(六ウ) 00101150G1△△豊かなるあめか下とて銭米の 00101160G2△△△ふるほとこしの御いせ道&△△伊賀丸(十三オ) 00101170G1△△おかけそといふもことわりすけ笠て 00101180G2△△△三条通をかふせかけれは△△下手丸(二十ウ) 00101190¥Q 00101200M9皇都△東籬亭主人校合 00101210M10皇都△都喜蝶作G 00101220M12皇都△有楽斎長秀画G 00101230M13文政十三庚寅四月発兌 00101240M14△△△△△寺町錦小路上ル町 00101250M15京都書林△△△伏見屋半三郎 00101260¥P326 00101270¥U噺本大系△第十五巻 00101280¥T初春仙女香の落噺し△女郎買の落し噺し△舎もの江戸かせぎ落し噺し△かこいものの落し噺し 00101290¥G 00101300¥Y 00101310L18文政頃刊 00101320L19泉永堂板 00101330L20小本四巻合一冊 00101340¥G(一オ) 00101350¥T1/初(はつ)はる/仙女香(せんじよこう)の/落(をとし)噺し 00101360¥N1¥J 00101370¥X仙女香 00101380M15ふうかなる/隠居(いんきよ)ありしか、房州より下女を/置(をき)、近所に八蔵 00101390M16といふひやうひやくもの有。おり+出入する。おりしも 00101400M17正月のことなるが、◇八◇礼にきて見れバ、隠居ハ/留守(るす)、下女 00101410M18のおさんひとり。◇八◇これ+おさん殿。きた時とハ/違(ちかい)、色 00101420M19が/白(しろく)なり、桜色になりやした△◇おサン◇アイ。おまへにおそ 00101430M20ハつた京橋の仙女香を、三ツ付やした△◇八◇それハ/奇妙(きめう)+ 00101440¥P327 00101450L1◇ヲサン◇色ハ白クなりやしたが、どうぞ/鼻(はな)を/高(たかく)して、ほうを 00101460L2ひくゝする薬ハ、どこに/厶(こざり)り升へ△◇八◇それハそれ+、今 00101470L3戸の/人形(にんきやう)屋サ(一ウ) 00101480¥N2¥J 00101490¥X大小 00101500L6◇礼者◇明ましてハ結構な春でござります△◇主人◇是ハはや※ 00101510L7と忝うござります。ハヽア、当春も又お作の大小、面白う 00101520L8出来ました△◇礼◇ハイ、私も年&大小でハ名を取ましたから、 00101530L9来年ハぐつとのしきつて、百大小をあんじるつもりさ△◇主◇ 00101540L10それハ大さうな事ね△◇礼◇左様さ。百通り拵へるにハ、マア 00101550L11戯作から彫刻から、よほど手間のかゝる事。そこで年礼を 00101560L12仕廻ふと、ぢきにあんじかけるつもりさ(二オ)◇主◇へヱ、し 00101570L13かし、来年の大小が、今からハしれぬはず。いづれの/陰陽= 00101580L14家(をんよう=か)にお聞なさるぞ△◇礼◇何さ。来年の大小柱暦に聞やす 00101590¥N3¥J 00101600¥X風神 00101610L17春風の手まねきすれバわらべらが△糸にひかるゝいかのぼ 00101620L18り。◇童◇風ふけなふけ風の神ハよわいな△◇風神◇ばかめ。つよ 00101630L19いと送り出されるハ 00101640¥N4¥J 00101650¥X妙薬(二ウ) 00101660M3ある隠居、染井へんの植木やを、のミ取まなこにてのぞき 00101670M4廻る。◇植木や◇モシ隠居さん。何をおさがしなさる◇隠居◇此 00101680M5頃あるものしりのいハれるにハ、/優曇花(うどんげ)の/花(はな)ハ三千年に一 00101690M6度花さくもので、其花を見ると三千年いきる。又その花を 00101700M7喰すれバ、薬九そうばいの割を以、三九、弐万七千年いき 00101710M8ると承つたから、なんでもその花を見付てくひたくぞんじ、 00101720M9毎日さがし廻ります△◇植◇へヱ、其物しりハまだ青い+。 00101730M10うどんげの花をたゞ(三オ)くつてハ弐万七千年。それに/酢(す) 00101740M11をくハへてくうと、五万年いきやす△◇隠◇シテ、すをくハへ 00101750M12る心ハ△◇植◇うすどんげの花 00101760¥N5¥J 00101770¥X問屋 00101780M15仕事師の忰を、/穀(こく)問屋へ年季奉公にやりしが、首尾よく勤 00101790M16て宿へ引こむと、ぢきに手なれし穀問屋をはじめけるが、 00101800M17大きに繁栄しけり。ある日帳箱の前で、書状数通書てゐけ 00101810M18れバ、◇親父◇是さ。手めへハ此いそがしいに、筆ばつかりひ 00101820M19ねくつてゐる。ちつと俵で(三ウ)もつミやナ△◇忰◇イヽヱ。 00101830M20是ハ諸国から、つミつけの案内状や得意方からの注文状な 00101840¥P328 00101850L1とが、ふるほど参りますから、其返事を、それ+に書て 00101860L2やらねハなりませぬ△◇親父◇ナニ、ばか+しい。正月のや 00101870L3うなひまな時に、沢山かいておけバいゝに 00101880¥N6¥J 00101890¥X儒者 00101900L6儒者と+/と((ママ))のつき合ハ、かりそめにも四角ばりて、切石 00101910L7に上下きせし風情也。Sイヤ先生。いかゞ思召。朋友(四 00101920L8オ)信ありといへども、信友と申すハまれなるもの。足下 00101930L9ハ又誰をか信友になし給ふぞ△S我ハ孔夫子を信友にいた 00101940L10したい△S我ハ夢にだも周公を信友にいたしたい。▽此咄 00101950L11を内弟子が立聞して、Sおいらハ女湯の三助の信友になり 00101960L12たい 00101970¥N7¥J 00101980¥X目代 00101990L15北方の奥に一つの国あり。此国のならハせにて、女の子も 00102000L16ちて、せいじんすれバ女郎に売る。是を出世ととなへ(四 00102010L17ウ)親族祝ひ、又そだて上し入目と身のしろ金を差引して、 00102020L18損徳を論ずるよし。其国のかたハらなる里にて、十五才に 00102030L19なる娘を持て、売るはずにせしに、此娘、ある男と欠落し 00102040L20て行衛しれず、三年ほど過て、もはや子持に成てゐけるを、 00102050M1やう+尋ね出し、とらへ来て、さう+所の目代へ訴へ 00102060M2けれバ、にくさハにくけれど、もはや子持になりしうへハ、 00102070M3ねうちなけれバ、了簡して売らぬがよいと、目代のあかる 00102080M4きさバきに、◇親◇子ゆゑのあかるみに迷ふ親心△◇娘◇子を(五 00102090M5オ)持てしる親のよく△◇目代◇ハテ、親ハあつても子ハそた 00102100M6つだナア 00102110¥N8¥J 00102120¥X銀簪 00102130M9ある船頭が海女にほれて、我と契らバ銀のかんざしをやら 00102140M10んといふ。あまもかんざしにやほれけん、一夜とめけり。 00102150M11扨船頭ハ約束のかんざしを紙に包ミしまゝ、あまにやりし 00102160M12が、跡しら波と出て行。其あとにて見れバ、かんざしにあ 00102170M13らで舟釘なり。あま、くやしがり、すぐさまゑびすお宮へ 00102180M14参り、恨ミの数&申上て、何とぞ船頭めが船からのめつて、 00102190M15海へ(五ウ)流れてくたバりますやうに、お守り下されと祈 00102200M16りて、神木にかの舟釘を打んとすれバ、神体あらハれ出給 00102210M17ひ、◇神◇ヤア+せく事なかれ。其釘をかんざしにせバ、船 00102220M18頭を流すにハ及ぶまじ△◇海女◇何がさて+△◇神◇それ、船頭 00102230M19を流すかハりのかんざしと投出し給ふを、アヽ有がたやと、 00102240M20おしいただきて見れバ、銀流し 00102250¥P329 00102260¥N9¥J 00102270¥X節分 00102280L3節分の夜に、鬼ハたゝずむ所なく、裏町をこそ+ゆけバ、 00102290L4(六オ)竹本何がしが所の豆まき也。門先に立よりてきけバ、 00102300L5のり地にてSヤア+鬼め。此年越のいり豆に、花さく春と 00102310L6いのつても、今夜ハさらりと西の海、きり+外へ出やア 00102320L7がれ△S鬼、こいつハかなハぬと隣町へ迯ゆけバ、こゝハ 00102330L8富本何がしが所の豆まき也。門先に立よりてきけバ、S年 00102340L9越の豆をうたバや、福ハ内、鬼ハそととハなさけなや△◇鬼◇ 00102350L10イヨ、有がてへと申ます(六ウ) 00102360¥G(1オ) 00102370¥T1/女郎買(しよろうかい)の/落(をと)し/噺(はな)し 00102380¥N1¥J 00102390¥X女郎買 00102400M15有/子息(むすこ)、女郎/買(かい)を始メ、だん+買つくし、/勘当(かんとう)され、供 00102410M16だちの所にいて、おり+買に/行(ゆき)けれバ、ひな様と/名付(なつけ)ら 00102420M17れ、ふしぎに思ひ、かむろに/菓子(くわし)をやりて、おれをひな様 00102430M18となぜにいふなと/聞(きけ)バ、◇カムロ◇いつも同/衣裳(いしやう)/着(き)てきなさる 00102440M19からといふ。◇客◇よし+といふて/別(わかれ)ける。/夫(それ)より/床入(とこいり)にな 00102450M20り、なしみなれハ、女郎/先(さき)にねている所を、◇客◇/着物(きもの)をはぎ、 00102460¥P330 00102470L1/雪(ゆき)のはだたといふてほめけれハ、◇女郎◇うれしそふに、/白(しろう)こ 00102480L2ざんすかとゝふ。◇客◇いや、ひやこい(1ウ) 00102490¥N2¥J 00102500¥X金印 00102510L5/吉原(よしハら)で/座舗(ざしき)もすミ、/床(とこ)へ入しに、女郎、せなかをむけてね 00102520L6るゆへ、どうしたときけバ、しやくおこりしといふ。◇客◇其 00102530L7しやくにハ妙な事がある。あの/最乗寺(さいじやうじ)の御/金印(かないん)を/腹(はら)へあ 00102540L8てると、ぢきにしやくがさがる。サア御/金印(かないん)をあてなと、 00102550L9小判一まいやる。(2オ)女郎、是をあてゝ、◇女郎◇ほんに妙 00102560L10ざんすねへ。ぢつきにさがりいしたト、それよりきげんよ 00102570L11くねる。夜明て/帰(かへ)らんとする時、◇客◇あの御金印を返しな△ 00102580L12◇女郎◇あれハどうぞ、うらにお出なんすまで、かしておくん 00102590L13なんし△◇客◇そんならかしていかう△◇女郎◇もしへ、お/金印(かないん)に 00102600L14も、利が出いすか 00102610¥N3¥J 00102620¥X諸礼 00102630L17/小笠流(おがさハらりう(ママ))の先生、ふとなり下り、/乞食(こじき)小やへおち(2ウ)しが、 00102640L18小やの中にても/万事(ばんし)/諸礼(しよれい)にてやりけり。/朋輩(ほうばい)の/乞食(こじき)、モシ 00102650L19先生。/梅干桶(むめぼしおけ)のものをくふにも、諸礼がありやすか。◇先生◇ 00102660L20あるとも+。先/桶(おけ)を両手にて引よせ、/飯(めし)を二つかミ/食(くつ)て、 00102670M1それから/肴(さかな)の/骨(ほね)にかゝる物じや△◇乞食◇一文/貰(もろ)ふにも諸礼が 00102680M2ありやすか△◇先生◇ある共+。一文の銭を/貰(もら)ひなば、三度 00102690M3いたゞいて、/袋(ふくろ)に入れる物じや△◇乞食◇しらミをつぶすにも 00102700M4諸礼がありやすか△◇先生◇ある共+。是ハつぶした/其跡(そのあと)で 00102710M5(3オ)◇乞食◇どうする△◇先生◇三どふるつて/着(き)る物じや 00102720¥N4¥J 00102730¥X商人 00102740M8/行徳(ぎやうとく)のむきミ売、本所四ツめへんのはたもとやしきへは 00102750M9いり、用人の/勝手(かつて)口から、◇商人◇もし、大ばか/猿(さる)ぼうハ、い 00102760M10らつしやらぬか△◇用人◇ナニ、/武士(ぶし)をとらへて大ばか猿ぼう 00102770M11のと、/舌長(したなが)なやつ。おのれ、まつ二つと刀にそりうてバ、 00102780M12◇商人◇アヽどうぞ、命ハおたすけ下されませ△◇用人◇そんなら、 00102790M13其むきミ、残らずおいて(3ウ)ゆけ△◇商人◇ハイ+と、む 00102800M14きミをミんなとられて、すご+立出る。◇用人◇/今度(こんど)きたら、 00102810M15又よりや△◇商人◇アイ。今度ハぶう+/貝(がい)でも持てきやせう 00102820¥N5¥J 00102830¥X居酒 00102840M18居酒やの腰懸にて、なまぐさ/坊主(ぼうず)、したゝかひつかけての 00102850M19太平楽。◇坊主◇イヤ、あの/徳本(とくほん)を、名僧だのぼさつだのとい 00102860M20ふが、あいつハ天がいも/鉢(はち)まきもしらず、よたかの/宝蔵(ほうぞう)だ 00102870¥P331 00102880L1に/修(しゆ)しえざるぼくねん(4オ)じん。それに引かへ/愚僧(くそう)など 00102890L2ハ、/正当(せうたう)いんもの/煮(に)ころばしより、魚でんのこのしろ、く 00102900L3うそくぜしき、居酒やのれんだいに、ちろり五つで/極楽往= 00102910L4生(ごくらくおう=じやう)、/大盃(たいはい)十八/度(ど)、/小盃(せうはい)/数(かず)しらぬ/大知識(だいちしき)。されバ徳本すら、 00102920L5一ケ寺を/開基(かいき)す。我ハなを十ケ寺も/開(ひら)かんと思ふ。◇若い者◇ 00102930L6なる程、おめへのきりやうでハ、おんでもねへ事。そして 00102940L7其/新寺(しんてら)のぬしになりなさると、せけんの人が△◇坊主◇何とい 00102950L8ハふ△◇若◇馬鹿の開山(4ウ) 00102960¥N6¥J 00102970¥X花嫁 00102980L11/婚礼(こんれい)の/座敷(ざしき)にて、/丸綿(まるハた)の白仕立なる/嫁(よめ)ご、ふつと取はづし、 00102990L12へをひりける。其そバに/居(ゐ)たる/待女郎(まちじよろう)、袖をふりて、これ 00103000L13ハ、ふん+とおめでたうござり升。S其つぎにゐたる/仲= 00103010L14人(なか=ふど)、/鼻(はな)をつまミ、いやはや、目にしミるほど、おめでたう 00103020L15ござる 00103030¥N7¥J 00103040¥X芸咄 00103050L18◇八◇吉公。お宿か△◇吉◇こりやア八さん。めづらしいねゑ(5 00103060L19オ◇八◇ほんに、おとゝし/篭細工(かございく)のはしり/時分(じぶん)、奥山でげん 00103070L20ざんしたまんまよ△◇吉◇そうさ。時に此頃ハ、何をお楽しミ 00103080M1だねへ◇八◇きゝねへ。とんだまじニ成て、/毎晩(まいばん)/銭湯(せんとう)からぢ 00103090M2きの/軍書(ぐんしよ)、/落(おと)し咄位の遊びさ△◇吉◇それハ妙だねへ△◇八◇しか 00103100M3し/軍書(ぐんしよ)なんどハ、一人してしやべるから、どうか/淋(さび)しいや 00103110M4うなもの。それよりハ座敷上るりの二人ならんだ所ハ、ど 00103120M5うかにぎやかで、いさミなものさト咄す。つぎの/勝手(かつて)で女 00103130M6房(5ウ)が、Sまさや+。@うぬが口へ手をあ|てゝつくりごへ、@ハイ+。S其 00103140M7きぶせうをはらつての、こんろでちよいとお茶を拵へてあ 00103150M8げや。@つくり声|ハイ+。@◇八◇時に、ゆんべ横丁の八人芸へいきやし 00103160M9たが、又どうもいゝねへ△◇吉◇へヱ、其名ハ何といふねへ△ 00103170M10◇八◇川嶋かゝあ(6オ) 00103180¥P332 00103190¥G(上一オ) 00103200¥T1/舎(いなか)もの江戸かせぎ/落(をと)し噺し 00103210¥N1¥J 00103220¥X舎物江戸かせぎ 00103230L15/舎(いなか)もの六蔵、七助二人/連(つれ)にて、江戸かせきにきて、神田/筋= 00103240L16違辺(すじ=かへへん)にてわかれ、思ひ+に家きやうしけるが、二三年も 00103250L17合ざりしが、浅草辺にて行合、これハ+とたがひにあい 00103260L18さつをして、◇七◇貴様ハどこに、なに商売をしているといへ 00103270L19バ、◇六◇今ハ鎌倉がしで、しちをとり、米を売つたりサ△◇七◇ 00103280L20それハけつこふだ△◇六◇そしておまへハといへバ、◇七◇おれも 00103290M1丁度それににたよふな商売さ。そして処ハとこだ。処ハ山 00103300M2崎町で、しちをおいたり、米をかつたり(上一ウ) 00103310¥N2¥J 00103320¥X万才 00103330M5万才ハ朝から晩まで、家毎にて盃をいたゞくに、どこても 00103340M6数の子と金ひら牛房斗り。又此家でも数の子をはさまれけ 00103350M7れバ、小声に、◇万才◇アヽちつと、いきなものでたべたいト 00103360M8いへば、手から数ノ子、ころ+ところげ落、◇数子◇アイ。 00103370M9いきなものをおたべ(一オ) 00103380¥N3¥J 00103390¥X狂歌 00103400M12辺鄙の狂歌師といつは、敗毒散ニかぎれど、医心も少しあ 00103410M13り、年ニ二三度ハ前句の点もする。常に手習子四五人をこ 00103420M14きつかひ、年番に当れバ庄屋としやきばる。第一ニ公事の 00103430M15あつかひが飯よりすきニて、気位べらぼうに高く、哥ハ赤 00103440M16下手なるものぞかし。(一ウ)此るいの狂歌師二人、ある日、 00103450M17浅草庵え来て、うぬぼれを並べたて、高き名をあたへよと 00103460M18いふゆへ、◇先生◇なるほど、各&御上達でごされハ、号を進 00103470M19ぜませう。先、足下ハ鼻がかけてゐるから/壺瑟楼(こひつろう)、また貴 00103480M20様ハきんが大きいから/浅尺(せんしやく)庵△◇二人◇ハヽア、いたミ入まし 00103490¥P333 00103500L1た 00103510¥N4¥J 00103520¥X念仏(二オ) 00103530L4仏性の光明行わたりて、心の鬼のすみかなき世なりけれハ、 00103540L5鬼も此ころほつ心して、衣の奉加ニ出けり。通りの人が、 00103550L6S是、鬼どの。何のねがひかあつて、そんな姿ニハなられ 00103560L7たぞ△◇鬼◇願といふハ、只仏の御名をあまた唱へ、罪をほろ 00103570L8ぼしたいばかり△Sなる程、尤じや。しかし其鬼の口から、 00103580L9あミた仏の出(二ウ)させ玉ふハふしぎた△◇鬼◇イヤ、口ばか 00103590L10りでハなイ。目からも出ます△S夫ハどうして△◇鬼◇鬼の眼 00103600L11にもあミだ 00103610¥N5¥J 00103620¥X隠居 00103630L14七十になる隠居、茶呑友達をほしがる故、出入の按摩、世 00103640L15話ヲする。◇いん居◇そして、其女の年ハいくつじや△◇あんま◇六 00103650L16十六さ△◇いん◇それハ(三オ)/四目(よめ)/十目(とをめ)でハないか△◇あんま◇ア 00103660L17イ。よめ遠目の上ニ、/遠耳(とをミヽ)さ 00103670¥N6¥J 00103680¥X書状 00103690L20江戸の伯父の方より、田舎へ状が届く。もとより無筆ゆへ、 00103700M1庄やの所へ行、其状をよんで貰ふ。◇庄や◇一筆啓上いたし候。 00103710M2先もつて御手まへ様△◇無筆◇もしへ、わしが事ハ手前で(三 00103720M3ウ)沢山だに、御の字をつけたり、様をつけたり、江戸の 00103730M4手紙ハ、げへに丁寧だもさ△◇庄や◇いよ+御あんねい△◇無筆◇ 00103740M5ヒヤア、又あんねへニ上、御の字をつけた 00103750¥N7¥J 00103760¥X御妾 00103770M8Sきのふ目見へのすんだめかけを、又やめにしやうとのお 00103780M9人。どうもわかりやせんから、聞ニ(四オ)きやした△Sイ 00103790M10ヤ、皃ハよいが、尻の大きいので気なしニなつたのさ 00103800M11S是、さる松め。しらうとの世話なら格別、おいらがきめ 00103810M12た奉公人ハ、鳥居よりきびしい小便無用たぞ。サア是から 00103820M13ハ出入だ。憚りながら、正雪でも忠弥でも相手にしかねへ 00103830M14兄さんだそ。あんまりとぼけアがるナ△Sまう夫で、前座 00103840M15ハすんだのか△Sなんだと(四ウ)△Sハテ、けいあん太平 00103850M16記しや 00103860¥N8¥J 00103870¥X三峯 00103880M19ある息子、遊所通ひの工面ニつまり、我家の土蔵のしろも 00103890M20のを盗ミ出さんと、ある夜忍びけるが、こゝに一ツの心が 00103900¥P334 00103910L1ゝりハ、三峯山のお犬のお礼がはつてあり。盗人来れハほ 00103920L2ゆるとなん。ほへられてハたまらぬゆへ、先手水をつかひ 00103930L3手を(五オ)合せ、とうぞ内の者丈ケ御ひいきにおねかひ申 00103940L4ます。南無三峯様+、お犬様+と唱へて、土蔵へ入ら 00103950L5んとすれば、お犬さま、わん++。◇息子◇ヱヽ、此ちく 00103960L6せう様め(五ウ) 00103970¥G(一オ) 00103980¥T1かこいものの/落(をと)し/噺(はな)し 00103990¥N1¥J 00104000¥Xかこゐもの 00104010M15こゝに浅草/生(うまれ)の女、江戸向へかたつき、五ツ斗の男の子有 00104020M16て、/亭主(ていす)に/別(わか)れ、後家になり、くらしにこまり、こきやう 00104030M17浅草へ/帰(かへ)り、/薮(やぶ)の内へ店をかりをりしに、/坊(ほう)、毎/晩(はん)よ/遊(あそび)に 00104040M18出る/故(ゆへ)、母、/坊(ぼう)をよび、浅草といふ処ハ、よるハ化物がで 00104050M19るから、夜遊に出るなといふ。/坊(ぼう)、承知して内に/居(い)けるに、 00104060M20折から世/話役(わやく)有て、坊様の旦那ができ、廿日はかり/過(すぎ)て、 00104070¥P335 00104080L1坊、母に向ひ、おらか処へくるおぢさんハ/化(はけ)物だろうから、 00104090L2よしになさいよ。母、なせに。坊、よる斗くるから(一ウ) 00104100¥N2¥J 00104110¥X立春 00104120L5一夜明れバ、こゝに梅がゝ、かしこに鴬、おの+哥の催 00104130L6促に、在ル狂哥好ミの息子、唐卓にもたれて詠初せんと考 00104140L7へる体を見て、◇親父◇コレ、初春そう+、何を物あんじす 00104150L8るやい△◇息子◇ハイ。立春を一ツいたさうとぞんしまして△◇父◇ 00104160L9ナニ、哥ばかりよんで、なまけてゐて、立身致さうも気か 00104170L10つゑゝ△◇子◇アイヤ、立春とハれいのひなぶり哥を致すもの 00104180L11でござります△◇父◇アヽ、ひなぶりハよさつ(二オ)せへ。寐 00104190L12小べんをたれるもんだよ 00104200¥N3¥J 00104210¥X蒲焼 00104220L15Sイヤ、たがなんといつても、かばやきの元祖と言ハ、大 00104230L16和田さ△Sイヤ、又水道橋も、昔からさめぬねへと咄ス内 00104240L17に、そばから飯たきぢゝいが、Sわたしハ此比、かば焼の 00104250L18ぐつとの元祖をたべました△Sそりやどこで△S日暮しで 00104260L19S何といふ茶やて△Sよしずはりて、山の芋のでんがく 00104270L20(二ウ) 00104280¥N4¥J 00104290¥X大食 00104300M3信濃から年季野郎を置しに、あまり大飯をくふゆへ、◇主人◇ 00104310M4コレ野郎よ。手まへなどの国ものハ皆大食だが、あれにも 00104320M5なんぞ、徳があるか△◇野郎◇アイ。おらが国でハ、大食すれ 00104330M6バ寿命か長いといひ申ス△◇主◇そりや又なぜ△◇野◇ハテ、大飯 00104340M7をくふものを、しなぬものといふでハごさりやせぬか△ 00104350M8◇主人◇ハヽア、道理で、いき国ともいふ 00104360¥N5¥J 00104370¥X餌差(三オ) 00104380M11Sあの鳥さしが、すゞめをさしかゝる時に、通りの人が、 00104390M12なんまいだといへバ、きめうにさしそこなふもんたねへ△ 00104400M13Sさ様さ。又通りの人が、なんともいハぬ時ハ、Sどうす 00104410M14るへ△Sすゝめが、なんまいたといつて、さゝれやす 00104420¥N6¥J 00104430¥X医家 00104440M17ゐしやとのゝ所へゆき、◇六兵衛◇ハイ、お頼ミ申ます。新道 00104450M18の八百屋のうらの六兵衛でごさります。先達てお(三ウ)療 00104460M19治て快気いたしました妻が、又今度ハ血の道で難義いたし 00104470M20ますから、御苦労なからお見廻下さりませ△◇ゐしや◇イヤ、 00104480¥P336 00104490L1血といふ/奴(やつ)ハ、たちまち一命にも及ぶこわひものじやから、 00104500L2外をたのまつしやれ△◇六◇それハあなたにも似合ぬお詞。病 00104510L3ひハ医の預る所、命ハ医のあづからさる所でハこさりませ 00104520L4ぬか△◇ゐ◇サレバサ。此ものまへも、礼にあつからざる所た 00104530L5から 00104540¥N7¥J 00104550¥X雨雲(四オ) 00104560L8小夜更て、永久はしの方から大橋の方へ、早足にいそぐハ、 00104570L9よたかの巣帰りにぞありける。S船まんぢう、声かけ、 00104580L10◇まんちう◇なぜそんなに、いそぎなさる△◇よたか◇ふつて来そう 00104590L11だからさ△◇まん◇へヱ、わつちらハふられても、へい気だよ 00104600L12◇たか◇なぜへ△◇まん◇ハテ、川にゐるから、かつはがたくさん 00104610L13ありやす△◇よた◇へヱ、わつちらもしつかり、かさハしよつ 00104620L14てゐやす 00104630¥N8¥J 00104640¥X野狐(四ウ) 00104650L17王子辺に、いとうつくしき娘ありけり。狐、是を見て大き 00104660L18にほれて、其娘に付きける。つきハ付ながら、どうもしや 00104670L19うなし。◇狐◇ヱヽばかな。隣の息子につけバ、勝手がよかつ 00104680L20た 00104690¥N9¥J 00104700¥X居酒 00104710M3づう国の旅人に、馬喰町にてあひ、是ハ久しふり。マア我 00104720M4店へお立寄とつれ立、伝馬町の方へゆき、ある居酒屋へよ 00104730M5り、◇金八◇此向ふの両替やが(五オ)わしが店さ。店でハ気が 00104740M6つまらうから、こゝで一ツ上ケやう△◇旅人◇扨&仕合な事。 00104750M7うつたまげ申た△◇金八◇イヤ、しかし大店の主になるも、又 00104760M8苦しミさ。人をつかふハ遣ハるゝで、猶大せいの家来共に 00104770M9あやまつて居ねバ、店が納りやせぬと、見えをいふ内、向 00104780M10ふの両替やの/丁稚(でつち)がきて、ヲイ金八どん。言付置た御ぜん 00104790M11かご、まだお屋敷へ持てうせおらぬかと、番頭さんが大こ 00104800M12ゞとだ。きり+こさらぬと、おはらひ箱だよといふて帰 00104810M13る。(五ウ)◇金八◇此通り、あやまりづめさ 00104820¥N10¥J 00104830¥X土産 00104840M16親分の所へ、子分の八が見まふ折ふし、又跡から、子分の 00104850M17松が来る。◇松◇親分。こりやアおかしらしいもんだがね。ぼ 00104860M18うにおみやてこざりやすト、四五百ばかりのうなぎを出ス。 00104870M19◇親分◇こりやア+、よしにしねへで△◇松◇ナニ、おはづかし 00104880M20うこさりやス。手ぶらの◇八◇てれきつて、手拭をひねり+ 00104890¥P337 00104900L1◇八◇わつちも、おはつかしう御座りやス(六オ) 00104910¥N11¥J 00104920¥X後家 00104930L4みとりの髪をゝしけなく、ふつつり切しぼつとり後家。け 00104940L5ふハ仏の日なりとて、近所へ配る心ざし、重箱出しに土蔵 00104950L6へゆく。飯たきの三介、跡からつか+と土蔵へはいり、 00104960L7後家の袖をしつかと引。◇後家◇ヲヤ、三介か。何をしやる 00104970L8◇三介◇ハイ。わしにもぼた餅一ツ、くれさつしやれ(六ウ)